説明

ポリオレフィンのクロロスルホン化方法

0.5〜10重量パーセントの塩素および0.25〜5重量パーセントの硫黄を含有するクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーが、塩化スルフリルまたはCl2とSO2との組み合わせのクロロスルホン化剤を用いる低温(50℃〜75℃)溶液法で製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィンのクロロスルホン化方法に、より具体的には0.5〜10重量パーセントの塩素および0.25〜5重量パーセントの硫黄を含むクロロスルホン化ポリオレフィンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クロロスルホン化ポリエチレンエラストマーおよびクロロスルホン化エチレンコポリマーエラストマーは、ワイヤおよびケーブル外被、型製品、自動車ホース、動力伝達ベルト、屋根ふき部材ならびにタンクライナーなどの用途に使用するための非常に良好な弾性材料であることが分かった。これらの材料は、耐油性、熱安定性、耐オゾン性および耐化学薬品性のそれらのバランスについて注目されている。
【0003】
歴史的に、エチレンおよびプロピレンホモポリマーおよびコポリマーをはじめとする、多種多様なポリオレフィンポリマーは、クロロスルホン化製品の製造用の出発ポリマー(すなわち、「ベースポリマー」または「ベース樹脂」)として利用されてきた。クロロスルホン化エラストマーの製造に用いられるベースポリマーの大部分はこれまで、ポリエチレンタイプ、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)および高密度ポリエチレン(HDPE)であった。これらのエラストマーを製造するために用いられるエチレンホモポリマーおよびコポリマーのほとんどは、高圧フリーラジカル触媒法によってかまたはZiegler−NattaもしくはPhillipsタイプ触媒を使用する低圧法によって重合される。最近、シングルサイト、すなわち、メタロセン触媒によって製造されたLLDPEが容易に入手可能になってきた。
【0004】
最も大量生産されているクロロスルホン化ポリオレフィンは、20〜50重量パーセントの塩素および0.15〜1.5重量パーセントの硫黄を含有する。それらは、高温(すなわち、110℃超)法で典型的には製造される。
【0005】
エチレンベースのエラストマー(例えば、EPおよびEPDM)は、自動車および工業用途でオイル用の粘度調整剤として利用される。これらのポリマーは、パラフィン系およびナフテン系オイルに容易に可溶で、かつ、安定であるが、より極性のポリマー(例えば、エチレン・アクリルまたはメタクリルコポリマーおよび高塩素化エチレンポリマー)はそうではない。これらのオイル添加剤ポリマーの幾つかはまた、向上した安定性を有する調合オイルシステム用の安定剤を組み込むために反応性基で官能基化される。
【0006】
オイルベースの溶液で使用するための10重量パーセント未満の塩素および低レベルの残留結晶化度を有するクロロスルホン化エチレン/アルファ−オレフィンコポリマーを有することが望ましいであろう。溶液粘度がオイル溶解性およびポリマー熱安定性とバランスをとらなければならないこれらの用途の幾つかでは、伝統的なLLDPE材料中に普通に存在する高結晶性材料の低レベルを緩和するためにシングルサイト触媒で製造されたコポリマーを用いることが望ましいであろう。
【0007】
これらの特別な用途でそれらのオイル溶解性および反応性スルホニルクロリド基を活用するために0.5〜10重量パーセント(重量%)の塩素および0.25〜5重量%の硫黄を含むクロロスルホン化ポリオレフィンを有することが望ましいであろう。かかるポリマーは、気相法によって製造されてきた(米国特許第3,624,054号明細書、米国特許第4,560,731号明細書、および欧州特許出願公開第131948 A2号明細書)。これらの方法は、高レベルの結晶化度を有するポリマーを必要とするという欠点に悩まされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
低レベルの塩素および硫黄を有するクロロスルホン化ポリオレフィンの製造のための低温液相法を有することが望ましいであろう。かかる方法は、典型的な高温溶液クロロスルホン化法によって一般に得ることができない低または無結晶化度を有し、かつ、低塩素レベルと中〜高硫黄レベルとの組み合わせを有するクロロスルホン化生成物の製造を可能にするであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様は、0.5〜10重量パーセントの塩素および0.25〜5重量パーセントの硫黄を含むクロロスルホン化ポリオレフィンの製造方法であって、
