説明

ポリ乳酸系樹脂組成物および成形体

【課題】ポリ乳酸系樹脂の透明性を損なうことなく、またラクチド含有量を増加させることなく、ポリ乳酸系樹脂成形体に柔軟性を付与することができる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリ乳酸(A)とポリプロピレンサクシネート(B)とを含有し、ポリ乳酸(A)とポリプロピレンサクシネート(B)の質量比〔(A)/(B)〕が、90/10〜40/60であり、プロピレングリコールとエステル結合した乳酸単位の含有量が、全乳酸単位の0.1モル%未満であることを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物(M)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸とポリプロピレンサクシネートとを含有するポリ乳酸系樹脂組成物に関し、特に、ポリ乳酸樹脂の樹脂改質剤として用いることができる樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷低減、石油枯渇防止の見地から、生分解性樹脂、特に、植物由来の生分解性樹脂が注目されている。生分解性樹脂の中でもポリ乳酸は、透明性が良好で、かつ最も耐熱性が高い樹脂の1つであり、またトウモロコシやサツマイモ等の植物由来原料から大量生産が可能なため、コストが安く、同時に石油使用量の削減にも貢献できるので、有用性が高い樹脂である。
【0003】
しかし、ポリ乳酸を含む生分解性樹脂は、成形性、機械強度に優れるものの、それを成形したフィルム、シート、繊維、不織布、射出成形品などにおいては柔軟性が不足しており、柔軟性を必要とする容器、包装資材、繊維、不織布などの用途には、未だ満足できるものではなかった。近年、柔軟性を改善するために、さまざまな改質剤が用いられており、可塑剤を添加して柔軟化する方法は広く知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ポリ乳酸100重量部に対して、可塑剤を25重量部以上含むポリ乳酸系組成物が開示されている。また、特許文献2には、脂肪族ポリエステルに、可塑剤としてグリセリンとカルボン酸との反応生成物を添加することにより、柔軟性と耐熱性を向上させることが開示されている。
しかし、特許文献1では、長期保存時に、樹脂組成物に含有される低分子量の可塑剤が系外にブリードアウトする問題があった。また、特許文献2では、可塑剤の添加により樹脂の透明性が低下し、また柔軟性の向上も十分なものとは言い難かった。
【0005】
また、特許文献3には、ポリヒドロキシカルボン酸と、ジオール、ジカルボン酸からなるポリエステルとを溶融し、エステル交換触媒を添加し、減圧下でエステル交換反応させて、ポリヒドロキシカルボン酸系共重合体を製造する方法が開示され、この共重合体をポリヒドロキシカルボン酸に添加すると、耐衝撃性や柔軟性を付与できることが開示されている。
さらに、特許文献4には、ポリヒドロキシカルボン酸とポリエステル構造単位とポリヒドロキシカルボン酸構造単位とを有するブロック共重合体、及びジオール、ジカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸とを反応させて得られるポリエステルを含有する組成物フィルムは優れた柔軟性、透明性を有しており、ブリードを長期にわたり防止できることが開示されている。
しかしながら、特許文献3のポリヒドロキシカルボン酸系共重合体、また特許文献4のブロック共重合体やポリエステルは、ラクチドの含有量が多く、加工時に発煙や汚れの原因になっていた。特に、シート製膜時にはラクチド量が多いことが原因で、キャストロール汚れからシートが滑りシート幅が狭くなるという操業性の問題が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−323113号公報
【特許文献2】特開2000−302956号公報
【特許文献3】特開2003−40990号公報
【特許文献4】特開2008−63483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記問題点を解決し、ポリ乳酸系樹脂の透明性を損なうことなく、またラクチド含有量を増加させることなく、ポリ乳酸系樹脂成形体に柔軟性を付与することができる樹脂組成物を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ポリ乳酸と、ポリプロピレンサクシネートとを含有し、プロピレングリコールとエステル結合した乳酸単位の含有量が低い樹脂組成物を使用することによって、上記課題が解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち本発明の要旨は、次のとおりである。
(1)ポリ乳酸(A)とポリプロピレンサクシネート(B)とを含有し、ポリ乳酸(A)とポリプロピレンサクシネート(B)の質量比〔(A)/(B)〕が、90/10〜40/60であり、プロピレングリコールとエステル結合した乳酸単位の含有量が、全乳酸単位の0.1モル%未満であることを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物(M)。
