説明

ポリマー被覆の炭素生成物及びその他の顔料並びに水性媒質重合法又は溶媒コーティング法によるそれらの製造法

【課題】ポリマー被覆の改質された炭素生成物およびその製造方法の提供。
【解決手段】ポリマーが少なくとも部分的に改質された炭素生成物を被覆しているような、ポリマー被覆の改質された炭素生成物が説明されている。改質された生成物は、炭素生成物に結合した少なくとも1個の有機基を有することが好ましく、かつこの有機基は、極性又は水性ベースの媒体において調製するために、イオン基、イオン化可能基、又は極性基で置換されることが好ましい。ポリマー被覆の改質された炭素生成物の製造法も説明されていて、これは水性ベース又は溶媒非含有重合法、有機溶剤ベースの重合法、又は溶液コーティング法などである。ポリマー被覆の改質された炭素生成物を含有するポリマー生成物及びマスターバッチも、衝撃強さ及び引張り強さなどの特性を改善する方法と共に説明されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、炭素生成物及び他の顔料及びポリマーに関し、かつより詳細にはポリマーによる顔料生成物のコーティングに関する。本発明は更に、カーボンブラック及び他の顔料のような炭素生成物を少なくとも部分的に被覆するための乳化もしくは懸濁法のような水性媒質重合又は溶媒にもとづく方法の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素生成物、及びより詳細にはカーボンブラックは、充填材及び/又は強化材として様々な分野において使用されている。カーボンブラックはそれが中に存在する様々なポリマーの特性に有利に寄与し得る一方で、カーボンブラックは引張特性及び応力−ひずみに関連した特性を含む、衝撃特性のような特定の不利な特性に寄与することが示されている。加えて、カーボンブラックがポリマーに含まれる場合、カーボンブラックは、小さい一次粒子の粒度及び高度に構成された凝集塊のようなその物理特性のためにポリマー中に分散することが困難であるので、通常マスターバッチの使用により添加される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、1種以上の前述の問題点を克服する手段の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要約)
本発明の実施態様において、本発明は、ポリマーで被覆され改質された炭素生成物であり、ここでポリマーが改質された炭素生成物を少なくとも部分的に被覆しているものに関する。好ましくは、改質された炭素生成物は、炭素生成物に結合した有機基を少なくとも1個有する。この有機基は、水性媒質中で安定した分散を形成することを容易にすることができるイオン基、イオン化可能基、又は極性基で置換されることが好ましい。この実施態様において、ポリマーは、改質された炭素生成物を部分的又は完全に封入しているか、もしくは改質された炭素生成物がコアとなりかつポリマーがシェルとなっている。
【0005】
本発明は、更に、水にもとづく媒質中で重合開始剤、少なくとも1種のモノマー、及び改質された炭素生成物を混合する工程を含む、ポリマー被覆の改質された炭素生成物の製造法に関する。この改質された炭素生成物は、好ましくは炭素生成物に付着した有機基を少なくとも1個有する。更に有機基は、好ましくはイオン基、イオン化可能基、又は極性基で置換される。その後重合開始剤、少なくとも1種のモノマー、及び改質された炭素生成物は、乳化重合、懸濁重合、又は他の水にもとづく重合が施され、ポリマー被覆の改質された炭素生成物が生成されるが、ここでモノマーは、水性環境で重合することが可能であり、かつ改質された炭素生成物は、水にもとづく媒質中に分散可能であるか又は分散されている。同じくこの方法は、安定した水性分散体を形成することができかつ更に該モノマーの重合時に形成されたポリマーに物理的及び/又は化学的に結合することができるような改質された炭素生成物の使用に関する。
【0006】
加えて本発明は、ポリマーは個別に調製され、かつその後適当な有機溶媒に溶解される、前述のもののようなポリマーで被覆され改質された炭素生成物の製造法に関する。改質された炭素生成物は次に、ポリマーを含有する溶媒と一緒にされ、その後溶媒が蒸発又は他の手段などにより除去される。
更に本発明は、重合可能なモノマーは有機溶媒中に存在し、かつその後改質された炭素生成物はモノマーを含有する溶媒と混合され、その後モノマーの重合及び引き続きの溶媒除去が続く、前述のようなポリマー被覆の改質された炭素生成物の製造法に関する。
【0007】
本発明は、更にポリマー被覆の改質された顔料にも関する。
前述の一般的説明及び下記の詳細な説明は両方共単に例示及び説明するものであり、かつクレームされた本発明の更なる説明を提供することが意図されていることは理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のカーボンブラック又はポリマー被覆され(20nm)改質されたカーボンブラックのヤング率対質量%をプロットしているグラフである。
【図2】本発明のカーボンブラック又はポリマー被覆され(20nm)改質されたカーボンブラックの破壊エネルギー対質量%をプロットしているグラフである。
【図3】本発明のポリマー被覆の改質された炭素生成物の顕微鏡写真である。
【図4】本発明のポリマー被覆の改質された炭素生成物の顕微鏡写真である。
【図5(A)】通常のカーボンブラックを含有するポリマーマトリックスに関する破壊エネルギーの変動を示すグラフである。
【図5(B)】溶液ポリマー被覆改質カーボンブラックを含有するポリマーマトリックスに関する破壊エネルギーの変動を示すグラフである。
【図5(C)】乳液ポリマー被覆改質カーボンブラックを含有するポリマーマトリックスに関する破壊エネルギーの変動を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(発明の詳細な説明)
本発明の実施態様において、本発明は、ポリマー被覆の改質された炭素生成物に関する。この改質された炭素生成物は、1種以上のポリマーで少なくとも部分的に被覆されており、かつ1種以上のポリマーにより実質的又は完全に被覆され得る。用語「被覆された」の使用は、部分的又は完全に被覆された炭素生成物及び改質された炭素生成物を含む。本発明のポリマーは、部分的又は完全に、改質された炭素生成物を封入しており、ここで改質された炭素生成物はコアであり、かつポリマーはシェルである。改質された炭素生成物を被覆するか又は封入に使用されるポリマーは、ポリマーが実質的に有機溶媒で抽出可能でないように改質された炭素生成物上に存在することが好ましい。より好ましくは、改質された炭素生成物上のポリマーは、物理的(例えば吸着)及び/又は化学的(例えば化学結合、グラフト)により結合される。
【0010】
ポリマーで被覆された炭素生成物は、炭素生成物に結合した少なくとも1個の有機基を有する改質された炭素生成物であることができる。好ましくは、この有機基は、イオン基、イオン化可能基、又は極性基で置換される。それに結合した有機基を有する炭素生成物は、炭素生成物に結合した少なくとも1個の有機基を有することが可能ないずれかの炭素生成物であることができる。例えば、炭素生成物は、ジアゾニウム塩と反応し改質された炭素生成物を生成することが可能ないずれかの炭素生成物であることができる。炭素は、結晶質又は非晶質型であることができる。例として、グラファイト、カーボンブラック、ガラス質炭素、活性チャコール、活性炭、炭素繊維及びそれらの混合物を含むが、これらに限定されるものではない。前述の細かく分割された形が好ましい。様々な炭素生成物の混合物を利用することも可能である。
【0011】
同じく、本発明の目的のために、改質された炭素生成物は、炭素相及びケイ素含有種相を含む集合体を含む。この集合体に関する説明に加えこの集合体の製造手段が、PCT国際公開公報第96/37547号に加え、米国特許出願第08/446,141号(現在米国特許第5,830,930号);第08/446,142号;第08/528,895号;第08/750,017号;及び第09/06l,871号に開示されている。この改質された炭素生成物は、そのまま使用することができ、もしくはそれに結合した有機基を有することができる。これらの特許、文献及び特許出願は全て、その全体が本明細書に参照により組入れられている。
【0012】
本発明の目的のための、改質された炭素生成物は同じく、炭素相及び金属含有種相を含む集合体であることができ、ここで金属含有種相は、マグネシウム、カルシウム、チタン、バナジウム、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、スズ、アンチモン、クロム、ネオジム、鉛、テルル、バリウム、セシウム、鉄、モリブデン、アルミニウム及び亜鉛、並びにそれらの混合物などを含む様々な異なる金属であることができる。炭素相及び金属含有種相を含む凝集塊は、その全体が本願明細書に参照により組入れられている、1997年3月27日に出願された米国特許出願第08/828,785号に開示されている。この炭素生成物はそのまま使用することができ、もしくはそれに結合した有機基を有することができる。
【0013】
更に本発明の目的のために、改質された炭素生成物は、シリカで被覆されたカーボンブラックを含み、これは例えば1996年11月28日に公開され、同じくその全体が本願明細書に参照により組入れられている、PCT国際公開公報第96/37547号に開示されている。この改質された炭素生成物はそのまま使用することができ、もしくはそれに結合した有機基を有することができる。
【0014】
炭素生成物への有機基の結合のための1法は、ジアゾニウム塩を還元するのに十分な外部から加えられた電流の非存在下で少なくとも1種のジアゾニウム塩の炭素生成物との反応に関する。すなわち、ジアゾニウム塩及び炭素生成物の間の反応は、ジアゾニウム塩を還元するのに十分な電子の外部給源の非存在下で進行する。本発明の方法においては、様々なジアゾニウム塩の混合物を使用することができる。この方法は、様々な反応条件下及びプロトン性及び非プロトン性の両方の溶媒システム又はスラリーを含むいずれかの反応媒質中で行うことができる。
【0015】
別法において、少なくとも1種のジアゾニウム塩は、プロトン性反応媒質中の炭素生成物と反応する。様々なジアゾニウム塩の混合物は、本発明のこの方法で使用することができる。この方法は、様々な反応条件下でも行うことができる。両方の方法においてジアゾニウム塩は現場形成することができる。望ましくは、いずれかの方法において、炭素生成物は、当該技術分野において公知の手段により単離しかつ乾燥することができる。更に、得られる炭素生成物は、公知の方法により不純物を除去するように処理することができる。
【0016】
この方法は、ジアゾニウム塩と炭素生成物の間の反応の進行を可能にするいずれかの反応媒質中において行うことができる。反応媒質は、溶媒にもとづくシステムであることができる。この溶媒は、プロトン性溶媒、非プロトン性溶媒、又は溶媒の混合物であることができる。プロトン性溶媒は、酸素又は窒素に結合した水素を含む、水又はメタノールのような溶媒であり、その結果水素結合を形成するのに十分な程酸性である。非プロトン性溶媒は、先に定義したような、酸性水素を含まない溶媒である。非プロトン性溶媒は、例えば、ヘキサン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル、及びベンゾニトリルのような溶媒を含む。プロトン性及び非プロトン性溶媒の考察に関しては、Morrison及びBoydの、Organic Chemisty、第5版、228-231ページ、(Allyn and Bacon社、1987年)を参照のこと。
【0017】
ジアゾニウム塩と炭素生成物の間の反応は、例えば毛羽立った(fluffy)又はペレット化された形状のような、あらゆる種類の炭素生成物で行うことができる。
ジアゾニウム塩と炭素生成物の間の反応は、炭素生成物に結合した有機基を有する改質された炭素生成物を生成する。ジアゾニウム塩は、炭素生成物に結合した有機基を含むことができる。当該技術分野において公知のその他の手段により、本発明において使用される改質された炭素生成物を生成することが可能である。
【0018】
有機基は、脂肪族基、環状有機基、又は脂肪族部分及び環状部分を有する有機化合物であることができる。この方法で使用されるジアゾニウム塩は、これらの基を1個有しかつ一過性であったとしてもジアゾニウム塩の形成が可能であるような第1級アミンに由来することができる。この有機基は、置換又は未置換で、分枝した又は分枝していないことができる。脂肪族基は、例えば、アルカン、アルケン、アルコール、エーテル、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、及び炭水化物に由来する基を含む。環状有機基は、脂環式炭化水素基(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)、ヘテロ環式炭化水素基(例えば、ピロリジニル、ピロリニル、ピペリジニル、モルホリニルなど)、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル、アントラセニルなど)、及びヘテロアリール基(イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、チエニル、チアゾリル、フリル、インドリルなど)などを含むが、これらに限定されるものではない。置換された有機基の立体障害が増大するにつれて、ジアゾニウム塩と炭素生成物の間の反応に由来する炭素生成物へ結合した有機基の数は減少するであろう。
【0019】
