説明

ポリフェノール含有植物材料の修飾方法および修飾型ポリフェノール含有植物材料の医療向け使用

本発明は、1つまたは複数のポリフェノール含有植物材料を修飾するための方法であって、少なくとも1つのポリフェノール含有材料と少なくとも1つの溶媒を混合して混合物を提供するステップと;混合物を加熱して、存在する細菌種を除去し、加熱混合物を提供するステップと;少なくとも1つのポリフェノール修飾用乳酸菌菌株および任意には少なくとも1つのタンパク質源を、加熱混合物に対し任意の順序でまたは同時に添加して発酵混合物を提供するステップと;発酵混合物の発酵に適した条件に発酵混合物を付して1つまたは複数の修飾型ポリフェノール含有植物材料の混合物を提供するステップと;ポリフェノール修飾用乳酸菌菌株を任意に除去して、生菌乳酸菌を含まない1つまたは複数の修飾型ポリフェノール含有植物材料の混合物を提供するステップとを含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、1つまたは複数のポリフェノール含有植物材料の修飾方法および、1つまたは複数の異なる修飾型ポリフェノール含有植物材料の新規医療向け使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
世界保健機構(WHO)は、2型糖尿病患者が2025年には3億人(現在の人口の約5%)になると予測している。これはすなわち、人口のかなりの部分がメタボリック症候群などのさまざまな代謝障害に罹患することを意味している。「メタボリック症候群」という用語は、臨床診断および定義の両面で大いに議論されてきた。とはいえこの用語は、2型糖尿病および心臓血管疾患を発生させるリスクの高い対象を特定する一群の警告的代謝性危険因子を表わしている。
【0003】
現在、国際糖尿病連合(IDF)および世界保健機構(WHO)によって一般的に認められている主要な基準が3つあり、それらは、肥満、異常脂質血症およびインスリン耐性という尺度である。これらの危険因子のそれぞれは、心臓血管疾患の有効な予測因子である。しかしながら、インスリン耐性は、2型糖尿病および心臓血管疾患の両方を予測することから、メタボリック症候群の主要構成要素とみなされている。インスリンの分泌は、グルコース代謝を維持するためのみならず、脂質代謝および血管緊張を制御するためにも必要である。インスリン耐性の結果、正常血糖を維持するベータ細胞の調節が不精確になり、高インスリン血症を導き、それが今度は、筋肉、脂肪組織および肝臓といったような主要代謝組織および臓器におけるインスリン耐性を断つことになり、インスリン耐性と高インスリン血症の間の悪循環が発生する。インスリン耐性の原因は、充分に理解されておらず、複数の遺伝性素因(遺伝的形質、多型)、酸化的ストレスなどの分子的因子、およびインスリンシグナリングと干渉し得るさまざまな炎症マーカーが存在する。
【0004】
重要なのは、集中的なライフスタイルの修正がもつ大きな影響であり、これによって2型糖尿病の発生の40〜58%を遅延または予防できることが介入研究において発見された。これらの介入研究における食事療法は、脂肪、とりわけ飽和脂肪(部分的に一価不飽和脂肪によって置換されているもの)からのエネルギー摂取を削減することによる体重削減を目指し、さらに繊維、全粒粉、野菜および果物が豊富なものであった。食事制限には、一日30分の身体活動が伴っていた。集中的なライフスタイルの修正がもつ生理学的メリットは、体重および血圧の低下そして、インスリン感受性および血中脂質の改善である。これは、危険性構成要素の全領域に影響を及ぼすものであり、メタボリック症候群に関係する疾患の発生を遅延させるかまたは予防することが発見されている。
【0005】
以上のことを考えると、上述の疾患の背後にある機序の調査において、ならびにこれらの疾患を予防、緩和または治療する新たな方法を見出すために多大な努力が払われてきたことは、意外ではない。
【0006】
食後の高インスリンレベル(高インスリン血症)が、メタボリック症候群の疾患(心臓血管疾患、2型糖尿病および肥満症)の発生の危険因子であることから、低インスリン応答をひき起こす食物が好ましいと考えられている。したがって、人体内でインスリンレベルを低下させる食物は、2型糖尿病、肥満症およびメタボリック症候群などの心臓血管疾患に伴う問題が増大しつつある先進工業国において、ヒトにとって有益なものになると考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明に関連して、かかる疾患を治療し予防するための新規の方法が発見された。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
本発明は、1つの態様において、1つまたは複数のポリフェノール含有植物材料を修飾するための方法であって、
a) 少なくとも1つのポリフェノール含有材料と少なくとも1つの溶媒を混合して混合物を提供するステップと;
b) 混合物を加熱して、存在する細菌種を除去し、加熱混合物を提供するステップと;
c) 少なくとも1つのポリフェノール修飾用乳酸菌菌株および任意には少なくとも1つのタンパク質源を、加熱混合物に対し任意の順序でまたは同時に添加して発酵混合物を提供するステップと;
d) 発酵混合物の発酵に適した条件に発酵混合物を付して1つまたは複数の修飾型ポリフェノール含有植物材料の混合物を提供するステップと;
e) 任意に、ポリフェノール修飾用乳酸菌菌株を除去して、生菌乳酸菌を含まない1つまたは複数の修飾型ポリフェノール含有植物材料の混合物を提供するステップと、
を含む方法を提供する。
【0009】
本発明は、さらなる態様において、糖尿病、メタボリック症候群および血管心臓疾患の予防または治療向けの組成物の製造を目的とする、生菌乳酸菌を含む1つまたは複数の修飾型ポリフェノール含有植物材料の混合物または生菌乳酸菌を含まない1つまたは複数の修飾型ポリフェノール含有植物材料の混合物の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図面の簡単な説明
【図1】グルコース基準飲料との関係における、被験個体による異なるブルーベリー飲料の摂取後に得られた食後血漿グルコース曲線を示す。
【図2】グルコース基準に比べた、異なるプロセス/添加剤に付された、異なるブルーベリー製品の摂取後の血清インスリン応答を示す。
【図3】未処理の対照(B-untreated)に比べた、異なるプロセス/添加剤に付された、異なるブルーベリー製品の摂取後のインスリン応答を示す。30分後、B-fermは、対照(B-untreated)に比べて有意なインスリン応答の低下を提供している(P<0.05、B-untreatedを対照としたダネット検定)。
