説明

ポリエーテル重合体

【課題】機械的強度に優れ、表面の平滑性が良好で、体積固有抵抗値等の電気的特性のバラツキが小さい成形体を提供し得るポリエーテル重合体を提供する。
【解決手段】オキシラン単量体100gに対して、有機アルミニウム3.00〜15.0ミリモル、リン酸0.3〜3.5ミリモル、及び有機リン化合物0.3〜6.0ミリモルを用い、有機アルミニウムにリン酸を反応させ、それに有機リン化合物を添加して重合触媒を得、その重合触媒の存在下に、オキシラン単量体を開環重合させることによって、重量平均分子量が5万以上且つ100万以下であり、重量平均分子量の値の3倍以上の分子量を有する重合体成分の含有量が15重量%以下であるポリエーテル重合体を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水膨潤性ゴム、導電性ロール等に用いられるポリエーテル重合体に関し、より詳細には、成形加工性に優れ、表面の平滑性が良好で、体積固有抵抗値のバラツキが小さい成形体を提供し得るポリエーテル重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエーテル重合体は、エチレンオキシドやプロピレンオキシドなどの単量体を(共)重合させて得られる重合体である。このポリエーテル重合体は、複写機や印刷機等に用いられる導電性材料(特許文献1)、接着剤やコーティング剤、吸水性材料や水膨潤性材料(特許文献2、特許文献3)などに利用されている。
【0003】
このような用途に適用されるポリエーテル重合体として、特許文献3には、ジメチルホルムアミドを溶媒とするゲルパーミエーション法によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が10万〜150万、分子量分布の指標Mw/Mn(ここでMnは数平均分子量)がより好ましくは1.5〜13のポリエーテル重合体が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−139795号公報
【特許文献2】特開平4−372651号公報
【特許文献3】特開2006−28454号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来のポリエーテル重合体は、離型性が低く成形加工性に難があった。また従来のポリエーテル重合体に添加物を配合しても均一に分散させることが難しく、例えば、固有電気抵抗値に大きなバラツキが生じることがあり、さらに成形体表面の平滑性が十分でないことがあった。
【0006】
本発明の目的は、成形加工性に優れ、表面の平滑性が良好で、体積固有抵抗値のバラツキが小さい成形体を提供し得るポリエーテル重合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、先ず従来のポリエーテル重合体は分子量分布が広いことに注目した。そして、本発明者等はポリエーテル重合体の分子量分布に関する検討を鋭意行った結果、有機アルミニウム、リン酸、及び有機リン化合物からなる重合触媒を用い、オキシラン単量体に対する有機アルミニウム、リン酸、及び有機リン化合物の量を特定の割合で用いることによって、重量平均分子量の3倍以上の分子量を有する重合体成分の含有量を特定値以下に低減したポリエーテル重合体が得られることを見出した。
【0008】
また、本発明者らは、該ポリエーテル重合体は、成形加工性に優れ、表面平滑性の良い押出成形体を与えること、該ポリエーテル重合体にニトリルゴムおよび充填剤を配合したポリエーテル重合体組成物は、体積固有抵抗値のバラツキが小さいものであることを見出した。さらに、リンおよびアルミニウムを特定の比率で含有するポリエーテル重合体が導電性ロール等に好適であることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいてさらに検討し、完成したものである。
【0009】
すなわち、本発明は、以下のものを含む。
(1) 重量平均分子量が5万以上且つ100万以下であり、重量平均分子量の値の3倍以上の分子量を有する重合体成分の含有量が15重量%以下であるポリエーテル重合体。
(2) リンおよびアルミニウムを含有し、リンの含有量が0.10〜0.32重量%であり、アルミニウムに対する前記リンの重量比(P/Al)が0.2〜1.1である(1)に記載のポリエーテル重合体。
(3) エチレンオキシド単量体単位(A)80〜98モル%、およびエチレンオキシド単量体と共重合可能な他のオキシラン単量体単位(B)2〜20モル%からなる(1)または(2)に記載のポリエーテル重合体。
(4) オキシラン単量体単位(B)が、アリルグリシジルエーテル単量体単位およびエピクロルヒドリン単量体単位の少なくとも一種を含んでなる、(3)に記載のポリエーテル重合体。
【0010】
(5) 有機アルミニウムにリン酸を反応させ、それに有機リン化合物を添加して得られた重合触媒の存在下に、オキシラン単量体を開環重合させるポリエーテル重合体の製造方法であって、
該単量体100gに対し、有機アルミニウム3.0〜15.0ミリモル、リン酸0.3〜3.5ミリモル、及び有機リン化合物0.3〜6.0ミリモルの割合で用いることを特徴とするポリエーテル重合体の製造方法。
【0011】
(6) 前記の(1)〜(4)のいずれかに記載のポリエーテル重合体、及び充填剤を含有するポリエーテル重合体組成物。
