説明

ポリテトラヒドロフランおよび/またはそのエステルの色数水素化のための触媒の処理法

水素化触媒を温度100〜250℃およびゲージ圧0〜40バールで水蒸気で処理することにより精製する、PTHFおよび/またはPTHF−エステルの色数水素化のための、少なくとも部分的に失活した水素化触媒の処理法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリテトラヒドロフランおよび/またはそのエステルの色数水素化のための触媒の処理法に関する。
【0002】
本発明は、色数水素化とも呼ばれる、水素で処理することにより低い色数を有するポリテトラヒドロフラン、ポリテトラヒドロフランモノエステルおよびジエステルを製造するために使用された、少なくとも部分的に失活した触媒を処理するための方法に関する。
【0003】
DE−A3112065から、ポリテトラヒドロフラン(以降、“PTHF”と呼ぶ)またはポリテトラヒドロフランモノ−および/またはジエステル(以降、“PTHF−エステル”と呼ぶ)を水素化触媒の存在下に水素処理して、低い色数を有する相当するポリマーにすることは公知である。その際、PTHF−エステルとしては特にPTHF−モノアセテート、PTHF−ジアセテートまたはその混合物が重要であり、これは公知法で、有利には無水酢酸の存在下に種々の水素化触媒でテトラヒドロフラン(以降、“THF”と呼ぶ)を重合することにより入手可能である。
【0004】
一般に、水素化触媒も作動時間の経過と共に活性および選択性が減少する傾向ある。従って、大規模に作動する色数水素化工程の水素化触媒は、もはや非認容性の限界値に達した後に、より高い活性および選択性の新鮮な水素化触媒に交換しなければならない。
【0005】
使用済みの失活した触媒の交換は一般に、使用済み触媒から付着する生成物、特にPTHFおよびPTHF−エステルを除去する精製工程と結びついている。
【0006】
その際、色数水素化のために使用した水素化触媒においては、通常PTHFまたはPTHF−エステルを除去して空にした後、なお生成物を含有する触媒を反応器中で、約60〜90℃の熱水で複数回非連続的にまたは連続的に洗浄するというように実施する。その際、一方では多量の洗浄水が生じる。生じた洗浄水は処理しなければならない。他方、例えばPTHF−ジアセテートは非水溶性であるので、付着した不純物からの触媒の清浄化は不十分である。
【0007】
水素化触媒の熱水での洗浄による不十分な清浄化は、触媒の吸引取出しの際に、通常冷却を伴い、触媒粒子の大きな単位、例えば粒状物または塊状物への粘着に導く。大規模工程において必要とされる反応器からの触媒の吸引取出しは困難になるか、または不可能になる。更に、取り外された水素化触媒は精製工程の後にもなお強く負荷されている。
【0008】
選択的に、触媒を溶剤、例えばメタノールで洗浄することができる。この方法で、確かに良好に流動性で、従って吸引取出し可能な触媒が得られる。しかしながら、この方法のためには多くの日数という高い時間的な負担を必要とし、かつ洗浄のために使用するメタノールの著しく費用のかかる処理を必要とするという欠点がある。
【0009】
従って、本発明の課題は、低い色数を有するPTHF、PTHF−モノエステルおよび/またはPTHF−ジエステルを水素で処理することにより製造するために使用された使用済み触媒の処理法であり、この処理法は迅速でかつ安価な触媒交換を可能とし、かつこの処理法により残留生成物をほとんど有さず、かつ引き続く廃棄物処理において良好に操作可能である調製された触媒が得られる。
【0010】
この課題は、PTHFおよび/またはPTHF−ジエステルの色数水素化のための、少なくとも部分的に失活した水素化触媒を処理するための方法により解決し、その際、この水素化触媒を一般に温度100〜250℃、有利に100〜200℃、特に有利に100〜150℃で、かつ一般にゲージ圧0〜40バール、有利に1〜16バール、特に有利に2〜4バールで、水蒸気で処理することにより精製する。PTHFおよび/またはPTHF−エステルの色数水素化の精製された触媒は第2の段階において廃棄物処理に供給することができる。有利には金属回収に供給されるが、精製した水素化触媒を廃棄物集積、再生または焼却することも可能である。
【0011】
水蒸気処理により水素化触媒は、水蒸気精製において生じる溶出液が蒸発残分EDR≦2%を示すまで精製する。
【0012】
本発明による方法は、PTHFおよび/またはPTHF−エステル、有利にPTHF−モノアセテートおよび/またはPTHF−ジアセテートの色数水素化のための少なくとも部分的に失活した水素化触媒を処理するために使用される。その当初の触媒活性が損失した場合、かつ/またはポリマーの色数が色数水素化によりもはや明らかに低下しない場合、色数水素化の水素化触媒は部分的に失活している。
