説明

ポリフェニレンスルフィド繊維及びアクリル繊維を含むバグフィルター

本発明は、管状セクションと、1つのクローズドエンドと、1つのオープンエンドとを有するバグフィルターであって、前記管状セクションが、フェルト中のポリフェニレンスルフィド繊維およびアクリル繊維の総重量を基準として、50〜80重量部のポリフェニレンスルフィド繊維と20〜50重量部のアクリル繊維との均質繊維ブレンドを含む不織フェルトを有し、アクリル繊維がポリフェニレンスルフィド繊維に等しいかまたはそれより低いフィラメント当たりのデニールを有するバグフィルターに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、向上した濾過性能を有するバグフィルターに関する。かかるバグフィルターは、熱ガス、例えば150℃またはさらにより高い温度のガスを濾過するのに特に有用である。一実施形態では、本バグフィルターは、排出基準を満たすために発電所で特に有用である。
【背景技術】
【0002】
例えば、Chapmanに付与された欧州特許出願第386 975号明細書に開示されている、熱ガス濾過用のポリフェニレンスルフィド・バグフィルターは公知であり、アスファルトプラント、石炭プラント、および他の工業関連からの粒子状物質から環境を保護するために使用されている。かかるプラントからの高い潜在的環境影響のために、バグフィルターの単位重量当たりの粒子状物質の捕捉を向上させる可能性を有するいかなる改善も望まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、管状セクションと、1つのクローズドエンドと、1つのオープンエンドとを有するバグフィルターであって、管状セクションが、フェルト中のポリフェニレンスルフィド繊維およびアクリル繊維の総重量を基準として、50〜80重量部のポリフェニレンスルフィド繊維と20〜50重量部のアクリル繊維との均質繊維ブレンドを含む不織フェルトを有し、アクリル繊維がポリフェニレンスルフィド繊維に等しいかまたはそれより低いフィラメント当たりのデニールを有するバグフィルターに関する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1】図は、本発明のバグフィルターの一実施形態を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明は、50〜80重量部のポリフェニレンスルフィド繊維と20〜50重量部のアクリル繊維との均質繊維ブレンドから製造されたバグフィルターであって、アクリル繊維がポリフェニレンスルフィド繊維に等しいかまたはそれより低いフィラメント当たりのデニールを有するバグフィルターに関する。驚くべきことに本発明者らは、熱ガス環境での使用に好適ではないと一般に考えられている特定のアクリル繊維が、バグフィルターの濾過性能を向上させ得ることを見いだした。アクリル繊維はバグフィルターにおいてポリフェニレンスルフィド繊維と連携してフィルターバッグ機械的特性に悪影響を及ぼすことなくより多くの微粒子を保持すると考えられる。
【0006】
図は、本発明のフィルターバッグの一実施形態を例示する。フィルターバッグ1は、クローズドエンド2、オープンエンド3、および管状セクション4を有する。示される実施形態で、フィルターバッグはまた、バッグのオープンエンドに取り付けられたバネ鋼金属止め輪5を有する。このバッグの管状セクション4は、重なり合い、三重縫合7で縫い付けられた継ぎ目6を形成する濾過フェルトからなる。本実施形態でのバッグのクローズドエンドはまた、管状セクションのために使用されたフェルトの端に8で縫い合わされている濾過フェルトからなる。図は好ましい実施形態を表すが、Wittemeierらに付与された米国特許第3,524,304号明細書、Hixenbaughに付与された同第4,056,374号明細書、Petersonに付与された同第4,310,336号明細書、Reierに付与された同第4,481,022号明細書、Tafaraに付与された同第4,490,253号明細書、および/またはTafaraに付与された同第4,585,833号明細書に開示されているものなどの、バグフィルターの他の潜在的な構成、向き、および特徴が用いられてもよい。
【0007】
幾つかの実施形態では、図に示されるような、フィルターバッグのクローズドエンド2は、管状セクションに縫い付けられたフィルター材料のディスクである。幾つかの他の実施形態では、クローズドエンドは、ある他の材料で作製されることができ、例えば幾つかの状況では金属クローズドエンドが必要とされるかもしれない。他の実施形態では、クローズドエンドは、縫い付け以外のある他の方法で超音波によって、接着剤によって、または熱で継ぎ合わせるかまたはシールすることができる。別の実施形態では、バッグの管状セクションに使用されるフェルトは、クローズドエンドを形成するために、一緒に寄せ集められるかまたは折り重ねられ、次にシールされることができる。
