説明

ポリペプチドの使用

本発明は、酵素、それらの機能的フラグメントまたは誘導体の、ポリペプチドのリン酸化状態を調節する能力を測定するための、ポリペプチドの使用に関し、本発明は、ポリペプチドがビオチン化されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素の、ポリペプチドのリン酸化状態を調節する能力を測定するための、ポリペプチドの使用に関する。さらなる本発明の形態は、このような活性を測定する方法、および、このような酵素の能力を修飾する物質を同定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インスリンは、インスリン受容体に結合し、インスリン受容体に本来備わっているチロシンキナーゼを活性化することによって、多数の増殖および代謝経路に影響を与えるペプチドホルモンである。この事象により、インスリン受容体(IR)の結合することができる多数のタンパク質の特異的なチロシン残基にリン酸化が起こる。インスリン受容体基質(IRS)タンパク質のファミリーもまた、このようにしてリン酸化されたタンパク質に属する。
【0003】
インスリン受容体基質1(IRS−1)は、多数のタンパク質キナーゼ(チロシン特異的タンパク質キナーゼ、または、セリン/トレオニン特異的タンパク質キナーゼ)によって、チロシン残基および/またはセリン残基および/またはトレオニン残基でリン酸化される細胞タンパク質である。これに関して、酵素に応じて異なるチロシンまたはセリン/トレオニン残基が特異的にリン酸化されていると考えられている。チロシンキナーゼによるリン酸化とは別に、例えばインスリン受容体(White,2002年)、IGF−1受容体(White,2002年)、または、JAK1/2(Thirone等,1999年)とは別に、IRS−1はまた、例えば、PKCファミリー由来のキナーゼ(Schmitz−Peiffer,2002年)、阻害剤のカッパBキナーゼ複合体(Gao等,2002年)、c−JunNH(2)末端キナーゼ(JNK,Aguirre等,2000年)、タンパク質キナーゼA(Sun等,1991年)、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(Mothe等,1996年)、タンパク質キナーゼB(Paz等,1999年)、カゼインキナーゼ(Tanasijevic等,1993年)、グリコーゲンシンターゼキナーゼベータ(Eldar−Finkelmann等,1997年)、AMP活性化キナーゼ(Jakobsen等,2001年)、または、ホスホイノシトール3キナーゼ(Freund等,1995年)のようなセリン/トレオニンキナーゼによってリン酸化されることがわかっている。IRS分子は、インスリンシグナル伝達経路において重要な分子であり、増殖、生存および代謝のような細胞機能の維持において、中心的な役割を果たす。これに関して、リン酸化されたIRSタンパク質は、インスリン受容体に関する多数のドッキング部位、および、いわゆるシグナル認識複合体(SRC)相同2ドメイン(SH2ドメイン)を有する細胞内のシグナル分子の複合体のネットワークを有する「ドッキング」タンパク質として役立つ。これらSH2ドメインタンパク質が活性化されることにより、さらに、特定のシグナルカスケードが活性化され、順にシグナルカスケードのさらに下流に位置する様々なエフェクターが活性化され、最終的には、インスリンシグナルを、分岐した他の細胞内シグナルカスケードの系列に伝達させる(総論として、White,2002年を参照)。
【0004】
IRSは、リンタンパク質群に属し、160〜185kDaの大きさを有し、インスリン受容体の基質として役立つ。IRSファミリーの4つのメンバー(IRS−1、IRS−2、IRS−3およびIRS−4)がわかっている。それらは、組織分布、細胞内局在、発達特異的発現、インスリン受容体に結合する特徴、および、それらが相互作用するSH2タンパク質の特徴の点で異なる。IRSファミリーの4つのメンバーは、それらの基礎的なタンパク質構造に関して極めて類似した構造を有する:いずれも、膜リン脂質に結合するアミノ(N)末端のプレクストリン相同ドメイン(PHドメイン)、PHドメインのカルボキシ(C)末端に直接連結され、インスリン受容体ベータサブユニットの膜近傍の領域に位置するAsp−Pro−Gluリン酸化チロシン(NPEpY)配列の認識に関与するリン酸化チロシン結合ドメイン(PTBドメイン)を有する。さらにそれらは、それほど高く保存されていないC末端部分を有し、これは、様々な可能性のあるチロシンリン酸化モチーフを有し、そのモチーフに特異的なSH2ドメインを含むタンパク質が結合できる。
【0005】
IRS−1は、21個の可能性のあるチロシンリン酸化部位を含み、そのうちいくつかは、SH2ドメインタンパク質に結合することができるアミノ酸配列モチーフに位置する。IRS−1はさらに、30個の可能性のあるセリン/トレオニンリン酸化部位をモチーフ中に含み、これらは、例えばPKCファミリー由来のキナーゼ(Schmitz−Peiffer,2002年)、阻害剤のカッパBキナーゼ複合体(Gao等,2002年)、c−JunNH(2)末端キナーゼ(JNK,Aguirre等,2000年)、タンパク質キナーゼA(Sun等,1991年)、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(Mothe等,1996年)、タンパク質キナーゼB(Paz等,1999年)、カゼインキナーゼ(Tanasijevic等,1993年)、グリコーゲンシンターゼキナーゼベータ(Eldar−Finkelmann等,1997年)、AMP活性化キナーゼ(Jakobsen等,2001年)、または、ホスホイノシトール3キナーゼ(PI3キナーゼ、Freund等,1995年)のような様々なキナーゼによって認識できる。
【0006】
インスリン受容体のシグナル経路における阻害作用は、近年発見されたIRS−1のセリン/トレオニンリン酸化の役割によって少なくとも部分的に説明でき、すなわち、このような阻害作用は、インスリン受容体との相互作用の障害、および/または、IRS−1のチロシンリン酸化の減少、および/または、それに続く、チロシンリン酸化IRS−1に結合することができるシグナルタンパク質との相互作用の障害と関連していると考えられている(総説として、White,2002年を参照)。これまで、様々なキナーゼ、例えばPKCファミリー由来のキナーゼ(Schmitz−Peiffer,2002年)、阻害剤のカッパBキナーゼ複合体(Gao等,2002年)、c−JunNH(2)末端キナーゼ(JNK,Aguirre等,2000年)、タンパク質キナーゼA(Sun等,1991年)、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(Mothe等,1996年)、タンパク質キナーゼB(Paz等,1999年)、カゼインキナーゼ(Tanasijevic等,1993年)、グリコーゲンシンターゼキナーゼベータ(Eldar−Finkelmann等,1997年)、または、ホスホイノシトール3キナーゼ(Freund等,1995年)に関して、それらのキナーゼがIRS−1をインビトロで直接リン酸化するということを実証することができるようになってきた。その上、いずれの場合においても、インタクト細胞における高いキナーゼ活性により、インスリンシグナル伝達経路の活性が阻害された。加えて、いくつかの研究では、インビトロでのRS−1のセリン/トレオニン残基におけるリン酸化は、インスリン受容体によって減少したチロシンリン酸化と直接関連していると考えられていた(Le Marchand−Brustel,1999年))。
