説明

ポリマーマイクロビーズ及びその製造方法

【課題】HIPEの望ましい特性を有するが、表皮を有しないポリマー材料を製造できるようになること。
【解決手段】本明細書に記載の方法。例えば、多孔質の架橋したポリマーマイクロビーズを製造する方法であって、(a)(i)(1)実質的に水不溶性の単官能価モノマー;(2)実質的に水不溶性の多官能価架橋剤;及び(3)安定な油中水滴型エマルションを形成させるのに適する乳化剤;を含む油相;と(ii)水性不連続相;とを組み合わせ、少くとも約70%の水性不連続相を含むエマルションを形成させること;(b)前記エマルションを水性懸濁媒に加え、分散したエマルション液滴の水中油滴型サスペンションを形成させること;次いで(c)前記エマルション液滴を重合させること;を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は架橋した多孔質ポリマー材料のマイクロビーズ及びそのようなマイクロビーズの製造方法に関する。特に、本発明は非常に高い多孔度のポリマーマイクロビーズに向けられている。
【背景技術】
【0002】
従来技術の説明
架橋した均質な多孔質ポリマー材料は特許文献1(1985年6月11日にBarby等に付与)に開示されている。開示されているポリマー材料は、油に対する水の割合が比較的高い油中水滴型エマルションの重合により製造される。これらのエマルションは「高内部相エマルション(high internal phase emulsions)」と呼ばれており、当該技術分野において「HIPEs」として知られている。HIPEsはモノマー及び架橋剤を含む油連続相と水性不連続相からなる。このようなエマルションは、組み合わされた油相と水性相とを乳化剤の存在のもとで攪拌することにより調製される。加熱することにより得られるエマルションからポリマーが製造される。次いで、ポリマーは、未重合モノマー/架橋剤を除去するために洗浄される。
【0003】
開示されている多孔質ポリマーは、中空壁内の細孔により相互に連通された空洞を含む硬質構造を有する。適切な構成成分及び加工条件を選択することにより、80%以上の気孔率を有するHIPEポリマーを得ることができる。従って、これらの材料は液体を吸収及び保持する非常に高い能力を有する。
【0004】
HIPEポリマーの種々の改良法が開示されている。例えば、特許文献2(1985年8月20日にHaqに付与)には、HIPEポリマーをスルホン化することによりイオン性溶液に対して非常に高い吸収能を示すスルホン化ポリマー材料を製造できることが開示されている。他の官能化されたHIPEポリマーは、特許文献3(1986年9月9日にJomes等に付与)及び特許文献4(1986年9月16日にJones等に付与)に開示されているのと同様な方法により製造することができる。
【0005】
重合性HIPEsの存在は知られているが、有用なHIPEポリマーの製造は困難である。これらのポリマーを製造するために使用されるエマルションは油に対する水の割合が高いために、エマルションは不安定になる傾向がある。適切なモノマー/架橋剤濃度、乳化剤及びその濃度、温度及び攪拌条件の選択は、安定なエマルションを形成するのに非常に重要である。これらの可変量の僅かな変化によって、エマルションが別々の油相及び水性相に「凝離」又は分離しうる。更に、エマルション成分及び安定なエマルションを調製する加工条件は、それらの用途に対して有用なHIPEポリマーを常に生じるわけではない。
【0006】
これらの問題に加え、HIPEポリマーの大規模生産にかかるコストはHIPEポリマーをベースとする製品の商業的開発を妨げている。HIPEポリマーを大規模生産する方法は公知である。例えば、特許文献5(1922年9月22日にDesMarais等に付与)には、重合して吸収性のあるポリマーとするのに適するHIPEsを調製する連続法が開示されている。更に、HIPE中のモノマーの硬化時間を短縮することによりこのような連続法を容易にする方法が特許文献6(1993年10月12日にBrownscomb等に付与)に記載されている。しかしながら、このような方法によるHIPEポリマーの大規模生産は、未重合エマルション成分をポリマーから除去することによる費用効果の欠如が障害になっている。
【0007】
HIPEポリマーを製造するための従来技術の方法によって、重合に使用される容器の大きさ及び形状のポリマー材料の塊が製造される。HIPEポリマーが塊状で製造されることに関する問題は、低密度の高度に吸収性のある材料の塊から未重合エマルション成分を洗浄して除去することが非常に困難であることである。この問題に対して試みられた解決法は塊を粒子に粉砕する方法であったが、乾燥及び磨砕工程は費用がかかり、そして磨砕により生じる粒子の大きさに限界があることによって、この方法は不十分である。多くの用途に対し、残留エマルション成分の除去は必須である。しかし、現在にいたるまで、この洗浄工程を実施するための費用効果のある方法は開発されていない。
【0008】
従来のHIPEポリマー塊に関する更なる問題は、HIPEと重合のために使用された容器との界面に塊が表皮を有することである(1985年6月11日にBarby等に付与された特許文献7、第4段、第1〜6行)。通気性のある塊、即ち有用な製品を製造するためには、表皮は除去されねばならない。理想的には、HIPEの望ましい特性を有するが、表皮を有しないポリマー材料を製造できるようになることが求められている。
【特許文献1】米国特許第4,522,953号明細書
【特許文献2】米国特許第4,536,521号明細書
【特許文献3】米国特許第4,611,014号明細書
【特許文献4】米国特許第4,612,334号明細書
【特許文献5】米国特許第5,149,720号明細書
【特許文献6】米国特許第5,252,619号明細書
【特許文献7】米国特許第4,522,953号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の要旨
本発明は、少なくとも約10%の材料が実質的に球状及び/又は実質的に楕円体のビーズの形状にある材料(以下「マイクロビーズ」と呼ぶ)を含む。これらのマイクロビーズは多孔質の架橋したポリマー構造を有し、連続な細孔により連通された空洞により特徴付けられる。各マイクロビーズの内部にある空洞の少なくとも幾つかは、そのマイクロビーズの表面と通じている。
【0010】
本発明は、多孔質の架橋したポリマーマイクロビーズを製造する方法及びこの方法の生成物も含む。この方法の第1段階は、油連続相(以下「油相」と呼ぶ)を水性不連続相と組み合わせてエマルションを形成させることである。エマルションの油相は、実質的に水不溶性の単官能価モノマー、実質的に水不溶性の多官能価架橋剤、及び安定な油中水滴型エマルションを形成するのに適する乳化剤を含む。前記方法の第2段階は、水性懸濁媒に前記エマルションを加え、分散したエマルション液滴の水中油滴型サスペンションを形成することである。この方法の最終工程は、前記エマルション液滴を重合させてマイクロビーズを形成させることである。
【0011】
一態様において、重合開始剤はHIPEの水性不連続相及び水性懸濁媒の双方の中に存在する。重合開始剤は場合に応じて油相中に含まれてもよい。この態様の変型において、油相はモノマーとしてスチレンを、架橋剤としてジビニルベンゼンを、及び乳化剤としてソルビタンモノオレエートを含む。更に、油相は、油溶性重合開始剤であるアゾイソビスブチロニトリルと、連続な細孔の形成を促進するドデカンを含む。水性不連続相は、水溶性重合開始剤である過硫酸カリウムを含む。水性懸濁媒は、改質シリカ及びゼラチン並びに過硫酸カリウムを含んでなる沈殿防止剤を含む。更なる態様において、重合開始剤は油相にのみ存在する。
【0012】
本発明は、特定の用途における使用に適するよう改質されたマイクロビーズを提供する。特に、本発明は、液体の吸収に適するよう官能化されたマイクロビーズ;マイクロビーズから製造された炭素含有構造体及びそのような構造体を製造する方法;並びにマイクロビーズの空洞内にゲル又はプレゲルを有するマイクロビーズ及びそのようなマイクロビーズを製造する方法を含む。
【0013】
更に、本発明は、分離及び合成手段における基材としてのマイクロビーズの使用を含む種々の用途でのマイクロビーズの使用、ポリペプチド又はオリゴヌクレオチドのような分子を固定化するための基材としてのマイクロビーズの使用、及び細胞培養手段におけるマイクロビーズの使用を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
発明の詳細な説明
マイクロビーズ
本発明は、「マイクロビーズ」と呼ばれている架橋した多孔質ポリマー材料を含み、ここで前記マイクロビーズの少なくとも約10%は実質的に球状及び/又は楕円体である。本発明はこのような材料を製造する方法をも含む。マイクロビーズは、典型的には、「HIPE」と呼ばれている高内部相エマルションの懸濁重合により製造される。本発明のかようなマイクロビーズは、従来のHIPEポリマーよりも多くの望ましい物理的特性を有する(例えば、引用によりここにその開示全体を含めることにする1985年6月11日にBarby等に付与された米国特許第4,522,953号に開示されているようなもの)。特に、マイクロビーズは、連続な細孔により連通された空洞の存在のために非常に低い密度を有する。本発明に係るマイクロビーズのバッチの嵩密度は典型的には約0.2g/ml未満である。このマイクロビーズの気孔率は高く、好ましくは少くとも約70%、より好ましくは少なくとも約90%である。この高い多孔度はマイクロビーズに非常に高い吸収性を付与する。更に、マイクロビーズ内の空洞の連続によって、液体がマイクロビーズを通って流れることが可能になり、マイクロビーズは、例えばタンパク質のクロマトグラフ分離及びペプチド合成のような生物工学上の用途において使用するのに適する優れた基材を提供する。
【0015】
このマイクロビーズの平均直径は約5μm〜約5mmである。好ましい平均直径は約50μm〜約500μmである。この小さな大きさによって、未重合エマルション成分を除去するためのマイクロビーズの洗浄が容易になる。また、本発明の方法は、比較的均一な大きさ及び形状のマイクロビーズを製造することに使用することができ、バッチ中の各マイクロビーズが完全に洗浄されるように洗浄条件を最適化することができる。従って、このマイクロビーズは、従来のHIPE塊とは異なって、比較的容易に洗浄することができる。本発明のこの特徴は、費用効果のよいHIPEポリマーの大規模製造を可能にする。
【0016】
このマイクロビーズの更なる特徴は、マイクロビーズが「表皮を有しない(skinless)」ことであり、内部空洞及び細孔がマイクロビーズの表面と通じている。従って、このマイクロビーズは、多孔質ポリマー材料が重合により直接生成し、表皮除去工程を必要としない点で従来のHIPEポリマーに対する利点を提供する。
【0017】
このマイクロビーズの高い多孔度は、マイクロビーズを吸収材料として、また、クロマトグラフ分離、固相合成、抗体又は酵素の固定化、及び細胞培養を含む種々の生物工学上の用途における固体基材として有用なものにしている。更に、このマイクロビーズの気孔率及び空洞の大きさのような物理的特性の多くは制御可能である。従って、用途の違いによって特殊化された種類の異なるマイクロビーズを製造することができる。このマイクロビーズの一般製法を以下で説明し、次いで特殊化されたマイクロビーズの製法の改良について説明する。
