説明

ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子、及び型内発泡成形体

【課題】複雑な形状の型内成形において、短時間の乾燥で、内倒れを解消し得、なおかつ良好な表面美麗性、特に薄肉形状の部位の美麗性が優れるため、ポリプロピレン系樹脂が本来有する耐熱性、耐溶剤性、断熱性、緩衝性を全く阻害することなく、低コストで複雑な形状の型内成形体を容易に得ることができるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を提供することにある。
【解決手段】コモノマーとして1−ブテンとエチレンを含み、MFRが10g/10分以上30g/10分以下のポリプロピレン系樹脂
70重量%以上95重量%以下とコモノマーとしてエチレンを含み、MFRが0.1g/10分以上3g/10分以下のポリプロピレン系樹脂5重量%以上30重量%以下を含有し、MFRが5g/10分以上20g/10分以下、融点が140℃以上155℃以下であるポリプロピレン系樹脂、および、石油樹脂および/またはテルペン系樹脂を含有するポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とすることを特徴とするポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は緩衝包材、通箱、自動車内装部材、自動車バンパー用芯材、断熱材などに用いられるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子、及び該予備発泡粒子を用いて得られる型内発泡成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を用いて得られる型内発泡成形体は、型内発泡成形体の長所である形状の任意性、軽量性、断熱性などの特徴をもつ。また同様の型内発泡成形体と比較しても、ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子を用いて得られる型内発泡成形体と比較すると、耐薬品性、耐熱性、圧縮後の歪回復率に優れており、またポリエチレン系樹脂予備発泡粒子を用いて得られる型内発泡成形体と比較すると、寸法精度、耐熱性、圧縮強度が優れている。これらの特徴により、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を用いて得られる型内発泡成形体は、自動車内装部材、自動車バンパー用芯材をはじめ、断熱材、緩衝包装材など様々な用途に用いられている。
【0003】
一方、近年型内発泡成形体においても外観が重要視されるものが増えてきている。これは使用者の目に触れる場所に使用される一般緩衝包材、自動車内装部材、通い箱と言った用途に多く、型内発泡成形体に通常求められる剛性、軽量性、断熱性などの物性に加え、良好な外観が求められる。型内発泡成形体はその製法上、粒子間の隙間や粒子の亀甲模様が見られるが、外観を重視する製品にはこれらを嫌うものも多い。粒子間の隙間を目立たなくさせるためには、一般に型内発泡成形時の加熱蒸気圧力を高くし、粒子同士の融着を促進させるなどの方法が取られる。これらの技術から分かるように、粒子間の間隙が目立たない外観が良好な型内発泡成形体、すなわち表面美麗性の高い型内発泡成形体を得るためには、型内発泡成形時の成形加熱蒸気圧力を粒子間の融着に必要となる圧力より高くする必要がある。
【0004】
また、プロピレン系樹脂型内発泡成形体の最も主要な用途の一つである緩衝包材の、特に箱形形状のものでは、加熱蒸気による成形の直後に“内倒れ”と呼ばれる現象が見られる。“内倒れ”とは、箱形の成形体における端部寸法に対し、中央部寸法が小さくなり、差が生じることをいい、この差は個々の設計製品サイズによって絶対値は変わるが、内倒れが大きい場合、製品として使用できない不良品となる。内倒れのほとんどは60℃以上80℃以下の高温乾燥することで概ね回復する場合があるが、このような乾燥工程の導入は著しく生産性を悪化させる。
【0005】
加熱成形後の成形体の収縮による内倒れ現象に対し、樹脂剛性の高いポリプロピレン系樹脂を使用し、反力として働く成形体剛性を付与し、変形を抑制することができる。
【0006】
しかし、内倒れ現象を抑制できるような高い剛性を持つポリプロピレン系樹脂とは、一般にコモノマー含量の少ない、融点の高い樹脂となるが、樹脂の融点が高くなるにつれて良好な成形体を得るために必要となる成形加熱蒸気の圧力は高くなる傾向にある。このため、より高い剛性を求める場合、加熱蒸気の多量消費のため、ユーティリティコストが高くなるため成形加工コストが高くなる。さらに高剛性の樹脂を用いた場合、加熱成形圧が高くなることから、耐圧仕様の高い成形機や金型を用いる必要が生じ、ユーティリティコストに加え、設備コストが高くなる。現在ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の型内発泡成形用の成形機は、耐圧0.4MPaの仕様であるものが大半を占めており、該成形機を用いて通常生産される成形加熱蒸気圧力はおおむね0.36MPa程度までである。型内発泡成形に用いられるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子は、これに対応できるような特性の樹脂を用いており、一般には融点が140〜150℃程度のエチレン-ランダムポリプロピレンが用いられている。
【0007】
