説明

ポリマークレーナノ複合材料を製造するための水をベースとした方法

【課題】ポリマー−クレーナノ複合材料を製造するための水をベースとした方法を提供する。
【解決手段】少なくとも1つの非極性ブロックと1つ以上のカチオンブロックとを含有するラテックス形態のブロックコポリマーを使用し、層間挿入および/または剥脱された天然または合成のクレーを製造するための、水をベースとした方法であり、そのブロックコポリマーは、エマルジョン調節された遊離基重合法によって製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー−クレーナノ複合材料を製造するための水をベースとした方法に関し、さらに詳しくは、エラストマーと、水膨潤可能なクレーから少なくとも部分的に剥脱された複数の板状体とからなるナノ複合材料を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
充填剤のポリマーへの添加は、一般的な工業的実施である。その目的は、概して、2つあり;複合材料の総コストを低下させ;それと同時に、例えば、磨耗、硬度、引張弾性率、引裂抵抗等の機械的特性において改善を生ずることである。非常に小さい寸法(<200nm)の充填剤粒子を使用することによって、ポリマー複合材料の特性は、充填剤のはるかに低い濃度、典型的には、標準のミクロンサイズの充填剤粒子を有する100重量部のゴム当り30〜100重量部と比較して、100重量部のゴム当り2〜10重量部で改良される。ナノメートルまたは“ナノ-スケール”の充填剤は、高い表面エネルギーとともに極めて広い表面積を有する。かかる理由により、この表面エネルギーをなんとかして克服または散逸して、加工および最終製品の仕上げの間に、充填剤の凝集を回避するために、ナノ充填剤の高分子基材への十分な混和性および分散を可能とすることが重要である。
【0003】
クレーまたは層状ケイ酸塩、例えば、モントモリロナイトをベースとする有機-無機ナノ複合材料の形成は、公知である。概して、これらのクレーは、通常、イオン交換法を通じてアルキルアンモニウムイオン類またはアミン類によって改質される。大きい有機イオン類は、負に帯電したケイ酸塩板状体間に滞在する小さい無機イオン類(例えば、ナトリウムイオン)を置換し、かくして、プレート間の距離を伸張し、同時に、改質されたクレーをさらに疎水性とする。最終結果は、高分子基材にさらに容易に分散可能な改質されたクレーである。幾つかの例にて、新規なナノ複合材料は、クレーが大きい凝集体を含まず十分に分散された層間挿入構造(an intercalated structure)を有するが、なお、大部分は、その層状(しかし、膨張した)領域形態を保持する。膨張した層状構造をとることで、いくつかの高分子基材は、積み重ねられた板状体間に相互に浸透することができ、これにより、ひいては、物理的特性の改良を生ずることが多い。層間挿入されたポリマー-クレー領域構造は、改良であるものの、それは、一般に剥脱と称される究極的な分散状態には到達しない。剥脱された状態が、X線回折パターンの完全なる欠如によって証拠付けられる時、クレーの層状構造は、完全に破壊される。この状態の個々の複数の板状体は、さて、高分子基材と比較して、相互に小さい親和性を有する。剥脱された状態の達成は、可能な限り最も低いレベルの充填剤で、最大の改良を提供するであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ポリマー−クレーナノ複合材料を製造するための水をベースとした方法を提供することであり、さらに詳しくは、エラストマーと、水膨潤可能なクレーから少なくとも部分的に剥脱された複数の板状体、とからなるナノ複合材料を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、エラストマーと、水膨潤可能なクレーから少なくとも部分的に剥脱された複数の板状体(partially exfoliated platelets)とからなるナノ複合材料を製造する方法であって、
(A) (1) (a) 4-ビニルピリジン、
(b) トリチオカーボネートRAFT剤、および乳化剤からなり、その乳化剤が、潜伏性界面活性剤と界面活性剤賦活剤との反応により水性重合媒体内でその場で(in situ)製造されるものである、第1の水性重合媒体を調製し;
(2) 第1の遊離基開始剤の存在下に4-ビニルピリジンを第1の水性重合媒体内で重合させて、ポリ(4-ビニルピリジン)を生成させ;
(3) ポリ(4-ビニルピリジン)をプロトン化して、プロトン化されたポリ(4-ビニルピリジン)RAFTマクロ開始剤を形成し;
(4) プロトン化されたポリ(4-ビニルピリジン)RAFTマクロ開始剤とエチレン性不飽和結合を含有するモノマーとからなるが、界面活性剤を除く、第2の水性重合媒体を調製し;
(5) 第2の遊離基開始剤の存在下に100℃未満の温度で、第2の水性媒体内でエチレン性不飽和結合を含有するモノマーと前記プロトン化されたポリ(4-ビニルピリジン)RAFTマクロ開始剤とを重合させて、エチレン性不飽和結合を含有するモノマーと4-ビニルピリジンとの両親媒性のブロックコポリマーを生成させる;
ことによって製造される、両親媒性のブロックコポリマーからなる水性ラテックスと;
(B) クレーについての層間挿入物(an intercalant)を除いて、層間の空間内にカチオン交換可能なイオンを含有する多層の水膨潤可能なクレーと、水との水性混合物、であって、


前記水膨潤可能なクレーが、複数の板状体間に水膨潤された空間を有している、複数の積み重ねられた板状体からなり、前記空間内に、カチオンイオン交換可能なイオンを含有する;
をブレンドする工程を含む方法に係る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
剥脱された(exfoliated)ポリマー−クレーナノ複合材料構造を得るための1つの技術は、イオン交換可能なカチオン(正)電荷を有する高分子基材に対して、共通の構造的特徴を有する高分子基材または添加剤を使用することである。この方法で、ブロックコポリマーのカチオン部分は、クレーと会合した無機カチオンと交換することができる。はるかに高い分子量を有するブロックコポリマーの非極性部分は、ついで、分離し、個々の複数のクレー板状体を取り囲み、嵩高い高分子基材と同様に、ナノ複合材料粒子の表面エネルギーを有効にする。
【0007】
本発明についての剥脱プロセス(exfoliation process)は、剥脱プロセスにて使用される、ポリマーラテックスに加えられる慣用的なアニオン性、カチオン性または非イオン性界面活性剤を使用することなく行われる。
【0008】
剥脱の最大化は、水膨潤可能なクレーの積み重ねられた複数の板状体の空間内での、カチオン交換可能なイオンによる、ラテックス中の両親媒性エラストマーコポリマーの粒子間における、前述したイオン交換現象によるエラストマーラテックス粒子の不安定化に、少なくとも一部は基づくものであり、これはクレーの層間挿入/剥脱(intercalation/exfoliation)を生じ、それによって、エラストマー粒子が凝固される。比較的嵩高い両親媒性の凝固したエラストマー粒子は、次に、負に帯電している積み重ねられた複数の板状体の空間に入り、板状体間の距離をさらに伸張し、エラストマー粒子の板状体表面への結合をさらに促進し、したがって、これにより、板状体のさらに完全な剥脱(デラミネーション)(exfoliation (delamination))を生ずる。
【0009】
さらに、本発明の作用により、比較的親水性の水膨潤可能なクレーは、より疎水性の剥脱された複数の板状体に実質的に変換され、これは、層間に挿入された、積み重ねられた複数の板状体を含み、この板状体は、ジエンをベースとするエラストマーとより相溶性であり、したがって、そのための粒状強化体としてその中に分散するのにより適している。
【0010】
本発明のナノ複合材料は、また、タイヤを含め製造物品の成分として使用することのできる、その他のエラストマー、強化充填剤、成分および/またはカップリング剤とのそのようなナノ複合材料のブレンドとしてゴム複合材料を製造するためにも使用することができる。かくして、このような製造物品は、前記ナノ複合材料および/または前記ゴム複合材料からなるゴム組成物によって構成することができる。
【0011】
事実、本プロセスのいくつかの態様は、操作性にて幾分簡単なようであるものの、本明細書では、技術的処理を適用するすべてが新規であり、従来の実施技術とはかけ離れており、進歩性を有すると考えられる。このことから、特に、剥脱された、疎水性の板状体強化エラストマー組成物の形態のナノ複合材料が、製造物品の複合材料、例えば、タイヤ用の成分としての使用に望ましいということが真実であると、本明細書においては考えられる。
【0012】
実際に、ポリマー結合された複数の板状体の完全な剥脱は、例えば、X線ピークの実質的な不在を証拠として、広角X線回折(WAXD)により決定することができる。エラストマーマトリックス内の、中間的に部分的に剥脱/層間挿入された状態に関する情報は、板状体間に間隔を置いて配置されている、基底面内のWAXDピーク強度および変化(増加)を観測することによって定量的に得ることができる。
【0013】
エラストマー/クレーナノ複合材料の製造は、WO2004/078785およびWO2004/078839に開示されていることをよく理解する必要がある。しかし、これらPCT出願国際特許公開公報には、CFRP/RAFTにより製造されるカチオン帯電された水溶性ポリ電解質が、1つ以上のカチオン帯電されたブロックおよび少なくとも1つの非極性ブロックを含有する両親媒性ブロックコポリマーラテックスの合成のためのマクロ開始剤として使用しうることは、何等開示も示唆もされていない。さらに、このような“界面活性剤を含まない”芯-鞘タイプの両親媒性エラストマーラテックスが、分散されたイオン交換可能なクレーを含む水性凝固プロセスによって、迅速かつ有効的に、ポリマー−クレーナノ複合材料を製造するのに直接使用されうることは、いずれの特許にても、何等示唆も記載もされていない。
【0014】
例えば、加硫エラストマー組成物(特に、例えばタイヤのような製造物品の成分や、特に、ゴムタイヤトレッド、についての組成物)の1つ以上のエラストマー物理特性(例えば、極限引張強さ、弾性率(例えば、300パーセント弾性率)および/または耐摩耗性)の増強を促進するため、エラストマー組成物の強化における有用性を高めることが所望される場合に;本発明の有意な態様は、アニオン性、カチオン性もしくは非イオン性界面活性剤を含有するラテックスではなく、1つ以上のカチオン帯電されたブロックおよび少なくとも1つの非極性ブロックを含有する両親媒性ブロックコポリマーラテックスの存在にて、その層(例えば、スメクタイトクレー)間の空間内にカチオン交換可能なイオン類を含有する多層の水膨潤可能なクレーが、層間挿入され、少なくとも部分的に、好ましくは、実質的に、剥脱されることである。
【0015】
多層に積み重ねられたクレー粒子(例えば、モントモリロナイトクレー)も、また、U.S.特許No.6,861,462にて報告されており、その特許には、水、エラストマー、カチオン界面活性剤、および、層間分離とカチオン交換能を有する層状のクレーからなり、層状のクレーがカチオン交換プロセスにより予備成形されたラテックスにより層間挿入され、前記ラテックスが、カチオン界面活性剤を含有するものが提供されている。
【0016】
