説明

ポリヌクレオチド含有サンプルの処理

ポリヌクレオチド(例えば、DNA)を処理する方法及びシステムが開示される。処理領域は、リガンドで改質された1つ又は2つ以上の表面(例えば、粒子表面)を有し、リガンドは、ポリヌクレオチドを第1の組をなす条件(例えば、温度及びpH)下で回復させ、ポリヌクレオチドを第2の組をなす条件(例えば、高い温度及び(又は)より基本的なpH)下で放出する。例えばサンプルのポリヌクレオチドを濃縮すると共に(或いは)増幅反応の抑制物質をポリヌクレオチドから分離するのに処理領域を利用することができる。処理領域を備えたマイクロフルイディック(microfluidic)デバイスが開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願の説明〕
本願は、2004年5月3日に出願された米国仮特許出願第60/567,174号及び2005年1月21日に出願された米国仮特許出願第60/645,784号の権益主張出願であり、これら米国仮特許出願を参照により引用し、これらの記載内容全体を本明細書の一部とする。
【0002】
本発明は、ポリヌクレオチド含有サンプルを処理する方法及び関連のシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
生物学的サンプルの分析では、サンプル中に存在する1つ又は2つ以上のポリヌクレオチドを検出するステップが実施される場合が多い。検出の一例は、定性的検出であり、この定性的検出は、例えば、ポリヌクレオチドの存在の判定及び(又は)突然変異のタイプ、サイズ、存否及び(又は)ポリヌクレオチドの配列に関連付けられた情報の判定に関する。別の検出例は、定量的検出であり、これは、例えば、ポリヌクレオチドの存在量の測定に関している。検出は、定量的側面と定性的側面の両方を含む場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポリヌクレオチドを検出するには、酵素を用いる場合が多い。例えば、或る検出法の中には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるポリヌクレオチドの増幅又は関連の増幅技術を含むものがある。検出法の中には、ポリヌクレオチドを増幅しないものもあり、この検出法も又、酵素を利用する。しかしながら、かかる技術に用いられる酵素の機能発揮は、検出されるべきポリヌクレオチドと一緒に存在する抑制物質の存在により阻害される場合がある。抑制物質は、例えば酵素の効率及び(又は)特異性を邪魔する場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一特徴は、1つ又は2つ以上のポリヌクレオチドを処理する(例えば、ポリヌクレオチドを濃縮するため及び(又は)ポリヌクレオチドの検出及び(又は)増幅を阻害する恐れのある抑制物質(例えば、ヘモグロビン)からポリヌクレオチドを分離するため)方法及び関連システムに関する。
【0006】
幾つかの実施形態では、この方法は、ポリヌクレオチドを抑制物質とは対照的にポリヌクレオチドと優先的に結び付く(例えば、保持する)比較的不動化された化合物又は構成物(compound)に接触させるステップを含む。例示の構成物は、ポリカチオンポリアミド(例えば、ポリ−L−リジン)及び(又は)ポリ−D−リジン)であり、これは、表面(例えば、1つ又は2つ以上の粒子の表面)に結合可能である。かかる構成物は、ポリヌクレオチドを保持し、ポリヌクレオチドと抑制物質を、例えば表面をかかる構成物及び関連のポリヌクレオチドで洗浄することにより分離できるようにする。分離の際、ポリヌクレオチドと構成物の結合は、壊されてポリヌクレオチドを構成物及び表面から放出させる(例えば、分離する)ことができる。
【0007】
幾つかの実施形態では、表面(例えば、1つ又は2つ以上の粒子の表面)は、ポリカチオンポリアミドで改質され、これは、表面に共有結合できる。ポリカチオンポリアミドは、ポリ−L−リジン及びポリ−D−リジンのうち少なくとも一方を含むのがよい。幾つかの実施形態では、ポリカチオンポリアミド(例えば、ポリ−L−リジン及びポリ−D−リジンのうちの少なくとも一方)は、約7,500Daの平均分子量を有する。ポリカチオンポリアミド(例えば、ポリ−L−リジン及びポリ−D−リジンのうち少なくとも一方)は、約35,000Da以下の平均分子量(例えば、約30,000Da以下の平均分子量(例えば、約25,000Daの平均分子量))を有するのがよい。ポリカチオンポリアミド(例えば、ポリ−L−リジン及びポリ−D−リジンのうち少なくとも一方)は、少なくとも約15,000Daのメジアン分子量を有するのがよい。ポリカチオンポリアミド(例えば、ポリ−L−リジン及びポリ−D−リジンのうち少なくとも一方)は、約25,000Da以下のメジアン分子量(例えば、約20,000Da以下のメジアン分子量(例えば、約20,000Daのメジアン分子量)を有するのがよい。
【0008】
本発明の別の特徴は、サンプル調製装置であって、ポリカチオンポリアミドが結合された表面と、この表面と連通状態にあり、表面を流体サンプルに接触させるサンプル導入通路とを有するサンプル調製装置に関する。
【0009】
幾つかの実施形態では、サンプル調製装置は、表面と接触状態にある水性液を少なくとも約65℃まで加熱するよう構成された熱源を更に有する。
【0010】
幾つかの実施形態では、サンプル調製装置は、pHが少なくとも約10(例えば、約10.5以上)の液体のリザーバを更に有する。サンプル調製装置は、表面を液体に接触させるよう構成されている(例えば、圧力源を作動させて液体を移動させることによって)。
【0011】
幾つかの実施形態では、表面は、複数の粒子の表面から成る。
【0012】
幾つかの実施形態では、ポリカチオンポリアミドは、ポリ−L−リジン及びポリ−D−リジンを含む。
【0013】
本発明の別の特徴は、サンプルを処理する方法であって、液体及び或る量のポリヌクレオチドを含む混合物を用意するステップと、保持部材をこの混合物に接触させるステップとを有するサンプル処理方法に関する。保持部材は、ポリメラーゼ連鎖反応抑制物質と比較して、ポリヌクレオチドを優先的に保持するよう構成されている。混合物中の液体の実質的に全てを保持部材から分離する。ポリヌクレオチドを保持部材から放出する。
【0014】
ポリヌクレオチドは、約7.5Mbp以下のサイズを有するのがよい。
【0015】
液体は、第1の液体であるのがよく、液体の実質的に全てを分離するステップは、保持部材を第2の液体に接触させるステップを含むのがよい。
【0016】
保持部材を第2の液体に接触させるステップは、熱作動式圧力源を作動させて圧力を第2の液体に加えるステップを含むのがよい。保持部材を第2の液体に接触させるステップは、熱作動式弁を開放させて第2の液体を保持部材に流体連通させるステップを含むのがよい。
【0017】
第2の液体の容積は、約50マイクロリットル以下であるのがよい。
保持部材は、ポリヌクレオチドを優先的にポリメラーゼ連鎖反応抑制物質(例えば、ヘモグロビン、ペプチド、糞便構成物、フミン酸、粘膜構成物、DNA結合タンパク質、又はサッカリド)に結合するよう構成された構成物から成る表面を有するのがよい。
【0018】
表面は、ポリリジン(ポリ−L−リジン及びポリ−D−リジン)を含むのがよい。
【0019】
第2の液体は、洗浄剤(例えば、SDS)を含むのがよい。
【0020】
放出ステップは、保持部材を少なくとも約50℃(例えば、約60℃)の温度まで加熱するステップを含むのがよい。温度は、加熱中、保持部材の存在下では液体を沸騰させるには不十分であるのがよい。温度は、100℃以下(例えば、100℃未満、約97℃以下)であるのがよい。温度を約10分以内の間(例えば、約5分以内の間、約3分以内の間)維持するのがよい。
【0021】
放出を、保持部材の遠心分離を行わないで実施するのがよい。
【0022】
或る特定の実施形態では、PCR抑制物質は、迅速に臨床サンプルから除去されていつでもPCRが可能な状態のサンプルが作られる。この方法は、実質的に抑制物質の無いポリヌクレオチド含有サンプルの調製ステップを有するのがよい。サンプルを熱的方法、化学的方法、超音波を用いた方法、機械的方法、静電気を用いた方法及び他のライシング(細胞の融解)法に起因して生じた例えば粗溶解質から調製できる。サンプルを遠心分離を用いないでも調製することができる。マイクロフルイディックデバイス(microfluidic device)を用い又は大規模にサンプルを調製することができる。
【0023】
本発明の別の特徴は、結合状態のポリリジン、例えばポリ−L−リジンから成る保持部材、例えば複数個の粒子、例えばビーズ並びに関連方法及びシステムに関する。保持部材は抑制物質と比較して優先的にポリヌクレオチド、例えばDANに結合する。保持部材を用いると、次の処理、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応による増幅が可能なようにポリヌクレオチドサンプルを調製することができる。
【0024】
或る特定の実施形態では、サンプル中に存在するポリヌクレオチドの90%以上を保持部材に結合し、放出させ、そして回収するのがよい。
【0025】
或る特定の実施形態では、ポリヌクレオチドを、10分未満で、7.5分未満で、5分未満で又は3分未満で、保持部材に結合し、放出させ、そして回収することができる。
【0026】
ポリヌクレオチドを、ポリヌクレオチド、保持部材及び(又は)抑制物質に遠心作用を与えないで、保持部材に結合し、放出させ、そして回収するのがよい。
【0027】
ポリヌクレオチドと抑制物質を互いに分離するには一般に、ポリヌクレオチド、抑制物質、処理領域及び(又は)保持部材に沈澱(例えば、遠心分離)を施すことは行われない。
【0028】
本発明の別の特徴は、チャネルと、チャネルの第1の側部に被着された熱反応性物質(PRS)の第1の塊と、チャネルの第1の側部と反対側のチャネルの第2の側部に被着されたPRSの第2の塊と、TRSの第1の塊と関連したガス圧力源とを有するマイクロフルイディックデバイスに関する。ガス圧力源を作動させると、PRSの第1の塊がTRSの第2の塊の中に押し込まれてチャネルが塞がれる。
【0029】
マイクロフルイディックデバイスは、TRSの第2の塊と関連した第2のガス圧力源を有するのがよい。第2のガス圧力源を作動させると、TRSの第2の塊がTRSの第1の塊の中に押し込まれる。
【0030】
TRSの第1の塊及び第2の塊のうち少なくとも一方(例えば、両方)は、ワックス(蝋)であるのがよい。
【0031】
本発明の別の特徴は、マイクロフルイディックデバイスのチャネルを塞ぐ方法に関する。塊状のTRSを加熱し、チャネルを横切って(例えば、ガス圧力によって)第2の塊状のTRS中に押し込む。また、第2の塊状のTRSを(例えば、ガス圧力によって)第1の塊状のTRSに向かって追いやるのがよい。
【0032】
本発明の別の特徴は、マイクロフルイディックデバイス用のアクチュエータに関する。アクチュエータは、チャネルと、チャネルに連結されたチャンバと、チャンバ内に設けられた包封状態の液体の少なくとも1つのリザーバと、チャンバ内のリザーバを包囲するガスとを有する。チャンバを加熱することにより、包封状態の液体のリザーバが膨張し、ガスが加圧される。代表的には、液体の沸点は、約90℃以下である。この液体は、約10以下の炭素原子を有する炭化水素であるのがよい。
【0033】
液体をポリマーで包封するのがよい。
【0034】
アクチュエータは、チャンバ内に設けられた包封状態の液体の多数のリザーバを有してもよい。多数のリザーバを固体(例えば、ワックス)内に分散させてもよい。
【0035】
多数のリザーバを可撓性エンクロージャ(例えば、軟質サック)内に設けてもよい。
【0036】
本発明の別の特徴は、第1の液体と第2の液体を組み合わせる(例えば、混合する)方法及び関連装置に関する。この装置は、装置の第1のチャネルと第2のチャネルを分離する熱反応性物質(TRS)の塊を有する。この装置は、第1の液体を第2のチャネルに沿って移動させて第1の液体の一部(例えば、内側部分)がTRSに隣接して位置するようにし、そして第2の液体を第2のチャネルに沿って移動させて第2の液体の一部(例えば、内側部分)がTRSに隣接して位置するようにする。熱源を作動させてTRSを移動させる(例えば、溶融、分散、断片化により)。第1の液体と第2の液体の内側部分は代表的には、ガスインターフェイスにより分離されることなく結合する。代表的には、第1の液体のサブセットと第2の液体のサブセットが互いに結合されるに過ぎない。液体は、混合チャネルに沿う移動時に互いに混合する。
【0037】
本発明の別の特徴は、凍結乾燥試薬粒子及びこの粒子の製造方法に関する。
【0038】
幾つかの実施形態では、凍結乾燥粒子は、各々がPCR抑制物質と比較して優先的にポリヌクレオチドと結び付く複数のリガンドを有する多数の小さな粒子を含む。凍結乾燥粒子は、更に(又は代替的に)細胞を融解させてポリヌクレオチドを放出させるよう構成されたライシング試薬(例えば、酵素)を含むのがよい。凍結乾燥粒子は更に(又は代替的に)タンパク質を劣化させる酵素(例えば、プロテアーゼ)を含むのがよい。
【0039】
細胞の溶液と凍結乾燥粒子を組み合わせて粒子を再構成することにより細胞を融解させることができる。再構成されたライシング試薬は、細胞を融解させる。ポリヌクレオチドは、小さな粒子のリガンドと結び付く。融解中、溶液を加熱するのがよい(例えば、ランプ(例えば、ヒートランプ)を用いて輻射により)。
【0040】
幾つかの実施形態では、凍結乾燥粒子は、PCR反応を行わせるための試薬(例えば、プライマ、コントロール(対照)プラスミド、ポリメラーゼ酵素)を含む。
【0041】
