説明

ポリペプチドの濃縮方法

本発明は、興味のあるポリペプチドを含む組成物を濃縮する方法、及びそのような濃縮組成物の、哺乳動物における疾患の治療のための、特に皮下注射による使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、興味のあるポリペプチドを濃縮する方法、濃縮された興味のあるポリペプチドを含む組成物の皮下注射用の医薬としての使用、及び少なくとも10 mg/mlの興味のあるポリペプチドを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかのポリペプチドは、ある疾患の予防及び/又は治療のための医薬として有用である。医薬を皮下注射できることは、患者が薬物を彼ら自身に投与することが容易になるので、有利である。
皮下注射できる容量には生理的に制限がある。つまり、患者が医薬の適切な量を受容することを確実にし、及び/又は複数回の皮下注射を回避するように高濃度で利用可能な、皮下投与される医薬が有利である。
【0003】
WO 99/37325は、ヘム合成経路に属する酵素活性の欠損又は欠陥を原因とする疾患を治療及び予防する方法を開示している。WO 03/002731は、組換えポルホビリノゲンデアミナーゼの工業規模での精製方法、及び医薬の製造のための精製物の使用を開示している。同様に、WO 02/099092及びWO 2005/094874は、リゾソーマルアルファ-マンノシダーゼ及びその治療上の使用を提供している。最後に、WO 2005/073367は、アリールスルファターゼAの精製方法、及び異染性白質ジストロフィーの治療における該酵素の使用を提供している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、興味のあるポリペプチドを濃縮する方法、及び哺乳動物に皮下注射するための医薬の製造のための、濃縮された興味のあるポリペプチドを含む組成物の使用に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ある態様において、
a) 興味のあるポリペプチドを含む組成物を遠心分離及び/又はろ過し、
b) 工程a)から得られたそれぞれ上清又は残留物(retentate)を濃縮する
ことを含む、興味のあるポリペプチドを含む組成物を濃縮する方法に関する。
【0006】
別の態様において、本発明は、少なくとも10 mg/mlの興味のあるポリペプチドを含む組成物に関する。
さらに別の態様において、本発明は、75〜250 mg/mlの興味のあるポリペプチドを含む組成物の、哺乳動物に皮下注射するための医薬の製造のための使用に関する。
【0007】
さらに別の態様において、本発明は、500〜300 mg/mlのPBGDの組成物を皮下注射することを含む、哺乳動物の急性間欠性ポルフィリン症を治療する方法に関する。
さらに別の態様において、本発明は、50〜300 mg/mlのアリールスルファターゼAの組成物を皮下注射することを含む、哺乳動物の異染性白質ジストロフィーを治療する方法に関する。
さらに別の態様において、本発明は、50〜300 mg/mlのリゾソーマルアルファ-マンノシダーゼの組成物を皮下注射することを含む、哺乳動物のリゾソーム貯蔵障害アルファ-マンノシドーシスを治療する方法に関する。
さらに別の態様において、本発明は、50〜300 mg/mlのガラクトシルセレブロシダーゼの組成物を皮下注射することを含む、哺乳動物のクラッベ病を治療する方法に関する。
【0008】
定義
本発明の目的のために、配列のアラインメント及び相同性スコアの計算は、タンパク質及びDNAアラインメントの両方に有用な完全Smith-Watermanアラインメントを用いて行い得る。タンパク質及びDNAのアラインメントのために、デフォルトスコア行列BLOSUM50及び単位行列をそれぞれ用いる。ギャップの最初の残基についてのペナルティは、タンパク質について-12、及びDNAについて-16であり、ギャップの追加の残基についてのペナルティは、タンパク質について-2、及びDNAについて-4である。アラインメントは、FASTAパッケージバージョンv20u6 (W. R. Pearson及びD. J. Lipman (1988), "Improved Tools for Biological Sequence Analysis", PNAS 85:2444〜2448,並びにW. R. Pearson (1990) "Rapid and Sensitive Sequence Comparison with FASTP and FASTA", Methods in Enzymology, 183:63〜98)を用いて行い得る。
【0009】
タンパク質配列の多重アラインメント(Multiple alignments)は、「ClustalW」(Thompson, J. D., Higgins, D. G.及びGibson, TJ. (1994) CLUSTAL W: improving the sensitivity of progressive multiple sequence alignment through sequence weighting, positions-specific gap penalties and weight matrix choice. Nucleic Acids Research, 22:4673〜4680)を用いて行い得る。DNA配列の多重アラインメントは、タンパク質アラインメントを鋳型として用い、アミノ酸を、DNA配列からの対応するコドンで置き換えることにより行うことができる。
【0010】
本発明の関係において、用語「E. C.」(酵素クラス(Enzyme Class))は、国際的に認められた酵素分類システムである、Recommendations of the Nomenclature Committee of the International Union of Biochemistry and Molecular Biology, Academic Press, Inc.のことをいう。
【0011】
アミノ酸配列、例えばタンパク質、又は核酸配列の関係において用いられる用語「起源」は、それが由来する生物のことをいうと理解される。該配列は、当業者に公知の遺伝子技術の方法を用いて、別の生物により発現され得る。これは、化学合成された配列も包含する。さらに、該配列は、コドン最適化、すなわちアミノ酸配列に影響しない核酸配列の変更のようなわずかな変更を含み得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
興味のあるポリペプチド
興味のあるポリペプチドは、特に、ホルモン若しくはホルモン変異型、酵素、受容体若しくはその一部分、抗体若しくはその一部分、アレルゲン又はレポーターであり得る。興味のあるポリペプチドは、特に、6つの主要な酵素群、例えばオキシドレダクターゼ(E.C. 1)、トランスフェラーゼ(E.C. 2)、ヒドロラーゼ(E.C. 3)、リアーゼ(E.C. 4)、イソメラーゼ(E.C. 5)又はリガーゼ(E.C. 6)の1つから選択される酵素であり得る。より具体的な態様において、興味のあるポリペプチドは、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、カルボヒドラーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、セロビオヒドロラーゼ、キチナーゼ、クチナーゼ、シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エンドグルカナーゼ、エステラーゼ、アルファ-ガラクトシダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、アルファ-グルコシダーゼ、ベータ-グルコシダーゼ、インベルターゼ、ラッカーゼ、リパーゼ、マンノシダーゼ、ムタナーゼ、オキシダーゼ、ペクチン分解酵素、ペルオキシダーゼ、ホスホリパーゼ、フィターゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、タンパク質分解酵素、リボヌクレアーゼ、トランスグルタミナーゼ、キシラナーゼ、又はベータ-キシロシダーゼであり得る。
【0013】
興味のあるポリペプチドは、特に、医薬として有用なポリペプチドであり得る。
適切な興味のあるポリペプチドの例は、限定されないが、ポルホビリノゲンデアミナーゼ、アリールスルファターゼ、アルファ-マンノシダーゼ及びガラクトセレブロシダーゼからなる群より選択される1つである。
【0014】
原則として、任意の起源に由来する興味のあるポリペプチドは、本発明の方法により処理できる。
ある具体的な実施形態において、興味のあるポリペプチドは、ヒト起源であり得る。特に、ヒトに投与されるべき医薬の製造のために興味のあるポリペプチドを用いる関係において、該ポリペプチドは、望ましくないアレルギー性反応を最小限にし得るので、ヒト起源であり得る。例えば多型によるヒトポリペプチドの天然の変異体は、本発明の関係において、「ヒト起源」の用語に含まれる。
【0015】
興味のあるポリペプチドは、特に、組換えタンパク質として産生され得、すなわち、興味のあるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を、興味のあるポリペプチドの発現のために細胞に導入し得る。組換え発現は、同種又は異種であり得、すなわち興味のあるポリペプチドは、それが天然に発現される細胞で発現され得るか(同種発現)、又は該ポリペプチドは、それが天然に発現されるのではない細胞で発現され得る(異種発現)。
【0016】
興味のある組換えポリペプチドは、具体的な興味のあるポリペプチドの組換え産生に適切ないずれの細胞により発現され得る。適切な細胞の例は、限定されないが、原核細胞、例えばE.coli細胞又はBacillus細胞を含む。適切な真核細胞の例は、限定されないが、酵母細胞又は哺乳動物細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)を含む。あるいは、これはヒト細胞であり得る。
【0017】
グリコシル化されたポリペプチドの発現に適する宿主細胞は、多細胞生物に由来する。無脊椎細胞の例は、植物及び昆虫細胞を含む。しかし、宿主細胞は、脊椎動物細胞でもあり得、脊椎動物細胞の培養(組織培養)での増殖は、日常的な手順になってきている。
【0018】
用語「組換えポリペプチド」又は「興味のある組換えポリペプチド」は、本明細書において、組換え産生されたポリペプチドのことである。
興味のある具体的なポリペプチドに言及して、本発明の関係において、興味のあるポリペプチドの機能的等価部分又はアナログも含まれる。例えば、興味のあるポリペプチドが酵素である場合、酵素の機能的に等価な部分は、酵素のドメイン若しくは部分配列(subsequence)であって、該ドメイン又は部分配列が、全長酵素と実質的に同じ酵素活性を発揮することを可能にする必須の触媒部位を含む酵素のドメイン若しくは部分配列、又は触媒をコードする遺伝子であり得る。用語「実質的に同じ酵素活性」は、天然酵素の活性の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%を有する等価部分又はアナログのことをいう。酵素の酵素的に等価なアナログの例は、機能的な形の酵素の触媒部位を含む融合タンパク質であり得るが、これは、別の種に由来する酵素の同種変異型でもあり得る。また、適切な酵素の比酵素活性を再現する完全に合成された分子も、「酵素的に等価なアナログ」を構成する。
【0019】
通常、当業者は、酵素活性の決定のための適切なアッセイを容易に考案できる。しかし、PBGDについては、適切なアッセイが、WO 03/002731の実施例2、及び本願明細書の実験の部分に記載されている。アリールスルファターゼは、その天然の基質に加えて、色素産生性合成基質であるパラニトロカテコールサルフェート(pNCS)の加水分解も触媒できる。生成物であるパラ-ニトロカテコール(pNC)は、515 nmの光を吸収する。アリールスルファターゼ活性の決定のためのアッセイは、WO 2005/073367、及びFluhartyら 1978, Meth. Enzymol. 50:537〜47に詳述されている。LAMANについて、適切な酵素活性アッセイがWO 02/099092に開示されている。
【0020】
ポルホビリノゲンデアミナーゼ
ある実施形態において、本発明の興味のあるポリペプチドは、ポルホビリノゲンデアミナーゼ(ポルホビリノゲンアンモニア-リアーゼ(重合(polymerizing))としても知られる)、E.C. 4.3.1.8.であり得る(Waldenstrom 1937, J. Acta.Med. Scand. Suppl.8)。ポルホビリノゲンデアミナーゼは、ヘム生合成経路の3番目の酵素である。E.C. 4.3.1.8は、E.C. 2.5.1.61に移動されたので、ポルホビリノゲンデアミナーゼ(PBGD)は、現在、このE.C.番号のもとにある。
ポルホビリノゲンデアミナーゼは、4ポルホビリノゲン + H2O = ヒドロキシメチルビラン + 4 NH3の反応を触媒する。
【0021】
PBDGは、PBDGの欠陥(活性の50%減少)を原因とするヒトの常染色体優性障害である急性間欠性ポリフィリン症(AIP)との関係において重要である(この関係におけるさらなる詳細についてWO01/07065)。
ポルホビリノゲンデアミナーゼは、短縮してPBGDとしても知られ、本発明の関係において、これらの2つの用語は、互いに交換可能に用いられ得る。
【0022】
PBGDの組換え発現のために、宿主細胞は、特に酵母細胞又はE.coli細胞であり得る。
組換えE.coli細胞の構築の詳細な例について、WO01/07065の実施例1が挙げられ、そしてマウスPBGDを発現可能な組換えHeLa細胞及びNIH 3T3細胞の構築のために、WO01/07065の実施例6が挙げられる。
【0023】
「組換えポルホビリノゲンデアミナーゼ(rPBGD)」の用語は、本明細書において、組換え産生されたPBGDのことである。以下において、この酵素及び組換えヒト型は、それぞれ「PBGD」及び「rhPBGD」という。この用語には、PBGDの酵素的に等価な部分又はアナログも含まれる。該酵素の酵素的に等価な部分のある例は、酵素のドメイン若しくは部分配列であって、該ドメイン又は部分配列が、全長酵素と実質的に同じ酵素活性を奏することを可能にする必須の触媒部位を含むドメイン若しくは部分配列、又は触媒をコードする遺伝子であり得る。用語「実質的に同じ酵素活性」は、WO 03/002731の実施例2に記載されるrhPBGD活性アッセイにおいて測定される天然のヒトrhPBGDの活性の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%を有する酵素の等価部分又はアナログのことをいう。酵素の酵素的に等価なアナログの例は、機能的な形の酵素の触媒部位を含む融合タンパク質であり得るが、これは、別の種に由来する酵素の同種変異型でもあり得る。また、適切な酵素の比酵素活性を再現する完全に合成された分子も、「酵素的に等価なアナログ」を構成する。
【0024】
本発明において用い得るPBGDの例は、本願の配列1〜10に示すもののいずれか、又はGenebank no. X04217、X04808若しくはM95623を含む。
【0025】
アリールスルファターゼ
本発明の別の実施形態において、興味のあるポリペプチドは、アリールスルファターゼAであり得る。
アリールスルファターゼAは、セレブロシド3-サルフェート + H2O = セレブロシド + サルフェートの反応を触媒する。
【0026】
ASAは、ヒトの肝臓、胎盤及び尿を含む種々の供給源から精製されている。これは、低等電点を有する酸性糖タンパク質(glucoprotein)である。pH 6.5を超えると、この酵素は、約110 kDaの分子量のダイマーとして存在する。ASAは、pH 4.5にてオクタマーを形成するpH依存性重合を受ける。ヒトの尿において、この酵素は、63及び54 kDaの2つの非同一サブユニットからなる。ヒトの肝臓、胎盤及び繊維芽細胞から精製されるASAも、55及び64 kDaの間で変動するわずかに異なるサイズの2つのサブユニットからなる。その他のリゾソーム酵素の場合と同様に、ASAは膜結合リボソーム上でグリコシル化前駆体として合成される。次いで、これは、小胞体及びゴルジ体を通過し、ここでそのN-結合オリゴ糖がプロセシングを受けて、複合型のリン酸化及び硫酸化オリゴ糖が形成される(Waheed Aら Biochim Biophys Acta. 1985, 847, 53〜61, Braulke Tら Biochem Biophys Res Commun. 1987, 143, 178〜185)。通常の培養繊維芽細胞において、62 kDaの前駆体ポリペプチドが生成され、これがマンノース-6-ホスフェート受容体結合を介して(Braulke Tら J Biol Chem. 1990, 265, 6650〜6655)、酸性プレリゾソームエンドソームに移動する(Kelly BMら Eur J Cell Biol. 1989, 48, 71〜78)。
【0027】
アリールスルファターゼAは、特に、ヒト起源であり得る。ヒトASAシグナルペプチドの長さ(18アミノ酸)は、コンセンサス配列、及びシグナル配列のための特定のプロセシング部位に基づく。よって、推定ヒトASA cDNA (EMBL GenBankアクセッション番号J04593及びX521151)から、シグナルペプチドの切断は、全ての細胞において残基番号18 (Ala)の後で行われるはずであり、ヒトASAの成熟形をもたらす。以下において、組換えアリールスルファターゼAは、rASAと省略し、ヒトASAの成熟形を含むアリールスルファターゼAの成熟形は「mASA」とよび、成熟組換えヒトASAは「mrhASA」という。
【0028】
