説明

ポリヌクレオチド配列改変体

2つの非同一ポリヌクレオチドからヘテロ二重鎖ポリヌクレオチドを調製し、一方の鎖の塩基対ミスマッチ部位またはその近傍にニックを導入し、ニックが生じたミスマッチ部位からミスマッチ塩基を除去し、除去した塩基を第1鎖中の塩基を補完する塩基で置き換えるために、反対鎖をテンプレートとして使用することによって、非同一ポリヌクレオチド配列間で配列変異を再分配するインビトロ法を記載する。この方法により、ミスマッチの部位で、一方の鎖から他方の鎖へと情報が伝達される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(相互参照)
本願は、米国仮特許出願第60/402,342号(2002年8月8日出願)に基づく優先権を主張する米国特許出願第10/637,758号(2003年8月8日出願)、米国特許出願第10/226,372号(2002年8月21日出願)、米国特許出願第10/280,913号(2002年10月25日出願)、ならびに米国仮特許出願第60/268,785号(2001年2月14日出願)および米国仮特許出願第60/266,386号(2001年2月2日出願)に基づく優先権を主張する米国特許出願第10/066,390号(2002年2月1日)の一部継続出願である。
【0002】
(発明の分野)
本発明は概して分子生物学に関し、より具体的には、関連する核酸分子の集団を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景情報)
DNAシャフリングは、2つ以上のDNA配列間で組換え体を取得してそれらを加速度的に進化させるための強力なツールである。DNAシャフリングのプロセスに用いられる親DNAまたはインプットDNAは、典型的には、野生型に対して何らかの改善された特徴を持つ、与えられた遺伝子の突然変異体または改変体である。DNAシャフリングの産物は、親核酸に由来する遺伝子配列の基本的にランダムな再集合体のプールに相当し、新しい配列の組合せがもたらす相加的または相乗的効果について、これを解析することができる。
【0004】
帰納的な配列再集合は、適切な特性を持つ改変体だけが次世代の生成にその遺伝物質を提供することが許される進化過程に似ている。DNAシャフリングによる配列再集合を行った後、性能の漸進的改善について試験することにより、最適化された改変体を作製する。さらなる再集合と試験のサイクルにより、そのプロセスの以前のサイクルで同定された遺伝的改善の新しい組合せを持つ遺伝子が生成する。有益な遺伝的変化を再集合させ、組み合わせることにより、考えうる配列の組合せの全てを個別に作製し、選別しなくても、最適化された配列を生じさせることができる。
【0005】
これは、既に改善されている配列に対する後続の改善が、主として偶然の発見によってもたらされるランダム突然変異誘発法とは、はっきりと異なる。例えば、強化された特性の所望の組合せを持つタンパク質を取得するには、種々の有益な突然変異の組合せを持つ突然変異体を同定する必要があるだろう。これらの有益な遺伝的変化を組み合わせるために利用できる方法がない場合は、さらなるランダム突然変異誘発が必要になるだろう。しかし、ランダム突然変異誘発法では、多数の突然変異体を作製し、それらを選別するサイクルを繰り返す必要があり、それは退屈で高度に労働集約的な方法になる。その上、配列が望ましくない影響を持つ突然変異をこうむる率は、配列の情報量と共に増加する。したがって情報量、ライブラリーサイズおよび突然変異生成速度が増加するにつれて、有益な突然変異に対する有害な突然変異の割合も増加し、さらなる改善の選択がますます困難になるだろう。最後に、いくつかのコンピュータシミュレーションにより、点突然変異誘発法はそれだけでは、多くの場合、漸進的すぎて、継続的で劇的な配列進化に要求される大規模ブロック変化は、可能にならないらしいことが示唆されている。
【0006】
ランダム突然変異誘発には多種多様な技術が使用されている。例えばある方法では、エラープローンポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を利用して、突然変異体遺伝子をライブラリー形式で生成させる(CadwellおよびJoyce,1992;Gramら、1992)。もう一つの方法はカセット突然変異誘発法である(ArkinおよびYouvan,1992;Delagraveら、1993;DelagraveおよびYouvan,1993;GoldmanおよびYouvan,1992;Hermesら、1990;Oliphantら、1986;Stemmerら、1993)。この方法では、最適化すべき特定領域を、合成的に突然変異させたオリゴヌクレオチドで置き換える。
【0007】
エラープローンPCRでは、配列全体に低レベルの点突然変異を導入するために、忠実度の低い重合条件を使用する。しかしこの方法の限界は、公表されたエラープローンPCRプロトコールではポリメラーゼの連続移動性が低くなるため、平均的サイズの遺伝子でランダム突然変異生成を行うには、この方法は非効率的だということである。
【0008】
オリゴヌクレオチド指定ランダム突然変異誘発法では、合成的に突然変異させたオリゴヌクレオチドで、短い配列を置き換える。遠く離れた突然変異の組合せを作製するには、異なる部位を異なるオリゴヌクレオチドによって同時に処理しなければならない。全ての部位を満たすのに必要なライブラリーサイズと比較して、この方法で得られるライブラリーサイズは限られているので、最適化を行うには何ラウンドも数多くの選択を行う必要がある。合成オリゴヌクレオチドを使った突然変異誘発法では、各選択後に個々のクローンを配列決定し、次いでそれらを複数のファミリーにグループ分けし、一つのファミリーを恣意的に選択して、それをコンセンサスモチーフにまとめる必要がある。そのようなモチーフを再合成し、一つの遺伝子に再挿入した後、さらなる選択を行う。この工程は統計的ボトルネックを生じ、労働集約的であり、何ラウンドも数多くの突然変異誘発を行うには実用的でない。
【0009】
これらの理由から、エラープローンPCRおよびオリゴヌクレオチド指定突然変異誘発法は、例えば配列の微調整など、必要な配列改変のサイクル数が比較的少ない突然変異誘発プロトコールには使用できるが、数多くの突然変異誘発および選択サイクルを必要とする方法では(大きい遺伝子配列に対するものでは特に)、その有効性に限界がある。
【0010】
上述のように、ランダムに突然変異させた遺伝子から改善された遺伝子産物を作製する先行技術の方法は、その有用性が限られている。ランダムに再集合させた遺伝子配列を作製するための方法として認識されている一方法では、酵素を使用して、長いヌクレオチド鎖を短い断片に切断する。次に、切断剤を遺伝物質から分離し、その物質を、遺伝物質がポリヌクレオチド鎖として再構成することが可能であるような方法(この際、その再構成はランダムであるか、または特定の順序に従う)で増幅する。この方法では、ランダムな断片に分解された遺伝子の改変体を組み立てるために、数ラウンドの増幅を行う必要がある((Stemmer,1994a;Stemmer,1994b)、米国特許第5,605,793号、米国特許第5,811,238号、米国特許第5,830,721号、米国特許第5,928,905号、米国特許第6,096,548号、米国特許第6,117,679号、米国特許第6,165,793号、米国特許第6,153,410号)。この方法の変法では、再構成に先立って、プライマーと限定的ポリメラーゼ伸長反応とを利用して断片を作製する(米国特許第5,965,408号、米国特許第6,159,687号)。
【0011】
しかしどちらの方法にも制限がある。これらの方法には技術的に複雑だという難点がある。そのため、これらの方法を応用できるのは、十分な経験を積んだスタッフを持つ施設に限定される。また、断片から分子を再構成することに起因する複雑な問題、例えば意図しない突然変異が生成することや、サイズが増すにつれて大きい標的分子を再構成させる困難さが増すことなどがあり、それらの問題が、長いポリヌクレオチド鎖を再構成させることに関して、これらの方法の有用性を制限する。
【0012】
これらの断片化と再構成に基づく遺伝子シャフリングの方法が持つもう一つの制限は、親テンプレートポリヌクレオチドが不均質性を増すにつれて発生する。これらの方法のアニーリング工程では、小さいポリヌクレオチド断片が、塩基対形成相互作用によって生じる安定化力に依存して、適正にアニールする。小さなアニーリング領域はその短さゆえに限られた安定化力しか持たないので、高度に相補的な配列のアニーリングは、相違の大きい配列よりも有利になる。そのような場合、これらの方法は、ある特定の親テンプレートに由来する相補的一本鎖のアニーリングによって親テンプレートポリヌクレオチドを再生する傾向を強く持っている。したがって親テンプレートは基本的に自分自身を再構成して、ライブラリー中に不変ポリヌクレオチドのバックグラウンドを生成し、それが組換え分子の検出をより困難にする。この問題は、親テンプレートが不均質になればなるほど、すなわち親テンプレート間の配列一致率が減少するにつれて、ますます重大になる。この結果はKikuchiら(Gene 243:133−137,2000)によって実証された。Kikuchiらは、Pattenら、1997;Crameriら、1998;Harayama,1998;Kumamaruら、1998;Changら、1999;Hanssonら、1999によって報告されたファミリーシャフリングの方法を使って、xylEとnahHの間の組換え体を作製しようと試みた。Kikuchiらは、組換え体が実質上生成しないこと(<1%)を見いだした。彼らは、一本鎖DNAの断片化および再構成によってキメラ遺伝子の形成を改善する方法も開示している。彼らはこの方法を使って14パーセントの割合でキメラ遺伝子を取得したが、他の86パーセントは親配列だった。
【0013】
組換え体の回収効率が低いという特徴は、配列一致率が低い親テンプレート(すなわち多様性が高い親テンプレート)から新規ポリヌクレオチドを生成させることに関して、これらの方法の有用性を制限する。したがって、これらの要求に応える遺伝子配列作製方法が必要とされている。
【0014】
本発明は、上述の必要を満たす方法を提供すると共に、それに関連する利点も提供する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の概要)
本発明は、ヘテロ二重鎖分子を形成させ、次に、ミスマッチ部位における配列情報が一方の鎖から他方の鎖に伝達されるようにミスマッチを取り扱うことにより、インビトロで突然変異を関連ポリヌクレオチド間で再集合させる方法を提供する。好ましい一態様では、ミスマッチニッキング酵素、dNTP類の存在下で3’→5’校正活性を持つポリメラーゼ、およびリガーゼを含有する反応液中でヘテロ二重鎖分子をインキュベートすることによって、ミスマッチを取り扱う。これらの各活性は、与えられたミスマッチ部位で、ヘテロ二重鎖にニックを入れ、不対塩基を一方の鎖から除去した後、テンプレートとして反対鎖を使用して置換し、そしてニックを閉じるように、協調して作用する。アウトプットポリヌクレオチドは、増幅してからクローニングするか、直接クローニングし、改善された特性について試験する。ミスマッチ解消再集合と試験のサイクルをさらに繰り返すことが、さらなる改善につながりうる。
【0016】
一態様として、ヘテロ二重鎖ポリヌクレオチド配列の2本の鎖間の均質性を増加させるインビトロ法は、ヘテロ二重鎖ポリヌクレオチド配列を有効量のミスマッチ指向性鎖切断活性、校正活性およびリガーゼ活性と混合すること、ならびにヘテロ二重鎖ポリヌクレオチド配列の2本の鎖間の均質性が生じるのに十分な時間待つことを含む。
【0017】
もう一つの態様として、少なくとも2つの非相補的ヌクレオチド塩基対を持つヘテロ二重鎖ポリヌクレオチド配列中の相補的塩基対の数を増加させるインビトロ法は、ヘテロ二重鎖ポリヌクレオチド配列のコピーを有効量のミスマッチ指向性鎖切断活性、校正活性およびリガーゼ活性と混合すること、ならびに多くの非相補的ヌクレオチド塩基対が相補的塩基対に変換されて、鎖間の均質性が少なくとも1つの相補的塩基対分は増加するのに十分な時間待つことを含む。
【0018】
もう一つの態様として、少なくとも2つの非相補的ヌクレオチド塩基対を持つヘテロ二重鎖ポリヌクレオチド配列から配列改変体の集団を作製するインビトロ法は、ヘテロ二重鎖ポリヌクレオチド配列を有効量のミスマッチ指向性鎖切断活性、校正活性およびリガーゼ活性と混合すること、ならびに多くの非相補的ヌクレオチド塩基対が相補的塩基対に変換されて、ポリペプチド配列の多様な集団が生じるのに十分な時間待つことを含む。
【0019】
もう一つの態様として、所望の機能的特性をコードするポリヌクレオチド配列を取得するインビトロ法は、少なくとも1つのヘテロ二重鎖ポリヌクレオチド配列を調製すること、ヘテロ二重鎖ポリヌクレオチド配列のコピーを有効量のミスマッチ指向性鎖切断活性、校正活性およびリガーゼ活性と混合すること、ヘテロ二重鎖ポリヌクレオチド配列の鎖間の相補率が増加して集団中の配列多様性が増すのに十分な時間待つこと、ならびに所望の機能的特性について改変体の集団を選別または選択することを含む。
【0020】
もう一つの態様として、所望の機能的特性をコードするポリヌクレオチドを取得するインビトロ法は、少なくとも1つのヘテロ二重鎖ポリヌクレオチドを調製すること、ヘテロ二重鎖ポリヌクレオチド配列のコピーを有効量のミスマッチ指向性鎖切断活性、校正活性およびリガーゼ活性と混合すること、ヘテロ二重鎖ポリヌクレオチド配列中のミスマッチヌクレオチド塩基対の一部または全部が相補的塩基に変換されて、ポリヌクレオチド配列の多様な集団が生じるのに十分な時間待つこと、所望の機能的特性を持つ改変体の集団を選別または選択すること、前記改変体の集団を変性させて一本鎖ポリヌクレオチド配列の集団を取得すること、前記一本鎖ポリヌクレオチド配列の集団をアニールさせてヘテロ二重鎖ポリヌクレオチド配列の多様な集団を形成させること、ヘテロ二重鎖ポリヌクレオチド配列を有効量のミスマッチ指向性鎖切断活性、校正活性およびリガーゼ活性と混合すること、ヘテロ二重鎖ポリヌクレオチド配列中のミスマッチヌクレオチド塩基対の一部または全部がマッチ塩基対に変換されて、ポリヌクレオチド配列の多様な集団が生じるのに十分な時間待つこと、そして所望の機能的特性を持つ改変体の集団を選別または選択することを含む。DNAは、選別に先立って、DNAの転写により、RNAに変換することができる。リガーゼ活性は校正後の鎖を閉じるために加えることができる。
【0021】
この方法の利点の一つは、配列が環状または線状であるということである。これは、ほぼ無制限な配列長のシャフリングを可能にする。改変体ポリヌクレオチド配列はさまざまな量の相補性を持つ。下記の実施例では、配列相同性が47%しかない2つのポリヌクレオチド間のポリヌクレオチドヘテロ二重鎖における相補性の増加を示すデータを記載する。
【0022】
今までの遺伝子シャフリング法、例えばStemmerらの方法と比較した、本発明の利点の一つは、ミスマッチの発生率が高い区域内で配列を交換できることである。Stemmerらの方法は断片の再アニーリングを必要とするので、かなりの量の一致度(一般的には少なくとも約70%の一致度)が要求される。本発明は、はるかに低い一致度を持つ領域でも、切断し解消することができる。なぜなら、二本鎖が切断され、変性され、再アニールするのではなく、ポリヌクレオチド全体は概して単にニックが入るだけで、一つにまとまっているからである。
【0023】
このプロセスは、与えられたヘテロ二重鎖DNA分子の多くの部位で、また両方の鎖で、同時に起こりうる。その結果、インプット鎖間の配列差のランダム化が起こり、出発配列の集団よりも多様な配列改変体の集団が得られる。
【0024】
もう一つの態様として、所望の機能的特性を持つタンパク質をコードする再集合DNA分子を同定する方法は、少なくとも1つの一本鎖ウラシル含有DNA分子であって、その一本鎖ウラシル含有DNA分子またはその相補鎖がタンパク質をコードしているものを用意すること、前記一本鎖ウラシル含有DNA分子にハイブリダイズする能力を持つ1つまたは複数の非同一一本鎖DNA分子であって、前記DNA分子が前記タンパク質の少なくとも1つの追加改変体をコードしているものを用意すること、前記一本鎖ウラシル含有DNA分子を工程(b)の少なくとも1つの一本鎖DNA分子と接触させることにより、アニールしたDNA分子を生成させること、アニールしたDNA分子をミスマッチエンドヌクレアーゼ、校正ポリメラーゼおよびリガーゼと共にインキュベートすることにより、ウラシル含有DNA分子にアニールした配列再集合DNA鎖を生成させること、ウラシル含有DNA分子が増幅されない条件下で再集合DNA鎖を増幅することにより、再集合DNA分子の集団を生成させること、そして所望の機能的特性を持つポリペプチドをコードするものを同定するために再集合DNA分子の集団を選別または選択することにより、所望の機能的特性を持つポリペプチドをコードする1つ以上のDNA分子を同定することを含む。このプロセスはテンプレートとしてRNA分子を使用して行うこともできる。
【0025】
(定義)
本明細書および特許請求の範囲が、ここで各用語に与えられている範囲を含めて、明確にかつ首尾一貫して理解されるように、以下の定義を記載する。
【0026】
本明細書で使用する「増幅」という用語は、ポリヌクレオチドのコピー数が増加するプロセスを指す。これは、その分子に対して直接行うか、またはそれを(例えば形質転換、トランスインフェクション(transinfection)などによって)細胞内に入れて、その細胞にそのポリヌクレオチドを自然に複製させることなどによって、間接的に行うことができる。
【0027】
本明細書で使用する「アニーリング」という用語は、少なくとも部分的に相補的であるヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションによる、少なくとも部分的に二本鎖である核酸の形成を指す。部分的に二本鎖である核酸は、短い方の核酸鎖が長い方の核酸の一部と100%同一である場合に、短い方の核酸鎖が長い方の核酸鎖にハイブリダイズすることによって生じうる。また、100%の一致度は持たないが、ある特定の一組のハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするのに十分な相同性を持つ2つの核酸鎖がハイブリダイズすることによっても、部分的に二本鎖である核酸は生じうる。
【0028】
本明細書で使用する「クランプ」という用語は、例えばPCRプライマーへのクランプ配列の組込みなどの方法によって、ポリヌクレオチドの一端に付加されるユニークなヌクレオチド配列を指す。以前に記載されているように(Skarfstad,J.Bact,vol 182,No 11,P.3008−3016)、クランプ配列は、異なる親に由来する鎖同士のハイブリダイゼーションによって生じるポリヌクレオチド配列(すなわちヘテロ二重鎖分子)だけの増幅を可能にし、それによって完全長ハイブリッド産物の生成を確実にするためのものである。
【0029】
本明細書で使用する「切断」という用語は、ポリヌクレオチドを酵素で消化すること、または他の方法でポリヌクレオチド内のリン酸ジエステル結合を破壊することを意味する。
【0030】
本明細書で使用する「相補的塩基対」という用語は、一方の鎖中のアデニンが他方の鎖中のチミン(またはウラシル)と向かい合い、一方の鎖中のシトシンが他方の鎖中のグアニンと向かい合っているような、二重らせん中のDNA(またはRNA)塩基の対応を指す。
【0031】
本明細書で使用する「〜に相補的」という用語は、ここでは、相補配列が基準ポリヌクレオチド配列の全部または一部の逆相補鎖と同一であること、または一方の鎖中の各ヌクレオチドが反対鎖中のヌクレオチドまたはその類似体と塩基対を形成できることを意味するために用いられる。例えば、ヌクレオチド配列「TATAC」は基準配列「GTATA」に相補的である。
【0032】
本明細書で使用する「変性(する/させる)」または「変性した」という用語は、これを核酸に関して使用する場合には、二本鎖核酸から一本鎖核酸への変換を指す。二本鎖核酸を変性させる方法は当業者にはよく知られており、例えば塩基対形成を不安定化する作用因子の添加、温度を上昇させること、塩濃度を低下させること、またはそれらの組合せが含まれる。これらの要因は、鎖の相補性に応じて、すなわち鎖が100%相補的であるか、それとも1つ以上の非相補ヌクレオチドを持っているかに応じて適用される。
【0033】
本明細書で使用する「所望の機能的特性」という用語は、選択または選別の目的となりうる表現型特性を意味し、例えばポリペプチドをコードすること、連結されたポリヌクレオチドの転写を促進すること、タンパク質を結合すること、あるポリペプチド、生物またはベクターの機能または生物学的特性を改善することなどが含まれるが、これらに限るわけではない。そのような所望の機能的特性を持つポリヌクレオチドは、例えば適切な植物、動物、真菌、酵母または細菌発現ベクターからの発現、組込みによるトランスジェニック植物、トランスジェニック動物またはトランスジェニック微生物の作出、リボザイムの発現などを含む(ただしこれらに限らない)数多くの方法で、使用することができる。
【0034】
本明細書で使用する「DNAシャフリング」という用語は、ここでは、実質上相同であるが同一ではない配列間での配列情報の再集合を示すために用いられる。
【0035】
本明細書で使用する「有効量」という用語は、ある作用因子がその所期の活性をもたらすのに必要なその作用因子の量を指す。本発明の場合、この決定は、当業者の知識で十分に可能である。
【0036】
本明細書で使用する「エキソヌクレアーゼ」という用語は、ポリヌクレオチド鎖の末端から1回に1つのヌクレオチドを切断する酵素、すなわちポリヌクレオチド分子の3’端または5’端のどちらかからリン酸ジエステル結合を加水分解する酵素を指す。そのようなエキソヌクレアーゼには、例えばT4 DNAポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼ、大腸菌Pol 1およびPfu DNAポリメラーゼなどがあるが、これらに限るわけではない。3’→5’方向に加水分解するエキソヌクレアーゼは「3’→5’エキソヌクレアーゼ活性」を持つと言われる。同様に、5’→3’活性を持つエキソヌクレアーゼは「5’→3’エキソヌクレアーゼ活性」を持つと言われる。なお、例えば大腸菌Pol Iなど、一部のエキソヌクレアーゼは3’→5’活性と5’→3’活性を両方とも持つことが知られている。
【0037】
本明細書で使用する「ミスマッチ解消による遺伝子再集合(Genetic Reassortment by Mismatch Resolution:GRAMMR)」という用語は、2つの非同一ポリヌクレオチドからヘテロ二重鎖ポリヌクレオチドを作製し、一方の鎖の塩基対ミスマッチ部位またはその近傍にニックを導入し、ニックが生じたミスマッチ部位からミスマッチ塩基を除去し、除去した塩基を第1鎖中の塩基を補完する塩基で置き換えるために、反対鎖をテンプレートとして使用することによって、非同一ポリヌクレオチド配列間で配列変異を再分配するインビトロ法を使って、関連ポリヌクレオチド間で配列変異を再集合させる方法を指す。この方法により、ミスマッチの部位で一方の鎖から他方の鎖へと情報が伝達される。
【0038】
この方法では、部分相補分子中の複数の部分を、独立して同時に取り扱うことができる。その結果として、ポリヌクレオチド配列中の相補塩基対の割合が上昇する。
【0039】
ヘテロ二重鎖ポリヌクレオチド配列の2本の鎖間にある1つ以上の塩基対ミスマッチは、ヘテロ二重鎖ポリヌクレオチド配列を有効量のミスマッチ指向性鎖切断活性、校正活性およびリガーゼ活性と混合することで1つ以上のミスマッチを解消するインビトロ法によって、解消される。この方法により、ミスマッチの部位で一方の鎖から他方の鎖に情報が伝達される。
【0040】
ミスマッチは、2つの非相補塩基が互いに向かい合って存在する結果であることができる。ミスマッチ部位は、隣接ミスマッチによって不安定になるヌクレオチド塩基対を含む、いくつもの不対ヌクレオチドのクラスターからなることができる。ミスマッチは、一方の鎖に、反対鎖上に数量的対応のない1つ以上の塩基が存在する結果であることもできる。例えば、ミスマッチの部位では、一方の鎖には1つの不対塩基が存在し、他方の鎖には不対塩基が存在しないかもしれない。これは、一方の鎖の当該部位に単一の不対ヌクレオチドを含んでいる配列長不均質部位をもたらしうる。このミスマッチ部位で最初にニックが入る鎖がどちらであるかに依存して、本発明の方法では、短い方の鎖に対して一塩基の挿入が起こることになるか、または元々余分な不対ヌクレオチドを持っていた鎖に対して一塩基の欠失が起こることになるだろう。一方の鎖から他方の鎖に配列長情報が伝達されるこの原理は、2本の鎖上のミスマッチ塩基の数が互いに一致していない任意のミスマッチ部位に、当てはまりうる。
【0041】
通常は、反応液中にヘテロ二重鎖ポリヌクレオチドのコピーが数多く存在する。この状況では、ポリヌクレオチドの一コピー上のトップ鎖と、別の一コピー中のボトム鎖とをテンプレートとして、ミスマッチ部位の配列情報が伝達されうる。十分なコピー数を利用できると仮定した場合、単一のミスマッチが存在するなら、2つのアウトプット改変体が考えられる。2つのミスマッチ部位が存在するなら、2×2個の改変体が生じうる。n個のミスマッチ部位が存在するなら、少なくとも2のn乗個、すなわち2個の遺伝子再集合体が、ミスマッチ解消によって可能になる。考えうる結果は少なくとも2個の改変体ポリヌクレオチドである。ここで少なくともと言うのは、正確な機構が完全にはわかっていないからである。2塩基以上の長さのミスマッチ部位の場合、個々の事象は、1個、2個またはそれ以上のミスマッチ塩基をテンプレートにするのだろうと、推測することができる。そうであるとすれば、生じうる改変体の数は増加することになるだろう。
【0042】
本明細書で使用する「GENEWARE」または「GENEWARE(登録商標)」という用語は、少なくとも一部がトバモウイルスに由来し、追加の(通常は異種の)サブゲノムプロモーターを持つように修飾されているウイルスベクターを指す。自然界に見いだされるトバモウイルスは、典型的には、移動タンパク質およびコートタンパク質のサブゲノムプロモーターを持っている。GENEWARE(登録商標)はLarge Scale Biology corpotationの登録商標である。