A)少なくとも1種のポリオレフィンベースポリマーを溶媒に50℃〜100℃の温度で溶解させて溶液を形成する工程と、
B)前記ポリオレフィンを沈殿させることなく前記溶液の温度を50℃〜75℃に調節する工程と、
C)前記温度を50℃〜75℃に維持しながら、クロロスルホン化剤および開始剤を前記溶液に加えて0.5〜10重量パーセントの塩素および0.25〜5重量パーセントの硫黄を含む少なくとも1種のクロロスルホン化ポリオレフィンを形成する工程と
を含む前記方法である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の方法により製造されるクロロスルホン化ポリオレフィンは、0.5〜10(好ましくは0.75〜8、最も好ましくは1〜5)重量パーセントの塩素および0.25〜5(好ましくは0.35〜3、最も好ましくは0.5〜2)重量パーセントの硫黄を含有する。これらのコポリマーは、i)Cl2およびSO2ならびにii)塩化スルフリル(SO2Cl2)からなる群から選択されたクロロスルホン化剤との反応によって溶液法(ポリオレフィンベースポリマーが溶媒に溶解されることを意味する)で製造される。
【0011】
Cl2/SO2クロロスルホン化法では、四塩化炭素とクロロホルムとの溶媒混合物が、冷却器および圧力調整を有する反応器に導入される。次に、ある量のポリオレフィンベースポリマーが反応器に加えられる。場合により、2種以上のポリオレフィンベースポリマーが、クロロスルホン化ポリオレフィンポリマーのブレンド物をもたらすために反応器に加えられてもよい。幾つかの最終使用用途向けには、2種以上の異なる(例えば、異なるコモノマー、異なる分子量分布など)クロロスルホン化ポリマーのブレンド物が好ましいかもしれない。反応器中のいかなる水分も場合により、1)反応器を真空に引き、こうして溶媒と水との共沸混合物を反応器からフラッシュするか、2)少量の化学的水分捕捉剤(例えば、塩化チオニルもしくは塩化アセチル)の添加かのどちらかによって除去されてもよい。アゾ開始剤(例えば、DuPontから入手可能なVazo(登録商標)52)が導入され、反応器は、酸素を除去するために不活性ガス(例えば、窒素)でパージされる。
【0012】
反応器は、ポリオレフィンベースポリマーの全てを溶解させるために約50℃〜100℃(好ましくは55℃から85℃)に加熱される。ポリオレフィンベースポリマーを沈殿させることなく、溶液の温度を50℃〜75℃(好ましくは55℃〜60℃)に調節した後、塩素ガス、二酸化硫黄および追加の開始剤が反応器に導入される。所望のレベルのクロロスルホン化が起こったとき、反応塊は窒素で脱ガスされ、真空の適用がそれに続く。場合により、エポキシド、例えば、Epon(登録商標)828(Hexion Specialty Chemicalsから入手可能な)が生成物を安定化させるために添加される。同様に場合により、酸化防止剤、例えば、Irganox(登録商標)1010(Ciba Specialty Chemicalsから入手可能な)も、単離および貯蔵中にポリマーを保護するために添加される。
【0013】
SO2Cl2クロロスルホン化法は、塩素ガス/二酸化硫黄混合物よりもむしろ、塩化スルフリルおよび任意のアミン活性化剤(例えば、ピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)など)がポリオレフィンベースポリマーをクロロスルホン化するために用いられるという点でCl2/SO2法とは異なる。
【0014】
本発明の方法に用いられるポリオレフィンベースポリマーには、様々なエチレン/アルファ−オレフィンコポリマーが含まれる。これには、伝統的なZiegler−NattaのLLDPEおよびメタロセン誘導エチレン・アルファ−オレフィンコポリマーが含まれる。アルファ−オレフィンは、3〜20個の炭素原子を含有する任意の非分岐アルファ−オレフィンであってもよい。オクテン−1、ブテン−1およびプロピレンが好ましいアルファ−オレフィンである。コポリマーは半結晶性かまたは非晶質であってもよい。半結晶性コポリマーは、それらが取り扱うのがより容易であるので好ましい。
【0015】
本発明の方法によって製造されたクロロスルホン化ポリオレフィンは、クロロスルホン化ポリオレフィン組成物に典型的に用いられる硬化剤および他の添加剤と配合されてもよい。
