説明

ポリエーテルポリオールの製造方法、および硬質発泡合成樹脂の製造方法

【課題】ポリオールシステム液の粘度を低く抑制でき、ポリオールシステム液とイソシアネート化合物との良好な混合性が得られ、低密度でありながら強度および寸法安定性が良好で難燃性および断熱性に優れる硬質発泡合成樹脂を形成できる、ポリエーテルポリオールの製造方法を提供する。
【解決手段】フェノール類、アルデヒド類およびアルカノールアミン類を反応させた後、得られた反応生成物にアルキレンオキシドを付加してポリエーテルポリオール(A)を製造する方法であって、フェノール類の1モルに対して、アルデヒド類の使用割合が0.9モル以上1.35モル未満、アルカノールアミン類の使用割合が2.1モル以上10.5モル以下であるポリエーテルポリオールの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエーテルポリオールの製造方法、および該製造方法で得られるポリエーテルポリオールを用いた硬質発泡合成樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオール等の活性水素化合物とポリイソシアネート化合物とを整泡剤、触媒および発泡剤の存在下で反応させて、硬質ポリウレタンフォームまたは硬質ポリイソシアヌレートフォーム(本明細書では、まとめて硬質発泡合成樹脂という。)を製造することは広く行われている。硬質発泡合成樹脂は成形の自由度が高く断熱性にも優れることから、各種の装置または建築物の断熱材として好適に採用されている。断熱材にあっては、熱伝導性がより低くて、断熱性がより高いことが望ましい。
【0003】
これらの硬質発泡合成樹脂は、スプレー法、連続ボード成形法、注入法などの成形法を用いて製造されている。
例えば建築現場等において、断熱材等として硬質発泡合成樹脂を製造する際にはスプレー法が多く採用される。スプレー法とは、例えばポリオールおよび発泡剤等を含むポリオールシステム液と、ポリイソシアネート化合物をそれぞれポンプで送液し、スプレーガンから施工対象となる壁面等に吹きつけながら反応させ、その壁面等上で発泡させて断熱材等とする方法である。スプレー法の利点は、施工の対象となる壁面等の形状に左右されず、所望の厚さの断熱材を施工できる点である。また、スプレー法の中でも多層吹き付け法によれば、2回以上吹き付けることで硬質発泡合成樹脂を積層して、厚い断熱層を形成できる。
【0004】
一般的に、硬質発泡合成樹脂においては、原料の使用量削減によるコストダウンまたは軽量化による搬送の容易性のため、良好な断熱性を保ちつつ更なる低密度化が要望されている。しかし、低密度化に伴って強度が低下し収縮しやすいという問題、すなわち、寸法安定性が低下する問題がある。低密度でも強度や寸法安定性に優れる硬質発泡合成樹脂の開発が必要である。
また硬質発泡合成樹脂は、建築材料としての防火性の観点から難燃性も必要である。特にスプレー法を採用する場合には、施工現場での溶接火花による火災事故防止の点からも難燃性が要求される。
【0005】
硬質発泡合成樹脂の製造においては、現在、発泡剤としてハイドロフルオロカーボン(例えばHFC−245fa、HFC−365mfc等。以下HFC類という。)が主に用いられている。しかし環境への負荷を考慮すると該HFC類の使用を削減することが望ましい。そこでHFC類の使用量を削減し、それを補うために、水を発泡剤として使用する技術が検討されてきた。しかし、同等の発泡密度を得るのに必要なHFC類と水との使用量では水の使用量の方が極端に少ないため、HFC類に代えて水を用いると、HFC類による溶媒効果が低減して、ポリオールシステム液の粘度が増大し、成形性や施工性が悪化する問題がある。また、ポリオールシステム液中の水の含有率が高くなるにつれて、ポリオールシステム液と疎水性の高いポリイソシアネート化合物との混合性が悪化し、成形不良が発生しやすくなるという問題もある。特に、発泡剤として水を使用した際の上記の問題点はスプレー法で顕著に表れ、長年要求され続けている硬質発泡合成樹脂の低密度化や、断熱性および難燃性の向上と同時に、これらの問題点を解決することが強く望まれている。
【0006】
一方、フェノール類、アルデヒド類およびアルカノールアミン類をマンニッヒ縮合反応させて得られる反応生成物(マンニッヒ縮合物)を利用して製造されるポリエーテルポリオール類は、高い強度と高い難燃性が得られやすいという点で評価されている。
下記特許文献1〜5には、マンニッヒ縮合物を用いたマンニッヒポリオールが記載されている。
特許文献1は発泡剤として水を用いて硬質ポリウレタンフォームを製造する方法において、マンニッヒポリオールを用いる方法が記載されている。フェノール類、アルデヒド類、およびアルカノールアミン類を反応させてマンニッヒ縮合物を得る際の、フェノール類:アルデヒド類:アルカノールアミン類のモル比として、一応1:1:1〜1:2.2:2.2の範囲が記載されているが、実施例で用いられている該モル比は1:1.5:2.0および1:2.0:2.0である。
特許文献2には、フェノール類1モルに対して1〜2モルのアミン化合物を混合し、さらに該フェノール類1モルに対して1.25〜1.75モルのホルムアルデヒドを添加して高官能マンニッヒ縮合物を製造し、これにアルキレンオキシドを付加させたマンニッヒポリオールが記載されている。
【0007】
特許文献3は、発泡剤に水を用いて硬質発泡合成樹脂を製造する方法に関するもので、マンニッヒ縮合物を用いて製造した低粘度のマンニッヒポリオールが記載されている。該マンニッヒ縮合物は、アルキルフェノール:ジエタノールアミン:ホルムアルデヒド=1:2.5〜4:1.5〜2で縮合して製造された官能基数の高いマンニッヒ縮合物である。
特許文献4は、フェノール性化合物をホルムアルデヒドおよびアルカノールアミンと反応させてマンニッヒ縮合物を形成し、このマンニッヒ縮合物を少なくとも部分的に脱水し、次いでアルコキシ化するマンニッヒポリオールの製造方法に関する。通常、1モルのホルムアルデヒドと0.75〜1.5モルのアルカノールアミンの比で用いられること、フェノール性化合物:ホルムアルデヒドのモル比は1:0.9〜1:3.5が有利に用いられることが、一応記載されているが、実施例で用いられているフェノール性化合物:ホルムアルデヒド:アルカノールアミンの比は1:2.0:2.0である。
特許文献5は、フェノール類とアルデヒド類とアルカノールアミン類を反応させた反応生成物に、プロピレンオキシドおよび/またはブチレンオキシド(エチレンオキシドを用いない)を付加してポリエーテルポリオールを製造する方法に関する。フェノール類1モルに対してアルデヒド類の使用割合を1.35〜3.0モルとし、アルデヒド類1モルに対してアルカノールアミン類の使用割合を1.1〜3.0とすることが記載されている。実施例で用いられているフェノール類:アルデヒド類:アルカノールアミン類の比は1:1.4〜2:1.8〜2.4である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2002−524630号公報
【特許文献2】特開2004−10812号公報
【特許文献3】特開平08−301820号公報
【特許文献4】特開平03−121113号公報
【特許文献5】特開平11−189645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来のマンニッヒポリオールは粘度が高い傾向にあり、ポリオールシステム液の粘度が高くなりやすい。ポリオールシステム液が高粘度であると、発泡時にポリオールシステム液とイソシアネート化合物原料の混合性不良が生じて施工性が悪くなりやすい。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、ポリオールシステム液の粘度を低く抑制でき、ポリオールシステム液とイソシアネート化合物との良好な混合性が得られ、低密度でありながら強度および寸法安定性が良好で難燃性および断熱性に優れる硬質発泡合成樹脂を形成できる、ポリエーテルポリオールの製造方法、および該ポリエーテルポリオールを用いた硬質発泡合成樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以下の[1]〜[10]である。
[1]下記フェノール類、下記アルデヒド類および下記アルカノールアミン類を反応させた後、得られた反応生成物にアルキレンオキシドを付加してポリエーテルポリオール(A)を製造する方法であって、前記フェノール類の1モルに対して、前記アルデヒド類の使用割合が0.9モル以上1.35モル未満、前記アルカノールアミン類の使用割合が2.1モル以上10.5モル以下であることを特徴とする、ポリエーテルポリオール(A)の製造方法。
フェノール類:フェノール、およびフェノールの水酸基に対して少なくとも1か所のオルト位に水素原子を有するフェノール誘導体からなる群から選ばれる1種以上。
アルデヒド類:ホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒドからなる群から選ばれる1種以上。
アルカノールアミン類:モノエタノールアミン、ジエタノールアミンおよび1−アミノ−2−プロパノールからなる群から選ばれる1種以上。