【0043】
本明細書で使用する「粒状性」という用語は、与えられた子孫ポリヌクレオチド中に隣接した配列として存在する、与えられた親ポリヌクレオチドに由来する核酸配列情報の量を指す。
【0044】
本明細書で使用する「テンプレート配列」という用語は、第2ポリヌクレオチド配列に部分的に相補的な第1一本鎖ポリヌクレオチド配列であって、GRAMMRで処理すると、そのテンプレート鎖から第2鎖への遺伝情報の伝達が起こるようになっているものを指す。
【0045】
テンプレート鎖から伝達される配列情報の単位が大きいほど、粒状性は高い。テンプレート鎖から伝達される配列情報のブロックが小さいほど、粒状性は低いまたは細かい。低い粒状性は、DNAシャフリングまたは再集合法が、より小さい孤立した遺伝情報のブロックをテンプレート鎖から第2鎖に伝達できることを示す。低い粒状性を持つDNAシャフリングまたは再集合法の利点は、小さい核酸配列を他から分割し、その配列情報を伝達することができるという点である。主として高い粒状性を与えるDNAシャフリングまたは再集合法では、小さい核酸配列を他から分割することは容易でない。
【0046】
本明細書で使用する「ヘテロ二重鎖ポリヌクレオチド」という用語は、同一でない一本鎖(典型的には別個の鎖)をアニールさせることによって形成される二本鎖ポリヌクレオチドを指す。ヘテロ二重鎖ポリヌクレオチドは、一本鎖ループまたは一本鎖バブルとして存在する不対領域を持っていてもよい。ヘテロ二重鎖ポリヌクレオチド領域は1本の一本鎖ポリヌクレオチドによって形成させることもでき、その場合は、部分的自己相補性がステム−ループ構造の形成を可能にし、その鎖のアニーリング部分が非同一である。
【0047】
本明細書で使用する「ヘテロ二重鎖DNA」という用語は、同一でない一本鎖(典型的には別個の鎖)をアニールさせることによって形成される二本鎖DNAを指す。ヘテロ二重鎖DNAは一本鎖ループまたは一本鎖バブルとして存在する不対領域を持っていてもよい。ヘテロ二重鎖DNA領域は1本の一本鎖ポリヌクレオチドに形成させることもでき、その場合は、部分的自己相補性がステム−ループ構造の形成を可能にし、その鎖のアニーリング部分が非同一である。
【0048】
本明細書で使用する「相同」という用語は、1つの一本鎖核酸配列が少なくとも部分的に相補的な一本鎖核酸配列にハイブリダイズしうることを意味する。ハイブリダイゼーションの程度は、後述するように、配列間の一致量、温度および塩濃度などのハイブリダイゼーション条件を含む多くの要因に依存しうる。
【0049】
核酸が共通する祖先配列から自然にまたは人工的に導かれる場合、それらは「相同」である。自然進化の過程では、長い間に2つ以上の子孫配列が親配列から分岐する場合に、すなわち突然変異と自然淘汰によって、これが起こる。人工的条件下では、例えば2つの基本的方法のうちの1つで、分岐が起こる。第1に、与えられた配列は、例えば典型的なクローニング中に起こるように、別の配列と人工的に組み換えて、子孫核酸を生成させるか、または与えられた配列を化学修飾するか、他の方法で操作して、結果として生じる分子を修飾することができる。もう一つの選択肢として、選択した親核酸配列とは配列が異なる核酸を合成することにより、核酸を新規合成することもできる。2つの核酸の祖先について明確な知識がない場合、相同性は、典型的には、2つの配列間の配列比較によって推断される。2つの核酸配列が各核酸のかなりの部分にわたって配列類似性を示す場合、それら2つの核酸は共通の祖先を持つと推断される。相同性を確定する配列類似性の厳密なレベルは、さまざまな要因に依存して、当技術分野内でもさまざまである。
【0050】
本明細書においては、2つの核酸がそれら2つの核酸分子間でGRAMMRによる情報伝達を起こすのに十分な配列一致度を持つ場合に、それらは相同であると見なされる。
【0051】
本明細書で使用される「同一」または「一致(度)」という用語は、2つの核酸配列が同じ配列または相補的な配列を持つことを意味する。したがって「一致区域」とは、ポリヌクレオチドの領域もしくは区域またはポリヌクレオチド全体が、もう一つのポリヌクレオチドの区域と同一または相補的であることを意味する。
【0052】
本明細書で使用する「相補率の増加」という用語は、ヘテロ二重鎖分子中の相補塩基対率が大きくなることを意味する。
【0053】
本明細書で使用する「リガーゼ」という用語は、核酸中の隣接ヌクレオチド間にリン酸ジエステル結合を樹立する酵素を指す。
【0054】
本明細書で使用する「ミスマッチ」という用語は、正常な塩基対形成相互作用を形成することができない塩基対(すなわち「A」と「T」(もしくは「U」)または「G」と「C」以外)を指す。
【0055】
本明細書で使用する「ミスマッチ解消」という用語は、ミスマッチ塩基対の相補塩基対への変換を意味する。
【0056】
本明細書で使用する「突然変異」という用語は、野生型核酸配列もしくは基準核酸配列の配列変化またはポリペプチドの配列変化を意味する。そのような突然変異は、トランジションまたはトランスバージョンなどの点突然変異であることができる。突然変異は欠失、挿入または重複であることができる。
【0057】
本明細書で使用する「ニックトランスレーション」という用語は、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性と5’→3’ポリメラーゼ活性との組合せにより、二本鎖ポリヌクレオチド中の一本鎖切断点(「ニック」)の位置を5’→3’方向に移動させることができるという、ポリメラーゼの特性を指す。
【0058】
本明細書で使用する「核酸」または「核酸分子」という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)などのポリヌクレオチドを意味し、一本鎖核酸および二本鎖核酸ならびにオリゴヌクレオチドを包含する。本発明で有用な核酸には、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、プラスミド、コスミド、PCR産物および合成オリゴヌクレオチドが含まれ、センス鎖、アンチセンス鎖、またはその両方を表すことができる。核酸には、一般に、自然界に存在する4つのヌクレオチド、アデニン、グアニン、シトシンおよびチミジン/ウリジンが組み込まれる。本発明の核酸は、自然界に存在するまたは自然界に存在しない他のヌクレオチド(その誘導体を含む、ただし、そのヌクレオチド誘導体が、ポリメラーゼにより、所望のポリヌクレオチド産物を生成するのに十分な効率でポリヌクレオチド中に組み込まれうる場合に限る)も組み込むことができる。
【0059】
本明細書で使用する「親核酸」という用語は、部分相補核酸の出発集団に含まれる元の一本鎖核酸に対して100%同一な配列を持つ核酸を指す。例えば図2で説明すると、部分相補核酸の組合せ1+/4−または2−/3+を本発明の方法での出発集団として使用したとすると、親核酸には、核酸XおよびYが含まれる。
【0060】
本明細書で使用する「部分相補(部分的に相補)」という用語は、別の核酸に対して実質上相補的であるが、少なくとも2つ以上のヌクレオチドが当該別の核酸とは異なっている核酸を指す。
【0061】
本明細書で使用する「部分相補核酸集団」という用語は、実質上相補的な配列を持つ個々の核酸群から構成される核酸集団であるが、ある特定の群に属する核酸はいずれも、当該集団中の他のどの配列群についても、厳密な相補配列を持っていないような、核酸集団を指す。
【0062】
本明細書においては、部分相補核酸集団のメンバーはどれでも、その集団の別の核酸またはその相補鎖とは、2つ以上のヌクレオチドで異なっている。したがって、厳密に相補的な配列(すなわち100%の相補性を持つ相補配列)を含む集団は、部分相補核酸からは明確に除外される。したがって、そのような部分相補核酸集団の各メンバーは、その集団の他のメンバーとは、両方の鎖を含めて2つ以上のヌクレチドで異なっている。一方の鎖をトップ鎖と呼び、その相補鎖をボトム鎖と呼ぶ。
【0063】
本明細書で使用する「トップ」鎖という用語は、5’→3’の方向に読まれるポリペプチドを指し、「ボトム鎖」とはその相補鎖を指す。ある配列をボトム鎖またはトップ鎖と呼ぶが、そのような呼称は、相補鎖を識別することを意図するものであると理解される。というのも、溶液状態では、ある鎖をトップ鎖またはボトム鎖として固定する配向はないからである。
【0064】
例えば、4本の鎖のいずれかを使って一本鎖部分相補核酸集団を生成させることができる2つの二本鎖核酸から、2つの核酸メンバーを含む集団を導くことができる。本発明の部分相補核酸集団を得るために使用することができる2つの核酸の鎖の潜在的組合せの一例を図2に示す。部分相補核酸集団の潜在的メンバーである2つの核酸配列を「X」(AGATCAATTG)および「Y」(AGACCGATTG)と名付ける(図2A)。これらの核酸配列は2つの位置(「」で示した4位および6位)で異なっている。核酸XおよびYの「トップ」鎖をそれぞれ「1+」および「3+」と名付け、核酸XおよびYの「ボトム鎖」をそれぞれ「2−」および「4−」と名付ける。
【0065】
図2Bに4本の核酸鎖の考えうる組合せを示す。考えうる鎖の組合せが6つあるうち、1+/2−、1+/4−、2−/3+、または3+/4−という組合せだけが、要求される部分相補核酸集団のトップ鎖とボトム鎖を構成する。これらのトップ/ボトム配列の組合せのうち、1+/4−または2−/3+だけが、2つの異なる分子の部分相補核酸集団の一例を構成する。なぜなら、これらの組合せだけが、少なくとも1つのヌクレオチドが異なる相補配列を持つからである。残りの組合せ1+/2−および2+/4−は、厳密に相補的な配列を含むので、本発明の部分相補核酸集団を構成しない。
【0066】
2つの異なる分子の集団に関する上述の例では、1つ以上のヌクレオチドが異なっているが同じセンスである鎖の組合せ、例えば1+/3+または2−/4−は、核酸分子の部分相補集団から除外された。しかし、より大きな集団には、その集団が少なくとも1本のボトム鎖と少なくとも1本のトップ鎖とを含む限り、このような同鎖核酸の組合せも含まれうる。例えば、鎖5+および6−を持つ第3の核酸「Z」を含めると、1+/3+/6−または2−/4−/5+という組合せが部分相補核酸集団を構成するだろう。同様に、その集団が少なくとも1つのトップ鎖および少なくとも1つのボトム鎖を含み、かつその集団が厳密な相補鎖であるメンバーを含まない限り、本発明の部分相補核酸集団を生成させるために、いくつもの核酸ならびにそれらの対応するトップ鎖およびボトム鎖を組み合わせることができる。
【0067】
本発明の核酸集団は約3個以上、約4個以上、約5個以上、約6個以上、約7個以上、約8個以上、約9個以上、約10個以上、約12個以上、約15個以上、約20個以上、約25個以上、約30個以上、約40個以上、約50個以上、約75個以上、約100個以上、約150個以上、約200個以上、約250個以上、約300個以上、約350個以上、約400個以上、約450個以上、約500個以上、さらには約1000個以上の異なる核酸分子であることができる。1つの集団は、約2000個以上、約5000個以上、約1×10個以上、約1×10個以上、約1×10個以上、約1×10個以上、さらには約1×10個以上の異なる核酸を含むことができる。当業者は、本明細書に開示するように、所望する再集合実験成果の性質および利用できる選別方法に応じて、本発明に含めるべき望ましい集団を容易に決定することができる。
【0068】
本明細書で使用する「ポリメラーゼ」という用語は、テンプレートによる指定を受けてヌクレオチドのポリマー(すなわちポリヌクレオチド)の形成を触媒する酵素を指す。本発明で役立つポリメラーゼは、例えば動物、植物、細菌およびウイルスポリメラーゼなど、任意の生物または供給源に由来することができる。ポリメラーゼは、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、またはRNAをDNAに転写する能力を持つ逆転写酵素であることができる。
【0069】
本明細書で使用する「校正」という用語は、ミスマッチヌクレオチドなどのヌクレオチドが3’→5’方向に除去されて、典型的には塩基対形成ヌクレオチドで置き換えられうるという酵素の特性を表す。挿入または欠失によって生じるループを取り扱う場合、校正は、ミスマッチヌクレオチドの除去のみ、または塩基対形成ヌクレオチドの付加のみを伴いうる。
【0070】
本明細書で使用する「組換え」ポリヌクレオチドという用語は、少なくとも2つの異なるポリヌクレオチドに由来する配列情報を含むポリヌクレオチドを指す。
【0071】
本明細書で使用する「関連ポリヌクレオチド」という用語は、それらポリヌクレオチドのある領域または区域が同一であり、それらポリヌクレオチドのある領域または区域が非同一であることを意味する。
【0072】
本明細書で使用するDNA「再集合」という用語は、ここでは、非同一配列間での配列変異の再分配を示すために用いられる。
【0073】
本明細書で使用する「レプリコン」という用語は、ある長さのポリヌクレオチドとその複製開始部位とを含む複製の遺伝単位を指す。
【0074】
本明細書で使用する「配列多様性」という用語は、非同一ポリヌクレオチドの存在量を指す。「集団中の配列多様性を増加させる」という用語は、集団中の非同一ポリヌクレオチドの相対的存在量を増加させることを意味する。
【0075】
本明細書で使用する「配列改変体」という用語は、基準分子と比較して1つ以上の配列差を持つ分子(DNA、RNA、ポリペプチドなど)を指す。例えば、GRAMMR中にヘテロ二重鎖分子の全体にわたって起こる別個の独立したミスマッチ解消事象の総和は、その分子の全体にわたる配列情報の再集合をもたらす。配列情報が、さまざまな組合せで再集合することにより、「配列改変体」の複雑なライブラリーが生成する。
【0076】
本明細書で使用する「鎖切断活性」または「切断」という用語は、ポリヌクレオチド鎖の主鎖に含まれるリン酸ジエステル結合の破壊、例えばニックの形成を指す。鎖切断活性は、酵素剤によって(そのような作用因子には、例えばCEL I、RES I、T4エンドヌクレアーゼVII、またはT7エンドヌクレアーゼI、S1ヌクレアーゼ、BAL−31ヌクレアーゼ、FEN1、クレベース、膵DNアーゼI、SPヌクレアーゼ、マングビーンヌクレアーゼ、およびヌクレアーゼP1などがあるが、これらに限るわけではない)、または化学的作用因子によって(そのような作用因子には、例えば過マンガン酸カリウム、酢酸テトラエチルアンモニウム、立体的に嵩高い光活性化可能なDNA挿入剤[Rh(bpy)2(chrysi)]3+、四酸化オスミウムとピペリジン、およびヒドロキシルアミンとピペリジンなどがあるが、これらに限るわけではない)、または電離放射線もしくは動的放射線(kinetic radiation)の形態のエネルギーによって提供されうる。
【0077】
本明細書で使用する「ミスマッチ指向性鎖切断」という用語は、ヘテロ二重鎖ポリヌクレオチド配列上のミスマッチ塩基対、ミスマッチ塩基対群、またはらせん外塩基もしくはらせん外塩基群の部位を認識し、そのミスマッチ部位で一方の鎖を切断する鎖切断活性を意味する。二本鎖切断および/またはランダム一本鎖切断も少しは起こりうるが、この反応の一次的な焦点は、ミスマッチ塩基対の部位にニックを入れることである。
【0078】
本明細書で使用する「十分な時間」という用語は、反応またはプロセスが所望の産物を与えるのに必要な期間を指す。本発明の場合、十分な時間の決定は、当業者の知識で十分に可能である。なお、「十分な時間」は、実施者の要望に依存して、反応の機能性または所望の産物の品質には影響を及ぼさずに、広く変化しうる。
【0079】
本明細書で使用する「野生型」という用語は、ある核酸断片が突然変異を一切含まないことを意味する。「野生型」タンパク質とは、そのタンパク質が自然界に見いだされる活性レベルで活性であり、典型的には自然界に見いだされるアミノ酸配列であるだろうことを意味する。一側面として、「野生型」または「親配列」という用語は、本発明の操作前の出発配列または基準配列を示すことができる。
【0080】
本明細書で使用するポリペプチド表記では、標準的な用法と慣習に従って、左方向はアミノ末端方向であり、右方向はカルボキシ末端方向である。同様に、別段の指定がない限り、一本鎖ポリヌクレオチド配列の左端は5’端であり、二本鎖ポリヌクレオチド配列の左方向を5’方向という。新生RNA転写物の5’→3’付加方向を転写方向という。
【0081】
(発明の詳細な説明)
本発明は、少なくとも2つの非相補的ヌクレオチド塩基対を持つ少なくとも1つのヘテロ二重鎖ポリヌクレオチドから配列改変体を作製するインビトロ法であって、少なくとも1つのヘテロ二重鎖ポリヌクレオチドを調製し、前記ヘテロ二重鎖ポリヌクレオチドを、有効量の、鎖切断活性、校正活性およびリガーゼ活性を持つ1つまたは複数の作用因子と混合し、相補率が増加して、少なくとも1つ以上の改変体が作製されるのに十分な時間待つことを含む方法を提供する。
【0082】
本発明のもう一つの側面は、ヘテロ二重鎖ポリヌクレオチドが環状、線状またはレプリコンである点である。
【0083】
本発明のもう一つの側面は、所望の改変体がさまざまな量の相補性を持つ点である。
【0084】
本発明のもう一つの側面は、鎖切断活性、校正活性、およびリガーゼ活性が逐次的に、または同時に加えられる点である。
【0085】
本発明のもう一つの側面は、T4 DNAリガーゼ、大腸菌DNAリガーゼ、またはTaq DNAリガーゼなどの作用因子によって提供されるリガーゼ活性の添加を提供する。
【0086】
本発明のもう一つの側面では、鎖切断活性が、CEL I、RES I、T4エンドヌクレアーゼVII、またはT7エンドヌクレアーゼI、S1ヌクレアーゼ、BAL−31ヌクレアーゼ、FEN1、クリベース(cleavase)、膵DNアーゼI、SPヌクレアーゼ、マングビーンヌクレアーゼ、およびヌクレアーゼP1などの酵素、過マンガン酸カリウム、酢酸テトラエチルアンモニウム、立体的に嵩高い光活性化可能なDNA挿入剤[Rh(bpy)2(chrysi)]3+、四酸化オスミウムとピペリジン、およびヒドロキシルアミンとピペリジンなどの化学的作用因子、または電離放射線もしくは動的放射線などのエネルギーの形態によって提供される。
【0087】
本発明のもう一つの側面では、ポリメラーゼ活性がPolベータによって提供される。
【0088】
本発明のもう一つの側面は、ポリメラーゼ活性と3’→5’エキソヌクレアーゼ活性が両方ともT4 DNAポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼ、大腸菌Pol 1またはPfu DNAポリメラーゼによって提供される点である。
【0089】
本発明のもう一つの側面は、ポリメラーゼ活性と5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を両方とも持つ作用因子が大腸菌Pol 1である点である。
【0090】
本発明のもう一つの側面は、ポリメラーゼ活性を持つ作用因子が3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を欠き(例えばTaq DNAポリメラーゼ、VentR(exo−)DNAポリメラーゼ、Deep VentR(exo−)DNAポリメラーゼ、Therminator DNAポリメラーゼ、またはクレノウフラグメント(3’→5’exo−)(New England BioLabsから入手できる酵素)、T4 DNAポリメラーゼ(3’→5’exo−)、またはKlentaq(Barnes,Gene 112(92)29)など)、3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を持つ作用因子がポリメラーゼ活性を欠く(例えば大腸菌エキソヌクレアーゼIII(Exo III)またはApe1(Hadiら、J Mol Biol 316(02)853))点である。鎖置換活性を持つポリメラーゼの場合は、T4 RNアーゼH(Bhagwatら、J Biol Chem 272(1997)28523)などのフラップエンドヌクレアーゼ活性を持つ作用因子も加えることが好ましい。
【0091】
本発明のもう一つの側面では、校正活性がT4 DNAポリメラーゼまたはT7 DNAポリメラーゼによって提供される。
【0092】
本発明のもう一つの側面では、有効量の鎖切断活性、および校正活性およびリガーゼ活性が、RES I、T4 DNAポリメラーゼ、および大腸菌DNAリガーゼによって提供される。
【0093】
本発明のもう一つの側面では、有効量の鎖切断活性、および校正活性およびリガーゼ活性が、RES I、T7 DNAポリメラーゼ、およびT4 DNAリガーゼによって提供される。
【0094】
本発明のもう一つの態様は、配列集団内の多様性を増加させるインビトロ法であって、少なくとも1つのヘテロ二重鎖を調製し、そのヘテロ二重鎖ポリヌクレオチドを、有効量の、校正活性、リガーゼ活性および鎖切断活性を持つ1つまたは複数の作用因子と混合し、相補率が増加して、集団内の多様性が増加するのに十分な時間待つことを含む方法を提供する。
【0095】
本発明のもう一つの態様は、所望の機能的特性をコードするポリヌクレオチドを取得する方法であって、少なくとも1つのヘテロ二重鎖ポリヌクレオチドを調製し、前記ヘテロ二重鎖ポリヌクレオチドを、有効量の、校正活性、リガーゼ活性および鎖切断活性を持つ1つまたは複数の作用因子と混合し、ヘテロ二重鎖ポリヌクレオチドの鎖間の相補率が増加して、集団内の多様性が増加するのに十分な時間待ち、そして所望の機能的特性に関して改変体の集団を選別または選択することを含む方法を提供する。
【0096】
本発明のもう一つの態様は、所望の機能的特性をコードするポリヌクレオチドを取得する方法であって、少なくとも1つのヘテロ二重鎖ポリヌクレオチドを調製し、前記ヘテロ二重鎖ポリヌクレオチドを、有効量の、校正活性、リガーゼ活性および鎖切断活性を持つ1つまたは複数の作用因子と混合し、ヘテロ二重鎖ポリヌクレオチドの鎖間の相補率が増加して、集団内の多様性が増加するのに十分な時間待ち、DNAをRNAに変換し、そして所望の機能的特性に関して、リボ核酸改変体の集団を選別または選択することを含む方法を提供する。
【0097】
本発明のさらにもう一つの態様は、所望の機能的特性を持つポリペプチドを取得する方法であって、少なくとも1つのヘテロ二重鎖ポリヌクレオチドを調製し、前記ヘテロ二重鎖ポリヌクレオチドを、有効量の、校正活性、リガーゼ活性および鎖切断活性を持つ1つまたは複数の作用因子と混合し、前記ヘテロ二重鎖ポリヌクレオチドの鎖間の相補率が増加するのに十分な時間待ち、前記ヘテロ二重鎖ポリヌクレオチドをRNAに変換して、前記RNAをポリペプチドに変換し、そして前記所望の機能的特性に関して。ポリペプチド改変体の集団を選別または選択することを含む方法を提供する。
【0098】
本発明のさらにもう一つの態様は、所望の機能的特性をコードするポリヌクレオチドを取得する方法であって、少なくとも1つのヘテロ二重鎖ポリヌクレオチド(このヘテロ二重鎖は、随意に、約95%、90%、85%、80%、75%、62%、58%または47%同一であり、約100塩基対、1000塩基対、10,000塩基対または100,000塩基対以上のサイズである)を調製し、前記ヘテロ二重鎖ポリヌクレオチドを、有効量の、校正活性、リガーゼ活性および鎖切断活性を持つ1つまたは複数の作用因子と混合し、ヘテロ二重鎖ポリヌクレオチドの鎖間の相補率が増加するのに十分な時間待ち、所望の機能的特性を持つ改変体の集団を選別または選択し、前記改変体の集団を変性させて一本鎖ポリヌクレオチドを取得し、前記一本鎖ポリヌクレオチドをアニールさせて少なくとも1つの第2ヘテロ二重鎖ポリヌクレオチドを形成させ、前記第2ヘテロ二重鎖ポリヌクレオチドを有効量の、校正活性、リガーゼ活性および鎖切断活性を持つ1つまたは複数の作用因子と混合し、ヘテロ二重鎖ポリヌクレオチドの鎖間の相補率が増加するのに十分な時間待ち、要すれば所望の機能的特性を持つ改変体の手段を選別または選択することを含む方法を提供する。第2ヘテロ二重鎖ポリヌクレオチドは、先に形成された改変体の集団だけから形成させるか、一本鎖親ポリヌクレオチドの一方または両方と共に形成させるか、または代替一本鎖ポリヌクレオチドと共に形成させることができる。
【0099】
2つの鎖が多くのミスマッチを持っている場合、ヘテロ二重鎖は比較的小さい領域(15〜20塩基対程度、好ましくは少なくとも100塩基対、そしてことによると、上記のようにそれよりはるかに大きな領域)に、ミスマッチを濃縮していてもよい。例えば、POP−GRAMMRの場合のように、ヘテロ二重鎖がベクターに挿入される場合、プラスミドの大半は完全に相補的であり、この比較的小さい領域だけが主にミスマッチを含んでいる。上述の一致率は、そのような状況では、その比較的小さい領域だけに適用しうる。
【0100】
本発明は、改善されたポリヌクレオチド配列または改善されたポリヌクレオチド配列の集団を、典型的には増幅および/またはクローニングされたポリヌクレオチドの形態で作製する方法に向けられ、ここにその改善されたポリヌクレオチド配列は、選択または選別の目的となりうる少なくとも1つの表現型特徴を持つ(例えばポリペプチドをコードする、連結されたポリヌクレオチドの転写を促進する、タンパク質を結合する、ウイルスベクターの機能を改善するなど)。そのような所望のポリヌクレオチドは、例えば適切な植物、動物、真菌、酵母または細菌発現ベクターからの発現、組込みによるトランスジェニック植物、トランスジェニック動物またはトランスジェニック微生物の作出、リボザイムの発現など、数多くの方法で使用することができる。
【0101】
GRAMMRは、インビトロ反応におけるヘテロ二重鎖DNA分子上のミスマッチ塩基対の解消に対応している。この反応は、ミスマッチまたはその近傍で起こる一方の鎖または他方の鎖の切断によって開始された後、切断された鎖からのミスマッチ塩基の切り出しと、その結果生じたギャップを他方の鎖の配列をテンプレートするヌクレオチドで埋めるための重合とが起こる。生じたニックは、主鎖が再結合するようにライゲーションによって閉じることができる。ヘテロ二重鎖分子の全体にわたって起こる個別の独立したミスマッチ解消事象の総和が、その分子の全体にわたる配列情報の再集合をもたらすだろう。配列情報は、さまざまな組合せで再集合して、配列改変体の複雑なライブラリーを生成する。
