説明

ポリシリケート粒子状材料の製造および使用

【課題】触媒、耐火材料、フィルター等の分離材料、研磨剤およびコーティング等の多くの市場で改善効果が得られ、ゲル化を回避し、触媒自体として、金属もしくは金属酸化物の触媒がその上に配置されてもよい触媒担体としての使用のための良好な物理的安定性と高い適切な酸性度を有するポリシリケート粒子状材料の製造及び使用の方法を提供する。
【解決手段】任意にアルミニウムでドープされ、予め存在させたナノ粒子のスラリーに7以下である中性から弱酸性のpHで任意に添加されたケイ酸溶液を、温度約20℃から30℃で添加するステップを含む粒子状材料の作製方法により、ポリシリケート粒子状分散体が得られる。次いで、分散体のpHを7超まで上昇させ、粒子状分散体の粒子を安定化/増強させる。任意に、粒子は乾燥されていてもよく、増大した空隙率および表面積を有する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
微粉砕シリカは触媒担体、バインダー、または触媒自体として用いられており、特に、アルミニウムまたはその他の金属で「ドープされ」た場合には、紙等の上のインク受容コーティング、ワインまたはジュースの浄化用のフィルター材料、等として用いられている。しかし、改善効果は、凝集シリカ粒子が標準的なコロイダルシリカを用いて得られるよりも大きな空隙率を有する場合に得られる。また、コロイダルシリカまたは他のシリケートが、アルミニウムをシリケート骨格中に組み込むことによって修飾されている場合には酸性度の向上等の公知の利益が得られるが、このような材料はゲルを形成する強い傾向を有し、これが不都合となる。
【0002】
物理的に安定なシリカ−アルミナ(アルミノ−シリケート)材料を得ることができれば、触媒、耐火材料、フィルター等の分離材料、研磨剤およびコーティング等の多くの市場で改善効果が得られる。使用される現存の材料は、望まれるようには均一またはアモルファスでない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明によれば、高表面積、高空隙率で、上記のような用途に対して有望な特徴を有し、そして改善された物理的安定性を発現する粒子状材料が得られる。具体的には、本発明の微分散したアルミノ−シリケート材料は、ゲル化を回避し、触媒自体として、または、たとえば白金、パラジウム、ニッケル、銅酸化物、またはその他の材料の金属もしくは金属酸化物の触媒がその上に配置されてもよい触媒担体としての使用のための所定の保証を与えるために良好な物理的安定性とともに高い適切な酸性度を有することができる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、任意にアルミニウム等の単一または複数の金属でドープされたケイ酸溶液を、中性から弱酸性である7以下のpHで、温度約20℃から130℃で、予め存在させたナノ粒子と混合し、予め存在させたナノ粒子の間に形成されるポリシリケート架橋を形成するステップと、少なくとも約5質量%SiO2の固形分量を有する分散体を生成するステップと、を含む粒子状材料の作製方法が提供される。その後、所望の場合には、得られる分散体のpHを7より大きく調整してアルカリ条件を与え、粒子状材料を安定化/増強させる。これに次いで、所望される場合は該材料を乾燥してたとえば乾燥触媒または乾燥触媒担体材料を形成してもよい。
【0005】
ある態様では、ケイ酸溶液がアルミニウムおよびその他のアルカリ金属でない金属を実質的に含まなくてもよい。所望の場合、少量のナトリウムまたはカリウム等のアルカリ金属が、上記された処理の第1段階において混合物のpHが7を超える原因となるに満たない量で、予め存在してもよい。
【0006】
仕上がった製造物は、さらなるステップとして、触媒を提供するために、慣用技術によって該製造物に適用された金属または金属酸化物のコーティングを有してもよい。該製造物は触媒、バインダー、または触媒担体として、水素化処理反応等の化学反応において使用できる。
【0007】
ある態様では、アルミニウムドープされたケイ酸溶液を、中性から弱酸性である7以下のpHを有する予め存在させたナノ粒子のスラリーと温度約20℃から130℃で混合し、予め存在させたナノ粒子の間に形成されるポリアルミノシリケート架橋を形成するステップと、粒子状分散体を生成するステップとを含む粒子状材料の作製方法を提供できる。そして、分散体のpHを7より大きく上昇させ、粒子状分散体の粒子を安定化/増強させる。
【0008】
