説明

ポリヌクレオチドの複合的分析のための組成物および方法

本明細書において提供されるのは、複合的解析および/または1つ以上の判別可能な標的配列を有するポリヌクレオチドの検出を行うための組成物および方法である。該方法は、1つ以上のポリヌクレオチド上にある1つ以上の標的配列の検出を可能にする特異的で相対的な示差的熱融解温度を有するシグナルクエンチャーのプローブ対を用いる。本明細書に記載された組成物および方法は、TまたはTおよび標識シグナルを併用することによってポリヌクレオチド試料の複合的解析を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、その開示内容全体が参照されて本明細書に組み入れられる、2003年2月18日出願に係る、“Compositions and Methods for Multiplex Analysis of Polynucleotides”という名称の米国特許出願第60/448,440号、および2003年3月10日出願に係る、“Compositions and Methods for Multiplex Analysis of Polynucleotides”」という名称の米国特許出願第60/453,791号に対して、米国特許法第119条第e項による利益を主張するものである。
【0002】
(分野)
本開示は、特定の相対的熱融解温度(relative thermal melting temperature)を有するプローブ対を使用して、ポリヌクレオチドの複合的解析を行なうための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
核酸のハイブリダイゼーションは、分子生物学において基本的な現象である。配列特異的なハイブリダイゼーションを利用するプローブ法が、核酸を検出、解析、および定量するための多くの応用法で利用されている。例えば、プローブによるハイブリダイゼーション法は、遺伝子の発現レベルを定量したり、1塩基多型(SNP)および他の遺伝子変異を検出したり、また、遺伝子をタイプ分け、マッピングおよび/またはフィンガープリントするために広く用いられている数多くのアッセイ法の中核をなしている。
【0004】
このようなアッセイ法は、しばしば、さまざまな判別可能な標識をもつプローブを用いて重層的な方法で行なわれ、1回のアッセイ反応で多様な結果を得ることを可能にする。例えば、ユニークでスペクトル分析可能な波長の光を放出することができるフルオロフォアのように、各自が異なる判別可能な標識を有する複数の異なった配列特異的プローブを用いて、1回のアッセイで、関心の対象である2種類以上の異なった配列の有無について、ポリヌクレオチド試料をアッセイすることができる。このようなアッセイ法では、プローブが、それぞれに対する相補配列が存在するならば、それらとハイブリダイズする条件下で、ポリヌクレオチド試料を複数の標識された配列特異的プローブと接触させる。ハイブリダイズしなかったプローブを除去するために洗浄した後、その存在が関心の対象である特定の配列の存在と相関している特定のスペクトルのシグナルまたは発色の有無を調べるためにアッセイ反応の測定を行なう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような複合的アッセイ法は強力であるが、1回のアッセイ反応で測定できる異なった配列の数は、例えば、利用できる異なった判別可能な標識の数、および異なった判別可能な標識が発生させるシグナルを検出できる検出装置を使えるかなど、いくつかの要素によって制約される。このような複合的アッセイ法の複雑さの程度は、汎用または判別不能な標識のいずれかを担う異なった配列特異的プローブを含むハイブリダイゼーションを区別できれば大いに増加する。したがって、異なった判別可能な標識やそのような標識を判別できる装置が利用可能かどうかに制限されないポリヌクレオチドの複合的アッセイ法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(概要)
本開示は、ポリヌクレオチド試料の複合的解析を行なうための組成物および方法を提供する。本明細書に記載された組成物および方法は、異なった判別可能な標識を使用することを必要とせずに、1回のアッセイで1つまたは複数の標的配列の検出を可能にする示差的な相対的熱融解温度(T)を有する配列特異的シグナル−クエンチャーのプローブ対を使用する。実際、特定の相対的Tを有するクエンチャープローブを使用することによって、シグナルプローブがすべて同じ標識を有している場合でも、重層的な方法で、複数の異なった標的配列を測定することができる。異なった判別可能な標識を有するシグナルプローブを使用することで、1回の複合的アッセイで解析または検出できる標的配列の種類を増やせる。このようにして、本明細書に記載された組成物および方法は、TまたはTおよび標識シグナルを併用することによってポリヌクレオチド試料の複合的解析を可能にする。
【0007】
いくつかの実施態様において、本開示は、1つ以上の標的配列を含むと推定されたポリヌクレオチド試料を、2種類以上の異なったシグナル−クエンチャーのプローブ対と接触させる方法を提供する。このシグナル−クエンチャーのプローブ対は、1つ以上のポリヌクレオチドに存在する標的配列にハイブリダイズするように設計することができる。第1のシグナル−クエンチャーのプローブ対の配列は、第1の特定された標的配列の領域内において、クエンチできる近さで互いにハイブリダイズするように設計することができる。第2のシグナル−クエンチャーのプローブ対の配列は、第2の特定された標的配列の領域内において、クエンチできる近さで互いにハイブリダイズするように設計することができる。各シグナルプローブは、標的配列にハイブリダイズすると、検出可能なシグナルを発生させることのできる標識を有することができる。第1のシグナルプローブによって発生したシグナルは、第2のシグナルプローブによって発生したプローブと判別可能にすることができる。あるいは、第2のシグナルプローブによって発生したプローブと判別できないようにすることもできる。各クエンチャープローブは、シグナルプローブとクエンチャープローブが標的配列上において、クエンチできる近さで互いにハイブリダイズすると、その対応するシグナルプローブによって生じるシグナルを消すことのできる部分を有することができる。
【0008】
各シグナル−クエンチャーのプローブ対は、クエンチャープローブが、それに対応するシグナルプローブよりも低いTをもつように設計することができる。シグナルプローブが判別不能な標識を担う実施態様において、第2のシグナルプローブが、第1のクエンチャープローブよりも低いTを有するように設計することができる。シグナルプローブが判別可能な標識を担う実施態様においては、第2のシグナルプローブが、第1のシグナルプローブまたは第1のクエンチャープローブよりも低いか高い、または同じTを有するように設計することができる。
【0009】
接触させた後、シグナルプローブによって生じたシグナルを、温度の関数として観測することができる。さまざまな異なったプローブのTを含む温度範囲を通して温度が上昇するか低下したときに、このようなシグナルを、継続的に、または、離散した複数時点で観測することができる。いくつかの実施態様では、複数の異なった離散した温度でシグナルを観測する。例えば、いくつかの実施態様では、シグナル−クエンチャーのプローブ対のシグナルプローブとクエンチャープローブのTの中間の温度、および、第1の対のクエンチャープローブのTと第2の対のシグナルプローブのTの中間の温度などを利用することができる。いくつかの実施態様では、さまざまなシグナルプローブとクエンチャープローブのTとほぼ等しい温度を使用することができる。温度の関数として、シグナルプローブが発生させるシグナルは、ポリヌクレオチド試料が、1つ以上の標的配列を含んでいるか否かの指標を提供する。
【0010】
本方法において使用されるシグナル−クエンチャーのプローブ対の数は、アッセイにおいて測定される標的配列の数に応じて決めることができる。例えば、診断に関連するときは、患者が、例えばウイルスに感染しているかどうかだけでなく、感染したウイルスの具体的な遺伝子型も判定することがしばしば望まれる。このような場合には、そのウイルスの既知の遺伝子型を判定するのに必要とされるだけの数のシグナル−クエンチャープローブ対を複合的アッセイ法に使用することができる。いくつかの実施態様では、各シグナル−クエンチャープローブ対のシグナルプローブとクエンチャープローブを、特異的な遺伝子型を示す配列にハイブリダイズするよう設計することができる。いくつかの実施態様では、各シグナルプローブを、ある特異的な遺伝子型を示す配列にハイブリダイズするよう設計し、1種類以上のクエンチャープローブを、それ以外の遺伝子型に共通する配列にハイブリダイズするように設計することができる。いくつかの実施態様では、各クエンチャープローブを、ある特異的な遺伝子型を示す配列にハイブリダイズするよう設計することができる。シグナルプローブはすべて、判別不能な標識を担うか、あるいは、シグナルプローブの全部または一部が判別可能な標識を担うことができる。
【0011】
いくつかの実施態様において、もっとも低いTをもつ、シグナル−クエンチャープローブ対のクエンチャープローブを場合によってはなくすこともできる。
【0012】
また、本明細書に記載されたさまざまな方法を実施するのに役立つ組成物およびキットも提供される。一般的に、このキットは、第1のシグナル−クエンチャープローブ対、および、少なくとも第2のシグナル−クエンチャープローブ対を含むが、もっとも低いTをもつ、シグナル−クエンチャープローブ対のクエンチャープローブは選択的である。いくつかの実施態様では、このキットは、2〜10種類の異なったシグナル−クエンチャープローブ対を含むことができる。いくつかの実施態様では、シグナルプローブの全部が判別不能な標識を担うことができる。いくつかの実施態様では、少なくとも1つのシグナルプローブが判別可能な標識を担うことができる。いくつかの実施態様では、このキットは、そのすべてが第1の判別可能なシグナル標識で標識されている2〜10種類の異なったシグナル−クエンチャープローブ対からなる第1のセット、および、そのすべてが第2の判別可能なシグナル標識であって、第1のシグナル標識とは判別可能な標識で標識されている2〜10種類の異なったシグナル−クエンチャープローブ対からなる第2のセットを含むことができる。このキットは、場合によっては、さらなるセットのプローブ対のすべてが、他のすべてのセットのシグナル標識から判別可能なシグナル標識で標識されていることもある2〜10種類の異なったプローブ対からなるセットをさらに含むことができる。
【0013】
示差的なTを利用することによって、判別可能な標識システムを必要とすることなく、多数の標的配列を同時に解析することができる。さらに、クエンチャープローブの使用を利用して、完全には相補的でないシグナルプローブと標的とのハイブリッドからのシグナルを低下させることができる。クエンチャープローブは、各非相補的シグナル−標的ハイブリッドからのシグナルを消して、シグナルプローブの特異性を効果的に高めることができる。さらに、示差的なTと、異なった検出可能なシグナル(例えば、異なった色を付けたフルオロフォア)との組み合わせを利用する実施態様では、1回のアッセイで、多数の異なった標的配列を調査および/または解析することが可能になる。同時に調査または解析することができる標的配列の数は、判別可能な検出可能シグナルの数と、判別可能なTの数とを合わせたものであるから、唯一制限となるのは、Tと検出可能なシグナルを識別する能力である。
【0014】
本明細書に記載された組成物および方法は、多くの応用場面においてポリヌクレオチド試料を解析するために使用することができる。具体的で非制限的な例として、この組成物および方法を用いて、複数の変異を同時に解析したり、多型性を検出したり、試料中の1つ又は複数の病原体の有無を検出したり、また、ウイルスなどの病原体の遺伝子型を決定したりすることができる。これ以外の数多くの利用法や利点が、好適な実施態様の詳細な説明を概観することによって明らかになる。
【0015】
(詳細な説明)
(略語と規則)
本明細書全体および図面において、核酸塩基配列を含む標的配列、ポリヌクレオチド、シグナルプローブおよびクエンチャープローブを示すために使用されている略語は、通常の一字略記法である。大文字(例、RNAおよびDNAの配列)が塩基配列を示し、小文字がヌクレオチドの模倣配列(例、PNA配列)を表す。したがって、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドに含まれるとき、天然型のコード核酸塩基は、以下のように略記される:アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)、およびウラシル(U)。PNAなどの模倣のポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドに含まれるとき、天然型のコード核酸塩基は、以下のように略記される:アデニン(a)、グアニン(g)、シトシン(c)、チミン(t)、およびウラシル(u)。「核酸塩基配列」または「配列」は互換的に使用する。
【0016】
また、特段の記載がない限り、一連の一文字略記で表示されるポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの配列は、一般的な規則に従って5’→3’方向に表示されている。PNAなど、アミノ末端とカルボキシル末端を有するポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの模倣配列は、一般的な規則に従ってアミノからカルボキシル方向に表示されている。逆平行のハイブリダイゼーション方向を平行方向のそれと区別するためには、オリゴヌクレオチドの5’末端がPNAのアミノ末端に相当し、オリゴヌクレオチドの3’末端がPNAのカルボキシル末端に相当すると理解すべきである。
【0017】
(定義)
本明細書と請求の範囲を通じて用いられるとき、以下の用語は、以下に記載する定義をもつものとする。単数形で定義された用語は複数形の場合も含み、逆の場合も同じである。
【0018】
「核酸塩基」は、核酸またはポリヌクレオチドの技術を利用するか、ポリアミドまたはペプチドの核酸技術を利用して、配列特異的にポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができるポリマーを作製している者に広く知られている天然および合成のヘテロ環状部分を意味する。適当な核酸塩基の非限定的な例には、アデニン、シトシン、グアニン、チミン、ウラシル、5−プロピニル−ウラシル、2−チオ−5−プロピニル−ウラシル、5−メチルシトシン、シュードイソシトシン、2−チオウラシルおよび2−チオチミン、2−アミノプリン、N9−(2−アミノ−6−クロロプリン)、N9−(2,6−ジアミノプリン)、ヒポキサンチン、N9−(7−デアザ−グアニン)、N9−(7−デアザ−8−アザ−グアニン)およびN8−(7−デアザ−8−アザ−アデニン)などがある。その他の適当な核酸塩基の非限定的な例は、Buchardt et al.,(国際公開第92/20702号または第92/20703号)の図2(A)および2(B)に示されている核酸塩基などである。
【0019】
「核酸塩基ポリマーまたはオリゴマー」は、得られた核酸塩基ポリマーまたはオリゴマーが、相補的な核酸塩基配列をもつポリヌクレオチドにハイブリダイズすることを可能にする結合によって結合している2個以上の核酸塩基を意味する。核酸塩基のポリマーまたはオリゴマーは、ポリヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド(例、DNAおよびRNAのポリマーおよびオリゴマー)、ポリヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドの類似化合物、ならびにポリヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドの模倣化合物、例えば、ポリアミド核酸またはペプチド核酸などであるが、これらに限定されるものではない。核酸塩基のポリマーまたはオリゴマーのサイズはさまざまなで、数核酸塩基や、2から40核酸塩基から、数百核酸塩基まで、数千核酸塩基またはそれ以上までである。
【0020】
「ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド」は、核酸塩基が糖リン酸結合(糖−リン酸骨格)によって結合されている核酸塩基のポリマーまたはオリゴマーを意味する。ポリヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドの例は、2’−デオキシリボヌクレオチドのポリマー(DNA)およびリボヌクレオチドのポリマー(RNA)などである。ポリヌクレオチドは、全部がリボヌクレオチドからなるか、全部が2’−デオキシリボヌクレオチドからなるか、またはそれらを組み合わせたものからなる。
【0021】
「ポリヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドの類似化合物」は、核酸塩基が、1つ以上の糖リン酸類似化合物を含む糖リン酸骨格によって結合されている、核酸塩基のポリマーまたはオリゴマーを意味する。典型的な糖リン酸類似化合物は、糖アルキルホスホン酸、糖ホスホアミダイト、糖アルキル型または置換型のアルキルホスホトリエステル、糖ホスホロチオエート、糖ホスホロジチオエート、糖リン酸、および、糖が2’−デオキシリボースまたはリボース以外である糖リン酸類似化合物、米国特許第6,013,785号および米国特許第5,696,253号(Dagani 1995, Chem. & Eng. News 4−5:1153;Dempey et al.,1995,J.Am.Chem.Soc.117:6140−6141も参照)に記載されているような正に荷電した糖−グアニジル鎖交をもつ核酸塩基ポリマーなどであるが、これらに限定されるものではない。糖が2’−デオキシリボースである、正に荷電した類似化合物は「DNG」と称され、一方、糖がリボースである同様の化合物は「RNG」と称される。ポリヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドの類似化合物の定義に具体的に含まれるのは、ロックド核酸(locked nucleic acids)(LNA:例えば、Elayadi et al.,2002, Biochemistry 41:9973−9981;Koshkin et al.,1998,J.Am.Chem.Soc.120:13252−3;Koshkin et al.,1998,Tetrahedron Letters,39:4381−4384;Jumar et al.,1998,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 8:2219〜2222;Singh and Wengel,1998,Chem.Commun.12:1247−1248;国際公開00/56746号、国際公開02/28875号および国際公開01/48190号を参照;これらはすべて、その全体が参照されて本明細書に組み入れられる。)
「ポリヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドの模倣化合物」は、骨格の1つ以上の糖リン酸結合が、糖−リン酸類似化合物に置換されている、核酸塩基のポリマーまたはオリゴマーを意味する。このような模倣化合物は、相補的なポリヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチド、またはポリヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチドの類似化合物、または別のポリヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチドの模倣化合物にハイブリダイズすることができ、以下の結合を1つ以上含む骨格を含むことができる:米国特許第5,786,461号;米国特許第5,766,855号;米国特許第5,719,262号;米国特許第5,539,082号および国際公開第98/03542号(また、Haaima et al.,1996,Angewandte Chemie Int’l in English 35:1939−1942;Lensnick et al.,1997,Nucleosid. Nucleotid.16:1775−1779;D’Costa et al.,1999,Org. Lett.1:1513−1516も参照のこと。また、Nielsen, 1999、Curr. Opin. Biotechnol.10:71−75も参照)に記載されているようなアルキルアミン側鎖をもつ正に荷電したポリアミド骨格;国際公開第92/20702号および米国特許第5,539,082号に記載されているような非荷電性ポリアミド骨格;米国特許第5,698,685号、米国特許第5,470,974号、米国特許第5,378,841号および米国特許第5,185,144号(また、Wages et al.,1997,Bio Techniques 23:1116−1121も参照)に記載されているような非荷電性モノホリノ−ホスホラミデート骨格;ペプチドによる核酸模倣骨格(例えば、米国特許第5,698,685号を参照);カルバメイト骨格(例えば、Stirchak and Summerton,1987,J.Org.Chem.52:4202);アミド骨格(例えば、Lebreton,1994,Synlett.February、1994:137を参照);メチルヒドロキシルアミン骨格(例えば、Vassuer et al.,1992,J.Am.Chem.Soc.114:4006を参照);3’−チオホルムアセタール骨格(例えば、Jones et al.,1993,J.Org.Chem.58:2983を参照)およびスルファミン酸骨格(例えば、米国特許第5,470,967号を参照)。上記参考文献はすべて、参照されて本明細書に組み入れられる。
【0022】
「ペプチド核酸」または「PNA」は、核酸塩基が、米国特許第5,539,082号、第5,527,675号、第5,623,049号、第5,714,331号、第5,718,262号、第5,736,336号、第5,773,571号、第5,766,855号、第5,786,461号、第5,837,459号、第5,891,625号、第5,972,610号、第5,986,053号、第6,107,470号、第6,451,968号、第6,441,130号、第6,414,112号および第6,403,763号のいずれかに記載されているアミノ結合(非荷電ポリアミド骨格)によって結合されているポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの模倣化合物を意味する。これらの文献はすべて参照されて本明細書に組み入れられる。「ペプチド核酸」または「PNA」という用語は、以下の刊行物に記載されているポリヌクレオチド模倣化合物の2つ以上のサブユニットを含むオリゴマーまたはポリマーにも適用するものとする:Lagriffoul et al.,1994,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,4:1081−1082;Petersen et al.,1994,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,6:793−796;Diderichsen et al.,1996,Tett.Lett.37:475−478;Fujii et al.,1997,Bioorg.Med.Chem.Lett.7:637−627;Jordan et al.,1997,Bioorg.Med.Chem.Lett.7:687−690;Krotz et al.,1995,Tett.Lett.36:6941−6944;Lagriffoul et al.,1994,Bioorg.Med.Chem.Lett.4:1081−1082;Diederichsen,U.,1997,Bioorganic & Medicinal Chemistry 25 Letters,7:1743−1746;Lowe et al.,1997,J.Chem.Soc.Perkin Trans.1,1:539−546;Lowe et al.,1997,J.Chem.Soc.Perkin Trans.11:547−554;Lowe et al.,1997,I.Chem.Soc.Perkin Trans.11:555−560;Howarth et al.,1997,I.Org.Chem.62:5441−5450;Altmann,K−H et al.,1997,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,7:1119−1122;Diederichsen,U.,1998,Bioorganic & Medicinal Chemistry Lett.,8:165−168;Diederichsen et al.,1998,Angew.Chem.mt.Ed.,37:302−305;Cantin et al.,1997,Tett.Lett.,38:4211−4214;Ciapetti et al.,1997,Tetrahedron,53:1167−1176;Lagriffoule et al.,1997,Chem.Eur.1.’3:912−919;Kumar et al.,2001,Organic Letters 3(9):1269−1272;および国際公開第96/04000号として開示されているStah et al.,のペプチドに基づく核酸模倣化合物(PENAM)(Peptide−Based Nucleic Acid Mimics (PENAMs))。これらはすべて参照されて本明細書に組み入れられる。
【0023】
PNAのいくつかの例は、核酸塩基がN−(2−アミノエチル)−グリシン骨格に結合しているもの、すなわちペプチド様のアミド結合ユニットである(例えば、米国特許第5,719,262号:Buchardt et al.,1992,国際公開第92/20702号;Nielsen et al.,1991,Science 254:1497−1500を参照)。本明細書記載の方法および組成物において使用するのに適したPNAであるN−(2−アミノエチル)−グリシンPNAの部分構造を以下の構造式(I)に示す:
(I)
【0024】
【化1】

式中、(a)nは、N−(2−アミノエチル)−グリシンPNAの長さを規定する整数であり、各Bは別々の核酸塩基であり、また、Rは、−OR’または−NR’R’であり、ここで、R’は、それぞれ独立して、水素または(C−C)アルキル基、好ましくは水素である。
【0025】
「キメラオリゴ」は、複数の異なったポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似化合物、およびポリヌクレオチド模倣化合物を含む核酸塩基のポリマーまたはオリゴマーを意味する。例えば、キメラオリゴは、RNA配列に連結したDNA配列を含むことが可能である。キメラオリゴの別の例は、PNAの配列に連結したDNA配列、およびPNAの配列に連結したRNA配列などである。
【0026】
「シグナル標識」は、本明細書記載のプローブに結合すると、そのプローブを、例えば、分光学的方法、光化学的方法、または電気化学発光法など、既知の検出法を用いて検出可能なプローブとする部分を意味する。標識の例としては、フルオロフォアや化学発光標識などがあげられるが、これらに限定されるものではない。このような標識によって、例えば、フルオロメータなど適当な検出装置で標識化合物を直接に検出することが可能になる。いくつかの実施態様において、標識は、フルオロメータによって検出できる蛍光発生性のレセプター色素であって、レセプター−クエンチャー色素対の一部を構成する。
【0027】
「クエンチャー標識」は、クエンチできるような近さに置かれると、シグナル標識によって産生される検出可能なシグナルを消すことのできる部分を意味する。
【0028】
「ワトソン−クリック塩基対」は、例えば、AがTおよびUと対合し、GがCと対合するなど、配列特異的な水素結合によって一緒に結合する核酸塩基および類似化合物の特異的な対合パターンを意味する。
【0029】
「ヌクレオシド」は、例えば、アデニン、グアニン、シトシン、ウラシル、チミン、7−デアザアデニン、7−デアザグアノシンなどのような、プリン、デアザプリンまたはピリミジン核酸塩基を含む化合物であって、1’位でペントースに連結している化合物を意味する。ヌクレオシド核酸塩基がプリンまたは7−デアザプリンの場合、ペントースは、そのプリンまたはデアザプリンの第9位で核酸塩基に結合し、核酸塩基がピリミジンの場合には、ペントースは、そのピリミジンの第1位で核酸塩基に結合している(例えば、Kornberg and Baker, DNA Replication, 2nd Ed.(Freeman,San Francisco,1992)を参照)。本明細書において「ヌクレオチド」という用語は、ヌクレオシドのリン酸エステルを意味し、例えば、もっとも一般的なエステル化部位が、ペントースのC−5位に結合しているヒドロキシル基である3リン酸エステルである。本明細書において「ヌクレオシド/チド」という用語は、ヌクレオシドおよびヌクレオチドを含む一群の化合物を意味する。
【0030】
「クエンチする」とは、可測的な低下がどのようなメカニズムで起きるかには関わらず、シグナル標識によって産生される検出可能なシグナルの量が可測的に減少することを意味する。
【0031】
「クエンチできる近さ」とは、標的配列上におけるシグナル−クエンチャーのプローブ対の位置を意味する。「クエンチできる近さ」に存在するためには、シグナル標識によって産生される検出可能なシグナルの量が可測的に減少するという結果になるよう、シグナル標識をクエンチャー標識から十分な近さに置く配置でシグナルプローブとクエンチャープローブをハイブリダイズさせなければならない。
【0032】
「アニーリング」または「ハイブリダイゼーション」は、ある核酸塩基ポリマーが別の核酸塩基ポリマーと塩基対合相互作用して、2本鎖構造、3本鎖構造または4本鎖構造の形成を生じさせることを意味する。アニーリングまたはハイブリダイゼーションは、ワトソン−クリック塩基対合相互作用を経由して生じることがあるが、フーグスティーン塩基対合のような別の水素結合相互作用によってもたらされることもある。
【0033】
(さまざまな例示的実施態様)
ここでは、ポリヌクレオチド試料の複合的解析を行なうための組成物および方法を提示する。いくつかの実施態様において、判別不能な標識を担い、かつ特定の相対的熱融解温度を有する複数のシグナル−クエンチャー核酸塩基オリゴマープローブ対を使用する、Tによってポリヌクレオチド試料の複合的解析を行なうための方法(T複合的解析法)が提供される。例えば、シグナルプローブが標的配列の一領域にハイブリダイズすると、それによって検出可能なシグナルが放出され(すなわちスイッチが入り)、クエンチャープローブが、クエンチできる近さでシグナルプローブにハイブリダイズするとクエンチされる(すなわちスイッチがオフになる)。各クエンチャープローブは、対応するシグナルプローブよりも低いT値をもつことも可能であり、アッセイにおいて使用されるシグナルプローブおよびクエンチャープローブのすべての中で最も高いT値をもつことができる第1のシグナルプローブ以外の各シグナル−クエンチャープローブ対のシグナルプローブは、前記クエンチャープローブ対のクエンチャープローブよりも低いT値をもつことが可能である。特定の相対的T値によって、温度が、さまざまなプローブのT値を含む温度範囲にわたって上昇するか下降すると、シグナルプローブによって産生させるシグナルは、対応するクエンチャープローブが標的配列にハイブリダイズするか、融解して標的配列から離れるかによって、スイッチが入ったり切れたりすることになる。したがって、ポリヌクレオチド試料の1つ以上の標的配列の有無は、温度の関数としてのシグナルのオンやオフの状態によって測定される。
【0034】
複合的解析法を用いて、多くの異なった由来のポリヌクレオチド試料を分析することができる。試料は、1つ以上の異なった標的配列を有すると疑われる1つのポリヌクレオチドを含むことができ、あるいは、それぞれが、0個、1つまたは複数の異なった標的配列を含むかもしれない複数の異なったポリヌクレオチドを含むことも可能である。
【0035】
ここで「標的配列」とは、検出しようとするポリヌクレオチド上の核酸塩基の配列を意味する。当然ながら、標的配列の性質によって、本明細書記載の組成物および方法が制限されるものではない。各標的配列は、ある標的配列を他の標的配列から区別するために使用することができるユニークな核酸塩基配列の一領域を含む。さらに、各標的配列は、他の標的配列と共通で、ある標的配列を他の標的配列から区別するために使用することができない核酸塩基配列の領域を含むことも可能である。標的配列を含む核酸塩基配列は、2本鎖ポリヌクレオチドの同じ鎖上に存在することも(図6A)、2本鎖ポリヌクレオチドの異なった鎖上に存在することも(図6B)可能である。
【0036】
標的配列を含むポリヌクレオチドは、どんな由来から提供されるものであってもよい。例えば、標的配列は、核酸塩基のポリマーもしくはオリゴマー、ポリヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチドの類似化合物、ポリヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチドの模倣化合物、またはキメラオリゴの一部として存在することも可能である。標的配列を含む試料を自然界から提供することもできるし、合成することも、製造過程から供給することも可能である。標的配列は、いかなる由来からも得ることができ、増幅することが可能である。例えば、標的配列は、細胞または生物における増幅プロセスから産生させることができ、さもなければ、細胞または生物から抽出することができる。標的配列の由来となりうる増幅プロセスの例には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、鎖置換増幅法(SDA;例えば、Walker et al.,1989,PNAS 89:392−396;Walker et al.,1992,Nucl.Acids.Res.20(7):1691−1696;Nadeau et al.,1999,Anal.Biochem.276(2):177−187;および米国特許第5,270,184号、第5,422,252号、第5,455,166号および第5,470,723号を参照)、転写媒介性増幅法(TMA)、Q−ベータレプリカーゼ増幅法(Q−beta)、ローリングサークル増幅法(RCA)、Lizardi,1998,Nat.Genetics 19(3):225−232および米国特許第5,854,033号)または非同期PCR(Asynchronous PCR)(例えば、国際公開第01/94638号を参照)などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
本発明に係るシグナルプローブおよびクエンチャープローブは、ポリヌクレオチドの鎖または標的配列を含むポリヌクレオチドの一領域と2本鎖のハイブリッドを形成するように設計することができる。標的配列の領域内において1本鎖状態では存在しないポリヌクレオチドは、検出またはハイブリダイゼーションの前に、そのような領域内で1本鎖になるようにすることができる。増幅によって得られたポリヌクレオチドについては、1本鎖増幅産物を生成するのに適した方法が好適である。1本鎖増幅産物ポリヌクレオチドを生成するのに適した増幅方法の非制限的な例には、T7RNAポリメラーゼによるラン−オフ転写、RCA、非対称PCR(Bachamann et al.,1990,Nucleic Acid Res.,18,1309)、および非同期PCR(国際公開第01/94638号を参照)などがあるが、これらに限定されるものではない。PNA開裂因子を使用する(米国特許第6,265,166号)など、2本鎖ポリヌクレオチドの領域を1本鎖化する周知の方法を用いて、ポリヌクレオチド上に1本鎖の標的配列を生じさせることもできる。
【0038】
シグナルおよびクエンチャーのプローブ対の核酸塩基配列は、一緒に使用して標的配列を検出できるように設計することができる。図1Aは、シグナルプローブおよびクエンチャープローブの核酸塩基配列を、判別用の核酸塩基配列を含む標的配列の領域にハイブリダイズするように設計することができるという実施態様を図解している。ここで「判別用の核酸塩基配列」とは、所定の標的配列にとってユニークで、該標的配列を別の標的配列から区別するために使用できる配列を意味する。
【0039】
別の実施態様において、クエンチャープローブの核酸塩基配列を、判別用の核酸塩基配列を含む標的配列の領域にハイブリダイズするように設計し、シグナルプローブの核酸塩基配列を、非判別的な核酸塩基配列を含む標的配列の領域にハイブリダイズするように設計することができる。ここで、「非判別的な」核酸塩基配列とは、別の標的配列と共通する核酸塩基配列を意味する。例示的な実施態様を図1Bに図示する。
【0040】
さらに別の実施態様において、シグナルプローブの核酸塩基配列を、判別用の核酸塩基配列を含む標的配列の領域にハイブリダイズするように設計し、クエンチャープローブの核酸塩基配列を、非判別的な核酸塩基配列を含む標的配列の領域にハイブリダイズするように設計することができる。例示的な実施態様を図1Cに図示する。
【0041】
上記実施態様は、同一のポリヌクレオチド鎖上に存在する標的配列について図示したものであるが、所定のシグナル−クエンチャーのプローブ対は、ポリヌクレオチドの別々の鎖にハイブリダイズするかもしれない。図6Bは、ポリヌクレオチドの両鎖上に標的配列が存在する実施態様を図解している。これらの実施態様では、シグナルプローブが、ポリヌクレオチドの一方の鎖上に位置する標的配列の一部にハイブリダイズし、一方で、クエンチャープローブは、ポリヌクレオチドの他方の鎖上に位置する標的配列の一部にハイブリダイズする。
【0042】
