説明

ポリ(トリメチレンテレフタレート)複合繊維方法

各成分が異なるポリトリメチレンテレフタレート組成物を含む並列もしくは偏心した鞘−芯複合繊維(6)の製造方法。急冷ガス(1)は、プレナム(4)を通り、蝶番付きバッフル(18)を通過し、スクリーン(5)を通って紡糸口金面(3)(その紡糸口金面(3)は距離(A)だけゾーン(2)の最上部の上方にへこんでいる)の下方のゾーン(2)に入り、まだ溶融している繊維(6)を横切って実質的に層流の流れをもたらす。繊維(6)は出口(7)を通ってゾーン(2)を出て、仕上剤は仕上ロール(10)によって塗布することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合ポリ(トリメチレンテレフタレート)繊維およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ(トリメチレンテレフタレート)(また「3GT」または「PTT」とも言われる)は、織編物、床材、包装材および他の最終用途での使用向けのポリマーとして最近多くの注目を集めてきた。織編物および床材繊維は、優れた物理的および化学的性質を有する。
【0003】
異なる固有粘度によって示唆されるように、2つの成分が異なる程度の配向を有する複合繊維は、前記繊維に使用面で増大した価値をもたらす望ましい捲縮収縮性を有することが知られている。
【0004】
米国特許公報(特許文献1)および米国特許公報(特許文献2)は、複合ポリエステル織物繊維を開示している。どちらの文献も、2つの成分のそれぞれが物理的性質の点で異なる同じポリマー、例えばポリ(トリメチレンテレフタレート)を含む、鞘−芯(sheath−core)または並列繊維のような複合繊維を開示していない。
【0005】
(特許文献3)は、2つの成分がそれぞれポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(トリメチレンテレフタレート)を含む、並列もしくは偏心した鞘−芯複合繊維の製造のための紡糸方法を開示している。ポリ(エチレンテレフタレート)のために、それらから製造された繊維および布は、ポリ(トリメチレンテレフタレート)一成分繊維および布よりも粗い手触りを有する。さらに、ポリ(エチレンテレフタレート)のために、これらの繊維およびそれらの布は高圧染色(dying)を必要とする。
【0006】
参照により本明細書に援用される、米国特許公報(特許文献4)および米国特許公報(特許文献5)は、フィラメント群(I)および(II)より本質的になるポリエステル・マルチフィラメント糸を記載している。フィラメント群(I)は、群ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)およびポリ(テトラメチレンテレフタレート)、および/またはこれらのポリエステルから選択された少なくとも2つのメンバーを含むブレンドおよび/または共重合体から選択されたポリエステルよりなる。フィラメント群(II)は、(a)群ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)およびポリ(テトラメチレンテレフタレート)、および/またはこれらのポリエステルから選択された少なくとも2つのメンバーを含むブレンドおよび/または共重合体から選択されたポリエステルと、(b)スチレン型ポリマー、メタクリレート型ポリマーおよびアクリレート型ポリマーよりなる群から選択された0.4〜8重量%の少なくとも1つのポリマーとよりなる基材よりなる。フィラメントは異なる紡糸口金から押し出すことができるが、好ましくは同じ紡糸口金から押し出される。フィラメントは、それらを混ぜ合わせるためにブレンドされ、次に交絡させられ、そして次に延伸または延伸テクスチャー加工を受けることが好ましい。実施例は、ポリ(エチレンテレフタレート)およびポリメタクリル酸メチル(実施例1)、ポリ(エチレンテレフタレート)およびポリスチレン(実施例3)、ならびにポリ(テトラメチレンテレフタレート)およびポリアクリル酸エチル(実施例4)からのタイプ(II)のフィラメントの製造を示している。ポリ(トリメチレンテレフタレート)は実施例では使用されなかった。マルチフィラメント糸のこれらの開示は、多成分繊維の開示を含んでいない。
【0007】
(特許文献6)は、鞘成分としてポリ(トリメチレンテレフタレート)と芯成分として繊維の全重量を基準にして0.1〜10重量%のポリスチレン系ポリマーを含むポリマーブレンドとを含む鞘−芯繊維の製造を記載している。この出願によれば、ポリスチレンのような添加された低軟化点ポリマーを用いて分子配向を抑えるための方法はうまくいかなかった。((特許文献7)および他の特許出願について言及されている。)それは、表層上に存在する低融点ポリマーが仮撚り(また「テクスチャー加工」としても知られる)のような処理にされされた時に溶融融合を時々引き起こすと述べている。述べられた他の問題には、曇り、染色不規則、ブレンド不規則および糸破損が含まれる。この出願によれば、芯はポリスチレンを含有し、鞘は含有しない。実施例1は、ポリ(トリメチレンテレフタレート)の鞘およびポリ(トリメチレンテレフタレート)と合計で繊維の4.5重量%のポリスチレンとのブレンドの芯の繊維の製造を記載している。
【0008】
(特許文献8)は、一方(A)が少なくとも85モル%ポリ(トリメチレンテレフタレート)を含み、他方(B)が0.05〜0.20モル%の三官能性コノモマーと共重合された少なくとも85モル%ポリ(トリメチレンテレフタレート)を含むか、または他方(C)が三官能性コモノマーと共重合されていない少なくとも85モル%ポリ(トリメチレンテレフタレート)を含み、(C)の固有粘度が(A)のそれよりも0.15〜0.30小さいかの鞘−芯または並列複合繊維を開示している。得られた複合繊維は130℃で加圧染色されたことが開示されている。
【0009】
優れた伸縮性、ソフトな手触りおよび優れた染料吸収を有し、かつ、高速で紡糸でき、大気圧下で染色できる繊維を製造することは望ましい。
【0010】
フィラメントおよび糸特性の悪化なしに、より高速の紡糸方法を用いることによって並列もしくは偏心した鞘−芯ポリ(トリメチレンテレフタレート)複合繊維の製造における生産性を増大させることもまた望ましい。
【0011】
【特許文献1】米国特許第3,454,460号明細書
【特許文献2】米国特許第3,671,379号明細書
【特許文献3】国際公開第01/53573 A1号パンフレット
【特許文献4】米国特許第4,454,196号明細書
【特許文献5】米国特許第4,410,473号明細書
【特許文献6】特開平11−189925号公報
【特許文献7】特開昭56−091013号公報
【特許文献8】特開2002−56918A号公報
【特許文献9】米国特許第5,015,789号明細書