凍結乾燥粒子の製造方法は、粒子の試薬と凍結保護物質(例えば、糖又は多価アルコール)の溶液を形成するステップを含む。溶液を液滴の状態で冷却状態の疎水性表面(例えば、ダイヤモンド膜又はポリテトラフルオロエチレン表面)上に被着させる。粒子が凍結し、そして溶液を除去する(例えば、昇華させる)のに十分な時間の間、減圧させる(典型的には、依然として凍結状態で)。凍結乾燥粒子の直径は、約5mm以下(例えば、約2.5mm以下、約1.75mm以下)であるのがよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
生物学的サンプルの分析では、サンプル中に1つ又は2つ以上のポリヌクレオチド(例えば、DNA、RNA、mRNA又はrRNA)が存在するかどうかを判定することが行われる場合が多い。例えば、特定の病原体が存在していることを表すポリヌクレオチドが存在しているかどうかを判定するためにサンプルを分析する場合がある。代表的には、生物学的サンプルは、複雑な混合物である。例えば、サンプルは、血液サンプル、組織サンプル(例えば、綿棒で採った例えば鼻組織、頬組織、肛門組織又は膣組織)、生検吸引液、溶解質、真菌又はバクテリアとして提供される場合がある。判定されるべきポリヌクレオチドは、粒子(例えば、細胞(例えば、白血球及び(又は)赤血球)、組織断片、バクテリア(例えば、グラム陽性菌及び(又は)グラム陰性菌)、真菌、胞子)に含まれている場合がある。1つ又は2つ以上の液体(例えば、水、緩衝液、血液、血漿、唾液、尿、髄液又は有機溶剤)は、代表的にはサンプルの一部であると共に(或いは)処理ステップ中サンプルに追加される。
【0043】
生物学的サンプルを分析する方法では、生物学的サンプル(例えば、綿棒)を用意し、ポリヌクレオチドをサンプルの粒子(例えば、バクテリア)から放出させ、放出したポリヌクレオチドのうち1つ又は2つ以上を増幅し(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により)、増幅したポリヌクレオチドの存在(又は不存在)を判定する(例えば、蛍光検出法により)。しかしながら、生物学的サンプルは代表的には、サンプル中のヌクレオチドの存在の判定を妨害する場合のある抑制物質(例えば、粘膜構成物、ヘモグロビン、糞便構成物及びDNA結合タンパク質)を含む。例えば、かかる抑制物質は、PCR及びポリヌクレオチドの存在を判定する他の酵素利用法によるポリヌクレオチドの増幅効率を減少させる場合がある。抑制物質の濃度を判定されるべきポリヌクレオチドに対して減少させなければ、分析は、誤った否定的結果を生じさせる場合がある。
【0044】
生物学的サンプル(例えば、判定されるべき1又は2以上のポリヌクレオチドを有するサンプル)を処理する方法及び関連システムを説明する。代表的には、この方法及びシステムは、判定されるべきポリヌクレオチドの濃度に対する抑制物質の濃度を減少させる。
【0045】
図1を参照すると、マイクロフルイディックデバイス(microfluidic device)200は、第1の層205、第2の層207及び第3の層209を有し、これら層は、判定されるべき1又は2以上のポリヌクレオチドを含むサンプルを処理するよう構成された種々のコンポーネントを有するマイクロフルイディックネットワーク201を構成している。デバイス200は代表的には、判定されるべきポリヌクレオチドの濃度を増大させると共に(或いは)判定されるべきポリヌクレオチドの濃度に対する抑制物質の濃度を減少させることによりサンプルを処理する。
【0046】
次に、ネットワーク201のコンポーネントの配置状態について説明する。
【0047】
ネットワーク201は、サンプル物質をネットワークに導入することができる入口202及び処理済みサンプルをネットワークから取り出すことができる(例えば、ネットワークによって追い出すことができる又はネットワークから抽出することができる)出口又は出力部236を有する。チャネル204が、入口202と接合部255との間に延びている。弁206が、チャネル204に沿って設けられている。リザーバチャネル240が、接合部255とアクチュエータ244との間に延びている。ゲート242,246が、チャネル240に沿って設けられている。チャネル257が、接合部255と接合部257との間に延びている。弁208が、チャネル257に沿って設けられている。リザーバチャネル246が、接合部259とアクチュエータ248との間に延びている。ゲート250,252が、チャネル246に沿って設けられている。チャネル261が、接合部259と接合部263との間に延びている。弁210及び疎水性ベント212が、チャネル261に沿って設けられている。チャネル256が、接合部263とアクチュエータ554との間に延びている。ゲート258が、チャネル256に沿って設けられている。
【0048】
チャネル214が、接合部263と処理チャンバ220との間に延び、この処理チャンバは、入口265及び出口267を有している。チャネル228が、処理チャンバ出口267と廃棄物リザーバ232との間に延びている。弁234が、チャネル228に沿って設けられている。チャネル230が、処理チャンバ出口267と出力部236との間に延びている。
【0049】
次に、ネットワーク201の特定のコンポーネントについて説明する。
【0050】
図2も又参照すると、処理チャンバ220は、第1の組をなす条件(例えば、第1の温度及び(又は)第1のpH)下でサンプルのポリヌクレオチドを保持したり第2の組をなす条件(例えば、これよりも高い第2の温度及び(又は)これよりも大きな第2の基本pH)下でポリヌクレオチドを放出するよう構成された複数個の粒子(例えば、ビーズ、微小球)218を有する。代表的には、ポリヌクレオチドは、サンプル中に存在している場合のある抑制物質と比較して優先的に保持される。粒子218は、保持部材216(例えば、コラム)として構成され、サンプル物質(例えば、ポリヌクレオチド)は、処理領域220の入口265と出口267との間で動く際にかかる粒子を通過しなければならない。
【0051】
フィルタ219は、粒子218が処理ステーション220の下流側に流れるのを阻止する。チャネル287は、フィルタ219と出口267を連結している。フィルタ219は、処理領域220内に、入口265の断面積よりも広い断面積を有する。例えば、幾つかの実施形態では、処理領域220内のフィルタ219の面積と入口265の断面積(この断面積的は代表的には、チャネル214の断面積とほぼ同じである)の比は、少なくとも約5(例えば、少なくとも約10、少なくとも約20、少なくとも約20)である。幾つかの実施形態では、処理領域220内のフィルタ219の面積は、少なくとも約1mm2(例えば、少なくとも2mm2、少なくとも約3mm2)である。幾つかの実施形態では、入口265及び(又は)チャネル214の断面積は、約0.25mm2以下(例えば約0.25mm2以下、約0.15mm2以下、約0.1mm2以下)である。処理領域220を通って流れる物質に対してフィルタ214により与えられる広い表面積は、処理領域のボイド容量(以下に説明する)の著しい増大を回避しながら処理領域の詰まりを阻止するのに役立つ。
【0052】
粒子218は、ポリヌクレオチドを保持する少なくとも1つのリガンドで改質されている(例えば、抑制物質と比較して優先性を備える)。代表的には、リガンドは、pHが約9.5以下(例えば、約9.0以下、約8.75以下、約8.5以下)の液体からポリヌクレオチドを保持する。サンプル溶液が処理領域220を通過しているとき、ポリヌクレオチドは保持され、他方、液体及び他の溶液成分(例えば、抑制物質)は、保持の度合が低く(例えば、保持されず)、処理領域から出る。一般に、リガンドは、pHが約10以上(例えば、約10.5以上、約11.0以上)の場合にポリヌクレオチドを放出する。したがって、ポリヌクレオチドをリガンド改質粒子から周囲の液体中に放出することができる。
【0053】
例示のリガンドとしては、ポリアミド(例えば、ポリカチオンポリアミド、例えばポリ−L−リジン、ポリ−D−リジン、ポリ−DL−オルニチン)が挙げられる。他のリガンドとしては、例えば、インターキャレータ(intercalator)、ポリ−インターキャレータ(poly-intercalator)、浅溝結合剤ポリアミン(例えば、スペルミジン)、複数のアミノ酸を含むホモポリマー及びコポリマー、並びにこれらの組合せが挙げられる。幾つかの実施形態では、リガンドの平均分子量は、少なくとも約5,000Da(例えば、少なくとも約7,500Da、少なくとも約15,000Da)である。幾つかの実施形態では、リガンドの平均分子量は、約50,000Da以下(例えば、約35,000Da以下、約27,500Da以下)である。幾つかの実施形態では、リガンドは、アミノ結合により粒子表面に取り付けられたポリリジンリガンドである。
【0054】
或る特定の実施形態では、リガンドは、酵素劣化、例えばペプチド結合を切断するプロテアーゼ酵素(例えば、体内プロテアーゼ及び体外プロテアーゼの混合物、例えばプロナーゼ)による劣化に対して耐性がある。例示のプロテアーゼ耐性リガンドとしては、例えば、ポリ−D−リジン及び酵素の攻撃に敏感なリガンドのエナンチオマーである他のリガンドが挙げられる。
【0055】
粒子218は、代表的には、リガンドを結び付けることが可能な材料で作られる。粒子218を作ることができる例示の材料としては、リガンドを結合させるよう改質できるポリマー材料が挙げられる。代表的なポリマー材料は、リガンドを取り付けるのに利用できるカルボキシル基及び(又は)アミノ基をもたらす又はこれらをもたらすよう改質されたものであるがよい。例示のポリマー材料としては、例えば、ポリスチレン、ラテックスポリマー(例えば、ポリカルボキシレート被覆ラテックス)、ポリアクリルアミド、ポリ酸化エチレン及びこれらの誘導体が挙げられる。粒子218を形成するのに使用できるポリマー材料は、マシオビッツ等(Mathiowitz et al.)に付与された米国特許第6,235,313号明細書に記載されており、この米国特許を参照により引用し、その記載内容を本明細書の一部とする。他の材料としては、ガラス、シリカ、アガロース、及びアミノ−プロピル−トリ−エトキシ−シラン(APES)改質材料が挙げられる。
【0056】
適当なリガンドで改質できる例示の粒子としては、カルボキシレート粒子(例えば、カルボキシレート改質磁性ビーズ(セラジン(Seradyn)社のセラ−マグ・マグネチック・カルボキシレート(Sera-Mag Magnetic Carboxylate)改質ビーズ部品番号3008050250)及びポリサイエンス(Polyscience)社から入手できるポリビード(Polybead)・カルボキシレート改質微小球、カタログ番号09850)が挙げられる。幾つかの実施形態では、リガンドは、ポリ−D−リジンを含み、ビーズは、ポリマー(例えば、ポリカルボキシレート被覆ラテックス)から成る。
【0057】
一般に、粒子の質量と粒子により保持されたポリヌクレオチドの質量の比は、約25以下(例えば、約20以下、約10以下)である。例えば、幾つかの実施形態では、約1グラムの粒子は、約100ミリグラムのポリヌクレオチドを保持する。
【0058】
代表的には、入口265とフィルタ290との間の処理領域220(粒子218を含む)の全容積は、約15マイクロリットル以下(例えば、約10マイクロリットル以下、約5マイクロリットル以下、約2.5マイクロリットル以下、約2マイクロリットル以下)である。例示の実施形態では、処理領域220の全容量は、約2.3マイクロリットルである。幾つかの実施形態では、粒子218は、処理領域220の全容積の少なくとも約10パーセント(例えば、少なくとも約15パーセント)を占める。幾つかの実施形態では、粒子218は、処理チャンバ220の全容積の約75パーセント以下(例えば、約50パーセント、約35パーセント以下)を占める。
【0059】
幾つかの実施形態では、リガンドによって自由に占めることができる処理領域220の容積(例えば、粒子218相互間の隙間を含む処理領域220のボイド容積)は、全容積から粒子により占められた容積を引いたものにほぼ等しい。代表的には、処理領域220のボイド容積は、約10マイクロリットル以下(例えば、約7.5マイクロリットル以下、約5マイクロリットル以下、約2.5マイクロリットル以下、約2マイクロリットル以下)である。幾つかの実施形態では、ボイド容積は、約50ナノリットル以上(例えば、約100ナノリットル以上、約250ナノリットル以上)である。例示の実施形態では、処理領域220の全容積は、約2.3マイクロリットルである。例えば、例示の実施形態では、処理領域の全容積は、約2.3マイクロリットルであり、粒子により占められる容積は、約0.3マイクロリットルであり、液体により自由に占められる容積(ボイド容積)は、約2マイクロリットルである。
【0060】
粒子218は代表的には、約20ミクロン以下(例えば、約15ミクロン以下、約10ミクロン以下)の平均直径を有する。幾つかの実施形態では、粒子218の平均直径は、少なくとも約4ミクロン(例えば、少なくとも約6ミクロン、少なくとも約8ミクロン)である。
【0061】
幾つかの実施形態では、フィルタ219と出口267との間のチャネル287の容積は、処理領域220のボイド容積よりも実質的に少ない。例えば、幾つかの実施形態では、フィルタ219と出口267との間のチャネル287の容積は、ボイド容積の約35%以下(例えば、約25%以下、約20%以下である)。例示の実施形態では、フィルタ219と出口267との間のチャネル287の容積は、約500マイクロリットルである。
【0062】
粒子密度は代表的には、1ミリリットル当たり少なくとも約108個の粒子(例えば、1ミリリットル当たり約109個の粒子)である。例えば、全容積約1マイクロリットルの処理領域は、約103個のビーズを入れることができる。
【0063】
