説明

ポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法

【課題】本発明は、高分子量かつ高融点を有するポリ乳酸ステレオコンプレックスを形成するポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を混合し、当該混合物を固相重合する方法であって、混合するポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸のうち、少なくともいずれか一方が下記式を満たし、かつ混合時に結晶が残存していることを特徴とするポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
(ΔHm−ΔHc)>20(J/g)
さらに、混合をせん断付与あるいは加圧で行い、当該混合物を固相重合することにより、重量平均分子量が10万以上のポリ乳酸ブロック共重合体を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子量、高融点を有し、結晶性の高いポリ乳酸ステレオコンプレックスを形成するポリ乳酸ブロック共重合体を効率的に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸は、透明性に優れた溶融成型可能な高分子であり、生分解性の特徴を有することから使用した後は自然環境中で分解して炭酸ガスと水に変換されるような生分解性プラスチックとしての開発が進められてきた。一方、近年では、生分解性の特徴よりも二酸化炭素や水を起源とする再生可能資源(バイオマス)を原料としたカーボンニュートラルの性質が注目され、地球環境中に二酸化炭素を増やさない環境低負荷材料としての利用が期待されている。さらに、ポリ乳酸のモノマーである乳酸が微生物を利用した発酵法により安価に製造されるようになったため、石油系プラスチック製の汎用ポリマーの代替素材としても検討されるようになってきた。しかしながら、ポリ乳酸は、石油系プラスチックに比較すると耐熱性や耐久性が低く、結晶化速度が小さいため生産性にも劣っており、実用化の範囲は大幅に限定されているのが現状である。
【0003】
このような問題点を解決する手段の一つとして、ポリ乳酸ステレオコンプレックスの利用が注目されている。ポリ乳酸ステレオコンプレックスは光学活性なポリ−L−乳酸(以下、PLLAと称する)とポリ−D−乳酸(以下、PDLAと称する)を混合することにより形成され、この融点はポリ乳酸ホモポリマーの融点170℃に比較して50℃高い220℃に達する。このため、高融点および高結晶性の繊維、フィルムおよび樹脂成型品としての適用が試みられている。
【0004】
従来、ポリ乳酸ステレオコンプレックスはPLLAとPDLAを溶液状態で混合するか、PLLAとPDLAを加熱溶融混合させることで形成される。しかしながら、PLLAとPDLAの溶液混合については、混合後に溶剤を揮発させる必要があることから製造工程が煩雑になり、結果としてポリ乳酸ステレオコンプレックスが高コストになる問題がある。また、PLLAとPDLAの加熱溶融混合の場合には、ポリ乳酸ステレオコンプレックスが十分溶融する温度で混合する必要があり、このような温度ではポリ乳酸の熱分解反応を併発するため、成型品として用いる場合には物性の低下を生じる問題があった。さらに、高分子量のPLLAとPDLAを加熱溶融混合した場合には、混合組成比が50:50であってもポリ乳酸ホモポリマーの融点が消失しないため、耐熱性と耐久性を兼ね備えた材料は得られないのが現状である。
【0005】
一方、高分子量においてもステレオコンプレックスを形成する技術としてPLLAセグメントとPDLAセグメントからなるポリ乳酸ブロック共重合体が開示されている(特許文献1〜3)。
【0006】
特許文献1は、開環重合あるいは直接重縮合にて作製したPLLAとPDLAを加熱下で溶融混練することで混合物を作製した後、この混合物を固相重合することでポリ乳酸ブロック共重合体を得ている。この技術では、溶融混練時にポリ乳酸ステレオコンプレックスの融点以上の温度を加温する必要があり、溶融混練時に混合物の分子量低下が課題となる。また、固相重合にて長時間反応が必要である点においても生産性向上が望まれていた。
【0007】
特許文献2は、PLLAオリゴマーとPDLAオリゴマーを融点近傍で混合することで部分的に融解したポリ乳酸ステレオコンプレックス混合物を作製し、この混合物を固相重合することでポリ乳酸ブロック共重合体を作製している。この技術では、ステレオコンプレックス形成が不均一であるため、得られたポリ乳酸ブロック共重合体についても結晶特性にばらつきがある。また、固相重合にて長時間の反応が必要であるため生産性にも問題がある。
【0008】
特許文献3は、PLLAとPDLAを融点近傍で混合し、ポリ乳酸単独結晶存在下で固相重合することによりポリ乳酸ブロック共重合体を作製している。この技術においてもステレオコンプレックスの形成は混練温度のみの制御であり、混練時には部分的な融解がみられることから、混練物の結晶特性にばらつきが存在する。また、この混練物を固相重合したポリ乳酸ブロック共重合体についても結晶特性が不均一である問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−238672号公報
【特許文献2】特開2004−26876号公報
【特許文献3】特開2006−307071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、従来技術の問題点を解決し、高分子量かつ高融点を有するポリ乳酸ステレオコンプレックスを形成するポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、かかる課題を解決するために鋭意検討した結果、次のような手段を採用するものである。
【0012】
すなわち、本発明のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法は以下のとおりである。
1.ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を混合し、当該混合物を固相重合する方法であって、混合するポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸のうち、少なくともいずれか一方が下記式(1)を満たし、かつ混合時に結晶が残存していることを特徴とするポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
(ΔHm−ΔHc)>20(J/g) (1)
ΔHm:結晶融解エンタルピー(J/g)
ΔHc:昇温時結晶化エンタルピー(J/g)
2.混合するポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸がともに下記式(1)を満たし、かつ混合時に結晶が残存していることを特徴とする1記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
(ΔHm−ΔHc)>20(J/g) (1)
ΔHm:結晶融解エンタルピー(J/g)
ΔHc:昇温時結晶化エンタルピー(J/g)
3.混合するポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸のうち、少なくともいずれか一方が下記式(2)を満たすことを特徴とする1または2記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
結晶化の割合(%):[(ΔHm−ΔHc)/ΔHm]>80 (2)
ΔHm:結晶融解エンタルピー(J/g)
ΔHc:昇温時結晶化エンタルピー(J/g)
4.混合するポリ−L−乳酸および/またはポリ−D−乳酸がせん断付与または加圧下、融点−50℃〜融点+20℃の範囲から選ばれる温度で処理することにより得られることを特徴とする1〜3いずれかに記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
5.混合するポリ−L−乳酸および/またはポリ−D−乳酸が、せん断速度10〜400/秒のせん断を加えて得られたものであることを特徴とする4記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
6.混合するポリ−L−乳酸および/またはポリ−D−乳酸が、0.05〜10MPaの圧力を加えて得られたものであることを特徴とする4記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
7.混合するポリ−L−乳酸および/またはポリ−D−乳酸が、処理時間0.1〜10分の処理で得られたものであることを特徴とする4〜6いずれかに記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
8.前記処理が単軸押出機、二軸押出機のいずれかで行われることを特徴とする4〜7いずれかに記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
9.混合時におけるポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸からなる混合物の結晶化度が10%以上であることを特徴とする1〜8いずれかに記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
10.混合時の温度が前記混合物の融点−50℃〜融点+20℃の範囲内であることを特徴とする9記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
11.混合を、せん断付与または加圧下にて行うことを特徴とする9または10記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
12.混合後における混合物の結晶化に基づく結晶化の割合が下記式(2)を満たすことを特徴とする1〜11いずれかに記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
結晶化の割合(%):[(ΔHm−ΔHc)/ΔHm]>80 (2)
ΔHm:結晶融解エンタルピー(J/g)
ΔHc:昇温時結晶化エンタルピー(J/g)
