説明

ポリマーのガラス転移温度制御方法及びこれを用いたポリマー

【課題】光学装置、特に、青色冷光放射材料に使用されるポリマーの寿命を増加させる手段を提供する。
【解決手段】光学装置に使用するポリマーであって、前記ポリマーは、選択的に置換される次式(I)の繰返し単位を有する。


ここで、各Arは、同じか異なる選択的に置換されるアリール基からなる。
【効果】正孔輸送領域、電子輸送領域、放射領域からなる光学装置に使用されるポリマーが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学装置の材料に関係し、特に有機電子冷光放射性装置及びその物理的特性の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
光−電子装置の一つの分類に、発光又は検出のための有機材料を使用する装置がある。このような装置の基本的な構造は、負電荷(電子)を有機層に注入するためのカソードと正電荷(正孔)を有機層に注入するためのアノードの間にはさまれた、例えば、ポリ(パラ−フェニレンビニレン)(PPV)又はポリフルオレンの薄膜のような発光有機層である。電子と正孔は有機層で結合して光を発生する。WO90/13148における有機発光層はポリマーである。US4,539,507における発光材料は(8−ヒドロキノリン)アルミニウム(ALq3)のような低分子材料として知られている分類の発光材料である。実用的な装置においては、電極の1つは透明であり、正孔を装置から放出することを可能にする。
【0003】
図1は、典型的な有機発光装置(OLED)の断面構造を示す図である。OLEDは、典型的には、インジウム錫酸化物(ITO)のような透明第1電極4で被覆されたガラス又はプラスチック基板1上に製作される。少なくとも1つの電子冷光放射性有機材料3の薄膜層が第1電極を覆う。最後に、カソード2が電子冷光放射性有機材料を覆う。カソードは、典型的には金属又は合金及びアルミニウムのような単層又はカルシウム及びアルミニウムのような複数層である。例えば、電極から電子冷光放射材料への電荷の注入を改善するために、他の層を付加することもできる。例えば、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルファネート(PEDOT−PSS)又はポリアニリンがアノード4及び電子冷光放射性材料3との間に供給される。電力供給源から電圧が電極間に付加されるとき、電極の1つはカソードとして働き、他方はアノードとして働く。
【0004】
有機半導体においては、重要な性質は、電子エネルギーレベルの真空レベルに関して測定される結合エネルギーであり、特に、最高空準位(HOMO)及び最低空準位(LUMO)レベルである。これらは、光放射の測定、並びに、特に、酸化還元の電気化学ポテンシャルの測定によって評価される。このようなエネルギーは、インターフェースに近い局地的環境のような多数のファクター、値が決められる曲線上の点(ピーク)によって影響されることがよく知られている。したがって、そのような値の使用は定量的であるというより指標的である。
【0005】
ポリマーOLEDの分野における焦点は、赤、緑及び青の発光材料が要求されるフルカラーディスプレイの開発である。商業的応用においては、OLEDにとって、数千時間の寿命を有することが望ましい。(「寿命」とは、室温においてDC稼動のもとOLEDの輝度が100cd/m2から20cd/m2に減少するのに要する時間を意味する)。本開発に関連する既存のポリマーOLEDディスプレイの欠点は、現在まで知られている青色発光材料の相対的に短い寿命にある。発光材料の寿命はOLED構造の最適化に拡張される。例えば、赤、緑及び青の寿命は使用されるカソードに依存する。しかしながら、ポリマー(特に、青色冷光放射ポリマー)は安定で、多様なOLED構造において長い寿命を有するものは、明らかに望ましい。
WO00/55927は次式(a)を有するポリマーを開示している。
【0006】
【化6】

ここで、w+x+y=1,w<0.5,0≦x+y≦0.5及びn<2である。
この出願は、ジフェニルフルオレン繰返し単位からなるポリマーを開示していない。
WO00/22026は次式(b)を有するポリマーを開示している。
【0007】
【化7】

