説明

ポリマー材料

所与の溶融粘度に対し、期待されるよりもメルトフローインデックスが高いポリアリールエーテルケトンおよびその製造方法について記載する。そのようなポリマーは、比較的高い流れが所望される状況において用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリマー材料に関し、詳細には、次に限定されないが、ポリマー材料それ自体、その調製方法およびその材料の使用に関する。好適な実施形態は、ポリアリールエーテルケトン(例えば、ポリエーテルエーテルケトン)に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエーテルエーテルケトンは、優れた化学的性質および物理的性質が要求される状況において用いられる、高機能な熱可塑性ポリマーである。このポリマーは、様々な溶融粘度およびメルトフローインデックスを有する(したがって異なる分子量を有する)複数の等級で販売されている。
【0003】
一般に、ポリエーテルエーテルケトンの分子量が増加すると、それに対応して溶融粘度は増加し、メルトフローインデックスは減少する。したがって、同じ分子量および溶融粘度を有するポリマーについては、メルトフローインデックスの予測、算出またはその両方を容易に行うことが可能である。
【0004】
低粘度のポリマーは比較的大きいメルトフローインデックスを有し、これは、それらのポリマーが比較的容易に流動することを意味する。そのようなポリマーは高充填された複合材料を製造するために(より低粘度の材料は、より高粘度のポリマーに比べて大きな体積のフィラー材料について、その周囲を流動すること、もしくは濡らすことまたはその両方が可能であるため)、また比較的薄い壁を有する部品の射出成形において(より低粘度の材料は型の狭い部分へ流れ込むことが可能であるため)用いられる。しかしながら、不利なことに、低粘度で低分子量/高メルトフローインデックスの材料の物理的性質(例えば、靭性)は、より高分子量の材料に比べ、比較的劣る傾向にあり、この結果、そのような低粘度/低分子量のポリマーは多くの状況において使用に適切でない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の1つの目的は、所与の溶融粘度に対して、より高いメルトフローインデックスを有するポリマー(例えば、ポリエーテルエーテルケトンまたはポリエーテルケトンなどのポリアリールエーテルケトン)を製造することである。これによって、許容可能な流動性を有する比較的高分子量のポリマーを用いることが所望される状況において、そのようなポリマーが用いられることを可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様では、ポリマー基本骨格にフェニル部位、ケトン部位およびエーテル部位を含むポリマー材料の調製方法を提供する。この方法は、次式の部位を有する1つ以上のモノマーを選択することを含む。
【0007】
【化1】

【0008】
ここで、Phはフェニル部位を表し、上記1つ以上のモノマーは99.7面積%以上の純度を有する。
驚くべきことに、式Iの比較的純粋なモノマーを提供することによって、調製されるポリマー材料のメルトフローインデックス(MFI)が期待されるよりも著しく大きくなることが見出された。この発見によって、他の利点に加え、調整されたポリマー材料がより容易に押し出されること(特に比較的高い溶融粘度(MV)にて)、同じMVの同等のポリマー材料より高充填されること、および同じMVの同等のポリマー材料に比べ薄い壁を有する部材を提供するためにより容易に用いられることが可能となる。
【0009】
他に記載のない限り、以下の試験1に記載のように、本明細書に記載の溶融粘度MVは、0.5×3.175mmの炭化タングステンダイを用いて、剪断速度1000s−1、400℃で動作するキャピラリーレオメータ測定を用いて、適切には測定される。
【0010】
上記1つ以上のモノマーの純度はガスクロマトグラフ(GC)分析を用いて、適切には以下の試験1に記載の方法を用いて評価できる。
上記1つ以上のモノマーは、99.75面積%以上、適切には99.8面積%以上、好適には99.85面積%以上、より好適には99.88面積%以上、特に99.9面積%以上の純度を有してよい。
【0011】
上記1つ以上のモノマーは、適切には無置換である2つ以上のフェニル部位を好適には含む。この2つ以上のフェニル部位は、好適には別の原子または基によって離間されている。この別の原子または基は、−O−および−CO−から選択されてよい。上記1つ以上のモノマーは、フェノキシフェノキシ安息香酸またはベンゾフェノンを含んでよい。
【0012】
上記1つ以上のモノマーは、ハロゲン原子(例えば、塩素またはフッ素原子。フッ素原子が特に好適である)、−OH部位および−COOH部位から選択される末端基を含む。上記1つ以上のモノマーは、好適にはフッ素原子および−COOH基から選択される末端基を含む。
【0013】
上記製法は、(a)次の一般式の化合物を自己縮重合させることと、
【0014】
【化2】

【0015】
(ここで、Yはハロゲン原子または基−EHを表し、Yはハロゲン原子または基−COOHもしくは−EHを表し、YおよびYが共に水素原子を表すことはない)
(b)次の一般式の化合物を
【0016】
【化3】

【0017】
次式の化合物、
【0018】
【化4】

【0019】
次式の化合物
【0020】
【化5】

【0021】
またはその両方と縮重合させることと、
(ここで、Yはハロゲン原子または基−EHを表し、Xはハロゲン原子または基−EHのうちの他方を表し、Yはハロゲン原子または基−EHを表し、Xはハロゲン原子または基−EHのうちの他方を表す)
(c)随意で(a)に記載の工程の生成物を(b)に記載の工程の生成物と共重合させることと、を含んでよい。ここで、各Arは次式の部位(i)〜(iv)のうちの1つから独立に選択され、
【0022】
【化6】