ケイ酸溶液は、予め存在させたナノ粒子のスラリーに、たとえば、反応混合物の「最終状態(heel)」(元の液体体積)において添加してもよい。これに代えて、ナノ粒子をケイ酸溶液に添加してもよい。
【0009】
ある態様では、予め存在させたナノ粒子を用いず、アルミニウムドープされたケイ酸溶液を温度約20℃から130℃で中性または弱酸性である7以下のpHに調整して、ポリアルミノ−シリケート生成物を粒子状分散体として形成するステップを含む粒子状材料の作製方法を提供できる。そして、前述と同様に、分散体のpHを7より大きく上昇させて、分散体中に形成した粒子を安定化/増強させる。
【0010】
上記の場合において、ケイ酸溶液は、それ自体かまたは予め存在させたナノ粒子のスラリーと混合するかに関わらず、中性から弱酸性のpH(すなわち7以下)で、シリケート架橋を形成する化学的縮合を進行させ、存在する場合には、予め存在させたナノ粒子を組み込み、ウェブ状でありかつ数において成長する粒子の分散体を、存在する場合には予め存在させたナノ粒子とともに生成し、ウェブ状の粒子状材料中に組み込むことができる。
【0011】
そして、pHを7より大きく、すなわちアルカリ条件に上昇させることにより、縮合工程は、主に新たなウェブ粒子の形成を伴わない個々のウェブネットワークの成長に転じ、ウェブ状の粒子状分散体中に存在する粒子を、数の上での意味よりむしろ体積の上で成長させることによって安定化/増強させる。
【0012】
ある態様においては、アルミニウムが存在する場合、該アルミニウムは全固形分の約10から約60質量%の範囲内で存在することができ、該アルミニウムはAl23として算出される。
【0013】
予め存在させたナノ粒子がある場合、予め存在させたナノ粒子は、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化亜鉛、クレー、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化セリウム、およびこれらの混合物を含んでもよく、同様に、他の金属酸化物等を所望により含んでもよい。上記のように、本発明では、これらの別個のナノ粒子が、高表面積、高空隙率および適切な材料を吸収、吸着または化学吸着する能力を有するウェブ状構造において互いに架橋しており、これは、内部および外部の表面積、空隙率ならびに化学反応性が高いことによる。
【0014】
ある態様においては、予め存在させたナノ粒子のサイズ範囲は約3nmから約300nmであってもよく、現状で好ましい態様において、特に約15nmから約250nmであってもよい。
【0015】
ある特定の態様において、液体キャリア中の凝集した材料の固形分量は、粒子を前述の通り安定化/増強させた後において、約3質量パーセントから約25質量パーセントの範囲内である。
【0016】
第2のpH調整ステップにおいて、該方法のある態様においては、pHを約7.5から10の間に上昇させる。pHを上昇させるために用いられるアルカリ化合物は何ら限定されず、典型的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、種々のアミン、これらの混合物等を含んでもよい。
【0017】
前述したように、特に触媒または触媒担体として用いるために、金属または金属酸化物のコーティングを公知の手段により液相または気相で本発明の粒子凝集体に加えてもよい。
【0018】
予め存在させたナノ粒子は、所望ならばコロイダルシリカ、たとえば、非コートシリカ、酸化アルミニウムコートされたシリカ、酸化セリウムコートされたシリカ、および他の金属等でコートまたはドープされたシリカ等のコロイダルシリカ種を含んでもよい。
【0019】
粒子パラメータ(粒径、空隙率および表面積)の制御は少なくとも3つの人工的な要因を取り扱うことで実現できる。3つの要因とは、(1)予め存在させたナノ粒子のサイズおよび濃度、(2)pH<7での成長時間、そして(3)pH>7での成長時間、である。各要因の相対比を調整することにより「調節可能な特性」を実現できる。
【0020】
低pH成長段階の間、ウェブ状構造を作るシリカ重合において顕著な核形成が生じている。このウェブ状構造は高表面積および高空隙率を与える。
【0021】
一方、高pH条件では、さらなる核形成ではなく、存在する表面上での成長が優位に生じる。その後の、存在する表面上での成長により、ネットワークが強化および増強される。結果として、強化された架橋は乾燥中に崩壊しにくい傾向があり、該ネットワークの開放構造(および高表面積および高空隙率)が保持される。
【0022】
