説明

ポリオレフィン繊維

(A)80以上のアイソタクチックインデックスを有する、プロピレンホモポリマー或いは85重量%以上のプロピレンを含むプロピレンとエチレン及び/又は4〜10個の炭素原子を有するα−オレフィンとの結晶質コポリマー20〜95重量%;及び(B)80重量%以上のブテン−1誘導単位の含量;3未満の分子量分布Mw/Mn;60MPa以下の曲げ弾性率;を有する、ブテン−1とエチレン及び/又は3〜10個の炭素原子を有するα−オレフィンとのコポリマー5〜80重量%;を含むポリオレフィン組成物。その繊維及びスパンボンド(織布/不織布)、使い捨て衛生用品(たとえばおむつ)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン繊維、かかる繊維から製造される物品、及びかかる繊維を製造するためのポリオレフィン組成物に関する。特に、本発明は、それから製造される繊維に関して、複数の機械的特性の間の良好なバランス、より詳しくは良好なテナシティー及び破断点伸び、変形後の弾性回復を改良された熱接着特性と共に示すポリオレフィン組成物に関する。より詳しくは、本発明は、エラストマー性からプラストマー性までの挙動を有するブテン−1コポリマー材料をブレンドした均一なプロピレンポリマーから製造される組成物に関する。
【0002】
繊維に関する定義には、スパンボンド繊維及び/又はフィラメントが含まれる。
本発明のポリオレフィン繊維は、減少した糊付け回数又は単一の糊付けでも製造することができる使い捨ておむつのような弾性(弾性回復)及びテナシティーの両方を必要とする用途のための柔軟な不織布に特に適している。
【背景技術】
【0003】
プロピレンポリマープラストマー又はエラストマーをプロピレンポリマー樹脂とブレンドすることができ、かくして得られる組成物を用いてテナシティーと弾性との良好なバランスを有する繊維を製造することは、従来技術において公知である。国際出願WO−2005/111282−A1(Dow)においては、アイソタクチックプロピレン及び反応器グレードのプロピレンをベースとするエラストマー又はプラストマーのブレンドから製造される繊維を含む柔軟で耐摩耗性の不織ウエブ又は布帛が開示されている。このブレンドにはブテン−1ポリマーは加えられていない。
【0004】
国際出願WO−93/06168−A1(Exxon)においては、プロピレンの強度特性と、約0.89〜約0.92g/cmの密度及び1〜100dg/分のMFRを有するポリ(1−ブテン)によって与えられる布帛の風合とをバランス良く有する繊維の製造のために用いられる、結晶質ポリプロピレンとポリ(1−ブテン)(Shellによって600SAの商品名で販売されている)とを含むブレンドが開示されている。この文献においては、かかるブレンドによって得られる繊維の弾性特性及び熱接着特性に関しては言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO−2005/111282−A1
【特許文献2】WO−93/06168−A1
【発明の概要】
【0006】
ここで、驚くべきことに、本発明にしたがってブテン−1コポリマーを均一なプロピレンポリマー樹脂中にブレンドすることによって、樹脂単独を用いて製造される繊維と比較して、且つプロピレンベースのコポリマーのプラストマー及びエラストマーを含む公知のブレンドに対して、改良された特性のバランスを有する繊維に変化させることができるポリオレフィン組成物が得られることを見出した。本発明の組成物によって、保持されるか又は向上した弾性回復及び優れた熱接着力と共に、特に高い値のテナシティーが保持され、更に良好な破断点伸び及びテナシティーが示される。
【0007】
上記のように、本発明のかかる有利性は、カレンダー加工物品(スパンボンド不織)を製造する場合には、熱接着が向上して、物品の柔軟性及び弾性を悪化させることなく必要な結合強度が保持されて、製造中のサイクル時間の加速及び/又はカレンダー加工温度の低下も可能になるために、繊維及びしたがってその不織布の柔軟性も増大することである。ユーザーは、幾つかの物品、特に使い捨て衛生用品が、適当な柔軟性を良好な耐引裂性及びテナシティーと組み合わせて示すことを特に高く評価するであろう。
【0008】
したがって、本発明の一態様は、(成分A及びBの合計量に対する重量%で)
(A)80より高く、好ましくは90〜98の間のアイソタクチックインデックス(沸騰n−ヘプタン中に不溶のフラクションの重量%)を有するプロピレンホモポリマー、或いは85重量%以上のプロピレンを含み、80以上のアイソタクチックインデックスを有するプロピレンとエチレン及び/又は4〜10個の炭素原子を有するα−オレフィンとの結晶質コポリマー20〜95重量%、好ましくは40〜95重量%、より好ましくは55〜90重量%、更により好ましくは65〜75重量%;
(B)
・80重量%以上のブテン−1誘導単位の含量;
・3未満の分子量分布Mw/Mn;
・60MPa以下、好ましくは40MPa以下、より好ましくは30MPa以下の曲げ弾性率(MEF);
を有する、ブテン−1とエチレン及び/又は3〜10個の炭素原子を有するα−オレフィンとのコポリマー5〜80重量%、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは10〜45重量%、更により好ましくは25〜35重量%;
を含むポリオレフィン組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで用いる「コポリマー」という用語は、2つの異なる繰り返し単位を有するポリマー、及び連鎖中に2つより多い異なる繰り返し単位を有するポリマー、例えばターポリマーの両方を指す。
【0010】
したがって、本発明による他の態様はかかるポリオレフィン組成物から製造される繊維である。
本発明による繊維は、通常は、ポリマー(A)単独の値に対して向上又は保持された柔軟性及び弾性回復を示す。特に驚くべきことに、テナシティーはポリマー(A)単独に対して実質的に低下しない。改良された熱接着力は、保持されているか又は更に改良された弾性回復と共に特性の有利なバランスに寄与する。通常は、繊維のテナシティーは、成分(A)単独を用いて同等の紡糸条件において得られる繊維のテナシティーに対して25%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満減少する。
【0011】
上記のプロピレンホモ又はコポリマー成分(A)は、好ましくは、ISO−1133にしたがって230℃、2.16kgにおいて測定して10〜50、より好ましくは20〜35g/10分のメルトフローレートの値を有する。公知のように、高いMFR値は、重合において直接か、或いはオレフィンポリマーの紡糸ライン内又はその前のペレット化段階中に有機ペルオキシドのような遊離基生成剤を加えることによるポリマーの制御されたラジカル分解によって得られる。
【0012】
ポリマー成分(A)は、好ましくは、下記に示す方法にしたがって測定して2〜8の範囲の分子量分布(Mw/Mn)を示す。
特にチーグラー・ナッタ触媒を用いてポリマー成分(A)を製造する場合には、Mw/Mnは3〜4、好ましくは3.2〜3.4の範囲である。
【0013】
特にメタロセン触媒を用いてポリマー成分(A)を製造する場合には、Mw/Mnは2〜3、好ましくは2.4〜2.6の範囲である。
ポリマー成分(A)はアイソタクチックタイプの立体規則性を示す。これは、プロピレンホモポリマー、或いはプロピレンと、エチレン及び線状又は分岐のC〜Cα−オレフィンから選択されるα−オレフィンとのランダムポリマー、例えばプロピレンのコポリマー及びターポリマーのいずれかである。ポリマー樹脂(A)はまたかかるポリマーの混合物であってもよく、この場合には混合比は重要ではない。好ましくは、α−オレフィンは、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、及び4−メチル−1−ペンテンからなる種類から選択される。コモノマー含量の好ましい量は15重量%以下の範囲である。
【0014】
本発明によるコポリマー成分(B)は、エラストマー性からプラストマー性までの挙動を有し、「プラストマー」とも呼ぶ。成分(B)は低い曲げ弾性率、及び好ましくは、
・低い結晶化度(X線によって測定して40%未満、好ましくは30%未満);及び
・90未満の低いショアA硬度(ISO−868);
・100%変形(ISO−2285)において30%より低く、好ましくは20%より低い永久伸び;
も示す。
【0015】
成分(B)は、好ましくは以下に記載するDSC法にしたがって測定してDSCにおいて検出できる融点(TmII)を有しないが、熟成後に測定可能な溶融エンタルピーを有することができる。特に、室温において10日間熟成した後に測定して、(B)の溶融エンタルピーは25J/g未満、好ましくは4〜20J/gであってよい。
【0016】
好ましくは、コポリマー成分(B)は、ブテン−1とエチレンとのコポリマー、及びブテン−1とプロピレン及びエチレンとのターポリマーの中から選択される。コポリマー成分(B)として、
(B1)5重量%〜10重量%(15.10モル%〜18.00モル%)、好ましくは15.50モル%〜16.50モル%の範囲のエチレン誘導単位の含量を有し、好ましくは以下の特性:
(a)65より低く、好ましくは60より低いショアA硬度(ISO−868にしたがって測定);
(b)本明細書中に記載する方法にしたがって測定して、室温において10日間熟成した後に測定して4〜15J/g、好ましくは5〜10J/gの範囲の溶融エンタルピー;
を有するブテン−1/エチレンコポリマーが特に好ましい。
【0017】
(B2)3〜10重量%(7.5モル%〜18モル%)、好ましくは4〜8重量%(7.5モル%〜15モル%)のポリマー鎖中のエチレン誘導単位、及び2〜10重量%(2.5モル%〜12モル%)、好ましくは4〜7重量%(5モル%〜8.5モル%)のポリマー鎖中のプロピレン誘導単位の含量を有し;
好ましくは以下の特性:
(a)90より低く、好ましくは85より低いショアA硬度値(ISO−868にしたがって測定);及び
(b)本明細書中に記載する方法にしたがって室温において10日熟成した後に測定して12〜20J/g、好ましくは14〜18J/gの溶融エンタルピー;
を有するブテン−1/エチレン/プロピレンターポリマーが、成分(B)として更により好ましい。
【0018】
プロピレンのホモ又はコポリマー成分(A)は、通常の方法により、プロピレン、及び場合によっては上記に記載のα−オレフィンを、立体特異性チーグラー・ナッタ触媒又はメタロセン触媒のような適当な触媒の存在下で重合することによって製造することができる。
【0019】
メタロセンベースの触媒によって得られるポリマー成分(A)は、好ましくは、メタロセン化合物として橋架ベンゾインデニルジルコニウムジクロリドを用いることによって得る。次に、かかる化合物をシリカ上に担持し、当該技術において公知の手順にしたがってアルモキサン、好ましくはメチルアルモキサンを用いることによって活性化する。プロピレンポリマーは、スラリー中のプロセスを用いて、希釈剤としてプロピレンモノマー、及び直列の2つの反応器を用いることによって得る。かかる種類のプロセス及び触媒の例は、国際特許出願WO−2005/005495−A1において見られる。
【0020】
プロピレンポリマー(A)は、立体特異性Z/N触媒の存在下において、希釈剤として液体モノマー(プロピレン)を用いてプロピレンを重合することによって得られる。立体特異性チーグラー・ナッタ触媒は、いずれも塩化マグネシウム化合物上に担持されている少なくとも1つのチタン−ハロゲン結合を有する少なくとも1種類のチタン化合物及び少なくとも1種類の電子ドナー化合物(内部ドナー)を含む固体触媒成分を含む。チーグラー・ナッタ触媒系は、更に、必須の共触媒として有機アルミニウム化合物、及び場合によっては外部電子ドナー化合物を含む。好ましくは、内部電子ドナー化合物は1,3−ジエーテルから選択される。上述したように、重合プロセスは、液相中において、主希釈剤として液体プロピレンを用いて行う(バルク重合)ことが好ましい。好ましくは、バルク重合は、直列に接続されている1以上のループ反応器内で行う。かかる種類のプロセス及び触媒の例は、国際特許出願WO−2006/042815−A1において見られる。
【0021】
ブテン−1コポリマー成分(B)は、重合条件下、
(A)立体剛性メタロセン化合物;
(B)アルモキサン又はアルキルメタロセンカチオンを形成することができる化合物;及び場合によっては
(C)有機アルミニウム化合物;
を接触させることによって得られる触媒系の存在下において、ブテン−1及びエチレン並びに最終的にはプロピレンを接触させることによって得ることができる。
【0022】
好ましくは、立体剛性メタロセン化合物(A)は、下式(I):
【0023】
【化1】