【0011】
[2]前記フェノール誘導体が、フェノールの水酸基に対して少なくとも1か所のオルト位に水素原子を有し、それ以外の、芳香環に結合した水素原子の1個以上が炭素数1〜15のアルキル基で置換されたアルキルフェノールである、[1]のポリエーテルポリオール(A)の製造方法。
[3]前記アルキレンオキシドが、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドからなる群から選ばれる1種以上である、[1]または[2]のポリエーテルポリオール(A)の製造方法。
[4]前記ポリエーテルポリオール(A)の水酸基価が200〜800mgKOH/gである、[1]〜[3]のポリエーテルポリオール(A)の製造方法。
【0012】
[5]ポリオール組成物(P)とポリイソシアネート化合物(I)を、発泡剤、整泡剤および触媒の存在下で反応させて硬質発泡合成樹脂を製造する方法であって、前記ポリオール組成物(P)が、[1]〜[4]の製造方法で得られるポリエーテルポリオール(A)を含むことを特徴とする硬質発泡合成樹脂の製造方法。
[6]前記ポリオール組成物(P)におけるポリエーテルポリオール(A)の含有量が20〜100質量%である、[5]の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
[7]前記発泡剤として水を単独で用いる、[5]または[6]の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
[8]前記ポリオール組成物(P)が、ポリマー分散ポリオール(W)を含む、[5]〜[7]の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
[9]前記ポリマー分散ポリオール(W)の水酸基価が100〜800mgKOH/gである、[8]の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
[10]スプレー法を用いる、[5]〜[9]の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法で得られるポリエーテルポリオール(A)は、これを含むポリオールシステム液の粘度が低く抑制され、ポリオールシステム液とイソシアネート化合物との良好な混合性が得られる。また、ポリエーテルポリオール(A)を用いて硬質発泡合成樹脂を製造することにより、低密度でありながら強度および寸法安定性が良好であり、難燃性および断熱性にも優れた硬質発泡合成樹脂が得られる。
したがって発泡剤としてHFCの代わりに水を用いた場合にも、ポリオールシステム液の粘度を低く抑えることができる。またスプレー法にも好ましく適用でき、良好な硬質発泡合成樹脂を形成できる。
本発明の硬質発泡合成樹脂の製造方法によれば、ポリオールシステム液の粘度が低く、ポリオールシステム液とイソシアネート化合物との混合性が良好であり、良好な成形性、施工性が得られるとともに、低密度でありながら強度および寸法安定性が良好で難燃性および断熱性にも優れる硬質発泡合成樹脂が得られる。スプレー法によっても良好な硬質発泡合成樹脂を形成できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明における「ポリオールシステム液」とは、ポリイソシアネート化合物と反応させる相手の液であり、ポリオールのほかに発泡剤、整泡剤、触媒等、必要に応じた配合剤を含む液である。
本発明における「硬質発泡合成樹脂」とは、硬質ポリウレタンフォームおよび硬質ポリイソシアヌレートフォームの総称である。以下、硬質フォームということもある。
本発明における「ポリマー分散ポリオール」とは、ポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオール等のベースポリオール(W’)中で、重合性不飽和結合を有するモノマーを重合させてポリマー粒子を形成することによって得られるもので、該ベースポリオール(W’)中に該ポリマー粒子を分散させたポリオール(W)である。
本発明における「マンニッヒ縮合物」とは、フェノール類、アルデヒド類、およびアルカノールアミン類を反応させて得られる化合物である。
本発明における「マンニッヒポリオール」とは、マンニッヒ縮合物に、アルキレンオキシドを付加して得られる化合物である。
【0015】
<ポリエーテルポリオール(A)の製造方法>
本発明のポリエーテルポリオール(A)(以下、「ポリオール(A)」という。)の製造方法は、まずフェノール類、アルデヒド類およびアルカノールアミン類を反応(以下、マンニッヒ縮合反応ということもある)させてマンニッヒ縮合物を含む反応生成物を得る。該反応生成物には反応後に残存する未反応物も含まれるものとする。
【0016】
フェノール類は、フェノール、およびフェノールの水酸基に対して少なくとも1か所のオルト位に水素原子を有するフェノール誘導体からなる群から選ばれる1種以上である。すなわち、フェノールの水酸基に対して少なくとも1か所のオルト位に水素原子を有していればよく、フェノールであってもよく、フェノール誘導体であってもよい。フェノール類は1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
フェノール誘導体としては、フェノールの水酸基に対して少なくとも1か所のオルト位に水素原子を有し、それ以外の、芳香環に結合した水素原子の1個以上が炭素数1〜15のアルキル基で置換されたアルキルフェノールが好ましい。アルキルフェノールにおけるアルキル基の置換位置はオルト位、メタ位、パラ位のいずれでもよい。アルキルフェノールの1分子中、アルキル基で置換された水素原子の数は1〜4個であり、1〜2個が好ましく、1個が最も好ましい。
アルキルフェノールにおけるアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜10である。該アルキルフェノールとして、ノニルフェノール、クレゾールが好ましく用いられる。特にノニルフェノールは、ポリオール(A)とポリイソシアネート化合物(I)との相溶性を向上させ、セル外観を向上させる点で好ましい。
【0017】
アルデヒド類としては、ホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒドの一方または両方の混合物が用いられる。これらのうちで、ホルムアルデヒドが硬質フォームの接着性を向上させる点で好ましい。ホルムアルデヒドはどのような形で使用してもよく、ホルマリン水溶液、メタノール溶液、パラホルムアルデヒドとして使用できる。パラホルムアルデヒドとして使用する場合は、パラホルムアルデヒドを加熱してホルムアルデヒドを生成させ、該ホルムアルデヒドを本工程の反応に用いてもよい。なお、使用量は、ホルムアルデヒド換算のモル数で計算する。
【0018】
アルカノールアミン類は、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンおよび1−アミノ−2−プロパノールからなる群から選ばれる1種以上である。これらのうちで、ジエタノールアミンが、得られる硬質フォームの強度向上とポリオール(A)の粘度低減のバランスをとる上でより好ましい。
【0019】
本発明において、原料の使用割合は、フェノール類の1モルに対し、アルデヒド類が0.9モル以上1.35モル未満であり、0.98モル以上1.30モル以下が好ましく、1.0モル以上1.25モル以下がさらに好ましい。0.9モル以上1.35モル未満であれば、ポリオール(A)が低粘度であり、これを用いて得られる硬質フォームは良好な寸法安定性とより優れた断熱性を有する。
【0020】
アルカノールアミン類の使用割合は、フェノール類の1モルに対して2.1〜10.5モルであり、好ましくは2.5〜10モルである。2.1〜10.5モルの範囲であれば、ポリオールシステム液の粘度が低く抑制されやすく、ポリオールシステム液とポリイソシアネート化合物(I)との混合性、および得られる硬質フォームの寸法安定性や難燃性が良好になりやすい点で好ましい。
【0021】
本発明において、アルデヒド類の使用割合を上記の範囲とすることは、ポリオール(A)の低粘度化に寄与する。その理由については、以下のように考えられる。以下においては、フェノール類の一例としてパラ位にアルキル基Rを有するアルキルフェノール、アルデヒド類の一例としてホルムアルデヒド、アルカノールアミン類の一例としてジエタノールアミンを用いて説明するが、他の化合物においても同様である。
すなわちフェノール類とアルデヒド類とアルカノールアミン類とを反応させる際に、フェノール類の1モルに対しアルデヒド類が0.9モル以上1.35モル未満であると、得られる反応生成物は、下式(i)で表されるような、フェノール類:アルデヒド類が1:1(モル比)で反応した構造を有するマンニッヒ縮合物を多く含み、下式(iii)で表されるような、フェノール類:アルデヒド類が1:2(モル比)で反応した構造を有するマンニッヒ縮合物や、式(iv)で表される多核体の含有量は少なく、式(ii)で表されるような未反応のアルキルフェノールは殆ど含まないものとなる。