有機基が置換されている場合、ジアゾニウム塩の形成と共存し得るいずれかの官能基を含むことができる。官能基は、R、OR、COR、COOR、OCOR、例えばCOOLi、COONa、COOK、COO-NR4+のようなカルボン酸塩、ハロゲン、CN、NR2、SO3H、例えばSO3Li、SO3Na, SO3K、 SO3-NR4+のようなスルホン酸塩、OSO3H、OSO3-塩、NR(COR)、CONR2、NO2、PO3H2、例えばPO3HNa及びPO3Na2のようなホスホン酸塩、例えばOPO3HNa及びOPO3Na2のようなリン酸塩、N=NR、NR3+X-、PR3+X-、SxR、SSO3H、SSO3-塩、SO2NRR’、SO2SR、SNRR’、SNQ、SO2NQ、CO2NQ、S-(1,4-ピペラジンジル)-SR、2-(1,3-ジチアニル)、2-(1,3-ジチオラニル)、SOR、及びSO2Rを含むが、これらに限定されるものではない。R及びR’は、同じ又は異なることができ、これらは独立して水素、分枝した又は分枝していないC1-C20の置換又は未置換の、飽和又は不飽和の炭化水素であり、例えばアルキル、アルケニル、アルキニル、置換又は未置換のアリール、置換又は未置換のヘテロアリール、置換又は未置換のアルキルアリール、もしくは置換又は未置換のアリールアルキルであることができる。整数kは、1〜8であり、かつ好ましくは2〜4である。アニオンX-は、ハライド又は鉱酸もしくは有機酸由来のアニオンである。Qは、(CH2)w、(CH2)xO(CH2)z、(CH2)xNR(CH2)z又は(CH2)xS(CH2)z(式中、wは2〜6の整数であり、かつx及びzは1〜6の整数である)。
【0020】
有機基は、式AyAr-の芳香族基であり、これは式AyArNH2の第1級アミンに相当している。この式において、変数は下記を意味する:Arは芳香族ラジカル、例えばアリール又はヘテロアリール基である。好ましくは、Arは、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、ビフェニル、ピリジニル、ベンゾチアジアゾリル、及びベンゾチアゾリルからなる群より選択され;Aは、前述の好ましい官能基から独立して選択された芳香族ラジカル上の置換基であるか、又はAは、直鎖、分枝鎖又環状の炭化水素ラジカル(炭素原子1〜20個を含むことが好ましい)で、未置換の又は1個以上のこれらの官能基で置換されたものであり;並びに、yは、1から、芳香族ラジカル中の-CHラジカルの総数までの整数である。例えばyは、Arがフェニルの場合は1〜5の整数であり、Arがナフチルの場合は1〜7であり、Arがアントラセニル、フェナントレニル又はビフェニルの場合は1〜9であり、又はピリジニルの場合は1〜4である。前述の式において、R及びR’の具体的な例は、NH2-C6H4-、CH2CH2-C6H4-NH2、CH2-C6H4-NN2、及びC6H5がある。
【0021】
炭素生成物に結合することができる有機基の別のセットは、官能基としてイオン基又はイオン化可能基で置換された有機基である。イオン化可能基とは、使用する媒質中でイオン基を形成することが可能なものである。イオン基は、アニオン基又はカチオン基であることができ、かつイオン化可能基はアニオン又はカチオンを形成することができる。
【0022】
アニオンを形成するイオン化可能基は、例えば酸基又は酸基の塩である。従って有機基は、有機酸に由来する基を含む。有機基がアニオン形成するイオン化可能基を含む場合、このような有機基は、a)芳香族基、並びにb)少なくとも1個の11未満のpKaを有する酸基、又は少なくとも1個の11未満のpKaを有する酸基の塩、又は少なくとも1個の11未満のpKaを有する酸基及び少なくとも1個の11未満のpKaを有する酸基の塩の混合物を有することができる。酸基のpKaは、酸性置換基のみではなく、全体としての有機基のpKaを意味する。より好ましくは10未満のpKaであり、最も好ましくは9未満である。有機基の芳香族基は、炭素生成物に直接結合することができる。芳香族基は更に、例えばアルキル基により置換されても又は置換されなくともよい。この有機基は、フェニル又はナフチル基であり、及び酸基は、スルホン酸基、スルフィン酸基、ホスホン酸基、又はカルボン酸基である。これらの酸基及びそれらの塩の例については先に考察されている。この有機基は、置換又は未置換のスルホフェニル基又はそれらの塩;置換又は未置換の(ポリスルホ)フェニル基又はそれらの塩;置換又は未置換のスルホナフチル基又はそれらの塩;もしくは、置換又は未置換の(ポリスルホ)ナフチル基又はそれらの塩であることができる。置換されたスルホフェニル基の例は、ヒドロキシスルホフェニル基又はそれらの塩である。
【0023】
アニオン(及びそれに対応する第1級アミン)を形成するイオン化可能官能基を有する具体的な有機基は、p-スルホフェニル(p-スルファニル酸)、4-ヒドロキシ-3-スルホフェニル(2-ヒドロキシ-5-アミノ-ベンゼンスルホン酸)、及び2-スルホエチル(2-アミノエタンスルホン酸)がある。アニオン形成するイオン化可能官能基を有する他の有機基も使用することができる。
【0024】
アミンは、カチオン基を形成するイオン化可能官能基の代表例である。例えば、アミンは、酸性媒質中でプロトン化され得、アンモニウム基を形成する。アミン置換基を有する有機基は、5未満のpKbを有することができる。第四級アンモニウム基(-NR3+)及び第四級ホスホニウム基(-PR3+)も、カチオン基の代表的例である。この有機基は、フェニル基又はナフチル基のような芳香族基及び第四級アンモニウム又は第四級ホスホニウム基を含むことができる。芳香族基は、炭素生成物に直接結合することができる。第四級化された環状アミン、及び第四級化された芳香族アミンさえも、有機基として使用することができる。従って、 N-置換されたピリジニウム化合物、例えばN-メチル-ピリジルをこれに関して使用することもできる。有機基の例は、(C5H4N)C2H5+、C6H4(NC5H5)+、C6H4COCH2N(CH3)3+、C6H4COCH2(NC5H5)+、(C5H4N)CH3+、及びC6H4CH2N(CH3)3+を含むが、これらに限定されるものではない。
【0025】
イオン基又はイオン化可能基で置換された結合された有機基を有する改質された炭素生成物の利点は、対応する未処理の炭素生成物に対して改質された炭素生成物が増加された水分散性を有することである。改質された炭素生成物の水分散性は、イオン化可能基を有するカーボンブラックに結合した有機基の数又は所定の有機基に結合したイオン化可能基の数と共に増加する。従って、改質された炭素生成物に会合したイオン化可能基の数が増加すると、その水分散性を増加し、かつ水分散性を望ましいレベルに調節することができるようになる。炭素生成物に結合した有機基としてアミンを含む改質された炭素生成物の水分散性が水性媒質を酸性化することにより増大することができることは注目し得る。
【0026】
改質された炭素生成物の水分散性は電荷の安定度によりある程度決まるので、水性媒質のイオン強度は、0.1モル未満であることができる。更にイオン強度は0.01モル未満であることもできる。
このような水分散可能な改質された炭素生成物が調製される場合は、イオン基、イオン化可能基、又は極性基を、反応媒質中でイオン化することができる。得られる生成物の溶液又はスラリーを使用するか、又は使用前に希釈することができる。得られる生成物溶液又はスラリーは、そのまま使用するか又は使用前に希釈することができる。あるいは、改質された炭素生成物は、通常のカーボンブラックに使用される技法により乾燥することができる。 これらの技術は、オーブン及びロータリーキルン中での乾燥を含むが、これらに限定されるものではない。しかし過乾燥は、水分散度の喪失を引き起こすことがある。
【0027】
イオン基又はイオン化可能基で置換された有機基を有する改質された炭素生成物は、それらの水分散性に加え、ジメチルスルホキシド(DMS0)、及びホルムアミドのような極性有機溶剤中にも分散することができる。メタノール又はエタノールのようなアルコールにおいて、クラウンエーテルのような錯化剤の使用は、酸基の金属塩を含む有機基を有するカーボンブラック生成物の分散性を増加する。
【0028】
芳香族スルフィドは、有機基の別の基を包含している。芳香族スルフィド基を有する改質された炭素生成物は、特にゴム組成物において有用である。これらの芳香族スルフィドは、式Ar(CH2)qSk(CH2)rAr’又はA(CH2)qSk(CH2)rAr”により表すことができる(式中、Ar及びAr’は独立して置換又は未置換のアリーレン又はヘテロアリーレン基であり、Ar”はアリール又はヘテロアリール基であり、kは1〜8であり、かつq及びrは0〜4である)。置換されたアリール基は、置換されたアルキルアリール基を含むであろう。アリーレン基は、フェニレン基を含み、特にp-フェニレン基、又はベンゾチアゾリレン基を含む。アリール基は、フェニル、ナフチル、ベンゾチアゾイルを含むことができる。kで示されるイオウ数は、 好ましくは2〜4個の範囲である。改質された炭素生成物は、式-(C6H4)-Sk-(C6H4)-で示される結合した芳香族スルフィド有機基を有することができる(式中kは1〜8の整数であり、より好ましくはkは2〜4の範囲である)。芳香族スルフィド基は、ビス-パラ-(C6H4)-S2-(C6H4)-及びパラ-(C6H4)-S2-(C6H4)-であることができる。これらの芳香族スルフィド基のジアゾニウム塩は、通常それらの対応する第1級アミン、H2N-Ar-Sk-Ar’-NH2 又はH2N-Ar-Sk-Ar”から調製される。この基は、ジチオジ-4,1-フェニレン、テトラチオジ-4,1-フェニレン、フェニルジチオフェニレン、ジチオジ4,1-(3-クロロフェニレン)、-(4-C6H4)-S-S-(2-C7H4NS)、-(4-C6H4)-S-S-(4-C6H4)-OH、-6-(2-C7H3NS)-SH、-(4-C6H4)-CH2CH2-S-S-CH2CH2-(4-C6H4)-、-(4-C6H4)-CH2CH2-S-S-S-CH2CH2-(4-C6H4)-、-(2-C6H4)-S-S-(2-C6H4)-、-(3-C6H4)-S-S-(3-C6H4)-、-6-(C6H3N2S)、-6-(2-C7H3NS)-S-NRR’(式中RR’は、-CH2CH2OCH2CH2-である)、-(4-C6H4)-S-S-S-S-(4-C6H4)-、-(4-C6H4)-CH=CH2、-(4-C6H4)-S-SO3H、-(4-C6H4)-SO2NH-(4-C6H4)-S-S-(4-C6H4)-NHSO2-(4-C6H4)-、-6-(2-C7H3NS)-S-S-2-(6-C7H3NS)-、-(4-C6H4)-S-CH2-(4-C6H4)-、-(4-C6H4)-SO2-S-(4-C6H4)-、-(4-C6H4)-CH2-S-CH2-(4-C6H4)-、-(3-C6H4)-CH2-S-CH2-(3-C6H4)-、-(4-C6H4)-CH2-S-S-CH2-(4-C6H4)-、-(3-C6H4)-CH2-S-S-CH2-(3-C6H4)-、-(4-C6H4)-S-NRR’(式中RR’は、-CH2CH2OCH2CH2-である)、(4-C6H4)-SO2NH-CH2CH2-S-S-CH2CH2-、NHSO2-(4-C6H4)-、-(4-C6H4)-2-(1,3-ジチアニル)、及び-(4-C6H4)-S-(1,4-ピペリジンジル)-S-(4-C6H4)-である。
【0029】
別の炭素生成物に結合することができる有機基のセットは、アミノフェニルを有する有機基、例えば(C6H4)-NH2、(C6H4)-CH2-(C6H4)-NH2、(C6H4)-SO2-(C6H4)-NH2である。有機基は、更に式Ar-Sn-Ar’又はAr-Sn-Ar”で示される芳香族スルフィドも含む(式中、Ar及びAr’は、独立してアリーレン基であり、Ar’はアリールであり、及びnは1〜8である)。このような有機基の炭素生成物への結合法は、米国特許出願第08/356,660号、第08/572,525号及び第O8/356,459号に開示されており、その内容は本願明細書に全体が参照により組入れられている。
【0030】
好ましくは、水性媒質中の分散を向上するために、有機基は、イオン基、イオン化可能基又は極性基を伴う又は伴わない、炭素生成物に直接結合した芳香族基及び/又はC1-C100アルキル基(及びより好ましくはC1-C12アルキル基)を含む。トルエンのような有機溶剤中での分散のためには、結合した基は、非極性又は非イオン性である。
【0031】
有機基の追加例は、米国特許第5,803,959号;第5,851,280号;第5,571,311号;第5,554,739号;第5,575,845号;第5,630,868号;第5,672,198号;第5,698,016号;第5,707,432号;及び第5,713,988号、並びにPCT国際公開公報第97/47692号;第97/47699号及び第96/18688号、並びに1997年12月19日に出願された米国特許出願第08/990,715号に開示されており、これらは全体が本願明細書に参照により組入れられている。
【0032】
1個よりも多い有機基が炭素生成物に結合することができ、もしくは様々に結合した有機基を伴う2個以上の改質された炭素生成物を使用することができる。有機基の2個以上の異なる種類を用いて、特性を組合せることができる。例えば、スルファニル基及びスチレン基のような、ふたつの異なる種類の有機基が結合した場合は、スルファニル基は分散を促進し、かつスチレン基はラジカルグラフト部位として利用される。様々な有機基の比は、同じ又は異なることができる。好ましくは、イオン基、イオン化可能基、又は極性基の最低処理レベルのみが、分散を安定化するために使用される。例えば、イオン種(例えば、硫酸塩、リン酸塩、有機酸のアルカリ塩又は第四級アンモニウム塩)、非−イオン種(例えば、ヒドロキシル、有機酸)又は界面活性安定剤(例えば、SDMS、SDS、Antarox) のような基を用いて、水性媒質中に安定した炭素生成物の分散を提供することができる。有機溶液中の改質された炭素生成物の分散は、同様の方法であるが、これらのより極性の低い環境に対しより相溶性のある処置を使用し、促進することができる。ラジカルグラフト部位を標的とする有機基の処置レベルは、使用する材料によって決まる。例えば、エポキシ基の結合は、ポリウレタンもしくはポリカーボネートのようなヒドロキルを発生するポリマーマトリックス、又はナイロンのようなアミンマトリックスへのグラフトを促進するであろう。別の例は、ラジカル重合時の架橋型反応を促進するための、スチレン又はアクリレートのようなラジカル感応性(radical sensitive)ビニル基の結合を含む。これらの結合した基は、最終的にはこれらの改質された炭素生成物を含有する物質の特性に影響を及ぼすであろう。影響を受けると思われる特性は、衝撃挙動、弾性反応、及びプラスチック中での分散性を含むが、これらに限定されるものではない。