【0023】
部位(i)〜(iv)は自身のフェニル部位のうちの1つ以上によって(好適にはその4,4’−位において)隣接部位へ結合されており、各m,n,w,r,s,z,tおよびvは独立に0または正の整数を表し、各Gは酸素もしくは硫黄の原子、直接結合または−O−Ph−O−部位から独立に選択され、Phはフェニル部位を表し、各Eは酸素もしくは硫黄の原子または直接結合から独立に選択される。
【0024】
本明細書では、特に述べない限り、フェニル部位は、それが結合されている部位に対し、1,4’−または1,3’−結合(好適には、1,4’−結合)を有する。
本明細書では、特に述べない限り、フェニル部位は好適には無置換である。
【0025】
好適なAr部位には、部位(i),(iii)および(iv)が含まれる。
各m,n,w,r,s,z,tおよびvは、好適には、独立に0または1を表す。
この製法を用いて、以下に記載のようなポリマー材料を製造することができる。
【0026】
上記ポリマー材料は、次の一般的式の繰返単位を有するホモポリマーであってもよく、
【0027】
【化7】

【0028】
2つ以上の異なるIVの単位からなるランダムコポリマーまたはブロックコポリマーであってもよい。ここで、AおよびBは独立に0または1を表し、E,G,Ar,m,r,sおよびw,zは、本明細書のいずれかの記載の通りである。E’はEについて記載した任意の部位から独立に選択されてよい。
【0029】
上述の単位IVを含むポリマー材料の代替として、上記ポリマー材料は、次の一般的式の繰返単位を有するホモポリマーであってもよく、
【0030】
【化8】

【0031】
2つ以上の異なるIVの単位からなるランダムコポリマーまたはブロックコポリマーであってもよい。ここで、AおよびBは独立に0または1を表し、E,E’,G,Ar,m,r,sおよびw,zは、本明細書のいずれかの記載の通りである。
【0032】
好適には、mは、0〜3の範囲、より好適には0〜2の範囲、特に0〜1の範囲である。好適には、rは、0〜3の範囲、より好適には0〜2の範囲、特に0〜1の範囲である。好適には、sは0または1である。好適には、wは0または1である。
【0033】
好適には、上記ポリマー材料は一般式IVの繰返単位を有するホモポリマーである。
上記ポリマー材料は、好適には次式の繰返単位を含み(例えば、上記ポリマー材料のうちの80wt%以上、好適には90wt%以上、特に95wt%以上が含む)、より好適には、次式の繰返単位のみからなる。
【0034】
【化9】

【0035】
ここで、t、vおよびbは独立に0または1を表す。好適なポリマー材料は、上記繰返単位を有する。ここで、t=1またはv=0(いずれの場合もb=0);t=0,v=0およびb=0;t=0,v=1およびb=0;t=1,v=1,b=0;またはt=0,s=1,v=0である。より好適には、t=1かつv=0;または、t=0かつv=0である。最も好適には、t=1かつv=0である。
【0036】
好適な実施形態では、上記ポリマー材料は、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトンおよびポリエーテルケトンエーテルケトンケトンから選択される。より好適な一実施形態では、ポリマー材料はポリエーテルケトンおよびポリエーテルエーテルケトンから選択される。特に好適な一実施形態では、ポリマー材料はポリエーテルエーテルケトンである。
【0037】
(a)に記載の工程は、求電子的な工程であっても求核的な工程であってもよい。
がハロゲン原子を表し、Yが基−COOHを表す、(a)に記載の工程の第1の実施形態では、この工程は求電子的であってよい。この工程は、好適には縮合剤の存在下に実行される。この縮合剤は、メタンスルホン酸(例えば、メタンスルホン酸無水物(anlydride))であってもよい。溶媒が適切には存在し、これは、メタンスルホン酸であってよい。この第1の実施形態では、好適には式Vの化合物において、Yは水素原子を表し、Yは基−COOHを表し、Arは式(iii)の部位を表し、mは0を表す。上記製法は、欧州特許第1263836号明細書または欧州特許第1170318号明細書に記載されている。
【0038】
(a)に記載の工程の第2の実施形態では、好適には、YおよびYのうちの一方はフッ素原子を表し、他方はヒドロキシル基を表す。そのようなモノマーが求核的な工程により縮重合されてもよい。モノマーの例には、4−フルオロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシ−4’−(4−フルオロベンゾイル)ベンゾフェノン、4−ヒドロキシ−4’−(4−フルオロベンゾイル)ビフェニル、および4−ヒドロキシ−4’−{4−フルオロベンゾイル)ジフェニルエーテルが含まれる。
【0039】
(b)に記載の工程は、好適には求核的である。好適には、YおよびYは各々ヒドロキシ基を表す。好適には、XおよびXは各々ハロゲン原子(適切には同じハロゲン原子)を表す。
【0040】
(b)に記載の工程が実行される場合、適切には、「a」は、この工程において用いられる化合物VIのモル%を表し、「b」は、この工程において用いられる化合物VIIのモル%を表し、「c」は、この工程において用いられる化合物VIIIのモル%を表す。
【0041】
好適には、aは45〜55の範囲、特に48〜52の範囲にある。好適には、bおよびcの合計は45〜55の範囲、特に48〜52の範囲にある。好適には、a、bおよびcの合計は100である。
【0042】
好適には、cは0である。この縮重合は、好適には式VIの1つのモノマーと式VIIの1つのモノマーとの縮重合を含み、aおよびbの合計は約100である。
この方法において接触される1つ以上の式VIIの化合物に対する1つ以上の式VIの化合物のモル数の比は、好適には1〜1.5の範囲、特に1〜1.1の範囲にある。好適には、この方法では、式VIの化合物は1種類しか用いられない。
【0043】
(b)に記載の工程が実行される場合、好適には、化合物VI、VIIおよびVIIIにおけるハロゲン原子または基−EHのうちの一方の合計のモル%は、化合物VI、VIIおよびVIIIにおけるハロゲン原子または基−EHのうちの他方の合計のモル%より、例えば、10%以下、特に5%以下だけ大きい。ハロゲン原子のモル%の方が大きい場合、ポリマーはハロゲン末端基を有し、基−EHのモル%の方が大きい場合(この場合、ポリマーは−EH末端基を有する)よりも安定する。
【0044】
また、過剰のハロゲンまたはヒドロキシ反応物を用いることによって、ポリマーの分子量を制御することも可能である。この過剰は、通常、0.1〜5.0モル%の範囲である。重合反応は、エンドキャップ部分として1つ以上の単官能性反応物を添加することによって、終了されてよい。
【0045】
(b)に記載の好適な工程は、一般式VIIの化合物(ここで、XおよびXはフッ素原子を表し、wは1を表し、Gは直接結合を表し、sは0を表す)を、一般式VIの化合物(ここで、YおよびYは−OH基を表し、Arは部位(iv)を表し、mは0を表す)または式VIの化合物(ここで、YおよびYは−OH基を表し、Arは部位(i)を表し、mは0を表す)と縮重合させることを含む。(b)に記載の別の好適な工程は、一般式VIIの化合物(ここで、XおよびXはフッ素原子を表し、wは0を表し、Gは直接結合を表し、rは1を表し、sは1を表す)を式VIの化合物(ここで、YおよびYは−OH基を表し、Arは部位(i)を表し、mは0を表す)と縮重合させることを含む。
【0046】
上述に記載のような純度を有するモノマーは、好適には一般式VIIのモノマーである。この化合物におけるXおよびXは、好適にはフッ素原子を表す。このモノマーは、好適には式VIIのモノマーであり、XおよびXはフッ素原子を表し、wは1を表し、Gは直接結合を表し、sは0を表す。
【0047】
第1の態様のこの工程は、好適には溶媒の存在下に実行される。溶媒は次式の溶媒であってよい。
【0048】
【化10】

