ポリオレフィン化合物の選択的酸化による多官能エポキシ化合物
【課題】温和な条件下、ポリオレフィン類と過酸化水素水溶液の反応による安全で容易な多官能エポキシ化合物の新規製造法の提供。
【解決手段】レニウム化合物の存在下、過酸化水素を用いて、少なくとも1個以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物中のシクロオレフィンの2重結合部位を選択的に酸化して、高収率で選択的に多官能エポキシ基含有化合物を生成することにより、エポキシ基および2重結合を分子内に含む多官能エポキシ化合物が高収率で選択的に生成することができる。
【解決手段】レニウム化合物の存在下、過酸化水素を用いて、少なくとも1個以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物中のシクロオレフィンの2重結合部位を選択的に酸化して、高収率で選択的に多官能エポキシ基含有化合物を生成することにより、エポキシ基および2重結合を分子内に含む多官能エポキシ化合物が高収率で選択的に生成することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ基および2重結合を分子内に含む多官能エポキシ化合物が得られるようにポリオレフィン類をエポキシ化する方法に関する。特に、本発明はトリオレフィン類と過酸化水素水溶液を触媒であるレニウム化合物存在下にて反応させ、1つの2重結合を選択的にエポキシ化させる多官能エポキシ化合物の新規な製造法に関する。本発明により提供される多官能エポキシ化合物は、レジスト材料(特にソルダ−レジスト材料)の原料として、また農薬・医薬の中間体や可塑剤、接着剤、塗料樹脂といった各種ポリマーの原料として化学工業をはじめ、各種の産業分野で幅広く用いられる有用な物質である。
【背景技術】
【0002】
分子内に2個以上の2重結合を有する化合物(ポリオレフィン類)の1つの2重結合を選択的にエポキシ化させる技術は、低生産性(低反応性、低選択性)であったり、適用性がある種の構造体に制限されたりする場合が多い。
従来、ポリオレフィン類の選択的エポキシ化剤として過ギ酸や過酢酸等の有機過酸を使用する方法が知られているが (例えばChem.Ber.,1985,118,1267−1270 非特許文献1、欧州特許公開0033763 特許文献1)、酸化剤由来の酸が当量生成するため装置の腐食などの問題があるほか、酸に反応しやすい基質ではジオールが副成しやすい。
【0003】
ケトン触媒下におけるオキソンを酸化剤としたジオレフィンの選択的エポキシ化方法 (J.Org.Chem.,1998,63,2948−2953 非特許文献2)が知られているが、この反応では触媒のケトンが非常に多く必要(ジオレフィン類に対し20−30モル%)であるほか、反応中のオキソンの分解を抑制する為に溶液中のpHや反応温度等の反応条件を厳密にコントロールする必要があるといった問題点が挙げられる。
【0004】
一方、過酸化水素は、安価で腐食性がなく、反応後の副生物は皆無又は水であるために環境負荷が小さく、工業的に利用するには優れた酸化剤である。
【0005】
過酸化水素をエポキシ化剤とするジオレフィン類の選択的エポキシ化に関しては、(1) 式Q3XW4O24(式中、Qは70個までの炭素原子を含む第4級アンモニウムカチオンを表し、XはPまたはAsを表す)で示される触媒の存在下、過酸化水素によりジオレフィンをエポキシ化する方法 (特開平4−275281 特許文献2)、(2)塩化第4級アンモニウム、リン酸、タングステン化合物の存在下、過酸化水素によりメタクリル酸ユニット有するジオレフィンをエポキシ化する方法 (Tetrahedron,1992,48,5099−5110 非特許文献3)、(3)タングステン化合物および第4級ピリジニウム塩存在下、1, 5, 9-シクロドデカトリエン(CDT)をモノエポキシ化する方法(特開2000−26441 特許文献3)、(4)タングステンおよびモリブデンのポリオキソメタラート錯体の存在下、過酸化水素により大員環脂肪族化合物を選択的モノエポキシ化する方法 (特開2002−155066 特許文献4)があげられるが、(1)では過酸化水素の量がジオレフィン1当量に対して1当量未満であるために反応収率が非常に悪く (使用したジオレフィンに対して32〜48%)、分離・精製過程に時間、コストがかかり生産性に乏しい。(2)の方法はメタクリル酸ユニット有するジオレフィンに限定される。(3)の方法はトリオレフィン1当量に対して1当量未満であるために原料の転化率が非常に悪いほか、(4)の方法では、時間経過とともにモノエポキシ化選択率が大幅に低下するといった問題がある。また、特許文献2、非特許文献3、特許文献3及び特許文献4は、いずれも、少なくとも1つ以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物のエポキシ化については何ら開示していない。
【0006】
少なくとも1つ以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物の過酸化水素を用いた選択的エポキシ化の例としては(5)アルカリ金属、アルカリ土類金属或いはアンモニウムの水に可溶な塩、リン酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸等の酸性触媒及びギ酸の存在下、過酸化水素によりテトラヒドロフタル酸ジアリルを選択的にエポキシ化し、4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジアリルを得る方法(特公昭50−39659 特許文献5)が挙げられる。しかしながら、(5)の方法では、収率は65%程度しか得られず、満足できるものではなかった。
【0007】
一方、レニウム化合物を触媒に用いた過酸化水素をエポキシ化剤とするポリオレフィン類の選択的エポキシ化に関しては、(6)有機レニウムオキシドを触媒として過酸化水素によりエポキシ化する方法 (特開2001−25665 特許文献6、C.R.Acad.Sci,Series IIC Chem.,Vol.3,2000,10,793−801 非特許文献4、Tetrahedron,2005,61,1069−1075 非特許文献5 等)を挙げることができる。しかしながら、特許文献6、非特許文献4及び非特許文献5は、いずれも、少なくとも1つ以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物のエポキシ化については何ら開示していない。
【0008】
従って温和な条件下、簡便な操作で安全に、少なくとも1つ以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物から選択的に多官能エポキシ化合物を収率良く、かつ低コストで製造する方法の開発が強く要望されている。
【非特許文献1】Chem.Ber.,118,1267−1270(1985)
【非特許文献2】J.Org.Chem.,63,2948−2953(1998)
【非特許文献3】Tetrahedron,48,5099−5110(1992)
【非特許文献4】C.R.Acad.Sci.,Series IIC Chem.,Vol.3,10,793−801(2000)
【非特許文献5】Tetrahedron,,61,1069−1075(2005)
【特許文献1】欧州特許公開0033763号
【特許文献2】特開平4−275281号公報
【特許文献3】特開2000−26441号公報
【特許文献4】特開2002−155066号公報
【特許文献5】特公昭50−39659号公報
【特許文献6】特開2001−25665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、温和な条件下、ポリオレフィン類と過酸化水素水溶液の反応による安全で容易な多官能エポキシ化合物の新規製造法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究の結果、レニウム化合物の存在下、過酸化水素を用いて、少なくとも1個以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物中のシクロオレフィンの2重結合部位を選択的に酸化して、高収率で選択的に多官能エポキシ基含有化合物を生成することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の[1]〜[10]に示されるレニウム化合物の存在下、多官能エポキシ化合物の製造方法に関する。
【0012】
[1] レニウム化合物の存在下、過酸化水素を用いて、少なくとも1個以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物中のシクロオレフィンの2重結合部位を酸化して、エポキシ基含有化合物を製造することを特徴とする多官能エポキシ化合物の製造方法。
【0013】
[2] 前記シクロオレフィン構造が炭素6〜8員環であることを特徴とする、前記[1]に記載の方法。
【0014】
[3] 前記少なくとも1つ以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物が下記一般式(1)〜(10)から成る群から選ばれることを特徴とする、前記[1]又は[2]に記載の方法:
一般式(1):
【化1】
(式中、R1は水素又はメチル基を表し、R2は炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R3〜R10はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、aは0〜3の整数を表し、そしてbは0〜2の整数を表す。)
一般式(2):
【化2】
(式中、R11は水素又はメチル基を表し、R12は炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R13〜R20はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、cは0〜3の整数を表し、そしてdは0〜2の整数を表す。)
一般式(3):
【化3】
(式中、R21,R22はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R23,R24はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R25〜R32はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、e、gはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、そしてf、hはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。)
一般式(4):
【化4】
(式中、R33,R34はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R35,R36はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R37〜R44はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、i、kはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、そしてj、lはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。)
一般式(5):
【化5】
(式中、R45は水素又はメチル基を表し、R46〜R53はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)
一般式(6):
【化6】
(式中、R54は水素又はメチル基を表し、R55〜R62はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)
一般式(7):
【化7】
(式中、R63,R64はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R65,R66はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R67〜R73はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、i、kはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、そしてj、lはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。)
一般式(8):
【化8】
(式中、R74,R75はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R76,R77はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R78〜R83はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、i、kはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、そしてj、lはそれぞれ独立に0〜2を表す。)
一般式(9):
【化9】
(式中、R84は水素又はメチル基を表し、R85〜R91はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)
一般式(10):
【化10】
(式中、R92は水素又はメチル基を表し、R93〜R98はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)。
【0015】
[4] 前記少なくとも1つ以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物が下記一般式(11)又は下記一般式(12)で表される化合物であることを特徴とする、前記[1]又は[2]に記載の方法:
一般式(11):
【化11】
(式中、R99は水素又はメチル基を表し、R100〜R107はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、そしてvは0〜2の整数を表す。)
一般式(12):
【化12】
(式中、R108は水素又はメチル基を表し、R109〜R116はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、そしてwは0〜2の整数を表す。)。
【0016】
[5] 前記少なくとも1つ以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物が下記一般式(5)又は下記一般式(6)で表される化合物であることを特徴とする、前記[1]又は[2]に記載の方法:
一般式(5):
【化13】
(式中、R45は水素又はメチル基を表し、R46〜R53はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)
一般式(6):
【化14】
(式中、R54は水素又はメチル基を表し、R55〜R62はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)。
【0017】
[6] 前記少なくとも1つ以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物が下記一般式(13)又は下記一般式(14)で表される化合物であることを特徴とする、前記[1]又は[2]に記載の方法:
一般式(13):
【化15】
(式中、R117,R118はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R119〜R126はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)
一般式(14):
【化16】
(式中、R127,R128はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R129〜R136はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)。
【0018】
