説明

ポリマー性炭水化物材料を用いた架橋

本発明は、可溶性炭水化物ポリマーと架橋剤によって可溶性炭水化物材料を第2の材料と架橋させる方法に関する。本発明はさらに、得られた架橋材料、その架橋材料の使用、ならびに可溶性炭水化物ポリマーと架橋剤を含むキットに関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、PCMと結合する可溶性炭水化物ポリマー(SCP)、ならびに、少なくとも第1の活性化可能な連結基(ALG)および典型的には第2のALGも含む架橋剤(CLA)を用いて、第1のポリマー系炭水化物材料(PCM)を第2の材料に架橋させる方法に関する。上記第2の材料は例えば第2のPCMであってよい。さらに、本発明は、その方法によって得られる架橋した材料、SCPおよびCLAを備えたキット、ならびに様々なその使用に関する。
【0002】
[背景技術]
製紙業、ボード業界および繊維業界で用いられるすべてのセルロース材料はほとんど、製品をその最終的な三次元形態に形成させる前か(例えば、木材パルプ、木綿糸等)またはその後で(例えば、紙匹(paper sheet)、段ボール紙、織物等)、これらの材料の表面特性を変えるために化学的に処理されている。製造工程の様々な時点で化学添加剤を用いてセルロース材料を処理すると、繊維表面特性が著しく変化する結果となる。例えば、アニオン性セルロース誘導体であるカルボキシメチルセルロースを木材パルプに添加して、通常用いられるカチオン系フィラーおよびサイズ剤の保持性を増進させる。
【0003】
様々な添加剤の開発と用途の進歩にもかかわらず、例えば紙やボード製品において、繊維−繊維間の結合を高めて目に見える強度特性の増大をもたらす化合物または材料が強く求められている。繊維密度を低下させることができ、同時に、様々な強度特性、例えば引張指数、引裂き指数および破裂強度を維持する添加剤に特に関心が寄せられている。さらに、多くの応用分野で、様々な湿度において繊維および繊維製品の寸法安定性を制御できることが重要である。
【0004】
化学的処理によってセルロース繊維表面を改変するために現在利用できる技術は、繊維表面上に薬剤を導入する方法において高度の制御性に欠けている。セルロースを直接化学的に改変させる場合の特に重大な欠点は、ほとんどの薬品が繊維構造の中に浸透し、繊維内部で起こる化学的改変が繊維構造および特性の損失をもたらすことである。特に、その分子間水素結合および分子内水素結合がセルロースの固有の材料特性に関与している、セルロースの水酸基において行われる反応は、セルロース構造を分裂させ、例えば強度特性に悪影響を及ぼすことになる。したがって、繊維構造の完全性を損なうことなく、ポリマー炭水化物材料、特にセルロース繊維上に種々の官能性を有する広い範囲の化学基を導入するための方法を開発することが必要である。上記問題点を克服するためには、セルロース線維状構造の結晶領域または無定形領域に対して高い親和性を示す分子または分子断片を介してセルロース上に表面化学構造体を配置できる方法が特に魅力的である。
【0005】
国際公開第03/033813号パンフレットは、改変のためのキャリヤーとして例えばキシログルカンを用いた炭水化物ポリマーの化学的および酵素的改変方法を開示している。
【0006】
米国特許第6844081号明細書は、浸透液およびトップコート組成物を含む2つの溶液を順次用いて木材を処理することによって得られる木製品を開示している。浸透液はホウ酸を含むことができる。
【0007】
Christiernin et al.は、セルロース繊維にキシログルカンを吸着させてセルロース繊維を架橋する方法を開示している。
【0008】
[発明の概要]
本発明の目的は、ポリマー性炭水化物材料(PCM)を、好ましくは第2の材料に迅速に架橋させる方法を提供することである。
【0009】
本発明の目的は、ポリマー性炭水化物材料(PCM)を架橋させる経済的な方法を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、架橋されているPCMを損なわない架橋方法を提供することである。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、高い引張強度を有する架橋PCMをもたらすPCMの架橋方法を提供することである。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、光学的特性を有する架橋PCMをもたらすPCMの架橋方法を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、詳細な説明と実施例を読めば明らかになろう。
【0014】
本発明の広い態様は、可溶性炭水化物ポリマー(SCP)と架橋剤(CLA)を用いて、第1のポリマー系炭水化物材料(PCM)を第2の材料に架橋させる方法に関する。本発明の好ましい実施形態では、第2の材料は第2のPCMである。
【0015】
したがって、本発明の態様は、第1のポリマー系炭水化物材料(PCM)と第2の材料を架橋させる方法であって、
a)前記第1のPCM、前記第2の材料、可溶性炭水化物ポリマー(SCP)および架橋剤(CLA)を含む組成物であって、前記SCPが第1のPCMと結合することができ、前記CLAが第1の活性化可能な連結基(ALG)と第2のALGを含む組成物を提供するステップと、
b)SCPを第1のPCMと結合させるステップと、
c)活性化の少なくとも1つの方法で、第1のALGおよび/または第2のALGを活性化させることによって、SCPおよびCLAを介して第1のPCMと第2の材料を架橋するステップと
を含む方法に関する。
【0016】
本発明の他の態様は、その方法によって得られる架橋材料に関する。
【0017】
本発明のさらに他の態様は、第2の材料と架橋した第1のPCMを含む架橋材料であって、その架橋が第1のPCMと結合したSCP、およびSCPと第2の材料の両方と結合した反応CLAを含む材料に関する。
【0018】
本発明のさらに他の態様はSCPおよびCLAを備えたキットに関する。
【0019】
本発明のさらに他の態様は、広範囲の用途での様々な材料の使用に関する。
【0020】
以下において、図を参照して本発明のいくつかの実施形態を説明する。
【0021】
[発明の詳細な説明]
本発明の広い態様は、可溶性炭水化物ポリマー(SCP)および架橋剤(CLA)を用いて第1のポリマー系炭水化物材料(PCM)を第2の材料に架橋させる方法に関する。本発明の好ましい実施形態では、第2の材料は第2のPCMである。
【0022】
したがって本発明の態様は、第1のポリマー系炭水化物材料(PCM)と第2の材料を架橋させる方法であって
a)前記第1のPCM、前記第2の材料、可溶性炭水化物ポリマー(SCP)および架橋剤(CLA)を含む組成物であって、前記SCPが第1のPCMと結合することができ、前記CLAが第1の活性化可能な連結基(ALG)と第2のALGを含む組成物を提供するステップと、
b)SCPを第1のPCMと結合させるステップと、
c)活性化の少なくとも1つの方法で、第1のALGおよび/または第2のALGを活性化させることによって、SCPおよびCLAを介して第1のPCMと第2の材料を架橋するステップと
を含む方法に関する。
【0023】
「Xおよび/またはY」に関して用いる「および/または」という用語は、「X」または「Y」あるいは「XおよびY」と解釈すべきである。
【0024】
本方法の例示的実施形態を図1に概略示す。ここで、ステップa)では、第1のPCM(1)、SCP(2)、第1のALG(R)および第2のALG(R)を含むCLA(3)、ならびに第2の材料(4)を含む組成物を示す。ステップb)では、SCPは第1のPCMと結合しており、したがって第1のPCMとSCPとの複合体が形成されている。ステップc)では、ある活性化の方法によって第1のALGと第2のALGの両方が活性化され、続いて、第1のPCM−結合SCPとCLA、ならびにCLAと第2の材料との間に結合が形成される。
【0025】
一般に、ALGは、少なくとも1つの活性化方法によって活性化されて、別の分子と少なくとも1つの結合を形成することができる。
【0026】
本発明の他の実施形態では、SCPは、提供されたとき第1のPCMとすでに結合していてよく、したがって、第1のポリマー系炭水化物材料(PCM)と第2の材料を架橋させる方法であって、
a)前記第1のPCM、前記第2の材料、第1のPCMと結合している可溶性炭水化物ポリマー(SCP)および架橋剤(CLA)を含む組成物であって、前記CLAが第1の活性化可能な連結基を含み、かつ任意選択で第2の活性化可能な連結基も含む組成物を提供するステップと、
c)活性化の少なくとも1つの方法で、第1の活性化可能な連結基および/または第2の活性化可能な連結基を活性化することによって、SCPおよびCLAを介して第1のPCMと第2の材料を架橋するステップと
を含む方法に関する。
【0027】
本発明の例示的実施形態を図7に概略示す。ここで、ステップa)では、SCP(2)と結合した第1のPCM(1)、第1のALG(R)および第2のALG(R)を含むCLA(3)、ならびに第2の材料(4)を含む組成物を示す。ステップc)では、第1のALGと第2のALGの両方が1つの活性化方法によって活性化されており、したがって結合が、第1のPCM結合SCPとCLAとの間、ならびにCLAと第2の材料との間に形成されている。
【0028】
第1のPCMと結合したSCPは、例えば、コーティング法またはコーティング類似の方法によって調製することができる。SCPの濃縮溶液を、噴霧するか、層状化するか、スピンするか、スポットするか、あるいは機械的方法でPCMの表面に加えることができる。SCPの濃縮溶液はゲルであってよい。SCPの濃縮溶液は一般に、水を含み、かつ、任意選択で他の共溶媒も含む。水および任意の共溶媒は通常、乾燥工程で組成物から除去される。
【0029】
本発明の好ましい実施形態は、
第1のポリマー系炭水化物材料(PCM)と第2のPCMを架橋させる方法であって、
a)前記第1のPCM、前記第2のPCM、可溶性炭水化物ポリマー(SCP)および架橋剤(CLA)を含む組成物であって、前記SCPが第1のPCMと結合することができ、前記CLAが第1の活性化可能な連結基(ALG)と第2のALGを含む組成物を提供するステップと、
b)SCPを第1のPCMと結合させるステップと、
c)活性化の少なくとも1つの方法で、第1のALGおよび/または第2のALGを活性化させることによって、SCPおよびCLAを介して第1のPCMと第2のPCMを架橋するステップと
を含む方法に関する。
【0030】
本発明の他の実施形態では、SCPは、提供されたとき第1のPCMとすでに結合していてよく、したがって、第1のポリマー系炭水化物材料(PCM)と第2のPCMを架橋させる方法であって、
a)前記第1のPCM、前記第2のPCM、第1のPCMと結合した可溶性炭水化物ポリマー(SCP)および架橋剤(CLA)を含む組成物であって、前記SCPが第1の活性化可能な連結基と第2の活性化可能な連結基を含む組成物を提供するステップと、
c)活性化の少なくとも1つの方法で、第1の活性化可能な連結基および/または第2の活性化可能な連結基を活性化させることによって、SCPおよびCLAを介して第1のPCMと第2のPCMを架橋するステップと
を含む方法に関する。
【0031】
一般に、CLAは第1の活性化可能な連結基(ALG)と第2のALGを含む。通常、ALGは、活性化の少なくとも1つの方法によって、活性化されて別の分子と少なくとも1つの結合を形成することができる。
【0032】
CLAは、ALG、例えば第1および第2の活性化可能な連結基がそれに結合しているスペーサー基をさらに含むことができる。
【0033】
スペーサー基は、例えば、原子、小有機分子、ポリペプチド、タンパク質、炭水化物、ナノ粒子、原子の規則的または非規則的集合体からなる群から選択される成分を含むことができる。
【0034】
原子の規則的または非規則的集合体は、金属、無機物質またはポリマーなどの有機材料を含むことができる。
【0035】
スペーサー基は、例えば、導電体、熱導体、半導体;断熱材および電気絶縁体からなる群から選択される成分を含むことができる。
【0036】
スペーサー基が上記成分の凝集体であることも考えられる。例えば、スペーサー基は、架橋SCPの凝集体などの架橋タンパク質または炭水化物の凝集体であってよい。
【0037】
一連の様々なCLA構造が考えられ、CLAの5つの重要な実施形態を図2に概略示す。図2のCLAは、すべてスペーサー基(6)を含み、スペーサー基と結合した第1のALGおよび第2のALGをさらに含む。図2では、シンタックスRi,jは、j番目の活性化方法によって活性化可能なi番目のALGを意味し、したがってR1,1は1番目の活性化方法によって活性化可能な1番目のALGであり、R4,2は、2番目の活性化方法によって活性化可能な4番目のALGである。
【0038】
図2.AのCLAは例えばジアルデヒドであってよく、その2つのアルデヒド基は第1および第2のALGであり、炭素鎖はスペーサー基である。図2.BのCLAは例えば実施例で用いる光活性化可能なリンカーの1つであってよい。図2.CのCLAは例えばホウ酸イオン、B(OH)4であってよく、ヒドロキシ基は4つのALGであり、ホウ素原子はスペーサー基である。
【0039】
図2.DおよびEのCLAは、一連の異なるALGが結合していてよいより大きなスペーサー基を有するCLAの典型的なものである。
【0040】
第2の材料が第2のPCMである、特にCLAがホウ素化合物である場合に有用である本発明の例示的実施形態を図10に概略示す。ステップa)は、第1のPCM(1)、2つのSCP(2)、第1のALG(R)と第2のALG(R)を含むCLA(3)および第2のPCM(4)を含む組成物を提供する。ステップb)では、SCPは第1のPCMと第2のPCMの両方に結合している。ステップc)では、第1のALGと第2のALGの両方が、1つの活性化方法で活性化されており、したがって、第1のPCM結合SCPとCLAの間、ならびにCLAと第2のPCMの間でにおいて、結合が形成されている。