【0049】
ここで、Wは直接結合、酸素原子または2つの水素原子(それぞれのベンゼン環に結合している)であり、ZおよびZ’は(同じであっても異なっていてもよい)水素原子またはフェニル基である。そのような芳香族スルホンの例には、ジフェニルスルホン、ジベンゾチオフェンジオキサイド、フェノキサチインジオキサイドおよび4−フェニルスルホニルビフェニルが含まれる。ジフェニルスルホンは好適な溶媒である。
【0050】
調製されるポリマー材料は、好適には、特定のモノマー(V),(VI),(VII)および(VIII)に由来する部位のみからなる。
調製されるポリマーは、好適には、式Vのモノマーに由来する部位、または式VIIのモノマーと縮重合された式VIのモノマーに由来する部位のみからなる。好適には、このポリマーは式VIIIのモノマーに由来する部位を含まない。
【0051】
この式V,VI,VII,VIIIの化合物では、各フェニル部位は、好適には1,4−置換されている。
(c)に記載の工程は、好適には用いられない。
【0052】
第1の態様の好適な工程は、
(d)次のフェノキシフェノキシ安息香酸の自己縮重合と、
【0053】
【化11】

【0054】
(適切には、本明細書において規定される式Xのポリマーを含む(好適には、のみからなる)ポリマーを調整する。ここで、pは1を表す)
(e)4,4’−ジフルオロベンゾフェノンとヒドロキノンまたは4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノンとの縮重合と、から選択されてよい。
【0055】
好適には、繰返単位のほぼ全体が、(d)および(e)において参照されるモノマーに由来する。
好適な一実施形態では、製法は、ポリマーを調製するために(e)に参照される縮重合を含み、適切には、次式の繰返単位を含む(例えば、上記ポリマー材料のうちの80wt%以上、好適には90wt%以上、特に95wt%以上が含む)ポリマー、より好適には、次式の繰返単位のみからなるポリマーを調製する。
【0056】
【化12】

【0057】
ここで、pは0または1を表す。特に好適な一実施形態では、pは1を表す。
上記ポリマー材料のMVは、0.06kNsm−2以上、より好適には0.08kNsm−2以上、特に0.085kNsm−2以上であってよい。MVは、4.0kNsm−2未満、適切には2.0kNsm−2未満、好適には1.0kNsm−2未満、より好適には0.75kNsm−2未満、特に0.5kNsm−2未満であってよい。適切には、MVは、0.08kNsm−2〜1.0kNsm−2の範囲、好適には0.085kNs
−2〜0.5kNsm−2の範囲である。
【0058】
上記ポリマー材料は、ASTM D638に則して測定される、100MPa以上の引張強度を有してよい。引張強度は、好適には105MPaより大きい。引張強度は、100〜120MPaの範囲、より好適には105〜110MPaの範囲であってよい。
【0059】
上記ポリマー材料は、ASTM D790に則して測定される、145MPa以上、好適には150MPa以上、より好適には155MPa以上の曲げ強度を有してよい。曲げ強度は、好適には145〜180MPaの範囲、より好適には150〜170MPaの範囲、特に155〜160MPaの範囲にある。
【0060】
上記ポリマー材料は、ASTM D790に則して測定される、3.5GPa以上、好適には4GPa以上の曲げ弾性率を有してよい。曲げ弾性率は、好適には3.5〜4.5GPaの範囲、より好適には3.8〜4.4GPaの範囲にある。
【0061】
上記ポリマー材料のガラス転移温度(T)は、140℃以上、適切には143℃以上であってよい。好適な一実施形態では、ガラス転移温度は140℃〜145℃の範囲にある。
【0062】
上記ポリマー材料(結晶の場合)の融解吸熱(Tm)の主ピークは、300℃以上であってよい。
上記ポリマー材料は、好適には半結晶性である。ポリマーの結晶度のレベルおよび程度は、例えば、BlundellおよびOsbornによる記載(Polymer、第24巻、953頁、1983年)のように、好適には広角X線回折(広角X線散乱すなわちWAXSとも呼ばれる)によって測定される。これに代えて、結晶度が示差走査熱量測定(DSC)によって評価されてもよい。
【0063】
上記ポリマー材料の結晶度のレベルは、1%以上、適切には3%以上、好適には5%以上、より好適には10%以上であってよい。特に好適な実施形態では、結晶度は30%を越え、より好適には40%を越え、特に45%を越えてよい。
【0064】
一般式V,VI,VIIおよびVIIIの化合物は市販されている(例えば、Aldrich U.K.)が、一般にフリーデル−クラフツ(Friedel−Crafts)反応と、それに続く適切な官能基の誘導とを含む標準的な手法によって調製することもできる。
【0065】
本発明の第2の態様では、第1の態様の製法により製造されるポリマー材料を提供する。
本発明の第3の態様では、次式の繰返単位を有するポリマー材料を提供する。
【0066】
【化13】

