説明

ポリオレフィン接着剤用ポリオール組成物およびその用途

【課題】ポリオレフィン系樹脂との接着性が良好な接着剤を与える新規なポリオール組成物およびこのポリオール組成物の用途を提供すること。
【解決手段】(A)分子内に1,2結合単位50モル%以上を有する常温で液状の水酸基末端共役ジエンポリマーと、(B)分子内に1,4結合単位50モル%超を有する常温で液状の水酸基末端共役ジエンポリマーとからなる組み合わせを含むポリオレフィン接着剤用ポリオール組成物、並びにこのポリオール組成物とポリイソシアネート系硬化剤とを含むポリオレフィン用接着剤、ポリオレフィン用シーリング材およびポリオレフィン用塗料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン接着剤用ポリオール組成物、並びにこのポリオール組成物を用いた、ポリオレフィン用接着剤、ポリオレフィン用シーリング材およびポリオレフィン用塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車分野、家電分野、包装分野、建材分野を始めとするあらゆる分野で、ポリオレフィン系材料が使用されている。ポリオレフィン系材料の主成分であるポリオレフィン系樹脂は一般の接着剤では接着することができないため、ポリオレフィン系樹脂用の特殊な接着剤の開発が盛んに検討されている。しかし、未だに充分な接着性能を有する接着剤が得られず、ポリオレフィン系材料を接着する場合、その表面をプライマーや電子線などで処理することにより、接着性能を向上させることが行われている。
一方、主として1,2結合単位を有する水酸基末端ポリブタジエン、主として1,4結合単位を有する水酸基末端ポリブタジエンおよびそれらの水添物を用いたポリオレフィン用接着剤について多数の検討がなされている。しかし、これらの水酸基末端ポリブタジエンを混合して用いた接着剤は少ない。
例えば特許文献1には、主として1,4結合で重合された常温で固体のポリブタジエングリコールの水添物に、主として1,2結合で重合された常温で液状のポリブタジエングリコールの水添物を併用した、低温安定性が改善された硬化剤組成物が開示されている。しかしながら、上記常温で固体の水添物は、硬化後の凝集力が弱く、また接着界面の濡れ性が低いことから、充分な接着強度を得ることができない。また、特許文献1の実施例には接着のクリープ特性が示されているが、低温特性を改良するために、上記常温で液体の水添物を添加したことにより、クリープ特性が低下する傾向が示されている。
特許文献2〜6には、1,2結合単位と1,4結合単位を種々の割合で含む化合物が、ポリオレフィン用接着剤あるいは加硫ゴム用接着剤として開示されている。しかしながら、特許文献2〜6いずれにおいても、1,2結合単位と1,4結合単位の割合は、1本のポリマー鎖中にランダムに含まれる結合単位の割合であり、1,2結合単位を有するジエンポリマーと1,4結合単位を有するジエンポリマーとの混合物ではなく、これらの実施例においてもこのような混合物は示されていない。また、熱可塑性ポリウレタンやクロロプレンゴムなど、上記ジエンポリマー以外の化合物を必須成分としている。さらに、特許文献2〜6において用いられている、水添化合物はいずれも常温で固体の化合物である。このような点で、本発明は、特許文献2〜6に開示されている技術とは異なる。
【0003】
【特許文献1】特開平06−158015号公報
【特許文献2】特開昭54−127928号公報
【特許文献3】特開昭58−196227号公報
【特許文献4】特開平03−170580号公報
【特許文献5】特開平03−247684号公報
【特許文献6】特開平01−108286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、ポリオレフィン系樹脂との接着性が良好な接着剤を与える新規なポリオール組成物およびこのポリオール組成物の用途を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、特定の液状共役ジエンポリマーの組み合わせを含むポリオール組成物により、上記目的が達成されることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち本発明は、以下のポリオレフィン接着剤用ポリオール組成物、並びにこのポリオール組成物を用いた、ポリオレフィン用接着剤、ポリオレフィン用シーリング材およびポリオレフィン用塗料を提供するものである。
1. (A)分子内に1,2結合単位50モル%以上を有する常温で液状の水酸基末端共役ジエンポリマーと、(B)分子内に1,4結合単位50モル%超を有する常温で液状の水酸基末端共役ジエンポリマーとからなる組み合わせを含むことを特徴とするポリオレフィン接着剤用ポリオール組成物。