【0033】
同じく、様々な改質された炭素生成物の組合せを使用することができる。例えば、それに結合した有機基を1種有する改質された炭素生成物は、それに結合した異なる有機基を有する別の改質された炭素生成物と組合せて使用することができる。同じく、炭素相及びケイ素種含有相を含む凝集塊のような改質された炭素生成物は、結合した有機基を有する改質された炭素生成物と組合せて使用することなどができる。
【0034】
1種以上のポリマーで被覆された改質された炭素生成物は、粒子が少なくとも部分的に1種以上のポリマーで被覆されることが可能である限りは、あらゆる粒度及び/又は表面積を有することができる。好ましくは、改質された炭素生成物の一次粒子の粒度は、約5nm〜約100nmであり、より好ましくは約8nm〜約75nmである。BET法で測定された改質された炭素生成物の窒素表面積は、好ましくは約20m2/g〜約1500m2/gであり、より好ましくは約25m2/g〜約700m2/gであり、最も好ましくは約30m2/g〜約250m2/gである。例えば繊維のように、改質された炭素生成物が粒子でないならば、好ましくは改質された炭素生成物は、下記の好ましい特性を有する:補強もしくは伝導特性又はその他の充填剤に関連した物理特性。
【0035】
改質された炭素生成物上のコーティングの厚さは、均質であるか、又は変動することができる。コーティングの厚さは、約1nm又はそれ以上であることができる。好ましくは、改質された炭素生成物上をコーティングしたポリマーは、実質的に均一な厚さである。好ましくは、改質された炭素生成物上のポリマーコーティングの厚さは、約10nm〜約100nm、より好ましくは約20nm〜約75nmであり、最も好ましくは約30nm〜約50nmである。図3及び4は、カーボンブラックの回りのコーティングを示す顕微鏡写真である。
【0036】
改質された炭素生成物は、1種よりも多いコーティング又はシェルを有することができる。別の表現をすると、改質された炭素生成物は、改質された炭素生成物又は事前のコーティングもしくはシェルを部分的又は完全に封入しているシェル又はコーティングの多層を有することができる。様々な層を含むポリマーは、同じ又は異なることができる。例えば、1層は架橋しているが、隣接層は架橋しないことができる。様々なコーティングの各々が、改質された炭素生成物上に1種よりも多く存在するならば、これは望ましいならば実質的に同じ又は異なる厚さであることができる。
【0037】
改質された炭素生成物上を被覆しているポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー及び/又は多くの異なる反復単位を有するポリマーであることができる。
ポリマーは、ランダムポリマー、交互ポリマー、グラフトポリマー、ブロックポリマー、星型ポリマー及び/又は櫛型ポリマーのような、いずれかの種類のポリマーであることができる。ポリマーは、1種以上のポリブレンドであることもできる。ポリマーは、相互侵入高分子網目構造(IPN);同時相互侵入高分子網目構造(SIN);又は、相互侵入エラストマー網目構造(IEN) であることもできる。ポリマーは、熱可塑性又は熱硬化性であることができる。
【0038】
ポリマーの具体的な例は、直鎖及び非直鎖のポリマー、例えばポリエチレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリイソブチレン、ポリスチレン、ポリカプロラクタム(ナイロン)、ポリイソプレンなどを含むが、これらに限定されるものではない。他の一般的なポリマーの種類は、ポリアミド、ポリカーボネート、高分子電解質、ポリエステル、ポリエーテル、(ポリヒドロキシ)ベンゼン、ポリイミド、イオウを含有するポリマー(例えばポリスルフィド、(ポリフェニレン)スルフィド、及びポリスルホン)、ポリオレフィン、ポリメチルベンゼン、ポリスチレン、及びスチレンコポリマー(ABSを含む)、アセタールポリマー、アクリル系ポリマー、アクリロニトリルポリマー及びコポリマー、ハロゲンを含有するポリオレフィン(例えばポリ塩化ビニル及びポリ塩化ビニリデン)、フルオロポリマー、イオノマーポリマー、ケトン基を含有するポリマー、液晶ポリマー、ポリアミド−イミド、オレフィン系二重結合を含有するポリマー(例えばポリブタジエン、ポリジシクロペンタジエン)、ポリオレフィン系コポリマー、ポリフェニレンオキシド、ポリウレタン、熱可塑性エラストマー、シリコーンポリマー、アルキド、エポキシ、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、尿素−、メラミン−、又はフェノール−ホルムアルデヒド樹脂などがある。好ましいポリマーは、アクリル系ポリマー、メタクリル系ポリマー、又はスチレン系ポリマーであるが、これは意図される用途に応じて大きく変動する。例えば、強化材用途では概して、ゴム製品が好ましいことに抽出できない、例えば溶媒中で抽出できないような方法で、改質された炭素生成物に結合されるゴム製品の形成に関連している。これは、表面に結合したスチレン基を有する改質された炭素生成物を使用することにより達成される。水性媒質のラジカル重合時に、生長する鎖は、改質された炭素生成物の表面のグラフト部位にグラフトし、かつゴム状の被覆された粒子を形成する。
【0039】
ポリマー被覆の改質された炭素生成物は、多くの方法で生成することができる。好ましくは、改質された炭素生成物は、水で媒介された重合環境である、例えば乳化重合又は懸濁重合法などに加え、溶媒にもとづく重合により生成することができるが、これらに限定されるものではない。関連する重合は、一般に連鎖生長重合及び/又は逐次生長重合である。水性の溶液重合法の例を下記に説明する。
【0040】
乳化重合法に関して、一般に、重合開始剤、少なくとも1種のモノマー、及び前述の改質された炭素生成物が組合せられ、かつ水にもとづく媒質に添加される。これらの成分は、あらゆる順番で添加することができるが、好ましくは改質された炭素生成物が、水にもとづく媒質に最初に添加され、次に重合開始剤が、その後モノマーが添加される。その後、乳化重合が行われ、ポリマー被覆の改質された炭素生成物を生じる。
【0041】
後に、更なる量の重合開始剤が、モノマーの継続する及び/又は完全な重合を確実にするために、任意に添加される。
この重合において使用されるモノマーは、安定フリーラジカル重合(SFRP)及び原子移動ラジカル重合(ATRP)のような、高度に特定化されたフリーラジカル重合を含む、いずれかの種類のフリーラジカル重合により重合されることが可能である。このようなオレフィン系モノマーの例は、アクリル酸塩、メタクリル酸塩、スチレン、ジエン、またはビニルエステルに加え、マレイン酸無水物又はスルホン酸ビニル、ビニルピリジン又はビニルピロリジノンのようなモノマーを含むが、これらに限定されるものではない。好ましいモノマーは、スチレン、アクリル酸、もしくはメタクリル酸、又はこれらの混合物もしくは組合せである。
【0042】
これらの様々なモノマーの誘導体に加え、2種以上のモノマーの混合物も使用することができる。
一般に、存在するモノマーの量は、水にもとづく又は溶剤にもとづく媒質中での改質された炭素生成物の少なくとも重合及び部分的コーティングに十分な量である。概して、このモノマー量は、総容量を基に約20%〜約8O容量%であり、より好ましくは約25 %〜約60容量%であり、かつ最も好ましくは約30%〜約50容量%である。
【0043】
使用される水にもとづく媒質は、ラジカル重合の発生を可能にするようないずれかの水にもとづく媒質であることができる。好ましくは、この水にもとづく媒質は水又は水を基にするものであり、より好ましくは脱イオン水である。
水にもとづく媒質の量は、改質された炭素生成物の少なくとも一部が重合されたモノマーにより部分的に被覆されるような、少なくともラジカル重合の発生をもたらすのに十分な量であることができる。
【0044】
重合開始剤に関して、存在するモノマーの少なくとも一部にラジカル重合を開始することが可能なあらゆる重合開始剤を使用することができる。例として、過酸化水素、及びペルオキシ硫酸アンモニウムのような過酸化物を含むが、これらに限定されるものではない。他の例は、アゾビスイソブチルニトリルのようなアゾ化合物、例えば第一鉄イオン(例えばFeCl2)のようなレドックス重合開始剤、銀アルキル試薬、及び光誘導法もしくは電解質転移法のような他の重合開始の方法を含む。具体的な例は、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、過酸化水素、3級-ブチルヒドロペルオキシド、クミルヒドロペルオキシド、又は亜硫酸水素ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、及び第一鉄塩のようなそれらの還元剤との組合せを含むが、これらに限定されるものではない。
【0045】
一般に、重合開始剤は、改質された炭素生成物を重合されたモノマーで少なくとも部分的に被覆するように、完全にではなくとも少なくとも部分的に水にもとづく媒質中に存在するモノマーの重合を開始する量で存在する。典型的成分及びレベルは、乳化重合の当業者には明らかであろう。
乳化重合時にポリマーで実質的に封入又は被覆するために、改質された炭素生成物は水にもとづく媒質中に適切に分散されなければならない。改質された炭素生成物は、水にもとづく媒質中に実質的に懸濁された改質された炭素生成物を維持するために、攪拌のような機械的手段により分散されるか、及び/又は、界面活性剤を、懸濁液を安定化するために、水にもとづく媒質に添加することができる。加えて、水にもとづく媒質中のより良い分散を提供するために、分散助剤を、水にもとづく媒質へのそれらの導入の前に、改質された炭素生成物に適用することができる。使用された改質された炭素生成物が、イオン基、イオン化可能基又は極性基で置換されている結合した有機基を有するならば、概して、界面活性剤又は分散助剤を使用することはなく、又は非常に少ない、少量の界面活性剤及び/又は分散助剤を使用することができる。これは、置換されたイオン基、イオン化可能基、又は極性基を伴う有機基を有する改質された炭素生成物は、十分に水分散性であり、その結果界面活性剤又は分散助剤の使用が不要なためである。従って、これは、水で媒介された重合のための経済的システムを作成することに加え、望ましいならば改質された炭素生成物の上に均一な被覆を提供する。加えて、水分散性の改質された炭素生成物を使用することで、攪拌が不要になる。
【0046】
イオン基、イオン化可能基又は極性基を伴う有機基を有する改質された炭素生成物程は水分散性でないような改質された炭素生成物が使用されるならば、さらに乳液を安定化するために界面活性剤を使用することができる。使用することができる界面活性剤の例は、エトキシル化されたアルコール、例えばポリエチレングリコール、SDS、SDMS及び/又はAntarox界面活性剤を含むが、これらに限定されるものではない。界面活性剤が使用されるならば、これは改質された炭素生成物の重量を基に約0.01〜約30の量、より好ましくは約0.1〜約10、最も好ましくは約1〜約5の量で存在することができる。
【0047】
ラジカル重合反応で典型的に使用される通常の成分は、表面活性化剤(懸濁法又は乳化法による水性媒質調製物)並びに阻害又は停止剤(例えば、キノン又はヒドロキノン)、ジビニルベンゼンのような架橋剤、更にはメルカプタン、CBr4のような連鎖移動剤、又は典型的にはラジカル重合において使用されかつ高分子の合成及び改質の業者に公知であるその他の改質剤などが存在することができる。これらの様々な任意の成分の量は、使用される重合開始剤、モノマー、及び改質された炭素生成物に応じて変動することができる。
【0048】
乳化重合は、例として及びより詳細には、水のような水にもとづく媒質及び改質されたカーボンブラックがおよそ70℃の水浴に維持されたフラスコに充填されるように行われることが好ましい。フラスコは、窒素で掃流され、かつその後重合開始剤がフラスコに添加される。次にモノマーが、Watson-Marlow蠕動ポンプのような蠕動ポンプ、又は重量計(gravametric)のようなその他の適当な導入手段を用いて、例えば流量調節又は手動調節のいずれかにより、反応しているフラスコに一定速度で導入される。
【0049】
この反応は、フラスコが室温に冷える前に、10時間程、完了するまで進行することができる。任意に、冷却前に、重合開始剤の追加量を、約70℃のフラスコに攪拌しながら添加し、モノマーの完全な重合を確実にすることができる。
次にポリマー被覆の改質された炭素生成物は、濾過もしくは蒸発のような手段によるか、又は凍結乾燥及び噴霧乾燥のような他の直接乾燥法により、水性ベースの媒質及びあらゆる未反応のモノマー又は副産物から分離することができる。あるいは、一旦十分なコーティング重量となったならば、材料を沈降させ、水性上清をデカントすることができる。残渣の湿固形物は、オーブンバッチ乾燥又は流動床乾燥器において達成されるような連続乾燥のような常法を用いて乾燥することができる。
【0050】
好ましくは、モノマーはあらゆる速度で添加することができるが、改質された炭素生成物上の最適なコーティングを得るためには、モノマーが約15分から約24時間の時間をかけて完全に添加されるような速度が好ましく、より好ましくは約1時間から約10時間かけて、及び最も好ましくは約2時間から約5時間かけることである。
【0051】
前述の重合を実施する条件は、多くの要因、例えば温度、攪拌、重合が生じる大気、圧力などにより最適化することができる。これらの要因とその作用は、当業者が持つ一般的重合に関する知識と類似又は同じであり、かつ本願明細書に記された詳細と組合せてこの知識により容易に決定することができるであろう。好ましくは、実施例に示されたように、重合時の大気は不活性であり、かつ温度は若干使用した重合開始剤システムによって左右される。本願明細書に記された点で本発明に適用することができる、一般的重合要因及びパラメータは、「The Chemistry of Free Radical Polymerization」、G. Moad及びD. Solomon、Pergamon Press、1995年、及び「Principles of Polymerization」、第2版、編集G. Odian、Wiley-Interscience Publ.、1981年に記されており、これらは両方共本願明細書に参照により組入れられている。
