説明

ポリマー粘度調整剤

レオロジー調整剤として用いることができる架橋両性ポリマー及び/又は吸収性ゲル材料を開示する。ポリマーは、可溶性塩及び/又は過酸化水素のような酸化剤を含む水性組成物中で保存安定性であることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ポリマー粘度調整剤
【背景技術】
【0002】
ポリマー粘度調整剤(PVM)又は「増粘剤」は、種々の組成物での用途が見出されている。例えば、PVMは、化粧品、洗面用化粧品、コーティング、塗装、洗剤、食品、モーター油等の粘度を高めるために用いられる。特定の組成物の粘度を高めるために用いる好適なPVMは、その性能及び/又は組成物中での安定性を含む要因に基づいて選択することができる。
【0003】
PVMの性能及び/又は安定性は、pH、温度及び塩濃度のような、組成物中の条件に影響を受ける可能性がある。従って、ある組成物中の条件下で実質的な増粘をもたらすPVMが、別の組成物中の条件下で、有効な増粘剤ではない、又は、不安定である場合さえある。それ故に、その製造、保存及び使用条件下で、目的とする製品組成物に適合し、効果的に粘度を高める化学構造を有するPVMを組み込むことが重要である場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願第60/834,867号
【特許文献2】国際特許公開第02/68575号
【特許文献3】米国特許出願第11/149817号
【特許文献4】米国特許第5,990,065号
【特許文献5】米国特許第6,069,122号
【特許文献6】米国特許第6,573,234号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
酸化剤及び塩を含むが、これらに限定されない物質の存在は、PVMにとって厳しくなり得る条件を与える場合がある。例えば、過酸化水素及び炭酸水素は、同時に出願した米国特許出願第60/834,867号に記載した染毛及び脱色組成物に含有されており、前記組成物は、低pH保存条件下で低粘度であるが、使用時のより高いpHで効果的に粘度を高める。従って、広範な保存及び使用条件にわたって、酸化剤及び/又は可溶性塩の存在下で改善された性能を有するPVMに対する要求が存在する。過酸化水素の存在下で保存安定性であり、正味荷電を有するとき粘度を高めるPVMを提供することがさらに望ましい。PVM及び染毛剤で有用であるPVMを含む組成物を提供することも望ましい。安定性賦活剤の使用を必ずしも必要としないこれらの特徴を有するPVMを提供することがさらに望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
PVMとして利用することができる架橋両性ポリマーを以下に開示する。一実施形態では、架橋両性ポリマーは、以下のモノマー型:多官能性架橋剤、アニオン性モノマー及びカチオン性モノマーの各々から選択されるモノマー由来のモノマー単位を含む。一実施形態では、架橋両性ポリマーは、約12重量%のH22を含む水性分散液中で40摂氏温度(℃)にて少なくとも約80日間保存安定性であり、2.0〜6.0の包含範囲内のpHで連続相を含む水性分散液中の正味荷電が0である、という特徴を有する。
【0007】
別の実施形態では、架橋両性ポリマーは、
a.1,3−ジアリル尿素、トリアリル尿素、テトラアリル尿素及び式(I)
+(R1234)A- (I)
(式中、
1)R1、R2、R3及びR4は各々式(II)
[(CH2nCH=CH2] (II)
(式中、nは1〜3の整数であり、R1、R2、R3及びR4の各々に関して独立して選択される)を有し、
2)A-は有機又は無機酸由来のアニオンである)を有するモノマーからなる群から選択される多官能性架橋剤、
b.アニオン性モノマー、及び
c.カチオン性モノマーからなる群の各々から選択されるモノマー由来のモノマー単位を含む。
【0008】
アニオン性モノマー(b)は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸及びイタコン酸からなる群から選択することができる。
【0009】
カチオン性モノマー(c)は、3−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、ジアリルジメチルアンモニウム塩、[(3−メチルアクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウム塩、3−メチル−1−ビニルイミダゾリウム塩、[2−(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム塩及び[2−(アクリロイルオキシ)プロピル]トリメチルアンモニウム塩からなる群から選択することができる。
【0010】
別の実施形態では、水溶液の粘度を増加させる方法を開示する。前記方法は、以下で開示する架橋両性ポリマーを水溶液に添加する工程を含む。
【0011】
さらなる実施形態では、本架橋両性ポリマーを含むパーソナルケア吸収性物品を開示する。架橋両性ポリマーが少なくとも1種の水性流体と接触すると、ポリマーはその少なくとも一部を吸収する。
【0012】
さらに別の実施形態では、自動液体皿洗い洗剤、軽質液体皿洗い洗剤、液体洗濯洗剤又は液体硬質表面洗浄剤のような、本架橋両性ポリマーを含む洗浄組成物を開示する。
【0013】
これらの及び他の実施形態、態様及び利点は、本発明に網羅され、以下の記載及び添付の特許請求の範囲に関してより良く理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0014】
「両性(Ampholytic)」及び「両性(amphoteric)」は互換的に用いることができ、アニオン性モノマー単位及びカチオン性モノマー単位を含むポリマーを表現する。両性ポリマー(An ampholytic polymer)は、その等電点より高いpHでアニオン性であり、等電点より低いpHでカチオン性であることができ、ここで等電点とはポリマーの正味荷電が0であるpHである。
【0015】
本明細書で使用するとき、「正味荷電」とは、ポリマーを含むモノマー単位の電荷の合計を指す。両性及び他のイオン性ポリマーの正味荷電は、pH、温度及び水性分散液の連続相のようなポリマーを含有する担体の可溶性塩濃度を含むが、これらに限定されない条件に依存する場合がある。