2. (A)成分および(B)成分の水酸基末端共役ジエンポリマーのうちの少なくとも一方が、水素化された常温で液状のポリオールである上記1に記載のポリオレフィン接着剤用ポリオール組成物。
3. (A)成分および(B)成分の水酸基末端共役ジエンポリマーのうちの少なくとも一方が、水酸基末端ポリブタジエンまたは水酸基末端ポリイソプレンである上記1または2に記載のポリオレフィン接着剤用ポリオール組成物。
4. 上記1〜3のいずれかに記載のポリオール組成物と、ポリイソシアネート系硬化剤とを含むポリオレフィン用接着剤。
5. 上記1〜3のいずれかに記載のポリオール組成物と、ポリイソシアネート系硬化剤とを含むポリオレフィン用シーリング材。
6. 上記1〜3のいずれかに記載のポリオール組成物と、ポリイソシアネート系硬化剤とを含むポリオレフィン用塗料。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ポリオレフィン系樹脂との接着性を著しく向上させ得るポリオレフィン接着剤用ポリオール組成物を得ることができ、このポリオール組成物とポリイソシアネート系硬化剤との組み合わせを含む、接着剤、シーリング材、塗料および粘着剤などはポリオレフィン系樹脂との接着性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のポリオレフィン接着剤用ポリオール組成物(以下、単に「ポリオール組成物」と称することもある。)は、(A)分子内に1,2結合単位50モル%以上を有する常温で液状の水酸基末端共役ジエンポリマー(以下、「1,2−THPCD」と略記することもある。)と、(B)分子内に1,4結合単位50モル%超を有する常温で液状の水酸基末端共役ジエンポリマー(以下、「1,4−THPCD」と略記することもある。)とからなる組み合わせを含む。ここで、常温とは25℃程度をいう。
本発明のポリオール組成物において、1,2−THPCDおよび1,4−THPCDは、常温で液状であることを要する。これらのうちのいずれか一方あるいは両方が常温で固体であると、本発明のポリオール組成物を配合成分とした接着剤の、ポリオレフィン系樹脂に対する接着強度が著しく低下する。
【0008】
(A)成分の1,2−THPCDにおいて、分子内の1,2結合単位の含有割合は50モル%以上であるが、ゴム弾性および接着強度などの観点から、好ましくは55〜95モル%、特に好ましくは55〜75モル%である。
また、(B)成分の1,4−THPCDにおいて、分子内の1,4結合単位の含有割合は50モル%以上であるが、ポリオレフィン系樹脂との接着性および水添化合物の常温液状性の観点から、好ましくは60〜95モル%、特に好ましくは70〜90モル%である。
【0009】
本発明のポリオール組成物において、1,2−THPCDと1,4−THPCDの混合割合は、質量比で、通常99:1〜1:99程度、好ましくは90:10〜10:90、特に好ましくは80:20〜20:80である。被着体の種類によって適切な混合割合は異なるが、1,2−THPCDと1,4−THPCDの割合が適度のものであると、本発明のポリオール組成物の硬化物中の、1,2−THPCDおよび1,4−THPCDのブロック構造単位の割合が適度のものとなるため、充分な接着性を得ることができる。
【0010】
本発明のポリオール組成物において、1,2−THPCDおよび1,4−THPCDのどちらか一方、あるいは両方が水素化されてなる水添化合物を用いることができる。水添化合物は未水添化合物に比べてオレフィン性が高いので、水添化合物を用いるとポリオレフィン系樹脂との濡れ性が向上し、接着性が優れる。特に、水酸基末端ポリイソプレンの水添化合物は、結晶性が低く、常温で液体となり易いので、好適である。さらに、水添化合物は耐熱性、耐候性、電気特性などが優れる。一方、水添化合物の製造には高圧での水添反応を行う必要があり、製造方法が煩雑であって高価であることから、経済性の点からは未水添化合物を用いることが好ましい。
本発明のポリオール組成物においては、1,2−THPCDおよび1,4−THPCDのうちの少なくとも一方が、水酸基末端ポリブタジエンまたは水酸基末端ポリイソプレンであることが好ましく、特に水酸基末端ポリブタジエンが好ましい。また、ブタジエン−ポリイソプレン共重合体や、水酸基末端共役ジエンポリマーの混合物を用いることもできる。水添化合物の場合、ポリイソプレンが、結晶性が低く、常温で液体となり易いので、好ましい。
【0011】
