説明

ポリトリメチレンエーテルエステルエラストマー軟質フィルム

ポリトリメチレンエーテルエステルエラストマー軟質フィルムが提供される。フィルムは靱性をはじめとする望ましい物理的特性を有し、それは、比較的薄いフィルムからの頑丈なパッケージングの製造でそれらの使用を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリトリメチレンエーテルエステルエラストマーを含む軟質フィルム、および該フィルムから製造された製品に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性エラストマー(TPE)は、2クラスのポリマー、すなわち、加熱時に二次加工することができる熱可塑性樹脂と、ゴム様ポリマーであるエラストマーとの特性を組み合わせたクラスのポリマーである。TPEの1つの形は、そのポリマー特性が通常熱可塑性樹脂のそれに似ている幾つかのブロックと、その特性が通常エラストマーのそれに似ている幾つかのブロックとを含有するブロック共重合体である。その特性が熱可塑性樹脂に似ているそれらのブロックはしばしば「ハード」セグメントと言われるが、その特性がエラストマーに似ているそれらのブロックはしばしば「ソフト」セグメントと言われる。ハードセグメントは伝統的な熱硬化性エラストマーで化学架橋によって提供されるものに類似の特性を提供するが、ソフトセグメントはゴム様特性を提供すると考えられる。
【0003】
ハードおよびソフトセグメントの性質に加えて、ハード対ソフトセグメントの重量およびモル比がTPEの特性を大いに決定する。例えば、より長いソフトセグメントは通常より低い初期引張弾性率を有するTPEにつながるが、ハードセグメントのより高い割合はより高い初期引張弾性率のポリマーにつながる。他の特性も同様に影響を受け得る。このように、分子レベルでの操作はTPEの特性の変化に影響を及ぼし、そして改善されたTPEが望まれる。
【0004】
しばしばTPEのソフトセグメントはポリ(アルキレンオキシド)セグメントから形成される。これまで、主なポリ(アルキレンオキシド)は、商業的供給源から容易に調達できるエチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシドおよびテトラヒドロフランなどの環状エーテルから誘導されたポリマーをベースにしてきた。開環重合にさらされた時に、環状エーテルは、それぞれ、ポリエーテルグリコール:ポリエチレンエーテルグリコール(PEG)、ポリ(1,2−プロピレンエーテル)グリコール(PPG)、およびポリテトラメチレンエーテルグリコール(PO4G、またPTMEGとも言われる)を形成する。
【0005】
ポリトリメチレンエーテルグリコール・ソフトセグメント(PO3Gとも言われる)とトリメチレンエステルとから誘導されたTPE、例えば、ポリトリメチレンエーテル・トリメチレンテレフタレート(PO3G/3GT)が開発され、繊維を製造するために使用されてきた。米国特許第6,599,625号明細書は、PO3G/3GTでできた繊維がポリテトラメチレンエーテルグリコール(PO4G)ソフトセグメントと3GTハードセグメントとでできた比較繊維が有するより高いアンロード・パワーおよび低い応力緩和を有したことを開示している。しかしながら、パーセント永久歪みはPO4G/3GT繊維についてよりPO3G/3GT繊維について僅かに高かった。靱性および破壊時伸び率は2タイプの繊維間で有意に違わなかった。
【0006】
ポリトリメチレンエーテルエステルのソフトセグメントとテトラメチレンエステルのハードセグメントとを含むTPE、例えば、ポリトリメチレンエーテル・テトラメチレンテレフタレート(PO3G/4GT)は、例えば、かかるTPEから製造された繊維、および該繊維の紡糸方法を開示している、米国特許第6,562,457号明細書に開示されている。PO3G/4GT繊維は、PO4G/4GTでできた比較繊維が有するより高いアンロード・パワー、低い応力緩和、高い伸び率、および低いパーセント永久歪みを有することが開示されている。靱性を除いて、応力緩和、伸び率、アンロード・パワーおよび永久歪みなどの特性のほとんどは、それらについてデータが本明細書で上に述べられた米国特許第6,599,625号明細書に報告されたPO3G/3GTのそれらに匹敵した。
【0007】
望ましい物理的特性を有する弾性繊維は現在入手可能であるが、同様に有利な特性を有するフィルムなどの他の物品に対するニーズは残っている。かかるフィルムは、例えば、食品、貯蔵および輸送用のバッグおよびパッケージングの製造で有用であり得る。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、約95〜約5重量%のポリトリメチレンエーテルエステル・ソフトセグメントと約5〜約95重量%のアルキレンエステル・ハードセグメントとを含む、ポリエーテルエステルエラストマーを含むフィルムである。
【0009】
好ましい実施形態では、ポリエーテルエステルエラストマーは約90〜約60重量%のポリトリメチレンエーテルエステル・ソフトセグメントと約10〜約40重量%のアルキレンエステル・ハードセグメントとを含む。好ましい実施形態では、アルキレンエステル・ハードセグメントは、エチレンエステル、トリメチレンエステル、またはテトラメチレンエステルのうちの少なくとも1つを含む。非常に好ましい実施形態では、アルキレンエステル・ハードセグメントはトリメチレンエステルまたはテトラメチレンエステルを含む。
【0010】
幾つかの好ましい実施形態では、ポリエーテルエステルエラストマーは、少なくとも約70重量%、より好ましくは少なくとも約74重量%のポリトリメチレンエーテルエステル・ソフトセグメントを含有する。ポリエーテルエステルエラストマーは約85重量%以下、より好ましくは約82重量%以下のポリトリメチレンエーテルエステル・ソフトセグメントを含有する。同様に好ましくは、ポリエーテルエステルエラストマーは少なくとも約15重量%、より好ましくは少なくとも約18重量%のアルキレンエステル・ハードセグメント、好ましくは約30重量%以下、より好ましくは約26重量%以下のアルキレンエステル・ハードセグメントを含有する。
【0011】
ポリエーテルエステルエラストマーは好ましくは少なくとも約1.0dL/g、より好ましくは少なくとも約1.4dL/g、さらにより好ましくは少なくとも約1.6dL/gの固有粘度を有する。好ましくは固有粘度は約3.0dL/g以下、より好ましくは約2.4dL/g以下、より好ましくは約2.0dL/g以下である。
【0012】
ポリエーテルエステルは好ましくは(a)高分子エーテルグリコール、(b)短鎖ジオールおよび(c)ジカルボン酸またはエステル、酸ハロゲン化物もしくは酸無水物などの等価物を提供し、反応させることによって製造される。好ましい実施形態では、ポリトリメチレンエーテルエステル・ソフトセグメントを形成するために使用される高分子エーテルグリコールの少なくとも60重量%はポリトリメチレンエーテルグリコールである。好ましくはポリトリメチレンエーテルエステル・ソフトセグメントを形成するために使用される高分子エーテルグリコールの少なくとも40重量%以下は、ポリエチレンエーテルグリコール、ポリプロピレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール、およびテトラヒドロフランと3−アルキルテトラヒドロフランとの共重合体、ならびにそれらの混合物から選択された高分子エーテルグリコールである。
【0013】
好ましい実施形態では、ポリトリメチレンエーテルエステル・ソフトセグメントを形成するために使用される高分子エーテルグリコールの少なくとも85重量%はポリトリメチレンエーテルグリコールである。好ましくは、ポリトリメチレンエーテルグリコールは少なくとも約600、より好ましくは少なくとも約1,000、さらにより好ましくは少なくとも約1,500の数平均分子量を有する。好ましくは、ポリトリメチレンエーテルグリコールは約5,000以下、より好ましくは約3,500以下の数平均分子量を有する。
【0014】
好ましい実施形態では、アルキレンエステル・ハードセグメントを形成するために使用されるジオールの少なくとも75モル%は1,3−プロパンジオールまたは1,4−ブタンジオールであり、ジオールの25モル%以下は1,4−ブタンジオールおよび1,3−プロパンジオール以外の、好ましくは2〜15個の炭素原子を有するジオールであり、より好ましくはエチレン、イソブチレン、ペンタメチレン、2,2−ジメチルトリメチレン、2−メチルトリメチレン、ヘキサメチレンおよびデカメチレングリコール、ジヒドロキシシクロヘキサン、シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキノンビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル、ならびにそれらの混合物から選択される。1,4−ブタンジオールおよび1,3−プロパンジオール以外の好ましいジオールは2〜8個の炭素原子、より好ましくは2〜6個の炭素原子を含有する。
【0015】
好ましくは、ジカルボン酸、エステル、酸塩化物または酸無水物は芳香族ジカルボン酸またはエステルであり、より好ましくはジメチルテレフタレート、ビベンゾエート、イソフタレート、フタレートおよびナフタレート;テレフタル酸、ビ安息香酸、イソフタル酸、フタル酸およびナフタル酸;ならびにそれらの混合物から選択される。芳香族ジエステルがより好ましい。
【0016】
好ましい実施形態では、ジカルボン酸、エステル、酸塩化物または酸無水物の少なくとも50モル%(より好ましくは少なくとも70モル%、さらにより好ましくは少なくとも85モル%)はテレフタル酸およびテレフタル酸ジメチルから選択される。別の好ましい実施形態では、ジカルボン酸、エステル、酸塩化物または酸無水物はテレフタル酸およびテレフタル酸ジメチルから選択される。別の実施形態では、本発明は、ポリトリメチレンエーテルグリコールとポリテトラメチレンエステルまたはポリトリメチレンエステルとを提供するおよび反応させることによって製造されるポリエーテルエステルに関する。
【0017】
本発明の別の態様は
(a)式
【0018】
【化1】