フィルタ219は代表的には、粒子218の直径よりも小さな幅を持つ細孔を有する。例示の実施形態では、フィルタ219は、約8ミクロンの平均幅を持つ細孔を有し、粒子218の平均直径は、約10ミクロンである。
【0064】
幾つかの実施形態では、粒子のうち少なくとも何割か(例えば、全て)は、磁性である。変形実施形態では、粒子のうちのほんの僅かが磁性である(例えば、磁性である粒子は無い)。
【0065】
幾つかの実施形態では、粒子のうちの少なくとも何割か(例えば、全て)は、中実である。幾つかの実施形態では、粒子の少なくとも何割か(例えば、全て)は、多孔質である(例えば、粒子は、これをこの中に少なくとも部分的に延びるチャネルを備える場合がある)。
【0066】
マイクロフルイディックネットワーク201のチャネルは代表的には、少なくとも1mm以下の断面寸法を有する。例えば、ネットワーク201のチャネルの幅及び(又は)深さは、約1mm以下(例えば、約750ミクロン以下、約500ミクロン以下、約250ミクロン以下)であるのがよい。
【0067】
弁は、物質が弁の一方の側の(例えば、弁の上流側の)位置から弁の他方の側の(例えば、弁の下流側の)位置までチャネルに沿って通ることができるようにする常開状態を有するコンポーネントである。作動時、弁は、物質が弁の一方の側から他方の側までチャネルに沿って通るのを阻止する閉鎖状態に移る。例えば、弁205は、第1の温度では比較的動きにくく、第2の温度ではより動きやすい熱応答性物質(TRS)の塊251を有している。チャンバ253は、塊251と気体連通状態にある。チャンバ253内のガス(例えば、空気)を加熱すると共にTRSの塊251を第2の温度まで加熱すると、チャンバ253内のガス圧力は、塊251をチャネル204内に移動させ、それにより物質がこのチャネルに沿って通るのを妨げる。ネットワーク201の他の弁は、弁206と同一の構造を有すると共に同一の仕方で動作する。
【0068】
TRSの塊は、本質的に中実の塊であってもよく、或いは、通路を塞ぐよう互いに協働する小さな粒子の凝集体であってもよい。TRSの例としては、共融合金(例えば、はんだ)、ワックス(例えば、オレフィン)、ポリマー、プラスチック及びこれらの組合せが挙げられる。第1の温度及び第2の温度は、例えばデバイス200のポリマー層のような材料を損傷させるのに足るほど高くはない。一般に、第2の温度は、約90℃以下であり、第1の温度は、第2の温度よりも低い(例えば、約70℃以下である)。
【0069】
ゲートは、物質がゲートの一方の側の位置からゲートの別の側までチャネルに沿って通ることができないようにする常閉状態を有するコンポーネントである。作動時、ゲートは、物質がゲートの一方の側(例えば、ゲートの上流側)からゲートの他方の側(例えば、ゲートの下流側)まで通るようにする閉鎖状態に移る。例えば、ゲート242は、接合部255とチャネル240との間で物質の流れを妨げるよう位置決めされたTRSの塊271を有する。塊271を第2の温度まで加熱すると、この塊は、接合部255とチャネル240との間での物質の通過を可能にするよう状態を変える(例えば、溶融、分散、断片化及び(又は)溶解により)。
【0070】
ゲート242,246相互間のチャネル240の部分は、液体(例えば、水、有機液体又はこれらの組合せ)を収容するよう構成された流体リザーバ279を形成する。貯蔵中、ゲート242,246は、流体リザーバ内の液体の蒸発を制限する(例えば、阻止する)。デバイス200の動作中、リザーバ279の液体は代表的には、ポリヌクレオチドを粒子218に関連させた状態で、抑制物質を処理領域220から除去する洗浄液として用いられる。代表的には、洗浄液は、1又は2以上の追加の成分(例えば、緩衝液、キレータ、界面活性剤、洗浄剤、塩基、酸又はこれらの組合せ)を有する溶液である。例示の溶液としては、例えば、pHが8.0の10〜50mMトリス、0.5〜2mMのEDTA及び0.5%〜2%のSDSの溶液、pHが80.の10〜50mMトリス、0.5〜2mMEDTA及び0.5%〜2%トリトンX−100の溶液が挙げられる。
【0071】
ゲート250,252相互間のチャネル246の部分は、リザーバ279と同様、蒸発が制限され又は蒸発が行えない状態で液体(例えば、溶液)を収容するよう構成された流体リザーバ281を形成する。デバイス200の動作中、リザーバ281の液体は代表的には、粒子218により保持されたポリヌクレオチドが放出されるリリース又は放出液として用いられる。例示のリリース液は、濃度が例えば約2mM水酸化物(例えば、約2mMNaOH)及び約500mM水酸化物(例えば、500mMNaOH)の水酸化物溶液(例えば、NaOH溶液)である。幾つかの実施形態では、リザーバ281内の液体は、約25mM以下の濃度(例えば、約15mMの水酸化物濃度)を有する水酸化物溶液である。
【0072】
リザーバ279,281は代表的には、少なくとも約0.375マイクロリットル(例えば、少なくとも約0.750マイクロリットル、少なくとも約1.25マイクロリットル、少なくとも約2.5マイクロリットル)の液体を収容する。幾つかの実施形態では、リザーバ279,281は、約7.5マイクロリットル以下(例えば、約5マイクロリットル以下、約4マイクロリットル以下、約3マイクロリットル以下)の液体を収容する。
アクチュエータは、物質(例えば、サンプル物質及び(又は)試薬物質)をネットワーク201の或る1つの場所と別の場所との間で移動させるができるガス圧力をもたらすコンポーネントである。例えば、図3を参照すると、アクチュエータ244は、熱膨張性物質(TEM)の塊273を収容したチャンバ272を有している。加熱されると、TEMは、膨張してチャンバ272内の自由容積を減少させると共にチャンバ272内の塊273を包囲しているガス(例えば、空気)を加圧する。代表的には、ゲート246,262がアクチュエータ244によって作動される。その結果、加圧ガスは、流体リザーバ279内の液体を接合部255に向かって追いやる。幾つかの実施形態では、アクチュエータ244は、アクチュエータと接合部255との間に約3psi以上(例えば、少なくとも約4psi、少なくとも約5psi)の圧力差を生じさせることができる。
【0073】
TEMは、キャリヤ277内に分散して設けられた複数の密封液体リザーバ(例えば、球)275を有する。代表的には、液体は、ケーシング(例えば、モノマー、例えば塩化ビニリデン、アクリロニトリル及びメチルメタクリレートで作られたポリマーケーシング)内に封入されている高蒸気圧液体(例えば、イソブタン及び(又は)イソペンタン)である。キャリヤ277は、リザーバがチャネル240に沿って移動することができるようにしないで、リザーバ275の膨張を可能にする特性(例えば、柔軟性及び(又は)高温で軟化する(例えば、溶融する)能力)を有する。幾つかの実施形態では、キャリヤ277は、適当なガラス転移温度を備えたワックス(例えば、オレフィン)又はポリマーである。代表的には、リザーバは、TEMの少なくとも約25重量パーセント(例えば、少なくとも約35重量パーセント、少なくとも約50重量パーセント)を占める。幾つかの実施形態では、リザーバは、TEMの約75重量パーセント以下(例えば、約65重量パーセント以下、約50重量パーセント以下)を占める。適当な密封液体リザーバをエキスパンセル(Expancel)(アクゾ・ノーベル(Akzo Nobel)社)から入手することができる。
【0074】
TEMを加熱すると(例えば、少なくとも約50℃の温度まで(例えば、少なくとも約75℃、少なくとも約90℃まで))、液体は、蒸発して各密封リザーバの容積及び塊273の容積を増大させる。キャリヤ273は軟化し、それにより塊273が膨張することができる。代表的には、TEMを作動中、約150℃以下(例えば、約125℃以下、約110℃以下、約100℃以下)の温度まで加熱する。幾つかの実施形態では、TEMの容積は、少なくとも約5倍(例えば、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍)膨張する。
【0075】
疎水性ベント(例えば、ベント212)は、ガスがチャネルから出ることができるようにする一方で液体がチャネルから出るのを制限する(例えば、阻止する)構造体である。代表的には、疎水性ベントは、チャネルの壁を構成する多孔質疎水性物質の層(例えば、多孔質フィルタ、例えばオスモニックス(Osmonics)社製の多孔質疎水性メンブレン)を含む。以下に説明するように、疎水性ベントを用いると、サンプルの微小液滴をネットワーク201内の所望の場所に配置することができる。
【0076】
疎水性ベントは代表的には、チャネルに沿って少なくとも約2.5mm(例えば、少なくとも約5mm、少なくとも約7.5mm)の長さを有する。疎水性ベントの長さは代表的には、疎水性ベント内のチャネルの深さの少なくとも約5倍(例えば、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍)である。例えば、幾つかの実施形態では、疎水性ベント内のチャネル深さは、約300ミクロン以下(例えば、約250ミクロン以下、約200ミクロン以下、約150ミクロン以下)である。
【0077】
疎水性ベント内のチャネルの深さは代表的には、疎水性ベントの上流側及び下流側のチャネルの深さの約75%以下(例えば、約65%以下、約60%以下)である。例えば、幾つかの実施形態では、疎水性ベント内のチャネル深さは、約150ミクロンであり、疎水性ベントの上流側及び下流側のチャネル深さは、約250ミクロンである。
【0078】
疎水性ベント内のチャネルの幅は代表的には、ベントから見て上流側であってベントから見て下流側のチャネルの幅よりも少なくとも約25%広い(例えば、少なくとも約50%広い)。例えば、例示の実施形態では、疎水性ベント内のチャネルの幅は、約400ミクロンであり、ベントから見て上流側及び下流側のチャネルの幅は、約250ミクロンである。
【0079】
マイクロフルイディックデバイス200を所望に応じて作製することができる。代表的には、層305,207,209は、ポリマー材料で作られる。ネットワーク201のコンポーネントは代表的には、層207,209を成形することにより(例えば、射出成形することにより)形成される。層205は代表的には、ネットワーク201のコンポーネントを密封するよう層207に固定された(例えば、接着されると共に(或いは)熱により固定された)軟質ポリマー材料(例えば、ラミネート)である。接着剤を用いて層207,209を互いに固定することができる。
【0080】
使用に当たり、デバイス200を代表的には、デバイスのコンポーネント(例えば、弁、ゲート、アクチュエータ及び処理領域220)を動作させるよう構成された熱源のアレイに熱的に関連させる。幾つかの実施形態では、熱源は、使用中デバイスを動作させる作動システムと一体である。作動システムは、熱源を所望のプロトコルに従って作動させるよう構成されたプロセッサ(例えば、コンピュータ)を含む。マイクロフルイディックデバイスを動作させるよう構成されたプロセッサは、2001年3月28日に出願された米国特許出願第09/819,105号明細書に記載されており、この米国特許出願を参照により引用し、その記載内容を本明細書の一部とする。他の実施形態では、熱源は、デバイスそれ自体と一体である。
【0081】
デバイス200を次のように動作させるのがよい。ネットワーク201の弁は、開放状態に構成されている。ネットワーク201のゲートは、閉鎖状態に構成されている。ポリヌクレオチドを含む流体サンプルを入口202からネットワーク201に導入する。例えば、サンプルをルアー(Luer)継手を有するシリンジにより導入するのがよい。シリンジは、ネットワーク201内でサンプルを最初に移動させる圧力をもたらす。サンプルは、チャネル204,257,261,214に沿って移動して処理領域220の入口265に達する。サンプルは、処理領域220中を通り、出口267を介して流出し、チャネル228に沿って流れて廃棄物チャンバ232に至る。サンプルの後縁(例えば、上流側の液体と気体のインターフェイス)が疎水性ベント212に達すると、導入装置(例えば、シリンジ)により提供される圧力が、ネットワーク201から解除されてサンプルのそれ以上の運動が停止する。
【0082】
代表的には、サンプルの導入量は、約500マイクロリットル以下(例えば、約250マイクロリットル以下、約100マイクロリットル以下、約50マイクロリットル以下、約25マイクロリットル以下、約10マイクロリットル以下)である。幾つかの実施形態では、サンプルの量は、約2マイクロリットル以下(例えば、約0.5マイクロリットル以下)である。
【0083】
処理領域220に入ったポリヌクレオチドは、粒子218相互間の隙間を通過する。サンプルのポリヌクレオチドは、保持部材216に接触し、サンプルの液体及び或る特定の他のサンプル成分(例えば、抑制物質)と比較して優先的に保持される。代表的には、保持部材220は、処理領域220に流入したサンプル中に存在したポリヌクレオチドの少なくとも約50%(少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%)を保持する。サンプルの液体及びサンプル中に存在する抑制物質は、出口267を介して処理領域220から流出し、廃棄物チャンバ232に流入する。処理領域は代表的には、サンプルの導入中、約50℃以下(例えば、30℃以下)の温度状態にある。
【0084】
処理は、保持部材216をリザーバ279の液体で洗浄して残存する抑制物質を保持部材216によって保持されたポリヌクレオチドから分離することによって続く。保持部材216を洗浄するため、弁206を閉じ、第1のリザーバ240のゲート242,246を開く。アクチュエータ244を作動させ、このアクチュエータは、リザーバ279内の洗浄液をチャネル257,261,214に沿って移動させ、処理領域220を通って廃棄物リザーバ232内へ流入させる。洗浄液は、チャネル204,257,261,214内に残存している可能性のあるサンプルを、処理領域を通って廃棄物チャンバ232内へ移動させる。洗浄液の後縁がいったんベント212に達すると、アクチュエータ244により生じているガス圧力を抜き、液体のそれ以上の運動を停止させる。