[7] 前記末端ビニルまたはビニリデン構造がアリルまたはメタリル構造であることを特徴とする、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
【0019】
[8] 前記レニウム化合物がメチルトリオキソレニウムであることを特徴とする、前記[1]〜[7]のいずれかに記載の方法。
【0020】
[9] 前記レニウム化合物に対して有機塩基性化合物を1〜30倍モル使用することを特徴とする、前記[1]〜[8]のいずれかに記載の方法。
【0021】
[10] 前記少なくとも1つ以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物のシクロオレフィン構造中に含まれる2重結合数に対して、過酸化水素を0.8〜10.0倍含有することを特徴とする、前記[1]〜[9]のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明の方法によれば、レジスト材料(特にソルダ−レジスト材料)の原料として、また農薬・医薬の中間体や可塑剤、接着剤、塗料樹脂といった各種ポリマーの原料として化学工業をはじめ、各種の産業分野で幅広く用いられる有用な物質である多官能エポキシ化合物を、対応するポリオレフィン類と過酸化水素水の反応から簡便な操作で安全に、高い収率で製造できることより、工業的に大きな効果をもたらす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明は、レニウム化合物の存在下、過酸化水素を用いて、少なくとも1個以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物中のシクロオレフィンの2重結合部位を酸化して、エポキシ基含有化合物を製造することを特徴とする多官能エポキシ化合物の製造方法である。
【0024】
まず、本発明の製造方法の原料成分である、少なくとも1個以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物について説明する。
本発明の製造方法の原料成分である、少なくとも1個以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物は、同一分子内に1個以上のシクロオレフィン構造と1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物であれば、特に制限はない。
【0025】
シクロオレフィン構造の中で、合成の容易さ、或いは入手の容易さを考慮すると、好ましいシクロオレフィン構造としては、炭素6〜8員環構造を有するシクロオレフィン構造である。
【0026】
少なくとも1個以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物の中で、好ましいものとしては以下の一般式(1)〜一般式(10)をあげることができる:
【0027】
一般式(1):
【化17】
(式中、R1は水素又はメチル基を表し、R2は炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R3〜R10はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、aは0〜3の整数を表し、そしてbは0〜2の整数を表す。)
一般式(2):
【化18】
(式中、R11は水素又はメチル基を表し、R12は炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R13〜R20はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、cは0〜3の整数を表し、そしてdは0〜2の整数を表す。)
一般式(3):
【化19】
(式中、R21,R22はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R23,R24はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R25〜R32はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、e、gはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、そしてf、hはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。)
一般式(4):
【化20】
(式中、R33,R34はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R35,R36はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R37〜R44はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、i、kはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、そしてj、lはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。)
一般式(5):
【化21】
(式中、R45は水素又はメチル基を表し、R46〜R53はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)
一般式(6):
【化22】
(式中、R54は水素又はメチル基を表し、R55〜R62はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)
一般式(7):
【化23】
(式中、R63,R64はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R65,R66はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R67〜R73はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、m、pはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、n、qはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。)
一般式(8):
【化24】
(式中、R74,R75はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R76,R77はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R78〜R83はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、r、tはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、そしてs、uはそれぞれ独立に0〜2を表す。)
一般式(9):
【化25】
(式中、R84は水素又はメチル基を表し、R85〜R91はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)
一般式(10):
【化26】
(式中、R92は水素又はメチル基を表し、R93〜R98はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)。
【0028】
まず、一般式(1)で表される化合物について説明する。
一般式(1):
【化27】
(式中、R1は水素又はメチル基を表し、R2は炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R3〜R10はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、aは0〜3の整数を表し、そしてbは0〜2の整数を表す。)。
【0029】
一般式(1)中、R1は水素又はメチル基を表す。R2は炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、例えば、以下のような残基を挙げることができる。
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【化38】
【0030】
一般式(1)中、R3〜R10はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。
また、aは、0〜3の整数を表すが、好ましくは、0又は1であり、更に好ましくは、0である。bは、0〜2の整数であるが、好ましくは、b=1である。
R3〜R10はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。
【0031】
一般式(1)で表される化合物で、式中のa=0場合には、一般式(11)で表される化合物となる:
一般式(11):
【化39】
(式中、R99は水素又はメチル基を表し、R100〜R107はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。また、vは0〜2の整数を表す。)。
【0032】
一般式(11)中、R99は水素又はメチル基を表す。また、R100〜R107はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。また、vは、0〜2の整数であるが、好ましくは、v=1である。
【0033】
一般式(1)で表される化合物の具体例としては、例えば、以下の構造を有する化合物を挙げることができる。
【化40】
【化41】
【化42】
【化43】
【化44】
【化45】
【化46】
【化47】
【化48】
【化49】
【化50】
【化51】
【0034】
次に、一般式(2)で表される化合物について説明する:
一般式(2):
【化52】
(式中、R11は水素又はメチル基を表し、R12は炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R13〜R20はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、cは0〜3の整数を表し、そしてdは0〜2の整数を表す。)。
【0035】
一般式(2)中、R11は水素又はメチル基を表す。R12は炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、例えば、以下のような残基を挙げることができる。
【化53】
【化54】
【化55】
【化56】
【化57】
【化58】
【化59】
【化60】
【化61】
【化62】
【化63】
【0036】
一般式(2)中、R13〜R20はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。
また、cは、0〜3の整数を表すが、好ましくは、0又は1であり、更に好ましくは、0である。dは、0〜2の整数であるが、好ましくは、d=1である。
R13〜R20はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。
一般式(2)で表される化合物で、式中のc=0には、一般式(12)で表される化合物となる:
一般式(12):
【化64】
(式中、R108は水素又はメチル基を表し、R109〜R116はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、wは0〜2の整数を表す。)。
【0037】
一般式(12)中、R108は水素又はメチル基を表す。また、R109〜R116はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、wは、0〜2の整数であるが、好ましくは、w=1である。
【0038】
一般式(2)で表される化合物の具体例としては、例えば、以下の構造を有する化合物を挙げることができる。
【化65】
【化66】
【化67】
【化68】
【化69】
【化70】
【化71】
【化72】
【化73】
【化74】
【0039】
次に、一般式(3)で表される化合物について説明する:
一般式(3):
【化75】
(式中、R21,R22はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表す。R23,R24はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R25〜R32はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、e、gはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、そしてf、hはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。)。
【0040】
一般式(3)中、R21,R22はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表す。R23,R24はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、例えば、以下のような残基を挙げることができる。
【化76】
【化77】
【化78】
【化79】
【化80】
【化81】
【化82】
【化83】
【化84】
【化85】
【化86】
【0041】
一般式(3)R25〜R32はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。
また、e、gはそれぞれ独立に0〜3の整数を表すが、好ましくは、それぞれ独立に0又は1である。f、hはそれぞれ独立に0〜2の整数を表すが、好ましくは、f,hともに1である。
一般式(3)で表される化合物で、式中のe=g=0かつf=h=1場合には、一般式(13)で表される化合物となる:
一般式(13):
【化87】
(式中、R117,R118はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R119〜R126はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)。
【0042】
一般式(13)中、R117,R118はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表す。また、R119〜R126はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。
【0043】
一般式(3)で表される化合物の具体例としては、例えば、以下の構造を有する化合物を挙げることができる。
【化88】
【化89】
【化90】
【化91】
【化92】
【化93】
【化94】
【化95】
【化96】
【0044】
次に、一般式(4)で表される化合物について説明する:
一般式(4):
【化97】
(式中、R33,R34はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R35,R36はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R37〜R44はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、i、kはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、そしてj、lはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。)。
【0045】
一般式(4)中、R33,R34はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表す。R35,R36はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、例えば、以下のような残基を挙げることができる。
【化98】
【化99】
【化100】
【化101】
【化102】
【化103】
【化104】
【化105】
【化106】
【化107】
【化108】
【0046】
一般式(4)中、R37〜R44はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。また、i、kはそれぞれ独立に0〜3の整数を表すが、好ましくは、それぞれ独立に0又は1である。j、lはそれぞれ独立に0〜2の整数を表すが、好ましくは、j,lともに1である。