【特許文献10】米国特許第5,276,201号明細書
【特許文献11】米国特許第5,284,979号明細書
【特許文献12】米国特許第5,334,778号明細書
【特許文献13】米国特許第5,364,984号明細書
【特許文献14】米国特許第5,364,987号明細書
【特許文献15】米国特許第5,391,263号明細書
【特許文献16】米国特許第5,434,239号明細書
【特許文献17】米国特許第5,510,454号明細書
【特許文献18】米国特許第5,504,122号明細書
【特許文献19】米国特許第5,532,333号明細書
【特許文献20】米国特許第5,532,404号明細書
【特許文献21】米国特許第5,540,868号明細書
【特許文献22】米国特許第5,633,018号明細書
【特許文献23】米国特許第5,633,362号明細書
【特許文献24】米国特許第5,677,415号明細書
【特許文献25】米国特許第5,686,276号明細書
【特許文献26】米国特許第5,710,315号明細書
【特許文献27】米国特許第5,714,262号明細書
【特許文献28】米国特許第5,730,913号明細書
【特許文献29】米国特許第5,763,104号明細書
【特許文献30】米国特許第5,774,074号明細書
【特許文献31】米国特許第5,786,443号明細書
【特許文献32】米国特許第5,811,496号明細書
【特許文献33】米国特許第5,821,092号明細書
【特許文献34】米国特許第5,830,982号明細書
【特許文献35】米国特許第5,840,957号明細書
【特許文献36】米国特許第5,856,423号明細書
【特許文献37】米国特許第5,962,745号明細書
【特許文献38】米国特許第5,990,265号明細書
【特許文献39】米国特許第6,235,948号明細書
【特許文献40】米国特許第6,245,844号明細書
【特許文献41】米国特許第6,255,442号明細書
【特許文献42】米国特許第6,277,289号明細書
【特許文献43】米国特許第6,281,325号明細書
【特許文献44】米国特許第6,312,805号明細書
【特許文献45】米国特許第6,325,945号明細書
【特許文献46】米国特許第6,331,264号明細書
【特許文献47】米国特許第6,335,421号明細書
【特許文献48】米国特許第6,350,895号明細書
【特許文献49】米国特許第6,353,062号明細書
【特許文献50】欧州特許第998 440号明細書
【特許文献51】国際公開第00/14041号パンフレット
【特許文献52】国際公開第98/57913号パンフレット
【特許文献53】米国特許出願第10/057,497号明細書
【特許文献54】米国特許出願第09/708,209号明細書
【特許文献55】国際公開第01/34693号パンフレット
【特許文献56】米国特許出願第09/938,760号明細書
【特許文献57】米国特許第5,798,433号明細書
【特許文献58】米国特許第5,340,909号明細書
【特許文献59】欧州特許第699 700号明細書
【特許文献60】欧州特許第847 960号明細書
【特許文献61】国際公開第00/26301号パンフレット
【非特許文献1】エッチ.エル.トラウブ(H.L.Traub)著、「ポリ−トリメチレンテレフタラートの合成および繊維化学的性質(Synthese und textilchemische Eigenschaften des Poly−Trimethleneterephthalates)」、シュトュットガルト大学学位論文(Dissertation Univeritat Stuttgart)(1994年)
【非特許文献2】エス.シャウホッフ(S.Schaufoff)著、「ポリ(トリメチレンテレフタレート)(PTT)の生産における新たな進展(New Developments in the Production of Poly(trimethylene terephthalate)(PTT))、人造繊維年報(Man−Made Fiber Year Book)(1996年9月)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に従った第1態様によると、方法は、
(a)2つのポリ(トリメチレンテレフタレート)溶融体を提供する工程と、
(b)変更後に、前記ポリマーが少なくとも約0.03dL/gだけ異なる固有粘度を有するように前記ポリマーの少なくとも1つの固有粘度を変える工程と、
(c)2つのポリ(トリメチレンテレフタレート)溶融体を紡糸口金に提供する工程と、
(d)ポリ(トリメチレンテレフタレート)溶融体から複合繊維を紡糸する工程とを含む。
【0013】
本発明の好ましい態様では、2つのポリ(トリメチレンテレフタレート)ポリマー溶融体は、
(a)2つの異なる再溶融システムを提供する工程と、
(b)少なくとも約0.03dL/gだけ異なる固有粘度を有するポリ(トリメチレンテレフタレート)溶融体を提供するように再溶融システムの少なくとも1つが操作される再溶融システムのそれぞれの中でポリ(トリメチレンテレフタレート)を再溶融する工程と
によって調製される。
【0014】
好ましくは、再溶融システムの1つ中のポリ(トリメチレンテレフタレート)の粘度は好ましくは少なくとも約0.03だけ低下させられる。あるいはまた、再溶融システムの1つ中のポリ(トリメチレンテレフタレート)の粘度は好ましくは少なくとも約0.03だけ増加させられる。
【0015】
本発明に従ったさらなる態様によれば、下記の少なくとも1つ、(a)ポリ(トリメチレンテレフタレート)含水量(b)溶融温度(c)溶融体滞留時間
が再溶融システムの1つ中のポリ(トリメチレンテレフタレート)の固有粘度を変えるために用いられる。
【0016】
好ましくは、ポリ(トリメチレンテレフタレート)溶融体の固有粘度は、変更後に、約0.03〜約0.5dL/gだけ異なる。
【0017】
本発明に従って製造された繊維は様々な形状をとることができる。繊維は形状が鞘−芯であることができる。好ましくは、繊維は並列もしくは偏心した鞘−芯である。また好ましくは、繊維は海島またはパイ状である。
【0018】
本発明に従った別の態様では、並列もしくは偏心した鞘−芯複合繊維は部分延伸マルチフィラメント糸の形である。
【0019】
本発明に従ったさらなる態様では、ポリ(トリメチレンテレフタレート)複合フィラメントを含む複合自己捲縮糸の製造方法は、
(a)2つのポリ(トリメチレンテレフタレート)溶融体を提供する工程と、
(b)変更後に、前記ポリマーが少なくとも約0.03dL/gだけ異なる固有粘度を有するように前記ポリマーの少なくとも1つの固有粘度を変える工程と、
(c)2つのポリ(トリメチレンテレフタレート)溶融体を紡糸口金に提供する工程と、
