説明

ポリマーを基にした持続放出性装置

本発明は、生物学的に活性のあるポリペプチドの持続性放出の組成物、および生物学的に活性のあるポリペプチドの持続性放出のために該組成物を形成し使用する方法に関する。本発明の持続性放出組成物は、生体適合性ポリマー中に分散した生物学的に活性のあるペプチドおよび糖を有する生体適合性ポリマーを含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
本明細書中で集合的にポリペプチドとして称される、多くのタンパク質及びペプチドはin vivoで生物学的活性を示し、医薬として有用である。多くの病気または状態が持続レベルの医薬投与を必要とし、最も効果的な予防及び/又は治療効果を提供する。持続レベルはしばしば、頻繁な皮下注射による生物学的活性ポリペプチドの投与で達成され、これがしばしば医薬及び不十分な患者のコンプライアンスのレベルの変動を起こす。
【0002】
もう1つの手段として、医薬を内包するポリマー等の、生物分解性材料の使用が持続送達系として使用され得る。例えば、微粒子または微小担体の形態における生物分解性ポリマーの使用は、医薬の放出を制御するポリマー固有の生物分解性を用いることで持続放出性の医薬を提供し得、そこでより一定した、持続レベルの医薬および改善した患者のコンプライアンスを提供する。
【0003】
しかしながら、これらの持続放出性装置はしばしば、医薬の高い初期バースト及びその後の最小放出を示し得、これが医薬の治療領域(window)及び/又は医薬の不十分な生物学的利用能の範囲を超えて血清薬剤レベルとなる。加えて、ポリマーの存在、生理的温度及び持続放出性組成物に対する体の応答が医薬を変更させ得(例えば、分解、凝集)、そこで医薬の所望の放出プロフィールを妨げる。
【0004】
さらに、持続放出性組成物を形成するために用いる方法が、医薬の不安定性及び加工工程の分解効果による医薬の活性の損失となり得る。分解効果は、医薬がポリペプチドである場合に、特に問題である。
【0005】
それゆえに、持続した方法で生物学的活性ポリペプチドの投与手段のための必要性があり、ここで送達されるポリペプチドの量は、治療レベルであり、所望の放出時間のための活性及び有効性を保持する。これらの問題に取り組む多くの研究開発がなされているが、新規解決方法を必要とする。
【0006】
(発明の要約)
本発明は優れた放出プロフィール(約3以下のCaveに対するCmaxの比率で特徴付けられるもの等)が、製造方法におけるポリマーに対するシリコーン油の比率を最適化することによって少数の成分を含む製剤で達成され得、そこで低細孔容積を達成するという発見に関する。本発明は生物学的活性ポリぺプチド等の薬剤の持続放出性のための組成物、並びに生物学的活性ポリペプチドの持続放出性のための、かかる組成物を形成及び使用する方法に関する。本発明の持続放出性組成物は、生体適合性ポリマー、生物学的活性ポリペプチド等の薬剤、及び糖を含む。ポリペプチド及び糖は好ましくはポリマー中で分散される。ポリペプチド及び糖は別々にまたは好ましくは一緒に分散され得る。持続放出性組成物は所望かつ一定の放出プロフィールを提供する。特定の態様において、プロフィールは約3以下のCaveに対するCmaxの比率を有するものとして特徴づけられる。好ましい態様において、生物学的活性ポリペプチドは、GLP-1、GLP-2、エキセンディン(exendin)-3、エキセンディン-4またはそのアナログ、誘導体若しくはそのアゴニスト、好ましくはエキセンディン-4等の、抗糖尿病性または糖調節性ポリペプチドである。糖は好ましくは、スクロース、マンニトールまたはその組み合わせである。好ましい組み合わせとしては、エキセンディン-4並びにスクロース及び/またはマンニトールが挙げられる。
【0007】
さらにあるいは、持続放出性組成物は生体適合性ポリマー、生物学的活性ポリペプチド等の薬剤、及び糖を含み、ここで該組成物は、約0.1mL/g以下の全細孔容積を有する。特定の態様において、全細孔容積は水銀圧入法(mercury intrusion porosimetry)を用いて測定される。
【0008】
さらにあるいは、持続放出性組成物は、本質的にまたは択一的に、生体適合性ポリマー、約3%w/wの濃度でのエキセンディン-4及び約2%w/wの濃度でのスクロースからなる。生体適合性ポリマーは、好ましくはポリラクチドコグリコリドポリマーである。
【0009】
本発明はまた、ポリペプチド等の生物学的活性剤の持続放出性用組成物を形成する方法を含み、これは水、水溶性ポリペプチド等の薬剤、及び糖を含む水相を、生体適合性ポリマー及びポリマー用溶媒を含む油相と混合させることで混合物を形成する工程;例えば混合物を超音波処理又は均質化することで油中水型エマルジョンを形成する工程;混合物にシリコーン油を添加して、初期の(embryonic)微粒子を形成する工程;初期の微粒子をクエンチ(quench)溶媒に移送して微粒子を硬化する工程;硬化微粒子を回収する工程;並びに硬化微粒子を乾燥する工程を含む。特定の態様において、シリコーン油は、約1.5:1のポリマー溶媒に対するシリコーン油の比率を達成するのに十分な量で添加される。さらにあるいは、ポリマーは約10%w/v以下で油相に存在する。
【0010】
薬剤又はポリペプチド、例えばエキセンディン-4は、本明細書中に記載の組成物において、最終組成物の全重量を元に約0.01%〜約10%w/wの濃度で存在し得る。また、糖、例えばスクロースは、組成物の最終重量の約0.01%〜約5%w/wの濃度で存在し得る。
【0011】
本発明の組成物は、注射、移植(例えば、皮下、筋肉内、腹腔内、頭蓋内及び皮内)、粘膜への投与(例えば、鼻腔内、膣内、肺内若しくは座薬の手段によって)、又はインサイチュ送達(例えば、浣腸若しくはエーロゾール噴霧)によって、ヒト、又は他の動物に投与され得る。
【0012】
持続放出性組成物は、組成物中にホルモン、特に抗糖尿病性又は糖調節性(glucoregulatory)ペプチド、例えば、GLP-1、GLP-2、エキセンディン-3、エキセンディン-4若しくはそのアゴニスト、アナログ若しくは誘導体を組み込む場合、組成物は治療上有効量で投与され、真性糖尿病、耐糖能異常(IGT)、肥満、心臓血管(CV)疾患又は上記のポリペプチド若しくはその誘導体、アナログあるいはアゴニストの1つで治療され得る他の疾患のいずれかで苦しむ患者を治療する。
【0013】
本発明の持続放出性組成物における糖の使用が、取り込まれる生物学的活性ポリペプチド、例えば、抗糖尿病性又は糖調節性ペプチドの生物学的利用能を改善し、優れた放出プロフィールを維持しながら、不安定性及び/又は持続放出性組成物を製剤する際に含まれるか、あるいは用いられるポリペプチドと他の成分との間での化学相互作用による活性の損失を最小限にする。
【0014】
本明細書中に記載の持続放出性製剤の利点としては、反復投与の必要性を除去することによる増強した患者のコンプライアンス及び容認、所望の放出プロフィールを提供することで血中レベルの活性剤濃度における変動を除去することによる増強した治療効果、並びにこれらの変動を低減することによる治療効果の提供に必要な生物学的活性ポリペプチドの総量を低減する可能性が挙げられる。
【0015】
(発明の詳細な説明)
本発明は、生物学的活性ポリペプチドの持続放出性用組成物、並びに生物学的活性ポリペプチドの持続放出性のための、前記組成物を形成及び使用する方法に関する。本発明の持続放出性組成物は、生体適合性ポリマー、及び生物学的活性ポリペプチド等の薬剤、及び糖を含む。薬剤及び糖は生体適合性ポリマーにおいて別々に、又は好ましくは一緒に分散される。特定の態様において、持続放出性組成物は、約3以下の平均血清濃度(Cave)に対する最大血清濃度(Cmax)の比率を有する放出プロフィールによって特徴付けられる。本明細書中で使用される場合、用語a又はanは1以上を指す。
【0016】
薬剤
好ましい態様において、薬剤は、GLP-1、GLP-2、エキセンディン-3、エキセンディン-4若しくはそのアナログ、誘導体若しくはアゴニストを含む、抗糖尿病性又は糖調節性ポリペプチド等の生物学的活性ポリペプチドである。最も具体的には、ポリペプチドはエキセンディン-4である。しかし、他の薬剤は本明細書中に記載の発見を利用し得る。
【0017】
本明細書中に使用される生物学的活性ポリペプチドは、集合的に生物学的活性タンパク質とペプチドとその薬学的に許容され得る塩を指し、これらは、インビボで放出される時、これらの分子、生物学的活性の形態で存在し、そこでインビボで所望の治療、予防及び/又は診断特性を有する。典型的に、ポリペプチドは、500〜200,000ダルトンの間での分子量を有する。
【0018】
