説明

ポリオレフィン系組成物とその製造方法。

【課題】本発明は、ラテックス状のシリコーンを他の樹脂に配合することが容易にできるようにハンドリング性が良好なマスターバッチ化したポリオレフィン系組成物とその製造方法に係るものである。
【解決手段】シリコーン系ラテックスにポリオレフィン系ラテックスをブレンドした後に固体化させることにより得られる。特に、後周期遷移金属錯体系のオレフィン重合用触媒の存在下、オレフィンモノマーを重合することにより得られるポリオレフィン系ラテックスを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン系ラテックスとポリオレフィン系ラテックスをブレンドした後に固体化させることを特徴とするポリオレフィン系組成物、該組成物と熱可塑性樹脂との熱可塑性樹脂組成物およびそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンは熱可塑性樹脂、特にポリオレフィンの表面改質剤(表面潤滑性、耐磨耗性、耐傷付性、離型性、ブロッキング性)あるいはポリマーブレンド、ポリマーアロイの成分(ゴム性、ガス透過性、耐衝撃性、低温特性、電気特性の発現成分)として用いられている。
【0003】
シリコーンを、ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂に添加する場合、ハンドリングを容易にする目的で、シリコーンとポリオレフィン等の熱可塑性樹脂とのマスターバッチが用いられている(非特許文献1)。
【0004】
一般的にはシリコーンとポリオレフィン等の熱可塑性樹脂とを溶融混練してマスターバッチ化がなされているが、ラテックス状で得られたシリコーンを溶融混練する場合、大量の水や乳化剤を除去する必要があり、困難であるが、本発明により、ラテックス状のシリコーンを容易にマスターバッチ化することが可能となる。
【非特許文献1】JETI,1999年,47巻(12号),111頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、ラテックス状のシリコーンを他の樹脂に配合することが容易にできるようにマスターバッチ化したポリオレフィン系組成物とその製造方法に係るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討した結果、本発明を完成するにいたった。
即ち本発明は、以下の構成を有するものである。
【0007】
1). シリコーン系ラテックスにポリオレフィン系ラテックスをブレンドした後に固体化させることを特徴とするポリオレフィン系組成物。
【0008】
2). ポリオレフィン系ラテックスが、後周期遷移金属錯体系のオレフィン重合用触媒の存在下、オレフィンモノマーを重合することにより得られることを特徴とする1)に記載のポリオレフィン系組成物。
【0009】
3). 後周期遷移金属錯体系のオレフィン重合用触媒が下記一般式(1):
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、Mはニッケル、パラジウム又は白金である。Eは酸素または硫黄である。Xはリン、砥素またはアンチモンである。 R、R、Rは各々独立して、水素または炭素数1〜20の炭化水素基である。Rf1はフッ素原子または炭素数1〜20のフッ素化炭化水素基である。Rは水素、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、水酸基、炭素数1〜20の炭化水素基からなるエーテル基、炭素数1〜20の炭化水素基からなるエステル基、スルホン酸塩または炭素数1〜20の炭化水素基からなるスルホン酸エステル基である。)であることを特徴とする2)記載のポリオレフィン系組成物。
【0012】
4). 後周期遷移金属錯体系のオレフィン重合用触媒が下記一般式(2)、又は(3):
【0013】
【化2】

【0014】
【化3】

【0015】
(式中、Mはニッケル、パラジウムまたは白金である。Eは酸素または硫黄である。Xはリン、砒素またはアンチモンである。R、R、Rは各々独立して、水素または炭素数1〜20の炭化水素基である。Yはハロゲン原子である。mは1〜3である。)
であることを特徴とする2)記載のポリオレフィン系組成物。
【0016】
5). 一般式(1)における後周期遷移金属錯体系のオレフィン重合用触媒が下記一般式(4):
【0017】
【化4】

【0018】
(式中、Mはニッケル、パラジウムまたは白金である。Eは酸素または硫黄である。Xはリン、砒素またはアンチモンである。R、R、Rは各々独立して、水素または炭素数1〜20の炭化水素基である。Rf1、Rf2は各々独立してフッ素原子または炭素数1〜20のふっ素化炭化水素基である。)
で表されることを特徴とする3)記載のポリオレフィン系組成物。
【0019】
6). オレフィン重合用触媒のEが酸素、Xがリンであることを特徴とする3)〜5)いずれかに記載のポリオレフィン系組成物。
【0020】
7). オレフィン重合用触媒のY又はRf1がフッ素であることを特徴とする3)〜6)いずれかに記載のポリオレフィン系組成物。
【0021】
8). 後周期遷移金属錯体系のオレフィン重合用触媒が下記一般式(5)、又は(6):
【0022】
【化5】

