説明

ポリオールの製造方法

アルキレンオキシドを供給する工程、平均官能価が少なくとも4である開始剤組成物を供給する工程、およびアルカリ土類金属水酸化物とアミンとを供給する工程からなるポリオールの製造方法。本方法は、またアルカリ土類金属水酸化物とアミン存在下で開始剤組成物とアルキレンオキシドとを反応させてポリオールを製造する工程を含む。この結果、高速・高収量で、コストを低下させ製造効率が最大としながら、一定の鎖長を有するポリオールを得ることができる。このポリオールはイソシアネートと反応させて、ポリウレタン成形物の製造に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にポリオールの製造方法およびそのポリオールから製造されるポリウレタン成形物に関する。より具体的には、本発明は、アルカリ土類金属水酸化物とアミンの存在下においてポリオールを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いろいろなポリオール類の製造方法が知られている。ある方法では、ショ糖とグリセリン(両方で平均官能価が7未満となる)とを、アルキレンオキシドと反応させている。通常、触媒量の水酸化カリウム及び/又はアミンの存在下でショ糖とグリセリンとアルキレンオキシドを反応させてポリオールを得ている。この反応はアルコキシル化反応であり、ショ糖及び/又はグリセリンのヒドロキシル基上にアルキレンオキシド単位の鎖を形成する。
【0003】
水酸化カリウム単独の存在下でもアミンとの共存下ででも、このアルコキシル化反応は進行する。しかし、このアルコキシル化反応は、ショ糖及び/又はグリセリンのヒドロキシル基上に形成されている既存のアルキレンオキシド単位の上に、さらに不均一な数のアルキレンオキシド単位を加えることとなる。この結果、鎖長が不均一となり、ショ糖が未反応でポリオール中に不純物として残ることとなる。また、水酸化カリウムを使用すると、起泡性を低下させる成分をポリオール中に残すこととなる。そのため、カリウムを除く必要があるが、製造速度が低下し、製造収率が低下し、製造コストが増加するため、工業的に実施するには適当でない。
【0004】
アミン単独の存在下では、このアルコキシル化反応で、アルキレンオキシド単位の数が増加したり不均化することはない。重合が起こると、つまりショ糖及び/又はグリセリンのヒドロキシル基1モル当たりのアルキレンオキシドのモル数が増加すると、アミンの触媒活性は低下する。具体的には、上記のモル数が2を超えると、またはポリオールのヒドロキシル価が350mgKOH/g未満となると、アミンの触媒効果がなくなる。
【0005】
水酸化カリウム及び/又はアミン類の使用に伴う難点を克服するため、いろいろな検討がなされた。しかしながら、これらの方法はコスト的に効果的でなく、ポリオールを高収率で得ることができなかった。検討された方法の一つは、ショ糖とグリセリンと、アルキレンオキシドとの逐次反応である。具体的には、鎖長が、ショ糖及び/又はグリセリンのヒドロキシル基の1モル当たりのアルキレンオキシド数が約1モルとなるまで、アミンの存在下でショ糖とグリセリンとをアルキレンオキシドと反応させる。その時点で反応を停止し、水酸化カリウムを加えてポリオールを製造する。しかしながら、この逐次反応では、水酸化カリウムを添加するために製造工程を停止する必要があり、製造速度が低下する。また、この逐次反応は、収率を低下させてコストを増加させるため、工業的に使用するには望ましくない。
【0006】
アルカリ土類金属水酸化物とアミンの存在下でポリオールとイソシアネートを用いて発泡体や界面活性剤を製造することも知られている。しかしこれらの場合には、アルカリ土類金属水酸化物とアミンが、開始剤組成物のアルコキシル化の触媒としてポリオールの製造に用いられているのでなく、発泡体及び/又は界面活性剤の製造に使用される時に同じように機能しているのではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、一定の鎖長をもつポリオールを、高速・高収率で、コストを低下させ効率を最大にして製造する方法が望まれる。このポリオールからポリウレタン成形物を製造することもできる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はポリオールの製造方法を提供する。本方法は、アルキレンオキシドを供給する工程と、平均官能価が少なくとも4である開始剤組成物を供給する工程とを含む。本方法はまた、アルカリ土類金属水酸化物とアミンとを供給する工程を含む。本方法はさらに、アルカリ土類金属水酸化物とアミンの存在下で開始剤組成物とアルキレンオキシドとを反応させてポリオールを製造する工程を含む。本発明はまた、アルカリ土類金属水酸化物とアミンの存在下で開始剤組成物とアルキレンオキシドとを反応させて得た反応生成物を含むポリオールを提供する。さらに、本発明は、イソシアネートと本発明のポリオールとの反応生成物を含むポリウレタン成形物を提供する。