人工的な工程は、粒子サイズ測定技術を用いて監視することができる。測定される粒径成長は低pH段階の間では速い。しかし、pHがpH>7に調整された後は、粒径の成長は顕著に遅い。
【0023】
根本的に、本発明によれば、ゲル化の手前で任意の所望の程度まで核形成およびシリカ粒子の増加を進行させる間、第2のpH調整ステップを遅らせてもよく、通常、結局は酸性条件下で行うことができる。そして、ゲル化前のある時点で、pHを7より大きく上昇させる第2のpH調整ステップを行ってもよく、これにより、本発明によれば、存在する表面上でのその後の成長によりネットワークが強化および増強される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
ナノ粒子は、サイズが典型的には直径約3から約300nmであり、ある態様においては実質的に円形である(すなわち石状の)安定な粒子を含んでもよい。しかし、円形ナノ粒子の直径、すなわち約3〜300nm、と同程度の主要寸法を有する板状のナノ粒子を用いてもよい。また、典型的には上記のナノ粒子と同程度のサイズである糸状ナノ粒子を用いてもよい。
【0025】
上記したように、ラポナイト等のクレーのナノ粒子を用いてもよい。平坦な粒子材料の例としてはベーマイト等のアルミナが挙げられる。よって、一般的に、寸法が約300nm以下、典型的には250nm以下であればナノ粒子はいずれの形状でもよいことが分かる。
【0026】
本発明によれば、各々が安定なネットワーク構造を示す粒子の粒子状分散体が得られ、上記した多くの望ましい用途において有用である。たとえば、本発明によって作製される粒子状材料の粒子は、改善された表面積、空隙率および安定性を有する触媒、バインダー、または触媒担体を含むことができる。特に、アルミニウムドープされた粒子状材料は適切な酸性度を有し、この目的に対して望ましい傾向がある。
【0027】
加えて、一般的に慣用される液体キャリア中の本発明の粒子凝集体は、インクジェットプリンター等のインク印刷機における用途のために、紙等の基材に対して従来と同様に適用できる。紙基材は、本発明の1以上の粒子凝集体を用いて作製でき、したがって、慣用される液体キャリア中で調製、配置し、紙の表面に適用して乾燥して、このようなインク印刷機等において望ましく有用な紙を得ることができる。よって、本発明の材料は、紙やボール紙等の基材の少なくとも一部の上にコートすることによってこのような基材に適用するためのインク受容コーティングに形成されてもよい。
【0028】
同様に、他の種類の用途として、浄化されるべき液体を供給するステップと、ここに記載したような方法に従って粒子凝集体を作製するステップと、ワインまたはジュースと凝集体とを接触させるステップと、次いで、凝集体をワインまたはジュースから分離するステップとを含む方法でワインまたはジュースを浄化することもできる。よって、公知のように、ワインまたはジュースの純度を低下させる望ましくない成分を除去できる。粒子凝集体をフィルター等のチャンバー内に保持してもよく、これを通過させたワインおよびジュースにおいては改善効果が得られる。
【0029】
ある態様では、中性から弱酸性のpHを有するアルミニウム含有ケイ酸溶液を、温度摂氏約20°から130°で供給して、材料中に形成されるポリアルミノシリケート架橋を形成し、粒子状分散体を生成するステップを含む粒子状材料の作製方法を提供する。上記のようにナノ粒子が存在するか否かは任意である。ナノ粒子が存在してもしなくても、アルミニウム含有ケイ酸溶液が縮合して粒子が形成され、該粒子はネットワーク形状内にある。
【0030】
そして、pHを7より大きく上昇させて粒子状分散体のこれらのネットワーク粒子を安定化/増強させる。
【0031】
分散体のpHを7より大きく上昇させるステップなしで、弱酸性のpHでの縮合という第1ステップのみで粒子状分散体を作製できることに注目すべきである。しかし、特にアルミニウム含有ケイ酸溶液の場合、このような材料は、7を超えるpHでの安定化/増強のステップなしでは物理的に不安定である。粒子状分散体は、このような安定化/増強のステップなしでは、一般的にゲルを形成する傾向があり、粘性でハンドリングが困難であり、本発明の利点を得るためには望ましくない。
【0032】
上記の本発明のある態様では、Al23およびSiO2としてそれぞれ算出される量で、アルミニウムがシリカの存在量の約1:1から1:200のモル比で存在してもよい。このような材料は触媒、バインダーまたは触媒担体を含んでもよい。
【0033】