本発明の実施において(前記U.S.特許No.6,861,462との混同を回避するため)、このような特許の教示と対照的に、エラストマーマトリックスのナノ複合材料とその中での剥脱された複数の板状体の分散は、「水膨潤可能なクレーの積み重ねられた複数の板状体の空間内のイオン交換可能なイオン類」と、「予備形成されたラテックスが自然に凝固される、1つ以上のカチオン帯電されたブロックおよび少なくとも1つの非極性ブロックを含有する両親媒性ブロックコポリマーのエラストマーラテックス中の、予備形成されたエラストマー粒子上に含有されるカチオン類」との間の、イオン交換によって製造されることが必要とされる。
【0017】
特に、本発明については、ラテックスへの添加前に、クレーが層間挿入剤で予め層間挿入されないように、クレーについての層間挿入剤を含有しないクレーの水分散液として、水膨潤可能なクレーを前記ラテックスに導入する。クレーは、当然のことながら、そのラテックスへの添加前に、クレーを分散させた水によって幾分か膨潤された、クレーの積み重ねられた複数の板状体間の空間内に、カチオン交換可能なイオン類を含有する。クレーの水分散液が添加されるラテックスそれ自体は、クレー内の前記空間内で、前記カチオン交換可能なイオン類とイオン交換するために使用される、カチオン帯電されたエラストマー粒子を含有する必要があり;カチオン帯電されたエラストマー粒子は、1つ以上のカチオン帯電したブロックと少なくとも1つの非極性ブロックとを含有する両親媒性のブロックコポリマーを含む。
【0018】
1つの実施態様にて、1つ以上のカチオン帯電されたブロックと少なくとも1つの非極性ブロックとを含有する両親媒性のブロックコポリマーラテックスのラテックスは、可逆的付加-フラグメンテーション(reversible addition-fragmentation(RAFT))マクロ開始剤を使用する調節された遊離基エマルジョン重合(controlled free radical emulsion polymerization(CFRP))によって、製造される。1つの実施態様にて、ラテックスは、
(A) (1) 4-ビニルピリジン、
(2) トリチオカーボネートRAFT剤、および、乳化剤からなり、その乳化剤が、潜伏性界面活性剤と界面活性剤賦活剤との反応によって、水性重合媒体内で、その場で(in situ)製造される、第1の水性重合媒体を調製し;
(B) 第1の遊離基開始剤の存在下に4-ビニルピリジンを前記第1の水性重合媒体内で重合させて、ポリ(4-ビニルピリジン)を生成させ;
(C) ポリ(4-ビニルピリジン)をプロトン化して、プロトン化されたポリ(4-ビニルピリジン)RAFTマクロ開始剤を形成し;
(D) プロトン化されたポリ(4-ビニルピリジン)RAFTマクロ開始剤とエチレン性不飽和結合を含有するモノマーとからなるが、界面活性剤を除く第2の水性重合媒体を調製し;
(E) 第2の遊離基開始剤の存在下に100℃未満の温度で、第2の水性媒体内でエチレン性不飽和結合を含有するモノマーと前記プロトン化されたポリ(4-ビニルピリジン)RAFTマクロ開始剤とを重合させて、エチレン性不飽和結合を含有するモノマーと4-ビニルピリジンとの両親媒性のブロックコポリマーを生成させる;
各工程を含む方法を使用して、製造される。
【0019】
上記した処理法によって製造されるラテックスと、水/水膨潤可能なクレー分散液とをブレンドすることにより、ナノ複合材料を製造することによって、個々の複数の板状体の少なくとも部分的な剥脱が生じる。ここにおいて、1つ以上のカチオン帯電されたブロックと、少なくとも1つの非極性ブロックラテックスとを含有する両親媒性のブロックコポリマーのカチオン帯電されたブロックが、クレー板状体の空間内のカチオン交換可能なイオン類とイオン交換し;したがって、両親媒性のブロックコポリマーのカチオン帯電されたブロックが前記空間に入り込み、そこに、比較的嵩高いエラストマー粒子がクレー板状体の正に帯電された表面にポリマー結合し、それにより、ひいては、前記空間を膨張させ、その分散液としてクレーからポリマーマトリックスそれ自体への板状体の実質的な剥脱(デラミネーション)(exfoliation(delamination))を促進する。
【0020】
複数の積み重ねられた板状体(例えば、非常に薄いケイ酸塩をベースとする板状体)によって構成されるクレーである、本発明にて使用されると考えられる水膨潤可能なクレーは、このような板状体間の空間内にカチオン交換可能なイオン類を含有する。このようなクレーの典型的な例は、水膨潤可能なスメクタイトクレー、バーミキュライトをベースとするクレーおよび雲母をベースとするクレーである。好ましくは、このような水膨潤可能なクレーは、スメクタイトクレーである。スメクタイトクレーの典型的な例は、例えば、モントモリロナイト、ヘクトライト、ノントライト、バイデライト、ボルコンスコイト、サポナイト、ソーコナイト、ソボカイト、ステレンサイトおよびシンフォルダイトクレーであり、そのうち、モントモリロナイトおよびヘクトライトクレーが好ましい。スメクタイトクレーの種々の例については、例えば、U.S.特許No.5,552,469を参照。このような空間内に含有されたこのようなカチオン交換可能なイオン類は、典型的には、ナトリウムイオン類とカリウムイオン類との少なくとも1つからなり、これらとしては、例えば、カルシウムイオン類および/またはマグネシウムイオン類を挙げることができるが、追加のカチオン交換可能なイオン類が存在してもよいことを理解するべきである。典型的には、このような空間内にナトリウムイオン類を収容するモントモリロナイトが好ましいが、少量の追加のカチオン交換可能なイオン類、例えば、カルシウムイオン類が、このような空間内に含有されてもよいことを理解するべきである。
【0021】
エマルジョン重合誘導されたエラストマースチレン/ブタジエンコポリマーは、典型的には、例えば、アニオン界面活性剤の存在下にて、遊離基およびレドックス重合開始剤により、水エマルジョン媒体中、スチレンおよび1,3-ブタジエンを重合することによって製造しうる。アニオン界面活性剤の典型的な例は、例えば、McCutchen’s,Volume 1,“Emulsifiers & Detergents”,North American Edition,2001,291頁および 292頁に見ることができ、非イオン界面活性剤についての典型的な例は、294〜300頁に見ることができ、カチオン界面活性剤の例は、300および301頁に見ることができる。
【0022】
本発明の実施について、カチオン性、アニオン性および非イオン性界面活性剤は除外されるべきである。しかし、所望される場合、少量の界面活性剤として、(例えば、0〜約20、あるいは、約0.1〜約20重量%)の非イオン界面活性剤を使用してもよい。
【0023】
したがって、本発明における両親媒性のブロックコポリマーエラストマーラテックスは、例えば、ポリ(4-ビニルピリジン)-b-スチレン/ブタジエンゴム、ポリ(4-ビニルピリジン)-b-cis-1,4-ポリブタジエンゴムおよび/またはポリ(4-ビニルピリジン)-b-ブタジエン/アクリロニトリルゴムのようなエラストマーを生成させるための、適当なモノマーから誘導されるエラストマーが、RAFTマクロ開始剤の存在下にて、エラストマー前駆体モノマー(例えば、スチレンおよび1,3-ブタジエンモノマーの組み合わせ、個々に、1,3-ブタジエン、または、1,3-ブタジエンとアクリロニトリルとの組み合わせ)の調節した遊離基重合を行った結果として製造される必要がある。好ましくは、エラストマーは、スチレン/ブタジエンエラストマーである。
【0024】
複数の板状体間の空間が、水で膨潤されることによって幾分膨張されている水膨潤状態において、層間挿入物を含有しない(例えば、第4級アンモニウム塩を含有しない)水膨潤可能なクレー(例えば、スメクタイトクレー)の水性分散液は、「両親媒性のブロックコポリマーラテックスのカチオン帯電されたブロック」と、「クレー(例えば、スメクタイトクレー)の膨潤された空間内のカチオン的にイオン交換可能なイオン類」との間で起こる、イオン交換を生じさせるために、両親媒性のブロックコポリマーエラストマー粒子の予備形成されたラテックス(pre-formed latex)とブレンドされることが必要である。このことから、本発明の実施は、
(A) ラテックスそれ自体は、カチオンラテックスであってもなくても、スメクタイトクレーの存在下にて生ずるそれぞれのモノマーの重合を単に必要とするか;または
(B) 典型的な塩/酸エラストマー凝固法によってエラストマーラテックスからエラストマーを単に凝固させるか;または、
(C) カチオン界面活性剤を含有するエラストマーラテックスからカチオンエラストマーを単に凝固させる;
ということとは、有意に異なる。
【0025】
したがって、本発明については、
(A) エラストマーが、例えば、スチレンおよび1,3-ブタジエンのようなモノマーの、水をベースとする媒体中のRAFTマクロ開始剤との共重合によって予備形成されて、1つ以上のカチオン帯電されたブロックを含有する両親媒性のブロックコポリマーを含有するエラストマーラテックスを形成した後;および
(B) ラテックスからのエラストマーの凝固前、または、凝固と同時に、
スメクタイトクレーが、層間挿入されて剥脱され、好ましくは、エラストマー内で複数の板状体(好ましくは、ポリマー結合された複数の板状体)として、実質的に剥脱される。
【0026】
したがって、水膨潤可能なクレー(例えば、スメクタイトクレー)は、
(A) モノマーの重合の間に層間挿入(intercalated)されず;
(B) それが凝固され、乾燥エラストマーとして回収された後に、スメクタイトクレーとエラストマーとを物理的にブレンドすることによって層間挿入されず;
(C) 予備的に層間挿入された(pre-intercalated)クレーとエラストマーとをブレンドする前に、第4級アンモニウム塩での処理によって予備的に層間挿入された(pre-intercalated)スメクタイトクレーをブレンドすることによっては層間挿入されない。
【0027】
それらのカチオン性により、1つ以上のカチオン帯電されたブロックを含有する両親媒性ブロックコポリマーのカチオン帯電されたブロックは、ラテックス内のエラストマー粒子を安定化させ、凝固からエラストマー粒子を守る。さらに、カチオン帯電されたブロック内のカチオン類は、スメクタイトクレーの複数の板状体間の空間内の、カチオン交換可能なイオン類(例えば、ナトリウムイオン類)とのイオン交換を経て、
(A) エラストマー粒子内のカチオン帯電されたブロックの存在からカチオン類を離脱させ、それによって、ラテックスを不安定化し(エラストマー粒子を凝固させ);
(B) 実質的に本質的に同時に(エラストマー粒子の凝固プロセスの間に)クレーのプレート間の距離を伸張して、(両親媒性のコポリマーのカチオン帯電されたブロックからさらに嵩高いカチオンを有するクレーの積み重ねられた板状体間の空間にて、イオン類、例えば、ナトリウムイオンを交換することによって)膨張された空間を形成し、したがって、クレーは層間挿入および剥脱され、不安定化されたエラストマー粒子を凝固させる。
【0028】
このように、好ましくは、エラストマーホスト内のクレー(例えば、スメクタイトクレー)に層間挿入され、好ましくは、実質的に剥脱された複数の板状体、好ましくは、ポリマー結合された複数の板状体の分散液としてのナノ複合材料を生成させる方法は、本明細書においては、新規かつ従来の実施からは逸脱していると考えられ、さらに、生ずるエラストマーのナノ複合材料およびこのような方法によって製造される実質的に剥脱され、ポリマー結合された複数の板状体の分散液も、また、新規かつ従来の実施から逸脱している。
【0029】
溶融ブレンド法による熱可塑性または熱硬化性ポリマーとの有機クレーのブレンドは、U.S.特許Nos.4,739,007;4,810,734;5,385,776;5,578,675;および、5,840,796にて考察されている。無機充填剤、例えば、モントモリロナイトクレーの付加体、および、第4級アンモニウム塩の少なくとも1つのゴムおよび有機シランとのブレンドは、U.S.特許No.4,431,755にて考察されている。