【図4】生菌を含む発酵ブルーベリー飲料およびその後の低温殺菌によって殺菌される発酵ブルーベリー飲料を摂取した後に得られる食後血漿グルコース曲線を示す。
【図5】生菌を含む発酵ブルーベリー飲料およびその後の低温殺菌によって殺菌される発酵ブルーベリー飲料を摂取した後のインスリン応答を示す。
【図6】ローズヒップピューレ、ブルーベリー、ブルーベリーピールおよびコケモモピール内のカテキン、エピカテキン、プロアントシアニジンダイマーアグリコン、プロアントシアニジントリマーアグリコン、プロアントシアニジンテトラマーアグリコン、3,4−ジヒドロキシフェニルプロピオン酸、3−フェニル乳酸、プロトカテク酸およびシアニジン−3−ガラクトシド/シアニジン−3−グルコシドの、発酵前後の含有量を示す。
【図7】ラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum) HEAL 19、ラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)299vまたはペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)による発酵前および発酵後のブルーベリー中のカテキン、エピカテキン、プロシアニジンB2、プロアントシアニジントリマーアグリコン、プロアントシアニジンテトラマーアグリコン、3,4−ジヒドロキシフェニルプロピオン酸、L−(−)−3−フェニル乳酸、プロトカテク酸およびシアニジン−3−ガラクトシド/シアニジン−3−グルコシドの含有量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の実施形態の詳細な説明
本発明の方法の一実施形態においては、少なくとも1つのポリフェノール含有植物材料と少なくとも1つの溶媒の混合物は均質化によって得られる。溶媒は好ましくは、水、水道水または蒸留水であるが、ミネラルウオータなどの別の水性食用溶媒、フルーツジュースおよび野菜ジュースなどのジュース、牛乳およびその他の飲料であってよい。
【0012】
少なくとも1つのポリフェノール含有材料と少なくとも1つの溶媒との調製混合物の中に存在する細菌および/または微生物などのあらゆる細菌種を除去するために、それらの成長をことごとく防止する目的で、ステップb)における加熱は、60℃〜100℃、好ましくは80℃〜100℃、より好ましくは90℃〜100℃の温度、すなわち細菌および微生物を殺すのに充分な温度で、例えば94℃で2秒間の低温殺菌または存在する細菌を除去するための従来のオートクレーブを用いて行なわれる。ステップd)において提供されている発酵は、混合物に添加される特定の乳酸菌菌株についてのみ起こらなければならない。したがって、発酵の前に加熱ステップb)において存在し得るその他のあらゆる細菌種を除去することが必要である。加熱温度および加熱持続時間は、存在するあらゆる細菌および微生物を殺すためという所望の結果を考慮して決定される。
【0013】
加熱ステップb)の後、ポリフェノール含有材料は酸性であり得ることから、KOHを添加することなどによって、加熱済み混合物のpHを約4.5〜9、好ましくは5〜7の範囲内のpH値に調整することができ得る。これは、添加された乳酸菌菌株が、このpH間隔で良好に成長するからである。少なくとも1つのポリフェノール修飾用乳酸菌菌株は、混合物1mlあたり約10〜10cfuの量で添加される。好ましくは、発酵は、少なくとも1つのタンパク質源例えばアミノ酸源の存在下で起こり、このタンパク質源はペプトン、トリプトン(ミルクブロス)、酵母抽出物およびこれらの組合せを含む群から選択されるが、これらに限定されるわけではない。別の例は、ミートブロスまたはオートミールであり、これらは細菌のための必要な構成要素も含んでいる。発酵をタンパク質源の添加無しで、すなわち添加された1つまたは複数ポリフェノール含有植物材料の構成要素すなわちこれらの植物材料中に存在するタンパク質および炭水化物のみの存在下で行なうことも同様に可能である。少なくとも1つのタンパク質は、全混合物の0.0001〜0.1重量%の量で添加されるかまたは存在する。
【0014】
本発明の実施形態においては、この少なくとも1つのポリフェノール修飾用乳酸菌菌株は、ラクトバシラス属(Lactobacillus)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、ウィッセラ属(Weissella)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、オエノコッカス属(Oenococcus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)および系統発生学的に関係する属を含む群から選択される。本発明の別の実施形態においては、このポリフェノール修飾用の少なくとも1つのラクトバシラス(Lactobacillus)菌株は、ラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバシラス・パラプランタラム(Lactobacillus paraplantarum)、ラクトバシラス・ペントーサス(Lactobacillus pentosus)、および ラクトバシラス・アルゲントラテンシス(Lactobacillus argentoratensis)を含む群から選択される。
【0015】
好ましくは、ラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)は、そのとき以下の登録番号が付与された1991年7月2日日付で Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbHに寄託されたラクトバシラス・プランタラム(Lactoabacillus plantarum)299、DSM 6595、1995年3月16日日付で Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbHに寄託されたラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)299v、DSM 9843、および2002年11月27日付で Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbHに寄託されラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)HEAL 9、DSM 15312、ラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)HEAL 19、DSM DSM 15313、およびラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)HEAL 99、DSM 15316からなる菌株群から選択される。
