説明

ポリ塩化ビフェニルに汚染された電気機器を、組み立てられたまま無害化し、かつ再生する方法

【課題】
ポリ塩化ビフェニルを含有する電気絶縁油を使用した電気機器の電気絶縁油、及び電気機器本体を、電気機器が組み立てられたまま無害化し、リサイクル、又は再使用可能に再生する。
【解決手段】
電気機器を開口するなどして、ポリ塩化ビフェニルを含有する電気絶縁油を抜き取って、PCBの無害化装置に投入し、法に定める無害化の判定条件を上回る水準に無害化した後、電気機器本体に環流し、電気機器本体に電気絶縁油とともに捕捉されているPCBを溶出させ、PCB濃度が平衡したときに法に定める無害化処理基準を達成していれば無害化処理を完了、達成していなければ、同じ工程を無害化処理基準を達成するまで繰り返し、電気絶縁油と電気機器本体をともに無害化し、電気機器を再使用可能に再生、又は、無害化処理後に電気絶縁油を新しい電気絶縁油に交換して電気機器を再生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低濃度のポリ塩化ビフェニル(以下、PCBという)に汚染された電気機器を、該電気機器が組み立てられた状態のままで、丸ごと無害化することを効率的に行う方法と、無害化した前記電気機器を継続して使用できるようにする再生(以下、再生という)方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機塩素系化合物であるPCBの有害性が指摘され、生産が中止されてから久しい。
しかし、長期間にわたってPCBの処理が進まず、PCB、あるいはPCBに汚染された電気絶縁油を使用した電気機器は、今なお実系統でたくさん使用されている。また、大量の使用をやめた、PCB、あるいはPCBに汚染された電気絶縁油を使用した電気機器
、及び単独の状態のPCBに汚染された電気絶縁油が、その保有者によって保管され続けられている。
【0003】
近年にいたり、化学的にPCBを無害化する技術が開発され、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号)」(以下、廃掃法という)にもとづくPCBの無害化処理に関する公的認証(以下、公的認証という)も制度化されて、一部の保有者においてPCB、あるいはPCBに汚染された電気絶縁油を使用した電気機器や、PCBに汚染された電気絶縁油の処理が始まっている。
【0004】
さて、処理を要するPCBの大部分は、変圧器やコンデンサ等の電気機器に絶縁媒体として使用されているものである。絶縁媒体には、「PCBそのもの、もしくは主要成分としてPCBを使用している場合」(以下、高濃度PCBという)と、「何らかの原因でごく微量のPCBが混入した電気絶縁油」(以下、低濃度PCBという)がある。
【0005】
低濃度PCBは、これまで、電気絶縁油を再生する際にPCBが混入したものと考えられてきており、再生電気絶縁油は、主に柱上変圧器に使用されていることが判明している
。しかし、至近にいたり、これまでPCBが入っていないと思われてきた電気絶縁油の新油を使用した電気機器からPCBが検出される事例が多数報告され、低濃度のPCB汚染は、電気絶縁油を使用するあらゆる電気機器に広がっていることが判明した。環境への影響や、社会的インフラとして最重要とも位置づけられる電力の供給を担う電気機器にとって、安定的な運用を脅かす深刻な状況といわなければならない。
【0006】
電気絶縁油の生産工程や、輸送、貯蔵、各種の作業工程、及び取り扱い器具、メンテナンス等、PCBが混入し得る機会は多々あり、これらの何れか、あるいは複合的に要因が重なって汚染が広まったものと考えられる。
【0007】
電気絶縁油を使用する電気機器は、電力会社が圧倒的多数を保有しているが、この他にも電力会社等の電力供給者から高電圧で受電し、自身で低電圧に降圧して使用している需要家が、日本全国に特別高圧受電の66/77kV級で10,000件程度、高圧受電の6kV級で70万件程度ある。
これらの特別高圧、あるいは高圧電力の需要家が実際に電力を消費するときの電圧は、多くの場合100〜400Vである。つまり6kV以上の電圧を降圧するための変圧器や
、他の電気機器が使用されていると云うことである。これら需要家が使用している電気機器の使用数量については関知していないが、それぞれの需要家が複数の変圧器を使用していることは想像に難くなく、前記の需要家数から察して変圧器だけでも200万台は下らないと推測される。
【0008】
PCB対策を考える場合、日本全国に張り巡らされた電力網を維持するため、電力会社の電力設備の拠点が全国津々浦々に設置されている他、それを遙かに上回る電力の需要家があり、かつ各需要家が複数の電気機器を使用していることは重要な事実である。特別高圧の需要家の受電容量を仮に平均4,000kVAとすれば、変圧器だけでも30〜50kVA級器100台程度が使用されていることになる。
