説明

ポルフィリン化合物の新規用途

【課題】微生物の増殖を停止及び減弱させる新規の方法の提供。
【解決手段】式(I)で示される化合物を光力学療法光源等に曝さない方法により微生物の増殖を停止又は減弱させる医薬の製造における該化合物の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポルフィリン化合物の新規用途、取分け、微生物のコロニー形成および感染の治療的または予防的処置におけるかかる化合物の使用に関わる。
【背景技術】
【0002】
増大する多くの微生物が発現する抗生物質に対する耐性は、世界的な健康上の問題であると認識されている(Tunger et al., 2000, Int. J. Microb. Agents 15:131-135; Jorgensen et al., 2000, Clin. Infect. Dis. 30:799-808)。結果として微生物を殺す新しい方法の開発が緊急に必要とされている。
【0003】
光力学療法(PDT)による微生物感染の処置は、殆どの抗生物質に典型的なメカニズムとは明らかに異なるメカニズムを伴うので、細菌を抹消する価値ある最新の方法の代表である。従って、PDTは光増感分子の使用に基づくものである;該分子は光によって活性化されると、細菌、マイコプラズマおよび酵母などの多様な原核および真核細胞にとって毒性である酸素反応性種を生成する(Malik et al., 1990, J. Photochem. Photobiol. B Biol. 5:281-293;Bertoloni et al., 1992, Microbios 71:33-46)。重要なことに、細菌に対する多くの光力学的薬剤の光増感活性は、抗生物質に対する耐性によって損なわれることがないが、代わりに、多くの場合、その化学構造に左右される(Malik et al., 1992, J. photochem. Photobiol B Biol. 14:262-266)。
【0004】
様々なタイプの中性およびアニオン性光増感剤は、グラム陽性細菌に対しては著しい光毒性作用を示す。しかし、かかる光増感剤は、グラム陰性細菌に対しては、その外膜の浸透性をエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)またはポリカチオンで処理して変化させない限り、評価し得る細胞毒性を示さない(Bertoloni et al., 1990, FEMS Microbiol. Lett. 71: 149-156; Nitzan et al., 1992, Photochem. Photobiol. 55: 89-97)。グラム陰性細菌の細胞外皮はグラム陽性細菌の外皮よりもより複雑で厚く、光増感剤の効率的な結合を防止するか、または遮断し、光増感剤により光生成した細胞毒反応性種を不活性化する(Ehrenbert et al., 1985, Photochem. Photobiol. 41: 429-435; Valduga et al., 1993, J. Photochem. Photobiol. B. Biol. 21:81-86)。
【0005】
対照的に、プラスに荷電した(カチオン性)光増感剤、例えば、ポルフィリンおよびフタロシアニンなどは、細胞外皮の自然な構造を改変する必要もなく、グラム陰性細菌の効率的な不活性化を促進する(Merchat et al., 1996, J. Photochem. Photobiol. B. Biol. 32:153-157; Minnock et al., 1996, J. Photochem. Photobiol. B. Biol. 32:159-164)。正電荷は決定的な細胞部位で光増感剤に結合することを好み、その部位が一旦露光により傷害を受けると、細胞の生存力を喪失させると思われる(Merchat et al., 1996, J. Photochem. Photobiol. B. Biol. 35:149-157)。従って、大腸菌はカチオン性5,10,15,20-テトラキス−(4−N−メチルピリジル)−ポルフィン(TMPyP)とインキュベーションした後に、可視光により効率的に不活性化される、との報告がある(Valduga et al., 1999, Biochem. Biophys. Res. Commun., 256:84-88)。このポルフィリンの光毒性作用には、DNAに結合することによるよりも、むしろ外膜と細胞質膜の両方の酵素的輸送機能の傷害により主に仲介される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Tunger et al., 2000, Int. J. Microb. Agents 15:131-135
