説明

ポリマー−カーボンナノチューブ混合物

混合物は、ポリマーでコーティングされたカーボンナノチューブを備える。ポリマーは、少なくとも一つの疎水性モノマーユニットを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーとカーボンナノチューブ(CNTs)を備えた混合物に関すると共に、ポリマー−カーボンナノチューブ混合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーとカーボンナノチューブを備えた混合物は公知である。ジョージチェン他(Adv.Mater.,2000,12,522)は、負電荷に帯電したカーボンナノチューブと水媒体におけるポリピロール又はポリアニリンとの電気化学再堆積により、ポリピロール−カーボンナノチューブとポリアニリン−カーボンナノチューブを形成する方法を開示している。この方法は、各々がモノマーユニットであるピロール及びアニリンの極性溶媒における溶解度を利用すると共に、その帯電されたカーボンナノチューブが極性溶媒中に分散され得る容易さを利用している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、モノマーユニット(例えば、疎水性モノマー)が極性溶媒中では難溶性又は不溶性であるが非極性溶媒中では可溶性であるポリマーを備えたポリマー−カーボンナノチューブ混合物を製造するためには、この技術を用いることは不可能であった。その理由は、水性反応媒体を非極性溶媒に取りかえることにより、帯電されたカーボンナノチューブが分散され得ない反応媒体が生成されるからである。
【0004】
モノマーユニットが疎水性であるポリマー−カーボンナノチューブ混合物の製造に対する別のアプローチは、例えば種々の低せん断及び高せん断混合技術又は製粉により、ポリマー粉末及びカーボンナノチューブを物理的に混合することであった。しかしながら、このアプローチの不利な点は、カーボンナノチューブがポリマー内で十分に分散され得ないことである。
【0005】
これらの問題を改善する方法が要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、ポリマーでコーティングされたカーボンナノチューブを備えた混合物が提供され、当該ポリマーは少なくとも1つの疎水性モノマーユニットを含んでいる。
【0007】
本発明のポリマー−カーボンナノチューブ混合物の利点は、当該混合物が、少なくとも1つの疎水性モノマーユニットを含んでいるポリマー単体や公知のポリマー−カーボンナノチューブと比較して、改善された伝導性及びキャパシタンスを提供することである。これは、内部でカーボンナノチューブがより均一に分散される混合物を結果的に生成するポリマーでカーボンナノチューブをコーティングしているためであると考えられる。これにより、ポリマーとカーボンナノチューブとの間により多くの界面が生成される。このようにポリマー中にカーボンナノチューブが含まれることはまた、混合物の物理的強度を向上させると考えられる。
【0008】
カーボンナノチューブは、カーボンナノチューブの各々の長さに沿って厚さが変化し得るが少なくとも1nmの厚さを有するポリマーコーティングを備えることが好ましい。より好ましくは、カーボンナノチューブの厚さは、カーボンナノチューブの各々の長さに沿って変化し得るが少なくとも200nmの厚さである。最も好ましくは、カーボンナノチューブの厚さは、カーボンナノチューブの各々の長さに沿って変化し得るが少なくとも10nmの厚さと100nmの厚さとの間である。
【0009】
コーティングされたカーボンナノチューブは、直径が一般的に約10nmから約1000nmであり、好ましくは、直径が約30nmから約200nmであり、より好ましくは、直径が約50nmから約100nmである。コーティングされたカーボンナノチューブは、長さが一般的に100μm以下であり、好ましくは、長さが1〜10μmである。長さが100μmよりも長いカーボンナノチューブは互いに絡まりやすい一方で、長さが100μm以下のカーボンナノチューブは伝導性が低すぎてポリマーの伝導性の十分な向上を提供することができない。
【0010】
本発明の混合物は、ポリマーでコーティングされた単一のカーボンナノチューブを含むナノフィブリル、つまり、ナノスケールの繊維を備えていることが好ましい。当該混合物中において、カーボンナノフィブリルは、走査型電子顕微鏡で観察されたとき、調理された大量のスパゲッティに似た構造を有する相互接続ネットワークを一般的に形成する。
【0011】