これまで、型内発泡成形体の剛性を向上するための技術に関して、様々な技術が検討されている。ポリプロピレン系樹脂で高い剛性を得るためには単純にホモポリプロピレンを用いることが考えられるが、例えば特許文献1には引張弾性率が15000〜25000kg/cm2で示差走査型熱量計にて得られるDSC曲線の高温側ピークの熱量が30〜60J/gであるホモポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子に関しての技術が開示されている。また特許文献1にはMFRが20〜100g/10分の範囲にあるホモプロピレン系樹脂を用いて、比較的低い成形温度で型内発泡成形体を得ることのできる予備発泡粒子が作製しうるという技術が開示されている。しかし、特許文献1記載の技術では、良好な発泡成形体を得るために必要な成形時の加熱蒸気の圧力が0.4〜0.6MPaであると記載されており、前述のように0.4MPa耐圧仕様の成形機では成形できない。また成形体の表面美麗性に関しては特段の記載はない。
【0008】
また、特許文献2記載の技術ではホモポリプロピレンや、コモノマー含量の少ないランダムポリプロピレン系樹脂を用いているが、表面美麗性に関して特段の記載は無い。類似の評価基準としては、発泡粒子同士の融着が60%以上という基準で評価しているが、該基準は型内発泡成形体内部の粒子同士がそれぞれ部分融着するという評価基準であり、表面美麗性を得るという基準に比べ、低い成形加熱蒸気圧力でも満たしうる基準である。該公報記載の技術では、実際に0.4MPa耐圧使用の成形機では表面美麗な成形体を得ることは難しい。
【0009】
ホモポリプロピレンほど高い剛性は得られないものの、成形性を重視してポリプロピレン系ランダム共重合体を用いた技術も検討されている。例えば特許文献3には、基材樹脂として融点が149〜157℃、MFRが1〜20g/10分、かつ半結晶時間が一定の値以下のプロピレン系ランダム共重合体を基材樹脂として用いる技術が開示されている。
【0010】
また、特許文献4には、型内発泡成形に用いるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の結晶状態について、示差走査型熱量分析(以下DSCと略す)を用いて得られる融解結晶カーブの高温側結晶量と低温側結晶量の関係を一定の範囲に設定することにより、得られる型内発泡成形体の圧縮強度を向上する技術が開示されている。
【0011】
しかし、これらの技術に関しては、型内発泡成形に必要となる加熱蒸気の圧力は0.4〜0.5MPaと高く、前記特許文献2〜4に記載の技術と同様、特に耐圧性能の高い成形機を用いることによって可能となっている技術である。
【0012】
さらに特許文献5には、1−ブテンをコモノマーとして含むポリプロピレン系樹脂を用いると樹脂融点に対して高い引っ張り弾性率、すなわち剛性を持つ樹脂が得られ、これを用いることにより、高い剛性をもつ型内発泡成形体を得ることができるという技術が開示されている。
【0013】
しかし当該技術に関しても、型内発泡成形に必要となる加熱蒸気の圧力は0.4MPa前後であり、他の技術と比較すると比較的低い成形加熱蒸気圧力であるものの、実施されている例の中で最も低いもので0.36MPaであり、現状よく用いられている0.4MPa耐圧仕様の成形機性能の下限レベルである。また表面美麗性さらには薄肉部位の美麗性に関して特段の記載はなく、表面美麗性を得るためにはさらに高い成形加熱蒸気圧力が必要となると考えられる。
【0014】
さらに特許文献6には、1−ブテン成分量を3〜12重量%含むプロピレン・1−ブテンランダム共重合体を基材樹脂とするポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を用いることにより、高い剛性を持つポリプロピレン系樹脂発泡成形体が得られる技術が開示されている。当該技術を用いた場合、成形加熱蒸気の圧力が0.3MPa前後と現状よく用いられる0.4MPa耐圧仕様の成形機でも成形可能であると記載されている。しかし、高分子量成分であるMFRの低い成分を含まず、該特許文献記載のエチレン成分を含まない1−ブテン単独系のポリプロピレン系樹脂ランダム共重合体は、エチレン成分を含むポリプロピレン系樹脂ランダム共重合体に比べ硬くもろい性質があり、この性質が発泡体の基材樹脂として用いた場合に、特に、緩衝包材用途の場合には、繰り返し緩衝性能に悪影響を及ぼし、自動車部材用途の場合、緩衝特性、圧縮後の寸法回復性や、低温領域での衝撃特性が劣ると言う性質となる。ポリプロピレン系樹脂発泡成形体は、同じ型内発泡成形体であるポリスチレン系樹脂発泡成形体と比べ、剛性面では劣るものの、繰り返し衝撃への耐性や柔軟性に優位性があり、これをもって緩衝包装材などに用いられている面もある。このため、該技術記載の技術では、剛性のみを目的とする用途以外の一般的な緩衝包材用途には向いていないという欠点もある。
【0015】
以上のように高い剛性を有するポリプロピレン系樹脂を基材とする予備発泡粒子を成形するには、一般に高い成形加熱蒸気圧力に耐えうる特殊な成形機を使用している現状がある。しかし成形機の耐圧性能を上げるためには、成形機の強度を高めるため装置を大型にする必要があり、また金型も肉厚にする必要があるため、装置コストがかなり上昇するという短所がある。成形加熱蒸気の圧力を上げるということは、成形時の加熱に必要な蒸気量も増加することとなり、これを冷却するための冷却水量が増加するなどユーティリティコストも上昇する。さらに、より高温に加熱するために成形時の加熱時間が長くなり、さらに加熱された金型を冷却水で冷却する工程にもより長い時間を必要とするため、製品あたりの生産サイクルが長くなり生産性が悪化する。またさらには型内発泡成形では金型形状が複雑であるため、形状によっては成形加熱時に金型の一部に応力が集中し、金型が破損することもあり、さらにコストアップの原因となる。
