説明

ポリオール(メタ)アクリレート

【課題】 一次皮膚刺激性指数が実用上十分に小さく取り扱いの容易なポリオール(メタ)アクリレート混合物を工業的に有利な方法で提供する。
【解決手段】 ジトリメチロールプロパン、2,2’−メチレンビス(オキシメチレン)ビス(2−エチル−1,3−プロパンジオール)、及びトリメチロールプロパンを特定の割合で含有するポリオール混合物をエステル化することによって得られるポリオール(メタ)アクリレート混合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定組成のアルコール混合物から誘導されるポリオール(メタ)アクリレート混合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トリメチロールプロパン(以下、TMPと称す)は、塩基性触媒下、ノルマルブチルアルデヒド(以下、NBDと称す)とホルムアルデヒドとのアルドール縮合及び交叉カニッツアロ反応によって工業的に大量に製造されており、その重要な用途に(メタ)アクリレートがある。TMPのアクリレートであるトリメチロールプロパントリアクリレート(以下、TMPTAと称す)は相溶性に優れ、架橋密度大きく、比較的低粘度で反応性も大きいという特徴があり、紫外線、電子線硬化型モノマーとして各種インキ、コーティング、接着剤、注型材料等に使用される。しかしながらTMPTAは、一次皮膚刺激性指数(以下、PIIと称す)が4.6と大きく、その使用には特段の注意が必要とされる。
【0003】
TMPTAよりPIIが大幅に低減された(メタ)アクリレートの一つに、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(以下、di−TMPTAと称す)がある。di−TMPTAは相溶性、反応性に優れるのみならず、PIIが0.3と低く安全性が高いため、紫外線、電子線硬化型モノマーとして各種インキ、コーティング、塗料、接着剤、注型材料等への使用が広がっている。
【0004】
di−TMPTAの原料であるジトリメチロールプロパン(以下、di−TMPと称す)は、TMP製造の際の副生物として生成し、これを回収することにより得られる。すなわち、NBDとホルムアルデヒドとの反応生成液を溶媒により抽出した後、得られたTMP抽出液(粗TMP)から高真空下の蒸留でTMPを得ると、TMPが留去された蒸留釜残中には一般にTMPが1〜30%、di−TMPが20〜70%含まれている。この釜残から主に晶析操作によってdi−TMPが回収される。
【0005】
しかしながら、TMP製造の蒸留釜残からの晶析操作では、溶媒を用いた晶析、固液分離及び乾燥という工程を経る必要があり、工業的に不利であるばかりでなく、蒸留釜残にはTMP及びdi−TMP以外の成分も多量に含まれているため、得られるdi−TMPの収率・純度も必ずしも満足すべきものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、di−TMPTAのようにPII値が実用上十分に小さく取り扱い容易なポリオール(メタ)アクリレート混合物を、より有利な方法で工業的に得る方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
di−TMPを得るための晶析操作において、di−TMP収率・純度を低下させる大きな要因は、主として粗TMPの蒸留釜残中に含まれている残存TMP、及びTMP2分子とホルムアルデヒドとにより生成した直鎖状ホルマールである2,2’−メチレンビス(オキシメチレン)ビス(2−エチル−1,3−プロパンジオール)(以下、bis−TMPと称す)にある。しかしながら本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、TMP、di−TMP及びbis−TMPの含有量をある一定の範囲内に限定した混合物を用いることにより、単離精製したdi−TMPを(メタ)アクリル化の原料として使用しなくても、PII値が実用上十分に小さく、かつ取り扱い容易なポリオール(メタ)アクリレートが得られることを見出し、本発明に到達した。すなわち本発明は、以下のとおりである。
(1) ジトリメチロールプロパン、2,2’−メチレンビス(オキシメチレン)ビス(2−エチル−1,3−プロパンジオール)、及びトリメチロールプロパンを含むポリオール混合物のエステル化により得られるポリオール(メタ)アクリレート混合物。
(2) 前記ポリオール混合物の組成がつぎの条件(a)〜(c)を満たす上記(1)記載のポリオール(メタ)アクリレート混合物。
(a)ジトリメチロールプロパン及び2,2’−メチレンビス(オキシメチレン)ビス(2−エチル−1,3−プロパンジオール)の合計含有量とトリメチロールプロパンの含有量との重量比率が0.5〜20の範囲であり、
