説明

ポリマーの分解方法及び分解装置

【課題】 比較的低温であっても、より高い効率でポリマーの分解が可能な新規分解方法及び分解装置の提供。
【解決手段】 ポリマーを加熱して熱分解する方法において、波長領域2〜14μm、25℃における全放射率(ε)が0.8以上である赤外線放射物体を配することを特徴とする、ポリマー分解方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーの分解方法及び分解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の廃プラスチック材の分解処理は、フタル酸ナトリウムやステアリン酸ソーダ等の分解促進剤を添加した状況下で、500〜800℃という高温の加熱炉内で廃プラスチック材を加熱することにより実施する。ここで、当該加熱により、廃プラスチック材のポリマー分子が切断される結果、液化した油脂成分が生成する。そして、当該油脂成分を分別精製し、再利用が可能なナフサ等の油脂を得ることができる。
【0003】
ここで、上記のような500〜800℃という高温で廃プラスチック材を分解処理した場合、その温度保持のための燃料費・電熱費のコストが嵩むという問題がある。このことから、本発明者らは、加熱炉内に投入した廃プラスチック材を250〜350℃程度の低い温度で燃焼させずに蒸し焼き状態に加熱して、プラスチック材を組成する油脂成分に分解し、発生した気化ガスを取り出して冷却装置で冷却して油脂類に還元する手段を特許文献1で提案している。詳細には、加熱炉内に長石・雲母を敷き詰めることを通じ、当該油化処理の前記低温での高効率化を達成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−168806
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記のような500〜800℃という高温で廃プラスチック材を分解処理した場合、その温度保持のための燃料費・電熱費のコストが嵩むという問題がある。そこで、本発明は、比較的低温であっても、より高い効率でポリマーの分解が可能な新規分解方法及び分解装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、ポリマーの熱分解反応において、波長領域2〜14μmにおける全放射率(ε)が0.8以上である赤外線放射物体を配することによって、比較的低温の条件であっても、ポリマーを分解することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明(1)は、ポリマーを加熱して熱分解する方法において、
波長領域2〜14μm、25℃における全放射率(ε)が0.8以上である赤外線放射物体を配することを特徴とする、ポリマー分解方法である。
【0008】
本発明(2)は、前記赤外線放射物体の粒径が63〜850μmであることを特徴とする、前記発明(1)のポリマー分解方法である。
【0009】
本発明(3)は、前記赤外線放射物体と前記ポリマーを隔離して熱分解を行う、前記発明(1)又は(2)のポリマー分解方法である。
【0010】
本発明(4)は、前記赤外線放射物体と前記ポリマーの間に開口率の高い部材を介在させる、前記発明(3)のポリマー分解方法である。
【0011】
本発明(5)は、ポリマーを加熱して熱分解する加熱炉を有するポリマー分解装置において、前記加熱炉内に波長領域2〜14μmにおける全放射率(ε)が0.8以上である赤外線放射物体が配されていることを特徴とするポリマー分解装置である。
【0012】
本発明(6)が、前記赤外線放射物体が
前記加熱炉内の内壁に適用されていることを特徴とする、前記発明(5)のポリマー分解装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、比較的低温条件であってもポリマーをより短時間でかつ高効率で分解することができるという効果を奏する。したがって、廃プラスチック等の廃棄物処理を比較的低温の条件の下で行なうことが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本分解装置(連続式)全体を処理方向(図中の左から右方向)に対して横から眺めた図(正面図)である。
【図2】図2は、本分解装置(連続式)全体を処理方向の上流側から眺めた図(図1の左側面図に相当)である。
【図3】図3は、本分解装置(連続式)全体を処理方向の下流側から眺めた図(図1の右側面図に相当)である。