【0030】
モントモリロナイトクレーは、例えば、複数の積み重ねられた薄くて比較的平坦な層によって構成される構造を有する天然産のクレーとして記載されており、このような個々の層は、2つの非常に薄いテトラヘドラル形状のシリカ層間に挟まれた、非常に薄いオクタヘドラル形状のアルミナ層によって構成され、アルミノシリケート構造を形成するような構造を有することができる。概して、天然に産するモントモリロナイトクレー内のこのようなアルミノシリケート構造については、若干のアルミニウムカチオン類(Al+3)は、マグネシウムカチオン類(Mg+2)によって置換されていると見られ、これにより、クレー構造の板状体層に対して正味、負の電荷を生ずる。このような負の電荷は、アルミノシリケートの複数の層または複数の板状体の間の空間(場合によっては、“ギャラリー(galleries)”と称す)内で、クレー内で自然に発生する、水和されたナトリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウムおよび/またはカリウムカチオンと(通常、主として、ナトリウムイオンと)、バランスをとっていると見られる。
【0031】
本発明の説明にて、用語“phr”は、エラストマー100重量部当りの物質の重量部を表すために使用される。用語“ゴム”および“エラストマー”は、特に断らない限り、互換的に使用することができる。用語“加硫された”および“硬化された”は、互換的に使用することができ、同様に、“未加硫の”または“未硬化の”も、また、特に断らない限り、互換的に使用することができる。
【0032】
1つの実施態様にて、(カチオンエラストマー粒子のエラストマーホスト内、その場(in situ)で)、水膨潤可能なクレーからの少なくとも部分的に剥脱された複数の板状体、およびエラストマーからなるナノ複合材料を製造する方法は、
(A) RAFTマクロ開始剤の存在下にて、モノマーの水性調節された遊離基重合によって製造される1つ以上のカチオン帯電されたブロックを含有する両親媒性のブロックコポリマーからなる水性予備成形されたエラストマーラテックスと;
(B) クレー(例えば、スメクタイトクレー)についての層間挿入剤を除いて、前記層間のその空間内にカチオン交換可能なイオンを含有する、多層の水膨潤可能なクレーと水との水性混合物とをブレンドする各工程を含み;前記水膨潤可能なクレーが、前記板状体間の水膨潤された(膨張された)空間と複数の積み重ねられた板状体とからなり、前記空間が、その中に、カチオンイオン交換可能なイオン類を含有し、それが、自然に生じうる(例えば、前記空間内にナトリウムイオンを含有するモントモリロナイトクレー)、という方法である。
【0033】
実際には、本方法は、エラストマーラテックス内の両親媒性ブロックコポリマーのカチオン帯電されたブロックの前記カチオンと、クレーの積み重ねられた板状体間の空間中の前記カチオン交換可能なイオンとの間のイオン交換に、少なくとも一部依拠し、それにより、クレーの個々の板状体間の分離を伸張し、少なくとも部分的に剥脱された板状体を生成し、ラテックスからエラストマー粒子を不安定化および凝固させ、それによって、凝固したラテックス粒子のマトリックス内の少なくとも部分的に剥脱された複数の板状体の分散液からなるナノ複合材料を生成する。
【0034】
1つの実施態様にて、予備形成された両親媒性ブロックコポリマーエラストマーを製造するためのモノマーは、また、少量(例えば、合計モノマーに基づき、約0.1〜約20、あるいは、約0.1〜約10重量パーセント)のアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-アルキルアクリルアミド、N-アルキルメタクリルアミド、N,N-ジアルキルアクリルアミドおよびN,N-ジアルキルメタクリルアミド(ここで、前記アルキル基は、1〜4個の炭素原子を含有する);アルファメチルスチレン、2-ビニルピリジンおよび4-ビニルピリジン、からなる追加の共重合可能なモノマーを含有する。
【0035】
前記追加の重合可能なモノマーの当該アルキル基の典型的な例は、例えば、メチル、エチル、プロピルおよびブチル基である。
1つの実施態様にて、前記予備成形された両親媒性ブロックコポリマーエラストマーを製造するためのモノマーは、また、例えば、ヒドロキシルプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、4-アニリノフェニルメタクリルアミド、2-ヒドロキシエチルアクリレートおよび2-ヒドロキシエチルメタクリレートから選択される少量(例えば、合計モノマーに基づき、約0.1〜約20、あるいは、約0.1〜約10重量パーセント)のエラストマー官能化モノマーを含有してもよい。
【0036】
処理されるべきクレー(例えば、スメクタイトクレー)の量、したがって、ナノ複合材料に含有されるべき剥脱され、ポリマー結合された板状体の量は、エラストマーラテックス中に少なくとも1つのカチオンブロックを含有する両親媒性ブロックコポリマーによって提供されるカチオン帯電されたブロックの利用可能な量によって制限されうる。
【0037】
したがって、水膨潤可能なクレー(例えば、スメクタイトクレー)と両親媒性ブロックコポリマーエラストマーラテックス中の利用可能なカチオン帯電されたブロックとの有意な量を定量的に表面処理することが所望される場合、水膨潤可能なクレーの空間内のカチオンイオン交換可能なイオンの全てまたは実質的に全てでイオン交換するのは不十分であり、その時、クレーの不完全な表面処理が生ずるであろう。特有の結果は、生ずるナノ複合材料が、表面処理されたクレー、および、エラストマー用の充填剤としてのみ有効であり有効な粒状強化ではないとここでは考えられる、有意な量の表面処理されていないクレーについての、両方の分散液を含有するエラストマーによって構成されうることである。
【0038】
したがって、水膨潤可能なクレーの空間内の、両親媒性ブロックコポリマーのカチオン帯電されたブロックと、カチオン交換可能なイオン類との間の有効な相互作用イオン交換のために、ラテックスに加えられるべき水膨潤可能なクレー(例えば、スメクタイトクレー)の有効量は、造形ラテックス中の両親媒性のブロックコポリマー内のカチオン帯電されたブロックの量によって制限される。
【0039】
1つの実施態様にて、ゴム複合材料は、少なくとも1つの追加のエラストマーと前記ナノ複合材料のブレンドとして提供され、同様に、前記ナノ複合材料を製造し、ついで、少なくとも1つのエラストマー、特に、ジエンに基づくエラストマーをそれとブレンドすることによるゴム複合材料を製造する方法も提供される。
【0040】
1つの実施態様にて、前記ナノ複合材料および/または前記ゴム複合材料からなる少なくとも1つの成分を有する製造物品;および、前記ナノ複合材料および/または前記ゴム複合材料を製造し、ついで、前記製造物品を製造することによる製造複合材料物品を製造するための方法も提供される。
【0041】
1つの実施態様にて、前記ナノ複合材料および/または前記ゴム複合材料からなる少なくとも1つの成分を有するタイヤが提供される。本発明の1つの態様にて、前記成分は、例えば、タイヤトレッドであってもよく;および、前記ナノ複合材料および/または前記ゴム複合材料を製造し、ついで、前記タイヤを製造する方法であってもよい。
【0042】
少なくとも1つのカチオンブロックラテックスを含有する両親媒性のブロックコポリマーは、水、エラストマー粒子および遊離基重合開始剤によって構成される。ラテックスそれ自体は、遊離基開始剤およびRAFT剤の存在下にて、水をベースとする媒体中、モノマーの調節された遊離基重合によって製造される。
【0043】
本発明は、両親媒性のブロックコポリマーを製造する方法であって、
(A) (1) 4-ビニルピリジン、
(2) トリチオカーボネートRAFT剤、および、乳化剤からなり、その乳化剤が、潜伏性の(latent)界面活性剤と界面活性剤賦活剤との反応により、水性重合媒体内で、その場で(in situ)製造される第1の水性重合媒体を調製し;
(B) 第1の遊離基開始剤の存在下にて4-ビニルピリジンを前記第1の水性重合媒体内で重合させて、ポリ(4-ビニルピリジン)を生成させ;
(C) ポリ(4-ビニルピリジン)をプロトン化して、プロトン化されたポリ(4-ビニルピリジン)RAFTマクロ開始剤を形成し;
(D) プロトン化されたポリ(4-ビニルピリジン)RAFTマクロ開始剤とエチレン性不飽和結合を含有するモノマーとからなるが、界面活性剤を除く、第2の水性重合媒体を調製し;
(E) 第2の遊離基開始剤の存在下に100℃未満の温度で、第2の水性媒体内でエチレン性不飽和結合を含有するモノマーと前記プロトン化されたポリ(4-ビニルピリジン)RAFTマクロ開始剤とを重合させて、エチレン性不飽和結合を含有するモノマーと4-ビニルピリジンとの両親媒性のブロックコポリマーを生成させる;
各工程を含む。
【0044】
本発明の方法は、2つのRAFT調節重合を伴い、第1に、4-ビニルピリジンのRAFT調節重合;続いて、プロトン化することによる、プロトン化されたポリ(4-ビニルピリジン)RAFTマクロ開始剤の生成;および、第2に、プロトン化されたポリ(4-ビニルピリジン)RAFTマクロ開始剤の、エチレン性不飽和結合を含有する第2のモノマーとのRAFT調節重合による両親媒性ブロックコポリマーの生成である。
【0045】
RAFT調節された重合は、バッチ、半バッチまたは連続法であってもよく、これは、ポリマー組成および形態の優れたコントロールを提供する。調節された重合は、通常、エマルジョン重合法として実施される。
【0046】
4-ビニルピリジンのRAFT調節重合にて、トリチオカーボネートRAFT剤が使用される。当分野公知のトリチオカーボネートRAFT剤のいずれも使用することができ、例えば、1つの実施態様にて、トリチオカーボネートRAFT剤は、米国特許出願シリアルNo.10/721,718に開示されている通りであり、この出願は、参考とすることによって、本明細書に完全に組み込む。もう1つの実施態様にて、トリチオカーボネートRAFT剤は、構造式:
【0047】
【化1】

[式中、R1は、1〜12個の炭素原子を有する二価のアルキル基であり;R2およびR3は、各々、独立に、水素または1〜12個の炭素原子を有するアルキル基であり;R4は、-OHまたは-COOHであるが、ただし、R1、R2およびR3の合計炭素原子は、12以下であり、Yは、遊離基付加についてビニル炭素を活性化しうる官能基を表す。]
を有する。
【0048】
1つの実施態様にて、Yは、-C(R’)2CN、-C(CH3)2Ar、-C(CH3)2COOR’’、-C(CH3)2CONHR’’、-C(CH3)2CH2C(CH3)、-CH(CH3)Ar、-CH2Ar、-C(CH3)3、-CR’2COOH、-C(R’)(CN)-(CH2)n-COOHおよび-C(R’)(CN)-(CH2)n-OHからなる群より選択される官能基を表し;R’が、1〜12個の炭素原子を含有する直鎖または分岐炭化水素を表し;Arが、未置換または置換されたフェニル、ナフチル、アントラセニル、ピレニルまたはピリジル基を表し;nが、1〜8の整数を表す。
【0049】
もう1つの実施態様にて、Yは、ベンジル、ピコリルまたはt-ブチルからなる群より選択される官能基を表す。
もう1つの実施態様にて、R1は、1〜4個の炭素原子を有する二価のアルキル基であり、すなわち、R1 は(CH2)mであり、mは、1〜4の範囲である。
【0050】
もう1つの実施態様にて、R1は(CH2)9であり、R2およびR3は水素であり、R4は-COOHであり、Yはベンジルであり、遊離基調節剤はS-ベンジル-S’-(11-ウンデカン酸)トリチオカーボネートである。
【0051】