本発明のポリオール組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、物性改良や粘度の低下、コストダウン、その他の目的のために、1,2−THPCDおよび1,4−THPCD以外の他のポリオールを配合することができる。他のポリオールとしては特に制限はないが、1,2−THPCDおよび1,4−THPCDとの相溶性が良好であることが好ましい。他のポリオールとしては、例えばポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオールなどを用いることができる。本発明のポリオール組成物において、上記の他のポリオールの含有量は、ポリオール組成物基準で、通常20質量%以下、好ましくは10質量%以下である。他のポリオール含有量が多いと耐水性、防湿性、電気特性などが低下することがある。また、本発明の1,2−THPCDおよび1,4−TFPCDには、その特性を損なわない範囲で、スチレン、エチレン、プロピレンなど他の共重合可能なモノマー単位が含まれていてもよい。
【0012】
本発明で用いる常温で液状の水酸基末端共役ジエンポリマーとしては、市販の水酸基末端共役ジエンポリマーあるいは公知の方法により製造したものを用いることができる。この水酸基末端共役ジエンポリマーを製造するには、例えば炭素数4〜22のジエンモノマー(ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、1,3−ペンタジエン、シクロペンタジエン等)から選ばれる一種または二種以上を、過酸化水素、水酸基を有するアゾ化合物(例えば、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシルエチル)プロピオンアミド等]または水酸基を有するパーオキシド(例えばシクロヘキサノンパーオキサイド等)を重合開始剤としてラジカル重合する方法を採用することができる。
上記重合開始剤の使用量は、ジエンモノマー100質量部に対して、過酸化水素は1.0〜50質量部程度、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシルエチル)プロピオンアミド]は5.0〜100質量部程度、シクロヘキサノンパーオキサイドは5.0〜100質量部程度である。
上記重合は無溶媒で行うことも可能であるが、反応の制御の容易さ等の観点から、溶媒中で行うことが好ましい。溶媒としては、通常、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等が用いられる。反応温度は80〜150℃程度、反応時間は0.5〜15時間程度が適当である。
【0013】
本発明で用いる常温で液状の水酸基末端共役ジエンポリマーは、ナフタレンジリチウム等の触媒を用いて、上記と同様のジエンモノマーをアニオン重合させてリビングポリマーを製造し、さらにモノエポキシ化合物等を反応させることによっても得ることができる。重合は無溶媒で行うことも可能であるが、ラジカル重合の場合と同様の観点から、溶媒中で行うことが好ましい。溶媒としてはヘキサン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素が用いられる。反応温度は50〜100℃程度、反応時間は1〜10時間程度が適当である。また、重合の際には二種以上のジエンモノマーを混合して用いてもよく、ジエンモノマー基準で50モル%以下の割合で、炭素数2〜22の付加重合性モノマーを添加してもよい。
この炭素数2〜22の付加重合性モノマーとしては、ブテン、ペンテン、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、アクリル酸およびそのエステル、メタクリル酸およびそのエステル、塩化ビニル、酢酸ビニル、アクリルアミド等が挙げられる。
上記反応終了後、溶液を減圧下で蒸留することにより、溶媒や未反応モノマー等が除去されて、水酸基末端共役ジエンポリマーを得ることができる。
【0014】
一般に前者のラジカル重合法を用いた場合は、主として1,4結合単位を含む化合物が得られ、一方、後者のアニオン重合法を用いた場合は、主として1,2結合単位を含む化合物が得られる。
本発明のポリオール組成物で用いる水酸基末端共役ジエンポリマーの数平均分子量は、通常300〜10000程度、好ましくは500〜5000であり、水酸基含有量は、通常0.2〜10meq/g程度、好ましくは0.5〜5meq/g、特に好ましくは0.7〜2meq/gである。なお、水酸基は、分子末端以外に分子鎖内部にも有することができる。
【0015】
本発明は、上記ポリオール組成物と、ポリイソシアネート系硬化剤とを含むポリオレフィン用接着剤、ポリオレフィン用シーリング材およびポリオレフィン用塗料をも提供する。本発明のポリオレフィン用接着剤、ポリオレフィン用シーリング材およびポリオレフィン用塗料は、液状ポリマー組成物である。