【0041】
上述のように、CLAは、第3のALG、第4のALGなどの追加のALGをさらに含むことができる。例えば、CLAは、2〜100000、例えば2〜5、5〜10、10〜20、20〜50、50〜100、100〜200、200〜500、500〜1000または1000〜10000、例えば10000〜100000の範囲の平均数のALGを含むことができる。
【0042】
本発明の実施形態では、第1および第2のALGは、同じ活性化方法で活性化させることができる。この場合、第1および第2のALGは例えば同じタイプであってよい。本発明の他の実施形態では、第1のALGは、第2のALGを活性化させることができる活性化方法で活性化させることができない。一般に、架橋は、第1または第2のALGをもっぱら活性化できる活性化方法を最初に用い、続いて、両方のALGを活性化させる活性化方法を用いて実施する。
【0043】
本発明のさらに他の実施形態では、第1のALGを活性化できる活性化方法で第2のALGを活性化できない。好ましい実施形態では、第1のALGを活性化できるが、第2のALGを活性化できない第1の活性化方法と、第2のALGを活性化できるが、第1のALGを活性化できない第2の活性化方法が存在する。
【0044】
特別な実施形態では、CLAは機能成分を含む。その機能成分は、強度の改変、色の改変、粗度の改変、光学的特性の改変、湿潤性の改変、熱伝導率の改変、導電率の改変、磁気特性の改変、例えば殺生物剤を含有させることなどの微生物の成長条件の改変、臭いの改変、またはその組合せなどの第1のPCMおよび/または第2の材料の特性の改変を含むことができる。
【0045】
機能成分は、例えば、透明度の改変、反射力の改変、より高い親水性またはより高い疎水性の付与、ガス不浸透性または半ガス浸透性の付与などの第1のPCMおよび/または第2の材料の特性の改変も含むことができる。
【0046】
機能成分は、第1のPCMおよび/または第2の材料に分子篩機能を付与して、分子センサーとして作用するか、または第1のPCMおよび/または第2の材料の強化または保護機能として作用できるようにすることもできる。
【0047】
機能成分による光学的特性の改変は、例えば、紙の上にビデオ画面をつくることに相当する。
【0048】
したがって、機能成分は、例えば、導電体、熱導体、半導体;断熱材、電気絶縁体、常磁性材料および超常磁性材料からなる群から選択される成分を含むことができる。
【0049】
スペーサー基は機能成分を含むことができる。
【0050】
スペーサー基は、最大99.5%のキシログルカン、例えば最大99%、95%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%または5%、例えば最大1%のキシログルカンを含むことができる。
【0051】
本発明の実施形態では、スペーサー基はキシログルカンを含まない。他の実施形態では、スペーサー基はSCPではない。
【0052】
スペーサー基は、最大100%、99.5%のセルロース、例えば最大99%、95%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%または5%、例えば最大1%のセルロースを含むことができる。
【0053】
本発明の実施形態では、スペーサー基はセルロースを含まず、他の実施形態では、スペーサー基はPCMではない。
【0054】
CLAは広範囲のサイズおよび形状を有することができると考えられる。しかし、通常、CLAの最長寸法は、最大100μm、例えば最大50μm、25μm、10μm、5μmまたは最大1μm、例えば最大500nm、250nm、125nm、100nm、75nm、50nm、25nm、12.5nm、10nm、5nm、2.5nm、1.25nm、1.0nm、0.5nmまたは最大0.1nmである。
【0055】
いくつかの実施形態については、少なくとも1nm、例えば少なくとも10nm、好ましくは少なくとも1μm、例えば少なくとも5μm、より好ましくは少なくとも10μm、例えば少なくとも25μmの最長寸法をもつCLAを有することが好ましい。
【0056】
一般に、CLAの最長寸法は0.1nm〜100μmの範囲である。CLAの最長寸法は、例えば、0.1nm〜1nmの範囲、1nm〜1μmの範囲または1μm〜100μmの範囲であってよい。
【0057】
いくつかの用途については、第1のPCMと第2の材料との間の十分な強度の架橋を得るために、ある長さかまたはそれを超える長さのCLAを用いることが重要である。
【0058】
ALGは、これらに限定されないが、カルボカチオン、金属カチオン、アルコキシド、チオラート、ホスホネート、カルボアニオン、カルボキシレート、ボロネート、スルホネート、アミノ酸、イリド(または、必要に応じて、これらの基のイオン化されていない共役酸または塩基)、ナイトレン、カルベンまたは電子が豊富な種または電子が不足した他の種;不飽和アルキル(例えば、脂肪酸アシルまたはアルキル基)またはアリール炭化水素(例えば、芳香もしくは多環の芳香族炭化水素または複素環);炭水化物;あるいはポリペプチドおよびタンパク質を含むかまたはこれらを生成できるものを含む架橋反応に関与できる広範囲の基のいずれを含むこともできる。
【0059】
したがって、架橋させるのに適したALGの例には、イオン基、炭化水素、求電子基、求核基、重合反応のための試薬、放射性同位体、遊離基前駆体、カルベン前駆体、ナイトレン前駆体、オキセン前駆体、核酸配列、アミノ酸配列、ポリペプチド、タンパク質、炭水化物、ビタミンおよび薬物が含まれる。
【0060】
本発明の実施形態では、ALGの少なくとも1つはヒドロキシ基でない。
【0061】
本発明の実施形態では、ALGの少なくとも1つは、イオン基(カチオン、例えば四級アミノ基、アンモニウム基、カルボカチオン、スルホニウム基または金属カチオン等;アニオン、例えばアルコキシド、チオラート、ホスホネート、カルボアニオン、カルボキシレート、ボロネート、スルホネート、ブンテ塩等;または両性イオン、例えばアミノ酸、イリド、あるいは同一分子上でのアニオンおよびカチオン基のその組合せ)であるか、またはそのイオン化されていない共役酸または塩基である。
【0062】
本発明の実施形態では、ALGの少なくとも1つは、例えば、アルカン、アルケン、アルキン、芳香もしくは多環の芳香族炭化水素および複素環の非荷電親水基(例えば、ポリエチレングリコールなどのポリエーテル)ならびにその組合せからなる群から選択される炭化水素基である。
【0063】
本発明の実施形態では、ALGの少なくとも1つは、例えば、アルキルハライド、アセタール、カルボニル基、アルケン、アルキン、アレン、芳香族炭化水素、芳香族複素環、ホウ素化合物、カルボカチオン、金属カチオン、キセノン原子またはキセノンをべースとした化合物およびその誘導体からなる群から選択される求電子基である。
【0064】
本発明の実施形態では、ALGの少なくとも1つは、例えば、アミン、チオール、ヒドロキシル、カルボアニオン、エノラート、アルケン、アルキン、アレン、芳香族炭化水素、芳香族複素環、金属、およびその誘導体からなる群から選択される求核基である。
【0065】
本発明の実施形態では、ALGの少なくとも1つは、例えば、アクリルアミド、ブロモブチラート、ビニル、スチレン、メチルメタクリレートおよびその誘導体からなる群から選択される重合反応のための試薬である。
【0066】
本発明の好ましい実施形態では、化学基は、重合開始剤の中から選択するか、または重合反応のためのモノマーの中から選択することができる。
【0067】
ALGは光活性化可能な基であってよい。例えば、光活性化可能な基である活性化可能な連結基を含むCLAは、アリールアジド、桂皮酸およびその誘導体から選択されるCLAであってよい。
【0068】
桂皮酸の有用な誘導体は、例えばクマリン酸(4−ヒドロキシ桂皮酸)、コニフェリン酸(3−メトキシ−4−ヒドロキシ桂皮酸)およびシナピン酸(3,5−ジメトキシ4−ヒドロキシ桂皮酸)である。
【0069】
光活性化可能な基は、例えば4−アジドベンゾイル基であってよい。
【0070】
他の有用な光活性化可能基は、例えば、Oldring et al.1およびOldring et al.2に見ることができる。両方の内容を、すべての使用のために参照により本明細書に組み込む。
【0071】
CLAは、例えば、標準的有機合成および/または通常の共役技術を用いて容易に調製される。標準的有機合成または通常の共役によってCLAを調製するこれらの技術はMarch,Smith et al.およびCollins et al.などのいくつかのハンドブックに記載されており、したがって当業者は容易に利用することができる。
【0072】
本発明の重要な実施形態では、ステップa)のSCPはCLAを含む。すなわち、提供されている場合、SCPはCLAに結合している。この実施形態では、CLAの第1または第2のALGはすでに活性化されており、したがって、SCPとCLAとの間に結合が形成されている。
【0073】
本方法の例示的実施形態を図8に概略示す。ここで、ステップa)では、第1のPCM(1)、SCP(2)、第1のALG(R)および第2のALG(R)を含むCLA(3)、ならびに第2の材料(4)を含む組成物を示す。SCPはすでに、ステップa)の前に、第1のALGを介してCLAと結合してSCP−CLA分子(7)を形成している。ステップb)では、SCPは第1のPCMと結合しており、したがって、第1のPCMとSCP−CLAとの間の複合体が形成されている。ステップc)では、第2のALGは活性化の方法によって活性化されており、その結果、CLAと第2の材料の間に結合が形成されている。
【0074】
図9に示すように、図8で示した方法は、ステップb)においてSCP−CLA分子を第2の材料に結合させ、ステップc)においてSCPを介して第1のPCMとの結合を形成させることによって改変することができる。
【0075】
他の重要な実施形態において、ステップa)のSCPはCLAを含まない、すなわち、提供されている場合、SCPはCLAと結合していない。
【0076】
ステップa)の組成物は、どちらも、CLAと結合したSCPを含み、SCPはCLAと結合しておらず、CLAはSCPと結合していないことも考えられる。
【0077】
本発明の好ましい実施形態では、組成物は、ホウ素エステルまたはその誘導体などの、元素ホウ素を含む反応したCLAを含む。
【0078】
例えば、組成物の重量の0.000000001%〜50%の元素ホウ素、例えば0.000000001%〜0.0000001%、0.0000001%〜0.00001%、0.00001%〜0.001%、0.001%〜0.01%、0.01%〜0.1%、0.1%〜1%、1%〜5%、5%〜10%、例えば10%〜50%の元素ホウ素を含む。
【0079】
組成物は二価の金属カチオンをさらに含むことができる。二価の金属カチオンは、例えば、Mg2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+、Cd2+、Ca2+、Sr2+、Pb2+およびBa2+からなる群から選択することができる。
【0080】
本発明の好ましい実施形態では、二価の金属カチオンはCa2+である。
【0081】
CLAはC2〜C8ジアルデヒドなどの反応したジアルデヒドを含むことができる。例えば、ジアルデヒドはグルタルアルデヒド(glutardealdehide)であってよい。
【0082】
本発明の関連で、「活性化の方法」という語句は、ALGを活性化させて架橋結合を形成させるために、その組成物を曝すべきプロセスおよび/または1つもしくは複数の組の状態を指す。
【0083】
活性化の方法は、例えば、
−組成物を電離放射線に曝すこと、
−組成物を電磁放射線に曝すこと、
−組成物に酸性pHをもたらすこと、
−組成物に塩基性pHをもたらすこと、
−適切な溶媒を提供すること、
−組成物をある温度にすること、
−触媒/化学的活性剤を加えること、および
−これらの組合せ
からなる群から選択することができる。
【0084】
好ましい実施形態では、活性化の方法は、例えば実施例IIおよびIIIに記載のようにして、組成物を電磁放射線に曝露させることである。
【0085】
曝露の時間と強度は用途によって異なり、当業者によって容易に決定される。一般に、組成物は、0.001秒間〜20時間、例えば0.001〜1秒間、1〜10秒間、10〜30秒間、30〜60秒間、1〜10分間、10〜30分間、30〜60分間1〜5時間、5〜10時間または10〜20時間の範囲の期間、電磁放射線に曝される。
【0086】
いくつかの用途では、0.001〜60秒間の範囲などの比較的短い時間曝露するのが有用である。他の用途では、例えば60秒間〜1時間などのいくぶん長い時間曝露させることが有益である。
【0087】
「電磁放射線」という用語は、広義に解釈されるべきであり、ガンマ線、X線、紫外線、可視スペクトル範囲内の放射線、赤外線、ならびに、例えばマイクロ波放射線および高周波放射線などのより高波長の放射線を包含する。
【0088】
本発明の実施形態では、電磁放射線は、150nm〜1500nm、例えば150nm〜400nm、400nm〜700nmまたは700nm〜1500nmの波長範囲内の波長を含む。
【0089】
通常、組成物を曝露する電磁放射線のエネルギーの少なくとも10%は、150nm〜1500nm、例えば150nm〜400nm、400nm〜700nmまたは700nm〜1500nmの波長範囲内の波長からなる。
【0090】
例えば、組成物を曝露する電磁放射線のエネルギーの少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%または少なくとも99%は、150nm〜1500nm、例えば150nm〜400nm、400nm〜700nmまたは700nm〜1500nmの波長範囲内の波長からなる。
【0091】
電離放射線は、例えば中性子線、電子線またはイオンビームなどの粒子線による放射線を含む。上記曝露時間は電離放射線にも適用される。
【0092】
