説明

ポリプロピレン系樹脂被覆用発泡体

【課題】柔軟性、耐熱性、および優れた発泡性、リサイクル性を有する非架橋のポリプロピレン系樹脂による低密度発泡体であって、配管や電線などの被覆に優れたポリプロピレン系被覆用発泡体の提供。
【解決手段】無架橋のポリプロピレン系樹脂、好ましくはプロピレン重合単位を50重量%以上含有するプロピレン−オレフィン共重合体からなり、MFRが0.1〜20g/10分、溶融張力が1.0〜50cN、伸長流動下においてひずみ硬化性を有するポリプロピレン系樹脂を基材とする被覆用発泡体であって、その発泡成形体の密度が0.02〜0.2g/cm、平均気泡径が0.05〜1.5mmであり、測定前の厚みの25%に相当する厚みの深さまで圧縮した時の圧縮硬さが5N/cm未満であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂被覆用発泡体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂被覆用発泡体に関し、さらに詳しくは、特定のポリプロピレン系樹脂を押出機より連続的に押出し、耐熱性などの要求される配管や電線・ケーブルル等に好適な高発泡率で被覆でき、しかも柔軟性に優れるポリプロピレン系樹脂被覆用発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
配管等の被覆用発泡体に関しては従来から、水道管あるいはクーラー用配管などの保冷用断熱材や、物品の保護、保温あるいは緩衝用包装材として、発泡させたポリオレフィン系樹脂からなる発泡体が用いられている。
特に近年、住宅のセントラルヒーティングの普及でヒートポンプタイプエアコンの高温熱媒配管部に用いる耐熱性、断熱厚みを有する保温筒状発泡体の需要が高まっている。
耐熱性を有する保温筒状発泡体に用いられる発泡ポリオレフィンとしては、電子線架橋法や架橋剤法により製造された架橋ポリプロピレン系樹脂や架橋ポリエチレンの発泡シートまたは筒状に成形したものが通常使用されている。しかし、これらのポリオレフィン系樹脂発泡体は、工程が複雑である為、収率と生産性に劣り、大量生産には適さず、さらに、製造過程で架橋成形が行なわれているため、廃棄時にはリサイクルに適さないという問題がある。
【0003】
生産性と外観を改良する方法として、発泡剤を含むポリプロピレン系樹脂を押出機から連続的に押出す方法が考えられるが、一般にポリプロピレン系樹脂は、僅かな温度変化により粘弾性が大きく変化し発泡適性範囲が著しく狭く、押出発泡は難しい。特に高発泡領域においては制御することが困難であり、外観の悪化に繋がる(例えば、特許文献1参照。)。
特に、筒状発泡体の押出は、発泡進行過程の発泡体を冶具等で押圧し円筒形状に賦形するものではないので、径方向の膨張変形は発泡体に引取速度で調整できる程度に留めなければならないところに押出技術上の難しさがある。更に発泡体が筒状であることは、発泡後の冷却固化過程において内外層の冷却の不均一を生じる為、筒内外層の収縮差により円筒形状が変形しやすい。
【0004】
例えば、特定のせん断速度の領域で2軸伸長粘度を規定することで、ポリプロピレン系樹脂の筒状発泡体を得ることができる(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、ダイスから出た筒状発泡体は強制冷却する手段がないため、円筒形状が制約される上、引取速度の調整も不可能である。
また、筒状の中空内部が負圧になることを防ぎ、内径寸法を維持させることができる筒状発泡体の製造方法(例えば、特許文献3参照。)が開示されている。しかし、この方法では、内外層の冷却の不均一化は解消されず、特にポリプロピレン系樹脂の場合、外気温度と押出発泡樹脂温度の差が大きいため内径寸法および表面外観を維持することができないという問題を有している。
【0005】
一方、電線やケ−ブルの被覆発泡体に関しては、従来より送線機から送り出された導体の周囲に共押出しにより発泡被覆する方法がとられ、各種の発泡絶縁電線や通信ケーブル、同軸ケーブル等に適用されている(例えば、特許文献4参照。)。外周を発泡体の絶縁層で被覆した発泡絶縁電線は被覆層の発泡化により誘電率の低下が可能になり、信号伝播遅延時間を可及的に短くすることができ、また信号の伝送損失も低くすることができ、とりわけコンピュータ等の電子機器に用いられる信号伝送用電線・ケーブルには不可欠とされている。信号処理速度を高めるために、その発泡層は、均一で微細な独立気泡が多数存在する発泡体、すなわち高発泡度の発泡体で構成されている。
このような高発泡率の絶縁電線を製造する方法としては、いわゆる化学発泡法とガス発泡法とがある(例えば、特許文献5、6参照。)。化学発泡法は、樹脂成分に化学発泡剤をその分解温度以下で配合し、それを押出機に供給し、その分解温度以上の温度で導体上に押出被覆し、次いでこれを空気中で発泡させた後、冷却固化する方法であり、ガス発泡法に比べ、設備費が低く、操作も簡単である。ガス発泡法は、熱分解型の化学発泡剤を用いずに、発泡剤として、ハロゲン化炭化水素、炭化水素、窒素ガス等を押出機のバレルの中間部から溶融樹脂内に高圧で注入し、導体上に押出被覆し、次いでこれを空気中で発泡させた後、冷却固化させる方法であり、設備費は高いが、高発泡であり、化学発泡剤の分解残渣の問題がない。
【0006】
そのような発泡体としては、安価であるということから、発泡度が60%前後のポリエチレン系発泡体が主に使用されている(例えば、特許文献7参照。)。しかしポリエチレン系樹脂は一般に誘電率、誘電体損失等の電気的性質や柔軟性に優れるが、耐熱性に乏しく使用温度に制約を受けたり、複数の発泡絶縁電線を一体のケ−ブルにするなどの場合に熱を受け変形したり発泡層が溶融しやすい問題がある。このため電子線架橋や有機過酸化物による架橋処理をおこない耐熱性を改善することが行われているが、電子線架橋では高価な加速器やシールドルームを必要とするため(例えば、特許文献8参照。)、製造装置の大型化とともに製造コストアップを招き、有機過酸化物による架橋処理では発泡処理が難しくなる問題がある。
一方、ポリプロピレン系樹脂はポリエチレン同様に比較的安価で、電気的性質に優れ、かつ耐熱性にも優れることから電子線架橋のような架橋処理を施す必要もないが、従来から発泡させても、高倍で、均一で微細な独立気泡が得られにくく、発泡体も柔軟性に欠け、耐折曲げ性に乏しいものしか得られない問題があった。
従って、発泡シートまたは筒状に成形したものから被覆する配管被覆用発泡体、および導体の共押出しによる絶縁被覆電線やケ−ブル等に用いられる被覆用発泡体としても、ポリプロピレン系樹脂は優れた材質適性を持ちながらも、発泡特性や柔軟性に乏しいため、未だ被覆用発泡体は実質的かつ経済性をもって実用化されていないのが現状である。
【特許文献1】特開平8−332666号公報
【特許文献2】特開平9−25353号公報
【特許文献3】特開昭60−56526号公報
【特許文献4】特開平5−17613号公報
【特許文献5】特開平7−282662号公報
【特許文献6】特開平8−64045号公報
【特許文献7】特開平5−2938号公報
【特許文献8】特開平5−28862号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑み、柔軟性、耐熱性、および優れた発泡性、リサイクル性を有する非架橋のポリプロピレン系樹脂による低密度発泡体であって、配管や電線、ケーブルなどの被覆に優れたポリプロピレン系被覆用発泡体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、プロピレン重合単位を50重量%以上含有するプロピレン−オレフィン共重合体からなり、特定のメルトフローレート、溶融張力、伸長流動下におけるひずみ硬化性を有する無架橋のポリプロピレン系樹脂を基材として用いたポリプロピレン系樹脂発泡体は、特定の密度、独立気泡率及び圧縮硬さを有し、柔軟性、耐熱性、リサイクル性を有する低密度発泡体で、配管や電線などの被覆に優れたポリプロピレン系被覆用発泡体となることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、無架橋のポリプロピレン系樹脂を基材とする被覆用発泡体であって、その発泡成形体の密度が0.02〜0.2g/cm、平均気泡径が0.05〜1.5mmであり、測定前の厚みの25%に相当する厚みの深さまで圧縮した時の圧縮硬さが5N/cm未満であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂被覆用発泡体が提供される。