特に、上記の予め存在させたナノ粒子は、望ましいある態様では、実質的に固体のシリカ球体を含んでもよい。用語「球体」は、全方向の寸法がおおよそ同様である小石状の粒子を説明する一般的な用語を意図する。
【0034】
ナノ粒子は人工的な工程の間のどの時点でも添加でき、典型的には、酸溶液または反応混合物の「最終状態」に添加できる。
【0035】
本発明の材料中に取り込まれたアルミニウムはAlO4として取り込まれる可能性があることを理解すべきである。本発明の材料は、窒化アルミニウム、塩化アルミニウム、リン酸アルミニウム、アルミニウムクロロハイドレート等の種々のアルミニウム源から形成でき、これにより組成および最終製造物の特性が変化する。
【0036】
よって、本発明によれば、ゲルになってしまうことがない安定化された粒子を生成するような新たな経路で形成される、高度に均一なアルミノシリケート組成物であるサブミクロンサイズのネットワーク材料が開示される。これらの材料は、予め存在させたナノ粒子とともにまたは予め存在させたナノ粒子なしで形成でき、したがって、本発明の製造物の特性を変える手法が得られる。工程は、原料および装置の両方の点で現状の製造機能を利用でき、製造物は乾燥してもよい。アルミノ−シリケート製造物の表面酸性度は、ケイ酸溶液におけるシリカのアルミナに対する比を調整することにより修正できる。本発明の工程によって形成された材料の空隙率および表面積は、アルミノ−シリケートまたは純粋なシリケートの粒子状材料の量と同様、予め存在させたナノ粒子の濃度の調整により制御できる。
【0037】
以上の開示および以下の実施例は説明目的のみで提示され、後述の特許請求の範囲において規定される本発明の範囲の限定を意図するものではない。
【実施例】
【0038】
以下に示す種々の実験において、アルミニウムドープされたケイ酸は、600mlのケイ酸ナトリウム溶液を脱イオン水で3リットルに希釈して得た、冷却されたケイ酸ナトリウムの約6質量パーセント溶液をカチオン交換することにより得た。酸型のDowex Monosphere 650−Hレジンを用い、カラムにおいてレジン:溶液の比を1:2の比として希薄ケイ酸ナトリウム溶液を脱イオンした。まずカラム中のレジンを脱イオン水で洗い流し、次いで、希薄ケイ酸ナトリウム溶液にカラムを通過させた。流出物が酸性となってケイ酸溶液の存在が示された時点で、流出物を回収した。得られた酸溶液は、SiO2濃度の5.84%〜6.23%に対応する1.0362〜1.0380の範囲の特定の重力を有していた。次いで、アルミニウムドーピングに用いられるアルミニウム塩を、アルミニウムクロロハイドレートまたは窒化アルミニウムの形で各々添加し、SiO2の存在量に基づいて酸溶液に種々の濃度で添加した。
【0039】
ラボ反応器としては、1リットルまたは1.5リットルの3ツ首丸底フラスコを用いた。反応器はまず0.5標準苛性ソーダに浸してすべての残留SiO2を除去し、次いで、中性になるまで脱イオン水ですすいだ。これらのフラスコを、標準的な、目盛なしの軽量ミキサー(uncalibrated lightening mixer)で撹拌した。1つの首部に熱電対を通し、一方、酸溶液のための添加ホースを反対の首部に通した。アルミニウムドープされた酸溶液の添加は、冷却タンクから所定の速度で蠕動ポンプにより行った。
【0040】
実施例1
この詳細な実施例では、88.6gのアルミニウムクロロハイドレートを上記のように調製した1160gの7%ケイ酸溶液に添加して、アルミニウムドープされたケイ酸を準備した。反応フラスコに1000mlの脱イオン水を加え90℃に加熱した。アルミニウムドープされた酸溶液を、蠕動ポンプで、速度4.6ml/分で2時間かけて添加し、ポンプ動作を15分間停止した。15分後、50mlの濃水酸化アンモニウムの添加によって反応混合物のpHを約pH9まで上昇させた。アルミニウムドープされたケイ酸の導入、添加を再開し、アルミニウムドープされたケイ酸の添加が130グラムになるまで系内への導入を行った。この間、pHを定期的に監視し、追加分の20%水酸化アンモニウムを、材料のpHが9.5超で維持されるように添加した。全添加時間はおよそ3時間であった。
【0041】
アルミニウムドープされたケイ酸の導入が完了した後、反応物を90℃でさらに1時間加熱して、反応を確実に完全に進行させた。次いで、撹拌を続けながら反応混合物を冷却しておいた。
【0042】
得られた製造物は、SiO2:Al23のモル比の7から1に対応し、シリカ(SiO2)の存在量に基づいて25wt.パーセントのAl23を含んでいた。
【0043】