(b)2,2’−メチレンビス(オキシメチレン)ビス(2−エチル−1,3−プロパンジオール)の含有量とジトリメチロールプロパンの含有量との重量比率が0.1〜15の範囲であり、
(c)ジトリメチロールプロパン及び2,2’−メチレンビス(オキシメチレン)ビス(2−エチル−1,3−プロパンジオール)の合計含有量がポリオール混合物全体の30〜95重量%である。
(3) 塩基性触媒存在下ノルマルブチルアルデヒドとホルムアルデヒドとの反応により生成したトリメチロールプロパンを溶媒で抽出し、得られたトリメチロールプロパンの抽出液から該溶媒を留去したのち、得られた粗トリメチロールプロパンを蒸留によって精製した際に得られる、トリメチロールプロパンを留去した蒸留釜残を前記ポリオール混合物として用いる上記(1)または(2)記載のポリオール(メタ)アクリレート混合物。
(4) 一次皮膚刺激性指数が0〜2.0の範囲である上記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリオール(メタ)アクリレート混合物。
(5) B型粘度計によって測定された25℃における粘度が1〜1900mPa・sの範囲である上記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリオール(メタ)アクリレート混合物。
(6) 上記(1)〜(5)のいずれかに記載のポリオール(メタ)アクリレート混合物を含む組成物を硬化してなる硬化物。
(7) 上記(1)〜(5)のいずれかに記載のポリオール(メタ)アクリレート混合物を含む組成物を原料として用いるインキ、塗料、接着剤または注型材料。
【発明の効果】
【0008】
上記したように本発明によれば、TMP、di−TMP及びbis−TMPの含有量をある一定の範囲内に限定した原料ポリオール混合物を用いるという工業的に極めて有利な方法で、PII値が実用上十分に小さく取り扱い容易なポリオール(メタ)アクリレート混合物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で用いる特定組成のアルコール混合物の構成成分であるdi−TMPは式(1)、bis−TMPは式(2)で表される。
【0010】
【化1】

【0011】
【化2】

【0012】
エステル化に供するポリオール混合物の組成として、di−TMPとbis−TMPの合計含有量とTMPの含有量との重量比率(di−TMPとbis−TMPとの合計重量/TMPの重量)は、好ましくは0.5〜20の範囲であり、より好ましくは0.6〜15の範囲、さらに好ましくは1〜12の範囲である。di−TMPとbis−TMPの合計含有量とTMPの含有量との重量比率が0.5を下回った場合、得られるポリオール(メタ)アクリレート混合物のPII値が2以上という過大な値となり、その使用には特段の注意が必要とされることとなり有効ではない。一方、di−TMPとbis−TMPの合計含有量とTMPの含有量との重量比率が20を上回っても、得られるポリオール(メタ)アクリレート混合物の性状に特段の不都合は生じないが、このような混合物を得るためには通常アルコール混合物を晶析等の操作により精製・濃縮する必要が生じるため、操作が煩雑となり工業操作上有用ではない。
【0013】
bis−TMP含有量とdi−TMP含有量との重量比率(bis−TMPの重量/di−TMPの重量)は、好ましくは0.1〜15の範囲、より好ましくは0.15〜10の範囲、さらに好ましくは0.2〜8の範囲である。bis−TMP含有量とdi−TMP含有量との重量比率がこの範囲から外れても得られるポリオール(メタ)アクリレート混合物の性状に特段の不都合は生じないが、このような混合物を得るためには通常どちらかの成分を晶析等の操作により精製・濃縮する必要が生じるため、操作が煩雑となり工業操作上有用ではない。
【0014】
di−TMPとbis−TMPとの合計含有量は、好ましくはポリオール混合物全体の30〜95重量%の範囲であり、より好ましくは40〜95重量%の範囲、さらに好ましくは45〜95重量%の範囲である。di−TMPとbis−TMPの合計含有量がポリオール混合物全体の30重量%を下回った場合、その他の成分の中でTMPのような低沸点の留分が多ければ、得られるポリオール(メタ)アクリレート混合物のPII値が2以上という過大な値となり、その使用には特段の注意が必要とされることとなり有効ではない。またその他の成分の中でbis−TMPより高沸点の留分が多い場合には、生成物であるポリオール(メタ)アクリレート混合物の粘度が上昇し、特にポリオールアクリレート混合物の場合には2000mPa・s(25℃)以上となって取り扱いに困難を生じるため有用ではない。一方、di−TMPとbis−TMPの合計含有量がポリオール混合物全体の95重量%を上回っても得られるポリオール(メタ)アクリレート混合物の性状に特段の不都合は生じないが、このような混合物を得るためには通常どちらかの成分を晶析等の操作により精製・濃縮する必要が生じるため、操作が煩雑となり工業操作上有用ではない。