【0067】
ここで、pは0または1を表す。このポリマー材料はkNsm−2で測定される溶融粘度
(MV)と、メルトフローインデックス(MFI)とを有する。ここで、
(a)pが1を表すとき、上記ポリマー材料の実際のlog10MFIは次式を用いて算出されるlog10MFIの期待値より大きい:
期待値(EV)=−3.2218x+2.3327
(ここで、xは上記ポリマー材料のkNsm−2でのMVを表す)
(b)pが0を表すとき、上記ポリマー材料の実際のlog10MFIは次式を用いて算出されるlog10MFIの期待値より大きい:
期待値(EV)=−2.539y+2.4299
(ここで、yは上記ポリマー材料のkNsm−2でのMVを表す)。
【0068】
MFIは、熱可塑性ポリマーの溶融物の流れの容易さの尺度である。MFIは、以下の試験2に記載のように測定されてよい。
上記ポリマー材料は、80wt%以上、好適には90wt%以上、特に95wt%以上の上記繰返単位Xを含んでよい。
【0069】
上記ポリマー材料は、好適には式Xの繰返単位のみからなり、p=1またはp=0である。すなわち、このポリマー材料は、好適にはポリエーテルエーテルケトンまたはポリエーテルケトンである。
【0070】
pが1を表すとき、上記ポリマー材料の実際のlog10MFIは次式を用いて算出されるlog10MFIの期待値より大きくてよい:
期待値(EV)=mx+2.33
(ここで、xは上記ポリマー材料のkNsm−2でのMVを表し、mは−3.00より大きい)
適切には、mは、−2.8より大きく、好適には−2.6より大きく、より好適には−2.5より大きく、特に−2.45より大きい。好適な一実施形態では、pが1を表すとき、期待値はほぼ次式によって与えられる:
期待値(EV)=−2.4x+2.34
(ここで、xは上記ポリマー材料のkNsm−2でのMVを表す)。
【0071】
pが0を表すとき、上記ポリマー材料の実際のlog10MFIは次式を用いて算出されるlog10MFIの期待値より大きくてよい:
期待値(EV)=my+2.43
(ここで、yは上記ポリマー材料のkNsm−2でのMVを表し、mは−2.5より大きい)
適切には、mは、−2.45より大きく、好適には−2.40より大きく、より好適には−2.35より大きい。
【0072】
本発明の第4の態様では、フィラー手段と組み合わされた第3の態様によるポリマー材料を含む複合材料を提供する。
このフィラー手段は、繊維フィラーまたは非繊維フィラーを含んでよい。このフィラー手段は、繊維フィラーおよび非繊維フィラーの両方を含んでよい。
【0073】
繊維フィラーは連続的であってもよく、不連続であってもよい。好適な実施形態では、繊維フィラーは不連続である。
繊維フィラーは、無機繊維材料、アラミド繊維などの非溶融および高融点の有機繊維材料、ならびに炭素繊維から選択されてよい。
【0074】
繊維フィラーは、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素繊維、ボロン繊維、フッ素樹脂繊維およ
びチタン酸カリウム繊維から選択されてよい。好適な繊維フィラーはガラス繊維および炭素繊維である。
【0075】
繊維フィラーはナノ繊維を含んでよい。
非繊維フィラーは、マイカ、シリカ、タルク、アルミナ、カオリン、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、チタン酸化物、フェライト、クレイ、ガラス粉末、亜鉛酸化物、炭酸ニッケル、鉄酸化物、石英粉末、炭酸マグネシウム、フッ素樹脂、グラファイト、炭素粉末、ナノチューブおよび硫酸バリウムから選択されてよい。フィラーは従来のサイズであってもよく、ナノ材料を含んでもよい。非繊維フィラーは、粉末またはフレーク状粒子の形態で導入されてよい。
【0076】
上記複合材料は、PCT/GB2003/001872に記載のようにして調製可能である。その内容を引用によって本明細書に援用する。好適には、この方法では、上記ポリマー材料および上記フィラー手段は、昇温された温度で、適切には上記ポリマー材料の溶融温度以上の温度で混合される。したがって、適切には、上記ポリマー材料およびフィラー手段は、ポリマー材料が溶融しているときに混合される。上記昇温温度は、適切にはポリマー材料の分解温度未満である。上記昇温温度は、好適には上記ポリマー材料の融解吸熱(Tm)の主ピークと同じか、それより高い。上記昇温温度は、好適には300℃以上、より好適には350℃以上である。有利には、溶融したポリマー材料は容易にフィラーを濡らすこと、繊維マットまたは織物など固められたフィラーに浸透すること、またはその両方が可能であるので、調製される複合材料は、ポリマー材料の全体を通じてほぼ一様に分散されたポリマー材料およびフィラー手段を含む。有利には、所与のMVに対するMFIがより高いため、第1の態様の製法によって製造されていないポリマー材料に比べ、混合、濡れ、浸透またはそれらのうちの1つ以上がより容易である。
【0077】
複合材料はほぼ連続的な工程により調製されてもよい。この場合、ポリマー材料およびフィラー手段は、それらの混合および加熱が行われる場所に常時供給されてよい。そのような連続工程の一例は押出である。別の例(フィラー手段が繊維フィラーを含む場合に特に関連し得る)は、上記ポリマー材料を含む溶融物を通じて連続的な繊維塊を動かすことを含む。連続的な繊維塊は、ある長さの連続的な繊維フィラー、より好適には少なくともある程度まで固められた複数の連続的なフィラメントを含んでよい。連続的な繊維の塊は、トウ、ロービング、ブレイド、織物または不織物を含んでよい。繊維塊を形成するフィラメントは、繊維塊内にほぼ一様に配置されてもよく、ランダムに配置されてもよい。
【0078】
これに代えて、複合材料が不連続工程により調製されてもよい。この場合、所定量の上記ポリマー材料および所定量の上記フィラー手段が選択され、接触されて、ポリマー材料を溶融させるとともに、ほぼ均一の複合材料を形成するようにポリマー材料およびフィラー手段を混合することによって、複合材料が調製される。