【0102】
GRAMMRの一態様では、当技術分野で知られている任意の方法、例えば突然変異導入PCR、化学的突然変異誘発などによって、突然変異体のライブラリーを作製した後、所望の特性を持つ突然変異体の選別または選択を行う。突然変異体DNAを混合し、一本鎖に変性し、アニールさせる。ハイブリダイズする部分相補鎖は、ミスマッチ部位に非塩基対形成ヌクレオチドを持つことになる。CEL I(Oleykowskiら、1998;Yangら、2000)または同様のミスマッチ指向性活性、例えばRES Iで処理すると、一方のポリヌクレオチド鎖または他方のポリヌクレオチド鎖の各ミスマッチの3’側にニックが入ることになる(その他、CEL IまたはRES Iは、挿入/欠失の3’側にニックを入れて、挿入/欠失の再集合をもたらすこともできる)。校正活性を持つポリメラーゼ(例えば T4 DNA Pol)が存在すると、ミスマッチの切り出しが可能になり、それに続いて5’→3’ポリメラーゼ活性が、他方の鎖のテンプレートとして使用することにより、ギャップを埋めるだろう。5’→3’エキソヌクレアーゼ活性および鎖置換活性を持たないポリメラーゼは、ギャップを埋めて、元のCElI切断部位が位置するDNAの5’末端に到達すると重合を停止するので、短い配列のパッチを再合成するに過ぎない。次に、DNAリガーゼ(例えばT4 DNAリガーゼまたは大腸菌DNAリガーゼ)が修復された鎖のリン酸エステル主鎖を復元することにより、ニックを閉じることができる。このプロセスは、与えられたヘテロ二重鎖DNA分子の多くの部位で、そしてどちらの鎖でも、同時に起こりうる。その結果、インプット鎖間の配列差のランダム化が起こって、出発配列の集団よりも多様な配列改変体の集団が得られる。これらのアウトプットポリヌクレオチドは、適切なベクターに直接クローニングするか、またはPCRで増幅してからクローニングすることができる。もう一つの選択肢として、二重鎖環状プラスミド分子という背景、またはGRAMMR反応後に適切な宿主に直接導入することができる他の適切なレプリコンという背景を持つヘテロ二重鎖領域で、反応を行うこともできる。さらにもう一つの選択肢として、ウイルスベクター転写プラスミドの場合などでは、アウトプットポリヌクレオチドをRNAポリヌクレオチドに転写し、それを直接的に、例えば植物ウイルスベクターの植物への接種などによって、使用することもできる。その結果得られるクローンを、所望の特性の改善に関する選択または選別に付す。次に、さらなる改善を達成する試みとして、選択したクローンで、このプロセス全体を1回以上繰り返すことができる。
【0103】
アウトプットポリヌクレオチドを直接クローニングする場合は、解消が不完全な分子が残っていて、それがクローニング宿主での複製時に、同じ細胞中に2種類のプラスミドをもたらす可能性がある。これらのプラスミドは混合プラスミドコロニーを生じる可能性がある。そのような可能性を避けることを望む場合は、アウトプットポリヌクレオチド分子を宿主中で増殖させて複製/解消を許し、ポリヌクレオチドを単離し、それを使って新しい宿主細胞を再び形質転換する。
【0104】
もう一つの態様として、1分子につき3つ以上の親からの配列インプットが望まれる場合は、上記の手順を繰り返してから、アウトプットポリヌクレオチドのクローニングを行う。GRAMMR反応後に、二本鎖ポリヌクレオチドを変性し、アニールさせ、ミスマッチ解消プロセスを繰り返す。そのようなサイクルを所望の回数行った後は、アウトプットポリヌクレオチドを直接クローニングし、適切なベクター中に導入するか、PCRで増幅してからクローニングすることができる。得られたクローンを所望の特性の改善に関する選択または選別に付す。
【0105】
もう一つの態様では、所望の突然変異から有害な突然変異のバックグラウンドを排除するのを助けるために、「分子戻し交配」を行う。この方法を行うために、所望の突然変異体DNAのプールを野生型DNAにハイブリダイズさせることができる。クローンを改善について選択し、プールし、有意義な変化が起こらなくなるまで、野生型に再び戻し交配する。
【0106】
本プロセスの効率は、出発集団をヘテロ二重鎖分子について濃縮し、その結果として無改変の親型アウトプット分子の数を減らすことによって、改善される。ミスマッチハイブリッドは、アプタマー、色素またはミスマッチDNAに結合する他の作用因子を使って、アフィニティー精製することができる。好ましい態様は、MutSタンパク質アフィニティーマトリックス(Wagnerら、Nucleic Acids Res.23(19):3944−3948(1995);Suら、Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)83:5057−5061(1986))またはミスマッチに結合するが切断はしないファージT4エンドヌクレアーゼVIIの突然変異体(GolzおよびKemper,Nucleic Acids Research,1999 ;27:e7)の使用である。
【0107】
ある態様では、インプットポリヌクレオチドが、各配列改変体の一本鎖からなるように、手順が変更される。例えば、非対称PCRによって部分相補一本鎖分子を生成させることにより、反対鎖である一本鎖DNAを、異なる親配列から製造することができる。実施例1に記載するように、これらの鎖を互いにアニールさせてヘテロ二重鎖にする。もう一つの選択肢として、各親二本鎖DNAの一方の鎖をラムダエキソヌクレアーゼで優先的に消化することによって一本鎖DNAを生成させた後、残った鎖を互いにアニールさせることもできる。この態様の場合、アニールする鎖には、それと再アニールする100%相補的な鎖が存在しない。したがって、アウトプットポリヌクレオチド間の無修飾ポリヌクレオチド(すなわち「親ポリヌクレオチド」)のバックグラウンドは低くなり、配列変異を再集合させる効率が高くなる。この効率の向上は、所望のポリヌクレオチドに関する試験に、選択ではなく選別を用いる場合には、とりわけ有益である。
【0108】
ヘテロ二重鎖形成のもう一つの方法は、二本鎖親DNAを混合し、鎖が解離するように変性させ、一本鎖DNAを互いにアニールさせて、ヘテロ二重鎖および親ホモ二重鎖の集団を作製することである。次に、ヘテロ二重鎖捕捉法(例えばMutSまたは非切断性T4エンドヌクレアーゼVII突然変異体を使用する上述の方法)によって、ヘテロ二重鎖を選択的に濃縮することができる。もう一つの選択肢として、ヘテロ二重鎖では切断されないが親ホモ二重鎖分子では切断されるようにミスマッチ部位と重なっている制限酵素によって、集団中の親ホモ二重鎖分子を切断することもできる。次に、実施例5に記載する完全長プラスミド・オン・完全長プラスミドヘテロ二重鎖DNA分子を作製するために行ったように、アガロースゲルでのサイズ分画によって、切断されていないヘテロ二重鎖DNAを単離することができる。次に、DNAリガーゼと共にインキュベートすることにより、完全長ヘテロ二重鎖プラスミド分子中のニックを閉じた。
【0109】
もう一つの態様では、「クランプ」配列の付加によって、親(またはインプット)二本鎖ポリヌクレオチドを修飾する。一方のインプットポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドプールを、5’プライマー中にユニーク配列が付加されているPCRによって増幅する。他方のインプットポリヌクレオチドまたはプールは、3’プライマー中にユニーク配列を付加して、PCRによって増幅する。クランプ配列は、GRAMMR反応の産物をクローニングするステップで、第1ポリヌクレチド(またはプール)に由来する5’クランプを持つ産物と、第2ポリヌクレオチド(またはプール)に由来する3’末端を持つ産物だけがクローニングに適した末端を持つことになるように、興味ある遺伝子の5’末端用および3’末端用として、それぞれユニークな制限酵素部位を含むように設計することができる。もう一つの選択肢として、5’クランプおよび3’クランプのユニーク配列を使って、GRAMMR反応の産物をPCR増幅することにより、同様の結果を得ることもできる。したがって、アウトプットポリヌクレオチドクローン間の無修飾ポリヌクレオチド(すなわち「親ポリヌクレオチド)のバックグラウンドは低くなり、配列変異を再集合させる効率が高くなる。この効率の向上は、所望のポリヌクレオチドに関する試験に、選択ではなく選別を用いる場合には、とりわけ有益である。所望により、どちらの親もトップ鎖として役だって両方の相互ヘテロ二重鎖がミスマッチ解消反応に参加できるように、クランププライマー配列に相補的なオリゴヌクレオチドプライマーをGRAMMR反応に加えることもできる。
【0110】
環状ヘテロ二重鎖ポリヌクレオチドを作製するもう一つの方法は、親二本鎖DNAが上述の末端クランプ配列を持ち、二重鎖の一端から伸びる一本鎖クランプ配列が、二重鎖の他端から伸びる一本鎖クランプ配列に相補的である場合に行われる。これらの相補一本鎖クランプをアニールさせることにより、ヘテロ二重鎖DNA分子を環化する。同一配列の再アニーリングによって生じる親ホモ二重鎖はクランプ配列を1つしか持たないので、環化に利用できる相補的な一本鎖配列を末端に持たない。また、環状分子中のあらゆるギャップを埋め、主鎖中のニックを閉じるために、それぞれDNAポリメラーゼおよびDNAリガーゼを使って、共有結合によって閉じた環状ヘテロ二重鎖分子の集団を形成させることができる。共有結合によって閉じた環状ヘテロ二重鎖分子は、さらなる変性条件に付されても、その成分鎖に解離しないので、変性、環化およびライゲーションのプロセスを繰り返すことにより、より多くの線状二本鎖親二重鎖を閉じた環状ヘテロ二重鎖に変化することができる。
【0111】
もう一つの態様では、ファージミドDNAなどの一本鎖環状ベクターの一領域を、関連しているが同一ではない線状DNAにハイブリダイズさせた後、それをT7 DNAポリメラーゼまたはT4 DNAポリメラーゼなどのポリメラーゼとT4遺伝子32タンパク質とを使って伸長し、次に、結果として生じたニックをライゲートすることにより、DNA間の相違部位にヘテロ二重鎖領域を持つ環状二本鎖分子を得ることができる。次に、この分子でGRAMMRを行うことにより、配列再集合分子のライブラリーを得ることができる。
【0112】
もう一つの選択肢として、プラスミド骨格および再集合の標的である親遺伝子配列に関して反対の鎖極性を持つ2つの一本鎖環状ベクター/ファージミドDNAを、互いにアニールさせる。ファージf1起点配列が存在するところに、広範なミスマッチ領域が生じる。しかし、GRAMMR処理を行うと、この広範なミスマッチ領域は、どちらかの親タイプ配列に復帰して、機能的なf1起点が修復されうる。これらの二本鎖分子は、興味ある親遺伝子をコードする鎖間の相違部位にも、ミスマッチ領域を含む。次に、この分子でGRAMMRを行うことにより、配列再集合分子のライブラリーを得ることができる。
【0113】
先の段落で述べたように、出発DNAまたはインプットDNAは、いくつもの形態をとることができる。例えば、実施例1で示すように、インプットDNAは、完全長であり、一本鎖であり、かつ反対センスを持つものであることができる。もう一つの選択肢として、インプットDNAは、完全長鎖の断片であることもできる。インプットDNAは、一方または両方が、二本鎖であることができ、また、例えばメチル化、ホスホロチオラート結合、ペプチド−核酸、DNAへのウラシルの組込み、一方または両方の鎖におけるRNAの置換などによって修飾されていてもよい。これらの修飾はハイブリダイゼーションを許すが、PCRなどのさまざまな技術による増幅は妨げるかもしれない。一方の鎖は改変体配列を含まないだろうという理由でその鎖が増幅可能であることを望まない場合は、ハイブリダイズは可能であるが増幅は不可能である上述のような修飾を、その一方の鎖に組み込むことができる。二重鎖のどちらも鎖も、両鎖に沿って連続的であるか、不連続ではあるが隣接しているか、不連続であってオーバーラップを持つか、不連続であってギャップを持つことができる。
【0114】
GRAMMRは、DNAの断片化および再構成に基づくDNAシャフリングスキームにも応用することができる。例えば、遺伝子再構成の過程で、遺伝子断片が変性、アニーリングおよび伸長のサイクルによって採取される方法では、GRAMMRを中間ステップとして使用することができる。
【0115】
そのような態様の一つでは、遺伝子または突然変異体遺伝子のプールに由来するDNAを、酵素的、機械的または化学的手段によって断片化し、要すれば、それらの断片のうち、一定のサイズ範囲にあるものを、アガロースゲルでの分離などの手段によって単離する。出発ポリヌクレオチド、例えば野生型もしくは所望の改変体またはそのプールを断片に加え、その混合物を変性させた後、アニールさせる。アニールしたポリヌクレオチドをポリメラーゼで処理することにより、無傷の鎖をテンプレートとして使用して、一本鎖ギャップを埋める。得られた部分相補二本鎖は、ミスマッチ部位に、非塩基対形成ヌクレオチドを持つだろう。CEL I(Oleykowskiら、1998;Yangら、2000)または同様の活性を持つ作用因子、例えばRES Iで処理することにより、各ミスマッチの3’側で一方または他方のポリヌクレオチド鎖にニックが入ることになる。校正活性を持つポリメラーゼ、例えばT4 DNAポリメラーゼなどを添加すると、ミスマッチの切り出しが可能になり、それに続く5’→3’ポリメラーゼ活性が、他方の鎖をテンプレートとして使用して、ギャップを埋めることになる。次に、T4 DNAリガーゼなどのDNAリガーゼにより、修復された鎖のリン酸エステル主鎖を復元することにより、ニックを閉じることができる。結果として、インプット鎖間での配列変異のランダム化が起こって、改善された特性を持つ可能性のあるアウトプット鎖が得られる。これらのアウトプットポリヌクレオチドは、適切なベクター中に直接クローニングするか、PCRで増幅してからクローニングすることができる。得られたクローンを、所望の特性の改善に関する選択または選別に付す。
【0116】
そのような態様の一つでは、突然変異体遺伝子のプールに由来するDNAを酵素的、機械的または化学的手段で断片化するか、親テンプレートにアニールさせたランダムオリゴヌクレオチドの限定的伸長によって断片を生成させ(米国特許第5,965,408号)、要すれば、それらの断片のうち、一定のサイズ範囲にあるものを、アガロースゲルでの分離などの手段によって単離する。その混合物を変性した後、アニールさせる。アニールしたポリヌクレオチドを、要すれば、ポリメラーゼで処理することにより、一本鎖ギャップを埋める。その結果得られる部分相補二本鎖断片は、ミスマッチ部位に、非塩基対形成ヌクレオチドを持つだろう。CEL I(Oleykowskiら、1998;Yangら、2000)または同様の活性を持つ作用因子、例えばRES Iで処理することにより、各ミスマッチの3’側で一方または他方のポリヌクレオチド鎖にニックが入ることになる。校正活性を持つポリメラーゼ、例えばT4 DNAポリメラーゼなどを添加すると、ミスマッチの切り出しが可能になり、それに続く5’→3’ポリメラーゼ活性が、他方の鎖をテンプレートとして使用して、ギャップを埋めることになる。次に、要すれば、T4 DNAリガーゼなどのDNAリガーゼにより、修復された鎖のリン酸エステル主鎖を復元することにより、ニックを閉じることができる。結果として、インプット鎖間での配列変異のランダム化が起こって、改善された特性を持つ可能性のあるアウトプット鎖が得られる。次に変性、アニーリングおよびGRAMMRを行うことにより、遺伝子再構成が起こる。PCRを使って、再構成遺伝子の所望の部分を増幅することができる。これらのPCRアウトプットポリヌクレオチドは適切なベクターにクローニングすることができる。得られたクローンを、所望の機能的特性に関する選択または選別に付す。
【0117】
本発明のもう一つの態様は、連続的な足場鎖から開始し、そこに別の遺伝子または遺伝子群の断片がアニールすることを提供する。Cocoら、Nature Biotech 19(01)354;米国特許第6,319,713号に記載されているようにフラップおよびギャップをトリミングし、GRAMMRを行う。このプロセスでは、テンプレート鎖と、フラップおよびギャップのトリミングおよびライゲーションによって得られた鎖との間の配列情報の伝達を可能にすることによって、GRAMMRがさらなる配列再集合を生じさせる。この方法により、1つの連続した鎖に特定の配列パッチを組み込むことの利益が得られる。同じ配列または遺伝子に多くの断片を同時にアニールさせることにより、多くの個別部位を同時に取り扱うことができ、それによって、複数の配列または遺伝子を一度に再集合させることが可能になる。この態様では、足場は必ずしも分解されず、むしろ二重鎖を直接クローニングするか、PCRで増幅してからクローニングすることができる。徹底的なミスマッチ解消により、完全に二重化したDNAが得られるだろう。部分ミスマッチ解消は、1つの二重鎖につき基本的に2つの異なる再集合産物を与えるだろう。
【0118】
本明細書から理解できるように、GRAMMRは、関連DNAのアニーリングをそのプロセス中の一ステップとして含むさまざまな方法に応用することもできる。例えば多くの部位指定突然変異誘発プロトコールは、一本鎖型環状DNA(ファージミドまたは変性ファージミド)への突然変異体コードDNA分子のアニーリングを必要とする。次に、これらのDNAはポリメラーゼを使って伸長された後、リガーゼによる処理でニックを閉じ、さらなる操作によって親配列が除去されて、親遺伝子バックグラウンド中に組み込まれた所望の突然変異または突然変異群が残される。これらのプロトコールは特定の突然変異を特定のDNA配列中に組み込むために広く使用されているが、そのようなプロセスで生成するヘテロ二重鎖分子にGRAMMR反応を応用することによって、それらの2つの鎖間で配列変異を再集合させ、その結果として、再集合した遺伝子変異を持つ子孫の多様なセットを得ることが可能である。
【0119】
もう一つの態様は、興味あるDNAの特定領域だけで行われる逐次的再集合の繰り返しに対応する。例えば、DNA配列を環状一本鎖ファージミドDNAにアニールさせ、GRAMMRを行う。それらの断片は、それらが物理的にアウトプット物質に組み込まれることがないように、処理することができる。例えば、これらの断片はその3’末端をジデオキシ残基で終わらせることにより、伸長不可能にすることができる。再集合は複数回にわたって行うことができるが、元のインプット一本鎖DNAに由来する修飾分子だけが回収されるだろう。その結果、この再集合に使用したDNA断片は、最終産物に配列情報だけを与え、最終的な回収可能産物に物理的に組み込まれることはないだろう。
【0120】
重要なミスマッチ部位、すなわち約1〜3個のミスマッチを含むパッチだけを解消することを望む場合は、S1ヌクレアーゼを使用することができる。S1ヌクレアーゼは一本鎖核酸に特異的なエンドヌクレアーゼである。これはDNA:DNAまたはDNA:RNA二重鎖中のミスマッチ塩基対の限定された領域を認識し切断することができる。S1ヌクレアーゼによる認識と切断には、一般に、少なくとも約4個の連続した塩基対のミスマッチが必要である。両鎖が切断されるとミスマッチ解消は起こらないだろうから、第1ニックが入った後、カウンターニックが入る前に、DNAは修復されなければならない。配列、配列コンテキストまたはミスマッチのサイズに応じて切断特異性を特異的に調整するには、他のヌクレアーゼが好ましいかもしれない。
【0121】
また、ミスマッチ残基を取り扱う他の手段、例えばミスマッチの化学的切断なども使用することができる。もう一つの選択肢として、ヘテロ二重鎖DNAの鎖を、例えばDNアーゼIまたは二重鎖領域だけを切断する作用因子が示すような活性によるランダムニッキングにかけることを、選択することもできる。2つの遺伝子間の一致領域でニック形成が起こると、反応液中に存在するDNAリガーゼがニックを閉じ、配列情報の正味の伝達は起こらないだろう。しかし、ニック形成がミスマッチ部位の近傍で起こると、3’−5’エキソヌクレアーゼによるミスマッチ塩基の除去、ポリメラーゼによるギャップの充填、続いてリガーゼによるニックの閉鎖が起こりうる。もう一つの選択肢として、不均質領域の全体にわたってニックトランスレーションを適用することにより、配列再集合を引き起こすこともできる。これらのプロセスは、もっぱらDNAのミスマッチ状態によって指示されるわけではないが、修復された鎖に配列情報を伝達するのに役立ち、したがって再集合配列をもたらす。
【0122】
GRAMMRは、予め選択されたライブラリーメンバー間の組換えを達成するために、タンパク質、ペプチドまたはアプタマーディスプレイ法に使用することができる。GRAMMRはインプットDNAの断片化を必要としないので、極めて短いストレッチの配列間で配列情報を再集合させることが可能だろう。例えば小さいペプチドをコードするDNAや、特定の特性、例えば標的結合などに関して選択されたRNAアプタマーを、再集合させることができる。選択したDNA分子間でアニーリングが起こるように、分子間には、ある程度の配列相同性が(例えばコード配列の5’領域および3’領域に、または結合活性が類似しているので類似性を持つランダム化された配列セグメントの領域中に、または特定のデフォルトセットに対するコドンゆらぎ塩基のバイアシングによって)存在すべきである。ヘテロ二重鎖の形成を助けるには、相同性の低い鎖のアニーリング能力を増加させるために、5’および/または3’末端に相補領域を付加してもよい。
【0123】
GRAMMRを実行する際の反応温度を操作することが有益な場合がある。例えば、温度を下げると、ヘテロ二重鎖の安定化が助長されるので、より高度にミスマッチした基質でGRAMMRを行うことが可能になる。また、鎖間の塩基対形成に影響を及ぼす添加物、例えば塩類、PEG、ホルムアミドなどは、GRAMMR反応におけるヘテロ二重鎖の安定性を変化させることによって、反応の結果に影響を及ぼすために、使用することができる。
【0124】
もう一つの態様では、ミスマッチした二本鎖ポリヌクレオチドを生成させ、DNAグリコシラーゼによる処理でアプリン酸部位またはアピリミジン酸部位(すなわち「AP部位」)を形成させ、APエンドヌクレアーゼ活性による処理でリン酸ジエステル結合を切断し、デオキシリブロースホスホジエステラーゼによる処理で、そのデオキシリボース−リン酸分子を除去し、DNAポリメラーゼβまたは他のDNAポリメラーゼによる処理でギャップ位置でDNA鎖の3’末端に1つのヌクレオチドを付加し、DNAリガーゼによる処理でそのギャップを閉じる。その結果、インプット鎖間の配列変異の再集合が起こって、改善された特性を持つ可能性のあるアウトプット鎖が得られる。これらのアウトプットポリヌクレオチドは、適切なベクターに直接クローニングするか、PCRで増幅してからクローニングすることができる。その結果得られるクローンを、所望の特性の改善に関する選択または選別に付す。
【0125】
もう一つの態様は、GRAMMRによるゾーン突然変異誘発、すなわち、多重塩基対形成能を持つヌクレオチド類似体を使ったミスマッチ残基またはそのすぐ近傍におけるランダムまたはセミランダム突然変異に対応する。これは、基本的にランダムな突然変異誘発を興味ある特定の一点に集中させるものであり、本発明にもう一つの利益を付加する。互いに似ているがわずかに異なる機能を持っている遺伝子の群(例えば多くの酵素)は、各々の活性にとって重要な意味を持つであろう領域に、互いに中程度の配列差を示すだろう。そのような活性としては、例えば基質選択性、結合パートナー、調節部位などを挙げることができる。これらの機能を支配する遺伝子配列は、関連遺伝子の集団内で、不均質なはずである。そのような機能の特異性はこれらのアミノ酸およびその近隣残基に関係することが知られているので、遺伝子間での配列情報の再集合に加えて、GRAMMR突然変異誘発も、ランダム化に対する耐性が低い可能性がある他の配列、例えば構造フレームワーク、不変残基および他のそのような重要部位を乱さずに、ランダム突然変異誘発をこれらの領域に向かわせて、それらの機能を進化させるために使用することができる。
【0126】
別個の機能を持つ異なる酵素は、活性部位および調節部位などの作動領域だけが異なるわけではない。それらは、互いに、遺伝的浮動によって生じる他の相違も持っているだろう。したがって、そのような変化部分におけるさらなるランダム化は、突然変異誘発実験の結果に対して中立的であるか、ごくわずかな重要性しか持たないか、有害であると見なしてもよい。ランダム突然変異誘発をそのような重要でない部位から遠ざけると共に、より良いランダム突然変異誘発の結果が得られそうな部位、例えば酵素の活性部位などに向けるには、遺伝子のコドン使用頻度の偏りを操作して、それらの領域におけるヌクレオチド相補性の全体的レベルを増減することができるだろう。高い相補性を持つ領域が低い相補性を持つ領域よりもGRAMMRの影響を受けにくいなら、与えられた部位でのGRAMMERによるゾーンランダム突然変異誘発の度合いを、調整することができる。
【0127】
もう一つの態様では、ヘテロ二重鎖分子が形成させてから、ヘテロ二重鎖の各末端の一方の鎖が消化されて後退するように、3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を持つ酵素を加える。平均して望ましい量の3’→5’消化が起きた時点で、同じ酵素または追加酵素に由来する5’→3’ポリメラーゼ活性に反対鎖をテンプレートとして二重鎖を修復させるために、dNTP類を加える。このようにして、消化された領域中のミスマッチは解消されて、相補性を生じる。要すれば、結果として生じた二重鎖を精製し、変性させた後、アニールさせる。消化に次いで重合を行うプロセスを繰り返すことにより、新しいキメラ配列が得られる。このプロセスは、所望に応じて、さらに何巡か行うことができる。アウトプット二重鎖分子をクローニングし、所望の機能的特性について試験する。このプロセスは断片化および再構成を必要としない。さらにこのプロセスはエンドヌクレアーゼ的切断も必要としない。