ここで、Xは97又は99であり、かつ、Yはそれぞれ3又は1である。これらのポリマーの冷光放射装置における使用について開示されている。
ジフェニルフルオレン繰り返し単位からなる冷光放射性ポリマーの他の開示は、次のものがある。
【0008】
9−(4−アダマンチルフェニル)−10−フェニルアントラセン及び2−アダマンチルフルオレン繰返し単位を開示するEP108875。
【0009】
9,9−ジ−n−オクチルフルオレン及び9,9−ジ(4−メトキシフェニル)フルオレンを開示するWO99/20675。
【0010】
本発明の目的は、従来技術のポリマーの上記光学装置におけるポリマーの寿命を増加させる手段を提供することにある。本発明の他の目的は、光学装置、特に、青色冷光放射材料に使用される長い寿命のポリマーを提供することにある。本発明のさらに他の目的は、従来技術のポリマーの熱的安定性を増加させる手段を提供することにある。
【0011】
本発明の発明者は、光学装置、特に電子冷光放射ポリマーに使用する際のポリマーの寿命は、驚くべきことに、ポリマーのガラス転移温度(Tg)を増加する繰返し単位の組み込みによって増加することを発見した。特に、2,7結合、9,9−ジアリールフルオレン繰返し単位の冷光放射装置、特に、青色発光冷光放射ポリマーへの組込みは、ポリマーの寿命の重要な増加をもたらす。ポリマーの寿命に対する影響に加えて、ポリマーのTgの増加は、熱的安定性の増加を伴うため本質的に望ましい。
【0012】
したがって、第1の側面において、本発明は、正孔輸送領域、電子輸送領域、及び放射領域からなる光学装置に使用されるポリマーを提供する。
前記ポリマーは、選択的に置換される次式(I)の繰返し単位を有する。
【化8】

ここで、各Arは、同じか異なる選択的に置換されるアリール基からなる。
好ましくは、各Arは次式(II)を有する選択的に置換される残部からなる群から独立して選択される。
【化9】

ここで、n=1、2又は3であり、Rは溶解性基又は水素である。特に好ましいRは水素であり、選択的に置換されるアルキル又はアルコキシである。最も好ましくは、Rは水素又はブチルである。ブチルは、n−、第2又は第3ブチルを意味し、上記従来技術に開示されているポリマーにおける9,9−ジアリールフルオレン繰返し単位は、電子輸送の目的のため及び/又は第2繰返し単位のために結合基として使用される。この目的のため、これら従来のポリマーは50%又はそれ以上の9,9−ジアリールフルオレン単位からなる。しかしながら、本件発明者は、繰返し単位(I)を有しない対応するポリマーに比較して、ガラス転移温度を増加する目的のために、式(I)の繰返し単位のより低い量を導入することを決めた。したがって、本発明のポリマーは、好ましくは50mol%より少ない、より好ましくは10−40mol%の式(I)の繰り返し単位を有する。
【0013】
好ましくは、ポリマーは電子冷光放射性ポリマーである。より好ましくは、ポリマーは青色電子冷光放射性ポリマーである。「青色電子冷光放射性ポリマー」とは、電子冷光放射により、400−500nmの波長、好ましくは430−500nmの波長の光の放射をするポリマーを意味する。
【0014】
第2の側面においては、本発明は、光学装置、好ましくは、正電荷注入のための第1電極、負電荷注入のための第2電極、並びに、正孔輸送領域、電子輸送領域及び発光領域からなるポリマーからなり、第1電極と第2電極の間に位置する層からなる電子冷光放射性装置を提供する。
【0015】
前記ポリマーは、次式(I)の繰返し単位を有する。
【化10】

ここで、各Arは、同じか異なり、選択的に置換アリール基を有する。
第3の側面において、本発明は、次式(III)のモノマー混合物の重合を含むポリマーのガラス転移温度の制御方法を提供する。
【化11】