【0016】
本発明の方法によって製造されたクロロスルホン化ポリオレフィンはまた、他の最終使用用途に使用するためのスルホネート誘導体に変換されてもよい。
【0017】
有用な硬化剤には、ビスマレイミド、過酸化物(例えば、Di−Cup(登録商標))、硫黄供与体(例えば、ジチオカルバミルポリスルフィド)および金属酸化物(例えば、MgO)が含まれる。
【0018】
組成物に使用するのに好適な添加剤の例には、i)フィラー、ii)可塑剤、iii)加工助剤、iv)酸受容体、v)酸化防止剤、およびvi)オゾン劣化防止剤が挙げられるが、それらに限定されない。
【実施例】
【0019】
試験方法
クロロスルホン化コポリマーに組み込まれた重量パーセントClおよびSは、Schoniger燃焼法(J.C.TorrおよびG.J.Kallos、American Industrial Association J.July、419(1974)ならびにA.M.MacDonald、Analyst、v86、1018(1961))によって測定した。
【0020】
実施例1
クロロスルホン化エチレン/オクテン−1コポリマーブレンド物(CSM1)は、塩素ガス/SO2手順によって製造した。90重量パーセント(重量%)の四塩化炭素と10重量%のクロロホルムとからなる80ポンド(36.3kg)の溶媒を、冷却器および圧力調整を備え付けた10ガロン(37.9リットル)のジャケット付き反応容器に加えた。1.25ポンド(0.567kg)のエチレン/オクテン−1コポリマー(0.5g/10分のメルトインデックスおよび0.868g/cm3の密度を有する、The Dow Chemical Co.から入手可能な、Engage(登録商標)8150)と、30g/10分のメルトインデックスおよび0.870g/cm3の密度を有する4.75ポンド(2.15kg)のエチレン/オクテン−1コポリマー(The Dow Chemical Co.から入手可能な、Engage(登録商標)8407)とを次に反応器に加えた。次に、17gの塩化チオニルを加えて反応器内容物から水分を除去した。10mlのクロロホルムに溶解させた2gのVazo(登録商標)52開始剤(DuPontから入手可能な、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル)を次に反応器に加えた。反応器を閉じ、約10リットル/分で20分間窒素でスパージして空気を除去した。反応塊を二酸化硫黄でスパージし、次に二酸化硫黄で2psig(13.8kPa)に加圧し、窒素で20psig(138kPa)に上げた。反応器内容物を次に、ポリマーを溶解させるために反応器ジャケットでのスチームで、85℃に30分間加熱した。反応温度を次に、反応器ジャケットを通したスチーム水混合物を使用して55℃〜60℃に下げた。反応温度を55℃〜60℃に維持しながら、クロロホルム中のVazo(登録商標)52開始剤の0.7重量%溶液を、反応の全体にわたって200ml毎時の流量で連続的に加えた。全体にわたって55℃〜60℃の反応温度を維持して、0.130ポンド(59g)の塩素および2.6ポンド(1.2kg)の二酸化硫黄が加えられるまで、塩素ガスを次に0.1ポンド/時(45.3g/時)の流量で反応器中へスパージし、二酸化硫黄を2ポンド/時(0.91kg/時)の流量で加えた。反応器溶液のサンプルを分析のために採取した。生成物は1.06重量%の硫黄および1.87重量%の塩素を含有した。反応塊を、窒素の低いフローを5分間反応器中へスパージし、これに真空が30分間続くことによって脱ガスした。反応塊を、18gのEpon(登録商標)828(Hexion Specialty Chemicalsから入手可能な、エピクロロヒドリンとビスフェノールAとの縮合生成物)および0.9gのIrganox(登録商標)1010(Ciba Specialty Chemicalsから入手可能な)の添加によって安定化させた。クロロスルホン化エチレン/アルファ−オレフィンコポリマーブレンド物は、加熱ドラム乾燥機上へ溶液をゆっくり注ぎ、そこで溶媒がフラッシュ除去されてポリマーの薄膜を残し、薄膜を、ドクターブレードを用いてドラムから取り外すことによって単離した。
【0021】
実施例2