【0128】
もう一つの態様では、ヘテロ二重鎖分子を形成させてから、ヘテロ二重鎖の各末端の一方の鎖が消化されるように、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を持つ酵素、例えばEnger,MJおよびRichardson,CC,J Biol Chem 258(83)11197に開示されているT7遺伝子6エキソヌクレアーゼなどを加える。平均して望ましい量の5’→3’消化が起きた時点で、反応を停止させ、エキソヌクレアーゼを失活させる。標的ポリヌクレオチドの5’末端および3’末端に相補的なオリゴヌクレオチドプライマーを加えて、アニールさせる。T4 DNAポリメラーゼなどのDNAポリメラーゼ、DNAリガーゼおよびdNTP類を加えることにより、反対鎖をテンプレートとして、5’→3’ポリメラーゼ活性にプライマーを伸長させ、二重鎖を修復させると共に、リガーゼでニックを閉じる。このようにして、消化された領域中のミスマッチは解消されて、相補性を生じる。要すれば、結果として生じた二重鎖を精製し、変性させた後、アニールさせる。消化に次いで重合を行うプロセスを繰り返すことにより、新しいキメラ配列が得られる。このプロセスは、所望に応じて、さらに何巡か行うことができる。アウトプット二重鎖分子をクローニングし、所望の機能的特性について試験する。このプロセスは断片化および再構成を必要としない。さらにこのプロセスはエンドヌクレアーゼ的切断も必要としない。
【0129】
どのDNAシャフリング実験でも、シャッフルされた子孫の集団内に得られるシャッフルされていないDNA、すなわち親DNAの比率を、最小限に抑えることが望ましい。これを達成するには数多くのアプローチを用いることができる。シャッフルすべき遺伝子が別個の、しかし他の点では同一の、プラスミド上に存在するプラスミド−オン−プラスミド(plasmid−on−plasmid)DNAシャフリング形式では、存在する異なるユニーク制限部位のいずれかで、各プラスミドを線状化する。制限エンドヌクレアーゼを除去した後、線状化したDNAを混合し、ばらばらに融解し、ニックの入った閉じた環状ヘテロ二重鎖分子であるか二本鎖の線状ホモ二重鎖であるヘテロ二重鎖DNAの集団が形成されるようにアニールさせる。GRAMMR反応の望ましい基質に相当するのは環状二本鎖ヘテロ二重鎖DNA分子の集団である。実験者は、この望ましい集団をゲル分画によって濃縮するか、またはこの集団の物理的分離を必要とせずに非シャッフル親分子の回収を妨害するような、1つまたは複数の方法を用いることができる。そのような方法を以下にいくつか挙げる。
【0130】
まず、線状親ホモ二重鎖および環状二本鎖ヘテロ二重鎖の混合集団のGRAMMR反応後に、一般的には大腸菌の形質転換を行う。環状DNAは対応する線状型よりもはるかに高い効率で大腸菌を形質転換するので、親ホモ二重鎖は、それらが環化して形質転換コンピテント分子になるのを妨げることにより、このステップで、強く差別することができる。GRAMMR反応のリガーゼ成分として大腸菌DNAリガーゼを使用することは、親ホモ二重鎖の再環化を妨げるのに役立つだろう。というのも、このリガーゼは、制限エンドヌクレアーゼ切断によって生じる短い付着末端をつなぎ合わせるよりも効率よくニックを閉じるからである。また、この酵素は極めて非効率的にしか平滑末端をライゲートしない。この戦略を使用すると、結果として、GRAMMR反応液による大腸菌の形質転換によって得られる子孫からは、非シャッフル親遺伝子が枯渇し、ヘテロ二重鎖基質としてGRAMMR反応に参加した分子が濃縮される。
【0131】
GRAMMRアウトプット分子の集団から親遺伝子の混入を排除するもう一つの方法は、プラスミド線状化部位を選択可能マーカー内に置くことである。これらの部位は、ヘテロ二重鎖の付着末端間でアニーリングが起こりうるように、互いに十分な距離を持つべきであり、充填または切り揃えることのできる突出部分を持つか、または切断時に配列の欠失を引き起こすべきである。上述のように、シャッフルすべき遺伝子を含有するプラスミドを、それらの部位の一方または他方で、線状化する。制限エンドヌクレアーゼを除去した後、線状化したDNAを混合し、融解し、アニールさせる。その結果得られる試料は、環状ヘテロ二重鎖と線状ホモ二重鎖の混合物から構成される。次に、この試料を、dNTP類の存在下に、T4 DNAポリメラーゼなどの校正ポリメラーゼで処理することができる。環状ホモ二重鎖は影響を受けないはずだが、線状親ホモ二重鎖はその末端が平滑化されて、GRAMMR反応の任意の時点で、または大腸菌の形質転換後に、その分子が再び環状化されると、選択マーカー配列に効率よく塩基が付加されるか、または選択マーカー配列から効率よく塩基が除去されるだろう。これらの配列の付加または欠失によって選択可能マーカーの機能が破壊されるのであれば、結果として生じる分子は、適切な選択下では回収されないだろう。
【0132】
シャッフルライブラリーへの非シャッフル親遺伝子の混入を防ぐために用いることができるもう一つの方法は、線状化したDNAを、融解およびアニーリングに先立って、脱リン酸化することである。線状ホモ二重鎖分子は環状分子にライゲートすることができなくなるだろうが、環状ヘテロ二重鎖は、各鎖に単一のニックを持っているだけで、環状のままであり、したがって、大腸菌を効率よく形質転換させることが可能だろう。
【0133】
シャッフルライブラリーへの非シャッフル親遺伝子の混入を防ぐために用いることができるもう一つの方法は、ヘテロ二重鎖分子中のミスマッチと重複する認識部位を持つ酵素で消化することである。それらの部位で親ホモ二重鎖を消化すると、その結果生じる分子は線状になるので、親遺伝子の混入を減少させるために、上述した処理のいずれかに付すことができる。その結果生じる分子は小さくもなり、無傷の環状ヘテロ二重鎖分子からの分離が容易になりうる。
【0134】
シャフリング実験から非シャッフル親分子を排除するだけでなく、2つ以上の親遺伝子の集団のうちの任意の2つ以上の遺伝子間でのシャフリングを防止したい場合にも、上記と同じ原理を応用することができる。
【0135】
本発明では、ランダムな再集合がインビトロDNAミスマッチ解消反応で起こる。この方法では、今までの突然変異再集合(「シャフリング」)法の基礎として役立っている「遺伝子再構成」のステップが一切必要ない。その代わりに、インビトロでのハイブリダイゼーションとミスマッチ解消とによって1つ以上のDNA鎖から別のDNA鎖へと配列変異を伝えるという、再構築DNAまたは人工DNAミスマッチ解消系の能力に基づいている。
【0136】
組換えDNA技術の標準的技法は、一般に、さまざまな刊行物、例えばAusubel,1987、Ausubel,1999、Sambrookら、1989など(これらの文献はそれぞれ参照によりそのまま本明細書に組み込まれる)に記載されている。ポリヌクレオチド修飾酵素は製造者の推奨に従って使用した。所望により、所定のDNA配列を増幅するためのPCRアンプリマーを、実施者の裁量で選択してもよい。
【0137】
GRAMMR反応に関与する、本発明に教示する各活性は、類似の活性を持つ機能的に等価な作用因子と交換することができ、そのような変更も本発明の範囲に包含されることに、留意されたい。例えば、実施例2に示すように、T4 DNAリガーゼの代わりにTaq DNAリガーゼを使用することができた。大腸菌DNAリガーゼなどの他のリガーゼも、代用することができる。また、実施例8に示すように、T4 DNAポリメラーゼの代わりにT7 DNAポリメラーゼを使用することができる。適当な校正活性を持つ他の酵素は、これらの酵素のいずれかの代わりに、GRAMMR反応に必要な校正活性の機能を果たすことができる。同様にして、GRAMMRに役立つことが実証されたものと機能的に等価な活性を持つ任意のポリメラーゼを、代用することができる。
【0138】
鎖切断は数多くの方法で引き起こすことができる。CEL Iの他にも、多くの機能的等価物、およびさまざまな植物種から得られる抽出物中に見いだされる潜在的に類似する活性(Oleykowski,Nucleic Acids Res 1998;26:4597−602)を使用することができる。他のミスマッチ指向性エンドヌクレアーゼ、例えばT4エンドヌクレアーゼVII、T7エンドヌクレアーゼI、およびSPヌクレアーゼ(Oleykowski,Biochemistry 1999;38:2200−5)なども使用することができる。特に有用なもう一つのミスマッチ指向性エンドヌクレアーゼはRES Iである。一本鎖DNAを攻撃する他のヌクレアーゼ、例えばS1ヌクレアーゼ、FEN1、クリベース、マングビーンヌクレアーゼ、およびヌクレアーゼP1なども使用することができる。DNAのランダムな切断を引き起こす酵素、例えばDNアーゼIなども、GRAMMRにおける鎖切断活性に代用することができる。他の手段による鎖切断を引き起こす方法も、数多く予想される。それらには、過マンガン酸カリウムと酢酸テトラエチルアンモニウムとの併用、立体的に嵩高い光活性化可能なDNA挿入剤、例えば[Rh(bpy)2(chrysi)]3+、四酸化オスミウムとピペリジンアルカロイド、およびヒドロキシルアミンとピペリジンアルカロイドの使用、ならびに鎖破壊をもたらす放射エネルギーの使用などが含まれる。
【0139】
本発明のもう一つの態様は、非天然(外来)核酸配列の維持および転写または発現用として安定であり、そのような外来配列を宿主植物内で全体的に転写または発現させる能力を持つ、組換え植物ウイルス核酸および組換えウイルスに向けられる。より具体的に述べると、本発明の組換え植物ウイルス核酸は、天然植物ウイルスサブゲノムプロモーターと、少なくとも1つの非天然植物ウイルスサブゲノムプロモーターと、植物ウイルスコートタンパク質コード配列とを含み、要すれば、少なくとも1つの非天然核酸配列を含む。
【0140】
本発明は、CEL Iエンドヌクレアーゼを発現させるためのベクターまたはプラスミドとして有用な、配列番号1、配列番号2、配列番号3または配列番号4などの核酸配列を含む核酸分子を提供する。配列番号3および配列番号4の核酸分子は、それぞれ配列番号1および配列番号2に含まれるCEL Iオープンリーディングフレームである。配列番号1、配列番号2、配列番号3および配列番号4の核酸分子の作製および使用については、本明細書の実施例12でさらに詳しく教示する。本発明は、RES Iエンドヌクレアーゼを発現させるためのベクターまたはプラスミドとして有用な、図3の核酸配列(配列番号16)を含む核酸分子も提供する。
【0141】
さらに本発明は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、または図3(配列番号16)からなる群より選択される核酸配列を含んでなるベクターまたはプラスミドを含む、宿主細胞または産生細胞である植物細胞を提供する。
【0142】
本発明は、宿主細胞または産生細胞である植物細胞中でCEL IまたはRES Iエンドヌクレアーゼを転写または発現させる能力を持つ少なくとも1つのサブゲノムプロモーターを含んでなる組換え植物ウイルス核酸も提供する。本発明は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、または図3(配列番号16)からなる群より選択される核酸配列を含んでなる組換え植物ウイルス核酸を使ってCEL IまたはRES Iエンドヌクレアーゼを発現させる方法も提供する。
【0143】
本明細書で使用する「宿主」という用語は、ベクターまたは植物ウイルス核酸を複製する能力を持ち、そのウイルスベクターまたは植物ウイルス核酸を含有するウイルスに感染しうる細胞、組織または生物を指す。この用語は、原核および真核細胞、器官、組織または生物を、適宜、包含するものとする。
【0144】
本明細書で使用する「表現型形質」という用語は、ある遺伝子の発現に起因する観察可能な特性を指す。
【0145】
本明細書で使用する「植物細胞」という用語は、プロトプラストと細胞壁とからなる植物の構造的および生理学的単位を指す。
【0146】
本明細書で使用する「植物器官」という用語は、植物の明確に異なる視覚的に識別できる部分、例えば根、茎、葉または胚などを指す。
【0147】
本明細書で使用する「植物組織」という用語は、植物体内の、または培養された、任意の植物組織を指す。この用語は、植物全体、植物細胞、植物器官、プロトプラスト、植物培養、または構造的および機能的な単位に組織された任意の植物細胞群を包含するものとする。
【0148】
本明細書で使用する「産生細胞」という用語は、ベクターまたはウイルスベクターを複製する能力を持つが、ウイルスにとって必ずしも宿主ではない細胞、組織または生物を指す。この用語は、原核および真核細胞、器官、組織または生物、例えば細菌、酵母、真菌類および植物組織などを包含するものとする。
【0149】
本明細書で使用する「プロモーター」という用語は、コード配列の転写の開始に関与する、コード配列に隣り合う5’隣接非コード配列を指す。
【0150】
本明細書で使用する「プロトプラスト」という用語は、細胞壁を持たず、植物培養または植物全体に再生する潜在力を持っている、単離された植物細胞を指す。
【0151】
本明細書で使用する「組換え植物ウイルス核酸」という用語は、非天然核酸配列を含むように改変されている植物ウイルス核酸を指す。
【0152】
本明細書で使用する「組換え植物ウイルス」という用語は、組換え植物ウイルス核酸を含有する植物ウイルスを指す。
【0153】
本明細書で使用する「実質的な配列相同性」という用語は、互いに実質上機能的に等価であるヌクレオチド配列を指す。実質的な配列相同性を持つそのような配列間のヌクレオチド差は、その配列がコードする遺伝子産物またはRNAの機能には、ごくわずかな影響しか及ぼさないだろう。
【0154】
本明細書で使用する「転写」という用語は、DNA配列の相補的コピーとしての、RNAポリメラーゼによるRNA分子の産生を指す。
【0155】
本明細書で使用する「ベクター」という用語は、細胞間でDNAセグメントを輸送する自己複製DNA分子を指す。
【0156】
植物細胞における有用な表現型形質には、例えば、除草剤耐性の改善、暑さまたは寒さの両極端、干ばつ、塩分または浸透圧ストレスに対する耐性の改善、病害虫(昆虫、線虫またはクモ類)または疾病(真菌、細菌またはウイルス)に対する耐性の改善、酵素または二次代謝産物の産生、雄性または雌性不稔、矮性、早熟性、収量、活力、雑種強勢、栄養的品質、香織または加工特性の改善などが含まれるが、これらに限るわけではない。他の例には、商業的用途を持つ重要なタンパク質または他の産物、例えばリパーゼ、メラニン、色素、抗体、ホルモン、医薬、抗生物質などの産生も含まれる。もう一つの有用な表現型形質は、例えば大麦の根発生を防止または阻害するのに利用されるような、消化酵素または阻害酵素の産生である。表現型形質は、バイオリアクターでの産生が望まれる二次代謝産物であってもよい。
【0157】
本発明のさらにもう一つの特徴は、指定したポリペプチドまたはタンパク質産物、例えば酵素、複雑な生体分子、リボザイム、またはアンチセンスRNAから生じるポリペプチドもしくはタンパク質産物などの製造方法である。そのような産物には、例えばIL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12など、EPO、CSF(G−CSF、GM−CSF、hPG−CSF、M−CSFなどを含む)、第VIII因子、第IX因子、tPA、hGH、受容体および受容体アンタゴニスト、抗体、神経ポリペプチド、メラニン、インスリン、ワクチンなどがあるが、これらの限るわけではない。RPVNAの非天然核酸は、所望の産物の産生をもたらす転写可能な配列を含む。この方法では、適当な植物宿主を、上述したような組換えウイルスまたは組換え植物ウイルス核酸に感染させ、感染した宿主を生育して所望の産物を産生させ、必要なら所望の産物を単離する。感染した宿主の生育と、その結果得られる産物の単離は、従来の技術に従って行われる。
【0158】
(CEL Iはミスマッチエンドヌクレアーゼである。)
CEL Iはセロリから単離されるミスマッチエンドヌクレアーゼである。標的ポリヌクレオチド配列(特にガンに関係するもの)中の突然変異を検出するための診断方法におけるCEl Iの使用は、米国特許第5,869,245号に開示されている。CEL Iを単離し、調製する方法も、この特許に開示されている。しかし、DNA配列再集合におけるCEL Iの使用に関する開示は、この特許にはない。
【0159】
CEL Iをコードする核酸分子は、PCT出願公開公報WO 01/62974 A1に開示されている。米国特許第5,869,245号と同様に、ガンに関係する標的ポリヌクレオチド配列中の突然変異を検出するための診断方法におけるCEL Iの使用が開示されている。ここでもやはり、DNA配列再集合におけるCEL Iの使用に関する開示はない。
【0160】
(RES Iはミスマッチエンドヌクレアーゼである。)
標的ポリヌクレオチド配列(特にガンに関係するもの)中の突然変異を検出するための診断方法にはRES Iミスマッチエンドヌクレアーゼを使用することが考えられる。これらのタイプの診断方法のいくつかの例は、米国特許第5,869,245号、Sokurenkoら、およびDel Titoらに開示されている。
【0161】
ファージT4のエンドヌクレアーゼVIIと、8、4もしくは1ヌクレオチドのDNAループ、または考えうる8つの塩基ミスマッチのいずれかとのインビトロでの反応性が、「Endonuclease VII of Phage T4 Triggers Mismatch Correction in Vitro」Solaroら、J Mol Biol 230(93)868に開示されている。この刊行物には、エンドヌクレアーゼVIIが誤対合の3’側、6ヌクレオチド以内に、ニックおよびカウンターニックを生じさせることによって、二本鎖切断点を導入する機構が報告されている。この刊行物は、第1ニックの発生とカウンターニックの発生との間の遅延は、カウンターニックが発生する前に、gp43の3’→5’エキソヌクレアーゼ活性がその誤対合を除去し、そのポリメラーゼ活性がギャップを埋めるのに十分であったことを開示している。一方の鎖上のミスマッチの3’側に位置し、ミスマッチの5’側の最初の安定な塩基対で停止する第1ニックから、ヌクレオチドが削除される。ポリメラーゼ活性は最初のニックに向かって5’→3’方向に進行し、これはDNAリガーゼによって閉じられる。結果として、3〜4ヌクレオチドの極めて短い修復トラックが、元のミスマッチ部位を横切って伸びることになる。この刊行物はエンドヌクレアーゼVIIがファージT4内に持ちうるさまざまな活性に関する議論で終わっている。しかし、この刊行物は、ファージT4外にあるエンドヌクレアーゼVIIの実用性は何ら開示しておらず、DNA再集合におけるその利用可能性に関する開示もない。
【0162】
大腸菌中にインビボでキメラDNA配列のライブラリーを作製する方法は、Nucleic Acids Research,1999,Vol 27,No.18,e18,Volkov,A.A.,Shao,Z.およびArnold,F.H.に開示されている。この方法では、インビトロで形成されたヘテロ二重鎖を使って大腸菌を形質転換し、そのなかで、ヘテロ二重鎖中の非同一領域の修復により、各親の要素から構成される新しい組換え配列のライブラリーが生成する。この刊行物には、既存のDNA組換え法、すなわちDNAシャフリングへの便利な追加として、この方法を使用することが開示されているが、開示されている方法は、大腸菌のインビボ環境に限定される。大腸菌におけるミスマッチ修復に利用できる機構は複数存在することと、MutS/L/H酵素系を利用する「ロングパッチ」修復機構が、おそらくはヘテロ二重鎖修復の原因だったのだろうということを、この刊行物は述べている。
【0163】
本発明を例示するために、以下の非限定的な例を記載する。
【0164】
【数1】

【0165】
【数2】

【0166】
【数3】

【実施例】
【0167】
(実施例1)
(CEL IによるミスマッチDNA基質の切断)
この実施例では、CEL I酵素の調製およびミスマッチDNA基質の切断におけるその使用を教示する。
【0168】
ホモジナイゼーション、硫酸アンモニウム、およびYangらが記載したコンカナバリンA−セファロースプロトコール(Biochemistry,39:3533−3541(2000)、この文献は参照により本明細書に組み込まれる)を使って、セロリの茎からCEL I酵素を調製した。冷凍セロリ茎部の試料1.5kgをジューサーでホモジナイズした。1リットルの汁を集め、100μMのフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)を含む100mM Tris−HCl(pH7.7)になるように調節し、2層のミラクロスを通して濾過した。氷上で撹拌しながら(NHSO固体を25%飽和になるまでゆっくり加えた。30分後に、その懸濁液を、4℃、27,000gで、1.5時間遠心分離した。上清を集め、氷上で撹拌しながら(NHSO固体で80%飽和になるように調節し、次に、27,000gで2時間遠心分離した。ペレットを緩衝液B(0.1M Tric−HCl、pH7.7、0.5M KCl、100μM PMSF)に再懸濁し、同じ緩衝液に対して透析した。
【0169】
コンカナバリンA(ConA)セファロースアフィニティークロマトグラフィーは、まず、透析した試料を2mlのConA樹脂と共に穏やかに撹拌しながら終夜インキュベートすることによって行った。次に、そのConA樹脂を直径0.5cmのカラムに充填し、数カラム体積の緩衝液Bで洗浄した。溶出は、緩衝液B中の0.3Mアルファ−メチル−マンノシドを使って行った。各1mlの画分を収集した。参照により本明細書に組み込まれるOleykowskiら、Nucleic Acids Research 26:4597−4602(1998)に記載されているように、0.1μlの各画分をミスマッチプローブと共に緩衝液D(20mM Tris−HCl、pH7.4、25mM KCl、10mM MgCl)中、45℃で、30分間インキュベートすることにより、各画分を放射標識ミスマッチ基質に対するミスマッチ切断活性についてアッセイした。7%尿素を含む10%TBE−PAGEゲル(Invitrogen)で分離した後、オートラジオグラフィーを行うことにより、反応産物を可視化した。ミスマッチ切断活性を持つCEL I画分を小分けして−20℃で凍結保存した。次に、第5 CEL I画分の5倍希釈系列を、放射標識ミスマッチ基質のミスマッチ切断について解析した。反応は、緩衝液D、New England BioLabs(NEB)T4 DNAリガーゼ緩衝液(50mM Tric−HCl、pH7.5、10mM MgCl、10mMジチオスレイトール(DTT)、1mM ATP、25μg/ml BSA)、またはGibco/BRL T4 DNAリガーゼ緩衝液(50mM Tris−HCl、pH7.6、10mM MgCl、1mM DTT、1mM ATP、5%(w/v)ポリエチレングリコール−8000)で行った。反応産物を上述のように可視化した。緩衝液Dでの切断活性とNEB T4 DNAリガーゼ緩衝液での切断活性とはほぼ等しいことがわかったのに対して、PEGを含有するGibco/BRLリガーゼ緩衝液での切断は、他の緩衝液と比較して5〜10倍、強化された。
【0170】
2種類の緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子から得られる明確に定義されたヘテロ二重鎖DNAを基質として使用することにより、CEL I活性をさらに解析した。このGFPヘテロ二重鎖基質は、センス鎖上のサイクル3 GFP(配列番号30)に相当する一本鎖DNAと、アンチセンス鎖上の野生型GFP(配列番号29)に相当する一本鎖DNAとをアニールさせることによって調製した。一本鎖DNAは、非対称PCRによって合成し、アガロースゲル電気泳動によって単離したものである。1×NEB制限酵素緩衝液2(10mM Tric−HCl、pH7.9、10mM MgCl、50mM NaCl、1mMジチオスレイトール)の存在下で90℃に加熱し、室温まで冷ますことによってアニールさせた後、アガロースゲル電気泳動を行い、続いてヘテロ二重鎖バンドを切り出し、Qiaquick DNAスピンカラムを使って抽出することにより、ヘテロ二重鎖DNAを単離した。ヘテロ二重鎖分子の全長にわたって、1または2ヌクレオチド長のミスマッチが、全部で28個生じる。ミスマッチの分布は、1個または2個のヌクレオチドで隔てられた数個のミスマッチからなる小さいクラスターから、両側が30個を超える塩基対で隔てられているミスマッチまで、さまざまである。
【0171】
1×NEB T4 DNAリガーゼ緩衝液中にCEL Iの3倍希釈系列を調製し、それぞれ0.5μgのスーパーコイルプラスミド調製物または100ngのサイクル3/野生型GFPヘテロ二重鎖を基質として含有する2系列の10μl反応液中で、各希釈液を1μlずつインキュベートした。反応はすべて1×NEB T4 DNAリガーゼ緩衝液中で行った。反応液を45℃で30分間インキュベートし、臭化エチジウムの存在下で1.5%TBE−アガロースゲルに流した。
【0172】
スーパーコイルプラスミド調製物を、増加する一連のCEL I量で処理すると、スーパーコイルDNAは、まずニックの入った環状分子に変換され、次に線状分子に変換され、次にランダムなサイズを持つ小さいDNA断片に変換された。ミスマッチGFP基質をCEL I調製物で処理すると、完全長ヘテロ二重鎖が消化されて、ミスマッチクラスターの近傍にある反対DNA鎖での切断を表すと思われるラダー状DNAバンドが生じた。さらなる消化により、ミスマッチGFP基質は、CEL I調製物によるヘテロ二重鎖DNAの限界消化物に相当すると思われるさらに小さいDNAに変換された。
【0173】
(実施例2)
(ミスマッチ解消カクテルによる完全長GFP遺伝子の変換)