【0010】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、ポリプロピレン系樹脂がプロピレン重合単位を50重量%以上含有するプロピレン−オレフィン共重合体からなり、メルトフローレート(230℃、21.2N)が0.1〜20g/10分、溶融張力(190℃、口径2mm)が1.0〜50cN、伸長流動下においてひずみ硬化性を有するポリプロピレン系樹脂であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂被覆用発泡体が提供される。
【0011】
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、ポリプロピレン系樹脂が135℃のテトラリン中で測定した固有粘度[η]が0.2〜10dl/gであり、プロピレン重合単位を50重量%以上を含有するプロピレン・オレフィン共重合体(a)と135℃のテトラリン中で測定した固有粘度[η]が15〜100dl/gである、エチレン単独重合体またはエチレン重合単位50重量%以上を含有するエチレン・α−オレフィン共重合体(b)を(a)成分100重量部に対し、0.01〜20重量部含有することを特徴とするポリプロピレン系樹脂被覆用発泡体が提供される。
【0012】
また、本発明の第4の発明によれば、第3の発明において、プロピレン・オレフィン共重合体(a)が、プロピレン単位含有量が99.4〜100モル%であるプロピレン単独あるいはプロピレン・オレフィンランダム共重合体からなる重合体成分(A)と、プロピレン単位含有量が35〜60モル%であるプロピレン・オレフィンランダム共重合体からなる重合体成分(B)とからなるプロピレン系ブロック共重合体ないしはプロピレン系樹脂組成物であって、重合体成分(B)の極限粘度[η]が0.5〜2.0dl/gであり、重合体成分(B)の極限粘度[η]と重合体成分(A)の極限粘度[η]との比[η]/[η]が0.3〜1.2であり、かつ、この極限粘度比[η]/[η]と、重合体成分(A)と重合体成分(B)の重量比W/Wとの積([η]/[η])・(W/W)が1.0〜3.0であるプロピレン系ブロック共重合体あるいはプロピレン系樹脂組成物からなることを特徴とするポリプロピレン系樹脂被覆用発泡体が提供される。
【0013】
また、本発明の第5の発明によれば、第4の発明において、重合体成分(B)の含有量が、プロピレン系ブロック共重合体あるいはプロピレン系樹脂組成物の22〜49重量%であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂被覆用発泡体が提供される。
【0014】
また、本発明の第6の発明によれば、第1、2、3、5のいずれかの発明において、ポリプロピレン系樹脂が135℃のテトラリン中で測定した固有粘度[η]が0.2〜10dl/gであり、プロピレン重合単位を50重量%以上を含有するプロピレン・オレフィン共重合体(a)、135℃のテトラリン中で測定した固有粘度[η]が15〜100dl/gである、エチレン単独重合体またはエチレン重合単位50重量%以上を含有するエチレン・α−オレフィン共重合体(b)を(a)成分100重量部に対し、0.01〜5.0重量部、及び135℃のテトラリン中で測定した固有粘度[η]が1〜15dl/gであり、密度が0.85〜0.895g/cmのエチレン・α−オレフィン共重合体(c)を(a)成分100重量部に対し、0.01〜20重量部含有することを特徴とするポリプロピレン系樹脂被覆用発泡体が提供される。
【0015】
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、無架橋のポリプロピレン系樹脂に難燃剤または銅害防止剤を配合してなることを特徴とするポリプロピレン系樹脂被覆用発泡体が提供される。
【0016】
また、本発明の第8の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明のポリプロピレン系樹脂被覆用発泡体が、鋼管、電線あるいはケーブルに被覆されていることを特徴とする被覆成形体が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明のポリプロピレン系樹脂の発泡体は、柔軟性、耐熱性、リサイクル性を有する低密度発泡体で、配管や電線などの被覆に優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、無架橋のポリプロピレン系樹脂を基材とする被覆用発泡体であって、その発泡成形体の密度0.02〜0.2g/cm以下であり、気泡径が0.05〜1.5mmであり、圧縮硬さが5N/cm未満であるポリプロピレン系樹脂被覆用発泡体である。以下、本発明について詳細を説明する。
【0019】
1.無架橋のポリプロピレン系樹脂
本発明の発泡体に用いるポリプロピレン系樹脂は、架橋されていないところに特徴があり、無架橋のポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン重合単位を50重量%以上含有するプロピレン・α−オレフィン共重合体からなるものである。プロピレンと共重合されるプロピレン以外のオレフィンとしては、特に限定されないが、炭素数2〜12のオレフィンが好ましく用いられる。具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン等が挙げられ、これらのオレフィンは1種のみならず2種であってもよい。
【0020】
また、本発明で用いる無架橋のポリプロピレン系樹脂は、下記特性(1)〜(3)を有しているものが好ましい。
特性(1)MFR
本発明で用いる無架橋のポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(230℃、21.2N)(MFR)は、0.1〜20g/10分が好ましく、より好ましくは、0.5〜15g/10分である。MFRが0.1g/10分未満であるとダイスでの流れが悪く、表面荒れが生じ、20g/10分を超えると気泡膜がやぶけて発泡倍率が上がりにくい。
ここで、MFRはJIS−K7210(230℃、21.2N)に準拠して測定する値である。
【0021】
特性(2)溶融張力
本発明で用いる無架橋のポリプロピレン系樹脂の溶融張力は、1.0〜50cNが好ましく、より好ましくは2〜50cN、特に好ましくは4〜50cNである。溶融張力が上記範囲であると緻密で気泡数の多い発泡体、低密度な発泡体を得ることができる。
ここで、溶融張力は、口径2.095×長さ40mmオリフィスから、温度190℃、速度20mm/分にて樹脂を押し出し、巻き取り速度を徐々に上げていき、一定となったときの値である。
【0022】
特性(3)ひずみ硬化性
本発明で用いる無架橋のポリプロピレン系樹脂は、溶融張力のみならず、伸長流動下におけるひずみ硬化性が大きく改善されていることを特徴とする。溶融張力は、樹脂の分子量を大きくする(メルトフローレートを小さくする)ことで改善されるが、従来のポリプロピレン系樹脂では、一軸伸長流動におけるひずみ硬化性は発現せず、両者を同一視することはできない。発泡成形では、気泡の成長段階から、冷却により気泡が固定化されるまでの過程は樹脂の伸長流動であり、樹脂の変形に伴う粘度の急激な粘度上昇、いわゆるひずみ硬化現象は、重要となる。気泡が成長するとき、ひずみ硬化性を有するポリプロピレン系樹脂では、たとえ気泡の一部分だけが変形を受けたとしても変形とともにその部分の粘度が急上昇し、その周りが伸長されるため、結果として均一な気泡膜と独立した気泡を保持した発泡体が得られることになる。つまり、本発明で用いるポリプロピレン系樹脂で、気泡が緻密で独立した外観が美麗な被覆用発泡体を提供することができる。
ここで、ひずみ硬化性は、東洋精機製作所製メルテンレオメーターを用い、温度180℃において、伸長時間とともに急激な粘度上昇を示す非線形現象を意味し、例えば「日本レオロジー学会誌、高分子溶融体の伸長粘度に関する研究、小山清人、174−180頁、Vol.19、1991年」等を参照することができる。ひずみ速度については特に制限されないが、測定装置上の制限から通常0.01〜5/sのひずみ速度で測定が行われる。
【0023】
本発明で用いる無架橋のポリプロピレン系樹脂は、上記の特性(1)〜(3)を満足するプロピレン重合単位を50重量%以上含有するプロピレン−オレフィン共重合体であれば、特に限定されないが、下記(a)成分及び(b)成分を含有する樹脂組成物、または下記(a)成分、(b)成分及び(c)成分を含有する樹脂組成物が好ましい。
【0024】
(a)成分
本発明で用いるポリプロピレン系樹脂の組成物の一成分として用いられる(a)成分は、135℃のテトラリン中で測定した固有粘度[η]が好ましくは0.2〜10dl/gであり、より好ましくは0.5〜8dl/gである、プロピレン重合単位を50重量%以上含有するプロピレン−オレフィン共重合体である。
(a)成分の固有粘度[η]が0.2dl/g未満であると得られる組成物の発泡特性が悪化し、10dl/gを超えると得られる組成物の流動性が悪化する。
