ポリマー−生物製剤送達組成物を構築するための方法
1つまたは複数の抗原または治療用生物製剤用の送達組成物の構築のための一段階法は、アフィニティーリガンドが結合する官能基を有する生分解性ポリマーを用いた、溶液からの分子の非共有結合的アフィニティー捕捉に基づく。次に、関心対象の分子を含む、ポリマーと結合したアフィニティー複合体を、例えばサイズ排除ろ過によって反応液から回収し、構築された送達組成物を得る。アフィニティーリガンドは、モノクローナル抗体であることもでき、または金属遷移イオンが結合した金属アフィニティーリガンドであることもできる。構築された送達組成物をポリマー粒子として製剤化することができ、これをその後、実質的な天然活性を有する非共有結合的に複合体形成した抗原または治療用生物製剤のインビボ送達のために、凍結乾燥および再構成することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は概して、ポリマーベースの送達組成物を調製するための方法に関し、特に、ポリマーベースのワクチンと生物製剤用の送達組成物との構築のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景情報
ワクチンの開発および投与が著しく進歩しているにもかかわらず、ワクチン製剤の有効性および安全性を増大させる代替的アプローチについては未だに調査中である。合成ワクチン(組換えタンパク質、合成ペプチド、および多糖-ペプチド結合体などの規定の抗原の使用のためにこのように呼ばれる)が、新規ワクチン候補として出現してきている。伝統的なワクチンは、弱毒化もしくは不活性化病原体、または、精製された細菌もしくはウイルスの構成要素で作製されている。合成ワクチンは、伝統的ワクチンの安全かつ順応性のある代替物となるが、しかし、これらのワクチンの免疫原性およびしたがって有効性を増加させるためにはさらなる努力が必要である。効果的な免疫応答を誘発するためには、ウイルスタンパク質またはペプチドなどの特異的抗原を免疫原性型の免疫系に提示しなければならない。特異的抗原に対する免疫応答を増強する材料および物質は、「アジュバント」として知られている。公知のアジュバントは、免疫系を活性化する特殊な細胞に対する抗原の送達を促進するか、または、これらの細胞を直接刺激して成熟を誘導する。これらの2つの機能は、免疫系に対する天然の病原体の刺激効果を効果的に模倣したものである。したがって、合成ワクチンは、免疫刺激的様式で抗原を送達することが必要と考えられる。
【0003】
アルミニウム化合物は現在、依然として、米国におけるヒトワクチンでの使用に関する唯一のFDA認可アジュバントである。優れた安全性の記録にもかかわらず、アルミニウム化合物は比較的弱いアジュバントであり、防御免疫に関連する抗体レベルを誘発するためには複数回投与レジメンが必要であることが多い。さらに、アルミニウム化合物は、細胞媒介性免疫の発生には効果がなく、したがって、多くのウイルス感染症、慢性感染症、および悪性疾患に関する場合と考えられるような、細胞媒介性応答が必要な状況に関しては、理想的なアジュバントではない可能性がある。多くの候補アジュバントが現在研究中であるが、ヒトにおける毒性および抗原の組込みのための高度先進技術の必要性を含むいくつかの欠点は、未だ克服されないままである。
【0004】
効果的なワクチンとは、感染を中和するためまたは異常細胞(感染または形質転換した)を破壊するために必要な防御免疫応答または治療免疫応答を誘発しなければならない。適応性のある免疫応答、すなわち抗原特異的応答は、リンパ球、特にTおよびBリンパ球によって媒介される。Bリンパ球は、その膜抗原特異的受容体:抗体分子を用いて、抗原を認識して結合する。各B細胞は固有の抗体受容体を発現するが、これは、B細胞刺激後に分泌されると考えられ、かつ、生物体から抗原を除去する目的で抗原に結合すると考えられる。抗体応答は、例えばウイルスの中和のために有用である。この場合、細胞に侵入する、感染する、または損傷するためにウイルスにより使用されたのと同じウイルスエピトープを抗体が認識することが重要である。この場合、ワクチン調製に使用される抗原はウイルス中の抗原と同じ立体構造を有することが必要である。一方、Tリンパ球は遊離抗原を認識せず、MHC分子と関連する抗原のみを認識する。MHC分子には2つの主要なクラスが存在する。クラスI分子は体内の細胞の大部分によって合成および表示されるが、クラスII分子はほぼ抗原提示細胞(APC)のみによってしか提示されない。CD4表現型を有するT細胞はヘルパーT細胞とも呼ばれ、MHCクラスIIタンパク質と関連する抗原を認識し、かつ、活性化の際には、リンホカインを分泌してそれらが相互作用している細胞を直接活性化する。一方、CD8表現型を有するT細胞は、MHCクラスIタンパク質と関連する抗原を認識する。活性化の際には、T細胞はリンホカインを分泌し、それらが認識する細胞を死滅させることができる。
【0005】
外因性抗原とは、宿主生物中には通常存在しない免疫原性材料である。例としては、細菌、遊離ウイルス、酵母、原生動物、および毒素に由来するものが挙げられる。これらの外因性抗原は、食作用を通して、微飲作用を通して、または受容体媒介性取り込みによって、抗原提示細胞すなわちAPC(マクロファージ、樹状細胞、およびBリンパ球)に侵入する。微生物は貪食され、かつ、タンパク質抗原はプロテアーゼによって分解されて一連のペプチドとなる。これらのペプチドは最終的にMHC分子内の溝に結合し、APCの表面に輸送される。したがって、CD4リンパ球は、そのT細胞受容体(TCR)およびCD4分子によってペプチド/MHC-II複合体を認識することができる。クラスII MHC中のAPCによって提示されるペプチドは、約10〜約30アミノ酸長であり、例えば約12〜約24アミノ酸長である(Marsh, S. G. E. et al. (2000) The HLA Facts Book, Academic Press, p. 58-59(非特許文献1))。CD4リンパ球のエフェクター機能には、成熟、クラススイッチ、および抗体産生のためのB細胞活性化が含まれる。同様にCD4 T細胞も樹状細胞(DC)を活性化させてサイトカインを分泌しかつ細胞障害性T細胞を刺激し、マクロファージの殺微生物(microbiocidal)活性を増大させるが、その全てが、細胞外または細胞内の病原体を破壊する重要な機構である。CD8リンパ球は、そのT細胞受容体(TCR)およびCD8分子によってペプチド/MHC-I複合体を認識することができる。クラスI MHC中のAPCによって提示されるペプチドは約8〜約17アミノ酸長である。
【0006】
ウイルス、細胞内細菌、および癌に対する身体の主要な防衛の1つが、細胞障害性Tリンパ球すなわちCTLによる、内因性感染細胞および腫瘍細胞の破壊である。これらのCTLは、CD8陽性Tリンパ球(CD8 T細胞)に由来するエフェクター細胞である。CTLとなるためには、ナイーブCD8 T細胞がAPCによって活性化されなければならない。このプロセスには、感染細胞、腫瘍細胞、ならびに死滅した感染細胞および腫瘍細胞の残骸を貪食および分解する樹状細胞が必要である。この様式で罹患細胞由来の内因性抗原がAPCに侵入することができ、ここで、プロテアーゼおよびペプチダーゼがタンパク質を分解して、約8〜約10、あるいは約8〜約11、または約8〜約12アミノ酸長の、一連のペプチドにすると考えられる。APCの表面上に現れた結合タンパク質を有するMHCクラスI分子を、ここで、相補的結合表面を有するT細胞受容体(TCR)を包含するナイーブCD8 T細胞によって認識することができる。TCRによるペプチドエピトープのこの認識は、ナイーブCD8 T細胞活性化およびエフェクター(CTL)機能誘導のための第一シグナルとしてはたらく。T細胞の完全な活性化には、ほとんどの場合同じ同種APCにより提供される、第二の抗原非特異的シグナルが必要である。これらの第二シグナルは、Toll様受容体(TLR)アゴニストなどの免疫刺激性アジュバントに応答してAPCによりアップレギュレートされた分子により提供されることが多い。
【0007】
合成ワクチンを調製する動機におけるさらなる関心対象分野は、組換えタンパク質の迅速精製法の開発である。アフィニティータグと固定化リガンドとの間の特異的相互作用に基づくいくつかの方法が開発されている。そのうち最も広範に使用されているのは固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)であり、これは、Cu2+またはNi2+などの固定化金属イオンを含む固体マトリクスと、タンパク質と融合したポリヒスチジンタグとの間の選択的相互作用の原理を用いている。ポリヒスチジンタグを含むタンパク質はマトリクスに選択的に結合するが、その他のタンパク質は洗い流される。
【0008】
IMACの代替法である金属アフィニティー沈殿では、固定化リガンドを使用しない。その代わりとして、標的のポリヒスチジンタグ付き組換えタンパク質が、ポリマー-金属リガンド結合体に特異的に結合し、これが、pHまたは温度などの環境刺激に応答して溶液から沈殿する。この現象によって、沈殿によるその他の細胞抽出物からの組換えタンパク質の精製が可能になる。その後の再使用のためにリサイクルできるポリマー結合体からの解離によって、精製タンパク質が回収される。ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)およびエラスチン様組換えタンパク質(後者は、エラスチンモノマーの第4位でリシン残基がバリンに置換されている)を用いて、金属アフィニティー沈殿に必要な金属錯体化学がもたらされる。しかし、どちらの方法も直接的ではない。例えば、エラスチン様ポリマー自体が、組換え調製を必要とする。
【0009】
関連する問題とは、分子の天然の活性の破壊を伴わない、ポリヌクレオチド、タンパク質など、様々な治療用生物製剤のインビボ送達のための組成物の調製である。
【0010】
したがって、非活性化病原体の代わりにタンパク質ならびにその他の抗原およびアジュバントを用いる、ワクチン送達組成物を調製するための新規かつより優れた方法に対する必要性が、当技術分野には未だ存在する。当技術分野には、実質的に天然活性を有する治療用生物製剤のインビボ送達用の組成物を、溶液または分散液から構築するための、新規かつ改善された方法に対する必要性も存在する。
【0011】
【非特許文献1】Marsh, S. G. E. et al. (2000) The HLA Facts Book, Academic Press, p. 58-59
【発明の開示】
【0012】
発明の概要
本発明は、生分解性ポリマーを用いた治療用生物製剤およびワクチンの送達用の、溶液または分散液からの組成物の構築のための一段階法を作成するために、金属アフィニティー精製技術を適合化させる。ポリマー分子上に官能基を含む生分解性ポリマーを用いて、一段階構築手順で、少なくとも1種の治療用生物製剤または抗原(アジュバントを含むまたは含まない)を溶液または分散液から捕捉することができる。例えば、本発明の一段階ワクチン構築法において、ある種のポリ(エステルアミド)(PEA)、ポリ(エステルウレタン)(PEUR)、およびポリ(エステルウレア)(PEU)ポリマーなどのポリマー鎖中にアミノ酸を含むポリマーを一段階構築の合成で用いることができ、かつしたがって、ポリマーへの付着として形成するアフィニティー複合体中の1つまたは複数の抗原を特異的に捕捉することによってワクチン送達組成物を容易に産生できる。本明細書において免疫原性および治療的有用性を有するワクチン送達組成物の形成を参照して本発明の方法を説明するが、本明細書に記載の方法は、生物学的分子の天然活性および従って治療的有用性が実質的に保持されるように様々な治療用生物製剤をインビボ送達するための組成物の一段階構築に使用することもできる。
【0013】
したがって、一態様において、本発明は、少なくとも1つの合成抗原を含む精製分子、該精製分子と特異的に結合するアフィニティーリガンド、および、該アフィニティーリガンドが付着できる官能基を含む合成生分解性ポリマーを、溶液または分散液中で共に接触させることによって、ワクチン送達組成物を構築するための方法を提供する。遊離官能基を介してアフィニティーリガンドがポリマーに付着するような条件下で接触工程が行われ、単一段階でワクチン送達組成物が構築されるように、抗原を含む分子とポリマー付着特異的結合アフィニティーリガンドとの間で非共有結合複合体が形成される。
【0014】
別の態様において、本発明は、(1) 治療用生物製剤が金属結合アミノ酸タグに付着する、精製された合成分子、(2) 少なくとも1つの遷移金属イオン、(3) 該金属イオンに結合する金属アフィニティーリガンド、および (4) 該アフィニティーリガンドが付着できる官能基を含む合成生分解性ポリマーを、溶液または分散液中で共に接触させることによって、治療用生物製剤のインビボ送達用の送達組成物を構築するための方法を提供する。接触工程は、その表面の遊離官能基を介してアフィニティーリガンドがポリマーに付着するような条件下で行われ、生物製剤の実質的な天然活性を維持しながら組成物が構築されるように、合成分子中、ポリマー付着金属アフィニティーリガンド、遷移金属イオン、および金属結合タグの間で非共有結合複合体が形成される。
【0015】
さらに別の態様において、本発明は、本発明の構築法における使用に適した組成物を提供する。本発明の組成物は、遷移金属イオンと非共有結合的に複合体形成している金属アフィニティーリガンドが予め付着する、1つまたは複数の官能基を有する合成生分解性ポリマーを含み、ここで該組成物は可溶性である。
【0016】
さらに別の態様において、本発明は、本発明のワクチン送達または本発明の方法によって作製された治療用生物製剤送達組成物を被験体に投与することにより、ワクチンまたは治療用生物製剤を被験体に送達するための方法を提供する。
【0017】
さらに別の態様において、本発明は、金属遷移イオンと非共有結合的に複合体形成している金属アフィニティーリガンドに、その表面の官能基を介して合成生分解性ポリマーが付着している組成物を提供し、該組成物は水性媒体中で可溶性である。
【0018】
発明の詳細な説明
本発明は、ポリマー分子上に官能基を含む生分解性ポリマーを正しい条件下で用いて、分散液、細胞溶解物、または溶液から、少なくとも1つの抗原などの精製された標的分子を捕捉することができ、一方で、捕捉された分子を、標的分子上の部位に特異的に結合するアフィニティーリガンドによってポリマーに非共有結合的に結合させるという発見に基づく。ポリマー上の官能基に付着するアフィニティーリガンドのタイプは、標的分子の特徴に依存する。例えば、溶液中の、タンパク質、融合タンパク質、または、金属結合アミノ酸を含むよう操作された(または天然に含む)その他の分子などの標的分子は、特異的に、さらに非共有結合的に、金属アフィニティーリガンドおよびポリマーに結合した金属イオンに結合し、金属アフィニティー複合体中で標的分子を捕捉する。特異的抗体結合部位を含む標的分子も同様に、ポリマーに結合したモノクローナル抗体によって捕捉することができる。この発見は、ポリマーベースの送達組成物の一段階構築のために、本発明において使用される。
【0019】
本発明の方法における使用のために好ましいポリマーである、構造式(IおよびIII〜VII)で描写されるPEA、PEUR、およびPEUは、本発明の方法において使用される官能基を含むだけでなく、送達アジュバント活性も有し、かつ抗原提示細胞(APC)によって容易に取り込まれる。したがって、これらのポリマーは、送達組成物の構築のための本発明の方法を促進するがワクチン構築に特に適しており、かつ、本発明の方法によって作製されたワクチン送達組成物の免疫原性を増大させる。
【0020】
したがって、本発明の一態様において、本方法は、以下の成分を溶液または分散液中で共に接触させる工程を含む:(1) 少なくとも1つの合成抗原を含む精製分子;(2) 該精製分子と特異的に結合するアフィニティーリガンド;および、(3) 該アフィニティーリガンドが結合できるか予め付着している官能基を含む、合成生分解性ポリマー。接触工程は、ポリマー上の官能基がアフィニティーリガンドに付着するような条件下で実施され、かつ、単一段階でワクチン送達組成物が構築されるように、非共有結合アフィニティー複合体は、抗原を含んで形成される。
【0021】
一態様において、1つまたは複数の関心対象の抗原または治療用生物製剤を含み、かつ、6×ヒスチジンタグなどのアミノ酸含有タグが付加されるよう操作された合成分子を、本発明の方法により、溶液から容易に構築しポリマーベースの送達組成物とすることができる。少なくとも1つの抗原または治療用生物製剤を含む分子を生分解性ポリマーに非共有結合的に連結するために、金属アフィニティー複合体を形成する。本発明の方法において使用されるポリマーは、アフィニティーリガンドが結合する遊離官能基を有する。例えば、モノマーあたり少なくとも1つの非アミノ酸部分に結合した少なくとも1つのアミノ酸を含むポリマーなどの、ポリマー鎖中にアミノ酸を含むポリマーを用いて、合成物を調製することができ、かつしたがって、実質的に天然活性を有する少なくとも1つの抗原または治療用生物製剤のインビボ送達用のポリマーベースの組成物を容易に産生できる。したがって、本発明の送達組成物は、様々な疾患の治療のためならびに、ヒトおよびその他の動物における様々な病原微生物または悪性疾患に対する免疫応答の刺激のための、生物製剤のインビボ送達に対する有用性を有する。
【0022】
本発明の方法において、そのような生分解性ポリマーを使用して、皮下もしくは筋肉内の注射または粘膜投与のための合成送達組成物を調製する。本組成物は、本発明の方法を用いて大量に再現可能であり、安全であり(ワクチン送達組成物は弱毒化病原体を全く含まない)、安定であり、かつ、輸送および保存のために凍結乾燥することができる。使用するポリマーの構造特性のために、本発明の方法により構築された送達組成物は、高コピー数および高局所密度の抗原または治療用生物製剤を提供する。
【0023】
例えば、一態様において、本発明は、以下を溶液または分散液中で共に接触させることによる、ワクチン送達組成物の構築のための方法を提供する:(1) ベクターおよび5〜約30アミノ酸を含む少なくとも1つのクラスIまたはクラスII制限消化(restricted)エピトープを含むタンパク質抗原をコードするDNA配列挿入物を含む少なくとも1つの組換えベクターを含む、生物の溶解物または抽出物であって、ここで該抗原は該生物によって発現されている;(2) Cu2+、Ni2+、Co2+、およびZn2+イオンより選択される遷移金属イオン;(3) 該金属イオンに結合する金属アフィニティーリガンド;ならびに (4) 遊離官能基を有する合成生分解性ポリマー。ポリマー上の遊離官能基が金属アフィニティーリガンドに結合するような条件下でこれらの成分を接触させ、ポリマー付着金属アフィニティーリガンド、遷移金属イオン、および少なくとも1つの抗原を組込んだ非共有結合複合体を形成する。任意で、しかし好ましくは、標的分子を含む溶液または分散液中にポリマーを導入する前に、本明細書に記載のように、金属アフィニティーリガンドおよび金属イオンをポリマー上の官能基に予め付着させることができる。
【0024】
さらに別の態様において、抗原または治療用生物製剤を含む精製分子を含む溶液または分散液と接触させる前に、アフィニティーリガンドおよび金属イオンが付着したポリマーを、例えば本明細書に記載のように、ポリマー粒子として製剤化することができる。本発明の方法は、例えばサイズ排除技術によって、アフィニティー複合体および結合したそのポリマーまたは粒子を溶液または分散液から分離して、望ましくない構成要素を含まない組成物を得る工程を、さらに含む。
【0025】
このように調製された本発明の送達組成物を製剤化して、様々な特性を有する組成物を得ることができる。一態様において、ポリマーは徐放性ポリマーデポーとして作用し、これは、該ポリマーデポーがインビボにおいて生分解されるにつれてAPCによって取り込まれかつMHCクラスIまたはクラスII分子によって提示される、抗原および抗原-ポリマー断片を放出する。その他の態様において、ポリマーは、APC中への抗原の担体として作用し、該抗原は、MHCクラスIまたはクラスII分子に関連する細胞表面における提示のために酵素的に分解される。別の態様において、ポリマーは抗原を保護して局所リンパ節へのその送達を促進するよう作用し、ここで、抗原特異的Bリンパ球は、天然構造で提示された抗原を認識することができる。組成物中でのポリマー、金属遷移イオン、およびアフィニティーリガンドの存在は、これらの生物学的プロセスを妨害するものではない。
【0026】
ヒトの治療に加えて、本発明の方法によって産生される送達組成物は、ペット(例えばネコ、イヌ、ウサギ、およびフェレット)、家畜(例えばニワトリ、アヒル、ブタ、ウマ、ヒツジ、乳牛、および肉牛)、および競走馬などの様々な患畜の獣医学的治療における使用も意図されている。
【0027】
本発明の方法およびワクチン送達組成物を、ポリマー分子上の官能基に形成された金属アフィニティー複合体を介してポリマーに非共有結合的に付着している、タンパク質またはタンパク質サブユニット抗原、あるいはその他のタイプの抗原に利用することができる。任意で、免疫刺激性アジュバントを、ポリマー内に分散させるか同様にポリマーに付着させることができる。APCは、MHC複合体を介して抗原由来ペプチドを表示し、細胞障害性T細胞などのT細胞によって認識されて、内因性免疫応答を発生させかつ促進し、それによって、一致するまたは類似の抗原を有する病原細胞の破壊をもたらす。または、APCは、プロセシングを受けていない(unprocessed)タンパク質抗原全体をその表面上に提示でき、これは次に、抗原特異的B細胞に認識されうる。持続期間にわたる抗原-APC複合体の持続的有用性を得るために、本発明のワクチン送達組成物において使用されるポリマーを、ポリマー分子またはそれが製剤化されたデポーおよび粒子の生分解速度に適応するように設計することができる。例えば、典型的には、送達ポリマーの製造に使用したモノマーの選択に応じて、約24時間、約7日間、約30日間、もしくは約90日間、またはそれ以上の範囲の期間にわたってポリマーデポーが分解すると考えられる。適切な免疫応答を得るために繰り返しワクチンを注射する必要がない埋込型ワクチン送達組成物を提供するためには、比較的長い期間が特に適している。
【0028】
本発明の方法によって調製されたワクチン送達組成物は、粘膜感染する(mucosally transmitted)病原体を含む多種多様な病原体に対する免疫応答を誘発するために、生分解性ポリマー媒介性送達技術を利用する。本組成物は、抗原自体の免疫原性が弱い場合でさえも、強力な免疫応答を提供する。本明細書に記載のワクチン送達組成物およびその調製法の個々の構成要素が公知であったとしても、そのような方法および活性作用物質の組み合わせが、構成要素を別々に使用した場合に得られるレベルを超えて抗原の有効性を増強すること、さらにまた、ワクチン送達組成物の製造に用いるポリマーが、組換え抗原精製およびポリマー含有ワクチン製造の技術を一段階法へと縮小する一方で、さらなるアジュバントの必要性を回避する場合があり得ることは予想されておらず、驚くべきことである。
【0029】
本発明は、任意の上述の病原体に対する免疫応答を提供するためのワクチン送達組成物の提供に対して広範に適用可能であるが、インフルエンザウイルスおよびHPVを参照して本明細書において本発明を例示する。
【0030】
本発明の方法によって調製されるワクチン送達組成物は、細胞媒介性免疫および/または体液性抗体応答を提供する。したがって、本発明の方法には、ウイルス性、細菌性、真菌性、および寄生虫性の病原体由来の抗原ならびに、抗体、Tヘルパー細胞活性、およびT細胞細胞障害活性を誘発しうる腫瘍関連抗原を含む、細胞性および/または体液性の免疫応答が望ましい任意の抗原の使用が見出されるであろう。したがって、本明細書で使用する「免疫応答」とは、使用した抗原に特異的な、抗体、Tヘルパー細胞活性、またはT細胞細胞障害活性の産生を意味する。そのような抗原には、ヒトおよび動物の病原体にコードされる抗原が非制限的に含まれ、これらは、構造タンパク質もしくは非構造タンパク質、多糖-ペプチド結合体、RNA、またはDNAのいずれかに対応できる。
【0031】
たとえば本発明には、以下を含む、ヘルペスウイルスファミリー由来の多種多様なタンパク質に対する免疫応答を刺激するためのワクチン送達組成物の調製における使用が認められるであろう:HSV-1およびHSV-2の糖タンパク質gB、gD、およびgHなどの、単純ヘルペスウイルス(HSV)タイプ1および2に由来するタンパク質;CMV gBおよびgHを含む、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、およびサイトメガロウイルス(CMV)に由来する抗原;ならびに、HHV6およびHHV7などのその他のヒトヘルペスウイルスに由来する抗原。(例えば、サイトメガロウイルスの内容物をコードするタンパク質の概説についてはChee et al., Cytomegaloviruses (J. K. McDougall, ed., Springer-Verlag 1990) pp. 125-169;様々なHSV-1コードタンパク質の考察についてはMcGeoch et al., J. Gen. Virol. (1988) 69:1531-1574;HSV-1およびHSV-2のgBおよびgDタンパク質ならびにそれをコードする遺伝子の考察については米国特許第5,171,568号;EBVゲノム中のタンパク質コード配列の同定についてはBaer et al., Nature (1984) 310:207-211;ならびに、VZVの概説についてはDavison and Scott, J. Gen. Virol. (1986) 67:1759-1816を参照されたい。)
【0032】
また、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、デルタ型肝炎ウイルス(HDV)、E型肝炎ウイルス(HEV)、およびG型肝炎ウイルス(HGV)を含む肝炎ファミリーのウイルス由来の抗原も、本明細書に記載の技術において好都合に使用できる。一例として、HCVのウイルスゲノム配列が公知であり、該配列を得るための方法も公知である。例えば、国際公開公報第89/04669号;同第90/11089号;および同第90/14436号を参照されたい。HCVゲノムは、E1(Eとしても公知である)およびE2(E2/NSIとしても公知である)ならびにN末端ヌクレオカプシドタンパク質(「コア」と称する)を含む、複数のウイルスタンパク質をコードしている(E1およびE2を含むHCVタンパク質の考察についてはHoughton et al., Hepatology (1991) 14:381-388を参照されたい)。これらのタンパク質、ならびにその抗原性断片のそれぞれは、本発明の方法における使用が見出されるであろう。同様に、HDV由来のδ抗原の配列が公知であり(例えば米国特許第5,378,814号を参照されたい)、この抗原も、本発明の方法において好都合に使用できる。さらに、コア抗原などのHBV由来の抗原、表面抗原sAg、ならびに、前表面(presurface)配列pre-S1およびpre-S2(以前はpre-Sと呼ばれた)、さらに、sAg/pre-S1、sAg/pre-S2、sAg/pre-S1/pre-S2、およびpre-S1/pre-S2などの上記の組み合わせも、本明細書において使用が見出されるであろう。例えば、HBV構造の考察については"HBV Vaccines--from the laboratory to license: a case study" in Mackett, M. and Williamson, J. D., Human Vaccines and Vaccination, pp. 159-176;および、その全文が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第4,722,840号、同第5,098,704号、同第5,324,513号;Beames et al., J. Virol. (1995) 69:6833-6838, Birnbaum et al. J. Virol. (1990) 64:3319-3330;およびZhou et al. J. Virol. (1991) 65:5457-5464を参照されたい。
【0033】
これらに限定されるわけではないが、以下のファミリーのメンバーに由来するタンパク質などのその他のウイルス由来の抗原も、特許請求される方法における使用が認められるであろう:ピコルナウイルス科(Picornaviridae)(例えばポリオウイルスなど);カリシウイルス科(Caliciviridae);トガウイルス科(Togaviridae)(例えば風疹ウイルス、デング熱ウイルスなど);フラビウイルス科(Flaviviridae);コロナウイルス科(Coronaviridae);レオウイルス科(Reoviridae);ビルナウイルス科(Birnaviridae);ラブドウイルス科(Rhabodoviridae)(例えば狂犬病ウイルスなど);フィロウイルス科(Filoviridae);パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)(例えば流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、RSウイルスなど);オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)(例えばインフルエンザA型、B型、およびC型ウイルスなど);ブンヤウイルス科(Bunyaviddae);アレナウイルス科(Arenaviridae);レトロウイルス科(Retroviradae)(例えばHTLV-I;HTLV-II;HIV-1(HTLV-III LAV、ARV、hTLRなどとしても公知である))、単離体HlVIIIb、HIVSF2、HIVLAV、HIVLAI、HIVMNに由来する抗原を非限定的に含む);特に、HIV-1CM235、HIV-1US4;HIV-2;サル免疫不全ウイルス(SIV)。さらに、抗原はHPVおよびダニ媒介性脳炎ウイルスに由来してもよい。これらおよびその他のウイルスの説明については、例えば、Virology, 3rd Edition (W. K. Joklik ed. 1988);Fundamental Virology, 2nd Edition (B. N. Fields and D. M. Knipe, eds. 1991)を参照されたい。
【0034】
より詳細には、HIVの様々な遺伝的サブタイプのメンバーを含む任意の上記HIV単離体に由来するエンベロープタンパク質が公知かつ報告されており(様々なHIV単離体のエンベロープ配列の比較については、例えば、Myers et al., Los Alamos Database, Los Alamos National Laboratory, Los Alamos, N.Mex. (1992);Myers et al., Human Retroviruses and Aids, 1990, Los Alamos, N.Mex.: Los Alamos National Laboratory;およびModrow et al., J. Virol. (1987) 61:570-578を参照されたい)、任意のこれらの単離体に由来する抗原は、本発明の方法における使用が認められるであろう。特に、gp120のV3ループに由来しかつ以下の配列
を有する合成ペプチドであるR15K(Nehete et al. Antiviral Res. (2002) 56:233-251)は、本発明の組成物および方法において使用されるであろう。さらに、本発明は、gp160およびgp41などの様々なエンベロープタンパク質、p24gagおよびp55gagなどのgag抗原、ならびにpol領域由来のタンパク質のうち任意のものを含む、任意の様々なHIV単離体に由来するその他の免疫原性タンパク質に対して同様に適用可能である。さらに、HIVタンパク質由来の様々なエピトープを用いて、ポリマー-ペプチド結合体のマルチエピトープカクテルを想定することができる。例えば、gp120およびgp41由来の以下の保存ペプチド6種が、アカゲザル/SHIVモデルにおいてウイルス負荷を減少させて伝染を阻害することが示されている。
本発明の組成物および方法において試験された抗原のアミノ酸配列は
であり、ここで全アミノ酸が天然のLアミノ酸である。
【0035】
上記で説明したように、インフルエンザウイルスは、本発明が特に有用と考えられるウイルスのもう1つの例である。特に、インフルエンザA型のエンベロープ糖タンパク質HAおよびNAは、核タンパク質でありかつ本発明の方法によるワクチン送達組成物の作製に使用できるため、免疫応答の発生に関して特に関心対象となる。インフルエンザA型のHAサブタイプは数多く同定されている(Kawaoka et al., Virology (1990) 12:759-767;Webster et al., "Antigenic variation among type A influenza viruses," p. 127-168. In: P. Palese and D. W. Kingsbury (ed.), Genetics of influenza viruses. Springer-Verlag, New York)。したがって、任意のこれら単離体に由来するタンパク質もまた、本明細書に記載の免疫化技術において使用可能である。特に、本発明のワクチン送達組成物および方法において、HAの13アミノ酸保存配列を用いることができる。現在のワクチン製剤において使用されているH3株では、このアミノ酸配列は
であり、H5株では大部分が
である。
【0036】
T細胞エピトープは、アミノ酸配列の短いセグメントとして抗原タンパク質全体に含まれる、小さなペプチドである。インビボにおいては、タンパク質が細胞内抗原プロセシング経路に入った後、該タンパク質は、抗原提示細胞の表面における提示のためにその内部に含まれるT細胞エピトープを遊離させるように、酵素によって切断される。このようにして、タンパク質全体またはペプチドを抗原として送達することができ、細胞性応答によって、免疫応答を誘発するように該タンパク質全体がプロセシングされる。
【0037】
B細胞エピトープは、タンパク質、糖タンパク質、脂質、またはその他の生物学的要素から構成されうる構造的決定因子である。典型的にはB細胞は、病原体の表面において、または抗原提示細胞の表面において、プロセシングを受けていない抗原(タンパク質など)を認識する。典型的にはB細胞は、リンパ節またはその他のリンパ組織中でその同種抗原に遭遇し、ここで該抗原は、抗原提示細胞によって取引されている。B細胞が活性化されると、抗原に特異的な抗体を分泌しかつ表面上にこの抗原を有する病原体に直接結合する、エフェクター細胞となる。B細胞および抗体の応答は、いくつかの方法のうち1つによって、病原体を消失させるか中和することができる。分泌された抗体でコーティングされた細菌またはウイルスは、生来の免疫系のFc受容体含有細胞による破壊の標的となる。あるいは、受容体媒介性エンドサイトーシスを通して、抗原特異的B細胞によって病原体を取り込むことができる。これらのB細胞は次に、CD4 T細胞に対する抗原提示細胞として作用でき、これはさらに、病原体に対する免疫応答を強化する。抗体が宿主を保護するためのもう1つの方法とは単に、抗体で被覆された病原体が物理的に宿主T細胞に侵入できないような、またはさもなくばその病原作用を発揮できないような、立体障害によるものである。これは病原体の「中和」として知られており、インビトロにおいてワクチンの真価を解析するための重要な方法の原理である;ワクチンは、特異的なだけでなく機能的に中和も行う抗体を誘導しなければならない。
【0038】
本発明のワクチン送達組成物の別の態様において、天然のウイルスコートタンパク質に由来しそこから変更したタンパク質構造ドメイン全体を、PEA、PEUR、またはPEUポリマーと結合させ、抗原として送達することができる。
【0039】
例示的な一例として、本発明の組成物および方法において、インフルエンザA型表面タンパク質をウイルス抗原として用いることができる。インフルエンザウイルスは、宿主上皮細胞の糖タンパク質表面の糖質への血球凝集素分子の結合によって、細胞に感染する。ウイルスは受容体媒介性エンドサイトーシスによって貪食され、細胞内小胞(endocytic vesicle)内部のpHの低下によってウイルス血球凝集素の構造に変化が生じ、これによりウイルス膜と小胞膜との融合が可能になる。血球凝集素(HA)タンパク質の露出部分は外部ドメインであり、これは、該タンパク質のHA1およびHA2サブパート(subpart)の両方を包含している。インフルエンザウイルスの別の株は、異なるアミノ酸配列を有するHA外部ドメインタンパク質を発現する。例えば、図13および14はそれぞれ、本発明のワクチン構築法による精製のために天然シグナル配列を除去してカルボキシ末端His6タグを追加するよう変更された、A/Puerto Rico/8/34(H1N1株由来)(SEQ ID NO: 11)およびA/Vietnam/1203/2004(H5N1)(SEQ ID NO: 12)のHA外部ドメインタンパク質のアミノ酸配列を示している。
【0040】
エンドソーム中へビリオンがエンドサイトーシスされる際、ウイルスのM2イオンチャネルがビリオン内部の酸性化を引き起こすと考えられている。ウイルス膜が小胞膜に融合した後、ウイルスの内容物は細胞質ゾルへと移動する。次にウイルスRNAが細胞の核に侵入し、ここで複製が起こる。レプリコンは細胞質ゾル中に戻り、新たなウイルス粒子のタンパク質へと翻訳される。インフルエンザウイルスM2イオンチャネルは、トランスゴルジネットワークの酸性内腔と中性細胞質との間のpH勾配を平衡化することによって、細胞外への(exocytic)経路においても同様に機能すると考えられる。ウイルス出芽の際には、小さな外部ドメインしかウイルス表面に露出しない。出芽ウイルスの脱離はノイラミニダーゼによって補助され、このように新たな細胞への感染が広がる。
【0041】
本発明のインフルエンザワクチンに関して、これらの各インフルエンザ株のノイラミニダーゼは、組換え遺伝子技術によって、M2ウイルス膜タンパク質に融合しており、新規の抗原性要素を形成する。この融合タンパク質は、そのカルボキシ末端においてタイプII膜タンパク質であるノイラミニダーゼ(NA)の外部ドメインと融合した、ウイルスM2タンパク質(M2e)のアミノ末端の24アミノ酸からなる。したがってNAタンパク質部分は、自身の膜貫通セグメントを含むアミノ末端を欠失している。結果として得られる融合タンパク質は、本発明のワクチン送達組成物構築法における精製および使用のためにカルボキシ末端のHis6タグを含むよう操作されている(SEQ ID NO: 13、図15およびSEQ ID NO: 14、図16)。またNAタンパク質外部ドメインは、独立して発現させることもでき(SEQ ID NO: 18、図20およびSEQ ID NO: 19、図21)、ワクチン組成物中で使用することもできる。
【0042】
さらなる例示的なインフルエンザ抗原は、RNAウイルスゲノムのキャプシド形成に必要な核タンパク質(NP)である。M2の細胞外部分と同様、NPのアミノ酸組成はビリオン表面タンパク質よりも高度に保存されており、かつ、NPの機能もまた増殖性インフルエンザ感染の伝搬に極めて重要であるので、これらのタンパク質は魅力的なワクチン構成要素である。HAなどのその他のインフルエンザ抗原の1つまたは複数と共に本発明の組成物中にこの抗原を封入することは、より包括的な免疫応答を提供するのに役立ち、かつしたがってより強力なワクチンを産生するのに役立つ。本発明の組成物および方法における使用のために変更された、A/Puerto Rico/8/34(H1N1)に由来する核タンパク質タンパク質のアミノ酸配列を、本明細書中、SEQ ID NO: 15、図17に示す。同様に変更した、A/Vietnam/1203/2004(H5N1)由来の核タンパク質タンパク質を、本明細書中、SEQ ID NO: 16、図18に示す。
【0043】
また本明細書に記載の組成物および方法には、ジフテリア、コレラ、結核、破傷風、百日咳、髄膜炎、ライム病を引き起こす生物、さらに、髄膜炎菌(Meningococcus)A、B、およびC、B型インフルエンザ菌(Hemophilus influenza type B;HIB)、ならびにヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori)を非限定的に含むその他の病原微生物に由来する抗原などの、数多くの細菌性抗原を用いた使用も認められるであろう。寄生虫性抗原の例には、マラリアおよび住血吸虫症を引き起こす生物に由来する抗原が含まれる。
【0044】
さらに、本明細書に記載の方法は、様々な悪性癌に対して抗原を送達するためおよび/または免疫応答を生じるためのワクチン組成物の構築用の手段を提供する。例えば、本発明の方法によって調製した組成物を用いて、活性化された癌遺伝子、胎児抗原、または活性化マーカーなど、問題となっている癌に特異的な特定の抗原に対する、体液性および細胞媒介性の免疫応答の両方を高めることができる。そのような腫瘍抗原には、特に、MAGE 1、2、3、4(Boon, T. Scientific American (March 1993):82-89)などを含む任意の様々なMAGE(メラノーマ関連抗原E);任意の様々なチロシナーゼ;MART 1(T細胞により認識されるメラノーマ抗原)、ras変異体;p53変異体;p97メラノーマ抗原;CEA(癌胎児抗原)が含まれる。本発明の方法および組成物によるワクチン送達組成物の調製において有用なさらなるメラノーマ抗原には、以下が含まれる。
* GP100はメラノーマ関連ME20抗原とも呼ばれる。
【0045】
ヒトおよび動物におけるある種の悪性疾患は、T細胞に感染してこれらの細胞を腫瘍細胞へと悪性転換させるウイルスに関連する。例えば、ほぼ全ての子宮頸癌患者がパピローマウイルスに感染しているほどに、HPVの特定のサブタイプは子宮頚癌の発症に強く関連している。HPVのその他のサブタイプは性器いぼに関連する。予防的に投与されると、細胞のウイルス感染が妨害されるようにHPVに対して体液性または細胞媒介性のいずれかの防御免疫応答を誘発するワクチンは、その後の曝露から患者を防御することができる。米国の性的に活発な個人のうち50%程度が人生の一時期に感染したと仮定されるほどに、大勢の人々が1種または複数のHPVウイルスを既に有し、かつ伝染率が高い。このため、治療用HPVワクチンの開発は極めて重要である。そのようなワクチンは、意図された患者がHPVの存在に関して陽性であると試験されたが現在は症状を有さない個人であるように設計されるか、または、HPV関連前癌病変を有することが認められる女性の治療用に設計されるか、または、初期もしくは後期の子宮頸癌を有する女性の治療用に設計される。治療用ワクチンとは、病原体に、場合によってはC型肝炎ウイルス(HCV)またはヒト免疫不全ウイルスなどの慢性ウイルス病原体に既に感染している患者に投与されるワクチンである。この例においては、後期または慢性のウイルス感染によって発現するタンパク質が、適切なワクチン標的となるであろう。ヒトパピローマウイルスの場合、2種類のタンパク質E6およびE7がHPV感染細胞中で発現しており、これらはまた、そのような感染に起因する腫瘍細胞中でも発現している。したがって、本発明のワクチン組成物は、これらのタンパク質および、PEA-NTAに結合したある種の糖脂質、膜脂質、または核酸を含むことができる。HPV-16 E6-E7変異体融合タンパク質(SEQ ID NO: 17、図19)を含む本発明のワクチン送達組成物で動物を処置した動物試験の結果を、実施例に示す。
【0046】
本発明を用いて多種多様な疾患に対するワクチンを構築できることは、容易に明らかとなる。
【0047】
本発明のワクチン送達組成物調製法においてポリマー中に分散する抗原は、任意の適切な長さを有することができるが、ペプチド制限消化Tリンパ球により認識される8〜約30アミノ酸のペプチド抗原セグメントを組み込むことができる。具体的には、対応するクラスIペプチド制限消化細胞障害性T細胞により認識される抗原セグメントが8〜約12アミノ酸、例えば9〜約11アミノ酸を含み、かつ、対応するクラスIIペプチド制限消化Tヘルパー細胞により認識される抗原セグメントが8〜約30アミノ酸、例えば約12〜約24アミノ酸を含む。
【0048】
天然T細胞媒介性免疫は(APCの表面上の)MHC分子によるペプチドエピトープの提示を介して機能するが、MHCは、補助ペプチド(peptide adjunct)、特に、糖部分または脂質部分がT細胞に表示されるようにペプチド部分がMHCによって保持されているグリコールペプチドおよびリポペプチドも、提示することができる。複数の腫瘍が糖誘導体化(glyco-derivatized)タンパク質または脂質誘導体化(lipo-derivatized)タンパク質を過剰発現し、かつ、これらの糖誘導体化または脂質誘導体化ペプチド断片が、場合によっては強力なT細胞エピトープとなりうるので、この考察は癌ワクチン学に特に関連する。さらに、そのようなT細胞エピトープ内の脂質は糖脂質であることができる。
【0049】
通常のペプチド単独の提示とは異なり、これらの場合、T細胞認識はペプチド上の糖または脂質の基に左右されるので、高親和性でMHCに結合するが、腫瘍関連の糖分子または脂質分子が合成的に共有結合する腫瘍タンパク質に由来するものではない短い合成ペプチドでさえ、抗原として成功裡に使用される。天然腫瘍細胞系に向けた人工T細胞エピトープを創出するためのこのアプローチは、Franco et al, J. Exp. Med (2004) 199(5):707-716により最近採用された。したがって、合成ペプチド誘導体およびさらにペプチド模倣薬までも、本発明のワクチン送達組成物調製法における抗原と置き換えて、ペプチド分枝および非抗原をT細胞に提示するためのプラットフォームを形成する高親和性MHC結合リガンドとして作用させることができる。
【0050】
したがって、本明細書に記載の「抗原」という用語は、特定の抗原または特定のTリンパ球が特異的に結合する分子、およびその一部を指す。抗原は、タンパク質、ペプチド、完全なペプチド誘導体(分枝ペプチドなど)、および、ペプチドの共有結合性ヘテロ誘導体(糖誘導体、脂質誘導体、および糖脂質誘導体)でありうる。また、以下を非限定的に含む、病原体または異常細胞に関連する非ペプチド分子を包含することも意図される:細菌またはウイルスで被覆された多糖、糖脂質、リポ多糖、オリゴヌクレオチド、およびリン酸含有抗原(リン酸抗原(phosphoantigen))。特定の抗原または特定のTリンパ球が特異的に結合する、そのような材料の断片ならびに修飾物およびそのような修飾配列を含む融合タンパク質も、本明細書で使用する「抗原」という用語に包含されることが意図される。
【0051】
当技術分野で公知の任意の技術を用いて、抗原を合成することができる。抗原には「ペプチド模倣体」も含まれうる。ペプチド類似体は、鋳型ペプチドの特性と類似した特性を有する非ペプチド生理活性物質として、製薬業界で一般に用いられる。これらのタイプの非ペプチド化合物は「ペプチド模倣体」または「ペプチド模倣薬」と称する。Fauchere, J. (1986) Adv. Bioactive agent Res., 15:29;Veber and Freidinger (1985) TINS p. 392;およびEvans et al. (1987) J. Med. Chem., 30:1229は通常、コンピュータ分子モデリングを利用して展開されている。一般的に、ペプチド模倣薬は、典型的なポリペプチド(すなわち、生化学特性または薬理活性を有するポリペプチド)と構造的に類似しているが、当技術分野で公知でありかつ以下の参照文献においてさらに説明されている方法によって、--CH2NH--、--CH2S--、--CH2-CH2--、--CH=CH--(シスおよびトランス)、--COCH2--、--CH(OH)CH2--、および--CH2SO--からなる群より選択される結合によって置換されてもよい1つまたは複数のペプチド結合を有する:Spatola, A.F. in "Chemistry and Biochemistry of Amino Acids, Peptides, and Proteins," B. Weinstein, eds., Marcel Dekker, New York, p. 267 (1983);Spatola, A.F., Vega Data (March 1983), Vol. 1, Issue 3, "Peptide Backbone Modifications"(一般総説);Morley, J.S., Trends. Pharm. Sci., (1980) pp. 463-468(一般総説);Hudson, D. et al., Int. J. Pept. Prot. Res., (1979) 14:177-185 (--CH2NH--, CH2CH2--);Spatola, A.F. et al., Life Sci., (1986) 38: 1243-1249 (--CH2-S--);Harm, M. M., J. Chem. Soc. Perkin Trans I (1982) 307-314 (--CH=CH--, cis and trans);Almquist, R.G. et al., J. Med. Chem., (1980) 23:2533 (--COCH2--);Jennings-Whie, C. et al., Tetrahedron Lett., (1982) 23:2533 (--COCH2--);Szelke, M. et al., European Appln., EP 45665 (1982) CA: 97:39405 (1982) (--CH(OH)CH2--);Holladay, M. W. et al., Tetrahedron Lett., (1983) 24:4401-4404 (--C(OH)CH2--);およびHruby, V.J., Life Sci, (1982) 31:189-199 (-CH2-S-)。そのようなペプチド模倣体は、例えば以下を含むポリペプチド態様に対する有意な利点を有しうる:産生の低コスト化、化学的安定性の増大、薬理特性の増強(半減期、吸収、強度、有効性など)、特異性の変化(例えば、広範囲の生物活性)など。
【0052】
さらに、ペプチド中の1つまたは複数のアミノ酸の置換(例えば、L-リシンの代わりにD-リシンを用いる)を使用して、より安定なペプチドおよび内因性プロテアーゼに対して耐性を有するペプチドを作製することができる。代替的に、例えば生分解性ポリマーに非共有的に結合した合成抗原をD-アミノ酸から調製することができ、これを逆ペプチド(inverso peptide)と称する。天然ペプチド配列の反対方向にペプチドを構築する場合、これはレトロペプチド(retro peptide)と称される。一般に、D-アミノ酸から調製したペプチドは、酵素的加水分解に対して非常に安定である。レトロ-逆ペプチドまたは部分的レトロ-逆ペプチドに関して、生物活性が保存された多くの場合が報告されている(米国特許第6,261,569 B1号およびその参照文献;B. Fromme et al., Endocrinology (2003)144:3262-3269)。
【0053】
その後の被験体への投与のために、1つまたは複数の選択された抗原を、本明細書に記載のアジュバントの存在下または非存在下で生分解性ポリマーと複合体形成させる。ワクチン送達組成物が調製されたら、静脈内、粘膜、筋肉内、または皮下送達経路を非限定的に含む様々な送達経路のために、該組成物を製剤化することができる。例えば、本明細書に記載の方法において有用なポリマーには、本明細書に記載のPEA、PEUR、およびPEUポリマーが非限定的に含まれる。これらのポリマーを様々な分子量で製造することができるが、所与の抗原を用いる使用に関して適切な分子量は、当業者によって容易に決定される。したがって、例えば、適切な分子量は約5,000〜約300,000キロダルトン(KD)のオーダーであり、例えば約5,000〜約250,000、または約65,000〜約200,000、または約100,000〜約150,000である。
【0054】
一部の態様において、ポリマー組成物自体による、抗原の残留、保護、およびAPCへの送達は、免疫原性アジュバント活性を提供するのに十分である。別の態様において、抗原の送達の増加、サイトカイン産生の刺激、および/または抗原提示細胞の刺激によって可溶性タンパク質抗原に対する免疫応答、特に細胞性免疫応答を増大させることができるアジュバントを含むように、本発明のワクチン送達組成物を調製することができる。あるいは、例えば同一組成物中または別々の組成物中の本発明のワクチン送達組成物と同時に、アジュバントを投与することができる。例えば、本発明のワクチン送達組成物の前または後にアジュバントを投与することができる。さらに代替的には、同時送達に関して本明細書に記載のように、アジュバントをポリマー中に分散させることができ、または、アジュバント/抗原をポリマーに非共有結合させることができる。
【0055】
細胞性および体液性の免疫応答を増強するための適切なタイプのアジュバントには以下が含まれるが、これらに限定されるわけではない:(1) 水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムなどのアルミニウム塩(ミョウバン);(2) 例えば、(a) Model 110Y microfluidizer(Microfluidics, Newton, Mass.)などのマイクロフルイダイザーを用いてサブミクロン粒子へと製剤化された、5%スクアレン、0.5% Tween 80(商標)、および0.5% Span 85を含み、任意で様々な量のMTP-PBを含む、MF59(国際公開公報第90/14837号)、(b) 顕微溶液化されてサブミクロンエマルジョンとなったか、ボルテックスされてそれより大きな粒度のエマルジョンとなった、10%スクアレン、0.4% Tween 80(商標)、5%プルロニック保護(pluronic-blocked)ポリマーL121、およびthr-MDPを含む、SAF、ならびに (c) 2%スクアレン、0.2% Tween 80(商標)、ならびに、モノホスホリルリピドA(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)からなる群由来の1つまたは複数の細菌細胞壁構成要素、好ましくはMPL+CWS(Detox(商標))を含む、Ribi(商標)アジュバント組成物(RAS)(Ribi Immunochem, Hamilton, Mont.)などの、水中油型エマルジョン製剤(ムラミルペプチドまたは細菌細胞壁構成要素などのその他の特異的免疫刺激剤を含むまたは含まない);(3) Stimulon(商標)(Cambridge Bioscience, Worcester, Mass.)などのサポニンアジュバント、またはそこから作製された、ISCOM(免疫刺激複合体)などの粒子;(4) 完全フロイントアジュバント(CFA)および不完全フロイントアジュバント(IFA);(5) インターロイキン(IL-1、IL-2など)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)などのサイトカイン;(6) コレラ毒素(CT)、百日咳毒素(PT)、または大腸菌(E. coli)易熱性毒素(LT)などの細菌性ADP-リボシル化毒素の解毒変異体、特にLT-K63(63位の野生型アミノ酸がリシンに置換されている)、LT-R72(72位の野生型アミノ酸がアルギニンに置換されている)、CT-S109(109位の野生型アミノ酸がセリンに置換されている)、およびPT-K9/G129(9位の野生型アミノ酸がリシンに、129位がグリシンに置換されている)(例えば、国際公開公報第93/13202号および同第92/19265号を参照されたい);ならびに (7) サポニンの精製型であるQS21およびリポ多糖(LPS)の非毒性誘導体である3D-モノホスホリルリピドA(MPL)(Moore, et al., Vaccine. 1999 Jun 4;17(20-21):2517-27)。また、本発明の方法により調製された組成物の有効性を増大させるために、免疫刺激アジュバントとして作用する細菌性、ウイルス性、または合成のRNAもしくはDNA化合物(例えばポリI:CまたはCpG)、糖質、またはその他のToll様受容体(TLR)リガンドなどのその他の物質を用いてもよい。
【0056】
本発明の実施における使用に適したポリマーは、ポリマーへのアフィニティーリガンドの容易な結合を可能にする機能性を有する。例えば、遊離のアミノ基またはカルボキシル基を有するポリマーは、本発明の方法における使用に関して本明細書で記載されたモノクローナル抗体またはアフィニティーリガンドと容易に反応し、該アフィニティーリガンドを該ポリマーに結合させることができる。本明細書に記載のように、生分解性ポリマーおよびアフィニティーリガンドは、ワクチン送達組成物を形成する一方で抗原および任意のアジュバントを細胞溶解物、その他の合成溶液または分散液から同時精製することを目的としてアフィニティーリガンドを生分解性ポリマーに結合させるために使用できる、数多くの相補的官能基を含んでもよい。
【0057】
本発明のワクチン送達組成物中のポリマーは、ポリマーの生分解の間そのような薬剤を含む粒子またはポリマー分子をゆっくりと放出しながら、個体の免疫細胞が抗原および任意のアジュバントと相互作用して免疫プロセスに影響を与えるのに十分な期間、抗原および任意のアジュバントを注射部位で維持することによって、インプラント部位での内因性免疫プロセスにおいて積極的な役割を有する。脆弱な抗原および任意のアジュバントは、抗原の半減期および残留を増大させるためによりゆっくりと生分解されるポリマーによって保護される。また、抗原および任意のアジュバントの共存は、ワクチン製剤に対する宿主の免疫応答を有利に変更できる。
【0058】