表面積および空隙率を決定するために、QuantachromeのAutosorb−1Cユニットを用いて窒素収着測定を行った。各試料を乾燥後焼成し、次いで300℃で3時間脱ガスした。各試料につき、多点BET表面積、全細孔容積およびBJH吸着細孔径分布を評価した。温度が予め設定されたNH3収着による化学吸着もまた、選択した試料につき同じ機器を用いて行った。
【0044】
透過型電子顕微鏡により微細組織および粒子形状を決定した。試料は、粉末のX線回折およびX線エネルギー分散分光、Zコントラストイメージング、および電界放射電子銃の走査透過電子顕微鏡による電子エネルギーロス分光により評価した。
【0045】
これらおよび他の試験で得た物理的データは、表面積359平方メートル毎グラム、細孔容積0.87cc/gm、および細孔径97.8オングストロームを示した。
【0046】
実施例2
実施例1の実験を繰り返し、実施例1と同様にしてポリアルミノシリケートを準備したが、シリカの存在量およびSiO2:Al23のモル比の4.99に基づいて、34質量パーセントのAl23を含有させた。
【0047】
本態様において、実施例1と同様の試験は、表面積238平方メートル毎グラム、細孔容積0.95cc/gm、および細孔径160オングストロームを示した。
【0048】
比較例3
実施例1の実験を繰り返し、100.28グラムのアルミニウムクロロハイドレートを前述したように準備した1,286グラムの4.9%酸溶液に添加することによって、アルミニウムドープされた酸溶液を準備した。750mlの脱イオン水を反応フラスコ内に添加して90℃に加熱することにより「最終状態」を準備した。アルミニウムドープされた酸溶液は、蠕動ポンプで、速度5.0ml毎分で、酸溶液の全量が導入されるまで添加した。反応中pH調整は行わず、条件は酸性側に維持された。反応混合物は、溶液を添加する間非常に粘性となり、ゲル化を示した。すべての酸溶液を添加した後、撹拌しながら冷却しておいた。工程中、pHをアルカリ側にするためのアルカリは添加しなかった。
【0049】
この系では、Al23の百分率は、シリカの存在量に基づいて、37.7質量パーセントであった。SiO2:Al23のモル比は、4.5であった。表面積は177M2/gと算出され、前述の2つの例よりも顕著に低い表面積であり、細孔容積は0.14cc/gmと算出され、これも前述の例よりも顕著に低く、細孔径は32.5オングストロームであり、これもはじめの2つの例よりも顕著に低い。
【0050】
我々は、結果の相違が、前述の2つの例で行ったアルカリ条件への工程の「転換」が欠けたことによると確信する。
【0051】
実施例4
シリケートの存在量に対するAl23の百分率が10%であり、SiO2:Al23モル比が16.97である他は実施例1と同様に、他の実験を行った。
【0052】
得られた粒子状材料の粒子を測定すると、表面積537.7M2/g、細孔容積0.84cc/gm、細孔径62.6オングストロームであった。
【0053】
実施例5
実施例1の手順を行ったが、SiO2:Al23のモル比19.37によりシリカの存在量に基づいてAl23の百分率が8.76%となるような割合を用いた。よって、形成された粒子状材料を測定すると、表面積560.6M2/g、細孔容積0.96cc/gm、および細孔径68.7オングストロームを有していた。
【0054】
実施例6
実施例1の工程を繰り返したが、シリカの存在量に基づいてAl23の百分率が6.35質量パーセント、SiO2:Al23のモル比が26.73となるような反応条件を用いた。この条件で、表面積は533.4M2/g、細孔容積は1.07cc/gm、および細孔径は79.9オングストロームと算出された。
【0055】
実施例7
実施例1の工程を繰り返したが、SiO2:Al23のモル比72.22によりシリカの存在量に基づいてAl23の百分率が2.35となる条件下とした。
【0056】
この条件で、粒子状製造物の表面積は581.1M2/g、細孔容積0.46cc/gm、および細孔径31.9オングストロームと算出された。
【0057】
実施例8
実施例1の工程を繰り返したが、アルミニウムの添加を一切行わず、粒子状製造物を純粋なシリカとした。得られた製造物においては、算出された表面積が230M2/g、細孔容積が0.94cc/gm、細孔径が169オングストロームであった。
【0058】
上記のすべての実施例では、単に粒子成長工程におけるアルカリ条件への「転換」がない例である比較例3と比べて、優れた結果が得られたといえる。
【0059】
実施例9
本実施例は、実質的に2次元であるナノ粒子の3次元ネットワーク内への組み込みについて示す。