適切な生物学的活性ポリペプチドとしては、限定されないが、グルカゴン、GLP-1、GLP-2又は他のGLPアナログ、グルカゴン様ペプチドの誘導体又はアゴニスト等のグルカゴン様ペプチド、エキセンディン-3及びエキセンディン-4、その誘導体、アゴニスト及びアナログ等のエキセンディン、血管活性腸管ペプチド(VIP)、免疫グロブリン、抗体、サイトカイン(例えば、リンホカイン、モノカイン、ケモカイン)、インターロイキン、マクロファージ活性化因子、インターフェロン、エリトロポイエチン、ヌクレアーゼ、壊死腫瘍因子、コロニー刺激因子(例えば、G-CSF)、インシュリン、酵素(例えば、スーパーオキシドジスムターゼ、プラスミノゲンアクチベーター等)、腫瘍抑制因子、血液タンパク質、ホルモン及びホルモンアナログ及びアゴニスト(例えば、卵胞刺激ホルモン、成長ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、及び黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH))、ワクチン(例えば、腫瘤、細菌及びウイルス抗原)、抗原、血液凝固因子、成長因子(NGF及びEGF)、ガストリン、GRH、ディフェンシン、エンケファリン、ブラジキニン、カルシトニン等の抗細菌ペプチド、並びにあらゆる前記のムテイン、アナログ、切断、欠失及び置換バリアント及び薬学的に許容され得る塩が挙げられる。
【0019】
エキセンディン-4は39アミノ酸ポリペプチドである。エキセンディン-4のアミノ酸配列は、1995年6月13日電子ニュース(Eng)に発行された米国特許第5,424,286号に見出され得、その全内容は参照によって本明細書中に援用される。AC2993とエキセナチドは、用語エキセンディン-4と同一である。エキセンディン-4は、ヒト及び動物において、低い血液グルコース濃度(低血糖症)の期間ではなく、上昇した血液グルコース濃度の存在下でインシュリンの分泌を刺激することが示されている。グルカゴン分泌を抑制し、ゆっくりと胃の中を空にし、摂食及び体重並びに他の機能に影響することも示されている。したがって、エキセンディン-4並びにそのアナログ及びアゴニストは真性糖尿病、IGT、肥満等の治療に有用であり得る。
【0020】
生物学的活性ポリペプチドの量は、持続放出性組成物の重合マトリックス内に含まれるが、治療上、診断上、又は予防上有効量であり、体重、治療される状態、使用されるポリマーの型、及びポリマーからの放出速度等の因子を考慮する当業者によって決定され得る。
【0021】
持続放出性組成物は、約0.01%(w/w)〜約50%(w/w)の薬剤、例えば、生物学的活性ポリペプチド(エキセンディン-4等)を一般に含む(組成物の全重量)。例えば、生物学的活性ポリペプチド(エキセンディン-4等)の量は、組成物の全重量の約0.1%(w/w)〜約30%(w/w)であり得る。ポリペプチドの量は所望の効果、薬剤の有効性、計画された放出レベル、及びポリペプチドが放出される時間帯に依存して変化する。好ましくは、充填の範囲は約0.1%(w/w)〜約10%(w/w)、例えば、0.5%(w/w)〜約5%(w/w)である。優れた放出プロフィールは薬剤、例えばエキセンディン-4が約3%w/wで充填される場合に得られた。
【0022】

本明細書中に定義される場合、糖は単糖類、二糖類又はオリゴ糖(約3〜約10の単糖)又はその誘導体である。例えば、単糖類の糖アルコールは糖の本定義に含まれる適切な誘導体である。したがって、例えば、単糖類マンノース由来である糖アルコールのマンニトールは、本明細書中に使用される場合、糖の定義に含まれる。
【0023】
適切な単糖類としては、限定されないが、グルコース、フルクトース及びマンノースが挙げられる。本明細書中にさらに定義される場合、二糖類は加水分解で2分子の単糖類を生じる化合物である。適切な二糖類としては、限定されないが、スクロース、ラクトース及びトレハロースが挙げられる。適切なオリゴ糖としては、限定されないが、ラフィノース及びアカルボースが挙げられる。
【0024】
持続放出性組成物に存在する糖の量は、持続放出性組成物の全重量の約0.01%(w/w)〜約10%(w/w)等、約0.1%(w/w)〜約5%(w/w)等の約0.01%(w/w)〜約50%(w/w)の範囲であり得る。優れた放出プロフィールが約2%(w/w)スクロースを取り込むことで得られた。
【0025】
また、持続放出性組成物に存在する糖の量は、薬剤または生物学的活性ポリペプチドとの重量比率を表し得る。例えば、ポリペプチド及び糖は約10:1〜約1:10重量:重量の比率で存在し得る。特に好ましい態様において、糖(例えば、スクロース)に対するポリペプチド(例えば、エキセンディン-4)の比率は、約3:2(w/w)である。
【0026】
2つ以上の糖の組み合わせも、使用され得る。糖の量は、組み合わせが使用される場合、上記の範囲と同様である。
【0027】
ポリペプチドがエキセンディン-4である場合、糖は好ましくはスクロース、マンニトールまたはその組み合わせである。
【0028】
ポリマー
本発明の持続放出性組成物を形成する適切なポリマーは、生物分解性若しくは非生物分解性ポリマー又はその混合物若しくはコポリマーのいずれかであり得る生体適合性ポリマーである。ポリマーが生体適合性であるのは、ポリマー及び任意のポリマーの分解産物が被移植者に非毒性であり、注射部位で実質的な免疫学的反応等の、被移植体に重大な有毒又は有害作用をも有さない場合である。
【0029】
本明細書中に定義される場合、生物分解性は、組成物がインビボで分解又は腐食され、より小さな単位又は化学種を形成することを意味する。分解は、例えば、酵素、化学及び物理的方法で生じ得る。適切な生体適合性、生物分解性ポリマーとしては、例えば、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリカーボネート、ポリエステルアミド、ポリアンヒドリド、ポリ(アミノ酸)、ポリオルトエステル、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(アルキレンアルキレート)、コポリマー又はポリエチレングリコール及びポリオルトエステル、生物分解性ポリウレタン、その混合物、並びにそのコポリマーが挙げられる。
【0030】
適切な生体適合性、非生物分解性ポリマーとしては、ポリアクリレート、酢酸エチレンビニルと他のアシル置換酢酸セルロースのポリマー、非分解性ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、フッ化ポリビニル(polyvinyl flouride)、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホネートポリオレフィン、ポリエチレンオキシド、その混合物、及びそのコポリマーからなる群より選択される非生物分解性ポリマーが挙げられる。
【0031】
本発明に使用されるポリマーの許容し得る分子量は、所望のポリマー分解速度、機械強度、末端基化学等の物理性質及び溶媒中のポリマーの解離速度等の因子を考慮して当業者によって決定され得る。典型的に、許容し得る分子量の範囲は約2,000ダルトン〜約2,000,000ダルトンである。好ましい態様において、ポリマーは、生物分解性ポリマー又はコポリマーである。より好ましい態様において、ポリマーは、約1:1のラクチド:グリコリドの比率及び約10,000ダルトン〜約90,000ダルトンの分子量を有するポリ(ラクチド−コーグリコリド)(以後、「PLG」)である。さらにより好ましい態様において、本発明で使用されるPLGの分子量は、約50,000ダルトン〜約60,000ダルトンのような約30,000ダルトン〜約70,000ダルトンの分子量を有する。
【0032】
PLGは、酸をエステル化することで得られ得るように酸末端基又はブロック化末端基を有し得る。優れた結果が、酸末端基を有するPLGで得られた。
【0033】
ポリマーはまた、ポリマー固有の粘度を元にして選択され得る。適切な固有粘度としては、約0.2〜0.6dL/gのような、より好ましくは約0.3〜0.5dL/gの間での約0.06〜1.0dL/gが挙げられる。3〜4週間で分解する好ましいポリマーが選択される。適切なポリマーは5050DL3A又は5050DL4Aとして販売されているもののような、商標名Medisorb(登録商標)の元でAlkermes, Inc.から購入され得る。Resomer(登録商標)RG503及び503Hのような、Boehringer Ingelheim Resomer(登録商標)PLGもまた、使用され得る。
【0034】
本発明の持続放出性組成物は、フィルム、ペレット、シリンダー、ディスク又は微粒子等の多くの形状に形成され得る。微粒子は、本明細書中に定義される場合、約1ミリメートル未満の直径及び微粒子中に懸濁されるか、あるいは溶解される生物学的活性ポリペプチドを有するポリマー成分を含む。微粒子は球状、非球状又は不規則な形状を有し得る。典型的に、微粒子は、注射に適切なサイズである。微粒子の典型的なサイズの範囲は、1000ミクロン以下である。特定の態様において、微粒子は、直径で約1〜約180ミクロンの範囲である。
【0035】
添加賦形剤