下式(iii)または(iv)で表される化合物に比べて、式(i)で表される化合物はマンニッヒポリオールの粘度を低く抑えることができる。かかる化合物が比較的多く存在することにより、ポリオール(A)が低粘度化される。
【0022】
また式(ii)で表される未反応のフェノール類がほとんど存在しないため、マンニッヒポリオール(ポリオール(A))の平均官能基数の低下が抑えられ、硬質フォームの強度低下を抑えることができる。これにより硬質フォームの寸法安定性を向上させることができる。
さらに、式(i)で表されるマンニッヒ縮合物は、式(iii)または(iv)で表される化合物に比べて、分子量が小さいため、これを開始剤として得られるマンニッヒポリオール(ポリオール(A))は、イソシアネート化合物や水との相溶性の向上に寄与し、得られる硬質フォームのセルの微細化に寄与する。硬質フォームのセルが微細化されると、輻射による伝熱が抑制され、熱伝導率が低下する。
【0023】
【化1】

【0024】
【化2】

【0025】
【化3】

【0026】
【化4】

【0027】
またアルカノールアミン類の使用割合は、マンニッヒポリオール(ポリオール(A))の粘度と硬質フォームの難燃性に影響を与える。すなわちアルカノールアミン類の使用割合が多くて、反応生成物(マンニッヒ縮合物)中に未反応のアルカノールアミン類が含まれると、該反応生成物を開始剤としてマンニッヒポリオール(ポリオール(A))を製造する際に、未反応のアルカノールアミン類にアルキレンオキシドが付加したポリオールが生成される。かかるポリオールは低粘度化に寄与するが、これが多くなるほど、芳香環を有するマンニッヒポリオールの含有割合が相対的に低くなるため、難燃性の低下が生じやすい。
本発明はアルデヒド類の使用割合を上記の範囲とし、かつアルカノールアミン類の使用割合を上記の範囲とすることにより、硬質フォームの難燃性を低下させずに、ポリオール(A))の低粘度化を達成できると考えられる。
【0028】
本発明におけるマンニッヒ縮合反応は、公知の方法で実施できる。フェノール類、アルデヒド類およびアルカノールアミン類を混合し、50〜150℃、好ましくは80〜130℃の温度で加熱することにより反応させることが好ましい。混合方法としては(1)〜(3)の方法が考えられる。
(1)フェノール類、アルデヒド類およびアルカノールアミン類を同時に混合する。
(2)フェノール類およびアルカノールアミン類の混合物にアルデヒド類を混合する。
(3)アルデヒド類およびアルカノールアミン類の混合物にフェノール類を混合する。
多核体の生成が少ない点で(2)が最も好ましく、次に(3)が好ましい。
マンニッヒ縮合反応により水が生成するので、また、ホルマリン水溶液を使用した場合には反応生成物中に水が存在するので、適切な方法で反応生成物から水を除去することが好ましい。例えば、100〜150℃にて反応装置の内圧を1,330〜66,500Paまで下げて減圧脱水し、残存水分量を約1質量%とする。水を除去する工程は、アルキレンオキシドを付加させる工程の前でも後でも行うことができ、アルキレンオキシドを付加させる工程の前に行うことが好ましい。
【0029】
本発明のポリエーテルポリオール(A)の製造においては、マンニッヒ縮合反応により得られた反応生成物を開始剤(S1)として、これにアルキレンオキシドを付加してポリオール(A)を得る。
開始剤(S1)に付加するアルキレンオキシドの付加量は、マンニッヒ縮合反応に使用したフェノール類1モルに対して2〜30モルが好ましく、4〜20モルがより好ましい。アルキレンオキシドの付加量が上記範囲の下限値以上であると、生成するポリオール(A)の水酸基価および粘度が低くなりやすい。アルキレンオキシドの付加量が上記範囲の上限値以下であると、得られるポリオール(A)を硬質フォームの製造に使用する場合、硬質フォームの収縮を抑えやすい。
【0030】
開始剤(S1)に開環付加重合させるアルキレンオキシド(AOと記載することもある。)としては、エチレンオキシド(EOと記載することもある。)、プロピレンオキシド(POと記載することもある。)、およびブチレンオキシドからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。これらのうちEOおよび/またはPOを用いることがより好ましく、EOおよびPOを用いることがさらに好ましい。
POとEOとを併用する場合、ブロック重合およびランダム重合のいずれの重合法を用いてもよく、さらにブロック重合とランダム重合の両者を組み合わせて製造することもできる。ブロック重合の場合、AOを開環付加重合させる順序は、PO、EOの順で付加するか、先にEOを付加し、PO、EOの順に付加することが好ましい。この順番で開環付加重合することで、ポリオール(A)の水酸基の多くは一級水酸基となり、ポリオール(A)とポリイソシアネート化合物(I)との反応性が高くなる。その結果、得られる硬質フォームの外観が良好になりやすく好ましい。また得られる硬質フォームの接着性の向上にも効果がある。
【0031】
開始剤(S1)に開環付加重合させるAOのうち、EOとPOとの合計が占める割合(EO+PO)/AOは、50〜100質量%が好ましく、80〜100質量%がより好ましく、100質量%が最も好ましい。この範囲であるとポリオールの粘度が低くなりやすく、かつ、硬質フォームの強度を確保しやすい。
またEOとPOとの合計量に対するEOの割合EO/(EO+PO)は50〜100質量%が好ましく、50〜80質量%がより好ましい。この範囲であるとポリオールの粘度を低く抑制しながら、硬質フォームの強度を確保しやすい。特に、末端がエチレンオキシド由来のオキシエチレン基となる場合は末端の水酸基が一級水酸基となり、良好な活性が得られるため、フォームの発泡性や反応性が速く、良好となりやすい。
なお、ポリオール(A)として、複数種のポリオール(A)を組み合わせて用いる場合、上記(EO+PO)/AOの値、またはEO/(EO+PO)の値は、ポリオール(A)全体としての値である。
【0032】
ポリオール(A)の水酸基価は200〜800mgKOH/gが好ましく、200〜550mgKOH/gがより好ましく、250〜450mgKOH/gがさらに好ましい。
ポリオール(A)として、複数種のポリオール(A)を組み合わせて用いる場合は、各ポリオール(A)の水酸基価がそれぞれ上記の範囲内であればよい。
ポリオール(A)の水酸基価が上記範囲の上限値以下であると、ポリオール(A)中に存在するアルキレンオキシド由来のオキシアルキレン鎖の量が増え、ポリオール(A)の粘度が下がりやすく好ましい。また、製造される硬質フォームの脆さが少なくなり接着性が出やすい。一方、該水酸基価が上記範囲の下限値以上であると、得られる硬質フォームの強度が確保し易く、寸法安定性がよくなるため好ましい。
【0033】
本発明のポリオール(A)の製造方法によれば、25℃における粘度が800mPa・s以下、好ましくは650mPa・s以下のポリオール(A)を得ることができる。該粘度の下限値は特に制限されないが、硬質フォームの強度を確保する点からは200mPa・s以上が好ましく、300mPa・s以上がより好ましい。
【0034】
<硬質発泡合成樹脂の製造方法>
本発明の硬質発泡合成樹脂の製造方法は、ポリオール組成物(P)とポリイソシアネート化合物(I)を、発泡剤、整泡剤および触媒の存在下で反応させる反応・発泡工程を有する。
[ポリオール組成物(P)]
ポリオール組成物(P)(以下、単に組成物(P)ということもある。)はポリオール(A)を含む。組成物(P)におけるポリオール(A)の含有量は、20〜100質量%が好ましく、30〜99質量%がより好ましく、30〜80質量%がさらに好ましい。この範囲であると、得られる硬質フォームにおいて好ましい強度、耐熱性および難燃性が得られ、フォーム割れの発生が抑制される。また、スプレー法においては、良好な活性を示す点から、壁面に吹き付ける場合の横流れの発生が抑制され、さらに多層吹き付けを行う場合のフォーム層どうしの接着性も向上するため良好な施工性が得られる。
【0035】
[ポリオール(C)]
組成物(P)は、さらに多価カルボン酸と多価アルコールを重縮合して得られる、水酸基価が100〜400mgKOH/gのポリエステルポリオール(C)(以下、ポリオール(C)ということもある。)を含んでもよい。
重縮合させる多価カルボン酸と多価アルコールの少なくとも一方は芳香環を有する芳香族化合物であることが好ましい。
多価カルボン酸としては、ジカルボン酸またはその無水物が好ましい。芳香環を有するジカルボン酸としては、無水フタル酸等のフタル酸類が挙げられる。芳香環を有しないジカルボン酸としてはマレイン酸、フマル酸、アジピン酸等が挙げられる。
多価アルコールとしては、ジオールが好ましい。芳香環を有するジオールとしては、例えば、ビスフェノールAにエチレンオキシドを付加させて得られるジオール等が挙げられる。芳香環を有しないジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0036】
ポリオール(C)の水酸基価は、100〜500mgKOH/gであり、100〜400mgKOH/gが好ましく、100〜350mgKOH/gがより好ましい。
ポリオール(C)として、複数種のポリエステルポリオールを組み合わせて用いる場合は、各ポリエステルポリオールの水酸基価がそれぞれ上記の範囲内であればよい。