【0019】
(式中、xは約9〜約86である)
を有する約5〜約95重量%のポリトリメチレンエーテルエステル・ソフトセグメントと、
(b)式
【0020】
【化2】

【0021】
(式中、yは2〜15であり、そして同じまたは異なるものであってもよいR1およびRはジカルボン酸等価物からカルボキシル官能基を除去した後に残る二価基である。好ましい実施形態では、yは2〜8、より好ましくは2〜6である)
を有する約95〜約5重量%のアルキレンエステル・ハードセグメントと
を含むポリトリメチレンエーテルエステルフィルムである。
【0022】
好ましい実施形態では、フィルムは、デニール当たり約0.1グラム(gpd)〜約5gpd、好ましくは少なくとも約1、より好ましくは少なくとも約2、さらにより好ましくは少なくとも約3gpdの有効破壊靱性、および約20%〜約2000%の破壊時伸び率を有する。破壊応力または靱性の単位はデニール当たりのグラム、gpd単位で与えられ、ここで1gpd=89MPaである。
【0023】
フィルムの厚さは、フィルムのための意図される使用に依存して、変わることができる。例えば、約1mmもしくはそれより厚い厚さを有するより厚いフィルムが、例えば、幾つかの用途向けには好ましいかもしれない。幾つかの実施形態では、フィルムは500マイクロメートル以下の厚さを有する。幾つかの実施形態では、フィルムは100マイクロメートル以下の厚さを有する。他の実施形態では、フィルムは50マイクロメートル以下の厚さを有する。一般に、フィルムは約5マイクロメートル以上、幾つかの実施形態では約10マイクロメートル以上、しばしば約20マイクロメートル以上の厚さを有する。より薄いフィルム、すなわち、5〜10マイクロメートルの厚さを有するフィルムは、防湿層としての使用のために好ましいかもしれない。約1mm以上の厚さを有する、より厚いフィルムもまた製造することができる。
【0024】
幾つかの実施形態では、フィルムはキャストフィルムである。幾つかの実施形態では、フィルムは延伸される。好ましい実施形態では、フィルムは二軸延伸される。
【0025】
本発明の別の態様は、少なくとも1つの第1熱可塑性ポリマー、および約95〜約5重量%のポリトリメチレンエーテルエステル・ソフトセグメントと約5〜約95重量%のアルキレンエステル・ハードセグメントとを含むポリエーテルエステルエラストマーを含むブレンドから製造されたフィルムである。好ましい実施形態では、ポリエーテルエステルエラストマーは約90〜約60重量%のポリトリメチレンエーテルエステル・ソフトセグメントと約10〜約40重量%のアルキレンエステル・ハードセグメントとを含む。好ましい実施形態では、アルキレンエステル・ハードセグメントはエチレンエステル、トリメチレンエステル、またはテトラメチレンエステルのうちの少なくとも1つを含む。非常に好ましい実施形態では、アルキレンエステル・ハードセグメントはトリメチレンエステルまたはテトラメチレンエステルを含む。
【0026】
本発明の別の態様は、少なくとも1つの第1ポリマー、および
(a)式
【0027】
【化3】