さらに、組成物を電磁放射線と電離放射線を組み合わせたたものに曝露する活性化の方法が考えられる。
【0093】
電磁放射線および/または電離放射線に曝露させる場合、組成物は、光開始剤を含むことができる。適切な光開始剤はOldring et al.1およびOldring et al.2に記載されており、両文献の内容をすべての使用のために参照により本明細書に組み込む。
【0094】
組成物における酸性pHの生成は、一般に、有機酸または無機酸(プロトン供与体、すなわちブレスレッド酸)の添加か、あるいはプロトン(ヒドロニウムイオン)を生成する反応(レドックス反応または酵素触媒反応など)によって実施する。
【0095】
組成物における塩基性pHの生成は、通常、有機塩基または無機塩基(プロトン受容体、すなわちブレスレッド塩基)の添加か、あるいは、プロトン(ヒドロニウムイオン)を消費する反応(レドックス反応または酵素触媒反応など)によって実施する。
【0096】
適切な溶媒の提供は、例えば、水性溶媒または有機溶媒中においてのみ反応するALGに関連している。反応速度に対する溶媒の効果はよく知られており、例えばMarchに記載されている。具体的には、イオン中間体を含む反応は、一般に極性溶媒中においてより急速である。溶媒自体が反応物である場合(例えば、とりわけ加水分解反応、加溶媒分解反応およびエステル交換)、溶媒の選択は特に重要である。
【0097】
組成物内を特定の温度にするのは、電気的または光学的な任意のエネルギー源を用いて容易に実施される。反応物を加熱して化学基の熱分解または熱活性化を起こさせる。反応ごとの速度は大部分、温度とともに増大する。
【0098】
多くの反応は、触媒または化学的活性剤を加えて実施することができる。遷移金属触媒が一般的であり、酵素も用いられる。また、酸および塩基の触媒作用も多くの系でよく知られている。保護基の取り外しについては多くの方法があり、Kocienski;KoIb et al.およびGreene & Wutsに記載されている。これら3つの文献の内容をすべての使用のために参照により本明細書に組み込む。
【0099】
活性化の典型的な方法は、例えば:
i)水性溶媒;温度:25℃;約pH7、
ii)水性溶媒;温度:25℃;約pH7、UV範囲での電磁放射線への曝露、
iii)水性溶媒;温度:25℃;約pH7、可視範囲での電磁放射線への曝露、
iv)水性溶媒;温度:25℃;約pH2〜4、および任意選択での二価の金属カチオン(ホウ素化合物に相当する)の存在、または
v)蒸発溶媒;温度:25〜50℃;約pH2〜4;および任意選択での二価の金属カチオンの存在である。
【0100】
活性化ii)およびiii)の方法は光リンカーを用いる架橋の態様で典型的なものである。
【0101】
活性化iv)およびv)の方法は、例えば紙において、CLAとしてホウ酸を用いる架橋に特に有用である。ここでは、乾燥の際にシートを加熱した場合に最も著しい架橋が起こる。理論に拘泥するわけではないが、水が追い出され、それによって、糖−ホウ素結合の加水分解である逆反応より、反応B(OH)3+糖−OH→糖−O−B(OH)2+H2Oに好都合となると考えられる。
【0102】
架橋反応の期間は、用途に応じて変わるが、それは当業者によって容易に決定される。一般に、架橋反応の期間は、0.001秒間〜20時間、例えば0.001〜1秒間、1〜10秒間、10〜30秒間、30〜60秒間、1〜10分間、10〜30分間、30〜60分間、1〜5時間、5〜10時間または10〜20時間の範囲である。
【0103】
いくつかの用途については、比較的短期間の架橋反応、例えば0.001〜60秒間の範囲を用いることが有用である。他の用途では、いくぶん長い期間、例えば60秒間〜1時間の架橋反応が有益となる。
【0104】
本発明の好ましい実施形態では、架橋反応の期間は、最大5日間、例えば最大2日間、36時間、24時間、20時間、15時間、10時間、9時間、8時間、7時間、6時間、5時間、4時間、3時間、2時間、例えば最大1時間である。特に好ましい実施形態では、架橋反応の期間は、最大60分間、例えば最大50分間、40分間、30分間、20分間、15分間、10分間、5分間、4分間、3分間または2分間、例えば最大1分間である。例えば、架橋反応の期間は、例えば最大60秒間、例えば50秒間、40秒間、30秒間、20秒間、15秒間、10秒間、5秒間、4秒間、3秒間または2秒間、例えば最大1秒間であってよい。架橋反応の期間は、より短く、例えば最大100ミリ秒、10ミリ秒または最大1ミリ秒、例えば最大0.1ミリ秒であってよいと考えられる。
【0105】
「架橋反応の期間」という用語は、ある活性化方法がその間に実施される時間を指す。複数の異なる活性化方法を順次用いる場合、架橋反応の期間は、任意の活性化方法がその間に実施される累積時間を指す。
【0106】
本発明の利点は、迅速な架橋方法が可能になることである。
【0107】
「PCM」と略記される「ポリマー性炭水化物材料」という用語は、水不溶性ポリマー性炭水化物材料および/または水溶性ポリマー性炭水化物材料を含む材料を指す。PCMは、全体的にまたは部分的に1つまたは複数の単糖からなる反復単位でできた任意の材料であってよい。そうしたPCMは、しばしば、2つ以上の異なるタイプのポリマー性炭水化物または炭水化物ポリマーと、タンパク質などの他のポリマーの複合体である。PCMはキチン(ポリ(N−アセチルグルコサミン))またはキトサン(ポリ(グルコサミン))を含むことができ、これはしばしば、タンパク質またはマンナンなどの他の多糖と複合体を形成する。
【0108】
PCMは、β−1,4−結合のグルコース単位からなるホモポリマーであるセルロースを含むことができる。グルコースの長鎖ホモポリマー(例えば、8〜15000グルコース単位)は水素結合で互いに積み重なって不溶性材料を形成する。そうしたセルロース材料は完全に結晶性であっても、不規則に生成した無定形であっても、あるいはその2つの混合物であってもよい。これらは、最初に不溶性セルロース材料を可溶化させ、次いでそれを再生させて、同一かまたは異なった鎖組織の不溶性セルロース材料(セルロースII)を形成させることによっても作製することができる。
【0109】
第1および/または第2のPCMは、植物、バクテリア、藻および動物からなる群から選択される供給源から誘導することができる。
【0110】
植物は、裸子植物(非顕花植物)または被子植物(顕花植物)を含むことができる。また、裸子植物は単子葉植物であっても双子葉植物であってもよい。植物は多年生、半年生または1年生であってよい。
【0111】
好ましい実施形態では、多年生植物は堅い木質化組織を有し、灌木または樹木を形成する木質植物である。好ましい多年生植物は、樹木などの木質多年生植物、すなわち樹木形成種の植物である。
【0112】
木質多年生植物の例には、糸杉、モミ、セコイア、アメリカツガ、ヒマラヤスギ、セイヨウネズ、カラマツ、マツ、アメリカスギ、トウヒおよびイチイなどの針葉樹;アカシア、ユーカリ、シデ、ブナノキ、マホガニー、クルミ、オーク、セイヨウトネリコ、ヤナギ、ヒッコリー、カバノキ、クリ、ポプラ、ハン、カエデおよびスズカケノキなどの広葉樹、ならびに綿、竹およびゴムなどの他の商業的に重要な植物が含まれる。
【0113】
他の好ましい実施形態では、植物は単子葉イネ科の草(moncotyledonous grass)であってよい。
【0114】
植物の他の例はオオムギ、麻、亜麻、小麦、トウモロコシまたはヤシである。
【0115】
したがって、本発明の実施形態では、第1および/または第2のPCMは水不溶性多糖を含む。
【0116】
第1および/または第2のPCMは、少なくとも5%のセルロース、例えば少なくとも10%、20%、30、40%、50%、60%、70%、80%、95%または99%、例えば少なくとも99.9%のセルロース、例えば100%のセルロースを含むことができる。
【0117】
本発明の方法は、事前加工したPCM含有製品に適用することができ、また、例えば複合体複合体材料などのPCMの単一セルロース微結晶へのより簡単な実施形態にも適用することができる。
【0118】
したがって、請求項1に記載のステップa)の第1および/または第2のPCMは、
i)微結晶がセルロースの化学的または酵素的加水分解で調製された微結晶性セルロース、
ii)例えば、植物繊維、動物供給源から調製されるか、または、例えば酢酸菌属などのセルロース生成バクテリアの培養によって作製されたセルロース微小繊維、
iii)例えば、溶媒の除去による溶媒可溶化セルロースの再生によって調製された再生セルロース、
iv)植物から抽出された繊維などの植物繊維、
v)部分的に脱繊維化した(defibrillated)木材
vi)木材
vii)繊維網状組織、および
viii)i)〜vii)のいずれかの組合せを含む複合材料
からなる群から選択される構造の一部を形成することもできる。
【0119】
「セルロース微小繊維」という用語は、植物または他の有機体によって作られるセルロース結晶の基本単位を指す。セルロース微小繊維は、セルロース系植物繊維から、より簡単には、酢酸菌属などのセルロース合成バクテリアの培養により調製することができる。
【0120】
植物繊維は、例えば木材繊維またはパルプ繊維であってよく、漂白した化学パルプもしくは漂白していない化学パルプ、機械的パルプ、熱機械的パルプ、化学機械的パルプ、綿毛パルプまたは紙パルプの一部を形成することができる。植物繊維は、植物例えば、上記植物のいずれかから作製することができる。
【0121】
繊維網状組織は、例えば紙または紙ボード、カード紙、木綿糸などの糸、織布または不織布、ろ紙、上質用紙(fine paper)、新聞印刷用紙、ライナーボード、ティッシュペーパーおよび他の衛生用品、袋用紙ならびにクラフト紙を含むことができる。
【0122】
織布または不織布は、例えば、綿、ビスコース、キュプロ、アセテートおよびトリアセテート繊維、モダール、レーヨン、ラミー、リンネル、テンセル(登録商標)等もしくはその混合物、またはこれらの繊維のいずれかの混合物、あるいは、これらの繊維のいずれかと合成繊維または羊毛との混合物、例えば、綿とスパンデックス(伸縮性デニム)、テンセル(登録商標)と羊毛、ビスコースとポリエステル、綿とポリエステル、ならびに綿と羊毛の混合物などの当業界で周知の任意のセルロース含有織物であってよい。
【0123】
複合体材料は例えば、例えば液体や食料品用の包装材料;パーチクルボードおよび繊維ボード、他の天然または合成のポリマーまたは材料を含む繊維複合体、ならびに導電体、半導体または絶縁体とされるものであってよい。
【0124】
PCMを含む成形材料でできた隅部および折り目(Corners and folds)は一般に弱く、本発明による架橋によって利益がもたらされることになる。本発明の架橋方法は、例えば成形包装材料の強化用の隅部および折り目に用いることができる。
【0125】
複合体材料の他の例は、しばしばポリエチレンなどの熱可塑性樹脂で積層化して、水溶液に対する非透過性障壁を提供する紙やカード紙、例えば、証券用紙、紙幣、木材−ポリマー複合体である。
【0126】
詳細な説明および実施例から明らかなように、第1のPCMおよび/または第2のPCMがその一部を形成する構造は、小さなポリマー(例えば、1nm未満の大きさ)、大きなポリマー(例えば、0.1〜1000nmの大きさ)、ポリマーの凝集体(例えば、1〜10.000nmの大きさ)、繊維(例えば、0.1〜100.000μmの大きさ)、繊維および複合体の凝集体(例えば、0.00001〜1000mの大きさ)における任意の構造に関連する。
【0127】
第1のPCMがそれに架橋している第2の材料は、例えばプラスチック、金属、金属酸化物、複合体材料、組織、細胞、タンパク質等の生物学的材料などの広い範囲から選択することができる。
【0128】
本発明の実施形態では、第2の材料はプラスチックを含む。例えば、架橋によって、第2の材料のプラスチックと結合したCLAが得られる。
【0129】
本発明の実施形態では、第2の材料は金属を含む。例えば、架橋によって、第2の材料の金属と結合したCLAが得られる。
【0130】
本発明の実施形態では、第2の材料は金属酸化物を含む。例えば、架橋によって、第2の材料の金属酸化物と結合したCLAが得られる。
【0131】
本発明の実施形態では、第2の材料は半導体酸化物を含む。例えば、架橋によって、第2の材料の半導体酸化物と結合したCLAが得られる。
【0132】
本発明の好ましい実施形態では、第2の材料は第2のPCMである。
【0133】
本発明の他の好ましい実施形態では、第2の材料はPCMではないか、または第2の材料は1重量%未満のPCMを含む。
【0134】
(SCP)と略記される「可溶性炭水化物ポリマー」という用語は、水性溶媒もしくは有機溶媒に溶解可能である、1つもしくは複数の異なる単糖またはその誘導体を含むポリマーまたはポリマーの凝集体を指す。例としては、ヘミセルロース(β(1−4)−連結グルコース単位、すなわちセルロースからだけでなってはいない炭水化物ポリマー)、ペクチン(ポリウロン酸およびエステル)および澱粉((1−6)側鎖分岐を有するか有していないα(1−4)−連結ポリグルコース)として分類される多糖が含まれる。それ自体がフコースやアラビノースなどの他の単糖でさらに置換されていてよい、α(1−6)キシロース残基で修飾されたβ(1−4)−連結ポリグルコース主鎖を含む多糖であるキシログルカンは、そうしたSCP、特にヘミセルロースの例である。
【0135】
好ましい実施形態では、SCPはPCMと、例えば1個もしくは複数の水素結合、イオン相互作用、1個もしくは複数の共有結合、ファンデルワールス力またはこれらの任意の組合せによって結合することができる。
【0136】
したがって、SCPは一般に、ヘミセルロース、ペクチンおよび澱粉からなる群から選択される成分を含む。
【0137】
本発明の好ましい実施形態では、SCPは、ヘミセルロース、例えば少なくとも1%のヘミセルロース、例えば少なくとも2%、5%、10%、20%、30、40%、50%、60%、70%、80%、95%または99%、例えば少なくとも99.9%のヘミセルロース、例えば100%のヘミセルロースを含む。