【0023】
【化6】

【0024】
(式中、Mはニッケルまたはパラジウムである。R、Rは各々独立して、炭素数1〜4の炭化水素基である。R、Rは各々独立して水素原子、またはメチル基である。Rはハロゲン原子、水素原子、または炭素数1〜20の有機基である。XはMに配位可能なヘテロ原子を持つ有機基であり、Rにつながっていてもよい、またはXは存在しなくてもよい。Lは任意のアニオンである。)
であることを特徴とする2)記載のポリオレフィン系組成物。
【0025】
9). 後周期遷移金属錯体系のオレフィン重合用触媒のMがニッケルであることを特徴とする3)〜8)いずれかに記載のポリオレフィン系組成物。
【0026】
10). オレフィンモノマーが炭素数10以下のα‐オレフィンであることを特徴とする2)〜9)のいずれかに記載のポリオレフィン系組成物。
【0027】
11). 1)〜10)のいずれかに記載のポリオレフィン系組成物と熱可塑性樹脂との熱可塑性樹脂組成物。
【0028】
12). シリコーン系ラテックスにポリオレフィン系ラテックスをブレンドした後に固体化させることを特徴とする1)〜10)のいずれかに記載のポリオレフィン系組成物の製造方法。
【0029】
13). 1)〜10)のいずれかに記載のポリオレフィン系組成物と熱可塑性樹脂を混合することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0030】
本発明の組成物において、シリコーン系マクロモノマーラテックスとポリオレフィン系ラテックスをブレンドした後に固体化させることにより、容易にマスターバッチが得られる。得られたマスターバッチはハンドリング性が良好なためポリオレフィン等の熱可塑性樹脂に容易に溶融混練でき、得られた熱可塑性樹脂組成物は表面潤滑性、耐磨耗性、耐傷付性、離型性、ブロッキング性等に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、シリコーン系ラテックスにポリオレフィン系ラテックスをブレンドした後に固体化させて得られるポリオレフィン系組成物、該組成物と熱可塑性樹脂との熱可塑性樹脂組成物およびそれらの製造方法に関する。
【0032】
ポリオレフィン系ラテックスとしてはエチレンやプロピレンを主成分としたものが市販されていてそれらを用いてもよいが、1μm以下の粒子径かつ中性のラテックスが得られるという点から、オレフィン重合触媒(配位重合触媒)、特に後周期遷移金属錯体系のオレフィン重合用触媒の存在下、オレフィンモノマーを共重合することにより得られるポリオレフィン系ラテックスが、好ましい。
【0033】
(配位重合触媒)
ポリオレフィン系ラテックスを製造するための配位重合触媒としては、水および極性化合物の共存下でオレフィン重合活性を有する配位重合触媒であれば特に制限はなく、好ましい例としてケミカル・レビュー(Chemical Review),2000年,100巻,1169−1203頁、ケミカル・レビュー(Chemical Review),2003年,103巻,283−315頁、有機合成化学協会誌,2000年,58巻,293頁、アンゲバンテ・ケミー国際版(Angewandte Chemie International Edition),2002年,41巻,544−561頁に記載されているものを挙げる事ができる。
【0034】
但し、これに限定されるものではない。合成が簡便であり高活性が得られるという点から、一般式(1)〜(6)で示される後周期遷移金属錯体系の配位重合触媒が好ましい。
【0035】
【化7】

【0036】
【化8】

【0037】
(式中、Mはパラジウムまたはニッケルである。R、Rは各々独立して、炭素数1〜4の炭化水素基である。R、Rは各々独立して水素原子、またはメチル基である。Rはハロゲン原子、水素原子、または炭素数1〜20の有機基である。XはMに配位可能なヘテロ原子を持つ有機基であり、Rにつながっていてもよい、またはXは存在しなくてもよい。Lは任意のアニオンである。)
【0038】
【化9】

【0039】
【化10】

【0040】
【化11】

【0041】
(式中、Mはニッケル、パラジウムまたは白金である。Eは酸素または硫黄である。Xはリン、砒素またはアンチモンである。R、R、Rは各々独立して、水素または炭素数1〜20の炭化水素基である。Rf1はフッ素原子または炭素数1〜20のフッ素化炭化水素基である。Rは水素、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、水酸基、炭素数1〜20の炭化水素基からなるエーテル基、炭素数1〜20の炭化水素基からなるエステル基、スルホン酸塩または炭素数1〜20の炭化水素基からなるスルホン酸エステル基である。Yはハロゲン原子である。mは1〜3である。)
一般式(5)または(6)で示される後周期遷移金属錯体系の配位重合触媒は、Brookhart触媒として知られている。
【0042】
水中で安定であることから特にMはパラジウムが好ましい。R,Rで表される炭素数1〜4の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−ブチル基などが好ましく、さらに好ましくはメチル基、イソプロピル基が好ましい。
【0043】
Xで表されるMに配位可能な分子としては、ジエチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、アセトアルデヒド、酢酸、酢酸エチル、水、エタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、炭酸プロピレンなどの極性化合物を例示することができるが、なくてもよい。またRがヘテロ原子、特にエステル結合等のカルボニル酸素を有する場合には、このカルボニル酸素がXとして配位してもよい。
【0044】
また、オレフィンとの重合時には、該オレフィンが配位する形になることが知られている。 また、Lで表される対アニオンは、α−ジイミン型の配位子と遷移金属とからなる触媒と助触媒の反応により、カチオン(M)と共に生成するが、溶媒中で非配位性のイオンペアを形成できるものならばいずれでもよい。
【0045】
両方のイミン窒素に芳香族基を有するα−ジイミン型の配位子、具体的には、ArN=C(R)−C(R)=NArで表される化合物は、合成が簡便で、活性が高いことから好ましい。R、Rは炭化水素基であることが好ましく、特に、水素原子、メチル基、および一般式(2)で示されるアセナフテン骨格としたものが合成が簡便で活性が高いことから好ましい。さらに、両方のイミン窒素に置換芳香族基を有するα−ジイミン型の配位子を用いることが、立体因子的に有効で、ポリマーの分子量が高くなる傾向にあることから好ましい。従って、Arは置換基を持つ芳香族基であることが好ましく、例えば、2,6−ジメチルフェニル、2,6−ジイソプロピルフェニルなどが挙げられる。
【0046】
本発明の後周期遷移金属錯体から得られる活性種中の補助配位子(R)としては、炭化水素基あるいはハロゲン基あるいは水素基が好ましい。後述する助触媒のカチオン(Q)が、触媒の金属−ハロゲン結合あるいは金属−水素結合あるいは水素−炭素結合から、ハロゲン等を引き抜き、塩が生成する一方、触媒からは、活性種である、金属−炭素結合あるいは金属−ハロゲン結合あるいは金属−水素結合を保有するカチオン(M)が発生し、助触媒のアニオン(L)と非配位性のイオンペアを形成する必要があるためである。
【0047】
を具体的に例示すると、メチル基、クロロ基、ブロモ基あるいは水素基が挙げられ、特に、メチル基あるいはクロロ基が、合成が簡便であることから好ましい。なお、M−ハロゲン結合へのオレフィンの挿入よりM−炭素結合(あるいは水素結合)へのオレフィンの挿入の方がおこりやすいため、触媒の補助配位子として特に好ましいRはメチル基である。
さらに、RとしてはMに配位可能なカルボニル酸素を持つエステル結合を有する有機基であってもよく、例えば、酪酸メチルから得られる基が挙げられる。
【0048】
助触媒としては、Qで表現できる。Qとしては、Ag、Li、Na、K、Hが挙げられ、Agがハロゲンの引き抜き反応が完結しやすいことから好ましく、Na、Kが安価であることから好ましい。Lとしては、BF4、B(C4、B(C(CF4、PF6、AsF6、SbF6、(RSOCH、(RSOC、(RSON、RSOが挙げられる。特に、PF6、AsF6、SbF6、(RSOCH、(RSOC、(RSON、RSOが、極性化合物に安定な傾向を示すという点から好ましく、さらに、PF6、AsF6、SbFが、合成が簡便で工業的に入手容易であるという点から特に好ましい。
【0049】
活性の高さからは、BF4、B(C4、B(C(CFが、特にB(C4、B(C(CFが好ましい。Rは複数のフッ素基を含有する炭化水素基である。これらフッ素は、アニオンを非配位的にするために必要で、その数は多いほど好ましい。Rfの例示としては、CF、C、C、C17、Cがあるが、これらに限定されない。またいくつかを組み合わせてもよい。
【0050】
一般式(1)、(2)または(3)で示される後周期遷移金属錯体系の配位重合触媒は、SHOP(Shell Higher Olefin Process)触媒として知られている。
一般式(1)の中でも下記一般式(4):
【0051】
【化12】

