説明

ポリプロピレン系樹脂組成物

【課題】 透明性および剛性に優れたポリプロピレン系樹脂組成物およびそれからなる成形体を提供する。
【解決手段】 プロピレン系重合体(A)と下記式(I)で表される化合物(B)と下記式(II)で表される金属塩(C)とを含有するポリプロピレン系樹脂組成物であって、
プロピレン系重合体(A)100重量部に対して、下記式(I)で表される芳香族燐酸エステル類化合物(B)および下記式(II)で表される金属塩(C)を、それぞれの重量の合計量で0.01〜1重量部含有してなるポリプロピレン系樹脂組成物およびそれからなる成形体。


式(I)



式(II)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂組成物およびそれからなる成形体に関するものである。さらに詳しくは、透明性および剛性に優れるポリプロピレン系樹脂組成物およびそれからなる成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、プロピレン系重合体は、押出成形品、射出成形品、中空成形品等に加工され各種の用途に用いられている。
例えば、特開平8−311253号公報には、透明性が優れた成形品が得られるポリプロピレン系樹脂組成物として、結晶性ポリオレフィンに、特定の構造を有するフォスフェート系化合物及びリチウムアルミニウム複合水酸化物塩をそれぞれ特定量配合してなる結晶性ポリオレフィン組成物が記載されている。
【0003】
また、特表2004−524417号には、高い剛性特性を示す熱可塑性樹脂製品として、酸補足剤化合物および特定の構造に従う金属塩を含んでなる熱可塑性樹脂製品が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平8−311253号公報
【特許文献2】特表2004−524417号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の特許公報等に記載されている樹脂組成物およびそれからなる製品の透明性および剛性については、これらのいずれにも優れる樹脂組成物を得るということに関して、さらなる改良が求められていた。
かかる状況の下、本発明の目的は、透明性および剛性に優れたポリプロピレン系樹脂組成物およびそれからなる成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、本発明が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、
プロピレン系重合体(A)と下記式(I)で表される化合物(B)と下記式(II)で表される金属塩(C)とを含有するポリプロピレン系樹脂組成物であって、
プロピレン系重合体(A)100重量部に対して、下記式(I)で表される芳香族燐酸エステル類化合物(B)および下記式(II)で表される金属塩(C)を、それぞれの重量の合計量で0.01〜1重量部含有してなるポリプロピレン系樹脂組成物およびそれからなる成形体に係るものである。

式(I)
(式中、R1は炭素数1〜10の2価の炭化水素基を表し、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を表し、Lは1または2である。)


式(II)
(式中、M1およびM2は、それぞれナトリウム原子および水素原子よりなる群から選ばれ、ここでM1およびM2のうち少なくとも一つはナトリウム原子であり、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、およびR13は、それぞれ水素原子、炭素数1〜9のアルキル基、水酸基、炭素数1〜9のアルコキシ基、炭素数1〜9のアルキレンオキシ基、アミノ基、炭素数1〜9のアルキルアミノ基、ハロゲン原子、およびフェニル基よりなる群から選択される基である。ここで、これらの基がアルキル基である場合、炭化水素環を形成してよい。)
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、透明性および剛性に優れたポリプロピレン系樹脂組成物およびそれからなる成形体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明で用いられるプロピレン系重合体(A)とは、プロピレンの単独重合体、プロピレン系共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種の重合体である。透明性の観点からプロピレン系共重合体が好ましい。
【0009】
プロピレン系重合体(A)の温度230℃、荷重21.18Nで測定したメルトフローレートは、通常、0.1〜400g/10分である。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を押出成形体に用いる場合、プロピレン系重合体(A)のメルトフローレートは、押出加工時に良好な流動性を得るという観点から、好ましくは0.1〜10g/10分であり、より好ましくは0.2〜8g/10分であり、さらに好ましくは0.3〜5g/10分である。
また、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を射出成形体に用いる場合、プロピレン系重合体(A)のメルトフローレートは、射出加工時に良好な流動性を得るという観点から、好ましくは11〜400g/10分であり、より好ましくは11〜200g/10分であり、さらに好ましくは11〜100g/10分である。