ポリオール(C)の水酸基価が上記範囲の上限値以下であると、得られる硬質フォームの脆さが少なくなり接着性が出やすい。またポリオール(C)の粘度が下がりやすくなるため、組成物(P)における混合性が良くなり好ましい。さらにスプレー法において、ポリオールシステム液とポリイソシアネート化合物(I)とを所定の体積比で使用して施工する場合のイソシアネート指数を高く設定できる。一方、ポリオール(C)の水酸基価が上記範囲の下限値以上であると、得られる硬質フォームが収縮しにくい。すなわち、上記範囲内であれば、原料の混合性を良好に保ちながら、硬質フォームの接着強度、特に初期の接着強度を高くできる。
組成物(P)にポリオール(C)を含有させる場合、その含有量は、組成物(P)全体の1〜80質量%が好ましく、1〜70質量%がより好ましく、20〜70質量%がさらに好ましい。上記範囲内であれば、硬質フォームの強度向上効果および接着性の向上効果が充分に得られる。
【0037】
[ポリマー分散ポリオール(W)]
組成物(P)中にポリマー粒子を含有させることが好ましい。該ポリマー粒子は組成物(P)中に分散されていることが好ましく、具体的には、ベースポリオール(W’)中にポリマー粒子が分散しているポリマー分散ポリオール(W)を調製し、該ポリマー分散ポリオール(W)を組成物(P)に含有させることが好ましい。
ポリマー分散ポリオール(W)は1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリマー粒子は外径が10μm以下であることが好ましい。なお、ポリマー粒子の外径測定は日機装社製マイクロトラック超微粒子粒度分析計UPA−EX150で行う。
組成物(P)全体におけるポリマー粒子の含有量は0.002〜10質量%が好ましく、0.02〜10質量%がより好ましく、0.5〜7質量%が特に好ましい。上記範囲内であると、断熱性能を維持しながら得られる硬質フォームの収縮を効果的に抑制できる。
【0038】
ポリマー分散ポリオール(W)の水酸基価は100〜800mgKOH/gが好ましく、150〜800mgKOH/gがより好ましい。本明細書におけるポリマー分散ポリオール(W)の水酸基価とは、ベースポリオール(W’)中にポリマー粒子が分散しているポリオールについて水酸基価を測定して得られる値である。
ポリマー分散ポリオール(W)の水酸基価が上記範囲の下限値以上であると、他のポリオールとの相溶性が良好であり、上記範囲の上限値以下であると、ポリマー粒子の分散安定性が良好である。
【0039】
ポリマー分散ポリオール(W)は、必要に応じて溶媒の存在下、ベースポリオール(W’)中で重合性不飽和結合を有するモノマーを重合させてポリマー粒子を析出させる方法で製造される。
ポリマー粒子の形成に用いられる、重合性不飽和結合を有するモノマーとしては、通常、重合性不飽和結合を1個有するモノマーが使用されるが、これに限らない。
該モノマーの具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、2,4−ジシアノブテン−1等のシアノ基含有モノマー;スチレン、α−メチルスチレン、ハロゲン化スチレン等のスチレン系モノマー;アクリル酸、メタクリル酸またはそれらのアルキルエステルやアクリルアミド、メタクリルアミド等のアクリル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;イソプレン、ブタジエン、その他のジエン系モノマー;マレイン酸ジエステル、イタコン酸ジエステル等の不飽和脂肪酸エステル類;塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル;塩化ビニリデン、臭化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;およびこれら以外のオレフィン、ハロゲン化オレフィンなどがある。
好ましくはアクリロニトリル20〜90質量%と他のモノマー10〜80質量%の組み合わせであり、他のモノマーとして好ましいのはスチレン、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステルおよび酢酸ビニルである。これら他のモノマーは2種以上併用してもよい。
【0040】
また、上記に挙げたモノマーのほかに、該重合性不飽和基を有するモノマーの一部または全部として、含フッ素アクリレートまたは含フッ素メタクリレート(以下、「含フッ素モノマー」ということがある。)を用いることも好ましい。該含フッ素モノマーを用いることにより、ベースポリオール(W’)中でのポリマー粒子の分散安定性がより良好となる。また、ポリマー分散ポリオール(W)と他のポリオールとの相溶性が高まって、硬質フォームにおける寸法安定性の向上、断熱性能の向上が期待できる。
含フッ素モノマーの好適なものとしては、下記式(1)で表されるモノマーが挙げられる。
【0041】
【化5】

【0042】
式(1)中において、Rは、炭素数1〜18のポリフルオロアルキル基である。Rにおいて、炭素数は1〜18であり、1〜10が好ましく、3〜8がより好ましい。
は、アルキル基中のフッ素原子の割合(アルキル基中の水素原子がフッ素原子に置換されている個数の割合)が、80%以上が好ましく、全部の水素原子がフッ素原子で置換されていることが特に好ましい。炭素数が18以下であると、硬質フォーム製造における発泡時、フォームの安定性が良好となり好ましい。
Rは、水素原子またはメチル基である。
Zは、フッ素原子を含まない2価の連結基であり、炭化水素基が好ましく、たとえばアルキレン基、アリーレン基が挙げられ、アルキレン基がより好ましい。該アルキレン基は、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜5のアルキレン基が特に好ましく、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。なお、式(1)におけるZとRはRの炭素数が少なくなるように区切る。
前記式(1)で表されるモノマーの具体例として、下記式(1−1)〜(1−3)で表される化合物が挙げられる。
【0043】
【化6】

【0044】
【化7】

【0045】
【化8】

【0046】
前記含フッ素モノマーは、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
含フッ素モノマーを用いる場合、その使用量は、重合性不飽和基を有する全モノマーに対し、10〜100質量%が好ましく、30〜80質量%がより好ましい。
特に、前記式(1)で表されるモノマーを用いる場合は、重合性不飽和基を有する全モノマー中において20〜100質量%が好ましく、30〜60質量%がより好ましく、40〜60質量%が最も好ましい。
該式(1)で表されるモノマーの割合が、20質量%以上、特に30質量%以上であると、硬質フォームとした際に良好な断熱性能が得られやすい。
【0047】
含フッ素モノマーを用いる場合、上記に挙げた重合性不飽和結合を有するモノマーのほかに、マクロモノマーを併用してもよい。「マクロモノマー」とは、片末端にラジカル重合性不飽和基を有する低分子量のポリマーまたはオリゴマーのことをいう。
【0048】
ポリマー粒子の形成に用いられる、重合性不飽和結合を有するモノマーの合計の使用量は特に限定されないが、ポリマー分散ポリオール(W)中におけるポリマー粒子の含有量が約1〜50質量%、より好ましくは2〜45質量%、さらに好ましくは10〜30質量%となる量であることが好ましい。
重合性不飽和結合を有するモノマーの重合は、遊離基を生成して重合を開始させるタイプの重合開始剤が好適に用いられる。重合開始剤の具体例としては2,2’−アゾビス−イソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル(AMBN)、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、アセチルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、過硫酸塩等が挙げられる。特にAMBNが好ましい。
【0049】
ベースポリオール(W’)としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、末端に水酸基を有する炭化水素系ポリマー等が挙げられる。特にポリエーテルポリオールのみからなるか、またはポリエーテルポリオールを主成分として、少量のポリエステルポリオールや末端に水酸基を有する炭化水素系ポリマー等を併用することが好ましい。
該ポリエーテルポリオールとしては、例えば多価アルコール、多価フェノール等のポリヒドロキシ化合物やアミン類等の開始剤にアルキレンオキシド等の環状エーテルを付加して得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。ベースポリオール(W’)として用いるポリエーテルポリオールは、前記ポリオール(A)と同じであってもよい。またベースポリオール(W’)として用いるポリエステルポリオールは、前記ポリオール(C)と同じであってもよい。
【0050】