(2)上記(1)記載のポリ乳酸系樹脂組成物(M)と、ポリ乳酸(D)とを含有し、ポリプロピレンサクシネート(B)の含有量が、3〜20質量%であることを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物(N)。
(3)上記(1)記載のポリ乳酸系樹脂組成物(M)と、ポリ乳酸(D)とを含有し、ポリプロピレンサクシネート(B)の含有量が3〜20質量%であることを特徴とする成形体。
(4)上記(2)記載のポリ乳酸系樹脂組成物(N)を成形してなる成形体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ポリ乳酸系樹脂組成物成形体の機械的強度や透明性を低下させることなく、その柔軟性を向上させることができる。したがって、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、樹脂改質剤として、特にポリ乳酸に好適に用いることができる。
また、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、ラクチド含有量が低いため、これを用いて成形体に加工する際に設備等を汚染することが非常に少なく、また、成形体の結晶化を阻害することがない。
さらに、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、COOH末端基濃度が低いため、得られる成形体は耐久性に優れ、長期間使用することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物(M)は、ポリ乳酸(A)とポリプロピレンサクシネート(B)とを含有し、また、ポリ乳酸系樹脂組成物(N)は、前記ポリ乳酸系樹脂組成物(M)とポリ乳酸(D)とを含有するものである。
本発明におけるポリ乳酸(A)、ポリ乳酸(D)としては、L−乳酸またはD―乳酸のみからなるホモポリマー、L−乳酸とD−乳酸の共重合体、あるいは一般的にステレオコンプレックスと呼ばれる重合体などのいずれを用いてもよいし、それらを混合して使用してもよい。ポリ乳酸中のL−乳酸/D−乳酸の含有比率は特に限定されず、市販されているL−乳酸/D−乳酸が、0.2/99.8〜99.8/0.2(モル%)であるものを使用することができる。ポリ乳酸の結晶性を利用する場合は、L−乳酸/D−乳酸が、0.2/99.8〜6.0/94.0(モル%)、または99.8/0.2〜94.0/6.0(モル%)であるものを使用することが好ましい。
【0012】
ポリ乳酸(A)、ポリ乳酸(D)の製造方法としては、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸(ラセミ体)を原料として、いったん環状2量体であるラクチドを合成し、その後開環重合を行う2段階のラクチド法や、当該原料を直接脱水縮合で行う一段階の直接重合法が知られている。本発明において用いられるポリ乳酸はいずれの製法によって得られたものであってもよい。また必要に応じてさらに固相重合法を併用してもよい。
【0013】
ポリ乳酸(A)の分子量は特に限定されないが、ポリプロピレンサクシネート(B)と溶融混練することから、(B)との相溶性を考慮すると、質量平均分子量(Mw)は50,000〜200,000であることが好ましく、70,000〜120,000であることがより好ましい。
一方、ポリ乳酸(D)の分子量も特に限定されないが、ポリ乳酸系樹脂組成物(M)とともに成形して得られる成形体の強度を考慮すると、質量平均分子量(Mw)は50,000以上であることが好ましく、70,000〜400,000であることがより好ましく、100,000〜200,000であることがさらに好ましい。
【0014】
ポリ乳酸(A)の分子量の指標としてメルトフローインデックス(MFI)を用いる場合には、190℃、2.16kgにおけるMFIは10〜80g/10minであることが好ましい。一方、ポリ乳酸(D)の分子量の指標としてMFIを用いる場合には、190℃、2.16kgにおけるMFIは0.1〜50g/10minであることが好ましく、0.2〜30g/10minであることがより好ましい。
【0015】
本発明においてポリ乳酸(A)とポリ乳酸(D)は、上述の理由から分子量が異なるものを使用することが好ましいが、同一のポリ乳酸であってもよい。
【0016】
本発明で使用するポリプロピレンサクシネート(B)は、プロピレングリコールとコハク酸とを反応させて得られる脂肪族ポリエステルである。プロピレングリコールとしては、分岐したアルキル基を持つ1,2−プロピレングリコールや、直鎖状の1,3−プロピレングリコールのどちらを用いてもよく、また両方用いてもよい。
また、ポリプロピレンサクシネート(B)は、プロピレングリコール以外のジオール成分や、コハク酸以外のジカルボン酸成分が共重合されてもよく、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、ブタンジオールが挙げられ、ジカルボン酸としては、例えば、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸が挙げられる。
【0017】
ポリプロピレンサクシネート(B)の質量平均分子量(Mw)は、ポリ乳酸(A)との相溶性を考慮すると、50,000未満であることが好ましく、1,000〜30,000であることがより好ましく、8,000〜25,000であることがさらに好ましい。質量平均分子量(Mw)が50,000以上であると、ポリ乳酸(A)との相溶性が低下し、得られる成形体が透明性に欠けることがある。