【非特許文献2】Jorgensen et al., 2000, Clin. Infect. Dis. 30:799-808
【非特許文献3】Malik et al., 1990, J. Photochem. Photobiol. B Biol. 5:281-293
【非特許文献4】Bertoloni et al., 1992, Microbios 71:33-46
【非特許文献5】Malik et al., 1992, J. photochem. Photobiol B Biol. 14:262-266
【非特許文献6】Bertoloni et al., 1990, FEMS Microbiol. Lett. 71: 149-156
【非特許文献7】Nitzan et al., 1992, Photochem. Photobiol. 55: 89-97
【非特許文献8】Ehrenbert et al., 1985, Photochem. Photobiol. 41: 429-435
【非特許文献9】Valduga et al., 1993, J. Photochem. Photobiol. B. Biol. 21:81-86
【非特許文献10】Merchat et al., 1996, J. Photochem. Photobiol. B. Biol. 32:153-157
【非特許文献11】Minnock et al., 1996, J. Photochem. Photobiol. B. Biol. 32:159-164
【非特許文献12】Merchat et al., 1996, J. Photochem. Photobiol. B. Biol. 35:149-157
【非特許文献13】Valduga et al., 1999, Biochem. Biophys. Res. Commun., 256:84-88
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、既知ポルフィリンに基づく抗微生物剤の利用は、哺乳動物宿主組織細胞に対するその毒性のために制限されている;すなわち、該化合物は標的の微生物細胞と宿主細胞間を識別し得ないということである。さらに、既知ポルフィリンに基づく抗微生物剤の利用は、標的微生物細胞に対するその比較的低い効力のためにもさらに制限されている。
さらに、微生物感染のすべてが光力学療法に適しているわけではない;例えば、感染部位が光に接近し得ないかもしれない。
【0008】
従って、微生物の増殖を停止および減弱させる新規の方法の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の側面によると、式(I)で示される化合物を光力学療法光源または音響力学療法超音波源に曝すことを要しない方法により微生物の増殖を停止または減弱させる医薬の製造(調剤)における該化合物の使用が提供される:
【化1】

【0010】
ただし、式中、
、X、XおよびXは独立して(すなわち、同一または異なって)水素原子、親油部分(疎水性部分)、フェニル基、低級アルキル、アルカリールもしくはアラルキル基、または以下の式で示されるカチオン性基を表す。
−L−R−N(R)(R)R
ここで、Lは連結部分であるか、または存在しない;Rは低級アルキレン、低級アルケニレンまたは低級アルキニレンを表し、これらには低級アルキル、低級アルキレン(酸素によりオプション的に中断される)、フルオロ、OR、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、NR1011およびN121314から選択される1個以上の置換基がオプション的に置換する;R、RおよびRは独立して(すなわち、同一または異なって)H、アリール、低級アルキル、低級アルケニルまたは低級アルキニルを表し、後者の3つには低級アルキル、低級アルキレン(酸素によりオプション的に中断される)、アリール、OR、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、NR1011およびN121314から選択される1個以上の置換基がオプション的に置換する)