【0052】
(式中、Mはニッケル、パラジウムまたは白金である。Eは酸素または硫黄である。Xはリン、砒素またはアンチモンである。R、R、Rは各々独立して、水素または炭素数1〜20の炭化水素基である。Rf1,Rf2は各々独立してフッ素原子または炭素数1〜20のフッ素化炭化水素基である。)で表されるオレフィン系重合用触媒が好ましい。特に、Rf1がフッ素化炭化水素基である場合、乳化系でも高いエチレン重合活性を示すことが報告されている(Angew.Chem.Int.Ed.2002年,41巻,544頁)。Rf2を電子吸引性のフッ素原子または炭素数1〜20のフッ素化炭化水素基にすることでより高活性およびまたはより高分子量のポリオレフィンを得ることができる。
一般式(1)は、以下の反応により調製するのが好ましい。
【0053】
【化13】

【0054】
(反応式中、Mはニッケル、パラジウムまたは白金である。Eは酸素または硫黄である。Xはリン、砒素またはアンチモンである。R、R、Rは各々独立して、水素または炭素数1〜20の炭化水素基である。Rf1はフッ素原子または炭素数1〜20のフッ素化炭化水素基である。Rは水素、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、水酸基、炭素数1〜20の炭化水素基からなるエーテル基、炭素数1〜20の炭化水素基からなるエステル基、スルホン酸塩または炭素数1〜20の炭化水素基からなるスルホン酸エステル基である。MLはゼロ価のニッケル、パラジウムまたは白金化合物である。LはMに対して配位し、Mの価数をゼロ価に保持するものであれば特に制限はない。nは自然数である)。
【0055】
これらの反応が進行しやすいことから、Mはゼロ価のニッケルであることが好ましい。Eは酸素であることが好ましい。Xはリンであることが好ましい。
【0056】
f1、Rは各々独立して炭素数1〜20のフッ素化炭化水素基が好ましい。具体例としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ペンタフルオロフェニル基、トリフルオロメチル基で置換されたフェニル基等が挙げられる。特に、Rf1はトリフルオロメチル基が好ましく、Rf2はペンタフルオロフェニル基が好ましい。
【0057】
また、R、R、Rは各々独立して、炭素数1〜20の炭化水素基が、特に置換芳香族基が好ましい。置換芳香族基として最も好ましいのはフェニル基である。
【0058】
一般式(2)あるいは一般式(3)は、以下の化合物によりその場で調製される配位子を用いてその場の反応で調製するのが好ましい。
【0059】
【化14】

【0060】
【化15】

【0061】
(反応式中、Mはニッケル、パラジウムまたは白金である。Eは酸素または硫黄である。Xはリン、砒素またはアンチモンである。R、R、Rは各々独立して、水素または炭素数1〜20の炭化水素基である。Yはハロゲン原子である。mは1〜3である。MLはゼロ価のニッケル、パラジウムまたは白金化合物である。LはMに対して配位し、Mの価数をゼロ価に保持するものであれば特に制限はない。nは自然数である。)
これらの反応が進行しやすいことから、Mはゼロ価のニッケルであることが好ましい。Eは酸素であることが好ましい。Xはリンであることが好ましい。
【0062】
ゼロ価のニッケル化合物としては、例えば、ビス(シクロオクタジエン)ニッケル、ビス(シクロオクタテトラエン)ニッケル、ビス(1、3、7-オクタトリエン)ニッケル、ビス(シクロドデカトリエン)ニッケル、ビス(アリル)ニッケル、ビス(メタリル)ニッケル、トリエチレンニッケル、ビス(ブタジエン)ニッケル、ビス(イソプレン)ニッケルが好ましく、ビス(シクロオクタジエン)ニッケルが特に好ましい。
【0063】
これらビス(シクロオクタジエン)ニッケルは公知の方法に従って合成することもできるし、固体を取り出すことなく溶液のまま用いてもよい(例えば、実験化学講座第4版、371頁に準じて2価のニッケル化合物とシクロオクタジエン等とトリアルキルアルミニウムとから合成できる)。
【0064】
また、Yは塩素またはフッ素、特にフッ素であることが好ましい。
【0065】
また、R、R、Rは各々独立して、炭素数1〜20の炭化水素基が、特に置換芳香族基が好ましい。置換芳香族基として最も好ましいのはフェニル基である。
【0066】
反応の促進のために、ホスフィン、ホスフィン酸化物、ケトン、エステル、エーテル、アルコール、ニトリル、アミン、ピリジン、オレフィン等を共存させるのが好ましい。特にオレフィンを共存させるのが好ましい。
【0067】
反応温度は0〜100℃、15〜70℃が好ましい。反応時間に特に制限はないが、20分間〜24時間が好ましい。反応は不活性雰囲気下で行うのが好ましく、アルゴン、窒素等が挙げられる。場合により微量の酸素、水分が存在していてもよい。反応は、通常溶媒を使用して実施するのが好ましく、溶媒としては脂肪族または芳香族溶媒が好ましく、これらはハロゲン化されていてもよい。
【0068】
例としては、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、イソドデカン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロヘプタン、エチルシクロヘキサン、ブチルクロリド、塩化メチレン、クロロホルムが挙げられる。一般に溶媒中のMの濃度は、1〜20000μmol/L、さらには10〜10000μmol/Lの範囲が好ましい。
【0069】
反応において、ML/配位子のモル比は、反応収率を高めるため少なくともMLを等量以上使用するのがよく、4/1〜1/1が好ましく、3/1〜2/1がより好ましい。
【0070】
本発明のオレフィン系重合触媒は複核であってもよい。
【0071】
本発明のオレフィン系重合用触媒として一般式(1)、(2)、(3)の具体例としては、ニッケルが入手性の点から優れており、特に下記一般式で示される化合物を好適に例示することができるが、これに限定されるものではない。
【0072】
【化16】

