説明

ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物

【課題】 耐熱性、耐衝撃性に優れることから、各種成形体用途としての展開に適したポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体及びアクリル酸エステル−メタクリル酸エステルブロック共重合体、好ましくはタルクからなるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性、耐衝撃性に優れるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体等の植物由来のバイオマスポリマーは、カーボンニュートラルの観点から大気中の二酸化炭素を増やさない材料として近年注目を集めている。そこで、これらのバイオマスポリマーを食器、包装フィルム、レジャー用品、押出成形品、パソコン、携帯電話等の家電製品、プリンター、コピー機等のOA機器、自動車部品に使用する試みが始まっている。しかしながら、これらの分野で使用するには、一般に耐熱性や耐衝撃性が要求される。そこで、これらの要求に応えるため、生分解性の脂肪族ポリエステル樹脂、無機充填材、特定のエラストマーからなる樹脂組成物(例えば特許文献1参照。)、ポリ乳酸と特定のアクリル系ブロック共重合体からなる熱可塑性樹脂組成物(例えば特許文献2参照。)、等が提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開平08−259788号公報
【特許文献2】特開2006−225413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に提案の樹脂組成物は、本質的に脂肪族ポリエステル樹脂と相溶性が悪いエラストマーをブレンドしているため耐衝撃性改良効果が充分でないと言う課題があった。また、特許文献2に提案の樹脂組成物はポリ乳酸がマトリクスであるため、耐熱性に劣るという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体に特定のブロック共重合体を配合したポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物が、耐熱性、耐衝撃性に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体及びアクリル酸エステル−メタクリル酸エステルブロック共重合体からなることを特徴とするポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物に関するものである。
【0007】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0008】
本発明に用いるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体は、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体の範疇に属するものであれば如何なるものでもよく、例えばポリ3−ヒドロキシブチレート単独重合体、3−ヒドロキシブチレート/3−ヒドロキシブチレート以外のヒドロキシアルカノエート共重合体、等が挙げられ、共重合体である場合の3−ヒドロキシブチレート以外のヒドロキシアルカノエートとしては、例えば3−ヒドロキシプロピオネート、3−ヒドロキシバレレート、3−ヒドロキシヘキサノエート、3−ヒドロキシヘプタノエート、3−ヒドロキシオクタノエート、3−ヒドロキシノナノエート、3−ヒドロキシデカノエート、3−ヒドロキシウンデカノエート、4−ヒドロキシブチレート、ヒドロキシラウリレートが挙げられる。中でも、耐熱性に優れるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物となることからポリ3−ヒドロキシブチレート単独重合体、3−ヒドロキシブチレート/3−ヒドロキシバレレート共重合体、3−ヒドロキシブチレート/4−ヒドロキシブチレート共重合体であることが好ましい。また、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体中の3−ヒドロキシブチレート以外のヒドロキシアルカノエートの共重合成分量としては、0〜20モル%であることが好ましく、特に0〜10モル%がより好ましい。
【0009】
本発明に用いるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体の融点は、特に耐熱性に優れるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物となることから160〜190℃であることが好ましく、特に165〜180℃であることが好ましい。
【0010】
また、本発明に用いるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体は、機械的強度、成形加工性に優れるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物となることから、クロロホルムに溶解し、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、GPCと記す。)で測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量100000〜3000000であることが好ましく、特に120000〜1000000であることが好ましい。
【0011】
ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体は、市販品として入手することが可能である。また、その製造方法としては、例えば米国特許4477654号公報、国際公開特許94/11519号公報、米国特許5502273号公報に記載されている方法等により入手することも可能である。
【0012】