【0009】
アルカリ土類金属水酸化物とアミンとを組合わせて使用することで、ポリオールの製造においてアミン触媒からアルカリ土類金属水酸化物触媒への切り替えがスムーズに行われる。このため製造工程を停止する必要がなくなる。また、高速・高収率で、コストを下げ、効率を最大として、一定鎖長のポリオールを得ることができるようになる。
【0010】
[図面の簡単な説明]
次の添付図表とともに以下の詳細な説明を参照することで、本発明の他の利点が容易に明確となり、よりよい理解が可能となる。
【0011】
図1は、ジメチルエタノールアミンと水酸化ストロンチウム八水和物の存在下で開始剤組成物のアルコキシル化を行うポリオールの試験製造プロセスの概要と、プロピレンオキシド添加率、圧力、および温度の経時変化を示す線グラフであり、
図2は、ジメチルシクロヘキシルアミンの存在下での開始剤組成物のアルコキシル化を行うポリオール製造の第一比較方法と、プロピレンオキシド添加率、圧力、および温度の経時変化を示す線グラフであり、
図3は、水酸化ストロンチウム八水和物の存在下での開始剤組成物のアルコキシル化を行うポリオール製造の第二比較方法と、プロピレンオキシド添加率、圧力、および温度の経時変化を示す線グラフである。
【0012】
発明の詳細な説明
ポリオールの製造方法が開示されている。本方法は、アルキレンオキシドを供給する工程と平均官能価が少なくとも4である開始剤組成物を供給する工程とを含む。本方法はさらに、アルカリ土類金属水酸化物とアミンとを供給する工程を含んでいる。このアルカリ土類金属水酸化物とアミンとを供給する工程は、アルカリ土類金属水酸化物とアミンとの組合わせを供給すると定義してもよい。しかし、アルカリ土類金属水酸化物とアミンを個別に供給してもよい。個別に供給する場合には、本方法は、好ましくはアルカリ土類金属水酸化物を供給する前にアミンを供給する工程を有する。あるいは、本方法は、アミンを供給する前にアルカリ土類金属水酸化物を供給する工程を有していてもよい。
【0013】
本方法はまた、アルカリ土類金属水酸化物とアミンの存在下で開始剤組成物とアルキレンオキシドとを反応させてポリオールを製造する工程を有していてもよい。上記のポリオールや、アルカリ土類金属水酸化物、アミンの各々について、以下により詳細に記載する。また、本方法により得られるポリオールも開示する。さらに、イソシアネートと本発明の方法により得られるポリオールの反応生成物を含むポリウレタン成形物をもまた、開示する。これらポリウレタン成形物や本方法については、後ほどより詳細に記載する。
【0014】
ポリオールの製造に用いられる開始剤組成物の平均官能価は少なくとも4である。好ましくは、開始剤組成物の平均官能価は少なくとも6である。ある実施様態においては、この開始剤組成物は、ショ糖、ソルビトール、またはこれらの混合物を含有している。好ましくは、本開始剤組成物は、米国ミシガン・シュガー社製造の「ビッグチーフグラニュー糖」という商品名のショ糖を含んでいる。しかしながら、この開始剤組成物は、ショ糖以外に、少なくとも6個のヒドロキシル基を有する非還元糖を含有していてもよい。このような開始剤組成物を組合わせて使用してもよい。
【0015】
この開始剤組成物は、2種以上の開始剤の混合物を含んでいてもよい。ある実施様態においては、この開始剤組成物は、ショ糖、ソルビトール、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる第一の開始剤とグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる第二の開始剤とを含有している。もう一つの実施様態においては、この開始剤組成物が、ショ糖とグリセリンを含有している。もし開始剤組成物が第二の開始剤を含有する場合、この第二の開始剤は公知の何れ開始剤であってもよく、低分子量の二官能性及び/又は多官能性アルコール類とアミン類を含んでいてもよい。好ましくは、第二の開始剤の官能価は2〜6であり、より好ましくは3〜5である。最も好ましくは、第二の開始剤の官能価は3である。もう一つの実施様態においては、第二の開始剤は、プロクター・アンド・ギャンブル社より商品名スペロール(R)で入手可能であるグリセリンを含んでいる。他の好適な第二の開始剤を使用することもでき、その例としては、1,1,1−トリメチロールプロパンなどのトリメチロール−アルカン類があげられる。第二の開始剤を組合わせて使用してもよい。
【0016】