(7) 前記の(1)〜(4)のいずれかに記載のポリエーテル重合体、及び充填剤を含有する水膨潤性組成物。
【0012】
(8) 前記の(1)〜(4)のいずれかに記載のポリエーテル重合体、ニトリルゴムおよび充填剤を含有してなるポリエーテル重合体組成物。
(9) 前記の(1)〜(4)のいずれかに記載のポリエーテル重合体、ニトリルゴムおよび充填剤を含有してなる導電性ロール用組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法によって、重量平均分子量が大きいけれども、重量平均分子量の3倍以上の分子量を有する重合体成分の含有量を特定値以下に低減されたポリエーテル重合体が容易に得られる。
本発明のポリエーテル重合体は、押出成形時の加工性に優れており、表面平滑性が良好な成形体を提供できる。
本発明のポリエーテル重合体及び充填剤からなる水膨潤性組成物は、成形加工性に優れ、水膨潤後の表面状態や粘着性に優れている。
さらに、本発明のポリエーテル重合体、二トリルゴム及び充填剤からなる導電性ロール用組成物は、体積固有抵抗値のバラツキが小さい成形体を提供できる。
本発明のポリエーテル重合体は上記のような効果を奏するものであるので、複写機や印刷機等に用いられる導電性材料、接着剤やコーティング剤、吸水性材料や水膨潤性材料などに利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(ポリエーテル重合体)
本発明のポリエーテル重合体は、重量平均分子量(Mw)が5万以上且つ100万以下、好ましくは7万以上且つ70万以下、より好ましくは8万以上且つ50万以下である。重量平均分子量が小さいと成形物の強度が不足し、逆に重量平均分子量が大きいと溶融粘度が上昇し、成形加工が困難となる。ポリエーテル重合体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグフラフィーにより標準ポリスチレン換算値として測定される、ポリエーテル重合体を構成する重合体成分個々の分子量の値であり、これらを重量平均して重量平均分子量(Mw)が求められる。
【0015】
本発明のポリエーテル重合体は、重量平均分子量(Mw)の値の3倍以上の分子量を有する重合体成分(以下、単に「高分子量成分」ということがある。)の含有量が、15重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。高分子量成分の含有量が多いと、押出成形時の圧力が高くなりすぎて成形加工性が低下し、また押出成形物の表面平滑性が低下する。
【0016】
本発明のポリエーテル重合体は、低分子量成分の含有量によって特に限定されないが、重量平均分子量の値の1/3倍以下の分子量を有する重合体成分の含有量(以下単に「低分子量成分」ということがある。)が、20重量%以下であることが好ましく、15重量%以下であることがさらに好ましい。低分子量成分の含有量が上記範囲内にあると、ポリマーの粘着性を低くでき、水膨潤性組成物とした際に粘着しにくくなる。
【0017】
本発明のポリエーテル重合体は、リンおよびアルミニウムを含有することが好ましい。所定量のリンおよびアルミニウムを含有したポリエーテル重合体は、混練時のポリマー切断が生じ難くなる。
リンの含有量は、好ましくは0.10〜0.32重量%、より好ましくは0.11〜0.28重量%、さらに好ましくは0.12〜0.25重量%である。リンの含有量が前記範囲内にあると導電性ロールに接触する感光体を汚染しにくくなる。
また、アルミニウムに対するリンの重量比(P/Al)は、好ましくは0.2〜1.1、より好ましくは0.3〜1.0であり、さらに好ましくは0.4〜0.90である。アルミニウムに対するリンの重量比が前記範囲にあると、加工性に優れる。
【0018】
本発明のポリエーテル重合体は、オキシアルキレン繰り返し単位を主構造単位とするものであれば特に限定されない。オキシアルキレン繰り返し単位はオキシラン単量体を開環重合することによって形成される。
【0019】
本発明のポリエーテル重合体を構成するために用いるオキシラン単量体は、特に限定されないが、本発明のポリエーテル重合体は、エチレンオキシド単量体単位(A)を主繰り返し単位とするものが好ましく、エチレンオキシド単量体単位(A)のみからなるものでも、エチレンオキシド単量体単位(A)とエチレンオキシド単量体と共重合可能な他のオキシラン単量体単位(B)とからなるものでもよい。本発明のポリエーテル重合体は、重合体全繰り返し単位中に、エチレンオキシド単量体単位(A)を、好ましくは80〜98モル%、より好ましくは82〜97モル%、さらに好ましくは83〜96モル%、最も好ましくは85〜95モル%含有している。
【0020】
エチレンオキシド単量体単位(A)の含有量が上記範囲にあると、成形加工性がより良好になり、機械的強度も高くなる。この場合、エチレンオキシド単量体と共重合可能な他のオキシラン単量体単位(B)の含有量は、好ましくは2〜20モル%、より好ましくは3〜18モル%、さらに好ましくは4〜17モル%、最も好ましくは5〜15モル%である。なお、エチレンオキシド単量体単位(A)と、エチレンオキシド単量体と共重合可能な他のオキシラン単量体単位(B)と、の合計で100モル%である。
【0021】