【0010】
プロピレン系重合体(A)がプロピレン系共重合体の場合、プロピレン系ランダム共重合体、または少なくとも二段階の重合工程によって製造されるプロピレン系ブロック共重合体等が挙げられる。
プロピレン系ランダム共重合体としては、例えば、プロピレンとエチレンを共重合して得られるプロピレン−エチレン共重合体、プロピレンと炭素数4〜20個を有する少なくとも1種のα−オレフィンを共重合して得られるプロピレン−α−オレフィン共重合体、プロピレンとエチレンと炭素数4〜20個を有する少なくとも1種のα−オレフィンを共重合して得られるプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。
【0011】
プロピレン−α−オレフィン共重合体またはプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体に用いられる炭素数4〜20個を有するのα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、2−メチルー1−プロペン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2, 3―ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3, 3―ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、メチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ペンテン、エチル−1−ペンテン、トリメチル−1−ブテン、メチルエチル−1−ブテン、1−オクテン、メチル−1−ペンテン、エチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ヘキセン、プロピル−1−へプテン、メチルエチル−1−へプテン、トリメチル−1−ペンテン、プロピル−1−ペンテン、ジエチル−1−ブテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等が挙げられる。好ましくは、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘキセン、1−オクテンであり、さらに好ましくは、共重合特性、経済性の観点から1−ブテン、1−ヘキセンである。
【0012】
プロピレン−α−オレフィン共重合体としては、例えば、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−1−オクテン共重合体等が挙げられ、
プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体としては、例えば、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体等が挙げられる。
【0013】
プロピレン系ランダム共重合体として、好ましくは、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体である。
より好ましくは、共重合体特性や経済性の観点から、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体である。
さらに好ましくはプロピレン−エチレン共重合体である。
【0014】
プロピレン系ランダム共重合体が、プロピレン−エチレン共重合体である場合、エチレン含有量は、透明性および剛性の観点から、好ましくは0.1〜30重量%であり、より好ましくは0.2〜20重量%であり、さらに好ましくは0.4〜15重量%である。(ただし、プロピレン−エチレン共重合体の全重量を100重量%とする。)
【0015】
プロピレン系ランダム共重合体が、プロピレン−エチレン共重合体である場合、その冷キシレン可溶部量(CXS)は、透明性および剛性の観点から、好ましくは0.1〜10重量%であり、より好ましくは0.2〜8重量%であり、さらに好ましくは0.4〜6重量%である。
CXSとは、10gのプロピレン−エチレン共重合体を1000mlの沸騰キシレンに溶解した後、50℃まで徐冷し、次いで氷水に浸し攪拌しながら20℃まで冷却し、20℃で一晩放置した後、析出したポリマーを濾別し、濾液からキシレンを蒸発させ、60℃で減圧乾燥して得られた20℃のキシレンに可溶なポリマーの重量%である。(ただし、プロピレン−エチレン共重合体の全重量を100重量%とする。)
【0016】
プロピレン系ランダム共重合体が、プロピレン−α−オレフィン共重合体である場合、エチレン含有量は、透明性および剛性の観点から、好ましくは0.1〜30重量%であり、より好ましくは0.2〜20重量%であり、さらに好ましくは0.4〜15重量%である。(ただし、プロピレン−α−オレフィン共重合体の全重量を100重量%とする。)
【0017】
プロピレン系重合体(A)がプロピレン系ブロック共重合体の場合、例えば、主にプロピレンからなる単量体を重合して得られる重合体成分(以下、重合体成分(D)と称する)と、エチレンおよびα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体とプロピレンとを共重合して得られる共重合体成分(以下、共重合体成分(E)と称する)からなり、少なくとも二段階によって製造されるプロピレン系ブロック共重合体等が挙げられる。プロピレン系ブロック共重合体は単独で使用しても良く、少なくとも2種を併用しても良い。