【0007】
IRS−1、2、3および4の配列は一般に公開されている。それをコードしたポリヌクレオチド配列と、これら遺伝子の関連タンパク質配列は、番号NM_005544(IRS−1hs),XM:007095(IRS−2hs),NM:032074(IRS−3rat),NM:003604(IRS−4hs)で、NCBIヌクレオチドデータベースより入手できる。NCBIとは、National Center for Biotechnology Informationのことである(郵便のあて先:National Center for Biotechnology Information,National Library of Medicine, Building38A,ベセスダ,メリーランド州20894,米国;ウェブアドレス:www.ncbi.nhm.nih.gov)。IRS−1遺伝子のクローニングは、特に、Araki等,1993年、および、Siemeister等,1996年に記載されている;IRS−2〜4のクローニングは、Araki等,1994年,Lavan等,1997年a、および、Lavan等,1997年bに記載されている。
【0008】
様々なキナーゼがIRS−1をリン酸化する能力を測定するため、および、様々なキナーゼがIRS−1をリン酸化する活性を測定するための様々な従来技術の方法が既知であり、これらの方法はそれぞれ、放射活性による検出法(例えば放射標識されたリン酸塩の基質への移動)、または、非放射活性による検出法に基づいている。
【0009】
従って、IRS−1をリン酸化するキナーゼの能力の機能として、放射標識したATPおよび測定すべきキナーゼをインキュベートすることによって放射活性リン酸残基をIRS−1に移動させる方法に従い、全長IRS−1タンパク質、それらの少なくとも1つのリン酸化部位を保持しているフラグメントまたはペプチドを用いて、IRS−1のリン酸化を測定することが知られている。これに続いて、クロマトグラフィーまたは電気泳動により、IRS−1を分画化し、移動したリン酸部分の量をフローシンチレーションまたはオートラジオグラフィによって検出する(例えば、完全IRS−1タンパク質およびグリコーゲンシンターゼキナーゼ3ベータについては、Eldar−Finkelman等,1997年で、IRS−1フラグメント(アミノ酸516〜777)およびインスリン受容体、IGF−1受容体または組換えインスリン受容体キナーゼについては、Siemeister等,1995年で、または、PKCファミリー由来の活性化タンパク質キナーゼを含む細胞溶解産物およびIRS−1ペプチド(アミノ酸601〜616)については、De Fea等,1997年で記載されている通り)。加えて、Siemeister等,1995年では、放射標識されたATPとインキュベートし、基質を正電荷を有するメンブレン(ニトロセルロースまたは類似の材料)に滴下して添加し、洗浄し、結合した放射標識された基質をオートラジオグラフィまたは放射線放出の測定によって検出することによって、IRS−1フラグメント、例えばIRS−1フラグメント(アミノ酸516〜777)、および、インスリン受容体、IGF−1受容体または組換えインスリン受容体キナーゼをリン酸化する能力を測定することが記載されている。
【0010】
IRS−1をリン酸化するキナーゼの能力を測定するさらなる方法としては、ビオチン化されたIRS−1ペプチド(アミノ酸601〜616)と、放射標識されたATPとをインキュベートし、基質をストレプトアビジンで被覆したメンブレンに滴下して添加し、洗浄し、結合した放射標識された基質をオートラジオグラフィまたは放射線放出の測定によって検出することが挙げられる(De Fea等,1997年を参照)。
【0011】
放射活性の取り扱いは、かなりの危険が必然的に伴い、極めて高価であるため、上述の放射活性分析法の欠点は明らかであり、従って、特にハイスループット方法(HTS方法)に対する適性は低い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述の短いペプチドの使用に基づく方法の欠点は、これらペプチドは、好ましくない速度定数(Vmax、Km)を有し、その上これらペプチドの三次元構造は、生理的な酵素基質の三次元構造と大きく異なることである。これは、一方では、完全に異なるフォールディングとして現われ、すなわち、酵素−基質相互作用の特異性を決定する特定の生物学的な空間が存在しておらず、それにより、認識の欠如(およびそのような修飾)または非特異的な認識(およびそのような修飾)のいずれかが起こり、最終的には、不正確な結果が生じる。その上、ペプチドが短いことは、それらが1つだけ、または2〜3のリン酸化部位しか有していないことを意味しており、そのために、異なる酵素による特定の基質
のリン酸化の修飾を調べるには様々なペプチドが必要である。またこれにより、コストの増加も招き、HTS様式の方法へは条件付の適用性があるだけである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
それゆえに、本発明の目的は、上述の欠点がない、タンパク質をリン酸化する酵素および/または脱リン酸化する酵素の活性を測定することができる方法を提供することである。
【0014】
この目的は、酵素、それらの機能的フラグメントまたは誘導体の、ポリペプチドのリン酸化状態を調節する能力を決定するための、ビオチン化されたポリペプチド(ペプチドに対し、Def GGs)の使用によって達成される。
【0015】
本発明は、驚くべきことに、ポリペプチドまたは全長タンパク質でも、ストレプトアビジンによるビオチン結合の立体障害がなく、ビオチン化が、調べられる基質のいずれかのキナーゼによるリン酸化を妨害しないということを示す発明者の成果に基づく。
【0016】
本発明の目的において、用語「ポリペプチド」は、ペプチド結合によって連結したアミノ酸を含み、このようにして直線状に連結した少なくとも50個のアミノ酸を有する分子を意味する。このタイプのより短い分子は、ペプチドという。用語「タンパク質」は、少なくとも1つのポリペプチド鎖を含む分子に関するが、共に会合した、または連結した複数のポリペプチド鎖からなる分子でもよい。従って、用語「タンパク質」は、用語「ポリペプチド」を包含する。
【0017】
本発明の様々な形態の好ましい実施形態において、上記ポリペプチドは、アミノ酸が50個およびそれ以上、好ましくはアミノ酸が50〜300個の長さを有する。本発明の様々な形態のさらに好ましい実施形態において、上記ポリペプチドは、1kDaおよびそれ以上、好ましくは1〜100kDa、特に好ましくは10〜50kDaの大きさを有する。
【0018】
本明細書において、酵素の基質は、酵素による修飾に適したあらゆる分子を意味する。天然の基質とは、本発明の目的において、それらが自然の生理的な、または病理学的な環境で存在しているように配列された分子であって、関連する酵素で修飾することができる。
【0019】