この実施例では、完全長GFP遺伝子を保存する種々のミスマッチ解消カクテルを教示する。ミスマッチGFP基質を、全体として合成ミスマッチ解消系を構成する酵素カクテルの存在下で、さまざまな濃度のCEL Iで処理した。使用した酵素はCEL I、T4 DNAポリメラーゼ、Taq DNAポリメラーゼおよびT4 DNAリガーゼである。CEL I活性は、ヘテロ二重鎖のミスマッチ塩基の3’側に、ニックを入れるはずである。T4 DNAポリメラーゼはニックが入ったヘテロ二重鎖からミスマッチ塩基を切り出すための3’→5’校正活性を含んでいる。T4 DNAポリメラーゼと、Taq DNAポリメラーゼは、ギャップを埋める能力を持つDNAポリメラーゼを含んでいる。T4 DNAリガーゼは、修復された分子中のニックを閉じる。Taq DNAポリメラーゼは5’フラップアーゼ(flap−ase)活性も持っている。
【0174】
GFPヘテロ二重鎖基質中のミスマッチを解消するのに役立つであろう反応条件を同定するために、マトリックス実験を行った。ある実験では、サイクル3/野生型GFPヘテロ二重鎖を、マトリックス形式で、8種類の濃度の第5 CEL I画分(上述)の連続希釈液と共にインキュベートした。各反応液は、ヘテロ二重鎖基質100ngと、1×NEB T4 DNAリガーゼ緩衝液中のT4 DNAリガーゼ(Gibco BRL)0.2μlと、それぞれ250μMのdNTP類とを、10μlの反応体積中に含んだ。マトリックスは全部で96個の反応液を含んだ。一組の反応液を室温で30分間インキュベートし、もう一組の反応液を37℃で30分間インキュベートした。
【0175】
インキュベーション後に、PCRを使って、各反応液からGFP遺伝子を増幅した。次に、各PCR反応液の一部をHindIIIおよびHpaIで消化し、臭化エチジウムを含む3%アガロースゲルで電気泳動した。サイクル3 GFPだけがHindIII部位を持ち、野生型だけがHpaI部位をコードしている。
【0176】
DNAミスマッチ解消がHindIIIミスマッチ部位かHpaIミスマッチ部位で起こったとすると、ある割合のPCR産物は、両方の部位を含有し、新規なバンドを与えると予想される。そのバンドは、CEL IもT4 DNAポリメラーゼもTaq DNAポリメラーゼも含有しない陰性対照試料を含めて、全ての試料に観察された。これらの結果から、基礎レベルのバックグラウンド組換えが、GRAMMR反応以外の実験中のどこかの時点で(おそらくはPCRステップ中に)起こっているらしいことが示唆された。PCRが媒介する組換えは、関連配列間では、増幅中に、ある頻度で起こることが知られている。Paaboら、J Biol Chem 265(90)4718−4721。
【0177】
もう一つの実験では、200ngのサイクル3/野生型GFPヘテロ二重鎖を、T4 DNAリガーゼ(0.2単位;Gibco BRL)の存在下または不在下に、さまざまな濃度のCEL IおよびT4 DNAポリメラーゼならびに2.5単位のTaq DNAポリメラーゼで処理した。各反応液は、1×NEB T4 DNAリガーゼ緩衝液と、0.05mMの各dNTPを、20μlの最終体積中に含んだ。反応液を37℃で30分間インキュベートし、10μlを、臭化エチジウムの存在下で2%TBE−アガロースゲルに流した。その結果から、DNAリガーゼは存在するがT4 DNAポリメラーゼは存在しない状態では、CEL Iの量が増加するにつれてヘテロ二重鎖DNAの分解は多くなること、しかしこの効果は反応液中のT4 DNAポリメラーゼ量を増やすことによって相殺されうることがわかった。これらの結果から、完全な反応液のさまざまな成分が全体として、DNAミスマッチ解消の全体を通して、完全長遺伝子の完全性を保存するように働きうることが示された。
【0178】
これらの結果をさらに詳しく調べ、この合成系に関してDNAミスマッチ解消のさらなる条件を同定するために、もう一つのマトリックス実験を行った。0.5mMの各dNTPを含有する1×NEB T4 DNAリガーゼ緩衝液中、10μlの反応体積で、2.5単位のTaq DNAポリメラーゼおよび0.2単位のT4 DNAリガーゼの存在下に、さまざまな濃度のCEL IおよびT4 DNAポリメラーゼで、60ngのサイクル3/野生型GFPヘテロ二重鎖を処理した。各組の反応液を20℃、30℃、37℃または45℃で1時間インキュベートした。次に、全ての反応液を臭化エチジウムの存在下で1.5%TBE−アガロースゲルに流した。その結果から、GFPヘテロ二重鎖は、CEL I調製物だけでは、ばらばらの断片に切断されることがわかった。まずは、GFP配列の完全長が見かけ上、CEL Iの存在下で、ミスマッチ解消系の他の成分によって保全される度合いにより、DNAミスマッチ解消の成功を判断した。このアッセイで高い割合のDNAを完全長分子として保存する酵素濃度および温度の条件を同定した。すなわち、実験中は一定に保たれた他の反応成分の存在下で、1μlの第5 CEL I画分調製物(実施例1に記載)を、1μl(1単位)のT4 DNAポリメラーゼと共に使用した。反応温度が上昇すると、それに応じてCEL Iの分解活性も増加することがわかった。さらに、修復反応の他の成分は、20℃、30℃および37℃では、完全長DNAの完全性を保存するように作用するが、45℃では完全長DNAを保存する効率が著しく低下することもわかった。これらの結果から、我々は、これらの実験条件では、45℃でのインキュベーションはGRAMMRのプロセスにとって最適でなく、20℃、30℃および37℃でのインキュベーションは許容されると結論した。
【0179】
DNAミスマッチ解消反応に代替酵素を使用するもう一つの実験を行った。T4 DNAリガーゼの代わりにTaq DNAリガーゼを使用した。3’エキソヌクレアーゼ/ポリメラーゼとしてT4 DNAポリメラーゼを含む一組の反応液との同時比較に、Pfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)を使用した。反応は、8単位のTaq DNAリガーゼ(NEB)、2.5単位のTaq DNAポリメラーゼ、0.5mMの各dNTP、さまざまなCEL I希釈液、およびT4 DNAポリメラーゼまたはPfuDNAポリメラーゼを含有するTaq DNAリガーゼ緩衝液中で行った。反応液を、臭化エチジウムの存在下で、1.5%TBE−アガロースゲルに流した。Pfu DNAポリメラーゼ、Taq DNAポリメラーゼ、およびTaq DNAリガーゼの存在下では、CEL I処理した基質DNAの完全長の保全が、CEL IのみとインキュベートしたDNAと比較して強化されることがわかった。この結果は、機能的に等価な活性を持つ酵素をGRAMMR反応に代用してもうまくいくことを示している。
【0180】
(実施例3)
(DNAミスマッチ解消(GRAMMR)後のGFPヘテロ二重鎖DNAにおける制限部位の復元)
この実験では、制限部位の復元を実証することによって、DNAミスマッチ解消による遺伝子再集合(GRAMMR)の実施可能性を教示する。
【0181】
上で見いだした至適条件(1×反応液は、10μlの反応体積で、0.5mMの各dNTPを含有する1×NEB T4 DNAリガーゼ緩衝液中、2.5単位のTaq DNAポリメラーゼおよび0.2単位のT4 DNAポリメラーゼの存在下に、60μgのヘテロ二重鎖DNA、1μlの第5 CEL I画分(実施例1に記載)、1単位のT4 DNAポリメラーゼを含有する)を使用して、20倍にスケールアップしたGRAMMR反応を、37℃で1時間行うことによって得た完全長産物をゲルで単離し、エンドヌクレアーゼ(その認識部位が、GFPヘテロ二重鎖中のミスマッチとオーバーラップするため、DNA中のそれらの部位が、制限酵素切断に対して耐性になっているもの)による制限酵素解析に付した。使用した酵素は、BamHI、HindIII、HpaI、およびXhoIである。陰性対照は未処理のGFPヘテロ二重鎖から構成された。陽性対照は、個別に、サイクル3 GFP配列または野生型GFP配列から構成された。対照は全て、DNAミスマッチ解消反応の産物と同じ酵素で消化した。全ての試料を、臭化エチジウムの存在下で、2%TBE−アガロースゲルに流した。
【0182】
ミスマッチ解消カクテルによる処理後に、DNAの一部は、BamHIおよびXhoI制限エンドヌクレアーゼに対する感受性を獲得したことから、DNAミスマッチ解消が起こったことが示された。HpaI切断試料は、陰性対照で低レベルの切断が起こったので、解釈することができなかった。GRAMMR処理試料では、HindIII、BamHIおよびXhoI部位が、異なる切断度を示した。XhoI部位の復元はBamHI部位の復元よりも多く、BamHI部位の復元はHindIII部位の復元よりも多かった。
【0183】
切断が起こる程度は、その部位においてDNA中のミスマッチが解消されている程度を示す。ミスマッチ解消効率の相違は、それらの部位に存在するミスマッチの性質または密度に関係するのかもしれない。例えば、XhoI部位は3つのミスマッチクラスターにまたがっているが、BamHI部位は2つのミスマッチにまたがり、HindIII部位は単一のミスマッチにまたがっている。
【0184】
(実施例4)
(GRAMMR処理したGFP遺伝子)
この実施例では、GRAMMRが、ヘテロ二重鎖中の2つの遺伝子配列間で、配列変異を再集合させうることと、直接クローニングしたGRAMMR産物またはPCR増幅後にクローニングしたGRAMMR産物に、有意な差はないことを実証する。
【0185】
実施例3のGRAMMR処理DNA分子を、続いて、pCR−Blunt II−TOPO(Invitrogen)へのライゲーションによって直接クローニングするか、PCRで増幅して、製造者の使用説明書に従ってpCR−Blunt II−TOPOにライゲートしてから、大腸菌の形質転換に使用した。個々のコロニーを拾い上げ、液体培地で生育した後、DNAを調製し、GFPインサートの配列を決定した。陰性対照として、未処理のGFPヘテロ二重鎖基質を直接クローニングするか、またはPCR増幅してからプラスミド中にクローニングした。
【0186】
GRAMMRでは、一方の鎖から他方の鎖への情報伝達のプロセスによって、配列情報の再集合が起こる。これらの情報伝達部位は、組換えに基づくDNAシャフリング法で起こる交叉事象と類似している。しかし、これらの再集合実験の結果を述べるために、GRAMMRアウトプット配列を交叉の観点から記述する。GRAMMR処理GFP遺伝子に由来する20個の完全長GFPクローンの配列を解析した。これらのクローンのうち4つは、GRAMMR反応後にpZeroBlunt(Invitrogen)に直接クローニングしたDNAから得た(PCR増幅なし)。他の16個の配列は、PCR増幅後にクローニングした。これらの完全長GFP配列の解析により、20個の配列は全て配列再集合を起こしていて、1遺伝子につき1〜10点の交叉を持っていることが明らかになった。この遺伝子の集合には全部で99点の交叉が見つかったので、平均すると、交叉は1遺伝子につき約5点になる。最初のミスマッチと最後のミスマッチの間の距離は約590ヌクレオチドであることから、交叉の総合的頻度は120塩基対につきほぼ1点と計算された。この20個のクローンからなる集合では、全部で7つの点突然変異がPCRプライマー配列間に位置する配列内で起こっていて、突然変異頻度はほぼ0.05%になった。
【0187】
GRAMMR反応を受けていない35個のクローンを配列決定した。これらの対照のうち、14個は直接的なクローニングによって得たものであり、21個は、GFPヘテロ二重鎖をテンプレートとして使用するPCR増幅を経て得たものである。これら35個の非GRAMMR処理対照クローンのうち、8個は組換え体であり、交叉は1〜3点だったが、大半は一点交叉事象だった。全部で25個の点突然変異が、PCRプライマー間に位置する配列内で起こっていて、突然変異頻度はほぼ0.1%になった。
【0188】
直接クローニングしたGRAMMR処理産物またはPCR増幅したGRAMMR処理産物の間に、有意な差は観察されなかった。しかし、注目すべきことに、非GRAMMR処理対象の場合は、直接クローニングしたDNAよりも、PCR増幅したDNAの方が、組換え頻度が高かった。この高い頻度は、「ジャンピングPCR(jumping PCR)」が一定レベルの組換えを引き起こすことを見いだした他の研究(Paaboら「DNA damage promotes jumping between templates during enzymatic amplification」J Biol Chem 265(90)4718−4721)で得られた結果と合致している。
【0189】
(実施例5)
(GFPプラスミドのDNAミスマッチ解消によるプラスミド−オン−プラスミド遺伝子再編成(POP GRAMMR)用のヘテロ二重鎖基質の調製)
この実施例では、DNAミスマッチ解消による遺伝子再集合用のヘテロ二重鎖基質が、無傷の環状プラスミドの形態をとりうることを教示する。サイクル3−GFPおよび野生型GFPヘテロ二重鎖分子をプラスミド−オン−プラスミド(POP)形式で調製した。この形式では、環状二本鎖プラスミドベクター骨格を背景として、GFP配列を再集合させた。これにより、GRAMMR反応液の一部を使った大腸菌の直接形質転換による再集合産物の回収が可能になった。したがって、再集合クローンを得るために、GRAMMR処置DNAにPCR増幅を行う必要も、他の追加操作を行う必要もなかった。
【0190】
野生型GFP(配列番号29)およびサイクル3 GFP(配列番号30)を含有するPOP−GRAMMR反応用のミスマッチDNA基質を作製して、2つのpBluescript系プラスミド、それぞれpBSWTGFP(配列番号31)およびpBSC3GFP(配列番号17)を得た。GFPは、pBluescriptポリリンカーのKpnI部位とEcoRI部位の間に、2つのプラスミド間で唯一の配列差が、野生型GFPとサイクル3 GFPとが互いに異なっている部位に生じるように、挿入した。SapIでプラスミド骨格を消化することにより、両方のプラスミドを線状化し、DNAスピンカラムを使って精製し、混合し、1×PCR緩衝液(Barnes,1994;PNAS,91,2216−2220)に変更し、沸騰水浴で3分間加熱し、室温まで徐冷することにより、変性したDNA鎖をアニールさせた。これらのDNAを変性させアニールさせることにより、二重鎖の混合物が得られる。つまり、親二重鎖の再形成と、2つのインプットプラスミドのそれぞれに由来する鎖のアニーリングによるヘテロ二重鎖の形成が起こる。親二重鎖はGRAMMRにとって望ましくないとみなし、一方または他方の親二重鎖を切断するがヘテロ二重鎖分子を切断しない制限酵素を使った消化によって除去した。PmlIは野生型GFP配列だけを切断し、XhoIはサイクル3 GFPだけを切断するので、この作業には、PmlIとXhoIを選択した。これらの酵素で処理した後、産物をアガロースゲル上で分割した。バンドを切り出してDNAスピンカラムで精製することにより、完全長未切断ヘテロ二重鎖分子を、アガロースゲル中のPmlI切断親ホモ二重鎖およびXhoI切断親ホモ二重鎖から分割し、精製した。
【0191】
その結果得られたヘテロ二重鎖分子の集団を、DNAリガーゼで処理することにより、線状DNAを環状二本鎖DNAヘテロ二重鎖に変換した。アガロースゲルシフト解析によって確認した後、環状二本鎖GFPヘテロ二重鎖プラスミドを、GRAMMR反応の基質として使用した。得られたクローンの例を、配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8として記載する。
【0192】
(実施例6)
(DNAミスマッチ解消による遺伝子再集合に関する典型的な反応パラメータ:CEL I濃度およびT4 DNAポリメラーゼ濃度の比較)
GRAMMR反応には、数多くの酵素活性の相互作用が含まれる。例えばCEL I濃度、T4 DNAポリメラーゼ濃度、反応温度、T7 DNAポリメラーゼによるT4 DNAポリメラーゼの置換、Taq DNAポリメラーゼの存在、およびCEL I酵素の起源など、GRAMMR反応に関係するパラメーターをいくつか検討した。3種類のCEL I濃度と2つのT4 DNAポリメラーゼ濃度とからなるマトリックスを設定して、インビトロDNAミスマッチ解消反応の限界を調べた。
【0193】
実施例5に記載したように調製した環状二本鎖ヘテロ二重鎖プラスミド21ngを、1×NEBリガーゼ緩衝液、0.5mMの各dNTP、1.0単位のTaq DNAポリメラーゼ、0.2単位のT4 DNAリガーゼ(Gibco/BRL)、1.0単位または0.2単位のT4 DNAポリメラーゼ、および0.3μl、0.1μlまたは0.03μlのCEL I調製物(実施例1に記載の第5画分)を含む一連の10μl反応液で、基質として使用した。2つのT4 DNAポリメラーゼ濃度と3つのCEL I濃度とからなる6つの組合せの全てを表す6つの反応液を調製し、5μlずつの等価な二組に分割し、それらを20℃または37℃でインキュベートした。CEL Iを含有せず0.2単位のT4 DNAポリメラーゼを他の反応成分と共に含有している対照反応を調製し、37℃でインキュベートした。30分後に、各反応液を1μlずつ使ってコンピテントDH5−アルファ大腸菌を形質転換し、それをLBamp平板にプレーティングした。コロニーを拾って培養した。プラスミドDNAを抽出し、制限断片長多型解析(RFLP)によって調べた後、GFP遺伝子配列の配列解析を行った。RFLP解析は、野生型GFP遺伝子とサイクル3 GFP遺伝子との間にある数カ所の制限酵素認識部位の相違に基づいて行った。RFLPの結果は、制限部位の再集合、すなわちGRAMMRが、CEL I/T4 DNAポリメラーゼ/温度マトリックスの全体にわたって起こったことと、CEL I非含有対照クローンではそのような再集合が起こらなかったことを示した。DNA配列解析により、再集合はCEL I含有試料の全てで起こっていたことが確認された。また、16個の対照クローンのうちただ1つのクローン(これは一方の遺伝子配列から他方の遺伝子配列への一塩基変化を持っていた。これはおそらく大腸菌における修復によるものか、またはランダム突然変異によるものだろう)を除いて、CEL I非含有対照では再集合が起こっていないことも、配列決定によって確認された。典型的なGRAMMRアウトプットGFPクローンの配列をいくつか示すが、これらはいずれも、0.3μlのCEL I調製物と1.0単位のT4 DNAポリメラーゼとを含む反応液を37℃でインキュベートすることによって得たものである。参考のために、親野生型GFP遺伝子とサイクル3 GFP遺伝子を、最初に示す。
【0194】
(実施例7)
(Taq DNAポリメラーゼはDNAミスマッチ解消による遺伝子再集合に必要ではない)
この実験では、仮にTaq DNAポリメラーゼがGRAMMRの機能をもたらしたり、妨害したりすることがあったとしても、それは劇的なものではないということを教示する。Taq DNAポリメラーゼは5’フラップアーゼ活性を持つと報告されており、先の実施例では、GRAMMR反応を受けているヘテロ二重鎖DNAに望ましくない5’フラップが形成され存続する可能性に対する防護手段として含めていた。
【0195】
実施例6と同様に、1×NEBリガーゼ緩衝液、0.5mMの各dNTP、0.2単位のT4 DNAリガーゼ、1.0単位のT4 DNAポリメラーゼ、1.0μlのCEL I調製物(実施例1に記載の第5画分)および2.5単位もしくは0.5単位のTaq DNAポリメラーゼを含むか、またはTaq DNAポリメラーゼを含まない10μl反応液中に、21ngの環状二本鎖二重鎖GFPプラスミド基質を使って、GRAMMR反応を設定した。30分後に、各反応液を1μlずつ使ってコンピテントDH5−アルファ大腸菌を形質転換し、それをLB amp平板にプレーティングした。コロニーを拾って培養した。プラスミドDNAを抽出し、RFLP解析によって調べた後、GFP遺伝子配列の配列解析を行った。RFLPの結果は、GRAMMR反応中にTaq DNAポリメラーゼが存在しても存在しなくても、制限部位の再集合、すなわちGRAMMRが起こっていたことを示した。これらの結果はDNA配列解析によって確認された。したがってこのデータは、Taq DNAポリメラーゼがGRAMMRには不必要だったことを示している。
【0196】
(実施例8)
(DNAミスマッチ解消による遺伝子再集合用の代替校正DNAポリメラーゼ)
この実験では、DNAミスマッチ解消による遺伝子再集合がT4 DNAポリメラーゼの使用に限定されるわけではないことと、それに代えて代替DNAポリメラーゼを使用できることとを教示する。
【0197】
実施例6と同様に、1×NEBリガーゼ緩衝液、0.5mMの各dNTP、0.2単位のT4 DNAリガーゼ(Gibco/BRL)、10単位または2単位のT7 DNAポリメラーゼ、1.0μlのCEL I調製物(実施例1に記載の第5画分)および2.5単位のTaq DNAポリメラーゼを含む10μl反応液中に、21ngの環状二本鎖二重鎖GFPプラスミド基質を使って、GRAMMR反応を設定した。30分後に、各反応液を1μlずつ使ってコンピテントDH5−アルファ大腸菌を形質転換し、それをLB amp平板にプレーティングした。コロニーを拾って培養した。プラスミドDNAを抽出し、RFLP解析によって調べた後、GFP遺伝子配列の配列解析を行った。RFLPの結果は、どちらのT7 DNAポリメラーゼ含有反応でも、制限部位の再集合、すなわちGRAMMRが起こっていたことを示した。これらの結果はDNA配列解析によって確認された。したがってこのデータは、GRAMMRには、T4 DNAポリメラーゼの代わりにT7 DNAポリメラーゼを使用できるということを示している。またこれは、GRAMMRでは個々の成分および機能を広く代替物で置き換えることができ、それでもなお同様の結果が得られることを示している。
【0198】
(実施例9)
(GRAMMR反応におけるクローン化CEL Iの使用)
この実施例では、セロリから精製される天然CEL I酵素の代わりに、クローン化された供給源に由来するCEL Iを、DNAミスマッチ解消による遺伝子再集合に使っても、結果に顕著な変化は生じないことを教示する。
【0199】
CEL IのcDNAをセロリRNAからクローニングした。その遺伝子をTMVウイルスベクターに挿入し、発現させた。そのコンストラクトの転写物を使って、Nicotiana benthamiana植物を感染させた。感染組織を収集し、CEl I酵素を精製した。この精製酵素を使って得られるGRAMMR反応の結果を、セロリから精製したCEL Iを使って得られるものと比較したところ、よく似ていることがわかった。
【0200】
1×NEBリガーゼ緩衝液、0.5mMの各dNTP、0.2単位のT4 DNAリガーゼ(Gibco/BRL)、1単位のT4 DNAポリメラーゼ、およびセロリから精製したCEL I調製物(実施例1に記載の第5画分)1.0μlまたはクローン化された供給源から精製したCEL I 0.3μlを含む10μl反応液中に、実施例5に記載の環状二本鎖二重鎖GFPプラスミド基質21ngを使って、GRAMMR反応を設定した。30分後に、各反応液を1μlずつ使ってコンピテントDH5−アルファ大腸菌を形質転換し、それをLB amp平板にプレーティングした。コロニーを拾って培養した。プラスミドDNAを抽出し、RFLP解析によって調べた後、GFP遺伝子配列の配列解析を行った。RFLPの結果は、セロリ由来CEL I含有反応でも、クローン化CEL I含有反応でも、制限部位の再集合、すなわちGRAMMRが起こっていたことを示した。これらの結果はDNA配列解析によって確認された。したがってこのデータは、GRAMMRでは、セロリ由来のCEL Iの代わりに、クローン化された供給源に由来するCEL Iを使用できることを示している。さらにこのデータは、GRAMMR反応の一部であるのはCEL I活性であって、セロリからCEL Iを抽出する際に用いる精製ステップがもたらす偶然の効果ではないことも証明している。
【0201】
(実施例10)
(ウイルスベクターにおけるトバモウイルス30K遺伝子の分子育種)
先の実施例では、DNAミスマッチ解消による遺伝子再集合が、高度に相同な配列を再集合させるのに有用であることを教示した。例えばwtGFPとサイクル3 GFPは96%一致する。この実施例では、さらに分岐した核酸配列、例えばトバモウイルス移動タンパク質遺伝子をコードする遺伝子などを再集合させるために、GRAMMRを使用することもできるということを教示する。
【0202】
約75%一致している2つのトバモウイルス移動タンパク質(MP)遺伝子のヘテロ二重鎖を作製した。このヘテロ二重鎖基質は、非対称PCRで合成した反対鎖である部分相補一本鎖DNA同士(一方の鎖はタバコモザイクウイルスU1型株(TMV−U1)由来の移動タンパク質遺伝子(配列番号9)をコードし、他方の鎖はトマトモザイクウイルス(ToMV)由来の移動タンパク質遺伝子(配列番号10)をコードする)をアニールさせることによって調製した。これら2つの部分相補移動タンパク質遺伝子の配列には、末端部でのそれらのDNAのアニーリングを促進し、PCRによる増幅およびクローニングを容易にするために、絶対的な相補性を持つ33ヌクレオチドを隣接させた。アニーリング反応は、2.5μgの各一本鎖DNAを、333mM NaCl、33mM MgCl、3.3mMジチオトレイトール、166mM Tris−HCl、pH7を含む150μlの反応液中で混合し、95℃で1分間インキュベートした後、室温まで徐冷することによって行われた。GRAMMRは、1×NEBリガーゼ緩衝液、0.5mMの各dNTP、0.4単位のT4 DNAリガーゼ(Gibco/BRL)、2.0単位のT4 DNAポリメラーゼ、およびCEL Iを含む20μlの反応液中で、5μlのヘテロ二重鎖基質をインキュベートすることによって行った。このCEL Iはクローン化調製物から得たものであり、使用した量はさまざまで、2μlの当該調製物に始まって、5つの3倍連続希釈液に及んだ。CEL Iを含まない7番目の調製物も調製し、これを対照とした。
【0203】