13.混合後の混合物のステレオコンプレックス形成率が80%以下であることを特徴とする12記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
14.得られるポリ乳酸ブロック共重合体の重量平均分子量が10万以上であることを特徴とする1〜13いずれかに記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高分子量かつ高融点を有するポリ乳酸ステレオコンプレックスを形成するポリ乳酸ブロック共重合体を効率的に製造することができる。このポリ乳酸ブロック共重合体は高分子量かつ高融点であるため、ポリ乳酸ホモポリマーでは使用が困難であった耐熱性が要求される分野に好適に採用できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0015】
本発明において、ポリ乳酸ブロック共重合体とは、L−乳酸単位からなるセグメントとD−乳酸単位からなるセグメントにより構成されるポリ乳酸ブロック共重合体である。
【0016】
ここで、L−乳酸単位からなるセグメントとは、L−乳酸を主成分とする重合体であり、L−乳酸単位を70モル%以上含有していることが好ましく、90モル%以上含有していることがより好ましく、95モル%以上含有していることがさらに好ましく、98モル%以上含有していることが特に好ましい。
【0017】
また、D−乳酸単位からなるセグメントとは、D−乳酸を主成分とする重合体であり、D−乳酸単位を70モル%以上含有していることが好ましく、90モル%以上含有していることがより好ましく、95モル%以上含有していることがさらに好ましく、98モル%以上含有していることが特に好ましい。
【0018】
本発明において、L−乳酸またはD−乳酸単位からなるセグメントは、得られるポリ乳酸ブロック共重合体の性能を損なわない範囲で、他の成分単位を含んでいてもよい。L−乳酸またはD−乳酸単位以外の他の成分単位としては、多価カルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトンなどが挙げられ、具体的には、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸などの多価カルボン酸類またはそれらの誘導体、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンまたはペンタエリスリトールにエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドを付加した多価アルコール、ビスフェノールにエチレンオキシドを付加反応させた芳香族多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの多価アルコール類またはそれらの誘導体、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸などのヒドロキシカルボン酸類、およびグリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−またはγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトンなどのラクトン類などが挙げられる。
【0019】
本発明の方法により得られるポリ乳酸ブロック共重合体の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、10万以上であることが、機械物性の点で好ましい。12万以上であることがさらに好ましく、14万以上であることが成形性および機械物性の点で特に好ましい。なお、重量平均分子量とは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールまたはクロロホルムを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量の値である。また、ステレオコンプレックス形成率(Sc)が50%以上のポリ乳酸ブロック共重合体を得ることが好ましく、70%以上であることがさらに好ましく、75〜100%であることがさらに好ましく、90〜100%であることが特に好ましい。ここで、ステレオコンプレックス形成率とは、ポリ乳酸中の全結晶におけるステレオコンプレックス結晶の占める割合である。具体的には示差走査型熱量計(DSC)で測定した際のポリ−L−乳酸単独結晶およびポリ−D−乳酸単独結晶の結晶融解に基づく熱量をΔHl、ステレオコンプレックス結晶の結晶融解に基づく熱量をΔHhとすると下記式(3)で算出することができる。
Sc=ΔHh/(ΔHl+ΔHh)×100 (3)
【0020】
さらに、本発明においては、ポリ乳酸ブロック共重合体一分子あたりに含まれるL−乳酸単位からなるセグメントおよびD−乳酸単位からなるセグメントの合計数が3以上であることが、高融点のポリ乳酸ステレオコンプレックスを形成しやすいポリ乳酸ブロック共重合体が得られる点で好ましい。
【0021】
本発明において、L−乳酸単位からなるセグメントとD−乳酸単位からなるセグメントのそれぞれの合計の重量比は、90:10〜10:90であることが好ましく、さらに75:25〜25:75であることがより好ましく、特に60:40〜40:60であることが最も好ましい。L−乳酸単位からなるセグメントの重量比がそれぞれ10重量%未満であるか、あるいは90重量%を越えると、得られるポリ乳酸ブロック共重合体の融点の上昇が小さくなり、ポリ乳酸ステレオコンプレックスを形成しにくくなる傾向を生じる。
【0022】
(ポリ乳酸の製造方法)
本発明において、用いるL―乳酸単位からなるポリ−L−乳酸およびD―乳酸単位からなるポリ−D−乳酸の製造方法については、特に限定されるものではなく、一般のポリ乳酸の製造方法を利用することができる。具体的には、L―乳酸またはD−乳酸を原料として、一旦、環状2量体であるL−ラクチドまたはD−ラクチドを生成せしめ、その後、開環重合を行う2段階のラクチド法と、当該原料を溶媒中または非溶媒中で直接脱水縮合を行う1段階の直接重合法などが知られており、いずれの製法を利用してもよい。
【0023】
ここで、ポリ−L−乳酸とは、L−乳酸を主成分とする重合体であり、L−乳酸単位を70モル%以上含有しているものであり、90モル%以上含有していることがより好ましく、95モル%以上含有していることがさらに好ましく、98モル%以上含有していることが特に好ましい。
【0024】
また、ポリ−D−乳酸とは、D−乳酸を主成分とする重合体であり、D−乳酸単位を70モル%以上含有しているものであり、90モル%以上含有していることがより好ましく、95モル%以上含有していることがさらに好ましく、98モル%以上含有していることが特に好ましい。
【0025】
本発明で使用するポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸の重量平均分子量は、10万以下であることが好ましく、7万以下がさらに好ましく、5万以下が特に好ましい。また、重量平均分子量は5千以上であることが好ましく、1万以上であることがさらに好ましい。
【0026】
ポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸に含有するラクチド量およびオリゴマー量は、それぞれ5%以下であることが好ましい。さらに好ましくは3%以下であり、特に好ましくは1%以下である。また、ポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸に含有する乳酸量は、2%以下であることが好ましい。さらに好ましくは1%以下であり、特に好ましくは0.5%以下である。
【0027】
重合触媒としては、金属触媒と酸触媒が挙げられる。金属触媒としては、錫化合物、チタン化合物、鉛化合物、亜鉛化合物、コバルト化合物、鉄化合物、リチウム化合物、希土類化合物が挙げられ、化合物の種類としては、金属アルコキシド、金属ハロゲン化合物、有機カルボン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、酸化物などが好ましい。具体的には、錫粉末、塩化錫(II)、塩化錫(IV)、臭化錫(II)、臭化錫(IV)、エトキシ錫(II)、t−ブトキシ錫(IV)、イソプロポキシ錫(IV)、酢酸錫(II)、酢酸錫(IV)、オクチル酸錫(II)、ラウリン酸錫(II)、ミリスチン酸錫(II)、パルミチン酸錫(II)、ステアリン酸錫(II)、オレイン酸錫(II)、リノール酸錫(II)、アセチルアセトン錫(II)、シュウ酸錫(II)、乳酸錫(II)、酒石酸錫(II)、ピロリン酸錫(II)、p−フェノールスルホン酸錫(II)、ビス(メタンスルホン酸)錫(II)、硫酸錫(II)、酸化錫(II)、酸化錫(IV)、硫化錫(II)、硫化錫(IV)、酸化ジメチル錫(IV)、酸化メチルフェニル錫(IV)、酸化ジブチル錫(IV)、酸化ジオクチル錫(IV)、酸化ジフェニル錫(IV) 、酸化トリブチル錫、水酸化トリエチル錫(IV)、水酸化トリフェニル錫(IV)、水素化トリブチル錫、モノブチル錫(IV)オキシド、テトラメチル錫(IV)、テトラエチル錫(IV)、テトラブチル錫(IV)、ジブチルジフェニル錫(IV)、テトラフェニル錫(IV)、酢酸トリブチル錫(IV)、酢酸トリイソブチル錫(IV)、酢酸トリフェニル錫(IV)、二酢酸ジブチル錫、ジオクタン酸ジブチル錫、ジラウリン酸ジブチル錫(IV)、マレイン酸ジブチル錫(IV)、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、塩化トリブチル錫(IV)、二塩化ジブチル錫、三塩化モノブチル錫、二塩化ジオクチル錫、塩化トリフェニル錫(IV)、硫化トリブチル錫、硫酸トリブチル錫、トリフルオロメタンスルホン酸錫(II)、ヘキサクロロ錫(IV)酸アンモニウム、ジブチル錫スルフィド、ジフェニル錫スルフィドおよび硫酸トリエチル錫、フタロシアニン錫(II)等の錫化合物が挙げられる。