【0018】
プロピレン系ブロック共重合体に含有される前記共重合体成分(E)の含有量は、通常、1〜99重量%であり、好ましくは3〜80重量%であり、より好ましくは5〜40重量%である。(ただし、プロピレン系ブロック共重合体の全重量を100重量%とする。)
【0019】
前記重合体成分(D)に用いられる主にプロピレンからなる単量体としては、プロピレン単独からなる単量体、プロピレンとエチレンからなる単量体、プロピレンとα−オレフィンからなる単量体、プロピレンとエチレンとα−オレフィンからなる単量体等が挙げられる。
【0020】
前記重合体成分(D)としては、例えば、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−α−オレフィン共重合体成分、プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体成分等が挙げられる。
【0021】
プロピレン系ブロック共重合体として、好ましくは、前記重合体成分(D)がプロピレンの単独重合体成分であり、前記共重合体成分(E)がプロピレン−エチレン共重合体成分である。
【0022】
前記重合体成分(D)または前記共重合体成分(E)に用いられるα−オレフィンとしては、通常、炭素数4〜12のα−オレフィンが挙げられ、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられ、好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。
【0023】
前記重合体成分(D)がプロピレン−α−オレフィン共重合体成分である場合、例えば、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−1−オクテン共重合体成分等が挙げられる。
【0024】
前記重合体成分(D)がプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体成分である場合、例えば、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体成分等が挙げられる。
【0025】
前記共重合体成分(E)としては、例えば、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−α−オレフィン共重合体成分、プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体成分等が挙げられる。
【0026】
共重合体成分(E)がプロピレン−エチレン共重合体成分である場合、前記共重合体成分(E)に含有されるエチレンの含有量は、通常、1〜70重量%であり、好ましくは5〜60重量%であり、より好ましくは10〜50重量%である。(ただし、前記共重合体成分(E)の全重量を100重量%とする。)
【0027】
共重合体成分(E)がプロピレン−α−オレフィン共重合体成分またはプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体である場合、前記共重合体成分(E)に含有されるα−オレフィンの含有量、またはエチレンの含有量とα−オレフィンの含有量の合計は、通常、10〜70重量%である。(ただし、前記共重合体成分(E)の全重量を100重量%とする。)
【0028】
共重合体成分(E)がプロピレン−α−オレフィン共重合体成分である場合、例えば、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−1−オクテン共重合体成分等が挙げられる。
【0029】
また、共重合体成分(E)がプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体成分である場合、例えば、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体成分等が挙げられる。
【0030】
そして、前記重合体成分(D)と前記共重合体成分(E)からなるプロピレン系ブロック共重合体としては、例えば、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(
プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体等が挙げられる。
【0031】
プロピレン系重合体(A)の製造方法としては、公知の重合触媒を用いて、公知の重合方法によって製造する方法が挙げられる。
公知の重合触媒としては、例えば、
(1)マグネシウム、チタンおよびハロゲンを必須とする固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物と、必要に応じて用いられる電子供与性化合物等の第3成分とからなる触媒系、
(2)シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とアルキルアルミノキサンからなる触媒系、
(3)シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とそれと反応してイオン性の錯体を形成する化合物および有機アルミニウム化合物からなる触媒系