【0024】
(式中、
Mは、第4族に属するものから選択される遷移金属の原子であり;好ましくは、Mはジルコニウムであり;
Xは、互いに同一か又は異なり、水素原子、ハロゲン原子、R、OR、OR’O、OSOCF、OCOR、SR、NR、又はPR基であり、ここでRは、場合によっては元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を含む、線状又は分岐で飽和又は不飽和の、C〜C20アルキル、C〜C20シクロアルキル、C〜C20アリール、C〜C20アルキルアリール、又はC〜C20アリールアルキル基であり;R’は、C〜C20アルキリデン、C〜C20アリーリデン、C〜C20アルキルアリーリデン、又はC〜C20アリールアルキリデン基であり;好ましくは、Xは、水素原子、ハロゲン原子、OR’O、又はR基であり;より好ましくは、Xは塩素又はメチル基であり;
、R、R、R、R、R、及びRは、互いに同一か又は異なり、水素原子、或いは、場合によっては元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を含む、線状又は分岐で飽和又は不飽和の、C〜C20アルキル、C〜C20シクロアルキル、C〜C20アリール、C〜C20アルキルアリール、又はC〜C20アリールアルキル基であり;或いは、RとR及び/又はRとRは、場合によっては飽和又は不飽和の5又は6員環を形成してもよく、かかる環は置換基としてC〜C20アルキル基を有していてもよく;但し、R又はRの少なくとも一方は、場合によっては元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を含む、線状又は分岐で飽和又は不飽和のC〜C20アルキル基、好ましくはC〜C10アルキル基であり;
好ましくは、R、Rは、同一であり、場合によっては1以上のケイ素原子を含むC〜C10アルキル基であり;より好ましくは、R及びRはメチル基であり;
及びRは、互いに同一か又は異なり、好ましくはC〜C10アルキル又はC〜C20アリール基であり;より好ましくは、これらはメチル基であり;
は、好ましくは水素原子又はメチル基であり;或いはRと結合して飽和又は不飽和の5又は6員環を形成してもよく、かかる環は置換基としてC〜C20アルキル基を有していてもよく;
は、好ましくは、水素原子、或いはメチル、エチル、又はイソプロピル基であり;或いはRと結合して上記に記載の飽和又は不飽和の5又は6員環を形成してもよく;
は、好ましくは、場合によっては元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を含む、線状又は分岐で飽和又は不飽和のC〜C20アルキル基;好ましくはC〜C10アルキル基であり;より好ましくは、Rはメチル又はエチル基であり;或いはRが水素原子とは異なる場合には、Rは好ましくは水素原子であり;
及びRは、互いに同一か又は異なり、場合によっては元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を含む、線状又は分岐で飽和又は不飽和のC〜C20アルキル基であり;好ましくは、R及びRは、互いに同一か又は異なりC〜C10アルキル基であり;より好ましくは、Rはメチル又はエチル基であり;Rは、メチル、エチル、又はイソプロピル基である)
に属する。
【0025】
好ましくは、式(I)の化合物は、式(Ia)又は(Ib):
【0026】
【化2】

【0027】
(式中、M、X、R、R、R、R、R、及びRは上記に記載した通りであり;
は、場合によっては元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を含む、線状又は分岐で飽和又は不飽和のC〜C20アルキル基であり;好ましくは、RはC〜C10アルキル基であり;より好ましくは、Rはメチル又はエチル基である)
を有する。
【0028】
成分(B)として用いるアルモキサンは、水と、式:HAlU3−j又はHAl6−j(式中、U置換基は、同一か又は異なり、水素原子、ハロゲン原子、場合によってはケイ素又はゲルマニウム原子を含む、C〜C20アルキル、C〜C20シクロアルキル、C〜C20アリール、C〜C20アルキルアリール、又はC〜C20アリールアルキル基であり、但し少なくとも1つのUはハロゲンとは異なり、jは0〜1の範囲であり、非整数でもある)の有機アルミニウム化合物とを反応させることによって得ることができる。この反応において、Al/水のモル比は好ましくは1:1〜100:1の範囲である。アルミニウムとメタロセンの金属との間のモル比は、一般に約10:1〜約20000:1、より好ましくは約100:1〜約5000:1の範囲である。本発明による触媒において用いるアルモキサンは、式:
【0029】
【化3】

【0030】
(式中、置換基Uは、同一か又は異なり、上記に記載した通りである)
のタイプの少なくとも1つの基を含む、線状、分岐、又は環式の化合物であると考えられる。
【0031】
特に、線状化合物の場合には、式:
【0032】
【化4】

【0033】
(式中、nは0又は1〜40の整数であり、置換基Uは上記に定義した通りである)
のアルモキサンを用いることができ;或いは、環式化合物の場合には、式;
【0034】
【化5】