またポリマー自体も、ポリマー-抗原組成物の食作用の刺激によって、APCへの抗原の送達における積極的な役割を有しうる。さらに、本明細書で開示されたポリマー、例えば構造式(IおよびIII〜VIII)を有するポリマーは、酵素的分解の際、細胞を培う必須アミノ酸を産生するが、その他の分解産物は、脂肪酸および糖の代謝の際に使用されるのと類似した経路を用いて代謝できる。抗原/金属イオン/アフィニティーリガンド複合体を有するポリマーの取り込みは安全である:APCが生存し、正常に機能し、かつ、本発明の組成物の分解産物を代謝/除去できることが試験により示されている。したがって、本発明の方法により産生されるこれらのポリマーおよびワクチン送達組成物は、注射自体に起因する外傷は別として、被験体に対し注射部位および全身の両方において実質的に非炎症性である。さらに、APCによるポリマーの能動的取り込みの場合、ポリマーは抗原の送達アジュバントとして働くので、したがって、追加のアジュバントを別々に製剤化するための必要不可欠な条件は無い。
【0059】
本明細書において免疫原性および治療的有用性を有するワクチン送達組成物の形成を参照して本発明の送達組成物構築法を説明するが、本明細書に記載の方法は、生体分子の天然活性および従って治療的有用性が実質的に保持されるように様々な治療用生物製剤をインビボ送達するための組成物の一段階構築用に使用することもできる。
【0060】
本明細書において「治療用生物製剤」という用語は、哺乳動物の体内に発生するかまたは身体プロセスに影響しかつ治療目的のために使用できる合成または天然の分子を指すために使用される。具体的には、タンパク質、ペプチド、ならびに全タイプのDNAおよびRNAなどの、生物学的プロセスに有用な様々な要素ならびに重合巨大分子が、本用語の意味に含まれる。
【0061】
ヌクレオチドは金属結合分子であることが、当技術分野で周知である(例えばWacker EC and Vallee BT, Journal of Biological Chemistry (1959) 234(12):3257-3262を参照されたい)。したがって、DNAおよびRNAの場合には、本発明の送達組成物に組み込まれるべき合成分子を、アミノ酸含有タグよりもむしろヌクレオチドタグを含むように合成(すなわち修飾)することができる。例えば、治療用生物製剤としてのRNAまたはDNAの鎖を送達するための本発明の組成物を製造する際、3'または5'端のいずれかに治療用生物製剤を含む分子中のヌクレオチド含有タグを介して、RNAまたはDNAをポリマー活性基に結合させる。また、その例が以下で概説されるこれらの手順を用いてHisタグ付き生物製剤を合成することもできるが、ここで、非タグ部分はペプチドでもタンパク質でもなく、ポリヌクレオチド(RNAまたはDNA)、多糖、脂質、または低分子ハプテンである。
【0062】
ヌクレオシドおよびヌクレオチドが遷移金属に結合すること、ならびに、ヒスチジンによる結合と類似の様式で特にプリンの塩基部分が金属カチオンに結合することが、当技術分野において公知である(例えば、De Meester P, et al., Biochem. J., (1974) 134, 791-792;Collins AD, et al., Biochim Biophys Acta, 402(1):1-6, 1975;Goodgame DML, et al., Nucleic Acids Res., 2(8):1375-1379, 1975;Gao Y-G, et al., Nucleic Acids Res., 21(17):4093-4101, 1993を参照されたい)。したがって、遷移金属への結合によって、CpGまたはポリI:Cなどのポリヌクレオチドアジュバント分子を、付随する抗原を含むまたは含まないワクチン粒子に直接組み込むことができる。
【0063】
本発明の生体適合性送達組成物の形成において有用な生分解性ポリマーには、モノマーあたり少なくとも1つの非アミノ酸部分に結合した少なくとも1つのアミノ酸を含むポリマーが含まれる。本明細書で使用する「非アミノ酸部分」という用語には様々な化学的部分が含まれるが、本明細書に記載のアミノ酸誘導体およびペプチド模倣薬は特別に除外する。さらに、少なくとも1つのアミノ酸を含むポリマーとは、そのように特記されない限り、天然ポリペプチドを含むポリアミノ酸セグメントを含むことを意図するものではない。ある態様において、モノマー中の2つの隣接アミノ酸の間に非アミノ酸を配置する。別の態様において、非アミノ酸部分は疎水性である。ポリマーはブロックコポリマーであってもよい。
【0064】
本発明の組成物および方法における使用のための好ましいポリマーは、ポリマー骨格上に一体型(built-in)官能基を有する、ポリエステルアミド(PEA)、ポリエステルウレタン(PEUR)、およびポリエステルウレア(PEU)であり、これらの一体型官能基は、その他の化学物質と反応でき、ポリマーの機能性をさらに広げるためのさらなる官能基の組み込みを導くことができる。したがって、本発明の方法において使用されるそのようなポリマーは、水溶性を増大させるための親水性構造を有するその他の化学物質と、ならびに、抗原、アジュバント、およびその他の作用物質と、事前の修飾の必要性無しに反応する準備もできている。
【0065】
さらに、本発明の送達組成物の調製において使用されるPEA、PEUR、およびPEUポリマーは、生理食塩水(PBS)媒体中で試験した場合には加水分解性分解を示さないが、キモトリプシンなどの酵素溶液中では均一な侵食性挙動(uniform erosive behavior)が認められ、それにより抗原の制御送達がもたらされる。
【0066】
したがって、一態様において、本発明の方法において使用されるポリマーは以下の少なくとも1つ又はその混合物を含む:
構造式 (I) に記載の化学式を有するPEA
式中、nは約5〜約150の範囲であり;R1は独立して、α,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-(C1-C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)二けい皮酸、もしくは4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)二けい皮酸、(C2-C20)アルキレン、もしくは(C2-C20)アルケニレンの残基から選択され;個別のn個のモノマー中のR3は独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2SCH3からなる群より選択され;かつR4は独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ、(C2-C20)アルキレン、飽和型もしくは不飽和型の治療的ジオールの残基、構造式 (II)
の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびそれらの組み合わせ、(C2-C20)アルキレン、ならびに(C2-C20)アルケニレンからなる群より選択される;
または、構造式IIIに記載の化学式を有するPEA
式中、nは約5〜約150の範囲であり;mは約0.1〜0.9の範囲であり;pは約0.9〜0.1の範囲であり;式中、R1は独立して、α,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-(C1-C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)二けい皮酸、もしくは4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)二けい皮酸、(C2-C20)アルキレン、もしくは(C2-C20)アルケニレンの残基より選択され;各R2は独立して、水素、(C1-C12)アルキルもしくは(C6-C10)アリール、または保護基であり;個別のm個のモノマー中のR3は独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2SCH3からなる群より選択され;R4は独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ、(C2-C20)アルキレン、飽和型もしくは不飽和型の治療的ジオールの残基、または構造式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され;かつR7は独立して、(C1-C20)アルキルまたは (C2-C20)アルケニル、例えば (C3-C6)アルキルまたは (C3-C6)アルケニルである;
または、構造式 (IV) に記載の化学式を有するPEUR
式中、nは約5〜約150の範囲であり;式中、R3は独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2SCH3からなる群より選択され;R4は、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレンもしくはアルキルオキシ、(C2-C20)アルキレン、飽和型もしくは不飽和型の治療的ジオールの残基、構造式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され;かつR6は独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレンもしくはアルキルオキシ、一般式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびそれらの組み合わせより選択される;
または、一般構造式 (V) に記載の化学構造を有するPEUR
式中、nは約5〜約150の範囲であり;mは約0.1〜約0.9の範囲であり;pは約0.9〜約0.1の範囲であり;R2は独立して、水素、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、もしくは保護基より選択され;個別のm個のモノマー中のR3は独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2SCH3からなる群より選択され;R4は、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレンもしくはアルキルオキシ、飽和型もしくは不飽和型の治療的ジオールの残基、および構造式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され;R6は独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレンもしくはアルキルオキシ、一般式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、飽和型もしくは不飽和型の治療的ジオールの残基、およびそれらの組み合わせより選択され;かつR7は独立して、(C1-C20)アルキルもしくは(C2-C20)アルケニルである;
または、一般構造式 (VI) に記載の化学式を有するPEU
式中、nは約10〜約150であり;個別のn個のモノマー中のR3は独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2SCH3より選択され;R4は独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ(C2-C20)アルキレン、飽和型もしくは不飽和型の治療的ジオールの残基、もしくは構造式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片より選択される;
または、構造式 (VII) に記載の化学式を有するPEU
式中、mは約0.1〜約1.0であり;pは約0.9〜約0.1であり;nは約10〜約150であり;各R2は独立して、水素、(C1-C12)アルキル、もしくは(C6-C10)アリールであり;個別のm個のモノマー中のR3は独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2SCH3より選択され;各R4は独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ(C2-C20)アルキレン、飽和型もしくは不飽和型の治療的ジオールの残基、構造式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびそれらの組み合わせより選択され;かつR7は独立して、(C1-C20)アルキルもしくは(C2-C20)アルケニル、例えば(C3-C6)アルキルもしくは(C3-C6)アルケニルである。
【0067】
例えば、本発明のポリマーベース送達組成物構築法において使用されるPEAポリマーの一選択肢において、少なくとも1つのR1は、α,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)(C1-C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)二けい皮酸、もしくは4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)二けい皮酸の残基であり、R4は一般式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片である。別の代替物において、PEAポリマー中のR1は、α,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)(C1-C8)アルカン、3,3'--(アルカンジオイルジオキシ)二けい皮酸、または4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)二けい皮酸の残基のいずれかである。さらに別の代替物において、PEAポリマー中のR1は、1,3-ビス(4-カルボキシフェノキシ)プロパン(CPP)などのα,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)(C1-C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)二けい皮酸、または4,4'-(アジポイルジオキシ)二けい皮酸の残基であり、R4は、DASなどの、一般式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片である。
【0068】
好ましくは、R7は-(CH2)4-である。
【0069】
本発明の実施における使用に適した保護基には、t-ブチルおよび、当技術分野で公知のその他のものなどが含まれる。1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの適切な二環式断片は、D-グルシトール、D-マンニトール、およびL-イジトールなどの糖アルコールに由来しうる。例えば、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール(イソソルビド、DAS)は、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片としての使用に特に適している。
【0070】
本明細書に記載のPEUポリマーは、ヒトおよびその他哺乳動物への送達用の本発明の送達組成物の作製に有用な高分子量ポリマーとして製造することができる。本発明の方法において使用されるPEUには、加水分解的に切断可能なエステル基、および、ポリマー鎖中にαアミノ酸を含む非毒性の天然モノマーが組み込まれている。PEUの最終的な生分解生成物は、αアミノ酸(生物学的またはそうではない)、ジオール、およびCO2である。PEAおよびPEURとは対照的に、PEUは結晶性または半結晶性であり、完全な合成の(および従って生成が容易な)メゾスコピックレンジのポリマー粒子、例えばナノ粒子の製剤化を可能にする有益な物理特性、化学特性、および生分解特性を包含する。
【0071】
例えば、本発明の送達組成物調製法において使用するPEUポリマーは高い力学的強度を有し、PEUポリマーの表面浸食は、生理学的条件で存在するヒドロラーゼなどの酵素により触媒されうる。
【0072】
PEUポリマー中の一代替物において、少なくとも1つのR4は、1,4:3,6-ジアンヒドロソルビトール(DAS)などの1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片である。
【0073】
一代替物において、式 (I) および (III)〜(VII) のポリマーの少なくとも1つのモノマー中のR3はCH2Phであり、合成において使用されるαアミノ酸はL-フェニルアラニンである。1つのモノマー中のR3が-CH2-CH(CH3)2である代替物において、ポリマーはαアミノ酸であるロイシンを含む。R3を変更することによって、その他のαアミノ酸、例えば、グリシン(R3が-Hである場合)、アラニン(R3が-CH3である場合)、バリン(R3が-CH(CH3)2である場合)、イソロイシン(R3が-CH(CH3)-CH2-CH3である場合)、フェニルアラニン(R3が-CH2-C6H5である場合)、リシン(R3が-(CH2)4-NH2である場合)、またはメチオニン(R3が-(CH2)2SCH3である場合)を使用することもできる。
【0074】
ポリマーが式IまたはIII〜VIIのPEA、PEUR、またはPEUであるさらなる態様において、少なくとも1つのR3がさらに-(CH2)3-であり、ここで、R3は環化して構造式 (XIII) に記載の化学構造を形成する。
【0075】
R3が-(CH2)3-である場合、ピロリジン-2-カルボン酸(プロリン)に類似したαイミノ酸を使用する。
【0076】
PEA、PEUR、およびPEUは、分散した抗原および任意のアジュバントを経時的に放出するような酵素作用によって実質的に生物分解される生分解性ポリマーである。これらのポリマーの構造特性のために、本発明の方法において使用する場合、そのように形成されたワクチン送達組成物は、抗原および任意のアジュバントの安定な負荷量(loading)を提供する一方、その三次元構造および従って生理活性を保存する。
【0077】
本明細書で使用する「アミノ酸」および「αアミノ酸」という用語は、アミノ基、カルボキシル基、および、本明細書で規定されたR3基のようなペンダントR基を含む、化学的化合物を意味する。本明細書で使用する「生物学的αアミノ酸」という用語は、合成において使用するアミノ酸を意味し、フェニルアラニン、ロイシン、グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、またはそれらの組み合わせより選択される。
【0078】
本明細書の実施において有用なPEA、PEUR、およびPEUポリマーにおいて、複数の異なるαアミノ酸を単一ポリマー分子中で使用することができる。これらのポリマーは、反復単位あたり少なくとも2つの異なるアミノ酸を含みうり、単一ポリマー分子は、分子のサイズに応じて、ポリマー分子中に異なるαアミノ酸を複数含みうる。一代替物において、本発明のポリマーの製造において使用されるαアミノ酸の少なくとも1つが、生物学的αアミノ酸である。
【0079】
「アリール」という用語は、少なくとも1つの環が芳香族である約9〜10個の環原子を有するフェニルラジカルまたはオルト融合二環式炭素環ラジカルを表すために、本明細書の構造式に関連して使用される。特定の態様において、1つまたは複数の環原子を、1つまたは複数のニトロ、シアノ、ハロ、トリフルオロメチル、またはトリフルオロメトキシで置換することができる。アリールの例には、フェニル、ナフチル、およびニトロフェニルが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0080】
「アルケニレン」という用語は、主鎖または側鎖中に少なくとも1つの不飽和結合を含む二価の分枝型または非分枝型の炭化水素鎖を意味するために、本明細書の構造式に関連して使用される。
【0081】
本明細書で使用する「治療的ジオール」とは、合成的に作製されたか天然であるか(例えば内因性)に関わらず、投与されると治療的または緩和的な様式でヒトなどの哺乳動物個体における生物学的プロセスに影響する、任意のジオール分子を意味する。
【0082】
本明細書で使用する「治療的ジオールの残基」という用語は、本明細書に記載の治療的ジオールの一部を意味するが、該ジオールの2つのヒドロキシル基はこの部分から除外される。その「残基」を含む、対応する治療的ジオールは、本ポリマー組成物の合成において使用される。治療的ジオールの残基は、生分解によるポリマーの骨格からの放出の際に、組成物を製造するために選択されるPEA、PEUR、またはPEUポリマーの特性に依存する制御様式で、インビボにおいて(またはpH、水性媒体などの類似条件の下で)再構成されて、対応するジオールとなるが、この特性は当技術分野で公知でありかつ本明細書に記載される。
【0083】
本発明の組成物において使用されるPEA、PEUR、およびPEUポリマーの多用途性のために、該ポリマーの基本単位(building block)の割合を変更することによって、ポリマー骨格中に組み込まれる治療的ジオールの量を制御することができる。例えば、PEAの組成に基づき、最大40% w/wの17β-エストラジオールの負荷量が達成できる。様々な負荷量比の17β-エストラジオールを有する、2種類の異なる規則的な線状PEAを、以下のスキーム1で説明する。
【0084】
同様に、ポリマーの基本単位2つ以上の量を変更することによって、PEURおよびPEUポリマー中への治療的ジオールの負荷量を変更することができる。
【0085】
さらに、4-アンドロステン-3,17ジオール(4-アンヒドロステンジオール)、5-アンドロステン-3,17ジオール(5-アンヒドロステンジオール)、19-ノル5-アンドロステン-3,17ジオール(19-ノルアンヒドロステンジオール)などの、テストステロンまたはコレステロールを基礎とした合成ステロイドベースのジオールは、本発明によるPEAおよびPEURポリマーの骨格への組み込みに適している。さらに、本発明のポリマー粒子送達組成物の調製における使用に適した治療的ジオール化合物には、例えば以下が含まれる:
アミカシン;アンホテリシンB;アピサイクリン(apicycline);アプラマイシン;アルベカシン;アジダムフェニコール;バンベルマイシン;ブチロシン;カルボマイシン;セフピラミド;クロラムフェニコール;クロルテトラサイクリン;シリンダマイシン;クロモサイクリン;デメクロサイクリン;ジアチモスルホン;ジベカシン、ジヒドロストレプトマイシン;ジリスロマイシン;ドキシサイクリン;エリスロマイシン;ホルチマイシン(fortimicin);ゲンタマイシン;グルコスルホン;ソラスルホン;グアメサイクリン(guamecycline);イセパマイシン;ジョサマイシン;カナマイシン;ロイコマイシン;リンコマイシン;ルセンソマイシン;リメサイクリン;メクロサイクリン;メタサイクリン;ミクロノマイシン;ミデカマイシン;ミノサイクリン;ムピロシン;ナタマイシン;ネオマイシン;ネチルマイシン;オレアンドマイシン;オキシテトラサイクリン;パロマイシン;ピカサイクリン;ポドフィリン酸2-エチルヒドラジン;プリマイシン(primycin);リボスタマイシン;リファミド(rifamide);リファンピン;リファマイシンSV;リファペンチン;リファキシミン;リストセチン;ロキタマイシン;ロリテトラサイクリン;ラサラマイシン(rasaramycin);ロキシスロマイシン;サンサイクリン(sancycline);シソマイシン;スペクチノマイシン;スピラマイシン;ストレプトマイシン;テイコプラニン;テトラサイクリン;チアンフェニコール;チオストレプトン;トブラマイシン;トロスペクトマイシン(trospectomycin);ツベラクチノマイシン;バンコマイシン;カンジシジン;クロルフェネシン;デルモスタチン;フィリピン;フンギクロミン(fungichromin);カナマイシン;ロイコマイシン;リンコマイシン;ルセンソマイシン;リメサイクリン;メクロサイクリン;メタサイクリン;ミクロノマイシン;ミデカマイシン;ミノサイクリン;ムピロシン;ナタマイシン;ネオマイシン;ネチルマイシン;オレアンドマイシン;オキシテトラサイクリン;パラモマイシン(paramomycin);ピパサイクリン(pipacycline);ポドフィリン酸2-エチルヒドラジン;プリシン(priycin);リボスタマイシン;リファミド(rifamide);リファンピン;リファマイシンSV;リファペンチン;リファキシミン;リストセチン;ロキタマイシン;ロリテトラサイクリン;ロサラマイシン(rosaramycin);ロキシスロマイシン;サンサイクリン;シソマイシン;スペクチノマイシン;スピラマイシン;ストレプトン(strepton);トブラマイシン;トロスペクトマイシン;ツベラクチノマイシン;バンコマイシン;カンジシジン;クロルフェネシン;デルモスタチン;フィリピン;フンギクロミン;メパルトリシン;ミスタチン(mystatin);オリゴマイシン;エリマイシン(erimycin)A;ツベルシジン;6-アザウリジン;アクラシノマイシン;アンシタビン;アントラマイシン;アザシタジン(azacitadine);ブレオマイシン;カルビシン;カルジノフィリンA;クロロゾトシン(chlorozotocin);クロモマイシン;ドキシフルリジン;エノシタビン;エピルビシン;ゲムシタビン;マンノムスチン;メノガリル;アトルバスタチン;プラバスタチン;クラリスロマイシン;ロイプロリン(leuproline);パクリタキセル;ミトブロニトール;ミトラクトール;モピダモール;ノガラマイシン;オリボマイシン;ペプロマイシン;ピラルビシン;プレドニムスチン;ピューロマイシン;ラニムスチン;ツベルシジン;ビンネシン(vinesine);ゾルビシン;クメタロール(coumetarol);ジクマロール;ビスクマ酢酸エチル;エチリジン(ethylidine);ジクマロール;イロプロスト;タプロステン(taprostene);チオクロマロール;アミプリロース(amiprilose);ロムルチド;シロリムス(ラパマイシン);タクロリムス;サリチルアルコール;ブロモサリゲニン(bromosaligenin);ジタゾール;フェプラジノール(fepradinol);ゲンチジン酸;グルカメタシン(glucamethacin);オルサラジン;S-アデノシルメチオニン;アジスロマイシン;サルメテロール;ブデソニド;アルブテロール;インジナビル;フルバスタチン;ストレプトゾシン;ドキソルビシン;ダウノルビシン;プリカマイシン;イダルビシン;ペントスタチン;メトキサントロン(metoxantrone);シタラビン;リン酸フルダラビン;フロキシウリジン;クラドリビン;カペシタビン;ドセタキセル;エトポシド;トポテカン;ビンブラスチン;テニポシドなど。飽和ジオールまたは不飽和ジオールのいずれかであるように、治療的ジオールを選択することができる。
【0086】
本明細書における分子量および多分散性は、ポリスチレン標準を用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される。より詳細には、例えば、高圧液体クロマトグラフィーポンプ、Waters 486 UV検出器、およびWaters 2410差次的屈折率検出器(differential refractive index detector)を備えたモデル510ゲル浸透クロマトグラフィー(Water Associates, Inc., Milford, MA)を用いて、数平均分子量および重量平均分子量(MnおよびMw)を決定する。テトラヒドロフラン(THF)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、またはN,N-ジメチルアセタミド(DMAc)を溶離液(1.0 mL/min)として用いる。分子量分布の狭いポリスチレンまたはポリ(メチルメタクリレート)標準を、較正のために用いた。
【0087】
一般式中にαアミノ酸を含む構造式 (I) および (III〜VII) のポリマーなどのポリマー作製法は、当技術分野で周知である。例えば、ポリマー合成用にR4がαアミノ酸に組み込まれている構造式 (I) のポリマーの態様に関して、例えば、ジオールHO-R4-OHと共にペンダントR3を含むαアミノ酸を縮合することによって、ペンダントR3を有するαアミノ酸を、エステル化を通してビス-α,ω-ジアミンへと変換することができる。その結果、反応性α,ω-アミノ基を有するジエステルモノマーが形成される。次に、ビス-α,ω-ジアミンを、セバシン酸などの二価酸、またはそのビス活性化エステル、またはビス-アシルクロリドによる重縮合反応に入れ、エステル結合およびアミド結合の両方を有する最終ポリマー(PEA)を得る。あるいは、PEURに関しては、二価酸の代わりに式 (VIII) のジカルボネート誘導体を用いるが、式中、R6は上記で定義され、R8は独立して、1つまたは複数のニトロ、シアノ、ハロ、トリフルオロメチル、またはトリフルオロメトキシで置換されてもよい(C6-C10)アリールである。
【0088】
より詳細には、上記で開示した構造式 (I) の生分解性ポリマーとして有用な不飽和ポリ(エステルアミド)(UPEA)の合成を説明するが、ここで、
であり、かつ/または、(b) R4は-CH2-CH=CH-CH2-である。(a) が示されて (b) が示されない場合、(I) のR4は-C4H8-または-C6H12-である。(a) が示されずに (b) が示される場合、(I) のR1は-C4H8-または-C8H16-である。
【0089】
以下のいずれかの溶液重縮合によってUPEAを調製することができる:(1) R4に少なくとも1つの二重結合を含むビス(αアミノ酸)ジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩と、飽和ジカルボン酸のジ-p-ニトロフェニルエステル、または、(2) R4に二重結合を含まないビス(αアミノ酸)ジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩と、不飽和ジカルボン酸のジ-ニトロフェニルエステル、または、(3) R4に少なくとも1つの二重結合を含むビス(αアミノ酸)ジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩と、不飽和ジカルボン酸のジ-ニトロフェニルエステル。
【0090】
p-トルエンスルホン酸の塩は、アミノ酸残基を含むポリマーの合成における使用に関して公知である。ビス(αアミノ酸)ジエステルのアリールスルホン酸塩は再結晶によって容易に精製され、これは検査の間中アミノ基を非反応性アンモニウムトシレートにするので、遊離塩基の代わりにアリールスルホン酸塩が使用される。重縮合反応において、トリエチルアミンなどの有機塩基の添加によって求核性アミノ基が容易に明らかになり、したがってポリマー産物が高収量で得られる。
【0091】
例えば、アセトン中でトリエチルアミンおよびp-ニトロフェノールを溶解させ、-78℃で撹拌しながら不飽和ジカルボン酸クロリドを滴下し、水中に注いで生成物を沈降させることによって、p-ニトロフェノールおよび不飽和ジカルボン酸クロリドから、不飽和ジカルボン酸のジ-p-ニトロフェニルエステルを合成することができる。この目的のために有用である適切な酸クロリドには、フマル酸クロリド、マレイン酸クロリド、メサコン酸クロリド、シトラコン酸クロリド、グルタコン酸クロリド、イタコン酸クロリド、エテニル-ブタン二酸クロリド、および2-プロペニル-ブタン二酸酸クロリドが含まれる。
【0092】
αアミノ酸、p-アリールスルホン酸(例えばp-トルエンスルホン酸一水和物)、および飽和型または不飽和型のジオールをトルエン中で混合し、水の発生が最小限となるまで還流温度に加熱し、その後冷却することによって、ビス(αアミノ酸)ジエステルのジ-アリールスルホン酸塩を調製できる。この目的に有用な不飽和ジオールには、例えば、2-ブテン-1,3-ジオールおよび1,18-オクタデカ-9-エン-ジオールが含まれる。
【0093】
米国特許第6,503,538 B1号に記載のように、ジカルボン酸の飽和ジ-p-ニトロフェニルエステルおよびビス(αアミノ酸)ジエステルの飽和ジ-p-トルエンスルホン酸塩を調製することができる。
【0094】
ここで、上記で開示した構造式 (I) の生分解性ポリマーとして有用な不飽和ポリ(エステルアミド)(UPEA)の合成を説明する。上述のように、米国特許第6,503,538 B1号の (III) のR4および/または同第6,503,538号の (V) のR1が(C2-C20)アルケニレンであること以外は同第6,503,538 B1号の化合物 (VII) と類似の様式で、構造式 (I) を有するUPEAを作製することができる。例えば、乾燥トリエチルアミンを、室温で、乾燥N,N-ジメチルアセタミド中の第6,503,538号の (III) および (IV) と第6,503,538号の (V) との混合物に添加し、次に80℃まで温度を上昇させて16時間撹拌し、次に反応液を室温まで冷却し、エタノールで希釈し、水中に注ぎ、ポリマーを分離し、分離されたポリマーを水で洗浄し、減圧下で約30℃まで乾燥させ、その後、p-ニトロフェノールおよびp-トルエンスルホネートに対する陰性試験用に精製することによって、反応が実施される。好ましい反応物 (IV) はリシンベンジルエステルのp-トルエンスルホン酸塩であり、生分解性を与えるためにベンジルエステル保護基は (II) から除去されることが好ましいが、加水分解は所望の二重結合を飽和させうるので、米国特許第6,503,538号の実施例22のように加水分解によってこれを除去するべきではなく、むしろ、不飽和を保存しうる方法によってベンジルエステル基を酸基に変換するべきである。あるいは、不飽和を保存しながら最終産物から容易に除去できるベンジルとは異なる保護基でリシン反応物 (IV) を保護することができ、例えば、リシン反応物をt-ブチルで保護することができ(すなわち反応物はリシンのt-ブチルエステルであることができ)、生成物 (II) を酸で処理することによって、不飽和を保存しながらt-ブチルをHに変換することができる。
【0095】
構造式 (I) を有する化合物の実用例は、第6,503,538号の実施例1の (III) をビス(L-フェニルアラニン)-2-ブテンジオール-1,4-ジエステルのp-トルエンスルホン酸塩へ置換すること、または第6,503,538号の実施例1の (V) をジ-p-ニトロフェニルフマレート(di-p-nitrophenyl fumarate)へ置換すること、または第6,503,538号の実施例1のIIIをビス(L-フェニルアラニン)-2-ブテンジオール-1,3-ジエステルのp-トルエンスルホン酸塩へ置換すること、および第6,503,538号の実施例1の (V) をデ-p-ニトロフェニルフマレートへ同じく置換することにより、提供される。
【0096】
構造式 (I) または (III) のいずれかを有する不飽和化合物において、カルボニルジイミダゾールまたは適切なカルボジイミドを濃縮剤として用いて、その後の足場(hold)であるアミノキシルラジカル、例えば4-アミノTEMPOを付着させることができる。本明細書において上述した、抗原、アジュバント、および抗原/アジュバント結合体または融合タンパク質を、二重結合機能性によって付着させることができる。ポリ(エチレングリコール)ジアクリレートへの結合によって、親水性が付与できる。
【0097】
さらに別の局面において、本発明の送達組成物構築法の形成における使用が意図されるポリマーには、米国特許第5,516,881号;同第6,476,204号;同第6,503,538号;ならびに米国出願10/096,435;10/101,408;10/143,572;および10/194,965に記載のものが含まれ、それぞれの全文が参照により本明細書に組み入れられる。
【0098】
生分解性のPEA、PEUR、およびPEUのポリマーおよびコポリマーは、モノマーあたり最大2アミノ酸を含んでよく、ポリマー分子あたり多数のアミノ酸を含んでよく、好ましくは10,000〜125,000の範囲の重量平均分子量を有し;これらのポリマーおよびコポリマーは典型的に、25℃において、0.3〜4.0の範囲、例えば0.5〜3.5の範囲にわたる固有粘度を有し、これは標準的粘度測定法により測定される。
【0099】
本発明の実施における使用が意図されるポリマーは、当技術分野において周知の様々な方法で合成できる。例えば、トリブチルスズ(IV) 触媒は一般に、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド)などのポリエステルを形成するために使用される。しかし、本発明の実施における使用に適したポリマーを形成するために多種多様な触媒を使用できることが理解される。
【0100】
本発明の実施における使用が意図されるPEAおよびPEURポリマーは、当技術分野において周知の様々な方法で合成できる。例えば、トリブチルスズ(IV) 触媒は一般に、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド)などのポリエステルを形成するために使用される。しかし、本発明の実施における使用に適したポリマーを形成するために多種多様な触媒を使用できることが理解される。
【0101】
使用が意図されるそのようなポリ(カプロラクトン)は、以下の例示的な構造式 (IX) を有する。
【0102】
使用が意図されるポリ(グリコリド)は、以下の例示的な構造式 (X) を有する。
【0103】
使用が意図されるポリ(ラクチド)は、以下の例示的な構造式 (XI) を有する。
【0104】
アミノキシル部分を含む適切なポリ(ラクチド-コ-ε-カプロラクトン)の例示的な合成を以下に示す。第一段階は、構造式 (XII) のポリマーを形成するための触媒としてオクチル酸第一スズ(stannous octoate)を用いた、ベンジルアルコールの存在下でのラクチドおよびε-カプロラクトンの共重合を伴う。
【0105】
次に、構造式 (XIII)を有するポリマー鎖を形成するために、ヒドロキシ末端ポリマー鎖を無水マレイン酸でキャッピングできる。
【0106】
この時点で、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシをカルボキシ末端基と反応させ、4-アミノ基とカルボン酸末端基の間の反応に起因するアミド結合を介して、アミノキシル部分をコポリマーに共有結合的に付着させることができる。あるいは、マレイン酸でキャッピングされたコポリマーにポリアクリル酸をグラフトし、さらなるアミノキシル基のその後の付着のための追加のカルボン酸部分を提供することができる。
【0107】
PEU用の構造式 (VII) を有する不飽和化合物において、カルボニルジイミダゾール、または適切なカルボジイミドを濃縮剤として用いて、その後の足場であるアミノ置換アミノキシル(N-オキシド)ラジカル含有基、例えば4-アミノTEMPOを付着させることができる。本明細書に記載のさらなる生理活性物質などを、任意で、二重結合を介して付着させることができる。
【0108】
例えば、以下の反応スキーム (2) に示すように、クロロホルム/水系におけるビス-求電子性(bis-electrophilic)モノマーとしてホスゲンを使用することによって、構造式 (VI) を有する本発明の高分子半結晶性PEUを界面で(inter-facially)調製することができる。
【0109】
類似のスキーム (3) によって、L-リシンエステルを含み構造式 (VII) を有するコポリ(エステルウレア)(PEU)の合成を実施することができる。
【0110】
例えば市販されている(Fluka Chemie, GMBH, Buchs, Switzerland)ホスゲン(ClCOCl)(高毒性)の20%トルエン溶液は、ジホスゲン(クロロ蟻酸トリクロロメチル)またはトリホスゲン(炭酸ビス(トリクロロメチル))のいずれかで置換できる。ホスゲン、ジホスゲン、またはトリホスゲンの代わりに、より毒性の低いカルボニルジイミダゾールをビス-求電子性モノマーとして使用することもできる。
【0111】
PEU合成の基本手順
高分子量のPEUを得るためには、モノマーの冷却液を使用することが必要である。例えば、水150 mL中のビス(αアミノ酸)-α,ω-アルキレンジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩の懸濁液に、無水炭酸ナトリウムを加え、室温で30分間撹拌し、約2〜0℃に冷却して、第一の溶液を形成する。並行して、第二の、ホスゲンのクロロホルム溶液を約15〜10℃まで冷却する。第一の溶液を界面重縮合用の反応器に入れ、第二の溶液を一度に迅速に加えて、約15分間活発に撹拌する。次に、クロロホルム層を分離し、無水Na2SO4を通して乾燥させ、その後ろ過することができる。得られた溶液は、さらなる使用まで保存できる。
【0112】
製造された全ての例示的PEUポリマーはクロロホルム溶液として得られ、これらの溶液は保存の間安定である。しかし、一部のポリマー、例えば1-Phe-4は、分離後にクロロホルムに対して不溶性になった。この問題を克服するために、滑らかな疎水性表面で型どり(cast)してクロロホルムを蒸発乾固させることによって、ポリマーをクロロホルム溶液から分離することができる。得られたPEUのさらなる精製は不要である。この手順によって得られた例示的PEUの収率および特徴を、本明細書の表1に要約する。
【0113】
多孔性PEU調製の基本手順
一般式にαアミノ酸を含むPEUポリマーを作製するための方法を以下で説明する。例えば、式 (I) または (II) のポリマーの態様に関して、例えばαアミノ酸をジオールHO-R1-OHと共に濃縮することによって、αアミノ酸をビス-(αアミノ酸)-α,ω-ジオール-ジエステルモノマーに変換することができる。その結果、エステル結合が形成される。次に、カルボン酸の酸クロリド(ホスゲン、ジホスゲン、トリホスゲン)を、ビス-(αアミノ酸)-アルキレンジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩を用いる重縮合反応に入れ、エステル結合およびウレア結合の両方を有する最終ポリマーを得る。
【0114】
R1に少なくとも1つの二重結合を含むビス-(αアミノ酸)-アルキレンジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩の界面溶液濃縮によって、不飽和PEUを調製することができる。この目的のために有用な不飽和ジオールには、例えば、2-ブテン-1,4-ジオールおよび1,18-オクタデカ-9-エン-ジオールが含まれる。反応の前に、不飽和モノマーをアルカリ水溶液、例えば水酸化ナトリウム溶液に溶解させることができる。次に、外部冷却下で、等モル量の単量体、二量体、または三量体のホスゲンを含む有機溶媒層、例えばクロロホルムと共に、水溶液を激しく撹拌することができる。発熱反応は急速に進行し、(ほとんどの場合)有機溶媒中に溶解したままのポリマーが得られる。有機層を水で数回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、蒸発させることができる。収率約75%〜85%の不飽和PEUを、例えば約45℃で、真空乾燥させることができる。
【0115】
強力な多孔性材料を得るために、後述の基本手順を用いて、1-L-Leu-4および1-L-Leu-6などのL-LeuベースのPEUを製造することができる。L-PheベースのPEUに適用した場合、強力な多孔性材料の形成においてそのような手順はうまくいかない。
【0116】
界面重縮合の直後に得られる、クロロホルム中のPEUの反応液またはエマルジョン(約100 mL)を撹拌しながら、ガラスビーカー中、好ましくは、ビーカー壁へのPEUの接着を低減するためにジメチルジクロロシランにより疎水性としたビーカー中の、約80℃〜85℃の水1,000 mLに滴下する。ポリマー溶液を水中でバラバラにして小滴とし、クロロホルムを幾分活発に蒸発させる。クロロホルムが蒸発するにつれて徐々に小滴が合体して、密度の高い(compact)タール状の塊となり、これは変容して粘着性のゴム状生成物となる。このゴム状生成物をビーカーから取り出し、疎水化した円柱形のガラス試験管に入れ、これを約24時間、約80℃でサーモスタット制御する。その後、試験管をサーモスタットから取り出し、室温まで冷却し、壊して、ポリマーを得る。得られた多孔性の棒を真空乾燥器に入れ、約80℃で約24時間、減圧乾燥させる。また、多孔性ポリマー材料を得るための当技術分野で公知の任意の手順を使用することもできる。
【0117】
上記の手順により作製した高分子量の多孔性PEUの特性は、表1に要約された結果をもたらした。
【0118】
(表1)式 (VI) および (VII) のPEUポリマーの特性
*一般式 (VI) のPEUであり、
1-L-Leu-4では、R4 = (CH2)4、R3 = i-C4H9
1-L-Leu-6では、R4 = (CH2)6、R3 = i-C4H9
1-L-Phe-6では、R4 = (CH2)6、R3 = -CH2-C6H5
1-L-Leu-DASでは、R4 = 1,4:3,6-ジアンヒドロソルビトール、R3 = i-C4Hである。
粘度低下は、25℃、濃度0.5 g/dLのDMF中で測定した。
b) GPC測定はDMF(PMMA)中で実施した。
c) TgはDSC測定由来の第二の加熱曲線から得た(加熱速度10℃/min)。
d) GPC測定はDMAc(PS)中で実施した。
【0119】
例示的な合成PEUの引張力を測定したが、結果を表2に要約する。亜鈴形PEUフィルム(4×1.6 cm)を用いて引張力測定値を得たが、これはクロロホルム溶液から型どりされ、平均厚0.125 mmを有し、かつ、PCが組み込まれた引張力測定器(Chatillon TDC200)上で、Nexygen FMソフトウェア(Amtek, Largo, FL)を用いて、クロスヘッド速度60 mm/minで、引張力試験に供された。本明細書で例示した例は、以下の力学的特性を有することが予想できる:
1. 約30℃〜約90℃の範囲、例えば約35℃〜約70℃の範囲のガラス転移温度;
2. 平均厚約1.6 cmのポリマーのフィルムは、約20 Mpa〜約150 Mpa、例えば約25 Mpa〜約60 Mpaの引張降伏応力を有すると考えられる;
3. 平均厚約1.6 cmのポリマーのフィルムは、約10%〜約200%、例えば約50%〜約150%の伸長率を有すると考えられる;かつ
4. 平均厚約1.6 cmのポリマーのフィルムは、約500 MPa〜約2000 MPaの範囲のヤング率を有すると考えられる。以下の表2は、このタイプの例示的PEUの特性を要約するものである。
【0120】
(表2)PEUの力学的特性
【0121】
本発明の送達組成物の様々な構成要素は、広範な比率で存在できる。例えば、ポリマー反復単位:抗原または反復単位:治療用生物製剤は、典型的に、1:50〜50:1の範囲、例えば1:10〜10:1、約1:3〜3:1、または約1:1の比率で使用される。しかし、特定の抗原を特定のポリマーに組み込むことが難しくかつその免疫原性が低い場合(この場合はより大きな相対量の抗原が必要である)などの特定の目的に関しては、その他の比率がより適切である可能性がある。
【0122】
PEA、PEUR、およびPEUポリマーなどの本発明の送達組成物において使用されるポリマーは、表面において酵素作用により生物分解される。したがって、本ポリマー、例えばその粒子は、制御放出速度で抗原を被験体に投与するが、これは、長期間にわたって特異的かつ一定である。さらに、PEA、PEUR、およびPEUポリマーは、有害な副産物を生成することなくインビボにおいて加水分解酵素を介して崩壊するので、本発明の送達組成物は実質的に非炎症性である。本明細書で使用する、本発明の送達組成物中のポリマーを説明するために用いられる「生分解性」とは、身体の正常な機能においてポリマーが崩壊して無害な生成物になることができることを意味する。一態様において、送達組成物全体が生分解性である。好ましい生分解性ポリマーは、生分解性を与える加水分解性エステル結合を有し、典型的には主にアミノ基で終結する鎖である。
【0123】
本明細書で使用する「分散」とは、本明細書で開示した抗原またはアジュバントなどの分子がポリマー中で分散し、混合し、溶解し、均質化し、かつ共有結合または非共有結合する(「分散する」または負荷する)ことを意味するが、これは、粒子へと形成されてもされなくてもよい。例えば、本発明のワクチン送達組成物構築法において、少なくとも1つの抗原もしくはアジュバント、又はその両方を、タンパク質または抗原に特異的に結合するアフィニティーリガンドの複合体を介して、例えば、アフィニティーリガンドおよび遷移金属イオンを含む金属アフィニティー複合体を介して、ポリマーに非共有結合させる。2つ以上の抗原が望ましい場合、多価抗原または抗原+アジュバントを個別のポリマー中に分散させ、その後必要に応じて混合して最終ワクチン送達組成物を形成させてもよく、または、アジュバントを含むまたは含まない抗原を一緒に混合し、その後単一ポリマー中に分散させて最終ワクチン送達組成物を形成させてもよい。
【0124】
組換えタンパク質またはペプチド抗原の調製
細菌および真核細胞発現系などの生物における、ペプチド抗原を含む異種性ポリペプチドの組換え産生技術は当技術分野で周知であり、本出願において詳細な説明は必要でない。例えば、本発明の実施において使用される抗原および融合タンパク質の調製は、標準的組換えDNA法を用いて行うことができる。好ましくは、所望のアフィニティーペプチドをコードするヌクレオチド配列をまず合成し、次にHisタグをコードするヌクレオチド配列に連結する。本発明の方法において使用する合成生物製剤の産生のために、類似の方法を使用できる。
【0125】
このように得られたハイブリッド遺伝子を、標準的方法を用いて、プラスミドpDS8/RBSII、SphI;pDS5/RBSII、3A+5A;pDS78/RBSII;pDS56/RBSII、またはその他の市販のもしくは一般に入手可能なプラスミドなどの発現ベクターに組み込むことができる。必要な方法論の大部分は、技術分野の事情を説明するための参照により本明細書に組み入れられる、Maniatisら、"Molecular Cloning", Cold Spring Harbor Laboratory, 2001において認められる。
【0126】
本発明の融合タンパク質の発現に関する方法もまた、Maniatisら、上記に記載されている。これには以下の手順が含まれる:(a) ハイブリッド遺伝子が発現制御配列に操作可能に連結された発現ベクターを用いた、適切な宿主生物、例えば大腸菌(E. coli)または昆虫細胞系Sf9の形質転換;(b) 適切な増殖条件下での形質転換宿主生物の培養;ならびに(c) 宿主生物からの所望の融合タンパク質の抽出および単離。使用可能な宿主生物には、以下が非限定的に含まれる:Sf9およびSf21などの昆虫細胞系、グラム陰性菌およびグラム陽性菌、例えば、大腸菌株M15などの大腸菌および枯草菌(B. subtilis)株など。使用可能なその他の大腸菌株には、例えば大腸菌294(ATCC No. 3144)、大腸菌RR1(ATCC No. 31343)、および大腸菌W3110(ATCC No. 27325)が含まれる。現在、タンパク質またはポリペプチド抗原の適切な折りたたみを保証するためには、バキュロウイルスベクターで形質転換された昆虫細胞が好ましい。
【0127】
抗原タンパク質および抗原を組換えT細胞溶解物から選択的に捕捉するための3種類の方法
大量のタンパク質抗原およびペプチドを組換え遺伝子技術によって産生するために、タンパク質に対するコード領域を人工遺伝子に組み込み、これを、細菌中、通常は大腸菌中で、または、宿主昆虫T細胞中で複製するバキュロウイルスなどのウイルス中で、複製および発現させる。どの方法を用いたとしても、その後の送達組成物への組み込みのために、過剰発現した抗原または治療用生物製剤を、次に、細胞溶解物または培養上清から選択的に除去しなければならない。
【0128】
本発明の方法による細胞溶解物からの標的分子の選択的捕捉に関して、本明細書において3種類の方法を説明する。それぞれ構造式IIIおよびIVのPEAおよびPEURポリマーを用いて、抗原を含む標的分子を捕捉し、かつ同時にワクチン送達組成物のコアを形成する。本態様において、新鮮な溶解物とポリマーを直接混合し、それにより抗原-ポリマー複合体の形成がもたらされる。これらのPEAおよびPEURポリマーの各反復単位上にタンパク質捕捉箇所が存在するので、抗原-ポリマー複合体分子は、サイズろ過によって残りの溶解物から除去できるような十分な高分子量を有する。
【0129】
オリゴマー形成
本態様において、本発明のワクチン構築法を用いて、天然でオリゴマーを形成する抗原タンパク質を捕捉してもよい。一例として、インフルエンザA型ウイルスに由来する、ヘマグルチニン(HA)の機能的(functional)三量体およびノイラミニダーゼ(NA)の四量体が挙げられる。
【0130】
以前に調製された標的抗原プロモーターは、ポリマーの単位を反復するよう結合されている。抗原タンパク質のオリゴマー化を促進するバッチ条件下で、プロモーター-ポリマー複合体を溶解物と混合する。得られたオリゴマー-ポリマー複合体を、サイズろ過によって残りの濾液から除去する。オリゴマー化技術による本発明のワクチン送達組成物の調製についてのより完全な説明は、2006年1月31日出願の米国出願11/345,021に含まれる。
【0131】
抗体(Ab)認識
本方法を用いて、タンパク質およびポリペプチド抗原を捕捉することができ、それに対して、ヒト化モノクローナル抗体分子またはその活性断片(MAbまたはFAb)を、例えば本明細書に記載のように調製する。
【0132】
標的抗原に対して以前に調製されたMAbまたはFAb分子は、アミド結合またはシステイン-マレイミド結合形成を用いて直接的に、あるいは、本明細書に記載の、組み込まれたHisタグおよび金属アフィニティーリガンドによって、または、当技術分野で公知の、プロテインAもしくはプロテインGなどのポリマー結合Ab結合タンパク質ドメインによって間接的に、ポリマーの反復単位に結合されている。この態様において、抗体結合を促進するバッチ条件下でAb-ポリマー複合体を溶解物と混合する。得られた抗原-Ab-ポリマー複合体を、サイズろ過によって残りの濾液から取り出す。
【0133】
ポリマー-アフィニティーリガンド結合
金属アフィニティー複合体形成
本態様において、(A) イミダゾール誘導体、または (B) ニトリロ三酢酸(NTA)またはイミノ二酢酸(IDA)などのNTA誘導体などの適切な金属アフィニティーリガンドにより、ポリマーの反復単位を予め機能付与する。アフィニティーリガンドは、多種多様な適切な官能基を介して、生分解性ポリマーに直接結合される。例えば、生分解性ポリマーがポリエステルである場合、カルボキシル基の鎖末端を用いて、アフィニティーリガンド上の相補的部分(例えば、金属アフィニティーリガンドNTAまたはIDA上の1つまたは複数の遊離アミノ基)と反応することができる。例えば以下において、多種多様な適切な試薬および反応条件が開示されている:March's Advanced Organic Chemistry, Reactions, Mechanisms, and Structure, Fifth Edition, (2001);およびComprehensive Organic Transformations, Second Edition, Larock (1999)。
【0134】
その他の態様において、アフィニティーリガンドは、遊離アミド、エステル、エーテル、アミノ、ケトン、チオエーテル、スルフィニル、スルホニル、ジスルフィド結合を介して、構造 (I) または (III〜VII) のポリマーのいずれかに連結することができる。当技術分野で公知の合成手順を用いて、適切に機能付与された開始材料からそのような結合を形成することができる。例えば一態様において、ポリマーの末端またはペンダントカルボキシル基(例えばCOOH)を介して、ポリマーを金属アフィニティーリガンドに連結させることができる。具体的には、本発明の方法において使用される金属アフィニティーリガンドを、構造式III、V、およびVIIにより記載されるものなどの、ポリマーのアミノ官能基またはヒドロキシル官能基を有するポリマーと反応させることができるが、その一方で、金属アフィニティー複合体を介してポリマーに非共有結合的に付着した抗原を有する生分解性ポリマーを提供するために、遷移金属イオンとの配位複合体を形成するための遊離結合部位および抗原を含む分子の金属結合アミノ酸をそのままにしておく。別の態様において、ポリマーのカルボキシル基を変形させて、ハロゲン化アシル、アシル無水物/「混合」無水物、または活性エステルにすることができる。その他の態様において、アフィニティーリガンドが、ポリマーのカルボキシル基のみを介して付着するがポリマーの遊離端には付着しないことを確実にするために、ポリマー分子の遊離-NH2末端をアシル化することができる。例えば、抗原タンパク質または抗原がポリマーのカルボキシル基に形成されたアフィニティー複合体のみを介して付着するがポリマーの遊離端には付着しないことを確実にするために、本明細書に記載の本発明のワクチン送達組成物をPEA、PEUR、またはPEUから調製することができ、ここで、N末端遊離アミノ基は例えば無水RCOOCOR(式中、R = (C1-C24)アルキルである)でアシル化されている。
【0135】
例えば、一態様において、側鎖保護リシン(例えば、ε-N-Boc,OBn-Lys)は、構造式III、IV、またはVIIのPEA、PEUR、またはPEUポリマーの反復単位上の活性化カルボキシレートへ、アミド結合を介して結合する。脱保護に続いて、これらリシン残基の遊離ε-アミノ基を、2-イミダゾールカルボキシアルデヒドなどの金属アフィニティーリガンドとの反応によって修飾する。
【0136】
次に、Fe2+、Cu2+、またはNi2+より選択される遷移金属(TM)を、例えば2-イミダゾールカルボキシアルデヒドなどの金属アフィニティーリガンドに結合させる。得られたTM誘導体化ポリマーは、Trpまたはヒスチジン伸長、例えばHis6タグなどの1つまたは複数の金属結合アミノ酸残基を含むものなどの、タンパク質含有抗原と結合したTM(II)を介して、生体機能化されている(bio-functionalized)。
【0137】
形成された金属アフィニティー複合体の強度は、抗原または抗原を含む分子中の金属結合アミノ酸の数および分布ならびに使用した金属イオンによって変動する。本発明の実施において使用した金属イオンは、ニッケル(Ni2+)、銅(Cu2+)、亜鉛(Zn2+)、およびコバルト(Co2+)である。一般に、抗原または抗原を組み込んでいる融合タンパク質の、金属イオンに対する結合の強度は、以下の順で低下する:Cu2+ > Ni2+ > Co2+ > Zn2+。
