ポリグルタミン酸−アミノ酸結合体および方法
一般式(I)および(II)の繰り返し単位を含む様々な生分解性ポリグルタミン酸−アミノ酸が調製される。そのようなポリマーは、様々な薬物、生体分子、および造影剤の送達用途に有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2005年12月5日に提出された「POLYGLUTAMATE−AMINO ACID AND METHODS」と題された米国仮特許出願番号60/742,291;2006年1月10日に提出された「POLYGLUTAMATE−ASPARTATE−TAXANES」と題された米国仮特許出願番号60/757,917;および2006年4月10日に提出された「POLYGLUTAMATE−ASPARATATE−MRI CHELATES」と題された米国仮特許出願番号60/790,735に対して優先権を主張する。これらは全て、それらの全体が引用により本明細書中に組み入れられる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、概して、ペンダント官能基を有している生体適合性の水溶性ポリマー、およびそれらを作製する方法に関し、特に、様々な薬物、生体分子、および造影剤の送達用途に有用であるポリグルタミン酸アミノ酸結合体に関する。
【背景技術】
【0003】
(関連分野の記載)
薬物、生体分子、および造影剤の送達は様々な系が使用されている。例えば、そのような系としては、カプセル、リポソーム、マイクロ粒子、ナノ粒子、およびポリマーが挙げられる。
【0004】
様々なポリエステル系生分解性系が特性決定されており、研究されている。ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、およびそれらのコポリマーであるポリ乳酸−コ−グリコール酸(PLGA)は、薬物送達用途の設計および性能に関して最も十分に特性決定されているいくつかの生体材料である。Uhrich,K.E.;Cannizzaro,S.M.;Langer,R.S.and Shakeshelf,K.M.「Polymeric Systems for Controlled Drug Release.」Chem.Rev.1999,99,3181−3198、およびPanyam J,Labhasetwar V.「Biodegradable nanoparticles for drug and gene delivery to cells and tissue.」Adv.Drug Deliv Rev.2003,55,329−47を参照のこと。また、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)は、薬物送達用途のためのポリマーを作製するために広く使用されている。ポリオルトエステルに基づく生分解性系もまた研究されている。Heller,J.;Barr,J.;Ng,S.Y.;Abdellauoi,K.S.and Gurny,R.「Poly(ortho ester):synthesis,characterization,properties and uses.」Adv.Drug Del.Rev.2002,54,1015−1039を参照のこと。ポリ無水物系もまた研究されている。そのようなポリ無水物は通常は生体適合性であり、代謝物として体から排除される比較的非毒性の化合物になるようにインビボで分解され得る。Kumar,N.;Langer,R.S.and Domb,A.J.「Polyanhydrides:an overview.」Adv.Drug Del.Rev.2002,54,889−91を参照のこと。
【0005】
アミノ酸系ポリマーもまた、新しい生体材料の潜在的な供給源として考えられている。優れた生体適合性を有しているポリアミノ酸は、低分子量の化合物を送達するために研究されている。比較的少数のポリグルタミン酸およびコポリマーが、薬物送達のための候補の材料として同定されている。Bourke,S.L.およびKohn,J.「Polymers derived from the amino acid L−tyrosine:polycarbonates,polyarylates and copolymers with poly(ethylene glycol).」Adv.Drug Del.Rev.,2003,55,447−466を参照のこと。
【0006】
投与される疎水性抗ガン剤および治療用タンパク質およびポリペプチドは、多くの場合、生体利用性が低い。そのような低い生体利用性は、疎水性薬物と水溶液との2相溶液の不適合、ならびに/または酵素分解による血液循環からのこれらの分子の迅速な除去が原因であり得る。投与されるタンパク質および他の低分子物質の効力を高めるための1つの技術によって、投与される薬剤をポリマー(例えば、ポリエチレングリコール(「PEG」)分子に結合させることができ、これによって、インビボでの酵素分解からの保護を提供することができる。そのような「PEG化」によって、多くの場合には循環時間が、ひいては、投与される物質の生体利用性が改善される。
【0007】
しかし、PEGには、特定の態様においては欠点がある。例えば、PEGが直鎖状ポリマーであるため、PEGによってもたらされる立体的保護は、分岐状のポリマーと比較すると限定される。PEGの別の欠点は、一般的には、その2つの末端で誘導体化されやすいことである。これにより、PEGに結合され得る他の機能性分子(例えば、特異的組織へのタンパク質または薬物の送達を助けるもの)の数が限定される。
【0008】
ポリグルタミン酸(PGA)は、疎水性抗ガン剤を可溶化させるために選択される別のポリマーである。PGAに結合される多くの抗ガン剤が報告されている。Chun Li.「Poly(L−glutamic acid)−anticancer drug conjugates.」Adv.Drug Del.Rev.,2002,54,695−713を参照のこと。しかし、現在FDAによって承認されているものはない。
【0009】
イチイ(Pacific Yew)の木の樹皮から抽出されたパクリタキセル(Paclitaxel)(Waniら、「Plant anticancer agents.VI.The isolation and structure of taxol,a novel antileukemic and antitumor agent from Taxus brevifolia.」J Am Chem Soc.1971,93,2325−7)は、卵巣ガンおよび乳ガンの処置についてFDAによって承認されている薬物である。しかし、他の抗ガン剤と同様に、パクリタキセルは、その疎水性および水溶液中での不溶性が原因で、生体利用性は低い。パクリタキセルを可溶化させるための1つの方法は、それをCremophor−ELと脱水されたエタノールとの混合物(1:1,v/v)に処方することである(Sparreboomら、「Cremophor EL−mediated Alteration of Paclitaxel Distribution in Human Blood:Clinical Pharmacokinetic Implications.」Cancer Research 1999,59,1454−1457)。この処方物は、Taxol(登録商標)(Bristol−Myers Squibb)として現在市販されている。パクリタキセルを可溶化させる別の方法は、高剪断均一化を使用する乳化による(Constantinidesら、「Formulation Development and Antitumor Activity of a Filter−Sterilizable Emulsion of Paclitaxel.」Pharmaceutical Research 2000,17,175−182)。最近、ポリマー−パクリタキセル結合体が、いくつかの臨床試験において進歩している(Ruth Duncan「The Dawning era of polymer therapeutics.」Nature Reviews Drug Discovery 2003,2,347−360)。さらに最近は、パクリタキセルはヒトアルブミンタンパク質と共にナノ粒子になるように処方されており、これは臨床試験において使用されている(Damascelliら、「Intraarterial chemotherapy with polyoxyethylated castor oil free paclitaxel,incorporated in albumin nanoparticles(ABI−007):Phase II study of patients with squamous cell carcinoma of the head and neck and anal canal:preliminary evidence of clinical activity.」Cancer.2001,92,2592−602、およびIbrahimら、「Phase I and pharmacokinetic study of ABI−007,a Cremophor−free,protein−stabilized,nanoparticle formulation of paclitaxel.」Clin Cancer Res.2002,8,1038−44)。この処方物は、現在、Abraxane(登録商標)(American Pharmaceutical Partners,Inc.)として市販されている。
【0010】
磁気共鳴画像診断(MRI)はこれが、非侵襲性であり、そして照射しないことの理由から、疾患の診断および病期診断において重要なツールである(Bulteら、「Magnetic resonance mincroscopy and histology of the CNS.」Trends in Biotechnology 2002,20,S24−S28を参照のこと)。組織の写真を得ることができるが、造影剤を用いるMRIは、その解像度を有意に改善する。しかし、MRI造影剤に適している常磁性金属イオンには、多くの場合は毒性がある。毒性を低下させるための1つの方法は、これらの金属イオンを多座分子(polydentate molecules)(例えば、ジエチレントリアミン五酢酸分子(DTPA))でキレート化させることである。Gd−DTPAは、臨床的な使用について1988年にFDAによって承認されており、Magnevist(登録商標)として現在市販されている。他のGd−キレートがFDAによって承認されており、市販されている。そして多くの他のものは現在開発中である(Caravanら、「Gadolinium(III)Chelates as MRI Contrast Agents:Structure,Dynamics,and Applications.」Chem.Rev.1999,99,2293−2352を参照のこと)。
【0011】
しかし、Gd−DTPAは、特異性がないという理由から、腫瘍組織を標的化するのに理想的ではない。Gd−DTPAがIV注射によって投与される場合には、これは、組織の血管外空間に、自発的に、そして直ちに拡散する。したがって、妥当なコントラスト画像を得るためには、通常は、多量の造影剤が必要である。加えて、これは腎臓での濾過によって迅速に排出される。拡散および濾過を回避するために、高分子MRI造影剤が開発されている(Caravanら、「Gadolium(III)Chelates as MRI Contrast Agents:Structure,Dynamics,and Applications.」Chem.Rev.1999,99,2293−2352を参照のこと)。これらの高分子MRI造影剤としては、タンパク質−MRIキレート(Laufferら、「Preparation and Water Relaxation Properties of Proteins Labeled with Paramagnetic Metal Chelates.」Magn.Reson.Imaging 1985,3,11−16を参照のこと)、多糖−MRIキレート(Sirlinら、「Gadolinium−DTPA−Dextran:A Macromolecular−MR Blood Pool Contrast Agent.」Acad Radiol.2004,11,1361−1369を参照のこと)、およびポリマー−MRIキレート(Luら、「Poly(L−glutamic acid)Gd(III)−DOTA Conjugate with a Degradable Spacer for Magnetic Resonance Imaging.」Bioconjugate Chem.2003,14,715−719,およびWenら、「Synthesis and Characterization of Poly(L−glutamic acid)Gadolinium Chelate:A New Biodegradable MRI Contrast Agent.」Bioconjugate Chem.2004,15,1408−1415を参照のこと)が挙げられる。
【0012】
最近、組織特異的MRI造影剤が開発された(Weinmannら、「Tissue−specific MR contrast agents.」Eur.J.Radiol.2003,46,33−44を参照のこと)。しかし、腫瘍特異的MRI造影剤は、臨床的用途においては報告されていない。ナノサイズの粒子は、高い浸透性および局所留保性効果(enhanced permeation and retention effect)(EPR効果)によって腫瘍を標的化することが報告されている(Brannon−Peppasら、「Nanoparticle and tageted systems for cancer therapy.」ADDR 2004,56,1649−1659を参照のこと)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
比較的疎水性の造影剤および薬物(例えば、特定の疎水性抗ガン剤、治療用タンパク質およびポリペプチド)は、多くの場合には、生体利用性が低い。この問題は、水性系におけるこれらの造影剤および薬物の溶解度が低いことに、少なくとも一部理由があると考えられる。特定の酵素分解される薬物もまた、これらが循環系で比較的迅速に分解され、それにより体から迅速に排出されることが原因で、生体利用性が低い。
【0014】
本発明者らは、多数の薬剤(例えば、造影剤および/または薬物)に結合することができる新規のポリグルタミン酸−アミノ酸のシリーズを見出した。特定の実施形態においては、ポリマーおよび得られる結合体は、特定の組織(例えば、腫瘍組織)に優先的に蓄積し、したがって、体の特異的な部分(例えば、腫瘍)に薬物(例えば、抗ガン剤)および/または造影剤を送達するのに有用である。特定の実施形態においては、ポリマーおよび得られるポリマー結合体はナノ粒子を形成し、これは、分子レベルで分散することによって水性系で造影剤および/または薬物を効率よく溶解し、それによって機能性および/または生体利用性を高める。
【課題を解決するための手段】
【0015】
1つの実施形態では、以下に示される式(I)の繰り返し単位と式(II)の繰り返し単位とを含むポリマー結合体が提供される。式中:nはそれぞれ独立して、1または2であり;A1はそれぞれ、酸素はまたNR5であり;A2はそれぞれ酸素であり;R1およびR2はそれぞれ独立して、C1〜10アルキル、C6〜20アリール、アンモニウム、アルカリ金属、多座リガンド(polydentate ligand)、保護されている酸素原子を含む多座リガンド前駆体、および1つの薬剤を含む化合物からなる群より選択され;薬剤は、抗ガン剤、標的化剤、光学的造影剤、および磁気共鳴造影剤からなる群より選択され;R1およびR2の少なくとも一方は、薬剤を含む基であり;R3およびR4はそれぞれ独立して、水素、アンモニウム、およびアルカリ金属からなる群より選択され;ポリマー結合体には、ポリマー結合体に対する薬剤の質量比に基づいて約1から約50%(重量/重量)の範囲の薬剤の量が含まれ;R5は水素またはC1〜4アルキルであり;そして、薬剤の量(式(I)の繰り返し単位の百分率と式(II)の繰り返し単位との百分率)は、実質的に同じ量の薬剤を含む比較可能なポリグルタミン酸結合体の溶解度よりも大きいポリマー結合体の溶解度が得られるように選択され、約22℃での0.9wt.%のNaCl水溶液の中に少なくとも5mg/mLのポリマー結合体が含まれている試験されたポリマー結合体溶液が、比較可能な試験されたポリグルタミン酸結合体溶液の光学的透明度よりも、広いpH範囲にわたって高い光学的透明度を有している場合には、ポリマー結合体の溶解度はより大きい。
【0016】
別の実施形態では、上記ポリマー結合体を作製する方法が提供され、該方法は、ポリマー反応体を溶媒に溶解または部分的に溶解させて、溶解または部分的に溶解されたポリマー反応体を形成する工程;および溶解または部分的に溶解されたポリマー反応体を第2の反応体と反応させる工程を含み、第2の反応体には、多座リガンド、保護されている酸素原子を含む多座リガンド前駆体、および1つの薬剤を含む化合物からなる群より選択される少なくとも1つが含まれる。
【0017】
別の実施形態では、本明細書中に記載されるポリマー結合体を含み、さらに、薬学的に許容される賦形剤、担体、および希釈剤から選択される少なくとも1つを含む薬学的組成物が提供される。
【0018】
別の実施形態では、本明細書中に記載される有効量のポリマー結合体を、それが必要な哺乳動物に投与する工程を含む、疾患または症状を処置あるいは緩和する方法が提供される。
【0019】
別の実施形態では、本明細書中に記載される有効量のポリマー結合体を哺乳動物に投与する工程を含む、疾患または症状を診断する方法が提供される。
【0020】
別の実施形態では、疾患または症状の処置あるいは緩和のための医薬品の調製のための、本明細書中に記載されるポリマー結合体の使用が提供される。
【0021】
別の実施形態では、疾患または症状の診断のための医薬品の調製のための、本明細書中に記載されるポリマー結合体の使用が提供される。
【0022】
これらの実施形態および他の実施形態は以下にさらに詳細に記載される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
用語「エステル」は、本明細書中ではその通常の意味で使用され、したがってこれには、式−(R)n−COOR’を有している化学的部分が含まれる。式中、RおよびR’は独立して、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール(環炭素によって結合されている)およびヘテロ脂環(環炭素によって結合されている)からなる群より選択され、そして式中、nは0または1である。
【0024】
用語「アミド」は、本明細書中ではその通常の意味で使用され、したがってこれには、式−(Rn)−C(O)NHR’または−(R)n−NHC(O)R’を有している化学的部分が含まれる。式中、RおよびR’は独立して、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール(環炭素によって結合されている)およびヘテロ脂環(環炭素によって結合されている)からなる群より選択され、そして式中、nは0または1である。アミドは、アミノ酸に含まれる場合も、また、本明細書中に記載されるように薬物分子に結合されたペプチド分子である場合もあり、それによってプロドラッグが形成される。
【0025】
本明細書中に開示される化合物上の任意のアミン、ヒドロキシ、またはカルボキシル側鎖は、エステル化させることができ、また、アミド化させることもできる。この末端を得るために使用される手順および特異的な基は当業者に公知であり、Greene and Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,第3版,John Wiley & Sons,New York,NY,1999(これはその全体が引用により本明細書中に組み入れられる)などの参考文献の中に容易に見つけることができる。
【0026】
本明細書中で使用される場合は、「アルキル」は、完全飽和している(二重結合または三重結合を有していない)炭化水素基を含む、直鎖または分岐状の炭化水素鎖をいう。アルキル基は、1から20個の炭素原子を有し得る(本明細書中に現れる場合はいずれの場合でも、「1から20」などの数字の範囲は、所定の範囲の中のそれぞれの整数をいう;例えば、「1から20個の炭素原子」は、アルキル基が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子などから、最大で20個の炭素原子から構成され得ることを意味するが、この定義には、数字の範囲が指定されていない用語「アルキル」の存在も含まれる)。アルキル基はまた、1から10個の炭素原子を有している中型のアルキルでもあり得る。アルキル基はまた、1から5個の炭素原子を有している低級アルキルであってもよい。化合物のアルキル基は、「C1〜C4アルキル」または同様の表記として指定することができる。単なる例ではあるが、「C1〜C4アルキル」は、アルキル鎖に1から4個の炭素原子が存在していること、すなわち、アルキル鎖が、メチル、エチル、プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、およびt−ブチルからなる群より選択されることを示す。典型的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
アルキル基は置換されていても、また、置換されていなくてもよい。置換されている場合には、置換基は、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環、アラルキル、ヘテロアラルキル、(ヘテロ脂環)アルキル、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、エステル、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ハロゲン、カルボニル、チオカルボニル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、保護されたC−カルボキシ、O−カルボキシ、イソシアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、ニトロ、シリル、スルフェニル、スルフィニル、スルホニル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、トリハロメタンスルホニル、トリハロメタンスルホンアミド、およびアミノから個々に、そして、独立して選択される1つ以上の基であり、これには、1置換アミノ基および2置換アミノ基、ならびにそれらの保護された誘導体が含まれる。置換基が「状況に応じて置換される」と記載される場合には、置換基は、上記置換基の1つで置換することができる。
【0028】
「常磁性金属キレート」は、リガンドが常磁性金属イオンに結合している錯体である。例として、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)−Gd(III)、DOTA−イットリウム−88、DOTA−インジウム−111、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)−Gd(III)、DTPA−イットリウム−88、DTPA−インジウム−111が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
「多座リガンド(poludentate ligand)」は、例えば、配位共有結合によって金属イオンに2つ以上の結合点を介してそれ自体を結合させることができるリガンドである。多座リガンドの例としては、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)、(1,2−エタンジイルジニトリロ)四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン、2,2’−ジピリジン(bipy)、1,10−フェナントロリン(phen)、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(DPPE)、2,4−ペンタンジオン(acac)、およびエタンジオエート(ox)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
「保護されている酸素原子を有している多座リガンド前駆体」は、適切な保護基で保護されている酸素原子(例えば、カルボキシル基の単結合酸素原子)を含む多座リガンドである。適切な保護基としては、低級アルキル、ベンジル、およびシリル基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
1つの実施形態では、以下の式(I)の繰り返し単位と式(II)の繰り返し単位とを含むポリマー結合体が提供される:
【化1】
式中、nはそれぞれ独立して、1または2であり、A1はそれぞれ、酸素はまたNR5であり、A2はそれぞれ酸素であり、R1およびR2はそれぞれ独立して、状況に応じて置換されたC1〜10アルキル、状況に応じて置換されたC6〜20アリール、アンモニウム、アルカリ金属、多座リガンド、保護されている酸素原子を有している多座リガンド前駆体、および1つの薬剤を含む化合物からなる群より選択される。アルカリ金属の例としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、およびセシウム(Cs)が挙げられる。1つの実施形態では、アルカリ金属はナトリウムである。
【0032】
薬剤には、任意の数の活性化合物が含まれ得る。例えば、薬剤は、抗ガン剤、標的化剤、光学的造影剤、および磁気共鳴造影剤からなる群より選択され得る。R1およびR2基のうちの少なくとも1つは、該薬剤を含む基である。式(II)の繰り返し単位には、薬剤が含まれる場合も、また含まれない場合もある。1つの実施形態においては、R3およびR4はそれぞれ別々に、水素、アンモニウム、およびアルカリ金属からなる群より選択される。別の実施形態においては、R5は、水素原子またはC1〜4アルキル基のいずれかである。
【0033】
ポリマー結合体に存在する薬剤の量は、広い範囲で変化し得る。1つの実施形態においては、ポリマー結合体には、ポリマー結合体に対する薬剤の質量比に基づいて約1から約50%(重量/重量)の範囲の薬剤の量が含まれる。別の実施形態においては、ポリマー結合体には、ポリマー結合体に対する薬剤の質量比に基づいて、約5から約40%(重量/重量)の範囲の薬剤の量が含まれる。別の実施形態においては、ポリマー結合体には、ポリマー結合体に対する薬剤の質量比に基づいて約10から約30%(重量/重量)の範囲の薬剤の量が含まれる。
【0034】
薬剤の量、ならびに式(I)および式(II)の繰り返し単位の百分率量(%)を選択して、得られるポリマー結合体の溶解度を有利に制御することができることが、現在見出されている。例えば、好ましい実施形態においては、薬剤の量、ならびに式(I)および式(II)の繰り返し単位の百分率量(%)は、ポリマー結合体が、目的の特定のpHおよび/またはpH範囲で可溶性(または不溶性)となるように選択される。いくつかの実施形態においては、ポリマーの分子量もまた、溶解度を制御するように選択される。以下に提供される例では、薬剤の量、ならびに式(I)および式(II)の繰り返し単位の百分率量(%)、および分子量の適切な選択による溶解度の制御が説明される。本明細書中に提供される指針によって知ることができるように、当業者は、所望される溶解度特性を有しているポリマー結合体を生じる薬剤の適切な量と、式(I)および式(II)の繰り返し単位の適切な百分率量(%)を同定するために、常套の実験を使用することができる。そのような溶解度の制御は、用途に応じて有利であり得る。例えば、本明細書中に提供されるポリマー結合体の実施形態を使用して、そうでなければ溶解度の低い抗ガン剤の選択された組織への送達の改善(好ましくは、望ましくない副作用を低減させる)を提供することができ、そして/または、患者に抗ガン剤を投与する必要がある頻度を少なくすることができる。
【0035】
薬剤の量、ならびに式(I)および式(II)の繰り返し単位の百分率量(%)は、好ましくは、実質的に同じ量の同じ薬剤を含む比較可能なポリグルタミン酸結合体の溶解度よりも大きいポリマー結合体の溶解度が得られるように選択される。1つの実施形態においては、ポリマー結合体の溶解度は、比較可能なポリグルタミン酸結合体の溶解度よりも大きい。溶解度は、約22℃の0.9重量%のNaCl水溶液中に少なくとも5mg/mLのポリマー結合体が含まれているポリマー結合体溶液を形成し、そして光学的透明度を決定することによって測定される。光学的透明度は、例えば、目視観察によって、または当業者に公知の適切な機器による方法によって、濁度によって決定することができる。同様に形成させたポリグルタミン酸結合体溶液に対し得られた溶解度の比較は、より広い範囲のpH値にわたるより高い光学的透明度によって明らかであるように、溶解度の改善を示す。したがって、約22℃の0.9重量%のNaCl水溶液の中に少なくとも5mg/mLのポリマー結合体を含む試験したポリマー結合体溶液が、広いpH範囲にわたって、比較可能な試験したポリグルタミン酸結合体溶液の光学的透明度よりも大きい光学的透明度を有している場合には、ポリマー結合体の溶解度は、実質的に同じ量の薬剤を含む比較可能なポリグルタミン酸結合体の溶解度よりも大きい。当業者は、「比較可能な」ポリグルタミン酸結合体が、結合体のポリマー部分が、それに対して比較される目的のポリマー結合体(式(I)の繰り返し単位と式(II)の繰り返し単位とを含む)の分子量とほぼ同じ分子量を有する対照材料であることを理解するであろう。
【0036】
ポリマー結合体には、1つ以上の不斉炭素原子が含まれ得る。不斉炭素(アスタリスク(*)によって示される場合がある)は、rectus(右旋)立体配置またはsinister(左旋)立体配置を有し得、したがって、繰り返し単位は、ラセミである場合も、鏡像異性である場合も、また、鏡像異性的に富化されているものである場合もある。記号「n」および「*」(不斉炭素を示している)は、本明細書中で他の場所で使用される場合には、特に明記されない限りは、上記と同じ意味を有する。
【0037】
式(I)の繰り返し単位と式(II)の繰り返し単位とを含むポリマーは、式(I)と式(II)との2つ以上の異なる繰り返し単位を含むコポリマーである。さらに、式(I)の繰り返し単位と式(II)の繰り返し単位とを含むポリマーは、式(I)ではなく、そして式(II)でもない他の繰り返し単位を含むコポリマーであり得る。ポリマー中の式(I)の繰り返し単位と式(II)の繰り返し単位との数は限定されないが、好ましくは、約50から約5,000個の範囲であり、そしてより好ましくは、約100から約2,000個の範囲である。
【0038】
多種多様な他の繰り返し単位が、式(I)の繰り返し単位と式(II)の繰り返し単位とを含むポリマー結合体に含まれる場合がある。1つの実施形態においては、ポリマー結合体には、以下の式(III)の繰り返し単位がさらに含まれる:
【化2】
式中、R6基は、水素、アンモニウム、またはアルカリ金属である。R6が水素である場合には、式(III)の繰り返し単位はグルタミン酸の繰り返し単位である。
【0039】
薬剤を含む化合物は、多くの様々な方法でポリマーに結合させることができる。1つの実施形態においては、薬剤を含む化合物は、繰り返し単位に直接結合され得る。別の実施形態においては、薬剤を含む化合物には、リンカー基がさらに含まれる。リンカー基は、ポリマーに薬剤(または薬剤を含む化合物)を結合させる基である。リンカー基は、比較的小さいものであり得る。例えば、リンカー基には、アミン、アミド、エーテル、エステル、ヒドロキシル基、カルボニル基、またはチオール基が含まれ得る。あるいは、リンカー基は比較的大きいものであり得る。例えば、リンカー基には、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリール(C1〜6アルキル)基、ヘテロアリール基、またはヘテロアリール(C1〜6アルキル)基が含まれ得る。
【0040】
薬剤には、任意のタイプの活性化合物が含まれ得る。1つの実施形態においては、薬剤は光学的造影剤であり得る。好ましい実施形態においては、光学的造影剤は、アクリジン色素、クマリン色素、ローダミン色素、キサンテン色素、シアニン色素、およびピレン色素からなる群より選択される1つ以上である。例えば、特異的な光学的造影剤としては、テキサスレッド(Texas Red)、Alexa Fluor(登録商標)色素、BODIPY(登録商標)色素、フルオレセイン(Fluorescein)、オレゴングリーン(Oregon Green)(登録商標)色素、およびローダミングリーン(Rhodamine Green)(商標)色素を挙げることができる。これらは市販されているか、または当業者に公知の方法によって容易に調製される。
【0041】
別の実施形態においては、薬剤には抗ガン剤が含まれる。1つの実施形態においては、抗ガン剤は、タキサン、カンプトテシン、およびドキソルビシンからなる群より選択され得る。薬剤にタキサンが含まれる場合には、タキサンがパクリタキセルまたはドセタキセルであることが好ましい。パクリタキセルは、パクリタキセルのC2’−炭素を介して酸素原子で式(I)の繰り返し単位または式(II)の繰り返し単位に対して結合させることができる。あるいは、または加えて、パクリタキセルは、パクリタキセルのC7−炭素を介して酸素原子で式(I)の繰り返し単位または式(II)の繰り返し単位に対して結合される場合もある。
【0042】
別の実施形態においては、薬剤には、磁気共鳴造影剤が含まれる。1つの実施形態においては、磁気共鳴造影剤には常磁性金属化合物が含まれる。例えば、磁気共鳴造影剤には、Gd(III)化合物が含まれ得る。そのような一例においては、Gd(III)化合物は以下であり得る:
【化3】
【0043】
別の実施形態においては、薬剤には多座リガンドが含まれる。1つの実施形態においては、多座リガンドは常磁性金属と反応させて、磁気共鳴造影剤を形成させることができる。例えば、多座リガンドには、いくつかのカルボン酸基および/またはカルボキシレート基が含まれ得る。1つの実施形態においては、多座リガンドには、以下の構造の化合物が含まれる:
【化4】
式中、R7はそれぞれ別々に、水素、アンモニウム、またはアルカリ金属である。
【0044】
別の実施形態においては、薬剤には多座リガンド前駆体が含まれる。そのような実施形態においては、多座リガンドの酸素原子は適切な保護基によって保護される。適切な保護基としては、低級アルキル、ベンジル、およびシリル基が挙げられるが、これらに限定されない。保護基を有している多座リガンド前駆体の一例が以下に提供される:
【化5】
【0045】
繰り返し単位の総数に基づくポリマー結合体中の式(I)の繰り返し単位の百分率(%)は、広い範囲にわたって変化し得る。1つの実施形態においては、ポリマーには、式(I)および(II)の繰り返し単位の総モル数に基づいて、約1モル%から約99モル%の式(I)の繰り返し単位が含まれ得る。別の実施形態においては、ポリマーには、式(I)および(II)の繰り返し単位の総モル数に基づいて、約1モル%から約50モル%の式(I)の繰り返し単位が含まれ得る。別の実施形態においては、ポリマーには、式(I)および(II)の繰り返し単位の総モル数に基づいて、約1モル%から約30モル%の式(I)の繰り返し単位が含まれ得る。別の実施形態においては、ポリマーには、式(I)および(II)の繰り返し単位の総モル数に基づいて、約1モル%から約20モル%の式(I)の繰り返し単位が含まれ得る。別の実施形態においては、ポリマーには、式(I)および(II)の繰り返し単位の総モル数に基づいて、約1モル%から約10モル%の式(I)の繰り返し単位が含まれ得る。
【0046】
式(I)および(II)の繰り返し単位に加えて、ポリマー結合体には、様々な他の繰り返し単位が含まれる場合がある。例えば、1つの実施形態においては、ポリマー結合体には、式(III)の繰り返し単位が含まれる。式(I)、(II)、および(III)の繰り返し単位を含むポリマー結合体中の繰り返し単位の総数に基づく、式(I)の繰り返し単位の百分率(%)は、広い範囲にわたって変化し得る。1つの実施形態においては、ポリマー結合体には、式(I)、(II)、および(III)の繰り返し単位の総モル数に基づいて、約1モル%から約99モル%の式(I)の繰り返し単位が含まれ得る。別の実施形態においては、ポリマー結合体には、式(I)、(II)、および(III)の繰り返し単位の総モル数に基づいて、約1モル%から約50モル%の式(I)の繰り返し単位が含まれ得る。別の実施形態においては、ポリマー結合体には、式(I)、(II)、および(III)の繰り返し単位の総モル数に基づいて、約1モル%から約30モル%の式(I)の繰り返し単位が含まれ得る。別の実施形態においては、ポリマー結合体には、式(I)、(II)、および(III)の繰り返し単位の総モル数に基づいて、約1モル%から約20モル%の式(I)の繰り返し単位が含まれ得る。別の実施形態においては、ポリマー結合体には、式(I)、(II)、および(III)の繰り返し単位の総モル数に基づいて、約1モル%から約10モル%の式(I)の繰り返し単位が含まれ得る。
【0047】
1つの実施形態においては、式(I)の繰り返し単位および式(II)の繰り返し単位中の少なくとも1つのnは1である。別の実施形態においては、式(I)の繰り返し単位および式(II)の繰り返し単位中の少なくとも1つのnは2である。
【0048】
1つの実施形態においては、ポリマー結合体中の薬剤の量、式(I)の繰り返し単位の百分率、および式(II)の繰り返し単位の百分率は、実質的に同じ量の薬剤を含む比較可能なポリグルタミン酸結合体の溶解度よりも大きいポリマー結合体の溶解度が得られるように選択される。式(I)および式(II)の繰り返し単位を含むポリマー結合体が、比較可能なポリグルタミン酸結合体の溶解度よりも大きい溶解度を有しているpH値の範囲は、狭い場合も、また、広い場合もある。上記のように、溶解度は、約22℃の0.9重量%のNaCl水溶液の中に少なくとも5mg/mLのポリマー結合体を含むポリマー結合体溶液を形成させること、そして光学的透明度を決定することによって測定される。1つの実施形態においては、ポリマー結合体は、少なくとも約3pH単位のpH範囲にわたって可溶性である。別の実施形態においては、ポリマー結合体は、少なくとも約8pH単位のpH範囲にわたって可溶性である。別の実施形態においては、ポリマー結合体は、少なくとも約9pH単位のpH範囲にわたって可溶性である。別の実施形態においては、ポリマー結合体が可溶性であるpH範囲には、約2から約5の範囲の中の少なくとも1つのpH値(例えば、pH=2、pH=3、pH=4、および/またはpH=5)が含まれる。好ましくは、ポリマー結合体が可溶性であるpH範囲は、比較可能なポリグルタミン酸結合体が可溶性であるpH範囲よりも広い。例えば、1つの実施形態においては、ポリマー結合体は、比較可能なポリグルタミン酸結合体が可溶性であるpH範囲よりも少なくとも約1pH単位広い、好ましくは、少なくとも約2pH単位広いpH範囲にわたって可溶性である。
【0049】
溶解度を測定するために溶液中に入れられるポリマー結合体の量には、大きなばらつきがあり得る。1つの実施形態においては、溶解度は、試験されるポリマー結合体溶液に少なくとも約5mg/mLのポリマー結合体が含まれる場合に測定される。別の実施形態においては、溶解度は、試験されるポリマー結合体溶液に少なくとも約10mg/mLのポリマー結合体が含まれる場合に測定される。別の実施形態においては、溶解度は、試験されるポリマー結合体溶液に少なくとも約25mg/mLのポリマー結合体が含まれる場合に測定される。別の実施形態においては、溶解度は、試験されるポリマー結合体溶液に少なくとも約100mg/mLのポリマー結合体が含まれる場合に測定される。別の実施形態においては、溶解度は、試験されるポリマー結合体溶液に少なくとも約150mg/mLのポリマー結合体が含まれる場合に測定される。当業者は、比較可能なポリグルタミン酸結合体が、試験されるポリマー結合体の濃度とほぼ同じ濃度で試験されることを理解するであろう。
【0050】
式(I)の繰り返し単位と式(II)の繰り返し単位とを含むポリマーは様々な方法で調製され得る。1つの実施形態においては、ポリマー反応体は、溶媒中に溶解または部分的に溶解されて、溶解または部分的に溶解されたポリマー反応体が形成される。溶解または部分的に溶解されたポリマー反応体は第2の反応体と反応して、中間体産物が、あるいは、いくつかの実施形態においては、式(I)の繰り返し単位と式(II)の繰り返し単位とを含むポリマーが形成される。
【0051】
ポリマー反応体には、式(I)の繰り返し単位と式(II)の繰り返し単位とを含むポリマーを形成することができる任意の適切な材料が含まれ得る。1つの実施形態においては、ポリマー反応体には、以下の式(IV)の繰り返し単位が含まれる:
【化6】
式中、nはそれぞれ独立して、1または2であり、A3はそれぞれ酸素であり、そしてR7およびR8はそれぞれ独立して、水素、アンモニウム、およびアルカリ金属からなる群より選択される。
【0052】
1つの実施形態においては、ポリマー反応体には、以下の式(V)の繰り返し単位が含まれ得る:
【化7】
式中、R9は、水素、アンモニウム、またはアルカリ金属である。
【0053】
第2の反応体は様々な化合物であり得る。1つの実施形態においては、第2の反応体には、多座リガンド、保護されている酸素原子を有している多座リガンド前駆体、および薬剤を含む化合物からなる群より選択される少なくとも1つが含まれる。1つの実施形態においては、第2の反応体には置換基が含まれ得る。置換基は、ヒドロキシおよびアミンからなる群より選択され得る。
【0054】
1つの実施形態においては、第2の反応体には、薬剤を含む化合物が含まれる。薬剤は任意の活性化合物であり得る。例えば、薬剤を含む化合物は、抗ガン剤、標的化剤、光学的造影剤、および磁気共鳴造影剤からなる群より選択される。1つの実施形態においては、光学的造影剤は、アクリジン色素、クマリン色素、ローダミン色素、キサンテン色素、シアニン色素、およびピレン色素からなる群より選択され得る。別の実施形態においては、抗ガン剤は、タキサン、カンプトテシン、およびドキソルビシンからなる群より選択され得る。1つの好ましい実施形態においては、抗ガン剤にはタキサンが含まれ得、そしてタキサンは、パクリタキセルおよびドセタキセルからなる群より選択され得る。
【0055】
パクリタキセルは、多数の方法でポリマーに結合され得る。1つの実施形態においては、パクリタキセルは、C2’−炭素に結合された酸素原子で、式(I)の繰り返し単位に結合される。別の実施形態においては、パクリタキセルは、C7−炭素に結合された酸素原子で、式(I)の繰り返し単位に結合される。
【0056】
1つの実施形態においては、薬剤を含む化合物には、磁気共鳴造影剤が含まれる。別の実施形態においては、磁気共鳴造影剤には常磁性金属化合物が含まれる。好ましくは、薬剤を含む化合物には、Gd(III)化合物が含まれる。例えば、薬剤を含む化合物には以下の構造が含まれ得る:
【化8】
【0057】
1つの実施形態においては、多座リガンドをポリマーに結合させることができる。任意の適切な多座リガンドが使用され得る。1つの実施形態においては、多座リガンドは、常磁性金属と反応させて、磁気共鳴造影剤を形成することができる。例えば、多座リガンドには、いくつかのカルボン酸基および/またはカルボキシレート基が含まれる場合がある。例えば、以下の構造の多座リガンドをポリマーに結合させることができる:
【化9】
式中、R7はそれぞれ別々に、水素、アンモニウム、またはアルカリ金属である。
【0058】
別の実施形態においては、保護基を有している多座リガンド前駆体がポリマーに結合され得る。そのような前駆体は、適切な保護基によって保護されたその酸素原子を有している。適切な保護基としては、低級アルキル、ベンジル、およびシリル基が挙げられるが、これらに限定されない。保護基を有している多座リガンド前駆体の一例は以下に提供される:
【化10】
【0059】
1つの実施形態においては、ポリマー結合体を作製する方法には、溶解または部分的に溶解されたポリマー反応体を第2の反応体と、カップリング剤の存在下で反応させる工程が含まれる。任意の適切なカップリング剤を使用することができる。1つの実施形態においては、カップリング剤は、以下からなる群より選択される:1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC)、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1,1’−カルボニル−ジイミダゾール(CDI)、N,N’−ジスクシンイミジルカルボネート(DSC)、N−[(ジメチルアミノ)−1H−1,2,3−トリアゾロ−[4,5−b]ピリジン−1−イル−メチレン]−N−メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN−オキサイド(HATU)、2−[(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルアミニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、2−[(6−クロロ−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルアミニウムヘキサフルオロホスフェート(HCTU)、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP(登録商標))、ブロモ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBroP(登録商標))、2−[(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルアミニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、およびベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)。
【0060】
反応を行うことを可能にする任意の適切な溶媒を使用することができる。1つの実施形態においては、溶媒は極性の非プロトン性溶媒であり得る。例えば、溶媒は、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピリドン(NMP)、およびN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)からなる群より選択することができる。
【0061】
別の実施形態においては、反応にはさらに、溶解または部分的に溶解されたポリマー反応体を触媒の存在下で反応させる工程が含まれ得る。反応を促進する任意の触媒を使用することができる。1つの実施形態においては、触媒には、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)が含まれ得る。
【0062】
1つの実施形態においては、式(I)の繰り返し単位と式(II)の繰り返し単位とを含むポリマーは、ポリグルタミン酸とアミノ酸(例えば、アスパラギン酸および/またはグルタミン酸)を用いて出発して生成することができる。あるいは、別の実施形態においては、ポリマーは、出発ポリグルタミン酸材料をその塩形態へと最初に変換することによって作製され得る。ポリグルタミン酸の塩形態は、ポリグルタミン酸を適切な塩基(例えば、重炭酸ナトリウム)と反応させることによって得ることができる。アミノ酸部分は、ポリグルタミン酸のペンダントカルボン酸基に結合させることができる。ポリグルタミン酸の重量平均分子量は限定されないが、好ましくは約10,000から約500,000ダルトンであり、そしてさらに好ましくは、約25,000から約300,000ダルトンである。そのような反応は、ポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)またはポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)を作製するために使用することができる。