酵素によるリン酸化状態の調節は、酵素によって基質が、少なくとも1つのリン酸基が、基質に移動されるか、または除去されるように修飾される特徴を意味する。それゆえに、本発明に関する酵素は、一つおよび/または他の反応を触媒する能力を有する。それゆえに、本発明に関する酵素は、少なくともこのようなキナーゼおよび/またはホスファターゼの能力を有するが、加えて、さらなる酵素的特性(例えばプロテアーゼ特性など)を有していてもよい。当業者であれば、様々な酵素の種類およびそれらの特性を十分に熟知している。
【0020】
本明細書において、酵素の機能的フラグメントとは、酵素のあらゆるフラグメント(すなわち、天然に存在する形態と比較して大きさが減少した、または、短縮化された分子)のことであって、それでもなお少なくとも1種のポリペプチドのリン酸化状態を調節する能力を有するものである。これに関して、酵素の「機能的な誘導体」という用語は、天然に存在する形態と比較して、あらゆるタイプの酵素による修飾(ただし短縮化は意味しない)を包含し、かつ、このような酵素の誘導体は、それでもなお、少なくとも1種のポリペプチドのリン酸化状態を調節する能力を有するものである。これに関して、本発明はまた、少なくとも1種のポリペプチドのリン酸化状態を調節することができる酵素のフラグメントの機能的な誘導体に関する。
【0021】
これに関して、酵素の、上記ポリペプチドのリン酸化状態を調節する能力の測定は、定性的に行ってもよいし、定量的に(すなわち定量可能な測定として)行ってもよい。
【0022】
本発明に係る使用は、用いられた基質の長さのために、本発明で達成される結果はより有益であるという利点があり、これは、上記基質が生理的な環境に対応しやすい三次構造を有するためである。加えて、用いられたポリペプチドは、従来技術で既知のペプチドと比べて、優れた速度定数を有し(例えば、IRS−1に関して、Kmは19μMである:参考としてSiemeister等,1995年のペプチド:>200μMと比較した場合)、複数のリン酸化部位を有する基質を解析するのに必要な基質は1つだけであり、さらに、例えば異なる酵素の能力を測定するのに用いることもできる。
【0023】
好ましい実施形態は、酵素の、上記ポリペプチドをリン酸化する能力を測定する使用に関する。
【0024】
本発明の様々な形態において、キナーゼ活性を有する酵素の特に有用なタイプは、セリン/トレオニンまたはチロシンキナーゼに関するものである。
【0025】
特に適切なキナーゼの例としては、特に、インスリン受容体、IGF−1受容体、trK受容体、EGF受容体、カゼインキナーゼII、タンパク質キナーゼCファミリーのメンバー、タンパク質キナーゼB/Akt、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPキナーゼ)、GSK−3ベータ、ERK1/2、IKKベータキナーゼ、AMPキナーゼ、PI3キナーゼまたはJNKが挙げられる。
【0026】
加えて、本発明に係る使用は同様に、酵素の、上記ポリペプチドを脱リン酸化する能力を測定するのにも適している。
【0027】
本発明のさらなる形態は、酵素、それらの機能的フラグメントまたは誘導体が、ビオチン化ポリペプチドのリン酸化状態を調節する能力を測定する方法に関する。
【0028】
ビオチン化ポリペプチドのリン酸化の程度を決定する適切な方法は、例えば、短いペプチドのリン酸化の程度を測定するのに適していることがわかっている方法に関する。これらは、当業者であれば熟知している。
【0029】
好ましい実施形態において、本発明の方法は、酵素、それらの機能的フラグメントまたは誘導体が、上記ポリペプチドをリン酸化する能力を測定する方法に関し、本方法は、以下の工程を含む:
a)適切な反応混合液中で、酵素または機能的フラグメントもしくは誘導体と、ビオチン化ポリペプチドとを接触させ、リン酸化反応を開始させる工程、
b)前記反応混合液を、キャリアーにカップリングし及びビオチン化ポリペプチドに結合可能な手段と接触させる工程、
c)前記手段に結合したポリペプチドのリン酸化状態を測定する工程。
【0030】
本発明のさらに好ましい実施形態は、酵素、それらの機能的フラグメントまたは誘導体が、上記ポリペプチドを脱リン酸化する能力を測定する方法に関し、本方法は、以下の工程を含む:
a)適切な反応混合液中で、酵素または機能的フラグメントもしくは誘導体と、少なくとも1つのリン酸残基を有するビオチン化ポリペプチドとを接触させ、リン酸化反応を開始させる工程、
b)前記反応混合液を、キャリアーにカップリングし及びビオチン化ポリペプチドに結合可能な手段と接触させる工程、
c)前記手段に結合したポリペプチドのリン酸化状態を測定する工程。
【0031】
これに関して、上記手段としては、ビオチン化ポリペプチドとの結合に適したあらゆるタイプの分子または超分子集合体(例えば物体またはデバイス)が可能である。
【0032】
この場合、上記の結合は、ビオチン部分または上記ポリペプチドそれ自体で起こる可能性があり、ポリペプチドそれ自体に結合する場合、リン酸化状態に依存する結合が好ましい(例えば、単一または複数のリン酸化部位に対して、リン酸化された状態またはリン酸化されていない状態においてのみ結合が起こる)。
【0033】
それゆえに、上記手段の好ましい実施形態は、ストレプトアビジンまたはリン酸特異的抗体(すなわち、上記ポリペプチドの特定の残基のリン酸化を認識し、そこでリン酸化されたポリペプチドに特異的に結合できる抗体)に関する。
【0034】
その上、本発明の様々な形態の目的のために用いられる反応混合液は、生化学的な反応混合液(すなわちインビトロ)であってもよいし、または、天然の細胞性の反応混合液であってもよい。これに関して、生化学的な混合液の組成は、調べられる酵素の必要条件によるが、適切な成分および組成、例えばATP、酵素活性が確実になるように望ましいpH環境および望ましい塩濃度を調節するための緩衝液は、当業者既知である。生化学的な混合液の場合、酵素および/またはポリペプチドは、組換えによって、および/または、天然源から部分的または完全に精製された分子として、および/または、生物学的材料からの抽出物、特に細胞または組織抽出物の形態で存在していてもよい。
【0035】
生物学的材料としては、特に:組織または臓器(例えば脳、血液、肝臓、脾臓、腎臓、心臓、血管)の細胞、好ましくは脊椎動物(ヒトなど)の細胞、または、細胞培養物由来の細胞が挙げられる。これに関して、本発明の目的で用いられる細胞としては、全てのタイプの細胞が挙げられ、例えば真核または原核単細胞生物(例えば細菌であり、例えばエシェリキア・コリ(E.Coli)、または酵母、例えばサッカロミセス・ポンベ(S.pombe)またはサッカロミセス・セレビジエ(S.cerevisiae))、または、多細胞生物から得られた細胞系(例えばHeLa、COS、NIH−3T3、CHOなど)が挙げられ、哺乳動物細胞系が好ましい。
【0036】
脊椎動物(ヒトなど)の組織群または臓器の細胞は、血液サンプリング、生検または外科的技術のような従来の技術により得られることができる。このような 組換え分子の製造、細胞または組織からの天然に存在する分子の精製、および、細胞または組織抽出物の製造は、十分に当業者周知である(以下に列挙した標準的な文献の例も参照)。
【0037】
様々な形態の目的のための使用に適した細胞系も同様に当業者既知であり、好ましくは、最初に組織群(好ましくは脊椎動物、特に好ましくは哺乳動物、特別にはヒトからの細胞群)から得られた単離された細胞が挙げられ、特に好ましくは培養された細胞系の形態であり;さらに、単細胞生物の形態(真核生物または原核生物)、例えば酵母または細菌の細胞も挙げられ、特別には培養された株の形態である。