【0013】
部分的に失活している水素化触媒は、例えば当初の活性の80%の残留活性を有していてよい。THFからPTHFへの重合からの、またはTHFとアルキレンオキシド、例えばエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドとの相応するポリブチレンアルキレングリヨーレルへの共重合からのポリマーの色数水素化のために使用された水素化触媒を処理することができ、その際重合も共重合もテロゲンの存在で実施されていてよい。テロゲンは、例えば水、一価または多価のアルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、更に炭素原子1〜8個の脂肪族カルボン酸、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、および芳香族カルボン酸、例えば安息香酸並びにその酸無水物である。
【0014】
少なくとも部分的に失活した色数水素化の水素化触媒は、重合または共重合の生成物で汚染されている。重合または共重合の生成物は、PTHF、ポリブチレンアルキレングリコールエーテルもしくは前記テロゲンとの反応生成物、例えばPTHF−モノエステル、PTHF−ジエステルである。
【0015】
本発明による方法は色数水素化のための水素化触媒の処理のために使用される。好適な水素化触媒は、例えばDE−A3112065から公知であり、第8副族、特にニッケル、コバルト、鉄並びに貴金属ルテニウム、パラジウムまたは白金、更に銅を含有している。金属は、純粋な形で、例えばラネー金属として、または還元されたオキシドとして使用することができる。しかしながら、好適な担体、例えば酸化アルミニウム、酸化ケイ素、軽石、ベントナイト、または例えば珪酸マグネシウム上に水素化金属を含有する触媒も有利である。卑金属、例えば鉄、コバルト、ニッケルおよび銅を含有する触媒は、使用の前に水素での還元により活性化型に変換されているのが有利である。貴金属触媒の使用の際には、多くの場合にそのような操作は不要である。本発明による方法を、ニッケルおよび銅を含有し、有利には担持されている色数水素化のための水素化触媒に適用するのが有利である。
【0016】
本発明による方法を実施するためには、反応混合物を排出することにより色数水素化反応器を空にする。次いで、反応器中になお存在する触媒を有利に上方から下方に連続的にまたは非連続的に水蒸気で、温度100〜250℃、有利には100〜200℃、特に有利には100〜150℃で、かつゲージ圧0〜40バール、有利に1〜16バール、特に有利に2〜4バールで処理する。
【0017】
水蒸気の物理的な剥離効果により、水素化触媒の流動性が再び生成され、水素化触媒を問題なく水素化反応器から除去することが可能である。こうして任意の反応装置中への任意の触媒の注ぎ込みを準備することが可能である。例えば触媒は破片、ストランド、球またはその他の成形体の形で存在してよい。精製した触媒は例えば水素化反応装置から吸引によりまたは排出により下から取り出すことができる。
【0018】
しかしながら、水蒸気での処理時間は、一般に2〜100時間、特に有利に5〜50時間である。
【0019】
水蒸気の凝縮により、水素化反応器中でまたは有利に別の分離した装置中で、水および触媒から除去された不純物を含有する溶離液(凝縮物)が得られる。
【0020】
この溶離液から、含有されるPTHF、PTHF−モノエステル、PTHF−ジエステルを例えば相分離により分離することができる。溶離液を蒸留により処理することも可能である。更に、得られたPTHFおよび/またはPTHF−エステルを別の分離した装置中で解重合することも可能である。解重合により得られたモノマーは返流することができる。残った凝縮物残分は廃水として浄化装置に供給することができる。
【0021】
本発明による方法により精製した色数水素化の水素触媒は、PTHFおよび/またはPTHF−エステルが除去されており、これは微細な粒状でありかつ流動性であるので、問題なく反応器から吸引取出しすることができる。本発明による方法で、反応器からの摩擦のない触媒取り外しが可能である。PTHFおよび/またはPTHF−エステルの色数水素化の失活した水素化触媒は有利に金属回収に供給することができる。これを廃棄物集積、再生または焼却することも可能である。
【実施例】
【0022】
次に実施例につき、本発明をより詳細に説明する。
【0023】
色数水素化