(d)部分延伸マルチフィラメント糸の形の並列もしくは偏心した鞘−芯繊維である複合繊維をポリ(トリメチレンテレフタレート)溶融体から紡糸する工程と、
(e)部分延伸糸をパッケージ上に巻き取る工程と、
(f)パッケージから糸をほどく工程と、
(g)複合フィラメント糸を延伸して延伸糸を形成する工程と、
(h)延伸糸をアニールする工程と、
(h)糸をパッケージ上に巻き取る工程と
を含む。
【0020】
本発明に従ったさらに別の態様では、本方法は、繊維を延伸する工程、アニールする工程およびステープルファイバーへと切断する工程をさらに含む。
【0021】
本発明に従ったなおいっそうさらなる態様では、ポリ(トリメチレンテレフタレート)自己捲縮複合ステープルファイバーの製造方法は、
(a)2つのポリ(トリメチレンテレフタレート)を提供する工程と、
(b)変更後に、前記ポリマーが少なくとも約0.03dL/gだけ異なる固有粘度を有するように前記ポリマーの少なくとも1つの固有粘度を変える工程と、
(c)ポリ(トリメチレンテレフタレート)を紡糸口金から溶融紡糸して並列断面か偏心した鞘−芯断面かのどちらかを有する少なくとも1つの複合繊維を形成する工程と、
(d)繊維を紡糸口金の下方の急冷ゾーンを通過させる工程と、
(e)繊維を約50〜約170℃の温度で約1.4〜約4.5の延伸比で延伸する工程と、
(f)延伸した繊維を約110〜約170℃で熱処理する工程と、
(g)場合によりフィラメントを交絡させる工程と、
(h)フィラメントを巻き取る工程と
を含む。
【0022】
本発明に従ったなおいっそうさらなる態様では、ポリ(トリメチレンテレフタレート)自己捲縮複合ステープルファイバーの製造方法は、
(a)2つのポリ(トリメチレンテレフタレート)を提供する工程と、
(b)変更後に、前記ポリマーが少なくとも約0.03dL/gだけ異なる固有粘度を有するように前記ポリマーの少なくとも1つの固有粘度を変える工程と、
(c)組成物を紡糸口金を通して溶融紡糸して並列断面か偏心した鞘−芯断面かのどちらかを有する少なくとも1つの複合繊維を形成する工程と、
(d)繊維を紡糸口金の下方の急冷ゾーンを通過させる工程と、
(e)場合により繊維を巻き取るかまたはそれらを缶中に入れる工程と、
(f)繊維を延伸する工程と、
(g)延伸した繊維を熱処理する工程と、
(h)繊維を約0.5〜約6インチのステープルファイバーへと切断する工程と
を含む。
【0023】
好ましくは各成分は成分中のポリマーの少なくとも約95重量%のポリ(トリメチレンテレフタレート)を含む。
【0024】
好ましくはポリ(トリメチレンテレフタレート)のそれぞれは少なくとも約95モル%ポリ(トリメチレンテレフタレート)繰り返し単位を含む。
【0025】
本発明に従ったさらに別の実施形態では、ポリ(トリメチレンテレフタレート)自己捲縮複合ステープルファイバーの製造方法は、
(a)約0.03〜約0.5dL/gだけ固有粘度の点で異なる2つの異なるポリ(トリメチレンテレフタレート)を提供する工程と、
(b)組成物を紡糸口金を通して溶融紡糸して並列断面か偏心した鞘−芯断面かのどちらかを有する少なくとも1つの複合繊維を形成する工程と、
(c)繊維を紡糸口金の下方の急冷ゾーンを通過させる工程と、
(d)場合により繊維を巻き取るかまたはそれらを缶中に入れる工程と、
(e)繊維を延伸する工程と、
(f)延伸した繊維を熱処理する工程と、
(g)繊維を約0.5〜約6インチのステープルファイバーへと切断する工程とを含み、
ここで、2つの異なるポリ(トリメチレンテレフタレート)は、
(i)2つの異なる再溶融システムを提供する工程と、
(ii)少なくとも約0.03dL/gだけ異なる固有粘度を有するポリ(トリメチレンテレフタレート)溶融体を提供するように再溶融システムの少なくとも1つが操作される再溶融システムのそれぞれの中でポリ(トリメチレンテレフタレート)を再溶融する工程と
によって調製される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明は、
(a)2つのポリ(トリメチレンテレフタレート)溶融体を提供する工程と、
(b)変更後に、前記ポリマーが少なくとも約0.03dL/gだけ異なる固有粘度を有するように前記ポリマーの少なくとも1つの固有粘度を変える工程と、
(c)2つのポリ(トリメチレンテレフタレート)溶融体を紡糸口金に提供する工程と、
(d)ポリ(トリメチレンテレフタレート)溶融体から複合繊維を紡糸する工程とを含むポリ(トリメチレンテレフタレート)複合繊維の製造方法を指向する。
【0027】
好ましくは、2つのポリ(トリメチレンテレフタレート)ポリマー溶融体は、
(a)2つの異なる再溶融システムを提供する工程と、
(b)少なくとも約0.03dL/gだけ異なる固有粘度を有するポリ(トリメチレンテレフタレート)溶融体を提供するように再溶融システムの少なくとも1つが操作される再溶融システムのそれぞれでポリ(トリメチレンテレフタレート)を再溶融する工程とによって調製される。
【0028】
典型的な運転では、典型的にはフレークの形のポリ(トリメチレンテレフタレート)ポリマー材料が1つまたは複数の供給ホッパーから2つの押出機に供給される。ポリ(トリメチレンテレフタレート)は加熱され、究極的には押出機中で溶融し、次に2つの別個の計量供給ポンプによって紡糸ブロックに供給され、そこで複合繊維が形成される。本発明の方法は、供給ホッパーからずっと紡糸ダイまでの1つまたは複数の場所で行われる。
【0029】
各再溶融システムに供給されるポリ(トリメチレンテレフタレート)ポリマー材料は同じものであっても異なってもよい。すなわち、同一のポリ(トリメチレンテレフタレート)ポリマー材料が各再溶融システムに供給されてもよく、究極的に生じた複合繊維中のポリ(トリメチレンテレフタレート)成分におけるIVの差は、再溶融システムの操作によって専らもたらされる。
【0030】
あるいはまた、ポリ(トリメチレンテレフタレート)成分間のIVの点で所望の程度の差を持った複合繊維を製造するために、既にIVの点で異なる2つの異なるポリ(トリメチレンテレフタレート)ポリマー材料が2つの再溶融システムに供給されてもよく、再溶融システムの操作がこの既存のIV差を増加させる(または減少させる)ように制御されてもよい。
【0031】
ポリマーの少なくとも1つの固有粘度を変えた後に、IVの差が少なくとも約0.03dL/gである限り、2つのポリマーの固有粘度の最初の差は0.03dL/g未満(例えば同じIV)かまたはそれよりも大きいものであり得たことは注目される。非限定的な例示として、第2ポリマーのIVよりも低いIVを有する第1ポリマーの場合およびIVの差が0.03dL/g未満である場合、(1)第1ポリマーのIVを低下させる、(2)第1ポリマーのIVを増加させる、(3)第2ポリマーのIVを低下させる、(4)第2ポリマーのIVを増加させる、または(4)両ポリマーのIVを変えることによって少なくとも約0.03dL/gIVの差を達成することは本発明の範囲内であろう。
