説明

ポリプロピレン系樹脂組成物およびそれからなるフィルム

【課題】滑り性、透明性および耐衝撃性に優れ、さらに耐熱安定性に優れたポリプロピレン系樹脂組成物およびそれからなるフィルムを提供する。
【解決手段】下記のポリプロピレン系樹脂(A)75〜95重量%と、エチレン−ブテン−1共重合体(B)5〜25重量%を含有するポリプロピレン系樹脂組成物およびそれからなるフィルム。
ポリプロピレン系樹脂(A)は、プロピレンに由来する構造を主成分とする重合体であって、融点が138℃〜150℃であるプロピレン系重合体(A−1)を含有し、当該プロピレン系重合体(A−1)100重量部に対して、特定の式で示されるベンゾフラン化合物(A−2)0.01〜0.05重量部と、リン系酸化防止剤(A−3)0.05〜0.30重量部と、フェノール系酸化防止剤(A−4)0〜0.03重量部とを含有するポリプロピレン系樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂組成物およびそれからなるフィルムに関するものである。さらに詳しくは、滑り性、透明性および耐衝撃性に優れ、さらに耐熱安定性に優れたポリプロピレン系樹脂組成物およびそれからなるフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系フィルムは光学的性質や機械的性質が優れていることから包装分野で広く使用されている。
例えば、特開平11−255980号公報には、包装用フィルムの加工安定性を改良する手段として、ポリプロピレン系樹脂と特定の構造を有するベンゾフラノン化合物を含有するポリプロピレン系樹脂組成物からなる包装用フィルムが記載されている。
【0003】
また、特開2003−12873号公報には、ポリプロピレン系フィルムの透明性および滑り性を改良する手段として、ポリプロピレン93〜99.89重量%と、密度が0.940g/cm3以上であるポリエチレン0.01〜2重量%と、密度が0.910〜0.935g/cm3である高圧法低密度ポリエチレン0.1〜5重量%を含むフィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−255980号公報
【特許文献2】特開2003−12873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポリプロピレン系フィルムの耐衝撃性を改良するために、ポリエチレン、プロピレンとエチレンの共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体を添加する場合がある。しかしながらこれらの添加成分は低結晶性であることから、耐衝撃性が改良されたフィルムの滑り性は必ずしも充分でないことがあり、また、添加により透明性が悪化する場合もあった。さらに、ポリプロピレン系フィルムをキャスト法によって製造する場合、加工時に、ポリプロピレン系樹脂が溶融されるため、高温での熱安定性が求められるという事情から、ポリプロピレン系樹脂組成物およびそれからなるフィルムの滑り性、透明性および耐衝撃性に加えて、耐熱安定性を改良することが求められていた。
かかる状況の下、本発明の目的は、滑り性、透明性および耐衝撃性に優れ、さらに耐熱安定性に優れたポリプロピレン系樹脂組成物およびそれからなるフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、かかる実状に鑑み、鋭意検討の結果、本発明が、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、
下記のポリプロピレン系樹脂(A)75〜95重量%と、エチレン−ブテン−1共重合体(B)5〜25重量%を含有するポリプロピレン系樹脂組成物(ただし、ポリプロピレン系樹脂組成物の全量を100重量%とする)。
ポリプロピレン系樹脂(A)は、
プロピレンに由来する構造を主成分とする重合体であって、融点が138℃〜150℃であるプロピレン系重合体(A−1)を含有し、当該プロピレン系重合体(A−1)100重量部に対して、
下記式(1)で示されるベンゾフラン化合物(A−2)0.01〜0.05重量部と、
リン系酸化防止剤(A−3)0.05〜0.30重量部と、
フェノール系酸化防止剤(A−4)0〜0.03重量部とを含有するポリプロピレン系樹脂である。