【0016】
本明細書で使用するとき、「モノマー」とは、反応し、それ自体又は他のモノマー若しくはモノマー単位のようなモノマーと化学結合することによりポリマーを形成することができる分子を指す。本明細書で使用するとき、「モノマー単位」とは、モノマー由来のポリマー中の化学結合した単位を指す。
【0017】
本明細書で使用するとき、「架橋」とは、一次化学結合により鎖の特定の炭素原子を連結する元素、基又は化合物を含む、本明細書で「架橋剤」と呼ばれる、ブリッジにより結合したポリマーの少なくとも2つの鎖を指す。「多官能性」架橋剤は、少なくとも2つの二重結合、少なくとも1つの二重結合及び反応基、又は少なくとも2つの反応基を有するモノマーを含むことができる。
【0018】
本明細書で使用するとき、「組成物」は、分散液、溶液、溶融液(例えば、純液体物質の)又は流体という用語を包含することができる。本明細書で使用するとき、「分散液」とは、本明細書で「連続相」と呼ばれる媒質中に均一に分散することができる粒子の系を指す。本明細書で使用するとき、「水溶液」という用語は、水を含む連続相に分布する粒子(本両性ポリマーを含んでよい)の分散液を含むことができる。
【0019】
本明細書で使用するとき、「レオロジー」とは、適用された応力の影響下における粘弾性流体の変形及び流動特性を指す。本明細書で使用するとき、「レオロジー調整剤」とは、前述の粘弾性流体の変形及び流動を変化させることができる物質又は組成物を指す。
【0020】
本明細書で使用するとき、「粘度」とは、剪断力による流体の流動抵抗を指す。流体の粘度は、流体温度のような、測定される条件に依存する場合がある。
【0021】
本明細書で使用するとき、「含む」という用語は、本発明を実施する際に多様な構成成分、成分、又は工程を組み合わせて使用できることを意味する。従って、「含む」という用語は、より制限された用語「から本質的になる」及び「からなる」を包含する。本組成物は、本明細書にて開示されるいかなる必須要素及び任意要素も含むことができ、これらから本質的になることができ、又はこれらからなることができる。
【0022】
本明細書で使用するとき、マーカッシュ言語は、特に指示がない限り、マーカッシュ群の個々の要素の組み合わせを包含する。
【0023】
本明細書で使用される全ての百分率、比率及び割合は、特に規定がない限り、組成物の重量百分率による。全ての平均値は、特に明確に指示がない限り、組成物又はその構成成分の「重量により」計算される。
【0024】
本明細書で使用するときモル・パーセント(モル%)は、ポリマーの全てのモノマー単位に対するモノマー単位の百分率、又は、他の試薬若しくは反応物質に基づく試薬若しくは反応物質のモル分率のいずれかを意味する場合がある。
【0025】
本明細書にて開示された全ての数値域は、範囲内の各個々の数を包含し、開示された範囲の上限値および下限値のあらゆる組み合わせを包含することを意味する。
【0026】
酸化剤を含む組成物中でPVMとして使用することができる保存安定性両性ポリマーを開示する。酸化剤の非限定的な例はH22である。本ポリマーは、当該技術分野において既知である安定剤も組成物中に存在するかどうかにかかわらず、これらの条件下で安定性を有することができる。当該技術分野において既知である安定剤としては、スズ酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ブチル化ヒドロキシトルエン並びに他のラジカルスカベンジャー及びキレート剤が挙げられるが、これらに限定されない。本文脈の中で、「保存安定性」は、開示した「保存安定性試験」の目的で少なくとも80日間、少なくとも90日間又は少なくとも100日間「保存条件」下においてその増粘能の少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約95%又は約100%を保持するポリマーを表現する。本明細書で使用するとき、ポリマーは、それが温度40℃で、水性連続相及び12%のH22を含む水性分散液中に存在するとき、「保存条件」下にある。
【0027】
保存安定性架橋両性ポリマーは、モノマーの逆懸濁重合及び溶液重合が挙げられるが、これらに限定されない当該技術分野において既知である方法を用いて調製される。保存安定性両性ポリマーは、保存条件下の水性分散液中で加水分解及び/又は酸化に耐える能力を有することができる。保存安定性両性ポリマーは、pH依存性増粘性能を有することができる。理論に束縛されるものではないが、ポリマーは、ポリマーの等電点を下回るpH及びポリマーの等電点を超えるpHで、液体を膨潤及び吸収することができる。
【0028】
本発明で使用されるモノマー単位は、(1)多官能性架橋剤、(2)アニオン性モノマー及び(3)カチオン性モノマーからなる群から選択することができるモノマー由来であってよい。
【0029】
多官能性架橋剤
本発明による保存安定性両性ポリマーは、多官能性架橋剤を含む。
【0030】
本発明のポリマーで使用される多官能性架橋剤としては、以下の非限定的なリストのモノマー:1,3−ジアリル尿素(DAU)、トリアリル尿素、テトラアリル尿素、N,N−ジアリルアクリルアミド(DAAm)及び式(I)を有するモノマーを含む。
+(R1234)A- (I)
式中、R1、R2、R3及びR4は各々式(II)を有する。
[(CH2nCH=CH2] (II)
さらに式中nは1〜3の整数であってよく、R1、R2、R3及びR4の各々に関して独立して選択することができる。A-は、有機又は無機酸由来のアニオンであってよく、非限定的な例としては、クロリド、アルキルサルフェート及びサルフェートの等価物の半分が挙げられる。
【0031】
テトラアリルアンモニウムクロリド(TAAC)、テトラアリルアンモニウムサルフェート及びテトラアリルアンモニウムメチルサルフェートは、式(I)を有する好適なモノマーの非限定的な例である。
【0032】
アニオン性モノマー
本発明による保存安定性両性ポリマーは、アニオン性モノマー由来であってよいモノマー単位をさらに含む。好適なアニオン性モノマーは、以下の一般式(III)を有することができる。
5−CH=CR6−CO−OH (III)
式中、
(a)R5は、水素原子、メチルラジカル、COOH基及びCH2COOH基からなる群から独立して選択され、