【0008】
幾つかの実施形態では、バッグのオープンエンド3は、バッグをセル板に取り付けるためのハードウェアを備えてもよい。幾つかの他の実施形態では、バッグのオープンエンドを、特別に設計されたセル板上にバッグを滑らせることによって滑合が成し遂げられるように寸法決めしてもよい。
【0009】
本発明の幾つかの実施形態では、管状セクション4におよび場合によりクローズドエンド2に使用される濾過材は不織布またはフェルトである。不織布またはフェルトは、エアレイド不織布、ウェット−レイド不織布、またはカード装置で製造される不織布の製造方法をはじめとする、従来の不織シート形成方法によって製造することができ、かかる形成シートは、スパンレーシング、ハイドロレーシング、ニードルパンチング、または不織シートを製造することができる他の方法によって布へ統合することができる。米国特許第3,508,308号明細書および同第3,797,074号明細書に開示されているスパンレース法ならびに米国特許第2,910,763号明細書および同第3,684,284号明細書に開示されているニードルパンチング法は、不織布およびフェルトの製造に有用である当該技術分野で周知の従来法の例である。
【0010】
幾つかの好ましい実施形態では、不織フェルトはニードルパンチフェルトである。幾つかの他の好ましい実施形態では、不織フェルトはスパンレースフェルトである。フェルトの坪量は典型的には平方ヤード当たり約8〜16オンス、好ましい実施形態では平方ヤード当たり12〜14オンスである。
【0011】
幾つかの実施形態では、本発明のフィルターバッグの、場合によりクローズドエンド2における管状セクション4は、濾過材の単層である。幾つかの他の実施形態では、管状セクションは、バッグの脈動中に安定性を与えるスクリムまたは強化クロスによって支持された濾過材で作製される。幾つかの好ましい実施形態では、不織フェルトは、フェルト中のステープルファイバーと相溶性である繊維で製造されている、支持スクリム織物を含む。このタイプのフェルトは、平方ヤード当たり約4〜8オンス(平方メートル当たり135〜270グラム)、好ましくは平方ヤード当たり約6オンス(平方メートル当たり200グラム)の坪量を有するクロスラップされたバットへステープルファイバーを変換するための標準カードおよびクロスラップ装置を用いて製造することができる。必要ならば、このバットは次に、例えば、標準ニードルパンチ機で結び付けるかまたは軽く統合することができる。これらのバットの2つ以上を次に、平方ヤード当たり約1〜4オンス(平方メートル当たり34〜135グラム)、好ましくは平方ヤード当たり約2オンス(平方メートル当たり70グラム)の坪量を有するスクリム織物の両側に配置し、3層が両側で数回ニードルパンチされて濾過フェルトが製造される。幾つかの好ましい実施形態では、スクリム織物はポリフェニレンスルフィド繊維、メタ−アラミド繊維、またはそれらの混合物を含む。
【0012】
図に示される好ましい実施形態では、濾過材は重ね合わせられて継ぎ目6を有するフィルター材のシリンダーを形成し、それは次に、アラミド繊維、フルオロポリマー繊維、ガラス繊維、またはそれらの組み合わせもしくはブレンドの3〜6のストランド層を有する糸などの、高温糸で縫い合わせられる。他の実施形態では、重ね合わせられた継ぎ目は、超音波、接着剤、熱、または全てのこれらの縫合方法のある組み合わせによってシールすることができる。
【0013】
本発明のバグフィルターの一特徴は、それがフェルト中のポリフェニレンスルフィド繊維およびアクリル繊維の総重量を基準として、50〜80重量部のポリフェニレンスルフィド繊維と20〜50重量部のアクリル繊維との均質繊維ブレンドを含む不織フェルトを含むことである。好ましい実施形態では、均質繊維ブレンドは65〜75重量部のポリフェニレンスルフィド繊維を含む。別の好ましい実施形態では、均質繊維は25〜35重量部のアクリル繊維を含む。繊維は、ポリフェニレンスルフィド繊維およびアクリル繊維がフェルト中に一様に混合され分配されていることを意味する、均質ブレンドとしてフェルト中に処理されている。これは、フェルトの任意の1つの部分に高濃度のアクリル繊維を有することによって引き起こされるホットスポットまたは局部的区域を回避するためにフェルトにおいて一様な混合物を形成する。
【0014】