【0016】
特定の乳酸菌菌株を添加した後、発酵条件は、大気圧下液体培地内でおよそ30℃〜50℃、好ましくはおよそ35℃〜45℃、特におよそ37℃〜40℃である。発酵は通常、5未満、好ましくは4未満のpH値に達するまで続行される。ヨーグルトを発酵させる場合には、発酵は4.6〜4.7未満のpHまで続けられる。発酵はおよそ10〜30時間、好ましくはおよそ15〜25時間、例えばおよそ20〜24時間行なわれる。発酵持続時間は、有益な修飾型ポリフェノール含有植物材料を提供するのに充分なものでなくてはならない。
【0017】
発酵が完了した後、ポリフェノール修飾用乳酸菌菌株を除去する任意のステップf)は、加熱、紫外線、ガンマ線、圧力、電流、放電、パルス電場、電気ショックまたは無菌化ろ過によって行なわれる。乳酸菌菌株を除去することにより、個体が摂取できる任意の組成物の形で、乳酸菌を含まない修飾型ポリフェノール含有植物混合物の得られた混合物を使用することが可能となる。
【0018】
乳酸菌菌株の発酵によって修飾される1つまたは複数のポリフェノール含有植物材料は例えば、果物、野菜、ベリー類、茶、穀物、緑茶、コーヒー、ココア、チョコレートおよび樹皮を含む群から選択される。果物およびベリー類は、例えばブルーベリー、コケモモ、クランベリー、リンゴ、バナナ、クロフサスグリ、イチゴ、木イチゴ、ローズヒップ、ブドウ、カンキツ類、アロニア、ボケ、アメリカスモモ、ローズヒップおよびエルダーベリー、オリーブ、ケーパーベリーまたはその他のポリフェノールに富む果実の群から選択される。樹皮は好ましくはシナモンから選択される。野菜は例えば豆から選択される。本発明は、上述の具体例に限定されない。選択された1つまたは複数のポリフェノール含有植物材料を考慮する上での重要な側面は、使用すべきこの1つまたは複数ポリフェノール含有植物材料が、乳酸菌菌株での発酵による影響を受け、修飾型ポリフェノール含有植物材料を提供しなければならないという点にある。
【0019】
本明細書に関連して、「ポリフェノール含有植物材料を修飾する」という語句は、添加された乳酸菌菌株の発酵がポリフェノールを含有する植物材料の存在下で起こったということを意味する。発酵が起こり、これらのポリフェノール基に影響を及ぼし、1つまたは複数の修飾型ポリフェノール含有植物材料を提供する。
【0020】
本明細書に関連して「1つまたは複数の修飾型ポリフェノール含有植物材料」という用語は、本書に規定されている条件で乳酸菌菌株の存在下でのポリフェノール含有植物材料の発酵の後に得られる1つまたは複数の製品を意図している。実験の部で、試験対象のポリフェノール含有材料は、ブルーベリー、コケモモおよびローズヒップであり、インスリン応答低下の有意な効果をひき起こすのは、発酵を受けたブルーベリー、コケモモおよびローズヒップを含有する被験製品のみであることが示されており、このことはすなわち、インスリン応答の低下をひき起こすのがポリフェノール含有材料の発酵である確率が最も高いということを意味している。したがって本発明に関連して「1つまたは複数の修飾型ポリフェノール含有植物材料」という用語は、ポリフェノール含有植物材料の発酵後に得られるような物質を意味する。かかる「修飾型ポリフェノール含有植物材料」は、乳酸菌菌株での発酵を受けなかったポリフェノール含有植物材料の摂取と比べ、これを摂取した後のヒトにおいてインスリン応答を低下させるという所望の効果を提供するはずである。任意の適切な形態で修飾型ポリフェノール含有植物材料を摂取することによるインスリンレベルの低下は、およそ1〜50%、好ましくはおよそ5〜40%、より好ましくはおよそ10〜30%、さらに一層好ましくはおよそ15〜25%、例えばおよそ25%の間隔内にあるはずである。
【0021】
本発明はさらに、糖尿病、メタボリック症候群、肥満症および血管心臓疾患の予防または治療向けの組成物の製造を目的とする、1つまたは複数の修飾型ポリフェノール含有植物材料の混合物または生菌乳酸菌を含まない1つまたは複数の修飾型ポリフェノール含有植物材料の混合物の使用に関する。
【0022】
組成物は、医薬組成物または食物組成物である。食物組成物は、例えば食品または食物サプリメントである。
【0023】
食品は、パン、チーズ、ヨーグルトジュース、栄養ドリンク、栄養バー、スプレッド、ビスケットおよびシリアルを含む群から選択でき得る。食物組成物は、健康維持のため個体が容易に摂取でき、上述の通りの心臓血管疾患を予防できることから、1つまたは複数の修飾型ポリフェノール含有植物材料の混合物または生菌乳酸菌を含まない1つまたは複数の修飾型ポリフェノール含有植物材料の混合物を食物組成物の中に含み入れるのが望ましい。
【0024】
方法と材料
被験製品
本発明の効果を示すために、1)ブルーベリー組成物の熱処理のタイプおよび程度、2)組成物内の乳酸産生菌(それぞれラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)299vおよびラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)HEAL19)の存在、および3)L.プランタラム(L. plantarum)HEAL19を用いたブルーベリー組成物の発酵に応じて、ポリフェノール含有植物材料、例えばブルーベリーとスクロースをベースとする異なる組成物の摂取の後の食後血中グルコースおよびインスリン応答の潜在的差異を評価するための試験を行なった。
【0025】