別のクロロスルホン化エチレン/アルファ−オレフィンコポリマーブレンド物(CSM2)は、塩化スルフリル手順によって製造した。90重量%の四塩化炭素と10重量%のクロロホルムとからなる50ポンド(22.7kg)の溶媒を、冷却器および圧力調整を備え付けた10ガロン(37.9L)のジャケット付き反応容器に加えた。2.4ポンド(1.09kg)のエチレン/オクテン−1コポリマー(30g/10分のメルトインデックスおよび0.87g/cm3の密度を有する、The Dow Chemical Co.から入手可能な、Engage(登録商標)8407)と0.6ポンド(0.272kg)のエチレン/ブテン−1コポリマー(0.3g/10分のメルトインデックスおよび0.870g/cm3の密度を有する、The Dow Chemical Co.から入手可能な、Engage(登録商標)7380)とを次に反応器に加えた。反応器を次に閉じ、80℃に加熱し、10ポンド(4.5kg)の溶媒をオーバーヘッドにフラッシュさせ、集めて微量の水分を反応器から除去した。次に、10mlのクロロホルムに溶解させた2gのVazo(登録商標)52開始剤((2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル)、引き続き3mlのDBU((1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7)を反応器に加えた。反応器を閉じ、約10リットル/分で10分間窒素でスパージして空気を除去した。反応塊を二酸化硫黄でスパージし、次に二酸化硫黄で1psig(6.8kPa)に加圧し、次に窒素で10psig(68kPa)に上げた。反応器内容物を次に、反応器ジャケットのスチームで85℃に30分間加熱してポリマーの溶解を確実にした。反応混合物を次に、反応器ジャケットを通したスチーム水混合物を使用して50℃〜55℃に下げた。反応温度を50℃〜53℃に維持しながら、クロロホルム中のVazo(登録商標)52開始剤の1重量%溶液を、反応の全体にわたって、200ml/時の流量で連続的に加えた。100mlの塩化スルフリルを40ml/分の流量で加えた。反応は、副産物塩化水素および過剰の二酸化硫黄の発生によって示唆された。30分後に、ガス発生が止まり、反応が完了したことを示唆した。反応物からのサンプルは0.97重量%の結合硫黄および1.98重量%の結合塩素を含有することが分かった。溶液器温度を90℃に上げ、圧力を20psig(136kPa)に設定した。圧力を次に大気圧に下げて残留副産物ガスを除去した。反応物を、12gのEpon(登録商標)828(Hexion Specialty Chemicalsから入手可能な、エピクロロヒドリンとビスフェノールAとの縮合生成物)と6.8gのIrganox(登録商標)1010(Ciba Specialty Chemicalsから入手可能な)との添加によって安定化させた。クロロスルホン化エチレン/アルファ−オレフィンコポリマーは、加熱ドラム乾燥機上へ溶液を注ぎ、そこで溶媒がフラッシュ除去されてポリマーの薄膜を残し、薄膜を、ドクターブレードを用いてドラムから取り外すことによって単離した。
【0022】
実施例3
クロロスルホン化エチレン/アルファ−オレフィンポリマー(CSM3)は、塩化スルフリル手順によって製造した。90重量%の四塩化炭素と10重量%のクロロホルムとからなる40ポンド(18.2kg)の溶媒を、冷却器および圧力調整バルブを備え付けた10ガロン(38L)のジャケット付き反応容器に加えた。4.0ポンド(1.82kg)のエチレン/オクテン−1コポリマー(30g/10分のメルトインデックスおよび0.87g/cm3の密度を有する、The Dow Chemical Co.から入手可能な、Engage(登録商標)8407)を次に反応器に加えた。次に、10mlのクロロホルムに溶解させた2gのVazo(登録商標)52開始剤、引き続き3mlのDBUを反応器に加えた。反応器を閉じ、70℃に加熱した。反応塊を次に二酸化硫黄でスパージし、次に二酸化硫黄で5psig(34.5kPa)に加圧し、窒素で20psig(138Pa)に上げた。ポリマー溶液温度を次に、反応器ジャケットを通したスチーム水混合物を使用して65℃に下げた。反応温度を65℃に維持しながら、クロロホルム中のVazo(登録商標)52開始剤の1重量%溶液を、反応の全体にわたって3.33ml/分の流量で連続的に加えた。150mlの塩化スルフリルを次に40ml/分の流量で加えた。塩化スルフリルの全てを加えた3.5分後に、圧力調整バルブの開きによって示唆されるように激しい反応が始まった。21分後に、圧力調整バルブが閉じ、反応が完了したことを示唆した。反応物からのサンプルは1.12重量%の硫黄および3.95重量%の塩素を含有することが分かった。反応器温度を90℃に上げ、圧力を大気圧に下げて溶存副産物ガスを除去した。ポリマーを、16gのEpon(登録商標)828(Hexion Specialty Chemicalsから入手可能な、エピクロロヒドリンとビスフェノールAとの縮合生成物)の添加によって安定化させ、2つのスチーム加熱ドラム上で沸騰させることによって溶液から単離し、フィルムとして手を加えた。