つまり、本発明が処理の対象としている電気機器は、使用施設数、及び使用数量がきわめて多数にのぼり、かつ使用施設は全国に広く散在している。
【0009】
低濃度PCBに汚染された電気機器のPCB濃度は、ごく低濃度であることが多く、5ppm以下がPCBに汚染された機器全体の約60%、10ppm以下が全体の約74%
、100ppm以下が全体の約99%であることが社団法人日本電機工業会(以下、JEMAという)のサンプリング調査で判明している。ただし、前記調査における最高濃度は2,110ppmであることから、低濃度PCBの最高濃度は10,000ppm(1%)程度と想定することが適当であろう。本発明は、1%以下の低濃度PCBの汚染電気機器に関するものである。
なお、PCB濃度はmg/kg、ppm、%等の表記が混在して広く使用されている。 本発明の説明では、ppmを優先的に使用するが、引用した原典がある場合は原則として原典に合わせ、ppm≒mg/kg、10,000ppm=1%として扱う。
【0010】
前記のJEMAの報告書では、汚染確率についての統計も示されており、低濃度PCB汚染機器が集中する1989年以前の製品で約45%、1990年以降の生産品を含めた汚染率は約27%である。
【0011】
これらの汚染電気機器を無害化処理するためには、これまでの方策では、固定式の処理施設まで運搬しなければならない(可搬、あるいは移動式の処理設備も提案されているが、低濃度PCBだけを処理する設備であり、電気機器本体は含まれていない)が、有害性を指摘されている汚染機器の運搬であり、厳重な安全施策と厳格な管理体制の確立が必須要件となる。現に、本発明の対象外であるが、「PCBを意図的に使用したトランス等を主な対象」とするPCB汚染機器の運搬に関して、環境省大臣官房廃棄物リサイクル対策部より[PCB廃棄物収集・運搬ガイドライン]が環廃産発第04040110号として、平成16年4月1日付で発令されている。(「PCBを意図的に使用]とは高濃度PCBのことと理解される。)
前記の通達によれば、堅牢な容器に収納された機器であることから電路ではそのままの形態で使用することが容認されているPCB汚染変圧器等を輸送する場合においても、漏洩のないことが検定された容器等に収納し、いわば2重の容器に収納する形態とすることが条件になっている。
低濃度PCB汚染電気機器については、このような具体的な指針は現時点では示されていないが、処理が本格化するための条件整備が必要となった暁には、同様な内容が示される可能性は高いと考えられる。
PCB汚染機器を無害化処理するには、輸送費は勿論のことこれらの輸送用用具の整備にも多額の費用が必要となり、かつそれらの用具はPCBの無害化処理が完了すれば不要となるものである。
なお、小形の電気機器の収納には、UN検定マーク付のドラム缶の使用が許容されており、簡便なようであるが、本発明者の一人が、市販のドラム缶を調べたところ、ドラム缶に収容できる電気機器は、ごく小形の限られたものに留まることが判明した。ドラム缶には、ドラム缶が腐食して収容物が流出して環境汚染源となることを防止するための、一般的な200リットル用のドラム缶をそのまま収容出来る300〜350リットルの容積を有する大形のドラム缶があるが、それでも1970年頃に生産された50kVAの変圧器を収容することは出来なかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記のとおり低濃度PCB、及び低濃度PCBに汚染された電気機器の無害化処理が始まっているが、これまでの無害化処理は、低濃度PCB、及び低濃度PCBに汚染された電気機器本体を、それぞれ個別に無害化して、リサイクルを含む廃棄処分するものであった。ここで云うリサイクルとは、無害化した電気絶縁油を燃料に転用したり、電気機器の金属製部材をもとの金属に戻したりすることを指す。
【0013】
電気機器本体は、いろいろな部材で構成され、例えば変圧器には絶縁紙で被覆した電線で構成されたコイルがあり、コイルの内部深くの絶縁紙にも低濃度PCBが染み込んでいる。
そのため、本発明が対象としている小形電気機器の場合、従来の無害化処理においては、電気機器本体を分解したり粉砕してから無害化処理が行われている。
各部材は、何れもPCBに汚染されているので、作業者、及び周囲環境への防汚対策を施したうえでの作業となり、設備面でも、作業面でも多くの費用と時間の掛かる、なかなか大変な作業である。
しかも、その大変な作業を行っても、結果は電気機器の廃棄処分であり、電気機器が有している機器としての価値を損なうものでしかない。
【0014】
ところで、PCBは、当初、安全上の問題が認識されておらず、変質しにくい安定性の高さと、優れた絶縁性能によって、脚光を浴びて登場した絶縁媒体である。
変質しにくく安定していると云うことは、自身が変化しにくいと云うことと同時に、他の物質を変性させないことでもある。