【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、滑り性、透明性および耐衝撃性に優れ、さらに耐熱安定性に優れたポリプロピレン系樹脂組成物およびそれからなるフィルムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂(A)は、プロピレンに由来する構造を主成分とする重合体であって、融点が138℃〜150℃であるプロピレン系重合体(A−1)を含有し、当該プロピレン系重合体(A−1)100重量部に対して、
前記式(1)で示されるベンゾフラン化合物(A−2)0.01〜0.05重量部と、
リン系酸化防止剤(A−3)0.05〜0.30重量部と、
フェノール系酸化防止剤(A−4)0〜0.03重量部とを含有するポリプロピレン系樹脂である。
【0009】
プロピレン系重合体(A−1)は、プロピレンに由来する構造を主成分とする重合体であり、透明性の観点から、好ましくは、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体およびプロピレン−エチレン−α−オレフィンランダム共重合体から選ばれる少なくとも1種のランダム共重合体である。
【0010】
ランダム共重合体とは、プロピレンに由来する構造の連鎖に、エチレンに由来する構造またはブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1などの炭素数4以上のα−オレフィンに由来する構造が、ランダムに結合したものである。エチレンに由来する構造、または、炭素数4以上のα−オレフィンに由来する構造は、プロピレンに由来する構造の連鎖に、単独で結合していてもよく、少なくとも2種が結合していてもよい。
【0011】
ランダム共重合体に含有されるエチレンに由来する構造の含有量(以下、エチレン含量と称する)は、通常0.5〜10重量%であり、炭素数4以上のα−オレフィンに由来する構造の含有量(以下、α−オレフィン含量と称する)は、通常は1〜20重量%である(ただし、ランダム共重合体の全量を100重量%とする)。
【0012】
ランダム共重合体として、好ましくは、耐衝撃性の観点から、プロピレンに由来する構造とエチレンに由来する構造からなるランダム共重合体である。このランダム共重合体に含有されるエチレンの含有量は、通常0.5〜10重量%であり、透明性や耐熱性の点から、好ましくは2〜6重量%である。
【0013】
プロピレン系重合体(A−1)の融点は、138℃〜150℃である。プロピレン系重合体(A−1)の融点が150℃を超えると、ポリプロピレン系樹脂組成物の透明性や耐衝撃性が劣ることがあり、融点が138℃未満であると、耐熱性が劣ることがある。
【0014】
また、プロピレン系重合体(A−1)として、プロピレンに由来する構造を主体とする重合体を単独で用いてもよく、少なくとも2種を併用してもよい。少なくとも2種を併用する場合も、少なくとも2種の混合物の融点は、138℃〜150℃である。そして、少なくとも2種の混合物として、好ましくは、フィルムを製膜した場合に、混合不良による「ムラ」や「フィッシュアイ」の発生を防止するという観点から、均一な混合物である。
【0015】
プロピレン系重合体(A−1)の製造方法としては、一般に公知の重合触媒と公知の重合方法を用いる製造方法が挙げられる。
公知の重合触媒としては、例えば、マグネシウム化合物にTi化合物を複合化させた固体触媒成分等からなるTi−Mg系触媒、このマグネシウム化合物にTi化合物を複合化させた固体触媒成分に有機アルミニウム化合物および必要に応じて電子供与性化合物等の第3成分を組み合わせた触媒等が挙げられる。
【0016】
好ましくは、例えば、特開昭61−218606号公報、特開昭61−287904号公報、特開平7−216017号公報、特開2004−67850号公報等に記載されたマグネシウム、チタンおよびハロゲンを必須成分とする固体触媒成分、有機アルミニウム化合物および電子供与性化合物からなる触媒である。
【0017】
公知の重合方法としては、不活性溶媒の存在下で行われる溶媒重合法、実質上液状の媒体の不存在下で液状のモノマーの存在下で行われる塊状重合法、気体のモノマーの存在下で行われる気相重合法、それらの組み合わせからなる重合法等が挙げられ、好ましくは気相重合法、または塊状重合法、もしくは気相重合法と塊状重合法の組み合わせからなる重合法である。
【0018】
本発明で用いられるベンゾフラン化合物は、前記式(1)で示されるベンゾフラン化合物(A−2)である。
ポリプロピレン系樹脂(A)に含有されるベンゾフラン化合物(A−2)の含有量は、プロピレン系重合体(A−1)100重量部に対して、0.01〜0.05重量部であり、好ましくは0.015〜0.05重量部である。