【0018】
定義
「マイクロビーズ」なる用語は、少なくとも約10%が実質的に球状及び/又は楕円体のビーズからなる架橋した多孔質ポリマー材料を意味する。この材料の好ましくは少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約50%は実質的に球状及び/又は実質的に楕円体のビーズからなる。
【0019】
HIPEの構成成分について用いる「実質的に不水溶性」なる語句は、水性相中に存在する成分が、水性モノマーの重合が重合性モノマーの約5重量%以下であるような低濃度で存在することを意味する。
【0020】
ここで用いる「嵩密度」なる用語は、マイクロビーズの既知の重量をその容積で割った商を意味する。
【0021】
ここで用いる「気孔率(void volume)」なる用語は、ポリマー材料を含まないマイクロビーズの容積を意味する。換言すれば、マイクロビーズの気孔率は空洞の合計容積からなる。気孔率は、マイクロビーズの全容積の百分率又はマイクロビーズの材料のグラム当たりの容積(cc/g)のいずれかで表される。
【0022】
ここで用いる「空洞の大きさ」なる用語は、マイクロビーズ内に存在する空洞の平均直径を意味する。
【0023】
ここで用いる「ポロゲン(porogen)」なる用語は、HIPEの油相中に含まれた場合に、マイクロビーズ内の空洞を連通する細孔の形成を促進する有機化合物を意味する。
【0024】
略語「DVB」は「ジビニルベンゼン」を意味し、略語「AIBN」は「アゾイソビスブチロニトリル」を意味し、そして略語「PVA」はポリ酢酸ビニルの加水分解により生成する「ポリビニルアルコール」を意味する。
【0025】
マイクロビーズの製造
都合のよいことに、本発明のマイクロビーズは、油相中に水性不連続相を含むエマルションからなるHIPEから製造される。HIPEは、いったん形成されると、水性懸濁媒に加えられ、懸濁媒中にHIPE微小液滴のサスペンションを形成する。次いで重合により液体HIPE微小液滴は固体マイクロビーズに転化する。
【0026】
一態様において、重合開始剤はHIPEの水性不連続相及び水性懸濁媒の双方に存在する。重合開始剤は、場合に応じて油相中に含められてもよい。他の態様において、重合開始剤は油相にのみ存在する。
【0027】
水性相重合開始剤を使用するマイクロビーズの製造
高内部相エマルションの成分
パラメータの中で2つのHIPE相の相対量はマイクロビーズの物理的特性の重要な決定因子である。特に、水性不連続相の百分率は、気孔率、密度、空洞の大きさ及び表面積に影響を及ぼす。好ましいマイクロビーズを製造するために使用されるエマルションにとって、水性不連続相の百分率は、一般に、約70%〜約98%、より好ましくは約75%〜約95%、最も好ましくは約80%〜約90%である。
【0028】
エマルションの油相は、モノマー、架橋剤、及び安定な油中水滴型エマルションを形成するのに適する乳化剤を含む。モノマー成分は、従来のHIPEポリマーのものと違わず、実質的に水不溶性の単官能価モノマーである。一態様において、モノマーの種類は、スチレンをベースとするモノマー、例えば、スチレン、4−メチルスチレン、4−エチルスチレン、クロロメチルスチレン、4−t−BOC−ヒドロキシスチレンである。モノマー成分は1種のモノマー又は混合物である。モノマー成分は典型的には油相の約5重量%〜約90重量%の濃度で存在する。モノマー成分の濃度は、好ましくは油相の約15%〜約50%、より好ましくは油相の約16%〜約38%である。
【0029】
架橋剤は、広範な種類の実質的に水不溶性の多官能価モノマーから選択することができる。架橋剤は二価であることが好ましい。適切な架橋剤は従来のものとは違わず、ジビニルベンゼン(DVB)のようなジビニル芳香族化合物を含む。ジ−又はトリアクリル系化合物及びトリアリルイソシアヌレートのような他の種類の架橋剤も使用できる。架橋剤は1種の架橋剤又は混合物である。架橋剤は典型的には油相の約1重量%〜約90重量%の濃度で存在する。好ましくは、架橋剤の濃度は油相の約15%〜約50%である。より好ましくは、この濃度は約16%〜約38%である。
【0030】
モノマー及び架橋剤に加え、油相は、安定なエマルションの形成を促進する乳化剤を含む。乳化剤は、安定なエマルションの形成を促進する非イオン、カチオン、アニオン若しくは両性乳化剤、又はこれらの組合せである。適切なエマルションは、従来のものとは違わず、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセロール脂肪酸エステル、並びにポリオキシエチレン脂肪酸及びエステルを含む。一態様において、乳化剤はソルビタンモノオレエート(SPAN 80として販売されている)である。乳化剤は一般に油相の約4重量%〜約50重量%の濃度で存在する。好ましくは、乳化剤の濃度は油相の約10%〜約25%である。より好ましくは、この濃度は約15%〜約20%である。
【0031】
第1態様の変型において、油相は、油溶性重合開始剤及びポロゲンも含む。開始剤は、アゾ開始剤のような、安定なエマルションの形成を可能にするいかなる油溶性開始剤であってもよい。好ましい開始剤は、アゾイソビスブチロニトリル(AIBN)である。開始剤は油相中の重合性モノマーの合計量(モノマー成分と架橋剤の合計量)の約5重量%以下の濃度で存在することができる。開始剤の濃度は、重合性モノマーの合計量の約0.5〜約1.5重量%、より好ましくは約1.2重量%である。
【0032】
本発明のポロゲンは、生成するポリマーにとって不十分な溶剤ではあるが、使用されるモノマーにとって好ましい溶剤であるという条件で、安定なエマルションの形成を可能にするいかなる非重合性有機化合物又はそれらの組合せであることができる。適切なポロゲンには、ドデカン、トルエン、シクロヘキサノール、n−ヘプタン、イソオクタン、及び石油エーテルが含まれる。好ましいポロゲンはドデカンである。ポロゲンは一般に油相の約10〜約60重量%の濃度で存在する。ポロゲンの濃度はマイクロビーズ内の空洞を連通する細孔の大きさ及び数に影響を及ぼす。特に、ポロゲン濃度を増加させると、連続な細孔の大きさ及び数が増加し、一方、ポロゲン濃度を低下させると、連続な細孔の大きさ及び数は低下する。好ましくは、ポロゲン濃度は油相の約25〜約40重量%である。より好ましくは、この濃度は約30〜約35重量%である。
【0033】
第1態様において、HIPEの水性不連続相は一般に水溶性重合開始剤を含む。この開始剤は適切な水溶性開始剤であればよい。このような開始剤は公知のものであって、過酸化物、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウム;過酢酸ナトリウム;過炭酸ナトリウム等を含む。好ましい開始剤は過硫酸カリウムである。開始剤は水性不連続相の約5重量%以下の濃度で存在することができる。好ましくは、開始剤の濃度は水性不連続相の約0.5〜約2重量%である。
【0034】
水性懸濁媒の成分
以下で詳細に説明する方法によるHIPEの形成後、HIPEは水性懸濁媒に加えられ、水中油滴型サスペンションを形成する。水性懸濁媒は沈殿防止剤を含み、そして第1態様において水溶性重合開始剤も含む。沈殿防止剤は、HIPEマイクロビーズの安定なサスペンションの形成を促進するいかなる薬剤又はそれらの組合せであることができる。水中油滴型サスペンションに適する典型的な液滴安定剤には、ゼラチン、天然ゴム、セルロース及びセルロース誘導体(例えば、ヒドロキシエチルセルロース)、ポリビニルピロリドン並びにポリビニルアルコール(PVA)のような水溶性ポリマーが含まれる。沈殿防止剤として使用するのに適するPVAはポリビニルアセテートの部分(85〜92%)加水分解により生成する。クレー、シリカ、アルミナ及びジルコニアのような微細な水不溶性無機固形物も使用される。2種以上の異なる沈殿防止剤を組み合わせることができる。更に、ある態様において、沈殿防止剤は、ゼラチン又はPVA(88%加水分解)と改質クレー又はシリカ粒子との組合せである。
【0035】
改質された無機固形物粒子は、該粒子の疎水性を高める薬剤により該粒子を処理することにより製造され、それによってサスペンションを安定する該粒子の性能は改良される。ある態様において、無機固形物粒子は、適切な有機溶剤の存在のもと、それらをアスファルテンのような界面活性剤で処理することにより改質される。適切な有機溶剤には、トルエン、ヘプタン、及びこれら2種の混合物が含まれる。無機固形物とアスファルテンの相対濃度を変化させて種々の疎水性を有する改質された無機固形物を製造することができる。粒子の疎水性の一つの尺度は、油−水界面において粒子が水性相中に浸入する程度を反映する「接触角」である。90°の接触角は、粒子が油相中に半分残り、そしてもう半分が水性相中に残ることを示す。90°未満の接触角は、粒子が更に水性相中に浸入する、即ち、より親水性であることを示す。本発明において、無機固形物粒子の疎水性は、この粒子が安定なサスペンションの形成を促進するように調節される。本発明の好ましい態様において、改質された無機固形物粒子の接触角は約60°である。
【0036】
沈殿防止剤は、安定なサスペンションの形成を促進するいかなる濃度で水性懸濁媒中に存在してもよく、典型的には、水性懸濁媒の約0.1〜約10重量%である。沈殿防止剤の好ましい組合せに対し、安定なサスペンションは、水性懸濁媒の約0.5重量%〜約5重量%のPVA濃度及び水性懸濁媒の約0.05〜0.3重量%の無機固形物濃度で得られる。
【0037】
沈殿防止剤に加え、本発明の第1態様において、水性懸濁媒は水溶性重合開始剤を含む。懸濁媒中及びHIPEマイクロビーズ中の開始剤の存在によって、重合反応が促進される。一般に、時間の経過とともにサスペンションが分離するために、急速な重合が望ましい。
【0038】
開始剤は、HIPEの水性不連続相について述べた上記のような適切な水溶性開始剤であることができる。この態様の好ましい変型において、開始剤は過硫酸カリウムであり、懸濁媒中に約5重量%以下の濃度で存在する。より好ましくは、開始剤の濃度は、水性懸濁媒の約0.5重量%〜約2重量%である。
【0039】
高内部相エマルションの製造
HIPEをベースとするマイクロビーズの製造における第1工程は、高内部相エマルションの形成である。HIPEは、引用することによりその開示を個々に含めることにする米国特許第4,522,953号(1985年6月11日にBarby等に付与)に開示されているような方法により調製できる。簡単に述べると、HIPEは油と水性不連続相とを剪断攪拌にかけながら組み合わせることにより形成される。一般に、ピン羽根車のような混合又は攪拌装置が使用される。
【0040】