【0025】
(a)成分で用いるプロピレン−オレフィン共重合体は、固有粘度[η]が上記範囲であれば特に制限がないが、例えば、次に説明するプロピレン系ブロック重合体ないしはプロピレン系樹脂組成物が好ましい。
すなわち、プロピレン・オレフィン共重合体(a)は、プロピレン単位含有量が99.4〜100モル%であるプロピレン単独あるいはプロピレン・オレフィンランダム共重合体からなる重合体成分(A)と、プロピレン単位含有量が35〜60モル%であるプロピレン・オレフィンランダム共重合体からなる重合体成分(B)とからなるプロピレン系ブロック共重合体ないしはプロピレン系樹脂組成物であって、重合体成分(B)の極限粘度[η]が0.5〜2.0dl/gであり、重合体成分(B)の極限粘度[η]と重合体成分(A)の極限粘度[η]との比[η]/[η]が0.3〜1.2であり、かつ、この極限粘度比[η]/[η]と、重合体成分(A)と重合体成分(B)の重量比W/Wとの積([η]/[η])・(W/W)が1.0〜3.0であるプロピレン系ブロック共重合体あるいはプロピレン系樹脂組成物である。
【0026】
また、重合体成分(B)の含有量は、プロピレン系ブロック共重合体あるいはプロピレン系樹脂組成物の22〜49重量%であることが好ましい。重合体成分(B)の含有量が22重量%未満であると耐衝撃性が不足し易くなり、49重量%を超えると剛性や耐熱性が不足し易くなる。
【0027】
なお、プロピレンと共重合されるプロピレン以外のオレフィンとしては、特に限定されないが、炭素数2〜12のオレフィンが好ましく用いられる。具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン等が挙げられ、これらのオレフィンは1種のみならず2種であってもよい。
【0028】
上記重合体成分(A)において、プロピレン単位含有量は、99.4〜100モル%である。プロピレン含有量が99.4モル%未満では耐熱性が低下し易くなる。また、上記重合体成分(B)において、プロピレン単位含有量は、35〜60モル%である。プロピレン含有量は、低温での耐衝撃性に影響し、含有量が少ないほど低温での耐衝撃性が向上するが、少なすぎると共重合体と結晶性ポリプロピレンとの分散性に影響を及ぼし、耐衝撃性が低下する傾向にある。
【0029】
さらに、重合体成分(B)は、135℃のテトラリン中で測定した極限粘度[η]が0.5〜2.0dl/gであり、かつ、同一条件で測定した重合体成分(A)の極限粘度[η]との極限粘度比[η]/[η]が0.3〜1.2の範囲にあることが好ましい。
重合体成分(B)の極限粘度[η]は、特に剛性に影響し、[η]/[η]は、重合体成分(B)の重合体成分(A)への分散性に影響する。極限粘度[η]が大きすぎると発泡性が悪化する。一方[η]が小さすぎると耐衝撃性が低下し易い。また、[η]/[η]が小さすぎると低温での耐衝撃性が不足し、一方、大きすぎると発泡性が不十分となり目的とする特性を達成できない。
【0030】
なお、重合体成分(A)および重合体成分(B)を連続的に製造してプロピレン系ブロック共重合体を得る場合、重合体成分(B)の極限粘度[η]は直接測定できないので、直接測定可能な重合体成分(A)の極限粘度[η]とプロピレン系ブロック共重合体全体の極限粘度[η]WHOLE、ならびに重合体成分(B)の重量%Wから、下記式により求める。
[η]={[η]WHOLE−(1−W/100)[η]}/(W/100)
ここで、連続的に製造するとは、第一段階で重合体成分(A)を製造し(第1重合工程)、ついで第二段階で重合体成分(B)を連続的に製造する(第2重合工程)ことを意味する。
【0031】
また、本発明で用いるプロピレン系ブロック共重合体あるいはプロピレン系樹脂組成物において、重合体成分(A)の重量をWとし、重合体成分(B)の重量をWとしたときの重量比(W/W)と、前記した両成分の極限粘度比([η]/[η])との積([η]/[η])×(W/W)が1.0〜3.0、好ましくは1.2〜2.5の範囲にあることが重要である。
該重量比と該極限粘度比との積が上記範囲にあることは、重合体成分(B)からなる複数のドメインが成形加工時に上記組成物の流れ方向に延在した状態で分散するか、もしくはその分散している任意のドメインが他のドメインと少なくとも1箇所で連結しているという特定分散構造を示すための必須条件であり、その値が上記の数値範囲内であると得られる発泡体の低温での耐衝撃性が良好となる。
【0032】
本発明で用いるプロピレン系ブロック共重合体あるいはプロピレン系樹脂組成物は、上記の諸特性を満足すればいかなる方法で製造してもよく、勿論、別々に製造された重合体成分(A)と重合体成分(B)を混合装置を用いて混合しても、重合体成分(A)を製造し、引き続き重合体成分(B)を製造して、プロピレン系ブロック共重合体を連続的に製造してもよい。また、使用する重合触媒も、立体規則性ポリプロピレンを製造可能な三塩化チタン系触媒、ハロゲン化マグネシウム担持型のチタン含有固体触媒、あるいはメタロセン触媒等の各種の触媒を用いることが出来る。より好適には、下記に示す製造方法を例示することができる。
【0033】
本発明に用いるプロピレン系ブロック共重合体の連続的製造方法の構成的特徴は、大粒径のチタン含有固体触媒成分(A)と有機アルミニウム化合物(B)および有機ケイ素化合物(C)からなる立体規則性触媒の存在下、気相中において第一段階で重合体成分(A)(以下、「結晶性ポリプロピレン」ということがある。)を製造し(第1重合工程)、第二段階で重合体成分(B)(以下、「プロピレン・α−オレフィンの共重合体」ということがある。)を連続的に製造する(第2重合工程)ことである。
【0034】
該製造方法において、チタン含有固体触媒成分(A)は、マグネシウム化合物、シリカ化合物もしくはアルミナ等の無機担体やポリスチレン等の有機担体にチタン化合物を担持したもの、またかかる担持体に必要に応じて、例えば、2−メチル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパンなどのエーテル類、ジ−n−ブチルフタレート、ジイソブチルフタレートなどのエステル類の電子供与性化合物を反応せしめたものなら公知のどの様なものでも使用できる。
例えば、マグネシム化合物−アルコール溶液をスプレーし、該固体成分を部分乾燥し、しかる後該部分乾燥固体成分をハロゲン化チタンおよびジ−n−ブチルフタレートなどの電子供与性化合物で処理してなるチタン含有固体触媒成分(特開平3−119003号公報)、マグネシウム化合物をテトラヒドロフラン/アルコール/電子供与体に溶解させ、TiCl単独または該電子供与体との組み合わせで析出させたマグネシム単体をハロゲン化チタンおよび上記電子供与性化合物で処理してなるチタン含有固体触媒成分(特開平4−103604号公報)などが挙げられる。
【0035】
また、該チタン含有触媒成分(A)は、平均粒径が25〜300μm、好ましくは30〜150μmのものが用いられる。該チタン含有触媒成分(A)の平均粒径が25μm未満では製造される粉末状のポリプロピレン系組成物の流動性すなわち、粉体流動性が著しく損なわれ、重合器の器壁や攪拌翼等への該ポリプロピレン系組成物の付着による重合系内の汚染や重合器から排出された粉体の搬送が困難になる等、安定運転の大きな妨げとなる場合がある。
さらに、該チタン含有触媒成分(A)は、正規分布における均一度は2.0以下のものが好ましい。均一度が2.0を超えると得られる粉末状ポリプロピレン系組成物の粉体流動性が悪化して連続での安定運転が困難となる場合がある。
【0036】
有機アルミニウム化合物(B)としては、一般式がRAlX3−m(式中、Rは炭素数1〜20の炭化水素基を、Xはハロゲン原子を表し、mは3≧m≧1.5の正数である)で表される有機アルミニウム化合物(B)を用いることができる。具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−i−ブチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロライ、ジエチルアルミニウムクロライド、メチルアルミニウムセスキクロライド、ジ−n−プロピルアルミニウムモノクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムアイオダイド、エトキシジエチルアルミニウム等を挙げることができ、好ましくはトリエチルアルミニウムを使用する。
これら有機アルミニウム化合物は1種の単独あるいは2種以上の混合物として使用することができる。
【0037】