【0047】
一般式(4)で表される化合物で、式中のi=k=0かつj=l=1場合には、一般式(14)で表される化合物となる:
一般式(14):
【化109】
(式中、R127,R128はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R129〜R136はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)
【0048】
一般式(14)中、R127,R128はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表す。また、R129〜R136はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。
【0049】
一般式(4)で表される化合物の具体例としては、例えば、以下の構造を有する化合物を挙げることができる。
【化110】
【化111】
【化112】
【化113】
【化114】
【化115】
【化116】
【化117】
【0050】
次に、一般式(5)で表される化合物について説明する:
一般式(5):
【化118】
(式中、R45は水素又はメチル基を表し、R46〜R53はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)。
【0051】
一般式(5)中、R45は水素又はメチル基を表す。また、R46〜R53はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。
【0052】
一般式(5)で表される化合物の具体例としては、例えば、以下の構造を有する化合物を挙げることができる。
【化119】
【化120】
【化121】
【0053】
次に、一般式(6)で表される化合物について説明する:
一般式(6):
【化122】
(式中、R54は水素又はメチル基を表し、R55〜R62はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)。
【0054】
一般式(6)中、R54は水素又はメチル基を表す。R55〜R62はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。
【0055】
一般式(6)で表される化合物の具体例としては、例えば、以下の構造を有する化合物を挙げることができる。
【化123】
【化124】
【化125】
【0056】
次に、一般式(7)で表される化合物について説明する:
一般式(7):
【化126】
(式中、R63,R64はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R65,R66はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R67〜R73はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、m、pはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、そしてn、qはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。)。
【0057】
一般式(7)中、R63,R64はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表す。R65,R66はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、例えば、以下のような残基を挙げることができる。
【化127】
【化128】
【化129】
【化130】
【化131】
【化132】
【化133】
【化134】
【化135】
【化136】
【化137】
【0058】
一般式(7)中、R67〜R73はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。また、m、pはそれぞれ独立に0〜3の整数を表すが、好ましくは、それぞれ独立に0又は1である。n、qはそれぞれ独立に0〜2の整数を表すが、好ましくは、n,qともに1である。
【0059】
一般式(7)で表される化合物の具体例としては、例えば、以下の構造を有する化合物を挙げることができる。
【化138】
【化139】
【化140】
【0060】
次に、一般式(8)で表される化合物について説明する:
一般式(8):
【化141】
(式中、R74,R75はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R76,R77はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R78〜R83はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、r、tはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、そしてs、uはそれぞれ独立に0〜2を表す。)。
【0061】
一般式(8)中、R74,R75はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表す。R76,R77はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、例えば、以下のような残基を挙げることができる。
【化142】
【化143】
【化144】
【化145】
【化146】
【化147】
【化148】
【化149】
【化150】
【化151】
【化152】
【0062】
一般式(8)中、R78〜R83はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。また、r、tはそれぞれ独立に0〜3の整数を表すが、好ましくは、それぞれ独立に0又は1である。s、uはそれぞれ独立に0〜2の整数を表すが、好ましくは、s,uともに1である。
【0063】
一般式(8)で表される化合物の具体例としては、例えば、以下の構造を有する化合物を挙げることができる。
【化153】
【化154】
【化155】
【0064】
次に、一般式(9)で表される化合物について説明する:
一般式(9):
【化156】
(式中、R84は水素又はメチル基を表し、R85〜R91はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)。
【0065】
一般式(9)中、R84は水素又はメチル基を表す。また、R85〜R91はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。
一般式(9)で表される化合物の具体例としては、例えば、以下の構造を有する化合物を挙げることができる。
【化157】
【化158】
【化159】
【化160】
【化161】
【0066】
次に、一般式(10)で表される化合物について説明する:
一般式(10):
【化162】
(式中、R92は水素又はメチル基を表し、R93〜R98はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)。
【0067】
一般式(10)中、R92は水素又はメチル基を表す。また、R93〜R98はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。
【0068】
一般式(10)で表される化合物の具体例としては、例えば、以下の構造を有する化合物を挙げることができる。
【化163】
【化164】
【化165】
【0069】
次に、本発明の多官能エポキシ化合物の製造方法の必須成分である過酸化水素について説明する。
本発明の製造法において用いられる過酸化水素水溶液中の過酸化水素の濃度に、特に制限はなく、濃度に応じて、少なくとも1個以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物オレフィン化合物への反応は生起するが、一般的には1〜80%、好ましくは20〜80%の範囲から選ばれる。
【0070】
過酸化水素水溶液の使用量に、特に制限はなく、使用量に応じて、少なくとも1個以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物への反応は生起するが、一般的には、少なくとも1個以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物のシクロオレフィン構造中に含まれる2重結合数に対して、過酸化水素を0.8〜10.0倍含有することが好ましく、さらに好ましくは1.0〜3.0倍の範囲から選ばれる。
【0071】
レニウム化合物としては、例えば、メチルトリオキソレニウム、エチルトリオキソレニウム、n−プロピルトリオキソレニウム、シクロヘキシルトリオキソレニウム、n−ブチルトリオキソレニウム、ベンジルトリオキソレニウム等が挙げられるが、メチルトリオキソレニウムが好ましい。これらレニウム化合物は単独で使用しても、2種以上を混合使用してもよい。その使用量は、少なくとも1個以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物に対して0.0001〜20モル%の範囲で選ばれることが好ましく、さらに好ましくは0.01〜10モル%の範囲である。
【0072】
なお、有機塩基性化合物を、助触媒として併用することが可能でありかつ好ましい。
【0073】
有機塩基性化合物としては、ピリジン、ピラジン、ピラゾール、ピリミジン、ピペリジン、2−シアノピリジン、4−シアノピリジン、2−プロピルピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、2,2’−ビピリジン、2−アミノピリジン、2−(メチルアミノ)ピリジン、ピロリジン、o−メトキシピリジン、p−メトキシピリジン、アニリン、8−ヒドロキシキノリン、キヌクリジン、4,4’−ジメチルアミノピリジン、o−フェナントロリン、4−ピペリジノピリジン等の窒素含有有機塩基性化合物を代表例としてあげることができる。
【0074】
この有機塩基性化合物の使用量としては、特に制限はないが、レニウム化合物に対して、0.1〜100倍モル用いることが好ましく、さらに好ましくは、1〜30倍モルである。
【0075】
本製造方法における反応温度は、通常、0〜100℃の範囲で行われるが、0〜50℃の範囲であることが好ましく、更に好ましくは、3〜40℃の範囲である。
【0076】
一般式(1)〜一般式(10)で表されている化合物から得られる多官能エポキシ化合物としては、それぞれ、下記一般式(15)〜下記一般式(24)で表される化合物である:
一般式(15):
【化166】
(式中、R1は水素又はメチル基を表し、R2は炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R3〜R10はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、aは0〜3の整数を表し、そしてbは0〜2の整数を表す。)
一般式(16):
【化167】
(式中、R11は水素又はメチル基を表し、R12は炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R13〜R20はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、cは0〜3の整数を表し、そしてdは0〜2の整数を表す。)
一般式(17):
【化168】
(式中、R21,R22はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R23,R24はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R25〜R32はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、e、gはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、そしてf、hはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。)
一般式(18):
【化169】
(式中、R33,R34はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R35,R36はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R37〜R44はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、i、kはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、そしてj、lはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。)
一般式(19):
【化170】
(式中、R45は水素又はメチル基を表し、R46〜R53はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)
一般式(20):
【化171】
(式中、R54は水素又はメチル基を表し、R55〜R62はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)
一般式(21):
【化172】
(式中、R63,R64はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R65,R66はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R67〜R73はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、m、pはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、そしてn、qはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。)
一般式(22):
【化173】
(式中、R74,R75はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R76,R77はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R78〜R83はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、r、tはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、そしてs、uはそれぞれ独立に0〜2を表す。)
一般式(23):
【化174】
(式中、R84は水素又はメチル基を表し、R85〜R91はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)
一般式(24):
【化175】
(式中、R92は水素又はメチル基を表し、R93〜R98はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)
【0077】
かくして生成した目的の多官能エポキシ化合物は、反応終了後の混合液を濃縮後、蒸留、昇華等の通常の方法によって取り出すことができる。
【実施例】
【0078】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により制限されるものではない。
実施例1
還流冷却器付きの50ml三ッ口丸底フラスコに、下記化合物(1)2.530g(10.1mmol)、メチルトリオキソレニウム24.9mg(0.1mmol)、ピリミジン80.3mg(1.0mmol)及び塩化メチレン5mgを入れた。その後、30質量%過酸化水素水を1.247g(11.0mmol)添加し、スターリングバーを入れ、マグネチックスタラーを用いて、室温で6時間攪拌を継続した。その後、ガスクロマトグラフ(以下、GCと記す。)法で分析した結果、化合物(1)の転化率は85%であり、4, 5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジアリルの収率は83%であった。
【0079】
化合物(1):