(b)R6は、水素原子、メチルラジカル、CH2COOH基及びCH2CH2COOH基からなる群から独立して選択される。
【0033】
一般式(III)を有する好適なアニオン性モノマーの非限定的な例としては、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸及びイタコン酸が挙げられる。
【0034】
カチオン性モノマー
本発明による両性ポリマーは、カチオン性モノマー単位をさらに含む。好適なカチオン性モノマー単位は、ジアリルジメチルアンモニウム塩、3−メチル−1−ビニルイミダゾリウム塩及び式(IV)を有するモノマーからなる群から選択されるモノマー由来であってよい。
7−CH=CR8−CO−Y−(Cm2m)−N+(R91011)A- (IV)
式中、
(a)R7及びR8は、各々水素原子及びメチルラジカルからなる群から独立して選択され、
(b)Yは、NH基、NR12基(式中、R12は1〜6個の炭素原子を有するアルキル基である)及び酸素原子からなる群から選択され、
(c)mは2〜5の整数であり、
(d)R9、R10及びR11は、各々1〜6個の炭素原子を有する直鎖及び分岐鎖アルキルラジカルからなる群から独立して選択され、
(e)A-は、有機又は無機酸由来のアニオンから選択されるアニオンである。
【0035】
-の非限定的な例としては、クロリド、アルキルサルフェート及びサルフェートの等価物の半分が挙げられる。
【0036】
好適なカチオン性モノマーの非限定的な例としては、3−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(APTAC)、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)、[(3−メチルアクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウムクロリド(MAPTAC)、3−メチル−1−ビニルイミダゾリウムクロリド(QVI)、[2−(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド及び[2−(アクリロイルオキシ)プロピル]トリメチルアンモニウムクロリドが挙げられる。
【0037】
架橋両性ポリマー
保存安定性及び/又はpH依存性膨潤を得るために、多官能性架橋剤、アニオン性モノマー単位及びカチオン性モノマー単位は、可溶性塩の存在下で保存安定性及び増粘特性を実現する限り、任意の組み合わせ又はモル比で開示したポリマー中に存在してよい。当業者は、所望の特性及び必要条件を満たすためにポリマーを特注生産することができる。
【0038】
本発明の架橋両性ポリマーは、以下の式(V)により表すことができる。
xyz (V)
式中、X、Y及びZは、多官能性架橋剤「L」、アニオン性モノマー単位「A」及びカチオン性モノマー単位「C」の相対モル比を示す整数である。本発明の架橋両性ポリマーが、2.0〜6.0の包含範囲内のpHで連続相を含む水性分散液中の正味荷電が0であるために、YはZより大きい数値であってよく、ZはXより大きい数値であってよい。
【0039】
本発明の架橋両性ポリマーの正味荷電が0であるとき(それらの等電点で)、それらは水性分散液中で膨潤することができず、たとえあったとしても少しの増粘しか提供することができない。正味負電荷又は正味正電荷を獲得すると、ポリマーは水性分散液中で膨潤することができ、増粘を提供することができる。典型的には、本発明の架橋両性ポリマーは、分散液の連続相のpHが、ポリマーの正味荷電が0であるpHから、少なくとも約1.0以上、少なくとも約0.5以上、又は少なくとも約0.25以上pH単位が変化するとき、正味負電荷又は正味正電荷を獲得する。
【0040】
多官能性架橋単位は、最小モル%少なくとも約0.01以上、少なくとも約0.05以上又は少なくとも約0.1モル%以上で、かつ、最大モル%約5以下、約10以下又は約15モル%以下で、開示したポリマー中に存在することができる。
【0041】
アニオン性モノマー単位は、最小モル%少なくとも約51以上、少なくとも約60以上又は少なくとも約65モル%以上で、かつ、最大モル%最大約75以下、最大約80以下又は最大約90モル%以下で、開示したポリマー中に存在することができる。
【0042】
カチオン性モノマー単位は、最小モル%少なくとも約5以上、少なくとも約10以上、少なくとも約15以上又は少なくとも約25モル%以上で、かつ、最大モル%最大約30以下、最大約40以下又は約49モル%以下で、開示したポリマー中に存在することができる。
【0043】
開示した架橋両性ポリマーは、0.5以上、1.0以上又は5.0重量%以上〜30以下、20以下又は10重量%以下の濃度の可溶性塩の存在下で、水溶液中で膨潤することができる。水の存在下での膨潤能特性により、本発明は、染毛及び脱色組成物並びに液体皿洗い洗剤、液体洗濯洗剤及び液体硬質表面洗浄剤のような洗浄組成物が挙げられるが、これらに限定されない組成物中で吸収性ゲル材料並びに増粘剤として有用になることができる。
【0044】
組成物
本発明による組成物は、少なくとも1種の酸化剤源を含んでよい、又は、それを含む組成物と組み合わせて用いてよい。使用される酸化剤は水溶性過酸素酸化剤を含んでよい。本明細書で定義するとき「水溶性」とは、保存温度又は周囲室温(例えば、25℃)で、少なくとも約1グラム(g)、少なくとも約10g又は少なくとも約100gの酸化剤が、1リットル(L)の脱イオン水又は目的とする組成物中に溶解することができることを意味する。染毛及び脱色組成物では、酸化剤は、メラミンの初期可溶化及び脱色(脱色)、並びに、毛幹中の酸化染料前駆体の酸化促進(酸化的染色)に有益であることができる。
【0045】
当該技術分野において既知である任意の水溶性酸化剤を、本発明で利用することができる。水溶性酸化剤は、水溶液中で過酸化水素を得ることができる無機過酸素物質を含んでよい。当該技術分野において既知である好適な水溶性過酸素酸化剤としては、過酸化水素、過ヨウ素酸ナトリウム及び過酸化ナトリウムのような無機アルカリ金属過酸化物、並びに、過酸化尿素、過酸化メラミン及び過ホウ酸塩、過炭酸塩、過リン酸塩、過ケイ酸塩、過硫酸塩等のアルカリ金属塩のような無機過水和物塩脱色化合物のような有機過酸化物が挙げられるが、これらに限定されない。無機過水和物塩は、一水和物、四水和物等として組み込むことができる。過酸化アルキル及びアリール、並びに/又はペルオキシダーゼを用いてもよい。2種以上の酸化剤の混合物を必要に応じて使用することができる。酸化剤は、水溶液中で、又は、使用前に溶解する粉末として提供することができる。本発明による組成物中で用いる具体的な酸化剤は、過酸化水素、過炭酸水素(酸化剤及び炭酸イオンの両方の源を提供するために用いることができる)、過硫酸水素及びこれらの組み合わせである。