【0063】
1つの実施形態においては、アミノ酸は、ポリグルタミン酸への結合の前に保護基によって保護される。この反応に適している保護されるアミノ酸部分の一例は、以下に示されるL−アスパラギン酸ジ−ブチルエステル塩酸塩である:
【化11】
L−アスパラギン酸ジ−t−ブチルエステル塩酸塩
【0064】
ポリグルタミン酸とアミノ酸との反応は、任意の適切な溶媒の存在下で行うことができる。1つの実施形態においては、溶媒は非プロトン性溶媒であり得る。好ましい実施形態においては、溶媒は、N,N−ジメチルホルムアミドである。
【0065】
1つの実施形態においては、カップリング剤(例えば、EDC、DCC、CDI、DSC、HATU、HBTU、HCTU、PyBOP(登録商標)、PyBroP(登録商標)、TBTU、およびBOP)を使用することができる。他の実施形態においては、ポリグルタミン酸およびアミノ酸を、触媒(例えば、DMAP)を使用して反応させることができる。
【0066】
反応の完了後、アミノ酸の酸素原子が保護されている場合には、保護基を公知の方法を使用して(例えば、適切な酸(例えば、トロフルオロ酢酸)を使用して)除去することができる。所望の場合には、ポリグルタミン酸をアミノ酸と反応させることによって得られるポリマーの塩形態を、ポリマーの酸形態を適切な塩基溶液(例えば、重炭酸ナトリウム溶液)で処理することによって形成させることができる。
【0067】
ポリマーは、当業者に公知の方法によって回収し、そして/または精製することができる。例えば、溶媒は、適切な方法(例えば、回転蒸発)によって除去することができる。加えて、反応混合物を酸性水溶液中に濾過して、沈殿を誘導することができる。得られた沈殿は、その後、濾過し、そして水で洗浄することができる。
【0068】
1つの実施形態においては、式(I)の繰り返し単位と式(II)の繰り返し単位とを含むポリマーにはまた、上記に示されるように式(III)の繰り返し単位も含まれ得る。式(I)、(II)、および(III)の繰り返し単位を含むポリマーを形成する1つの方法は、ポリグルタミン酸を用いて出発し、そしてこれをアミノ酸(例えば、アスパラギン酸および/またはグルタミン酸)と、ポリグルタミン酸に基づいて1.0等量未満のアミノ酸の量で反応させることによる。例えば、1つの実施形態においては、ポリグルタミン酸に基づいて0.7等量のアミノ酸をポリグルタミン酸と反応させることができ、その結果、得られるポリマーの繰り返し単位のうちの約70%をアミノ酸が占める。上記で議論されたように、アミノ酸の酸素原子は適切な保護基を使用して保護することができる。1つの実施形態においては、アミノ酸はL−アスパラギン酸またはL−グルタミン酸であり得る。別の実施形態においては、アミノ酸の酸素原子は、t−ブチル基で保護することができる。アミノ酸の酸素原子が保護されている場合には、保護基は、適切な酸(例えば、トリフルオロ酢酸)などの公知の方法を使用して除去することができる。
【0069】
薬剤を含む基、多座リガンド、および/または保護されている酸素原子を有している多座リガンド前駆体の、ポリマー酸またはその塩形態への結合は、様々な方法によって、例えば、薬剤を含む基、多座リガンド、および/または保護されている酸素原子を有している多座リガンド前駆体を様々なポリマーに共有結合させることによって行うことができる。上記の基をポリグルタミン酸および/または塩から得られるポリマーに結合させる1つの方法は、熱(例えば、マイクロ波の方法を使用することによる熱)を使用することによる。あるいは、結合は、室温で行われる場合もある。当業者に一般的に公知であり、そして/または本明細書中に記載されている、適切な溶媒、カップリング剤、触媒、および/または緩衝液を使用して、ポリマー結合体を形成することができる。ポリグルタミン酸を用いる場合には、ポリグルタミン酸ならびに/または塩およびアミノ酸から得られたポリマーの塩または酸形態の両方を、ポリマー結合体を形成するための出発材料として使用することができる。
【0070】
ポリグルタミン酸ならびに/または塩およびアミノ酸から得られたポリマーに結合させることができる適切な薬剤としては、蛍光剤(optical agent)、抗ガン剤、標的化剤、磁気共鳴造影剤(例えば、常磁性金属化合物)、多座リガンド、および保護されている酸素原子を有している多座リガンド前駆体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
1つの実施形態においては、ポリグルタミン酸ならびに/または塩およびアミノ酸から得られたポリマーは、蛍光剤に結合させることができる。1つの実施形態においては、蛍光剤は、Texas Red−NH2であり得る。
【化12】
Texas Red−NH−
【0072】
1つの特定の実施形態においては、少なくとも1つの式(I)の繰り返し単位と少なくとも1つの式(II)の繰り返し単位とを含むポリマーを、DCC、Texas Red−NH2色素、ピリジン、および4−ジメチルアミノピリジンと反応させることができる。混合物は、マイクロ波の方法を使用して加熱される。1つの実施形態においては、反応は、約100°〜150℃の範囲の温度にまで加熱される。別の実施形態においては、材料が加熱される時間は5から40分の範囲である。所望の場合には、反応混合物は室温に冷却することができる。当業者に公知の適切な方法を使用して、ポリマー結合体を単離、そして/または精製することができる。例えば、反応混合物は、酸性水溶液中に濾過することができる。形成する全ての沈殿を、その後、濾過し、そして水で洗浄することができる。状況に応じて、沈殿を任意の適切な方法によって精製することができる。例えば、沈殿をアセトンに移して溶解することができ、そして得られる溶液を再び重炭酸ナトリウム溶液中に濾過することができる。所望の場合には、得られる反応溶液を、セルロース膜を使用して水で透析することができ、そしてポリマーを凍結乾燥させ、単離することができる。
【0073】
Texas Red色素を含む結合体は、以下の実施例に説明されるように、選択された組織に造影剤を送達するために使用することができる。上記ポリマーは、例えば、以下に説明されるように、水溶液中でナノ粒子に形成され得る。
【0074】
1つの実施形態においては、ポリグルタミン酸ならびに/または塩およびアミノ酸から得られたポリマーを抗ガン剤に結合させることができる。1つの実施形態においては、抗ガン剤は、タキサン、カンプトテシン、および/またはドキソルビシンであり得る。好ましい実施形態においては、抗ガン剤はタキサン(例えば、パクリタキセルまたはドセタキセル)である。
【0075】
1つの実施形態においては、ポリマーに結合された抗ガン剤はパクリタキセルである。1つの実施形態においては、パクリタキセルは、C2’−酸素原子でポリマーに結合することができる。別の実施形態においては、パクリタキセルはC7−酸素原子でポリマーに結合することができる。別の実施形態においては、ポリマー鎖には、C2’−酸素原子によってのみポリマーにカップリングされているパクリタキセルが含まれる。なお別の実施形態においては、ポリマー鎖には、C7−酸素原子によってのみポリマーにカップリングされているパクリタキセルが含まれる。なお別の実施形態においては、ポリマーには、C2’−結合されたパクリタキセル基とC7−結合されたパクリタキセル基との両方が含まれる。
【0076】
抗ガン剤は、Texas−Redに関して上記に記載された方法を使用して、ポリグルタミン酸ならびに/または塩およびアミノ酸から得られたポリマーに結合させることができる。
【0077】
1つの実施形態においては、パクリタキセルは、好ましくは、カップリング剤(例えば、EDCおよび/またはDCC)と触媒(例えば、(DAMP)との存在下で、溶媒(例えば、DMFなどの非極性溶媒)中でポリグルタミン酸ならびに/または塩およびアミノ酸から得られたポリマーと反応させることができる。さらに別の薬剤(例えば、ピリジンまたはヒドロキシベンゾトリアゾール)を使用することができる。1つの実施形態においては、反応は、0.5〜2日間にわたって行われ得る。当業者に公知の適切な方法を使用して、ポリマー結合体を単離および/または精製することができる。例えば、反応混合物は、酸性溶液に注いで沈殿を形成させることができる。形成する任意の沈殿を、その後、濾過し、そして水で洗浄することができる。状況に応じて、沈殿を任意の適切な方法によって精製することができる。例えば、沈殿をアセトンに移して、その中に溶解することができ、そして得られる溶液を再び重炭酸ナトリウム溶液中に濾過することができる。所望の場合には、得られる反応溶液を、セルロース膜を使用して水で透析することができ、そしてポリマーを凍結乾燥させ、単離することができる。得られるポリマー中のパクリタキセルの含有量は、UV分光分析によって決定することができる。
【0078】
あるいは、薬剤を含む化合物を、グルタミン酸および/またはアスパラギン酸などのアミノ酸と反応させることができ、薬剤を含む化合物はアミノ酸にカップリング(例えば、共有結合)される。アミノ酸−薬剤化合物は、その後、ポリグルタミン酸またはその塩と反応して、ポリマー結合体を形成することができる。1つの実施形態においては、パクリタキセルをグルタミン酸と反応させて、パクリタキセルがグルタミン酸のペンダントカルボン酸基に共有結合されている化合物が形成される。グルタミン酸−パクリタキセル化合物を、その後、ポリグルタミン酸またはその塩と反応させて、ポリマー結合体を形成することができる。1つの実施形態においては、パクリタキセルをアスパラギン酸と反応させて、パクリタキセルがアスパラギン酸のペンダントカルボン酸基に共有結合されている化合物が形成される。アスパラギン酸−パクリタキセル化合物を、その後、ポリグルタミン酸またはその塩と反応させて、ポリマー結合体を形成することができる。所望の場合には、C2’−酸素によってアミノ酸にカップリングされたパクリタキセルを、公知の分離方法(例えば、HPLC)を使用して、C7−酸素によってアミノ酸にカップリングされたパクリタキセルから分離することができる。
【0079】
ポリマー結合体の形成の後、ポリマーに共有結合していない任意の遊離の薬剤の量を測定することもできる。例えば、薄層クロマトグラフィ(TLC)を使用して、パクリタキセルに結合されたポリマーの組成物中に残っている遊離のパクリタキセルが実質的に存在しないことを確認することができる。
【0080】
1つの実施形態においては、ポリグルタミン酸ならびに/または塩およびアミノ酸から得られたポリマーを、多座リガンドに結合させることができる。適切な多座リガンドとしては、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)、(1,2−エタンジイルジニトリロ)四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン、2,2’−ジピリジン(bipy)、1,10−フェナントロリン(phen)、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(DPPE)、2,4−ペンタンジオン(acac)、およびエタンジオエート(ox)が挙げられるが、これらに限定されない。当業者に一般的に公知であり、そして/または本明細書中に記載されている、適切な溶媒、カップリング剤、触媒、および/または緩衝液を使用して、ポリマー結合体を形成することができる。別の実施形態においては、ポリグルタミン酸ならびに/または塩およびアミノ酸から得られたポリマーを、保護されている酸素原子を有している多座リガンド前駆体に結合させることができる。ポリグルタミン酸を用いる場合には、ポリグルタミン酸ならびに/または塩およびアミノ酸から得られたポリマーの塩または酸形態の両方を、ポリマー結合体を形成するための出発材料として使用することができる。
【0081】
1つの実施形態においては、多座リガンドにはDTPAが含まれる。1つの実施形態においては、DTPAなどの多座リガンド(保護されている酸素原子を有しているもの、または有していないもの)を、好ましくは、カップリング剤(例えば、DCC)と触媒(例えば、DMAP)との存在下で、ポリグルタミン酸ならびに/または塩およびアミノ酸から得られたポリマーと、溶媒(例えば、DMFなどの非プロトン性溶媒)中で反応させることができる。保護基が存在する場合には、適切な方法を使用して除去を行うことができる。例えば、保護されている酸素原子を有している多座リガンド前駆体(例えば、t−ブチル基によって保護されている酸素原子を有しているDTPA)とのポリマー結合体を、トロフルオロ酢酸などの酸で処理することができる。保護基の除去後、酸を回転蒸発によって除去することができる。1つの実施形態においては、DTPAを適切な塩基で処理して、カルボン酸−OH基上の水素原子を除去することができる。いくつかの実施形態においては、塩基は重炭酸ナトリウムである。
【0082】
1つの実施形態においては、ポリグルタミン酸ならびに/または塩およびアミノ酸から得られたポリマーを、磁気共鳴造影剤に結合させることができる。1つの実施形態においては、磁気共鳴造影剤にはGd(III)化合物が含まれる。磁気共鳴造影剤を形成する1つの方法は、常磁性金属を、多座リガンドを含むポリマー結合体と反応させることによる。適切な常磁性金属としては、Gd(III)、インジウム−111、およびイットリウム−88が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、DTPAを含むポリマー結合体は、緩衝溶液中Gd(III)で数時間処理することができる。当業者に公知の適切な方法を使用して、ポリマー結合体を単離し、そして/または精製することができる。例えば、得られる反応溶液を、セルロース膜を使用して水で透析することができ、そしてポリマーを凍結乾燥させ、単離することができる。常磁性金属の量は、誘導結合プラズマ発光分析(ICP−OES)測定によって定量することができる。
【0083】
ポリマー結合体は、例えば、以下の実施例に説明されるように、選択された組織に造影剤および/または薬物を送達するために使用することができる。上記ポリマーは、例えば、以下に説明されるように、水溶液中でナノ粒子に形成され得る。ポリマーと薬物とを含む結合体は、同様の様式でナノ粒子になるように形成され得る。そのようなナノ粒子を使用して、選択された組織に対して薬物を優先的に送達することができる。
【0084】
(薬学的組成物)
いくつかの実施形態においては、本明細書中に開示される化合物(例えば、ポリマー結合体および/またはそれを含む薬剤)のプロドラッグ、代謝物、立体異性体、水和物、溶媒和物、多形体、および薬学的に許容される塩が提供される。
【0085】
「プロドラッグ」は、インビボで元の薬物に変換される薬剤をいう。プロドラッグは、多くの場合、いくつかの状況ではそれらは元の薬物よりも投与することが容易である場合があるとの理由から有用である。例えば、これらは、経口投与によって生体利用が可能であるが、元の薬物はそうではない場合がある。プロドラッグはまた、元の薬物を上回るほどに、薬学的組成物中の溶解度の改善を有している場合がある。プロドラッグの一例(限定ではない)は、細胞膜(水溶性が移動に決定的である)の通過を容易にするためにエステル(「プロドラッグ」)として投与されるが、その後、一旦、水溶性であることが有効である細胞内に入ると、代謝によってカルボン酸、活性部分に加水分解される化合物である。プロドラッグのさらなる例は、酸基に結合された短いペプチド(ポリアミノ酸)であり得、ペプチドが代謝されて活性部分が露出される。適切なプロドラッグ誘導体の選択および調製のための従来の手順は、例えば、Design of Prodrugs,(H.Bundgaard,Elsevier編,1985)(これはその全体が引用により本明細書中に組み入れられる)に記載されている。
【0086】
用語「プロドラッグエステル」は、生理学的条件下で加水分解される任意のいくつかのエステルを形成する基の付加によって形成される、本明細書中に開示される化合物の誘導体をいう。プロドラッグエステル基の例としては、ピボイルオキシメチル、アセトキシメチル、フタリジル、インダニル、およびメトキシメチル、さらには当該分野で公知の他のそのような基が挙げられ、(5−R−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メチル基が含まれる。プロドラッグエステル基の他の例は、例えば、T.Higuchi and V.Stella,「Pro−drug as Novel Delivery Systems」,第14巻,A.C.S.Symposium Series,American Chemical Society(1975);および「Bioreversible Carriers in Drug Design:Theory and Application」,E.B.Roche編,Pergamon Press:New York,14−21(1987)(カルボキシル基を含む化合物についてのプロドラッグとして有用なエステルの例が提供されている)に見出すことができる。上記参考文献はそれぞれ、それらの全体が引用により本明細書中に組み入れられる。
【0087】
用語「薬学的に許容される塩」は、それが投与される生物に対して有意な刺激を引き起こさず、そして化合物の生物学的活性および特性を取り消してしまうことのない化合物の塩をいう。いくつかの実施形態においては、塩は化合物の酸付加塩である。薬学的塩は、化合物を無機酸(例えば、ハロゲン化水素酸(例えば、塩化水素酸または塩化ホウ素酸)、硫酸、硝酸、リン酸など)と反応させることによって得ることができる。薬学的塩はまた、化合物を有機酸(例えば、脂肪族もしくは芳香族カルボン酸またはスルホン酸、例えば、酢酸、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸、またはナフタレンスルホン酸)と反応させることによって得ることもできる。薬学的塩はまた、化合物を塩基と反応させて、塩(例えば、アンモニウム塩、アルカリ金属塩、(例えば、ナトリウム塩もしくはカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩もしくはマグネシウム塩)、有機酸基の塩(例えば、ジシクロヘキシルアミン)、N−メチル−D−グルカミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、C1〜C7アルキルアミン、シクロヘキシルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ならびにアルギニン、リジンなどのアミノ酸との塩)を形成することによっても得ることができる。
【0088】
薬学的処方物の製造に、薬学的賦形剤とその塩形態の有効成分との混和物が含まれる場合には、薬学的賦形剤(塩基性ではない(すなわち、酸性または中性のいずれか)賦形剤)を使用することが所望され得る。
【0089】
様々な実施形態においては、本明細書中に開示される化合物(例えば、ポリマー結合体および/またはそれを含む薬剤)を単独で使用することができ、本明細書中に開示される他の化合物と組み合わせて使用することができ、また、本明細書中に記載される治療分野で活性のある1つ以上の他の薬剤と組み合わせて使用することもできる。
【0090】
別の態様においては、本開示は、1つ以上の生理学的に許容される界面活性剤、担体、希釈剤、賦形剤、平滑剤、懸濁化剤、被膜形成物質、およびコーティング補助物質(coating assistants)、またはそれらの組み合わせと、本明細書中に開示される化合物(例えば、ポリマー結合体および/またはそれを含む薬剤)とを含む薬学的組成物に関する。治療的使用について許容される担体または希釈剤は薬学の分野では周知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第18版,Mack Publishing Co.,Easton,PA(1990)(これはその全体が引用により本明細書中に組み入れられる)に記載されている。保存剤、安定剤、色素、甘味剤、香料、香味剤などが薬学的組成物中に提供される場合もある。例えば、安息香酸ナトリウム、アスコルビン酸、およびp−ヒドロキシ安息香酸のエステルを、保存剤として添加することができる。加えて、抗酸化剤および懸濁化剤が使用される場合がある。様々な実施形態においては、アルコール、エステル、硫酸化脂肪族アルコールなどが界面活性剤として使用され得る;スクロース、グルコース、ラクトース、デンプン、結晶化セルロース、マンニトール、軽質無水ケイ酸塩、アルミン酸マグネシウム、アルミン酸メタケイ酸マグネシウム(magnesium methasilicate aluminate)、合成ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウムなどを、賦形剤として使用することができる;ステアリン酸マグネシウム、タルク、硬化油などを平滑剤として使用することができる;ココナッツ油、オリーブ油、ゴマ油、ピーナッツ油、大豆油(soya)を懸濁化剤または潤滑剤として使用することができる;炭水化物(例えば、セルロース)もしくは糖の誘導体としての酢酸フタル酸セルロース(cellulose acetate phthalate)、またはポリビニルの誘導体としてのメチルアセテート−メタクリレートコポリマーを、懸濁化剤として使用することができる;そして、フタル酸エステルなどの可塑剤を懸濁化剤として使用することができる。
【0091】
用語「薬学的組成物」は、本明細書中に開示される化合物(例えば、ポリマー結合体および/またはそれを含む薬剤)の、他の化学的成分(例えば、希釈剤または担体)との混合物をいう。薬学的組成物は、生物への化合物の投与を容易にする。多数の化合物を投与するための技術が当該分野に存在しており、これには、経口投与、注射による投与、エアゾール投与、非経口投与、および局所投与が含まれるが、これらに限定されない。薬学的組成物はまた、化合物を無機酸または有機酸(例えば、塩化水素酸、ホウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸など)と反応させることによっても得ることができる。
【0092】
用語「担体」は、細胞または組織への化合物の取り込みを容易にする化合物をいう。例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)が一般的に利用されている担体である。なぜなら、これは、多くの有機化合物の、生物の細胞または組織への取り込みを促進するからである。
【0093】
用語「希釈剤」は、目的の化合物(例えば、ポリマー結合体および/またはそれを含む薬剤)を溶解させ、さらにはその化合物の生物学的に活性な形態を安定化させるであろう、水中に希釈される化合物をいう。緩衝化溶液中に溶解された塩は、当該分野では希釈剤として利用される。1つの一般的に使用されている緩衝化溶液はリン酸緩衝化生理食塩水である。なぜならこれは、ヒトの血液の塩条件を模倣するからである。緩衝塩は低濃度で溶液のpHを制御することができるので、緩衝化希釈剤によっては、まれに、化合物の生物学的活性が修飾されてしまう。用語「生理学的に許容される」は、化合物の生物学的活性および特性を取り消してしまうことのない担体または希釈剤をいう。
【0094】
本明細書中に記載される薬学的組成物は、それ自体をヒト患者に投与することができ、また、併用療法においてはそれらが他の有効成分、または適切な担体もしくは賦形剤と混合されている薬学的組成物中で投与することもできる。目的の用途の化合物の処方および投与のための技術は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」,Mack Publishing Co.,Easton,PA,第18版,1990に見ることができる。
【0095】
適切な投与経路としては、例えば、経口投与、直腸投与、経粘膜投与、局所投与、または腸投与;非経口投与(筋肉内、皮下、静脈内、髄内注射、ならびにクモ膜下、直接の脳室内、腹腔内、鼻腔内、または眼内注射が含まれる)を挙げることができる。化合物(例えば、ポリマー結合体および/またはそれを含む薬剤)はまた、所定の速度での長時間および/または時間が決められたパルス投与のために、持続放出または徐放投与形態(デポー注射、浸透圧ポンプ、丸剤、経皮(電気送達型のものを含む)パッチなどを含む)で投与することもできる。
【0096】
本発明の薬学的組成物は、それ自体が公知の様式で、例えば、常套の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠を作成する、ゲル化(levigating)、乳化、カプセル化、捕捉、または錠剤化プロセスによって、製造することができる。
【0097】
したがって、本発明にしたがって使用される薬学的組成物は、薬学的に使用することができる調製物への活性化合物の処理を容易にする賦形剤および補助剤を含む1つ以上の生理学的に許容される担体を使用して、常套の様式で処方することができる。適切な処方は、選択される投与経路に応じて様々である。任意の周知の技術、担体、および賦形剤を、適切であり、そして例えば、上記のRemington’s Pharmaceutical Sciencesにおいて当該分野で理解されているように使用することができる。
【0098】
注射可能なものは、常套の形態に、液体溶液または懸濁液、注射前に液体中の溶液または懸濁液とするために適している固体の形態のいずれかとして、あるいはエマルジョンとして調製することができる。例えば、適切な賦形剤は、水、生理食塩水、デキストロース、マンニトール、ラクトース、レシチン、アルブミン、グルタミン酸ナトリウム、塩酸システインなどである。加えて、所望の場合には、注射可能な薬学的組成物には、少量の非毒性の補助物質(例えば、湿潤剤、pH緩衝剤など)を含めることができる。生理学的に適合性の緩衝液としては、ハンクス溶液(Hanks’s solution)溶液、リンガー溶液(Ringer’s solution)、または生理食塩水が挙げられるが、これらに限定されない。所望の場合には、吸収を促進させる調製物(例えば、リポソーム)を利用することができる。
【0099】
経粘膜投与のためには、浸透されるバリアに適切な浸透剤が処方物中で使用される場合がある。
【0100】
非経口投与(例えば、ボーラス注射または持続注入による)のための薬学的組成物としては、水溶性形態の活性化合物の水溶液が挙げられる。加えて、活性化合物の懸濁液は、適切な油状の注射懸濁液として調製することができる。適切な親油性溶媒または媒体としては、脂肪油(例えば、ゴマ油)または他の有機油(例えば、大豆油、グレープフルーツ油、またはアーモンド油)、あるいは合成の脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルまたはトリグリセリド)、あるいはリポソームが挙げられる。水性の注射懸濁液には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなどの、懸濁液の粘性を高める物質が含まれ得る。状況に応じて、懸濁液には、適切な安定剤、または高度に濃縮された溶液の調製を可能にするための化合物の溶解度を高める物質も含まれる場合がある。注射用の処方物は、保存剤が添加された単位投与量形態で(例えば、アンプル中に、または多用量の容器中に)提示され得る。組成物は、懸濁液、溶液、または油中エマルジョン、あるいは水性媒体などの形態をとることができ、そしてこれには、懸濁化剤、安定剤、および/または分散剤などの処方剤が含まれる場合がある。あるいは、有効成分は、適切な媒体(例えば、滅菌の発熱物質を含まない水)で使用前に構成される粉末の形態であり得る。
【0101】
経口投与のためには、化合物は、活性化合物を当該分野で周知の薬学的に許容される担体と混合することによって容易に処方することができる。そのような担体によって、本発明の化合物を、処置される患者が経口で摂取するための錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー、懸濁剤などとして処方することが可能となる。経口で使用される薬学的調製物は、活性化合物を固体の賦形剤と混合すること、状況に応じて、得られた混合物を粉砕すること、そして顆粒の混合物を、錠剤または糖衣錠の核を得るために所望の場合には適切な補助剤を加えた後に、処理することによって得ることができる。適切な賦形剤は、特に、充填剤(例えば、糖(ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む);セルロース調製物(例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン(PVP))である。所望の場合には、崩壊剤(例えば、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(例えばアルギン酸ナトリウム))が添加され得る。糖衣錠の核には適切なコーティングが施される。この目的のためには、濃縮された糖溶液を使用することができる。これには、状況に応じて、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適切な有機溶媒または溶媒混合物が含まれ得る。染料または色素が、活性化合物の用量の様々な組み合わせの同定のため、または特性決定のために、錠剤または糖衣錠のコーティングに添加される場合がある。この目的のためには、濃縮された糖溶液を使用することができる。これには、状況に応じて、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適切な有機溶媒または溶媒混合物が含まれ得る。染料または色素が、活性化合物の用量の様々な組み合わせの同定のため、または特性決定のために、錠剤または糖衣錠のコーティングに添加される場合がある。
【0102】
経口で使用することができる薬学的調製物としては、ゼラチンでできている押し込み型のカプセル、さらにはゼラチンおよび可塑剤(例えば、グリセロールまたはソルビトール)でできている密閉型のソフトカプセルが挙げられる。押し込み型のカプセルには、充填剤(例えば、ラクトース)、結合剤(例えば、デンプン)、および/または潤滑剤(例えば、タルクもしくはステアリン酸マグネシウム)、および状況に応じて、安定剤と混合された有効成分が含まれ得る。ソフトカプセルでは、活性化合物は、適切な液体(例えば、脂肪油、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコール)中に溶解または懸濁され得る。加えて、安定剤が添加される場合がある。経口投与のための全ての処方物は、そのような投与に適している投与量でなければならない。
【0103】
口腔投与のためには、組成物は、通常の様式で処方された錠剤またはトローチ剤の形態とすることができる。
【0104】
吸入による投与のためには、本発明にしたがって使用される化合物は、通常、適切な推進剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の適切な気体)を使用して、加圧されたパックまたはネブライザからエアゾール噴霧剤の提示の形態で送達される。圧縮されたエアゾールの場合には、投与量単位は、定量を送達するためのバルブを取り付けることによって決定することができる。化合物の粉末混合物と、適切な粉末基剤(例えば、ラクトースまたはデンプン)とを含む、カプセルおよびカートリッジ(例えば、吸入器または注入器において使用されるゼラチン製のもの)を、処方することができる。
【0105】
眼内、鼻腔内、および耳介内投与を含む用途のための、薬学の分野で周知の様々な薬学的組成物が、本明細書中でさらに開示される。これらの用途に適している浸透剤は当該分野で一般的に公知である。眼内投与のための薬学的組成物としては、水溶性形態の活性化合物の水性眼科用溶液(例えば、点眼薬)、またはゲランガム中(Sheddenら、Clin.Ther.,23(3):440−50(2001))またはヒドロゲル中の活性化合物の水性眼科用溶液(Mayerら、Ophthalmologica,210(2):101−3(1996));眼科用軟膏;眼科用懸濁剤(例えば、微粒子、液体担体媒体中に懸濁された薬物含有低分子ポリマー粒子(Joshi,A.,J.Ocul.Pharmacol.,10(1):29−45(1994))、液体の可溶性処方物(Almら、Prog.Clin.Biol.Res.,312:447−58(1989))、およびミクロスフェア(Mordenti,Toxicol.Sci.,52(1):101−6(1999)))、ならびに眼内挿入物が挙げられる。上記の参考文献は全て、それらの全体が引用により本明細書中に組み入れられる。そのような適切な薬学的処方物は、最も頻繁に、そして好ましくは、安定性および快適性のために、滅菌であり、等張性であり、そして緩衝化されて処方される。鼻腔内送達のための薬学的組成物にはまた、正常な線毛作用の維持を確実にするために多くの態様において鼻汁の分泌を刺激するために調製される点鼻薬および噴霧剤も含まれ得る。Remington’s Pharmaceutical Sciences,第18版,Mack Publishing Co.,Easton,PA(1990)(これはその全体が引用により本明細書中に組み入れられる)に開示されており、そして当業者に周知であるように、適切な処方物は、最も多くの場合に、そして好ましくは、等張性であり、5.5から6.5のpHを維持するようにわずかに緩衝化され、そしてこれには、最も多くの場合には、そして好ましくは、抗微生物性の保存剤と適切な薬物安定剤とが含まれる。耳介内送達のための薬学的処方物としては、耳への局所塗布のための懸濁剤および軟膏が挙げられる。そのような耳介内処方物についての一般的な溶媒には、グリセリンおよび水が含まれる。
【0106】
化合物はまた、直腸用組成物(例えば、坐剤または停留浣腸)(例えば、ココアバターまたは他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を含むもの)にも処方することができる。
【0107】
先に記載された処方物に加えて、化合物は、デポー調製物としても処方することもできる。そのような長時間作用型の処方物は、埋め込み(例えば、皮下もしくは筋肉内)または筋肉内注射によって投与することができる。したがって、例えば、化合物は、適切なポリマー材料もしくは疎水性材料(例えば、許容される油中のエマルジョンとして)、またはイオン交換樹脂とともに処方することができ、また、難溶性誘導体として(例えば、難溶性の塩として)処方することができる。
【0108】
疎水性化合物については、適切な薬学的担体は共溶媒系であり得、これには、ベンジルアルコール、非極性界面活性剤、水混和性有機ポリマー、および水相が含まれる。使用される一般的な共溶媒系は、VPD共溶媒系である。これは、3% w/vのベンジルアルコール、8% w/vの非極性界面活性剤Polysorbate 80(商標)、および65% w/vのポリエチレングリコール300の、無水エタノールでボリュームアップされた(made up to volume)溶液である。必然的に、共溶媒系の百分率は、その溶解度および毒性の特徴を壊すことなく、相当に変化させることができる。さらに、共溶媒成分の実体も様々であり得る;例えば、他の毒性の低い非極性界面活性剤を、POLYSORBATE 80(商標)の代わりに使用することができる;ポリエチレングリコールの画分サイズを変化させることができる;他の生体適合性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン)でポリエチレングリコールを置き換えることができる;そして、他の糖または多糖類でデキストロースを置き換えることができる。
【0109】
あるいは、疎水性の薬学的化合物についての他の送達系を使用することができる。リポソームおよびエマルジョンは、疎水性薬物についての送達媒体または担体の周知の例である。特定の有機溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド)もまた使用することができるが、通常は、より大きな毒性が犠牲となる。加えて、化合物は、徐放系(例えば、治療薬を含む固体の疎水性ポリマーの半透過性マトリックス)を使用して送達することができる。様々な徐放マトリックスが確立されており、そして当業者に周知である。徐放カプセルは、それらの化学的性質に応じて、数時間または数週間から最大100日間にわたって化合物を放出することができる。治療薬の化学的性質および生物学的安定性に応じて、タンパク質の安定化のためのさらに別の方策が使用される場合がある。
【0110】
細胞内に投与されることが意図される薬剤は、当業者に周知の技術を使用して投与することができる。例えば、そのような薬剤はリポソーム中にカプセル化され得る。リポソーム処方と同時に水性溶液中に存在する全ての分子は、水性の内部に取り込まれる。リポソームの内容物は、外部の微小環境から保護され、また、リポソームが細胞膜と融合するため、細胞の細胞質中に効率よく送達される。リポソームは、組織特異的抗体でコーティングすることができる。リポソームは、所望の臓器に対して標的化され、そして選択的に取り込まれるであろう。あるいは、疎水性の有機低分子は、細胞内に直接投与される場合もある。
【0111】
さらに別の治療薬または診断薬が薬学的組成物に組み入れられる場合がある。あるいは、または加えて、薬学的組成物は、他の治療薬または診断薬を含む他の組成物と混合される場合がある。
【0112】
(投与方法)
化合物または薬学的組成物は、任意の適切な手段によって患者に投与することができる。投与方法の限定ではない例としては、中でも、以下が挙げられる:活性化合物を生存している組織と接触させるための当業者によって適切であると考えられる、(a)経口経路からの投与(この投与には、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、噴霧剤、シロップ剤、または他のそのような形態での投与が含まれる);(b)経口以外の経路による投与(例えば、直腸、膣、尿道内、眼内、鼻腔内、または耳介内)(この投与には、水性懸濁剤、油状調製物などとして、または液滴、噴霧剤、坐剤、軟膏、膏薬などとしての投与が含まれる);(c)注射(皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、皮内、眼窩内、莢膜内、髄腔内、胸骨内など)(注入ポンプによる送達が含まれる);(d)腎臓または心臓の領域への直接の注射によるような局所的な投与(例えば、デポー移植物による);さらには、(e)局所投与。
【0113】
投与に適している薬学的組成物には、その意図される目的を達成するために有効な量で有効成分が含まれている組成物が含まれる。用量として必要とされる本明細書中に開示される治療有効量の化合物は、投与経路、処置される動物(ヒトを含む)のタイプ、および考慮される特異的な動物の身体的特徴に応じて様々であろう。用量は、所望の効果が得られるように合わせることができるが、体重、食事療法、現在行われている投薬などの要因、および医学の分野の当業者が認識しているであろう他の要因に応じた様々であろう。さらに詳細には、治療有効量は、処置される被験体の疾患の症状を防ぐ、寛解させる、または緩和する、あるいは生存期間を長くするために有効な化合物の量を意味する。治療有効量の決定は、特に本明細書中に提供される詳細な開示を参照して、十分に当業者の能力の範囲内にある。
【0114】
当業者に容易に明らかであろうように、投与される有用なインビボでの投与量と特定の投与の態様は、年齢、体重、および処置される哺乳動物種、使用される特定の化合物、およびこれらの化合物が使用される特異的な用途に応じて様々であろう。所望の結果を得るために必要な投与量レベルである有効な投与量レベルの決定は、日常的に行われている薬理学的方法を使用して当業者が行うことができる。典型的には、生成物のヒトでの臨床的使用は、より低い投与量レベルで始められ、所望の効果が得られるまで投与量レベルを増大させる。あるいは、許容されるインビトロでの実験を使用して、確立されている薬理学的方法を使用して本発明の方法によって同定された組成物の有用な用量および投与経路を確立することができる。
【0115】
ヒト以外の動物実験では、可能性のある生成物の適用がより高い投与量レベルで開始され、所望の効果がそれ以上得られなくなるか、または有害な副作用が消えるまで投与量を減少させる。投与量は、所望の効果および治療指標に応じて幅広い範囲があり得る。典型的には、投与量は、約10マイクログラム/kgから100mg/kg体重の間であり得、好ましくは、約100マイクログラム/kgから10mg/kg体重の間であり得る。あるいは、投与量は、当業者に理解されるように、患者の表面積に基づき、そしてそれに基づいて計算される。
【0116】
本発明の薬学的組成物についての正確な処方、投与経路、および投与量は、患者の症状を考慮して個々の医師によって選択され得る。(例えば、Finglら、1975、「The Pharmacological Basis of Therapeutics」(これがその全体が引用により本明細書中に組み入れられる)、特に、第1章1頁を参照のこと)。典型的には、患者に投与される組成物の用量の範囲は、約0.5から1000mg/患者の体重1kgであり得る。投与量は、患者の必要性に応じて、1回である場合も、また、2回以上のシリーズである場合もある。化合物についてのヒトへの投与量が少なくともいくつかの症状について確立されている場合には、本発明では同じ投与量が、または確立されているヒトへの投与量の約0.1%から500%の間、より好ましくは、約25%から250%の間の投与量が使用されるであろう。ヒトへの投与量が確立されていない場合には、新しく発見された薬学的組成物についてそうであろうように、適切なヒトへの投与量は、ED50値もしくはID50値、またはインビトロもしくはインビボでの実験によって導かれた他の適切な値(動物での毒性試験および効力の試験によって定量されるような値)から予想することができる。
【0117】
かかりつけの医師は、毒性または臓器の機能不全の理由から投与を終了させる、中断する、または調節する方法およびタイミングを知っていることに留意されるべきである。逆に、かかりつけの医師は、臨床応答が不適切である(毒性を回避する)場合にはより高いレベルとなるように処置を調節するための方法も知っているであろう。目的の障害の管理において投与される用量の大きさは、処置される症状の重篤度、および投与経路に応じて変化するであろう。例えば、症状の重篤度は、標準的な予後診断評価方法によって、一部評価することができる。さらに、用量、およびおそらくは投与頻度もまた、個々の患者の年齢、体重、および応答にしたがって変化するであろう。上記で議論されたものと同等のプログラムを、獣医学用の医薬品において使用することができる。
【0118】
正確な投与量は、個々の薬物に基づいて決定されるであろうが、ほとんどの場合には、投与量に関するいくつかの一般化を行うことができる。成人のヒト患者についての1日投与レジメンは、例えば、個々の有効成分について、0.1mgから2000mgの間、好ましくは、1mgから500mgの間、例えば、5mgから200mgの間の経口用量であり得る。他の実施形態においては、0.01mgから100mgの間、好ましくは、0.1mgから60mgの間、例えば、1mgから40mgの間の個々の有効成分の静脈内、皮下、または筋肉内用量が使用される。薬学的に許容される塩の投与の場合には、投与量は遊離の塩基として計算することができる。いくつかの実施形態においては、組成物は1日に1回から4回投与される。あるいは、本発明の組成物は、持続的な静脈内注入によって、好ましくは、1000mg/日までの個々の有効成分の用量で投与され得る。当業者に理解されるであろうように、特定の状況においては、特定の侵攻性疾患または感染を効果的にそして積極的に処置するためには、上記の好ましい投与量範囲を上回るかまたはさらにははるかに上回る量の本明細書中に開示される化合物を投与することが必要である場合がある。いくつかの実施形態においては、化合物は、持続的療法の期間の間、例えば、1週間以上、または数ヶ月間、もしくは数年間、投与されるであろう。
【0119】
投与量および間隔は、調節作用または最小有効濃度(MEC)を維持するために十分な活性部分の血漿レベルが得られるように、個別に調節することができる。MECは個々の化合物について変化するであろうが、インビトロでのデータから概算することができる。MECを得るために必要な投与量は、個々の特徴および投与経路に応じて様々であろう。しかし、HPLCアッセイまたは生体アッセイを使用して、血漿濃度を決定することができる。
【0120】
投与の間隔もまた、MEC値を使用して決定することもできる。組成物は、時間の10〜90%、好ましくは、30〜90%、そして最も好ましくは、50〜90%についてMECを上回る血漿レベルを維持するレジメンを使用して投与されるべきである。
【0121】
局所投与または選択的取り込みの場合には、薬物の有効局所濃度は、血漿濃度には関係しない場合がある。
【0122】
投与される組成物の量は、処置される被験体、被験体の体重、苦痛の重篤度、投与の様式、およびかかりつけの医師の判断に応じて様々であり得る。
【0123】
本明細書中に開示される化合物(例えば、ポリマー結合体および/またはそれを含む薬剤)は、公知の方法を使用して効力および毒性について評価することができる。例えば、特定の化合物、または化合物のサブセット、共有される特定の化学的部分の毒性は、細胞株(例えば、哺乳動物、好ましくはヒトの細胞株)に対するインビトロでの毒性を決定することによって確立することができる。そのような実験の結果は、多くの場合は、動物(例えば、哺乳動物、またはより特異的には、ヒト)での毒性の予測である。あるいは、動物モデル(例えば、マウス、ラット、ウサギ、またはサル)での特定の化合物の毒性は、公知の方法を使用して決定することができる。特定の化合物の効力は、いくつかの認識されている方法(例えば、インビトロでの方法、動物モデル、またはヒトでの臨床試験)を使用して確立することができる。認識されているインビトロでのモデルは、ほとんど全てのクラスの症状について存在しており、これには、ガン、心臓血管疾患、および様々な免疫不全が含まれるが、これらに限定されない。同様に、許容される動物モデルは、そのような症状を処置するための薬品の効力を確立するために使用することができる。効力を決定するためにモデルが選択される場合には、当業者は、適切なモデル、用量、および投与経路、ならびにレジメンを選択するための当該分野の最先端の技術を指針とすることができる。もちろん、ヒトでの臨床試験もまた、ヒトにおける化合物の効力を決定するために使用することができる。
【0124】
組成物は、所望の場合には、有効成分を含む1つ以上の単位投与量形態が含まれ得るパックまたはディスペンサー装置に提示され得る。パックには、例えば、金属製またはプラスチック製のホイル(例えば、ブリスターパック)が含まれ得る。パックまたはディスペンサー装置には、投与についての説明書が付随する場合がある。パックまたはディスペンサーにはまた、医薬品の製造、使用、または販売を規制する政府機関によって決定された形式で、容器に取り付けられた注意書きが付随する場合もある。この注意書きは、ヒトまたは家畜への投与についての薬物の形態の政府機関による承認の反映である。そのような注意書きは、例えば、処方薬または承認されている製品の挿入物についての米国食品医薬品局によって承認されたラベルである場合もある。適合する薬学的担体中に処方された本発明の化合物を含む組成物もまた調製することができ、適切な容器の中に入れ、そして示された症状の処置についてラベルすることができる。
【実施例】
【0125】
以下の実施例は、本明細書中に記載される実施形態をさらに記載する目的のために提供され、本発明の範囲を限定するものではない。
【0126】
材料:
様々な分子量(多角光散乱(MALS)に基づいて41,400(PGA(97k))、17,600(PGA(44k))、16,000(PGA(32k))、および10,900(PGA(21k))ダルトンの平均分子量)を有しているポリ−L−グルタミン酸ナトリウム塩;1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC);N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC);ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt);ピリジン;4−ジメチルアミノピリジン(DMAP);N,N’−ジメチルホルムアミド(DMF);酢酸ガドリニウム;クロロホルム;および重炭酸ナトリウムは、Sigma−Aldrich Chemical社から購入した。ポリ−L−グルタミン酸を、2Nの塩酸溶液を使用してポリ−L−グルタミン酸に変換した。トロフルオロ酢酸(TFA)は、Bioscienceから購入した。Omniscan(商標)(ガドジアミド)はGE healthcareから購入した。