シグナルプローブとクエンチャープローブの化学組成は、本明細書記載の組成物および方法を成功させる上で決定的に重要ではない。実際に、配列特異的態様で標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズできる任意の核酸塩基オリゴマーを、本明細書記載の組成物および方法に使用することができる。したがって、本明細書記載の組成物および方法に役立つシグナルプローブとクエンチャープローブは、上記したように、オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチドの類似化合物、PNAやキメラオリゴなどオリゴヌクレオチドの模倣化合物を含むが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施態様において、シグナルプローブおよびクエンチャープローブは、ヌクレアーゼ(例えばエキソヌクレアーゼおよび/またはエンドヌクレアーゼ)による分解にたいして抵抗性であってもよい。ヌクレアーゼ抵抗性プローブには、例示であって制限的ではないが、PNAプローブなどのオリゴヌクレオチド模倣プローブなどがある。
【0043】
多くの場合、特異的なシグナル−クエンチャープローブ対のシグナルプローブおよびクエンチャープローブは、同一の化学組成をもつはずである(例えば、どちらもDNAオリゴマーあるいはどちらもPNAオリゴマー)が、そうである必要はない。実際、以下で詳細に考察するように、場合によっては、必要な示差的T値を実現するために、異なった化学組成をもつシグナルプローブとクエンチャープローブを利用することが望ましいかもしれない。
【0044】
さらに、さまざまな異なったシグナルプローブおよびクエンチャープローブの化学組成は同一であっても異なっていてもよい。具体的な例として、シグナルプローブはすべてDNAオリゴマーでもよく、すべてPNAオリゴマーでもよい。あるいは、DNAオリゴマーのものもあれば、PNAオリゴマーのものもあるということでもよい。同様に、クエンチャールプローブはすべてDNAオリゴマーでもよく、すべてPNAオリゴマーでもよい。あるいは、DNAオリゴマーのものもあれば、PNAオリゴマーのものもあるということでもよい。
【0045】
その化学組成に関わらず、シグナルプローブは、標的配列にシグナルプローブがハイブリダイズしたときに検出可能なシグナルを発生させることができるレポーターまたはシグナル標識を含む。シグナル標識は、直接標識、すなわち、それ自体が検出可能な標識であるか検出可能なシグナルを発生させる標識でもよく、あるいは、間接標識、すなわち、別の化合物が存在するときに検出可能なシグナルを発生させる標識でもよい。標識の種類は成功にとって決定的に重要ではないが、標識が、クエンチできる近さでハイブリダイズしたクエンチャープローブによってクエンチできる検出可能シグナルを発生させることが重要である。適当な直接的シグナル標識の例は、フルオロフォア、クロモフォア、化学発光部分などであるが、これらに限定されるものではない。適当な間接的シグナル標識の例は、基質と反応して検出可能なシグナルを発生させることができる酵素(例、アルカリホスファターゼ、ホースラディッシュ・パーオキシダーゼ、リゾチーム、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、乳酸脱水酵素、ウレアーゼなど)、または別の標識に結合できるその他の分子または部分であるが、これらに限定されるものではない。例えば、ストレプトアビジン−化学発光接合体を用いてビオチンを検出することができる。
【0046】
クエンチャープローブは、シグナルプローブ上にあるシグナル標識によって産生される検出可能なシグナルをクエンチすることができるクエンチャー標識を含む。クエンチャープローブが、クエンチできる近さでシグナルプローブにハイブリダイズして、クエンチャー標識がシグナル標識に十分近づき、シグナル標識によって産生される検出可能なシグナルの量が可測的に減少する結果、クエンチが起きる。どの所定のシグナル−クエンチャープローブ対についても、クエンチャー標識とシグナル標識の同一性、シグナル−クエンチャーのプローブ対がどのように標的配列にハイブリダイズするよう設計されているのか、また、シグナルプローブのクエンチャープローブへの近さ(すなわち、シグナルプローブとクエンチャープローブが連続しているか、または、1個以上のヌクレオチドによって隔離されているか)などの要素によって、クエンチは影響を受ける。クエンチャー標識の同一性は、シグナルプローブ上に含まれるシグナル標識の同一性に依存するし、当業者にも明らかである。例えば、シグナルプローブが間接的な酵素標識を含む場合には、クエンチャー標識は、その酵素のインヒビターであろう(例えば、共有結合したインヒビター−DNA−酵素モジュールを含む、DNA検出のためのシステムについて記載しているSaghatelian et al.,2003,J.Am.Chem.Soc.,125:344−345を参照のこと、この文献はその全部が、参照されて本明細書に組み入れられる)。シグナル標識がフルオロフォアであれば、クエンチャー標識は、シグナルであるフルオロフォアの発光をクエンチすることができるフルオロフォア、クロモフォア、またはその他の成分部分であろう(このような種類のシグナル−クエンチャー標識対については、以下で詳細に検討する)。
【0047】
シグナル標識およびクエンチャー標識は、それぞれ、シグナルプローブおよびクエンチャープローブに結合することができ、シグナルプローブとクエンチャープローブが、同一の標的配列上のそれぞれの領域または部位にハイブリダイズすると、クエンチャー標識が、シグナル標識によって産生された検出可能なシグナルをクエンチできるならば、実質的にどの部位で結合してもよい。したがって、シグナル標識とクエンチャー標識は、それぞれ別個に、末端、末端もしくは内部にある核酸塩基、またはシグナルプローブおよびクエンチャープローブの骨格に結合することができる。
【0048】
いくつかの実施態様において、シグナル標識とクエンチャー標識は、それらに対応するシグナルプローブとクエンチャープローブの末端残基で、またはその近傍で結合している(例えば、オリゴヌクレオチドプローブの5’−または3’−末端のヌクレオチド、またはPNAプローブのアミノ末端またはカルボキシル末端の残基)。標識は、核酸塩基あるいは末端で、末端の残基に結合している(例えば、オリゴヌクレオチドプローブの5’−または3’−末端、またはPNAプローブのアミノ末端またはカルボキシル末端)。末端の残基に結合すると、シグナル標識とクエンチャー標識は、シグナルプローブとクエンチャープローブが標的配列にハイブリダイズすると、クエンチできる間隔で好適に方向づけられるよう、反対側の末端に位置できるようになる。例えば、シグナルプローブとクエンチャープローブがオリゴヌクレオチドのとき、シグナル標識が5’末端のヌクレオチドに結合していれば、クエンチャー標識が3’末端のヌクレオチドに置かれなければならず、逆の場合にも同様である。PNAのシグナルプローブおよびクエンチャープローブでは、標識の位置は、プローブが、逆平行か平行のいずれの方向で標的配列にハイブリダイズするよう設計されているかによって決まる。例えば、シグナルとクエンチャーの両プローブが、同一方向で標的配列にハイブリダイズするよう設計されていて、シグナル標識が、シグナルプローブのアミノ末端残基に結合する場合には、クエンチャー標識は、クエンチャープローブのカルボキシル末端残基に結合させなければならない。逆の場合にも同様である。シグナルプローブとクエンチャープローブが、逆方向で標的配列にハイブリダイズするよう設計されている(すなわち、一つが平行、もう一つが逆平行の)場合には、シグナル標識とクエンチャー標識は、同じ種類の末端に結合しなければならない。シグナル標識とクエンチャー標識は、それぞれのプローブのアミノ末端に結合するか、それぞれのプローブのカルボキシル末端に結合しなければならない。
【0049】
クエンチが起きるメカニズムは決定的に重要ではない。クエンチが起こるメカニズムであれば何でも、本明細書記載の方法を実施する際に使用することができる。蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)によって、衝突や直接的な接触など非FRETメカニズム(例えば、Yaron et al.,1979,Analytical Biochemistry 95:228−235を参照)によって、FRETと非FRETメカニズムを組み合わせることによって、または、未解明の単一または複数のメカニズムによってクエンチが起きる。
【0050】
一つの部分から別の部分にエネルギーを移動させることができる色素部分を本明細書記載の方法で使用することができる。いくつかの実施態様において、一つの部分から別の部分にエネルギーを移動させることができる複数の色素部分を、本明細書記載の方法において使用することができる。例えば、一つの部分が第1の供与体として働き、その他の色素部分が、励起エネルギーを受け取って移動させることができる受容体/供与体として働くという、3種類の色素部分を用いることができる。当業者なら理解できるように、多数の色素を含むエネルギー移動カスケードも、本明細書記載の方法において使用することができる。
【0051】
いくつかの実施態様において、色素対の供与体成分から受容体成分にエネルギーを移動させることができる色素対を、シグナル標識およびクエンチャー標識として使用することができる。このような色素対は、当技術分野においてよく知られている。
【0052】
具体的な一例として、クエンチャー部分は、よく知られている現象であるFRET(非放射活性エネルギー移動またはフェルスターエネルギー移動としても知られている)によるシグナルフルオロフォアの蛍光をクエンチできる色素分子でもよい。FRETでは、励起されたフルオロフォア(供与体色素;この場合にはシグナルフルオロフォア)が、その励起エネルギーを別のクロモフォア(受容体色素;この場合にはクエンチャー)に移動させる。このようなFRET受容体すなわちクエンチャーは、それ自体がフルオロフォアでもよく、移動されたエネルギーを蛍光として放出する(蛍光発光性FRETクエンチャーまたは受容体)か、または、非蛍光性で、別の崩壊メカニズムによって移動したエネルギーを放出させてもよい(暗黒性(dark)FRETクエンチャーもしくは受容体)。以下で詳しく論じるように、効率的なエネルギー移動は、FRET供与体と受容体の間の距離だけでなく、FRET供与体の発光スペクトルとFRETクエンチャーまたは受容体の吸光スペクトルの間のスペクトル重複に直接依存する。
【0053】
FRET色素対であるシグナル標識とクエンチャー標識の例は、当技術分野においてよく知られている。例えば、Marras et al.,2002,Nucleic Acids Res.,30(21)e122;Wittwer et al.,1997,Biotechniques 22:130−138;Lay and Wittwer,1997,Clin.Chem.43:2262−2267;Bernard et al.,1998,Anal.Biochem.255:101−107;米国特許第6,427,156号;および米国特許第6,140,054号を参照。これらの開示内容は、参照された本明細書に組み入れられる。
【0054】
いくつかの実施態様において、シグナルプローブのシグナル標識はフルオロフォアであり、クエンチャープローブのクエンチャー標識は、シグナルフルオロフォアの蛍光シグナルをクエンチできる成分部分である。フルオロフォアは当技術分野において既知である。蛍光シグナルをクエンチできる成分部分の例は、ダブシル(Dabcyl)、ダブシルBHQ−1、TMR、QSY−7、BHQ−2、ブラックホールクエンチャー(Biosearch)、およびニトロ基またはアゾ基を有する芳香族化合物などである。
【0055】
別の具体的な実施態様において、クエンチ成分部分は、非FRETメカニズムによって、シグナルフルオロフォアの蛍光をクエンチできる分子またはクロモフォアであるかもしれない。衝突または直接の接触によるクエンチでは、シグナルフルオロフォアとクエンチクロモフォアとの間のスペクトル重複は必要でないが、シグナルフルオロフォアとクエンチクロモフォアは、互いに衝突するのに十分な近さに位置している必要がある。
【0056】
前記したように、供与体(シグナル)と受容体(クエンチャー)の標識間のエネルギー移動の効率は、それらの間の距離に依存しうる。供与体の標識と受容体の標識との間の距離は、シグナルプローブとクエンチャープローブが互いにハイブリダイズできる近さなど、多くの要素によって決まる。したがって、いくつかの実施態様において、シグナルプローブとクエンチャープローブは、標的配列上で互いに連続してハイブリダイズするように設計することができる。シグナルプローブとクエンチャープローブは、標的配列上で互いに非連続的にハイブリダイズするように設計することができる。例えば、1から5個の核酸塩基で、シグナルプローブとクエンチャープローブの間を隔てることができる。典型的には、シグナルプローブとクエンチャープローブを、それらが標的配列にハイブリダイズすると0個から1個の核酸塩基で隔てられるように設計することができる。
【0057】
当業者には認識できるように、標識をプローブに結合させるために使用されるリンカーの長さは、とりわけ、標識がプローブに結合する地点(すなわち、末端の核酸塩基または末端の残基であるか否か)と、シグナルプローブとクエンチャープローブが互いにハイブリダイズする近さによって決まる。例えば、シグナルプローブとクエンチャープローブが、標的配列上で互いに連続してハイブリダイズするように設計されていて、それらに対応する標識が、近接した末端残基に結合していれば、比較的短いリンカーを使用できる。非連続的にハイブリダイズするように設計されたシグナルプローブとクエンチャープローブは、長いリンカーを使用する必要がある。これらの原理はすべて十分に理解されており、当業者は、具体的応用場面に適した標識シグナルプローブおよびクエンチャープローブを規定通りに設計することができる。
【0058】
いくつかの実施態様において、シグナルプローブは、自己指示プローブであってもよい。本明細書において、「自己指示」シグナルプローブは、溶液中に遊離しているときには検出可能なシグナルをほとんど発生させないか、全く発生させない(すなわち、標的配列にハイブリダイズしない)が、標的配列にハイブリダイズすると検出可能なシグナルを発生させるシグナルプローブである。あるいは、自己指示プローブは、溶液中に遊離しているときには、第1の検出可能なシグナルを発生させ、標的配列にハイブリダイズすると、第1の検出可能なプローブとは判別可能な第2の検出可能なシグナルを発生させることもできる。これらの示差的シグナルによって、自己指示プローブは、ハイブリダイズしないと「オフ」になり、ハイブリダイズすると「オン」になる。
【0059】
自己指示プローブの示差的シグナルの性質は決定的に重要ではない。必要なのは、標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズしたときと、ハイブリダイズしなかったときとで、シグナルプローブによって産生されるシグナルを何らかの方法で判別できることである。例えば、示差的シグナルは、ハイブリダイゼーションしたときのシグナル強度の増加または低下であったり、ハイブリダイゼーションしたときの発光スペクトルの変化であったり、蛍光偏光の変化であったり、電気化学的電位の変化であったり、電気化学発光状態の変化であったりすることも可能である。
【0060】
蛍光性自己指示シグナルプローブの使用には多くの利点がある。このような利点の一つは、プローブが溶液中に遊離しているときには、プローブは検出可能なシグナルをほとんどか全く発生させないため、蛍光シグナルのバックグランドレベルが低いせいで、シグナル対ノイズ比が低いことである。もう一つの利点は、溶液中に遊離しているときには、ハイブリダイズしなかったプローブは、検出可能なシグナルをほとんどか全く発生させないため、洗浄段階を省略または最小化できる点である。自己指示プローブを使用することのさらに別の重要な利点は、アッセイを閉鎖系で実施して、試料または将来試料となるもののコンタミネーションを防止できる点である(下記参照)。
【0061】
組成物および方法において自己指示プローブとして使用するために容易に使用できるか、日常的に用いられうる数多くの自己指示プローブが当技術分野において知られている。適当な自己指示シグナルプローブの具体例では、シグナル標識は、1本鎖ポリヌクレオチド対2本鎖ポリヌクレオチドの存在下で示差的なシグナルを発生させる部分である。この性質をもつ部分は、一例として、かつ非制限的に、2本鎖DNAなどの2本鎖ポリヌクレオチドの塩基対の間にインターカレートする色素、および2本鎖DNAなどの2本鎖ポリヌクレオチドの浅い方の溝に結合する色素などである(MGB色素)。このようなインターカレートする色素やMGB色素が数多く知られている。適当なインターカレート色素の具体例は、アクリジンオレンジ、エチジウムブロマイド、ヨウ化プロピジウム、ヨウ化ヘキシウムエチジウムブロマイドのホモダイマー、ヨウ化3,3’−ジエチルチアジカルボシアニン(Wilhelmsson et al.,2002,Nucleic Acids Res.30(2)e3)、SYBR(登録商標)グリーンIおよびSYBR(登録商標)グリーンII(Molecular Probes,Eugene,OR)、7−アミノアクチノマイシンD、アクチノマイシンD(インターカレーションすると吸光度を変化させる非蛍光性色素)、およびMolecular Probes,Eugene,ORから入手できるその他のインターカレート色素(例えば、Molecular Probes Catalog, Sections 8.1を参照。本文献は参照されて本明細書に組み入れられる。
【0062】
適当なMGB色素の具体例は、Hoechst332589、Hoechst33342、およびHoechst34580などのビスベンズイミド色素、ならびにDAPI(4’,6−ジアミノ−2−フェニルインドール)などのインドール色素などであるが、これらに限定されるものではない。また、これ以外のMGB色素をMolecular Probes,Eugene,ORから入手できる(例えば、前記Molecular Probes Catalog, Sections 8.1を参照)。
【0063】
これらのインターカレート色素およびMGB色素は、周知技術を用いてシグナルプローブに連結することができる。インターカレート色素を、シグナルプローブなどの核酸塩基オリゴマーに連結させるのに適した方法が、例えば、米国特許第4,835,263号に記載されており、その開示内容は参照されて本明細書に組み入れられる。MGB色素を、シグナルプローブなどの核酸塩基オリゴマーに連結させるのに適した方法は、例えば、米国特許第5,801,155号、第6,492,346号および第6,486,308号に記載されており、その開示内容は参照されて本明細書に組み入れられる。
【0064】
さらに、自己指示シグナルプローブとして使用するのに適した自己指示プローブの具体例は、二重標識ヘアピン型自己指示プローブである。「ヘアピン型」とは、1本鎖のループ領域と2本鎖のステム領域を含む構造物を意味する。二重標識ヘアピン型プローブは、一方の末端上に供与体分子をもち、他方の末端に受容体分子をもつように設計されている。標的配列にハイブリダイズしないと、受容体分子は、供与体分子によって産生された検出可能なシグナルをクエンチする。ヘアピン型プローブが標的配列にハイブリダイズすると、供与体と受容体は、効率的なエネルギー移動を行なうには大きすぎる距離に隔てられてしまい、受容体は、供与体によって産生されるシグナルを効率的にクエンチできなくなる。したがって、標的配列にハイブリダイズしていないと、ヘアピン型プローブは「オフ」であり(溶液の温度が、ヘアピンステム領域のT値よりも低い場合)、標的配列にハイブリダイズすると検出可能なシグナルを産生する。すなわち、「オン」になる。