当該分野で周知であるように、添加賦形剤が請求された発明の製剤に添加され得ることが可能である一方で、本発明の驚くべき発見は、優れた放出プロフィールが本明細書中に記載の単純な製剤で達成され得るということである。かかる添加賦形剤が薬剤の放出速度を増大又は低下し得る。実質的に放出速度を増大し得る成分としては、ポリマー分解を容易にする細孔形成薬剤及び賦形剤が挙げられる。例えば、ポリマー加水分解の速度は、非中性pHで増大する。それゆえに、無機酸若しくは無機塩基等の酸性賦形剤又は塩基性賦形剤がポリマー溶液に添加され、微粒子を形成するために使用され、ポリマー腐食速度を変更し得る。実質的に放出速度を低下し得る成分としては、薬剤の水溶性を低下させる賦形剤が挙げられる。
【0036】
記載された持続放出性製剤の好ましい態様は、本質的に生体適合性ポリマー、薬剤及び糖からなる。「本質的に〜からなる」とは、製剤からの活性剤の放出速度を実質的に増大する成分の非存在を意味する。薬剤の放出速度を実質的に増大又は低下させるとは期待されない添加賦形剤の例としては、添加活性剤及び不活性成分が挙げられる。
【0037】
さらに別の態様において、製剤は生体適合性ポリマー、薬剤及び糖からなる。「〜からなる」とは、該方法から、上記以外の構成物又は成分及び出発物質、溶媒等の残留レベルの非存在を意味する。
【0038】
酢酸、クエン酸、リン酸等の緩衝剤又は他の生物学的適合性バッファーが水相で必要がなく、薬剤、例えば、エキセンディン-4を用いて良〜優の生物学的利用能を有する持続放出性製剤を達成するという驚くべき発見がされている。塩を塩析することが薬剤、例えば、エキセンディン-4のバーストを制御するために不必要であるという驚くべき発見もあった。したがって、本発明の組成物はまた、本明細書中に記載のように、バッファー及び/又は塩の塩析の実質的な(又は完全な)非存在下での組成物を含む。
【0039】
さらにあるいは、本発明の持続放出性組成物は、低細孔度を有する。かかる態様において、持続放出性組成物は、生体適合性ポリマー、生物学的活性ポリペプチド及び糖を含み、ここで該組成物は、約0.1mL/g以下の全細孔容積を有する。特定の態様において、全細孔容積は、例えば、下記により詳細に記載されるように、水銀圧入細孔度計を用いて測定される。
【0040】
投与
本発明の組成物を、当該分野にて一般に公知の方法にしたがって投与し得る。本発明の組成物を患者(例えば、薬剤を必要とするヒト)または他の動物に、注射、移植(例えば、皮下、筋肉内、腹膜内、頭蓋内、および皮内)、粘膜への投与(例えば、鼻腔内、膣内、肺内または坐剤による)、またはインサイチュ送達(例えば、浣腸剤もしくはエアゾール噴霧)によって投与し得る。
【0041】
持続放出性組成物を、所望の時間で所望の治療レベルを達する任意の用量スケジュールを用いて投与し得る。例えば、持続放出性組成物を投与し、送達された薬物のレベルが基準値に戻るまで患者をモニターし得る。基準値に戻った後、持続放出性組成物をまた投与し得る。あるいは、持続放出性組成物の続く投与が患者の基準レベル達成の前に起こり得る。
【0042】
例えば、持続放出性組成物がその中にホルモン、特に抗糖尿病薬もしくは糖調節性ペプチド、例えばGLP-1、GLP-2、エキセンディン-3、エキセンディン-4またはそのアゴニスト、アナログもしくは誘導体が組み込まれる場合、真性糖尿病、IGT、肥満症、心臓血管(CV)障害または上記ポリペプチドまたはその誘導体、アナログもしくはアゴニストの1つによって処置され得る任意の他の障害を患っている患者を処置するために、該組成物を治療有効量で投与する。
【0043】
本発明の持続放出性組成物の投与によって処置し得る他の状態として、インシュリンを内部に含む持続放出性組成物で処置され得るI型およびII型糖尿病が挙げられる。さらに、組み込まれるポリペプチドがFSHまたはそのアナログである場合、持続放出性組成物は不妊症を処置するために使用され得る。他の例において、組み込まれるポリペプチドがβインターフェロンまたはそのムテインである場合、持続放出性組成物は多発性硬化症を処置するために使用され得る。十分に理解され得るように、持続放出性組成物は所定のポリペプチドの投与に応答する疾患を処置するために使用され得る。
【0044】
さらなる態様において、本発明の持続放出性組成物をコルチコステロイドと共に同時投与し得る。本発明の持続放出性組成物とコルチコステロイドとの同時投与は、持続放出性組成物の生物学的活性ポリペプチドの生物学的利用能をさらに増大させ得る持続放出性組成物と組み合わせてのコルチコステロイドの同時投与は、Daschらによる「持続放出性組成物の放出プロフィールを変化させる方法」(Method of Modifying the Release Profile of Sustained Release Compositions)と題された、米国特許出願第60/419,430号に詳細に記載され、その全内容はここに参照によって援用される。
【0045】
本明細書に規定されるように、コルチコステロイドとは糖質コルチコイドともよばれるステロイド系の抗炎症性剤を言う。
【0046】
好適なコルチコステロイドとしては、限定されないが、21-アセトキシプレグネノロン、アルクロメタゾン、アルゲストン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、クロロプレドニゾン、クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチコステロン、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコート、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、ジスフロラゾン(Disflorasone)、ジフルコルトロン、ジフルプレドネート、エノキソロン、フルアザコルト、フルクロロニド(Flucloronide)、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド(Flucinolone Acetonide)、フルオシノニド、フルオコルチンブチル(Fluocortin Butyl)、フルオコルトロン(Flucortolone)、フルオロメトロン、酢酸フルペロロン、酢酸フルプレドニデン(Fluprednidene Acetate)、フルプレドニソロン、フルランドレノリド、プロピオン酸フルチカゾン、ホルモコルタール(Formocortal)、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタゾール、ハロメタゾン(Halometasone)、酢酸ハロプレドン、ヒドロコルタメート、ヒドロコルチゾン、ロテプレドノールエタボネート、マジプレドン(Mazipredone)、メドリゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、フランカルボン酸モメタゾン(Mometasone Furoate)、パラメタゾン、プレドニカルベート(Prednicarbate)、プレドニゾロン、プレドニゾロン25-ジエチルアミノ-アセテート、リン酸プレドニゾロンナトリウム、プレドニゾン、プレドニバル(Prednival)、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトール(Tixocortol)、トリアムシノロン(全形態)、例えばトリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンアセトニド21-オイン酸メチルエステル(Triamcinolone Acetonide 21-oic acid methyl ester)、トリアムシノロンベネトニド(Benetonide)、トリアムシノロンヘキサアセトニド、トリアムシノロンジアセテート、その薬学的に許容され得る混合物およびその塩ならびに任意の他の誘導体およびそのアナログが挙げられる。
【0047】
1つの態様において、コルチコステロイドは、内部に含まれた生体適合性ポリマーおよび生物学的活性ポリペプチド剤を含む持続放出性組成物中に同時に組み込まれ得る(co-incorporate)。
【0048】
別の態様において、コルチコステロイドは第二の生体適合性ポリマー中に別々に組み込まれ得る。第二の生体適合性ポリマーは、内部に含まれた生物学的活性ポリペプチド剤を有する第一の生体適合性ポリマーと同じであるか、または異なり得る。
【0049】
さらに別の態様において、コルチコステロイドは非カプセル化の状態で存在し得るが、持続放出性組成物と混合され得る。例えばコルチコステロイドは、持続放出性組成物を送達するために使用されるビヒクル中に可溶化し得る。あるいはコルチコステロイドは、適切なビヒクル中に懸濁された固形物として存在し得る。さらにコルチコステロイドは、持続放出性組成物と混合される粉末として存在し得る。
【0050】
コルチコステロイドは、持続放出性組成物からの生物学的活性ポリペプチドの生物学的利用能を増大させるのに十分な量で存在することを理解されたい。増大した生物学的利用能とは、特定の製剤の投与の2日後に開始し放出サイクルの終わりに終了する期間にわたって、コルチコステロイドの非存在下での投与と比較してコルチコステロイドと共に同時投与した場合、持続放出性組成物からの生物学的活性ポリペプチドの生物学的利用能の増大を言う。
