説明

ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物

【課題】 難燃性、耐湿熱性、機械強度に優れるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体100重量部に対し、難燃剤5〜100重量部、さらに好ましくはタルク、カルボジイミド化合物よりなる難燃性、耐湿熱性に優れるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性、耐湿熱性、機械強度に優れるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体等の植物由来のバイオマスポリマーは、カーボンニュートラルの観点から大気中の二酸化炭素を増やさない材料として近年注目を集めている。そこで、これらのバイオマスポリマーをパソコン、携帯電話等の家電製品、プリンター、コピー機等のOA機器に使用する試みが始まっている。これらの分野において使用される部品は、発熱して高温になったり、高温、多湿になる自動車内に放置されたりするため、一般に高度な難燃性や耐久性が要求される。
【0003】
これらの要求に応えるため、生分解性を有する有機高分子化合物とケイ素酸化物との相溶体を主成分とする難燃性複合樹脂組成物(例えば特許文献1参照。)、ポリ乳酸と、該ポリ乳酸を除く他の生分解性樹脂と、シリコーン系添加剤と、乳酸系ポリエステルからなる生分解性樹脂組成物(例えば特許文献2参照。)が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−319532号公報
【特許文献2】特開2004−161790号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に提案の樹脂組成物はある程度の難燃性は付与されているものの実用に耐えうる難燃性を有しておらず、特許文献2に提案の樹脂組成物は、難燃性は付与されているものの耐熱性、耐久性が不足しており、難燃性と耐湿熱性に優れたバイオマスポリマーからなる樹脂組成物はこれまで提案されてこなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体に難燃剤を添加したポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物が、優れた難燃性、耐湿熱性、機械強度を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体100重量部に対し、難燃剤0.1〜100重量部よりなることを特徴するポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物に関するものである。
【0008】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明に用いるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体は、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体の範疇に属するものであれば如何なるものでもよく、例えばポリ3−ヒドロキシブチレート単独重合体、3−ヒドロキシブチレート/3−ヒドロキシブチレート以外のヒドロキシアルカノエート共重合体、等が挙げられ、共重合体である場合の3−ヒドロキシブチレート以外のヒドロキシアルカノエートとしては、例えば3−ヒドロキシプロピオネート、3−ヒドロキシバレレート、3−ヒドロキシヘキサノエート、3−ヒドロキシヘプタノエート、3−ヒドロキシオクタノエート、3−ヒドロキシノナノエート、3−ヒドロキシデカノエート、3−ヒドロキシウンデカノエート、4−ヒドロキシブチレート、ヒドロキシラウリレートが挙げられる。中でも、耐熱性に優れるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物となることからポリ3−ヒドロキシブチレート単独重合体、3−ヒドロキシブチレート/3−ヒドロキシバレレート共重合体、3−ヒドロキシブチレート/4−ヒドロキシブチレート共重合体であることが好ましい。また、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体中の3−ヒドロキシブチレート以外のヒドロキシアルカノエートの共重合成分量としては、0〜20モル%であることが好ましく、特に0〜10モル%がより好ましい。
【0010】
本発明に用いるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体の融点は、特に耐熱性に優れるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物となることから160〜190℃であることが好ましく、特に165〜180℃であることが好ましい。
【0011】
また、本発明に用いるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体は、機械的強度、成形加工性に優れるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物となることから、クロロホルムに溶解し、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、GPCと記す。)で測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量100000〜3000000であることが好ましく、特に120000〜1000000であることが好ましい。
【0012】
ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体は、市販品として入手することが可能である。また、その製造方法としては、例えば米国特許4477654号公報、国際公開特許94/11519号公報、米国特許5502273号公報に記載されている方法等により入手することも可能である。
【0013】