また、チタニウムメトキシド、チタニウムプロポキシド、チタニウムイソプロポキシド、チタニウムブトキシド、チタニウムイソブトキシド、チタニウムシクロヘキシド、チタニウムフェノキシド、塩化チタン、二酢酸チタン、三酢酸チタン、四酢酸チタン、酸化チタン(IV)等のチタン化合物、ジイソプロポキシ鉛(II)、一塩化鉛、酢酸鉛、オクチル酸鉛(II)、イソオクタン酸鉛(II)、イソノナン酸鉛(II)、ラウリン酸鉛(II)、オレイン酸鉛(II)、リノール酸鉛(II)、ナフテン酸鉛、ネオデカン酸鉛(II)、酸化鉛、硫酸鉛(II)等の鉛化合物、亜鉛粉末、メチルプロポキシ亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、オクチル酸亜鉛(II)、ナフテン酸亜鉛、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、硫酸亜鉛等の亜鉛化合物、塩化コバルト、酢酸コバルト、オクチル酸コバルト(II)、イソオクタン酸コバルト(II)、イソノナン酸コバルト(II)、ラウリン酸コバルト(II)、オレイン酸コバルト(II)、リノール酸コバルト(II)、ナフテン酸コバルト、ネオデカン酸コバルト(II)、炭酸第一コバルト、硫酸第一コバルト、酸化コバルト(II)等のコバルト化合物、塩化鉄(II)、酢酸鉄(II)、オクチル酸鉄(II)、ナフテン酸鉄、炭酸鉄(II)、硫酸鉄(II)、酸化鉄(II)等の鉄化合物、プロポキシリチウム、塩化リチウム、酢酸リチウム、オクチル酸リチウム、ナフテン酸リチウム、炭酸リチウム、硫酸ジリチウム、酸化リチウム等のリチウム化合物、トリイソプロポキシユウロピウム(III)、トリイソプロポキシネオジム(III)、トリイソプロポキシランタン、トリイソプロポキシサマリウム(III)、トリイソプロポキシイットリウム、イソプロポキシイットリウム、塩化ジスプロシウム、塩化ユウロピウム、塩化ランタン、塩化ネオジム、塩化サマリウム、塩化イットリウム、三酢酸ジスプロシウム(III)、三酢酸ユウロピウム(III)、酢酸ランタン、三酢酸ネオジム、酢酸サマリウム、三酢酸イットリウム、炭酸ジスプロシウム(III)、炭酸ジスプロシウム(IV)、炭酸ユウロピウム(II)、炭酸ランタン、炭酸ネオジム、炭酸サマリウム(II)、炭酸サマリウム(III)、炭酸イットリウム、硫酸ジスプロシウム、硫酸ユウロピウム(II)、硫酸ランタン、硫酸ネオジム、硫酸サマリウム、硫酸イットリウム、二酸化ユウロピウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化サマリウム(III)、酸化イットリウム等の希土類化合物が挙げられる。その他にも、カリウムイソプロポキシド 、塩化カリウム、酢酸カリウム、オクチル酸カリウム、ナフテン酸カリウム、炭酸tert−ブチルカリウム、硫酸カリウム、酸化カリウム等のカリウム化合物、銅(II)ジイソプロポキシド、塩化銅(II)、酢酸銅(II)、オクチル酸銅、ナフテン酸銅、硫酸銅(II)、炭酸二銅等の銅化合物、塩化ニッケル、酢酸ニッケル、オクチル酸ニッケル、炭酸ニッケル、硫酸ニッケル(II)、酸化ニッケル等のニッケル化合物、テトライソプロポキシジルコニウム(IV)、三塩化ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、オクチル酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム(II)、炭酸ジルコニウム(IV)、硫酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム(II)等のジルコニウム化合物、トリイソプロポキシアンチモン、フッ化アンチモン(III)、フッ化アンチモン(V)、酢酸アンチモン、酸化アンチモン(III)等のアンチモン化合物、マグネシウム、マグネシウムジイソプロポキシド 、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム等のマグネシウム化合物、ジイソプロポキシカルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、オクチル酸カルシウム、ナフテン酸カルシウム、乳酸カルシウム、硫酸カルシウム等のカルシウム化合物、アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシド、塩化アルミニウム、酢酸アルミニウム、オクチル酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、酸化アルミニウム等のアルミニウム化合物、ゲルマニウム、テトライソプロポキシゲルマン、酸化ゲルマニウム(IV)等のゲルマニウム化合物、トリイソプロポキシマンガン(III)、三塩化マンガン、酢酸マンガン、オクチル酸マンガン(II)、ナフテン酸マンガン(II)、硫酸第一マンガン等のマンガン化合物、塩化ビスマス(III)、ビスマス粉末、酸化ビスマス(III)、酢酸ビスマス、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス等のビスマス化合物なども挙げることができる。また、錫酸ナトリウム、錫酸マグネシウム、錫酸カリウム、錫酸カルシウム、錫酸マンガン、錫酸ビスマス、錫酸バリウム、錫酸ストロンチウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸アルミニウム、チタン酸カリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸コバルト、チタン酸亜鉛、チタン酸マンガン、チタン酸ジルコニウム、チタン酸ビスマス、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムなどの2種以上の金属元素からなる化合物なども好ましい。また、酸触媒としては、プロトン供与体のブレンステッド酸でもよく、電子対受容体であるルイス酸でもよく、有機酸および無機酸のいずれでもよい。具体的には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、オクチル酸、ノナン酸、イソノナン酸、トリフルオロ酢酸およびトリクロロ酢酸などのモノカルボン酸化合物、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、酒石酸およびマロン酸などのジカルボン酸化合物、クエン酸およびトリカリバリル酸などのトリカルボン酸化合物、ベンゼンスルホン酸、n−ブチルベンゼンスルホン酸、n−オクチルベンゼンスルホン酸、n−ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,5−ジブチルベンゼンスルホン酸、o−アミノベンゼンスルホン酸、m−アミノベンゼンスルホン酸、p−アミノベンゼンスルホン酸、3−アミノ−4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸、5−アミノ−2−メチルベンゼンスルホン酸、3,5−ジアミノ−2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、2,4−ジニトロベンゼンスルホン酸、p−クロルベンゼンスルホン酸、 2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸、p−フェノールスルホン酸、クメンスルホン酸、キシレンスルホン酸、o−クレゾールスルホン酸、m−クレゾールスルホン酸、p−クレゾールスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸、イソプロピルナフタレンスルホン酸、ドデシルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、1,5−ナフタレンジスルホン酸、2,7−ナフタレンジスルホン酸、4,4−ビフェニルジスルホン酸、アントラキノン−2−スルホン酸、m−ベンゼンジスルホン酸、2,5−ジアミノ−1,3−ベンゼンジスルホン酸、 アニリン−2,4−ジスルホン酸、アントラキノン−1,5−ジスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸などの芳香族スルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、n−オクチルスルホン酸、ペンタデシルスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリクロロメタンスルホン酸、 1,2−エタンジスルホン酸、1,3−プロパンジスルホン酸などの脂肪族スルホン酸、シクロペンタンスルホン酸、シクロヘキサンスルホン酸およびカンファースルホン酸などの脂環式スルホン酸などのスルホン酸化合物、アスパラギン酸やグルタミン酸などの酸性アミノ酸、アスコルビン酸、レチノイン酸、リン酸、メタリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、リン酸モノドデシルおよびリン酸モノオクタデシルなどのリン酸モノエステル、リン酸ジドデシルおよびリン酸ジオクタデシルなどのリン酸ジエステル、亜リン酸モノエステルおよび亜リン酸ジエステルなどのリン酸化合物、ホウ酸、塩酸、硫酸なども挙げられる。また、酸触媒としては、形状は特に限定されず、固体酸触媒および液体酸触媒のいずれでもよく、例えば、固体酸触媒としては、酸性白土、カオリナイト、ベントナイト、モンモリロナイト、タルク、ケイ酸ジルコニウムおよびゼオライトなどの天然鉱物、シリカ、アルミナ、チタニアおよびジルコニアなどの酸化物またはシリカアルミナ、シリカマグネシア、シリカボリア、アルミナボリア、シリカチタニアおよびシリカジルコニアなどの酸化物複合体、塩素化アルミナ、フッ素化アルミナ、陽イオン交換樹脂などが挙げられる。
【0028】
本発明において、生成されるポリ乳酸の分子量を考慮した場合、錫化合物、チタン化合物、アンチモン化合物、希土類化合物、および酸触媒が好ましく、生成されるポリ乳酸の融点を考慮した場合に、錫化合物、チタン化合物、およびスルホン酸化合物がより好ましい。さらに、生成されるポリ乳酸の熱安定性を考慮した場合、金属触媒の場合は、錫系の有機カルボン酸塩あるいは錫系のハロゲン化合物が好ましく、特に酢酸錫(II)、オクチル酸錫(II)、および塩化錫(II)がより好ましく、酸触媒の場合は、モノおよびジスルホン酸化合物が好ましく、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、プロパンジスルホン酸、およびナフタレンジスルホン酸がより好ましい。また、触媒は1種類でもよく、2種類以上併用してもよいが、重合活性を高める点から考えて、2種類以上を併用することが好ましく、着色も抑制することが可能となるという点で、錫化合物から選択される1種類以上および/またはスルホン酸化合物から選択される1種類以上を用いることが好ましく、さらに生産性に優れるという点で、酢酸錫(II)および/またはオクチル酸錫(II)と、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンジスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸のいずれか一種類以上との併用がより好ましく、酢酸錫(II)および/またはオクチル酸錫(II)と メタンスルホン酸および/またはプロパンジスルホン酸の併用がさらに好ましい。