【0052】
ポリマー被覆の改質された炭素生成物は、水にもとづく重合法に類似している溶媒にもとづく重合法により形成することもできる。トルエンのような溶媒中の分散を増強し、及び/又は炭素生成物へと生長するポリマーのグラフトを可能にするような基を発生する改質された炭素生成物が好ましい。その他の溶媒の例は、低い連鎖移動定数を有する溶媒、例えばトルエン、キシレン、THF及び酢酸エチルを含むが、これらに限定されるものではない。
【0053】
溶媒にもとづく重合の例は、溶液重合及び溶液コーティングを含むが、これらに限定されるものではない。溶液コーティングでは一般に、一旦重合が完了すると、改質された炭素生成物がポリマー溶液中に、いずれかの手段により添加され、かつ好ましくは改質された炭素生成物を溶液中に存在するポリマーで少なくとも一部コーティングするのに十分な時間分散される。その後、ポリマー及びポリマー被覆の改質された炭素生成物からの溶媒の制御された分離が、制御された蒸発又は非溶媒への沈殿により行われる。その後ポリマー被覆の改質された炭素生成物は、例えば真空下40℃で乾燥される。
【0054】
その結果、溶液コーティング法の一型は、溶液(例えば溶媒)中でのポリマーの調製に関連しており、ここで改質された炭素生成物は、次にポリマー溶液に添加され、かつポリマーを含有する溶媒が、蒸発又は他の手段などにより除去される。コーティング法において使用される溶媒は、一般にトルエンのような有機溶媒であるが、改質された炭素生成物を被覆することが意図されたポリマー材料の性質に応じて、メタノールのような極性溶媒を含むこともできる。
【0055】
溶液重合において、モノマーの重合は、有機溶媒中に改質された炭素生成物が存在する中で現場で進行する。典型的には、このような溶媒にもとづく重合において使用される他の常用の成分も、通常の量で存在することができる。しかし、ラジカル重合においては、重合開始剤が通常よりも多い量で存在することが好ましい。
【0056】
これらの種類の重合法において、溶媒にもとづく溶液は、前述のようなフリーラジカル重合開始剤、及び望ましいモノマー(複数)を含有する。重合開始が熱により誘導される場合、反応液は、例えばおよそ7O℃で数時間加熱される。この種の重合は、一般に窒素雰囲気下60℃で30時間などで、完了するまで進めることができる。最終生成物は、蒸発法のような、通常の回収技術により捕集されるであろう。
【0057】
本発明のポリマー被覆の改質された炭素生成物は、バルク重合によっても調製することができる。この方法において、重合可能なモノマーは、改質された炭素生成物及び重合開始剤と共に存在する。一般に、この方法において、溶媒として作用するために全ての時点で未反応のモノマーが残留するように、制御された量の重合開始剤が存在する。第一にこの種の方法において、未反応のモノマーは溶媒として作用するので、形式的(formal)溶媒は存在する必要はない。この方法で使用することができる様々な種類のモノマーは、先に示したモノマーを含むが、これらに限定されるものではない。
【0058】
更に、本発明のポリマー被覆の改質された炭素生成物は、炭素生成物の分散性のために被覆された後蒸発、凍結乾燥、噴霧乾燥、凝固、遠心、濾過など当業者に公知の分離手段により分離されるようなラテックス配合物中の改質された炭素生成物の分散により製造することができる。
本発明のポリマー被覆の改質された炭素生成物は、多くの方法で使用することができる。特に、ポリマーで被覆され改質された炭素生成物は、低濃度から高濃度のカーボンブラックのような炭素生成物を含むマスターバッチにおいて使用することができる。ポリマーで被覆され改質された炭素生成物は、通常のカーボンブラックがポリマーでマスターバッチとされるものと同じ方法でマスターバッチに導入することができる。あるいは、ポリマーで被覆され改質された炭素生成物は、それ自身高濃度で、又は既に存在しかつ改質された炭素生成物に被覆されたポリマーの量に関する標準のマスターバッチとして作用することができる。
【0059】
本発明のポリマー被覆の改質された炭素生成物のマスターバッチの成分としての使用に関して、ポリマー被覆の改質された炭素生成物は、丁度通常のマスターバッチが形成されるようにマスターバッチが形成される。従ってポリマー被覆の改質された炭素生成物は、ワックス及びポリマー更には他の任意の成分を含むことができる標準のマスターバッチ成分に添加することができる。本発明のポリマー被覆の改質された炭素生成物がマスターバッチを形成するために使用される場合、一般に改質された炭素生成物の量は、マスターバッチにおいて常用の炭素生成物、例えばカーボンブラックにおいて通常使用される量であることができる。しかし、本発明のポリマー被覆の改質された炭素生成物を用い、炭素生成物のより高い配合量を伴うマスターバッチが可能であり、従って本発明のマスターバッチは、マスターバッチ質量を基に、約10質量%〜約95質量%又はそれ以上の炭素生成物、及びより好ましくは約50質量%〜約90質量%の炭素生成物を含むことができる。
【0060】
本発明の改質された炭素生成物は、ポリマー中に混和又は分散し、通常の補強剤、充填剤又はカーボンブラックのような着色剤の導入を可能にするいずれかの方法を用いて、ポリマー製品を形成することができる。例として、改質された炭素生成物の、単軸押出機又は多軸押出機のような押出機又は射出成形装置へのホッパ供給がある。改質された炭素生成物をポリマーに導入するその他の手段は、Banbury及びBrabenderミキサーなどの内部ミキサーのような、ミキサーを含む。ポリマーへの改質された炭素生成物の導入、及び好ましい分散のその他の手段は、長い連続ミキサー、連続配合押出機(例えばBuss Kneader)、タンブルブレンダー、ペレタイザなどを含むが、これらに限定されるものではない。
【0061】
ポリマー被覆の改質された炭素生成物は、コーティング前に良好に分散させることが可能であるので、個々の一次凝集が各々均等に被覆されることが好ましい。このことは、それが希釈されたマトリックス材中のポリマー被覆の改質された炭素生成物の良好な表面湿潤特性をもたらす。この作用は、未処理の又は通常の炭素生成物を用いて行った同一手順又は同等の市販のマスターバッチと比較した場合に、優れた分散特性をもたらす。更にマスターバッチ調製法の観点からこれらの材料が調製される容易さは、このポリマー被覆の改質された炭素生成物を優れた添加物としている。加えて、この改質された炭素粒子は個別のポリマーコーティング内に位置するので、コーティング樹脂の配合が適切にデザインされた場合は、ポリマー及び炭素粒子の直接混合では必ずしも達成されないような独自の特性を達成することができる。例えば、剛性マトリックスの補強のような特性を、個別の炭素粒子及びそれに個別に配合されたポリマーを有する材料と比較した場合に達成することができる。
【0062】
本発明のポリマー被覆の改質された炭素生成物は、ポリマーコーティングと化学的に相互作用する能力を有し、適切に配合された場合はこのコーティングはそれが導入されたマトリックスポリマー生成物とも相互作用することができる。改質された炭素生成物とポリマーコーティングの間の相互作用については、先に述べている。コーティング樹脂がマトリックスポリマーと相互作用する場合は、この被覆され改質された炭素生成物は、ポリマーマトリックスに結合することができ、例えば該ポリマー生成物のポリマーマトリックスにグラフト重合することができる。この能力は、衝撃強さ及び引張強さなどの改善された特性をもたらすことができる。メルトフロー粘度のようなその他の特性もこの方法で影響を受け得る。この方法の利点は、優れた衝撃強さ、制御された流動特性、有益な材料表面接着性、及び改善された色特性の材料を製造する能力を含むが、これらに限定されるものではない。別の本発明の利点は、ポリマー被覆の改質された炭素生成物を含有するポリマー生成物の改善されたUV安定性である。図1及び2は、一旦ポリマー被覆の改質された炭素生成物が、SANのようなポリマーマトリックスに導入された場合の引張り及び衝撃強さに関する改善された特性を提供するポリマー被覆の改質された炭素生成物の能力を示す。これらの図において、「Sterling」は常用のカーボンブラックでありかつ「被覆されたSterling」は結合したスチレン基を有し引き続きPS/BA/GMAポリマーの約20nmで被覆された改質されたカーボンブラックである。
【0063】
常用のポリマーのような、本発明のポリマー生成物は、いずれか望ましい商品又は形状に形成及び造形することができる。
更に、本発明のポリマー生成物は、溶媒性及び溶媒非含有ポリマーコーティングに加えポリマー発泡を含む。ポリマーコーティングに関して典型的には、水性又は非水性の媒質は、通常のポリマーコーティングにおいて典型的に認められる量で存在するであろう。ポリマー発泡に関して、典型的発泡剤は、通常のポリマー発泡において通常認められる量で存在するであろう。
【0064】
本発明のポリマー生成物は、ポリマー中に認められる常用の追加成分、例えば、酸化防止剤、安定剤(例えば光/UV及び熱型)、可塑剤、充填剤、耐衝撃性改良剤、滑剤、殺生物剤、難燃剤、加工調節剤(process modifier)、帯電防止剤、発泡剤(起泡剤)、着色料、抗菌剤、粘着防止剤、有機過酸化物、蛍光増白剤、カップリング剤、相溶化剤、加工助剤、離型助剤、粘着付与剤、粘度抑制剤、反応性繊維添加物(reactive additives fiber)、かぶり防止剤、防曇剤、殺菌剤、導電剤、架橋剤、艶消剤、分散剤、可塑剤、流れ調整剤、蛍光剤、溶融促進剤(fusion promoter)、殺カビ剤及び殺真菌剤、成核剤、有機キレート化剤、表面処理剤などの添加、又は本願明細書に参照により組入れられている「Plastic Additives and Modifiers Handbook」、Jesse Edenbaum編集、193-1086ページ (1992年)に記された他の物質の添加を含む。
【0065】
ポリマー被覆の改質された炭素生成物は、未処理のカーボンブラック及び/又はポリマー生成物に添加された場合に炭素生成物上に被覆されたポリマーそれ自身と比べて、改善された特性を有することが好ましい。例えば、本発明のポリマー被覆の改質された炭素生成物を含有するポリマー生成物は、未処理のカーボンブラックを含有するポリマー生成物と比べて改善された衝撃強さ及び/又は引張り強さを有することが好ましい。
【0066】
より詳細に述べると、このポリマー被覆の改質された炭素生成物は、SAN(スチレンアクリロニトリル)のような樹脂の極限衝撃強さを、未改質のカーボンブラック及びゴム強化材を含有するSANと比べて改善することが可能である。別の利点は、制御された粘度及びより良い着色特性を有する通常のマスターバッチと比べて、容易(低い剪断)に分散可能な着色剤又は強化材として作用する能力を含む。あるいは、得られる現場生成された樹脂中の改質された炭素生成物の質量%が0.01質量%〜3.0質量%の範囲であるならば、この樹脂は強力剪断ミキサーを使わなくとも優れた分散特性を有するような直接ゆるむ(letdown)材料とみなすことができる。
【0067】
改質された炭素生成物のほかに、ポリマー被覆改質顔料を形成することに加え、炭素生成物以外の改質された顔料を使用することができる。本発明の目的のためには、改質された顔料は、それに結合した少なくとも1個の有機基を有することが可能な全ての種類の顔料を含むであろう。前述のポリマー被覆の改質された炭素生成物の形成及び適用に関する詳細は、本願明細書において改質された顔料にも同じく適用される。着色された顔料は、芳香族基又はアルキル基のような有機基の結合で改質され得るような顔料のいずれかである。炭素生成物以外の着色された顔料は、ブラック、ブルー、ホワイト、シアン、グリーン、バイオレット、マゼンタ、レッド、イエロー、それらの色調及び/又は色相に加えそれらの混合物含むが、これらに限定されるものではない。適当な着色された顔料の種類は、アントラキノン、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジアゾ、モノアゾ、ピラントロン、ペリレン、複素環式イエロー、キナクロドン、及び(チオ)インディゴを含むが、これらに限定されるものではない。着色顔料及び有機基が結合した着色顔料の製造法に関する具体的な例及び更なる情報は、米国特許第5,837,045号及びPCT公開国際公開公報第97/47699号に開示されており、これらは両方共本願明細書に参照により組入れられている。
【0068】
本発明は、本発明の単なる例示することが意図されている、下記の実施例によりより明確化されるであろう。
(実施例)
各実施例において、SはSterling(登録商標)カーボンブラックを示し;RはRegal(登録商標)カーボンブラックを示し;「nf」は結合した有機基であり;第一の数値は炭素生成物上のポリマーコーティングの厚さを、及び第二の数値はカーボンブラック及びカーボンブラック上に被覆されたポリマーの量を、充填剤を伴うポリマーマトリックスの質量%で表している。例えば、R-nf-0-50は、未処理の(有機基が結合していない)Regalカーボンブラックを意味し、0はポリマーコーティングの厚さであり、50は質量%による炭素生成物の量である。
実施例1
スチレン(PS)、アクリロニトリル(PAN)及びアクリル酸グリシジル(PGMA)のホモポリマー、並びにこれら3種のターポリマー(PS/AN/GMA)を、溶媒対モノマーの質量比70:30で、トルエン中で溶液重合により調製した。AZBNを重合開始剤としてモノマーの0.1質量%で使用した。この重合は、窒素環境下60℃で16時間進行した。得られたポリマーは、過剰量の石油エーテル(60/80)への沈殿、及び一定質量になるまでの真空下40℃での乾燥により分離・精製した。使用されるコモノマーの組成を表1に示した。
【0069】
【表1】