本発明に用いる難燃剤としては、難燃効果を発揮するものであれば特に制限は無く公知のものを使用でき、その中でも効率よくポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物に難燃性を付与できることから、塩素系難燃剤、リン系難燃剤、臭素系難燃剤、窒素系難燃剤、無機系難燃剤、シリコーン系難燃剤、フッ素系難燃剤、加熱膨張性黒鉛であることが好ましい。
【0014】
塩素系難燃剤としては、例えば塩素化パラフィン、パークロロシクロデカン、パークロロシクロペンタデカン、無水クロレンド酸、クロレンド酸、塩素化ポリエチレン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が使用できる。
【0015】
リン系難燃剤としては、例えばトリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジ2,6−キシレニルホスフェート、トリキシリルホスフェート、トリフェニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニル)ホスフェート、レゾルシノールジフェニルホスフェート等の芳香族ホスフェート;芳香族ホスフェートの縮合物;2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、イソデシルジフェニルホスフェート等のアルキルアリールホスフェート;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジメチルメチルホスフォネート、ジエチルエチルホスフォネート等の脂肪族ホスフェート;脂肪族ホスフェートの縮合物;ホスフォリネート等のホスフェート;トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジブロモフェニル)ホスフェート、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、トリス(2−クロロエチレン)ホスフェート、トリス(1,3−ジクロロ−2−プロピル)ホスフェート、トリス(2,4−ジブロモフェニル)ホスフェート、テトラキス−(2−クロロエチル)エチレンジホスフェート等の含ハロゲンホスフェート;含ハロゲンホスフェートの縮合物;縮合型ポリホスフォネート;テトラキスヒドロキシメチルホスホニウムサルフェート;赤リン;ポリリン酸アンモニウム;ポリリン酸アンモニウム・アミドポリクロロホスフェート;ビニルホスフェートオリゴマー;ビニルホスフォネートオリゴマー;テトラフェニル−m−フェニレンジホスフェート;アミドホスファゼン;ホスフィンオキサイド等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が使用できる。
【0016】
臭素系難燃剤としては、例えばデカブロモジフェニルエーテル、トリブロモフェニルアリルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、テトラブロモ無水フタル酸、テトラブロモビスフェノールA(以下、TBAと略す。)、TBA−カーボネートオリゴマー、TBA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、TBA−ビス(アリルエーテル)、TBA−エトキシレート、ヘキサブロモシクロドデカン、トリブロモフェノール、ジブロモフェノール、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、ヘキサブロモベンゼン、トリブロモスチレン、ペンタブロモスチレン、トリブロモフェニルマレイミド、トリブロモネオペンチルアルコール、ジブロモネオペンチルアルコール、ポリジブロモフェニレンオキサイド、キサブロモシクロドデカン、ポリ(ペンタブロモベンジル)アクリレート、臭素化ポリスチレン、臭素化エポキシオリゴマー、ビオメソブロモフェノキシエタン、臭素化アセナフチレン、TBA−エポキシオリゴマー、TBA−エポキシポリマー、ペンタブロモベンジルアクリレート、テトラブロモグリシジルエーテル、TBA−グリシジルエーテル、エチレンビステトラブロモフタルイミド、バイロチェック、TBA−ビスヒドロキシエチルエーテル、テトラブロモビスフェノールS−ビスヒドロキシエチルエーテル、TBA−ビス(ジブロモプロピル)、ビス(ジブロモプロピル)テトラブロモビスフェノールS、トリス(ジブロモプロピル)・イソシアヌレート、トリス(トリブロモネオペンチル)・ホスフェート、ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジン、ポリブロモフェニルインダン、臭素化フェノキシ樹脂、臭素化フェニレノキサイドオリゴマー、エチレンビス(ポリブロモフェニルエーテル)、臭素化芳香族トリアジン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が使用できる。
【0017】
無機系難燃剤としては、例えば水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ;スルファミン酸グアニジン、リン酸グアニジン、リン酸グアニル尿素、リン酸メラミン等のグアニジン塩;ホウ酸亜鉛、ホウ酸アンチモン、ホウ酸、アンモニウムアルミニウムハイドロオキシカーボネート、モリブデン酸アンチモン、モリブデン酸化物、酸化モリブデン、ベンゾイルフェロセン、フェロセン;酸化スズ、水和スズ化合物、スズ酸亜鉛等のスズ化合物;芳香族スルフェンアシド、アセチルアセトン、サリチルアルデヒド、8−ヒドロキシノリン、ジメチルグリオキシモの金属塩等の無機錯体;リン−窒素化合物、カルシウム−アルミネート水和物、カルシウム−アルミニウム−シリケート、ジルコニウム化合物、ドーソナイト;脂肪族スルホン酸塩、芳香族スルホン酸塩、芳香族スルホンアミド塩、スルフイミド塩、イミドジリン酸テトラエステル塩、フッ素化脂肪族スルホン酸塩等のアルカリ・アルカリ土類金属塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が使用できる。
【0018】