【0016】
以上のように、型内発泡成形において成形加熱蒸気圧力が高いということは様々な欠点を有しており、できる限り低い成形加熱蒸気圧力で成形できることが望ましい。既存技術の範疇では、現状多く用いられている0.4MPa耐圧仕様の成形機にて安定生産でき得る高い剛性を持つ型内発泡成形用ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を得ることは困難である。
【0017】
一方、緩衝包材用途の特に精密部品の集合包材では、前記箱形形状内部が複雑な形状となる場合が多い。複雑な形状の成形体を得ようとする場合、所謂”薄肉”形状と呼ばれる、予備発泡粒子が厚み方向に数個程度しか入らないような厚さが薄く狭い形状があると、満足な形状や表面美麗性を得ることが困難な場合がある。そのため、該箇所においては、緩衝性能や強度が十分得られない、予備発泡粒子同士の融着が不良となるなどの不具合を生じやすく、形状設計に大きな制約となっている。
【0018】
例えば特許文献7では、型内発泡成形用ポリオレフィン系予備発泡粒子で二次発泡性や融着性の良好な予備発泡粒子を得るために、有機過酸化物が存在する分散媒体中にポリプロピレン系樹脂を分散させ、樹脂表面を改質する方法が示されている。しかし、この方法では、有機過酸化物による金属侵食を考慮した設備が必要であったり、分散媒中における効果の不均一性が生じやすく、品質ばらつきを生じやすい。
【0019】
また、特許文献8では、表面外観と機械的物性の優れた型内成形体を得るために特定の構造を有するポリプロピレン系樹脂にテルペン系樹脂や石油樹脂を含有させたポリプロピレン系樹脂を予備発泡粒子の基材とする技術が開示されているが、薄肉形状を有する成形体に適用した場合の薄肉部の成形性や美麗性については、言及されていない。また、特定の高価なポリプロピレン系樹脂を使用することから、経済性の面にも問題がある。
【0020】
特定のメルトインデックスの樹脂を混合して得られた特定のメルトインデックスの樹脂によるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子が表面性、融着が良好であることが特許文献9で見出されているが、より高度な二次発泡性や融着性を必要とする薄肉形状を有する成形体に適用する場合は、効果が十分でない場合があった。
【0021】
以上のように、“内倒れ”となりにくい高剛性の樹脂を基材とした予備発泡粒子を一般的な仕様の成形機で外観美麗な成形体を低コストで得ることは困難であり、なおかつ薄肉部位のような複雑形状を有する型内発泡成形体で満足な成形性や表面美麗性を得ることはさらに困難であった。
【特許文献1】特開平8−277340号公報
【特許文献2】特開平10−45938号公報
【特許文献3】特開平10−316791号公報
【特許文献4】特開平11−156879号公報
【特許文献5】特開平7−258455号公報
【特許文献6】特開平1−242638号公報
【特許文献7】特開2002−167460号公報
【特許文献8】特開2005−29773号公報
【特許文献9】特開2000−327825号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の目的は、例えば、箱型形状のように内倒れの起こりやすい形状、さらには発泡粒子の粒径1〜3個分程度の厚みである、いわゆる薄肉部位を有する複雑な形状の型内成形において、短時間の乾燥で、内倒れを解消し得、なおかつ良好な表面美麗性が得られ、更には薄肉部位の美麗性が優れた型内成形体を容易に得ることができるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、上記課題に鑑みて鋭意研究した結果、コモノマーとして1−ブテンとエチレンを含み、MFRが10g/10分以上30g/10分以下であるポリプロピレン系樹脂(A)70重量%以上95重量%以下、とコモノマーとしてエチレンを含み、MFRが0.1g/10分以上3g/10分以下であるポリプロピレン系樹脂(B)5重量%以上30重量%以下を含んでなり、MFR、融点がいずれも所定の範囲内にあるポリプロピレン系樹脂、と石油樹脂および/またはテルペン系樹脂を含有するポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とすることを特徴とするポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を用いることにより、成形時の成形加工温度が低いながらも、内倒れを抑止し、かつ表面美麗性であり、特に薄肉部位の美麗性が良好な型内発泡成形体が得られることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0024】
すなわち、本発明の第1は、プロピレン系樹脂(C)中、下記ポリプロピレン系樹脂(A)70重量%以上95重量%以下と下記ポリプロピレン系樹脂(B)5重量%以上30重量%以下を含んでなり、MFRが5g/10分以上20g/10分以下、融点が140℃以上155℃以下であるポリプロピレン系樹脂(C)と石油樹脂および/またはテルペン系樹脂を含有するポリプロピレン系樹脂組成物を基材樹脂とすることを特徴とするポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子に関する。
ポリプロピレン系樹脂(A):コモノマーとして1−ブテンとエチレンを含み、MFRが10g/10分以上30g/10分以下