【0028】
(式中、xは約9〜約86である)
を有する約5〜約95重量%のポリトリメチレンエーテルエステル・ソフトセグメントと、
(b)式
【0029】
【化4】

【0030】
(式中、yは2〜6であり、そして同じまたは異なるものであってもよいR1およびRはジカルボン酸等価物からカルボキシル官能基を除去した後に残る二価基である)
を有する約95〜約5重量%のアルキレンエステル・ハードセグメントと
を含む第2ポリマーを含むブレンドから製造されたフィルムである。
【0031】
好ましい実施形態では、フィルムはデニール当たり約0.1グラム(gpd)〜約5gpdの有効破壊靱性、および約20%〜約2000%の破壊時伸び率を有する。破壊応力または靱性の単位はデニール当たりのグラム、gpd単位で与えられ、ここで1gpd=89MPaである。
【0032】
幾つかの実施形態ではフィルムは、再生可能な資材源に由来する少なくとも1つの原料を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明は、望ましい機械的特性、特に引張強度、伸び率、強靱性、アンロード・パワー、応力緩和およびパーセント永久歪みを有し、そして取り扱いの容易さを提供する頑丈なバッグの製造に特に有用である弾性の軟質フィルムを提供する。かかる特性を有する弾性繊維は公知であったが、公知の弾性繊維に使用された同じ組成物から製造されたフィルムの物理的特性は、特にポリマー組成物間で比較して、繊維とは異なる特性を有することが驚くべきことにも見いだされた。
【0034】
本明細書で開示されるフィルムは、類似のパッケージングに通常使用されるより薄いフィルムを使用する、比較的少量のエラストマーを使用する、それによって材料コストおよび総製造コストの低減を可能にする、頑丈なパッケージング材料の製造での使用に望ましい物理的特性を有する。
【0035】
本明細書で言及されるすべての特許、特許出願、および刊行物はその全体が参照により本明細書に援用される。
【0036】
特に明記しない限り、すべての百分率、部、比などは重量による。さらに、量、濃度、または他の値もしくはパラメーターが範囲、好ましい範囲または好ましい上限値および好ましい下限値のリストのどちらかとして与えられる場合、列挙される量、濃度、または他の値もしくはパラメーターは、かかる範囲が別々に開示されるか否かにかかわらず、任意の上方範囲限界もしくは好ましい値と任意の下方範囲限界もしくは好ましい値との任意のペアから形成されるすべての範囲を含むことを意図される。数値の範囲が本明細書で列挙される場合、特に明記しない限り、該範囲はその終点、ならびに範囲内のすべての整数および分数を含むことを意図される。本発明の範囲が範囲を画定する時に列挙された具体的な値に限定されることは意図されない。
【0037】
本発明は、場合により可塑剤の使用なしに、靱性、弾性、強靱性および柔軟性などの望ましい機械的特性を有するポリトリメチレンエーテルエステルエラストマーを含む軟質フィルムを提供する。加えてフィルムの伸び回復性は、延伸後に、フィルムが他の材料で製造されたフィルムよりそれらの元の寸法に近い寸法に、その元の寸法に戻るようなものである。いかなる可塑剤もなしのフィルムは多くの食品パッケージ用途での使用に望ましい。
【0038】
フィルムは、当業者に公知の方法を用いてポリマーから製造することができる。軟質フィルムはキャストフィルムまたは延伸フィルムであることができる。延伸フィルムは一軸延伸または二軸延伸であることができる。延伸は、例えば管状またはフラットフィルム法などの、当該技術で公知の任意の方法で達成することができる。フィルムの延伸は、例えば、その開示が参照により本明細書にこれによって援用される特許出願国際公開第01/48062号パンフレットに開示されている。
【0039】
本発明は、一態様では、約95〜約5重量%のポリトリメチレンエーテルエステル・ソフトセグメントと約5〜約95重量%のアルキレンエステル・ハードセグメントとを含む、ポリエーテルエステルエラストマーを含むフィルムを提供する。
【0040】
好ましい実施形態では、ポリエーテルエステルエラストマーは約90〜約60重量%のポリトリメチレンエーテルエステル・ソフトセグメントと約10〜約40重量%のアルキレンエステル・ハードセグメントとを含む。好ましい実施形態では、アルキレンエステル・ハードセグメントは、エチレンエステル、トリメチレンエステル、またはテトラメチレンエステルのうちの少なくとも1つを含む。非常に好ましい実施形態では、アルキレンエステル・ハードセグメントはトリメチレンエステルまたはテトラメチレンエステルを含む。
【0041】
別の態様では、本発明は
(a)式
【0042】
【化5】

【0043】
(式中、xは約9〜約86である)
を有する約5〜約95重量%のポリトリメチレンエーテルエステル・ソフトセグメントと、
(b)式
【0044】
【化6】