【0046】
本発明の架橋両性ポリマーは、同時に出願した米国特許出願第60/834,867号に記載された染毛又は脱色組成物を含むが、これらに限定されないヘアケア組成物中で増粘剤として用いることができる。これらの染毛又は脱色組成物は、少なくとも1リットルあたり0.1モル(mol/L)の、炭酸、カルバミン酸、炭酸水素又はペルオキソ一炭酸イオン及びこれらの混合物、少なくとも1種の酸化剤、並びに少なくとも1種のここで開示した架橋両性ポリマーの供給源を含んでよい。髪への適用の容易性は、酸化組成物及び混合時に増粘される又は少なくとも1種の成分が混合時に全組成物を増粘する増粘化処方として提供される、いわゆる「thin−thin」型液体組成物としての染料組成物を提供することにより実現することができる。
【0047】
幾つかの実施形態では、染毛及び脱色キットは「thin−thin」型液体組成物を含んでよい。これらの実施形態は、少なくとも1種の過酸化水素供給源を含む個別にパッケージ化された酸化液体成分と、炭酸イオン、カルバミン酸イオン又は炭酸水素イオン及びこれらの混合物並びに少なくとも1種のここで開示した架橋両性ポリマーの供給源を含む第2の個別にパッケージ化された液体成分を含んでよい。少なくとも0.1モル/Lの、炭酸イオン、カルバミン酸イオン、炭酸水素イオン又はペルオキソ一炭酸イオン及びこれらの組み合わせの供給源を含む液体組成物は、2種の液体成分を混合する際に生じる。
【0048】
さらなる実施形態では、染毛又は脱色キットは、2種の成分のうち1種が混合時に全組成物を増粘する増粘化処方として提供される。これらの実施形態は、少なくとも1種の過酸化水素供給源及び少なくとも1種の本発明の架橋両性ポリマーを含む、個別にパッケージ化された酸化液体成分を含んでよい。これらの実施形態はさらに、炭酸イオン、カルバミン酸イオン又は炭酸水素イオン及びこれらの混合物の供給源を含む個別にパッケージ化された第2成分を含む。少なくとも0.1モル/Lの、炭酸イオン、カルバミン酸イオン、炭酸水素イオン又はペルオキソ一炭酸イオン及びこれらの混合物の供給源を含む液体組成物は、2種の液体成分の混合時に生じる。
【0049】
本発明の架橋両性ポリマーは、液体皿洗い洗剤、液体洗濯洗剤及び液体硬質表面洗浄剤を含むが、これらに限定されない洗浄組成物中でPVMとして使用することができる。自動液体皿洗い洗剤組成物では、ポリマーは組成物中に約0.25重量%〜約10重量%、或いは約0.5重量%〜約2重量%存在することができる。ポリマーは、組成物に約40〜約800、又は或いは約100〜約600ダイン/平方センチメートル(ダイン/cm2)の明白な降伏値を与えることができる。降伏値は、ゲル強度が限度を超え、流動が始まる剪断応力の指標であり、降伏値は以下の方法の部分に記載するように測定される。
【0050】
自動液体皿洗い洗剤組成物は、組成物の約0重量%〜約30重量%、或いは約0重量%〜約20重量%の濃度を含むが、これらに限定されない任意の好適な量で、本明細書で使用することができるビルダーを含有してよい。好適なビルダーは、国際特許公開第02/68575号に論じられている。
【0051】
開示した自動液体皿洗い洗剤組成物は、組成物の0重量%〜約5重量%、或いは約0.1重量%〜約2.5重量%の濃度で非イオン性界面活性剤を含有してよい。好適な非イオン性界面活性剤は、非塩素漂白剤組成物中にアルキルエトキシレートを含んでよい。非塩素漂白剤安定界面活性剤の非限定的な例は、BASF社(ドイツ、ルートヴィヒスハーフェン(Ludwigshafen))により製造されているSLF18(登録商標)である。或いは、塩素漂白剤含有組成物では、塩素漂白剤安定性低起泡性界面活性剤を用いることができ、かかる界面活性剤は組成物の約0.1重量%〜約10重量%の範囲で存在することができ、これらの界面活性剤は一般に当業者に既知である。塩素漂白剤安定界面活性剤の非限定的な例は、ダウ・ケミカル社(ミシガン州、ミッドランド(Midland)から入手可能なダウファックス(Dowfax)(登録商標)アニオン性界面活性剤である。
【0052】
自動液体皿洗い組成物はさらに、酵素、漂白剤系、亜鉛塩、分散ポリマー及び溶媒のような既知の組成物構成成分を含んでよい。さらなる成分は、2005年6月10日出願の同時継続中の米国特許出願第11/149817号で論じられている。
【0053】
本発明の架橋両性ポリマーは、任意の好適なpHを有してよい軽質液体皿洗い洗剤組成物で用いることができる。これらの組成物のpHは、当該技術分野において既知であるpH調整成分を用いて調節することができる。組成物は、4〜14、6〜13、又は6〜10のpHを有してよい。
【0054】
軽質液体皿洗い洗剤組成物は、20℃で測定するとき、約0.5Pa・sを超える粘度を有するように増粘することができ、幾つかの実施形態では、組成物の粘度は約0.5〜約1.1Pa・sであってよい。軽質液体皿洗い洗剤組成物の粘度は、以下の方法の部分に記載するように測定される。
【0055】
本発明の軽質液体皿洗い洗剤組成物は、液体洗剤組成物の約0.01重量%〜約50重量%、約1重量%〜約50重量%、約25重量%〜約50重量%又は30〜約50重量%の界面活性剤系を含んでよい。好適な界面活性剤としては、サルフェート又はスルホネート界面活性剤及びC10〜C14アルキル又はヒドロキシアルキルの水溶性塩又は酸が挙げられるが、これらに限定されない。好適な対イオンとしては、水素、アルカリ金属カチオン又はアンモニウム若しくは置換アンモニウム及びナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。さらなる好適な界面活性剤としては、アミンオキシド及びベタインのような両性界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