すなわち、電気機器本体にPCBが付着したり、電気機器の構成部材にPCBが染み込んでいるが、PCBに汚染されているのは電気絶縁油だけであって、電気機器本体が有害なものに変質しているわけではない。さらに云えば、電気絶縁油も変質しているのではなく、有害なPCBが混入しているにすぎない。
この視点は、本発明の重要な着目点である。
【0015】
それにも関わらず、これまでの低濃度PCBの無害化処理が、低濃度PCBと電気機器本体を別々に無害化処理し、かつ、低濃度PCBに加え、電気機器本体までも廃棄の扱いとしているのは、主に次の4つのことが影響していると考えられる。
1)低濃度PCBと電気機器本体を同時に無害化する、という発想がなかった。
2)低濃度PCBと電気機器本体を同時に無害化する方法がなかった。又はそのような方法が知られていなかった。
3)絶縁紙等の、電気絶縁油とともにPCBが染み込んだ絶縁油浸透性材からPCBを抽出できず無害化処理できなかった。又は電気機器本体を廃棄処分にするしかないようなダメージを与えないで、絶縁油浸透性材に染み込んだPCBを無害化する方法がなかった。あるいは、そのような方法が知られていなかった。
4)PCBの適正な処理を進めるための法律である「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(平成十三年法律第六十五号)」や、この法律の原点といえる前記の「廃掃法」などが、何れも「廃棄」の文言を冠した法律名になっている。つまり、PCBは廃棄するべきものと認識されているといえる。
ただし、始めに法令ありきではなく、これらの法律は、制定当時の技術を反映したものと考えるのが適切であろう。そうであっても、法令が一旦発効してしまえば、その後の発想、思考、指向に影響するのは当然のことである。
以上の結果、PCBに汚染された電気絶縁油、及び/又は、電気機器を継続して使用できるようにする再生という発想が生まれなかった。
【0016】
本発明は、このような状況に対して、絶縁紙等に染み込んでいるPCBを含め、電気機器に使用されている全ての低濃度PCBのPCBを、電気機器が組み立てられたまま丸ごと、かつ複数台まとめて無害化するもので、低濃度PCB汚染電気機器の処理方法を革新的に高度化する、安全で、高効率/経済的な低濃度PCBの無害化処理方法である。
【0017】
また、無害化装置を小型に構成し、車載出来るようにして、必要な場合は、該無害化装置を電気機器が据え付けられている変電所や受電所等に移動し、現地で無害化処理を行うことも可能である。
加えて、無害化した電気機器を継続的に使用可能とするための検査装置や補修品等を当該車両、又は別の車両に積載し、無害化処理を行うとともに、現地で無害化した電気機器を再使用を出来るように再生することも可能である。
【0018】
なお、低濃度PCB汚染電気機器は、前記のとおりほとんどが1989年以前に生産された機器であり、老朽化が進んでいる機器も少なくない。そのような電気機器の場合は、無害化処理後に廃棄と云うことも考えられるが、その場合でも電気機器を組み立てたまま無害化できれば安全、かつ効率的である。無害な機器になれば、PCBに汚染されていない電気機器と同様に扱え、安全で容易にリサイクルを含む廃棄処理することが出来る。
【0019】
また、低濃度PCBを無害化した処理済絶縁油が所要の電気絶縁油の性能を満たす場合は、処理済絶縁油を無害化した電気機器本体に再封入して使用することが出来る。
処理済絶縁油をそのまま使用することが出来ない場合でも、新しい電気絶縁油に入れ替えれば電気機器の再使用が可能となる。
【0020】
電気機器を再生することが出来れば、これまでの低濃度PCB汚染電気機器の処理方法とは全く異なる、現行の法令でも想定していない理想的な処理方法になる。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明では、既に存在する低濃度PCBの無害化装置を使用する低濃度PCBの無害化処理に、分配の法則という自然科学の知見を利用した溶解平衡の仕組みを新たに取り入れ
、次の方法、手順によって課題を解決する。
1)低濃度PCBに汚染された複数台の電気機器を、蓋を外す等により開口する他は、分解や解体をしないで、丸ごと一括して無害化、及び再生する。
無害化設備の処理能力と1回の処理数量は、処理を要する電気機器の種類、規模、数量、及び処理期間等を考慮して当業者が適宜決定する。
2)電気機器から低濃度PCBを抜き取って無害化し、PCB濃度が低下した前記電気機器自身の処理済絶縁油を元の電気機器に環流し、電気機器を元の状態に戻す。
PCBの無害化装置は、PCBの無害化処理に関する法令上の基準、いわゆる卒業基準(以下、卒業基準という)値である0.5mg/kgをさらに下回る値まで無害化出来る能力を有していることを要する。無害化処理効率の観点からは、なるべく高い無害化能力を有していることが望ましい。本発明の実用上の有効性という観点からは、この高い無害化能力の確保が重要である。