有機ケイ素化合物(C)としては、一般式RSi(OR(式中、RおよびRは炭化水素基、Rは炭化水素基もしくはヘテロ原子を含む炭化水素基を表し、0≦X≦2、1≦Y≦3、1≦Z≦3、かつX+Y+Z=4である)で表される有機ケイ素化合物が使用される。具体的には、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等を挙げることができる。好ましくは、ジイソブチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシランおよびジフェニルジメトキシシランが使用される。
これらの有機ケイ素化合物は、1種の単独あるいは2種以上の混合物として使用することができる。
【0038】
前記チタン含有固体触媒成分(A)、有機アルミニウム化合物(B)および必要に応じて有機ケイ素化合物(C)を組み合わせた立体規則性触媒を、第1重合工程のプロピレン重合に用いるが、該チタン含有固体触媒(A)は、α−オレフィンを予め反応させて予備活性化処理した触媒として用いることが好ましい。
チタン含有固体触媒成分(A)の予備活性化処理においては、有機アルミニウム化合物(B’)の使用量は、特に限定されるものではないが、通常チタン含有固体触媒成分中のチタン原子1モルに対して0.1〜40モル、好ましくは0.3〜20モルの範囲で用い、α−オレフィンを10〜80℃で10分〜48時間かけてチタン含有固体触媒成分(A)1グラム当たり0.1〜100グラム、好ましくは0.5〜50グラムを反応させる。
予備活性化処理においては、予め、有機ケイ素化合物(C’)を有機アルミニウム化合物1モルに対して0.01〜10モル、好ましくは0.05〜5モルの範囲で用いてもよい。
【0039】
上記の予備活性化処理に用いられる有機アルミニウム(B’)としては、本重合に用いられる前記例示した有機アルミニウム(B)を挙げることができる。この有機アルミニウム化合物(B’)として、本重合時に使用される有機アルミニウム化合物(B)と同種のものでも、または異なる種類のものを使用できるが、好ましくはトリエチルアルミニウムを用いる。
また予備活性化処理に必要に応じて用いられる有機ケイ素化合物(C’)としては、前記例示した有機ケイ素化合物(C)と同種のものを挙げることができる。この有機ケイ素化合物(C’)としても、本重合に使用される有機ケイ素化合物(C)と同種のものでも、また異なるものを使用でき、好ましくは、ジイソブチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシランおよびジフェニルジメトキシシランを用いる。
【0040】
チタン含有固体触媒成分(A)の予備活性化処理に用いられるα−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン等である。これらのオレフィンは、単独のみならず、他のオレフィンの1種または2種以上の混合物をも含んでいてもよい。また、その重合に際してポリマーの分子量を調節するために水素等の分子量調節剤を併用することもできる。
チタン含有固体触媒成分(A)の予備活性化処理に用いられる不活性溶剤は、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカンおよび流動パラフィン等の液状飽和炭化水素やジメチルポリシロキサンの構造を持ったシリコンオイル等の重合反応に著しく影響を及ぼさない不活性溶剤である。これらの不活性溶剤は、1種の単独溶剤または2種以上の混合溶剤のいずれでもよい。これらの不活性溶剤の使用に際しては重合に悪影響を及ぼす水分、イオウ化合物等の不純物は取り除いた後で使用することが好ましい。
【0041】
上記予備活性化処理されたチタン含有固体触媒成分(A)の存在下に、気相中においてプロピレンもしくは該プロピレンと少量のα−オレフィンとを重合して結晶性ポリプロピレンを製造する第1重合工程、次いで該結晶性ポリプロピレンの存在下にプロピレンとα−オレフィンとを共重合してプロピレン・α−オレフィン共重合体を製造する第2重合工程を連続的に実施する。
該第1重合工程は気相重合法に限定されるものではなく、スラリー重合法や塊状重合法を採用してもよいが、それに連続する第2重合工程が気相重合法であることが好ましいことから、第1重合工程も気相重合法を採用することが好ましい。第2重合工程としてスラリー重合法や塊状重合法を採用した場合、得られる共重合体が溶液中に溶出し、安定運転の継続が困難となる。
【0042】
結晶性ポリプロピレンの重合条件は、重合形式で異なるが、気相重合法の場合、一定量の粉末状ポリプロピレン系組成物を混合、撹拌しながら予備活性化処理されたチタン含有固体触媒成分(A)、有機アルミニウム成分(B)および有機ケイ素化合物(C)からなる立体規則性触媒の存在下、重合温度20〜120℃、好ましくは40〜100℃、重合圧力大気圧〜9.9MPa、好ましくは0.59〜5.0MPaの条件下にプロピレンもしくは該プロピレンと少量のα−オレフィンとを供給して重合し、結晶性ポリプロピレンを製造する。
有機アルミニウム化合物(B)とチタン含有固体触媒成分(A)との使用比率はAl/Ti=1〜500(モル比)、好ましくは10〜300である。この場合、チタン含有固体触媒成分(A)のモル数とは実質的にチタン含有固体触媒成分(A)中のTiグラム原子数をいう。有機ケイ素化合物(C)と有機アルミニウム成分(B)の使用率はB/C=1〜10(モル比)、好ましくは1.5〜8である。(B)/(C)のモル比が過大な場合、結晶性ポリプロピレンの結晶性が低下し、得られるポリプロピレン系組成物の剛性が不十分となる。また、該B/Cモル比が過小な場合には重合活性が著しく低下し、生産性が低下する。
結晶性ポリプロピレンの分子量の調節には、重合時に水素のような分子量調節剤の使用が可能であり、結晶性ポリプロピレンの極限粘度が本発明の要件を満たすように実施される。結晶性ポリプロピレンを重合後、生成した粉末状重合体の一部を抜き出し、極限粘度、メルトフローレート、触媒単位重量当たりの重合収量の測定に供する。
【0043】
第1重合工程の重合に引き続いて、重合温度20〜120℃、好ましくは40〜100℃、重合圧力大気圧〜9.9MPa、好ましくは0.59〜5.0MPaの条件下でプロピレンとα−オレフィンとの混合モノマーを共重合してプロピレン・α−オレフィン共重合体を生成させる第2重合工程を実施する。プロピレン・α−オレフィン共重合体中のα−オレフィン含有量はコモノマーガス中のα−オレフィンモノマーとプロピレンモノマーのガスモル比を制御して、共重合体中のプロピレン含有量が35〜60モル%になるように調節する。
一方、結晶性ポリプロピレンの重量に対するプロピレン・α−オレフィン共重合体の重量は、重合時間の調節や一酸化炭素や硫化水素等の触媒の重合活性調節剤を使用して、プロピレン・α−オレフィン共重合体の重量が22〜44重量%になるよう調節する。さらに、プロピレン・α−オレフィン共重合体の分子量は、プロピレン・α−オレフィン共重合体の極限粘度が本発明で用いるポリプロピレン系組成物の要件を満たすように水素のような分子量調節剤を共重合時に加えて調節される。また、水素の供給方法は、得られるポリプロピレン系組成物が本発明の要件を満たす様に供給される。重合方式は、回分式、半連続式もしくは連続式のいずれでも採用できるが、工業的には連続式の重合方式が好ましい。
【0044】
第2重合工程の終了後に重合系内からモノマーを除去して粉末状のポリプロピレン系組成物得ることができる。得られたポリプロピレン系組成物の一部は極限粘度の測定、およびα−オレフィン含有量の測定ならびに触媒単位重量当たりの重合収量の測定に供する。
【0045】
(b)成分
本発明で用いるポリプロピレン系樹脂の組成物に用いられる(b)成分は、135℃のテトラリン中で測定した固有粘度[η]が好ましくは15〜100dl/gであり、より好ましくは17〜50dl/gである、エチレン単独重合体またはエチレン重合単位50重量%以上を含有するエチレン・α−オレフィン共重合体である。
(b)成分の固有粘度[η]が15dl/g未満であると得られる組成物の溶融張力と結晶化温度が不十分となってしまう。一方、100dl/gを超えるのは製造上の効率から好ましくない。
なお、エチレンと共重合されるエチレン以外のα−オレフィンとしては、特に限定されないが、炭素数3〜12のオレフィンが好ましく用いられる。具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン等が挙げられ、これらのオレフィンは1種のみならず2種であってもよい。
【0046】
ポリプロピレン系樹脂として(a)成分と(b)成分を含有する組成物を用いる場合の組成物中の(b)成分の配合量は、(a)成分100重量部に対して、0.01〜20重量部が好ましく、より好ましくは0.02〜10重量部である。(b)成分の量が0.01重量部未満では、得られるポリプロピレン系樹脂の溶融張力の向上効果が少なく、20重量部を超えると効果が飽和するほか、得られる発泡体の均質性が損なわれるため好ましくない。また、次に述べる(c)成分を含有する場合は、5重量部以下、好ましくは3重量部以下である。