等が挙げられる。
好ましくはマグネシウム、チタンおよびハロゲンを必須とする固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物と、電子供与性化合物からなる触媒系であり、例えば、特開昭61−218606号公報、特開昭61−287904号公報、特開平1−319508号、特開平7−216017号公報等に記載されている触媒系である。
【0032】
公知の重合方法としては、例えば、不活性炭化水素溶媒によるスラリー重合法、溶媒重合法、無溶媒による液相重合法、気相重合法等が挙げられ、好ましくは気相重合法である。
さらに、前記の重合法を組み合わせ、それらを連続的に行う方法、例えば、液相―気相重合法等が挙げられる。例えば、特開平7−216017号公報等に記載されている重合方法が挙げられる。
【0033】
本発明で用いられる化合物(B)は、下記式(I)で示される芳香族燐酸エステル類化合物である。

式(I)
(式中、R1は炭素数1〜10の2価の炭化水素基を表し、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を表し、Lは1または2である。)
【0034】
式(I)において、置換基R1は炭素数1〜10の2価の炭化水素基を表し、炭素数1〜10の2価の炭化水素基としてはアルキレン基、アルキリデン基等が挙げられる。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等が挙げられ、好ましくはメチレン基であり、アルキリデン基としては、例えば、エチリデン基、n−プロピレリデン基、i−プロピリデン基等が挙げられ、好ましくはエチリデン基である。
【0035】
2およびR3はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を表し、炭素数1〜10の炭化水素基としては、アルキル基、フェニル基等が挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられ、好ましくはR2およびR3が共にt−ブチル基である。
Lは1または2である。
【0036】
式(I)で示される芳香族燐酸エステル類化合物(B)としては、例えば、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジメチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジメチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジエチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジエチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、およびヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4−i−プロピル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4−i−プロピル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]等が挙げられる。
【0037】
好ましくは、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、およびヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]であり、より好ましくは、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]である。
【0038】
芳香族燐酸エステル類化合物(B)としては、市販品を用いても良く、例えば、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]と炭素数8〜20の脂肪族モノカルボン酸リチウム塩の混合物(旭電化(株)製、商品名:アデカスタブNA21)等が挙げられる。
【0039】
本発明で用いられる金属塩(C)は、下記式(II)で表される金属塩(C)である。

式(II)
(式中、M1およびM2は、それぞれナトリウム原子および水素原子よりなる群から選ばれ、ここでM1およびM2のうち少なくとも一つはナトリウム原子であり、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、およびR13は、それぞれ水素原子、炭素数1〜9のアルキル基、水酸基、炭素数1〜9のアルコキシ基、炭素数1〜9のアルキレンオキシ基、アミノ基、炭素数1〜9のアルキルアミノ基、ハロゲン原子、およびフェニル基よりなる群から選択される基である。ここで、これらの基がアルキル基である場合、炭化水素環を形成してよい。)
金属塩(C)として、好ましくは、剛性の観点から、ジナトリウム−ビシクロ(2,2,1)ヘプタン−2,3−ジカルボキシラートである。
【0040】
金属塩(C)としては、市販品を用いても良く、例えば、ジナトリウム−ビシクロ(2,2,1)ヘプタン−2,3−ジカルボキシラート(ミリケンケミカル社製(株)製、商品名:HPN68)等が挙げられる。
【0041】
本発明で用いられる芳香族燐酸エステル類化合物(B)および金属塩(C)含有量は、プロピレン系重合体(A)100重量部に対して、化合物(B)および金属塩(C)のそれぞれの重量の合計量で、0.01〜1重量部であり、好ましくは0.02〜0.8重量部であり、より好ましくは0.05〜0.6重量部である。
