説明

ポリマー材料

【課題】油の処理または燃焼または採収に利用できるコロイドまたはゲルを形成するポリマー材料の提供。
【解決手段】本発明には、式(I):
【化1】


(式中、AおよびBは、同じまたは異なっており、および少なくとも一方が比較的極性の原子または基を含み、およびRおよびRは、独立して、比較的非極性の原子または基を含む。)
で表される化合物またはその塩を、エテン自体が一般に不溶性の溶媒中で供給し、前記化合物中のC=C基を互いに反応させてポリマー構造を形成することから成る第1ポリマー化合物の調製方法が記載されている。第1ポリマー化合物を、第2ポリマー化合物(例えば、ポリビニルアルコール、コラーゲン等)と反応させて、油の処理または燃焼または採収に利用できるコロイドまたはゲルを生成してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー材料に関し、専らではないが、特に、1,2−置換されたエテン化合物、例えば、置換されたスチリルピリジニウム化合物から少なくとも部分的に形成されるポリマー材料に関する。
【0002】
英国特許出願広告第2030575号公報(エージェンシー・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー)には、ホルミル基またはアセタール基をスチリルフェニル基上に有するスチリルピリジミウム塩を、ポリビニルアルコールまたは部分ケン化されたポリ酢酸ビニルと反応させることにより調製される感光性樹脂が開示されている。前記樹脂中、−CH=CH−基は、感光性を有し、従って、前記樹脂は、例えば、高感度を発現することが分かっている場合には、スクリーン印刷において使用され得る。
【0003】
本発明は、様々な有用な特性を有するポリマー材料を調製することができる、前記の種類の1,2−置換されたエテン化合物の驚くべき特性の発見に基づいている。
【0004】
本発明の第1の観点によれば、式:
【化1】

(式中、AおよびBは、同じまたは異なっており、および少なくとも一方が比較的極性の原子または基を含み、およびRおよびRは、独立して、比較的非極性の原子または基を含む。)
で表される化合物またはその塩を、エテン自体が一般に不溶性の溶媒中で供給し、前記化合物中のC=C基を互いに反応させてポリマー構造を形成することから成る第1ポリマー化合物を調製する方法が提供される。
【0005】
好ましくは、RおよびRは、独立して、水素原子または任意に置換された、好ましくは未置換のアルキル基から選ばれる。好ましくは、RおよびRは、同じ原子または基を表す。好ましくは、RおよびRは、水素原子を表す。
【0006】
好ましくは、前記溶媒は極性溶媒である。好ましくは、前記溶媒は、水性溶媒である。より好ましくは、前記溶媒は、本質的に水から構成される。
【0007】
好ましくは、式Iの前記化合物は、前記溶媒中において、前記化合物の分子が凝集する濃度で供給される。式Iの化合物の凝集は、後述する様々な分析法の結果から示されるかまたは推論されてよく、そのような分析法の1種以上を用いてよい。好ましくは、式Iの前記化合物は、溶媒中で、または適切な蒸気圧測定によって化合物の凝集点であるとして示唆される濃度以上で供給される。
【0008】
化合物Iの分子は、溶媒中で、分子が互いに実質上平行に有効に整列するように互いに整列されたC=C結合を有する凝集体またはミセルを形成すると考えられる。