【0038】
キャリアーは、反応混合液から、ビオチン−ストレプトアビジン相互作用を介してそれらにカップリングしたペプチドを除去するのに適した、または、このようなペプチドを標識するのに適した、全てのタイプの分子または超分子集合体(例えば物体またはデバイス)が可能である。適切なデバイスは、例えば、従来技術において十分に周知の様々な材料で製造された、メンブレン、プレートまたは極めて広範囲の形状を有する物体(ここでは一般的にビーズと称する)である。これに関して、キャリアーの特徴は、方法の目的(例えば診断、活性物質の検索または新しい相互作用パートナーの発見)および検出様式に依存し、適切なキャリアーの選択は当業者の能力の範囲内である。
【0039】
本発明の方法の一実施形態において、リン酸化状態は、反応混合液に放射標識されたγ32P−ATPを添加し、少なくとも1回の洗浄工程を行った後にキャリアー(好ましくはメンブレンまたはプレート)に残存する放射活性を測定することによって決定される。この方法において、遊離の放射活性物質などのストレプトアビジンに結合していない反応混合液成分は、単に除去することが可能であり、それによって、キャリアーに固定化された放射活性物質に基づき簡単にポリペプチドのリン酸化状態を測定することができる。この場合において、ビオチン化ポリペプチドとの結合に適した手段は、特にストレプトアビジンである。
【0040】
本発明の方法のさらに好ましい実施形態において、反応混合液に、リン酸化されたポリペプチドに特異的に結合することができる抗体(BSP)が添加される。この場合、このような抗体は、手段それ自体、および、前記手段に加えて添加されるものの両方を意味する(ここで、後者は、好ましくはリン酸特異的抗体ではなく、特に好ましくはストレプトアビジンである)。この場合、リン酸化状態の測定は、上記ポリペプチドに結合した抗体の量を測定することによって行われる。抗体を標識および検出するのに適した手法は、当業者既知である。従って、一方では、直接検出できる適切に標識された第一の抗体を用いることが可能であり、または、第一の抗体のFC(結晶化フラグメント)部分に対して向けられた適切に標識された第二の抗体を用いて、検出の特異性を高めることができる。
【0041】
これに関して、用語「抗体」は、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗血清の両方、組換えによって生産された抗体、ならびに組換えによって製造された単鎖抗体を包含する。このような抗体の選択および製造は当業者の能力の範囲内であり、これに関して、以下に列挙した標準的な文献を参照してもよい。このような抗体に適した標識もまた従来技術において既知であり、例えば、酵素標識標識、例えばCIP(ウシ腸のホスファターゼ)もしくはHRP(ホースラディッシュペルオキシダーゼ)、特定の波長の光を用いた照射によって励起された際に検出可能なシグナルを発生させる蛍光分子、例えばテキサスレッド、Cy3、FSTC(フルオレセインイソチオシアネート)、または、既知の蛍光タンパク質が挙げられる。適切な標識の選択も同様に、当業者の能力に従う。適切な標識された、または標識されていない第一および第二の抗体、ならびにそれらの製造は、既知の従来技術であり、その上、このような抗体は様々な供給元によって市販されている。第一および第二の抗体は、例えば、ベクトン・ディッキンソン(Becton Dickinson)、ファルマシア(Pharmacia)またはサンタ・クルーズ・バイオテクノロジー(Santa Cruz Biotech)から得ることができる。
【0042】
上記の方法の好ましい実施形態において、上記ポリペプチドに結合した抗体の量は、少なくとも1回の洗浄工程を行った後にキャリアー(好ましくはメンブレンまたはプレート)に残存する抗体の量を測定することによって測定される。
【0043】
本発明の方法のさらに好ましい実施形態において、上記手段がカップリングしたキャリアーが、第一のシグナル発生体を含む第一のキャリアーであり、前記ポリペプチドは、第二のシグナル発生体を含む第二のキャリアーにカップリングされ、これら2つのシグナル発生体は、それらが互いに直接隣り合った状態になると、検出可能なシグナルを発生させることができ、リン酸化状態は、検出可能なシグナルが発生しているかどうかを測定することによって測定される。この場合、キャリアーは、好ましくはビーズである。ここで上記手段は、好ましくはリン酸特異的抗体である。この場合、キャリアーは、抗体に直接または間接的に連結することができ、好ましくは、キャリアーにカップリングされるプロテインAを介して間接的に連結することができる。この場合、第二のキャリアーは、ビオチン化ポリペプチドに直接または間接的に連結することができ、好ましくは、ビオチン化ポリペプチドのビオチン部分を介して間接的に連結することができる;好ましくは、これは、キャリアーにカップリングしたストレプトアビジンを介して起こる。
【0044】
この場合、シグナル発生体は、検出可能なシグナルを発生させるのに適したあらゆるタイプの手段または分子が可能であり;例えば、エネルギー照射により励起された後に、直接に、または、従来技術において既知の適切な手段でシグナルを増幅させた後に検出できる光を放出する蛍光団が挙げられる。この場合、シグナル発生体は、本発明の目的において、上記手段(すなわち好ましくはリン酸特異的抗体)と上記ポリペプチドとの直接的な相互作用が起こる場合にのみシグナルが発生されるように選択される。適切なキャリアーおよびシグナル発生体(例えば、アルファスクリーン(ALPHAScreen)TM、または、LANCETM、パーキン・エルマー・ライフサイエンス(Perkin−Elmer life sciences);HTRFTM、CISバイオ・インターナショナル(CIS Bio International)の形態で)が既知である。これらの場合において、シグナルの発生には、キャリアーが互いに直接隣り合った状態であることが必須である。それゆえに、極めて驚くべきことに、従来技術で用いられるペプチドと比べて、ポリペプチドは明らかに大きいにも関わらず、このタイプの方法は、ポリペプチドと共に用いるのに適している。
【0045】
本発明の様々な形態の目的のために、上記ポリペプチドは、好ましくは酵素の天然の基質であり、好ましくは長さが短縮されていない形態である。特に適切なポリペプチドとしては、インスリン受容体キナーゼの全ての基質が挙げられる。これに関して、特に好ましくは、インスリン受容体基質(IRS)ファミリーのポリペプチド、好ましくはIRS−1、2、3または4であり、なかでもIRS−1またはそれらの機能的フラグメントもしくは誘導体が特に好ましい。これは、インスリン受容体によってリン酸化される能力を有するフラグメントまたは誘導体(またはフラグメントの誘導体)を意味する。IRSとしては、ヒトIRSがさらに好ましい。
【0046】
その上、本発明の様々な形態の目的のために、特に、配列番号1で示される配列を有するヒトIRS−1が配列番号2で示される配列によってコードされたヒトIRS−1であるIRS−1の使用が特に好ましい。その上、上述のポリペプチドは、特に、それらをリン酸化するインスリン受容体の能力を測定するのに適している。
【0047】