好ましくは、当該混合物は孔を有する。本発明の幾つかの実施形態に係る混合物は一般的に、異なるサイズによって特定される2つのタイプの孔を有する。当該混合物は、1μm以下のサイズの孔を有することが好ましく、10nmから100nmのサイズの孔を有することがより好ましい。これらの孔は通常、ナノフィブリル間の溝や隙間に形成される。
【0012】
さらに好ましくは、当該混合物は、1μm以上のサイズの孔を有する。当該混合物は、より好ましくは10μm以上、最も好ましくは100μm以上の孔を有する。当該混合物の表面上にクレーターとして現れ得るこれらの孔は、カーボンナノチューブが電気化学的にポリマーでコーティングされるときに形成される。これらの孔又はクレーターの形成については以下で詳述する。
【0013】
当該混合物の有孔性は、当該混合物が電気化学センサーに用いられるときに特に重要である。そのようなアプリケーションにおいて、多孔性をより有する混合物は、使用される何らかの反応物がポリマー−カーボンナノチューブ混合物とより容易に反応できることを意味する。
【0014】
好ましくは、カーボンナノチューブは多層である。
【0015】
好ましくは、ポリマーは伝導性ポリマーである。代わりに、当該ポリマーは非伝導性ポリマーであることが好ましい。非伝導性ポリマーは一般的に、電圧が印加されたときに電流が通過しないポリマーである。
【0016】
当該ポリマーは、ポリ[3,4−エチレン−ジオキシチオフェン](PEDOT)であることが好ましい。
【0017】
本発明の混合物は、電池、超コンデンサ、電気化学反応炉、光電池、センサー、クロムディスプレイ、又は太陽電池に用いられ得る。
【0018】
本発明によると、ポリマーとカーボンナノチューブを有する混合物の製造方法もまた提供され、その方法は、以下のステップ、
(a)溶液を形成するために、非極性溶媒中にモノマーを溶かす工程と、
(b)懸濁液を形成するために、極性溶媒中にカーボンナノチューブを分散させる工程と、
(c)上記溶液と上記懸濁液とからなるエマルジョンを形成する工程と、
(d)上記モノマーを重合する工程と、
(e)上記カーボンナノチューブを上記ポリマーでコーティングする工程とを備える。
【0019】
好ましくは、重合ステップとコーティングステップとは電気化学的に実行される。代わりとして、重合ステップとコーティングステップとは化学的に実行されることが好ましい。
【0020】
好ましくは、当該カーボンナノチューブは多層であることが好ましい。
【0021】
好ましくは、当該カーボンナノチューブは、上記工程(b)に先立って、少なくとも部分的に酸化される。より好ましくは、その少なくとも部分的な酸化は酸性処理による。
【0022】
好ましくは、当該モノマーは、3,4−エチレン−ジオキシチオフェン(EDOT)である。
【0023】
本発明によると、本発明の方法によって得られ得る混合物が提供される。
【0024】
カーボンナノチューブは、疎水性及び親水性の表面機能性を有しており、この機能性は、例えば酸性処理による部分的な酸化によって高められ得る。疎水性の機能性は、当該カーボンナノチューブのグラフェン層によるものであり、親水性の機能性は、グラフェン層上に形成されたヒドロキシル基及びカルボキシル基によるものである。アンフィフォビシティとして知られているこの二重の機能性が意味することは、本発明においては、カーボンナノチューブが極性溶媒と非極性溶媒との間の界面を安定させると考えられていることである。
【0025】
本発明の幾つかの実施形態では、疎水性モノマーが非極性溶媒中、好ましくは有機溶媒中に溶けており、当該カーボンナノチューブは極性溶媒中、好ましくは水の中に分散されている。この非極性溶媒及び極性溶媒のエマルジョンがそれから形成され、その中に、1つの溶媒(又は相)の液滴が他方の溶媒中に分散されている。このエマルジョンは、超音波処理により、又は、機械的又は磁気的攪拌器を用いた攪拌により、形成され得る。
【0026】
極性溶媒及び非極性溶媒の一方の液滴サイズに対して、その他方の溶媒中に分散されているときに、小さいサイズである当該カーボンナノチューブは、液滴の合体を妨害する界面バリアとして機能できる。このため、当該カーボンナノチューブは、当該混合物を形成する反応にとって十分に安定である、他方に分散された一方の相の準安定の液滴の形成を起こさせることができる。好ましくは、当該液滴は約30から約60分の間安定である。
【0027】
当該カーボンナノチューブの疎水性及び親水性の部分は、その表面に配置されており、このことは、当該カーボンナノチューブが相界面に対して平行に位置する傾向があることを意味している。これは、相界面に対して垂直に位置する疎水性の頭部基及び親水性の尾部基を有する従来の界面活性分子と対照的である。