もう1つの実施態様にて、R1はCH2であり、R2は(CH2)8であり、R3は水素であり、R4は-OHであり、Yはベンジルであり、遊離基調節剤はS-ベンジル-S’-(2-ヒドロキシデシル)トリチオカーボネートである
もう1つの実施態様にて、R1はCH2であり、R2は(CH2)8であり、R3は水素であり、R4は-OHであり、Yは4-ピコリルであり、遊離基調節剤はS-ベンジル-S’-(2-ヒドロキシデシル)トリチオカーボネートである。
【0052】
RAFT調節された重合は、望ましくない副反応、例えば、連鎖停止を最小としつつ、重合過程を調節するための遊離基調節剤の存在を必要とする。調節剤は、重合の機構、使用されるモノマーのタイプ、開始のタイプ、溶剤システムおよび反応条件を含め、重合の詳細に大きく依存する特徴を有する。調節剤は、多くの異なる方法によってエマルジョンシステムに導入され、好ましい方法は、実施される個々の実施態様に大きく依存する。幾つかの実施態様にて、活性な調節剤は、純粋な化合物の形態または溶液もしくは混合物の成分として反応容器に直接加えることができる。その他の実施態様にて、活性な調節剤は、乳化前、間または後に生ずる化学反応からその場で(in situ)発生させることができる。
【0053】
調節剤を導入または発生させるために使用される方法の如何にかかわらず、本発明について適した調節剤は、“活発な(living)”重合動力学を伴う1つ以上の利点を提供する。これらの利点としては、
(A) 重合度の時間の関数としての直線依存性;
(B) 数平均分子量(Mn)の重合の程度に及ぼす直線依存性;
(C) 変換とは鋭敏に独立な一定数のポリマー分子および活性中心;
(D) Mw/Mnが、概して、2未満、好ましくは、1.1〜1.8、多くは、1.4より低い狭い分子量分布;および、
(E) さらなるモノマーの添加の際に重合を継続する能力を有するモノマーのポリマーへの本質的に完全な変換;
が挙げられる。
【0054】
全ての重合反応は開始する必要がある。幾つかのモノマー、例えば、スチレンについては、例えば、熱的自己開始反応は、追加の試薬を必要とせずして起こりうる。多くのその他のモノマーについては、重合開始は、重合を伝達しうる中間体を究極的に生ずる1つ以上の化学反応をきっかけとするために、薬剤を添加することによって実行することができる。これらの薬剤は、“開始剤”と称されることが多い。
【0055】
本発明に適した開始剤のタイプは、重合の機構、使用されるモノマーのタイプ、調節剤のタイプ、溶剤システムおよび反応条件を含め、重合の詳細に大きく依存する。多くの異なるタイプの開始剤が検討されている。
【0056】
開始剤は、遊離基機構、例えばRAFT;または、安定な遊離基を含む関連機構による重合のための開始剤となりうるのがよい。典型的には、遊離基重合に適した開始剤は、遊離基を生じうる試薬またはそうのような試薬の組み合わせである。イオン化照射(60Co γ線)への暴露、光化学反応または超音波処理を含め、遊離基を生じさせるためのその他の方法も、当業者であれば、遊離基重合を開始するための適当な方法として明らかであろう。
【0057】
一般的に使用される遊離基開始剤の幾つかの典型的な例としては、種々の過酸化化合物、例えば、カリウムパーサルフェート、アンモニウムパーサルフェート、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、ジ-t-ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキシド、デカノイルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、p-メンタンヒドロパーオキシド、t-ブチルヒドロパーオキシド、アセチルアセトンパーオキシド、ジセチルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシベンゾエート、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド等;種々のアゾ化合物、例えば、2-t-ブチルアゾ-2-シアノプロパン、ジメチルアゾジイソブチレート、アゾジイソブチロニトリル、2-t-ブチルアゾ-1-シアノシクロヘキサン、1-t-アミルアゾ-1-シアノシクロヘキサン等;種々のアルキルパーケタール、例えば、2,2-bis-(t-ブチルパーオキシ)ブタン、エチル3,3-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブチレート、1,1-ジ-(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等が挙げられる。パーサルフェート開始剤、例えば、カリウムパーサルフェートおよびアンモニウムパーサルフェートが、このような水性エマルジョン重合にて特に有用である。
【0058】
重合は、また、レドックス開始剤、例えば、キレート化した鉄塩類、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートおよび有機ヒドロパーオキシドの組み合わせを使用して発生される遊離基で開始することもできる。このような有機ヒドロパーオキシドの幾つかの典型的な例としては、クメンヒドロパーオキシド、パラメンタンヒドロパーオキシドおよび第3級ブチルヒドロパーオキシドが挙げられる。第3級ブチルヒドロパーオキシド(t-BHP)、第3級ブチルパーアセテート(t-BPA)および“アゾ”開始剤、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)が遊離基を発生するのに使用して好ましい。
【0059】
バッチ操作にて、重合時間は、所望される通りに変化させることができ;それは、例えば、数分〜数日まで変化させることができる。バッチプロセスにおける重合は、モノマーがもはや吸収されなくなるかまたはそれより早い時に、所望される場合には、例えば、反応混合物が過度に粘稠となる場合に、終了させられる。連続操作では、重合混合物は、いずれかの適当な設計の反応器システムを通過させるのがよい。このような場合の重合反応は、滞留時間を変えることによって適当に調節される。滞留時間は、反応器システムのタイプおよび反応器のサイズとともに変化させることができ、例えば、10〜15分から24時間以上である。
【0060】
本発明の重要な態様は、その場(in situ)での乳化であり、乳化は、“潜伏性の界面活性剤(latent surfactant)”を“界面活性剤賦活剤(surfactant activator)”と反応させることによって実行され、調節されたエマルジョン重合用の界面活性剤を生成する。本明細書にて使用する場合、“潜伏性の界面活性剤”という用語は、(i) 水と混和しないモノマー含有溶液に溶解性であり;そして、(ii) 慣用的な界面活性剤レベルで、化合物または化合物の混合物をモノマー含有溶液および水と単に緩やかに混合することにより、安定化されたコロイド状のミクロエマルジョンを独立に生成しえない;化合物または化合物の混合物をいう。“界面活性剤賦活剤”という用語は、本明細書にて、(i) 水に溶解性であり;そして、(ii) 慣用的な界面活性剤レベルで化合物または化合物の混合物をモノマー含有溶液および水と単に緩やかに混合することにより安定化されたコロイド状のミクロエマルジョンを独立に生成しえない;化合物または化合物の混合物を記載するために使用される。本発明について、水は、その場での(in situ)乳化反応のための反応体であってもよいが、水単独では、界面活性剤賦活剤とはなりえない。本発明に従い使用することのできる調節された重合プロセスにおけるin situ乳化技術は、2003年11月25日に出願された米国特許出願シリアルNo.10/721,718に記載されている。米国特許出願シリアルNo.10/721,718は、それらの全体を参考とすることによって本明細書に組み込む。
【0061】
In situミクロエマルジョンについての基本的な原理は、Prokopov and Gritskova(Russ.Chem.,Rev.2001,70,791)に記載されており、彼らは、脂肪酸の中和によりその場(in situ)にて製造されるアルカリ金属石鹸を使用するスチレンの慣用的な遊離基重合におけるその使用を検討している。Prokopov and Gritskovaにより説明されているように、乳化の間のスチレン-水界面でのカルボキシレート石鹸の製造は、界面にて生ずる豊富な乳化剤によって、界面張力が有意に低下するので、微細なミクロエマルジョンを生成することができる。界面での界面活性剤合成にて使用されるカルボン酸および金属対イオンの性質を変化させることにより、エマルジョンの分散度および安定性を調節することが可能であり、同様に、慣用的な遊離基重合により生成される、その結果として生ずるポリスチレンラテックスの分散度および安定性をも調節することができる。本発明にて、in situミクロエマルジョンの原理は、疎水物質または特殊な乳化装置なしで、慣用的な石鹸レベルを使用する多種多様な方法により、調節された重合に適するエマルジョンを生成させるために広く拡張される。
【0062】
幾つかの実施態様にて、調節された重合用の界面活性剤は、モノマー/水界面での酸/塩基中和反応によって生成されうる。幾つかのタイプのアニオン界面活性剤については、これは、例えば、モノマー溶解性の酸の水性塩基との反応により、達成することができ、モノマー溶解性の酸は、潜伏性の界面活性剤であり、塩基は、in situ乳化のための界面活性剤賦活剤である。適当なモノマー溶解性の酸としては、例えば、パルミチン酸、オレイン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ラウリルサルフェート、ヘキサデシルスルホン酸、ジヘキサデシルホスホン酸、ヘキサデシルコハク酸半エステル、および、コハク酸のモノヘキサデシルアミドが挙げられる。適当な塩基としては、例えば、アルカリ金属イオンおよび第4級アンモニウムイオンの水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩;置換および未置換アミン類;ならびに、塩基性窒素含有ヘテロ化合物が挙げられる。当業者であれば、モノマー溶解性の酸のおおよそのpKa未満のpKbを有するいずれの水性塩基もまた適当でありうることが明らかであろう。また、感湿性の化合物、例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムアミド、カリウムヒドリド等の加水分解によりその場で(in situ)発生させる水酸化物も、また、界面活性剤賦活剤として適当でありうる。
【0063】
例えば、米国特許出願シリアルNo.10/721,718に記載されている反応を含め、その場(in situ)で界面活性剤を合成するために、多くのその他の反応を使用することができ、上記例示した具体的な実施態様は、乳化の間に界面活性剤を生ずる潜伏性の界面活性剤/界面活性剤賦活剤のいずれの組み合わせも除外する意図はない。当業者であれば、その他の潜伏性界面活性剤/界面活性剤の組み合わせも、界面活性剤合成と調節された重合の化学が適合する時、適していることが理解されるであろう。
【0064】
RAFT剤の存在下でのRAFT調節された重合によって生成されるポリ(4-ビニルピリジン)は、限定するつもりはないが、例えば、濾過、溶解および結晶化を含め、当分野公知の方法を使用し、第1の重合媒体から単離することができる。ポリ(4-ビニルピリジン)は、ついで、プロトン化されて、プロトン化されたポリ(4-ビニルピリジン)RAFTマクロ開始剤を生成する。ポリ(4-ビニルピリジエン)のプロトン化は、例えば、無機強酸、例えば、塩化水素酸等を使用して、達成される。プロトン化は、酸の水溶液にポリ(4-ビニルピリジン)を溶解させることによって達成することができる。
