説明

ポリオール混合物および該混合物より得られる反応性ホットメルト組成物ならびに該組成物を使用して得られる成形品

本発明は、
(1)脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを主成分として製造される結晶性ポリエステ
ルポリオール、 10〜97重量%
(2)芳香族ポリカルボン酸と脂肪族ポリオールを主成分として製造されるポリエステル
ポリオール、 0〜45重量%
(3)ポリカーボネートポリオール 3〜45重量%
を含むポリオール混合物、このポリール混合物とポリイソシアネートを反応させて得られる反応性ホットメルト組成物、及びこの反応性ホットメルト組成物を使用した成形品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、脂肪族ポリエステルポリオール、芳香族系ポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオールを含有するポリオール混合物および該混合物より得られる反応性ホットメルト組成物、およびそれを使用した成形品に関する。
【背景技術】
反応性ホットメルト接着剤は、強度、接着速度に優れ、組み立て産業におけるライン化適性が高いことに加え、脱溶剤化、省エネルギー化が図れるという社会的要請にも適合するため急速に伸長している。それと共に、継続作業性の向上の要求も強く、より速い硬化速度を有する反応性ホットメルト接着剤が求められている。
この要求に応えるため、ポリエステルポリオールの結晶化度がその硬化速度に影響を与えることが知られている。すなわち、硬化速度の向上のためには結晶化度の高いポリエステルポリオールが極めて有利なのである。(例えば、「接着」1984年、28巻、8号、p.5および「ADHESIVES AGE」1987年、11月号、p.32参照)
これらのポリエステルポリオールの原料としては、多価カルボン酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸など、ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが知られている。
これらのモノマーの組み合わせから得られるポリエステルポリオールの内では、改善された硬化速度を持つ反応性ホットメルト接着剤の製造原料としてドデカン二酸と1,6−ヘキサンジオールを用いたもの、セバシン酸と1,6−ヘキサンジオールを用いたものやドデカン二酸とエチレングリコールを用いたポリエステルポリオール等が開示されている。(例えば、特開平2−88686号公報(第4−6頁)参照。)
また、ポリカーボネート系ポリオールとポリイソシアネートの反応より得られる反応性ホットメルト接着剤が、初期接着力および耐熱接着力が向上し、加熱安定性と耐湿性(または耐水性)に優れたものであることが開示されている。(例えば、特開平2−305882号公報(第7−8頁)参照。)
また、湿気硬化ポリウレタンホットメルト型接着剤を、成形品製造のための成形素材として使用し、この成形素材を加熱溶融させ、0.1〜5MPaの加圧下に密閉型中に射出し、冷却することにより固化した成形品を短時間後に型から取出し、次いで空気湿気に暴露することによって硬化させる成形方法が開示され、その大きな経済的および技術的利点は、大きく低下した加工圧力、比較的簡単な装置および手段、ならびに種々の基材への良好な接着である。さらに、この成形品は温度耐性であり、種々の基材に接着し、これらは、電気構成部材の製造に特に適していることが記載されている。(例えば、特表平10−511716号公報(第16−18頁)参照。)
しかしながら、これらの報告では、金属、特にアルミニウムに対する接着性に関する記載はなく、また、その接着性は実施したところ不充分である。現在、半導体部品分野あるいは電気部品構成分野では、金属部分、特に軽量なアルミニウム金属と一体化した製品の要求が強くなり、製造の際に関わる速い固化速度、製造時の取り扱いに関わる低い溶融粘度と金属部分、特にアルミニウムとの強い接着強度を併せ持つ反応性ホットメルト組成物が求められている。
本発明は、上記問題点を解決するために、結晶性のポリエステルポリオール、芳香族系ポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオールの使用割合を検討し、それに適したポリオール混合物および該混合物から得られる、特にアルミニウムとの接着性に優れた反応性ホットメルト組成物ならびにこの組成物を使用した成形品を提供することを課題とする。