ベンゾフラン化合物(A−2)の含有量が、上記の範囲よりも少ない場合は、ポリプロピレン系樹脂組成物の耐熱安定性が悪化することがあり、上記の範囲よりも多い場合は、不経済であり、また、ポリプロピレン系フィルムの滑り性が悪化することがある。
【0019】
本発明で用いられるリン系酸化防止剤(A−3)は、例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンフォスフォナイト、トリス(ノニルフェニル)フォスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス(2,4−ジ−t―ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン6−イル]オキシ]−N,N−ビス[2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン−6−イル]オキシ]−エチル]エタナミン等が挙げられる。好ましくは、耐加水分解性の観点から、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトである。これらのリン系酸化防止剤は、単独で用いてもよく、少なくとも2種を併用してもよい。
【0020】
ポリプロピレン系樹脂(A)に含有されるリン系酸化防止剤(A−3)の含有量は、プロピレン系重合体(A−1)100重量部に対して、0.05〜0.3重量部であり、好ましくは、0.10〜0.2重量部である。リン系酸化防止剤(A−3)の含有量が、上記の範囲よりも少ない場合は、ポリプロピレン系樹脂組成物の耐熱安定性が悪化することがあり、上記の範囲よりも多い場合は、ポリプロピレン系フィルムの滑り性が悪化することがある。
【0021】
本発明で用いられるフェノール系酸化防止剤(A−4)は、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレイト、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレイト、テトラキス[メチレン−3(3’,5’ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート] 、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(ル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン等が挙げられる。これらのフェノール系酸化防止剤は、単独で用いてもよく、少なくとも2種を併用してもよい。
【0022】
ポリプロピレン系樹脂(A)に含有されるフェノール系酸化防止剤(A−4)の含有量は、プロピレン系重合体(A−1)100重量部に対して、ポリプロピレン系フィルムの滑り性の観点から、0〜0.03重量部であり、好ましくは、0〜0.02重量部であり、より好ましくは0〜0.01重量部である。
【0023】
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂(A)のメルトフローレートは、加工性または透明性の観点から、好ましくは2〜20g/10分であり、より好ましくは5〜15g/10分である。
【0024】
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂(A)の製造方法としては、例えば、プロピレン系重合体(A−1)と、ベンゾフラン化合物(A−2)と、リン系酸化防止剤(A−3)と、フェノール系酸化防止剤(A−4)と、必要に応じて添加されるその他の添加剤とを、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、ナウターブレンダー、タンブルミキサー等のミキサーで均一に混合した後、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー等を使用して、溶融混練する方法が挙げられる。
【0025】
本発明で用いられるエチレン−ブテン−1共重合体(B)は、エチレンとブテン−1を共重合して得られた共重合体である。エチレン−ブテン−1共重合体(B)の密度は、耐衝撃性および滑り性の点から、好ましくは、850〜900Kg/m3である。また、エチレン−ブテン−1共重合体(B)のメルトフローレートは、透明性の観点から、好ましくは0.5〜10g/10分であり、より好ましくは0.6〜3g/10分である。
【0026】
エチレン−ブテン−1共重合体(B)の製造方法としては、例えば、不均一系触媒や、均一系触媒(例えば、メタロセン触媒等)を用いて、溶液重合、高圧重合や気相重合等によって製造する方法が挙げられる。