剪断攪拌の程度及び時間は、安定なエマルションを形成するのに十分でなくてはならない。剪断攪拌は空洞の大きさに逆比例して関係するので、小さな又は大きな空洞を有するマイクロビーズをそれぞれ得るために、攪拌を増やすか、又は減らすことができる。一態様において、1400rpmに設定されたGifford−Woodホモジナイザー−ミキサー(モデル1−LV)を使用してHIPEを製造できる。この混合速度において、HIPEは約5分間で製造される。他の態様において、上記ミキサーの空気駆動型(モデル1−LAV)を使用し、5〜10psiに調節された空気圧で約5〜10分間を要してHIPEが製造される。HIPEは、例えば米国特許第5,149,720号(1992年9月22日にDesMarais等に付与)に開示されているように回分法又は連続法で製造できる。
【0041】
HIPE微小液滴サスペンションの製造
HIPEは、いったん形成されると、水性懸濁媒に加えられる。HIPEは、HIPE微小液滴のサスペンションを形成するのに適する量及び速度で懸濁媒に加えられる。
【0042】
HIPEが加えられると、サスペンションは安定なサスペンションを形成するのに十分な剪断攪拌にかけられる。製造されるマイクロビーズが比較的均一な大きさになるように、使用される混合装置は攪拌力をサスペンションに比較的均一な分散させるものであるべきである。剪断攪拌は微小液滴の大きさに逆比例に関係し、小さな又は大きなHIPE微小液滴を得るために、それぞれ攪拌を増やすか又は減らすことができる。この方法において、重合により生成するマイクロビーズの大きさを制御することができる。
【0043】
そらせ板又はくぼみを有する22リットルの球形反応器内で安定な微小液滴サスペンションを製造するために、例えば、HIPEは、サスペンションが約50%のHIPEを含むまで約500ml/分以下の流量で懸濁媒に加えられる。攪拌は、約1.5〜3インチの直径を有するプロペラ形又は櫂形羽根車が使用される場合には、約50〜約500rpmで行うことができる。ある態様において、HIPEは、サスペンションが約10%のHIPEを含むまで、22リットル反応器内の懸濁媒に20ml/分の流量で加えられる。この混合物の約250rpmでの攪拌に続く重合によって、約100〜約160μmの平均直径を有するマイクロビーズが得られる。
【0044】
HIPE微小液滴の重合
HIPE微小液滴の安定なサスペンションが得られたら、水性懸濁媒の温度を周囲温度よりも高い温度に上昇させ、そして重合を開始させる。重合条件はHIPEの組成によって変わる。例えば、モノマー又はモノマー混合物及び重合開始剤は、重合温度の特に重要な決定因子である。更に、この条件は、安定なサスペンションが重合に要する時間保たれるよう選択されなければならない。所定のHIPEに対して適切な重合温度の決定は、当業者の裁量に任せられている。一般に、高温によりサスペンションが分離しうるために、HIPEサスペンションの温度は約85℃を超えるべきではない。好ましくは、AIBNが油溶性開始剤でありそして過硫酸カリウムが水溶性開始剤である場合、サスペンションを60℃に一晩(約18時間)保つことによりスチレンモノマーが重合する。
【0045】
マイクロビーズの洗浄
重合工程によりHIPEは固体マイクロビーズになる。前述のように、このマイクロビーズは一般に、残留物、HIPEの未重合成分又は懸濁媒を除去するために洗浄される。マイクロビーズの安定性に影響を及ぼさずに残留成分を可溶化することができる液体で洗浄できる。1回以上の洗浄を必要とする。好ましくは、マイクロビーズは水で5回以上洗浄され、次いでソクスレー(Soxhlet)抽出器内で約1日間を要してアセトン抽出により洗浄される。次いでマイクロビーズをいかなる慣用的な手段によっても乾燥させることができる。2日間を要して風乾するか、又は50℃で一晩を要して減圧下でマイクロビーズを乾燥させることが好ましい。得られるマイクロビーズは、典型的には約0.10g/ml未満の嵩密度を有する。
【0046】
油相開始剤を使用するマイクロビーズの製造
マイクロビーズ成分
第2態様において、重合開始剤が水性相の代わりに油相中に存在する方法によりポリマーマイクロビーズを製造することができる。この態様に対して適切な開始剤には、油溶性開始剤、例えば、AIBN、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、VAZO型開始剤(例えば、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、ワイオミング州ミルウォーキー所在のアルドリッチ(Aldrich)によりVAZO触媒88として市販されている)等が含まれる。
【0047】
この態様において、ラジカル反応を開始させるのに十分な開始剤が油相に加えられる。所定のマイクロビーズの製造にとって適切な開始剤濃度は当業者により容易に決定される。典型的には、開始剤は、油相中の重合性モノマーの合計量(モノマー成分と架橋剤の合計量)の約5重量%以下の濃度で存在する。開始剤の濃度は、好ましくは重合性モノマーの約0.5〜約3.0重量%、より好ましくは約2.2重量%である。
【0048】
更に、第2態様は、HIPEの水性不連続相と水性懸濁媒との間に境界を形成できる安定剤の使用を必要とし、ここでこれらの2つの水性媒体は微小液滴のサスペンション中で接している。この現象は、洗剤分子により形成される境界が泡の内側にある空気と外側の空気とを分ける石鹸の泡の場合に類似している。安定剤は、HIPE微小液滴からの水の減損量を減少させ、且つ微小液滴の融合を妨げる。
【0049】
一般に、安定剤は、有機溶剤に可溶性であり、そしてHIPEの水性不連続相と水性懸濁媒との間の境界を安定化するのに十分に親水性の皮膜形成化合物であるべきである。これらの特性は、この態様で安定剤として作用しうる種々の天然及び合成ポリマーにおいて見出されており、このようなポリマーにはメチルセルロース及びエチルセルロースのようなセルロース誘導体並びにPVA(約70%未満の加水分解度)が含まれる。他の適切な安定剤は、本明細書の教示に従って当業者により経験的に決定される。安定剤はエチルセルロースを含むことが好ましい。
【0050】
安定剤の濃度は、HIPE微小液滴からの水の減損量を減少させ、且つ微小液滴の融合を減少させる。最適な濃度は、HIPEの組成に依存し、経験的に決定される。適切な安定剤濃度は典型的には油相の約0.01重量%〜約15重量%である。高い安定剤濃度を適用することができるが、15%を超える濃度において、重合したマイクロビーズから安定剤を洗浄して除去することは困難である。好ましくは、安定剤の濃度は、油相の約0.1%から約1%、より好ましくは約0.2%〜約0.6%である。
【0051】
安定剤が油相に可溶でない場合には、安定剤は典型的には不活性溶剤中に溶かされ、得られる溶液はHIPEの油相に加えられる。安定剤の可溶化に加え、不活性溶剤はポロゲンとして作用する。不活性溶剤は、安定剤を可溶化し、且つHIPEの油相に混和しうる溶剤であればよい。第2態様に有用な不活性溶剤の例には、トリクロロエタン、トルエン、クロロホルム、及び他のハロゲン化溶剤等が含まれる。
【0052】
安定剤の溶解性を高めるのに十分な不活性溶剤が安定剤に加えられると、安定剤の油相との混合が可能になる。不活性溶剤の濃度は、使用される安定剤及び油相によって変わり、そして個々の安定剤を所定の油相と混合しやすくするための不活性溶剤の適切な種類及び濃度の決定は、当業者の裁量に任せられている。典型的には、不活性溶剤の濃度は、油相の約3重量%〜約60重量%、より好ましくは、約10重量%〜約40重量%である。
【0053】
モノマー、架橋剤及び乳化剤の適切な濃度は、油溶性重合開始剤、安定剤及び不活性溶剤の油相中に混入しないほどこれらの成分の濃度が減少しないという条件で、基本的に上記の通りである。従って、第2態様におけるこれらの成分に対し典型的な濃度は以下の通りである:
濃 度
成 分 (HIPEの重量%)
モノマー 4〜90
架橋剤 1〜89
乳化剤 3〜50
これらの成分のそれぞれに対して好ましい濃度は第1態様について先に述べたものと同様である。更に、第1態様について先に述べたものと同様に、ポロゲンは場合に応じて油相中に含まれていてもよい。ポロゲンが含まれる場合には、モノマー、架橋剤、及び/又は乳化剤の濃度を低下させることができる。
【0054】
第2態様の水性不連続相及び水性懸濁媒は、第2態様の水性不連続相及び懸濁媒が重合開始剤を含まないという点で第1態様のものとは異なる。第2態様の変型において、水性不連続相は基本的に水からなる。この態様の水性懸濁媒は、HIPE微小液滴の安定なサスペンションの形成を促進するいかなる薬剤又はそれらの組合せであってもよい沈殿防止剤を含む。適切な沈殿防止剤の例は上記の通りである。天然ゴム、例えば、アラビアゴム(ワイオミング州ミルウォーキー所在のアルドリッチ・ケミカル・カンパニー(AldrichChemical Co.)から市販入手可能)が好ましい。沈殿防止剤は、安定なサスペンションの形成を促進する濃度で存在することができ、その濃度は、典型的には、水性懸濁媒の約1重量%〜約30重量%である。好ましくは、沈殿防止剤の濃度は約2%〜約15%である。
【0055】
マイクロビーズの製造
第2態様に従ってマイクロビーズを製造するために、油溶性重合開始剤、安定剤及び不活性溶剤をモノマー、架橋剤及び乳化剤と組み合わせることにより油相が調製される。油相と水性不連続相とを安定なエマルションが形成するよう十分に剪断攪拌にかけながら組み合わせることによりHIPEは形成される.HIPEは、いったん形成すると、HIPE微小液滴のサスペンションを形成するのに適する量及び速度で水性懸濁媒に加えられる。HIPEが加えられる際に、サスペンション上記のようには剪断攪拌にかけられる。
【0056】
安定なサスペンションを得た後、温度を上昇させることにより重合が開始される。先に説明したように、重合条件はHIPEの組成に依って変わり、そして所定のHIPEに適する条件の決定は、当業者の裁量に任せられている。過酸化ラウロイルが開始剤である場合には、例えば、重合は都合良いことに50℃で20時間を要して実施される。
【0057】
マイクロビーズの改質
マイクロビーズは種々の用途に対して有用であり、特に、吸収材料として、また生物工学上の用途に於ける固体基材としても有用である。例えば、溶剤を輸送するため、体液を吸収するため、及び接着性微小担体として、マイクロビーズをベースとする吸収剤を使用することができる。生物工学上の用途には、クロマトグラフ分離、固相合成、抗体又は酵素の固定化、並びに微生物及び哺乳類細胞の培養が含まれる。種々の方法により塩基性のマイクロビーズを改質し、個々の用途に適するよう特殊化されたマイクロビーズを製造することができる。
【0058】
酸の吸収のためのマイクロビーズの官能化
種々のイオン性及び極性官能基をマイクロビーズに付加させて、多量の酸性液体を吸収することができるポリマーマイクロビーズを製造することができる。このようなマイクロビーズは一般に、中性油であるメチルオレエートに対するそれらの吸収能に比して水性及び/又は有機酸を吸収する高い能力を有する。特に、メチルオレエート吸収量に対する水性及び/又は有機酸吸収量の比は約1.2以上である。このようなマイクロビーズを製造するのに適する好ましい出発物質は、約1%〜約50%架橋し、且つ、溶剤を吸収した状態で約70%以上の気孔率を有するマイクロビーズである。
【0059】
官能化されたマイクロビーズは、下記式:
【0060】
【化1】