本発明で用いるアクリル酸エステル−メタクリル酸エステルブロック共重合体は、少なくとも1つのアクリル酸エステル単位からなる重合体ブロックと少なくとも1つのメタクリル酸エステル単位からなる重合体ブロックとを含むブロック共重合体であり、公知の方法により入手することが可能である。
【0013】
該アクリル酸エステル−メタクリル酸エステルブロック共重合体を構成するアクリル酸エステル単位からなる重合体ブロックは、アクリル酸エステルから構成される重合体ブロックであれば特に制限は無く、該アクリル酸エステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−メトキシエチル等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。中でもアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2−メトキシエチルが好ましく、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルを用いることがより好ましい。
【0014】
また、本発明の効果を失わない限りにおいて、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリル、メタクリル酸エステル、メタクリル酸、アクリル酸、芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、オレフィン、無水マレイン酸などの他のモノマーを共重合しても差し支えない。
【0015】
該アクリル酸エステル−メタクリル酸エステルブロック共重合体を構成するメタクリル酸エステル単位からなる重合体ブロックは、メタクリル酸エステル単位から構成される重合体ブロックであれば特に制限はなく、該メタクリル酸エステルとしては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−メトキシエチル等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。中でもメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニルなどのメタクリル酸アルキルエステルを用いること好ましく、メタクリル酸メチルを用いることがさらに好ましい。
【0016】
また、本発明の効果を失わない限りにおいて、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリル、前記のアクリル酸エステル、メタクリル酸、アクリル酸、芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、オレフィン、無水マレイン酸等の他のモノマーを共重しても差し支えない。
【0017】
該アクリル酸エステル−メタクリル酸エステルブロック共重合体の分子鎖形態は、ブロック形態を有していれば特に制限されることはなく、例えば線状、分枝状、放射状などのいずれでもよい。中でも特に耐衝撃性の向上したポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物となることからアクリル酸エステル単位からなる重合体ブロックとメタクリル酸エステル単位からなる重合体ブロックが結合したアクリル酸エステル−メタクリル酸エステルジブロック共重合体及び/又はメタクリル酸エステル−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステルトリブロック共重合体を用いることが好ましく、特にアクリル酸n−ブチル−メタクリル酸メチルジブロック共重合体及び/又はメタクリル酸メチル−アクリル酸n−ブチル−メタクリル酸メチルトリブロック共重合体を用いることが好ましい。ここで、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体がブロック形態を有さない場合、つまりランダム共重合体である場合、得られるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物は、耐衝撃性に劣るものとなる。
【0018】
該アクリル酸エステル−メタクリル酸エステルブロック共重合体は、得られるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物が特に耐衝撃性に優れることから重量平均分子量10000〜2000000であることが好ましく、特に15000〜1200000であることがより好ましい。また、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステルブロック共重合体のアクリル酸エステル単位からなる重合体ブロックは、重量平均分子量8000〜1500000であることが好ましく、12000〜1000000であることがより好ましい。さらに、メタクリル酸エステル単位からなる重合体ブロックは、重量平均分子量1000〜750000であることが好ましく、1500〜500000であることがより好ましい。
【0019】
該アクリル酸エステル−メタクリル酸エステルブロック共重合体を構成するアクリル酸エステル単位の含有量は、30〜90重量%であることが好ましく、65〜85質量%であることがより好ましい。
【0020】
また、該アクリル酸エステル−メタクリル酸エステルブロック共重合体は、得られるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物が特に耐衝撃性に優れるものとなることから、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)1〜2のものであることが好ましく、1〜1.6のものであることがより好ましい。
【0021】
該アクリル酸エステル−メタクリル酸エステルブロック共重合体は、必要に応じて、分子鎖中または分子鎖末端に水酸基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基などの官能基を有していてもよい。
【0022】