ここで、各Arは、同じか異なる選択的に置換されたアリール基を有し、各Pは重合のための配位基であり、製造プロセスは、事前に決められたガラス転移温度に達するに必要な量の式(III)のモノマーを重合するステップからなる。
【0016】
好ましくは、式(III)のモノマーは、重合混合物のモノマー混合物の重合において50mol%以下、より好ましくは10−40mol%のモノマーを含む。
【0017】
芳香族モノマーからの共役ポリマーの製造に特にかなう2つの重合技術として、例えば、WO00/53656に開示されるスズキ重合と”Macromolecules”,31、1099−1103(1988)に開示されるヤマモト重合がある。スズキ重合は、ハロゲン化物及びボロン誘導配位基のカップリングを伴う。ヤマモト重合は、ハロゲン化物配位基のカップリングを伴う。したがって、各Pは、(a)ボロン酸基、ボロンエステル基及びボラン基、並びに、(b)ハロゲン化物配位基から構成される群から独立して選択されることが好ましい。
【0018】
好ましくは、本発明の方法は、式(III)の第1モノマーと、第1モノマーと同じか異なり得る第2モノマーとを、金属配位錯体触媒の存在下でモノマーの重合によりポリマーを形成するように反応させる工程を含む。
【0019】
好ましくは、本発明の方法は、(a)ボロン酸基、ボロンエステル基及びボラン基から選択される少なくとも2つのボロン誘導配位基を有する芳香族モノマー、並びに、式(III)のモノマーからなる少なくとも1つの第1又は第2芳香族モノマー、又は(b)1つの反応ハロゲン化物配位基、並びに、ボロン酸基、ボロンエステル基及びボラン基から選ばれる1つのボロン誘導配位基を有する式(III)の方法族モノマー、からなる反応混合物を重合する工程を含み、ここで、反応混合物は、芳香族モノマーの重合の触媒に適した量の触媒、ボロン誘導配位基を−BX3-アニオン基の転換するために十分な量の塩基、ここでXはF及びOHからなる群から独立して選択される。
好ましくは、塩基は有機塩基であり、より好ましくは、WO00/53656に開示されるようにテトラ−アルキルアンモニウムカルボネート又はハイドロオキサイドである。
【0020】
第4の側面において、本発明は、ポリマー、好ましくは、電子冷光放射性ポリマーにお
いて、ガラス転移温度増加要素として、選択的に置換される式(I)の繰り返し単位の使用を提供する。
【化12】

ここで、各Arは上記で定義される。
【0021】
第5の側面において、本発明は、選択的置換繰返し単位(I)を50mol%以下、好ましくは10−40%含有するポリマー、好ましくは電子冷光放射性ポリマーを提供する。
【化13】