【0027】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に含有されるポリプロピレン系樹脂(A)の含有量は75〜95重量%であり、エチレン−ブテン−1共重合体(B)の含有量は5〜25重量%である(ただし、ポリプロピレン系樹脂組成物の全重量を100重量%とする)。
ポリプロピレン系樹脂(A)の含有量としては、透明性や耐衝撃性の観点から、好ましくは80〜95重量%であり、エチレン−ブテン−1共重合体(B)の含有量としては、透明性や耐衝撃性の観点から、好ましくは5〜20重量%である。
【0028】
ポリプロピレン系樹脂(A)の含有量が75重量%未満の場合(すなわち、エチレン−ブテン−1共重合体(B)の含有量が25重量%を超える場合)には、透明性が悪化することがある。また、ポリプロピレン系樹脂(A)の含有量が95重量%を超える場合(すなわち、エチレン−ブテン−1共重合体(B)の含有量が5重量%未満の場合)には、耐衝撃性が劣ることがある。
【0029】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法としては、例えば、
(1)ポリプロピレン系樹脂(A)を溶融混練する時に、エチレン−ブテン−1共重合体(B)を原料の一部として混合し、溶融混練する方法、
(2)ポリプロピレン系樹脂(A)とエチレン−ブテン−1共重合体(B)を混合して溶融混練する方法、
(3)フィルムを製造する時に、ポリプロピレン系樹脂(A)とエチレン−ブテン−1共重合体(B)を混合し、そのまま製膜する方法、
等が挙げられる。
【0030】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物、または、本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂(A)には、必要に応じて、その他の添加剤やその他の樹脂を添加しても良い。
その他の添加剤としては、例えば、本発明で用いられるベンゾフラン化合物(A−2)、リン系酸化防止剤(A−3)、フェノール系酸化防止剤(A−4)以外の酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、造核剤、アンチブロッキング剤等が挙げられる。
また、その他の樹脂としては、例えば、本発明で用いられるエチレン−ブテン−1共重合体(B)以外のエチレン−α−オレフィン共重合体や、エチレン単独重合体が挙げられる。
【0031】
本発明のポリプロピレン系フィルムは、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物からなるポリプロピレン系フィルムであり、単層フィルムでもあってもよく、本発明のポリプロピレン系フィルムからなる層を少なくとも1つ有する多層フィルムであってもよい。
本発明のポリプロピレン系フィルムの厚みは、通常10〜500μmであり、好ましくは10〜150μmである。
【0032】
本発明のポリプロピレン系フィルムの製造方法は、単層フィルムを製造する方法としては、例えば、通常用いられるインフレーション法、Tダイを用いるキャスト法等が挙げられ、多層フィルムを製造する方法としては、例えば、通常用いられるインフレーション法、Tダイを用いるキャスト法等によって、本発明のポリプロピレン系フィルムからなる層と他の層を共押し出しする加工法や押出ラミネート法等が挙げられる。好ましくは、Tダイを用いるキャスト法である。
【0033】
また、未延伸フィルムであってもよく、延伸フィルムであってもよい。好ましくは、未延伸フィルムである。
延伸フィルムを製造する場合、延伸方法としては、例えば、ロール延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法等を用いて一軸または二軸に延伸する方法が挙げられる。
【0034】
本発明のポリプロピレン系フィルムとして、好ましくは、透明性等の観点から、Tダイを用いるキャスト法によって製造される未延伸フィルムである。
【0035】
本発明のポリプロピレン系フィルムの用途としては、包装用途等が挙げられ、例えば、食品、繊維、雑貨等の包装用途が挙げられる。また、耐衝撃性が良好であることから、レトルト食品や重量物の包装にも好適に用いられる。
【0036】