【0065】
ヘアピン型自己指示プローブは、当技術分野においてに周知されており(例えば、Tyagi et al.,1996,Nature Biotechnology 14:303−308;Nazarenko et al.,1997,Nucleic Acids Res.25:2516−1521参照。概説としては、Tan et al.,2000、Chem.Eur.J.6:1107;Fang et al.,2000, Anal.Chem.72:747A;これらはすべて参照されて本明細書に組み入れられる)、溶液中でヘアピン型立体構造をとることができる核酸塩基配列を有する。いくつかの実施態様において、ヘアピン型プローブは、一方の末端(例えば3’−末端)にFRET供与体を、もう一方の末端(例えば5’−末端)にFRET受容体を含み、プローブがヘアピン型立体構造になると、FRET受容体が、FRET供与体から産生される検出可能なシグナルをクエンチする。いくつかの実施態様では、非FRETの供与体および受容体が使用される(米国特許第6,150,097号を参照のこと。本文献は、参照されて本明細書に組み入れられる)。ヘアピン型自己指示プローブは、完全にPNAから作製することができる(米国特許第6,355,412号を参照のこと。本文献は、その全体が参照されて本明細書に組み入れられる)。
【0066】
自己指示シグナルプローブとして使用するのに適した自己指示プローブの別の具体例は、直鎖型二重標識プローブである。本明細書において「直鎖型」とは、ヘアピン型立体構造でない立体構造と考えられるプローブを意味する。しかしながら、「直鎖型」という用語は、該プローブが、2次構造または3次構造を含まないという意味ではない。すなわち、直鎖型二重標識プローブは直鎖状でもよいし、ヘアピン型立体構造でない立体構造を想定してもよい。ヘアピン型プローブ同様、二重標識直鎖型プローブは、供与体および受容体を含む。また、ヘアピン型プローブ同様、二重標識直鎖型プローブは、標的配列にハイブリダイズするまで、実質的にクエンチされたままでいることも可能である。自己指示シグナルプローブとして使用するのに適した二重標識直鎖型プローブは、当技術分野においてさまざまなタイプが知られているが、一例を挙げれば、当技術分野において広くTaqMan(登録商標)プローブと呼ばれている二重標識DNAプローブ(例えば、米国特許第5,210,015号、第6,258,569号、および第6,503,720号を参照);Kuhn et al.,2002、J.Am.Chem.Soc.124(6):1097−1103(また、そこで引用されている文献)に記載されている二重標識PNAプローブ、また、米国特許第6,485,901号(また、そこで引用されている文献)にも記載されているものなどがあるが、これらに限定されるものではない。これらの文献は全体が参照されて本明細書に組み入れられる。
【0067】
ヘアピン型および直鎖型の二重標識自己指示プローブを用いる実施態様において、シグナルプローブのシグナル標識は、二重標識されたプローブの供与体に相当する。受容体は、シグナルプローブの対応するクエンチャープローブのクエンチャー標識と同じであってもよいし、異なっていてもよい。スペクトル重複に関係なく、多くの異なった供与体色素からの蛍光シグナルをクエンチできるため、汎用受容体色素として当技術分野において認知されている色素の例はダブシルである。適当なシグナル標識と受容体の選択は、シグナルプローブに結合するのに適した位置とリンカーの選択同様、当業者にとって明らかなことである。
【0068】
適当に標識されたシグナルおよびクエンチャープローブは、常法を用いて合成することができる。例えば、オリゴヌクレオチドプローブを合成する方法が、米国特許第4,973,679号;Beaucage,1992,Tetrahedron 48:2223−2311;米国特許第4,415,732号;米国特許第4,458,066号;米国特許第5,047,524号および米国特許第5,262,530号に記載されており、これらはすべて、その全体が参照されて本明細書に組み入れられる。合成は、例えば、Applied Biosystems,Foster City,CAから入手できる392型,394型,3948型および/または3900型のDNA/RNA合成装置など、市販されている自動合成装置を使用して行なうことができる。
【0069】
標識されたオリゴヌクレオチドプローブを合成する方法も周知されている。具体例としては、国際公開第01/94638号(特に、第16〜21頁の開示内容)を参照のこと。本文献は、その全体が参照されて本明細書に組み入れられる。
【0070】
標識されたオリゴヌクレオチド類似化合物プローブを合成する方法も周知されている。例えば、米国特許第6,479,650号および米国特許第6,432,642号を参照のこと。これら両文献は、その全体が参照されて本明細書に組み入れられる。
【0071】
PNAを化学的に組み立てる方法も周知されている(米国特許第5,539,082号、第5,527,675号、第5,623,049号、第5,714,331号、第5,718,262号、第5,736,336号、第5,773,571号、第5,766,855号、第5,786,461号、第5,837,459号、第5,891,625号、第5,972,610号、第5,986,053号、および第6,107,470号を参照。これらの文献は、その全体が参照されて本明細書に組み入れられる)。PNA合成法に関する一般的な参考書としては、Nielsen et al.,Peptide Nucleic Acids;Protocols and Applications,Horizon Scientific Press, Norfolk England (1999)も参照のこと。
【0072】
PNAを標識する非限定的な方法が、米国特許第6,110,676号、第6,280,964号、現在米国特許第6,355,421号として発行されている国際公開第99/22018号、現在米国特許第6.485,901号として発行されている国際公開第99/21881号、現在米国特許第6,326,479号として発行されている国際公開第99/37670号、および現在米国特許第6,361,942として発行されている国際公開第99/49293号、本明細書の実施例の節に記載されており、または、その他、PNA合成およびペプチド合成の技術分野において周知されている。また、PNAを標識する方法は、Nielsen et al.,Peptide Nucleic Acids;Protocols and Applications,Horizon Scientific Press, Norfolk England (1999)でも検討されている。シグナルおよびクエンチャープローブとして使用できるPNAオリゴマーを標識する非限定的な方法は以下のとおりである。会合の合成化学法は本質的に同じであるから、ペプチドを標識するために広く使用されている方法を用いて、しばしばPNAオリゴマーを標識することができる。
【0073】
PNAキメラの合成、標識および改変には、当業者に既知の方法および上記の方法を利用することができる。PNAキメラの合成、標識および改変に関する適当な参考資料は、現在米国特許第6,063,569号として発行されているWIPO公開特許出願第96/40709号に記載されており、その全体が参照されて本明細書に組み入れられる。さらに、PNA合成および標識のための上記の方法は、しばしば、PNAキメラのPNA部分を改変するためにも利用することができる。また、核酸を合成および標識するための周知の方法も、しばしば、PNAキメラのオリゴヌクレオチド部分を改変するためにも利用することができる。例示的な方法は、米国特許第5,476,925号、米国特許第5,453,496号、米国特許第5,446,137号、米国特許第5,419,966号、米国特許第5,391,723号、米国特許第5,391,667号、米国特許第5,380,833号、米国特許第5,348,868号、米国特許第5,281,701号、米国特許第5,278,302号、米国特許第5,262,530号、米国特許第5,243,038号、米国特許第5,218,103号、米国特許第5,204,456号、米国特許第5,204,455号、米国特許第5,198号、米国特許第540号、米国特許第5,175,209号、米国特許第5,164,491号、米国特許第5,112,962号、米国特許第5,071,9,74号、米国特許第5,047,524号、米国特許第4,980,460号、米国特許第4,923,901号、米国特許第4,786,724号、米国特許第4,725,677号、米国特許第4,659,774号、米国特許第4,500,707号、米国特許第4,458,066号および米国特許第4,415,732号に記載されており、これらの文献は、その全体が参照されて本明細書に組み入れられる。
【0074】
複合的法の基本原理を、2つの異なった標的配列12、14および3組のシグナル−クエンチャーのプローブ対16、22、28を有するポリヌクレオチド10を用いた実施態様を例にして図2Aに示す。各標的配列は、判別配列11、15の領域および非判別配列13、17の領域を含む。第1のシグナル−クエンチャープローブ対は、第1のシグナルプローブ18と第1のクエンチャープローブ20を、第2のプローブ対は、第2のシグナルプローブ24と第2のクエンチャープローブ26を、そして第3のプローブ対は、第3のシグナルプローブ30と選択的な第3のクエンチャープローブ32を含んでいる。図に示すように、各シグナルプローブ18、24、30は、自己指示シグナルプローブであり、19aで示されるシグナル標識と19bで示されるクエンチャー色素(例えばFRET受容体)を含んでいる。クエンチャープローブ20、26、32はすべて、自己指示シグナルプローブ18、24、30のクエンチャー色素と同じクエンチャー標識を含んでいる。図示された実施態様では、シグナルプローブ18、24、30は、標的配列の判別領域にハイブリダイズするよう設計されており、クエンチャープローブ20、26、32は、標的配列の非判別領域にハイブリダイズするよう設計されている。
【0075】
図2Aに図示されているように、T複合的を行なうために、以下のような特定の相対的T値をもつように、さまざまなシグナルプローブとクエンチャープローブが設計されている。T(第1シグナルプローブ18)>T(第1クエンチャープローブ20)>T(第2シグナルプローブ24)>T(第2クエンチャープローブ26)>T(第3シグナルプローブ30)>T(第3クエンチャープローブ22)などである。プローブT値の最小から最大までの範囲はさまざまであろうが、いくつかの実施態様において、この範囲は、約20〜95℃であり、約30〜85℃での範囲であることがより好適である。
【0076】
連続した2つのプローブ間(例えば、第1シグナルプローブ18と第1クエンチャープローブ20、第1クエンチャープローブ20と第2シグナルプローブ24など、ここでは、ΔTプローブと呼ぶ)のT値の違いもさまざまでありうる。いくつかの実施態様において、ΔTプローブは、5℃以上であり、典型的には、約5〜10℃である。ΔTプローブ値の間隔は全部同じでもよいが、異なっていてもよい。
【0077】
連続した2つのシグナル−クエンチャープローブ対間のTの差の値もさまざまでありうる。本明細書において、具体的なシグナル−クエンチャープローブ対のT値は、シグナルプローブのT値である。したがって、連続した2つのプローブ対の差をΔTシグナルプローブと名付けることができる。いくつかの実施態様において、ΔTシグナルプローブは、約7〜15℃以上であり、典型的には、約10〜15℃である。ΔTシグナルプローブ値の間隔は全部同じでもよいが、異なっていてもよい。
【0078】
当業者は認識できるように、1回の複合的Tアッセイに含まれうるシグナル−クエンチャープローブ対の数は、選択されたΔTプローブとΔTシグナルプローブの間隔に一部依存する。さらに詳しく後述するように、さまざまな色の蛍光を発生させるシグナル標識のように判別可能なシグナルプローブ標識を使用することによって、1回の複合的アッセイで複雑さの度合いをさらに加えることができる。
【0079】
当技術分野において周知されているように、特定のプローブのT値は、外的要素(例えば、塩濃度、pHなど)および内的要素(例えば、プローブ濃度、プローブの長さ、GC含量、最近傍の相互作用など)によって決まる(例えば、Wetmur,1991,Crit.Rev.Biochem.Mol.Biol.26:227−259;Wetmur,1995,In:Molecular Biology and Biotechnology,Meyers,Ed.VCH,New York,pp.605−608;Brown et al.,1990,J.Mol.Biol.212:437−440;Gaffney et al.,1989,Biochemstry 28:5881−5889など参照)。プローブと標的配列の間のミスマッチが、プローブのT値を低下させる原因となりうる(例えば、Guo et al.,1997,Nat.Biotechnol.15:331−335;Wallace et al.,1979,Nucleic Acids Res.6:3543−3557を参照)。ミスマッチのタイプも、プローブのT値の低下量に影響を与えうる。例えばG−Tミスマッチのように比較的安定したミスマッチは、DNAプローブのT値を2〜3℃低下させることが知られている(例えば、Bernardet et al.,1998,Anal.Biochem.255:101−107を参照)が、一方、より不安定なC−Aミスマッチは、DNAプローブのT値を8〜10℃変化させることが知られている(例えば、Lay et al.,1997,Clin.Chem.43:2262−2267;Bernard et al.,Am.J.Pathol.153:1055−1061を参照)。ミスマッチの位置と数もプローブのT値に影響することが知られている(例えば、Wallace et al.,1979、前掲参照)。このように、標的配列に対するプローブの配列一致率が、標的配列の相補鎖からプローブが解離して融解する温度に直接影響を与えうる。プローブと標的配列との間の配列の違いまたはミスマッチが大きくなるほど、プローブのT値は低下する。したがって、例えば、標的配列に完全に相補的な配列をもつプローブは、1個以上のミスマッチを含む配列をもつプローブよりも高い温度で解離するはずである。
【0080】
特定のプローブのT値は、その骨格の組成によっても左右されうる。例えば、DNAおよびRNAのオリゴのようなオリゴヌクレオチドプローブは、負に荷電したホスホジエステル骨格を有する。これも負に荷電したホスホジエステル骨格を有するcDNA鎖などの標的配列にハイブリダイズすると、負電荷は互いに反発し合う。これに対して、PNA核酸塩基オリゴマーなどのオリゴヌクレオチド模倣化合物には、DNAおよび/またはRNAのポリヌクレオチドにハイブリダイズしても静電気的に反発しない中性の骨格をもつものがある。糖−グアニジル鎖交を含む核酸塩基ポリマーなどの核酸塩基オリゴマーには、正に荷電していて、標的であるDNAまたはRNAのポリヌクレオチドにハイブリダイズすると静電気的に引かれるものがある。
【0081】
上記の要素は、外在的なものであっても内在的なものであってもすべて、具体的な複合的応用法について適当なT値を有するシグナルプローブおよびクエンチャープローブを設計するために使用することができる。いくつかの実施態様において、シグナルプローブとクエンチャープローブの核酸塩基配列は、標的配列内の領域に完全に相補的になるよう設計することができる。これらの実施態様では、上記した他の要素を合わせることで、必要であればプローブのT値を調整したり変更したりすることができる。
【0082】
また、1個以上の立体構造的にロックされたヌクレオチド(LNAヌクレオチド)をプローブ配列に取り込むことによって、プローブのT値を調整したり変更したりすることができる。LNAヌクレオチドの同一性によって、LNAヌクレオチド当り2〜5℃までプローブのT値を増加させることができる。例えば、立体構造的にロックされたヌクレオチドの二環式チミジン(T)を含むプローブのT値を、1回の修飾あたり2.0〜3.5℃の範囲で上昇させることができる。同様に、二環式シチジン(C)を含むプローブ配列のT値を、1回の修飾あたり2℃以上上昇させることができる。1個よりも多いヌクレオチドをLNAヌクレオチドで置換することによって、より大きな温度変化を実現することができる。例えば、米国特許第6,503,566号、国際公開第99/14226号および国際公開第00/56916号を参照のこと。また、これらの文献はすべて、その全体が参照されて本明細書に組み入れられる。
【0083】
1個以上の二重鎖結合部分(DBM)をプローブに結合されることによって、プローブのT値を調整したり変更したりすることができる。本明細書において、「二重鎖結合部分」または「DBM」とは、ポリヌクレオチドの2本鎖に結合する分子を意味する。シグナルプローブまたはクエンチャープローブに含まれていると、DBMは、ハイブリダイズしたプローブによって形成される二重鎖に結合して、ハイブリッドを安定化させ、T値を増加させる。使用に適したDBMは、インターカレート色素(既述)および浅い方の溝結合(MGB)部分などであるが、これらに限定されるものではない。MGB部分は、MGB色素(既述)を含み、また、ポリヌクレオチドの2本鎖の浅い方の溝に結合する非蛍光分子を含む。使用に適した非蛍光MGB部分は、ネトロプシン、ディスタマイシンおよびレキシトロプシン、ミトラマイシン、クロモマイシンA3、オリボマイシン、アントラマイシン、シビロマイシンなどであり、さらに別の関連抗生物質および合成誘導化合物である、ペンタミジン、スチルバミジンおよびベレニル(berenil)などのジアリールアミジン、CC−1065および関連するピロロインドールおよびインドールポリペプチド、ならびに天然または合成のアミノ酸からなる多くのオリゴペプチドなどであるが、これらに限定されるものではない。
【0084】
さらに適当なMGB部分、また、化学的性質、リンカー、およびそれらが結合するのに適している位置が、米国特許第6,492,346号および第6,486,308号に記載されており、これらの開示内容は、その全体が参照されて本明細書に組み入れられる。
【0085】
蛍光性のDBMが、シグナル標識でないシグナルプローブに含まれる場合には、シグナル標識の発光スペクトルからDBMの発光スペクトルを確実に判別できるように(スペクトルによって分析できるように)注意しなければならない。また、シグナルプローブが標的配列にハイブリダイズしているときにシグナル標識によって産生されるシグナルを、シグナルプローブに含まれるこのようなDBMがクエンチすることのないよう注意を払う必要がある。
【0086】
再び、図2Aを参照すると、標的ポリヌクレオチド10は、シグナル−クエンチャーのプローブ対16、22、28と接触する。標的配列(12および14)とプローブ対が接触するときの条件(例えば、標的/プローブ濃度、塩濃度、pHなど)はさまざまであるが、シグナルプローブとクエンチャープローブのT値を計算および/または実験的に測定した条件によって決めることができる。理想的には、標的配列とプローブ対が接触させられる条件は、シグナルプローブとクエンチャープローブのT値を計算および/または実験的に測定した条件と同じであろう。当業者は、具体的な応用場面に適したハイブリダイゼーション条件を選択することに精通している。
【0087】