【0073】
【化17】

【0074】
【化18】

【0075】
(式中、Phはフェニル基、R’は炭素数1〜6の炭化水素基、nは1〜3を示す)。
【0076】
(オレフィンモノマー)
本発明に用いられる、オレフィンモノマーは、配位重合可能な炭素−炭素二重結合を有するオレフィン化合物である。オレフィンモノマーの好ましい例としては炭素数2〜20のオレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ヘキサデセン、1−エイコセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロヘキサン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン等が挙げられる。
【0077】
この中でも炭素数10以下のα−オレフィンが重合活性の高さから好ましく、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが挙げられる。
これらのオレフィンモノマーは、単独で使用してもよく、また2種以上使用してもよい。
【0078】
また、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,4−ヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエン、ノルボルナジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ジメタノオクタヒドロナフタリン、ジシクロペンタジエン等のジエンを少量併用してもよい。ジエンの使用量はオレフィンモノマー100重量部に対して好ましくは0〜20重量部である。
【0079】
オレフィンモノマーの使用量としては、制限はないが、分子量の大きい重合体を収率良く得られるという点から、オレフィンモノマー/触媒活性種がモル比で10〜10、さらには100〜10、とくには1000〜10とするのが好ましい。
【0080】
(シリコーン系ラテックス)
本発明で用いられるシリコーン系ラテックスは、オルガノシロキサン(以下、オルガノシロキサン(A−1)ともいう)が好ましい。
【0081】
オルガノシロキサンとしては、公知のものが多数存在するが、制限はなく、必要な機能に応じて、オルガノシロキサンの1種あるいは2種以上を選択すればよい。さらに、本発明のシリコーン系ラテックスは、他の単量体を含んでいても良い。主鎖骨格は直鎖状でも環状でも分岐状でも良く、架橋により三次元的な網目構造を取っていても良い。本発明のシリコーン系ラテックスは微粒子であっても良い。複合粒子であっても良く、コアシェル構造を取っていても良い。
【0082】
シリコーン系ラテックスの製造方法は特に限定はないが、乳化重合による方法が好ましい。
【0083】
本発明のシリコーン系ラテックスは、オルガノシロキサン(A−1)に、分子内に該オルガノシロキサン(A−1)と反応可能な官能基および炭素−炭素二重結合を有する化合物(以下、化合物(A−2)ともいう)を併用しても良く、さらに必要に応じて該オルガノシロキサン(A−1)および/または化合物(A−2)と反応可能な官能基を有する単量体(以下、化合物(A−3)ともいう)を含有していても良い。
【0084】
各成分の使用量には特に制限は無く任意の量で用いて良いが、好ましい使用量は、シリコーン系ラテックスの固形分中、オルガノシロキサン(A−1)成分100重量部に対して、化合物(A−2)は好ましくは0〜100重量部、さらに好ましくは0〜60重量部である。
【0085】
少なすぎると得られるポリオレフィン系グラフト重合体の物性が低下しうる。化合物(A−3)を使用する場合は、シリコーン系ラテックスの固形分中、オルガノシロキサン(A−1)成分100重量部に対して、好ましくは0〜100重量部、さらに好ましくは0〜40重量部である。多すぎると得られるポリオレフィン系グラフト重合体の物性が低下しうる。
【0086】
前記オルガノシロキサン(A−1)は、シリコーン系ラテックスの主骨格を構成するための成分である。オルガノシロキサン(A−1)は、乳化重合しうる液状のものであれば任意の分子量のものを使用しうるが、得られるシリコーン系ラッテクスの物性が設計しやすいという点から、好ましくは重量平均分子量1000以下、特に好ましくは500以下である。オルガノシロキサン(A−1)としては、直鎖状、環状または分岐状のものを使用することが可能である。乳化重合系の適用可能性および経済性の点から、環状シロキサンが好ましい。
【0087】
かかる環状シロキサンの具体例としては、たとえばヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン、1,2,3,4−テトラハイドロ−1,2,3,4−テトラメチルシクロテトラシロキサンなどがあげられる。
【0088】
また、2官能性のアルコキシシランもかかるオルガノシロキサン(A−1)として用いることができ、その具体例としては、たとえばジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシランなどがあげられる。さらには、環状シロキサンと2官能性のアルコキシシランとを併用することもできる。これらオルガノシロキサン(A−1)は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0089】
前記化合物(A−2)は、それ自身が有する官能基により前記オルガノシロキサン(A−1)と反応し、その結果、得られるシリコーン系ラテックスの側鎖または末端に炭素−炭素二重結合を導入させることができる。この炭素−炭素二重結合は、エポキシ化やマレイン化等の官能基導入などさらなる反応や重合の開始点として用いることができる。化合物(A−1)と反応するための基としては、珪素原子に結合した加水分解性アルコキシ基またはシラノール基、あるいは化合物(A−1)と開環共重合しうる環状シロキサン構造を持つ基を用いることが好ましい。また、珪素1原子に加水分解性アルコキシ基またはシラノール基が2つ結合した化合物が好ましい。
【0090】