また、本発明のポリプロピレン系フィルムと他のフィルムを貼り合わせたものも好適に用いられる。他のフィルムとしては、例えば、本発明のポリプロピレン系フィルム以外のポリプロピレン系フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリスチレンフィルム、アルミ箔、紙等が挙げられる。
貼り合わせる方法としては、例えば、熱ラミネート法、ドライラミネート法等が挙げられる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明について、実施例および比較例を用いて説明する。実施例および比較例における各項目の測定値は、下記の方法で測定した。
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
メルトフローレートはJIS K7210に準拠して測定した。ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレートは、温度230℃、荷重2.16kgfで測定した。エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体のメルトフローレートは、温度190℃、荷重2.16kgで測定した。
【0038】
(2)プロピレン系重合体のエチレン含量(単位:重量%)
高分子ハンドブック(1995年、紀伊国屋書店発行)の第616頁に記載されている方法によって求めた。
【0039】
(3)プロピレン系重合体のブテン−1含有量(重量%)
高分子ハンドブック(1995年、紀伊国屋書店発行)の第618頁記載されている方法によって求めた。
【0040】
(4)融点(Tm、単位:℃)
示差走査熱量計(パーキンエルマー社製DSC)を用いて、試片約10mgを窒素雰囲気下220℃で溶融させた後、急速に150℃まで冷却した。150℃で1分間保持した後、5℃/分の降温速度で50℃まで降温した。
その後に50℃で1分保持した後、5℃/分で昇温させて、得られた融解吸熱カーブの最大ピークのピーク温度の小数位以下を四捨五入してTm(融点)とした。ピークが複数あるものは、高温側のピークを採用した。
なお、本測定器を用いて5℃/分の降温速度ならびに昇温速度で測定したインジウム(In)のTmは156.6℃であった。
【0041】
(5)エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体の密度(単位:Kg/m3
JIS K6760に従って測定した。融点100℃以上のものはJIS K6760にあるアニーリングを行った後測定した。
【0042】
(6)ヘイズ(単位:%)
JIS K7105に従って測定した。
【0043】
(7)静止摩擦係数(単位:μs)
製膜時の滑りの評価として、製膜直後(製膜後1時間以内)のフィルムを用い、室温23℃、湿度50%のもと、MD100mm×75mmのフィルムサンプル2枚の測定面同士を重ね合わせて、設置面積63.5mm×63.5mmで重量200gの重りを用いてトーレ・スリップ・テスター F110型で移動速度15cm/分で測定した。
【0044】
(8)耐衝撃性(単位:Kg・cm/mm)
東洋精機製フィルムインパクトテスターを使用して、直径15mmの半球状衝撃頭を用いて、−10℃でフィルムの衝撃強度を測定した。
【0045】
(9)耐熱安定性(MFR比)
耐熱安定性は、ポリプロピレン系樹脂(A)またはそれに相当するポリプロピレン系樹脂を用いて、下記の実験「(10)繰り返し造粒」を行い、下記の式から算出さられたMFR比によって、評価した。MFR比が、1.8以上のものを「劣」、1.8未満のものを「良」とした。
(MFR比)=(繰り返し造粒後のMFR)/(繰り返し造粒前のMFR)
【0046】
(10)繰り返し造粒
40mm単軸押出機(VS40−28型:田辺プラスチックス機械社製、フルフライト型スクリュー付き)を用いて、280℃で溶融押し出しを行い再ペレット化した。この操作を合計3回行った。
【0047】
(実施例1)
(固体触媒の合成および予備活性化)
特開2004−067850号公報の実施例に準拠して製造されたマグネシウム、チタンおよびハロゲンを含む固体触媒成分15gに対して、十分に脱水脱気処理したn−ヘキサン1.5L、トリエチルアルミニウムを37.5ミリモル、シクロヘキシルエチルジメトキシシランを3.75ミリモルの割合で添加し、槽内温度を5〜15℃に保ちながらプロピレン35gの割合で連続的に供給して予備活性化を行った。
【0048】
(プロピレン系重合体(PP−1)の製造)