【発明の開示】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、以下の組成物により課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明のポリオール混合物は、
(1)脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを主成分として製造される結晶性ポリエステ
ルポリオール、 10〜97重量%
(2)芳香族ポリカルボン酸と脂肪族ポリオールを主成分として製造されるポリエステル
ポリオール、 0〜45重量%
(3)ポリカーボネートポリオール 3〜45重量%
を含むことを特徴とするものであり、
本発明の反応性ホットメルト組成物は、上記ポリオール混合物とポリイソシアネートとを反応させて得られることを特徴とするものであり、さらには、この組成物を使用して得られる成形品が提供される。
より詳しくは、使用時の取り扱いの容易さと接着時間のコントロールを考慮し、特に電気回路部品とアルミ基盤の接着強度に優れた反応性ホットメルト組成物、それを製造するためのポリオール混合物、ならびにそれを用いて得られる成形品が提供される。
好ましくは、ドデカン二酸やアジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸および1,6−ヘキサンジオールを主成分として製造される直鎖脂肪族ポリエステルポリオール、o−,m−,p−フタル酸等の芳香族ポリカルボン酸および1,6−ヘキサンジオール等のポリオールを主成分として製造される芳香族系ポリエステルポリオールならびに1,6−ヘキサンジオール等のポリオールを用いて製造されるポリカーボネートポリオール混合物およびこれから得られる反応性ホットメルト組成物並びにそれを使用した成形品が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明で使用する(1)脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを主成分として製造される結晶性ポリエステルポリオールとは、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールから得られる結晶性ポリエステルポリオールである。
このような結晶性ポリエステルポリオールとして好ましくは、炭素数6〜12の直鎖状脂肪族ジカルボン酸と炭素数2〜12の直鎖状脂肪族ジオールから得られる結晶性ポリエステルポリオールである。ジカルボン酸の具体例としては、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカン二酸、ドデカン二酸が挙げられ、ジオールの具体例としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオールが挙げられる。
本発明のジカルボン酸とジオールは、それぞれ単独でも混合して使用しても何ら問題はない。さらには、上記で得られたポリエステルポリオールの混合物であっても問題はない。
また、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを主成分として製造されるとは、これら脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールから得られる結晶性ポリエステルポリオールが、全ポリエステルポリオールの総重量の50重量%以上、好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上を含有することであり、他の成分としては、ポリカーボネートポリオール、ポリラクトンポリオールやポリエーテルポリオールが挙げられる。
使用できるポリカーボネートポリオールとしては、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ブタンジオールなどの直鎖脂肪族ジオールを成分とするポリカーボネートジオールが挙げられる。使用できるポリラクトンポリオールとしては、例えば、カプロラクトンモノマーの開環重合によるポリカプロラクトンポリオールが挙げられる。また、使用できるポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
また、本発明における結晶性とは、溶融状態より10℃/分の冷却速度で冷却、固化させたポリエステルポリオールのX線回折法(ルーランド法)による結晶化度において唯一評価されるものであり(例えば、「高分子のX線回折」、L.E.Alexander著、桜田一朗監訳、化学同人、1972年、p125参照)、結晶化度が20%以上のものである。好ましくは結晶化度が30%以上のものである。特に好ましくは結晶化度が40%以上のものである。結晶化度が20%より低いと製造した反応性ホットメルト組成物の固化時間が長くなる傾向が認められ好ましくない。