化合物(A−2)の具体例としては、たとえば3−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシランなどのアルコキシシラン化合物、および1,3,5,7−テトラキス(アクリロキシプロピル)−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリス(アクリロキシプロピル)−1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサンなどのオルガノシロキサンがあげられ、中でも3−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシランが反応性が良好であるという点で特に好ましい。これら化合物(A−2)は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0091】
前記化合物(A−3)は、前記オルガノシロキサン(A−1)および/または化合物(A−2)と反応することでシリコーン系ラテックスの物性を調整することができる成分であり、シリコーン系ラテックスへの炭素−炭素二重結合の導入を目的としていない点で、化合物(A−2)とは異なる成分である。シリコーン系ラテックス中に架橋構造を導入してTgや弾性率を調整しやすいということから、珪素原子に結合した加水分解性基を分子中に少なくとも3個有する多官能シラン化合物またはその部分加水分解縮合物が好ましい。
【0092】
このような多官能シラン化合物の具体例としてはメチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリ(メトキシエトキシ)シラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、などのアルコキシシラン、およびその部分加水分解縮合物;メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、テトラアセトキシシランなどのアセトキシシラン、およびその部分加水分解縮合物があげられる。
【0093】
また、化合物(A−3)としては、オルガノシロキサン(A−1)および/または化合物(A−2)と反応しうる官能基を有する非シリコーン系マクロモノマーを用いることもできる。そのようにしてシリコーンとアクリルとの複合粒子を得ることも可能である。これら化合物(A−3)は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0094】
本発明に用いられるシリコーン系ラテックスは、酸性もしくは塩基性条件下で行われる通常の重合方法により製造することができる。たとえば前記オルガノシロキサン(A−1)、化合物(A−2)ならびに必要に応じて用いられる化合物(A−3)を、乳化剤および水とともにホモミキサー、コロイドミル、ホモジナイザーなどを用いてエマルジョンとし、ついで、系のpHをアルキルベンゼンスルホン酸や硫酸などで2〜4に調整し、加熱して重合させた後、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ成分を加えて中和するなどの方法で製造することができる。
【0095】
なお、原料の全部を一括添加したのち、一定時間撹拌してからpHを小さくしてもよく、また原料の一部を仕込んでpHを小さくしたエマルジョンに残りの原料を逐次追加してもよい。逐次追加するばあい、そのままの状態または水および乳化剤と混合して乳化液とした状態のいずれで添加してもよいが、重合速度の面から、乳化状態で追加する方法を用いることが好ましい。反応温度は50〜95℃が好ましい。50℃未満では重合速度が遅くなり、95℃を超えると重合安定性が乏しくなる。反応時間は好ましくは1〜100時間であり、さらに好ましくは5〜50時間である。反応時間が短すぎると重合が不充分であり、長すぎると生産性が低くなる。
【0096】
酸性条件下で重合を行う場合、通常、ポリオルガノシロキサンの骨格を形成しているSi−O−Si結合は切断と結合生成の平衡状態にある。この平衡は温度によって変化し、低温になるほど高分子量のポリオルガノシロキサンが生成しやすくなる。したがって、高分子量のポリオルガノシロキサンを得るためには、加熱によりオルガノシロキサン(A−1)を重合した後、重合温度以下に冷却して熟成を行うことが好ましい。具体的には、50℃以上で重合を行い重合転化率が75〜90%、さらに好ましくは82〜89%に達した時点で加熱を止め、10〜50℃、好ましくは20〜45℃に冷却して5〜100時間程度熟成を行うことができる。なお、ここで言う重合転化率は原料中のオルガノシロキサンの低揮発分への転化率を意味する。
【0097】
乳化重合に用いる水の量についてはとくに制限は無く、モノマーを乳化分散させるために必要な量であれば良く、通常前記オルガノシロキサン(A−1)および、化合物(A−2)、化合物(A−3)を用いた場合はそれらの合計量に対して1〜20倍の重量を用いれば良い。使用する水の量が少なすぎると、であるモノマーの割合が相対的に多くなるため、エマルジョンがW/OからO/Wへの相の転換が起こりにくくなり、水が連続層となりにくい。使用する水の量が多すぎると安定性に乏しくなる上、釜効率が低くなる。
【0098】
乳化重合に用いる乳化剤は、反応を行うpH領域において乳化能を失わないものであれば特に限定なく公知のものを使うことができる。かかる乳化剤の例としては、たとえばアルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0099】
また、該乳化剤の使用量にはとくに限定がなく、目的とするシリコーン系ラテックスの粒子径などに応じて適宜調整すればよい。充分な乳化能が得られ、かつ得られるシリコーン系ラテックスとそれから得られるポリオレフィン系ラテックスとの組成物の物性に悪影響を与えないという点から、前記エマルジョン中に水100重量部あたり0.05〜20重量部用いるのが好ましく、特には0.1〜10重量部用いるのが好ましい。
【0100】
シリコーン系ラテックスの平均粒子径は、前記乳化剤の使用量の増減などの通常の乳化重合技術を用いて制御することが可能である。熱可塑性樹脂と配合したときに良好な分散性を発現する点から、好ましくは20〜1000nm、さらに好ましくは30〜500nmの範囲内であることが好ましい。平均粒子径の測定方法は特に限定はないが、例えばレーザー解析散乱法によって測定することができる。
【0101】
本発明の乳化重合により製造されたシリコーン系ラテックスは、上述のように単一のシリコーン系ラテックスのみからなるものであっても良いし、1種あるいは2種以上のラテックスからなる複合粒子、さらにはラテックスブレンドであってもよい。
【0102】
以上シリコーン系ラテックスとポリオレフィン系ラテックスを任意の量、好ましくは、シリコーン系ラテックスの固形分100重量部に対しポリオレフィン系ラテックスの固形分が2000〜50重量部、好ましくは1500〜80重両部、さらに好ましくは800〜80重両部になるようにブレンドした後、塩析、ろ過、乾燥などのプロセスを経た後、固体化した組成物が得ることができる。