【0029】
重合触媒の添加量については特に限定されるものではなく、使用する原料(L−乳酸、D−乳酸など)100重量部に対して0.001重量部以上、2重量部以下が好ましく、とくに0.001重量部以上、1重量部以下がより好ましい。触媒量が0.001重量部未満では重合時間の短縮効果が低下し、2重量部を越えると最終的に得られるポリ乳酸ブロック共重合体の分子量が大きくなりにくい傾向を生じる。また、触媒を2種類以上併用する場合は、合計添加量が上記の範囲内であることが好ましく、錫化合物から選択される1種類以上および/またはスルホン酸化合物から選択される1種類以上を併用する場合は、高い重合活性を維持し、かつ着色を抑制することが可能であるという点で、錫化合物とスルホン酸化合物の重量比が1:1〜1:30であることが好ましく、生産性に優れるという点で、1:2〜1:15であることがより好ましい。
【0030】
重合触媒の添加時期については特に限定されるものではないが、酸触媒については原料または原料を脱水した後に添加することが生産性に優れるという点で好ましく、金属触媒については原料を脱水した後に添加することが重合活性を高める点から考えて好ましい。
【0031】
(ポリ乳酸の処理方法)
次にポリ乳酸を処理する工程について説明する。
【0032】
本発明において、ポリ乳酸の処理とは、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を混合し、その混合物を固相重合してポリ乳酸ブロック共重合体を製造する際に、混合するポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸のうち、少なくともいずれか一方を結晶化させるための処理である。
【0033】
本発明で、処理したポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸は、少なくともいずれか一方が下記式(1)を満たすことが重要である。
(ΔHm−ΔHc)>20(J/g) (1)
【0034】
また、(ΔHm−ΔHc)の値が、30J/gより大きいことが好ましく、40J/gより大きいことが特に好ましい。また、混合するポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸がともに(1)式を満たすことが好ましく、30J/gより大きいことが好ましく、40J/gより大きいことが特に好ましい。
【0035】
ここでいうΔHmは、示差走査型熱量計(DSC)にて測定した際の結晶融解に基づく熱量(J/g)、ΔHcは昇温時結晶化に基づく熱量(J/g)である。
【0036】
ここで、混合するポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸のうち、少なくともいずれか一方が(1)式を満たすことは、いずれか一方、好ましくは両方が、結晶化していることを表している。
【0037】
また、混合するポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸のうち、少なくともいずれか一方が下記式(2)を満たすことも重要である。
結晶化の割合(%):[(ΔHm−ΔHc)/ΔHm]>80 (2)
【0038】
結晶化の割合は、85%より大きいことが好ましく、90%より大きいことが特に好ましい。また、混合するポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸がともに(2)式を満たすことが好ましく、結晶化の割合が、85%より大きいことがさらに好ましく、90%より大きいことが特に好ましい。
【0039】
本発明で使用するポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸の分子量は、重量平均分子量(Mw)5,000〜100,000の範囲であることが好ましく、7,000〜80,000の範囲であることがより好ましい。また得られる結晶化ポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸の結晶化度と流動性の関係から重量平均分子量10,000〜60,000の範囲の時が特に好ましい。重量平均分子量が5,000未満の時は機械強度が低いため好ましくなく、重量平均分子量が100,000を越える場合には流動性が低く、特に結晶化度10%以上となったときの流動性が著しく低くなるため好ましくない。また低分子量のポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸を用いる場合には通常は溶融粘度が低いため、ドローダウンしやすいなど溶融加工性に課題がある。ポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸の重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した標準ポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量として、溶媒にヘキサフルオロイソプロパノールまたはクロロホルムを用い、測定することができる。
【0040】
本発明のポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の処理方法に関しては、例えば、気相中または液相中において結晶化温度で保持する方法、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の溶液混合物から溶媒を揮発させる方法、溶融状態のポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を融点−50℃〜融点+20℃の溶融機内でせん断を付与しながら滞留する方法および溶融状態のポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を融点−50℃〜融点+20℃の溶融機内で圧力を付与しながら滞留する方法などが挙げられる。中でも操作が簡便で、かつ処理したポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を混合する工程へ連続的に供給できるという観点からは、溶融状態のポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を溶融機内でせん断あるいは圧力を付与しながら滞留する方法が好ましい。このときの溶融機はせん断あるいは圧力を付与することができれば限定されず、重合缶、ニーダー、バンバリーミキサー、単軸押出機、二軸押出機、射出成形機などを用いることができ、好ましくは単軸押出機、二軸押出機である。
【0041】
処理温度は混合するポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の融点−50℃〜融点+20℃の範囲が好ましい。処理温度のより好ましい範囲は融点−40℃〜融点であり、特に好ましくは融点−30℃〜融点−5℃の温度範囲である。溶融機の温度は通常、樹脂が溶融して良好な流動性を発現するために融点+20℃以上を設定するが、融点+20℃を超える温度で処理した場合には、仮に結晶が生成したした場合でも再融解してしまうため好ましくなく、融点−50℃以下で処理して結晶化した場合には流動性が著しく低下するため好ましくない。ここで、融点とは、示差熱走査型測定を用いて、昇温速度20℃/分で30℃から240℃まで昇温した際の結晶融解温度のことである。
【0042】
また、処理時間は0.1分〜10分であることが好ましく、より好ましくは0.3〜5分、特に好ましくは0.5分〜3分の範囲である。処理時間が0.1分以下の場合には結晶化が不十分となるため好ましくなく、10分を超える場合には処理により熱分解を生じやすくなるため好ましくない。
【0043】
処理時にせん断を付与することで溶融樹脂の分子が配向する傾向があり、その結果、著しく結晶化速度を大きくすることができる。このときのせん断速度は10〜400/秒の範囲が好ましい。せん断速度が10/秒未満の場合は結晶化速度が小さくなるため好ましくない。一方、せん断速度が400/秒を超える場合にはせん断発熱により樹脂温度が上昇して熱分解を生じやすくなるため好ましくない。
【0044】
圧力を付与した場合においても結晶化が促進する傾向が見られ、特に0.05〜10MPaの範囲のときに良好な流動性と結晶性を併せ持つ結晶化ポリ乳酸を得ることができるため好ましい。圧力が0.05MPa未満および10MPa以上の時には結晶化速度が小さくなるため好ましくない。
【0045】
さらにせん断速度10〜400/秒のせん断と0.05〜10MPaの圧力を同時に付与して処理した場合には結晶化速度がより大きくなるため特に好ましい。
【0046】
(ポリ乳酸の混合方法)
次にポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を混合する工程について説明する。
ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合方法としては、前記のように処理を行ったポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸からなる混合物の結晶が残存するような混合する方法を挙げることができる。具体的には、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸からなる混合物の結晶化度が10%以上になるように混合するのが好ましい。結晶化度については、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物を氷浴で冷却することで結晶構造を凍結した後、広角X線回折測定を行い、非晶部のハロー領域と結晶部の回折ピーク領域の面積比より測定することができる。また結晶化にともない溶融機内でのポリマー濁度が変化するため、濁度により結晶化を判断することもできる。