好ましくは、分子は、互いに隣接した基AおよびBと整列する。
【0009】
式Iの前記化合物は、溶媒中において、少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも1.0重量%、より好ましくは少なくとも1.5重量%の濃度で供給されてよい。
【0010】
化合物中の基C=Cは、光化学反応において好ましく反応を引き起こす。好ましくは、前記方法は、紫外光を適当に使用する、光化学反応を誘導することを含む。好ましくは、前期方法において、500nmまでの波長の光を使用する。
【0011】
好ましくは、AおよびBは、独立して、任意に置換されたアルキル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、芳香族およびヘテロ芳香族基から選ばれる。基AまたはBが環状構造を有する場合、5員環以上、好ましくは6員環が好ましい。
【0012】
より好ましくは、AおよびBは、独立して、5員、またはより好ましくは6員の、任意に置換された芳香族およびヘテロ芳香族基から選ばれ、6員から成る基が特に好ましい。前記へテロ芳香族基の好ましいヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が挙げられ、酸素原子および、特に窒素原子が好ましい。好ましいヘテロ芳香族基は、1個のヘテロ原子のみを包含する。好ましくは、特定のまたは前記のへテロ原子は、基C=Cとヘテロ芳香族基との結合位置から最も離れて配置される。例えば、ヘテロ芳香族基が6員環を含んで構成される場合、ヘテロ原子は、好ましくは、基C=Cと環との結合位置に関して4位に供給される。
【0013】
特に断らない限り、本明細書において記載された任意に置換された基、例えば、基AおよびBは、ハロゲン原子、および任意に置換されたアルキル基、アシル基、アセタール基、ヘミアセタール基、アセタールアルキロキシ基、ヘミアセタールアルキロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基、水酸基、アミノ基、アルキルアミノ基、スルフィニル基、スキルスルフィニル基、スルホノル基、アルキルスルホニル基、スルホネート基、アミド基、アルキルアミド基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、ハロカルボニル基およびハロアルキル基で置換されてよい。好ましくは、3個まで、より好ましくは1個までの任意の置換基が任意に置換された基上に供給されてよい。
【0014】
特に断らない限り、アルキル基は、炭素数10まで、好ましくは6まで、より好ましくは4までであってよく、メチル基およびエチル基が特に好ましい。
【0015】
好ましくは、AおよびBはそれぞれ、極性原子または基を表す。好ましくは、AおよびBはそれぞれ、任意に置換された芳香族基またはヘテロ芳香族基を表し、前記芳香族基の「p」軌道は基C=Cの「p」軌道と整列される。好ましくは、AおよびBは、異なる原子または基を表す。
【0016】
好ましくは、基AおよびBの一方は、カルボニル基またはアセタール基、特に好ましくはホルミル基を含む任意の置換基を包含する。基AおよびBのもう一方は、任意の置換されたアルキル基、好ましくは未置換のC1−4アルキル基(例えば、特に好ましくはメチル基)である任意の置換基を包含する。
【0017】
好ましくは、基Aは、好ましくは基C=Cに関して4位に、ホルミル基または式:
【化2】