【化176】
また、4, 5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジアリルには、下記化合物(2)及び下記化合物(3)に2種の異性体が存在するが、上記反応では、4, 5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジアリルのうちの68%が化合物(2)であり、32%が化合物(3)であることが、ガスクロマトグラフ(以下、GCと記す。)法により確認された。
【0080】
化合物(2):
【化177】
【0081】
化合物(3):
【化178】
なお、そのときのGC法の分析条件は以下の通りである。
使用カラム:J&W サイエンティフィック社製 HP−1
(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)
インジェクション温度:300℃、
検出器温度:300℃
カラムの温度条件:スタート温度130℃で2分間ホールドし、その後20℃/分の昇温速度で280℃まで昇温し、その後、6.5分間280℃でホールド
【0082】
実施例2
化合物(1)2.530g(10.1mmol)の代わりに化合物(4)1.674g(10.1mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、化合物(4)の転化率は、99.5%であり、3,4−エポキシシクロヘキサン−1−カルボン酸アリルの収率は80%であった。
【0083】
化合物(4):
【化179】
また、3,4−エポキシシクロヘキサン−1−カルボン酸アリルには、化合物(5)及び化合物(6)に2種の異性体が存在するが、上記反応では、3,4−エポキシシクロヘキサン−1−カルボン酸アリルのうちの61%が化合物(5)であり、39%が化合物(6)であることが、GC法により確認された。
【0084】
化合物(5):
【化180】
【0085】
化合物(6):
【化181】
なお、そのときのGC法の分析条件は実施例1と同様であった。
【0086】
実施例3
化合物(1)2.530g(10.1mmol)の代わりに化合物(7)1.917g(10.0mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、化合物(7)の転化率は、99.5%であり、N−アリル−4, 5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボキシイミドの収率は78%であった。
【0087】
化合物(7):
【化182】
また、N−アリル−4, 5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボキシイミドには、化合物(8)及び化合物(9)に2種の異性体が存在するが、上記反応では、N−アリル−4, 5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボキシイミドのうちの15%が化合物(8)であり、85%が化合物(9)であることが、GC法により確認された。
【0088】
化合物(8):
【化183】
【0089】
化合物(9):
【化184】
なお、そのときのGC法の分析条件は実施例1と同様であった。
【0090】
実施例4
50mlのガラス製容器を用い,化合物(4)(2.0g,12.0mmol),メチルトリオキソレニウム(10.0mg,0.042mmol),ピラゾール(82.0mg,1.2mmol)の混合物に,室温にて過酸化水素水(31%,1.44ml,14.4mmol)を攪拌しながら滴下して加えた。室温で5時間攪拌して反応を行った。亜硫酸ナトリウム水溶液を加えた後,有機溶媒で有機物を抽出し,水で洗浄した後,硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機溶媒を減圧下留去させ,収率を1H−NMRを用いて計算した結果,出発原料はすべて消失しており,85%の収率で3,4−エポキシシクロヘキサン−1−カルボン酸アリルが得られた。続いて減圧蒸留(5mmHg,135℃)により高純度のエポキシシクロヘキサン−1−カルボン酸アリルを単離した。
【0091】
実施例5
50mlのガラス製容器を用い,化合物(4)(665mg,4.0mmol),メチルトリオキソレニウム(5.0mg,0.021mmol),ピラゾール(29.0mg,0.42mmol)を酢酸エチル(2ml)に溶解させ,室温にて過酸化水素水(31%,0.50ml,5.0mmol)を攪拌しながら滴下して加えた。室温で6時間攪拌して反応を行った。亜硫酸ナトリウム水溶液を加えた後,有機溶媒で有機物を抽出し,水で洗浄した後,硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機溶媒を減圧下留去させ,収率を1H−NMRを用いて計算した結果,出発原料はすべて消失しており,86%の収率で4,5−エポキシシクロヘキサン−1−カルボン酸アリルが得られた。
【0092】
実施例6
50mlのガラス製容器を用い,化合物(4)(665mg,4.0mmol),メチルトリオキソレニウム(4.5mg,0.019mmol),ピリジン(33.5mg,0.42mmol)の混合物に,室温にて過酸化水素水(31%,0.45ml,4.5mmol)を攪拌しながら滴下して加えた。室温で5時間攪拌して反応を行った。亜硫酸ナトリウム水溶液を加えた後,有機溶媒で有機物を抽出し,水で洗浄した後,硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機溶媒を減圧下留去させ,収率を1H−NMRを用いて計算した結果,出発原料はすべて消失しており,88%の収率で4,5−エポキシシクロヘキサン−1−カルボン酸アリルが得られた。
【0093】
比較例1
攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下ロートを取り付けた内容量2lの四ッ口フラスコに化合物(1)400g、ベンゼン600g、90%ギ酸41g、40%リン酸2g及び塩化カルシウム2gを仕込み、内容物をかきまぜつつ温度を50〜60℃に調節しながら、滴下ロートより50質量%過酸化水素132gを30分間で滴下し、60℃で5時間反応させた。その後、GC法により分析した結果、4, 5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジアリルの収率は65%であった。
なお、そのときのGC法の分析条件は実施例1と同様であった。
なお、本明細書に記載の転化率及び収率は以下のように定義される:
【0094】
少なくとも1個以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物の転化率(%)=〔(反応した少なくとも1個以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物のmol数)/(反応に供給した少なくとも1個以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物のmol数)〕×100
【0095】
多官能エポキシ化合物の収率(%)=〔(少なくとも1個以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物の転化率)×((生成した多官能エポキシ化合物のmol数)/(反応した少なくとも1個以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物のモル数))×100)〕/100
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ基および2重結合を分子内に含む多官能エポキシ化合物が得られるようにポリオレフィン類をエポキシ化する方法に関する。特に、本発明はトリオレフィン類と過酸化水素水溶液を触媒であるレニウム化合物存在下にて反応させ、1つの2重結合を選択的にエポキシ化させる多官能エポキシ化合物の新規な製造法に関する。本発明により提供される多官能エポキシ化合物は、レジスト材料(特にソルダ−レジスト材料)の原料として、また農薬・医薬の中間体や可塑剤、接着剤、塗料樹脂といった各種ポリマーの原料として化学工業をはじめ、各種の産業分野で幅広く用いられる有用な物質である。
【背景技術】
【0002】
分子内に2個以上の2重結合を有する化合物(ポリオレフィン類)の1つの2重結合を選択的にエポキシ化させる技術は、低生産性(低反応性、低選択性)であったり、適用性がある種の構造体に制限されたりする場合が多い。
従来、ポリオレフィン類の選択的エポキシ化剤として過ギ酸や過酢酸等の有機過酸を使用する方法が知られているが (例えばChem.Ber.,1985,118,1267−1270 非特許文献1、欧州特許公開0033763 特許文献1)、酸化剤由来の酸が当量生成するため装置の腐食などの問題があるほか、酸に反応しやすい基質ではジオールが副成しやすい。
【0003】
ケトン触媒下におけるオキソンを酸化剤としたジオレフィンの選択的エポキシ化方法 (J.Org.Chem.,1998,63,2948−2953 非特許文献2)が知られているが、この反応では触媒のケトンが非常に多く必要(ジオレフィン類に対し20−30モル%)であるほか、反応中のオキソンの分解を抑制する為に溶液中のpHや反応温度等の反応条件を厳密にコントロールする必要があるといった問題点が挙げられる。
【0004】
一方、過酸化水素は、安価で腐食性がなく、反応後の副生物は皆無又は水であるために環境負荷が小さく、工業的に利用するには優れた酸化剤である。
【0005】
過酸化水素をエポキシ化剤とするジオレフィン類の選択的エポキシ化に関しては、(1) 式Q3XW4O24(式中、Qは70個までの炭素原子を含む第4級アンモニウムカチオンを表し、XはPまたはAsを表す)で示される触媒の存在下、過酸化水素によりジオレフィンをエポキシ化する方法 (特開平4−275281 特許文献2)、(2)塩化第4級アンモニウム、リン酸、タングステン化合物の存在下、過酸化水素によりメタクリル酸ユニット有するジオレフィンをエポキシ化する方法 (Tetrahedron,1992,48,5099−5110 非特許文献3)、(3)タングステン化合物および第4級ピリジニウム塩存在下、1, 5, 9-シクロドデカトリエン(CDT)をモノエポキシ化する方法(特開2000−26441 特許文献3)、(4)タングステンおよびモリブデンのポリオキソメタラート錯体の存在下、過酸化水素により大員環脂肪族化合物を選択的モノエポキシ化する方法 (特開2002−155066 特許文献4)があげられるが、(1)では過酸化水素の量がジオレフィン1当量に対して1当量未満であるために反応収率が非常に悪く (使用したジオレフィンに対して32〜48%)、分離・精製過程に時間、コストがかかり生産性に乏しい。(2)の方法はメタクリル酸ユニット有するジオレフィンに限定される。(3)の方法はトリオレフィン1当量に対して1当量未満であるために原料の転化率が非常に悪いほか、(4)の方法では、時間経過とともにモノエポキシ化選択率が大幅に低下するといった問題がある。また、特許文献2、非特許文献3、特許文献3及び特許文献4は、いずれも、少なくとも1つ以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物のエポキシ化については何ら開示していない。
【0006】
少なくとも1つ以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物の過酸化水素を用いた選択的エポキシ化の例としては(5)アルカリ金属、アルカリ土類金属或いはアンモニウムの水に可溶な塩、リン酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸等の酸性触媒及びギ酸の存在下、過酸化水素によりテトラヒドロフタル酸ジアリルを選択的にエポキシ化し、4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジアリルを得る方法(特公昭50−39659 特許文献5)が挙げられる。しかしながら、(5)の方法では、収率は65%程度しか得られず、満足できるものではなかった。
【0007】
一方、レニウム化合物を触媒に用いた過酸化水素をエポキシ化剤とするポリオレフィン類の選択的エポキシ化に関しては、(6)有機レニウムオキシドを触媒として過酸化水素によりエポキシ化する方法 (特開2001−25665 特許文献6、C.R.Acad.Sci,Series IIC Chem.,Vol.3,2000,10,793−801 非特許文献4、Tetrahedron,2005,61,1069−1075 非特許文献5 等)を挙げることができる。しかしながら、特許文献6、非特許文献4及び非特許文献5は、いずれも、少なくとも1つ以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物のエポキシ化については何ら開示していない。
【0008】
従って温和な条件下、簡便な操作で安全に、少なくとも1つ以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物から選択的に多官能エポキシ化合物を収率良く、かつ低コストで製造する方法の開発が強く要望されている。
【非特許文献1】Chem.Ber.,118,1267−1270(1985)
【非特許文献2】J.Org.Chem.,63,2948−2953(1998)
【非特許文献3】Tetrahedron,48,5099−5110(1992)
【非特許文献4】C.R.Acad.Sci.,Series IIC Chem.,Vol.3,10,793−801(2000)
【非特許文献5】Tetrahedron,,61,1069−1075(2005)
【特許文献1】欧州特許公開0033763号
【特許文献2】特開平4−275281号公報
【特許文献3】特開2000−26441号公報
【特許文献4】特開2002−155066号公報
【特許文献5】特公昭50−39659号公報
【特許文献6】特開2001−25665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、温和な条件下、ポリオレフィン類と過酸化水素水溶液の反応による安全で容易な多官能エポキシ化合物の新規製造法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究の結果、レニウム化合物の存在下、過酸化水素を用いて、少なくとも1個以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物中のシクロオレフィンの2重結合部位を選択的に酸化して、高収率で選択的に多官能エポキシ基含有化合物を生成することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の[1]〜[10]に示されるレニウム化合物の存在下、多官能エポキシ化合物の製造方法に関する。
【0012】
[1] レニウム化合物の存在下、過酸化水素を用いて、少なくとも1個以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物中のシクロオレフィンの2重結合部位を酸化して、エポキシ基含有化合物を製造することを特徴とする多官能エポキシ化合物の製造方法。
【0013】
[2] 前記シクロオレフィン構造が炭素6〜8員環であることを特徴とする、前記[1]に記載の方法。
【0014】
[3] 前記少なくとも1つ以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物が下記一般式(1)〜(10)から成る群から選ばれることを特徴とする、前記[1]又は[2]に記載の方法:
一般式(1):
【化1】
(式中、R1は水素又はメチル基を表し、R2は炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R3〜R10はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、aは0〜3の整数を表し、そしてbは0〜2の整数を表す。)
一般式(2):
【化2】
(式中、R11は水素又はメチル基を表し、R12は炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R13〜R20はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、cは0〜3の整数を表し、そしてdは0〜2の整数を表す。)