【0042】
化合物(B)の含有量は、プロピレン系重合体(A)100重量部に対して、通常、0.005〜0.995重量部であり、透明性の観点から、好ましくは0.01〜0.8重量部であり、より好ましくは0.05〜0.5重量部である。
金属塩(C)の含有量は、プロピレン系重合体(A)100重量部に対して、通常、0.005〜0.995重量部であり、剛性の観点から、好ましくは0.01〜0.8重量部であり、より好ましくは0.05〜0.5重量部である。
【0043】
化合物(B)および金属塩(C)のそれぞれの重量の合計量が、前記下限を下回ると、透明性および剛性が優れない場合がある。また、化合物(B)および金属塩(C)のそれぞれの重量の合計量が、前記上限を上回ると、成形体にブツが発生する場合がある。
【0044】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物およびそれからなる成形体の透明性および剛性を高めるという観点から、芳香族燐酸エステル類化合物(B)および金属塩(C)含有量として、好ましくは、芳香族燐酸エステル類化合物(B)の重量と、金属塩(C)の重量の比(b/c)が、1以上である(ここで、bは芳香族燐酸エステル類化合物(B)の重量を表し、cは金属塩(C)の重量を表す)。より好ましくは2以上であり、さらに好ましくは3以上である。
【0045】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物には、必要に応じて、他の添加剤、例えば、中和剤、耐候性、難燃性、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、銅害防止剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤等を添加してもよい。これらの添加剤は、単独で用いてもよく、少なくとも2種を併用してもよい。
中和剤としては、例えば、脂肪酸カルシウム塩、ハイドロタルサイトが挙げられ、その含有量として、好ましくは、プロピレン系重合体(A)100重量部に対して0.005〜0.5重量部である。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤が挙げられる。
【0046】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物には、必要に応じて、本発明に用いられるプロピレン系重合体(A)以外の他の樹脂を含有させてもよい。他の樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、エチレン−α−オレフィン系エラストマー等が挙げられる。これらの他の樹脂は、単独で用いても良く、少なくとも2種を併用しても良い。
【0047】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の製造法としては、プロピレン系重合体(A)、芳香族燐酸エステル類化合物(B)、金属塩(C)、さらには必要に応じて添加される前記の各種添加剤を溶融混練する方法が挙げられる。例えば、プロピレン系重合体(A)、化合物(B)、金属塩(C)、さらには必要に応じて添加される前記の各種添加剤をタンブラーミキサー、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー等の混合機を用いて混合した後、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー等で溶融混練する方法が挙げられる。
【0048】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物からなる成形体は、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を各種成形方法によって成形したものであり、成形体の形状、サイズ等は特に制限されるものではない。
【0049】
本発明の成形体の製造方法としては、例えば、通常工業的に用いられている射出成形法、プレス成形法、真空成形法、発泡成形法、押出成形法等が挙げられ、また、目的に応じて、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物と同種のポリプロピレン系樹脂や他の樹脂と貼合する成形方法、共押出成形する方法等も挙げられる。
【0050】
本発明の成形体として、好ましくは、押出成形体、射出成形体でであり、それらの成形方法は押出成形法、射出成形法である。
【0051】
押出成形法としては、通常用いられるインフレーション法、Tダイ法、カレンダー法等が挙げられる。また、これらの方法を用いて本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を単独で成形する方法や、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物と異なる樹脂からなる少なくとも2層の多層にして成形する方法等が挙げられる。多層にする方法としては、通常用いられる共押出成形法、押出ラミネート法、熱ラミネート法、ドライラミネート法等が挙げられる。
【0052】