(2)芳香族ポリカルボン酸と脂肪族ポリオールを主成分として製造されるポリエステルポリオールとは、芳香族ポリカルボン酸および脂肪族ポリオールから得られるポリエステルポリオールである。
芳香族ポリカルボン酸とは、芳香環にすくなくとも2個のカルボキシル基を持つ化合物であり、好ましい芳香族ポリカルボン酸としては、炭素数8〜20の芳香族ポリカルボン酸である。具体的には、フタル酸、イソフタル酸およびテレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ビフェニルジカルボン酸が挙げられる。芳香族ポリカルボン酸は、そのポリアルキルエステル、ポリアリールエステルや酸無水物という誘導体の形で使用しても良い。好ましくは、フタル酸、イソフタル酸およびテレフタル酸、およびこれらのジアルキルエステル化合物やジアリールエステル化合物およびフタル酸無水物である。これら芳香族ポリカルボン酸およびその誘導体は、単独でも混合して使用しても何ら問題はない。
なお、ポリアルキルエステルのアルキル基については、特に制限はなく、好ましくは炭素数が1〜8個の脂肪族飽和炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基,プロピル基、ブチル基が挙げられる。ポリアリールエステルのアリール基についても、特に制限はなく、好ましくは炭素数が6〜12個の芳香族炭化水素基であり、具体的には、フェニル基、トリル基、クロロフェニル基が挙げられる。
脂肪族ポリオールとは、分子内に少なくとも2個のヒドロキシル基を持つ脂肪族炭化水素化合物であり、好ましい脂肪族ポリオールは炭素数2〜12の脂肪族ポリオールであり、具体的には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、2,2−ジエチルプロパンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。好ましくは、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオールであり、より好ましくは、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオールである。
さらに、脂肪族ポリオールは、その炭素原子を一部酸素原子や芳香環で置換したジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングルコール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等であっても良い。これら脂肪族ポリオールも単独または混合して使用しても何ら問題はない。
また、ヒドロキシピバリン酸などの炭素数2〜12のオキシ酸を構成成分として含んでいても良い。
さらに、これら芳香族ポリカルボン酸および脂肪族ポリオールから得られるポリエステルポリオールの混合物であっても何ら問題はない。
芳香族ポリカルボン酸と脂肪族ポリオールを主成分として製造されるとは、芳香族ポリカルボン酸の使用モル数が全ポリカルボン酸のモル数の50モル%以上、好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上を占めることであり、他のジカルボン酸としては脂肪族ポリカルボン酸が挙げられる。ここで脂肪族ポリカルボン酸は、炭素数4〜12のカルボン酸である。具体的には、アジピン酸が挙げられ、この化合物を含む好ましい芳香族ポリカルボン酸としては、フタル酸とアジピン酸の組み合わせが挙げられ、対応する脂肪族ポリオールとしては、エチレングリコールおよびネオペンチルグリコールが好ましい。
(1)および(2)のポリエステルポリオールは、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールから、および芳香族ポリカルボン酸及び/又はそのポリアルキルエステル及び/又はそのアリールエステル及び/又はその酸無水物と脂肪族ポリオールから、公知の重縮合をさせることにより得ることができる。通常、脂肪族ジオールあるいは脂肪族ポリオールのヒドロキシル基と脂肪族ジカルボン酸及び/又は芳香族ポリカルボン酸(及び/又はその誘導体)のカルボキシル基の当量比(ヒドロキシル基/カルボキシル基)は、1.02〜1.5が好ましく、1.05〜1.3がより好ましい。具体的には所定量の脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールあるいは芳香族ポリカルボン酸と脂肪族ポリオールを、触媒の存在下または不存在下に150〜250℃程度の温度範囲で、1〜50時間程度、重縮合することによりエステル化またはエステル交換を行う。