【0045】
(式中、yは2〜6であり、そして同じまたは異なるものであってもよいR1およびRはジカルボン酸等価物からカルボキシル官能基を除去した後に残る二価基である。好ましい実施形態では、yは3または4である)
を有する約95〜約5重量%のアルキレンエステル・ハードセグメントと
を含むポリトリメチレンエーテルエステルエラストマーを含むポリトリメチレンエステルフィルムを提供する。
【0046】
本明細書に列挙されるソフトセグメントおよびハードセグメントの指定量は、ポリマー中のソフトセグメントおよびハードセグメントの組み合わせた総量を基準とする。幾つかの好ましい実施形態では、ポリマーは約30%〜約90%のソフトセグメントを含む。幾つかの実施形態では、ポリトリメチレンエーテルエステルエラストマーは約60〜約90重量%のソフトセグメントと約40〜約10重量%のアルキレンエステル・ハードセグメントとを含む。幾つかの実施形態では、ポリトリメチレンエーテルエステルエラストマーは少なくとも約70重量%、より好ましくは少なくとも約74重量%のソフトセグメントを含み、かかる実施形態では、ポリトリメチレンエーテルエステルエラストマーは約82%以下、好ましくは約85重量%以下のポリトリメチレンエーテル・ソフトセグメントを含む。幾つかの好ましい実施形態では、ポリトリメチレンエーテルエステルエラストマーは少なくとも約15%、より好ましくは少なくとも約18重量%、約30重量%以下、より好ましくは約26重量%以下のアルキレンエステル・ハードセグメントを含む。幾つかの好ましい実施形態では、ポリマーは約50%〜約80%のソフトセグメントと、約20%〜約50%のハードセグメントとを含む。
【0047】
例えば、ポリトリメチレンエーテルグリコール、ジカルボン酸等価物などへのいかなる言及も列挙された成分の1つ以上を包含することが意図される。このように、例えば、ポリトリメチレンエーテルグリコールであるソフトセグメントを形成するために使用される高分子エーテルグリコールへの言及は、そのうちの1つ以上が他とは異なり得る1つ以上のポリトリメチレンエーテルグリコールを使用できることを意味する。
【0048】
好ましい実施形態では、フィルムはデニール当たり約0.1グラム(gpd有効)〜約5の有効破壊靱性を有する。幾つかの好ましい実施形態では、有効破壊靱性は約3〜4である。好ましい実施形態では、フィルムは約20%〜約2000%、好ましくは約100%〜約1200%、より好ましくは約600%〜約1000%の破壊時伸び率を有するが、望ましいフィルムは前述範囲内の任意の値の破壊時伸び率を有することができる。本明細書で用いられる靱性の単位はデニール当たりのグラム、gpdであり、ここで1gpd=89MPaである。
【0049】
ポリトリメチレンエーテルエステルフィルムは、m−クレゾール中の0.5%溶液で30℃で測定されるように、好ましくは少なくとも約1.0dL/g、より好ましくは少なくとも約1.4dL/g、さらにより好ましくは少なくとも約1.6dL/gの固有粘度を有する。同様に好ましくは、ポリトリメチレンエーテルエステルの固有粘度は約3.0dL/g以下、より好ましくは約2.4dL/g以下、より好ましくは約2.0dL/g以下である。
【0050】
本明細書では、用語「ポリトリメチレンエーテルエステル・ソフトセグメント」および「ソフトセグメント」は、その反応がエステル結合を形成する、高分子エーテルグリコールとジカルボン酸または等価物との反応生成物であって、ソフトセグメントを形成するために使用される高分子エーテルグリコールの少なくとも40重量%がポリトリメチレンエーテルグリコール(PO3G)である生成物を意味するために用いられる。好ましくは、高分子エーテルグリコールの少なくとも約50重量%、より好ましくは少なくとも約60重量%がポリトリメチレンエーテルグリコールである。ポリトリメチレンエーテルグリコールの含有率は90、95または100重量%ほどに高いことができる。用語「ポリトリメチレンエーテルエステルエラストマー」は、本明細書で用いるところでは、トリメチレンエーテル繰り返し単位を含有するソフトセグメントとアルキレンエステル繰り返し単位を含有するハードセグメントとを含むポリマーを包含することを意図される。
【0051】
PO3Gは当業者に公知の任意の方法によって製造することができる。例えば、PO3Gは1,3−プロパンジオールの脱水によってまたはオキセタンの開環重合によって製造することができる。PO3Gの製造方法は、それらの開示がその全体が参照により本明細書に援用される、米国特許第6,720,459号明細書および米国特許出願公開第2002/0007043号明細書に記載されている。開示された方法を用いて製造されたポリトリメチレンエーテルグリコールは不飽和末端基をほとんど持たない。ソフトセグメントは約60重量パーセント以下の別の高分子エーテルグリコール、すなわち、PO3G以外の高分子エーテルグリコールを含むことができる。ポリエチレンエーテルグリコール(PEG)、ポリプロピレンエーテルグリコール(PPG)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PO4G)、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール、およびテトラヒドロフランと3−メチルテトラヒドロフランとの共重合体(THF/3MeTHF)が好ましい。このように、例えば、他の高分子エーテルグリコールはPEG、PEGとPPGとの混合物、PEGとPO4Gとの混合物、PEGとTHF/3MeTHFとの混合物またはそれらの3もしくは4成分組み合わせであることができる。存在する場合、他の高分子エーテルグリコールは好ましくは少なくとも約600、より好ましくは少なくとも約1,000、さらにより好ましくは少なくとも約1,500の数平均分子量を有する。同様に好ましくは、存在する場合、他の高分子エーテルグリコールの分子量は約5,000以下、より好ましくは約3,500以下である。
【0052】
「ジカルボン酸等価物」とは、ジカルボン酸ならびにグリコールとの反応後にジカルボン酸およびそれらの等価物がこのように形成されるポリエステル中に同じセグメントを生み出すという点において、グリコールとの反応でジカルボン酸と実質的に同じように機能する化合物を意味する。ジカルボン酸等価物には、ジカルボン酸、ジカルボン酸のジエステル、ならびに酸ハロゲン化物(例えば、酸塩化物)および酸無水物などのジエステル形成性誘導体が含まれる。ジカルボン酸等価物は任意の置換基またはそれらの組み合わせを含有することができる。
【0053】
ジカルボン酸等価物は芳香族、脂肪族または脂環式であることができる。「芳香族ジカルボン酸等価物」は、各カルボキシル基が芳香環または芳香環システム中の炭素原子に結合しているジカルボン酸等価物である。「脂肪族ジカルボン酸等価物」は、各カルボキシル基が完全に飽和の炭素原子にまたはオレフィン系二重結合の一部である炭素原子に結合しているジカルボン酸等価物である。完全に飽和の炭素原子が環中にある場合、等価物は「脂環式ジカルボン酸等価物」である。
【0054】
好ましいジカルボン酸等価物はジカルボン酸、およびジカルボン酸のジエステル、特にジカルボン酸のジメチルエステルである。芳香族ジカルボン酸またはジエステルは単独でまたは少量の、例えば、約20モルパーセント未満の1つ以上の脂肪族もしくは脂環式ジカルボン酸もしくはジエステルと組み合わせて同様に好ましい。ジカルボン酸および芳香族ジカルボン酸のジメチルエステルが最も好ましい。
【0055】
ポリトリメチレンエーテルエステルの製造に有用な模範的な芳香族ジカルボン酸には、テレフタル酸、イソフタル酸、ビ安息香酸、ナフタル酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタンなどのベンゼン核付き置換ジカルボン酸化合物、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−スルホニルジ安息香酸、ならびにそれらのC1〜C10アルキル置換誘導体およびハロ、アルコキシまたはアリール誘導体などの環置換誘導体が含まれる。p−(ヒドロキシエトキシ)安息香酸などのヒドロキシ酸もまた、芳香族ジカルボン酸もまた存在するという条件で、使用することができる。ポリトリメチレンエーテルエステルの製造に有用な模範的な脂肪族および脂環式ジカルボン酸には、セバシン酸、1,3−または1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ドデカン二酸、グルタル酸、コハク酸、シュウ酸、アゼライン酸、ジエチルマロン酸、フマル酸、シトラコン酸、アリルマロネート酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート酸、ピメリン酸、スベリン酸、2,5−ジエチルアジピン酸、2−エチルスベリン酸、2,2,3,3−テトラメチルコハク酸、シクロペンタンジカルボン酸、デカヒドロ−1,5−(または2,6−)ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビシクロヘキシルジカルボン酸、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルカルボン酸)、3,4−フランジカルボキシレート、および1,1−シクロブタンジカルボキシレートが含まれる。前述の脂肪族ジカルボン酸のジエステル、酸ハロゲン化物および酸無水物の形でのジカルボン酸等価物もまた有用である。模範的な芳香族ジエステルには、ジメチルテレフタレート、ビベンゾエート、イソフタレート、フタレートおよびナフタレートが含まれる。
【0056】
テレフタル酸、ビ安息香酸、イソフタル酸およびナフタル酸、ジメチルテレフタレート、ビベンゾエート、イソフタレート、ナフタレートおよびフタレート、ならびにそれらの混合物が好ましい。フェニレンジカルボン酸の等価物、より具体的にはテレフタル酸およびイソフタル酸ならびにそれらのジエステル、テレフタル酸ジメチルおよびイソフタル酸ジメチルが特に好ましいジカルボン酸等価物である。幾つかの実施形態では、2つ以上のジカルボン酸等価物を使用することができる。例えば、テレフタル酸またはテレフタル酸ジメチルを、少量の1つ以上の他のジカルボン酸等価物と共に使用することができる。
【0057】
幾つかの好ましい実施形態では、ジカルボン酸等価物の少なくとも50モル%、より好ましくは少なくとも70モル%、さらにより好ましくは少なくとも85モル%、最も好ましくは約95〜100モル%はテレフタル酸および/またはテレフタル酸ジメチルを含む。
【0058】
「アルキレンエステル・ハードセグメント」は、本明細書で用いるところでは、その反応がエステル結合を形成する、短鎖ジオールとジカルボン酸等価物との反応生成物を意味する。例えば、短鎖ジオールは脂肪族C2〜C15ジオール、好ましくはC2〜C8、より好ましくはC2〜C6ジオールであることができる。好適なジオールの例には、エチレングリコール、イソブチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、2,2−ジメチルトリメチレングリコール、2−メチルトリメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、ジヒドロキシシクロヘキサン、シクロヘキサンジメタノール、およびヒドロキノンビス(2−ヒドロキシエチル)エーテルが挙げられる。より好ましくは、ジオールはエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、またはそれらの混合物である。