軽質液体皿洗い洗剤組成物で用いるためのさらなる構成成分としては、溶媒、ヒドロトロープ、酵素、染料、香料、ジアミン及び米国特許第5,990,065号、同第6,069,122号及び同第6,573,234号に開示されているような石鹸泡促進ポリマー(suds boosting polymer)を挙げることができる。
【0057】
本発明の架橋両性ポリマーは、保湿剤、コンディショナー、洗浄剤、日焼け止め剤、抗加齢化合物、化粧品(口紅、ファンデーション、ほお紅、クリーム、眉墨及び/又はマスカラが挙げられるが、これらに限定されない)及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない種々のパーソナルケア製品中にPVMとして用いることができる。組成物は、エマルション、ローション、ミルク、液体、固体、クリーム、ゲル、ムース、軟膏、ペースト、セラム、スティック、スプレー、トニック、エアゾール、フォーム、ペンシル等が挙げられるが、これらに限定されない種々の形態であってよい。本発明の組成物はまた、例えば、ゲル、フォーム、ローション及びクリームが挙げられるひげそり前用製品の形態であってもよく、エアゾール及び非エアゾール型の両方を含む。
【0058】
吸収性ゲル材料
本発明の架橋両性ポリマーは、吸収性ゲル材料(AGM)として利用することができる。AGMは時に当該技術分野において「ヒドロゲル」、「超吸収体」材料又は「ヒドロコロイド」材料と呼ばれる。水性流体、特に体液との接触時、AGMは流体を吸収し、ゲルを形成することができる。AGMは、典型的には、大量の水性体液を吸収することができ、さらに中圧下でかかる吸収された流体を保持することができる。
【0059】
本発明の架橋両性ポリマーは、パーソナルケア吸収性物品にAGMとして使用することができ、既知の物品の例としては生理用ナプキン、パンティライナー、おむつ等が挙げられるが、これらに限定されない。パーソナルケア吸収性物品は、従来層状構造であり、各層が着用者に面する表面及び衣類に面する表面を有する。一般に、物品は、着用者に面する表面上の液体透過性トップシート、衣類に面する表面上の液体障壁バックシート及びトップシートとバックシートとの間に配置される吸収性コアを含む。幾つかの実施形態では、本発明のポリマーは、粒状離散粒子の形態で吸収性コア内に位置することができる。さらなる実施形態では、ポリマーは繊維状又はシート状形態で存在することができ、ポリマーは繊維状材料中に均質に又は不均質に分散することができる。ポリマーが経血又は尿のような1種以上の体液と接触すると、ポリマーは流体を吸収してゲルを形成することができ、さらに流体を保持することができる。
【0060】
方法
全ての試薬は、特に指定しない限り、アルドリッチ(Aldrich)(ミズーリ州、セントルイス(St.Louis)製であり、特に指定しない限り、受け取った状態のまま使用する。
【0061】
テトラアリルアンモニウムクロリドは、典型的な四級化手順を用いて、TCアメリカ(TCI Americas)(オレゴン州、ポートランド(Portland))製トリアリルアミンをアリルクロリドと四級化することにより調製する。
【0062】
安定性試験用の過酸化水素溶液(12%)は、クレイロール(Clairol, Inc.)(コネチカット州、スタンフォード(Stamford))製のクレイルオキシド(Clairoxide)(登録商標)40である。
【0063】
V−50(登録商標)反応開始剤は、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリドである。
【0064】
スパン(Span)−80(登録商標)は、ソルビタンモノオレエートである。
【0065】
ミリポア社(Millipore Inc.)(マサチューセッツ州、ビルリカ(Billerica))製ミリQ(Milli-Q)(登録商標)システムから得る低伝導度イオン交換水を全ての方法で使用する。
【0066】
I.pH
組成物のpHは、サーモ・エレクトロン社(Thermo Electron Corp.)(マサチューセッツ州、ワルタン(Walthan))製オリオン(Orion)8102BN複合電極を備えるオリオン710A+pHメーターで測定する。架橋両性ポリマーの正味荷電が0であるpH(その等電点)は、溶液中にポリマーを入れ、ポリマーが崩壊し溶液中に沈降するまで溶液のpHを調節することにより測定する。ポリマーが沈降するpHは、ポリマーの正味荷電が0であるpHである。
【0067】
II.NMRスペクトル
NMRスペクトルは、酸性化D2O(0.6g濃縮HCl/100gD2O)中でとる。スペクトルは、30秒のリサイクル遅延(recycle delay)で標準的なパラメータを用いて、バリアン(Varian)500MHzユニティ・プラス・インスツルメンツ(Unity Plus instrument)(カリフォルニア州、パロアルト(Palo Alto))により得る。
【0068】
III.レオロジー
レオロジー試験用の試料は、クレイルオキシド(登録商標)40中の4〜6%ポリマー分散液と、16重量%(wt%)炭酸アンモニウム及び14重量%グリシン酸ナトリウムを1:1比で含む溶液とを混合することにより調製する。レオロジー測定は、温度制御のためにペルチェプレートを用いて25℃でTAインスツルメンツAR−1000レオメーター(デラウェア州、ニューカッスル(New Castle))で行う。測定は、1000ミクロンのギャップを有する25ミリメートル(mm)の平行板又は40mmの2°錘体形状のいずれかを使用して行う。連続剪断速度傾斜実験(continuous shear rate ramp experiment)は、1分間にわたって0.5〜1000秒-1で実施される。データは、10回当たり10点、ログモードで収集する。1及び900秒-1での粘度測定値をデータから作表する。
【0069】
本軽質液体皿洗い洗剤の粘度は、20℃で、ブルックフィールド・エンジニアリング・ラボ(Brookfield Engineering Labs)(マサチューセッツ州、ミドルボロ(Middleboro))製ブルックフィールド粘度計型番LVDVII+を用いて測定する。これらの測定に使用されるスピンドルは、様々な粘度の製品を測定するのに適した速度を有するS31であり、例えば、粘度が1.0Pa・sを超える製品の測定には12(毎分回転数)rpm、粘度が0.5Pa・s〜1.0Pa・sの製品には30rpm、粘度が0.5Pa・s未満の製品の測定には60rpmである。