【0018】
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物(M)において、ポリ乳酸(A)とポリプロピレンサクシネート(B)の質量比〔(A)/(B)〕は、90/10〜40/60であることが必要であり、90/10〜50/50であることが好ましく、80/20〜50/50であることがより好ましい。ポリ乳酸系樹脂組成物(M)におけるポリプロピレンサクシネート(B)の含有量が10質量%未満であると、ポリ乳酸(D)に十分な柔軟性を付与するためには、樹脂改質剤としてのポリ乳酸系樹脂組成物(M)を大量に添加する必要があり、コスト的に不利である。一方、ポリプロピレンサクシネート(B)の含有量が60質量%を超えると、長期保存中にポリプロピレンサクシネート(B)がブリードし、保存性に問題が生じることがある。
【0019】
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物(M)において、プロピレングリコールとエステル結合した乳酸単位の含有量は、全乳酸単位の0.1モル%未満であることが必要である。この含有量は、後述するH NMRによって測定することができる。
通常、ポリ乳酸と脂肪族ポリエステルとを共重合や、エステル交換させると、乳酸単位に脂肪族ポリエステルのグリコール単位がエステル結合するので、エステル結合した乳酸単位の割合は、全乳酸単位の0.1モル%以上になる。このようにエステル交換反応が活発に起きると、同時にラクチド発生反応も起こっているので、ラクチド濃度が高くなり、得られる樹脂組成物を加工する際に、発煙や汚れの原因となる。また、樹脂のCOOH末端基濃度も高くなり、成形体の耐久性に悪影響を及ぼすことになる。
例えば未延伸シート製膜時には、樹脂組成物中のラクチド量が多いことが原因で、キャストロール汚れからシートが滑りシート幅が狭くなるという操業性の問題が生じる。
また、樹脂のCOOH末端基濃度が高くなると、耐加水分解性が不十分となるので、得られる成形体は黄変して、長期使用することが困難となる。また、フィルムなどに加工した場合も、高温高湿条件での使用においては耐久性が不十分になってしまう。
【0020】
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物(M)は、プロピレングリコールとエステル結合した乳酸単位の割合が、全乳酸単位の0.1モル%未満であるので、ラクチド濃度、COOH末端基濃度が低く、したがって、樹脂改質剤としてポリ乳酸(D)に対して用いると、加工性、操業性に優れ、耐久性に悪影響を及ぼさず、優れた透明性、柔軟性を付与することができる。
なお、ポリ乳酸系樹脂組成物(M)におけるラクチド濃度は、0.4質量%未満が好ましく、樹脂のCOOH末端基濃度は35モル/t以下が好ましい。
【0021】
上記のように本発明のポリ乳酸系樹脂組成物(M)は、ポリ乳酸(A)とポリプロピレンサクシネート(B)とを含有する。ポリ乳酸系樹脂組成物(M)における、ポリ乳酸(A)とポリプロピレンサクシネート(B)の合計質量は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。ポリ乳酸系樹脂組成物(M)中のポリ乳酸(A)とポリプロピレンサクシネート(B)の合計質量が80質量%未満では、ポリ乳酸系樹脂組成物(M)を樹脂改質剤として用いる時に、柔軟性を付与することができず、またラクチド濃度、COOH末端基濃度が低い特徴が損なわれる。
【0022】
ポリ乳酸系樹脂組成物(M)にはブロッキング防止剤を添加することが好ましい。添加するブロッキング防止剤としては、融点が70℃〜200℃であるものが好ましく、また、数十μm径の微粉末もしくはエマルジョンが好ましい。ブロッキング防止剤はポリ乳酸(D)との成形体で透明性を維持するものが好ましい。
ブロッキング防止剤の具体例としては、ポリ乳酸微粉末、N,N’−エチレン−ビス−12−ヒドロキシステアリルアミド、エチレンビスステアリン酸アミド、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムなどの微粉末が挙げられる。また、ポリ乳酸エマルジョンやエチレンビスステアリン酸アミドエマルジョンなどのエマルジョンが挙げられる。この中でも、特にポリ乳酸微粉末やN,N’−エチレン−ビス−12−ヒドロキシステアリルアミドを好適に用いることができる。これらのブロッキング防止剤は、単独で使用してもよいし複数組み合わせて使用してもよい。
ブロッキング防止剤の含有量はポリ乳酸樹脂組成物(M)に対して0.01〜5質量%であることが好ましく、0.01〜2質量%であることがより好ましい。ブロッキング防止剤の含有量が0.01質量%未満では、ポリ乳酸樹脂組成物のブロッキングを防止する効果に乏しく、5質量%を超えて添加すると、成形体を作製する際に粉末が飛散するなどしてラインを汚染し作業性が悪くなり、また、得られる成形体の柔軟性などの物性に悪影響を及ぼす。
後述する方法で得られるポリ乳酸系樹脂組成物(M)のペレットがブロッキングしやすい場合は、ブロッキング防止剤をポリ乳酸系樹脂組成物(M)全体に対して0.1〜5質量%添加することが好ましい。ペレット一粒ずつにブロッキング防止剤が均一についていることが好ましいので、ブレンダーなどのブレンド機で均一に混ぜ合わせるのが好ましい。