前記オキシラン単量体単位(B)の構成成分である、エチレンオキシド単量体(a)と共重合可能な他のオキシラン単量体(b)としては、炭素数3〜20のアルキレンオキシド、炭素数1〜10のグリシジルエーテル、ビニル化合物オキシド、などが挙げられる。
【0022】
炭素数3〜20のアルキレンオキシドとしては、プロピレンオキシド、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシ−イソブタン、2,3−エポキシブタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシオクタデカン、1,2−エポキシエイコサンなどの鎖状アルキレンオキシド;1,2−エポキシシクロペンタン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロドデカンなどのシクロアルキレンオキシド;などが挙げられる。
【0023】
炭素数1〜10のグリシジルエーテルとしては、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテルなどのアルキルグリシジルエーテル;フェニルグリシジルエーテルなどのアリールグリシジルエーテル;などが挙げられる。
【0024】
ビニル化合物オキシドとしては、スチレンオキシドなどが挙げられる。
これらの中でも、鎖状アルキレンオキシドが好ましく、重合反応性の高いプロピレンオキシド、1,2−エポキシブタンが最も好ましい。
【0025】
オキシラン単量体(b)には、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ブタジエンジオキシド、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルなどのジエポキシ化合物が含まれる。これらは2種以上を併用してもよい。
オキシラン単量体(b)中にこれらジエポキシ化合物を含むと、重合体鎖に分岐構造を導入することができる。ジエポキシ化合物の含有量は、全単量体の、好ましくは0.1〜5モル%である。ジエポキシ化合物の含有量が多いと、押出成形時の圧力が高くなりすぎ成形加工性が低下したり、押出成形物の表面平滑性が低下したりする場合がある。
【0026】
前記オキシラン単量体(b)には、架橋性官能基を有するオキシラン単量体(c)(以下、単に「架橋性オキシラン単量体(c)」ということがある。)が含まれる。この架橋性オキシラン単量体(c)を用いると、ポリエーテル重合体を架橋することができるようになり、強度の高い成形体を容易に得ることができる。なお、架橋性官能基とは、架橋剤との反応、加熱や活性放射線照射などにより架橋構造を形成し得る官能基である。
【0027】
架橋性オキシラン単量体(c)の含有量は、全単量体の、通常18モル%以下、好ましくは2〜15モル%、より好ましくは2〜13モル%である。架橋性オキシラン単量体(c)の含有量が多すぎると、重合反応中に、ゲル化反応等を起こし易くなって、成形加工性が低下するおそれがある。
本発明のポリエーテル重合体は、重合体全繰り返し単位中に、架橋性オキシラン単量体単位(C)を、通常18モル%以下、好ましくは2〜15モル%、より好ましくは2〜13モル%含有している。
【0028】
架橋性オキシラン単量体(c)としては、エポキシ化合物のハロゲン化物、ビニル基を有するエポキシ化合物などが挙げられる。エポキシ化合物のハロゲン化物としては、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリン、エピフルオロヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリンなどのエピハロヒドリンなどのハロゲン化アルキレンオキシド;p−クロロスチレンオキシド;ジブロモフェニルグリシジルエーテル;などが挙げられる。
【0029】
また、ビニル基を有するエポキシ化合物としては、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブテニルグリシジルエーテル、o−アリルフェニルグリシジルエーテルなどのエチレン性不飽和グリシジルエーテル;ブタジエンモノエポキシド、クロロプレンモノエポキシド、4,5−エポキシ−2−ペンテン、3,4−エポキシ−1−ビニルシクロヘキセン、1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンなどのジエンまたはポリエンのモノエポキシド;3,4−エポキシ−1−ブテン、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、1,2−エポキシ−9−デセンなどのアルケニルエポキシド;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルクロトネート、グリシジル−4−ヘプテノエート、グリシジルソルベート、グリシジルリノレート、グリシジル−4−メチル−3−ペンテノエート、3−シクロヘキセンカルボン酸のグリシジルエステル、4−メチル−3−シクロヘキセンカルボン酸のグリシジルエステルなどエチレン性不飽和カルボン酸のグリシジルエステル類;などが挙げられる。これら架橋性オキシラン単量体(c)は一種類のみを用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ハロゲン化アルキレンオキシドやエチレン性不飽和グリシジルエーテルが好ましく、アリルグリシジルエーテル、エピクロロヒドリンが特に好ましい。