【0127】
L−アスパラギン酸β−t−ブチルエステル塩酸塩(H−Asp(OtBu)−OtBu・HCl)、L−グルタミン酸ジ−t−ブチルエステル塩酸塩(H−Glu(OtBu)−OtBu・HCl)、N−α−CBZ−L−グルタミン酸αベンジルエステル(Z−Glu−OBzl)は、Novabiochem(La Jolla,CA)から購入した。パクリタキセルは、PolyMed(Houston,Texas)から購入した。3H−パクリタキセルはMaravel Biochemicals,Inc.から購入した。細胞傷害性MTT試験(細胞生存性)のためのスルホローダミンB色素は、Molecular Imaging Products Company(Michigan)から購入した。化学的なp−NH2−Bn−DPTA−ペンタ(tBuエステル)は、Macrocyclics(Dallas,Texas)から購入した。Texas Red(登録商標)カダヴェリン(Texas Red−NH2色素)は、Molecular Probeから購入した。ウシ血清は、Sigmaから購入した。これは10,000rpmで遠心分離して、全ての物質を除去した。
【0128】
1H NMRはJoel(400MHz)から入手し、そして粒子サイズをZetalPals(Brookhaven Instruments Corporation)によって測定した。マイクロ波化学を、Biotageにおいて行った。ポリマーの分子量は、多角光散乱(MALS)(Wyatt Corporation)検出器と組み合わせたサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)によって決定した。
SEC−MALS分析条件:
・HPLCシステム: Agilent 1200
・カラム: Shodex SB 806M HQ
(Pullulanについての排除限界は20,000,000であり、粒子サイズ:13ミクロン、サイズ(mm)ID×長さ;8.0×300)
・移動相: 1×DPBSまたはDPBS(pH7.0)中の1%のLiBr
・流速: 1ml/分
・MALS検出器: WyattによるDAWN HELEOS
・DRI検出器: WyattによるOptilab rEX
・オンライン粘度計: WyattによるViscoStar
・ソフトウェア: WyattによるASTRA 5.1.9
・試料濃度: 1〜2mg/ml
・注入量: 100μl
ポリマーのdn/dc値:0.185を測定において使用した。
BSAを、実際の試料を実行する前に対照として使用した。
【0129】
上記システムおよび条件(本明細書中では以後、MALS検出器を用いるHeleosシステムと呼ぶ)を使用して、出発ポリマーの平均分子量(MALSを用いるそれらのシステムを使用したSigma−Aldrichによって報告された41,400、17,600、16,000、および10,900ダルトンのポリ−L−グルタミン酸ナトリウム塩平均分子量)が、それぞれ、49,000、19,800、19,450、および9,400ダルトンであることを実験によって明らかにした。
【0130】
ポリマー−パクリタキセル結合体中のパクリタキセルの含有量を、メタノール中に既知の濃度のパクリタキセルを用いて作成した検量線に基づいて、UV/Vis分光分析(Lambda Bio 40,PerkinElmer)によって予測した(λ=228nm)。
【0131】
ポリ−L−グルタミン酸−パクリタキセル結合体(PGA−PTX)の合成を、先の文献に報告されているように行った。Liら、「Complete Regression of Well−established tumors using a novel water−soluble poly(L−glutamic acid)−paclitaxel conjugate.」Cancer Research 1998,58,2404−2409(その内容はその全体が引用により本明細書中に組み入れられる)を参照のこと。49,000ダルトンおよび19,450ダルトンの平均分子量を有しているポリグルタミン酸からそれぞれ調製したPGA(97k)−PTX−20およびPGA(32k)−PTX−20中のパクリタキセルの量を、λ=229nmでUV分光分析によって、20重量%として定量した。パクリタキセルの量を減少させることによって、全重量に基づいて10重量%を、49,000ダルトンの平均分子量を有しているポリグルタミン酸からPGA(97k)−PTX−10について得た。
【0132】
(実施例1)
ポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)を、以下のように、図1の一般的な反応スキームにしたがって調製した:
【0133】
ポリグルタミン酸(0.75g)(MALS検出器を用いるHeleosシステムに基づいて49,000ダルトンの平均分子量)を、100mLのジクロロメタン(DCM)に少しずつ加えた。DCC(8.7mL、DCM中の1M)を加え、20分間攪拌した。その後、DCMを回転蒸発によって除去し、残渣をDMF(80mL)に溶解させた。H−asp(OtBu)−(OtBu)(2.44g)、ピリジン(4mL)、およびDMAP(0.1g)を添加し、反応混合物を室温で15〜24時間攪拌した。反応混合物を酸性水溶液(500mL、pH紙に基づきpH<2)に濾過した。白色の沈殿が形成し、これを濾過し、水で洗浄した。その後、白色の沈殿をアセトン(100mL)に溶解させた。溶液を、0.2μmのフィルターを通して濾過し、アセトンを回転蒸発によって除去した。中間体ポリマーの構造を、1.4ppmのO−tBu基のピークの存在によって、1H−NMRによって確認した。
【0134】
中間体ポリマーを、DCM中の95%のトロフルオロ酢酸(TFA)で5〜8時間処理した。その後、DCMを、沈殿が形成するまで添加した。溶媒を除去し、そして残渣をさらなるDCMで洗浄した。残渣を減圧下において、DCMを除去した。残渣をメタノールおよび水に再度溶解させ、その後、逆浸透水(4回水を交換)中で一晩、半膜セルロース(semi−membrane cellulose)(分子量カットオフ10,000ダルトン)を使用して透析した。ポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)は、透析後の水中では、pH7で実質的に光学的に透明であった。ポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)(1.2g)が、凍結乾燥後に白色粉末として得られた。ポリマーを、1.4ppmのO−tBu基のピークの消滅によって、1H−NMRによって確認した。
【0135】
(実施例2)
ポリ−(γ−アスパルチル−グルタミン)−ポリ−L−グルタミン酸を、以下のように、図2に示す一般的な反応スキームにしたがって調製した。
【0136】
MALS検出器を用いるHeleosシステムに基づいて49,000ダルトンの平均分子量を有しているポリグルタミン酸(0.075g)を、DMF(3mL)中に少しずつ溶解させた。その後、DCC(130mL)、H−asp(OtBu)−(OtBu)(0.11g)、ピリジン(200μL)、およびDMAP(0.010g)を加えた。反応は、120℃で30分間、マイクロ波の方法を使用して行った。その後、反応物を室温に冷却した。反応の完了は、薄層カラム(TLC、酢酸エチル中のRf=0.4)を使用して、H−asp(OtBu)−(OtBu)の完全な消滅をモニタリングすることによって追跡調査した。完了すると、反応混合物を酸性水溶液(150mL、pH紙に基づきpH<2)に濾過した。白色の沈殿が形成し、これを濾過し、水で洗浄した。その後、白色の沈殿をアセトン(50mL)に溶解させた。溶液を、重炭酸ナトリウム溶液(0.5M)中へと濾過し、逆浸透水(4回水を交換)中で一晩、半膜セルロース(分子量カットオフ10,000ダルトン)を使用して透析した。得られた中間体ポリマーエステルは、凍結乾燥後に白色であった。ポリマー構造を、1.4ppmのO−tBu基のピークの存在によって、1H−NMRによって確認した。
【0137】
その後、中間体ポリマーを、DCM中の95%のトリフルオロ酢酸(TFA)で5時間処理した。DCMを、沈殿が形成するまで添加した。次いで、溶媒を除去し、そして残渣をさらなるDCMで洗浄した。残渣を減圧下に置き、DCMを除去した。その後、残渣をメタノールおよび水に再度溶解させ、逆浸透水(4回水を交換)中で一晩、半膜セルロース(分子量カットオフ10,000ダルトン)を使用して透析した。ポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)−ポリ−L−グルタミン酸(0.10g)が、透析後に、白色粉末として得られた。ポリマー構造を、1.4ppmのO−tBu基のピークの消滅によって、1H−NMRによって確認した。
【0138】
(実施例3)
ポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)を、以下のように、図3に示した一般的な反応スキームにしたがって調製した。
【0139】
MALS検出器を用いるHeleosシステムに基づいて49,000ダルトンの平均分子量を有しているポリグルタミン酸ナトリウム塩(10.0g)、EDC(33.8g)、HOBt(15.9g)、およびH−asp(OtBu)−(OtBu)−HCl(32.0g)を、DMF(700mL)中で混合した。反応混合物を、室温で15〜24時間攪拌し、その後、水溶液(3L)に注いだ。白色の沈殿が形成され、これを濾過し、水で洗浄した。その後、中間体ポリマーエステルを凍結乾燥させた。中間体ポリマーの構造を、1.4ppmのO−tBu基のピークの存在によって1H−NMRによって確認した。
【0140】
中間体ポリマーを、TFA(200mL)で5時間処理した。その後、TFAを回転蒸発によって少しずつ除去した。残渣に水を加え、残渣を逆浸透水(4回水を交換)中で一晩、半膜セルロース(分子量カットオフ10,000ダルトン)を使用して透析した。ポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)は、透析後のpH7の水中では透明であった。ポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)(15.0g)が、凍結乾燥後に白色粉末として得られた。ポリマー構造を、1.4ppmのO−tBu基のピークの消滅によって、1H−NMRによって確認した。ポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)の平均分子量を測定し、これが99,400ダルトンであることを明らかにした。
【0141】
(実施例3a〜3b)
様々な平均分子量(MALS検出器を用いるHeleosシステムに基づき、19,800および9,400ダルトン)を有している出発ポリグルタミン酸ナトリウム塩からのポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)の合成を、実施例3の手順を使用して行い、得られたポリマーであるポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)の平均分子量を測定し、そしてそれぞれ、39,700および17,700ダルトンであることを見出した。
【0142】
(実施例4)
ポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)を、以下のように、図4に示した一般的な反応スキームにしたがって調製した。
【0143】
MALS検出器を用いるHeleosシステムに基づいて19,800ダルトンの平均分子量を有しているポリグルタミン酸ナトリウム塩(0.40g)、EDC(1.60g)、HOBt(0.72g)、およびH−glu(OtBu)−(OtBu)−HCl(1.51g)を、DMF(30mL)中で混合した。反応混合物を、室温で15〜24時間攪拌し、その後、蒸留水(200mL)に注いだ。白色の沈殿が形成し、これを濾過し、水で洗浄した。その後、中間体ポリマーエステルを凍結乾燥させた。中間体ポリマーの構造を、1.4ppmのO−tBu基のピークの存在によって1H−NMRによって確認した。
【0144】
中間体ポリマーを、TFA(20mL)で5〜8時間処理した。その後、TFAを回転蒸発によって少しずつ除去した。残渣に水を加え、残渣を逆浸透水(4回水を交換)中で一晩、半膜セルロース(分子量カットオフ10,000ダルトン)を使用して透析した。ポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)は、透析後のpH7の水中では透明であった。ポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)(0.6g)は、凍結乾燥後に白色粉末として得られた。ポリマー構造を、1.4ppmのO−tBu基のピークの消滅によって、1H−NMRによって確認した。ポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)の平均分子量を測定し、これが38,390ダルトンであることを見出した。
【0145】
(実施例4a〜4c)
様々な平均分子量(MALS検出器を用いるHeleosシステムに基づき、49,000、19,450および10,900)を有しているポリ−L−グルタミン酸ナトリウム塩からのポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)の合成を、実施例4の手順を使用して行った。それらのポリ(γ−L−グルタミル−グルタミン)ポリマーの平均分子量を測定し、そしてそれぞれ、110,800、37,400、および19,800ダルトンであることを見出した。
【0146】
(実施例5)
ポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)−ポリ−L−グルタミン酸を、以下のように、図5に示した一般的な反応スキームにしたがって調製した。
【0147】
MALS検出器を用いるHeleosシステムに基づいて49,000ダルトンの平均分子量を有しているポリグルタミン酸ナトリウム塩(0.50g)、EDC(0.26g)、HOBt(0.11g)、およびH−glu(OtBu)−(OtBu)−HCl(0.05g)を、DMF(30mL)中で混合した。反応混合物を、室温で15〜24時間攪拌し、そして水溶液(500mL)に注いだ。白色の沈殿が形成し、これを濾過し、水で洗浄した。中間体ポリマーエステルを凍結乾燥させた。中間体ポリマーの構造を、1.4ppmのO−tBu基のピークの存在によって1H−NMRによって確認した。
【0148】
中間体ポリマーを、TFA(20mL)で5〜8時間処理した。TFAを回転蒸発によって少しずつ除去した。残渣に水を加え、残渣を逆浸透水(4回水を交換)中で一晩、半膜セルロース(分子量カットオフ10,000ダルトン)を使用して透析した。ポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)−ポリ−L−グルタミン酸は、透析後のpH7の水中では透明であった。ポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)−ポリ−L−グルタミン酸(0.25g)は、凍結乾燥後に白色粉末として得られた。ポリマー構造を、1.4ppmのO−tBu基のピークの消滅によって、1H−NMRによって確認した。ポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)の平均分子量を測定し、これが57,400ダルトンであることを見出した。
【0149】
(実施例6)
PGA−97−A−Texas Redと本明細書中で呼ばれるポリマー結合体を、以下のように、図6に示した一般的な反応スキームにしたがって調製した。
【0150】
平均分子量99,400ダルトンのポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)(100mg)を、DMF(3mL)中に少しずつ溶解させた。無水DCC(130mL)、Texas Red−NH2色素(15mg)、ピリジン(200μL)、およびDMAP(0.010g)を加えた。反応は、120℃で30分間、マイクロ波の方法を使用して行った。その後、反応物を室温に冷却した。反応混合物を酸性水溶液(200mL、pH紙に基づきpH<2)に濾過した。紫色の沈殿が形成し、これを濾過し、水で洗浄した。その後、紫色の沈殿をアセトン(50mL)に溶解させた。溶液を、重炭酸ナトリウム溶液(0.5M)中へと濾過し、逆浸透水(4回水を交換)中で一晩、半膜セルロース(分子量カットオフ10,000ダルトン)を使用して透析した。ポリマーPGA−97−A−Texas Red(80mg)が、凍結乾燥後に紫色の固体として得られた。
【0151】
(実施例7)
PGA−97−A−DTPAと本明細書中で呼ばれるポリマー結合体を、以下のように、図7に示した一般的な反応スキームにしたがって調製した。
【0152】
平均分子量99,400ダルトンのポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)(100mg)を、DMF(5mL)中に溶解させた。その後、DCC(200mL)を溶液に添加した。DMF(5mL)中のp−NH2−Bn−DTPA−ペンタ−(tBuエステル)(400mg)の溶液もまた反応混合物に加えた。その後、無水ピリジン(300μL)、および触媒DMAP(20g)を加えた。反応混合物を攪拌し、マイクロ波の条件下で、30分間、120℃に加熱した。その後、反応物を室温に冷却し、いくらかの沈殿が形成した。沈殿を濾過し、上清を、水中の希塩酸で、約2のpHになるように酸性化させた。中間体ポリマーを含む溶液を、セルロース膜(分子量カットオフ10,000ダルトン)で2日間、水中で透析し、そして中間体ポリマーを凍結乾燥させた。中間体ポリマーの構造を、1H−NMRによって確認した。
【0153】
中間体ポリマーを、TFAで4時間処理した。その後、TFAを回転蒸発によって除去した。残渣を水に溶解させ、そして溶液をセルロース膜(分子量カットオフ10,000ダルトン)を用いて水中で透析した。ポリマーを凍結乾燥させた。PGA−97−A−DTPAの構造を、1H−NMRによって確認した。
【0154】
(実施例8)
PGA−97−A−DTPA−Gd(III)と本明細書中で呼ばれるポリマー結合体を、以下のように、図8に示した一般的な反応スキームにしたがって調製した。
【0155】
実施例7から得たPGA−97−A−DTPAを、緩衝液中の酢酸Gd(III)で4時間処理した。反応溶液を、セルロース膜(分子量カットオフ−10,000ダルトン)で3日間、水中で透析し、凍結乾燥させポリマー(86mg)が得られた。Gd(III)の量を、誘導結合プラズマ発光分析(ICP−OES)測定によって定量した。存在するGd(III)の量は、Gadolinium ICP標準物(Ricca Chemical Company,Arlington,Texas(カタログ番号PGD1KN−500))に基づいて、ポリマーの重量に対して7重量%であることを見出した。
【0156】
(実施例9)
PGA−97−A−10と本明細書中で呼ばれるポリマー結合体を、以下のように、図9に示した一般的な反応スキームにしたがって調製した。
【0157】
平均分子量99,400ダルトンのポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)(351mg)を、DMF(40mL)中に少しずつ溶解させた。DCC(120mg)とパクリタキセル(44mg)とをそれぞれ混合物に添加した。DMF(10mL)と触媒量のDMAP(100mg)とを、その後、混合物に加えた。反応混合物を室温で1日攪拌した。反応の完了を、遊離のパクリタキセルが存在しないことを確認するTLCによって確認した。混合物をクロロホルム(300mL)に注ぎ、沈殿を形成させた。残渣が濾過後に得られ、その後、メタノール中に溶解させた。沈殿を、0.2Nの塩酸水溶液を加えることによって誘導し、そして残渣を10,000rpmでの遠心分離後に単離した。次いで、残渣を0.5Mの重炭酸ナトリウム溶液中に再度溶解させた。ポリマー溶液を、逆浸透水(4回水を交換)中で1日、セルロース膜(分子量カットオフ10,000ダルトン)を使用して脱イオン水中で透析した。透明な溶液が得られ、これを凍結乾燥させた。PGA−97−A−10(340mg)が得られ、これを、1H−NMRによって確認した。PGA−97−A−10中のパクリタキセルの含有量を、UV分光分析によって10重量%と決定した。遊離のパクリタキセルが存在しないこともまたTLCによって確認した。
【0158】
(実施例10)
PGA−97−A−20と本明細書中で呼ばれるポリマー結合体を、以下のように、図9に示した一般的な反応スキームにしたがって調製した。
【0159】
平均分子量99,400ダルトンのポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)(750mg)を、DMF(50mL)中に少しずつ溶解させた。EDC(450mg)とパクリタキセル(210mg)とをそれぞれ混合物に添加した。触媒として作用するDMAP(100mg)を混合物に加えた。反応混合物を室温で1日攪拌した。反応の完了をTLCによって確認した。混合物を0.2Nの塩酸溶液(300mL)に注いだ。沈殿が形成され、これを、10,000rpmでの遠心分離後に回収した。その後、残渣を0.5MのNaHCO3溶液中に再度溶解させた。ポリマー溶液を、逆浸透水(4回水を交換)中で1日、セルロース膜(分子量カットオフ10,000ダルトン)を使用して脱イオン水中で透析した。透明な溶液が得られ、これを凍結乾燥させた。PGA−97−A−20(700mg)が得られ、構造を、1H−NMRによって確認した。PGA−97−A−20中のパクリタキセルの含有量を、UV分光分析によって20重量%と決定した。
【0160】
(実施例10a〜10b)
それぞれ、39,700および17,700ダルトンの平均分子量を有しているポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)ポリマーからのPGA−−44−A−20およびPGA−−21−A−20と本明細書中で呼ばれるポリマー結合体の合成を、実施例10の手順を使用して行った。ポリマー中のパクリタキセルの含有量を、UV分光分析によって、20重量%と決定した。
【0161】
(実施例10c)
39,700ダルトンの平均分子量を有しているポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)からのPGA−−44−A−19と本明細書中で呼ばれるポリマー結合体の合成を、パクリタキセルだけを添加する代わりにパクリタキセルと3H−パクリタキセルとの混合物を添加するよう変更して、実施例10の手順を使用して行った。ポリマー中のパクリタキセルの含有量を、UV分光分析によって19重量%と決定した。
【0162】
(実施例11)
PGA−−97−G−20と本明細書中で呼ばれるポリマー結合体を、以下のように、図10に示した一般的な反応スキームにしたがって調製した。
【0163】
平均分子量110,800ダルトンのポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)(1.0g)を、DMF(55mL)中に少しずつ溶解させた。EDC(600mg)とパクリタキセル(282mg)とをそれぞれ混合物に添加した。触媒として作用するDMAP(300mg)を混合物に加えた。反応混合物を室温で1日攪拌した。反応の完了をTLCによって確認した。混合物を0.2Nの塩酸溶液(300mL)に注いだ。沈殿が形成され、これを、10,000rpmでの遠心分離後に回収した。その後、残渣を重炭酸ナトリウム溶液(0.5MのNaHCO3溶液)中に再度溶解させた。ポリマー溶液を、逆浸透水(4回水を交換)中で1日、セルロース膜(分子量カットオフ10,000ダルトン)を使用して脱イオン水中で透析した。透明な溶液が得られ、これを凍結乾燥させた。PGA−−97−A−20(1.1g)が得られ、1H−NMRによって確認した。PGA−−97−A−20中のパクリタキセルの含有量を、UV分光分析によって20重量%と決定した。
【0164】
(実施例11a〜11c)
それぞれ、38,390、37,400、および19,800ダルトンの平均分子量を有しているポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)ポリマーからのPGA−−44−A−20、PGA−−32−G−20、およびPGA−−21−G−20と本明細書中で呼ばれるポリマー結合体の合成を、実施例11の手順を使用して行った。それぞれのポリマー中のパクリタキセルの含有量を、UV分光分析によって、20重量%と決定した。パクリタキセルの量を増大させることにより、パクリタキセルのより多量の搭載(loading)が得られた。例えば、PGA−−32−G−40を、37,400ダルトンの平均分子量を有しているポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)ポリマーから、実施例11の手順を使用して調製した。パクリタキセルの含有量をUV分光分析によって決定し、40重量%であることを見出した。
【0165】
(実施例12a〜12c)
それぞれ、110,800、37,400、および19,800ダルトンの平均分子量を有しているポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)ポリマーからのPGA−−97−G−24、PGA−−32−G−19、PGA−21−G−19と本明細書中で呼ばれるポリマー結合体の合成を、パクリタキセルだけを添加する代わりにパクリタキセルと3H−パクリタキセルとの混合物を添加するよう変更して、実施例11の手順を使用して行った。PGA−97−G−24、PGA−32−G−19、PGA−21−G−19中のパクリタキセルの含有量を、UV分光分析によって、それぞれ、24重量%、19重量%、および19重量%と決定した。
【0166】
(実施例13)
保護されたC2’−PTX−Gluおよび保護されたC7−PTX−gluの合成
【化13】
Z−Glu−OBzl(2.6g)、パクリタキセル(2.0g)、EDC(1.5g)、およびDMAP(300mg)をDMF(20mL)中に混合し、そして15時間攪拌した。TLCによる測定は、混合物中には遊離のパクリタキセルが残っていないことを示していた。その後、混合物を、0.2Nの塩酸水溶液(100mL)に注ぎ、そして有機生成物を酢酸エチル(50mL×2回)中に抽出した。有機相を合わせ、0.5Mの重炭酸ナトリウム溶液(100mL)で洗浄した。その後、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。酢酸エチルを回転蒸発によって除去し、そして生成物をシリカゲルクロマトグラフィ(ヘキサン:酢酸エチル、1:1)によって精製した。得られた生成物が、保護されたC2’−PTX−Glu(2.2g)および保護されたC7−PTX−glu(0.42g)であることを、1H−NRMによって確認した。
【0167】
(実施例13a)
C2’−PTX−Gluの合成
【化14】
保護されたC2’−PTX−Glu(2.2g)および10%のPd/C(0.20g)を、脱酸素化されたメタノール(150mL)中で攪拌した。水素ガスを、バルーンを使用して導入した。反応物を4時間水素化させた。TLCによって反応の完了を確認した。溶液を、0.2μmのフィルターを通して濾過した。溶液は透明であり、メタノールを回転蒸発によって除去した。粗生成物をさらに、水およびアセトニトリルの勾配を使用して逆相HPLCによって精製した。HPLC精製後にC2’−PTX−Glu(600mg)が得られ、これを凍結乾燥させ、そして生成物をLC−MSによって確認した。結果を図11に示す。C2’−PTX−Gluは、約32分のHPLC時間と、約6.2分のLC−MS時間とを有していた。
【0168】
(実施例13b)
C7−PTX−gluの合成
【化15】
保護されたC7−PTX−Glu(250mg)および10%のPd/C(0.20g)を、脱酸素化されたメタノール溶液(150mL)中で攪拌した。水素ガスを、バルーンを使用して溶液中に導入し、そして反応物を4時間水素化させた。反応の完了をTLC測定によって確認した後、溶液を、0.2μmのフィルターを通して濾過した。溶液は透明であり、メタノールを回転蒸発によって除去した。粗生成物をさらに、水およびアセトニトリルの勾配を使用して逆相HPLCによって精製した。HPLC精製後にC7−PTX−Glu(30mg)が得られ、これを凍結乾燥させ、そして生成物をLC−MSによって確認した。結果を図11に示す。C7−PTX−Gluは、約35分のHPLC時間と、約6.4分のLC−MS時間とを有していた。
【0169】
(実施例14)
PGA−97−G−27と本明細書中で呼ばれるポリマー結合体を、以下のように、図12に示した一般的な反応スキームにしたがって調製した。
【0170】
ポリ−L−グルタミン酸(210mg)をDMF(10mL)中に溶解させた。EDC(65モル%)とNHS(65モル%)とを混合物に加え、そしてこれを15時間攪拌した。その後、DMF(2mL)中のC2’−PTX−Glu(105mg)の溶液を混合物に添加した。次に、0.5Mの重炭酸ナトリウム溶液(3mL)を添加した。反応混合物を3時間攪拌し、その後、希釈した0.2Nの塩酸溶液(300mL)に注いだ。沈殿が形成され、これを、10,000rpmでの遠心分離後に回収した。
【0171】
その後、残渣を0.5Mの重炭酸ナトリウム溶液中に再度溶解させた。ポリマー溶液を、逆浸透水(4回水を交換)中で1日、セルロース膜(分子量カットオフ10,000ダルトン)を使用して脱イオン水中で透析した。透明な溶液が得られ、これを凍結乾燥させた。得られた生成物はPGA−97−G−27(250mg)であり、これを、1H−NMRによって確認した。PGA−97−G−27中のパクリタキセルの含有量を、UV分光分析によって27重量%と決定した。
【0172】
(実施例15)
PGA−97−G−ドキソルビシンの合成
【化16】
ポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)(70mg)、ドキソルビシン(30mg)、EDC(50mg)、HOBt(15mg)をDMF(4mL)中に溶解させた。混合物を120℃で10分間、マイクロ波に置き、その後、0.2Nの塩酸溶液に注いだ。沈殿が形成され、これを回収した。残渣を希釈した0.5Mの重炭酸ナトリウム溶液中に再度溶解させ、そして逆浸透水(4回水を交換)中で1日、セルロース膜(分子量カットオフ10,000ダルトン)を使用して脱イオン水中で透析した。透明な赤色の溶液が得られ、これを凍結乾燥させた。得られたPGA−97−G−ドキソルビシン(80mg)の生成物の構造を1H−NMRによって確認した。
【0173】
(実施例16)
PGA−97−G−カンプトテシンの合成
【化17】
ポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)(70mg)、グリシル−カンプトテシン(30mg)、EDC(50mg)、HOBt(15mg)をDMF(4mL)中に溶解させた。混合物を120℃で10分間、マイクロ波で加熱した。混合物をDCM(150mL)に注ぎ、沈殿を形成させた。残渣を希釈した0.2Nの塩酸溶液中で15分間超音波処理した。得られた固形物を濾過し、希釈した水で洗浄し、その後、凍結乾燥させた。PGA−97−G−カンプトテシンを、淡黄色の固体(50mg)として回収した。
【0174】
(実施例17)
(溶解度)
様々なポリマーの溶解度を様々なpHレベルで試験し、19,800ダルトンの平均分子量を有しているポリ−L−グルタミン酸(PGA−19,800)の対照と比較した。試験したポリマーは以下である:19,800ダルトンの平均分子量を有しているポリ−(γ−グルタミル)−ポリ−L−グルタミン(PGPG−19,800);37,400ダルトンの平均分子量を有しているポリ−(γ−グルタミル)−ポリ−L−グルタミン(PGPG−37,400);出発ポリマーPGA−19,800から調製した、20重量%のパクリタキセル含有量を有しているポリ−L−グルタミン酸−パクリタキセル−20%(PGA(32k)−PTX−20);ポリ−(γ−グルタミル)−ポリ−L−グルタミン−19,800の出発ポリマーから調製した、20重量%のパクリタキセル含有量を有しているPGA−21−G−20;および、ポリ−(γ−グルタミル)−ポリ−L−グルタミン−37,400の出発ポリマーから調製した、20重量%のパクリタキセル含有量を有しているPGA−32−G−20。
【0175】
それぞれのポリマー(5mg)をpH緩衝液(1mL)に加え、そして混合物を2分間超音波処理した。その後、混合液を室温で30分間落ち着かせた。溶解度を眼で観察し、そして1から10のスケールで記録し、1は極めて不溶性、5は濁った懸濁液、そして10は極めて透明な溶液である。結果を以下の表1に示す。
【表1】
【0176】
(実施例18a)
(細胞培養および調製):
B16F0細胞をATCC(CRL−6322、ATCC アメリカンタイプカルチャーコレクション,Rockville,MD)から購入し、これを10%のウシ胎児血清および100単位/mLのペニシリンを含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で増殖させた。細胞は、5%のCO2環境下37℃で増殖させた。培養培地を除去し、廃棄した。細胞を、ダルベッコリン酸緩衝溶液(Dulbecco Phosphate Buffer Solution(DPBS))ですすぎ、トリプシン−エチレンジアミン四酢酸(EDTA)溶液(0.5ml)を加え、そして細胞を倒立顕微鏡下で観察して、これらが分散していることを確認した。完全な増殖培地(6.0から8.0ml)を加え、そして細胞をゆっくりとピペッティングすることによって吸引した。適切なアリコート中の細胞懸濁液を新しい培養プレートに移した。細胞を、5%のCO2中37℃で24時間増殖させ、その後、さらに実験を行った。
【0177】
(実施例18b)
(インビトロでの細胞による取り込み実験)
PGA−97−A−Texas RedおよびTexas Red色素(TR)をDPBS中に別々に溶解させた。色素を含む両方の溶液を、1.0μMから10μMの最終濃度で細胞に添加した。化合物を含む細胞を37℃で8〜24時間インキュベートし、その後、細胞をDPBSで3回洗浄した。処理した細胞を、OLYMPUS蛍光顕微鏡下で試験し、そして励起および放射波長を、それぞれ、591nmおよび612nmで測定した。結果は、細胞はPGA−97−A−Texas Redに由来するTexas red色素を取り込んだが、Texas Redのみに由来する色素は取り込まなかったことを示している。
【0178】
ほぼ同じ数のB16F0黒色腫細胞が含まれている3つの試料容器を、それぞれ、1μMのPGA−97−A−Texas Red、0.1μMのPGA−97−A−Texas Red、および10μMのTexas Redのみとともに、24時間インキュベートした。個々の容器のインビトロでの細胞による取り込みについての写真を、Olympus蛍光顕微鏡システムのカメラで撮影した。1μMのPGA−97−A−Texas Redを含む試料の写真においては、およそ30%の細胞が赤かった。0.1μMのPGA−97−A−Texas Redを含む試料の写真においては、およそ10%の細胞が赤かった。10μMのTexas Redのみの試料の写真においては、およそ0%の細胞が赤かった。これらの結果は、細胞はPGA−97−A−Texas Redから色素を取り込むが、Texas red色素のみからは色素を取り込まないことを示している。ポリマー結合体は、薬物の細胞内送達に有効である。
【0179】
(実施例18c)
細胞による取り込みをまた、共焦点顕微鏡(Olympus FV1000)によっても確認した。細胞の核をHoechst 33342で5〜20分間染色し、DPBSで2〜3回洗浄し、そしてレーザースキャン共焦点顕微鏡下で観察した。Hoechst 33342の励起および放射波長を、それぞれ、405nmおよび461nmで測定した。Texas Red(TR)を543nmのレーザーで励起させ、そして、37℃の5%のCO2環境下615nmで検出した。結果は、暴露の24時間後に、PGA−97−A−Texas Redに由来するTexas red色素がB16F0細胞によって取り込まれたことを示している。PGA−97−A−Texas Redに由来するTexas red色素は細胞質で見られ、そして核からは排除されていた。
【0180】
共焦点顕微鏡(Olympus FV100)によって1μMのPGA−97−A−Texas Redのインビトロでの細胞による取り込みを示す写真を撮影し、細胞質への取り込みと核への取り込みとを比較した。写真は、PGA−97−A−TexasRedが、暴露の24時間後にB16F0細胞によって取り込まれたことを示している。PGA−97−A−Texas Redは、細胞質で見られ、そして核からは排除されていた。
【0181】
(実施例19)
(同系腫瘍モデル)
動物:Nu/nuマウス、雌、6〜8週齢(22〜25g)。孤立性腫瘍を、2×105のマウス黒色腫細胞(B16F0)を右腿の皮下に注射することによって生じさせた。5〜7日後に、腫瘍が約500mm3に達すると、PGA−97−A−Texas RedまたはTexas Red色素を腫瘍に対して静脈内に注射した。
【0182】
(実施例20)
(PGA−97−A−Texas RedまたはTRの投与およびクリオスタット切片)
PGA−97−A−Texas RedおよびTexas RedをDPBS中に別々に溶解させ、動物に投与する前に0.2μlのフィルターを通して濾過した。100μlのPGA−97−A−Texas Red(2.5%のTR負荷)または0.1〜10mMのTexas Redを、実施例19の同系腫瘍モデルを使用して腫瘍に静脈内注射した。腫瘍を最適な切開温度で切り取り、包埋し、そして液体窒素中で凍結させた。クリオスタット切片(6〜15μm)を作製し、そして氷上で10〜30分間、0.03Mのスクロースを含む4%のパラホルムアルデヒドで固定した。切片をDPBSで2回洗浄し、Hoechst 33342(1μg/ml)で10分間染色し、そしてDPBSで再び洗浄した。その後、切片を、蛍光封入剤(DakoCytomation)でマウントし、カバーガラスで覆った。腫瘍のクリオスタット切片を、レーザースキャン共焦点顕微鏡下で観察した。画像は、PGA−97−A−Texas Redに由来するTexas red色素が、PGA−97−A−Texas Redの静脈内投与の24時間後にインビボで腫瘍細胞中に蓄積したが、Texas Red色素のみの場合には蓄積しなかったことを示していた。
【0183】
インビボでの腫瘍組織によるPGA−97−A−Texas RedおよびTexas Red色素のみの取り込みについてのクリオスタット断面の写真を撮影した。それぞれについて、3つの異なる断面を、6枚の画像の全てについて撮影した。Texas Red色素のみの異なる断面の3枚の写真は、緑色、オレンジ−黄色、および原則として黒として観察された。PGA−97−A−Teas Redの異なる断面の3枚の写真は、緑色、オレンジ−黄色、およびいくらかの赤色の領域として観察された。PGA−97−A−Texas Redに由来するTexas Red色素が、1枚の写真で腫瘍組織において観察された。一方、Texas Red色素は、Texas Redのみの同様の写真においては観察されなかった。これらの結果は、PGA−97−A−Texas Redに由来するTexas red色素が、PGA−97−A−Texas Redの静脈内投与の24時間後にインビボで腫瘍細胞中に蓄積したが、Texas Red色素のみの場合には蓄積しなかったことを示している。
【0184】
加えて、PGA−97−A−Texas Redに由来するTexas red色素はまた、腫瘍の血管に沿って内皮細胞中に見ることができた。さらなる写真を、腫瘍組織の別のクリオスタット断面について撮影した。赤色色素が、PGA−97−A−Texas Redの尾静脈への静脈内投与の24時間後に血管に沿って観察された。結果は、PGA−97−A−Texas Redを、腫瘍の血管に沿って内皮細胞中で見ることができたことを示している。
【0185】
(実施例21)
(インビトロでの細胞傷害性MTT試験)
パクリタキセルを含む本明細書中に記載したポリマー結合体を、いくつかの異なる薬物濃度でB16F0黒色腫細胞の増殖に対するそれらの効果について評価した。細胞傷害性MTTアッセイを、Monksら、JNCI 1991,83.757−766(その全体が引用により本明細書中に組み入れられる)に報告されているように行った。PGA−44−A−20を、実施例10aと同様に、MALS検出器を用いるHeleosシステムに基づいて39,700ダルトンの平均分子量を有しているポリ(γ−L−アスパルチル−グルタミン)から調製し、そしてポリマー中のパクリタキセルの重量百分率は20重量%であった。PGA−97−A−20を、実施例10と同様に、MALS検出器を用いるHeleosシステムに基づいて99,400ダルトンの平均分子量を有しているポリ(γ−L−アスパルチル−グルタミン)から調製し、そしてポリマー中のパクリタキセルの重量百分率は20重量%であった。PGA(97k)−PTX−20を本実施例の対照ポリマーとして使用し、これを、MALS検出器を用いるHeleosシステムに基づいて49,000ダルトンの平均分子量を有しているポリ−L−グルタミン酸から先の文献の手順にしたがって調製し、ポリマー中のパクリタキセルの重量百分率は20重量%であった(Liら、「Complete Regression of Well−established tumors using novel water soluble poly(L−glutamic acid)−paclitaxel conjugate.」Cancer Research 1998,58,2404−2409を参照のこと)。結果を図13に示す。黒色腫細胞の生存性は、図13に示したように、薬物濃度が増大するに伴い低下した。これらの結果は、PGA−44−A−20およびPGA−97−A−20が有効な抗ガン剤であることを示している。
【0186】
(実施例22)
(インビトロでの細胞傷害性MTT実験)
パクリタキセルを含むポリマー結合体を、いくつかの異なる濃度の薬物でのB16F0黒色腫細胞の増殖に対するそれらの効果を見るために、対照ポリマー、パクリタキセルを含まないポリマー、およびポリマーを含まないTaxolの対照に対して比較した。細胞傷害性MTTアッセイを、Monksら、JNCI 1991,83.757−766に報告されているように行った。PGA−97−A−10を、実施例9と同様に、MALS検出器を用いるHeleosシステムに基づいて99,400ダルトンの平均分子量を有しているポリ(γ−L−アスパルチル−グルタミン)から調製し、そしてポリマー中のパクリタキセルの重量百分率は10重量%であった。本実施例の対照ポリマーとして使用したPGA(97k)−PTX−10は、先の文献にしたがって、MALS検出器を用いるHeleosシステムに基づいて49,000ダルトンの平均分子量を有しているポリ−L−グルタミン酸から先の文献の手順にしたがって調製し(Liら、「Complete Regression of Well−established tumors using novel water soluble poly(L−glutamic acid)−paclitaxel conjugate.」Cancer Research 1998,58,2404−2409)、ポリマー中のパクリタキセルの重量百分率は10重量%であった。パクリタキセルを含まないポリマーは、ポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)ナトリウム塩であった。
【0187】
結果を図14に示す。抗腫瘍薬を有していないナトリウム塩ポリマーは、黒色腫細胞の生存性に対してほとんど効果がなかった。加えて、PGA−97−A−10を、好ましくは、抗腫瘍薬を含む対照ポリマーと比較した。図14に示すように、PGA−97−A−10は、有効な抗ガン剤として作用する。
【0188】
(実施例23)
(薬物動態実験のための動物および腫瘍モデル)
ヌードマウス(6〜7週齢、体重25〜30グラム、雌)を、Charles River Lab(Willington,MA)から購入した、B16F0細胞株はATCC(CRL−6322、ATCC アメリカンタイプカルチャーコレクション,Rockville,MD)から購入した。B16F0細胞を10%のウシ胎児血清、2μMのグルタミン、1mMの必須ではないアミノ酸、1mMのピルビン酸ナトリウム、100U/mLのペニシリン、および100μg/mlのストレプトマイシンを補充したDMEMで培養した。組織培養物から採取したB16F0細胞をカウントし、5×106/mLの濃度で再度懸濁した。TB注射器を使用して、0.4mL(全部で2×106細胞)を、それぞれのマウスに皮下注射によって投与した。1匹の動物あたり4つの腫瘍を、右肩、左肩、右臀部、および左臀部に接種した。
【0189】
(実施例23a)
実施例23によるマウスの集団全体について平均の腫瘍の容積が200〜300mm3(6〜8mmの直径)に達した時点で、腫瘍を有しているそれぞれのマウスに、3H−Taxol(対照)またはPGA−44−A−19の1回のIVボーラス注射を尾静脈から投与した。
【0190】
PGA−44−A−19を、実施例10cと同様に、MALS検出器を用いるHeleosシステムに基づいて39,700ダルトンの平均分子量を有しているポリ(γ−L−アスパルチル−グルタミン)から調製し、そしてポリマー中のパクリタキセルの重量百分率は19重量%であった。この実施例の対照はTaxolであった。遊離の3H−Taxol(対照)およびPGA−44−A−19の用量は、20mgのパクリタキセル等量/kgであった。それぞれの薬物について、4匹のマウスのグループを、様々な時点で(それぞれの単位は時間)麻酔した:0(すなわち、IV注射後可能な限りすぐに)、0.083、0.25、1.0、2.0、4.0、8.0、48、72、96、120、および144。心臓の穿刺または眼窩球後(retro−orbital)穿刺によって得た0.5mlの血液のコレクションを、ヘパリン化したチューブに入れた。その後、マウスを麻酔から回復する前に屠殺した。それぞれのマウスの血液試料を11,000rpmで遠心分離した。血液試料から上清血漿(0.2〜0.3mL)を収集し、新しいバイアルに移した。それぞれの試料の0.1mLの血漿を、別々に新しい10mLのバイアルに移し、そして液体シンチレーション溶液(5mL)をバイアルに加えた。パクリタキセルの含有量を、液体シンチレーションLS6500カウンティングシステム(Beckman)を使用して分析し、それぞれの試料の検量線から計算した。結果を図15に示す。PGA−44−A−19のパクリタキセル濃度は、長時間にわたりはるかに高いままであった。これらの結果は、PGA−44−A−19中のパクリタキセルが、Taxolだけと比較して血液循環においてより長い時間にわたって有効性を有していることを示している。
【0191】
(実施例24)
実施例23によるマウスの集団の全てについて、平均の腫瘍容積が200〜300mm3(6〜8mmの直径)に達した時点で、腫瘍を有しているそれぞれのマウス(ヌードnu/nuマウス)に、3H−Taxol(対照)またはPGA−44−A−19の1回のIVボーラス注射を、尾静脈から投与した。
【0192】