【図4】図4は、本分解装置(連続式)全体を処理方向(図中の左から右方向)に対して横から眺めた図(断面図)である。
【図5】図5は、本分解装置(連続式)の加熱炉の縦断面図である。
【図6】図6は、本分解装置(連続式)の加熱炉の横断面図である。
【図7】図7は、本分解装置(バッチ式)全体の斜視図である。
【図8】図8は、本分解装置(バッチ式)の加熱炉の内部構造を示した図である。
【図9】図9は、本分解装置(バッチ式)の冷却手段の構造を示した図である。
【図10】図10は、本分解装置(バッチ式)における、加熱炉の上面で冷却されて液化した場合の、当該液体が液溜め部に導かれるまでの様子を示した図である。
【図11】図11は、プラスチック分解試験において用いた装置の概略断面図である。
【図12】図12は、プラスチック分解試験の結果を示す図である。
【図13】図13は、粒径の異なる赤外線放射物体を用いてプラスチックの分解反応を行なった結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るポリマー分解方法は、ポリマーを加熱して熱分解する方法において、波長領域2〜14μm、300℃における全放射率(ε)が0.8以上である赤外線放射物体を配することを特徴とする。すなわち当該波長領域における全放射率(ε)が、0.8以上である赤外線放射物体をポリマーの熱分解の系内に配することによって、低温条件であっても、ポリマーが分解するという効果を奏する。その推定理由としては、前記性質を有する赤外線放射物体がポリマーの熱分解において存在することにより、すくなくとも波長領域2〜14μの赤外線が放射されるため、ポリマーの分子振動が増幅させることになる。したがって、当該性質を有する赤外線放射物体をポリマーの熱分解の系に配することによって、低温条件であっても分解を進行させることができると考えられる。
【0016】
ここで、300℃における赤外線放射物体の全放射率(ε)は、0.85以上であることがより好適であり、0.9以上であることが更に好適である。また、200℃における赤外線放射物体の全放射率(ε)も、0.8以上であることが好適であり、0.85以上であることがより好適であり、0.9以上であることが更に好適である。さらに、25℃における赤外線放射物体の全放射率(ε)が、0.8以上であることが好適であり、0.85以上であることがより好適である。ここで、全放射率(ε)は、実施例に示されている方法により測定できる(参考文献:泉由貴子著JIAR Report 2002年第13巻第5号第13項)。
【0017】
また、本発明において使用される赤外線放射物体は、粒子状であることが好適である。また、当該赤外線放射物体は、粒径が63〜850μmであることが好適であり、149〜850μmであることが好適である。当該範囲内で特に分解の活性が高く、63μより小さい場合及び850μmよりも大きい場合には、分解活性が低下する。
【0018】
本発明に係るポリマー分解方法においては、前記赤外線放射物体とポリマーを接触させて又は近隣に離隔して配して熱を与えることにより、ポリマーが分解する。ここで、ポリマーの分解を行なう温度条件は、110〜310℃が好適であり、130〜300℃がより好適であり、230〜300℃が更に好適である。
【0019】
また、赤外線放射物体とポリマーとを離隔する場合には、当該間に配する部材は、金属などの材料は不向きで有り、開孔率の高い部材を配することが好適である。板状の金属材料を配すると赤外線を遮断してしまうためである。すなわち、金属材料を配する場合には、パンチングメタル又は金属金網などの開孔率の高い部材を配することが好適である。また開孔率は、50%以上であることが好適である。
【0020】
ここで、本発明においてポリマーとは、炭素−炭素結合を有する有機材料であれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)等のオレフィン樹脂や、塩化ビニール樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0021】
次に、図1〜図6を参照しながら、本最良形態に係る分解装置(連続式)を説明する。前述のように、本分解装置は、ポリマーを加熱して分解する加熱炉内に赤外線放射物体が配されていることを特徴とする。そこで、以下では、当該分解装置の全体構造をまず説明し、特徴部分に係る構成要素(加熱炉)を次に説明した後、残る構成要素について説明する。尚、本最良形態では、加熱炉の内壁に「赤外線放射物体含有層」が適用されたもの(連続式)を例示するが、加熱炉内に赤外線放射物体が存在する限りどのような形態でもよく、例えば、赤外線放射物体(又はそれを含有するセラミック体等)が加熱炉の炉床{又は炉床上等に配置した板(例えば鉄板)上}に敷き詰められている形態や、ポリマー中に赤外線放射物体を混在させる形態であってもよい。