上記硬化剤として使用するポリイソシアネート化合物は特に制限されないが、反応性や安全性、価格、得られる硬化物の物性などを考慮して選ばれる。ポリイソシアネート化合物としては、ポリオールとポリイソシアネートとを別途反応させて合成したプレポリマーを用いることもできる。
ポリイソシアネート化合物とは、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する有機化合物であって、上記液状の水酸基末端共役ジエンポリマーまたはその水添化合物の水酸基と反応する反応性イソシアネート基を有するものである。このポリイソシアネート化合物としては、通常の芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートおよび脂環族ポリイソシアネートを挙げることができる。
【0016】
具体的には例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートと2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネートの混合物(以上全てMDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタリン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェートおよびイソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0017】
また、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等の脂肪族−芳香族ポリイソシアネート(イソシアネート基が、芳香族環と直接結合せずに、脂肪族基を介して芳香族環に結合したポリイソシアネートを指す。)を挙げることができる。
さらに、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネートを挙げることができる。
さらにまた、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネートを挙げることができる。
【0018】
その他、上記ポリイソシアネート化合物の環化三量体(イソシアヌレート変性体)、ビューレット変性体やエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ポリエーテルポリオール、ポリマーポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリアルカジエンポリオール、ポリアルカジエンポリオールの水素化物、部分鹸化エチレン−酢酸ビニル共重合体、ヒマシ油系ポリオール等のポリオール化合物と前記ポリイソシアネート化合物との付加反応物等が用いられる。
また、これらポリイソシアネート化合物は二種以上を混合して用いることもでき、さらにこれらポリイソシアネート化合物のイソシアネート基を、フェノール類、オキシム類、イミド類、メルカプタン類、アルコール類、ε−カプロラクタム、エチレンイミン、α−ピロリドン、マロン酸ジエチル、亜硫酸水素ナトリウム、ホウ酸等のブロック剤でブロックしたいわゆるブロックイソシアネート化合物をも用いることができる。
ポリイソシアネートの使用量は、通常、NCO/OH(モル比)が0.5〜2.5となる量であり、好ましくは0.8〜1.5となる量である。
【0019】
本発明のポリオレフィン用接着剤、ポリオレフィン用シーリング材またはポリオレフィン用塗料である液状ポリマー組成物には、接着性やその他の物性向上、粘度低下などによるプロセス性改良、耐熱性、耐候性および耐薬品性などを向上させるために公知の添加剤を添加することができる。このような添加剤としては、無機充填材、有機充填材、酸化防止剤、紫外線老化防止剤、静電防止剤など各種安定剤、コストダウンのための増量材、顔料や染料などの着色剤、可塑剤、プロセスオイル、瀝青物質などが挙げられる。
上記液状ポリマー組成物に無機充填材を加えることにより、ポリオレフィン樹脂に対する接着性が著しく向上する。無機充填材としては、亜鉛、アルミニウム、銅、ニッケル、ガラス球、ガラスフレーク、ガラス繊維、カーボンブラック(チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック)、炭素繊維、グラファイト、アスベスト、カオリンクレー、ロウ石クレー、タルク、カスミ石、クリオライト、ケイ灰石、ケイソウ土、スレート粉、ホワイティング、長石粉、マイカ、セッコウ、石英粉、微粉珪酸、アタパルジャイト、セリサイト、火山灰、蛭石、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄、二酸化モリブデン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、ゼオライト、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、ボロンナイトライトおよび二硫化モリブデン等を挙げることができる。無機充填材としては特に炭酸カルシウムが好ましい。