タンパク質修飾は、2つの真核スルファターゼ(ASA及びアリールスルファターゼB (ASB))、並びに緑藻Volvox carteriからの1つにおいて同定されている(Schmidt Bら Cell. 1995, 82, 271〜278, Selmer Tら Eur J Biochem. 1996, 238, 341〜345)。この修飾は、既知のスルファターゼ間で保存されているシステイン残基の、2-アミノ-3-オキソプロピオン酸残基への変換を導く(Schmidt Bら Cell. 1995, 82, 271〜278)。新規なアミノ酸誘導体は、C*-ホルミルグリシン(FGly)としても認識されている。MSD細胞由来のASA及びASBにおいて、Cys-69残基は保持されている。従って、Cys-69のFGly-69への変換が、触媒活性ASA及びASBを発生するために必要であり、このタンパク質修飾の欠陥がMSDの原因であると提案されている。Cys-69は、18残基のシグナルペプチドを有する前駆体ASAを参照している。mASAにおいては、該システイン残基はCys-51である。さらなる研究により、mASAにおいてCys-51を取り囲む16残基の直線配列が、変換を行わせるのに充分であり、ポリペプチドがその天然の構造にまだ折り畳まれていない場合は、タンパク質修飾が小胞体への同時翻訳タンパク質転位の遅い段階で又はその後に発生することを示している。(Dierks Tら Proc Natl Acad Sci. 1997, 94, 11963〜1196, Wittke, D.ら (2004), Acta Neuropathol. (Berl.), 108, 261〜271)。
【0029】
ASAの複数の形が、ヒトの尿、白血球、血小板、培養繊維芽細胞及び肝臓からの酵素調製物の電気泳動及び等電点電気泳動において証明されている。エンドグリコシダーゼH、シアリダーゼ及びアルカリホスファターゼでの処理は、分子サイズ及び電気泳動パターンの複雑性を低減させ、このことは、ASAの電荷不均一性のほとんどが、高度の炭水化物含量の変動によることを示唆する。
アリールスルファターゼAは、特に、血液脳関門を横切ることができるアリールスルファターゼAの形、及び/又は脳内の標的細胞への侵入のための特異的タグを有するrASAの形であり得る。特に、これは、インビボにおいて、マンノース-6-ホスフェート経路を介して効率的にエンドサイトーシスされるrASAであり得る。
【0030】
つまり、ASAは、一般に、血液脳関門を越える及び/又は細胞膜を横切るASAの輸送を増大させ及び/又は促進することができるいわゆるタグ、ビヒクルとしてのペプチド若しくはタンパク質、又はビヒクルとしての毒素に共有結合させてよい(Schwarzeら,Trends Cell Biol. 2000; 10(7): 290-295; Lindgrenら, Trends Pharmacol. Sci. 2000; 21(3): 99〜103)。このようなペプチド配列を含むASA分子は、発現法により生成できる。タンパク質導入プロセスは、細胞の型に特異的ではなく、それが発生する機構は完全には明らかになっていないが、ある種の膜の混乱及び受容体依存的な透過プロセスにより起こると考えられている。特に、折り畳まれていない状態の分子は、プロセスを促進させ得るが、必須ではない。
【0031】
適切なタグの例は、限定されないが、マンノース-6-ホスフェートタグを含む。
ビヒクルとしてのペプチド又はタンパク質の例は、限定されないが、いわゆるタンパク質導入ドメインを含む。適切なタンパク質導入ドメインの例は、限定されないが、本明細書に参照により組み込まれるWO 2005/073367に記載されるものを含む。よって、タンパク質導入ドメインは、HIV TATタンパク質からの11残基の塩基性ペプチドYGRKKRRQRRR (Schwarzeら,Trends Cell Biol. 2000; 10(7): 290〜295)、より大きいアルファらせん性及び両親媒性の性質を配列に付与するTATの合成バージョンYARAAARQARA (Hoら, Cancer Res. 2001; 61(2):474〜477)、ポリR又は塩基性のR及びK残基の混合が他のアミノ酸と組み合わさって構成される合成リーダーペプチド、及びベータ-3インテグリン又はカポジ肉腫FGFのいずれかからの疎水性シグナル配列部分に基づくペプチド (Dunicanら Biopolymers 2001; 60(1): 45〜60)であり得る。
ビヒクルとしての適切な毒素の例は、限定されないが、本明細書に参照により組み込まれるWO 2005/073367に記載されるものを含む。
【0032】
ASAは、特に、
(a) WO 2005/073367の配列番号2のアミノ酸配列;
(b) 組換えヒトアリールスルファターゼAに酵素的に等価な(a)の配列の一部分;
(c) (a)又は(b)の配列のいずれか1つと少なくとも75%の配列同一性を有し、かつ組換えヒトアリールスルファターゼAに酵素的に等価なアミノ酸配列を同時に含むアミノ酸配列アナログ
をコードする核酸配列を含み得る。
【0033】
本明細書の関係において、WO 2005/073367の実施例1に記載されるアリールスルファターゼA活性測定のためのアッセイで決定される場合に、アリールスルファターゼAの基質であるpNCSのある量を、37℃にて、少なくとも20 U/mgポリペプチド(好ましくは50 U/mgポリペプチド)の比活性に相当する割合で加水分解可能なポリペプチド、及び/又はWO 2005/073367の実施例2に記載されるアッセイにおいて25 mU/mlの用量レベルでのインキュベーションによりアッセイされる場合に、MLD繊維芽細胞に装填された少なくとも40%の標識アリールスルファターゼA基質、例えば(fx.) 14Cパルミトイルスルファチドを加水分解可能なポリペプチドであるアミノ酸配列又はアミノ酸配列の一部分。
【0034】
ASAは、別の態様において、特に、
(a) WO 2005/073367の配列番号1の核酸配列
(b) 組換えヒトアリールスルファターゼAに酵素的に等価なアミノ酸配列をコードする(a)の配列の一部分
(c) (a)又は(b)の配列のいずれか1つと少なくとも75%の配列同一性を有し、かつ組換えヒトアリールスルファターゼAに酵素的に等価なアミノ酸配列を同時にコードする核酸配列アナログ
を含み得る。
上記の核酸配列とWO 2005/073367の配列番号1との間の配列同一性の程度は、少なくとも80%、例えば少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%であることが好ましい。上記の核酸配列によりコードされるアミノ酸配列と、WO 2005/073367の配列番号2との間の配列同一性の程度が、少なくとも80%、例えば少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%であることも同様に好ましい。
【0035】
本発明の目的のために、アリールスルファターゼAが、組換え酵素であることが好ましく、特に好ましくは組換えヒトアリールスルファターゼA (rhASA)である。
【0036】
rASAが哺乳動物細胞又は細胞系で産生され、該哺乳動物細胞又は細胞系が、マンノース-6-ホスフェート受容体経路を介してインビボで効率的にエンドサイトーシスされるrASAのグリコフォームを産生することが好ましい。特に、rASAの好ましいグリコフォームは、マンノース-6-ホスフェート経路を介してインビボでrASAの効率的なエンドサイトーシスを可能にする、ある量の露出されたマンノース-6-ホスフェートを含む。
ある具体的な実施形態において、rASAの産生されたグリコフォームの少なくとも1つは、CHO細胞で産生されたグリコフォームと同様である。
【0037】
成熟ヒトアリールスルファターゼAの51位のシステイン残基の翻訳後修飾は、酵素の活性に適切である。よって、本発明の好ましい実施形態において、アリールスルファターゼA又はその等価物の産生は、WO 2005/073367の配列番号2のCys-69に対応するアミノ酸が、WO 2005/073367の配列番号3のFgly-51に対応するホルミルグリシンに変換されている酵素のアイソフォームを含む生成物をもたらす速度及び条件下で生じる。WO 2005/073367の配列番号4は、18アミノ酸シグナルペプチドの切断後であるが、C-51の修飾の前の成熟ヒトアリールスルファターゼAを表す。
【0038】
つまり、本発明の別の実施形態において、ASA又はその酵素的等価物は、
(a) WO 2005/073367の配列番号3のアミノ酸配列;
(b) 組換えヒトアリールスルファターゼAに酵素的に等価な(a)の配列の一部分
(c) (a)又は(b)の配列のいずれか1つと少なくとも75%の配列同一性を有し、かつ同時に組換えヒトアリールスルファターゼAに酵素的に等価であるアミノ酸配列アナログ
からなる群より選択され得る。
【0039】
本発明により産生される酵素と、WO 2005/073367の配列番号3又はWO 2005/073367の配列番号4との間の配列同一性の程度は、少なくとも80%、例えば少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%であることが好ましい。
【0040】
最適であることが望まれるインビボでの酵素の生物活性及び効果のために、適当な量の酵素が上記のようなグリコシル化パターンを獲得し、51位で翻訳後修飾されていると有利である。つまり、本発明のASAの少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%又は98%が、上記のグリコフォーム/アイソフォームであり得る。
【0041】
本発明のASAは、その構造の点で、2005/073367の配列番号3に従うrASAと異なり得る。Cys-51を取り囲むアミノ酸残基の配列が、配列番号3における対応する配列と同一であるか又は高い程度の配列同一性を有することが有利である。つまり、アリールスルファターゼAにおけるCys-51を取り囲む20アミノ酸、例えば19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5又は4アミノ酸残基の直線配列が、2005/073367の配列番号3における対応する配列と、同一であるか、又は少なくとも90%同一、例えば95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であることが好ましい。リゾソーム内のrASAの活性形はオクタマーであるので、本発明のASAは、特に、オクタマー又は生理条件下でオクタマーに組み立てられるrASAであり得る。
【0042】
rASAの触媒活性として理解されるASAの酵素活性は、検出可能な基質又は検出可能な最終産物を導く基質のいずれかのrASAにより媒介される加水分解に基づく酵素アッセイにおいて測定され得る。好ましい態様において、アッセイは、色素産生性合成基質であるパラ-ニトロカテコールサルフェート(pNCS)の加水分解に基づき、これは、最終産物パラ-ニトロカテコール(pNC)を有し、これが515 nmの光を吸収する。
【0043】
リゾソーマルアルファ-マンノシダーゼ
さらに別の実施形態において、興味のあるポリペプチドは、リゾソーマルアルファ-マンノシダーゼ(LAMAN)であり得る。リゾソーマルアルファ-マンノシダーゼは、EC 3.2.1.24に属し、アルファ-D-マンノシドの末端の非還元アルファ-D-マンノース残基を、非還元末端から、N-結合糖タンパク質の規則正しい分解の間に加水分解するエキソグリコシダーゼである(Aronson及びKuranda FASEB J 3:2615〜2622. 1989)。本発明の関係において、用語リゾソーマルアルファ-マンノシダーゼは、短縮された用語LAMANと交換可能に用いられ得る。
【0044】
本発明のLAMANは、特にヒト起源であり得る。ヒト酵素は、49残基の推定シグナルペプチドを有する1011アミノ酸の単一ポリペプチドとして合成され、これが15、42及び70 kDの3つの主要なグリコペプチドにプロセシングされる(Nilssenら Hum.Mol.Genet. 6, 717〜726. 1997)。
LAMANをコードする遺伝子(MANB)は、第19染色体に位置する(19cen-q12) (Kanedaら Chromosoma 95:8〜12. 1987)。MANBは、21.5 kbにわたる24エキソンからなる(GenBankアクセッション番号U60885〜U60899; Riiseら Genomics 42:200〜207 . 1997)。LAMAN転写産物は、3,500ヌクレオチド(nts)を超え、1,011アミノ酸配列をコードするオープンリーディングフレームを含む(GenBank U60266.1)。
【0045】
LAMANをコードするヒトcDNAのクローニング及び配列決定は、3報で出版されている(Nilssenら Hum.Mol.Genet. 6, 717〜726. 1997; Liaoら J.Biol.Chem. 271, 28348〜28358. 1996; Nebesら. Biochem.Biophys.Res.Commun. 200, 239〜245. 1994)。興味深いことに、3つの配列は同一ではない。Nilssenらの配列(アクセッション# U60266.1)と比較したときに、アスパラギン酸のバリンへの置換をもたらす1670位と1671位でのTAのATへの変更が、Liaoら及びNebesらにより見出される。
【0046】
最も好ましい実施形態において、リゾソーマルアルファマンノシダーゼは、WO 2005/094874の配列番号1のアミノ酸配列を含む。
【0047】
実行上及び経済的な理由から、本発明のLAMANは、組換えにより産生されることが好ましい。組換え産生により、大きいフラクションがマンノース-6-ホスフェートを含有する酵素の調製物を得ることも可能であろう。組換え産生は、WO 2005/094874の配列番号2の配列を含む核酸配列を用いる細胞のトランスフェクションの後に達成できる。
【0048】
アルファ-マンノシダーゼは、哺乳動物細胞系で作製されるのが好ましい。なぜなら、このことにより、例えば体の内臓の細胞での効率的な受容体媒介取り込みを確実にするグリコシル化プロファイルがもたらされるからである。特に、CHO、COS又はBHK細胞での酵素の産生が、マンノース-6-ホスフェート残基の付加による酵素の適切な翻訳後修飾を確実にすることが見出されている。さらに、正しいシアリル化プロファイルが得られる。正しいシアリル化は、露出したガラクトース残基により、肝臓による取り込みを妨げるために重要であることが知られている。
【0049】
さらにより好ましい実施形態において、哺乳動物細胞系は、よって、CHO、COS細胞又はBHK細胞を含む群から選択される(Steinら J Biol Chem.1989, 264, 1252〜1259)。哺乳動物細胞系がヒト繊維芽細胞系であるのがさらに好ましい。
最も好ましい実施形態において、哺乳動物細胞系は、CHO細胞系である。
【0050】
別の実施形態において、リゾソーマルアルファ-マンノシダーゼは、調製物のフラクションが、マンノース6-ホスフェート基を有する1又は複数のN-結合オリゴ糖を有するリゾソーマルアルファ-マンノシダーゼからなるリゾソーマルアルファ-マンノシダーゼの調製物であり得る。
上記のリゾソーマルアルファ-マンノシダーゼの調製物のフラクションは、マンノース6-ホスフェート受容体に結合可能であることがさらに好ましい。
【0051】
酵素がマンノース-6-ホスフェート受容体に結合する能力は、WO 2005/094874の実施例1に記載されるインビトロアッセイにおいて決定できる。ここで、酵素のMPRアフィニティ300 Matrixへの結合は、マンノース-6-ホスフェート受容体への結合のその能力の測定を提供する。本発明の好ましい実施形態において、酵素のマンノース-6-ホスフェート受容体への結合は、インビトロで発生する。
本発明のより好ましい実施形態において、このフラクションは、リゾソーマルアルファ-マンノシダーゼの調製物の活性の1〜75%、例えば2〜70%、例えば5〜60%、例えば10〜50%、例えば15〜45%、例えば20〜40%、例えば30〜35%に相当する。
【0052】
よって、リゾソーマルアルファ-マンノシダーゼが、Man-6-P-受容体マトリクスへの、酵素の量の2〜100%、5〜95%、10〜90%、20〜80%、30〜70%又は40〜60%のマンノース6-ホスフェート依存的結合を可能にするマンノース6-ホスフェート残基含量を有することが好ましい。現在、酵素のいくつかのバッチでリン酸化の程度が分析され、典型的には、酵素の30〜45%がリン酸化され、アフィニティマトリクスに結合する。
【0053】
上記のリゾソーマルアルファ-マンノシダーゼの量の2〜100%、5〜90%、10〜80%、20〜75%、30〜70%、35〜65%又は40〜60%を構成するフラクションが、高い親和性でMan-6-P-受容体に結合することがさらに好ましい。理論的には、酵素がMan-6-P-受容体に高い親和性で結合するためには、2つのマンノース6-ホスフェート基が互いに近くに位置しなければならない。最近の観察により、リン酸化マンノース残基の間の距離は、高い親和性の結合を得るためには、40Å又はそれ未満でなければならないことが示唆される。WO 2005/094874の配列番号1に従うヒトリゾソーマルアルファ-マンノシダーゼにおいて、2つのマンノース6-ホスフェート残基は、367位及び766位のアスパラギンに位置し得る。よって、本発明による医薬は、そのフラクションが、これらのアスパラギン残基の両方でマンノース6-ホスフェート基を有するリゾソーマルアルファ-マンノシダーゼを含むことが好ましい。
【0054】
好ましくは、アルファ-マンノシダーゼは、組換え技術により作製される。さらなる実施形態において、アルファ-マンノシダーゼはヒト起源であり(hLAMAN)、より好ましくは、成熟ヒトアルファ-マンノシダーゼ(mhLAMAN)又はそのフラグメントである。該フラグメントは、修飾され得るが、酵素の活性部位は保存されるべきである。
【0055】
本発明によるアルファ-マンノシダーゼの調製において、酵素のあるフラクションはその前駆体の形であるが、他のフラクションは、約55及び70 kDaのタンパク質分解によりプロセシングされた形である。
【0056】
ガラクトセレブロシダーゼ
別の実施形態において、興味のあるポリペプチドは、ガラクトセレブロシダーゼであり得、これはGALCと短縮できる。ガラクトセレブロシダーゼは、E.C. 3.1.6.46に属し、D-ガラクトシル-N-アシルスフィンゴシン + H2O = D-ガラクトース + N-アシルスフィンゴシンの反応を触媒できる酵素であり、つまりGALCは、例えばミエリンのガラクト脂質の分解を触媒する。
【0057】
ヒト由来のGALC酵素は、643アミノ酸を含み、72.8 kDaの分子量を有するガラクトシル化されたリゾソーマル酵素である。本発明のGALCは、特にヒト起源であり得る。さらなる実施形態において、GALCは上記の宿主細胞の1つで組換え発現され得る。GALCの組換え発現のための宿主細胞は、特にCHO細胞であり得る。
【0058】
本明細書及び特許請求の範囲において、以下のアミノ酸及び核酸配列に言及する。
【0059】
【表1】