【0015】
本発明で使用するTMP、di−TMP及びbis−TMPを含む原料のポリオール混合物は以下の要領で得られる。塩基性触媒存在下、ブチルアルデヒドとホルムアルデヒドを反応させ、得られた反応生成液からTMPを分離する。その際、反応生成液を濃縮後または濃縮せずに、溶媒を用いて抽出することで実質的に蟻酸ソーダを含まないTMP抽出液が得られる。TMP抽出液から抽出に用いた溶媒を留去して得られた粗TMPを、更に高真空下の蒸留で精製することで、TMP製品と、TMPが留去した蒸留釜残、すなわち本発明で使用するTMP、di−TMP及びbis−TMPを含む原料ポリオール混合物とに分離される。本発明では、TMP、di−TMP及びbis−TMPの含有量が一定の範囲内に限定されていれば、この原料ポリオール混合物をそのまま直接使用しても良いし、di−TMPなどの特定の成分を晶析操作などで取得した後の残分を使用しても良い。
【0016】
TMP、di−TMP及びbis−TMPを含むポリオール混合物をエステル化してポリオール(メタ)アクリレート混合物を製造するに際し、アクリル酸またはメタクリル酸は、化学量論比以上に使用されるのが普通である。一般にアルコールに対するアクリル酸またはメタクリル酸のモル比(アクリル酸またはメタクリル酸のモル数/アルコールのモル数)は1.0〜2.0であるが、好ましくは1.1〜1.5、より好ましくは1.15〜1.45である。反応は触媒を使用し、生成する水は蒸留することにより系外への排出が行なわれる。このような触媒は硫酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の酸性触媒であるが、その使用量はアクリル酸またはメタクリル酸に対して0.1〜10モル%、好ましくは1〜5モル%、より好ましくは1.5〜4モル%の割合で使用される。このような操作によって、TMP、di−TMP、bis−TMPの水酸基だけでなく、ポリオール混合物中に含まれるその他の有機副産物が有する水酸基についても、エステル化して(メタ)アクリレートとなる。
【0017】
反応により生成した水を蒸留により系外へ排出するためには、共沸溶剤を用いることが有利である。このような共沸溶剤は50℃〜150℃の沸点を有し、水と分離し易いものなら使用できるが、n−ヘキサン、n−ヘプタンのような脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンのような脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエンのような芳香族炭化水素が適している。その使用量は通常、反応混合物の5〜70重量%、好ましくは10〜65重量%、より好ましくは15〜60重量%の範囲である。反応温度は、50〜150℃の範囲でよいが、反応時間の短縮と重合防止の点から、75〜120℃、より好ましくは77〜115℃の範囲で行なわれるのが有利である。
【0018】
市販のアクリル酸またはメタクリル酸には既に重合防止剤が添加されているのが普通であるが、反応時に改めて重合防止剤を添加してもよい。そのような重合防止剤には、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、フェノチアジン、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、3−ヒドロキシチオール、α−ニトロソ−β−ナフトール、p−ベンゾキノン、2,5−ジヒドロキシ−p−キノン、N−ニトロソジフェニルアミン、銅塩等が挙げられる。その使用量は通常反応混合物に対して0.001〜1重量%、好ましくは0.005〜0.8重量%、より好ましくは0.01〜0.5重量%の範囲である。
【0019】
上記のようにして得られる本発明のポリオール(メタ)アクリレート混合物は、必要ならば水、食塩水またはアルカリ性の水溶液等で洗浄したり、常圧蒸留または減圧蒸留のような方法で溶剤と分離したりすることによって、工業的用途に使用される。
【0020】
本発明におけるポリオール(メタ)アクリレート混合物のPII値は、好ましくは0〜2.0、より好ましくは0〜1.9、さらに好ましくは0〜1.8の範囲である。PII値が2.0を超える場合は、そのものの取り扱い中に皮膚にかぶれを生じる可能性が高く、その使用には特段の注意が必要とされることになる。
【0021】