シリコーン系難燃剤としては、例えばポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(ジフェニルシロキサン)、ポリ(メチルフェニルシロキサン)等のポリオルガノシロキサン;エポキシ変性ポリオルガノシロキサン、メタクリル基変性ポリオルガノシロキサン、アミノ基変性ポリオルガノシロキサン;等のシリコーンオイル、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、シリコーンパウダー等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が使用できる。
【0019】
窒素系難燃剤としては、例えばメラミン、シアヌール酸、メラミンシアヌレート、メラミンフォスフェート等のトリアジン化合物;ポリリン酸メラミン;硫酸メラミン;尿素;イソシアヌレート等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が使用できる。
【0020】
フッ素系難燃剤としては、例えばフッ素系金属塩、ポリテトラフロロエチレン、テトラフロロエチレンとヘキサフロロプロピレンの共重合体、フッ素系フタルイミド等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が使用できる。
【0021】
そして、特に難燃性に優れるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物が効率よく得られることから、難燃剤としては、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、デカブロモジフェニルエーテル、縮合リン酸エステル、ハロゲン化リン酸エステル、塩素化ポリエチレン、ポリリン酸メラミン、メラミンシアヌレート、シリコーンパウダー、ポリテトラフルオロエチレン、加熱膨張性黒鉛であることが好ましい。
【0022】
該難燃剤の量はポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物に用いられるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体100重量部に対し、0.1〜100重量部であり、好ましくは10〜70重量部である。難燃剤が0.1重量部未満ではポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物の難燃性が得られず、100重量部を超えるとポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物の機械強度が低下することがある。
【0023】
本発明のポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物にはタルクを添加してもよい。添加するタルクに特に制限は無く、タルクの範疇に属する限り如何なるものも用いることができ、例えばタルク原石を衝撃式粉砕機やミクロンミル型粉砕機で粉砕し、更にミクロンミル、ジェット型粉砕機で微粉砕した後、サイクロンやミクロンセパレーター等で分級調整して製造したものが挙げられる。そして、タルクとしてはその取り扱い性に優れるとともに、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物を射出成形した際にその成形性が向上することから、メジアン径0.1〜10μmのタルクであることが好ましく、特に0.5〜6μmのタルクであることが好ましい。
【0024】
また、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体への分散性に優れることから表面処理剤で処理されたタルクであることが好ましく、表面処理剤としては、例えばビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のシランカップリング剤;イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート等のチタネートカップリング剤;ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸などの脂肪酸及びその金属塩;アルミニウム系カップリング剤;クロム系カップリング剤;ジルコニウム系カップリング剤;ボラン系カップリング剤;エポキシ等を挙げることができ、特にエポキシ表面処理タルク、シランカップリング剤表面処理タルクが好ましい。
【0025】
該タルクの量としては、本発明の目的を達成できる限りにおいて制限はなく、特にポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物を射出成形した際に成形性が向上することからポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体100重量部に対し1〜50重量部の範囲であることが好ましく、特に5〜25重量部であることが好ましい。
【0026】
本発明のポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物にはカルボジイミド化合物を添加することが好ましい。カルボジイミド化合物としては、特に制限は無く公知のものを使用できる。該カルボジイミド化合物としては、分子内に1個以上のカルボジイミド基を有する化合物であれば如何なるものでもよく、例えばN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N,N’−ジ(o−トルイル)カルボジイミド、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド等の一官能性カルボジイミド化合物;p−フェニレン−ビス(2,6−キシリルカルボジイミド)、p−フェニレン−ビス(t−ブチルカルボジイミド)、p−フェニレン−ビス(メシチルカルボジイミド)、テトラメチレン−ビス(t−ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサン−1,4−ビス(メチレン−t−ブチルカルボジイミド)等の二官能性カルボジイミド化合物;1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートの混合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,6−ジイソプロピルフェニルイソシアネート、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、ポリフェニルポリイソシアネート等のイソシアネートの縮合物等の多官能性カルボジイミド化合物等が挙げられ、その中でも多官能性カルボジイミド化合物が好ましい。