説明

ポリオレフィン系難燃性樹脂組成物および難燃性絶縁電線

【課題】比重が1.15以下と軽量化されたノンハロゲンの難燃性を有し、絶縁電線に用いた時にISO規格の45度傾斜延焼試験に合格すると共に、機械的特性や耐磨耗性にも優れたポリオレフィン系難燃性樹脂組成物を提供することにある。
【解決手段】ポリプロピレン80〜95質量%、ポリエチレン5〜20質量%からなるベース樹脂100質量部に、メラミンシアヌレート50〜110質量部を添加した、比重が1.15以下であるポリオレフィン系難燃性樹脂組成物とすることによって、解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量化された耐磨耗性や耐熱性を有するノンハロゲンのポリオレフィン系難燃性樹脂組成物およびそれを用いた難燃性絶縁電線、特に自動車用のワイヤハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
環境問題等からノンハロゲンの難燃性を有するポリオレフィン系樹脂組成物が、塩化ビニル樹脂に代わって使用されるようになってきている。しかしながら、高難燃性を得るためには大量の金属水酸化物が添加されるので、軽量化に関しては問題があった。例えば、難燃性の絶縁電線用として、水平燃焼試験や45度傾斜燃焼試験に合格するためには、ベース樹脂100質量部に対して70質量部以上添加する必要があるので、樹脂組成物の比重は1.2以上となって、金属水酸化物を使用しないポリエチレン樹脂組成物より重くなる。また、塩化ビニル樹脂組成物と比重が近くなって、比重による分別処理が困難となる問題があった。特に、自動車用のワイヤハーネスにおいては、自動車の電子化が進められているため自動車内での配線が増加し、より軽量化や薄肉化が要求されている。このため自動車用のワイヤハーネスは、特に耐熱性、耐磨耗性や難燃性等が問題となっている。また、従来から使用されているポリ塩化ビニル樹脂組成物を被覆した自動車用絶縁電線は、その廃却処分においては添加剤の鉛が問題となり、また焼却処分においては、塩素ガスやダイオキシン等の有害物質が環境上問題となっている。このためポリオレフィン系樹脂をベースとする樹脂組成物が提案されているが、難燃性を得るためには金属水和物等の難燃剤を多量に添加するため、比重が大きくなり比重による分別処理ができなかった。
【0003】
以上のような問題点を解決するための提案が種々なされている。例えば特許文献1には、ポリマー成分としてのプロピレン−エチレンブロックコポリマーおよびエチレン・酢酸ビニルコポリマー、並びに金属水酸化物を含有する難燃性樹脂組成物であって、前記ポリマー成分におけるプロピレン−エチレンブロックコポリマーの含有率が90〜45重量%で、前記エチレン・酢酸ビニルコポリマーの含有率が10〜55重量%であり、且つ前記ポリマー成分100重量部に対して、前記金属水酸化物30〜300重量部含有させた難燃性耐磨耗性樹脂組成物が記載されている。しかしながら、この難燃性耐磨耗性樹脂組成物は、エチレン・酢酸ビニルコポリマーの含有量が多くなるとポリプロピレンとの相溶性が悪くなり、機械的特性が低下する。また、ポリプロピレンの比率が高くなると、アイソタクチックポリプロピレンの特徴から結晶化度が高いために、曲げによる被覆の白化の問題があって、特に、薄肉化された自動車用絶縁電線とした場合に十分に満足できるものではなかった。さらに軽量化の問題も解決されていない。また特許文献2には、エチレン系エラストマー100重量部に対して、金属水和物51ないし500重量部が混練りされたマスターバッチと、オレフィン系樹脂とを混練りし、該オレフィン系樹脂中に前記マスターバッチがミクロ分散された状態で、架橋されてなる難燃オレフィン系樹脂組成物である。そして、エチレン系エラストマーとしてはエチレン・プロピレン・ジエン共重合体が、オレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体等が記載されている。しかしながら、この自動車用電線においても難燃性と耐磨耗性を両立させることが困難であった。また金属水和物が多量に添加されるので軽量化の問題が解決されず、塩化ビニル樹脂組成物との比重分別ができなかった。