【0022】
そこで、図面を参照しながら、本分解装置(連続式)の全体構造を詳述する。まず、図1は、本分解装置全体を処理方向(図中の左から右方向)に対して横から眺めた図(正面図)である。また、図2は、本分解装置全体を処理方向の上流側から眺めた図(図1の左側面図に相当)である。更に、図3は、本分解装置全体を処理方向の下流側から眺めた図(図1の右側面図に相当)である。これらの図に示されるように、本分解装置は、処理方向に沿って円筒状を成している加熱炉1と、加熱炉1内にポリマーを供給するフィーダー2と、加熱炉1内にナトリウム系の触媒を供給する触媒フィーダー3と、加熱炉1内に投入したポリマーから加熱処理により分解して生成されてくる気化ガスを抽き出し後述する冷却装置5に導く気化ガス取出管4と、気化ガス取出管4で抽き出される気化ガスを冷却処理する冷却装置5と、加熱炉1内に生成される主として炭素からなる炭化残渣を排出する(受け入れる)残渣排出装置6と、から構成されている。そして、これら各構成要素は、機枠F内に収納・固定されている。
【0023】
次に、本発明の特徴的な構成要素である、加熱炉1の構造について詳述する。まず、図4〜図6を参照しながら、本発明の特徴部分である、加熱炉1内面に形成された「赤外線放射物体含有層」を詳述する。当該加熱炉1のベース構造は、処理方向に沿って円筒状に形成された周壁10と、当該周壁10を前後(軸方向の両端側)から閉塞する側壁11とから構築されている。そして、この円筒横倒し状の加熱炉1の内面(周壁10+側壁11・11とから構成される内壁)の全体又は一部に赤外線放射物体含有層mが形成されている。ここで、当該赤外線放射物体含有層mは、赤外線放射物体を含有する限り特に限定されず、赤外線放射物体そのものの成形体(例えばパネル)、赤外線放射物体の粉砕物を含有するセラミック体{例えば、赤外線放射物体の粉砕物・耐火セメント・水を混和して焼成したセラミック体(例えばパネル)}、赤外線放射物体の粉砕物を含有するキャスタブルを例示することができる。より具体的には、パネル状に成形した天然赤外線放射物体のセラミックパネルを加熱炉の内壁面に貼り付ける態様、粉砕した天然赤外線放射物体を、耐火セメント及び水と練和して、モルタル状に加熱炉の内壁面に塗着する態様(当該塗着体は、加熱炉の稼動による加熱で焼成されて、セラミック体である赤外線放射物体含有層を形成させる)、を挙げることができる。ここで、内面のどの位置に赤外線放射物体含有層を形成させてもよいが、内壁面に形成させた方が、炉床に形成させるよりも有効である。また、本最良形態では、円筒状の加熱炉を例示したが、他の形状の場合には、当該形状に合わせて赤外線放射物体含有層の設置位置を適宜決定する。例えば、上面側が平らで周壁が側断面においてU字状をなすU字管(その一端側にポリマーの供給口が設置されており、他端側に排出口が設置されている)の加熱炉の場合には、上面側、周壁、供給口側壁及び排出口側壁の全部又は一部に赤外線放射物体含有層を形成する。
【0024】
ここで、後述する実施例の結果からも明らかなように、赤外線放射物体含有層は、大きさが小石程度の粗い粉砕片として赤外線放射物体を含有する態様が好適である。当該態様の場合、赤外線放射物体が板状や粉状で存在するときと比較し、時間当たりの採取油量が遥かに高いことに加え、焼成したセラミックパネルにクラックが発生することが抑制される。尚、当該粉砕片を内壁(特に重力の影響を受ける壁面)に設ける場合には、耐火セメント等を用いて壁面に粉砕片を固定する。また、炉床等の重力の影響を受けない位置に配する場合には、敷き詰める等、単に粉砕片を配する形態であってもよい。
【0025】
次に、加熱炉1の内部構造に関する他の構成要素について説明する。尚、前記の赤外線放射物体含有層以外の構成要素は、本発明の特徴ではないので、以下で説明する要素の一部の構成が異なる形態や存在しない形態、他の構成要素が付加された形態についても、前述の本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲内である。
【0026】
まず、図1〜図3に示すように、当該加熱炉1は、サポート1aにより機枠Fに固定されている。そして、回転可能に機軸Fに軸架された回転軸12が、当該加熱炉1の内腔の軸芯部位に左右に貫通するように配設されている。更に、図4に示すように、この回転軸12の周面には、螺旋状のアジテータ13が取り付けられている。そして、当該アジテータ13は、回転軸12の一方に取り付けられたモーターM1の作動により当該回転軸12が駆動回転することで回動する。