【0138】
通常、SCPは、第1のPCMの場合より、他の供給源すなわち他の有機体からもたらされることに留意すべきである。
【0139】
本発明の好ましい実施形態では、SCPはヘミセルロースキシログルカンを含む。SCPはキシログルカンから本質的になっていてよい。
【0140】
SCPは少なくとも1%のキシログルカン、例えば少なくとも2%、5%、10%、20%、30、40%、50%、60%、70%、80%、95%または99%、例えば少なくとも99.9%のキシログルカン、例えば100%のキシログルカンを含むことができる。
【0141】
本発明の実施形態では、SCPは最大100%のキシログルカン、例えば最大99.9%、99.5%、99%、95%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%または5%、例えば最大1%のキシログルカンを含む。
【0142】
多くの異なる供給源からのキシログルカンを用いることができる。例えば、キシログルカンの供給源は種々の植物、例えば、エンドウ豆またはキンレンカの細胞壁であってよく、あるいは、種々の植物、例えば、タマリンダス属(Tamarindus sp.)またはアブラナ属(Brassica sp.)の種子であってよい。本発明ではタマリンドの種子からのキシログルカンが好ましい。
【0143】
SCPは、ヘミセルロースおよびペクチン、例えばグルクロノキシラン、キシラン、マンナン、グルコマンナン、ガラクトグルコマンナン、アラビノキシラン、ガラクツロナン、ラムノガラクツロナン、特にラムノガラクツロナンIIおよびキシログルカンからなる群から選択される成分を含むことができる。
【0144】
一般に、SCPはその炭水化物主鎖の一端に還元性末端、すなわちアルデヒド基を含む。SCPを酵素ガラクトース酸化酵素と反応させることによってより多くのアルデヒド基を生成させることができ、これによって、SCPのガラクトース含有側鎖中でのアルデヒド基の生成がもたらされる。一般に、アルデヒド基は、SCPに化学基またはALGを結合させるのに有用である。本発明の好ましい実施形態では、好ましくはキシログルカンを含むSCPは、炭水化物主鎖中の天然由来の還元性末端、ならびに側鎖中の1個または複数のアルデヒド基を含む。
【0145】
本発明の実施形態では、少なくとも1つのSCPは単一分子である。本発明の実施形態では、少なくとも1つのCPは分子の凝集体である。さらに実施形態では、少なくとも1つのSCPは単一分子であり、少なくとも1つのSCPは分子の凝集体である。
【0146】
炭素原子を含むSCPのいずれかの部分が、1つまたは複数の共有結合でSCPの残りの部分と結合している場合、SCPは単一分子と見なされる。炭素原子を含むSCPの一部が、1つまたは複数のイオン結合および/または水素結合で、SCPの残りの部分と結合している場合、SCPは分子の凝集体と見なされる。
【0147】
本発明の好ましい実施形態では、SCPは化学基をさらに含む。
【0148】
本発明の関連では、「化学基」という用語は、PCMの活性化または改変に関係する可能性のある任意の化学基を指す。
【0149】
そうした活性化または改変に適した化学基の例には、イオン基(カチオン、例えば四級アミノ基、アンモニウム基、カルボカチオン、スルホニウム基または金属カチオン等;アニオン、例えばアルコキシド、チオラート、ホスホネート、カルボアニオン、カルボキシレート、ボロネート、スルホネート、ブンテ塩等;あるいは両性イオン、例えばアミノ酸、イリド、または同一分子上でのアニオン基とカチオン基の他の組合せ)またはそのイオン化されていない共役酸または塩基(必要に応じて)、アルカン、アルケン、アルキン、芳香もしくは多環の芳香族炭化水素および複素環非荷電親水基(例えば、ポリエチレングリコールなどのポリエーテル)などの炭化水素、場合により、求電子原子(例えば、カルボニル化合物、カルボカチオン、アルキルハライド、アセタール等)、求核試薬(例えば、窒素、イオウ、酸素、カルボアニオン等)を含むもの、または重合反応のためのモノマー(遊離基、例えば、アクリルアミド、ブロモブチラート、ビニル、スチレン等、あるいは求核または求電子試薬)などの反応基、放射性同位体、遊離基前駆体、カルベン前駆体、ナイトレン前駆体、オキセン前駆体、核酸配列体、アミノ酸配列体、ポリペプチド、タンパク質、炭水化物、ビタミンおよび薬物が含まれる。
【0150】
本発明の好ましい実施形態では、化学基は、重合開始剤の中から選択するか、または重合反応のためのモノマーの中から選択することができる。
【0151】
重合開始剤は、例えば原子移動ラジカル重合のための開始剤であってよい。
【0152】
適切な重合開始剤は、例えば4−(2−(2−ブロモプロピオニルオキシ)−エトキシ]安息香酸(Zhang et al.)である。これは実施例1に記すように、これはSCPと結合していてよい。
【0153】
重合のための適切なモノマーの例は、アクリルアミド、アクリル酸、アクリレート、ビニル化合物(塩化ビニルなど)、エチレン、プロピレン、スチレン、その誘導体およびその混合物である。
【0154】
SCPでの重合により得られるポリマーは、さらなる架橋に有用なALGを含むことができる。重合したアクリル酸は、例えば架橋などのさらなる反応に利用できるカルボン酸基を含むことになる。
【0155】
CLAのスペーサー基が、本明細書で定義する化学基を含むこともさらに考えられる。例えば、スペーサー基は重合を開始させるための化学基を含むことができる。
【0156】
1つまたは複数のアルデヒドを含むCLAと一緒に用いた場合、SCPは、第一アミンである化学基を含むことが好ましい。
【0157】
化学基は、例えばホウ素化合物に対して高い親和性を有する炭水化物材料を含むことができる。ホウ素化合物に対して高い親和性を有する炭水化物材料は、例えば、容易にホウ素エステルを形成するものであってよい。これは、例えばホウ酸またはその塩などのホウ素化合物をCLAとして用いた場合、特に有利である。
【0158】
ホウ素化合物に対して高い親和性を有する炭水化物材料はアピオシル残基を含むことができる。
【0159】
ホウ素化合物に対して高い親和性を有する炭水化物材料は1−>3’−連結アピオシル残基を含むことができる。
【0160】
例えば、ホウ素化合物に対して高い親和性を有する炭水化物材料はラムノガラクツロナンIIまたはその断片であってよい。ラムノガラクツロナンIIはO’Neill et al.のようにして調製することができる。
【0161】
化学基を含むSCPは複数の異なる方法で調製することができる。本発明の実施形態では、化学基を含むSCPは、化学基とCPとの間の結合の形成をもたらす有機合成を用いて調製する。そうした結合には、これらに限定されないが、エステル、エーテル、スルホネート、シリル、(ヘミ)アセタール、(ヘミ)ケタール、ホスホネートまたは任意の数のアシル結合が含まれる。有機合成による、化学基を含むSCPの調製に用いられるケミストリーは、例えばMarch,Smith et al.およびCollins et al.などの多くのハンドブックに記載されている。
【0162】
本発明の他の実施形態では、化学基を含むSCPは、SCPを活性化できる酵素を用いて、例えば酸化によって調製することができる。SCP(a)を酵素で処理して酸化された基(b)を含む生成物(c)を得る。次いで、酸化された基のさらなる改変を、他の化学基(d)を導入して化学基を含むSCP(e)を生成するために用いることができる。
【0163】
本発明の他の実施形態では、化学基を含むSCPは、天然かまたは化学的に改変した単糖もしくはオリゴ糖を、オリゴ糖または多糖の末端上へ移動させることができる酵素を用いて調製することができる。そうした酵素には、これらに限定されないが、トランスグリコシル化活性を有するが加水分解活性は低い酵素、高い固有のトランスグリコシル化活性を有するグルコシルヒドロラーゼ、生物工学的に処理してそのトランスグリコシル化活性を高めた酵素、および基質としてヌクレオチド糖を用いたグリコシルトランスフェラーゼが含まれる。
【0164】
酵素は、トランスグリコシラーゼ、グリコシルヒドロラーゼ、グリコシルトランスフェラーゼからなる群から選択することができる。酵素は、野生型酵素、あるいは野生型酵素から誘導した機能的および/または構造的に修飾した酵素であってよい。一実施形態では、酵素はキシログルカンエンドトランスグリコシラーゼ(XET,EC2.4.1.207)である。本発明に関連するXETの調製および使用は、Fry et al.により、また国際公開第03/033813号パンフレットにさらに詳細に記載されている。酵素は、最近発見されたマンナントランスグリコシラーゼなどの他のヘミセルローストランスグリコシラーゼであってもよい。
【0165】
高いトランスグリコシル化活性を有する酵素を選択することが好ましく、実際的目的のためにも、加水分解または他の分解活性が低いかまたは検出できないものが最も好ましい。トランスグリコシル化活性を促進させるために、ヌクレオチド糖または有機溶媒を必要としないことが好ましい。そうしたトランスグリコシル化酵素の一例は、植物からの既知の酵素であるキシログルカンエンドトランスグリコシラーゼである。
【0166】
例えば、Biochem.J15(1992)282,p.821−828において、Stephen C.Fry et al.は、XETは微小線維間のキシログルカン鎖を切断し再結合するのに関与しており、したがって、XETは植物細胞の増殖に必要な壁の弛緩(wall−loosening)を引き起こすことを指摘している。XETは、すべての植物、特にすべての陸上植物中に存在していると考えられる。XETは、双子葉植物、単子葉植物、特にイネ科の単子葉植物およびユリ科の単子葉植物から抽出され、コケやゼニゴケ類からも抽出される。XETは、Fry et al.;Kallasまたは国際公開第03/033813号パンフレットに記載のようにして得ることができる。
【0167】
本発明者等は、キシログルカンポリマーなどのSCPは、化学的および/または酵素的に改変されて架橋基を含むことができることを見出した。さらに、本発明者等は、これらの基を改変した場合でも、SCPはセルロースなどのPCMの表面と密に結合し、その導入された架橋基は、SCPを介してPCMの多孔質表面と結合した場合でもなお、さらなる化学的反応に使用できることを見出した。具体的には、そうした化学的に改変したキシログルカンポリマーは、ポリマーをセルロース系繊維表面に結合させるための界面として用いることができる。本方法の重要な利点は、そうした界面を用いると、そうでない場合にセルロースの直接的化学修飾の際に通常もたらされる繊維構造および性能の損失が回避される。
【0168】
発明者等は、驚くべきことに、SCPとCLAを用いてPCMを架橋することによって、PCMまたはその複合体からなる材料の強度特性の著しい増進が可能であることをさらに見出した。
【0169】
その組成物は溶媒をさらに含むことができる。溶媒は、例えば、親水性溶媒、疎水性溶媒、水性溶媒およびその混合物からなる群から選択することができる。いくつかの実施形態では、水性溶媒が好ましい。
【0170】
組成物は二価の金属カチオンをさらに含むことができる。二価の金属カチオンは、例えば、Mg2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+、Cd2+、Ca2+、Sr2+、Pb2+およびBa2+からなる群から選択することができる。好ましい実施形態では、二価の金属カチオンはCa2+である。
【0171】
組成物は添加剤をさらに含むことができる。添加剤は緩衝剤、湿潤剤、安定剤、水活性を低減するDMSOなどの有機成分およびその組合せからなる群から選択することができる。
【0172】
緩衝剤は、リン酸塩、ホウ酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、アジピン酸塩、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、炭酸塩(特にアルカリ金属またはアルカリ土類金属、特に炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウム、あるいはアンモニウムおよびHCl塩)、ジアミン、特にジアミノエタン、イミダゾール、トリスもしくはアミノ酸緩衝剤が適切である。湿潤剤はPCMの湿潤性の向上を助けることができる。湿潤剤は、非イオン性界面活性剤型かまたはイオン性界面活性剤型のどちらであってもよい。
【0173】
組成物は、例えば、0.1〜99.9%の範囲のPCMを含むことができる。
【0174】
別段の指定のない限り、本明細書で言及する割合は重量/重量割合であることに留意されたい。
【0175】
組成物は、例えば、0.001〜99.9%の範囲のSCPを含むことができる。
【0176】
組成物は、例えば、0.000000001〜99.9%の範囲のCLAを含むことができる。
【0177】
組成物は、例えば、1〜99.9%の範囲の溶媒を含むことができる。
【0178】
PCMとSCPの重量比は、PCMの有効表面積ならびにSCPのサイズに依存する。本発明の好ましい実施形態では、組成物は、特定のPCMの濃度に対する特定のSCPの最大吸収可能濃度を超える量でSCPを含む。しかし、PCMに対するSCPの保護効果は、組成物が、特定のSCPの最大吸収可能濃度の少なくとも20%、特定のSCPの最大吸収可能濃度の好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは、少なくとも90%などの少なくとも80%の量のSCPを含む場合に得ることができる。
【0179】
「特定のSCPの最大吸収可能濃度」は、特定のSCPの濃度を増大させながら、特定のPCMの固定量の試料を処理することによって実験的に決定することができるパラメータである。図11に示すように結果のデータをプロットすることによって、「特定のSCPの最大吸収可能濃度」は、X軸上において、そこで線が立ち上がり始めるSCP濃度(図11で「最大」と記してある)として決定することができる。