【特許文献1】特許第3460619号公報
【特許文献2】特開平10−294021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
よって本発明が解決しようとする課題は、比重が1.15以下と軽量化されたノンハロゲンの難燃性を有し、絶縁電線として用いた時にISO6722規格の45度傾斜延焼試験に合格すると共に、機械的特性や耐磨耗性にも優れたポリオレフィン系難燃性樹脂組成物を提供することにある。また、前記の特性を有すると共に曲げによる白化特性を向上させたポリオレフィン系難燃性樹脂組成物を提供することにある。さらに、前記のポリオレフィン系難燃性樹脂組成物を用いることにより、前記の特性を有し、比重による分別が可能な難燃性絶縁電線、特に自動車用のワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記解決しようとする課題は、請求項1に記載されるように、ポリプロピレン80〜95質量%、ポリエチレン5〜20質量%からなるベース樹脂100質量部に、メラミンシアヌレート50〜110質量部を添加した、比重が1.15以下であるポリオレフィン系難燃性樹脂組成物とすることによって、解決される。
【0006】
また、請求項2に記載するように、前記80〜95質量%のポリプロピレン内、5〜30質量%がASTM D2240によって測定した表面硬度が60以下のプロピレン−αオレフィン共重合体および/またはアタクチックポリプロピレンである、比重が1.15以下である請求項1に記載のポリオレフィン系難燃性樹脂組成物とすることによって、解決される。
【0007】
さらに、請求項3に記載するように、前記ポリプロピレンは、融点が160℃以上である請求項1または2に記載のポリオレフィン系難燃性樹脂組成物とすることによって、解決される。
【0008】
また、請求項4に記載するように、前記ポリエチレンは、低密度ポリエチレンまたは直鎖低密度ポリエチレンである請求項1〜3のいずれかに記載のポリオレフィン系難燃性樹脂組成物。
【0009】
さらに、請求項5に記載する請求項1〜4のいずれかに記載のポリオレフィン系難燃性樹脂組成物が、導体上に被覆された難燃性絶縁電線。また、請求項6に記載される請求項5に記載の難燃性絶縁電線を用いて組立てられた自動車用のワイヤハーネスとすることによって、解決される。
【発明の効果】
【0010】
以上のような本発明は、ポリプロピレン80〜95質量%、ポリエチレン5〜20質量%からなるベース樹脂100質量部に、メラミンシアヌレート50〜110質量部を添加した、比重が1.15以下であるポリオレフィン系難燃性樹脂組成物としたので、軽量化されたノンハロゲンの難燃性を有し、絶縁電線に用いた時にISO6722規格の45度傾斜延焼試験に合格すると共に、機械的特性や耐磨耗性にも優れたポリオレフィン系難燃性樹脂組成物を提供することができる。
【0011】
また、前記80〜95質量%のポリプロピレン内、5〜30質量%がASTM D2240によって測定した表面硬度が60以下のプロピレン−αオレフィン共重合体および/またはアタクチックポリプロピレンである、比重が1.15以下であるポリオレフィン系難燃性樹脂組成物としたので、前記の特性を有すると共に曲げによる耐白化特性が向上し、また難燃性絶縁電線に用いた時に柔軟性を向上させることができる。
【0012】
前記ポリプロピレンとして融点が160℃以上のものを用いることによって、前記の特性を有すると共にISO 6722規格のクラス1およびクラス2の耐熱グレードとすることができる。また、前記ポリエチレンとして低密度ポリエチレンまたは直鎖低密度ポリエチレンを用いることによって、前記の特性に加えて低温脆化特性が向上する。
【0013】