PGA−44−A−19を、実施例10cと同様に、MALS検出器を用いるHeleosシステムに基づいて39,700ダルトンの平均分子量を有しているポリ(γ−L−アスパルチル−グルタミン)から調製し、そしてポリマー中のパクリタキセルの重量百分率は19重量%であった。遊離の3H−Taxol(対照)およびPGA−44−A−19の用量は、20mgのパクリタキセル等量/kgであった。それぞれの薬物について、4匹のマウスのグループを、様々な時点で(それぞれの単位は時間)麻酔した:0(すなわち、IV注射後可能な限りすぐに)、0.083、0.25、1.0、2.0、4.0、8.0、48、72、96、120、および144。両方の臀部および両方の肩から、腫瘍を別々に採取した。その後、マウスを麻酔から回復する前に屠殺した。およそ80〜180mgのそれぞれの腫瘍をシンチレーションバイアルに入れ、そして腫瘍をSoluene(組織可溶化剤)(1mL)で消化した。その後、0.1mLの消化させた組織を10mLのバイアルに移し、そして液体シンチレーション混合液(5mL)をバイアルに加えた。パクリタキセルの含有量を、液体シンチレーションLS6500カウンティングシステム(Beckman)を使用して分析し、それぞれの試料の検量線から計算した。PGA−44−A−19を、Taxol対照に対して比較した。結果を図16に示す。PGA−44−A−19のパクリタキセルの腫瘍の蓄積は、長時間にわたりはるかに高いままであった。これらの結果は、PGA−44−A−19中のパクリタキセルは、Taxolのみと比較して腫瘍での蓄積の改善を示すことを示している。
【0193】
(実施例25)
(インビボでの効力の実験のための動物および腫瘍モデル)
ヌードマウス(6〜8週齢、体重21〜25グラム、雄)を、Charles River Lab(Willington,MA)から購入した。B16−F0−EGFP安定細胞を、10%のウシ血清、100U/mLのペニシリン、および100μg/mlのストレプトマイシンを補充したDMEMで増殖させた細胞培養物中で維持した。細胞を、接種の48時間前に分け、その結果、これらを採取時に対数増殖期になるようにした。細胞を、トリプシン−EDTAを使用して組織培養物から採取し、そして生存している細胞の数を、トリパンブルーの存在下で血球計においてカウントすることによって決定した。細胞を、血清を含まないDMEM培地中に5×106/mlの濃度で再度懸濁した。腫瘍細胞懸濁液を、それぞれの肩およびそれぞれの臀部の上に5×106/mlの濃度で1ccのインシュリン注射器を使用して、0.1mlの腫瘍細胞懸濁液を注射することによって接種した(4部位/マウス)。
【0194】
腫瘍の接種の日に、マウスを続いて6つのグループのうちの1つに入れ、1つのケージに3匹のマウスを収容し、全部で12個のケージとした。それぞれのマウスに、実験を通じてこれらを独自に識別できるように腫瘍の接種時点で、麻酔下、耳に穴をあけた。それぞれのケージを、薬物、含まれている動物に投与した薬物の用量、および含まれている動物の数をラベルした。
【0195】
(実施例25a)
実施例11a〜11cにしたがって作成したポリマーの最大耐量(MTD)での体重減少の毒性を測定した。MTDは、本明細書中では、2週間以内に最大15%の体重の減少を生じる用量と定義する。PGA−21−G−20およびPGA−32−G−20を、それぞれ、実施例11cおよび11bに開示したように、MALS検出器を用いるHeleosシステムに基づいて、それぞれ、19,800および37,400ダルトンの平均分子量を有している出発ポリ(γ−L−アスパルチル−グルタミン)ポリマーから調製し、そしてそれぞれのポリマー中のパクリタキセルの重量百分率は20重量%であった。PGA−21−G−20およびPGA−32−G−20を、50mg/mLで生理食塩水中に溶解させた。この実施例についての対照抗ガン剤はAbraxaneであり、これは、抗ガン剤としてFDAによって承認されている。生理食塩水もまた、抗腫瘍薬を含まないネガティブ対照として使用した。注射した薬物の実際の量は、それぞれの動物の体重から決定した。薬物の最初の用量は、マウスの集団全体の平均の腫瘍の大きさが約15から約50mm3(腫瘍の大きさは、式(w2×l)/2から概算し、式中、「l」は、ミリメートルで測定した腫瘍の最長直径であり、「w」は最長直径に対して垂直な直径である)に達した時点で、マウスに投与した。マウスには、2用量の薬物を連続する2日間に、麻酔をせずに尾静脈への注射によって投与した。ストック溶液は注射を行う日に新しく調製した。薬物のストック溶液を1ccの注射器に抜き取り、静脈内に注射した。マウスを最も近い0.1g単位まで体重を測定した。ヌードnu/nuマウスには、100mg/kgのパクリタキセル等量の用量のAbraxaneと比較して、175mg/kgの用量のPGA−21−G−20と150mg/kgの用量のPGA−32−G−20との両方の高用量を注射した。それぞれの薬物で処置した場合の体重の変化(%)を別々に観察し、経時的に(日)記録した。結果を図17に示す。PGA−21−G−20は、はるかに高い用量でもほとんど体重の減少を示さなかった。PGA−32−G−20は、はるかに高い用量でも、Abraxaneと同等の体重の減少しか示さなかった。これらの結果は、抗ガン剤と結合させた本発明の好ましいポリマーはマウスに対する毒性が低いことを示している。
【0196】
(実施例26)
(インビボでの効力の実験)
実施例25に記載したように、ヌードnu/nuマウスの中のB16F0−EGF黒色腫腫瘍に対する最大耐量(MTD)のPGA−21−G−20、PGA−32−G−20、およびAbraxaneの抗腫瘍効果を、経時的に、ネガティブ対照として生理食塩水を用いて測定した。PGA−21−G−20およびPGA−32−G−20を、50mg/mLで生理食塩水中に溶解させた。この実施例についての対照抗ガン剤はAbraxaneであり、これは、抗ガン剤としてFDAによって承認されている。生理食塩水を、抗腫瘍薬を含まない別の対照として使用した。注射した薬物の実際の量は、それぞれの動物の体重から決定した。薬物の最初の用量は、実験中のマウスの集団全体の平均の腫瘍サイズが約15から約50mm3に達した時点で、マウスに投与した。マウスには、2用量の薬物を連続する2日間に、麻酔をせずに尾静脈への注射によって投与した。ストック溶液は注射を行う日に新しく調製した。薬物のストック溶液を1ccの注射器に抜き取り、静脈内に注射した。腫瘍サイズを最も近い0.1mm単位まで測定した。ヌードnu/nuマウスには、100mg/kgのパクリタキセル等量の用量のAbraxane対照と比較して、175mg/kgの用量のPGA−21−G−20と150mg/kgのPGA−32−G−20との両方の高用量を、注射した。それぞれの薬物で処置した場合の腫瘍容積の変化を別々に観察し、経時的に(日)記録した。結果を図18に示す。PGA−21−G−20およびPGA−32−G−20は、腫瘍の増殖を有意に阻害した。これらの結果は、抗ガン剤と結合させた本発明の好ましいポリマーが有効な抗ガン剤であることを示している。
【0197】
(実施例27)
実施例11にしたがって作製したポリマーの最大耐量(MTD)での体重減少の毒性を測定した。PGA−97−G−20を実施例11に記載した手順にしたがって調製した。出発材料は、MALS検出器を用いるHeleosシステムに基づいて、それぞれ、110,800ダルトンの平均分子量を有しているポリ(γ−L−グルタミル−グルタミン)であった。ポリマー中のパクリタキセルの重量百分率は20%であった。PGA−97−G−20を、50mg/mLで生理食塩水中に溶解させた。この実施例についての対照抗ガン剤はTaxolおよびAbraxaneであり、これらは、抗ガン剤としてFDAによって承認されている。生理食塩水を、抗腫瘍薬を含まないネガティブ対照として使用した。注射した薬物の実際の量は、それぞれの動物の体重から決定した。薬物の最初の用量は、実験中のマウスの集団全体の平均の腫瘍サイズが約15から約50mm3に達した時点で投与した。マウスには、2用量の薬物を連続する2日間に、麻酔をせずに尾静脈への注射によって投与した。ストック溶液は注射を行う日に新しく調製した。薬物のストック溶液を1ccの注射器に抜き取り、静脈内に注射した。マウスを最も近い0.1g単位まで体重を測定した。ヌードnu/nuマウスには、それらのパクリタキセル等量でのAbraxane(100mg/kg)およびTaxol(50mg/kg)と比較して、より高用量のPGA−97−D−20(60mg/kg)を注射した。それぞれの薬物で処置した場合の体重の変化(%)を別々に観察し、経時的に(日)記録した。結果を図19に示す。図19に示したように、PGA−97−G−20は、はるかに高い用量でも、対照と同程度の体重の減少しか示さなかった。これらの結果は、抗ガン剤と結合させた本発明の好ましいポリマーは臨床用に承認されている薬物と同程度の毒性しか有していないことを示している。
【0198】
(実施例28)
(インビボでの効力の実験)
ヌードnu/nuマウス中のB16F0−EGF黒色腫腫瘍に対する最大耐量(MTD)のPGA−97−G−20、Taxol、およびAbraxaneの抗腫瘍効果を、経時的に、ネガティブ対照として生理食塩水を用いて測定した。PGA−97−G−20を、50mg/mLで生理食塩水中に溶解させた。この実施例についての対照抗ガン剤はTaxolおよびAbraxaneであり、これらは、抗ガン剤としてFDAによって承認されている。生理食塩水を、抗腫瘍薬を含まないネガティブ対照として使用した。注射した薬物の実際の量は、それぞれの動物の体重から決定した。薬物の最初の用量は、実験中のマウスの集団全体の平均の腫瘍の大きさが約15から約50mm3に達した時点で投与した。マウスには、2用量の薬物を、麻酔をせずに尾静脈からのIV注射によって次の日に投与した。ストック溶液は注射を行う日に新しく調製した。薬物のストック溶液を1ccの注射器に抜き取り、静脈内に注射した。腫瘍サイズを最も近い0.1mm単位まで測定した。ヌードnu/nuマウスには、それらのパクリタキセル等量で100mg/kgの用量のAbraxaneおよび50mg/kgのTaxolと比較して、高用量の60mg/kgの用量のPGA−97−G−20を注射した。それぞれの薬物で処置した場合の腫瘍容積の変化を別々に観察し、経時的に(日)記録した。結果を図20に示す。図20に示したように、PGA−97−G−20は腫瘍の増殖に対して有意な効果を有しており、TaxolおよびAbraxaneのいずれよりも優れた能力を有していた。これらの結果は、抗ガン剤と結合させた本発明の好ましいポリマーが有効な抗ガン剤であることを示している。
【0199】
(実施例29)
パクリタキセルと結合されたポリグルタミン酸に対するパクリタキセルを含むポリマー結合体の最大耐量(MTD)での体重減少の毒性を測定した。PGA−32−G−20を実施例11bに記載した手順にしたがって調製した。出発材料は、MALS検出器を用いるHeleosシステムに基づいて、それぞれ、37,400ダルトンの平均分子量を有しているポリ(γ−L−グルタミル−グルタミン)ポリマーであり、それぞれのポリマー中のパクリタキセルの重量百分率は20%であった。PGA−32−G−20を、パクリタキセルに結合された19,450ダルトンの分子量(MALS検出器を用いるHeleosシステムに基づいて)を有しており、その結果、ポリマー中のパクリタキセルの重量百分率が20%であるポリグルタミン酸(PGA(32k)−PTX−20)の対照に対して比較した。生理食塩水を、抗腫瘍薬を含まない基本対照として使用した。PGA−32−G−20およびPGA(32k)−PTX−20の両方を、50mg/mLで生理食塩水中に溶解させた。生理食塩水を、抗腫瘍薬を含まない対照として使用した。注射した薬物の実際の量は、それぞれの動物の体重から決定した。薬物の最初の用量は、実験中のマウスの集団全体の平均の腫瘍サイズが約15から約50mm3に達した時点で投与した。マウスには、2用量の薬物を、麻酔をせずにIV尾静脈への注射によって、次の日に投与した。ストック溶液は注射を行う日に新しく調製した。薬物のストック溶液を1ccの注射器に抜き取り、静脈内に注射した。マウスを最も近い0.1g単位まで体重を測定した。ヌードnu/nuマウスには、100mg/kgのパクリタキセル等量の用量でのPGA832k)−PTX−20と比較して、より高用量のPGA−32−G−20を125mg/kgで注射した。それぞれの薬物で処置した場合の体重の変化(%)を別々に観察し、経時的に(日)記録した。結果を図21に示す。PGA−32−G−20は、はるかに高い用量でも、対照と同程度の体重の減少しか示さなかった。これらの結果は、抗ガン剤と結合された本発明の好ましいポリマーは治験薬と同程度の毒性しか有していないことを示している。
【0200】
(実施例30)
(インビボでの効力の実験)
ヌードnu/nuマウス中のB16F0−EGF黒色腫腫瘍に対する最大耐量(MTD)のPGA−32−G−20およびPGA(32k)−PTX−20の抗腫瘍効果を、経時的に、ネガティブ対照として生理食塩水を用いて測定した。PGA−32−G−20およびPGA(32k)−PTX−20の両方を、50mg/mLで生理食塩水中に溶解した。注射した薬物の実際の量は、それぞれの動物の体重から決定した。薬物の最初の用量は、実験中のマウスの集団全体の平均の腫瘍サイズが約15から約50mm3に達した時点で投与した。マウスには、2用量の薬物を、麻酔をせずに尾静脈からのIV注射によって次の日に投与した。ストック溶液は注射を行う日に新しく調製した。薬物のストック溶液を1ccの注射器に抜き取り、静脈内に注射した。マウスを最も近い0.1mg単位まで体重測定した。ヌードnu/nuマウスには、100mg/kgのパクリタキセル等量の用量のPGA(32k)−PTX−20と比較して、高用量の125mg/kgの用量のPGA−32−G−20を注射した。腫瘍サイズを、最も近い0.1mm単位まで測定した。それぞれの薬物で処置した場合の腫瘍容積の変化を別々に観察し、経時的に(日)記録した。結果を図22に示す。PGA−32−G−20は腫瘍の増殖に対して有意な効果を有しており、PGA(32k)−PTX−20よりも優れた能力を有していた。これらの結果は、抗ガン剤と結合させた本発明の好ましいポリマーが有効な抗ガン剤であることを示している。
【0201】
(実施例31)
ポリマー結合体を、様々な分子量のポリマーの選択に関してパクリタキセルが放出される速度を決定するために試験した。PGA−21−G−20、PGA−32−G−20、PGA−97−G−20と、PGA(97k)−PTX−20の対照とを2mg/mLの濃度でリン酸緩衝液中に入れ、放出速度を測定した。ポリマー−パクリタキセル結合体の溶液を37℃でインキュベートした。50μlのアリコートを様々な時点で取って、凍結させた。その後、全てのアリコートをLC−MSによって分析した。HPLCプロフィール上の放出された薬物のピークの累積面積を測定した。放出されたパクリタキセルの量を検量線から計算した。結果を図23に示し、これは、ポリマー結合体の分子量が大きくなるに伴い、放出されるパクリタキセルの百分率が減少することを示している。これらの結果は、パクリタキセルの放出速度を、ポリマーの様々な分子量を選択することによって制御することができることを示している。
【0202】
(実施例32)
(薬物動態実験のための動物および腫瘍モデル)
ヌードマウス(6〜7週齢、体重25〜30グラム、雌)を、Charles River Lab(Willington,MA)から購入した、B16F0細胞株はATCC(CRL−6322、ATCC アメリカンタイプカルチャーコレクション,Rockville,MD)から購入した。B16F0細胞を10%のウシ胎児血清、2μMのグルタミン、1mMの必須ではないアミノ酸、1mMのピルビン酸ナトリウム、100U/mLのペニシリン、および100μg/mlのストレプトマイシンを補充したDMEMで培養した。組織培養物から採取したB16F0細胞をカウントし、5×106/mLの濃度で再度懸濁した。TB注射器を使用して、0.4mL(全部で2×106細胞)を、それぞれのマウスに皮下注射によって投与した。1匹の動物あたり4つの腫瘍を、右肩、左肩、右臀部、および左臀部に接種した。
【0203】
(実施例32a)
様々な薬物結合ポリマーを、経時的に血漿中のパクリタキセル濃度を決定するために、Taxolの対照に対して試験した。実施例32によるマウスの集団全体について平均の腫瘍容積が200〜300mm3(6〜8mmの直径)に達した時点で、腫瘍を有しているそれぞれのマウスに、3H−Taxol(対照)、PGA−21−A−19、PGA−32−A−19、PGA−97−A−24の1回のIVボーラス注射を尾静脈から投与した。
【0204】
PGA−21−G−19を、反応体ポリマーであるポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)から調製し、分子量は19,800ダルトンであり、ポリマー中のパクリタキセルの重量による百分率は19%であった。PGA−32−G−19を、反応体ポリマーであるポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)から調製し、分子量は37,400ダルトンであり、ポリマー中のパクリタキセルの重量による百分率は19%であった。PGA−97−G−24を、反応体ポリマーであるポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)から調製し、分子量は110,800ダルトンであり、ポリマー中のパクリタキセルの重量による百分率は24%であった。
【0205】
遊離の3H−タキソール(対照)、PGA−21−A−19、PGA−32−A−19、およびPGA−97−A−24の用量は、20mgパクリタキセル等量/kgであった。それぞれの薬物について、4匹のマウスのグループを、様々な時点で(それぞれの単位は時間)麻酔した:1.0、2.0、4.0、および24。心臓の穿刺または眼窩球後(retro−orbital)穿刺によって得た0.5mlの血液のコレクションを、ヘパリン化したチューブに入れた。その後、マウスを麻酔から回復する前に屠殺した。それぞれのマウスの血液試料を11,000rpmで遠心分離し、血液試料から上清血漿(0.2〜0.3mL)を収集し、新しいバイアルに移した。それぞれの試料の0.1mLの血漿を、別々に新しい10mLのバイアルに移した。それぞれの試料の0.1mLの血漿を新しい10mLのバイアルに別々に移し、そして液体シンチレーション溶液(5mL)をバイアルに加えた。パクリタキセルの含有量を、液体シンチレーションLS6500カウンティングシステム(Beckman)を使用して分析し、それぞれの試料の検量線から計算した。結果を図24に示す。これらの結果は、本発明の好ましいポリマー結合体中のパクリタキセル薬物が、Taxolと比較して血漿中でより長い持続期間を有していることを示している。
【0206】
(実施例33)
様々な薬物結合ポリマーを、経時的に腫瘍中のパクリタキセル濃度を決定するために、Taxolの対照に対して試験した。実施例32によるマウスの集団全体について平均の腫瘍容積が200〜300mm3(6〜8mmの直径)に達した時点で、腫瘍を有しているそれぞれのマウスに、3H−Taxol(対照)、PGA−21−A−19、PGA−32−A−19、PGA−97−A−24の1回のIVボーラス注射を尾静脈から投与した。
【0207】
PGA−21−G−19を、反応体ポリマーであるポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)から調製し、分子量は19,800ダルトンであり、ポリマー中のパクリタキセルの重量による百分率は19%であった。PGA−32−G−19を、反応体ポリマーであるポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)から調製し、分子量は37,400ダルトンであり、ポリマー中のパクリタキセルの重量による百分率は19%であった。PGA−97−G−24を、反応体ポリマーであるポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)から調製し、分子量は110,800ダルトンであり、ポリマー中のパクリタキセルの重量による百分率は24%であった。
【0208】
遊離の3H−タキソール(対照)、PGA−21−A−19、PGA−32−A−19、およびPGA−97−A−24の用量は、20mgパクリタキセル等量/kgであった。それぞれの薬物について、4匹のマウスのグループを、様々な時点で(それぞれの単位は時間)麻酔した:1.0、2.0、4.0、および24。両方の臀部および両方の肩から、腫瘍を別々に採取した。その後、マウスを麻酔から回復する前に屠殺した。およそ80〜180mgのそれぞれの腫瘍をシンチレーションバイアルに入れ、そして腫瘍をSoluene(組織可溶化剤)(1mL)で消化した。その後、0.1mLの消化させた組織を10mLのバイアルに移し、そして液体シンチレーション混合液(5mL)をバイアルに加えた。パクリタキセルの含有量を、液体シンチレーションLS6500カウンティングシステム(Beckman)を使用して分析し、それぞれの試料の検量線から計算した。結果を図25に示す。これらの結果は、本発明の好ましいポリマー結合体中のパクリタキセル薬物が、Taxolと比較して、時間がたつにつれて腫瘍中でさらに濃縮されることを示している。
【0209】
(実施例34)
(動物および腫瘍モデル)
ヌードマウス(6〜7週齢、体重25〜30グラム、雄)を、Charles River Lab(Willington,MA)から購入した。B16細胞株はATCC(CRL−6322、ATCC アメリカンタイプカルチャーコレクション,Rockville,MD)から購入した。B16細胞を、10%のウシ胎児血清、2μMのグルタミン、1mMの必須ではないアミノ酸、1mMのピルビン酸ナトリウム、100U/mLのペニシリン、および100μg/mlのストレプトマイシンを補充したDMEMで培養した。組織培養物から採取したB16細胞をカウントし、5×106/mLの濃度で再度懸濁した。TB注射器を使用して、0.2mL(全部で1×106細胞)を、それぞれのマウスに皮下注射によって投与した。1匹の動物あたり1つの腫瘍を、右臀部に接種した。腫瘍の接種部位は、それが成長した場合に腫瘍を測定することを容易にするために、接種前に毛をそり落とした。
【0210】
(実施例35)
(腫瘍の蓄積についての磁気共鳴影像法)
ニーコイル(knee coil)のpre−contrastおよびpost−contrastを使用して、GE 3T MRスキャナーでマウスの画像を獲得した。撮影パラメーターは以下であった:TE:minful、TR=250ms、FOV:8および24スライス/スラブ、および1.0mmのコロナスライス(coronal slice)厚。PGA−97−A−DTPA−Gd(III)を、実施例7〜8と同様に、MALS検出器を用いるHeleosシステムに基づいて、99,400ダルトンの平均分子量を有しているポリ(γ−L−アスパルチル−グルタミン)から調製した。この実施例の対照材料は、Omniscan−Gd(III)−(DTPA−BMA(0.1mmolのGd(III)/kg)であった。PGA−97−A−DTPA−Gd(III)の注射用量は0.1mmol Gd(III)/kgであった。Omniscan(商標)の注射用量は0.1mmol Gd(III)/kgであった。2つの化合物を麻酔したマウスに尾静脈から注射し、画像を、注射前、および造影剤の注射後6分から4時間で獲得した。MRIの結果を図26に示す。図26に示すように、腫瘍組織に蓄積したPGA−97−A−DTPA−Gd(III)キレートの量は、低分子Omniscan−Gd(III)よりも多かった。これらの結果は、PGA−97−A−DTPA−Gd(III)キレートが高い特異性と保持を有していることを示している。
【0211】
(実施例36)
(ナノ粒子の形成の実験)
様々な溶液(0.2μmのフィルターを通して濾過した)を、示した場合を除き、1mg/mLでポリ−(g−アスパルチル−グルタミン)(分子量は99,400ダルトンであった)に加えた。溶液は全て均質に溶解させた。粒子サイズ、多分散性、およびベースライン指数を、光散乱ZeltaPals(Brookhaven Instrument Corporation)によって測定した。結果を表2にまとめた。MilliQ水は、0.2μmのフィルターを有している処理系によって濾過された水を意味する。
【表2】
【0212】
(実施例37)
(PGA−97−A−10のナノ粒子の形成)
PGA−97−A−10を様々な濃度で脱イオン水に溶解させた。粒子サイズ、多分散性、およびベースライン指数を、光散乱(ZeltaPals,Brookhaven Instrument Corporation)によって測定した。結果を以下の表3に示す。
【表3】
【0213】
(実施例38)
薬物結合ポリマーの凍結割断電子顕微鏡による画像を、Nano Analytical Laboratory(San Francisco,CA)によって撮影した。ポリマーは、ポリ−(g−L−アスパルチル−グルタミン)から調製したPGA−44−A−20であって、分子量は39,700ダルトンであり、ポリマー中のパクリタキセルの重量による百分率は20%であった。これを、超音波処理(約5分)後に生理食塩水中に1mg/mLの濃度にした。その後、これをパラフィルムで包み、すぐに会社に送った(輸送にほぼまる1日)。到着すると、これを4℃で保存した。その後、ポリマーを、ナノ粒子が形成するかどうかを決定するために生理食塩水に入れた。電子顕微鏡画像の複製を図27に示す。画像で見ることができるように、ポリマー結合体を水溶液に入れると、本発明の好ましい薬物結合ポリマーのナノ粒子が形成された。
【0214】
(実施例39)
薬物結合ポリマーの粒子を、様々な薬物濃度での安定性を決定するために試験した。PGA−44−A−20およびPGA−97−A−20を様々な薬物濃度で粒子になるように形成し、粒子サイズを測定した。結果を図28に示す。粒子はナノ粒子サイズの範囲を維持し、そして薬物濃度が高くなるに伴い、さらに安定となった。これらの結果は、安定なナノ粒子を、広い範囲の薬物濃度で形成することができることを示している。
【0215】
(実施例40)
薬物結合ポリマーの粒子を、様々な薬物濃度での安定性を決定するために試験した。PGA−21−G−20およびPGA−32−G−20を様々な薬物濃度で粒子になるように形成し、粒子サイズを測定した。結果を図29に示す。粒子はナノ粒子サイズの範囲を維持し、そして薬物濃度が高くなるに伴い、さらに安定となった。これらの結果はさらに、安定なナノ粒子を、広い範囲の薬物濃度で形成することができることを示している。
【0216】
多数の様々な変更を、本発明の精神から逸脱することなく行うことができることが当業者に理解されるであろう。したがって、本発明の形態は例示にすぎず、本発明の範囲を限定するようには意図されないことが明白に理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0217】
【図1】図1は、ポリ−(γ−L−アスパルチルグルタミン)の調製のための反応スキームを示す。
【図2】図2は、ポリ−(γ−L−アスパルチルグルタミン)−ポリ−L−グルタミン酸の調製のための反応スキームを示す。
【図3】図3は、ポリ−(γ−L−アスパルチルグルタミン)の調製のための別の反応スキームを示す。
【図4】図4は、ポリ−(γ−L−グルタミルグルタミン)の調製のための反応スキームを示す。
【図5】図5は、ポリ−(γ−L−グルタミルグルタミン)−ポリ−L−グルタミン酸の調製のための反応スキームを示す。
【図6】図6は、PGA−97−A−Texas Redの調製のための反応スキームを示す。
【図7】図7は、PGA−97−A−DTPAの調製のための反応スキームを示す。
【図8】図8は、PGA−97−A−DTPA−Gd(III)の調製のための反応スキームを示す。
【図9】図9は、PGA−A−PTXの調製のための一般的な反応スキームを示す。
【図10】図10は、PGA−G−PTXの調製のための一般的な反応スキームを示す。
【図11】図11は、C2’−パクリタキセル−グルタミン酸およびC7−パクリタキセル−グルタミン酸の化学構造、ならびに、それらのHPLCおよびLC−MS時間を示す。
【図12】図12は、PGA−97−G−27の調製のための反応スキームを示す。
【図13】図13は、PGA−44−A−20、PGA−97−A−20、およびPGA(97k)−PTX−20(対照)の、いくつかの異なる薬物濃度でのB16F0黒色腫細胞の増殖に対する効果を示しているプロットを示す。
【図14】図14は、PGA−97−A−10、PGA(97k)−PTX−10、ポリ−(γ−L−アスパルチルグルタミン)ナトリウム塩、およびTaxolの、いくつかの異なる薬物濃度でのB16F0黒色腫細胞の増殖に対する効果を示しているプロットを示す。
【図15】図15は、経時的なヌードnu/nuマウス中でのB16F0黒色腫腫瘍でのPGA−44−A−19およびTaxolのパクリタキセルの血漿濃度を示しているプロットを示す。
【図16】図16は、経時的なヌードnu/nuマウス中でのB16F0黒色腫腫瘍でのPGA−44−A−19およびTaxolのパクリタキセルの腫瘍濃度を示しているプロットを示す。
【図17】図17は、経時的なヌードnu/nuマウスに対するそれらのそれぞれの最大耐用量のPGA−21−G−20、PGA−32−G−20、Abraxane、および生理食塩水での処置の際の体重の変化(%)を示しているプロットを示す。
【図18】図18は、経時的なヌードnu/nuマウス中のB16F0で形質転換されたEGF黒色腫腫瘍に対するそれらのそれぞれの最大耐用量のPGA−21−G−20、PGA−32−G−20、Abraxane、および生理食塩水の抗腫瘍効果を示しているプロットを示す。
【図19】図19は、経時的なヌードnu/nuマウスに対するそれらのそれぞれの最大耐用量のPGA−97−G−20、Taxol、Abraxane、および生理食塩水での処置の際の体重の変化(%)を示しているプロットを示す。
【図20】図20は、経時的なヌードnu/nuマウスのB16F0で形質転換されたEGFに対するそれらのそれぞれの最大耐用量のPGA−97−G−20、Taxol、Abraxane、および生理食塩水の抗腫瘍効果を示しているプロットを示す。
【図21】図21は、経時的なヌードnu/nuマウスに対するそれらのそれぞれの最大耐用量のPGA−32−G−20、PGA(32k)−PTX−20、および生理食塩水での処置の際の体重の変化(%)を示しているプロットを示す。
【図22】図22は、経時的なヌードnu/nuマウス中のB16F0で形質転換されたEGFに対するそれらのそれぞれの最大耐用量のPGA−32−G−20、PGA(32k)−PTX−20、および生理食塩水の抗腫瘍効果を示しているプロットを示す。
【図23】図23は、リン酸緩衝液中の2mg/mLのポリマー−パクリタキセル結合体濃度での、経時的なパクリタキセルの放出を示しているプロットを示す。
【図24】図24は、経時的な、PGA−21−G−19、PGA−32−G−19、PGA−97−G−24、およびTaxolの血漿中でのパクリタキセル濃度を示しているプロットを示す。
【図25】図25は、経時的な、PGA−21−G−19、PGA−32−G−19、PGA−97−G−24、およびTaxolの腫瘍中でのパクリタキセル濃度を示しているプロットを示す。
【図26】図26は、経時的なヌードnu/nuマウス中のB16F0黒色腫腫瘍に対するPGA−97−A−DTPA−Gd(III)およびOmniscan(商標)(ガドジミド(gadodimide))の腫瘍蓄積効果を示しているプロットを示す。
【図27】図27は、PGA−44−A−20の凍結破断された電子顕微鏡画像診断の写真のコピーを示す。
【図28】図28は、PGA−44−A−20およびPGA−97−A−20の濃度に対する静的光散乱(粒子のサイズ)を示しているプロットを示す。
【図29】図29は、PGA−21−G−20およびPGA−32−G−20の濃度に対する静的光散乱(粒子のサイズ)を示しているプロットを示す。
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2005年12月5日に提出された「POLYGLUTAMATE−AMINO ACID AND METHODS」と題された米国仮特許出願番号60/742,291;2006年1月10日に提出された「POLYGLUTAMATE−ASPARTATE−TAXANES」と題された米国仮特許出願番号60/757,917;および2006年4月10日に提出された「POLYGLUTAMATE−ASPARATATE−MRI CHELATES」と題された米国仮特許出願番号60/790,735に対して優先権を主張する。これらは全て、それらの全体が引用により本明細書中に組み入れられる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、概して、ペンダント官能基を有している生体適合性の水溶性ポリマー、およびそれらを作製する方法に関し、特に、様々な薬物、生体分子、および造影剤の送達用途に有用であるポリグルタミン酸アミノ酸結合体に関する。
【背景技術】
【0003】
(関連分野の記載)
薬物、生体分子、および造影剤の送達は様々な系が使用されている。例えば、そのような系としては、カプセル、リポソーム、マイクロ粒子、ナノ粒子、およびポリマーが挙げられる。
【0004】
様々なポリエステル系生分解性系が特性決定されており、研究されている。ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、およびそれらのコポリマーであるポリ乳酸−コ−グリコール酸(PLGA)は、薬物送達用途の設計および性能に関して最も十分に特性決定されているいくつかの生体材料である。Uhrich,K.E.;Cannizzaro,S.M.;Langer,R.S.and Shakeshelf,K.M.「Polymeric Systems for Controlled Drug Release.」Chem.Rev.1999,99,3181−3198、およびPanyam J,Labhasetwar V.「Biodegradable nanoparticles for drug and gene delivery to cells and tissue.」Adv.Drug Deliv Rev.2003,55,329−47を参照のこと。また、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)は、薬物送達用途のためのポリマーを作製するために広く使用されている。ポリオルトエステルに基づく生分解性系もまた研究されている。Heller,J.;Barr,J.;Ng,S.Y.;Abdellauoi,K.S.and Gurny,R.「Poly(ortho ester):synthesis,characterization,properties and uses.」Adv.Drug Del.Rev.2002,54,1015−1039を参照のこと。ポリ無水物系もまた研究されている。そのようなポリ無水物は通常は生体適合性であり、代謝物として体から排除される比較的非毒性の化合物になるようにインビボで分解され得る。Kumar,N.;Langer,R.S.and Domb,A.J.「Polyanhydrides:an overview.」Adv.Drug Del.Rev.2002,54,889−91を参照のこと。
【0005】
アミノ酸系ポリマーもまた、新しい生体材料の潜在的な供給源として考えられている。優れた生体適合性を有しているポリアミノ酸は、低分子量の化合物を送達するために研究されている。比較的少数のポリグルタミン酸およびコポリマーが、薬物送達のための候補の材料として同定されている。Bourke,S.L.およびKohn,J.「Polymers derived from the amino acid L−tyrosine:polycarbonates,polyarylates and copolymers with poly(ethylene glycol).」Adv.Drug Del.Rev.,2003,55,447−466を参照のこと。
【0006】
投与される疎水性抗ガン剤および治療用タンパク質およびポリペプチドは、多くの場合、生体利用性が低い。そのような低い生体利用性は、疎水性薬物と水溶液との2相溶液の不適合、ならびに/または酵素分解による血液循環からのこれらの分子の迅速な除去が原因であり得る。投与されるタンパク質および他の低分子物質の効力を高めるための1つの技術によって、投与される薬剤をポリマー(例えば、ポリエチレングリコール(「PEG」)分子に結合させることができ、これによって、インビボでの酵素分解からの保護を提供することができる。そのような「PEG化」によって、多くの場合には循環時間が、ひいては、投与される物質の生体利用性が改善される。
【0007】
しかし、PEGには、特定の態様においては欠点がある。例えば、PEGが直鎖状ポリマーであるため、PEGによってもたらされる立体的保護は、分岐状のポリマーと比較すると限定される。PEGの別の欠点は、一般的には、その2つの末端で誘導体化されやすいことである。これにより、PEGに結合され得る他の機能性分子(例えば、特異的組織へのタンパク質または薬物の送達を助けるもの)の数が限定される。
【0008】
ポリグルタミン酸(PGA)は、疎水性抗ガン剤を可溶化させるために選択される別のポリマーである。PGAに結合される多くの抗ガン剤が報告されている。Chun Li.「Poly(L−glutamic acid)−anticancer drug conjugates.」Adv.Drug Del.Rev.,2002,54,695−713を参照のこと。しかし、現在FDAによって承認されているものはない。
【0009】
イチイ(Pacific Yew)の木の樹皮から抽出されたパクリタキセル(Paclitaxel)(Waniら、「Plant anticancer agents.VI.The isolation and structure of taxol,a novel antileukemic and antitumor agent from Taxus brevifolia.」J Am Chem Soc.1971,93,2325−7)は、卵巣ガンおよび乳ガンの処置についてFDAによって承認されている薬物である。しかし、他の抗ガン剤と同様に、パクリタキセルは、その疎水性および水溶液中での不溶性が原因で、生体利用性は低い。パクリタキセルを可溶化させるための1つの方法は、それをCremophor−ELと脱水されたエタノールとの混合物(1:1,v/v)に処方することである(Sparreboomら、「Cremophor EL−mediated Alteration of Paclitaxel Distribution in Human Blood:Clinical Pharmacokinetic Implications.」Cancer Research 1999,59,1454−1457)。この処方物は、Taxol(登録商標)(Bristol−Myers Squibb)として現在市販されている。パクリタキセルを可溶化させる別の方法は、高剪断均一化を使用する乳化による(Constantinidesら、「Formulation Development and Antitumor Activity of a Filter−Sterilizable Emulsion of Paclitaxel.」Pharmaceutical Research 2000,17,175−182)。最近、ポリマー−パクリタキセル結合体が、いくつかの臨床試験において進歩している(Ruth Duncan「The Dawning era of polymer therapeutics.」Nature Reviews Drug Discovery 2003,2,347−360)。さらに最近は、パクリタキセルはヒトアルブミンタンパク質と共にナノ粒子になるように処方されており、これは臨床試験において使用されている(Damascelliら、「Intraarterial chemotherapy with polyoxyethylated castor oil free paclitaxel,incorporated in albumin nanoparticles(ABI−007):Phase II study of patients with squamous cell carcinoma of the head and neck and anal canal:preliminary evidence of clinical activity.」Cancer.2001,92,2592−602、およびIbrahimら、「Phase I and pharmacokinetic study of ABI−007,a Cremophor−free,protein−stabilized,nanoparticle formulation of paclitaxel.」Clin Cancer Res.2002,8,1038−44)。この処方物は、現在、Abraxane(登録商標)(American Pharmaceutical Partners,Inc.)として市販されている。
【0010】
磁気共鳴画像診断(MRI)はこれが、非侵襲性であり、そして照射しないことの理由から、疾患の診断および病期診断において重要なツールである(Bulteら、「Magnetic resonance mincroscopy and histology of the CNS.」Trends in Biotechnology 2002,20,S24−S28を参照のこと)。組織の写真を得ることができるが、造影剤を用いるMRIは、その解像度を有意に改善する。しかし、MRI造影剤に適している常磁性金属イオンには、多くの場合は毒性がある。毒性を低下させるための1つの方法は、これらの金属イオンを多座分子(polydentate molecules)(例えば、ジエチレントリアミン五酢酸分子(DTPA))でキレート化させることである。Gd−DTPAは、臨床的な使用について1988年にFDAによって承認されており、Magnevist(登録商標)として現在市販されている。他のGd−キレートがFDAによって承認されており、市販されている。そして多くの他のものは現在開発中である(Caravanら、「Gadolinium(III)Chelates as MRI Contrast Agents:Structure,Dynamics,and Applications.」Chem.Rev.1999,99,2293−2352を参照のこと)。
【0011】
しかし、Gd−DTPAは、特異性がないという理由から、腫瘍組織を標的化するのに理想的ではない。Gd−DTPAがIV注射によって投与される場合には、これは、組織の血管外空間に、自発的に、そして直ちに拡散する。したがって、妥当なコントラスト画像を得るためには、通常は、多量の造影剤が必要である。加えて、これは腎臓での濾過によって迅速に排出される。拡散および濾過を回避するために、高分子MRI造影剤が開発されている(Caravanら、「Gadolium(III)Chelates as MRI Contrast Agents:Structure,Dynamics,and Applications.」Chem.Rev.1999,99,2293−2352を参照のこと)。これらの高分子MRI造影剤としては、タンパク質−MRIキレート(Laufferら、「Preparation and Water Relaxation Properties of Proteins Labeled with Paramagnetic Metal Chelates.」Magn.Reson.Imaging 1985,3,11−16を参照のこと)、多糖−MRIキレート(Sirlinら、「Gadolinium−DTPA−Dextran:A Macromolecular−MR Blood Pool Contrast Agent.」Acad Radiol.2004,11,1361−1369を参照のこと)、およびポリマー−MRIキレート(Luら、「Poly(L−glutamic acid)Gd(III)−DOTA Conjugate with a Degradable Spacer for Magnetic Resonance Imaging.」Bioconjugate Chem.2003,14,715−719,およびWenら、「Synthesis and Characterization of Poly(L−glutamic acid)Gadolinium Chelate:A New Biodegradable MRI Contrast Agent.」Bioconjugate Chem.2004,15,1408−1415を参照のこと)が挙げられる。
【0012】
最近、組織特異的MRI造影剤が開発された(Weinmannら、「Tissue−specific MR contrast agents.」Eur.J.Radiol.2003,46,33−44を参照のこと)。しかし、腫瘍特異的MRI造影剤は、臨床的用途においては報告されていない。ナノサイズの粒子は、高い浸透性および局所留保性効果(enhanced permeation and retention effect)(EPR効果)によって腫瘍を標的化することが報告されている(Brannon−Peppasら、「Nanoparticle and tageted systems for cancer therapy.」ADDR 2004,56,1649−1659を参照のこと)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
比較的疎水性の造影剤および薬物(例えば、特定の疎水性抗ガン剤、治療用タンパク質およびポリペプチド)は、多くの場合には、生体利用性が低い。この問題は、水性系におけるこれらの造影剤および薬物の溶解度が低いことに、少なくとも一部理由があると考えられる。特定の酵素分解される薬物もまた、これらが循環系で比較的迅速に分解され、それにより体から迅速に排出されることが原因で、生体利用性が低い。
【0014】
本発明者らは、多数の薬剤(例えば、造影剤および/または薬物)に結合することができる新規のポリグルタミン酸−アミノ酸のシリーズを見出した。特定の実施形態においては、ポリマーおよび得られる結合体は、特定の組織(例えば、腫瘍組織)に優先的に蓄積し、したがって、体の特異的な部分(例えば、腫瘍)に薬物(例えば、抗ガン剤)および/または造影剤を送達するのに有用である。特定の実施形態においては、ポリマーおよび得られるポリマー結合体はナノ粒子を形成し、これは、分子レベルで分散することによって水性系で造影剤および/または薬物を効率よく溶解し、それによって機能性および/または生体利用性を高める。
【課題を解決するための手段】
【0015】
1つの実施形態では、以下に示される式(I)の繰り返し単位と式(II)の繰り返し単位とを含むポリマー結合体が提供される。式中:nはそれぞれ独立して、1または2であり;A1はそれぞれ、酸素はまたNR5であり;A2はそれぞれ酸素であり;R1およびR2はそれぞれ独立して、C1〜10アルキル、C6〜20アリール、アンモニウム、アルカリ金属、多座リガンド(polydentate ligand)、保護されている酸素原子を含む多座リガンド前駆体、および1つの薬剤を含む化合物からなる群より選択され;薬剤は、抗ガン剤、標的化剤、光学的造影剤、および磁気共鳴造影剤からなる群より選択され;R1およびR2の少なくとも一方は、薬剤を含む基であり;R3およびR4はそれぞれ独立して、水素、アンモニウム、およびアルカリ金属からなる群より選択され;ポリマー結合体には、ポリマー結合体に対する薬剤の質量比に基づいて約1から約50%(重量/重量)の範囲の薬剤の量が含まれ;R5は水素またはC1〜4アルキルであり;そして、薬剤の量(式(I)の繰り返し単位の百分率と式(II)の繰り返し単位との百分率)は、実質的に同じ量の薬剤を含む比較可能なポリグルタミン酸結合体の溶解度よりも大きいポリマー結合体の溶解度が得られるように選択され、約22℃での0.9wt.%のNaCl水溶液の中に少なくとも5mg/mLのポリマー結合体が含まれている試験されたポリマー結合体溶液が、比較可能な試験されたポリグルタミン酸結合体溶液の光学的透明度よりも、広いpH範囲にわたって高い光学的透明度を有している場合には、ポリマー結合体の溶解度はより大きい。
【0016】