試験には、異なる5つの被験飲料および基準飲料(Ref.)が含まれていた。被験飲料は、未処理未発酵ブルーベリー飲料(B-untr)1つ、低温殺菌された未発酵ブルーベリーをベースとする飲料1つ(B-past)、それぞれラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)299vおよびHEAL19の添加を伴う低温殺菌された未発酵の飲料2つ(B-299vおよびB-HEAL)および、低温殺菌されL.プランタラム(L. plantarum)HEAL19で発酵された飲料1つ(B-ferm)からなっていた。基準飲料は、水中に溶解されたグルコースからなっていた。ブルーベリー(バクシニウム・ミルティルス(Vaccinium myrtillus))を、−20℃での貯蔵に先立ちピューレ状態に混合した。解凍後、ブルーベリーを水(1:1)で希釈し、家庭用ミキサーを用いて5分間均質化した。その後、ブルーベリーを再度希釈し(1:1)、25%のブルーベリー溶液を得た。その後ブルーベリーを、高性能分散装置(Ultra Turrax T25, Janke & Kunkel IKA, Werke GmbH & Co.KG, Staufen, Germany)を用いて25000rpmで均質化した。未発酵ブルーベリー飲料用の試料(B-untreated)を採取し、食事試験で使用するまで−20℃で凍結させた。残りのブルーベリー溶液を低温殺菌し(94℃、2秒)、−20℃で貯蔵した(B-pasteurized)。
【0026】
試験の前日にB-pasturized飲料を解凍してラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)299v(B-299v)およびラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)HEAL19(B-HEAL19)を別々に添加した2つの飲料を調製し、それぞれのラクトバシラス菌株を加えその後供与するまで冷蔵庫内(+4℃)に一晩放置した。
【0027】
供与のおよそ一週間前に、600mlの殺菌されたブルーベリー溶液を容器内で発酵させ、pHを5に調整するためにKOHを添加した。その後、ラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)HEAL19(1×10コロニー形成単位(cfu)/ml)を用いてブルーベリー溶液に接種した。窒素源として加熱滅菌したソラマメの花1グラムを加えた。1×10/ml(pH3.8)という最終cfuに達するまで20時間、ブルーベリー溶液を発酵させた(B-fermented)。発酵後、ブルーベリー溶液を4℃で貯蔵した。発酵はProbi AB (Lund, Sweden)が実施した。300mlの水に対し、30gのD+−グルコース(VWR international Ltd. Poole, England)を含有するグルコース飲料を基準食として用いた。全ての食事が30gの炭水化物で提供された。試験開始時点で、被験対象の各人に対し、一斤の小麦精白パン(WWB, Dollar Storfranska, Lockarp, Sweden)を提供した。各試験実施の前夜に個々に選択された量のスライスを摂取させることになっていた。
【0028】
表1は、被験飲料および基準の異なる組成を示す。
【0029】
【表1】

【0030】
供与の前に、72.8のアスコルビン酸、320.1のtrecomex(ジャガイモ加工デンプン)、291mgのCNK(カラギナンE407)および26.18gのスクロースを、各ブルーベリー飲料に添加した。さらに、1.18gのグルコースをB-fermented飲料に添加して、発酵中のこの炭水化物の損失を補填した。最終的に、20%のブルーベリーおよび30gの炭水化物を含む300gのブルーベリー飲料が得られるように、全てのブルーベリー飲料を32.0gの水で調整した。
【0031】
被験飲料試験
全ての飲料を朝食として供与し、少なくとも5日あけて無作為に提供した。全ての対象から書面によるインフォームドコンセントを得た。これらの対象はまた、試験中いつでも特段の説明無く自主的に中止できるという事実を充分認識していた。ルンド大学医学部倫理委員会は、この試験を承認した。
【0032】
被験対象
15名の健常な非喫煙ボランティア、つまり7人の女性および8人の男性が、緊急食事試験に参加した。平均年令は25±2.4(平均±SD(標準偏差))才であり、平均肥満度指数は正常範囲(22.4±2.0kg/m;平均±SD)内であった。対象は、いかなる薬物治療も受けていなかった。対象には、試験前日のアルコール摂取、身体活動および繊維が豊富な夕食を避けるように依頼した。対象は、各試験実施の前夜、午後9時〜10時の間に個々に選択された量のWWBを食べた。試験全体にわたり、個々に選択されたスライスの量を等しく保った。WWB食の後、対象には、研究所に到着するまで何も摂取しないよう依頼した。ただし必要な場合は、午後10時以降、少量の水分の摂取は許された。各対象は、少なくとも1週間あけて4回の試験実施に参加した。
【0033】
試験設計および血液試料採取
対象は、朝7時45分に研究所に到着し、末梢カテーテルが肘正中動脈内に挿入された。毎回、全ての参加者は、ストレスまたは不安の感情を含めたその日の自らの身体状態に関する質問用紙に記入した。食事を、10分間落ちついて摂らせた。空腹時および食事摂取から15、30、60、90、120、180、240分後に、血清インスリンおよび血漿血中グルコース分析のために、毛細管血を収集した。
【0034】
グルコース分析
β−グルコース分析装置(Hemocue 201+, Hemocue AB, Aengelholm, Sweden)を用いて血中グルコースを決定した。
【0035】
インスリン分析
血清インスリン試料を−20℃で貯蔵した。分析は、酵素免疫測定キット(Mercodia Insulin Elisa; Mercodia AB, Uppsala, Sweden)を使用することにより、総合型免疫測定分析装置(CODA Open Microplate System; Bio-Rad Laboratories, Hercules CA)上で実施された。
【0036】
計算と統計的分析
各参加者および各被験飲料について、血中グルコースおよび血清インスリンに関する0〜45分および0〜120分での増分的曲線下面積(AUC)を、GraphPad PRISM (version 3.02; GraphPad Software Inc, San Diego)を使用して計算した。ベースライン下の全ての面積は、計算から除外した。血中グルコース、および血清インスリンを各時点で統計的に分析した。統計的計算はMINITAB Statistical Software (release 13.1 for windows)を用いて実施した。一般線形モデル(ANOVA)とそれに続くチューキー多重比較検定またはダネット検定により、有意性を判定した。P<0.05という結果をもたらした差異が、有意とみなされた。
【0037】
血漿グルコース
グルコース曲線下の初期(0〜45分)面積も後期(0〜90分)面積も同様に、グルコース基準に比べブルーベリー飲料の摂取後に有意な形で低下していた。ブルーベリー飲料についてのGI値は、間隔58〜64の中に充分集められ、グルコース基準(GI=100)よりも有意に低下していた。血漿グルコースは図1に示されている。