この際の触媒としては、たとえば、チタンテトラブトキシドなどのチタン系触媒、ジブチルスズオキシドなどのスズ系の触媒の存在下に行うことも重縮合を促進し、好ましい。触媒は、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸、或いは脂肪族ポリオールと芳香族ポリカルボン酸と共に仕込んでも良いし、無触媒で予備重合を進めた後、加えても良い。ポリエステルポリオールの製造においては、両末端をほとんどヒドロキシル基にし、カルボン酸末端を生成しない様にすることが望ましく、この目的のために、予備重合を行った後に前述の触媒を加えることは、特に効果があり好ましい。
(1)および(2)のポリエステルポリオールの数平均分子量は、好ましくは500から20000のポリエステルポリオールであり、さらに好ましくは1000から15000であり、特に好ましくは1500〜10000である。この範囲より小さい場合には、耐熱性、耐薬品性や初期並びに硬化時の強度が不充分と成り易い。この範囲より大きいと、溶融時の粘度が高くなり扱い難くなる場合がある。
本発明で使用する(3)ポリカーボネートポリオールは、従来公知のポリオール(多価アルコール:分子内に少なくとも2個のヒドロキシル基を有する有機化合物)とホスゲン、クロル蟻酸エステル、ジアルキルカーボネートまたはジアリールカーボネートとの縮合によって得られるものであり、種々の分子量のものが知られている。このようなポリカーボネートポリオールとして好ましいものは、ポリオールとして、脂肪族ポリオール、環式脂肪族ポリオール、芳香族ポリオールなどが挙げられる。具体的には、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,8−ノナンジオール、1,9−ノナンジオール、2,2−ジエチルプロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAを使用したものであり、好ましくは1,6−ヘキサンジオールを含むものである。
また、ポリオールは、その炭素原子を一部酸素原子や芳香環で置換したジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングルコール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニルプロパン等であっても良い。
これらのポリオールは単独、または複数を組み合わせて使用される。また、個々のポリカーボネートポリオールをランダム、またはブロック共重合させてもよい。
ポリカーボネートポリオールの数平均分子量は、好ましくは300から20000、より好ましくは400〜10000、さらに好ましくは500〜5000である。この範囲より小さいと、結晶性が低く、この範囲より大きい場合には溶融時の粘度が高くなる傾向が生じる場合がある。
適量のポリカーボネートポリオールを(1)及び(2)のポリエステルポリールと組み合わせたポリオール混合物と、ポリイソシアネートを反応させて得られた反応性ホットメルト組成物は、被着材、特にアルミニウムへの初期接着力を高め、分子量と配合比の調整により、成形用の組成物として適した粘度を持たせることが可能となる。
本発明で使用する(1)脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを主成分として製造される結晶性ポリエステルポリオールと(2)芳香族ポリカルボン酸と脂肪族ポリオールを主成分として製造されるポリエステルポリオール及び、
(3)ポリカーボネーポリオールを含むポリオール混合物の各成分の使用割合は、
(1)脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを主成分として製造される結晶性ポリエステ
ルポリオール、 10〜97重量%
(2)芳香族ポリカルボン酸と脂肪族ポリオールを主成分として製造されるポリエステル
ポリオール、 0〜45重量%
(3)ポリカーボネートポリオール 3〜45重量%
であり、好ましくは、
(1)脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを主成分として製造される結晶性ポリエステ
ルポリオール、 30〜90重量%
(2)芳香族ポリカルボン酸と脂肪族ポリオールを主成分として製造されるポリエステル
ポリオール、 5〜30重量%
(3)ポリカーボネートポリオール 5〜40重量%
である。