【0060】
これらの配列を参照にして、本発明の好ましい実施形態による興味のあるポリペプチドは、
i) 配列番号14、15、18、19、20、21及び24のいずれにより規定されるアミノ酸配列;
ii) i)で規定されるアミノ酸配列の機能的に等価な部分;及び
iii) i)又はii)で規定されるアミノ酸配列の機能的に等価なアナログであって、該アナログのアミノ酸配列が、i)又はii)で規定されるアミノ酸配列と少なくとも75%同一であるアナログ
からなる群より選択されるアミノ酸を含む。
【0061】
ある特定の実施形態において、iii)のアナログは、i)又はii)で規定される配列と少なくとも80%同一であり、例えばi)又はii)で規定される配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも99.5%同一である。
【0062】
さらに、興味のあるポリペプチドは、
i) 配列番号1〜13、16、17、22及び23のいずれにより規定される核酸配列;
ii) i)で規定される核酸配列と少なくとも75%同一である核酸配列
からなる群より選択される配列を含む核酸配列を用いる組換え発現により得ることができる。
【0063】
ポリペプチドの組換え産生のために、ii)における酸配列がi)で規定される配列と少なくとも80%同一であり、例えばi)で規定される配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は例えば少なくとも99.5%同一であることがさらに好ましい。
【0064】
興味のあるポリペプチドを含む組成物
興味のあるポリペプチドを含む組成物についての以下の記載は、本発明の方法に従って濃縮されたポリペプチドを含む組成物と、興味のあるポリペプチドを少なくとも10 mg/ml含む本発明の組成物とに関する。
【0065】
本発明は、興味のあるポリペプチドを少なくとも10 mg/ml含む組成物であって、該興味のあるポリペプチドが本発明によるいずれのポリペプチド、例えば特にrhPBGD、アリールスルファターゼ、アルファ-マンノシダーゼ又はガラクトセレブロシダーゼであり得る組成物にも関する。該組成物は、特に、興味のあるポリペプチドを少なくとも25 mg/ml、例えば興味のあるポリペプチドを少なくとも50 mg/ml又は少なくとも75 mg/ml又は少なくとも100 mg/ml含む。よって、該組成物は、特に、興味のあるポリペプチドを10〜1000 mg/mlの間、例えば興味のあるポリペプチドを10〜500 mg/ml、又は10〜300 mg/ml、又は10〜200 mg/ml、又は25〜500 mg/ml、又は25〜400 mg/ml、又は40〜400 mg/ml、又は40〜300 mg/ml、又は50〜400 mg/ml、又は50〜300 mg/ml、又は75〜400 mg/ml、又は75〜300 mg/ml、又は100〜200 mg/ml、又は100〜150 mg/mlの間で含み得る。
【0066】
興味のあるポリペプチドを含む組成物は、特に水溶液であり得る。
【0067】
興味のあるポリペプチドを高濃度で含むことに加えて、上記の組成物は、特に、興味のあるポリペプチドの凝集を含まないか、又は非常にわずかな凝集しか含み得ない。よって、興味のあるポリペプチドが凝集として存在する量は、特に、組成物中の興味のあるポリペプチドの全量の5重量%未満であり得る。特に、該凝集物は、興味のあるポリペプチドの全量の4重量%未満、例えば3重量%未満、又は2重量%未満、又は1重量%未満、又は0.5重量%未満、又は0.1重量%未満であり得る。本明細書の関係において、用語「凝集」は、モノマーでない興味のあるポリペプチドの任意の形を意味する。よって、この用語は、興味のあるポリペプチドの任意のダイマー又はマルチマーを含む。
【0068】
さらに、該組成物が、興味のあるペプチドのみ、又は他のペプチド、すなわち興味のあるポリペプチドではないタンパク質を少なくともわずかな極微量でのみ含む場合、有利である。よって、ある特定の実施形態において、該組成物は、興味のあるポリペプチド以外のタンパク質を、1重量%未満、例えば0.5重量%未満、又は0.1重量%未満、又は0.05重量%未満、又は0.01重量%未満含む。
【0069】
種々の因子がポリペプチドの安定性及び活性に影響し、興味のあるポリペプチドを含む組成物は、よって、特に、興味のあるポリペプチドをできる限り安定に保つように最適化され得る。
【0070】
pHは、通常、興味のあるポリペプチドの安定性に影響するので、興味のあるポリペプチドを含む組成物のpHは、特に、7.5〜8.5の範囲、例えば特にpH 7.7〜8.2の間、特にpH 7.8〜8.0の間、又はpH 7.85〜7.95の間、例えばpH 7.8又はpH 7.9であり得る。このことは、特に、興味のあるポリペプチドがPBGDである場合に当てはまる。
【0071】
よって、興味のあるポリペプチドを含む組成物は、特に、上記のpH範囲に組成物を維持し得る緩衝剤を含み得る。このような緩衝剤の例は、限定されないが、TRIS-HCL、クエン酸Na及びNa2HPO4を含む。このような緩衝剤の濃度は、具体的な緩衝剤の選択及び組成物中の他の成分の存在に依存し得る。緩衝剤がNa2HPO4である場合、Na2HPO4の濃度は、0.5〜15 mMの範囲、例えば1〜10 mMの範囲、又は1.5〜7.5 mMの範囲、例えば1.83〜7.4 mMの範囲、又は1.5〜3 mMの範囲、例えば1.83〜3.7 mMの範囲、又は1.83〜2.45 mMの範囲、又は3.5〜7.5 mMの範囲、例えば3.6〜7.4 mMの範囲、又は5.4〜7.4 mMの範囲、例えば1.84 mM、又は2.45 mM、又は3.67 mM、又は5.51 mM又は7.34 mMであり得る。
【0072】
緩衝剤がTRIS-HCLである場合、TRIS-HCLの濃度は、特に、2〜50 mMの範囲、例えば2〜40 mM、又は2〜30 mM、又は2〜20 mM、又は2〜10 mM、又は5〜25 mM、又は5〜20 mM、又は8〜12 mM、又は9〜11 mM、例えば10 mMであり得る。
【0073】
興味のあるポリペプチドを含む組成物が含み得る他の化合物の例は、限定されないが、アミノ酸、糖類、アルコール及び界面活性剤を含む。このような適切な化合物の例は、限定されないが、グリシン、マンニトール、スクロース、L-セリン、Tween 80又はこれらの化合物の1若しくは複数の組み合わせを含む。これらの化合物の濃度は、具体的な化合物に依存するが、グリシンについては、濃度は、特に、1〜200 mMの範囲、例えば5〜190 mMの範囲、又は10〜180 mMの範囲、又は10〜170 mMの範囲、又は20〜160 mMの範囲、又は20〜150 mMの範囲、又は25〜125 mMの範囲、又は5〜100 mMの範囲、又は5〜90 mMの範囲、又は5〜80 mMの範囲、又は5〜70 mMの範囲、又は5〜60 mMの範囲、又は10〜100 mMの範囲、又は10〜90 mMの範囲、又は10〜80 mMの範囲、又は10〜70 mMの範囲、又は10〜60 mMの範囲、又は12〜60 mMの範囲、又は12〜55 mMの範囲、又は13.5〜54 mMの範囲、又は10〜30 mMの範囲、例えば13.5〜27 mMの範囲、又は13.5〜18 mMの範囲、25〜55 mMの範囲、例えば27〜54 mMの範囲、又は40〜55の範囲、例えば40.5〜54 mMの範囲、例えば12.5、13、13.5、14、14.5、17、17.5、18、18.5、19、25、26、27、28、29、30、39.5、40、40.5、41、41.5、又は53、53.5、53、54.5又は55 mMであり得る。
【0074】
マンニトールの濃度は、特に、50〜1000 mMの範囲、例えば50〜900 mMの範囲、又は50〜800 mMの範囲、又は50〜700 mMの範囲、又は50〜600 mMの範囲、又は100〜900 mMの範囲、又は100〜800 mMの範囲、又は100〜700 mMの範囲、又は100〜600 mMの範囲、又は100〜500 mMの範囲、又は120〜525 mMの範囲、又は125〜500 mMの範囲、又は100〜300 mMの範囲、例えば120〜275 mMの範囲、又は120〜170 mMの範囲、又は200〜600 mMの範囲、例えば225〜550 mMの範囲、又は240〜510 mMの範囲、又は370〜525 mMの範囲、例えば120、125、130、160、165、166.7、170、175、200、221、225、250、275、300、365、370、375、380、385、490、495、500、505又は510 mMであり得る。
【0075】
スクロースの濃度は、特に、1〜200 mMの範囲、例えば5〜190 mMの範囲、又は10〜180 mMの範囲、又は10〜170 mMの範囲、又は20〜160 mMの範囲、又は20〜150 mMの範囲、又は25〜125 mMの範囲、又は5〜100 mMの範囲、又は5〜90 mMの範囲、又は5〜80 mMの範囲、又は5〜70 mMの範囲、又は5〜60 mMの範囲、又は10〜100 mMの範囲、又は10〜90 mMの範囲、又は10〜80 mMの範囲、又は10〜70 mMの範囲、又は10〜60 mMの範囲、又は12〜60 mMの範囲、又は12〜55 mMの範囲、又は13.5〜54 mMの範囲、又は10〜30 mMの範囲、例えば13.5〜27 mMの範囲、又は13.5〜18 mMの範囲、又は25〜55 mMの範囲、例えば27〜54 mMの範囲、又は40〜55の範囲、例えば40.5〜54 mMの範囲、例えば12.5、13、13.5、14、14.5、17、17.5、18、18.5、19、25、26、27、28、29、30、39.5、40、40.5、41、41.5又は53、53.5、53、54.5又は55 mMであってよい。スクロースが、マンニトールも含む組成物中に含まれる場合、マンニトールの濃度は、スクロースの濃度に対応して減じることができる。すなわち、マンニトールとスクロースとの濃度は、特に、マンニトールを単独で用いる場合のマンニトールの濃度と同じであり得る。
【0076】
Tween 80の濃度は、0.001〜1 w/v%の範囲、例えば0.005〜1 w/v%の範囲、又は0.01〜1 w/v%の範囲、又は0.001〜0.5 w/v%の範囲、又は0.005〜0.5 w/v%の範囲、又は0.01〜0.5 w/v%の範囲、又は0.05〜0.4 w/v%の範囲、又は0.05〜0.3 w/v%の範囲、又は0.05〜0.2 w/v%の範囲、又は0.075〜0.4 w/v%の範囲、又は0.075〜0.3 w/v%の範囲、又は0.075〜0.2 w/v%の範囲、又は0.09〜0.2 w/v%の範囲、例えば0.075、0.08、0.09、0.1、0.125、0.15、0.175又は0.2 w/v%であり得る。
【0077】
ポリペプチドが特にPBGD、アリールスルファターゼ、リゾソーマルアルファ-マンノシダーゼ又はガラクトセレブロシダーゼであり得る興味のあるポリペプチドを含む組成物は、特に、1又は複数の上記の化合物の組み合わせを含み得る。このような組成物の適切な例は、興味のあるポリペプチドに加えて、Na2HPO4、グリシン及びマンニトールを含むものであり得る。該組成物のpH及び種々の化合物の濃度は、上記のとおりであってよい。よって、上記の組成物は、ある実施形態において、0.5〜15 mM Na2HPO4、1〜200 mMグリシン、50〜1000 mMマンニトールを含み、7.5〜8.5の範囲のpHであり得る。化合物の上記の濃度とpHの任意の組み合わせは、本発明に含まれる。他の化合物の適切な組み合わせ、及び興味のあるポリペプチドを含む組成物のpHの具体例は、3.67 mM Na2HPO4、27 mMグリシン、250 mMマンニトールを含み、かつ7.7〜7.9の範囲のpHを有するものである。
【0078】
適切な組成物の他の例は、限定されないが、以下のいずれかを含む。
・ 1.84 mM Na2HPO4、13.5 mMグリシン、125 mMマンニトール、及び7.7〜7.9の範囲のpH。
・ 2.45 mM Na2HPO4、18 mMグリシン、167 mMマンニトール、及び7.7〜7.9の範囲のpH。
・ 5.51 mM Na2HPO4、40.5 mMグリシン、375 mMマンニトール、及び7.7〜7.9の範囲のpH。
・ 7.34 mM Na2HPO4、54 mMグリシン、500 mMマンニトール、及び7.7〜7.9の範囲のpH。
・ 3.67 mM Na2HPO4、27 mMグリシン、220 mMマンニトール、30 mMスクロース、及び7.7〜7.9の範囲のpH。
・ 3.67 mM Na2HPO4、245 mMマンニトール、32 mMスクロース、及び7.7〜7.9の範囲のpH。
【0079】
・ 3.67 mM Na2HPO4、27 mM L-セリン、250 mMマンニトール、及び7.7〜7.9の範囲のpH。
・ 10 mM TRIS-HCl、27 mMグリシン、250 mMマンニトール、及び7.7〜7.9の範囲のpH。
・ 3.67 mMクエン酸Na、27 mMグリシン、250 mMマンニトール、及び7.7〜7.9の範囲のpH。
・ 3.67 mM Na2HPO4、27 mMグリシン、220 mMマンニトール、29 mMスクロース、0.1%(w/v) Tween 80、及び7.7〜7.9の範囲のpH。
・ 3.67 mM Na2HPO4、27 mMグリシン、220 mMマンニトール、29 mMスクロース、0.1%(w/v) Tween 80、及び7.7〜7.9の範囲のpH。
【0080】
興味のあるポリペプチドを含む組成物は、特に、哺乳動物における治療用途に用い得る。よって、興味のあるポリペプチドを含む組成物は、特に、哺乳動物の組織に対して等張であり、例えばこれは、特に、200〜400 mOsm/kgの範囲、例えば250〜350 mOsm/kgの範囲、又は275〜325 mOsm/kgの範囲、又は295〜305 mOsm/kgの範囲、例えば295 mOsm/kg又は300 mOsm/kg又は305 mOsm/kgのモル浸透圧であり得る。
【0081】
興味のあるポリペプチドを濃縮する方法
本発明の方法は、a) 興味のあるポリペプチドを含む組成物の遠心分離及び/又はろ過、並びにb) 工程a)からの組成物の濃縮の工程を含む。本発明の発明者らは、興味のあるポリペプチドを含む組成物を濃縮する前に該組成物を遠心分離及び/又はろ過することにより、興味のあるポリペプチドが全く又はほとんど凝集せずに、高度に濃縮された興味のあるポリペプチドを含む組成物を得ることが可能であることを見出した。さらに、例えば、ポリペプチド凝集物はポリペプチドに対する免疫応答を惹起する危険性を増加させ得るので、ポリペプチド凝集物の量が低減すれば、ポリペプチドの治療用途に一般に有利である。
【0082】
ポリペプチドの皮下投与のために、ポリペプチド組成物は、小容量で高い活性を有することが有利である。なぜなら、小容量のみが皮下注射され得るからである。
【0083】
タンパク質又はポリペプチドは、通常の形では、濃縮されたときに凝集する。つまり、興味のあるポリペプチドを濃縮するために本発明の方法を用いる場合、高い割合でポリペプチド凝集物の形成を引き起こさないことが有利である。実施例に示すように、本発明の濃縮方法により得られる組成物中のPBGD凝集物の量は、濃縮していないPBGD組成物のものと同様である。