開始剤組成物中の第一の開始剤及び/又は第二の開始剤の量は任意である。ある実施様態においては、好ましくは、第一の開始剤は、100重量部の開始剤組成物に対して少なくとも30重量部の量で存在している。また、第二の開始剤は、100重量部の開始剤組成物に対して、好ましくは40重量部未満の量で、より好ましくは30%未満、最も好ましくは20%未満の量で存在する。ある実施様態においては、第一の開始剤の量と第二の開始剤の量の合計が開始剤組成物の総量に相当するような量で、第二の開始剤が存在している。
【0017】
この開始剤組成物は、アルカリ土類金属水酸化物とアミンの存在下でアルキレンオキシドと反応して、ポリオールを形成する。このアルキレンオキシドは、既知のいずれのアルキレンオキシドであってもよいが、好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、アミレンオキシド、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。より好ましくは、このアルキレンオキシドは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。最も好ましくは、このアルキレンオキシドは、プロピレンオキシドを含んでいる。この開始剤組成物は、当業界の熟練者の求めに応じて、特定のヒドロキシル価をもつポリオールを得るためにいかなる量のアルキレンオキシドと反応させてもよい。この開始剤組成物とアルキレンオキシドとの反応は開環アルコキシル化反応であり、第一の開始剤及び/又は第二の開始剤のヒドロキシル基上にアルキレンオキシド単位の鎖を結合させてポリオールを形成する。この反応によりアルキレンオキシド単位からなりほぼ長さの等しい鎖をもつポリオールを形成され、結果として、このポリオールがばらつきのない物理化学的性質を有することが好ましい。
【0018】
前述のようにまず最初にアルカリ土類金属水酸化物が供給されるが、本ポリオールは、アルカリ土類金属水酸化物の存在下で形成される。アルカリ土類金属類は、周期律表の第二族に属す金属であり、アルカリ金属類は周期律表の第一族に属す金属である。本発明には、第一族に属すアルカリ金属類が含まれない。このアルカリ土類金属水酸化物は、好ましくは水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。アルカリ土類金属水酸化物は、水酸化ストロンチウムであことが最も好ましい。このアルカリ土類金属水酸化物には、水和物も含まれる。好適な水和物の例としては、一水和物〜九水和物およびこれらの組み合わせがあげられるが、これらに限定されるわけではい。特に好適な水和物は、八水和物である。ある実施様態においては、このアルカリ土類金属水酸化物は、米国ノアテクノロジー社から販売されている水酸化ストロンチウム八水和物である。このアルカリ土類金属水酸化物は、上記開始剤組成物、アルキレンオキシド、およびアミンとともに、100重量部のポリオールに対して、好ましくは0.01〜1重量部、より好ましくは0.1〜0.75重量部、最も好ましくは0.2〜0.5重量部の量で存在している。
【0019】
アルカリ土類金属水酸化物に加えて、アミンの存在下ででも、ポリオールが形成され、また開始剤組成物とアルキレンオキシドとが反応する。このアミンは、公知のいずれのアミンであってもよく、第一級アミン、第二級アミン、または第三級アミンのいずれでもよい。このアミンはまた、第一級アミン、第二級アミン及び/又は第三級アミンの混合物であってもよい。ある実施様態においては、このアミンが、米国アトフィナケミカルズ社より市販されているジメチルエタノールアミンである。このアミンは、開始剤組成物、アルキレンオキシドおよびアルカリ土類金属水酸化物とともに、100重量部のポリオールに対して、好ましくは0.01〜5重量部、より好ましくは0.1〜2重量部、最も好ましくは0.5〜1.5重量部の量で含まれている。
【0020】
理由は不明であるが、アルカリ土類金属水酸化物が、触媒的にアミンを補助しているようである。アミンは、開始剤組成物の第一の開始剤及び/又は第二の開始剤のヒドロキシル基上でのアルコキシル化の際に、アルキレンオキシド単位の均一な分布に悪影響を与えることなく、開始剤組成物とアルキレンオキシドとの反応を触媒する。ポリオールの平均鎖長が1未満の場合(即ち、開始剤組成物のヒドロキシル基1モル当たりのアルキレンオキシドの量が1モル未満の場合)には、アミンが主たる触媒となる。ポリオールの鎖長が約1.5である場合では、アルカリ土類金属水酸化物の触媒効果が増大するようである。上記のアルカリ土類金属水酸化物とアミンとの併用により、開始剤組成物とアルキレンオキシドとの反応におけるアミン触媒からアルカリ土類金属水酸化物触媒へのスムーズな変化が起こり、ポリオールを与える。ポリオール製造の反応時間はいくらでもよい。しかし、15時間未満で、より好ましくは12時間未満、最も好ましくは10時間未満で、ポリオールが形成されることが好ましい。