【0138】
本態様において、本発明の送達組成物構築法の有効性の高さは、ポリマーと結合した金属アフィニティーリガンド、選択した金属遷移イオン、および標的分子中の金属結合アミノ酸、特にトリプトファン(Trp)およびヒスチジン(His)の相互作用に基づく。本発明の送達組成物構築法における使用に適した金属アフィニティーリガンドには、ニトリロ三酢酸(NTA)およびイミノ二酢酸(IDA)が含まれる。NTAは、109〜1014の安定度定数を有する様々な遷移金属に結合することが公知である、四座(tetradentate)金属アフィニティーリガンドである。ポリマー中の利用可能な官能基にNTAが結合した後も、その内部に複数の遊離金属配位部位が存在し続けるために、安定度定数は高いままである。例えば、イミノ二酢酸(IDA)を金属アフィニティーリガンドとして使用する場合、ポリマーへのIDAの結合後も、金属イオンが配位されうる二座キレート化部分は遊離状態のままである。金属イオン上の遊離配位部位が次に遊離して標的分子中の金属結合アミノ酸に結合するように、これらの結合金属アフィニティーリガンドを介して様々な金属イオンを配位させることができる。本発明の方法において使用する柔軟なポリマー鎖に沿って遊離官能基が位置しているので、標的分子表面上の結合部位に対して最良の位置に金属イオンを配置することができる。その結果、形成された複数の金属アフィニティー複合体を介して、標的分子を、非共有結合的ではあるが固くポリマーに結合させることができる。
【0139】
標的分子(例えば抗原、またはHisタグを含む融合ペプチド)中に少なくとも1つのヒスチジン残基が存在することは、抗原または治療用分子のポリマーへの結合のために重要な要素である。しかし、本発明の方法および組成物において短鎖抗原を使用する際、存在するαアミノ基もまた、ヒスチジン残基が存在しないならば、特に、システインおよびトリプトファンなどのその他の金属結合アミノ酸が抗原中に存在して結合に寄与するならば、抗原が時としてアフィニティーリガンドを介しても付着できるようにはたらく。結合に寄与するヒスチジン基のpK値は中性の範囲内であるので、ポリマーへの抗原の結合はpH値約7で生じることが予想される。しかし、個々のアミノ酸の実際のpK値は、隣接するアミノ酸残基の影響に強く依存して変動しうる。タンパク質構造に応じて、アミノ酸のpK値を、理論的pK値から最大で1pH単位較正できることが、様々な実験により示されている。したがって、pH値約8の反応液により結合の改善が達成されることが多い。
【0140】
金属配位複合体の形成の間に起こる相互作用におけるこれらの複雑性を除くと、抗原または標的分子中のヒスチジンまたはトリプトファンの数によって、使用するべき金属イオンの選択に関する一般的指針が提供され、これを以下の表3に示す。
【0141】
(表3)
【0142】
pH、緩衝液、およびイオン強度
反応液または分散液中の条件は、本発明の方法における金属アフィニティー複合体の形成に影響を与える。一般に、pH値約8により、より低いpH約6よりも強い結合が得られる。緩衝剤も結合に影響し、ここで、酢酸またはリン酸中で最も強い結合が生じ、アンモニウムまたはTris中で中程度の結合が生じ、クエン酸中で最も弱い結合が生じる。反応液中のイオン強度の制御も、複合体形成に影響する。約0.1M〜約1.0Mの濃度範囲、例えば約0.5M〜約0.9Mの間のNaClを用いて、望ましくないタンパク質-タンパク質イオン相互作用を抑制してもよい。
【0143】
同じく反応液または分散液中の金属イオンに結合するその他の物質の存在は、標的分子の結合を阻害する可能性がある。例えば、特に金属イオンが銅である場合、高濃度のイミダゾールは、金属複合体の結合特性に強く影響を及ぼす。同時に、反応液のpH値低下は、細胞溶解物などの複合体混合物由来の利用可能な標的分子の吸着をより少なくする。さらに、アフィニティー複合体によって荷電されないままのポリマーカルボキシ基とタンパク質とのイオン相互作用を阻害するために、比較的高いイオン強度であるべきである。例えば、反応液または分散液中の約0.1M〜1.0M NaCl、例えば0.5M〜約0.9M NaClの存在は、反応液中の望ましくないタンパク質結合を阻害するのに十分である。
【0144】
好ましくは、標的分子のアミノ末端またはカルボキシ末端に少なくとも1つのHisが存在し(すなわちHisタグ)、これは、金属アフィニティー複合体中の金属イオンへの抗原の結合の特異性の改善をもたらす。したがって、一態様において、結合特異性を確実にするためのタグとして、少なくとも1個〜約10個の隣接His残基、例えば約6個のHis残基(すなわちHis6)がアミノ末端およびカルボキシ末端の一方または両方に組み込まれる。Hisタグを追加する場合、Hisタグおよび金属キレート、例えばNi-NTA金属キレートを、最終送達組成物中に残存させる。
【0145】
本発明の方法で使用する抗原にHisタグを追加するかどうかに関わらず、抗原が最終産物中で金属配位複合体を介してポリマーに非共有結合するように、金属配位複合体およびポリマーはワクチン送達組成物中で抗原と共に残存する。したがって、Hisタグを有するまたは有さない抗原にポリマーを非共有結合的に連結する配位複合体が形成されたならば、必要なのは、反応液または分散液中のその他の(すなわち不要な)材料およびタンパク質から、ワクチン組成物を構成する複合体を分離することだけである。サイズ排除ろ過または遠心分離などの単純な手順および例えば当技術分野で公知かつ本明細書に記載のものなどの洗浄技術を、この目的のために使用することができる。
【0146】
一態様において、アフィニティーリガンドである構造式 (III) のポリマー組成物は、構造式 (XIV) を有するリンカーを介したポリマー-追加キレート剤の結合体に含まれる。
式中、R11は、その炭化水素鎖に2〜20個の炭素原子を含む任意の多官能性の疎水性または親水性リンカーであり、金属結合リガンド中のR12は式XV中で示されたとおりである。式 (V) および (VII) のポリマーならびに式 (XV) に記載のものなどのリガンドを含む、類似のアフィニティーリガンド-ポリマー組成物を調製することができる。
式中、R10はH、COOH、またはCOOR13であり、R13は(C1-C8)アルキルまたはベンジルである。
【0147】
別の例において、アフィニティーリガンドである6-アミノ-2-(ビス-カルボキシメチルアミノ)-ヘキサン酸(アミノブチル-、すなわちAB-NTA、式XVI)
を、アミド結合を介して直接的に、PEA、PEUR、またはPEUなどのアミノ酸含有ポリマーの反復単位上の活性化カルボン酸塩と結合させる。上述の遷移金属(TM)イオンを、次にキレート化NTAに結合させる。一態様において、得られたTM誘導体化ポリマーを、His6タグを包含する遺伝的に発現された抗原と結合したTMを介して、生体機能化用の細胞溶解物と接触させることができる。
【0148】
式XVIのアフィニティーリガンド(AB-NTA)は、リシンのα-N誘導体を表す。本明細書(実施例1)に開示した相同的リガンドの別の例は、一般式XVIIを有するオルニチン誘導体である。
式中、R9は独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレンであり;例えば、(C3-C6)アルキレン、(C3-C6)アルケニレンであり;かつR10は水素、(C1-C12)アルキル、または (C2-C12)アルケニルである。
【0149】
各6Hisタグのうち2つのヒスチジンのみが優先的に遷移金属イオンの各キレート化箇所に結合するので、6×ヒスチジンでタグ付けした抗原または全長抗原タンパク質とTM機能付与ポリマーとの間の複合体は、本明細書に記載の適切な金属アフィニティー複合体形成条件下で、架橋タンパク質-ポリマー複合体を作製することができる。溶解物巨大分子に関して、化学量論により制御される範囲内の、大きなサイズのこれらの架橋タンパク質-ポリマー複合体は、サイズ排除によるろ過を促進する。
【0150】
あるいは、その他の態様において、既に単離されたまたは合成の抗原またはアジュバントを、リンカー分子を介してポリマーに付着させてもよい。実際、生分解性ポリマーの表面疎水性を向上させるため、生分解性ポリマーの酵素活性化への到達しやすさを向上させるため、および、生分解性ポリマーの放出プロファイルを改善するために、リンカーを用いて抗原および/またはアジュバントを生分解性ポリマーに間接的に付着させてもよい。特定の態様において、リンカー化合物は、分子量(Mw)が約44〜約10,000、好ましくは44〜2000のポリ(エチレングリコール);セリンなどのアミノ酸;1〜100の反復単位を有するポリペプチド;および、任意のその他適切な低分子量ポリマーを含む。典型的には、リンカーは、抗原をポリマーから約5オングストローム〜約200オングストローム分離する。
【0151】
またさらなる態様において、リンカーは式W-A-Qの二価のラジカルであり、式中、Aは、(C1-C24)アルキル、(C2-C24)アルケニル、(C2-C24)アルキニル、(C3-C8)シクロアルキル、または (C6-C10)アリールであり、WおよびQはそれぞれ独立して、-N(R)C(=O)-、-C(=O)N(R)-、-OC(=O)-、-C(=O)O、-O-、-S-、-S(O)、-S(O)2-、-S-S-、-N(R)-、-C(=O)-であり、式中、各Rは独立してHまたは (C1-C6)アルキルである。
【0152】
上記のリンカーを説明するために使用する「アルキル」という用語は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ヘキシルなどを含む、直鎖または分枝鎖の炭化水素基を指す。
【0153】
本明細書で使用する、リンカーを説明するために用いる「アルケニル」とは、1つまたは複数の炭素-炭素二重結合を有する直鎖または分枝鎖の炭化水素基を指す。
【0154】
本明細書で使用する、リンカーを説明するために用いる「アルキニル」とは、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する直鎖または分枝鎖の炭化水素基を指す。
【0155】
本明細書で使用する、リンカーを説明するために用いる「アリール」とは、6〜14個の範囲の炭素原子を有する芳香族基を指す。
【0156】
特定の態様において、リンカーは約2〜約25アミノ酸を有するポリペプチドでありうる。使用が意図される適切なペプチドには、ポリ-L-リシン、ポリ-L-グルタミン酸、ポリ-L-アスパラギン酸、ポリ-L-ヒスチジン、ポリ-L-オルニチン、ポリ-L-スレオニン、ポリ-L-チロシン、ポリ-L-ロイシン、ポリ-L-リシン-L-フェニルアラニン、ポリ-L-アルギニン、ポリ-L-リシン-L-チロシンなどが含まれる。
【0157】
本発明の一態様において、合成の抗原または治療用生物製剤は、レトロ-逆ペプチドまたは部分的レトロ-逆ペプチドを提示した。
【0158】
その他の態様において、マトリックス中で光架橋可能な(photocrosslinkable)バージョンのポリマーと抗原を混合し、架橋後、関連する抗原提示細胞またはBリンパ球による取り込みに適したサイズまで、典型的には(これに限定されるわけではないが)約0.1〜10μmのサイズ範囲まで、材料を分散させる(例えばすりつぶす)。
【0159】
金属アフィニティーリガンド以外のリンカーを、ポリマーまたは抗原もしくはアジュバントにまず付着させることができる。合成の間、リンカーは、無保護形態または、当業者に周知の様々な保護基を用いた保護形態のいずれかであることができる。保護リンカーの場合、リンカーの無保護末端をまずポリマーまたは抗原に付着させることができる。次に、Pd/H2水素化分解、温和な酸もしくは塩基加水分解、または、当技術分野で公知の任意のその他の一般的な脱保護法を用いて、保護基を脱保護することができる。脱保護リンカーを、その後、抗原、アジュバント、またはアジュバント/抗原結合体に付着させることができる。
【0160】
本発明による生分解性ポリマーの例示的な合成(ここで、付着対象となる分子はアミノキシルである)を、以下に示す。アミノ部分がポリマーのカルボキシル基のカルボニル残基の炭素に共有結合するように、アミド結合を有するポリエステルの鎖末端のカルボン酸部分をアミノ置換アミノキシル含有ラジカルへと置換するために、N,N'-カルボニルジイミダゾールの存在下で、ポリエステルをアミノ置換N-オキシドフリーラジカル(アミノキシル)含有基、例えば4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシと反応させることができる。N,N'-カルボニルジイミダゾールまたは適切なカルボジイミドは、ポリエステルの鎖末端におけるカルボキシル基のヒドロキシル部分を、アミノキシル、例えば4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシと反応しうる中間産物部分に転換する。アミノキシル反応物は典型的に、1:1〜100:1の範囲にわたる反応物対ポリエステルのモル比で使用される。N,N'-カルボニルジイミダゾール対アミノキシルのモル比は、好ましくは約1:1である。
【0161】
そのような態様において、典型的な反応は以下の通りである。ポリエステルが反応溶媒中に溶解し、溶解に使用される温度で反応が容易に実行される。反応溶媒は、ポリエステルが溶解しうる任意のものであってよい。ポリエステルがポリグリコール酸またはポリ(グリコリド-L-ラクチド)(グリコール酸対L-乳酸のモノマーモル比が50:50を上回る)である場合、115℃〜130℃において高度精製(純度99.9+%)ジメチルスルホキシドは、または室温においてジメチルスルホキシド(DMSO)は、適切にポリエステルを溶解させる。ポリエステルが、ポリ-L-乳酸、ポリ-DL-乳酸、またはポリ(グリコリド-L-ラクチド)(グリコール酸対L-乳酸のモノマーモル比が50:50または50:50を下回る)である場合、室温〜50℃において、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、およびクロロホルムはポリエステルを適切に溶解させる。
【0162】
ポリマー/抗原結合
その他の態様において、本明細書に記載の本発明の送達組成物を作製するために使用されるポリマーは、ポリマーに直接連結した、アフィニティーリガンド、抗原、アジュバント、または治療用生物製剤を有することができる。ポリマーの残基を、1つまたは複数のそのような分子の残基に連結させることができる。例えば、ポリマーの残基1つをアフィニティーリガンドの残基1つに直接連結させることができる。ポリマーおよびアフィニティーリガンドはそれぞれ、1の開放結合価(open valence)を有する。代替的に、2つ以上の抗原、多価抗原、または異なる病原微生物由来の抗原の混合物を、ポリマーに直接連結させることができ、あるいは、本明細書に記載のアフィニティーリガンド複合体を介してポリマーに連結させることができる。しかし、各抗原の残基をポリマーの対応残基に連結させることができるので、1つまたは複数の抗原の残基の数は、ポリマーの残基における開放結合価の数に対応しうる。
【0163】
本明細書で使用する「ポリマーの残基」とは、1以上の開放結合価を有するポリマーのラジカルを指す。ラジカルが抗原の残基に付着した場合に生理活性が実質的に保持されているという条件で、本発明のポリマー(例えばポリマー骨格上またはペンダント基上)の、任意の合成可能な原子1つもしくは複数または官能基を除去して、この開放結合価を提供することができる。さらに、ラジカルが抗原の残基に付着した場合に生理活性が実質的に保持されているという条件で、任意の合成可能な官能基(例えばカルボキシル)をポリマー上(例えばポリマー骨格上またはペンダント基上)に作製して、この開放結合価を提供することができる。所望の結合に基づいて、当業者は、当技術分野で公知の手順を用いて、本発明のポリマーに由来しうる、機能付与された開始材料を適切に選択することができる。
【0164】
本明細書で使用する「構造式 (*) の化合物の残基」とは、1以上の開放結合価を有する、本明細書に記載の式 (I) および (III〜VII) のポリマーの化合物のラジカルを指す。ラジカルが抗原の残基に付着した場合に生理活性が実質的に保持されているという条件で、化合物の(例えばポリマー骨格上またはペンダント基上の)任意の合成可能な原子1つもしくは複数または官能基を除去して、この開放結合価を提供することができる。さらに、ラジカルが抗原の残基に付着した場合に生理活性が実質的に保持されているという条件で、任意の合成可能な官能基(例えばカルボキシル)を式 (I) および (III〜VII) の化合物上(例えばポリマー骨格上またはペンダント基上)に作製して、この開放結合価を提供することができる。所望の結合に基づいて、当業者は、当技術分野で公知の手順を用いて、式 (I) および (III〜VII) の化合物に由来しうる、機能付与された開始材料を適切に選択することができる。
【0165】
例えば、抗原またはアジュバントの残基を、アミド(例えば、-N(R)C(=O)-または-C(=O)N(R)-)、エステル(例えば、-OC(=O)-または-C(=O)O-)、エーテル(例えば、-O-)、アミノ(例えば、-N(R)-)、ケトン(例えば、-C(=O)-)、チオエーテル(例えば、-S-)、スルフィニル(例えば、-S(O)-)、スルホニル(例えば、-S(O)2-)、ジスルフィド(例えば、-S-S-)、または直接(例えば、C-C結合)結合を介して(式中、各Rは独立して、Hまたは (C1-C6)アルキルである)、構造式 (I) および (III〜VII) の化合物の残基に連結させることができる。当技術分野で公知の合成手順を用いて、適切に機能付与された開始材料からそのような結合を形成することができる。所望の結合に基づいて、当業者は、当技術分野で公知の手順を用いて、構造式 (I) および (III〜VII) のいずれか一つの化合物の残基に由来しうる、ならびに抗原またはアジュバントの所与の残基に由来しうる機能的開始材料を適切に選択することができる。抗原またはアジュバントの残基を、構造式 (I) および (III〜VII) のいずれか1つの化合物の残基上の任意の合成可能な部位に連結させることができる。さらにまた本発明は、構造式 (I) および (III〜VII) のいずれか1つの化合物に直接連結された抗原またはアジュバント生理活性物質の残基を2つ以上有する化合物も提供する。
【0166】
ポリマー分子に連結できる抗原または治療用生物製剤の数は、典型的にはポリマーの分子量に依存しうる。例えば、構造式 (I) または (III) の化合物(式中、nは約5〜約150である)については、抗原またはアフィニティーリガンドをポリマーの末端基と反応させることにより、好ましくは約5〜約70、最大約150の抗原(すなわちその残基)をポリマー(すなわちその残基)に連結することができる。不飽和ポリマーにおいては、抗原またはアフィニティーリガンドをポリマー中の二重(または三重)結合と反応させることもできる。
【0167】
本発明の送達組成物を本明細書に記載のように形成したら、さらに製剤化して粒子とすることができる。特定の態様において、当技術分野で周知でありかつ本明細書に記載の複数の技術のいずれかを用いて、粒子中に物理的に組み込まれた(分散された)か、任意でリンカーを使用することによってポリマー官能基に付着した、抗原/アジュバント結合体またはアジュバントを有するもしくは有さない抗原を有する粒子として、本明細書に記載の本発明のワクチン送達組成物を提供することができる。ワクチン送達組成物に関して、粒子はAPCによる取り込みのための大きさとされ、例えば、約10ナノメートル〜約1000ミクロンの範囲の、または約10ナノメートル〜約100ミクロンの範囲の平均直径を有する。任意で、粒子は、その生分解性の制御を補助するための、ポリマーの薄い被覆をさらに含むことができる。典型的にはそのような粒子は、ポリマー分子あたり、約1〜約150個の抗原および/またはアジュバント分子を含む。
【0168】
アジュバントは、ポリマーに共有結合的に結合してもよく、非共有結合的に結合してもよく、または、ポリマー中で(結合ではなく)マトリクス化してもよい。このように、本発明の組成物のポリマー中にアジュバントを「分散」させることができる。ポリマー中でアジュバントを分散させるのに使用する方法は、抗原を付着させるのに使用する方法と同じでも異なってもよく、かつ、本発明の組成物を粒子へと形成する前または後のいずれで実施してもよい。選択される方法はアジュバントの性質に影響されると考えられる。例えば、抗原の付着に関して本明細書に記載の方法を用いて、アミノ酸および/または金属結合タグを含むアジュバントを、非共有結合的にポリマー-アフィニティーリガンド-金属イオン組成物につなぐことができる。あるいは、2006年11月21日出願の同時係属中の米国出願 (Docket No. MEDIV3020-2)に記載の方法を用いて、アジュバント(またはその凝集物、オリゴマー、または結晶)としての巨大分子生物製剤が共有結合的にポリマーに付着し、その天然活性が維持されるようにポリマー粒子へと取り込まれてもよい。またさらに、2006年1月31日出願の同時係属中の米国出願11/345,021(Docket No. MEDIV 2050-4)に記載の方法を用いて、有機分子などの非重合アジュバントをポリマー粒子中に分散させることができる。
【0169】
不混和性の溶媒技術を用いて、本発明の送達組成物の粒子を作製することができる。一般に、これらの方法は2種類の不混和性の液体のエマルジョンの調製を必要とする。単一エマルジョン法を用いて、疎水性アジュバントを組み込んだ粒子を作製することができる。この方法において、粒子中に組み込まれるべきアジュバント分子をまず溶媒中でポリマーと混合し、次に、界面活性剤などの表面安定剤を用いて水溶液中で乳化させる。このようにして、疎水性アジュバント、抗原、またはアジュバント/抗原結合体を有するポリマー粒子を形成して水溶液中で懸濁し、ここで、粒子中の疎水性結合体は水溶液中に有意に溶出することなく安定と考えられるが、そのような分子は筋肉組織などの身体組織中に溶出すると考えられる。
【0170】
粒子の製造に使用されるエマルジョンの作製において、多くの乳化技術が役立つであろう。しかし、現在好ましいエマルジョン作製法は、水中で混和性ではない溶媒の使用によるものである。乳化手順は、溶媒を用いてポリマー-アフィニティーリガンド複合体を溶解させる工程、任意の所望のアジュバント粒子と混合する工程、水中に入れる工程、ならびにその後、ミキサーおよび/または超音波処理器を用いて撹拌する工程からなる。撹拌速度、ならびに/または、ポリマー-アフィニティーリガンド複合体、アジュバント分子、および表面安定剤の濃度を制御することによって、粒度を制御することができる。第二のエマルジョン:第三のエマルジョンの比を調整することによって、コーティングの厚さを制御することができる。上述の粒子形成法のいずれにおいても、粒子形成後に粒子中のポリマーに結合させることによって、任意のアジュバントを粒子表面上のコーティング中に存在させることができる。
【0171】
適切なエマルジョン安定剤は、マンニドモノオレエート(mannide monooleate)、デキストラン70,000、ポリオキシエチレンエーテル、ポリグリコールエーテルなどの非イオン性界面活性剤を有しうり、その全てが、例えばSigma Chemical Co., St. Louis, Moから、容易に購入可能である。界面活性剤は、約0.3%〜約10%、好ましくは約0.5%〜約8%、より好ましくは約1%〜約5%の濃度で存在しうる。
【0172】
本明細書に記載のPEA、PEUR、およびPEUポリマーは容易に水を吸収し(ポリマーフィルム上で、5〜25% w/wの水の取り込み)、それを介して抗原および多くのアジュバントなどの親水性分子を容易に拡散させる。この特徴によって、PEA、PEUR、およびPEUポリマーは、抗原/アジュバントの放出速度を制御するためのポリマー粒子上への保護コーティングとしての使用に適したものとなる。水の吸収はまた、ポリマーおよびそのようなポリマーベースの送達組成物の生体適合性も増大させる。さらに、インビボにおいて送達された場合、PEA、PEUR、およびPEUポリマーの親水特性のために、特にインビボ温度において、粒子は粘着性となりかつ凝塊形成する。したがって、皮下注射用針または無針注射によるなど、皮下もしくは筋肉内注射された場合または、所送達用に経皮送達された場合、ポリマー粒子は自然にポリマーデポーを形成する。
【0173】
体内への循環を許容しない大きさである、約1ミクロン〜約100ミクロンの範囲の平均直径を有する粒子が、インビトロにおけるそのようなポリマーデポーの形成に適している。あるいは、経口投与に関しては、GI管は、よりずっと大きな粒子、例えば平均直径が約1ミクロン〜約1000ミクロンの微粒子を許容できる。
【0174】
例えば、典型的には、約24時間、約7日間、約30日間、または約90日間、またはそれ以上から選択された期間にわたってポリマーデポーは崩壊すると考えられる。適切な免疫応答を得るために繰り返しワクチン注射する必要がない埋込型ワクチン送達組成物を提供するためには、比較的長い期間が特に適している。
【0175】
本明細書に記載のポリマー粒子からのアジュバント/抗原の放出速度は、コーティングの厚さ、粒子の外側を被覆するアジュバント分子の数、粒度、構造、およびコーティングの密度を調整することによって制御することができる。コーティングの密度は、存在するならば、コーティング中のアジュバントの負荷量を調整することによって、調整できる。コーティングがアジュバントを含まない場合、ポリマーコーティングは最も高密度であり、抗原はコーティングを介して最もゆっくりと溶出する。対照的に、アジュバント/抗原がコーティング中に負荷されている場合、アジュバント/抗原が溶出される(コーティングの外側表面から開始する)とコーティングは多孔性になり、したがって、粒子の中心のアジュバント/抗原は速い速度で溶出することができる。被覆中のアジュバント負荷量が多いほど、コーティング層の密度は低くなり、溶出速度は速くなる。コーティング中のアジュバント/抗原の負荷量を、外側コーティングの真下の粒子の内側においてよりも小さくすることができる。また、上述のように調製された、放出速度の異なる粒子を混合することによって、粒子からのアジュバント/抗原の放出速度を制御することもできる。
【0176】
またさらなる態様において、粒子を、約20 nm〜約500 nmの平均直径を有するナノ粒子にすることができる。上述のように、その内部に分散した、すなわちエマルジョン中に混合されたまたはポリマーに結合した抗原を用いた単一エマルジョン法によって、ナノ粒子を作製することができる。またナノ粒子は、本明細書に記載のPEAまたはPEURポリマーを含むミセルとして提供することもできる。ミセルは水中で形成され、溶媒の非存在下で、任意のアジュバントタンパク質とともに水溶性の抗原をミセル中に同時に負荷させる。
【0177】
より詳細には、疎水性ポリマー鎖と結合した水溶性イオン化ポリマー鎖で、生分解性ミセルを形成する。ミセルの外側部分が主にポリマーの水溶性イオン化セクションからなる一方で、ポリマーの疎水性セクションは主に分割されてミセルの内側となり、ポリマー分子を共に保有する。
【0178】
ミセルの作製に用いるポリマーの生分解性の疎水性セクションは、本明細書に記載のPEA、PEUR、またはPEUポリマーで作製される。強い疎水性を有するPEA、PEUR、またはPEUポリマーに関しては、1,4:3,6-ジアンヒドロ-D-ソルビトールのジ-L-ロイシンエステルまたはα,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)(C1-C8)アルカンのような剛性芳香族二酸などの構成要素を、ポリマー反復単位中に含めてもよい。対照的に、ポリマーの水溶性セクションは、ポリエチレングリコール、ポリグリコサミノグリカン、または多糖と、少なくとも1つのイオン化アミノ酸または極性アミノ酸の交互反復単位(repeating alternating unit)とを含み、ここで、交互反復単位は実質的に同じ分子量を有し、かつポリマーの分子量は約10kD〜約300kDの範囲である。水溶性セクションの分子量が増加すればするほど、ミセルの多孔性が増大し、その鎖がより長くなり、これによって高負荷量の水溶性抗原および任意のアジュバントが可能になる。さらに、ポリアミノ酸は単一アミノ酸よりも高い免疫原性を有する。
【0179】
交互反復単位は、約300D〜約700Dの範囲の、実質的に同じ分子量を有する。ポリマーの分子量が10kDを上回る一態様において、少なくとも1つのアミノ酸単位が、セリン、グルタミン酸、アスパラギン酸、リシン、およびアルギニンより選択されるイオン化アミノ酸または極性アミノ酸である。一態様において、イオン化アミノ酸の単位は、グルタメートまたはアスパルテートなどの少なくとも1ブロックのイオン化ポリ(アミノ酸)を含み、これをポリマー中に含めることができる。本発明のミセル組成物は、ポリマーの水溶性セクション中のイオン化アミノ酸の少なくとも一部がイオン化されるpH値を有する、薬学的に許容される水性媒体をさらに含みうる。
【0180】
生分解性疎水性ポリマー鎖は、本発明に記載のPEA、PEUR、またはPEUポリマーで作製される。強い疎水性を有するPEA、PEUR、またはPEUに関して、1,3-ビス(-4-カルボキシレート-フェノキシ)-プロパン(CPP)および/または、-1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール-D-ソルビトール(DAS)のビス(-L-ロイシン)ジエステルなどの構成要素を疎水性ポリマー鎖に含めることができる。対照的に、水溶性鎖はポリエチレングリコール(PEG)および、(ポリ)リシンまたは(ポリ)グルタメートなどのイオン化アミノ酸の多数の反復単位で作製され、ここで、PEU単位およびイオン化アミノ酸単位は同様の分子量、例えば数百kDを有する(すなわちPEG単位は、この範囲内の実質的に任意の分子量を有しうる)。しかし、ポリマーの水溶性セクションの合計分子量は、例えば、約10kD〜約300kDの範囲である。水溶性セクションの分子量が増加するほど、ミセルの多孔性が増大し、その鎖がより長くなり、これによって高負荷量の水溶性抗原および任意のアジュバントが可能になる。さらに、ポリアミノ酸は単一アミノ酸よりも高い免疫原性を有する。
【0181】
ミセル内の荷電部分を水中で部分的に互いから分離させ、ポリマーおよび任意のアジュバントに付着した抗原含有アフィニティー複合体などの水溶性物質の吸収用の空間をつくる。同じタイプの電荷を有するイオン化鎖は互いに反発し、より大きな空間をつくると考えられる。またイオン化ポリマーは抗原を引きつけ、これによりマトリックスに安定性を与える。さらに、ミセルの水溶性外部は、イオン化部位がアジュバントによって利用された後の体液中のタンパク質へのミセルの接着を阻害する。このタイプのミセルは、ミセル体積の最大95%と非常に高い多孔性を有し、これによって、高負荷量の水溶性生物製剤、例えば様々なアジュバントなどが可能になる。ミセルの粒度範囲は約20 nm〜約200 nmであり、血中で循環するためには約20 nm〜約100 nmが好ましい。
【0182】
本明細書に記載のポリマー粒子からのアジュバント/抗原の放出速度は、コーティング厚、粒度、構造、およびコーティング密度を調整することにより制御できる。コーティングの密度は、コーティング中のアジュバント/抗原の負荷量を変動させることによって調整できる。コーティングが抗原もアジュバントも含まない場合、ポリマーコーティングは最も高密度であり、コーティングを通じた抗原および任意のアジュバントの溶出が最も遅い。対照的に、抗原またはアジュバントがコーティング中に負荷されている場合、抗原またはアジュバントが溶出される(コーティングの外側表面から開始する)とコーティングは多孔性になり、したがって、粒子の中心の活性物質は速い速度で溶出することができる。コーティング層中の負荷量が大きくなればなるほど密度は低くなり、溶出速度は速くなる。コーティング中のアジュバント/抗原の負荷量は、外側コーティングの真下の粒子の内側においてよりも小さくすることができる。また、上述のように調製された異なる放出速度を有する粒子を混合することによって、粒子からのアジュバント/抗原の放出速度を制御することもできる。
【0183】
例えばヘリウムネオンレーザー内蔵分光計を用いた、例えばレーザー光散乱によって、粒度を測定することができる。一般に、粒度は室温で測定され、粒子の直径の平均値を得るために問題の試料の複数回分析(例えば5〜10回)を必要とする。また粒度は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて容易に決定される。これを行うために、約100オングストロームの厚さとなるまで乾燥粒子を金/パラジウム混合物でスパッタコーティングし(sputter-coated)、その後、走査型電子顕微鏡を用いて試験する。あるいは、抗原含有アフィニティー複合体を介して非共有結合的にポリマーに付着させるよりむしろ、抗原を、当技術分野で周知かつ本明細書で後述するいくつかの方法のいずれかを用いて、(すなわち「負荷」または「マトリクス化」によって)ポリマー中に分散させることができる。抗原含量は一般に、ポリマーに対して約0.1%〜約40% (w/w) の抗原に相当する量であり、例えば、約1%〜約25% (w/w) の抗原、または約2%〜約20% (w/w) の抗原である。抗原の重量パーセントは、以下でより詳述するように、所望の用量および治療される状態に左右される。いずれにしても、粒子またはポリマー分子のいずれかとしての本発明の送達組成物の調製後、該組成物を凍結乾燥することができ、使用前に乾燥組成物を適切なビヒクル中で懸濁する。
【0184】
本発明の送達組成物中に含まれる抗原および任意のアジュバントまたは治療用生物製剤を含む任意の適切かつ有効な量の粒子またはポリマー断片を、ポリマー粒子(インビボにおいて形成されたポリマーデポー中のものを含む)から経時的に放出することができ、かつこれは典型的に、例えば、使用された特定のポリマー、抗原、アジュバント、または治療用生物製剤および、存在するならばポリマー/抗原結合に左右されると考えられる。典型的には、最大100%のポリマー粒子または分子をポリマーデポーから放出することができる。具体的には、その最大約90%、最大75%、最大50%、または最大25%をポリマーデポーから放出することができる。ポリマーからの放出速度に典型的に影響する要素は、ポリマーの性質および量、ポリマー/抗原結合および/もしくは治療用生物製剤結合のタイプ、ならびに、製剤中に存在する追加の物質の性質および量である。
【0185】
上述のように本発明の方法を用いて送達組成物が構築されたら、その後の送達のために該組成物を製剤化することができる。例えば、粘膜送達または皮下送達に関しては、本組成物は一般に、水、生理食塩水、グリセロール、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、エタノールなどの、粘膜送達または皮下送達に適した「薬学的に許容される賦形剤またはビヒクル」を1種又は複数含むと考えられる。さらに、湿潤剤または乳化剤などの補助物質、pH緩衝物質などがそのようなビヒクル中に存在してもよい。
【0186】
鼻腔内および肺用の製剤は通常、鼻粘膜への刺激も引き起こさず毛様体機能を有意に妨害することもないビヒクルを含むと考えられる。水、水性の生理食塩水またはその他の公知の物質などの希釈剤を、本発明と共に用いることができる。また鼻用製剤も、これらに限定されるわけではないが、クロロブタノールおよび塩化ベンザルコニウムなどの保存剤を含みうる。鼻粘膜による吸収を増大させるために界面活性剤を含めてもよい。
【0187】
直腸用および尿道用の座剤に関しては、カカオバター(カカオ脂)またはその他のトリグリセリド、エステル化、水素化、および/または分溜によって改変された植物油、グリセリンゼラチン、ポリアルカリグリコール(polyalkaline glycol)、様々な分子量のポリエチレングリコールの混合物、ならびにポリエチレングリコールの脂肪酸エステルなどの伝統的な結合剤および担体が、ビヒクルに含まれる。
【0188】
膣内送達に関しては、本発明の製剤を、ポリエチレントリグリセリドの混合物を含むものなどのペッサリー基剤に組み込むことができ、あるいは、任意でコロイドシリカを含む、トウモロコシ油またはゴマ油などの油中に懸濁することができる。例えば、Richardson et al., Int. J. Pharm. (1995) 115:9-15を参照されたい。
【0189】
特定の送達様式に関して使用するための適切なビヒクルのさらなる考察については、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Mack Publishing Company, Easton, Pa., 19th edition, 1995を参照されたい。当業者は、特定の抗原および送達部位に使用するための適切なビヒクルを容易に決定することができる。
【0190】
本発明の方法において構築される組成物は、関心対象の抗原または治療用生物製剤の「有効量」を含みうる。すなわち、症状を予防する、減少させる、または消失させるために十分な免疫応答を被験体に生じさせるであろう量の抗原が、本組成物中に含まれると考えられる。あるいは、症状を予防する、減少させる、または消失させるであろう量の治療用生物製剤が、本組成物中に含まれると考えられる。中でもとりわけ、治療される被験体;治療されるべき被験体の年齢および全身状態;被験体の免疫系が抗体または適切な細胞媒介応答を合成する能力;所望の防御の程度;治療される状態の重傷度;選択された特定の抗原または治療用生物製剤、ならびにその投与様式に応じて、正確な必要量が変動すると考えられる。適切な有効量は当業者により容易に決定できる。したがって、「有効量」は通常の試験によって決定できる比較的広い範囲を有する。例えば、本発明の目的に関して、用量あたりの送達される抗原の有効量は典型的には約1μg〜約100 mg、例えば約5μg〜約1 mg、または約10μg〜約500μgの範囲にわたる。
【0191】
一旦製剤化されたら、本発明の組成物は、標準技術を用いて、粘膜または皮下の注射によって、またはその他の送達経路によって投与される。例えば、鼻腔内、肺、膣、および直腸技術を含む粘膜送達技術については、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Mack Publishing Company, Easton, Pa., 19th edition, 1995、ならびに、鼻腔内投与技術については、欧州公報第517,565号およびIllum et al., J. Controlled Rel. (1994) 29:133-141を参照されたい。
【0192】
投薬治療は、本発明の徐放性送達組成物の単回投与であってもよく、当技術分野で公知の複数回投与スケジュールであってもよい。ワクチン送達組成物に関して、ブースターは、初回免疫応答のために投与されたのと同じ製剤を用いてもよく、異なる製剤を用いてもよい。また投薬レジメンは、少なくとも部分的に、被験体の要求によっても決定されうるが、これは医師の判断に基づく。さらに、疾患の予防が望まれる場合、ワクチン送達組成物は通常、関心対象の病原体への一次感染の前に投与される。例えば症状または再発の減少などの治療が望まれる場合、ワクチン送達組成物は通常、一次感染の後に投与される。
【0193】
皮下送達または粘膜送達のために開発されたいくつかの動物モデルにおいて、本発明の組成物をインビボ試験することができる。例えば覚醒(conscious)ヒツジモデルは、物質の鼻送達を試験するための人工の承認モデル(art-recognized model)である。例えば、Longenecker et al., J. Pharm. Sd. (1987) 76:351-355およびIllum et al., J. Controlled Rel. (1994) 29: 133-141を参照されたい。一般に粉末状で凍結乾燥形状のワクチン送達組成物を、鼻腔内へと吹き込む。上述のように、当技術分野で公知の標準技術を用いて、抗体力価について血液試料を分析することができる。細胞免疫応答も、上述のようにモニターすることができる。
【0194】
献血された免疫化ヒトボランティアであっても、マウスまたはその他動物のどちらであってもよいドナーに由来する細胞を用いた、細胞媒介免疫応答に関する一連のインビトロアッセイ法が、現在存在している。アッセイ法には細胞がドナーに由来する状況が含まれるが、一部のアッセイ法では、その他の供給源、例えばB細胞系から、抗原提示細胞の供給源を提供する。これらのインビトロアッセイ法には以下が含まれる:蛍光活性化フローサイトメトリーによる細胞表面マーカー分析、サイトカイン産生に関するアッセイ法、例えば細胞内サイトカインアッセイ法、および、酵素結合免疫吸着スポット検定法(ELISPOT)、抗原特異的T細胞受容体発現の分析(フローサイトメトリーによる四量体分析)、細胞障害性Tリンパ球アッセイ法;リンパ球増殖アッセイ法、例えばトリチウムチミジン取り込み;プロテインキナーゼアッセイ法、イオン輸送アッセイ法、ならびにリンパ球遊走阻害機能アッセイ法(Hickling, J. K. et al. (1987) J. Virol., 61: 3463;Hengel, H. et al. (1987) J. Immunol, 139: 4196;Thorley-Lawson, D. A. et al. (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84: 5384;Kadival, G. J. et al. (1987) J. Immunol, 139:2447;Samuelson, L. E. et al. (1987) J. Immunol, 139:2708;Cason, J. et al. (1987) J. Immunol. Meth., 102:109;およびTsein, R. J. et al. (1982) Nature, 293: 68)。
【0195】
T細胞により認識されたペプチドがT細胞を活性化して免疫応答を生じるかどうかを試験するために、いわゆる「機能検査」を用いる。酵素結合免疫スポット(ELISpot)アッセイ法は、マイクロプレート上のサイトカインまたはエフェクター分子に特異的なモノクローナル抗体の付着によって特異的サイトカインまたはその他のエフェクター分子を分泌する個別の細胞の検出用に適合化されている。抗原によって刺激された細胞を、固定化抗体と接触させる。細胞および全ての被結合物質を洗い流した後、同じサイトカインまたはその他のエフェクター分子に特異的な、抗体タグ付きのポリクローナル抗体、またはより多くの場合はモノクローナル抗体を、ウェルに加える。洗浄後、色つき沈殿物(すなわちスポット)がサイトカイン局在の位置で形成されるような反応条件下で、タグ付き抗体に対する基質を添加する。応答を定量化するために、スポットを手作業で、または自動ELISpotリーダー構成(composition)を用いて数えることができる。被験ペプチドによるT細胞活性化の最終確認には、例えばマウスまたはその他の動物モデルにおけるインビボ試験が必要であり得る。
【0196】
容易に明らかであるように、本発明の方法を用いて構築されたワクチン送達組成物は、ウイルス、細菌、寄生虫、および真菌に対する免疫応答を誘発するため、そのような病原体により引き起こされる多種多様な疾患および感染を治療および/または予防するため、ならびに、様々な腫瘍抗原に対する免疫応答を刺激するために有用である。本組成物は上述のように治療的または予防的に使用することができるだけでなく、例えば診断目的でおよび関心対象の抗原の免疫精製用にポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の両方を調製するためにも本組成物を使用することができる。ポリクローナル抗体が望ましい場合、選択された哺乳動物(例えばマウス、ウサギ、ヤギ、ウマなど)を、本発明の組成物で免疫化する。任意で、1回または複数回の抗原投与によって、動物を2〜6週間後にブーストする。次に、ポリクローナル抗血清を免疫動物から入手し、例えば防御応答または治療応答のどちらが誘発されているかを判定するために、公知の手順に従って処置する。例えば、Jurgens et al. (1985) J. Chrom. 348:363-370を参照されたい。
【0197】
モノクローナル抗体は一般に、Kohler and Milstein, Nature (1975) 256:495-96の方法またはその変法を用いて調製される。典型的には、マウスまたはラットを上述のように免疫化する。しかし、血清を抽出するために動物を放血するよりもむしろ、脾臓(および任意で、複数の大リンパ節)を取り出し、解離させて単一の細胞にする。望ましいならば、(非特異的接着T細胞を除去した後に)タンパク質抗原で被覆したプレートまたはウェルに細胞懸濁物を適用することによって、脾臓細胞をスクリーニングしてもよい。抗原に特異的な膜結合イムノグロブリンを発現するB細胞はプレートに結合すると考えられ、これらは懸濁物の残りと共に洗い流されることはない。得られたB細胞、または解離した全脾臓細胞を、ハイブリドーマを形成させるためにメラノーマ細胞と融合するよう誘導し、選択培地(例えば、ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン培地である「HAT」)中で培養する。得られたハイブリドーマを限界希釈によってプレーティングし、免疫抗原に特異的に結合する(かつ無関係の抗原に結合しない)抗体の産生について分析する。選択されたモノクローナル抗体分泌ハイブリドーマを次に、インビトロ(例えば、組織培養ボトルまたは中空繊維リアクタ中)またはインビボ(マウス中の腹水として)のいずれかで培養する。例えば、M. Schreier et al., Hybridoma Techniques (1980);Hammerling et al., Monoclonal Antibodies and T-cell Hybridomas (1981);Kennett et al., Monoclonal Antibodies (1980)を参照されたい;同じく、米国特許第4,341,761号;同第4,399,121号;同第4,427,783号;第4,444,887号;同第4,466,917号;同第4,472,500号;第4,491,632号;および同第4,493,890号を参照されたい。関心対象のポリペプチドに対して産生されたモノクローナル抗体の集団を、種々な特性に関して、すなわち、イソ型、エピトープ、親和性などに関して、スクリーニングすることができる。
【0198】
以下の実施例は、本発明の限定ではなく、例示を意図したものである。
【0199】
実施例1
アフィニティリガンドの合成:
金属複合体形成のために有用な3つのリガンドの合成を記載する。
【0200】
アフィニティリガンド6-アミノ-2-(ビス-カルボキシメチルアミノ)-ヘキサン酸(AB-NTA)、(式XVI)を発表されている方法に従って合成した(E. Hochuli, H. Dobeli and A. Schacher J. Chromatography, 411, 177-184, 1987)。
【0201】
NTA(Orn)-リガンド合成(式XVII、ここでR9=(CH2)3;およびR10=H)
Nδ-Z-NTA(Orn)-N-アルキル化段階:ブロモ酢酸(4.17g、30.0mmol)を1.5N NaOH(15mL)に溶解し、0℃に冷却した。NaOH(25mL)中のNδ-ベンジルオキシカルボニル-L-オルニチン(3.99g、15.0mmol)をこの溶液に滴下した。最初、溶液は乳白色になったが、1.5N NaOH(5.0mL)を加えた後、溶液は再度澄明となった。冷却浴中で2時間後、溶液を室温で終夜撹拌した(pHを約12.0以上に維持し、さもないと沈澱が生じた)。50℃で2時間加熱し、室温まで冷却した後、1M HCl(60mL)を滴下した。生成した沈澱を集中漏斗でろ過した。こうして得た白色固体を脱イオン水(2×25mL)で洗浄し、45℃、減圧下で乾燥した。純粋な生成物収量は2.9gであった。
【0202】
NTA(Orn)-水素添加段階:Nδ-Z-NTA(Orn)(2.5g、6.53mmol)をメタノール/水(20:1、66mL)に溶解し、10%Pd/C(125mg、約5重量%)を加えた後、室温、大気圧下で水素添加した。TLCをCH3CN/H2O(4:1)で展開し、UVおよびニンヒドリン検出してモニターすることにより、水素添加は2.5時間で完了した。触媒をセライト床を通して除去し、有機溶媒を減圧下で蒸発させた。凍結乾燥生成物を回収した。
【0203】
アフィニティリガンドAB-NTA-OMe(式XVII、ここでR9=(CH2)4;およびR10=CH3)の調製
第一段階で、1.5gの塩化5-(ビス-ベンジルオキシカルボニルメチル-アミノ)-5-メトキシカルボニル-ペンチル-アンモニウム(式XVI)を報告されている方法に基づいて合成した(Kiessling LL et al., J. Am. Chem. Soc, (2004), 126, 1608-1609)。フェニル保護リガンドをNTA-OMe-(CO2CH2Ph)2と命名する。リガンドのPEAへの結合およびその後の脱保護を以下の実施例2に記載する。
【0204】
実施例2
PEA活性化(PEA-OSu)のための一般法
PEAポリマー(式III;ここでR1=(CH2)8;R2=H;およびR3=CH2CH(CH3)2)(24.0g、13.09mmol、重量平均Mw=65kDa、GPC(PS))を無水ジメチルホルムアミド(DMF、80mL)にアルゴン雰囲気下で溶解した。次いで、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、2.97g、1.1当量、14.41mmol)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(HOSu、1.81g、15.71mmol)を別々にDMF(5〜10mL)に溶解し、溶液に10分間あけて加えた。反応混合物を室温で約24時間撹拌した。生成した残渣を孔径0.45ミクロンのガラスフィルター(PTFEフィルター)を通してろ去した。PEA-OSu結合体の溶液を別の1.0L丸底フラスコに集め、アルゴン雰囲気下で維持した。
【0205】
PEA-NTA結合体(式XIX)の合成
6-アミノ-2-(ビス-カルボキシメチルアミノ)-ヘキサン酸(3.43g、13.09mol)をジメチルスルホキシド(DMSO、60mL)中で撹拌し、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、7.53mL、3.3当量、43.21mmol)を加えた。得られた不均質な混合物を追加のDMF(40mL)で希釈し、ボルテックスミキサー上で特定の糖脂質、膜脂質または核酸を室温で5分間混合した。生成したNTA塩分散液を前述の1.0L丸底フラスコ中のPEA-OSuの活性エステル(24.0g、13.09mmol)にゆっくり加えた。得られた反応混合物を室温で72時間撹拌した(NTAの消費をTLC、ニンヒドリン噴霧および1H NMRでモニターした)。PEA-NTAポリマー結合体を0.1N HCl溶液(1L)中に沈澱させ、1時間撹拌を続けた。沈澱をろ取し、小片に切断し、脱イオン水(500mL)で1時間の洗浄を2回行った。ポリマー結合体を凍結乾燥器で終夜乾燥した(粗収量25.2g)。得られたポリマーをエタノールに溶解し(40mLに5g)、水(0.7L)中に沈澱させることにより、さらに精製した。1時間激しく撹拌した後、生成した沈澱を集め、小片に切断し、脱イオン水(1.0L)中に入れ、さらに1時間撹拌した。ポリマーを回収し、45℃の減圧乾燥器で終夜乾燥した。生成した固体をエタノールに再度溶解し、ろ過し、テフロン(登録商標)処理した皿上に置いた。減圧乾燥器で乾燥した後、生成物をNMRおよびGPCで分析し、HClおよびDIPEAの痕跡を試験した。
【0206】
PEA-NTA(Orn)-結合体の合成
オルニチン類縁体を同様に合成した。8mLバイアル中、NTA(Orn)(0.137g、1.0当量、0.55mmol)をDMSO(3.0mL)に溶解し、DIPEA(0.32mL、3.3当量、1.82mmol)を溶液に加えた。得られた不均質な混合物をボルテックスにかけ、室温で5分間撹拌した(分散を助けるためにDMF(0.6mL)を追加した)。DMSO-DMF中で生じたNTA(Orn)塩懸濁液を、20mLバイアル中のPEA-OSuの活性エステル(65k)(1.02g、0.55mmol)にアルゴン雰囲気下でゆっくり加え、室温で72時間撹拌した。NTA(Orn)の消費をTLC、ニンヒドリン噴霧および1H NMRでモニターした。反応混合物からポリマーを1.0N HCl(150mL)中に激しく撹拌しながら沈澱させた。集めたポリマーを小片に切断し、1時間撹拌した。最後に、ポリマー片を脱イオン水(0.2L)中に入れ、1時間撹拌して、HClの痕跡を除去した(この工程を2回繰り返した)。ポリマー片を回収し、凍結乾燥混合物で終夜乾燥した(収量:1g)。
【0207】
PEA-NTA(OMe)結合/脱保護:
PEA-NTA-OMe-(CO2CH2Ph)2結合 PEA-NTA(OMe)の活性化PEA-OSuへの結合を二つの前述の方法と同様に行った。生成したPEA-リガンド結合体を以下のとおりにさらに脱保護した:100mL丸底フラスコ中、固体PEA-NTA-OMe-(CO2CH2Ph)2(250mg)をエタノール(10ml)に加えた。完全に溶解した後、ギ酸(1.0mL)および10%Pd/C(25〜30mg)を加え、フラスコにアルゴンをパージして終夜撹拌した。翌日、反応混合物を孔径0.45ミクロンのPTFEガラスフィルターを通してろ過し、追加のエタノール(4.0mL)で洗浄した。全混合物を脱イオン水(30mL)に加え、ポリマーが白色固体として沈澱した。固体を小片に切断し、脱イオン水(20mL)中で30分間撹拌した(2回繰り返した)。小片を乾燥器で24時間乾燥し、生成物(23mg)を得た。
【0208】
実施例3
PEA-NTA-Ni2+複合体の調製
エタノール(44mL)中のPEA-NTA(2.3g)の溶液に、脱イオン水中のNiCl2(40mL中118mg)の溶液を超音波処理下に滴下した。ポリマー-NTA-Ni2+複合体が帯緑色固体としてゆっくり沈澱した。不均質な混合物を室温で1時間置き、15分ごとに30秒間超音波処理した。遠心分離し、デカンテーションした後、PEA-NTA-Ni2+複合体を脱イオン水(3×40ml)で洗浄し、凍結乾燥した。乾燥したPEA-NTA-Ni2+複合体をメタノール(60ml)に溶解し、テフロン(登録商標)処理した皿の型に入れた。メタノールを室温で完全に蒸発させた後、40〜45℃の減圧乾燥器で48時間乾燥を続けた。複合体の収率は94.2%(2.278g)であった。
【0209】
実施例4
His標識タンパク質からの本発明のワクチン送達組成物の構築法
A. ニッケルアフィニティリガンドをPEAに結合させる保存溶液の調製:
PEA-NTA-Ni+2保存溶液Aを下記のとおりに調製した:ニッケル担持ポリマー(重量平均Mw=68.9kDa、101.9mg)をバイアル中のヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP、2.4mL)に加えた。得られた不均質な混合物を超音波処理し、室温で2時間放置して、ゲルになるまで浸漬した。その後、脱イオン水(2.0ml)を滴下して、ゲルの微細な分散液(pH=3.0)を調合した。
【0210】
B. 抗原タンパク質を金属担持NTA-PEAマトリックスにより捕捉する保存溶液の調製:
保存溶液A(PEA-NTA-Ni+2 49.89mgを含む)(2.15mL)を、緩衝液(25mMトリス/500mM NaCl、30mL)中の精製His標識E6E7タンパク質(SEQ ID NO:17、HPV治療ワクチンのための標的抗原、21.0mg)の冷却溶液(約4℃)に滴下した。タンパク質-ポリマー金属アフィニティ複合体の沈澱がpH8.0で数分以内に始まった。得られた混合物を同じ温度で1時間置き、タンパク質およびポリマーの沈澱を確実に完了させた。沈澱を+4℃、12000rpmで30分間の遠心分離により回収した。(上清を別のチューブに集め、任意の残存タンパク質についてSDS PAGEで分析した)。沈澱をPBS緩衝液(30mL)で2回洗浄した後、4℃、12000rpmで30分間遠心分離した。最後に、集めた淡緑色沈澱を24時間凍結乾燥した。この工程により製剤(66mg、タンパク質の収率95%)を得た。製剤中のタンパク質捕捉を還元SDS PAGE、ならびに他の方法で分析した。
【0211】
PEA-NTA-E6E7の粉砕製剤
PEA-NTA-Ni+2-E6E7タンパク質複合体(29.18mg)を下記のとおりに生成した。His6標識E6E7タンパク質(SEQ ID NO:17、6.5mg)をPBS緩衝液(6.5ml)に懸濁した。この材料を組織粉砕器で10〜15分間粉砕し、均質な分散液を得た。
【0212】
実施例5
あらかじめ作成したワクチン送達粒子の構築法
A) インサイチューでのニッケル担持によるPEA-NTA-Ni+2ミクロスフェアの製剤
PEA-NTA-Ni+2微粒子を、PEA-NTA(上の実施例3で生成、50mg)をヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP、1mL)に室温で5分間の超音波処理により溶解して調製した。0.1M NiSO4(250μL)をPEA-NTA/HFIP相に加えると、有機相中水相乳濁液が生じた。続いて、全乳濁液を5分間ボルテックスにかけながら、HFIP(750μL)および脱イオン水(500μL)を加えて乳濁液を均質とし、「第1相」を生成した。第1相を脱イオン水中のポリ(ビニル)アルコール(PVA)(脱イオン水(12mL)中のPVA(25mg))からなる「第2相」に注入すると、第二の水相中有機相/水相乳濁液が生じた。第1相を第2相に、10℃、25Wの電力で60秒間超音波処理しながら、20ゲージの針で注入した。得られた乳濁液、「第3相」を760mmHg減圧下、30℃の水浴中で10分間ロトエバポレートして有機溶媒を除去し、PEA-NTAミクロスフェアの溶液を得た。このミクロスフェア溶液を0.001''ステンレススチールメッシュを通してろ過し、液体窒素中で凍結し、終夜凍結乾燥した。
【0213】