ある具体的な実施形態において、本方法の工程a)は、工程b)の前に行われる。
【0084】
工程a) 遠心分離及び/又はろ過
本発明の発明者らは、興味のあるポリペプチドを含む組成物を濃縮する前に、組成物の遠心分離及び/又はろ過により該組成物を前処理することが有利であり、これは、この前処理により多くの又はほとんどのポリペプチド凝集物が除去されるからであることを見出した。
【0085】
工程b)における組成物の濃縮を、フィルタ又はメンブレンの使用による方法、例えば限外ろ過により行う場合、凝集物の存在は、フィルタ又はメンブレンを妨げる可能性があり、小分子及び液体がフィルタ又はメンブレンを通過できない。このことは、組成物が濃縮される速度を低減させ、及び/又はいずれのさらなる濃縮を完全に妨げ得る。
【0086】
よって、この種の濃縮のために、工程a)による前処理が有利である。なぜなら、凝集物の除去は、組成物が前処理されない場合よりもより濃縮された興味のあるポリペプチドの組成物を得ることを可能にするからである。
【0087】
工程b)における組成物の濃縮が、水分の除去に基づく方法、例えば凍結乾燥又は蒸発により行われる場合、工程a)における前処理は、濃縮組成物中に存在する凝集物を低減させる利点がある。
【0088】
工程a)は、以下の3つの代替法のうちの1つにより行い得る:
・ 遠心分離、
・ ろ過、又は
・ 遠心分離とろ過。
【0089】
工程a)が遠心分離及びろ過の両方を含む場合、本発明の発明者らは、遠心分離により大きい凝集物がほとんど除去され、その後、ろ過により残りのより小さい凝集物が除去されることを見出しているので、遠心分離をろ過の前に行うことが有利である。
【0090】
遠心分離
凝集物を除去し得るように、興味のあるポリペプチドを含む組成物は、1500〜3000 gの範囲、例えば1800〜2500 gの範囲、又は2000〜2300 gの範囲の力で遠心分離され得る。
【0091】
典型的には、組成物は、10〜60分間、例えば15〜50分間、又は20〜40分間遠心分離され得る。
温度は興味のあるポリペプチドの安定性に影響し得るので、遠心分離は、2〜20℃の範囲、例えば3〜15℃、又は3〜10℃の範囲、又は3〜8℃の範囲、例えば4℃又は5℃又は6℃の温度で行い得る。
【0092】
遠心分離により、興味のあるポリペプチドは凝集して沈降し、すなわちそれらはペレットを形成するが、個々の興味のあるポリペプチド分子は溶液中にとどまる。よって、本発明の方法においてその後に用いるのは、遠心分離された組成物の上清である。
【0093】
ろ過
興味のあるポリペプチドを含む組成物は、0.20〜5μmの範囲、例えば0.2〜2.5μmの範囲の孔径を有するフィルタを通してろ過し得る。
フィルタの孔径に加えて、フィルタを形成する材料も、興味のあるポリペプチドのろ過に影響し得る。適切なメンブレンフィルタの例は、限定されないが、ポリエーテルスルホン(PES)、セルロースアセテート、再生セルロース及びポリビニリデンフルオリド(PVDF)を含む。
【0094】
タンパク質のような分子をろ過する場合、通常、除去されるのは小分子であり、ろ過の後に、興味のあるポリペプチドは、通常、残留物中に存在し得る。よって、通常、本発明のその後の工程において用いられるのは、ろ過により得られる残留物である。
【0095】
工程b) 濃縮
原則として、興味のあるポリペプチドの組成物を濃縮する任意の方法を、本発明の工程b)において用い得る。
このような適切な方法の例は、限定されないが、限外ろ過、及び水分の除去による濃縮を含む。
【0096】
限外ろ過
限外ろ過は、水圧を用いて、値のカットオフサイズとしても知られる特定の径の孔を有するメンブレンに分子及び溶媒を通過させる分離法である。メンブレンのカットオフ値よりも小さい分子量を有する分子のみが、メンブレンを通過できるが、より大きい分子量のものはメンブレンを通過せず、いわゆる残留物を形成する。残留物中に存在する分子は、よって、溶媒がメンブレンを通過して流れるにつれて、濃縮される。
【0097】
ある特定の実施形態において、興味のあるポリペプチドを含む溶液又は組成物の濃縮は、タンジェンシャルフローろ過(TFF)により行い得る。この方法は、特に、大規模濃縮、すなわち1リットルから数百リットルまでの容量の溶液の濃縮に有用である。よって、この方法は、特に、工業的規模での興味のあるポリペプチドの濃縮溶液の製造に有用である。
【0098】
TFF法は、ろ過される溶液が半透過性のメンブレンを横切って流れるようにする特定の装置の使用に基づく。メンブレンの孔よりも小さい分子のみが、メンブレンを通過し、ろ液を形成し、回収されるべきより大きい物質を残存させる(残留物)。TFF法では、2つの異なる圧力を印加する。一方はシステムに溶液を注入し、それをシステム内で循環させるためであり(入口圧力)、他方の圧力は、メンブレンにわたって印加され(メンブレン圧力)、小分子及び溶媒をメンブレンに通過させる。入口圧力は、典型的には、1〜3バール、例えば1.5〜2バールの間であり得る。メンブレン圧力は、典型的には1バールより大きくてよい。
【0099】
興味のあるポリペプチドの濃縮された組成物は、組成物の濃縮にTFFが用いられる場合、残留物として回収され得る。
【0100】
TFFのためのメンブレンは、典型的には、再生セルロース又はポリエーテルスルホン(PES)製であり得る。
メンブレンの孔径は、典型的には、10000 Mw未満、例えば10〜10000 Mwの範囲の分子量カットオフを有し得る。
【0101】
別の実施形態において、興味のあるポリペプチドを含む組成物の濃縮は、遠心デバイスの使用により行い得る。この方法の原理は、メンブレンに遠心力を印加することにより溶液がメンブレンを越えてろ過されることである。このようなメンブレンは、しばしば、分子量(Mw)カットオフにより特徴付けられ、すなわち、これがメンブレンを横切ることができる化合物の最大分子サイズであり、これよりも大きい分子サイズの化合物はメンブレンを横切らない。本発明で用いられるメンブレンのMwカットオフは、特に、30000 Mw未満、例えば10〜30000 Mwの間であり得る。
【0102】
メンブレンは、特に、ポリエーテルスルホン(PES)又は再生セルロースであり得る。
このような適切な市販のフィルタデバイスの例は、Centricon Plus-80又はCentricon Plus-15であり得る。
【0103】
濃縮は、典型的には、2000〜4500g、例えば2500〜4000gの間、又は2750〜3500gの間、又は3000〜3500gの間、例えば3000g、又は3100g、又は3200g、又は3300g、又は3400g、又は3500gでの遠心分離により行い得る。
典型的には、遠心分離は、数時間、例えば1時間より長く、例えば1〜10時間行い得る。
【0104】
興味のあるポリペプチドの安定性へのいずれの負の影響を最小限にするために、遠心分離は、特に、2〜20℃の範囲、例えば3〜15℃の範囲、又は3〜10℃の範囲、又は3〜6℃の範囲の温度で行い得る。
【0105】
水分の除去による濃縮
水分の除去による濃縮の原理は、通常、全て又はほとんどの水分を除去して固体を得て、次いで、以前に希釈又は溶解していたよりも少ない容量の水にこの固体を希釈又は溶解することである。しかし、原則として、これは、水分の必要な量を単に除去して、その後の化合物の再希釈又は再溶解を行わずに所望の濃度を得ることにより行い得る。
【0106】
水分の除去による濃縮の適切な方法の例は、凍結乾燥及び蒸発を含む。
凍結乾燥及び蒸発の両方について、3つの最も関連するパラメータは、温度、圧力及び時間である。
【0107】
凍結乾燥の方法は、以下の3又は4工程を含み得る:凍結段階、一次乾燥段階及び二次乾燥段階及び任意に、凍結段階の後のアニーリング工程。凍結乾燥は、特に、本発明の方法のさらなる工程として含まれる凍結乾燥について記載されるようにして行い得る。
【0108】
さらなる工程
興味のあるポリペプチドは、天然の供給源、すなわち興味のあるポリペプチドを天然に発現する細胞に由来し得るか、又はこれは特に組換え発現され得る。
興味のあるポリペプチドの由来が何であるかに関わらず、これは、本発明の方法に供する前に精製され得る。
【0109】
このような「精製」は、特に、限定されないが、細胞破片の除去、興味のあるポリペプチド以外の他のタンパク質の除去、及び興味のあるポリペプチドが由来する供給源に存在し得るその他の成分の除去を含み得る。よって、本発明のある特定の実施形態において、興味のあるポリペプチドを含む組成物は、5重量%未満、又は1重量%未満、又は0.5重量%未満、又は0.1重量%未満、又は0.05重量%未満、又は0.01重量%未満の興味のあるポリペプチド以外の他のタンパク質を含む。
【0110】
よって、例えば宿主細胞により発現される他のタンパク質は、興味のあるポリペプチドを含む組成物を本発明の方法に用いる前に、該組成物から除去され得る。
【0111】
よって、ある特定の実施形態において、本発明の方法は、工程a)の前に、1又は複数の以下の工程を含み得る:
i) 興味のあるポリペプチドの組換え発現
ii) 1又は複数のクロマトグラフィー工程による興味のあるポリペプチド組成物の精製
iii) 配合緩衝剤の交換。
【0112】
興味のあるポリペプチドの組換え発現は、特に、興味のあるポリペプチドについて既に記載したようにして行い得る。
【0113】
興味のあるポリペプチドがPBGDである場合、クロマトグラフィーの適切な種類の例は、限定されないが、アフィニティクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー(IEC)及びヒドロキシアパタイトカラムでのクロマトグラフィーを含む。原則として、これらのクロマトグラフィー法のいずれの組み合わせも用い得る。本発明の発明者らは、以前に、PBGDについて、少なくともアフィニティクロマトグラフィーの工程を行うことが有利であり、これをクロマトグラフィーのいずれの他の方法と組み合わせる場合、アフィニティクロマトグラフィーの工程を他のクロマトグラフィーの前に行うことが有利であることを見出している(例えばWO 03/002731を参照)。
【0114】
興味のあるポリペプチドがPBGDである実施形態について、市販で入手可能なアフィニティクロマトグラフィーカラムの例は、アフィニティカップリング、基特異的アフィニティ、及び金属キレートアフィニティカラムを含む。
【0115】
Amersham Pharmacia Biotechのプロダクトカタログ2001は、アフィニティカップリングカラムの例、例えば-NH2を含む固定化リガンドを含むカラム及び1級アミノ基を含むリガンドを含むカラムを示している。
【0116】
金属キレートアフィニティカラムは、露出したヒスチジン基を用いる金属イオン錯体形成によるタンパク質の精製に特に好ましい。WO01/07065の実施例3は、組換えヒトポルホビリノゲンデアミナーゼの「His-Tag」(rhPBGD-His)を用いる構築について記載している。rhPBGD-Hisを精製するためには、金属キレートアフィニティカラム、例えばコバルト金属アフィニティ樹脂を有するカラムを用いるのが好ましい。
【0117】
アフィニティクロマトグラフィーの他の適切な方法の例は、限定されないが、リガンドとしてブタのヘパリンを有するカラム、又はリガンドとしてCibracon Blue 3Gとしても知られる1-アミノ-4-[[4-[[4-クロロ-6-[[3 (又は4)-スルホフェニル]アミノ]-1,3,5-トリアジン-2-イル]アミノ]-3-スルホフェニル]アミノ]-9,10-ジヒドロ-9,10-ジオキソ-2-アントラセンスルホン酸を用い、かつリガンドカップリング法としてトリアジンカップリングを用いるカラムを含む。後者の市販で入手可能な例は、Amersham Pharmacia BiotechからのBlue Sepharose 6 Fast Flow (FF)である。よって、本発明の好ましい実施形態は、本明細書に記載されるように、工程(i)のアフィニティクロマトグラフィーカラムがリガンドカップリング法としてトリアジンカップリングを用いるカラムであり、より好ましくはリガンドがCibacron Blue 3Gである方法に関する。
【0118】
用語「イオン交換クロマトグラフィー(IEC)」は、本明細書において、分子、例えばタンパク質を、あるpHでの全体の電荷に基づいて、カラム上の荷電された基への静電的結合により分離するカラムとして、当該技術に従って理解される。イオン交換は、カラム上への一方の種のイオンの、溶液中に失われる他方との引き換えでの吸収のことである。
【0119】
適切なIECカラムの例は、Q Sepharoseカラム、Q SP Sepharoseカラム、又はCM Sepharoseカラムのようなカラムであり、これは特にDEAE Sepharoseカラムであり得る。
【0120】
適切なヒドロキシアパタイトカラムの例は、セラミックヒドロキシアパタイトカラムである。ヒドロキシアパタイト(Ca5(PO4)3OH)2は、タンパク質、酵素、核酸、ウイルス及びその他の高分子の分離及び精製に用い得るリン酸カルシウムの形である。セラミックヒドロキシアパタイトは、ヒドロキシアパタイトの球形で大きい孔がある(macroporous)形である。CHT I型(Bio-Rad)は、適切な市販で入手可能なセラミックヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーカラムの例である。
【0121】
ある実施形態において、本発明の方法は、工程a)の前に以下の工程を含み得る。
i) PBGDの組換え発現
ii) 工程i)からのPBGD組成物をアフィニティクロマトグラフィーに供する
iii) 工程ii)のPBGD組成物をイオン交換クロマトグラフィーに供する。
【0122】
さらなる実施形態において、本発明の方法は、工程a)の前に以下の工程を含み得る。
i) PBGDの組換え発現
ii) 工程i)からのPBGD組成物をアフィニティクロマトグラフィーに供する
iii) 工程ii)からのPBGD組成物をイオン交換クロマトグラフィーに供する
iv) 工程iii)からのPBGD組成物をヒドロキシアパタイトカラムに供する。
【0123】
これらの方法はともに、任意に、工程ii)から得られるPBGD組成物のダイアフィルトレーションの希釈工程をさらに含む。つまり、上記の工程は、工程ii)の後でiii)の前、すなわち工程iia)であるはずである。工程iia)の目的は、塩濃度を適切な導電性、例えば<10 mS/cmまで低減することである。このことは、特に、DEAE Sepharoseをイオン交換クロマトグラフィー工程、すなわち工程iii)における樹脂として用いる場合に適切であり得る。なぜなら、これは捕捉されたPBGDのDEAE Sepharose樹脂への結合を促進し得るからである。希釈は、精製水の直接の添加又は精製水に対する限外ろ過により行い得る。
【0124】
PBGDの組換え発現である工程i)は、上記の方法のいずれにより行い得る。
【0125】