さらに、前記ポリオレフィン系難燃性樹脂組成物が、導体上に被覆された難燃性絶縁電線とすることによって、比重が1.15以下と軽量化されたノンハロゲンの難燃性を有し、ISO6722規格の45度傾斜延焼試験に合格すると共に曲げによる耐白化性に優れ、また機械的特性や耐磨耗性にも優れたものになる。さらに、塩化ビニル樹脂被覆絶縁電線と比重による分別が可能な難燃性絶縁電線することができる。また、前記難燃性絶縁電線を用いて組立てた自動車用ワイヤハーネスとすることによって、前記の特性を有すると共に軽量化されたワイヤハーネスとして有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明を詳細に説明する。請求項1に記載される発明は、ポリプロピレン80〜95質量%、ポリエチレン5〜20質量%からなるベース樹脂100質量部に、メラミンシアヌレート50〜110質量部を添加した、比重が1.15以下であるポリオレフィン系難燃性樹脂組成物である。
【0015】
まず、ベース樹脂を構成するポリプロピレン(以下、PP)について説明する。本発明で用いるPPは、PPのホモポリマーのみではなくエチレンとのランダム共重合体やブロック共重合体を含むものである。また、耐磨耗性からエチレンとのブロック共重合体が好ましい。さらに、これらは混合物としても使用可能である。具体的なPPとしては、プライムポリマー社のブロック共重合体であるB701WB等が挙げられる。そしてこのPPは、ベース樹脂中に80〜95質量%の割合で添加される。これは配合量がこの範囲でないと、耐磨耗性が不足するためである。これは、PP中に一定量のポリエチレン(以下、PE)が分散されることによって、耐磨耗性が向上されることによるものである。またこのPPは、請求項3に記載されるように、融点が160℃以上であることが好ましい。このようなPPを用いることによって、ISO 6722規格に規定されるクラス1およびクラス2の耐熱グレードとして使用することが可能となるためである。
【0016】
さらに、前記PPは請求項2に記載されるように、前記80〜95質量%のPPの内、5〜30質量%をASTM D2240によって測定した表面硬度が60以下のプロピレン−αオレフィン共重合体および/またはアタクチックポリプロピレンとすることによって、得られたポリオレフィン系難燃性樹脂組成物の柔軟性を向上させることができ、難燃性絶縁電線に使用した場合に作業性等が向上できる。このように、5〜30質量%をASTM D2240によって測定した表面硬度が60以下のプロピレン−αオレフィン共重合体および/またはアタクチックポリプロピレンに置き換えるので、PPの添加量範囲は、50〜90質量%の範囲となる。なお、プロピレン−αオレフィン共重合体および/またはアタクチックポリプロピレンの表面硬度を60以下としたのは、結晶化度の低い材料を混合することで、曲げに対する白化を防止するためである。その添加量は30質量%を超えて添加すると、耐磨耗性が低下するので好ましくない。ASTM D2240によって測定した表面硬度が60以下のプロピレン−αオレフィン共重合体としては、三井化学社のタフマーXM−5070、アタクチックポリプロピレンとしては、住友化学社のT3527等がある。
【0017】
また、PPと共にベース樹脂を構成するPEは、各種のPEを使用することできる。例えば、高密度ポリエチレン(以下、HDPE)、中密度ポリエチレン(以下、MDPE)、低密度ポリエチレン(以下、LDPE)や直鎖状低密度ポリエチレン(以下、LLDPE)である。中でも、請求項4に記載されるように、LDPEやLLDPEを使用するのが好ましい。これは、柔軟性、低温脆化特性や曲げによる耐白化性を向上させるためである。そしてその割合は、ベース樹脂中に5〜20質量%の割合で添加される。これは配合量が5質量%未満であると耐磨耗性向上の効果がなく、また20質量%を超えて添加すると、耐磨耗性が低下するためである。このような割合に配合されたポリオレフィン混合物は、これをベース樹脂とし、その100質量部に対して種々の添加剤を必要な質量部数配合することによってポリオレフィン難燃性樹脂組成物を得ることができる。
【0018】