(上式中、Aは架橋され炭素鎖を表し、Yは任意のスペーサー基(spacer group)であり、そしてZはイオン性又は極性官能基である)により表される構造単位を含む。Zは、アミノ又は置換アミノ基、及び8個以上の炭素原子を有する有機対イオンの存在のもとで8個以上の炭素原子を有するアルキル(以下「高級アルキル」と呼ぶ)カチオンアンモニウム基又は8個以下の炭素原子を有するアルキルカチオン第4級アンモニウムから選ばれる。官能化されたマイクロビーズは、このような構造単位の一つの種類又は異なる種類の組合せを含む。
【0061】
好ましい態様において、Zは、下記1〜3の構造を有するイオン性又は極性官能基から選ばれる:
【0062】
【化2】

上式中、R、R、R、R、及びRは同一であっても異なっていてもよく、アルキル、シクロアルキル、アリール、及びヒドロキシアルキルから選ばれる。代わりに、R及びRは環構造の一部を形成することができる。Zがカチオン第4級アンモニウム基(3)である場合、R、R、及びRは、好ましくはRとRとRの全体に存在する炭素の数が10以上になるように選ばれる。Zがアミン塩基(2)である場合、R及びRは、好ましくはRとRの全体に存在する炭素の数が8以上になるように選ばれる。
【0063】
カチオン第4級アンモニウム基(3)又はアミン塩基(2)に適する対イオンXは有機又は無機イオンである。高級アルキルカチオン基に適する対イオンは、塩化物、スルフェート、又はニトレートのような無機化学種である。代わりに、対イオンはアセテート又はオレエートのような短鎖又は長鎖の有機化学種である。
【0064】
他の態様において、カチオン第4級アンモニウム基(3)に対し、R、R、及びRは、RとRとRの全体に存在する炭素の数は10未満であり、そしてアミン塩基(2)に対し、RとRの全体に存在する炭素の数は8未満である。この態様において、対イオンXは好ましくは8個以上の炭素原子を有する有機基、例えばオレエートである。カチオン第4級アンモニウム基(3)に対し、XはOHであることができる。
【0065】
官能化されたマイクロビーズにより吸収される溶剤の量は、架橋度が約15〜20%を超えないという条件で、存在するイオン性又は極性官能基の数と共に増加する。液体の吸収量は溶媒和されたポリマー鎖の移動度に依存するため、架橋度がこのレベルを超えると、吸収される液体の量は置換度に対してますます変化しにくくなる。架橋度は、モノマーと架橋剤の相対量を変化させることにより調節される。好ましくは、架橋度は約2%〜約10%である。官能化度は一般に、約30%以上、好ましくは約50%以上、最も好ましくは約70%以上である。
【0066】
官能化されたマイクロビーズは、官能化されたHIPEポリマーを製造するのに使用されるのと同じ方法により製造される。適切な方法は公知であり、例えば、引用によりその記載全てをここに含めることにする米国特許第4,611,014号(1986年9月9日にJomes等に付与)に開示されている。簡単に述べると、官能化されたマイクロビーズは一般に、臭素又はクロロメチルのような反応性基を有する予備成形されたマイクロビーズの改質により直接製造することができる。
【0067】
その後の化学的改質に適するマイクロビーズは、クロロメチルスチレン又は4−t−BOC−ヒドロキシスチレンのようなモノマーの重合により製造することができる。他の適切なモノマーは、重合後にクロロメチル化され、実質的に官能化されたマイクロビーズに転化しうる反応性マイクロビーズ中間体を生成することができるスチレン、α−メチルスチレン若しくは他の置換スチレン、又はビニル芳香族モノマーである。反応性基を有しないモノマーを約20%以上の濃度でマイクロビーズ中に含めることができる。しかしながら、HIPEをベースとするマイクロビーズを製造するには、このようなモノマーは安定なHIPEの形成を可能にするものでなくてはならない。反応性モノマーの濃度は、一般に、化学的改質後に生じる官能化されたマイクロビーズがイオン性又は極性官能基を有するように、モノマー残留分の約30%の最低値に基づいて十分に高い。
【0068】
反応性マイクロビーズの化学的改質は、種々の慣用的な方法により実施される。アミン−、アミン塩−及びカチオン第4級アンモニウム−官能化マイクロビーズを製造するのに好ましい具体的な方法は、それぞれ実施例2〜4で詳細に説明する。
【0069】
他の態様において、イオン性又は極性基を有するマイクロビーズは、適切な実質的に不水溶性のモノマー乳化及び重合により直接製造することができる。
【0070】
水溶液の吸収のためのマイクロビーズの官能化
種々の極性又はイオン性官能基を選択することのよって、マイクロビーズを官能化し、多量の水溶液を吸収し、またイオン交換樹脂としても機能するマイクロビーズを製造することができる。これらのマイクロビーズの塩化ナトリウム水溶液を吸収する能力は、吸水量に対する塩化ナトリウム水溶液の吸収量の比が概して約0.1以上、好ましくは約0.5以上、最も好ましくは約0.7以上であるようなものである。
【0071】
吸水に適する官能化されたマイクロビーズは下記の構造単位を含む:
【0072】
【化3】

上式中、Aは架橋された炭素鎖であり、Yは任意のスペーサー基であり、そしてZはイオン性又は極性官能基である。Zは、10個以下の炭素原子を有するアルキルカチオンアンモニウム基、8個以下の炭素原子を有するアルキルアミン塩、アルコキシレート基、硫酸、炭酸、リン酸又はスルホン酸の金属塩基若しくはアンモニウム塩基又は置換アンモニウム塩基から選ばれ、但し、Zがスルホン酸である場合に、Yは下記の構造を有しない:
【0073】
【化4】

官能化されたマイクロビーズは、このような構造単位の一つの種類又は異なる種類の組合せを含むことができる。
【0074】
好ましい態様において、Zは下記の構造1〜2のイオン性又は極性官能基から選ばれる:
【0075】
【化5】

上式中、R、R、及びRは同一であっても異なっていてもよく、アルキル、シクロアルキル、アリール、及びヒドロキシアルキルから選ばれる。代わりに、R及びRは環構造の一部を形成する。Zがカチオン第4級アンモニウム基(1)である場合、R、R及びRは好ましくはRとRとRの全体に存在する炭素の数が10未満になるように選ばれ、R及びRは好ましくはRとRの全体に存在する炭素の数が8未満になるように選ばれる。
【0076】
カチオン第4級アンモニウム基(1)又はアミン塩基(2)に適する対イオンXは、塩化物、スルフェート又はニトレートのような無機化学種である。代わりに、対イオンは8個以下の炭素原子を有するカルボキシレート種、例えばアセテート又はラクテートであることができる。カチオン第4級アンモニウム基(1)に対し、XはOHであることもできる。
【0077】
一態様において、Zは下記の型のアルコキシル化された鎖である:
【0078】
【化6】