別の実施形態では、上記ポリマー結合体を作製する方法が提供され、該方法は、ポリマー反応体を溶媒に溶解または部分的に溶解させて、溶解または部分的に溶解されたポリマー反応体を形成する工程;および溶解または部分的に溶解されたポリマー反応体を第2の反応体と反応させる工程を含み、第2の反応体には、多座リガンド、保護されている酸素原子を含む多座リガンド前駆体、および1つの薬剤を含む化合物からなる群より選択される少なくとも1つが含まれる。
【0017】
別の実施形態では、本明細書中に記載されるポリマー結合体を含み、さらに、薬学的に許容される賦形剤、担体、および希釈剤から選択される少なくとも1つを含む薬学的組成物が提供される。
【0018】
別の実施形態では、本明細書中に記載される有効量のポリマー結合体を、それが必要な哺乳動物に投与する工程を含む、疾患または症状を処置あるいは緩和する方法が提供される。
【0019】
別の実施形態では、本明細書中に記載される有効量のポリマー結合体を哺乳動物に投与する工程を含む、疾患または症状を診断する方法が提供される。
【0020】
別の実施形態では、疾患または症状の処置あるいは緩和のための医薬品の調製のための、本明細書中に記載されるポリマー結合体の使用が提供される。
【0021】
別の実施形態では、疾患または症状の診断のための医薬品の調製のための、本明細書中に記載されるポリマー結合体の使用が提供される。
【0022】
これらの実施形態および他の実施形態は以下にさらに詳細に記載される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
用語「エステル」は、本明細書中ではその通常の意味で使用され、したがってこれには、式−(R)n−COOR’を有している化学的部分が含まれる。式中、RおよびR’は独立して、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール(環炭素によって結合されている)およびヘテロ脂環(環炭素によって結合されている)からなる群より選択され、そして式中、nは0または1である。
【0024】
用語「アミド」は、本明細書中ではその通常の意味で使用され、したがってこれには、式−(Rn)−C(O)NHR’または−(R)n−NHC(O)R’を有している化学的部分が含まれる。式中、RおよびR’は独立して、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール(環炭素によって結合されている)およびヘテロ脂環(環炭素によって結合されている)からなる群より選択され、そして式中、nは0または1である。アミドは、アミノ酸に含まれる場合も、また、本明細書中に記載されるように薬物分子に結合されたペプチド分子である場合もあり、それによってプロドラッグが形成される。
【0025】
本明細書中に開示される化合物上の任意のアミン、ヒドロキシ、またはカルボキシル側鎖は、エステル化させることができ、また、アミド化させることもできる。この末端を得るために使用される手順および特異的な基は当業者に公知であり、Greene and Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,第3版,John Wiley & Sons,New York,NY,1999(これはその全体が引用により本明細書中に組み入れられる)などの参考文献の中に容易に見つけることができる。
【0026】
本明細書中で使用される場合は、「アルキル」は、完全飽和している(二重結合または三重結合を有していない)炭化水素基を含む、直鎖または分岐状の炭化水素鎖をいう。アルキル基は、1から20個の炭素原子を有し得る(本明細書中に現れる場合はいずれの場合でも、「1から20」などの数字の範囲は、所定の範囲の中のそれぞれの整数をいう;例えば、「1から20個の炭素原子」は、アルキル基が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子などから、最大で20個の炭素原子から構成され得ることを意味するが、この定義には、数字の範囲が指定されていない用語「アルキル」の存在も含まれる)。アルキル基はまた、1から10個の炭素原子を有している中型のアルキルでもあり得る。アルキル基はまた、1から5個の炭素原子を有している低級アルキルであってもよい。化合物のアルキル基は、「C1〜C4アルキル」または同様の表記として指定することができる。単なる例ではあるが、「C1〜C4アルキル」は、アルキル鎖に1から4個の炭素原子が存在していること、すなわち、アルキル鎖が、メチル、エチル、プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、およびt−ブチルからなる群より選択されることを示す。典型的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
アルキル基は置換されていても、また、置換されていなくてもよい。置換されている場合には、置換基は、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環、アラルキル、ヘテロアラルキル、(ヘテロ脂環)アルキル、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、エステル、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ハロゲン、カルボニル、チオカルボニル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、保護されたC−カルボキシ、O−カルボキシ、イソシアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、ニトロ、シリル、スルフェニル、スルフィニル、スルホニル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、トリハロメタンスルホニル、トリハロメタンスルホンアミド、およびアミノから個々に、そして、独立して選択される1つ以上の基であり、これには、1置換アミノ基および2置換アミノ基、ならびにそれらの保護された誘導体が含まれる。置換基が「状況に応じて置換される」と記載される場合には、置換基は、上記置換基の1つで置換することができる。
【0028】
「常磁性金属キレート」は、リガンドが常磁性金属イオンに結合している錯体である。例として、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)−Gd(III)、DOTA−イットリウム−88、DOTA−インジウム−111、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)−Gd(III)、DTPA−イットリウム−88、DTPA−インジウム−111が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
「多座リガンド(poludentate ligand)」は、例えば、配位共有結合によって金属イオンに2つ以上の結合点を介してそれ自体を結合させることができるリガンドである。多座リガンドの例としては、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)、(1,2−エタンジイルジニトリロ)四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン、2,2’−ジピリジン(bipy)、1,10−フェナントロリン(phen)、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(DPPE)、2,4−ペンタンジオン(acac)、およびエタンジオエート(ox)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
「保護されている酸素原子を有している多座リガンド前駆体」は、適切な保護基で保護されている酸素原子(例えば、カルボキシル基の単結合酸素原子)を含む多座リガンドである。適切な保護基としては、低級アルキル、ベンジル、およびシリル基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
1つの実施形態では、以下の式(I)の繰り返し単位と式(II)の繰り返し単位とを含むポリマー結合体が提供される:
【化1】
式中、nはそれぞれ独立して、1または2であり、A1はそれぞれ、酸素はまたNR5であり、A2はそれぞれ酸素であり、R1およびR2はそれぞれ独立して、状況に応じて置換されたC1〜10アルキル、状況に応じて置換されたC6〜20アリール、アンモニウム、アルカリ金属、多座リガンド、保護されている酸素原子を有している多座リガンド前駆体、および1つの薬剤を含む化合物からなる群より選択される。アルカリ金属の例としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、およびセシウム(Cs)が挙げられる。1つの実施形態では、アルカリ金属はナトリウムである。
【0032】
薬剤には、任意の数の活性化合物が含まれ得る。例えば、薬剤は、抗ガン剤、標的化剤、光学的造影剤、および磁気共鳴造影剤からなる群より選択され得る。R1およびR2基のうちの少なくとも1つは、該薬剤を含む基である。式(II)の繰り返し単位には、薬剤が含まれる場合も、また含まれない場合もある。1つの実施形態においては、R3およびR4はそれぞれ別々に、水素、アンモニウム、およびアルカリ金属からなる群より選択される。別の実施形態においては、R5は、水素原子またはC1〜4アルキル基のいずれかである。
【0033】
ポリマー結合体に存在する薬剤の量は、広い範囲で変化し得る。1つの実施形態においては、ポリマー結合体には、ポリマー結合体に対する薬剤の質量比に基づいて約1から約50%(重量/重量)の範囲の薬剤の量が含まれる。別の実施形態においては、ポリマー結合体には、ポリマー結合体に対する薬剤の質量比に基づいて、約5から約40%(重量/重量)の範囲の薬剤の量が含まれる。別の実施形態においては、ポリマー結合体には、ポリマー結合体に対する薬剤の質量比に基づいて約10から約30%(重量/重量)の範囲の薬剤の量が含まれる。
【0034】
薬剤の量、ならびに式(I)および式(II)の繰り返し単位の百分率量(%)を選択して、得られるポリマー結合体の溶解度を有利に制御することができることが、現在見出されている。例えば、好ましい実施形態においては、薬剤の量、ならびに式(I)および式(II)の繰り返し単位の百分率量(%)は、ポリマー結合体が、目的の特定のpHおよび/またはpH範囲で可溶性(または不溶性)となるように選択される。いくつかの実施形態においては、ポリマーの分子量もまた、溶解度を制御するように選択される。以下に提供される例では、薬剤の量、ならびに式(I)および式(II)の繰り返し単位の百分率量(%)、および分子量の適切な選択による溶解度の制御が説明される。本明細書中に提供される指針によって知ることができるように、当業者は、所望される溶解度特性を有しているポリマー結合体を生じる薬剤の適切な量と、式(I)および式(II)の繰り返し単位の適切な百分率量(%)を同定するために、常套の実験を使用することができる。そのような溶解度の制御は、用途に応じて有利であり得る。例えば、本明細書中に提供されるポリマー結合体の実施形態を使用して、そうでなければ溶解度の低い抗ガン剤の選択された組織への送達の改善(好ましくは、望ましくない副作用を低減させる)を提供することができ、そして/または、患者に抗ガン剤を投与する必要がある頻度を少なくすることができる。
【0035】
薬剤の量、ならびに式(I)および式(II)の繰り返し単位の百分率量(%)は、好ましくは、実質的に同じ量の同じ薬剤を含む比較可能なポリグルタミン酸結合体の溶解度よりも大きいポリマー結合体の溶解度が得られるように選択される。1つの実施形態においては、ポリマー結合体の溶解度は、比較可能なポリグルタミン酸結合体の溶解度よりも大きい。溶解度は、約22℃の0.9重量%のNaCl水溶液中に少なくとも5mg/mLのポリマー結合体が含まれているポリマー結合体溶液を形成し、そして光学的透明度を決定することによって測定される。光学的透明度は、例えば、目視観察によって、または当業者に公知の適切な機器による方法によって、濁度によって決定することができる。同様に形成させたポリグルタミン酸結合体溶液に対し得られた溶解度の比較は、より広い範囲のpH値にわたるより高い光学的透明度によって明らかであるように、溶解度の改善を示す。したがって、約22℃の0.9重量%のNaCl水溶液の中に少なくとも5mg/mLのポリマー結合体を含む試験したポリマー結合体溶液が、広いpH範囲にわたって、比較可能な試験したポリグルタミン酸結合体溶液の光学的透明度よりも大きい光学的透明度を有している場合には、ポリマー結合体の溶解度は、実質的に同じ量の薬剤を含む比較可能なポリグルタミン酸結合体の溶解度よりも大きい。当業者は、「比較可能な」ポリグルタミン酸結合体が、結合体のポリマー部分が、それに対して比較される目的のポリマー結合体(式(I)の繰り返し単位と式(II)の繰り返し単位とを含む)の分子量とほぼ同じ分子量を有する対照材料であることを理解するであろう。
【0036】
ポリマー結合体には、1つ以上の不斉炭素原子が含まれ得る。不斉炭素(アスタリスク(*)によって示される場合がある)は、rectus(右旋)立体配置またはsinister(左旋)立体配置を有し得、したがって、繰り返し単位は、ラセミである場合も、鏡像異性である場合も、また、鏡像異性的に富化されているものである場合もある。記号「n」および「*」(不斉炭素を示している)は、本明細書中で他の場所で使用される場合には、特に明記されない限りは、上記と同じ意味を有する。
【0037】
式(I)の繰り返し単位と式(II)の繰り返し単位とを含むポリマーは、式(I)と式(II)との2つ以上の異なる繰り返し単位を含むコポリマーである。さらに、式(I)の繰り返し単位と式(II)の繰り返し単位とを含むポリマーは、式(I)ではなく、そして式(II)でもない他の繰り返し単位を含むコポリマーであり得る。ポリマー中の式(I)の繰り返し単位と式(II)の繰り返し単位との数は限定されないが、好ましくは、約50から約5,000個の範囲であり、そしてより好ましくは、約100から約2,000個の範囲である。
【0038】
多種多様な他の繰り返し単位が、式(I)の繰り返し単位と式(II)の繰り返し単位とを含むポリマー結合体に含まれる場合がある。1つの実施形態においては、ポリマー結合体には、以下の式(III)の繰り返し単位がさらに含まれる:
【化2】
式中、R6基は、水素、アンモニウム、またはアルカリ金属である。R6が水素である場合には、式(III)の繰り返し単位はグルタミン酸の繰り返し単位である。
【0039】
薬剤を含む化合物は、多くの様々な方法でポリマーに結合させることができる。1つの実施形態においては、薬剤を含む化合物は、繰り返し単位に直接結合され得る。別の実施形態においては、薬剤を含む化合物には、リンカー基がさらに含まれる。リンカー基は、ポリマーに薬剤(または薬剤を含む化合物)を結合させる基である。リンカー基は、比較的小さいものであり得る。例えば、リンカー基には、アミン、アミド、エーテル、エステル、ヒドロキシル基、カルボニル基、またはチオール基が含まれ得る。あるいは、リンカー基は比較的大きいものであり得る。例えば、リンカー基には、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリール(C1〜6アルキル)基、ヘテロアリール基、またはヘテロアリール(C1〜6アルキル)基が含まれ得る。
【0040】
薬剤には、任意のタイプの活性化合物が含まれ得る。1つの実施形態においては、薬剤は光学的造影剤であり得る。好ましい実施形態においては、光学的造影剤は、アクリジン色素、クマリン色素、ローダミン色素、キサンテン色素、シアニン色素、およびピレン色素からなる群より選択される1つ以上である。例えば、特異的な光学的造影剤としては、テキサスレッド(Texas Red)、Alexa Fluor(登録商標)色素、BODIPY(登録商標)色素、フルオレセイン(Fluorescein)、オレゴングリーン(Oregon Green)(登録商標)色素、およびローダミングリーン(Rhodamine Green)(商標)色素を挙げることができる。これらは市販されているか、または当業者に公知の方法によって容易に調製される。
【0041】
別の実施形態においては、薬剤には抗ガン剤が含まれる。1つの実施形態においては、抗ガン剤は、タキサン、カンプトテシン、およびドキソルビシンからなる群より選択され得る。薬剤にタキサンが含まれる場合には、タキサンがパクリタキセルまたはドセタキセルであることが好ましい。パクリタキセルは、パクリタキセルのC2’−炭素を介して酸素原子で式(I)の繰り返し単位または式(II)の繰り返し単位に対して結合させることができる。あるいは、または加えて、パクリタキセルは、パクリタキセルのC7−炭素を介して酸素原子で式(I)の繰り返し単位または式(II)の繰り返し単位に対して結合される場合もある。
【0042】
別の実施形態においては、薬剤には、磁気共鳴造影剤が含まれる。1つの実施形態においては、磁気共鳴造影剤には常磁性金属化合物が含まれる。例えば、磁気共鳴造影剤には、Gd(III)化合物が含まれ得る。そのような一例においては、Gd(III)化合物は以下であり得る:
【化3】
【0043】
別の実施形態においては、薬剤には多座リガンドが含まれる。1つの実施形態においては、多座リガンドは常磁性金属と反応させて、磁気共鳴造影剤を形成させることができる。例えば、多座リガンドには、いくつかのカルボン酸基および/またはカルボキシレート基が含まれ得る。1つの実施形態においては、多座リガンドには、以下の構造の化合物が含まれる:
【化4】
式中、R7はそれぞれ別々に、水素、アンモニウム、またはアルカリ金属である。
【0044】
別の実施形態においては、薬剤には多座リガンド前駆体が含まれる。そのような実施形態においては、多座リガンドの酸素原子は適切な保護基によって保護される。適切な保護基としては、低級アルキル、ベンジル、およびシリル基が挙げられるが、これらに限定されない。保護基を有している多座リガンド前駆体の一例が以下に提供される:
【化5】
【0045】
繰り返し単位の総数に基づくポリマー結合体中の式(I)の繰り返し単位の百分率(%)は、広い範囲にわたって変化し得る。1つの実施形態においては、ポリマーには、式(I)および(II)の繰り返し単位の総モル数に基づいて、約1モル%から約99モル%の式(I)の繰り返し単位が含まれ得る。別の実施形態においては、ポリマーには、式(I)および(II)の繰り返し単位の総モル数に基づいて、約1モル%から約50モル%の式(I)の繰り返し単位が含まれ得る。別の実施形態においては、ポリマーには、式(I)および(II)の繰り返し単位の総モル数に基づいて、約1モル%から約30モル%の式(I)の繰り返し単位が含まれ得る。別の実施形態においては、ポリマーには、式(I)および(II)の繰り返し単位の総モル数に基づいて、約1モル%から約20モル%の式(I)の繰り返し単位が含まれ得る。別の実施形態においては、ポリマーには、式(I)および(II)の繰り返し単位の総モル数に基づいて、約1モル%から約10モル%の式(I)の繰り返し単位が含まれ得る。
【0046】
式(I)および(II)の繰り返し単位に加えて、ポリマー結合体には、様々な他の繰り返し単位が含まれる場合がある。例えば、1つの実施形態においては、ポリマー結合体には、式(III)の繰り返し単位が含まれる。式(I)、(II)、および(III)の繰り返し単位を含むポリマー結合体中の繰り返し単位の総数に基づく、式(I)の繰り返し単位の百分率(%)は、広い範囲にわたって変化し得る。1つの実施形態においては、ポリマー結合体には、式(I)、(II)、および(III)の繰り返し単位の総モル数に基づいて、約1モル%から約99モル%の式(I)の繰り返し単位が含まれ得る。別の実施形態においては、ポリマー結合体には、式(I)、(II)、および(III)の繰り返し単位の総モル数に基づいて、約1モル%から約50モル%の式(I)の繰り返し単位が含まれ得る。別の実施形態においては、ポリマー結合体には、式(I)、(II)、および(III)の繰り返し単位の総モル数に基づいて、約1モル%から約30モル%の式(I)の繰り返し単位が含まれ得る。別の実施形態においては、ポリマー結合体には、式(I)、(II)、および(III)の繰り返し単位の総モル数に基づいて、約1モル%から約20モル%の式(I)の繰り返し単位が含まれ得る。別の実施形態においては、ポリマー結合体には、式(I)、(II)、および(III)の繰り返し単位の総モル数に基づいて、約1モル%から約10モル%の式(I)の繰り返し単位が含まれ得る。
【0047】
1つの実施形態においては、式(I)の繰り返し単位および式(II)の繰り返し単位中の少なくとも1つのnは1である。別の実施形態においては、式(I)の繰り返し単位および式(II)の繰り返し単位中の少なくとも1つのnは2である。
【0048】
1つの実施形態においては、ポリマー結合体中の薬剤の量、式(I)の繰り返し単位の百分率、および式(II)の繰り返し単位の百分率は、実質的に同じ量の薬剤を含む比較可能なポリグルタミン酸結合体の溶解度よりも大きいポリマー結合体の溶解度が得られるように選択される。式(I)および式(II)の繰り返し単位を含むポリマー結合体が、比較可能なポリグルタミン酸結合体の溶解度よりも大きい溶解度を有しているpH値の範囲は、狭い場合も、また、広い場合もある。上記のように、溶解度は、約22℃の0.9重量%のNaCl水溶液の中に少なくとも5mg/mLのポリマー結合体を含むポリマー結合体溶液を形成させること、そして光学的透明度を決定することによって測定される。1つの実施形態においては、ポリマー結合体は、少なくとも約3pH単位のpH範囲にわたって可溶性である。別の実施形態においては、ポリマー結合体は、少なくとも約8pH単位のpH範囲にわたって可溶性である。別の実施形態においては、ポリマー結合体は、少なくとも約9pH単位のpH範囲にわたって可溶性である。別の実施形態においては、ポリマー結合体が可溶性であるpH範囲には、約2から約5の範囲の中の少なくとも1つのpH値(例えば、pH=2、pH=3、pH=4、および/またはpH=5)が含まれる。好ましくは、ポリマー結合体が可溶性であるpH範囲は、比較可能なポリグルタミン酸結合体が可溶性であるpH範囲よりも広い。例えば、1つの実施形態においては、ポリマー結合体は、比較可能なポリグルタミン酸結合体が可溶性であるpH範囲よりも少なくとも約1pH単位広い、好ましくは、少なくとも約2pH単位広いpH範囲にわたって可溶性である。
【0049】
溶解度を測定するために溶液中に入れられるポリマー結合体の量には、大きなばらつきがあり得る。1つの実施形態においては、溶解度は、試験されるポリマー結合体溶液に少なくとも約5mg/mLのポリマー結合体が含まれる場合に測定される。別の実施形態においては、溶解度は、試験されるポリマー結合体溶液に少なくとも約10mg/mLのポリマー結合体が含まれる場合に測定される。別の実施形態においては、溶解度は、試験されるポリマー結合体溶液に少なくとも約25mg/mLのポリマー結合体が含まれる場合に測定される。別の実施形態においては、溶解度は、試験されるポリマー結合体溶液に少なくとも約100mg/mLのポリマー結合体が含まれる場合に測定される。別の実施形態においては、溶解度は、試験されるポリマー結合体溶液に少なくとも約150mg/mLのポリマー結合体が含まれる場合に測定される。当業者は、比較可能なポリグルタミン酸結合体が、試験されるポリマー結合体の濃度とほぼ同じ濃度で試験されることを理解するであろう。
【0050】
式(I)の繰り返し単位と式(II)の繰り返し単位とを含むポリマーは様々な方法で調製され得る。1つの実施形態においては、ポリマー反応体は、溶媒中に溶解または部分的に溶解されて、溶解または部分的に溶解されたポリマー反応体が形成される。溶解または部分的に溶解されたポリマー反応体は第2の反応体と反応して、中間体産物が、あるいは、いくつかの実施形態においては、式(I)の繰り返し単位と式(II)の繰り返し単位とを含むポリマーが形成される。
【0051】
ポリマー反応体には、式(I)の繰り返し単位と式(II)の繰り返し単位とを含むポリマーを形成することができる任意の適切な材料が含まれ得る。1つの実施形態においては、ポリマー反応体には、以下の式(IV)の繰り返し単位が含まれる:
【化6】
式中、nはそれぞれ独立して、1または2であり、A3はそれぞれ酸素であり、そしてR7およびR8はそれぞれ独立して、水素、アンモニウム、およびアルカリ金属からなる群より選択される。
【0052】
1つの実施形態においては、ポリマー反応体には、以下の式(V)の繰り返し単位が含まれ得る:
【化7】
式中、R9は、水素、アンモニウム、またはアルカリ金属である。
【0053】
第2の反応体は様々な化合物であり得る。1つの実施形態においては、第2の反応体には、多座リガンド、保護されている酸素原子を有している多座リガンド前駆体、および薬剤を含む化合物からなる群より選択される少なくとも1つが含まれる。1つの実施形態においては、第2の反応体には置換基が含まれ得る。置換基は、ヒドロキシおよびアミンからなる群より選択され得る。
【0054】
1つの実施形態においては、第2の反応体には、薬剤を含む化合物が含まれる。薬剤は任意の活性化合物であり得る。例えば、薬剤を含む化合物は、抗ガン剤、標的化剤、光学的造影剤、および磁気共鳴造影剤からなる群より選択される。1つの実施形態においては、光学的造影剤は、アクリジン色素、クマリン色素、ローダミン色素、キサンテン色素、シアニン色素、およびピレン色素からなる群より選択され得る。別の実施形態においては、抗ガン剤は、タキサン、カンプトテシン、およびドキソルビシンからなる群より選択され得る。1つの好ましい実施形態においては、抗ガン剤にはタキサンが含まれ得、そしてタキサンは、パクリタキセルおよびドセタキセルからなる群より選択され得る。
【0055】
パクリタキセルは、多数の方法でポリマーに結合され得る。1つの実施形態においては、パクリタキセルは、C2’−炭素に結合された酸素原子で、式(I)の繰り返し単位に結合される。別の実施形態においては、パクリタキセルは、C7−炭素に結合された酸素原子で、式(I)の繰り返し単位に結合される。
【0056】
1つの実施形態においては、薬剤を含む化合物には、磁気共鳴造影剤が含まれる。別の実施形態においては、磁気共鳴造影剤には常磁性金属化合物が含まれる。好ましくは、薬剤を含む化合物には、Gd(III)化合物が含まれる。例えば、薬剤を含む化合物には以下の構造が含まれ得る:
【化8】
【0057】
1つの実施形態においては、多座リガンドをポリマーに結合させることができる。任意の適切な多座リガンドが使用され得る。1つの実施形態においては、多座リガンドは、常磁性金属と反応させて、磁気共鳴造影剤を形成することができる。例えば、多座リガンドには、いくつかのカルボン酸基および/またはカルボキシレート基が含まれる場合がある。例えば、以下の構造の多座リガンドをポリマーに結合させることができる:
【化9】
式中、R7はそれぞれ別々に、水素、アンモニウム、またはアルカリ金属である。
【0058】
別の実施形態においては、保護基を有している多座リガンド前駆体がポリマーに結合され得る。そのような前駆体は、適切な保護基によって保護されたその酸素原子を有している。適切な保護基としては、低級アルキル、ベンジル、およびシリル基が挙げられるが、これらに限定されない。保護基を有している多座リガンド前駆体の一例は以下に提供される:
【化10】
【0059】
1つの実施形態においては、ポリマー結合体を作製する方法には、溶解または部分的に溶解されたポリマー反応体を第2の反応体と、カップリング剤の存在下で反応させる工程が含まれる。任意の適切なカップリング剤を使用することができる。1つの実施形態においては、カップリング剤は、以下からなる群より選択される:1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC)、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1,1’−カルボニル−ジイミダゾール(CDI)、N,N’−ジスクシンイミジルカルボネート(DSC)、N−[(ジメチルアミノ)−1H−1,2,3−トリアゾロ−[4,5−b]ピリジン−1−イル−メチレン]−N−メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN−オキサイド(HATU)、2−[(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルアミニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、2−[(6−クロロ−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルアミニウムヘキサフルオロホスフェート(HCTU)、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP(登録商標))、ブロモ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBroP(登録商標))、2−[(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルアミニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、およびベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)。
【0060】
反応を行うことを可能にする任意の適切な溶媒を使用することができる。1つの実施形態においては、溶媒は極性の非プロトン性溶媒であり得る。例えば、溶媒は、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピリドン(NMP)、およびN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)からなる群より選択することができる。
【0061】
別の実施形態においては、反応にはさらに、溶解または部分的に溶解されたポリマー反応体を触媒の存在下で反応させる工程が含まれ得る。反応を促進する任意の触媒を使用することができる。1つの実施形態においては、触媒には、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)が含まれ得る。
【0062】
1つの実施形態においては、式(I)の繰り返し単位と式(II)の繰り返し単位とを含むポリマーは、ポリグルタミン酸とアミノ酸(例えば、アスパラギン酸および/またはグルタミン酸)を用いて出発して生成することができる。あるいは、別の実施形態においては、ポリマーは、出発ポリグルタミン酸材料をその塩形態へと最初に変換することによって作製され得る。ポリグルタミン酸の塩形態は、ポリグルタミン酸を適切な塩基(例えば、重炭酸ナトリウム)と反応させることによって得ることができる。アミノ酸部分は、ポリグルタミン酸のペンダントカルボン酸基に結合させることができる。ポリグルタミン酸の重量平均分子量は限定されないが、好ましくは約10,000から約500,000ダルトンであり、そしてさらに好ましくは、約25,000から約300,000ダルトンである。そのような反応は、ポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)またはポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)を作製するために使用することができる。
【0063】
1つの実施形態においては、アミノ酸は、ポリグルタミン酸への結合の前に保護基によって保護される。この反応に適している保護されるアミノ酸部分の一例は、以下に示されるL−アスパラギン酸ジ−ブチルエステル塩酸塩である:
【化11】
L−アスパラギン酸ジ−t−ブチルエステル塩酸塩
【0064】
ポリグルタミン酸とアミノ酸との反応は、任意の適切な溶媒の存在下で行うことができる。1つの実施形態においては、溶媒は非プロトン性溶媒であり得る。好ましい実施形態においては、溶媒は、N,N−ジメチルホルムアミドである。
【0065】
1つの実施形態においては、カップリング剤(例えば、EDC、DCC、CDI、DSC、HATU、HBTU、HCTU、PyBOP(登録商標)、PyBroP(登録商標)、TBTU、およびBOP)を使用することができる。他の実施形態においては、ポリグルタミン酸およびアミノ酸を、触媒(例えば、DMAP)を使用して反応させることができる。
【0066】
反応の完了後、アミノ酸の酸素原子が保護されている場合には、保護基を公知の方法を使用して(例えば、適切な酸(例えば、トロフルオロ酢酸)を使用して)除去することができる。所望の場合には、ポリグルタミン酸をアミノ酸と反応させることによって得られるポリマーの塩形態を、ポリマーの酸形態を適切な塩基溶液(例えば、重炭酸ナトリウム溶液)で処理することによって形成させることができる。
【0067】
ポリマーは、当業者に公知の方法によって回収し、そして/または精製することができる。例えば、溶媒は、適切な方法(例えば、回転蒸発)によって除去することができる。加えて、反応混合物を酸性水溶液中に濾過して、沈殿を誘導することができる。得られた沈殿は、その後、濾過し、そして水で洗浄することができる。
【0068】
1つの実施形態においては、式(I)の繰り返し単位と式(II)の繰り返し単位とを含むポリマーにはまた、上記に示されるように式(III)の繰り返し単位も含まれ得る。式(I)、(II)、および(III)の繰り返し単位を含むポリマーを形成する1つの方法は、ポリグルタミン酸を用いて出発し、そしてこれをアミノ酸(例えば、アスパラギン酸および/またはグルタミン酸)と、ポリグルタミン酸に基づいて1.0等量未満のアミノ酸の量で反応させることによる。例えば、1つの実施形態においては、ポリグルタミン酸に基づいて0.7等量のアミノ酸をポリグルタミン酸と反応させることができ、その結果、得られるポリマーの繰り返し単位のうちの約70%をアミノ酸が占める。上記で議論されたように、アミノ酸の酸素原子は適切な保護基を使用して保護することができる。1つの実施形態においては、アミノ酸はL−アスパラギン酸またはL−グルタミン酸であり得る。別の実施形態においては、アミノ酸の酸素原子は、t−ブチル基で保護することができる。アミノ酸の酸素原子が保護されている場合には、保護基は、適切な酸(例えば、トリフルオロ酢酸)などの公知の方法を使用して除去することができる。
【0069】
薬剤を含む基、多座リガンド、および/または保護されている酸素原子を有している多座リガンド前駆体の、ポリマー酸またはその塩形態への結合は、様々な方法によって、例えば、薬剤を含む基、多座リガンド、および/または保護されている酸素原子を有している多座リガンド前駆体を様々なポリマーに共有結合させることによって行うことができる。上記の基をポリグルタミン酸および/または塩から得られるポリマーに結合させる1つの方法は、熱(例えば、マイクロ波の方法を使用することによる熱)を使用することによる。あるいは、結合は、室温で行われる場合もある。当業者に一般的に公知であり、そして/または本明細書中に記載されている、適切な溶媒、カップリング剤、触媒、および/または緩衝液を使用して、ポリマー結合体を形成することができる。ポリグルタミン酸を用いる場合には、ポリグルタミン酸ならびに/または塩およびアミノ酸から得られたポリマーの塩または酸形態の両方を、ポリマー結合体を形成するための出発材料として使用することができる。
【0070】
ポリグルタミン酸ならびに/または塩およびアミノ酸から得られたポリマーに結合させることができる適切な薬剤としては、蛍光剤(optical agent)、抗ガン剤、標的化剤、磁気共鳴造影剤(例えば、常磁性金属化合物)、多座リガンド、および保護されている酸素原子を有している多座リガンド前駆体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
1つの実施形態においては、ポリグルタミン酸ならびに/または塩およびアミノ酸から得られたポリマーは、蛍光剤に結合させることができる。1つの実施形態においては、蛍光剤は、Texas Red−NH2であり得る。
【化12】
Texas Red−NH−
【0072】
1つの特定の実施形態においては、少なくとも1つの式(I)の繰り返し単位と少なくとも1つの式(II)の繰り返し単位とを含むポリマーを、DCC、Texas Red−NH2色素、ピリジン、および4−ジメチルアミノピリジンと反応させることができる。混合物は、マイクロ波の方法を使用して加熱される。1つの実施形態においては、反応は、約100°〜150℃の範囲の温度にまで加熱される。別の実施形態においては、材料が加熱される時間は5から40分の範囲である。所望の場合には、反応混合物は室温に冷却することができる。当業者に公知の適切な方法を使用して、ポリマー結合体を単離、そして/または精製することができる。例えば、反応混合物は、酸性水溶液中に濾過することができる。形成する全ての沈殿を、その後、濾過し、そして水で洗浄することができる。状況に応じて、沈殿を任意の適切な方法によって精製することができる。例えば、沈殿をアセトンに移して溶解することができ、そして得られる溶液を再び重炭酸ナトリウム溶液中に濾過することができる。所望の場合には、得られる反応溶液を、セルロース膜を使用して水で透析することができ、そしてポリマーを凍結乾燥させ、単離することができる。
【0073】
Texas Red色素を含む結合体は、以下の実施例に説明されるように、選択された組織に造影剤を送達するために使用することができる。上記ポリマーは、例えば、以下に説明されるように、水溶液中でナノ粒子に形成され得る。
【0074】
1つの実施形態においては、ポリグルタミン酸ならびに/または塩およびアミノ酸から得られたポリマーを抗ガン剤に結合させることができる。1つの実施形態においては、抗ガン剤は、タキサン、カンプトテシン、および/またはドキソルビシンであり得る。好ましい実施形態においては、抗ガン剤はタキサン(例えば、パクリタキセルまたはドセタキセル)である。
【0075】
1つの実施形態においては、ポリマーに結合された抗ガン剤はパクリタキセルである。1つの実施形態においては、パクリタキセルは、C2’−酸素原子でポリマーに結合することができる。別の実施形態においては、パクリタキセルはC7−酸素原子でポリマーに結合することができる。別の実施形態においては、ポリマー鎖には、C2’−酸素原子によってのみポリマーにカップリングされているパクリタキセルが含まれる。なお別の実施形態においては、ポリマー鎖には、C7−酸素原子によってのみポリマーにカップリングされているパクリタキセルが含まれる。なお別の実施形態においては、ポリマーには、C2’−結合されたパクリタキセル基とC7−結合されたパクリタキセル基との両方が含まれる。
【0076】
抗ガン剤は、Texas−Redに関して上記に記載された方法を使用して、ポリグルタミン酸ならびに/または塩およびアミノ酸から得られたポリマーに結合させることができる。
【0077】
1つの実施形態においては、パクリタキセルは、好ましくは、カップリング剤(例えば、EDCおよび/またはDCC)と触媒(例えば、(DAMP)との存在下で、溶媒(例えば、DMFなどの非極性溶媒)中でポリグルタミン酸ならびに/または塩およびアミノ酸から得られたポリマーと反応させることができる。さらに別の薬剤(例えば、ピリジンまたはヒドロキシベンゾトリアゾール)を使用することができる。1つの実施形態においては、反応は、0.5〜2日間にわたって行われ得る。当業者に公知の適切な方法を使用して、ポリマー結合体を単離および/または精製することができる。例えば、反応混合物は、酸性溶液に注いで沈殿を形成させることができる。形成する任意の沈殿を、その後、濾過し、そして水で洗浄することができる。状況に応じて、沈殿を任意の適切な方法によって精製することができる。例えば、沈殿をアセトンに移して、その中に溶解することができ、そして得られる溶液を再び重炭酸ナトリウム溶液中に濾過することができる。所望の場合には、得られる反応溶液を、セルロース膜を使用して水で透析することができ、そしてポリマーを凍結乾燥させ、単離することができる。得られるポリマー中のパクリタキセルの含有量は、UV分光分析によって決定することができる。
【0078】
あるいは、薬剤を含む化合物を、グルタミン酸および/またはアスパラギン酸などのアミノ酸と反応させることができ、薬剤を含む化合物はアミノ酸にカップリング(例えば、共有結合)される。アミノ酸−薬剤化合物は、その後、ポリグルタミン酸またはその塩と反応して、ポリマー結合体を形成することができる。1つの実施形態においては、パクリタキセルをグルタミン酸と反応させて、パクリタキセルがグルタミン酸のペンダントカルボン酸基に共有結合されている化合物が形成される。グルタミン酸−パクリタキセル化合物を、その後、ポリグルタミン酸またはその塩と反応させて、ポリマー結合体を形成することができる。1つの実施形態においては、パクリタキセルをアスパラギン酸と反応させて、パクリタキセルがアスパラギン酸のペンダントカルボン酸基に共有結合されている化合物が形成される。アスパラギン酸−パクリタキセル化合物を、その後、ポリグルタミン酸またはその塩と反応させて、ポリマー結合体を形成することができる。所望の場合には、C2’−酸素によってアミノ酸にカップリングされたパクリタキセルを、公知の分離方法(例えば、HPLC)を使用して、C7−酸素によってアミノ酸にカップリングされたパクリタキセルから分離することができる。
【0079】
ポリマー結合体の形成の後、ポリマーに共有結合していない任意の遊離の薬剤の量を測定することもできる。例えば、薄層クロマトグラフィ(TLC)を使用して、パクリタキセルに結合されたポリマーの組成物中に残っている遊離のパクリタキセルが実質的に存在しないことを確認することができる。
【0080】
1つの実施形態においては、ポリグルタミン酸ならびに/または塩およびアミノ酸から得られたポリマーを、多座リガンドに結合させることができる。適切な多座リガンドとしては、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)、(1,2−エタンジイルジニトリロ)四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン、2,2’−ジピリジン(bipy)、1,10−フェナントロリン(phen)、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(DPPE)、2,4−ペンタンジオン(acac)、およびエタンジオエート(ox)が挙げられるが、これらに限定されない。当業者に一般的に公知であり、そして/または本明細書中に記載されている、適切な溶媒、カップリング剤、触媒、および/または緩衝液を使用して、ポリマー結合体を形成することができる。別の実施形態においては、ポリグルタミン酸ならびに/または塩およびアミノ酸から得られたポリマーを、保護されている酸素原子を有している多座リガンド前駆体に結合させることができる。ポリグルタミン酸を用いる場合には、ポリグルタミン酸ならびに/または塩およびアミノ酸から得られたポリマーの塩または酸形態の両方を、ポリマー結合体を形成するための出発材料として使用することができる。
【0081】
1つの実施形態においては、多座リガンドにはDTPAが含まれる。1つの実施形態においては、DTPAなどの多座リガンド(保護されている酸素原子を有しているもの、または有していないもの)を、好ましくは、カップリング剤(例えば、DCC)と触媒(例えば、DMAP)との存在下で、ポリグルタミン酸ならびに/または塩およびアミノ酸から得られたポリマーと、溶媒(例えば、DMFなどの非プロトン性溶媒)中で反応させることができる。保護基が存在する場合には、適切な方法を使用して除去を行うことができる。例えば、保護されている酸素原子を有している多座リガンド前駆体(例えば、t−ブチル基によって保護されている酸素原子を有しているDTPA)とのポリマー結合体を、トロフルオロ酢酸などの酸で処理することができる。保護基の除去後、酸を回転蒸発によって除去することができる。1つの実施形態においては、DTPAを適切な塩基で処理して、カルボン酸−OH基上の水素原子を除去することができる。いくつかの実施形態においては、塩基は重炭酸ナトリウムである。
【0082】
1つの実施形態においては、ポリグルタミン酸ならびに/または塩およびアミノ酸から得られたポリマーを、磁気共鳴造影剤に結合させることができる。1つの実施形態においては、磁気共鳴造影剤にはGd(III)化合物が含まれる。磁気共鳴造影剤を形成する1つの方法は、常磁性金属を、多座リガンドを含むポリマー結合体と反応させることによる。適切な常磁性金属としては、Gd(III)、インジウム−111、およびイットリウム−88が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、DTPAを含むポリマー結合体は、緩衝溶液中Gd(III)で数時間処理することができる。当業者に公知の適切な方法を使用して、ポリマー結合体を単離し、そして/または精製することができる。例えば、得られる反応溶液を、セルロース膜を使用して水で透析することができ、そしてポリマーを凍結乾燥させ、単離することができる。常磁性金属の量は、誘導結合プラズマ発光分析(ICP−OES)測定によって定量することができる。
【0083】
ポリマー結合体は、例えば、以下の実施例に説明されるように、選択された組織に造影剤および/または薬物を送達するために使用することができる。上記ポリマーは、例えば、以下に説明されるように、水溶液中でナノ粒子に形成され得る。ポリマーと薬物とを含む結合体は、同様の様式でナノ粒子になるように形成され得る。そのようなナノ粒子を使用して、選択された組織に対して薬物を優先的に送達することができる。
【0084】
(薬学的組成物)
いくつかの実施形態においては、本明細書中に開示される化合物(例えば、ポリマー結合体および/またはそれを含む薬剤)のプロドラッグ、代謝物、立体異性体、水和物、溶媒和物、多形体、および薬学的に許容される塩が提供される。
【0085】
「プロドラッグ」は、インビボで元の薬物に変換される薬剤をいう。プロドラッグは、多くの場合、いくつかの状況ではそれらは元の薬物よりも投与することが容易である場合があるとの理由から有用である。例えば、これらは、経口投与によって生体利用が可能であるが、元の薬物はそうではない場合がある。プロドラッグはまた、元の薬物を上回るほどに、薬学的組成物中の溶解度の改善を有している場合がある。プロドラッグの一例(限定ではない)は、細胞膜(水溶性が移動に決定的である)の通過を容易にするためにエステル(「プロドラッグ」)として投与されるが、その後、一旦、水溶性であることが有効である細胞内に入ると、代謝によってカルボン酸、活性部分に加水分解される化合物である。プロドラッグのさらなる例は、酸基に結合された短いペプチド(ポリアミノ酸)であり得、ペプチドが代謝されて活性部分が露出される。適切なプロドラッグ誘導体の選択および調製のための従来の手順は、例えば、Design of Prodrugs,(H.Bundgaard,Elsevier編,1985)(これはその全体が引用により本明細書中に組み入れられる)に記載されている。
【0086】
用語「プロドラッグエステル」は、生理学的条件下で加水分解される任意のいくつかのエステルを形成する基の付加によって形成される、本明細書中に開示される化合物の誘導体をいう。プロドラッグエステル基の例としては、ピボイルオキシメチル、アセトキシメチル、フタリジル、インダニル、およびメトキシメチル、さらには当該分野で公知の他のそのような基が挙げられ、(5−R−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メチル基が含まれる。プロドラッグエステル基の他の例は、例えば、T.Higuchi and V.Stella,「Pro−drug as Novel Delivery Systems」,第14巻,A.C.S.Symposium Series,American Chemical Society(1975);および「Bioreversible Carriers in Drug Design:Theory and Application」,E.B.Roche編,Pergamon Press:New York,14−21(1987)(カルボキシル基を含む化合物についてのプロドラッグとして有用なエステルの例が提供されている)に見出すことができる。上記参考文献はそれぞれ、それらの全体が引用により本明細書中に組み入れられる。