(1)脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを主成分として製造される結晶性ポリエステルポリオールが10重量%より少ないと、溶融した反応性ホットメルト組成物が固化することによる接着に長時間を要す。また、97重量%より多く含有すると接着時間が極端に短くなり、また、被着材、特にアルミニウムの初期接着性が悪くなり、好ましくない。
(2)芳香族ポリカルボン酸と脂肪族ポリオールを主成分として製造されるポリエステルポリオールは、場合により使用しなくてもよいが、反応性ホットメルト組成物の強度を調整するために0〜45重量%の範囲内で使用する。45重量%より多ければ組成物の結晶性が低下したり、作業性に支障をきたす場合があり好ましくない。
(3)ポリカーボネートポリオールが、3重量%より少ないと初期の接着性が悪い。また、45重量%より多く使用すると組成物の結晶性が低下し、好ましくない。
本発明では、場合によって、上記ポリオール混合物に上記(1)、(2)および(3)に含まれない他のポリオールを少量混合することも差し支えない。上記(1)、(2)および(3)以外のポリオールとしては、ポリラクトンポリオールやポリエーテルポリオールが挙げられる。
使用できるポリラクトンポリオールとしては、例えば、カプロラクトンモノマーの開環重合によるポリカプロラクトンポリオールが挙げられる。また、使用できるポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
これらを混合する比率は(1)+(2)+(3)=100重量部に対して50重量部以下、好ましくは40重量部以下、より好ましくは30重量部以下であることが望ましい。この範囲を超えて他のポリオールを混合すると、結晶性が低下し好ましくない。
本発明で使用するポリイソシアネートは、通常よく知られている芳香族、脂肪族および環式脂肪族ジイソシアネートや高官能性もしくは高分子ポリイソシアネートであり、好ましくは芳香族ジイソシアネートである。具体的には、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネートおよびその誘導体が挙げられ、好ましくは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。
本発明のポリオール混合物とポリイソシナネートの使用範囲は、特別な制限はなく、通常の範囲内で使用される。即ち、ポリオール混合物のOH基対ポリイソシアネートのNCO基のモル比が1:1.2〜1:3.5、好ましくは1:1.5〜1:3.0、さらに好ましくは1:1.7〜1:2.5である。反応条件も特別な制限はなく、通常の範囲内で実施される。具体的には、50〜150℃、好ましくは70〜140℃の温度範囲で、0.5〜10時間程度である。なお、反応は、溶媒中で行うこともできる。さらに、必要に応じて、遷移金属化合物触媒、たとえばチタンテトラブトキシド、ジブチルスズオキシド、ジラウリン酸ジブチルスズ、2−エチルカプロン酸スズ、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、2−エチルカプロン酸亜鉛、グリコール酸モリブデン、塩化鉄、塩化亜鉛などや、アミン触媒、たとえばトリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジブチルアミンなどの触媒を添加してもよい。反応は通常、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましいが、乾燥空気雰囲気下や密閉条件下など水分が混入しない条件下であれば何ら問題はない。
本発明で得られた反応性ホットメルト組成物の粘度については、好ましくは、120℃で100000cps以下、より好ましくは100〜50000cps、さらに好ましくは200〜40000cps以下、最も好ましくは500〜7000cps以下である。
本発明の反応性ホットメルト組成物は、そのまま使用することもできるが、通常のホットメルト組成物に使用される可塑剤、熱可塑性ポリマー、粘着付与剤、老化防止剤等を添加して使用することもできる。また、成型用樹脂に通常使用される着色剤、充填剤を使用することもできる。
本発明で得られる反応性ホットメルト組成物は、通常のホットメルト接着剤としての用途使用だけでなく、金属(具体的には、銅、マグネシウム、アルミニウムが挙げられ、好ましくはアルミニウムである)との優れた接着性と接着時間が調整できるため、連続作業での接着加工や封止作業などの成形加工に向いている。例えば、製靴工業、材木加工工業、建築材料工業、製本工業、金属工業、樹脂加工工業、自動車製造工業、電気・電子部品製造工業、半導体部品製造工業の分野が挙げられ、これらの工業分野で製造される製品が成形品となる。電気・電子部品製造工業および半導体部品製造工業分野での具体的な成形品としては、半導体封止製品および、コンピューター、ビデオ、カメラ、ゲーム機、テレビ、ラジオや携帯電話部品などの、回路板、素子、スイッチ、配線、プラグコネクター、表示装置、電池を挿入し、反応性ホットメルト組成物で封止し、一体化させた電気・電子部品、電気・電子製品が挙げられる。