一般式(3):
【化3】
(式中、R21,R22はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R23,R24はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R25〜R32はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、e、gはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、そしてf、hはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。)
一般式(4):
【化4】
(式中、R33,R34はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R35,R36はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R37〜R44はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、i、kはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、そしてj、lはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。)
一般式(5):
【化5】
(式中、R45は水素又はメチル基を表し、R46〜R53はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)
一般式(6):
【化6】
(式中、R54は水素又はメチル基を表し、R55〜R62はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)
一般式(7):
【化7】
(式中、R63,R64はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R65,R66はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R67〜R73はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、i、kはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、そしてj、lはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。)
一般式(8):
【化8】
(式中、R74,R75はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R76,R77はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R78〜R83はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、i、kはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、そしてj、lはそれぞれ独立に0〜2を表す。)
一般式(9):
【化9】
(式中、R84は水素又はメチル基を表し、R85〜R91はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)
一般式(10):
【化10】
(式中、R92は水素又はメチル基を表し、R93〜R98はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)。
【0015】
[4] 前記少なくとも1つ以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物が下記一般式(11)又は下記一般式(12)で表される化合物であることを特徴とする、前記[1]又は[2]に記載の方法:
一般式(11):
【化11】
(式中、R99は水素又はメチル基を表し、R100〜R107はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、そしてvは0〜2の整数を表す。)
一般式(12):
【化12】
(式中、R108は水素又はメチル基を表し、R109〜R116はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、そしてwは0〜2の整数を表す。)。
【0016】
[5] 前記少なくとも1つ以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物が下記一般式(5)又は下記一般式(6)で表される化合物であることを特徴とする、前記[1]又は[2]に記載の方法:
一般式(5):
【化13】
(式中、R45は水素又はメチル基を表し、R46〜R53はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)
一般式(6):
【化14】
(式中、R54は水素又はメチル基を表し、R55〜R62はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)。
【0017】
[6] 前記少なくとも1つ以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物が下記一般式(13)又は下記一般式(14)で表される化合物であることを特徴とする、前記[1]又は[2]に記載の方法:
一般式(13):
【化15】
(式中、R117,R118はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R119〜R126はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)
一般式(14):
【化16】
(式中、R127,R128はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R129〜R136はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)。
【0018】
[7] 前記末端ビニルまたはビニリデン構造がアリルまたはメタリル構造であることを特徴とする、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
【0019】
[8] 前記レニウム化合物がメチルトリオキソレニウムであることを特徴とする、前記[1]〜[7]のいずれかに記載の方法。
【0020】
[9] 前記レニウム化合物に対して有機塩基性化合物を1〜30倍モル使用することを特徴とする、前記[1]〜[8]のいずれかに記載の方法。
【0021】
[10] 前記少なくとも1つ以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物のシクロオレフィン構造中に含まれる2重結合数に対して、過酸化水素を0.8〜10.0倍含有することを特徴とする、前記[1]〜[9]のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明の方法によれば、レジスト材料(特にソルダ−レジスト材料)の原料として、また農薬・医薬の中間体や可塑剤、接着剤、塗料樹脂といった各種ポリマーの原料として化学工業をはじめ、各種の産業分野で幅広く用いられる有用な物質である多官能エポキシ化合物を、対応するポリオレフィン類と過酸化水素水の反応から簡便な操作で安全に、高い収率で製造できることより、工業的に大きな効果をもたらす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明は、レニウム化合物の存在下、過酸化水素を用いて、少なくとも1個以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物中のシクロオレフィンの2重結合部位を酸化して、エポキシ基含有化合物を製造することを特徴とする多官能エポキシ化合物の製造方法である。
【0024】
まず、本発明の製造方法の原料成分である、少なくとも1個以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物について説明する。
本発明の製造方法の原料成分である、少なくとも1個以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物は、同一分子内に1個以上のシクロオレフィン構造と1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物であれば、特に制限はない。
【0025】
シクロオレフィン構造の中で、合成の容易さ、或いは入手の容易さを考慮すると、好ましいシクロオレフィン構造としては、炭素6〜8員環構造を有するシクロオレフィン構造である。
【0026】
少なくとも1個以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物の中で、好ましいものとしては以下の一般式(1)〜一般式(10)をあげることができる:
【0027】
一般式(1):
【化17】
(式中、R1は水素又はメチル基を表し、R2は炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R3〜R10はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、aは0〜3の整数を表し、そしてbは0〜2の整数を表す。)
一般式(2):
【化18】
(式中、R11は水素又はメチル基を表し、R12は炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R13〜R20はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、cは0〜3の整数を表し、そしてdは0〜2の整数を表す。)
一般式(3):
【化19】
(式中、R21,R22はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R23,R24はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R25〜R32はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、e、gはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、そしてf、hはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。)
一般式(4):
【化20】
(式中、R33,R34はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R35,R36はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R37〜R44はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、i、kはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、そしてj、lはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。)
一般式(5):
【化21】
(式中、R45は水素又はメチル基を表し、R46〜R53はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)
一般式(6):
【化22】
(式中、R54は水素又はメチル基を表し、R55〜R62はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)
一般式(7):
【化23】
(式中、R63,R64はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R65,R66はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R67〜R73はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、m、pはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、n、qはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。)
一般式(8):
【化24】
(式中、R74,R75はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R76,R77はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R78〜R83はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、r、tはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、そしてs、uはそれぞれ独立に0〜2を表す。)
一般式(9):
【化25】
(式中、R84は水素又はメチル基を表し、R85〜R91はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)
一般式(10):
【化26】
(式中、R92は水素又はメチル基を表し、R93〜R98はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)。
【0028】
まず、一般式(1)で表される化合物について説明する。
一般式(1):
【化27】
(式中、R1は水素又はメチル基を表し、R2は炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R3〜R10はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、aは0〜3の整数を表し、そしてbは0〜2の整数を表す。)。
【0029】
一般式(1)中、R1は水素又はメチル基を表す。R2は炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、例えば、以下のような残基を挙げることができる。
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【化38】
【0030】
一般式(1)中、R3〜R10はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。
また、aは、0〜3の整数を表すが、好ましくは、0又は1であり、更に好ましくは、0である。bは、0〜2の整数であるが、好ましくは、b=1である。
R3〜R10はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。
【0031】
一般式(1)で表される化合物で、式中のa=0場合には、一般式(11)で表される化合物となる:
一般式(11):
【化39】
(式中、R99は水素又はメチル基を表し、R100〜R107はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。また、vは0〜2の整数を表す。)。
【0032】
一般式(11)中、R99は水素又はメチル基を表す。また、R100〜R107はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。また、vは、0〜2の整数であるが、好ましくは、v=1である。
【0033】
一般式(1)で表される化合物の具体例としては、例えば、以下の構造を有する化合物を挙げることができる。
【化40】
【化41】
【化42】
【化43】
【化44】
【化45】
【化46】
【化47】
【化48】
【化49】
【化50】
【化51】
【0034】
次に、一般式(2)で表される化合物について説明する:
一般式(2):
【化52】