本発明におけるポリオール(メタ)アクリレート混合物の粘度はB型粘度計によって測定され、25℃において好ましくは1〜1900mPa・s、より好ましくは1〜1700mPa・s、さらに好ましくは1〜1500mPa・sの範囲である。ポリオール(メタ)アクリレート混合物の粘度が上記範囲から外れる場合は、液体としての取り扱いが難しくなり、適当な流動性を与えるために加温して取り扱うか、あるいは希釈剤(アクリルモノマー、溶媒等)を用いる必要が生じるなど、その使用には特段の注意が必要とされるため好ましくない。
【0022】
本発明のポリオール(メタ)アクリレート混合物は、コーティング及びインキ組成物の重合性モノマーとして有用であり、それらは紫外線、電子線等により、または熱的手段により硬化させることが出来る。紫外線等により硬化を行なう場合には、一般的に公知の多くの種類にわたる光増感剤または光重合開始剤を含有させる。硬化方法も公知のものに従って実施することが可能である。
【0023】
また、このポリオール(メタ)アクリレート混合物は、それ自体単独で、または他の単量体もしくは重合体と混合して使用することが出来る。更に、このポリオール(メタ)アクリレート混合物は、有機過酸化物の添加によっても重合することが出来る。
【実施例】
【0024】
次に実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。但し本発明は、以下の実施例により何ら制限されるものではない。
なお、PII値と粘度はつぎのような方法で測定した。
PII値
ドレーズ改良法により測定した。すなわち、背中の毛を刈った健康な白色ウサギ6匹の無処置皮膚、およびかすり傷をつけた皮膚に対して貼り付けテストを行なった。テスト部位は4ヶ所に分け、試料0.5mlを1.5×1.5インチの広さに塗布し、絆創膏で固定した。刺激性は紅斑と浮腫をそれぞれ0〜4の5段階で評価した。貼り付け後4、24、48時間後における紅斑と浮腫の読みの総和を6で割った値を個々のウサギの評点とし、6匹の評点の平均をPII値とした。
粘度
B型粘度計(型式BM、(株)東京計器製造所製)を用いて25℃で測定した。
【0025】
製造例1
特開平11−49708号公報に記載された実施例1に準じて、NBDとホルムアルデヒドよりTMPを合成した。反応終了後、溶媒にNBDを用いてTMPを抽出し、低沸点である原料や副生物を回収、除去した。抽出で得られた粗TMPをフイルムエバポレーターで蒸留した。TMPを留去した蒸留釜残として、TMP8%、di−TMP45%、bis−TMP28%、及びその他の有機副産物19%という組成を有するポリオール混合物を得た。
【0026】
製造例2
上記の蒸留釜残1300重量部とアセトン1300重量部を加え、溶液が透明になるまで加熱撹拌した。これを攪拌しながら30℃まで冷却し、30℃に保ったまま2時間晶析を行なった。得られたスラリーから遠心分離によってdi−TMP結晶256重量部を分離し、得られた母液からアセトンを留去してTMP23%、di−TMP26%、bis−TMP25%、及びその他の有機副産物26%という組成を有するポリオール混合物1044重量部を得た。
【0027】
実施例1
機械撹拌装置、温度調節装置、温度計、凝縮器及び分縮器を備えた2000mlの丸底フラスコに、製造例2で調製したポリオール混合物285重量部(水酸基24重量%含有)、アクリル酸346重量部、p−トルエンスルホン酸一水和物18重量部、ハイドロキノン3重量部、フェノチアジン0.05重量部、ベンゼン400重量部、シクロヘキサン100重量部を仕込んで82〜90℃に加熱し、生成水は溶剤と共に蒸留、凝縮させ分離器で水のみ系外に排出し、溶剤は反応器に戻した。水が72重量部発生した時点で室温まで冷却した。反応混合物をベンゼン800重量部及びシクロヘキサン200重量部の混合物に溶解し、20%水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、20%食塩水400重量部で3回洗浄した。溶剤を減圧留去した後、活性白土処理し、淡黄色のポリオールアクリレート混合物419重量部を得た。このもののPII値は1.8であり、粘度は400mPa・s(25℃)であった。2−エチルアンスラキノン(光増感剤)5.0重量%を生成物の一部に添加し、次いで生成した増感された透明なコーティング組成物を鋼製パネル上に塗布し、次いで該コーティングを紫外線に露出して透明な乾燥した膜状コーティングを得た。
【0028】
実施例2
製造例1で調製したポリオール混合物279重量部(水酸基24.5重量%含有)を使用した以外は実施例1と全く同様の操作を行なったところ、淡黄色のポリオールアクリレート混合物415重量部を得た。このもののPII値は1.5であり、粘度は800mPa・s(25℃)であった。2−エチルアンスラキノン(光増感剤)5.0重量%を生成物の一部に添加し、次いで生成した増感された透明なコーティング組成物を鋼製パネル上に塗布し、次いで該コーティングを紫外線に露出して透明な乾燥した膜状コーティングを得た。
【0029】
実施例3