【0079】
複合材料は、例えば、ペレットまたは粒など、粒子体へと成形されてよい。ペレットまたは粒は、10mm未満、好適には75mm未満、より好適には50mm未満の最大寸法を有してよい。
【0080】
好適には、フィラー手段は、ガラス繊維、炭素繊維、カーボンブラックおよびフッ素樹脂から選択される1つ以上のフィラーを含む。より好適には、フィラー手段は、ガラス繊維または炭素繊維を含み、特には不連続な、例えば、チョップドガラス繊維またはチョップド炭素繊維を含む。好適な不連続繊維は、ポリマー材料との接触前の平均長が10mm未満、好適には7mm未満である。平均長は、1mmより大きく、好適には2mmより大きくてよい。好適には、繊維フィラー手段は、ポリマー材料との接触前の長さが10mm未満のファイバーのみからなる。
【0081】
有利には、第2および第3の態様に記載のようなポリマー材料は、第1の態様の製法によって製造されていない、記載のMV/MFI関係を有さない、またはその両方であるポリマー材料に比べ、より低い圧力の下で押し出されることができる(例えば、溶融ろ過および他の工程により)。さらに、フィルムまたは繊維は、他のポリマー材料に比べ、より薄いゲージへ溶融延伸されてもよい。これに加えて、分散および粉体コーティングにおいて、このポリマー材料は、溶融時により容易に流動するので、部材に対しピンホールなどの欠陥のないコーティングを形成することができる。本発明の第5の態様では、分散または粉体コーティング中に第2または第3の態様に記載のようなポリマー材料を、溶融加工(例えば、押し出し、射出成形、回転成形(roto−moulding)、回転ライニング(roto−lining))またはその他流動させることを含む、部材の製造方法を提供する。
【0082】
上記方法は、好適には、部材が製造される前駆体材料を選択すること(前駆体材料は上記ポリマー材料を含む)と、適切には、押出装置もしくは射出成形装置において、回転成形装置もしくは回転ライニング装置において、または基板への粉体の堆積または分散後において、前駆体材料をその溶融温度より高い温度にさらすこととを含む。適切には、上記前駆体材料は、300℃より高い温度、好適には340℃より高い温度まで加熱される。適切には、450℃未満の温度まで加熱される。
【0083】
上記前駆体材料は、本明細書に記載のポリマー材料または本明細書に記載の複合材料のみからなってよい。
回転ライニングは、ポリマー材料を用いて容器または物品のライニングを行うことを含む。ポリマー粉体は2軸回転装置へ導入され、溶融される。容器/物品を回転させ、ポリマーを溶融させることによって、ポリマーが容器または物品の内部領域に付着する。回転成形では、容器/物品が分割され、完成品(例えば、プラスチック容器)が脱型される点を除いて、同様の手順に従ってよい。
【0084】
この方法は、例えば、ワイヤ、フィルム、繊維、ストック形材、プレート、パイプ、外形、チューブまたはブローンフィルム(blown film)を製造するための溶融工程(例えば、押出工程)を含んでよい。
【0085】
第6の態様では、第4の態様に記載のような、第4の態様により製造されるときの、またはその両方であるポリマー材料を含む、溶融加工された部材を提供する。
第5の態様の方法を用いて、比較的薄い壁を有する部材を製造することができる。したがって、本発明は、第7の態様では、3mm以下の厚さを有する領域を含む壁を有する部材の製造方法に関する。この方法は、(A)第2または第3の態様によるポリマー材料を含む前駆体材料を選択することと、(B)上記前駆体材料を処理することによって、上記部材を形成することととを含む。
【0086】
好適には、この部材は、厚さが2mm以下、より好適には1mm以下の領域を含む。
(B)に記載の処理は、好適には、上記前駆体材料を溶融加工することを含む。溶融加工は、好適には押し出しまたは射出成形によって行われる。
【0087】
適切には、上記部材は、上述の厚さを有する、0.5cm以上、好適には1cm以上、より好適には5cm以上の面積を有する領域を含む。したがって、一実施形態では、上記部材は、厚さが3mm、好適には2mm以下である、0.5cm以上の領域を含む。
【0088】
本明細書に記載された任意の発明または実施形態の任意の態様の任意の機能は、必要な
変更を加えて本明細書に記載の他の発明または実施形態の任意の態様の任意の機能と組み合わされてよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0089】
ここで、例として、添付の図面を参照し、本発明の特定の実施形態について記載する。
他に記載のない限り、本明細書に記載の化学試薬はすべて、Sigma−Aldrich Chemical Company(英国ドーセット州)から入手したままで用いた。
【0090】
以下の実施例では、次の試験を用いた。
試験1−ポリアリールエーテルケトンの溶融粘度
ポリアリールエーテルケトンの溶融粘度を、0.5×3.175mmの炭化タングステンダイが取り付けられたラム押出機を用いて測定した。約5グラムのポリアリールエーテルケトンを、空気循環式オーブン中、150℃で3時間乾燥した。押出機を400℃の平衡状態とした。乾燥させたポリマーを加熱した押出機のバレルに充填し、そのポリマーの上に真鍮チップ(長さ12mm×直径9.92±0.01mm)を配置した。続いて、閉じ込められた空気を除くのを補助するように、ピストンおよびスクリューを圧力計のプルーフリングがピストンにちょうど接するまで手動で回転させた。このポリマーのカラムを5分間以上掛けて加熱し、溶融させた。予熱段階の後、溶融したポリマーが1000s−1の剪断速度でダイを通じて押し出されて細い繊維を形成するようにスクリューを動かすと同時に、ポリマーを押し出すのに必要な圧力(P)を記録した。溶融粘度は次式によって与えられる。
【0091】
【数1】