攪拌機付き流動床反応器に、重合温度80℃、重合圧力20Kg/cm2Gを保持するようにプロピレン、エチレン、水素を供給しながら、予備活性化された固体触媒成分、トリエチルアルミニウム、シクロヘキシルエチルジメトキシシランを連続的に供給し、連続重合を行った。予備活性化された固体触媒成分とトリエチルアルミニウムの単位時間あたり供給量の重量比は1:1.6であり、トリエチルアルミニウムとシクロヘキシルエチルジメトキシシランの単位時間あたりの供給モル比は1:0.15であった。また、平均滞留時間は4時間であった。プロピレンとエチレンの供給比はPP−1のエチレン含量が4.6重量%となるように調整した。PP−1の融点は138℃であった。PP−1のMFRが7.5となるように、水素の供給量を調整した。
【0049】
(ポリプロピレン系樹脂の製造)
上記重合によって得られたプロピレン系重合体(PP−1)100重量部に、前記式(1)で示されるベンゾフラン化合物(5,7−ジ−t−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン)を0.02重量部、リン系酸化防止剤トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(商品名:IRGAFOS168)0.15重量部を加え、スーパーミキサー(SMG100:株式会社川田製作所製)で均一に混合し、65mm単軸押出機(VS65−32:田辺プラスチックス機械株式会社製、ダルメージスクリュー付き)を用いて樹脂温度230℃で混練を行い、ポリプロピレン系樹脂を得た。ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレートは7.4g/10分であった。
【0050】
(フィルムの製造)
上記混練によって得られたポリプロピレン系樹脂85重量部に、メルトフローレートが1.2g/10分、密度885Kg/m3のエチレン−ブテン−1共重合体(EBR−1:商品名タフマーA1085)を15重量部、アンチブロッキング剤マスターバッチ1重量部を均一に混合し、50mmTダイ製膜装置(田辺プラスチックス株式会社製V−50−F600型フィルム成型装置、400mm幅Tダイ付き)を用いて樹脂温度250℃で溶融押出を行った。溶融押出されたものを40℃の冷却水を通水した冷却ロールで冷却して、厚さ30μmのフィルムを得た。
なお、アンチブロッキング剤マスターバッチは、特開2003−170420号公報の実施例4に記載されているサイリシア550(富士シリシア化学株式会社製)10重量%マスターバッチを用いた。
【0051】
(実施例2)
前記式(1)で示されるベンゾフラン化合物の量を0.05重量部とした以外は、実施例1と同様に行った。
【0052】
(実施例3)
ポリプロピレン系樹脂の製造時において、プロピレン系重合体(PP−1)100重量部に、前記式(1)で示されるベンゾフラン化合物(5,7−ジ−t−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン)を0.02重量部、リン系酸化防止剤トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(商品名:IRGAFOS168)0.15重量部、フェノール系酸化防止剤として、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:IRGANOX1010)0.02重量部を加えた以外は実施例1と同様に行った。
【0053】
(実施例4)
EBR−1の代わりに、メルトフローレートが3.6g/10分、密度885Kg/m3のエチレン−ブテン−1共重合体(EBR−2:商品名タフマーA4085)を用いた以外は実施例1と同様に行った。
【0054】
(実施例5)
(固体触媒の合成および予備活性化)
実施例1と同様に行った。
(プロピレン系重合体(PP−2)の製造)
実施例1と同様の手順で、プロピレン、エチレン、ブテン−1、水素を供給し連続重合を行った。プロピレンとエチレンとブテン−1の供給比は、PP−2のエチレン含量が2.2重量%に、ブテン−1含量が4.5重量%になるように調整した。また、PP−2の融点は138℃であった。PP−2のMFRが7.5となるように、水素の供給量を調整した。
(ポリプロピレン系樹脂の製造)
プロピレン系重合体(PP−1)の代わりに、上記重合によって得られたプロピレン系重合体(PP−2)100重量部を用いた以外は、実施例1と同様に行った。
(フィルムの製造)
実施例1と同様に行った。
【0055】
(比較例1)
前記式(1)で示されるベンゾフラン化合物を添加しなかった以外は、実施例1と同様に行った。
【0056】
(比較例2)