また、本発明で得られる反応性ホットメルト組成物は、部品の挿入物や接着、封止を行わずに、反応性ホットメルト組成物のみを用いて成形物を作成することもできる。
本発明で得られる反応性ホットメルト組成物の加工温度は、少なくとも使用する反応性ホットメルト組成物の融点以上であり、好ましくは70〜200℃、さらに好ましくは90〜170℃である。融点より低い温度では、作業効率が悪く、加工温度があまりに高ければ、反応性ホットメルト組成物の変質が起きる場合があり好ましくない。
また、本発明で得られた反応性ホットメルト組成物を成形加工に使用する場合には、特に制限はなく、通常の射出成形機やアプリケーターが使用される。
射出成形方法にも、制限はない。一例として、反応性ホットメルト組成物を70〜200℃の温度で溶融させ、この溶融物を0.1〜5MPaの過剰圧力のもとに密閉金型中に射出し、冷却した成形品を短時間に型から取り出し、次いで大気中の湿気により硬化させる。また、密閉金型中には、上記工業分野の成形前の部品を接着用あるいは封止用の部材として挿入することも可能である。
【実施例】
以下、本発明を実施例挙げて具体的に説明するが、これに制限されるものではない。
分析方法
(1)水酸基価、酸価および数平均分子量
ポリエステルポリオールの水酸基価および酸価は、JIS K 1557に準拠して測定し、数平均分子量はこの水酸基価から算出した。
(2)融点および結晶化温度
ポリエステルポリオールの融点および結晶化温度は、示差熱分析(DSC)における最大の吸熱ピークおよび放熱ピークの温度から求めた。DSCの測定は、加熱速度10℃/minおよび冷却速度−10℃/minで行った。
(3)結晶化度
結晶化度は、製造したポリエステルポリオールを、その融点以上の温度で加熱溶融し、この状態から10℃/分の速度で冷却、固化させた後、これを粉末とし、X線回折法(ルーランド法)により測定、算出した値である。
【実施例1】
1,6−ヘキサンジオールとドデカン二酸からなる平均分子量3600の宇部興産製ポリエステルポリオール(以下、ETERNACOLL3010と記載する)70重量部、1,6−ヘキサンジオールとジメチルカーボネートからなる平均分子量1000の宇部興産製ポリカーボネートポリオール(ユーエッチカーブ(UH−CARB)100と記載する)30重量部をセパラブルフラスコに入れ、窒素置換し、これを120℃で加熱溶融した。更に、250rpmで攪拌しながら120℃、50mmHgで1時間脱水処理し、10分間の窒素置換を行なった。その後、前もって60℃に加温しておいた4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDIと記載する)(仕込みのポリエステルポリオール混合物のOH基に対し、1.1倍モル)を一度に添加し、窒素雰囲気下、さらに120℃、1.5時間攪拌して反応性ホットメルト組成物を合成した。
得られた反応性ホットメルト組成物については、下記の物性測定法により融点、結晶化温度、溶融粘度、オープンタイム、セットタイム、初期接着性の測定を行った。その結果を表1に示した。
物性測定法
(1)融点:DSC測定における融解ピークの温度を融点として求めた。DSCの測定条件は昇温速度10℃/minで−100℃から100℃まで昇温した。
(2)結晶化温度:DSC測定における結晶化ピークの温度を結晶化温度として求めた。DSCの測定条件は冷却速度10℃/minで100℃から−100℃まで冷却した。
(3)溶融粘度:試料を120℃で溶融し、B型粘度計で測定した。
(4)オープンタイム:120℃で溶融した反応性ホットメルト組成物を、厚さ1.6mmのアルミ板上に直径約2cm、厚さ約2mmの大きさに塗布し、室温で放冷して反応性ホットメルト組成物が固まるまでの時間を測定した。実験は室温23℃で行った。
(5)セットタイム:120℃で溶融した反応性ホットメルト組成物を、厚さ1.6mmのアルミ板上に直径約2cm、厚さ約2mmの大きさに塗布し、その上から別のアルミ板を重ねて圧締めし、固まるまでの時間を測定した。実験は室温23℃で行った。