【0051】
本明細書中で使用する場合、患者とは薬剤または治療、病気の予防もしくは診断方法を必要とするヒト等のヒトを言う。
【0052】
本明細書中に規定されるように、生物学的活性ポリペプチドの持続放出性とは、本発明の持続放出性組成物からのポリペプチドの放出であって、ポリペプチド溶液の直接投与後にポリペプチドの生物学的に有意な量が得られ得る間よりも長い期間にわたって起こる放出である。持続放出性とは、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、または少なくとも約4週間等の、少なくとも約1週間の期間にわたっておこる放出であることが好ましい。持続放出性は相対的に一定かまたは変化する放出速度を有する、継続的または非継続的な放出であり得る。放出の継続性および放出のレベルは、使用されるポリマー組成物の型(例えばモノマー比率、分子量、ブロック組成(block composition)、およびポリマーの組み合わせの変化)、ポリペプチド負荷(polypeptide loading)、および/または所望の効果を作り出すための賦形剤の選択によって影響され得る。
【0053】
本明細書で使用される場合、治療有効量、予防有効量または診断的有効量とは、投与後の所望の生物学的反応を導くのに必要な持続放出性組成物の量である。
【0054】
Cmaxとは本明細書で使用される場合、モニターされる放出期間に起こる薬物の最高血清中濃度である。
【0055】
Caveとは本明細書で使用される場合、放出プロフィールの曲線下面積(AUC)を放出時間で割ることによって導かれる薬物の平均血清中濃度である。
【0056】
Caveに対するCmaxの比率は約3以下が好ましい。このプロフィールは上記したもの等、抗糖尿病薬または糖調節性ペプチドの特に望ましいものである。約3以下の比率によって治療領域のCaveが提供され、同時に(while)高比率から生じ得る有害な薬物の副作用を避けることが可能である。
【0057】
生物学的利用能とは、その用語が本明細書中で使用される場合、循環系に到達する治療物の量をいう。生物学的利用能は、投与後に開始し予め決められた時点で終了する期間中、特定のポリペプチドの放出プロフィールに対する計算された曲線下面積(AUC)として規定され得る。当該分野で理解されるように、放出プロフィールは予め決められた時点(X軸)での被験体の生物学的活性剤の血清レベル(Y軸)をグラフ化することによってもたらされる。生物学的利用能はしばしば生物学的利用率(% bioavailability)という用語でよばれ、それは持続放出性組成物の投与後の特定のポリペプチドに対して達成された生物学的利用能を、同用量の薬物の静脈内投与後の特定のポリペプチドに対して達成された生物学的利用能で割り、100を掛けたものである。
【0058】
放出プロフィールの変化は、生物学的活性ポリペプチド薬剤の存在に対し患者の血清を適切に薬物動態学的にモニターすることによって確認され得る。例えば当該分野で周知であるように、特異的抗体基準の試験(例えばELISAおよびIRMA)は患者の血清中のある生物学的に活性なポリペプチド薬剤の濃度を測定するために使用され得る。かかる試験の例は、本明細書中にエキセンディン-4に対して記載される。
【0059】
患者に対する薬剤の治療効果をモニターするための患者の薬力学的なモニタリングは、放出された薬剤の生物学的活性の保持を確認するために使用され得る。薬力学的効果のモニタリング方法は、幅広く利用可能な技術を使用して投与される生物学的活性ポリペプチド剤に基づいて選択され得る。
【0060】
製造
いくつかの方法が、本発明の持続放出性組成物(ポリマー/生物学的活性ポリペプチドマトリクス)、本明細書中に記載されるように特に低多孔性を有する組成物を形成し得ることによって知られている。微粒子形成のいくつかの方法に対する詳細な手順が実施例に示される。好ましい態様において、生物学的活性ポリペプチドの持続放出性のための組成物を形成する本発明の方法は、水、水溶性ペプチド等の薬剤および糖を含む水相と、生体適合性ポリマーおよびポリマー溶媒を含む油相とを合わせることによって混合物を形成すること;油中水滴型エマルジョンを形成すること;コアセルベーション剤、例えばシリコーン油、植物油または鉱油を混合物に添加して初期微粒子を形成すること;初期微粒子をクエンチ溶媒へ移し微粒子を硬化させること;硬化した微粒子を回収すること;ならびに硬化した微粒子を乾燥させることを含む。このプロセスは本明細書中にて水中油中油滴プロセス(W/O/O)と一般によぶ。
【0061】
好ましくは、ポリマーは約3% w/w〜約25% w/w、好ましくは約5% w/w〜約10% w/w等の約4% w/w〜約15% w/w範囲の濃度で油相に存在し得る。卓越した結果は、油相において6% w/w濃度のPLGを使用して本明細書中で得られた。
【0062】
ポリマーは一般にポリマー溶媒と合わされる。ポリマーが本明細書中で好ましいもの等のPLGである場合、ポリマーがPLGのための溶媒に添加される。かかる溶媒は当該分野において周知である。好ましい溶媒は塩化メチレンである。
【0063】
薬剤および糖が水相に、好ましくは同一の水相に添加される。薬剤の濃度は好ましくは10〜100mg/g、好ましくは50〜100mg/gの間である。糖の濃度は好ましくは10〜50mg/gおよび30〜50mg/gである。
【0064】
次いで2つの相を混合してエマルジョンを形成する。内部エマルジョンの小滴の大きさが約1ミクロン未満、好ましくは約0.7ミクロン未満、より好ましくは約0.4ミクロン等の0.5ミクロン未満であるようにエマルジョンが形成されることが好ましい。ソニケーター(sonicator)およびホモジナイザーは、かかるエマルジョンを形成するために使用され得る。
【0065】
コアセルベーション剤とは、本発明で使用される場合、ポリマー溶液(ポリマーおよび溶媒)が容易に可溶化せず、それによりポリマー溶液と共に明瞭な相を形成する任意の油をいう。本発明に使用するための好適なコアセルベーション剤としては、限定されないが、シリコーン油、植物油および鉱油が挙げられる。特定の態様において、コアセルベーション剤はシリコーン油であり、ポリマー溶媒に対するシリコーン油の比率が約0.75:1〜約2:1を達成するのに十分な量で添加される。特定の態様において、ポリマーに対するシリコーン油の比率は約1:1〜約1.5:1である。好ましい態様において、ポリマーに対するシリコーン油の比率は約1.5:1である。
【0066】
ポリマー非溶媒を含むクエンチに、得られる混合物を添加する。ポリマー非溶媒は当該分野で一般に周知である。特に好ましいクエンチは、ヘプタン/エタノール溶媒系を含む。
【0067】
固形薬物はまた、上記したプロセスの修正型を使用してカプセル化し得る。この修正プロセスは固相/油中/油滴(solid/oil/oil)(S/O/O)としてよばれ得る。
【0068】
例えば固形エキセンディン-4を、6%PLG含有塩化メチレン中に懸濁し氷上にて約4分超音波処理した。続くプロセスは、W/O/O方法に対して相似的な様式で行われた。
【0069】
次に、本発明を以下の実施例によってさらに具体的に記載する。
【0070】
典型的な実施例
微粒子調製物I
本明細書中に記載される持続放出性組成物を相分離プロセスによって調製した。1kgバッチサイズのエキセンディン-4およびスクロースを含有する微粒子に対する一般的なプロセスを以下に記載する。
【0071】
A.内部油中水滴型エマルジョンの形成
ホモジナイザーを用いて油中水滴型エマルジョンを生成した。好適なホモジナイザーとしては、インライン(in-line)MegatronホモジナイザーMT-V 3-65 F/FF/FF、Kinematica AG、Switzerlandが挙げられる。エキセンディン-4およびスクロース等の賦形剤を水に溶解させることによってエマルジョンの水相を調製した。得られる溶液における薬物の濃度は約50mg/g〜約100mg/gであり得る。例えば薬物がエキセンディン-4である場合、溶液中の薬物の濃度は水600gにつき約30g〜約60gであり得る。特定の態様において、50gのエキセンディン-4および20gのスクロースを600gの灌注(irrigation)用水(WFI)に溶解した。上記で指定した量は、使用される多くのエキセンディン-4に対して特異的なペプチド含量(content)の強度を補正する(compensate)ための調整をしていない、名目上の負荷を表す。PLGAポリマー(例えば、930gの精製された50:50のDL4A PLGA(Alkermes,Inc.)を塩化メチレン(14.6kgまたは6% w/w)中に溶解させることによって、エマルジョンの油相を調製した。
【0072】