本発明に係るプローブおよび標的配列に関するハイブリダイゼーション条件を最適化するために変えることができるハイブリダイゼーション変数は、標的/プローブの濃度、シグナルプローブ/クエンチャープローブの濃度、塩濃度、pH、また、ハイブリダイゼーション用緩衝液のその他の成分などである。ホルムアミドのような不安定化剤を緩衝液に加えることもできる。当業者は、具体的な応用場面についてハイブリダイゼーション条件を最適化するために変えられる適当なハイブリダイゼーション変数を選択することに精通している。
【0088】
ポリヌクレオチド試料10がシグナル−クエンチャープローブ対に接触すると、シグナルプローブのシグナル標識によって産生される検出可能なシグナルを温度の関数として観測する。使用される検出システムは、シグナルプローブ標識によって産生される検出可能なシグナルの性質によって決まり、それは当業者にとって明らかに分かる。蛍光シグナル標識からの発光を(1つ以上の波長で)測定する装置は、さまざまな温度で蛍光シグナル標識からの発光を(1つ以上の波長で)測定する装置として市販されている。このような装置は、一例を挙げれば、Roche(以前はIdaho Technologies)から入手できるLightCycler(商標)計器、およびApplied Biosystems(Foster City、CA)から入手できるPrism(商標)7700、7900、7000配列検出装置などであるが、これらに限定されるものではない。
【0089】
いくつかの実施態様において、シグナルプローブのシグナル標識における発光を、好ましくは、その最大発光波長そのものか、その近傍で、低下する温度の関数として観測する。測定は、第1の温度で発光を得、それよりも低い温度で測定を繰り返すことによって段階的に行なうことができる。あるいは、発光の測定は、継続的に観測するか、温度が下がって行くにつれて不連続な温度点で観測することができる。発光の測定を継続的に観測するとき、温度は、約100〜10,000msecの速度で低下する。発光の測定を不連続な温度点で観測するとき、温度を、約0.01〜5℃/分の範囲の速度で、またはより好ましくは、約0.01〜1℃/分、0.1〜1℃/分または0.5〜1℃/分の範囲で測定する。
【0090】
継続的に観測する場合でも、不連続な温度で観測する場合でも、最も高いT値をもつプローブ(一般的には第1シグナルプローブ)のT値と最も低いT値をもつプローブ(一般的にはn番目のシグナルプローブ、または場合によってn番目のクエンチャープローブ)のT値を含む温度範囲にわたり、シグナルプローブによって産生される検出可能なシグナルを観測する。好適には、すべてのシグナルプローブとクエンチャープローブがハイブリダイズしていないことを保証するのに十分な高温である開始温度から、すべてのシグナルプローブとクエンチャープローブがハイブリダイズしていることが確実な十分に低い最終温度まで、検出可能なシグナルを観測する。30〜85℃の範囲になるT値を有するシグナル−クエンチャープローブ対については、95〜20℃の温度範囲にわたってシグナルプローブの検出可能なシグナルを観測することができる。
【0091】
再び、図2Aを参照すると、シグナルプローブ18、24および30はすべて自己指示型である(すなわち、すべてのシグナルプローブは「オフ」である)ため、第1シグナルプローブ18(分図A)のT値よりも高い開始温度では、すべてのプローブはハイブリダイズしないのでシグナルは検出されない。第1シグナルプローブ18のT値と第1クエンチャープローブ20の間の温度において、シグナルプローブ18が、ポリヌクレオチド10上の標的配列12の相補的な判別領域11にハイブリダイズする(分図B)。この温度では、シグナル標識19aが検出可能なシグナルを産生する(「オン」になる。19cに図示)。第1クエンチャープローブ20と第2シグナルプローブ24のT値の間の温度においては、第1クエンチャープローブ20が、ポリヌクレオチド10上の標的配列12の相補的な非判別領域13にハイブリダイズして、第1シグナルプローブ20のシグナル標識19aによって産生されるシグナルをクエンチする(「オフ」にする)(分図C)。第2シグナルプローブ24と第2クエンチャープローブ26のT値の間の温度では、ポリヌクレオチド10が、第2シグナルプローブ20に相補的な標的配列の領域を含んでいたなら、ポリヌクレオチド10への第2シグナルプローブ24のハイブリダイゼーションが生じるが、図示した例においては、それは生じていない(分図D).したがって、第2シグナルプローブ20はハイブリダイズしないままで、検出可能なシグナルを産生しない(「オフ」のままである)。図示した例では、第2クエンチャープローブ26と第3シグナルプローブ30のT値の間の温度では(分図E)、第2クエンチャープローブ26もハイブリダイズしないままである。第3シグナルプローブ30と選択的な第3クエンチャープローブ32のT値の間の温度では(分図F)、第3シグナルプローブ30がポリヌクレオチド10上の標的配列14の相補的な判別領域17にハイブリダイズして、「オン」の状態にさせる。第3のシグナル−プローブ対28が選択的な第3クエンチャープローブ32を含んでいれば、温度を、ポリヌクレオチド10上にある標的配列14の相補的非判別領域15にハイブリダイズする第3クエンチャープローブ32のT値よりも低くして(分図G)、第3シグナルプローブ30の検出可能なシグナルを「オフ」にすることができる。
【0092】
各シグナルプローブの検出可能なシグナルが「オフ」と「オン」になったことは、温度に対して、検出可能シグナルの強度をプロットすることによって図に表すことができ(例えば、図2B参照)、その結果を、本明細書では、複合的T曲線(またはシグナルプロフィール)と呼ぶ。特定の温度で検出された各シグナルは、特定の標的配列の存在を示す指標である。さらに、シグナルプロフィールの第1導関数を計算して、特定の温度において、検出可能なシグナルが「オン」になることを下降または谷として示し、シグナルが「オフ」になることを上昇またはピークとして示すグラフに描くことができる(例えば図2C参照)。当業者は、どのようにシグナルプロフィールをプロットして、その第1導関数を計算するか知っていよう。さらに、蛍光シグナル標識が使用される場合には、ほとんどの蛍光分光光度計が、その能力をもつソフトウエアとコンピュータを備えていて、所定の間隔で自動的に解析を行なうようプログラムすることができる。
【0093】
あるいは、最も低いプローブT値よりも低い温度から開始して、最も高いプローブT値よりも高い温度で終わる上昇温度の関数として、シグナルプローブの検出可能なシグナルを観測することができる。ここでも、第1の温度での発光を得、それよりも高い温度で測定を繰り返すことによって測定を段階的に行なうことができる。あるいは、発光の測定を、約100〜10,000msecの速度で継続的に観測するか、例えば、約0.01〜5℃/分の範囲の速度で、またはより好ましくは、約0.01〜1℃/分、0.1〜1℃/分または0.5〜1℃/分の範囲で、温度が上昇して行くにつれて不連続な温度点で測定することができる。ハイブリダイゼーションの順序は、図2Aに描かれている順序と逆になる。すなわち、図2Aの分図Gから始まって、図2Aの分図Aで終わる。したがって、解析を始めるときには、相補的プローブはすべて標的配列にハイブリダイズしていて、シグナルプローブはすべて「オフ」になっている。温度が上昇するにつれて、第3クエンチャープローブ32が融解して離れ、第3シグナルプローブ30が「オン」になることができ、その他も同じようになって、全てのプローブが融解して離れ(分図A)、シグナルが検出されなくなる。分図Gから分図Aまでの過程で得られるシグナルプロフィール、およびこのシグナルプロフィールの第1導関数を、それぞれ図2Dおよび2Eに示す。選択的な第3クエンチャープローブ32を使用しない場合には、一連の事象は、図2Aの分図Fから始まり、図2Aの分図Aまで進行することに留意されたい。
【0094】
したがって、アッセイの間、温度を上昇(または増加)させることによって、または、温度を下降(または減少)させることによって、標的配列の存在に対応するシグナルを、温度の関数として検出することができる。したがって、多数のプローブを用いて、1つのポリヌクレオチド上または多数のポリヌクレオチド上にある1つ以上の標的配列を検出することができる。標的配列の存在に対応するシグナルは、温度の関数として検出されるため、いくつかの実施態様では、多数のさまざまな標的配列を検出するための判別可能な、またはスペクトルによって分析可能なシグナル標識を使用する必要はない。各プローブは異なったT値をもち、標的配列の存在に対応するシグナルは温度の関数として検出されるため、複数のシグナルプローブ上で同一のシグナル標識を用いることができる。
【0095】
シグナル−クエンチャープローブ対を利用するT複合的法は、ミスマッチによるハイブリダイゼーションの報告がないため、シグナルプローブの特異性を効果的に高める。この重要で有利な特徴が図3に示されている。図3では、シグナル−クエンチャープローブ対が、一塩基多型性を含むポリヌクレオチド試料に接触している。シグナルプローブとクエンチャープローブのT値の間の温度で、シグナルプローブがその相補配列にハイブリダイズして、検出可能なシグナルを産生する(分図A)。シグナルプローブのT値より低いが、ミスマッチハイブリダイゼーションのT値より高い温度では(分図B)、クエンチャープローブが、3つの多型標的のすべてにハイブリダイズして、ハイブリダイズしたシグナルプローブのシグナルをクエンチする。ミスマッチハイブリダイゼーションのT値よりも低い温度では(分図C)、シグナルプローブが、多型標的の一つに(または、ミスマッチのT値によってはもっと多くに)ハイブリダイズする。しかし、この温度では、クエンチャープローブも多型標的にハイブリダイズするため、ミスマッチしたシグナルプローブは検出可能なシグナルを産生せず、そのシグナルは、隣接してハイブリダイズしたクエンチャープローブによってクエンチされる。クエンチャープローブを使用するため、ミスマッチハイブリダイゼーション現象は観察されない。その結果、シグナルプローブの特異性が効果的に高められる。多型的な標的の存在による干渉を受けることなく、正確な配列解析結果を得ることができる。異なった多型標的に相補的で、異なった判別可能標識をもつ、さらに別のシグナルプローブを使用することによって、1回のアッセイで、3つの多型的な標的配列をすべて正確に同定することができよう。
【0096】
当業者には理解できるように、シグナルプローブが自己指示プローブでなかったら、目的とする標的配列にハイブリダイズしなかった検出可能なシグナルプローブを除去するために、洗浄段階が何回も必要になるか、連続的なフローシステムの使用が必要となる。
【0097】
上記したところから明らかなように、T複合的法とシグナル複合的法の両方を使用することによって、1回の複合的アッセイで同時に同定または解析できる配列の数の複雑さを高めることができる。本明細書において、「シグナル複合的法」とは、シグナルプローブによって産生される検出可能なシグナルに基づいて行なわれる複合的法を意味する。シグナル複合的法では、シグナルプローブの少なくとも一部は、他から判別できる検出可能なシグナルを産生するシグナル標識を含む。このようにして、標的配列の有無は、特定の検出可能なシグナルの有無と相関している。このようなシグナル複合的法は、異なった多型に相補的なプローブを、さまざまなスペクトル分解可能な発光シグナルを放出するフルオロフォアで標識することによって、通常のSNPポリヌクレオチドアッセイ法でも広く使用されている(すなわち、さまざまな色のフルオロフォアで標識される)。
【0098】
二重のTおよびシグナルによる複合的法を、各シグナルプローブ40、42が、第1の色を発色するフルオロフォアで標識されている2つのT複合的のシグナル−クエンチャープローブ対と、シグナルプローブ44が、第2の色を発色するフルオロフォアで標識されている1つのT複合的のシグナル−クエンチャープローブ対を使用する実施態様について図4に図解する。図解されている実施態様において、シグナルプローブはすべて自己指示シグナルプローブである。さらに、当業者は、クエンチャー標識の選択は、選択された特異的なシグナル標識によって決まることは認識しているが、クエンチャープローブはすべて同じクエンチャー標識で標識される。分図Aにおいて、温度は、すべてのプローブのT値よりも高い。その結果、シグナルプローブのいずれも、検出可能なシグナルを産生できない。分図Bでは、温度は、シグナルプローブ42および44のT値よりも低いが、すべてのクエンチャープローブのT値よりは高い。この温度で、シグナルプローブ42は、第1の色のシグナルを放出し、シグナルプローブ44は、第2の色のシグナルを放出する。どちらのシグナルも同じ温度で出現するが、異なった色によって分析することができる。分図Cでは、温度を下げるにつれて、プローブ42と44のシグナルが、それらに対応するクエンチャープローブのハイブリダイゼーションによってクエンチされる。さらに低い温度で(分図D)、シグナルプローブ40は、その相補的な標的配列にハイブリダイズして、第1の色のシグナルを放出する。シグナルプローブ40および42は、同じ色のシグナルを放出するが、異なったT値によって互いを判別することが可能である。最後に、さらに低い温度では(分図E)、シグナルプローブ40に対応するクエンチャープローブは、それに相補的な標的配列にハイブリダイズして、シグナルプローブ40のシグナルをクエンチする。図4から明らかなように、2つの異なった判別可能なシグナルのそれぞれに対応するシグナルプロフィールを得ることによって、数多くの標的配列を解析することができる。
【0099】
この二重のTおよび色による複合的法は、使用できる判別可能な標識の数によってのみ制限される。図4は、単一の第2発色シグナル−クエンチャープローブ対のみの使用を図解しているが、当業者は、特定の温度範囲で判別できるシグナル−クエンチャープローブ対の数によってのみ制限されるが、T複合的のシグナル−クエンチャープローブ対をいくつでも各判別可能な標識に使用できると認識できるはずである。さらに、図4に示すように、異なった判別可能な標識(例えば、色)で標識されたシグナルプローブは、同じT値を有していてもよいし、異なったT値であってもよい。同様に、それらに対応するクエンチャープローブは、異なって標識されたシグナルプローブに対応するT値と同一のT値をもつことも可能であるが、異なっていてもよい。
【0100】
本発明に係るTおよびシグナル−T複合的アッセイ法は、ポリヌクレオチド配列を解析または検出するのに有用なあらゆるタイプのハイブリダイゼーションによるアッセイ法において実際に使用することができる。一定の実施態様において、Tおよびシグナル−T複合的アッセイ法を、増幅反応のエンドポイント解析法として使用することができる。このようなアッセイ法において、シグナル−クエンチャープローブ対は、増幅過程における増幅反応に含ませることも可能であるし、また、増幅が完了したところで反応混合液に加えることも可能である。増幅反応に含まれるとき、シグナルプローブとクエンチャープローブは、好ましくは、増幅反応で使用される酵素によっては作用を受けることのない核酸塩基ポリマー(例えば、PNAオリゴマー)である。増幅後、シグナル標識の検出可能なシグナルを、既に述べたように、温度の関数として観測する。増幅の後にTおよび/または二重T−シグナル複合的解析を行なうのに適した機器は、好ましくは、熱サイクル装置、コンピュータ、レポーター色素を励起するための光源(例えば、整調フィルターをもつレーザーまたはそれ以外の広域スペクトルの光源)、蛍光励起と発光のデータを収集するための光学装置、およびデータ収集と解析のためのソフトウエアを含む。本発明に係る方法において使用するのに適した増幅・検出システムの一例は、ABI PRISM 5700、7000、7700および7900HT検出システムであるが、これらに限定されるものではない。ABIの検出システムは、熱サイクル装置、蛍光検出ユニット、および、本発明に係る方法を用いて、増幅の各サイクルの間標的配列のリアルタイム検出を行なうための応用特異的ソフトウエアを含み、増幅反応後にさらに精製または解析を行なうことなく、検出された標的ポリヌクレオチドを定量的に測定した結果を提供する。
【0101】
(標的ポリヌクレオチドを検出するためのキット)
本明細書記載の方法で使用される組成物と試薬をパッケージしてキットにすることができる。いくつかの実施態様において、このキットは、感染症、遺伝的疾患、または細胞性疾患に関連する標的配列を検出するため、したがって、そのような疾患を診断するために使用することができる。
【0102】
このような診断用キットは、例えば、標識されたシグナル−クエンチャープローブ対および選択的な増幅用プライマーを含むことも可能である。プローブまたはプライマーが非標識の状態で供給される場合には、特異的標識試薬もキット中に含ませることができる。また、このキットは、例えば、緩衝液、dNPT、および/または重合手段(例えば、逆転写酵素および/またはDNAポリメラーゼ)など、選択的な増幅に必要な、また、例えば、酵素および固相抽出剤など、検出解析に必要な別の適当なパッケージ化された試薬および材料、そして、アッセイ法を実施するための説明書を含むこともできる。
【0103】
いくつかの実施態様において、キットは、一つ以上のポリヌクレオチドの複数の遺伝子座における変異または多型性の有無を判定するために使用することができ、1)第1の標的配列にあるポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができ、それにハイブリダイズすると第1の検出可能なシグナルを発生させることができる第1のシグナルプローブ;2)第1のシグナルプローブとして同じ標的配列にクエンチできる近さでハイブリダイズすることができ、クエンチできる近さでそれにハイブリダイズすると、第1のシグナルプローブのシグナルをクエンチすることができる第1のクエンチャープローブであって、第1のシグナルプローブのT値よりも低いT値をもつ第1のクエンチャープローブ;3)第2の標的配列にある同じか異なるポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができ、それにハイブリダイズすると第2の検出可能なシグナルを発生させることができる第2のシグナルプローブであって、第1のクエンチャープローブのT値よりも低いT値をもつ第2のシグナルプローブ;および4)第2のシグナルプローブとして同じ標的配列にクエンチできる近さでハイブリダイズすることができ、クエンチできる近さでそれにハイブリダイズすると、第2のシグナルプローブのシグナルをクエンチすることができる選択的な第2のクエンチャープローブであって、第2のシグナルプローブのT値よりも低いT値をもつ選択的な第2のクエンチャープローブを含む。
【0104】
(本願の方法および組成物の診断への応用)
いくつかの実施態様において、本明細書記載の組成物および方法は、感染症、遺伝的疾患、または細胞性疾患に関連する標的配列を検出して、そのような疾患を診断するために使用することができる。より具体的には、本明細書記載の組成物および方法を用いて、そのような疾患に関連する変異または配列の多様性(例えば、遺伝子型判定)、および、例えば一塩基多型性(SNPs)などの多型性を検出することができる。
【0105】