工程ii)における適切なアフィニティクロマトグラフィーカラムの例は、上記のいずれのものであり得る。
【0126】
工程iii)におけるイオン交換クロマトグラフィーを行う適切な方法の例は、上記のいずれであり得る。
【0127】
工程iv)における適切なヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーカラムの例は、上記のいずれであり得る。
【0128】
特定の実施形態において、アフィニティクロマトグラフィーカラムは、リガンドカップリング法、特に、リガンドがCibracon Blue 3Gである方法としてトリアジンカップリングを用いるカラムであり得る。これは、特に、Blue Sepharose 6 Fast Flowカラムであり、イオン交換クロマトグラフィーカラムはDEAE Sepharoseカラムであり得、方法が工程iv)も含む実施形態において、このカラムは特にセラミックヒドロキシアパタイトカラムであり得る。
【0129】
本発明の方法は、方法の工程b)の後にさらなる工程を含み得る。このような工程は、限定されないが、以下の1又は複数を含む:
・ 濃縮された興味のあるポリペプチドを含む組成物の凍結乾燥、
・ 濃縮された興味のあるポリペプチドを含む組成物の緩衝剤の交換、
・ 濃縮された興味のあるポリペプチドを含む組成物の滅菌ろ過、
・ 蒸発。
【0130】
本発明の方法においては、異なる凍結乾燥機、凍結乾燥される溶液の容量、及び他のパラメータを用い得る。適切な凍結乾燥機の例は、限定されないが、本発明の実施例で用いられるようなLyostar (FTM-systems)凍結乾燥機を含み、ここで、濃縮された興味のあるポリペプチド、すなわちこの場合にPBGDを含む溶液を、2及び6 mlの注入ガラスバイアル(1型)に充填し、ゴムの栓(クロロブチル)で栓をする。凍結乾燥は、以下の3工程により行い得る;
i) 凍結、
ii) 一次乾燥、及び
iii) 二次乾燥。
【0131】
工程i) 凍結は、特に、サンプルを周囲温度にてまず装填し、これを0℃に冷却し、0℃にて30分間維持した後に、1分あたり1℃で、-40℃まで温度を下げて-40℃にて30分間維持することにより行われ得る。
【0132】
工程ii) 一次乾燥は、特に、真空圧力126 mTorrに排出し、1分当たり1℃で、0℃まで温度を上げて、サンプルを0℃にて360分間維持することにより行われる。
【0133】
工程iii) 二次乾燥は、特に、1分当たり0.5℃で、+30℃まで温度を上昇させるとともに完全真空に排出し、サンプルを+30℃にて360分間維持することにより行われ得る。
二次乾燥の後に、サンプルは、真空で密閉されるか、又は窒素を充填した後に密閉され得る。
【0134】
適切な凍結乾燥法の例は、本発明の実施例に記載されるものを含む。
さらなる実施形態において、凍結乾燥は、一次乾燥段階の前にアニーリング工程を含み得る。本発明の発明者らは、凍結乾燥法にアニーリング工程を含めることにより、アニーリング工程を含まない同じ凍結乾燥法を用いたときに比較して、目視によりひび割れがより少ないことによる視覚的な見た目が改善され、及び/又は凍結乾燥物の再構成時間がより短くなることを見出している。凍結乾燥物の再構築のための時間が低減されることは、溶液として投与される医薬として用いられる場合に特に有利である。視覚的な見た目の改善も、通常、ほとんどの製品について有利であるとみなされる。
【0135】
よって、凍結乾燥は、以下の工程を含み得る:
i) 凍結
ii) アニーリング
iii) 一次乾燥
iv) 二次乾燥。
【0136】
凍結、一次乾燥、及び二次乾燥の工程は、特に、上記のようにして行い得る。アニーリング工程、すなわち工程ii)は、特に、30分の凍結の後に、例えば1分当たり2℃の割合で、-10℃又は-20℃まで温度を上昇させ、この温度を120又は420分間維持し、次いで、温度を例えば1分当たり2℃の割合で-40℃まで下げて、この温度でサンプルを60〜90分間維持した後に一次乾燥工程を開始することにより行い得る。
【0137】
濃縮された興味のあるポリペプチドを含む組成物の緩衝剤の交換は、特に、a) 例えば5〜15回、濃縮された興味のあるポリペプチドを含む組成物を緩衝剤又は配合物(formulation)中で希釈し、b) 希釈された組成物を再び濃縮し、工程a)及びb)を、これらの工程を行う前の組成物中に存在する緩衝剤又は配合物中の賦形剤の量が、これらの工程を行った後の該組成物中に存在する緩衝剤又は配合物中の賦形剤の例えば5容量%未満、又は1容量%未満を構成するように、充分な回数行うことにより行い得る。
【0138】
特に、本発明の工程b)から得られる興味のあるポリペプチドを含む組成物は、特に、該組成物の滅菌ろ過の工程及び/又は該組成物の凍結乾燥の工程をさらに含み得る。
滅菌ろ過は、通常、0.22μm又は0.20μmの孔径のフィルタを通して組成物をろ過することにより行われる。凍結乾燥は、特に、上記のようにして行い得る。
【0139】
本発明は、本発明の方法により得られる凍結乾燥組成物にも関する。
【0140】
皮下注射
本発明は、50〜300 mg/mlの範囲の興味のあるポリペプチドを含む組成物の、哺乳動物への皮下注射用の医薬品を製造するための使用にも関する。
興味のあるポリペプチドは、限定されないが、PBGD、アリールスルファターゼA、リゾソーマルアルファ-マンノシダーゼ及びガラクトセレブロシダーゼを含む本発明による興味のあるポリペプチドのいずれであり得る。
【0141】
用語「皮下」は、しばしば、s.c.と短縮され、これらの2つの用語は、本発明の関係において交換可能に用い得る。
【0142】
注射を皮下で行う場合、生理的な制約により、1.5 mLを超えて注射することは通常不可能である。
【0143】
患者は、特定の興味のあるポリペプチドの所定の量を通常必要とするので、患者に投与される必要がある興味のあるポリペプチドを含む組成物の容量と、該組成物中の興味のあるポリペプチドの濃度の間に相関関係がある。
【0144】
よって、興味のあるポリペプチドを含む組成物が興味のあるポリペプチドを高い濃度で含み、この高い濃度の興味のあるポリペプチドが多量のポリペプチド凝集物の形成なしに得ることができることは、本発明の利点である。このような濃縮された興味のあるポリペプチド組成物の使用は、該組成物をより少ない容量で注射し、同時に、患者が興味のあるポリペプチドの適切な量を受容することを確実にし、よって、興味のあるポリペプチドを皮下投与することを容易にする。
【0145】
興味のあるポリペプチドを含む上記の組成物は、特に、75〜250 mg/mlの間、例えば75〜200 mg/mlの間、又は75〜150 mg/mlの間、又は100〜150 mg/mlの間、又は100〜125 mg/mlの間、又は125〜150 mg/mlの間の興味のあるポリペプチドを含む。
【0146】
上記のように、患者が興味のあるポリペプチドの適切な量を受容することを確実にするように患者に注射される必要がある興味のあるポリペプチドを含む組成物の容量は、該組成物中の興味のあるポリペプチドの濃度と相関する。
【0147】
よって、このような組成物の容量は、組成物中の興味のあるポリペプチドの濃度に従って、通常、調節される。しかし、容量は、通常、0.1〜1.5 mlの範囲、例えば0.1〜1.5 mlの範囲、又は0.5〜1.5 mlの範囲、又は0.5〜1.5 mlの範囲、又は0.75〜1.5 mlの範囲、又は0.75〜1.5 mlの範囲、又は1〜1.5 mlの範囲、又は1〜1.5 mlの範囲であり得る。
【0148】
患者に投与するのに適する興味のあるポリペプチドの量は、通常、個体の体重及び具体的な興味のあるポリペプチドに依存する。
【0149】
ある実施形態において、本発明は、50〜300 mg/mlのPBGDの組成物の皮下注射を含む、哺乳動物を急性間欠性ポルフィリン症について治療する方法に関する。
PBGDの投与は、急性間欠性ポルフィリン症の治療について特に有用である。しかし、PBGDの投与が、別のポリフィリン症、例えば遺伝性コプロポルフィリン症又は異型ポリフィリン症の治療に有用であり得ることも考えられる。ポリフィリン症は、ヘム生合成経路における種々の欠失により引き起こされるいくつかの疾患を集合的に表すのに用いられる用語である。よって、任意の型のポリフィリン症に罹患した患者に対する例えば他の治療剤との組み合わせでのPBGDの投与は、該経路の中の種々の中間体の全体的な代謝回転を増加させる助けになり得る。例えば、Meissner PNら, 1986, European Journal of Clinical Investigation, vol. 16, 257〜261; Hift RJら, 1997, S. Afr. Med. J., vol. 87, 718〜27及びMeissner Pら, 1993, J. Clin. Invest., vol. 91, 1436〜44は、遺伝性コプロポルフィリン症及び異型ポリフィリン症におけるALA及びPBGの蓄積について記載している。これらの疾患において、ALA及びPBGの蓄積は、ALAのPBGへの変換のそれぞれ4及び5工程下流に位置する酵素の欠損に起因する。最近の2つの文献において、異型ポルフィリン症の患者に蓄積するポルフィリノゲンがPBG-デアミナーゼをどのように阻害し得るかが記載されている。
【0150】
さらなる実施形態において、本発明は、50〜300 mg/mlのアリールスルファターゼAの組成物の皮下注射を含む、哺乳動物を異染性白質ジストロフィーについて治療する方法に関する。
異染性白質ジストロフィー(MLD)は、リゾソーム酵素であるアリールスルファターゼ A (ASA)における常染色体上の劣性遺伝子欠損により引き起こされ、ミエリン鞘の膜の進行性破壊(脱髄)、及びガラクトシルスルファチド(硫酸セレブロシド)の中枢神経系(CNS)及び末梢神経系の両方の白質での蓄積をもたらす。組織学的調製物において、ガラクトシルスルファチドは、異染性に染色される球形の顆粒状の塊を形成する。ガラクトシルスルファチドは、また、腎臓、胆嚢及びいくつかのその他の内臓に蓄積され、尿中に過剰量で排泄される。
【0151】
ガラクトシルスルファチドは、通常、3-O-サルフェート連結の加水分解により代謝されて、リゾソーム酵素であるアリールスルファターゼ A (EC 3.1.6.8) (Austinら Biochem J. 1964, 93, 15C〜17C)と、サポシンBとよばれるスフィンゴ脂質アクチベータタンパク質との組み合わせの作用によりガラクトセレブロシドを形成する。アリールスルファターゼ Aの重大な欠損は、MLDの乳児期晩期、若年期及び成人期の形の患者からの全ての組織において生じる(以下を参照)。以下、アリールスルファターゼAタンパク質を「ASA」という。ASAの重大な欠陥は、MLDの患者からの全ての組織において生じる。
【0152】
さらに別の実施形態において、本発明は、50〜300 mg/mlのリゾソーマルアルファ-マンノシダーゼの組成物の皮下注射を含む、哺乳動物をリゾソーム貯蔵障害アルファ-マンノシドーシスについて治療する方法に関する。
アルファ-マンノシドーシスは、全世界で1/1000000〜1/500000の間の頻度で発生する劣性の常染色体疾患である。マンノシドーシスは、欧州、アメリカ、アフリカ及びアジアの全ての人種集団において見出される。これは、良好な診断サービスがある全ての国において、類似の頻度でリゾソーム貯蔵障害について検出される。彼らは、見かけ上は健康に生まれる。しかし、疾患の症状は進行性である。アルファ-マンノシドーシスは、非常に重篤な形から非常に穏やかな形までにわたる臨床上の不均質性を示す。典型的な臨床症状は、精神薄弱、骨格変化、再発性感染をもたらす免疫系障害、聴覚障害であり、該疾患は、しばしば、きめの粗い顔、顕著な額、平坦な鼻橋(nasal bridge)、小さい鼻、及び広い口のような典型的な顔の特徴と関連する。最も深刻な場合(I型マンノシドーシス)において、子供は、肝脾腫大に罹患し、生命の早期の間に死亡する。おそらく、この早期の死亡は、疾患により引き起こされる免疫不全による重篤な感染により引き起こされる。より穏やかな場合(2型マンノシドーシス)には、患者は、通常、成人の年齢に到達する。患者の骨格の衰弱により、20〜40歳で車椅子が必要となる。該疾患は、単純な読み書きの最も基本的な技術だけでなく全てを排除する弱い精神機能をしばしばもたらす脳の広汎性機能不全の原因である。これらの問題は、聴覚障害及び独立した生活を患者から排除する他の臨床症状に関連し、結果として、生涯にわたる介護が必要である。
【0153】
さらに別の実施形態において、本発明は、50〜300 mg/mlのガラクトシルセレブロシダーゼの組成物の皮下注射を含む、哺乳動物をクラッベ病について治療する方法に関する。
ヒトにおいて、GALC酵素の欠損は、クラッベ病又はクラッベ型白質ジストロフィーとして知られる常染色体の遺伝性で遺伝子性のリゾソーム貯蔵疾患をもたらす。酵素は、ヒトの精巣、腎臓、胎盤、肝臓及び脳で発現され、GALC酵素の欠損は、通常、ミエリン代謝、並びに中枢及び末梢神経系(それぞれCNS及びPNS)に障害をもたらす。
クラッベ病は、いずれの年齢、国籍及び性別のヒトで観察されている。
【0154】
本発明の態様の1つの関係において記載される実施形態及び特徴は、本発明のその他の態様にも適用されることに注目すべきである。特に、興味のあるポリペプチドを含む組成物について記載される全ての実施形態、例えばさらなる化合物の存在、緩衝剤及びpHは、本願で用いられる興味のあるポリペプチドを含む組成物にも適用される。
【0155】
本発明による物体又はその特性若しくは特徴の1つが単数形で記載される場合、これは、複数形での物体又はその特性若しくは特徴のことにも言及する。例えば、「ポリペプチド」について述べる場合、1又は複数のポリペプチドについて述べると理解される。
【0156】
本明細書の全てにおいて、用語「含む」又は「含み」のような変形は、記載される要素、整数若しくは工程、又は要素、整数若しくは工程の群を含むが、他のいずれの要素、整数若しくは工程、又は要素、整数若しくは工程の群を除外しないことを意図すると理解される。
本願で引用される特許及び非特許文献の全ては、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0157】
本発明を、ここで、以下の非限定的な実験の部分において、さらに詳細に説明する。
実験
材料
rhPBGD
以下の実験において用いたrhPBGDは、WO 03/002731の実施例1の方法2に従って得られ、ここで、方法2は、工程IV、すなわち、セラミックヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー工程を含む方法である。
【0158】
配合緩衝剤
組換え精製rhPBGDは、以下の水性配合緩衝剤中に存在した:
3.67 mM Na2HPO4
27 mM グリシン
250 mM マンニトール
及びpH 7.9。
配合緩衝剤は、次いで、0.22μmのフィルタを通して滅菌ろ過した。
【0159】
方法
凍結乾燥
精製rhPBGD溶液の凍結乾燥を、以下のスケジュールに従ってLyostar (FTM-systems)凍結乾燥機で行った。
【0160】
【表2】