B) あらかじめニッケル担持してのPEA-NTA-Ni+2ミクロスフェアの調製
PEA-NTA-Ni+2ミクロスフェアを、前述の実施例3からのあらかじめニッケル担持したPEA-NTA-Ni+2複合体を用い、複合体(50mg)をヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP、1mL)に室温で5分間超音波処理して溶解することにより調製した。乳濁液を5分間ボルテックスにかけながら、脱イオン水(600μL)を加えて溶液を均質とし、「第1相」を生成した。第1相を脱イオン水に溶解したポリ(ビニル)アルコール(PVA)(脱イオン水(25mL)中のPVA(7mg))からなる「第2相」に注入して、水相中有機相乳濁液を生じた。第1相を第2相に、10℃、20ゲージの針で注入して、「第3相」乳濁液を生成した。第3相乳濁液を10℃、25Wの電力で60秒間超音波処理し、次いで760mmHg減圧下、30℃の水浴中で10分間ロトエバポレートして有機溶媒を除去し、0.001''ステンレススチールメッシュを通してろ過して、PEA-NTA-Ni+2ミクロスフェアを得、これを液体窒素中で凍結し、終夜凍結乾燥した。
【0214】
C) His標識タンパク質のあらかじめ作成したPEA-NTA-Ni+2ミクロスフェア上への構築
実施例5に記載の(A)または(B)のいずれかからのミクロスフェアを精製抗原溶液中、1〜3mg/mLの範囲の濃度で再構成した。典型的な粒径は0.05〜15μmの範囲であった。例えば、トリスpH8.0緩衝液中の精製ヒスチジン標識E6E7タンパク質(5mg)の溶液10mLにこれらのPEA-NTA-Ni+2ミクロスフェア(20mg)をピペットで混合して再構成することにより、精製E6E7タンパク質を粒子に結合した。このニッケル担持ミクロスフェアをあらかじめ作成する方法により、実施例4に作成を記載した本発明の組成物の生成において行っていた超音波処理または有機溶媒へのHis標識タンパク質の曝露が回避される。方法のこの局面は、重要な立体構造の抗原決定因子が特定の溶媒中で破壊されうる抗原、例えば、実施例10に記載のインフルエンザ赤血球凝集素にとって重要でありうる。
【0215】
実施例6
本実施例は、動物における本発明のワクチン送達組成物中のPEAポリマーの、アジュバントを追加して、または追加なしでの使用を例示する。ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)サブタイプ16のE6およびE7タンパク質の改変融合タンパク質(SEQ ID NO:17)を、以下に記載のモデル系における抗原として用いた。
【0216】
実験をTaconic(Hudson NY)から購入した6〜10週齢の間の雌C57BL/6マウスで行った。サブユニットワクチンは、実施例4に記載のPEA-NTA-Ni+2のミクロスフェアに複合した、大腸菌(E. coli)における組換え分子として産生したHis6標識E6E7融合タンパク質からなっていた。この材料を食塩水、またはアジュバントCpGを動物1匹につき5nmol(31.5μg)の最終濃度で含む食塩水中で希釈した。1回用量あたり用いたE6E7タンパク質の量は、各実施例に示すとおり、10〜100μgの間であった。合成オリゴデオキシヌクレオチドCpG(5'から3':tccatgacgttcctgatgct)(SEQ ID NO:20)をIntegrated DNA Technologies(Coralville IA)によるホスホチオエート主鎖を用いて合成した。免疫化前にポリマー-タンパク質結合体およびCpGを1時間混合し、注入直前に粒子を分散させるため溶液を超音波処理(4℃で1分間)した。マウスを全量200μlで尾基部の皮下に免疫化した。
【0217】
細胞株C3は他所に記載のとおりに全HPV-16ゲノムで形質転換したマウス胚線維芽細胞である(Ossevoort MA, et al. J Immunother Emphasis Tumor Immunol. (1995), 18(2): 86-94.)。同系非免疫マウスの側腹部に皮下注射すると、注射後約10日で触知可能な腫瘍を検出することができる。腫瘍成長の防止、または既存の腫瘍の退行が、各ワクチン製剤の有効性を評価するために用いた一次アッセイである。
【0218】
前述のPEA-NTA-Ni+2ワクチン送達組成物(「ワクチン」)が予防的に作用することの試験として、マウス実験を設定し、腫瘍攻撃の5週間前に免疫化したマウスの腫瘍成長をモニターした。この試験において、マウス5匹の4群を以下のとおりに準備した:第1群)精製した前述のHPVタンパク質抗原(10μg)および免疫刺激アジュバントとしてCpG(5nmol)で免疫化、第2群)ワクチン(タンパク質10μgに正規化)およびCpG(5nmol)で免疫化、第3群)約1×106の放射線照射したC3腫瘍細胞を腹腔内注射(陽性対照として)、または第4群)非免疫化のまま(未処置群)。5週間後、マウスに3×105 C3腫瘍細胞を皮下注射(側腹部)した。腫瘍成長を細胞注射後15日間モニターし、15日目に動物を屠殺し、腫瘍を摘出して秤量した。図1に示すとおり、ワクチンで免疫化したマウスは非結合HPVタンパク質抗原で免疫化したマウス、または非免疫化のまま(未処置)のマウスよりも腫瘍が小さかった。
【0219】
実施例7
腫瘍細胞攻撃の1週間前に免疫化したマウスの腫瘍成長の防止
マウス10〜15匹の群を、第1群)精製HPVタンパク質抗原(100μg)、第2群)前述の実施例5に記載のとおりに調製したPEA-NTA-Ni+2-抗原ワクチン送達組成物(「ワクチン」)(タンパク質100μgを含む)、第3群)PEAポリマー単独(抗原なし)、または第4群)非免疫化のまま(未処置群)のいずれかで免疫化した。7日後、マウスに2×105 C3腫瘍細胞を皮下注射(側腹部)した。腫瘍成長を細胞注射後18日間モニターし、腫瘍サイズを触診により1〜6の尺度を用いて採点した。図2のデータで示すとおり、ワクチンで免疫化したマウスは、アジュバントを追加しない場合でも、腫瘍成長から100%保護された。タンパク質単独もしくはポリマー単独で免疫化したマウス、または免疫化しなかったマウスは腫瘍成長から保護されなかった。
【0220】
各群から数匹のマウスを腫瘍注射の日、または腫瘍注射の7日後に屠殺し、脾臓を分析のために摘出した。ワクチン接種したマウスではE6E7特異的CD8 T細胞の数が増加していることが判明し、これらの細胞はインビトロでの抗原刺激に応答してインターフェロン-γ(IFN-γ)を産生することが明らかにされた。
【0221】
実施例8
腫瘍細胞攻撃の1週間後の治療的免疫化により誘導される腫瘍の退行
マウスに4×105 C3腫瘍細胞を側腹部に皮下注射した。6日後、マウス5匹の群を第1群)非免疫化のまま(未処置群)、第2群)PEAポリマー単独(抗原なし)、または第3群)本明細書において実施例6に記載のミクロスフェアとして製剤したワクチン(タンパク質100μgに正規化)およびアジュバントとしてCpG(5nmol)のいずれかで免疫化した。腫瘍成長を細胞注射後24日間モニターし、腫瘍サイズを触診により1〜6の尺度を用いて採点した。図3に示すとおり、ワクチンで免疫化したマウスの腫瘍は第15日から第24日の間に退行したが、非免疫化マウス、またはPEAポリマー単独で免疫化したマウスの腫瘍は成長し続けた。
【0222】
実施例9
HAの外部ドメインの発現、精製、および特徴づけ
オリゴヌクレオチドの設計 インフルエンザA/プエルトリコ/8/34からの赤血球凝集素の外部ドメイン(HAPR8)(SEQ ID NO:11)をコードする遺伝子カセットを作成するために、重複オリゴヌクレオチドの組を設計した。これらのDNAカセットは、精製のため、および本発明の方法によるワクチン組成物の構築のために、カルボキシ末端ヘキサ-ヒスチジン標識を有するNde1-EcoRI制限断片として設計した。DNA発現カセットは、望ましくない制限部位を持たず、細菌に対して選択したコドン使用頻度を有するよう設計した。重複オリゴヌクレオチドは末端の高い精度を確保するため、85ヌクレオチドまでの長さに制限した。
【0223】
クローニングと配列決定 合成オリゴヌクレオチドを凍結乾燥状態で受け取り、100pmol/mlの濃度に懸濁した。次いで、オリゴヌクレオチドを加熱および冷却により対でアニーリングし、DNAポリメラーゼIのKlenow断片を用いて群で伸長した。次に、これらのアニーリングし、伸長した配列をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、高忠実度ポリメラーゼ混合物(Roche)を用いて連結した。次いで、PCR生成物をpCR2.1またはpBAD TOPOトポイソメラーゼ連結ベクター(Invitrogen, San Diego, CA)中にTOPO-クローニングし、TOP10細菌に形質転換し、選択的プレート上で培養した。
【0224】
TOP10の個々のコロニーの細菌培養物4ミリリットルを培養し、プラスミドDNAを調製した。次いで、プラスミド調製物を制限消化により分析し、陽性クローンからのDNAを配列決定した。DNA断片を制限消化および発現ベクター中への連結によりサブクローニングした。細菌発現のために、次の2つのベクターファミリーを用いた:(1)アラビノース誘導性プロモーターを用いて遺伝子の転写を駆動するpBADベクター;および(2)タンパク質発現のために選択した細菌内で誘導されるためにT7ポリメラーゼを必要とする、pETベクターなどのT7プロモーターを用いるベクター。アラビノースプロモーターは、アラビノースを代謝しないTOP10のような細菌細胞株中の誘導物質アラビノース濃度を変動させることにより調節される能力を有するが、T7プロモーターは少量でも誘導されたT7ポリメラーゼが存在すると強く駆動され、したがって大量のタンパク質を速やかに産生することができる。加えて、HAPR8およびHA1PR8をコードするDNAカセットをpFAST Bac Dualベクター(Invitrogen)中にサブクローニングし、組換えバキュロウイルス(Bacmid)を作成するために用いた。一例において、SEQ ID NO:11のアミノ酸をコードするDNAカセットをpBac Dualに、タンパク質発現が多角体プロモーターによって駆動されるような様式で挿入した。これらの形質移入細胞から生成したバキュロウイルスをpBac-HAPR8バキュロウイルスと呼んだ。
【0225】
実施例10
HAの産生および製剤ならびに活性の測定
HAの立体構造状態はB細胞の強健な保護応答のために非常に重要であるため、バキュロウイルス感染SF9細胞をHAの発現のために選択し、精製HAPR8タンパク質をPEA-NTA-Ni+2ミクロスフェアに製剤した。pBac-HAPR8バキュロウイルスを感染多重度1(MOI=1)で用い、SF9細胞をSf900 II-SFM培地(Invitrogen、500ml)中、1.5×106細胞/mlの密度で感染させた。感染細胞を48から72時間培養し、遠心分離により回収した。細胞タンパク質を、0.1%トリトンX-100(登録商標)を含むPBS緩衝液に懸濁することにより可溶化し、Ni担持キレート化セファロース(GE)を用いての固定化金属アフィニティクロマトグラフィで精製した。精製タンパク質を50倍量の25mMトリス(登録商標)界面活性剤、pH8.0、150mM NaClを二回交換して透析し、2ミクロンフィルターを通してろ過し、エンドトキシンについて試験した。
【0226】
精製タンパク質の特徴づけは、SDS-PAGE、サイズ排除クロマトグラフィ、ならびに反応性についての免疫ブロッティングおよびELISAからなっていた。加えて、HA抗原は適当に折りたたまれなければならないため、HAタンパク質を標準のプロトコル(すなわち、Webster, R., et al., WHO Animal Influenza Manual, World Health Organization, WHO/CDS/NCS/2002.5)に従い赤血球凝集アッセイによりシアル酸結合機能について試験した。ニワトリ赤血球を赤血球凝集アッセイで対照としてのA/プエルトリコ/8/34ウイルスと共に用いた。バキュロウイルス産生HAPR8外部ドメインは凝集能を有する。製剤候補の評価のために、この機能性HAアッセイを凝集阻害アッセイと共に用いる。試験したHAタンパク質またはタンパク質サブドメインが製剤前に赤血球凝集活性を有する場合、HA-PEA-NTA-Ni+2ワクチンも赤血球凝集活性を有するはずである。
【0227】
実施例11
PEA-NTA製剤中のNPの核酸結合能の操作
細菌発現遺伝子を、発現したmRNA中にACAのヌクレオチド配列を含まないように操作し、この配列を標的とする特定のRNアーゼ、MazFの同時発現を可能にした(Suzuki, M., et al. Mol. Cell. (2005) 18:253-261)。MazFおよびHA、M2e-NA、またはNPタンパク質の発現ベクターの同時誘導により、所望のインフルエンザタンパク質に関連しての細菌タンパク質の複雑性が低くなる。このアプローチは収量を改善し、所望のインフルエンザタンパク質と同時に精製される細菌タンパク質のレベルを下げることができる。しかし、これに加えて、NPポリペプチドを産生するためのプロモーター誘導時に発現される核酸の操作により、単一製剤の一部として、または他の標的抗原からなる製剤の一部として、ヒスチジン標識NPに結合している特定の核酸を多く含むことになる。
【0228】
核酸の担体としてのこの核酸結合タンパク質の使用は、NPまたはインフルエンザワクチン組成物の使用に制限されるものではない。細胞内の望ましくないRNAまたはプラスミド配列の破壊は、他のRNアーゼ、DNアーゼまたは他の標的指向酵素によって選択的に行うことができると考えられる。核酸はインフルエンザNPではなく、哺乳動物細胞、他のウイルス、寄生生物、または細菌からの核酸結合タンパク質を含む他の核酸結合タンパク質を担体とすることができると考えられる。
【0229】
実施例12
マウス実験
インフルエンザHAおよびNPタンパク質を本発明のポリマー-NTP-Ni+2-抗原ワクチン送達組成物に結合することの免疫原性への影響を試験するために、前述の6〜8週齢のマウスに下記の一つを注射した(第0日):PBS(陰性対照)、PEA-NTA-Ni+2ワクチン組成物(実施例5)HA-PEA、NP-PEAもしくはHA-PEA+NP-PEAのいずれかと対応する遊離タンパク質(すなわち、PEASEQ ID NO:11および15に結合していない)または陽性対照としての遊離PR8インフルエンザAウイルス(マウスにPR8を腹腔内(ip)注射)を免疫反応性について比較した。PBS群はマウス10匹からなり、PR8群はマウス3匹からなり、他の群はすべてそれぞれマウス5匹からなっていた。
【0230】
動物から第20日に採血し(一次応答を評価するため)、第21日に初回抗原刺激に用いたのと同じ製剤で追加免疫した。動物から第35日に再度採血し(二次応答を評価するため)、第42日に感染性PR8ウイルスで経鼻攻撃した。
【0231】
図4は様々なマウス群の一次抗体応答からの抗HA抗体価を示している。PEA-HA+PEA-NPワクチンは最も高い抗HA IgG1抗体価を誘導し、血清1mlあたり抗体8.27+/-1.39μgであった。この抗体価は遊離タンパク質として注射したHA+NPにより誘導された抗体価:1.56+/-1.369μg/mlよりも有意に高かった(p<0.0001)。PEA-HA+PEA-NP複合体によって誘導された抗体価はPEA-HA複合体によって誘導された値:3.92+/-2.18μg/mlよりも有意に高かった(p=0.0056)。この結果はPEA-NP複合体が免疫原性アジュバント効果を生じることを示している。興味深いことに、PEA-HA複合体(1.54+/-1.6μg/ml)と遊離HA+NP抗原(1.56+/-1.36μg/ml)との間の抗HA抗体価に有意差はなかったため、このアジュバント効果はNPをPEAポリマーと複合させて送達した場合にのみ検出することができた。ワクチン組成物中のPEAポリマーの存在の強いアジュバント効果は、二次応答においても明白であった(図5);PEA-HA+PEA-NP複合体によって誘導された抗HA IgG2a血清抗体レベルは遊離HA+遊離NPによって誘導された応答よりも有意に高かった(p=0.0015)。同様に、PEA-HA複合体によって誘導された血清抗体レベルは遊離HAのものよりも高かった(p=0.021)。抗HA IgG1レベルは抗体価レベルの同じパターンに従い、1回注射後に得られたレベルよりも100倍高かった(30〜300)(表4参照)。
【0232】
予防ワクチンの基本的特徴はウイルス中和抗体を速やかに誘導する能力である。図6にまとめたデータが示すとおり、生存ウイルスの他に、1回注射後に中和抗体を誘導することができる唯一の製剤はPEA-HA+PEA-NP複合体であった。これとは対照的に、追加免疫後、HAを含むすべての製剤は、マイクロ中和アッセイ(Rowe, T., et al. Detection of antibody to avian influenza A (H5N1) virus in human serum by using a combination of serologic assays. J Clin Microbiol. (1999) 37:937-43)で測定して、測定可能なレベルの中和抗体を誘導した(図6)。
【0233】
これらの知見の妥当性は、本試験においてマウスを感染性PR8ウイルスで攻撃した際に明らかに認められた。試験マウスの体重減少を示す図7から明らかなとおり、第4日までまったく体重が減少しなかった(実際は、体重が増加し続けていた)動物は、PR8免疫化群およびPEA-HA+PEA-NP複合体注射群の動物で;すべての他の群では、動物は急速に体重減少した。重要なことに、遊離HA+NPまたはPEA-HA複合体で免疫化した動物はPEA-HA+PEA-NP複合体で免疫化した動物よりも保護の程度が低く(それぞれp=0.0017およびp=0.17)、PEA-HA複合体を注射した動物にPEA-NP複合体を追加した本発明のワクチン送達組成物におけるポリマー担体への抗原の結合の強いアジュバント効果を確認した。図8の結果から明らかなとおり、未処置/PBS群の動物すべて、および遊離NP群の5匹のうち4匹(NP群の1匹はプロトコルに従って安楽死させなければならなかった)は、体重減少が元の体重の20%に達した時点で。遊離HA群の1匹は安楽死させなければならなかったが、PEA-HA+PEA-NP、PEA-HA、遊離HA+NPおよびPR8-注射群の動物では100%生存が達成された。
【0234】
(表4)
データは、基準として抗HA IgG1モノクローナル抗体を用いて、血清1mL中の抗HA免疫グロブリンのmgで報告する。
【0235】
まとめとして、インフルエンザHAのPEAへの非共有結合により強い免疫原が生じ、これはPEA-NPの追加によってさらに改善され、試験動物の死亡を防止し、インフルエンザウイルス感染に関連する罹患率から完全に保護するワクチンを得た。
【0236】
実施例13
インフルエンザA/ベトナム/1203/2004タンパク質製剤を用いてのマウス実験
PR8で得られた結果は他のインフルエンザタンパク質サブタイプにも拡大しうることを確認するために、6〜8週齢のマウス群にPBS;インフルエンザA/ベトナム/1203/2004から得たポリマー複合タンパク質--PEA-HA、PEA-NP、もしくはPEA-HAプラスPEA-NP;または対応する非結合ウイルスタンパク質--HA、NPもしくはHA+NP(SEQ ID NO:14および16)を注射した(第0日)。各群はマウス5匹からなっていた。動物から20日後に採血し、IgG1のレベルを終点ELISAによりもとめた。図9は、血清希釈の逆数としての血清抗HA IgG1抗体価測定値を示しており、光学密度(OD)から2つの標準偏差がバックグラウンドよりも高いと判断される。HA-PR8への応答において観察されるとおり、ベトナムインフルエンザウイルスによるPEA-HA+PEA-NP複合体は最も高い抗HA IgG1抗体価を誘導し、血清希釈の逆数4500+/-1506で、陽性と判断される。この抗体価は遊離HA+NPタンパク質により誘導された値--血清希釈の逆数120+/-46.4よりも有意に高く(p<0.02)、陽性結果を示すものであった。組み合わせたPEA-HA+PEA-NPポリマー複合体はPEA-HA複合体(血清希釈の逆数380+/-135.6)よりも有意に免疫原性が高く(p=0.026)、陽性と判断された。これらの結果はPEA-NPのアジュバント効果を示している。
【0237】
インフルエンザA/ベトナム/1203/2004由来のウイルスタンパク質と複合したPEAポリマーを含むワクチン組成物を用いて本試験で得た結果は、A/プエルトリコ/8/34インフルエンザウイルス由来タンパク質で得たデータを実証するものである。
【0238】
実施例14
フェレット試験
マウス試験で得た陽性データを考慮して、フェレットにおけるA/ベトナム/1203/2004感染に対する保護のための、本発明のワクチン製剤の有効性を実施した。フェレットはヒトインフルエンザウイルス感染に対する最良のモデルと考えられる。フェレットにおいてNi担持NTA-PEAに結合した、HAおよびNP(SEQ ID NO:14および16)を含むタンパク質-ポリマーワクチンを2つの濃度(表示のタンパク質15および50μg/フェレット)で初回抗原刺激および追加免疫法を用いて試験し、ワクチンを皮下(s.c.)および経鼻(i.n.)投与について試験した。本試験はMedical Research and Evaluation Facility of Battelle Memorial Institute(Columbus, Ohio)で契約に基づいて実施し、ウイルス攻撃したフェレットの罹患率および死亡率を評価した。
【0239】
試験では現行のインフルエンザA株について血清陰性で8〜15週齢の雄フェレットを用いた。動物を5群に分けた:第1群)対照非免疫群(6匹);第2群)PEA-HAプラスPEA-NP 50μg皮下(s.c.)投与群(7匹);第3群)HA-PEA 50μg(sc)投与群(5匹);第4群)PEA-HAプラスPEA-NP 15μg(s.c.)投与群(7匹);および第5群)PEA-HAプラスPEA-NP 50μg経鼻(i.n.)投与群(6匹)。15μg投与した第4群のフェレットは第0日に初回抗原刺激し、第28日に追加免疫し、第42日に二回目の追加免疫を行った。他の3群のフェレットは第28日に一回目の注射をし、第42日に追加免疫した。すべてのフェレットを試験第67日にA/ベトナム/1203/2004インフルエンザウイルスの1.3×103 TCID50で経鼻攻撃した。血清試料を試験期間中を通して採取した。フェレットを攻撃後20日間観察した。
【0240】
図10は本試験におけるフェレットのカプラン-マイヤー生存曲線を示している。PBS群では、動物6匹のうち5匹が死亡した。2匹は攻撃後5日で死亡しているのが見つかり、3匹は重度の神経学的合併症により攻撃後6日で安楽死させた。PEA-HA+PEA-NP(sc)50μg群では、動物1匹が攻撃後9日で死亡した。PEA-HA群では1匹が攻撃後12日で死亡し、PEA-HA+PEA-NP(sc)15μg群では1匹が攻撃後10日で死亡した。PEA-HA+PEA-NP経鼻50μg群では、すべてのフェレットが生存した。
【0241】
図11は攻撃後の試験フェレットにおける体重変化を示すグラフである。対照群では、元の体重から17%減少したにもかかわらず生存した1匹を含むすべての動物が急速な体重減少を示した。他のすべての群では、フェレットは攻撃に対してよく反応し、死亡した動物を除いて(図10参照)、体重減少はほとんど、またはまったくなかった。事実、多くの動物は試験の全過程中、体重が増加し続けた。
【0242】
感染攻撃の3日後に採取した血液から得た血液学的データにより、体重減少によって評価したとおり、感染攻撃後の罹患はないことが確認された。図12A〜Dはウイルス攻撃したフェレットにおける全白血球(WBC)、リンパ球、単球、および血小板(PLT)の血球数を示している。非免疫化群ではこれらのパラメーターすべてで著しい低下が見られた。これとは対照的に、免疫化した動物は血球数を正常範囲内に維持した。この結果は、血小板数の重度の低下と、インフルエンザ感染の顕著な臨床的特徴として著しいリンパ球減少を示した、ベトナムにおけるヒトH5N1患者の血液学的所見と一致した(N. Engl. J. Med. (2004) 350:1179))。
【0243】
まとめとして、フェレット試験で得た結果に基づき、本発明の抗H5N1ワクチン送達組成物はインフルエンザAウイルスの致死株からの罹患および死亡防止において有効であると結論することができる。
【0244】
すべての出版物、特許、および特許文書は、個々に参照により組み入れられるがごとく、参照により本明細書に組み入れられる。本発明を様々な具体的かつ好ましい態様および技術に関連して記載してきた。しかし、本発明の精神および範囲内にとどまりつつ、多くの変更および改変を行いうることが理解されるべきである。
【0245】
本発明を前述の実施例に関連して記載してきたが、改変および変更は本発明の精神および範囲内に含まれることが理解されると思われる。したがって、本発明は添付の特許請求の範囲によってのみ制限される。
【図面の簡単な説明】
【0246】
【図1】図1は、免疫化前にアジュバントとしてのCpG(1匹のマウスに5nmol)と混合した表示の組成物を1回注射した5週間後の、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)-発現腫瘍細胞株、C3で攻撃したマウスから摘出した腫瘍の腫瘍量を示すグラフである。放射線照射細胞を注射したマウスおよび無処置マウスを対照群とする。腫瘍サイズを腫瘍細胞攻撃の15日後に評価した。各記号は個々の動物からの腫瘍量を示している。
【図2】図2は、アジュバントを追加せずに表示の組成物で1回免疫化した1週間後の、HPV-発現腫瘍細胞株、C3で攻撃したマウスにおける腫瘍サイズを示すグラフである。腫瘍サイズを攻撃後第18日に評価した。各記号は個々の動物からの相対腫瘍サイズを示している。バーは各マウス群の平均腫瘍サイズを表している。
【図3】図3は、HPV-発現腫瘍細胞株、C3を注射したマウスにおける腫瘍サイズを示すグラフである。細胞注射の6日後、マウスに表示の組成物を1回皮下注射した。腫瘍サイズを腫瘍細胞注射後24日間にわたり評価した。各記号は個々の動物からの相対腫瘍サイズを示している。バーは各マウス群の平均腫瘍サイズを表している。
【図4】図4は、マウスにPEAポリマーを含む、もしくは含まない、表示の製剤、PBS(陰性対照)、または感染性PR8ウイルス(陽性対照)を1回注射し、追加免疫した後の抗HA抗体価(一次応答)を示すグラフである。血清試料を最初の注射の20日後および免疫化の14日後に採取した。
【図5】図5は、PEAポリマーを含む、もしくは含まない、表示の製剤を1回注射した後の二次抗HA IgG2a応答を示すグラフである。PBS(陰性対照)または感染性PR8ウイルス(陽性対照)を注射した動物群を比較のために含む。マウスに表示の製剤で初回抗原刺激し、21日後に追加免疫した。血清試料を追加免疫の14日後に採取し、二次応答抗HA IgG2a抗体価をELISAでもとめた。
【図6】図6は、図4および5と同様、表示の製剤および対照を注射し、追加免疫したマウスにおけるウイルス中和血清抗体価を示すグラフである。血清試料を最初の注射の20日後および免疫化の14日後に採取した。HAに対する血清中和抗体価を、MDCK細胞を用いてのインフルエンザウイルスマイクロ中和アッセイでもとめた。追加免疫後、HAを含むすべての製剤は測定可能なレベルの中和抗体を誘導した。
【図7】図7は、図4、5および6の表示のワクチン製剤を注射し、追加免疫したマウスにおける、感染性ウイルスで攻撃した後の体重変化を示すグラフである。マウスを感染性PR8ウイルスで経鼻攻撃した。-20%の点線は動物を安楽死させなければならない時点を示している。
【図8】図8は、感染攻撃後のマウスの生存を示すグラフである。マウスに表示のワクチン製剤を腹腔内(ip)に注射し、追加免疫した。マウスを感染性PR8ウイルスで経鼻攻撃し、体重減少が20%以上になった時点でプロトコルに従って安楽死させた。
【図9】図9は、インフルエンザA/ベトナム/1203/2004 H5N1分子による表示の製剤をip注射した試験マウスにおける抗体応答を示すグラフである。血清試料を12日後に採取し、IgG1抗体価を終点ELISAでもとめた。データは血清希釈の逆数で報告し、それにより2つの標準偏差がバックグラウンドよりも高いと判断される。
【図10】図10は、1.3×103 TCID50のA/ベトナム/1203/2004インフルエンザウイルスで感染経鼻攻撃した後の免疫化試験フェレットの生存を示すグラフである。フェレットにPEAポリマーと複合させた表示のウイルス抗原を注射し、追加免疫した。フェレットをプロトコルに従い、攻撃の20日後に安楽死させた。
【図11】図11は、図10と同様、インフルエンザA/ベトナム/1203/2004で感染攻撃後の試験フェレットにおける体重減少を示すグラフである。フェレットにPEAポリマーと複合させた表示のウイルス抗原、または陰性対照としてPBSを注射し、追加免疫した。試験フェレットの体重変化を、感染性ウイルスでの経鼻攻撃後20日間モニターした。
【図12】図12A〜Dは、ベトナムインフルエンザAウイルスで感染経鼻攻撃した3日後の試験フェレットから採取した血液からの血液学的データを示す一連のグラフである。フェレットにPEAポリマーと複合させた表示のウイルス抗原を注射し、追加免疫しておいた。フェレットを経鼻攻撃し、攻撃の3日後に採血した。点線は正常範囲を表している。図12A=ウイルス攻撃フェレットの白血球(WBC)、図12B=リンパ球、図12C=単球、および図12D=血小板(PLT)。
【図13】図13は、A/プエルトリコ/8/34(H1N1)由来の赤血球凝集素タンパク質の外部ドメインの一文字コードによるアミノ酸配列である(SEQ ID NO:11)。
【図14】図14は、A/ベトナム/1203/2004(H5N1)由来の赤血球凝集素タンパク質の外部ドメインの一文字コードによるアミノ酸配列である(SEQ ID NO:12)。
【図15】図15は、M2タンパク質の外部ドメインとA/プエルトリコ/8/34(H1N1)由来ノイラミニダーゼの外部ドメインとの融合タンパク質の一文字コードによるアミノ酸配列である(SEQ ID NO:13)。
【図16】図16は、M2タンパク質の外部ドメインとA/ベトナム/1203/2004(H5N1)由来ノイラミニダーゼの外部ドメインとの融合タンパク質の一文字コードによるアミノ酸配列である(SEQ ID NO:14)。
【図17】図17は、A/プエルトリコ/8/34(H1N1)由来核タンパク質のHis-標識型の一文字コードによるアミノ酸配列である(SEQ ID NO:15)。
【図18】図18は、A/ベトナム/1203/2004(H5N1)由来核タンパク質のHis-標識型の一文字コードによるアミノ酸配列である(SEQ ID NO:16)。
【図19】図19は、HPV-16 E6およびE7の突然変異融合タンパク質の一文字コードによるアミノ酸配列である。アミノ末端下線配列はE6から、中央部分はE7からであり、カルボキシ末端にヘキサ-ヒスチジン標識がある(SEQ ID NO:17)。
【図20】図20は、A/プエルトリコ/8/34(H1N1)由来ノイラミニダーゼの外部ドメインの一文字コードによるアミノ酸配列である(SEQ ID NO:18)。
【図21】図21は、A/ベトナム/1203/2004(H5N1)由来ノイラミニダーゼの外部ドメインの一文字コードによるアミノ酸配列である(SEQ ID NO:19)。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は概して、ポリマーベースの送達組成物を調製するための方法に関し、特に、ポリマーベースのワクチンと生物製剤用の送達組成物との構築のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景情報
ワクチンの開発および投与が著しく進歩しているにもかかわらず、ワクチン製剤の有効性および安全性を増大させる代替的アプローチについては未だに調査中である。合成ワクチン(組換えタンパク質、合成ペプチド、および多糖-ペプチド結合体などの規定の抗原の使用のためにこのように呼ばれる)が、新規ワクチン候補として出現してきている。伝統的なワクチンは、弱毒化もしくは不活性化病原体、または、精製された細菌もしくはウイルスの構成要素で作製されている。合成ワクチンは、伝統的ワクチンの安全かつ順応性のある代替物となるが、しかし、これらのワクチンの免疫原性およびしたがって有効性を増加させるためにはさらなる努力が必要である。効果的な免疫応答を誘発するためには、ウイルスタンパク質またはペプチドなどの特異的抗原を免疫原性型の免疫系に提示しなければならない。特異的抗原に対する免疫応答を増強する材料および物質は、「アジュバント」として知られている。公知のアジュバントは、免疫系を活性化する特殊な細胞に対する抗原の送達を促進するか、または、これらの細胞を直接刺激して成熟を誘導する。これらの2つの機能は、免疫系に対する天然の病原体の刺激効果を効果的に模倣したものである。したがって、合成ワクチンは、免疫刺激的様式で抗原を送達することが必要と考えられる。
【0003】
アルミニウム化合物は現在、依然として、米国におけるヒトワクチンでの使用に関する唯一のFDA認可アジュバントである。優れた安全性の記録にもかかわらず、アルミニウム化合物は比較的弱いアジュバントであり、防御免疫に関連する抗体レベルを誘発するためには複数回投与レジメンが必要であることが多い。さらに、アルミニウム化合物は、細胞媒介性免疫の発生には効果がなく、したがって、多くのウイルス感染症、慢性感染症、および悪性疾患に関する場合と考えられるような、細胞媒介性応答が必要な状況に関しては、理想的なアジュバントではない可能性がある。多くの候補アジュバントが現在研究中であるが、ヒトにおける毒性および抗原の組込みのための高度先進技術の必要性を含むいくつかの欠点は、未だ克服されないままである。
【0004】
効果的なワクチンとは、感染を中和するためまたは異常細胞(感染または形質転換した)を破壊するために必要な防御免疫応答または治療免疫応答を誘発しなければならない。適応性のある免疫応答、すなわち抗原特異的応答は、リンパ球、特にTおよびBリンパ球によって媒介される。Bリンパ球は、その膜抗原特異的受容体:抗体分子を用いて、抗原を認識して結合する。各B細胞は固有の抗体受容体を発現するが、これは、B細胞刺激後に分泌されると考えられ、かつ、生物体から抗原を除去する目的で抗原に結合すると考えられる。抗体応答は、例えばウイルスの中和のために有用である。この場合、細胞に侵入する、感染する、または損傷するためにウイルスにより使用されたのと同じウイルスエピトープを抗体が認識することが重要である。この場合、ワクチン調製に使用される抗原はウイルス中の抗原と同じ立体構造を有することが必要である。一方、Tリンパ球は遊離抗原を認識せず、MHC分子と関連する抗原のみを認識する。MHC分子には2つの主要なクラスが存在する。クラスI分子は体内の細胞の大部分によって合成および表示されるが、クラスII分子はほぼ抗原提示細胞(APC)のみによってしか提示されない。CD4表現型を有するT細胞はヘルパーT細胞とも呼ばれ、MHCクラスIIタンパク質と関連する抗原を認識し、かつ、活性化の際には、リンホカインを分泌してそれらが相互作用している細胞を直接活性化する。一方、CD8表現型を有するT細胞は、MHCクラスIタンパク質と関連する抗原を認識する。活性化の際には、T細胞はリンホカインを分泌し、それらが認識する細胞を死滅させることができる。
【0005】
外因性抗原とは、宿主生物中には通常存在しない免疫原性材料である。例としては、細菌、遊離ウイルス、酵母、原生動物、および毒素に由来するものが挙げられる。これらの外因性抗原は、食作用を通して、微飲作用を通して、または受容体媒介性取り込みによって、抗原提示細胞すなわちAPC(マクロファージ、樹状細胞、およびBリンパ球)に侵入する。微生物は貪食され、かつ、タンパク質抗原はプロテアーゼによって分解されて一連のペプチドとなる。これらのペプチドは最終的にMHC分子内の溝に結合し、APCの表面に輸送される。したがって、CD4リンパ球は、そのT細胞受容体(TCR)およびCD4分子によってペプチド/MHC-II複合体を認識することができる。クラスII MHC中のAPCによって提示されるペプチドは、約10〜約30アミノ酸長であり、例えば約12〜約24アミノ酸長である(Marsh, S. G. E. et al. (2000) The HLA Facts Book, Academic Press, p. 58-59(非特許文献1))。CD4リンパ球のエフェクター機能には、成熟、クラススイッチ、および抗体産生のためのB細胞活性化が含まれる。同様にCD4 T細胞も樹状細胞(DC)を活性化させてサイトカインを分泌しかつ細胞障害性T細胞を刺激し、マクロファージの殺微生物(microbiocidal)活性を増大させるが、その全てが、細胞外または細胞内の病原体を破壊する重要な機構である。CD8リンパ球は、そのT細胞受容体(TCR)およびCD8分子によってペプチド/MHC-I複合体を認識することができる。クラスI MHC中のAPCによって提示されるペプチドは約8〜約17アミノ酸長である。
【0006】
ウイルス、細胞内細菌、および癌に対する身体の主要な防衛の1つが、細胞障害性Tリンパ球すなわちCTLによる、内因性感染細胞および腫瘍細胞の破壊である。これらのCTLは、CD8陽性Tリンパ球(CD8 T細胞)に由来するエフェクター細胞である。CTLとなるためには、ナイーブCD8 T細胞がAPCによって活性化されなければならない。このプロセスには、感染細胞、腫瘍細胞、ならびに死滅した感染細胞および腫瘍細胞の残骸を貪食および分解する樹状細胞が必要である。この様式で罹患細胞由来の内因性抗原がAPCに侵入することができ、ここで、プロテアーゼおよびペプチダーゼがタンパク質を分解して、約8〜約10、あるいは約8〜約11、または約8〜約12アミノ酸長の、一連のペプチドにすると考えられる。APCの表面上に現れた結合タンパク質を有するMHCクラスI分子を、ここで、相補的結合表面を有するT細胞受容体(TCR)を包含するナイーブCD8 T細胞によって認識することができる。TCRによるペプチドエピトープのこの認識は、ナイーブCD8 T細胞活性化およびエフェクター(CTL)機能誘導のための第一シグナルとしてはたらく。T細胞の完全な活性化には、ほとんどの場合同じ同種APCにより提供される、第二の抗原非特異的シグナルが必要である。これらの第二シグナルは、Toll様受容体(TLR)アゴニストなどの免疫刺激性アジュバントに応答してAPCによりアップレギュレートされた分子により提供されることが多い。
【0007】
合成ワクチンを調製する動機におけるさらなる関心対象分野は、組換えタンパク質の迅速精製法の開発である。アフィニティータグと固定化リガンドとの間の特異的相互作用に基づくいくつかの方法が開発されている。そのうち最も広範に使用されているのは固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)であり、これは、Cu2+またはNi2+などの固定化金属イオンを含む固体マトリクスと、タンパク質と融合したポリヒスチジンタグとの間の選択的相互作用の原理を用いている。ポリヒスチジンタグを含むタンパク質はマトリクスに選択的に結合するが、その他のタンパク質は洗い流される。
【0008】
IMACの代替法である金属アフィニティー沈殿では、固定化リガンドを使用しない。その代わりとして、標的のポリヒスチジンタグ付き組換えタンパク質が、ポリマー-金属リガンド結合体に特異的に結合し、これが、pHまたは温度などの環境刺激に応答して溶液から沈殿する。この現象によって、沈殿によるその他の細胞抽出物からの組換えタンパク質の精製が可能になる。その後の再使用のためにリサイクルできるポリマー結合体からの解離によって、精製タンパク質が回収される。ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)およびエラスチン様組換えタンパク質(後者は、エラスチンモノマーの第4位でリシン残基がバリンに置換されている)を用いて、金属アフィニティー沈殿に必要な金属錯体化学がもたらされる。しかし、どちらの方法も直接的ではない。例えば、エラスチン様ポリマー自体が、組換え調製を必要とする。
【0009】
関連する問題とは、分子の天然の活性の破壊を伴わない、ポリヌクレオチド、タンパク質など、様々な治療用生物製剤のインビボ送達のための組成物の調製である。
【0010】
したがって、非活性化病原体の代わりにタンパク質ならびにその他の抗原およびアジュバントを用いる、ワクチン送達組成物を調製するための新規かつより優れた方法に対する必要性が、当技術分野には未だ存在する。当技術分野には、実質的に天然活性を有する治療用生物製剤のインビボ送達用の組成物を、溶液または分散液から構築するための、新規かつ改善された方法に対する必要性も存在する。
【0011】
【非特許文献1】Marsh, S. G. E. et al. (2000) The HLA Facts Book, Academic Press, p. 58-59
【発明の開示】
【0012】
発明の概要
本発明は、生分解性ポリマーを用いた治療用生物製剤およびワクチンの送達用の、溶液または分散液からの組成物の構築のための一段階法を作成するために、金属アフィニティー精製技術を適合化させる。ポリマー分子上に官能基を含む生分解性ポリマーを用いて、一段階構築手順で、少なくとも1種の治療用生物製剤または抗原(アジュバントを含むまたは含まない)を溶液または分散液から捕捉することができる。例えば、本発明の一段階ワクチン構築法において、ある種のポリ(エステルアミド)(PEA)、ポリ(エステルウレタン)(PEUR)、およびポリ(エステルウレア)(PEU)ポリマーなどのポリマー鎖中にアミノ酸を含むポリマーを一段階構築の合成で用いることができ、かつしたがって、ポリマーへの付着として形成するアフィニティー複合体中の1つまたは複数の抗原を特異的に捕捉することによってワクチン送達組成物を容易に産生できる。本明細書において免疫原性および治療的有用性を有するワクチン送達組成物の形成を参照して本発明の方法を説明するが、本明細書に記載の方法は、生物学的分子の天然活性および従って治療的有用性が実質的に保持されるように様々な治療用生物製剤をインビボ送達するための組成物の一段階構築に使用することもできる。
【0013】
したがって、一態様において、本発明は、少なくとも1つの合成抗原を含む精製分子、該精製分子と特異的に結合するアフィニティーリガンド、および、該アフィニティーリガンドが付着できる官能基を含む合成生分解性ポリマーを、溶液または分散液中で共に接触させることによって、ワクチン送達組成物を構築するための方法を提供する。遊離官能基を介してアフィニティーリガンドがポリマーに付着するような条件下で接触工程が行われ、単一段階でワクチン送達組成物が構築されるように、抗原を含む分子とポリマー付着特異的結合アフィニティーリガンドとの間で非共有結合複合体が形成される。
【0014】
別の態様において、本発明は、(1) 治療用生物製剤が金属結合アミノ酸タグに付着する、精製された合成分子、(2) 少なくとも1つの遷移金属イオン、(3) 該金属イオンに結合する金属アフィニティーリガンド、および (4) 該アフィニティーリガンドが付着できる官能基を含む合成生分解性ポリマーを、溶液または分散液中で共に接触させることによって、治療用生物製剤のインビボ送達用の送達組成物を構築するための方法を提供する。接触工程は、その表面の遊離官能基を介してアフィニティーリガンドがポリマーに付着するような条件下で行われ、生物製剤の実質的な天然活性を維持しながら組成物が構築されるように、合成分子中、ポリマー付着金属アフィニティーリガンド、遷移金属イオン、および金属結合タグの間で非共有結合複合体が形成される。
【0015】
さらに別の態様において、本発明は、本発明の構築法における使用に適した組成物を提供する。本発明の組成物は、遷移金属イオンと非共有結合的に複合体形成している金属アフィニティーリガンドが予め付着する、1つまたは複数の官能基を有する合成生分解性ポリマーを含み、ここで該組成物は可溶性である。
【0016】
さらに別の態様において、本発明は、本発明のワクチン送達または本発明の方法によって作製された治療用生物製剤送達組成物を被験体に投与することにより、ワクチンまたは治療用生物製剤を被験体に送達するための方法を提供する。
【0017】
さらに別の態様において、本発明は、金属遷移イオンと非共有結合的に複合体形成している金属アフィニティーリガンドに、その表面の官能基を介して合成生分解性ポリマーが付着している組成物を提供し、該組成物は水性媒体中で可溶性である。
【0018】
発明の詳細な説明
本発明は、ポリマー分子上に官能基を含む生分解性ポリマーを正しい条件下で用いて、分散液、細胞溶解物、または溶液から、少なくとも1つの抗原などの精製された標的分子を捕捉することができ、一方で、捕捉された分子を、標的分子上の部位に特異的に結合するアフィニティーリガンドによってポリマーに非共有結合的に結合させるという発見に基づく。ポリマー上の官能基に付着するアフィニティーリガンドのタイプは、標的分子の特徴に依存する。例えば、溶液中の、タンパク質、融合タンパク質、または、金属結合アミノ酸を含むよう操作された(または天然に含む)その他の分子などの標的分子は、特異的に、さらに非共有結合的に、金属アフィニティーリガンドおよびポリマーに結合した金属イオンに結合し、金属アフィニティー複合体中で標的分子を捕捉する。特異的抗体結合部位を含む標的分子も同様に、ポリマーに結合したモノクローナル抗体によって捕捉することができる。この発見は、ポリマーベースの送達組成物の一段階構築のために、本発明において使用される。
【0019】
本発明の方法における使用のために好ましいポリマーである、構造式(IおよびIII〜VII)で描写されるPEA、PEUR、およびPEUは、本発明の方法において使用される官能基を含むだけでなく、送達アジュバント活性も有し、かつ抗原提示細胞(APC)によって容易に取り込まれる。したがって、これらのポリマーは、送達組成物の構築のための本発明の方法を促進するがワクチン構築に特に適しており、かつ、本発明の方法によって作製されたワクチン送達組成物の免疫原性を増大させる。
【0020】
したがって、本発明の一態様において、本方法は、以下の成分を溶液または分散液中で共に接触させる工程を含む:(1) 少なくとも1つの合成抗原を含む精製分子;(2) 該精製分子と特異的に結合するアフィニティーリガンド;および、(3) 該アフィニティーリガンドが結合できるか予め付着している官能基を含む、合成生分解性ポリマー。接触工程は、ポリマー上の官能基がアフィニティーリガンドに付着するような条件下で実施され、かつ、単一段階でワクチン送達組成物が構築されるように、非共有結合アフィニティー複合体は、抗原を含んで形成される。
【0021】
一態様において、1つまたは複数の関心対象の抗原または治療用生物製剤を含み、かつ、6×ヒスチジンタグなどのアミノ酸含有タグが付加されるよう操作された合成分子を、本発明の方法により、溶液から容易に構築しポリマーベースの送達組成物とすることができる。少なくとも1つの抗原または治療用生物製剤を含む分子を生分解性ポリマーに非共有結合的に連結するために、金属アフィニティー複合体を形成する。本発明の方法において使用されるポリマーは、アフィニティーリガンドが結合する遊離官能基を有する。例えば、モノマーあたり少なくとも1つの非アミノ酸部分に結合した少なくとも1つのアミノ酸を含むポリマーなどの、ポリマー鎖中にアミノ酸を含むポリマーを用いて、合成物を調製することができ、かつしたがって、実質的に天然活性を有する少なくとも1つの抗原または治療用生物製剤のインビボ送達用のポリマーベースの組成物を容易に産生できる。したがって、本発明の送達組成物は、様々な疾患の治療のためならびに、ヒトおよびその他の動物における様々な病原微生物または悪性疾患に対する免疫応答の刺激のための、生物製剤のインビボ送達に対する有用性を有する。
【0022】
本発明の方法において、そのような生分解性ポリマーを使用して、皮下もしくは筋肉内の注射または粘膜投与のための合成送達組成物を調製する。本組成物は、本発明の方法を用いて大量に再現可能であり、安全であり(ワクチン送達組成物は弱毒化病原体を全く含まない)、安定であり、かつ、輸送および保存のために凍結乾燥することができる。使用するポリマーの構造特性のために、本発明の方法により構築された送達組成物は、高コピー数および高局所密度の抗原または治療用生物製剤を提供する。
【0023】
例えば、一態様において、本発明は、以下を溶液または分散液中で共に接触させることによる、ワクチン送達組成物の構築のための方法を提供する:(1) ベクターおよび5〜約30アミノ酸を含む少なくとも1つのクラスIまたはクラスII制限消化(restricted)エピトープを含むタンパク質抗原をコードするDNA配列挿入物を含む少なくとも1つの組換えベクターを含む、生物の溶解物または抽出物であって、ここで該抗原は該生物によって発現されている;(2) Cu2+、Ni2+、Co2+、およびZn2+イオンより選択される遷移金属イオン;(3) 該金属イオンに結合する金属アフィニティーリガンド;ならびに (4) 遊離官能基を有する合成生分解性ポリマー。ポリマー上の遊離官能基が金属アフィニティーリガンドに結合するような条件下でこれらの成分を接触させ、ポリマー付着金属アフィニティーリガンド、遷移金属イオン、および少なくとも1つの抗原を組込んだ非共有結合複合体を形成する。任意で、しかし好ましくは、標的分子を含む溶液または分散液中にポリマーを導入する前に、本明細書に記載のように、金属アフィニティーリガンドおよび金属イオンをポリマー上の官能基に予め付着させることができる。
【0024】
さらに別の態様において、抗原または治療用生物製剤を含む精製分子を含む溶液または分散液と接触させる前に、アフィニティーリガンドおよび金属イオンが付着したポリマーを、例えば本明細書に記載のように、ポリマー粒子として製剤化することができる。本発明の方法は、例えばサイズ排除技術によって、アフィニティー複合体および結合したそのポリマーまたは粒子を溶液または分散液から分離して、望ましくない構成要素を含まない組成物を得る工程を、さらに含む。
【0025】
このように調製された本発明の送達組成物を製剤化して、様々な特性を有する組成物を得ることができる。一態様において、ポリマーは徐放性ポリマーデポーとして作用し、これは、該ポリマーデポーがインビボにおいて生分解されるにつれてAPCによって取り込まれかつMHCクラスIまたはクラスII分子によって提示される、抗原および抗原-ポリマー断片を放出する。その他の態様において、ポリマーは、APC中への抗原の担体として作用し、該抗原は、MHCクラスIまたはクラスII分子に関連する細胞表面における提示のために酵素的に分解される。別の態様において、ポリマーは抗原を保護して局所リンパ節へのその送達を促進するよう作用し、ここで、抗原特異的Bリンパ球は、天然構造で提示された抗原を認識することができる。組成物中でのポリマー、金属遷移イオン、およびアフィニティーリガンドの存在は、これらの生物学的プロセスを妨害するものではない。
【0026】
ヒトの治療に加えて、本発明の方法によって産生される送達組成物は、ペット(例えばネコ、イヌ、ウサギ、およびフェレット)、家畜(例えばニワトリ、アヒル、ブタ、ウマ、ヒツジ、乳牛、および肉牛)、および競走馬などの様々な患畜の獣医学的治療における使用も意図されている。
【0027】
本発明の方法およびワクチン送達組成物を、ポリマー分子上の官能基に形成された金属アフィニティー複合体を介してポリマーに非共有結合的に付着している、タンパク質またはタンパク質サブユニット抗原、あるいはその他のタイプの抗原に利用することができる。任意で、免疫刺激性アジュバントを、ポリマー内に分散させるか同様にポリマーに付着させることができる。APCは、MHC複合体を介して抗原由来ペプチドを表示し、細胞障害性T細胞などのT細胞によって認識されて、内因性免疫応答を発生させかつ促進し、それによって、一致するまたは類似の抗原を有する病原細胞の破壊をもたらす。または、APCは、プロセシングを受けていない(unprocessed)タンパク質抗原全体をその表面上に提示でき、これは次に、抗原特異的B細胞に認識されうる。持続期間にわたる抗原-APC複合体の持続的有用性を得るために、本発明のワクチン送達組成物において使用されるポリマーを、ポリマー分子またはそれが製剤化されたデポーおよび粒子の生分解速度に適応するように設計することができる。例えば、典型的には、送達ポリマーの製造に使用したモノマーの選択に応じて、約24時間、約7日間、約30日間、もしくは約90日間、またはそれ以上の範囲の期間にわたってポリマーデポーが分解すると考えられる。適切な免疫応答を得るために繰り返しワクチンを注射する必要がない埋込型ワクチン送達組成物を提供するためには、比較的長い期間が特に適している。
【0028】
本発明の方法によって調製されたワクチン送達組成物は、粘膜感染する(mucosally transmitted)病原体を含む多種多様な病原体に対する免疫応答を誘発するために、生分解性ポリマー媒介性送達技術を利用する。本組成物は、抗原自体の免疫原性が弱い場合でさえも、強力な免疫応答を提供する。本明細書に記載のワクチン送達組成物およびその調製法の個々の構成要素が公知であったとしても、そのような方法および活性作用物質の組み合わせが、構成要素を別々に使用した場合に得られるレベルを超えて抗原の有効性を増強すること、さらにまた、ワクチン送達組成物の製造に用いるポリマーが、組換え抗原精製およびポリマー含有ワクチン製造の技術を一段階法へと縮小する一方で、さらなるアジュバントの必要性を回避する場合があり得ることは予想されておらず、驚くべきことである。
【0029】
本発明は、任意の上述の病原体に対する免疫応答を提供するためのワクチン送達組成物の提供に対して広範に適用可能であるが、インフルエンザウイルスおよびHPVを参照して本明細書において本発明を例示する。
【0030】
本発明の方法によって調製されるワクチン送達組成物は、細胞媒介性免疫および/または体液性抗体応答を提供する。したがって、本発明の方法には、ウイルス性、細菌性、真菌性、および寄生虫性の病原体由来の抗原ならびに、抗体、Tヘルパー細胞活性、およびT細胞細胞障害活性を誘発しうる腫瘍関連抗原を含む、細胞性および/または体液性の免疫応答が望ましい任意の抗原の使用が見出されるであろう。したがって、本明細書で使用する「免疫応答」とは、使用した抗原に特異的な、抗体、Tヘルパー細胞活性、またはT細胞細胞障害活性の産生を意味する。そのような抗原には、ヒトおよび動物の病原体にコードされる抗原が非制限的に含まれ、これらは、構造タンパク質もしくは非構造タンパク質、多糖-ペプチド結合体、RNA、またはDNAのいずれかに対応できる。
【0031】
たとえば本発明には、以下を含む、ヘルペスウイルスファミリー由来の多種多様なタンパク質に対する免疫応答を刺激するためのワクチン送達組成物の調製における使用が認められるであろう:HSV-1およびHSV-2の糖タンパク質gB、gD、およびgHなどの、単純ヘルペスウイルス(HSV)タイプ1および2に由来するタンパク質;CMV gBおよびgHを含む、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、およびサイトメガロウイルス(CMV)に由来する抗原;ならびに、HHV6およびHHV7などのその他のヒトヘルペスウイルスに由来する抗原。(例えば、サイトメガロウイルスの内容物をコードするタンパク質の概説についてはChee et al., Cytomegaloviruses (J. K. McDougall, ed., Springer-Verlag 1990) pp. 125-169;様々なHSV-1コードタンパク質の考察についてはMcGeoch et al., J. Gen. Virol. (1988) 69:1531-1574;HSV-1およびHSV-2のgBおよびgDタンパク質ならびにそれをコードする遺伝子の考察については米国特許第5,171,568号;EBVゲノム中のタンパク質コード配列の同定についてはBaer et al., Nature (1984) 310:207-211;ならびに、VZVの概説についてはDavison and Scott, J. Gen. Virol. (1986) 67:1759-1816を参照されたい。)
【0032】
また、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、デルタ型肝炎ウイルス(HDV)、E型肝炎ウイルス(HEV)、およびG型肝炎ウイルス(HGV)を含む肝炎ファミリーのウイルス由来の抗原も、本明細書に記載の技術において好都合に使用できる。一例として、HCVのウイルスゲノム配列が公知であり、該配列を得るための方法も公知である。例えば、国際公開公報第89/04669号;同第90/11089号;および同第90/14436号を参照されたい。HCVゲノムは、E1(Eとしても公知である)およびE2(E2/NSIとしても公知である)ならびにN末端ヌクレオカプシドタンパク質(「コア」と称する)を含む、複数のウイルスタンパク質をコードしている(E1およびE2を含むHCVタンパク質の考察についてはHoughton et al., Hepatology (1991) 14:381-388を参照されたい)。これらのタンパク質、ならびにその抗原性断片のそれぞれは、本発明の方法における使用が見出されるであろう。同様に、HDV由来のδ抗原の配列が公知であり(例えば米国特許第5,378,814号を参照されたい)、この抗原も、本発明の方法において好都合に使用できる。さらに、コア抗原などのHBV由来の抗原、表面抗原sAg、ならびに、前表面(presurface)配列pre-S1およびpre-S2(以前はpre-Sと呼ばれた)、さらに、sAg/pre-S1、sAg/pre-S2、sAg/pre-S1/pre-S2、およびpre-S1/pre-S2などの上記の組み合わせも、本明細書において使用が見出されるであろう。例えば、HBV構造の考察については"HBV Vaccines--from the laboratory to license: a case study" in Mackett, M. and Williamson, J. D., Human Vaccines and Vaccination, pp. 159-176;および、その全文が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第4,722,840号、同第5,098,704号、同第5,324,513号;Beames et al., J. Virol. (1995) 69:6833-6838, Birnbaum et al. J. Virol. (1990) 64:3319-3330;およびZhou et al. J. Virol. (1991) 65:5457-5464を参照されたい。