【0028】
ポリマー−カーボンナノチューブ混合物を形成するために、再堆積プロセスは、当該カーボンナノチューブにポリマーがコーティングされる際に用いられる。この再堆積プロセスは、酸化剤のような重合化インスティゲータの利用を介して化学的に実行されるか、又は、電気化学的に実行され得る。
【0029】
本発明の幾つかの実施形態に係る電気化学的再堆積プロセスは、分散に対する多くの動的な変化を作り出す。この理由は、EDOTのような疎水性モノマーが極性相を移動できず、かつ、当該カーボンナノチューブが非極性相に入ることができないからである。
【0030】
再堆積プロセス中、モノマーを含む非極性位相の液滴は、ポリマーが電気化学重合によって消滅すると共に付随する例えばアセトナイトライドである非極性溶媒が例えば水である隣接する極性相に溶けるのに応じて、収縮する、と考えられている。このプロセスは堆積された混合物の表面上に観察されるクレーターのような孔を生み出すであろう。電極に近い液滴中の混合物の要素がこのように一旦堆積されると、分散からの更なる液滴が代わりに拡散し得、その結果、連続してクレーターが生じる。当該ポリマー−カーボンナノチューブ混合物におけるカーボンナノチューブは、電極表面の伝導性を保持し、これにより、電気化学的再堆積の継続を可能とする。
【0031】
当該ポリマー−カーボンナノチューブの最初の成長が、コーティング表面に観察されるより小さいクレーター(直径約1μmから10μm)を生成させると考えられている。これは、極性又は非極性相の液滴が最初は相対的に小さいからである。電気分解が継続すると、極性溶媒が水であって非極性溶媒がアセトナイトライドであるとき、すでに形成されたより小さいクレーターの表面上に堆積されて観察されるより大きなクレーター(一般には10μmよりも大きいく、100μmよりも大きくなる場合もある。)を結果的に生成する、アセトナイトライドの水性液滴への拡散につれて、水性の液滴はより大きく成長する、と考えられている。
【0032】
本発明に係る混合物におけるより大きなボルタンメトリー電流とより高い電極キャパシタンスは、多くの効果によるものと考えられている。すなわち、その効果とは、(i)ポリマーの伝導性に関わらず当該カーボンナノチューブを介したエレクトロンのための内部通路と、当該混合物の孔ネットワークにおけるイオンのための内部通路の供給、(ii)ポリマー/電気分解界面を横切るイオン移動とポリマー相内におけるイオン輸送との双方に対する壁を最小化する、各カーボンナノチューブ上でのポリマー相の薄さ、(iii)負に帯電されたカーボンナノチューブの存在による電荷平衡におけるより小さいカチオンの役割、という効果である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、本発明の一実施形態における電気化学的に堆積されたPEDOT−CNTの走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示している。
【図2】図2は、従来のPEDOTポリマーと本発明の一実施形態におけるPEDOT−CNT混合物の周期的な電圧電流記録図である。
【図3】図3は、従来のPEDOTポリマーと本発明の一実施形態におけるPEDOT−CNT混合物にとっての容量(Y軸)及び電位(X軸)の関係図である。
【図4】図4は、従来のPEDOTポリマーと本発明の一実施形態におけるPEDOT−CNT混合物にとっての容量(Y軸)及び堆積電荷(X軸)の関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は付随する各図面を参照してより詳細にさらに説明することになるが、これらは本発明の主張する範囲を制限する意図ではない。
【0035】
(比較例)
アセトニトリルをEDOT中に溶解させたEDOT濃度0.25mol/Lの溶液5mlが、水5mlに添加された。例えば二塩化銅(CuCl)のようなカラーインジケータが、2つの層のうちいずれが水性層であるかを特定するために添加され得る。この混合は、10分間超音波分解処理された。超音波分解が一旦終了したら、有機相と水性相とが分離することにより、溶解しているEDOT(3,4−エチレン−ジオキシチオフェン)によって金色を呈する上層有機相を与えた。上層有機相の堆積は、約2mlであり、これは、水中で区分けされたまま残存するアセトニトリルの半分以上であることを示していた。
【0036】
(実施例1)
アセトニトリルをEDOT中に溶解させたEDOT濃度0.25mol/Lの溶液5mlが、酸性処理された多層カーボンナノチューブの水性懸濁液0.3wt%に添加された。この混合は、10分間超音波分解処理された。しかしながら、分離している有機相及び水性相の代わりに、準安定の有機水性エマルジョンが形成された。