【0027】
次に、当該加熱炉1の外側には、加熱炉1内の温度を所定温度に保持するために、電熱ヒーターaが加熱炉1の外周面(筒状をなす周壁10)に巻き付けられていると共に、当該巻き付けられたヒーターaの外周には、断熱材bが多層状に更に巻き付けられている。尚、本最良形態においては、炉内温度の制御を容易かつ確実なものとする観点から当該加熱手段を採用したが、当該油化装置内を所定(または所定範囲)の処理温度に設定可能である限り、どのような形態であってもよい(例えば、実施例では燃焼装置を使用)。
【0028】
次に、フィーダー2は、ポリマーを投入するホッパー20と、ホッパー20の下口21に接続する搬送筒22と、当該搬送筒22内に軸架されたスクリュー状のコンベア23と、当該コンベア23を駆動するモーターM2とから構成される。更に、この搬送筒22の先端は、加熱炉1の一端側(図4の左側)に設けられた供給口15と接続した、ポリマーを導入する接続筒24と接続している。そして、ホッパー20内に投入されたポリマーは、モーターM2の駆動によるコンベア23の作動により、搬送筒22の先端側(図4の右側)に向けて圧送される。そして、搬送筒22の先端側に圧送されたポリマーは、当該先端側に接続された接続筒24を通り、供給口15から加熱炉1内に導入される。ここで、フィーダー2には、加熱炉1内に供給したポリマーの熱分解で生成する気化ガスの圧力が逆流して噴出するのを阻止するため、回転バルブ状の繰出機構25が、ポリマーを圧送するコンベア23の終端側に設置されている。尚、フィーダー2の材質や構造等は、水洗後の濡れた状態にあるポリマーを加熱炉1内に供給可能なよう、適宜決定される。
【0029】
次に、触媒フィーダー3は、触媒を投入するホッパー30と、当該ホッパー30内に投入された触媒から所定量の触媒を分けて供給する定量繰出機構31と、所定量の触媒を誘導する搬送筒32とから構成される。ここで、当該搬送筒32の下端は、前述のフィーダー2の搬送筒22の搬送方向における中間部位に接続している。この結果、フィーダー2からのポリマーと所定量の触媒が混和した状態で、これらが加熱炉1に送られるよう機能する。
【0030】
次に、気化ガス取出管4は、図4に示すように、加熱炉1の中央よりやや後ろに配置されている。また、図5に示すように、気化ガス取出管4は、加熱炉1の内腔に連通する接続口40を介して、加熱炉1の軸方向に対して加熱炉1の左右上部に配置されていると共に、周壁10の軸芯位置を通る上下の中心線Xに対して略30度程度の角度で配置されている。この結果、加熱炉1の炉内の上部に集積した気化ガス(ポリマーから生成する気化ガス)や水蒸気等が、後述する冷却装置5に効率的に導かれる。
【0031】
次に、冷却装置5は、気密に形成した冷却ボックス50と、それの内部に配設したラジエータ状の熱交換器51と、熱交換器51内を循環させる、冷凍機で冷却した冷却水を貯留する冷却水タンク52と、当該タンク52内の冷却水を循環させるポンプP1とから構成される。ここで、当該冷却ボックス50の内部で前記熱交換器51の下方には、冷却により凝縮して油化した油脂成分を受ける受器53が、トレー状に配設されている。そして、当該受器53の底部には、貯留された油脂成分を排出させる油排出管54が、バルブV1を介して接続し、その先に回収タンクt1が更に接続している。尚、この受器53内には、加熱炉1内に供給した水から生成して気化ガスと共に気化ガス取出管4を経て冷却ボックス50内に導かれる水蒸気から復水した水(塩化ビニールの分解とナトリウム系触媒との反応で生じたNaCl)も、前述の油化した油脂成分と一緒に受器53内に貯留される。そして、当該水と油脂成分とは二層分離し、当該水は下層に滞留する。そして、当該塩水は、受器53の底面側にバルブV2を介して接続した水排水管55を通り、その下端側に接続した塩水タンクt2に貯留される。尚、装置内で二層分離せず外に混合液を出して二層分離してもよい。
【0032】