該多官能性カルボジイミド化合物としては、例えば(商品名)カルボジライトLA−1(日清紡社製)、(商品名)カルボジライトHMV−8CA(日清紡社製)、(商品名)エラストスタブH01(日清紡社製)等の商品名で一般的に知られている多官能性カルボジイミド化合物が挙げられる。これらのカルボジイミド化合物は1種又は2種以上が使用できる。
【0027】
カルボジイミド化合物の官能基当量は、50〜1000g/eqが好ましく、特に好ましくは100〜500g/eqである。
【0028】
また、カルボジイミド化合物の量は、耐湿熱性に優れたポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物が得られることからポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体100重量部に対し、0.1〜10重量部であり、好ましくは0.5〜5重量部である。
【0029】
また、本発明のポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物は、耐熱性、特に耐熱変色性を向上させるため安定剤を添加してもよく、該安定剤としては、例えばリン化合物、ヒンダードフェノール系化合物、ヒドロキシジオキサホスフェピン系化合物、ヒドロキシアクリレート系化合物、硫黄含有化合物、スズ系化合物、ラクトン系化合物、ヒドロキシルアミン系化合物、ビタミンE系化合物、アリルアミン系化合物、アミン−ケトン系化合物、芳香族第二級アミン系化合物、モノフェノール系化合物、ビスフェノール系化合物、ポリフェノール系化合物、ベンツイミダゾール系化合物、ジチオカルバミン酸系化合物、チオウレア系化合物、有機チオ酸系化合物等が挙げられ、該安定剤の添加量は特に制限なくポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体100重量部に対し、0.0001〜10重量部が好ましく用いられる。
【0030】
本発明のポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物には、例えば染料、有機顔料、無機顔料、ガラス繊維、無機補強剤、可塑剤、紫外線吸収剤、発泡剤、アクリル加工助剤、滑剤、結晶核剤、可塑剤、離型剤、加水分解防止剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、防徽剤、防錆剤、イオントラップ剤、難燃剤、難燃助剤等の公知の添加剤を加えることができる。また、無機充填材及び/又は有機充填材を添加してもよい。また、分散性を高めるために、表面改質された無機充填材を用いることも可能である。無機充填材及び/又は有機充填材の添加量は特に制限なくポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体100重量部に対し、0.1〜100重量部が好ましく、特に3〜50重量部が好ましい。
【0031】
さらに、熱可塑性エラストマー、ゴム、熱可塑性樹脂、特に生分解性樹脂と称される熱可塑性樹脂をブレンドしてもよい。
【0032】
本発明のポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物の製造方法としては、本発明のポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物を製造することが可能であればいかなる方法も用いることが可能であり、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体、及び難燃剤、更に必要に応じタルク、カルボジイミド化合物、安定剤、難燃剤、添加剤等を、例えば溶液混合、溶融混合等の混合方法により製造することが可能であり、その中でも効率よく混合できることから溶融混合が好ましく用いられる。
【0033】
溶融混合には、例えばバンバリーミキサー(ファレル社製)、加圧ニーダー((株)森山製作所製)、インターナルミキサー(栗本鉄工所製)、インテンシブミキサー(日本ロール製造(株)製)等の機械加圧式混練機;ロール成形機、単軸押出し機、二軸押出し機等の押出し成形機;等のプラスチックまたはゴムの加工に使用される混練成形機が使用できる。溶融混合する際の温度は120〜200℃が好ましく、特に好ましくは150〜190℃である。特に押出機を使用する際には、押出機のダイから吐出する溶融樹脂組成物の温度が160℃以上185℃以下になるように温度設定することが好ましい。
【0034】
本発明のポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物を成形体とする際の成形方法に特に制限は無く、射出成形、押出成形、トランスファー成形、インフレーション成形、ブロー成形、加熱成形、圧縮成形、熱成形等の通常の熱可塑性樹脂の成形方法を用いることができる。中でも生産性に優れることから、射出成形により成形体とすることが好ましい。
【0035】
射出成形する際のシリンダーの温度は120〜200℃が好ましく、特に好ましくは150〜190℃であり、金型の温度は20〜90℃が好ましく、40〜80℃がさらに好ましい。また、射出成形する前には40〜100℃で3〜10時間乾燥して用いることが好ましい。
【0036】