【0038】
【表2】

【0039】
血清インスリン
異なるブルーベリー飲料摂取後のインスリン応答および基準は、図2に示されている。30〜60分の間隔内で、全てのブルーベリー飲料は、グルコース基準に比べて有意に低いインスリン応答を発生させた。15分後、B-fermの摂取後のインスリンレベルは、グルコース基準に比べて有意に低かった。食後初期(0〜45分のAUCとして表現)において、B-fermは、B-HEAL19よりも低いインスリン応答を発生させた。
【0040】
低温殺菌および発酵(L.プランタラム(L. plantarum)HEAL19を用いた)またはブルーベリー原料へのラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)の添加の重要性を試験するため、B-past、B-ferm、B-299vおよびB-HEAL19のインスリン応答を未処理対照飲料(B-untr)と比較した。摂取から30分後に、B-fermは、B-treatedに比べ有意に低下していた。120分後に、B-299vおよびB-HEAL19は、B-untreatedに比べて著しく低いインスリン応答を示した。初期インスリン応答(0〜45分AUC)の比較から、B-fermが未処理ブルーベリー飲料に比べて有意に低いインスリン応答(25%)を提供することが示された(P<0.05、表4)。低温殺菌もラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)299vまたはラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)HEAL19各々の添加も、未処理のブルーベリー飲料との関係において、食後インスリン面積に有意な形で影響を及ぼさなかった。
【0041】
【表3】

【0042】
ラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)HEAL19を用いたブルーベリーの発酵は、インスリン応答の低下の鍵となる要因であると思われる。結果は、発酵プロセスがインスリン終止を改善することを示唆している。
【0043】
【表4】

【0044】
ブルーベリー飲料後の食後血漿グルコース応答は同じレベルにあったことから、ラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)HEAL19を含む発酵済みブルーベリー飲料の摂取後の25%低いインスリン応答は、血漿グルコースの類似の減少と同時には見られなかった。しかしながら、ラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)HEAL19を用いたブルーベリーの発酵は、発酵ブルーベリーを含有する飲料で見られたインスリン応答低下の鍵となる要因であるように思われる。この効果は、同じ細菌ラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)HEAL19が、摂取直前にブルーベリー飲料に添加された場合には見られない。したがって、インスリン応答の低下を発生させるのは細菌自体の存在ではなく、むしろ重要なのは発酵そのものである。この興味深い効果をひき起こす活発な機序は、発酵により産生されるかまたは修飾される構成要素すなわち、発酵後のブルーベリー内で利用可能な修飾型ポリフェノール構成要素に起因し得ると思われる。
【0045】
要約すると、発酵ブルーベリー飲料は、未発酵ブルーベリー飲料に比べてインスリン応答を25%削減したという結論を下すことができる。将来は、代謝性障害を患う人々を目的とする製品が、2型糖尿病および内皮障害の発生を予防させ恐らくは減少もさせる付加的な方法を提示できるものと思われる。好ましくは問題の全ての側面すなわち栄養面および臨床的側面のみならず社会的、文化的および経済的側面をも統合することによって、より大きな観点で「代謝性障害の蔓延」を考慮して、西欧諸国および開発途上国において全体的に健康的なライフスタイルを導入することができるかもしれない。全ての消費者の知識が増大することで、業界を市場の要望に従わせることが望まれる。
【0046】
生菌を含む飲料についての効果を細菌が除去された飲料についての効果と比較する試験
L.プランタラム(L. plantarum)HEAL19の培養液を発酵後に低温殺菌した飲料が、L.プランタラム(L. plantarum)HEAL19の培養液を発酵後に生きた状態に保っている飲料と同じ低いインスリン応答を提供するか否かを評価するために、2つの異なる被験飲料を含み入れた。
【0047】
被験飲料は、低温殺菌されL.プランタラム(L. plantarum)HEAL19で発酵された1つの飲料と、低温殺菌されL.プランタラム(L. plantarum)HEAL19で発酵され次に発酵後低温殺菌された1つの飲料からなっていた。ブルーベリー(バクシニウム・ミルティルス(Vaccinium myrtillus))をピューレ状態に混合し、その後−20℃で貯蔵した。解凍後、ブルーベリーを水で希釈させ(1:1)、家庭用ミキサーを用いて5分間均質化させた。その後ブルーベリーを再度希釈し(1:1)、25%のブルーベリー溶液を得た。その後、ブルーベリー溶液を、高性能分散装置(Ultra Turrax T25, Janke & Kunkel IKA, Werke GmbH & Co.KG, Staufen, Germany)を用いて25000rpmで均質化させた。未発酵ブルーベリー飲料用の試料を採取し(B-untreated)、食事試験で使用するまで−20℃で凍結させた。残りのブルーベリー溶液を低温殺菌し(94℃、2秒)、−20℃で貯蔵した(B-past.)。
【0048】
供与のおよそ一週間前に、600mlの殺菌されたブルーベリー溶液を容器内で発酵させ、pHを5に調整するためにKOHを添加した。その後、ラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)HEAL19(1×10コロニー形成単位(cfu)/ml)を用いてブルーベリー溶液に接種した。窒素源として加熱滅菌したソラマメの花1グラムを加えた。1×10/ml(pH3.8)という最終cfuに達するまで20時間、ブルーベリー溶液を発酵させた。発酵後、ブルーベリー溶液を4℃で貯蔵し、再び低温殺菌させ(94℃、2秒)4℃で貯蔵した。発酵はProbi AB (Lund, Sweden)が実施した。
【0049】
表5は、被験飲料および基準の異なる組成を示す。
【0050】
【表5】

【0051】