【0047】
具体的な混合方法としては、処理を行ったポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を回分法もしくは連続法で混合する方法が挙げられ、いずれの方法で混合してもよいが、溶融状態のポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の内、融点の低い方のポリ乳酸の融点−50℃〜融点+20℃の溶融機内でせん断を付与しながら滞留する方法および溶融状態のポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の内、融点の低い方のポリ乳酸の融点−50℃〜融点+20℃の溶融機内で圧力を付与しながら滞留する方法が、混合後におけるポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物の結晶化の割合およびステレオコンプレックス形成率を制御できるという観点で特に好ましい。ここでいう混合後におけるポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物の結晶化の割合は下記式(2)を満たすことが好ましい。
結晶化の割合(%):[(ΔHm−ΔHc)/ΔHm]>80 (2)
【0048】
また、前記のステレオコンプレックス形成率とは、ポリ乳酸中の全結晶におけるステレオコンプレックス結晶の占める割合である。具体的には示差走査型熱量計(DSC)で測定した際のポリ−L−乳酸単独結晶およびポリ−D−乳酸単独結晶の結晶融解に基づく熱量をΔHl、ステレオコンプレックス結晶の結晶融解に基づく熱量をΔHhとすると下記式(3)で算出することができる。
Sc=ΔHh/(ΔHl+ΔHh)×100 (3)
【0049】
ステレオコンプレックス形成率(Sc)は、X線回折で測定したポリ乳酸の単独結晶とステレオコンプレックス結晶の割合から算出することも可能であるが、本発明では、上記のDSCで測定した結晶融解熱量から求めた値を用いる。
【0050】
本発明においては、混合後における混合物のステレオコンプレックス形成率は80%以下であることが重要である。より好ましくは60%以下であり、さらに好ましくは10〜55%であり、最も好ましいのは20〜45%である。
【0051】
混合工程で用いる装置としては、特に限定されるものではなく、例えば一軸押出機、二軸押出機、プラストミル、ニーダーおよび減圧装置付き撹拌槽型反応機が挙げられ、均一かつ十分に混練できる観点においては、一軸押出機、二軸押出機を用いることが好ましい。
【0052】
混合する温度条件については、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物の融点−50℃〜融点+20℃の範囲が好ましい。混合温度のより好ましい範囲は融点−40℃〜融点であり、特に好ましくは融点−30℃〜融点−5℃の温度範囲である。溶融機の温度は通常、樹脂が溶融して良好な流動性を発現するために融点+20℃以上を設定するが、融点+20℃を超える温度で処理した場合には、仮に結晶が生成したした場合でも再融解してしまうため好ましくなく、融点−50℃以下で処理して結晶化した場合には流動性が著しく低下するため好ましくない。ここで融点は、示差走査型熱量計(DSC)を用いて昇温速度20℃/分で30℃から240℃まで昇温した際の、結晶融解温度のことを指す。
【0053】
混合する圧力条件については特に限定されるものではなく、大気雰囲気下または窒素などの不活性気体雰囲気下のいずれの条件でもよい。
【0054】
混合工程において、L−乳酸単位からなるポリ−L−乳酸とD−乳酸単位からなるポリ−D−乳酸の混合重量比は、90:10〜10:90であることが好ましく、さらに80:20〜20:80であることが好ましく、さらに70:30〜30:70であることが好ましく、特に60:40〜40:60であることが好ましい。L−乳酸単位からなるポリ−L−乳酸の重量比がそれぞれ10重量%未満であるか、あるいは90重量%を越えると、最終的に得られるポリ乳酸ブロック共重合体の融点の上昇が小さくなり、ポリ乳酸ステレオコンプレックスを形成しにくくなる傾向を生じる。
【0055】
この混合工程において、次の固相重合を効率的に進めるために、さらに触媒を添加することもできる。
【0056】
触媒の添加量は、特に限定されるものではなく、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物100重量部に対して0.001重量部以上、2重量部以下が好ましく、とくに0.001重量部以上、1重量部以下がより好ましい。触媒量が0.001重量部未満では、固相重合の反応時間短縮効果が低下し、2重量部を越えると最終的に得られるポリ乳酸ブロック共重合体の分子量が大きくなりにくい傾向を生じる。
【0057】
また、混合工程においては、最終的に得られるポリ乳酸ブロック共重合体のL−乳酸単位からなるポリ−L−乳酸(L−乳酸単位からなるセグメント)と、D−乳酸単位からなるポリ−D−乳酸(D−乳酸単位からなるセグメント)との交互性を高めるために、多官能性化合物を混合してもよい。
【0058】
ここで使用する多官能性化合物としては、特に限定されるものではなく、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸ハロゲン化物、多価カルボン酸、多価イソシアネート、多価アミン、多価アルコールおよび多価エポキシ化合物などが挙げられ、具体的には、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、コハク酸無水物、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、1,8−ナフタレンジカルボン酸無水物、ピロメリット酸無水物などの多価カルボン酸無水物、イソフタル酸クロリド、テレフタル酸クロリド、2,6−ナフタレンジカルボン酸クロリドなどの多価カルボン酸ハロゲン化物、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの多価カルボン酸、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエン−2,4−ジイソシアネートなどの多価イソシアネート、エチレンジアミン、ヘキサンジアミン、ジエチレントリアミンなどの多価アミン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの多価アルコール、およびテレフタル酸ジグリシジルエステル、ナフタレンジカルボン酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル、ピロメリット酸テトラグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルなどの多価エポキシ化合物などが挙げられる。好ましくは、多価カルボン酸無水物、多価イソシアネート、多価アルコールおよび多価エポキシ化合物であり、特に多価カルボン酸無水物、多価イソシアネートおよび多価エポキシ化合物がより好ましい。また、これらは1種または2種以上を併用して使用することができる。
【0059】
多官能性化合物の混合量については特に限定されるものではなく、ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸の合計100重量部に対して、0.01重量部以上、20重量部以下が好ましく、さらに0.1重量部以上、10重量部以下であることがより好ましい。多官能性化合物の添加量が多すぎても、あるいは少なすぎても、多官能性化合物を使用する効果が小さくなる傾向となる。
【0060】
さらに、多官能性化合物を用いる際には、ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸と多官能性化合物の反応を促進させるために、触媒を添加してもよい。触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、水素化ほう素ナトリウム、水素化ほう素リチウム、フェニル化ほう素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、りん酸水素二ナトリウム、りん酸水素二カリウム、りん酸水素二リチウム、ビスフェノールAの二ナトリウム塩、同二カリウム塩、同二リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、同カリウム塩、同リチウム塩、同セシウム塩などのアルカリ金属化合物、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウムなどのアルカリ土類金属化合物、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリアミルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリエチレンジアミン、ジメチルフェニルアミン、ジメチルベンジルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジメチルアニリン、ピリジン、ピコリン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7などの3級アミン、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、4−フェニル−2−メチルイミダゾールなどのイミダゾール化合物、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、トリプロピルベンジルアンモニウムクロライド、N−メチルピリジニウムクロライドなどの第4級アンモニウム塩、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィンなどのホスフィン化合物、テトラメチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、トリフェニルベンジルホスホニウムブロマイドなどのホスホニウム塩、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリ(p−ヒドロキシ)フェニルホスフェート、トリ(p−メトキシ)フェニルホスフェートなどのリン酸エステル、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸などの有機酸、および三フッ化ホウ素、四塩化アルミニウム、四塩化チタン、四塩化スズなどのルイス酸などが挙げられ、これらは1種または2種以上を併用して使用することができる。