【0035】
(式中、nは2〜40の整数であり、U置換基は上記に定義した通りである)
のアルモキサンを用いることができる。本発明にしたがって用いるのに好適なアルモキサンの例は、メチルアルモキサン(MAO)、テトラ(イソブチル)アルモキサン(TIBAO)、テトラ(2,4,4−トリメチルペンチル)アルモキサン(TIOAO)、テトラ(2,3−ジメチルブチル)アルモキサン(TDMBAO)、及びテトラ(2,3,3−トリメチルブチル)アルモキサン(TTMBAO)である。特に興味深い共触媒は、アルキル及びアリール基が特定の分岐パターンを有するWO−99/21899及びWO−01/21674に記載されているものである。WO−99/21899及びWO−01/21674によるアルミニウム化合物の非限定的な例は、
トリス(2,3,3−トリメチルブチル)アルミニウム、トリス(2,3−ジメチルヘキシル)アルミニウム、トリス(2,3−ジメチルブチル)アルミニウム、トリス(2,3−ジメチルペンチル)アルミニウム、トリス(2,3−ジメチルヘプチル)アルミニウム、トリス(2−メチル−3−エチルペンチル)アルミニウム、トリス(2−メチル−3−エチルヘキシル)アルミニウム、トリス(2−メチル−3−エチルヘプチル)アルミニウム、トリス(2−メチル−3−プロピルヘキシル)アルミニウム、トリス(2−エチル−3−メチルブチル)アルミニウム、トリス(2−エチル−3−メチルペンチル)アルミニウム、トリス(2,3−ジエチルペンチル)アルミニウム、トリス(2−プロピル−3−メチルブチル)アルミニウム、トリス(2−イソプロピル−3−メチルブチル)アルミニウム、トリス(2−イソブチル−3−メチルペンチル)アルミニウム、トリス(2,3,3−トリメチルペンチル)アルミニウム、トリス(2,3,3−トリメチルヘキシル)アルミニウム、トリス(2−エチル−3,3−ジメチルブチル)アルミニウム、トリス(2−エチル−3,3−ジメチルペンチル)アルミニウム、トリス(2−イソプロピル−3,3−ジメチルブチル)アルミニウム、トリス(2−トリメチルシリルプロピル)アルミニウム、トリス(2−メチル−3−フェニルブチル)アルミニウム、トリス(2−エチル−3−フェニルブチル)アルミニウム、トリス(2,3−ジメチル−3−フェニルブチル)アルミニウム、トリス(2−フェニルプロピル)アルミニウム、トリス[2−(4−フルオロフェニル)プロピル]アルミニウム、トリス[2−(4−クロロフェニル)プロピル]アルミニウム、トリス[2−(3−イソプロピルフェニル)プロピル]アルミニウム、トリス(2−フェニルブチル)アルミニウム、トリス(3−メチル−2−フェニルブチル)アルミニウム、トリス(2−フェニルペンチル)アルミニウム、トリス[2−(ペンタフルオロフェニル)プロピル]アルミニウム、トリス[2,2−ジフェニルエチル]アルミニウム、及びトリス[2−フェニル−2−メチルプロピル]アルミニウム、並びにヒドロカルビル基の1つが水素原子で置き換えられている対応する化合物、及びヒドロカルビル基の1つ又は2つがイソブチル基で置き換えられているものである。
【0036】
上記のアルミニウム化合物の中で、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)、トリス(2,4,4−トリメチルペンチル)アルミニウム(TIOA)、トリス(2,3−ジメチルブチル)アルミニウム(TDMBA)、及びトリス(2,3,3−トリメチルブチル)アルミニウム(TTMBA)が好ましい。
【0037】
アルキルメタロセンカチオンを形成することのできる化合物の非限定的な例は、式:D(式中、Dは、ブレンステッド酸であり、プロトンを供与し、式(I)のメタロセンの置換基Xと不可逆的に反応することができ、Eは、適合しうるアニオンであり、2つの化合物の反応から生成する活性触媒種を安定化することができ、十分に不安定でオレフィン性モノマーによって除去することができる)の化合物である。好ましくは、アニオンEは1つ以上のホウ素原子を含む。より好ましくは、アニオンEは、式:BAr(−)(式中、置換基Arは、同一であっても異なっていてもよく、フェニル、ペンタフルオロフェニル、又はビス(トリフルオロメチル)フェニルのようなアリール基である)のアニオンである。WO−91/02012に記載されているテトラキス−ペンタフルオロフェニルボレートが、これらの化合物の特に好ましい例である。更に、式:BArの化合物を好都合に用いることができる。このタイプの化合物は、例えば、公開国際特許出願WO−92/00333に記載されている。アルキルメタロセンカチオンを形成することのできる化合物の他の例は、式:BArP(式中、Pは置換又は非置換ピロール基である)の化合物である。これらの化合物は、WO−01/62764に記載されている。共触媒の他の例はEP−A−0775707及びDE−19917985において見ることができる。ホウ素原子を含む化合物は、DE−A−19962814及びDE−A−19962910の記載にしたがって好都合に担持させることができる。これらのホウ素原子を含む化合物は全て、約1:1〜約10:1、好ましくは1:1〜2:1の範囲、より好ましくは約1:1の、ホウ素とメタロセンの金属との間のモル比で用いることができる。
【0038】
式:Dの化合物の非限定的な例は、
トリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ボレート;
トリメチルアンモニウムテトラ(トリル)ボレート;
トリブチルアンモニウムテトラ(トリル)ボレート;
トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート;
トリプロピルアンモニウムテトラ(ジメチルフェニル)ボレート;
トリブチルアンモニウムテトラ(トリフルオロメチルフェニル)ボレート;
トリブチルアンモニウムテトラ(4−フルオロフェニル)ボレート;
N,N−ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ボレート;
N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート;
ジ(プロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート;
ジ(シクロヘキシル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート;
トリフェニルホスホニウムテトラキス(フェニル)ボレート;
トリ(メチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(フェニル)ボレート;
トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(フェニル)ボレート;
トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート;
トリフェニルカルベニウムテトラキス(フェニル)アルミネート;
フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート;
N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート;
である。
【0039】