ポリプロピレン系樹脂(B):コモノマーとしてエチレンを含み、MFRが0.1g/10分以上3g/10分以下
好ましい態様としては、
(1)石油樹脂および/またはテルペン系樹脂の添加量が、ポリプロピレン系樹脂(C)に対し1重量%以上20重量%以下であること、
(2)ポリプロピレン系樹脂組成物のMFRが5g/10分以上20g/10分以下、融点が140℃以上155℃以下であり、かつ下記条件式を満たすこと、
〔MFR(g/10分)〕≧1.6×〔融点(℃)〕−235 (1)
(3)示差走査熱量計法による測定において2つの融解ピークを有し、該融解ピークのうち低温側の融解ピーク熱量Qlと、高温側の融解ピーク熱量Qhから算出した、高温側の融解ピークの比率Qh/(Ql+Qh)×100が、13%以上50%以下であること、
を特徴とする前記記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子に関する。
【0025】
本発明の第2は、前記記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を用いて得られる、密度が10kg/m3以上300kg/m3以下の型内発泡成形体に関する。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、剛性が高く、かつ表面美麗性の高いポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を、特殊な成形機を使用しなくとも安定的により低い成形加工温度で製造することができる。本発明のポリプロピレン系予備発泡粒子は、とりわけ薄肉部位を有する成形体を成形した場合において、内倒れを防止することが出来、かつ薄肉部位の発泡粒子の伸びが良好な成形体を
得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明において、ポリプロピレン系樹脂とは、モノマーとしてプロピレンを主体とした樹脂であり、共重合成分としては、エチレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3,4−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、3−メチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンなどの炭素数2または4〜12のα−オレフィン、シクロペンテン、ノルボルネン、テトラシクロ[6,2,11,8,13,6]−4−ドデセンなどの環状オレフィン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエンなどのジエン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなどのビニル単量体などが挙げられる。これらのうち、エチレン、1−ブテンを使用することが耐寒脆性向上、安価等という点で好ましい。
【0028】
本発明におけるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を構成する基材樹脂は、ポリプロピレン系樹脂(C)と石油樹脂および/またはテルペン系樹脂を含有するポリプロピレン系樹脂組成物からなる。
【0029】
本発明に用いるポリプロピレン系樹脂(C)は、MFRが5g/10分以上20g/10分以下、融点が140℃以上155℃以下であり、さらに、下記条件式を満たすことが好ましい。
〔MFR(g/10分)〕≧1.6×〔融点(℃)〕−235 (1)
さらにポリプロピレン系樹脂(C)は、後述するポリプロピレン系樹脂(A)70重量%以上95重量%以下、とポリプロピレン系樹脂(B)5重量%30重量%以下を含んでなる。ポリプロピレン系樹脂(C)中ポリプロピレン系樹脂(A)を70重量%以上95重量%以下含むと、該ポリプロピレン系樹脂からなる樹脂組成物を基材樹脂とするポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子から得られる型内発泡成形体の剛性が高くなる傾向にある。
【0030】
本発明における、ポリプロピレン系樹脂(A)は、プロピレンを主体として、1−ブテンとエチレンを含んでなる共重合体であり、具体的には、エチレン−ブテン−プロピレンランダムターポリマー、エチレン−ブテン−プロピレンブロックターポリマーなどが挙げられるが、エチレン−ブテン−プロピレンランダムターポリマーが好ましい。該ポリプロピレン系樹脂(A)は、メルトフローレート(MFR)が10g/10分以上30g/10分以下であり、より好ましくは、10g/10分以上20g/10分以下である。
【0031】
本発明におけるポリプロピレン系樹脂(B)は、プロピレンを主体として、エチレンを含んでなる共重合体を言い、具体的には、エチレン−プロピレンランダムコポリマー、エチレン−ブテン−プロピレンランダムターポリマー、エチレン−プロピレンブロックコポリマー、エチレン−ブテン−プロピレンブロックターポリマーなどが挙げられるが、エチレン−プロピレンランダムコポリマー、エチレン−ブテン−プロピレンランダムターポリマーが好ましい。該ポリプロピレン系樹脂(B)は、MFRが、0.1g/10分以上3g/10分以下であり、より好ましくは、MFRは0.3g/10分以上2g/10分以下である。
【0032】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂(C)と石油樹脂および/またはテルペン系樹脂を含有する。