また、押出成形体を、例えば、ロール延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法等によって、一軸または二軸に延伸してもよく、通常用いられるコロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、オゾン処理等によって、表面処理を施してもよい。
【0053】
射出成形方法としては、通常用いられる射出成形、射出発泡成形、超臨界射出発泡成形、超高速射出成形、射出圧縮成形、ガスアシスト射出成形、サンドイッチ射出成形、サンドイッチ射出発泡成形、インサート・アウトサート射出成形等の方法が挙げられる。
【0054】
本発明の成形体の用途としては、例えば、フィルム、シート、自動車材料、家電材料、OA機器材料、建材、医療用材料、各種ボトル、コンテナー等が挙げられる。好ましくは、フィルム、シート、ボトルであり、特に好ましくはシートである。
【0055】
フィルムとしては、例えば、菓子類、液状食品、レトルト食品、衣類等を包装する延伸フィルム、未延伸フィルム、インフレーションフィルム等が挙げられる。
【0056】
シートとしては、食品向け熱成形容器・蓋・トレー、ブリスターパック、文具ファイル、フォルダー、飲料向け深絞り容器等が挙げられる。
【0057】
自動車材料としては、例えば、ドアートリム、ピラー、インストルメンタルパネル、コンソール、ロッカーパネル、アームレスト、ドアーパネル、スペアタイヤカバー等の内装部品、バンパー、スポイラー、フェンダー、サイドステップ等の外装部品、その他エアインテークダクト、クーラントリザーブタンク、フェンダーライナー、ファン等の部品、また、フロント・エンドパネル等の一体成形部品等が挙げられる。
【0058】
家電材料としては、例えば、洗濯機用材料(外槽、内槽、蓋、パルセータ、バランサー等)、乾燥機用材料、掃除機用材料、炊飯器用材料、ポット用材料、保温機用材料、食器洗浄機用材料、空気清浄機用材料等が挙げられる。
【0059】
OA機器・メディア関連材料としては、例えば、磁気記録媒体や光記録媒体のケース、パソコン用部品、プリンター用部品、インク保存タンク等が挙げられる。
医療用材料としては、輸液バッグ、注射筒等が挙げられる。
ボトルとしては、食品、飲料水、洗剤等の充填用ボトル等が挙げられる。
コンテナー材料としては、食品充填用容器、ビール等の運搬用コンテナー、衣装コンテナー、文具用コンテナー等が挙げられる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例および比較例によって、本発明を具体的に説明する。実施例および比較例で用いた物性の測定および試料の調整は、下記の方法に従って行った。
【0061】
[物性の測定方法]
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS K7210の条件14(Condition Number 14)の方法に従って温度230℃、荷重21.18Nで測定した。
【0062】
(2)エチレン含量(単位:重量%)
高分子ハンドブック(1995年、紀伊国屋書店発行)の第616〜619頁に記載されているIRスペクトルによる定量方法に準拠し測定を行い求めた。
【0063】
(3)冷キシレン可溶部量(CXS、単位:重量%)
10gのプロピレン系重合体を1000mlの沸騰キシレンに溶解した後、50℃まで徐冷し、次いで氷水に浸し攪拌しながら20℃まで冷却し、20℃で一晩放置した後、析出したポリマーを濾別し、濾液からキシレンを蒸発させ、60℃で減圧乾燥して得られる20℃のキシレンに可溶なポリマーを回収し、プロピレン系重合体の全重量を100重量%として、算出した。
【0064】
(4)プレスシートの作成
JIS K6758に従って作成した。
【0065】
(5)透明性(ヘイズ、単位:%)
JIS K7150に従い測定した。
【0066】
(6)剛性(曲げ弾性率、単位:MPa)
JIS K7203に従って測定した。
【0067】
[プロピレン系重合体(A)の製造方法]
特開平7−216017号公報の実施例1記載の方法によって得られる触媒系を用いてプロピレンを気相重合することによって、本発明で用いた下記のプロピレン−エチレン共重合体(A−1)および(A−2)のそれぞれのパウダーを得た。
(A−1)プロピレン−エチレン共重合体
MFRが1.5g/10分であり、エチレン含有量が5.6重量%であり、冷キシレン可溶部量が5.0重量%であった。
(A−2)プロピレン−エチレン共重合体
MFRが1.3g/10分であり、エチレン含有量が4.0重量%であり、冷キシレン可溶部量が2.6重量%であった。
【0068】
[化合物(B)]
(B−1)ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]と炭素数8〜20の脂肪族モノカルボン酸リチウム塩の混合物(旭電化(株)製、商品名:アデカスタブNA21)
【0069】
[金属塩(C)]
(C−1)ジナトリウム−ビシクロ(2,2,1)ヘプタン−2,3−ジカルボキシラート(ミリケンケミカル社製(株)製、商品名:HPN68)
【0070】
実施例1