【0085】
処理領域220を通ってアクチュエータ244によって移動させられる洗浄液の容積は代表的には、処理領域220のボイド容積の少なくとも約2倍(例えば、ボイド容積の少なくとも約3倍)であり、ボイド容積の約10倍以下(例えば、ボイド容積の約5倍以下)であるのがよい。処理領域は代表的には、洗浄中、約50℃以下(例えば、30℃以下)の温度状態にある。例示の洗浄液としては、リザーバ279,281について説明した液体が挙げられる。
【0086】
処理は、ポリヌクレオチドを保持部材216から放出させることにより続行する。代表的には、リザーバ279からの洗浄液をリザーバ281からのリリース液(例えば、水酸化物溶液)で置き換え、次にポリヌクレオチドを放出させる。弁208を閉じ、ゲート250,252を開く。アクチュエータ248を作動させ、それにより、リザーバ281内のリリース液をチャネル261,214に沿って移動させて処理領域220に流入させ、保持部材216に接触させる。リザーバ281からのリリース液の後縁が疎水性ベント212に達すると、アクチュエータ248により生じる圧力を抜き、液体のそれ以上の運動を停止させる。処理領域220を通ってアクチュエータ248により移動させられる液体の容積は代表的には、処理領域220のボイド容積に少なくともほぼ等しく(例えば、ボイド容積の少なくとも約2倍)、ボイド容積の約10倍以下(例えば、ボイド容積の約5倍以下)であるのがよい。
【0087】
ポリヌクレオチドを保持した保持部材216をリザーバ281からの液体にいったん接触させると、代表的には放出ステップを実施する。代表的には、放出ステップでは、処理領域216内に存在するリリース液を加熱する。一般に、液体を、保持部材の存在下で液体を沸騰させるには不十分な温度まで加熱する。幾つかの実施形態では、この温度は、100℃以下(例えば、100℃未満、約97℃以下)である。幾つかの実施形態では、温度は、約65℃以上(例えば、約75℃以上、約80℃以上、約90℃以上)である。幾つかの実施形態では、温度は、約1分間以上(例えば、約2分間以上、約5分間以上、約10分間以上)維持する。幾つかの実施形態では、温度を約30分間(例えば、約15分間以下、約10分間以下、約5分間以下)維持する。例示の実施形態では、処理領域220を約1分〜7分間(例えば、約2分間)、約65℃〜90℃に(例えば、70℃に)加熱する。
【0088】
ポリヌクレオチドを処理領域220中に存在する液体中へ放出する(例えば、ポリヌクレオチドを代表的には、処理領域220のボイド容積とほぼ同じ容積を持つリリース液中に放出する)。代表的には、ポリヌクレオチドを約10マイクロリットル以下(例えば、約5マイクロリットル以下、約2.5マイクロリットル以下)の液体中に放出する。
【0089】
或る特定の実施形態では、処理領域220を通って移動する元のサンプルの容積とポリヌクレオチドが放出導入された液体の容積の比は、少なくとも約10(例えば、少なくとも約50、少なくとも約100、少なくとも約250、少なくとも約500、少なくとも約1000)である。幾つかの実施形態では、容積が約2mlのサンプルからのポリヌクレオチドを処理領域内に保持し、そして約4マイクロリットル以下(例えば、約3マイクロリットル以下、約2マイクロリットル以下、約1マイクロリットル以下)の液体中に放出するのがよい。
【0090】
ポリヌクレオチドが放出導入された液体は代表的には、処理領域220に流入したサンプル中に存在するポリヌクレオチドの少なくとも約50%(例えば、少なくとも約75%、少なくとも85%、少なくとも約90%)を含む。リリース液中に存在するポリヌクレオチドの濃度は、リリース液の容積が処理領域を通って移動した元の液体サンプルの容積よりも小さいので、元のサンプル中のポリヌクレオチド濃度よりも高い場合がある。例えば、リリース液中のポリヌクレオチドの濃度は、デバイス200に導入されたサンプル中のポリヌクレオチドの濃度の少なくとも約10倍以上(例えば、少なくとも約25倍以上、少なくとも約100倍以上)であるのがよい。ポリヌクレオチドが放出導入された液体中に存在する抑制物質の濃度は一般に、ポリヌクレオチドについて増幅効率を増大させるのに十分な量だけ元の流体サンプル中の抑制物質の濃度よりも少ない。
【0091】
サンプルを含むポリヌクレオチドを処理領域220に導入する時期とポリヌクレオチドをリリース液中に放出する時点との時間間隔は代表的には、約15分以下(例えば、約10分以下、約5分以下)である。
【0092】
放出されたポリヌクレオチドを含む液体を次のようにして処理領域220から取り出すのがよい。弁210,234を閉じる。ゲート238,258を開く。アクチュエータ254を作動させて圧力を発生させ、この圧力により、液体及びポリヌクレオチドを処理領域220からチャネル230内へ流入させ、そして出口236に向かって移動させる。ポリヌクレオチドを含む液体を取り出すのに例えばシリンジ又は自動サンプル採取装置を用いるのがよい。ポリヌクレオチドの放出中、保持部材216と接触状態にある液体に応じて、放出されたポリヌクレオチドを含む溶液を或る量の緩衝液(例えば、等量の25〜50mMトリス−HCl緩衝液pH8.0)で中和させるのがよい。
【0093】
ポリヌクレオチドの放出を加熱ステップを含むものとして説明したが、加熱しないでポリヌクレオチドを放出することができる。例えば、幾つかの実施形態では、リザーバ281の液体は、ポリヌクレオチドを保持部材から放出するイオン強度、pH、界面活性剤濃度、組成又はこれらの組合せを有する。
【0094】
ポリヌクレオチドを処理領域220内に存在する単一の容積の液体中に放出するものとして説明したが、他の形態を使用できる。例えば、ポリヌクレオチドを放出する際にこれに伴って(段階的に又は連続的に)流体を処理領域220内及び(又は)処理領域220を通って流体を導入してもよい。かかる実施形態では、ポリヌクレオチドを処理領域220のボイド容積の約10倍以下(例えば、約7.5倍以下、約5倍以下、約2.5倍以下、約2倍以下)の容積の液体中に放出するのがよい。
【0095】
リザーバ279,281をこれが第1のゲートと第2のゲートとの間で液体を保持するものとして説明したが、他の形態を使用できる。例えば、各リザーバの液体を全体として不浸透性のメンブレンによりネットワーク201から隔離されたパウチ(例えば、ブリスターパック)内に保持してもよい。パウチは、ユーザがメンブレンを穴あけし、それによりアクチュエータが使用中液体を移動させることができるリザーバ279,281内へ送り込むように構成されている。
【0096】
処理領域をこれがマイクロリットル級の寸法形状を有するものとして説明したが、他の寸法形状を使用することができる。例えば、抑制物質とは対照的にポリヌクレオチドを優先的に保持するよう構成された表面(例えば、粒子)を備えた処理領域は、大きな容積(例えば、数十マイクロリットル以上、少なくとも約1ミリリットル以上)を有してもよい。幾つかの実施形態では、処理領域は、ベンチトップスケールを有する。
【0097】
処理領域220をこれが多数の表面改質粒子で形成された保持部材を有するものとして説明したが、他の形態を使用できる。例えば、幾つかの実施形態では、処理領域220は、ポリヌクレオチドを通過させる多数の開口部(例えば、細孔及び(又は)チャネル)を有する多孔質部材(例えば、フィルタ、多孔質メンブレン又はゲルマトリックス)として構成された保持部材を有する。多孔質メンブレンの表面は、ポリヌクレオチドを優先的に保持するよう改質される。例えばオスモニックス社から入手できるフィルタメンブレンは、表面が改質されると共に処理領域220内にポリヌクレオチドを保持するために用いることができるポリマーで作られている。幾つかの実施形態では、処理領域220は、サンプルを通過させる複数の表面(例えば、壁又はバッフル)として構成された保持部材を有する。壁又はバッフルは、ポリヌクレオチドを優先的に保持するよう改造される。
【0098】
処理領域220をマイクロフルイディックネットワークの一コンポーネントとして説明したが、他の形態を使用できる。例えば、幾つかの実施形態では、保持部材をどこか他のところで処理するための処理領域から取り出すのがよい。例えば、保持部材を或る1つの場所でポリヌクレオチド及び抑制物質を含む混合物に接触させ、次に、別の場所に移動させ、この別の場所において、ポリヌクレオチドを保持部材から取り出す。
【0099】
リザーバ275をキャリヤ内に分散して配置したものとして説明したが、他の形態を使用してもよい。例えば、リザーバ275を例えばメンブレン、例えばエンクロージャ、例えばサックで形成された軟質エンクロージャ内に収納するのがよい。幾つかの実施形態では、リザーバは、チャンバ272内に固定されていない状態にある。かかる実施形態では、アクチュエータ244は、あまりに小さいのでリザーバ275を通すことができないが、ガスをチャンバ272から流出させることができるほど大きい細孔を備えた多孔質部材を有するのがよい。
【0100】
種々のコンポーネントを備えたマイクロフルイディックデバイスが、パルナック等(Parunak et al.)により2004年3月17日出願された米国仮特許出願第60/553,553号に記載されており、この米国仮特許出願を参照により引用し、その記載内容を本明細書の一部とする。
【0101】
マイクロフルイディックデバイス300を既に細胞から放出されたポリヌクレオチドを受け入れるよう構成されたものとして説明したが、マイクロフルイディックデバイスは、ポリヌクレオチドを細胞から放出するよう(例えば、細胞を融解させることにより)構成されたものであるのがよい。例えば、図4〜図6を参照すると、マイクロフルイディックデバイス300は、サンプルライシングチャンバ302を有し、このサンプルライシングチャンバ内で、細胞がこの中に含まれるポリヌクレオチドを放出するよう融解される。マイクロフルイディックデバイス300は、基板層L1〜L3、マイクロフルイディックネットワーク304(図4には、この所々の部分しか示されていない)及び液体試薬リザーバR1〜R4を更に有している。液体試薬リザーバR1〜R4は、液体試薬(例えば、サンプル物質を処理するための液体試薬)を保持し、これらリザーバは、試薬ポートRP1〜RP4によりネットワーク304に連結されている。
【0102】
ネットワーク304は、実質的に層L2,L3相互間に形成されているが、一部が3つ全ての層L1〜L3相互間に延びている。マイクロフルイディックネットワーク304は、多数のコンポーネントを有し、かかるコンポーネントとしては、チャネルCi、弁Vi、二重弁V′i、ゲートGi、混合ゲートMGi、ベントHi、ガスアクチュエータ(例えば、ポンプ)Pi、第1の処理領域B1、第2の処理領域B2、検出ゾーンD1、空気ベントAVi及び廃棄物ゾーンWiが挙げられる。ネットワーク304のコンポーネントは代表的には熱作動式である。図7に示すように、熱源ネットワーク312は、マイクロフルイディックネットワーク304のコンポーネントに対応した場所を有する熱源(例えば、抵抗加熱源)を有する。例えば、熱源HPiの設置場所は、アクチュエータPiの設置場所に対応し、熱源HGiの設置場所は、ゲートGi及び混合ゲートの設置場所に対応し、熱源HViの設置場所は、弁Vi及び二重弁V′iの設置場所に対応し、熱源HD1の設置場所は、ネットワーク304の処理チャンバD1の設置場所に対応している。使用に当たり、デバイス300のコンポーネントを代表的にはデバイス200について上述したようなプロセッサを用いて作動されるネットワーク312の対応の熱源と熱的接触状態に配置する。熱源ネットワーク312は、デバイス200について上述したようにデバイス300と一体であってもよく、これとは別体であってもよい。
【0103】
マイクロフルイディックデバイス300のコンポーネントについて説明する。
空気ベントAViは、ネットワーク304内の液体の移動により押し退けられたガス(例えば、空気)を抜くことができるコンポーネントであり、したがって、圧力の増大によって液体の所望の運動が妨げられるようなことはない。例えば、空気ベントAV2は、ガスを液体の下流側にベントAV2を通って逃がすことにより液体をチャネルC14に沿ってチャネルC16内へ流入させることができる。
【0104】
弁Viは、物質が弁の一方の側部(例えば、弁の上流側)の位置から弁の他方の側(例えば、弁の下流側)の位置までチャネルに沿って流れることができるようにする常開状態を有するコンポーネントである。弁Viは、マイクロフルイディックデバイス200の弁と同一の構造を有するのがよい。
【0105】
図8及び図9で理解されるように、二重弁V′iも又、物質が弁の一方の側部(例えば、弁の上流側)の位置から弁の他方の側(例えば、弁の下流側)の位置までチャネルに沿って流れることができるようにする常開状態を有するコンポーネントである。一例として図8及び図9の二重弁V′11を取り上げると、二重弁V′iは、チャネル(例えば、チャネルC14)の各側で互いに間隔を置いて設けられたTRS(例えば、共融合金及び(又は)ワックス)の第1及び第2の塊314,316を有する。代表的には、TRS塊314,316は、互いに(例えば、TRS塊の幅の約50%以下の距離だけ)ずらされている。開放状態の弁を通って移動する物質は、第1のTRS塊314と第2のTRS塊316との間を通る。各TRS塊314,316は、代表的にはガス(例えば、空気)を収容したそれぞれのチャンバ318,320と関連している。
【0106】