【0033】
前記石油樹脂は、従来公知の石油樹脂及び水添石油樹脂から選ばれる少なくとも1種である。
【0034】
この石油樹脂は、シクロペンタジエン等の石油系不飽和炭化水素、高級オレフィン系炭化水素、または芳香族炭化水素等を主原料(50重量%以上)とする樹脂である。これらの石油樹脂の中でも、ポリプロピレン系樹脂への相溶性の高い水素化された水添石油樹脂が好ましい。
【0035】
前記テルペン系樹脂は、(C58nの組成で表される炭化水素化合物、すなわちテルペンの単独重合体、またはテルペンと共重合可能なモノマーとテルペンとの共重合体が挙げられる。通常、前記nは、2〜30の整数であるが、8〜20の整数であることが好ましい。前記組成式(C58nで表されるテルペンとしては、例えば、ピネン、ジペンテン、カレン、ミルセン、オシメン、リモネン、テルピノレン、テルピネン、サビネン、トリシクレン、ビサボレン、ジンギベレン、サンタレン、カンホレン、ミレン、トタレン等が挙げられる。
【0036】
前記テルペン系樹脂とは、これらの単独重合体または共重合体をいう。これら単独重合体または共重合体の中でも、特にピネン及びジペンテン等の重合体が好ましく、さらに、ポリプロピレン系樹脂への相溶性の高い水素添加物が好ましい。また、水素添加物の中でも、水添率80%以上、特に90%以上のものが好ましい。
【0037】
これらの石油樹脂、テルペン系樹脂の中でも、環球法により測定した軟化点が80℃〜150℃であるものを使用することが好ましい。石油樹脂および/またはテルペン系樹脂の添加量としては、ポリプロピレン系樹脂(C)100重量部に対して、1重量部以上20重量部以下が好ましく、1重量部以上10重量部以下がより好ましい。1重量部未満であると、効果である予備発泡粒子の加熱成形時の美麗な表面性や融着生を得難くなる傾向があり、20重量部より多くなると、基材樹脂を構成するポリプロピレン系樹脂が本来有する剛性や耐熱性を害する恐れがある。
【0038】
ポリプロピレン系樹脂組成物のMFRは、5g/10分以上20g/10分以下であることが好ましく、さらに好ましくは7g/10分以上15g/10分以下である。MFRが当該範囲内であると型内発泡成形時の成形温度、成形時間のバランスが良く、良好な表面美麗性、特に型形状に薄肉部位がある場合の当該部位が良好な表面美麗性を得やすい傾向にある。
【0039】
またポリプロピレン系樹脂組成物の融点は、140℃以上155℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは145℃以上152℃以下である。融点が当該範囲内であると、現状よく用いられている0.4MPa耐圧仕様の成形機でも良好な型内発泡成形体が得られる傾向にある。
【0040】
また、ポリプロピレン系樹脂組成物は、MFRと融点の間に下記条件式(1)を満たすことが好ましい。
〔MFR(g/10分)〕≧1.6×〔融点(℃)〕−235 (1)
MFR、融点のそれぞれが前記範囲内であり、前記条件式(1)を満たすと、成形加熱蒸気圧力を高くしなくとも、表面美麗性の高い型内発泡成形体を得ることが出来る傾向にある。
【0041】
これらのポリプロピレン系樹脂は無架橋の状態が好ましいが、パーオキサイドや放射線により架橋させても良い。またポリプロピレン系樹脂と混合使用可能な他の熱可塑性樹脂、例えば低密度ポリエチレン、直鎖状密度ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブテン、アイオノマー等をポリプロプレン系樹脂の特性が失われない範囲で混合使用しても良い。
【0042】
上記のポリプロピレン系樹脂は、通常、予備発泡に利用されやすいようにあらかじめ押出機、ニーダー、バンバリミキサー、ロール等を用いて溶融し、円柱状、楕円状、球状、立方体状、直方体状等のような所望の粒子形状で、その粒子の平均粒重量が0.5〜3.0mgが好ましくは0.5〜2.0mg、更に好ましくは0.5〜1.5mgになるように成形加工される。界面活性剤型もしくは高分子型の帯電防止剤、顔料、難燃性改良材、導電性改良材等必要により加えられる成分は、通常、樹脂粒子の製造過程において溶融した樹脂中に添加することが好ましい。
【0043】
予備発泡粒子を製造するに当たり、発泡剤に特に制限はなく、プロパン、イソブタン、ノルマルブタン、イソペンタン、ノルマルペンタン等の脂肪族炭化水素およびそれらの混合物;空気、窒素、二酸化炭素等の無機ガス;水等が例示できるが、設備コスト、生産コストに優れる水を発泡剤として使用することが好ましい。
【0044】
水を発泡剤として使用する場合、高い発泡倍率の予備発泡粒子を得るために、ポリプロピレン系樹脂に親水性ポリマー、トリアジン骨格を有する化合物のうち1種以上の化合物を添加することが好ましい。ここで親水性ポリマーとは、エチレン−アクリル酸−無水マレイン酸三元共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体を金属イオンで架橋したアイオノマー樹脂などのカルボキシル基含有ポリマー等があげられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用しても良い。特にエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体をナトリウムイオン、カリウムイオンなどのアルカリ金属イオンで架橋させたエチレン系アイオノマー樹脂が良好な含水率を与え、良好な発泡性を与えることから好ましい。さらにはエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体をカリウムイオンで架橋させたエチレン系アイオノマー樹脂がより大きな平均セル径を与えることから、より好ましい。