均質繊維ブレンドは従来法によって形成することができる。例えば、一実施形態では、繊維のベールから得られるクリンプしたステープルファイバーの塊は、より一様な混合物を形成するために、ピッカーなどの装置によって開繊し、次に空気搬送などの、任意の利用可能な方法によってブレンドすることができる。代わりの実施形態では、繊維は、ピッカーでの繊維開繊前に一様な混合物を形成するためにブレンドすることができる。さらに別の可能な実施形態では、繊維はカッターブレンドされてもよい、すなわち、様々な繊維タイプのトウを組み合わせ、次にステープルへカットすることができる。繊維のブレンドは次に、前に述べられたような従来法を用いて不織布またはフェルトへ変換することができる。一般にこれは、繊維のエア−レイングまたはウェット−レイングなどの、他の方法が用いられてもよいが、カード機などの装置を用いて繊維ウェブを形成することを含む。必要ならば、繊維ウェブは次に、ジグザグ構造で互いのトップ上に個々のウェブを層状にすることによってクロスラップした構造を生み出すためにクロスラッパーなどの装置にコンベヤによって送ることができる。
【0015】
本発明のバグフィルターの別の特徴は、アクリル繊維がフェルトでの粒子保持率を高めそしてバグフィルター性能を向上させるためにポリフェニレンスルフィド繊維に等しいかまたはそれより低いフィラメント当たりのデニール、すなわちフィラメント当たりの線密度を有することである。幾つかの実施形態では、ポリフェニレンスルフィド繊維はフィラメント当たり約1.5〜3デニール(フィラメント当たり1.7〜3.3デシテックス)の線密度を有し、アクリル繊維はフィラメント当たり約0.5〜3デニール(フィラメント当たり0.6〜3.3デシテックス)の線密度を有する。好ましい一実施形態では、ポリフェニレンスルフィド繊維の線密度はフィラメント当たり1.8デニール(フィラメント当たり2.0デシテックス)より大きく、フィラメント当たり約2.2デニール(フィラメント当たり2.4デシテックス)以下であり、アクリル繊維はフィラメント当たり約0.9デニール(フィラメント当たり1.0デシテックス)からフィラメント当たり1.8デニール(フィラメント当たり2.0デシテックス)以下の線密度を有する。本発明に使用される繊維は好ましくは、約1.5〜3インチ(38〜76mm)のカット長を有し、クリンプし、インチ当たり約4〜10クリンプ(センチメートル当たり1.5〜4クリンプ)のクリンプ頻度を有する。
【0016】
アクリルポリマーは、等しいデニールを有する繊維について、アクリル繊維のフィラメント直径がポリフェニレンスルフィド繊維のフィラメント直径より大きく、そしてアクリル繊維の単位重量当たりの表面積がポリフェニレンスルフィド繊維より大きいことを意味する、ポリフェニレンスルフィドポリマー(約1.34〜1.38)より低い比重(約1.16)を有する。それ故、同じフィラメントデニールを有するアクリル繊維およびポリフェニレンスルフィド繊維のフェルトから製造されたバグフィルターが同じフィラメントデニールのポリフェニレンスルフィド繊維のみのフェルトからのバグフィルターと比較されるとき、バッグは同一の単位重量を有するが、アクリル/ポリフェニレンスルフィド・バグフィルターは粒子を捕捉することができるより多くの繊維表面積を有するであろう。アクリル繊維がポリフェニレンスルフィド繊維より低いフィラメントデニールを有するとき、単位重量当たりより多くのアクリル繊維をバグフィルターへ組み入れることができ、再び、フィラメントの数の増加による表面被覆率の向上のために濾過性能の向上をもたらす。一方、アクリル繊維のフィラメントデニールがポリフェニレンスルフィド繊維のフィラメントデニールよりかなり大きい場合、アクリル繊維はより高い表面積を有するが、単位重量当たりを基準として、より少ないアクリル繊維が使用されなければならず、より不満足な濾過効率を有すると考えられるバグフィルターをもたらす。
【0017】
本発明に有用なアクリル繊維は、全アクリル繊維の少なくとも85重量%であるアクリロニトリル単位を含む。アクリロニトリル単位は−(CH2−CHCN)−である。アクリル繊維は、アクリロニトリルと共重合性の15重量%以下のエチレン系モノマーと共に85重量%以上のアクリロニトリルで構成されるアクリルポリマーおよびこれらのアクリルポリマーの2つ以上の混合物から製造することができる。アクリロニトリルと共重合性のエチレン系モノマーの例には、アクリル酸、メタクリル酸およびそれらのエステル(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなど)、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリルアミド、メタクリルアミド、メタクリロニトリル、アリルスルホン酸、メタンスルホン酸およびスチレンスルホン酸が挙げられる。アクリルポリマーおよび繊維の例示的な一製造方法は、米国特許第3,047,455号明細書に開示されている。アクリル繊維は、Solutia社およびBayer社をはじめとする多数の会社によって商業的に製造されてきたし、特に好ましい一アクリル繊維は、フロリダ州PaceのSterling Fibers社から商業的に入手可能である。