3)電気機器の種類、構造によっては、無害化処理が終了した電気機器を、回転や緩やかな振動等により揺動させることによって、電気絶縁油面以外の部位に、電気絶縁油とともに付着しているPCBを洗浄し、電気機器の全ての部位のPCBを無害化の卒業基準以下とする。
4)処理済電気絶縁油を再封入した電気機器を静置し、電気機器本体に電気絶縁油とともに捕捉されている低濃度PCBを、普遍的な物理現象である分配の法則を利用して処理済電気絶縁油中に溶出させ、溶出させたときに無害化の判断基準である、いわゆる卒業基準のPCB濃度0.5ppm以下を達成するようにする。
絶縁紙等にはPCBの選択的吸着特性のないことが実験で判明しており、平衡状態においては、処理済絶縁油中のPCB濃度と、絶縁紙等に吸着されている絶縁油中のPCB濃度は同一値となる。
5)1回の無害化処理によって卒業基準を達成できないときは、前記の2)から4)の工程を繰り返して行い、卒業基準を達成する。
6)無害化処理装置は、固定装置方式の他、必要に応じて可搬形で構成し、電気機器が存在する現地で無害化処理を行う。
7)電気機器を継続して使用出来るように再生する場合は、無害化処理済電気絶縁油を使用する場合の他、必要に応じて処理済電気絶縁油を新たな電気絶縁油に交換する。
8)電気機器の無害化処理を現地で行う場合は、必要に応じて、可搬形の電気機器検査装置、及び/又は、適宜の補修部材を現地に持ち込み、無害化処理紙を行った電気機器の再使用可否の診断、及び再使用を可能とするための補修を行う。
9)PCB濃度が卒業基準を達成し、無害化処理が終了したら、電気機器本体を廃棄処理、又は再生する。廃棄の場合は、電気機器は無害になっているので、通常の産業廃棄物としてリサイクル等の有効利用を図りつつ処分する。
【0022】
なお、本発明の無害化処理に際しては、低濃度PCBの処理済絶縁油、又は無害化進行途次の低濃度PCBが、低濃度PCB無害化の進展に悪影響を及ぼさない無害化処理方法を適用する必要がある。
例えば、低濃度PCBの無害化に際してタール様の物質を生じる無害化処理方法の場合は、低濃度PCBの循環処理系統に目詰まりをもたらしたり、該タールが絶縁紙等の絶縁油浸透性材に付着し、同材からのPCBの滲出を妨げ、無害化の進行を阻害する可能性がある。また、処理済絶縁油の特性が大きく変わって分配の法則が機能しにくくなるとか、PCBの観測がしづらくなるなどの懸念も考えられ好ましくない。勿論、タール様の物質が適切に除去でき、処理済絶縁油に有害とならない無害化処理方法であれば、適用できる可能性はある。
本発明者の一人が、特許出願した特許文献1に示す発明に適用している触媒水素還元法は、電気絶縁油の特性にほとんど影響を与えず、タール様の物質も生じないPCBの無害化処理方法であり、本発明の無害化処理に適用するに適した方法の一つである。
【0023】
また、前記のとおり、本発明では、普遍的な物理現象である分配の法則を利用して、電気機器の絶縁紙等に捕捉されているPCBを、無害化が進展した処理済絶縁油中に滲出させる方策を採っているので、処理効率の面から、無害化装置が卒業基準であるPCB濃度0.5ppm以下を大きく下回る値まで無害化出来る能力を有し、PCB濃度平衡時のPCB濃度が低い値にできることが望ましい。
前記の特許文献1の発明に適用している無害化装置は、低濃度PCBをPCBの無害化装置内に繰り返し循環させて無害化する方法を採っており、循環回数を増減させることでPCBを所望の濃度まで低下させることが出来る。つまり、無害化処理を行う電気機器のPCB濃度や、低濃度PCBの使用量に関わらず無害化の水準を設定することが可能であり、その点でも、本発明の無害化装置に適用するに適した方法といえる。
【0024】
例えば、無害化装置が卒業基準の1/5のPCB濃度である0.1ppmまで無害化する能力を有していれば、下記のような試算が出来る。
特許文献1に適用している触媒水素還元法により、前記のPCBの無害化処理に関する公的認証を得る際に行った実験では、100ppmの低濃度PCBが、再現試験含めて約0.05ppmまで無害化できており、このような考え方は十分成立し得ることである。
1.試算の前提条件
1)計算を簡易にして理解を容易にするため、無害化処理を行う1回分の電気機器数量は1台とする。
2)電気機器本体の絶縁紙等に捕捉されている低濃度PCB量を、小形変圧器における実験例を参考に、電気機器に使用されている低濃度PCB全量の5%とする。
3)低濃度PCBを無害化装置によって0.1ppmまでPCB濃度を低下させるものとする。
4)電気機器の電気絶縁油面以外に付着したPCBは、きわめて微量であるので、計算の便宜上、無害化処理したPCB濃度には影響しないものとする。
而して、そのまま静置し、電気機器本体に捕捉されている低濃度PCBと処理済絶縁油中のPCB濃度が平衡した時点について試算する。
2.試算
1)低濃度PCBに汚染されている電気機器を、1回の無害化処理によって無害化を完 了させることができる最高PCB濃度P1
a)静置状態の電気機器が保有するPCBの総量