【0065】
プロトン化されたポリ(4-ビニルピリジン)RAFTマクロ開始剤は、エチレン性不飽和結合を含有する少なくとも1つのモノマーと第2の重合に使用されて、両親媒性ブロックコポリマーを生ずる。
【0066】
第2の重合にて使用されるエチレン性不飽和結合を含有する、適したモノマーとしては、スチレン、置換されたスチレン、アルキルアクリレート、置換されたアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、置換されたアルキルメタクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N-ジアルキルアクリルアミド、N,N-ジアルキルメタクリルアミド、イソプレン、1,3-ブタジエン、エチレン、ビニルアセテート、ビニルクロライド、ビニリデンクロライドおよびそれらの組み合わせから選ばれる少なくとも1つのモノマーが挙げられる。これらのモノマーの官能化された変種も、また、使用することができる。本発明にて使用することができ、それから誘導可能な具体的なモノマーまたはコモノマーとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート(全ての異性体)、ブチルメタクリレート(全ての異性体)、2-エチルヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、メタクリル酸、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、メタクリロニトリル、α-メチルスチレン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート(全ての異性体)、ブチルアクリレート(全ての異性体)、2-エチルヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、アクリル酸、ベンジルアクリレート、フェニルアクリレート、アクリロニトリル、スチレン、グリシジルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート(全ての異性体)、ヒドロキシブチルメタクリレート(全ての異性体)、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート、トリエチレングリコールメタクリレート、無水イタコン酸、イタコン酸、グリシジルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート(全ての異性体)、ヒドロキシブチルアクリレート(全ての異性体)、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジエチルアミノエチルアクリレート、トリエチレングリコールアクリレート、メタクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-t-ブチルメタクリルアミド、N-n-ブチルメタクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、N-エチロールメタクリルアミド、N-t-ブチルアクリルアミド、N-n-ブチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-エチロールアクルアミド、ビニル安息香酸(全ての異性体)、ジエチルアミノスチレン(全ての異性体)、α-メチルビニル安息香酸(全ての異性体)、ジエチルアミノα-メチルスチレン(全ての異性体)、p-ビニルベンゼンスルホン酸、p-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、トリエトキシシリルプロピルメタクリレート、トリブトキシシリルプロピルメタクリレート、ジメトキシメチルシリルプロピルメタクリレート、ジエトキシメチルシリルプロピルメタクリレート、ジブトキシメチルシリルプロピルメタクリレート、ジイソプロピルメチルシリルプロピルメタクリレート、ジメトキシシリルプロピルメタクリレート、ジエトキシシリルプロピルメタクリレート、ジブトキシシリルプロピルメタクリレート、ジイソプロポキシシリルプロピルメタクリレート、トリメトキシシリルプロピルアクリレート、トリエトキシシリルプロピルアクリレート、トリブトキシシリルプロピルアクリレート、ジメトキシメチルシリルプロピルアクリレート、ジエトキシメチルシリルプロピルアクリレート、ジブトキシメチルシリルプロピルアクリレート、ジイソプロポキシメチルシリルプロピルアクリレート、ジメトキシシリルプロピルアクリレート、ジエトキシシリルプロピルアクリレート、ジブトキシシリルプロピルアクリレート、ジイソプロポキシシリルプロピルアクリレート、無水マレイン酸、N-フェニルマレイミド、N-ブチルマレイミド、クロロプレン、エチレン、ビニルアセテート、ビニルクロライド、ビニリデンクロライド、2-(2-オキソ-1-イミダゾリジニル)エチル2-メチル-2-プロペノエート、1-[2-[2-ヒドロキシ-3-(2-プロピル)プロピル]アミノ]エチル-2-イミダゾリジノン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルイミダゾール、クロトン酸、ビニルスルホン酸およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0067】
1つの実施態様にて、エチレン性不飽和結合を含むモノマーは、スチレン、イソプレンおよびブタジエンから選択される。1つの実施態様にて、エチレン性不飽和結合を含むモノマーは、スチレンおよびブタジエンから選択される。
【0068】
本発明の重要な態様は、第2の重合工程の“界面活性剤なしの”性質にかかっている。すなわち、その場で(in situ)またはその他のいずれかで発生させる追加の界面活性剤が、第2の重合工程には存在しない。プロトン化されたポリ(4-ビニルピリジン)RAFTマクロ開始剤は、重合の間に作用して、通常の場合、追加の界面活性剤を必要とせず、自己安定化ブロックコポリマーラテックスを生成する。
【0069】
第2の重合は、100℃未満の温度で行われる。これは、より高価な処理装置およびより高いエネルギーインプットにより、より高い反応温度を必要とするシステムに優り、有益である。
【0070】
両親媒性のブロックコポリマーを含有するラテックスは、クレーの分散液と合わされて、ナノ複合材料を形成する。
多層スメクタイトクレーの水をベースとする分散液は、スメクタイトクレーの層間挿入剤誘発層間挿入(intercalant-induced intercalation)が、スメクタイトクレーの水分散液を水性両親媒性ブロックコポリマーエマルジョンと混合した後に生ずるように、層間挿入物(例えば、第4級アンモニウム塩)を除外することが必要である。
【0071】
スメクタイトクレーの層間挿入(intercalation)およびラテックスからの凝固が実質的に同時に生ずるので、スメクタイトクレー(例えば、モントモリロナイトクレー)は、エラストマーホストラテックス内のその場で(in situ)、スメクタイトクレーをより疎水性の形態にする層間挿入後に、エラストマー(例えば、スチレン/ブタジエンエラストマー)ホストとさらに相溶性となる。ここで、重要なことは、単にモノマーをクレーの存在下で重合させてエラストマーを形成し、続いて、エラストマーを凝固させるのではなく、上述した方法で、このようなスメクタイトクレーの層間挿入および既に形成されたエラストマーの凝固が生ずる、ということである。したがって、本発明の実施により、ここでは、最初にラテックス形態のエラストマーを生成させ、ついで、ナノ複合材料を生成させることによって可能となる、さらに有効な層間挿入の柔軟性をも可能にすると考えられる。
【0072】
水膨潤可能なクレー(例えば、スメクタイトクレー)の層間挿入と実質的に同時のエラストマーのラテックスからの凝固は、例えば、エラストマーラテックスを水性の水膨潤可能なクレー分散液に緩やかに加え、その間、クレー/水分散液を攪拌することによって行うことができる。このような添加は、本明細書にて、ラテックス粒子と水膨潤された水膨潤可能なクレー粒子との間の良好な接触を可能とすると考えられる。
【0073】
クレー/水は、層間挿入剤を含有せず(例えば、第4級アンモニウム塩を含有せず)、水膨潤可能なクレーの積み重ねられた層の間に含有されたナトリウムイオンとのイオン交換を促進するが、水中の水膨潤可能なクレーは、複数の積み重ねられた板状体間の空間が幾分拡大するような膨潤された状態にあると考えられる。このような処理法については、ラテックスは、例えば、約20℃〜約30℃の温度で、約40℃〜約80℃の範囲の高温を有する水中のクレーの分散攪拌液に添加するのがよい。何故ならば、本明細書にて、クレーは、高温でさらに容易に水に分散されると考えられるからである。高温でのクレー/水分散液のこのような使用は、分散液に添加されるラテックスの温度より少なくとも40℃高いのが好ましく、本明細書にて、
(A) 水膨潤可能なクレーの複数の積み重ねられた板状体と、カチオン界面活性剤との間の、空間内における、カチオン交換可能なイオン(例えば、ナトリウムイオン)のイオン移動機構;
(B) エラストマーラテックスおよび、それによる、エラストマー粒子の不安定化;
(C) ポリマー結合された板状体を形成するのを助けるために、膨潤され層間挿入されたクレーの、複数の板状体間の空間内へのエラストマー粒子の移動;
(D) および、エラストマーホスト内のポリマー結合された板状体の実質的な剥脱;および、
(E) 不安定化されたエラストマーラテックスからのエラストマー粒子の凝固;
の実質的に同時の組み合わせがさらに効率を促進するのに有用であると考えられる。
【0074】
このような工程の実質的に同時の効果は、これらの工程の一部が事実上幾分部分的に逐次的であってもよいが、クレーのさらに有効なカチオン層間挿入およびポリマー結合された複数の板状体の実質的な剥脱を促進するように、層間挿入されたクレーと、その実質的に剥脱されポリマー結合された複数の板状体とのさらに効率的な均一分散とを行うことであり、このことは、この工程による本発明の機能強化されたナノ複合材料の形成において、本発明の最も重要な、結果として得られる特徴になりうる。
【0075】
生ずるナノ複合材料は、追加のエラストマーとブレンドされて、ゴム複合材料を生ずる。例えば、ゴム複合材料は、ナノ複合材料を種々の追加のジエンに基づくエラストマー、例えば、イソプレンおよび1,3-ブタジエンから選択されるホモポリマーとコポリマー、およびイソプレンおよび1,3-ブタジエン;ならびに、スチレンおよびα-メチルスチレン、好ましくはスチレン、から選択されるビニル芳香族化合物から選択される少なくとも1つのジエンのコポリマー、とのブレンドによって製造することができる。
【0076】
このような追加の共役ジエンをベースとするエラストマーの典型的な例は、例えば、cis−1,4−ポリイソプレン(天然および合成)、cis−1,4−ポリブタジエン、スチレン/ブタジエンコポリマー(水性エマルジョン重合で製造されたおよび有機溶剤溶液重合製造されたもの)、約15〜約90パーセントの範囲内のビニル1,2-含量を有する中程度のビニルポリブタジエン、イソプレン/ブタジエンコポリマー、スチレン/イソプレン/ブタジエンターポリマーである。錫カップリングされたエラストマー、例えば、錫カップリングされた有機溶液重合製造されたスチレン/ブタジエンコポリマー、イソプレン/ブタジエンコポリマー、スチレン/イソプレンコポリマー、ポリブタジエンおよびスチレン/イソプレン/ブタジエンターポリマーも、また、使用することができる。
【0077】