好ましいIRS−1フラグメントは、配列番号3に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドである。
【0048】
本発明の様々な形態は、様々なレベルで用いることができる。それらの使用は、酵素またはそれらの機能的フラグメントもしくは誘導体が、上記ポリペプチドのリン酸化状態を調節する能力を修飾する物質の同定において特に有用である。
【0049】
活性物質候補の活性のパラメーターとして、上記物体の特定の標的分子(「標的」といい、この場合、リン酸化状態のポリペプチド)の活性または濃度または量を測定する適切な分析方法またはシステム(アッセイとよばれる)は、従来技術において既知である。それらの可能な例は、インビトロでのアッセイ、すなわち、単離された、または部分的に単離された成分を用いた生化学的なアッセイであり、このような成分を組み合わせて反応混合液を与え、それに基づいて活性物質候補の活性を測定することができる。さらに、細胞性の環境中での、標的タンパク質の活性(すなわち、本件においては、酵素の活性)、および、この標的分子の活性に対する活性物質候補の活性が測定できる細胞アッセイシステム(アッセイ)も可能である。
【0050】
これに関して、アッセイとして、それに基づいて生物学的プロセスをモニターできる、あらゆるタイプの分析方法が挙げられる。これは通常、細胞系または生化学系で再現される生理的な代謝経路および制御メカニズム、それに加えて病理学的な状態の部分を表わす分子プロセスおよびシグナルカスケードを必然的に伴う。続いて、それらの上記経路およびメカニズムに介在する能力に基づき活性物質の薬理活性が測定できる。
【0051】
活性物質を発見する目的のために、特に、活性物質のハイスループットスクリーニングの目的で使用するために、アッセイは再現性を有していなければならず、さらに、拡張可能で、強固であること(すなわち、外的な影響に対する感受性がほとんどないこと)が好ましい。アッセイは、好ましくは、化学物質の標的分子の活性に対して作用する能力に関するハイスループットスクリーニングに適しているはずである。これに関して、アッセイの特徴は、特に、用いられる標的分子の特徴(例えば、基礎となる生化学的な分子、例えばポリペプチドまたはポリヌクレオチドの正確な型または特徴)と「読み出し」、すなわちそれに基づき標的分子の活性が決定されるパラメーターに依存している。
【0052】
様々なタイプのアッセイが従来技術において既知であり、そのうちのほとんどは商業的な供給元から市販もされている。
【0053】
2種の結合パートナーの相互作用の測定に適したアッセイとしては、例えば、放射線同位体アッセイまたは蛍光アッセイが挙げられ、例えば蛍光偏光アッセイ、例えば、パンベラ(Panvera)、パーキン・エルマー・ライフサイエンス(NEN、LANCETM、アルファスクリーンTM)、または、CISバイオ・インターナショナル(HTRFTM)から市販されている。アッセイのさらなる例としては、細胞系が、安定して(誘導的または構成的に; 染色体またはエピソームにより)、または一時的に、望ましい組換えタンパク質を発現するような細胞アッセイが挙げられる。これらアッセイとしては、例えば、レポーター遺伝子アッセイが挙げられ、このようなアッセイにおいて、特定のプロモーターの調節、または、シグナル伝達経路またはシグナル伝達カスケードの一員の調節が、関連するプロモーターの制御下で発現されるレポーター酵素の活性に基づき測定される。このタイプのアッセイにとって、そのものが調べられるか、または、調べられるシグナル伝達カスケードで調節される所定のプロモーターの制御下でレポーター遺伝子を発現する組換え細胞系を作製することが必要である。一般的に、適切なレポーター酵素は当業者既知であり、例えば、ツチボタルルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼが挙げられる(いずれも、例えばパッカード・リージェント(Packard Reagents)から市販されている)、β−ガラクトシダーゼなどが挙げられる。適切な細胞系の選択は当業者既知であり、特に、アッセイの目的または「読み出し」による。これらは通常、培養と形質転換が簡単な、例えばHeLa、COS、CHO または NIH−3T3細胞のような細胞系である。
【0054】
タンパク質リン酸化またはキナーゼ活性の測定に適しているのは、例えば、蛍光偏光法(例えばパンベラから市販されている)、ホモジニアス時間分解蛍光(HTRFTM、CISバイオ・インターナショナル)、または、LANCETM分析(パーキン・エルマー・ライフサイエンス)、または、増幅ルミネッセンス近接ホモジニアスアッセイ法(アルファスクリーンTM、パーキン・エルマー・ライフサイエンス製)である。
【0055】
パーキン・エルマー・ライフサイエンス製のアルファスクリーンTMを用いたキナーゼ活性の測定は、本発明の目的において特に有用であり、これは、例えば、調べられるキナーゼが、生化学的な混合液中で、ATPの存在下で、ビオチン化されたペプチドをリン酸化することによって行われる。次に、リン酸化されたペプチドは、特異的な抗リン酸抗体と結合し、この抗リン酸抗体は、プロテインAが結合したアクセプタービーズにカップリングされてもよく、または、適切な第二の抗体とカップリングさせて提供してもよい。同混合液は、ストレプトアビジンがカップリングしたドナービーズを含み、ストレプトアビジンは、ペプチドのビオチン部分に結合する。ペプチドへの結合により、アクセプタービーズとドナービーズが直接隣り合わせにされ、化学反応のカスケードが開始され、大きく増幅された検出可能な発光シグナルを発生する:ドナービーズ中の光増感剤は、レーザーの励起によって励起され、その周囲で酸素を一重項状態に変換する。次に、一重項酸素がアクセプタービーズに拡散し、そこでチオキセン誘導体が励起され、それによって、波長370nmの化学発光が放出され、順にアクセプタービーズ中のさらなる蛍光団が励起され、波長520〜620nmの発光が生じる。ドナービーズとアクセプタービーズが近接している場合にのみ一重項酸素による蛍光団の励起が起こるため、その場のみ検出可能なシグナルが発生する。
【0056】
その他のタイプの分析、および、その他のタイプの「読み出し」も同様に、十分に当業者周知である。
【0057】
これに関して、特に好ましくは、多数の物質を最短時間で解析できるハイスループット方法の形態(HTS、ハイスループットスクリーニング)における使用が挙げられる。
【0058】
目的に応じて、調節の修飾は、酵素による調節の阻害または活性化を意味する場合もある。これに関して、この修飾の特徴としては、最終的に上記ポリペプチドの酵素で触媒されたリン酸化状態に対する効果を有すると考えられる全ての作用を含み、例えばそれは酵素−基質相互作用の修飾または酵素の触媒活性の修飾であり、また、(好ましくは、細胞性の反応混合液を用いた解析の場合)酵素発現などの修飾も挙げられる。
【0059】
本発明のさらなる形態は、酵素またはそれらの機能的フラグメントもしくは誘導体の、上記ポリペプチドのリン酸化状態を調節する能力を修飾する物質を同定する方法に関し、本方法は、以下の工程を含む:
a)上述の本発明の方法のいずれか1つに従って、試験しようとする物質を反応混合液に添加しないで、酵素またはそれらの機能的フラグメントもしくは誘導体が、上記ポリペプチドのリン酸化状態を調節する能力を測定すること、