【0092】
剪断速度と他のパラメータとの関係は次式によって与えられる:
【0093】
【数2】

【0094】
試験2−ポリアリールエーテルケトンのメルトフローインデックス
ポリアリールエーテルケトンのメルトフローインデックスを、CEASTメルトフローテスター6941.000で測定した。乾燥したポリマーをメルトフローテスター装置のバレルに配置し、適切な実施例において指定される温度まで加熱した。この温度は、完全にポリマーを溶融させるように選択される。次いで、バレルに加重ピストン(5kg)を挿入し、2.095mmボア×8.000mmの炭化タングステンダイを通じて押し出すことによって、一定の剪断応力の下でポリマーを押し出した。MFI(メルトフローインデックス)は、10分間に押し出されたポリマーの質量(g)である。
【0095】
試験3−4,4’−ジフルオロベンゾフェノンのガスクロマトグラフィー(GC)分析
Varian GCカラム(CP Sil 8CB、非極性、30m、0.25mm、1μm DF、部品番号CP8771)を用いて、Varian 3900ガスクロマトグラフでGC分析を行った。動作条件は次のとおりであった:
注入部温度300℃
検出部温度340℃
10℃/minで100℃から300℃までオーブンを昇温し、10分間保持(合計動作時間は30分間)
スプリット比50:1
注入体積1μL。
【0096】
試料は、100mgの4,4’−ジフルオロベンゾフェノンを1mLのジクロロメタンに溶解することによって調整する。
4,4’−ジフルオロベンゾフェノンのGC保持時間は約13.8分である。
【0097】
純度は標準的な方法を用いて算出される面積%として示される。
試験4−融点範囲の決定
融点範囲は、Buchi B−545を用いる光透過率測定によって、自動的に決定される。第1の値は透過率1パーセントで記録される。
設定: 勾配:1℃/min
設定温度:101℃
モード:薬物類(pharmacopoe)
検出:1および90パーセント。
【0098】
融点範囲は、90および1パーセントの融点決定間の差として記録される。
実施例1−L.V.Johnson、F Smith、M StaceyおよびJ C
Tatlowによる製法(J Chem. Soc、第919号、p.4710−4713、1952年)に基づく、フルオロベンゼンと四塩化炭素との反応による4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(BDF)の調製
機械式スターラー、温度計、フルオロベンゼン(192g、2mol)および四塩化炭素(290g)を収容している滴下漏斗、温度計、および環流式冷却器を取り付けた1Lの3口丸底フラスコに、四塩化炭素(250g)および無水の三塩化アルミニウム(162g、1.2mol)を充填した。フルオロベンゼン/四塩化炭素溶液を、撹拌しながら10℃に保持した三塩化アルミニウムの四塩化炭素懸濁液に1時間掛けて滴下した。次いで、この反応混合物を、さらに16時間、15℃に保持した。反応混合物を氷水へ注ぎ、有機層を分離して、重炭酸ナトリウム水溶液、次いで水で洗浄した。
【0099】
この有機相を、機械式スターラー、温度計および環流冷却器を取り付けた、エタノール/水の50:50混合物(500cm)を収容している2Lの3口丸底フラスコに充填した。この混合物を還流温度まで加熱して30分間保持し、室温まで冷却して、粗固体生成物をろ過によって回収し、真空下70℃で乾燥した。
【0100】
乾燥した粗生成物(100g)を熱工業用アルコール(400cm)および炭に撹拌して溶解し、濾別し、水(100cm)を加え、還流点まで再加熱して生成物を溶解し、冷却した。この生成物を濾別し、1:1の工業用アルコール/水で洗浄し、次いで真空下、70℃で乾燥させた。この生成物の融点範囲は107〜108℃であり(試験4を用いて決定)、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン純度は99.9面積%であった(試験3を用いて決定)。
【0101】
実施例2−フルオロベンゼンと4−フルオロベンゾイルクロリドとの反応による4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(BDF)の調製
機械式スターラー、温度計、4−フルオロベンゾイルクロリド(1550g、9.78mol)を収容している滴下漏斗、および環流冷却器が取り付けられた10Lの3口丸底フラスコに、フルオロベンゼン(2048g、21.33mol)および無水の三塩化アルミニウム(1460g、10.94mol)を充填した。この混合物を撹拌しながら20〜30℃に保持し、4−フルオロベンゾイルクロリドを1時間掛けて滴下して添加した。添加を完了させると、反応混合物の温度を2時間掛けて80℃まで上昇させ、周囲温度まで冷ましてから注意深く氷(4kg)/水(2kg)へ取り出した。この混合物を、20Lの蒸留ヘッドの取り付けられた1口丸底フラスコへ再充填した。過剰なフルオロベンゼンを蒸留して除くため、蒸留ヘッドの温度が100℃に達するまで内容物を加熱した。この混合物を20℃まで冷却し、粗4,4’−ジフルオロベンゾフェノンを濾別し、水で洗浄して、真空下、70℃で乾燥した。
【0102】
この粗生成物を実施例1に記載のように再結晶させた。この生成物の融点範囲は107〜108℃であり(試験4を用いて決定)、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン純度は99.9面積%であった(試験3を用いて決定)。
【0103】
実施例3−4,4’−ジフルオロジフェニルメタンの硝酸酸化による4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(BDF)の調製
規模を3倍にした以外は、欧州特許第4710号明細書(EP4710A2)の実施例2に記載の4,4’−ジフルオロジフェニルメタンの酸化の製法にしたがった。
【0104】
実施例3a
EP4710A2の実施例2に記載の再結晶手順にしたがって、融点範囲106〜107℃および純度99.6%(試験3を用いて分析)の4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(115g)を生成した。
【0105】
実施例3b
実施例3aの生成物を再び同じ手順を用いて再結晶し、融点範囲107〜108℃および純度99.9%(GCgcによって分析)の4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(95g)を得た。
【0106】
実施例4a−ポリエーテルエーテルケトンの調製
すりガラスのQuickfit蓋、撹拌器/撹拌器ガイド、ならびに窒素入口および出口が取り付けられた250mlのフランジ付きフラスコを、実施例1の4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(22.48g、0.103mol)、ヒドロキノン(11.01g、0.1mol)およびジフェニルスルホン(49g)で充填し、1時間以上窒素でパージした。次いで、内容物を140〜150℃まで加熱し、ほぼ無色の溶液を形成させた。乾燥した炭酸ナトリウム(10.61g、0.1mol)および炭酸カリウム(0.278g、0.002mol)を添加した。温度を200℃まで上昇させて1時間保持し、250℃まで上昇させて1時間保持し、315℃まで上昇させて2時間保持した。生成物の溶融粘度およびメルトフローインデックス(それぞれ試験1および2を用いて測定)の詳
細を、以下のテーブル1に与える。
【0107】
実施例4b〜4t−様々な4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(BDF)源からのポリエーテルエーテルケトン試料の調製および溶融粘度範囲
4,4’−ジフルオロベンゾフェノンの源を変化させ、一定の範囲の溶融粘度を有するポリエーテルエーテルケトンを生成するように重合時間を変化させた以外は、実施例4aに記載の手順を繰り返した。生成物の溶融粘度およびメルトフローインデックスの詳細を、以下のテーブル1に与える。
テーブル1
【0108】
【表1】