TRS塊314,316及び二重弁V′iのチャンバ318,320は、熱源ネットワーク312の対応の熱源HV′11と熱的接触状態にある。熱源HV′11を作動させることにより、TRS塊314,316は、より移動性の高い第2の状態(例えば、部分溶融状態)に移り、チャンバ318,320内のガスの圧力が増大する。ガス圧力は、チャネルC11を横切ってTRS塊314,316を押し遣り、弁HV′11(図9)を閉じる。代表的には、塊314,316は、少なくとも部分的に互いに結合してチャネルC11を塞ぐ塊322を形成する。
【0107】
図6を参照すると、ゲートGiは、物質をゲートの一方の側の位置からゲートの別の側までチャネルに沿って移動させないようにする常閉状態を有するコンポーネントである。ゲートGiは、デバイス200のゲートについて説明したのと同一の構造を有するのがよい。
【0108】
図10A〜図10Dで分かるように、混合ゲートMGiは、液体のうちの2つの容積分をネットワーク304内で結合させる(例えば、混合させる)ことができるコンポーネントである。混合ゲートMGiについて以下に更に説明する。
【0109】
アクチュエータPiは、物質(例えば、サンプル物質及び(又は)試薬物質)をネットワーク304の或る1つの場所と別の場所との間で移動させるガス圧力をもたらすコンポーネントである。アクチュエータPiは、デバイス200のアクチュエータと同一であるのがよい。例えば、各アクチュエータPiは、チャンバ内のガスを加圧するよう加圧できるTEMの塊273を収容したチャンバを有する。各アクチュエータPiは、液体がアクチュエータのチャンバに入るのを阻止する対応のゲートGi(例えば、アクチュエータP1のゲートG2)を有する。ゲートは代表的には、アクチュエータのチャンバ内に生じた圧力がマイクロフルイディックネットワークに入ることができるようにするよう作動される(例えば、開かれる)。
【0110】
廃棄物チャンバW1は、ネットワーク304内の液体の取り扱い(例えば、移動及び(又は)混合)に起因して生じる廃棄物(例えば、オーバーフロー)液体を受け入れることができるコンポーネントである。代表的には、各廃棄物チャンバW1は、チャンバに流入する液体により押し退けられたガスを抜くことができるようにする関連の空気ベントを有する。
【0111】
第1の処理領域B1は、ポリヌクレオチドを濃縮させると共に(或いは)サンプルの抑制物質から分離することができるようにするコンポーネントである。処理領域B1は、デバイス200の処理領域220と同様な構成及び作用を有するのがよい。幾つかの実施形態では、第1の処理領域B1は、処理領域220について上述した1又は2以上のリガンドで改質された少なくとも1つの表面を備える保持部材(例えば、多数の粒子(例えば、微小球又はビーズ)、多孔質部材、多数の壁)を有する。例えば、リガンドは、1又は2以上のポリアミド(例えば、ポリカチオンポリアミド、例えばポリ−L−リジン、ポリ−D−リジン、ポリ−DL−オルニチン)を含むのがよい。幾つかの実施形態では、保持部材の粒子は、ライシングチャンバ302内に設けられ、サンプル物質と一緒に処理領域B1内に入れられる。
【0112】
第2の処理領域B2は、1又は2以上のポリアミドが存在するかどうかを判定するために物質(例えば、サンプル物質)を構成物(例えば、試薬)と結合させることができるコンポーネントである。幾つかの実施形態では、構成物としては、1又は2以上のPCR試薬(例えば、プライマ、コントロール(対照)プラスミド及びポリメラーゼ酵素)を含む。代表的には、構成物を1又は2以上の凍結乾燥粒子(例えば、ペレット)として処理領域内に収納する。粒子は一般に、室温(例えば、約20℃)で少なくとも約6ヶ月(例えば、少なくとも約12ヶ月)の保存寿命を有する。第2の処理領域B2に流入した液体は、凍結乾燥構成物を溶解させる(例えば、再構成する)。
【0113】
代表的には、処理領域B2の凍結乾燥粒子の平均容積は、約5マイクロリットル以下(例えば、約4マイクロリットル以下、約3マイクロリットル以下、約2マイクロリットル以下)である。幾つかの実施形態では、処理領域B2の凍結乾燥粒子の平均直径は、約4mm以下(例えば、約3mm以下、約2mm以下)である。例示の実施形態では、凍結乾燥粒子の平均容積は、約2マイクロリットルであり、その平均直径は約1.35mmである。1又は2以上のポリアミドが存在しているかどうかを判定するための凍結乾燥粒子としては、代表的には、多数の構成物が挙げられる。幾つかの実施形態では、凍結乾燥粒子は、ポリアミドが存在しているかどうかを判定すると共に(或いは)ポリアミドの濃度を増大させる反応に用いられる1又は2以上の構成物を含む。例えば、凍結乾燥粒子は、例えばPCRによりポリヌクレオチドを増幅させる1又は2以上の酵素を含むのがよい。次に、B群レンサ球菌属(GBS)バクテリアと関連したポリヌクレオチドを増幅させるための例示の試薬を含む例示の凍結乾燥粒子について説明する。幾つかの実施形態では、凍結乾燥粒子としては、凍結保護物質、1又は2以上の塩、1又は2以上のプライマ(例えば、GBSプライマF及び(又は)GBSプライマR)、1又は2以上のプローブ(例えば、GBSプローブ−FAM)、1又は2以上の内部コントロールプラスミド、1又は2以上の特異性コントロール(例えば、GBSのPCRに関するコントロールとしてレンサ球菌属肺炎球菌DNA)、1又は2以上のPCR試薬(例えば、dNTP及び(又は)dUTP)、1又は2以上の閉塞剤又は増量剤(例えば、非特異性タンパク質(例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)、RNAseA、又はゲラチン)及びポリメラーゼ(例えば、グリセロールが含まれていないタックポリメラーゼ(Taq Polymerase))が挙げられる。当然のことながら、他の成分(例えば、他のプライマ及び(又は)特異性コントロール)を他のポリヌクレオチドの増幅のために使用できる。
【0114】
凍結保護物質は一般に、凍結乾燥粒子の安定性を高めるのに役立つと共に粒子の他の構成物への損傷を阻止するのに役立つ(例えば、粒子の調製及び(又は)貯蔵中の酵素の変性を阻止することにより)。幾つかの実施形態では、凍結保護物質は、1又は2以上の糖(例えば、1又は2以上の二糖類(例えば、トレハロース、メリジトース、ラフィノース))及び(又は)1又は2以上の多価アルコール(マニトール、ソルビトール)を含む。
凍結乾燥粒子を所望に応じて調製することができる。代表的には、凍結乾燥粒子の構成物を溶剤(例えば、水)と結合させて溶液を作り、次に、この溶液を(例えば、別々のアリコート(例えば、液滴)の状態で例えばピペットにより)冷却状態の疎水性表面(例えば、ダイヤモンド膜又はポリテトラフルオロエチレン表面)上に配置する。一般に、表面の温度は、液体窒素の温度の近くまで(例えば、約−150°F以下(−101℃以下)、約−200°F以下(−128℃以下)、約−275°F以下(−175℃以下))まで減少させる。溶液は、別個独立の粒子として凍結する。凍結粒子に、溶剤(例えば、昇華により)ペレットから除去するのに十分な圧力及び時間の間、依然として凍結状態で真空作用を及ぼす。
【0115】
一般に、粒子の構成材料の溶液中の構成物の濃度は、マイクロフルイディックデバイス中に再構成された場合よりも高い。代表的には、溶液濃度と再構成濃度の比は、少なくとも約3(例えば、少なくとも約4.5)である。幾つかの実施形態では、比は約6である。
【0116】
GBSの存在を表すポリヌクレオチドの増幅に使用される凍結乾燥ペレットを調製する例示の溶液を作るには、凍結保護物質(例えば、乾燥粉末としてトレハロースを120mg)、緩衝溶液(例えば、pH8.4の1Mトリス、2.5MのKCl及び200mMのMgCl2の溶液48マイクロリットル)、第1のプライマ(例えば、500マイクロモルのGBSプライマF(インビトロゲン)を1.92マイクロリットル)、第2のプライマ(例えば、500マイクロモルのGBSプライマR(インビトロゲン)を1.92マイクロリットル)、プローブ(例えば、250マイクロモルのGBSプローブ−FAM(IDT/バイオサーチ・テクノロジーズ(Biosearch Technologies)社を1.92マイクロリットル)、コントロールプローブ(例えば、250マイクロモルのCal Orange560(バイオサーチ・テクノロジーズ社)を1.92マイクロリットル)、テンプレートプラスミド(例えば、1マイクロリットル当たり105コピーのプラスミドの溶液を0.6マイクロリットル)、特異性コントロール(例えば、1マイクロリットル当たり10ナノグラム(例えば、1マイクロリットル当たり約5,000,000コピー)レンサ球菌属肺炎球菌DAN(ATCC)の溶液を1.2マイクロリットル)、PCR試薬(例えば、dNTP(エピセンター(Epicenter)社)の100ミリモル溶液を4.8マイクロリットル及びdUTP(エピセンター社)の20ミリモル溶液を4マイクロリットル)、増量剤(例えば、BSA(インビトロゲン(Invitorogen)社)の1ミリリットル溶液当たり50ミリグラムを24マイクロリットル)、ポリメラーゼ(例えば、グリセロールが含まれていないTaq Polymerase(インビトロゲン/エッペンドルフ(Eppendorf)社)の1マイクロリットル溶液当たり5Uを60マイクロリットル)及び溶剤(例えば、水)を化合させて約400マイクロリットルの溶液を作るのがよい。この溶液の約2マイクロリットル当たり約200アリコートを上述したように凍結させると共に脱溶媒和して200個のペレットを作る。再構成時、200個の粒子は、総容積が約2.4ミリリットルのPCR試薬溶液を作る。
【0117】
図5に示すように、試薬リザーバRiは、使用の準備ができるまでネットワーク300から分離された液体試薬(例えば、水、緩衝溶液、水酸化物溶液)を収容するよう構成されている。リザーバR1は、液体を収容する密閉空間330を画定するエンクロージャ329を有する。各空間330は、エンクロージャ329の下部壁333によって試薬ポートRPi及びネットワーク304から分離されている。エンクロージャ329の一部は、各エンクロージャの下部壁333の方へ差し向けられた穿刺部材331として形成されている。デバイス300を使用する場合、穿刺部材331を押し下げて壁333を穴あけすることにより試薬リザーバRiを作動させる。穿刺部材331をユーザにより(例えば、親指で)又はデバイス300を動作させるために用いられる作動システムにより押し下げるのがよい。
【0118】
壁333を穴あけすると、リザーバからの流体がネットワーク333に流入する。例えば、図5及び図6で分かるように、リザーバR2からの液体は、ポートRP2によりネットワーク304に流入し、チャネルC2に沿って移動する。ゲートG3は、液体がチャネルC8に沿って流れるのを阻止する。過剰の液体は、チャネルC7に沿って流れて廃棄物チャンバW2に流入する。リザーバR2からの液体の後縁が疎水性ベントH2を通ると、リザーバ内に作られる圧力が逃がされて、液体のそれ以上の運動を停止させる。その結果、ネットワーク304は、接合部J1と接合部J2との間のチャネルC2の容積によって定められた容積を有する液体試薬のアリコートを受け入れる。アクチュエータP1を作動させると、この試薬アリコートをネットワーク304内で更に移動させる。試薬リザーバR1,R3,R4は、対応のチャネル、疎水性ベント及びアクチュエータと関連している。
【0119】
図示の形態では、試薬リザーバR1は代表的には、処理領域B1内に保持されたポリヌクレオチドを放出するためのリリース液(例えば、デバイス200について上述したような水酸化物溶液)を収容する。試薬リザーバR2は代表的には、ポリヌクレオチドの放出に先立って、処理領域B1からの非保持状態の物質(例えば、抑制物質)を除去するための洗浄液(例えば、デバイス200について上述したような緩衝溶液)を収容する。試薬リザーバR3は代表的には、中和緩衝液(例えば、pH8.0の25〜50mMトリス−HCL緩衝溶液)を収容する。試薬リザーバR4は代表的には、脱イオン水を収容する。
【0120】
ライシングチャンバ302は、主ライシングチャンバ306と廃棄物チャンバ308に分割されている。物質は、チャンバ306,308の一方から他方のチャンバに流れる際に必ずネットワーク304の少なくとも一部を通過する。主ライシングチャンバ306は、サンプルをチャンバ306に導入するサンプル入力ポートSP1、チャンバ306をネットワーク304に連結するサンプル出力ポートSP2及び以下に説明するようにチャンバ306内のサンプル物質と相互作用する凍結乾燥試薬LPを有する。入力ポートSP1は、物質(例えば、サンプル物質及びガス)がチャンバ306に流入することができるが、物質がポートSP1によりチャンバ308から流出するのを制限する(例えば、阻止する)一方向弁を有する。代表的には、ポートSP1は、気密シールを形成するようサンプル入力装置(例えば、シリンジ)と結合するよう構成された継手(例えば、ルアー継手)を有する。主チャンバ306は代表的には、約5ミリリットル以下(例えば、約4ミリリットル以下)の容積を有する。使用に先立って、代表的には、主チャンバ306をガス(例えば、空気)で満たす。
【0121】
廃棄物チャンバ308は、液体がネットワーク304からチャンバ308に流入することができるようにする廃棄物部分W6及びチャンバ308に流入した液体により押し退けられるガスが出ることができるようにするベント310を有する。
【0122】
ライシング302の凍結乾燥試薬粒子LPは、ポリヌクレオチドを細胞から放出する(例えば、細胞を融解させることにより)構成された1又は2以上の構成物(例えば、試薬)を含む。例えば、粒子LPは、タンパク質(例えば、プロテイナーゼ、プロテアーゼ(例えば、プロナーゼ)、トリプシン、プロテイナーゼK、ファージ溶菌性酵素(例えば、PlyGBS)、リゾチーム(例えば、改質リゾチーム、例えばReadyLyse)、細胞特異性酵素(例えば、B群レンサ球菌属を溶解させるためミュータノリシン))を減少させる(例えば、変性させる)よう構成された1又は2以上の酵素を含むのがよい。