【0047】
(c)成分
本発明で用いるポリプロピレン系樹脂の組成物に用いられる(c)成分は、135℃のテトラリン中で測定した固有粘度[η]が好ましくは1〜15dl/gであり、より好ましくは2〜10dl/gであり、密度が好ましくは0.85〜0.895g/cmであり、より好ましくは0.855〜0.885g/cmである、エチレン・α−オレフィン共重合体である。なお、エチレンと共重合されるエチレン以外のα−オレフィンとしては、特に限定されないが、炭素数3〜12のオレフィンが好ましく用いられる。具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン等が挙げられ、これらのオレフィンは1種のみならず2種であってもよい。α―オレフィンは上記の(b)と同一でもよく異なっていても良い。
(c)成分の固有粘度[η]が1dl/g未満であると得られる組成物の耐衝撃性が不十分となってしまう。また、密度が0.85g/cmで未満であると屈曲性の改良が却って悪化し、0.895g/cmを超えると柔軟性の改良効果が充分得られない。
ポリプロピレン系樹脂として(a)成分、(b)成分及び(c)成分を含有する組成物を用いる場合の組成物中の(b)成分の配合量は、(a)成分100重量部に対して、0.01〜20重量部が好ましく、組成物中の(c)成分の配合量は、(a)成分100重量部に対して、0.01〜20重量部が好ましく、より好ましくは1〜15重量部である。(c)成分の量が0.01重量部未満では、柔軟性の改良効果は得られず、20重量部を超えると溶融張力の低下を引き起こす。
【0048】
なお、本発明で用いるポリプロピレン系樹脂には、発泡性、押出安定性、熱成形性等の特性を阻害しない範囲で、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン・α−オレフィンコポリマー、ポリ−4−メチル−ペンテン−1等のα−ポリオレフィン、エチレン−プロピレンエラストマー等のオレフィン系エラストマー、またはこれらと共重合可能な他の単量体、例えば、酢酸ビニル、塩化ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の共重合体および混合物等を添加してもよい。
さらに、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、造核剤、滑剤、難燃剤、着色剤、無機質または有機質の充填剤、銅害防止剤等の各種添加剤を添加することができる。特に、電線被覆等の用途に用いる場合は、難燃剤または銅害防止剤を配合することが好ましい。
【0049】
2.発泡体
本発明のポリプロピレン系樹脂被覆用発泡体は、単軸押出機、多軸押出機、タンデム押出機などの押出機内において上記無架橋ポリプロピレン系樹脂と核形成剤を押出機に供給し、押出機内の溶融樹脂に高圧下で揮発性発泡剤を供給し、均一に混錬後、押出機出口の断面形状が環状のスリットを有するダイスより低圧下に筒状の押出発泡をさせ、環状ダイスに連結した冷却筒に接触させ、ダイス先端から冷却筒の接触までの距離を0.05mm以上で引取りながら固化させて得ることができる。
ダイス出口から押出された樹脂が冷却筒に接触するまでの距離は0.05mm以上であり、好ましくは2mm以上200mm以下が望ましい。0.05mmより短いとダイスと冷却筒によりダイス温度が下がり環状スリット内の樹脂詰まり等のトラブルが発生する。また、ダイスと冷却筒との距離が長いとコルゲート状の発泡体となり、緩衝効果が得られる。
ここで、ダイス先端から冷却筒の接触面までの距離は、図1に一例を示す模式的装置の断面図において、押出機ダイ1のダイ先端2から冷却筒3の接触点4までの距離dが0.05mm以上であることにより発泡体の内径を一定にすることができる。
【0050】
上記揮発性発泡剤としては、窒素、炭酸ガス、プロパン、ネオペンタン、メチルエーテル、二塩化二フッ化メタン、n−ブタン、イソブタン、各種フロン等の気体が挙げられる。なお、ここで気体とは、常温で気体であることを意味する。一方、揮発性の発泡剤としては、水、エーテル、石油エーテル、アセトン、ペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、イソヘプタン、ベンゼン、トルエン、各種アルコール、ハロゲン化炭化水素(例えば、メチルクロライド)等が挙げられる。気体及び揮発性の発泡剤の添加割合は、基材樹脂100重量部に対して、0.5〜20重量部とすることが好ましい。
【0051】
上記発泡剤は、窒素、炭酸ガス及び水を単独或いはそれらの混合物で発泡剤全量に対して5重量%以上含むことが好ましい。5重量%以下の場合は、発泡剤の逸散にバラツキを生じ成形品の安定性に乏しい。また、窒素、炭酸ガス及び水は、押出工程における加熱により分解することにより、窒素、炭酸ガス及び水を発生しうる分解性発泡剤の状態で添加してもよい。
【0052】
本発明では、外観や気泡の緻密さの点から重曹、クエン酸等の熱分解性物質、または炭酸ガス、ブタンガス等の揮発性物質から選ばれる少なくとも1種類の発泡剤を用いることが好ましい。また、本発泡剤の添加割合は、基材樹脂100重量部に対して、0.01〜5重量部とすることが好ましい。更に、分解温度、発生ガス及び分解速度を調節するために、公知の発泡助剤を添加してもよい。
【0053】
本発明に係る発泡剤の他、気泡調節剤として、炭酸アンモニウム、重曹、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム等の無機系分解性発泡剤、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル及びジアゾアミノベンゼン等のアゾ化合物、N,N’−ジニトロソペンタンメチレンテトラミン及びN,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミド等のニトロソ化合物、ベンゼンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルヒドラジド、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジド、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、トリヒドラジノトリアジン、バリウムアゾジカルボキシレート等の分解性発泡剤、タルク、シリカ等の無機粉末、多価カルボン酸等の酸性塩、多価カルボン酸と炭酸ナトリウム又は重曹との反応混合物等が挙げられ、これらは単独でも組み合わすこともできる。また、添加割合は、基材樹脂100重量部に対して、純分0.01〜5重量部とすることが好ましい。
【0054】
上記のようにして得られる本発明の被覆用発泡体は、下記の発泡体特性(1)〜(3)を有する。
発泡体特性(1)密度
本発明のポリプロピレン系樹脂被覆用発泡体の密度は、0.02〜0.2g/cmであり、好ましくは0.03〜0.1g/cmである。発泡体の密度が0.02g/cm未満では気泡膜が薄くなり独立した気泡構造を保ちにくく、0.2g/cmを超えると圧縮硬さの高い剛性を有したものとなり柔軟性が得られにくい。
【0055】
発泡体特性(2)平均気泡径
本発明のポリプロピレン系樹脂被覆用発泡体の平均気泡径は、0.05〜1.5mmであり、好ましくは0.1〜1.0mmである。気泡径が、0.05mm未満では気泡膜が厚く発泡体の柔軟性が発現しにくく被覆に適した柔軟な発泡体が得られいくい。1.5mmを超えると気泡膜が薄くはなるが発泡体の圧縮による回復が低下する。
【0056】
発泡体特性(3)圧縮硬さ
本発明のポリプロピレン系樹脂被覆用発泡体の測定前の厚みの25%に相当する厚みの深さまで圧縮した時の圧縮硬さは、5N/cm以下であり、好ましくは4N/cm以下である。圧縮硬さは、発泡体の初期厚みの25%を10mm/分の速度で圧縮した際の強度であり、発泡体の剛性が高いと被被覆体との密着性や施工性に支障をきたす。また、被覆用発泡体の密度が0.2g/cm以上では、圧縮硬さが5N/cm以上となり柔軟性が得られない。
【0057】
本発明の被覆用発泡体の肉厚は、特に限定しないが、肉厚は2〜20mm程度が好ましい。更に好ましくは2〜10mm。肉厚が20mmより厚いと、発泡層中央部が冷却不足になり独立した気泡が形成され難くい。
【0058】
本発明の被覆用発泡体は、柔軟性、耐熱性、リサイクル性を有する非架橋のポリプロピレン系樹脂による低密度発泡体であるので、電線被覆製造法や配管被覆製造法を用いて、電線や配管を内層体とし該発泡体による積層被覆できる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例、比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお、実施例で用いた評価方法を以下に示す。