電気機器に使用されている低濃度PCBの全量を[N1]kg、無害化処理されないで電気機器本体に捕捉されている低濃度PCBのPCB濃度を[P1]mg/kgとすれば、
・静置状態の電気機器が保有するPCBの総量
=(N1×0.05×P1+N1×0.95×0.1)mg
b)電気機器の初期PCB濃度
PCB濃度平衡時のPCB濃度を卒業基準である0.5mg/kgとすれば、
・(N1×0.05×P1+N1×0.95×0.1)/N1≦0.5
P1≦(0.5−0.95×0.1)/0.05
≦8.1
すなわちPCB濃度が8.1mg/kg以下であれば、1回の無害化処理で卒業基準であるPCB濃度0.5mg/kg以下を達成出来る。
2)PCB濃度が8.1mg/kgを超える場合で、無害化処理工程を2循環させることによって無害化を完了させることができる最高PCB濃度P2
・最初の低濃度PCBの無害化処理と平衡が終ったときのPCB濃度が、前記 1)項のP1=8.1mg/kgになるP2濃度を計算する。
・(N1×0.05×P2+N1×0.95×0.1)/N1=8.1
P2=(8.1−0.95×0.1)/0.05
=160.1
すなわちPCB濃度が160.1mg/kg以下であれば、無害化処理を2回繰り返せば、卒業基準である0.5mg/kg以下を達成出来る。
【0025】
以上の試算例は、前提条件によって無害化できるPCB濃度が変わるが、変圧器実器を用いて行った実験例を参考に計算してあるので、実態に近いと考えてよい。前記のJEMAの調査結果から判断すると、1回の無害化処理によって、低濃度PCBに汚染された電気機器の60%以上の無害化が可能であり、2回繰り返せばほぼ全数の無害化が可能ということになる。
【0026】
以上をまとめて説明すれば次のようである。
請求項1の発明においては、0.5mg/kg超から10,000mg/kg以下のポリ塩化ビフェニルに汚染された電気絶縁油を使用した1台以上の電気機器を適宜の部位で開口して電気絶縁油を抜き取り、ポリ塩化ビフェニルの無害化装置へ注入して無害化し、無害化が進展した処理済絶縁油を無害化装置から電気絶縁油を抜き取った電気機器に環流して後、前記の開口部を閉鎖して静置し、電気機器本体に捕捉された電気絶縁油中のポリ塩化ビフェニルを分配の法則を利用して処理済絶縁油に滲出させ、処理済絶縁油と電気機器本体に捕捉された電気絶縁油中のポリ塩化ビフェニル濃度を平衡させることによってPCB濃度を法令に定められたポリ塩化ビフェニルの無害化処理基準値以下にして、ポリ塩化ビフェニルに汚染された電気機器を組み立てられたまま無害化、及び/又は再生する。
請求項2の発明においては、請求項1に示すポリ塩化ビフェニルに汚染された電気絶縁油を含む電気機器本体の無害化方法において、処理済絶縁油と電気機器本体に捕捉された電気絶縁油のポリ塩化ビフェニル濃度が平衡に達したときに、法令に定められたポリ塩化ビフェニルの無害化処理基準値を満たせない場合は、再び電気機器から無害化が進展した電気絶縁油をポリ塩化ビフェニルの無害化装置に注入してポリ塩化ビフェニルを無害化し
、電気機器への環流、静置を繰り返して行い、ポリ塩化ビフェニルに汚染された電気機器を組み立てられたまま無害化、及び/又は再生する。
請求項3の発明においては、請求項1、及び請求項2において、処理済絶縁油を電気機器本体に環流して後、静置する前後の何れかにおいて電気機器を揺動させ、電気機器内部の電気絶縁油面以外の部位に電気絶縁油とともに付着したPCBを洗い流して、電気機器内の全ての部位を法令に定められたポリ塩化ビフェニルの無害化処理基準値以下にして、ポリ塩化ビフェニルに汚染された電気機器を組み立てられたまま無害化、及び/又は再生する。
請求項4の発明においては、請求項1から請求項3において、無害化装置を車載して、電気機器が置かれた現地へ移動して処理を行い、ポリ塩化ビフェニルに汚染された電気機器を組み立てられたまま無害化、及び/又は再生する。
請求項5の発明においては、請求項1から請求項4において、無害化が終了した電気機器の処理済絶縁油を新たな電気絶縁油に交換して、ポリ塩化ビフェニルに汚染された電気機器を組み立てられたまま再生する。
請求項6の発明においては、請求項1から請求項5において、無害化された電気機器を
、無害化を行った現地において、継続的に使用することの可否の判定、及び/又は継続的に使用可能とするための補修を行って、該電気機器を継続使用可能に再生する。
【特許文献1】特願2003−351420
【発明の効果】
【0027】
本発明は次のような効果をもたらすものであるといえる。
特に、低濃度PCB汚染電気機器を再生する場合は、新たに代替の電気機器を製作する必要がなく、以下に示す効果に留まらず、資源、及びエネルギーの節約と云う観点から、環境に対する負荷が著しく軽減され、これまでにない理想的な処理方法になる。
1)複数の電気機器を同時に無害化できるので効率的、経済的な処理である。