【0070】
調製したターポリマーは、下記構造を有する:
【0071】
【化1】

【0072】
カーボンブラック又は改質されたカーボンブラック粒子のコーティングは、溶液蒸発法により行った。粒子のコーティング手順には主な3工程がある:第一に、適当な溶媒へ該ターポリマー(PS/AN/GMA)を溶解する工程(100:5、溶媒wt%:ターポリマーwt%);次に、洗浄した粒子を溶液に分散する工程;及び最後に、溶媒を制御しながら蒸発する工程。粒子のトルエン−溶解したコポリマーへの分散を、Silverson L4R高剪断ミキサーを用いて行った。この混合物から溶媒を、回転フィルムエバポレーターを用い水ポンプで減圧した状態で70℃で除去した。3個の異なるサンプルを、各カーボンブラック銘柄又は改質されたカーボンブラックから調製した。全ての場合、自在−流れの粉末を得た。表2Aは、カーボンブラック又は改質されたカーボンブラック1gについて被覆されたサンプルを調製するために使用したターポリマーの質量を示している。
【0073】
【表2】

【0074】
DSC実験を、被覆した及び被覆していない粒子について行った。Tgでの熱流の標準化した変化ΔHfnorは、このターポリマーが粒子上に効率的に被覆されたことを明らかに示している。
実施例2
本発明者らは、改質されたカーボンブラックの表面上へのポリマーの現場形成を、乳化重合法を用いて行った。モノマーとしてスチレンを、重合開始剤として4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)を選択した。カーボンブラックは、カーボンブラックに結合した-C6H4SO3Na基を有するSterling(登録商標)4620銘柄(Cabot社)を用いた。
【0075】
使用した重合開始剤の量のみを変更し、3回の乳化重合を行った。使用した配合を表2Bに示した。使用したポリマーの量は、改質されたカーボンブラックと同じ直径を持つ同等の非孔性球の表面積及び容積を基に20nmコーティングを生じるように計算した。
【0076】
【表3】

【0077】
この重合は、5首フランジ付き反応フラスコ中で、窒素下70℃で行った。反応フラスコの内容物を連続攪拌し、窒素ガス流れで不活性雰囲気を確立した。フラスコの内容物が水浴温度になった後、水を溶媒とする重合開始剤溶液(5g)を添加した。その後モノマーの総量を、滴下ロートを用い15分間かけて添加した。5時間後、反応フラスコを室温まで冷却し、No.4シンターで濾過した。生成物を真空下60℃で乾燥した。
【0078】
重合開始剤の最低量を使用する反応については(E1, E2)、重合していないモノマーが第二層として水の上に認められ、強力なスチレン臭が明らかであった。重合開始剤の最高量を使用する反応について(E3)、未反応のモノマーは検出されなかった。E2重合は、改質されたカーボンブラックを除く以外は反復した;この反応はラテックスを生じた。この反応生成物をDSCにより温度範囲0〜200℃で分析した。
【0079】
Cycolac SAN 29283を、被覆された及び被覆されない改質されたカーボンブラックの2銘柄と配合した(Regal 80(登録商標)及びSterling 4620(登録商標)カーボンブラック)。配合は、Banburyミキサー中で、表3にまとめた混合条件下で行った。調製した化合物及びそれらの分析データを表4に示した。
【0080】
【表4】

【0081】
この化合物のシートへの加工は、150℃での通常の圧縮成形により行った。厚さ3mmの成形されたシートを帯のこで切断し、引張り試験用の試験片150mm x 25mm x 3mmを作成した。これらの試験片を、ルーターマシーンを用い、ASTM D638規格に合うよう、ダンベル型試験片に機械処理し、その後表面の周縁のきずを除くために研磨した。衝撃試験用試験片は、厚さ6mmのシートを、150mm x 25mm x 6mmに切断した。試験片を研磨し、かつ微粉砕装置を用いて様々な深さにノッチを入れ、かつ試験直前にノッチの根元に新たな安全かみそりの刃を滑らせてノッチを鋭利にした。この衝撃試験用試験片は、ASTM D5045-95に従い作成しかつ試験した。
【0082】
【表5】

【0083】
実施例3
実施例1で述べたものよりもTgが低い、スチレン、アクリル酸ブチルおよびメタクリル酸グリシジルのターポリマー(PS/BA/ GMA)を合成するために種々の研究を行った。
スチレン(Aldrich, 98%)は分液漏斗中の10%水酸化ナトリウム溶液で数回、次いで蒸留水で数回、それぞれ洗浄した。この抑制剤無添加モノマーを無水硫酸カルシウム上で乾燥させてから、減圧下、窒素雰囲気中で蒸留した。アクリル酸ブチル(Aldrich, 97%)は分液漏斗中の2%水酸化ナトリウム溶液で数回、次いで蒸留水で数回、それぞれ洗浄した。この抑制剤無添加モノマーを無水硫酸カルシウム上で乾燥させてからフィルターで分離した。アゾビス(イソブチルニトリル)(AZBN)を、30℃で飽和トルエン溶液を形成してから溶液を氷水浴で0℃に冷却することにより精製した。メタクリル酸グリシジル(Aldrich, 97%)は供給された状態のままで使用した。
【0084】
ターポリマーはトルエン使用の溶液重合で、初期溶媒モノマー重量比を70:30として調製した。AZBNは抑制剤として、モノマーの0.1質量%濃度で使用した。重合は窒素雰囲気下、60℃で30時間にわたりかく拌しながら進行させた。異なるコモノマー組成で2種類のターポリマーを調製した。
使用したコモノマー組成を表5に示す。
【0085】
【表6】

【0086】
【表7】

【0087】
ターポリマー(PS/BA/GMA)1はTgが14℃であり、アクリル酸ブチル分が多いターポリマー(PS/BA/GMA)2はTgが−30℃である。
カーボンブラック(CB)または改質カーボンブラック(MCB)粒子の被覆材には低Tg(−30℃)のターポリマー(PS/BA/GMA)2を選んだ。被覆は前の報告書に記載されているのと同じ手順を用いる溶液蒸発法で行った。調製された状態のままのターポリマー溶液に多様な粒子を分散させてから溶媒を制御蒸発させた。試料の被覆後、40℃で減圧乾燥させ厚さ20 nmの被膜と硬質固体を得た。
【0088】
この被覆試料はDSC(示差走査熱量分析)で特性を調べたが、−30℃付近で単一Tgを示すターポリマーと同様の痕跡を示す。
多量(〜800 g)のポリマー被覆改質カーボンブラックを前述の溶液蒸発法で調製した。被覆に使用したポリマーはスチレン、アクリル酸ブチルおよびメタクリル酸グリシジルのターポリマー(PS/BA/GMA)2である。この特別に合成したターポリマーによる改質カーボンブラック(MCB)の目標被覆厚は20 nmであった。乳鉢を使用して被覆MCBを粉砕し微粉にした。次いで、この被覆MCBをSANと配合した。
【0089】
Cycolac SAN 29283は2種類の被覆および非被覆CB(カーボンブラックRegal 80(登録商標)およびSterling 4620(登録商標))と配合した。配合はBanburyミキサーを使用して表7にまとめた混練条件で行った。得られたコンパウンドとその分析データは表8のとおりである。
CPIは表8記載のコンパウンドのいくつかについて、引張試験片の射出成形をISO R527 typeIIに従って行った。
【0090】
【表8】

【0091】
【表9】

【0092】
実施例4
2種類のモノマー[スチレンとアクリル酸ブチル]および2種類の開始剤[4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)と過硫酸アンモニウム]を使用して改質カーボンブラック(MCB)表面にその場でポリマー形成を行うための乳化重合法の使用についても種々研究した。使用したCBはSterling 4620に-C6H4SO3Na基を結合させたものである。
【0093】
乳化重合に使用した材料はスチレン(Aldrich, 98%)、アクリル酸ブチル(Aldrich, 97%)(セクション3.1.1記載の要領で精製)、窒素雰囲気下で沸騰させ溶存酸素を除去した純水、メタノールで洗浄し恒量まで乾燥させたMCB、それにどちらも供給された状態のまま使用した2種類の開始剤、すなわち4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)(Aldrich, 75+%)と過硫酸アンモニウム(Aldrich, 99.0%)である。
【0094】
調べた3組のモノマー/開始剤の組合せについて合計30回の乳化重合を実施した。各組合せ内の反応の差は使用開始剤のレベルにあった。調べた組合せは次のとおりである。
a) スチレン/4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)
b) スチレン/過硫酸アンモニウム
c) アクリル酸ブチル/過硫酸アンモニウム
重合は密封系内で70℃で実施した。20 nmの被覆を実現するために形成されるべきモノマー量の計算は官能化CBと同径の同等非多孔質球体の表面積と体積によった。重合は次の要領で実施した。
【0095】
反応フラスコにまず水(25 g)とMCB(10 g)を入れた。反応フラスコの内容物を連続的にかく拌し、また窒素流を確立した。フラスコの内容物が浴温度に達してから、開始剤水溶液(5 g)を加え、系を密封した。次いで、モノマーを滴下漏斗で15分間に全量加えた。10時間後、反応フラスコを室温に冷却し、反応生成物をNo.4シンターでろ過、回収してから、60℃で減圧乾燥させた。ろ過処理前にアリコートを分取して、ガス−液体クロマトグラフィー(GLC)を使用した反応の転化率の計算に備えた。
【0096】
乳化重合に使用したコンパウンドは表9、10および11に示すとおりである。
乳化重合の転化率を計算するために、反応後に分取したアリコート中の未反応モノマー量をGLCで測定した。アリコートにAnala Rメタノールを加えて水とモノマーの混和性を高めた。GLCはPerkin-Elmer Autosystem Gas Chromatographで行った。定量分析は内部標準としてプロパン-l-オールを使用して行った。
【0097】
【表10】