【0061】
触媒の添加量は特に限定されるものではなく、ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸の合計100重量部に対して、0.001重量部以上、1重量部以下が好ましい。触媒量が0.001重量部未満では、触媒を添加する効果が不充分であり、逆に1重量部を越えると、最終的に得られるポリ乳酸ブロック共重合体の分子量が大きくなりにくい傾向を生じる。
【0062】
混合後におけるポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物の分子量は、重量平均分子量(Mw)5,000〜100,000の範囲であることが好ましい。7,000〜80,000の範囲がさらに好ましく、10,000〜60,000であることが特に好ましい。
【0063】
また、ポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸に含有するラクチド量およびオリゴマー量は、それぞれ5%以下であることが好ましい。さらに好ましくは3%以下であり、特に好ましくは1%以下である。また、ポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸に含有する乳酸量は、2%以下であることが好ましい。さらに好ましくは1%以下であり、特に好ましくは0.5%以下である。
【0064】
(固相重合)
次に、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物をその融点より低い温度で固相重合する工程について説明する。
【0065】
この固相重合工程を実施する際には、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物の形状は、特に限定されるものではなく、塊状、フィルム、ペレットおよび粉末などいずれでもよいが、固相重合を効率的に進めるという観点においては、ペレットまたは粉末を用いることが好ましい。ペレットにする方法としては、混合物をストランド状に押出し、ペレタイズする方法が挙げられる。また、粉末にする方法としては、ミキサー、ブレンダー、ボールミルおよびハンマーミルなどの粉砕機を用いて粉砕する方法が挙げられる。この固相重合工程を実施する方法については特に限定されるものではなく、回分法でも連続法でもよく、また、反応容器は、撹拌槽型反応器、ミキサー型反応器および塔型反応器などを用いることができ、これらの反応器は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0066】
この固相重合工程を実施する際には、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物が結晶化していることが好ましい。本発明において、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合工程で得られた混合物が結晶化状態である場合は、固相重合工程を実施する際にポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物の結晶化は特に不要であるが、結晶化を行うことで固相重合の効率をさらに高めることもできる。
【0067】
結晶化させる方法については特に限定されるものではなく、公知の方法を利用することができる。例えば、気相中または液相中において結晶化温度で保持する方法およびポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の溶融混合物を延伸または剪断の操作を行いながら冷却固化させる方法などが挙げられ、操作が簡便であるという観点においては、気相中または液相中において結晶化温度で保持する方法が好ましい。
【0068】
ここでいう結晶化温度とは、ガラス転移温度より高く、前記で混合したポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸のうち、低い融点を有するポリ乳酸の融点よりも低い温度範囲であれば特に限定されるものではないが、予め示差走査型熱量計(DSC)により測定した昇温結晶化温度および降温結晶化温度の範囲内であることがより好ましい。
【0069】
結晶化させる際には、減圧、常圧または加圧のいずれの条件でもよい。
【0070】
また、結晶化させる際の時間については特に限定されるものではないが、3時間以内であれば十分に結晶化されており、2時間以内でも好ましい。
【0071】
この固相重合工程を実施する際の温度条件としては、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物の融点以下の温度であり、具体的には、100℃以上、220℃以下が好ましく、さらに固相重合を効率的に進めるという観点においては、110℃以上、210℃以下であることがより好ましく、さらには、120℃以上、200℃以下であることが最も好ましい。
【0072】
また、固相重合の反応時間を短縮するために、反応の進行とともに温度を段階的に上げるかあるいは連続的に上げることが好ましい。固相重合時に段階的に昇温するときの温度条件としては、第一段階として130〜155℃で1〜15時間、第二段階として160〜175℃で1〜15時間、第三段階として180〜200℃で10〜30時間と昇温するのが好ましく、さらには第一段階として140〜155℃で2〜12時間、第二段階として165〜175℃で2〜12時間、第三段階として185〜195℃で15〜25時間と昇温するのがより好ましい。固相重合時に連続的に昇温するときの温度条件としては、130℃〜150℃の初期温度より1〜5℃/分の速度で185〜195℃まで連続的に昇温するのが好ましい。また、段階的な昇温と連続的な昇温を組み合わせることも固相重合を効率的に進行する観点から好ましい。
【0073】
また、この固相重合工程を実施する際には、真空下または乾燥窒素などの不活性気体気流下で行うことが好ましい。
【0074】
(ポリ乳酸ブロック共重合体)
本発明の製造方法を採用することで、重量平均分子量が10万以上のポリ乳酸ブロック共重合体を得ることが好ましく、12万以上であることがさらに好ましく、14万以上であることがさらに好ましい。また、ステレオコンプレックス形成率(Sc)が50%以上のポリ乳酸ブロック共重合体を得ることが好ましく、70%以上であることがさらに好ましく、75〜100%であることがさらに好ましく、90〜100%であることが特に好ましい。
【0075】
本発明の製造方法により得られるポリ乳酸ブロック共重合体には、本発明の目的を損なわない範囲で、通常の添加剤、例えば、充填剤(ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、天然繊維、有機繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、セラミックスファイバー、セラミックビーズ、アスベスト、ワラステナイト、タルク、クレー、マイカ、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、モンモリロナイト、合成マイカ、ドロマイト、カオリン、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、石膏、ノバキュライト、ドーソナイトまたは白土など)、紫外線吸収剤(レゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンなど)、熱安定剤(ヒンダードフェノール、ヒドロキノン、ホスファイト類およびこれらの置換体など)、滑剤、離形剤(モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびポリエチレンワックスなど)、染料(ニグロシンなど)および顔料(硫化カドミウム、フタロシアニンなど)を含む着色剤、着色防止剤(亜リン酸塩、次亜リン酸塩など)、難燃剤(赤燐、燐酸エステル、ブロム化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、水酸化マグネシウム、メラミンおよびシアヌール酸またはその塩、シリコン化合物など)、導電剤あるいは着色剤(カーボンブラックなど)、摺動性改良剤(グラファイト、フッ素樹脂など)、結晶核剤(タルクなどの無機系核剤、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビス−12−ジヒドロキシステアリン酸アミドおよびトリメシン酸トリシクロヘキシルアミドなどの有機アミド系化合物、銅フタロシアニンおよびピグメントイエロー110などの顔料系核剤、有機カルボン酸金属塩、フェニルホスホン酸亜鉛など)、帯電防止剤などの1種または2種以上を添加することができる。
【0076】
また、本発明の製造方法により得られるポリ乳酸ブロック共重合体には、本発明の目的を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミドなど)または熱硬化性樹脂(例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂など)または軟質熱可塑性樹脂(例えば、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、エチレン/プロピレンターポリマー、エチレン/ブテン−1共重合体など)などの少なくとも1種以上をさらに含有することができる。
【0077】
本発明の製造方法により得られるポリ乳酸ブロック共重合体は、成形品などに加工する際に、一旦熱溶融させて固化した後も、高融点のポリ乳酸ステレオコンプレックスを形成しやすい特徴を有する。
【0078】
本発明の製造方法により得られるポリ乳酸ブロック共重合体は、成形品として広く用いることができる。成形品としては、例えば、フィルム(無延伸、一軸延伸、二軸延伸)、シート、繊維・布、不織布、射出成形品、押出し成形品、真空圧空成形品、ブロー成形品、および他の材料との複合体などが挙げられ、これらの成形品は、農業用資材、園芸用資材、漁業用資材、土木・建築用資材、文具、医療用品、自動車用部品、電気・電子部品、光学フィルムまたはその他の用途として有用である。