供与の前に、72.8mgのアスコルビン酸、320.1mgのtrecomex(ジャガイモ加工デンプン)、291mgのCNK(カラギナンE407)および26.18gのスクロースを、各ブルーベリー飲料に添加した。さらに、1.18gのグルコースをB-fermented飲料に添加して、発酵中のこの炭水化物の損失を補填した。最終的に、20%のブルーベリーおよび30gの炭水化物を含む300gのブルーベリー飲料が得られるように、全てのブルーベリー飲料を32.0gの水で調整した。
【0052】
被験飲料試験
全ての飲料を朝食として供与し、少なくとも5日あけて無作為に提供した。全ての対象から書面によるインフォームドコンセントを得た。これらの対象はまた、試験中いつでも特段の説明無く自主的に中止できるという事実を充分認識していた。ルンド大学医学部倫理委員会は、この試験を承認した。
【0053】
被験対象
13名の健常な非喫煙ボランティアが、緊急食事試験に参加した。平均年令は25.5±1.34(平均±SD(標準偏差))才であり、平均肥満度指数は正常範囲(20.8±0.24kg/m;平均±SD)内であった。対照の一人は1つの試験の前日に胃腸障害を起こすインフルエンザを患い、したがって試験から除外された。対象は、いかなる薬物治療も受けていなかった。対象には、試験前日のアルコール摂取、身体活動および繊維が豊富な夕食を避けるように依頼した。対象は、各試験機会の前夜、午後9時〜10時の間に個々に選択された量のWWBを食べた。試験全体にわたり、個々に選択されたスライスの量を等しく保った。WWB食の後、対象には、研究所に到着するまで何も摂取しないよう依頼した。ただし必要な場合は、午後10時以降、少量の水分の摂取は許された。各対象は、少なくとも1週間あけて4回の試験実施に参加した。
【0054】
試験設計および血液試料採取
対象は、朝7時45分に研究所に到着し、末梢カテーテルが肘正中動脈内に挿入された。毎回、全ての参加者は、ストレスまたは不安の感情を含めたその日の自らの身体状態に関する質問用紙に記入した。食事を、10分間落ちついて摂らせた。空腹時および食事摂取から15、30、60、90、120分後に、血清インスリンおよび血漿血中グルコース分析のために、毛細管血を収集した。
【0055】
グルコース分析
β−グルコース分析装置(model no. 120401, Hemocue AB, Aengelholm, Sweden)を用いて血中グルコースを決定した。
【0056】
インスリン分析
血清インスリン試料を−20℃で貯蔵した。分析は、酵素免疫測定キット(Mercodia Insulin Elisa; Mercodia AB, Uppsala, Sweden)を使用することにより、総合型免疫測定分析装置(CODA Open Microplate System; Bio-Rad Laboratories, Hercules CA)上で実施された。
【0057】
計算と統計的分析
各参加者および各被験飲料について、血中グルコースおよび血清インスリンに関する0〜45分および0〜120分での増分的曲線下面積(AUC)を、GraphPad PRISM (version 3.02; GraphPad Software Inc, San Diego)を使用して計算した。ベースライン下の全ての面積は、計算から除外した。血中グルコース、および血清インスリンを各時点で統計的に分析した。統計的計算はMINITAB Statistical Software (release 13.1 for windows)を用いて実施した。一般線形モデル(ANOVA)とそれに続くチューキー多重比較検定またはダネット検定により、有意性を判定した。P<0.05という結果をもたらした差異が、有意とみなされた。
【0058】
血漿グルコース
図4を見ればわかるように、グルコース曲線の下の初期(0〜45分)面積も後期(0〜120分)面積も同様に生菌を伴う被験飲料に比べ発酵後低温殺菌された被験飲料の摂取後わずかに低下していた。血中グルコースが空腹時値より上にとどまっている期間を、空腹時値からの血中グルコースの最大増加で除することによって、グルコース曲線のプロフィールを分析した。この商は、グルコース持続時間/ピーク定数と呼ばれる(分/ΔmM)。グルコース持続時間/ピーク定数の高い値は、グルコース曲線が長く低いことを意味し、低い値は、短く高い曲線を伴う好ましくない曲線プロフィールを表わす。この試験には基準が一切含み入れられなかったため、GI値は全く判定できなかった。
【0059】
【表6】

【0060】
【表7】

【0061】
血清インスリン
2つのブルーベリー飲料を摂取した後のインスリン応答は、図5に示されている。生菌を含む被験飲料に比べて発酵後低温殺菌された被験飲料摂取後にAUCは低下していた。この試験には基準が一切含み入れられなかったため、II値は全く判定できなかった。
【0062】
【表8】

【0063】
論述
両方の飲料とも、グルコースについてほぼ同じ応答を示した。低温殺菌された、すなわち細菌が死滅した飲料は、生菌を含む飲料に比べインスリン応答について優れた結果を示した。以前の試験においては、低温殺菌のみではインスリン応答に対する効果が全く見られなかった。すなわち、低温殺菌されたブルーベリーは、低温殺菌されていないブルーベリーと同じ結果をもたらした。しかしながら、本試験は、発酵後の熱処理の度合がインスリン応答に大きく影響し得るということを表わしている。
【0064】
この効果の機序については、さらに評価する必要がある。1つの理論としては、より強力な熱処理がブルーベリー内のポリフェノールおよびその他の生物活性構成要素に対する効果を通してインスリン低下効果を提供し、このことは、熱処理の追加ステップによって熱滅菌された細菌を伴う飲料によって例示されるという考え方である。
【0065】
ポリフェノール化合物分析
ポリフェノール含有植物材料の修飾が起こることの証拠を提供するため、発酵前後のローズヒップピューレ、ブルーベリー、ブルーベリーピールおよびコケモモピール内のカテキン、エピカテキン、プロアントシアニジンダイマーアグリコン、プロアントシアニジントリマーアグリコン、プロアントシアニジンテトラマーアグリコン、3,4−ジヒドロキシフェニルプロピオン酸、L−(−)−3−フェニル乳酸、プロトカテク酸およびシアニジン−3−ガラクトシド/シアニジン−3−グルコシドの含有量を比較する試験を行なった。
【0066】
その他の微生物が発酵に影響を及ぼすのを回避するため、発酵前に全ての果物画分を低温殺菌した。
【0067】