【0045】
前記親水性ポリマーの使用量は親水性ポリマーの種類にもより、特に限定されないが、通常ポリプロピレン系樹脂(C)100重量部に対して、0.01重量部以上20重量部未満が好ましく、0.5重量部以上5重量部未満がより好ましい。0.01重量部未満では、高発泡倍率の予備発泡粒子が得られにくく、20重量部以上では耐熱性、機械強度の低下が大きくなる場合がある。
【0046】
前記トリアジン骨格とは、単位トリアジン骨格あたりの分子量が300以下のものが好ましい。ここで、トリアジン骨格あたりの分子量とは、1分子中に含まれるトリアジン骨格数で分子量を除した値である。単位トリアジン骨格あたりの分子量が300を超えると発泡倍率ばらつき、セル径ばらつきが目立つ場合がある。単位トリアジン骨格あたりの分子量が300以下の化合物としては、例えば、メラミン(化学名1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン)、アンメリン(同1,3,5−トリアジン−2−ヒドロキシ−4,6−ジアミン)、アンメリド(同1,3,5−トリアジン−2,4−ヒドロキシ−6−アミン)、シアヌル酸(同1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオール)、トリス(メチル)シアヌレート、トリス(エチル)シアヌレート、トリス(ブチル)シアヌレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)シアヌレート、メラミン・イソシアヌル酸縮合物などがあげられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用しても良い。これらの内、高発泡倍率の予備発泡粒子を発泡倍率ばらつき、セル径ばらつきが少なく得るためには、メラミン、イソシアヌル酸、メラミン・イソシアヌル酸縮合物を使用することが好ましい。
【0047】
前記ポリプロピレン系樹脂粒子を、従来から知られている方法を利用して、例えば、耐圧容器内で水中に分散させ、プロピレン系樹脂分散物とし、該分散物を好ましくは該ポリプロピレン系樹脂粒子の融点−25℃から+25℃、更に好ましくは−10℃から+10℃の範囲の温度に加熱するとともに窒素、空気などの無機ガスで加圧して該ポリプロピレン系樹脂粒子内に水を含浸させ、加圧下で容器内の温度、圧力を一定に保持しながら、該ポリプロピレン系樹脂粒子と水との分散物を容器内よりも低圧の雰囲気下に放出することによりポリプロピレン系予備発泡粒子を製造する。低圧雰囲気に放出する際、該低圧雰囲気は、発泡倍率を高くするために高温に保持されていることが好ましく、高温空気、水蒸気などで80℃以上100℃以下、より好ましくは90℃以上100℃以下に保持する。80℃未満である場合、高発泡倍率の予備発泡粒子が得られにくく、予備発泡粒子を発泡直後に冷却する効果から予備発泡粒子の収縮を招きやすい。100℃以上の場合、予備発泡粒子同士の融着を招く場合がある。
【0048】
予備発泡粒子製造時における密閉容器には特に制限はなく、予備発泡粒子製造時における容器内圧力、容器内温度に耐えられるものであればよいが、例えばオートクレーブ型の耐圧容器があげられる。
【0049】
前記分散物の調製に際しては、分散剤として、例えば第三リン酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の無機系分散剤と、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、n−パラフィンスルホン酸ソーダ、α−オレフィンスルホン酸ソーダ等の分散助剤を使用されることが好ましい。これらの中でも第三リン酸カルシウムとドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの併用が更に好ましい。分散剤や分散助剤の使用量は、その種類や、用いるポリプロピレン系樹脂の種類と使用量によって異なるが、通常、水100重量部に対して分散剤0.2〜3重量部を配合することが好ましく、分散助剤0.001〜0.1重量部を配合することが好ましい。また、ポリプロピレン系樹脂粒子は、水中での分散性を良好なものにするために、通常、水100重量部に対して20〜100重量部使用するのが好ましい。
【0050】
以上の製造方法により得られるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の発泡倍率は、好ましくは5倍以上50倍以下であり、さらに好ましくは7倍以上45倍以下である。
また、一旦5倍以上35倍以下の予備発泡粒子を製造し、予備発泡粒子を密閉容器内に入れて窒素、空気などを含浸させる加圧処理により予備発泡粒子内の圧力を常圧よりも高くした後、該発泡粒子をスチーム等で加熱して更に発泡させる二段発泡法等の方法で50倍以上の二段発泡予備発泡粒子を得ても良い。
【0051】
本発明のポリプロピレン系予備発泡粒子は、示差走査熱量計法による測定において2つの融解ピークを有し、該融解ピークのうち低温側の融解ピーク熱量Qlと、高温側の融解ピーク熱量Qhから算出した、高温側の融解ピークの比率Qh/(Ql+Qh)×100(以下、DSC比と略す)が13%以上50%以下であることが好ましく、より好ましくは18%以上40%以下の範囲である。DSC比が当該範囲であると、表面美麗性の高い型内発泡成形体が得られやすい。
【0052】