上式中、pは1〜680であり、そして
【0079】
【化7】

であり、ここでRは水素又はアルキル基であり、そしてMは金属、アンモニウム又は置換アンモニウムカチオンである。特に、Rが水素であり、BがCHOHであり、そしてp<20であることが好ましい。
【0080】
上記官能基をHIPEポリマーに付加する方法は、引用によりその開示全てをここに含めることにする米国特許第4,612,334号(1986年9月16日にJones等に付与)に開示されている。吸水に適する官能化されたマイクロビーズは、対応する官能化されたポリマーを製造するのに使用されるのと同様な方法により製造される。適切な方法は、同じ塩基型の官能基(例えば、アミン塩)に対し、酸を吸収するのに適する官能化されたマイクロビーズを製造する方法について記述したものと同じ方法である。
【0081】
特に、水溶液の吸収に適するよう官能化することができる反応性マイクロビーズ中間体の製造に適するモノマーには、クロロメチルスチレン、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、又は他の適切なアクリレートエステル若しくはメタクリレートエステルが含まれる。更に、スチレン、α−メチルスチレン若しくは他の置換スチレン又はビニル芳香族モノマーのようなモノマーを重合し、次いで、クロロメチル化、スルホン化、ニトロ化、又は他の方法で活性化させ、その後に官能化マイクロビーズに転化しうる反応性マイクロビーズ中間体を製造することができる。アミン塩、カチオン第4級アンモニウム、アルコキシレート、及びスルホネート塩により官能化されたマイクロビーズは、それぞれ実施例5〜8にて詳細に説明する。
【0082】
マイクロビーズからの安定な炭素構造物の製造
マイクロビーズは、マイクロビーズの空洞及び連続な細孔の元の構造の保有する多孔質炭素含有材料に転化させることができる。この材料は、例えば、収着材又は濾材として、及び種々の生物工学上の用途における固体基材として有用である(次節にて更に説明する)。更に、炭素含有マイクロビーズは、バッテリー及びスーパーコンデンサー内の電極材料として使用することができる。バッテリー電極材料は、マイクロビーズのような大きな格子空間を有することが好ましい。大きな格子空間は、バッテリー作動時の格子の膨張及び収縮を減少させるか又はなくし、バッテリーの耐用年数を延ばす。スーパーコンデンサーは、非常に導電性の高い電極を必要とする。マイクロビーズの連通によって高度に導電性になるため、マイクロビーズをこの用途に理想的に適合させることができる。
【0083】
炭素含有マイクロビーズを製造するために、引用によりその内容全てをここに含めることにする米国特許第4,775,655号(1988年10月4日にEdwards等に付与)においてHIPEポリマーに関して開示されているように、安定なマイクロビーズを不活性雰囲気中で加熱する。この熱処理に耐えるマイクロビーズの性能は、使用されるモノマーに依存する、スチレンをベースとするモノマーのようなあるモノマーは、加熱時の解重合に対して安定なマイクロビーズを生じる。
【0084】
このようなマイクロビーズを安定化させるのに必要な改質法は種々の態様をとることができる。マイクロビーズ成分及び加工条件は、高い架橋度を達成するように、又は適用される加熱条件下での解重合を減少させる又は防ぐ化学物質を含むように選ぶことができる。適切な安定化させる化学物質には、ハロゲン基;スルホネート基;並びにクロロメチル基、メトキシ基、ニトロ基及びシアノ基が含まれる。最高の熱安定性に対し、架橋度が約20%以上であり、そして他の化学的改質度が少なくとも約50%であることが好ましい。安定化させる物質は、マイクロビーズの形成後にマイクロビーズに導入するか、又は適切に改質されたモノマーの選択によりマイクロビーズに導入することができる。
【0085】
マイクロビーズは、いったん安定化されると、不活性雰囲気中で少なくとも約500℃の温度に加熱される。最終的な炭素含有構造の安定剤の含有量を少なくするには、一般に、温度を少なくとも約1200℃に上昇させなければならない。マイクロビーズから安定な炭素構造物を製造するのに好ましい具体的な方法は実施例9において詳細に説明する。
【0086】
基材として使用するのに適するマイクロビーズの製造
多くのクロマトグラフ及び化学合成技術は基材を使用する。クロマトグラフ分離において、溶液の成分は、基材の表面に結合している化学基と相互作用するそのような成分の能力に基づいて分離される。固相合成において、基材は、成長する分子が固定される台(platform)として機能する。
【0087】
双方の方法とも回分法又は連続法で実施することができる。回分法において、基材は容器内に充填され、そして分離すべき成分又は反応体を含む溶液が連続的に加えられ、次いで濾過により除去され、そして洗浄される。代わりに、連続法又は半連続法において、基材がカラム内に充填され、次いで溶液が連続的にカラムを通り抜ける。
【0088】
液体が流動するのに十分な連続な流路となり、且つ、溶液成分又は反応体をマイクロビーズに拡散させる硬質骨格をマイクロビーズが提供するように、マイクロビーズはこのような系における使用に適するよう調節される。個々の用途にとって望ましいならば、溶液中の成分又は反応体と直接相互作用するマイクロビーズの表面に化学基を提供することによりマイクロビーズを官能化することができる。代わりに、マイクロビーズの表面にある化学基は、他の反応性種、例えば、触媒、酵素又は抗体に対するアンカーとして作用することができる。
【0089】
次節において、クロマトグラフィー及び固相合成におけるマイクロビーズの使用を説明及び検討し、具体例としてイオン交換クロマトグラフィー及びペプチド合成において使用するためのマイクロビーズの官能化を述べる。これらの2種の用途の検討は、例示を意図するものであって、いかなる場合であっても本発明の範囲を限定するものではない。これらの用途の変型は、当業者により容易に理解されるものであって、本発明の範囲に含まれる。
【0090】
クロマトグラフィーに使用するためのマイクロビーズの官能化
マイクロビーズは、イオン交換、ゲル濾過、吸着及びアフィニティークロマトグラフィーを含む種々のクロマトグラフィー技術における基材として有用である。
【0091】
イオン交換クロマトグラフィーにおいて、混合物の構成成分は実効電荷の違いに基づいて分離される。カチオンを分離する「カチオン交換樹脂」と呼ばれる基材は、負電荷を帯びた基の存在により特徴付けられる。逆に、アニオンを分離する「アニオン交換樹脂」と呼ばれる基材は、正電荷を帯びた基の存在により特徴付けられる。例えば、アニオン交換樹脂に結合する成分は、典型的には、カラム緩衝液のpHを増加させるか、該成分と競争してカラムに結合するアニオンを添加することにより前記樹脂から遊離させることができる。このような成分は、高実効電荷を有する成分よりも先に、且つ、低実効電荷を有する成分よりも後にカラムから溶出する。
【0092】
カチオン交換樹脂は、マイクロビーズ表面に酸性基を提供することによりマイクロビーズから製造することができる。適切な基には、強酸性スルホネート基、並びに弱酸性カルボキシレート基、カルボキシメチル基、ホスフェート基、スルホメチル基、スルホエチル基、及びスルホプロピル基が含まれる。アニオン交換樹脂は、強塩基性第4級アンモニウムから弱塩基性基、例えばアミノエチル基、ジエチルアミノエチル基、グアニドエチル基及びエピクロロヒドリントリエタノールアミン基に及ぶ塩基性基を用いてマイクロビーズを官能化することによりマイクロビーズから製造することができる。
【0093】
酸性溶液及び水溶液の吸収のためのマイクロビーズの官能化について先の述べたように、又は他の慣用的な方法によって、酸性又は塩基性基を予備成形されたマイクロビーズに加えることができる。代法として、このような基を有するマイクロビーズは、適切なモノマーの重合により直接製造することができる。
【0094】
製造法に関わらず、クロマトグラフィー用に官能化されたマイクロビーズは一般に少なくとも約70%の気孔率及び約50μm以下の空洞の大きさを有する。マイクロビーズは約70%〜約80%の気孔率を有することが好ましい。これらの特性の組合せによって、マイクロビーズ中の流れを比較的妨げずに液体の迅速な吸収が可能になる。
【0095】
マイクロビーズ基材の吸収力は、米国特許第4,965,289号(1990年10月23日にSherringtonに付与)に開示されている方法に従ってゲルをマイクロビーズに添加することにより増加させることができる。次節にて更に述べるように、ゲルは、マイクロビーズの空洞内で形成されるか、又はマイクロビーズの空洞内に加えられ、そしてマイクロビーズに結合する。マイクロビーズ基材がアニオン交換樹脂として機能するか又はカチオン交換樹脂として機能するかによって、ゲルは、それぞれ酸性基又は塩基性基を有する。
【0096】
固相合成に使用するのに適するマイクロビーズの官能化
マイクロビーズは、マイクロビーズ表面に結合される化学基を提供することにより、固相合成に使用するのに適するよう官能化される。前記化学基は、合成に必要とされる反応体の1つと相互作用するように選ばれる。選ばれた化学基に基づいて、ペプチド、オリゴヌクレオチド及びオリゴサッカリドのような多様な化学種の化学合成に適するようにマイクロビーズ基材を特殊化することができる。このような合成に使用するのに適するマイクロビーズを官能化するために、適切な化学基を添加する方法は、従来のHIPE及び他のポリマーについて既に記載されている方法と違わない。
【0097】
マイクロビーズは、例えば、引用によりその開示全てをここに含めることにする米国特許第4,965,289号(1990年10月23日にSherringtonに付与)中のHIPEポリマーについて開示されているように、ペプチド合成のために官能化することができる。簡単に述べると、マイクロビーズは、気孔率が少なくとも約70%及び空洞の大きさが約50μm以下になるように製造することができる。使用時にマイクロビーズがその乾燥体積の2倍以上に膨潤しないように、マイクロビーズは十分に架橋されていることが好ましい。
【0098】
マイクロビーズ表面に結合される化学基は、合成中に第1反応体に結合するいかなる基であってもよい。ペプチド合成において、例えば、化学基は、製造されるべきペプチドの第1アミノ酸に結合するいかなる基であってもよい。化学基がアミン基以外のアミノ酸の位置において結合するように化学基は選ばれる。典型的には、化学基は第1アミノ酸のカルボキシル基と反応するアミンを含む。
【0099】
化学基を予備成形されたマイクロビーズに加えるか、又は化学基を有するマイクロビーズを適切な実質的に不水溶性のモノマーの乳化及び重合により直接製造することができる。所望であれば、化学基を更に改質し、ペプチドの第1アミノ酸と相互作用するスペーサー基を提供することができる。
【0100】
ペプチド合成は、第1アミノ酸を適切なマイクロビーズ表面の化学基に結合させることより開始する。アミノ酸反応体のアミン基は一般に保護されており、従って、アミノ酸の脱保護及びカップリングの環(round)を変化させることにより連鎖成長が起こる。このプロセスはペプチドの基材からの脱離により停止し、その後、ペプチドは典型的には精製される。
【0101】
マイクロビーズ基材の吸収力は、米国特許第4,965,289号(1990年10月23日にSherringtonに付与)に開示されている方法に従ってゲルをマイクロビーズに添加することにより増加させることができる。簡単に述べると、適切なマイクロビーズを樹基のように製造し、次いでゲル又はプレゲルをマイクロビーズの空洞内に沈着及び保持させる。ゲルは一般に非常に溶剤を吸収しやすい架橋したゲルであり、例えば、軟質の変形しうるポリアミドゲルである。合成用途に対し、ゲルは、一般に、合成に関わる反応体と相互作用するように調節される。多孔質材料に対する膨潤したゲルの比は約60:40〜約95:5(重量:重量)であり、より好ましくは約75:25〜約95:5である。最も好ましい比は約80:20である。
【0102】
米国特許第4,965,289号(1990年10月23日にSherringtonに付与)に開示されているように、ゲル入りのHIPEポリマーを製造する従来法のいずれによっても予備成形されたマイクロビーズ中にゲルを沈着及び保持させることができる。一態様において、ゲルはマイクロビーズの空洞内でプレゲル材料から形成される。最も好ましくは、ゲルは、ゲル形成時にマイクロビーズの空洞内に保持又は固定される。ゲルとマイクロビーズ表面の間の鎖の絡み合い(entanglement)及び/又は相互貫入(interpenetration)によりゲルを保持することができる。更に、ゲルとマイクロビーズ表面の間の化学結合を伴うと考えられる方法によりゲルを保持することができる。上記機構の組合せも可能である。