ベースポリオール(W’)のうちの5質量%以上が、下記ポリエーテルポリオール(X)であることが好ましい。該ポリエーテルポリオール(X)は、水酸基価が84mgKOH/g以下であり、かつポリエーテルポリオール(X)全体に対するオキシエチレン基含量が40質量%以上であるものをいう。
ポリエーテルポリオール(X)は、開始剤として多価アルコールを使用し、エチレンオキシドまたはエチレンオキシドと他の環状エーテルを付加して得られるものが好ましい。
多価アルコールとしてはグリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール等が好ましい。他の環状エーテルとしてはプロピレンオキシド、イソブチレンオキシド、1−ブテンオキシド、2−ブテンオキシドが好ましく、プロピレンオキシドが特に好ましい。
ポリエーテルポリオール(X)において、水酸基価が84mgKOH/g以下であるとポリマー粒子が安定に分散したポリマー分散ポリオール(W)が得られやすい。該ポリエーテルポリオール(X)の水酸基価は、67mgKOH/g以下が好ましく、60mgKOH/g以下が特に好ましい。ポリエーテルポリオール(X)の水酸基価の下限は、ポリマー粒子の分散安定性の点から、5mgKOH/g以上が好ましく、8mgKOH/g以上がより好ましく、20mgKOH/g以上が特に好ましく、30mgKOH/g以上が最も好ましい。
【0051】
ポリエーテルポリオール(X)において、ポリエーテルポリオール(X)全体に対するオキシエチレン基含量が40質量%以上であると、ポリマー分散ポリオール(W)におけるポリマー粒子の分散が安定しやすい。該オキシエチレン基含量は50質量%以上がより好ましく、55質量%以上がさらに好ましい。該オキシエチレン基含量の上限は約100質量%、すなわち開始剤にEOのみを付加させたポリエーテルポリオール(X)であってもよい。ポリマー粒子の分散安定性の点からは、該オキシエチレン基含量が90質量%以下であることがより好ましい。
ベースポリオール(W’)のうちのポリエーテルポリオール(X)の含有量が5質量%以上であると、分散性のよいポリマー分散ポリオール(W)が得られやすい。該ポリエーテルポリオール(X)の含有量は、10質量%以上がより好ましい。該ポリエーテルポリオール(X)の含有量の上限は特にないが、ポリマー分散ポリオール(W)全体の水酸基価が上記の好ましい範囲となるように設定することが好ましい。
【0052】
ベースポリオール(W’)は、上記ポリエーテルポリオール(X)の5〜90質量%と、水酸基価が400〜850mgKOH/gであるポリオール(Z)の10〜95質量%との混合物であることが好ましく、ポリエーテルポリオール(X)の30〜80質量%と、前記ポリオール(Z)の20〜70質量%との混合物であることがより好ましい。
ポリオール(Z)の水酸基価は400〜800mgKOH/gがより好ましい。
【0053】
ポリエーテルポリオール(Z)は、上記ベースポリオール(W’)に含まれるポリエーテルポリオールのうち、水酸基価が上記の範囲であるものを用いることができる。そのうち、開始剤として多価アルコールまたはアミン類を用い、プロピレンオキシドを付加して得られるものが好ましい。
【0054】
組成物(P)にポリマー分散ポリオール(W)を含有させる場合、その含有量は、組成物(P)全体におけるポリマー粒子の含有量が上記の好ましい範囲となるように設定される。例えば組成物(P)全体におけるポリマー分散ポリオール(W)の含有量は0.01〜20質量%の範囲内が好ましく、0.1〜20質量%がより好ましい。
【0055】
[その他のポリオール(D)]
組成物(P)に、ポリオール(A)、ポリオール(C)、またはポリマー分散ポリオール(W)のいずれにも属さないその他のポリオール(D)を含有させてもよい。
ポリオール(D)としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール等が例示できる。ポリオール(D)の水酸基価は10〜600mgKOH/gが好ましい。ポリオール(D)として、複数種のポリオールを組み合わせて用いる場合は、各ポリオールの水酸基価がそれぞれ上記の範囲内であればよい。
組成物(P)全体におけるポリオール(D)の含有量は25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。
【0056】
組成物(P)全体としての水酸基価は100〜450mgKOH/gが好ましく、150〜350mgKOH/gがより好ましい。組成物(P)の水酸基価が上記範囲であれば、得られる硬質フォームの強度が充分高くなるため好ましい。
組成物(P)はポリオール(A)を含み、任意にポリオール(C)、(W)、および/または(D)を含むことができる。組成物(P)はさらに減粘作用を有する成分を含んでいてもよい。
【0057】
[ポリイソシアネート化合物(I)]
ポリイソシアネート化合物(I)としては、イソシアネート基を2以上有する、芳香族系、脂環族系、脂肪族系等のポリイソシアネート;これらを変性して得られる変性ポリイソシアネート等が挙げられる。
具体例としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(通称:クルードMDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)等のポリイソシアネートまたはこれらのプレポリマー型変性体、イソシアヌレート、ウレア変性体、カルボジイミド変性体等が挙げられる。このうち、クルードMDI、またはその変性体が好ましく、クルードMDIの変性体が特に好ましい。ポリイソシアネート化合物(I)は1種でもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0058】
通常、ポリイソシアネート化合物(I)は液体である。ポリイソシアネート化合物(I)の25℃における粘度は50〜450mPa・sが好ましい。この粘度範囲であれば、得られる硬質フォームに収縮が発生しにくい。また、スプレー法による吹き付け成形時の施工性が良好となり、得られる硬質フォームの外観を良好に保つことができる。
ポリイソシアネート化合物(I)の使用量は、反応系中に存在する、組成物(P)およびその他の活性水素化合物の活性水素の合計数に対するイソシアネート基の数の100倍で表して(以下、この100倍で表した数値を「イソシアネート指数」という)、50〜300が好ましい。
特に、触媒としてウレタン化触媒を主に用いるウレタン処方の場合、ポリイソシアネート化合物(I)の使用量は、前記イソシアネート指数で50〜170が好ましく、70〜150がより好ましい。
また、触媒としてイソシアネート基の三量化反応を促進させる触媒を主に用いるイソシアヌレート処方の場合、ポリイソシアネート化合物(I)の使用量は、前記イソシアネート指数で100〜350が好ましく、100〜300がより好ましく、100〜180がさらに好ましい。
【0059】
[触媒]
触媒は、ウレタン化触媒としては第3級アミンが好ましく、三量化反応促進触媒としては錫塩、鉛塩および水銀塩を除く金属塩および/または第4級アンモニウム塩が好ましい。イソシアヌレート処方の場合、ウレタン化触媒と三量化反応促進触媒の併用が好ましく、第3級アミンと、前記金属塩および/または第4級アンモニウム塩とを併用することがより好ましい。
【0060】
第3級アミンとしては、例えばN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチル−(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジプロピレントリアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルグアニジン、1,3,5−トリス(N,N−ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、1−ジメチルアミノプロピルイミダゾール、N−メチル−N−(N,N−ジメチルアミノエチル)エタノールアミン等の第3級アミン化合物が挙げられる。これらのうち、発泡時に発生する臭気が少ない点からは、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテルが好ましい。
【0061】
錫塩、鉛塩および水銀塩を除く金属塩としては、酢酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム、2−エチルヘキサン酸ビスマス等のカルボン酸金属塩等が好ましい。スプレー法において、コストが安く、触媒活性に優れる等の観点から、2−エチルヘキサン酸カリウムが好ましい。
【0062】
第4級アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウムクロライド等のテトラアルキルアンモニウムハロゲン化物;水酸化テトラメチルアンモニウム塩等のテトラアルキルアンモニウム水酸化物;テトラメチルアンモニウム2−エチルヘキサン酸塩、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムギ酸塩、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム2−エチルヘキサン酸塩等のテトラアルキルアンモニウム有機酸塩類;N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン等の第3級アミンと炭酸ジエステル類とを反応して得られる4級アンモニウム炭酸塩を、2−エチルヘキサン酸とアニオン交換反応させることで得られる4級アンモニウム化合物等が挙げられる。