ここで、各Arは上記で定義される。
【0022】
各領域は、互いに共役された単一の繰返し単位又は複数の繰返し単位を有する。それぞれの正孔輸送領域、電子輸送領域及び発光領域はポリマー内で1度だけ生じ得る。領域は、特に、それが共役された繰返し単位の拡張された鎖を有するときポリマー内で1度だけ生じる。代替的に、ポリマー内に分散された複数の1又は2以上の正孔輸送領域、電子輸送領域及び発光領域を有することもできる。それぞれの3つの領域は互いに化学的に他と異なること、例えば、任意の領域は、2以上の正孔輸送領域、電子輸送領域又は発光領域としては機能しないことを注意すべきである。
上記で定義された「正孔輸送領域」、「電子輸送領域」及び「発光領域」の用語は、下記の概要に示されるように互いに相対的に定義される。
【0023】
「正孔輸送領域」は、発光領域又は電子輸送領域のHOMOレベルより低いHOMOレベルを有する領域を意味する。
【0024】
「電子輸送領域」は、発光領域又は正孔輸送領域のLUMOレベルより高く、発光領域のLUMOレベルと本発明のポリマーが使用されるカソード電極の仕事関数の間に位置するLUMOレベルを有する領域を意味する。典型的には、カソードの仕事関数は約2.5eVである。
【0025】
「発光領域」は、正孔輸送領域又は電子輸送領域よりHOMO−LUMOレベルのバンドギャップが小さい領域を意味する。
【0026】
ポリマーのHOMO及びLUMOレベル並びにバンドギャップは、対応するホモポリマー又は循環のボルタンメトリーによる1:1コポリマーのHOMOレベルを測定することによって正確に評価することができる。領域のLUMOレベルもこの方法で測定することができる。代替的に、HOMOレベル及びHOMO−LUMOバンドギャップを測定することによって計算される。さらに、発光領域は、ホモポリマーの冷光放射波長又は各領域に対応する1:1のコポリマーから容易に確定することができよう。
【0027】
代替的に、全ての正孔輸送、電子輸送、又は発光は、上記で与えられた対応する定義を
充足する領域から生じる。しかしながら、正孔、電子輸送又は発光の相対的に少ない量は、対応する定義を充足しない領域のためによる。例えば、その領域のHOMO−LUMOバンドギャップが発光領域のHOMO−LUMOバンドギャップより大きくなければ、正孔又は電子輸送領域から相対的に少ない量の発光が観察することができよう。典型的な冷光放射性装置は、4.8eVの仕事関数を有するアノードを有する。したがって、正孔輸送領域のHOMOレベルは、好ましくは約4.8−5.5eVである。同様に、典型的な装置のカソードは、約3eVの仕事関数を有するであろう。したがって、電子輸送領域のLUMOレベルは、好ましくは約3−3.5eVである。
【0028】
例えば、WO99/54385に開示されているように正孔輸送領域として好ましい材料はトリアリールアミンである。
【0029】
電子輸送領域として好ましい材料は2,7結合フルオレン繰返し単位及びこれらの共役された鎖である。特に、好ましいポリフルオレンは、例えば、EP0842208に開示される2,7−結合−9,9−ジアルキルフルオレンである。例えば、EP0707020に開示されるスピロビフルオレン及びインデンフルオレンである。これに加えて、
式(I)の繰返し単位及びこれらの共役鎖は、電子輸送領域としてだけでなく本発明のガラス転移温度の増加をはかる機能としても働く。さらに電子輸送領域として好ましい材料は、1,4結合フェニル繰返し単位及びこれらの共役された鎖である。
発光領域として好ましい材料は、WO00/55927及びWO00/46321に開示される発光繰返し単位である。特に好ましい青色発光繰返し単位は、選択的に置換された次式(IV)の繰返し単位を有する。
【化14】

ここで、各R’は水素又は溶解性基から独立して選択される。特に好ましい溶解性基は、選択的に置換されたアルキル又はアルコキシである。最も好ましいものは、R’がn−ブチルのものである。
【0030】
それぞれの正孔輸送領域、電子輸送領域及び発光領域は、例えば、WO00/55927に開示されるポリマー骨格の一部として提供される。代替的に、1又は2以上の前記領域は、例えば、WO01/49769及びWO02/26859に開示されるポリマー骨格から分岐したものでありえる。ここで、正孔輸送領域は、電子輸送骨格から分岐したものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
次に、本発明のモノマーの製造、ポリマーの製造及び装置の製造についての実施例を示す。
モノマーの実施例
本発明のモノマーは、下記の図にしたがって製造される。
【化15】

【0032】
モノマーの実施例M1:2,7−ジブロモ−9,9−ジフェニルフルオレン
【化16】

3lのフランジフラスコ中に、フルオレン(100.006g,0.555mol)、フォスフォラス5酸化物(110.148g,0.776mol)及びトリメチルフォスフェート(1200ml)が混合された。機械的攪拌をしながら、トリメチルフォスフェート中のブロミン(63ml,1.23mol)溶液がすばやく加えられた。透明溶液は120℃で22時間加熱された。混合物は室温まで冷却され、3lの水中に注ぎ込まれた。ナトリウムチオ硫酸塩(50.045g)が加えられると、混合物は黄色に変色した。攪拌は1時間継続され、黄色の固体はろ過された。この固体はメタノール中で加熱され、臭素化合物が除去され、176.183gが得られた(HPLCにより98%に純化、94%生成)。
1H NMR (CDCl3) 7.73 (2H, d, J 2.0), 7.61 (2H, dd, J 7.6, 2.0), 7.36 (2H, d, J 8.0); 13C NMR (CDCl3) 142.3, 137.5, 135.3, 127.9, 123.3, 121.8, 109.8。
【0033】
4,4’−ジブロモ−2−カルボン酸−1,1’−ビフェニル
【化17】