【0021】
上述のように、このポリオールは、平均官能価が少なくとも4である開始剤組成物とアルキレンオキシドとを、アルカリ土類金属水酸化物とアミンの存在下で反応させた反応生成物を含んでいる。このポリオールのヒドロキシル価は、好ましくは500以下であり、より好ましくは200〜470、最も好ましくは280〜370mgKOH/gである。また、このポリオールは、好ましくは300ダルトン以下の当量を有する。この「当量」は、ポリオールの重量平均分子量(Mw)をポリオールの官能価で除したものである。
【0022】
ある実施様態においては、得られるポリオールがアルキレンオキシドから形成された内部ブロックを有する。もう一つの実施様態においては、このポリオールが、アルキレンオキシドから形成された内部ブロックを二個有する。更に別の態様においては、このポリオールが、3個以上のアルキレンオキシドから形成されたブロックを有する。ある実施様態においては、このポリオールが、少なくとも一種のエチレンオキシド単位と少なくとも一種のプロピレンオキシド単位からなるヘテロ組成の内部ブロック、即ちプロピレンオキシド及び/又はエチレンオキシドから形成されるランダムな内部ブロックを有している。少なくとも、このブロックが、100重量部のポリオールに対して50重量部のプロピレンオキシドを含有することが好ましい。また、この「ヘテロ組成」は、3個以下の繰返しプロピレンオキシド単位を有することが好ましい。
【0023】
成形後にこのポリオールをポリウレタン成形物の製造に用いてもよい。このポリウレタン成形物は、硬質発泡体であっても軟質発泡体であっても、あるいは弾性体であってもよい。好ましくは、このポリウレタン成形物は硬質発泡体である。硬質発泡体の場合、このポリウレタン成形物は巾広い産業において使用可能であり、例えば絶縁や建材として使用できる。ポリオールをポリウレタン成形物の製造に使用する前に、このポリオールからアルカリ土類金属水酸化物とアミンを、実質的にすべて除去してもよい。しかし、除去は必ずしも必要でない。
【0024】
このポリウレタン成形物は、最初に供給されたイソシアネートとポリオールの反応生成物を含んでいる。しかしながら、ポリオールをイソシアネートと反応させる前に、一種以上の添加物を、ポリオール及び/又はイソシアネートに添加してもよい。このような添加物としては、空気放出剤、湿潤剤、表面修飾剤、ワックス類、不活性無機充填剤、モレキュラーシーブ、反応性無機充填剤、チョップ状ガラス、加工添加物、表面活性剤、接着促進剤、酸化防止剤、染料、顔料、紫外線安定剤、揺変剤、老化防止剤、潤滑剤、接着促進剤、カップリング剤、溶媒、レオロジー促進剤、界面活性剤類、架橋剤、膨張剤、膨張反応改質剤、ブロー触媒・重合触媒・ゲル化触媒などの触媒、相溶化剤、鎖延長剤、消泡剤、鎖状重合停止剤、およびこれらの組み合わせがあげられるが、これらに限定されるものわけではない。もし含まれる場合、この添加物は、ポリオール及び/又はイソシアネート中にいかなる量で含まれていてもよい。また、上記ポリオールとは異なる第二のポリオールを、ポリウレタン成形物を製造する前にポリオールに添加してもよい。
【0025】
ポリオールと反応させるイソシアネートは、既知のいずれのイソシアネートであってもよく、例えば、イソシアネート類、ポリイソシアネート類、イソシアネートやポリイソシアネートのビウレット類、イソシアネートやポリイソシアネートのイソシアヌレート類、およびこれらの組み合わせがあげられるが、これらに限定されるものではない。本発明のある実施様態においては、このイソシアネート成分に、n官能性イソシアネートが含まれる。この実施様態において、nは、好ましくは2〜5の数字、より好ましくは2〜4、最も好ましくは3〜4の数字である。なお、nは整数であっても、2〜5の中間値であってもよい。このイソシアネートを、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、およびこれらの組み合わせからなる群から選んでもよい。ある実施様態においては、このイソシアネート成分が脂肪族イソシアネートを含んでいる。もしイソシアネート成分が脂肪族イソシアネートを含む場合、そのイソシアネート成分は、変性多価脂肪族イソシアネート、すなわち脂肪族ジイソシアネート及び/又は脂肪族ポリイソシアネートの化学反応により得られる生成物を含んでいてもよい。その例としては、例えば、尿素類、ビウレット類、アロファン酸エステル類、カルボジイミド類、ウレトンイミン類、イソシアヌレート類、ウレタン類、二量体、3量体、およびこれらの組み合わせがあげられるが、これらに限定されるわけではない。このイソシアネート成分の他の例としては、変性ジイソシアネートそのものあるいはそのポリオキシアルキレングリコールとの反応生成物、ジエチレングリコール類、ジプロピレングリコール類、ポリオキシエチレングリコール類、ポリオキシプロピレングリコール類、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレングリコール類、ポリエステルオール類、ポリカプロラクトン類、およびこれらの組み合わせがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