本発明のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形に用いる場合には、イ)そのまま用いる方法、ロ)あらかじめ予備発泡粒子中に空気等の無機ガスを圧入し、発泡能を付与する方法、ハ)予備発泡粒子を圧縮状態で金型内に充填し成形する方法、など従来既知の方法が使用しうる。
【0053】
本発明のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子から型内発泡成形体を成形する方法としては、たとえばあらかじめ予備発泡粒子を耐圧容器内で空気加圧し、粒子中に空気を圧入することにより発泡能を付与し、これを閉鎖しうるが密閉し得ない成形型内に充填し、水蒸気などを加熱媒体として0.20〜0.4MPa程度の加熱水蒸気圧で3〜30秒程度の加熱時間で成形しポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子同士を融着させ、このあと成形金型を水冷により型内発泡成形体取り出し後の型内発泡成形体の変形を抑制できる程度まで冷却した後、金型を開き、型内発泡成形体を得る方法などが挙げられる。
【0054】
本発明のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を用いて得られる型内発泡成形体の密度は、10kg/m3以上300kg/m3以下であることが好ましく、より好ましくは15kg/m3以上250kg/m3以下である。
【0055】
本発明の型内発泡成形体は、薄肉部を有する成形体において内倒れを防止し、薄肉部の伸びを良好に出来ることから、一般緩衝包材、自動車内装部材、通い箱等に好適に使用することが出来る。
【0056】
次に本発明におけるMFR、融点、DSC比の測定方法について説明する。
【0057】
MFRの測定は、JIS−K7210記載のMFR測定器を用い、オリフィス2.0959±0.005mmφ、オリフィス長さ8.000±0.025mm、荷重2160g、230±0.2℃の条件下で測定したときの値である。
【0058】
融点の測定はセイコーインスツルメンツ(株)製のDSC6200型示差走査熱量計を用いて、ポリプロピレン系樹脂粒子5〜6mgを10℃/minの昇温速度で40℃から220℃まで昇温する事により樹脂粒子を融解し、その後10℃/minで220℃から40℃まで降温することにより結晶化させた後に、さらに10℃/minで40℃から220℃まで昇温したときに得られるDSC曲線から、2回目の昇温時の融解ピーク温度として求められる値である。
【0059】
DSC比の測定はセイコーインスツルメンツ(株)製のDSC6200型示差走査熱量計を用いて、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子5〜6mgを10℃/minの昇温速度で40℃から220℃まで昇温する際に得られる融解曲線(図1に例示)において、2つのピークを有し、該融解ピークのうち低温側の融解ピーク熱量Qlと、高温側の融解ピーク熱量Qhから算出した、高温側の融解ピークの比率Qh/(Ql+Qh)×100で表されるパラメータである。
【実施例】
【0060】
つぎに、本発明を実施例及び比較例に基づき説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0061】
また実施例及び比較例における評価は下記の方法で行った。
【0062】
〔予備発泡粒子の発泡倍率〕嵩体積約50cm3のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の重量w(g)およびエタノール水没体積v(cm3)を求め、発泡前の樹脂粒子の密度d(g/cm3)から次式により求める。
発泡倍率=d×v/w
〔最低成形加熱蒸気圧力〕東洋機械金属株式会社製ポリオレフィン発泡成形機パールスターP−150Nを用い、縦270mm×横290mm×厚み40mmのブロック金型に、あらかじめ粒子内部の空気圧力が2.0atmになるように調整したポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を充填し、まず0.1MPaの水蒸気で金型内の空気を追い出し、その後任意の圧力の加熱蒸気を用いて10秒間加熱成形させることにより、ポリプロピレン系樹脂発泡成形体を得る。この発泡成形体の表面状態を観察し、表面に凹凸が無く、かつ各粒子間の間隙もほとんど目立たない成形体を得ることのできる加熱蒸気圧力の内、最低の圧力を最低成形加熱蒸気圧力とした。良好な表面美麗性を与える最も低い成形加熱蒸気圧力であり、表面美麗性、成形性の尺度とし、一般に用いられる0.4MPa耐圧仕様の成形機を用いる場合の連続生産可能圧力である0.34MPa以下を基準とした。
【0063】
〔成形評価〕東洋機械金属株式会社製ポリオレフィン発泡成形機パールスターP−150Nを用い、0.28MPaの水蒸気加熱により成形した後、25℃で2時間静置し、次いで65℃に温調した恒温室内に5時間静置した後、取り出し、25℃で放冷し、図3に示す成形体を得た。成形体2試験体の寸法(b)を測定、平均値化し、製品要求品質345mmとの差を求め、要求品質との差が−2.0〜+2.0mmであることを合格とした。また、薄肉部位の表面性の評価では、皺や収縮跡がほとんどないことを合格(○)とした。
【0064】
表1に示すMFR、融点を持つポリプロピレン系樹脂を用い、表2に示す比率の樹脂100重量部に対し、造核剤としてタルクを0.3重量部、メラミン0.5重量部になるように添加・混合し、50mmφ単軸押出機で混練したのち造粒し、ポリプロピレン系樹脂粒子(1.3mg/粒)を製造した。
【0065】