【0070】
IV.保存安定性
安定性試験用の試料を、pH約3〜約4の過酸化水素溶液(12重量%H22)に添加し、室温及び40℃で保存する。等しい重量の上記炭酸アンモニウム−グリシン酸ナトリウム溶液と混合するとき、1秒-1で20〜40(パスカル秒)Pa・sの初期粘度を付与する4〜6重量%で試料を調製する。過酸化物分散液の試料を定期的に除去し、等量の塩溶液と混合し、粘度を測定する。
【0071】
V.ポリマーの作製方法
ポリマー調製用装置は、ガラスとテフロン(Teflon)(登録商標)とから構成される。金属混入を導く材料は使用しない。全ての透析は、イオン交換水中で分画分子量3500のセルロース系透析袋内で実施する。袋中のポリマーの濃度は4〜6重量%である。
【0072】
ポリマーは、以下の実施例の部分に記載するように、逆懸濁及び溶液重合を含むが、これらに限定されない重合技術により調製することができる。
【0073】
VI.降伏値
降伏値は、TバーBスピンドルを備えたブルックフィールド・エンジニアリング・ラボ(Brookfield Engineering Labs)(マサチューセッツ州、ミドルボロ(Middleboro)製ブルックフィールドRVT型粘度計を用いて、関連する読取を行っている間にヘリパス(Helipath)ドライブを利用して25℃で測定される。前記系を0.5rpmに設定し、試験する組成物のトルクを、30秒後又は系が安定した後で読み取る。前記系を停止し、rpmを1.0rpmに設定し直す。同じ組成物からのトルクを、30秒後または前記系が安定した後で読み取る。トルク読取値から、ブルックフィールド(Brookfield)粘度計に与えられた係数を用いて見かけ粘度を計算する。続いて、見かけ又はブルックフィールド(Brookfield)降伏値を次のように計算する:ブルックフィールド(Brookfield)降伏値=(0.5rpmでの見かけ粘度−1rpmでの見かけ粘度)/100。これは一般的な計算方法であり、カーボポール(Carbopol)(登録商標)の文献及び他の出版された参考文献に公開されている。
【実施例】
【0074】
比較例1:AA、DADMAC及びMBAの溶液重合
フラスコに、水(19.50g)、蒸留アクリル酸(3.08g、0.0427モル)、DADMAC溶液(65重量%、10.63g、0.0427モル)、N,N−メチレンビスアクリルアミド、即ち、MBA(0.0132g、0.09ミリモル(mmol))、モノマーの0.10モルパーセント(mol%))及びV−50(登録商標)(0.116g、0.43ミリモル、モノマーを基準として0.5モル%)を充填する。アルゴンを注入し、油浴槽中で20時間65℃に加熱する。ポリマーをフラスコから排出し、3.5Lの水を3度交換して透析する。最終ポリマー溶液を凍結乾燥し、固体ポリマーを真空オーブン内で2時間50℃にて乾燥させ、次いで粉末に粉砕する。収量は4.63gである(55重量%)。プロトンNMRによる分析は、ポリマーが72.5モル%のアクリル酸を含有することを示す。4重量%の水分散液を、16重量%の炭酸アンモニウムと14重量%のグリシン酸ナトリウムで増粘し、1秒-1で30Pa・sの粘度を得る。過酸化水素中、40℃での保存安定性のために、試料は当初42Pa・s、20日後20Pa・s、85日後2Pa・sの粘度を有する。
【0075】
理論に束縛されるものではないが、比較例1の増粘化溶液は、架橋単位の加水分解又は酸化分解を通じた架橋単位における架橋両性ポリマー増粘剤の開裂により、時間とともに粘度を失うと考えられている。同様の挙動が、一般に用いられるメチレンビスアクリルアミド、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル及びジビニルベンゼンを含む多官能性モノマーで調製した架橋両性ポリマー増粘剤についても観察されることができる。本明細書で開示した多官能性架橋モノマーを用いて調製した架橋両性ポリマーは、40℃でクレイルオキシド(登録商標)中で90日間保存した後、増粘能(≧50%初期粘度)を維持することにより改善された安定性を示す。
【0076】
(実施例2):AA、DADMAC及びDAUの溶液重合
フラスコに、水(39.15g)、蒸留アクリル酸(6.13g、0.085モル)、DADMAC溶液(65重量%、21.16g、0.085モル)、1,3−ジアリル尿素(0.120g、0.85ミリモル、モノマーの0.50モル%)及びV−50(登録商標)(0.116g、0.43ミリモル、モノマーを基準として0.25モル%)を充填する。アルゴンを30分間注入し、油浴中で20時間65℃に加熱する。ポリマーをフラスコから排出し、17Lの水を3度交換して透析する。最終ポリマー溶液を凍結乾燥し、固体ポリマーを真空オーブン内で2時間50℃にて乾燥させ、次いで粉末に粉砕する。収量は9.49gである(56重量%)。プロトンNMRによる分析は、ポリマーが72.1モル%のアクリル酸を含有することを示す。4重量%の水スラリーを、16重量%の炭酸アンモニウムと14重量%のグリシン酸ナトリウムで増粘し、1秒-1で27Pa・sの粘度を得る。過酸化水素中、40℃での保存安定性のために試料は当初27Pa・s、88日後18Pa・sの粘度を有する。
【0077】
(実施例3):AA、DADMAC及びDAAmの溶液重合
フラスコに、水(39.12g)、蒸留アクリル酸(6.15g、0.0853モル)、DADMAC溶液(65重量%、21.23g、0.0853モル)、N,N−ジアリルアクリルアミド(0.052g、0.34ミリモル、モノマーの0.20モル%)及びV−50(登録商標)(0.116g、0.43ミリモル、モノマーを基準として0.25モル%)を充填する。アルゴンを注入し、油浴中で20時間65℃に加熱する。ポリマーをフラスコから排出し、17Lの水を4度交換して透析する。最終ポリマー溶液を凍結乾燥し、固体ポリマーを真空オーブン内で2時間50℃にて乾燥させ、次いで粉末に粉砕する。収量は9.70gである(57重量%)。プロトンNMRによる分析は、ポリマーが68.0モル%のアクリル酸を含有することを示す。4重量%の水スラリーを、16重量%の炭酸アンモニウムと14重量%のグリシン酸ナトリウムで増粘し、1秒-で38Pa・sの粘度を得る。過酸化水素中、40℃での保存安定性のために試料は当初37Pa・s、89日後38Pa・sの粘度を有する。
【0078】