【0098】
【表11】

【0099】
【表12】

【0100】
乳化重合生成物中のポリマーの存在はIR吸収スペクトル測定を使用して検出した。乳化重合生成物の沈降も重合反応成功の指標として用いた。したがって、これは乳化重合が成功しMCB粒子上にポリマーが均一に形成されたことを示す。
実施例5
次の乳化重合経路について次の点も種々研究した。
a) 下記を使用する乳化重合経路
1) 単一モノマー:アクリル酸ブチル(BA)
2) モノマー混合物:BAとメタクリル酸アリル(ALMA)。相対モノマー比の影響も調べた。
b) CBまたはMCB上の被膜厚の変動。
【0101】
どのコンパウンドにも純水を、窒素雰囲気下で沸騰させて溶存酸素を除去してから使用した。モノマーはアクリル酸ブチル(BA, Aldrich, 97%)とメタクリル酸アリル(ALMA, Aldrich, 98%)の2種類を使用した。BAは2%水酸化ナトリウムで数回洗浄してから使用した。ALMAは供給された状態のままで使用した。MCB(Sterling 4620(登録商標)に-C6H4SO3Na基を結合させたものと-C6H4CH=CH2基を結合させたもの)はメタノールで洗浄後、恒量に乾燥させてから、また開始剤の過硫酸アンモニウム(Aldrich, 99.0%)は供給された状態のままで、それぞれ使用した。重合は一種の半連続式乳化重合法で行った。
【0102】
湯浴で70℃に保持した丸底フラスコに水とMCBを入れた。フラスコ内の気体は窒素で置換した。この混合物が浴温度に達した後、開始剤を加え、Watson-Marlowペリスタポンプを使用してモノマーを反応容器中に定流量で送った。反応を10時間持続させてから室温に冷却し、No.4シンターでろ過し、60℃で減圧乾燥させた。被膜厚を15 nm超にするために、反応時間が3時間経過後に追加の開始剤水溶液を加えた。
【0103】
減量・抽出実験、ガス−液体クロマトグラフィー(GLC)および示差走査熱量分析(DSC)により乳化重合生成物を分析した。試料の減量を土台にした重量分析法と抽出実験法とを用いて試料中のポリマー存在量を定量的に計算した。これらの方法は次のとおりであった。
a) 炉法
この方法では、十分に乾燥させた乳化重合生成物を550℃の炉内に3時間保持して、ポリマーを分解させた。非被覆MCB試料も同じ条件下で処理した。
b) 抽出法
この方法では、十分に乾燥させた重合生成物をクロロホルムで抽出した。クロロホルムの沸点でSoxhle抽出を3時間実施した。未被覆MCB試料も同じ条件下で処理した。
【0104】
GLCは未反応モノマー量の測定に使用した。GLCにはPerkin-Elmer 8500 Gas Chromatographを使用した。溶液(1 μl)をCarbowax 20Mカラム(全長25 m、内径0.3 mm)に7.0 psiの注入圧力で注入した。オーブン温度は60℃から160℃へと7℃ min-1の速度で引き上げた。この方法では、乳化重合の転化率を計算するために反応系からアリコートを分取した。アリコートにAnalaRメタノールを加えて水とモノマーの混和性を高めた。定量分析は内部標準としてプロパン-l-オールを使用して行った。
【0105】
ポリマーを検出するために、反応生成物を対象にDSC実験を行った。実験は窒素雰囲気下で、20℃ min-1の加熱速度で、DuPont Thermal Analyst 2000装置を使用し、DuPont 910セルベースにDSCセルを装着して行った。反応生成物は分析前に、真空オーブンを使用して40℃で恒量に乾燥させた。
種々のモノマー組成で数回の乳化重合を実施した。すべての乳化重合には水中分散性にすぐれたMCB(Sterling(登録商標)CBに-C6H4SO3Na基と-C6H4CH=CH2基を結合させたもの)を使用した。目標被膜厚はいずれの場合も10 nmであった。実施した乳化重合の代表例3件を表12に示す。
【0106】
【表13】

【0107】
これらの研究では、ホモポリマーがゴム状の性質を帯びるという理由でアクリル酸ブチルを使用した。場合によっては、架橋を起こさせるためにALMAも使用した。この架橋はポリマー分子の運動を少なくすることにより剪断抵抗を増すことができるし、また配合時の被覆損失の防止にもなる。
減量・抽出実験で得られた結果を表13に示す。
【0108】
【表14】

【0109】
特定の被覆ポリマー組成(98 mol% BA/2 mol% ALMA)に関して被覆厚変動の影響を調べた。(-C6H4SO3Na/-C6H4CH=CH2)基を結合させたSterling(登録商標)カーボンブラック上で数回の乳化重合を2 mol% ALMA、98 mol% BAのコモノマー組成で実施した。表3は最も代表的な重合の組成を示す。
E6重合は使用開始剤量では完全反応に至らず、被覆厚20 nm以上の乳化重合には追加の開始剤が必要だったことを示唆している。
【0110】
【表15】

【0111】
【表16】

【0112】
実施例6
種々の乳化重合から実施例5のE3のコンパウンドを選んで大規模乳化重合向けにスケールアップすることにした。
-C6H4SO3Na/-C6H4CH=CH2基を結合させたカーボンブラックから乳化重合法で2回分量(〜450 g)のポリマー被覆MCBを調製した。被覆に使用したモノマーはアクリル酸ブチル(BA)とメタクリル酸アリル(ALMA)である。目標被覆厚は10 nmであった。重合手順は前述のとおりとした。反応後、得られた生成物をろ過、乾燥してから粉砕して微粉とした。生成物の特性をガス−液体クロマトグラフィー(GLC)、示差走査熱量分析(DSC)および熱重量測定法(TG)で調べた。GLCからは反応が完全だったことが、DSCからはポリマーのTgが−43℃であることが、またTGからは減量率が約10.5%だったことがそれぞれ判明した。
【0113】
特性を調べ終わってから、2回分量を1つに混ぜ、さらにSANと配合した。ポリマー被覆MCBの組成は表16に示すとおりである。
【0114】
【表17】

【0115】
被覆MCBにCycolac SAN 29283を配合した。配合はBanburyミキサーを使用して、表17にまとめた混練条件で行った。調製されたコンパウンドとその分析データを表18に示す。
【0116】
【表18】

【0117】
【表19】

【0118】
コンパウンドの加工は前述の要領で行った。引張試験片はASTM D638規格に従って作製した。衝撃試験片はASTM D5045-95に従って作製し試験した。Dynamic Mehanical Thermal Analysis(DMTA)による分析に備えて、扁平試験片(45 mm×10
mm×3 mm)も作製した。
表18に示した一部のコンパウンドについて引張試験片の射出成形をISO R527 typeIIに従って行った。
【0119】
SANと被覆MCBを含有する次のコンパウンドシリーズについて特性を調べた(表19)。
SANと溶液蒸発被覆MCBを含有するコンパウンド。被覆に使用したポリマーは前述のスチレン、アクリロニトリルおよびメタクリル酸グリシジルのターポリマー(PS/BA/GMA)である。この方法で2種類のMCBを被覆した。
【0120】
SANと乳化被覆MCBを含有するコンパウンド(表18)。
引張試験は様々なコンパウンドの引張特性を求めるためにASTM D638に従ってInstron 1122引張試験機で行った。引張試験では標点距離を64 mm、クロスヘッド速度を10 mm min-1とした。Instron 2630-30伸び計を使用してひずみを10%まで正確に測定した。各材料につき合計6個の試験片を試験し、機械的性質の平均値を計算した。
【0121】
表20はコンパウンドの引張特性を示す。比較のために無添加SANおよび非被覆CB添加SANコンパウンドの値も記す。
【0122】
【表20】

【0123】
【表21】

【0124】
三点曲げ単縁端切欠き衝撃試験を、MK4マイクロプロセッサーおよびPCにインタフェースしたCeast 6545デジタル振り子(解放角は15度に設定)を使用して行った。標準試験片は、幅Wの4倍に名目上等しい支持台間隔S(=96.0 mm)で三点曲げ荷重を受ける単縁端切欠き付きビームであった。
切欠きビーム厚比(a/w)は0.50±0.05であり、各材料につき少なくとも6個の試験片を分析し平均値を計算した。ASTM D 5045-95から計算した破壊エネルギーの測定値GIcを表21に示す。
【0125】
図5(A)〜(C)はCB含量のGIcに対する影響を示す。非被覆CBコンパウンドの場合には、CB含量の上昇に伴いGIc値の顕著な低下が見られる。この傾向は乳化被覆MCBの場合でも変わらない。対照的に、溶液被覆コンパウンドはCB添加量の上昇に伴いGIc値も上昇するという逆の傾向を示す。添加SANは添加率50%の場合でさえ無添加材よりも高靱性になることが判明した。
【0126】
【表22】

【0127】
実施例7
どのコンパウンドにも窒素雰囲気下で沸騰させ溶存酸素を除去した純水を使用した。使用したモノマーはアクリル酸ブチル(BA, Aldrich, 97%)とメタクリル酸アリル(ALMA, Aldrich, 98%)の2種類である。アクリル酸ブチルは前述のように2%水酸化ナトリウムで数回洗浄してから使用した。メタクリル酸アリルは供給された状態のままで使用した。カーボンブラックSterling(-C6H4SO3Na/-C6H4CH=CH2)はメタノールで洗浄し、恒量に乾燥させた。開始剤の過硫酸アンモニウム(Aldrich, 99.0%)は供給された状態のままで使用した。
【0128】
重合は一種の半連続式乳化重合法で行った。湯浴で70℃に保持した丸底フラスコに水とカーボンブラックを入れた。フラスコ内の気体を窒素で置換した。混合物が浴温度に達した後、開始剤を加え、またWatson-Marlowペリスタポンプを使用してモノマーを反応容器に定流量で送った。(水に溶かした)追加量の開始剤もシリンジポンプを使用して3時間にわたり連続的に加えた。開始剤を低流量(〜0.23 ml min-1)で追加したのは、全量を一挙に追加したときに生じるおそれのある反応の不安定化を防ぐためである。
【0129】
アリコート(〜3 g)を注射器で定期的に分取して、ガス−液体クロマトグラフィー(GLC)で分析し未反応モノマーのレベルを求めた。完全転化したことをGLCが示唆するまで重合反応を継続させた。その後、重合系を室温に冷却し、No.4シンターでろ過し60℃で減圧乾燥させた。表22は各乳化重合に使用したコンパウンドを示す。
【0130】
【表23】

【0131】
アリコート中に残存する未反応モノマーの量を求めるために速度論的研究を行った。それによれば、重合初期段階(0〜120分)で高レベル(〜90%)の瞬時転化が起きていることが判明した。次いで瞬時転化は減少に転じモノマー添加の終了まで減少し続けた。この減少はE2(被覆厚30 nm)のほうが著しかった。この時点から、瞬時添加は増加の一途をたどり反応開始後300分で100%転化が達成された。
【0132】
どちらのスケールアップ重合(E-100A-20とE-100A-30)でも2回分のポリマー被覆カーボンブラックを調製した。前述のように、カーボンブラックは洗浄し、乾燥させたSterling(-C6H4SO3Na/-C6H4CH=CH2)(試料番号010-100A)であり、被覆に使用したモノマーは混合比98:2 mol%のアクリル酸ブチル(BA)とメタクリル酸アリル(ALMA)である。目標被覆厚は試料E-100A-20が20 nm、E-100A-30が30 nmであった。重合手順は前述のとおりとした。反応後、得られた生成物をろ過乾燥し粉砕して微粉とした。表23は被覆カーボンブラックのスケールアップ組成の詳細である。
【0133】
【表24】

【0134】
ポリマー被覆の検出を目的に反応生成物を対象にDSC実験を行った。実験はDuPont Thermal Analyst 2000装置を用いDuPont 910セルベースにDSCセルを装着して窒素雰囲気下、20℃ min-1の加熱速度で実施した。生成物は分析前に40℃で恒量に減圧乾燥した。
このスケールアップ生成物はIR吸収スペクトル測定で特性も調べた。赤外線スペクトルはKBrディスクとPerkin-Elmer 2000 FT-IRスペクトロメーターを使用して得た。ポリマー被覆(BA/ ALMA)の赤外線吸収スペクトルの主な特徴は、C=O伸縮に由来する1735 cm-1での強いピークとC−O伸縮振動に由来する1160 cm-1での強いバンドである。
【0135】
スケールアップ生成物を対象に分散性実験も行った。少量(〜1 g)の乾燥生成物(E-100A-10、E-100A-20およびE-100A-30)を水(〜10 g)に分散させ、沈殿するにまかせた。この実験により、E-100A-30とE-100A-20の沈殿はきわめて急速であることが観察され、被膜厚の増大に伴い水中分散性が低下することが判明した。E-100A-10は沈殿にもっと長い時間を要した。これらの実験はポリマーがカーボンブラック上にうまく被覆されたことを示し、また被膜厚変化の影響も定性的に示した。
【0136】
2セットのコンパウンドを調製した。第1のセットはCycolac SAN 29283と被覆カーボンブラック(E-100A-20)を様々な比率で配合して調製し、第2のセットはこのSANとE-100A-30を配合して調製した。配合はBanburyミキサーを用いて、表24に示す混練条件で行った。得られたコンパウンドとその分析データは表25に示すとおりである。
【0137】
【表25】

【0138】
【表26】

【0139】
コンパウンドの加工は前述の要領で行った。引張試験片はASTM D638規格に従って作製した。衝撃試験片はASTM D5045-95に従って作製し試験した。Dynamic Mehanical Thermal Analysis(DMTA)による分析に備えて、扁平試験片(45 mm×10mm×3 mm)も作製した。
表6に示した一部のコンパウンドについて引張試験片の射出成形をISO R527 typeIIに従って行った。コンパウンドE-100A-30-10およびE-100A-30-30もISO R527
typeIの推奨寸法を使用して射出成形した。
【0140】
引張試験は様々なコンパウンドの引張特性を求めるためにASTM D638に従ってInstron 1122引張試験機で行った。引張試験では標点距離を64 mm、クロスヘッド速度を10 mm min-1とした。Instron 2630-30伸び計を使用してひずみを10%まで正確に測定した。各材料につき合計6個の試験片を試験し、機械的性質の平均値を計算した。
【0141】
表26はコンパウンドの引張特性を示す。比較のために無添加SANおよび非被覆CB添加SANコンパウンドの値も記す。図4〜6は、コンパウンドのカーボンブラック含量とヤング率E、極限応力σu、および極限ひずみεuの変動の関係を示す。E-100A-10で調製したコンパウンドから得た値も比較のために示す。
【0142】
【表27】