b)本発明の上述の方法のいずれか1つに従って、試験しようとする物質を反応混合液に添加して、酵素またはそれらの機能的フラグメントもしくは誘導体が、上記ポリペプチドのリン酸化状態を調節する能力を測定すること、
c)a)による能力とb)による能力を比較すること。
【0060】
本発明の方法は特に、非インスリン依存性糖尿病(NIDDM)を治療するため、腫瘍学において(IGFRK)、または、炎症プロセス(IKKキナーゼ)を治療するための、薬理学的に活性な物質を同定するのに適している。以下、様々な図および実施例によって本発明をより詳細に説明するが、それにより本発明の主題は限定されない。
【実施例】
【0061】
実施例1
用いられるIRS−1フラグメント
インスリンシグナル経路からのポリペプチド基質をビオチン化することと、それが本発明の使用および方法で使用可能であることを実証するために、ヒトIRS−1由来の、中央部の可能性のあるチロシン(太字)とセリンリン酸化部位(下線)をコードする大きさが262個のアミノ酸からなるフラグメントを選択した(aa516〜aa777)(Siemeister等,J.Biol.Chem.1995年)。このフラグメントは、5個の可能性のあるチロシンリン酸化部位を含み、これらは図3で強調されており、以下、それらのモチーフと共に太字で示される。
【化1】

【0062】
セリン612、632、662および731は、YMXMSPモチーフにおける4つの考えられるセリンキナーゼリン酸化部位を示しており、これらは、インスリン受容体のチロシンリン酸化部位の近傍に位置しており、これらはSH2ドメインの結合部位に収容されている。これらのセリン残基のアラニンへの突然変異により、ホスファチジル−イノシトール三リン酸キナーゼ(PI3K)のIRS−1介在の活性が増加し(Mothe等,1996年)、これは、これらが阻害機能を有することを示す。しかしながら、さらにセリンリン酸化部位が存在することを除外することはできないが、これまでに報告されていない。
【0063】
実施例2
hIRS−1−p30のクローニングおよびビオチン化
調べるために、まず、Siemeister等,1995年に記載されているように、ヒトIRS−1の、長さが262個のアミノ酸のドメインD516−P777(hIRS−1−p30)をE.coliで発現させた。この場合、発現ベクターを、慣用的な方法で、配列番号10に示される配列(hIRS−1−p30のcDNA配列)を有するポリヌクレオチドを、プラスミドpET3d(ノバジェン(Novagen)から注文番号69421で市販されている)に挿入することによって製造した。この目的のために、まず、空のベクターを、標準的な条件下で、酵素NcoI(ロシュ・ダイアグノスティックスGmbHマンハイム(Roche Diagnostics GmbH Mannheim)から注文番号835315で市販されている)、および、BamHI(ロシュ・ダイアグノスティックスGmbHマンハイムから注文番号656275で市販されている)で消化し、スピンカラム(キアゲン(Qiagen,ヒルデン)から注文番号28104で市販されている)を用いて精製した。
【0064】
この場合、ビオチン化は、商業的な供給元(N−Zyme,ダルムシュタット,ドイツ)に委託して、従来の技術を用いて行われた。hIRS−1−p30インスリン受容体フラグメントの発現は、Siemeister等,1995年に記載されているように行われた。発現の結果をチェックするために、E.coli(E.coli BL21株、ノバジェンから注文番号69451〜3で市販されている)からのタンパク質抽出物を製造し、SDS−PAGEによって標準的な条件下で(例えば、以下に列挙した標準的な文献を参照)分画し、標準的な条件下でクーマシー染色溶液で染色することによって証明した(例えば、以下に列挙した標準的な文献を参照)。同様に、hIRS−1−p30の精製をSiemeister等に従って行った。hIRS−1−p30のビオチン化は、トランスグルタミナーゼを用いて酵素的に行われた。
【0065】
実施例3
アルファスクリーンTM:小麦胚芽レクチンのアフィニティーで精製されたラット肝臓のインスリン受容体による、ビオチン化したIRS-1フラグメントのリン酸化
図4に結果が示された実験において、小麦胚芽レクチンのアフィニティークロマトグラフィーで精製されたラット肝臓のインスリン受容体(WGA−IR、配列登録番号NP_058767、または、シグマ(Sigma)から注文番号70543で市販されている)を、様々な濃度のヒトインスリン(例えばシグマから注文番号I−9266で市販されている)、および、85nMのビオチン化IRSフラグメントを、50mMのトリス緩衝液(pH7.4)、8mMのMgCl2、2mMのMnCl2中で、4℃で10分間インキュベートし、続いて、ATPを添加した後(最終濃度50μM)、30℃で30分間インキュベートした。次に、EDTAを最終濃度20mMまで添加することによって反応を止め、IRS−1のリン酸化を、アクセプターp−Tyrに直接カップリングした特異的抗体(パーキン・エルマー・ライフサイエンスから注文番号6760601Cで市販されている)を用いて検出したところ、図4に示された読み出しの結果を得た。この方法を用いて、インスリンに関するEC50を10nMと決定することができた。
【0066】
実施例4
アルファスクリーンTM:PKCおよび組換えインスリン受容体キナーゼによるビオチン化したIRS−1フラグメントのリン酸化
パーキン・エルマー・ライフサイエンス製のアルファスクリーンTMにより、リン酸化されたIRS−1フラグメントと、リン酸化されたセリンまたはチロシン残基を認識する抗体(p−Ser/p−Tyr抗体)との相互作用を検出することが可能になる。この場合、ビオチン化したIRS−1は、ストレプトアビジンドナーに結合した状態であり、抗体は、アクセプターがカップリングしたプロテインA、または、アクセプターに結合した適切な第二の抗体によって結合される。相互作用が生じる場合、アクセプターは、ドナーのすぐ近辺に到達し、そこに保持され、そうすることによって、ドナーによって発生した一重項酸素原子が拡散によってアクセプタービーズ中の化学発光基に到達し、最終的に検出可能な光の発光が起こる。
【0067】
上述のアッセイで発生した光の強度(いわゆる「読み出し」)を検出し(図5AおよびBで棒グラフの形態で示す)、IRS−1をタンパク質キナーゼCおよびATPと30分間インキュベートし、続いてp−Ser抗体(バイオソース(Biosource,ベルギー)から注文番号44−550で市販されている)を添加し、さらに 120分間インキュベートした後に、パーキン・エルマーのFusionまたは AlphaQuestという機器を用いて測定することによって定量した。PKC存在下および非存在下で発生した光の強度の比較を、図11Aに示す。図11Bに結果が示された実験において、50mMのトリス緩衝液(pH7.4)、8mMのMgCl2、50μMのATPの反応緩衝液中で、ポリリシンと30℃で10分間インキュベートすることによって、組換えインスリン受容体キナーゼ(IRK、アミノ酸941〜1343、NCBI登録番号NM_000208)を活性化し、次にIRK基質IRSを添加し、続いて30℃で30分間インキュベートした。直接アクセプターにカップリングしたp−Tyr特異的抗体(パーキン・エルマー・ライフサイエンスから注文番号6760601Cで市販されている)を用いてIRS−1のリン酸化を検出し、図11Bに示された読み出し結果が得られた。