(式中、Xは、1〜6の整数であり、および各Rは、独立して、アルキル基またはフェニル基であるかまたは合わせてアルカレン基を形成する。)
で表される基で置換されたフェニル基を表す。
【0018】
好ましくは、基Bは、式:
【化3】

(式中、Rは、水素原子またはアルキル基またはアラルキル基を表し、Rは、水素原子またはアルキル基を表し、およびXは、強酸イオンを表す。)
の基を表す。
【0019】
本発明の使用における式Iの好ましい化合物は、英国特許出願公告第2030575号公報の第3頁第8行〜第39行に開示されているものを包含し、ここに、前記化合物を挿入する。
【0020】
本発明の使用における式Iの化合物は、英国特許出願公告第2030575号公報に開示されているのと同様に調製されてよく、そのような調製法も、ここに挿入する。
【0021】
本発明は、前記の第1の観点の方法によって調製できる新規な第1ポリマー化合物にも及ぶ。
本発明の第2の観点によれば、式:
【化4】

(式中、A、B、RおよびRは、上述と同様のものであり、およびnは、整数である。)
で表される新規な第1ポリマー化合物が提供される。
【0022】
本発明の第3の観点によれば、前記第1または第2の観点の第1ポリマー化合物を第2のポリマー化合物と一緒に溶媒中で供給し、それらを完全に混合することを含む組成物の調製方法が提供される。
【0023】
好ましくは、前記第2ポリマー化合物は、第1ポリマー化合物と、好ましくは酸触媒化反応において反応し得る1種以上の官能基を包含する。前記反応は、好ましくは縮合反応である。好ましくは、前記第2ポリマー化合物は、アルコール、カルボン酸、カルボン酸誘導体(例えば、エステル)およびアミン基から選ばれる官能基を包含する。好ましい第2ポリマー化合物としては、任意に置換された、好ましくは未置換のポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアルキレングリコール類(例えば、ポリプロピレングリコール)およびコラーゲン(およびそのいずれかの成分)が挙げられる。
【0024】
好ましくは、前記第2ポリマー化合物は、通常条件下で固体である。好ましくは、前記の完全な混合は、高温で行われる。好ましくは、混合は、化合物Iを調製したのと同じ溶媒中で行われる。混合物は、上述の前記第2ポリマー化合物と同じ種類であってよいポリマー化合物もさらに含んでいてよい。
【0025】
前記混合物中の前記第1ポリマー化合物と第2ポリマー化合物(または第2ポリマー化合物と更なる化合物との合計重量)との重量比は、調製される組成物の性質に大きく影響を及ぼすことが分かっている。前記第1ポリマー化合物と第2ポリマー化合物との重量比は、0.01〜100の範囲、好ましくは0.05〜50、より好ましくは0.3〜20の範囲であってよい。
好ましくは、水を組成物から除去して、固体材料を、例えばフィルムの形態で製造する。
【0026】
本発明の第4の観点によれば、第1または第2の観点の第1ポリマー化合物と、前記第3の観点において記載した第2のポリマー化合物とを含む組成物が提供される。
好ましくは、前記組成物は、固体形態で供給される。
【0027】
本発明の第5の観点によれば、第3の観点で調製される混合物または第4の観点の混合物を溶媒中で供給し、第1および第2ポリマー化合物を互いに反応させることを含む、材料、例えば、コロイドまたはゲルを作製する方法が提供される。
【0028】
反応は、酸触媒化されていてよく、従って、前記方法は、混合物中に酸を供給する工程を含んでいてよい。使用される酸の濃度が、コロイド/ゲル生成の速度に影響を及ぼすことが分かっている。好ましくは、少なくとも0.05重量%、より好ましくは少なくとも0.1重量%の酸を使用する。有機または無機のいずれの酸を使用してもよい。好ましい酸は、p−トルエンスルホン酸、塩酸、リン酸、スルホン酸およびナフタレン硫酸を包含する。
使用される混合物の濃度は、コロイドまたはゲルのうちいずれが形成されるかに影響を及ぼす。前記固体組成物の第1および第2ポリマー化合物の固体組成の重量%が約2重量%以下である場合、粘弾性コロイド溶液が形成される。他方、濃度が約2重量%を超えると、ゲルが形成される。
【0029】
第1ポリマー化合物と第2ポリマー化合物との反応前に活性な成分を適宜添加することによって、別の活性な成分を、第5の観点に記載の通り調製されたコロイドまたはゲル中に取り込んでもよい。好ましい活性な成分としては、抗菌剤(例えば、ヨウ素/ヨウ素混合物、セチルトリメチルアンモニウムブロマイドおよびネオマイシンスルフェート)が挙げられる。シート材料は、活性な成分を組み込んで作製されてよく、本明細書中に記載の通り調製される製品は、生物学的適合性を有することが分かっていることから、シート材料を燃焼処理に使用してもよい。
【0030】
油(または油状のもの)が、第5の観点の反応混合物と接触すると、油の50重量%までが混合物によって乳化でき、かつ得られるゲルが、油を固体マトリックス中に保持することが分かった。従って、第6の観点では、本発明は、第5の観点の反応混合物を含む油(または油状のもの)を捕集および/または単離および/または乳化する方法を提供することから、油(または油状のもの)は、材料(例えば、形成されるゲル)中に導入される。