次いで水相を油性相に添加し、約3分間でオーバーヘッドミキサー(overhead mixer)により粗大エマルジョンを形成した。次いで粗大エマルジョンを室温にておよそ10,000rpmで均質化した。これにより、1ミクロン未満の内部エマルジョンの小滴の大きさを得た。任意の好適な手段を使用して内部エマルジョンの形成が達成され得ることを理解されたい。エマルジョン形成の好適な手段として、限定されないが、上記されるような均質化および超音波処理が挙げられる。
【0073】
B.コアセルベート形成
次いで、約5分間にわたりシリコーン油(21.8kgのジメチコーン(Dimethicone)、NF、350cs)を内部エマルジョンに添加することでコアセルベーション工程を行った。これはシリコーン油と塩化メチレン、1.5:1の比率に相当する。ポリマー溶液からの塩化メチレンはシリコーン油中に分配され、エキセンディン-4を含有する水相の周りにポリマーを沈殿させ始め、微小カプセル化をもたらす。かくして形成された初期ミクロスフェアは軟らかく硬化を必要とする。しばしば、初期ミクロスフェアは短時間、例えばミクロスフェア硬化工程を進める前の約1分〜約5分放置させ得る。
【0074】
C.ミクロスフェア硬化および洗浄処理
次いで初期ミクロスフェアを、即座にヘプタン/エタノール溶媒混合物中に移した。必要とされるヘプタン/エタノール混合物の容量は、ミクロスフェアのバッチサイズに基づいて決定され得、典型的に塩化メチレンとヘプタン/エタノール溶媒の16:1の比率となる。本実施例において、3℃の冷却された攪拌水槽に約210kgのヘプタンおよび23kgのエタノールを使用した。この溶媒混合物は、ミクロスフェアからのさらなる塩化メチレンを抽出することによってミクロスフェアを硬化させた。この硬化工程はまたクエンチングともよばれ得る。3℃にて1時間クエンチした後、溶媒混合物はデカントされて、新鮮なヘプタン(13kg)を3℃にて添加し1時間保持してミクロスフェア表面上の残留シリコーン油、エタノールおよび塩化メチレンを洗浄するか、または回収工程に対して直接的に汲み出される(pump)かのいずれかである。
【0075】
D.ミクロスフェアの乾燥および回収
クエンチまたはデカント/洗浄工程の終わりに、ミクロスフェアを12インチのSweco Pharmasep Filter/Dryer Model PH12Y6に移し、回収した。濾過器/乾燥器としては20ミクロン多層式回収ふるいを使用し、回収および乾燥の間ふるいを振動させるモーターに接続される。最大ライン(maximum line)移動を確保しかつ任意の過剰なシリコーン油を除去するため、ヘプタン(3℃にて6Kg)を用いる最終洗浄処理を行った。次いで、以下のスケジュール:3℃にて6時間;41℃までの勾配で6時間;および41℃にて84時間に従って、調節された速度での窒素ガスの一定パージを伴う真空状態でミクロスフェアを乾燥させた。
【0076】
乾燥完了後回収容器中にミクロスフェアを入れ、150μmのふるいにかけ、約−20℃にて充填するまで保管した。
【0077】
本明細書中で調製された全ての微粒子製剤に対して、ポリペプチド、例えば調製された製剤中に存在するエキセンディン-4および賦形剤の量は、持続放出性組成物の最終重量に基づいてa%(w/w)として表される。記載がない限り、%(w/w)は名目上の割合である。
【0078】
微粒子調製物II
A.内部油中水滴型エマルジョンの形成
ソニケーターを用いて油中水滴型エマルジョンを生成した。好適なソニケーターとしては、モデルCV33プローブヘッドを有するVibracell VCX 750、Sonics and Materials Inc., Newston、 CTが挙げられる。エキセンディン-4およびスクロース等の賦形剤を水に溶解させることによってエマルジョンの水相を調製した。得られる溶液における薬物の濃度は約50mg/ml〜約100mg/mlであり得る。例えば薬物がエキセンディン-4である場合、溶液中の薬物の濃度は水65.5gにつき約3.28g〜約6.55gであり得る。特定の態様において、5.46gのエキセンディン-4および2.18gのスクロースを65.5gの灌注用水またはWFIに溶解させた。上記に指定した量は、成分の濾過滅菌の際の損失分を補正するために、標的負荷に対する4%の余分量を表す。PLGAポリマー(例えば、97.7gの精製された50:50のDL4A PLGA(Alkermes,Inc.))を塩化メチレン(1539gまたは6% w/v)中に溶解させることによって、エマルジョンの油相を調製した。
【0079】
次いで水相を約3分間にわたって油相に添加し、同時に室温にて100%の振動で超音波処理をした。5psigで1インチHPLC管末端(ID=20/1000インチ)を有する1/4インチステンレス鋼管によって水相をくみ上げ、超音波処理域内の超音波処理プローブの下に添加した。次いで、反応器を、100%振幅で2分間のさらなる超音波処理により、1400〜1600rpmで攪拌した後、30秒間保持し、次いで、1分より長い超音波処理をした。これにより、0.5ミクロン未満の内部エマルジョンの小滴の大きさを得た。任意の好適な手段を使用して内部エマルジョンの形成が達成され得ることを理解されたい。エマルジョン形成の好適な手段として、限定されないが、上記されるような超音波処理および均質化が挙げられる。
【0080】
B.コアセルベート形成
次いで、約3〜5分間にわたりシリコーン油(2294gのジメチコーン、NF、350cs)を内部エマルジョンに添加することでコアセルベーション工程を行った。これはシリコーン油と塩化メチレン1.5:1の比率に相当する。ポリマー溶液からの塩化メチレンはシリコーン油中に分配され、エキセンディン-4を含有する水相の周りにポリマーを沈殿させ始め、微小カプセル化をもたらす。かくして形成された初期ミクロスフェアは軟らかく硬化を必要とする。しばしば、初期ミクロスフェアは短時間、例えばミクロスフェア硬化工程を進める前の約1分〜約5分放置させ得る。
【0081】
C.ミクロスフェア硬化および洗浄処理
次いで初期ミクロスフェアを、即座にヘプタン/エタノール溶媒混合物中に移した。必要とされるヘプタン/エタノール混合物の容量は、ミクロスフェアのバッチサイズに基づいて決定され得る。本実施例において、3℃の冷却された攪拌水槽(350〜450rpm)に約22kgのヘプタンおよび2448gのエタノールを使用した。この溶媒混合物は、ミクロスフェアからのさらなる塩化メチレンを抽出することによってミクロスフェアを硬化させた。この硬化工程はまたクエンチングともよばれ得る。3℃にて1時間クエンチした後、溶媒混合物はデカントされて、新鮮なヘプタン(13kg)を3℃にて添加し1時間保持してミクロスフェア表面上の残留シリコーン油、エタノールおよび塩化メチレンを洗浄した。
【0082】
D.ミクロスフェアの乾燥および回収
洗浄処理の終わりにミクロスフェアを、内側が一端の閉じた濾過器としての機能を果たす円錐型乾燥室である直径6インチ、20ミクロン多層式回収ふるいに移し、回収した。ヘプタン(4℃にて6Kg)を用いる最終洗浄処理を行って、最大ライン移動を確保した。次いで、以下のスケジュール:3℃にて18時間;25℃にて24時間;35℃にて6時間;および38℃にて42時間に従って、調節された速度での窒素ガスの一定パージでミクロスフェアを乾燥させた。
【0083】
乾燥完了後、乾燥円錐体(cone)に取り付けられたテフロン(登録商標)/ステンレス鋼滅菌化回収容器中にミクロスフェアを入れた。回収容器を密閉し、乾燥円錐体から取り外し、−20±5℃で充填するまで保管した。洗浄のために分解した際、円錐体に残留する物質は、薬物内容分析のために考慮される。収量はおよそ100gのミクロスフェアであった。
【0084】
本明細書中で調製された全ての微粒子製剤に対して、ポリペプチド、例えば調製された製剤中に存在するエキセンディン-4および賦形剤の量は、持続放出性組成物の最終重量に基づいてa%(w/w)として表される。記載がない限り、%(w/w)は名目上の割合である。
【0085】
ポリマー:
使用に適する具体的なPLGポリマーの例を以下のリストに示す。以下の実施例で用いたポリマーはすべて、そのリストに示し、リストに示したポリマーはすべて、Cincinnati,OHのAlkermes、Inc.から入手し、以下のように記載され得る。
ポリマー2A: ポリ(ラクチド-コ-グリコリド); 50:50 ラクチド:グリコリド比; 12.3 kD Mol. Wt.; IV=0.15 (dL/g)
ポリマー4A: ポリ(ラクチド-コ-グリコリド); 50:50 ラクチド:グリコリド比; Mol. Wt. 45- 64 kD; IV=0.45-0.47 (dL/g)
【0086】
PLGの精製: 当該技術分野では(例えば、LuckeらによるPeptide Acylation by Poly(α-Hydroxy Esters)、Pharmaceutical Research、第19巻、No.2、p.175-181、2002年2月を参照のこと)、PLGマトリクス内に取り込まれるタンパク質およびペプチドが、ポリマーの調製後に残留するPLGの分解産物または不純物との相互作用の結果、望ましくない改変(例えば、分解または化学的修飾)がなされ得ることが知られている。したがって、本明細書に記載するほとんどの微粒子製剤の調製に使用されるPLGポリマーを、当該技術分野で認識されている精製方法を用い、持続放出性組成物の調製前に精製した。