【0161】
目視観察(澄明性(clarity)及び色)
液体を、色、澄明性及び沈殿について、以下のスキームに従って目視で調べた。
色: 1: 無色; 2: わずかに黄色; 3: 黄色
澄明性: 1: 澄明; 2: わずかに濁っている; 3: 濁っている
その他の所見: オペレータによるその他の観察は、ここに含めた場合もある(例えば沈殿物、不溶物質など)。
【0162】
pH測定
pH計(Metrohm 691 pH Meter)及び電極(組み合わせたLL pH電極)を、4.00〜9.00の範囲の3種類の標準参照溶液(Merck)で校正した。液体を、最後に分析した。
【0163】
タンパク質濃度
抽出物、処理中のサンプル、バルク薬剤及び最終生成物中のタンパク質の濃度は、アルカリ性の媒体中のタンパク質によるCu2+のCu+への還元の原理を用いる方法(ビウレット反応)により決定した。Cu+イオンを、次いで、高い感度及び選択性の比色検出をもたらすビシンコニン酸を含有する試薬と反応させた。
【0164】
純度
組換えヒトポルホビリノゲンデアミナーゼ(rhPBGD)及びrhPBGD変異型を、移動相中の有機変性剤(アセトニトリル)のパーセンテージに依存するシリカベースの固定媒体へのそれらの吸着及び脱着能力に従って分離した。
【0165】
rhPBGD活性
ポルホビリノゲンデアミナーゼ(PBGD)は、4分子のポルホビリノゲン(PBG)の付加を触媒して、直線状テトラマーであるプレウロポルフィリノゲンを形成し、これは、酵素から放出されて、ウロポルフィリノゲンIIIシンターゼの作用によりインビボでウロポルフィリノゲンIIIに環化される。プレウロポルフィリノゲンは、ベンゾキノンと化学的に酸化されてウロポルフィリンを形成でき、これは405 nmの光を吸収する。
分析は、各回の試験において1つの単一バイアルに対して行った。rhPBGD活性及びタンパク質濃度の決定のために、試験を、各バイアルについて、2重及び3重にそれぞれ行った。
【0166】
モル浸透圧
凍結乾燥したrhPBGDの1つのバイアルを、1.00 mlのMilliQ水に再懸濁した。rhPBGDの凍結水溶液のバイアルを融解した。浸透圧計(Vapro浸透圧計)を、100〜1000 mOsm/kgの範囲の3つの標準溶液(100、290、1000 mOsm/kg)を用いて校正した。次いで、液体を分析した。
【0167】
実施例1
遠心フィルタデバイスを用いる濃縮
凍結したPBGD-バルク溶液(7 mg/mL rhPBGD, 3.67 mM Na2HPO4, 27 mM グリシン, 250 mM マンニトール, pH 7.9)を、20℃の水浴中で融解し、3200gにて10分間遠心分離し、その後に、0.20μm-PESフィルタ(Nalgeneポリエーテルスルホンフィルタ)により滅菌ろ過した。PBGDバルク溶液を、Centrifugal Filter Devices Centricon Plus-80 (Mwカットオフ30000)及びCentricon Plus-15 (Mwカットオフ30000)を3200 gにて数時間運転することにより、100 mg/mlまで濃縮した。濃縮された溶液、すなわち残留物を、0.22μmフィルタ(Millex GV)により滅菌ろ過し、最後に、この溶液の一部分を、滅菌配合緩衝剤で希釈して50 mg/mlを得た。5 mg/mlの溶液を、組換え精製hPBGDを滅菌配合緩衝剤で直接希釈することにより調製した。
【0168】
5 mg/mL、50 mg/mL及び100 mg/mLのrhPBGDを、次いで、上記のようにして凍結乾燥した。5、50及び100 mg/mLのrhPBGDを含む上記の凍結乾燥したrhPBGD溶液のそれぞれ、並びに5 mg/mLのrhPBGD水溶液のいくつかのバイアルを、40℃±2℃、75%±5%相対湿度(RH)に貯蔵した。バイアルを、充分に密閉された二次容器(紙の箱)中で遮光して貯蔵した。
【0169】
記載した時点(すなわち貯蔵時間)で、各凍結乾燥サンプルのバイアルを、1.00 mLのMillipore水に再懸濁した。
最懸濁したバイアル及びrhPBGdの水溶液のバイアルのそれぞれを、次いで、色、澄明性及び沈殿物について目視観察し、pH、タンパク質濃度、純度及びrhPBGD活性を、上記のようにして測定した。
結果を、以下の表1〜4に示す。
【0170】
【表3】