リン系酸化防止剤トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(商品名:IRGAFOS168)の量を0.03重量部とした以外は、実施例1と同様に行った。
【0057】
(比較例3)
リン系酸化防止剤トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(商品名:IRGAFOS168)の量を0.35重量部とした以外は、実施例1と同様に行った。
【0058】
(比較例4)
フェノール系酸化防止剤ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:IRGANOX1010)の量を0.10重量部とした以外は実施例3と同様に行った。
【0059】
(比較例5)
フィルムの製造時に、ポリプロピレン系樹脂を70重量部、EBR−1を30重量部とした以外は実施例1と同様に行った。
【0060】
(比較例6)
フィルムの製造時に、ポリプロピレン系樹脂を100重量部とし、EBR−1を用いなかった以外は実施例1と同様に行った。
【0061】
(比較例7)
EBR−1の代わりに、メルトフローレートが0.4g/10分、密度870Kg/m3のエチレン−プロピレン共重合体(EPR−1:商品名タフマーP0680)を用いた以外は実施例1と同様に行った。
【0062】
(比較例8)
(固体触媒の合成および予備活性化)
実施例1と同様に行った。
(プロピレン系重合体(PP−3)の製造)
実施例1と同様の手順で、プロピレン、水素を供給し連続重合を行いプロピレン単独重合体を得た。PP−3の融点は165℃であった。PP−3のMFRが8.0となるように、水素の供給量を調整した。
(ポリプロピレン系樹脂の製造)
プロピレン系重合体(PP−1)の代わりに、上記重合によって得られたプロピレン系重合体(PP−3)100重量部を用いた以外は、実施例1と同様に行った。
(フィルムの製造)
実施例1と同様に行った。
【0063】
実施例および比較例の物性を表1、表2に示した。
本発明の要件を満足する実施例は、滑り性、透明性および耐衝撃性に優れ、さらに耐熱安定性に優れていることが分かる。
これに対して、本発明の要件を満足しない比較例1および比較例2は耐熱安定性が、比較例3および比較例4は滑り性が、比較例5および比較例7は透明性が、比較例6は透明性と耐衝撃性が、比較例8は耐衝撃性と耐熱安定性が、それぞれ不充分であることが分かる。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のポリプロピレン系樹脂(A)75〜95重量%と、エチレン−ブテン−1共重合体(B)5〜25重量%を含有するポリプロピレン系樹脂組成物(ただし、ポリプロピレン系樹脂組成物の全量を100重量%とする)。
ポリプロピレン系樹脂(A)は、
プロピレンに由来する構造を主成分とする重合体であって、融点が138℃〜150℃であるプロピレン系重合体(A−1)を含有し、当該プロピレン系重合体(A−1)100重量部に対して、
下記式(1)で示されるベンゾフラン化合物(A−2)0.01〜0.05重量部と、
リン系酸化防止剤(A−3)0.05〜0.3重量部と、
フェノール系酸化防止剤(A−4)0〜0.03重量部とを含有するポリプロピレン系樹脂である。

【請求項2】
プロピレン系重合体(A−1)が、プロピレンに由来する構造とエチレンに由来する構造からなるランダム共重合体である請求項1記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項3】
エチレン−ブテン−1共重合体(B)のメルトフローレートが0.6〜3(g/10分)である請求項1記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1記載のポリプロピレン系樹脂組成物からなるポリプロピレン系フィルム。
【請求項5】
ポリプロピレン系フィルムが未延伸フィルムである請求項4記載のポリプロピレン系フィルム。
【請求項6】
未延伸フィルムであるポリプロピレン系フィルムを、キャスト法によって製造する請求項5記載のポリプロピレン系フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2007−284606(P2007−284606A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−115331(P2006−115331)
【出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】