(1)固有粘度[η]:オストヴァルト粘度計(三井東圧化学(株)製)を用い、135℃のテトラリン中で測定した(単位:dl/g)。
(2)メルトフローレート(MFR):JIS−K7210に規定された方法(230℃、0.216N)で測定した値を示した(単位:g/10min)。
(3)溶融張力:(株)東洋精機製作所製メルトテンション2型を用い、190℃に加熱溶融した樹脂組成物を、直径2.095mm、長さ40mmのオリフィスから20mm/分の速度で押出されたストランドを引き取り、値が安定した時の値(単位:cN)。
(4)α−オレフィン含有率:赤外線吸収スペクトル法により測定した(単位:重量%)。
(5)20℃キシレン可溶成分量:ISO/DIS 1873−1に準拠して測定した(単位重量%)。
(6)密度:発泡シ−トの場合はタテ、ヨコ各50mmのサンプルを切り出し、厚みを測定し体積を求め、同時にサンプルの重量を測定して、密度を求めた。また被覆体からは体積が測定できる形状に切り出し、同じくその重量を測定して密度を求めた。
(7)平均気泡径:発泡体の径方向に垂直な断面を5mm厚で切出し、切断面の拡大投影により断面中の気泡数と気泡径より算出した。気泡径が0.1mm以下では強度が維持できず、折れや裂けの要因となる可能性がある。
(8)圧縮硬さ:JIS K6767に準じ、発泡体を25×25mm□に数枚切り取り、重ね合わせて厚みを20mmとし、重ねた上から25×25mm□の圧子で測定前の厚みの25%に相当する厚み5mmの深さまで圧縮した時の強度を測定し、柔軟性の判定の指標の1つとして求めた(単位:N/cm)。
(9)耐折曲げ座屈性:得られた導体と発泡被覆層を有する発泡被覆体を180°折曲げを10回繰り返し、その結果、折り曲げ部の発泡層に亀裂発生有無を観察して柔軟性の判定の指標の1つとした。亀裂が発生しないものを○とし、耐折曲げ座屈性がよく柔軟性に優れる判定し、また亀裂が発生したものは×とし、耐折曲げ座屈性が悪く柔軟性に劣ると判定した。
【0060】
(実施例1)
(1)ポリプロピレン系樹脂の製造
(i)遷移金属化合物触媒成分の調製
窒素置換したSUS製オートクレーブに、無水MgClを95.3g、乾燥EtOH352mlを入れ、この混合物を攪拌下に、105℃に加熱して溶解させた。1時間攪拌後、この溶液を105℃に加熱した加圧窒素(1.1MPa)で二流体スプレーノズルでスプレー塔に送入した。窒素ガスの流量は38リットル/分であった。スプレー塔中には、冷却用として液体窒素を導入し、塔内温度を−15℃に保持した。生成物は塔内底部に導入した冷却ヘキサン中に集められ、256gを得た。生成物の分析結果から、この担体の組成は出発溶液と同じMgCl・6EtOHであった。
担体に用いるため、上記生成物の篩い分けを行い45〜212μmの粒径で球状の担体205gを得た。得られた担体を室温で、181時間、3リットル/分の流量の窒素を用いて通気乾燥して組成がMgCl・1.7EtOHの乾燥担体を得た。ガラスフラスコ中において、乾燥担体20g、四塩化チタン160mL精製1,2−ジクロルエタン240mlを混合し、攪拌下に100℃に加熱した後、ジイソブチルフタレート6.8ml加え、さらに100℃で2時間加熱した後、デカンテーションにより液相部を除き、再び、四塩化チタン160ml、精製1,2−ジクロルエタン320mlを加えた。100℃で1時間加熱保持した後、デカンテーションにより液相部を除き、精製ヘキサンで洗浄した後、乾燥してチタン含有固体触媒成分を得た。得られたチタン含有固体触媒成分:A−1の平均粒径は115μmであり、その分析値は、Mg:19.5重量%、Ti:1.6重量%、Cl:59.0重量%、ジイソブチルフタレート:4.5重量%であった。
【0061】
(ii)予備重合
内容積5リットルの傾斜羽根付きステンレス製反応器を窒素ガスで置換した後、n−ヘキサン2.8リットル、トリエチルアルミニウム(有機金属化合物(AL1))4ミリモルおよび前項で調製したチタン含有担持型触媒成分9.0g(チタン原子換算で5.26ミリモル)を加えた後、プロピレン20gを供給し、−2℃で10分間、予備重合を行った。別途、同一条件で行った予備重合後に生成したポリマーを分析したところ、チタン含有担持型触媒成分1g当たり、プロピレン2gがポリプロピレン(B)となり、ポリプロピレン(B)の135℃のテトラリン中で測定した固有粘度[η]が2.8dl/gであった。
【0062】
(iii)触媒の予備活性化
予備重合反応時間終了後、未反応のプロピレンを反応器外に放出し、反応器の気相部を1回、窒素置換した後、反応器内の温度を−1℃に保ちつつ、反応器内の圧力が0.59MPaを維持するようにエチレンを反応器に連続的に2時間供給し、予備活性化重合を行った。別途、同一条件で行った予備活性化重合後に生成したポリマーを分析した結果、チタン含有担持型触媒成分1g当たり、ポリマーが24g存在し、かつポリマーの135℃のテトラリン中で測定した固有粘度[η]T2が31.4dl/gであった。エチレンによる予備活性化重合で生成したチタン含有担持型触媒成分1g当たりのポリエチレン(A)の重量(W)は、予備活性化処理後のチタン含有担持型触媒成分1gあたりのポリマー生成量(WT2)と予備重合後のチタン含有担持型触媒成分1gあたりのポリプロピレン(B)の生成量(W)との差として次式で求められる。
=WT2−W
また、エチレンによる予備活性化で生成したポリエチレン(A)の固有粘度[η]は、予備重合で生成したポリプロピレン(B)の固有粘度[η]および予備活性化処理で生成したポリマーの固有粘度[η]T2から次式により求められる。
[η]=([η]T2×WT2−[η]×W)/(WT2−W
上記式に従ってエチレンによる予備活性化重合で生成したポリエチレン(A)の重量は、チタン含有担持型触媒成分1g当たり22g、固有粘度[η]は34.0dl/gであった。反応時間終了後、未反応のエチレンを反応器外に放出し、反応器の気相部を1回、窒素置換した後、反応器内にジ−1−プロピルジメトキシシラン(電子供与体(E1))1.6ミリモルを加えた後、プロピレン20gを供給し、1℃で10分間保持し、予備活性化処理後の付加重合を行った。別途、同一の条件で行った付加重合で生成したポリマーの分析結果は、チタン含有担持型触媒成分1g当たり、ポリマーが26g存在し、かつポリマーの135℃のテトラリン中で測定した固有粘度[η]T3が29.2dl/gであった。この結果、上記と同様にして算出した付加重合により生成したポリプロピレン(D)の生成量(W)は、チタン含有担持型触媒成分1g当たり2g、固有粘度[η]が2.8dl/gであった。反応時間終了後、未反応のプロピレンを反応器外に放出し、反応器の気相部を1回、窒素置換し、本重合用の予備活性化触媒とした。
【0063】
(iv)プロピレン単独重合体の製造
気相多段重合装置の1段目重合器に上記で得られた予備活性化触媒、トリエチルアルミニウム(有機金属化合物(AL2))、ジ−i−プロピルジメトキシシラン(電子供与体(E2))を連続的に供給した。反応温度70℃、反応圧力2.5MPa、攪拌速度40rpmの条件を維持するようにプロピレンを連続供給し、さらに生成プロピレン単独重合体の分子量を調整するために水素ガスを連続的に供給し、重合器の気相中水素濃度にて生成プロピレン単独重合体の固有粘度、およびメルトフローレートを制御した。この時、生成したプロピレン単独重合体を間欠的に抜き出し、各測定を行った。このようにして所定量のプロピレンを単独重合させた。
【0064】
(v)エチレン−プロピレン共重合体の製造
次に2段目重合器に、生成されたプロピレン単独重合体およびエチレン−プロピレン混合ガスを連続的に供給し、エチレンとプロピレンの共重合を行った。反応条件は反応温度60℃、反応圧力2.1MPa、攪拌速度40rpm、気相のガス組成ではエチレン/プロピレンモル比および水素/エチレンモル比を調整した。生成エチレン−プロピレン共重合体の重合量を調整するために重合活性抑制剤として一酸化炭素、又は生成エチレン−プロピレン共重合体の分子量を調整するために水素ガスを供給した。このようにして所定量のエチレン−プロピレン共重合体組成物を得た。
【0065】
(vi)ポリプロピレン系樹脂
このプロピレン系重合体組成物100重量部と、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.1重量部、およびステアリン酸カルシウム0.1重量部を混合し、該混合物をスクリュー径40mmの押出造粒機を用いて230℃にて造粒しペレット状のポリプロピレン系樹脂組成物Aとした。得られたペレットのメルトフローレートは1g/10分、溶融張力は6.5cNであった。
【0066】
(2)発泡体の製造と評価