2)機器が組み立てられた状態のままで、かつ低濃度PCBと電気機器本体を一緒に無害化出来るので、効率的、経済的、かつ、廃棄する場合は、無害化処理後に電気機器を分解すればよく、安心、安全である。
3)適用する無害化処理方法によっては、処理済絶縁油が所要の電気絶縁油としての性能を保持している場合があり、そのような場合は、処理済絶縁油を無害化した電気機器本体に再封入することによって、電気機器として再生することが可能になる。
また、処理済絶縁油をそのまま使用することが出来ない場合でも、無害化した電気機器本体に新しい電気絶縁油を封入すれば、電気機器の再生が可能である。
4)必要に応じて、電気機器が存在する現地で無害化処理が出来、かつ継続使用の可否を判断し、可の場合は、再生することが可能である。
【実施例】
【0028】
以下に、本発明の具体的内容を、実施例により詳細に説明する。
なお、説明を判りやすく、具体的な記述とするために、本発明者の一人が特許出願した特許文献1の触媒水素還元法を用いた無害化装置をPCBの無害化に適用した場合を事例として示す。触媒水素還元法は、前記の公的認証を得ている1%以下の低濃度PCBの無害化処理方法である。
ただし、本発明における無害化装置が具備すべき要件は前記したとおりであり、触媒水素還元法に限定されるものではない。
【0029】
図1は特許文献1の発明になる低濃度PCBの無害化装置1と複数の変圧器2を組み合わせて構成した低濃度PCBの無害化システムにより、変圧器2自身を無害化してしまう方法を説明するための、本発明の具体的な構成を説明する図である。
無害化装置1は、以下に説明する変圧器2を除く低濃度PCB3aの無害化処理装置全体を意味している。
なお、変圧器2は、電気機器一般を代表しており、低濃度PCB3aを使用している機器であれば、どういう機器であってもよい。
【0030】
無害化処理は、次の手順により行う。
先ず、変圧器2の給排油口4を開口する。適当な給排油口4が無い場合は、変圧器2の蓋を外すなどにより開口する。複数の変圧器2を同時に無害化処理する場合は、全台を同様にする。
【0031】
排油ポンプ5によって、変圧器2から低濃度PCB3aを抜き取り、無害化装置本体6と連接する第1の配管7を介して、加熱器8によって所要の温度まで加熱して無害化装置本体6の注入口9から注入する。第1の配管7には苛性ソーダ10の投入口11が配設されており、低濃度PCB3aと苛性ソーダ10は、第1の配管7中を流通する過程や排油ポンプ5で撹拌され混合される。低濃度PCB3aと苛性ソーダ10の混合は、第1の配管7の途中に図示しない攪拌機を配設して行ってもよい。
【0032】
無害化装置本体6に注入された低濃度PCB3aは、無害化装置本体6内で触媒12に接触し、無害化が進展した処理済絶縁油3bとなって、無害化装置本体6下端の貯留部13に一旦留置される。PCB濃度によっては、1回の無害化処理だけでは、PCBの無害化が不十分な場合があり、その場合は、第2の配管14によって、無害化処理途次にある低濃度PCB3aを無害化装置本体6の注入口9まで戻し、再び無害化処理を行い、所望のPCB濃度に低下するまで繰り返す。必要に応じて繰り返して無害化処理を行うことによって、当初の低濃度PCB3aのPCB濃度にかかわらず、所望のPCB濃度までPCBを低濃度化できることが、この無害化装置1の大きな特徴の一つであり、本発明に適用するに非常に好適な無害化装置といえる。
なお、処理済絶縁油3bの貯留部13は、無害化装置本体6と分離し、独立させても良い。処理済絶縁油を変圧器に環流するに際して、冷却を要する場合が多いが、貯留部13を別に設けた方が冷却が容易になる。
【0033】
貯留部13で冷却された処理済絶縁油3bは、食塩分離フィルタ15、及び油水分離器16を通って、ポンプ17により、第3の配管18を通って元の変圧器2に環流される。
【0034】
処理済絶縁油3bが変圧器2に環流され、再封入される過程で変圧器2の容器等に付着した低濃度PCB3aは洗い流されPCBは処理済絶縁油中に溶け込む。ただし、容器壁面に付着している低濃度PCB3aは、低濃度PCB3aの全量に対し0.1%程度しかないことが実験で判明しており、処理済絶縁油3bのPCB濃度の観測値に影響を与えるほどのことはなく、ほとんどの場合、無視して差し支えない。
【0035】
ただし変圧器には、電気絶縁油を収納した変圧器の容器内に空間を設けて空気や窒素ガスを封入し、温度変化による電気絶縁油の体積変化にともなう圧力変動を、気体の体積変化によって緩和するようにした構造を有するものがある。
【0036】
この場合、静置された状態では、PCBの汚染は電気絶縁油面以下の部位と云うことになるが、運搬や作業等の際、電気絶縁油面が変動し、変圧器2の内部全体がPCBに汚染されていると考えなければならない。
そのような場合には、処理済油3bが環流されたら給排油口4、又は変圧器2の蓋を閉じる。その状態で、変圧器2を静かに回転させるとか、緩やかに振動させる等、揺動させることによって、飛び散るなどして油面以外に付着した低濃度PCB3aを洗い落とすことが必要である。