Zは−CHまたはNである;
【0011】
、Y、YおよびYは存在しないか、または独立してアリール、低級アルキル、低級アルケニルまたは低級アルキニルを表し、後者の3つには低級アルキル、低級アルキレン(酸素によりオプション的に中断される)、アリール、OR、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、NR1011およびN121314から選択される1個以上の置換基がオプション的に置換するか、またはそれらが結合するピロール環と組合わさって環状基を形成してもよい;また
、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13およびR14は独立してHまたは低級アルキルを表す、
ただし、X、X、XおよびXの少なくとも1つは上記定義のカチオン性基であり、またX、X、XおよびXの少なくとも一つは水素原子、フェニル基、親油部分、または低級アルキル、アルカリールもしくはアラルキル基である。
【0012】
用語「低級アルキル」とは線状もしくは分枝状、環状もしくは非環状のC〜C20アルキルを含むものとし、これらは酸素により中断されていてもよい(好ましくは、高々5個の酸素原子が各アルキル鎖に存在する)。R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13およびR14が表し得る低級アルキル基は、C−C18アルキル、C−C16アルキル、C−C14アルキル、C−C12アルキル、C−C10アルキル、C−Cアルキル、C−Cアルキル、C−Cアルキル、C−Cアルキル、C−Cアルキル、C−Cアルキル、C−CアルキルおよびC−Cアルキルである。R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13およびR14が表し得る好適な低級アルキル基は、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C10、C11、C12、C13、C14、C15およびC16アルキルを含む。
および/またはN121314の1つ以上は環状アミン/アンモニウム基を表し得る;例えば、以下のとおりである;
【0013】
【化2】

【0014】
該環状アミン/アンモニウム基は6員よりも小さくても大きくてもよく、例えば、かかる基は4−、5−、7−、8−、9−または10−員環で構成されることは十分に理解されよう。
従って、用語「低級アルキレン」はそのように解釈されるべきである。
用語「低級アルケニル」および「低級アルキニル」とは線状もしくは分枝状、環状もしくは非環状のC〜C20アルケニルおよびアルキニルをそれぞれ含むものとし、その各々は酸素により中断されていてもよい(好ましくは、高々5個の酸素原子が各アルケニルまたはアルキニル鎖に存在する)。
【0015】
用語「低級アルケニル」はまたシスおよびトランス幾何異性体双方を包含する。R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13およびR14が表し得る低級アルケニル基は、C−C18アルケニル、C−C17アルケニル、C−C16アルケニル、C−C14アルケニル、C−C12アルケニル、C−C10アルケニル、C−Cアルケニル、C−Cアルケニル、C−Cアルケニル、C−Cアルケニル、C−Cアルケニル、C−CアルケニルおよびC−Cアルケニルを包含する。R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13およびR14が表し得る好適な低級アルケニル基は、C、C、C、C、C、C、C、C、C10、C11、C12、C13およびC14アルケニルを包含する。
用語「低級アルケニレン」はそれに準じて解釈されるべきものである。
【0016】
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13およびR14が表し得る「低級アルキニル」基は、C−C18アルキニル、C−C16アルキニル、C−C14アルキニル、C−C12アルキニル、C−C10アルキニル、C−Cアルキニル、C−Cアルキニル、C−Cアルキニル、C−Cアルキニル、C−Cアルキニル、C−Cアルキニル、C−CアルキニルおよびC−Cアルキニルを包含する。R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13およびR14が表し得る好適な低級アルキニル基は、C、C、C、C、C、C、C、C、C10、C11、C12、C13およびC14アルキニルを包含する。