【0180】
紙パルプの架橋において典型的な本発明の実施形態では、組成物は一般に、0.5〜70%の範囲のPCM、0.005〜30%の範囲のSCP、0.00001〜5%CLAおよび10〜90%の範囲の溶媒を含む。
【0181】
事前加工した紙匹の架橋において典型的な本発明の実施形態では、組成物は一般に、0.5〜70%の範囲のPCM、0.005〜30%の範囲のPSC、0.00001〜5%の範囲のCLAおよび10〜90%の範囲の溶媒を含む。
【0182】
組成物において、PCMおよびCLAは、10000:1〜1000:1、1000:1〜100:1、100:1〜10:1、10:1〜1:1、1:1〜1:10、1:10〜1:100または1:100〜1:1000などの10000:1〜1000:1の重量対重量比範囲であってよい。
【0183】
本発明の重要な実施形態では、ステップa)で提供された場合、SCPは第1のPCMと結合している。
【0184】
第1のPCMは、例えば、事前結合したSCP−PCMを調製する際またはステップb)で起こる、第1のPCMとSCPとの間の結合の形成の際には固体状であってよい。あるいは、第1のPCMは、第1のPCMとSCPとの間の結合の形成の際には、適切な溶媒に溶解しているか、または可溶化されている。セルロースは、例えば、N−メチルモルホリン−N−オキシド(NMMO)、塩化リチウム/ジメチルアセトアミド(LiCl/DIMAC)、尿素/ヒドロキシド等に溶解しているかまたは可溶化されていてよい。通常、PCMは次いで前記溶液から再度沈殿させる。
【0185】
上記方法のステップa〜c)には、ステップd)の重合が後続することができる。ステップd)の組成物は通常、ステップc)の架橋材料、重合開始剤およびモノマーを含み、場合によりメチル2−ブロモプロピオネートプロピオネートなどの犠牲開始剤も含む。実施例Iのように、重合反応を開始する前に、重合開始剤をSCPと結合させることができる。あるいは、重合反応を開始する前に、モノマーをSCPと結合させることができる。通常、ステップd)の組成物は、重合反応の開始前に遊離モノマーを常に含むことになる。重合反応は液相中でも気相中でも進行することができ、したがって、モノマーはガス状で存在することも、また液状で存在するかまたは溶解した状態であってもよい。
【0186】
ステップd)の重合は、実施例Iにしたがって、すなわち、同じ開始剤を用いか、または任意選択で同じモノマーも用いるグラフト重合であってよい。当業者は代替の開始剤およびモノマーを容易に特定することができる。
【0187】
重合は、必ずしも架橋材料の生成の時点で実施する必要はない。例えば、重合は、包装材料などの架橋材料上でそれを成形した後、実施することができる。PCMを含む成形材料の隅部および折り目は一般に脆弱であり、重合かまたは追加の架橋の強化によって利益を受ける。
【0188】
本発明の他の態様は、本発明のいずれかによって得られる架橋材料に関する。
【0189】
本発明のさらに他の態様は、第2の材料と架橋した第1のPCMを含む架橋材料であって、その架橋が、第1のPCMと結合したSCP、ならびにSCPと第2の材料の両方と結合した反応CLAを含む架橋材料に関する。
【0190】
第1のPCM、SCP、CLAおよび架橋材料の第2の材料は、種々の実施形態および本明細書で記載の代替形態から選択することができる。
【0191】
本発明の関連では、「結合(した)」という用語は、直接的結合と、直接結合の鎖を形成する中間基/分子を含む結合の両方を包含することを意味する。例えば、CLAが第2のPCMと結合している場合、PCMのヒドロキシ基の1つもしくは複数の直接結合との1つもしくは複数の直接結合を形成するか、例えば、第2のPCMと1つもしくは複数の直接結合をやはり形成するSCPとの1つもしくは複数の直接結合を形成することができる。結合は、例えば、共有結合であるか、あるいは水素結合、イオン結合もしくはファンデルワールス相互作用またはその組合せなどの非共有結合的相互作用であってよい。CLAが第2の材料と結合している場合、それは、第2の材料の任意の部分と1つもしくは複数の直接結合を形成するか、または、例えば、第2の材料と1つもしくは複数の直接結合をやはり形成するSCPと1つもしくは複数の直接結合を形成することができる。結合は、例えば、共有結合であるか、あるいは水素結合、イオン結合もしくはファンデルワールス相互作用またはその組合せなどの非共有結合的相互作用であってよい。
【0192】
本発明の好ましい実施形態では、SCPとCLAとの間の結合、ならびにCLAと第2の材料との間の結合は共有結合を含む。
【0193】
本発明の他の好ましい実施形態では、SCPとCLAとの間の結合、ならびにCLAと第2の材料との間の結合は共有結合および/またはイオン結合を含む。
【0194】
本発明のさらに好ましい実施形態では、SCPとCLAとの間の結合、ならびにCLAと第2の材料との間の結合は共有結合および/またはイオン結合および/または水素結合を含む。
【0195】
CLAと第2の材料との間の結合は、ファンデルワールス力による結合も含むと考えられる。したがって、本発明の実施形態では、SCPとCLAとの間の結合は、共有結合および/またはイオン結合および/または水素結合を含み、他方、CLAと第2のPCMとの間の結合は、ファンデルワールス力による結合を含む。
【0196】
本発明の架橋材料は多くの材料を含むことができる。当業者は理解されるように、PCM、SCPおよびCLAがそれぞれ、架橋材料の主要成分である実施形態が存在する。
【0197】
一般に、架橋材料は、例えば、0.1〜99.9%の範囲のPCMを含むことができる。したがって、架橋材料は0.1〜10%、10〜20%、20〜30%、30〜40%、40〜50%、50〜60%、60〜70%、70〜80%、80〜90%または90〜99.9%の範囲のPCMを含むことができる。
【0198】
架橋材料は、例えば、0.1〜99.9%の範囲の反応したSCPを含むことができる。したがって、架橋材料は0.1〜10%、10〜20%、20〜30%、30〜40%、40〜50%、50〜60%、60〜70%、70〜80%、80〜90%または90〜99.9%の範囲のSCPを含むことができる。
【0199】
架橋材料は、例えば、少なくとも0.1%のSCP、例えば少なくとも0.1%、0.5%、1%、2%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%、例えば少なくとも99%のSCPを含むことができる。
【0200】
架橋材料は、例えば、0.001〜99.9%の範囲の反応したCLAを含むことができる。したがって、架橋材料は0.1〜10%、10〜20%、20〜30%、30〜40%、40〜50%、50〜60%、60〜70%、70〜80%、80〜90%または90〜99.9%の範囲のCLAを含むことができる。
【0201】
本発明によってその繊維を架橋した事前加工紙匹について典型的である本発明の実施形態では、架橋材料は、60〜99%の範囲のPCM、1〜30%の範囲のSCPおよび0.001〜30%の範囲の反応CLA、例えば、80〜95%の範囲のPCM、5〜20%の範囲のSCPおよび0.001〜10%の範囲の反応CLAを含む。
【0202】
強力にSCP強化したPCM材料について典型的である本発明の実施形態では、架橋材料は、30〜70%の範囲のPCM、30〜70%の範囲のSCPおよび0.001〜20%の範囲の反応CLA、例えば、40〜60%の範囲のPCM、40〜60%の範囲のSCPおよび0.001〜5%の範囲の反応CLAを含む。
【0203】
CLAが嵩張ったスペーサー基を含むPCM材料について典型的である本発明の実施形態では、架橋材料は、20〜40%の範囲のPCM、20〜40%の範囲のSCPおよび20〜60%の範囲の反応CLA、例えば、20〜30%の範囲のPCM、20〜30%の範囲のSCPおよび40〜60%の範囲の反応CLAを含む。
【0204】
本発明の実施形態では、架橋材料は、PCMとSCPを10000:1〜1:100、例えば10000:1〜1000:1、1000:1〜100:1、100:1〜10:1、10:1〜1:1、1:1〜1:10または1:10〜1:100の重量対重量比範囲で含む。一般に、架橋材料は、PCMとSCPを100:1〜1:10の重量対重量比範囲で含む。
【0205】
本発明の好ましい実施形態では、架橋材料は、ホウ素エステルまたはその誘導体などの元素ホウ素を含む反応CLAを含む。
【0206】
例えば、架橋材料重量のうちの0.000000001%〜5%、例えば0.000000001%〜0.0000001%、0.0000001%〜0.00001%、0.00001%〜0.001%、0.001%〜0.01%、0.01%〜0.1%、0.1%〜1%が元素ホウ素であり、例えば1%〜5%が元素ホウ素である。
【0207】
架橋材料は二価の金属カチオンをさらに含むことができる。二価の金属カチオンは、例えば、Mg2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+、Cd2+、Ca2+、Sr2+、Pb2+およびBa2+からなる群から選択される。
【0208】
本発明の好ましい実施形態では、二価の金属カチオンはCa2+である。
【0209】
反応CLAは、C2〜C8ジアルデヒドなどの反応したジアルデヒドを含むことができる。例えば、ジアルデヒドはグルタルアルデヒドであってよい。
【0210】
本発明の他の態様はSCPとCLAを含むキットに関する。キットは、例えば架橋のためであってよく、または例えば、本明細書で述べる架橋方法で用いることができる。
【0211】
本発明の実施形態では、キットのSCPはCLAを含む、すなわち、SCPはCLAと結合している。他の実施形態では、キットのSCPはCLAを含まない、すなわち、SCPはCLAと結合していない。キットは、CLAと結合しているSCP、CLAと結合していないSCP、およびSCPと結合していないCLAを含むことができることも考えられる。
【0212】
SCPとCLAは、キットの別個の容器中に配置されていてよい。あるいは、それらは同一容器に配置されていてよい。キットのSCPおよび/またはCLAは、液体状、半液体状、固体状または半固体状で存在することができる。例えば、キットのSCPとCLAはどちらも固体状で存在することができる。
【0213】
キットのSCPおよび/またはCLAは粉末または顆粒の形態で存在することができる。
【0214】
キットは本明細書で述べる添加剤をさらに含むことができる。
【0215】
本発明の好ましい実施形態では、SCPおよび/またはCLA、好ましくはSCPとCLAの両方が、すぐ使える配合物で存在する。本発明の関連では、「すぐ使える配合物」という語句は、本発明による架橋を実施するための、第1のPCMおよび/または第2の材料を除くすべての必要成分を含む配合物を指す。本発明の実施形態では、キットの「すぐ使える配合物」は架橋を実施するための溶媒を含まない。他の実施形態では、「すぐ使える配合物」は溶媒、例えば水または有機溶媒を含む。
【0216】
本発明の架橋材料には多くの用途があり、例えば、紙またはパルプ製品、ろ紙、高級印刷用紙、新聞印刷用紙、再生セルロース材料、ライナーボード、ティッシュペーパーおよび他の衛生用品、袋用紙およびクラフト紙、他の包装材料、パーチクルボードおよび繊維ボード、ならびに、固形木製品もしくは木材と繊維の複合体の表面部、木綿糸、波形カード紙、織物、診断アッセイもしくは化学アッセイまたは診断プロセスもしくは化学プロセスのための助剤、液体や食料品用の包装薬剤、水溶液に不透過性バリヤーを提供するためのポリエチレンなどの熱可塑性樹脂で積層化された紙およびカード紙、織物、証券用紙、紙幣、追跡可能な文書用フィラー、積層製品およびパネル製品、木材とポリマーの複合体、ポリマー複合体、合金およびブレンド品、導電体、半導体、絶縁体ならびにセルロース誘導品(セルロース系)などの製造方法において用いることができる。
【0217】
本発明の架橋材料には多くの用途があり、例えば、周囲温度の変化に応じて自動的に変色する材料などの感熱材料などの製造方法において用いることができる。37℃で変色する感熱材料が特に重要である。架橋材料はさらに、例えば、ある範囲の波長を遮断(例えばUV遮断など)する光感受性材料などの製造方法において用いることができる。
【0218】
本発明の架橋材料は、例えば、透明材料、反射材料、ガス不浸透性もしくは半浸透性材料、あるいは他の構造を強化するかまたは保護するための材料として用いることができる。
【0219】
本発明の架橋材料は、例えば、診断または分離の技術で用いられる医療用の膜、ゲル、ビーズ、および電子用途で用いられる膜の製造方法において用いることができる。本発明の関連での繊維製品は、他の天然または合成ポリマーまたは材料との新型の複合体、ならびに導電体、半導体または絶縁体と考えられるものであってもよい。
【0220】
また、本発明の架橋材料は、例えば、綿、ビスコース、キュプロ、アセテートおよびトリアセテート繊維などのセルロース含有織物、モダール、レーヨン、ラミー、リンネル、テンセル(登録商標)等もしくはその混合物、またはこれらの繊維の任意の混合物、あるいは、綿およびスパンデックス(伸縮性デニム)、テンセル(登録商標)および羊毛、ビスコースおよびポリエステル、綿およびポリエステルならびに綿および羊毛の混合物などの合成繊維または羊毛とのこれらの繊維の任意の混合物の製造方法において用いることができる。
【0221】