【0123】
幾つかの実施形態では、物品LPは代表的には、代替的に又は追加的に、抑制物質と比較して、ポリヌクレオチドを保持するコンポーネントを有する。例えば、粒子LPは、デバイス200について上述したようにリガンドで改質された多数の粒子218の表面を有するのがよい。粒子LPは、表面改質粒子上の部位を結合するために決定されるべきポリヌクレオチドと競合する恐れのあるポリヌクレオチドを減少させる酵素を含むのがよい。例えば、決定されるべきDNAと競合する恐れのあるRNAを減少させるため、粒子LPは、酵素、例えばRNAアーゼ(例えば、RNAseA ISC BioExpress(アムレスコ(Amresco)社)を含むのがよい。
【0124】
例示の実施形態では、粒子LP細胞は、凍結保護物質、抑制物質と比較してポリヌクレオチドを保持するよう構成されたリガンドで改質された粒子、及び1又は2以上の酵素を含む。
【0125】
代表的には、粒子LPの平均容積は、約35マイクロリットル以下(例えば、約27.5マイクロリットル以下、約25マイクロリットル以下、約20マイクロリットル以下)である。幾つかの実施形態では、粒子LPの平均直径は、約8mm以下(例えば、約5mm以下、約4mm以下)である。例示の実施形態では、凍結乾燥粒子の平均容積は、約20マイクロリットルであり、その平均直径は、約3.5mmである。
【0126】
粒子LPを所望に応じて調製することができる。代表的には、上述したような凍結保護物質及び冷却状態の疎水性表面を用いて粒子を調製する。例えば、粒子LPを調製するための溶液を調製するには、凍結保護物質(例えば、トレハロースを6グラム)、リガンドで改質された複数個の粒子(例えば、ポリ−D−リジンリガンドによりカルボキシレート改質された粒子のサスペンションを約2ミリリットル)、プロテアーゼ(例えば、プロテアーゼを400ミリグラム)、RNAアーゼ(例えば、RNAアーゼを30ミリグラム(1ミリグラム当たり120Uの活性度))、ペプチドグリカンを消化する酵素(例えば、ReadyLyse(1マイクロリットルReadyLyse溶液当たり30,000Uを160マイクロリットル))、細胞特異性酵素(例えば、ミュータノリシン(例えば、1マイクロリットルのミュータノリシン溶液当たり50Uを200マイクロリットル)及び溶剤(例えば、水)を化合させて約20ミリリットルを生じさせるのがよい。この溶液の各々について約20マイクロリットルの約1000アリコートを上述したように凍結すると共に脱溶媒和させて1000本のペレットを作る。再構成されると、ペレットは、全部で約200ミリリットルの溶液を作るよう用いられる。
【0127】
使用に当たり、デバイス300を次のように動作させるのがよい。ネットワーク304の弁Vi及びV′iは、開放状態に構成されている。ネットワーク304のゲートGi及び混合ゲートMGiは、閉鎖状態に構成されている。試薬ポートR1〜R4を押し下げて液体試薬を上述したようにネットワーク304内に導入する。サンプルを、ポートSP1を介してライシングチャンバ302に導入し、主ライシングチャンバ306内の凍結乾燥粒子LPに結合させる。代表的には、サンプルは、粒子(例えば、細胞)と緩衝溶液の組合せを含む。例えば、例示のサンプルは、約2部の全血及び約3部の緩衝容器(例えば、pHが8.0の二重mMトリス、1mMEDTA及び1%SDSの溶液)を含む。別の例示のサンプルは、B群レンサ球菌属及び緩衝溶液(例えば、pHが8.0の20mMトリス、1mMEDTA及び1%トリトンX−100)を含む。
【0128】
一般に、サンプルの導入量は、主アイシングチャンバ306の全容積よりも小さい。例えば、サンプルの容積は、チャンバ306の全容積の約50%以下(例えば、約35%以下、約30%以下)であるのがよい。代表的なサンプルの容積は、約3ミリリットル以下(例えば、約1.5ミリリットル以下)である。或る量のガス(例えば、空気)を一般にサンプルと共に主チャンバ306に導入する。代表的には、ガスの導入容積は、チャンバ306の全容積の約50%以下(例えば、約35%以下、約30%以下)である。かかる容積のサンプルとガスが結合して既にチャンバ306内に存在しているガスを加圧する。ポートSP1の弁307は、ガスがチャンバ306から流出するのを阻止する。ゲートG3,G4,G8,G10は、閉鎖状態にあるので、加圧サンプルは、ポートSP2を介してネットワーク304に入るのが阻止される。
【0129】
サンプルは、チャンバ306内の粒子LPを溶解させる。再構成されたライシング試薬(例えば、ReadyLyse、ミュータノリシン)は、サンプルの細胞を融解させ始めてポリヌクレオチドを放出させる。他の試薬(例えば、プロテアーゼ酵素、例えばプロナーゼ)は、サンプル内の抑制物質(例えば、タンパク質)を減少させ又は変性させ始める。サンプルからのポリヌクレオチドは、粒子LPから放出された粒子218のリガンドと結び付き始める(例えば、結合し始める)。代表的には、チャンバ306内のサンプルを融解が生じている間、或る期間(例えば、約15分間以下、約10分間以下、約7分間以下)、加熱する(例えば、少なくとも約50℃に、少なくとも約60℃に)。幾つかの実施形態では、少なくとも部分的にライシングチャンバの内容物を加熱するために光エネルギーが用いられる。例えば、デバイス300を動作させるために用いられる作動システムは、チャンバ306と熱的及び光学的接触状態に置かれたランプ(例えば、主として赤外光を発生するランプ)を有するのがよい。チャンバ306は、チャンバ306内のサンプルの温度をモニタするために用いられる温度センサTSを有する。ランプ出力をセンサTSで測定された温度に基づいて増減する。
【0130】
デバイス300の動作を続行し、G2を作動させ(例えば、開放し)主ライシングチャンバ306のポートSP2とライシング廃棄物チャンバ308のポートW6との間に経路を生じさせる。この経路は、チャネルC9、チャネルC8に沿って処理領域B1及びチャネルC11を通って延びる。チャンバ306内の圧力は、融解されたサンプル物質(融解質、粒子218に結合されたポリヌクレオチド及び他のサンプル成分を含む)を経路に沿って移動させる。粒子218(ポリヌクレオチドを含む)を、サンプルの液体及び他の成分が廃棄物チャンバ308に流入しながら、処理領域B1(例えば、フィルタにより)保持する。或る期間(例えば、約2〜約5分間)後、ゲートG1を開くことによりライシングチャンバ306内の圧力を抜いてポートSP2とW6との間に第2の経路を作る。二重弁V′1及びV′8を閉じてライシングチャンバ302をネットワーク304から隔離する。
【0131】
デバイス300の動作は、ポンプP1を作動させ、ゲートG2,G3,G9を開くことにより続行する。ポンプP1は、チャネルC2内の洗浄液を接合部J1の下流側に押し遣り、処理領域B1を通って廃棄物チャンバW5内に流入させる。洗浄液は、粒子218により保持されなかった抑制物質及び他の構成物を処理領域B1から除去する。洗浄液の後縁(例えば、上流側インターフェイス)が疎水性ベントH14を通過すると、アクチュエータP1からの圧力がネットワーク304から抜かれ、液体のそれ以上の運動を停止させる。二重弁V′2,V′9を閉じる。
【0132】
動作は、ポンプP2を作動させ、ゲートG6,G4,G8を開いてリリース液を試薬リザーバR1から処理領域B1内に移動させ、そして粒子218に接触させる。空気ベントAV1は、移動中のリリース液の前方の圧力を抜く。疎水性ベントH6は、リリース液の後縁の後ろの圧力を抜き、リリース液のそれ以上の運動を停止させる。二重弁V′6,V′10を閉じる。
【0133】
動作は、処理領域B1を加熱し(例えば、粒子218を加熱することにより)ポリヌクレオチドを粒子218から放出させる。粒子をデバイス200について上述したように加熱するのがよい。代表的には、リリース液は、約15mMの水酸化物(例えば、NaOH溶液)を含み、粒子を約2分間掛けて約70℃まで加熱してポリヌクレオチドを粒子218から放出する。
【0134】
動作は、ポンプP3を作動させ、ゲートG5,G10を開いてリリース液を処理領域B1から下流側に放出することにより続行する。空気ベントAV2は、リリース液の下流側の圧力を抜き、液体がチャネルC16内に流入できるようにする。疎水性ベントH8は、圧力をリリース液の上流側から抜き、それ以上の運動を停止させる。二重弁V′11,V′14を閉じる。
【0135】
図10A〜図10Dを参照すると、混合ゲートMG11を用いて粒子218から放出されたポリヌクレオチドを含むリリース液の一部と試薬リザーバR3からの中和緩衝液を混合させる。図10Aは、試薬リザーバR3を押し下げて中和緩衝液をネットワーク304内に導入する前の混合ゲートMG11領域を示している。図10Bは、中和緩衝剤をチャネルC13,C12内に導入した後の混合ゲートMG11領域を示している。二重弁V′13を閉じてネットワーク304を試薬リザーバR3から隔離する。二重弁V′12を閉じてネットワーク304を廃棄物チャンバW3から隔離する。中和緩衝液は、ゲートMG11のTRSの塊324の一方の側に接触する。
【0136】
図10Cは、リリース液をチャネルC16内に移動させた後の混合ゲートMG11領域を示している。マイクロフルイディックネットワーク304の寸法(例えば、チャネル寸法及び疎水性ベントH8の位置)は、チャネルC16,C14の結合部J3,J4相互間に位置決めされたリリース液の部分が、放出ステップ中、粒子218と接触状態にある液体の容積にほぼ相当するように構成されている。幾つかの実施形態では、接合部J3,J4相互間に位置する液体の容積は、約5マイクロリットル以下(例えば、約4マイクロリットル以下、約2.5マイクロリットル以下)である。例示の実施形態では、接合部J3,J4の相互間のリリース液の容積は、約1.75マイクロリットルである。代表的には、接合部J3,J4相互間の液体は、処理領域B1に流入したサンプル中に存在するポリヌクレオチドの少なくとも約50%(少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%)を含む。弁V14を閉じてネットワーク304を空気ベントAV2から隔離する。
【0137】
混合ゲートMG11を作動させる前に、接合部14のところのリリース液とチャネルC13,C12相互間の接合部J6のところの中和緩衝液をTRSの塊324から分離する(例えば、液体は、ガスの容積によっては間隔を置いて位置しない)。リリース液と中和緩衝液を結合させ又は組み合わせるため、ポンプP4及びゲートG12,G13,MG11を作動させる。ポンプP4は、接合部J5,J6の相互間の中和液の容積及び接合部J4,J3相互間のリリース液の容積を混合チャネルC15(図10D)内に押し遣る。TRSの塊324は代表的には、分散すると共に(或いは)溶融し、それにより2つの液体を結合させ又は組み合わせることができる。結合(又は組合せ)状態の液体は、下流側インターフェイス335(接合部J3によって形成される)及び上流側インターフェイス(接合部J5によって形成される)。これらインターフェイスが存在することにより、インターフェイスが存在しない場合よりもより効率的な混合(例えば、結合状態の液体の再循環)が可能である。図10Dで分かるように、混合は代表的には、2つの液体相互間のインターフェイスの近くで始まる。混合チャネルC15は代表的には、チャネル内の結合状態の液体の全長と少なくともほぼ同じぐらい長く(例えば、少なくとも約2倍)である。
【0138】
リリース液と結合された中和緩衝液の容積は、接合部J5,J6相互間のチャネル寸法により定められる。代表的には、結合状態の中和液の容積は、結合状態のリリース液の容積とほぼ同じである。幾つかの実施形態では、接合部J5,J6相互間に位置する液体の容積は、約5マイクロリットル以下(例えば、約4マイクロリットル以下、約2.5マイクロリットル以下)である。例示の実施形態では、接合部J5,J6相互間のリリース液の容積は、約2.25マイクロリットルである(例えば、リリース液と中和緩衝剤の全容積は、約4マイクロリットルである)。
【0139】
図6を参照すると、結合状態のリリース液と中和緩衝液は、混合チャネルC15に沿って流れてチャネルC32内に流入する(空気ベントAV8により下流側に抜かれる)。運動は、結合状態の液体の上流側インターフェイスが、疎水性ベントH11を通過するまで続行し、この疎水性ベントは、圧力をアクチュエータP4から抜いて、結合状態の液体のそれ以上の運動を停止させる。
【0140】
デバイス300の動作を続行させ、アクチュエータP5及びゲートG14,G15,G17を作動させて第2の処理領域B2中に存在する凍結乾燥PCR粒子を試薬リザーバR4からの水の中に溶解させる。疎水性ベントH10は、アクチュエータP5からの圧力を水の上流側で抜き、それ以上の運動を停止させる。溶解は代表的には、PCR試薬ペレットを溶解させるために約2分掛からないで(例えば、約1分掛からないで)生じる。弁V17を閉じる。
【0141】
デバイス300の動作を続行して、アクチュエータP6及びゲートG16を作動させて凍結乾燥粒子の溶解構成物を処理領域B2からチャネルC31内に押し遣り、このチャネル内で、溶解状態の試薬が混ざって均質の溶解状態の凍結乾燥粒子溶液を形成する。アクチュエータP6は、溶液をチャネルC35,C33内に移動させる(空気ベントAV5によって下流側に抜かれる)。疎水性ベントH9は、アクチュエータP6により生じた圧力を溶液の上流側で抜き、それ以上の運動を停止させる。弁V18,V19,V′20及びV′22を閉じる。
【0142】