該アクリル酸エステル−メタクリル酸エステルブロック共重合体の製造方法としては、例えばアクリル酸エステル−メタクリル酸エステルブロック共重合体の各重合体ブロックを構成するアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルのそれぞれをリビング重合する方法を挙げることができる。このようなリビング重合の手法としては、例えば有機アルカリ金属化合物を重合開始剤とし、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩などの鉱酸塩存在下でアニオン重合する方法(特公平07−025859号公報参照。)、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤とし、有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合する方法(特開平11−335432号公報参照。)、有機希土類金属錯体を重合開始剤として重合する方法(特開平06−093060号公報参照。)、α−ハロゲン化エステル化合物を開始剤として銅化合物の存在下、ラジカル重合する方法(マクロモレキュラ ケミカル フィジックス(Macromol.Chem.Phys.)201巻、1108〜1114頁(2000年))などが挙げられる。また、多価ラジカル重合開始剤や多価ラジカル連鎖移動剤を用いて、各重合体ブロックを構成するアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルのそれぞれを重合させ、本発明に用いるアクリル酸エステル−メタクリル酸エステルブロック共重合体を含有する混合物として製造する方法なども挙げられる。そして、これらの中でも、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステルブロック共重合体が、高純度で得られることから有機アルカリ金属化合物を重合開始剤とし、有機アルミニウム化合物の存在下で、アニオン重合する方法が好ましい。
【0023】
また、該アクリル酸エステル−メタクリル酸エステルブロック共重合体は、例えば(商品名)LApolymer((株)クラレ製)として市販品として入手することも可能である。
【0024】
該アクリル酸エステル−メタクリル酸エステルブロック共重合体の添加量としては、本発明の目的を達成できる限りにおいて制限はなく、特に優れた耐衝撃性を有するポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物となることからポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体100重量部に対し1〜100重量部の範囲であることが好ましく、特に5〜80重量部であることが好ましい。
【0025】
本発明のポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物は、射出成形時の成形サイクルが向上し、成形加工性に優れるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物となることからタルクを含んでなることが好ましい。その際のタルクとしては、特に制限は無く、タルクの範疇に属するかぎりいかなるものも用いることができ、例えばタルク原石を衝撃式粉砕機やミクロンミル型粉砕機で粉砕し、更にミクロンミル、ジェット型粉砕機で微粉砕した後、サイクロンやミクロンセパレーター等で分級調整して製造したものが挙げられる。そして、タルクとしてはその取り扱い性に優れるとともに、本発明のポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物を成形加工した際の製品外観に優れる成形体を製造することが可能となることから、メジアン径0.1〜10μmのタルクであることが好ましく、特に0.5〜6μmのタルクであることが好ましい。
【0026】
また、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体への分散性に優れることから表面処理を施されたタルクであることが好ましく、表面処理材としては、例えばビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のシランカップリング剤;イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート等のチタネートカップリング剤;ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸などの脂肪酸及びその金属塩;アルミニウム系カップリング剤;クロム系カップリング剤;ジルコニウム系カップリング剤;ボラン系カップリング剤;エポキシ等を挙げることができ、特にエポキシ表面処理タルク、シランカップリング剤表面処理タルクが好ましい。
【0027】
該タルクの添加量としては、本発明の目的を達成できる限りにおいて制限はなく、特にポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物の結晶化が速くなり成形加工性に優れたものとなるとともに、耐衝撃性にも優れたものとなることからポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体100重量部に対し1〜100重量部の範囲であることが好ましく、特に3〜50重量部であることが好ましい。
【0028】
また、本発明のポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物は、耐熱性、特に耐熱変色性を向上させるため安定剤を添加してもよく、該安定剤としては、例えばリン化合物、ヒンダードフェノール系化合物、ヒドロキシジオキサホスフェピン系化合物、ヒドロキシアクリレート系化合物、硫黄含有化合物、スズ系化合物、ラクトン系化合物、ヒドロキシルアミン系化合物、ビタミンE系化合物、アリルアミン系化合物、アミン−ケトン系化合物、芳香族第二級アミン系化合物、モノフェノール系化合物、ビスフェノール系化合物、ポリフェノール系化合物、ベンツイミダゾール系化合物、ジチオカルバミン酸系化合物、チオウレア系化合物、有機チオ酸系化合物等が挙げられ、該安定剤の添加量は特に制限なくポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体100重量部に対し、0.0001〜10重量部が好ましく用いられる。