一方、このイソシアネートは、芳香族イソシアネートを含んでいてもよい。もしイソシアネートが芳香族イソシアネートを含む場合、その芳香族イソシアネートは、式R’(NCO)*Z*に該当するものであってもよい。式中、R’は多価の有機芳香族基であり、zは、R’の価数に相当する整数であり、好ましくは、zは少なくとも2である。このイソシアネートが芳香族イソシアネートを含む場合、このイソシアネートとしては、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、1,4−ジイソシアナトベンゼン、1,3−ジイソシアナト−o−キシレン、1,3−ジイソシアナト−p−キシレン、1,3−ジイソシアナト−m−キシレン、2,4−ジイソシアナト−1−クロロベンゼン、2,4−ジイソシアナト−1−ニトロ−ベンゼン、2,5−ジイソシアナト−1 −ニトロベンゼン、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−および2,6−トルエンジイソシアネートの混合物、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1−メトキシ−2,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル− 4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネートポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、2,4,6−トルエントリイソシアネートなどのトリイソシアネート類、4,4’−ジメチル−2,2’−5,5’−ジフェニルメタンテトライソシアネートなどのテトライソシアネート類、トルエンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4 −ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、これらの異性体の混合物、およびこれらの組み合わせがあげられるが、これらに限定されるものではない。あるいは、この芳香族イソシアネートが、m−TMXDIと1,1,1−トリメチロールプロパンからのトリイソシアネート生成物、トルエンジイソシアネートと1,1,1−トリメチロールプロパンの反応生成物、およびこれらの組み合わせを含んでいてもよい。このイソシアネートは、いかなるNCO含量(%)をもち、いかなる粘度をもっていてもよい。このイソシアネートを、いかなる量のポリオールと反応させて、ポリウレタン成形物を形成してもよい。
【0027】
実施例
本発明の方法により、アルカリ土類金属水酸化物と第一のアミンの存在下でポリオール1を合成する。二種の比較用ポリオール、比較用ポリオール1と比較用ポリオール2を合成するが、合成方法は本発明の方法とは異なる。比較用ポリオール1は、第二のアミンと上記アルカリ土類金属水酸化物の存在下で開始剤組成物とアルキレンオキシドとを反応させて合成する。比較用ポリオール2は、アルカリ土類金属水酸化物と存在下、第一のアミンまたは第二のアミンの非存在下で、上記の開始剤組成物とアルキレンオキシドとを反応させて合成する。開始剤組成物、アルキレンオキシド、アルカリ土類金属水酸化物、第一のアミン、および第二のアミンの具体的な量を、下の表1に示す。ポリオール1と比較用ポリオール1と比較用ポリオール2の反応時間、配合OH価、および実測OH価を下の表1に示す。特記しない限り、ポリオール1と比較用ポリオール1用の成分の単位はグラムであり、比較用ポリオール2用の成分の単位はキログラムである。
【0028】
【表1】

【0029】
グリセリンは、プロクター・アンド・ギャンブル社からスペロール(R)という商品名で入手可能である。
【0030】
ショ糖は、米国ミシガン・シュガー社よりビッグチーフグラニュー糖という商品名で市販されているものである。
【0031】
アルカリ土類金属水酸化物は、水酸化ストロンチウム八水和物であり、これは、米国ノア・テクノロジーズ社の市販製品である。
【0032】