化合物(C)として用いる有機アルミニウム化合物は、上記記載の式:HAlU3−j又はHAl6−jのものである。また、本発明の触媒は不活性担体上に担持させることもできる。これは、メタロセン化合物(A)、或いはそれと成分(B)との反応の生成物、或いは成分(B)及び次にメタロセン化合物(A)を、例えば、シリカ、アルミナ、Al−Si、Al−Mg混合酸化物、ハロゲン化マグネシウム、スチレン/ジビニルベンゼンコポリマー、ポリエチレン、又はポリプロピレンのような不活性担体上に堆積させることによって行う。担持プロセスは、炭化水素、例えばトルエン、ヘキサン、ペンタン、又はプロパンのような不活性溶媒中、0℃〜100℃の範囲の温度において行い、好ましくは、このプロセスは25℃〜90℃の範囲の温度において行い、或いはこのプロセスは室温において行う。
【0040】
用いることのできる担体の好適な種類は、活性水素原子を有する基によって官能化されている多孔質有機担体によって構成されるものである。有機担体が部分的に架橋したスチレンポリマーであるものが特に好適である。このタイプの担体は、ヨーロッパ出願EP−A−0633272に記載されている。本発明にしたがって用いるのに特に好適な不活性担体の他の種類は、ポリオレフィン多孔質プレポリマー、特にポリエチレンのものである。
【0041】
本発明にしたがって用いるための不活性担体の更なる好適な種類は、国際出願WO−95/32995に記載されているもののような多孔質ハロゲン化マグネシウムのものである。
【0042】
本発明にしたがってブテン−1をエチレン及び/又はプロピレン又は他のα−オレフィンと共に重合するためのプロセスは、液相中において、不活性炭化水素溶媒の存在下又は不存在下、例えばスラリー中で、又は気相中で行うことができる。炭化水素溶媒は、トルエンのような芳香族か、或いはプロパン、ヘキサン、ヘプタン、イソブタン、又はシクロヘキサンのような脂肪族のいずれかであってよい。概して、重合温度は、一般に−100℃〜+200℃の範囲、好ましくは40℃〜90℃、より好ましくは50℃〜80℃の範囲である。重合圧力は、一般に0.5〜100barの範囲である。
【0043】
重合温度がより低いと、得られるポリマーの得られる分子量はより高くなる。
本発明によるポリオレフィン組成物は以下のようにして製造する。ブテン−1コポリマー成分(B)は、ニート形態か又は好ましくはマスターバッチの一部としてポリマー成分(A)にブレンドすることができ、かかる場合においては、成分(B)は、ポリマー成分(A)と同一であっても異なっていてもよいプロピレンポリマー樹脂中に予め分散させる。かくして製造される濃縮液を、次にポリマー成分(A)にブレンドする。
【0044】
本発明によるプロピレンポリマー組成物は、通常の方法にしたがって、例えばポリマー成分(A)、成分(B)又はその濃縮液、並びに周知の添加剤を、ブレンダー、例えばHenschel又はBanburyミキサー中において、ポリマーの軟化温度以上の温度で混合してかかる成分を均一に分散させ、次に組成物を押出し、ペレット化して製造することができる。
【0045】
ポリマー組成物には、通常、添加剤及び/又はペルオキシドを加え、後者は所望のMFRを得るためには常に必要である。
上記のポリマー又はポリマー組成物に加えるかかる添加剤は、顔料、乳白剤、充填剤、安定剤、難燃剤、耐酸剤、及び漂白剤のようなポリマーに対する通常の添加剤を含む。
【0046】
本発明の組成物は、上記のような繊維の製造のために特に好適である。
本発明の更に他の態様は、上記の繊維を用いて製造される物品、特に不織布に関する。
繊維及び繊維を用いて製造される物品はいずれも、公知の方法にしたがって製造する。特に、本発明の布帛は、スパンボンド不織布を製造するための周知の方法を用いて製造することができ、これによると、繊維を展開して直接繊維ウエブを形成し、不織布が得られるようにカレンダー加工する。
【0047】
通常のスパンボンドプロセスにおいては、ポリマーを押出機内においてポリオレフィン組成物の融点に加熱し、次に溶融したポリオレフィン組成物を、所望の直径の複数のオリフィスを含む紡糸口金を通して加圧下でポンプによって押出し、それによってフィラメントをその後に延伸にかけることなく溶融ポリマー組成物のフィラメントを製造する。
【0048】
この装置は、その紡糸ヘッド上にダイを有する押出機、冷却塔、ベンチュリ管を用いる空気吸込回収装置を含むことを特徴とする。
この装置の下で、フィラメント速度を制御するために空気速度を用い、フィラメントを通常はコンベヤーベルト上に集め、そこで周知の方法にしたがって分配してウエブを形成する。
【0049】
・通常のスパンボンド機を用いる場合には、通常は以下のプロセス条件:0.3〜0.8g/分、好ましくは0.4〜0.6g/分の範囲の孔あたりの排出量を適用することが好都合である。
【0050】
・紡糸口金の面から供給される溶融ポリマーフィラメントは、一般に空気流を用いて冷却し、冷却の結果、固化させる。
・紡糸温度は一般に200℃〜300℃である。
【0051】
布帛は、単層又は多層不織布によって構成することができる。
好ましい態様においては、不織布は多層であり、少なくとも1つの層はかかるポリオレフィン組成物から形成される繊維を含む。他の層はスパンボンド以外の紡糸プロセスによって得ることができ、他のタイプのポリマーを含ませることができる。
【実施例】
【0052】
以下の実施例において詳細を与える。これらは本発明を限定することなく例示するために与えるものである。
詳細な説明及び実施例において報告する特性を求めるために以下の分析法を用いた。
【0053】
・メルトフローレート:
ISO法1133(MIL:230℃及び2.16kg;MIE:190℃及び2.16kg)にしたがって求めた。
【0054】
・ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によるMWD及びMw/Mnの測定:
赤外検出器IR4 POLIMERCHAR及びTSKカラムセット(タイプGMHXL-HT)を備えたWaters 150-C ALC/GPCシステムを用い、溶媒として1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)(0.1volの2,6−ジ−t−ブチルp−クレゾール(BHT)で安定化)を用いて1mL/分の流速で135℃において運転して分子量分布MWD曲線を求めた。試料を140℃の温度において1時間連続的に撹拌することによってTCB中に溶解した。
【0055】
0.45μmのテフロン膜を通して溶液を濾過した。濾液(濃度:0.08〜1.2g/L;注入体積:300μL)をGPCにかけた。ポリスチレンの単分散フラクション(Polymer Laboratoriesによって提供)を標準試料として用いた。PS(K=1.21×10−4dL/g;α=0.706)、及びPB(K=1.78×10−4dL/g;α=0.725)、PE(K=4.06×10−4dL/g;α=0.725)、PP(K=1.90×10−4dL/g;α=0.725)に関するMark-Houwink定数の一次結合を用い、コポリマー中のコモノマー含量に関して加重することによって、PBコポリマーに関する普遍較正を行った。市販のソフトウエアWater Empower v.1を用いて、データの獲得並びにMWD、特に
【0056】
【化6】