標的配列は、細菌(古細菌などの極限環境微生物を含む)、真菌、昆虫、魚、貝、は虫類、および/または哺乳類など、原核生物および真核生物から得ることができる。適当な哺乳類は、齧歯類(ラット、マウス、ハムスター、モルモットなど)、霊長類、家畜動物(ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマなど)およびヒトであるが、これらに限定されるものではない。
【0106】
いくつかの実施態様において、本明細書記載の組成物および方法を用いて、一定の疾患に関連するSNPを検出することができる。例えば、SNP、特にコード配列の中および近傍にあるSNPには、治療上関連のある表現型変異体および/または病気の素因の直接の原因である可能性のあるものもある。臨床上重要な表現型をもたらす、数多くのよく知られている多型がある。例えば、apoE2/3/4変異体は、アルツハイマー病およびその他の病気のさまざまな相対的リスクと関連がある(Corder et al.,(1993)Science 261:828−9参照)。
【0107】
いくつかの実施態様において、遺伝子診断にプローブを使用することができる。例えば、本明細書に開示されている技術を用いて、非腺腫性大腸癌の遺伝子、BRCA1乳癌遺伝子、さまざまな癌に関連するP53、アルツハイマー病の大きなリスクを示すApoE4遺伝子などの標的配列を検出するために本明細書に開示された技術を用いて作製することができ、患者、嚢胞性線維症遺伝子中の変異、またはその他当技術分野において周知のもののいずれかの簡単な発症前スクリーニングが可能になる。
【0108】
いくつかの実施態様において、本明細書記載の組成物および方法を用いて、診断および/または遺伝子型判定のために細菌の配列を検出することができる。細菌の配列は、枯草菌;コレラ菌などのビブリオ菌;腸管毒素原性大腸菌などの大腸菌;志賀赤痢菌などの赤痢菌;ネズミチフス菌などのサルモネラ菌;ヒト結核菌、ハンセン菌などのマイコバクテリウム;ボツリヌス菌、破傷風菌、クロストリジウム・ディフィシレ、クロストリジウム・パーフリンジェンスなどのクロストリジウム菌;ジフテリア菌などのコリネバクテリア;化膿連鎖球菌、肺炎連鎖球菌などの連鎖球菌;黄色ブドウ球菌などのブドウ球菌;インフルエンザ菌などのヘモフィルス菌;髄膜炎菌、淋菌などのナイセリア菌;ペスト菌などのエルシニア菌;緑膿菌、シュードモナス・プチダなどのシュードモナス菌;クラミジア・トラコマチスなどのクラミジア菌;百日咳菌などのボルデテラ菌;梅毒トレポネーマなどのトレポネーマ菌など、興味の対象となる幅広い種類の病原性および非病原性の原核生物から得ることができる。
【0109】
いくつかの実施態様において、本明細書記載の組成物および方法を用いて、診断および/または遺伝子型判定のためにウイルスの配列を検出することができる。どのウイルス由来のウイルス配列でも、本明細書記載の組成物および方法を用いて遺伝子型判定または同定を行なうことができる。特に関心があるのは、ヒトの病気の原因となるRNAウイルスおよびDNAウイルスである。例えば、ピコルナウイルス科(例、ポリオウイルス1−3、A型肝炎)、カリシウイルス科、アストロウイルス科、トガウイルス科、フラビウイルス科(例、C型肝炎(HCV))、コロナウイルス科、パラミクソウイルス科、ラブドウイルス科(例、狂犬病)、フィロウイルス科(例、エボラウイルス)、オルトミクソウイルス科(例、A型およびB型のインフルエンザ)、ブニヤウイルス科、アレナウイルス科、レオウイルス科、ビルナウイルス科、およびレトロウイルス科(例、ヒトT細胞リンパ腫ウイルス(HTLV)、ヒト免疫不全ウイルス)に属するウイルスRNAウイルスを、本明細書記載の組成物および方法を用いて検出できる。同様に、ヘパドナウイルス科(B型肝炎)、サーコウイルス科、パルボウイルス科、パピローマウイルス科(ヒトパピローマウイルス)、ポリオーマウイルス科、アデノウイルス科、ヘルペスウイルス科(ヒトサイトメガロウイルス、ポックスウイルス科、およびイリドウイルス科に属するDNAウイルスを、本明細書記載の組成物および方法を用いて検出できる。Fields「Virology」(2001)、第4版、Lippincott−Raven Publishers, Philadelphia,第1巻および2巻参照;これらは、その全体が参照されて本明細書に組み入れられる。
【0110】
例えば、いくつかの実施態様において、本明細書記載の組成物および方法を用いて「ウイルス特異的配列」を検出することができる。本明細書において「ウイルス特異的配列」とは、あるウイルスにとって遺伝子型特異的配列を有する標的配列を意味する。本明細書において、「遺伝子型特異的配列」とは、特定のウイルスの遺伝子型を同定し、少なくとも一つの別のウイルス遺伝子型、好ましくは3から5種類の別のウイルス遺伝子型、最も好ましくは、他のすべての遺伝子型からそのウイルス遺伝子型を判別する配列を意味する。したがって、本明細書記載の方法では、遺伝子型特異的配列のプローブは、特定のウイルス遺伝子型を同定する配列に特異的に結合することによって、さまざまなウイルスの遺伝子型を区別する。
【0111】
ウイルスの遺伝子型特異的配列を選択する方法は、当技術分野において知られている。例えば、既知のHCV配列を整列させて、ある遺伝子型を他の遺伝子型から区別する、配列間の変異をさがすことによって、HCVの遺伝子型特異的配列を選択することができる。さらに、HCV配列を単離し配列決定して、既知のHCV配列と比較することができる。特に、HCVの全長RNAゲノムのDNA相補配列がクローニングされているので(Kato et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.87:6547−6549(1990);Choo et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:2541−2455(1991);Okamoto et al.,J.Gen.Virol.,72:2697−2704(1991);Okamoto et al.Virology 188:331−341(1992))ので、HCV遺伝子型特異的配列を選択するために利用することができる。HCV単離株(例えば、患者の試料から)を単離して配列決定する方法、ならびにHCV遺伝子型特異的配列を選択する方法は、当技術分野においてよく知られている。さらに、既知または単離された配列を整列して、既知または単離された配列間の違いまたは変異に基づいてHCV遺伝子型特異的配列を選択する方法も、当技術分野においてよく知られている(例えば、Lieven et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:10134−10138(1994);Leiven et al.,Journal of Clinical Microbiology,34(9):2259−2266(1996)参照)。
【0112】
例えば、DNASTAR,Inc.のLasergeneソフトウエアパッケージを用いて、目的とする配列を整列させることができる。アラインメントの結果に基づいて、可能性のあるプローブを同定して、2次構造の程度について解析する。次に、可能性のあるプローブのT値を計算して、必要があれば、T値を調整して所望のT値を得る。そして、プローブを合成して、実際のT値を測定する。実際のT値が、所望のT値と相当に異なっていたら、改変したプローブを設計して合成する。T値を予測/計算するために多くの刊行物を利用することが可能である。例えば、Santa Lucia et al.,1996,Biochemistry,35:3555−3562、およびGiessen et al.,1998,Nucleic Acids Research,26:5004−5006を参照のこと。
【0113】
ウイルスによっては、ウイルスゲノムのいくつかの領域を利用して、プローブの配列を設計することができる。例えば、HCVゲノムのいくつかの領域が、遺伝子型判定およびHCV単離株の分類に関連して調べられている。例えば、HCVの329から340塩基対の非構造(NS)5B領域、コア領域、および5’非翻訳領域が、HCVの遺伝子型判定の既知の方法において利用されている領域である(例えば、Stuyver et a1,1995,Virus Res.38:137−157;Tokita et al.,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:11022−11026;Widell et al,1994,J.Med.Virol. 44:272−279;Okamoto et al.,1993,J.Gen.Viro1. 74:2385−2390;Smith et al.,1995,J.Gen.Virol.76:1749−1761参照。これらの文献は全体が参照されて本明細書に組み入れられる)。
【0114】
本明細書記載の方法では、シグナルプローブがそれぞれ、異なったウイルス遺伝子型特異的配列に結合するウイルス複合的アッセイ法において、多数のプローブを用いて複数のウイルス遺伝子型を同定することができる。例えば、1回の複合的アッセイで3種類の異なったシグナルプローブを使用して、3種類の異なったウイルス遺伝子型特異的配列の存在を検出することができる。したがって、シグナルプローブは、それぞれ、異なったウイルス遺伝子型特異的配列に相補的な判別配列を含む。同様に、1回の複合的アッセイで3種類の異なったクエンチャールプローブを使用して、3種類の異なったウイルス遺伝子型特異的配列の存在を検出することができる。各クエンチャープローブは、異なったウイルス遺伝子型特異的配列に相補的な判別配列を含む。
【0115】
以下の実施例は、開示されている組成物および方法を具体化したものであり、本明細書記載の組成物および方法の範囲を制限するものではない。本明細書記載の組成物および方法の精神と範囲を逸脱することなく、さまざまな変更および修正を加えうることは当業者に明らかであり、本明細書記載の組成物および方法をさまざまな用法および状態に適合させることができる。したがって、他の実施態様も包含される。
【0116】
2003年2月18日に出願された米国特許出願第60,448,440号の明細書の内容はすべて、その全体が参照されて、また、あらゆる目的のために本明細書に組み入れられる。
【実施例】
【0117】
(実施例1:T複合的解析法を用いた標的配列判別法)
複合的アッセイ法が、さまざまな標的配列を明確に判別できることが、4種類の異なった標的配列に特異的なシグナル−クエンチャープローブ対によって実証された。標的、シグナルプローブおよびクエンチャープローブの配列を下の表1に示す。色素「DYE1」の構造を以下に示す。
【0118】
【化2】

シグナルプローブは、アミノ末端をDYE1(シグナル標識)で、カルボキシル末端をダブシル成分(非蛍光クエンチャー)で標識した自己指示直鎖型PNAプローブであった。Dye1およびダブシルは、表1に示すように、それぞれの末端に直接結合しているか、アミノ酸リンカーを用いて間隔をおいて結合していた。
【0119】
【表1−1】

【0120】
【表1−2】

表1では、Lysはアミノ酸L−リジンで、Gluはアミノ酸L−グルタミン酸である。
【0121】
ABI Prism(登録商標) 7700配列検出装置上でT複合的解析法を実施した。各アッセイは、1種類の高TPNAシグナルプローブ(PNA1またはPNA2)およびそれに対応する標的DNA、1種類の低TPNAシグナルプローブ(PNA3またはPNA4)およびそれに対応する標的DNAを含んでいた。高低低Tプローブの各組み合わせで、アッセイを2回、すなわち、PNAクエンチャープローブであるPNA5とともに1回、PNA5なしで1回行った。クエンチャープローブは、PNA1プローブおよびPNA2プローブがハイブリダイズする位置から1塩基下流の位置で標的配列とハイブリダイズする。各アッセイの試料容量は50μLで、5μLの10XTaqManバッファーA(Applied Biosystems、Foster City、CA)、および1μLの各プローブ、標的、およびクエンチャーを含んでいた。シグナルプローブと標的の最終濃度は、別段の記載がない限り0.2μMであった。クエンチャープローブの最終濃度は0.4μMであった。
【0122】
アッセイのために、試料を速やかに95℃まで加熱して、0.33℃/分の速さで90℃から30℃までの蛍光データを収集した。すべてのアッセイを3回反復して行った。Dye1の蛍光シグナルは、配列検出装置のソフトウエアを用いて測定した。これらのシグナルの導関数(導関数プロフィール)は、蛍光分光光度計装置と同梱されていた解離曲線ソフトウエアを用いて計算した。
【0123】
シグナルプローブPNA2とPNA4を用いて行われたアッセイのための蛍光シグナルの導関数プロフィールを図5Aに示した。シグナルプローブPNA1とPNA3を用いて行われたアッセイのための蛍光シグナルの導関数プロフィールを図5Bに示した。各図において、プラス記号(「+」)を付されたプロフィールは、クエンチャープローブ存在下で行われたアッセイから得られたものである。マイナス記号(「−」)を付されたプロフィールは、クエンチャープローブ不在下で行われたアッセイから得られたものである。既に述べたように、図5Aでは、PNAシグナルプローブのPNA4を2倍濃度(0.4μM)で用いた。
【0124】
図5Aを参照して、「+」のプロフィールを温度が低下するのを追って(右から左に)見てみると、谷の後にピークがあり、その後にもう一つの谷が観察される。同じように「−」プロフィールを見ると、谷があるだけで、はっきりしたピークは見られない。2つのアッセイの唯一の違いは、第1の高Tシグナルプローブ(PNA2シグナルプローブ)からのシグナルを「オフにする」クエンチャープローブの存在である。PNA2シグナルプローブのT値は約77℃であり、一方、PNA4シグナルプローブのT値は約66℃である(約11℃の差が得られる)。クエンチャープローブ(PNA5)のT値は約72℃である。90〜30℃の範囲で温度を下げると、プローブがハイブリダイズする順序は、PNA2>PNA5>PNA4の順である。「+」プロフィールで見られた谷−ピーク−谷は、明確にプローブ−クエンチャーのハイブリダイゼーションがあったことを示している。これに対して、「−」曲線で観察された谷は、PNA2とPNA4のシグナルプローブが、それぞれのT値でハイブリダイズしてできた蛍光シグナルの混成物である。特定のT値そのものか、その近傍にあるピークおよび谷として現れる結果のシグナルは、プローブと標的のこの特定の組み合わせの診断である。
【0125】
図5Bのプロフィールは、図5Aのプロフィールと同様である。この実験では、両シグナルプローブが0.2μMで存在していた。ここでも、非常にはっきりした谷−ピーク−谷という形跡が、クエンチャープローブが存在する場合に得られたプロフィール(「+」プロフィール)において明らかである。クエンチャープローブがない場合に得られたプロフィール(「−」プロフィール)も、谷−ピーク−谷という形跡を示しているが、明確ではない。この例では、2つのシグナルプローブにおけるT値の差は、この前の例における差よりも大きい(TPNA1≒79℃;TPNA3≒64℃;約15℃の差が得られる)。
【0126】
上記実施例は、T複合的アッセイ法が、密接な関係にある配列を明確に区別できることを実証しているが、このアッセイ法は、一定の疾患状態と関連している多型を判別するためにも利用することができる。臨床上重要な表現型をもたらす周知の多型性が数多くある。例えば、apoE/3/4変異体は、アルツハイマー病およびその他の病気のさまざまな相対的リスクと関連があり(Corder et al.,(1993)Science 261:828−9参照)、鎌状赤血球貧血、フェニルケトン尿症、血友病、嚢胞性線維症、およびさまざまな癌が、一つ以上の遺伝子変異と関連づけられてきた。これらの病気と関連する一塩基変異を検出できるようにプローブ対を設計することができる。
【0127】
(実施例2:T複合的解析法は、シグナルプローブの特異性を効果的に高める)
本実施例は、T複合的解析法が、シグナルプローブの特異性を効果的に高めて、非常に密接な関係にある標的配列を判別できることを実証する。
【0128】
例えば、実施例1で説明された実験と同様の実験を、PNA1プローブにミスマッチを1つ含む標的DNAを用いて行った。この実験では、シグナルプローブ−標的配列ハイブリッドのT値が、クエンチャープローブ−標的ハイブリッドのT値よりも低かったため、PNA1プローブからのシグナルは、「+」導関数プロフィールに記録されなかった。クエンチャープローブがまずハイブリダイズするため、低い温度では、シグナルプローブからのシグナルがクエンチされて観察されなかった(とても弱いシグナルだけが観察された)。クエンチャープローブが欠如している時には、シグナルは低い温度で観察された。したがって、ミスマッチハイブリッドからのシグナルをクエンチすることによって、クエンチャープローブを使用することでシグナルプローブの特異性を効果的に高めた。
【0129】
(実施例3:T複合的解析法を用いた遺伝子型判別法)
複合的アッセイ法が、特定のHCV遺伝子型配列に特異的なシグナル−クエンチャープローブ対および合成したHCV特異的DNA標的によって、近縁のHCV遺伝子型配列を明確に判別できることを実証した。プローブと標的配列の配列を、下の表2に示す。Dye1は、実施例1で使用したものと同じ色素である。下線を施したヌクレオチドは、シグナルプローブがハイブリダイズする配列を示している。
【0130】
【表2】

実施例1に記載したように複合的解析を行った。図7は、5つのPNAと表2に示した3つの(合成)DNA分子を含むハイブリダイゼーション実験からの蛍光の一次導関数を示している。蛍光シグナルの増加は、一次導関数において、冷却曲線における谷に対するピークとして現れる。用いた温度範囲は、図7のX軸に示されている。試料は3回反復で行った。95℃から30℃までの19:59分の冷却ステップの後、19:59分間にわたって30℃から95℃まで加熱してデータを集めた。
【0131】
5種類のハイブリダイゼーションが起きたことは図7で明らかである。これらの事象は、約56℃、68℃および83℃で観察された3つのピークと、約63℃と76℃で観察された2つの谷によって示されている。これらの結果は、本発明に係る方法を用いて、近縁の配列を容易に判別できることを示している。
【0132】
本明細書で引用されている参考文献はすべて、その全体が、あらゆる目的のために参照して本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1A】図1Aは、シグナルプローブとクエンチャープローブがともに、クエンチできる近さで標的配列を他の標的配列から区別するために使用することができる「識別力のある」核酸塩基配列を含む標的配列の一領域にハイブリダイズするように設計されているシグナル−クエンチャーのプローブ対を具体的に例示するものである。
【図1B】図1Bは、シグナルプローブが、標的配列を試料中に存在しうる他の標的配列から区別するために使用することができる「識別力のある」核酸塩基配列を含む標的配列の領域にハイブリダイズするように設計されていて、クエンチャープローブが、「識別力のない」核酸塩基配列を含む標的配列の一領域にハイブリダイズするように設計されているシグナル−クエンチャーのプローブ対を具体的に例示するものである。
【図1C】図1Cは、クエンチャープローブが、「識別力のある」核酸塩基配列を含む標的配列の領域にハイブリダイズするように設計されていて、シグナルプローブが、「識別力のない」核酸塩基配列を含む標的配列の一領域にハイブリダイズするように設計されているシグナル−クエンチャーのプローブ対を具体的に例示するものである。