得られたポリプロピレン系樹脂組成物A100重量部と気泡調整剤としてタルク1.0重量部をリボンブレンダーにより均一に攪拌混合し、バレル途中に揮発性発泡剤注入用のバレル孔を有する65mmφ押出機と90mmφ押出機とを連結した発泡用タンデム押出設備に供給し、発泡剤として無臭用工業ブタンを6重量部注入し溶融混錬した後、90mmφの押出機の先端に取り付けられた環状のダイ(リップ径14mm、リップ間隔1mm)より単層の筒状発泡体を押出し、外径が50Φmm、温度70℃の循環水を接続した冷却筒にて冷却しながら、筒状に一部を切開きシート状の被覆用発泡体を得た。得られた発泡体は、厚み5mm、密度0.09g/cm、平均気泡径0.5mm、圧縮硬さ2.5N/cmと柔軟な風合いを有した。結果を表1に示す。
【0067】
(比較例1)
予備活性化及び付加重合を行わなかった他は、実施例1と同様にしてプロピレン単独重合体を重合し、エチレン−プロピレン共重合体を重合した。得られた共重合体のパウダー4kgに、酸化防止剤として1,1,3−トリス(2−メチル−4−ハイドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン0.004kg、ステアリン酸カルシウム0.004kgを加え高速攪拌式混合機(ヘンシェルミキサー、商品名)で室温下3分混合し、該混合物をスクリュー口径40mmの押出造粒機を用いて造粒しポリプロピレン系樹脂組成物Bとした。得られたペレットのメルトフローレートは3.1g/10分、溶融張力は0.75cNであった。実施例1同様にして発泡体を得ようとしたが、ダイ出口でガスが抜けてしまい発泡体を得ることができなかった。結果を表1に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
(実施例2)
実施例1と同様にポリプロピレン系樹脂Aとタルクを押出機に供給し、発泡剤としてブタンを10重量部注入し溶融混錬した後、筒状の発泡体を経て単層のシート状の被覆用発泡体を得た。得られた発泡体は、厚み5mm、密度0.045g/cm、平均気泡径1.0mm、圧縮硬さは1.0N/cmであった。結果を表2に示す。
【0070】
(実施例3)
気泡調整剤を重曹系発泡剤(日本ベーリンガーインゲルハイム社製CF40E)とし0.3重量部配合した以外は、実施例2と同様にして押出機に供給し単層のシート状発泡体を得た。得られた発泡体は、密度0.045g/cm、平均気泡径0.3mm、圧縮硬さ0.6N/cmと柔軟であった。結果を表2に示す。
【0071】
(実施例4)
実施例1同様の製造条件にて、予備活性化ポリエチレン(A)量を13重量部とし、エチレン−プロピレン共重合体のエチレン含有量、重量部、メルトフローレートを調整し表2に示すようなプロピレン系共重合体組成物を得た。実施例1同様にして、ペレット状のポリプロピレン系樹脂組成物Bを得た。得られたペレットのメルトフローレートは1.0g/10分、溶融張力は30cNであった。実施例3と同様の気泡調整剤を配合し、単層のシート状発泡体を得た。得られた発泡体は、密度0.045g/cm、平均気泡径0.15mm、圧縮硬さ0.6N/cmと柔軟であった。結果を表2に示す。
【0072】
(実施例5)
実施例4で得られたポリプロピレン系樹脂組成物B100重量部に対し、135℃のテトラリン中で測定した固有粘度が10dl/g、密度が0.87g/cmのエチレン−α−オレフィン共重合体13重量部を配合し、リボンブレンダーにより均一に攪拌混合し、実施例3同様に発泡シートを得た。得られた発泡シートは、密度0.06g/cm、平均気泡径0.5mm、圧縮硬さ0.3N/cmと柔軟であった。結果を表2に示す。
【0073】
【表2】

【0074】
(実施例6)
実施例4で得られたシート状発泡体を、発泡絶縁ケーブル製造ラインを用いて、径9.6mmの絶縁ケーブル上に被せるように包むと同時に、シート端面の熱融着により接合し、発泡絶縁ケーブルを得た。得られた絶縁ケーブルをマンドリルに巻付け初めて座屈したときの径により耐座屈性を評価したが径が小さく良好であった。結果を表3に示す。
【0075】
(比較例2)
(1)ポリプロピレン系樹脂の製造
(i)遷移金属化合物触媒成分の調製
撹拌機付きステンレス製反応器中において、デカン37.5リットル、無水塩化マグネシウム7.14kg、および2−エチル−1−ヘキサノール35.1リットルを混合し、撹拌しながら140℃で4時間加熱反応を行って均一な溶液とした。この均一溶液中に無水フタル酸1.67kgを添加し、さらに130℃にて1時間撹拌混合を行い、無水フタル酸をこの均一溶液に溶解した。
得られた均一溶液を室温(23℃)に冷却した後、この均一溶液を−20℃に保持した四塩化チタン200リットル中に3時間かけて全量滴下した。滴下後、4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジ−i−ブチル5.03リットルを添加し、2時間110℃にて撹拌保持して反応を行った。反応終了後、熱濾過して固体部を採取し、固体部を275リットルの四塩化チタン中に再懸濁させた後、再び110℃で2時間、反応を持続した。
反応終了後、再び熱濾過により固体部を採取し、n−ヘキサンにて、洗浄液中に遊離のチタンが検出されなくなるまで充分洗浄した。続いて、濾過により溶媒を分離し、固体部を減圧乾燥してチタン2.4重量%を含有するチタン含有担持型触媒成分(遷移金属化合物触媒成分)を得た。
【0076】
(ii)予備活性化触媒の調製
内容積30リットルの傾斜羽根付きステンレス製反応器を窒素ガスで置換後、n−ヘキサン18リットル、トリエチルアルミニウム60ミリモルおよび前項で調整したチタン含有担持型触媒成分150g(チタン原子換算で75.16ミリモル)を添加した後、プロピレン500gを供給し、−2℃で40分間、予備重合を行った。
別途、同一の条件で行った予備重合後に生成したポリマーを分析した結果、チタン含有担持型触媒成分1g当たり、3.0gのポリプロピレンが生成し、このポリプロピレンの固有粘度[η]は2.80dl/gであった。
【0077】
(iii)触媒の予備活性化
反応時間終了後、未反応のプロピレンを反応器外に放出し、反応器の気相部を1回、窒素置換した後、反応器内の温度を0℃に保持しながら、反応器内の圧力を0.59MPaに維持するようにエチレンを反応器に連続的に6時間供給し、予備活性化重合を行った。別途、同一の条件で行った予備活性化重合後に生成したポリマーを分析した結果、チタン含有担持型触媒成分1g当たり、ポリマーが73.3g存在し、かつポリマーの固有粘度[η]は29.7dl/gであった。
エチレンによる予備活性化重合で生成したチタン含有担持型触媒成分1g当たりのポリエチレン量(W)は、予備活性化処理後のチタン含有担持型触媒成分1g当たりのポリマー生成量(W)と予備重合後のチタン含有担持型触媒成分1g当たりのポリプロピレン生成量(W)との差として次式で求められる。
=W−Wまた、エチレンによる予備活性化重合で生成したポリエチレンの固有粘度[η]は、予備重合で生成したポリプロピレンの固有粘度[η]および予備活性化処理で生成したポリマーの固有粘度[η]から次式により求められる。
[η]=([η]×W−[η]×W)/(W−W
反応時間終了後、未反応のエチレンを反応器外に放出し、反応器の気相部を1回、窒素置換し、プロピレン系重合体組成物製造のための予備活性化触媒スラリーとしたが、別途、同一条件で行ったプロピレンによる予備重合およびエチレンによる予備活性化重合のデータを用いた上記式による計算結果から、エチレンによる予備活性化重合で生成したポリエチレン量は、チタン含有担持型触媒成分1g当たり70.3g、該ポリエチレンの固有粘度は30.9dl/gであった。
【0078】
(iv)プロピレン系重合体組成物の製造
窒素置換された、内容積110リットルの撹拌機を備えた連続式横型気相重合器(長さ/直径=3.7)に、触媒成分の分散媒体としてポリプロピレンパウダー25kgを導入し、さらに予備活性化触媒スラリーをチタン含有担持型触媒成分として0.62g/h、またトリエチルアルミニウムおよびジイソプロピルジメトキシシランをチタン含有担持型触媒成分中のチタン原子に対し、それぞれモル比が90および15となるように連続的に供給した。
さらに、重合温度70℃の条件下、重合器内の水素濃度のプロピレン濃度に対する比が0.0055となるように水素を、また重合器内の圧力が2.15MPaを保持するようにプロピレンをそれぞれ重合器内に供給して、プロピレンの気相重合を150時間連続して行った。重合中は重合器内の重合体の保有レベルを60容積%に維持するように、重合器からポリマーを11kg/hの速度で抜き出した。抜き出したポリマーを、水蒸気を5容積%含む窒素ガスにより100℃にて30分間接触処理し、固有粘度が1.98dl/gであるポリマーを得た。得られたポリマーは、(b)成分に該当する予備活性化処理により生成したポリエチレンの含有率0.90重量%のプロピレン系重合体組成物であり、(a)成分のポリプロピレンの固有粘度は1.86dl/gであった。