【0059】
エラストマーのソフトセグメントおよび/またはハードセグメントの成分は生物由来であることができる。例えば、コーンスターチなどの再生可能な資材源を使用して発酵法で得られる1,3−プロパンジオールを、PO3Gソフトセグメントおよび3GTハードセグメントを製造するために使用することができる。
【0060】
ポリトリメチレンエーテルエステルは、通常のエステル交換反応、すなわち、ジカルボン酸等価物の性質に依存してエステル化またはエステル交換を用いて製造することができる。たとえば、テレフタル酸ジメチルは、エステル交換によって形成されたメタノールを留去しながら、150〜250℃で触媒の存在下にポリトリメチレンエーテルグリコールおよび過剰の1,4−ブタンジオールと加熱することができる。反応は典型的には約1気圧の圧力で行われる。反応生成物は、テレフタル酸ジメチルとポリトリメチレンエーテルグリコールおよび1,4−ブタンジオールとのエステル交換反応生成物の混合物、少量の相当するオリゴマーを含んだ異なる量の(ヒドロキシ−ポリトリメチレンエーテル)テレフタレートと共に主としてビス(ヒドロキシブチル)テレフタレートである。混合物は次に重合、例えば重縮合を受けてポリトリメチレンエーテル・ソフトセグメントと(1,4−ブタンジオールとテレフタル酸ジメチルとの縮合生成物である)テトラメチレンテレフタレート・ハードセグメントとを持った共重合体を形成する。重合には、追加のエステル交換および短鎖ジオールを除去し、こうして分子量を高めるための蒸留が後に続く。重縮合は典型的には真空下に行われる。圧力は典型的には0.01〜18mmHg(1.3〜2400Pa)の範囲、好ましくは0.05〜4mmHg(6.7〜553Pa)の範囲、最も好ましくは0.05〜2mmHgである。重縮合は典型的には約220℃〜260℃の範囲の温度で行われる。
【0061】
高温での過度の滞留時間および可能な付随熱分解を回避するために、触媒をエステル交換に用いることができる。エステル交換法に有用な触媒には、チタン、ランタン、錫、アンチモン、ジルコニウム、および亜鉛の有機および無機化合物が含まれる。テトライソプロピルチタネートおよびテトラブチルチタネートなどのチタン触媒が好ましく、完成ポリマーの計算重量を基準にして、重量で少なくとも約25ppm(好ましくは少なくとも約50ppm、より好ましくは少なくとも約70ppm)、そして約1,000ppm以下(好ましくは約700ppm以下、より好ましくは約400ppm以下)のチタンの量で好ましくは使用される。テトライソプロピルチタネートおよびテトラブチルチタネートはまた重縮合触媒としても有効である。追加触媒をエステル交換または直接エステル化反応の後にそして重合の前に添加することができる。好ましくは触媒はテトラブチルチタネート(TBT)である。
【0062】
エステル交換重合は一般に、加えられた溶媒なしに溶融物で行われるが、低温で水およびジオールなどの揮発性成分の除去を容易にするために不活性溶媒を加えることができる。この技法は、ポリトリメチレンエーテルグリコールまたはジオールとジカルボン酸等価物との反応中に、特にそれが直接エステル化を伴う、すなわち、ジカルボン酸等価物が二酸である場合に有用である。他の特別な重合技法は特定のポリマーの製造に有用であり得る。重合(重縮合)はまた、真空でおよび/または発生したジオールを除去するための不活性ガスの流れ中でポリトリメチレンエーテルグリコール、ジカルボン酸等価物、および短鎖ジオールの反応からの分割固体生成物を加熱することによって固相で成し遂げることもできる。このタイプの重縮合は本明細書では「固相重合」(または略記された「SPP」)と言われる。驚くべきことに、PO3G/3GTポリマーはPO3G/4GTまたはPO4G/4GTポリマーより固相重合を受けやすいことが発見された。「より受けやすい」は、PO3G/3GTポリマーが固相重合にさらされた時にPO3G/4GTまたはPO4G/4GTポリマーが示すより速い反応速度論を示すことを意味する。SPPは、PO3G/3GTエラストマーの分子量を所望のレベルまで上げるための好ましい方法である。
【0063】
上に記載されたものに代わるエステル交換を用いることができる。例えば、ポリトリメチレンエーテルグリコールを、ランダム化が起こるまで触媒の存在下にポリエステル(例えば、ポリテトラメチレンテレフタレート)と直接反応させることができる。好適な触媒には、本明細書で上に列挙された触媒が含まれ、テトラブチルチタネートなどのチタン触媒が好ましい。
【0064】
バッチまたは連続法を上記のプロセスに、またはポリトリメチレンエーテルエステル製造の任意の段階に用いることができる。エステル交換による連続重合が好ましい。
【0065】
ポリトリメチレンエーテルエステルエラストマーの製造において、溶融強度を高めるために公知の分岐剤を組み入れることが時々望ましい。分岐剤は典型的にはポリマーの100グラム当たり0.00015〜0.005当量の濃度で使用される。分岐剤は、例えば、3個以上のヒドロキシル基、好ましくは3〜6個のヒドロキシル基を有するポリオール、3個以上のカルボキシル基、好ましくは3もしくは4個のカルボキシル基を有するポリカルボン酸、または合計3個以上のヒドロキシルおよびカルボキシル基、好ましくは3〜6個のヒドロキシルおよびカルボキシル基を有するヒドロキシ酸であることができる。模範的なポリオール分岐剤には、グリセロール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、1,1,4,4−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、トリメチロールプロパン、および1,2,6−ヘキサントリオールが含まれる。模範的なポリカルボン酸分岐剤には、ヘミメリト酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、1,1,2,2−エタンテトラカルボン酸、1,1,2−エタントリカルボン酸、1,3,5−ペンタントリカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸などの酸が含まれる。酸はそのままで使用することができるが、それらの低級アルキルエステルの形でそれらを使用することが好ましい。
【0066】
ポリトリメチレンエーテルエステルの特性は、例えば、ジカルボン酸等価物の性質、短鎖ジオールのタイプ、ポリトリメチレンエーテルグリコールの分子量、ハードセグメントの重量パーセント、および/またはハードセグメント対ソフトセグメントのモル比を変えることをはじめとする、組成物を変えることによって影響を受け得る。
【0067】
ポリトリメチレンエーテルエステルは、1つ以上の他のポリマーとブレンドし、フィルムを製造するために使用することができる。かかる他のポリマーは好ましくは熱可塑性樹脂である。例は、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリウレタンウレア、アクリルポリマー、およびオレフィン共重合体をはじめとするポリオレフィンである。
【0068】
通常の添加剤をポリトリメチレンエーテルエステルまたはフィルムへ公知技法によって組み入れることができる。模範的な添加剤には、艶消剤(例えば、TiO2、硫化亜鉛または酸化亜鉛)、着色剤(例えば、染料)、安定剤(例えば、酸化防止剤、紫外線安定剤、熱安定剤など)、フィラー、難燃剤、顔料、抗菌剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、増量剤、加工助剤、粘度ブースター、および他の機能性添加剤が含まれる。
【0069】
ポリトリメチレンエーテルエステルは少なくとも約35,000、より好ましくは少なくとも約45,000、さらにより好ましくは少なくとも約50,000、もっとさらにより好ましくは少なくとも約60,000、そしてさらにより好ましくは少なくとも約80,000の重量平均分子量を有することが一般に好ましい。一般に、重量平均分子量は約168,000以下、好ましくは約150,000以下、より好ましくは約120,000以下である。幾つかの非常に好ましい実施形態では、ポリトリメチレンエーテルエステルは約60,000〜約110,000の重量平均分子量を有する。幾つかの方法にとっては、高すぎる分子量は所望の加工にとって高すぎる粘度をもたらすので、重量平均分子量の実用的な上限は、加工性、特に押出可能性などの因子によって決定される。
【0070】
ポリトリメチレンエーテルエステルエラストマーを含むフィルムは、公知の方法を用いて、基材上へ積層するまたはコートすることができる。積層することができる基材の例には、例えば、紙、板紙、無機発泡体、有機発泡体、および無機有機発泡体、ポリマーフィルムおよびシート、金属基材、ならびに織布および不織布が挙げられる。フィルムはまた、食品ラップでなどの、食品パッケージングで使用することができる。フィルムで積層されたまたはコートされた基材は、食品容器の製造に使用することができる。当業者は、ポリマー組成物およびコーティング形成に用いられる方法、ならびに所望の用途に基づいて適切なプロセスパラメーターを特定することができるであろう。
【実施例】
【0071】
ポリトリメチレンエーテルエステルエラストマーは、それらの開示が参照により本明細書に援用される、米国特許第6,562,457号明細書および米国特許第6,599,625号明細書に記載されているように製造した。フィルムをエラストマーの融点より上でプレスした。フィルムは典型的には、Teflon(登録商標)剥離フィルムを用いて固体プレートの間にプレスすることによって200℃より僅かに上で製造した。用いた圧力は20psi〜200psiであり、約1分間加えた。フィルムは未延伸であり、機械試験実施のために約3インチ長さ、および1/4インチ幅の狭いストリップへカットした。米国特許第6,562,457号明細書および米国特許第6,599,625号明細書に記載されているように3〜5サンプルから取った測定値を平均して機械的特性を得た。
【0072】
実施例1〜2
デニール当たりのグラム(gpd)単位の破壊靱性Tおよびパーセント破壊時伸び率Eは、アクリル接触面を備えたシリーズ2712(002)空気圧作用グリップ(Pneumatic Action Grips)を装備したInstron(登録商標)試験器(Tester)で測定した。試験を3回繰り返した。結果の平均値を報告する。これらの特殊なグリップの使用は、それが試験中のサンプルの滑りを回避するのを助けるので好ましい。さらに、他のタイプのグリップを用いて得られた試験結果は、滑りのために人為的に高い伸び率の報告をもたらし得る。このように、かかる他のタイプのグリップを用いる本発明フィルムの試験は、靱性および伸び率について本明細書で報告されるものより高い値をもたらすかもしれないことが留意されるべきである。従って、材料間の正確な比較のためには、用いられたグリップのタイプ、そして特にグリップがアクリル接触面を有するかどうかの考察が非常に望ましい。
【0073】
ハードセグメント重量パーセント計算
重量パーセント・ハードセグメントは次の式
【0074】
【数1】