【0018】
本発明に有用なポリフェニレンスルフィド繊維は、良好な耐熱性、耐化学薬品性および耐加水分解性を有し、繊維の成分単位の少なくとも90%は、−(C64−S)−のフェニレンスルフィド構造単位を有するポリマーのものである。ポリフェニレンスルフィド繊維は、東レ株式会社、呉羽化学工業株式会社(現株式会社クレハ)、および東洋紡績株式会社などの会社によってToray PPS(登録商標)、Forton(登録商標)、Ryton(登録商標)およびProcon(登録商標)などの商品名で販売されている。
【0019】
試験方法
フィルターバグの濾過効率はASTM(米国材料試験協会)D6830を用いて測定可能であり、ミューレン破裂はASTM D461を用いて測定可能であり、そして破壊強度および伸び率はASTM D5035を用いて測定可能である。
【実施例】
【0020】
実施例1
67重量部の2インチ(50mm)カット長を有する、フィラメント当たり2デニール(フィラメント当たり2.2デシテックス)ポリフェニレンスルフィド繊維および33重量部のSterling Fibers社から入手可能な2インチ(50mm)カット長を有する、フィラメント当たり0.9デニール(フィラメント当たり1.0デシテックス)アクリル繊維を含有する均質繊維ブレンドが、ベールからのステープルファイバーを組み合わせ、そして混合することによって製造される。標準カードおよびクロスラップ装置を用いて、これらの繊維を平方ヤード当たりおおよそ6オンス(平方メートル当たり200グラム)の坪量を有するクロスラップしたバットへ変換し、それを次に標準ニードルパンチ機で結び付けるかまたは軽く統合する。これらのバットの2つを、平方ヤード当たりおおよそ2オンス(平方メートル当たり70グラム)の坪量を有する、そして全体がポリフェニレンスルフィド紡績糸からなるスクリム織物の両側に配置し、3つの層を両側で数回ニードルパンチして公称平方ヤード当たり14オンス(平方メートル当たり475グラム)濾過フェルトを製造する。次にフェルトを、7インチ(18cm)ダブルフラット幅および5インチ(13cm)止め輪トップを有する、おおよそ120インチ(305cm)長さであるフィルターバッグへ二次加工することができる。バッグは継ぎ目に三重縫合を有することもできる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状セクションと、1つのクローズドエンドと、1つのオープンエンドとを有するバグフィルターであって、前記管状セクションが、フェルト中のポリフェニレンスルフィド繊維およびアクリル繊維の総重量を基準として、
a)50〜80重量部のポリフェニレンスルフィド繊維と、
b)20〜50重量部のアクリル繊維と
の均質繊維ブレンドを含む不織フェルトを有し、
前記アクリル繊維が前記ポリフェニレンスルフィド繊維に等しいかまたはそれより低いフィラメント当たりのデニールを有するバグフィルター。
【請求項2】
65〜75重量部のポリフェニレンスルフィド繊維を含む請求項1に記載のバグフィルター。
【請求項3】
25〜35重量部のアクリル繊維を含む請求項1に記載のバグフィルター。
【請求項4】
前記不織フェルトがニードルパンチフェルトである請求項1に記載のバグフィルター。
【請求項5】
前記不織フェルトがスパンレースフェルトである請求項1に記載のバグフィルター。
【請求項6】
前記ポリフェニレンスルフィド繊維のフィラメント当たりのデニールが1.5〜3.0である請求項1に記載のバグフィルター。
【請求項7】
前記アクリル繊維のフィラメント当たりのデニールが0.5〜3である請求項1に記載のバグフィルター。
【請求項8】
前記クローズドエンドが同様に前記均質繊維ブレンドを含む請求項1に記載のバグフィルター。
【請求項9】
前記フェルトの坪量が平方ヤード当たり8〜16オンスである請求項1に記載のバグフィルター。
【請求項10】
前記フェルトの坪量が平方ヤード当たり12〜14オンスである請求項9に記載のバグフィルター。
【請求項11】
少なくとも150℃の温度に加熱されたガスを、請求項1に記載のバグフィルターに通過させる工程を含む熱ガスの濾過方法。

【公表番号】特表2010−503525(P2010−503525A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−528274(P2009−528274)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/019827
【国際公開番号】WO2008/033405
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】