第一のアミンはジメチルエタノールアミンであり、これは、米国アトフィナケミカルズ社から市販されているものである。
【0033】
第二のアミンはジメチルシクロヘキシルアミンであり、これは、米国エアプロダクト・アンド・ケミカルズ社よりポリキャット(R)8という商品名で市販されているものである。
【0034】
アルキレンオキシドは、プロピレンオキシドであり、これはハンツマン・ベース・ケミカルズ社より市販されているものである。
【0035】
配合OH価は、開始剤組成物とアルキレンオキシドの反応の結果得られると計算されるポリオール1および比較用ポリオール1と2のOH価(mgKOH/g)である。
【0036】
実測OH価は、開始剤組成物とアルキレンオキシドの反応の結果、実際に得られるポリオール1および比較用ポリオール1と2のOH価(mgKOH/g)である。
【0037】
アルキレンオキシドの添加時間は、反応容器の圧力を6.2bar[90psig]以下に維持しながら反応容器にアルキレンオキシドを添加するのに要する時間である。
【0038】
総反応時間は、アルキレンオキシドを反応容器に添加し、アルキレンオキシドの添加完了後に開始剤組成物が完全にアルコキシル化するまでに要する時間であり、図1〜3に示すように反応容器で、圧力、温度および時間を測定しながら求めたものである。具体的には、圧力と温度の両方が定常状態に達するときアルコキシル化反応が実質的に完了している。
【0039】
図1に、第一のアミンとアルカリ土類金属水酸化物の両方の触媒による開始剤組成物のアルコキシル化とポリオール1の合成を示す。理由は不明だが、図1に示すように、およそ1〜4時間の圧力が低下しているが、これは第一のアミンの触媒によるもののようである。図1に示すように、およそ4.3〜8時間で、第一のアミンによる触媒が終了してアルカリ土類金属水酸化物による触媒が増加しているようである。全体として、約9時間でアルコキシル化反応が実質的に完了し、温度と圧力が実質的に定常状態となり、実測ヒドロキシル価がおよそ355.6mgKOH/gである、すなわち配合ヒドロキシル価のほぼ半分であるポリオール1が得られる。
【0040】
図2と表1に示すように、第二のアミン、ジメチルシクロヘキシルアミンの存在下に形成される比較用ポリオール1の実測ヒドロキシル価は、配合ヒドロキシル価の約半分とならない。図2は、圧力から判断するに、およそ10.28時間で、アルキレンオキシドの添加量が93.6%で、比較用ポリオール1の合成が終了していることを示している。およそ12.9時間で温度と圧力が定常状態となり、この時点で、添加したアルキレンオキシドの反応が完了している。第二のアミン、ジメチルシクロヘキシルアミンを反応容器に添加後に、残る6.4%のアルキレンオキシドを、次いで16.8〜17.3時間で添加する。最後の6.4%のアルキレンオキシドは、後で真空ストリッピングで回収されるため、反応して所望の比較用ポリオール1の合成に使用されていないようである。理由は不明だが、第二のアミンによる触媒には、比較用ポリオール1合成に対する速度論的な制限があるようである。この速度論的な制限のため、比較用ポリオール1の実測ヒドロキシル価が、配合ヒドロキシル価の約半分より小さくなっているようである。
【0041】
図3と表1に示すように、水酸化ストロンチウムの存在下で生成する比較用ポリオール2は、配合ヒドロキシル価の約半分の実測ヒドロキシル価をもつ。しかし、図3に示すように、圧力から判断するに、比較用ポリオール2の合成はおよそ5.5時間で終了している。圧力の減少後、反応が再開して比較用ポリオール2を与える。急激な圧力増加は、工業的に実施するのに好ましくない。
【0042】
ポリオール1の合成の際のアルキレンオキシドの添加時間は、比較用ポリオール1と2の合成の際の添加時間より短い。ポリオール1合成の際の総反応時間もまた、比較用ポリオール1と2の合成の際の総反応時間より短い。
【0043】
合成後のポリオール1は、配合OH価から約1%以内の実測OH価を持ち、反応時間は10時間未満である。逆に、比較用ポリオール1と比較用ポリオール2は、それぞれ配合OH価の7.5%および0.5%の実測OH価を持つ。しかし、比較用ポリオール1と比較用ポリオール2の反応時間は、それぞれ12.9時間と18.66時間であり、いずれも非効率である。
【0044】
以上、本発明を具体的に説明したが、ここで使用した用語は、制限を意図したものではなくもっぱら説明を目的とするものである。もちろん、上の記述を元に本発明の変更や変動が可能であり、本発明を上記の具体例とは異なった形で実施することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、ジメチルエタノールアミンと水酸化ストロンチウム八水和物の存在下で開始剤組成物のアルコキシル化を行うポリオールの試験製造プロセスの概要と、プロピレンオキシド添加率、圧力、および温度の経時変化を示す線グラフである。