また、N.N’−エチレン−ビス−12−ヒドロキシステアリルアミドなどの有機酸アミド系のブロッキング防止剤は、結晶核剤としても効果があるため溶融混練時に添加して、結晶化速度の大きいペレットを作製し、結晶化させることでブロッキングを防止するという手法を用いてもよい。
【0023】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物(M)には、必要に応じて、結晶核剤、可塑剤、末端封鎖剤、耐衝撃改良剤、紫外線防止剤、光安定剤、防曇剤、防霧剤、帯電防止剤、難燃剤、着色防止剤、酸化防止剤、充填材、顔料、離型剤、防湿剤、酸素バリア剤などを本発明の特性を損なわない範囲で添加してもよい。
【0024】
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物(M)の製造方法としては、たとえば、ポリ乳酸(A)とポリプロピレンサクシネート(B)とを、触媒を添加しないで、またはごく少量の触媒を添加して、溶融混練して製造する方法が好ましい。この方法においては、溶融混練時間を5分以内と短くすることが好ましい。
【0025】
次に、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物(M)の製造方法について詳しく説明する。
押出機中に、ポリ乳酸(A)とポリプロピレンサクシネート(B)とを添加し溶融混練する。このとき、1軸押出機あるいは2軸押出機で溶融混練を行い、シリンダー温度160〜220℃、ダイス温度150〜160℃に加熱し、ポリ乳酸系樹脂組成物を混練時間1〜5分間溶融混練して押出して、ストランドを冷却後ペレットサイズにカットすることが好ましい。用いる押出機は混練能力から2軸押出機が好ましい。また、ポリ乳酸(A)はホッパーから供給し、ポリプロピレンサクシネート(B)は、予め80〜150℃、好ましくは120〜150℃に加熱して溶融状態にして、ギアポンプやシリンダーポンプを用いて液体添加法により添加することが好ましい。ポリプロピレンサクシネート(B)は80℃未満では粘度が高く泡をかみ、定量的に液体添加しにくい。ポリプロピレンサクシネート(B)の添加にあたっては、130℃に加熱されたポリプロピレンサクシネート(B)で予め吐出量を検量し、ポリ乳酸(A)の吐出量にあわせて目標量添加できるように算出しておくことが好ましい。ポリプロピレンサクシネート(B)が130℃でも粘度が高く、泡がみなどが原因で検量線に直線性がない場合は、150℃まで加熱してもよい。ポリプロピレンサクシネート(B)を液注で1軸押出機あるいは2軸押出機中に添加する際には、混練部全体の2分の1より供給部側から行うことが好ましい。例えば、混練部がC1部(供給側)〜C11部(ダイス側)までの11の部分に分かれている場合、C1部〜C5部の間でポリプロピレンサクシネート(B)を添加することが好ましい。ポリプロピレンサクシネート(B)とポリ乳酸(A)の混合性は比較的良いが、混練部全体の2分の1以降から添加した場合、ポリプロピレンサクシネート(B)の分散性が低下し、得られたペレットに濃度むらができやすくなる。このようなポリ乳酸系樹脂組成物(M)をマスターバッチとして樹脂改質剤に用いると、得られるポリ乳酸系樹脂組成物(N)も濃度むらが生じ、得られる成形体の物性にばらつきが生じやすくなる。
【0026】
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物(N)は、上記ポリ乳酸系樹脂組成物(M)と、ポリ乳酸(D)とを含有するものであり、ポリ乳酸系樹脂組成物(N)を成形することによって成形体を得ることができる。このように本発明のポリ乳酸系樹脂組成物(M)は、樹脂改質剤としてマスターバッチで用いることができる。
ポリ乳酸系樹脂組成物(N)におけるポリプロピレンサクシネート(B)の含有量は、3〜20質量%であることが必要であり、3〜15質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることがさらに好ましい。ポリプロピレンサクシネート(B)の含有量が3質量%未満では、得られる成形体は柔軟性が乏しく、20質量%を超えると、成形体の表面にポリプロピレンサクシネート(B)がブリードアウトすることにより保存性が損なわれたり、加工性、操業性が低下したりする。
【0027】
本発明の成形体は、ポリ乳酸系樹脂組成物(M)と、ポリ乳酸(D)とを含有し、ポリプロピレンサクシネート(B)を3〜20質量%含有するものである。また、成形体におけるポリプロピレンサクシネート(B)の含有量は、3〜15質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることがさらに好ましい。ポリプロピレンサクシネート(B)の含有量が3質量%未満では、成形体は柔軟性が乏しく、20質量%を超えると、成形体の表面にポリプロピレンサクシネート(B)がブリードアウトすることにより保存性が損なわれたり、加工性、操業性が低下したりする。本発明の成形体は、ポリ乳酸系樹脂組成物(N)を成形することによって得ることができる。
【0028】
本発明の成形体としては、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形、インフレーション成形、インジェクションブロー成形、発泡シート成形、溶融紡糸および、シート加工後の真空成形、圧空成形、真空圧空成形等の成形方法により得られた各種の成形体が挙げられる。成形体の具体例としては、押出成形してなるフィルム、シート、および、これらフィルム、シートから加工してなる成形体、溶融紡糸してなる繊維、不織布、射出成形してなる成形体、ビーズ発泡、押出発泡してなる成形体、ブロー成形してなる中空体、および、この中空体から加工してなる成形体などが挙げられる。本発明のポリ乳酸系樹脂組成物(N)が透明性に優れるという利点を生かして、押出成形してなるシートやシートを延伸してなるフィルムなどの成形体とすることが好ましい。