【0068】
上述の研究により、ビオチン化ポリペプチドは、キナーゼによってリン酸化が可能であることを最初に実証することができた。これは、大きさが28kDaのhIRS−1フラグメントが、ビオチン化した状態で、セリンキナーゼPKCδ、および、インスリン受容体のチロシンキナーゼによってリン酸化が可能なことによって示された。この場合、リン酸特異的抗体による検出も同様に、ビオチン残基が結合したポリペプチドの大きさに起因する立体障害による検出反応の妨害を起こすことなく成し遂げられた。それにより、アルファスクリーンTMの原理に基づき、均一なアッセイシステムを作成することができ、従って、ビオチン化により可能な精製および検出技術を用いて、ポリペプチドのリン酸化状態を測定することが可能である。このアッセイの原理は、本発明で初めてポリペプチドの大きさを有するタンパク質フラグメント(より正確には28kDa)に適用された。
【0069】
これにより、細胞のリン酸化および脱リン酸化機構と相互作用する薬理学的に活性な物質のための改善された探索法、リン酸化依存性の疾患の診断、大きき、さらには構造的に無傷の生理的な基質上の特定のポリペプチドに対する新規のタンパク質キナーゼの同定が可能になり、従って、これらの研究が基づいている、リン酸化または脱リン酸化の特異性をいっそう高めることができ、それにより、この方法で得られたデータによる情報が提供される。加えて、本発明で用いられたアッセイシステムにおける読み出しは、非放射活性であるが、発光性であり、これは、ハイスループットスクリーニング(HTS)法における使用にとって利点を示す。従って、本発明で説明されたアッセイは、新規の活性物質の同定または既知の活性物質の確認のために、キナーゼおよびホスファターゼのようなポリペプチドおよびタンパク質のリン酸化状態を調節する全ての酵素のHTSで用いることができる。同様に、他の方法、例えば、特定のポリペプチドをリン酸化する新規の酵素、例えば、上述した新規のIRS−1リン酸化キナーゼを全細胞溶解産物から探索するための方法にも適している。
【0070】
図の説明
図1:IRS1〜IRS4のタンパク質配列(配列番号1〜4)である。4つのファミリーメンバーの配列の登録番号(NCBIタンパク質データベース)は、NM_005544(IRS−1hs):M:007095(IRS−2hs)、NM:032074(IRS−3rat)、NM_003604(IRS−4hs)である。
図2:IRS1〜IRS4をコードするDNA配列(配列番号5〜8)である。4つのファミリーメンバーの配列の登録番号(NCBIヌクレオチドデータベース)は、NM_005544(IRS−1hs),:M:007095(IRS−2hs)、NM:032074(IRS−3rat)、NM_003604(IRS−4hs)である。
図3:本発明の研究に用いられた、IRS−1タンパク質(hIRS−1−p30)の262個のアミノ酸を含むドメインである。セリン612、632、662および731は、下線で示される。YXXMチロシンリン酸化モチーフは、太字で示される。
図4:小麦胚芽レクチンのアフィニティークロマトグラフィーで精製されたインスリン受容体を用いたアルファスクリーンの結果である。
図5:アルファスクリーンTMの結果である。
図6:インスリン受容体、IRS−1およびセリンキナーゼの相互作用を要約した図である。
図7:阻害剤作用を有するセリンリン酸化の考えられる分子メカニズムを要約した図である。
【0071】
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Short Protocols in Molecular Biology, 5th edition, by Frederick M. Ansubel (Editor), Roger Brent (Editor), Robert E. Kingston (Editor), David D. Moore (Editor),
J.G. Seidman (Editor), John A. Smith (Editor), Kevin Struhl (Editor), October 2002, John Wiley & Sons, Inc., New York“
【0072】
材料および方法
特に指定がない限り、上述の方法は、当業者既知の標準的な方法であり、例えば、上述の文献、特に、標準的な方法における文献(また、本明細書において標準的な文献ともいう)で参照できる。
【0073】
略語
アミノ酸(また、一般的にはAAと略記される)には、3文字または1文字コードを用いた(示された標準的な文献も参照);ヌクレオチドには、一般的に、習慣的な1文字略語をに用いた(示された標準的な文献も参照)。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1−1】IRS1〜IRS4のタンパク質配列(配列番号1〜4)である。
【図1−2】図1−1の続きである。
【図2−1】IRS1〜IRS4をコードするDNA配列(配列番号5〜8)である。
【図2−2】図2−1の続きである。
【図2−3】図2−2の続きである。
【図2−4】図2−3の続きである。
【図2−5】図2−4の続きである。
【図3】本発明の研究に用いられた、IRS−1タンパク質(hIRS−1−p30)の262個のアミノ酸を含むドメインである。
【図4】小麦胚芽レクチンのアフィニティークロマトグラフィーで精製されたインスリン受容体を用いたアルファスクリーンの結果である。
【図5】アルファスクリーンTMの結果である。
【図6】インスリン受容体、IRS−1およびセリンキナーゼの相互作用を要約した図である。
【図7】阻害剤作用を有するセリンリン酸化の考えられる分子メカニズムを要約した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵素、それらの機能的フラグメントまたは誘導体がポリペプチドのリン酸化状態を調節する能力を測定するための、ポリペプチドの使用であって、該ポリペプチドがビオチン化されている、使用。
【請求項2】
酵素がポリペプチドをリン酸化する能力を測定するための、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
酵素がポリペプチドを脱リン酸化する能力を測定するための、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
酵素、それらの機能的フラグメントまたは誘導体がビオチン化ポリペプチドのリン酸化状態を調節する能力を測定する方法。
【請求項5】
a.適切な反応混合液中で、酵素または機能的フラグメントもしくは誘導体と、ビオチン化ポリペプチドとを接触させ、そしてリン酸化反応を開始させる工程、
b.反応混合液を、キャリアーにカップリングしそしてビオチン化ポリペプチドに結合可能な手段と接触させる工程、
c.上記手段に結合したポリペプチドのリン酸化状態を測定する工程、
を含む、酵素、それらの機能的フラグメントまたは誘導体がポリペプチドをリン酸化する能力を測定するための、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
a.適切な反応混合液中で、酵素または機能的フラグメントもしくは誘導体と、少なくとも1つのリン酸残基を有するビオチン化ポリペプチドとを接触させ、そしてリン酸化反応を開始させる工程、