そして、前述のベース樹脂100重量部に対して、メラミンシアヌレートを50〜110重量部配合することによって、比重が1.15以下の軽量化されたノンハロゲンのポリオレフィン系難燃性樹脂組成物とすることができる。メラミンシアヌレートは、一般にポリアミドやポリウレタンの難燃剤として使用されるものであるが、分解して大量の窒素ガス等を放出するので、樹脂類の難燃剤として使用することができると共に、その比重は小さいのでポリオレフィン系難燃性樹脂組成物を軽量化することができる。また、前記難燃性樹脂組成物を導体上に被覆して製造した難燃性絶縁電線は、ISO6722規格における45度傾斜燃焼試験に合格する難燃性を得ることができる。そして、このポリオレフィン系難燃性樹脂組成物は、破断強度や破断伸び等の機械的特性と耐磨耗性にも優れた難燃性樹脂組成物である。その添加量は、50質量部未満ではISO規格の45度傾斜燃焼試験に合格する難燃性が得られず、また、110質量部を超えて添加すると機械的特性が低下し、比重が1.15以上となり比重分別ができなくなる。このようにして得られた本発明のポリオレフィン系難燃性樹脂組成物は、導体上に被覆することによって前記の特性を有すると共に、比重による分別が可能な難燃性絶縁電線、特に自動車用のワイヤハーネスとして有用である。
【0019】
前記ポリオレフィン系難燃性樹脂組成物は、各ベース樹脂およびメラミンシアヌレートの所定量を、二軸混練押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等の通常用いられる混練機で溶融混練することによって得られる。また、必要に応じて他の添加剤、例えば、酸化防止剤、老化防止剤、加工助剤、着色顔料やカーボンブラック等を、本発明の目的を損なわない範囲で適宜配合することによって、製造することができる。
【0020】
そして、前記ポリオレフィン系難燃性樹脂組成物は、請求項5に記載されるように、導体上に押出し被覆され、難燃性の絶縁電線として各種用途に使用される。すなわち、前記難燃性絶縁電線は、ノンハロゲンでISO 6722の45度傾斜燃焼試験に合格する難燃性を有すると共に、比重が1.15以下と軽量化された難燃性絶縁層となる。このことにより、塩化ビニル樹脂組成物等と比重による分別処理が可能となる。また、耐磨耗性や機械特性に優れたものである。具体的には、機械的特性として、破断強度が10MPa以上、破断伸びが150%以上のものである。また、耐磨耗性もJASO D611のスクレープ試験に準拠する、ニードル径Φ0.45mm、荷重7Nにおいて30回以上に耐えるものである。
【0021】
そして、請求項6に記載されるように、特に自動車用のワイヤハーネス(組み電線)とした場合には、その特性上から有用である。特に、電子線照射架橋した場合には、被覆が薄肉化された自動車用のワイヤハーネスとして好ましい。ワイヤハーネスは、通常0.5〜2mm程度の銅導体上に、押出し被覆によって厚さ0.1〜0.4mm程度に被覆層が施された絶縁電線が用いられる。本発明の前記ポリオレフィン系難燃性樹脂組成物は、ノンハロゲンで難燃性を有すると共に、比重が1.15以下と軽量化されたものであり、また耐磨耗性や機械特性にも優れたものであるからワイヤハーネスとして最適である。特に、電子線照射によって架橋された場合には、被覆が薄肉化できるので、より軽量化に寄与できる。また、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート等の架橋助剤を添加した場合には、電子線照射により効率的に架橋ネットワークが構築される。
【実施例】
【0022】
表1または表2に記載するポリオレフィン系難燃性樹脂組成物を用いて難燃性絶縁電線を作製し、本発明の効果を確認した。具体的は、撚り線導体(0.12mmの銅線を19本撚り)上に、厚さ0.25mmの被覆層を形成した外径1.04mmの難燃性絶縁電線である。ポリオレフィン系難燃性樹脂組成物の構成材料は、PPとしてB701WB(プライムポリマー社のブロック共重合体)、PEとしてC150(宇部社のLDPE)、プロピレン−αオレフィン共重合体としタフマーXM−5070(三井化学社製)、アタクチックポリプロピレンとしT3527等(住友化学社製)、メラミンシアヌレートはMC860(日産化学工業社製)および酸化防止剤としてチバスペシャリティケミカルズ社のイルガノックスMD1024およびイルガノックス1010を用いた。