【0032】
本発明の方法の実施に際して変えられる再溶融/紡糸システムの操作での変数(パラメーター)には、再溶融温度、再溶融システムでの再溶融ポリマー材料の滞留時間、および再溶融ポリマーの水分レベル(含水量)または調節された水分レベルが含まれる。
【0033】
所与のIVのポリ(トリメチレンテレフタレート)は典型的には再溶融された時にIVの低下(減少)を示す。ポリ(トリメチレンテレフタレート)が曝される再溶融温度が高ければ高いほど、IVの低下は大きくなる。本発明の実施では、約235℃〜約295℃の範囲の再溶融温度が用いられてもよい。より高い温度範囲(275℃〜295℃)での運転は、当該温度範囲における非常に急なIV変化のために綿密に監視されなければならない。好ましい温度範囲は約235℃〜270℃である。再溶融温度は典型的には押出機中で測定され、制御される。しかしながら、本発明の方法の実施では、任意のトランスファー・ライン、供給ポンプ、または溶融体貯蔵タンクでの温度が有利に変えられてもよい。
【0034】
紡糸前の再溶融システムでの再溶融ポリマーの滞留時間は、典型的には再溶融/紡糸装置の物理的配置によって制御される。装置は、所望の滞留時間および2つの再溶融システム間での滞留時間の任意の所望の差を得るために配置されてもよい。あるいはまた、計量供給ポンプ、場合により用いられる溶融体貯蔵タンクまたはリサイクル・ループが、同じ装置で可変のホールドアップ時間を与えるために使用されてもよい。より長いホールドアップ時間は生じるポリマーの低下したIVと相関する。実際には、実験室装置では約1〜約7分の範囲のホールドアップ時間が用いられた。生産スケール装置では、約10〜約20分のホールドアップ時間が用いられると予期される。本発明の実施では、ポリ(トリメチレンテレフタレート)ポリマー材料が再溶融される時から、任意のトランスファー・ラインおよび装置を通って、繊維形成の時までの総ホールドアップ時間が制御されてもよい。
【0035】
再溶融されるべきポリマーの含水率もまた、再溶融/紡糸操作の間に、IV、およびIVの変化に影響を及ぼす。出発ポリマーの水分レベルが高ければ高いほど、再溶融サイクルを通して観察されるIVの低下は大きくなる。出発ポリマーの水分レベル(含水量)に加えて、水分レベルは、供給ホッパーから押出機を通してシステムの操作を変化させることによって変えられてもよい。実際には、供給ホッパー−押出機システムは、ポリマー分解を最小限にするために、不活性ガス、典型的には窒素でパージされる/覆われる。この不活性ガス覆い/パージは、ポリマーの含水率の対応する変化をもたらすために、ガス容量、速度、温度および含水率に関して制御および変更されてもよい。さらに、ポリマーの含水量を増やすために、ポリマー・フレークが押出機に導入されるポイントで、または押出機のバレル中で、水を、場合により水蒸気の形で導入することが望ましいかもしれない。
【0036】
本発明の実施では、2つの再溶融システムを含む再溶融/紡糸システムで、1つの再溶融システムの操作を一定に保持し、他方の操作を変えることによってIVの差を達成することが慣例である。しかしながら、2つの再溶融システムの両方を独立して変えることは本発明の範囲内である。
【0037】
本発明の方法の実施は、究極的に生じる複合繊維中のポリ(トリメチレンテレフタレート)成分におけるIVの差の制御を可能にする。一般に、2成分間のIVの差が大きければ大きいほど、捲縮収縮は大きくなり、従って、生じた複合繊維の価値は高くなる。
【0038】
さらに、本方法の制御パラメーターは製品のより大きな一様性を可能にするから、本発明の実施は繊維品質の向上を可能にする。
【0039】
さらに、本方法の実施は、出発原料の品揃えの潜在的減少によって運転効率の増加を可能にする。本発明の方法の運転によって、2つのポリ(トリメチレンテレフタレート)成分間の差が量を変えることによって異なる多種多様な複合繊維が最小限の異なるIVの出発原料を使用して製造されるかもしれない。究極的な単純化では、上に示されたように、繊維成分が異なるIVを有する複合繊維は、単一ポリ(トリメチレンテレフタレート)出発原料から製造されるかもしれない。
【0040】
本明細書で用いるところでは、「複合繊維」は、繊維断面が例えば並列、偏心した鞘−芯またはそれから有用な捲縮が成長できる他の好適な断面であるように、繊維の長さに沿って互いに密にくっついたペアのポリマーを含む繊維を意味する。
【0041】
別の表示がない場合、「ポリ(トリメチレンテレフタレート)」(「3GT」または「PTT」)という言及は、ホモポリマーと、少なくとも70モル%トリメチレンテレフタレート繰り返し単位を含む共重合体と、少なくとも70モル%のホモポリマーまたはコポリエステルを含むポリマー組成物とを包含することを意味する。好ましいポリ(トリメチレンテレフタレート)は、少なくとも85モル%、より好ましくは少なくとも90モル%、さらにより好ましくは少なくとも95モル%または少なくとも98モル%、最も好ましくは約100モル%のトリメチレンテレフタレート繰り返し単位を含む。
【0042】
共重合体の例には、それぞれが2個のエステル形成基を有する3種もしくはそれ以上の反応体を用いて製造されたコポリエステルが挙げられる。例えば、コポリエステルを製造するのに使用されるコモノマーが4〜12個の炭素原子を有する直鎖、環式、および分枝の脂肪族ジカルボン酸(例えば、ブタン二酸、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、ドデカン二酸、および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸);テレフタル酸以外の8〜12個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸(例えば、イソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸);2〜8個の炭素原子を有する直鎖、環式、および分枝の脂肪族ジオール(1,3−プロパンジオール以外の、例えば、エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1.3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、および1,4−シクロヘキサンジオール);ならびに4〜10個の炭素原子を有する脂肪族および芳香族エーテルグリコール(例えば、ヒドロキノンビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル、またはジエチレンエーテルグリコールをはじめとする、約460よりも下の分子量を有するポリ(エチレンエーテル)グリコール)よりなる群から選択されるコポリ(トリメチレンテレフタレート)を使用することができる。コモノマーは典型的にはコポリエステル中に約0.5〜約15モル%の範囲のレベルで存在し、そして30モル%までの量で存在することができる。