【0037】
当該エマルジョンは、アルゴンで脱気され、何らかの他の電解液の添加無しに、1.0Vでの定電位重合に用いられた。作業用の電極は、Ag(銀)/AgCi(塩化銀)(3mol/L)レファレンス電極及びPt(白金)配線対抗電極に接合して用いられる1.6mm白金ディスク又は6mmグラファイトデイスクであった。適当な電荷が一旦通過すると、電気分解が終了し、その結果、作業用電極上にPEDOT−CNT混合物の滑らかで且つ密着した黒いコーティングが形成された。この実施例では、0.3Ccm−2の堆積電荷が用いられた。
【0038】
PEDOT−カーボンナノチューブのエマルジョンの安定性が意味することは、その安定性は、当該エマルジョンの相分離が起きる前に、幾つかのPEDOT−カーボンナノチューブ混合物の堆積に利用され得ることである。当該エマルジョンはまた、位相分離の後に再生成され得る。形成されたPEDOT−カーボンナノチューブ混合物の性質はエマルジョンの再生成によって影響されない。
【0039】
形成されたPEDOT−カーボンナノチューブ混合物は、走査線型顕微鏡下で観察され、図1の画像を生成した。図1(a)は、当該混合物表面上における数百μmまでの大きさを有する一連の浅いクレーターを示している。土手リング(クレーターの縁部で盛り上がった部分)を有するか又は有しないより小さいクレーターは、より大きなクレーターの基部に観察され得る。このことは、当該PEDOT−カーボンナノチューブ混合物のコーティングにおけるより早い段階において、より小さいクレーターが形成されること、及び、電気分解が継続するにつれてより大きなクレーターがより小さなクレーターの上面に形成されることを示している。
【0040】
図1(b)は、クレーターの1つにおける基部をより大きく表示したものである。この図は一定の局所配列を持つネットワーク状のナノフィブリルを示している。
【0041】
図1(a)に示された当該PEDOT−カーボンナノチューブ混合物の表面上に形成されたクレーターにおける相対的に平坦な基部は、エマルジョンの水滴が当該混合物コーティングの表面を湿らせたときに、当該水滴の平坦化から生じていたかも知れない。堆積プロセスにおいて、当該水滴により、バスケット形状の構造をもつPEDOT−カーボンナノチューブが当該混合物表面に形成される。図1(b)におけるナノフィブリルが電極表面に対して平行に位置しているという事実は、乾燥によってこれらのバスケット状の構造が単純に崩壊することを示唆している。
【0042】
黒いコーティングは、ナノフィブリルの平坦ではない表面によってPEDOT−カーボンナノチューブであることが確認された。また、ナノフィブリルの直径は、コーティングされていないカーボンナノチューブの直径約10nmから約30nmと比較して、約30nmから約50nmであった。加えて、1つのクレーターの基部の組成についてエネルギー分散型X線分析を行ったところ、81原子%の炭素、15原子%の酸素、及び4原子%の硫黄、という典型的な組成を示した。硫黄の検知によりPEDOTの存在を確認した。しかしながら、純粋のPEDOTの組成6C:2O:1Sと比較して、過剰な炭素及び酸素が存在した。この過剰さは、酸化されたカーボンナノチューブに起因する可能性がある。
【0043】
図1(c)に示すように、多くの土手リングは中空であることが分かった。EDOTの疎水性は、PEDOT−カーボンナノチューブ混合物の堆積における後の段階において、重合が大きな水滴の間における残存する有機相中で起こる可能性があり、その結果、土手リング中に観察された中空構造が生じる。土手リングにおけるPEDOT−カーボンナノチューブの典型的な組成は、87原子%の炭素、12原子%の酸素、及び1原子%の硫黄であることが分かった。これは、クレーターの基部におけるよりも低いPEDOT濃度であることを示している。
【0044】
堆積後、PEDOT−CNT混合物がコーティングされた電極は、蒸留水で洗浄されて、レファレンス電極及び対抗電極と一緒に、サイクリック・ボルタンメトリー及び電気化学スペクトロスコピー研究のために、0.5mol/LのKClの水溶媒に移された。
【0045】
図2は、サイクリック・ボルタモグラムの幾つかを重ねて示しており、その枠内には、より小さい電位範囲の2つのボルタモグラフを示している。ボルタモグラムAは、サポート電極としてLiClOを用いる上記比較例において、始めに準備された純粋PEDOTの第1周期のものである。ボルタモグラムBは、前述したPEDOT−カーボンナノチューブ混合物の第1周期を示している。ボルタモグラムCは、5000充放電周期後に、同じPEDOT−カーボンナノチューブ混合物の周期を示している。当該サイクリックボルタモグラムのパラメータは次の通りである。