触媒の使用量は、組成物(P)の100質量部に対して、触媒の合計量が0.1〜20質量部であることが好ましい。
また、触媒の使用量を調節することで、組成物(P)とポリイソシアネート化合物(I)、発泡剤、整泡剤の混合の開始時から目視で反応が開始するまでの時間(クリームタイム)、発泡が終了するまでの時間(ライズタイム)を調整することができる。
【0063】
[発泡剤]
発泡剤は公知のものを用いることができるが、環境への負荷軽減の点から発泡剤の一部または全部として水を用いることが好ましく、発泡剤の全部として水を単独で用いることがより好ましい。
発泡剤の一部として水を用いる場合、水と空気または不活性ガス(二酸化炭素、窒素等)とを組み合わせて用いることが好ましい。さらに低沸点の含フッ素化合物または炭化水素化合物を併用してもよい。
低沸点の含フッ素化合物としては、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)、1,1,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(HFE−236pc)、1,1,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテル(HFE−254pc)、1,1,1,2,2,3,3−ヘプタフルオロプロピルメチルエーテル(HFE−347mcc)等が挙げられる。これらのうち、HFC−134a、HFC−245faおよびHFC−365mfcが好ましい。
炭化水素化合物としては、ブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。
水以外の発泡剤を用いる場合、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
発泡剤としての水の使用量は、組成物(P)の100質量部に対し0.5〜10質量部が好ましく、0.5〜7質量部が特に好ましい。
また発泡剤としての低沸点の含フッ素化合物の使用量は、組成物(P)の100質量部に対し0〜60質量部が好ましく、5〜45質量部がより好ましい。発泡剤としてのペンタン(ノルマルペンタン、イソペンタン、および/またはシクロペンタン)の使用量は、組成物(P)の100質量部に対し0.5〜40質量部が好ましく、0.5〜30質量部がより好ましい。
【0065】
[整泡剤]
本発明においては良好な気泡を形成するため整泡剤を用いる。整泡剤としては例えば、シリコーン系整泡剤、含フッ素化合物系整泡剤が挙げられる。これらは市販品を使用できる。整泡剤の使用量は、適宜選定できるが、組成物(P)の100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましい。
【0066】
[その他の配合剤]
本発明では、上述した組成物(P)、ポリイソシアネート化合物(I)、触媒、発泡剤、整泡剤の他に、任意の配合剤を使用できる。配合剤としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の充填剤;酸化防止剤、紫外線吸収剤等の老化防止剤;難燃剤、可塑剤、着色剤、抗カビ剤、破泡剤、分散剤、変色防止剤等が挙げられる。
【0067】
[反応・発泡工程]
反応・発泡工程は、組成物(P)および発泡剤を含むポリオールシステム液と、ポリイソシアネート化合物(I)を含む液をそれぞれ調製し、これらを混合して反応させる方法が好ましい。整泡剤および触媒は、ポリオールシステム液と、ポリイソシアネート化合物(I)を含む液のどちらに含有させてもよい。ポリオールシステム液の分離等の問題、すなわち安定的な性能を発揮させる点からは、整泡剤および触媒をポリオールシステム液に含有させることが好ましい。
【0068】
本発明によれば、ポリオール(A)の粘度を低くでき、これによって組成物(P)の粘度を低くできるため、低粘度のポリオールシステム液を得ることができる。例えば、25℃における粘度が500mPa・s以下、好ましくは450mPa・s以下のポリオールシステム液を得ることができる。
該ポリオールシステム液の粘度の下限値は特に制限されないが、得られるフォームの強度の点からは100mPa・s以上が好ましく、150mPa・s以上がより好ましい。
ポリオールシステム液を低粘度化することによって、ポリイソシアネート化合物(I)との混合性や、スプレー法により硬質フォームを形成したときの平滑性を向上させることができる。
特にスプレー法を用いる場合は、混合装置としてのスプレーガンの詰まり、あるいは混合比の異常変動を防止するために、ポリイソシアネート化合物(I)を含む液とポリオールシステム液との粘度差が極力小さいことが好ましい。ポリイソシアネート化合物(I)を含む液の25℃における好ましい粘度が50〜450mPa・sであることから、ポリオールシステム液の25℃における粘度も50〜450mPa・sであることがより好ましい。
【0069】
[施工方法]
本発明の硬質フォームの製造方法は、ポリオールシステム液の粘度が低いことが好ましい施工方法に適しており、特にスプレー法に好適である。
スプレー法は、まず組成物(P)、発泡剤、および整泡剤、触媒等、必要に応じた配合剤を含むポリオールシステム液を調製し、該ポリオールシステム液とポリイソシアネート化合物(I)を含む液とを施工面に吹き付けながら反応させる発泡方法である。
スプレー法は、工事現場にて直接硬質フォームを製造できることから、工事コストを抑制できる、凹凸のある施工面にも隙間なく施工できる、多層の硬質フォームを形成できる等の長所を有している。そのためスプレー法は、建築、建設、住宅用途に好適であり、建築現場において壁、天井等に硬質フォームの断熱材を施工する際に好適に採用されることが多い。具体的な施工例としては、マンション、オフィスビル、プレハブ冷凍倉庫等の断熱材が挙げられる。特に本発明の製造方法はマンション・オフィスビル等の断熱材の施工に好適である。
スプレー法としては種々の方法が知られているが、特にポリオールシステム液とポリイソシアネート化合物(I)を含む液とをミキシングヘッドで混合して発泡させるエアレススプレー法が好ましい。ミキシングヘッドでの混合液の温度は30〜50℃が好ましい。該混合液の温度が高すぎると、発泡反応が急激に進行しやすくなるため、樹脂化反応とのバランスが崩れやすい。その結果、発泡応力が優勢となり、基材面からの剥離等の不具合が生じやすい。
【0070】
また本発明の製造方法は、スプレー法以外の方法にも適用できる。例えば連続ボード成形法や注入法を用いることができる。特に出窓等のサッシ部分に注入する成形工法などにおいては、ポリオールシステム液の粘度が低いことで、良好な作業性および施工性が得られるとともに、強度および寸法安定性に優れた硬質フォームを製造できる。
【0071】
<硬質フォーム>
本発明の製造方法により製造される硬質フォーム密度(コア密度)は、JIS A 9526に準拠する測定方法で得られる値で、15〜60kg/mが好ましく、20〜50kg/mより好ましい。該硬質フォーム密度(コア密度)は発泡剤の量により調節可能で、発泡剤を多く用いれば軽くすることは可能である。発泡剤として水を使用する場合は、ポリオールシステム液とイソシアネート化合物(I)との混合性の点や、スプレー法ではポリオールシステム液とイソシアネート化合物(I)とが体積比1:1で混合されることが多い点等から、水の好ましい使用量には制限がある。
本発明では、ポリオール(A)を用いることによって、硬質フォーム密度(コア密度)の上記範囲において、強度および寸法安定性に優れるとともに、成形性および施工性にも優れた硬質フォームを形成できる。
【0072】
本発明によれば、低粘度のポリオール(A)を得ることができ、これを用いることによって低粘度のポリオール組成物(P)が得られる。その結果、発泡剤として水を用いた場合の、ポリオールシステム液の粘度増加を抑えることができ、良好な施工性および作業性が得られる。またポリオールシステム液とポリイソシアネート化合物(I)を含む液との粘度の差を小さくできるため、両者の混合性が向上し、強度、寸法安定性、および断熱性に優れた硬質フォームが得られる。特にスプレー法では、ポリオールシステム液が減粘されることで、スプレー工法でのミスト状態が細かくなり、いわゆるミストパターンが広角になることで、均一的な吹き付けがしやすくなり、表面平滑性が良好になる。
またマンニッヒ縮合反応の反応生成物中に未反応のフェノール類がほとんど存在しないため、該反応生成物を開始剤として得られるマンニッヒポリオール(ポリオール(A))の平均官能基数の低下がなく、得られる硬質フォームの強度を上げることができる。また、該反応生成物中において、上式(i)で表されるような、フェノール類:アルデヒド類が1:1(モル比)で反応した構造を有するマンニッヒ縮合物の含有量が相対的に多くなるため、硬質フォームの断熱性も向上しやすい。