【0075】
(式中、
1はジカルボン酸等価物の重量であり、
2グリコールの重量であり、
1は原子質量単位(「amu」)(グラム/モル)でのジカルボン酸等価物の分子量であり、
2はamu単位でのグリコールの分子量であり、
hsはamu単位(グラム/モル)でのハードセグメント繰り返し単位の分子量であり、
ssはamu単位(グラム/モル)でのソフトセグメントの分子量である)
に従って計算した。
【0076】
数平均分子量(Mn)
ポリトリメチレンエーテルグリコールの数平均分子量(Mn)は、NMR分光法を用いるヒドロキシル末端基を分析することによってまたは滴定によって測定した。ヒドロキシル価はASTM(米国材料試験協会)E222方法に従って測定し、あることが本発明の範囲内にあるかどうかを分析するために用いられるべきである方法である。
【0077】
固有粘度
固有粘度(IV)測定はASTM方法2857−70に従って行った。ポリマーサンプルを秤量前に70℃で3時間乾燥させた。サンプルをm−クレゾール中の0.5%溶液を用いて30℃で走らせた。効率、精度、および正確さを向上させるために、AutoVisc(登録商標)自動測定システム(Automatic Measuring System)(Design Scientific(Gainesville,GA,U.S.A.)、現在、名称AutoVisc(登録商標)IでCannon Instruments(State College,PA,U.S.A.)によって製造されていると考えられる)自動粘度測定システムを用いた。高密度赤外繊維光学検出システムを人間オペレータの代わりに用い、一定温度を提供するために通常用いられる油浴または水浴の代わりに空気浴を用いた。AutoViscは、ASTM D−445、「透明なおよび不透明な液体の動粘度のための標準試験方法(Standard Test Method For Kinematic Viscosity of Transparent and Opaque Liquids)」の精度規格を上回る。
【0078】
試験したポリマーは表1に示す組成を有した。ポリマーから製造されたフィルムの機械的特性を表2に示す。
【0079】
表1