フェノール化合物の分析のため、試料を秤量し、抽出用の溶液を添加した(試料中の濃度:50%のエタノール、0.05Mのリン酸、あるいは50%のメタノール、0.5%)。その後、試料を超音波浴内で10分間抽出し、その後遠心分離し、さらにその後上清をバイアルに移し、HPLC−MS分析により分析した。Salminen et al. Characterisation of proanthocyanidin aglycones and glycosides from rose hips by high-performancce liquid chromatography-mass spectrometry、and their rapid quantification together with Vitamin C. J Chrom A 2005; 1077:170-180、およびSalminen et al. Characterisation of hydrolysable tannins from leaves of Betula pubescens by high-performance liquid chromatography-mass spectrometry. J Chrom A 1999; 864: 283-291にある通り、API 150 EX TurboによってHPLC−MS分析を実施した。
【0068】
計器を、マイナスモードに設定した。すなわちマイナスイオンを分析した。HPLC系は、Perkin Elmer LC-200 Micro PumpタイプのHPLCポンプおよびPerkin Elmer 200 Autoサンプラからなっていた。試料の注入体積は8μlであった。
【0069】
90〜1000m/zの間の質量数にわたり、走査を実施した。
【0070】
検出のために用いられる具体的質量数:
カテキン、m/z289(M−H)
エピカテキン、m/z289(M−H)
プロシアニジンB2、m/z577(M−H)
プロアントシアニジンダイマーアグリコン、m/z577(M−H)
プロアントシアニジントリマーアグリコン、m/z865(M−H)
プロアントシアニジンテトラマーアグリコン、m/z1153(M−H)
3,4−ジヒドロキシフェニルプロピオン酸、m/z181(M−H)
L−(−)−3−フェニル乳酸、m/z165(M−H)
プロトカテク酸、m/z153(M−H)
シアニジン−3−ガラクトシド、シアニジン−3−グルコシド、m/z447(M−H)
【0071】
試験の結果は、図6を見るとわかり、これは、ブルーベリーならびにコケモモおよびローズヒップの両方においてポリフェノール含有植物材料の修飾が起こることを示している。
【0072】
【表9】

【0073】
ラットに対する試験において、選択されたフェノール化合物の盲腸内の濃度は、ローズヒップのみが消費された場合に比べ、ローズヒップに加えてラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)299vまたはラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)HEAL19が消費された場合異なるものであることが示された(表10)。このことは、盲腸内での発酵中にポリフェノール構成要素が修飾されたことを表わしている。
【0074】
【表10】

【0075】
ラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)HEAL19、ラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)299vまたはペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)を用いた発酵の比較試験
ポリフェノール含有植物材料の修飾が、その他の細菌を用いて発酵させた場合にも起こることの証拠を提供するために、ラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)HEAL19、ラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)299vまたはペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)での発酵の前後のブルーベリー中のカテキン、エピカテキン、プロシアニジンB2、プロアントシアニジントリマーアグリコン、プロアントシアニジンテトラマーアグリコン、3,4−ジヒドロキシフェニルプロピオン酸、L−(−)−3−フェニル乳酸、プロトカテク酸およびシアニジン−3−ガラクトシド/シアニジン−3−グルコシドの含有量を比較する試験を実施した。
【0076】
試験の結果は図7を見るとわかり、これは、ポリフェノール含有植物材料の修飾が、試験された全ての細菌すなわちラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)HEAL19、ラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)299vまたはペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)を用いた発酵の後に起こるということを示している。
【0077】
【表11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数のポリフェノール含有植物材料を修飾するための方法であって、
a) 少なくとも1つのポリフェノール含有材料と少なくとも1つの溶媒を混合して混合物を提供するステップと;
b) 前記混合物を加熱して、存在する細菌種を除去し、加熱混合物を提供するステップと;
c) 少なくとも1つのポリフェノール修飾用乳酸菌菌株および任意には少なくとも1つのタンパク質源を、前記加熱混合物に対し任意の順序でまたは同時に添加して発酵混合物を提供するステップと;
d) 前記発酵混合物を前記発酵混合物の発酵に適した条件に付して1つまたは複数の修飾型ポリフェノール含有植物材料の混合物を提供するステップと;