室温で1時間後に、StrataprepスピンDNA精製カラム(Stratagene,カリフォルニア州ラホーヤ)を使ってDNAを反応液から精製し、上記2つの配列の隣接プライマー結合部位にアニールするように設計されたプライマーを用いるPCR反応に、テンプレートとして使用した。各反応で得たPCR産物をStrataprepカラムを使って精製し、AvrIIおよびPacIで消化し、同様に切断したpGENEWARE(登録商標)−MP−Avr−Pacの移動タンパク質スロットにライゲートした。このプラスミドは、移動タンパク質遺伝子を他の移動タンパク質遺伝子で置き換えることができるように、移動タンパク質遺伝子に隣接するAvrII部位とPacI部位で修飾された完全長感染性トバモウイルス−GFPクローンを含んでいる。DH5−アルファ大腸菌を形質転換し、プレーティングした後、コロニーを拾い、培養物を生育させ、DNAを抽出した。移動タンパク質インサートを両方向からDNA配列解析にかけたところ、GRAMMR処理材料から得られるインサートの大半は、TMV−U1移動タンパク質遺伝子配列とToMV移動タンパク質遺伝子配列の両方から構成される再集合配列であることが、配列データによって確認された。いくつかの典型的なGRAMMRアウトプットMPクローンのDNA配列を、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、および配列番号15として示す。
【0204】
(実施例11)
(改良されたヒ酸塩解毒細菌を作出するためのGRAMMR)
ヒ素解毒は、硫ヒ鉄鉱を含む金鉱の採掘および他の用途、例えば環境改善などにとって重要である。ヒ酸塩解毒オペロンを含有するプラスミドpGJ103(JiおよびSilver,1992)(Ji,G.およびSilver,S.「Regulation and expression of the arsenic resistance operon from Staphylococcus aureus plasmid pI258」J.Bacteriol.174,3684−3694(1992)、この論文は参照により本明細書に組み込まれる)は、Simon Silver博士(イリノイ大学、イリノイ州シカゴ)から入手することができる。pGJ103(pUC19にクローニングされたpI258 arsオペロンを含有する)を保持する大腸菌TG1は、LBアンピシリン寒天平板上で4μg/mlのMIC(最小発育阻止濃度)を持つ。arsオペロンを突然変異誘発PCR(mutagenic PCR)によって増幅し、pUC19にクローニングし、大腸菌TG1の形質転換に使用する。形質転換した細胞を、ある範囲のヒ酸ナトリウム濃度(2、4、8、16mM)で、プレーティングする。最も高いヒ酸塩レベルを持つ平板からコロニーを拾う。それらのコロニーを適当なヒ酸塩選択下に混合培養で生育させる。その培養物からプラスミドDNAを単離する。そのプラスミドDNAを、pUC19プラスミド骨格に一度だけ切り込みを入れる制限エンドヌクレアーゼで消化することにより、線状にする。その線状プラスミドを94℃で10分間加熱することによって変性させる。一本鎖のアニーリングが促進されるように反応液を冷ます。ハイブリダイズする部分相補鎖はミスマッチ部位に非塩基対形成ヌクレオチドを持つ。CEL I(実施例9の方法で精製したもの)で処理することにより、各ミスマッチの3’側で、どちらか一方のポリヌクレオチド鎖にニックが入る。校正活性を持つポリメラーゼ、例えばT4 DNAポリメラーゼなどが存在すると、ミスマッチの切り出しが可能になり、それに続いて5’→3’ポリメラーゼ活性が、他方の鎖をテンプレートとして、ギャップを埋める。次に、T4 DNAリガーゼが、修復された鎖のリン酸主鎖を復元することによって、ニックを閉じる。その結果、インプット鎖間で突然変異のランダム化が起こって、改善された特性を持つ可能性のあるアウトプット鎖が得られる。これらのアウトプットポリヌクレオチドを直接使って大腸菌TG1を形質転換し、それらの細胞を、さらに高いヒ酸塩レベル(8、16、32、64mM)で、プレーティングする。最も高いヒ酸塩レベルを持つプレートからコロニーを拾い、再集合を上述のようにもう1回行う。ただし、結果として生じる形質転換細胞は、32、64、128、256mMのヒ酸塩濃度で、プレーティングする。次に、さらなる改善を達成するための試みとして、選択したクローンを使って、このプロセスを1回以上繰り返すことができる。
【0205】
(実施例12)
(CEL Iエンドヌクレアーゼのクローニング、発現および精製)
この実施例では、植物からCEL Iエンドヌクレアーゼを発現させるために使用した核酸分子(ここではp1177MP4−CEL I Avr(配列番号1)およびp1177MP4−CEL I 6HIS(配列番号2)と呼ぶ)の作製を教示する。特にこの実施例では、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,316,931号、第5,589,367号、第5,866,785号および第5,889,190号に教示されている開示に言及する。
【0206】
(セロリRNA抽出:)
セロリは地元の市場で購入した。少量のセロリ組織(0.5〜0.75g)を切り刻み、液体窒素で凍結し、粉砕ガラスの存在下に乳鉢と乳棒で摩砕した。400μlのTrizolを加えてさらに摩砕し、700μlの抽出物を取り出して、氷上に5分間保った。次に200μlのクロロホルムを加え、試料を遠心分離し、室温に3分間放置し、再び15,000gで10分間遠心分離した。水層を新しいチューブに取り出し、等体積のイソプロパノールを加えた。チューブを上下逆さにして混合し、室温で10分間放置した後、4℃、15,000gで10分間遠心分離した。ペレットを、400μlの70%エタノール中で2回、100%エタノール中で1回洗浄し、風乾し、40μlの蒸留水に再懸濁した。1μlのRNasinを加え、3.5μlを1%アガロースゲルに流して、RNA調製物の品質をチェックした(ゲル像)。残りはさらに使用するまで−70℃で保存した。
【0207】
(ウイルスベクターによるCEL I遺伝子のクローニングおよび発現:)
セロリから得た全RNAを逆転写にかけた後、PCRを行うことにより、CEL I遺伝子配列をコードするcDNAを増幅した。別個の反応では、11μlの全セロリRNA調製物を、1μl(50pmol)のCElI−Avr−R、CElI−6H−Rと混合するか、または2μlのオリゴdTプライマーと混合した。CelI−Avr−Rは、cDNAをプライミングし、遺伝子の3’末端にある天然CEL I配列を増幅するために使用した。一方、CelI−6H−Rは、CEL I遺伝子の3’末端にリンカーペプチドおよび6−Hisタグをコードする配列を付加するために使用した。試料を70℃に1分間加熱し、氷で急冷した後、4μlの5×Superscript II緩衝液、2μlの0.1M DTT、1μlの10mM各dNTP、および1μlのSuperscript II(Gibco/BRL)を各反応液に加えた。これらの反応液を42℃で1時間インキュベートした。
【0208】
CEL I cDNA配列のPCR増幅は、W.M.Barnesの方法(Proc Natl Acad Sci.USA,1994 Mar 15;91(6):2216−20)により、Taq−Pfu混合物を使って、またはPfuだけを使って行った。CelI−Avr−RでプライミングしたRT反応液は、CelI−Avr−R(リバースプライマーとして)と対にしたCelI−Pac−F(フォワードプライマーとして)をプライマーとするPCRに、テンプレートとして使用した。他のPCRでは、オリゴdTでプライミングしたRT反応液を、上記プライマー対の両方に、テンプレートとして使用した。全てのPCR反応は、液量を100μlとし、50℃でのアニーリングと72℃で2分間の伸長とを30サイクル行った。得られた反応液の一部をアガロースゲル電気泳動で解析した。Pfuを唯一のポリメラーゼとして使用した反応液には、生成物は認められなかった。Taq/Pfu混合物を使って行った反応は全て、予想されるサイズの産物を与えた。しかし、Cel I特異的プライマー対でプライミングしたcDNAから増幅されたものは、オリゴdTでプライミングしたcDNAから増幅された反応よりも多くの産物を与えた。最も多くの産物が得られたPCR反応液から、Zymoclean DNAスピンカラムキットを使ってDNAを精製し、PacIおよびAvrIIで消化し、ゲル単離し、PacIおよびAvrIIで消化したプラスミドpRT130(トバモウイルス系GENEWARE(登録商標)ベクター)にライゲートした。2μlの各ライゲーション液を使ってDH5αコンピテント大腸菌を形質転換し、LB−amp寒天平板で一晩培養した。コロニーを拾い、液体培養で一晩生育させ、Qiagenプラスミドプレップキットを使ってプラスミドDNAを単離した。各コンストラクトから得た12個のクローンを、PacIおよびAvrIIによる消化でスクリーニングしたところ、各組12個のうち11個が、正しいサイズを持つインサートに関して陽性だった。各コンストラクトにつき10個のクローンをインビトロで転写し、RNAをN.benthamiana植物に接種した。また、10個のクローンからなる各組のCEL I遺伝子インサートを配列解析にかけた。天然型CEL Iをコードするインサートを含有する数個のクローンは、WO 01/62974 A1に公表されているCEL I配列と同じ配列を持っていた。6−ヒスチジン配列に融合したCEL Iをコードするインサートを含有する1個のクローンは、公表されたCEL I配列と同一だった。それぞれ1個のクローン(それぞれpRT130−CEL I Avr−B3およびpRT130−CEL I 6His−A9)を選択して、それ以降の作業に使用した。次に、これらのクローン中のCEL Iコード配列を、別のGENEWARE(登録商標)ベクターに移した。これらのクローン、すなわちp1177MP4−CEL I Avr−B3およびp1177MP4−CEL I 6His−A9の配列を、それぞれ配列番号1および配列番号2として記載する。
【0209】
(クローン化CEL I活性のアッセイ:)
Cel I配列を含有するGENEWARE(登録商標)コンストラクトが活性なCEl I酵素を産生できるかどうかを決定するために、pRT130−CEL I Avr(配列番号1)およびpRT130−CEL I 6His(配列番号2)ならびにGFP−GENEWARE対照感染植物の試料を収集し、pH8.0のTris−HCl中、小さい乳鉢と乳棒でホモジナイズした。抽出物を清澄化し、スーパーコイルDNAニッキング活性についてアッセイした。各スーパーコイルDNAニッキングアッセイは、10μlの総体積で、1×NEBリガーゼ緩衝液中にpUC19誘導体のスーパーコイルプラスミド調製物0.5μgを含有する反応液で行った。反応液に加えた植物抽出物の量は、0.1μl、0.01μl、または0.001μlであり、42℃で30分間インキュベートした後、臭化エチジウムの存在下で1%TBE−アガロースゲルに流した。GFP−GENEWARE対照感染植物抽出物にはニッキング活性はほとんどまたは全く検出されなかったが、CEL I−GENEWAREコンストラクトに感染した植物から得た抽出物は、プラスミドDNA基質に対してかなりの量の活性を示した。
【0210】
pRT130−CEL I Avr−B3およびpRT130−CEL I 6His−A9を接種した植物の抽出物に対して、さらなる活性アッセイを行った。これらのアッセイでは、感染した葉から細胞内液を洗い出し、残った洗浄済みの葉組織から得られる物質とは別々にアッセイした。アッセイは、インキュベーションを37℃で1時間行った点を除いて、上述の通りに行った。試料を、臭化エチジウムの存在下で1%TBE−アガロースゲルに流し、写真撮影した。
【0211】
(感染N.benthamiana植物からの6His標識CEL Iの精製)
N.bentthamiana植物に、播種後20〜21日の時点で、pRT130−CEL I 6His−A9から得られるRNA転写物を接種した。接種の10日後に、96個の感染植物体から組織を収集し、細胞内液洗浄にかけた。簡単に述べると、感染した葉および茎材料に、冷たい浸潤緩衝液(7mMβ−MEの存在下、50mMリン酸塩、pH4)を使って30秒間の減圧浸潤処理を2回行った。浸潤処理した組織を拭って過剰の緩衝液を吸着させ、バスケットローター(Beckman)を使って2500×gで20分間の遠心分離を行うことにより、分泌タンパク質を回収した。組換えCEL_Iを含有する抽出された細胞内液(IF)に最終濃度が1mMになるようにPMSFを加え、撹拌しながら25℃で15分間撹拌した。抽出物にイミダゾール(pH6.0)とNaClを最終濃度がそれぞれ5mMと0.5Mになるように加えた後、IFをpH5.2に調節し、1.2μSartorius GFメンブレン(Whatman)を通して濾過することにより、ルビスコおよび緑色色素の大半を取り除いた。清澄化後直ちに、濃NaOH溶液を使ってpHを7.0に調節し、氷上で20分間インキュベートして、非タンパク質物質を沈殿させた。0.8μまたは0.65/0.45μSartorius GF(Whatman)を使って、IFをさらに清澄化した。清澄化したIFから、5mMイミダゾールを含有する結合緩衝液(50mMリン酸、0.5mM NaCl、pH7.0)で平衡化したNi2+ Fast Flow Sepharose(Amersham Pharmacia Biotech,ニュージャージー州)を用いる金属キレートアフィニティクロマトグラフィーにより、300cm/時の線速度で、組換えCEL Iを精製した。結合していないタンパク質を20mMイミダゾール/結合緩衝液で洗浄し、結合緩衝液中、20→400Mイミダゾールの直線的勾配で、Ni2+ SepharoseからCEL Iを溶出させた。まだイミダゾールを含有している画分を、スーパーコイルDNAニッキング活性について上述のようにアッセイしたが、取るに足りない活性しか持っていないことがわかった。次に、10kD MWCOF透析チューブ(Pierce)を使用して、ZnClの存在下で、0.1M Tris−HCl(pH8l.0)に対して、同じ画分を透析し、再びアッセイした。スーパーコイルDNAニッキング活性は、この透析によって回復した。
【0212】
ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)プレキャストTris−グリシンゲル(Invitrogen,カリフォルニア州カールズバッド)を使用し、Laemmliの緩衝液系で、Xcell II Mini−Cell装置(Invitrogen,カリフォルニア州カールズバッド)を使って、IFおよび精製CEL−Iタンパク質を分析した。クーマシーブリリアントブルーおよび銀染色によって、タンパク質バンドを可視化した。Bio−Radゲルイメージャーを使ってSDS−PAGEゲルを走査し、解析した。
【0213】
(精製CEL Iの質量分析:)
マトリックス支援レーザー/脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI−TOF)によって、精製CEL Iの平均分子量を決定した。CEL Iの一部を50%アセトニトリル/水で1:10希釈し、PE Biosystem DE−Pro質量分析計を使って、シナピン酸マトリックスと混合(1:1 v/v)した。質量分析は、25kVの加速電圧を使って、ポジティブ−リニアイオンモードで行った。
【0214】
(精製CEL Iから単離されたペプチドの質量分析:)
CEL Iを、14%ゲルでのSDS−PAGEで分離し、クーマシーブリリアントブルーで染色した。単一の均質なバンドが見えた。このバンドを切り出し、完全に脱染した。タンパク質を、50%アセトニトリル中、10mM DDTの存在下に、37℃で30分間還元し、還元されたスルフヒドリル基を、50%アセトニトリル中、28mMヨードアセトアミドの存在下で、遮光下に24℃で30分間ブロックした。ゲル片を50%アセトニトリルで洗浄し、部分脱水後に、切り出したCEL Iバンドを高純度トリプシン(Promega)の溶液中で浸解した。このタンパク質分解消化を37℃で16時間進行させた。得られたペプチドを、50%アセトニトリル/0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)でゲル片から溶出させ、SpeedVacで濃縮した。それらのペプチドをMALDI−TOFで分析した。混合トリプシン消化物を、α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸のマトリックス中で結晶化させ、遅延引き出し機構を実装したPerSeptive Biosystem DE−STR MALDI−TOF質量分析計を使用し、リフレクター−ポジティブイオンモードおよび加速電圧20kVで稼働させて分析した。予想される理論質量は、MS−digest(Protein Prospector)またはGPMAWプログラム(Lighthouse Data、デンマーク・オーゼンセ)によって計算した。タンデム質量分析(ナノエレクトロスプレーイオン化(ESI)法)用に、ペプチド試料を5%アセトニトリル/0.1%ギ酸で希釈し、LC MS/MSにかけて、四重極直交型飛行時間質量分析装置(Micromass,Inc.,英国マンチェスター)で解析した。データをMslynxで処理し、Sonarでデータベースを検索した。
【0215】
ウイルスが発現させる組換えCEL Iは、IFに分泌された。
【0216】
清澄化したIF抽出材料を使って、His−タグCEL I活性を精製した。CEL Iは、一段階Ni2+アフィニティークロマトグラフィー分離によって精製された。クーマシー染色SDS−PAGEおよび質量分析で確認したところ、高度に精製された均質な単一タンパク質バンドが精製された。成熟タンパク質のサイズおよび糖鎖付加率は、セロリから単離されたCEL Iタンパク質(Yangら、2000)について報告されているものと一致する。MALDI−TOF質量分析法によると、精製CEL Iは40kDの平均分子量を持ち、質量ベースで23.5%の糖鎖付加を示す。CEL Iは、アミノ酸位置58、116、134および208に、4つの潜在的糖鎖付加部位を持っている。モノアイソトピック質量2152.6086(理論値2152.0068)。
【0217】
MALDI−TOFで回収されたペプチド107−125(K)DMCVAGAIQNFTSQLGHFR(H)(配列番号35)の質量に相当するDaは、アスパラギン116は糖鎖付加されていないことを示す。これらのゲル分析と質量分析データは、全体として、CEL Iタンパク質のかなりの部分が回収可能だったことと、このタンパク質がN.benthamiana植物中で正しくプロセシングされたことを示している。以降の実験のために、p1177MP4−CEL I 6His−A9を使って、6−Hisタグ付きCEL I遺伝子を製造した。このクローンを転写し、N.benthamiana植物に接種し、それを感染の8日後に収集した。この植物材料を2体積の抽出緩衝液(500mM NaCl、100mM NaPi、25mM Tris pH8.0、7mM β−メルカプトエタノール、2mM PMSF)と混合し、減圧浸潤処理した。緩衝液浸潤後に、組織をジューサーで浸解し、得られた緑色の液汁を4%w/vポリエチレングリコールに調節して、4℃で1時間静置した。その緑色液汁を、20分間の低速(3500×g)での遠心分離によって清澄化するか、パーライト(2%w/v)と混合し、1.2μmフィルターを通して濾過した。清澄化した緑色液汁から、金属アフィニティークロマトグラフィーによって、タグ付きCEL Iを精製した。緑色液汁をニッケル−NTA樹脂と混合して、CEL Iのバッチ結合を行うか、緑色液汁をニッケル−NTA樹脂床に流すカラム形式で精製を行った。結合のために、清澄化した緑色液汁を10%w/vグリセロールおよび10mMイミダゾールに調節した。結合後に、洗浄緩衝液(330mM NaCl、100mM NaPi、pH8.0、10mMイミダゾール)で樹脂を十分に洗浄し、結合しているCEL I酵素をニッケル−NTAから2樹脂床体積の400mMイミダゾール含有1×リン酸緩衝食塩水(PBS)に溶出させた。次に、そのCEL I調製物を1×PBSに対して透析することでイミダゾールを除去し、活性をアッセイし、グリセロールを加えて、またはグリセロールを加えずに、使用時まで、4℃または−20℃で保存した。
【0218】
(実施例13)
(Res Iエンドヌクレアーゼのクローニング、発現および使用)
この実施例では、Selaginella lepidophyllaからの、cDNAライブラリーの構築、そのライブラリーからの、エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列の同定、およびここで「RES I」と呼ぶその新しいエンドヌクレアーゼの発現を教示する。
【0219】
フッカツソウSelaginella lepidophyllaの組織からTrizol法を使ってRNAを抽出し、標準的な方法でオリゴdTプライムドcDNAを調製した。得られたcDNAをGENEWARE(登録商標)系クローニングベクターにライゲートし、そのライゲーション産物を使ってコンピテント大腸菌細胞を形質転換した。GENEWARE(登録商標)cDNAクローンを含有する細菌コロニーを無作為に拾い、液体培養物として生育させた後、DNA調製およびクローン化したcDNA配列の決定を行った。クローン化したSelaginella cDNAの配列ファイルをデータベースにロードし、そのデータベースを、CEL I遺伝子のDNA配列に対して類似性を持つ配列について、BLAST解析によって検索した。他の種から得られたcDNAの配列を含む他のDNA配列データベースでもBLAST解析を行った。
【0220】
セロリCEL I配列に対してあるレベルの相同性を示したBLASTヒットを、いくつかの種に由来するライブラリー中に同定し、対応するGENEWARE(登録商標)cDNAクローンを、一セットのGENEWARE(登録商標)cDNAクローンに再配置した。次に、このcDNAクローンのセットをインビトロで転写することによって感染性GENEWARE(登録商標)転写物を作製し、次に、それをNicotiana benthamiana植物の葉に接種して、GENEWARE(登録商標)ウイルスゲノム内にコードされているcDNA配列の発現解析を行った。接種の7日後に、感染した植物から葉試料を採取し、2体積の水中でホモジナイズした。次に、抽出物をスーパーコイルDNAニッキングおよび切断活性についてアッセイした。
【0221】
各スーパーコイルDNAニッキングアッセイは、1×NEB T4 DNAリガーゼ緩衝液中にpUC19誘導体のスーパーコイルプラスミド調製物0.5μgを含有する、総体積10μlの反応液で行った。反応液に加えた植物抽出物の量は1μl、0.33μlまたは0.011μlであり、これを37℃で30分間インキュベートして、Gelstar蛍光DNA染色試薬の存在下で1%TAE−アガロースゲルに流した。ニッキング活性は非感染植物抽出物にはほとんどまたは全く検出されなかったが、Selaginella lepidopyllaに由来する一遺伝子のcDNAを含有するGENEWARE(登録商標)コンストラクトに感染させた植物から得た抽出物だけは、プラスミドDNA基質に対してかなりの量の活性を示した。
【0222】
これらのクローンの完全遺伝子配列を決定し、非コード5’および3’配列を持たないオープンリーディングフレームを増幅し、かつコードされているタンパク質のC末端に6ヒスチジンテールを付加するためのPCRプライマーを、設計した。次に、それらのプライマーを使って、活性完全長Selaginellaクローンの1つからORFを増幅した。次に、植物体内で発現させるために、得られたPCR産物をGENEWARE(登録商標)ベクターpDN4のPacI部位とAvrII部位の間にクローニグした。得られたクローンpLSB2225(これはRES I ORF(配列番号16)を含有し、RES Iタンパク質(配列番号34)をコードする)を配列決定することにより、この遺伝子が正しく挿入されていることを確認した後、それをインビトロで転写し、その感染性転写物をN.benthamiana植物に接種した。接種の7日後に、感染植物抽出物を上述のように調製し、スーパーコイルDNAニッキングおよび消化活性についてアッセイすることにより、クローン化された酵素の活性を確認した。
【0223】
各スーパーコイルDNAニッキングアッセイは、50mM KClの存在下、1×NEB大腸菌DNAリガーゼ緩衝液中にpUC19誘導体のスーパーコイルプラスミド調製物0.5μgを含有する総体積10μlの反応液で行った。反応液に加えた植物抽出物の量は0.2μl、0.04μl、0.008μlまたは0.0016μlであり、これを37℃で30分間インキュベートして、Gelstar蛍光DNA染色試薬の存在下で0.8%TAE−アガロースゲルに流した。ニッキング活性は非感染植物抽出物にはほとんどまたは全く検出されなかったが、GENEWARE(登録商標)−SelaginellaコンストラクトpLSB2225に感染させた植物から得た抽出物は、プラスミドDNA基質に対してかなりの量の活性を示した。
【0224】
このアッセイで陽性結果を得た後、pLSB2225感染植物の抽出物をGRAMMR反応に使用して、GENEWARE(登録商標)によって製造されたCEL I酵素の代わりにミスマッチ解消反応の一成分として機能するこの酵素の能力を試験した。
【0225】
(実施例14)
(GRAMMR反応におけるRES Iの使用)
この実施例では、セロリから精製された天然CEL I酵素の代わりにRES Iを、DNAミスマッチ解消による遺伝子再集合に使用することができ、そのようにしても、結果には顕著な変化が何も生じないことを教示する。
【0226】
pBSWTGFP(配列番号31)によってコードされるpBS誘導体(Stratagene,カリフォルニア州ラホーヤ)中の野生型Aequorea victoria GFP遺伝子(Prasherら、Gene 111(92)229)と、大腸菌における蛍光強度を増大させると共に放射波長を青色光放射に変化させる突然変異を持つ改変体(Crameriら、Nat Biotechnol 14(96)315;Heimら、PNAS 91(94)12501;Yangら、J Biol Chem 273(98)8212)との間で、GRAMMRを行った。図5(配列番号32)に示すプラスミドpBSC3BFPによってコードされるこの改変体遺伝子は、長波長UV光によって励起されると明るい青色光を放射する蛍光タンパク質をコードしている。
【0227】