本発明のポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物は、例えば電子機器、パソコン、携帯電話、テレビ等の家電製品;インストルメンタルパネル、インストルメンタルパネルのアンダーカバー等の自動車内装部品、タイヤカバー等の自動車外装部品等の自動車用部品;コピー機、ファックス機、複合機、プリンター等のオフィス用機器;船、車両、航空機、自転車、オートバイ等の車両用部品;机、椅子等の事務機器;液晶表示装置、有機EL表示装置等の表示機器;太陽電池用基板;トレイ、コップ等の食器;シート;フィルム;カード;磁気テープ、キャリアテープ等のテープ;写真フィルム、包装用フィルム、電子部品用フィルム、電気絶縁フィルム、金属板ラミネート用フィルム、ガラスディスプレイ用フィルム等のフィルム;タッチパネル、バックライト等のベースフィルム;救急絆創こう、サージカルテープ、リハビリテープ等の医療補助用テープの基材;消炎、鎮痛、血行促進等の疾患治療用テープの基材;手術用手袋;紙おむつ、ナプキン等の衛生用品固定用テープの基材;等に使用することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明のポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物は、優れた難燃性、耐湿熱性、機械強度を有することから各種成形体の材料として有用なものである。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、用いた試薬等は断りのない限り市販品を用いた。
【0039】
評価・分析に用いた機器及び方法を以下に示す。
【0040】
〜ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体の重量平均分子量の測定〜
ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体は、60℃のクロロホルムに2時間溶解して得られた溶解成分のみを用いて、GPCによる分子量測定を行った。尚、重量平均分子量は標準ポリスチレン(東ソー(株)製)を用いて、ポリスチレン換算で求めた。測定条件を以下に示す。
機種:商品名HLC8020GPC(東ソー(株)製)
溶媒:クロロホルム
サンプル溶解条件:60℃、2時間
カラム温度:40℃
測定濃度:50mg/50ml
注入量:100μl
カラム:商品名TSKgel GMHHR−H(東ソー(株)製)2本
〜難燃性の評価〜
アンダーライターズラボラトリーズ社のUL94規格の垂直燃焼試験法に準じて難燃クラスを評価した。
【0041】
〜引張強度の評価〜
JIS K 7161に従い、A型試験片を用いて引張強さを測定した。
【0042】
〜耐湿熱性の評価〜
温度70℃、相対湿度90%に設定した恒温恒湿器PL−2G(タバイエスペック(株)製)にA型試験片を300時間放置した後、JIS K 7161に従い引張強さを測定した。
【0043】
実施例1
ポリ3−ヒドロキシブチレート単独重合体(Tianan Biologic Material社製、商品名ENMAT200;重量平均分子量660000)100重量部、縮合リン酸エステル(旭電化工業(株)製、商品名アデカスタブFP−500)20重量部、メラミンシアヌレート(日産化学工業(株)製、商品名MC−640)10重量部、タルク(日本タルク(株)製、商品名P−3、表面エポキシ変性、メジアン径5.1μm)5重量部及び多官能性カルボジイミド化合物(日清紡(株)製、商品名カルボジライトLA−1)1重量部をドライブレンドした後、二軸押出し機((株)東洋精機製作所製、商品名ラボプラストミル)を用いて溶融混合を行いポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物ペレットを得た。その際の溶融混合は、シリンダー温度175℃、ダイス温度165℃、スクリュー回転数80rpmで行った。
【0044】
得られたポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物ペレットを、射出成形機(東芝機械プラスチック社製、商品名IS100E)を用いてA型試験片(JIS K 7139に準拠)を作製した。成形条件は、ノズル温度175℃、金型温度60℃であり、成形サイクルは60秒であった。得られた試験片を用いて引張強度、耐湿熱性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0045】
また、難燃性の試験は、圧縮成形により成形した厚さ2mmのシートから幅13mm、長さ125mmの試験片を切り出して行った。成形条件は、加熱温度185℃、加熱時間5分、冷却温度40℃、冷却時間5分であった。その結果を表1に示す。
【0046】
実施例2
3−ヒドロキシブチレート/3−ヒドロキシバレレート共重合体(Tianan Biologic Material社製、商品名ENMAT100、重量平均分子量290000)100重量部、三酸化アンチモン(東ソー(株)製、商品名フレームカット610R)10重量部、デカブロモジフェニルエーテル(東ソー(株)製、商品名フレームカット110R)25重量部及びタルク(日本タルク(株)製、商品名P−3、表面エポキシ変性、メジアン径5.1μm)5重量部をドライブレンドした後、実施例1と同様にしてペレットを作製し、引張強度、耐湿熱性、難燃性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0047】
実施例3
ポリ3−ヒドロキシブチレート単独重合体(Tianan Biologic Material社製、商品名ENMAT200;重量平均分子量660000)100重量部、縮合リン酸エステル(旭電化工業(株)製、商品名アデカスタブFP−500)20重量部、ポリリン酸メラミン(日産化学工業(株)製、商品名PMP−200)10重量部、ポリテトラフルオロエチレン(ダイキン工業(株)製、商品名ポリフロンMPA FA−500)0.5重量部、タルク(日本タルク(株)製、商品名P−3、表面エポキシ変性、メジアン径5.1μm)5重量部及び多官能性カルボジイミド化合物(日清紡(株)製、商品名カルボジライトLA−1)1重量部をドライブレンドした後、実施例1と同様にしてペレットを作製し、引張強度、耐湿熱性、難燃性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0048】