テトラヒドロフランをドイツ特許出願公開第2916653号公報(US4189566)中に記載されている、触媒として漂白用粘土を使用し、制御物質として酢酸無水物を使用する連続的な重合法により重合した。この特許公開公報中に同様に記載されている市販のテトラヒドロフランを精製するための前処理は実施しないでよい。重合のためには、BASF株式会社の工業用品質テトラヒドロフランを使用した。DE−A2916653の実施例3により分子量650のPTHF−ジアセテートを製造した。この重合体は色数100APHAを有する。反応器から流出するPTHF−ジアセテートを、パラジウム0.4%を含有するシリカゲルストランド3mmからなる触媒床を介して下方から上方に導通し、その際水素を供給した。この水素化を行った生成物は10APHAより小さい色数を示す。触媒負荷は触媒1リットルおよび時間当たりポリマー溶液0.4kgを有した。時間あたり導入される水素量はポリマー溶液1lあたり1Nlであった。水素化処理されたポリマー溶液から過剰のテトラヒドロフランを除去し、生じたジアセテートを鹸化した。最終的に、色数約15APHAおよび酸価0mgKOH/gを有するPTHFが得られた。
【0024】
例1
23ヶ月の耐用期間の後、前記色数水素化のために使用した部分的に失活した触媒を24時間、4バールの水蒸気で上方から下方に160℃で処理した。流量は約1t/hであった。
【0025】
24時間後、非常に良好な流動性の触媒バラ荷が得られ、これは問題なく吸引取出しすることができた。最後の方で得られた凝縮物はTOC−含量<1%を示す。更なる分析値は第1表に記載する。更に、第1表は比較例V1として、水蒸気処理の開始時に直ぐに得られた凝縮物の相応する値を記載している。
【0026】
酸価(SZ)の測定
酸価を水酸化カリウム(KOH)で当量点滴定により測定する。酸価は試料1gを中和するために必要である水酸化カリウムの量をmgで記載している。
【0027】
蒸発残分(EDR)の測定
蒸発残分は一定の条件下にPTHFまたはPTHF−エステル−低沸点混合物中の蒸発不可能な割合を測定している。EDRを測定するために、試料を蒸発フラスコ中で標準圧で140℃で60分間および同じ温度で1ミリバール未満の真空下に蒸発させる。蒸発残分は、
【0028】
【化1】

により計算する。
【0029】
その際、
EDR=蒸発残分、DIN1310による質量濃度(g/100g)
=試料を有する蒸発フラスコの質量(g)
=蒸発残分を有する蒸発フラスコの質量(g)
100=gの100gへの変換ファクター
THF−含量の測定
溶離液のTHF−含量をガスクロマトグラフィーにより測定した(ヘッドスペースガスクロマトグラフィー)。
【0030】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化触媒を温度100〜250℃およびゲージ圧0〜40バールで水蒸気で処理することにより精製する、PTHFおよび/またはPTHF−エステルの色数水素化のための、少なくとも部分的に失活した水素化触媒の処理法。
【請求項2】
水素化触媒がニッケル、コバルト、鉄、ルテニウム、パラジウム、白金または銅を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
水素化触媒が担持されている、請求項2記載の方法。
【請求項4】
PTHF−モノアセテートおよび/またはPTHF−ジアセテートの色数水素化のための水素化触媒を処理するための請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル、コバルト、鉄、ルテニウム、パラジウム、白金または銅を含有する水素化触媒を温度100〜250℃およびゲージ圧0〜40バールで、水蒸気で処理することにより精製する、PTHFおよび/またはPTHF−エステルの色数水素化のための、少なくとも部分的に失活した水素化触媒の処理法。
【請求項2】
水素化触媒が担持されている、請求項1記載の方法。
【請求項3】
PTHF−モノアセテートおよび/またはPTHF−ジアセテートの色数水素化のための水素化触媒を処理するための請求項1または2記載の方法。

【公表番号】特表2006−526036(P2006−526036A)
【公表日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500541(P2006−500541)
【出願日】平成16年1月10日(2004.1.10)
【国際出願番号】PCT/EP2004/000120
【国際公開番号】WO2004/065455
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】