【0029】
本発明の成形体は、必要に応じてコート剤をコーティングしてもよい、コーティング方法は特に限定されないが、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング等が挙げられる。
また、本発明の成形体は、必要に応じて表面処理をしてもよい。表面処理方法としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、酸処理などが挙げられる。
【0030】
次に、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物(N)の製法と、成形体の一例である未延伸シートや延伸フィルムの製法について説明する。
ポリ乳酸系樹脂組成物(N)の製造方法は、特に限定されるものではなく、上述のポリ乳酸系樹脂組成物(M)の製造方法と同様の方法が挙げられる。また、未延伸シートの製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、Tダイ法、インフレーション法、カレンダー法等が挙げられる。なかでも、Tダイを用いて材料を溶融混練して押し出すTダイ法が好ましい。Tダイ法では、所定量のポリ乳酸(D)とポリ乳酸系樹脂組成物(M)を、押出機ホッパーに供給し溶融混練してポリ乳酸系樹脂組成物(N)を押し出し、キャストロールで冷却することにより未延伸シートが得られる。このとき、温度条件としては、シリンダー温度は160〜220℃、Tダイ温度は220〜240℃が適当である。なお、混練時間が長いとエステル交換が進行することがあるので、混練時間は短時間が好ましい。また、キャストロールは20〜40℃に制御されていることが適当である。この方法で、厚み50〜2000μmの未延伸シートが得られる。未延伸シート製膜時に他の添加剤を添加する場合は、特に限定されないが、10〜50質量%程度含有するマスターバッチチップをあらかじめ作製しておき、これを用いて目標とする含有量になるよう添加する方法が好ましい。
【0031】
次に上記製造方法で作製した未延伸シートを、一軸もしくは二軸延伸することが好ましい。延伸方法としては、ロール法、テンター法等が挙げられ、一軸延伸法、逐次二軸延伸法あるいは同時二軸延伸法のいずれかを採用することが好ましい。また、延伸での面倍率は4〜16倍であることが好ましい。面倍率が4倍未満であると、得られるフィルムの機械物性、特に引張強度が低く、実用に耐えないことがある。また、面倍率が16倍を超えると、フィルムが延伸途中で延伸応力に耐えきれず破断してしまうことがあるため好ましくない。得られた延伸フィルムの厚みは10〜200μmとするのが好ましい。厚みが10μm未満であると、包装袋のコシがないものとなり、200μmより厚いと、コスト的に不利であり、好ましくない。延伸温度としては、50〜130℃が好ましく、60〜110℃がさらに好ましい。延伸温度が50℃未満であると、延伸のための熱量不足によりフィルムが延伸初期で破断する。また130℃を超えると、フィルムに熱が加わりすぎてドロー延伸となり延伸斑を多発する傾向がある。また、延伸フィルムに寸法安定性を付与する目的で、延伸後、熱弛緩処理を実施してもよい。熱弛緩処理の方法としては、熱風を吹き付ける方法、赤外線を照射する方法、マイクロ波を照射する方法、ヒートロール上に接触させる方法等が選択でき、均一に精度良く加熱できる点で熱風を吹き付ける方法が好ましい。その際、80〜160℃の範囲で1秒以上であることが好ましく、かつ、2〜8%のリラックス率の条件下で実施することが好ましい。
【0032】
このようにして得られた本発明の成形体である延伸フィルムは単層でも良好な包装体が得られるが、内容物や保存方法、製袋方法にあわせて、他の樹脂を積層してもよい。積層方法は、コート、ダイレクトラミ、押出ラミ等が挙げられ、要求される性能に応じて適宜選択することができる。
【0033】
本発明の成形体の用途としては、例えば、従来柔軟性が不足するため使用が難しかった野菜包装用フィルム、飴個包装用フィルムなどの軟包装や、溶断シール袋、オムツや生理用品等の衛生材、建材、電気電子機器や自動車などの保護用途、農業用被覆資材、防草シート、工程フィルムなどの工業材料用途等が挙げられ、本発明の成形体は、これらの用途に好適に使用することができる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
実施例及び比較例の評価に用いた測定法は次のとおりである。
【0035】
(1)プロピレングリコールとエステル結合した乳酸単位の含有量
試料を300mg採取し、CDCl10mLに溶解して、H NMR(装置:日本電子社製ECA500、測定周波数:500MHz、基準:テトラメチルシラン(TMS)を0ppm)測定を行った。