【0023】
実施例4
別のクロロスルホン化ポリオレフィン(CSM4)は、2.5ポンド(1.14kg)のエチレン/ブテン−1コポリマー(0.3g/10分のメルトインデックスおよび0.87g/cm3の密度を有する、The Dow Chemical Co製のEngage(登録商標)7380)を使用したことを除いては、実施例3のような手順を用いて製造した。合計75mlの塩化スルフリルをクロロスルホン化剤として使用した。反応物からのポリマーサンプルは1.08重量%の結合硫黄および4.0重量%の結合塩素を含有することが分かった。反応器温度を90℃に上げ、圧力を大気圧に下げて溶存副産物ガスを除去した。ポリマーを、16gのEpon(登録商標)828(Hexion Specialty Chemicalsから入手可能な、エピクロロヒドリンとビスフェノールAとの縮合生成物)の添加によって安定化させ、ポリマーを、2つのスチーム加熱ドラム上で沸騰させることによって溶液から単離し、フィルムとして手を加えた。
【0024】
実施例5
別のクロロスルホン化ポリオレフィン(CSM5)は、1.0g/10分のメルトインデックスおよび72重量%のエチレン含有率を有する2ポンド(0.908kg)のエチレン−プロピレンコポリマー(Exxon−Mobil Corporation製のVistalon(登録商標)V722)を用いたことを除いては、実施例1のような手順を用いて製造した。合計0.17ポンド(0.08kg)の塩素ガスおよび2.0ポンド(0.908kg)の二酸化硫黄をクロロスルホン化剤として使用した。ポリマーを、10gのEpon(登録商標)828(Hexion Specialty Chemicalsから入手可能な、エピクロロヒドリンとビスフェノールAとの縮合生成物)の添加によって安定化させた。ポリマーを、2つのスチーム加熱ドラム上で沸騰させることによって溶液から単離し、フィルムとして手を加えた。単離した乾燥ポリマーは、Schoniger手順によって2.7重量%の塩素および1.44重量%の硫黄と分析された。
【0025】
比較例A
比較クロロスルホン化エチレン/プロピレンコポリマーは、クロロスルホン化を85℃で、すなわち、本発明の方法の75℃最高温度より上で行ったことを除いては、塩素ガス/SO2手順を用いることによって製造した。生じたコポリマーは0.21重量%のSを含有したにすぎなかった。
【0026】
92重量%の四塩化炭素と8重量%のクロロホルムとからなる40ポンド(18.2kg)の溶媒を、かき混ぜ機、冷却器および圧力調整を備え付けた10ガロン(38L)のジャケット付き反応容器に加えた。1,226gのエチレン/プロピレンポリマー(230℃で40g/10分のメルトフローレイトおよび0.870g/cm3の密度を有する、三井化学株式会社から入手可能な、Tafmer(登録商標)P0080K)と136gのエチレン/プロピレンコポリマー(230℃で0.5g/10分のメルトフローレイトおよび0.870g/cm3の密度を有する、三井化学株式会社から入手可能な、Tafmer(登録商標)P0680)とを溶媒が充満する反応器に加えた。反応容器を、かき混ぜながらおよそ20分間大気圧にて10リットル/分で、窒素でスパージして空気を除去した。スパージング後に、窒素フローを停止し、反応器圧力調整器を20psig(138kPa)に設定した。反応器をジャケットスチームで85℃に加熱し、かき混ぜながら当該温度に30分間維持してポリマーを完全に溶解させた。反応器圧力調整器を20psig(138kPa)に維持しながら、反応器を二酸化硫黄で2psig(13.8kPa)に、次にN2で20psig(138kPa)に加圧した。反応器温度を反応の全体にわたって85℃に維持しながら、クロロホルム中のVazo(登録商標)52開始剤の0.7重量%溶液を、反応の全体にわたって200ml/時の流量で加えた。開始剤添加から10分後に、合計50gの塩素ガスが加えられるまで、塩素ガスを次に100g毎時の流量で反応器にスパージし、二酸化硫黄添加を200g/時で続行した。反応液の小サンプルを採取し、クロロスルホン化ポリマーを単離し、乾燥させた。生成物は2.76重量%の塩素および0.21重量%の硫黄を含有することが分かった。反応器圧力を大気圧に下げて溶存ガス状副産物を部分的に除去した。10リットル/分の流量で窒素ガスでのスパージングを15分間行って副産物をさらに除去した。反応塊を次に、10gのEpon(登録商標)828の添加によって安定化させた。