2lのフランジフラスコ中に、2,7−ジブロモフルオレン(120.526g,0.356mol)、水酸化カリウム(微粒子化、168.327g、3.000mol)及びトルエン(600ml)が置かれた。この混合物は120℃で1時間加熱され、室温まで冷却された。激しく攪拌しながら、固体を溶解するために水(〜2l)が加えられた。緑色の水溶層が除去され、黄色のトルエン層が水で2回洗浄された。結合された水溶層は濃塩酸で酸化され、沈殿固形物はろ過、乾燥され、トルエンから再結晶して100.547gの粗悪な白い結晶(79%生成)が得られた。
1H NMR ((CD3)2CO) 8.00 (1H, d, J 2.0), 7.77 (1H, dd, J 8.0, 2.4), 7.57 (2H, d, J
8.0), 7.34 (1H, d, J 8.4), 7.29 (2H, d, J 8.8) ; 13C NMR ((CD3)2CO) 167.1, 140.4, 139.8, 134.2, 133.5, 132.8, 132.7, 131.2, 130.6, 121.4, 121.1。
【0034】
4,4’−ジブロモ−2−カルボン酸−1,1’−ビフェニルのメチルエステル
【化18】

【0035】
4,4−ジブロモ−2−カルボン酸
4,4−ジブロモ−2−カルボン酸ビフェニル(171.14g,0.481mol)がメタノール(700ml)及び硫酸(15ml)中に浮遊させ、80℃で21時間過熱した。溶媒は除去され、油はエチルアセテート中に溶解した。この溶媒は2Nの水酸化ナトリウム、水、飽和塩化ナトリウムで洗浄され、硫酸マグネシウム上で乾燥され、ろ過され、蒸発してオレンジ色の油が得られた。この油は、熱いメタノールで処理され、エステルを冷却して、沈殿化させろ過した。母液は蒸発され、固体は再結晶化されて追加の生成物が得られた。エステルはGCMSにより100%純化され、123.27g(69%)の生成物が得られた。
1H NMR (CDCl3) 7.99 (1H, d, J 2.0), 7.64 (1H, dd, J 8.0, 1.6), 7.51 (2H, d, J 8.4), 7.19 (1H, d, J 8.8), 7.13 (2H, d, J 8.8) , 3.67 (3H, s) ; 13C NMR (CDCl3) 167.1, 140.3, 139.1, 134.4, 132.9, 132.1, 132.0, 131.3, 129.8, 121.9, 121.5, 52.3;
GCMS: M+ = 370。
【0036】
4,4’−ジブロモ−2−ジフェニルアルコール−1,1’−ビフェニル
【化19】

4,4−ジブロモ−2−メチルエステル−ビフェニル(24.114g,65.1mmol)を乾燥ジエチルエーテル(120ml)中に溶解し、イソプロパノール/ドライアイス浴を用いてマイナス60℃まで冷却された。フェニルリチウム(シクロヘキサン−エーテル中1.8M、91ml)が滴下された。反応は4時間後に完結した。水が添加され(70ml)、その後水溶層がジエチルエーテルで洗浄された。結合された有機相が塩化ナトリウムで洗浄され、硫酸マグネシウム上で乾燥され、ろ過され、蒸発されて黄色の粉が得られた。イソプロパノールからの再結晶により19gの白い固体(59%生成)が得られた。
GC-MS (m/z, relative intensity %) 494 (M+, 100);1H NMR (CDCl3) 7.43 (1H, dd, J 8.4, 2.4), 7.28 (6H, m), 7.23 (2H, d, J 8.0), 7.11 (4H, m), 6.99 (1H, d, J 2.4), 6.94 (1H, d, J 8.4), 6.61 (2H, d, J 8.4) ; 13C NMR (CDCl3) 147.5, 146.7, 140.3, 139.3, 134.0, 133.0, 131.2, 131.1, 130.3, 128.2, 128.1, 127.8, 121.8, 121.3, 83.2。
【0037】
2,7−ジブロモ−9,9−ジフェニルフルオレン
【化20】