デバイス300の作動を続行して、アクチュエータP7及びゲートG18,MG20,G22を作動させてゲートMG20とゲートG22との間のチャネル32内の中和されたリリース液の一部とゲートG18とMG20との間のチャネルC35中の溶解された凍結乾燥粒子溶液の一部を組み合わせる(例えば、混合する)。結合状態の液体は、混合チャネルC37に沿って移動して検出領域D2内に入る。空気ベントAV3は、結合状態の液体の下流側でガス圧力を抜く。結合状態の液体の上流側インターフェイスが疎水性ベントH13を通過すると、アクチュエータP7からの圧力を抜き、結合状態の液体を検出領域D2内に入れる。
【0143】
アクチュエータP8及びゲートMG2,G23及びG19を作動させてゲートMG2とゲートG23との間の試薬リザーバR4からの水の一部とゲートG19とゲートMG2との間のチャネルC33内の溶融状態の凍結乾燥粒子溶液の第2の部分を組み合わせる。結合状態の液体は、混合チャネルC41に沿って移動して検出領域D1内に流入する。空気ベントAV4は、結合状態の液体の下流側のガス圧力を抜く。結合状態の液体の上流側インターフェイスが疎水性ベントH12を通過すると、圧力をアクチュエータP8から抜き、結合状態の液体を検出領域D1内に入れる。
【0144】
デバイス300の作動を続行して、二重弁V′26,V′27を閉じて検出領域D1をネットワーク304から隔離し、二重弁V′24,V′25を閉じて検出領域D2をネットワーク304から隔離する。各検出領域の内容物(検出領域D2中のサンプルポリヌクレオチドを含む中和リリース液、溶解状態の凍結乾燥粒子溶液からのPCR試薬、溶解状態の凍結乾燥粒子溶液から検出領域D1内へのPCR試薬を含む脱イオン水)に加熱及び冷却ステップを施してポリヌクレオチドを増幅する(検出領域D2中に存在していれば)。各検出領域の二重弁は、加熱中、検出領域の内容物の蒸発を阻止する。増幅されたポリヌクレオチドは一般に、蛍光検出法を用いて検出される。
【0145】
図11を参照すると、デバイス700が、例えばサンプルをポリヌクレオチドの増幅に備えて準備するようポリヌクレオチド含有サンプルを処理するために構成されている。デバイス700は、サンプルリザーバ704、試薬リザーバ706、ガス圧力発生器708、クロージャ(例えば、キャップ710)及び複数個の粒子(例えば、リガンド、例えばポリ−L−リジン及び(又は)ポリ−D−リジンで表面改質されたカルボキシレートビーズ705)を有する保持部材704を含む処理領域702を有している。保持部材704及びビーズ705は、保持部材216及び表面改質粒子218の任意の特性又は全ての特性を共有するのがよい。デバイス700は、開口部716及び開口部716を開閉する弁、例えば熱作動式弁715を更に有している。
【0146】
使用に当たり、ポリヌクレオチド含有サンプルをサンプルリザーバ704に添加する。代表的なサンプルの量は、約100μL〜約2mLである。ただし、これよりも多い又は少ない量を使用できる。試薬リザーバ706をあらかじめ試薬が入れられたデバイス700のユーザに提供するのがよい。変形例として、デバイス700は、ユーザが試薬をデバイス700に追加するよう構成されたものであってもよい。いずれの場合においても、試薬は、例えばNaOH溶液及び(又は)緩衝溶液、例えば、本明細書において説明したかかる溶液のうちの任意のものを含むのがよい。
【0147】
サンプル及び必要ならば試薬をデバイス700にいったん追加すると、キャップ710を閉じてサンプル及び試薬物質の蒸発を阻止する。
【0148】
また図12を参照すると、オペレータ718は、デバイス700を動作させるよう構成されている。オペレータ718は、第1の熱源720及び第2の熱源722を有している。第1の熱源720は、例えばサンプルリザーバ704内に存在するサンプルを加熱してポリヌクレオチド含有サンプルの細胞を溶解させて自由なポリヌクレオチドを調製する。 デバイス700は、ポリヌクレオチド含有サンプル中に存在するポリペプチドのペプチド結合を分割するよう構成された酵素、例えばプロテアーゼ、例えばプロナーゼを含む酵素リザーバ712を更に有するのがよい。酵素リザーバ712をあらかじめ酵素が入れられたデバイス700のユーザに提供するのがよい。変形例として、デバイス700は、ユーザが酵素をデバイス700に追加するよう構成されたものであってもよい。
【0149】
デバイス700を用いると、測定されるべきポリヌクレオチドの量に対して存在する抑制物質の量を減少させることができる。かくして、サンプルを処理領域702を通って溶出させてサンプルの成分をビーズ705に接触させる。ビーズ705は、本明細書のどこか別の場所に説明したように抑制物質と比較して、サンプルのポリヌクレオチドを保持する。弁714が開放状態にある場合、処理領域702中に保持されなかったサンプル成分は、開口部を通ってデバイス700から出る。
【0150】
ポリヌクレオチド含有サンプルが処理領域702を通っていったん出ると、或る量の試薬、例えば洗浄溶液、例えば、バッファ液、例えば1%トリトンX100を含むpH8.0のトリス−EDTAを処理領域702を通って溶出させる。洗浄溶液は一般に、試薬リザーバ706内に蓄えられ、この試薬リザーバは、或る量の洗浄溶液を放出するよう構成された弁を有するのがよい。洗浄溶液は、保持されたポリヌクレオチドを溶出させないで、残りのポリヌクレオチド含有サンプル及び抑制物質を溶出させる。
【0151】
抑制物質を保持状態のポリヌクレオチドからいったん分離すると、ポリヌクレオチドは、ビーズ705から放出される。幾つかの実施形態では、ビーズ705、リリース溶液、例えば洗浄溶液とは異なるpHを持つNaOH溶液又はバッファ溶液に接触させることによりポリヌクレオチドを放出する。変形例として又は組合せ例として、保持状態のポリヌクレオチドを有するビーズを例えば、オペレータ718の第2の熱源722を用いることによって加熱する。加熱を用いてポリヌクレオチドを放出させると、リリース溶液は、洗浄溶液と同一であるのがよい。
【0152】
ガス圧力発生器708を用いると、放出状態のポリヌクレオチドを含む或る量のリリース溶液をデバイス700から追い出すことができる。ガス圧力発生器及び(又は)オペレータ718は、発生器708内に存在するガスを加熱する熱源を有するのがよい。加熱されたガスは膨張し、ガス圧力を発生させてサンプルを追い出す。幾つかの実施形態では、熱的に発生したガス圧力を用いるにせよそうでないにせよ、ガス圧力発生器708は、所定容積の物質を追い出すよう構成されている。代表的には、追い出された溶液の量は、約500μL以下、約250μL以下、約100μL以下、約50μL以下、例えば約25μL以下である。
【0153】
実施例
以下の実施例は、例示であって、本発明を限定するものではない。
【0154】
保持部材の調製
約1011mL-1の濃度のカルボキシレート表面磁性ビーズ(セラジン社のセラ−マグ・マグネチック・カルボキシレート(Sera-Mag Magnetic Carboxylate)改質ビーズ部品番号3008050250)をpHが6.1の500mM2−(N−モルフォリニオ)−エタンスルフォン酸(MES)緩衝液中のN−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)及び1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDAC)を用いて30分間活性化させた。活性化状態のビーズを、3000Da又は300,000Daの平均分子量ポリ−L−リジン(PLL)で培養した。非結合状態のPLLを除去するために2回の洗浄後、ビーズをいつでも使用できる状態にした。
【0155】
マイクロフルイディックデバイス
図13及び図14を参照すると、マイクロフルイディックデバイス300を作製して抑制物質からのポリヌクレオチドの分離を実証した。デバイス300は、第1の基板部分302′及び第2の基板部分304′を有し、かかる第1及び第2の基板部分は、それぞれ、第1及び第2の層302a′,302b′及び304a′,304b′を備えている。第1の層302a′及び第2の層302b′は、入口310′及び出口312′を有するチャネル306′を画定している。第1及び第2の層304a′,304b′は、入口314′及び出口316′を有するチャネル308′を画定している。接着剤324′を用いて第1の基板部分302′と第2の基板部分304′を結合してフィルタ318′が出口312′と入口314′との間に位置した状態で出口312′が入口314′と連通するようにした。出口312′の一部を上述したように調製した活性化状態のビーズで満たして保持部材(ビーズ)を有する処理領域320′を提供した。接着剤326′で固定したピペット322′(図14)は、サンプルの導入を容易にした。
【0156】
使用に当たり、入口310′を介して導入したサンプルは、チャネルに沿って流れて処理領域320′を通過した。過剰のサンプル物質は、チャネル308′に沿って流れ、出口316′を介してデバイス300′から流出した。ポリヌクレオチドを抑制物質と比較してビーズにより優先的に保持した。サンプルをいったん導入すると、追加の液体、例えば洗浄液及び(又は)保持状態のポリヌクレオチドを放出するのに用いられる液体を入口326′から導入した。
【0157】
DNAの保持
デバイス300′のポリ−L−リジン改質ビーズによるポリヌクレオチドの保持を、約1000個のビーズを含む約1μLの容量の処理領域を有するデバイスをそれぞれ調製することにより実証した。ビーズを約15,000〜30,000Daのポリ−L−リジンで改質した。各処理領域をニシンの精子DANを含む液体(濃度が約20mg/mLの約20μLのサンプル)で満たし、それによりビーズと液体を接触状態に配置した。液体とビーズを10分間接触状態にした後、液体を各処理領域から取り出し、これに定量リアルタイムPCRを施して液体中に存在するニシンの精子DANの量を測定した。
【0158】
2つのコントロール(対照)を実施した。先ず最初に、他の点では同一の処理領域に非改質状態のビーズ、即ち、活性化ステップ及びポリ−L−リジン培養ステップを除き、ポリ−L−リジンビーズと同一であるビーズを詰め込んだ。ニシンの精子DNAを含む液体をこれらビーズに接触させ、10分間放置し、取り出し、次にこれに定量リアルタイムPCRを施した。第2に、ニシンの精子DNAを有する液体(「非処理液体」)に定量リアルタイムPCRを施した。
【0159】
図15を参照すると、第1及び第2のコントロールは、非改質状態のビーズと接触した液体及び非処理液体中にニシンの精子DNAが存在していることを表す本質的に同一の反応を示した。3000個のポリ−L−リジンビーズと接触した液体は、改質状態のビーズがニシンの精子DANの実質的に全てを保持したことを表す弱い応答を示した。300,000Daのポリ−L−リジンビーズと接触した液体のPCR応答は、3000Daの場合よりも少なくとも約50%高く、低分子量表面改質がニシンの精子DNAを保持するのに一層効率的であったことを表す増幅応答を示した。
【0160】
ポリ−L−リジン改質ビーズからのDNAの放出
処理領域を有するデバイスに3000Daのポリ−L−リジン改質ビーズを詰め込んだ。ビーズレンサ球菌属(GBS)から得たポリヌクレオチドを含む液体を、ニシン精子DNAについて上述したように、ビーズに接触させ、10分間培養した。pH8の二重mMトリス、1mMEDTA及び1%トリトンX−100緩衝溶液中の約10,000個のGBSバクテリアに3分間97℃で熱的ライシングを施すことによりこの液体を得た。
【0161】
10分後、ビーズと接触状態の液体を、処理領域を通って約10μlの洗浄溶液(1%トリトンX−100を含むpH8のトリス−EDTA)を流すことにより除去した。次いで、約1μlの5mMNaOH溶液を処理領域に添加した。このプロセスは、詰め込まれた処理領域をビーズと接触状態のNaOH溶液で満たされたままにした。ビーズと接触状態の溶液を95℃まで加熱した。95℃で5分間加熱した後、ビーズと接触状態の溶液を、処理領域に処理領域のボイド容積の3倍に等しい容積の溶液で溶出させることにより除去した。
【0162】
図16を参照すると、溶液の5つのアリコートに定量リアルタイムPCR増幅を施した。アリコートE1,E2,E3は各々、約1μlの液体を収容していた。アリコートLは、処理領域を通過した元のサンプルの液体に対応していた。アリコートWは、加熱を行わないで洗浄溶液から得られた液体であった。アリコートE1は、チャネル308の容積にほぼ等しいデバイス300の排除容積ボイド容量に相当している。かくして、アリコートE1の液体は、加熱中、ビーズと非接触状態でチャネル308内に存在していた。この液体は、加熱に先立って処理領域を通過した。アリコートE2は、加熱中、ビーズと接触状態で加熱領域内に存在していた液体から成る。アリコートE3は、アリコートE2を処理領域から除去するために用いられた液体から成る。
【0163】
図16で分かるように、初期のサンプル中に存在するGBSのDNAの65%以上は、ビーズにより保持され、ビーズから放出された(アリコートE2)。アリコートE2は又、ビーズにより保持されたDNAのうち80%以上の放出を立証している。GBSのDNAの約18%以下は、捕捉されることなく処理領域を通過した。加熱が行われなかった洗浄溶液は、GBSのDANのうち5%未満から成っていた(アリコートW)。
【0164】
ポリヌクレオチドと抑制物質の分離
頬の内層からの頬細胞は、単一のヌクレオチド多型性(SNP)検出に使用できるヒトの遺伝子物質(DNA)の源となる。頬細胞から成るサンプルに熱的融解を施してDNAを細胞内部から放出させた。上述したように、デバイス300を用いてDNAを付随した抑制物質から分離した。図16のアリコートE2に対応した洗浄済みサンプルにポリメラーゼレンサ反応を施した。熱的融解から得られたコントロール又は手を加えていないサンプルも又増幅させた。
【0165】
図17を参照すると、洗浄後サンプルは、コントロールサンプルの場合よりも少ないサイクルで実質的に高いPCR応答を示した。例えば、洗浄後サンプルは、32サイクル中20の応答を超え、コントロールサンプルは、同一の応答を達成するのに約45サイクルを必要とした。