【0103】
シリコーン成分がこれより多くなると本願発明のポリオレフィン系組成物はハンドリング性が良好となる固体として得られがたくなり、また、逆にシリコーン成分がこれより少なくなると他の樹脂に配合した時の改質効果が小さくなる。
【0104】
(樹脂組成物)
本発明のポリオレフィン系組成物は、各種の熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂に配合することにより樹脂組成物を製造するための原料として用いることができる。
【0105】
前記熱可塑性樹脂としては、一般に用いられている樹脂、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、エチレンプロピレンゴム、プロピレンエチレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、エチレンオクテンゴム、ポリメチルペンテン、エチレン環状オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレングリシジルメタクリレート共重合体、エチレンメチルメタクリレート共重合体などのポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−N−フェニルマレイミド共重合体、α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体などのビニルポリマー、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル−ポリスチレン複合体、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルフォンなどのエンジニアリングプラスチックが好ましく例示される。
【0106】
前記熱硬化性樹脂としては、一般に用いられている樹脂、例えばフェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ホリエステル樹脂、エポキシ樹脂などが好ましく例示される。これら熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0107】
これらのうちポリオレフィンが本発明のポリオレフィン系組成物の分散性が良好であるという点で好ましく、具体的にはポリエチレン、ポリプロピレンなどがあげられ好ましい。
【0108】
熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂と本発明のポリオレフィン系組成物との配合割合は、成形品の物性がバランスよくえられるように適宜決定すればよいが、充分な物性を得るためには本発明のポリオレフィン系組成物の量が熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部、更には0.1〜5重量部、特には01〜3重量部が好ましい。
【0109】
本発明の樹脂組成物は、プラスチック、ゴム工業において知られている通常の添加剤、たとえば可塑剤、安定剤、滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤、難燃助剤、顔料、ガラス繊維、充填剤、高分子加工助剤などの配合剤を含有することができる。
【0110】
本発明の樹脂組成物を得る方法としては、通常の熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂の配合に用いられる方法を用いることができ、例えば、熱可塑性樹脂と本発明のポリオレフィン系組成物および所望により添加剤成分とを、加熱混練機、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ブラベンダー、ニーダー、高剪断型ミキサー等を用いて溶融混練することで製造することができる。また、例えば、熱硬化性樹脂と本発明のポリオレフィン系組成物および所望により添加剤成分とを混合することで製造することができる。また各成分の混練、および、混合順序は特に限定されず、使用する装置、作業性あるいは得られる樹脂組成物の物性に応じて決定することができる。
【0111】
かくして得られる樹脂組成物の成形法としては、通常のこれら樹脂組成物の成形に用いられる方法をあげることができる。熱可塑性樹脂組成物の場合は、たとえば射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、カレンダー成形法などの成形法があげられる。熱硬化性樹脂組成物の場合は、たとえばキャスト法、プレス法、注型法、コーティング法などの成形方法があげられる。
【実施例】
【0112】
以下に、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限を受けるものではない。
【0113】
[耐傷付性試験]
後述の手順でサンプルシート(厚さ0.3mm)を作成した。ROTARY ABRSION TESTER(東洋精機製作所製)に金巾3号で覆った直径2.5cm・高さ1.0cmの半円柱のアルミを取り付け、そこにサンプルシートをセットし、一定荷重(1kg)をかけてサンプルシートを所定回数(200回)摩擦して操作後の傷付き具合を目視で観察した。なお、試験毎に金巾3号の交換を行った。
【0114】
[平均粒子径]
粒子径は、マイクロトラック粒度分布測定装置(日機装社製)にて測定した。なお、本発明の平均粒子径とは体積平均値のことを言う。
【0115】
(合成例1)配位子の合成
窒素雰囲気下、Helvetica Chimica Acta.1928頁,76巻,1993年を参考にして合成したペンタフルオロベンジルトリフェニルホスホニウムブロミド2.61g、乾燥THF(和光純薬製)11mlを仕込み、氷浴を用いて0℃に冷却した。モレキュラーシーブで乾燥したトリエチルアミン(和光純薬製)1.5mlを加え、15分攪拌した。さらにトリフルオロ酢酸無水物(東京化成製)0.78mlを滴下し、0℃で1時間、室温(15℃)で1時間反応させた。
【0116】
濾液を濃縮し、蒸留水(和光純薬製)15mlで洗浄、乾燥した。得られた生成物を60℃のメタノールに溶解させ0℃まで徐々に冷却し、再結晶を行った。乾燥後の収量は、1.5gであった。1H−NMR(CDCl3)により、ベンジルプロトンが消失していることから、下記化学式で示される化合物が生成していることを確認した。
【0117】
【化19】