さらに、マンニッヒ縮合物を開始剤とするポリオール(A)は、硬質フォームの難燃性の向上に寄与する。特にスプレー法においては、施工現場での溶接火花による火災事故防止や建築材料としての防火性の観点から硬質フォームの難燃性が高いことが好ましい。
【実施例】
【0073】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。表3、4において例1〜7が実施例、例8〜10が比較例である。用いた原料は、以下のとおりである。
【0074】
[難燃剤]
トリスクロロプロピルフォスフェート(スプレスタジャパン社製、商品名:ファイロールPCF)。
[整泡剤]
シリコーン系整泡剤(商品名:SH−193、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)。
[触媒]
・触媒A:反応型泡化触媒(ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテルの70質量%DPG(ジプロピレングリコール)溶液、商品名:TOYOCAT RX7、東ソー社製)。
・触媒B:アミン系泡化触媒(商品名:TOYOCAT TT、東ソー社製)。
・触媒C:第4級アンモニウム塩とエチレングリコールの混合物(商品名:TOYOCATTRX、東ソー社製)。
[ポリイソシアネート化合物(I)]
ポリメリックMDI(MDIとクルードMDIの混合物)、商品名:コロネート1130、日本ポリウレタン工業社製、25℃における粘度:130mPa・s、イソシアネート基含有率:31質量%)。
【0075】
<ポリオール(A)>
マンニッヒ縮合物を含むポリオール(A)として、下記表1に示すポリオールA1〜A5を製造した。ポリオールA3〜A5は比較のポリオールである。
[ポリオールA1]
ノニルフェノール1モルに対し、ホルムアルデヒド1モルおよびジエタノールアミン2.2モルを反応させて得られた反応生成物を開始剤として、PO、EOをこの順序で開環付加重合させて得られた水酸基価300mgKOH/gのポリエーテルポリオール。アルキレンオキシドの付加量はノニルフェノール1モルに対し16.4モルである。付加させたPOとEOの合計量に対するEOの割合は55質量%である。25℃における粘度(以下、同様。)は640mPa・s。
[ポリオールA2〜A5]
表1に示す配合で、ポリオールA1と同様にして、ポリオールA2〜A5を製造した。
【0076】
【表1】

【0077】
<ポリオール(C)>
[ポリオールC1]
ジエチレングリコールと無水フタル酸とを重縮合して得られた、水酸基価315mgKOH/gのポリエステルポリオール。
【0078】
<ポリマー分散ポリオール(W)>
ポリマー分散ポリオール(W)として、下記表2に示す配合で、下記製造例の方法により製造したポリマー分散ポリオールW1〜W6を用いた。表2における配合比の単位は「質量%」である。
[重合性不飽和結合を有するモノマー]
ポリマー粒子を形成するための重合性不飽和結合を有するモノマーとしては、アクリロニトリル(AN)、酢酸ビニル(Vac)、メタクリル酸メチル(MMA)、前記式(1−1)で表されるポリフルオロアルキルメタクリレート(FMA)を用いた。
【0079】
またマクロモノマーとして以下の2種を用いた。
・マクロモノマーM1:下記のポリオールE、トリレンジイソシアネート(商品名:T−80、日本ポリウレタン工業社製)および2−ヒドロキシエチルメタクリレート(純正化学社製)を、ポリオールE/トリレンジイソシアネート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート=1/1/1のモル比率となるように仕込み、60℃で1時間反応させた後さらに80℃で6時間反応させることで得られた、水酸基価40mgKOH/gの重合性不飽和基を有するマクロモノマー。
・マクロモノマーM2:下記のポリオールF、トリレンジイソシアネート(商品名:T−80、日本ポリウレタン工業社製)および2−ヒドロキシエチルメタクリレート(純正化学社製)を、ポリオールF/トリレンジイソシアネート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート=1/1/1のモル比率となるように仕込み、60℃で1時間反応させた後さらに80℃で6時間反応させることで得られた、水酸基価21mgKOH/gの重合性不飽和基を有するマクロモノマー。
・ポリオールE:開始剤としてグリセリンを用い、該グリセリンに、EOを開環付加重合した後、POとEOとの混合物[PO/EO=46.2/53.8(質量比)]を開環付加重合させた、ポリオールD中のオキシエチレン基含有量65質量%、水酸基価が48mgKOH/gのポリオキシアルキレンポリオール。
・ポリオールF:開始剤としてグリセリンを用い、該グリセリンに、EOを開環付加重合した後、POとEOとの混合物[PO/EO=48.0/52.0(質量比)]を開環付加重合させた、ポリオールT中のオキシエチレン基含有量60質量%、水酸基価が28mgKOH/gのポリオキシアルキレンポリオール。
【0080】
[ベースポリオール(W’)]
ベースポリオール(W’)としては、下記のポリオールX1、Z1、Z2の混合物を用いた。
(ポリオールX1)
グリセリンを開始剤として、POとEOとをランダムに付加させて得られた、水酸基価50mgKOH/gのポリエーテルポリオール。付加させたPOとEOの合計量に対するEOの割合は70質量%である。ポリオールX1の全体におけるオキシエチレン基の含有量は68質量%である。
(ポリオールZ1)
グリセリンを開始剤として、POを開環付加重合させて得られた、水酸基価650mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
(ポリオールZ2)
エチレンジアミンを開始剤として、POを開環付加重合させて得られた、水酸基価が760mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
【0081】
[製造例1:ポリマー分散ポリオール(W1)の製造]
5L加圧反応槽に、表2に示した配合でベースポリオール(W’)、モノマー、および重合開始剤としてのAMBNを全て仕込んだ後、撹拌しながら昇温を開始し、反応液を80℃に保ちながら10時間反応させた。モノマーの反応率は80%以上を示した。反応終了後、110℃、20Paで2時間加熱減圧脱気して未反応モノマーを除去し、ポリマー分散ポリオールW1を得た。
得られたポリマー分散ポリオールW1の水酸基価、25℃における粘度、およびW1中のポリマー粒子の含有量を表1に示す(以下、同様。)。
【0082】
[製造例2、3:ポリマー分散ポリオール(W2)、(W3)の製造]
5L加圧反応槽に、表2に示したベースポリオール(W’)の混合物のうちの70質量%を仕込み、120℃に保ちながら、残りのベースポリオール(W’)の混合物とモノマーとAMBNの混合物を撹拌しながら2時間かけてフィードし、全フィード終了後同温度下で約0.5時間撹拌を続けた。製造例2、3のいずれにおいても、モノマーの反応率は80%以上を示した。反応終了後、未反応モノマーを120℃、20Paで2時間加熱減圧脱気にて除去し、ポリマー分散ポリオールW2およびW3を得た。
【0083】
[製造例4〜6:ポリマー分散ポリオール(W4)、(W5)、(W6)の製造]
5L加圧反応槽に、表2に示した配合で、ポリオールX1、ポリオールZ1、およびマクロモノマーを仕込み、120℃に保ちつつ、モノマーおよび重合開始剤(AMBN)の混合物を、撹拌しながら2時間かけてフィードし、全フィード終了後、同温度下で約0.5時間撹拌を続けた。その後、未反応モノマーを減圧下、120℃で3時間除去することによりポリマー分散ポリオールW4〜W6を得た。
【0084】
【表2】

【0085】
[ポリオールおよびポリオールシステム液の粘度]
ポリオールおよびポリオールシステム液の粘度はJIS K 1557−5に準拠し、測定温度25℃にて測定した。
【0086】
<例1〜例10:硬質フォームの製造>
表3に示す配合で調製したポリオールシステム液と、ポリイソシアネート化合物(I)を用いて硬質フォームを製造し、下記の方法で評価した。表3に示す配合比の単位は「質量部」である。
ポリオールシステム液は、ポリオール(A)、(C)、ポリマー分散ポリオール(W)の混合物からなる組成物(P)、および発泡剤としての水に、触媒、整泡剤、および難燃剤を添加、混合して調製した。発泡剤としては水のみを用いた。表3には、組成物(P)全体の水酸基価(単位:mgKOH/g)、ポリオールシステム液の25℃における粘度(単位:mPa・s)を示す。
また、硬質フォームの製造に用いるポリオールシステム液と、ポリイソシアネート化合物(I)の使用量は、体績比で1/1とした。このときのポリイソシアネート化合物(I)の使用量(単位:質量部)およびイソシアネート指数を表3に示す。
【0087】
<スプレー施工試験>
ポリオールシステム液と、ポリイソシアネート化合物(I)を、ガスマー社製スプレー発泡機(商品名:FF−1600)を用いて、吐出圧力70〜85kg/m、液温40℃、室温20℃の条件下で、発泡、反応させて硬質フォームを製造した。