【0103】
一態様において、マイクロビーズは、そのマイクロビーズに適するプレゲル成分と膨潤溶剤(swelling solvents)を含む溶液と接触する。プレゲル成分がマイクロビーズに浸透し、そしてゲルを形成し始めると、マイクロビーズは膨潤し、マイクロビーズの膨潤したポリマー材料と成形ゲルとの間のポリマー鎖の相互貫入により成形ゲルの一部を閉じ込める。適切な膨潤溶剤は、マイクロビーズポリマーの性質に依存、当業者により容易に決定される。ポリマー鎖の絡み合いによってゲル入りのマイクロビーズを製造する好ましい具体的方法は実施例10に記載した。
【0104】
他の態様において、化学結合による保持は、ゲル又はプレゲル成分をマイクロビーズの定着基(anchor groups)と反応させることにより達成される。適切なゲル定着基は当該技術分野で公知のものと違わず、このような基にはゲル又はプレゲル成分との相互作用に利用できる二重結合を有する基が含まれる。このような定着基は、マイクロビーズ形成後の改質により又は適切に改質されたモノマーの選択によりマイクロビーズに導入することができる。
【0105】
例えば、ゲル入りのマイクロビーズは、アミノメチル官能性マイクロビーズをアクリロイルクロライドと反応させ、アクリル化されたマイクロビーズとすることにより製造することができる。ゲル重合を開始させるためにプレゲルの存在のもとで加熱することにより、アクリレート基の二重結合は成形ゲルと相互作用し、マイクロビーズに対してゲルの共有結合が生じると考えられる。アクリル化されたマイクロビーズが使用される場合、適切なプレゲルモノマーには、例えば、アクリロイルチラミンアセテート及びアクリロイルサルコシンメチルエステルが含まれる。上記のように、定着基は、マイクロビーズ形成後の改質によるか又は適切な改質されたモノマーの選択によりマイクロビーズに導入される。
【0106】
分子を固定するためのマイクロビーズの使用
マイクロビーズは、ポリペプチド及びオリゴヌクレオチドを含む種々の分子に適する基材として使用することができる、マイクロビーズは、抗体、レクチン、酵素、及びハプテンを固定化するのに特に有用である。このような分子をポリマー基材に結合させる方法は、よく知られている(例えば、Tijssen,P.Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology: Practice and Theoriesof Enzyme Immunoassays,NewYork:Elsevier(1985)、第298〜314頁を参照されたい)。幾つかのこのような方法を以下で簡単に説明する。この方法は、具体例として述べるのであって、限定を意図するものではなく、当業者は、関心のある分子をマイクロビーズに結合させるのにこれらの従来の方法をどのように使用又は改良するかを容易に決定することができる。
【0107】
ポリペプチドは、非共有結合的吸着を通じて又は共有結合によりマイクロビーズに結合することができる。非共有結合的吸着は一般に不特定の疎水性相互作用に起因するもので、ポリペプチドの実効電荷に依存しない。ポリペプチドは、ポリペプチドを含む緩衝液によりマイクロビーズを処理することによりマイクロビーズに結合する。適切な緩衝液は、50Mmのカーボネート、pH9.6;100mMの塩化ナトリウムを含む10mMのトリス−HCL、pH8.5;及びリン酸により緩衝液とされた塩化ナトリウム水溶液を含む。ポリペプチド濃度は一般に1〜10μg/mlである。湿潤室内の4℃で典型的にはこの溶液中でマイクロビーズを一晩インキュベートした。ポリペプチド吸着度は、ポリペプチドの部分的変性により、例えば、ポリペプチドを高温、低pH(例えば、2.5)、又は変性原(例えば、尿素)に暴露することにより増加した。
【0108】
マイクロビーズへのポリペプチドの共有結合に多くの異なる異なる方法を利用することができる。都合良いことに、例えば、マイクロビーズをグルタルアルデヒドで処理することによって、遊離アミノ基を有するポリペプチドを、スチレンをベースとするマイクロビーズに結合させることができる。次いで、ポリペプチドが加えられ、そして100mMカーボネートを用いて溶液のpHが約8.0〜約9.5に増加される。pHの増加によって、マイクロビーズ表面にポリペプチドを結合させるグルタルアルデヒドの反応性が増大する。エチルクロロホルメートは、上記方法におけるグルタルアルデヒドの代わりに使用されるか、又はグルタルアルデヒドと組み合わされて使用される。
【0109】
代法として、ポリペプチドの共有結合に適するようマイクロビーズを官能化することができる。このようなマイクロビーズは、関心のあるポリペプチドに結合する定着基を提供する。ポリマーにポリペプチドを結合させるのに適する定着基は公知のものであって、ヒドラジド基、アルキルアミン基、及びサンガー試薬が含まれる。定着基は、マイクロビーズ形成後の改質によるか又は適切に改質されたモノマーの選択によりマイクロビーズに導入することができる。
【0110】
更に、ポリペプチドを、架橋分子を介してマイクロビーズに結合させることができる。この結合方法は、マイクロビーズに弱く結合するポリペプチドに対して有用である。このようなポリペプチドは、プラスチック、例えば、子ウシ血清アルブミン(BSA)に対して高いアフィニティーを有する架橋分子に結合される。BSA橋を介してマイクロビーズにポリペプチドを結合させるには、BSAがマイクロビーズに添加され、次いで、カルボジイミドのような慣用的な架橋剤を使用して固定化されたBSAにポリペプチドが結合される。
【0111】
他の態様において、マイクロビーズはオリゴヌクレオチドに適する基材として機能する。都合良いことに、メチル化BSA、ポリ−L−リシン、又はプロタミンスルフェートのようなポリカチオン物質でマイクロビーズを処理することによって、オリゴヌクレオチドをマイクロビーズに吸着させることができる。後者が用いられる場合には、マイクロビーズは典型的には約90分間を要して1%プロタミンスルフェート水溶液で処理され、次いで数回蒸留水で洗浄される。次いでマイクロビーズは乾燥される。10mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)及び10mMエチレングリコール−ビス(β−アミノエチルエーテル)N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)を含むpH7.5の50mMトリス−HClのような緩衝液中に約10μg/mlの濃度で含まれるオリゴヌクレオチドをマイクロビーズに添加することによって、処理されたマイクロビーズにオリゴヌクレオチドは吸着される。一般に、60分間の処理時間は好適な結果を与えた。
【0112】
高密度細胞培養におけるマイクロビーズの使用
上記用途に加え、マイクロビーズは細胞培養にも有用である。高密度細胞培養は一般に、成長培地を用いる連続灌流により細胞が供給されることを要する。懸濁培養はこの要求を満たすが、剪断効果により高細胞密度での通気に限界がある。マイクロビーズはこれらの剪断効果から細胞を保護し、そして慣用的な攪拌又はエアリフトバイオリアクターに使用することができる。
【0113】
真核生物又は原核生物の細胞の培養に使用するのに適するマイクロビーズを製造するために、マイクロビーズは一般に種々の公知の滅菌法により滅菌される。適切な方法には、放射線照射、エチレンオキシド処理、及び好ましくは高圧滅菌が含まれる。無菌マイクロビーズは、次いで、培養すべき細胞に適する成長培地を有する培養容器内に置かれる。適切な成長培地は公知であり、懸濁培養に適する従来技術の成長培地と違いはない。細胞の接種物が加えられ、そして、マイクロビーズへの細胞の結合に適する条件下に培地は保たれる。培地の体積は一般に増加し、そして培地は従来技術の懸濁培地と同様に保たれる。
【0114】
マイクロビーズは、改質せずに細胞培養に使用できるが、細胞の結合、成長、及び特定のタンパク質の生成を改良するためにマイクロビーズを改質することもできる。例えば、細胞をマイクロビーズに結合させるために種々の架橋分子を使用することができる。適切な架橋分子には、抗体、レクチン、グルタルアルデヒド、及びポリ−L−リシンが含まれる。更に、上記のようにマイクロビーズのスルホン化によって、細胞の結合度が増加する。実施例11は、具体的な哺乳類の細胞培養にスルホン化されたマイクロビーズを使用することを例示する。
【実施例】
【0115】
本発明を以下の特定的ではあるが非限定的な実施例により更に説明する、建設的に実施される方法は現在時制で記載し、そして実験室内で実施した方法は過去時制で記載した。
【0116】
実施例1
A.水性相及び油相開始剤を使用するマイクロビーズの製造
以下の実験計画案に従って具体例として好ましいマイクロビーズを製造した。HIPE及び水性懸濁媒の各成分の最終濃度を表1の実験4に示す。また、表1は以下の実験計画案が有効であったことを示す実験を表す。これらの実験結果は表2に記載した。
【0117】
1.11.37gのスチレンをベースとするモノマー、11.25gのDVB、8.00gのSpan 80、0.27gのAIBN、及び15.00gのドデカンを室温で攪拌しながら組み合わせることにより油相を調製する。
【0118】
2.94.3mlの蒸留水に0.78gの過硫酸カリウムを加えることにより水性相を調製する。
【0119】
3.油相を約1400rpmで攪拌し、次いで油相に水性不連続相を20ml/分の流量で加える。組み合わせた相を1400rpmで約5〜10分間を要して攪拌し、安定なHIPEとする。
【0120】
4.2gの過硫酸カリウム及び3gのカオリナイトクレー(Georgia Kaolin Co.,Inc.)を1リットルの蒸留水と組み合わせることにより水性懸濁媒を調製する。混合物を700rpmで約15分間を要して攪拌し、次いで攪拌速度を250rpmに調節する。
【0121】
5.22リットルLurex反応器(形式番号LX6214−1008)内で、サスペンションがHIPEを約20%含むまで、水性懸濁媒にHIPEを15ml/分の滴下添加する。
【0122】
6.マイクロビーズを形成させるため、250rpmで攪拌しながら温度を一晩60℃に上昇させることによりサスペンションを重合させる。
【0123】
7.得られたマイクロビーズを水で5回洗浄し、次いでソクスレー抽出器内で約1日間4を要してアセトン抽出を行う。マイクロビーズを一晩を要して風乾させる。得られた材料の嵩密度は乾燥したマイクロビーズの0.055g/mlであった。
【0124】
B.油相開始剤を使用するマイクロビーズの製造
以下の代替的実験計画案に従って具体例として好ましいマイクロビーズを製造した。HIPE及び水性懸濁媒の各成分の最終濃度を表3の実験4に示す。また、表1は以下の実験計画案が有効であったことを示す実験を表す。これらの実験結果は表4に記載した。
【0125】
1.1リットルのビーカー内で、0.4gのエチルセルロースを30gのトリクロロエタン中に溶かし、次いで20gのスチレンをベースとするモノマー、19.5gのDVB、22gのSpan80、及び0.9gの過酸化ラウロイルを加えることにより油相を調製する。室温で攪拌することにより成分を混合する。
【0126】
2.ビーカーをGifford−Woodホモジナイザー−ミキサー(Model1−LV;ニューハンプシャー州ハドソン所在のGreercoから入手可能)に据え付け、そして850gの脱イオン水を徐々に加えながら1800〜4800rpmで攪拌し、HIPEを形成させる。
【0127】
3.2リットルガラスシリンダー反応器(ニュージャージー州ヴィンランド所在のAce Glass製)内で、120gのアラビアゴムを800gの脱イオン水と組み合わせることにより調製する。100rpmで攪拌しながら、混合物を60〜70℃で約15分間加熱し、そして混合物を約40℃に冷却する。
【0128】
4.HIPEを約200ml/分の流量で水性懸濁媒に滴下添加する。
【0129】
5.望ましいビーズの大きさに依存して混合速度を10rpm〜300rpmに調製する。
【0130】
6.マイクロビーズを形成させるため、定速攪拌のもとで約20時間を要して45℃に温度を上昇させることにより、サスペンションを重合させる。
【0131】
7.得られたマイクロビーズを水で5回洗浄し、次いでソクスレー抽出器内でそれぞれ約18時間を要してアセトン抽出に続いてメタノール抽出を行う。マイクロビーズを一晩を要して風乾させる。
【0132】
【表1−1】