【0029】
本発明のポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物には、例えば染料、有機顔料、無機顔料、無機補強剤、可塑剤、アクリル加工助剤等の加工助剤、紫外線吸収剤、発泡剤、滑剤、結晶核剤、可塑剤、離型剤、加水分解防止剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、防徽剤、防錆剤、イオントラップ剤、難燃剤、難燃助剤等の公知の添加剤を加えることができる。また、無機充填材及び/又は有機充填材を添加してもよい。また、分散性を高めるために、表面改質された無機充填材を用いることも可能である。無機充填材及び/又は有機充填材の添加量は特に制限なくポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体100重量部に対し、0.1〜100重量部が好ましく、特に3〜50重量部が好ましい。
【0030】
さらに、熱可塑性エラストマー、ゴム、熱可塑性樹脂、特に生分解性樹脂と称される熱可塑性樹脂をブレンドしてもよい。
【0031】
本発明のポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物の製造方法としては、本発明のポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物を製造することが可能であればいかなる方法も用いることが可能であり、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステルブロック共重合体、更に必要に応じ安定剤、難燃剤、添加剤等を、例えば溶液混合、溶融混合等の混合方法により製造することが可能であり、その中でも効率よく混合できることから溶融混合が好ましく用いられる。
【0032】
溶融混合には、例えばバンバリーミキサー(ファレル社製)、加圧ニーダー((株)森山製作所製)、インターナルミキサー(栗本鉄工所製)、インテンシブミキサー(日本ロール製造(株)製)等の機械加圧式混練機;ロール成形機、単軸押出し機、二軸押出し機等の押出し成形機;等のプラスチックまたはゴムの加工に使用される混練成形機が使用できる。溶融混合する際の温度は120〜200℃が好ましく、特に好ましくは150〜190℃である。特に押出機を使用する際には、押出機のダイから吐出する溶融樹脂組成物の温度が160℃以上185℃以下になるように温度設定することが好ましい。
【0033】
本発明のポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物は、耐衝撃性に優れることから各種用途用成形体として用いることが可能であり、例えば電子機器、パソコン、携帯電話、テレビ等の家電製品;インストルメンタルパネル、インストルメンタルパネルのアンダーカバー等の自動車内装部品、タイヤカバー等の自動車外装部品等の自動車用部品;コピー機、ファックス機、複合機、プリンター等のオフィス用機器;船、車両、航空機、自転車、オートバイ等の車両用部品;机、椅子等の事務機器;液晶表示装置、有機EL表示装置等の表示機器;太陽電池用基板;トレイ、コップ等の食器;シート;フィルム;カード;磁気テープ、キャリアテープ等のテープ;写真フィルム、包装用フィルム、電子部品用フィルム、電気絶縁フィルム、金属板ラミネート用フィルム、ガラスディスプレイ用フィルム等のフィルム;タッチパネル、バックライト等のベースフィルム;救急絆創こう、サージカルテープ、リハビリテープ等の医療補助用テープの基材;消炎、鎮痛、血行促進等の疾患治療用テープの基材;手術用手袋;紙おむつ、ナプキン等の衛生用品固定用テープの基材;等に使用することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明のポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物は、耐熱性、耐衝撃性に優れることから、各種成形体用途としての展開に適したものである。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、用いた試薬等は断りのない限り市販品を用いた。
【0036】
評価・分析に用いた機器及び方法を以下に示す。
【0037】
〜ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体の重量平均分子量の測定〜
ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体は、60℃のクロロホルムに2時間溶解して得られた溶解成分のみを用いて、GPCによる分子量測定を行った。尚、重量平均分子量は標準ポリスチレン(東ソー(株)製)を用いて、ポリスチレン換算で求めた。測定条件を以下に示す。
機種:商品名HLC8020GPC(東ソー(株)製)
溶媒:クロロホルム
サンプル溶解条件:60℃、2時間
カラム温度:40℃
測定濃度:50mg/50ml
注入量:100μl
カラム:商品名TSKgel GMHHR−H(東ソー(株)製)2本
〜試験片の準備〜
耐熱性、耐衝撃性の評価に用いた試験片は、射出成形機(東芝機械プラスチック社製、商品名IS100E)を用い、ノズル温度175℃、射出時間10秒、金型温度60℃の条件で準備した。
【0038】
〜耐衝撃性の測定法〜
JIS K 7111に従い、シャルピー衝撃強さを測定した。
【0039】
〜耐熱性の測定法〜
JIS K 7191−1及び−2(B法)に従い、荷重たわみ温度を測定した。
【0040】
実施例1