【0057】
の比を求めるための処理を行った。
・コモノマー含量:
IR分光法によるか、又はNMR(示している場合)によって求めた。
【0058】
特にブテン−1コポリマー成分(B)に関しては、コモノマーの量は、実施例のコポリマーの13C−NMRスペクトルから計算した。ジ重水素化1,1,2,2−テトラクロロエタン中のポリマー溶液(8〜12重量%)について120℃において測定を行った。13C−NMRスペクトルは、120℃においてフーリエ変換モードで150.91MHzで運転するBruker AV-600分光計上で、90°のパルス、パルス間の遅延15秒、及びCPD(WALTZ16)を用いて獲得してH−13Cカップリングを除去した。60ppm(0〜60ppm)のスペクトルウインドウを用いて約1500の過渡スペクトルを32Kのデータ点で保存した。
【0059】
NMRによるコポリマーの組成:
以下の関係式を用いて13C−NMRスペクトルからダイアド分布を計算した。
PP=100・I/Σ
PB=100・I/Σ
BB=100(I−I19)/Σ
PE=100(I+I)/Σ
BE=100(I+I10)/Σ
EE=100(0.5(I15+I+I10)+0.25(I14))/Σ
ここで、Σ=I+I+I−I19+I+I+I+I10+0.5(I15+I+I10)+0.25(I14
モル含量は以下の関係式を用いてダイアドから得た。
【0060】
P(m%)=PP+0.5(PE+PB)
B(m%)=BB+0.5(BE+PB)
E(m%)=EE+0.5(PE+BE)
、I、I、I、I、I、I、I10、I14、I15、I19は、13C−NMRスペクトルにおけるピークの積分値である(参照として29.9ppmにおけるEEEシーケンスのピーク)。これらのピークの割当は、J.C. Randal, Macromol. Chem. Phys., C29, 201 (1989)、M.Kakugo, Y.Naito, K.Mizunuma, 及びT.Miyatake, Macromolecules 15, 1150 (1982)、及びH.N. Cheng, Journal of Polymer Science, Polymer Physics Edition, 21, 57 (1983)にしたがって行った。これらを表Aにまとめる(命名は、C.J.Carman, R.A.Harrington, 及びC.E.Wilkes, Macromolecules 10, 536 (1977)にしたがう)。
【0061】
【表1】