【0031】
本発明は、第5の観点の方法で調製され得るコロイドまたはゲルにまで及ぶ。
【0032】
第7の観点によれば、本明細書中に記載したような第2のポリマー材料と式IVで表される化合物との反応生成物を含む新規の第3のポリマー化合物が提供される。
【0033】
本明細書中に開示される本発明のいずれかの観点または例示の特徴は、本明細書に記載の他の観点または例示のいずれの特徴と組み合わされてもよい。
【0034】
本発明の特定の態様を、添付した図を参照し、実施例により説明する。
【0035】
4−(4−ホルミルフェニルエテニル)−1−メチルピリジニウムメトスルホネート(SbQ)の物理−化学的実験
実 験
精製されたSbQの水溶液試料について、以下の通り、種々の物理−化学的実験を行なった。
i.表面張力測定−滴下プロファイル測定手順を用いて行なった。
ii.蒸気圧測定−Analar NaCl溶液で較正したKnauer蒸気圧浸透圧計を用いて行なった。
iii.水中での最小化されたSbQ分子の構造のエネルギー解析−MMフォース・フィールディング計算に基づいてHyperchem(登録商標)分子モデルパッケージを用いて行なった。
iv.導電率測定−Wayne Kerr B905型自動測定ブリッジを用いて行なった。
v.密度測定−見掛けのモル体積値を与えるために、ヨーロピアン・ポリマー・ジャーナル、1987年、23、711頁の記載と同様にして行なった。
vi.光散乱測定−543nmで操作するUniphase 1mW HeNeレーザを用いるように改造されたSoficaフォトゴニオメーター42000型を用いて行なった。
vii.希釈熱測定−LKBフローマイクロ熱量計2107-121/127型を用いて行なった。
【0036】
結 果:
図1によれば、Δt/C比は、濃度C(g/kg)における溶媒参照プローブと溶液プローブとの間の温度差を表している。プロットは、2つの線形領域を表しており、それらはいずれも良好な相関係数0.996および0.998を有し、1.25重量%の濃度値で交差している。溶液濃度の低い範囲の部分は、通常の方法で用いられて、予想値335に近い、SbQの数平均分子量値341を得た。より高い濃度における勾配の差は、1.25重量%の濃度以上においてSbQ分子の凝集の形成が生じたことを示唆している。
【0037】
Hyperchemパッケージを用いた解析は、非常に平坦な構造を予想している。分子についてのそのような構造は、分子の疎水性領域を順番にかつアルデヒド基と−N−CH基を交互になるように分子を積み重ねて、図2に示すように、4個のSbQ分子に関し、水中での最小化されたエネルギーを示す凝集体を生成することの可能性を当然考慮している。
【0038】
凝集体に起因するような2つの濃度領域についての図1における切片間の差をとると、SbQ凝集体の分子量約2800が得られ、1.25重量%の変化に関する臨界濃度または0.04M付近では、凝集体スタックが、約8個のモノマー単位から構成されることを示唆している。
【0039】
図3の表面張力測定によれば、示されたパターンは、約0.06Mで生じる変遷点を有する、界面活性剤のミセル化についての典型的なパターンである。そのため、この形跡は、実際、臨界ミセル濃度(cmc)が0.04〜0.06MのSbQ凝集体が積み重なったロッド状ミセルである。
【0040】
図4のモル導電率は、0.04Mで生じるcmcでの勾配の変化を含む、ミセル状形成種の予想されるパターンも表している。
【0041】
図5によれば、0.04Mで観られる勾配の急な変化は、SbQ分子が、この濃度以上では、よりコンパクトな形状を採用すること、正確には、凝集してミセルを形成したときに何が起こるかを予想できることを意味している。
【0042】
図6によれば、濃度が0.04Mに近づくと生じる、散乱の急な増加は、より大きな粒子(すなわち、ミセル)の発現を示している。
【0043】
図7によれば、希釈熱の測定は、勾配の急な変化(この場合、0.035Mでの変化)を示し、モノマーから、発生したミセルまでの、溶質の溶液状態における主な変化も示している。
【0044】
全ての実験測定値の濃度依存特性の間における近接した相関が、SbQの水溶液中でのモノマー−ミセル平衡の存在の十分な確認であることが、上述から認められるべきである。この特性は、以下の実施例において有用である。
【0045】
実施例1
ポリ(1,4−ジ(4−(N−メチルピリジニル) )−2,3−ジ(4−(1−ホルミルフェニル)ブチリデン)(以下に示す化合物II)
SbQ 1重量%を超える水溶液を、紫外光に暴露した。これにより、凝集体中の隣接する4−(4−ホルミルフェニルエテニル)−1−メチルピリジニウムメトスルフェート分子(I)の炭素−炭素二重結合間で光化学反応が生じ、以下の反応スキームに示すように、ポリマー[ポリ(1,4−ジ(4−(N−メチルピリジニル))−2,3−ジ(4−(1−ホルミルフェニル)ブチリデン(II)]が生成された。化合物IとIIのアニオンは、明瞭とするために省略されていると認められるべきである。
【化5】