(実施例4):AA、DADMAC及びTAACの溶液重合
フラスコに、水(39.71g)、蒸留アクリル酸(6.92g、0.0961モル)、DADMAC溶液(65重量%、19.55g、0.0786モル)、テトラアリルアンモニウムクロリド(0.372g、1.75ミリモル、モノマーの1.0モル%)及びV−50(登録商標)(0.120g、0.44ミリモル、モノマーを基準として0.25モル%)を充填する。アルゴンを注入し、油浴槽中で20時間65℃に加熱する。前記ポリマーをフラスコから排出し、17Lの水を2度交換して透析する。最終ポリマー溶液を凍結乾燥し、固体ポリマーを真空オーブン内で2時間50℃にて乾燥させ、次いで粉末に粉砕する。収量は10.62gである(64重量%)。プロトンNMRによる分析は、ポリマーが70.8モル%のアクリル酸を含有することを示す。4重量%の水スラリーを、16重量%の炭酸アンモニウムと14重量%のグリシン酸ナトリウムで増粘し、1秒-1で40Pa・sの粘度を得る。過酸化水素中、40℃での保存安定性のために試料は当初26Pa・s、146日後17Pa・sの粘度を有する。
【0079】
(実施例5):AA、MAPTAC及びDAUの溶液重合
フラスコに、水(36.55g)、蒸留アクリル酸(9.86g、0.137モル)、MAPTAC溶液(50重量%、20.13g、0.0456モル)、1,3−ジアリル尿素(0.0767g、0.55ミリモル、モノマーの0.30モル%)及びV−50(登録商標)(0.0496g、0.18ミリモル、モノマーを基準として0.10モル%)を充填する。アルゴンを30分間注入し、油浴中で5時間65℃に加熱する。前記ポリマーをフラスコから排出し、17Lの水を2度交換して透析する。最終ポリマー溶液を凍結乾燥し、固体ポリマーを真空オーブン内で2時間50℃にて乾燥させ、次いで粉末に粉砕する。プロトンNMRによる分析は、ポリマーが74.4モル%のアクリル酸を含有することを示す。4重量%の水スラリーを、16重量%の炭酸アンモニウムと14重量%のグリシン酸ナトリウムで増粘し、1秒-1で14Pa・sの粘度を得る。
【0080】
(実施例6):AA、DADMAC及びDAUの逆懸濁重合
500mLの三つ口丸底フラスコに、スパン−80(1.5g)及びシクロヘキサン(200g)を充填し、機械的攪拌機、温度計及び隔膜を取り付ける。フラスコの内容物にアルゴンを注入し、それ以降アルゴンの上部圧力を維持する。別のフラスコに、水(39.15g)、蒸留アクリル酸(6.13g、0.085モル)、DADMAC溶液(65重量%、21.16g、0.085モル)、1,3−ジアリル尿素(0.120g、0.85ミリモル、モノマーの0.50モル%)及び過硫酸カリウム(0.116g、0.43ミリモル、モノマーを基準として0.25モル%)を充填する。氷浴槽中で冷却し、アルゴンを注入する。600rpmの設定で攪拌し、4分間にわたってモノマー溶液を丸底フラスコに添加する。フラスコを4時間65℃に加熱し、次いで40℃に冷却し、水性アンモニア(29%、1.0g、0.017モル)を添加する。添加後混合物を少なくとも15分間攪拌し、次いで500mLの別の分液漏斗に排出し、下層を回収する。前記ポリマーを一晩空気乾燥する。プロトンNMRによる分析は、54重量%の転換を示した。前記ポリマーを水に分散させ、17Lの水を2度交換して透析する。最終ポリマー溶液を凍結乾燥し、固体ポリマーを真空オーブン内で2時間50℃にて乾燥させる。プロトンNMRによる分析は、ポリマーが68.7モル%のアクリル酸を含有することを示す。6重量%の水スラリーを、16重量%の炭酸アンモニウムと14重量%のグリシン酸ナトリウムで増粘し、1秒-1で42Pa・sの粘度を得る。
【0081】
(実施例7):AA、MAPTAC及びDAUの逆懸濁重合
500mLの三つ口丸底フラスコに、スパン−80(1.5g)及びシクロヘキサン(200g)を充填し、機械的攪拌機、温度計及び隔膜を取り付ける。フラスコの内容物にアルゴンを注入し、それ以降アルゴンの上部圧力を維持する。別のフラスコに、水(36.53g)、蒸留アクリル酸(9.88g、0.137モル)、濾過したMAPTAC溶液(50重量%、20.17g、0.0457モル)、1,3−ジアリル尿素(0.0384g、0.27ミリモル、モノマーの0.15モル%)及びV−50(登録商標)(0.0496g、0.18ミリモル、モノマーを基準として0.1モル%)を充填する。氷浴槽中で冷却し、アルゴンを注入する。600rpmの設定で攪拌し、4分間にわたってモノマー溶液を丸底フラスコに添加する。フラスコを4時間65℃に加熱し、次いで40℃に冷却し、水性アンモニア(29%、1.44g、0.0246モル)を添加する。添加後反応物を少なくとも15分間攪拌し、次いで500mLの別の分液漏斗に排出し、下層を回収する。前記ポリマーを一晩空気乾燥し、次いで真空オーブン内で2時間50℃にて乾燥させる。プロトンNMRによる分析は、ポリマーが75.3モル%のアクリル酸を含有することを示す。6重量%の水スラリーを、16重量%の炭酸アンモニウムと14重量%のグリシン酸ナトリウムで増粘し、1秒-1で14Pa・sの粘度を得る。
【0082】
本発明の「発明を実施するための形態」で引用した全ての文献は、関連部分において本明細書に参考として組み込まれるが、いずれの文献の引用も、それが本発明に対する先行技術であることを容認するものと解釈されるべきではない。この文書における用語のいずれかの意味又は定義が、参考として組み入れられた文献におけるその用語のいずれかの意味又は定義と対立する場合は、この文書における用語に与えられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0083】
本発明の特定の実施形態を説明し記述してきたが、本発明の趣旨範囲から逸脱することなく他の様々な変更修正を行えることが当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にあるそのような全ての変更および修正を、添付の特許請求の範囲で扱うものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のモノマー型:多官能性架橋剤、アニオン性モノマー及びカチオン性モノマーの各々から選択されるモノマー由来のモノマー単位を含む架橋両性ポリマーであって、前記架橋両性ポリマーが、