【0023】
前記難燃性絶縁電線について、以下の試験を行った。JIS規格C3005に基づいて引張破断強度(引張速度200mm/min、標線間20mm)および引張破断伸び(引張速度200mm/min、標線間20mm)を測定し、引張破断強度が10MPa以上、引張破断伸びが150%以上を合格、それ以外を不合格とした。また、難燃性についてISO規格6722の45度傾斜燃焼試験を行った。燃焼終了後70秒以内に消化し、500mm長の試料において少なくとも50mm長残留している場合を合格、それ以外は不合格とした。さらに、自動車用低圧電線のスクレープ試験をJASO D611に準拠して行った。ニードル径Φ0.45mm、荷重7Nにおいて30回以上を合格、30回未満は不合格とした。(編肉の影響をなくすために90°ずつ回転させて12回行い、平均値で調べた)また、曲げによる白化特性を調べるために、直径6mm、3mmおよび1mmのマンドレルに6ターン巻回して、白化の発生の有無を観察した。Φ6mmのマンドレルにおいて白化が無ければ合格とした。表1に実施例の結果を、表2に比較例の結果を記載した。
【0024】
【表1】

【0025】
【表2】

【0026】
表1から明らかなとおり、実施例1〜21に記載される本発明の難燃性絶縁電線は、全ての試験項目に合格する優れたものである。すなわち、引張破断強度が10MPa以上で引張破断伸びが150%以上、また、難燃性についてISO規格6722の45度傾斜燃焼試験に合格とし、さらに、スクレープ試験で30回以上をクリアするものである。そして特に、実施例10〜21に示したPP共重合体を混合したポリオレフィン系難燃性樹脂組成物は、曲げによる白化特性にも優れたものである。詳細に説明する。実施例1〜3に記載したように、メラミンシアヌレートの添加量が50質量部の場合にはPP添加量が80〜95質量%、PEの添加量が20〜5質量%の範囲で、実施例4〜6のようにメラミンシアヌレートの添加量が80質量部においても、PP添加量が80〜95質量%、PEの添加量が20〜5質量%の範囲で、また比較例7〜9のように、メラミンシアヌレートの添加量が110質量部の場合もPP添加量が80〜95質量%、PEの添加量が20〜5質量%の範囲で、全ての試験項目に合格することが判る。但し、曲げによる白化特性に関しては、Φ3mmのマンドレルを用いた場合には白化が見られた。また、実施例10〜12のように、PP添加量が50質量%、PEの添加量が20質量%において、PP共重合体および/またはアタクチックPPの添加量が30質量部の場合には、全ての試験項目に合格することが判る。また曲げによる白化特性は、Φ1mmのマンドレルを用いても白化が見られなかった。さらに、実施例13〜15のように、PP添加量が70質量%、PEの添加量が10質量%では、PP共重合体および/またはアタクチックPPの添加量が20質量部の場合も、全ての試験項目に合格することが判る。また曲げによる白化特性は、Φ1mmのマンドレルを用いても白化が見られなかった。
【0027】
また実施例16および17のように、PP添加量が90質量%、PEの添加量が5質量%で、PP共重合体またはアタクチックPPの添加量が5質量部の場合も、全ての試験項目に合格することが判る。さらに曲げによる白化特性は、Φ3mmのマンドレルを用いても白化が見られなかった。また、実施例18および19のように、PP添加量が80質量%、PEの添加量が20質量%で、PP共重合体またはアタクチックPPの添加量が5質量部の場合も、全ての試験項目に合格することが判る。また曲げによる白化特性は、Φ3mmのマンドレルを用いても白化が見られなかった。さらに、実施例20のように、PP添加量が75質量%、PEの添加量が10質量%で、PP共重合体10質量部およびアタクチックPPの添加量が5質量部の場合、全ての試験項目に合格することが判る。また曲げによる白化特性は、Φ3mmのマンドレルを用いても白化が見られなかった。さらに実施例21のように、PP添加量が90質量%、PEの添加量が5質量%で、PP共重合体の添加量が5質量部の場合も、全ての試験項目に合格することが判る。また曲げによる白化特性は、Φ3mmのマンドレルを用いても白化が見られなかった。