【0109】
実施例4a〜4iおよび4k〜4sについての溶融粘度およびMFIのデータを図1にグラフとして示す。このグラフは、次式から算出されている。
log10MFI(実施例3aによるポリエーテルエーテルケトン)=2.35−3.22×溶融粘度(実施例3aによるポリエーテルエーテルケトン)、および、
log10MFI(実施例1によるポリエーテルエーテルケトン)=2.34−2.4×溶融粘度(実施例1によるポリエーテルエーテルケトン)。
【0110】
実施例5a−ポリエーテルケトンの調製
すりガラスのQuickfit蓋、撹拌器/撹拌器ガイド、ならびに窒素入口および出口が取り付けられた250mlのフランジ付きフラスコを、実施例1の4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(33.49g、0.153mol)、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン(32.13g、0.150mol)およびジフェニルスルホン(124.5g)で充填し、1時間以上窒素でパージした。次いで、内容物を160℃まで加熱し、ほぼ無色の溶液を形成させた。乾燥した炭酸ナトリウム(16.59g、0.156mol)を添加した。温度を1℃/minで340℃まで上昇させて、2時間保持した。
【0111】
この反応混合物を冷やし、粉砕して、アセトンおよび水で洗浄した。得られたポリマーを120℃のエアオーブンで乾燥し、粉体を得た。生成物の色調、溶融粘度およびメルトフローインデックスの詳細を、以下のテーブル2に与える。
【0112】
実施例5b〜j−様々な4,4’−ジフルオロベンゾフェノン源からのポリエーテルケトン試料の調製
4,4’−ジフルオロベンゾフェノンの源を変化させ、一定の範囲の溶融粘度を有するポリエーテルエーテルケトンを生成するように重合時間を変化させた以外は、実施例5aに記載の手順を繰り返した。詳細をテーブル2に与える。
テーブル2
【0113】
【表2】

【0114】
実施例5a〜5jについての溶融粘度およびMFIのデータを図2にグラフとして示す
。このグラフは、次式から算出されている。
log10MFI(実施例3aによるポリケトン)=2.42−2.539×溶融粘度(実施例3aによるポリケトン)。
【0115】
記載のポリマー材料の比較的高いMFIは、産業用途において同じMVでより低いMFIの材料を越える有意な利点を有する。例えば、相対的な流れ易さのために、複合材料に比較的高いMFIの材料をより高いフィラー度で用いることができる。さらに、より高いMFIの材料をより低い圧力で押し出すことができる(一例では、約11.0MPa(110bar)で押し出す必要があった低MFIを有する同じMVの材料に比べ、高MFI材料を約7.5MPa(75bar)で押し出すことができる)ことが見出されている。これによって、フィルムおよび繊維をより薄いゲージへ溶融延伸することが可能となる。さらに、より高MFIの材料で、より薄い壁を有する部材を製造することができる。これに加えて、コーティングを形成するポリマー材料がより容易に流れ、連続的なコーティングする層を生成することが可能であるので、より高MFIの材料を分散または粉体コーティングに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】様々な4,4’−ジフルオロベンゾフェノンを用いて製造されるポリエーテルエーテルケトンについてのlog10MFI対溶融粘度のプロットの図。
【図2】ポリエーテルケトンについてのlog10MFI対溶融粘度のプロットの図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式の繰返単位を有し、kNsm−2で測定される溶融粘度(MV)と、メルトフローインデックス(MFI)とを有するポリマー材料であって、
【化1】