本発明のさらに他の態様は、紙またはパルプ製品、ろ紙、高級印刷用紙、新聞印刷用紙、再生セルロース材料、ライナーボード、ティッシュペーパーおよび他の衛生用品、袋用紙およびクラフト紙、他の包装材料、パーチクルボードおよび繊維ボード、ならびに、固形木製品もしくは木材と繊維の複合体の表面、木綿糸、波形カード紙、織物、診断アッセイもしくは化学アッセイまたは診断プロセスもしくは化学プロセスのための助剤、液体や食料品用の包装薬剤、水溶液に不透過性バリヤーを提供するためのポリエチレンなどの熱可塑性樹脂で積層化された紙およびカード紙、織物、証券用紙、紙幣、追跡可能な文書用フィラー、積層製品およびパネル製品、木材とポリマーの複合体、ポリマー複合体、合金およびブレンド品、導電体、半導体、絶縁体、診断または分離の技術で用いられる医療用の膜、ゲル、ビーズ、綿、ビスコース、キュプロ、アセテートおよびトリアセテート繊維、モダール、レーヨン、ラミー、リンネル、テンセル(登録商標)等のセルロース含有織物もしくはその混合物、またはこれらの繊維のいずれかの混合物、あるいは、これらの繊維のいずれかと合成繊維または羊毛との混合物、例えば、綿とスパンデックス(伸縮性デニム)、テンセル(登録商標)と羊毛、ビスコースとポリエステル、綿とポリエステル、綿と羊毛、およびセルロース誘導品(セルロース系)からなる群から選択される製品であって、本発明による架橋材料を含む製品である。
【実施例】
【0222】
(実施例I:セルロース上へのメチルメタクリレートのグラフト重合)
【0223】
(はじめに)
本実施例は、SCPへの重合開始剤の結合の仕方と、SCP−重合開始剤共役物によるセルロース上へのグラフト重合の実施の仕方を実証する。
【0224】
優れたATRP開始剤部分と好都合な色素体タグの両方を担持する重合開始剤4−(2−(2−ブロモプロピオニルオキシ)−エトキシ]安息香酸を、XGO(XGO−NH)のアミノアルジトール誘導体とカップリングさせ、続いて、XET酵素を用いてキシログルカン(XG)中に組み込む。XGO−NH(約M1200)のサイズが小さいことによって、精密な合成および分析化学が可能になり、完全な誘導体化に続く、XG鎖長を調整するための特異的な制御可能酵素反応が確実になる。続く開始剤担持XG(XG−INI)のセルロースへの吸着によって、多価の相互作用(XGOおよび誘導体自体はセルロースと結合せず、XG鎖>20Glc単位を必要とする)を介して、開始剤は表面に効果的に繋ぎ止められる。本実験については、ワットマン(Whatman)グレード1定性ろ紙を、好都合な高純度セルロース繊維用紙として選択したが、その方法は、広範囲のセルロース繊維や再生セルロースに直接適用することができる。ATRP条件下での、MMAの開始剤担持ろ紙上へのグラフト重合によって、表面特性が変更された繊維が得られる。
【0225】
(材料)
タマリンドの種からのキシログルカン(XG)(Xyl:Glc:Gal:Ara=35:45:16:4)をMegazyme(Bray、アイルランド)から購入した。XETは、Kallasによるピチアパストリス中のポプラ属トレムラxアメリカヤマナラシ(Populus tremula x tremuloides)PttXET16Aの異種発現によって得た。Brumer et al.に記載のようにして、エンドグルカナーゼ消化を用いて、脱油したタマリンド核種粉末(300メッシュ、Maharashtra Traders、インド)から、キシログルカンオリゴ単糖(XGO、XXXG/XLXG/XXLG/XLLG比15:7:32:46)の混合物を調製した。Brumer et al.のようにして、XGO(XGO−NH)のアミノアルジトール誘導体を還元的アミノ化により調製した。
【0226】
(開始剤改変XGO(XGO−INI)の合成)
4−(2−(2−ブロモプロピオニルオキシ)エトキシ)安息香酸(Zhang et al.により合成した。35267mg、0.84ミリモル)とN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC、149μl、0.84ミリモル)をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF、2mL)中に溶解し、室温で15分間攪拌した。次いで、DMF(5mL)中のXGO−NH(500mg、0.4ミリモル)と4,4−ジメチルアミノピリジン(5mg、0.04ミリモル)を加えた。混合物を室温で4時間攪拌し、続いてアセトンを加えた。得られた沈殿物をワットマンGF/Aガラスマイクロファイバーフィルターで収集し、真空乾燥し、C18逆相カラム(Silica 60A 40−63μm C18,SDS,France、2.6cm×10cm)を用いて、水の中でCHCNの濃度を増大させながら段階的溶出させて精製した。純度の高い生成物を含む画分(TLC、70:30アセトニトリル:水)を集め、凍結乾燥してXGO−INIを白色粉末(272mg、44%の収率)として得た。
【0227】
(開始剤のXGへの結合と、セルロース上への固定化)
XET技術を用いたセルロース表面上への開始剤の固定化は以下のようにして実施した。開始剤改変XGO(XGO−INI)を、Brumer et al.によるXGOの還元的アミノ化、続く、Zhang et al.にしたがって作製した4−(2−(2−ブロモプロピオニルオキシ)−エトキシ]安息香酸を用いたカルボジイミド媒介N−アシル化によって得た。NaOAc緩衝剤(20mM、pH5.5)中にXG(1g/L)、XGO−INI(0.5g/L)およびXET(10単位)を含む1mLの混合物の試料を、30℃で24時間インキュベートした。75℃で10分間加熱して反応を停止させ、12000gで20分間遠心分離して変性したXETを除去した。この方法で作製した開始剤改変XG(XG−INI)は2.2×10(PDI=2.0)のMを有していた。ろ紙ディスク(ワットマングレード1、Φ1.5cm、平均質量15mg)を上澄みに加え、25℃で24時間軌道型振とう機でインキュベートした。次いで、セルロースディスクを取り出し、周回式(end−over−end)混合機中で水(3×5mL)で洗浄し、真空下、60℃で48時間乾燥した。XG中に組み込み、続いてろ紙ディスクと結合したXGO−INIの量は、洗浄溶液中に残留するXGO−INIの量(HO中でのε250nm=11000cm−1−1)で測定して、0.06マイクロモルであった。
【0228】
(重合)
次いで、開始剤担持ワットマンフィルターを、グラフトATRPのためのMMA(2mL、18.7ミリモル)、メチル2−ブロモプロピオネート(2mL、0.018ミリモル)、CuBr(5.7mg、0.04ミリモル)、dHbipyl2(28.2mg、0.08ミリモル)、ジフェニルエーテル(2mL、溶媒および内部標準として)の均一溶液を含むシェンク(Schlenk)反応管中に入れた。凍結−ポンピング−解凍サイクルで脱気し、続いて、攪拌しながら(磁気攪拌子)個々の反応管を、90℃で20分、40分、60分、120分、180分および240分間加熱した。溶液は急速に赤褐色に変色し、重合が進行するにつれて、混合物の粘性は徐々に高くなってきた。溶液中で犠牲開始剤として作用するメチル2−ブロモプロピオネートは、移行反応および停止反応による影響はほとんどなく、十分に制御された重合をもたらした。溶液中に生成した遊離ポリマーとセルロース繊維表面上のグラフトポリマーの数平均分子量(Mn)は、初期のモノマーと遊離の開始剤の供給濃度比から計算した理論値と同等の傾斜で、MMAの転換率に対して直線的に増大した(表面上のキシログルカン固定化開始剤量は溶液中の開始剤に対して無視できる程度に少なかった)。さらに、図3で示すように、両方のポリマーの多分散性指標(Mw/Mn)は相対的に低く、これは、グラフト重合工程がMMA中でのATRPと同じようによく制御されていることを示している。図3は、遊離ポリマー(黒丸)および開裂ポリマー(白丸)のMnおよびMw/Mnのプロットを、モノマー転換率の関数として示している。実線は理論的Mnを転換率の関数として表しており、点線はMw/Mn対転換率データの線形最小二乗当てはめを表している。
【0229】
重合の後、ろ紙をクロロホルムで繰り返し洗浄して、セルロース繊維上にポリ(MMA)鎖が化学的に固定されていることが確認された。
【0230】
ポリ(MMA)の表面グラフト化のさらなる証拠は、洗浄したろ紙のATRFTIRスペクトルにおける1732cm−1でのカルボニルピーク(νc=o)の出現をもとにした。その強度はモノマー転換率と比例していた(図4)。これは、ATRP技術によってグラフト化層の厚さを制御できることを強く示唆している。遊離ポリマーがMn<5×10(DP<500)を有する反応によるポリ(MMA)グラフト化ろ紙は水を徐々に吸収したが、M>5×10が得られる反応による試料については、水の吸着は検出されなかった(図5)。これらの高い疎水性のセルロース紙の角度の(θ)増大は、M5.8×10、6.7×10および7.2×10のグラフトポリマーをそれぞれ有する試料について、120±6°、126±5°および131±5°であった(図3に示す)。
【0231】
(実施例II:セルロース上へのシンナモイル基の結合、それに続く光活性化架橋)
【0232】
(はじめに)
本実施例は、SCPへのシンナモイル基の結合の仕方と、SCP−シンナモイル共役物によるセルロースの光活性化架橋の実施の仕方を実証する。
【0233】
シンナモイル基を、XGO(XGO−NH)のアミノアルジトール誘導体とカップリングし、続いてXET酵素を用いてキシログルカン(XG)中に組み込んだ。XGO−NH(約M1200)のサイズが小さいことによって、精密な合成および分析化学が可能になり、完全な誘導体化に続く、XG鎖長を調整するための特異的な制御可能酵素反応が確実になる。続くシンナモイル担持XG(XG−CIN)のセルロースへの吸着によって、多価の相互作用(XGOおよび誘導体自体はセルロースと結合せず、XG鎖>20Glc単位を必要とする)を介して、開始剤は表面に効果的に繋ぎ止められる。本実験については、針葉樹の化学パルプをセルロース源として選択したが、その方法は、広範囲のセルロース繊維や再生セルロースに直接適用することができる。XG−CINを含むパルプで作製した手製シート(Hand sheet)は、紫外線(UV)照射した後、強度特性が改善されていた。
【0234】
(材料)
タマリンドの種からのキシログルカン(XG)(Xyl:Glc:Gal:Ara=35:45:16:4)をMegazyme(Bray、アイルランド)から購入した。XETは、Kallasによるピチアパストリス中のポプラ属トレムラxアメリカヤマナラシ(Populus tremula x tremuloides)PttXET16Aの異種発現によって得た。Brumer et al.に記載のようにして、エンドグルカナーゼ消化を用いて、脱油したタマリンド核種粉末(300メッシュ、Maharashtra Traders、インド)から、キシログルカンオリゴ単糖(XGO、XXXG/XLXG/XXLG/XLLG比15:7:32:46)の混合物を調製した。Brumer et al.のようにして、XGO(XGO−NH)のアミノアルジトール誘導体を還元的アミノ化により調製した。
【0235】
木材パルプ:針葉樹(マツとトウヒを混合したもの)からの漂白した硫酸塩パルプ(30g)を水に終夜浸漬して再懸濁させ、続いて、2リットルの最終容積まで希釈し、ISO5263:1997によって30000回転させて完全に混合した。Christiernin et al.によって先に記載されている方法と類似の方法にしたがって、パルプのカチオン含有量を正規化した。HCl(1M、20ml)を加えて、得られた懸濁液のpHを2に低下させ、続いて30分間攪拌した。繊維をろ取し、ろ液の導電率が5μSより低くなるまで洗浄した。繊維を再懸濁し、NaHCO(0.1M、20ml)を加えて繊維をNaの形態に転換させた。10分間攪拌してもpH9に達しない場合、懸濁液をNaOH(1M)で滴定してpH9とし、続いて、平衡に達するまで攪拌した(30分間)。繊維を再度ろ取し、ろ液の導電率が5μSより低くなるまで洗浄した。次いでパルプに圧力をかけて過剰の水を除去した。
【0236】
(シンナモイル改変XGO(XGO−CIN)の合成)
XGO−NH(500mg、0.4ミリモル)をDMF(15ml)中に溶解した。EDC塩酸塩(161mg、0.84ミリモル、2.1当量)、桂皮酸(62.2mg、0.42ミリモル、1.05当量)および4,4’−ジメチルアミノピリジン(DMAP、24.5mg、0.2ミリモル、0.5当量)を、逐次迅速に加え、反応液を室温で20時間攪拌した。攪拌しながら反応混合物をアセトン(60mL)に注加した。得られた沈殿物をワットマンGF/Aガラスマイクロファイバーフィルターに採取し、真空乾燥し、C18逆相カラム(Silica 60A 40−63μm C18,SDS,France、2.6cm×10cm)を用いて、水の中でCHCNの濃度を増大させながら段階的溶出させて精製した。純度の高い生成物を含む画分(TLC、70:30アセトニトリル:水)を集め、凍結乾燥してXGO−CINを白色粉末(440mg、収率78%)として得た。
【0237】
(シンナモイル基のXGへの結合と、セルロース上への固定化)
シンナモイル基のXGへの結合を、XGO−INIをXGO−CINで置き換えて、開始剤基(上記)のための技術を用いて実施した。3Lの水の中で450mgのXG−CINと30gパルプを終夜混合して、得られた生成物、XG−CINを木材パルプに吸着させ、続いてろ過し、水で洗浄して未結合のXG−CINを除去した。次いでパルプに圧力をかけて過剰の水を除去した。
【0238】
(手製シートの作製)
ISO5269−2:1998の方法による手製シート作製のために、Kothen迅速シート作製機(Rapid Kothen Sheet Former)(RK−3KWT,PTI Paper Testing Instruments,GmbH,Vorchdorf,Austria)を用いた。シートを作製する前に、2g部のパルプ(乾燥質量ベースで)を攪拌しながら約500mLの水に懸濁した。乾燥ステップの前に、シートから約10cmの位置に置いた水銀ランプ(30W、主発光254nm、モデルG30T8,Philips,Eindhoven、オランダ)を用いて、生成したシートをどれも30分間(結果参照、図6)照射した。次いで、Kothen迅速装置を用いて、シートを真空下で93℃、12分間乾燥した(ISO5269−2:1998は10分間としている)。対照シートは、UV光に曝露していないXG−CIN担持シートかまたはシンナモイル基が不足しているキシログルカン(XET酵素の媒介下でのXGと非誘導化XGOの反応により作製。この方法で作製した低分子質量のXGは、XG−CINと本質的に同じ分子量分布を有していた)を担持したシートのいずれかからかなる。