【0060】
150mlの脱イオン水を、反応器に入れて60℃に加熱した。次いで、ベーマイトナノ粒子(実質的に2次元である)を含む22グラムの予め存在させた酸化アルミニウムナノ粒子を含む180グラムのケイ酸を入れた。撹拌しながら水にナノ粒子を徐々に加えた。この添加の後、20wt.パーセントの水酸化ナトリウムを、ケイ酸に基づいて、pHがアルカリ側になるように添加した。その後、22グラムの酸化アルミニウム(ベーマイト)を含む180グラムのケイ酸をさらに添加した。
【0061】
反応混合物は、撹拌を続けながら60℃で4時間維持した。
【0062】
最終製造物をろ過し、高表面積、高細孔容積の粒子状材料を作製した。表面積は、258m2/gmであり、細孔容積は0.43cc/gmであった。細孔径は67.4オングストロームであった。該材料は紙コーティング材料への処方に特に好適である。
【0063】
本実施例で用いたベーマイトナノ粒子はケイ酸反応剤中にドープされたといえる。ある態様では、望ましい製造物をナノ粒子の後添加によって形成できる。
【0064】
実施例10
特に本実施例では、ケイ酸をアルミニウムでドープしていない。600mlのケイ酸ナトリウム溶液を脱イオン水で4リットルに希釈することにより準備した、冷却されたケイ酸ナトリウムのおよそ4.5質量パーセント溶液をカチオン交換することによってケイ酸を準備した。酸型のDowex Monosphere 650−Hレジンを用い、カラムにおいてレジン:溶液の比を1:2の比として、希釈したケイ酸ナトリウムを脱イオンした。まずカラム中のレジンを脱イオン水で洗い流し、次いで、希釈されたケイ酸ナトリウム溶液にカラムを通過させた。流出物が酸性となってケイ酸の存在が示された時点で、流出物を回収した。
【0065】
反応フラスコに、171mlの脱イオン水と、直径約20nmの予め存在させたシリカナノ粒子の34.5%脱イオン溶液28.9gとを添加した。この溶液を90℃に加熱した。次いで、蠕動ポンプにより速度0.8ml/分で約3.5時間かけてケイ酸を添加した。ポンプ動作を15分間停止した。15分後、2mlの濃水酸化アンモニウムの添加によって反応混合物のpHを7超に調整した。添加されたケイ酸の全量の約350グラムが系内に導入されるまでケイ酸の導入、添加を再開した。全添加時間はおよそ7.5時間であった。
【0066】
ケイ酸の導入が完了した後、反応物を90℃でさらに1時間加熱して、反応を確実に完全に進行させた。次いで、撹拌を続けながら反応混合物を冷却しておいた。
【0067】
これらおよび他の試験から得られた物理的データは、表面積185平方メートル毎グラム、細孔容積0.58cc/g、および細孔径125オングストロームを示した。
【0068】
実施例10等の材料に対しては、予め存在させたナノ粒子としてのシリカの存在量の相対的な百分率、低(酸性)pHで添加したケイ酸の量、およびアルカリ条件下で添加したケイ酸の量を変えて実験を行った。表面積および細孔容積は、低pH段階の間にケイ酸として添加したシリカの百分率と相互に関連することが分かった。たとえば、低pHで導入したケイ酸の画分を8.8%から15.7%に増加させるとともに、予め存在させたナノ粒子のためのシリカの画分を一定(77%)に維持することにより、細孔容積の0.31cc/gから0.42cc/gへの増大に対応して表面積が150から190m2/gに増大した。
【0069】
実施例11
特に本実施例では、実施例10による最終的な凝集材料を、ホウ酸で安定化させた塩基性の酢酸アンモニウムでコートする。
【0070】
まず、凝集材料を、固形分がおよそ15wt.パーセントの溶液に濃縮した。次いで、酸型のDowex Monosphere 650−Hレジンを用い、カラムにおいてレジン:溶液の比を1:2の比として、該溶液を脱イオンした。流出物が酸性となって、脱イオンされた凝集体の存在が示された時点で、流出物を回収した。この材料のゼータ電位は、pH4においておよそ−10MVであった。100gの流出物に約3gの濃酢酸溶液を添加してpH3で該材料を安定化させた。
【0071】
この流出物を、新しく準備された塩基性の酢酸アンモニウムの25wt.パーセント溶液として反応フラスコに85g添加した。脱イオンされた溶液を、蠕動ポンプにより、速度4.0ml/分でフラスコに添加した。
【0072】
得られた溶液のゼータ電位は、pH4において約+30mVであった。
実施例12