プロピレン−エチレン共重合体(A−1)100重量部に対して、化合物(B−1)を0.30重量部、金属塩(C−1)を0.02重量部、塩素補足剤としてステアリン酸カルシウムを0.05重量部、酸化防止剤(チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名Irganox1010)を0.10重量部を配合し、ヘンシェルミキサ−で3分間混合した後、40mm径の単軸押出造粒機(田辺製作所(株)製)を用いて、設定温度250℃で溶融混練してペレットを得た。得られたペレットのMFR測定を行い、プレスシート(厚み1mm)を作成し、物性を測定した。その結果を表1に示した。
なお、プレスシートは、230℃で10分間加熱溶融させ、30℃で5分間冷却させて、作成した。
【0071】
実施例2
実施例1で用いた金属塩(C−1)の量を0.05重量部に変更した以外は、実施例1と同様に実施した。得られたペレットのMFR測定を行い、プレスシートを作成し、物性を測定した。その結果を表1に示した。
【0072】
実施例3
実施例1で用いた金属塩(C−1)の量を0.10重量部に変更した以外は、実施例1と同様に実施した。得られたペレットのMFR測定を行い、プレスシートを作成し、物性を測定した。その結果を表1に示した。
【0073】
実施例4
実施例2で用いたプロピレンーエチレン共重合体を(A−2)に変更した以外は、実施例1と同様に実施した。得られたペレットのMFR測定を行い、プレスシートを作成し、物性を測定した。その結果を表1に示した。
【0074】
比較例1
プロピレン−エチレン共重合体(A−1)100重量部に対して、化合物(B−1)を0.30重量部、塩素補足剤としてステアリン酸カルシウムを0.05重量部、酸化防止剤(チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名Irganox1010)を0.10重量部を配合し、ヘンシェルミキサ−で3分間混合した後、40mm径の単軸押出造粒機(田辺製作所(株)製)を用いて、設定温度250℃で溶融混練してペレットを得た。得られたペレットのMFR測定を行い、プレスシートを作成し、物性を測定した。その結果を表1に示した。
【0075】
比較例2
比較例1で用いた化合物(B−1)を金属塩(C−1)0.30重量部に変更した以外は、比較例1と同様に実施した。得られたペレットのMFR測定を行い、プレスシートを作成し、物性を測定した。その結果を表1に示した。
【0076】
比較例3
実施例1で用いた金属塩(C−1)の量を0.20重量部に変更した以外は、実施例1と同様に実施した。得られたペレットのMFR測定を行い、プレスシートを作成し、物性を測定した。その結果を表1に示した。
【0077】
比較例4
比較例1で用いたプロピレンーエチレン共重合体を(A−2)に変更した以外は、比較例1と同様に実施した。得られたペレットのMFR測定を行い、プレスシートを作成し、物性を測定した。その結果を表1に示した。
【0078】
【表1】

【0079】
本発明の要件を満足する実施例1〜4は、透明性および剛性が優れていることが分かる。
これに対して、本発明の要件である金属塩(C)を含有しない比較例1または比較例3は、剛性が劣っており、本発明の要件である化合物(B)を含有しない比較例2は、透明性が劣っていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン系重合体(A)と下記式(I)で表される芳香族燐酸エステル類化合物(B)と下記式(II)で表される金属塩(C)とを含有するポリプロピレン系樹脂組成物であって、
プロピレン系重合体(A)100重量部に対して、下記式(I)で表される芳香族燐酸エステル類化合物(B)および下記式(II)で表される金属塩(C)を、それぞれの重量の合計量で0.01〜1重量部含有してなるポリプロピレン系樹脂組成物。

式(I)
(式中、R1は炭素数1〜10の2価の炭化水素基を表し、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を表し、Lは1または2である。)


式(II)
(式中、M1およびM2は、それぞれナトリウム原子および水素原子よりなる群から選ばれ、ここでM1およびM2のうち少なくとも一つはナトリウム原子であり、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、およびR13は、それぞれ水素原子、炭素数1〜9のアルキル基、水酸基、炭素数1〜9のアルコキシ基、炭素数1〜9のアルキレンオキシ基、アミノ基、炭素数1〜9のアルキルアミノ基、ハロゲン原子、およびフェニル基よりなる群から選択される基である。ここで、これらの基がアルキル基である場合、炭化水素環を形成してよい。)
【請求項2】
芳香族燐酸エステル類化合物(B)の重量と、金属塩(C)の重量の比(b/c)が、1以上である請求項1記載のポリプロピレン系樹脂組成物(ここで、bは芳香族燐酸エステル類化合物(B)の重量を表し、cは金属塩(C)の重量を表す)。
【請求項3】
請求項1または2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物からなる押出成形体。
【請求項4】
請求項1または2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物からなる射出成形体。

【公開番号】特開2006−117776(P2006−117776A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−306436(P2004−306436)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】