b.反応混合液を、キャリアーにカップリングしそしてビオチン化ポリペプチドに結合可能な手段と接触させる工程、
c.上記手段に結合したポリペプチドのリン酸化状態を測定する工程、
を含む、酵素、それらの機能的フラグメントまたは誘導体がポリペプチドを脱リン酸化する能力を測定するための、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
キャリアーがメンブレンまたはプレートである、請求項4〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
手段がストレプトアビジンまたはリン酸特異的抗体である、請求項4〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
反応混合液に放射標識されたγ32P−ATPを添加し、そして少なくとも1回の洗浄工程を行った後にメンブレンまたはプレートに残存する放射活性を測定することによって、リン酸化状態を測定する、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
リン酸化状態の測定が、反応混合液にリン酸化ポリペプチドに特異的に結合できる抗体を添加し、ポリペプチドに結合した抗体の量を測定することによってなされる、請求項4〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ポリペプチドに結合した抗体の量の測定が、少なくとも1回の洗浄工程を行った後にメンブレンまたはプレートに残存する抗体の量を測定することによってなされる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ストレプトアビジンがカップリングしたキャリアーが、第一のシグナル発生体を含む第一のキャリアーであり、ポリペプチドは、第二のシグナル発生体を含む第二のキャリアーにカップリングされ、これら2つのシグナル発生体が互いに直接隣り合った状態になると、検出可能なシグナルを発生させることができ、そしてリン酸化状態の測定は、シグナルが発生しているかどうかを測定することによってなされる、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
ポリペプチドが、アミノ酸が50個およびそれ以上、好ましくは50〜300個の長さを有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用、または、請求項4〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ポリペプチドが、1kDaおよびそれ以上、好ましくは1〜100kDa、特に好ましくは10〜50kDa、特に25〜35kDaの大きさを有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用、または、請求項4〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
酵素が、キナーゼ、好ましくはチロシンキナーゼである、請求項1〜3もしくは14のいずれか一項に記載の使用、または、請求項4、5もしくは7〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
ポリペプチドが、酵素の天然の基質であって、好ましくは長さが短縮されていない、請求項1〜3および12〜15のいずれか一項に記載の使用、または、請求項4〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
ポリペプチドが、インスリン受容体基質(IRS)、好ましくはIRS−1、2、3または4、特に好ましくはIRS−1であるか、または、それらの機能的フラグメントもしくは誘導体である、請求項1〜3および12〜16のいずれか一項に記載の使用、または、請求項4〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
IRS−1が、配列番号1で示される配列を有するヒトIRS−1であるか、または、配列番号2で示される配列によってコードされる、請求項17に記載の使用または方法。
【請求項19】
IRS−1フラグメントが、配列番号3に示されるアミノ酸配列を有するものであり、好ましく配列番号3に示されるアミノ酸配列からなる、請求項18に記載の使用または方法。
【請求項20】
酵素が、以下のキナーゼ:インスリン受容体、IGF−1受容体、trK受容体、EGF受容体、カゼインキナーゼII、タンパク質キナーゼC、タンパク質キナーゼB/Akt、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPキナーゼ)、GSK−3、ERKまたはJNKのいずれか一つ、または、それらの機能的フラグメントもしくは誘導体である、請求項1〜3および12〜19のいずれか一項に記載の使用、または、請求項4〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
酵素またはそれらの機能的フラグメントもしくは誘導体が、ポリペプチドのリン酸化状態を調節する能力を修飾する物質を同定するための、請求項1〜3および12〜20のいずれか一項に記載の使用、または、請求項4〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
a.請求項3〜21のいずれか一項に記載の方法によって、試験しようとする物質を反応混合液に添加しないで、酵素またはそれらの機能的フラグメントもしくは誘導体の、ポリペプチドのリン酸化状態を調節する能力を測定する工程、
b.請求項3〜21のいずれか一項に記載の方法によって、試験しようとする物質を反応混合液に添加して、酵素またはそれらの機能的フラグメントもしくは誘導体の、ポリペプチドのリン酸化状態を調節する能力を測定する工程、
c.a)による能力とb)による能力とを比較する工程、
を含む、酵素またはそれらの機能的フラグメントもしくは誘導体が、ポリペプチドのリン酸化状態を調節する能力を修飾する物質を同定する方法。
【請求項23】
非インスリン依存性糖尿病(NIDDM)を治療するための薬理学的に活性な物質を同定するための、請求項21に記載の使用、もしくは、請求項21または22に記載の方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図2−4】
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【図2−5】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−512802(P2007−512802A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529715(P2006−529715)
【出願日】平成16年4月27日(2004.4.27)
【国際出願番号】PCT/EP2004/004428
【国際公開番号】WO2004/104220
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(397056695)サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (456)
【Fターム(参考)】