【0020】
有機充填材としては、ゴム粉末、セルロース、リグニン、キチン質、皮革粉、ヤシ殻、木粉、木綿、麻、羊毛、絹等の天然系の繊維、ナイロン、ポリエステル、ビニロン、アセテート、アクリル等の合成繊維、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の合成樹脂の粉末または顆粒等を挙げることができる。
これらの無機充填材および有機充填材の配合量については特に制限はないが、通常、本発明のポリオール組成物100質量部に対して、500質量部以下、好ましくは200質量部以下である。
【0021】
上記ポリオール組成物とポリイソシアネート系硬化剤とを含む液状ポリマー組成物は、上記成分を上記割合で配合して調製する。この液状ポリマー組成物の調製にあたっては、混合装置、混練装置等を用い、通常0〜120℃程度、好ましくは15〜100℃の温度で、0.5秒〜8時間程度、好ましくは1秒〜5時間撹拌混合する。液状ポリマーの調製には、通常、ワンショット法と呼ばれる方法またはプレポリマー法と呼ばれる方法が用いられる。
ワンショット法では、まず上記配合成分のうち少なくともポリイソシアネート化合物を除く成分を配合して上記の温度、時間で混合し、混合物を得る。この混合物にポリイソシアネート化合物および先の混合で用いなかった添加剤成分を添加し、上記の温度、時間で混合し、液状ポリマー組成物を得る。この液状ポリマー組成物における好ましいNCO/OH(モル比)は0.5〜2.5である。
【0022】
プレポリマー法には、下記プレポリマー法(1)とプレポリマー法(2)がある。プレポリマー法(1)では、NCO/OH、NCO/NH2またはNCO/(OH+NH2)が1.7〜25(当量比)、好ましくは1.7〜5.5の範囲で、水酸基末端共役ジエンポリマーおよびポリアミン化合物のうちの少なくとも一つと、ポリイソシアネート化合物とを反応させてプレポリマーを得る。この反応は、その他の配合成分の一部または全部の存在下で行ってもよく、その他の配合成分の非存在下で行ってもよい。反応の温度は上記と同様に、通常0〜120℃程度、好ましくは15〜100℃であり、反応時間は、通常0.1〜10時間程度、好ましくは0.5〜8時間である。このプレポリマーに残りの配合成分を、上記と同様の温度および反応時間で混合し、液状ポリマー組成物を得る。
【0023】
プレポリマー法(2)では、NCO/OH、NCO/NH2またはNCO/(OH+NH2)が1.7〜5.0(当量比)の範囲で、配合全成分を配合し、反応させてプレポリマーを得る。反応温度は上記プレポリマー法(1)と同様であり、時間は通常0.1〜10時間、好ましくは0.5〜8時間である。このプレポリマーを空気中の湿気(水)と反応させることにより、液状ポリマー組成物を得る。
このようにして調製された液状ポリマー組成物は、ポリオレフィン用接着剤、オレフィン用シーリング材およびオレフィン用塗料を始めとする各種の用途に供せられ、硬化処理することによりさまざまな形態の硬化体を与える。
【実施例】
【0024】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1
水酸基末端ポリブタジエンポリオール(出光興産(株)製、Poly bd R−45HT;1,4結合80モル%含有、液状)と、水酸基末端ポリブタジエンポリオール(米国サートマー社製、KRASOL−LBH−P2000;1,2結合65モル%含有、液状)とを、質量比75:25の割合で混合した。これに、ポリイソシアネート系硬化剤としてジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製、125M)を、NCO/OH(モル比)で1.05となるように加えて攪拌混合し、その後、反応触媒としてジブチル錫ジラウレート(共同薬品(株)製)を質量比0.01で加え、液状の接着剤組成物を作製した。
被着剤として、表面をイソプロピルアルコールで拭取り処理した厚さ3mm、幅25mm、長さ100mmのPP板(プライムポリマー社製、J−6083HP)2枚に、上記接着剤組成物を塗布し、重ね合わせた。そのままの状態で、温度25℃、湿度60%の環境下で72時間かけて後養生を行った後、万能引張試験機(エー・アンド・ディ(株)製テンシロン)にて引張せん断接着強度(JIS K6848:1999およびJIS K6850:1999に準拠)を測定したところ、0.57MPaであった。