1つの実施態様にて、ナノ複合材料および/またはゴム複合材料、特に、複数の剥脱された板状体のための粒状強化剤として、また、通常、約5〜約100、あるいは、約5〜約90phrの範囲の量の、カーボンブラックおよび/または粒状合成アモルファスシリカ、特に、沈降させたシリカ、または、カーボンブラックとこのようなアモルファスシリカとの組み合わせを挙げることもできる。このようなカーボンブラックとシリカとの組み合わせを使用する場合、通常、少なくとも約5phrのカーボンブラックおよび少なくとも10phrのシリカが使用される。例えば、約1/5〜約5/1の範囲のシリカ対カーボンブラックの重量比を使用することができる。
【0078】
1つの実施態様にて、100重量部のエラストマー当りの重量部(phr)に基づき、
(A) 本発明のナノ複合材料、約5〜約150、あるいは、約5〜約115phr;
(B) ナノ複合材料と追加のジエンに基づくエラストマーに含まれるエラストマーの合計が100重量部であることを条件として、少なくとも1つの追加のジエンに基づくエラストマー0〜約95、あるいは、約5〜約95phr;
(C) カーボンブラック、沈降シリカ凝集体、その表面上にシリカの領域を含有するシリカ含有カーボンブラック、および、それらの混合物から選択される少なくとも1つの追加の強化粒状充填剤0〜約80、または、約10〜約80phr、あるいは、約10〜約60phr;および、場合によっては、
(D) 剥脱された複数の板状体の、板状体の表面の周辺縁上に含有されるヒドロキシル基(例えば、シラノール基)と反応性であり、前記沈降させたシリカおよび前記シリカ含有カーボンブラックの表面上に含有されるヒドロキシル基(例えば、シラノール基)と反応性である部分と、前記シリカおよび/またはシリカ含有カーボンブラックを使用する場合に、前記ナノ複合材料のエラストマーおよび少なくとも1つの前記追加のエラストマーの、前記ジエンに基づくエラストマーとの少なくとも1つと相互作用するもう1つの部分、とを含有するカップリング剤;
を含むゴム組成物が提供される。
【0079】
一般に使用される合成アモルファスシリカまたはゴム配合用途に使用されるシリカを含む顔料は、本発明にてシリカとして使用することができるが、沈降させたシリカの凝集体が、通常、好ましい。
【0080】
本発明にて、好ましくは、使用される沈降させたシリカの凝集体は、例えば、溶解性のケイ酸塩、例えば、ケイ酸ナトリウムの酸性化によって得られる沈降させたシリカであり、共沈させたシリカおよび少量のアルミニウムを含んでもよい。
【0081】
このようなシリカは、通常、窒素ガスを使用して測定されるBET表面積、好ましくは、約40〜約600平方メートル/グラムの範囲、さらに通常、約50〜約300平方メートル/グラムの範囲を特徴とする。表面積を測定するBET法は、Journal of the American Chemical Society,Volume 60,Page 304(1930)に記載されている。
【0082】
シリカは、典型的には、約50〜約400cm3/100gの範囲のジブチルフタレート(DBP)吸収値、さらに通常は、約100〜約300cm3/100gを有することを特徴とする。
種々の市販入手可能な沈降させたシリカも本発明にて使用されると考えられ、本明細書にて、単なる例として挙げられ、何の制限も伴わず、例えば、称呼Hi-Sil 210、Hi-Sil 243等を有するHi-Sil商標の元にPPG Industriesからのシリカ;例えば、Zeosil 1165 MPおよびZeosil 165 GRのようなRhodiaからのシリカ;例えば、称呼VN2、VN3およびUltrasil 7005を有するDegussa AGからのシリカであり、また、その他の等級のシリカ、特に、沈降させたシリカも使用することができ、これらは、エラストマーの強化のために使用することができる。
【0083】
先に考察したように、所望される場合には、種々のカップリング剤を使用することもできる。例えば、そのポリスルフィド架橋に平均2〜2.6個、または、3.5〜4個の結合硫黄原子、好ましくは、2〜2.6個の硫黄原子を有するビス(3-トリアルコキシシリルアルキル)ポリスルフィドを使用することができ、特に、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドが好ましい。
【0084】
当業者であれば、ナノ複合材料またはゴム複合材料は、ゴム配合技術にて概して公知の方法、例えば、種々の硫黄加硫可能な成分ゴムと種々の一般に使用されている添加材料、例えば、硬化助剤、例えば、硫黄、賦活剤、難燃剤および促進剤との混合;加工添加剤、例えば、オイル;粘着樹脂を含め、樹脂;シリカ;および、可塑剤;充填剤;顔料;脂肪酸;酸化亜鉛;ワックス;抗酸化剤およびオゾン亀裂防止剤;ペプチド剤;および、強化材、例えば、カーボンブラックとの混合によって配合されるであろう。当業者公知のように、硫黄加硫可能かつ硫黄加硫された材料(ゴム)の意図する用途に応じて、上記した添加剤が選択され、かつ、慣用的な量が、一般に使用される。
【0085】
使用される場合、粘着樹脂の典型的な量は、約0.5〜約10phr、通常、約1〜約5phrを含む。加工助剤の実質的な量は、約1〜約50phrを占める。このような加工助剤としては、例えば、芳香族、ナフテン系および/またはパラフィン系加工助剤が挙げられる。抗酸化剤の典型的な量は、約1〜約5phrを占める。典型的な抗酸化剤は、例えば、ジフェニル-p-フェニレンジアミンおよびその他、例えば、The Vanderbilt Rubber Handbook(1978)、Pages344〜346に記載されているものがよい。抗酸化剤の典型的な量は、約1〜5phrを占める。使用される場合、脂肪酸の典型的な量は、ステアリン酸を含むことができ、約0.5〜約3phrを占める。酸化亜鉛の典型的な量は、約1〜約10phrを占める。ワックスの典型的な量は、約1〜約5phrを占める。微結晶質のワックスが使用されることが多い。ペプタイザー(peptizer)の典型的な量は、約0.1〜約1phrを占める。
【0086】
加硫は、典型的には、硫黄加硫剤の存在にて行われるが、過酸化物およびその他の非硫黄硬化剤もエラストマーを加硫するのに使用するのに適当である場合もある。適当な硫黄加硫剤の例としては、元素状の硫黄(遊離硫黄)または硫黄供与加硫剤、例えば、アミンジスルフィド、高分子ポリスルフィドまたは硫黄オレフィン付加体が挙げられる。好ましくは、硫黄加硫剤は、元素状の硫黄である。当業者公知であるように、硫黄加硫剤は、約0.5〜約4phrの範囲の量、なおさらに、若干の場合には、約8phrまでの量が使用される。
【0087】
促進剤は、加硫のために必要とされる時間および/または温度を調節し、加硫物の特性を改良するために使用される。1つの実施態様にて、単一の促進剤システム、すなわち、主促進剤が使用される。慣用的かつ好ましくは、主促進剤は、約0.5〜約4、好ましくは、約0.8〜約1.5phrの範囲の合計量が使用される。もう1つの実施態様にて、主および副促進剤の組み合わせが使用され、副促進剤は、加硫物の特性を活性化および改良するために、少量(約0.05〜約3phr)使用される。これら促進剤の組み合わせは、最終特性に相乗効果を生ずることが期待され、いずれかの促進剤単独の使用によって生ずるものよりも幾分良好である。また、通常の処理温度によっては影響を受けないが、普通の加硫温度で満足する硬化を生ずる遅延作用促進剤も使用することができる。加硫遅延剤もまた使用することができる。本発明にて使用することのできる促進剤の適当なタイプは、アミン類、ジスルフィド類、グアニジン類、チオ尿素類、チアゾール類、チウラム類、スルフェンアミド類、ジチオカーバメイト類およびキサンテート類である。好ましくは、主促進剤は、スルフェンアミドである。第2の促進剤を使用する場合、第2の促進剤は、好ましくは、グアニジン、ジチオカルバメートまたはチウラム化合物である。
【0088】
上記添加剤の存在および相対的な量は、本明細書にて、特に断らない限り、本発明の1つの態様であると考えられ、これは、さらに、主として、ナノ複合材料およびゴム複合材料の製造に係り、タイヤを含め、このようなナノ複合材料および製造される物品をも含み、これは、前記ナノ複合材料および/またはゴム複合材料からなる少なくとも1つの成分を有する。潜在的な用途の拡大列挙およびポリマークレーナノ複合材料組成物の使用は、WO2004/078785 の32-36頁に見ることができる。この引用で覆いきれないさらなる使用は、タイヤ、ベルト、ホース等においてであり、物理的かつ動力学的機構の特性を改良することができる。理想的には、何人も、軽量化しかつ化合物のヒステリセスを低下させるために、ポリマークレーナノ複合材料を効果的に使用したいであろう。
【0089】
ゴム複合材料の製造、すなわち、ゴム組成物の混合は、ゴム混合技術の当業者公知の方法によって達成することができる。例えば、成分は、典型的には、少なくとも2工程、すなわち、少なくとも1つの非生産的工程、続く、生産的混合工程で混合される。最終的な硬化剤は、典型的には、慣用的に“生産的”混合工程と称される最終工程で混合される。この生産的混合工程では、混合が、典型的には続く非生産的混合工程を進行させるよりも低い混合温度である、ある温度または究極温度で行われる。ゴムおよび充填剤、例えば、シリカおよびシリカ処理されたカーボンブラックならびに接着剤は、1つ以上の非生産的混合工程で混合する。“非生産的”および“生産的”混合工程という用語は、ゴム混合技術分野の当業者には、周知である。
【実施例】
【0090】
以下の実施例は、本発明を例示するために示し、本発明を何等限定する意図はない。部およびパーセンテージは、特に断らない限り、重量部および重量パーセントである。
実施例1
ジベンジルトリチオカーボネート(DBTTC)RAFT剤での“in situ”乳化法によるポリ(4-ビニルピリジン)の製造
機械的パドル攪拌器、窒素導入口、ポットサーモメーター、加熱マントルおよび冷却器を備えた500ml三径丸底フラスコに1.33g(〜0.00459mol)のジベンジルトリチオカーボネート、60.0g(〜0.57mol)の蒸留した4-ビニルピリジンと3.6g(〜0.0127mol)のオレイン酸を装填した。攪拌反応器を、ついで、窒素の緩やかな流入でパージしてから、0.36g(〜0.00133mol)のカリウムパーサルフェート、0.88g(〜0.0083mol)の炭酸ナトリウム、0.88g(〜0.010mol)の炭酸水素ナトリウムおよび0.82g(〜0.0126mol)の水酸化カリウムを158gの逆浸透圧(RO)処理した水に溶解させることによって製造した水溶液を加えた。黄色のエマルジョンが即座に形成される。エマルジョンを、ついで、65℃まで急速に加熱し、サーモウオッチコントローラの助けを借りて、そこに保持した。重合の進行は、重量分析法に従った。1時間後、パーセントラテックス固体は、22.6%であるか、または、75%変換であった。1.5時間後、エマルジョンは、不安定化され始めた。加熱は、合計4時間継続した。生ずる混合物は、非常に粘稠な橙色の高分子下方相とほとんど透明な上方水相を有する2相であった。上方をデカンテーションして、下方のポリマー相を水で数回洗浄した。過剰の水の除去後、下方のポリマー相を〜200mlのメタノールに溶解させた。290gのメタノール溶液が単離され、固体含量は、20.0%であった。これは、ポリマー収率58.0gまたは4-ビニルピリジンの94.5%転化率を表す。理論的なMnは、13,300であり、他方、NMRによって決定したおおよそのMnは、〜11,000であった。
【0091】
実施例2
S-ベンジル-S’-(2-ヒドロキシデシル)トリチオカーボネート(BHDTTC)RAFT剤での“in situ”乳化法によるポリ(4-ビニルピリジン)の製造