【0030】
本発明のポリエーテル重合体は、下記の方法によって好適に得ることができる。
本発明のポリエーテル重合体の製造方法は、有機アルミニウムにリン酸を反応させ、それに有機リン化合物を添加して得られた重合触媒の存在下に、オキシラン単量体を開環重合させるポリエーテル重合体の製造方法であって、該オキシラン単量体100gに対し、有機アルミニウム3.0〜15.0ミリモル、リン酸0.3〜3.5ミリモル、有機リン化合物0.3〜6.0ミリモルの割合で用いることを特徴とするものである。
有機アルミニウムと有機リン化合物が上記範囲内であると、高分子量成分の含有量を減少させやすくなる。
【0031】
オキシラン単量体を開環重合するための重合触媒としては、例えば、有機アルミニウムに水とアセチルアセトンとを反応させた重合触媒(特公昭35−15797号公報)、トリイソブチルアルミニウムにリン酸とトリエチルアミンとを反応させた重合触媒(特公昭46−27534号公報)、トリイソブチルアルミニウムにジアザビアシクロウンデセンの有機酸塩とリン酸とを反応させた重合触媒(特公昭56−51171号公報)、アルミニウムアルコキサイドの部分加水分解物と有機亜鉛化合物とからなる重合触媒(特公昭43−2945号公報)、有機亜鉛化合物と多価アルコールとからなる重合触媒(特公昭45−7751号公報)、ジアルキル亜鉛と水とからなる重合触媒(特公昭36−3394号公報)などが知られているが、本発明のポリエーテル重合体の製造方法では、有機アルミニウムにリン酸を反応させ、それに有機リン化合物を添加して得られた重合触媒を用いる。この重合触媒を用いて開環重合を行うと、重量平均分子量の値の3倍以上の分子量を有する重合体成分の含有量を容易に低減させることができる。
【0032】
有機アルミニウムとしては、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム化合物、トリシクロアルキルアルミニウム化合物、トリアリルアルミニウム化合物、ジアルキルアルミニウムハイドライド、モノアルキルアルミニウムジハイドライド、ジアルキルアルミニウムハライド、モノアルキルアルミニウムジハライド、ジアルキルアルミニウムアルコキシド、モノアルキルアルミニウムジアルコキシド、などが挙げられる。
【0033】
有機リン化合物としては、ルイス塩基として作用するものが好適である。例えば、トリフェニルホスフィン、トリパラトリルホスフィン、トリメタトリルホスフィン、トリオルトトリルホスフィン、トリス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6−トリメチルフェニル)ホスフィン、トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィンなどのトリアリールホスフィンが挙げられる。有機リン化合物によって重合活性が向上し、高分子量成分および低分子量成分の含有量が容易に低減される。
【0034】
本発明の製造方法に用いられる重合触媒の好ましい実施態様としては、トリイソブチルアルミニウムとリン酸とを反応させ、それにトリフェニルホスフィンを添加し加熱熟成させた重合触媒が挙げられる。加熱熟成の温度及び時間は特に限定されないが、熟成温度としては、通常30〜100℃、好ましくは35〜90℃、より好ましくは38〜85℃、熟成時間は、通常30分〜5時間、好ましくは40分〜4時間、より好ましくは45分〜3時間である
【0035】
重合溶媒は、重合触媒を失活させないものであれば特に限定されない。例えば、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素;n−ペンタン、n−へキサンなどの鎖状飽和炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式飽和炭化水素;などが挙げられる。
【0036】
重合方法としては、溶液重合法または溶媒スラリー重合法などの重合法を採用できるが、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロペンタンなどの飽和炭化水素溶媒を用いた溶媒スラリー重合法が好適である。
【0037】
溶媒スラリー重合においては、重合に使用する単量体のうち、溶媒に不溶な重合体を与える単量体と溶媒に可溶な重合体を与える単量体とで予め重合触媒を処理してシードを形成させておくことが、重合反応系の安定性の観点から好ましい。重合触媒の処理は、重合触媒成分と少量の上記各単量体とを混合し、通常0〜100℃、好ましくは30〜50℃の温度で、通常3〜90分熟成させればよい。このようにして熟成した重合触媒の使用によって重合缶への重合体の付着を防止することができる。
重合反応は、通常0〜100℃、好ましくは30〜70℃で、回分式、半回分式、連続式などの任意の方式で行うことができる。
【0038】
本発明のポリエーテル重合体に、用途に応じて、公知の重合体に通常配合される添加剤、又はポリエーテル重合体以外のゴム若しくは樹脂を添加して、ポリエーテル重合体組成物とすることができる。添加剤としては、充填剤、酸化防止剤(老化防止剤)、加硫剤、加硫促進剤、架橋剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、粘着付与剤、界面活性剤、導電性付与剤、電解質物質、着色剤(染料・顔料)、帯電防止剤などが挙げられる。