【実施例】
【0079】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ここで、実施例中の部数は、重量部を示す。なお、物性等の測定は以下の方法で実施した。
【0080】
(1)重量平均分子量
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した標準ポリメチルメタクリレート換算の値である。GPCの測定は、検出器にWATERS社示差屈折計WATERS410を用い、ポンプにWATERS社MODEL510を用い、カラムにShodex GPC HFIP−806MとShodex GPC HFIP−LGを直列に接続したものを用いて行った。測定条件は、流速0.5mL/minとし、溶媒にヘキサフルオロイソプロパノールを用い、試料濃度1mg/mLの溶液を0.1mL注入した。
【0081】
(2)熱特性
融点、融解熱量、結晶化温度、結晶化熱量は、パーキンエルマー社示差走査型熱量計(DSC)により測定した。試料5mgを窒素雰囲気下中、昇温速度20℃/分で30℃から240℃まで昇温し、得られた昇温時結晶化エンタルピー(ΔHc)および結晶融解エンタルピー(ΔHm)を測定した。結晶化の割合については下記式(4)から算出した。
結晶化の割合(%):[(ΔHm−ΔHc)/ΔHm] (4)
【0082】
(3)ポリマー濁度
押出機ベント口から目視観察したポリマーの濁り具合を下記の基準で判断した。なお、濁りが大きいほど結晶化が進行していることを示している。
A:白色不透明でスクリュー表面が全く見えない。
B:白く濁りはあるがスクリュー表面がぼんやりと見える程度。
C:透明で押出機のスクリュー表面がはっきりと見える。
【0083】
(4)結晶化度
融点−50℃〜融点+20℃の範囲から選ばれた温度のポリマーを氷浴で冷却することで結晶構造を凍結した後、広角X線回折測定を行い、非晶部のハロー領域と結晶部の回折ピーク領域の面積比より測定した。
【0084】
(5)混合物におけるステレオコンプレックス形成率(Sc)
ステレオコンプレックス形成率(Sc)は、下記式(3)から算出した。
Sc=ΔHh/(ΔHl+ΔHh)×100 (3)
但し、示差走査型熱量計(DSC)の昇温時に150℃以上190℃未満に現れるポリ−L−乳酸単独結晶およびポリ−D−乳酸単独結晶の結晶融解に基づく熱量をΔHl、190℃以上250未満に現れるステレオコンプレックス結晶の結晶融解に基づく熱量をΔHhとする。
【0085】
(6)ポリマーにおけるステレオコンプレックス形成率(Sc)
ステレオコンプレックス形成率(Sc)は、下記式(3)から算出した。
Sc=ΔHh/(ΔHl+ΔHh)×100 (3)
【0086】
但し、示差走査型熱量計(DSC)の第2昇温時に150℃以上190℃未満に現れるポリ−L−乳酸単独結晶およびポリ−D−乳酸単独結晶の結晶融解に基づく熱量をΔHl、190℃以上250℃未満に現れるステレオコンプレックス結晶の結晶融解に基づく熱量をΔHhとする。
【0087】
[参考例1]
撹拌装置と還流装置を備えた反応容器中に、90%L−乳酸水溶液を50部入れ、温度を150℃にした後、徐々に減圧して水を留去しながら3.5時間反応した。その後、窒素雰囲気下で常圧にし、酢酸スズ(II)0.05部を添加した後、170℃にて13Paになるまで徐々に減圧しながら7時間重合反応を行い、ポリ−L−乳酸(PLA1)を得た。PLA1の重量平均分子量は18,000、融点は149℃であった。
【0088】
[参考例2]
参考例1で得られたPLA1を、窒素雰囲気下110℃で1時間結晶化処理を行った後、60Paの圧力下、140℃で3時間、150℃で3時間、160℃で6時間固相重合を行い、ポリ−L−乳酸(PLA2)を得た。PLA2の重量平均分子量は52,000、融点は160℃であった。
【0089】
[参考例3]
参考例1で得られたPLA1を、窒素雰囲気下110℃で1時間結晶化処理を行った後、60Paの圧力下、140℃で3時間、150℃で3時間、160℃で9時間固相重合を行い、ポリ−L−乳酸(PLA3)を得た。PLA3の重量平均分子量は84,000、融点は170℃であった。
【0090】
[参考例4]
撹拌装置と還流装置を備えた反応容器中に、90%D−乳酸水溶液を50部入れ、温度を150℃にした後、徐々に減圧して水を留去しながら3.5時間反応した。その後、窒素雰囲気下で常圧にし、酢酸スズ(II)0.05部を添加した後、170℃にて13Paになるまで徐々に減圧しながら7時間重合反応を行い、ポリ−D−乳酸(PDA1)を得た。PDA1の重量平均分子量は15,000、融点は148℃であった。
【0091】
[参考例5]
参考例4で得られたPDA1を、窒素雰囲気下110℃で1時間結晶化処理を行った後、60Paの圧力下、140℃で3時間、150℃で3時間、160℃で6時間固相重合を行い、ポリ−D−乳酸(PDA2)を得た。PDA2の重量平均分子量は,49,000、融点は158℃であった。
【0092】
[参考例6]
参考例4で得られたPDA1を、窒素雰囲気下110℃で1時間結晶化処理を行った後、60Paの圧力下、140℃で3時間、150℃で3時間、160℃で9時間固相重合を行い、ポリ−D−乳酸(PDA3)を得た。PDA3の重量平均分子量は81,000、融点は167℃であった。
【0093】
(実施例1〜14、比較例1〜3)
(1)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を処理する工程
表1、表2に記載のとおり、ポリ−L−乳酸を、日本製鋼所社製TEX30型二軸押出機(L/D=45.5)を用い、せん断結晶化による処理を行った。二軸押出機は、樹脂供給口よりL/D=10の部分に温度180℃に設定した可塑化部分を設け、その後、表1、表2に記載の温度に設定した結晶化部分を設けた。結晶化部のスクリューエレメントにはニーディングディスクを備えてせん断を付与できるスクリューとした。
一方、ポリ−D−乳酸は、窒素雰囲気下で加熱することにより結晶化の処理を行った。このときの処理温度と時間は表1、表2に記載のとおりである。
【0094】
また、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸につき、それぞれ処理した際の結晶化の割合および(ΔHm−ΔHc)は表1、表2に示すとおりである。実施例1〜13と比較例2は、処理により、結晶化の割合および(ΔHm−ΔHc)が高くて結晶化特性に優れていたのに対し、実施例14と比較例1は結晶化の割合および(ΔHm−ΔHc)がPDAのみ高く、比較例3はPLAおよびPDA両方で結晶化の割合および(ΔHm−ΔHc)が低かった。
【0095】
(2)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を混合する工程
前記の二軸押出機によりせん断結晶化しているポリ−L−乳酸に対して、樹脂供給口よりL/D=30の部分に設けたサイド供給口より、前記の加熱処理を行ったポリ−D−乳酸を添加して混合を行った。混合部のスクリューエレメントにはニーディングディスクを備えてせん断付与できるスクリューとし、せん断付与下で混合を行った。混合時の温度設定および混合時のポリマー濁度、結晶化度は表1、表2に示すとおりである。また、混合後の混合物の結晶化の割合とステレオコンプレックス形成率(Sc)についても表1、表2に記載したとおりである。
【0096】
表1、表2の結果より、実施例1〜13は、混合時および混合後における混合物の高融点化が観測され、結晶化度、結晶化の割合等の結晶化特性に優れていた。また、ステレオコンプレックス形成率についてはいずれも80%以下であった。実施例14は、混合時および混合後における混合物は結晶化しているものの、結晶化特性は低かった。また、ステレオコンプレックス形成率は87%と高かった。比較例1〜3は、混合物の高融点化が観測されて、ステレオコンプレックス形成率は80%以上であったが、結晶化度、結晶化の割合等の結晶化特性はいずれも低い値であった。
【0097】
(3)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物を固相重合する工程
(2)により得られた混合物を真空乾燥機に入れ、140℃にて圧力13.3Paで4時間固相重合を行い、次いで150℃に昇温して4時間、さらに160℃に昇温して10時間固相重合を行った。表1、表2に示すように、実施例1〜13については、いずれも固相重合後に分子量が10万以上と高分子量化しており、高融点化およびステレオコンプレックス形成率も70%以上が観測された。これに対して実施例14および比較例1〜3については、高融点化およびステレオコンプレックス形成率も70%以上と観測されたが、固相重合後の分子量は10万以上に増加しなかった。
【0098】
【表1】

【0099】
【表2】

【0100】
(実施例15〜33、比較例4)
(1)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を処理する工程
表3、表4に記載のとおり、ポリ−L−乳酸を、日本製鋼所社製TEX30型二軸押出機(L/D=45.5)を用い、せん断結晶化による処理を行った。二軸押出機は、樹脂供給口よりL/D=10の部分に温度180℃に設定した可塑化部分を設け、その後、表3、表4に記載の温度に設定した結晶化部分を設けた。結晶化部のスクリューエレメントにはニーディングディスクを備えてせん断を付与できるスクリューとした。
ポリ−D−乳酸についてもポリ−L−乳酸と同様、日本製鋼所社製TEX30型二軸押出機(L/D=45.5)を用い、せん断結晶化による処理を行った。二軸押出機のスクリューアレンジはポリ−L−乳酸をせん断結晶化した場合と同様で、結晶化部分の温度設定は表3、表4に記載したとおりである。
【0101】
ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸につき、それぞれ処理した際の結晶化の割合および(ΔHm−ΔHc)を表3、表4に示した。実施例15〜31と比較例4は処理により、結晶化の割合および(ΔHm−ΔHc)が高くて結晶化特性に優れていたのに対し、実施例32および33は結晶化の割合および(ΔHm−ΔHc)がPDAのみ高かった。