【0033】
これらに限定されるわけではないが、以下のファミリーのメンバーに由来するタンパク質などのその他のウイルス由来の抗原も、特許請求される方法における使用が認められるであろう:ピコルナウイルス科(Picornaviridae)(例えばポリオウイルスなど);カリシウイルス科(Caliciviridae);トガウイルス科(Togaviridae)(例えば風疹ウイルス、デング熱ウイルスなど);フラビウイルス科(Flaviviridae);コロナウイルス科(Coronaviridae);レオウイルス科(Reoviridae);ビルナウイルス科(Birnaviridae);ラブドウイルス科(Rhabodoviridae)(例えば狂犬病ウイルスなど);フィロウイルス科(Filoviridae);パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)(例えば流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、RSウイルスなど);オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)(例えばインフルエンザA型、B型、およびC型ウイルスなど);ブンヤウイルス科(Bunyaviddae);アレナウイルス科(Arenaviridae);レトロウイルス科(Retroviradae)(例えばHTLV-I;HTLV-II;HIV-1(HTLV-III LAV、ARV、hTLRなどとしても公知である))、単離体HlVIIIb、HIVSF2、HIVLAV、HIVLAI、HIVMNに由来する抗原を非限定的に含む);特に、HIV-1CM235、HIV-1US4;HIV-2;サル免疫不全ウイルス(SIV)。さらに、抗原はHPVおよびダニ媒介性脳炎ウイルスに由来してもよい。これらおよびその他のウイルスの説明については、例えば、Virology, 3rd Edition (W. K. Joklik ed. 1988);Fundamental Virology, 2nd Edition (B. N. Fields and D. M. Knipe, eds. 1991)を参照されたい。
【0034】
より詳細には、HIVの様々な遺伝的サブタイプのメンバーを含む任意の上記HIV単離体に由来するエンベロープタンパク質が公知かつ報告されており(様々なHIV単離体のエンベロープ配列の比較については、例えば、Myers et al., Los Alamos Database, Los Alamos National Laboratory, Los Alamos, N.Mex. (1992);Myers et al., Human Retroviruses and Aids, 1990, Los Alamos, N.Mex.: Los Alamos National Laboratory;およびModrow et al., J. Virol. (1987) 61:570-578を参照されたい)、任意のこれらの単離体に由来する抗原は、本発明の方法における使用が認められるであろう。特に、gp120のV3ループに由来しかつ以下の配列
を有する合成ペプチドであるR15K(Nehete et al. Antiviral Res. (2002) 56:233-251)は、本発明の組成物および方法において使用されるであろう。さらに、本発明は、gp160およびgp41などの様々なエンベロープタンパク質、p24gagおよびp55gagなどのgag抗原、ならびにpol領域由来のタンパク質のうち任意のものを含む、任意の様々なHIV単離体に由来するその他の免疫原性タンパク質に対して同様に適用可能である。さらに、HIVタンパク質由来の様々なエピトープを用いて、ポリマー-ペプチド結合体のマルチエピトープカクテルを想定することができる。例えば、gp120およびgp41由来の以下の保存ペプチド6種が、アカゲザル/SHIVモデルにおいてウイルス負荷を減少させて伝染を阻害することが示されている。
本発明の組成物および方法において試験された抗原のアミノ酸配列は
であり、ここで全アミノ酸が天然のLアミノ酸である。
【0035】
上記で説明したように、インフルエンザウイルスは、本発明が特に有用と考えられるウイルスのもう1つの例である。特に、インフルエンザA型のエンベロープ糖タンパク質HAおよびNAは、核タンパク質でありかつ本発明の方法によるワクチン送達組成物の作製に使用できるため、免疫応答の発生に関して特に関心対象となる。インフルエンザA型のHAサブタイプは数多く同定されている(Kawaoka et al., Virology (1990) 12:759-767;Webster et al., "Antigenic variation among type A influenza viruses," p. 127-168. In: P. Palese and D. W. Kingsbury (ed.), Genetics of influenza viruses. Springer-Verlag, New York)。したがって、任意のこれら単離体に由来するタンパク質もまた、本明細書に記載の免疫化技術において使用可能である。特に、本発明のワクチン送達組成物および方法において、HAの13アミノ酸保存配列を用いることができる。現在のワクチン製剤において使用されているH3株では、このアミノ酸配列は
であり、H5株では大部分が
である。
【0036】
T細胞エピトープは、アミノ酸配列の短いセグメントとして抗原タンパク質全体に含まれる、小さなペプチドである。インビボにおいては、タンパク質が細胞内抗原プロセシング経路に入った後、該タンパク質は、抗原提示細胞の表面における提示のためにその内部に含まれるT細胞エピトープを遊離させるように、酵素によって切断される。このようにして、タンパク質全体またはペプチドを抗原として送達することができ、細胞性応答によって、免疫応答を誘発するように該タンパク質全体がプロセシングされる。
【0037】
B細胞エピトープは、タンパク質、糖タンパク質、脂質、またはその他の生物学的要素から構成されうる構造的決定因子である。典型的にはB細胞は、病原体の表面において、または抗原提示細胞の表面において、プロセシングを受けていない抗原(タンパク質など)を認識する。典型的にはB細胞は、リンパ節またはその他のリンパ組織中でその同種抗原に遭遇し、ここで該抗原は、抗原提示細胞によって取引されている。B細胞が活性化されると、抗原に特異的な抗体を分泌しかつ表面上にこの抗原を有する病原体に直接結合する、エフェクター細胞となる。B細胞および抗体の応答は、いくつかの方法のうち1つによって、病原体を消失させるか中和することができる。分泌された抗体でコーティングされた細菌またはウイルスは、生来の免疫系のFc受容体含有細胞による破壊の標的となる。あるいは、受容体媒介性エンドサイトーシスを通して、抗原特異的B細胞によって病原体を取り込むことができる。これらのB細胞は次に、CD4 T細胞に対する抗原提示細胞として作用でき、これはさらに、病原体に対する免疫応答を強化する。抗体が宿主を保護するためのもう1つの方法とは単に、抗体で被覆された病原体が物理的に宿主T細胞に侵入できないような、またはさもなくばその病原作用を発揮できないような、立体障害によるものである。これは病原体の「中和」として知られており、インビトロにおいてワクチンの真価を解析するための重要な方法の原理である;ワクチンは、特異的なだけでなく機能的に中和も行う抗体を誘導しなければならない。
【0038】
本発明のワクチン送達組成物の別の態様において、天然のウイルスコートタンパク質に由来しそこから変更したタンパク質構造ドメイン全体を、PEA、PEUR、またはPEUポリマーと結合させ、抗原として送達することができる。
【0039】
例示的な一例として、本発明の組成物および方法において、インフルエンザA型表面タンパク質をウイルス抗原として用いることができる。インフルエンザウイルスは、宿主上皮細胞の糖タンパク質表面の糖質への血球凝集素分子の結合によって、細胞に感染する。ウイルスは受容体媒介性エンドサイトーシスによって貪食され、細胞内小胞(endocytic vesicle)内部のpHの低下によってウイルス血球凝集素の構造に変化が生じ、これによりウイルス膜と小胞膜との融合が可能になる。血球凝集素(HA)タンパク質の露出部分は外部ドメインであり、これは、該タンパク質のHA1およびHA2サブパート(subpart)の両方を包含している。インフルエンザウイルスの別の株は、異なるアミノ酸配列を有するHA外部ドメインタンパク質を発現する。例えば、図13および14はそれぞれ、本発明のワクチン構築法による精製のために天然シグナル配列を除去してカルボキシ末端His6タグを追加するよう変更された、A/Puerto Rico/8/34(H1N1株由来)(SEQ ID NO: 11)およびA/Vietnam/1203/2004(H5N1)(SEQ ID NO: 12)のHA外部ドメインタンパク質のアミノ酸配列を示している。
【0040】
エンドソーム中へビリオンがエンドサイトーシスされる際、ウイルスのM2イオンチャネルがビリオン内部の酸性化を引き起こすと考えられている。ウイルス膜が小胞膜に融合した後、ウイルスの内容物は細胞質ゾルへと移動する。次にウイルスRNAが細胞の核に侵入し、ここで複製が起こる。レプリコンは細胞質ゾル中に戻り、新たなウイルス粒子のタンパク質へと翻訳される。インフルエンザウイルスM2イオンチャネルは、トランスゴルジネットワークの酸性内腔と中性細胞質との間のpH勾配を平衡化することによって、細胞外への(exocytic)経路においても同様に機能すると考えられる。ウイルス出芽の際には、小さな外部ドメインしかウイルス表面に露出しない。出芽ウイルスの脱離はノイラミニダーゼによって補助され、このように新たな細胞への感染が広がる。
【0041】
本発明のインフルエンザワクチンに関して、これらの各インフルエンザ株のノイラミニダーゼは、組換え遺伝子技術によって、M2ウイルス膜タンパク質に融合しており、新規の抗原性要素を形成する。この融合タンパク質は、そのカルボキシ末端においてタイプII膜タンパク質であるノイラミニダーゼ(NA)の外部ドメインと融合した、ウイルスM2タンパク質(M2e)のアミノ末端の24アミノ酸からなる。したがってNAタンパク質部分は、自身の膜貫通セグメントを含むアミノ末端を欠失している。結果として得られる融合タンパク質は、本発明のワクチン送達組成物構築法における精製および使用のためにカルボキシ末端のHis6タグを含むよう操作されている(SEQ ID NO: 13、図15およびSEQ ID NO: 14、図16)。またNAタンパク質外部ドメインは、独立して発現させることもでき(SEQ ID NO: 18、図20およびSEQ ID NO: 19、図21)、ワクチン組成物中で使用することもできる。
【0042】
さらなる例示的なインフルエンザ抗原は、RNAウイルスゲノムのキャプシド形成に必要な核タンパク質(NP)である。M2の細胞外部分と同様、NPのアミノ酸組成はビリオン表面タンパク質よりも高度に保存されており、かつ、NPの機能もまた増殖性インフルエンザ感染の伝搬に極めて重要であるので、これらのタンパク質は魅力的なワクチン構成要素である。HAなどのその他のインフルエンザ抗原の1つまたは複数と共に本発明の組成物中にこの抗原を封入することは、より包括的な免疫応答を提供するのに役立ち、かつしたがってより強力なワクチンを産生するのに役立つ。本発明の組成物および方法における使用のために変更された、A/Puerto Rico/8/34(H1N1)に由来する核タンパク質タンパク質のアミノ酸配列を、本明細書中、SEQ ID NO: 15、図17に示す。同様に変更した、A/Vietnam/1203/2004(H5N1)由来の核タンパク質タンパク質を、本明細書中、SEQ ID NO: 16、図18に示す。
【0043】
また本明細書に記載の組成物および方法には、ジフテリア、コレラ、結核、破傷風、百日咳、髄膜炎、ライム病を引き起こす生物、さらに、髄膜炎菌(Meningococcus)A、B、およびC、B型インフルエンザ菌(Hemophilus influenza type B;HIB)、ならびにヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori)を非限定的に含むその他の病原微生物に由来する抗原などの、数多くの細菌性抗原を用いた使用も認められるであろう。寄生虫性抗原の例には、マラリアおよび住血吸虫症を引き起こす生物に由来する抗原が含まれる。
【0044】
さらに、本明細書に記載の方法は、様々な悪性癌に対して抗原を送達するためおよび/または免疫応答を生じるためのワクチン組成物の構築用の手段を提供する。例えば、本発明の方法によって調製した組成物を用いて、活性化された癌遺伝子、胎児抗原、または活性化マーカーなど、問題となっている癌に特異的な特定の抗原に対する、体液性および細胞媒介性の免疫応答の両方を高めることができる。そのような腫瘍抗原には、特に、MAGE 1、2、3、4(Boon, T. Scientific American (March 1993):82-89)などを含む任意の様々なMAGE(メラノーマ関連抗原E);任意の様々なチロシナーゼ;MART 1(T細胞により認識されるメラノーマ抗原)、ras変異体;p53変異体;p97メラノーマ抗原;CEA(癌胎児抗原)が含まれる。本発明の方法および組成物によるワクチン送達組成物の調製において有用なさらなるメラノーマ抗原には、以下が含まれる。
* GP100はメラノーマ関連ME20抗原とも呼ばれる。
【0045】
ヒトおよび動物におけるある種の悪性疾患は、T細胞に感染してこれらの細胞を腫瘍細胞へと悪性転換させるウイルスに関連する。例えば、ほぼ全ての子宮頸癌患者がパピローマウイルスに感染しているほどに、HPVの特定のサブタイプは子宮頚癌の発症に強く関連している。HPVのその他のサブタイプは性器いぼに関連する。予防的に投与されると、細胞のウイルス感染が妨害されるようにHPVに対して体液性または細胞媒介性のいずれかの防御免疫応答を誘発するワクチンは、その後の曝露から患者を防御することができる。米国の性的に活発な個人のうち50%程度が人生の一時期に感染したと仮定されるほどに、大勢の人々が1種または複数のHPVウイルスを既に有し、かつ伝染率が高い。このため、治療用HPVワクチンの開発は極めて重要である。そのようなワクチンは、意図された患者がHPVの存在に関して陽性であると試験されたが現在は症状を有さない個人であるように設計されるか、または、HPV関連前癌病変を有することが認められる女性の治療用に設計されるか、または、初期もしくは後期の子宮頸癌を有する女性の治療用に設計される。治療用ワクチンとは、病原体に、場合によってはC型肝炎ウイルス(HCV)またはヒト免疫不全ウイルスなどの慢性ウイルス病原体に既に感染している患者に投与されるワクチンである。この例においては、後期または慢性のウイルス感染によって発現するタンパク質が、適切なワクチン標的となるであろう。ヒトパピローマウイルスの場合、2種類のタンパク質E6およびE7がHPV感染細胞中で発現しており、これらはまた、そのような感染に起因する腫瘍細胞中でも発現している。したがって、本発明のワクチン組成物は、これらのタンパク質および、PEA-NTAに結合したある種の糖脂質、膜脂質、または核酸を含むことができる。HPV-16 E6-E7変異体融合タンパク質(SEQ ID NO: 17、図19)を含む本発明のワクチン送達組成物で動物を処置した動物試験の結果を、実施例に示す。
【0046】
本発明を用いて多種多様な疾患に対するワクチンを構築できることは、容易に明らかとなる。
【0047】
本発明のワクチン送達組成物調製法においてポリマー中に分散する抗原は、任意の適切な長さを有することができるが、ペプチド制限消化Tリンパ球により認識される8〜約30アミノ酸のペプチド抗原セグメントを組み込むことができる。具体的には、対応するクラスIペプチド制限消化細胞障害性T細胞により認識される抗原セグメントが8〜約12アミノ酸、例えば9〜約11アミノ酸を含み、かつ、対応するクラスIIペプチド制限消化Tヘルパー細胞により認識される抗原セグメントが8〜約30アミノ酸、例えば約12〜約24アミノ酸を含む。
【0048】
天然T細胞媒介性免疫は(APCの表面上の)MHC分子によるペプチドエピトープの提示を介して機能するが、MHCは、補助ペプチド(peptide adjunct)、特に、糖部分または脂質部分がT細胞に表示されるようにペプチド部分がMHCによって保持されているグリコールペプチドおよびリポペプチドも、提示することができる。複数の腫瘍が糖誘導体化(glyco-derivatized)タンパク質または脂質誘導体化(lipo-derivatized)タンパク質を過剰発現し、かつ、これらの糖誘導体化または脂質誘導体化ペプチド断片が、場合によっては強力なT細胞エピトープとなりうるので、この考察は癌ワクチン学に特に関連する。さらに、そのようなT細胞エピトープ内の脂質は糖脂質であることができる。
【0049】
通常のペプチド単独の提示とは異なり、これらの場合、T細胞認識はペプチド上の糖または脂質の基に左右されるので、高親和性でMHCに結合するが、腫瘍関連の糖分子または脂質分子が合成的に共有結合する腫瘍タンパク質に由来するものではない短い合成ペプチドでさえ、抗原として成功裡に使用される。天然腫瘍細胞系に向けた人工T細胞エピトープを創出するためのこのアプローチは、Franco et al, J. Exp. Med (2004) 199(5):707-716により最近採用された。したがって、合成ペプチド誘導体およびさらにペプチド模倣薬までも、本発明のワクチン送達組成物調製法における抗原と置き換えて、ペプチド分枝および非抗原をT細胞に提示するためのプラットフォームを形成する高親和性MHC結合リガンドとして作用させることができる。
【0050】
したがって、本明細書に記載の「抗原」という用語は、特定の抗原または特定のTリンパ球が特異的に結合する分子、およびその一部を指す。抗原は、タンパク質、ペプチド、完全なペプチド誘導体(分枝ペプチドなど)、および、ペプチドの共有結合性ヘテロ誘導体(糖誘導体、脂質誘導体、および糖脂質誘導体)でありうる。また、以下を非限定的に含む、病原体または異常細胞に関連する非ペプチド分子を包含することも意図される:細菌またはウイルスで被覆された多糖、糖脂質、リポ多糖、オリゴヌクレオチド、およびリン酸含有抗原(リン酸抗原(phosphoantigen))。特定の抗原または特定のTリンパ球が特異的に結合する、そのような材料の断片ならびに修飾物およびそのような修飾配列を含む融合タンパク質も、本明細書で使用する「抗原」という用語に包含されることが意図される。
【0051】
当技術分野で公知の任意の技術を用いて、抗原を合成することができる。抗原には「ペプチド模倣体」も含まれうる。ペプチド類似体は、鋳型ペプチドの特性と類似した特性を有する非ペプチド生理活性物質として、製薬業界で一般に用いられる。これらのタイプの非ペプチド化合物は「ペプチド模倣体」または「ペプチド模倣薬」と称する。Fauchere, J. (1986) Adv. Bioactive agent Res., 15:29;Veber and Freidinger (1985) TINS p. 392;およびEvans et al. (1987) J. Med. Chem., 30:1229は通常、コンピュータ分子モデリングを利用して展開されている。一般的に、ペプチド模倣薬は、典型的なポリペプチド(すなわち、生化学特性または薬理活性を有するポリペプチド)と構造的に類似しているが、当技術分野で公知でありかつ以下の参照文献においてさらに説明されている方法によって、--CH2NH--、--CH2S--、--CH2-CH2--、--CH=CH--(シスおよびトランス)、--COCH2--、--CH(OH)CH2--、および--CH2SO--からなる群より選択される結合によって置換されてもよい1つまたは複数のペプチド結合を有する:Spatola, A.F. in "Chemistry and Biochemistry of Amino Acids, Peptides, and Proteins," B. Weinstein, eds., Marcel Dekker, New York, p. 267 (1983);Spatola, A.F., Vega Data (March 1983), Vol. 1, Issue 3, "Peptide Backbone Modifications"(一般総説);Morley, J.S., Trends. Pharm. Sci., (1980) pp. 463-468(一般総説);Hudson, D. et al., Int. J. Pept. Prot. Res., (1979) 14:177-185 (--CH2NH--, CH2CH2--);Spatola, A.F. et al., Life Sci., (1986) 38: 1243-1249 (--CH2-S--);Harm, M. M., J. Chem. Soc. Perkin Trans I (1982) 307-314 (--CH=CH--, cis and trans);Almquist, R.G. et al., J. Med. Chem., (1980) 23:2533 (--COCH2--);Jennings-Whie, C. et al., Tetrahedron Lett., (1982) 23:2533 (--COCH2--);Szelke, M. et al., European Appln., EP 45665 (1982) CA: 97:39405 (1982) (--CH(OH)CH2--);Holladay, M. W. et al., Tetrahedron Lett., (1983) 24:4401-4404 (--C(OH)CH2--);およびHruby, V.J., Life Sci, (1982) 31:189-199 (-CH2-S-)。そのようなペプチド模倣体は、例えば以下を含むポリペプチド態様に対する有意な利点を有しうる:産生の低コスト化、化学的安定性の増大、薬理特性の増強(半減期、吸収、強度、有効性など)、特異性の変化(例えば、広範囲の生物活性)など。
【0052】
さらに、ペプチド中の1つまたは複数のアミノ酸の置換(例えば、L-リシンの代わりにD-リシンを用いる)を使用して、より安定なペプチドおよび内因性プロテアーゼに対して耐性を有するペプチドを作製することができる。代替的に、例えば生分解性ポリマーに非共有的に結合した合成抗原をD-アミノ酸から調製することができ、これを逆ペプチド(inverso peptide)と称する。天然ペプチド配列の反対方向にペプチドを構築する場合、これはレトロペプチド(retro peptide)と称される。一般に、D-アミノ酸から調製したペプチドは、酵素的加水分解に対して非常に安定である。レトロ-逆ペプチドまたは部分的レトロ-逆ペプチドに関して、生物活性が保存された多くの場合が報告されている(米国特許第6,261,569 B1号およびその参照文献;B. Fromme et al., Endocrinology (2003)144:3262-3269)。
【0053】
その後の被験体への投与のために、1つまたは複数の選択された抗原を、本明細書に記載のアジュバントの存在下または非存在下で生分解性ポリマーと複合体形成させる。ワクチン送達組成物が調製されたら、静脈内、粘膜、筋肉内、または皮下送達経路を非限定的に含む様々な送達経路のために、該組成物を製剤化することができる。例えば、本明細書に記載の方法において有用なポリマーには、本明細書に記載のPEA、PEUR、およびPEUポリマーが非限定的に含まれる。これらのポリマーを様々な分子量で製造することができるが、所与の抗原を用いる使用に関して適切な分子量は、当業者によって容易に決定される。したがって、例えば、適切な分子量は約5,000〜約300,000キロダルトン(KD)のオーダーであり、例えば約5,000〜約250,000、または約65,000〜約200,000、または約100,000〜約150,000である。
【0054】
一部の態様において、ポリマー組成物自体による、抗原の残留、保護、およびAPCへの送達は、免疫原性アジュバント活性を提供するのに十分である。別の態様において、抗原の送達の増加、サイトカイン産生の刺激、および/または抗原提示細胞の刺激によって可溶性タンパク質抗原に対する免疫応答、特に細胞性免疫応答を増大させることができるアジュバントを含むように、本発明のワクチン送達組成物を調製することができる。あるいは、例えば同一組成物中または別々の組成物中の本発明のワクチン送達組成物と同時に、アジュバントを投与することができる。例えば、本発明のワクチン送達組成物の前または後にアジュバントを投与することができる。さらに代替的には、同時送達に関して本明細書に記載のように、アジュバントをポリマー中に分散させることができ、または、アジュバント/抗原をポリマーに非共有結合させることができる。
【0055】
細胞性および体液性の免疫応答を増強するための適切なタイプのアジュバントには以下が含まれるが、これらに限定されるわけではない:(1) 水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムなどのアルミニウム塩(ミョウバン);(2) 例えば、(a) Model 110Y microfluidizer(Microfluidics, Newton, Mass.)などのマイクロフルイダイザーを用いてサブミクロン粒子へと製剤化された、5%スクアレン、0.5% Tween 80(商標)、および0.5% Span 85を含み、任意で様々な量のMTP-PBを含む、MF59(国際公開公報第90/14837号)、(b) 顕微溶液化されてサブミクロンエマルジョンとなったか、ボルテックスされてそれより大きな粒度のエマルジョンとなった、10%スクアレン、0.4% Tween 80(商標)、5%プルロニック保護(pluronic-blocked)ポリマーL121、およびthr-MDPを含む、SAF、ならびに (c) 2%スクアレン、0.2% Tween 80(商標)、ならびに、モノホスホリルリピドA(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)からなる群由来の1つまたは複数の細菌細胞壁構成要素、好ましくはMPL+CWS(Detox(商標))を含む、Ribi(商標)アジュバント組成物(RAS)(Ribi Immunochem, Hamilton, Mont.)などの、水中油型エマルジョン製剤(ムラミルペプチドまたは細菌細胞壁構成要素などのその他の特異的免疫刺激剤を含むまたは含まない);(3) Stimulon(商標)(Cambridge Bioscience, Worcester, Mass.)などのサポニンアジュバント、またはそこから作製された、ISCOM(免疫刺激複合体)などの粒子;(4) 完全フロイントアジュバント(CFA)および不完全フロイントアジュバント(IFA);(5) インターロイキン(IL-1、IL-2など)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)などのサイトカイン;(6) コレラ毒素(CT)、百日咳毒素(PT)、または大腸菌(E. coli)易熱性毒素(LT)などの細菌性ADP-リボシル化毒素の解毒変異体、特にLT-K63(63位の野生型アミノ酸がリシンに置換されている)、LT-R72(72位の野生型アミノ酸がアルギニンに置換されている)、CT-S109(109位の野生型アミノ酸がセリンに置換されている)、およびPT-K9/G129(9位の野生型アミノ酸がリシンに、129位がグリシンに置換されている)(例えば、国際公開公報第93/13202号および同第92/19265号を参照されたい);ならびに (7) サポニンの精製型であるQS21およびリポ多糖(LPS)の非毒性誘導体である3D-モノホスホリルリピドA(MPL)(Moore, et al., Vaccine. 1999 Jun 4;17(20-21):2517-27)。また、本発明の方法により調製された組成物の有効性を増大させるために、免疫刺激アジュバントとして作用する細菌性、ウイルス性、または合成のRNAもしくはDNA化合物(例えばポリI:CまたはCpG)、糖質、またはその他のToll様受容体(TLR)リガンドなどのその他の物質を用いてもよい。
【0056】
本発明の実施における使用に適したポリマーは、ポリマーへのアフィニティーリガンドの容易な結合を可能にする機能性を有する。例えば、遊離のアミノ基またはカルボキシル基を有するポリマーは、本発明の方法における使用に関して本明細書で記載されたモノクローナル抗体またはアフィニティーリガンドと容易に反応し、該アフィニティーリガンドを該ポリマーに結合させることができる。本明細書に記載のように、生分解性ポリマーおよびアフィニティーリガンドは、ワクチン送達組成物を形成する一方で抗原および任意のアジュバントを細胞溶解物、その他の合成溶液または分散液から同時精製することを目的としてアフィニティーリガンドを生分解性ポリマーに結合させるために使用できる、数多くの相補的官能基を含んでもよい。
【0057】
本発明のワクチン送達組成物中のポリマーは、ポリマーの生分解の間そのような薬剤を含む粒子またはポリマー分子をゆっくりと放出しながら、個体の免疫細胞が抗原および任意のアジュバントと相互作用して免疫プロセスに影響を与えるのに十分な期間、抗原および任意のアジュバントを注射部位で維持することによって、インプラント部位での内因性免疫プロセスにおいて積極的な役割を有する。脆弱な抗原および任意のアジュバントは、抗原の半減期および残留を増大させるためによりゆっくりと生分解されるポリマーによって保護される。また、抗原および任意のアジュバントの共存は、ワクチン製剤に対する宿主の免疫応答を有利に変更できる。
【0058】
またポリマー自体も、ポリマー-抗原組成物の食作用の刺激によって、APCへの抗原の送達における積極的な役割を有しうる。さらに、本明細書で開示されたポリマー、例えば構造式(IおよびIII〜VIII)を有するポリマーは、酵素的分解の際、細胞を培う必須アミノ酸を産生するが、その他の分解産物は、脂肪酸および糖の代謝の際に使用されるのと類似した経路を用いて代謝できる。抗原/金属イオン/アフィニティーリガンド複合体を有するポリマーの取り込みは安全である:APCが生存し、正常に機能し、かつ、本発明の組成物の分解産物を代謝/除去できることが試験により示されている。したがって、本発明の方法により産生されるこれらのポリマーおよびワクチン送達組成物は、注射自体に起因する外傷は別として、被験体に対し注射部位および全身の両方において実質的に非炎症性である。さらに、APCによるポリマーの能動的取り込みの場合、ポリマーは抗原の送達アジュバントとして働くので、したがって、追加のアジュバントを別々に製剤化するための必要不可欠な条件は無い。
【0059】
本明細書において免疫原性および治療的有用性を有するワクチン送達組成物の形成を参照して本発明の送達組成物構築法を説明するが、本明細書に記載の方法は、生体分子の天然活性および従って治療的有用性が実質的に保持されるように様々な治療用生物製剤をインビボ送達するための組成物の一段階構築用に使用することもできる。
【0060】
本明細書において「治療用生物製剤」という用語は、哺乳動物の体内に発生するかまたは身体プロセスに影響しかつ治療目的のために使用できる合成または天然の分子を指すために使用される。具体的には、タンパク質、ペプチド、ならびに全タイプのDNAおよびRNAなどの、生物学的プロセスに有用な様々な要素ならびに重合巨大分子が、本用語の意味に含まれる。
【0061】
ヌクレオチドは金属結合分子であることが、当技術分野で周知である(例えばWacker EC and Vallee BT, Journal of Biological Chemistry (1959) 234(12):3257-3262を参照されたい)。したがって、DNAおよびRNAの場合には、本発明の送達組成物に組み込まれるべき合成分子を、アミノ酸含有タグよりもむしろヌクレオチドタグを含むように合成(すなわち修飾)することができる。例えば、治療用生物製剤としてのRNAまたはDNAの鎖を送達するための本発明の組成物を製造する際、3'または5'端のいずれかに治療用生物製剤を含む分子中のヌクレオチド含有タグを介して、RNAまたはDNAをポリマー活性基に結合させる。また、その例が以下で概説されるこれらの手順を用いてHisタグ付き生物製剤を合成することもできるが、ここで、非タグ部分はペプチドでもタンパク質でもなく、ポリヌクレオチド(RNAまたはDNA)、多糖、脂質、または低分子ハプテンである。
【0062】
ヌクレオシドおよびヌクレオチドが遷移金属に結合すること、ならびに、ヒスチジンによる結合と類似の様式で特にプリンの塩基部分が金属カチオンに結合することが、当技術分野において公知である(例えば、De Meester P, et al., Biochem. J., (1974) 134, 791-792;Collins AD, et al., Biochim Biophys Acta, 402(1):1-6, 1975;Goodgame DML, et al., Nucleic Acids Res., 2(8):1375-1379, 1975;Gao Y-G, et al., Nucleic Acids Res., 21(17):4093-4101, 1993を参照されたい)。したがって、遷移金属への結合によって、CpGまたはポリI:Cなどのポリヌクレオチドアジュバント分子を、付随する抗原を含むまたは含まないワクチン粒子に直接組み込むことができる。
【0063】
本発明の生体適合性送達組成物の形成において有用な生分解性ポリマーには、モノマーあたり少なくとも1つの非アミノ酸部分に結合した少なくとも1つのアミノ酸を含むポリマーが含まれる。本明細書で使用する「非アミノ酸部分」という用語には様々な化学的部分が含まれるが、本明細書に記載のアミノ酸誘導体およびペプチド模倣薬は特別に除外する。さらに、少なくとも1つのアミノ酸を含むポリマーとは、そのように特記されない限り、天然ポリペプチドを含むポリアミノ酸セグメントを含むことを意図するものではない。ある態様において、モノマー中の2つの隣接アミノ酸の間に非アミノ酸を配置する。別の態様において、非アミノ酸部分は疎水性である。ポリマーはブロックコポリマーであってもよい。
【0064】
本発明の組成物および方法における使用のための好ましいポリマーは、ポリマー骨格上に一体型(built-in)官能基を有する、ポリエステルアミド(PEA)、ポリエステルウレタン(PEUR)、およびポリエステルウレア(PEU)であり、これらの一体型官能基は、その他の化学物質と反応でき、ポリマーの機能性をさらに広げるためのさらなる官能基の組み込みを導くことができる。したがって、本発明の方法において使用されるそのようなポリマーは、水溶性を増大させるための親水性構造を有するその他の化学物質と、ならびに、抗原、アジュバント、およびその他の作用物質と、事前の修飾の必要性無しに反応する準備もできている。
【0065】
さらに、本発明の送達組成物の調製において使用されるPEA、PEUR、およびPEUポリマーは、生理食塩水(PBS)媒体中で試験した場合には加水分解性分解を示さないが、キモトリプシンなどの酵素溶液中では均一な侵食性挙動(uniform erosive behavior)が認められ、それにより抗原の制御送達がもたらされる。
【0066】
したがって、一態様において、本発明の方法において使用されるポリマーは以下の少なくとも1つ又はその混合物を含む:
構造式 (I) に記載の化学式を有するPEA
式中、nは約5〜約150の範囲であり;R1は独立して、α,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-(C1-C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)二けい皮酸、もしくは4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)二けい皮酸、(C2-C20)アルキレン、もしくは(C2-C20)アルケニレンの残基から選択され;個別のn個のモノマー中のR3は独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2SCH3からなる群より選択され;かつR4は独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ、(C2-C20)アルキレン、飽和型もしくは不飽和型の治療的ジオールの残基、構造式 (II)
の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびそれらの組み合わせ、(C2-C20)アルキレン、ならびに(C2-C20)アルケニレンからなる群より選択される;
または、構造式IIIに記載の化学式を有するPEA
式中、nは約5〜約150の範囲であり;mは約0.1〜0.9の範囲であり;pは約0.9〜0.1の範囲であり;式中、R1は独立して、α,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-(C1-C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)二けい皮酸、もしくは4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)二けい皮酸、(C2-C20)アルキレン、もしくは(C2-C20)アルケニレンの残基より選択され;各R2は独立して、水素、(C1-C12)アルキルもしくは(C6-C10)アリール、または保護基であり;個別のm個のモノマー中のR3は独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2SCH3からなる群より選択され;R4は独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ、(C2-C20)アルキレン、飽和型もしくは不飽和型の治療的ジオールの残基、または構造式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され;かつR7は独立して、(C1-C20)アルキルまたは (C2-C20)アルケニル、例えば (C3-C6)アルキルまたは (C3-C6)アルケニルである;
または、構造式 (IV) に記載の化学式を有するPEUR
式中、nは約5〜約150の範囲であり;式中、R3は独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2SCH3からなる群より選択され;R4は、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレンもしくはアルキルオキシ、(C2-C20)アルキレン、飽和型もしくは不飽和型の治療的ジオールの残基、構造式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され;かつR6は独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレンもしくはアルキルオキシ、一般式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびそれらの組み合わせより選択される;
または、一般構造式 (V) に記載の化学構造を有するPEUR
式中、nは約5〜約150の範囲であり;mは約0.1〜約0.9の範囲であり;pは約0.9〜約0.1の範囲であり;R2は独立して、水素、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、もしくは保護基より選択され;個別のm個のモノマー中のR3は独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2SCH3からなる群より選択され;R4は、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレンもしくはアルキルオキシ、飽和型もしくは不飽和型の治療的ジオールの残基、および構造式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され;R6は独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレンもしくはアルキルオキシ、一般式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、飽和型もしくは不飽和型の治療的ジオールの残基、およびそれらの組み合わせより選択され;かつR7は独立して、(C1-C20)アルキルもしくは(C2-C20)アルケニルである;
または、一般構造式 (VI) に記載の化学式を有するPEU
式中、nは約10〜約150であり;個別のn個のモノマー中のR3は独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2SCH3より選択され;R4は独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ(C2-C20)アルキレン、飽和型もしくは不飽和型の治療的ジオールの残基、もしくは構造式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片より選択される;
または、構造式 (VII) に記載の化学式を有するPEU
式中、mは約0.1〜約1.0であり;pは約0.9〜約0.1であり;nは約10〜約150であり;各R2は独立して、水素、(C1-C12)アルキル、もしくは(C6-C10)アリールであり;個別のm個のモノマー中のR3は独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2SCH3より選択され;各R4は独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ(C2-C20)アルキレン、飽和型もしくは不飽和型の治療的ジオールの残基、構造式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびそれらの組み合わせより選択され;かつR7は独立して、(C1-C20)アルキルもしくは(C2-C20)アルケニル、例えば(C3-C6)アルキルもしくは(C3-C6)アルケニルである。
【0067】
例えば、本発明のポリマーベース送達組成物構築法において使用されるPEAポリマーの一選択肢において、少なくとも1つのR1は、α,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)(C1-C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)二けい皮酸、もしくは4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)二けい皮酸の残基であり、R4は一般式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片である。別の代替物において、PEAポリマー中のR1は、α,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)(C1-C8)アルカン、3,3'--(アルカンジオイルジオキシ)二けい皮酸、または4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)二けい皮酸の残基のいずれかである。さらに別の代替物において、PEAポリマー中のR1は、1,3-ビス(4-カルボキシフェノキシ)プロパン(CPP)などのα,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)(C1-C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)二けい皮酸、または4,4'-(アジポイルジオキシ)二けい皮酸の残基であり、R4は、DASなどの、一般式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片である。
【0068】
好ましくは、R7は-(CH2)4-である。
【0069】
本発明の実施における使用に適した保護基には、t-ブチルおよび、当技術分野で公知のその他のものなどが含まれる。1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの適切な二環式断片は、D-グルシトール、D-マンニトール、およびL-イジトールなどの糖アルコールに由来しうる。例えば、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール(イソソルビド、DAS)は、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片としての使用に特に適している。
【0070】
本明細書に記載のPEUポリマーは、ヒトおよびその他哺乳動物への送達用の本発明の送達組成物の作製に有用な高分子量ポリマーとして製造することができる。本発明の方法において使用されるPEUには、加水分解的に切断可能なエステル基、および、ポリマー鎖中にαアミノ酸を含む非毒性の天然モノマーが組み込まれている。PEUの最終的な生分解生成物は、αアミノ酸(生物学的またはそうではない)、ジオール、およびCO2である。PEAおよびPEURとは対照的に、PEUは結晶性または半結晶性であり、完全な合成の(および従って生成が容易な)メゾスコピックレンジのポリマー粒子、例えばナノ粒子の製剤化を可能にする有益な物理特性、化学特性、および生分解特性を包含する。
【0071】
例えば、本発明の送達組成物調製法において使用するPEUポリマーは高い力学的強度を有し、PEUポリマーの表面浸食は、生理学的条件で存在するヒドロラーゼなどの酵素により触媒されうる。
【0072】
PEUポリマー中の一代替物において、少なくとも1つのR4は、1,4:3,6-ジアンヒドロソルビトール(DAS)などの1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片である。
【0073】
一代替物において、式 (I) および (III)〜(VII) のポリマーの少なくとも1つのモノマー中のR3はCH2Phであり、合成において使用されるαアミノ酸はL-フェニルアラニンである。1つのモノマー中のR3が-CH2-CH(CH3)2である代替物において、ポリマーはαアミノ酸であるロイシンを含む。R3を変更することによって、その他のαアミノ酸、例えば、グリシン(R3が-Hである場合)、アラニン(R3が-CH3である場合)、バリン(R3が-CH(CH3)2である場合)、イソロイシン(R3が-CH(CH3)-CH2-CH3である場合)、フェニルアラニン(R3が-CH2-C6H5である場合)、リシン(R3が-(CH2)4-NH2である場合)、またはメチオニン(R3が-(CH2)2SCH3である場合)を使用することもできる。
【0074】
ポリマーが式IまたはIII〜VIIのPEA、PEUR、またはPEUであるさらなる態様において、少なくとも1つのR3がさらに-(CH2)3-であり、ここで、R3は環化して構造式 (XIII) に記載の化学構造を形成する。
【0075】
R3が-(CH2)3-である場合、ピロリジン-2-カルボン酸(プロリン)に類似したαイミノ酸を使用する。
【0076】
PEA、PEUR、およびPEUは、分散した抗原および任意のアジュバントを経時的に放出するような酵素作用によって実質的に生物分解される生分解性ポリマーである。これらのポリマーの構造特性のために、本発明の方法において使用する場合、そのように形成されたワクチン送達組成物は、抗原および任意のアジュバントの安定な負荷量(loading)を提供する一方、その三次元構造および従って生理活性を保存する。
【0077】
本明細書で使用する「アミノ酸」および「αアミノ酸」という用語は、アミノ基、カルボキシル基、および、本明細書で規定されたR3基のようなペンダントR基を含む、化学的化合物を意味する。本明細書で使用する「生物学的αアミノ酸」という用語は、合成において使用するアミノ酸を意味し、フェニルアラニン、ロイシン、グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、またはそれらの組み合わせより選択される。
【0078】
本明細書の実施において有用なPEA、PEUR、およびPEUポリマーにおいて、複数の異なるαアミノ酸を単一ポリマー分子中で使用することができる。これらのポリマーは、反復単位あたり少なくとも2つの異なるアミノ酸を含みうり、単一ポリマー分子は、分子のサイズに応じて、ポリマー分子中に異なるαアミノ酸を複数含みうる。一代替物において、本発明のポリマーの製造において使用されるαアミノ酸の少なくとも1つが、生物学的αアミノ酸である。
【0079】
「アリール」という用語は、少なくとも1つの環が芳香族である約9〜10個の環原子を有するフェニルラジカルまたはオルト融合二環式炭素環ラジカルを表すために、本明細書の構造式に関連して使用される。特定の態様において、1つまたは複数の環原子を、1つまたは複数のニトロ、シアノ、ハロ、トリフルオロメチル、またはトリフルオロメトキシで置換することができる。アリールの例には、フェニル、ナフチル、およびニトロフェニルが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0080】
「アルケニレン」という用語は、主鎖または側鎖中に少なくとも1つの不飽和結合を含む二価の分枝型または非分枝型の炭化水素鎖を意味するために、本明細書の構造式に関連して使用される。
【0081】
本明細書で使用する「治療的ジオール」とは、合成的に作製されたか天然であるか(例えば内因性)に関わらず、投与されると治療的または緩和的な様式でヒトなどの哺乳動物個体における生物学的プロセスに影響する、任意のジオール分子を意味する。
【0082】
本明細書で使用する「治療的ジオールの残基」という用語は、本明細書に記載の治療的ジオールの一部を意味するが、該ジオールの2つのヒドロキシル基はこの部分から除外される。その「残基」を含む、対応する治療的ジオールは、本ポリマー組成物の合成において使用される。治療的ジオールの残基は、生分解によるポリマーの骨格からの放出の際に、組成物を製造するために選択されるPEA、PEUR、またはPEUポリマーの特性に依存する制御様式で、インビボにおいて(またはpH、水性媒体などの類似条件の下で)再構成されて、対応するジオールとなるが、この特性は当技術分野で公知でありかつ本明細書に記載される。
【0083】
本発明の組成物において使用されるPEA、PEUR、およびPEUポリマーの多用途性のために、該ポリマーの基本単位(building block)の割合を変更することによって、ポリマー骨格中に組み込まれる治療的ジオールの量を制御することができる。例えば、PEAの組成に基づき、最大40% w/wの17β-エストラジオールの負荷量が達成できる。様々な負荷量比の17β-エストラジオールを有する、2種類の異なる規則的な線状PEAを、以下のスキーム1で説明する。
【0084】
同様に、ポリマーの基本単位2つ以上の量を変更することによって、PEURおよびPEUポリマー中への治療的ジオールの負荷量を変更することができる。
【0085】
さらに、4-アンドロステン-3,17ジオール(4-アンヒドロステンジオール)、5-アンドロステン-3,17ジオール(5-アンヒドロステンジオール)、19-ノル5-アンドロステン-3,17ジオール(19-ノルアンヒドロステンジオール)などの、テストステロンまたはコレステロールを基礎とした合成ステロイドベースのジオールは、本発明によるPEAおよびPEURポリマーの骨格への組み込みに適している。さらに、本発明のポリマー粒子送達組成物の調製における使用に適した治療的ジオール化合物には、例えば以下が含まれる:
アミカシン;アンホテリシンB;アピサイクリン(apicycline);アプラマイシン;アルベカシン;アジダムフェニコール;バンベルマイシン;ブチロシン;カルボマイシン;セフピラミド;クロラムフェニコール;クロルテトラサイクリン;シリンダマイシン;クロモサイクリン;デメクロサイクリン;ジアチモスルホン;ジベカシン、ジヒドロストレプトマイシン;ジリスロマイシン;ドキシサイクリン;エリスロマイシン;ホルチマイシン(fortimicin);ゲンタマイシン;グルコスルホン;ソラスルホン;グアメサイクリン(guamecycline);イセパマイシン;ジョサマイシン;カナマイシン;ロイコマイシン;リンコマイシン;ルセンソマイシン;リメサイクリン;メクロサイクリン;メタサイクリン;ミクロノマイシン;ミデカマイシン;ミノサイクリン;ムピロシン;ナタマイシン;ネオマイシン;ネチルマイシン;オレアンドマイシン;オキシテトラサイクリン;パロマイシン;ピカサイクリン;ポドフィリン酸2-エチルヒドラジン;プリマイシン(primycin);リボスタマイシン;リファミド(rifamide);リファンピン;リファマイシンSV;リファペンチン;リファキシミン;リストセチン;ロキタマイシン;ロリテトラサイクリン;ラサラマイシン(rasaramycin);ロキシスロマイシン;サンサイクリン(sancycline);シソマイシン;スペクチノマイシン;スピラマイシン;ストレプトマイシン;テイコプラニン;テトラサイクリン;チアンフェニコール;チオストレプトン;トブラマイシン;トロスペクトマイシン(trospectomycin);ツベラクチノマイシン;バンコマイシン;カンジシジン;クロルフェネシン;デルモスタチン;フィリピン;フンギクロミン(fungichromin);カナマイシン;ロイコマイシン;リンコマイシン;ルセンソマイシン;リメサイクリン;メクロサイクリン;メタサイクリン;ミクロノマイシン;ミデカマイシン;ミノサイクリン;ムピロシン;ナタマイシン;ネオマイシン;ネチルマイシン;オレアンドマイシン;オキシテトラサイクリン;パラモマイシン(paramomycin);ピパサイクリン(pipacycline);ポドフィリン酸2-エチルヒドラジン;プリシン(priycin);リボスタマイシン;リファミド(rifamide);リファンピン;リファマイシンSV;リファペンチン;リファキシミン;リストセチン;ロキタマイシン;ロリテトラサイクリン;ロサラマイシン(rosaramycin);ロキシスロマイシン;サンサイクリン;シソマイシン;スペクチノマイシン;スピラマイシン;ストレプトン(strepton);トブラマイシン;トロスペクトマイシン;ツベラクチノマイシン;バンコマイシン;カンジシジン;クロルフェネシン;デルモスタチン;フィリピン;フンギクロミン;メパルトリシン;ミスタチン(mystatin);オリゴマイシン;エリマイシン(erimycin)A;ツベルシジン;6-アザウリジン;アクラシノマイシン;アンシタビン;アントラマイシン;アザシタジン(azacitadine);ブレオマイシン;カルビシン;カルジノフィリンA;クロロゾトシン(chlorozotocin);クロモマイシン;ドキシフルリジン;エノシタビン;エピルビシン;ゲムシタビン;マンノムスチン;メノガリル;アトルバスタチン;プラバスタチン;クラリスロマイシン;ロイプロリン(leuproline);パクリタキセル;ミトブロニトール;ミトラクトール;モピダモール;ノガラマイシン;オリボマイシン;ペプロマイシン;ピラルビシン;プレドニムスチン;ピューロマイシン;ラニムスチン;ツベルシジン;ビンネシン(vinesine);ゾルビシン;クメタロール(coumetarol);ジクマロール;ビスクマ酢酸エチル;エチリジン(ethylidine);ジクマロール;イロプロスト;タプロステン(taprostene);チオクロマロール;アミプリロース(amiprilose);ロムルチド;シロリムス(ラパマイシン);タクロリムス;サリチルアルコール;ブロモサリゲニン(bromosaligenin);ジタゾール;フェプラジノール(fepradinol);ゲンチジン酸;グルカメタシン(glucamethacin);オルサラジン;S-アデノシルメチオニン;アジスロマイシン;サルメテロール;ブデソニド;アルブテロール;インジナビル;フルバスタチン;ストレプトゾシン;ドキソルビシン;ダウノルビシン;プリカマイシン;イダルビシン;ペントスタチン;メトキサントロン(metoxantrone);シタラビン;リン酸フルダラビン;フロキシウリジン;クラドリビン;カペシタビン;ドセタキセル;エトポシド;トポテカン;ビンブラスチン;テニポシドなど。飽和ジオールまたは不飽和ジオールのいずれかであるように、治療的ジオールを選択することができる。
【0086】
本明細書における分子量および多分散性は、ポリスチレン標準を用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される。より詳細には、例えば、高圧液体クロマトグラフィーポンプ、Waters 486 UV検出器、およびWaters 2410差次的屈折率検出器(differential refractive index detector)を備えたモデル510ゲル浸透クロマトグラフィー(Water Associates, Inc., Milford, MA)を用いて、数平均分子量および重量平均分子量(MnおよびMw)を決定する。テトラヒドロフラン(THF)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、またはN,N-ジメチルアセタミド(DMAc)を溶離液(1.0 mL/min)として用いる。分子量分布の狭いポリスチレンまたはポリ(メチルメタクリレート)標準を、較正のために用いた。
【0087】