このプロピレン系重合体組成物100重量部と、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.1重量部、およびステアリン酸カルシウム0.1重量部を混合し、該混合物をスクリュー径40mmの押出造粒機を用いて230℃にて造粒しペレット状のポリプロピレン系樹脂組成物Aとした。得られたペレットのメルトフローレートは2g/10分、溶融張力は21cNであった。
【0079】
(2)発泡体の製造と評価
得られたポリプロピレン系樹脂A100重量部と気泡調整剤としてタルク1.0重量部をリボンブレンダーにより均一に攪拌混合し、バレル途中に揮発性発泡剤注入用のバレル孔を有する65mmφ押出機と90mmφ押出機とを連結した発泡用タンデム押出設備に供給し、発泡剤として無臭用工業ブタンを6重量部注入し溶融混錬した後、90mmφの押出機の先端に取り付けられた環状のダイ(リップ径14mm、リップ間隔1mm)より単層の筒状発泡体を押出し、外径が50Φmm、温度70℃の循環水を接続した冷却筒にて冷却し、ダイス先端から冷却筒接触までの距離が2mmとして引取り、厚み4mm、密度0.05g/cm、平均気泡径2.0mmの筒状発泡体を得た。得られた筒状発泡体の特性を表3に示すように、発泡体の切片を切出し測定した圧縮硬さは15N/cmと剛性を有する。
実施例6同様に得られたシート状発泡体を、発泡絶縁ケーブル製造ラインを用いて、径9.6mmの絶縁ケーブル上に被せるように包むと同時に、シート端面の熱融着により接合し、発泡絶縁ケーブルを得た。得られた絶縁ケーブルをマンドリルに巻付け初めて座屈したときの径により耐座屈性を評価した結果を表3に示すように径が大きく座屈性は実施例6よりも劣る。
【0080】
(実施例7)
外径8mmの鋼管を冷却しながら、単層の筒状発泡体が得られるよう図2のように鋼管に実施例1同様のポリプロピレン系樹脂Aと気泡調整剤による発泡体を積層しながら引取ることにより、鋼管に積層された発泡体を得た。得られた被覆鋼管は表面の柔軟な風合いが得られた。図2において、鋼管10はダイス1内で発泡体5で被覆され矢印方向に引き取られる。なお、得られた被覆鋼管の断面は、図3示すように鋼管3の外表面を発泡体5で被覆したものとなる。結果を表3に示す。
【0081】
(実施例8)
実施例1で得られたポリプロピレン樹脂組成物A100重量部に気泡調整剤として重曹系発泡剤(日本ベーリンガーインゲルハイム社製CF40E)0.3重量部配合し、50mmφ電線被覆装置(L/D=25)を用いて、押出温度210℃、押出線速度100m/分で、ダイスから1.6mmφの導体(銅線)上に発泡層を被覆して押出し、その後冷却エア−を吹き付け、さらに冷却水槽を通り巻き取りを行い、外径2.6mm、被覆厚さ1.0mmの発泡被覆電線を得た。得られた発泡被覆電線は、発泡被覆層が密度0.045g/cm、平均気泡径0.3mmであり、導体に対して均一に被覆形成され、柔軟で容易に折り曲げられ、座屈発生しにくいものであった。結果を表3に示す。
【0082】
(実施例9)
実施例4で得られた、発泡体を粉砕機にて粉砕し、粉砕品100重量部、気泡調整剤を重曹系発泡剤(日本ベーリンガーインゲルハイム社製CF40E)とし0.3重量部配合した以外は、実施例2同様の押出機に供給し単層のシート状発泡体を得た。得られた発泡体は密度0.06g/cm、平均気泡径0.6mm、圧縮硬さは1.0N/cmで柔軟であった。結果を表2に示す。
【0083】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明のポリプロピレン系樹脂の発泡体は、柔軟性、耐熱性、リサイクル性を有する低密度発泡体であるので、電線被覆、配管被覆等に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の発泡体の製造におけるダイス先端と冷却筒の位置を説明する図である。
【図2】本発明の被覆用発泡体を鋼管への被覆方法を説明する図である。
【図3】本発明の被覆用発泡体で被覆された被覆鋼管の断面図である。
【符号の説明】
【0086】
1 ダイ
2 ダイス先端
3 冷却筒
4 冷却筒接触点
5 発泡体
10 鋼管
d ダイス先端から冷却筒接触点間距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無架橋のポリプロピレン系樹脂を基材とする被覆用発泡体であって、その発泡成形体の密度が0.02〜0.2g/cm、平均気泡径が0.05〜1.5mmであり、測定前の厚みの25%に相当する厚みの深さまで圧縮した時の圧縮硬さが5N/cm未満であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂被覆用発泡体。
【請求項2】
ポリプロピレン系樹脂がプロピレン重合単位を50重量%以上含有するプロピレン−オレフィン共重合体からなり、メルトフローレート(230℃、21.2N)が0.1〜20g/10分、溶融張力(190℃、口径2mm)が1.0〜50cN、伸長流動下においてひずみ硬化性を有するポリプロピレン系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂被覆用発泡体。
【請求項3】
ポリプロピレン系樹脂が135℃のテトラリン中で測定した固有粘度[η]が0.2〜10dl/gであり、プロピレン重合単位を50重量%以上含有するプロピレン・オレフィン共重合体(a)と135℃のテトラリン中で測定した固有粘度[η]が15〜100dl/gである、エチレン単独重合体またはエチレン重合単位50重量%以上を含有するエチレン・α−オレフィン共重合体(b)を(a)成分100重量部に対し、0.01〜20重量部含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂被覆用発泡体。
【請求項4】
プロピレン・オレフィン共重合体(a)が、プロピレン単位含有量が99.4〜100モル%であるプロピレン単独あるいはプロピレン・オレフィンランダム共重合体からなる重合体成分(A)と、プロピレン単位含有量が35〜60モル%であるプロピレン・オレフィンランダム共重合体からなる重合体成分(B)とからなるプロピレン系ブロック共重合体ないしはプロピレン系樹脂組成物であって、重合体成分(B)の極限粘度[η]が0.5〜2.0dl/gであり、重合体成分(B)の極限粘度[η]と重合体成分(A)の極限粘度[η]との比[η]/[η]が0.3〜1.2であり、かつ、この極限粘度比[η]/[η]と重合体成分(A)と重合体成分(B)の重量比W/Wとの積([η]/[η])・(W/W)が1.0〜3.0であるプロピレン系ブロック共重合体あるいはプロピレン系樹脂組成物からなることを特徴とする請求項3に記載のポリプロピレン系樹脂被覆用発泡体。
【請求項5】
重合体成分(B)の含有量が、プロピレン系ブロック共重合体あるいはプロピレン系樹脂組成物の22〜49重量%であることを特徴とする請求項4に記載のポリプロピレン系樹脂被覆用発泡体。
【請求項6】
ポリプロピレン系樹脂が135℃のテトラリン中で測定した固有粘度[η]が0.2〜10dl/gであり、プロピレン重合単位を50重量%以上を含有するプロピレン・オレフィン共重合体(a)、135℃のテトラリン中で測定した固有粘度[η]が15〜100dl/gである、エチレン単独重合体またはエチレン重合単位50重量%以上を含有するエチレン・α−オレフィン共重合体(b)を(a)成分100重量部に対し、0.01〜5.0重量部、及び135℃のテトラリン中で測定した固有粘度[η]が1〜15dl/gであり、密度が0.85〜0.895g/cmのエチレン・α−オレフィン共重合体(c)を(a)成分100重量部に対し、0.01〜20重量部含有することを特徴とする請求項1、2、4、5のいずれか1項に記載のポリプロピレン系樹脂被覆用発泡体。
【請求項7】
無架橋のポリプロピレン系樹脂に難燃剤または銅害防止剤を配合してなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリプロピレン系樹脂被覆用発泡体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリプロピレン系樹脂被覆用発泡体が、鋼管、電線あるいはケーブルに被覆されていることを特徴とする被覆成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−45268(P2006−45268A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−224588(P2004−224588)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【Fターム(参考)】