ゴムとしては、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ニトリルゴム、アクリルゴムなどが挙げられる。さらにスチレンブタジエンブロック共重合体、スチレンイソプレンブロック共重合体、及びこれらの水素添加物などの熱可塑性エラストマーが挙げられる。
樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。
【0039】
本発明のポリエーテル重合体は、複写機や印刷機等に用いられる導電性材料、接着剤やコーティング剤、吸水性材料や水膨潤性材料、電池やコンデンサ等に用いられる高分子固体電解質などに利用することができる。
【0040】
本発明のポリエーテル重合体組成物は、前記のポリエーテル重合体及び充填剤を含有する。このポリエーテル重合体組成物は、後述のように水膨潤性組成物として好適である。
【0041】
(水膨潤性組成物)
本発明の水膨潤性組成物は、本発明のポリエーテル重合体及び充填剤を含有するものである。水膨潤性組成物に用いられる充填剤としては、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、クレイなどが挙げられ、機械的強度と膨潤度の点で、カーボンブラック、シリカが好ましく、シリカが特に好ましい。水膨潤性組成物に用いられる充填剤の量は、ポリエーテル重合体100重量部に対して、通常5〜90重量部である。
【0042】
本発明の水膨潤性組成物は、通常、架橋して用いられる。そのため、架橋剤を配合することが好ましい。架橋剤としては、架橋ゴムの分野において通常使用されるものが使用できる。その種類や量は、所望により適宜選択することができる。
架橋剤の使用量は、ポリエーテル重合体100重量部に対し、好ましくは0.5〜30重量部、より好ましくは0.8〜20重量部、さらに好ましくは1〜15重量部である。
【0043】
水膨潤性組成物は、本発明のポリエーテル重合体と充填剤とを混練することによって得られる。混練に用いる装置としては、ロール、ブラベンダー、バンバリー、ニーダー等のバッチ式混練機;単軸押出機、二軸押出機、ブスコニーダー等の連続式混練機;および溶媒を添加したプラレタリーミキサーなどが挙げられる。
架橋する場合の条件は、適宜選択することができる。
本発明の水膨潤性組成物は、機械的強度、圧縮強度、水保持性等に優れている。
【0044】
本発明のポリエーテル重合体組成物は、前記のポリエーテル重合体、ニトリルゴム及び充填剤を含有してなる。このポリエーテル重合体組成物は、後述のように導電性ロール用組成物として好適に使用できる。
【0045】
(導電性ロール用組成物)
本発明の導電性ロール用組成物は、本発明のポリエーテル重合体、ニトリルゴムおよび充填剤を含有するものである。
前記ニトリルゴムは、共役ジエン単量体とエチレン性不飽和ニトリル単量体と必要に応じて共重合させられるその他の単量体との共重合体である。
【0046】
ニトリルゴムとしては、入手の容易性や、ポリエーテル重合体との相溶性の観点から、ブタジエンやイソプレンと、アクリロニトリルとの共重合体が好ましく、ブタジエンとアクリロニトリルとの共重合体が特に好ましい。ニトリルゴム中のアクリロニトリル単位量は、好ましくは10〜50重量%、より好ましくは15〜40重量%である。ニトリルゴムのムーニー粘度は(ML1+4,100℃)は、好ましくは10〜100、より好ましくは20〜80である。ニトリルゴムの量は、ポリエーテル重合体100重量部に対して10〜2,000重量部が好ましく、20〜1,300重量部が特に好ましい。
【0047】
導電性ロール用組成物に用いられる充填剤としては、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、クレイなどが挙げられ、研磨後の表面平滑性(研磨性)の点で、炭酸カルシウム、クレイが好ましい。
導電性ロール用組成物に用いられる充填剤の量は、ポリエーテル重合体とニトリルゴムとの合計量100重量部に対して、5〜70重量部であることが研磨性や押出成形性の点で好ましい。
【0048】
本発明の導電性ロール用組成物は、通常、架橋して用いられる。そのため、架橋剤を配合することが好ましい。架橋剤としては、架橋ゴムの分野において通常使用されるものが使用できる。その種類や量は、所望により適宜選択することができる。
架橋剤の使用量は、ポリエーテル重合体とニトリルゴムとの合計量100重量部に対し、好ましくは0.5〜30重量部、より好ましくは0.8〜20重量部、さらに好ましくは1〜15重量部である。
【0049】
本発明の導電性ロール用組成物は、本発明のポリエーテル重合体、ニトリルゴムおよび充填剤を混練することによって得られる。混練のために用いる装置としては、ロール、ブラベンダー、バンバリー、ニーダー等のバッチ式混練機;単軸押出機、二軸押出機、ブスコニーダー等の連続式混練機;溶媒を添加したプラレタリーミキサーなどが挙げられる。
架橋する場合の条件は、適宜選択することができる。
【0050】
本発明の導電性ロール用組成物は、体積固有抵抗の環境依存性、摩擦係数、耐オゾン性に優れる。本発明の導電性ロール用組成物を成形したロールの用途としては、プリンター、複写機の電子写真装置、紡糸などを搬送する工業部材が挙げられる。