【0118】
(合成例2)ポリエチレンラテックスの合成
ドデシル硫酸ナトリウム(Fluka製)2.0g、純水(和光純薬製)500ml、ヘキサデカン(和光純薬製)5.1gの混合物を1L4口フラスコにいれ、減圧とアルゴン(エアウォーター社製、超高純度アルゴンガス)置換を20回繰り返すことで水溶液の脱気とフラスコ内のアルゴン置換を行った。そこに1時間のアルゴンバブリング処理をしたトルエン50mlを加え、攪拌しながら超音波ホモジナイザー(SMT company社製、超音波分散機 UH−600)を用いて5分間乳化させた。得られた乳化溶液をアルゴン雰囲気下の1Lの耐圧オートクレーブ(TAIATSU TECHNO社製、TAS−1型オートクレーブ)にチューブを用いて導入し、オートクレーブ内液温を50℃に調節した。
【0119】
一方、Ni(cod)(関東化学製)30.2mg(110μmol)をアルゴン雰囲気下で20mlシュレンク管に秤量した。また、別の20mlシュレンク管に、(合成例1)の配位子を13.8mg(25.6μmol)秤量してアルゴン雰囲気下にした。Ni(cod)、及び、配位子のシュレンク管に1.0mLずつトルエンを加えて、これらを溶解させた後、Ni(cod)のトルエン溶液を配位子のトルエン溶液に加えた。続いて、この溶液に1−ヘキセン(和光純薬製、蒸留後、1時間のアルゴンバブリング処理をしたもの)0.36mLを加えた。1−ヘキセンを加えると、触媒溶液は黄色からオレンジ色へと変化した。色調の変化を確認した後、この溶液をシリンジで、ドデシル硫酸ナトリウム2.0g、純水20ml、ヘキサデカン200mgの混合物が入った100mLシュレンク管に注入した。この混合液を攪拌しながら超音波ホモジナイザーを用いて1分間乳化させた。
【0120】
この触媒乳化溶液を、先に乳化溶液を仕込んでおいた1Lオートクレーブ内にシリンジで加えた後、ただちに300rpmで撹拌を開始し、エチレンガス(住友精化(株)社製、PUREグレード)でオートクレーブ内を3MPaとした。エチレン導入後、エチレンの消費にともなう発熱が観測され、液温上昇した。
【0121】
オートクレーブ内液温を50℃に保ち5時間攪拌を続けた後、未反応のエチレンガスを除去し、ポリエチレンのラテックス溶液を得た。このラテックス溶液の固形分量は14.8%であり、この反応で生成したポリエチレンの量91.9g、また、この反応での単位触媒あたりのエチレンモノマー取り込み数を示すTurn Over Number(ポリエチレン中のエチレンユニットのモル数/触媒のモル数(ここでは合成例1の配位子のモル数))は128,000であった。また、得られたポリエチレンラテックスの平均粒子径は460nmであった。
【0122】
(実施例1)ポリジメチルシロキサンラテックスとポリエチレンラテックスのブレンド(0.1:1.0)
100mlナスフラスコにポリジメチルシロキサンラテックス(固形分量47.6%、Mn=120,000、平均粒子径330nm)1.9gを入れ、そこに合成例2のポリエチレンラテックス(固形分量14.8%)61.5gを加え、ポリジメチルシロキサンとポリエチレンの重量比を0.1:1.0とした。1h攪拌行った後、その混合液に10.0wt%塩化カルシウム水溶液4.5mlを加えて塩析を行ったところ、白色固体が析出した。大量の水で洗った後、ろ過、乾燥させ、ポリジメチルシロキサンとポリエチレンのマスターバッチを得た。
【0123】
得られたマスターバッチ80mgとランダムPP(PC540R、サンアロマー社製)40gをプラストミル(東洋精機製、LABOPLASTOMILL)を用いて200℃、10分間、100rpmで溶融混練することにより熱可塑性樹脂組成物を得、180℃プレス(神藤金属工業所、型式NSF−50)して約0.3mm厚のシートを作成し、上記の耐傷付性試験を行い評価した。
【0124】
(実施例2)ポリジメチルシロキサンラテックスとポリエチレンラテックスのブレンド(0.5:1.0)
(実施例1)と同様の操作でポリジメチルシロキサンとポリエチレンの重量比を0.5:1.0としたマスターバッチを作成した。
得られたマスターバッチ80mgとランダムPP(PC540R、サンアロマー社製)40gから(実施例1)と同様の操作で約0.3mm厚のシートを作成し、上記の耐擦傷性試験を行い評価した。
【0125】
(実施例3)ポリジメチルシロキサンラテックスとポリエチレンラテックスのブレンド(1.0:1.0)
(実施例1)と同様の操作でポリジメチルシロキサンとポリエチレンの重量比を1.0:1.0としたマスターバッチを作成した。
得られたマスターバッチ80mgとランダムPP(PC540R、サンアロマー社製)40gから(実施例1)と同様の操作で約0.3mm厚のシートを作成し、上記の耐擦傷性試験を行い評価した。
【0126】
(実施例4)ポリジメチルシロキサンラテックスとポリエチレンラテックスのブレンド(1.5:1.0)
(実施例1)と同様の操作でポリジメチルシロキサンとポリエチレンの重量比を1.5:1.0としたマスターバッチを作成した。
得られたマスターバッチ80mgとランダムPP(PC540R、サンアロマー社製)40gから(実施例1)と同様の操作で約0.3mm厚のシートを作成し、上記の耐擦傷性試験を行い評価した。
【0127】
(実施例5)ポリジメチルシロキサンラテックスとポリエチレンラテックスのブレンド(1.0:1.0)
(実施例1)と同様の操作でポリジメチルシロキサンとポリエチレンの重量比を1.0:1.0としたマスターバッチを作成した。
得られたマスターバッチ400mgとランダムPP(PC540R、サンアロマー社製)40gから(実施例1)と同様の操作で約0.3mm厚のシートを作成し、上記の耐擦傷性試験を行い評価した。
【0128】
(比較例1)比較のシート(ランダムPP(PC540R、サンアロマー社製))作成
ランダムPP(PC540R、サンアロマー社製)40gから(実施例1)と同様の操作で約0.3mm厚のシートを作成し、上記の耐傷付性試験を行い評価した。
【0129】
(比較例2)比較のシート(ランダムPP(PC540R、サンアロマー社製)+ポリジメチルシロキサン)作成
ポリジメチルシロキサン(上記のポリジメチルシロキサンラテックスに10wt%塩化カルシウム水溶液を加えることで塩析させ、それを濾過、洗浄、乾燥したもの)80mgとランダムPP(PC540R、サンアロマー社製)40gから(実施例1)と同様の操作で約0.3mm厚のシートを作成し、上記の耐傷付性試験を行い評価した。
【0130】
上記のマスターバッチの性状の一覧を(表1)に、また、(実施例1)、(実施例2)、(実施例3)のマスターバッチをランダムPP(PC540R、サンアロマー社製)に添加して得たプレスシートの耐傷付性試験の結果を(比較例1)と(比較例2)の試験結果とともに(表2)に示す。
【0131】
なお、表−2の評価は次の基準により判断した。
1:傷が明確に観察でき、試験面が白化している。
2:傷が明確に観察できる。
3:傷がわずかに観察できる。
4:傷が観察できない。
【0132】
【表1】