【0037】
さて、無害化装置1に触媒水素還元法を採用した特許文献1に示す精製装置を適用した場合、触媒12は無害化装置本体6内に留まり、処理済絶縁油中3bに混入しないので、二次生成物である食塩水NaCl+H2Oだけを除去すれば、処理済絶縁油3bをそのまま変圧器2に環流でき都合がよい。
さらに食塩水の水分は、無害化処理時の加熱温度によって蒸発するので、実際には固形の食塩となって、ほとんどは触媒12の表面に留まる。また、わずかに処理済絶縁油3b中に混入する食塩も絶縁油には溶けないので、既存のごくありふれたフィルタで容易に除去することが可能である。
ただし、食塩分離フィルタ15,及び油水分離器16を処理済絶縁油3bが貯留部13に送られる前部に配置した方がよい場合もあり得る。無害化装置の特徴に応じて当業者が適宜の選択を行うことが必要である。
【0038】
ところで、変圧器2の構成部材である絶縁紙やプレスボード、木質材等の電気絶縁油の浸透性材には、電気絶縁油とともにPCBが染み込んでいる。これらのPCBも無害化しなければ変圧器2を無害化したことにはならない。
本発明においては、これら絶縁油浸透性材に染み込んだPCBを、分配の法則を利用して低濃度PCB3aの無害化が進展した処理済絶縁油3b中に滲出、溶解させ、絶縁油浸透性材中のPCB濃度と処理済絶縁油3b中のPCB濃度が平衡したときに、変圧器2中の全ての低濃度PCB3aが、無害化の卒業基準を達成するようにする。
【0039】
溶解平衡について説明する。
濃度の高いPCBを含む電気絶縁油が染み込んだ絶縁紙等を、PCBを含まないか、濃度の低いPCBを含む電気絶縁油に浸漬すると、絶縁紙等に捕捉されているPCBが電気絶縁油中に滲み出してくる。これを分配の法則といい、PCB以外でも起こる普遍的な物理現象である。絶縁紙等に捕捉されている電気絶縁油中のPCB濃度と、単独の液状で存在する電気絶縁油中のPCB濃度が平衡(等しくなる)に達すれば、PCBの浸み出しは停止する。
分配の法則とPCBの関わりについては、例えば非特許文献1に、PCBが生物に蓄積される濃度が、分配の法則の作用による周囲環境との平衡によって決まってくる事例が説明されている。本発明では、この法則を高濃度化ではなく、PCBの低濃度化に利用している。
【非特許文献1】「環境汚染物質シリーズ PCB」、社団法人 日本化学会編、昭和55年、23頁〜25頁
【0040】
図3に約20ppmの低濃度PCBが混入した小形変圧器から電気絶縁油を抜き取り、PCBを含まない電気絶縁油(以下、新油と記述することがある。)に入れ換えた場合の
、変圧器本体から新油中へのPCBの滲出、溶解状況を測定した実験結果を示す。絶縁紙等に捕捉されたPCBは、電気絶縁油を交換した直後から新油中へ滲出を始め、新油中のPCB濃度が上昇するにしたがい滲出速度が低下する。この実験では、約25日で新油中のPCB濃度が飽和に達した。このときの新油中のPCB濃度は、絶縁紙等に捕捉され変圧器中に残留していたPCBの総量から計算した平衡時のPCB濃度に合致することが確認された。
【0041】
パラグラフ0033の続きを説明する。変圧器2に規定量の処理済み絶縁油3bを環流したら給排油口4を閉じて、そのまま静置する。
静置状態に置かれた変圧器2においては、前記の分配の法則によって絶縁油浸透性材に電気絶縁油とともに捕捉されているPCBが、無害化処理によって濃度が著しく低下した処理済絶縁油3b中に溶出して、やがて絶縁油浸透性材中のPCBと処理済絶縁油中のPCBが平衡すると溶出は停止する。
この時点において、PCB濃度が卒業基準値を下回っていれば無害化処理は終了である。
【0042】
処理を要する変圧器が多く、以上の作業によっても全量の無害化処理が終了しない場合は、この作業を繰り返すことになる。作業手順は、最初と全く同様であるので説明は省略する。
【0043】
図2は、無害化装置を車載した状況を示す図である。
前記のとおり、低濃度PCB汚染電気機器は全国に広く分散して存在することから、当該電気機器が置かれている現地で無害化処理することが適当な場合がある。そのような場合は、無害化装置を無害化処理を要する電気機器の所在地に移動し無害化処理を行う。無害化装置の構成は、車載されていること以外は、前記した装置と本質的な差異はないので詳細は省略する。
【0044】
無害化作業が終了した時点でPCB濃度が低く、かつ絶縁油浸透性材から溶出してくるPCBが少なく、再び汚染機器の判定を受けない状態になることが予測される電気機器においては、絶縁油浸透性材からPCBが処理済絶縁油中に溶出するのを待つことなく、該電気機器を元の電路に戻しても良い。絶縁油浸透性材に捕捉された低濃度PCBは徐々に処理済絶縁油中に溶出してくるが、もやや有害と判定される範疇ではない。
【0045】