特に本実施例では、ケイ酸をアルミニウムでドープし、最終状態の予め存在させた粒子もまたアルミニウムでドープする。ドープされたケイ酸は、実施例1の工程によって準備するが、Al23の百分率が、シリカの存在量に基づいて、SiO2:Al23のモル比17.0で10wt.パーセントである条件とする。
【0073】
反応フラスコに、914mlの脱イオン水と、直径約8nmである予め存在させたシリカナノ粒子の21wt.%脱イオン溶液286gとを添加した。これらは、粒子中のシリカの存在量に基づきSiO2:Al23のモル比84.8によってAl23の百分率が2となるように成長させた。
【0074】
この溶液を90℃で加熱した。次いで、ドープされたケイ酸を、蠕動ポンプを用い速度10ml/分で約1.0時間かけて添加した。ポンプ動作を15分間停止した。15分後、30mlの濃水酸化アンモニウムを添加することにより、反応混合物のpHを約9超に調整した。約1543グラムのドープされたケイ酸全量が系内に導入されるまで、ドープされたケイ酸の導入、添加を再開した。全添加時間はおよそ2.5時間であった。
【0075】
ドープされたケイ酸の導入が完了した後、反応物を90℃でさらに1時間加熱して、反応を確実に完全に進行させた。次いで、撹拌を続けながら反応混合物を冷却しておいた。
【0076】
物理データは、表面積650平方メートル毎グラム、細孔容積0.59cc/g、および細孔径36オングストロームを示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子状材料の作製方法であって、アルミニウムドープされたケイ酸溶液を、pHが実質的に7以下の予め存在させたナノ粒子と、温度約20℃から130℃で混合し、予め存在させたナノ粒子の間に形成されるポリアルミノシリケート架橋を形成して粒子状分散体を生成するステップと、分散体のpHを7より大きく上昇させて粒子状分散体の粒子を安定化/増強させるステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記アルミニウムが、Al23として算出される量で、全固形分の約10から約60wt.パーセントの範囲内で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記予め存在させたナノ粒子がシリカを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記予め存在させたナノ粒子が、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化セリウム、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記予め存在させたナノ粒子のサイズの範囲が、約3nmから約300nmである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記予め存在させたナノ粒子のサイズ範囲が、約15nmから約250nmである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記粒子状材料の固形分量が、粒子を安定化/増強させた後で、約3質量%から約25質量%の範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記pHを約7.5から10の間に上昇させる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記pHを、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、アミン、およびこれらの混合物からなる群から選択されるアルカリ化合物を用いて上昇させる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
金属酸化物コーティングを粒子凝集体に適用することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ナノ粒子がコロイダルシリカを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記コロイダルシリカが、非コートシリカ、酸化アルミニウムコートされたシリカ、アルミニウムドープされたシリカおよび酸化セリウムコートされたシリカからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記コロイダルシリカの粒子の粒径が、約3nmから約150nmの範囲内である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法によって作製された粒子を含む触媒。