【0043】
ポリ(トリメチレンテレフタレート)は少量の他のコモノマーを含むことができ、かかるコモノマーは通常それらが特性に有意な悪影響を持たないように選択される。かかる他のコモノマーには、例えば、約0.2〜5モル%の範囲のレベルでの5−スルホイソフタレートナトリウムが含まれる。非常に少量の三官能性コモノマー、例えば、トリメリット酸を粘度調節のために組み入れることができる。
【0044】
ポリ(トリメチレンテレフタレート)は30モルパーセントまでの他のポリマーとブレンドすることができる。例は、上に記載されたもののような他のジオールから製造されたポリエステルである。好ましいポリ(トリメチレンテレフタレート)は少なくとも85モル%、より好ましくは少なくとも90モル%、さらにより好ましくは少なくとも95または少なくとも98モル%、最も好ましくは約100モル%のポリ(トリメチレンテレフタレート)を含む。
【0045】
本発明で使用されるポリ(トリメチレンテレフタレート)の固有粘度は、約0.60dL/gから約2.0dL/gまで、より好ましくは1.5dL/gまで、最も好ましくは約1.2dL/gまでの範囲である。好ましくはポリ(トリメチレンテレフタレート)はIVの点で少なくとも約0.03、より好ましくは少なくとも約0.10dL/g、そして好ましくは約0.5dL/gまで、より好ましくは約0.3dL/gまでの差を有する。
【0046】
ポリ(トリメチレンテレフタレート)およびポリ(トリメチレンテレフタレート)を製造するための好ましい製造技術は、それらのすべてが参照により本明細書に援用される、米国特許公報(特許文献9)、米国特許公報(特許文献10)、米国特許公報(特許文献11)、米国特許公報(特許文献12)、米国特許公報(特許文献13)、米国特許公報(特許文献14)、米国特許公報(特許文献15)、米国特許公報(特許文献16)、米国特許公報(特許文献17)、米国特許公報(特許文献18)、米国特許公報(特許文献19)、米国特許公報(特許文献20)、米国特許公報(特許文献21)、米国特許公報(特許文献22)、米国特許公報(特許文献23)、米国特許公報(特許文献24)、米国特許公報(特許文献25)、米国特許公報(特許文献26)、米国特許公報(特許文献27)、米国特許公報(特許文献28)、米国特許公報(特許文献29)、米国特許公報(特許文献30)、米国特許公報(特許文献31)、米国特許公報(特許文献32)、米国特許公報(特許文献33)、米国特許公報(特許文献34)、米国特許公報(特許文献35)、米国特許公報(特許文献36)、米国特許公報(特許文献37)、米国特許公報(特許文献38)、米国特許公報(特許文献39)、米国特許公報(特許文献40)、米国特許公報(特許文献41)、米国特許公報(特許文献42)、米国特許公報(特許文献43)、米国特許公報(特許文献44)、米国特許公報(特許文献45)、米国特許公報(特許文献46)、米国特許公報(特許文献47)、米国特許公報(特許文献48)、および米国特許公報(特許文献49)、(特許文献50)、(特許文献51)、および(特許文献52)、(非特許文献1)、(非特許文献2)、ならびに米国特許公報(特許文献53)に記載されている。本発明のポリエステルとして有用なポリ(トリメチレンテレフタレート)は、商標ソロナ(Sorona)で、デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,Delaware)の本願特許出願人から商業的に入手可能である。
【0047】
ポリ(トリメチレンテレフタレート)はまた、それらの両方とも参照により本明細書に援用される、2000年11月8日に出願された米国特許公報(特許文献54)((特許文献55)に対応する)または2002年8月24日に出願された米国特許公報(特許文献56)に記載されているような酸染色できるポリエステル組成物であり得る。米国特許公報(特許文献54)のポリ(トリメチレンテレフタレート)は、酸染色できるおよび酸染色されたポリエステル組成物の酸染色性を助長するのに有効な量で第二級アミンまたは第二級アミン塩を含む。好ましくは、第二級アミン単位は少なくとも約0.5モル%、より好ましくは少なくとも1モル%の量で組成物中に存在する。第二級アミン単位は、組成物の重量を基準にして、好ましくは約15モル%以下、より好ましくは約10モル%以下、最も好ましくは5モル%以下の量でポリマー組成物中に存在する。米国特許公報(特許文献56)の酸染色できるポリ(トリメチレンテレフタレート)組成物は、ポリ(トリメチレンテレフタレート)と第三級アミンをベースとする高分子添加物とを含む。高分子添加物は、(i)トリアミン含有第二級アミンまたは第二級アミン塩単位と、(ii)1種もしくは複数種の他のモノマーおよび/またはポリマー単位とから製造される。好ましい一高分子添加物は、ポリ−イミノ−ビスアルキレン−テレフタルアミド、−イソフタルアミドおよび−1,6−ナフタルアミド、ならびにそれらの塩よりなる群から選択されたポリアミドを含む。本発明で有用なポリ(トリメチレンテレフタレート)はまた、陽イオン的に染色できるかまたは参照により本明細書に援用される米国特許公報(特許文献44)に記載されているもののような染色された組成物、および染色されたもしくは染料含有組成物でもあり得る。
【0048】
他の高分子添加物を、強度を改善するために、後の押出加工を促進するまたは他の便益を提供するために、ポリ(トリメチレンテレフタレート)に添加することができる。例えば、ヘキサメチレンジアミンを、本発明の酸染色できるポリエステル組成物に強度および加工性を追加するために約0.5〜約5モル%という少量で添加することができる。ナイロン6またはナイロン6−6のようなポリアミドを、本発明の酸染色できるポリエステル組成物に強度および加工性を追加するために約0.5〜約5モル%という少量で添加することができる。核剤、好ましくはテレフタル酸モノナトリウム塩、ナフタレンジカルボン酸モノナトリウム塩およびイソフタル酸モノナトリウム塩よりなる群から選択された0.005〜2重量%のジカルボン酸のモノナトリウム塩を、参照により本明細書に援用される米国特許公報(特許文献40)に記載されているように核剤として添加することができる。
【0049】
ポリ(トリメチレンテレフタレート)ポリマーは、必要に応じて、添加剤、例えば、艶消剤、核剤、熱安定剤、粘度向上剤、蛍光増白剤、顔料、および酸化防止剤を含むことができる。TiOまたは他の顔料を、ポリ(トリメチレンテレフタレート)、組成物に、または繊維製造で添加することができる。(例えば、参照により本明細書に援用される、米国特許公報(特許文献2)、米国特許公報(特許文献57)および米国特許公報(特許文献58)、(特許文献59)および(特許文献60)、ならびに(特許文献61)を参照されたい。)