a.約12重量%のH22を含む水性分散液中で40℃にて少なくとも約80日間保存安定性であり、
b.2.0〜6.0の包含範囲内のpHにおいて連続相を含む水性分散液中の正味荷電が0である、架橋両性ポリマー。
【請求項2】
前記多官能性架橋剤が、1,3−ジアリル尿素、トリアリル尿素、テトラアリル尿素及び式(I)
+(R1234)A- (I)
(式中、
a.R1、R2、R3及びR4は各々式(II)
[(CH2nCH=CH2] (II)
(式中、nは1〜3の整数であり、R1、R2、R3及びR4の各々に関して独立して選択される)
を有し、
b.A-は、有機又は無機酸由来のアニオンである)
を有するモノマーからなる群から選択される、請求項1に記載の架橋両性ポリマー。
【請求項3】
前記式(I)を有するモノマーが、テトラアリルアンモニウムクロリドである、請求項2に記載の架橋両性ポリマー。
【請求項4】
前記アニオン性モノマーが、式(III)
5−CH=CR6−CO−OH (III)
(式中、
a.R5は、水素原子、メチルラジカル、COOH基及びCH2COOH基からなる群から独立して選択され、
b.R6は、水素原子、メチルラジカル、CH2COOH基及びCH2CH2COOH基からなる群から独立して選択される)
を有する、請求項1に記載の架橋両性ポリマー。
【請求項5】
前記アニオン性モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸及びイタコン酸からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の架橋両性ポリマー。
【請求項6】
前記カチオン性モノマーが、ジアリルジメチルアンモニウム塩、3−メチル−1−ビニルイミダゾリウム塩及び式(IV)
7−CH=CR8−CO−Y−(Cm2m)−)N+(R91011)A- (IV)
(式中、
(a)R7及びR8は各々水素原子及びメチルラジカルからなる群から独立して選択され、
(b)Yは、NH基、NR12基(式中、R12は1〜6個の炭素原子を有するアルキル基である)及び酸素原子からなる群から選択され、
(c)mは2〜5の整数であり、
(d)R9、R10及びR11は各々1〜6個の炭素原子を有する直鎖及び分岐鎖アルキルラジカルからなる群から独立して選択され、
(e)A-は、有機又は無機酸由来のアニオンである)を有するモノマーからなる群から選択される、請求項1に記載の架橋両性ポリマー。
【請求項7】
前記カチオン性モノマーが、3−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、[(3−メチルアクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウムクロリド、3−メチル−1−ビニルイミダゾリウムクロリド、[2−(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド及び[2−(アクリロイルオキシ)プロピル]トリメチルアンモニウムクロリドからなる群から選択される、請求項6に記載の架橋両性ポリマー。
【請求項8】
a.前記多官能性架橋剤が1,3−ジアリル尿素であり、
b.前記アニオン性モノマーがアクリル酸であり、
c.前記カチオン性モノマーが、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド及び[(3−メチルアクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウムクロリドからなる群から選択される、請求項1に記載の架橋両性ポリマー。
【請求項9】
a.1,3−ジアリル尿素、トリアリル尿素、テトラアリル尿素及び式(I)
+(R1234)A- (I)
(式中、
1)R1、R2、R3及びR4は各々式(II)を有し、
[(CH2nCH=CH2] (II)
(さらに式中、nは1〜3の整数であり、R1、R2、R3及びR4の各々に関して独立して選択される)、
2)A-は有機又は無機酸由来のアニオンである)
を有するモノマーからなる群から選択される多官能性架橋剤、
b.アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸及びイタコン酸からなる群から選択されるアニオン性モノマー、及び
c.3−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、ジアリルジメチルアンモニウム塩、[(3−メチルアクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウム塩、3−メチル−1−ビニルイミダゾリウム塩、[2−(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム塩及び[2−(アクリロイルオキシ)プロピル]トリメチルアンモニウム塩からなる群から選択されるカチオン性モノマー
からなる群の各々から選択されるモノマー由来のモノマー単位を含む架橋両性ポリマー。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の架橋ポリマーを前記水溶液に添加する工程を含む、水溶液の粘度を増加させる方法。
【請求項11】
前記架橋両性ポリマーが少なくとも1種の水性流体に曝露されると、前記架橋両性ポリマーが前記水性流体の少なくとも一部を吸収する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の架橋両性ポリマーを含むパーソナルケア吸収性物品。
【請求項12】
自動液体皿洗い洗剤、軽質液体皿洗い洗剤、液体洗濯洗剤及び液体硬質表面洗浄剤からなる群から選択される洗浄組成物であって、請求項1〜11のいずれか一項に記載の架橋両性ポリマーを含む組成物。

【公表番号】特表2009−544764(P2009−544764A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−520124(P2009−520124)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際出願番号】PCT/IB2007/053051
【国際公開番号】WO2008/015653
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】