【実施例】
【0051】
以下に実施例、比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。使用した溶媒、単量体などは、全て脱気脱水処理を行ったものを用いた。なお、実施例および比較例中の部および%は、断りのない限り重量基準である。
【0052】
(1)重量平均分子量(Mw)、Mwの3倍以上の分子量を有する重合体成分(高分子量成分)の含有量およびMwの1/3倍以下の分子量を有する重合体成分(低分子量成分)の含有量は以下の方法により測定した。尚、前記高分子量成分及び低分子量成分の含有量は、測定された分子量分布のチャート面積から算出した。
装置:東ソー株式会社製GPCシステム
カラム:東ソー株式会社製G7000HHR+GMHHR−H
検出器:示差屈折計
溶媒:ジメチルホルアミド(リチウムブロマイド5mmol/L)
流速:1ml/min カラム温度:40℃
分子量標準物質:ポリマーラボラトリー社製標準ポリスチレン
【0053】
(2)ポリマー中のAlとPの定量は、得られたポリマーを湿式分解法でサンプル調整し、ICP−AESを用いて、内部標準法で検量線を作成して求めた。
原子吸光装置:SPS−5000(セイコーインスツルメンツ)
【0054】
(3)ポリマー組成は、ポリマーを重クロロホルムに溶解し、1H−NMRにより各ユニットの積分値を求め、その算出結果から組成比を求めた。
装置:JNM−EX400型(日本電子データム製)
【0055】
(4)成形加工性
(Tダイ押出し)
二軸押出機(スクリュー径25mm、スクリュー回転数100rpm、L/D=30)の先端にコートハンガーダイ(幅250mm、リップ間隙0.4mm)を取り付け、第1フィード口にポリエーテル重合体100部を、第二フィード口に、FEFカーボンブラック25部、シリカ(製品名トクシールGU、トクヤマ社製)15部、酸化亜鉛(亜鉛華1号)5部、ステアリン酸1部、及びジエチレングリコール2部からなる混合物を、それぞれ供給して、シートに押出した。押出成形時の入り口バレル温度は30℃、中央部バレルは100℃、ヘッドおよびダイ温度は120℃であった。表面の平滑度合いを目視で観察し、下記の判断基準で評価した。
◎:表面が平滑で、光沢がある
○:表面に若干凹凸があるが、大部分が平滑である
△:表面に凹凸がある
×:表面に多くの凹凸が見られ、一部波打ちが観察される。
【0056】
(ガーベダイ押出し)
ポリエーテル重合体75部、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(製品名DN401LL、日本ゼオン社製)25部、FEFカーボンブラック25部、シリカ(トクシールGU)15部、酸化亜鉛(亜鉛華1号)5部、ステアリン酸1部、及びジエチレングリコール2部をバンバリーミキサーにて混練し、さらにロールにてシートに成形した。このシートをガーベダイ式押出機にて押出し、ASTM D 2230−77記載のA法に準じて16点満点で評価した。ガーベダイ式押出機による押出時のスクリュー回転数は30rpm、設定温度はバレル60℃、ヘッド80℃である。
◎:13〜16点
○:10〜12点
△:7〜9点
×:6点以下
【0057】
(5)水膨潤試験
a)水膨潤率
前記Tダイ押出しで得られたシート148部に、加硫剤(粉末硫黄#325)0.8部並びに加硫促進剤としてテトラメチルチウラムジスルフィド(製品名ノクセラーTT、大内新興化学工業社製)1.5部及びN−シクロヘキシルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド(製品名ノクセラーCZ、大内新興化学工業社製)1.2部を添加しながら6インチロールにて混練し、厚さが2.2±0.1mmのシートを得た。これを、所定の大きさに切り3枚重ね、150℃で30分間プレスして25mm×25mm×5mmの試験片を得た。この試験片を23℃の水道水に48時間浸漬し、その体積膨脹率を求めた。
【0058】
b)水膨潤後の表面状態
体積膨潤率の測定を終えた前記試験片の表面の平滑度合いを目視で観察し、下記判断基準で表面状態を評価した。
○:均一に膨潤しており、表面がほぼ平滑である
△:若干不均一に膨潤しており、表面の一部に波打ちが観察される
×:かなり不均一に膨潤しており、大きな表面の波打ちが観察される
【0059】
c)天然ゴム手袋への粘着性
体積膨潤率の測定を終えた前記シートの表面を、天然ゴム手袋(アズワン社製、クアラテック手袋)を装着した手で触り、粘着度合いを下記判断基準で官能試験して粘着性を評価した。
○:ベタツキは若干ある。手袋を持ち上げると手袋に付いてシートが持ち上がるが、シートは自重ですぐに落下する。
△:ベタツキが若干ある。手袋を持ち上げると手袋に付いてシートが持ち上がる。しばらくしてシートは自重で落下する。
×:ベタツキがあり、手袋から剥がれにくい。
【0060】
(6)体積固有抵抗値およびそのバラツキ