実施例4
ポリ3−ヒドロキシブチレート単独重合体(Tianan Biologic Material社製、商品名ENMAT200;重量平均分子量660000)100重量部、水酸化マグネシウム(協和化学(株)製、商品名キスマ5E)50重量部、メラミンシアヌレート(日産化学工業(株)製、商品名MC−640)10重量部及びタルク(日本タルク(株)製、商品名P−3、表面エポキシ変性、メジアン径5.1μm)5重量部をドライブレンドした後、実施例1と同様にしてペレットを作製し、引張強度、耐湿熱性、難燃性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0049】
実施例5
ポリ3−ヒドロキシブチレート単独重合体(Tianan Biologic Material社製、商品名ENMAT200;重量平均分子量660000)100重量部、ハロゲン化リン酸エステル(大八化学工業(株)製、商品名CR−900)20重量部、ポリテトラフルオロエチレン(ダイキン工業(株)製、商品名ポリフロンMPA FA−500)0.5重量部及びタルク(日本タルク(株)製、商品名P−3、表面エポキシ変性、メジアン径5.1μm)5重量部をドライブレンドした後、実施例1と同様にしてペレットを作製し、引張強度、耐湿熱性、難燃性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0050】
実施例6
ポリ3−ヒドロキシブチレート単独重合体(Tianan Biologic Material社製、商品名ENMAT200;重量平均分子量660000)100重量部、ポリリン酸メラミン(日産化学工業(株)製、商品名PMP−200)10重量部、塩素化ポリエチレン(ダイソー(株)製、商品名ダイソラックG235)5重量部、加熱膨張性黒鉛(東ソー(株)製、商品名フレームカットGREP−EG)10重量部及びタルク(日本タルク(株)製、商品名P−3、表面エポキシ変性、メジアン径5.1μm)5重量部をドライブレンドした後、実施例1と同様にしてペレットを作製し、引張強度、耐湿熱性、難燃性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0051】
比較例1
ポリ3−ヒドロキシブチレート単独重合体(Tianan Biologic Material社製、商品名ENMAT200;重量平均分子量660000)100重量部及びタルク(日本タルク(株)製、商品名P−3、表面エポキシ変性、メジアン径5.1μm)5重量部を二軸押出し機((株)東洋精機製作所製、商品名ラボプラストミル)を用いて溶融混合を行いポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体ペレットを作製し、引張強度、耐湿熱性、難燃性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0052】
比較例2
ポリ3−ヒドロキシブチレート単独重合体(Tianan Biologic Material社製、商品名ENMAT200;重量平均分子量660000)100重量部、水酸化マグネシウム(協和化学(株)製、商品名キスマ5E)120重量部及びタルク(日本タルク(株)製、商品名P−3、表面エポキシ変性、メジアン径5.1μm)5重量部をドライブレンドした後、実施例1と同様にしてペレットを作製し、引張強度、耐湿熱性、難燃性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0053】
比較例3
ポリ乳酸(三井化学社製、商品名レイシアH−280)100重量部、水酸化マグネシウム(協和化学(株)製、商品名キスマ5E)50重量部、メラミンシアヌレート(日産化学工業(株)製、商品名MC−640)10重量部及びタルク(日本タルク(株)製、商品名P−3、表面エポキシ変性、メジアン径5.1μm)5重量部をドライブレンドした後、実施例1と同様にしてペレットを作製し、引張強度、耐湿熱性、難燃性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0054】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体100重量部に対し、難燃剤5〜100重量部よりなることを特徴とするポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物。
【請求項2】
塩素系難燃剤、リン系難燃剤、臭素系難燃剤、窒素系難燃剤、無機系難燃剤、シリコーン系難燃剤、フッ素系難燃剤及び加熱膨張性黒鉛よりなる群から選ばれる1種以上の難燃剤であることを特徴とする請求項1に記載のポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物。
【請求項3】
三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、デカブロモジフェニルエーテル、縮合リン酸エステル、ハロゲン化リン酸エステル、塩素化ポリエチレン、ポリリン酸メラミン、メラミンシアヌレート、シリコーンパウダー、ポリテトラフルオロエチレン及び加熱膨張性黒鉛よりなる群から選ばれる1種以上の難燃剤であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物。
【請求項4】
さらにタルクを配合してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物。
【請求項5】
さらにカルボジイミド化合物を配合してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物。

【公開番号】特開2008−303351(P2008−303351A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−153854(P2007−153854)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】