なお、低濃度PCB汚染電気機器の処理を現地で行い、かつ再生を目指す場合は、電気機器の検査装置や補修部品等を必要に応じて現地へ運搬し、無害化処理が終了すると同時に現地において診断や必要な補修を行うのがよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の、低濃度PCB汚染電気機器の無害化処理の一実施例を示す図である。
【図2】本発明の、電気絶縁油の無害化装置を車載型で構成した場合の、低濃度PCB汚染電気機器を無害化処理する他の実施例を示す図である。
【図3】PCBの新油中への滲出、溶解状況を測定した実験結果を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
1 無害化装置
2 変圧器
3a 低濃度PCB
3b 処理済絶縁油
4 給排油口
5 排油ポンプ
6 無害化装置本体
7 第1の配管
8 加熱器
9 注入口
10 苛性ソーダ
11 投入口
12 触媒
13 貯留部
14 第2の配管
15 食塩分離フィルタ
16 油水分離器
17 ポンプ
18 第3の配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.5mg/kg超から10,000mg/kg以下のポリ塩化ビフェニルに汚染された電気絶縁油を使用した1台以上の電気機器を適宜の部位で開口して電気絶縁油を抜き取り、ポリ塩化ビフェニルの無害化装置へ注入して無害化し、無害化が進展した処理済絶縁油を無害化装置から電気絶縁油を抜き取った電気機器に環流して後、前記の開口部を閉鎖して静置し、電気機器本体に捕捉された電気絶縁油中のポリ塩化ビフェニルを分配の法則を利用して処理済絶縁油に滲出させ、処理済絶縁油と電気機器本体に捕捉された電気絶縁油中のポリ塩化ビフェニル濃度を平衡させることによってPCB濃度を法令に定められたポリ塩化ビフェニルの無害化処理基準値以下にして電気機器を無害化することを特徴とする、ポリ塩化ビフェニルに汚染された電気機器を組み立てられたまま無害化、及び/又は再生する方法。
【請求項2】
請求項1に示すポリ塩化ビフェニルに汚染された電気絶縁油を含む電気機器本体の無害化方法において、処理済絶縁油と電気機器本体に捕捉された電気絶縁油のポリ塩化ビフェニル濃度が平衡に達したときに、法令に定められたポリ塩化ビフェニルの無害化処理基準値を満たせない場合は、再び電気機器から無害化が進展した電気絶縁油をポリ塩化ビフェニルの無害化装置に注入してポリ塩化ビフェニルを無害化し、電気機器への環流、静置を繰り返して行い電気機器を無害化することを特徴とする、ポリ塩化ビフェニルに汚染された電気機器を組み立てられたまま無害化、及び/又は再生する方法。
【請求項3】
請求項1、及び請求項2において、処理済絶縁油を電気機器本体に環流して後、静置する前後の何れかにおいて電気機器を揺動させ、電気機器内部の電気絶縁油面以外の部位に電気絶縁油とともに付着したPCBを洗い流して、電気機器内の全ての部位を法令に定められたポリ塩化ビフェニルの無害化処理基準値以下にして電気機器を無害化することを特徴とする、ポリ塩化ビフェニルに汚染された電気機器を組み立てられたまま無害化、及び/又は再生する方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3において、無害化装置を車載して、電気機器が置かれた現地へ移動して処理を行うことを特徴とする、ポリ塩化ビフェニルに汚染された電気機器を組み立てられたまま無害化、及び/又は再生する方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4において、無害化が終了した電気機器の処理済絶縁油を新たな電気絶縁油に交換して、該電気機器を継続使用を可能にすることを特徴とする、ポリ塩化ビフェニルに汚染された電気機器を組み立てられたまま再生する方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5において、無害化された電気機器を、無害化を行った現地において、継続的に使用することの可否の判定、及び/又は継続的に使用可能とするための補修を行って、該電気機器を継続使用可能にすることを特徴とする、ポリ塩化ビフェニルに汚染された電気機器を組み立てられたまま再生する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−122767(P2006−122767A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−311710(P2004−311710)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(000002842)株式会社高岳製作所 (72)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【出願人】(591180130)日興リカ株式会社 (9)
【出願人】(591008823)株式会社カナエ (14)
【出願人】(504400023)
【Fターム(参考)】