【0087】
用語「薬学的に許容される塩」は、それが投与される生物に対して有意な刺激を引き起こさず、そして化合物の生物学的活性および特性を取り消してしまうことのない化合物の塩をいう。いくつかの実施形態においては、塩は化合物の酸付加塩である。薬学的塩は、化合物を無機酸(例えば、ハロゲン化水素酸(例えば、塩化水素酸または塩化ホウ素酸)、硫酸、硝酸、リン酸など)と反応させることによって得ることができる。薬学的塩はまた、化合物を有機酸(例えば、脂肪族もしくは芳香族カルボン酸またはスルホン酸、例えば、酢酸、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸、またはナフタレンスルホン酸)と反応させることによって得ることもできる。薬学的塩はまた、化合物を塩基と反応させて、塩(例えば、アンモニウム塩、アルカリ金属塩、(例えば、ナトリウム塩もしくはカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩もしくはマグネシウム塩)、有機酸基の塩(例えば、ジシクロヘキシルアミン)、N−メチル−D−グルカミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、C1〜C7アルキルアミン、シクロヘキシルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ならびにアルギニン、リジンなどのアミノ酸との塩)を形成することによっても得ることができる。
【0088】
薬学的処方物の製造に、薬学的賦形剤とその塩形態の有効成分との混和物が含まれる場合には、薬学的賦形剤(塩基性ではない(すなわち、酸性または中性のいずれか)賦形剤)を使用することが所望され得る。
【0089】
様々な実施形態においては、本明細書中に開示される化合物(例えば、ポリマー結合体および/またはそれを含む薬剤)を単独で使用することができ、本明細書中に開示される他の化合物と組み合わせて使用することができ、また、本明細書中に記載される治療分野で活性のある1つ以上の他の薬剤と組み合わせて使用することもできる。
【0090】
別の態様においては、本開示は、1つ以上の生理学的に許容される界面活性剤、担体、希釈剤、賦形剤、平滑剤、懸濁化剤、被膜形成物質、およびコーティング補助物質(coating assistants)、またはそれらの組み合わせと、本明細書中に開示される化合物(例えば、ポリマー結合体および/またはそれを含む薬剤)とを含む薬学的組成物に関する。治療的使用について許容される担体または希釈剤は薬学の分野では周知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第18版,Mack Publishing Co.,Easton,PA(1990)(これはその全体が引用により本明細書中に組み入れられる)に記載されている。保存剤、安定剤、色素、甘味剤、香料、香味剤などが薬学的組成物中に提供される場合もある。例えば、安息香酸ナトリウム、アスコルビン酸、およびp−ヒドロキシ安息香酸のエステルを、保存剤として添加することができる。加えて、抗酸化剤および懸濁化剤が使用される場合がある。様々な実施形態においては、アルコール、エステル、硫酸化脂肪族アルコールなどが界面活性剤として使用され得る;スクロース、グルコース、ラクトース、デンプン、結晶化セルロース、マンニトール、軽質無水ケイ酸塩、アルミン酸マグネシウム、アルミン酸メタケイ酸マグネシウム(magnesium methasilicate aluminate)、合成ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウムなどを、賦形剤として使用することができる;ステアリン酸マグネシウム、タルク、硬化油などを平滑剤として使用することができる;ココナッツ油、オリーブ油、ゴマ油、ピーナッツ油、大豆油(soya)を懸濁化剤または潤滑剤として使用することができる;炭水化物(例えば、セルロース)もしくは糖の誘導体としての酢酸フタル酸セルロース(cellulose acetate phthalate)、またはポリビニルの誘導体としてのメチルアセテート−メタクリレートコポリマーを、懸濁化剤として使用することができる;そして、フタル酸エステルなどの可塑剤を懸濁化剤として使用することができる。
【0091】
用語「薬学的組成物」は、本明細書中に開示される化合物(例えば、ポリマー結合体および/またはそれを含む薬剤)の、他の化学的成分(例えば、希釈剤または担体)との混合物をいう。薬学的組成物は、生物への化合物の投与を容易にする。多数の化合物を投与するための技術が当該分野に存在しており、これには、経口投与、注射による投与、エアゾール投与、非経口投与、および局所投与が含まれるが、これらに限定されない。薬学的組成物はまた、化合物を無機酸または有機酸(例えば、塩化水素酸、ホウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸など)と反応させることによっても得ることができる。
【0092】
用語「担体」は、細胞または組織への化合物の取り込みを容易にする化合物をいう。例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)が一般的に利用されている担体である。なぜなら、これは、多くの有機化合物の、生物の細胞または組織への取り込みを促進するからである。
【0093】
用語「希釈剤」は、目的の化合物(例えば、ポリマー結合体および/またはそれを含む薬剤)を溶解させ、さらにはその化合物の生物学的に活性な形態を安定化させるであろう、水中に希釈される化合物をいう。緩衝化溶液中に溶解された塩は、当該分野では希釈剤として利用される。1つの一般的に使用されている緩衝化溶液はリン酸緩衝化生理食塩水である。なぜならこれは、ヒトの血液の塩条件を模倣するからである。緩衝塩は低濃度で溶液のpHを制御することができるので、緩衝化希釈剤によっては、まれに、化合物の生物学的活性が修飾されてしまう。用語「生理学的に許容される」は、化合物の生物学的活性および特性を取り消してしまうことのない担体または希釈剤をいう。
【0094】
本明細書中に記載される薬学的組成物は、それ自体をヒト患者に投与することができ、また、併用療法においてはそれらが他の有効成分、または適切な担体もしくは賦形剤と混合されている薬学的組成物中で投与することもできる。目的の用途の化合物の処方および投与のための技術は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」,Mack Publishing Co.,Easton,PA,第18版,1990に見ることができる。
【0095】
適切な投与経路としては、例えば、経口投与、直腸投与、経粘膜投与、局所投与、または腸投与;非経口投与(筋肉内、皮下、静脈内、髄内注射、ならびにクモ膜下、直接の脳室内、腹腔内、鼻腔内、または眼内注射が含まれる)を挙げることができる。化合物(例えば、ポリマー結合体および/またはそれを含む薬剤)はまた、所定の速度での長時間および/または時間が決められたパルス投与のために、持続放出または徐放投与形態(デポー注射、浸透圧ポンプ、丸剤、経皮(電気送達型のものを含む)パッチなどを含む)で投与することもできる。
【0096】
本発明の薬学的組成物は、それ自体が公知の様式で、例えば、常套の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠を作成する、ゲル化(levigating)、乳化、カプセル化、捕捉、または錠剤化プロセスによって、製造することができる。
【0097】
したがって、本発明にしたがって使用される薬学的組成物は、薬学的に使用することができる調製物への活性化合物の処理を容易にする賦形剤および補助剤を含む1つ以上の生理学的に許容される担体を使用して、常套の様式で処方することができる。適切な処方は、選択される投与経路に応じて様々である。任意の周知の技術、担体、および賦形剤を、適切であり、そして例えば、上記のRemington’s Pharmaceutical Sciencesにおいて当該分野で理解されているように使用することができる。
【0098】
注射可能なものは、常套の形態に、液体溶液または懸濁液、注射前に液体中の溶液または懸濁液とするために適している固体の形態のいずれかとして、あるいはエマルジョンとして調製することができる。例えば、適切な賦形剤は、水、生理食塩水、デキストロース、マンニトール、ラクトース、レシチン、アルブミン、グルタミン酸ナトリウム、塩酸システインなどである。加えて、所望の場合には、注射可能な薬学的組成物には、少量の非毒性の補助物質(例えば、湿潤剤、pH緩衝剤など)を含めることができる。生理学的に適合性の緩衝液としては、ハンクス溶液(Hanks’s solution)溶液、リンガー溶液(Ringer’s solution)、または生理食塩水が挙げられるが、これらに限定されない。所望の場合には、吸収を促進させる調製物(例えば、リポソーム)を利用することができる。
【0099】
経粘膜投与のためには、浸透されるバリアに適切な浸透剤が処方物中で使用される場合がある。
【0100】
非経口投与(例えば、ボーラス注射または持続注入による)のための薬学的組成物としては、水溶性形態の活性化合物の水溶液が挙げられる。加えて、活性化合物の懸濁液は、適切な油状の注射懸濁液として調製することができる。適切な親油性溶媒または媒体としては、脂肪油(例えば、ゴマ油)または他の有機油(例えば、大豆油、グレープフルーツ油、またはアーモンド油)、あるいは合成の脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルまたはトリグリセリド)、あるいはリポソームが挙げられる。水性の注射懸濁液には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなどの、懸濁液の粘性を高める物質が含まれ得る。状況に応じて、懸濁液には、適切な安定剤、または高度に濃縮された溶液の調製を可能にするための化合物の溶解度を高める物質も含まれる場合がある。注射用の処方物は、保存剤が添加された単位投与量形態で(例えば、アンプル中に、または多用量の容器中に)提示され得る。組成物は、懸濁液、溶液、または油中エマルジョン、あるいは水性媒体などの形態をとることができ、そしてこれには、懸濁化剤、安定剤、および/または分散剤などの処方剤が含まれる場合がある。あるいは、有効成分は、適切な媒体(例えば、滅菌の発熱物質を含まない水)で使用前に構成される粉末の形態であり得る。
【0101】
経口投与のためには、化合物は、活性化合物を当該分野で周知の薬学的に許容される担体と混合することによって容易に処方することができる。そのような担体によって、本発明の化合物を、処置される患者が経口で摂取するための錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー、懸濁剤などとして処方することが可能となる。経口で使用される薬学的調製物は、活性化合物を固体の賦形剤と混合すること、状況に応じて、得られた混合物を粉砕すること、そして顆粒の混合物を、錠剤または糖衣錠の核を得るために所望の場合には適切な補助剤を加えた後に、処理することによって得ることができる。適切な賦形剤は、特に、充填剤(例えば、糖(ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む);セルロース調製物(例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン(PVP))である。所望の場合には、崩壊剤(例えば、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(例えばアルギン酸ナトリウム))が添加され得る。糖衣錠の核には適切なコーティングが施される。この目的のためには、濃縮された糖溶液を使用することができる。これには、状況に応じて、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適切な有機溶媒または溶媒混合物が含まれ得る。染料または色素が、活性化合物の用量の様々な組み合わせの同定のため、または特性決定のために、錠剤または糖衣錠のコーティングに添加される場合がある。この目的のためには、濃縮された糖溶液を使用することができる。これには、状況に応じて、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適切な有機溶媒または溶媒混合物が含まれ得る。染料または色素が、活性化合物の用量の様々な組み合わせの同定のため、または特性決定のために、錠剤または糖衣錠のコーティングに添加される場合がある。
【0102】
経口で使用することができる薬学的調製物としては、ゼラチンでできている押し込み型のカプセル、さらにはゼラチンおよび可塑剤(例えば、グリセロールまたはソルビトール)でできている密閉型のソフトカプセルが挙げられる。押し込み型のカプセルには、充填剤(例えば、ラクトース)、結合剤(例えば、デンプン)、および/または潤滑剤(例えば、タルクもしくはステアリン酸マグネシウム)、および状況に応じて、安定剤と混合された有効成分が含まれ得る。ソフトカプセルでは、活性化合物は、適切な液体(例えば、脂肪油、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコール)中に溶解または懸濁され得る。加えて、安定剤が添加される場合がある。経口投与のための全ての処方物は、そのような投与に適している投与量でなければならない。
【0103】
口腔投与のためには、組成物は、通常の様式で処方された錠剤またはトローチ剤の形態とすることができる。
【0104】
吸入による投与のためには、本発明にしたがって使用される化合物は、通常、適切な推進剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の適切な気体)を使用して、加圧されたパックまたはネブライザからエアゾール噴霧剤の提示の形態で送達される。圧縮されたエアゾールの場合には、投与量単位は、定量を送達するためのバルブを取り付けることによって決定することができる。化合物の粉末混合物と、適切な粉末基剤(例えば、ラクトースまたはデンプン)とを含む、カプセルおよびカートリッジ(例えば、吸入器または注入器において使用されるゼラチン製のもの)を、処方することができる。
【0105】
眼内、鼻腔内、および耳介内投与を含む用途のための、薬学の分野で周知の様々な薬学的組成物が、本明細書中でさらに開示される。これらの用途に適している浸透剤は当該分野で一般的に公知である。眼内投与のための薬学的組成物としては、水溶性形態の活性化合物の水性眼科用溶液(例えば、点眼薬)、またはゲランガム中(Sheddenら、Clin.Ther.,23(3):440−50(2001))またはヒドロゲル中の活性化合物の水性眼科用溶液(Mayerら、Ophthalmologica,210(2):101−3(1996));眼科用軟膏;眼科用懸濁剤(例えば、微粒子、液体担体媒体中に懸濁された薬物含有低分子ポリマー粒子(Joshi,A.,J.Ocul.Pharmacol.,10(1):29−45(1994))、液体の可溶性処方物(Almら、Prog.Clin.Biol.Res.,312:447−58(1989))、およびミクロスフェア(Mordenti,Toxicol.Sci.,52(1):101−6(1999)))、ならびに眼内挿入物が挙げられる。上記の参考文献は全て、それらの全体が引用により本明細書中に組み入れられる。そのような適切な薬学的処方物は、最も頻繁に、そして好ましくは、安定性および快適性のために、滅菌であり、等張性であり、そして緩衝化されて処方される。鼻腔内送達のための薬学的組成物にはまた、正常な線毛作用の維持を確実にするために多くの態様において鼻汁の分泌を刺激するために調製される点鼻薬および噴霧剤も含まれ得る。Remington’s Pharmaceutical Sciences,第18版,Mack Publishing Co.,Easton,PA(1990)(これはその全体が引用により本明細書中に組み入れられる)に開示されており、そして当業者に周知であるように、適切な処方物は、最も多くの場合に、そして好ましくは、等張性であり、5.5から6.5のpHを維持するようにわずかに緩衝化され、そしてこれには、最も多くの場合には、そして好ましくは、抗微生物性の保存剤と適切な薬物安定剤とが含まれる。耳介内送達のための薬学的処方物としては、耳への局所塗布のための懸濁剤および軟膏が挙げられる。そのような耳介内処方物についての一般的な溶媒には、グリセリンおよび水が含まれる。
【0106】
化合物はまた、直腸用組成物(例えば、坐剤または停留浣腸)(例えば、ココアバターまたは他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を含むもの)にも処方することができる。
【0107】
先に記載された処方物に加えて、化合物は、デポー調製物としても処方することもできる。そのような長時間作用型の処方物は、埋め込み(例えば、皮下もしくは筋肉内)または筋肉内注射によって投与することができる。したがって、例えば、化合物は、適切なポリマー材料もしくは疎水性材料(例えば、許容される油中のエマルジョンとして)、またはイオン交換樹脂とともに処方することができ、また、難溶性誘導体として(例えば、難溶性の塩として)処方することができる。
【0108】
疎水性化合物については、適切な薬学的担体は共溶媒系であり得、これには、ベンジルアルコール、非極性界面活性剤、水混和性有機ポリマー、および水相が含まれる。使用される一般的な共溶媒系は、VPD共溶媒系である。これは、3% w/vのベンジルアルコール、8% w/vの非極性界面活性剤Polysorbate 80(商標)、および65% w/vのポリエチレングリコール300の、無水エタノールでボリュームアップされた(made up to volume)溶液である。必然的に、共溶媒系の百分率は、その溶解度および毒性の特徴を壊すことなく、相当に変化させることができる。さらに、共溶媒成分の実体も様々であり得る;例えば、他の毒性の低い非極性界面活性剤を、POLYSORBATE 80(商標)の代わりに使用することができる;ポリエチレングリコールの画分サイズを変化させることができる;他の生体適合性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン)でポリエチレングリコールを置き換えることができる;そして、他の糖または多糖類でデキストロースを置き換えることができる。
【0109】
あるいは、疎水性の薬学的化合物についての他の送達系を使用することができる。リポソームおよびエマルジョンは、疎水性薬物についての送達媒体または担体の周知の例である。特定の有機溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド)もまた使用することができるが、通常は、より大きな毒性が犠牲となる。加えて、化合物は、徐放系(例えば、治療薬を含む固体の疎水性ポリマーの半透過性マトリックス)を使用して送達することができる。様々な徐放マトリックスが確立されており、そして当業者に周知である。徐放カプセルは、それらの化学的性質に応じて、数時間または数週間から最大100日間にわたって化合物を放出することができる。治療薬の化学的性質および生物学的安定性に応じて、タンパク質の安定化のためのさらに別の方策が使用される場合がある。
【0110】
細胞内に投与されることが意図される薬剤は、当業者に周知の技術を使用して投与することができる。例えば、そのような薬剤はリポソーム中にカプセル化され得る。リポソーム処方と同時に水性溶液中に存在する全ての分子は、水性の内部に取り込まれる。リポソームの内容物は、外部の微小環境から保護され、また、リポソームが細胞膜と融合するため、細胞の細胞質中に効率よく送達される。リポソームは、組織特異的抗体でコーティングすることができる。リポソームは、所望の臓器に対して標的化され、そして選択的に取り込まれるであろう。あるいは、疎水性の有機低分子は、細胞内に直接投与される場合もある。
【0111】
さらに別の治療薬または診断薬が薬学的組成物に組み入れられる場合がある。あるいは、または加えて、薬学的組成物は、他の治療薬または診断薬を含む他の組成物と混合される場合がある。
【0112】
(投与方法)
化合物または薬学的組成物は、任意の適切な手段によって患者に投与することができる。投与方法の限定ではない例としては、中でも、以下が挙げられる:活性化合物を生存している組織と接触させるための当業者によって適切であると考えられる、(a)経口経路からの投与(この投与には、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、噴霧剤、シロップ剤、または他のそのような形態での投与が含まれる);(b)経口以外の経路による投与(例えば、直腸、膣、尿道内、眼内、鼻腔内、または耳介内)(この投与には、水性懸濁剤、油状調製物などとして、または液滴、噴霧剤、坐剤、軟膏、膏薬などとしての投与が含まれる);(c)注射(皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、皮内、眼窩内、莢膜内、髄腔内、胸骨内など)(注入ポンプによる送達が含まれる);(d)腎臓または心臓の領域への直接の注射によるような局所的な投与(例えば、デポー移植物による);さらには、(e)局所投与。
【0113】
投与に適している薬学的組成物には、その意図される目的を達成するために有効な量で有効成分が含まれている組成物が含まれる。用量として必要とされる本明細書中に開示される治療有効量の化合物は、投与経路、処置される動物(ヒトを含む)のタイプ、および考慮される特異的な動物の身体的特徴に応じて様々であろう。用量は、所望の効果が得られるように合わせることができるが、体重、食事療法、現在行われている投薬などの要因、および医学の分野の当業者が認識しているであろう他の要因に応じた様々であろう。さらに詳細には、治療有効量は、処置される被験体の疾患の症状を防ぐ、寛解させる、または緩和する、あるいは生存期間を長くするために有効な化合物の量を意味する。治療有効量の決定は、特に本明細書中に提供される詳細な開示を参照して、十分に当業者の能力の範囲内にある。
【0114】
当業者に容易に明らかであろうように、投与される有用なインビボでの投与量と特定の投与の態様は、年齢、体重、および処置される哺乳動物種、使用される特定の化合物、およびこれらの化合物が使用される特異的な用途に応じて様々であろう。所望の結果を得るために必要な投与量レベルである有効な投与量レベルの決定は、日常的に行われている薬理学的方法を使用して当業者が行うことができる。典型的には、生成物のヒトでの臨床的使用は、より低い投与量レベルで始められ、所望の効果が得られるまで投与量レベルを増大させる。あるいは、許容されるインビトロでの実験を使用して、確立されている薬理学的方法を使用して本発明の方法によって同定された組成物の有用な用量および投与経路を確立することができる。
【0115】
ヒト以外の動物実験では、可能性のある生成物の適用がより高い投与量レベルで開始され、所望の効果がそれ以上得られなくなるか、または有害な副作用が消えるまで投与量を減少させる。投与量は、所望の効果および治療指標に応じて幅広い範囲があり得る。典型的には、投与量は、約10マイクログラム/kgから100mg/kg体重の間であり得、好ましくは、約100マイクログラム/kgから10mg/kg体重の間であり得る。あるいは、投与量は、当業者に理解されるように、患者の表面積に基づき、そしてそれに基づいて計算される。
【0116】
本発明の薬学的組成物についての正確な処方、投与経路、および投与量は、患者の症状を考慮して個々の医師によって選択され得る。(例えば、Finglら、1975、「The Pharmacological Basis of Therapeutics」(これがその全体が引用により本明細書中に組み入れられる)、特に、第1章1頁を参照のこと)。典型的には、患者に投与される組成物の用量の範囲は、約0.5から1000mg/患者の体重1kgであり得る。投与量は、患者の必要性に応じて、1回である場合も、また、2回以上のシリーズである場合もある。化合物についてのヒトへの投与量が少なくともいくつかの症状について確立されている場合には、本発明では同じ投与量が、または確立されているヒトへの投与量の約0.1%から500%の間、より好ましくは、約25%から250%の間の投与量が使用されるであろう。ヒトへの投与量が確立されていない場合には、新しく発見された薬学的組成物についてそうであろうように、適切なヒトへの投与量は、ED50値もしくはID50値、またはインビトロもしくはインビボでの実験によって導かれた他の適切な値(動物での毒性試験および効力の試験によって定量されるような値)から予想することができる。
【0117】
かかりつけの医師は、毒性または臓器の機能不全の理由から投与を終了させる、中断する、または調節する方法およびタイミングを知っていることに留意されるべきである。逆に、かかりつけの医師は、臨床応答が不適切である(毒性を回避する)場合にはより高いレベルとなるように処置を調節するための方法も知っているであろう。目的の障害の管理において投与される用量の大きさは、処置される症状の重篤度、および投与経路に応じて変化するであろう。例えば、症状の重篤度は、標準的な予後診断評価方法によって、一部評価することができる。さらに、用量、およびおそらくは投与頻度もまた、個々の患者の年齢、体重、および応答にしたがって変化するであろう。上記で議論されたものと同等のプログラムを、獣医学用の医薬品において使用することができる。
【0118】
正確な投与量は、個々の薬物に基づいて決定されるであろうが、ほとんどの場合には、投与量に関するいくつかの一般化を行うことができる。成人のヒト患者についての1日投与レジメンは、例えば、個々の有効成分について、0.1mgから2000mgの間、好ましくは、1mgから500mgの間、例えば、5mgから200mgの間の経口用量であり得る。他の実施形態においては、0.01mgから100mgの間、好ましくは、0.1mgから60mgの間、例えば、1mgから40mgの間の個々の有効成分の静脈内、皮下、または筋肉内用量が使用される。薬学的に許容される塩の投与の場合には、投与量は遊離の塩基として計算することができる。いくつかの実施形態においては、組成物は1日に1回から4回投与される。あるいは、本発明の組成物は、持続的な静脈内注入によって、好ましくは、1000mg/日までの個々の有効成分の用量で投与され得る。当業者に理解されるであろうように、特定の状況においては、特定の侵攻性疾患または感染を効果的にそして積極的に処置するためには、上記の好ましい投与量範囲を上回るかまたはさらにははるかに上回る量の本明細書中に開示される化合物を投与することが必要である場合がある。いくつかの実施形態においては、化合物は、持続的療法の期間の間、例えば、1週間以上、または数ヶ月間、もしくは数年間、投与されるであろう。
【0119】
投与量および間隔は、調節作用または最小有効濃度(MEC)を維持するために十分な活性部分の血漿レベルが得られるように、個別に調節することができる。MECは個々の化合物について変化するであろうが、インビトロでのデータから概算することができる。MECを得るために必要な投与量は、個々の特徴および投与経路に応じて様々であろう。しかし、HPLCアッセイまたは生体アッセイを使用して、血漿濃度を決定することができる。
【0120】
投与の間隔もまた、MEC値を使用して決定することもできる。組成物は、時間の10〜90%、好ましくは、30〜90%、そして最も好ましくは、50〜90%についてMECを上回る血漿レベルを維持するレジメンを使用して投与されるべきである。
【0121】
局所投与または選択的取り込みの場合には、薬物の有効局所濃度は、血漿濃度には関係しない場合がある。
【0122】
投与される組成物の量は、処置される被験体、被験体の体重、苦痛の重篤度、投与の様式、およびかかりつけの医師の判断に応じて様々であり得る。
【0123】
本明細書中に開示される化合物(例えば、ポリマー結合体および/またはそれを含む薬剤)は、公知の方法を使用して効力および毒性について評価することができる。例えば、特定の化合物、または化合物のサブセット、共有される特定の化学的部分の毒性は、細胞株(例えば、哺乳動物、好ましくはヒトの細胞株)に対するインビトロでの毒性を決定することによって確立することができる。そのような実験の結果は、多くの場合は、動物(例えば、哺乳動物、またはより特異的には、ヒト)での毒性の予測である。あるいは、動物モデル(例えば、マウス、ラット、ウサギ、またはサル)での特定の化合物の毒性は、公知の方法を使用して決定することができる。特定の化合物の効力は、いくつかの認識されている方法(例えば、インビトロでの方法、動物モデル、またはヒトでの臨床試験)を使用して確立することができる。認識されているインビトロでのモデルは、ほとんど全てのクラスの症状について存在しており、これには、ガン、心臓血管疾患、および様々な免疫不全が含まれるが、これらに限定されない。同様に、許容される動物モデルは、そのような症状を処置するための薬品の効力を確立するために使用することができる。効力を決定するためにモデルが選択される場合には、当業者は、適切なモデル、用量、および投与経路、ならびにレジメンを選択するための当該分野の最先端の技術を指針とすることができる。もちろん、ヒトでの臨床試験もまた、ヒトにおける化合物の効力を決定するために使用することができる。
【0124】
組成物は、所望の場合には、有効成分を含む1つ以上の単位投与量形態が含まれ得るパックまたはディスペンサー装置に提示され得る。パックには、例えば、金属製またはプラスチック製のホイル(例えば、ブリスターパック)が含まれ得る。パックまたはディスペンサー装置には、投与についての説明書が付随する場合がある。パックまたはディスペンサーにはまた、医薬品の製造、使用、または販売を規制する政府機関によって決定された形式で、容器に取り付けられた注意書きが付随する場合もある。この注意書きは、ヒトまたは家畜への投与についての薬物の形態の政府機関による承認の反映である。そのような注意書きは、例えば、処方薬または承認されている製品の挿入物についての米国食品医薬品局によって承認されたラベルである場合もある。適合する薬学的担体中に処方された本発明の化合物を含む組成物もまた調製することができ、適切な容器の中に入れ、そして示された症状の処置についてラベルすることができる。
【実施例】
【0125】
以下の実施例は、本明細書中に記載される実施形態をさらに記載する目的のために提供され、本発明の範囲を限定するものではない。
【0126】
材料:
様々な分子量(多角光散乱(MALS)に基づいて41,400(PGA(97k))、17,600(PGA(44k))、16,000(PGA(32k))、および10,900(PGA(21k))ダルトンの平均分子量)を有しているポリ−L−グルタミン酸ナトリウム塩;1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC);N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC);ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt);ピリジン;4−ジメチルアミノピリジン(DMAP);N,N’−ジメチルホルムアミド(DMF);酢酸ガドリニウム;クロロホルム;および重炭酸ナトリウムは、Sigma−Aldrich Chemical社から購入した。ポリ−L−グルタミン酸を、2Nの塩酸溶液を使用してポリ−L−グルタミン酸に変換した。トロフルオロ酢酸(TFA)は、Bioscienceから購入した。Omniscan(商標)(ガドジアミド)はGE healthcareから購入した。
【0127】
L−アスパラギン酸β−t−ブチルエステル塩酸塩(H−Asp(OtBu)−OtBu・HCl)、L−グルタミン酸ジ−t−ブチルエステル塩酸塩(H−Glu(OtBu)−OtBu・HCl)、N−α−CBZ−L−グルタミン酸αベンジルエステル(Z−Glu−OBzl)は、Novabiochem(La Jolla,CA)から購入した。パクリタキセルは、PolyMed(Houston,Texas)から購入した。3H−パクリタキセルはMaravel Biochemicals,Inc.から購入した。細胞傷害性MTT試験(細胞生存性)のためのスルホローダミンB色素は、Molecular Imaging Products Company(Michigan)から購入した。化学的なp−NH2−Bn−DPTA−ペンタ(tBuエステル)は、Macrocyclics(Dallas,Texas)から購入した。Texas Red(登録商標)カダヴェリン(Texas Red−NH2色素)は、Molecular Probeから購入した。ウシ血清は、Sigmaから購入した。これは10,000rpmで遠心分離して、全ての物質を除去した。
【0128】
1H NMRはJoel(400MHz)から入手し、そして粒子サイズをZetalPals(Brookhaven Instruments Corporation)によって測定した。マイクロ波化学を、Biotageにおいて行った。ポリマーの分子量は、多角光散乱(MALS)(Wyatt Corporation)検出器と組み合わせたサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)によって決定した。
SEC−MALS分析条件:
・HPLCシステム: Agilent 1200
・カラム: Shodex SB 806M HQ
(Pullulanについての排除限界は20,000,000であり、粒子サイズ:13ミクロン、サイズ(mm)ID×長さ;8.0×300)
・移動相: 1×DPBSまたはDPBS(pH7.0)中の1%のLiBr
・流速: 1ml/分
・MALS検出器: WyattによるDAWN HELEOS
・DRI検出器: WyattによるOptilab rEX
・オンライン粘度計: WyattによるViscoStar
・ソフトウェア: WyattによるASTRA 5.1.9
・試料濃度: 1〜2mg/ml
・注入量: 100μl
ポリマーのdn/dc値:0.185を測定において使用した。
BSAを、実際の試料を実行する前に対照として使用した。
【0129】
上記システムおよび条件(本明細書中では以後、MALS検出器を用いるHeleosシステムと呼ぶ)を使用して、出発ポリマーの平均分子量(MALSを用いるそれらのシステムを使用したSigma−Aldrichによって報告された41,400、17,600、16,000、および10,900ダルトンのポリ−L−グルタミン酸ナトリウム塩平均分子量)が、それぞれ、49,000、19,800、19,450、および9,400ダルトンであることを実験によって明らかにした。
【0130】
ポリマー−パクリタキセル結合体中のパクリタキセルの含有量を、メタノール中に既知の濃度のパクリタキセルを用いて作成した検量線に基づいて、UV/Vis分光分析(Lambda Bio 40,PerkinElmer)によって予測した(λ=228nm)。
【0131】
ポリ−L−グルタミン酸−パクリタキセル結合体(PGA−PTX)の合成を、先の文献に報告されているように行った。Liら、「Complete Regression of Well−established tumors using a novel water−soluble poly(L−glutamic acid)−paclitaxel conjugate.」Cancer Research 1998,58,2404−2409(その内容はその全体が引用により本明細書中に組み入れられる)を参照のこと。49,000ダルトンおよび19,450ダルトンの平均分子量を有しているポリグルタミン酸からそれぞれ調製したPGA(97k)−PTX−20およびPGA(32k)−PTX−20中のパクリタキセルの量を、λ=229nmでUV分光分析によって、20重量%として定量した。パクリタキセルの量を減少させることによって、全重量に基づいて10重量%を、49,000ダルトンの平均分子量を有しているポリグルタミン酸からPGA(97k)−PTX−10について得た。
【0132】
(実施例1)
ポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)を、以下のように、図1の一般的な反応スキームにしたがって調製した:
【0133】
ポリグルタミン酸(0.75g)(MALS検出器を用いるHeleosシステムに基づいて49,000ダルトンの平均分子量)を、100mLのジクロロメタン(DCM)に少しずつ加えた。DCC(8.7mL、DCM中の1M)を加え、20分間攪拌した。その後、DCMを回転蒸発によって除去し、残渣をDMF(80mL)に溶解させた。H−asp(OtBu)−(OtBu)(2.44g)、ピリジン(4mL)、およびDMAP(0.1g)を添加し、反応混合物を室温で15〜24時間攪拌した。反応混合物を酸性水溶液(500mL、pH紙に基づきpH<2)に濾過した。白色の沈殿が形成し、これを濾過し、水で洗浄した。その後、白色の沈殿をアセトン(100mL)に溶解させた。溶液を、0.2μmのフィルターを通して濾過し、アセトンを回転蒸発によって除去した。中間体ポリマーの構造を、1.4ppmのO−tBu基のピークの存在によって、1H−NMRによって確認した。
【0134】
中間体ポリマーを、DCM中の95%のトロフルオロ酢酸(TFA)で5〜8時間処理した。その後、DCMを、沈殿が形成するまで添加した。溶媒を除去し、そして残渣をさらなるDCMで洗浄した。残渣を減圧下において、DCMを除去した。残渣をメタノールおよび水に再度溶解させ、その後、逆浸透水(4回水を交換)中で一晩、半膜セルロース(semi−membrane cellulose)(分子量カットオフ10,000ダルトン)を使用して透析した。ポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)は、透析後の水中では、pH7で実質的に光学的に透明であった。ポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)(1.2g)が、凍結乾燥後に白色粉末として得られた。ポリマーを、1.4ppmのO−tBu基のピークの消滅によって、1H−NMRによって確認した。
【0135】
(実施例2)
ポリ−(γ−アスパルチル−グルタミン)−ポリ−L−グルタミン酸を、以下のように、図2に示す一般的な反応スキームにしたがって調製した。
【0136】
MALS検出器を用いるHeleosシステムに基づいて49,000ダルトンの平均分子量を有しているポリグルタミン酸(0.075g)を、DMF(3mL)中に少しずつ溶解させた。その後、DCC(130mL)、H−asp(OtBu)−(OtBu)(0.11g)、ピリジン(200μL)、およびDMAP(0.010g)を加えた。反応は、120℃で30分間、マイクロ波の方法を使用して行った。その後、反応物を室温に冷却した。反応の完了は、薄層カラム(TLC、酢酸エチル中のRf=0.4)を使用して、H−asp(OtBu)−(OtBu)の完全な消滅をモニタリングすることによって追跡調査した。完了すると、反応混合物を酸性水溶液(150mL、pH紙に基づきpH<2)に濾過した。白色の沈殿が形成し、これを濾過し、水で洗浄した。その後、白色の沈殿をアセトン(50mL)に溶解させた。溶液を、重炭酸ナトリウム溶液(0.5M)中へと濾過し、逆浸透水(4回水を交換)中で一晩、半膜セルロース(分子量カットオフ10,000ダルトン)を使用して透析した。得られた中間体ポリマーエステルは、凍結乾燥後に白色であった。ポリマー構造を、1.4ppmのO−tBu基のピークの存在によって、1H−NMRによって確認した。
【0137】
その後、中間体ポリマーを、DCM中の95%のトリフルオロ酢酸(TFA)で5時間処理した。DCMを、沈殿が形成するまで添加した。次いで、溶媒を除去し、そして残渣をさらなるDCMで洗浄した。残渣を減圧下に置き、DCMを除去した。その後、残渣をメタノールおよび水に再度溶解させ、逆浸透水(4回水を交換)中で一晩、半膜セルロース(分子量カットオフ10,000ダルトン)を使用して透析した。ポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)−ポリ−L−グルタミン酸(0.10g)が、透析後に、白色粉末として得られた。ポリマー構造を、1.4ppmのO−tBu基のピークの消滅によって、1H−NMRによって確認した。
【0138】
(実施例3)
ポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)を、以下のように、図3に示した一般的な反応スキームにしたがって調製した。
【0139】
MALS検出器を用いるHeleosシステムに基づいて49,000ダルトンの平均分子量を有しているポリグルタミン酸ナトリウム塩(10.0g)、EDC(33.8g)、HOBt(15.9g)、およびH−asp(OtBu)−(OtBu)−HCl(32.0g)を、DMF(700mL)中で混合した。反応混合物を、室温で15〜24時間攪拌し、その後、水溶液(3L)に注いだ。白色の沈殿が形成され、これを濾過し、水で洗浄した。その後、中間体ポリマーエステルを凍結乾燥させた。中間体ポリマーの構造を、1.4ppmのO−tBu基のピークの存在によって1H−NMRによって確認した。
【0140】
中間体ポリマーを、TFA(200mL)で5時間処理した。その後、TFAを回転蒸発によって少しずつ除去した。残渣に水を加え、残渣を逆浸透水(4回水を交換)中で一晩、半膜セルロース(分子量カットオフ10,000ダルトン)を使用して透析した。ポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)は、透析後のpH7の水中では透明であった。ポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)(15.0g)が、凍結乾燥後に白色粉末として得られた。ポリマー構造を、1.4ppmのO−tBu基のピークの消滅によって、1H−NMRによって確認した。ポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)の平均分子量を測定し、これが99,400ダルトンであることを明らかにした。
【0141】
(実施例3a〜3b)
様々な平均分子量(MALS検出器を用いるHeleosシステムに基づき、19,800および9,400ダルトン)を有している出発ポリグルタミン酸ナトリウム塩からのポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)の合成を、実施例3の手順を使用して行い、得られたポリマーであるポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)の平均分子量を測定し、そしてそれぞれ、39,700および17,700ダルトンであることを見出した。
【0142】
(実施例4)
ポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)を、以下のように、図4に示した一般的な反応スキームにしたがって調製した。
【0143】
MALS検出器を用いるHeleosシステムに基づいて19,800ダルトンの平均分子量を有しているポリグルタミン酸ナトリウム塩(0.40g)、EDC(1.60g)、HOBt(0.72g)、およびH−glu(OtBu)−(OtBu)−HCl(1.51g)を、DMF(30mL)中で混合した。反応混合物を、室温で15〜24時間攪拌し、その後、蒸留水(200mL)に注いだ。白色の沈殿が形成し、これを濾過し、水で洗浄した。その後、中間体ポリマーエステルを凍結乾燥させた。中間体ポリマーの構造を、1.4ppmのO−tBu基のピークの存在によって1H−NMRによって確認した。
【0144】
中間体ポリマーを、TFA(20mL)で5〜8時間処理した。その後、TFAを回転蒸発によって少しずつ除去した。残渣に水を加え、残渣を逆浸透水(4回水を交換)中で一晩、半膜セルロース(分子量カットオフ10,000ダルトン)を使用して透析した。ポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)は、透析後のpH7の水中では透明であった。ポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)(0.6g)は、凍結乾燥後に白色粉末として得られた。ポリマー構造を、1.4ppmのO−tBu基のピークの消滅によって、1H−NMRによって確認した。ポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)の平均分子量を測定し、これが38,390ダルトンであることを見出した。
【0145】
(実施例4a〜4c)
様々な平均分子量(MALS検出器を用いるHeleosシステムに基づき、49,000、19,450および10,900)を有しているポリ−L−グルタミン酸ナトリウム塩からのポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)の合成を、実施例4の手順を使用して行った。それらのポリ(γ−L−グルタミル−グルタミン)ポリマーの平均分子量を測定し、そしてそれぞれ、110,800、37,400、および19,800ダルトンであることを見出した。
【0146】
(実施例5)
ポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)−ポリ−L−グルタミン酸を、以下のように、図5に示した一般的な反応スキームにしたがって調製した。
【0147】
MALS検出器を用いるHeleosシステムに基づいて49,000ダルトンの平均分子量を有しているポリグルタミン酸ナトリウム塩(0.50g)、EDC(0.26g)、HOBt(0.11g)、およびH−glu(OtBu)−(OtBu)−HCl(0.05g)を、DMF(30mL)中で混合した。反応混合物を、室温で15〜24時間攪拌し、そして水溶液(500mL)に注いだ。白色の沈殿が形成し、これを濾過し、水で洗浄した。中間体ポリマーエステルを凍結乾燥させた。中間体ポリマーの構造を、1.4ppmのO−tBu基のピークの存在によって1H−NMRによって確認した。
【0148】
中間体ポリマーを、TFA(20mL)で5〜8時間処理した。TFAを回転蒸発によって少しずつ除去した。残渣に水を加え、残渣を逆浸透水(4回水を交換)中で一晩、半膜セルロース(分子量カットオフ10,000ダルトン)を使用して透析した。ポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)−ポリ−L−グルタミン酸は、透析後のpH7の水中では透明であった。ポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)−ポリ−L−グルタミン酸(0.25g)は、凍結乾燥後に白色粉末として得られた。ポリマー構造を、1.4ppmのO−tBu基のピークの消滅によって、1H−NMRによって確認した。ポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)の平均分子量を測定し、これが57,400ダルトンであることを見出した。
【0149】
(実施例6)
PGA−97−A−Texas Redと本明細書中で呼ばれるポリマー結合体を、以下のように、図6に示した一般的な反応スキームにしたがって調製した。
【0150】
平均分子量99,400ダルトンのポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)(100mg)を、DMF(3mL)中に少しずつ溶解させた。無水DCC(130mL)、Texas Red−NH2色素(15mg)、ピリジン(200μL)、およびDMAP(0.010g)を加えた。反応は、120℃で30分間、マイクロ波の方法を使用して行った。その後、反応物を室温に冷却した。反応混合物を酸性水溶液(200mL、pH紙に基づきpH<2)に濾過した。紫色の沈殿が形成し、これを濾過し、水で洗浄した。その後、紫色の沈殿をアセトン(50mL)に溶解させた。溶液を、重炭酸ナトリウム溶液(0.5M)中へと濾過し、逆浸透水(4回水を交換)中で一晩、半膜セルロース(分子量カットオフ10,000ダルトン)を使用して透析した。ポリマーPGA−97−A−Texas Red(80mg)が、凍結乾燥後に紫色の固体として得られた。