【0062】
・25℃におけるキシレン中の溶解度(XS):
2.5gのポリマーを、135℃、撹拌下で250mLのキシレン中に溶解した。20分後、溶液を撹拌下で25℃に冷却し、次に30分間沈降させた。濾紙を用いて沈殿物を濾過し、溶液を窒素流下で蒸発させ、残渣を一定重量になるまで真空下80℃において乾燥した。このようにして、残渣から、ポリマー可溶分の重量%(25℃におけるキシレン可溶分=XS25℃)を計算した。0℃においてo−キシレン中に不溶のフラクション(25℃におけるキシレン不溶分=XI25℃)は、
XI%25℃=100−XS%25℃
である。
【0063】
雰囲気温度(25℃)においてキシレン中に不溶のポリマーの重量%は、ポリマーのアイソタクチックインデックスと考えられる。この値は、定義によりポリプロピレンのアイソタクチックインデックスを構成する、沸騰n−ヘプタンで抽出することによって求められるアイソタクチックインデックスに実質的に相当する。
【0064】
・曲げ弾性率(MEF):ISO法178にしたがって求めた。
・ショアA:
ISO−868にしたがって、15秒の負荷時間で測定した。
【0065】
・引張特性(プラークについて):
ISO−527-Tensileにしたがい、Brabender内で関連するコポリマー試料を1%の2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)と180℃において混合することによって得たポリマー組成物の圧縮成形(200℃、30℃/分の冷却を用いた)によって得た厚さ1.9mmのプラークについて測定した。他に示す場合を除いて、全ての機械的測定は、試験片をオートクレーブ内において室温及び2kbarの圧力に10分間保持した後に行った。
【0066】
・永久伸び:
ISO−2285にしたがって測定した。
・固有粘度[η]:
テトラヒドロナフタレン中135℃において求めた(ASTM−2857−70)。
【0067】
・熱特性:
ブテン−1ポリマーの融点(TII)は、以下の方法にしたがって、Perkin Elmer DSC-7装置上での示差走査熱量測定(DSC)によって測定した。
【0068】
重合から得られた秤量した試料(5〜6mg)をアルミニウム皿中に密封し、10℃/分に相当する走査速度で180℃に加熱した。試料を180℃に5分間保持して全ての結晶を完全に溶融させた。引き続いて、10℃/分に相当する走査速度で−20℃に冷却した後、ピーク温度を結晶化温度(T)としてとった。−20℃において5分間静置した後、試料に対して10℃/分に相当する走査速度での180℃への2回目の加熱を行った。この2回目の加熱操作において、ピーク温度が検出された場合にはこれを結晶形態IIの融点(TII)として、面積を国際標準溶融エンタルピー(ΔHII)としてとった。
【0069】
10日後の溶融エンタルピーは、以下のようにして、Perkin Elmer DSC-7装置上での示差走査熱量測定(DSC)を用いることによって測定した。
重合から得られた秤量した試料(5〜10mg)をアルミニウム皿中に密封し、20℃/分に相当する走査速度で200℃に加熱した。試料を200℃に5分間保持して全ての結晶を完全に溶融させた。次に、試料を室温において10日間貯蔵した。10日後に、試料をDSCにかけ、−20℃に冷却し、次に10℃/分に相当する走査速度で200℃へ加熱した。この加熱操作において、ピーク温度を融点(T)として、面積を10日後の国際標準溶融エンタルピー(ΔH)としてとった。
【0070】
・X線結晶化度:
固定スリットによるCu−Kα1放射線を用い、6秒毎に0.1°の段階で2θ=5°と2θ=35°の回折角の間のスペクトルを集めて、X線回折粉末回折計でX線結晶化度を測定した。
【0071】
XRD測定は、DSCアルミニウム皿中にアニールした試料について直接行った。試料を室温から180℃に10℃/分で加熱し、180℃において5分間放置し、次に10℃/分で20℃に冷却するDSCにおいて、試験片をコンディショニングした。XRD測定にかける前に、試料を室温及び雰囲気圧のDSC皿中に10日間放置した。
【0072】
得られた回折パターンを用いて、%Cr=100×Ca/Ta(ここで、Taはスペクトルのプロファイルと基準線との間の面積(カウント/秒・2θで表す)であり、Caはスペクトルのプロファイルとアモルファスのプロファイルとの間の面積(カウント/秒・2θで表す)である)として表される結晶化度の計算のために必要な全ての成分を誘導した。
【0073】
・フィラメントのテナシティー及び破断点伸び:
500mの粗紡糸から長さ100mmのセグメントを切断した。このセグメントから、試験する単繊維をランダムに選択した。試験するそれぞれの単繊維をInstron動力計(モデル1122)のクランプに固定し、クランプ間の初期距離を20mmとして、100%より低い伸びに関しては20mm/分、100%より大きい伸びに関しては50mm/分の牽引速度で破断するまで引っ張った。極限強さ(破断時の負荷)及び破断点伸びを求めた。
【0074】
以下の等式を用いてテナシティーを誘導した。
テナシティー=極限強さ(cN)×10/繊度(dtex)。
・フィラメントの弾性回復:
動力計を用いて23℃において弾性回復を測定した。実施例において示す押出/紡糸条件にしたがって紡糸繊維の試料を調製した。上記のように500mの粗紡糸から単繊維をランダムに選択した。
【0075】
以下の条件下の2つの変形サイクルを試料に適用した。
第1サイクル:
・初期クロスヘッド距離:200mm;
・クロスヘッド速度:3.3mm/秒;
・最大変形における最大クロスヘッド距離:400mm;
・最大クロスヘッド距離における弛緩時間:60秒;
・逆クロスヘッド速度:3.3mm/秒;
・変形サイクルの終了時におけるクロスヘッド時間(クロスヘッド距離:200mm):180秒;
第2サイクル:
・初期クロスヘッド距離:200mm;
・クロスヘッド速度:3.3mm/秒。
【0076】
・残留変形率:これは、ロードセルを開始して次式に対応する第2のサイクルにおける引張力を記録した際に記録された変形の割合の値である。
残留変形率=100×(現時点のクロスヘッド距離−初期クロスヘッド距離)/(初期クロスヘッド距離)
・試験の終了:
弾性回復(%)は、最大変形(400mm、200mmの初期クロスヘッド距離に関する100%変形に対応する)から上記に定義の残留変形率を減じた割合の値である。
【0077】
・熱接着強度:
実施例において示す押出/紡糸条件にしたがって製造した紡糸繊維試料について、動力計を用いて熱接着強度を測定した。上記のように500mの粗紡糸から単繊維をランダムに選択した。
【0078】
試料を接着にかけ、以下の条件下で接着強度を測定するために試験した。
接着条件:
・温度:150℃(異なって示されていない場合);
・フィラメント繊度:4000dTex;
・折り畳み回数:4000dTexの最終繊度を得る回数;
・接着時間:1秒;
・接着圧力:800N。
【0079】
力測定条件(曲線下の平均面積,cN):
・クロスヘッド速度:20mm/分;
・初期クロスヘッド距離:20mm。
【0080】
実施例及び比較例において用いるポリマー成分:
以下のアイソタクチックプロピレンホモポリマー(A)を用いた。
【0081】
【表2】