用語「低級アルキニレン」はそれに準じて解釈されるべきものである。
【0017】
用語「アリール」はフェニルおよびナフチルなどの6員ないし10員の炭素環状芳香族基であり、それらの基にはフルオロ、シアノ、ニトロ、低級アルキル(すなわち、アルカリール)、OR、C(O)R、C(O)OR、C(O)NRおよびNR1011から選択される1個以上の置換基がオプション的に置換する。
用語「アラルキル」は低級アルキル基を介してポルフィリン環に結合するアリール基を含む。
【0018】
本発明の第二の側面では、式(II)で示される化合物を光力学療法光源または音響力学療法超音波源に曝すことを含まない方法により微生物の増殖を停止または減弱させる医薬の製造(調剤)における該化合物の使用が提供される。
【0019】
【化3】

【0020】
ただし、式中、Mは金属元素またはメタロイド元素であり;X、X、X、X、Y、Y、Y、YおよびZは上記に定義のとおりである。
好ましくは、本発明の第一および第二の側面において、当該医薬は抗微生物作用を活性化する刺激に該化合物を曝すことを含まない方法により微生物の増殖を阻止または減弱させるためのものである。
【0021】
我々の意味する「抗微生物作用を活性化する刺激」とは、光力学療法光源または超音波源での照射など、微生物の増殖を阻止または減弱させる化合物の能力を増大させる刺激である。換言すると、当該医薬は固有の抗微生物作用を示す,すなわち、該医薬(および特にその中で活性な化合物)は本来的に活性である。そのような活性は技術的に周知の方法により決定し得る;例えば、実施例B参照。
【0022】
従って、当該医薬は光力学療法または音響力学療法以外の方法により微生物の増殖を阻止または減弱させるためのものである。しかし、該医薬が通常の周囲の光(すなわち、太陽光または人工的な周囲の光)に曝される場合の微生物の増殖を阻止または減弱させる方法が除外されないことは十分理解されよう。
好ましくは、該医薬は10mW/cm未満強度の光/照射、例えば、20mW/cm未満、25mW/cm未満、30mW/cm未満(すなわち、300W/m未満)、40mW/cm未満、50mW/cm未満、60mW/cm未満、70mW/cm未満、80mW/cm未満、90mW/cm未満または100mW/cm未満に曝す。
【0023】
有利には、該医薬は100J/cm未満の光/照射線量に、例えば、90J/cm未満、80J/cm未満、70J/cm未満、60J/cm未満、50J/cm未満、40J/cm未満、30J/cm未満、20J/cm未満または10J/cm未満の線量に曝す。
【0024】
当業者はさらに、当該医薬がその本来の活性とその光力学的および/または音響力学的活性の双方を利用する処置計画に使用するためのものであり得ることを十分に理解するであろう。例えば、該医薬は先ず活性化刺激の存在なしに使用され、その結果、その本来の抗微生物作用が利用され得る,次いでその光力学的および/または音響力学的活性が利用されるように、活性化刺激に曝す。
【0025】
用語「金属元素」は二価または三価の金属元素を含むものとする。好ましくは、金属元素は反磁性である。より好ましくは、該金属元素は、Zn(II)、Cu(II)、La(III)、Lu(III)、Y(III)、In(III)、Cd(II)、Mg(II)、Al(III)、Ru、Ni(II)、Mn(III)、Fe(III)およびPd(II)から選択される。最も好ましくは、該金属元素はNi(II)、Mn(III)、Fe(III)又はPd(II)である。
用語「メタロイド」とは、金属と非金属両方の性質に中間的な、通電能力などの物理的化学的能力を有する元素を含むものとする。用語「メタロイド元素」は1つ以上のリガンドがオプション的に置換するケイ素(Si)およびゲルマニウム(Ge)原子である。
【0026】
金属元素およびメタロイド元素という用語は、陽性の酸化状態を有する金属元素またはメタロイド元素を包含し、そのすべてに、フルオロ、OH、OR15(ここで、R15は上記定義の低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、アラルキル、アリールまたはアルカリール(ただし、アリールおよびアルカリールはモノ置換である))から選択される1個以上のリガンドが置換し得ることは十分に理解されよう。