GRAMMR反応は、環状二本鎖プラスミドDNAを背景とするGFP/c3BFPヘテロ二重鎖で行った。この環状全プラスミドヘテロ二重鎖DNA基質は、まず、pBSWTGFP(配列番号31)およびpBSC3BFP(図5、配列番号32)を、それぞれKpn IおよびNgoM IVによる消化で線状化し、次に、消化したDNAをDNAスピンカラムで精製することによって調製した。次に、それら2つの線状化プラスミドを200ngずつ混合し、体積20μlで1×SSPE(180nM NaCl、10mM NaHPO、1mM EDTA、pH7.4)にした。次に、その混合物を、95℃で4分間インキュベートし、氷水に浸けてその状態を10分間保ってから、37℃でインキュベートした。30分後に、アニールしたDNA試料を氷に戻し、GRAMMR反応で使用するまでそのままにしておいた。
【0228】
GRAMMRによる配列シャフリングを促進する能力について、CEL IをRESIと比較するために、独立した2系列のシャフリング反応を行った。各GRAMMR反応液は、KClを50mMになるように補足した1×NEB大腸菌リガーゼ緩衝液中に、1単位のT4 DNAポリメラーゼ、2単位の大腸菌DNAリガーゼ、および5nmolの各dNTPを含んだ。次に、2つの酵素の連続希釈を個別に行った。上記のカクテルを分注した2系列のチューブのそれぞれに、GENEWARE(登録商標)によって発現させたCEL IまたはRES I抽出物を1μlずつ、1/3、1/9、1/27、1/81または1/243の希釈率で加えた。エンドヌクレアーゼを含まない対照反応液も調製した。各反応液に、アニールしたDNAヘテロ二重鎖基質20ngを含有する1μlの液を加え、その反応液を室温で1時間、氷上で30分間インキュベートした後、コンピテント大腸菌の形質転換に使用した。
【0229】
緑色蛍光タンパク質(GFP)および青色蛍光タンパク質(BFP)は、得られたコロニー中に、長波長UV照射によって可視化することができた。親野生型GFPは暗い緑色蛍光を持ち、親c3BFPは明るい青色蛍光を放つ。これらの蛍光タンパク質をコードしている遺伝子では、放射色を決定する配列と、蛍光強度を支配する配列とが、互いに異なる位置にある。DNAシャフリングは放射色を決定する配列と蛍光強度を支配する配列との「切り離し」をもたらすだろうと予想される。結果として、得られる子孫は、放射色および強度という機能的特性の再集合を示すと予想されるだろう。したがって、対応する平板上の細菌コロニーから生じる蛍光の色および強度を調べることによって、各反応で起こったDNAシャフリングの程度の尺度を採点することができた。ヌクレアーゼ非含有対照では、暗い緑色コロニーと明るい青色コロニーしか観察されなかった。しかし、CEL IかRES Iのどちらか一方を含有する反応液から得られるDNAで形質転換した細胞を含む平板では、幾分明るい緑色コロニーと、幾分暗い青色コロニーが観察され、DNA配列のシャフリングが起こったことを示した。DNA配列解析により、これが実際にその通りであることと、シャッフルされたクローンの回収率はCEL IでもRES Iでも平均で85%を超えることと、情報伝達事象の数および分布はどちらの酵素でもよく似ていることが確認された。ただし、高濃度のRES I調製物で処理した反応液が低い形質転換効率を持つことからわかるように、この実験におけるRES Iの活性は、CEL Iの活性よりも数倍高いようだった。
【0230】
(実施例15)
(DNAミスマッチ解消によるプラスミド−オン−プラスミド遺伝子再集合(POP GRAMMR)を使ったウイルスベクター中の著しく分岐したトバモウイルス30K遺伝子の分子育種)
実施例10は、数種類の分岐したトバモウイルス株(約75%同一;pGENEWARE−MP−Avr−Pacベクターにクローニングされているもの)に由来する移動タンパク質(MP)の、GRAMMRを使った再集合を教示している。この実施例では、さらに著しく分岐した種を再集合させるためのプラスミド−オン−プラスミドGRAMMR(POP GRAMMR)の使用を教示する。
【0231】
トバモウイルスTMV−Cg(図6、配列番号18)、TMV−Ob(図7、配列番号19)、TMV−U2(図8、配列番号20)、TMV−U1(配列番号9)、およびトマトモザイクウイルス(ToMV)(配列番号10)に由来する出発親MP遺伝子を使用した。pGENEWARE−ToMV MPのプラスミドはSma Iによる消化で線状化した。TMV−Cg、TMV−Ob、TMV−U2、またはTMV−U1に由来するMP遺伝子を含有するpGENEWAREのプラスミドはStu Iで消化した。消化されたpGENEWARE−MPコンストラクトはDNAスピンカラムを使って精製した。以下のヘテロ二重鎖対を作製した:pGENEWARE−Cg MPとpGENEWARE−ToMV MP、pGENEWARE−TMV−Ob MPとpGENEWARE−ToMV MP、pGENEWARE−TMV−U2 MPとpGENEWARE−ToMV MP、pGENEWARE−TMV−U1 MPとpGENEWARE−ToMV MP。これらのMP遺伝子配列のヘテロ二重鎖は、それぞれ約47%、58%、62%および75%同一である。ヘテロ二重鎖DNAは、1×SSPE(180mM NaCl、10mM NaHPO、1mM EDTA、pH7.4)中、20μlの体積で、2つの線状化プラスミドをそれぞれ200ngずつ混合することによって作製した。その混合物を95℃で4分間インキュベートし、氷水に浸けてその状態を10分間保ってから、37℃でインキュベートした。30分後に、アニールしたDNA試料を氷に戻し、GRAMMR反応で使用するまでそのままにしておいた。
【0232】
各10μlのGRAMMR反応液は、KClを50mMになるように補足した1×NEB大腸菌リガーゼ緩衝液中に、1単位のT4 DNAポリメラーゼ、2単位の大腸菌DNAリガーゼ、および0.5mMの各dNTPを含んだ。次に、CEL I(1/3、1/9、1/27、1/81、1/243、または1/729希釈したもの)を1μlずつ加えた。エンドヌクレアーゼを含まない対照反応液も調製した。各反応液に、アニールしたDNAヘテロ二重鎖基質20ngを含有する1μlの液を加え、その反応液を室温で1時間、氷上で30分間インキュベートした後、コンピテント大腸菌の形質転換に使用した。
【0233】
DNA解析を両方向から行ったところ、その配列データは、GRAMMR処理材料に由来するかなりの数のクローンが、両方の親移動タンパク質遺伝子配列に由来する情報を含有する再集合配列であることを示した。GRAMMR反応によって得た典型的アウトプットpGENEWARE−MPクローンの配列を以下にいくつか示す:TMV−Cg/ToMVクローン、図9、配列番号21、および図10、配列番号22;TMV−Ob/ToMVクローン、図11、配列番号22、および図12、配列番号24;TMV−U2/ToMVクローン、図13、配列番号25、および図14、配列番号26;ならびにTMV−U1/ToMVクローン、図15、配列番号27、および図16、配列番号28。
【0234】
(実施例16)
(選択可能マーカー内を切断するエンドヌクレアーゼを用いる線状化DNA基質でのGRAMMR)
この実施例では、選択可能マーカー遺伝子内を切断する制限エンドヌクレアーゼでDNA基質分子を直線化するGRAMMR反応を教示する。
【0235】
pBSWTGFP(配列番号31)によってコードされるpBS誘導体(Stratagene,カリフォルニア州ラホーヤ)中の野生型Aequorea victoria GFP遺伝子(Prasherら、Gene 111(92)229)と、大腸菌における蛍光強度を増大させると共に放射波長を青色光放射に変化させる突然変異を持つ改変体(Crameriら、Nat Biotechnol 14(96)315;Heimら、PNAS 91(94)12501;Yangら、J Biol Chem 273(98)8212)との間で、GRAMMRを行う。プラスミドpBSC3BFP(入れる番号32)がコードするこの改変体遺伝子は、長波長UV光によって励起されると明るい青色光を放射する蛍光タンパク質をコードしている。
【0236】
GRAMMR反応は、環状二本鎖プラスミドDNAを背景とするGFP/c3BFPヘテロ二重鎖で行う。この環状全プラスミドヘテロ二重鎖DNA基質は、まず、pBSWTGFP(配列番号31)およびpBSC3BFP(配列番号32)を、それぞれAhdIおよびBcgIによる消化で線状化し、次に、消化したDNAをDNAスピンカラムで精製することによって調製する。次に、それら2つの線状化プラスミドを200ngずつ混合し、体積20μlで1×SSPE(180nM NaCl、10mM NaHPO、1mM EDTA、pH7.4)にする。次に、その混合物を、95℃で4分間インキュベートし、氷水に浸けてその状態を10分間保ってから、37℃でインキュベートする。30分後に、アニールしたDNA試料を氷に戻し、GRAMMR反応で使用するまでそのままにしておく。
【0237】
GRAMMRによる配列再集合を促進する能力について、CEL IをRESIと比較するために、独立した2系列の再集合反応を行う。各反応を、まず、KClを50mMになるように補足した1×NEB大腸菌リガーゼ緩衝液中、5nmolの各dNTPの存在下で、1単位のT4 DNAポリメラーゼにより、室温で10分間処理する。次に、2単位の大腸菌DNAリガーゼを加える。次に、2つの酵素の連続希釈を個別に行う。上記のカクテルを分注した2系列のチューブのそれぞれに、GENEWARE(登録商標)によって発現させたCEL IまたはRES I抽出物を1μlずつ、1/3、1/9、1/27、1/81または1/243の希釈率で加える。エンドヌクレアーゼを含まない対照反応液も調製する。各反応液に、アニールしたDNAヘテロ二重鎖基質20ngを含有する1μlの液を加え、その反応液を室温で1時間、氷上で30分間インキュベートしてから、コンピテント大腸菌の形質転換に使用する。
【0238】
緑色蛍光タンパク質(GFP)および青色蛍光タンパク質(BFP)は、得られたコロニー中に、長波長UV照射によって可視化される。親野生型GFPは暗い緑色蛍光を放ち、親c3BFPは明るい青色蛍光を放つ。これらの蛍光タンパク質をコードしている遺伝子では、放射色を決定する配列と、蛍光強度を支配する配列とが、互いに異なる位置にある。
【0239】
DNA再集合は放射色を決定する配列と蛍光強度を支配する配列との「切り離し」をもたらすだろうと予想される。結果として、得られる子孫は、放射色および強度という機能的特性の再集合を示すと予想されるだろう。したがって、対応する平板上の細菌コロニーから生じる蛍光の色および強度を調べることによって、各反応で起こったDNAシャフリングの程度の尺度を採点することができる。
【0240】
(実施例17)
(選択可能マーカー内を切断するエンドヌクレアーゼを用いる線状化DNA基質でのGRAMMR)
この実施例では、選択可能マーカー遺伝子内で切断する制限エンドヌクレアーゼを使ってDNA基質を線状化するGARAMMR法を教示する。
【0241】
pBSWTGFP(配列番号3)によってコードされるpBS誘導体(Stratagene,カリフォルニア州ラホーヤ)中の野生型Aequorea victoria GFP遺伝子(Prasherら、Gene 111(92)229)と、大腸菌における蛍光強度を増大させると共に放射波長を青色光放射に変化させる突然変異を持つ改変体(Crameriら、Nat Biotechnol 14(96)315;Heimら、PNAS 91(94)12501;Yangら、J Biol Chem 273(98)8212)との間で、GRAMMR再集合を行う。プラスミドpBSC3BFP(配列番号17)がコードするこの改変体遺伝子は、長波長UV光によって励起されると明るい青色光を放射する蛍光タンパク質をコードしている。
【0242】
GRAMMR反応は、環状二本鎖プラスミドDNAを背景とするGFP/c3BFPヘテロ二重鎖で行う。この環状全プラスミドヘテロ二重鎖DNA基質は、まず、pBSWTGFP(配列番号3)およびpBSC3BFP(配列番号17)を、それぞれAhdIおよびBcgIによる消化で線状化し、次に、消化したDNAをDNAスピンカラムで精製することによって調製する。次に、それら2つの線状化プラスミドを200ngずつ混合し、体積20μlで1×SSPE(180nM NaCl、10mM NaHPO、1mM EDTA、pH7.4)にする。次に、その混合物を、95℃で4分間インキュベートし、氷水に浸けてその状態を10分間保ってから、37℃でインキュベートする。30分後に、アニールしたDNA試料を氷に戻し、GRAMMR反応で使用するまでそのままにしておく。
【0243】
GRAMMRによる配列再集合を促進する能力について、CEL IをRESIと比較するために、独立した2系列の再集合反応を行う。各反応液を、まず、KClを50mMになるように補足した1×NEB大腸菌リガーゼ緩衝液中、5nmolの各dNTPの存在下で、1単位のT4 DNAポリメラーゼにより、室温で10分間処理する。次に、2単位の大腸菌DNAリガーゼを加える。次に、2つの酵素の連続希釈を個別に行う。上記のカクテルを分注した2系列のチューブのそれぞれに、GENEWAREによって発現させたCEL IまたはRES I抽出物を1μlずつ、1/3、1/9、1/27、1/81または1/243の希釈率で加える。エンドヌクレアーゼを含まない対照反応液も調製する。各反応液に、アニールしたDNAヘテロ二重鎖基質20ngを含有する1μlの液を加え、その反応液を室温で1時間、氷上で30分間インキュベートしてから、コンピテント大腸菌の形質転換に使用する。
【0244】
緑色蛍光タンパク質(GFP)および青色蛍光タンパク質(BFP)は、得られたコロニー中に、長波長UV照射によって可視化される。親野生型GFPは暗い緑色蛍光を放ち、親c3BFPは明るい青色蛍光を放つ。これらの蛍光タンパク質をコードしている遺伝子では、放射色を決定する配列と、蛍光強度を支配する配列とが、互いに異なる位置にある。
【0245】
DNA再集合は放射色を決定する配列と蛍光強度を支配する配列との「切り離し」をもたらすだろうと予想される。結果として、得られる子孫は、放射色および強度という機能的特性の再集合を示すと予想されるだろう。したがって、対応する平板上の細菌コロニーから生じる蛍光の色および強度を調べることによって、各反応で起こったDNAシャフリングの程度の尺度を採点することができる。
【0246】
(実施例18)
(GRAMMR反応における他のヌクレアーゼの使用)
この実施例では、ミスマッチエンドヌクレアーゼ以外のヌクレアーゼを、DNAミスマッチ解消による遺伝子再集合に使用できることを教示する。
【0247】
pBSWTGFP(配列番号3)によってコードされるpBS誘導体(Stratagene,カリフォルニア州ラホーヤ)中の野生型Aequorea victoria GFP遺伝子(Prasherら、Gene 111(92)229)と、大腸菌における蛍光強度を増大させると共に放射波長を青色光放射に変化させる突然変異を持つ改変体(Crameriら、Nat Biotechnol 14(96)315;Heimら、PNAS 91(94)12501;Yangら、J Biol Chem 273(98)8212)との間で、GRAMMRシャフリングを行った。図5(配列番号17)に示すプラスミドpBSC3BFPによってコードされるこの改変体遺伝子は、長波長UV光によって励起されると明るい青色光を放射する蛍光タンパク質をコードしている。
【0248】
GRAMMR反応は、環状二本鎖プラスミドDNAを背景とするGFP/c3BFPヘテロ二重鎖で行った。この環状全プラスミドヘテロ二重鎖DNA基質は、まず、pBSWTGFP(配列番号3)およびpBSC3BFP(図5、配列番号17)を、それぞれKpn IおよびNgoM IVによる消化で線状化し、次に、消化したDNAをDNAスピンカラムで精製することによって調製した。次に、それら2つの線状化プラスミドを200ngずつ混合し、体積20μlで1×SSPE(180nM NaCl、10mM NaHPO、1mM EDTA、pH7.4)にした。次に、その混合物を、95℃で4分間インキュベートし、氷水に浸けてその状態を10分間保ってから、37℃でインキュベートした。30分後に、アニールしたDNA試料を氷に戻し、GRAMMR反応で使用するまでそのままにしておいた。
【0249】
非ミスマッチ特異的ヌクレアーゼがGRAMMRによる配列シャフリングを促進できるかどうかを決定するために、独立した数系列のシャフリング反応を行った。各GRAMMR反応液は、KClを50mMになるように補足した1×NEB大腸菌リガーゼ緩衝液中に、1単位のT4 DNAポリメラーゼ、2単位の大腸菌DNAリガーゼ、および5nmolの各dNTPを含んだ。次に、2つの酵素の連続希釈を個別に行った。上記のカクテルを分注した6系列のチューブのそれぞれに、Bal31(New England Biolabs)、DNアーゼI(Ambion)、マングビーンヌクレアーゼ(New England Biolabs)、RQ1 DNアーゼ(Promega)、S1ヌクレアーゼ(BRL)、またはファージT7エンドヌクレアーゼI(New England Biolabs)を含むさまざまなヌクレアーゼ(いずれも、大腸菌DNAリガーゼ緩衝液で希釈することにより、1μlあたり1単位になるように調節したもの)を1μlずつ、1/3、1/9、1/27、1/81または1/243の希釈率で加えた。TMVウイルスベクターによって発現されたCEL Iを使って、もう1系列の酵素希釈液も調製した。エンドヌクレアーゼを含まない対照反応液も調製した。各反応液に、アニールしたDNAヘテロ二重鎖基質20ngを含有する1μlの液を加え、その反応液を室温で1時間、氷上で30分間インキュベートした後、コンピテント大腸菌の形質転換に使用した。
【0250】
緑色蛍光タンパク質(GFP)および青色蛍光タンパク質(BFP)は、得られたコロニー中に、長波長UV照射によって可視化することができた。親野生型GFPは暗い緑色蛍光を持ち、親c3BFPは明るい青色蛍光を放つ。これらの蛍光タンパク質をコードしている遺伝子では、放射色を決定する配列と、蛍光強度を支配する配列とが、互いに異なる位置にある。DNAシャフリングは放射色を決定する配列と蛍光強度を支配する配列との「切り離し」をもたらすだろうと予想される。結果として、得られる子孫は、放射色および強度という機能的特性の再集合を示すと予想されるだろう。したがって、対応する平板上の細菌コロニーから生じる蛍光の色および強度を調べることによって、各反応で起こったDNAシャフリングの程度の尺度を採点することができた。
【0251】
ヌクレアーゼ非含有対照では、暗い緑色コロニーと明るい青色コロニーしか観察されなかった。ヌクレアーゼBal31、マングビーンヌクレアーゼ、S1ヌクレアーゼ、およびT7エンドヌクレアーゼIを含有する反応液でも、同じ観察結果だった。しかし、CEL I、DNアーゼI、またはRQ1 DNアーゼを含有する反応液から得られるDNAで形質転換した細胞を含む平板では、幾分明るい緑色コロニーと、幾分暗い青色コロニーが観察され、DNA配列のシャフリングが起こったことを示した。CEL I処理に対応する平板では、RQ1 DNアーゼ処理に相当する平板よりも明るい緑色コロニーが得られ、RQ1 DNアーゼ処理に相当する平板では、DNアーゼI処理で観察されるものよりも、数が多かった。しかし、T7エンドヌクレアーゼIを使って得られた陰性の結果は、その後、無視することにした。なぜなら、使用した酵素調製物は、検出可能なヌクレアーゼ活性を持たないことが、他の実験でわかったからである。
【0252】
(実施例19)
(RQ1 DNアーゼ、およびDNアーゼI活性の比較)
上記の結果の一部を再確認するために、もう一組の実験を行った。反応液は上述のように調製し、RQ1 DNアーゼ、DNアーゼI(1μlあたり1単位に希釈したもの)およびCEL Iを1/3、1/9、1/27、1/81、1/243、1/729、または1/2187に希釈し、それぞれ1μlを反応カクテルに加えてから、ヘテロ二重鎖DNAを加えた。エンドヌクレアーゼを含有しない対照反応液も調製した。
【0253】
結果は先の実施例で得たものと同様だった。各酵素系列について全部で約500個のコロニーを得た。CEL I系列では合計20個の明るい緑色コロニーが観察されたのに対して、RQ1 DNアーゼ処理に対応する平板には6個の明るい緑色コロニーが見つかった。DNアーゼI平板またはヌクレアーゼ非含有対照平板には、明るい緑色コロニーは観察されなかった。
【0254】
(実施例20)
(DNアーゼIおよびpol Iを用いる代替DNAシャフリング法)
この実験では、ヘテロ二重鎖DNAを非特異的エンドヌクレアーゼ(DNアーゼI)で処理するという、MooreらのWO02/24953に記載されている実験を再現する。次に、ヘテロ二重鎖DNAを、ヘテロ二重鎖DNA上でニックトランスレーションを行うニックトランスレーティングDNAポリメラーゼ(Pol I)と接触させることにより、DNAシャフリングの一形態を引き起こす。
【0255】
この実験ではGFP遺伝子とc3BFP遺伝子を使用した。環状二本鎖プラスミドDNAを背景とするGFP/c3BFP遺伝子間のヘテロ二重鎖を作製した。この環状全プラスミドヘテロ二重鎖DNA基質は、まず、pBSWTGFP(配列番号31)およびpBSC3BFP(図5、配列番号32)を、それぞれKpn IおよびNgoM IVによる消化で線状化し、次に、消化したDNAをDNAスピンカラムで精製することによって調製した。次に、それら2つの線状化プラスミドを、液量10μl中で、125ngずつ混合し、95℃で4分間インキュベートし、氷水に10分間浸けた。次に、1.1μlの10×SSPE(1800mM NaCl、100mM NaHPO、10mM EDTA、pH7.4)を加えてから、37℃でインキュベートした。30分後に、アニールしたDNAを氷に戻した。その試料を、2%低融点アガロースゲルに流し、ニックが入った環状ヘテロ二重鎖バンドをゲル単離し、DNAスピンカラムを使って精製した。
【0256】
以下の試薬を氷上で混合した:水5.4μl;10×NT緩衝液(0.5M Tris−HCl pH7.5;0.1M MgCl;10mMジチオスレイトール[DTT];0.5mg/mL BSA)1.0μl;Pol I(4単位)0.4μl、2mM dNTP 1.8μl、DNアーゼI(0.18単位、50%グリセロール、1×NT緩衝液中の10単位/μl原液から希釈したもの)0.4μl、およびヘテロ二重鎖DNA(20ng)1μl。DNアーゼIとPol Iの一方または両方を欠く対照反応も設定した。反応は全て14℃で15分間行い、0.5μlの500mM EDTAで停止させた。1μlの反応液を使ってコンピテント大腸菌を形質転換した。
【0257】
DNA配列解析を両方向から行った。その結果、DNアーゼIとPol Iを両方とも含有する反応液では、解析したクローンの44%が2つの親遺伝子のキメラであることがわかった。各クローンは交叉部位を1箇所だけ含んでいた。また、これらのキメラは全て、交叉部位の上流にあるc3BFP配列と、交叉部位の下流にある野生型GFP配列とから構成されていた。これらの著しい極性効果と、もっぱら一点交叉であるキメラとは、純粋にニックトランスレーションに基づくDNAシャフリングの機構から予測されるものと合致している。DNアーゼIを欠く対照反応では、解析したクローンの34%が2つの親遺伝子のキメラであり、DNアーゼI+Pol I反応で観察されたものと同じ極性効果を示した。Pol Iを欠く対照反応では、解析したクローンの17%が2つの親遺伝子のキメラだった。DNアーゼIとPol Iを両方とも欠く対照反応では、解析したクローンの10%が2つの親遺伝子のキメラだった。
【0258】
(実施例21)
(DNAミスマッチ解消反応による遺伝子再集合の粒状性を調節するための、さまざまな比率のDNAポリメラーゼとDNAリガーゼの使用)
この実験では、GRAMMR反応の一定成分の濃度を操作することにより、情報伝達部位の長さ(粒状性)を調節できることを教示する。
【0259】
伝達される配列情報のブロックが長いほど、粒状性は粗くなる。伝達される配列情報がのブロックが短いほど、粒状性は細かくなる。
【0260】
この実験ではGFP遺伝子とc3BFP遺伝子を使用した。実施例14で説明したように環状二本鎖プラスミドDNAを背景とするGFP/c3BFP遺伝子間のヘテロ二重鎖を作製した。GRAMMRにおけるDNAポリメラーゼとDNAリガーゼの相対濃度を変化させるマトリックス実験を行った。NEB大腸菌DNAポリメラーゼI(Pol I;CEL Iによるニックが入ると、校正後に、その部位からニックトランスレーションを行うことができる)およびNEB 大腸菌DNAリガーゼを使用した。これら2つの酵素を原液濃度から1×大腸菌リガーゼ緩衝液で希釈した。使用したPol Iの濃度は、0.01、0.1、1.0および5.0単位/μLである。使用した大腸菌DNAリガーゼの濃度は、0.0、0.02、0.2および2.0単位/μLである。マトリックスは全部で16の個別反応を含んだ。各反応液は、0.5mMの各dNTP、KClを50mMになるように補足した1×NEB大腸菌リガーゼ緩衝液、1μlの希釈大腸菌DNAリガーゼ、1μlの希釈Pol I、GENEWARE(登録商標)によって発現させたCEL I調節物1μl(タンパク質含量27ng)およびアニールしたDNAヘテロ二重鎖20ngを含んだ。反応液を室温で1時間インキュベートしてから、コンピテント大腸菌の形質転換に直接使用した。
【0261】
無作為に選択したいくつものクローンに対してDNA配列解析を両方向から行ったところ、粒状性の度合いと交叉頻度は、使用したPol IとDNAリガーゼの相対濃度に依存して、子孫クローン間でさまざまであることが、配列データからわかった。例えば、DNAリガーゼを使用せず、1.0単位のPol Iを使用した反応では、子孫クローンが大きい粒状性を示し、親クローン間の交叉は1点だけだった。0.2単位のDNAリガーゼと0.1単位のPol Iとを使用した反応では、粒状性は細かく、親クローン間に平均で約3点の交叉があった。2.0単位のDNAリガーゼと0.1単位のPol Iとを使用した反応では、粒状性は相対的にはるかに細かく、親クローン間に平均で約7点の交叉があった。
【0262】
この実験から、リガーゼ:Pol I比が高いほど粒状性は細かくなるという傾向が明らかになった。リガーゼの濃度がPol Iに対して低いと、Pol I酵素は、リガーゼによってニックが閉じられるまでの間に、より長い距離にわたってニックトランスレーションを行うことができるのだろう。しかし、リガーゼの濃度が増えるにつれて、ニック閉鎖の可能性が増大し、それがニックトランスレーション事象を早めに終了させ、したがって情報伝達部位の平均長を短くする傾向を持つことになる。