【0046】
堆積電圧 1.0V
電荷 0.3Ccm−2
電位走査率 20mVS−1
電極基板 1.6mm直径の白金ディスク
電気分解 0.5molL−1KCl水溶液
レファレンス電極 Ag/AgCl(3M KCl)
図2は、PEDOT−カーボンナノチューブが、純粋PEDOTよりもずっと大きな電流を持つ電位循環に対して反応したことを示している。図2における枠内に示されたように、電位走査がかなり小さいがかなり正の範囲を示す約−0.2Vから約+0.5に限定されたとき(すなわち、その範囲では、ポリマーが、典型的な容量性特性である酸化され/ドープされた状態で保持されている)、矩形の電流−電圧曲線が観察された。そのような矩形の曲線上の電流はキャパシタンス(キャパシタンス=電流/電位走査率)に直接関連している。これは、PEDOT−カーボンナノチューブ混合物がより大きなキャパシタンスを持っていたことを示している。
【0047】
ピーク電流における変化と同様に、図2は、連続する充放電サイクル後のPEDOT−カーボンナノチューブ混合物の電気化学変化を示している。この変化は、大きくて不動の負に帯電されたカーボンナノチューブによるものと考えられている。これらのカーボンナノチューブが意味することは、電気分解からのカチオン(K)とアニオン(Cl−1)が電位サイクル中におけるレドックスプロセスに参加できるということである。
【0048】
堆積されたコーティングは、電極から剥がされて、赤外分光法によって分析された。PEDOT−カーボンナノチューブ混合物は、純粋PEDOTがすでに減少(デドープ)されるであろう大きな負の電位においてさえ、ドープされた純粋PEDOTの赤外部の特徴を保持しており、その結果、かなり異なる赤外線スペクルを生じるということが分かった。この理由は、カーボンナノチューブがポリマー鎖に沿ってエレクトロンの非局在化を高めるからであると考えられている。
【0049】
純粋PEDOTとPEDOT−カーボンナノチューブ混合物の異なる赤外スペクトルに関する結論は、図3に示された電気化学的インピーダンス分光分析によるキャパシタンス測定によって支持されている。その測定は、Ag/AgCl(3mol/L)からなるレファレンス電極に対して0.0Vで実行された。このグラフは、負電位での純粋PEDOTと比較したとき、PEDOT混合物のより高いキャパシタンスを示している。この場合、試験された全てのコーティングは0.3Ccm−2の堆積電荷を用いて形成された。
【0050】
種々の堆積電荷、より厚いコーティングに応じたより高い堆積電荷で成長した一連のPEDOT−カーボンナノチューブ混合物コーティングのキャパシタンスは、0.5mol/LのKCl中で電気化学インピーダンス分光法によって測定され、その結果が図4に示されている。当該測定は、Ag/AgCl(3mol/L)からなるレファレンス電極に対して0.0Vで実行された。このグラフは、PEDOT−カーボンナノチューブ混合物と純水PEDOTの双方ともにキャパシタンスが線形に上昇することを示しており、PEDOT−カーボンナノチューブ混合物がかなり大きなキャパシタンスを提供することを示している。
【0051】
電気重合は約60Ccm−2の大変な高堆積電荷まで継続することができるけれど、図4に示された線形的な関係は高堆積電荷においてなくなる。大変高い堆積電荷を通過させた後に、電極上に形成されている密着コーティングの代わりに、大きなゲル様の液滴が代わりに生成される。乾燥後、ゲルはコーティングを形成する。しかしながら、これらのコーティングは、一般的に十分に定義されておらず、これらは電極ディスク(1.6nmの直径)を超えると共に絶縁シース(sheath)(5mmの直径)上に広がる。そのようなコーティングのキャパシタンス測定は、図4に示したグラフからの推定よりもかなりの低読み出しを生じる。このような態様は、ポリピロール及びカーボンナノチューブの再堆積中にまた生じた。そして、これは、高アスペクト比のカーボンナノチューブの特性を形成するネットワークによるものと考えられている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーでコーティングされたカーボンナノチューブを備える混合物において、
前記ポリマーは、少なくとも一つの疎水性モノマーユニットを含んでいる、混合物。
【請求項2】
請求項1に記載の混合物において、
前記ポリマーコーティングの厚さは、前記カーボンナノチューブの各々の長さに沿って変化し得るが、前記長さは、少なくとも1nmの厚さである、混合物。