(式中、R11は水素又はメチル基を表し、R12は炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R13〜R20はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、cは0〜3の整数を表し、そしてdは0〜2の整数を表す。)。
【0035】
一般式(2)中、R11は水素又はメチル基を表す。R12は炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、例えば、以下のような残基を挙げることができる。
【化53】
【化54】
【化55】
【化56】
【化57】
【化58】
【化59】
【化60】
【化61】
【化62】
【化63】
【0036】
一般式(2)中、R13〜R20はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。
また、cは、0〜3の整数を表すが、好ましくは、0又は1であり、更に好ましくは、0である。dは、0〜2の整数であるが、好ましくは、d=1である。
R13〜R20はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。
一般式(2)で表される化合物で、式中のc=0には、一般式(12)で表される化合物となる:
一般式(12):
【化64】
(式中、R108は水素又はメチル基を表し、R109〜R116はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、wは0〜2の整数を表す。)。
【0037】
一般式(12)中、R108は水素又はメチル基を表す。また、R109〜R116はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、wは、0〜2の整数であるが、好ましくは、w=1である。
【0038】
一般式(2)で表される化合物の具体例としては、例えば、以下の構造を有する化合物を挙げることができる。
【化65】
【化66】
【化67】
【化68】
【化69】
【化70】
【化71】
【化72】
【化73】
【化74】
【0039】
次に、一般式(3)で表される化合物について説明する:
一般式(3):
【化75】
(式中、R21,R22はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表す。R23,R24はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R25〜R32はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、e、gはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、そしてf、hはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。)。
【0040】
一般式(3)中、R21,R22はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表す。R23,R24はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、例えば、以下のような残基を挙げることができる。
【化76】
【化77】
【化78】
【化79】
【化80】
【化81】
【化82】
【化83】
【化84】
【化85】
【化86】
【0041】
一般式(3)R25〜R32はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。
また、e、gはそれぞれ独立に0〜3の整数を表すが、好ましくは、それぞれ独立に0又は1である。f、hはそれぞれ独立に0〜2の整数を表すが、好ましくは、f,hともに1である。
一般式(3)で表される化合物で、式中のe=g=0かつf=h=1場合には、一般式(13)で表される化合物となる:
一般式(13):
【化87】
(式中、R117,R118はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R119〜R126はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)。
【0042】
一般式(13)中、R117,R118はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表す。また、R119〜R126はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。
【0043】
一般式(3)で表される化合物の具体例としては、例えば、以下の構造を有する化合物を挙げることができる。
【化88】
【化89】
【化90】
【化91】
【化92】
【化93】
【化94】
【化95】
【化96】
【0044】
次に、一般式(4)で表される化合物について説明する:
一般式(4):
【化97】
(式中、R33,R34はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R35,R36はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R37〜R44はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、i、kはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、そしてj、lはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。)。
【0045】
一般式(4)中、R33,R34はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表す。R35,R36はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、例えば、以下のような残基を挙げることができる。
【化98】
【化99】
【化100】
【化101】
【化102】
【化103】
【化104】
【化105】
【化106】
【化107】
【化108】
【0046】
一般式(4)中、R37〜R44はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。また、i、kはそれぞれ独立に0〜3の整数を表すが、好ましくは、それぞれ独立に0又は1である。j、lはそれぞれ独立に0〜2の整数を表すが、好ましくは、j,lともに1である。
【0047】
一般式(4)で表される化合物で、式中のi=k=0かつj=l=1場合には、一般式(14)で表される化合物となる:
一般式(14):
【化109】
(式中、R127,R128はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R129〜R136はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)
【0048】
一般式(14)中、R127,R128はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表す。また、R129〜R136はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。
【0049】
一般式(4)で表される化合物の具体例としては、例えば、以下の構造を有する化合物を挙げることができる。
【化110】
【化111】
【化112】
【化113】
【化114】
【化115】
【化116】
【化117】
【0050】
次に、一般式(5)で表される化合物について説明する:
一般式(5):
【化118】
(式中、R45は水素又はメチル基を表し、R46〜R53はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)。
【0051】
一般式(5)中、R45は水素又はメチル基を表す。また、R46〜R53はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。
【0052】
一般式(5)で表される化合物の具体例としては、例えば、以下の構造を有する化合物を挙げることができる。
【化119】
【化120】
【化121】
【0053】
次に、一般式(6)で表される化合物について説明する:
一般式(6):
【化122】
(式中、R54は水素又はメチル基を表し、R55〜R62はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)。
【0054】
一般式(6)中、R54は水素又はメチル基を表す。R55〜R62はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。
【0055】
一般式(6)で表される化合物の具体例としては、例えば、以下の構造を有する化合物を挙げることができる。
【化123】
【化124】
【化125】
【0056】
次に、一般式(7)で表される化合物について説明する:
一般式(7):
【化126】
(式中、R63,R64はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R65,R66はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R67〜R73はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、m、pはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、そしてn、qはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。)。
【0057】
一般式(7)中、R63,R64はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表す。R65,R66はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、例えば、以下のような残基を挙げることができる。
【化127】
【化128】
【化129】
【化130】
【化131】
【化132】
【化133】
【化134】
【化135】
【化136】
【化137】
【0058】
一般式(7)中、R67〜R73はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。また、m、pはそれぞれ独立に0〜3の整数を表すが、好ましくは、それぞれ独立に0又は1である。n、qはそれぞれ独立に0〜2の整数を表すが、好ましくは、n,qともに1である。
【0059】
一般式(7)で表される化合物の具体例としては、例えば、以下の構造を有する化合物を挙げることができる。
【化138】
【化139】
【化140】
【0060】
次に、一般式(8)で表される化合物について説明する:
一般式(8):
【化141】
(式中、R74,R75はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R76,R77はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R78〜R83はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、r、tはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、そしてs、uはそれぞれ独立に0〜2を表す。)。
【0061】
一般式(8)中、R74,R75はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表す。R76,R77はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、例えば、以下のような残基を挙げることができる。
【化142】
【化143】
【化144】
【化145】
【化146】
【化147】
【化148】
【化149】
【化150】
【化151】
【化152】
【0062】
一般式(8)中、R78〜R83はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。また、r、tはそれぞれ独立に0〜3の整数を表すが、好ましくは、それぞれ独立に0又は1である。s、uはそれぞれ独立に0〜2の整数を表すが、好ましくは、s,uともに1である。
【0063】
一般式(8)で表される化合物の具体例としては、例えば、以下の構造を有する化合物を挙げることができる。
【化153】
【化154】
【化155】
【0064】
次に、一般式(9)で表される化合物について説明する:
一般式(9):
【化156】
(式中、R84は水素又はメチル基を表し、R85〜R91はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)。
【0065】
一般式(9)中、R84は水素又はメチル基を表す。また、R85〜R91はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。
一般式(9)で表される化合物の具体例としては、例えば、以下の構造を有する化合物を挙げることができる。
【化157】
【化158】
【化159】
【化160】
【化161】
【0066】
次に、一般式(10)で表される化合物について説明する:
一般式(10):
【化162】
(式中、R92は水素又はメチル基を表し、R93〜R98はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)。
【0067】
一般式(10)中、R92は水素又はメチル基を表す。また、R93〜R98はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。
【0068】
一般式(10)で表される化合物の具体例としては、例えば、以下の構造を有する化合物を挙げることができる。
【化163】
【化164】
【化165】
【0069】
次に、本発明の多官能エポキシ化合物の製造方法の必須成分である過酸化水素について説明する。
本発明の製造法において用いられる過酸化水素水溶液中の過酸化水素の濃度に、特に制限はなく、濃度に応じて、少なくとも1個以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物オレフィン化合物への反応は生起するが、一般的には1〜80%、好ましくは20〜80%の範囲から選ばれる。
【0070】
過酸化水素水溶液の使用量に、特に制限はなく、使用量に応じて、少なくとも1個以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物への反応は生起するが、一般的には、少なくとも1個以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物のシクロオレフィン構造中に含まれる2重結合数に対して、過酸化水素を0.8〜10.0倍含有することが好ましく、さらに好ましくは1.0〜3.0倍の範囲から選ばれる。
【0071】
レニウム化合物としては、例えば、メチルトリオキソレニウム、エチルトリオキソレニウム、n−プロピルトリオキソレニウム、シクロヘキシルトリオキソレニウム、n−ブチルトリオキソレニウム、ベンジルトリオキソレニウム等が挙げられるが、メチルトリオキソレニウムが好ましい。これらレニウム化合物は単独で使用しても、2種以上を混合使用してもよい。その使用量は、少なくとも1個以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物に対して0.0001〜20モル%の範囲で選ばれることが好ましく、さらに好ましくは0.01〜10モル%の範囲である。
【0072】
なお、有機塩基性化合物を、助触媒として併用することが可能でありかつ好ましい。
【0073】
有機塩基性化合物としては、ピリジン、ピラジン、ピラゾール、ピリミジン、ピペリジン、2−シアノピリジン、4−シアノピリジン、2−プロピルピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、2,2’−ビピリジン、2−アミノピリジン、2−(メチルアミノ)ピリジン、ピロリジン、o−メトキシピリジン、p−メトキシピリジン、アニリン、8−ヒドロキシキノリン、キヌクリジン、4,4’−ジメチルアミノピリジン、o−フェナントロリン、4−ピペリジノピリジン等の窒素含有有機塩基性化合物を代表例としてあげることができる。