【0087】
キャラクタライゼーション方法:
下記のキャラクタライゼーション方法が、活性剤の所望の放出プロフィールをもたらす微粒子の同定に好適であることが確定された。
【0088】
SEM
SEMを、微粒子の粒径、形状および表面特徴を評価するために使用した。SEMイメージングは、Personal SEM(登録商標)システム(ASPEXTM、LLC)において行なった。すべての試料は、スパチュラにより、カーボン両面テープで被覆した標準SEMスタッブ(stub)上に堆積させた。試料をAuで約90秒間18 mA 放出電流により、Model SC 7620 “Mini” Sputter Coater (Energy Beam Sciences)を用いてスパッターコートした。すべてのSEMイメージングは、20 KeV電子ビームを用い、およそ250〜2500×の拡大範囲で行なった。
【0089】
極低温SEM
微粒子の断面を、極低温(cryogenic)SEMを用いて調べた。微粒子試料を、HISTO PREP(登録商標)Solution (Fischer)と混合し、-20℃のクリオスタット内に一晩維持した。硬化した微粒子をガラスカバースリップ上に置き、次いで、金属ナイフを用いて細分した。細分した粒子をアルミニウムスタッブ上に置き、パラジウムおよび白金でスパッターコートし、走査電子顕微鏡(Phillips 525M)下で観察した。切片の目視観察は、微粒子の多孔度の測定方法を提供する。
【0090】
多孔性の測定-水銀圧入
微粒子内の細孔容積分布を、SutoPor IV型9500 Moden Mercury Intrusion Porosimeter (Micromeritics、Norcross、GA)を用いて測定した。簡単には、針入度計(penetrometer)にて、段階的に最大圧力60,000 Psiaまで圧力を負荷することにより、水銀を既知量の微粒子内に押し込んだ。細孔内に圧入された水銀の容量を種々の圧力で測定した。この方法は、微粒子内の細孔分布を定量する。すなわち、圧入された細孔の径は、負荷した圧力に反比例する。液体-固体-気体系における内力と外力の平衡は、ウォシュバーン式で示され得る。負荷された圧力と水銀が押し込まれる細孔径との関係は、


式中: D = 細孔直径
γ = 表面張力(定数)
θ = 接触角 (定数)
P = 圧力
で示される。
【0091】
したがって、水銀が圧入される細孔の径は負荷した圧力に反比例する。すべての細孔が密な柱状(tight cylinder)であると仮定すると、平均細孔直径(D=4V/A)は、細孔容積(V=πD2h/4)を細孔面積(A=πDh)で除することにより算出され得る。
【0092】
残留溶媒
ヘプタン、エタノールおよび塩化メチレンの定量には単一の方法を用いた。装置は、Rtx 1301、30 cm×0.53 mm カラムを有するHP 5890 Series 2ガスクロマトグラフから構成された。約130 mgの微粒子を10 ml N,N-ジメチルホルムアミドに溶解した。酢酸プロピルを内部標準として用いた。試料調製は、0.03%という低い塩化メチレンの濃度が定量され得るように調整した。
【0093】
微粒子調製
表1に示す微粒子バッチを上記のようにして、100グラム規模で、4Aポリマーおよびシリコーン油の塩化メチレンに対する比1.5:1または1:1のいずれかを用いて調製した。シリコーン油は、350 csの粘度を有した。製剤化に用いたエキセンディン-4および賦形剤の量もまた表1に示す。
【0094】
【表1】



【0095】
多孔性
水銀圧入法から得られた全圧入容積および計算した平均細孔直径を表2に示す。平均細孔直径とインビトロ放出との関係を図1に示す。
【0096】
【表2】

【0097】
図1は、インビトロ初期放出に対する硫酸アンモニウムの効果を示す。データは、インビトロ初期放出が微粒子細孔直径と相関することを示す。硫酸アンモニウムを用いて作製した製剤は、一定の多孔性および放出を示した硫酸アンモニウムなしの製剤とは異なり、種々のレベルのインビトロ放出および多様な多孔性を示した。微粒子の製造の際、水相中における硫酸アンモニウムの存在は、内部エマルジョンの調製中に薬物物質を塩析し得る。沈殿物の微小環境の違いは、多孔性の差に寄与し得、したがって初期放出における変動に寄与し得る。この効果は、硫酸アンモニウムなしで調製した製剤では観察されなかった。スクロースおよびエキセンディン-4を用いた製剤は、エキセンディン-4、スクロースおよび硫酸アンモニウム有する製剤と比べて、より望ましく一定のレベルの初期放出を示す。
【0098】
図2は、インビトロ放出に対する多孔性の効果、および処理条件、すなわちシリコーン油の塩化メチレンに対する比が形成される微粒子の多孔性に対して有する影響をさらに示す。簡単には、1:1のシリコーン油対塩化メチレン比を用いて調製した微粒子製剤(表1の製剤2-4および2-5)は、1.5:1のシリコーン対塩化メチレン比を用いて調製した同じ製剤(表1の製剤2、2-1および2-2)よりも高い初期放出を有する。図2は、高いシリコーン油対塩化メチレン比は低多孔性をもたらし、これは、低初期放出をもたらすことを示す。
【0099】
極低温SEM
極低温SEM解析を、上記のようにして、表1の形式2、3および5の製剤において行なった。図3A〜3Bは、選択した製剤形式2(製剤2-2、図3A)および形式5(5%エキセンディン-4、2%スクロース、図3B)の顕微鏡写真のスキャンである。図4A〜Dは、それぞれ、表1の製剤3-4、3-5、3-6および3-7の顕微鏡写真のスキャンである。この場合も、硫酸アンモニウムの使用で示された初期放出の変動に寄与し得る多孔性の変動が、図4A〜Dの極低温SEM断面において見られ得る。
【0100】
残留溶媒レベル
ある所定の製剤中の残留溶媒のレベルは、該製剤のTgに影響を与え得る。残留溶媒レベルを、表1の形式2および5の微粒子製剤について調べた。ヘプタン、エタノールおよび塩化メチレンの定量には単一の方法を用いた。装置は、Rtx 1301、30 m×0.53 mm カラムを有するHP 5890 Series 2ガスクロマトグラフから構成された。約130 mgの微粒子を10 ml N,N-ジメチルホルムアミドに溶解した。酢酸プロピルを内部標準として用いた。試料調製は、0.03%という低い塩化メチレンの濃度が定量され得るように調整した。
【0101】
図5は、表1の形式2および5 (3または5%エキセンディン-4、2%スクロース)の製剤に関する%残留エタノールおよび塩化メチレンのプロットである。図5は、残留溶媒の量が増加するにつれてTgが低下することを示す。
【0102】
3%エキセンディン-4および2%スクロースを有する微粒子の調製
微粒子製剤における硫酸アンモニウムの存在によって導入される多孔性が変動することおよび多孔性が初期放出に有意に影響を与える特徴であると確認されたことに鑑み、さらなる知見において硫酸アンモニウムは追求しなかった。
【0103】
内部エマルジョン小滴サイズの影響
以下の試験は、内部エマルジョンの形成ならびに得られるエマルジョンおよび作製されたミクロスフェアで得られる24時間インビトロ放出の安定性に対するプロセスパラメーターの影響を調べるために、異なるプロセスパラメーターを用いて行なった。水相および溶媒相の内部エマルジョンが、100g規模について上記のような超音波処理、または36/4発電機(Kinematica AG、Switzerland)を備えたMT5000ホモジナイザーを低速(10,800 rpm)もしくは高速(21,300 rpm)のいずれかで用いた均質化のいずれかによって形成された。種々の手法による内部エマルジョン形成後、エマルジョンは、アリコートを取り出す前に、オーバーヘッドスターラーで5、15または60分間穏やかに攪拌しながら反応器内に保持した。指定の保持時間後、内部エマルジョンを、さらに、上記のようにして微粒子に加工し、次いで、24時間インビトロ放出を、各バッチについて、以下に記載のようにして測定した。
【0104】
内部エマルジョン小滴サイズキャラクタライゼーションは、Horiba 粒径解析装置を用いて測定され得る
内部エマルジョンのアリコートを反応器からガラスピペットを用いて抜き出した。トランスファーピペットを用い、約30滴の内部エマルジョンを、20cc容スクリューキャップシンチレーションバイアル内に、約10 mlの6%Medisorb(登録商標)50:50 4A PLGポリマー溶液に添加した後、混合した。また、6%Medisorb(登録商標)50:50 4A PLGポリマー溶液を参照ブランク溶液とした。次いで、約9 mlのこの希釈エマルジョン試料を、洗浄した10 ml容Horiba試料ホルダーに移した。試料ホルダー上にカバーを置き、ポリマー溶媒の急速な蒸発を防いだ。調製された試料は、青いライン(blue bar)(ランプ)の0.65%〜0.90%の目盛範囲の許容透過率%内であった。0.94〜0.00iの相対屈折率設定を、プログラムのセットアップに選択した。試料を、次いで、小滴サイズ用LA 910型などのHoriba 粒径解析装置によって測定した。プロセスパラメーターおよび5、15および60分にわたる保持時間で得られた内部エマルジョンサイズ、ならびに得られた24時間インビトロ放出結果(かっこ内)に対応するデータを図9に示す。