【0027】
式(I)および(II)で示される化合物は、少なくとも1個のカチオン性基を含んでなる。従って、本発明の化合物は陽性電荷、例えば、+1、+2、+3、+4、+5.+6またはそれ以上の電荷を担持し得る。好適な態様において、該化合物は+4未満の実効電荷、例えば、+1、+2または+3を担持する。取分け好適な態様において、該化合物は+2の実効電荷を担持する。
【0028】
当業者は式(I)および(II)で示される化合物が、カウンタ(counter)−アニオンにより平衡を維持していることを十分に理解しよう。好例な(代表的な)カウンタ−アニオンは、限定されるものではないが、ハロゲン化物(例、フッ化物、塩化物および臭化物)、硫酸塩(例、硫酸デシル)、硝酸塩、過塩素酸塩、スルホン酸塩(例、メタンスルホン酸塩)、およびトリフルオロ酢酸塩を含む。その他の適切なカウンタ−アニオンについては当業者周知であろう。従って、式(I)および(II)で示される化合物の医薬的に、および/または獣医学的に許容し得る誘導体、例えば、塩および溶媒和物もまた本発明の範囲内に含まれる。考慮しうる塩は、酸付加塩、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸およびリン酸などの無機酸とで形成される塩、カルボン酸類との塩または有機スルホン酸との塩;塩基付加塩;塩基とで形成される金属塩、例えば、ナトリウム塩およびカリウム塩を含む。
【0029】
さらに当業者は、式(I)で示される化合物が互変異性を示し得ることを十分に認識しよう。すべての互変異性体およびその混合物は本発明の範囲内に含まれる。
【0030】
式(I)および(II)で示される化合物はまた、1つ以上の不斉炭素原子を含んでいてもよく、従って、光学的および/またはジアステレオ異性体性を示し得る。ジアステレオ異性体は通常の技法、例えば、クロマトグラフィーまたは分別再結晶法などにより分離し得る。様々な立体異性体が当該化合物のラセミ酸または他の混合物を、常套の、例えば、分別結晶法またはHPLCなどの技法を用いて分離することにより、単離し得る。別法として、所望の光学異性体はラセミ化やエピマー化を起こさない条件下で、適切な光学活性出発原料を反応させることにより、または、例えば、ホモキラル酸による誘導化と、引き続くジアステレオマーエステルの常套手段(例、HPLC、シリカ上のクロマトグラフィー)による分離により調製し得る。すべての立体異性体が本発明の範囲内に包含される。
【0031】
本発明の第一および第二の側面における好適な態様において、Zは−CHである。
本発明の第一および第二の側面の特徴は、置換基X、X、XおよびXの少なくとも1つが、上記定義の式−L−R−N(R)(R)Rで示される四級アンモニウムのカチオン性基であることである。好ましくは、X、X、XおよびXのいずれもがアニリニウムまたはピリジニウム・カチオン性基ではない。
好適な態様において、Rは非置換の低級アルキレン、低級アルケニレンまたは低級アルキニレン基である。
【0032】
有利には、Rは式:
−(CH)m−
で示される直鎖の低級アルキレン基である。
好ましくは、mは1ないし20の整数である。より好ましくは、mは1ないし10、例えば、1ないし6、1ないし5、1ないし4または1ないし3の整数である。Rの表し得る好適な直鎖の低級アルキレン基は、mが2、3、4、5、6、7、8、9または10である場合の上記式の基である。最も好ましくは、mは2または3である。
【0033】
四級アンモニウム部分の残り3つの置換基、すなわち、R、RおよびRは同一または異なってもよく、H、低級アルキル、低級アルケニルまたは低級アルキニルから選択され、その後者の3種には低級アルキル、OR、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、NR1011およびN121314から選択される1個以上の置換基がオプション的に置換される。
【0034】
好適な態様において、R、Rおよび/またはRは低級アルキル、低級アルケニルまたは低級アルキニル基である。
【0035】
好ましくは、R、Rおよび/またはRは非置換の低級アルキル基である。
【0036】
選択肢として、R、RおよびRの内の少なくとも1つは、一級、二級もしくは三級アミン基または四級アンモニウム基の置換したアルキル基である。