一般式中にαアミノ酸を含む構造式 (I) および (III〜VII) のポリマーなどのポリマー作製法は、当技術分野で周知である。例えば、ポリマー合成用にR4がαアミノ酸に組み込まれている構造式 (I) のポリマーの態様に関して、例えば、ジオールHO-R4-OHと共にペンダントR3を含むαアミノ酸を縮合することによって、ペンダントR3を有するαアミノ酸を、エステル化を通してビス-α,ω-ジアミンへと変換することができる。その結果、反応性α,ω-アミノ基を有するジエステルモノマーが形成される。次に、ビス-α,ω-ジアミンを、セバシン酸などの二価酸、またはそのビス活性化エステル、またはビス-アシルクロリドによる重縮合反応に入れ、エステル結合およびアミド結合の両方を有する最終ポリマー(PEA)を得る。あるいは、PEURに関しては、二価酸の代わりに式 (VIII) のジカルボネート誘導体を用いるが、式中、R6は上記で定義され、R8は独立して、1つまたは複数のニトロ、シアノ、ハロ、トリフルオロメチル、またはトリフルオロメトキシで置換されてもよい(C6-C10)アリールである。
【0088】
より詳細には、上記で開示した構造式 (I) の生分解性ポリマーとして有用な不飽和ポリ(エステルアミド)(UPEA)の合成を説明するが、ここで、
であり、かつ/または、(b) R4は-CH2-CH=CH-CH2-である。(a) が示されて (b) が示されない場合、(I) のR4は-C4H8-または-C6H12-である。(a) が示されずに (b) が示される場合、(I) のR1は-C4H8-または-C8H16-である。
【0089】
以下のいずれかの溶液重縮合によってUPEAを調製することができる:(1) R4に少なくとも1つの二重結合を含むビス(αアミノ酸)ジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩と、飽和ジカルボン酸のジ-p-ニトロフェニルエステル、または、(2) R4に二重結合を含まないビス(αアミノ酸)ジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩と、不飽和ジカルボン酸のジ-ニトロフェニルエステル、または、(3) R4に少なくとも1つの二重結合を含むビス(αアミノ酸)ジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩と、不飽和ジカルボン酸のジ-ニトロフェニルエステル。
【0090】
p-トルエンスルホン酸の塩は、アミノ酸残基を含むポリマーの合成における使用に関して公知である。ビス(αアミノ酸)ジエステルのアリールスルホン酸塩は再結晶によって容易に精製され、これは検査の間中アミノ基を非反応性アンモニウムトシレートにするので、遊離塩基の代わりにアリールスルホン酸塩が使用される。重縮合反応において、トリエチルアミンなどの有機塩基の添加によって求核性アミノ基が容易に明らかになり、したがってポリマー産物が高収量で得られる。
【0091】
例えば、アセトン中でトリエチルアミンおよびp-ニトロフェノールを溶解させ、-78℃で撹拌しながら不飽和ジカルボン酸クロリドを滴下し、水中に注いで生成物を沈降させることによって、p-ニトロフェノールおよび不飽和ジカルボン酸クロリドから、不飽和ジカルボン酸のジ-p-ニトロフェニルエステルを合成することができる。この目的のために有用である適切な酸クロリドには、フマル酸クロリド、マレイン酸クロリド、メサコン酸クロリド、シトラコン酸クロリド、グルタコン酸クロリド、イタコン酸クロリド、エテニル-ブタン二酸クロリド、および2-プロペニル-ブタン二酸酸クロリドが含まれる。
【0092】
αアミノ酸、p-アリールスルホン酸(例えばp-トルエンスルホン酸一水和物)、および飽和型または不飽和型のジオールをトルエン中で混合し、水の発生が最小限となるまで還流温度に加熱し、その後冷却することによって、ビス(αアミノ酸)ジエステルのジ-アリールスルホン酸塩を調製できる。この目的に有用な不飽和ジオールには、例えば、2-ブテン-1,3-ジオールおよび1,18-オクタデカ-9-エン-ジオールが含まれる。
【0093】
米国特許第6,503,538 B1号に記載のように、ジカルボン酸の飽和ジ-p-ニトロフェニルエステルおよびビス(αアミノ酸)ジエステルの飽和ジ-p-トルエンスルホン酸塩を調製することができる。
【0094】
ここで、上記で開示した構造式 (I) の生分解性ポリマーとして有用な不飽和ポリ(エステルアミド)(UPEA)の合成を説明する。上述のように、米国特許第6,503,538 B1号の (III) のR4および/または同第6,503,538号の (V) のR1が(C2-C20)アルケニレンであること以外は同第6,503,538 B1号の化合物 (VII) と類似の様式で、構造式 (I) を有するUPEAを作製することができる。例えば、乾燥トリエチルアミンを、室温で、乾燥N,N-ジメチルアセタミド中の第6,503,538号の (III) および (IV) と第6,503,538号の (V) との混合物に添加し、次に80℃まで温度を上昇させて16時間撹拌し、次に反応液を室温まで冷却し、エタノールで希釈し、水中に注ぎ、ポリマーを分離し、分離されたポリマーを水で洗浄し、減圧下で約30℃まで乾燥させ、その後、p-ニトロフェノールおよびp-トルエンスルホネートに対する陰性試験用に精製することによって、反応が実施される。好ましい反応物 (IV) はリシンベンジルエステルのp-トルエンスルホン酸塩であり、生分解性を与えるためにベンジルエステル保護基は (II) から除去されることが好ましいが、加水分解は所望の二重結合を飽和させうるので、米国特許第6,503,538号の実施例22のように加水分解によってこれを除去するべきではなく、むしろ、不飽和を保存しうる方法によってベンジルエステル基を酸基に変換するべきである。あるいは、不飽和を保存しながら最終産物から容易に除去できるベンジルとは異なる保護基でリシン反応物 (IV) を保護することができ、例えば、リシン反応物をt-ブチルで保護することができ(すなわち反応物はリシンのt-ブチルエステルであることができ)、生成物 (II) を酸で処理することによって、不飽和を保存しながらt-ブチルをHに変換することができる。
【0095】
構造式 (I) を有する化合物の実用例は、第6,503,538号の実施例1の (III) をビス(L-フェニルアラニン)-2-ブテンジオール-1,4-ジエステルのp-トルエンスルホン酸塩へ置換すること、または第6,503,538号の実施例1の (V) をジ-p-ニトロフェニルフマレート(di-p-nitrophenyl fumarate)へ置換すること、または第6,503,538号の実施例1のIIIをビス(L-フェニルアラニン)-2-ブテンジオール-1,3-ジエステルのp-トルエンスルホン酸塩へ置換すること、および第6,503,538号の実施例1の (V) をデ-p-ニトロフェニルフマレートへ同じく置換することにより、提供される。
【0096】
構造式 (I) または (III) のいずれかを有する不飽和化合物において、カルボニルジイミダゾールまたは適切なカルボジイミドを濃縮剤として用いて、その後の足場(hold)であるアミノキシルラジカル、例えば4-アミノTEMPOを付着させることができる。本明細書において上述した、抗原、アジュバント、および抗原/アジュバント結合体または融合タンパク質を、二重結合機能性によって付着させることができる。ポリ(エチレングリコール)ジアクリレートへの結合によって、親水性が付与できる。
【0097】
さらに別の局面において、本発明の送達組成物構築法の形成における使用が意図されるポリマーには、米国特許第5,516,881号;同第6,476,204号;同第6,503,538号;ならびに米国出願10/096,435;10/101,408;10/143,572;および10/194,965に記載のものが含まれ、それぞれの全文が参照により本明細書に組み入れられる。
【0098】
生分解性のPEA、PEUR、およびPEUのポリマーおよびコポリマーは、モノマーあたり最大2アミノ酸を含んでよく、ポリマー分子あたり多数のアミノ酸を含んでよく、好ましくは10,000〜125,000の範囲の重量平均分子量を有し;これらのポリマーおよびコポリマーは典型的に、25℃において、0.3〜4.0の範囲、例えば0.5〜3.5の範囲にわたる固有粘度を有し、これは標準的粘度測定法により測定される。
【0099】
本発明の実施における使用が意図されるポリマーは、当技術分野において周知の様々な方法で合成できる。例えば、トリブチルスズ(IV) 触媒は一般に、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド)などのポリエステルを形成するために使用される。しかし、本発明の実施における使用に適したポリマーを形成するために多種多様な触媒を使用できることが理解される。
【0100】
本発明の実施における使用が意図されるPEAおよびPEURポリマーは、当技術分野において周知の様々な方法で合成できる。例えば、トリブチルスズ(IV) 触媒は一般に、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド)などのポリエステルを形成するために使用される。しかし、本発明の実施における使用に適したポリマーを形成するために多種多様な触媒を使用できることが理解される。
【0101】
使用が意図されるそのようなポリ(カプロラクトン)は、以下の例示的な構造式 (IX) を有する。
【0102】
使用が意図されるポリ(グリコリド)は、以下の例示的な構造式 (X) を有する。
【0103】
使用が意図されるポリ(ラクチド)は、以下の例示的な構造式 (XI) を有する。
【0104】
アミノキシル部分を含む適切なポリ(ラクチド-コ-ε-カプロラクトン)の例示的な合成を以下に示す。第一段階は、構造式 (XII) のポリマーを形成するための触媒としてオクチル酸第一スズ(stannous octoate)を用いた、ベンジルアルコールの存在下でのラクチドおよびε-カプロラクトンの共重合を伴う。
【0105】
次に、構造式 (XIII)を有するポリマー鎖を形成するために、ヒドロキシ末端ポリマー鎖を無水マレイン酸でキャッピングできる。
【0106】
この時点で、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシをカルボキシ末端基と反応させ、4-アミノ基とカルボン酸末端基の間の反応に起因するアミド結合を介して、アミノキシル部分をコポリマーに共有結合的に付着させることができる。あるいは、マレイン酸でキャッピングされたコポリマーにポリアクリル酸をグラフトし、さらなるアミノキシル基のその後の付着のための追加のカルボン酸部分を提供することができる。
【0107】
PEU用の構造式 (VII) を有する不飽和化合物において、カルボニルジイミダゾール、または適切なカルボジイミドを濃縮剤として用いて、その後の足場であるアミノ置換アミノキシル(N-オキシド)ラジカル含有基、例えば4-アミノTEMPOを付着させることができる。本明細書に記載のさらなる生理活性物質などを、任意で、二重結合を介して付着させることができる。
【0108】
例えば、以下の反応スキーム (2) に示すように、クロロホルム/水系におけるビス-求電子性(bis-electrophilic)モノマーとしてホスゲンを使用することによって、構造式 (VI) を有する本発明の高分子半結晶性PEUを界面で(inter-facially)調製することができる。
【0109】
類似のスキーム (3) によって、L-リシンエステルを含み構造式 (VII) を有するコポリ(エステルウレア)(PEU)の合成を実施することができる。
【0110】
例えば市販されている(Fluka Chemie, GMBH, Buchs, Switzerland)ホスゲン(ClCOCl)(高毒性)の20%トルエン溶液は、ジホスゲン(クロロ蟻酸トリクロロメチル)またはトリホスゲン(炭酸ビス(トリクロロメチル))のいずれかで置換できる。ホスゲン、ジホスゲン、またはトリホスゲンの代わりに、より毒性の低いカルボニルジイミダゾールをビス-求電子性モノマーとして使用することもできる。
【0111】
PEU合成の基本手順
高分子量のPEUを得るためには、モノマーの冷却液を使用することが必要である。例えば、水150 mL中のビス(αアミノ酸)-α,ω-アルキレンジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩の懸濁液に、無水炭酸ナトリウムを加え、室温で30分間撹拌し、約2〜0℃に冷却して、第一の溶液を形成する。並行して、第二の、ホスゲンのクロロホルム溶液を約15〜10℃まで冷却する。第一の溶液を界面重縮合用の反応器に入れ、第二の溶液を一度に迅速に加えて、約15分間活発に撹拌する。次に、クロロホルム層を分離し、無水Na2SO4を通して乾燥させ、その後ろ過することができる。得られた溶液は、さらなる使用まで保存できる。
【0112】
製造された全ての例示的PEUポリマーはクロロホルム溶液として得られ、これらの溶液は保存の間安定である。しかし、一部のポリマー、例えば1-Phe-4は、分離後にクロロホルムに対して不溶性になった。この問題を克服するために、滑らかな疎水性表面で型どり(cast)してクロロホルムを蒸発乾固させることによって、ポリマーをクロロホルム溶液から分離することができる。得られたPEUのさらなる精製は不要である。この手順によって得られた例示的PEUの収率および特徴を、本明細書の表1に要約する。
【0113】
多孔性PEU調製の基本手順
一般式にαアミノ酸を含むPEUポリマーを作製するための方法を以下で説明する。例えば、式 (I) または (II) のポリマーの態様に関して、例えばαアミノ酸をジオールHO-R1-OHと共に濃縮することによって、αアミノ酸をビス-(αアミノ酸)-α,ω-ジオール-ジエステルモノマーに変換することができる。その結果、エステル結合が形成される。次に、カルボン酸の酸クロリド(ホスゲン、ジホスゲン、トリホスゲン)を、ビス-(αアミノ酸)-アルキレンジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩を用いる重縮合反応に入れ、エステル結合およびウレア結合の両方を有する最終ポリマーを得る。
【0114】
R1に少なくとも1つの二重結合を含むビス-(αアミノ酸)-アルキレンジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩の界面溶液濃縮によって、不飽和PEUを調製することができる。この目的のために有用な不飽和ジオールには、例えば、2-ブテン-1,4-ジオールおよび1,18-オクタデカ-9-エン-ジオールが含まれる。反応の前に、不飽和モノマーをアルカリ水溶液、例えば水酸化ナトリウム溶液に溶解させることができる。次に、外部冷却下で、等モル量の単量体、二量体、または三量体のホスゲンを含む有機溶媒層、例えばクロロホルムと共に、水溶液を激しく撹拌することができる。発熱反応は急速に進行し、(ほとんどの場合)有機溶媒中に溶解したままのポリマーが得られる。有機層を水で数回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、蒸発させることができる。収率約75%〜85%の不飽和PEUを、例えば約45℃で、真空乾燥させることができる。
【0115】
強力な多孔性材料を得るために、後述の基本手順を用いて、1-L-Leu-4および1-L-Leu-6などのL-LeuベースのPEUを製造することができる。L-PheベースのPEUに適用した場合、強力な多孔性材料の形成においてそのような手順はうまくいかない。
【0116】
界面重縮合の直後に得られる、クロロホルム中のPEUの反応液またはエマルジョン(約100 mL)を撹拌しながら、ガラスビーカー中、好ましくは、ビーカー壁へのPEUの接着を低減するためにジメチルジクロロシランにより疎水性としたビーカー中の、約80℃〜85℃の水1,000 mLに滴下する。ポリマー溶液を水中でバラバラにして小滴とし、クロロホルムを幾分活発に蒸発させる。クロロホルムが蒸発するにつれて徐々に小滴が合体して、密度の高い(compact)タール状の塊となり、これは変容して粘着性のゴム状生成物となる。このゴム状生成物をビーカーから取り出し、疎水化した円柱形のガラス試験管に入れ、これを約24時間、約80℃でサーモスタット制御する。その後、試験管をサーモスタットから取り出し、室温まで冷却し、壊して、ポリマーを得る。得られた多孔性の棒を真空乾燥器に入れ、約80℃で約24時間、減圧乾燥させる。また、多孔性ポリマー材料を得るための当技術分野で公知の任意の手順を使用することもできる。
【0117】
上記の手順により作製した高分子量の多孔性PEUの特性は、表1に要約された結果をもたらした。
【0118】
(表1)式 (VI) および (VII) のPEUポリマーの特性
*一般式 (VI) のPEUであり、
1-L-Leu-4では、R4 = (CH2)4、R3 = i-C4H9
1-L-Leu-6では、R4 = (CH2)6、R3 = i-C4H9
1-L-Phe-6では、R4 = (CH2)6、R3 = -CH2-C6H5
1-L-Leu-DASでは、R4 = 1,4:3,6-ジアンヒドロソルビトール、R3 = i-C4Hである。
粘度低下は、25℃、濃度0.5 g/dLのDMF中で測定した。
b) GPC測定はDMF(PMMA)中で実施した。
c) TgはDSC測定由来の第二の加熱曲線から得た(加熱速度10℃/min)。
d) GPC測定はDMAc(PS)中で実施した。
【0119】
例示的な合成PEUの引張力を測定したが、結果を表2に要約する。亜鈴形PEUフィルム(4×1.6 cm)を用いて引張力測定値を得たが、これはクロロホルム溶液から型どりされ、平均厚0.125 mmを有し、かつ、PCが組み込まれた引張力測定器(Chatillon TDC200)上で、Nexygen FMソフトウェア(Amtek, Largo, FL)を用いて、クロスヘッド速度60 mm/minで、引張力試験に供された。本明細書で例示した例は、以下の力学的特性を有することが予想できる:
1. 約30℃〜約90℃の範囲、例えば約35℃〜約70℃の範囲のガラス転移温度;
2. 平均厚約1.6 cmのポリマーのフィルムは、約20 Mpa〜約150 Mpa、例えば約25 Mpa〜約60 Mpaの引張降伏応力を有すると考えられる;
3. 平均厚約1.6 cmのポリマーのフィルムは、約10%〜約200%、例えば約50%〜約150%の伸長率を有すると考えられる;かつ
4. 平均厚約1.6 cmのポリマーのフィルムは、約500 MPa〜約2000 MPaの範囲のヤング率を有すると考えられる。以下の表2は、このタイプの例示的PEUの特性を要約するものである。
【0120】
(表2)PEUの力学的特性
【0121】
本発明の送達組成物の様々な構成要素は、広範な比率で存在できる。例えば、ポリマー反復単位:抗原または反復単位:治療用生物製剤は、典型的に、1:50〜50:1の範囲、例えば1:10〜10:1、約1:3〜3:1、または約1:1の比率で使用される。しかし、特定の抗原を特定のポリマーに組み込むことが難しくかつその免疫原性が低い場合(この場合はより大きな相対量の抗原が必要である)などの特定の目的に関しては、その他の比率がより適切である可能性がある。
【0122】
PEA、PEUR、およびPEUポリマーなどの本発明の送達組成物において使用されるポリマーは、表面において酵素作用により生物分解される。したがって、本ポリマー、例えばその粒子は、制御放出速度で抗原を被験体に投与するが、これは、長期間にわたって特異的かつ一定である。さらに、PEA、PEUR、およびPEUポリマーは、有害な副産物を生成することなくインビボにおいて加水分解酵素を介して崩壊するので、本発明の送達組成物は実質的に非炎症性である。本明細書で使用する、本発明の送達組成物中のポリマーを説明するために用いられる「生分解性」とは、身体の正常な機能においてポリマーが崩壊して無害な生成物になることができることを意味する。一態様において、送達組成物全体が生分解性である。好ましい生分解性ポリマーは、生分解性を与える加水分解性エステル結合を有し、典型的には主にアミノ基で終結する鎖である。
【0123】
本明細書で使用する「分散」とは、本明細書で開示した抗原またはアジュバントなどの分子がポリマー中で分散し、混合し、溶解し、均質化し、かつ共有結合または非共有結合する(「分散する」または負荷する)ことを意味するが、これは、粒子へと形成されてもされなくてもよい。例えば、本発明のワクチン送達組成物構築法において、少なくとも1つの抗原もしくはアジュバント、又はその両方を、タンパク質または抗原に特異的に結合するアフィニティーリガンドの複合体を介して、例えば、アフィニティーリガンドおよび遷移金属イオンを含む金属アフィニティー複合体を介して、ポリマーに非共有結合させる。2つ以上の抗原が望ましい場合、多価抗原または抗原+アジュバントを個別のポリマー中に分散させ、その後必要に応じて混合して最終ワクチン送達組成物を形成させてもよく、または、アジュバントを含むまたは含まない抗原を一緒に混合し、その後単一ポリマー中に分散させて最終ワクチン送達組成物を形成させてもよい。
【0124】
組換えタンパク質またはペプチド抗原の調製
細菌および真核細胞発現系などの生物における、ペプチド抗原を含む異種性ポリペプチドの組換え産生技術は当技術分野で周知であり、本出願において詳細な説明は必要でない。例えば、本発明の実施において使用される抗原および融合タンパク質の調製は、標準的組換えDNA法を用いて行うことができる。好ましくは、所望のアフィニティーペプチドをコードするヌクレオチド配列をまず合成し、次にHisタグをコードするヌクレオチド配列に連結する。本発明の方法において使用する合成生物製剤の産生のために、類似の方法を使用できる。
【0125】
このように得られたハイブリッド遺伝子を、標準的方法を用いて、プラスミドpDS8/RBSII、SphI;pDS5/RBSII、3A+5A;pDS78/RBSII;pDS56/RBSII、またはその他の市販のもしくは一般に入手可能なプラスミドなどの発現ベクターに組み込むことができる。必要な方法論の大部分は、技術分野の事情を説明するための参照により本明細書に組み入れられる、Maniatisら、"Molecular Cloning", Cold Spring Harbor Laboratory, 2001において認められる。
【0126】
本発明の融合タンパク質の発現に関する方法もまた、Maniatisら、上記に記載されている。これには以下の手順が含まれる:(a) ハイブリッド遺伝子が発現制御配列に操作可能に連結された発現ベクターを用いた、適切な宿主生物、例えば大腸菌(E. coli)または昆虫細胞系Sf9の形質転換;(b) 適切な増殖条件下での形質転換宿主生物の培養;ならびに(c) 宿主生物からの所望の融合タンパク質の抽出および単離。使用可能な宿主生物には、以下が非限定的に含まれる:Sf9およびSf21などの昆虫細胞系、グラム陰性菌およびグラム陽性菌、例えば、大腸菌株M15などの大腸菌および枯草菌(B. subtilis)株など。使用可能なその他の大腸菌株には、例えば大腸菌294(ATCC No. 3144)、大腸菌RR1(ATCC No. 31343)、および大腸菌W3110(ATCC No. 27325)が含まれる。現在、タンパク質またはポリペプチド抗原の適切な折りたたみを保証するためには、バキュロウイルスベクターで形質転換された昆虫細胞が好ましい。
【0127】
抗原タンパク質および抗原を組換えT細胞溶解物から選択的に捕捉するための3種類の方法
大量のタンパク質抗原およびペプチドを組換え遺伝子技術によって産生するために、タンパク質に対するコード領域を人工遺伝子に組み込み、これを、細菌中、通常は大腸菌中で、または、宿主昆虫T細胞中で複製するバキュロウイルスなどのウイルス中で、複製および発現させる。どの方法を用いたとしても、その後の送達組成物への組み込みのために、過剰発現した抗原または治療用生物製剤を、次に、細胞溶解物または培養上清から選択的に除去しなければならない。
【0128】
本発明の方法による細胞溶解物からの標的分子の選択的捕捉に関して、本明細書において3種類の方法を説明する。それぞれ構造式IIIおよびIVのPEAおよびPEURポリマーを用いて、抗原を含む標的分子を捕捉し、かつ同時にワクチン送達組成物のコアを形成する。本態様において、新鮮な溶解物とポリマーを直接混合し、それにより抗原-ポリマー複合体の形成がもたらされる。これらのPEAおよびPEURポリマーの各反復単位上にタンパク質捕捉箇所が存在するので、抗原-ポリマー複合体分子は、サイズろ過によって残りの溶解物から除去できるような十分な高分子量を有する。
【0129】
オリゴマー形成
本態様において、本発明のワクチン構築法を用いて、天然でオリゴマーを形成する抗原タンパク質を捕捉してもよい。一例として、インフルエンザA型ウイルスに由来する、ヘマグルチニン(HA)の機能的(functional)三量体およびノイラミニダーゼ(NA)の四量体が挙げられる。
【0130】
以前に調製された標的抗原プロモーターは、ポリマーの単位を反復するよう結合されている。抗原タンパク質のオリゴマー化を促進するバッチ条件下で、プロモーター-ポリマー複合体を溶解物と混合する。得られたオリゴマー-ポリマー複合体を、サイズろ過によって残りの濾液から除去する。オリゴマー化技術による本発明のワクチン送達組成物の調製についてのより完全な説明は、2006年1月31日出願の米国出願11/345,021に含まれる。
【0131】
抗体(Ab)認識
本方法を用いて、タンパク質およびポリペプチド抗原を捕捉することができ、それに対して、ヒト化モノクローナル抗体分子またはその活性断片(MAbまたはFAb)を、例えば本明細書に記載のように調製する。
【0132】
標的抗原に対して以前に調製されたMAbまたはFAb分子は、アミド結合またはシステイン-マレイミド結合形成を用いて直接的に、あるいは、本明細書に記載の、組み込まれたHisタグおよび金属アフィニティーリガンドによって、または、当技術分野で公知の、プロテインAもしくはプロテインGなどのポリマー結合Ab結合タンパク質ドメインによって間接的に、ポリマーの反復単位に結合されている。この態様において、抗体結合を促進するバッチ条件下でAb-ポリマー複合体を溶解物と混合する。得られた抗原-Ab-ポリマー複合体を、サイズろ過によって残りの濾液から取り出す。
【0133】
ポリマー-アフィニティーリガンド結合
金属アフィニティー複合体形成
本態様において、(A) イミダゾール誘導体、または (B) ニトリロ三酢酸(NTA)またはイミノ二酢酸(IDA)などのNTA誘導体などの適切な金属アフィニティーリガンドにより、ポリマーの反復単位を予め機能付与する。アフィニティーリガンドは、多種多様な適切な官能基を介して、生分解性ポリマーに直接結合される。例えば、生分解性ポリマーがポリエステルである場合、カルボキシル基の鎖末端を用いて、アフィニティーリガンド上の相補的部分(例えば、金属アフィニティーリガンドNTAまたはIDA上の1つまたは複数の遊離アミノ基)と反応することができる。例えば以下において、多種多様な適切な試薬および反応条件が開示されている:March's Advanced Organic Chemistry, Reactions, Mechanisms, and Structure, Fifth Edition, (2001);およびComprehensive Organic Transformations, Second Edition, Larock (1999)。
【0134】
その他の態様において、アフィニティーリガンドは、遊離アミド、エステル、エーテル、アミノ、ケトン、チオエーテル、スルフィニル、スルホニル、ジスルフィド結合を介して、構造 (I) または (III〜VII) のポリマーのいずれかに連結することができる。当技術分野で公知の合成手順を用いて、適切に機能付与された開始材料からそのような結合を形成することができる。例えば一態様において、ポリマーの末端またはペンダントカルボキシル基(例えばCOOH)を介して、ポリマーを金属アフィニティーリガンドに連結させることができる。具体的には、本発明の方法において使用される金属アフィニティーリガンドを、構造式III、V、およびVIIにより記載されるものなどの、ポリマーのアミノ官能基またはヒドロキシル官能基を有するポリマーと反応させることができるが、その一方で、金属アフィニティー複合体を介してポリマーに非共有結合的に付着した抗原を有する生分解性ポリマーを提供するために、遷移金属イオンとの配位複合体を形成するための遊離結合部位および抗原を含む分子の金属結合アミノ酸をそのままにしておく。別の態様において、ポリマーのカルボキシル基を変形させて、ハロゲン化アシル、アシル無水物/「混合」無水物、または活性エステルにすることができる。その他の態様において、アフィニティーリガンドが、ポリマーのカルボキシル基のみを介して付着するがポリマーの遊離端には付着しないことを確実にするために、ポリマー分子の遊離-NH2末端をアシル化することができる。例えば、抗原タンパク質または抗原がポリマーのカルボキシル基に形成されたアフィニティー複合体のみを介して付着するがポリマーの遊離端には付着しないことを確実にするために、本明細書に記載の本発明のワクチン送達組成物をPEA、PEUR、またはPEUから調製することができ、ここで、N末端遊離アミノ基は例えば無水RCOOCOR(式中、R = (C1-C24)アルキルである)でアシル化されている。
【0135】
例えば、一態様において、側鎖保護リシン(例えば、ε-N-Boc,OBn-Lys)は、構造式III、IV、またはVIIのPEA、PEUR、またはPEUポリマーの反復単位上の活性化カルボキシレートへ、アミド結合を介して結合する。脱保護に続いて、これらリシン残基の遊離ε-アミノ基を、2-イミダゾールカルボキシアルデヒドなどの金属アフィニティーリガンドとの反応によって修飾する。
【0136】
次に、Fe2+、Cu2+、またはNi2+より選択される遷移金属(TM)を、例えば2-イミダゾールカルボキシアルデヒドなどの金属アフィニティーリガンドに結合させる。得られたTM誘導体化ポリマーは、Trpまたはヒスチジン伸長、例えばHis6タグなどの1つまたは複数の金属結合アミノ酸残基を含むものなどの、タンパク質含有抗原と結合したTM(II)を介して、生体機能化されている(bio-functionalized)。
【0137】
形成された金属アフィニティー複合体の強度は、抗原または抗原を含む分子中の金属結合アミノ酸の数および分布ならびに使用した金属イオンによって変動する。本発明の実施において使用した金属イオンは、ニッケル(Ni2+)、銅(Cu2+)、亜鉛(Zn2+)、およびコバルト(Co2+)である。一般に、抗原または抗原を組み込んでいる融合タンパク質の、金属イオンに対する結合の強度は、以下の順で低下する:Cu2+ > Ni2+ > Co2+ > Zn2+。
【0138】
本態様において、本発明の送達組成物構築法の有効性の高さは、ポリマーと結合した金属アフィニティーリガンド、選択した金属遷移イオン、および標的分子中の金属結合アミノ酸、特にトリプトファン(Trp)およびヒスチジン(His)の相互作用に基づく。本発明の送達組成物構築法における使用に適した金属アフィニティーリガンドには、ニトリロ三酢酸(NTA)およびイミノ二酢酸(IDA)が含まれる。NTAは、109〜1014の安定度定数を有する様々な遷移金属に結合することが公知である、四座(tetradentate)金属アフィニティーリガンドである。ポリマー中の利用可能な官能基にNTAが結合した後も、その内部に複数の遊離金属配位部位が存在し続けるために、安定度定数は高いままである。例えば、イミノ二酢酸(IDA)を金属アフィニティーリガンドとして使用する場合、ポリマーへのIDAの結合後も、金属イオンが配位されうる二座キレート化部分は遊離状態のままである。金属イオン上の遊離配位部位が次に遊離して標的分子中の金属結合アミノ酸に結合するように、これらの結合金属アフィニティーリガンドを介して様々な金属イオンを配位させることができる。本発明の方法において使用する柔軟なポリマー鎖に沿って遊離官能基が位置しているので、標的分子表面上の結合部位に対して最良の位置に金属イオンを配置することができる。その結果、形成された複数の金属アフィニティー複合体を介して、標的分子を、非共有結合的ではあるが固くポリマーに結合させることができる。
【0139】
標的分子(例えば抗原、またはHisタグを含む融合ペプチド)中に少なくとも1つのヒスチジン残基が存在することは、抗原または治療用分子のポリマーへの結合のために重要な要素である。しかし、本発明の方法および組成物において短鎖抗原を使用する際、存在するαアミノ基もまた、ヒスチジン残基が存在しないならば、特に、システインおよびトリプトファンなどのその他の金属結合アミノ酸が抗原中に存在して結合に寄与するならば、抗原が時としてアフィニティーリガンドを介しても付着できるようにはたらく。結合に寄与するヒスチジン基のpK値は中性の範囲内であるので、ポリマーへの抗原の結合はpH値約7で生じることが予想される。しかし、個々のアミノ酸の実際のpK値は、隣接するアミノ酸残基の影響に強く依存して変動しうる。タンパク質構造に応じて、アミノ酸のpK値を、理論的pK値から最大で1pH単位較正できることが、様々な実験により示されている。したがって、pH値約8の反応液により結合の改善が達成されることが多い。
【0140】
金属配位複合体の形成の間に起こる相互作用におけるこれらの複雑性を除くと、抗原または標的分子中のヒスチジンまたはトリプトファンの数によって、使用するべき金属イオンの選択に関する一般的指針が提供され、これを以下の表3に示す。
【0141】
(表3)
【0142】
pH、緩衝液、およびイオン強度
反応液または分散液中の条件は、本発明の方法における金属アフィニティー複合体の形成に影響を与える。一般に、pH値約8により、より低いpH約6よりも強い結合が得られる。緩衝剤も結合に影響し、ここで、酢酸またはリン酸中で最も強い結合が生じ、アンモニウムまたはTris中で中程度の結合が生じ、クエン酸中で最も弱い結合が生じる。反応液中のイオン強度の制御も、複合体形成に影響する。約0.1M〜約1.0Mの濃度範囲、例えば約0.5M〜約0.9Mの間のNaClを用いて、望ましくないタンパク質-タンパク質イオン相互作用を抑制してもよい。
【0143】
同じく反応液または分散液中の金属イオンに結合するその他の物質の存在は、標的分子の結合を阻害する可能性がある。例えば、特に金属イオンが銅である場合、高濃度のイミダゾールは、金属複合体の結合特性に強く影響を及ぼす。同時に、反応液のpH値低下は、細胞溶解物などの複合体混合物由来の利用可能な標的分子の吸着をより少なくする。さらに、アフィニティー複合体によって荷電されないままのポリマーカルボキシ基とタンパク質とのイオン相互作用を阻害するために、比較的高いイオン強度であるべきである。例えば、反応液または分散液中の約0.1M〜1.0M NaCl、例えば0.5M〜約0.9M NaClの存在は、反応液中の望ましくないタンパク質結合を阻害するのに十分である。
【0144】
好ましくは、標的分子のアミノ末端またはカルボキシ末端に少なくとも1つのHisが存在し(すなわちHisタグ)、これは、金属アフィニティー複合体中の金属イオンへの抗原の結合の特異性の改善をもたらす。したがって、一態様において、結合特異性を確実にするためのタグとして、少なくとも1個〜約10個の隣接His残基、例えば約6個のHis残基(すなわちHis6)がアミノ末端およびカルボキシ末端の一方または両方に組み込まれる。Hisタグを追加する場合、Hisタグおよび金属キレート、例えばNi-NTA金属キレートを、最終送達組成物中に残存させる。
【0145】
本発明の方法で使用する抗原にHisタグを追加するかどうかに関わらず、抗原が最終産物中で金属配位複合体を介してポリマーに非共有結合するように、金属配位複合体およびポリマーはワクチン送達組成物中で抗原と共に残存する。したがって、Hisタグを有するまたは有さない抗原にポリマーを非共有結合的に連結する配位複合体が形成されたならば、必要なのは、反応液または分散液中のその他の(すなわち不要な)材料およびタンパク質から、ワクチン組成物を構成する複合体を分離することだけである。サイズ排除ろ過または遠心分離などの単純な手順および例えば当技術分野で公知かつ本明細書に記載のものなどの洗浄技術を、この目的のために使用することができる。
【0146】
一態様において、アフィニティーリガンドである構造式 (III) のポリマー組成物は、構造式 (XIV) を有するリンカーを介したポリマー-追加キレート剤の結合体に含まれる。
式中、R11は、その炭化水素鎖に2〜20個の炭素原子を含む任意の多官能性の疎水性または親水性リンカーであり、金属結合リガンド中のR12は式XV中で示されたとおりである。式 (V) および (VII) のポリマーならびに式 (XV) に記載のものなどのリガンドを含む、類似のアフィニティーリガンド-ポリマー組成物を調製することができる。
式中、R10はH、COOH、またはCOOR13であり、R13は(C1-C8)アルキルまたはベンジルである。
【0147】
別の例において、アフィニティーリガンドである6-アミノ-2-(ビス-カルボキシメチルアミノ)-ヘキサン酸(アミノブチル-、すなわちAB-NTA、式XVI)
を、アミド結合を介して直接的に、PEA、PEUR、またはPEUなどのアミノ酸含有ポリマーの反復単位上の活性化カルボン酸塩と結合させる。上述の遷移金属(TM)イオンを、次にキレート化NTAに結合させる。一態様において、得られたTM誘導体化ポリマーを、His6タグを包含する遺伝的に発現された抗原と結合したTMを介して、生体機能化用の細胞溶解物と接触させることができる。
【0148】
式XVIのアフィニティーリガンド(AB-NTA)は、リシンのα-N誘導体を表す。本明細書(実施例1)に開示した相同的リガンドの別の例は、一般式XVIIを有するオルニチン誘導体である。
式中、R9は独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレンであり;例えば、(C3-C6)アルキレン、(C3-C6)アルケニレンであり;かつR10は水素、(C1-C12)アルキル、または (C2-C12)アルケニルである。
【0149】
各6Hisタグのうち2つのヒスチジンのみが優先的に遷移金属イオンの各キレート化箇所に結合するので、6×ヒスチジンでタグ付けした抗原または全長抗原タンパク質とTM機能付与ポリマーとの間の複合体は、本明細書に記載の適切な金属アフィニティー複合体形成条件下で、架橋タンパク質-ポリマー複合体を作製することができる。溶解物巨大分子に関して、化学量論により制御される範囲内の、大きなサイズのこれらの架橋タンパク質-ポリマー複合体は、サイズ排除によるろ過を促進する。
【0150】
あるいは、その他の態様において、既に単離されたまたは合成の抗原またはアジュバントを、リンカー分子を介してポリマーに付着させてもよい。実際、生分解性ポリマーの表面疎水性を向上させるため、生分解性ポリマーの酵素活性化への到達しやすさを向上させるため、および、生分解性ポリマーの放出プロファイルを改善するために、リンカーを用いて抗原および/またはアジュバントを生分解性ポリマーに間接的に付着させてもよい。特定の態様において、リンカー化合物は、分子量(Mw)が約44〜約10,000、好ましくは44〜2000のポリ(エチレングリコール);セリンなどのアミノ酸;1〜100の反復単位を有するポリペプチド;および、任意のその他適切な低分子量ポリマーを含む。典型的には、リンカーは、抗原をポリマーから約5オングストローム〜約200オングストローム分離する。
【0151】
またさらなる態様において、リンカーは式W-A-Qの二価のラジカルであり、式中、Aは、(C1-C24)アルキル、(C2-C24)アルケニル、(C2-C24)アルキニル、(C3-C8)シクロアルキル、または (C6-C10)アリールであり、WおよびQはそれぞれ独立して、-N(R)C(=O)-、-C(=O)N(R)-、-OC(=O)-、-C(=O)O、-O-、-S-、-S(O)、-S(O)2-、-S-S-、-N(R)-、-C(=O)-であり、式中、各Rは独立してHまたは (C1-C6)アルキルである。
【0152】
上記のリンカーを説明するために使用する「アルキル」という用語は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ヘキシルなどを含む、直鎖または分枝鎖の炭化水素基を指す。
【0153】
本明細書で使用する、リンカーを説明するために用いる「アルケニル」とは、1つまたは複数の炭素-炭素二重結合を有する直鎖または分枝鎖の炭化水素基を指す。
【0154】
本明細書で使用する、リンカーを説明するために用いる「アルキニル」とは、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する直鎖または分枝鎖の炭化水素基を指す。
【0155】
本明細書で使用する、リンカーを説明するために用いる「アリール」とは、6〜14個の範囲の炭素原子を有する芳香族基を指す。
【0156】
特定の態様において、リンカーは約2〜約25アミノ酸を有するポリペプチドでありうる。使用が意図される適切なペプチドには、ポリ-L-リシン、ポリ-L-グルタミン酸、ポリ-L-アスパラギン酸、ポリ-L-ヒスチジン、ポリ-L-オルニチン、ポリ-L-スレオニン、ポリ-L-チロシン、ポリ-L-ロイシン、ポリ-L-リシン-L-フェニルアラニン、ポリ-L-アルギニン、ポリ-L-リシン-L-チロシンなどが含まれる。
【0157】
本発明の一態様において、合成の抗原または治療用生物製剤は、レトロ-逆ペプチドまたは部分的レトロ-逆ペプチドを提示した。
【0158】
その他の態様において、マトリックス中で光架橋可能な(photocrosslinkable)バージョンのポリマーと抗原を混合し、架橋後、関連する抗原提示細胞またはBリンパ球による取り込みに適したサイズまで、典型的には(これに限定されるわけではないが)約0.1〜10μmのサイズ範囲まで、材料を分散させる(例えばすりつぶす)。
【0159】
金属アフィニティーリガンド以外のリンカーを、ポリマーまたは抗原もしくはアジュバントにまず付着させることができる。合成の間、リンカーは、無保護形態または、当業者に周知の様々な保護基を用いた保護形態のいずれかであることができる。保護リンカーの場合、リンカーの無保護末端をまずポリマーまたは抗原に付着させることができる。次に、Pd/H2水素化分解、温和な酸もしくは塩基加水分解、または、当技術分野で公知の任意のその他の一般的な脱保護法を用いて、保護基を脱保護することができる。脱保護リンカーを、その後、抗原、アジュバント、またはアジュバント/抗原結合体に付着させることができる。
【0160】
本発明による生分解性ポリマーの例示的な合成(ここで、付着対象となる分子はアミノキシルである)を、以下に示す。アミノ部分がポリマーのカルボキシル基のカルボニル残基の炭素に共有結合するように、アミド結合を有するポリエステルの鎖末端のカルボン酸部分をアミノ置換アミノキシル含有ラジカルへと置換するために、N,N'-カルボニルジイミダゾールの存在下で、ポリエステルをアミノ置換N-オキシドフリーラジカル(アミノキシル)含有基、例えば4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシと反応させることができる。N,N'-カルボニルジイミダゾールまたは適切なカルボジイミドは、ポリエステルの鎖末端におけるカルボキシル基のヒドロキシル部分を、アミノキシル、例えば4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシと反応しうる中間産物部分に転換する。アミノキシル反応物は典型的に、1:1〜100:1の範囲にわたる反応物対ポリエステルのモル比で使用される。N,N'-カルボニルジイミダゾール対アミノキシルのモル比は、好ましくは約1:1である。
【0161】
そのような態様において、典型的な反応は以下の通りである。ポリエステルが反応溶媒中に溶解し、溶解に使用される温度で反応が容易に実行される。反応溶媒は、ポリエステルが溶解しうる任意のものであってよい。ポリエステルがポリグリコール酸またはポリ(グリコリド-L-ラクチド)(グリコール酸対L-乳酸のモノマーモル比が50:50を上回る)である場合、115℃〜130℃において高度精製(純度99.9+%)ジメチルスルホキシドは、または室温においてジメチルスルホキシド(DMSO)は、適切にポリエステルを溶解させる。ポリエステルが、ポリ-L-乳酸、ポリ-DL-乳酸、またはポリ(グリコリド-L-ラクチド)(グリコール酸対L-乳酸のモノマーモル比が50:50または50:50を下回る)である場合、室温〜50℃において、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、およびクロロホルムはポリエステルを適切に溶解させる。
【0162】
ポリマー/抗原結合
その他の態様において、本明細書に記載の本発明の送達組成物を作製するために使用されるポリマーは、ポリマーに直接連結した、アフィニティーリガンド、抗原、アジュバント、または治療用生物製剤を有することができる。ポリマーの残基を、1つまたは複数のそのような分子の残基に連結させることができる。例えば、ポリマーの残基1つをアフィニティーリガンドの残基1つに直接連結させることができる。ポリマーおよびアフィニティーリガンドはそれぞれ、1の開放結合価(open valence)を有する。代替的に、2つ以上の抗原、多価抗原、または異なる病原微生物由来の抗原の混合物を、ポリマーに直接連結させることができ、あるいは、本明細書に記載のアフィニティーリガンド複合体を介してポリマーに連結させることができる。しかし、各抗原の残基をポリマーの対応残基に連結させることができるので、1つまたは複数の抗原の残基の数は、ポリマーの残基における開放結合価の数に対応しうる。
【0163】
本明細書で使用する「ポリマーの残基」とは、1以上の開放結合価を有するポリマーのラジカルを指す。ラジカルが抗原の残基に付着した場合に生理活性が実質的に保持されているという条件で、本発明のポリマー(例えばポリマー骨格上またはペンダント基上)の、任意の合成可能な原子1つもしくは複数または官能基を除去して、この開放結合価を提供することができる。さらに、ラジカルが抗原の残基に付着した場合に生理活性が実質的に保持されているという条件で、任意の合成可能な官能基(例えばカルボキシル)をポリマー上(例えばポリマー骨格上またはペンダント基上)に作製して、この開放結合価を提供することができる。所望の結合に基づいて、当業者は、当技術分野で公知の手順を用いて、本発明のポリマーに由来しうる、機能付与された開始材料を適切に選択することができる。
【0164】
本明細書で使用する「構造式 (*) の化合物の残基」とは、1以上の開放結合価を有する、本明細書に記載の式 (I) および (III〜VII) のポリマーの化合物のラジカルを指す。ラジカルが抗原の残基に付着した場合に生理活性が実質的に保持されているという条件で、化合物の(例えばポリマー骨格上またはペンダント基上の)任意の合成可能な原子1つもしくは複数または官能基を除去して、この開放結合価を提供することができる。さらに、ラジカルが抗原の残基に付着した場合に生理活性が実質的に保持されているという条件で、任意の合成可能な官能基(例えばカルボキシル)を式 (I) および (III〜VII) の化合物上(例えばポリマー骨格上またはペンダント基上)に作製して、この開放結合価を提供することができる。所望の結合に基づいて、当業者は、当技術分野で公知の手順を用いて、式 (I) および (III〜VII) の化合物に由来しうる、機能付与された開始材料を適切に選択することができる。
【0165】
例えば、抗原またはアジュバントの残基を、アミド(例えば、-N(R)C(=O)-または-C(=O)N(R)-)、エステル(例えば、-OC(=O)-または-C(=O)O-)、エーテル(例えば、-O-)、アミノ(例えば、-N(R)-)、ケトン(例えば、-C(=O)-)、チオエーテル(例えば、-S-)、スルフィニル(例えば、-S(O)-)、スルホニル(例えば、-S(O)2-)、ジスルフィド(例えば、-S-S-)、または直接(例えば、C-C結合)結合を介して(式中、各Rは独立して、Hまたは (C1-C6)アルキルである)、構造式 (I) および (III〜VII) の化合物の残基に連結させることができる。当技術分野で公知の合成手順を用いて、適切に機能付与された開始材料からそのような結合を形成することができる。所望の結合に基づいて、当業者は、当技術分野で公知の手順を用いて、構造式 (I) および (III〜VII) のいずれか一つの化合物の残基に由来しうる、ならびに抗原またはアジュバントの所与の残基に由来しうる機能的開始材料を適切に選択することができる。抗原またはアジュバントの残基を、構造式 (I) および (III〜VII) のいずれか1つの化合物の残基上の任意の合成可能な部位に連結させることができる。さらにまた本発明は、構造式 (I) および (III〜VII) のいずれか1つの化合物に直接連結された抗原またはアジュバント生理活性物質の残基を2つ以上有する化合物も提供する。
【0166】
ポリマー分子に連結できる抗原または治療用生物製剤の数は、典型的にはポリマーの分子量に依存しうる。例えば、構造式 (I) または (III) の化合物(式中、nは約5〜約150である)については、抗原またはアフィニティーリガンドをポリマーの末端基と反応させることにより、好ましくは約5〜約70、最大約150の抗原(すなわちその残基)をポリマー(すなわちその残基)に連結することができる。不飽和ポリマーにおいては、抗原またはアフィニティーリガンドをポリマー中の二重(または三重)結合と反応させることもできる。
【0167】
本発明の送達組成物を本明細書に記載のように形成したら、さらに製剤化して粒子とすることができる。特定の態様において、当技術分野で周知でありかつ本明細書に記載の複数の技術のいずれかを用いて、粒子中に物理的に組み込まれた(分散された)か、任意でリンカーを使用することによってポリマー官能基に付着した、抗原/アジュバント結合体またはアジュバントを有するもしくは有さない抗原を有する粒子として、本明細書に記載の本発明のワクチン送達組成物を提供することができる。ワクチン送達組成物に関して、粒子はAPCによる取り込みのための大きさとされ、例えば、約10ナノメートル〜約1000ミクロンの範囲の、または約10ナノメートル〜約100ミクロンの範囲の平均直径を有する。任意で、粒子は、その生分解性の制御を補助するための、ポリマーの薄い被覆をさらに含むことができる。典型的にはそのような粒子は、ポリマー分子あたり、約1〜約150個の抗原および/またはアジュバント分子を含む。
【0168】
アジュバントは、ポリマーに共有結合的に結合してもよく、非共有結合的に結合してもよく、または、ポリマー中で(結合ではなく)マトリクス化してもよい。このように、本発明の組成物のポリマー中にアジュバントを「分散」させることができる。ポリマー中でアジュバントを分散させるのに使用する方法は、抗原を付着させるのに使用する方法と同じでも異なってもよく、かつ、本発明の組成物を粒子へと形成する前または後のいずれで実施してもよい。選択される方法はアジュバントの性質に影響されると考えられる。例えば、抗原の付着に関して本明細書に記載の方法を用いて、アミノ酸および/または金属結合タグを含むアジュバントを、非共有結合的にポリマー-アフィニティーリガンド-金属イオン組成物につなぐことができる。あるいは、2006年11月21日出願の同時係属中の米国出願 (Docket No. MEDIV3020-2)に記載の方法を用いて、アジュバント(またはその凝集物、オリゴマー、または結晶)としての巨大分子生物製剤が共有結合的にポリマーに付着し、その天然活性が維持されるようにポリマー粒子へと取り込まれてもよい。またさらに、2006年1月31日出願の同時係属中の米国出願11/345,021(Docket No. MEDIV 2050-4)に記載の方法を用いて、有機分子などの非重合アジュバントをポリマー粒子中に分散させることができる。
【0169】
不混和性の溶媒技術を用いて、本発明の送達組成物の粒子を作製することができる。一般に、これらの方法は2種類の不混和性の液体のエマルジョンの調製を必要とする。単一エマルジョン法を用いて、疎水性アジュバントを組み込んだ粒子を作製することができる。この方法において、粒子中に組み込まれるべきアジュバント分子をまず溶媒中でポリマーと混合し、次に、界面活性剤などの表面安定剤を用いて水溶液中で乳化させる。このようにして、疎水性アジュバント、抗原、またはアジュバント/抗原結合体を有するポリマー粒子を形成して水溶液中で懸濁し、ここで、粒子中の疎水性結合体は水溶液中に有意に溶出することなく安定と考えられるが、そのような分子は筋肉組織などの身体組織中に溶出すると考えられる。
【0170】
粒子の製造に使用されるエマルジョンの作製において、多くの乳化技術が役立つであろう。しかし、現在好ましいエマルジョン作製法は、水中で混和性ではない溶媒の使用によるものである。乳化手順は、溶媒を用いてポリマー-アフィニティーリガンド複合体を溶解させる工程、任意の所望のアジュバント粒子と混合する工程、水中に入れる工程、ならびにその後、ミキサーおよび/または超音波処理器を用いて撹拌する工程からなる。撹拌速度、ならびに/または、ポリマー-アフィニティーリガンド複合体、アジュバント分子、および表面安定剤の濃度を制御することによって、粒度を制御することができる。第二のエマルジョン:第三のエマルジョンの比を調整することによって、コーティングの厚さを制御することができる。上述の粒子形成法のいずれにおいても、粒子形成後に粒子中のポリマーに結合させることによって、任意のアジュバントを粒子表面上のコーティング中に存在させることができる。
【0171】
適切なエマルジョン安定剤は、マンニドモノオレエート(mannide monooleate)、デキストラン70,000、ポリオキシエチレンエーテル、ポリグリコールエーテルなどの非イオン性界面活性剤を有しうり、その全てが、例えばSigma Chemical Co., St. Louis, Moから、容易に購入可能である。界面活性剤は、約0.3%〜約10%、好ましくは約0.5%〜約8%、より好ましくは約1%〜約5%の濃度で存在しうる。
【0172】
本明細書に記載のPEA、PEUR、およびPEUポリマーは容易に水を吸収し(ポリマーフィルム上で、5〜25% w/wの水の取り込み)、それを介して抗原および多くのアジュバントなどの親水性分子を容易に拡散させる。この特徴によって、PEA、PEUR、およびPEUポリマーは、抗原/アジュバントの放出速度を制御するためのポリマー粒子上への保護コーティングとしての使用に適したものとなる。水の吸収はまた、ポリマーおよびそのようなポリマーベースの送達組成物の生体適合性も増大させる。さらに、インビボにおいて送達された場合、PEA、PEUR、およびPEUポリマーの親水特性のために、特にインビボ温度において、粒子は粘着性となりかつ凝塊形成する。したがって、皮下注射用針または無針注射によるなど、皮下もしくは筋肉内注射された場合または、所送達用に経皮送達された場合、ポリマー粒子は自然にポリマーデポーを形成する。
【0173】
体内への循環を許容しない大きさである、約1ミクロン〜約100ミクロンの範囲の平均直径を有する粒子が、インビトロにおけるそのようなポリマーデポーの形成に適している。あるいは、経口投与に関しては、GI管は、よりずっと大きな粒子、例えば平均直径が約1ミクロン〜約1000ミクロンの微粒子を許容できる。
【0174】
例えば、典型的には、約24時間、約7日間、約30日間、または約90日間、またはそれ以上から選択された期間にわたってポリマーデポーは崩壊すると考えられる。適切な免疫応答を得るために繰り返しワクチン注射する必要がない埋込型ワクチン送達組成物を提供するためには、比較的長い期間が特に適している。
【0175】
本明細書に記載のポリマー粒子からのアジュバント/抗原の放出速度は、コーティングの厚さ、粒子の外側を被覆するアジュバント分子の数、粒度、構造、およびコーティングの密度を調整することによって制御することができる。コーティングの密度は、存在するならば、コーティング中のアジュバントの負荷量を調整することによって、調整できる。コーティングがアジュバントを含まない場合、ポリマーコーティングは最も高密度であり、抗原はコーティングを介して最もゆっくりと溶出する。対照的に、アジュバント/抗原がコーティング中に負荷されている場合、アジュバント/抗原が溶出される(コーティングの外側表面から開始する)とコーティングは多孔性になり、したがって、粒子の中心のアジュバント/抗原は速い速度で溶出することができる。被覆中のアジュバント負荷量が多いほど、コーティング層の密度は低くなり、溶出速度は速くなる。コーティング中のアジュバント/抗原の負荷量を、外側コーティングの真下の粒子の内側においてよりも小さくすることができる。また、上述のように調製された、放出速度の異なる粒子を混合することによって、粒子からのアジュバント/抗原の放出速度を制御することもできる。
【0176】
またさらなる態様において、粒子を、約20 nm〜約500 nmの平均直径を有するナノ粒子にすることができる。上述のように、その内部に分散した、すなわちエマルジョン中に混合されたまたはポリマーに結合した抗原を用いた単一エマルジョン法によって、ナノ粒子を作製することができる。またナノ粒子は、本明細書に記載のPEAまたはPEURポリマーを含むミセルとして提供することもできる。ミセルは水中で形成され、溶媒の非存在下で、任意のアジュバントタンパク質とともに水溶性の抗原をミセル中に同時に負荷させる。
【0177】
より詳細には、疎水性ポリマー鎖と結合した水溶性イオン化ポリマー鎖で、生分解性ミセルを形成する。ミセルの外側部分が主にポリマーの水溶性イオン化セクションからなる一方で、ポリマーの疎水性セクションは主に分割されてミセルの内側となり、ポリマー分子を共に保有する。
【0178】