処理法:DBTTCの代わりに1.80g(〜0.00464mol)のBHDTTC RAFTを使用した以外は、実施例1と同様である。65℃での反応時間4時間後、実施例1と同様に処理した。19.66%固体での289gのメタノール溶液は、56.8gのポリ(4-ビニルピリジン)または92%の転化率を表す。
【0092】
実施例3
ポリ(4-VP+-b-PS-b-4-VP+)トリブロックコポリマーラテックスの製造
実施例1(〜10.0gのポリマー)からの20%ポリ(4-ビニルピリジン)のメタノール溶液50.0gを500mlの単径フラスコに入れ、ロータリーエバポレータで溶剤を取り去った。乾燥させたポリマーに、ついで、110gのRO水および10.0gの濃塩酸を加えた。均一な淡黄色の水溶液が得られるまで、混合物を攪拌した。この溶液は、ついで、機械的パドル攪拌器、窒素導入口、ポットサーモメーター、加熱マントルおよび冷却器を備えた500ml三径丸底フラスコに装填した。0.6gのカリウムパーサルフェートを、ついで、加え、続いて、30.0g(〜0.288mol)のスチレンを加えた。二相攪拌混合物は、ついで、窒素下、65℃まで8時間急速に加熱した。最終のラテックス固体は、26.7%(理論値27.1%)または98.5%転化率であると決定された。最終ラテックスの小部分を分析するために希釈した水酸化カリウム中で凝固させた。NMRは、25.8%のポリ(4-VP)および74.2%のポリスチレン(理論値25%ポリ(4-VP)および75%PS)の組成を示した。ラテックス粒子サイズは、〜182nmであった。
【0093】
実施例4
ポリ(4-VP+-b-PS)ジブロックコポリマーラテックスの製造
実施例2からの19.66%ポリ(4-ビニルピリジン)メタノール溶液50.5g(〜10.0gポリマー)を500mlの単径フラスコに入れ、ロータリーエバポレータで溶剤を取り去った。乾燥させたポリマーに、ついで、110gのRO水および10.0gの濃塩酸を加えた。均一な淡黄色の水溶液が得られるまで、混合物を攪拌した。この溶液は、ついで、機械的パドル攪拌器、窒素導入口、ポットサーモメーター、加熱マントルおよび冷却器を備えた500ml三径丸底フラスコに装填した。0.43gのカリウムパーサルフェートを、ついで、加え、続いて、30.0g(〜0.288mol)のスチレンを加えた。二相攪拌混合物は、ついで、窒素下、65℃まで急速に加熱した。わずか2時間後、ラテックス固体は、27%(理論値27.1%)または〜100%転化率であると決定された。最終ラテックスの小部分を分析するために希釈した水酸化カリウム中で凝固させた。NMRは、24.8%のポリ(4-VP)および75.2%のポリスチレン(理論値25%ポリ(4-VP)および75%PS)の組成を示した。ラテックス粒子サイズは、〜150nmであった。
【0094】
実施例5
S-ベンジル-S’-(2-ヒドロキシデシル)トリチオカーボネート(BHDTTC)RAFT剤での“in situ”乳化法によるポリ(4-ビニルピリジン)の繰り返し製造
処理法:2.23スケール因子以外は実施例2と同様である。65℃での反応時間4時間後、実施例1と同様に反応を処理した。24.4%固体での505gのメタノール溶液は、123.2gのポリ(4-ビニルピリジン)または92%の転化率を表す。
【0095】
実施例6
ポリ(4-VP+-b-PS-b-NIPAM)トリブロックコポリマーラテックスの製造
実施例5からの24.4%ポリ(4-ビニルピリジン)メタノール溶液41g(〜10.0gポリマー)を500mlの単径フラスコに入れ、ロータリーエバポレータで溶剤を取り去った。乾燥させたポリマーに、ついで、110gのRO水および10.0gの濃塩酸を加えた。均一な淡黄色の水溶液が得られるまで、混合物を攪拌した。この溶液は、ついで、機械的パドル攪拌器、窒素導入口、ポットサーモメーター、加熱マントルおよび冷却器を備えた500ml三径丸底フラスコに装填した。0.43gのカリウムパーサルフェートを、ついで、加え、続いて、30.0g(〜0.288mol)のスチレンを加えた。二相攪拌混合物は、ついで、窒素下、70℃まで急速に加熱した。3時間後、ラテックス固体は、28.1パーセントであり、本質的に完全なスチレン転化率を示した。この時点で、10.0g(0.088mol)のN-イソプロピルアクリルアミドモノマー(NIPAM)を高温のラテックスに加え、反応をさらに2.5時間継続した。ラテックスは、非常に粘稠となり、室温で一晩放置した。ラテックスは、ついで、100mlの水で希釈し、希水酸化カリウム溶液中で凝固させた。濾過後、洗浄および乾燥させ、47.5gのポリマーを単離(理論量50.0g)するかまたは95%転化させた。乾燥させた材料は、ジクロロメタンに完全に溶解性であった。NMR分析では、重量パーセントで、18.7パーセントの4-VP;61.9パーセントのスチレン;および、19.4パーセントのNIPAMのwtパーセント組成を示した。計算値は、20/60/20である。ポリスチレン標準に対してのSEC分析は、Mn374,000およびPDI1.47を有する単一モードを示した。
【0096】
実施例7
ポリ(4-VP+-b-SBR)ジブロックコポリマーラテックスの製造
実施例5からのメタノール溶液483gの溶剤を取り去り、残渣を118gの濃塩酸を含有する1300mlのRO水に溶解させて、プロトン化された水溶性ポリ(4-ビニルピリジン)RAFTマクロ開始剤の9.9%水溶液を調製した。1gのカリウムパーサルフェートを、ついで、9.9%マクロ開始剤水溶液の252.5g(〜25gポリマー)に溶解させた。この溶液は、ついで、窒素で予めフラッシュした1クオートの重壁ボトルに装填し、続いて、60.0g(0.577mol)のスチレンと90.0g(〜1.67mol)のブタジエンを添加した。ボトルは、ついで、キャップし、65℃の水浴でタンブルした。反応の進行は、金属キャップのガス抜き穴を介してシリンジのニードルにより固体含有物を周期的に採取することによって重量分析法によりモニターした。23時間後、浴からボトルを取出し、室温まで冷却して重合を停止させた。固体の含量は、32.3パーセントまたはスチレンとブタジエンとの〜70%転化率であることが決定された。
【0097】
実施例8
S-ベンジル-S’-(ドデシル)トリチオカーボネート(BDTTC)RAFT剤での溶液重合法によるポリ(2-ビニルピリジン)の製造
機械的攪拌器、温度計および窒素導入口を備えた500mL丸底フラスコに、133gの2-プロパノール、65.5g(620mmol)の2-ビニルピリジンおよび11.5g(42mmol)のS-ベンジル-S’-(ドデシル)トリチオカーボネートを装填した。フラスコを窒素と23gトルエン中1.5g(6.1mmol)の1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)でフラッシュした。溶液を210分間加熱還流した。最終固体は、31.7パーセントまたは95パーセント転化率であり、理論的Mnは、2,470であり、実験SEC Mnは、2,940g/molであった。
【0098】
実施例9
S-ベンジル-S’-(ドデシル)トリチオカーボネート(BDTTC)RAFT剤での溶液重合法によるポリ(4-ビニルピリジン)の製造
機械的攪拌器、温度計および窒素導入口を備えた500mL丸底フラスコに、150gの2-プロパノール、55g(524mmol)の4-ビニルピリジン、9.25g(25mmol)のS-ベンジル-S’-(ドデシル)トリチオカーボネートおよび0.63g(4.4mmol)の2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)を装填した。溶液を180分間加熱還流した。溶剤を蒸発させると、58.1(91パーセント)を生成した。理論的Mnは、2,570であり、実験SEC Mnは、2,738g/molであった。

実施例10
ポリ(2-VP+-b-ESBR)コポリマーラテックスの製造
実験を複数回行った。750ミリリットルのシャンペンボトルに、11.25gのポリ(2-ビニルピリジン)、11.25gの濃塩酸、175gの水、1.5gのカリウムパーサルフェートの溶液を装填した。ボトルを窒素と60gのスチレンでフラッシュし、続いて、90gのブタジエンを加えた。ボトルをキャップし、65℃の水浴に入れ、21時間タンブルした。パーセント固体は、未変化であり、反応が生じなかったことを示した。
【0099】
実施例11
ポリ(2-VP+-b-ESBR)コポリマーラテックスの製造
75gのスチレンと75gのブタジエンとを装填した以外は、実施例10と同様であった。パーセント固体は、未変化であり、反応が生じなかったことを示した。
【0100】
実施例12
ポリ(4-VP+-b-ESBR)コポリマーの製造
11.25gのポリ(4-ビニルピリジン)を装填した以外は、実施例10と同様の実験を行った。最終固体は、10wtパーセント、またはスチレンおよびブタジエンの28パーセント転化率であった。試料を合わせ、排気して、ブタジエンをレリースした。ついで、1000mLの水を加え、減圧下でストリップし、残留スチレンを除去した。ラテックスは、光散乱により、体積平均粒子径121nmを有した。
【0101】
ポリマーを単離するために、攪拌しつつ、250gのラテックスをWingstay L分散液の一部凝固剤、20gの水酸化カリウムおよび1200mLの水に加えた。かけらを濾過し、25ミリリットルHgの減圧下45℃で乾燥させた。58gのブロックコポリマーを単離した。Mnは、10,500g/molであり、PDIは、1.23であった。ガラス転移範囲は、-56.2〜-47.7℃であった。
【0102】
実施例13
ポリ(4-VP+-b-ESBR)コポリマーの製造
実施例12と同様の実験を行った。ラテックスは、光散乱により、体積平均粒子径127nmを有した。64グラムのブロックコポリマーを単離した。Mnは、11,200g/molであり、PDIは、1.38であった。ガラス転移範囲は、-45.9〜-34.5℃であった。
【0103】
実施例14
ナトリウムモントモリロナイトの水性分散液によるポリ(4-VP+-b-SBR)ジブロックコポリマーラテックスの凝固沈殿によるポリマークレーナノ複合材料の形成
1リットルのビーカーに実施例7からの20.0gのラテックス(〜5.9gのゴム)を装填し、300mlの水で希釈した。機械的に攪拌されているラテックスに、ついで、〜0.5gの50パーセント活性フェノール系AO分散液を加えた。もう1つの1リットルビーカーに、Southern Clay Products製のナトリウムモントモリロナイト(NaMMT)の2.64wtパーセント分散液320gを秤取した。クレー分散液は、ついで、320gの水で希釈して、1.32wtパーセントのクレー分散液を得た。希釈クレースラリーは、ついで、漿液が透明となるまで、周囲温度で攪拌したラテックスに緩やかに加えた。*注:“清澄”点は、沈殿の微細な性質により見分けるのが幾分困難である。この技術により、清澄点は、ほぼ296gの1.32wtパーセントのクレースラリーまたは合計3.9gのクレーを必要とすることが決定された。ポリマークレーナノ複合材料は、ついで、濾去し、専ら水で洗浄し、循環エアーオーブン内50℃で一晩乾燥させると、10.9gの非常に硬い粒状の灰色材料(理論的には、〜9.3g)を与えた。
【0104】
実施例15
ナトリウムモントモリロナイトの水性分散液によるポリ(4-VP+-b-SBR)ジブロックコポリマーラテックスの凝固沈殿、続く、SBRラテックスでの過凝固によるポリマークレーナノ複合材料の形成