pは0または1を表し、
(a)pが1を表すとき、前記ポリマー材料の実際のlog10MFIは次式を用いて算出されるlog10MFIの期待値より大きく、
期待値(EV)=−3.2218x+2.3327
(ここで、xは前記ポリマー材料のkNsm−2でのMVを表す)
(b)pが0を表すとき、前記ポリマー材料の実際のlog10MFIは次式を用いて算出されるlog10MFIの期待値より大きい
期待値(EV)=−2.539y+2.4299
(ここで、yは前記ポリマー材料のkNsm−2でのMVを表す)
ポリマー材料。
【請求項2】
前記ポリマー材料は式Xの繰返単位のみからなり、p=1またはp=0である請求項1に記載のポリマー材料。
【請求項3】
pが1を表すとき、前記ポリマー材料の実際のlog10MFIは次式を用いて算出されるlog10MFIの期待値より大きく、
期待値(EV)=mx+2.33
(ここで、xは前記ポリマー材料のkNsm−2でのMVを表し、mは−3.00より大きい)
pが0を表すとき、前記ポリマー材料の実際のlog10MFIは次式を用いて算出されるlog10MFIの期待値より大きい
期待値(EV)=my+2.43
(ここで、yは前記ポリマー材料のkNsm−2でのMVを表し、mは−2.5より大きい)
請求項1または2に記載のポリマー材料。
【請求項4】
は−2.8より大きい請求項3に記載のポリマー材料。
【請求項5】
は−2.45より大きい請求項3または4に記載のポリマー材料。
【請求項6】
は−2.45より大きい請求項3乃至5のいずれか一項に記載のポリマー材料。
【請求項7】
は−2.35より大きい請求項3乃至6のいずれか一項に記載のポリマー材料。
【請求項8】
前記ポリマー材料のMVは0.06kNsm−2以上かつ4.0kNsm−2未満である請求項1乃至7のいずれか一項に記載のポリマー材料。
【請求項9】
フィラー手段と組み合わされた請求項1乃至8のいずれか一項に記載のポリマー材料を
含む複合材料。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載のポリマー材料を溶融加工することを含む、部材の製造方法。
【請求項11】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のポリマー材料を含む、溶融加工された部材。
【請求項12】
3mm以下の厚さを有する領域を含む壁を有する部材の製造方法であって、
(A)請求項1乃至7のいずれか一項に記載のポリマー材料を含む前駆体材料を選択することと、
(B)前記前駆体材料を処理することによって、前記部材を形成することと、からなる方法。
【請求項13】
ポリマー基本骨格にフェニル部位、ケトン部位およびエーテル部位を含むポリマー材料の調製方法であって、
次式の部位を有する1つ以上のモノマーを選択することを含み、
【化2】

Phはフェニル部位を表し、前記1つ以上のモノマーは99.7面積%以上の純度を有する方法。
【請求項14】
前記1つ以上のモノマーは99.85面積%以上の純度を有する請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記1つ以上のモノマーは99.9面積%以上の純度を有する請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記1つ以上のモノマーは無置換の少なくとも2つのフェニル部位を含み、同2つのフェニル部位は−O−および−CO−から選択される別の原子または基によって離間されている請求項13乃至15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記1つ以上のモノマーはフェノキシフェノキシ安息香酸またはベンゾフェノンを含む請求項13乃至16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記1つ以上のモノマーは、ハロゲン原子、−OH部位および−COOH部位から選択される末端基を含む請求項13乃至17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
(a)次の一般式の化合物を自己縮重合させることと、
【化3】

(ここで、Yはハロゲン原子または基−EHを表し、Yはハロゲン原子または基−COOHもしくは−EHを表し、YおよびYが共に水素原子を表すことはない)
(b)次の一般式の化合物を
【化4】

次式の化合物、
【化5】

次式の化合物
【化6】

またはその両方と縮重合させることと、
(ここで、Yはハロゲン原子または基−EHを表し、Xはハロゲン原子または基−EHのうちの他方を表し、Yはハロゲン原子または基−EHを表し、Xはハロゲン原子または基−EHのうちの他方を表す)
(c)随意で(a)に記載の工程の生成物を(b)に記載の工程の生成物と共重合させることと、を含み、
各Arは次式の部位(i)〜(iv)のうちの1つから独立に選択され、
【化7】

部位(i)〜(iv)は自身のフェニル部位のうちの1つ以上によって(好適にはその4,4’−位において)隣接部位へ結合されており、各m,n,w,r,s,z,tおよびvは独立に0または正の整数を表し、各Gは酸素もしくは硫黄の原子、直接結合または−O−Ph−O−部位から独立に選択され、Phはフェニル部位を表し、各Eは酸素もしくは硫黄の原子または直接結合から独立に選択される、請求項13乃至18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリマー材料は次式の繰返単位を含み、
【化8】

t、vおよびbは独立に0または1を表す請求項13乃至19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記ポリマー材料は、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトンおよびポリエーテルケトンエーテルケトンケトンから選択される請求項13乃至20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ポリマー材料はポリエーテルエーテルケトンである請求項1乃至21のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−540094(P2009−540094A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514894(P2009−514894)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【国際出願番号】PCT/GB2007/002194
【国際公開番号】WO2007/144610
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(501097318)ビクトレックス マニュファクチャリング リミテッド (15)
【氏名又は名称原語表記】VICTREX MANUFACTURING LIMITED
【Fターム(参考)】