【0050】
(代わりのスチレン実施形態)
代わりの実施形態では、ポリ(トリメチレンテレフタレート)は添加物としてスチレンポリマーを含有してもよい。「スチレンポリマー」とは、ポリスチレンおよびその誘導体を意味する。好ましくはスチレンポリマーは、ポリスチレン、アルキルまたはアリール置換ポリスチレンおよびスチレン多成分ポリマーよりなる群から、より好ましくはポリスチレンから選択される。最も好ましくは、スチレンポリマーはポリスチレンである。
【0051】
存在する場合、スチレンポリマーは、成分中のポリマーの、少なくとも約0.1重量%、より好ましくは少なくとも約0.5重量%、そして好ましくは約10重量%まで、より好ましくは約5重量%まで、最も好ましくは約2重量%までの量で成分中に好ましくは存在する。
【0052】
ポリ(トリメチレンテレフタレート)は多数の技術を用いて製造することができる。好ましくはポリ(トリメチレンテレフタレート)およびスチレンポリマーは溶融ブレンドされ、次に、押し出され、ペレットへと切断される。(「ペレット」はこの関連では総称的に用いられ、形状にかかわらず用いられ、その結果、それは時々「チップ」、「フレーク」などと呼ばれる製品を含むのに用いられる。)次にペレットは再溶融され、フィラメントへと押し出される。用語「混合物」は、特に再溶融前のペレットを言う時に用いられ、用語「ブレンド」は、溶融組成物(例えば、再溶融後の)を言う時に用いられる。ブレンドはまた、再溶融の間にポリ(トリメチレンテレフタレート)ペレットをポリスチレンと配合することによってか、または別のやり方で溶融ポリ(トリメチレンテレフタレート)を供給し、それを紡糸前にスチレンポリマーと混合することによって、調製することができる。
【0053】
ポリ(トリメチレンテレフタレート)は、好ましくは、成分中のポリマーの、少なくとも約70重量%、より好ましくは少なくとも約80重量%、さらにより好ましくは少なくとも85重量%、より好ましくは少なくとも約90重量%、最も好ましくは少なくとも約95重量%、そして幾つかの場合にはさらにより好ましくは少なくとも98重量%のポリ(トリメチレンテレフタレート)を含む。ポリ(トリメチレンテレフタレート)は好ましくは約100重量%まで、または100重量%マイナス存在するスチレンポリマーの量のポリ(トリメチレンテレフタレート)を含む。
【0054】
ポリ(トリメチレンテレフタレート)組成物は好ましくは成分中のポリマーの、少なくとも約0.1重量%、より好ましくは少なくとも約0.5重量%のスチレンポリマーを含む。組成物は好ましくは成分中のポリマーの、約10重量%まで、より好ましくは約5重量%まで、さらにより好ましくは約3重量%まで、さらにより好ましくは2重量%まで、最も好ましくは約1.5重量%のスチレンポリマーを含む。多くの場合、約0.8%〜約1%のスチレンポリマーが好ましい。2種もしくはそれ以上のスチレンポリマーを使用することができるので、スチレンポリマーという言及は少なくとも1種のスチレンポリマーを意味し、言及される量はポリマー組成物中に使用されたスチレンポリマーの総量の表示である。
【0055】
(図面についての議論)
さて図面について言及すると、図1は、本発明の方法で有用であるクロスフロー溶融紡糸装置を例示する。急冷ガス1は、プレナム4を通り、蝶番付きバッフル18を通過し、スクリーン5を通って紡糸口金面3の下方のゾーン2に入り、紡糸口金中の毛管(示されていない)から紡糸されたばかりのまだ溶融している繊維6を横切って実質的に層流のガス流れをもたらす。バッフル18は最上部で蝶番で動くようになっており、その位置は、ゾーン2の端から端まで急冷ガスの流れを変えるために調節することができる。紡糸口金面3は距離Aだけゾーン2の最上部の上方にへこんでおり、その結果、その間に繊維がへこんだ側面によって加熱されるかもしれない、遅れた後まで、急冷ガスは紡糸されたばかりの繊維と接触しない。あるいはまた、紡糸口金面がへこんでいない場合、非加熱の急冷遅れ空間は、短いシリンダー(示されていない)を紡糸口金面の直ぐ下方におよびそれと同軸に配置することによって生み出すことができる。必要ならば、加熱できる急冷ガスは、繊維を通って、装置を取り囲む空間中へと流れ続ける。少量のガスが繊維出口7を通ってゾーン2を出る移動繊維に同伴され得るにすぎない。仕上剤を任意の仕上ロール10によって今固体の繊維に塗布することができ、次に繊維を図2に例示されるロールに通すことができる。
【0056】
図2において、例えば図1に示された装置から紡糸されたばかりの繊維6は、(任意の)仕上ロール10を経由して、駆動ロール11を回って、遊びロール12を回って、次に加熱供給ロール13を回って通過させることができる。供給ロール13の温度は約50℃〜約70℃の範囲にあり得る。次に繊維は加熱延伸ロール14によって延伸することができる。延伸ロール14の温度は、約50〜約170℃、好ましくは約100〜約120℃の範囲にあり得る。延伸比(巻取速度対取出しまたは供給ロール速度の比)は、約1.4〜約4.5、好ましくは約3.0〜約4.0の範囲にある。何の有意の張力(繊維をロール上に保持するのに必要なものを越えて)も、ロールのペア13間にまたはロールのペア14間にかける必要がない。
【0057】
ロール14によって延伸された後、繊維は、ロール15によって熱処理し、任意の非加熱ロール16(それは満足な巻取りのための糸張力を調節する)を回って、次に巻取機へ通過させることができる。熱処理はまた、1つまたは複数の他の加熱ロール、スチーム・ジェットまたは「熱室」のような加熱室で実施することもできる。熱処理は、実質的に一定の長さで、例えば、約110℃〜約170℃、好ましくは約120℃〜約160℃の範囲の温度に繊維を加熱する図2のロール15によって実施することができる。熱処理の継続期間は、糸デニールに依存し、重要なことは、繊維がロールのそれと実質的に同じ温度に達し得ることである。熱処理温度が低すぎる場合、捲縮は高温で張力下に減少し得るし、収縮は増加し得る。熱処理温度が高すぎる場合、本方法の操作性は、頻繁な繊維破断のために困難になる。繊維張力を本方法におけるこのポイントで実質的に一定に保持し、それによって繊維捲縮のロスを避けるために、熱処理ロールおよび延伸ロールの速度は実質的に等しいことが好ましい。
【0058】
あるいはまた、供給ロールは非加熱であることができ、延伸は、延伸ジェットと、繊維をまた熱処理する加熱延伸ロールとによって成し遂げることができる。交絡ジェットを場合により延伸/熱処理ロールと巻取装置との間に配置することができる。
【0059】
最後に、繊維は巻き取られる。本発明の製品の製造における典型的な巻取速度は3,200メートル毎分(mpm)である。使用可能な巻取速度は約2,0000mpm〜6,000mpmである。