【0166】
血液は、感染症薬、癌マーカ及び他の遺伝マーカの検出を含む種々の診断検査におけるサンプルマトリックスとして役立つ。血液サンプル中に存在するヘモグロビンは、PCRの文書化された能力の有る抑制剤である。2つの5ml血液サンプルを20mMトリスpH8、1mMEDTA、1%SDS緩衝液中で溶解させてそれぞれのデバイス300に導入し、かかるデバイスを上述したように動作させて2つの洗浄サンプルを調製した。第3の5ml血液サンプルを溶解させ、ミネソタ州所在のジェントラ・システムズ(Gentra Systems)社の商用DNA抽出法Puregeneを用いて調製した。それぞれの洗浄サンプル及び商用抽出法を施したサンプルを対立遺伝子弁別分析(Allelic discrimination analysis)(カリフォルニア州所在のアプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)社のCYP2D6*4試薬)のために使用した。各サンプルは、血液の薬1ml分に相当するDNAの量を収容していた。
【0167】
図18を参照すると、洗浄後サンプル及び商用抽出サンプルは、ほぼ同じPCR応答を示し、デバイス300′の処理領域は、抑制剤を血液サンプルから効果的に除去したことを立証した。
【0168】
耐プロテアーゼ性保持部材
次の処理のためにポリヌクレオチドサンプルの調製では、サンプルにプロテアーゼ処理を行う場合が多く、このプロテアーゼ処理では、プロテアーゼは、サンプル中のタンパク質のペプチド結合を分割する。例示のプロテアーゼは、プロナーゼ、即ち、体内プロテアーゼと体外プロテアーゼの混合物である。プロナーゼは、大抵のペプチド結合を分割する。或る特定のリガンド、例えばポリ−L−リジンは、プロナーゼ及び他のプロテアーゼによる断裂を受けやすい。かくして、サンプルが一般に保持部材の存在下でプロテアーゼ処理を受けない場合、これに結合されたリガンドは、プロテアーゼに敏感である。
【0169】
ポリ−D−リジン、即ち、ポリ−リジンの右旋エナンチオマーは、プロナーゼ及び他のプロテアーゼによる分割に抵抗する。プロテアーゼ処理を受けた場合であっても結合状態のポリ−D−リジンを含む保持部材がDNAを保持する能力について研究した。
【0170】
8つのサンプルを調製した。4つで第1の群から成るサンプルは、10μl緩衝溶液中に1000個のGBS細胞を含んでいた。4つで第2の群をなすサンプルは、10μl緩衝液中に100個のGBS細胞を含んでいた。8つのサンプルの各々を3分間掛けて97℃まで加熱してGBS細胞を融解させた。4つのサンプルの組を加熱状態のサンプルから作った。各サンプル組は、第1及び第2の群の各々から1つのサンプルを含んでいた。各サンプル組のサンプルを次のように処理した。
【0171】
図19Aを参照すると、サンプル組1のサンプルにプロナーゼ培養を施してそれぞれのタンパク質分割サンプルを調製し、次にこれらサンプルを加熱してプロテアーゼを非活性化した。タンパク質分割加熱サンプルを各々が1組のポリ−L−リジン改質ビーズから成るそれぞれの保持部材に接触させた。5分後、それぞれの組のビーズを5マイクロリットルの5mMNaOH溶液で洗浄して抑制剤及びタンパク質分割生成物を結合状態のDANから分離した。それぞれの組のビーズを各々、NaOH溶液の第2のアリコットに接触させ、2分間80℃に加熱してDNAを放出させた。放出状態のDANを含む溶液を等量の緩衝液で中和した。中和溶液を分析してDNA回収効率を求めた。結果を平均して図19Bに示した。
【0172】
サンプル組2のサンプルにプロナーゼ培養を施してそれぞれのタンパク質分割サンプルを調製し、次にこれらサンプルを加熱してプロテアーゼを非活性化した。タンパク質分割加熱サンプルを各々が1組のポリ−D−リジン改質ビーズから成るそれぞれの保持部材に接触させた。5分後、それぞれの組のビーズを5マイクロリットルの5mMNaOH溶液で洗浄して抑制剤及びタンパク質分割生成物を結合状態のDANから分離した。それぞれの組のビーズを各々、NaOH溶液の第2のアリコットに接触させ、2分間80℃に加熱してDNAを放出させた。放出状態のDANを含む溶液を等量の緩衝液で中和した。中和溶液を分析してDNA回収効率を求めた。結果を平均して図19Bに示した。
【0173】
サンプル組3のサンプルにプロナーゼ培養を施してそれぞれのタンパク質分割サンプルを調製した。プロテアーゼを熱的又は化学的の何れによっても非活性化させなかった。タンパク質分割サンプルを各々が1組のポリ−L−リジン改質ビーズから成るそれぞれの保持部材に接触させた。5分後、それぞれの組のビーズを5マイクロリットルの5mMNaOH溶液で洗浄して抑制剤及びタンパク質分割生成物を結合状態のDANから分離した。それぞれの組のビーズを各々、NaOH溶液の第2のアリコットに接触させ、2分間80℃に加熱してDNAを放出させた。放出状態のポリヌクレオチドを含む溶液をそれぞれ等量の緩衝液で中和した。中和溶液を分析してDNA回収効率を求めた。結果を平均して図19Bに示した。
【0174】
サンプル組4のサンプルにプロナーゼ培養を施してそれぞれのタンパク質分割サンプルを調製した。プロテアーゼを熱的又は化学的の何れによっても非活性化させなかった。タンパク質分割加熱サンプルを各々が1組のポリ−D−リジン改質ビーズから成るそれぞれの保持部材に接触させた。5分後、それぞれの組のビーズを5マイクロリットルの5mMNaOH溶液で洗浄して抑制剤及びタンパク質分割生成物を結合状態のDANから分離した。それぞれの組のビーズを各々、NaOH溶液の第2のアリコットに接触させ、2分間80℃に加熱してDNAを放出させた。放出状態のポリヌクレオチドを含む溶液を等量の緩衝液で中和した。中和溶液を分析してDNA回収効率を求めた。結果を平均して図19に示した。
【0175】
図19Bで理解されるように、サンプル組4を用いて平均で80%を超えるDNAをGBS細胞から回収し、この場合、サンプルをポリ−D−リジン改質ビーズに接触させ、プロテアーゼ非活性化を行わないでビーズの存在下でプロナーゼ培養を施した。サンプル組4に関する回収効率は、他のサンプルのいずれの場合よりも2倍以上高い。具体的に説明すると、サンプル組1,2,3,4に関する回収効率はそれぞれ、29%、32%、14%、81.5%であった。かかる回収効率の立証するところによれば、高い回収効率をDNAを保持する保持部材の存在下でプロテアーゼ培養を施したサンプルについて得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】マイクロフルイディックデバイスの斜視図である。
【図2】ポリヌクレオチドを保持すると共に(或いは)ポリヌクレオチドを抑制物質から分離する処理領域の断面図である。
【図3】アクチュエータの断面図である。
【図4】マイクロフルイディックデバイスの斜視図である。
【図5】図4のマイクロフルイディックデバイスの断面側面図である。
【図6】図4のマイクロフルイディックデバイスのマイクロフルイディックネットワークの斜視図である。
【図7】図4のマイクロフルイディックデバイスの構成要素を作動させる熱源のアレイを示す図である。
【図8】弁を開放状態で示す図である。
【図9】弁を閉鎖状態で示す図である。
【図10A】図6のマイクロフルイディックネットワークの混合ゲート及びこのネットワークの隣接の領域を示す図である。
【図10B】図6のマイクロフルイディックネットワークの混合ゲート及びこのネットワークの隣接の領域を示す図である。
【図10C】図6のマイクロフルイディックネットワークの混合ゲート及びこのネットワークの隣接の領域を示す図である。
【図10D】図6のマイクロフルイディックネットワークの混合ゲート及びこのネットワークの隣接の領域を示す図である。
【図11】ポリヌクレオチドと抑制物質を分離する装置を示す図である。
【図12】図11の装置及びその作動装置を示す図である。
【図13】マイクロフルイディックデバイスを示す図である。
【図14】図13のマイクロフルイディックデバイスの5線矢視断面図である。
【図15】ニシンの精子DNAの保持状態を示す図である。
【図16】DNAの保持及びB群レンサ球菌属からのDANの放出状態を示す図である。
【図17】抑制物質を取り出した元のサンプル及び抑制物質を取り出さなかったサンプルのPCR反応を示す図である。
【図18】本発明に従って調製されたサンプル及び商業的規模のDNA抽出法を用いて調製したサンプルのPCR反応を示す図である。
【図19A】ポリヌクレオチドと抑制物質の分離方法の実施中に行われるステップを示す流れ図である。
【図19B】図19Aの方法が実施されたサンプルからのDNAを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル調製装置であって、
ポリカチオンポリアミドが結合された表面と、
前記表面と連通状態にあり、前記表面を流体サンプルに接触させるサンプル導入通路とを有する、サンプル調製装置。
【請求項2】
前記表面と接触状態にある水性液を少なくとも約65℃まで加熱するよう構成された熱源を更に有する、請求項1記載のサンプル調製装置。
【請求項3】
pHが少なくとも約10の液体のリザーバを更に有し、前記装置は、前記表面を前記液体に接触させるよう構成されている、請求項1記載のサンプル調製装置。
【請求項4】
前記表面は、複数の粒子の表面から成る、請求項1記載のサンプル調製装置。
【請求項5】
前記表面を前記装置から取り出すことができる、請求項1記載のサンプル調製装置。
【請求項6】
前記ポリカチオンポリアミドは、ポリ−L−リジン及びポリ−D−リジンのうち少なくとも一方を含む、請求項1記載のサンプル調製装置。
【請求項7】
サンプルを処理する方法であって、
液体及び或る量のポリヌクレオチドを含む混合物を用意するステップと、
ポリメラーゼ連鎖反応抑制物質と比較して、ポリヌクレオチドを優先的に保持するよう構成された保持部材を前記混合物に接触させるステップと、
混合物中の液体の実質的に全てを前記保持部材から分離するステップと、
前記保持部材によって保持されたポリヌクレオチドを前記保持部材から放出するステップとを有する、方法。
【請求項8】
前記ポリヌクレオチドは、約7.5Mbp以下のサイズを有する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記液体は、第1の液体であり、前記液体の実質的に全てを分離するステップは、前記保持部材を第2の液体に接触させるステップを含む、請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記保持部材を第2の液体に接触させるステップは、熱作動式圧力源を作動させて圧力を前記第2の液体に加えるステップを含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記保持部材を第2の液体に接触させるステップは、熱作動式弁を開放させて前記第2の液体を前記保持部材に流体連通させるステップを含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記第2の液体の容積は、約50マイクロリットル以下である、請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記保持部材は、ポリヌクレオチドを優先的にポリメラーゼ連鎖反応抑制物質に結合するよう構成された構成物から成る表面を有する、請求項10記載の方法。
【請求項14】
前記抑制物質は、ヘモグロビン、ペプチド、糞便構成物、フミン酸、粘膜構成物、DNA結合タンパク質、又はサッカリドのうち少なくとも1つを含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記表面は、ポリリジンから成る、請求項13記載の方法。
【請求項16】
前記ポリリジンは、ポリ−L−リジン及びポリ−D−リジンのうちの少なくとも一方から成る、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記分離ステップは、前記第1の液体を第2の液体で置き換えるステップを含む、請求項15記載の方法。
【請求項18】
前記第2の液体は、洗浄剤から成る、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記放出ステップは、前記保持部材を少なくとも約50℃の温度まで加熱するステップを含む、請求項9記載の方法。
【請求項20】
前記保持部材は、液体の存在下で加熱され、前記温度は、加熱中、前記保持部材の存在下では前記液体を沸騰させるには不十分である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記温度は、100℃以下である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記温度は、約10分間以内にわたって維持される、請求項19記載の方法。
【請求項23】
前記方法は、前記保持部材の遠心分離法を含まない、請求項19記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【公表番号】特表2007−535933(P2007−535933A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−511505(P2007−511505)
【出願日】平成17年5月3日(2005.5.3)
【国際出願番号】PCT/US2005/015345
【国際公開番号】WO2005/108620
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(503354871)ハンディーラブ インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】