ポリ3−ヒドロキシブチレート単独重合体(Tianan Biologic Material社製、商品名ENMAT200;重量平均分子量660000)100重量部に対して、メタクリル酸メチル−アクリル酸n−ブチル−メタクリル酸メチルトリブロック共重合体((株)クラレ製、商品名LApolymer LA2250)20重量部をドライブレンドした後、二軸押出し機((株)東洋精機製作所製、商品名ラボプラストミル)を用いて溶融混合を行いポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物ペレットを得た。その際の溶融混合は、シリンダー温度175℃、ダイス温度165℃、スクリュー回転数80rpmで行った。
【0041】
得られたポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物ペレットを用いて、耐熱性、耐衝撃性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0042】
実施例2
3−ヒドロキシブチレート/3−ヒドロキシバレレート共重合体(Tianan Biologic Material社製、商品名ENMAT100、重量平均分子量290000)100重量部に対して、メタクリル酸メチル−アクリル酸n−ブチル−メタクリル酸メチルトリブロック共重合体((株)クラレ製、商品名LApolymer LA2140)40重量部、タルク(日本タルク(株)製、商品名SG−2000、表面エポキシ変性、メジアン径1.0μm)10重量部をドライブレンドした後、二軸押出し機((株)東洋精機製作所製、商品名ラボプラストミル)を用いて溶融混合を行いポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物ペレットを得た。その際の溶融混合は、シリンダー温度175℃、ダイス温度165℃、スクリュー回転数80rpmで行った。
【0043】
得られたポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物ペレットを用いて、耐熱性、耐衝撃性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0044】
比較例1
ポリ3−ヒドロキシブチレート単独重合体(Tianan Biologic Material社製、商品名ENMAT200;重量平均分子量660000)を二軸押出し機((株)東洋精機製作所製、商品名ラボプラストミル)を用いて溶融混合を行いポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体ペレットを得た。その際の溶融混合は、シリンダー温度175℃、ダイス温度165℃、スクリュー回転数80rpmで行った。
【0045】
得られたポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体ペレットを用いて、耐熱性、耐衝撃性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0046】
得られたポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体は、耐衝撃性に劣るものであった。
【0047】
比較例2
ポリ乳酸(三井化学社製、商品名レイシアH−280)100重量部に対して、メタクリル酸メチル−アクリル酸n−ブチル−メタクリル酸メチルトリブロック共重合体((株)クラレ製、商品名LApolymer LA2250)20重量部をドライブレンドした後、二軸押出し機((株)東洋精機製作所製、商品名ラボプラストミル)を用いて溶融混合を行い樹脂組成物ペレットを得た。その際の溶融混合は、シリンダー温度200℃、ダイス温度195℃、スクリュー回転数80rpmで行った。
【0048】
得られた樹脂組成物ペレットを射出成形機(東芝機械プラスチック社製、商品名IS100E)を用い、ノズル温度200℃、射出時間10秒、金型温度60℃の条件で試験片に成形し、耐熱性、耐衝撃性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0049】
得られた樹脂組成物は耐熱性、耐衝撃性に劣り、成形サイクルの長いものであった。
【0050】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体及びアクリル酸エステル−メタクリル酸エステルブロック共重合体からなることを特徴とするポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物。
【請求項2】
ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体100重量部に対し、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステルブロック共重合体5〜100重量部からなることを特徴とする請求項1に記載のポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物。
【請求項3】
アクリル酸エステル−メタクリル酸エステルブロック共重合体が、メタクリル酸メチル−アクリル酸n−ブチル−メタクリル酸メチルトリブロック共重合体及び/又はアクリル酸n−ブチル−メタクリル酸メチルジブロック共重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、タルクを含んでなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物。
【請求項5】
メジアン径0.1〜10μmのタルクを含んでなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体樹脂組成物。

【公開番号】特開2009−7519(P2009−7519A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−172186(P2007−172186)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】