【実施例】
【0060】
次の実施例は、本発明を例示する目的のために提示され、限定することを意図するものではない。すべての部、百分率などは、特に明記しない限り重量による。
【0061】
(固有粘度)
固有粘度(IV)は、米国材料試験協会(ASTM)D5225−92に準拠した自動化方法に従って19℃で0.4グラム/dL濃度で50/50重量%トリフルオロ酢酸/塩化メチレンに溶解したポリマーについてヴィスコテック強制流動粘度計(Viscotek Forced Flow Viscometer)Y900(テキサス州ヒューストンのヴィスコテック・コーポレーション(Viscotek Corporation,Houston,TX))で測定される粘度を用いて測定した。次に、測定した粘度をASTM D4603−96によって測定されるような60/40重量%フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン中での標準粘度と相関させて報告する固有粘度値に到達した。繊維中のポリマーのIVは、実際に紡糸した複合繊維に関して測定するか、あるいはまた、繊維中のポリマーのIVは、2つのポリマーが単繊維へと組み合わされないようにパック/紡糸口金なしで試験ポリマーを紡糸したことを除いては複合繊維へと実際に紡糸したポリマーと同じプロセス条件にポリマーを曝すことによって測定した。
【0062】
(靱性および破断伸び)
次の実施例で報告するポリ(トリメチレンテレフタレート)糸の物理的性質は、インストロン社(Instron Corp.)引張試験機、モデルNo.1122を用いて測定した。より具体的には、破断伸びE、および靱性はASTM D−2256に従って測定した。
【0063】
(捲縮収縮)
特に記載のない限り、実施例で示すように製造した複合繊維における捲縮収縮は、次の通り測定した。各試料を、約0.1gpd(0.09dN/テックス)の張力でかせリールを使って5000+/−5総合デニール(5550デシテックス)のかせを形成した。かせを70+/−°F(21+/−1℃)および65+/−2%相対湿度で最低16時間順化させた。かせをスタンドから実質的に垂直につるし、1.5mg/デニール(1.35mg/デシテックス)重り(例えば5550デシテックスかせに対して7.5グラム)をかせの底部につるし、重り付きかせを平衡長さに達するに任せ、かせの長さを1mm内まで測定し、「Cb」として記録した。1.35mg/デシテックス重りを試験の継続期間中かせにそのままにしておいた。次に、500g重り(100mg/d;90mg/デシテックス)をかせの底部からつるし、かせの長さを1mm内で測定し、「Lb」として記録した。捲縮収縮値(パーセント)(この試験について下に記載するようなヒートセットの前の)(「CCb」)を式
CCb=100×(Lb−Cb)/Lb
に従って計算した。
【0064】
500g重りを取り外し、次に、1.35mg/デシテックス重りを依然として所定の場所に付けて、かせをラック上につるし、約212°F(100℃)で5分間オーブン中でヒートセットし、その後ラックおよびかせをオーブンから取り出し、上記のように2時間順化させた。この工程は、複合繊維中に最終捲縮を成長させるための一方法である商業的ドライ・ヒートセット工程をシミュレートするようデザインされている。かせの長さを上記のように測定し、その長さを「Ca」として記録した。500グラム重りを再びかせからつるし、かせ長さを上記のように測定し、「La」として記録した。ヒートセット後捲縮収縮値(%)(「CCa」)を式
CCa=100×(La−Ca)/La
に従って計算した。
【0065】
CCaを表中に報告する。
【0066】
(繊維製造)
表1に示すような固有粘度を有するポリ(トリメチレンテレフタレート)を、図1の装置を用いて紡糸した。出発ポリ(トリメチレンテレフタレート)を50ppm含水量未満に乾燥した。紡糸口金温度を265℃未満に維持した。急冷ガスが一遅れのみで紡糸したばかりの繊維に接触するように、(後融合)紡糸口金を4インチ(10.2cm)(図1の「A」)だけ紡糸カラムの最上部中へへこませた。
【0067】
実施例で複合繊維を紡糸する際に、ポリマーを、0.5〜40ポンド/時(0.23〜18.1kg/時)処理能力を有するヴェルナー・アンド・プフライデラー(Werner & Pfleiderer)共回転28mm押出機で溶融させた。ポリ(トリメチレンテレフタレート)(3GT)押出機で達成される最高溶融温度は約265〜275℃であった。ポンプがポリマーを紡糸ヘッドへ移した。
【0068】
繊維を、6000mpmの最大巻取速度を有するバーマッグ(Barmag)SW6 2s 600巻取機(独国、バーマッグ社(Barmag AG,Germany))で巻き取った。
【0069】
用いた紡糸口金は、円形に配列された34ペアの毛管、30°の毛管の各ペア間内角、0.64mmの毛管直径、および4.24mmの毛管長さを有する後融合二成分紡糸口金であった。特に記載のない限り、繊維中の2つのポリマーの重量比は50/50であった。急冷は、図1に類似の装置を用いて実施した。急冷ガスは、約20℃の室温で供給される空気であった。繊維は並列断面を有した。
【0070】
実施例では、かけた延伸比は、複合繊維を得る際にほぼ最大の運転可能な延伸比であった。特に明記しない限り、図2のロール13は約70℃で、ロール14は約90℃および3200mpmで、ロール15は約120℃〜約160℃で運転した。
【0071】
(実施例1)
紡糸を、表1に示す条件を用いて上に記載したように実施した。
【0072】
【表1】

【0073】
データは、西押出機と東押出機との間で固有粘度(IV)の差が増えるにつれて、増加した捲縮収縮(CCa)を達成できることを示す。表2に示すようにポリマー溶融体温度および溶融体滞留時間を変えることによって、東押出機の繊維IVを変化させたが、西押出機の繊維IVは一定に維持した。
【0074】
【表2】

【0075】
本発明の実施形態の上述の開示は、例示および説明の目的のために提示されてきた。包括的であることまたは本発明を開示された厳密な形に限定することは意図されない。本明細書に記載された実施形態の多くの変形および修正は、本開示に鑑みて当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の製品の製造で有用なクロスフロー急冷溶融紡糸装置を例示する。
【図2】図1の溶融紡糸装置と連結して用いることができるロール配置の一例を例示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)2つのポリ(トリメチレンテレフタレート)溶融体を提供する工程と、
(b)変更後に、前記ポリマーが少なくとも約0.03dL/gだけ異なる固有粘度を有するように前記ポリマーの少なくとも1つの固有粘度を変える工程と、