(6)接着性:120℃で溶融したホットメルトを、厚さ1.6mmのアルミ板上に直径約2cm、厚さ約2mmの大きさに塗布し、室温で放冷して固化させた。10分間の放置の後、固化した反応性ホットメルト組成物の端部にスパチェラの先端で力を与え、アルミ板と反応性ホットメルト組成物を剥離させ、接着性を調べた。この時、静置後自然に剥離が生じていたものは×、軽い力で剥離したものは△、強い力によって剥離したものは○、反応性ホットメルト組成物が変形してなお剥離しなかったものを◎と評価した。
【実施例2〜8】
実施例1のエタナコール(ETERNACOLL)3010 70重量部、ユーエッチカーブ(UH−CARB)100 30重量部の代わりに、表1に示したポリエステルポリオールとポリカーボネートポリオールを使用した他は、同様の手順により反応性ホットメルト組成物を合成した。
得られた接着剤の物性評価を表1に示した。
比較例1〜5
実施例1のエタナコール(ETERNACOLL)3010 70重量部、ユーエッチカーブ(UH−CARB)100 30重量部の代わりに、表1に示す材料を使用した他は、同様の手順により反応性ホットメルト組成物を合成した。
得られた接着剤の物性評価を表1に併せて示した。
実施例1〜8および比較例1〜5の組成ならびに物性評価を表1にまとめて示した。


なお、表中の記号は以下の意味を有する。
(1)結晶性PEPO:結晶性ポリエステルポリオール
(2)芳香族PEPO:芳香族ポリエステルポリオール
(3)PCD:ポリカーボネートジオール
PCLD:ポリカプロラクトンジオール
PPG:ポリプロピレングリコール
HD:1,6−ヘキサンジオール
DDA:ドデカン二酸
AA:アジピン酸
ET3010:宇部興産製エタナコール(ETERNACOLL)3010[商品名、HD−DDA系ポリエステルポリオール:平均分子量3600、水酸基価30.9、酸価0.16、融点70.4℃、結晶化温度57.3℃、結晶化度49%]
ET3015:宇部興産製エタナコール(ETERNACOLL)3015[商品名、HD−DDA系ポリエステルポリオール:平均分子量2500、水酸基価45.0、酸価0.08、融点70.8℃、結晶化温度54.5℃、結晶化度43%]
ET3030:宇部興産製エタナコール(ETERNACOLL)3030[商品名、HD−AA系ポリエステルポリオール:平均分子量3800、水酸基価29.0、酸価0.20、融点57.3℃、結晶化温度40.4℃、結晶化度43%]
HD−(DDA/AA):[DDA/AA:40/60:平均分子量3200、水酸基価32.2、酸価0.21、融点56.3℃、結晶化温度37.0℃、結晶化度40%]
ET5010:宇部興産製エタナコール(ETERNACOLL)5010[商品名、EG/NPG−AA/PA系ポリエステルポリオール:平均分子量1900、水酸基価58.2、酸価0.10、Tg−0.2℃]
ET5011:宇部興産製エタナコール(ETERNACOLL)5011[商品名、EG/NPG−AA/PA系ポリエステルポリオール:平均分子量2600、水酸基価43.8、酸価0.10、Tg−0.5℃]
DY7130:ヒュルス社製ダイナコール(DYNACOLL)7130[商品名、平均分子量3000、水酸基価34.6、酸価〈2、Tg23.6℃]
UH−100:宇部興産製UH−CARB100[商品名、HD系ポリカーボネートジオール:平均分子量1000、水酸基価112.1、酸価0.02、融点45.9℃]
PCLD(2000):ダウ社製トーン・ポリオール(TONE(TM)POLYOL)2241[商品名、ポリカプロラクトンジオール:平均分子量2000、融点67.7℃、結晶化温度47.5℃]
PPG(2000):和光純薬工業製[ポリプロピレングリコール ジオール型:平均分子量2000]
EG:エチレングリコール
NPG:ネオペンチルグリコール
PA:フタル酸
実施例及び比較例の結果から明らかなように、本発明の反応性ホットメルト組成物は、アルミ板との優れた接着性を有していることがわかる。
アルミ電池ケースとプリント配線基板を挿入し、反応性ホットメルト組成物により一体化させた電池成形品
【実施例9】
実施例8の反応性ホットメルト組成物を用いて、以下のように、アルミ電池ケースとプリント配線基板を挿入し一体化させた電池成形品を製造した。
1.反応性ホットメルト組成物をギヤポンプタイプのアプリケーターに投入し、110℃で溶融した。アプリケーターの温度設定は、タンク110℃、ホース110℃、ノズル110℃であった。
2.金型を開け、アルミ電池ケースとプリント配線基板をあらかじめ配線したものを型内に設置した。
3.型を圧力もれがないように閉じた。
4.アプリケーターのノズルを型の射出チャンネルのところまで進め、圧力もれがないように接続した。
5.反応性ホットメルト組成物を以下の条件で射出した。
加工温度:110℃、射出圧1.4MPa、射出時間5秒