【0239】
(実施例III:セルロース上への4−アジドベンゾイル基の結合、それに続く光活性化架橋)
【0240】
(はじめに)
本実施例では、SCPへの4−アジドベンゾイル基の結合の仕方と、SCP−4−アジドベンゾイル共役物によるセルロースの光活性化架橋の実施の仕方を実証する。
【0241】
4−アジドベンゾイル基を、XGO(XGO−NH)のアミノアルジトール誘導体とカップリングし、続いて、XET酵素を用いてキシログルカン(XG)中に組み込んだ。XGO−NH(約M1200)のサイズが小さいことによって、精密な合成および分析化学が可能になり、完全な誘導体化に続く、XG鎖長を調整するための特異的な制御可能酵素反応が確実になる。続く4−アジドベンゾイル担持XG(XG−N)のセルロースへの吸着によって、多価の相互作用(XGOおよび誘導体自体はセルロースと結合せず、XG鎖>20Glc単位を必要とする)を介して、開始剤は表面に効果的に繋ぎ止められる。本実験については、針葉樹の化学パルプをセルロース源として選択したが、その方法は、広範囲のセルロース繊維や再生セルロースに直接適用することができる。XG−Nを含むパルプで作製した手製シートは、紫外線(UV)照射した後、強度特性が改善されていた。
【0242】
(材料)
タマリンドの種からのキシログルカン(XG)(Xyl:Glc:Gal:Ara=35:45:16:4)をMegazyme(Bray、アイルランド)から購入した。XETは、Kallasによるピチアパストリス中のポプラ属トレムラxアメリカヤマナラシ(Populus tremula x tremuloides)PttXET16Aの異種発現によって得た。Brumer et al.に記載のようにして、エンドグルカナーゼ消化を用いて、脱油したタマリンド核種粉末(300メッシュ、Maharashtra Traders、インド)から、キシログルカンオリゴ単糖(XGO、XXXG/XLXG/XXLG/XLLG比15:7:32:46)の混合物を調製した。Brumer et al.のようにして、XGO(XGO−NH)のアミノアルジトール誘導体を還元的アミノ化により調製した。
【0243】
木材パルプ:針葉樹(マツとトウヒを混合したもの)からの漂白した硫酸塩パルプ(30g)を水に終夜浸漬して再懸濁させ、続いて、2リットルの最終容積まで希釈し、ISO5263:1997によって30000回転させて完全に混合した。Christiernin et al.によって先に記載されている方法と類似の方法にしたがって、パルプのカチオン含有量を以下のようにして正規化した。HCl(1M、20ml)を加えて、得られた懸濁液のpHを2に低下させ、続いて30分間攪拌した。繊維をろ取し、ろ液の導電率が5μSより低くなるまで洗浄した。繊維を再懸濁し、NaHCO(0.1M、20ml)を加えて繊維をNaの形態に転換させた。10分間攪拌してもpH9に達しない場合、懸濁液をNaOH(1M)で滴定してpH9とし、続いて、平衡に達するまで攪拌した(30分間)。繊維を再度ろ取し、ろ液の導電率が5μSより低くなるまで洗浄した。次いでパルプに圧力をかけて過剰の水を除去した。
【0244】
(4−アジドベンゾイル改変XGO(XGO−N)の合成)
N−ヒドロキシスクシニミジル−4−アジドベンゾエート(66.3mg、0.255ミリモル、1.0当量;Sigma−Aldrich、カタログ番号A−9048)を、ジメチルホルムアミド(DMF、24ml)中のXGO−NH(314.8mg、0.247ミリモル)の溶液に加えた。室温で4時間攪拌後、真空下、50℃でDMFを蒸発させた。固体を水で抽出し、得られた溶液を、C18逆相カラム(Silica 60A 40−63μmC18,SDS,France、2.6cm×10cm)を用いて、水の中でCHCNの濃度を増大させながら段階的溶出させて精製した。純度の高い生成物を含む画分(TLC、70:30アセトニトリル:水)を集め、凍結乾燥してXGO−Nを白色粉末として得た。
【0245】
(4−アジドベンゾイル基のXGへの結合と、セルロース上への固定化)
XGへの4−アジドベンゾイル基の結合を、XGO−INIをXGO−Nで置き換えて、開始剤基(上記)のための技術を用いて実施した。3Lの水の中で450mgのXGO−Nと30gパルプを終夜混合して、得られた生成物、XG−Nを木材パルプに吸着させ、続いてろ過し、水で洗浄して未結合のXG−Nを除去した。次いでパルプに圧力をかけて過剰の水を除去した。
【0246】
(手製シートの作製)
ISO5269−2:1998の方法による手製シート作製のために、Kothen迅速シート作製機(RK−3KWT,PTI Paper Testing Instruments,GmbH,Vorchdorf、オーストリア)を用いた。シートを作製する前に、2g部のパルプ(乾燥質量ベースで)を攪拌しながら約500mLの水に懸濁した。乾燥ステップの前に、シートから約10cmの位置に置いた水銀ランプ水銀ランプ(30W、主発光254nm、モデルG30T8,Philips,Eindhoven、オランダ)を用いて、作製したシートをどれも30分間照射した(結果参照、図6)。次いで、Kothen迅速装置を用いて、シートを真空下で93℃、12分間乾燥した(ISO5269−2:1998は10分間としている)。対照シートは、UV光に曝露していないXG−N担持シートか、または4−アジドベンゾイル基が不足しているキシログルカンを担持したシート(XET酵素の媒介下でのXGと非誘導化XGOの反応により作製。この方法で作製した低分子質量のXGは、XG−Nと本質的に同じ分子量分布を有していた)からかなる。
【0247】
(引張強度試験)
手製シートを、23℃、および50%の相対湿度の条件下に24時間置いた。SCAN標準方法SCAN−P67:93によって、この条件下で引張強度試験を実施した。結果を図6に棒グラフでまとめて示す。図6は手製シートの引張強度指標を示す。Aはキシログルカンの添加なし;Bは吸着された未改変キシログルカンを用い;Cは吸着されたXG−CINを用い;Dは吸着されたXG−Nを用いたものである。試料B、CおよびD中のキシログルカンは、2.2×10(PDI=2.0)の重量平均分子量Mを有していた。試料B、CおよびDは乾燥前に30分間照射した。乾燥後に照射したシートについて、引張強度に統計的差異は見られなかった。
【0248】
(実施例IV:木材パルプのキシログルカン媒介によるホウ素架橋)
【0249】
(XGのパルプへの吸着およびホウ酸を用いた架橋)
木材パルプ:針葉樹(マツとトウヒを混合したもの)からの漂白した硫酸塩パルプ(30g)を水に終夜浸漬して再懸濁させ、続いて、2リットルの最終容積まで希釈し、ISO5263:1997によって30000回転させて完全に混合した。Christiernin et al.によって先に記載されている方法と類似の方法にしたがって、パルプのカチオン含有量を以下のようにして正規化した。HCl(1M、20ml)を加えて、得られた懸濁液のpHを2に低下させ、続いて30分間攪拌した。繊維をろ取し、ろ液の導電率が5μSより低くなるまで洗浄した。繊維を再懸濁し、NaHCO(0.1M、20ml)を加えて繊維をNaの形態に転換させた。10分間攪拌してもpH9に達しない場合、懸濁液をNaOH(1M)で滴定してpH9とし、続いて、平衡に達するまで攪拌した(30分間)。繊維を再度ろ取し、ろ液の導電率が5μSより低くなるまで洗浄した。次いでパルプに圧力をかけて過剰の水を除去した。
【0250】
表1にまとめたように、キシログルカン処理木材パルプを、ホウ酸を用いて架橋することによるさらなる利益を示すために、複数の試料を作製した:
【0251】
【表1】

【0252】
木材パルプの第1の処理としてキシログルカンを吸着させた場合(表1、試料1〜5)、キシログルカン(40mg)を400mlの脱塩水中に溶解した。次いで、木材パルプ(4g)を加え、懸濁液を室温で18時間攪拌した。その時点で懸濁液をろ過し、パルプ固形物を水で洗浄して過剰のキシログルカンを除去した。試料6〜9については、処理Aを省略し、木材パルプを処理Bに直接用いた。処理Bは:手製シート作製の前に、0.1%重量/容積のホウ酸水溶液、pH3.5;0.01%ホウ酸水溶液、pH3.5;または水、pH3.5のいずれかの中に木材パルプを、0分間かまたは24時間再懸濁させることからなる(表1)。すべての場合、溶液のpHはパルプを加えた後、100mMのHCl水溶液を加えて調節した。試験する手製シートは、ISO5269−2:1998の方法によるKothen迅速シート作製機(R.K−3KWT,PTI Paper Testing Instruments,GmbH,Vorchdorf、オーストリア)で、処理B後の各試料(2gパルプ/sheet)から作製した。
【0253】
[参考文献]
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WO 03/033 813

US patent No.6,844,081
【図面の簡単な説明】
【0254】
【図1】本発明の第1の例示的実施形態の方法のステップを示す図である。
【図2】複数のタイプのCLAを示す図である。
【図3】遊離ポリマーおよび開裂ポリマーのMnおよびMw/Mnをモノマー転換率の関数として示す図である。
【図4】ポリ(MMA)グラフト化ろ紙の反射率FTIRスペクトルのプロットを示す図である。
【図5】水滴をはじく疎水性ろ紙の写真である。
【図6】架橋した紙の引張強度指標を対照と比較して示す棒グラフである。
【図7】本発明の第2の例示的実施形態の方法のステップを示す図である。
【図8】本発明の第3の例示的実施形態の方法のステップを示す図である。
【図9】図8で示した方法ステップの変形体を示す図である。
【図10】本発明の第4の例示的実施形態の方法のステップを示す図である。
【図11】SCPの最大吸収可能濃度を決定するためのプロットを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のポリマー系炭水化物材料(PCM)と第2の材料を架橋させる方法であって、
a)前記第1のPCM、前記第2の材料、可溶性炭水化物ポリマー(SCP)および架橋剤(CLA)を含む組成物を提供するステップであって、前記SCPが第1のPCMと結合することができ、前記CLAが、そのALGが活性化の方法による活性化の際に他の分子と少なくとも1つの結合を形成できる第1の活性化可能な連結基(ALG)および第2のALGを含むステップと、
b)SCPを第1のPCMと結合するステップと、
c)活性化の少なくとも1つの方法で第1の活性化可能な連結基および/または第2の活性化可能な連結基を活性化させることによって、SCPおよびCLAを介して第1のPCMと第2の材料を架橋するステップと
を含む方法。
【請求項2】
第1のポリマー系炭水化物材料(PCM)と第2のPCMを架橋させる方法であって、
a)前記第1のPCM、前記第2の材料、第1のPCMと結合した可溶性炭水化物ポリマー(SCP)および架橋剤(CLA)を含む組成物を提供するステップであって、前記CLAが、そのALGが活性化の方法による活性化の際に他の分子と少なくとも1つの結合を形成できる第1のALG、第2の活性化可能な連結基および第2のALGを含むステップと、
c)活性化の少なくとも1つの方法で第1の活性化可能な連結基および/または第2の活性化可能な連結基を活性化させることによって、SCPおよびCLAを介して第1のPCMと第2の材料を架橋するステップと
を含む方法。
【請求項3】
前記第2の材料が第2のPCMである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1および第2のALGを、同じ活性化方法で活性化させることができる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2のALGを活性化させることができる活性化の方法によって、前記第1のALGを活性化させることができない、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のALGを活性化させることができる活性化の方法によって、前記第2のALGを活性化させることができない、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記CLAが、前記第1および/または第2の活性化可能な連結基が結合しているスペーサー基をさらに含む、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記スペーサー基が、原子、タンパク質、ポリペプチド、小有機分子、炭水化物、ナノ粒子の群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記スペーサー基が、最大99.5%のキシログルカン、例えば最大99%、95%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%または5%、例えば最大1%のキシログルカンを含む、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記スペーサー基がキシログルカンを含まない、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記スペーサー基がSCPでない、請求項7〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記スペーサー基が、最大99.5%のセルロース、例えば最大99%、95%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%または5%、例えば最大1%のセルロースを含む、請求項7〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記スペーサー基がセルロースを含まない、請求項7〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記スペーサー基がPCMでない、請求項7〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記CLAの最長寸法が、最大100μm、例えば最大50μm、25μm、10μm、5μmまたは最大1μm、例えば最大500nm、250nm、125nm、100nm、75nm、50nm、25nm、12.5nm、10nm、5nm、2.5nm、1.25nm、1.0nm、0.5nmまたは最大0.1nmである、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記活性化可能な連結基が本質的に炭水化物を架橋することができる、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記活性化可能な連結基が、光活性化可能な基、イオン基、炭化水素、求電子基、求核基、重合反応のためのモノマー、放射性同位体、遊離基前駆体、カルベン前駆体、ナイトレン前駆体、オキセン前駆体、核酸配列、アミノ酸配列、ポリペプチド、タンパク質、炭水化物、ビタミンおよび薬物からなる群から選択される、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