【表1】

該樹脂粒子100重量部、分散剤としてパウダー状塩基性第3リン酸カルシウム2重量部および分散助剤としてn−パラフィンスルホン酸ソーダ0.05重量部を含む水系分散媒300重量部を、内容量10Lの耐圧容器に仕込み、攪拌しながら表2記載の温度まで昇温し、窒素を圧入して表2記載の圧力に調整し、30分間保持した。その後、窒素を圧入しながら容器内温、圧力を3.0MPaに保持しつつ、耐圧容器下部のバルブを開いて、水系分散媒を開孔径4.0mmφのオリフィス板を通して蒸気により95℃に調節された大気圧下に放出することによってポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子をえた。得られた予備発泡粒子内に空気含浸により3.0MPaの内圧を付与し、60〜90kPaの蒸気により加熱し、表2に示すように発泡倍率約29倍の発泡粒子を得た。
【表2】

【0066】
次に得られた発泡粒子を用いて最低成形加熱蒸気圧力、および箱形成形体の成形評価結果(内倒れ量、薄肉部表面性)を行った。
【表3】

【0067】
実施例で示す樹脂を用いたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子と、比較例1〜4で示す。通常使用されているポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子のそれぞれの評価結果を比べると、本発明記載の技術を用いた実施例では、最低成形蒸気過熱圧力、内倒れ量および薄肉部表面性のすべてで優れた結果が得られたのに対し、比較例4では最低加熱圧が装置限界を超える圧力となり、比較例2および3では内倒れ量が大きく、比較例1、2および4では薄肉部の表面性が製品レベルに達しなかった。
【0068】
以上のように、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子において、本発明記載の技術を用いると、現状よく用いられている0.4MPa耐圧仕様の成形機を用いて、表面美麗でかつ乾燥時間が短く成形体を得られることから効率的に成形体の製造が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】示差走査熱量計を用い、本発明記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を測定した際に得られるDSC曲線の一例である。横軸は温度、縦軸は吸熱量である。低温側の網掛け部分がQl、高温側の網掛け部分がQhである。
【図2】成形評価に用いた箱型成形体の形状を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0070】
a 薄肉形状部位
b 中央部寸法を測定した箇所
c 端部寸法を測定した箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン系樹脂(C)中、下記ポリプロピレン系樹脂(A)70重量%以上95重量%以下と下記ポリプロピレン系樹脂(B)5重量%以上30重量%以下を含んでなり、MFRが5g/10分以上20g/10分以下、融点が140℃以上155℃以下であるポリプロピレン系樹脂(C)と石油樹脂および/またはテルペン系樹脂を含有するポリプロピレン系樹脂組成物を基材樹脂とすることを特徴とするポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子。
ポリプロピレン系樹脂(A):コモノマーとして1−ブテンとエチレンを含み、MFRが10g/10分以上30g/10分以下
ポリプロピレン系樹脂(B):コモノマーとしてエチレンを含み、MFRが0.1g/10分以上3g/10分以下
【請求項2】
石油樹脂および/またはテルペン系樹脂の添加量が、ポリプロピレン系樹脂(C)に対し1重量%以上20重量%以下であることを特徴とする請求項1記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子。
【請求項3】
ポリプロピレン系樹脂組成物のMFRが5g/10分以上20g/10分以下、融点が140℃以上155℃以下であり、かつ下記条件式を満たすことを特徴とする請求項1または2記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子。
〔MFR(g/10分)〕≧1.6×〔融点(℃)〕−235 (1)
【請求項4】
示差走査熱量計法による測定において2つの融解ピークを有し、該融解ピークのうち低温側の融解ピーク熱量Qlと、高温側の融解ピーク熱量Qhから算出した、高温側の融解ピークの比率Qh/(Ql+Qh)×100が、13%以上50%以下であることを特徴とする請求項1〜3何れか一項記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子。
【請求項5】
請求項1〜4何れか一項記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を用いて得られる、密度が10kg/m3以上300kg/m3以下の型内発泡成形体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−106150(P2008−106150A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290411(P2006−290411)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】