6.アプリケーターのノズルを型から取り去った。
7.1分間、成形品を金型に保持し、冷却した。
8.型を開いて成形品を取り出した。
9.成形品のスプルーを除去した。
10.成形品を室温で大気中湿気により硬化させた。
この成形品は、剥離、き裂を含んでいなかった。
【産業上の利用可能性】
本発明により、金属、特にアルミニウムとの接着性に優れた反応性ホットメルト組成物の前駆体であるポリオール混合物および該混合物から得られる反応性ホットメルト組成物ならびにこの組成物を使用した成形品を提供することが可能となった。特に電気・電子構成部品、電気・電子部品や半導体部品の用途に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを主成分として製造される結晶
性ポリエステルポリオール、 10〜97重量%
(2)芳香族ポリカルボン酸と脂肪族ポリオールを主成分として製造されるポリエステル
ポリオール、 0〜45重量%
(3)ポリカーボネートポリオール 3〜45重量%
を含むポリオール混合物。
【請求項2】
(1)脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを主成分として製造される結晶性ポリエステルポリオールを、溶融状態より10℃/分の冷却速度で冷却、固化させた該ポリエステルポリオールのX線回折法(ルーランド法)による結晶化度測定において、結晶化度が30%以上のものである請求の範囲第1項記載のポリオール混合物。
【請求項3】
(1)脂肪族ジカルボン酸が炭素数6〜12のジカルボン酸であり、脂肪族ジオールが炭素数2〜12のジオールの結晶性ポリエステルポリオールであり、
(2)芳香族ポリカルボン酸がフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸からなる群の少なくとも1化合物であり、脂肪族ポリオールが炭素数2〜12のポリオールのポリエステルポリオールである、請求の範囲第1項記載のポリオール混合物。
【請求項4】
(1)脂肪族ジカルボン酸がドデカン二酸及びアジピン酸から選択される少なくとも一種であり、脂肪族ジオールが1,6−ヘキサンジオールである、請求の範囲第3項記載のポリオール混合物。
【請求項5】
(2)芳香族ポリカルボン酸がフタル酸とアジピン酸であり、脂肪族ポリオールがエチレングリコール及びネオペンチルグリコールのポリエステルポリオールである、請求の範囲第4項記載のポリオール混合物。
【請求項6】
(3)ポリカーボネートポリオールが1,6−ヘキサンジオールを含む化合物である、請求の範囲第5項記載のポリオール混合物。
【請求項7】
(1)脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを主成分として製造される結晶
性ポリエステルポリオール、 30〜90重量%
(2)芳香族ポリカルボン酸と脂肪族ポリオールを主成分として製造されるポリエステル
ポリオール、 5〜30重量%
(3)ポリカーボネートポリオール 5〜40重量%
を含む請求の範囲第1項記載のポリオール混合物。
【請求項8】
請求の範囲第1〜7項のいずれか1項記載のポリール混合物とポリイソシアネートを反応させて得られる反応性ホットメルト組成物。
【請求項9】
請求の範囲第8項記載の反応性ホットメルト組成物を使用した成形品。
【請求項10】
請求の範囲第8項記載の反応性ホットメルト組成物を密閉型中に射出し、冷却した後、型から取り出し、次いで大気中で湿気硬化させて得られる成形品。
【請求項11】
密閉型中に挿入物を設置し、一体化させて得られることを特徴とする請求の範囲第10項記載の成形品。
【請求項12】
電気・電子部品製造工業および半導体部品製造工業分野の製品である請求の範囲第9〜11項のいずれか1項記載の成形品。
【請求項13】
挿入物が、電気・電子構成部材または半導体構成部材である請求の範囲第11項記載の成形品。
【請求項14】
電気・電子構成部材または半導体構成部材が、センサー、回路板、素子、スイッチ、配線、コネクター、表示装置、電池である請求の範囲第12項又は第13項に記載の成形品。

【国際公開番号】WO2004/031296
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【発行日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−541262(P2004−541262)
【国際出願番号】PCT/JP2003/012594
【国際出願日】平成15年10月1日(2003.10.1)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】