【0082】
ポリマーA1〜A2は、立体特異性Z/N触媒の存在下において、希釈剤として液体モノマー(プロピレン)を用いてプロピレンを単独重合することによって直接製造された、報告するMFR値及び分子量分布を有する市販のポリマーである。
【0083】
ポリマーA3〜A4は、上記のメタロセンタイプの触媒の存在下でプロピレンを単独重合することによって直接製造された、報告するMFR値及び分子量分布を有する市販のポリマーである。
【0084】
以下のブテン−1コポリマー(B2)を製造し、用いた。
メタロセン化合物の合成:
WO−01/47939にしたがって、ジメチルシランジイル{(1−(2,4,7−トリメチルインデニル)−7−(2,5−ジメチルシクロペンタ[1,2−b:4,3−b’]−ジチオフェン)}ジルコニウムジクロリド(A1)を調製した。
【0085】
触媒溶液の製造:
メチルアルモキサン(MAO)は、Albermarleによって30%wt/wtトルエン溶液(d=0.92g/mL)として供給され、これをそのまま用いた。標準的なトリイソブチルアルミニウムアルキル(TIBA)が、Cromptonによって純粋な化学薬品として供給され、これを無水イソドデカン又はシクロヘキサンで更に希釈して、約100g/Lの濃度を有する無色の溶液を得た。全ての化学薬品は標準的なSchlenk法を用いて取り扱った。
【0086】
触媒C2A1:
(MAO/TIBA、AlTOT/Zr=400モル/モル、AlMAO/Zr=267モル/モル、トルエン/イソドデカン中):
62.7mgのA1を、室温、窒素雰囲気下において、磁気スターラーを備えた100mLのSchlenkフラスコ中に充填した。同時に、6.05mLのトルエン中30重量%のMAO Albemarle(28.8ミリモル、AlMAO/Zr=267)を、室温、窒素雰囲気下において、50mLのSchlenkフラスコ中に充填した。次に、シクロヘキサン中のトリイソブチルアルミニウム(TIBA)(25mL、濃度114g/L、14.4ミリモル、AlTIBA/Zr=133、AlTOT/Zr=400モル/モル、MAO/TIBA=2/1モル/モル)を、室温においてMAOに加えて無色の溶液を得て、これを室温において1時間撹拌した。最後に、イソドデカン/トルエン中のアルキルのこの溶液を、室温、窒素雰囲気下において、14mLの無水シクロヘキサン中に予め懸濁したメタロセンにゆっくりと加えた。得られた明澄な暗赤色の触媒溶液を室温において1〜2時間撹拌し、これをそのまま重合において用いた。溶液濃度は溶液1リットルあたり触媒合計量(メタロセン+MAO+TIBA)100gであり、Z39Meの濃度は、溶液1mLあたり1.39mgのメタロセンとなる量であった。
【0087】
B2の重合:
液体ブテン−1、プロピレン、及びエチレンが液体媒体を構成する直列に接続した2つの撹拌反応器を含むパイロットプラントにおいて重合を行った。触媒系C2−A1を、3g/時の供給速度で第1の30L反応器中に注入し、表1に報告するデータにしたがって水素、1−ブテン、プロピレン、及びエチレンを供給しながら、70℃の重合温度において重合を連続的に行った。2つの反応器の圧力は、24bargにおいて一定に保持した。1−ブテンポリマーを溶液から溶融体として回収し、ペレットに切断した。重合条件を表1に報告し、得られたコポリマーB2の特徴を表2に報告する。
【0088】
B1の重合:
プロピレン供給を行わずにB2の製造に関する実験を繰り返した。重合条件を表1に報告し、コポリマーB1の特徴を表2に報告する。
【0089】
【表3】