残渣排出装置6は、加熱炉1の他端側の端部に設けた残渣排出口14に接続した排出管61と、前記残渣排出口14を外部に対し密閉した状態とし、そこに送られてきた残渣を強制的に送り出すよう機能するバルブシャッター状の残渣取出機構60と、当該送り出し方向の下流側に接続した残渣取出ピン62とから構成される。ここで、残渣取出機構60は、モーターM3(図示せず)の駆動により、残渣を順次残渣取出ピン62内に送り込むよう機能する。また、残渣取出ピン62は、その外周がウオータージャケットよりなる冷却器63により囲われている。そして、前述の冷却タンク52内の冷却水が、ポンプP2により冷却器63内を循環する。その結果、残渣取出62内に回収される炭化残渣が冷却されると共に気密に保持されるので、当該残渣が空気と接触した状態での熱との相乗作用による粉塵爆発が抑制される。更に、この残渣を回収する残渣取出ピン62は、冷却された残渣を排出するための取出口64がその底部に設けられている。そして、この取出口64にも、残渣取出ピン62からの噴出を阻止するシャッター65が開閉自在に設置されている。更に、当該シャッター65が開放した際、冷却された残渣を外部に取り出すためのコンベア66が、前記取出口64に設けられている。
【0033】
次に、本最良形態に係る分解装置(連続式)の使用方法(一例)について説明する。まず、ホッパー20には、裁断されたポリマーを投入する。この際、水洗いしたポリマーを水切りも乾燥も行わない濡れた状態で投入してもよい。また、触媒フィーダー3には、ポリマーに含まれる塩化ビニールを分解した際に生じる塩素化合物を分解するためのナトリウム系触媒(水酸化ナトリウム、重炭酸ナトリウム等)を投入する。そして、これらホッパー内のポリマーとナトリウム系触媒とが導入される加熱炉の温度として、特には限定されない(好適には上限温度を500℃以下に設定)が、例えば150〜400℃に設定する。
【0034】
次に、図7〜図10を参照しながら、別の最良形態に係る分解装置(バッチ式)を説明する。尚、連続式の場合と同一である箇所は説明を省略する。まず、図7に示すように、本分解装置は、概略、方形状の加熱炉101と、加熱炉内を加熱するためのバーナー102と、バーナー102に接続されており加熱炉101の内部を貫く熱伝達配管103と、熱伝達配管103を加熱炉101に導入するまで当該管の冷却を防止するための保温装置104と、加熱炉101内で発生したガスを冷却して液化するための冷却手段(これは後述する)に送られる冷却水が貯められた、ウオーターポンプと接続した冷却水タンク106と、加熱炉101の真下に設けられた液溜め部107と、加熱炉101の温度制御等を行う操作装置109と、これらを収納するフレーム110とから構成される。尚、図示するように、液溜め部107を冷却ガスで冷却するための冷凍機108を更に備えるように構成してもよい。
【0035】
次に、図8を参照しながら、本最良形態に係る加熱炉101の構造を説明する。当該加熱炉101内には、図示するように、熱伝達配管103がU字状に配されている。ここで、当該熱伝達配管103内には、バーナー102からの燃焼空気が導入されている。そして、燃焼空気の熱が熱伝達配管103を介して加熱炉101内に伝達される結果、加熱炉101内が加熱される。尚、加熱炉101内の分解温度の調整は、バーナー102での燃焼を調節することにより実行する。
【0036】
次に、図9を参照しながら、本最良形態に係る冷却手段の構造を説明する。ここで、図9は、加熱炉101の部分断面図である。当該加熱炉101の上面及び両側面には、内部に冷却水配管112aが埋め込まれている冷却器112が取り付けられている。そして、この加熱炉101は、当該冷却器112近傍で二重構造を採っている。具体的には、加熱炉101内には、発生した分解ガスが導入される空間(分解ガス導入空間101b)を構築するための内部壁101aが上及び左右に設置されている。そして、左右の内部壁101aに関しては、加熱炉101内で発生した気体を前記気体導入空間101bに導く導入スリット101a−1が設けられている。このような構成下、図示するように、発生した分解ガスGは導入スリット101a−1を介して分解ガス導入空間101bに導かれ、そこで分解ガスGは冷却器112と接触して冷却され液化する。そして、図中の矢印で示すように、当該液体Lは自重で下方に落下し、前述の液溜め部107内に蓄えられる。尚、液溜め部107にも同様の冷却器が備えられている。このため、分解ガスが液化せずに液溜め部107まで導かれた場合には、同様のメカニズムでの冷却が当該液溜め部107でも行われる。尚、一例として、図10に、加熱炉101の上面で冷却されて液化した場合の、当該液体が液溜め部107に導かれるまでの様子を示す。
【0037】