アルコール(69.169g,140mmol)及び氷酢酸(450ml)が攪拌され、還元流まで加熱され、その後濃塩酸(0.5ml)が滴下された。添加物が完了したとき、混合物は1時間加熱され、その後冷却された。反応混合物は水(500ml)中に注がれ、その後固体はろ過された。白い固体は、n−ブチルアセテートから3回再結晶化され、望むべき生成物20.03gが得られた(HPLCにより99.59%、30%生成)。
1H NMR (CDCl3), δ/ppm: 7.58 (2H, d, J 7.6), 7.49 (2H, d, 1.2), 7.48 (2H, dd, 1.6), 7.25 (6H, m), 7.14 (4H, m).
13C NMR (CDCl3), δ/ppm: 153.2, 144.6, 138.3, 131.1, 129.6, 128.7, 128.2, 127.4,
122.0, 121.7, 65.8。
【0038】
モノマー例M2−M4
下記の表に記載されるAr基を有するモノマーが、上記で概略記載したスキーム及び一般的実験プロセスにしたがって製造された。表に示されるAr基に対応するアリールリチウム化合物は対応するアリール臭化物から製造された。
【0039】
【表1】

【0040】
ポリマー実施例P1
本発明の青色電子冷光放射性ポリマーが、9,9−ジ−n−オクチルフルオレン−2,7−ジ(エチレンボロネート)(0.5価)、2,7−ジブロモ−9,9−ジフェニルフルオレン−2,7−ジ(エチレニルボロネート)(0.5価)、2,7−ジブロモ−9,9−ジフェニルフルオレン(0.3価)、N,N−ジ(4−ブロモフェニル)−セク−ブチルフェニルアミン(0.1価)及びN,N’−ジ(4−ブロモフェニル)−N,N’−ジ(4−n−ブチルフェニル)−1,4−ジアミノベンゼン(0.1価)の反応によるWO00/53656のプロセスにしたがって製造された。
【化21】

【0041】
ポリマー実施例P2−P4
ポリマーにおける9,9−ジオクチルフルオレン繰返し単位及び9,9−ジフェニルフルオレン繰返し単位の割合が下記のように変動する点を除いて、ポリマーが実施例P1の方法に従って製造された。
【0042】
【表2】

【0043】
ポリマー実施例P5
2,7−ジブロモ−9,9−ジ(ビフェニル)フルオレン(モノマー実施例M3;0.3価)が2,7−ジブロモ−9,9−ジフェニルフルオレンに代えて使用される点を除いて、実施例P1の方法にしたがってポリマーが製造された。
【0044】
ポリマー比較例
WO00/55927に開示されるように、実施例1のポリマーにしたがって青色発光ポリマーが製造された。ここで、全ての9,9−ジフェニルフルオレン繰返し単位が9,9−ジ−n−オクチルフルオレン繰返し単位に代えられた。これは、2,7−ジブロモ−9,9−ジフェニルフルオレンに代えて2,7−ジブロモ−9,9−ジ−n−オクチルフルオレンの0.3かが使用されるポリマーの実施例1の製造方法に従って行われた。
【0045】
装置の実施例
ガラス基板上の一定の厚さのITO基板に、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンサルファネート(BaytronPTMからBayerTMとして有効な)が270ミクロンの厚さまでスピンコーティングにより導入された。この上に、本発明のポリマーがスピンコーティングにより厚さ50nmまで積層された。リチウムフルオライド(厚さ4nm)の層が、ポリマー上に気相蒸着し、その上にカルシウムのカソード(厚さ50nm)が再度気相蒸着された。装置は、金属缶を用いてカプセル化された。
【0046】
装置の比較例
上記の比較例のポリマーを本発明のポリマーに代える以外は上記装置の実施例の製造概要に沿って、装置が製造された。
結果
上記のポリマーのガラス転移温度が下記の表に示される。
【0047】
【表3】