ポリマー化合物IIは新規であると考えられる。
【0046】
実施例2
化合物IIを用いたブレンドの調製
ゲルの調製に関する常法を以下に概説する。
88%加水分解された、分子量300,000のポリ(ビニルアルコール)13gを、化合物IIの2重量%溶液87g中に溶解した。一定速度で撹拌しながらポリ(ビニルアルコール)をゆっくりと添加して、粉末を分散した。溶液を60℃の温度に6時間保持することによって最終的な溶解を達成した。得られたポリ(ビニルアルコール)/ポリ(1,4−ジ(4−(N−メチルピリジニル) )−2,3−ジ(4−(1−ホルミルフェニル)ブチリデン)溶液は、PTFEシート上にフィルムとして一体成形され、真空下で乾燥されてよい。固体ブレンドは、光安定性であり、必要となるまで、デシケータ中で貯蔵できる。
【0047】
実施例3
ゲルの調製
【化6】

実施例2に記載のフィルムを、酸(例えば、p−トルエン硫酸)も含む水中に再度溶解することもある。これは、以下のスキームに従って、酸触媒化アルドール縮合反応を生じさせる。
【0048】
使用されるフィルムの濃度は、得られるゲルの性質に影響を及ぼす。例えば、2.5重量%を超える濃度では、堅いゲルが形成される。さらに、ゲル化時間は、使用される酸の濃度に依存する。0.1重量%の酸により、ゲル化時間16時間が与えられるが、1重量%の酸は、10分のゲル化時間を与える。
【0049】
本明細書中に記載された以下の手順で調製されるゲルの性質
1.ポリ(ビニルアルコール)2.5〜13重量%を用いて形成されるゲルは、溶融せず、または100℃に加熱したときに形態変化の視覚的な痕跡を表さない。より高い温度において、ゲルは、「炭化する」が、燃えない。
2.ゲルは、堅く、場合により透明である。
3.ゲル化に要する時間は、ゲル化反応を触媒作用するのに用いられる酸の濃度を変えることによって制御できる。様々なゲル時間によって、反応混合物を鋳型に単に流し込むことにより、異なる形状のゲルを一体成形することができる。ゲル形成時に材料の収縮はほとんどない。
4.ゲルは、全ての通常の有機溶媒に不溶であるが、かなり膨潤するものもある。ゲルは水溶液にも不溶である。
5.実施例2および3に記載のポリ(ビニルアルコール)のみの代わりに、コラーゲン50重量%およびポリ(ビニルアルコール)50重量%の混合物を用いて、堅いゲルを製造することができる。製造されるゲルは、耐有機溶媒性および水中での限られた膨潤を示す。
6.実施例3においてゲル化反応を触媒作用する酸の添加後、50重量%までの油を反応混合物で乳化してもよい。形成されるゲルは、固体マトリックス中に油を保持する。
7.ゲルは、ポリプロピレングリコール400を50重量%まで含有する溶媒混合物を用いて製造できる。得られるゲルの水中での膨潤特性は、溶媒中のポリプロピレングリコールの量で制御される。
8.2重量%以下の濃度では、粘弾性溶液が製造され、未反応の混合物と比べると粘度は10倍向上する。この性質は、反応混合物を油井中の裂目に注ぎ込み、反応が進むと、架橋したポリマー溶液の粘弾性が向上するため、裂目を開けたままにできる点で、三次油採収での使用の可能性を有している。
実施例1〜3のゲルおよび上述に記載のゲルはいずれも、ポリ(ビニルアルコール)鎖の過ヨウ素酸塩分裂過程によって迅速に崩壊することがある。生成される溶液は、低粘度で水で容易に洗浄される。乳化した油の場合、上記6.のゲルは、過ヨウ素酸塩分裂がゲル崩壊をもたらすことから、油が採収できる。
読み手の注意は、本出願と連結して本明細書と同時または本明細書より先に提出された全ての論文および書類および本明細書と共に公衆閲覧されている全ての論文および書類に向けられる。そのような全ての論文および書類の内容をここに挿入する。
【0050】
(添付する特許請求の範囲、要約書および図面を含む)本明細書に開示された全ての特徴および/または開示された方法またはプロセスの全ての工程は、そのような特徴および/または工程の少なくともいくつかが相互に相容れない組み合わせである場合を除いて、組み合わされてよい。
【0051】
(添付する特許請求の範囲、要約書および図面を含む)本明細書に開示されている各特長は、特に断らない限り、同じ、同等または同様の目的を果たす代替の特徴と置き換えてもよい。従って、特に断らない限り、開示された特徴はそれぞれ、包括的な一連の同等または同様の特徴のうちのほんの一例である。
【0052】
本発明は、前述の態様の詳細に限定されない。本発明は、(添付する特許請求の範囲、要約書および図面を含む)本明細書に開示された特徴のうち、新規なもの、または新規な組み合わせ、あるいは開示された方法またはプロセスの工程の新規なものまたは新規な組み合わせにまで及ぶ。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】4−(4−ホルミルフェニルエテニル)−1−メチルピリジニウムメトスルホネート(SbQ)の水溶液の、37℃における濃度の関数としての蒸気圧測定を示すグラフである。
【図2】水中における4個の分子の予想されるエネルギー最小化構造の代表例である。
【図3】SbQ溶液の、25℃における濃度の関数としての表面張力測定を表すグラフである。
【図4】SbQ溶液の、25℃における濃度の関数としてのモル電導率を表すグラフである。
【図5】SbQ溶液の、25℃における濃度の関数としての見掛けのモル体積値を表すグラフである。
【図6】SbQ溶液の、25℃における濃度の関数としての90°でのレイリー散乱を表すグラフである。
【図7】SbQ溶液の、25℃における濃度の関数としての希釈熱を表すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ポリマー材料と第2ポリマー材料の反応生成物を含有する第3ポリマー材料であって、該第1ポリマー材料が式:
【化1】