【図2A】図2Aは、3種類の異なった自己指示(self−indicating)型シグナルプローブが、判別不能なシグナル標識を担い、標的配列の区別領域にハイブリダイズするという例を示して、T複合的法の基本原理を図示したものである。
【図2B】図2Bは、図2Aの例から、低下する温度の関数として得られたなシグナルの理論的プロフィールを示している。
【図2C】図2Cは、図2Bのシグナルプロフィールの理論的第1導関数のプロフィールを示している。
【図2D】図2Dは、図2Aの例から、上昇する温度の関数として得られたシグナルの理論的プロフィールを示している。
【図2E】図2Eは、図2Dのシグナルプロフィールの理論的第1導関数のプロフィールを示している。
【図3】図3は、シグナル−クエンチャーのプローブ対によるT複合的の有利な特徴の1つを図示したものである。
【図4】図4は、2倍のTと色の複合的を使用する例(すなわち、第1の蛍光シグナル標識で標識されたシグナル−クエンチャープローブ対の第1のセット、および異なった色の第2の蛍光シグナル標識で標識されたシグナル−クエンチャープローブ対の第2のセット)を図示したものである。
【図5A】図5Aは、本明細書に記載されたT複合的法を用いて得られたアッセイの実際のシグナルプロフィールを示している。
【図5B】図5Bは、図5Aのシグナルプロフィールの第1導関数を示す。
【図6A】図6Aは、シグナル−クエンチャーのプローブ対が、ポリヌクレオチドの同一鎖上にある標的配列にハイブリダイズする例を図示したものである。
【図6B】図6Bは、シグナル−クエンチャーのプローブ対が、ポリヌクレオチドの別の鎖上にある標的配列にハイブリダイズする例を図示したものである。
【図7】図7は、実施例3に記載されたハイブリダイゼーション実験から得られたシグナルプロフィールの第1導関数を示している。







【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つ以上の標的配列について、ポリヌクレオチド試料を分析する方法であって、該方法は、以下:
一つ以上の標的配列を含むと推定されるポリヌクレオチド試料を、(i)第1の標的配列の少なくとも一部にハイブリダイズし得、それにハイブリダイズする場合、第1の検出可能なシグナルを発生し得る第1のシグナルプローブ;(ii)該第1のシグナルプローブにクエンチする近さでハイブリダイズし得、クエンチする近さでそれにハイブリダイズする場合、該第1のシグナルプローブのシグナルをクエンチし得る第1のクエンチャープローブであって、該第1のシグナルプローブのTよりも低いTを有する第1のクエンチャープローブ;(iii)第2の標的配列の少なくとも一部にハイブリダイズし得、それにハイブリダイズする場合、第2の検出可能なシグナルを発生し得る少なくとも第2のシグナルプローブ;および(iv)該第2のシグナルプローブにクエンチする近さでハイブリダイズし得、クエンチする近さでそれにハイブリダイズする場合、該第2のシグナルプローブのシグナルをクエンチし得る任意の第2のクエンチャープローブであって、該第2のシグナルプローブのTよりも低いTを有する該任意の第2のクエンチャープローブと接触させる工程;
該シグナルプローブの検出可能なシグナルを、温度の関数としてモニタリングする工程;ならびに
該ポリヌクレオチド試料に一つ以上の標的配列が存在するか否かをそれから決定する工程、を包含する、方法。
【請求項2】
前記第1の検出可能なシグナルおよび第2の検出可能なシグナルが、蛍光シグナルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の蛍光シグナルおよび第2の蛍光シグナルがスペクトル分解可能である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のシグナルプローブのTが、前記第2のシグナルプローブのTよりも高い、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のクエンチャープローブのTが、前記第1のシグナルプローブのTよりも約5〜10℃低い範囲にあり、そして前記任意の第2のクエンチャープローブのTが、前記第2のシグナルプローブのTよりも約5〜10℃低い範囲にある、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の蛍光シグナルおよび第2の蛍光シグナルがスペクトル分解可能ではなく、そして、前記第2のシグナルプローブが前記第1のクエンチャープローブよりも低いTを有する、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のクエンチャープローブのTが、前記第1のシグナルプローブのTよりも約5〜10℃低い範囲にあり、そして前記任意の第2のクエンチャープローブのTが、前記第2のシグナルプローブのTよりも約5〜10℃低い範囲にある、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第2のシグナルプローブのTが、前記第1のシグナルプローブのTよりも約7〜15℃低い範囲にある、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の蛍光シグナルおよび第2の蛍光シグナルが同一である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記任意の第2のクエンチャープローブが存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のシグナルプローブおよび第2のシグナルプローブが自己指示シグナルプローブである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記自己指示プローブがヘアピン型プローブである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1のシグナル、第1のクエンチャー、第2のシグナル、および任意の第2のクエンチャープローブが、ヌクレアーゼによる分解に抵抗性である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のシグナル、第1のクエンチャー、第2のシグナル、および任意の第2のクエンチャープローブが、それぞれ互いに独立に、DNA核酸塩基オリゴマー、RNA核酸塩基オリゴマー、およびPNA核酸塩基オリゴマーからなる群より選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のシグナル、第1のクエンチャー、第2のシグナル、および任意の第2のクエンチャープローブが、すべてDNA、RNAまたはPNAの核酸塩基オリゴマーである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記自己指示プローブが直鎖型自己指示プローブである、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記第1のシグナル、第1のクエンチャー、第2のシグナル、および任意の第2のクエンチャープローブが、ヌクレアーゼによる分解に抵抗性である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1のシグナル、第1のクエンチャー、第2のシグナル、および任意の第2のクエンチャープローブが、それぞれ互いに独立に、DNA、RNAおよびPNAの核酸塩基オリゴマーからなる群より選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記第1のシグナル、第1のクエンチャー、第2のシグナル、および任意の第2のクエンチャープローブが、すべてDNA、RNAまたはPNAの核酸塩基オリゴマーである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1のシグナル、第1のクエンチャー、第2のシグナル、および任意の第2のクエンチャープローブが、すべてPNAの核酸塩基オリゴマーである、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
各自己指示プローブが、ハイブリダイズしなかったシグナルプローブからハイブリダイズしたシグナルプローブを区別し得る標識を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項22】
前記標識が蛍光性のインターカレート色素である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記蛍光性インターカレート色素が、アクリジンオレンジ、エチジウムブロマイド、ヨウ化プロピジウム、ヨウ化ヘキシジウム、エチジウムブロマイドのホモダイマー、ヨウ化3,3’−ジエチルチアジカルボシアニン、SYBR(登録商標)グリーンIおよびSYBR(登録商標)グリーンII、7−アミノアクチノマイシンD、およびアクチノマイシンDからなる群より選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記標識が蛍光性の浅い方の溝に結合する色素である、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記蛍光性の浅い方の溝に結合する色素が、Hoechst 332589、Hoechst 33342、およびHoechst 34580などのビスベンズイミド色素、ならびにDAPI(4’,6−ジアミノ−2−フェニルインドール)などのインドール色素からなる群より選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記検出可能なシグナルが、前記第1シグナルプローブのTよりも高い温度から、前記任意の第2のクエンチャープローブのTよりも低い温度まで低下する温度の関数としてモニタリングされる、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記検出可能なシグナルが、前記シグナルプローブおよびクエンチャープローブのTにほぼ等しい温度でモニタリングされる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記検出可能なシグナルが、前記シグナルプローブとクエンチャープローブのTとのほぼ中間の温度でモニタリングされる、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記温度が、約0.01℃/分〜約5℃/分の範囲内の割合で低下する、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記検出可能なシグナルが、温度の関数として、約100ミリ秒〜10,000ミリ秒毎の範囲の割合で連続してモニタリングされる、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記検出可能なシグナルが、前記任意の第2のクエンチャープローブのTよりも低い温度から、前記第1のシグナルプローブのTよりも高い温度まで上昇する温度の関数としてモニタリングされる、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記検出可能なシグナルが、前記シグナルプローブおよびクエンチャープローブのTにほぼ等しい温度でモニタリングされる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記検出可能なシグナルが、前記シグナルプローブおよびクエンチャープローブのTの中間の温度でモニタリングされる、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記温度が、約0.01℃/分〜約5℃/分の範囲内の割合で上昇する、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記検出可能なシグナルが、温度の関数として、約100ミリ秒〜10,000ミリ秒毎の範囲の割合で連続してモニタリングされる、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記検出可能なシグナルが、前記第1のシグナルプローブおよび第2のシグナルプローブのTを決定することによって、温度の関数としてモニタリングされる、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
前記ポリヌクレオチド試料が、ゲノムDNA、cDNA、RNA、mRNA、rRNAおよび増幅産物からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
前記ポリヌクレオチド試料が1本鎖である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記ポリヌクレオチド試料が、2つ以上の異なったポリヌクレオチドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項40】
前記標的配列が、2つ以上のポリヌクレオチド上に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
前記標的配列が、同一のポリヌクレオチド鎖上に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
前記標的配列が、2つの異なったポリヌクレオチド鎖上に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
一つ以上の標的配列について、ポリヌクレオチド試料を分析する方法であって、該方法は、以下:
ポリヌクレオチド試料を、(1)m個のシグナル−クエンチャープローブ対の第1のセットであって、それぞれ、(i)標的配列の一部にハイブリダイズし得、それにハイブリダイズする場合、第1の検出可能なシグナルを発生させ得るシグナルプローブ、および(ii)該シグナルプローブにクエンチする近さでハイブリダイズし得、クエンチする近さでそれにハイブリダイズする場合、その検出可能なシグナルをクエンチし得る、対応するクエンチャープローブを含む、第一のセットであって、ここで、該第1のシグナルプローブがもっとも高いTを有し、各クエンチャープローブのTが、それに対応するシグナルプローブのTよりも低く、各シグナルプローブのTが、該シグナル−クエンチャープローブ対の該クエンチャープローブのTよりも低く、そして、さらに、最も低いTを有する該第1のセットの該シグナル−クエンチャープローブ対の該クエンチャープローブが任意である、第1のセット;ならびに(2)n個のシグナル−クエンチャープローブ対の第2のセットであって、それぞれ、(i)標的配列の一部にハイブリダイズし得、それにハイブリダイズする場合、該第1の検出可能なシグナルと区別可能な第2の検出可能なシグナルを発生させ得るシグナルプローブ、および(ii)該シグナルプローブにクエンチする近さでハイブリダイズし得、クエンチする近さでそれにハイブリダイズする場合、その検出可能なシグナルをクエンチし得る、対応するクエンチャープローブを含む第2のセットであって、ここで、各クエンチャープローブのTが、それに対応するシグナルプローブのTより低く、各シグナルプローブのTが、該シグナル−クエンチャープローブ対の該クエンチャープローブのTより低く、そして、さらに、最も低いTを有する該第2のセットの該シグナル−クエンチャープローブ対のクエンチャープローブが任意である、第2のセットと接触させる工程;
該第1および第2の検出可能なシグナルを、温度の関数としてモニタリングする工程;ならびに、
該ポリヌクレオチド試料に一つ以上の標的配列が存在するか否かを決定する工程;
を包含する、方法。
【請求項44】
mが、1〜10までの範囲の整数であり、nが1〜10までの範囲の整数である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
各シグナル−クエンチャープローブ対のシグナルプローブとクエンチャープローブとの間のTの差が、約5〜10℃の範囲である、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記第1のセットのシグナルプローブのTが、約7〜15℃の温度範囲で互いに異なり、前記第2のセットのシグナルプローブのTが、約7〜15℃の温度範囲で互いに異なる、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
前記第1のセットの各シグナルプローブのTが、直前のシグナル−クエンチャープローブ対のクエンチャープローブのTよりも約5〜10℃の範囲で低く、前記第2のセットの各シグナルプローブのTが、直前のシグナル−クエンチャープローブ対のクエンチャープローブのTよりも約5〜10℃の範囲で低い、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
前記第1のセットおよび第2のセットのプローブのTが、約20℃〜約90℃の範囲である、請求項43に記載の方法。
【請求項49】
請求項43に記載の方法であって、該方法は、さらに、p個のシグナル−クエンチャープローブ対の第3のセットを含み、該第3のセットのそれぞれが、標的配列の一部にハイブリダイズし得、前記第1の判別可能なシグナルおよび第2の判別可能なシグナルから判別され得る第3の検出可能なシグナルを発生させ得るシグナルプローブ、および、該シグナルプローブにクエンチする近さでハイブリダイズし得、クエンチする近さでそれにハイブリダイズする場合、その検出可能なシグナルをクエンチし得る、対応するクエンチャープローブを含み、ここで、各クエンチャープローブのTが、それに対応するシグナルプローブのTよりも低く、各シグナルプローブのTが、前記シグナル−クエンチャープローブ対の前記クエンチャープローブのTよりも低く、そして、さらに、最も低いTを有するシグナル−クエンチャープローブ対のクエンチャープローブが選択的であり;そして、第1、第2および第3の検出可能なシグナルが温度の関数としてモニタリングされる、方法。
【請求項50】
前記検出可能なシグナルが蛍光シグナルである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前期選択的なクエンチャープローブが存在する、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記シグナルプローブが自己指示シグナルプローブである、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
各自己指示シグナルプローブが、ヘアピン型の自己指示プローブである、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
各自己指示プローブが、直鎖型の自己指示プローブである、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
各自己指示シグナルプローブが、ハイブリダイズしたシグナルプローブをハイブリダイズしていないシグナルプローブから区別し得る標識を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
前記プローブが、ヌクレアーゼによる分解に抵抗性である、請求項49に記載の方法。