【0102】
(2)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を混合する工程
前記の二軸押出機にてせん断結晶化しているポリ−L−乳酸に対して、樹脂供給口よりL/D=30の部分に設けたサイド供給口より、前記のせん断結晶化処理を行ったポリ−D−乳酸を添加して混合を行った。混合部のスクリューエレメントにはニーディングディスクを備えてせん断付与できるスクリューとし、せん断付与下で混合を行った。混合時の温度設定および混合時のポリマー濁度、結晶化度は表3、表4に示すとおりである。また、混合後の混合物の結晶化の割合とステレオコンプレックス形成率(Sc)についても表3、表4に記載したとおりである。
【0103】
表3、表4の結果より、実施例15〜31は、混合時および混合後における混合物の高融点化が観測され、結晶化度、結晶化の割合等の結晶化特性は優れていた。また、ステレオコンプレックス形成率についてはいずれも80%以下であった。実施例32および33は、混合時および混合後における混合物は結晶化しているものの、結晶化特性は低かったが、ステレオコンプレックス形成率は80%以上と高かった。比較例4は、混合物の高融点化が観測されて、ステレオコンプレックス形成率は80%以上であったが、結晶化度、結晶化の割合等の結晶化特性はいずれも低い値であった。
【0104】
(3)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物を固相重合する工程
(2)により得られた混合物を真空乾燥機に入れ、140℃にて圧力13.3Paで4時間固相重合を行い、次いで150℃に昇温して4時間、さらに160℃に昇温して10時間固相重合を行った。表3、表4に示すように、実施例15〜31については、いずれも固相重合後に分子量が10万以上と高分子量化しており、高融点化およびステレオコンプレックス形成率は70%以上が観測された。これに対して実施例32、33および比較例4については、高融点化およびステレオコンプレックス形成率も70%以上と観測されたが、固相重合後の分子量は10万以上に増加しなかった。
【0105】
【表3】

【0106】
【表4】

【0107】
(実施例34〜47、比較例5)
(1)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を処理する工程
表5、表6に記載のとおり、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸をそれぞれ窒素雰囲気下で加熱することにより結晶化の処理を行った。このときの処理温度と時間は表5、表6に記載のとおりである。処理を行った後の熱特性は、表5、表6に示すように、実施例34〜46と比較例5は結晶化の割合および(ΔHm−ΔHc)が高くて結晶化特性に優れていたのに対し、実施例47は結晶化の割合および(ΔHm−ΔHc)がPDAのみで高かった。
【0108】
(2)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を混合する工程
前記の加熱結晶化しているポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を、日本製鋼所社製TEX30型二軸押出機(L/D=45.5)のL/D=30の部分に設けたサイド供給口よりそれぞれ添加して混合を行った。混合部のスクリューエレメントにはニーディングディスクを備えてせん断付与できるスクリューとし、せん断付与下で混合を行った。混合時の温度設定および混合時のポリマー濁度、結晶化度は表5、表6に示すとおりである。また、混合後の混合物の結晶化の割合とステレオコンプレックス形成率(Sc)についても表5、表6に記載したとおりである。
【0109】
表5、表6の結果より、実施例34〜46は、混合時および混合後における混合物の高融点化が観測され、結晶化度、結晶化の割合等の結晶化特性は優れていた。また、ステレオコンプレックス形成率についてはいずれも80%以下であった。これに対して、実施例47および比較例5は、混合物の高融点化が観測されて、ステレオコンプレックス形成率は80%以上であったが、結晶化度、結晶化の割合等の結晶化特性はいずれも低い値であった。
【0110】
(3)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物を固相重合する工程
(2)により得られた混合物を真空乾燥機に入れ、140℃にて圧力13.3Paで4時間固相重合を行い、次いで150℃に昇温して4時間、さらに160℃に昇温して10時間固相重合を行った。表3に示すように、実施例34〜46については、いずれも固相重合後に分子量が10万以上と高分子量化しており、高融点化およびステレオコンプレックス形成率は70%以上が観測された。これに対して実施例47および比較例5については、高融点化およびステレオコンプレックス形成率も70%以上と観測されたが、固相重合後の分子量は10万以上に増加しなかった。
【0111】
【表5】

【0112】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を混合し、当該混合物を固相重合する方法であって、混合するポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸のうち、少なくともいずれか一方が下記式(1)を満たし、かつ混合時に結晶が残存していることを特徴とするポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
(ΔHm−ΔHc)>20(J/g) (1)
ΔHm:結晶融解エンタルピー(J/g)
ΔHc:昇温時結晶化エンタルピー(J/g)
【請求項2】
混合するポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸がともに下記式(1)を満たし、かつ混合時に結晶が残存していることを特徴とする請求項1記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
(ΔHm−ΔHc)>20(J/g) (1)
ΔHm:結晶融解エンタルピー(J/g)
ΔHc:昇温時結晶化エンタルピー(J/g)
【請求項3】
混合するポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸のうち、少なくともいずれか一方が下記式(2)を満たすことを特徴とする請求項1または2記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
結晶化の割合(%):[(ΔHm−ΔHc)/ΔHm]>80 (2)
ΔHm:結晶融解エンタルピー(J/g)
ΔHc:昇温時結晶化エンタルピー(J/g)
【請求項4】
混合するポリ−L−乳酸および/またはポリ−D−乳酸がせん断付与または加圧下、融点−50℃〜融点+20℃の範囲から選ばれる温度で処理することにより得られることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
【請求項5】
混合するポリ−L−乳酸および/またはポリ−D−乳酸が、せん断速度10〜400/秒のせん断を加えて得られたものであることを特徴とする請求項4記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
【請求項6】
混合するポリ−L−乳酸および/またはポリ−D−乳酸が、0.05〜10MPaの圧力を加えて得られたものであることを特徴とする請求項4記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
【請求項7】
混合するポリ−L−乳酸および/またはポリ−D−乳酸が、処理時間0.1〜10分の処理で得られたものであることを特徴とする請求項4〜6いずれかに記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
【請求項8】
前記処理が単軸押出機、二軸押出機のいずれかで行われることを特徴とする請求項4〜7いずれかに記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
【請求項9】
混合時におけるポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸からなる混合物の結晶化度が10%以上であることを特徴とする請求項1〜8いずれかに記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
【請求項10】
混合時の温度が前記混合物の融点−50℃〜融点+20℃の範囲内であることを特徴とする請求項9記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
【請求項11】
混合をせん断付与または加圧下にて行うことを特徴とする請求項9または10記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
【請求項12】
混合後における混合物の結晶化に基づく結晶化の割合が下記式(2)を満たすことを特徴とする請求項1〜11いずれかに記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
結晶化の割合(%):[(ΔHm−ΔHc)/ΔHm]>80 (2)
ΔHm:結晶融解エンタルピー(J/g)
ΔHc:昇温時結晶化エンタルピー(J/g)
【請求項13】
混合後の混合物のステレオコンプレックス形成率が80%以下であることを特徴とする請求項12記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
【請求項14】
得られるポリ乳酸ブロック共重合体の重量平均分子量が10万以上であることを特徴とする請求項1〜13いずれかに記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。

【公開番号】特開2011−111599(P2011−111599A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272261(P2009−272261)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】