ステップa)の前記SCPが前記CLAを含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
ステップa)の前記SCPが前記CLAを含まない、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記活性化の方法が、
前記組成物を電離放射線に曝すこと、
前記組成物を電磁放射線に曝すこと、
前記組成物に酸性pHをもたらすこと、
前記組成物に塩基性pHをもたらすこと、
適切な溶媒を提供すること、
組成物をある温度にすること、
触媒/化学的活性剤を加えること、および
これらの組合せ
からなる群から選択される、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記活性化の方法が、前記組成物を電離放射線に曝すことである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記組成物を、0.1秒間〜20時間、例えば0.1〜1秒間、1〜10秒間、10〜30秒間、30〜60秒間、1〜10分間、10〜30分間、30〜60分間、1〜5時間、5〜10時間または10〜20時間の範囲の期間電磁放射線に曝す、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記電磁放射線が、150nm〜1500nm、例えば150nm〜400nm、400nm〜700nmまたは700nm〜1500nmの波長範囲内の波長を含む、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記組成物を曝す電磁放射線のエネルギーの少なくとも10%が、150nm〜1500nm、例えば150nm〜400nm、400nm〜700nmまたは700nm〜1500nmの波長範囲内の波長からなる、請求項21〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記組成物を曝す電磁放射線のエネルギーの少なくとも50%が、150nm〜1500nm、例えば150nm〜400nm、400nm〜700nmまたは700nm〜1500nmの波長範囲内の波長からなる、請求項21〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記第1および/または前記第2のPCMが水不溶性多糖である、請求項1〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記第1および/または第2のPCMが、少なくとも5%のセルロース、例えば少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、95%または99%、例えば少なくとも99.9%のセルロース、例えば100%のセルロースを含む、請求項1〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記第1および/または第2のPCMが、植物、バクテリア、藻および動物からなる群から選択される供給源から誘導される、請求項1〜27のいずれか一項に記載の材料。
【請求項29】
請求項1に記載のステップa)の前記第1および/または第2のPCMが、
i)微結晶性セルロース、
ii)セルロース微小繊維、
iii)再生セルロース、
iv)植物から抽出された繊維などの植物繊維、
v)部分的に脱繊維化した木材、
vi)木材、
vii)繊維網状組織、および
viii)i)〜vii)のいずれかの組合せを含む複合体材料
からなる群から選択される構造の一部を形成する、請求項1〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記SCPが、ヘミセルロース、ペクチンおよび澱粉からなる群から選択される成分を含む、請求項1〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記SCPがキシログルカンを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記SCPがキシログルカンから本質的になる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記SCPが、少なくとも1%のキシログルカン、例えば少なくとも2%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、95%または99%、例えば少なくとも99.9%のキシログルカン、例えば100%のキシログルカンを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記SCPが、最大100%のキシログルカン、例えば最大99.9%、99.5%、99%、95%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%または5%、例えば最大1%のキシログルカンを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記SCPが化学基をさらに含む、請求項1〜34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記化学基が第一アミンおよびチオールからなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記化学基が、ホウ素化合物(ホウ素エステルを容易に形成する)に対して高い親和性を有する炭水化物材料を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
ホウ素化合物に対して高い親和性を有する前記炭水化物材料がアピオシル残基を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
ホウ素化合物に対して高い親和性を有する前記炭水化物材料が1−>3’−連結アピオシル残基を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
ホウ素化合物に対して高い親和性を有する前記炭水化物材料がラムノガラクツロナンIIである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記組成物が溶媒をさらに含む、請求項1〜40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記溶媒が親水性溶媒、疎水性溶媒、水性溶媒およびその混合物からなる群から選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記組成物が0.1〜99.9%のPCM、0.1〜99.9%のSCP、0.001〜99.9%のCLA、および0.001〜99.9%の溶媒を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記組成物PCMおよびCLAが10000:1〜1000:1の重量対重量比範囲にある、請求項1〜43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記組成物が二価の金属カチオンをさらに含む、請求項1〜44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記二価の金属カチオンがMg2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+、Cd2+、Ca2+、Sr2+、Pb2+およびBa2+からなる群から選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記二価の金属カチオンがCa2+である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
ステップa)において提供される場合、前記SCPが、前記第1のPCMと予め結合されている、請求項1〜47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記第1のPCMが、前記第1のPCMと前記SCPの結合の形成の際に固体状である、請求項1〜48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記第1のPCMと前記SCPの結合の形成の際に、前記第1のPCMが、溶解しているかまたは可溶化されている、請求項1〜49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
請求項1〜50のいずれか一項に記載の方法によって得られる架橋材料。
【請求項52】
第2の材料で架橋された第1のPCMを含む架橋材料であって、前記架橋が、前記第1のPCMと結合したSCP、および前記SCPと前記第2の材料の両方と結合した反応CLAを含む架橋材料。
【請求項53】
前記第2の材料が第2のPCMである、請求項52に記載の架橋材料。
【請求項54】
前記架橋材料が0.01〜99.9%のPCMおよび0.001〜99.9%のSCPを含む、請求項52または53に記載の架橋材料。
【請求項55】
前記架橋材料が0.001〜50%の反応CLAをさらに含む、請求項52〜54のいずれか一項に記載の架橋材料。
【請求項56】
前記架橋材料が、PCMおよびSCPを10000:1〜1000:1の重量対重量比範囲で含む、請求項52〜55のいずれか一項に記載の架橋材料。
【請求項57】
前記反応CLAが、ホウ素エステルまたはその誘導体などの元素ホウ素を含む、請求項52〜56のいずれか一項に記載の架橋材料。
【請求項58】
前記架橋材料の重量の0.000000001%〜5%が元素ホウ素、例えば0.000000001%〜0.0000001%、0.0000001%〜0.00001%、0.00001%〜0.001%、0.001%〜0.01%、0.01%〜0.1%、0.1%〜1%、例えば1%〜5%の元素ホウ素からなる請求項57に記載の架橋材料。
【請求項59】
前記架橋材料が二価の金属カチオンをさらに含む、請求項52〜58のいずれか一項に記載の架橋材料。
【請求項60】
前記二価の金属カチオンがMg2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+、Cd2+、Ca2+、Sr2+、Pb2+およびBa2+からなる群から選択される、請求項59に記載の架橋材料。
【請求項61】
前記二価の金属カチオンがCa2+である、請求項60に記載の架橋材料。
【請求項62】
前記反応CLAがC2〜C8ジアルデヒドなどの反応したジアルデヒドを含む、請求項52〜61のいずれか一項に記載の架橋材料。
【請求項63】
前記ジアルデヒドがグルタルアルデヒドである、請求項62に記載の架橋材料。
【請求項64】
SCPおよびCLAを含むキット。
【請求項65】
紙またはパルプ製品、ろ紙、高級印刷用紙、新聞印刷用紙、再生セルロース材料、ライナーボード、ティッシュペーパーおよび他の衛生用品、袋用紙およびクラフト紙、他の包装材料、パーチクルボードおよび繊維ボード、ならびに、固形木製品もしくは木材と繊維の複合体の表面部、木綿糸、波形カード紙、織物、診断アッセイもしくは化学アッセイまたは診断プロセスもしくは化学プロセスのための助剤、液体や食料品用の包装薬剤、水溶液に不透過性バリヤーを提供するためのポリエチレンなどの熱可塑性樹脂で積層化された紙およびカード紙、織物、証券用紙、紙幣、追跡可能な文書用フィラー、積層製品およびパネル製品、木材とポリマーの複合体、ポリマー複合体、合金およびブレンド品、導電体、半導体、絶縁体ならびにセルロース誘導品(セルロース系)からなる群から選択される製品の作製における、請求項52〜63のいずれか一項に記載の架橋材料の使用。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2008−528719(P2008−528719A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−551640(P2007−551640)
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【国際出願番号】PCT/EP2006/000630
【国際公開番号】WO2006/079512
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(507201360)スウィーツリー テクノロジーズ アーベー (1)
【Fターム(参考)】