(c)2つのポリ(トリメチレンテレフタレート)溶融体を紡糸口金に提供する工程と、
(d)ポリ(トリメチレンテレフタレート)溶融体から複合繊維を紡糸する工程とを含むことを特徴とするポリ(トリメチレンテレフタレート)複合繊維の製造方法。
【請求項2】
下記、
(a)ポリ(トリメチレンテレフタレート)含水量
(b)溶融温度、および
(c)溶融体滞留時間
の少なくとも1つが、ポリ(トリメチレンテレフタレート)の固有粘度を変えるために用いられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポリ(トリメチレンテレフタレート)溶融体の固有粘度が少なくとも約0.03〜約0.5dL/gだけ異なることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
繊維が並列、偏心した鞘−芯、鞘−芯、海島またはパイ状繊維であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
並列もしくは偏心した鞘−芯複合繊維が部分延伸マルチフィラメント糸の形であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ポリ(トリメチレンテレフタレート)複合繊維が30モル%までのコモノマーとの共重合体を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
共重合体が、それぞれが2つのエステル形成基を有する3種もしくはそれ以上の反応体を用いて製造されたコポリエステルを含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ポリ(トリメチレンテレフタレート)が30モル%までの他のポリマーとブレンドされることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ポリ(トリメチレンテレフタレート)が酸染色でき、かつ、複合繊維の酸染色性を助長するのに有効な量で第二級アミン、第二級アミン塩、または第三級アミンを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
(a)部分延伸糸をパッケージ上に巻き取る工程と、
(b)パッケージから糸をほどく工程と、
(c)複合糸を延伸して延伸糸を形成する工程と、
(d)延伸糸をアニールする工程と、
(e)糸をパッケージへ巻き取る工程と
をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項11】
繊維を延伸する工程、アニールする工程およびステープルファイバーへと切断する工程をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
(a)2つのポリ(トリメチレンテレフタレート)を提供する工程と、
(b)変更後に、前記ポリマーが少なくとも約0.03dL/gだけ異なる固有粘度を有するように前記ポリマーの少なくとも1つの固有粘度を変える工程と、
(c)ポリ(トリメチレンテレフタレート)を紡糸口金から溶融紡糸して並列断面か偏心した鞘−芯断面かのどちらかを有する少なくとも1つの複合繊維を形成する工程と、
(d)繊維を紡糸口金の下方の急冷ゾーンを通過させる工程と、
(e)繊維を約50〜約170℃の温度で約1.4〜約4.5の延伸比で延伸する工程と、
(f)延伸した繊維を約110〜約170℃で熱処理する工程と、
(g)場合によりフィラメントを交絡させる工程と、
(h)フィラメントを巻き取る工程と
を含むことを特徴とする捲縮ポリ(トリメチレンテレフタレート)複合繊維を含む十分に延伸された糸の製造方法。
【請求項13】
(a)2つのポリ(トリメチレンテレフタレート)を提供する工程と、
(b)変更後に、前記ポリマーが少なくとも約0.03dL/gだけ異なる固有粘度を有するように前記ポリマーの少なくとも1つの固有粘度を変える工程と、
(c)組成物を紡糸口金を通して溶融紡糸して並列断面か偏心した鞘−芯断面かのどちらかを有する少なくとも1つの複合繊維を形成する工程と、
(d)繊維を紡糸口金の下方の急冷ゾーンを通過させる工程と、
(e)場合により繊維を巻き取るかまたはそれらを缶中に入れる工程と、
(f)繊維を延伸する工程と、
(g)延伸した繊維を熱処理する工程と、
(h)繊維を約0.5〜約6インチのステープルファイバーへと切断する工程とを含むことを特徴とするポリ(トリメチレンテレフタレート)自己捲縮複合ステープルファイバーの製造方法。
【請求項14】
2つのポリ(トリメチレンテレフタレート)が、
(a)2つの異なる再溶融システムを提供する工程と、
(b)少なくとも約0.03dL/gだけ異なる固有粘度を有するポリ(トリメチレンテレフタレート)溶融体を提供するように再溶融システムの少なくとも1つが操作される再溶融システムのそれぞれの中でポリ(トリメチレンテレフタレート)を再溶融する工程とによって調製されることを特徴とする請求項2、12、または13に記載の方法。
【請求項15】
(a)約0.03〜約0.5dL/gだけ固有粘度の点で異なる2つの異なるポリ(トリメチレンテレフタレート)を提供する工程と、
(b)組成物を紡糸口金を通して溶融紡糸して並列断面か偏心した鞘−芯断面かのどちらかを有する少なくとも1つの複合繊維を形成する工程と、
(c)繊維を紡糸口金の下方の急冷ゾーンを通過させる工程と、
(d)場合により繊維を巻き取るかまたはそれらを缶中に入れる工程と、
(e)繊維を延伸する工程と、
(f)延伸した繊維を熱処理する工程と、
(g)繊維を約0.5〜約6インチのステープルファイバーへと切断する工程とを含むポリ(トリメチレンテレフタレート)自己捲縮複合ステープルファイバーの製造方法であって、
2つの異なるポリ(トリメチレンテレフタレート)が
(i)2つの異なる再溶融システムを提供する工程と、
(ii)少なくとも約0.03dL/gだけ異なる固有粘度を有するポリ(トリメチレンテレフタレート)溶融体を提供するように再溶融システムの少なくとも1つが操作される再溶融システムのそれぞれの中でポリ(トリメチレンテレフタレート)を再溶融する工程とによって調製されることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−511726(P2006−511726A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−564669(P2004−564669)
【出願日】平成15年6月23日(2003.6.23)
【国際出願番号】PCT/US2003/019914
【国際公開番号】WO2004/061169
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】