【請求項3】
請求項2に記載の混合物において、
前記ポリマーコーティングの厚さは、前記カーボンナノチューブの各々の長さに沿って変化し得るが、前記長さは、1nmと500nmとの間の厚さである、混合物。
【請求項4】
請求項3に記載の混合物において、
前記ポリマーコーティングの厚さは、前記カーボンナノチューブの各々の長さに沿って変化し得るが、前記長さは、1nmと200nmとの間の厚さである、混合物。
【請求項5】
請求項4に記載の混合物において、
前記ポリマーコーティングの厚さは、前記カーボンナノチューブの各々の長さに沿って変化し得るが、前記長さは、10nmと100nmとの間の厚さである、混合物。
【請求項6】
請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載の混合物において、
前記混合物は、ナノフィブリルを含んでいる、混合物。
【請求項7】
請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載の混合物において、
前記混合物は、複数の孔を含んでいる、混合物。
【請求項8】
請求項7に記載の混合物において、
前記複数の孔は、径が1μm以下である、混合物。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の混合物において、
前記複数の孔は、径が1μm以上である、混合物。
【請求項10】
請求項1〜9のうちのいずれか1項に記載の混合物において、
前記カーボンナノチューブは、壁で囲まれている、混合物。
【請求項11】
請求項1〜10のうちのいずれか1項に記載の混合物において、
前記ポリマーは、伝導性ポリマーである、混合物。
【請求項12】
請求項1〜10のうちのいずれか1項に記載の混合物において、
前記ポリマーは、非伝導性ポリマーである、混合物。
【請求項13】
請求項11に記載の混合物において、
前記ポリマーは、ポリ[3,4−エチレン−ジオキシチオフェン]である、混合物。
【請求項14】
請求項1〜13のうちのいずれか1項に記載の前記混合物を備えた電池、超コンデンサ、電気化学反応炉、光電池、センサー、クロムディスプレイ、又は太陽電池。
【請求項15】
ポリマー及びカーボンナノチューブを備えた混合物を製造する方法であって、
(a)溶液を形成するために非極性溶媒中にモノマーを溶かす工程と、
(b)浮遊物を形成するために極性溶媒中にカーボンナノチューブを分散させる工程と、
(c)前記溶液と前記浮遊物とのエマルジョンを形成する工程と、
(d)前記モノマーを重合する工程と、
(e)前記ポリマーで前記カーボンナノチューブをコーティングする工程とを備える、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、
前記重合工程と前記コーティング工程とは、電気化学的に実行される、方法。
【請求項17】
請求項15に記載の方法において、
前記重合工程と前記コーティング工程とは、化学的に実行される、方法。
【請求項18】
請求項15〜17のうちのいずれか1項に記載の方法において、
前記カーボンナノチューブは、壁で囲まれている、方法。
【請求項19】
請求項15〜18のうちのいずれか1項に記載の方法において、
前記カーボンナノチューブは、前記ステップ(b)よりも前に少なくとも部分的に酸化される、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法において、
前記少なくとも部分的に酸化する工程は、酸性処理によって行われる、方法。
【請求項21】
請求項15〜20のうちのいずれか1項に記載の方法において、
前記モノマーは、3,4−エチレン−ジオキシチオフェンである、方法。
【請求項22】
請求項15〜21のうちのいずれか1項に記載の方法によって得られる混合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−503603(P2010−503603A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527887(P2009−527887)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際出願番号】PCT/GB2007/003472
【国際公開番号】WO2008/032071
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(501038322)ユニバーシティ オブ ノッティンガム (10)
【Fターム(参考)】