【請求項15】
請求項1に記載の方法によって作製された粒子を含む触媒担体。
【請求項16】
ワインおよびジュースの浄化方法であって、浄化されるべき液体を供給するステップと、請求項1に記載の方法によって粒子凝集体を作製するステップと、ワインまたはジュースと凝集体とを接触させるステップと、次いで、凝集体をワインまたはジュースから分離するステップと、を含む方法。
【請求項17】
基材と、請求項1の方法によって作製され前記基材の少なくとも一部にコートされる1以上の粒子凝集体とを含む、基材への適用のためのインク受容コーティング。
【請求項18】
インク印刷機用の紙であって、紙基材と、請求項1に記載の方法によって作製され紙の表面に適用される1以上の粒子凝集体とを含む紙。
【請求項19】
インクジェットプリンター紙の作製方法であって、紙基材を準備するステップと、請求項1に記載の方法によって作製された1以上の粒子凝集体を紙の表面に適用するステップと、を含む方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法による製造物。
【請求項21】
粒子状材料の作製方法であって、
ケイ酸溶液を、混合しながら、中性から弱酸性のpHを有する、予め存在させたナノ粒子のスラリーに温度約20℃から130℃で添加し、予め存在させたナノ粒子の間に形成されるポリシリケート架橋を形成して、固形分量が少なくとも約5質量%SiO2の分散体を生成するステップと、
前記分散体のpHが7を超えるようにpHを調整して、粒子状材料を安定化/増強させるステップと、
材料を乾燥して乾燥触媒または乾燥触媒担体を形成するステップと、
を含む方法。
【請求項22】
前記触媒、バインダー、触媒原料、または触媒担体を化学反応において使用することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ケイ酸溶液が、アルミニウムおよび他のアルカリ金属でない金属を実質的に含まない、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
金属酸化物コーティングを製造物に適用することをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
請求項21に記載の方法によって作製された粒子を含む触媒。
【請求項26】
請求項21に記載の方法によって作製された粒子を含む触媒担体。
【請求項27】
粒子状材料の作製方法であって、中性から弱酸性のpHを有するアルミニウム含有ケイ酸溶液を温度約20℃から130℃で準備し、前記材料において形成されるポリアルミノシリケート架橋を形成して粒子状分散体を生成するステップと、分散体のpHを7より大きく上昇させて粒子状分散体の粒子を安定化/増強させるステップと、を含む方法。
【請求項28】
Al23およびSiO2としてそれぞれ算出される量で、アルミニウムがシリカの存在量の約1:1から1:200の範囲内のモル比で存在する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
請求項27に記載の方法によって製造された粒子を含む触媒。
【請求項30】
請求項27に記載の方法によって製造された粒子を含む触媒担体。
【請求項31】
ケイ酸が、添加された、予め存在させたナノ粒子を含まない、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記予め存在させたナノ粒子が実質的に固体のシリカ石を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
請求項1に記載の方法による製造物。
【請求項34】
請求項21に記載の方法による製造物。
【請求項35】
請求項27に記載の方法による製造物。
【請求項36】
ケイ酸溶液を、予め存在させたナノ粒子のスラリーに添加する、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
ナノ粒子をケイ酸溶液に添加する、請求項1に記載の方法。

【公開番号】特開2009−18960(P2009−18960A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−182536(P2007−182536)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(507234542)ナルコ カンパニー (1)
【Fターム(参考)】