【0133】
【表2】

【0134】
(表1)に示すように、ポリジメチルシロキサンは粘性の非常に高い油状であるのに対し、得られたポリジメチルシロキサンとポリエチレンのマスターバッチは粉体となりハンドリング性が向上している。特に、ポリエチレンに対するポリジメチルシロキサンの重量比が小さい場合、マスターバッチは白色粉体として得られておりハンドリング性が非常に向上している。また、得られたポリジメチルシロキサンとポリエチレンのマスターバッチをランダムPPに添加することにより、(表2)に示すように、ランダムPPの耐傷付性の改善が見られた。
【0135】
これらのことから、本手法および本手法で得られるマスターバッチは、簡便にシリコーンとポリオレフィンのマスターバッチを得る手法およびその特徴をポリオレフィンに付与できる改質剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン系ラテックスにポリオレフィン系ラテックスをブレンドした後に固体化させることを特徴とするポリオレフィン系組成物。
【請求項2】
ポリオレフィン系ラテックスが、後周期遷移金属錯体系のオレフィン重合用触媒の存在下、オレフィンモノマーを重合することにより得られることを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン系組成物。
【請求項3】
後周期遷移金属錯体系のオレフィン重合用触媒が下記一般式(1):
【化1】

(式中、Mはニッケル、パラジウム又は白金である。Eは酸素または硫黄である。Xはリン、砥素またはアンチモンである。 R、R、Rは各々独立して、水素または炭素数1〜20の炭化水素基である。Rf1はフッ素原子または炭素数1〜20のフッ素化炭化水素基である。Rは水素、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、水酸基、炭素数1〜20の炭化水素基からなるエーテル基、炭素数1〜20の炭化水素基からなるエステル基、スルホン酸塩または炭素数1〜20の炭化水素基からなるスルホン酸エステル基である。)であることを特徴とする請求項2記載のポリオレフィン系組成物。
【請求項4】
後周期遷移金属錯体系のオレフィン重合用触媒が下記一般式(2)、又は(3):
【化2】

【化3】

(式中、Mはニッケル、パラジウムまたは白金である。Eは酸素または硫黄である。Xはリン、砒素またはアンチモンである。R、R、Rは各々独立して、水素または炭素数1〜20の炭化水素基である。Yはハロゲン原子である。mは1〜3である。)
であることを特徴とする請求項2記載のポリオレフィン系組成物。
【請求項5】
一般式(1)における後周期遷移金属錯体系のオレフィン重合用触媒が下記一般式(4):
【化4】

(式中、Mはニッケル、パラジウムまたは白金である。Eは酸素または硫黄である。Xはリン、砒素またはアンチモンである。R、R、Rは各々独立して、水素または炭素数1〜20の炭化水素基である。Rf1、Rf2は各々独立してフッ素原子または炭素数1〜20のふっ素化炭化水素基である。)
で表されることを特徴とする請求項3記載のポリオレフィン系組成物。
【請求項6】
オレフィン重合用触媒のEが酸素、Xがリンであることを特徴とする請求項3〜5いずれかに記載のポリオレフィン系組成物。
【請求項7】
オレフィン重合用触媒のY又はRf1がフッ素であることを特徴とする請求項3〜6いずれかに記載のポリオレフィン系組成物。
【請求項8】
後周期遷移金属錯体系のオレフィン重合用触媒が下記一般式(5)、又は(6):
【化5】

【化6】

(式中、Mはニッケルまたはパラジウムである。R、Rは各々独立して、炭素数1〜4の炭化水素基である。R、Rは各々独立して水素原子、またはメチル基である。Rはハロゲン原子、水素原子、または炭素数1〜20の有機基である。XはMに配位可能なヘテロ原子を持つ有機基であり、Rにつながっていてもよい、またはXは存在しなくてもよい。Lは任意のアニオンである。)
であることを特徴とする請求項2記載のポリオレフィン系組成物。
【請求項9】
後周期遷移金属錯体系のオレフィン重合用触媒のMがニッケルであることを特徴とする請求項3〜8いずれかに記載のポリオレフィン系組成物。
【請求項10】
オレフィンモノマーが炭素数10以下のα‐オレフィンであることを特徴とする請求項2〜9のいずれかに記載のポリオレフィン系組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のポリオレフィン系組成物と熱可塑性樹脂との熱可塑性樹脂組成物。
【請求項12】
シリコーン系ラテックスにポリオレフィン系ラテックスをブレンドした後に固体化させることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のポリオレフィン系組成物の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれかに記載のポリオレフィン系組成物と熱可塑性樹脂を混合することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。

【公開番号】特開2008−291180(P2008−291180A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−140606(P2007−140606)
【出願日】平成19年5月28日(2007.5.28)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】