e) 任意に、前記ポリフェノール修飾用乳酸菌菌株を除去して、生菌乳酸菌を含まない1つまたは複数の修飾型ポリフェノール含有植物材料の混合物を提供するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのポリフェノール含有植物材料および前記少なくとも1つの溶媒の混合物が均質化によって得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップb)の加熱が60℃〜100℃、好ましくは80℃〜100℃、より好ましくは90℃〜100℃で行なわれる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記加熱混合物のpHが、約4.5〜9、好ましくは5〜7の範囲内のpH値に調整される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのポリフェノール修飾用乳酸菌菌株が、混合物1mlあたり約10〜10cfuの量で添加される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのタンパク質源が、ペプトン、トリプトン、酵母抽出物およびそれらの組合せを含む群から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つのタンパク質が、前記混合物の0.0001〜0.1重量%の量で添加される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのポリフェノール修飾用乳酸菌菌株がラクトバシラス属(Lactobacillus)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、ウィッセラ属(Weissella)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、オエノコッカス属(Oenococcus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)および 系統発生学的に関連する属を含む群から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つのポリフェノール修飾用ラクトバシラス属(Lactobacillus)菌株が、ラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバシラス・パラプランタラム(Lactobacillus paraplantarum)、ラクトバシラス・ペントーサス(Lactobacillus pentosus)およびラクトバシラス・アルゲントラテンシス(Lactobacillus argentoratensis)を含む系統発生学的群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)が、ラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)299、DSM6595、ラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)299v、DSM15316、ラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)HEAL9、DSM15312、ラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)HEAL19、DSM DSM15313およびラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)HEAL99、DSM15316を含む菌株群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記発酵条件が、大気圧下液体培地中で30℃〜50℃の温度である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記発酵が、5未満好ましくは4未満のpH値に達するまで進行する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリフェノール修飾用乳酸菌菌株の除去が、加熱、紫外線、ガンマ線、圧力、電流、放電、パルス電場、無菌化ろ過または電気ショックによって行なわれる、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記1つまたは複数のポリフェノール含有植物材料が、果物、野菜、ベリー類、茶、緑茶、コーヒー、ココア、穀物、チョコレートおよび樹皮を含む群から選択される、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記果物およびベリー類が、ブルーベリー、コケモモ、クランベリー、リンゴ、バナナ、クロフサスグリ、イチゴ、木イチゴ、ローズヒップ、ブドウ、カンキツ類、アロニア、ボケ、アメリカスモモ、ローズヒップおよびエルダーベリー、ケーパーベリー、オリーブまたはその他のポリフェノールに富む果実の群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記樹皮がシナモンから選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記穀物が、オートムギ、大麦、小麦、ソルガム、キビ、コメおよびトウモロコシから選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
糖尿病、メタボリック症候群、肥満症および血管心臓疾患の予防または治療向けの組成物の製造を目的とする、1つまたは複数の修飾型ポリフェノール含有植物材料の混合物または生菌乳酸菌を含まない1つまたは複数の修飾型ポリフェノール含有植物材料の混合物の使用。
【請求項19】
前記組成物が医薬組成物または食物組成物である、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記食物組成物が食品または食物サプリメントである、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
前記食品が、パン、チーズ、ヨーグルトジュース、栄養ドリンク、栄養バー、スプレッド、ビスケットおよびシリアルを含む群から選択される、請求項20に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−529962(P2010−529962A)
【公表日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511143(P2010−511143)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際出願番号】PCT/SE2008/000383
【国際公開番号】WO2008/150212
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
【出願人】(509243300)プロビ アーベー (2)
【Fターム(参考)】