前記カーベダイ押出し評価用のためにバンバリーミキサーで混練して得られた物148部に、加硫剤(粉末硫黄#325)0.8部並びに加硫促進剤としてテトラメチルチウラムジスルフィド(TT)1.5部及びN−シクロヘキシルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド(CZ)1.2部を添加しながら6インチロールで混練し、厚さが2.2±0.1mmのシートを得た。このシートを160℃で30分間プレスで加硫し、150mm×150mm×2mmのシートを得た。加硫されたシートの体積固有抵抗値を、JIS K6911に従って測定した。また、体積固有抵抗値のバラツキは、前記同様にして加硫シートを5枚製造し、それらの体積固有抵抗値をそれぞれ測定し、その測定値中の最大値と最小値の差を平均値で除し、%で表記した。
【0061】
実施例1(ポリエーテル重合体P−1の製造)
乾燥され、窒素置換された撹拌機付きオートクレープに、トリイソブチルアルミニウム10.08部、トルエン33.73部、およびジエチルエーテル18.82部を仕込んだ。オートクレーブ内の温度を30℃にし、撹拌しながらリン酸0.70部を10分間かけて一定速度で添加した。これにトリフェニルホスフィン5.33部を添加し、60℃で2時間熟成させて、重合触媒を得た。
【0062】
乾燥され、窒素置換された撹拌付きオートクレープに、n−ヘキサン1514部と上記重合触媒溶液68.66部を仕込んだ。オートクレーブ内の温度を30℃にし、撹拌しながら、エチレンオキシド(EO)1.2部を加えて0.2時間反応させた(第一工程)。次いで、エチレンオキシド0.6部及びプロピレンオキシド(PO)1.4部の混合物を加えて0.2時間反応させ、シード分散液を得た(第二工程)。
【0063】
引き続き、オートクレーブ内の温度を60℃にして、前記シード分散液に、エチレンオキシド416.6部、プロピレンオキシド34.7部、アリルグリシジルエーテル(AGE)49.5部、及びn−ヘキサン439.8部からなる混合溶液を5時間かけて連続的に等速度で添加した。添加終了後、2時間攪拌を続け反応させ、スラリーを得た(第三工程)。重合反応率は99%であった。得られたスラリーに重合停止剤としてエタノール9.8部を添加し、老化防止剤として4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)の5%のトルエン溶液43部を添加し攪拌して、ポリマークラムを得た。該クラムをろ過によって分離し、40℃で真空乾燥して粉体状のポリエーテル重合体P−1を得た。
【0064】
ポリエーテル重合体P−1は、エチレンオキシド単位90.2モル%、プロピレンオキシド単位5.9モル%、及びアリルグリシジルエーテル単位3.9モル%で組成される重合体であった。このポリエーテル重合体P−1の重量平均分子量(Mw)は148,000、Mwの3倍以上の分子量を有する重合体成分の割合は1.2%、Mwの1/3倍以下の分子量を有する重合体成分の割合は9.7%であった。このポリエーテル重合体P−1のポリマー中リンの残留物は、0.17%であった。ポリエーテル重合体P−1の製造条件、重量平均分子量及び高分子量成分含有量、及びポリマー中の単量体単位組成などを表1に示す。また重合体P−1の評価結果を表2に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
実施例2〜3、及び比較例1
重合触媒溶液に用いる、トリイソブチルアルミニウム、リン酸およびトリフェニルホスフィンの量、および重合反応に用いるエチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)およびアリルグリシジルエーテル(AGE)の量を、表1に示す量に変えたこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリエーテル重合体をそれぞれ得た。ポリエーテル重合体P−2、P−3、P−5の製造条件、重量平均分子量及び高分子量成分含有量、及び単量体単位組成などを表1に示す。また重合体P−5の評価結果を表2に示す。
【0067】
実施例4
重合触媒溶液に用いる、トリイソブチルアルミニウム、リン酸およびトリフェニルホスフィンの量、および重合反応に用いるエチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)およびアリルグリシジルエーテル(AGE)の量を、表1に示す量に変えたこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリエーテル重合体P−4を得た。ポリエーテル重合体P−4の製造条件、重量平均分子量及び高分子量成分含有量、及び単量体単位組成などを表1に示す。また重合体P−4の評価結果を表2に示す。
【0068】
比較例2
乾燥され窒素置換された撹拌機付きオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム10.08部、トルエン33.74部、およびジエチルエーテル18.83部仕込んだ。オートクレーブ内の温度を30℃にし、撹拌しながらリン酸1.49部を10分間かけて一定速度で添加した。これにトリエチルアミン1.03部を添加し、60℃で2時間熟成反応し、重合触媒の溶液を得た。
【0069】
乾燥され窒素置換された撹拌機付きオートクレーブに、n−へキサン1514部と上記重合触媒溶液65.16部を仕込んだ。オートクレーブ内の温度を30℃にして、撹拌しながら、エチレンオキシド1.2部を加えて15分間反応させた(第一工程)。次いで、エチレンオキシド0.6部とプロピレンオキシド1.4部の混合物を加えて15分間反応させて、シード分散液を得た(第二工程)。