次に、本最良形態に係る分解装置(バッチ式)の使用方法(一例)について説明する。まず、加熱炉101内の所定位置(例えば熱伝達配管103の上に鉄板を配置)に、裁断されたポリマーを搭載する。この際、水洗いしたポリマーを水切りも乾燥も行わない濡れた状態で投入してもよい。また、このポリマーには、ポリマーに含まれる塩化ビニールを分解した際に生じる塩素化合物を分解するためのナトリウム系触媒(水酸化ナトリウム、重炭酸ナトリウム等)を混合する。そして、これらポリマーとナトリウム系触媒とが導入される加熱炉の温度として、特には限定されない(好適には上限温度を500℃以下に設定)が、例えば、120〜350℃の範囲に設定する。
【実施例】
【0038】
(赤外領域の分光放射率)
以下の試料について、赤外領域の分光放射率を測定した。
御影石:愛媛県大島産御影石
銅板:日鉱金属(株)製
ステンレス板:新日本製鉄(株)製
【0039】
赤外領域の分光放射率測定は、FI−IRにより各試料の反射率を測定し、分光放射率を算出した。結果を以下の表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
尚、分析条件の詳細に関して、以下の表2に示した。また、解析析方法に関しては、以下の表3に示した。
【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
(プラスチック分解試験)
本発明に係る材料を用いてプラスチックの分解試験を行なった。ここでは、マントルヒーター内に500cc用ビーカーを入れ、その中に上記の御影石を入れ、更に、13メッシュのアルミニウム金網からなる仕切り板によって仕切った内部にポリスチレン(PS)5gを載せたアルミ皿を設置した(図11)。マントルヒーターの電流を固定して温度約230〜250℃にて加熱した。加熱開始から1時間毎にポリスチレンの重量減少率を測定した。結果、銅板やステンレス板を用いた場合には、ポリスチレンの分解はほとんど進行しなかったが、御影石を用いた場合には、特に、顕著に分解が進行した。結果を図12に示した。
【0045】
また、前記試験において、仕切り版として使用したアルミニウム金網を、アルミニウム板又はアルミニウムパンチメタルに変更した以外は同様の条件で、プラスチックの分解試験を行なった。結果6時間後におけるプラスチックの分解率は、アルミニウム板を用いた場合には、約7%の重量減少率であった。これに対して、アルミニウムパンチメタルを使用した場合には、約43%の重量減少率であった。アルミニウム金網を使用した場合には、約89%の重量減少率を観測している。これらの結果を踏まえれば、仕切り版の開孔率が高ければ高いほどプラスチックの分解が促進されやすくなることがわかる。
【0046】
アルミニウム皿の中にポリスチレン5gはかり取り、当該更に、微粉末、63μm以下、63〜149μm、149μm〜850μm、850μm〜3mm、3〜10mm、10〜20mmの粒径の異なる御影石の粉体を混合した。当該アルミニウム皿をホットプレート上で230℃にて1時間加熱して、プラスチックの分解反応を行なった。すると、粒径が63〜850μmの範囲内で高い活性を示し、特に、149〜850μmの範囲で最も高い活性を示した(図13)。ここで、粒径は、ふるいのメッシュサイズで選別した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーを加熱して熱分解する方法において、
波長領域2〜14μm、25℃における全放射率(ε)が0.8以上である赤外線放射物体を配することを特徴とする、ポリマー分解方法。
【請求項2】
前記赤外線放射物体の粒径が63〜850μmであることを特徴とする、請求項1記載のポリマー分解方法。
【請求項3】
前記赤外線放射物体と前記ポリマーを隔離して熱分解を行う、請求項1又は2記載のポリマー分解方法。
【請求項4】
前記赤外線放射物体と前記ポリマーの間に開口率の高い部材を介在させる、請求項3記載のポリマー分解方法。
【請求項5】
ポリマーを加熱して熱分解する加熱炉を有するポリマー分解装置において、前記加熱炉内に波長領域2〜14μmにおける全放射率(ε)が0.8以上である赤外線放射物体が配されていることを特徴とするポリマー分解装置。
【請求項6】
前記赤外線放射物体が前記加熱炉内の内壁に適用されていることを特徴とする、請求項5記載のポリマー分解装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−132372(P2011−132372A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293222(P2009−293222)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(302048038)
【Fターム(参考)】