【0133】
【表1−2】

【0134】
【表1−3】

【0135】
【表2】

【0136】
【表3】

【0137】
【表4】

実施例2
アミン基を使用する酸の吸収のためのマイクロビーズの官能化
ジエチルアミン官能化マイクロビーズを実施例1に記載のように調製したクロロメチルスチレンマイクロビーズから製造した。マイクロビーズを一晩を要して風乾させ、次いで200mlヘキサンを使用して15時間を要してソクスレー抽出し、残留未重合成分を除去した。次いで、5gのマイクロビーズを150mlの水溶性ジエチルアミンと共に20時間還流した。得られたジエチルアミン官能化マイクロビーズは85%置換されており、そして1.5mM/gの吸収力を有していた。この材料1gは20mlの1N硫酸を吸収した。
【0138】
実施例3
アミン基を使用する酸の吸収のためのマイクロビーズの官能化
ジヘキシルアンモニウム塩を製造するために、ジエチルアミン官能化マイクロビーズに関する上記実施例1に記載したようにジヘキシルアミン官能化マイクロビーズを調製した。次いで、1gのジヘキシルアミン官能化マイクロビーズを100mlメタノール酸HClに加え、そして30分間攪拌した。得られた塩の対イオンは塩化物イオンであった。ジヘキシルアンモニウムクロライド官能化マイクロビーズを濾過により集め、50mlのメタノールを用いて3回洗浄し、次いで一晩を要して風乾させた。得られたマイクロビーズは70%置換されていた。
【0139】
実施例4
第4級アンモニウム基を使用する酸の吸収のためのマイクロビーズの官能化
ジメチルデシルアンモニウム塩を製造するために、クロロメチルスチレンマイクロビーズを実施例1に記載のように調製した。マイクロビーズを一晩を要して風乾させ、次いでヘキサンを用いてソクスレー抽出し、残留未重合成分を除去した。減圧下で1gのマイクロビーズに10倍モル過剰のエタノール酸アミンを充填し、次いで7時間還流した。得られた塩の対イオンは塩化物イオンであった。ジメチルデシルアンモニウムクロライド官能化マイクロビーズを濾過により集め、50mlのエタノールを使用して2回及び50mlのメタノールを使用して2回洗浄し、次いで一晩を要して風乾させた。得られたマイクロビーズは70%置換されていた。
【0140】
実施例5
アミン塩を使用する水溶液の吸収のためのマイクロビーズの官能化
ジメチルアンモニウム塩を製造するために、ジエチルアミン官能化マイクロビーズを実施例3に記載のように調製した。マイクロビーズを一晩を要して風乾させ、ヘキサンを使用してソクスレー抽出し、残留未重合成分を除去した。1gのマイクロビーズを100mlのメタノール酸HClに加え、そして30分間攪拌した。得られた塩の対イオンは塩化物イオンであった。ジエチルアミンクロライド官能化マイクロビーズは85%置換されていた。
【0141】
実施例6
第4級アンモニウム基を使用する水溶液の吸収のためのマイクロビーズの官能化
ジメチルデシルアンモニウム塩を製造するために、クロロメチルスチレンマイクロビーズを実施例1に記載のように調製した。マイクロビーズを一晩を要して風乾させ、次いでヘキサンを使用してソクスレー抽出し、残留未重合成分を除去した。次いで、1gのマイクロビーズを100mlのアミン水溶液で30分間処理した。得られたジメチルデシルアンモニウムクロライド官能化マイクロビーズは85%置換されていた。
【0142】
実施例7
アルコキシレート基を使用する水溶液の吸収のためのマイクロビーズの官能化
実施例1に記載のように調製されたクロロメチルスチレンマイクロビーズからエトキシル化されたマイクロビーズを製造した。マイクロビーズを一晩を要して風乾させ、次いでヘキサンを使用してソクスレー抽出し、残留未重合成分を除去した。次いで、1gのマイクロビーズを、PEG過剰の溶剤として8〜9個のエチレングリコールモノマーを含むアニオン型のポリエチレングリコール(PEG)100mlで処理した。反応物を95℃で2時間加熱した。得られたエトキシル化されたマイクロビーズは90%置換されていた。
【0143】
実施例8
スルホネート基を使用する水溶液の吸収のためのマイクロビーズの官能化
実施例1に記載のように調製されたスチレンマイクロビーズからスルホネート官能化マイクロビーズを製造した。マイクロビーズを、減圧下50℃で2日間を要して乾燥させた。次いで、10gのマイクロビーズを、200mlのクロロホルムと50mlのクロロスルホン酸の混合物を含む500mlフラスコに入れた。フラスコを室温で2日間振盪した。スルホネート官能化マイクロビーズを濾過により集め、そしてそれぞれ250mlのクロロホルム、メチレンクロライド、アセトン及びメタノールで逐次洗浄した。マイクロビーズを300mlの10%水酸化ナトリウム水溶液に一晩浸漬し、次いで溶出液が中性のpHに達するまで水で洗浄した。得られた材料の嵩密度は乾燥したマイクロビーズの0.067g/mlであり、そして吸収力は2.5mM/gであった。この材料の1gは23.5gの水を吸収した。
【0144】
実施例9
クロロメチルスチレンマイクロビーズからの安定な炭素構造物の製造
架橋度が20〜40%となり、そして気孔率が90%となるように、実施例1に記載のように3−クロロメチルスチレンマイクロビーズを製造した。次いで、1gのマイクロビーズを電熱管炉内に入れ、そして酸素を含まない窒素雰囲気中で温度を600℃に上昇させた。加熱速度を1分間当たり5℃以下に保ち、そして180℃〜380℃の範囲では加熱速度が1分間当たり2℃を超えないようにした。加熱工程後、空気による酸化を防ぐためにマイクロビーズを不活性雰囲気中で周囲温度に冷却した。
【0145】
実施例10
タンパク質合成用基材としての使用に適するゲル入りのマイクロビーズの製造
90%の気孔率、0.047g/mlの嵩密度、1〜50μmの平均空洞直径を有し、その10%が架橋されているマイクロビーズを実施例1に記載のように製造した。使用したゲルは、ポリ(N−(2−(4−アセトキシフェニル)エチル)アクリルアミド)であった。ゲル前駆体の溶液を調製するために、2.5gのモノマー、0.075gの架橋剤であるエチレンビス(アクリルアミド)、及び0.1gの開始剤であるAIBNを10mlの膨潤剤であるジクロロメタンに加えた。次いで、ゲル前駆体溶液を窒素でパージすることにより脱酸素化した。
【0146】
0.7gのマイクロビーズをゲル前駆体溶液に加え、この試料を還流用に改良された回転式蒸発器により回転させながら60℃に混合物を加熱することにより重合を開始させた。ジクロロエタンはマイクロビーズを膨潤させ、それによってゲル前駆体がマイクロビーズに浸透し、そしてマイクロビーズのポリマー鎖と相互貫入するポリアミドが形成された。1時間後、ゲル入りのマイクロビーズ(以下「複合材料」と呼ぶ)を50mlのジメチルホルムアミド(DMF)及び50mlのジエチルエーテルを使用して洗浄し、次いで減圧乾燥させた。複合材料内に化学基を形成させるため、0.25gの複合材料をDMF中に溶けたヒドラジン水和物の5%溶液50mlで5分間を要して処理した。この処理によって、ゲルマトリックス内にペプチド合成に適する化学基として作用する遊離フェノール官能基が提供された。
【0147】
実施例11
高密度細胞培養におけるマイクロビーズの使用
哺乳類の細胞培養に適するマイクロビーズを製造するために、実施例8に記載のようにスルホン化マイクロビーズを製造し、次いで70%エタノール溶液内に浸漬し、そして121℃で15分間を要して高圧滅菌した。次いで、マイクロビーズをステリルホスフェート緩衝塩化ナトリウム水溶液で2回洗浄し、そして完全成長培地で1回洗浄した。500mgのステリルマイクロビーズを、細胞の付着を防止するためにシリコーン化された500mlのローラーボトルに入れた。
【0148】
50mlの成長培地(胎児ウシ血清を10%含む)中に含まれる5×10のベビーハムスター腎細胞の接種物をローラーボトルに加えた。マイクロビーズに細胞が結合するように定期的に攪拌しながら、前記接種物をマイクロビーズと共に37℃で8時間インキュベートした。培地体積は100mlに増加し、そしてローラーボトルに空気−CO(95:5)混合物を通気し、ローラー装置内に入れた。グルコース濃度が1g/リットル未満に降下するたびに成長培地を取り替えた。
【0149】
本発明により、例えば、以下が提供される:
1.連続な細孔により連通された空洞を有する多孔質の架橋したポリマーマイクロビーズであって、各マイクロビーズの内部にある前記空洞の少なくとも幾つかがそのマイクロビーズの表面と通じており、そして前記マイクロビーズの約10%が実質的に球状又は実質的に楕円体又はこれらの組合せであるマイクロビーズ。
【0150】
2.約5μm〜約5mmの平均直径を有する項目1記載のマイクロビーズ。
【0151】
3.少なくとも約70%の気孔率を有する項目1記載のマイクロビーズ。
【0152】
4.多孔質の架橋したポリマーマイクロビーズを製造する方法であって、
(a)(i)(1)実質的に水不溶性の単官能価モノマー;
(2)実質的に水不溶性の多官能価架橋剤;及び
(3)安定な油中水滴型エマルションを形成させるのに適する乳化剤;を含む油相;と
(ii)水性不連続相;とを組み合わせ、少なくとも約70%の水性不連続相を含むエマルションを形成させること;
(b)前記エマルションを水性懸濁媒に加え、分散したエマルション液滴の水中油滴型サスペンションを形成させること;次いで
(c)前記エマルション液滴を重合させること;を含む方法。
【0153】
5.モノマーがスチレンをベースとするモノマーである項目4記載の方法。
【0154】
6.モノマーが油相中に約4〜約90重量%の濃度で存在する項目4記載の方法。
【0155】
7.架橋剤が、ジビニルベンゼン化合物、ジ−又はトリアクリル化合物、トリアリルイソシアヌレート、及びこれらの組合せからなる群より選ばれる、項目4記載の方法。
【0156】
8.架橋剤が油相中に約1〜約90重量%の濃度で存在する項目4記載の方法。
【0157】
9.乳化剤が、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセロール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸又はエステルからなる群より選ばれるか、又は乳化剤がこれらの組合せである、項目4記載の方法。
【0158】
10.乳化剤が油相中に約3〜約50重量%の濃度で存在する項目4記載の方法。
【0159】
11.油相が油溶性重合開始剤を更に含む項目4記載の方法。
【0160】
12.開始剤がアゾ開始剤及び過酸化物開始剤からなる群より選ばれる項目11記載の方法。
【0161】
13.油溶性重合開始剤が油相中に重合性ポリマーの合計量の約5重量%以下の濃度で存在する項目11記載の方法。
【0162】
14.油相がポロゲンを更に含む項目4記載の方法。
【0163】
15.ポロゲンが、ドデカン、トルエン、シクロヘキサノール、n−ヘプタン、イソオクタン及び石油エーテルからなる群より選ばれる、項目14記載の方法。
【0164】
16.ポロゲンが油相中に約10〜約60重量%の濃度で存在する項目14記載の方法。
【0165】
17.水性不連続相が水溶性重合開始剤を含む項目4記載の方法。
【0166】
18.水溶性重合開始剤が過酸化物開始剤を含む項目17記載の方法。
【0167】
19.水溶性重合開始剤が水性不連続相中に約5重量%以下の濃度で存在する項目17記載の方法。
【0168】
20.水中油滴型サスペンションが安定なサスペンションを生成させるのに適する量の高内部相エマルションを含む項目4記載の方法。
【0169】
21.水性懸濁媒が沈殿防止剤を含む項目4記載の方法。
【0170】
22.沈殿防止剤が水溶性ポリマー及び水不溶性無機固形物からなる群より選ばれる項目21記載の方法。
【0171】
23.沈殿防止剤が、改質されて疎水性が増加した水不溶性無機固形物を含む、項目23記載の方法。
【0172】
24.沈殿防止剤が水性懸濁媒中に約1〜約30重量%の濃度で存在する項目21記載の方法。
【0173】
25.水性懸濁媒が水溶性重合開始剤を含む項目4記載の方法。
【0174】
26.水溶性重合開始剤が過酸化物開始剤である項目25記載の方法。
【0175】
27.水溶性重合開始剤が水性懸濁媒中に約5重量%以下の濃度で存在する項目25記載の方法。
【0176】
28.サスペンションが、安定なサスペンションを形成させるのに十分な剪断攪拌を提供しながら高内部相エマルションを水性懸濁媒に加えることにより形成される、項目4記載の方法。
【0177】
29.多孔質の架橋したポリマーマイクロビーズを製造する方法であって、
(a)(i)(1)スチレン;
(2)ジビニルベンゼン;
(3)アゾイソビスブチロニトリル;
(4)ドデカン;及び
(5)ソルビタンモノオレエート;を含む油相;と
(ii)過硫酸カリウムを含む水性不連続相;とを組み合わせ、エマルションを形成させること;
(b)前記エマルションを水性懸濁媒に加え、分散したエマルション液滴の水中油滴型サスペンションを形成させること、ここで前記懸濁媒は、
(i)過硫酸カリウム;
(ii)改質シリカ;及び
(iii)ゼラチン;を含む;次いで
(c)前記エマルション液滴を重合させること;を含む方法。
【0178】
30.(a)(i)(1)実質的に水不溶性の単官能価モノマー;
(2)実質的に水不溶性の多官能価架橋剤;及び
(3)安定な油中水滴型エマルションを形成させるのに適する乳化剤;を含む油相;と
(ii)水性不連続相;とを組み合わせ、エマルションを形成させること;
(b)前記エマルションを水性懸濁媒に加え、分散したエマルション液滴の水中油滴型サスペンションを形成させること;次いで
(c)前記エマルション液滴を重合させること;を含む方法により製造される多孔質の架橋したポリマーマイクロビーズ。
【0179】
31.(a)(i)(1)スチレン;
(2)ジビニルベンゼン;
(3)アゾイソビスブチロニトリル;
(4)ドデカン;及び
(5)ソルビタンモノオレエート;を含む油相;と
(ii)過硫酸カリウムを含む水性不連続相;とを組み合わせ、エマルションを形成させること;
(b)前記エマルションを水性懸濁媒に加え、分散したエマルション液滴の水中油滴型サスペンションを形成させること、ここで前記懸濁媒は、
(i)過硫酸カリウム;
(ii)改質シリカ;及び(iii)ゼラチン;を含む;次いで
(c)前記エマルション液滴を重合させること;を含む方法により製造される多孔質の架橋したポリマーマイクロビーズ。
【0180】
32.構造単位:
【0181】
【化8】