施工する基材は、縦が600mm、横が600mm、厚さが5mmのフレキシブル板を用い、これに対して、吹き付け施工を行った。吹き付けは、厚さ1mmの下吹き層を施工した後に、一層の厚さが25〜30mmとなるように2層吹き付け施工し、合計で3層積層した。
スプレー施工における施工性、成形性、混合性、得られた硬質フォームの密度、圧縮強さ、寸法安定性、熱伝導率、および難燃性を以下の方法で評価した。評価結果を表4に示す。
【0088】
評価方法
[スプレーパターン(スプレー施工性)]
スプレーミストの広がり程度を目視にて確認し、以下の3段階で評価した。
3:充分にミストの開きが広角となり、平滑な吹き付けが可能である状態。
2:ミストの開きがやや不充分であり、平滑な吹き付けがやや困難な状態。
1:ミストの開きが不充分であり、平滑な吹き付けが困難な状態。
[フォーム内部の状態(成形性)]
施工したフォームの端部をカットし、断面の状態を確認し以下の基準で評価した。
×(不良):フォーム内部にスコーチ等による着色や割れがあったり、セル不均一などの不良部分がある。
○(良好):フォーム内部にスコーチ等による着色や割れや、セル不均一などがない。
[混合性]
吹きつけ直後のフォームを観察し、セルと色相の均一性を目視にて確認した。評価は以下の通り、3段階評価とした。
3:セルが均一で混合斑がなく、色相が均一な状態。
2:セルが不均一かあるいは混合斑の一方が確認される状態。
1:セルが不均一であり、かつ混合斑が確認され、色相が不均一な状態。
【0089】
[圧縮強さ・密度]
硬質フォームの圧縮強さおよび密度を、JIS A 9526に準拠する方法で測定した。
[寸法変化率(高温での寸法安定性)]
100mm×100mm×40mmの直方体に切り出したフォームを、70℃の環境下に保持し、24時間経過後に、発泡方向に対して垂直方向の寸法変化率を測定した。
[熱伝導率]
熱伝導率(単位:W/m・K)は、JIS A 1412−2に準拠し、熱伝導率測定装置(製品名:オートラムダHC−074型、英弘精機社製)を用いて、平均温度20℃で測定した。
【0090】
[難燃性試験]
難燃性試験として、前記スプレー施工試験で得られたサンプルをフレキシブル板も含め、厚み20mmとなるようカットし、ISO5660に準拠したコーンカロリーメーターによる発熱性試験を実施した。
表4に示すように、得られた結果としてHRRは最大発熱速度を示し、THRは総発熱量を示す。ISO5660では、難燃材料の基準である5分間の試験において、HRRが200kW/m以上を10s以上継続する場合、THRが8MJ/m以上の場合、あるいは防火上有害な裏面まで貫通する亀裂および穴がある場合は不合格である。亀裂および貫通については目視による外観で評価し、亀裂および/または貫通なきものは○(不良)、亀裂および/または貫通のあるものは×(不良)とした。
【0091】
<簡易発泡試験>
ポリオールシステム液とポリイソシアネート化合物とを10℃に調整し、ポリエチレン製カップ中に手早く投入し、毎分3,000回転で3秒間撹拌し、2Lカップ中で発泡させた。
硬質フォームの反応性およびコア密度を以下の方法で評価した。評価結果を表4に示す。
(評価方法)
[反応性(クリームタイム・ライズタイム)]
ポリオールシステム液とポリイソシアネート化合物との混合開始時刻を0秒とし、混合液が泡立ちを始めるまでの時間をクリームタイム(秒)、混合液が発泡し始め、フォームの上昇が停止する時間をライズタイム(秒)とした。
[コア密度]
得られた硬質フォームのコア部を、縦50mm×横50mm×厚み50mmの立方体に切断し、質量と体積から密度(単位:kg/m)を算出した。
【0092】
【表3】

【0093】
【表4】

【0094】
表3、4の結果に示されるように、例1〜7においては、発泡剤が水のみであるにもかかわらず、ポリオールシステム液の粘度が低く、スプレー法における混合性、施工性、成形性が良好であった。また得られた硬質フォームは低密度でありながら、圧縮強さおよび寸法安定性が良好であり、難燃性および断熱性にも優れていた。また簡易発泡でも低密度の良好な硬質フォームを成形できた。
これに対して、例9および10は、ポリオール(A)の開始剤(S1)がフェノール類1モルに対してアルデヒド類を1.5モルおよび2.2モル反応させたものであるため、ポリオール(A)の粘度およびポリオールシステム液の粘度が比較的高くなった。スプレーパターンが悪化したため平滑な吹付けがやや困難であり、ポリイソシアネート化合物(I)との混合性もやや劣る結果であった。また得られた硬質フォームは、内部にセルの不均一な部分が観察され、圧縮強さの低下、寸法安定性の悪化が見られた。さらに熱伝導率については、例1〜7と比較してやや悪化する結果となった。
例8は、ポリオール(A)の開始剤(S1)が、フェノール類1モルに対してアルカノールアミン類を2.0モル反応させたものである。フェノール類1モルに対してアルカノールアミン類を2.1モル以上反応させた開始剤(S1)から得たポリオール(A2)を使用した例7と比較して、ポリオール(A)の粘度およびポリオールシステム液の粘度が比較的高くなり、また、ポリイソシアネート化合物(I)との混合性が劣り、スプレー施工性が良くない。また得られた硬質フォームは、内部にセルの不均一な部分が観察され、圧縮強さの低下、寸法安定性の悪化が見られた。熱伝導率もやや悪化する結果となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記フェノール類、下記アルデヒド類および下記アルカノールアミン類を反応させた後、得られた反応生成物にアルキレンオキシドを付加してポリエーテルポリオール(A)を製造する方法であって、
前記フェノール類の1モルに対して、前記アルデヒド類の使用割合が0.9モル以上1.35モル未満、前記アルカノールアミン類の使用割合が2.1モル以上10.5モル以下であることを特徴とする、ポリエーテルポリオール(A)の製造方法。
フェノール類:フェノール、およびフェノールの水酸基に対して少なくとも1か所のオルト位に水素原子を有するフェノール誘導体からなる群から選ばれる1種以上。
アルデヒド類:ホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒドからなる群から選ばれる1種以上。
アルカノールアミン類:モノエタノールアミン、ジエタノールアミンおよび1−アミノ−2−プロパノールからなる群から選ばれる1種以上。
【請求項2】
前記フェノール誘導体が、フェノールの水酸基に対して少なくとも1か所のオルト位に水素原子を有し、それ以外の、芳香環に結合した水素原子の1個以上が炭素数1〜15のアルキル基で置換されたアルキルフェノールである、請求項1に記載のポリエーテルポリオール(A)の製造方法。
【請求項3】
前記アルキレンオキシドが、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドからなる群から選ばれる1種以上である、請求項1または2に記載のポリエーテルポリオール(A)の製造方法。
【請求項4】
前記ポリエーテルポリオール(A)の水酸基価が200〜800mgKOH/gである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリエーテルポリオール(A)の製造方法。
【請求項5】
ポリオール組成物(P)とポリイソシアネート化合物(I)を、発泡剤、整泡剤および触媒の存在下で反応させて硬質発泡合成樹脂を製造する方法であって、
前記ポリオール組成物(P)が、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法で得られるポリエーテルポリオール(A)を含むことを特徴とする硬質発泡合成樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記ポリオール組成物(P)におけるポリエーテルポリオール(A)の含有量が20〜100質量%である、請求項5に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記発泡剤として水を単独で用いる、請求項5または6に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記ポリオール組成物(P)が、ポリマー分散ポリオール(W)を含む、請求項5〜7のいずれか一項に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記ポリマー分散ポリオール(W)の水酸基価が100〜800mgKOH/gである、請求項8に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
【請求項10】
スプレー法を用いる、請求項5〜9のいずれか一項に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2011−241255(P2011−241255A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112296(P2010−112296)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】