この表に見られるように、本発明のポリマーは従来の比較例のポリマーよりTg値がかなり高く、これにより大きい熱的安定性が得られる。Tgは、ポリマーに組み込まれる繰返し単位(I)の量に伴い増加する。さらに、式(I)の異なる繰返し単位はこれがTgに影響する範囲で異なる。したがって、ポリマーP4(30%のジ(ビフェニル)フルオレン繰返し単位)は、P1(30%のジフェニルフルオレン繰返し単位)に比較して高いTg値を有する。
【0048】
熱的安定性の増加に加えて、ポリマーP1−P4は約3000時間又はそれ以上の寿命を有する。ここで、ポリマーの比較例は約1000時間の寿命を有する。
本発明は特定の模範的な実施例によって説明できるが、特許請求の範囲で規定する発明の思想及び範囲を超えない限り、本明細書で開示する特徴の多様な変形、代替及び/又は組合せは当業者にとって明らかであると言えるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】典型的な有機発光装置(OLED)の断面図を示す。
【符号の説明】
【0050】
1 基板
2 カソード
3 電子冷光放射材料
4 アノード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(III)のモノマー混合物の重合を含むポリマーのガラス転移温度の制御方法。
【化3】

ここで、各Arは、同じか異なる選択的に置換されたアリール基を有し、少なくとも2つの置換される又は置換されないアリール又はヘテロアリール基である場合を除く。また、各Pは重合のための配位基であり、製造プロセスは、事前に決められたガラス転移温度に達するに必要な量の式(III)のモノマーを重合するステップからなる。
【請求項2】
各Arが次式(II)を有する選択的に置換される残部からなる基からなる請求項1に記載の制御方法。
【化4】

ここで、n=1、2又は3であり、Rは選択的に置換されたアルキル又はアルコキシからなる基又は水素である。
【請求項3】
モノマー混合物の重合において、式(III)のモノマーを50mol%以下含有するモノマー混合物を使用する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
モノマー混合物の重合において、式(III)のモノマーを10−40mol%以下含有するモノマー混合物を使用する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
各Pは、(a)ボロン酸基、ボロンエステル基及びボラン基、並びに、(b)ハロゲン化物配位基から構成される群から独立して選択される請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
式(III)の第1モノマーと、第1モノマーと同じか異なり得る第2モノマーとを、金属配位錯体触媒の存在下でモノマーの重合によりポリマーを形成する条件下において反応させる工程を含む請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
(a)ボロン酸基、ボロンエステル基及びボラン基から選択される少なくとも2つのボロン誘導配位基を有する芳香族モノマー、並びに、式(III)のモノマーからなる少なくとも1つの第1又は第2芳香族モノマー、又は(b)1つの反応ハロゲン化物配位基、並びに、ボロン酸基、ボロンエステル基及びボラン基から選ばれる1つのボロン誘導配位基を有する式(III)の方法族モノマー、からなる反応混合物を重合する工程、ここで、反応混合物は、芳香族モノマーの重合の触媒に適した量の触媒、ボロン誘導配位基を−BX3アニオン基の転換するために十分な量の塩基、ここでXはF及びOHからなる群から独立して選択される、からなる反応混合物を重合する工程を含むポリマーのガラス転移温度の制御方法。
【請求項8】
塩基が有機塩基である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ポリマーが冷光放射性ポリマーである請求項1ないし8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
次式(I)で表される選択的に置換された繰返し単位がガラス転移温度増大要素として使用されているポリマー。
【化5】

ここで、各Arは、同じか異なる選択的に置換されたアリール基を有し、少なくとも2つの置換される又は置換されないアリール又はヘテロアリール基である場合を除く。
【請求項11】
電子冷光放射性ポリマーである請求項10に記載のポリマー。



【図1】
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【公開番号】特開2007−119785(P2007−119785A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−296171(P2006−296171)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【分割の表示】特願2002−589592(P2002−589592)の分割
【原出願日】平成14年5月10日(2002.5.10)
【出願人】(597063048)ケンブリッジ ディスプレイ テクノロジー リミテッド (152)
【Fターム(参考)】