【0263】
(実施例22)
(GFPの、DNAミスマッチ解消による遺伝子再集合を使ったプラスミド−オン−プラスミドゾーン突然変異誘発(POP zmGRAMMR))
この実施例では、多重塩基対形成能を持つヌクレオチド類似体の存在下でGRAMMRを行うことにより、ミスマッチ残基またはそのすぐ近傍に、ランダムまたはセミランダム突然変異を組み込むことができるということを教示する。最終結果は、出発遺伝子間の不均質領域に集中した突然変異を持つ、シャッフルされた遺伝子の集団である。
【0264】
通常のGRAMMR法とは異なり、ゾーン突然変異誘発GRAMMRは、ヘテロ二重鎖中にヌクレオチド対ミスマッチを1つしか必要としない。ヘテロ二重鎖中の2つのポリ核酸間の相違を解消する代わりに、多様性を増加させている。ポリヌクレオチドの一方は完全長である必要はなく、1つの塩基がミスマッチしながらもハイブリダイズするのに十分な長さのオリゴヌクレオチドであることができる。これは所望のポリヌクレオチド鎖に対して部分的に相補的である。このようにして、特定のゾーンまたはその近傍にミスマッチを持つ完全長親鎖がなくても、合成オリゴまたはポリヌクレオチドを使って、その特定ゾーンに突然変異誘発を誘導することができる。
【0265】
ヘテロ二重鎖を形成する各鎖上の突然変異誘発ゾーンは、ミスマッチした塩基対と、両鎖上の上流および下流1〜約50ヌクレオチド以内の領域を含む。より好ましくは、突然変異誘発ゾーンは、ミスマッチした塩基対と、ミスマッチの両側の1〜約10ヌクレオチドを含む。
【0266】
ヌクレオチド類似体は、直ちに、またはそのヌクレオチド類似体を組み込んだポリヌクレオチド鎖または相補鎖の複製後に、同じ鎖または相補鎖に塩基変化を誘発する任意のヌクレオチド類似体または複数のヌクレオチド類似体の組合せであることができる。ヌクレオチド類似体は、どちらかの鎖に1ヌクレオチド以上の挿入または欠失を誘発してもよい。多数のヌクレオチド類似体が、それ自体は知られている。
【0267】
実施例14で説明したように、環状二本鎖プラスミドDNAを背景とするGFP/c3BFP遺伝子間のヘテロ二重鎖を作製した。リガーゼとポリメラーゼの比および類似体ヌクレオチドとdNTPの比がさまざまなであるようなzmGRAMMR反応液をいくつか設定した。これらのzmGRAMMR反応液は以下の成分を含有した:0.1単位のPol I DNAポリメラーゼ;2単位または10単位の大腸菌DNAリガーゼ:0または0.5mMの2’−デオキシ−P−ヌクレオシド−5’−三リン酸(dPTP);0または0.5mMの8−オキソ−2’−デオキシグアノシン−5’−三リン酸(8−オキソ−dGTP);0,5、25、50または500nMの各dNTP;およびKClを50mMになるように補足した1×NEB大腸菌リガーゼ緩衝液。Pol Iの代わりに1単位のT4 DNAポリメラーゼまたは5単位のクレノウポリメラーゼを使用する反応も設定した。次に、GENEWARE(登録商標)によって発現させたRES I調製物1μl(タンパク質量2ng)を加えた。エンドヌクレアーゼを含有しない対照反応も調製した。最後に、アニールしたDNAヘテロ二重鎖基質20ngを加え、完全になった反応液を25℃で1時間インキュベートした。zmGRAMMR処理したヘテロ二重鎖をカラム精製し、コンピテント大腸菌の形質転換に使用した。
【0268】
得られたコロニーをUV照射下で調べた。dNTPに対して高濃度のヌクレオチド類似体を使用したzmGRAMMR反応では、非蛍光コロニーの割合が高かったが、類似体なしで行った対照反応から得られるコロニーでは、非蛍光コロニーは、たとえあったとしてもごくわずかだった。クレノウポリメラーゼを含有する反応液からはごくわずかなコロニーが生じ、それらはすべて非蛍光性だった。無作為に拾ったいくつものクローンで行ったDNA配列から、ヌクレオチド類似体含有GRAMMR反応から得られるかなりの数のクローンが、GFP/c3BFP遺伝子間のミスマッチ部位またはそのごく近傍に集中している突然変異(すなわち両親とは無関係な反応)を含むことがわかった。dNTPに対するヌクレオチド類似体の比が高い反応ほど、突然変異を含有するクローンのパーセンテージが高くなった。クレノウを使ったzmGRAMMR反応はほとんどがうまくいかず、類似体を含まない対照反応でさえ、コロニーはほとんど回収されなかった。T4 DNAポリメラーゼを使ったzmGRAMMR反応によって得られるコロニーでは、Pol I含有反応から得られるものよりも、突然変異がミスマッチ部位に集中していた。これは予想どおりの結果だった。なぜなら、T4 DNAポリメラーゼはニックトランスレーションを行わないので、切り出されたミスマッチの部位か、そのごく近傍にしか類似体を組み込まないと予想されるからである。
【0269】
塩基類似体はGRAMMR反応中に組み込まれるので、これらの突然変異は反応途中のポリメラーゼの道に印を付ける働きをする。実施例18で教示したようにリガーゼとPol Iの比を変化させることにより、突然変異させる道の幅を操作することができる。
【0270】
(寄託情報)
バージニア州マナッサス、ユニバーシティ・ブルバード10801のAmerican Type Culture Collection(ATCC)に、3つの寄託がなされている。タバコモザイクウイルスの誘導体と、6HISタグが付加されたセロリ由来のCEL Iミスマッチエンドヌクレアーゼ遺伝子のcDNAとを含有するプラスミドDNAコンストラクトが寄託されている。このコンストラクトは、内部ではP1177MP4−CEL I 6HISと呼ばれ、ATCC番号PTA−3927(受託日2001年12月13日)を割り当てられている。タバコモザイクウイルスの誘導体と、セロリ由来のCEL IミスマッチエンドヌクレアーゼのcDNAとを含有するプラスミドDNAコンストラクトが寄託されている。このコンストラクトは、内部ではP1177MP4−CEL I Avrと呼ばれ、ATCC番号PTA−3926(受託日2001年12月13日)を割り当てられている。タバコモザイクウイルスの誘導体と、Selaginella lepidopylla由来の34kDaタンパク質をコードするcDNAインサートとを含有するプラスミドDNAコンストラクトが寄託されている。このcDNAインサートをRES I−6HISという。RES Iはミスマッチエンドヌクレアーゼ遺伝子である。このコンストラクトは内部ではpLSB−2225と呼ばれ、ATCC番号PTA−4562(受託日2002年7月30日)を割り当てられている。
【0271】
これらの寄託は、微生物の寄託に関するブダペスト条約の取り決めに基づいてなされたものであり、少なくとも30年間、および当該受託機関が当該寄託物の試料の分譲を求める最新の請求を受け取った後少なくとも5年間、または本願またはこれらの寄託物のいずれかに言及する以後の出願に対して発行された特許の有効期間のうち、最も長い期間にわたって維持される。各寄託物がこの期間中に生存不可能になった場合は補充されるだろう。
【0272】
上記各クローンについて出願人が使用する名称は、American Type Culture Collectionになされた上記寄託のための寄託物では短縮されていることに注意すべきである。すなわち、p1177MP4−CEL I Avr−B3をp1177MP4−CEL I Avrといい、p1177MP4−CEL I 6His−A9をp1177MP4−CEL I 6Hisという。クローンp1177MP4−CEL I Avr(配列番号1)は、ヌクレオチド5765から6655までのCEL Iオープンリーディングフレーム(配列番号3)を含有し、クローンp1177MP4−CEL I 6His−A9(配列番号2)は、ヌクレオチド5765から6679までのCEL Iオープンリーディングフレーム(配列番号4)を含んだ。
【0273】
【表1】

【0274】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0275】
【図1】図1は、ミスマッチ解消による遺伝子再集合(Genetic Reassortment by Mismatch Resolution:GRAMMR)のプロセスを表す。少なくとも2つのヌクレオチド位置で異なっている2つの仮想ポリヌクレオチド間で起こる再集合を考える。Aのトップ鎖とBのボトム鎖との間に起こるアニーリングを示す。これにより、2つの位置でミスマッチが生じる。再集合ミスマッチ解消プロセス後は、4つの異なる産物ポリヌクレオチド、すなわち親タイプAおよびBと、再集合産物XおよびYが認められる。
【図2】図2は、2分子の典型的な部分相補核酸集団を表す。図2Aは、完全に相補的なトップ/ボトム鎖(それぞれ1+/2−および3+/4−)を持つ2つの核酸分子「X」および「Y」の配列を表す。核酸XおよびY間の相違ヌクレオチドの位置を表示する()。図2Bは、変性およびアニーリング後の核酸XおよびYに由来する一本鎖の考えうる組合せを表し、それらの組合せのどれが、2成分の部分相補核酸集団を構成するかを示している。
【図3】図3は、実施例13に記載のRES Iエンドヌクレアーゼの核酸配列(配列番号16)を表す。
【図4】図4は、対応するRES Iのアミノ酸配列(配列番号34)を表す。
【図5】図5は、実施例14に記載のプラスミドpBSC3BFPの核酸配列(配列番号32)を表す。
【図6】図6は、実施例15に記載のTMV−Cgのトバモウイルス移動タンパク質オープンリーディングフレームの核酸配列(配列番号18)を表す。
【図7】図7は、実施例15に記載のTMV−Obのトバモウイルス移動タンパク質オープンリーディングフレームの核酸配列(配列番号19)を表す。
【図8】図8は、実施例15に記載のTMV−U2のトバモウイルス移動タンパク質オープンリーディングフレームの核酸配列(配列番号20)を表す。
【図9】図9は、実施例15に記載のTMV−CgおよびToMv GRAMMR反応によって得られるクローン(配列番号21)を表す。
【図10】図10は、実施例15に記載のTMV−CgおよびToMv GRAMMR反応によって得られるもう一つのクローン(配列番号22)を表す。
【図11】図11は、実施例15に記載のTMV−ObおよびToMv GRAMMR反応によって得られるクローン(配列番号23)を表す。
【図12】図12は、実施例15に記載のTMV−ObおよびToMv GRAMMR反応によって得られるもう一つのクローン(配列番号24)を表す。
【図13】図13は、実施例15に記載のTMV−U2およびToMv GRAMMR反応によって得られるクローン(配列番号25)を表す。
【図14】図14は、実施例15に記載のTMV−U2およびToMv GRAMMR反応によって得られるもう一つのクローン(配列番号26)を表す。
【図15】図15は、実施例15に記載のTMV−U1およびToMv GRAMMR反応によって得られるクローン(配列番号27)を表す。
【図16】図16は、実施例15に記載のTMV−U1およびToMv GRAMMR反応によって得られるもう一つのクローン(配列番号28)を表す。
【図17】図17は、実施例15に記載のTMVのトバモウイルス移動タンパク質オープンリーディングフレームの核酸配列(配列番号9)を表す。
【図18】図18は、実施例15に記載のToMVのトバモウイルス移動タンパク質オープンリーディングフレームの核酸配列(配列番号10)を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの親ポリヌクレオチドに由来する異なるヌクレオチド配列を有する改変体ポリヌクレチドを作製する方法であって、該方法は、以下:
少なくとも該2つの親ポリヌクレオチド間で少なくとも1つのヘテロ二重鎖を調製する工程、
該ヘテロ二重鎖中の少なくとも一方のポリヌクレオチド鎖をミスマッチ部位で切断して切断部位を形成させる工程、
該切断部位またはその近傍で少なくとも一方のポリヌクレオチド鎖上の少なくとも1つのヌクレオチドを置換する工程、
を包含し、該ポリヌクレオチド鎖の少なくとも一方が、該少なくとも2つの親ポリヌクレオチドのどちらとも異なるヌクレオチド配列を有する方法。
【請求項2】
ヘテロ二重鎖を形成する前記ポリヌクレオチドが環状である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記調製工程がインビトロで行われ、かつ前記切断工程および前記置換工程がインビボで行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ヘテロ二重鎖ポリヌクレオチド配列が遺伝子を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ヘテロ二重鎖ポリヌクレオチド配列がゲノムである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ヘテロ二重鎖ポリヌクレオチド配列が、約100bpを超えるポリヌクレオチド分子内の一領域である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも3つの親ポリヌクレオチドを使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
複数の改変体ポリヌクレオチドが形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
所望の機能的特性をコードするポリヌクレオチド配列を取得する方法であって、該方法は、以下:
少なくとも2つの親ポリヌクレオチドから少なくとも1つのヘテロ二重鎖を作製する工程、
該ヘテロ二重鎖中の少なくとも一方のポリヌクレオチド鎖をミスマッチ部位で切断して切断部位を形成させる工程、
該切断部位またはその近傍で少なくとも一方のポリヌクレオチド鎖上の少なくとも1つのヌクレオチドを置換して、該少なくとも2つの親ポリヌクレオチドのどちらとも異なるポリヌヌクレオチド配列を有する複数の改変体ポリヌクレオチド鎖を形成させる工程、
該所望の機能的特性に関して、改変体の集団を選別または選択する工程、
を包含する方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、該方法は、以下:
少なくとも一つの改変体ポリヌクレオチド鎖を含む第2ヘテロ二重鎖を形成させる工程、
該第2ヘテロ二重鎖中の少なくとも一方のポリヌクレオチド鎖をミスマッチ部位で切断して切断部位を形成させる工程、
該切断部位またはその近傍で少なくとも一方のポリヌクレオチド鎖上の少なくとも1つのヌクレオチドを置換して、該第2ヘテロ二重鎖中に存在するどちらの親ポリヌクレオチドとも異なるヌクレオチド配列を有する複数の改変体ポリヌクレオチド鎖を形成させる工程、および
該所望の機能的特性に関して、改変体の集団を選別または選択する工程、
を、さらに包含する方法。
【請求項11】
前記選別または選択の工程に先立って前記改変体ポリヌクレオチドをRNAに変換する工程をさらに包含する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記改変体ポリヌクレオチドまたはそこから転写されたRNAを翻訳してポリペプチドを産生させる工程をさらに包含し、前記選別または選択の工程が前記ポリペプチドに対して行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
所望の機能的特性を有する再集合DNA分子を同定する方法であって、該方法は、以下:
a)少なくとも1つの一本鎖修飾ポリヌクレオチドであって、該一本鎖修飾ポリヌクレオチドまたはその相補鎖が該所望の特性を有するかまたは該所望の特性をコードし、該修飾ポリヌクレオチドはハイブリダイゼーション可能であるが増幅不可能である、少なくとも1つの一本鎖修飾ポリヌクレオチドを提供する工程、b)該一本鎖修飾ポリヌクレオチドにハイブリダイズ可能な1つまたは複数の非同一一本鎖DNA分子であって、該DNA分子が少なくとも1つのさらなる改変体を有するかまたはコードする、1つまたは複数の非同一一本鎖DNA分子を用意する工程、
該一本鎖修飾ポリヌクレオチドを、工程(b)の少なくとも1つの一本鎖DNA分子と接触させ、それにより、アニールしたDNA分子を生成させる工程、
該アニールしたDNA分子を、ミスマッチエンドヌクレアーゼ、校正酵素およびリガーゼと共にインキュベートし、それにより、該一本鎖修飾ポリヌクレオチドにアニールした組換えDNA鎖を生成させる工程、および
該所望の機能的特性をコードするDNA分子を同定するために、再集合DNA分子の集団を選別または選択し、それにより、該所望の機能的特性を有するポリペプチドをコードする1つまたは複数のDNA分子を同定する工程、
を包含する方法。
【請求項14】
前記修飾ポリヌクレオチドが増幅されない条件下で前記再集合DNA鎖を増幅することにより、前記選別または選択の工程に先立って、再集合DNA分子の集団を調製する工程をさらに包含する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記修飾ポリヌクレオチドがウラシルを含有する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
所望の機能的特性を有する組換えDNA分子を同定する方法であって、該方法は、以下:
少なくとも、
a.少なくとも1つの一本鎖修飾ポリヌクレオチドであって、該一本鎖修飾ポリヌクレオチドまたはその相補鎖が、該修飾ポリヌクレオチドはハイブリダイゼーション可能であるが増幅不可能である、少なくとも1つの一本鎖修飾ポリヌクレオチドと、
b.該一本鎖修飾ポリヌクレオチドにハイブリダイズ可能な少なくとも1つの非同一一本鎖DNAであって、該DNA分子が少なくとも1つのさらなる改変体を有するかまたはコードしている、少なくとも1つの非同一一本鎖DNAと
の間に、アニールした二本鎖分子を形成させる工程、
該アニールした二本鎖分子の少なくともDNA鎖を切断して切断部位を形成させる工程、および
該切断部位またはその近傍でヌクレオチドを置換し、それにより、該修飾ポリヌクレオチドにアニールした組換えDNA鎖を生成させる工程であって、該組換えDNA鎖は、該アニールした二本鎖分子のどちらのポリヌクレオチドとも異なるヌクレオチド配列を有する工程、および
該所望の機能的特性を有するかまたはコードしている組換えDNA分子を同定するために、組換えDNA分子の集団を選別または選択し、それにより、該所望の機能的特性を有するかまたはコードしている1以上のDNA分子を同定する工程、
を包含する方法。
【請求項17】
前記修飾DNA分子が増幅されない条件下で組換えDNA鎖を増幅することにより、前記選別または選択の工程に先立って、組換えDNA分子の集団を生成する工程をさらに包含する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記切断工程がミスマッチ部位で起こる、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記修飾ポリヌクレオチドがウラシルを含有する、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1つのヘテロ二重鎖ポリヌクレオチドからインビトロで配列改変体を作製する方法のための組成物であって、該ヘテロ二重鎖は少なくとも2つの非相補的ヌクレオチド塩基対を有し、該組成物は、有効量の、エキソヌクレアーゼ活性、ポリメラーゼ活性およびミスマッチ鎖切断活性を有する1つまたは複数の作用因子を含む組成物。
【請求項21】
リガーゼ活性をさらに含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
少なくとも1つのヘテロ二重鎖ポリヌクレオチドからインビトロで配列改変体を作製する方法のための組成物であって、該ヘテロ二重鎖は少なくとも2つの非相補的ヌクレオチド塩基対を有し、該組成物は、有効量の、3’→5’校正エキソヌクレアーゼ活性、ポリメラーゼ活性および鎖切断活性を有する1つまたは複数の作用因子を含む組成物。
【請求項23】
リガーゼ活性をさらに含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
少なくとも1つのヘテロ二重鎖ポリヌクレオチドからインビトロで配列改変体を作製するために使用されるキットであって、該ヘテロ二重鎖は少なくとも2つの非相補的ヌクレオチド塩基対を有し、該キットは、有効量の、エキソヌクレアーゼ活性、ポリメラーゼ活性および鎖切断活性を有する1つまたは複数の作用因子を含有する複数の容器を含むキット。
【請求項25】
リガーゼ活性を有する1つまたは複数の作用因子をさらに含む、請求項24に記載のキット。
【請求項26】
少なくとも2つの非相補的ヌクレオチド塩基対と、該2つの非相補的ヌクレオチド塩基対の少なくとも1つに位置するニックとを有する、ニックが入った環状ヘテロ二重鎖。
【請求項27】
ニックが、前記少なくとも2つの非相補的ヌクレオチド塩基対の少なくとも2つに位置する、請求項26に記載のニックが入った環状ヘテロ二重鎖。
【請求項28】
ヘテロ二重鎖内で解消されるポリ核酸配列の長さを変化させる方法であって、該方法は、以下:
a.少なくとも1つのヘテロ二重鎖ポリヌクレオチドを調製する工程、
b.該ヘテロ二重鎖ポリヌクレオチドを、有効量の、少なくともエキソヌクレアーゼ活性、ポリメラーゼ活性、リガーゼ活性および鎖切断活性を有する1つまたは複数の作用因子と混合する工程、および
c.該ヘテロ二重鎖ポリヌクレオチドの鎖間の相補率が増加するのに十分な時間待つ工程、
を包含し、該ヘテロ二重鎖のポリヌクレオチド鎖間で所望の長さの解消が得られるように、リガーゼ活性に対するポリメラーゼ活性の比を変化させる方法。
【請求項29】
前記鎖切断活性がミスマッチ鎖切断活性である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
所望のポリヌクレオチド内の特定ヌクレオチドを囲むゾーンで突然変異を生成させる方法であって、該方法は、以下:
a.該所望のポリヌクレオチドを囲む該ゾーン内に少なくとも1つの非相補的ヌクレオチドを有する少なくとも1つの部分相補ポリヌクレオチドを調製する工程、
b.該所望のポリヌクレオチドと該部分相補ポリヌクレオチドとの間に少なくとも1つのヘテロ二重鎖を形成させる工程、
c.該ヘテロ二重鎖を少なくとも1つのヌクレオチド類似体、有効量の、エキソヌクレアーゼ活性、ポリメラーゼ活性およびミスマッチ鎖切断活性を有する1つまたは複数の作用因子と混合する工程、および
d.核酸類似体が該所望のポリヌクレオチドもしくは該部分相補ポリヌクレオチドまたはその両方に組み込まれるのに十分な時間待つ工程、
を包含する方法。
【請求項31】
リガーゼ活性を有する工程をさらに包含する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
請求項1、13、18、20または29に記載の方法によって製造される非天然改変体ポリヌクレオチド。
【請求項33】
所望の機能的特性を有する、請求項32に記載の非天然改変体ポリヌクレオチド。
【請求項34】
請求項13、18または20に記載の方法によって製造される、所望の機能的特性を有する非天然改変体ポリペプチド。
【請求項35】
前記所望の機能的特性が、親ポリヌクレオチドがコードしているポリペプチドの対応する所望の機能的特性とは異なっている、請求項34に記載の非天然ポリペプチド。
【請求項36】
請求項30の方法によって製造される非天然突然変異型ポリヌクレオチド。
【請求項37】
前記突然変異が前記ヘテロ二重鎖中のミスマッチに存在するか、またはその30ヌクレオチド以内に存在する、請求項36に記載の非天然突然変異型ポリヌクレオチド。
【請求項38】
第1ヌクレオチド配列および第2ヌクレオチド配列である少なくとも2つの部分を含み、
該第1ヌクレオチド配列は、第1天然ポリヌクレオチドの一部に対して同一または相補的であり、かつ第2天然ポリヌクレオチドの対応する部分に対しては同一でも相補的でもなく、
該第2ヌクレオチド配列は、第2天然ポリヌクレオチドの一部に対して同一または相補的であり、かつ第1天然ポリヌクレオチドの対応する部分に対しては同一でも相補的でもない、
非天然改変体ポリヌクレオチド。
【請求項39】
第3ヌクレオチド配列をさらに含み、該第3ヌクレオチド配列は、第3天然ポリヌクレオチドの一部に対して同一または相補的であり、かつ前記第1天然配列または前記第2天然配列の対応する部分に対しては同一でも相補的でもない、請求項38に記載の非天然改変体ポリヌクレオチド。
【請求項40】
第1ペプチド配列および第2ペプチド配列である少なくとも2つの部分を含み、
該第1ペプチド配列が、第1天然ポリペプチドの一部に対して同一または相補的であり、かつ第2天然ポリペプチドの対応する部分に対しては同一でも相補的でもなく、
該第2ペプチド配列は、第2天然ポリペプチドの一部に対して同一または相補的であり、かつ第1天然ポリペプチドの対応する部分に対しては同一でも相補的でもない、
非天然改変体ポリペプチド。
【請求項41】
第3ペプチド配列をさらに含み、該第3ペプチド配列は、第3天然ポリペプチドの一部に対して同一または相補的であり、かつ前記第1天然配列または前記第2天然配列の対応する部分に対しては同一でも相補的でもない、請求項40に記載の非天然改変体ポリペプチド。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2007−529991(P2007−529991A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504649(P2005−504649)
【出願日】平成15年10月24日(2003.10.24)
【国際出願番号】PCT/US2003/033742
【国際公開番号】WO2005/010212
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(502027868)ラージ スケール バイオロジー コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】