【0025】
実施例2
実施例1において、水酸基末端ポリブタジエンポリオール(出光興産(株)製、Poly bd R−45HT;1,4結合含量80モル%、液状)に替えて水添ポリイソプレンポリオール(出光興産(株)製、EPOL;1,4結合含量80モル%、液状)を用い、このEPOLと水酸基末端ポリブタジエンポリオール(米国サートマー社製、KRASOL−LBH−P2000;1,2結合含量65モル%、液状)とを質量比50:50で用いた以外は、実施例1と同様の方法で接着剤組成物を作製した。実施例1と同様の方法で引張せん断接着強度を測定したところ、0.71MPaであった。
【0026】
実施例3
実施例2において、KRASOL−LBH−P2000に替えて水酸基末端水添ポリブタジエンポリオール(米国サートマー社製、KRASOL−HLBH−P2000;1,2結合含量65モル%、液状)を用い、EPOLとKRASOL−HLBH−P2000とを質量比25:75で用いた以外は、実施例2と同様の方法で接着剤組成物を作製した。実施例1と同様の方法で引張せん断接着強度を測定したところ、0.77MPaであった。
【0027】
実施例4
実施例1において、Poly bd R−45HTとKRASOL−LBH−P2000の合計量100質量部に対して、炭酸カルシウム(白石工業(株)製、白艶華CCR)100質量部を加えた以外は、実施例1と同様の方法で接着剤組成物を作製した。実施例1と同様の方法で引張せん断接着強度を測定したところ、1.00MPaであった。
【0028】
比較例1および2
実施例1において、Poly bd R−45HTおよびKRASOL LBH−P2000の一方のみを用い、NCO/OH(モル比)を1.05とした以外は、実施例1と同様の方法で接着剤組成物を作製した。実施例1と同様の方法で引張せん断接着強度を測定しようとしたところ、いずれの場合も試験片は測定前あるいは測定開始時にはがれてしまった。
【0029】
比較例3
実施例3において、EPOLに替えて水添ポリブタジエンポリオール(三菱化学(株)製、ポリテールH;1,4結合含量80モル%、固体)を用いた以外は、実施例3と同様の方法で接着剤組成物を作製した。実施例1と同様の方法で引張せん断接着強度を測定したところ、0.29であった。
以上の実施例および比較例をまとめて以下の表に示す。
【0030】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のポリオレフィン接着剤用ポリオール組成物と、イソシアネート系硬化剤を含む液状ポリマー組成物は、ポリオレフィン用接着剤、ポリオレフィン用シーリング材およびポリオレフィン用塗料を始めとする各種の用途に供せられ、硬化処理することによりさまざまな形態の硬化体を与える。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子内に1,2結合単位50モル%以上を有する常温で液状の水酸基末端共役ジエンポリマーと、(B)分子内に1,4結合単位50モル%超を有する常温で液状の水酸基末端共役ジエンポリマーとからなる組み合わせを含むことを特徴とするポリオレフィン接着剤用ポリオール組成物。
【請求項2】
(A)成分および(B)成分の水酸基末端共役ジエンポリマーのうちの少なくとも一方が、水素化された常温で液状のポリオールである請求項1に記載のポリオレフィン接着剤用ポリオール組成物。
【請求項3】
(A)成分および(B)成分の水酸基末端共役ジエンポリマーのうちの少なくとも一方が、水酸基末端ポリブタジエンまたは水酸基末端ポリイソプレンである請求項1または2に記載のポリオレフィン接着剤用ポリオール組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリオール組成物と、ポリイソシアネート系硬化剤とを含むポリオレフィン用接着剤。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリオール組成物と、ポリイソシアネート系硬化剤とを含むポリオレフィン用シーリング材。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリオール組成物と、ポリイソシアネート系硬化剤とを含むポリオレフィン用塗料。


【公開番号】特開2008−63425(P2008−63425A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−242285(P2006−242285)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(301020167)出光サートマー株式会社 (5)
【Fターム(参考)】