ミセルの作製に用いるポリマーの生分解性の疎水性セクションは、本明細書に記載のPEA、PEUR、またはPEUポリマーで作製される。強い疎水性を有するPEA、PEUR、またはPEUポリマーに関しては、1,4:3,6-ジアンヒドロ-D-ソルビトールのジ-L-ロイシンエステルまたはα,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)(C1-C8)アルカンのような剛性芳香族二酸などの構成要素を、ポリマー反復単位中に含めてもよい。対照的に、ポリマーの水溶性セクションは、ポリエチレングリコール、ポリグリコサミノグリカン、または多糖と、少なくとも1つのイオン化アミノ酸または極性アミノ酸の交互反復単位(repeating alternating unit)とを含み、ここで、交互反復単位は実質的に同じ分子量を有し、かつポリマーの分子量は約10kD〜約300kDの範囲である。水溶性セクションの分子量が増加すればするほど、ミセルの多孔性が増大し、その鎖がより長くなり、これによって高負荷量の水溶性抗原および任意のアジュバントが可能になる。さらに、ポリアミノ酸は単一アミノ酸よりも高い免疫原性を有する。
【0179】
交互反復単位は、約300D〜約700Dの範囲の、実質的に同じ分子量を有する。ポリマーの分子量が10kDを上回る一態様において、少なくとも1つのアミノ酸単位が、セリン、グルタミン酸、アスパラギン酸、リシン、およびアルギニンより選択されるイオン化アミノ酸または極性アミノ酸である。一態様において、イオン化アミノ酸の単位は、グルタメートまたはアスパルテートなどの少なくとも1ブロックのイオン化ポリ(アミノ酸)を含み、これをポリマー中に含めることができる。本発明のミセル組成物は、ポリマーの水溶性セクション中のイオン化アミノ酸の少なくとも一部がイオン化されるpH値を有する、薬学的に許容される水性媒体をさらに含みうる。
【0180】
生分解性疎水性ポリマー鎖は、本発明に記載のPEA、PEUR、またはPEUポリマーで作製される。強い疎水性を有するPEA、PEUR、またはPEUに関して、1,3-ビス(-4-カルボキシレート-フェノキシ)-プロパン(CPP)および/または、-1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール-D-ソルビトール(DAS)のビス(-L-ロイシン)ジエステルなどの構成要素を疎水性ポリマー鎖に含めることができる。対照的に、水溶性鎖はポリエチレングリコール(PEG)および、(ポリ)リシンまたは(ポリ)グルタメートなどのイオン化アミノ酸の多数の反復単位で作製され、ここで、PEU単位およびイオン化アミノ酸単位は同様の分子量、例えば数百kDを有する(すなわちPEG単位は、この範囲内の実質的に任意の分子量を有しうる)。しかし、ポリマーの水溶性セクションの合計分子量は、例えば、約10kD〜約300kDの範囲である。水溶性セクションの分子量が増加するほど、ミセルの多孔性が増大し、その鎖がより長くなり、これによって高負荷量の水溶性抗原および任意のアジュバントが可能になる。さらに、ポリアミノ酸は単一アミノ酸よりも高い免疫原性を有する。
【0181】
ミセル内の荷電部分を水中で部分的に互いから分離させ、ポリマーおよび任意のアジュバントに付着した抗原含有アフィニティー複合体などの水溶性物質の吸収用の空間をつくる。同じタイプの電荷を有するイオン化鎖は互いに反発し、より大きな空間をつくると考えられる。またイオン化ポリマーは抗原を引きつけ、これによりマトリックスに安定性を与える。さらに、ミセルの水溶性外部は、イオン化部位がアジュバントによって利用された後の体液中のタンパク質へのミセルの接着を阻害する。このタイプのミセルは、ミセル体積の最大95%と非常に高い多孔性を有し、これによって、高負荷量の水溶性生物製剤、例えば様々なアジュバントなどが可能になる。ミセルの粒度範囲は約20 nm〜約200 nmであり、血中で循環するためには約20 nm〜約100 nmが好ましい。
【0182】
本明細書に記載のポリマー粒子からのアジュバント/抗原の放出速度は、コーティング厚、粒度、構造、およびコーティング密度を調整することにより制御できる。コーティングの密度は、コーティング中のアジュバント/抗原の負荷量を変動させることによって調整できる。コーティングが抗原もアジュバントも含まない場合、ポリマーコーティングは最も高密度であり、コーティングを通じた抗原および任意のアジュバントの溶出が最も遅い。対照的に、抗原またはアジュバントがコーティング中に負荷されている場合、抗原またはアジュバントが溶出される(コーティングの外側表面から開始する)とコーティングは多孔性になり、したがって、粒子の中心の活性物質は速い速度で溶出することができる。コーティング層中の負荷量が大きくなればなるほど密度は低くなり、溶出速度は速くなる。コーティング中のアジュバント/抗原の負荷量は、外側コーティングの真下の粒子の内側においてよりも小さくすることができる。また、上述のように調製された異なる放出速度を有する粒子を混合することによって、粒子からのアジュバント/抗原の放出速度を制御することもできる。
【0183】
例えばヘリウムネオンレーザー内蔵分光計を用いた、例えばレーザー光散乱によって、粒度を測定することができる。一般に、粒度は室温で測定され、粒子の直径の平均値を得るために問題の試料の複数回分析(例えば5〜10回)を必要とする。また粒度は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて容易に決定される。これを行うために、約100オングストロームの厚さとなるまで乾燥粒子を金/パラジウム混合物でスパッタコーティングし(sputter-coated)、その後、走査型電子顕微鏡を用いて試験する。あるいは、抗原含有アフィニティー複合体を介して非共有結合的にポリマーに付着させるよりむしろ、抗原を、当技術分野で周知かつ本明細書で後述するいくつかの方法のいずれかを用いて、(すなわち「負荷」または「マトリクス化」によって)ポリマー中に分散させることができる。抗原含量は一般に、ポリマーに対して約0.1%〜約40% (w/w) の抗原に相当する量であり、例えば、約1%〜約25% (w/w) の抗原、または約2%〜約20% (w/w) の抗原である。抗原の重量パーセントは、以下でより詳述するように、所望の用量および治療される状態に左右される。いずれにしても、粒子またはポリマー分子のいずれかとしての本発明の送達組成物の調製後、該組成物を凍結乾燥することができ、使用前に乾燥組成物を適切なビヒクル中で懸濁する。
【0184】
本発明の送達組成物中に含まれる抗原および任意のアジュバントまたは治療用生物製剤を含む任意の適切かつ有効な量の粒子またはポリマー断片を、ポリマー粒子(インビボにおいて形成されたポリマーデポー中のものを含む)から経時的に放出することができ、かつこれは典型的に、例えば、使用された特定のポリマー、抗原、アジュバント、または治療用生物製剤および、存在するならばポリマー/抗原結合に左右されると考えられる。典型的には、最大100%のポリマー粒子または分子をポリマーデポーから放出することができる。具体的には、その最大約90%、最大75%、最大50%、または最大25%をポリマーデポーから放出することができる。ポリマーからの放出速度に典型的に影響する要素は、ポリマーの性質および量、ポリマー/抗原結合および/もしくは治療用生物製剤結合のタイプ、ならびに、製剤中に存在する追加の物質の性質および量である。
【0185】
上述のように本発明の方法を用いて送達組成物が構築されたら、その後の送達のために該組成物を製剤化することができる。例えば、粘膜送達または皮下送達に関しては、本組成物は一般に、水、生理食塩水、グリセロール、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、エタノールなどの、粘膜送達または皮下送達に適した「薬学的に許容される賦形剤またはビヒクル」を1種又は複数含むと考えられる。さらに、湿潤剤または乳化剤などの補助物質、pH緩衝物質などがそのようなビヒクル中に存在してもよい。
【0186】
鼻腔内および肺用の製剤は通常、鼻粘膜への刺激も引き起こさず毛様体機能を有意に妨害することもないビヒクルを含むと考えられる。水、水性の生理食塩水またはその他の公知の物質などの希釈剤を、本発明と共に用いることができる。また鼻用製剤も、これらに限定されるわけではないが、クロロブタノールおよび塩化ベンザルコニウムなどの保存剤を含みうる。鼻粘膜による吸収を増大させるために界面活性剤を含めてもよい。
【0187】
直腸用および尿道用の座剤に関しては、カカオバター(カカオ脂)またはその他のトリグリセリド、エステル化、水素化、および/または分溜によって改変された植物油、グリセリンゼラチン、ポリアルカリグリコール(polyalkaline glycol)、様々な分子量のポリエチレングリコールの混合物、ならびにポリエチレングリコールの脂肪酸エステルなどの伝統的な結合剤および担体が、ビヒクルに含まれる。
【0188】
膣内送達に関しては、本発明の製剤を、ポリエチレントリグリセリドの混合物を含むものなどのペッサリー基剤に組み込むことができ、あるいは、任意でコロイドシリカを含む、トウモロコシ油またはゴマ油などの油中に懸濁することができる。例えば、Richardson et al., Int. J. Pharm. (1995) 115:9-15を参照されたい。
【0189】
特定の送達様式に関して使用するための適切なビヒクルのさらなる考察については、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Mack Publishing Company, Easton, Pa., 19th edition, 1995を参照されたい。当業者は、特定の抗原および送達部位に使用するための適切なビヒクルを容易に決定することができる。
【0190】
本発明の方法において構築される組成物は、関心対象の抗原または治療用生物製剤の「有効量」を含みうる。すなわち、症状を予防する、減少させる、または消失させるために十分な免疫応答を被験体に生じさせるであろう量の抗原が、本組成物中に含まれると考えられる。あるいは、症状を予防する、減少させる、または消失させるであろう量の治療用生物製剤が、本組成物中に含まれると考えられる。中でもとりわけ、治療される被験体;治療されるべき被験体の年齢および全身状態;被験体の免疫系が抗体または適切な細胞媒介応答を合成する能力;所望の防御の程度;治療される状態の重傷度;選択された特定の抗原または治療用生物製剤、ならびにその投与様式に応じて、正確な必要量が変動すると考えられる。適切な有効量は当業者により容易に決定できる。したがって、「有効量」は通常の試験によって決定できる比較的広い範囲を有する。例えば、本発明の目的に関して、用量あたりの送達される抗原の有効量は典型的には約1μg〜約100 mg、例えば約5μg〜約1 mg、または約10μg〜約500μgの範囲にわたる。
【0191】
一旦製剤化されたら、本発明の組成物は、標準技術を用いて、粘膜または皮下の注射によって、またはその他の送達経路によって投与される。例えば、鼻腔内、肺、膣、および直腸技術を含む粘膜送達技術については、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Mack Publishing Company, Easton, Pa., 19th edition, 1995、ならびに、鼻腔内投与技術については、欧州公報第517,565号およびIllum et al., J. Controlled Rel. (1994) 29:133-141を参照されたい。
【0192】
投薬治療は、本発明の徐放性送達組成物の単回投与であってもよく、当技術分野で公知の複数回投与スケジュールであってもよい。ワクチン送達組成物に関して、ブースターは、初回免疫応答のために投与されたのと同じ製剤を用いてもよく、異なる製剤を用いてもよい。また投薬レジメンは、少なくとも部分的に、被験体の要求によっても決定されうるが、これは医師の判断に基づく。さらに、疾患の予防が望まれる場合、ワクチン送達組成物は通常、関心対象の病原体への一次感染の前に投与される。例えば症状または再発の減少などの治療が望まれる場合、ワクチン送達組成物は通常、一次感染の後に投与される。
【0193】
皮下送達または粘膜送達のために開発されたいくつかの動物モデルにおいて、本発明の組成物をインビボ試験することができる。例えば覚醒(conscious)ヒツジモデルは、物質の鼻送達を試験するための人工の承認モデル(art-recognized model)である。例えば、Longenecker et al., J. Pharm. Sd. (1987) 76:351-355およびIllum et al., J. Controlled Rel. (1994) 29: 133-141を参照されたい。一般に粉末状で凍結乾燥形状のワクチン送達組成物を、鼻腔内へと吹き込む。上述のように、当技術分野で公知の標準技術を用いて、抗体力価について血液試料を分析することができる。細胞免疫応答も、上述のようにモニターすることができる。
【0194】
献血された免疫化ヒトボランティアであっても、マウスまたはその他動物のどちらであってもよいドナーに由来する細胞を用いた、細胞媒介免疫応答に関する一連のインビトロアッセイ法が、現在存在している。アッセイ法には細胞がドナーに由来する状況が含まれるが、一部のアッセイ法では、その他の供給源、例えばB細胞系から、抗原提示細胞の供給源を提供する。これらのインビトロアッセイ法には以下が含まれる:蛍光活性化フローサイトメトリーによる細胞表面マーカー分析、サイトカイン産生に関するアッセイ法、例えば細胞内サイトカインアッセイ法、および、酵素結合免疫吸着スポット検定法(ELISPOT)、抗原特異的T細胞受容体発現の分析(フローサイトメトリーによる四量体分析)、細胞障害性Tリンパ球アッセイ法;リンパ球増殖アッセイ法、例えばトリチウムチミジン取り込み;プロテインキナーゼアッセイ法、イオン輸送アッセイ法、ならびにリンパ球遊走阻害機能アッセイ法(Hickling, J. K. et al. (1987) J. Virol., 61: 3463;Hengel, H. et al. (1987) J. Immunol, 139: 4196;Thorley-Lawson, D. A. et al. (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84: 5384;Kadival, G. J. et al. (1987) J. Immunol, 139:2447;Samuelson, L. E. et al. (1987) J. Immunol, 139:2708;Cason, J. et al. (1987) J. Immunol. Meth., 102:109;およびTsein, R. J. et al. (1982) Nature, 293: 68)。
【0195】
T細胞により認識されたペプチドがT細胞を活性化して免疫応答を生じるかどうかを試験するために、いわゆる「機能検査」を用いる。酵素結合免疫スポット(ELISpot)アッセイ法は、マイクロプレート上のサイトカインまたはエフェクター分子に特異的なモノクローナル抗体の付着によって特異的サイトカインまたはその他のエフェクター分子を分泌する個別の細胞の検出用に適合化されている。抗原によって刺激された細胞を、固定化抗体と接触させる。細胞および全ての被結合物質を洗い流した後、同じサイトカインまたはその他のエフェクター分子に特異的な、抗体タグ付きのポリクローナル抗体、またはより多くの場合はモノクローナル抗体を、ウェルに加える。洗浄後、色つき沈殿物(すなわちスポット)がサイトカイン局在の位置で形成されるような反応条件下で、タグ付き抗体に対する基質を添加する。応答を定量化するために、スポットを手作業で、または自動ELISpotリーダー構成(composition)を用いて数えることができる。被験ペプチドによるT細胞活性化の最終確認には、例えばマウスまたはその他の動物モデルにおけるインビボ試験が必要であり得る。
【0196】
容易に明らかであるように、本発明の方法を用いて構築されたワクチン送達組成物は、ウイルス、細菌、寄生虫、および真菌に対する免疫応答を誘発するため、そのような病原体により引き起こされる多種多様な疾患および感染を治療および/または予防するため、ならびに、様々な腫瘍抗原に対する免疫応答を刺激するために有用である。本組成物は上述のように治療的または予防的に使用することができるだけでなく、例えば診断目的でおよび関心対象の抗原の免疫精製用にポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の両方を調製するためにも本組成物を使用することができる。ポリクローナル抗体が望ましい場合、選択された哺乳動物(例えばマウス、ウサギ、ヤギ、ウマなど)を、本発明の組成物で免疫化する。任意で、1回または複数回の抗原投与によって、動物を2〜6週間後にブーストする。次に、ポリクローナル抗血清を免疫動物から入手し、例えば防御応答または治療応答のどちらが誘発されているかを判定するために、公知の手順に従って処置する。例えば、Jurgens et al. (1985) J. Chrom. 348:363-370を参照されたい。
【0197】
モノクローナル抗体は一般に、Kohler and Milstein, Nature (1975) 256:495-96の方法またはその変法を用いて調製される。典型的には、マウスまたはラットを上述のように免疫化する。しかし、血清を抽出するために動物を放血するよりもむしろ、脾臓(および任意で、複数の大リンパ節)を取り出し、解離させて単一の細胞にする。望ましいならば、(非特異的接着T細胞を除去した後に)タンパク質抗原で被覆したプレートまたはウェルに細胞懸濁物を適用することによって、脾臓細胞をスクリーニングしてもよい。抗原に特異的な膜結合イムノグロブリンを発現するB細胞はプレートに結合すると考えられ、これらは懸濁物の残りと共に洗い流されることはない。得られたB細胞、または解離した全脾臓細胞を、ハイブリドーマを形成させるためにメラノーマ細胞と融合するよう誘導し、選択培地(例えば、ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン培地である「HAT」)中で培養する。得られたハイブリドーマを限界希釈によってプレーティングし、免疫抗原に特異的に結合する(かつ無関係の抗原に結合しない)抗体の産生について分析する。選択されたモノクローナル抗体分泌ハイブリドーマを次に、インビトロ(例えば、組織培養ボトルまたは中空繊維リアクタ中)またはインビボ(マウス中の腹水として)のいずれかで培養する。例えば、M. Schreier et al., Hybridoma Techniques (1980);Hammerling et al., Monoclonal Antibodies and T-cell Hybridomas (1981);Kennett et al., Monoclonal Antibodies (1980)を参照されたい;同じく、米国特許第4,341,761号;同第4,399,121号;同第4,427,783号;第4,444,887号;同第4,466,917号;同第4,472,500号;第4,491,632号;および同第4,493,890号を参照されたい。関心対象のポリペプチドに対して産生されたモノクローナル抗体の集団を、種々な特性に関して、すなわち、イソ型、エピトープ、親和性などに関して、スクリーニングすることができる。
【0198】
以下の実施例は、本発明の限定ではなく、例示を意図したものである。
【0199】
実施例1
アフィニティリガンドの合成:
金属複合体形成のために有用な3つのリガンドの合成を記載する。
【0200】
アフィニティリガンド6-アミノ-2-(ビス-カルボキシメチルアミノ)-ヘキサン酸(AB-NTA)、(式XVI)を発表されている方法に従って合成した(E. Hochuli, H. Dobeli and A. Schacher J. Chromatography, 411, 177-184, 1987)。
【0201】
NTA(Orn)-リガンド合成(式XVII、ここでR9=(CH2)3;およびR10=H)
Nδ-Z-NTA(Orn)-N-アルキル化段階:ブロモ酢酸(4.17g、30.0mmol)を1.5N NaOH(15mL)に溶解し、0℃に冷却した。NaOH(25mL)中のNδ-ベンジルオキシカルボニル-L-オルニチン(3.99g、15.0mmol)をこの溶液に滴下した。最初、溶液は乳白色になったが、1.5N NaOH(5.0mL)を加えた後、溶液は再度澄明となった。冷却浴中で2時間後、溶液を室温で終夜撹拌した(pHを約12.0以上に維持し、さもないと沈澱が生じた)。50℃で2時間加熱し、室温まで冷却した後、1M HCl(60mL)を滴下した。生成した沈澱を集中漏斗でろ過した。こうして得た白色固体を脱イオン水(2×25mL)で洗浄し、45℃、減圧下で乾燥した。純粋な生成物収量は2.9gであった。
【0202】
NTA(Orn)-水素添加段階:Nδ-Z-NTA(Orn)(2.5g、6.53mmol)をメタノール/水(20:1、66mL)に溶解し、10%Pd/C(125mg、約5重量%)を加えた後、室温、大気圧下で水素添加した。TLCをCH3CN/H2O(4:1)で展開し、UVおよびニンヒドリン検出してモニターすることにより、水素添加は2.5時間で完了した。触媒をセライト床を通して除去し、有機溶媒を減圧下で蒸発させた。凍結乾燥生成物を回収した。
【0203】
アフィニティリガンドAB-NTA-OMe(式XVII、ここでR9=(CH2)4;およびR10=CH3)の調製
第一段階で、1.5gの塩化5-(ビス-ベンジルオキシカルボニルメチル-アミノ)-5-メトキシカルボニル-ペンチル-アンモニウム(式XVI)を報告されている方法に基づいて合成した(Kiessling LL et al., J. Am. Chem. Soc, (2004), 126, 1608-1609)。フェニル保護リガンドをNTA-OMe-(CO2CH2Ph)2と命名する。リガンドのPEAへの結合およびその後の脱保護を以下の実施例2に記載する。
【0204】
実施例2
PEA活性化(PEA-OSu)のための一般法
PEAポリマー(式III;ここでR1=(CH2)8;R2=H;およびR3=CH2CH(CH3)2)(24.0g、13.09mmol、重量平均Mw=65kDa、GPC(PS))を無水ジメチルホルムアミド(DMF、80mL)にアルゴン雰囲気下で溶解した。次いで、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、2.97g、1.1当量、14.41mmol)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(HOSu、1.81g、15.71mmol)を別々にDMF(5〜10mL)に溶解し、溶液に10分間あけて加えた。反応混合物を室温で約24時間撹拌した。生成した残渣を孔径0.45ミクロンのガラスフィルター(PTFEフィルター)を通してろ去した。PEA-OSu結合体の溶液を別の1.0L丸底フラスコに集め、アルゴン雰囲気下で維持した。
【0205】
PEA-NTA結合体(式XIX)の合成
6-アミノ-2-(ビス-カルボキシメチルアミノ)-ヘキサン酸(3.43g、13.09mol)をジメチルスルホキシド(DMSO、60mL)中で撹拌し、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、7.53mL、3.3当量、43.21mmol)を加えた。得られた不均質な混合物を追加のDMF(40mL)で希釈し、ボルテックスミキサー上で特定の糖脂質、膜脂質または核酸を室温で5分間混合した。生成したNTA塩分散液を前述の1.0L丸底フラスコ中のPEA-OSuの活性エステル(24.0g、13.09mmol)にゆっくり加えた。得られた反応混合物を室温で72時間撹拌した(NTAの消費をTLC、ニンヒドリン噴霧および1H NMRでモニターした)。PEA-NTAポリマー結合体を0.1N HCl溶液(1L)中に沈澱させ、1時間撹拌を続けた。沈澱をろ取し、小片に切断し、脱イオン水(500mL)で1時間の洗浄を2回行った。ポリマー結合体を凍結乾燥器で終夜乾燥した(粗収量25.2g)。得られたポリマーをエタノールに溶解し(40mLに5g)、水(0.7L)中に沈澱させることにより、さらに精製した。1時間激しく撹拌した後、生成した沈澱を集め、小片に切断し、脱イオン水(1.0L)中に入れ、さらに1時間撹拌した。ポリマーを回収し、45℃の減圧乾燥器で終夜乾燥した。生成した固体をエタノールに再度溶解し、ろ過し、テフロン(登録商標)処理した皿上に置いた。減圧乾燥器で乾燥した後、生成物をNMRおよびGPCで分析し、HClおよびDIPEAの痕跡を試験した。
【0206】
PEA-NTA(Orn)-結合体の合成
オルニチン類縁体を同様に合成した。8mLバイアル中、NTA(Orn)(0.137g、1.0当量、0.55mmol)をDMSO(3.0mL)に溶解し、DIPEA(0.32mL、3.3当量、1.82mmol)を溶液に加えた。得られた不均質な混合物をボルテックスにかけ、室温で5分間撹拌した(分散を助けるためにDMF(0.6mL)を追加した)。DMSO-DMF中で生じたNTA(Orn)塩懸濁液を、20mLバイアル中のPEA-OSuの活性エステル(65k)(1.02g、0.55mmol)にアルゴン雰囲気下でゆっくり加え、室温で72時間撹拌した。NTA(Orn)の消費をTLC、ニンヒドリン噴霧および1H NMRでモニターした。反応混合物からポリマーを1.0N HCl(150mL)中に激しく撹拌しながら沈澱させた。集めたポリマーを小片に切断し、1時間撹拌した。最後に、ポリマー片を脱イオン水(0.2L)中に入れ、1時間撹拌して、HClの痕跡を除去した(この工程を2回繰り返した)。ポリマー片を回収し、凍結乾燥混合物で終夜乾燥した(収量:1g)。
【0207】
PEA-NTA(OMe)結合/脱保護:
PEA-NTA-OMe-(CO2CH2Ph)2結合 PEA-NTA(OMe)の活性化PEA-OSuへの結合を二つの前述の方法と同様に行った。生成したPEA-リガンド結合体を以下のとおりにさらに脱保護した:100mL丸底フラスコ中、固体PEA-NTA-OMe-(CO2CH2Ph)2(250mg)をエタノール(10ml)に加えた。完全に溶解した後、ギ酸(1.0mL)および10%Pd/C(25〜30mg)を加え、フラスコにアルゴンをパージして終夜撹拌した。翌日、反応混合物を孔径0.45ミクロンのPTFEガラスフィルターを通してろ過し、追加のエタノール(4.0mL)で洗浄した。全混合物を脱イオン水(30mL)に加え、ポリマーが白色固体として沈澱した。固体を小片に切断し、脱イオン水(20mL)中で30分間撹拌した(2回繰り返した)。小片を乾燥器で24時間乾燥し、生成物(23mg)を得た。
【0208】
実施例3
PEA-NTA-Ni2+複合体の調製
エタノール(44mL)中のPEA-NTA(2.3g)の溶液に、脱イオン水中のNiCl2(40mL中118mg)の溶液を超音波処理下に滴下した。ポリマー-NTA-Ni2+複合体が帯緑色固体としてゆっくり沈澱した。不均質な混合物を室温で1時間置き、15分ごとに30秒間超音波処理した。遠心分離し、デカンテーションした後、PEA-NTA-Ni2+複合体を脱イオン水(3×40ml)で洗浄し、凍結乾燥した。乾燥したPEA-NTA-Ni2+複合体をメタノール(60ml)に溶解し、テフロン(登録商標)処理した皿の型に入れた。メタノールを室温で完全に蒸発させた後、40〜45℃の減圧乾燥器で48時間乾燥を続けた。複合体の収率は94.2%(2.278g)であった。
【0209】
実施例4
His標識タンパク質からの本発明のワクチン送達組成物の構築法
A. ニッケルアフィニティリガンドをPEAに結合させる保存溶液の調製:
PEA-NTA-Ni+2保存溶液Aを下記のとおりに調製した:ニッケル担持ポリマー(重量平均Mw=68.9kDa、101.9mg)をバイアル中のヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP、2.4mL)に加えた。得られた不均質な混合物を超音波処理し、室温で2時間放置して、ゲルになるまで浸漬した。その後、脱イオン水(2.0ml)を滴下して、ゲルの微細な分散液(pH=3.0)を調合した。
【0210】
B. 抗原タンパク質を金属担持NTA-PEAマトリックスにより捕捉する保存溶液の調製:
保存溶液A(PEA-NTA-Ni+2 49.89mgを含む)(2.15mL)を、緩衝液(25mMトリス/500mM NaCl、30mL)中の精製His標識E6E7タンパク質(SEQ ID NO:17、HPV治療ワクチンのための標的抗原、21.0mg)の冷却溶液(約4℃)に滴下した。タンパク質-ポリマー金属アフィニティ複合体の沈澱がpH8.0で数分以内に始まった。得られた混合物を同じ温度で1時間置き、タンパク質およびポリマーの沈澱を確実に完了させた。沈澱を+4℃、12000rpmで30分間の遠心分離により回収した。(上清を別のチューブに集め、任意の残存タンパク質についてSDS PAGEで分析した)。沈澱をPBS緩衝液(30mL)で2回洗浄した後、4℃、12000rpmで30分間遠心分離した。最後に、集めた淡緑色沈澱を24時間凍結乾燥した。この工程により製剤(66mg、タンパク質の収率95%)を得た。製剤中のタンパク質捕捉を還元SDS PAGE、ならびに他の方法で分析した。
【0211】
PEA-NTA-E6E7の粉砕製剤
PEA-NTA-Ni+2-E6E7タンパク質複合体(29.18mg)を下記のとおりに生成した。His6標識E6E7タンパク質(SEQ ID NO:17、6.5mg)をPBS緩衝液(6.5ml)に懸濁した。この材料を組織粉砕器で10〜15分間粉砕し、均質な分散液を得た。
【0212】
実施例5
あらかじめ作成したワクチン送達粒子の構築法
A) インサイチューでのニッケル担持によるPEA-NTA-Ni+2ミクロスフェアの製剤
PEA-NTA-Ni+2微粒子を、PEA-NTA(上の実施例3で生成、50mg)をヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP、1mL)に室温で5分間の超音波処理により溶解して調製した。0.1M NiSO4(250μL)をPEA-NTA/HFIP相に加えると、有機相中水相乳濁液が生じた。続いて、全乳濁液を5分間ボルテックスにかけながら、HFIP(750μL)および脱イオン水(500μL)を加えて乳濁液を均質とし、「第1相」を生成した。第1相を脱イオン水中のポリ(ビニル)アルコール(PVA)(脱イオン水(12mL)中のPVA(25mg))からなる「第2相」に注入すると、第二の水相中有機相/水相乳濁液が生じた。第1相を第2相に、10℃、25Wの電力で60秒間超音波処理しながら、20ゲージの針で注入した。得られた乳濁液、「第3相」を760mmHg減圧下、30℃の水浴中で10分間ロトエバポレートして有機溶媒を除去し、PEA-NTAミクロスフェアの溶液を得た。このミクロスフェア溶液を0.001''ステンレススチールメッシュを通してろ過し、液体窒素中で凍結し、終夜凍結乾燥した。
【0213】
B) あらかじめニッケル担持してのPEA-NTA-Ni+2ミクロスフェアの調製
PEA-NTA-Ni+2ミクロスフェアを、前述の実施例3からのあらかじめニッケル担持したPEA-NTA-Ni+2複合体を用い、複合体(50mg)をヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP、1mL)に室温で5分間超音波処理して溶解することにより調製した。乳濁液を5分間ボルテックスにかけながら、脱イオン水(600μL)を加えて溶液を均質とし、「第1相」を生成した。第1相を脱イオン水に溶解したポリ(ビニル)アルコール(PVA)(脱イオン水(25mL)中のPVA(7mg))からなる「第2相」に注入して、水相中有機相乳濁液を生じた。第1相を第2相に、10℃、20ゲージの針で注入して、「第3相」乳濁液を生成した。第3相乳濁液を10℃、25Wの電力で60秒間超音波処理し、次いで760mmHg減圧下、30℃の水浴中で10分間ロトエバポレートして有機溶媒を除去し、0.001''ステンレススチールメッシュを通してろ過して、PEA-NTA-Ni+2ミクロスフェアを得、これを液体窒素中で凍結し、終夜凍結乾燥した。
【0214】
C) His標識タンパク質のあらかじめ作成したPEA-NTA-Ni+2ミクロスフェア上への構築
実施例5に記載の(A)または(B)のいずれかからのミクロスフェアを精製抗原溶液中、1〜3mg/mLの範囲の濃度で再構成した。典型的な粒径は0.05〜15μmの範囲であった。例えば、トリスpH8.0緩衝液中の精製ヒスチジン標識E6E7タンパク質(5mg)の溶液10mLにこれらのPEA-NTA-Ni+2ミクロスフェア(20mg)をピペットで混合して再構成することにより、精製E6E7タンパク質を粒子に結合した。このニッケル担持ミクロスフェアをあらかじめ作成する方法により、実施例4に作成を記載した本発明の組成物の生成において行っていた超音波処理または有機溶媒へのHis標識タンパク質の曝露が回避される。方法のこの局面は、重要な立体構造の抗原決定因子が特定の溶媒中で破壊されうる抗原、例えば、実施例10に記載のインフルエンザ赤血球凝集素にとって重要でありうる。
【0215】
実施例6
本実施例は、動物における本発明のワクチン送達組成物中のPEAポリマーの、アジュバントを追加して、または追加なしでの使用を例示する。ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)サブタイプ16のE6およびE7タンパク質の改変融合タンパク質(SEQ ID NO:17)を、以下に記載のモデル系における抗原として用いた。
【0216】
実験をTaconic(Hudson NY)から購入した6〜10週齢の間の雌C57BL/6マウスで行った。サブユニットワクチンは、実施例4に記載のPEA-NTA-Ni+2のミクロスフェアに複合した、大腸菌(E. coli)における組換え分子として産生したHis6標識E6E7融合タンパク質からなっていた。この材料を食塩水、またはアジュバントCpGを動物1匹につき5nmol(31.5μg)の最終濃度で含む食塩水中で希釈した。1回用量あたり用いたE6E7タンパク質の量は、各実施例に示すとおり、10〜100μgの間であった。合成オリゴデオキシヌクレオチドCpG(5'から3':tccatgacgttcctgatgct)(SEQ ID NO:20)をIntegrated DNA Technologies(Coralville IA)によるホスホチオエート主鎖を用いて合成した。免疫化前にポリマー-タンパク質結合体およびCpGを1時間混合し、注入直前に粒子を分散させるため溶液を超音波処理(4℃で1分間)した。マウスを全量200μlで尾基部の皮下に免疫化した。
【0217】
細胞株C3は他所に記載のとおりに全HPV-16ゲノムで形質転換したマウス胚線維芽細胞である(Ossevoort MA, et al. J Immunother Emphasis Tumor Immunol. (1995), 18(2): 86-94.)。同系非免疫マウスの側腹部に皮下注射すると、注射後約10日で触知可能な腫瘍を検出することができる。腫瘍成長の防止、または既存の腫瘍の退行が、各ワクチン製剤の有効性を評価するために用いた一次アッセイである。
【0218】
前述のPEA-NTA-Ni+2ワクチン送達組成物(「ワクチン」)が予防的に作用することの試験として、マウス実験を設定し、腫瘍攻撃の5週間前に免疫化したマウスの腫瘍成長をモニターした。この試験において、マウス5匹の4群を以下のとおりに準備した:第1群)精製した前述のHPVタンパク質抗原(10μg)および免疫刺激アジュバントとしてCpG(5nmol)で免疫化、第2群)ワクチン(タンパク質10μgに正規化)およびCpG(5nmol)で免疫化、第3群)約1×106の放射線照射したC3腫瘍細胞を腹腔内注射(陽性対照として)、または第4群)非免疫化のまま(未処置群)。5週間後、マウスに3×105 C3腫瘍細胞を皮下注射(側腹部)した。腫瘍成長を細胞注射後15日間モニターし、15日目に動物を屠殺し、腫瘍を摘出して秤量した。図1に示すとおり、ワクチンで免疫化したマウスは非結合HPVタンパク質抗原で免疫化したマウス、または非免疫化のまま(未処置)のマウスよりも腫瘍が小さかった。
【0219】
実施例7
腫瘍細胞攻撃の1週間前に免疫化したマウスの腫瘍成長の防止
マウス10〜15匹の群を、第1群)精製HPVタンパク質抗原(100μg)、第2群)前述の実施例5に記載のとおりに調製したPEA-NTA-Ni+2-抗原ワクチン送達組成物(「ワクチン」)(タンパク質100μgを含む)、第3群)PEAポリマー単独(抗原なし)、または第4群)非免疫化のまま(未処置群)のいずれかで免疫化した。7日後、マウスに2×105 C3腫瘍細胞を皮下注射(側腹部)した。腫瘍成長を細胞注射後18日間モニターし、腫瘍サイズを触診により1〜6の尺度を用いて採点した。図2のデータで示すとおり、ワクチンで免疫化したマウスは、アジュバントを追加しない場合でも、腫瘍成長から100%保護された。タンパク質単独もしくはポリマー単独で免疫化したマウス、または免疫化しなかったマウスは腫瘍成長から保護されなかった。
【0220】
各群から数匹のマウスを腫瘍注射の日、または腫瘍注射の7日後に屠殺し、脾臓を分析のために摘出した。ワクチン接種したマウスではE6E7特異的CD8 T細胞の数が増加していることが判明し、これらの細胞はインビトロでの抗原刺激に応答してインターフェロン-γ(IFN-γ)を産生することが明らかにされた。
【0221】
実施例8
腫瘍細胞攻撃の1週間後の治療的免疫化により誘導される腫瘍の退行
マウスに4×105 C3腫瘍細胞を側腹部に皮下注射した。6日後、マウス5匹の群を第1群)非免疫化のまま(未処置群)、第2群)PEAポリマー単独(抗原なし)、または第3群)本明細書において実施例6に記載のミクロスフェアとして製剤したワクチン(タンパク質100μgに正規化)およびアジュバントとしてCpG(5nmol)のいずれかで免疫化した。腫瘍成長を細胞注射後24日間モニターし、腫瘍サイズを触診により1〜6の尺度を用いて採点した。図3に示すとおり、ワクチンで免疫化したマウスの腫瘍は第15日から第24日の間に退行したが、非免疫化マウス、またはPEAポリマー単独で免疫化したマウスの腫瘍は成長し続けた。
【0222】
実施例9
HAの外部ドメインの発現、精製、および特徴づけ
オリゴヌクレオチドの設計 インフルエンザA/プエルトリコ/8/34からの赤血球凝集素の外部ドメイン(HAPR8)(SEQ ID NO:11)をコードする遺伝子カセットを作成するために、重複オリゴヌクレオチドの組を設計した。これらのDNAカセットは、精製のため、および本発明の方法によるワクチン組成物の構築のために、カルボキシ末端ヘキサ-ヒスチジン標識を有するNde1-EcoRI制限断片として設計した。DNA発現カセットは、望ましくない制限部位を持たず、細菌に対して選択したコドン使用頻度を有するよう設計した。重複オリゴヌクレオチドは末端の高い精度を確保するため、85ヌクレオチドまでの長さに制限した。
【0223】
クローニングと配列決定 合成オリゴヌクレオチドを凍結乾燥状態で受け取り、100pmol/mlの濃度に懸濁した。次いで、オリゴヌクレオチドを加熱および冷却により対でアニーリングし、DNAポリメラーゼIのKlenow断片を用いて群で伸長した。次に、これらのアニーリングし、伸長した配列をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、高忠実度ポリメラーゼ混合物(Roche)を用いて連結した。次いで、PCR生成物をpCR2.1またはpBAD TOPOトポイソメラーゼ連結ベクター(Invitrogen, San Diego, CA)中にTOPO-クローニングし、TOP10細菌に形質転換し、選択的プレート上で培養した。
【0224】
TOP10の個々のコロニーの細菌培養物4ミリリットルを培養し、プラスミドDNAを調製した。次いで、プラスミド調製物を制限消化により分析し、陽性クローンからのDNAを配列決定した。DNA断片を制限消化および発現ベクター中への連結によりサブクローニングした。細菌発現のために、次の2つのベクターファミリーを用いた:(1)アラビノース誘導性プロモーターを用いて遺伝子の転写を駆動するpBADベクター;および(2)タンパク質発現のために選択した細菌内で誘導されるためにT7ポリメラーゼを必要とする、pETベクターなどのT7プロモーターを用いるベクター。アラビノースプロモーターは、アラビノースを代謝しないTOP10のような細菌細胞株中の誘導物質アラビノース濃度を変動させることにより調節される能力を有するが、T7プロモーターは少量でも誘導されたT7ポリメラーゼが存在すると強く駆動され、したがって大量のタンパク質を速やかに産生することができる。加えて、HAPR8およびHA1PR8をコードするDNAカセットをpFAST Bac Dualベクター(Invitrogen)中にサブクローニングし、組換えバキュロウイルス(Bacmid)を作成するために用いた。一例において、SEQ ID NO:11のアミノ酸をコードするDNAカセットをpBac Dualに、タンパク質発現が多角体プロモーターによって駆動されるような様式で挿入した。これらの形質移入細胞から生成したバキュロウイルスをpBac-HAPR8バキュロウイルスと呼んだ。
【0225】
実施例10
HAの産生および製剤ならびに活性の測定
HAの立体構造状態はB細胞の強健な保護応答のために非常に重要であるため、バキュロウイルス感染SF9細胞をHAの発現のために選択し、精製HAPR8タンパク質をPEA-NTA-Ni+2ミクロスフェアに製剤した。pBac-HAPR8バキュロウイルスを感染多重度1(MOI=1)で用い、SF9細胞をSf900 II-SFM培地(Invitrogen、500ml)中、1.5×106細胞/mlの密度で感染させた。感染細胞を48から72時間培養し、遠心分離により回収した。細胞タンパク質を、0.1%トリトンX-100(登録商標)を含むPBS緩衝液に懸濁することにより可溶化し、Ni担持キレート化セファロース(GE)を用いての固定化金属アフィニティクロマトグラフィで精製した。精製タンパク質を50倍量の25mMトリス(登録商標)界面活性剤、pH8.0、150mM NaClを二回交換して透析し、2ミクロンフィルターを通してろ過し、エンドトキシンについて試験した。
【0226】
精製タンパク質の特徴づけは、SDS-PAGE、サイズ排除クロマトグラフィ、ならびに反応性についての免疫ブロッティングおよびELISAからなっていた。加えて、HA抗原は適当に折りたたまれなければならないため、HAタンパク質を標準のプロトコル(すなわち、Webster, R., et al., WHO Animal Influenza Manual, World Health Organization, WHO/CDS/NCS/2002.5)に従い赤血球凝集アッセイによりシアル酸結合機能について試験した。ニワトリ赤血球を赤血球凝集アッセイで対照としてのA/プエルトリコ/8/34ウイルスと共に用いた。バキュロウイルス産生HAPR8外部ドメインは凝集能を有する。製剤候補の評価のために、この機能性HAアッセイを凝集阻害アッセイと共に用いる。試験したHAタンパク質またはタンパク質サブドメインが製剤前に赤血球凝集活性を有する場合、HA-PEA-NTA-Ni+2ワクチンも赤血球凝集活性を有するはずである。
【0227】
実施例11
PEA-NTA製剤中のNPの核酸結合能の操作
細菌発現遺伝子を、発現したmRNA中にACAのヌクレオチド配列を含まないように操作し、この配列を標的とする特定のRNアーゼ、MazFの同時発現を可能にした(Suzuki, M., et al. Mol. Cell. (2005) 18:253-261)。MazFおよびHA、M2e-NA、またはNPタンパク質の発現ベクターの同時誘導により、所望のインフルエンザタンパク質に関連しての細菌タンパク質の複雑性が低くなる。このアプローチは収量を改善し、所望のインフルエンザタンパク質と同時に精製される細菌タンパク質のレベルを下げることができる。しかし、これに加えて、NPポリペプチドを産生するためのプロモーター誘導時に発現される核酸の操作により、単一製剤の一部として、または他の標的抗原からなる製剤の一部として、ヒスチジン標識NPに結合している特定の核酸を多く含むことになる。
【0228】
核酸の担体としてのこの核酸結合タンパク質の使用は、NPまたはインフルエンザワクチン組成物の使用に制限されるものではない。細胞内の望ましくないRNAまたはプラスミド配列の破壊は、他のRNアーゼ、DNアーゼまたは他の標的指向酵素によって選択的に行うことができると考えられる。核酸はインフルエンザNPではなく、哺乳動物細胞、他のウイルス、寄生生物、または細菌からの核酸結合タンパク質を含む他の核酸結合タンパク質を担体とすることができると考えられる。
【0229】
実施例12
マウス実験
インフルエンザHAおよびNPタンパク質を本発明のポリマー-NTP-Ni+2-抗原ワクチン送達組成物に結合することの免疫原性への影響を試験するために、前述の6〜8週齢のマウスに下記の一つを注射した(第0日):PBS(陰性対照)、PEA-NTA-Ni+2ワクチン組成物(実施例5)HA-PEA、NP-PEAもしくはHA-PEA+NP-PEAのいずれかと対応する遊離タンパク質(すなわち、PEASEQ ID NO:11および15に結合していない)または陽性対照としての遊離PR8インフルエンザAウイルス(マウスにPR8を腹腔内(ip)注射)を免疫反応性について比較した。PBS群はマウス10匹からなり、PR8群はマウス3匹からなり、他の群はすべてそれぞれマウス5匹からなっていた。
【0230】
動物から第20日に採血し(一次応答を評価するため)、第21日に初回抗原刺激に用いたのと同じ製剤で追加免疫した。動物から第35日に再度採血し(二次応答を評価するため)、第42日に感染性PR8ウイルスで経鼻攻撃した。
【0231】
図4は様々なマウス群の一次抗体応答からの抗HA抗体価を示している。PEA-HA+PEA-NPワクチンは最も高い抗HA IgG1抗体価を誘導し、血清1mlあたり抗体8.27+/-1.39μgであった。この抗体価は遊離タンパク質として注射したHA+NPにより誘導された抗体価:1.56+/-1.369μg/mlよりも有意に高かった(p<0.0001)。PEA-HA+PEA-NP複合体によって誘導された抗体価はPEA-HA複合体によって誘導された値:3.92+/-2.18μg/mlよりも有意に高かった(p=0.0056)。この結果はPEA-NP複合体が免疫原性アジュバント効果を生じることを示している。興味深いことに、PEA-HA複合体(1.54+/-1.6μg/ml)と遊離HA+NP抗原(1.56+/-1.36μg/ml)との間の抗HA抗体価に有意差はなかったため、このアジュバント効果はNPをPEAポリマーと複合させて送達した場合にのみ検出することができた。ワクチン組成物中のPEAポリマーの存在の強いアジュバント効果は、二次応答においても明白であった(図5);PEA-HA+PEA-NP複合体によって誘導された抗HA IgG2a血清抗体レベルは遊離HA+遊離NPによって誘導された応答よりも有意に高かった(p=0.0015)。同様に、PEA-HA複合体によって誘導された血清抗体レベルは遊離HAのものよりも高かった(p=0.021)。抗HA IgG1レベルは抗体価レベルの同じパターンに従い、1回注射後に得られたレベルよりも100倍高かった(30〜300)(表4参照)。
【0232】
予防ワクチンの基本的特徴はウイルス中和抗体を速やかに誘導する能力である。図6にまとめたデータが示すとおり、生存ウイルスの他に、1回注射後に中和抗体を誘導することができる唯一の製剤はPEA-HA+PEA-NP複合体であった。これとは対照的に、追加免疫後、HAを含むすべての製剤は、マイクロ中和アッセイ(Rowe, T., et al. Detection of antibody to avian influenza A (H5N1) virus in human serum by using a combination of serologic assays. J Clin Microbiol. (1999) 37:937-43)で測定して、測定可能なレベルの中和抗体を誘導した(図6)。
【0233】
これらの知見の妥当性は、本試験においてマウスを感染性PR8ウイルスで攻撃した際に明らかに認められた。試験マウスの体重減少を示す図7から明らかなとおり、第4日までまったく体重が減少しなかった(実際は、体重が増加し続けていた)動物は、PR8免疫化群およびPEA-HA+PEA-NP複合体注射群の動物で;すべての他の群では、動物は急速に体重減少した。重要なことに、遊離HA+NPまたはPEA-HA複合体で免疫化した動物はPEA-HA+PEA-NP複合体で免疫化した動物よりも保護の程度が低く(それぞれp=0.0017およびp=0.17)、PEA-HA複合体を注射した動物にPEA-NP複合体を追加した本発明のワクチン送達組成物におけるポリマー担体への抗原の結合の強いアジュバント効果を確認した。図8の結果から明らかなとおり、未処置/PBS群の動物すべて、および遊離NP群の5匹のうち4匹(NP群の1匹はプロトコルに従って安楽死させなければならなかった)は、体重減少が元の体重の20%に達した時点で。遊離HA群の1匹は安楽死させなければならなかったが、PEA-HA+PEA-NP、PEA-HA、遊離HA+NPおよびPR8-注射群の動物では100%生存が達成された。
【0234】
(表4)
データは、基準として抗HA IgG1モノクローナル抗体を用いて、血清1mL中の抗HA免疫グロブリンのmgで報告する。
【0235】
まとめとして、インフルエンザHAのPEAへの非共有結合により強い免疫原が生じ、これはPEA-NPの追加によってさらに改善され、試験動物の死亡を防止し、インフルエンザウイルス感染に関連する罹患率から完全に保護するワクチンを得た。
【0236】
実施例13
インフルエンザA/ベトナム/1203/2004タンパク質製剤を用いてのマウス実験
PR8で得られた結果は他のインフルエンザタンパク質サブタイプにも拡大しうることを確認するために、6〜8週齢のマウス群にPBS;インフルエンザA/ベトナム/1203/2004から得たポリマー複合タンパク質--PEA-HA、PEA-NP、もしくはPEA-HAプラスPEA-NP;または対応する非結合ウイルスタンパク質--HA、NPもしくはHA+NP(SEQ ID NO:14および16)を注射した(第0日)。各群はマウス5匹からなっていた。動物から20日後に採血し、IgG1のレベルを終点ELISAによりもとめた。図9は、血清希釈の逆数としての血清抗HA IgG1抗体価測定値を示しており、光学密度(OD)から2つの標準偏差がバックグラウンドよりも高いと判断される。HA-PR8への応答において観察されるとおり、ベトナムインフルエンザウイルスによるPEA-HA+PEA-NP複合体は最も高い抗HA IgG1抗体価を誘導し、血清希釈の逆数4500+/-1506で、陽性と判断される。この抗体価は遊離HA+NPタンパク質により誘導された値--血清希釈の逆数120+/-46.4よりも有意に高く(p<0.02)、陽性結果を示すものであった。組み合わせたPEA-HA+PEA-NPポリマー複合体はPEA-HA複合体(血清希釈の逆数380+/-135.6)よりも有意に免疫原性が高く(p=0.026)、陽性と判断された。これらの結果はPEA-NPのアジュバント効果を示している。
【0237】
インフルエンザA/ベトナム/1203/2004由来のウイルスタンパク質と複合したPEAポリマーを含むワクチン組成物を用いて本試験で得た結果は、A/プエルトリコ/8/34インフルエンザウイルス由来タンパク質で得たデータを実証するものである。
【0238】
実施例14
フェレット試験
マウス試験で得た陽性データを考慮して、フェレットにおけるA/ベトナム/1203/2004感染に対する保護のための、本発明のワクチン製剤の有効性を実施した。フェレットはヒトインフルエンザウイルス感染に対する最良のモデルと考えられる。フェレットにおいてNi担持NTA-PEAに結合した、HAおよびNP(SEQ ID NO:14および16)を含むタンパク質-ポリマーワクチンを2つの濃度(表示のタンパク質15および50μg/フェレット)で初回抗原刺激および追加免疫法を用いて試験し、ワクチンを皮下(s.c.)および経鼻(i.n.)投与について試験した。本試験はMedical Research and Evaluation Facility of Battelle Memorial Institute(Columbus, Ohio)で契約に基づいて実施し、ウイルス攻撃したフェレットの罹患率および死亡率を評価した。
【0239】
試験では現行のインフルエンザA株について血清陰性で8〜15週齢の雄フェレットを用いた。動物を5群に分けた:第1群)対照非免疫群(6匹);第2群)PEA-HAプラスPEA-NP 50μg皮下(s.c.)投与群(7匹);第3群)HA-PEA 50μg(sc)投与群(5匹);第4群)PEA-HAプラスPEA-NP 15μg(s.c.)投与群(7匹);および第5群)PEA-HAプラスPEA-NP 50μg経鼻(i.n.)投与群(6匹)。15μg投与した第4群のフェレットは第0日に初回抗原刺激し、第28日に追加免疫し、第42日に二回目の追加免疫を行った。他の3群のフェレットは第28日に一回目の注射をし、第42日に追加免疫した。すべてのフェレットを試験第67日にA/ベトナム/1203/2004インフルエンザウイルスの1.3×103 TCID50で経鼻攻撃した。血清試料を試験期間中を通して採取した。フェレットを攻撃後20日間観察した。
【0240】
図10は本試験におけるフェレットのカプラン-マイヤー生存曲線を示している。PBS群では、動物6匹のうち5匹が死亡した。2匹は攻撃後5日で死亡しているのが見つかり、3匹は重度の神経学的合併症により攻撃後6日で安楽死させた。PEA-HA+PEA-NP(sc)50μg群では、動物1匹が攻撃後9日で死亡した。PEA-HA群では1匹が攻撃後12日で死亡し、PEA-HA+PEA-NP(sc)15μg群では1匹が攻撃後10日で死亡した。PEA-HA+PEA-NP経鼻50μg群では、すべてのフェレットが生存した。
【0241】
図11は攻撃後の試験フェレットにおける体重変化を示すグラフである。対照群では、元の体重から17%減少したにもかかわらず生存した1匹を含むすべての動物が急速な体重減少を示した。他のすべての群では、フェレットは攻撃に対してよく反応し、死亡した動物を除いて(図10参照)、体重減少はほとんど、またはまったくなかった。事実、多くの動物は試験の全過程中、体重が増加し続けた。
【0242】
感染攻撃の3日後に採取した血液から得た血液学的データにより、体重減少によって評価したとおり、感染攻撃後の罹患はないことが確認された。図12A〜Dはウイルス攻撃したフェレットにおける全白血球(WBC)、リンパ球、単球、および血小板(PLT)の血球数を示している。非免疫化群ではこれらのパラメーターすべてで著しい低下が見られた。これとは対照的に、免疫化した動物は血球数を正常範囲内に維持した。この結果は、血小板数の重度の低下と、インフルエンザ感染の顕著な臨床的特徴として著しいリンパ球減少を示した、ベトナムにおけるヒトH5N1患者の血液学的所見と一致した(N. Engl. J. Med. (2004) 350:1179))。
【0243】
まとめとして、フェレット試験で得た結果に基づき、本発明の抗H5N1ワクチン送達組成物はインフルエンザAウイルスの致死株からの罹患および死亡防止において有効であると結論することができる。
【0244】
すべての出版物、特許、および特許文書は、個々に参照により組み入れられるがごとく、参照により本明細書に組み入れられる。本発明を様々な具体的かつ好ましい態様および技術に関連して記載してきた。しかし、本発明の精神および範囲内にとどまりつつ、多くの変更および改変を行いうることが理解されるべきである。
【0245】
本発明を前述の実施例に関連して記載してきたが、改変および変更は本発明の精神および範囲内に含まれることが理解されると思われる。したがって、本発明は添付の特許請求の範囲によってのみ制限される。
【図面の簡単な説明】
【0246】
【図1】図1は、免疫化前にアジュバントとしてのCpG(1匹のマウスに5nmol)と混合した表示の組成物を1回注射した5週間後の、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)-発現腫瘍細胞株、C3で攻撃したマウスから摘出した腫瘍の腫瘍量を示すグラフである。放射線照射細胞を注射したマウスおよび無処置マウスを対照群とする。腫瘍サイズを腫瘍細胞攻撃の15日後に評価した。各記号は個々の動物からの腫瘍量を示している。
【図2】図2は、アジュバントを追加せずに表示の組成物で1回免疫化した1週間後の、HPV-発現腫瘍細胞株、C3で攻撃したマウスにおける腫瘍サイズを示すグラフである。腫瘍サイズを攻撃後第18日に評価した。各記号は個々の動物からの相対腫瘍サイズを示している。バーは各マウス群の平均腫瘍サイズを表している。
【図3】図3は、HPV-発現腫瘍細胞株、C3を注射したマウスにおける腫瘍サイズを示すグラフである。細胞注射の6日後、マウスに表示の組成物を1回皮下注射した。腫瘍サイズを腫瘍細胞注射後24日間にわたり評価した。各記号は個々の動物からの相対腫瘍サイズを示している。バーは各マウス群の平均腫瘍サイズを表している。
【図4】図4は、マウスにPEAポリマーを含む、もしくは含まない、表示の製剤、PBS(陰性対照)、または感染性PR8ウイルス(陽性対照)を1回注射し、追加免疫した後の抗HA抗体価(一次応答)を示すグラフである。血清試料を最初の注射の20日後および免疫化の14日後に採取した。
【図5】図5は、PEAポリマーを含む、もしくは含まない、表示の製剤を1回注射した後の二次抗HA IgG2a応答を示すグラフである。PBS(陰性対照)または感染性PR8ウイルス(陽性対照)を注射した動物群を比較のために含む。マウスに表示の製剤で初回抗原刺激し、21日後に追加免疫した。血清試料を追加免疫の14日後に採取し、二次応答抗HA IgG2a抗体価をELISAでもとめた。
【図6】図6は、図4および5と同様、表示の製剤および対照を注射し、追加免疫したマウスにおけるウイルス中和血清抗体価を示すグラフである。血清試料を最初の注射の20日後および免疫化の14日後に採取した。HAに対する血清中和抗体価を、MDCK細胞を用いてのインフルエンザウイルスマイクロ中和アッセイでもとめた。追加免疫後、HAを含むすべての製剤は測定可能なレベルの中和抗体を誘導した。
【図7】図7は、図4、5および6の表示のワクチン製剤を注射し、追加免疫したマウスにおける、感染性ウイルスで攻撃した後の体重変化を示すグラフである。マウスを感染性PR8ウイルスで経鼻攻撃した。-20%の点線は動物を安楽死させなければならない時点を示している。