【0151】
(実施例7)
PGA−97−A−DTPAと本明細書中で呼ばれるポリマー結合体を、以下のように、図7に示した一般的な反応スキームにしたがって調製した。
【0152】
平均分子量99,400ダルトンのポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)(100mg)を、DMF(5mL)中に溶解させた。その後、DCC(200mL)を溶液に添加した。DMF(5mL)中のp−NH2−Bn−DTPA−ペンタ−(tBuエステル)(400mg)の溶液もまた反応混合物に加えた。その後、無水ピリジン(300μL)、および触媒DMAP(20g)を加えた。反応混合物を攪拌し、マイクロ波の条件下で、30分間、120℃に加熱した。その後、反応物を室温に冷却し、いくらかの沈殿が形成した。沈殿を濾過し、上清を、水中の希塩酸で、約2のpHになるように酸性化させた。中間体ポリマーを含む溶液を、セルロース膜(分子量カットオフ10,000ダルトン)で2日間、水中で透析し、そして中間体ポリマーを凍結乾燥させた。中間体ポリマーの構造を、1H−NMRによって確認した。
【0153】
中間体ポリマーを、TFAで4時間処理した。その後、TFAを回転蒸発によって除去した。残渣を水に溶解させ、そして溶液をセルロース膜(分子量カットオフ10,000ダルトン)を用いて水中で透析した。ポリマーを凍結乾燥させた。PGA−97−A−DTPAの構造を、1H−NMRによって確認した。
【0154】
(実施例8)
PGA−97−A−DTPA−Gd(III)と本明細書中で呼ばれるポリマー結合体を、以下のように、図8に示した一般的な反応スキームにしたがって調製した。
【0155】
実施例7から得たPGA−97−A−DTPAを、緩衝液中の酢酸Gd(III)で4時間処理した。反応溶液を、セルロース膜(分子量カットオフ−10,000ダルトン)で3日間、水中で透析し、凍結乾燥させポリマー(86mg)が得られた。Gd(III)の量を、誘導結合プラズマ発光分析(ICP−OES)測定によって定量した。存在するGd(III)の量は、Gadolinium ICP標準物(Ricca Chemical Company,Arlington,Texas(カタログ番号PGD1KN−500))に基づいて、ポリマーの重量に対して7重量%であることを見出した。
【0156】
(実施例9)
PGA−97−A−10と本明細書中で呼ばれるポリマー結合体を、以下のように、図9に示した一般的な反応スキームにしたがって調製した。
【0157】
平均分子量99,400ダルトンのポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)(351mg)を、DMF(40mL)中に少しずつ溶解させた。DCC(120mg)とパクリタキセル(44mg)とをそれぞれ混合物に添加した。DMF(10mL)と触媒量のDMAP(100mg)とを、その後、混合物に加えた。反応混合物を室温で1日攪拌した。反応の完了を、遊離のパクリタキセルが存在しないことを確認するTLCによって確認した。混合物をクロロホルム(300mL)に注ぎ、沈殿を形成させた。残渣が濾過後に得られ、その後、メタノール中に溶解させた。沈殿を、0.2Nの塩酸水溶液を加えることによって誘導し、そして残渣を10,000rpmでの遠心分離後に単離した。次いで、残渣を0.5Mの重炭酸ナトリウム溶液中に再度溶解させた。ポリマー溶液を、逆浸透水(4回水を交換)中で1日、セルロース膜(分子量カットオフ10,000ダルトン)を使用して脱イオン水中で透析した。透明な溶液が得られ、これを凍結乾燥させた。PGA−97−A−10(340mg)が得られ、これを、1H−NMRによって確認した。PGA−97−A−10中のパクリタキセルの含有量を、UV分光分析によって10重量%と決定した。遊離のパクリタキセルが存在しないこともまたTLCによって確認した。
【0158】
(実施例10)
PGA−97−A−20と本明細書中で呼ばれるポリマー結合体を、以下のように、図9に示した一般的な反応スキームにしたがって調製した。
【0159】
平均分子量99,400ダルトンのポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)(750mg)を、DMF(50mL)中に少しずつ溶解させた。EDC(450mg)とパクリタキセル(210mg)とをそれぞれ混合物に添加した。触媒として作用するDMAP(100mg)を混合物に加えた。反応混合物を室温で1日攪拌した。反応の完了をTLCによって確認した。混合物を0.2Nの塩酸溶液(300mL)に注いだ。沈殿が形成され、これを、10,000rpmでの遠心分離後に回収した。その後、残渣を0.5MのNaHCO3溶液中に再度溶解させた。ポリマー溶液を、逆浸透水(4回水を交換)中で1日、セルロース膜(分子量カットオフ10,000ダルトン)を使用して脱イオン水中で透析した。透明な溶液が得られ、これを凍結乾燥させた。PGA−97−A−20(700mg)が得られ、構造を、1H−NMRによって確認した。PGA−97−A−20中のパクリタキセルの含有量を、UV分光分析によって20重量%と決定した。
【0160】
(実施例10a〜10b)
それぞれ、39,700および17,700ダルトンの平均分子量を有しているポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)ポリマーからのPGA−−44−A−20およびPGA−−21−A−20と本明細書中で呼ばれるポリマー結合体の合成を、実施例10の手順を使用して行った。ポリマー中のパクリタキセルの含有量を、UV分光分析によって、20重量%と決定した。
【0161】
(実施例10c)
39,700ダルトンの平均分子量を有しているポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)からのPGA−−44−A−19と本明細書中で呼ばれるポリマー結合体の合成を、パクリタキセルだけを添加する代わりにパクリタキセルと3H−パクリタキセルとの混合物を添加するよう変更して、実施例10の手順を使用して行った。ポリマー中のパクリタキセルの含有量を、UV分光分析によって19重量%と決定した。
【0162】
(実施例11)
PGA−−97−G−20と本明細書中で呼ばれるポリマー結合体を、以下のように、図10に示した一般的な反応スキームにしたがって調製した。
【0163】
平均分子量110,800ダルトンのポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)(1.0g)を、DMF(55mL)中に少しずつ溶解させた。EDC(600mg)とパクリタキセル(282mg)とをそれぞれ混合物に添加した。触媒として作用するDMAP(300mg)を混合物に加えた。反応混合物を室温で1日攪拌した。反応の完了をTLCによって確認した。混合物を0.2Nの塩酸溶液(300mL)に注いだ。沈殿が形成され、これを、10,000rpmでの遠心分離後に回収した。その後、残渣を重炭酸ナトリウム溶液(0.5MのNaHCO3溶液)中に再度溶解させた。ポリマー溶液を、逆浸透水(4回水を交換)中で1日、セルロース膜(分子量カットオフ10,000ダルトン)を使用して脱イオン水中で透析した。透明な溶液が得られ、これを凍結乾燥させた。PGA−−97−A−20(1.1g)が得られ、1H−NMRによって確認した。PGA−−97−A−20中のパクリタキセルの含有量を、UV分光分析によって20重量%と決定した。
【0164】
(実施例11a〜11c)
それぞれ、38,390、37,400、および19,800ダルトンの平均分子量を有しているポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)ポリマーからのPGA−−44−A−20、PGA−−32−G−20、およびPGA−−21−G−20と本明細書中で呼ばれるポリマー結合体の合成を、実施例11の手順を使用して行った。それぞれのポリマー中のパクリタキセルの含有量を、UV分光分析によって、20重量%と決定した。パクリタキセルの量を増大させることにより、パクリタキセルのより多量の搭載(loading)が得られた。例えば、PGA−−32−G−40を、37,400ダルトンの平均分子量を有しているポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)ポリマーから、実施例11の手順を使用して調製した。パクリタキセルの含有量をUV分光分析によって決定し、40重量%であることを見出した。
【0165】
(実施例12a〜12c)
それぞれ、110,800、37,400、および19,800ダルトンの平均分子量を有しているポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)ポリマーからのPGA−−97−G−24、PGA−−32−G−19、PGA−21−G−19と本明細書中で呼ばれるポリマー結合体の合成を、パクリタキセルだけを添加する代わりにパクリタキセルと3H−パクリタキセルとの混合物を添加するよう変更して、実施例11の手順を使用して行った。PGA−97−G−24、PGA−32−G−19、PGA−21−G−19中のパクリタキセルの含有量を、UV分光分析によって、それぞれ、24重量%、19重量%、および19重量%と決定した。
【0166】
(実施例13)
保護されたC2’−PTX−Gluおよび保護されたC7−PTX−gluの合成
【化13】
Z−Glu−OBzl(2.6g)、パクリタキセル(2.0g)、EDC(1.5g)、およびDMAP(300mg)をDMF(20mL)中に混合し、そして15時間攪拌した。TLCによる測定は、混合物中には遊離のパクリタキセルが残っていないことを示していた。その後、混合物を、0.2Nの塩酸水溶液(100mL)に注ぎ、そして有機生成物を酢酸エチル(50mL×2回)中に抽出した。有機相を合わせ、0.5Mの重炭酸ナトリウム溶液(100mL)で洗浄した。その後、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。酢酸エチルを回転蒸発によって除去し、そして生成物をシリカゲルクロマトグラフィ(ヘキサン:酢酸エチル、1:1)によって精製した。得られた生成物が、保護されたC2’−PTX−Glu(2.2g)および保護されたC7−PTX−glu(0.42g)であることを、1H−NRMによって確認した。
【0167】
(実施例13a)
C2’−PTX−Gluの合成
【化14】
保護されたC2’−PTX−Glu(2.2g)および10%のPd/C(0.20g)を、脱酸素化されたメタノール(150mL)中で攪拌した。水素ガスを、バルーンを使用して導入した。反応物を4時間水素化させた。TLCによって反応の完了を確認した。溶液を、0.2μmのフィルターを通して濾過した。溶液は透明であり、メタノールを回転蒸発によって除去した。粗生成物をさらに、水およびアセトニトリルの勾配を使用して逆相HPLCによって精製した。HPLC精製後にC2’−PTX−Glu(600mg)が得られ、これを凍結乾燥させ、そして生成物をLC−MSによって確認した。結果を図11に示す。C2’−PTX−Gluは、約32分のHPLC時間と、約6.2分のLC−MS時間とを有していた。
【0168】
(実施例13b)
C7−PTX−gluの合成
【化15】
保護されたC7−PTX−Glu(250mg)および10%のPd/C(0.20g)を、脱酸素化されたメタノール溶液(150mL)中で攪拌した。水素ガスを、バルーンを使用して溶液中に導入し、そして反応物を4時間水素化させた。反応の完了をTLC測定によって確認した後、溶液を、0.2μmのフィルターを通して濾過した。溶液は透明であり、メタノールを回転蒸発によって除去した。粗生成物をさらに、水およびアセトニトリルの勾配を使用して逆相HPLCによって精製した。HPLC精製後にC7−PTX−Glu(30mg)が得られ、これを凍結乾燥させ、そして生成物をLC−MSによって確認した。結果を図11に示す。C7−PTX−Gluは、約35分のHPLC時間と、約6.4分のLC−MS時間とを有していた。
【0169】
(実施例14)
PGA−97−G−27と本明細書中で呼ばれるポリマー結合体を、以下のように、図12に示した一般的な反応スキームにしたがって調製した。
【0170】
ポリ−L−グルタミン酸(210mg)をDMF(10mL)中に溶解させた。EDC(65モル%)とNHS(65モル%)とを混合物に加え、そしてこれを15時間攪拌した。その後、DMF(2mL)中のC2’−PTX−Glu(105mg)の溶液を混合物に添加した。次に、0.5Mの重炭酸ナトリウム溶液(3mL)を添加した。反応混合物を3時間攪拌し、その後、希釈した0.2Nの塩酸溶液(300mL)に注いだ。沈殿が形成され、これを、10,000rpmでの遠心分離後に回収した。
【0171】
その後、残渣を0.5Mの重炭酸ナトリウム溶液中に再度溶解させた。ポリマー溶液を、逆浸透水(4回水を交換)中で1日、セルロース膜(分子量カットオフ10,000ダルトン)を使用して脱イオン水中で透析した。透明な溶液が得られ、これを凍結乾燥させた。得られた生成物はPGA−97−G−27(250mg)であり、これを、1H−NMRによって確認した。PGA−97−G−27中のパクリタキセルの含有量を、UV分光分析によって27重量%と決定した。
【0172】
(実施例15)
PGA−97−G−ドキソルビシンの合成
【化16】
ポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)(70mg)、ドキソルビシン(30mg)、EDC(50mg)、HOBt(15mg)をDMF(4mL)中に溶解させた。混合物を120℃で10分間、マイクロ波に置き、その後、0.2Nの塩酸溶液に注いだ。沈殿が形成され、これを回収した。残渣を希釈した0.5Mの重炭酸ナトリウム溶液中に再度溶解させ、そして逆浸透水(4回水を交換)中で1日、セルロース膜(分子量カットオフ10,000ダルトン)を使用して脱イオン水中で透析した。透明な赤色の溶液が得られ、これを凍結乾燥させた。得られたPGA−97−G−ドキソルビシン(80mg)の生成物の構造を1H−NMRによって確認した。
【0173】
(実施例16)
PGA−97−G−カンプトテシンの合成
【化17】
ポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)(70mg)、グリシル−カンプトテシン(30mg)、EDC(50mg)、HOBt(15mg)をDMF(4mL)中に溶解させた。混合物を120℃で10分間、マイクロ波で加熱した。混合物をDCM(150mL)に注ぎ、沈殿を形成させた。残渣を希釈した0.2Nの塩酸溶液中で15分間超音波処理した。得られた固形物を濾過し、希釈した水で洗浄し、その後、凍結乾燥させた。PGA−97−G−カンプトテシンを、淡黄色の固体(50mg)として回収した。
【0174】
(実施例17)
(溶解度)
様々なポリマーの溶解度を様々なpHレベルで試験し、19,800ダルトンの平均分子量を有しているポリ−L−グルタミン酸(PGA−19,800)の対照と比較した。試験したポリマーは以下である:19,800ダルトンの平均分子量を有しているポリ−(γ−グルタミル)−ポリ−L−グルタミン(PGPG−19,800);37,400ダルトンの平均分子量を有しているポリ−(γ−グルタミル)−ポリ−L−グルタミン(PGPG−37,400);出発ポリマーPGA−19,800から調製した、20重量%のパクリタキセル含有量を有しているポリ−L−グルタミン酸−パクリタキセル−20%(PGA(32k)−PTX−20);ポリ−(γ−グルタミル)−ポリ−L−グルタミン−19,800の出発ポリマーから調製した、20重量%のパクリタキセル含有量を有しているPGA−21−G−20;および、ポリ−(γ−グルタミル)−ポリ−L−グルタミン−37,400の出発ポリマーから調製した、20重量%のパクリタキセル含有量を有しているPGA−32−G−20。
【0175】
それぞれのポリマー(5mg)をpH緩衝液(1mL)に加え、そして混合物を2分間超音波処理した。その後、混合液を室温で30分間落ち着かせた。溶解度を眼で観察し、そして1から10のスケールで記録し、1は極めて不溶性、5は濁った懸濁液、そして10は極めて透明な溶液である。結果を以下の表1に示す。
【表1】
【0176】
(実施例18a)
(細胞培養および調製):
B16F0細胞をATCC(CRL−6322、ATCC アメリカンタイプカルチャーコレクション,Rockville,MD)から購入し、これを10%のウシ胎児血清および100単位/mLのペニシリンを含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で増殖させた。細胞は、5%のCO2環境下37℃で増殖させた。培養培地を除去し、廃棄した。細胞を、ダルベッコリン酸緩衝溶液(Dulbecco Phosphate Buffer Solution(DPBS))ですすぎ、トリプシン−エチレンジアミン四酢酸(EDTA)溶液(0.5ml)を加え、そして細胞を倒立顕微鏡下で観察して、これらが分散していることを確認した。完全な増殖培地(6.0から8.0ml)を加え、そして細胞をゆっくりとピペッティングすることによって吸引した。適切なアリコート中の細胞懸濁液を新しい培養プレートに移した。細胞を、5%のCO2中37℃で24時間増殖させ、その後、さらに実験を行った。
【0177】
(実施例18b)
(インビトロでの細胞による取り込み実験)
PGA−97−A−Texas RedおよびTexas Red色素(TR)をDPBS中に別々に溶解させた。色素を含む両方の溶液を、1.0μMから10μMの最終濃度で細胞に添加した。化合物を含む細胞を37℃で8〜24時間インキュベートし、その後、細胞をDPBSで3回洗浄した。処理した細胞を、OLYMPUS蛍光顕微鏡下で試験し、そして励起および放射波長を、それぞれ、591nmおよび612nmで測定した。結果は、細胞はPGA−97−A−Texas Redに由来するTexas red色素を取り込んだが、Texas Redのみに由来する色素は取り込まなかったことを示している。
【0178】
ほぼ同じ数のB16F0黒色腫細胞が含まれている3つの試料容器を、それぞれ、1μMのPGA−97−A−Texas Red、0.1μMのPGA−97−A−Texas Red、および10μMのTexas Redのみとともに、24時間インキュベートした。個々の容器のインビトロでの細胞による取り込みについての写真を、Olympus蛍光顕微鏡システムのカメラで撮影した。1μMのPGA−97−A−Texas Redを含む試料の写真においては、およそ30%の細胞が赤かった。0.1μMのPGA−97−A−Texas Redを含む試料の写真においては、およそ10%の細胞が赤かった。10μMのTexas Redのみの試料の写真においては、およそ0%の細胞が赤かった。これらの結果は、細胞はPGA−97−A−Texas Redから色素を取り込むが、Texas red色素のみからは色素を取り込まないことを示している。ポリマー結合体は、薬物の細胞内送達に有効である。
【0179】
(実施例18c)
細胞による取り込みをまた、共焦点顕微鏡(Olympus FV1000)によっても確認した。細胞の核をHoechst 33342で5〜20分間染色し、DPBSで2〜3回洗浄し、そしてレーザースキャン共焦点顕微鏡下で観察した。Hoechst 33342の励起および放射波長を、それぞれ、405nmおよび461nmで測定した。Texas Red(TR)を543nmのレーザーで励起させ、そして、37℃の5%のCO2環境下615nmで検出した。結果は、暴露の24時間後に、PGA−97−A−Texas Redに由来するTexas red色素がB16F0細胞によって取り込まれたことを示している。PGA−97−A−Texas Redに由来するTexas red色素は細胞質で見られ、そして核からは排除されていた。
【0180】
共焦点顕微鏡(Olympus FV100)によって1μMのPGA−97−A−Texas Redのインビトロでの細胞による取り込みを示す写真を撮影し、細胞質への取り込みと核への取り込みとを比較した。写真は、PGA−97−A−TexasRedが、暴露の24時間後にB16F0細胞によって取り込まれたことを示している。PGA−97−A−Texas Redは、細胞質で見られ、そして核からは排除されていた。
【0181】
(実施例19)
(同系腫瘍モデル)
動物:Nu/nuマウス、雌、6〜8週齢(22〜25g)。孤立性腫瘍を、2×105のマウス黒色腫細胞(B16F0)を右腿の皮下に注射することによって生じさせた。5〜7日後に、腫瘍が約500mm3に達すると、PGA−97−A−Texas RedまたはTexas Red色素を腫瘍に対して静脈内に注射した。
【0182】
(実施例20)
(PGA−97−A−Texas RedまたはTRの投与およびクリオスタット切片)
PGA−97−A−Texas RedおよびTexas RedをDPBS中に別々に溶解させ、動物に投与する前に0.2μlのフィルターを通して濾過した。100μlのPGA−97−A−Texas Red(2.5%のTR負荷)または0.1〜10mMのTexas Redを、実施例19の同系腫瘍モデルを使用して腫瘍に静脈内注射した。腫瘍を最適な切開温度で切り取り、包埋し、そして液体窒素中で凍結させた。クリオスタット切片(6〜15μm)を作製し、そして氷上で10〜30分間、0.03Mのスクロースを含む4%のパラホルムアルデヒドで固定した。切片をDPBSで2回洗浄し、Hoechst 33342(1μg/ml)で10分間染色し、そしてDPBSで再び洗浄した。その後、切片を、蛍光封入剤(DakoCytomation)でマウントし、カバーガラスで覆った。腫瘍のクリオスタット切片を、レーザースキャン共焦点顕微鏡下で観察した。画像は、PGA−97−A−Texas Redに由来するTexas red色素が、PGA−97−A−Texas Redの静脈内投与の24時間後にインビボで腫瘍細胞中に蓄積したが、Texas Red色素のみの場合には蓄積しなかったことを示していた。
【0183】
インビボでの腫瘍組織によるPGA−97−A−Texas RedおよびTexas Red色素のみの取り込みについてのクリオスタット断面の写真を撮影した。それぞれについて、3つの異なる断面を、6枚の画像の全てについて撮影した。Texas Red色素のみの異なる断面の3枚の写真は、緑色、オレンジ−黄色、および原則として黒として観察された。PGA−97−A−Teas Redの異なる断面の3枚の写真は、緑色、オレンジ−黄色、およびいくらかの赤色の領域として観察された。PGA−97−A−Texas Redに由来するTexas Red色素が、1枚の写真で腫瘍組織において観察された。一方、Texas Red色素は、Texas Redのみの同様の写真においては観察されなかった。これらの結果は、PGA−97−A−Texas Redに由来するTexas red色素が、PGA−97−A−Texas Redの静脈内投与の24時間後にインビボで腫瘍細胞中に蓄積したが、Texas Red色素のみの場合には蓄積しなかったことを示している。
【0184】
加えて、PGA−97−A−Texas Redに由来するTexas red色素はまた、腫瘍の血管に沿って内皮細胞中に見ることができた。さらなる写真を、腫瘍組織の別のクリオスタット断面について撮影した。赤色色素が、PGA−97−A−Texas Redの尾静脈への静脈内投与の24時間後に血管に沿って観察された。結果は、PGA−97−A−Texas Redを、腫瘍の血管に沿って内皮細胞中で見ることができたことを示している。
【0185】
(実施例21)
(インビトロでの細胞傷害性MTT試験)
パクリタキセルを含む本明細書中に記載したポリマー結合体を、いくつかの異なる薬物濃度でB16F0黒色腫細胞の増殖に対するそれらの効果について評価した。細胞傷害性MTTアッセイを、Monksら、JNCI 1991,83.757−766(その全体が引用により本明細書中に組み入れられる)に報告されているように行った。PGA−44−A−20を、実施例10aと同様に、MALS検出器を用いるHeleosシステムに基づいて39,700ダルトンの平均分子量を有しているポリ(γ−L−アスパルチル−グルタミン)から調製し、そしてポリマー中のパクリタキセルの重量百分率は20重量%であった。PGA−97−A−20を、実施例10と同様に、MALS検出器を用いるHeleosシステムに基づいて99,400ダルトンの平均分子量を有しているポリ(γ−L−アスパルチル−グルタミン)から調製し、そしてポリマー中のパクリタキセルの重量百分率は20重量%であった。PGA(97k)−PTX−20を本実施例の対照ポリマーとして使用し、これを、MALS検出器を用いるHeleosシステムに基づいて49,000ダルトンの平均分子量を有しているポリ−L−グルタミン酸から先の文献の手順にしたがって調製し、ポリマー中のパクリタキセルの重量百分率は20重量%であった(Liら、「Complete Regression of Well−established tumors using novel water soluble poly(L−glutamic acid)−paclitaxel conjugate.」Cancer Research 1998,58,2404−2409を参照のこと)。結果を図13に示す。黒色腫細胞の生存性は、図13に示したように、薬物濃度が増大するに伴い低下した。これらの結果は、PGA−44−A−20およびPGA−97−A−20が有効な抗ガン剤であることを示している。
【0186】
(実施例22)
(インビトロでの細胞傷害性MTT実験)
パクリタキセルを含むポリマー結合体を、いくつかの異なる濃度の薬物でのB16F0黒色腫細胞の増殖に対するそれらの効果を見るために、対照ポリマー、パクリタキセルを含まないポリマー、およびポリマーを含まないTaxolの対照に対して比較した。細胞傷害性MTTアッセイを、Monksら、JNCI 1991,83.757−766に報告されているように行った。PGA−97−A−10を、実施例9と同様に、MALS検出器を用いるHeleosシステムに基づいて99,400ダルトンの平均分子量を有しているポリ(γ−L−アスパルチル−グルタミン)から調製し、そしてポリマー中のパクリタキセルの重量百分率は10重量%であった。本実施例の対照ポリマーとして使用したPGA(97k)−PTX−10は、先の文献にしたがって、MALS検出器を用いるHeleosシステムに基づいて49,000ダルトンの平均分子量を有しているポリ−L−グルタミン酸から先の文献の手順にしたがって調製し(Liら、「Complete Regression of Well−established tumors using novel water soluble poly(L−glutamic acid)−paclitaxel conjugate.」Cancer Research 1998,58,2404−2409)、ポリマー中のパクリタキセルの重量百分率は10重量%であった。パクリタキセルを含まないポリマーは、ポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)ナトリウム塩であった。
【0187】
結果を図14に示す。抗腫瘍薬を有していないナトリウム塩ポリマーは、黒色腫細胞の生存性に対してほとんど効果がなかった。加えて、PGA−97−A−10を、好ましくは、抗腫瘍薬を含む対照ポリマーと比較した。図14に示すように、PGA−97−A−10は、有効な抗ガン剤として作用する。
【0188】
(実施例23)
(薬物動態実験のための動物および腫瘍モデル)
ヌードマウス(6〜7週齢、体重25〜30グラム、雌)を、Charles River Lab(Willington,MA)から購入した、B16F0細胞株はATCC(CRL−6322、ATCC アメリカンタイプカルチャーコレクション,Rockville,MD)から購入した。B16F0細胞を10%のウシ胎児血清、2μMのグルタミン、1mMの必須ではないアミノ酸、1mMのピルビン酸ナトリウム、100U/mLのペニシリン、および100μg/mlのストレプトマイシンを補充したDMEMで培養した。組織培養物から採取したB16F0細胞をカウントし、5×106/mLの濃度で再度懸濁した。TB注射器を使用して、0.4mL(全部で2×106細胞)を、それぞれのマウスに皮下注射によって投与した。1匹の動物あたり4つの腫瘍を、右肩、左肩、右臀部、および左臀部に接種した。
【0189】
(実施例23a)
実施例23によるマウスの集団全体について平均の腫瘍の容積が200〜300mm3(6〜8mmの直径)に達した時点で、腫瘍を有しているそれぞれのマウスに、3H−Taxol(対照)またはPGA−44−A−19の1回のIVボーラス注射を尾静脈から投与した。
【0190】
PGA−44−A−19を、実施例10cと同様に、MALS検出器を用いるHeleosシステムに基づいて39,700ダルトンの平均分子量を有しているポリ(γ−L−アスパルチル−グルタミン)から調製し、そしてポリマー中のパクリタキセルの重量百分率は19重量%であった。この実施例の対照はTaxolであった。遊離の3H−Taxol(対照)およびPGA−44−A−19の用量は、20mgのパクリタキセル等量/kgであった。それぞれの薬物について、4匹のマウスのグループを、様々な時点で(それぞれの単位は時間)麻酔した:0(すなわち、IV注射後可能な限りすぐに)、0.083、0.25、1.0、2.0、4.0、8.0、48、72、96、120、および144。心臓の穿刺または眼窩球後(retro−orbital)穿刺によって得た0.5mlの血液のコレクションを、ヘパリン化したチューブに入れた。その後、マウスを麻酔から回復する前に屠殺した。それぞれのマウスの血液試料を11,000rpmで遠心分離した。血液試料から上清血漿(0.2〜0.3mL)を収集し、新しいバイアルに移した。それぞれの試料の0.1mLの血漿を、別々に新しい10mLのバイアルに移し、そして液体シンチレーション溶液(5mL)をバイアルに加えた。パクリタキセルの含有量を、液体シンチレーションLS6500カウンティングシステム(Beckman)を使用して分析し、それぞれの試料の検量線から計算した。結果を図15に示す。PGA−44−A−19のパクリタキセル濃度は、長時間にわたりはるかに高いままであった。これらの結果は、PGA−44−A−19中のパクリタキセルが、Taxolだけと比較して血液循環においてより長い時間にわたって有効性を有していることを示している。
【0191】
(実施例24)
実施例23によるマウスの集団の全てについて、平均の腫瘍容積が200〜300mm3(6〜8mmの直径)に達した時点で、腫瘍を有しているそれぞれのマウス(ヌードnu/nuマウス)に、3H−Taxol(対照)またはPGA−44−A−19の1回のIVボーラス注射を、尾静脈から投与した。
【0192】
PGA−44−A−19を、実施例10cと同様に、MALS検出器を用いるHeleosシステムに基づいて39,700ダルトンの平均分子量を有しているポリ(γ−L−アスパルチル−グルタミン)から調製し、そしてポリマー中のパクリタキセルの重量百分率は19重量%であった。遊離の3H−Taxol(対照)およびPGA−44−A−19の用量は、20mgのパクリタキセル等量/kgであった。それぞれの薬物について、4匹のマウスのグループを、様々な時点で(それぞれの単位は時間)麻酔した:0(すなわち、IV注射後可能な限りすぐに)、0.083、0.25、1.0、2.0、4.0、8.0、48、72、96、120、および144。両方の臀部および両方の肩から、腫瘍を別々に採取した。その後、マウスを麻酔から回復する前に屠殺した。およそ80〜180mgのそれぞれの腫瘍をシンチレーションバイアルに入れ、そして腫瘍をSoluene(組織可溶化剤)(1mL)で消化した。その後、0.1mLの消化させた組織を10mLのバイアルに移し、そして液体シンチレーション混合液(5mL)をバイアルに加えた。パクリタキセルの含有量を、液体シンチレーションLS6500カウンティングシステム(Beckman)を使用して分析し、それぞれの試料の検量線から計算した。PGA−44−A−19を、Taxol対照に対して比較した。結果を図16に示す。PGA−44−A−19のパクリタキセルの腫瘍の蓄積は、長時間にわたりはるかに高いままであった。これらの結果は、PGA−44−A−19中のパクリタキセルは、Taxolのみと比較して腫瘍での蓄積の改善を示すことを示している。
【0193】
(実施例25)
(インビボでの効力の実験のための動物および腫瘍モデル)
ヌードマウス(6〜8週齢、体重21〜25グラム、雄)を、Charles River Lab(Willington,MA)から購入した。B16−F0−EGFP安定細胞を、10%のウシ血清、100U/mLのペニシリン、および100μg/mlのストレプトマイシンを補充したDMEMで増殖させた細胞培養物中で維持した。細胞を、接種の48時間前に分け、その結果、これらを採取時に対数増殖期になるようにした。細胞を、トリプシン−EDTAを使用して組織培養物から採取し、そして生存している細胞の数を、トリパンブルーの存在下で血球計においてカウントすることによって決定した。細胞を、血清を含まないDMEM培地中に5×106/mlの濃度で再度懸濁した。腫瘍細胞懸濁液を、それぞれの肩およびそれぞれの臀部の上に5×106/mlの濃度で1ccのインシュリン注射器を使用して、0.1mlの腫瘍細胞懸濁液を注射することによって接種した(4部位/マウス)。
【0194】
腫瘍の接種の日に、マウスを続いて6つのグループのうちの1つに入れ、1つのケージに3匹のマウスを収容し、全部で12個のケージとした。それぞれのマウスに、実験を通じてこれらを独自に識別できるように腫瘍の接種時点で、麻酔下、耳に穴をあけた。それぞれのケージを、薬物、含まれている動物に投与した薬物の用量、および含まれている動物の数をラベルした。
【0195】
(実施例25a)
実施例11a〜11cにしたがって作成したポリマーの最大耐量(MTD)での体重減少の毒性を測定した。MTDは、本明細書中では、2週間以内に最大15%の体重の減少を生じる用量と定義する。PGA−21−G−20およびPGA−32−G−20を、それぞれ、実施例11cおよび11bに開示したように、MALS検出器を用いるHeleosシステムに基づいて、それぞれ、19,800および37,400ダルトンの平均分子量を有している出発ポリ(γ−L−アスパルチル−グルタミン)ポリマーから調製し、そしてそれぞれのポリマー中のパクリタキセルの重量百分率は20重量%であった。PGA−21−G−20およびPGA−32−G−20を、50mg/mLで生理食塩水中に溶解させた。この実施例についての対照抗ガン剤はAbraxaneであり、これは、抗ガン剤としてFDAによって承認されている。生理食塩水もまた、抗腫瘍薬を含まないネガティブ対照として使用した。注射した薬物の実際の量は、それぞれの動物の体重から決定した。薬物の最初の用量は、マウスの集団全体の平均の腫瘍の大きさが約15から約50mm3(腫瘍の大きさは、式(w2×l)/2から概算し、式中、「l」は、ミリメートルで測定した腫瘍の最長直径であり、「w」は最長直径に対して垂直な直径である)に達した時点で、マウスに投与した。マウスには、2用量の薬物を連続する2日間に、麻酔をせずに尾静脈への注射によって投与した。ストック溶液は注射を行う日に新しく調製した。薬物のストック溶液を1ccの注射器に抜き取り、静脈内に注射した。マウスを最も近い0.1g単位まで体重を測定した。ヌードnu/nuマウスには、100mg/kgのパクリタキセル等量の用量のAbraxaneと比較して、175mg/kgの用量のPGA−21−G−20と150mg/kgの用量のPGA−32−G−20との両方の高用量を注射した。それぞれの薬物で処置した場合の体重の変化(%)を別々に観察し、経時的に(日)記録した。結果を図17に示す。PGA−21−G−20は、はるかに高い用量でもほとんど体重の減少を示さなかった。PGA−32−G−20は、はるかに高い用量でも、Abraxaneと同等の体重の減少しか示さなかった。これらの結果は、抗ガン剤と結合させた本発明の好ましいポリマーはマウスに対する毒性が低いことを示している。
【0196】
(実施例26)
(インビボでの効力の実験)
実施例25に記載したように、ヌードnu/nuマウスの中のB16F0−EGF黒色腫腫瘍に対する最大耐量(MTD)のPGA−21−G−20、PGA−32−G−20、およびAbraxaneの抗腫瘍効果を、経時的に、ネガティブ対照として生理食塩水を用いて測定した。PGA−21−G−20およびPGA−32−G−20を、50mg/mLで生理食塩水中に溶解させた。この実施例についての対照抗ガン剤はAbraxaneであり、これは、抗ガン剤としてFDAによって承認されている。生理食塩水を、抗腫瘍薬を含まない別の対照として使用した。注射した薬物の実際の量は、それぞれの動物の体重から決定した。薬物の最初の用量は、実験中のマウスの集団全体の平均の腫瘍サイズが約15から約50mm3に達した時点で、マウスに投与した。マウスには、2用量の薬物を連続する2日間に、麻酔をせずに尾静脈への注射によって投与した。ストック溶液は注射を行う日に新しく調製した。薬物のストック溶液を1ccの注射器に抜き取り、静脈内に注射した。腫瘍サイズを最も近い0.1mm単位まで測定した。ヌードnu/nuマウスには、100mg/kgのパクリタキセル等量の用量のAbraxane対照と比較して、175mg/kgの用量のPGA−21−G−20と150mg/kgのPGA−32−G−20との両方の高用量を、注射した。それぞれの薬物で処置した場合の腫瘍容積の変化を別々に観察し、経時的に(日)記録した。結果を図18に示す。PGA−21−G−20およびPGA−32−G−20は、腫瘍の増殖を有意に阻害した。これらの結果は、抗ガン剤と結合させた本発明の好ましいポリマーが有効な抗ガン剤であることを示している。
【0197】
(実施例27)
実施例11にしたがって作製したポリマーの最大耐量(MTD)での体重減少の毒性を測定した。PGA−97−G−20を実施例11に記載した手順にしたがって調製した。出発材料は、MALS検出器を用いるHeleosシステムに基づいて、それぞれ、110,800ダルトンの平均分子量を有しているポリ(γ−L−グルタミル−グルタミン)であった。ポリマー中のパクリタキセルの重量百分率は20%であった。PGA−97−G−20を、50mg/mLで生理食塩水中に溶解させた。この実施例についての対照抗ガン剤はTaxolおよびAbraxaneであり、これらは、抗ガン剤としてFDAによって承認されている。生理食塩水を、抗腫瘍薬を含まないネガティブ対照として使用した。注射した薬物の実際の量は、それぞれの動物の体重から決定した。薬物の最初の用量は、実験中のマウスの集団全体の平均の腫瘍サイズが約15から約50mm3に達した時点で投与した。マウスには、2用量の薬物を連続する2日間に、麻酔をせずに尾静脈への注射によって投与した。ストック溶液は注射を行う日に新しく調製した。薬物のストック溶液を1ccの注射器に抜き取り、静脈内に注射した。マウスを最も近い0.1g単位まで体重を測定した。ヌードnu/nuマウスには、それらのパクリタキセル等量でのAbraxane(100mg/kg)およびTaxol(50mg/kg)と比較して、より高用量のPGA−97−D−20(60mg/kg)を注射した。それぞれの薬物で処置した場合の体重の変化(%)を別々に観察し、経時的に(日)記録した。結果を図19に示す。図19に示したように、PGA−97−G−20は、はるかに高い用量でも、対照と同程度の体重の減少しか示さなかった。これらの結果は、抗ガン剤と結合させた本発明の好ましいポリマーは臨床用に承認されている薬物と同程度の毒性しか有していないことを示している。
【0198】
(実施例28)
(インビボでの効力の実験)
ヌードnu/nuマウス中のB16F0−EGF黒色腫腫瘍に対する最大耐量(MTD)のPGA−97−G−20、Taxol、およびAbraxaneの抗腫瘍効果を、経時的に、ネガティブ対照として生理食塩水を用いて測定した。PGA−97−G−20を、50mg/mLで生理食塩水中に溶解させた。この実施例についての対照抗ガン剤はTaxolおよびAbraxaneであり、これらは、抗ガン剤としてFDAによって承認されている。生理食塩水を、抗腫瘍薬を含まないネガティブ対照として使用した。注射した薬物の実際の量は、それぞれの動物の体重から決定した。薬物の最初の用量は、実験中のマウスの集団全体の平均の腫瘍の大きさが約15から約50mm3に達した時点で投与した。マウスには、2用量の薬物を、麻酔をせずに尾静脈からのIV注射によって次の日に投与した。ストック溶液は注射を行う日に新しく調製した。薬物のストック溶液を1ccの注射器に抜き取り、静脈内に注射した。腫瘍サイズを最も近い0.1mm単位まで測定した。ヌードnu/nuマウスには、それらのパクリタキセル等量で100mg/kgの用量のAbraxaneおよび50mg/kgのTaxolと比較して、高用量の60mg/kgの用量のPGA−97−G−20を注射した。それぞれの薬物で処置した場合の腫瘍容積の変化を別々に観察し、経時的に(日)記録した。結果を図20に示す。図20に示したように、PGA−97−G−20は腫瘍の増殖に対して有意な効果を有しており、TaxolおよびAbraxaneのいずれよりも優れた能力を有していた。これらの結果は、抗ガン剤と結合させた本発明の好ましいポリマーが有効な抗ガン剤であることを示している。
【0199】
(実施例29)
パクリタキセルと結合されたポリグルタミン酸に対するパクリタキセルを含むポリマー結合体の最大耐量(MTD)での体重減少の毒性を測定した。PGA−32−G−20を実施例11bに記載した手順にしたがって調製した。出発材料は、MALS検出器を用いるHeleosシステムに基づいて、それぞれ、37,400ダルトンの平均分子量を有しているポリ(γ−L−グルタミル−グルタミン)ポリマーであり、それぞれのポリマー中のパクリタキセルの重量百分率は20%であった。PGA−32−G−20を、パクリタキセルに結合された19,450ダルトンの分子量(MALS検出器を用いるHeleosシステムに基づいて)を有しており、その結果、ポリマー中のパクリタキセルの重量百分率が20%であるポリグルタミン酸(PGA(32k)−PTX−20)の対照に対して比較した。生理食塩水を、抗腫瘍薬を含まない基本対照として使用した。PGA−32−G−20およびPGA(32k)−PTX−20の両方を、50mg/mLで生理食塩水中に溶解させた。生理食塩水を、抗腫瘍薬を含まない対照として使用した。注射した薬物の実際の量は、それぞれの動物の体重から決定した。薬物の最初の用量は、実験中のマウスの集団全体の平均の腫瘍サイズが約15から約50mm3に達した時点で投与した。マウスには、2用量の薬物を、麻酔をせずにIV尾静脈への注射によって、次の日に投与した。ストック溶液は注射を行う日に新しく調製した。薬物のストック溶液を1ccの注射器に抜き取り、静脈内に注射した。マウスを最も近い0.1g単位まで体重を測定した。ヌードnu/nuマウスには、100mg/kgのパクリタキセル等量の用量でのPGA832k)−PTX−20と比較して、より高用量のPGA−32−G−20を125mg/kgで注射した。それぞれの薬物で処置した場合の体重の変化(%)を別々に観察し、経時的に(日)記録した。結果を図21に示す。PGA−32−G−20は、はるかに高い用量でも、対照と同程度の体重の減少しか示さなかった。これらの結果は、抗ガン剤と結合された本発明の好ましいポリマーは治験薬と同程度の毒性しか有していないことを示している。
【0200】
(実施例30)
(インビボでの効力の実験)
ヌードnu/nuマウス中のB16F0−EGF黒色腫腫瘍に対する最大耐量(MTD)のPGA−32−G−20およびPGA(32k)−PTX−20の抗腫瘍効果を、経時的に、ネガティブ対照として生理食塩水を用いて測定した。PGA−32−G−20およびPGA(32k)−PTX−20の両方を、50mg/mLで生理食塩水中に溶解した。注射した薬物の実際の量は、それぞれの動物の体重から決定した。薬物の最初の用量は、実験中のマウスの集団全体の平均の腫瘍サイズが約15から約50mm3に達した時点で投与した。マウスには、2用量の薬物を、麻酔をせずに尾静脈からのIV注射によって次の日に投与した。ストック溶液は注射を行う日に新しく調製した。薬物のストック溶液を1ccの注射器に抜き取り、静脈内に注射した。マウスを最も近い0.1mg単位まで体重測定した。ヌードnu/nuマウスには、100mg/kgのパクリタキセル等量の用量のPGA(32k)−PTX−20と比較して、高用量の125mg/kgの用量のPGA−32−G−20を注射した。腫瘍サイズを、最も近い0.1mm単位まで測定した。それぞれの薬物で処置した場合の腫瘍容積の変化を別々に観察し、経時的に(日)記録した。結果を図22に示す。PGA−32−G−20は腫瘍の増殖に対して有意な効果を有しており、PGA(32k)−PTX−20よりも優れた能力を有していた。これらの結果は、抗ガン剤と結合させた本発明の好ましいポリマーが有効な抗ガン剤であることを示している。
【0201】
(実施例31)
ポリマー結合体を、様々な分子量のポリマーの選択に関してパクリタキセルが放出される速度を決定するために試験した。PGA−21−G−20、PGA−32−G−20、PGA−97−G−20と、PGA(97k)−PTX−20の対照とを2mg/mLの濃度でリン酸緩衝液中に入れ、放出速度を測定した。ポリマー−パクリタキセル結合体の溶液を37℃でインキュベートした。50μlのアリコートを様々な時点で取って、凍結させた。その後、全てのアリコートをLC−MSによって分析した。HPLCプロフィール上の放出された薬物のピークの累積面積を測定した。放出されたパクリタキセルの量を検量線から計算した。結果を図23に示し、これは、ポリマー結合体の分子量が大きくなるに伴い、放出されるパクリタキセルの百分率が減少することを示している。これらの結果は、パクリタキセルの放出速度を、ポリマーの様々な分子量を選択することによって制御することができることを示している。
【0202】
(実施例32)
(薬物動態実験のための動物および腫瘍モデル)
ヌードマウス(6〜7週齢、体重25〜30グラム、雌)を、Charles River Lab(Willington,MA)から購入した、B16F0細胞株はATCC(CRL−6322、ATCC アメリカンタイプカルチャーコレクション,Rockville,MD)から購入した。B16F0細胞を10%のウシ胎児血清、2μMのグルタミン、1mMの必須ではないアミノ酸、1mMのピルビン酸ナトリウム、100U/mLのペニシリン、および100μg/mlのストレプトマイシンを補充したDMEMで培養した。組織培養物から採取したB16F0細胞をカウントし、5×106/mLの濃度で再度懸濁した。TB注射器を使用して、0.4mL(全部で2×106細胞)を、それぞれのマウスに皮下注射によって投与した。1匹の動物あたり4つの腫瘍を、右肩、左肩、右臀部、および左臀部に接種した。
【0203】
(実施例32a)
様々な薬物結合ポリマーを、経時的に血漿中のパクリタキセル濃度を決定するために、Taxolの対照に対して試験した。実施例32によるマウスの集団全体について平均の腫瘍容積が200〜300mm3(6〜8mmの直径)に達した時点で、腫瘍を有しているそれぞれのマウスに、3H−Taxol(対照)、PGA−21−A−19、PGA−32−A−19、PGA−97−A−24の1回のIVボーラス注射を尾静脈から投与した。
【0204】