ポリ乳酸(A)においては、乳酸単位のCH由来のピークは、1.57〜1.59ppm領域に現れ、CH由来のピークは、5.14〜5.18ppm領域に現れる。一方、プロピレングリコールとエステル結合した乳酸単位では、CH由来のピークが、1.50〜1.53ppm領域に現れる。したがって、5.14〜5.18ppm領域のピーク面積値(La)が全乳酸単位のモル数に対応し、1.50〜1.53ppm領域のピーク面積値(Ex)の3分の1がプロピレングリコールとエステル結合した乳酸単位のモル数に対応するので、((Ex/3)/La)×100から、プロピレングリコールとエステル結合した乳酸単位の含有量(モル%)を算出した。
また、ポリプロピレンサクシネート(B)のプロピレングリコールとして、1,2−プロピレングリコールを含有する場合、1,2−プロピレングリコール単位のCH由来のピークは、乳酸単位のCH由来のピークに重なって現れる。したがって、5.14〜5.18ppm領域のピーク面積値(La)には、1,2−プロピレングリコール単位のモル数に対応する分が含まれる。ところで、1,2−プロピレングリコール単位のCH由来のピークは4.08〜4.18ppm領域に現れ、その領域のピーク面積値(Pg)の2分の1が1,2−プロピレングリコール単位のモル数に対応する。したがって、((Ex/3)/(La−(Pg/2)))×100から、1,2−プロピレングリコールを含有する場合の、プロピレングリコールとエステル結合した乳酸単位の含有量(モル%)を算出した。
なお、本測定にあたっては、更なる高性能NMRを使用してもよい。
【0036】
(2)ラクチド濃度
試料0.1gに、ジクロロメタン10ml、100ppm内部標準液0.5mlを加えて、シェーカー(150rpm×40分)により攪拌し、試料を溶解させ、測定用試料溶液を調製した。そこへシクロヘキサンを添加してポリマーを析出させ、HPLC用ディスクフィルター(孔径0.45μm)でポリマーを濾別し、濾液をガスクロマトグラフィーで測定した。標準物質は東京化成工業社製のL−ラクチド、内部標準物質は2,6−ジメチル−γ−ピロンを用いた。
ガスクロマトグラフィー(Hewlett Packard社製、HP−6890)の測定は、ヘリウム(He)をキャリアガスとして、流速2.5ml/minで、オーブンプログラムは80℃で1分間保持し、20℃/minで200℃まで昇温し、30℃/minで280℃まで昇温し、5分間保持する条件で行った。カラムは、J&W社製DB−17(30m×0.25mm×0.25μm)を用い、検出器はFID(温度300℃)、内部標準法で測定した。
【0037】
(3)COOH末端基濃度〔COOH〕
50ml三角フラスコに、試料約0.15gと、ジクロロメタン20mlとを入れ、指示薬(フェノールレッド)を加えて0.1NのKOH溶液で滴定を行い、計算から求めた。
【0038】
(4)ポリプロピレンサクシネート(B)の極限粘度(η)
フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒として、試料濃度0.5質量%、温度20℃の条件下で常法に基づき測定した。
【0039】
(5)ポリ乳酸(A)、ポリプロピレンサクシネート(B)、ポリ乳酸(D)、ポリ乳酸系樹脂組成物(M)、ポリ乳酸系樹脂組成物(N)の質量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)
示差屈折率検出器(島津製作所社製、RID−10A)を備えたゲル浸透クロマトグラフィ装置(島津製作所社製)を用い、テトラヒドロフラン(THF)を溶離液として、流速1.0ml/min、40℃で測定した。カラムは、SHODEX KF−805L、KF−804L(昭和電工社製)を連結して用いた。サンプルは、樹脂組成物10mgをクロロホルム0.5mlに溶解後、THF5mlで希釈し、0.45μmのフィルターでろ過してから測定に供した。分子量はポリスチレン(Waters社製)を標準試料として換算した。
【0040】
(6)ポリ乳酸(A)、ポリ乳酸(D)のD体含有量(%)
ポリ乳酸(A)約0.3gを1N−水酸化カリウム/メタノール溶液6mlに加え、65℃にて充分撹拌し、ポリ乳酸を分解させた後、硫酸450μlを加えて、65℃にて撹拌し、乳酸メチルエステルとした。このサンプル5ml、純水3ml、および、塩化メチレン13mlを混合して振り混ぜた。静置分離後、下部の有機層を約1.5ml採取し、孔径0.45μmのHPLC用ディスクフィルターでろ過後、HewletPackard社製HP−6890SeriesGCsystemでGC測定した。乳酸メチルエステルの全ピーク面積に占めるD−乳酸メチルエステルのピーク面積の割合(%)を算出し、これをD体含有量(%)とした。
【0041】
(7)延伸フィルムのヘイズ(透明性)
得られた厚み25μmの延伸フィルムについて、JIS−K7105により、日本電色工業社製ヘーズメーターNDH2000を用いて測定した。このとき、それぞれサンプル数を5とし、これらの測定値の平均値を測定値とした。測定値によりそれぞれ以下の2段階で評価した。
○:5%未満
×:5%以上
【0042】
(8)延伸フィルムの柔軟性
得られた厚み25μmの延伸フィルムを手でつまむようにさわり、フィルムのしゃりしゃり感の風合いを触感にて以下の3段階で評価した。
○:良好(しゃりしゃりしていない)
△:普通
×:劣る(しゃりしゃりしている)
【0043】
(9)引張弾性率(GPa)
JIS K―7127に記載の方法に準じて、厚み25μmの延伸フィルムを10mm×100mmの短冊状にしたものを試料とし、MD方向、TD方向それぞれサンプル数を10とし、これらの測定値の平均値を測定値とした。測定は島津製作所社製オ−トグラフ(引張試験機)AG−ISを用いて測定した。試験条件は支点間距離100mm、20mm/minの速度で測定した。