【0027】
実施例6
別のクロロスルホン化ポリオレフィンサンプルは、温度を本発明の方法の限界内に維持したことを除いては、比較例Aと同じベース樹脂および手順を用いて製造した。ポリマーを溶解させるために反応器内容物を85℃に30分間維持し、次に温度を75℃に下げ、クロロスルホン化反応の全体にわたって75℃に維持した。反応液の小サンプルを採取し、クロロスルホン化ポリマーを単離し、乾燥させた。生成物は2.55重量%の塩素および0.48重量%の硫黄を含有することが分かった。
【0028】
実施例7
別のクロロスルホン化ポリオレフィンサンプルは、温度を本発明の方法の限界内に維持したことを除いては、比較例Aと同じベース樹脂および手順を用いて製造した。ポリマーを溶解させるために反応器内容物を85℃に30分間維持し、次に温度を59℃に下げ、反応の全体にわたって59℃に維持した。反応液の小サンプルを採取し、クロロスルホン化ポリマーを単離し、乾燥させた。生成物は2.08重量%の塩素および1.20重量%の硫黄を含有することが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.5〜10重量パーセントの塩素および0.25〜5重量パーセントの硫黄を含むクロロスルホン化ポリオレフィンの製造方法であって、
A)少なくとも1種のポリオレフィンベースポリマーを溶媒に50℃〜100℃の温度で溶解させて溶液を形成する工程と、
B)前記ポリオレフィンを沈殿させることなく前記溶液の温度を50℃〜75℃に調節する工程と、
C)前記温度を50℃〜75℃に維持しながら、クロロスルホン化剤および開始剤を前記溶液に加えて、0.5〜10重量パーセントの塩素および0.25〜5重量パーセントの硫黄を含む少なくとも1種のクロロスルホン化ポリオレフィンを形成する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記クロロスルホン化剤が塩素ガスおよび二酸化硫黄である請求項1に記載のクロロスルホン化ポリオレフィンの製造方法。
【請求項3】
前記クロロスルホン化剤が塩化スルフリルである請求項1に記載のクロロスルホン化ポリオレフィンの製造方法。
【請求項4】
前記ポリオレフィンベースポリマーがエチレンとC3〜C20非分岐アルファ−オレフィンとのコポリマーである請求項1に記載のクロロスルホン化ポリオレフィンの製造方法。
【請求項5】
前記アルファ−オレフィンが、オクテン−1、ブテン−1およびプロピレンからなる群から選択される請求項4に記載のクロロスルホン化ポリオレフィンの製造方法。
【請求項6】
前記アルファ−オレフィンがオクテン−1である請求項5に記載のクロロスルホン化ポリオレフィンの製造方法。
【請求項7】
前記アルファ−オレフィンがブテン−1である請求項5に記載のクロロスルホン化ポリオレフィンの製造方法。
【請求項8】
前記アルファ−オレフィンがプロピレンである請求項5に記載のクロロスルホン化ポリオレフィンの製造方法。
【請求項9】
前記クロロスルホン化剤および前記開始剤を前記溶液に加える前に前記溶液から水分を除去する工程をさらに含む請求項1に記載のクロロスルホン化ポリオレフィンの製造方法。
【請求項10】
前記水分除去が、前記反応器を真空に引くことによる請求項9に記載のクロロスルホン化ポリオレフィンの製造方法。
【請求項11】
前記水分除去が、前記溶液へ化学的水分捕捉剤を添加することによる請求項9に記載のクロロスルホン化ポリオレフィンの製造方法。
【請求項12】
少なくとも2種の異なるポリオレフィンベースポリマーが工程A)で溶解される請求項1に記載のクロロスルホン化ポリオレフィンの製造方法。

【公表番号】特表2010−523759(P2010−523759A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502122(P2010−502122)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【国際出願番号】PCT/US2008/004267
【国際公開番号】WO2008/123989
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(597035953)デュポン パフォーマンス エラストマーズ エルエルシー (44)
【Fターム(参考)】