【0105】
ミクロスフェアキャラクタライゼーション
エキセンディン-4ミクロスフェアを、ラットにおける薬物含量、粒径、残留溶媒、初期インビトロ放出、およびPK特性に関して慣用的にキャラクタライズした。薬物を抜き取り、選択したバッチにおいて、カプセル化後のエキセンディン-4純度の予備評価を得た。
【0106】
インビトロ初期放出
エキセンディン-4の初期放出は、放出バッファー (10 mM HEPES、100 mM NaCl、pH 7.4)中に1時間後のエキセンディン-4の濃度を測定することにより測定した。150±5 mgのミクロスフェアを、5.0 mLの10mM HEPES、100mM NaCl、pH 7.4バッファー中に室温で入れ、約30秒間ボルテックスして溶液を懸濁し、次いで、37℃のエアチャンバ室内に1時間入れた。1時間後、試料をエアチャンバ室から取り出し、数回上下逆さにして混合した後、3500 rpmで10分間遠心分離した。上清みを取り出し、以下の条件: カラム: TSK-GEL(登録商標)、7.8 mm x 30 cm、5 m (TSOH BIOSEP PART #08540); カラムオーブン温度: 周囲温度; 自動試料採取装置温度: 6℃; 流速: 0.8 mL/分; 検出: 280 nm; インジェクション容量: 10 L; 移動相:アセトニトリル35%/0.1%TFAを含む水65%/リットル(v/v); 実行時間: およそ20分を用いたHPLCによって直接解析した。30 mM酢酸バッファー、pH 4.5中で調製したエキセンディン-4バルク薬物質、0.2 mg/mLを標準として使用した。
【0107】
動物実験
本明細書に記載するすべての薬物動態(PK)試験は、およそ500±50 gの重量の成体雄Sprague-Dawleyラットにおいて行なった。
【0108】
微粒子製剤のPKキャラクタライゼーションのため、各動物は、希釈剤 (3%カルボキシメチルセルロース、0.9%NaCl、0.1%Tween 20)中に懸濁した微粒子の皮下注射を肩甲骨間領域に受けた。一般的には、用量は、0.75 mLの注射容積中、ラット1匹あたりおよそ1.0 mgエキセンディン-4とした。血液試料を側尾静脈(lateral tail vein)から、投与後、0.5、2、4、6、10、24時間、ならびに2、4、7、10、14、17、21、24および28日に採取した。血液試料をEDTAを含むMICROTAINER(登録商標)チューブ内に直接入れ、約14,000×gで約2分間遠心分離した。次いで、血漿を保存剤なしでMICROTAINER(登録商標)チューブに移し-70℃でアッセイ時まで保存した。IRMAを用いて血漿エキセンディン濃度を測定した。
【0109】
インビボ放出-IRMA
血漿中のエキセンディン-4の定量方法は、サンドイッチイムノアッセイとし、検体は、固相モノクローナル抗体EXE4:2-8.4により捕捉し、放射性ヨウ化モノクローナル抗体GLP-1:3-3によって検出する。結合分の計測数を、標準較正曲線から定量する。このアッセイは、完全長または完全エキセンディン-4に特異的であり、エキセンディン-4(3-39)を検出しない。典型的な標準曲線範囲は、トレーサー抗体の寿命(age)に応じて30 pg/mL〜2000 pg/mLである。
【0110】
インビトロおよびインビボ放出
製剤2、2-1および2-2(3%エキセンディン-4および2%スクロース)を、インビトロ初期放出について上記のようにして試験した。インビトロ放出は、それぞれ、0.4%、0.4%および0.5%であった。また、すべての3つのバッチは、0-1日で1154〜1555 pg/mLの範囲のCmaxの比較的低いインビボ初期放出を有した。図6は、3%エキセンディン-4および2%スクロース_(2-l)を有する製剤、また、3%エキセンディン-4単独(1) ならびに3%エキセンディン-4および0.5%硫酸アンモニウム(4)に関する代表的な薬物動態曲線である。シリコーン油の塩化メチレンに対する比1.5:1を用い、シリコーン油の粘度は350 csとした。
【0111】
図6から、硫酸アンモニウムを含有しない製剤は、より低い初期放出を示すことがわかる。エキセンディン-4単独を有する製剤は適当な初期放出を示すが、カプセル化後の薬物の純度は、エキセンディン-4をスクロースとの組合せで有する製剤と比べ、減少した。製剤中の糖の添加は、薬剤の分解を減少させる。
【0112】
上で比較した3つの製剤2、2-1および2-2のインビボ 放出プロフィールを図7に示す。3つのすべてのバッチは、比較的低い初期放出の後、「谷(trough)」(ほぼ第4日〜第17日の間で低い血清レベル)、その後、ほぼ第21日〜第28日にわたって持続放出性を示した。低初期放出および放出プロフィールの形状は、この3つの製剤で一致した。
【0113】
1:1のシリコーン油の塩化メチレンに対する比を用いた製剤
表1の製剤2-3、2-4および2-5 (3%エキセンディン-4、2%スクロース)を、1:1のシリコーン油の塩化メチレンに対する比を用いて調製した。これらの製剤の初期放出は、表1の製剤2、2-1および2-2(3%エキセンディン-4、2%スクロースで1.5:1のシリコーンの塩化メチレンに対する比)の場合よりも高かった。具体的には、1.5:1比の製剤は、平均初期放出約0.4%をもたらしたが、1:1比の製剤は、平均初期放出約1.0%をもたらした。同じ傾向がインビボで観察され、1:1比の場合のラットにおける第0日〜第1日のCmaxは2288±520pg/mLであったが、1.5:1比の場合のラットにおける第0日〜第1日のCmaxは1300±221 pg/mLであった。
【0114】
薬物負荷の増加
スクロースを2%に維持したまま、エキセンディン-4負荷を4%に増加させると、インビトロおよびインビボで3%負荷と同じ範囲の初期放出がもたらされた。
【0115】
表1の形式5の3つの製剤を調製した(5%薬物負荷、2%スクロース、1.5:1 のシリコーン油の塩化メチレンに対する比)。3つのバッチ5-1、5-2および5-3は、すべて0.2〜0.5%の範囲の低インビトロ初期放出を示した。同様に、製剤のインビボCmaxは、一貫して低く、467 pg/mL〜1267 pg/mLの範囲であった。図8は、試験した3つのバッチの薬物動態データのグラフを示す。2%スクロースを有する3%エキセンディン-4製剤の挙動と比べ、5%製剤は、ほぼ第1日〜第2日によりわたってより高い血清薬物レベルを示した。5%製剤のプロフィールの残りは、谷の後、主に第21日〜第28にわたって薬物の放出を有する3%製剤と同様であった。
【0116】
本発明を、その好ましい態様を参照して具体的に示し、記載したが、形態および詳細における種々の変形が、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱せずになされ得ることは、当業者によって理解される。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】図1は、本明細書中に記載の持続放出性組成物のための平均細孔直径とインビトロ放出との関係を示すグラフである。(A.S.=硫酸アンモニウム)
【図2】図2は、微粒子からのエキセンディン-4のインビトロ放出に対する細孔性効果及び方法の条件、つまりシリコーン油の塩化メチレンに対する比率が形成された微粒子の細孔上に与える影響を示すグラフである。
【図3】図3A〜3Bは、本明細書中に記載の選択された微粒子製剤に関する極低温SEMの画像である。
【図4】図4A〜4Dは、本明細書中に記載の選択された微粒子製剤に関する極低温SEMの画像である。
【図5】図5は、本明細書中に記載の微粒子製剤に関する残留エタノール及び塩化メチレン対Tg%のプロットである。
【図6】図6は、製剤2-1(3%エキセンディン-4及び2%スクロース)、製剤1(3%エキセンディン-4のみ)並びに製剤4(3%エキセンディン-4及び0.5%硫酸アンモニウム)についての代表的な薬動力学曲線(濃度、pg/ml v.時間、日数、挿入部は第1日の濃度を示す)である。
【図7】図7は、3つの微粒子製剤2、2-1及び2-2に対するインビボ放出プロフィールのグラフである。
【図8】図8は、微粒子製剤5-1、5-2及び5-3に対する薬動力的データのグラフである。
【図9】図9は、方法パラメーターと該方法で達成される内部エマルジョンサイズとの間の関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本質的に生体適合性ポリマー、生物学的活性ポリペプチド及び糖からなる生物学的活性ポリペプチドの持続放出性のための組成物であって、Caveに対するCmaxの比率が約3以下である、組成物。