○:3.0GPa未満
△:3.0GPa以上3.5GPa未満
×:3.5GPa以上
【0044】
(10)耐久性試験(黄変)
ペレットを35℃、95%RH条件下で30日間保存し、ペレットの黄変を測定することで耐久性試験を行った。評価は0日、30日にサンプリングし、ペレットの黄変度合いを色差計で測定し、(30日目のYI値−0日目のYI値)で算出した。測定は日本電色工業社製分光色差計SE−6000を用いた。光源はD65−10を用い、反射測定でYI値を測定した。
○:5未満
△:5以上10未満
×:10以上
【0045】
(11)耐久性試験(分子量Mw保持率)
延伸フィルムを40℃、90%RH条件下で90日間保存し、耐久試験を行った。評価は0日、30日、60日、90日の時にサンプリングし、各保存日数での質量平均分子量を測定した。質量平均分子量の測定方法は上記方法と同様である。0日の試料の質量平均分子量をブランクとし、各保存日数での分子量低下を保持率として表した。保持率の計算方法は、(保存日数での質量平均分子量)/(0日目試料の質量平均分子量)×100とした。
◎:90%以上
○:70%以上90%未満
△:50%以上70%未満
×:50%未満
【0046】
(12)製膜状況操業性
未延伸シートの製膜時に、発煙の多さとキャストロール汚れからシートが滑り、シート幅が狭くなるために24時間連続操業の中で製膜試験を中断した回数を評価した。シート幅が延伸時の設定チャック幅から20mm狭まった場合、もしくはTダイの幅から20mm狭った場合に製膜を中断し、中断後はラクチド除去後製膜を再開した。
○:中断回数0〜1回
△:中断回数2回
×:中断回数3回以上
【0047】
次に、実施例、比較例において用いた各種原料を示す。
(1)ポリ乳酸(A)
A−1:ポリ乳酸(ネイチャーワークス社製、品番:6251D)D体含有量1.2モル%、ラクチド濃度0.2質量%、質量平均分子量(Mw)=10万、〔COOH〕=40モル/t。
A−2:ポリ乳酸(ネイチャーワークス社製、品番:6300D)D体含有量12.0モル%、ラクチド濃度0.2質量%、質量平均分子量(Mw)=14万、〔COOH〕=30モル/t。
【0048】
(2)ポリ乳酸(D)
D−1:ポリ乳酸(ネイチャーワークス社製、品番:4032D)D体含有量1.2モル%、ラクチド濃度0.2質量%、質量平均分子量(Mw)=16万、〔COOH〕=22モル/t。
D−2:ポリ乳酸(ネイチャーワークス社製、品番:4042D)D体含有量4.0モル%、ラクチド濃度0.2質量%、質量平均分子量(Mw)=16万、〔COOH〕=22モル/t。
【0049】
(3)ポリプロピレンサクシネート(B)
B−1:
コハク酸74.67g、1,2−プロピレングリコール57.74gを撹拌翼のついた重合缶に仕込み、窒素気流下で130℃から1時間に20℃ずつ220℃まで昇温し、生成する水を留去しながら1時間エステル化反応を行った。次いで、重合触媒としてチタンテトラブトキシド(TBT)を0.0086g添加し、230℃に昇温、0.8torrまで減圧して重縮合反応を8時間行い、透明な脂肪族ポリエステルを得た。得られた脂肪族ポリエステルの極限粘度(η)は0.24、ガラス転移点は−12℃、質量平均分子量は13000、数平均分子量は8000、〔COOH〕=20モル/tであった。
B−2:
コハク酸74.67g、1,3−プロピレングリコール57.74gを撹拌翼のついた重合缶に仕込み、窒素気流下で130℃から1時間に20℃ずつ220℃まで昇温し、生成する水を留去しながら1時間エステル化反応を行った。次いで、重合触媒としてチタンテトラブトキシド(TBT)を0.0086g添加し、230℃に昇温、0.8torrまで減圧して重縮合反応を8時間行い、脂肪族ポリエステルを得た。得られた脂肪族ポリエステルの極限粘度(η)は0.22、ガラス転移点は−10℃、質量平均分子量は12000、数平均分子量は8000、〔COOH〕=15モル/tであった。
【0050】
実施例1
二軸押出機(池貝社製PCM−30)を用い、ポリ乳酸(A−1)をホッパーから供給し、あらかじめ150℃の加熱タンクで溶融させたポリプロピレンサクシネート(B−1)をギアポンプで混練部途中から液体添加法で添加し、樹脂組成物(M−1)中のこれらの含有量が表1に示す値となるように溶融混練した。押出温度190℃、スクリュー回転数150rpm、吐出量120g/minの条件で、1.5分間溶融混練して押出し、ストランドを冷却後、ペレットサイズにカットした。
得られた樹脂組成物ペレットに対して、N,N’−エチレン−ビス−12−ヒドロキシステアリルアミドを0.25質量%添加して、均一に混ざるようにブレンドした。その後50℃、40時間真空乾燥した。乾燥後のペレットを(M−1)とした。
【0051】
実施例2〜6
ポリ乳酸(A)とポリプロピレンサクシネート(B)の種類と含有量とを表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてペレット(M−2)〜(M−6)を得た。
【0052】
比較例1
二軸押出機(池貝社製PCM−30)を用い、ポリ乳酸(A−1)をホッパーから供給し、あらかじめ150℃の加熱タンクで溶融させたポリプロピレンサクシネート(B−1)をギアポンプで混練部途中から液体添加法で添加し、触媒としてTBTを液体添加法で添加し、ポリ乳酸系樹脂組成物中のこれらの含有量が表1に示す値となるように溶融混練した。押出温度190℃、スクリュー回転数100rpm、吐出量50g/minの条件で、エステル交換しやすいように、合計6分間溶融混練して押出し、ストランドを冷却後、ペレットサイズにカットした。