【0090】
【表4】

【0091】
実施例1〜12
表3に示すポリマー成分、及び下記に示す添加剤を、Leonard 25押出機内において、以下の条件下で混合及び押出すことによってポリマー組成物を調製した。
【0092】
・ポリマー組成物の溶融温度:(表3に報告);
・長さ:70cm;
・直径:25mm;
・圧縮比:3。
【0093】
組成物は、0.03重量%のステアリン酸カルシウム及び0.08重量%のIrgafos 168を含んでいた。
ポリマー成分及びかくして得られた組成物の特性を表3に報告する。
【0094】
次に、組成物を、以下に示す条件で操作することによって紡糸にかけた。
・紡糸温度:ポリマー組成物の溶融温度に等しい;
・孔直径:0.6mm;
・長さ/直径(l/d):5;
・繊度:2.2dtex;
・紡糸速度:2700m/分。
【0095】
紡糸繊維を回収し試験した。表3に繊維の特性を報告する。
対照例1及び2(1R、2R)
対照例として、ベース材料であるポリマー成分(A)を用いて実施例1を繰り返した。ブテン−1コポリマー(B)を加えずにポリマーA1及びA2を紡糸した。
【0096】
表3に繊維の特性を報告する。
【0097】
【表5】

【0098】
比較例13〜15
ブテン−1コポリマー(B)に代えて、ExxonによってVistamaxx 4200の商品名で販売されているポリプロピレンベースのプラストマーを加えた他は実施例1を繰り返した。ポリマー成分及びそれらの量を表4に報告する。
【0099】
【表6】

【0100】
実施例16〜26
実施例1〜12に関して用いたものと同じ条件下において、表5に示すポリマー成分及び下記に示す添加剤をLeonard 25押出機内で混合及び押出すことによってポリマー組成物を調製した。
【0101】
ポリマー成分及びかくして得られた組成物の特性を表5に報告する。
次に、実施例1〜12に関して示したものと同じ条件下で操作することによって組成物を紡糸にかけた。
【0102】
紡糸された繊維を回収し、試験した。表5に繊維の特性を報告する。
対照例3及び4(3R、4R):
対照として、ブテン−1コポリマー(B)を加えずに、ポリマー成分(A)としてポリマーA3及びA4を用いてポリマー組成物を調製した。
【0103】
ポリマー成分及びそれらの量を表5に報告する。
【0104】
【表7】

【0105】
比較例27
本発明によるブテン−1コポリマー(B)の代わりに、半結晶質ポリブテンホモポリマーBc(メルトフローレート(MFR)=0.4g/10分(190℃/2.16kg);曲げ弾性率=450MPa(ISO−178);TmII=115.9)を加えた他は、実施例1を繰り返した。ポリマー成分及びそれらの量を、比較のために実施例1、7、及び対照例1Rと共に表6において報告する。
【0106】
【表8】

【0107】
この比較例は、本発明にしたがってブテン−1コポリマー(B)を加えることによって変性したプロピレンポリマー(A)は、結晶質ポリブテン−1ポリマーによって変性したプロピレンポリマー(A)よりも高いテナシティー及び高い弾性回復を有することを示す。特に、弾性回復は、本発明による繊維ブレンドに関しては30%より高い。成分(B)がより好ましいターポリマー成分(B2)である場合には、繊維をより高い紡糸速度(好ましくは4000m/分より高い)で得ることができるという更なる有利性が観察される。より高い紡糸速度は増加した繊維製造速度を意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)80以上のアイソタクチックインデックスを有する、プロピレンホモポリマー或いは85重量%以上のプロピレンを含むプロピレンとエチレン及び/又は4〜10個の炭素原子を有するα−オレフィンとのコポリマー20〜95重量%;及び
(B)
・80重量%以上のブテン−1誘導単位の含量;
・3未満の分子量分布Mw/Mn;
・60MPa以下の曲げ弾性率;
を有する、ブテン−1とエチレン及び/又は3〜10個の炭素原子を有するα−オレフィンとのコポリマー5〜80重量%;
を含むポリオレフィン組成物。
【請求項2】
コポリマー成分(B)が5重量%〜10重量%の範囲のエチレン誘導単位の含量を有するブテン−1/エチレンコポリマーである、請求項1に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項3】
コポリマー成分(B)が、ポリマー鎖中に3〜10重量%のエチレン誘導単位、及びポリマー鎖中に2〜10重量%のプロピレン誘導単位の含量を有するブテン−1/エチレン/プロピレンターポリマーである、請求項1に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の組成物を用いて製造される繊維。
【請求項5】
請求項4に記載の繊維を含む不織布。
【請求項6】
請求項4に記載の繊維を含むおむつ。

【公表番号】特表2012−512919(P2012−512919A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541292(P2011−541292)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066278
【国際公開番号】WO2010/069775
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(506126071)バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ (138)
【Fターム(参考)】