実施例1記載の装置と同様の装置を用いて、製造例1記載の組成を有するポリオール混合物285重量部、メタクリル酸413重量部、p−トルエンスルホン酸3重量部、ハイドロキノン3重量部、フェノチアジン0.05重量部、トルエン500重量部を仕込んで111〜118℃に加熱し、生成水は溶剤と共に蒸留、凝縮させ分離器で水のみ系外に排出し、溶剤は反応器に戻した。水が72重量部発生した時点で室温まで冷却した。反応混合物をトルエン1000重量部に溶解し、20%水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、20%食塩水400重量部で3回洗浄した。溶剤を減圧留去した後、活性白土処理し、淡黄色のポリオールメタクリレート混合物470重量部を得た。このもののPII値は0.4であり、粘度は100mPa・s(25℃)であった。2−エチルアンスラキノン(光増感剤)5.0重量%を生成物の一部に添加し、次いで生成した増感された透明なコーティング組成物を鋼製パネル上に塗布し、次いで該コーティングを紫外線に露出して透明な乾燥した膜状コーティングを得た。
【0030】
比較例1
フイルムエバポレーターでの蒸留に代えて単蒸留した以外は製造例1と同様に調製したポリオール混合物、すなわちTMP60%、di−TMP16%、bis−TMP11%、及びその他の有機副産物13%という組成を有するポリオール混合物228重量部(水酸基30重量%含有)を使用した以外は実施例1と全く同様の操作を行なったところ、淡黄色のポリオールアクリレート混合物377重量部を得た。このもののPII値は3.0であった。
【0031】
比較例2
製造例2で得られたポリオール混合物を更に強熱し単蒸留して得られたポリオール混合物、すなわちTMP8%、di−TMP12%、bis−TMP15%、及びその他の有機副産物65%という組成を有するポリオール混合物342重量部(水酸基20重量%含有)を使用した以外は実施例1と全く同様の操作を行なったところ、淡黄色のポリオールアクリレート混合物478重量部を得た。このものの粘度は3000mPa・s(25℃)であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジトリメチロールプロパン、2,2’−メチレンビス(オキシメチレン)ビス(2−エチル−1,3−プロパンジオール)、及びトリメチロールプロパンを含むポリオール混合物のエステル化により得られるポリオール(メタ)アクリレート混合物。
【請求項2】
前記ポリオール混合物の組成がつぎの条件(a)〜(c)を満たす請求項1記載のポリオール(メタ)アクリレート混合物。
(a)ジトリメチロールプロパン及び2,2’−メチレンビス(オキシメチレン)ビス(2−エチル−1,3−プロパンジオール)の合計含有量とトリメチロールプロパンの含有量との重量比率が0.5〜20の範囲であり、
(b)2,2’−メチレンビス(オキシメチレン)ビス(2−エチル−1,3−プロパンジオール)の含有量とジトリメチロールプロパンの含有量との重量比率が0.1〜15の範囲であり、
(c)ジトリメチロールプロパン及び2,2’−メチレンビス(オキシメチレン)ビス(2−エチル−1,3−プロパンジオール)の合計含有量がポリオール混合物全体の30〜95重量%である。
【請求項3】
塩基性触媒存在下ノルマルブチルアルデヒドとホルムアルデヒドとの反応により生成したトリメチロールプロパンを溶媒で抽出し、得られたトリメチロールプロパンの抽出液から該溶媒を留去したのち、得られた粗トリメチロールプロパンを蒸留によって精製した際に得られる、トリメチロールプロパンを留去した蒸留釜残を前記ポリオール混合物として用いる請求項1または2記載のポリオール(メタ)アクリレート混合物。
【請求項4】
一次皮膚刺激性指数が0〜2.0の範囲である請求項1〜3のいずれかに記載のポリオール(メタ)アクリレート混合物。
【請求項5】
B型粘度計によって測定された25℃における粘度が1〜1900mPa・sの範囲である請求項1〜4のいずれかに記載のポリオール(メタ)アクリレート混合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のポリオール(メタ)アクリレート混合物を含む組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載のポリオール(メタ)アクリレート混合物を含む組成物を原料として用いるインキ、塗料、接着剤または注型材料。

【公開番号】特開2006−193450(P2006−193450A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−5156(P2005−5156)
【出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】