1リットルのビーカーに実施例7からの20.0gのラテックス(〜5.9gのゴム)を装填し、300mlの水で希釈した。機械的に攪拌されているラテックスに、ついで、〜0.5gの50パーセント活性フェノール系AO分散液を加えた。もう1つの1リットルビーカーに、Southern Clay Products製のナトリウムモントモリロナイト(NaMMT)の2.64wtパーセント分散液320gを秤取した。クレー分散液は、ついで、320gの水で希釈して、1.32wtパーセントのクレー分散液を得た。希釈クレースラリーは、ついで、漿液が透明となるまで、周囲温度で攪拌したラテックスに緩やかに加えた。*注:“清澄”点は、沈殿の微細な性質により見分けるのが幾分困難である。この技術により、清澄点は、ほぼ296gの1.32wtパーセントのクレースラリーまたは合計3.9gのクレーを必要とすることが決定された。形成される微細な粒子は、室温で一晩放置した。この間に、若干の沈降が生じ、頂部に清澄な漿液が現れた。懸濁液を、ついで、大きいステンレススチ−ルのビーカーに移し、1.8gの塩化ナトリウムを含有する1200mlの水で希釈した。混合物のpHは、希塩酸の添加により2.5〜3.0に調節した。別のビーカーに、フェノール性AOの50パーセント水性分散液ほぼ1phrを含有する21.3パーセントの固体SBR 1502ラテックス(〜63gゴム)297gを秤取した。このラテックスは、ついで、希塩酸でpHを2〜3の範囲に保ちつつ、攪拌ポリマークレーナノ複合材料に緩やかに加えた。SBRの凝固が進行するにつれて、元の微細なナノ複合材料は、サイズが大きくなる。最終のかけらのサイズは、数ミリメートルの範囲内でかなり均一であった。かけらは、100メッシュの篩で濾過し、水で洗浄し、循環エアーオーブン内50℃で一晩乾燥させると、粗くは、4.67wtパーセントのクレーを含有するポリマークレーナノ複合材料83.4gを与えた。
【0105】
実施例16
実施例14のポリマークレーナノ複合材料の機械的特性
小型の実験室用のミキサーを使用し、〜5phrのクレーとポリ-(4-ビニルピリジン-b-SBR)コポリマーとのマスターバッチをモデル配合物にて混合し、基本的な機械特性を測定した。対照(慣用的なエマルジョンSBR PLF 1502/クレーマスターバッチ)としてのCAMとの同様の配合物と比較して、等しいクレー負荷にて、ポリ-(4-ビニルピリジン-b-SBR)は、等しいタンデルタ(tan delta)で24パーセント高い貯蔵弾性率を示し、22パーセント高い大ひずみ(300%)率を示し、そして、幾分か低い破断時の伸びで10パーセント高い引張強さを示した。これらの改良は、クレー板状体とプロトン化されたビニルピリジンブロックとの間の強力な相互作用に起因する。
【0106】
本発明を例示する目的で、ある種の典型的な実施態様および詳細を示したものの、当業者であれば、本発明の精神および範囲ならびに特許請求の範囲の請求項から逸脱することなく、種々の変更および変形をなしうることが明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマーと、水膨潤可能なクレーから少なくとも部分的に剥脱された複数の板状体とからなるナノ複合材料を製造する方法であって、
(A) (1) (a) 4-ビニルピリジン、
(b) トリチオカーボネートRAFT剤、および乳化剤からなり、その乳化剤が、潜伏性界面活性剤と界面活性剤賦活剤との反応により水性重合媒体内でその場で製造されるものである、第1の水性重合媒体を調製し;
(2) 第1の遊離基開始剤の存在下に4-ビニルピリジンを第1の水性重合媒体内で重合させて、ポリ(4-ビニルピリジン)を生成させ;
(3) ポリ(4-ビニルピリジン)をプロトン化して、プロトン化されたポリ(4-ビニルピリジン)RAFTマクロ開始剤を形成し;
(4) プロトン化されたポリ(4-ビニルピリジン)RAFTマクロ開始剤とエチレン性不飽和結合を含有するモノマーとからなるが、界面活性剤を除く、第2の水性重合媒体を調製し;
(5) 第2の遊離基開始剤の存在下に100℃未満の温度で、第2の水性媒体内でエチレン性不飽和結合を含有するモノマーと前記プロトン化されたポリ(4-ビニルピリジン)RAFTマクロ開始剤とを重合させて、エチレン性不飽和結合を含有するモノマーと4-ビニルピリジンとの両親媒性のブロックコポリマーを生成させる;
ことによって製造される、両親媒性のブロックコポリマーからなる水性ラテックスと;
(B) クレーについての層間挿入物を除いて、層間の空間内にカチオン交換可能なイオンを含有する多層の水膨潤可能なクレーと、水との水性混合物、であって、
前記水膨潤可能なクレーが、複数の板状体間に水膨潤された空間を有している、複数の積み重ねられた板状体からなり、前記空間内に、カチオンイオン交換可能なイオンを含有する;
をブレンドする工程を含む、当該方法。
【請求項2】
トリチオカーボネートRAFT剤が、構造式:
【化1】

(式中、R1は、1〜12個の炭素原子を有する二価のアルキル基であり;R2およびR3は、各々、独立に、水素または1〜12個の炭素原子を有するアルキル基であり;R4は、-OHまたは-COOHであるが、ただし、R1、R2およびR3の合計炭素原子は、12以下であり、Yは、遊離基付加についてビニル炭素を活性化しうる官能基を表す。)
を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Yが、-C(R’)2CN、-C(CH3)2Ar、-C(CH3)2COOR’’、-C(CH3)2CONHR’’、-C(CH3)2CH2C(CH3)、-CH(CH3)Ar、-CH2Ar、-C(CH3)3、-CR’2COOH、-C(R’)(CN)-(CH2)n-COOHおよび-C(R’)(CN)-(CH2)n-OHからなる群より選択される官能基を表し;R’が、1〜12個の炭素原子を含有する直鎖または分岐炭化水素を表し;Arが、未置換または置換されたフェニル、ナフチル、アントラセニル、ピレニルまたはピリジル基を表し;nが、1〜8の整数を表す、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
R1が(CH2)mであり、mが1〜4の範囲である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
Yが、ベンジル、ピコリルおよびt-ブチルからなる群より選択される官能基を表す、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
R1が(CH2)9であり、R2およびR3が水素であり、R4が-COOHであり、Yがベンジルであり、遊離基調節剤がS-ベンジル-S’-(11-ウンデカン酸)トリチオカーボネートである、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
R1がCH2であり、R2が(CH2)8であり、R3が水素であり、R4が-OHであり、Yがベンジルであり、遊離基調節剤がS-ベンジル-S’-(2-ヒドロキシデシル)トリチオカーボネートである、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
R1がCH2であり、R2が(CH2)8であり、R3が水素であり、R4が-OHであり、Yが4-ピコリルであり、遊離基調節剤がS-(4-ピコリル)-S’-(2-ヒドロキシデシル)トリチオカーボネートである、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つのモノマーが、ブタジエンであり、両親媒性のブロックコポリマーが、ポリ(4-ビニルピリデン-b-ブタジエン)である、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つのモノマーが、ブタジエンとスチレンとを含み、両親媒性のブロックコポリマーが、ポリ(4-ビニルピリデン-b-スチレンブタジエン)である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記水膨潤可能なクレーが、水膨潤可能なスメクタイトクレー、バーミキュライトをベースとするクレー、および雲母をベースとするクレーの少なくとも1つから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記水膨潤可能なクレーが、モントモリロナイト、ヘクトライト、ノントライト、ベイデライト、ボルコンスコイト、サポナイト、サウコナイト、ソボカイト、ステレンサイトおよびシンフォルダイトクレーの少なくとも1つから選択されるスメクタイトクレーである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
請求項1の方法によって製造されるナノ複合材料。
【請求項14】
請求項2の方法によって製造されるナノ複合材料。
【請求項15】
請求項13の前記ナノ複合材料および追加のエラストマーおよび/または追加の粒状強化充填剤のブレンドからなるゴム複合材料。
【請求項16】
請求項14の前記ナノ複合材料および追加のエラストマーおよび/または追加の粒状強化充填剤のブレンドからなるゴム複合材料。
【請求項17】
100重量部のエラストマー当りの重量部(phr)に基づき、
(A) 請求項13に記載のナノ複合材料約5〜約150phr;
(B) ナノ複合材料と追加のジエンに基づくエラストマーに含まれるエラストマーの合計が100重量部であることを条件として、少なくとも1つの追加のジエンに基づくエラストマー0〜約95phr;
(C) カーボンブラック、沈降シリカ凝集体、その表面上にシリカの領域を含有するシリカ含有カーボンブラック、および、それらの混合物から選択される少なくとも1つの追加の強化粒状充填剤0〜約80phr;および、場合によっては、
(D) 剥脱された複数の板状体の、板状体表面の周辺縁上に含有されるヒドロキシル基(例えば、シラノール)と反応性であり、前記沈降シリカおよびシリカ含有カーボンブラックの表面上に含有されるヒドロキシル基(例えば、シラノール基)と反応性である部分と、
前記追加のエラストマーを使用する場合に、前記ナノ複合材料のエラストマーおよび少なくとも1つの追加のエラストマーの、ジエンに基づくエラストマーと相互作用するもう1つの部分、
とを含有するカップリング剤;
を含むゴム組成物。
【請求項18】
前記追加の共役ジエンに基づくエラストマーが、cis1,4-ポリイソプレン(天然および合成)、cis1,4-ポリブタジエン、スチレン/ブタジエンコポリマー(水性エマルジョン重合製造および溶剤溶液重合製造)、約15〜約90%の範囲のビニル1,2-含量を有する中程度のビニルポリブタジエン、イソプレン/ブタジエンコポリマー、スチレン/イソプレン/ブタジエンターポリマーの少なくとも1つから選択される、請求項17に記載のゴム組成物。
【請求項19】
(A) 請求項13のナノ複合材料;または、
(B) 請求項13のナノ複合材料と少なくとも1つの追加のエラストマーおよび/または強化充填剤;
からなる少なくとも1つの成分を有する製造物品。
【請求項20】
(A) 請求項13の前記ナノ複合材料;または、
(B) 請求項13の前記ナノ複合材料と少なくとも1つの追加のエラストマーおよび/または強化充填剤;
からなる少なくとも1つの成分を有するタイヤ。

【公開番号】特開2007−169634(P2007−169634A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−339581(P2006−339581)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【出願人】(590002976)ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー (256)
【氏名又は名称原語表記】THE GOODYEAR TIRE & RUBBER COMPANY
【住所又は居所原語表記】1144 East Market Street,Akron,Ohio 44316−0001,U.S.A.
【Fターム(参考)】