(式中、AおよびBは、同じまたは異なっており、および少なくとも一方が比較的極性の原子または基を含み、RおよびRは、独立して、比較的非極性の原子または基を含み、nは、整数である。)
を有することを特徴とする、第3ポリマー材料。
【請求項2】
式中、Aは任意に置換された芳香族基であり、Bは任意に置換されたヘテロ芳香族基であり、基AおよびBの1つはカルボニルまたはアセタール基を含む任意の置換基を含み、RおよびRは独立して水素原子、メチル基またはエチル基から選択され、nは、整数である請求項1記載の第3ポリマー材料。
【請求項3】
基AおよびBの1つはカルボニルまたはアセタール基を含む任意の置換基を含み、基AおよびBの他の1つがC1−4アルキル基である任意の置換基を含む請求項2記載の第3ポリマー材料。
【請求項4】
基Aがホルミル基によって置換されたフェニル基または式:
【化2】

(式中、Xは1〜6の整数であり、各Rは独立してC1−4アルキルまたはフェニル基であり、または共にアルカレン基を形成する。)
で表される基によって置換されたフェニル基を示す請求項1〜3いずれかに記載の第3ポリマー材料。
【請求項5】
基Bが一般式:
【化3】

(式中、Rは水素原子またはアルキルまたはアラルキル基を示し、Rは水素原子またはアルキル基を示し、かつXは強酸性イオンを示し、RまたはRの各アルキル基は炭素数4以下であり、それにはアラルキル基の部分に含むアルキル基も含まれる。)
で表される請求項1〜4いずれかに記載の第3ポリマー材料。
【請求項6】
第2ポリマー材料がアルコール、カルボン酸、カルボン酸誘導体およびアミン基から選択される官能基を含む請求項1〜5いずれかに記載の第3ポリマー材料。
【請求項7】
第2ポリマー材料が、任意に置換されたポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアルキレングリコールおよびコラーゲンから選ばれる請求項1〜6いずれかに記載の第3ポリマー材料。
【請求項8】
第2ポリマー材料がポリビニルアルコールである請求項1〜7いずれかに記載の第3ポリマー材料。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の第1ポリマー材料を請求項1〜8いずれかに記載の第2ポリマー材料と共に溶媒中に供給し、それらを完全に混合することを含む、組成物の調製方法。
【請求項10】
請求項1〜8いずれかに記載の第1ポリマー材料および第2ポリマー材料を含有する組成物。
【請求項11】
第1および第2ポリマー材料の混合物を溶媒中に提供し、両者を互いに反応させる第3ポリマー材料の製造方法。
【請求項12】
油を請求項1〜8いずれかに記載の第1および第2ポリマー材料を含有する反応混合物と接触させて、第1および第2ポリマー材料を反応させ油が形成される第3ポリマー材料に導入されることを特徴とする油を捕集、単離または乳化する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−174756(P2008−174756A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38750(P2008−38750)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【分割の表示】特願平10−514398の分割
【原出願日】平成9年9月16日(1997.9.16)
【出願人】(303039899)アドバンスト・ジェル・テクノロジー・リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】ADVANCED GEL TECHNOLOGY LIMITED
【Fターム(参考)】