(上式中、Aは架橋された炭素鎖であり、Yは任意のスペーサー基であり、そしてZはイオン性又は極性官能基である)
を含む水性及び/又は有機酸性液体を吸収するように官能化された項目1記載のマイクロビーズ。
【0182】
33.メチルオレエート吸収量に対する官能化されたマイクロビーズによる水性及び/又は有機酸の吸収量の比が約1.2以上である、項目32記載の官能化されたマイクロビーズ。
【0183】
34.Zが、8個以上の炭素原子を有する有機基である対イオンの存在のもとで、アミノ基又は置換アミノ基;8個以上の炭素原子を有するアルキルカチオン第4級アンモニウム基;及び8個以下の炭素原子を有するアルキルカチオン第4級アンモニウム基からなる群より選ばれる、項目32記載の官能化されたマイクロビーズ。
【0184】
35.Zが、下記化学種1〜3:
【0185】
【化9】

(上式中、R、R、R、R及びRは同一であっても異なっていてもよく、アルキル、シクロアルキル、アリール、及びヒドロキシアルキルからなる群より選ばれるか、又はR及びRは環構造の一部を形成し、そしてカチオン第4級アンモニウム(3)に対してRとRとRの全体に存在する炭素原子の数が10以上であり、アミン塩(2)に対してRとRの全体に存在する炭素原子の数が8以上であり、そして対イオンXは有機又は無機イオンである)
からなる群より選ばれるイオン性又は極性官能基を含む、項目32記載の官能化されたマイクロビーズ。
【0186】
36.カチオン第4級アンモニウム(3)に対してRとRとRの全体に存在する炭素原子の数が10未満であり、アミン塩(2)に対してRとRの全体に存在する炭素原子の数が8未満であり、そして対イオンXが8個以上の炭素原子を有する有機基である、項目35記載の官能化されたマイクロビーズ。
【0187】
37.架橋度が約1〜約20%である項目32記載の官能化されたマイクロビーズ。
【0188】
38.架橋度が約2〜約10%である項目32記載の官能化されたマイクロビーズ。
【0189】
39.気孔率が約95%以上である項目32記載の官能化されたマイクロビーズ。
【0190】
40.官能化度が約50%以上である項目32記載の官能化されたマイクロビーズ。
【0191】
41.下記構造単位:
【0192】
【化10】

(上式中、Aは架橋された炭素鎖であり、Yは任意のスペーサー基であり、そしてZはイオン性又は極性官能基である)
を含む、水性液体を吸収するように官能化された項目1記載のマイクロビーズ。
【0193】
42.吸水量に対する官能化されたマイクロビーズによる10%塩化ナトリウムの吸収量の比が約0.1以上である項目41記載の官能化されたマイクロビーズ。
【0194】
43.吸水量に対する10%塩化ナトリウムの吸収量の比が約0.5以上である項目42記載の官能化されたマイクロビーズ。
【0195】
44.吸水量に対する10%塩化ナトリウムの吸収量の比が約0.7以上である項目43記載の官能化されたマイクロビーズ。
【0196】
45.Zが、10個以下の炭素原子を有するアルキルカチオン第4級アンモニウム基;8個以下の炭素原子を有するアルキルアミン塩基;アルコキシレート基;硫酸、炭酸、リン酸又はスルホン酸基の金属塩、アンモニウム塩、又は置換アンモニウム塩;からなる群より選ばれ、但し、Zがスルホン酸である場合には、Yは下記の構造:
【0197】
【化11】

を有しない、項目41記載の官能化されたマイクロビーズ。
【0198】
46.Zが、下記構造1〜2:
【0199】
【化12】

(上式中、R、R、及びRは同一であっても異なっていてもよく、アルキル、シクロアルキル、アリール、及びヒドロキシアルキルからなる群より選ばれるか、又はR及びRは環構造の一部を形成し、そしてカチオン第4級アンモニウム(1)に対してRとRとRの全体に存在する炭素原子の数が10未満であり、アミン塩(2)に対してRとRの全体に存在する炭素原子の数が8未満であり、そして対イオンXは無機イオン又は8個未満の炭素原子を有するカルボキシレート基である)
からなる群より選ばれるイオン性又は極性官能基を含む、項目41記載の官能化されたマイクロビーズ。
【0200】
47.Zが、下記構造:
【0201】
【化13】

(上式中、pは1〜680であり、そして
【0202】
【化14】

であり、ここでRは水素又はアルキル基であり、Mは、金属、アンモニウム又は置換アンモニウムカチオンである)を有するアルコキシレート基である、項目41記載の官能化されたマイクロビーズ。
【0203】
48.架橋度が約1〜約20%である項目41記載の官能化されたマイクロビーズ。
【0204】
49.架橋度が約2〜約10%である項目41記載の官能化されたマイクロビーズ。
【0205】
50.気孔率が約95%以上である項目41記載の官能化されたマイクロビーズ。
【0206】
51.官能化度が約50%以上である項目41記載の官能化されたマイクロビーズ。
【0207】
52.炭素含有構造を有する項目1記載のマイクロビーズ。
【0208】
53.少なくとも約90%の気孔率及び約0.25g/cc以下の乾燥密度を有する項目52記載の官能化されたマイクロビーズ。
【0209】
54.(a)連続な細孔により連通された空洞を有する安定な多孔質の架橋したポリマーマイクロビーズを製造すること;及び
(b)不活性雰囲気中で前記安定なマイクロビーズを少なくとも約500℃の温度に加熱すること;を含む炭素含有マイクロビーズを製造する方法。
【0210】
55.(i)連続な細孔により連通された空洞を有する安定な多孔質の架橋したポリマーマイクロビーズに少なくとも2種の成分を含む溶液を通すこと、ここで前記2種の成分の一方と選択的に相互作用する化学基が前記マイクロビーズの表面に結合されている;及び
(ii)前記2種の成分を互いに分離すること;を含む分離方法。
【0211】
56.分離方法がイオン交換クロマトグラフィーである項目55記載の方法。
【0212】
57.化学基がマイクロビーズの表面に結合されている項目55記載の方法。
【0213】
58.化学基がマイクロビーズの空洞内のゲル又はプレゲルに結合されている項目55記載の方法。
【0214】
59.連続な細孔により連通された空洞を有する多孔質の架橋したポリマーマイクロビーズに反応体を含む溶液を通すことを含む方法であって、反応体と相互作用する化学基が前記マイクロビーズの表面に結合されている方法。
【0215】
60.化学基がマイクロビーズの表面に結合されている項目59記載の方法。
【0216】
61.化学基がマイクロビーズの空洞内のゲル又はプレゲルに結合されている項目60記載の方法。
【0217】
62.化学合成において溶液及び反応体の成分からなる群より選ばれる化学物質と相互作用する化学基を含むゲル又はプレゲルを空洞内に更に含む項目1記載のマイクロビーズ。
【0218】
63.空洞が約1〜約100μmの直径を有する項目62記載のマイクロビーズ。
【0219】
64.液体の存在のもとで、その乾燥体積の約2倍を超えない体積に膨潤する項目62記載のマイクロビーズ。
【0220】
65.マイクロビーズに対する膨潤したゲルの重量比が約60:40〜約95:5になる項目62記載のマイクロビーズ。
【0221】
66.(a)連続な細孔により連通された空洞を有する多孔質の架橋したポリマーマイクロビーズを製造すること;次いで
(b)前記マイクロビーズの空洞内にゲル又はプレゲルを沈着及び保持させること;を含む、ゲル又はプレゲルを有するマイクロビーズを製造する方法。
【0222】
67.工程(b)が、マイクロビーズを、そのマイクロビーズに適するプレゲル成分及び膨潤溶剤を含む溶液に、膨潤したマイクロビーズに前記プレゲルが浸透し、そしてマイクロビーズの空洞内にゲルを形成させるのに十分な時間接触させることを含む、項目66記載の方法。
【0223】
68.ポリペプチド及びオリゴヌクレオチドからなる群より選ばれる分子がその表面に結合される項目1記載のマイクロビーズ。
【0224】
69.分子が、抗体、レクチン、酵素及びハプテンからなる群より選ばれるポリペプチドである、項目68記載のマイクロビーズ。
【0225】
70.分子が、非共有結合的吸着、共有結合、及び架橋分子を介する結合からなる群より選ばれる結合によりマイクロビーズの表面に結合される、項目68記載のマイクロビーズ。
【0226】
71.(a)培地の存在のもとで、連続な細孔により連通された空洞を有する多孔質の架橋したポリマーマイクロビーズに細胞を接触させる工程;次いで
(b)マイクロビーズを攪拌する工程;の各工程を上記の順で含む方法。
【0227】
72.油相が油溶性重合開始剤を更に含み、そして重合開始剤が水性不連続相又は水性懸濁媒のいずれかの中に存在する、項目4記載の方法。
【0228】
73.油溶性開始剤が、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、及びVAZO開始剤からなる群より選ばれる、項目72記載の方法。
【0229】
74.油溶性重合開始剤が油相中に重合性モノマーの合計量の約5重量%以下の濃度で存在する項目72記載の方法。
【0230】
75.水性不連続相が基本的に水からなる項目72記載の方法。
【0231】
76.前記エマルションが、
(a)天然又は合成ポリマー安定剤;及び
(b)不活性溶剤;を更に含む項目72記載の方法。
【0232】
77.ポリマー安定剤がセルロース誘導体である項目76記載の方法。
【0233】
78.ポリマー安定剤が、メチルセルロース、エチルセルロース、及びポリビニルアルコールからなる群より選ばれる、項目76記載の方法。
【0234】
79.ポリマー安定剤が油相中に約0.01〜約15重量%の濃度で存在する項目76記載の方法。
【0235】
80.不活性溶剤がトリクロロエタン及びトルエンからなる群より選ばれる項目76記載の方法。
【0236】
81.沈殿防止剤が天然ゴムである項目72記載の方法。
【0237】
82.(a)(i)(1)スチレン;
(2)ジビニルベンゼン;
(3)過酸化ラウロイル;
(4)トリクロロエタン;及び
(5)ソルビタンモノオレエート;を含む油相;と
(ii)重合開始剤を含まない水性不連続相;とを組み合わせ、エマルションを形成させること;
(b)前記エマルションを水性懸濁媒に加え、分散したエマルション液滴の水中油滴型サスペンションを形成させること、ここで前記懸濁媒はアラビアゴムを含み、且つ、重合開始剤を含まない;次いで
(c)前記エマルション液滴を重合させること;を含む多孔質の架橋したポリマーマイクロビーズを製造する方法。
【0238】
83.(a)(i)(1)スチレン;
(2)ジビニルベンゼン;
(3)過酸化ラウロイル;
(4)トリクロロエタン;及び
(5)ソルビタンモノオレエート;を含む油相;と
(ii)重合開始剤を含まない水性不連続相;とを組み合わせ、エマルションを形成させること;
(b)前記エマルションを水性懸濁媒に加え、分散したエマルション液滴の水中油滴型サスペンションを形成させること、ここで前記懸濁媒はアラビアゴムを含み、且つ、重合開始剤を含まない;次いで
(c)前記エマルション液滴を重合させること;を含む方法により製造される多孔質の架橋したポリマーマイクロビーズ。
【0239】
84.油相がポロゲンを更に含む項目72記載の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載されるポリマーマイクロビーズおよびその製造方法。

【公開番号】特開2009−57578(P2009−57578A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321673(P2008−321673)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【分割の表示】特願平8−501165の分割
【原出願日】平成7年6月6日(1995.6.6)
【出願人】(308018486)サンストーム リサーチ コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】