【0080】
表2

1 600%歪みへの5×サイクリング後600%の歪みで有効デニール当たりのグラム×1000の単位で測定した負荷パワー。
2 600%への5×サイクリング後400%の歪みで有効デニール当たりのグラム×1000の単位で測定したアンロード・パワー。
3 600%への5サイクル後に同様に測定したパーセント永久歪み。靱性は、1gpd=89MPaであるgpd(デニール当たりのグラム)単位で表す。デニールは繊維の単位長さ当たりの重量である。
【0081】
表2は、PO3Gソフトセグメントがアンロード・パワーを一般に高めることを示す。PO3Gソフトセグメントはまた、より高い伸び率および有効靱性にも寄与する。実施例1で、靱性は比較例についてのそれのほぼ2倍である。4GT/PO4Gフィルムと比べて4GT/PO3Gフィルムについて靱性の2倍増加は、同じ組成の繊維の公知特性からは予期されない。表2に示すように、PO3Gソフトセグメントを含有するエラストマーの特性は、他のソフトセグメントを有するリストされたポリマーのそれらよりも優れている。表2はまた、PO4GソフトセグメントのポリマーがPO3Gソフトセグメントのポリマーと比較してより低いアンロード・パワーおよびより高い応力緩和を示すことも示す。
【0082】
初期デニールに標準化された破壊応力によって一般に求められるエンジニアリング靱性の代わりに、有効靱性を、エンジニアリング靱性に破壊時延伸比(すなわち、500%伸び率について延伸比SRは6×である)を乗じることによって計算することができる。これは、異なる伸び率のエラストマーについて実質的に変わり得る破壊時断面積を明らかにする。これらの量は表2でgpd有効として表し、それは、リストされた他のポリマーよりPO3G/4GTについて2倍高いことを示す。
【0083】
実施例3〜6
表3に報告される、異なるハードセグメントとソフトセグメントとを有するエラストマーはバッチ重合法によって製造した。典型的なバッチ重合手順を下に示す。
【0084】
PO3G/3GTエラストマー合成。3つ口(真っ直ぐな口)250mLガラス丸底フラスコに、2,100の数平均分子量を有する72.0g(34.2ミリモル)のPO3Gポリエーテルグリコール、28.9g(380ミリモル)の1,3−プロパンジオール、33.0g(170ミリモル)テレフタル酸ジメチル、0.50gEthanox(登録商標)330酸化防止剤を装入した。正のN2ガス流れ下に、1.0mLの触媒溶液を加えた、触媒はTyzor(登録商標)TBTテトラブチルチタネートであり、1,3−プロパンジオール中の5%溶液として使用した。フラスコに除去アーム、撹拌機ならびに熱電対およびミリトル(mTorr)真空計センサーを連結した窒素注入口を備え付けた。反応物を加熱マントルに置くことによって加熱した。重合をN2下240℃で2.0時間進行するに任せた。その時点で、真空を導入し、圧力を30分にわたって大気圧から1mmHg(133.3Pa)に下げた。反応を十分な粘度が達成されるまで240℃で真空下に続行した。反応物をN2下に放冷し、フラスコを液体N2中で急冷させた。生じたバッチポリマー生成物を磨り潰し、乾燥させ、正のN2流れの真空オーブン中150℃で20時間固相重合にさらした。バッチポリマーおよび固相重合させたポリマーの固有粘度を表3に報告する。
【0085】
表3