【請求項2】
ポリペプチドが、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド、エキセンディン(exendin)、グルカゴン様ペプチドのアゴニスト、血管活性腸管ペプチド、免疫グロブリン、抗体、サイトカイン、インターロイキン、マクロファージ活性化因子、インターフェロン、エリトロポイエチン、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子、インシュリン、酵素、腫瘍抑制因子、血液タンパク質、卵胞刺激ホルモン、成長ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、及び黄体形成ホルモン放出ホルモン、NGF、EGF、ガストリン、GRH、ディフェンシン、エンケファリン、並びに、そのムテイン、アナログ、欠失及び置換バリアント及び薬学的に許容され得る塩から選択される、請求項1記載の持続放出性組成物。
【請求項3】
生物学的活性ポリペプチドが糖調節性ペプチドである、請求項2記載の持続放出性組成物。
【請求項4】
糖調節性ペプチドがGLP−1、GLP−2、エキセンディン−3、エキセンディン−4またはその組み合わせから選択される、請求項3記載の持続放出性組成物。
【請求項5】
ポリペプチドが持続放出性組成物の全重量の約0.1%w/w〜約10%w/wで存在する、請求項4記載の持続放出性組成物。
【請求項6】
ポリペプチドが持続放出性組成物の全重量の約0.5%w/w〜約5%w/wで存在する、請求項5記載の持続放出性組成物。
【請求項7】
組成物の全細孔容積が、水銀圧入法(mercury intrusion porosimetry)を用いて測定する場合、約0.1mL/g以下である、請求項6記載の持続放出性組成物。
【請求項8】
糖が持続放出性組成物の全重量の約0.01%w/w〜約10%w/wで存在する、請求項7記載の持続放出性組成物。
【請求項9】
糖が持続放出性組成物の全重量の約0.1%w/w〜約5%w/wで存在する、請求項8記載の持続放出性組成物。
【請求項10】
糖が単糖類、二糖類、糖アルコールまたはその組み合わせから選択される、請求項9記載の持続放出性組成物。
【請求項11】
糖がスクロース、マンニトール及びその組み合わせから選択される、請求項10記載の持続放出性組成物。
【請求項12】
生体適合性ポリマーがポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリエステルアミド、ポリ無水物、ポリ(アミノ酸)、ポリオルトエステル、ポリシアノアクリレート、ポリ(p-ジオキサノン)、ポリ(シュウ酸アルキレン)、生物分解性ポリウレタン、その混合物、およびそのコポリマーからなる群より選択される、請求項9記載の持続放出性組成物。
【請求項13】
前記ポリマーがポリ(ラクチド−コ−グリコリド)を含む、請求項12記載の持続放出性組成物。
【請求項14】
前記ポリマーが50:50ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)である、請求項13記載の持続放出性組成物。
【請求項15】
前記ポリマーが約0.3〜0.5dL/gの間の固有粘度性を有する、請求項14記載の持続放出性組成物。
【請求項16】
組成物の重量の約3% w/w以上のエキセンディン-4および約2% w/w以上のスクロースが内部に分散された生体適合性ポリマーを含む、生物学的活性ポリペプチドの持続放出性のための組成物。
【請求項17】
生体適合性ポリマー、組成物の重量の約3% w/w以上のエキセンディン-4および約2% w/w以上のスクロースから本質的になる、生物学的活性ポリペプチドの持続放出性のための組成物。
【請求項18】
生体適合性ポリマー、組成物の重量の約3% w/w以上のエキセンディン-4および約2% w/w以上のスクロースからなる、生物学的活性ポリペプチドの持続放出性のための組成物。
【請求項19】
生体適合性ポリマーがポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)および混合物ならびにそのコポリマーから選択される、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
Caveに対するCmaxの比率が約3以下である、請求項19記載の組成物。
【請求項21】
組成物の全細孔容積が、水銀圧入法を使用して測定する場合、約0.1mL/g以下である、請求項20記載の組成物。
【請求項22】
生体適合性ポリマー、エキセンディン、エキセンディンアナログ、誘導体、またはアゴニストからなる群より選択される生物学的活性剤、および糖から本質的になる持続性放出組成物の治療有効量を投与することを含み、Caveに対するCmaxの比率が3以下である、2型糖尿病を患う患者の処置方法。
【請求項23】
薬剤がエキセンディン-4である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
持続放出性組成物の生体適合性ポリマーが、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)ならびにその混合物およびコポリマーから選択される、請求項23記載の方法。
【請求項25】
糖が持続放出性組成物中に、持続放出性組成物の総重量の約0.01%w/w〜約10%w/wの濃度で存在する、請求項24記載の方法。
【請求項26】
組成物の全孔容積が、水銀圧入法で測定したとき約0.1mL/g以下である、請求項24記載の方法。
【請求項27】
エキセンディン-4が持続放出性組成物中に、持続放出性組成物の総重量の約0.1%〜約10%の濃度で存在する、請求項26記載の方法。
【請求項28】
組成物の重量の約3%w/w以上のエキセンディン-4および約2%w/w以上のスクロースが内部に分散された生体適合性ポリマーからなる持続放出性組成物の治療有効量を投与することを含む、2型糖尿病を患う患者の処置方法。
【請求項29】
a) 水溶性ポリペプチドおよび糖を含む水相を、生体適合性ポリマーおよび該ポリマー用溶媒を含む油相と合わせることにより、混合物を形成する工程;
b) 工程aの混合物の油中水型エマルジョンを形成する工程;
c) コアセルベーション剤を混合物に添加して初期(embryonic)微粒子を形成する工程、ここで、前記コアセルベーション剤は、約1:1〜約1.5:1のシリコーン油のポリマー溶媒に対する比を得るのに充分な量で添加されたシリコーン油である;
d) 初期微粒子をクエンチ溶媒に移して微粒子を硬化する工程;
e) 硬化された微粒子を回収する工程;ならびに
f) 硬化された微粒子を乾燥する工程;
を含む、ポリペプチドの持続放出性のための組成物の調製方法。
【請求項30】
シリコーン油のポリマー溶媒に対する比が1.5:1である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
ポリマーが油相中に約10%w/v以下で存在する、請求項29記載の方法。
【請求項32】
ポリマーが、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)ならびにその混合物およびコポリマーからなる群より選択される、請求項29記載の方法。
【請求項33】
ポリペプチドが、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド、エキセンディン、グルカゴン様ペプチドのアゴニスト、血管活性腸管ペプチド、免疫グロブリン、抗体、サイトカイン、インターロイキン、マクロファージ活性化因子、インターフェロン、エリトロポイエチン、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子、インシュリン、酵素、腫瘍抑制因子、血液タンパク質、卵胞刺激ホルモン、成長ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、及び黄体形成ホルモン放出ホルモン、NGF、EGF、ガストリン、GRH、ディフェンシン、エンケファリン、並びに、そのムライン、アナログ、欠失及び置換バリアント及び薬学的に許容され得る塩からなる群より選択される、請求項29記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−532640(P2007−532640A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508312(P2007−508312)
【出願日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/011547
【国際公開番号】WO2005/110425
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(506350023)アルカーメス,インコーポレイテッド (12)
【Fターム(参考)】