【0171】
【表4】

【0172】
【表5】

【0173】
【表6】

【0174】
実施例2
遠心フィルタデバイスによるrhPBGD組成物の濃縮
凍結したPBGD-バルク溶液(7 mg/mL rhPBGD, 3.67 mM Na2HPO4, 27 mM グリシン, 250 mM マンニトール, pH 7.9)を、20℃の水浴中で融解し、3200gで10分間遠心分離した後に、0.20μm-PESフィルタ(Nalgeneポリエーテルスルホンフィルタ)により滅菌ろ過した。PBGD-バルク溶液を、Centrifugal Filter Devices Centricon Plus-80 (Mwカットオフ30000)及びCentricon Plus-15 (Mwカットオフ30000)を3200 gで数時間運転することにより100 mg/mlまで濃縮した。濃縮した溶液、すなわち残留物を、0.22μmフィルタ(Millex GV)により滅菌ろ過し、滅菌ろ過した配合緩衝剤(上記を参照)で希釈して、より低濃度の溶液を得た。各濃度の容量のフラクションを、上記のようにして凍結乾燥した。
【0175】
種々の濃度の凍結乾燥したrhPBGD及びrhPBGDの水溶液を、5℃±3℃又は-20℃±5℃で貯蔵した(環境相対湿度(RH))。全てのバイアルを、充分に密閉された二次容器(紙の箱)の中で遮光して貯蔵した。
【0176】
記載した時点(すなわち貯蔵時間)で、各凍結乾燥サンプルのバイアルを、1.00 mLのMillipore水に再懸濁し、rhPBGDの水溶液とともに、色、澄明性及び沈殿物について目視観察し、pH、タンパク質濃度、純度、モル浸透圧及びrhPBGD活性の測定により試験した。
【0177】
結果を、以下の表5〜19に示す。
【0178】
【表7】

【0179】
【表8】

【0180】
【表9】

【0181】
【表10】

【0182】
【表11】

【0183】
【表12】

【0184】
【表13】

【0185】
【表14】

【0186】
【表15】

【0187】
【表16】

【0188】
【表17】

【0189】
【表18−1】

【0190】
【表18−2】

【0191】
【表19−1】

【0192】
【表19−2】

【0193】
【表20−1】

【0194】
【表20−2】

【0195】
【表21−1】

【0196】
【表21−2】

【0197】
実施例3
タンジェンシャルフローろ過(TFF)によるrhPBGD組成物の濃縮
rhPBGDのバルク溶液を、次いで、最短で3日間、5℃にて暗所で融解した。
融解した溶液を、次いで、2200gにて約10分間、200 mLのコニカル遠心チューブを用いて遠心分離した。
溶液を、次いで、以下の孔径:5.0μm; 0.65μm; 0.45μm及び0.20μmの一連のフィルタによりろ過した後に、タンジェンシャルフローろ過(TFF)により濃縮した。
【0198】
TFFによる濃縮は、Millipore Labscale TFF System及びMillipore Pellicon (登録商標) XL Filterを用いて、約20〜25 psiのポンプ入口圧力及び約4〜6 psiのPellicon (登録商標) XL Filterを通しての圧力で行った。rhPBGDは、TFFシステムのサンプル容器をアルミニウムホイルのシートで覆うことにより、手順の間に遮光した。
【0199】
TFF手順から得られた濃縮rhPBGD溶液を、次いで、滅菌水中で調製した3.67 mM Na2HPO4 x 2H2O、27 mMグリシン及び220 mM マンニトール含有配合緩衝剤に緩衝剤を交換した。これは、上記の緩衝剤を、TFF-システムに連続的に加え、該緩衝剤が前の緩衝剤を置換するまでメンブレンを介して圧力をかけることにより行った。
【0200】
濃縮し、緩衝剤交換したrhPBGD溶液を、次いで、孔径0.22μmのフィルタを通過させることにより滅菌ろ過した。滅菌ろ過は、各回に新しいフィルタを用いて2回行った。
滅菌濃縮rhPBGD溶液を、次いで、バイアルに入れた後に、これを方法の部分に記載したようにして凍結乾燥した。
【0201】
実施例4
再構成時間に対する凍結乾燥の異なる形態及び/又は賦形剤の量の影響
PBGDを、実施例3に記載したようにして濃縮し、緩衝剤の交換の後に、PBGDの濃度を決定した。
濃縮PBGD溶液を、次いで、Lyostar (FTM-systems)凍結乾燥機中で凍結乾燥した。溶液を、2及び6 mlの注入ガラスバイアル(1型)に充填し、ゴムの栓(クロロブチル)で栓をした。
【0202】
原型の凍結乾燥サイクル:
サンプルを周囲温度にて装填し、棚を30分間で0℃まで冷却した。温度を、-40℃まで(1分当たり1℃)下げ、その温度で30分間維持し、次いで、真空圧力を126 mTorrまで排出し、温度を0℃まで(1分当たり1℃)上げることにより一次乾燥を開始した。360分間の一次乾燥の後に、温度を+30℃まで(1分当たり0.5℃)上げ、同時に完全真空を排出した(二次乾燥の開始)。温度を+30℃で360分間維持し、次いでバイアルに真空下で栓をした。
【0203】
アニーリング工程を含む凍結乾燥
-40℃にて30分後、温度を1分当たり2℃の割合で-10℃又は-20℃まで上げ、この温度でこれらを120又は420分間維持した後に、1分当たり2℃で-40℃まで温度を再び下げ、一次乾燥の開始前にサンプルを60〜90分間維持した。
【0204】
結果を表20に示し、ここで賦形剤及び凍結乾燥サイクルについて用いた短縮した用語は、以下の意味である。
1xの量の賦形剤は、PBGD溶液が、滅菌水中で調製された3.67 mM Na2HPO4 x 2H2O, 27 mMグリシン及び220 mM マンニトールを含むことを表す。
1.5x量の賦形剤は、PBGD溶液が、滅菌水中で調製された5.51 mM Na2HPO4 x 2H2O, 40.5 mMグリシン及び375 mM マンニトール、すなわち、1x緩衝剤中に存在する各成分の1.5xを含むことを表す。
2x賦形剤は、PBGD溶液が、滅菌水中で調製された7.34 mM Na2HPO4 x 2H2O, 54 mMグリシン及び500 mM マンニトール、すなわち1x緩衝剤中に存在する各成分の2xを含むことを表す。
【0205】
原型の凍結乾燥サイクルは、上記のとおりである。
アニーリング凍結乾燥サイクルは、上記のとおりであり、ここで、アニーリング工程は、温度を-10℃まで上げ、サンプルをこの温度で120分間維持した後に-40℃まで再び下げることを含む。
延長アニーリング凍結乾燥サイクルは、上記のとおりであり、ここで、アニーリング工程は、温度を-20℃まで上げ、サンプルをこの温度で420分間維持した後に-40℃まで再び下げることを含む。
【0206】
【表22】