【0143】
【表28】

【0144】
表26および27は、ヤング率、極限応力および極限ひずみが圧縮成形試験片の場合と同様にCB含量と同じ傾向をたどることを示している。ただし、被覆試料E-100A-30と他試料(E-100A-10およびE-100A-20)の間にはふるまいに有意の差が存在することは注目に値する。E-100A-30を含む試料はヤング率がやや高めの値を示し極限応力およびひずみが著しく高い値を示している。これは、この試料に使用したカーボンブラックに対するポリマー被覆の比(〜0.4 gポリマー/1 g CB)が機械的性質を変えるのに適切であることを示唆する。この同じポリマー被覆/カーボンブラック比は、機械的性質の改善を示した溶液被覆CBにも使用した。
【0145】
三点曲げ単縁端切欠き衝撃試験を、MK4マイクロプロセッサーおよびPCにインタフェースしたCeast 6545デジタル振り子(解放角は15度に設定)を使用して行った。標準試験片は、幅Wの4倍に名目上等しい支持台間隔S(=96.0 mm)で三点曲げ荷重を受ける単縁端切欠き付きビームであった。
切欠きビーム厚比(a/w)は0.50±0.05であり、各材料につき少なくとも6個の試験片を分析し平均値を計算した。ASTM D 5045-95から計算した破壊エネルギーの測定値GIcを表28に示す。
【0146】
【表29】

【0147】
非被覆CBコンパウンドではCB含量の上昇に伴いGIc値の著減が見られるが、この同じ傾向が乳化被覆CBでも観測された。しかし、被覆厚の異なるCB間に有意の差はないものの、スケールを変えて値をプロットすると30 nm被覆CBコンパウンドの破壊エネルギーがやや高めの値になる。30 nm被膜厚のふるまいの10および20 nmと比較した場合のこの差は射出成形試験片の引張特性でも観測された。
実施例8
さらに3種のコンパウンドを調製した。使用するカーボンブラックは、やはりSterlingであるが単一処理(-C6H4SO3Na基だけを付加)したものに限った。このコンパウンドセットの変数はポリマー被覆組成、すなわち種々の比のアクリル酸ブチル(BA):メタクリル酸アリル(ALMA)であった。メタクリル酸メチル(MMA)やスチレン(S)などのような新モノマーも導入した。これらの変数は、
・異なる種類のCB(二重処理対単一処理)
・異なる架橋剤レベル(ALMA 2 mol%対1 mol%)
・異なるポリマー被覆組成(BA:ALMA対BA:ALMA:MMA:S)
で調製したスケールアップコンパウンドを比較することにより、被覆CB添加SANの分散性や機械的性質への影響を調べることを可能にする。
【0148】
30 nm被膜厚を選んだのはカーボンブラック重量%(wt% CB)に対する被覆ポリマー重量%(wt% polymer)の比を約0.4 g polymer/1 g CBにするためである。この比は、非被覆CBに比して機械的性質の改善を示した溶液蒸発法[S-NH2-20(BA)とR-NH2-20(BA)]に使用した比とほぼ同じである。
まず、適当な反応物組成と反応時間を求めるために小規模反応を実施した。速度論的研究も行った。この予備反応手順は実施例7で述べたとおりである。アクリル酸ブチル(BA)は前述の要領で洗浄した。メタクリル酸メチル(MMA, Aldrich,
98.0%)は2%水酸化ナトリウムで数回洗浄してから使用し、またスチレン(S, Aldrich, 98.0%)は前の報告書で述べた要領で蒸留してから使用した。メタクリル酸アリルは供給されたままの状態で使用した。カーボンブラック(スルホン化Sterling 4620)はメタノールで洗浄し、恒量に乾燥させ、過硫酸アンモニウム(Aldtrich, 99.0%)は供給された状態のままで使用した。
【0149】
重合は一種の半連続式乳化重合法で行った。表29は最も代表的な重合の組成を示す。
【0150】
【表30】

【0151】
表29が示すように、重合E3は使用した開始剤の量では長い反応時間(10時間)後でも完全反応には至らなかった。この開始剤レベルは、二重処理Sterling(-C6H4SO3Na/-C6H4CH=CH2)という異なる種類のCBを使用した同じポリマー被覆重合の場合と同じであった。これは、CBに対して行われた2番目の処理がCB表面を遮断し、開始剤の消費を少なくしていることを示唆する。開始剤の量を増やして重合E3を再実施した(E4)が、今度は転化が完全であった。重合E3では初期反応段階で瞬時転化の急減が見られるが、これは結局〜51%で安定する。反応時間150分で追加開始剤を添加しても転化率に有意の影響は見られない。重合反応E4は、開始剤レベルを引き上げた後で転化率が100%に達したことを示す。
【0152】
重合E5はE4に類似するが、この場合はBA:ALMA比が99:1 mol%であった。瞬時転化で反応時間20〜80分の間に90%超の転化率が実現した。その後、転化が鈍り、追加量の開始剤を添加すると再び転化が活発になり、反応時間220分程度で転化率100%となった。
これらの実験から、E4、E5およびE6の組成をスケールアップ被覆法に採用することにした。
【0153】
各スケールアップ[E-16A-30、E-16A-30(99BA)およびE-16A-30(94BA)]用に2回分のポリマー被覆CBを調製した。使用CBは前述のような洗浄、乾燥済みSterling(-C6H4SO3Na)(試料番号T016-84A)であった。スケールアップE-16A-30およびE-16A-30 (99BA)で被覆材に使用したモノマーはアクリル酸ブチル(BA)とメタクリル酸アリル(ALMA)で、その配合比はそれぞれ98:2、99:1 mol%であった。スケールアップE-16A-30(94BA)で使用したモノマーはBA、ALAM、メタクリル酸メチル(MMA)およびスチレン(S)で、配合比は94:1:3:2 mol%であった。目標被膜厚は30 nmとした。重合手順は前述のとおりであった。反応はGLCでモニターした。反応後、得られた生成物をろ過、乾燥し、粉砕して微粉とした。
【0154】
【表31】