得られた樹脂組成物ペレットに対して、ブロッキング防止剤を0.25質量%添加して、均一に混ざるようにブレンドした。その後50℃、40時間真空乾燥した。乾燥後のペレットを(E−1)とした。
【0053】
比較例2〜5
ポリ乳酸(A)、ポリプロピレンサクシネート(B)、触媒の種類と含有量とを表1に示すように変更した以外は、比較例1と同様にしてペレット(E−2)〜(E−5)を得た。
【0054】
実施例1〜6、比較例1〜5で得られた樹脂組成物の組成、評価結果を表1に示した。また、比較例6では、樹脂組成物としてDIC社製プラメートPD−350を使用し、これをペレット(E−6)として評価した結果を示した。
【0055】
【表1】

【0056】
表1から明らかなように、実施例1〜6で得られたポリ乳酸系樹脂組成物(M)は、ポリ乳酸(A)とポリプロピレンサクシネート(B)との含有比率、およびプロピレングリコールとエステル結合した乳酸単位の含有量が、本発明の範囲内のものであったため、ラクチド濃度やCOOH末端基濃度も低く、耐久性に優れたものであった。
一方、比較例1〜6の樹脂組成物ペレット(E−1)〜(E−6)は、ポリ乳酸(A)とポリプロピレンサクシネート(B)とのエステル交換反応が進行し、プロピレングリコールとエステル結合した乳酸単位の含有量が、全乳酸単位の0.1%以上であったため、ラクチド濃度やCOOH末端基濃度も高く、耐久性に劣るものであった。
【0057】
実施例7
ポリ乳酸(D−1)をホッパーから供給し、樹脂組成物ペレット(M−1)を別フィーダで計量して添加し、樹脂組成物(N)中のこれらの含有量が表2に示す値となるようにし、スクリュー径約19mmの単軸押出機を用いて、押出温度215℃にて、Tダイより樹脂組成物(N)を溶融押出し、20℃に設定されたキャストロールに密着させて、厚み250μmの未延伸シートを得た。
得られた未延伸シートの端部をテンター式同時二軸延伸機のクリップに把持し、70℃の予熱ゾーンを走行させた後、温度68℃でMDに3.0倍、TDに3.3で同時二軸延伸した。その後TDの弛緩率5%として、温度140℃で4秒間の熱処理を施した後、室温まで冷却して巻き取り、厚さ25μmの二軸延伸フィルムを得た。
【0058】
実施例8〜14、比較例7〜17
ポリ乳酸(D)と樹脂組成物ペレット(M、E)の種類と含有量とを表2に示すように変更した以外は、実施例7と同様にして厚さ25μmの二軸延伸フィルムを得た。
【0059】
実施例7〜14、比較例7〜17で得られた二軸延伸フィルムの組成、評価結果を表2に示した。
【0060】
【表2】

【0061】
表2から明らかなように、実施例7〜14で得られたポリ乳酸系樹脂組成物(N)を成形してなる二軸延伸フィルムは、ポリ乳酸系樹脂組成物(M)を含有し、ポリプロピレンサクシネート(B)の含有量が本発明で規定する範囲内のものであったため、柔軟性、耐久性、製膜時の操業性に優れたものであった。
一方、比較例7、8では、ポリ乳酸系樹脂組成物(M)を含有しないものであったり、含有していてもポリプロピレンサクシネート(B)の含有量が少ないものであったため、得られた二軸延伸フィルムは、透明性、耐久性には優れているものの、柔軟性に劣るものであった。
比較例9、10では、ポリプロピレンサクシネート(B)の含有量が多すぎたため、得られた二軸延伸フィルムは、柔軟性には優れるものの、耐久性、製膜時の操業性に劣るものであった。
比較例11〜17では、プロピレングリコールとエステル結合した乳酸単位の含有量が、全乳酸単位の0.1モル%以上であるポリ乳酸系樹脂組成物を使用したため、得られた二軸延伸フィルムは、透明性、耐久性、操業性および柔軟性をすべて満足することができないものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸(A)とポリプロピレンサクシネート(B)とを含有し、ポリ乳酸(A)とポリプロピレンサクシネート(B)の質量比〔(A)/(B)〕が、90/10〜40/60であり、プロピレングリコールとエステル結合した乳酸単位の含有量が、全乳酸単位の0.1モル%未満であることを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物(M)。
【請求項2】
請求項1記載のポリ乳酸系樹脂組成物(M)と、ポリ乳酸(D)とを含有し、ポリプロピレンサクシネート(B)の含有量が、3〜20質量%であることを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物(N)。
【請求項3】
請求項1記載のポリ乳酸系樹脂組成物(M)と、ポリ乳酸(D)とを含有し、ポリプロピレンサクシネート(B)の含有量が3〜20質量%であることを特徴とする成形体。
【請求項4】
請求項2記載のポリ乳酸系樹脂組成物(N)を成形してなる成形体。



【公開番号】特開2012−77254(P2012−77254A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226120(P2010−226120)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】