【0207】
実施例5
凍結乾燥生成物の見かけに対する凍結乾燥の異なる形態及び/又は賦形剤の量の影響
PBGDの濃縮された凍結乾燥溶液を、実施例4に記載されるようにして調製し、賦形剤の量及び凍結乾燥サイクルの種類に対する言及は、実施例4と同じ意味を有する。
凍結乾燥生成物の目視観察により、以下の結果が得られた。
A: それぞれ4.6 mg/ml、66.6 mg/ml及び109.4 mg/mlのrhPBGDを含む溶液から調製した3つの生成物の比較は、凍結乾燥生成物のひび割れの数が、rhPBGDの濃度が増加するにつれて増加することを示した。
B: 150 mg/mlのrhPBGDを含み、1x及び1.5xの量の賦形剤を含む溶液から調製した2つの生成物の比較は、凍結乾燥生成物のひび割れの数が、1.5xの量の賦形剤を含む生成物について、1xの量の賦形剤を含む生成物よりも少ないことを示した。
【0208】
C: 1x及び2xの量の賦形剤を含む150 mg/mlのrhPBGD溶液 から調製した2つの凍結乾燥生成物の比較は、2xの量の賦形剤を含む凍結乾燥生成物におけるひび割れの数が、1xの量の賦形剤を含む生成物よりも低いことを示した。
D: 原型、アニーリング及び延長アニーリング凍結乾燥サイクルを用いて150 mg/mlのrhPBGD溶液から調製した3つの凍結乾燥生成物の比較は、凍結乾燥生成物におけるひび割れの数が、アニーリング凍結乾燥サイクルにより調製された生成物において、原型の凍結乾燥サイクルにより調製された生成物よりも低いことを示した。さらに、延長アニーリング凍結乾燥サイクルにより調製された生成物中のひび割れの数は、アニーリング凍結乾燥サイクルにより調製された生成物よりも低かった。
【0209】
E: 3つの凍結乾燥生成物を、それぞれ150、175及び200 mg/mlのrhPBGD溶液から調製した。凍結乾燥生成物は、それぞれ、1.5xの量の賦形剤を含み、これらは、アニーリングサイクルを用いて凍結乾燥した。いずれの凍結乾燥生成物も、全くひび割れを含まなかった。
F: 2つの凍結乾燥rhPBGD生成物を、150 mg/mlのrhPBGD溶液から調製した。これらのうちの一方は、1xの量の賦形剤を含み、原型の凍結乾燥サイクルにより調製され、他方は、1.5xの量の賦形剤を含み、延長アニーリング凍結乾燥サイクルにより調製された。1.5xの量の賦形剤を含み、かつ延長アニーリング凍結乾燥サイクルにより調製された生成物が含むひび割れは、1xの量の賦形剤を含み、かつ原型の凍結乾燥サイクルにより調製された生成物よりも少なかった。
【0210】
G: 2つの凍結乾燥rhPBGD生成物を、150 mg/mlのrhPBGD溶液から調製した。これらの一方は、1xの量の賦形剤を含み、原型の凍結乾燥サイクルにより調製され、他方は、0.1% Tween 80を1xの量の賦形剤と組み合わせて含み、延長アニーリング凍結乾燥サイクルにより調製された。0.1% Tween 80を1xの量の賦形剤と組み合わせて含み、かつ延長アニーリング凍結乾燥サイクルにより調製された生成物が含むひび割れは、1xの量の賦形剤を含み、かつ原型の凍結乾燥サイクルにより調製された生成物よりも少なかった。
【0211】
実施例6
凍結乾燥rhPBGDの安定性に対する、回復容量、賦形剤の量及び凍結乾燥の形態の影響
濃縮rhPBGD溶液の凍結乾燥サンプルを、実施例4に記載されるようにして調製した。
「バルク溶液」は、凍結乾燥前のPBGDの濃縮溶液である。
表21は、回復容量(Rec. vol:凍結乾燥生成物を再懸濁する容量である)に対するrhPBGDの濃度、賦形剤の量(実施例4と同じ定義を用いる)、凍結乾燥の形態(実施例4と同じ定義を用いる)、及び充填容量の比(fill. Vol:これは、凍結乾燥される前の組成物の容量である)に関して以下の特徴を有するrhPBGD溶液の結果を示す。
【0212】
溶液1:
・ 約5 mg/ml rhPBGD
・ 1xの量の賦形剤
・ 原型凍結乾燥サイクル
・ Fill.vol = Rec. vol
溶液2:
・ 約70 mg/ml rhPBGD
・ 1xの量の賦形剤
・ 原型凍結乾燥サイクル
・ Fill.vol = 2x Rec. vol
【0213】
溶液3:
・ 約110 mg/ml rhPBGD
・ 1xの量の賦形剤
・ 原型凍結乾燥サイクル
・ Fill.vol = Rec. vol
溶液4:
・ 約70 mg/ml rhPBGD
・ 1xの量の賦形剤
・ 原型凍結乾燥サイクル
・ Fill.vol = 1.5x Rec. vol
【0214】
溶液5:
・ 約90 mg/ml rhPBGD
・ 2/3xの量の賦形剤
・ 原型凍結乾燥サイクル
・ Fill.vol = 1.5x Rec. vol
溶液6:
・ 約60 mg/ml rhPBGD
・ 1/2xの量の賦形剤
・ 原型凍結乾燥サイクル
・ Fill.vol = 2x Rec. vol
【0215】
溶液7:
・ 約110 mg/ml rhPBGD
・ 1xの量の賦形剤
・ アニーリング凍結乾燥サイクル
・ Fill.vol = Rec. vol
溶液8:
・ 約60 mg/ml rhPBGD
・ 1xの量の賦形剤
・ アニーリング凍結乾燥サイクル
・ Fill.vol = 2x Rec. vol
【0216】
溶液9:
・ 約150 mg/ml rhPBGD
・ 1xの量の賦形剤
・ アニーリング凍結乾燥サイクル
・ Fill.vol = Rec. vol
溶液10:
・ 約150 mg/ml rhPBGD
・ 1xの量の賦形剤
・ 原型凍結乾燥サイクル
・ Fill.vol = Rec. vol
【0217】
表21には示さないが、各時点で純度についても試験し、全ての場合において100%と確認された。
溶液2について第4及び9週の時点で、並びに溶液4について第9週の時点で、間違った回復容量を用いた。
【0218】
【表23−1】

【0219】
【表23−2】

【0220】
【表23−3】

【0221】
実施例7
rhPBGDの安定性に対する異なる賦形剤の影響
rhPBGDを実施例4に記載されるようにして濃縮し、次いで、緩衝剤を、以下に記載される4つの緩衝剤の1つに交換した。生成物を、次いで、原型のアニーリング工程を含んで実施例4に記載されるようにして凍結乾燥し、サンプルの安定性を、実施例6に記載されるようにして試験した。
【0222】
rhPBGDの安定性に対する以下の4つの配合の影響を試験した:
配合A (実施例6の溶液9に相当): 250 mM マンニトール, 27 mM グリシン及び3.67 mM Na2HPO4
配合B: 250 mM マンニトール, 27 mM グリシン及び10 mM TRIS-HCL。
配合C: 250 mM マンニトール, 27 mM グリシン, 3.67 mM Na2HPO4及び0.1% Tween 80。
配合D: 221 mM マンニトール, 29 mM スクロース, 27 mM グリシン, 3.67 mM Na2HPO4及び0.1% Tween 80。
【0223】
結果を、表22に示す。
【0224】
【表24】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 興味のあるポリペプチドを含む組成物を遠心分離及び/又はろ過し、
b) 工程a)から得られたそれぞれ上清又は残留物を濃縮する
ことを含む、興味のあるポリペプチドを含む組成物を濃縮する方法。
【請求項2】
興味のあるポリペプチドが、ポルホビリノゲンデアミナーゼ、アリールスルファターゼA、アルファマンノシダーゼ、ガラクトシルセレブロシダーゼ並びにそれらの機能的等価部分及びアナログからなる群より選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
興味のあるポリペプチドが、
i) 配列番号14、15、18、19、20、21及び24のいずれにより定義されるアミノ酸配列;
ii) i)で定義されるアミノ酸配列の機能的等価部分;及び
iii) i)又はii)で定義されるアミノ酸配列の機能的等価アナログであって、そのアミノ酸配列がi)又はii)で定義されるアミノ酸配列と少なくとも75%同一であるアナログ
からなる群より選択されるアミノ酸を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程b)が、凍結乾燥又は蒸発により行われる請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
工程b)が、限外ろ過により行われる請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程b)が、タンジェンシャルフローろ過により行われる請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程b)が、遠心デバイスを用いて行われる請求項5に記載の方法。
【請求項8】
興味のあるポリペプチドを含む組成物が、グリシン、L-セリン、スクロース及びマンニトールからなる群より選択される1又は複数の成分をさらに含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
興味のあるポリペプチドを含む組成物が、TRIS-HCL、クエン酸Na及びNa2HPO4からなる群より選択される1又は複数の緩衝剤をさらに含む請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程b)から得られた興味のあるポリペプチドを含む濃縮された組成物を滅菌する工程をさらに含む請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程b)から得られた興味のあるポリペプチドを含む濃縮された組成物を凍結乾燥する工程をさらに含む請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
工程a)の遠心分離が、1800〜2500 gで行われる請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
工程a)のろ過のために用いられるフィルタが、0.20〜5.0マイクロメートルの範囲の孔径を有する請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
工程a)の前に、以下の
i) 興味のあるポリペプチドの組換え発現、
ii) 興味のあるポリペプチドの、1又は複数のクロマトグラフィー工程による精製、
iii) 配合緩衝剤の交換
の工程の1又は複数をさらに含む請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
工程ii)のクロマトグラフィーが、アフィニティクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー及びヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーからなる群より選択される請求項14に記載の方法。
【請求項16】
工程a)の前に、以下の
i) 興味のあるポリペプチドの組換え発現、
ii) 工程i)からの興味のあるポリペプチドを含む組成物をアフィニティクロマトグラフィーに供する、及び
iii) 工程ii)の興味のあるポリペプチドを含む組成物をイオン交換クロマトグラフィーに供する
工程を含む請求項14に記載の方法。
【請求項17】
工程a)の前に、以下の
i) 興味のあるポリペプチドの組換え発現、
ii) 工程i)からの興味のあるポリペプチドを含む組成物をアフィニティクロマトグラフィーに供する、
iii) 工程ii)からの興味のあるポリペプチドを含む組成物をイオン交換クロマトグラフィーに供する、及び
iv) 工程iii)からの興味のあるポリペプチドを含む組成物をヒドロキシアパタイトカラムに供する
工程を含む請求項14に記載の方法。
【請求項18】
i) 配列番号1〜13、16、17、22及び23のいずれかにより定義される核酸配列;
ii) i)で定義される核酸配列と少なくとも75%同一である核酸配列
からなる群より選択される配列を含む核酸配列を用いる組換え発現を含む請求項14に記載の方法。
【請求項19】
工程ii)から得られた興味のあるポリペプチドを含む組成物を希釈又はダイアフィルトレーションする工程をさらに含む請求項16又は17に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも10 mg/mlのポルホビリノゲンデアミナーゼ、アリールスルファターゼA、リゾソーマルアルファ-マンノシダーゼ及びガラクトシルセレブロシダーゼからなる群より選択されるポリペプチドを含む組成物。
【請求項21】
ポリペプチドが請求項3で定義されるポリペプチドである請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
75〜250 mg/mlのポルホビリノゲンデアミナーゼ、アリールスルファターゼA、リゾソーマルアルファ-マンノシダーゼ及びガラクトシルセレブロシダーゼからなる群より選択されるポリペプチドを含む組成物の、哺乳動物の皮下注射用の医薬の製造のための使用。
【請求項23】
ポリペプチドが、請求項3で定義されるポリペプチドである請求項22に記載の使用。
【請求項24】
医薬が、急性間欠性ポリフィリン症、異染性白質ジストロフィー、リゾソーム貯蔵障害アルファ-マンノシドーシス又はクラッベ病の治療用である請求項22又は23に記載の使用。
【請求項25】
500〜300 mg/mlのPBGDの組成物を皮下注射することを含む、哺乳動物の急性間欠性ポルフィリン症を治療する方法。
【請求項26】
50〜300 mg/mlのアリールスルファターゼAの組成物を皮下注射することを含む、哺乳動物の異染性白質ジストロフィーを治療する方法。
【請求項27】
50〜300 mg/mlのリゾソーマルアルファ-マンノシダーゼの組成物を皮下注射することを含む、哺乳動物のリゾソーム貯蔵障害アルファ-マンノシドーシスを治療する方法。
【請求項28】
50〜300 mg/mlのガラクトシルセレブロシダーゼの組成物を皮下注射することを含む、哺乳動物のクラッベ病を治療する方法。

【公表番号】特表2009−532394(P2009−532394A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503414(P2009−503414)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【国際出願番号】PCT/DK2007/000177
【国際公開番号】WO2007/112757
【国際公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(508324994)シャイア ファーマシューティカルズ アイルランド リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】Shire Pharmaceuticals Ireland Limited
【住所又は居所原語表記】5 Riverwalk,Citiwest Business Campus,Dublin 24,Ireland
【Fターム(参考)】