【0155】
被覆ポリマーを検出しガラス転移温度Tgを決定するために反応生成物を対象にDSC実験を行った。
DSC結果からE-16A-30とE-16A-30(99BA)のTgは−43℃と判明した(これは反応E-100A-30の−44℃とほぼ同じであった)。スケールアップE-16A-30(94BA)のTgは−30℃であった。Tgがこのように高くなったのは、ポリマーのBA含量が低い(94
mol%)ためであり、またBAよりもガラス状の特徴が強くゴム状の特徴が弱いMMAとSが存在するためである。
【0156】
スケールアップ生成物はIRスペクトル測定でも特性を調べた。スケールアップ試料のIRスペクトルの主な特徴はポリマー被覆中のBAの存在に起因するピーク(C=O伸縮に起因する1735 cm-1での強いピークとC−O伸縮振動に起因する1160 cm-1での強いバンド)であった。この場合もスペクトルはCBに起因する高レベルのノイズを示す。試料E-16A-30(94BA)では被覆に使用した他モノマー(S、MMAまたはALMA)に起因するピークは明白でない。これらのモノマーはBAに比して配合比が低いためである。
【0157】
これらのスケールアップ生成物を対象に分散性実験も行った。この単純な実験から、E-16A-30、E-16A-30(99BA)およびE-16A-30 (94BA)は水に分散させた後、急速に沈殿することが判明した。これはポリマーがCB上にうまく被覆されたことを示唆する。水面層が生じないのは、ポリマーが別個の相としては重合しないことを示唆する。
【0158】
本明細書とその中で開示された発明の実施を考察すれば、本発明の他の実施態様は当業者には自明であろう。明細書と実施例は例示にすぎず、本発明の真の範囲と精神は請求項で示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質炭素生成物を少なくとも1種類のポリマーで少なくとも部分的に被覆してなるポリマー被覆改質炭素生成物。
【請求項2】
改質炭素生成物が炭素生成物に少なくとも1個の有機基を結合させてなる請求項1記載のポリマー被覆改質炭素生成物。
【請求項3】
少なくとも1種類のポリマーが単層中に存在する請求項1記載のポリマー被覆改質炭素生成物。
【請求項4】
少なくとも1種類のポリマーが多層中に存在し、その少なくとも1種類のポリマーが各層で同じであるかまたは異なる請求項1記載のポリマー被覆改質炭素生成物。
【請求項5】
有機基がイオン基、イオン化可能基または極性基で置換されている請求項2記載のポリマー被覆改質炭素生成物。
【請求項6】
イオン基、イオン化可能基または極性基がスルホン酸基またはその塩、スルフィン酸基またはその塩、カルボン酸基またはその塩、ホスホン酸基またはその塩、もしくは第四級アンモニウム基である請求項5記載のポリマー被覆改質炭素生成物。
【請求項7】
有機基が置換型または非置換型スルホフェニル基またはその塩である、もしくは有機基が置換型または非置換型(ポリスルホ)フェニル基またはその塩である請求項2記載のポリマー被覆改質炭素生成物。
【請求項8】
有機基が置換型または非置換型スルホナフチル基またはその塩である、もしくは有機基が置換型または非置換型(ポリスルホ)ナフチル基またはその塩である請求項2記載のポリマー被覆改質炭素生成物。
【請求項9】
有機基が置換型または非置換型p-スルホフェニルまたはその塩である請求項2記載のポリマー被覆改質炭素生成物。
【請求項10】
有機基がp-C6H4SO3Naである請求項2記載のポリマー被覆改質炭素生成物。
【請求項11】
炭素生成物がカーボンブラック、グラファイト、ガラス質炭素、活性炭素、活性チャコール、炭素繊維、またはそれらの混合物である請求項2記載のポリマー被覆改質炭素生成物。
【請求項12】
炭素生成物がカーボンブラックである請求項2記載のポリマー被覆改質炭素生成物。
【請求項13】
有機基が少なくとも1個の芳香族基を含み、前記芳香族基が炭素生成物に直接結合している請求項2記載のポリマー被覆改質炭素生成物。
【請求項14】
有機基がC1-C12アルキル基を含み、前記アルキル基が炭素生成物に直接結合している請求項2記載のポリマー被覆改質炭素生成物。
【請求項15】
ポリマーがポリエチレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリイソブチレン、ポリスチレン、ポリカプロラクタム(ナイロン)、ポリイソプレン、ポリアミド、ポリカーボネート、高分子電解質、ポリエステル、ポリエーテル、(ポリヒドロキシ)ベンゼン、ポリイミド、含硫黄ポリマー、ポリオレフィン、ポリメチルベンゼン、ポリスチレン、スチレンコポリマー、アセタールポリマー、アクリルポリマー、アクリロニトリルポリマーおよびコポリマー、ハロゲンを含むポリオレフィン、フルオロポリマー、アイオノマーポリマー、含ケトン基ポリマー、液晶ポリマー、ポリアミド-イミド、オレフィン二重結合を含むポリマー、ポリオレフィンコポリマー、ポリフェニレンオキシド、ポリウレタン、熱可塑性エラストマー、シリコーンポリマー、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、ウレア樹脂、メラミン樹脂、またはフェノール-ホルムアルデヒド樹脂である請求項1記載のポリマー被覆改質炭素生成物。
【請求項16】
少なくとも1種類のポリマーが改質炭素生成物を実質的に被覆する請求項1記載のポリマー被覆改質炭素生成物。
【請求項17】
少なくとも1種類のポリマーが改質炭素生成物を部分的に被覆する請求項1記載のポリマー被覆改質炭素生成物。
【請求項18】
少なくとも1種類のポリマーが厚さ約1 nmないし約100 nmである請求項1記載のポリマー被覆改質炭素生成物。
【請求項19】
改質炭素生成物が炭素相と含ケイ素種相とを含む集合体である請求項1記載のポリマー被覆改質炭素生成物。
【請求項20】
改質炭素生成物が炭素相と含金属種相とを含む集合体である請求項1記載のポリマー被覆改質炭素生成物。
【請求項21】
改質炭素生成物が少なくとも1種類の部分的シリカ被覆カーボンブラックを含む請求項1記載のポリマー被覆改質炭素生成物。
【請求項22】
炭素生成物がカーボンブラック、グラファイト、ガラス質炭素、活性炭素、活性チャコール、炭素繊維、またはそれらの混合物である請求項3記載のポリマー被覆改質炭素生成物。
【請求項23】
炭素生成物がカーボンブラックである請求項5記載のポリマー被覆改質炭素生成物。
【請求項24】
改質炭素生成物に結合させた有機基をさらに含む請求項19記載のポリマー被覆改質炭素生成物。
【請求項25】
改質炭素生成物に結合させた有機基をさらに含む請求項20記載のポリマー被覆改質炭素生成物。
【請求項26】
改質炭素生成物に結合させた有機基をさらに含む請求項21記載のポリマー被覆改質炭素生成物。
【請求項27】
水にもとづく媒質中で開始剤、少なくとも1種類のモノマー、および改質炭素生成物を混合することとポリマー被覆改質炭素生成物を形成するための重合を行うこととを含むポリマー被覆改質炭素生成物を製造する方法において、前記モノマーがフリーラジカル重合により重合される能力を有するポリマー被覆炭素生成物を製造する方法。
【請求項28】
改質炭素生成物が炭素生成物に結合された少なくとも1個の有機基を含む請求項27記載の方法。
【請求項29】
少なくとも1個の有機基がイオン基、イオン化可能基または極性基で置換されていて、かつ改質炭素生成物が水にもとづく媒質中で分散性を有する請求項28記載の方法。
【請求項30】
開始剤が過酸化物、アゾ化合物、または銀アルキル試薬である請求項27記載の方法。
【請求項31】
重合が乳化重合である請求項27記載の方法。
【請求項32】
重合が懸濁重合である請求項27記載の方法。
【請求項33】
重合が縮合またはラジカル重合である請求項27記載の方法。
【請求項34】
重合が連鎖生長重合である請求項27記載の方法。
【請求項35】
重合が段階生長重合である請求項27記載の方法。
【請求項36】
水性媒質が水である請求項27記載の方法。
【請求項37】
水にもとづく媒質に界面活性剤を導入することをさらに含む請求項27記載の方法。
【請求項38】
重合時に改質炭素生成物を十分に分散させるために水にもとづく媒質をかく拌することをさらに含む請求項27記載の方法。
【請求項39】
イオン基、イオン化可能基または極性基がスルホン酸基またはその塩、スルフィン酸基またはその塩、カルボン酸基またはその塩、ホスホン酸基またはその塩、もしくは第四級アンモニウム基である請求項29記載の方法。
【請求項40】
有機基が置換型または非置換型スルホフェニル基またはその塩である、もしくは有機基が置換型または非置換型(ポリスルホ)フェニル基またはその塩である請求項28記載の方法。
【請求項41】
有機基が置換型または非置換型スルホナフチル基またはその塩である、もしくは有機基が置換型または非置換型(ポリスルホ)ナフチル基またはその塩である請求項28記載の方法。
【請求項42】
有機基が置換型または非置換型p-スルホフェニルまたはその塩である請求項28記載の方法。
【請求項43】
有機基がp-C6H4SO3Naである請求項28記載の方法。
【請求項44】
炭素生成物がカーボンブラック、グラファイト、ガラス質炭素、微粉炭素、活性炭素、活性チャコール、炭素繊維、またはそれらの混合物である請求項28記載の方法。
【請求項45】
炭素生成物がカーボンブラックである請求項28記載の方法。
【請求項46】
モノマーがスチレン、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル、アクリル酸ブチルである請求項27記載の方法。
【請求項47】
少なくとも1種類の改質炭素生成物、少なくとも1種類の溶媒、および前記溶媒中で溶解することができる少なくとも1種類のポリマーを混合して、前記少なくとも1種類のポリマーをして前記少なくとも1種類の改質炭素生成物を少なくとも部分的に被覆させるようにすることと前記溶媒を分離除去することとを含むポリマー被覆改質炭素生成物を製造する方法。
【請求項48】
少なくとも1種類の改質炭素生成物が炭素生成物に少なくとも1個の有機基を結合させてなる請求項47記載の方法。
【請求項49】
少なくとも1種類の有機基がイオン基、イオン化可能基または極性基である請求項48記載の方法。
【請求項50】
イオン基、イオン化可能基または極性基がスルホン酸基またはその塩、スルフィン酸基またはその塩、カルボン酸基またはその塩、ホスホン酸基またはその塩、もしくは第四級アンモニウム基である請求項49記載の方法。
【請求項51】
有機基が置換型または非置換型スルホフェニル基またはその塩である、もしくは有機基が置換型または非置換型(ポリスルホ)フェニル基またはその塩である請求項48記載の方法。
【請求項52】
有機基が置換型または非置換型スルホナフチル基またはその塩である、もしくは有機基が置換型または非置換型(ポリスルホ)ナフチル基またはその塩である請求項48記載の方法。
【請求項53】
有機基が置換型または非置換型p-スルホフェニルまたはその塩である請求項48記載の方法。
【請求項54】
有機基がp-C6H4SO3Naである請求項48記載の方法。
【請求項55】
炭素生成物がカーボンブラック、グラファイト、ガラス質炭素、活性炭素、活性チャコール、炭素繊維、またはそれらの混合物である請求項48記載の方法。
【請求項56】
炭素生成物がカーボンブラックである請求項48記載の方法。
【請求項57】
少なくとも1種類のポリマーがポリエチレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリイソブチレン、ポリスチレン、ポリカプロラクタム(ナイロン)、ポリイソプレン、ポリアミド、ポリカーボネート、高分子電解質、ポリエステル、ポリエーテル、(ポリヒドロキシ)ベンゼン、ポリイミド、含硫黄ポリマー、ポリオレフィン、ポリメチルベンゼン、ポリスチレン、スチレンコポリマー、アセタールポリマー、アクリルポリマー、アクリロニトリルポリマーおよびコポリマー、ハロゲンを含むポリオレフィン、フルオロポリマー、アイオノマーポリマー、含ケトン基ポリマー、液晶ポリマー、ポリアミド-イミド、オレフィン二重結合を含むポリマー、ポリオレフィンコポリマー、ポリフェニレンオキシド、ポリウレタン、熱可塑性エラストマー、シリコーンポリマー、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、ウレア樹脂、メラミン樹脂、またはフェノール-ホルムアルデヒド樹脂を含む請求項47記載の方法。
【請求項58】
少なくとも1種類の溶媒が有機溶媒である請求項47記載の方法。
【請求項59】
未反応モノマーが溶媒である請求項47記載の方法。
【請求項60】
溶媒が低連鎖移動定数をもつ請求項47記載の方法。
【請求項61】
少なくとも1種類のポリマーを含む溶媒が、少なくとも1種類の開始剤の存在下で少なくとも1種類のモノマーを少なくとも1種類の溶媒へと添加することにより溶解状態で調製される請求項47記載の方法。
【請求項62】
少なくとも1種類の開始剤が過酸化物、アゾ化合物、また銀アルキル試薬である請求項61記載の方法。
【請求項63】
少なくとも1種類のモノマーがオレフィンを含む請求項61記載の方法。
【請求項64】
溶媒の分離がろ過によって実現される請求項47記載の方法。
【請求項65】
分離が減圧、加熱、噴霧乾燥または凍結乾燥を含む蒸発法によって実現される請求項47記載の方法。
【請求項66】
ポリマー被覆改質炭素生成物を水にもとづく媒質から分離することをさらに含む請求項27記載の方法。
【請求項67】
分離が沈殿、ろ過、蒸発またはそれらの組合せによって実現される請求項66記載の方法。
【請求項68】
少なくとも1種類の改質炭素生成物が炭素生成物に少なくとも1種類の第2有機基をさらに結合させてなる請求項2記載のポリマー被覆改質炭素生成物。
【請求項69】
少なくとも1種類の第2有機基が少なくとも1個のアルケニル基置換芳香族基を含む請求項68記載のポリマー被覆改質炭素生成物。
【請求項70】
少なくとも1種類のポリマーで少なくとも部分的に被覆した少なくとも1種類の改質炭素生成物を含むポリマー被覆改質炭素生成物において、前記改質炭素生成物が少なくとも1個の有機基を結合させた少なくとも1種類の改質炭素生成物;炭素相と含ケイ素種相とを含む少なくとも1種類の集合体;炭素相と含金属種相とを含む少なくとも1種類の集合体;または少なくとも1種類の部分的シリカ被覆カーボンブラックを含むポリマー被覆改質炭素生成物。
【請求項71】
改質炭素生成物が少なくとも1種類の炭素生成物に少なくとも1個の有機基を結合させてなる請求項70記載のポリマー被覆改質炭素生成物。
【請求項72】
少なくとも1個の有機基が少なくとも1個の芳香族基または少なくとも1個のC1-C12アルキル基を炭素生成物に直接結合させてなる請求項71記載のポリマー被覆改質炭素生成物。
【請求項73】
改質炭素生成物が炭素相と含ケイ素種相とを含む集合体であって、随意に有機基をそれに結合させている請求項70記載のポリマー被覆改質炭素生成物。
【請求項74】
改質炭素生成物が炭素相と含金属種相とを含む集合体であって、随意に有機基をそれに結合させている請求項70記載のポリマー被覆改質炭素生成物。
【請求項75】
水にもとづく媒質中で少なくとも1種類の開始剤、少なくとも1種類のモノマー、少なくとも1種類の改質炭素生成物および少なくとも1種類の界面活性剤を混合することとポリマー被覆改質炭素生成物を形成するために乳化重合を行うこととを含むポリマー被覆改質炭素生成物を製造する方法において、前記モノマーがフリーラジカル重合により重合される能力を有し、また前記少なくとも1種類の改質炭素生成物が少なくとも1個の有機基を結合させた少なくとも1種類の改質炭素生成物、炭素相と含ケイ素種相とを含む少なくとも1種類の集合体、炭素相と含金属種相とを含む少なくとも1種類の集合体、または少なくとも1種類の部分的シリカ被覆カーボンブラックまたはそれらの組合せを含むポリマー被覆改質炭素生成物を製造する方法。
【請求項76】
複数のポリマー被覆改質炭素生成物において、各生成物が少なくとも1種類のポリマーで実質的に被覆されている複数のポリマー被覆改質炭素生成物。
【請求項77】
複数のポリマー被覆改質炭素生成物において、各生成物が実質的に一様なポリマー被膜厚を有する複数のポリマー被覆改質炭素生成物。
【請求項78】
少なくとも1種類の改質炭素生成物、少なくとも1種類のモノマー、および少なくとも1種類の有機溶媒を混合して前記少なくとも1種類のモノマーを前記少なくとも1種類の溶媒中に分散させることと前記少なくとも1種類の溶媒を分離除去して前記少なくとも1種類のポリマー被覆改質炭素生成物を回収することとを含む少なくとも1種類のポリマー被覆改質炭素生成物を製造する方法。
【請求項79】
ポリマーマトリックス中に請求項1記載のポリマー被覆改質炭素生成物を分散させてなるポリマー生成物。
【請求項80】
請求項1記載のポリマー被覆改質炭素生成物、ポリマーおよびワックスを含んでなるポリマーマスターバッチ。
【請求項81】
請求項1記載のポリマー被覆改質炭素生成物を含んでなるポリマーマスターバッチ。
【請求項82】
ポリマーが少なくとも1種類のウレタン、少なくとも1種類のポリエステル、少なくとも1種類のポリカーボネート、少なくとも1種類のポリイミド、少なくとも1種類のポリアミド、少なくとも1種類のポリウレア、またはそれらの組合せを含んでなる請求項78記載の方法。
【請求項83】
ポリマー生成物の衝撃強さを高めるための、ポリマー生成物形成時に十分な量の請求項1記載のポリマー被覆改質炭素生成物を導入することを含む方法。
【請求項84】
ポリマー生成物の引張強さを高めるための、ポリマー生成物形成時に十分な量の請求項1記載のポリマー被覆改質炭素生成物を導入することを含む方法。
【請求項85】
ポリマー被覆改質炭素生成物を製造するための、改質炭素生成物をポリマーラテックスを含む分散系に分散させ、もって分散系内で前記ポリマー被覆改質炭素生成物を形成させるようにすることを含む方法。
【請求項86】
ポリマー被覆改質炭素生成物が分散系から回収される請求項85記載の方法。
【請求項87】
ポリマー被覆改質炭素生成物が蒸発、凍結乾燥、噴霧乾燥、凝集、遠心、ろ過、またはそれらの組合せによって回収される請求項86記載の方法。
【請求項88】
少なくとも1種類のモノマーと少なくとも1種類の改質炭素生成物をその場での重合法またはプレフォームポリマーの溶液または分散系からの沈着法で結合させることにより請求項1記載のポリマー被覆改質炭素生成物を製造する方法。
【請求項89】
ポリマーマトリックス中に請求項2記載のポリマー被覆改質炭素生成物を分散させてなるポリマー生成物。
【請求項90】
ポリマーマトリックス中に請求項3記載のポリマー被覆改質炭素生成物を分散させてなるポリマー生成物。
【請求項91】
ポリマーマトリックス中に請求項4記載のポリマー被覆改質炭素生成物を分散させてなるポリマー生成物。
【請求項92】
ポリマーマトリックス中に請求項5記載のポリマー被覆改質炭素生成物を分散させてなるポリマー生成物。
【請求項93】
ポリマーマトリックス中に請求項11記載のポリマー被覆改質炭素生成物を分散させてなるポリマー生成物。
【請求項94】
ポリマーマトリックス中に請求項15記載のポリマー被覆改質炭素生成物を分散させてなるポリマー生成物。
【請求項95】
炭素生成物にさらに1個以上の有機基を結合させてなる請求項2記載のポリマー被覆改質炭素生成物。
【請求項96】
請求項79記載のポリマー生成物を含む物品。
【請求項97】
請求項89記載のポリマー生成物を含む物品。
【請求項98】
請求項90記載のポリマー生成物を含む物品。
【請求項99】
請求項91記載のポリマー生成物を含む物品。
【請求項100】
請求項92記載のポリマー生成物を含む物品。
【請求項101】
請求項93記載のポリマー生成物を含む物品。
【請求項102】
請求項94記載のポリマー生成物を含む物品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図5(A)】
image rotate

【図5(B)】
image rotate

【図5(C)】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−72414(P2012−72414A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−278264(P2011−278264)
【出願日】平成23年12月20日(2011.12.20)
【分割の表示】特願2000−575948(P2000−575948)の分割
【原出願日】平成11年10月8日(1999.10.8)
【出願人】(391010758)キャボット コーポレイション (164)
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
【Fターム(参考)】