【0086】
表3のデータは驚くべきことに、ソフトセグメントに関係なく、3GTハードセグメントを有するポリマーが2GTおよび4GTハードセグメントを有するポリマーより固相重合によって容易に重合することを明らかにする。ポリマーが3GTハードセグメントを有する場合に固有粘度の予期されない劇的な増加もまた観察された。
【0087】
実施例7〜11
実施例7〜9についてのPO3G/3GTエラストマーは、上記のようなバッチ重合法で72重量%のソフトセグメントおよび28重量%のハードセグメント含有率で製造した。実施例10および11についてのポリマーは、実施例8のポリマーを固相重合させることによって製造した。固相重合は、異なる時間、減圧不活性雰囲気下に150℃で行った。フィルム特性に対する重量平均分子量(Mw)の影響を、PO4Gソフトセグメント(78%)と4GTハードセグメント(22%)とを含有する市販のHYTRELポリマーと比較してPO3G/3GTエラストマーについて表4に示す。
【0088】
表4.分子量の関数としてのPO3G/3GTポリマーのフィルム特性

1 300%への5×サイクリング後300%の歪みで有効デニール当たりのグラム×1000の単位で測定した負荷パワー。
2 300%への5×サイクリング後100%の歪みで有効デニール当たりのグラム×1000の単位で測定したアンロード・パワー。
3 300%への5サイクル後に同様に測定したパーセント永久歪み。
【0089】
表4のデータは、フィルムの製造に使用したPO3G/3GTの分子量が靱性、アンロート・パワー、およびパーセント永久歪みなどのある種の特性に対して驚くべき影響を与えるが、伸び率、負荷パワーおよび応力緩和に対してはほとんど影響を与えないことを示す。さらに、約100,000の重量平均分子量を有するPO3G/3GTエラストマーから製造したフィルムの伸び回復性は、特に靱性、アンロード・パワー、応力緩和およびパーセント永久歪みの観点から、HYTREL(登録商標)ポリエステルと比較した時に顕著である。本明細書に提示するデータは、PO3G/3GTの以前に公表された特性を考えれば驚くべきデータである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
95〜5重量%のポリトリメチレンエーテルエステル・ソフトセグメントと5〜95重量%のアルキレンエステル・ハードセグメントとを含むポリトリメチレンエーテルエステルエラストマーを含む弾性フィルム。
【請求項2】
ポリエーテルエステルエラストマーが90〜60重量%のポリトリメチレンエーテルエステル・ソフトセグメントと10〜40重量%のアルキレンエステル・ハードセグメントとを含む、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
アルキレンエステル・ハードセグメントがエチレンエステル、トリメチレンエステル、およびテトラメチレンエステルのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のフィルム。
【請求項4】
ポリトリメチレンエーテルエステルエラストマーが式
【化1】

(式中、xは9〜86である)
を有する5〜95重量%のポリアルキレンエーテルエステル・ソフトセグメントと、式
【化2】

(式中、yは2〜15であり、そして同じまたは異なるものであってもよいR1およびRはジカルボン酸等価物からカルボキシル官能基を除去した後に残る二価基である)
を有する95〜5重量%のアルキレンエステル・ハードセグメントとを含む、請求項1に記載のフィルム。
【請求項5】
少なくとも1gpdの有効靱性を有する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項6】
少なくとも2gpdの有効靱性を有する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項7】
3gpdの有効靱性を有する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項8】
少なくとも800%の破壊時伸び率を有する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項9】
900%〜2000%の破壊時伸び率を有する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項10】
100マイクロメートル以下の厚さを有する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項11】
50マイクロメートル以下の厚さを有する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項12】
5マイクロメートル以上の厚さを有する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項13】
500マイクロメートル以下の厚さを有する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項14】
1mm以上の厚さを有する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項15】
前記エラストマーが60,000以上の重量平均分子量を有する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項16】
前記エラストマーが168,000以下の重量平均分子量を有する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項17】
前記エラストマーが60,000〜110,000の重量平均分子量を有する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項18】
キャストフィルムである、請求項1に記載のフィルム。
【請求項19】
延伸フィルムである、請求項1に記載のフィルム。
【請求項20】
二軸延伸されている、請求項18に記載のフィルム。
【請求項21】
前記エラストマーが分岐剤を含む、請求項1に記載のフィルム。
【請求項22】
ソフトセグメントの量がエラストマーの総重量を基準にして少なくとも30重量%である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項23】
ソフトセグメントの量がエラストマーの総重量を基準にして少なくとも60重量%である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項24】
ソフトセグメントの量がエラストマーの総重量を基準にして30重量%〜90重量%である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項25】
ソフトセグメントの量がエラストマーの総重量を基準にして50重量%〜80重量%である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項26】
ハードセグメントの量が少なくとも15重量%である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項27】
エラストマーがPO3G/3GTである、請求項1に記載のフィルム。
【請求項28】
エラストマーがPO3G/4GTである、請求項1に記載のフィルム。
【請求項29】
エラストマーがPO3G/2GTである、請求項1に記載のフィルム。
【請求項30】
請求項1に記載のフィルムを含むラミネート。
【請求項31】
少なくとも1種の他のポリマーを含む、請求項1に記載のフィルムであって、前記他のポリマーが熱可塑性ポリマーであるフィルム。
【請求項32】
請求項1に記載のフィルムを含む食品パッケージ。
【請求項33】
アルキレンエステル・ハードセグメントがトリメチレンエステルを含む、請求項1に記載の弾性フィルム。
【請求項34】
アルキレンエステル・ハードセグメントがテトラメチレンエステルを含む、請求項1に記載の弾性フィルム。

【公表番号】特表2008−503644(P2008−503644A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518126(P2007−518126)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/021241
【国際公開番号】WO2006/009758
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】