【0074】
この有機塩基性化合物の使用量としては、特に制限はないが、レニウム化合物に対して、0.1〜100倍モル用いることが好ましく、さらに好ましくは、1〜30倍モルである。
【0075】
本製造方法における反応温度は、通常、0〜100℃の範囲で行われるが、0〜50℃の範囲であることが好ましく、更に好ましくは、3〜40℃の範囲である。
【0076】
一般式(1)〜一般式(10)で表されている化合物から得られる多官能エポキシ化合物としては、それぞれ、下記一般式(15)〜下記一般式(24)で表される化合物である:
一般式(15):
【化166】
(式中、R1は水素又はメチル基を表し、R2は炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R3〜R10はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、aは0〜3の整数を表し、そしてbは0〜2の整数を表す。)
一般式(16):
【化167】
(式中、R11は水素又はメチル基を表し、R12は炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R13〜R20はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、cは0〜3の整数を表し、そしてdは0〜2の整数を表す。)
一般式(17):
【化168】
(式中、R21,R22はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R23,R24はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R25〜R32はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、e、gはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、そしてf、hはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。)
一般式(18):
【化169】
(式中、R33,R34はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R35,R36はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R37〜R44はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、i、kはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、そしてj、lはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。)
一般式(19):
【化170】
(式中、R45は水素又はメチル基を表し、R46〜R53はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)
一般式(20):
【化171】
(式中、R54は水素又はメチル基を表し、R55〜R62はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)
一般式(21):
【化172】
(式中、R63,R64はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R65,R66はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R67〜R73はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、m、pはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、そしてn、qはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。)
一般式(22):
【化173】
(式中、R74,R75はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R76,R77はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R78〜R83はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、r、tはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、そしてs、uはそれぞれ独立に0〜2を表す。)
一般式(23):
【化174】
(式中、R84は水素又はメチル基を表し、R85〜R91はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)
一般式(24):
【化175】
(式中、R92は水素又はメチル基を表し、R93〜R98はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)
【0077】
かくして生成した目的の多官能エポキシ化合物は、反応終了後の混合液を濃縮後、蒸留、昇華等の通常の方法によって取り出すことができる。
【実施例】
【0078】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により制限されるものではない。
実施例1
還流冷却器付きの50ml三ッ口丸底フラスコに、下記化合物(1)2.530g(10.1mmol)、メチルトリオキソレニウム24.9mg(0.1mmol)、ピリミジン80.3mg(1.0mmol)及び塩化メチレン5mgを入れた。その後、30質量%過酸化水素水を1.247g(11.0mmol)添加し、スターリングバーを入れ、マグネチックスタラーを用いて、室温で6時間攪拌を継続した。その後、ガスクロマトグラフ(以下、GCと記す。)法で分析した結果、化合物(1)の転化率は85%であり、4, 5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジアリルの収率は83%であった。
【0079】
化合物(1):
【化176】
また、4, 5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジアリルには、下記化合物(2)及び下記化合物(3)に2種の異性体が存在するが、上記反応では、4, 5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジアリルのうちの68%が化合物(2)であり、32%が化合物(3)であることが、ガスクロマトグラフ(以下、GCと記す。)法により確認された。
【0080】
化合物(2):
【化177】
【0081】
化合物(3):
【化178】
なお、そのときのGC法の分析条件は以下の通りである。
使用カラム:J&W サイエンティフィック社製 HP−1
(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)
インジェクション温度:300℃、
検出器温度:300℃
カラムの温度条件:スタート温度130℃で2分間ホールドし、その後20℃/分の昇温速度で280℃まで昇温し、その後、6.5分間280℃でホールド
【0082】
実施例2
化合物(1)2.530g(10.1mmol)の代わりに化合物(4)1.674g(10.1mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、化合物(4)の転化率は、99.5%であり、3,4−エポキシシクロヘキサン−1−カルボン酸アリルの収率は80%であった。
【0083】
化合物(4):
【化179】
また、3,4−エポキシシクロヘキサン−1−カルボン酸アリルには、化合物(5)及び化合物(6)に2種の異性体が存在するが、上記反応では、3,4−エポキシシクロヘキサン−1−カルボン酸アリルのうちの61%が化合物(5)であり、39%が化合物(6)であることが、GC法により確認された。
【0084】
化合物(5):
【化180】
【0085】
化合物(6):
【化181】
なお、そのときのGC法の分析条件は実施例1と同様であった。
【0086】
実施例3
化合物(1)2.530g(10.1mmol)の代わりに化合物(7)1.917g(10.0mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、化合物(7)の転化率は、99.5%であり、N−アリル−4, 5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボキシイミドの収率は78%であった。
【0087】
化合物(7):
【化182】
また、N−アリル−4, 5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボキシイミドには、化合物(8)及び化合物(9)に2種の異性体が存在するが、上記反応では、N−アリル−4, 5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボキシイミドのうちの15%が化合物(8)であり、85%が化合物(9)であることが、GC法により確認された。
【0088】
化合物(8):
【化183】
【0089】
化合物(9):
【化184】
なお、そのときのGC法の分析条件は実施例1と同様であった。
【0090】
実施例4
50mlのガラス製容器を用い,化合物(4)(2.0g,12.0mmol),メチルトリオキソレニウム(10.0mg,0.042mmol),ピラゾール(82.0mg,1.2mmol)の混合物に,室温にて過酸化水素水(31%,1.44ml,14.4mmol)を攪拌しながら滴下して加えた。室温で5時間攪拌して反応を行った。亜硫酸ナトリウム水溶液を加えた後,有機溶媒で有機物を抽出し,水で洗浄した後,硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機溶媒を減圧下留去させ,収率を1H−NMRを用いて計算した結果,出発原料はすべて消失しており,85%の収率で3,4−エポキシシクロヘキサン−1−カルボン酸アリルが得られた。続いて減圧蒸留(5mmHg,135℃)により高純度のエポキシシクロヘキサン−1−カルボン酸アリルを単離した。
【0091】
実施例5
50mlのガラス製容器を用い,化合物(4)(665mg,4.0mmol),メチルトリオキソレニウム(5.0mg,0.021mmol),ピラゾール(29.0mg,0.42mmol)を酢酸エチル(2ml)に溶解させ,室温にて過酸化水素水(31%,0.50ml,5.0mmol)を攪拌しながら滴下して加えた。室温で6時間攪拌して反応を行った。亜硫酸ナトリウム水溶液を加えた後,有機溶媒で有機物を抽出し,水で洗浄した後,硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機溶媒を減圧下留去させ,収率を1H−NMRを用いて計算した結果,出発原料はすべて消失しており,86%の収率で4,5−エポキシシクロヘキサン−1−カルボン酸アリルが得られた。
【0092】
実施例6
50mlのガラス製容器を用い,化合物(4)(665mg,4.0mmol),メチルトリオキソレニウム(4.5mg,0.019mmol),ピリジン(33.5mg,0.42mmol)の混合物に,室温にて過酸化水素水(31%,0.45ml,4.5mmol)を攪拌しながら滴下して加えた。室温で5時間攪拌して反応を行った。亜硫酸ナトリウム水溶液を加えた後,有機溶媒で有機物を抽出し,水で洗浄した後,硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機溶媒を減圧下留去させ,収率を1H−NMRを用いて計算した結果,出発原料はすべて消失しており,88%の収率で4,5−エポキシシクロヘキサン−1−カルボン酸アリルが得られた。
【0093】
比較例1
攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下ロートを取り付けた内容量2lの四ッ口フラスコに化合物(1)400g、ベンゼン600g、90%ギ酸41g、40%リン酸2g及び塩化カルシウム2gを仕込み、内容物をかきまぜつつ温度を50〜60℃に調節しながら、滴下ロートより50質量%過酸化水素132gを30分間で滴下し、60℃で5時間反応させた。その後、GC法により分析した結果、4, 5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジアリルの収率は65%であった。
なお、そのときのGC法の分析条件は実施例1と同様であった。
なお、本明細書に記載の転化率及び収率は以下のように定義される:
【0094】
少なくとも1個以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物の転化率(%)=〔(反応した少なくとも1個以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物のmol数)/(反応に供給した少なくとも1個以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物のmol数)〕×100
【0095】
多官能エポキシ化合物の収率(%)=〔(少なくとも1個以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物の転化率)×((生成した多官能エポキシ化合物のmol数)/(反応した少なくとも1個以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物のモル数))×100)〕/100
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レニウム化合物の存在下、過酸化水素を用いて、少なくとも1個以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物中のシクロオレフィンの2重結合部位を酸化して、エポキシ基含有化合物を製造することを特徴とする多官能エポキシ化合物の製造方法。
【請求項2】
前記シクロオレフィン構造が炭素6〜8員環であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つ以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物が、下記一般式(1)〜(10):
一般式(1):
【化1】
(式中、R1は水素又はメチル基を表し、R2は炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R3〜R10はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、aは0〜3の整数を表し、そしてbは0〜2の整数を表す。)
一般式(2):
【化2】
(式中、R11は水素又はメチル基を表し、R12は炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R13〜R20はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、cは0〜3の整数を表し、そしてdは0〜2の整数を表す。)
一般式(3):
【化3】
(式中、R21,R22はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R23,R24はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R25〜R32はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、e、gはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、そしてf,hはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。)
一般式(4):
【化4】