【図2】図2は、ジメチルシクロヘキシルアミンの存在下での開始剤組成物のアルコキシル化を行うポリオール製造の第一比較方法と、プロピレンオキシド添加率、圧力、および温度の経時変化を示す線グラフである。
【図3】図3は、水酸化ストロンチウム八水和物の存在下での開始剤組成物のアルコキシル化を行うポリオール製造の第二比較方法と、プロピレンオキシド添加率、圧力、および温度の経時変化を示す線グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキレンオキシドを供給する工程と、
平均官能価が少なくとも4である開始剤組成物を供給する工程と、
アルカリ土類金属水酸化物とアミンとを供給する工程と、
アルカリ土類金属水酸化物とアミンの存在下で開始剤組成物とアルキレンオキシドとを反応させてポリオールを製造する工程と
を含むことを特徴とするポリオールの製造方法。
【請求項2】
前記開始剤組成物がショ糖、ソルビトール、またはこれらの組合せを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記開始剤組成物がショ糖を含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記開始剤組成物が2種以上の開始剤の混合物を含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記開始剤組成物がショ糖とグリセリンとを含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記開始剤組成物が、ショ糖、ソルビトール、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる第一の開始剤と、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる第二の開始剤とを含む請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記第一の開始剤が、100重量部の開始剤組成物に対して少なくとも30重量部の量で存在する請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記アルカリ土類金属水酸化物が、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記アルカリ土類金属水酸化物が水酸化ストロンチウムを含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記アルカリ土類金属水酸化物が、100重量部のポリオールに対して0.1〜0.75重量部の量で存在する請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記アミンがジメチルエタノールアミンを含む請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記アミンが、100重量部のポリオールに対して0.1〜2重量部の量で存在する請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記アルキレンオキシドが、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、アミレンオキシド、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記アルキレンオキシドがプロピレンオキシドを含む請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリオールのヒドロキシル価が200〜470mgKOH/gであり、その当量が300ダルトン以下である請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリオールが、少なくとも一種のエチレンオキシド単位と少なくとも一種のプロピレンオキシド単位を含むヘテロ組成の内部ブロックを含む請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記のヘテロ組成が3個以下の繰返しプロピレンオキシド単位を含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリオールが12時間未満で製造される請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記アルカリ土類金属水酸化物とアミンとを供給する工程が、アルカリ土類金属水酸化物とアミンとの組合わせを供給する工程である請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記アルカリ土類金属水酸化物とアミンとを供給する工程が、さらにアルカリ土類金属水酸化物を供給する前にアミンを供給する工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記アルキレンオキシドがプロピレンオキシドを含み、前記開始剤組成物が、ショ糖を含む第一の開始剤とグリセリンを含む第二の開始剤とを含み、前記アルカリ土類金属水酸化物が水酸化ストロンチウムを含み、また前記アミンがジメチルエタノールアミンを含む請求項1に記載の方法。
【請求項22】
平均官能価が少なくとも4である開始剤組成物とアルキレンオキシドとをアルカリ土類金属水酸化物とアミンの存在下で反応させて得た反応生成物を含むことを特徴とするポリオール。
【請求項23】
前記開始剤組成物が2種以上の開始剤の混合物である請求項22に記載のポリオール。
【請求項24】
前記開始剤組成物が、ショ糖を含む第一の開始剤とグリセリンを含む第二の開始剤とを含む請求項23に記載のポリオール。
【請求項25】
前記アルカリ土類金属水酸化物が水酸化ストロンチウムを含み、前記アミンがジメチルエタノールアミンを含む請求項22に記載のポリオール。
【請求項26】
前記アルキレンオキシドがプロピレンオキシドを含む請求項22に記載のポリオール。
【請求項27】
ヒドロキシル価が200〜470mgKOH/gであり、当量が300ダルトン以下である請求項22に記載のポリオール。
【請求項28】
少なくとも一種のエチレンオキシド単位と少なくとも一種のプロピレンオキシド単位とを含むヘテロ組成の内部ブロックを有し、ヘテロ組成が3個以下の繰返しプロピレンオキシド単位を含む請求項22に記載のポリオール。
【請求項29】
前記開始剤組成物とアルキレンオキシドとの反応が12時間未満の期間である請求項22に記載のポリオール。
【請求項30】
前記開始剤組成物が、ショ糖を含む第一の開始剤とグリセリンを含む第二の開始剤とを含み、前記アルカリ土類金属水酸化物が水酸化ストロンチウムを含み、前記アミンがジメチルエタノールアミンを含み、前記アルキレンオキシドがプロピレンオキシドを含む請求項22に記載のポリオール。
【請求項31】
イソシアネートと、平均官能価が少なくとも4である開始剤組成物とアルキレンオキシドとをアルカリ土類金属水酸化物とアミンの存在下で反応させて得た反応生成物を含むポリオールとの反応生成物を含むことを特徴とするポリウレタン成形物。
【請求項32】
前記開始剤組成物が2種以上の開始剤の混合物である請求項31に記載のポリウレタン成形物。
【請求項33】
前記開始剤組成物が、ショ糖を含む第一の開始剤とグリセリンを含む第二の開始剤とを含む請求項32に記載のポリウレタン成形物。
【請求項34】
前記アルカリ土類金属水酸化物が水酸化ストロンチウムを含み、前記アミンがジメチルエタノールアミンを含む請求項31に記載のポリウレタン成形物。
【請求項35】
前記アルキレンオキシドがプロピレンオキシドを含む請求項31に記載のポリウレタン成形物。
【請求項36】
前記ポリオールのヒドロキシル価が200〜470mgKOH/gであり、その当量が300ダルトン以下である請求項31に記載のポリウレタン成形物。
【請求項37】
前記ポリオールが、少なくとも一種のエチレンオキシド単位と少なくとも一種のプロピレンオキシド単位とを含むヘテロ組成の内部ブロックを有し、ヘテロ組成が3個以下の繰返しプロピレンオキシド単位を含む請求項31に記載のポリウレタン成形物。
【請求項38】
発泡体である請求項31に記載のポリウレタン成形物。
【請求項39】
前記開始剤組成物が、ショ糖を含む第一の開始剤とグリセリンを含む第二の開始剤とを含み、前記アルカリ土類金属水酸化物が水酸化ストロンチウムを含み、前記アミンがジメチルエタノールアミンを含み、前記アルキレンオキシドがプロピレンオキシドを含み、および前記ポリウレタン成形物が発泡体である請求項31に記載のポリウレタン成形物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−528398(P2009−528398A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555764(P2008−555764)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【国際出願番号】PCT/EP2007/051543
【国際公開番号】WO2007/096317
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】