【図8】図8は、感染攻撃後のマウスの生存を示すグラフである。マウスに表示のワクチン製剤を腹腔内(ip)に注射し、追加免疫した。マウスを感染性PR8ウイルスで経鼻攻撃し、体重減少が20%以上になった時点でプロトコルに従って安楽死させた。
【図9】図9は、インフルエンザA/ベトナム/1203/2004 H5N1分子による表示の製剤をip注射した試験マウスにおける抗体応答を示すグラフである。血清試料を12日後に採取し、IgG1抗体価を終点ELISAでもとめた。データは血清希釈の逆数で報告し、それにより2つの標準偏差がバックグラウンドよりも高いと判断される。
【図10】図10は、1.3×103 TCID50のA/ベトナム/1203/2004インフルエンザウイルスで感染経鼻攻撃した後の免疫化試験フェレットの生存を示すグラフである。フェレットにPEAポリマーと複合させた表示のウイルス抗原を注射し、追加免疫した。フェレットをプロトコルに従い、攻撃の20日後に安楽死させた。
【図11】図11は、図10と同様、インフルエンザA/ベトナム/1203/2004で感染攻撃後の試験フェレットにおける体重減少を示すグラフである。フェレットにPEAポリマーと複合させた表示のウイルス抗原、または陰性対照としてPBSを注射し、追加免疫した。試験フェレットの体重変化を、感染性ウイルスでの経鼻攻撃後20日間モニターした。
【図12】図12A〜Dは、ベトナムインフルエンザAウイルスで感染経鼻攻撃した3日後の試験フェレットから採取した血液からの血液学的データを示す一連のグラフである。フェレットにPEAポリマーと複合させた表示のウイルス抗原を注射し、追加免疫しておいた。フェレットを経鼻攻撃し、攻撃の3日後に採血した。点線は正常範囲を表している。図12A=ウイルス攻撃フェレットの白血球(WBC)、図12B=リンパ球、図12C=単球、および図12D=血小板(PLT)。
【図13】図13は、A/プエルトリコ/8/34(H1N1)由来の赤血球凝集素タンパク質の外部ドメインの一文字コードによるアミノ酸配列である(SEQ ID NO:11)。
【図14】図14は、A/ベトナム/1203/2004(H5N1)由来の赤血球凝集素タンパク質の外部ドメインの一文字コードによるアミノ酸配列である(SEQ ID NO:12)。
【図15】図15は、M2タンパク質の外部ドメインとA/プエルトリコ/8/34(H1N1)由来ノイラミニダーゼの外部ドメインとの融合タンパク質の一文字コードによるアミノ酸配列である(SEQ ID NO:13)。
【図16】図16は、M2タンパク質の外部ドメインとA/ベトナム/1203/2004(H5N1)由来ノイラミニダーゼの外部ドメインとの融合タンパク質の一文字コードによるアミノ酸配列である(SEQ ID NO:14)。
【図17】図17は、A/プエルトリコ/8/34(H1N1)由来核タンパク質のHis-標識型の一文字コードによるアミノ酸配列である(SEQ ID NO:15)。
【図18】図18は、A/ベトナム/1203/2004(H5N1)由来核タンパク質のHis-標識型の一文字コードによるアミノ酸配列である(SEQ ID NO:16)。
【図19】図19は、HPV-16 E6およびE7の突然変異融合タンパク質の一文字コードによるアミノ酸配列である。アミノ末端下線配列はE6から、中央部分はE7からであり、カルボキシ末端にヘキサ-ヒスチジン標識がある(SEQ ID NO:17)。
【図20】図20は、A/プエルトリコ/8/34(H1N1)由来ノイラミニダーゼの外部ドメインの一文字コードによるアミノ酸配列である(SEQ ID NO:18)。
【図21】図21は、A/ベトナム/1203/2004(H5N1)由来ノイラミニダーゼの外部ドメインの一文字コードによるアミノ酸配列である(SEQ ID NO:19)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 以下の成分
(1) 治療用生物製剤および金属結合アミノ酸を含む、少なくとも1つの精製された合成分子;
(2) 少なくとも1つの遷移金属イオン;
(3) 精製分子中の金属結合残基に特異的に結合する、アフィニティーリガンド;ならびに
(3) アフィニティーリガンドが付着できる遊離官能基を含む、合成生分解性ポリマー
を、溶液または分散液中で共に接触させる工程
を含む、治療用生物製剤の送達用のポリマーベースの組成物を構築するための方法であって、接触工程が、アフィニティーリガンドがポリマーの遊離官能基に結合するような条件下であり、かつ、生物製剤の実質的な天然活性を維持しながら組成物を構築するために、合成分子の遷移金属イオン、ポリマー付着金属アフィニティーリガンド、および金属結合タンパク質の間で、非共有結合アフィニティー複合体が形成される、方法。
【請求項2】
少なくとも1つの遷移金属イオンが、Cu2+、Ni2+、Co2+、およびZn2+イオンより選択される遷移金属イオンを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
金属アフィニティーリガンドが6-アミノ-2-(ビス-カルボキシメチルアミノ)-ヘキサン酸、ニトリロ三酢酸(NTA)、およびイミノ二酢酸(IDA)より選択され、遷移金属イオンがFe2+、Cu2+、またはNi2+より選択される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
金属アフィニティーリガンドがNTAであり、遷移金属イオンがNi2+である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
組成物を構築するための (a) の接触工程の前に金属アフィニティーリガンドおよび遷移金属イオンをポリマーの官能基に付着させる、請求項1記載の方法。
【請求項6】
治療用生物製剤がDNA、RNA、タンパク質、ペプチド、分枝ペプチド、グリコペプチド、リポペプチド、またはグリコリポペプチドである、請求項1記載の方法。
【請求項7】
ポリマーがアミノ酸含有生分解性ポリマーであり、遊離官能基がアミノ基またはカルボキシル基である、請求項5記載の方法。
【請求項8】
生分解性ポリマーが、以下の少なくとも1つまたは混合物を含む、請求項1記載の方法:
5〜約30アミノ酸を含む構造式 (I) に記載の化学構造を有するポリ(エステルアミド)(PEA)、および、構造式 (I) に記載の構造式を有する生分解性PEA
式中、nは約5〜約150の範囲であり;R1は独立して、α,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-(C1-C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)二けい皮酸、もしくは4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)二けい皮酸、(C2-C20)アルキレン、もしくは(C2-C20)アルケニレンの残基から選択され;個別のn個のモノマー中のR3は独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2SCH3からなる群より選択され;かつR4は独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ、(C2-C20)アルキレン、飽和型もしくは不飽和型の治療的ジオールの残基、構造式 (II)
の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびそれらの組み合わせ、(C2-C20)アルキレン、ならびに(C2-C20)アルケニレンからなる群より選択される;
または、構造式IIIに記載の化学式を有するPEAポリマー
式中、nは約5〜約150の範囲であり;mは約0.1〜0.9の範囲であり;pは約0.9〜0.1の範囲であり;式中、R1は独立して、α,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-(C1-C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)二けい皮酸、もしくは4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)二けい皮酸、(C2-C20)アルキレン、もしくは(C2-C20)アルケニレンの残基から選択され;各R2は独立して、水素、(C1-C12)アルキルもしくは(C6-C10)アリール、または保護基であり;個別のm個のモノマー中のR3は独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2SCH3からなる群より選択され;かつR4は独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ、(C2-C20)アルキレン、飽和型もしくは不飽和型の治療的ジオールの残基、もしくは構造式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され;かつR7は独立して、(C1-C20)アルキルもしくは (C2-C20)アルケニルである;
または、構造式 (IV) に記載の化学式を有するポリ(エステルウレタン)(PEUR)ポリマー
式中、nは約5〜約150の範囲であり;式中、R3は独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2SCH3からなる群より選択され;R4は、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレンもしくはアルキルオキシ、(C2-C20)アルキレン、飽和型もしくは不飽和型の治療的ジオールの残基、構造式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され;かつR6は独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレンもしくはアルキルオキシ、一般式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびそれらの組み合わせより選択される;
または、一般構造式 (V) に記載の化学構造を有するPEURポリマー
式中、nは約5〜約150の範囲であり;mは約0.1〜約0.9の範囲であり;pは約0.9〜約0.1の範囲であり;R2は独立して、水素、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、もしくは保護基より選択され;個別のm個のモノマー中のR3は独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2SCH3からなる群より選択され;R4は、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレンもしくはアルキルオキシ、飽和型もしくは不飽和型の治療的ジオールの残基、および構造式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され;かつR6は独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレンもしくはアルキルオキシ、一般式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、飽和型もしくは不飽和型の治療的ジオールの残基の有効量、およびそれらの組み合わせより選択され;かつR7は独立して、(C1-C20)アルキルもしくは(C2-C20)アルケニルである;
または、一般構造式 (VI) に記載の化学式を有するポリ(エステルウレア)(PEU)
式中、nは約10〜約150の範囲であり;個別のn個のモノマー中のR3は独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2SCH3より選択され;R4は独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ(C2-C20)アルキレン、飽和型もしくは不飽和型の治療的ジオールの残基、もしくは構造式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片より選択される;
または、構造式 (VII) に記載の化学式を有するPEU
式中、mは約0.1〜約1.0であり;pは約0.9〜約0.1であり;nは約10〜約150であり;各R2は独立して、水素、(C1-C12)アルキル、もしくは(C6-C10)アリールより選択され;個別のm個のモノマー中のR3は独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2SCH3より選択され;各R4は独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ(C2-C20)アルキレン、飽和型もしくは不飽和型の治療的ジオールの残基、構造式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびそれらの組み合わせより選択される。
【請求項9】
ポリマーが構造式 (I) または (III) に記載のPEAを含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
ポリマーが構造式 (IV) または (V) に記載のPEURを含む、請求項8記載の方法。
【請求項11】
ポリマーが構造式 (VI) または (VII) に記載のPEUを含む、請求項8記載の方法。
【請求項12】
組成物を構築するために (a) において成分を共に接触させる工程の前に、ポリマーの粒子を形成させる工程をさらに含む、請求項8記載の方法。
【請求項13】
(a) 以下の成分
(1) 合成抗原を含む少なくとも1つの精製分子;
(2) 精製分子に特異的に結合するアフィニティーリガンド;および
(3) アフィニティーリガンドが付着できる遊離官能基を含む、合成生分解性ポリマー
を溶液または分散液中で共に接触させる工程
を含む、ワクチン送達組成物を構築するための方法であって、
接触工程が、アフィニティーリガンドがポリマーの遊離官能基に結合するような条件下であり、かつ、組成物を構築するために、アフィニティーリガンドが合成抗原を含む分子と非共有結合複合体を形成する、方法。
【請求項14】
ポリマーがアミノ酸含有生分解性ポリマーであり、遊離官能基がアミノ基またはカルボキシル基である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
ポリマーが、モノマーあたり少なくとも1つの非アミノ酸部分と結合した少なくとも1つのアミノ酸を含む、請求項13記載の方法。
【請求項16】
生分解性ポリマーが、以下のうち少なくとも1つまたは混合物を含む、請求項13記載の方法:
5〜約30アミノ酸を含む構造式 (I) に記載の化学構造を有するポリ(エステルアミド)(PEA)、および、構造式 (I) に記載の構造式を有する生分解性PEA
式中、nは約5〜約150の範囲であり;R1は独立して、α,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-(C1-C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)二けい皮酸、もしくは4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)二けい皮酸、(C2-C20)アルキレン、もしくは(C2-C20)アルケニレンの残基から選択され;個別のn個のモノマー中のR3は独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2SCH3からなる群より選択され;かつR4は独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ、(C2-C20)アルキレン、飽和型もしくは不飽和型の治療的ジオールの残基、構造式 (II)
の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびそれらの組み合わせ、(C2-C20)アルキレン、ならびに(C2-C20)アルケニレンからなる群より選択される;
または、構造式IIIに記載の化学式を有するPEAポリマー
式中、nは約5〜約150の範囲であり;mは約0.1〜0.9の範囲であり;pは約0.9〜0.1の範囲であり;式中、R1は独立して、α,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-(C1-C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)二けい皮酸、もしくは4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)二けい皮酸、(C2-C20)アルキレン、もしくは(C2-C20)アルケニレンの残基から選択され;各R2は独立して、水素、(C1-C12)アルキルもしくは(C6-C10)アリール、または保護基であり;個別のm個のモノマー中のR3は独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2SCH3からなる群より選択され;かつR4は独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ、(C2-C20)アルキレン、飽和型もしくは不飽和型の治療的ジオールの残基、もしくは構造式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され;かつR7は独立して、(C1-C20)アルキルもしくは (C2-C20)アルケニルである;
または、構造式 (IV) に記載の化学式を有するポリ(エステルウレタン)(PEUR)ポリマー
式中、nは約5〜約150の範囲であり;式中、R3は独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2SCH3からなる群より選択され;R4は、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレンもしくはアルキルオキシ、飽和型もしくは不飽和型の治療的ジオールの残基、構造式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され;かつR6は独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレンもしくはアルキルオキシ、一般式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびそれらの組み合わせより選択される;
または、一般構造式 (V) に記載の化学構造を有するPEURポリマー
式中、nは約5〜約150の範囲であり;mは約0.1〜約0.9の範囲であり;pは約0.9〜約0.1の範囲であり;R2は独立して、水素、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、もしくは保護基より選択され;個別のm個のモノマー中のR3は独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2SCH3からなる群より選択され;R4は、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレンもしくはアルキルオキシ、飽和型もしくは不飽和型の治療的ジオールの残基、および構造式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され;かつR6は独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレンもしくはアルキルオキシ、一般式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、飽和型もしくは不飽和型の治療的ジオールの残基の有効量、およびそれらの組み合わせより選択され;かつR7は独立して、(C1-C20)アルキルもしくは(C2-C20)アルケニルである;
または、一般構造式 (VI) に記載の化学式を有するポリ(エステルウレア)(PEU)
式中、nは約10〜約150の範囲であり;個別のn個のモノマー中のR3は独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2SCH3より選択され;R4は独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ(C2-C20)アルキレン、飽和型もしくは不飽和型の治療的ジオールの残基、もしくは構造式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片より選択される;
または、構造式 (VII) に記載の化学式を有するPEU
式中、mは約0.1〜約1.0であり;pは約0.9〜約0.1であり;nは約10〜約150であり;各R2は独立して、水素、(C1-C12)アルキル、もしくは(C6-C10)アリールであり;個別のm個のモノマー中のR3は独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2SCH3より選択され;各R4は独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ(C2-C20)アルキレン、飽和型もしくは不飽和型の治療的ジオールの残基、構造式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびそれらの組み合わせより選択される。
【請求項17】
ポリマーが構造式 (I) または (III) に記載のPEAを含む、請求項14記載の方法。
【請求項18】
ポリマーが構造式 (IV) または (V) に記載のPEURを含む、請求項14記載の方法。
【請求項19】
ポリマーが構造式 (VI) または (VII) に記載のPEUを含む、請求項14記載の方法。
【請求項20】
組成物を構築するために (a) において成分を共に接触させる工程の前に、ポリマーの粒子を形成させる工程をさらに含む、請求項14記載の方法。
【請求項21】
粒子上にポリマー被覆を形成させる工程をさらに含む、請求項18記載の方法。
【請求項22】
約10ナノメートル〜約1000ミクロンの範囲の平均直径を有する粒子および抗原が、粒子のポリマー分子中に分散している、請求項18記載の方法。
【請求項23】
粒子上にポリマー被覆を形成させる工程をさらに含む、請求項18記載の方法。
【請求項24】
粒子が約10ナノメートル〜約10ミクロンの範囲の平均直径を有する、請求項18記載の方法。
【請求項25】
ポリマー分子が約5,000〜約300,000の範囲の平均分子量を有する、請求項18記載の方法。
【請求項26】
約5〜約70個の抗原が非共有結合的にポリマー分子に付着している、請求項18記載の方法。
【請求項27】
(b) 溶液または分散液中で複合体をその他の成分から分離し、構築された組成物を精製する工程
をさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項28】
サイズろ過によって複合体が溶液または分散液から取り出される、請求項13記載の方法。
【請求項29】
組成物を構築するために (a) において成分を共に接触させる工程の前に、ポリマーの遊離官能基へとアフィニティーリガンドを結合させる工程をさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項30】
合成抗原をコードするDNA配列挿入物およびベクターを含む少なくとも1つの組換えベクターを含む生物の溶解物または抽出物から、精製分子を入手する工程をさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項31】
合成抗原が、5〜約30アミノ酸を含む少なくとも1つのクラスIまたはクラスII抗原を含み、該抗原が生物によって発現される、請求項30記載の方法。
【請求項32】
アフィニティーリガンドが、精製分子またはその内部に含まれる合成抗原に特異的に結合するモノクローナル抗体を含む、請求項13記載の方法。
【請求項33】
アフィニティーリガンドが、合成抗原に特異的に結合するモノクローナル抗体である、請求項13記載の方法。
【請求項34】
組成物を構築するために (a) において成分を共に接触させる工程の前に、ポリマーに結合した抗体結合タンパク質ドメインを介してモノクローナル抗体をポリマーに結合する工程をさらに含む、請求項33記載の方法。
【請求項35】
抗体結合タンパク質ドメインがプロテインAまたはプロテインGから得られる、請求項34記載の方法。
【請求項36】
アフィニティーリガンドが金属アフィニティーリガンドであり、精製分子が金属結合アミノ酸を含み、かつ、(a) において共に接触させる成分が、Cu2+、Ni2+、Co2+、およびZn2+イオンより選択される遷移金属イオンをさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項37】
金属アフィニティーリガンドが6-アミノ-2-(ビス-カルボキシメチルアミノ)-ヘキサン酸、ニトリロ三酢酸(NTA)、およびイミノ二酢酸(IDA)より選択され、遷移金属イオンがFe2+、Cu2+、またはNi2+より選択される、請求項36記載の方法。
【請求項38】
条件が、約8のpH値を含む、請求項36記載の方法。
【請求項39】
条件が、約0.1 M〜約1.0 Mの範囲のNaCl濃度を含む、請求項36記載の方法。
【請求項40】
条件が、約0.5 M〜約0.9 Mの範囲のNaCl濃度を含む、請求項36記載の方法。
【請求項41】
金属アフィニティーリガンドがNTAであり、金属イオンがNi2+である、請求項36記載の方法。
【請求項42】
精製分子が、合成抗原に付着した6×Hisタグをさらに含む、請求項36記載の方法。
【請求項43】
組成物を構築するために (a) において成分を共に接触させる工程の前に、金属アフィニティーリガンドおよび金属イオンをポリマーの遊離官能基に付着させる工程をさらに含む、請求項36記載の方法。
【請求項44】
組成物が、ポリマー分子あたり約5〜約150個の抗原を含む、請求項42記載の方法。
【請求項45】
組成物を構築するために (a) において成分を共に接触させる工程の前に、ポリマーの粒子を形成させる工程をさらに含む、請求項42記載の方法。
【請求項46】
約10ナノメートル〜約1000ミクロンの範囲の平均直径を有する粒子および抗原が、粒子のポリマー分子中に分散している、請求項45記載の方法。
【請求項47】
(a) で共に接触する成分が、金属アフィニティーリガンドを含む第二の金属アフィニティー複合体を介してポリマーに非共有結合しているペプチドアジュバントおよび金属イオンをさらに含む、請求項36記載の方法。
【請求項48】
(a) で共に接触する成分が、金属アフィニティーリガンドを含む第二の金属アフィニティー複合体を介してポリマーに非共有結合しているポリヌクレオチドアジュバントおよび金属イオンをさらに含む、請求項36記載の方法。
【請求項49】
(a) で共に接触する成分が、1つまたは複数のToll様受容体アゴニストをさらに含む、請求項48記載の方法。
【請求項50】
(a) で共に接触する成分が、ポリI:Cおよび/またはCpGをさらに含む、請求項49記載の方法。
【請求項51】
DNA配列挿入物が1つまたは2つのHisタグをさらにコードし、それぞれが、融合タンパク質をコードするためにそのアミノ末端またはカルボキシ末端において合成抗原に連結した1〜10個の隣接ヒスチジン残基を有する、請求項30記載の方法。
【請求項52】
単一の6×Hisタグが、融合タンパク質のカルボキシ末端においてコードされている、請求項51記載の方法。
【請求項53】
抗原が、インフルエンザA型のH1N1株またはH5N1株のいずれかに由来するクラスIまたはクラスII抗原を含む、請求項30記載の方法。
【請求項54】
抗原が、SEQ ID NO: 11、12、13、または14記載のアミノ酸配列を含む、請求項53記載の方法。
【請求項55】
インフルエンザA型のH5N1に由来する配列が、SEQ ID NO: 12、14、16、およびそれらの組み合わせより選択される、請求項53記載の方法。
【請求項56】
合成抗原が腫瘍関連の糖分子または脂質分子を含む、請求項13記載の方法。
【請求項57】
合成抗原が、ウイルス、細菌、真菌、または腫瘍の細胞表面抗原のエピトープを含む、請求項13記載の方法。
【請求項58】
合成抗原が、アジュバント結合タンパク質またはアジュバント複合体形成リポタンパク質もしくは糖タンパク質を含む、請求項13記載の方法。
【請求項59】
合成抗原がインフルエンザウイルスのNPを含む、請求項58記載の方法。
【請求項60】
アジュバントが天然または合成のポリヌクレオチドである、請求項58記載の方法。
【請求項61】
アジュバントが1つまたは複数の天然または合成のTLRアゴニストである、請求項60記載の方法。
【請求項62】
アジュバントがポリI:Cおよび/またはCpGである、請求項61記載の方法。
【請求項63】
インビボで投与された場合に組成物が徐放性ポリマーデポーを形成する、請求項1記載の方法。
【請求項64】
組成物を凍結乾燥する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項65】
哺乳動物における免疫応答を誘発するために、ポリマー粒子または分子の液体分散の形態の、請求項13記載の方法により形成されたワクチン送達組成物の免疫刺激量を、哺乳動物に投与する工程
を含む、哺乳動物における免疫応答を誘発するための方法。
【請求項66】
インビボで投与された場合に組成物が徐放性ポリマーデポーを形成する、請求項65記載の方法。
【請求項67】
約24時間〜約90日間の期間にわたって組成物が生物分解される、請求項65記載の方法。
【請求項68】
組成物が、約10ナノメートル〜約1000ミクロンの範囲の平均直径を有する粒子の形態である、請求項65記載の方法。
【請求項69】
遷移金属イオンと非共有結合的に複合体形成した金属アフィニティーリガンドが予め付着している1つまたは複数の官能基を有する合成生分解性ポリマーを含む組成物であって、可溶性である、組成物。
【請求項70】
請求項1記載の方法によって作製される、送達組成物。
【請求項71】
請求項13記載の方法によって作製される、ワクチン送達組成物。
【請求項1】
(a) 以下の成分
(1) 治療用生物製剤および金属結合アミノ酸を含む、少なくとも1つの精製された合成分子;
(2) 少なくとも1つの遷移金属イオン;
(3) 精製分子中の金属結合残基に特異的に結合する、アフィニティーリガンド;ならびに
(3) アフィニティーリガンドが付着できる遊離官能基を含む、合成生分解性ポリマー
を、溶液または分散液中で共に接触させる工程
を含む、治療用生物製剤の送達用のポリマーベースの組成物を構築するための方法であって、接触工程が、アフィニティーリガンドがポリマーの遊離官能基に結合するような条件下であり、かつ、生物製剤の実質的な天然活性を維持しながら組成物を構築するために、合成分子の遷移金属イオン、ポリマー付着金属アフィニティーリガンド、および金属結合タンパク質の間で、非共有結合アフィニティー複合体が形成される、方法。
【請求項2】
少なくとも1つの遷移金属イオンが、Cu2+、Ni2+、Co2+、およびZn2+イオンより選択される遷移金属イオンを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
金属アフィニティーリガンドが6-アミノ-2-(ビス-カルボキシメチルアミノ)-ヘキサン酸、ニトリロ三酢酸(NTA)、およびイミノ二酢酸(IDA)より選択され、遷移金属イオンがFe2+、Cu2+、またはNi2+より選択される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
金属アフィニティーリガンドがNTAであり、遷移金属イオンがNi2+である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
組成物を構築するための (a) の接触工程の前に金属アフィニティーリガンドおよび遷移金属イオンをポリマーの官能基に付着させる、請求項1記載の方法。
【請求項6】
治療用生物製剤がDNA、RNA、タンパク質、ペプチド、分枝ペプチド、グリコペプチド、リポペプチド、またはグリコリポペプチドである、請求項1記載の方法。
【請求項7】
ポリマーがアミノ酸含有生分解性ポリマーであり、遊離官能基がアミノ基またはカルボキシル基である、請求項5記載の方法。
【請求項8】
生分解性ポリマーが、以下の少なくとも1つまたは混合物を含む、請求項1記載の方法:
5〜約30アミノ酸を含む構造式 (I) に記載の化学構造を有するポリ(エステルアミド)(PEA)、および、構造式 (I) に記載の構造式を有する生分解性PEA
式中、nは約5〜約150の範囲であり;R1は独立して、α,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-(C1-C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)二けい皮酸、もしくは4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)二けい皮酸、(C2-C20)アルキレン、もしくは(C2-C20)アルケニレンの残基から選択され;個別のn個のモノマー中のR3は独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2SCH3からなる群より選択され;かつR4は独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ、(C2-C20)アルキレン、飽和型もしくは不飽和型の治療的ジオールの残基、構造式 (II)
の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびそれらの組み合わせ、(C2-C20)アルキレン、ならびに(C2-C20)アルケニレンからなる群より選択される;
または、構造式IIIに記載の化学式を有するPEAポリマー
式中、nは約5〜約150の範囲であり;mは約0.1〜0.9の範囲であり;pは約0.9〜0.1の範囲であり;式中、R1は独立して、α,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-(C1-C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)二けい皮酸、もしくは4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)二けい皮酸、(C2-C20)アルキレン、もしくは(C2-C20)アルケニレンの残基から選択され;各R2は独立して、水素、(C1-C12)アルキルもしくは(C6-C10)アリール、または保護基であり;個別のm個のモノマー中のR3は独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2SCH3からなる群より選択され;かつR4は独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ、(C2-C20)アルキレン、飽和型もしくは不飽和型の治療的ジオールの残基、もしくは構造式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され;かつR7は独立して、(C1-C20)アルキルもしくは (C2-C20)アルケニルである;
または、構造式 (IV) に記載の化学式を有するポリ(エステルウレタン)(PEUR)ポリマー
式中、nは約5〜約150の範囲であり;式中、R3は独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2SCH3からなる群より選択され;R4は、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレンもしくはアルキルオキシ、(C2-C20)アルキレン、飽和型もしくは不飽和型の治療的ジオールの残基、構造式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され;かつR6は独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレンもしくはアルキルオキシ、一般式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびそれらの組み合わせより選択される;
または、一般構造式 (V) に記載の化学構造を有するPEURポリマー
式中、nは約5〜約150の範囲であり;mは約0.1〜約0.9の範囲であり;pは約0.9〜約0.1の範囲であり;R2は独立して、水素、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、もしくは保護基より選択され;個別のm個のモノマー中のR3は独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2SCH3からなる群より選択され;R4は、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレンもしくはアルキルオキシ、飽和型もしくは不飽和型の治療的ジオールの残基、および構造式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され;かつR6は独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレンもしくはアルキルオキシ、一般式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、飽和型もしくは不飽和型の治療的ジオールの残基の有効量、およびそれらの組み合わせより選択され;かつR7は独立して、(C1-C20)アルキルもしくは(C2-C20)アルケニルである;
または、一般構造式 (VI) に記載の化学式を有するポリ(エステルウレア)(PEU)
式中、nは約10〜約150の範囲であり;個別のn個のモノマー中のR3は独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2SCH3より選択され;R4は独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ(C2-C20)アルキレン、飽和型もしくは不飽和型の治療的ジオールの残基、もしくは構造式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片より選択される;
または、構造式 (VII) に記載の化学式を有するPEU
式中、mは約0.1〜約1.0であり;pは約0.9〜約0.1であり;nは約10〜約150であり;各R2は独立して、水素、(C1-C12)アルキル、もしくは(C6-C10)アリールより選択され;個別のm個のモノマー中のR3は独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2SCH3より選択され;各R4は独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ(C2-C20)アルキレン、飽和型もしくは不飽和型の治療的ジオールの残基、構造式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびそれらの組み合わせより選択される。
【請求項9】
ポリマーが構造式 (I) または (III) に記載のPEAを含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
ポリマーが構造式 (IV) または (V) に記載のPEURを含む、請求項8記載の方法。
【請求項11】
ポリマーが構造式 (VI) または (VII) に記載のPEUを含む、請求項8記載の方法。
【請求項12】
組成物を構築するために (a) において成分を共に接触させる工程の前に、ポリマーの粒子を形成させる工程をさらに含む、請求項8記載の方法。
【請求項13】
(a) 以下の成分
(1) 合成抗原を含む少なくとも1つの精製分子;
(2) 精製分子に特異的に結合するアフィニティーリガンド;および
(3) アフィニティーリガンドが付着できる遊離官能基を含む、合成生分解性ポリマー
を溶液または分散液中で共に接触させる工程
を含む、ワクチン送達組成物を構築するための方法であって、
接触工程が、アフィニティーリガンドがポリマーの遊離官能基に結合するような条件下であり、かつ、組成物を構築するために、アフィニティーリガンドが合成抗原を含む分子と非共有結合複合体を形成する、方法。
【請求項14】
ポリマーがアミノ酸含有生分解性ポリマーであり、遊離官能基がアミノ基またはカルボキシル基である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
ポリマーが、モノマーあたり少なくとも1つの非アミノ酸部分と結合した少なくとも1つのアミノ酸を含む、請求項13記載の方法。
【請求項16】
生分解性ポリマーが、以下のうち少なくとも1つまたは混合物を含む、請求項13記載の方法:
5〜約30アミノ酸を含む構造式 (I) に記載の化学構造を有するポリ(エステルアミド)(PEA)、および、構造式 (I) に記載の構造式を有する生分解性PEA
式中、nは約5〜約150の範囲であり;R1は独立して、α,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-(C1-C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)二けい皮酸、もしくは4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)二けい皮酸、(C2-C20)アルキレン、もしくは(C2-C20)アルケニレンの残基から選択され;個別のn個のモノマー中のR3は独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2SCH3からなる群より選択され;かつR4は独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ、(C2-C20)アルキレン、飽和型もしくは不飽和型の治療的ジオールの残基、構造式 (II)
の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびそれらの組み合わせ、(C2-C20)アルキレン、ならびに(C2-C20)アルケニレンからなる群より選択される;
または、構造式IIIに記載の化学式を有するPEAポリマー
式中、nは約5〜約150の範囲であり;mは約0.1〜0.9の範囲であり;pは約0.9〜0.1の範囲であり;式中、R1は独立して、α,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-(C1-C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)二けい皮酸、もしくは4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)二けい皮酸、(C2-C20)アルキレン、もしくは(C2-C20)アルケニレンの残基から選択され;各R2は独立して、水素、(C1-C12)アルキルもしくは(C6-C10)アリール、または保護基であり;個別のm個のモノマー中のR3は独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2SCH3からなる群より選択され;かつR4は独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ、(C2-C20)アルキレン、飽和型もしくは不飽和型の治療的ジオールの残基、もしくは構造式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され;かつR7は独立して、(C1-C20)アルキルもしくは (C2-C20)アルケニルである;
または、構造式 (IV) に記載の化学式を有するポリ(エステルウレタン)(PEUR)ポリマー
式中、nは約5〜約150の範囲であり;式中、R3は独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2SCH3からなる群より選択され;R4は、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレンもしくはアルキルオキシ、飽和型もしくは不飽和型の治療的ジオールの残基、構造式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され;かつR6は独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレンもしくはアルキルオキシ、一般式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびそれらの組み合わせより選択される;
または、一般構造式 (V) に記載の化学構造を有するPEURポリマー
式中、nは約5〜約150の範囲であり;mは約0.1〜約0.9の範囲であり;pは約0.9〜約0.1の範囲であり;R2は独立して、水素、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、もしくは保護基より選択され;個別のm個のモノマー中のR3は独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2SCH3からなる群より選択され;R4は、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレンもしくはアルキルオキシ、飽和型もしくは不飽和型の治療的ジオールの残基、および構造式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され;かつR6は独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレンもしくはアルキルオキシ、一般式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、飽和型もしくは不飽和型の治療的ジオールの残基の有効量、およびそれらの組み合わせより選択され;かつR7は独立して、(C1-C20)アルキルもしくは(C2-C20)アルケニルである;
または、一般構造式 (VI) に記載の化学式を有するポリ(エステルウレア)(PEU)
式中、nは約10〜約150の範囲であり;個別のn個のモノマー中のR3は独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2SCH3より選択され;R4は独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ(C2-C20)アルキレン、飽和型もしくは不飽和型の治療的ジオールの残基、もしくは構造式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片より選択される;
または、構造式 (VII) に記載の化学式を有するPEU
式中、mは約0.1〜約1.0であり;pは約0.9〜約0.1であり;nは約10〜約150であり;各R2は独立して、水素、(C1-C12)アルキル、もしくは(C6-C10)アリールであり;個別のm個のモノマー中のR3は独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C6-C10)アリール(C1-C20)アルキル、および-(CH2)2SCH3より選択され;各R4は独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ(C2-C20)アルキレン、飽和型もしくは不飽和型の治療的ジオールの残基、構造式 (II) の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびそれらの組み合わせより選択される。
【請求項17】
ポリマーが構造式 (I) または (III) に記載のPEAを含む、請求項14記載の方法。
【請求項18】
ポリマーが構造式 (IV) または (V) に記載のPEURを含む、請求項14記載の方法。
【請求項19】
ポリマーが構造式 (VI) または (VII) に記載のPEUを含む、請求項14記載の方法。
【請求項20】
組成物を構築するために (a) において成分を共に接触させる工程の前に、ポリマーの粒子を形成させる工程をさらに含む、請求項14記載の方法。
【請求項21】
粒子上にポリマー被覆を形成させる工程をさらに含む、請求項18記載の方法。
【請求項22】
約10ナノメートル〜約1000ミクロンの範囲の平均直径を有する粒子および抗原が、粒子のポリマー分子中に分散している、請求項18記載の方法。
【請求項23】
粒子上にポリマー被覆を形成させる工程をさらに含む、請求項18記載の方法。
【請求項24】
粒子が約10ナノメートル〜約10ミクロンの範囲の平均直径を有する、請求項18記載の方法。
【請求項25】
ポリマー分子が約5,000〜約300,000の範囲の平均分子量を有する、請求項18記載の方法。
【請求項26】
約5〜約70個の抗原が非共有結合的にポリマー分子に付着している、請求項18記載の方法。
【請求項27】
(b) 溶液または分散液中で複合体をその他の成分から分離し、構築された組成物を精製する工程
をさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項28】
サイズろ過によって複合体が溶液または分散液から取り出される、請求項13記載の方法。
【請求項29】
組成物を構築するために (a) において成分を共に接触させる工程の前に、ポリマーの遊離官能基へとアフィニティーリガンドを結合させる工程をさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項30】
合成抗原をコードするDNA配列挿入物およびベクターを含む少なくとも1つの組換えベクターを含む生物の溶解物または抽出物から、精製分子を入手する工程をさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項31】
合成抗原が、5〜約30アミノ酸を含む少なくとも1つのクラスIまたはクラスII抗原を含み、該抗原が生物によって発現される、請求項30記載の方法。
【請求項32】
アフィニティーリガンドが、精製分子またはその内部に含まれる合成抗原に特異的に結合するモノクローナル抗体を含む、請求項13記載の方法。
【請求項33】
アフィニティーリガンドが、合成抗原に特異的に結合するモノクローナル抗体である、請求項13記載の方法。
【請求項34】
組成物を構築するために (a) において成分を共に接触させる工程の前に、ポリマーに結合した抗体結合タンパク質ドメインを介してモノクローナル抗体をポリマーに結合する工程をさらに含む、請求項33記載の方法。
【請求項35】
抗体結合タンパク質ドメインがプロテインAまたはプロテインGから得られる、請求項34記載の方法。
【請求項36】
アフィニティーリガンドが金属アフィニティーリガンドであり、精製分子が金属結合アミノ酸を含み、かつ、(a) において共に接触させる成分が、Cu2+、Ni2+、Co2+、およびZn2+イオンより選択される遷移金属イオンをさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項37】
金属アフィニティーリガンドが6-アミノ-2-(ビス-カルボキシメチルアミノ)-ヘキサン酸、ニトリロ三酢酸(NTA)、およびイミノ二酢酸(IDA)より選択され、遷移金属イオンがFe2+、Cu2+、またはNi2+より選択される、請求項36記載の方法。
【請求項38】
条件が、約8のpH値を含む、請求項36記載の方法。
【請求項39】
条件が、約0.1 M〜約1.0 Mの範囲のNaCl濃度を含む、請求項36記載の方法。
【請求項40】
条件が、約0.5 M〜約0.9 Mの範囲のNaCl濃度を含む、請求項36記載の方法。
【請求項41】
金属アフィニティーリガンドがNTAであり、金属イオンがNi2+である、請求項36記載の方法。
【請求項42】
精製分子が、合成抗原に付着した6×Hisタグをさらに含む、請求項36記載の方法。
【請求項43】
組成物を構築するために (a) において成分を共に接触させる工程の前に、金属アフィニティーリガンドおよび金属イオンをポリマーの遊離官能基に付着させる工程をさらに含む、請求項36記載の方法。
【請求項44】
組成物が、ポリマー分子あたり約5〜約150個の抗原を含む、請求項42記載の方法。
【請求項45】
組成物を構築するために (a) において成分を共に接触させる工程の前に、ポリマーの粒子を形成させる工程をさらに含む、請求項42記載の方法。
【請求項46】
約10ナノメートル〜約1000ミクロンの範囲の平均直径を有する粒子および抗原が、粒子のポリマー分子中に分散している、請求項45記載の方法。
【請求項47】
(a) で共に接触する成分が、金属アフィニティーリガンドを含む第二の金属アフィニティー複合体を介してポリマーに非共有結合しているペプチドアジュバントおよび金属イオンをさらに含む、請求項36記載の方法。
【請求項48】
(a) で共に接触する成分が、金属アフィニティーリガンドを含む第二の金属アフィニティー複合体を介してポリマーに非共有結合しているポリヌクレオチドアジュバントおよび金属イオンをさらに含む、請求項36記載の方法。
【請求項49】
(a) で共に接触する成分が、1つまたは複数のToll様受容体アゴニストをさらに含む、請求項48記載の方法。
【請求項50】
(a) で共に接触する成分が、ポリI:Cおよび/またはCpGをさらに含む、請求項49記載の方法。
【請求項51】
DNA配列挿入物が1つまたは2つのHisタグをさらにコードし、それぞれが、融合タンパク質をコードするためにそのアミノ末端またはカルボキシ末端において合成抗原に連結した1〜10個の隣接ヒスチジン残基を有する、請求項30記載の方法。
【請求項52】
単一の6×Hisタグが、融合タンパク質のカルボキシ末端においてコードされている、請求項51記載の方法。
【請求項53】
抗原が、インフルエンザA型のH1N1株またはH5N1株のいずれかに由来するクラスIまたはクラスII抗原を含む、請求項30記載の方法。
【請求項54】
抗原が、SEQ ID NO: 11、12、13、または14記載のアミノ酸配列を含む、請求項53記載の方法。
【請求項55】
インフルエンザA型のH5N1に由来する配列が、SEQ ID NO: 12、14、16、およびそれらの組み合わせより選択される、請求項53記載の方法。
【請求項56】
合成抗原が腫瘍関連の糖分子または脂質分子を含む、請求項13記載の方法。
【請求項57】
合成抗原が、ウイルス、細菌、真菌、または腫瘍の細胞表面抗原のエピトープを含む、請求項13記載の方法。
【請求項58】
合成抗原が、アジュバント結合タンパク質またはアジュバント複合体形成リポタンパク質もしくは糖タンパク質を含む、請求項13記載の方法。
【請求項59】
合成抗原がインフルエンザウイルスのNPを含む、請求項58記載の方法。
【請求項60】
アジュバントが天然または合成のポリヌクレオチドである、請求項58記載の方法。
【請求項61】
アジュバントが1つまたは複数の天然または合成のTLRアゴニストである、請求項60記載の方法。
【請求項62】
アジュバントがポリI:Cおよび/またはCpGである、請求項61記載の方法。
【請求項63】
インビボで投与された場合に組成物が徐放性ポリマーデポーを形成する、請求項1記載の方法。
【請求項64】
組成物を凍結乾燥する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項65】
哺乳動物における免疫応答を誘発するために、ポリマー粒子または分子の液体分散の形態の、請求項13記載の方法により形成されたワクチン送達組成物の免疫刺激量を、哺乳動物に投与する工程
を含む、哺乳動物における免疫応答を誘発するための方法。
【請求項66】
インビボで投与された場合に組成物が徐放性ポリマーデポーを形成する、請求項65記載の方法。
【請求項67】
約24時間〜約90日間の期間にわたって組成物が生物分解される、請求項65記載の方法。
【請求項68】
組成物が、約10ナノメートル〜約1000ミクロンの範囲の平均直径を有する粒子の形態である、請求項65記載の方法。
【請求項69】
遷移金属イオンと非共有結合的に複合体形成した金属アフィニティーリガンドが予め付着している1つまたは複数の官能基を有する合成生分解性ポリマーを含む組成物であって、可溶性である、組成物。
【請求項70】
請求項1記載の方法によって作製される、送達組成物。
【請求項71】
請求項13記載の方法によって作製される、ワクチン送達組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2009−524584(P2009−524584A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544537(P2008−544537)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2006/046896
【国際公開番号】WO2007/067744
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(507277424)メディバス エルエルシー (13)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2006/046896
【国際公開番号】WO2007/067744
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(507277424)メディバス エルエルシー (13)
【Fターム(参考)】
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