【0070】
引き続き、オートクレーブ内の温度を60℃にして、前記シード分散液に、エチレンオキシド416.6部、プロピレンオキシド34.7部、アリルグリシジルエーテル49.5部、及びn−ヘキサン439.8部からなる混合溶液を5時間かけて連続的に等速度で添加した。添加終了後、2時間攪拌を続け反応させて、スラリーを得た(第三工程)。重合反応率は98%であった。得られたスラリーに重合停止剤としてエタノール9.8部を添加し、老化防止剤として4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)の5%のトルエン溶液43部を添加し攪拌して、ポリマークラムを得た。該クラムをろ過によって分離し、40℃で真空乾燥して粉体状のポリエーテル重合体P−6を得た。
【0071】
ポリエーテル重合体P−6は、エチレンオキシド(EO)単位90.3モル%、プロピレンオキシド(PO)単位6.0モル%、及びアリルグリシジルエーテル(AGE)単位3.7モル%で組成される重合体であった。また、この重合体P−6の重量平均分子量(Mw)は168,000、Mwの3倍以上の分子量の重合体成分の割合は24.6%であった。ポリエーテル重合体P−6の製造条件、重量平均分子量及び高分子量成分含有量、及び単量体単位組成などを表1に示す。また重合体P−6の評価結果を表2に示す。
【0072】
比較例3
重合触媒溶液に用いる、トリイソブチルアルミニウム、リン酸およびトリフェニルホスフィンの量、および重合反応に用いるEO、POおよびAGEの量を、表1に示す量に変えたこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリエーテル重合体P−7を得た。ポリエーテル重合体P−7の製造条件、重量平均分子量及び高分子量成分含有量、及び単量体単位組成などを表1に示す。また重合体P−7の評価結果を表2に示す。
【0073】
以上の結果から、表1に示すように、有機アルミニウム、リン酸、及び有機リン化合物を本発明の範囲で用いた重合触媒の存在下で、オキシラン単量体を開環重合すると、高分子量成分の含有量が大幅に低減できることがわかる。
【0074】
【表2】

【0075】
表2によれば、高分子量成分の含有量が本発明の規定範囲より多く含むポリエーテル重合体(比較例1〜3)は、その成形加工性に劣り、水膨潤後の表面の状態に劣り、体積固有抵抗値のバラツキが大きいことがわかる。これに対して、高分子量成分の含有量が本発明の規定範囲内であるポリエーテル重合体(実施例1及び4)は、Tダイ押出成形及びガーベダイ押出成形のいずれにおいても良好な成形加工性を示し、水膨潤後の表面状態、粘着性も良好であり、体積固有抵抗値のバラツキが小さいことがわかる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が5万以上且つ100万以下であり、重量平均分子量の値の3倍以上の分子量を有する重合体成分の含有量が15重量%以下であるポリエーテル重合体。
【請求項2】
リンおよびアルミニウムを含有し、リンの含有量が0.10〜0.32重量%であり、アルミニウムに対する前記リンの重量比(P/Al)が0.2〜1.1である請求項1に記載のポリエーテル重合体。
【請求項3】
エチレンオキシド単量体単位(A)80〜98モル%、およびエチレンオキシド単量体と共重合可能な他のオキシラン単量体単位(B)2〜20モル%からなる請求項1または2に記載のポリエーテル重合体。
【請求項4】
前記オキシラン単量体単位(B)が、アリルグリシジルエーテル単量体単位およびエピクロルヒドリン単量体単位の少なくとも一種を含んでなる、請求項3に記載のポリエーテル重合体。
【請求項5】
有機アルミニウムにリン酸を反応させ、それに有機リン化合物を添加して得られた重合触媒の存在下に、オキシラン単量体を開環重合させるポリエーテル重合体の製造方法であって、該単量体100gに対し、有機アルミニウム3.0〜15.0ミリモル、リン酸0.3〜3.5ミリモル、及び有機リン化合物0.3〜6.0ミリモルの割合で用いることを特徴とするポリエーテル重合体の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載のポリエーテル重合体、及び充填剤を含有するポリエーテル重合体組成物。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載のポリエーテル重合体、及び充填剤を含有する水膨潤性組成物。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれかに記載のポリエーテル重合体、ニトリルゴムおよび充填剤を含有してなるポリエーテル重合体組成物。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれかに記載のポリエーテル重合体、ニトリルゴムおよび充填剤を含有してなる導電性ロール用組成物。

【公開番号】特開2008−56853(P2008−56853A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−237897(P2006−237897)
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】