(式中、R33,R34はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R35,R36はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R37〜R44はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、i、kはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、そしてj,lはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。)
一般式(5):
【化5】
(式中、R45は水素又はメチル基を表し、R46〜R53はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)
一般式(6):
【化6】
(式中、R54は水素又はメチル基を表し、R55〜R62はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)
一般式(7):
【化7】
(式中、R63,R64はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R65,R66はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R67〜R73はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、m、pはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、そしてn、qはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。)
一般式(8):
【化8】
(式中、R74,R75はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R76,R77はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R78〜R83はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、r、tはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、そしてs、uはそれぞれ独立に0〜2を表す。)
一般式(9):
【化9】
(式中、R84は水素又はメチル基を表し、R85〜R91はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)
一般式(10):
【化10】
(式中、R92は水素又はメチル基を表し、R93〜R98はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)
から成る群から選ばれることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つ以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物が下記一般式(11)又は一般式(12):
一般式(11)
【化11】
(式中、R99は水素又はメチル基を表し、R100〜R107はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、そしてvは0〜2の整数を表す。)
一般式(12):
【化12】
(式中、R108は水素又はメチル基を表し、R109〜R116はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、そしてwは0〜2の整数を表す。)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つ以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物が下記一般式(5)又は下記一般式(6):
一般式(5):
【化13】
(式中、R45は水素又はメチル基を表し、R46〜R53はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)
一般式(6):
【化14】
(式中、R54は水素又はメチル基を表し、R55〜R62はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)
で表される化合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つ以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物が下記一般式(13)又は下記一般式(14):
一般式(13):
【化15】
(式中、R117,R118はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R119〜R126はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)
一般式(14):
【化16】
(式中、R127,R128はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R129〜R136はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)
で表される化合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記末端ビニルまたはビニリデン構造がアリルまたはメタリル構造であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記レニウム化合物がメチルトリオキソレニウムであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記レニウム化合物に対して有機塩基性化合物を1〜30倍モル使用することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つ以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物のシクロオレフィン構造中に含まれる2重結合数に対して、過酸化水素を0.8〜10.0倍含有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項1】
レニウム化合物の存在下、過酸化水素を用いて、少なくとも1個以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物中のシクロオレフィンの2重結合部位を酸化して、エポキシ基含有化合物を製造することを特徴とする多官能エポキシ化合物の製造方法。
【請求項2】
前記シクロオレフィン構造が炭素6〜8員環であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つ以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物が、下記一般式(1)〜(10):
一般式(1):
【化1】
(式中、R1は水素又はメチル基を表し、R2は炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R3〜R10はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、aは0〜3の整数を表し、そしてbは0〜2の整数を表す。)
一般式(2):
【化2】
(式中、R11は水素又はメチル基を表し、R12は炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R13〜R20はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、cは0〜3の整数を表し、そしてdは0〜2の整数を表す。)
一般式(3):
【化3】
(式中、R21,R22はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R23,R24はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R25〜R32はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、e、gはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、そしてf,hはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。)
一般式(4):
【化4】
(式中、R33,R34はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R35,R36はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R37〜R44はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、i、kはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、そしてj,lはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。)
一般式(5):
【化5】
(式中、R45は水素又はメチル基を表し、R46〜R53はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)
一般式(6):
【化6】
(式中、R54は水素又はメチル基を表し、R55〜R62はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)
一般式(7):
【化7】
(式中、R63,R64はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R65,R66はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R67〜R73はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、m、pはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、そしてn、qはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。)
一般式(8):
【化8】
(式中、R74,R75はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R76,R77はそれぞれ独立に炭素数2〜8から選ばれる2価の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素残基を表し、R78〜R83はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、r、tはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、そしてs、uはそれぞれ独立に0〜2を表す。)
一般式(9):
【化9】
(式中、R84は水素又はメチル基を表し、R85〜R91はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)
一般式(10):
【化10】
(式中、R92は水素又はメチル基を表し、R93〜R98はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)
から成る群から選ばれることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つ以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物が下記一般式(11)又は一般式(12):
一般式(11)
【化11】
(式中、R99は水素又はメチル基を表し、R100〜R107はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、そしてvは0〜2の整数を表す。)
一般式(12):
【化12】
(式中、R108は水素又はメチル基を表し、R109〜R116はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表し、そしてwは0〜2の整数を表す。)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つ以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物が下記一般式(5)又は下記一般式(6):
一般式(5):
【化13】
(式中、R45は水素又はメチル基を表し、R46〜R53はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)
一般式(6):
【化14】
(式中、R54は水素又はメチル基を表し、R55〜R62はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)
で表される化合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つ以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物が下記一般式(13)又は下記一般式(14):
一般式(13):
【化15】
(式中、R117,R118はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R119〜R126はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)
一般式(14):
【化16】
(式中、R127,R128はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、R129〜R136はそれぞれ独立に水素、メチル基、エチル基または塩素から選ばれる原子団を表す。)
で表される化合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記末端ビニルまたはビニリデン構造がアリルまたはメタリル構造であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記レニウム化合物がメチルトリオキソレニウムであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記レニウム化合物に対して有機塩基性化合物を1〜30倍モル使用することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つ以上のシクロオレフィン構造と少なくとも1個以上の末端ビニルまたはビニリデン構造を有する化合物のシクロオレフィン構造中に含まれる2重結合数に対して、過酸化水素を0.8〜10.0倍含有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【公開番号】特開2008−106016(P2008−106016A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−292034(P2006−292034)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成18年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「有害化学物質リスク削減基盤技術研究開発(非フェノール系樹脂原料を用いたレジスト材料の開発)」に係る委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成18年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「有害化学物質リスク削減基盤技術研究開発(非フェノール系樹脂原料を用いたレジスト材料の開発)」に係る委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]