PGA−21−G−19を、反応体ポリマーであるポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)から調製し、分子量は19,800ダルトンであり、ポリマー中のパクリタキセルの重量による百分率は19%であった。PGA−32−G−19を、反応体ポリマーであるポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)から調製し、分子量は37,400ダルトンであり、ポリマー中のパクリタキセルの重量による百分率は19%であった。PGA−97−G−24を、反応体ポリマーであるポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)から調製し、分子量は110,800ダルトンであり、ポリマー中のパクリタキセルの重量による百分率は24%であった。
【0205】
遊離の3H−タキソール(対照)、PGA−21−A−19、PGA−32−A−19、およびPGA−97−A−24の用量は、20mgパクリタキセル等量/kgであった。それぞれの薬物について、4匹のマウスのグループを、様々な時点で(それぞれの単位は時間)麻酔した:1.0、2.0、4.0、および24。心臓の穿刺または眼窩球後(retro−orbital)穿刺によって得た0.5mlの血液のコレクションを、ヘパリン化したチューブに入れた。その後、マウスを麻酔から回復する前に屠殺した。それぞれのマウスの血液試料を11,000rpmで遠心分離し、血液試料から上清血漿(0.2〜0.3mL)を収集し、新しいバイアルに移した。それぞれの試料の0.1mLの血漿を、別々に新しい10mLのバイアルに移した。それぞれの試料の0.1mLの血漿を新しい10mLのバイアルに別々に移し、そして液体シンチレーション溶液(5mL)をバイアルに加えた。パクリタキセルの含有量を、液体シンチレーションLS6500カウンティングシステム(Beckman)を使用して分析し、それぞれの試料の検量線から計算した。結果を図24に示す。これらの結果は、本発明の好ましいポリマー結合体中のパクリタキセル薬物が、Taxolと比較して血漿中でより長い持続期間を有していることを示している。
【0206】
(実施例33)
様々な薬物結合ポリマーを、経時的に腫瘍中のパクリタキセル濃度を決定するために、Taxolの対照に対して試験した。実施例32によるマウスの集団全体について平均の腫瘍容積が200〜300mm3(6〜8mmの直径)に達した時点で、腫瘍を有しているそれぞれのマウスに、3H−Taxol(対照)、PGA−21−A−19、PGA−32−A−19、PGA−97−A−24の1回のIVボーラス注射を尾静脈から投与した。
【0207】
PGA−21−G−19を、反応体ポリマーであるポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)から調製し、分子量は19,800ダルトンであり、ポリマー中のパクリタキセルの重量による百分率は19%であった。PGA−32−G−19を、反応体ポリマーであるポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)から調製し、分子量は37,400ダルトンであり、ポリマー中のパクリタキセルの重量による百分率は19%であった。PGA−97−G−24を、反応体ポリマーであるポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)から調製し、分子量は110,800ダルトンであり、ポリマー中のパクリタキセルの重量による百分率は24%であった。
【0208】
遊離の3H−タキソール(対照)、PGA−21−A−19、PGA−32−A−19、およびPGA−97−A−24の用量は、20mgパクリタキセル等量/kgであった。それぞれの薬物について、4匹のマウスのグループを、様々な時点で(それぞれの単位は時間)麻酔した:1.0、2.0、4.0、および24。両方の臀部および両方の肩から、腫瘍を別々に採取した。その後、マウスを麻酔から回復する前に屠殺した。およそ80〜180mgのそれぞれの腫瘍をシンチレーションバイアルに入れ、そして腫瘍をSoluene(組織可溶化剤)(1mL)で消化した。その後、0.1mLの消化させた組織を10mLのバイアルに移し、そして液体シンチレーション混合液(5mL)をバイアルに加えた。パクリタキセルの含有量を、液体シンチレーションLS6500カウンティングシステム(Beckman)を使用して分析し、それぞれの試料の検量線から計算した。結果を図25に示す。これらの結果は、本発明の好ましいポリマー結合体中のパクリタキセル薬物が、Taxolと比較して、時間がたつにつれて腫瘍中でさらに濃縮されることを示している。
【0209】
(実施例34)
(動物および腫瘍モデル)
ヌードマウス(6〜7週齢、体重25〜30グラム、雄)を、Charles River Lab(Willington,MA)から購入した。B16細胞株はATCC(CRL−6322、ATCC アメリカンタイプカルチャーコレクション,Rockville,MD)から購入した。B16細胞を、10%のウシ胎児血清、2μMのグルタミン、1mMの必須ではないアミノ酸、1mMのピルビン酸ナトリウム、100U/mLのペニシリン、および100μg/mlのストレプトマイシンを補充したDMEMで培養した。組織培養物から採取したB16細胞をカウントし、5×106/mLの濃度で再度懸濁した。TB注射器を使用して、0.2mL(全部で1×106細胞)を、それぞれのマウスに皮下注射によって投与した。1匹の動物あたり1つの腫瘍を、右臀部に接種した。腫瘍の接種部位は、それが成長した場合に腫瘍を測定することを容易にするために、接種前に毛をそり落とした。
【0210】
(実施例35)
(腫瘍の蓄積についての磁気共鳴影像法)
ニーコイル(knee coil)のpre−contrastおよびpost−contrastを使用して、GE 3T MRスキャナーでマウスの画像を獲得した。撮影パラメーターは以下であった:TE:minful、TR=250ms、FOV:8および24スライス/スラブ、および1.0mmのコロナスライス(coronal slice)厚。PGA−97−A−DTPA−Gd(III)を、実施例7〜8と同様に、MALS検出器を用いるHeleosシステムに基づいて、99,400ダルトンの平均分子量を有しているポリ(γ−L−アスパルチル−グルタミン)から調製した。この実施例の対照材料は、Omniscan−Gd(III)−(DTPA−BMA(0.1mmolのGd(III)/kg)であった。PGA−97−A−DTPA−Gd(III)の注射用量は0.1mmol Gd(III)/kgであった。Omniscan(商標)の注射用量は0.1mmol Gd(III)/kgであった。2つの化合物を麻酔したマウスに尾静脈から注射し、画像を、注射前、および造影剤の注射後6分から4時間で獲得した。MRIの結果を図26に示す。図26に示すように、腫瘍組織に蓄積したPGA−97−A−DTPA−Gd(III)キレートの量は、低分子Omniscan−Gd(III)よりも多かった。これらの結果は、PGA−97−A−DTPA−Gd(III)キレートが高い特異性と保持を有していることを示している。
【0211】
(実施例36)
(ナノ粒子の形成の実験)
様々な溶液(0.2μmのフィルターを通して濾過した)を、示した場合を除き、1mg/mLでポリ−(g−アスパルチル−グルタミン)(分子量は99,400ダルトンであった)に加えた。溶液は全て均質に溶解させた。粒子サイズ、多分散性、およびベースライン指数を、光散乱ZeltaPals(Brookhaven Instrument Corporation)によって測定した。結果を表2にまとめた。MilliQ水は、0.2μmのフィルターを有している処理系によって濾過された水を意味する。
【表2】
【0212】
(実施例37)
(PGA−97−A−10のナノ粒子の形成)
PGA−97−A−10を様々な濃度で脱イオン水に溶解させた。粒子サイズ、多分散性、およびベースライン指数を、光散乱(ZeltaPals,Brookhaven Instrument Corporation)によって測定した。結果を以下の表3に示す。
【表3】
【0213】
(実施例38)
薬物結合ポリマーの凍結割断電子顕微鏡による画像を、Nano Analytical Laboratory(San Francisco,CA)によって撮影した。ポリマーは、ポリ−(g−L−アスパルチル−グルタミン)から調製したPGA−44−A−20であって、分子量は39,700ダルトンであり、ポリマー中のパクリタキセルの重量による百分率は20%であった。これを、超音波処理(約5分)後に生理食塩水中に1mg/mLの濃度にした。その後、これをパラフィルムで包み、すぐに会社に送った(輸送にほぼまる1日)。到着すると、これを4℃で保存した。その後、ポリマーを、ナノ粒子が形成するかどうかを決定するために生理食塩水に入れた。電子顕微鏡画像の複製を図27に示す。画像で見ることができるように、ポリマー結合体を水溶液に入れると、本発明の好ましい薬物結合ポリマーのナノ粒子が形成された。
【0214】
(実施例39)
薬物結合ポリマーの粒子を、様々な薬物濃度での安定性を決定するために試験した。PGA−44−A−20およびPGA−97−A−20を様々な薬物濃度で粒子になるように形成し、粒子サイズを測定した。結果を図28に示す。粒子はナノ粒子サイズの範囲を維持し、そして薬物濃度が高くなるに伴い、さらに安定となった。これらの結果は、安定なナノ粒子を、広い範囲の薬物濃度で形成することができることを示している。
【0215】
(実施例40)
薬物結合ポリマーの粒子を、様々な薬物濃度での安定性を決定するために試験した。PGA−21−G−20およびPGA−32−G−20を様々な薬物濃度で粒子になるように形成し、粒子サイズを測定した。結果を図29に示す。粒子はナノ粒子サイズの範囲を維持し、そして薬物濃度が高くなるに伴い、さらに安定となった。これらの結果はさらに、安定なナノ粒子を、広い範囲の薬物濃度で形成することができることを示している。
【0216】
多数の様々な変更を、本発明の精神から逸脱することなく行うことができることが当業者に理解されるであろう。したがって、本発明の形態は例示にすぎず、本発明の範囲を限定するようには意図されないことが明白に理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0217】
【図1】図1は、ポリ−(γ−L−アスパルチルグルタミン)の調製のための反応スキームを示す。
【図2】図2は、ポリ−(γ−L−アスパルチルグルタミン)−ポリ−L−グルタミン酸の調製のための反応スキームを示す。
【図3】図3は、ポリ−(γ−L−アスパルチルグルタミン)の調製のための別の反応スキームを示す。
【図4】図4は、ポリ−(γ−L−グルタミルグルタミン)の調製のための反応スキームを示す。
【図5】図5は、ポリ−(γ−L−グルタミルグルタミン)−ポリ−L−グルタミン酸の調製のための反応スキームを示す。
【図6】図6は、PGA−97−A−Texas Redの調製のための反応スキームを示す。
【図7】図7は、PGA−97−A−DTPAの調製のための反応スキームを示す。
【図8】図8は、PGA−97−A−DTPA−Gd(III)の調製のための反応スキームを示す。
【図9】図9は、PGA−A−PTXの調製のための一般的な反応スキームを示す。
【図10】図10は、PGA−G−PTXの調製のための一般的な反応スキームを示す。
【図11】図11は、C2’−パクリタキセル−グルタミン酸およびC7−パクリタキセル−グルタミン酸の化学構造、ならびに、それらのHPLCおよびLC−MS時間を示す。
【図12】図12は、PGA−97−G−27の調製のための反応スキームを示す。
【図13】図13は、PGA−44−A−20、PGA−97−A−20、およびPGA(97k)−PTX−20(対照)の、いくつかの異なる薬物濃度でのB16F0黒色腫細胞の増殖に対する効果を示しているプロットを示す。
【図14】図14は、PGA−97−A−10、PGA(97k)−PTX−10、ポリ−(γ−L−アスパルチルグルタミン)ナトリウム塩、およびTaxolの、いくつかの異なる薬物濃度でのB16F0黒色腫細胞の増殖に対する効果を示しているプロットを示す。
【図15】図15は、経時的なヌードnu/nuマウス中でのB16F0黒色腫腫瘍でのPGA−44−A−19およびTaxolのパクリタキセルの血漿濃度を示しているプロットを示す。
【図16】図16は、経時的なヌードnu/nuマウス中でのB16F0黒色腫腫瘍でのPGA−44−A−19およびTaxolのパクリタキセルの腫瘍濃度を示しているプロットを示す。
【図17】図17は、経時的なヌードnu/nuマウスに対するそれらのそれぞれの最大耐用量のPGA−21−G−20、PGA−32−G−20、Abraxane、および生理食塩水での処置の際の体重の変化(%)を示しているプロットを示す。
【図18】図18は、経時的なヌードnu/nuマウス中のB16F0で形質転換されたEGF黒色腫腫瘍に対するそれらのそれぞれの最大耐用量のPGA−21−G−20、PGA−32−G−20、Abraxane、および生理食塩水の抗腫瘍効果を示しているプロットを示す。
【図19】図19は、経時的なヌードnu/nuマウスに対するそれらのそれぞれの最大耐用量のPGA−97−G−20、Taxol、Abraxane、および生理食塩水での処置の際の体重の変化(%)を示しているプロットを示す。
【図20】図20は、経時的なヌードnu/nuマウスのB16F0で形質転換されたEGFに対するそれらのそれぞれの最大耐用量のPGA−97−G−20、Taxol、Abraxane、および生理食塩水の抗腫瘍効果を示しているプロットを示す。
【図21】図21は、経時的なヌードnu/nuマウスに対するそれらのそれぞれの最大耐用量のPGA−32−G−20、PGA(32k)−PTX−20、および生理食塩水での処置の際の体重の変化(%)を示しているプロットを示す。
【図22】図22は、経時的なヌードnu/nuマウス中のB16F0で形質転換されたEGFに対するそれらのそれぞれの最大耐用量のPGA−32−G−20、PGA(32k)−PTX−20、および生理食塩水の抗腫瘍効果を示しているプロットを示す。
【図23】図23は、リン酸緩衝液中の2mg/mLのポリマー−パクリタキセル結合体濃度での、経時的なパクリタキセルの放出を示しているプロットを示す。
【図24】図24は、経時的な、PGA−21−G−19、PGA−32−G−19、PGA−97−G−24、およびTaxolの血漿中でのパクリタキセル濃度を示しているプロットを示す。
【図25】図25は、経時的な、PGA−21−G−19、PGA−32−G−19、PGA−97−G−24、およびTaxolの腫瘍中でのパクリタキセル濃度を示しているプロットを示す。
【図26】図26は、経時的なヌードnu/nuマウス中のB16F0黒色腫腫瘍に対するPGA−97−A−DTPA−Gd(III)およびOmniscan(商標)(ガドジミド(gadodimide))の腫瘍蓄積効果を示しているプロットを示す。
【図27】図27は、PGA−44−A−20の凍結破断された電子顕微鏡画像診断の写真のコピーを示す。
【図28】図28は、PGA−44−A−20およびPGA−97−A−20の濃度に対する静的光散乱(粒子のサイズ)を示しているプロットを示す。
【図29】図29は、PGA−21−G−20およびPGA−32−G−20の濃度に対する静的光散乱(粒子のサイズ)を示しているプロットを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の繰り返し単位と式(II)の繰り返し単位とを含むポリマー結合体であって:
【化1】
式中:
nはそれぞれ独立して、1または2であり;
A1はそれぞれ、酸素はまたNR5であり;
A2はそれぞれ酸素であり;
R1およびR2はそれぞれ独立して、C1〜10アルキル、C6〜20アリール、アンモニウム、アルカリ金属、多座リガンド、保護されている酸素原子を有している多座リガンド前駆体、および薬剤を含む化合物からなる群より選択され;
前記薬剤は、抗ガン剤、標的化剤、光学的造影剤、および磁気共鳴造影剤からなる群より選択され;
R1およびR2の少なくとも一方は、薬剤を含む基であり;
R3およびR4はそれぞれ独立して、水素、アンモニウム、およびアルカリ金属からなる群より選択され;
ポリマー結合体には、ポリマー結合体に対する前記薬剤の質量比に基づいて約1から約50%(重量/重量)の範囲の前記薬剤の量が含まれ;
R5は水素またはC1〜4アルキルであり;そして
薬剤の量、式(I)の繰り返し単位の百分率および式(II)の繰り返し単位の百分率は、実質的に同じ量の薬剤を含む比較可能なポリグルタミン酸結合体の溶解度よりも大きいポリマー結合体の溶解度が得られるように選択され、約22℃の0.9重量%のNaCl水溶液に少なくとも5mg/mLのポリマー結合体が含まれている試験されたポリマー結合体溶液が、比較可能な試験されたポリグルタミン酸結合体溶液の光学的透明度よりも、広いpH範囲にわたって高い光学的透明度を有している場合には、ポリマー結合体の溶解度はより大きい
ポリマー結合体。
【請求項2】
式(III)の繰り返し単位をさらに含み:
【化2】
式中、R6基は、水素、アンモニウム、またはアルカリ金属である、
請求項1に記載のポリマー結合体。
【請求項3】
前記薬剤を含む前記化合物にリンカー基がさらに含まれている、請求項1から2のいずれか1項に記載にポリマー結合体。
【請求項4】
前記薬剤が光学的造影剤である、請求項1から3のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項5】
前記光学的造影剤が、アクリジン色素、クマリン色素、ローダミン色素、キサンテン色素、シアニン色素、およびピレン色素からなる群より選択される、請求項4に記載のポリマー結合体。
【請求項6】
前記薬剤が抗ガン剤である、請求項1から3のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項7】
前記抗ガン剤が、タキサン、カンプトテシン、およびドキソルビシンからなる群より選択される、請求項6に記載のポリマー結合体。
【請求項8】
前記タキサンが、パクリタキセルおよびドセタキセルからなる群より選択される、請求項7に記載のポリマー結合体。
【請求項9】
パクリタキセルが、C2’−炭素に結合された酸素原子で、式(I)の繰り返し単位に結合されている、請求項8に記載のポリマー結合体。
【請求項10】
パクリタキセルが、C7−炭素に結合された酸素原子で、式(I)の繰り返し単位に結合されている、請求項8に記載のポリマー結合体。
【請求項11】
前記薬剤が磁気共鳴造影剤である、請求項1から3のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項12】
前記磁気共鳴造影剤にGd(III)化合物が含まれる、請求項11に記載のポリマー結合体。
【請求項13】
前記Gd(III)化合物に:
【化3】
が含まれる、請求項12に記載のポリマー結合体。
【請求項14】
前記多座リガンドに:
【化4】
が含まれ、
式中、R7はそれぞれ別々に、水素、アンモニウム、またはアルカリ金属である、請求項1から3のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項15】
前記保護されている酸素原子を有している多座リガンド前駆体に:
【化5】
が含まれる、請求項1から3のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項16】
前記ポリマーに、式(I)および式(II)の繰り返し単位の総モル数に基づいて、約1モル%から約30モル%の式(I)の繰り返し単位が含まれている、請求項1または3から15のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項17】
前記ポリマー結合体に、式(I)および式(II)の繰り返し単位の総モル数に基づいて、約1モル%から約20モル%の式(I)の繰り返し単位が含まれている、請求項1または3から15のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項18】
前記ポリマー結合体に、式(I)および式(II)の繰り返し単位の総モル数に基づいて、約1モル%から約10モル%の式(I)の繰り返し単位が含まれている、請求項1または3から15のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項19】
前記ポリマー結合体に、式(I)、(II)、および(III)の繰り返し単位の総モル数に基づいて、約1モル%から約99モル%の式(I)の繰り返し単位が含まれている、請求項2から15のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項20】
前記ポリマー結合体に、式(I)、(II)、および(III)の繰り返し単位の総モル数に基づいて、約1モル%から約30モル%の式(I)の繰り返し単位が含まれている、請求項2から15のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項21】
前記ポリマー結合体に、式(I)、(II)、および(III)の繰り返し単位の総モル数に基づいて、約1モル%から約20モル%の式(I)の繰り返し単位が含まれている、請求項2から15のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項22】
前記ポリマー結合体に、式(I)、(II)、および(III)の繰り返し単位の総モル数に基づいて、約1モル%から約10モル%の式(I)の繰り返し単位が含まれている、請求項2から15のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項23】
少なくとも1つのnが1である、請求項1から22のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項24】
少なくとも1つのnが2である、請求項1から22のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項25】
アルカリ金属がナトリウムである、請求項1から22のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項26】
前記広いpH範囲が少なくとも約3pH単位である、請求項1から25のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項27】
前記広いpH範囲が少なくとも約8pH単位である、請求項1から25のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項28】
前記広いpH範囲が少なくとも約9pH単位である、請求項1から25のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項29】
前記広いpH範囲に、約2から約5の範囲の少なくとも1つのpHの値が含まれる、請求項1から25のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項30】
前記試験されたポリマー結合体溶液に、少なくとも約10mg/mLの前記ポリマー結合体が含まれている、請求項1から25のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項31】
前記試験されたポリマー結合体溶液に、少なくとも約25mg/mLの前記ポリマー結合体が含まれている、請求項1から25のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項32】
前記試験されたポリマー結合体溶液に、少なくとも約100mg/mLの前記ポリマー結合体が含まれている、請求項1から25のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項33】
前記試験されたポリマー結合体溶液に、少なくとも約150mg/mLの前記ポリマー結合体が含まれている、請求項1から25のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項34】
請求項1から33のいずれか1項に記載のポリマー結合体を作製する方法であって、ポリマー反応体を溶媒に溶解または部分的に溶解させて、溶解または部分的に溶解されたポリマー反応体を形成する工程;および前記溶解または部分的に溶解されたポリマー反応体を第2の反応体と反応させる工程を含み、第2の反応体には、多座リガンド、保護されている酸素原子を有している多座リガンド前駆体、および薬剤を含む化合物からなる群より選択される少なくとも1つが含まれる、方法。
【請求項35】
前記ポリマー反応体に式(IV)の繰り返し単位が含まれ:
【化6】
式中、
nはそれぞれ独立して、1または2であり;
A3はそれぞれ酸素であり;そして
R7およびR8はそれぞれ独立して、水素、アンモニウム、およびアルカリ金属からなる群より選択される、
請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記ポリマー反応体に式(V)の繰り返し単位が含まれ:
【化7】
式中、R9は、水素、アンモニウム、またはアルカリ金属である、
請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記第2の反応体に、ヒドロキシおよびアミンからなる群より選択される置換基が含まれる、請求項34から36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記薬剤が、抗ガン剤、標的化剤、光学的造影剤、および磁気共鳴造影剤からなる群より選択される、請求項34から36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記光学的造影剤が、アクリジン色素、クマリン色素、ローダミン色素、キサンテン色素、シアニン色素、およびピレン色素からなる群より選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記抗ガン剤が、タキサン、カンプトテシン、およびドキソルビシンからなる群より選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記タキサンが、パクリタキセルおよびドセタキセルからなる群より選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記パクリタキセルが、C2’−炭素に結合された酸素原子で、式(I)の繰り返し単位に結合されている、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記パクリタキセルが、C7−炭素に結合された酸素原子で、式(I)の繰り返し単位に結合されている、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記磁気共鳴造影剤にGd(III)化合物が含まれる、請求項38に記載の方法。
【請求項45】
前記Gd(III)化合物に:
【化8】
が含まれる、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記多座リガンドに:
【化9】
が含まれ、式中、R7はそれぞれ別々に、水素、アンモニウム、またはアルカリ金属である、請求項34から36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記保護されている酸素原子を有している多座リガンド前駆体に:
【化10】
が含まれる、請求項34から36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
溶解または部分的に溶解されたポリマー反応体をカップリング剤の存在下で反応させる工程をさらに含む、請求項34から47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記カップリング剤が以下:1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC)、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1,1’−カルボニル−ジイミダゾール(CDI)、N,N’−ジスクシンイミジルカルボネート(DSC)、N−[(ジメチルアミノ)−1H−1,2,3−トリアゾロ−[4,5−b]ピリジン−1−イル−メチレン]−N−メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN−オキサイド(HATU)、2−[(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルアミニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、2−[(6−クロロ−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルアミニウムヘキサフルオロホスフェート(HCTU)、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、ブロモ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、2−[(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルアミニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、およびベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP);
からなる群より選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記溶媒が極性の非プロトン性溶媒である、請求項34から49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピリドン(NMP)、およびN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)からなる群より選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記溶解または部分的に溶解されたポリマー反応体を触媒の存在下で反応させる工程をさらに含む、請求項34から51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記触媒が、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
請求項1から33のいずれか1項に記載のポリマー結合体と、薬学的に許容される賦形剤、担体、および希釈剤から選択される少なくとも1つが含まれている、薬学的組成物。
【請求項55】
請求項1から33のいずれか1項に記載の有効量のポリマー結合体をそれが必要な哺乳動物に投与する工程を含む、疾患または症状を処置あるいは緩和する方法。
【請求項56】
請求項1から33のいずれか1項に記載の有効量のポリマー結合体を哺乳動物に投与する工程を含む、疾患または症状を診断する方法。
【請求項57】
疾患または症状の処置あるいは緩和のための医薬品の調製のための、請求項1から33のいずれか1項に記載のポリマー結合体の使用。
【請求項58】
疾患または症状の診断のための医薬品の調製のための、請求項1から33のいずれか1項に記載のポリマー結合体の使用。
【請求項1】
式(I)の繰り返し単位と式(II)の繰り返し単位とを含むポリマー結合体であって:
【化1】
式中:
nはそれぞれ独立して、1または2であり;
A1はそれぞれ、酸素はまたNR5であり;
A2はそれぞれ酸素であり;
R1およびR2はそれぞれ独立して、C1〜10アルキル、C6〜20アリール、アンモニウム、アルカリ金属、多座リガンド、保護されている酸素原子を有している多座リガンド前駆体、および薬剤を含む化合物からなる群より選択され;
前記薬剤は、抗ガン剤、標的化剤、光学的造影剤、および磁気共鳴造影剤からなる群より選択され;
R1およびR2の少なくとも一方は、薬剤を含む基であり;
R3およびR4はそれぞれ独立して、水素、アンモニウム、およびアルカリ金属からなる群より選択され;
ポリマー結合体には、ポリマー結合体に対する前記薬剤の質量比に基づいて約1から約50%(重量/重量)の範囲の前記薬剤の量が含まれ;
R5は水素またはC1〜4アルキルであり;そして
薬剤の量、式(I)の繰り返し単位の百分率および式(II)の繰り返し単位の百分率は、実質的に同じ量の薬剤を含む比較可能なポリグルタミン酸結合体の溶解度よりも大きいポリマー結合体の溶解度が得られるように選択され、約22℃の0.9重量%のNaCl水溶液に少なくとも5mg/mLのポリマー結合体が含まれている試験されたポリマー結合体溶液が、比較可能な試験されたポリグルタミン酸結合体溶液の光学的透明度よりも、広いpH範囲にわたって高い光学的透明度を有している場合には、ポリマー結合体の溶解度はより大きい
ポリマー結合体。
【請求項2】
式(III)の繰り返し単位をさらに含み:
【化2】
式中、R6基は、水素、アンモニウム、またはアルカリ金属である、
請求項1に記載のポリマー結合体。
【請求項3】
前記薬剤を含む前記化合物にリンカー基がさらに含まれている、請求項1から2のいずれか1項に記載にポリマー結合体。
【請求項4】
前記薬剤が光学的造影剤である、請求項1から3のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項5】
前記光学的造影剤が、アクリジン色素、クマリン色素、ローダミン色素、キサンテン色素、シアニン色素、およびピレン色素からなる群より選択される、請求項4に記載のポリマー結合体。
【請求項6】
前記薬剤が抗ガン剤である、請求項1から3のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項7】
前記抗ガン剤が、タキサン、カンプトテシン、およびドキソルビシンからなる群より選択される、請求項6に記載のポリマー結合体。
【請求項8】
前記タキサンが、パクリタキセルおよびドセタキセルからなる群より選択される、請求項7に記載のポリマー結合体。
【請求項9】
パクリタキセルが、C2’−炭素に結合された酸素原子で、式(I)の繰り返し単位に結合されている、請求項8に記載のポリマー結合体。
【請求項10】
パクリタキセルが、C7−炭素に結合された酸素原子で、式(I)の繰り返し単位に結合されている、請求項8に記載のポリマー結合体。
【請求項11】
前記薬剤が磁気共鳴造影剤である、請求項1から3のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項12】
前記磁気共鳴造影剤にGd(III)化合物が含まれる、請求項11に記載のポリマー結合体。
【請求項13】
前記Gd(III)化合物に:
【化3】
が含まれる、請求項12に記載のポリマー結合体。
【請求項14】
前記多座リガンドに:
【化4】
が含まれ、
式中、R7はそれぞれ別々に、水素、アンモニウム、またはアルカリ金属である、請求項1から3のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項15】
前記保護されている酸素原子を有している多座リガンド前駆体に:
【化5】
が含まれる、請求項1から3のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項16】
前記ポリマーに、式(I)および式(II)の繰り返し単位の総モル数に基づいて、約1モル%から約30モル%の式(I)の繰り返し単位が含まれている、請求項1または3から15のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項17】
前記ポリマー結合体に、式(I)および式(II)の繰り返し単位の総モル数に基づいて、約1モル%から約20モル%の式(I)の繰り返し単位が含まれている、請求項1または3から15のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項18】
前記ポリマー結合体に、式(I)および式(II)の繰り返し単位の総モル数に基づいて、約1モル%から約10モル%の式(I)の繰り返し単位が含まれている、請求項1または3から15のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項19】
前記ポリマー結合体に、式(I)、(II)、および(III)の繰り返し単位の総モル数に基づいて、約1モル%から約99モル%の式(I)の繰り返し単位が含まれている、請求項2から15のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項20】
前記ポリマー結合体に、式(I)、(II)、および(III)の繰り返し単位の総モル数に基づいて、約1モル%から約30モル%の式(I)の繰り返し単位が含まれている、請求項2から15のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項21】
前記ポリマー結合体に、式(I)、(II)、および(III)の繰り返し単位の総モル数に基づいて、約1モル%から約20モル%の式(I)の繰り返し単位が含まれている、請求項2から15のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項22】
前記ポリマー結合体に、式(I)、(II)、および(III)の繰り返し単位の総モル数に基づいて、約1モル%から約10モル%の式(I)の繰り返し単位が含まれている、請求項2から15のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項23】
少なくとも1つのnが1である、請求項1から22のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項24】
少なくとも1つのnが2である、請求項1から22のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項25】
アルカリ金属がナトリウムである、請求項1から22のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項26】
前記広いpH範囲が少なくとも約3pH単位である、請求項1から25のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項27】
前記広いpH範囲が少なくとも約8pH単位である、請求項1から25のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項28】
前記広いpH範囲が少なくとも約9pH単位である、請求項1から25のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項29】
前記広いpH範囲に、約2から約5の範囲の少なくとも1つのpHの値が含まれる、請求項1から25のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項30】
前記試験されたポリマー結合体溶液に、少なくとも約10mg/mLの前記ポリマー結合体が含まれている、請求項1から25のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項31】
前記試験されたポリマー結合体溶液に、少なくとも約25mg/mLの前記ポリマー結合体が含まれている、請求項1から25のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項32】
前記試験されたポリマー結合体溶液に、少なくとも約100mg/mLの前記ポリマー結合体が含まれている、請求項1から25のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項33】
前記試験されたポリマー結合体溶液に、少なくとも約150mg/mLの前記ポリマー結合体が含まれている、請求項1から25のいずれか1項に記載のポリマー結合体。
【請求項34】
請求項1から33のいずれか1項に記載のポリマー結合体を作製する方法であって、ポリマー反応体を溶媒に溶解または部分的に溶解させて、溶解または部分的に溶解されたポリマー反応体を形成する工程;および前記溶解または部分的に溶解されたポリマー反応体を第2の反応体と反応させる工程を含み、第2の反応体には、多座リガンド、保護されている酸素原子を有している多座リガンド前駆体、および薬剤を含む化合物からなる群より選択される少なくとも1つが含まれる、方法。
【請求項35】
前記ポリマー反応体に式(IV)の繰り返し単位が含まれ:
【化6】
式中、
nはそれぞれ独立して、1または2であり;
A3はそれぞれ酸素であり;そして
R7およびR8はそれぞれ独立して、水素、アンモニウム、およびアルカリ金属からなる群より選択される、
請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記ポリマー反応体に式(V)の繰り返し単位が含まれ:
【化7】
式中、R9は、水素、アンモニウム、またはアルカリ金属である、
請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記第2の反応体に、ヒドロキシおよびアミンからなる群より選択される置換基が含まれる、請求項34から36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記薬剤が、抗ガン剤、標的化剤、光学的造影剤、および磁気共鳴造影剤からなる群より選択される、請求項34から36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記光学的造影剤が、アクリジン色素、クマリン色素、ローダミン色素、キサンテン色素、シアニン色素、およびピレン色素からなる群より選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記抗ガン剤が、タキサン、カンプトテシン、およびドキソルビシンからなる群より選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記タキサンが、パクリタキセルおよびドセタキセルからなる群より選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記パクリタキセルが、C2’−炭素に結合された酸素原子で、式(I)の繰り返し単位に結合されている、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記パクリタキセルが、C7−炭素に結合された酸素原子で、式(I)の繰り返し単位に結合されている、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記磁気共鳴造影剤にGd(III)化合物が含まれる、請求項38に記載の方法。
【請求項45】
前記Gd(III)化合物に:
【化8】
が含まれる、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記多座リガンドに:
【化9】
が含まれ、式中、R7はそれぞれ別々に、水素、アンモニウム、またはアルカリ金属である、請求項34から36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記保護されている酸素原子を有している多座リガンド前駆体に:
【化10】
が含まれる、請求項34から36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
溶解または部分的に溶解されたポリマー反応体をカップリング剤の存在下で反応させる工程をさらに含む、請求項34から47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記カップリング剤が以下:1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC)、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1,1’−カルボニル−ジイミダゾール(CDI)、N,N’−ジスクシンイミジルカルボネート(DSC)、N−[(ジメチルアミノ)−1H−1,2,3−トリアゾロ−[4,5−b]ピリジン−1−イル−メチレン]−N−メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN−オキサイド(HATU)、2−[(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルアミニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、2−[(6−クロロ−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルアミニウムヘキサフルオロホスフェート(HCTU)、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、ブロモ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、2−[(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルアミニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、およびベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP);
からなる群より選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記溶媒が極性の非プロトン性溶媒である、請求項34から49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピリドン(NMP)、およびN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)からなる群より選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記溶解または部分的に溶解されたポリマー反応体を触媒の存在下で反応させる工程をさらに含む、請求項34から51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記触媒が、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
請求項1から33のいずれか1項に記載のポリマー結合体と、薬学的に許容される賦形剤、担体、および希釈剤から選択される少なくとも1つが含まれている、薬学的組成物。
【請求項55】
請求項1から33のいずれか1項に記載の有効量のポリマー結合体をそれが必要な哺乳動物に投与する工程を含む、疾患または症状を処置あるいは緩和する方法。
【請求項56】
請求項1から33のいずれか1項に記載の有効量のポリマー結合体を哺乳動物に投与する工程を含む、疾患または症状を診断する方法。
【請求項57】
疾患または症状の処置あるいは緩和のための医薬品の調製のための、請求項1から33のいずれか1項に記載のポリマー結合体の使用。
【請求項58】
疾患または症状の診断のための医薬品の調製のための、請求項1から33のいずれか1項に記載のポリマー結合体の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公表番号】特表2009−518511(P2009−518511A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544385(P2008−544385)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【国際出願番号】PCT/US2006/045915
【国際公開番号】WO2007/067417
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【国際出願番号】PCT/US2006/045915
【国際公開番号】WO2007/067417
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
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