【請求項57】
各プローブが、DNA核酸塩基オリゴマー、RNA核酸塩基オリゴマー、およびPNA核酸塩基オリゴマーからなる群より独立に選択される、請求項49に記載の方法。
【請求項58】
各プローブがPNA核酸塩基オリゴマーである、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記ポリヌクレオチドサンプルが、ゲノムDNA、cDNA、RNA、mRNA、rRNAおよび増幅産物からなる群より選択される、請求項49に記載の方法。
【請求項60】
前記標的配列が同一のポリヌクレオチド鎖上に存在する、請求項49に記載の方法。
【請求項61】
前記標的配列が、2つの異なったポリヌクレオチド鎖上に存在する、請求項49に記載の方法。
【請求項62】
前記検出可能なシグナルが、前記第1シグナルプローブのTよりも高い温度から、前記選択的な第2のクエンチャープローブのTよりも低い温度まで低下する温度の関数としてモニタリングされる、請求項49に記載の方法。
【請求項63】
前記検出可能なシグナルが、前記シグナルプローブおよびクエンチャープローブのTにほぼ等しい温度でモニタリングされる、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記検出可能なシグナルが、前記シグナルプローブのTとクエンチャープローブのTとの中間の温度でモニタリングされる、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
前記温度が、約0.01℃/分〜約5℃/分の範囲内の割合で低下する、請求項62に記載の方法。
【請求項66】
前記検出可能なシグナルが、温度の関数として、約100ミリ秒〜10,000ミリ秒の範囲の割合で連続してモニタリングされる、請求項62に記載の方法。
【請求項67】
前記検出可能なシグナルが、前記選択的な第2のクエンチャープローブのTよりも低い温度から、前記第1のシグナルプローブのTよりも高い温度まで上昇する温度の関数としてモニタリングされる、請求項49に記載の方法。
【請求項68】
前記検出可能なシグナルが、前記シグナルプローブおよびクエンチャープローブのTにほぼ等しい温度でモニタリングされる、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記検出可能なシグナルが、前記シグナルプローブのTとクエンチャープローブのTとの中間の温度でモニタリングされる、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
前記温度が、約0.01℃/分〜約5℃/分の範囲内の割合で上昇する、請求項67に記載の方法。
【請求項71】
前記検出可能なシグナルが、温度の関数として、約100ミリ秒〜10,000ミリ秒毎の範囲の割合で連続してモニタリングされる、請求項67に記載の方法。
【請求項72】
前記検出可能なシグナルが、前記第1のシグナルプローブおよび第2のシグナルプローブのTを決定する工程によって、温度の関数としてモニタリングされる、請求項49に記載の方法。
【請求項73】
生物の遺伝子型を判定する方法であって、該方法は、以下:
該生物からのポリヌクレオチド試料、またはそれの増幅産物を、第1の複数のシグナル−クエンチャープローブ対と接触させる工程であって、該シグナル−クエンチャープローブ対のそれぞれは、種々の遺伝子型特異的配列に、クエンチする近さでハイブリダイズして、分析可能な温度依存的オン−オフハイブリダイゼーションプロフィールを生成し得る、工程;
該シグナル−クエンチャープローブ対に対して、温度依存的オン−オフハイブリダイゼーションプロフィールを得る工程、および
該生物の遺伝子型をそれから決定する工程、
を包含する、方法。
【請求項74】
請求項73に記載の方法であって、各シグナル−クエンチャーのプローブ対が、それぞれの遺伝子型特異的配列にハイブリダイズする場合、検出可能な蛍光シグナルを発生するシグナルプローブ、および、該シグナルプローブにクエンチする近さでハイブリダイズする場合、該シグナルプローブの検出可能な蛍光シグナルをクエンチするクエンチャープローブを含む、方法。
【請求項75】
前記シグナルプローブによって発生される前記検出可能な蛍光シグナルが、スペクトル分解可能ではない、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
少なくとも1つのシグナルプローブによって発生される前記検出可能な蛍光シグナルが、他のシグナルプローブによって発生される検出可能な蛍光シグナルからスペクトル分解され得る、請求項73に記載の方法。
【請求項77】
ウイルスの遺伝子型を判定する方法であって、該方法は、以下:
ウイルス由来のポリヌクレオチドサンプル、またはそれの増幅産物を、第1の複数のシグナル−クエンチャープローブ対と接触させる工程であって、該シグナル−クエンチャープローブ対のそれぞれが、種々のウイルス遺伝子型特異的配列に、クエンチする近さでハイブリダイズして分析可能な温度依存的オン−オフハイブリダイゼーションプロフィールを生み出し得る、工程;
該シグナル−クエンチャープローブ対に対して、温度依存的オン−オフハイブリダイゼーションプロフィールを得る工程、および
該ウイルスの遺伝子型をそれから決定する工程、
を包含する、方法。
【請求項78】
前記ウイルスがC型肝炎ウイルス(HCV)である、請求項73に記載の方法。
【請求項79】
請求項69または77に記載の方法であって、種々の遺伝子型特異的配列に、クエンチする近さでハイブリダイズして分析可能な温度依存的オン−オフハイブリダイゼーションプロフィールを生み出し得る第2の複数のシグナル−クエンチャープローブ対をさらに含む、方法。
【請求項80】
請求項79に記載の方法であって、前記第1の複数の各シグナル−クエンチャーのプローブ対が、それぞれの遺伝子型特異的配列にハイブリダイズする場合、第1の検出可能な蛍光シグナルを発生するシグナルプローブ、および、クエンチする近さでそれにハイブリダイズする場合、該シグナルプローブの蛍光シグナルをクエンチするクエンチャープローブを含み、そして、該第2の複数の各シグナルプローブが、それぞれの遺伝子型特異的配列にハイブリダイズする場合、第2の検出可能な蛍光シグナルを発生するシグナルプローブ、および、クエンチする近さでそれにハイブリダイズする場合、該シグナルプローブの蛍光シグナルをクエンチするクエンチャープローブを含み、ここで、第1および第2の検出可能な蛍光シグナルが互いからスペクトル分解可能である、方法。
【請求項81】
前記第1の複数が、2〜10個のシグナル−クエンチャープローブ対を含み、前記第2の複数が、2〜10個のシグナル−クエンチャープローブ対を含む、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記シグナルプローブが自己指示シグナルプローブである、請求項73〜81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
前記自己指示シグナルプローブが自己指示直鎖型PNAプローブである、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記遺伝子型特異的配列が、同一のポリヌクレオチド鎖上に存在する、請求項73または77に記載の方法。
【請求項85】
前記遺伝子型特異的配列が、異なったポリヌクレオチド鎖上に存在する、請求項73または77に記載の方法。
【請求項86】
目的のポリヌクレオチド配列の存在についてサンプルを分析する方法であって、該方法は、以下:
該試料からのポリヌクレオチド、またはそれの増幅産物を、第1の複数のシグナル−クエンチャープローブ対に接触させる工程であって、該シグナルクエンチャープローブ対のそれぞれが、種々の既知の標的配列に、クエンチする近さでハイブリダイズして、分析可能な温度依存的オン−オフハイブリダイゼーションプロフィールを生み出し得る、工程;
該シグナル−クエンチャープローブ対に対して、温度依存的オン−オフハイブリダイゼーションプロフィールを得る工程、および
1つ以上の異なる標的配列の有無を決定する工程、
を包含する、方法。
【請求項87】
請求項86に記載の方法であって、前記第1の複数の各シグナル−クエンチャープローブ対のそれぞれが、それぞれの標的配列にハイブリダイズする場合、第1の検出可能な蛍光シグナルを発生させるシグナルプローブ、および、該シグナルプローブにクエンチする近さでハイブリダイズする場合、該シグナルプローブの検出可能な蛍光シグナルをクエンチするクエンチャープローブを含む、方法。
【請求項88】
請求項86に記載の方法であって、前記第1の複数が、1個〜n個までのシグナル−クエンチャープローブ対を含み、ある対の各クエンチャープローブのTが、前記シグナルプローブのTよりも低く、各n番目のシグナルプローブのTが、1つ前の(n−1)番目のクエンチャープローブのTよりも低い、方法。
【請求項89】
第2の複数のシグナルクエンチャープローブ対をさらに含む請求項86に記載の方法であって、該シグナルクエンチャープローブ対のそれぞれは、種々の既知の標的配列に、クエンチする近さでハイブリダイズして、分析可能な温度依存的オン−オフハイブリダイゼーションプロフィールを生み出し得る、方法。
【請求項90】
請求項89に記載の方法であって、前記第2の複数の各シグナル−クエンチャーのプローブ対が、それぞれの標的配列にハイブリダイズする場合に第2の検出可能な蛍光シグナルを発生するシグナルプローブ、および、クエンチする近さでシグナルプローブにハイブリダイズする場合、シグナルプローブの蛍光シグナルをクエンチするクエンチャープローブを含み、ここで、該第1の検出可能な蛍光シグナルおよび第2の検出可能な蛍光シグナルが互いからスペクトル分解可能である、方法。
【請求項91】
請求項89に記載の方法であって、前記第1の複数が、1〜m個までのシグナル−クエンチャープローブ対を含み、そして、前記第2の複数が、1〜n個までのシグナル−クエンチャープローブ対を含み、ここで、各対のクエンチャープローブが、そのシグナルプローブよりも低いTを有し、該第1の複数の各m番目のシグナルプローブが、その1つ前の(m−1)番目のクエンチャープローブのTよりも低いTを有し、そして、該第2の複数の各シグナルプローブが、その1つ前の(n−1)番目のクエンチャープローブのTよりも低いTを有する、方法。
【請求項92】
前記シグナルプローブが自己指示シグナルプローブである、請求項86〜91のいずれか1項に記載の記載の方法。
【請求項93】
前記自己指示シグナルプローブが自己指示直鎖型PNAプローブである、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
生物のポリヌクレオチドの遺伝子型を判定する複合的方法であって、該方法は、以下:
複数の遺伝子型特異的アンプリコンおよび複数のシグナル−クエンチャープローブ対を生成するのに適した増幅プライマーの存在下でポリヌクレオチドを増幅する工程であって、該各シグナル−クエンチャーのプローブ対が、種々の遺伝子型特異的アンプリコンに、クエンチする近さでハイブリダイズし得、分析可能な温度依存的オン−オフハイブリダイゼーションプロフィールを生み出し得る、工程;
該シグナル−クエンチャープローブ対に対して、温度依存的オン−オフハイブリダイゼーションプロフィールを得る工程、および
それから該生物の遺伝子型を決定する工程、
を包含する、方法。
【請求項95】
前記増幅プライマーが遺伝子型特異的ではない、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記増幅プライマーが遺伝子型特異的である、請求項94に記載の方法。
【請求項97】
前記ポリヌクレオチドが、ヒト、動物、細菌、真菌およびウイルスからなる群より選択される生物由来である、請求項94に記載の方法。
【請求項98】
前記生物が、C型肝炎ウイルス(HCV)、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、ヒト免疫不全症ウイルス(HIV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、およびサイトメガロウイルス(CMV)からなる群より選択される、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記ポリヌクレオチドがHCVのポリヌクレオチドである、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記プライマーが、HCVポリヌクレオチドの5’非翻訳領域を増幅する、請求項94に記載の方法。
【請求項101】
前記HCVポリヌクレオチドが、HCV RNA、またはそれから誘導されたcDNAである、請求項99に記載の方法。
【請求項102】
前記シグナル−クエンチャープローブ対が、直鎖型のPNA自己指示プローブである、請求項94に記載の方法。
【請求項103】
目的の疾患について患者を診断する複合的方法であって、該方法は、以下:
該患者に由来するポリヌクレオチドサンプルを、複数のシグナル−クエンチャープローブ対の存在下でインキュベートする工程であって、ここで、該シグナルクエンチャープローブ対のそれぞれは、目的の特定の疾患を示す種々の標的配列に、クエンチする近さでハイブリダイズし得、それにハイブリダイズする場合、分析可能な温度依存的オン−オフハイブリダイゼーションプロフィールを生み出し得る、工程、
該シグナル−クエンチャープローブ対に対して、温度依存的オン−オフハイブリダイゼーションプロフィールを得る工程、および
それから該患者が目的の疾患を有しているか否かを決定する工程、
を包含する、方法。
【請求項104】
目的の疾患について患者を診断する複合的方法であって、該方法は、以下:
該患者に由来するポリヌクレオチドサンプルを、複数の異なったアンプリコンを生成させるのに適した増幅プライマー、および複数のシグナルクエンチャープローブ対の存在下で増幅する工程であって、該アンプリコンのそれぞれが、種々の目的の疾患と関連し、そして、該シグナルクエンチャープローブ対のそれぞれが、種々のアンプリコンに、クエンチする近さでハイブリダイズし得、分析可能な温度依存的オン−オフハイブリダイゼーションプロフィールを生み出し得る、工程
該シグナル−クエンチャープローブ対に対して、温度依存的オン−オフハイブリダイゼーションプロフィールを得る工程、および
それから該患者が目的の疾患に有するかを否かを決定する工程、
を包含する、方法。
【請求項105】
複合ポリヌクレオチド分析のためのキットであって、該キットは、複数のシグナルクエンチャープローブ対を備え、該対のそれぞれは、クエンチする近さで種々の標的配列にハイブリダイズし得、そして、そのそれぞれの標的配列の存在下で分析可能な温度依存的オン−オフハイブリダイゼーションプロフィールを生み出し得る、キット。
【請求項106】
請求項105に記載のキットであって、各シグナル−クエンチャーのプローブ対が、そのそれぞれの標的配列の一部にハイブリダイズする場合、検出可能な蛍光シグナルを発生するシグナルプローブ、および該シグナルプローブに、クエンチする近さでハイブリダイズする場合、該シグナルプローブの検出可能な蛍光シグナルをクエンチするクエンチャープローブを備える、キット。
【請求項107】
請求項105に記載のキットであって、前記複数のシグナル−クエンチャープローブ対が、1個からn個までの範囲の数であり、ここで、選択的なn番目のクエンチャープローブのTが、そのそれぞれのn番目のシグナルプローブのTよりも低く、n番目のシグナルプローブのTが、その前の(n−1)番目のクエンチャープローブのTよりも低い、キット。
【請求項108】
前記シグナルプローブがヘアピン型自己指示プローブである、請求項105に記載のキット。
【請求項109】
前記シグナルプローブが直鎖型自己指示プローブである、請求項105に記載のキット。
【請求項110】
前記シグナルプローブが直鎖型自己指示PNAプローブである、請求項105に記載のキット。
【請求項111】
前記シグナルプローブが、蛍光シグナルを発生させ得る、請求項105に記載のキット。
【請求項112】
前記シグナルプローブのすべてが、同一の蛍光発生性レポーター色素で標識される、請求項105に記載のキット。
【請求項113】
1つ以上のポリヌクレオチドの複数の遺伝子座に変異または多型があるか否かを決定するためのキットであって、該キットは、第1の標的配列の一領域でポリヌクレオチドとハイブリダイズして、それにハイブリダイズする場合、第1の検出可能な蛍光シグナルを発生させ得る第1のシグナルプローブ、該第1のシグナルプローブと同一の標的配列の別の領域に、クエンチする近さでハイブリダイズして、クエンチする近さでそれにハイブリダイズする場合、該第1のシグナルプローブのシグナルをクエンチし得、該第1のシグナルプローブのTよりも低いTを有する第1のクエンチャープローブ、第2の標的配列の一領域で同一かまたは異なったポリヌクレオチドにハイブリダイズして、それにハイブリダイズする場合、第2の検出可能な蛍光シグナルを発生させ得、該第1のクエンチャープローブのTよりも低いTを有する第2のシグナルプローブ、および、該第2のシグナルプローブと同一の標的配列の別の領域に、クエンチする近さでハイブリダイズして、クエンチする近さでそれにハイブリダイズする場合、該第2のシグナルプローブのシグナルをクエンチし得、該第2のシグナルプローブのTよりも低いTを有する任意の第2のクエンチャープローブを備える、キット。
【請求項114】
前記第1のシグナルプローブおよび第2のシグナルプローブがヘアピン型自己指示プローブである、請求項113に記載のキット。
【請求項115】
前記第1のシグナルプローブおよび第2のシグナルプローブが直鎖型自己指示プローブである、請求項113に記載のキット。
【請求項116】
前記第1のシグナルプローブおよび第2のシグナルプローブが直鎖型自己指示PNAプローブである、請求項113に記載のキット。
【請求項117】
前記第1のシグナルプローブおよび第2のシグナルプローブの全てが、同一の蛍光発生性レポーター色素によって標識される、請求項113に記載のキット。
【請求項118】
ポリヌクレオチドの1つ以上の標的配列を増幅する工程に適した増幅プライマーをさらに備える、請求項105〜117のいずれか1項に記載のキット。
【請求項119】
ポリメラーゼをさらに備える、請求項118に記載のキット。
【請求項120】
増幅に適したヌクレオシド三リン酸をさらに備える、請求項119に記載のキット。

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

image rotate

image rotate

image rotate

image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2007−535893(P2007−535893A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503683(P2006−503683)
【出願日】平成16年2月18日(2004.2.18)
【国際出願番号】PCT/US2004/004815
【国際公開番号】WO2004/074447
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(505310541)アプレラ コーポレイション (12)
【Fターム(参考)】