【0028】
これに対して、比較例1〜10に記載される本発明から外れる例は、引張破断強度、引張破断伸び、難燃性、スクレープ試験または曲げによる白化のいずれかが不合格となった。すなわち、比較例1のように、PP量が75質量%と低くPE量が25質量%と多くなると破断伸びが不合格となり、比較例2のようにベース樹脂がPPのみであると、破断伸び、スクレープ試験が不合格となり、曲げによる白化も不合格となった。また比較例3のように、メラミンシアヌレートが40質量部と少ないと難燃性が不合格となり、さらに比較例4のようにメラミンシアヌレートが120質量部と多くなると、破断伸び並びにスクレープ試験に不合格となる。比較例5および6のように、PPおよびPEの添加量が本発明範囲内であっても、PP共重合体またはアタクチックPPの添加量がそれぞれ40質量部と多い場合には、いずれもスクレープ試験が不合格となる。また比較例7のように、PPおよびPEの添加量が本発明範囲内であっても、PP共重合体およびアタクチックPPの合計添加量が40質量部と多い場合も、スクレープ試験に不合格となる。さらに、比較例8および9のように、PPの添加量が40質量%と少なく、PP共重合体またはアタクチックPPの添加量がそれぞれ40質量%と多いと、いずれもスクレープ試験に不合格となる。また比較例10のように、PP添加量が40質量%と少なく、PP共重合体およびアタクチックPPの合計添加量が40質量部と多いと、やはりスクレープ試験に不合格となった。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上のような本発明の自動車用のワイヤハーネスは、ノンハロゲンの難燃性と比重が1.15以下に軽量化されたものであると共に、優れた耐磨耗性、耐熱性や曲げによる耐白化性を有するものであるから、高密度化された自動車用のワイヤハーネスとして十分対応でき、有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン80〜95質量%、ポリエチレン5〜20質量%からなるベース樹脂100質量部に、メラミンシアヌレート50〜110質量部を添加した、比重が1.15以下であることを特徴とするポリオレフィン系難燃性樹脂組成物。
【請求項2】
前記80〜95質量%のポリプロピレン内、5〜30質量%がASTM D2240によって測定した表面硬度が60以下のプロピレン−αオレフィン共重合体および/またはアタクチックポリプロピレンである、比重が1.15以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン系難燃性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリプロピレンは、融点が160℃以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリオレフィン系難燃性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリエチレンは、低密度ポリエチレンまたは直鎖低密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリオレフィン系難燃性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のポリオレフィン系難燃性樹脂組成物が、導体上に被覆されたことを特徴とする難燃性絶縁電線。
【請求項6】
請求項5に記載の難燃性絶縁電線を使用して組立てられたことを特徴とする自動車用ワイヤハーネス。

【公開番号】特開2007−204641(P2007−204641A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−26011(P2006−26011)
【出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】