【0037】
本発明の第一および第二の側面における好適な態様において、Rは−(CH)−であり、RおよびRはCHであり、Rは−(CH)−N(CH)である。
本発明の第一および第二の側面における別の好適な態様において、Rは−(CH)−であり、R、RおよびRはそれぞれCHである。
本発明の第一および第二の側面におけるさらなる別の好適な態様において、Rは−(CH)−であり、R、RおよびRはそれぞれCである。
【0038】
有利には、X、X、XおよびXの少なくとも1つは上記定義のカチオン性基であり、X、X、XおよびXの少なくとも1つは水素原子である。
好ましくは、X、X、XおよびXのそれぞれは水素原子であるか、または上記定義のカチオン性基である。
【0039】
好都合なことに、一級、二級もしくは三級アミン基のpK値は、本発明化合物にそれが存在する場合、当該基が生理的環境にあってプロトン化されることを確実にするために、8よりも大きい。
【0040】
四級アンモニウム・カチオン性基は、連結部分Lを介してポルフィリン環にオプション的に結合する。
【0041】
好適な連結部分Lは、フェノキシ、フェニレン、スルホニルアミド、アミノスルホニル、スルホニルイミノ、フェニルスルホニルアミド、フェニルアミノスルホニル、尿素、ウレタンおよびカルバメート連結部分である。
【0042】
好適な態様において、四級アンモニウム・カチオン性基は、フェノキシ・リンカーを介してポルフィリン環に連結している。
【0043】
従って、X、X、Xおよび/またはXは、以下の式を有する。
【0044】
【化4】

【0045】
ここにおいて、Rは上記定義のR−N(R)(R)Rであり、nは1ないし3の整数である。
【0046】
別の好適な態様において、四級アンモニウム・カチオン性基は、フェニレン・リンカーを介してポルフィリン環に連結している。
【0047】
従って、X、X、Xおよび/またはXは、以下の式を有する。
【0048】
【化5】

【0049】
ここにおいて、Rは上記定義のR−N(R)(R)Rであり、mは1ないし3の整数である。
【0050】
好ましくは、mは2であり、最も好ましくは1である。
【0051】
別の好適な態様において、X、X、Xおよび/またはXは、以下の式を有する。
【0052】
【化6】

【0053】
ここにおいて、RはR−N(R)(R)Rであり、nおよびmは上記定義のとおりであり、n+mは1ないし3である。
【0054】
有利には、Lはパラ位にモノ置換基を有するベンゼン環(例、フェノキシ、フェニレン、フェニルスルホニルアミドまたはフェニルアミノ−スルホニル)を含んでなる。あるいは、Lはメタ−またはオルト−位置にモノ−またはジ−置換基を有していてもよい。Lはパラ−およびオルト−共に置換されていてもよい。
【0055】
別の好適な態様において、四級アンモニウム・カチオン性基は直接ポルフィリン環に結合する;すなわち、Lが存在しない。
【0056】
本発明の第一および第二の側面における好適な態様において、当該化合物はポルフィリン環の反対側に、すなわち、環の位置5および15または環の位置10および20に、上記定義の2つのカチオン性基を含んでなる。例えば、XおよびXは水素原子、親油性部分、フェニル基、低級アルキル、アルカリールまたはアラルキル基であってもよく、またXおよびXはカチオン性基であってもよく、またはその逆でもよい。好ましくは、XおよびXが共に水素原子であり、XおよびXが共にカチオン性基であるか、またはその逆である。
【0057】
あるいは、当該化合物はポルフィリン環の隣接位置に、すなわち、環の位置5および15、または環の位置10および15、または環の位置15および20、または環の位置20および5に、上記定義の2つのカチオン性基を含んでなる。例えば、XおよびXが水素であって、XおよびXがカチオン性基であり得るか、またはXおよびXが水素であり、XおよびXがカチオン性基であり得る、などである。
【0058】
当業者は、Zが窒素を表す場合、さらなる異性体構造の可能性が生じることを十分に理解するであろう。かかる可能性は本発明の範囲内に包含される。
【0059】
本発明の第一および第二の側面におけるさらに好適な態様において、当該化合物はその構成ピロール環の1ヶ所以上に置換基を有する。従って、Y、Y、YおよびYは存在しないか、または独立してアリール、低級アルキル、低級アルケニルまたは低級アルキニルを表し、その後者の3つには低級アルキル、低級アルキレン(酸素によりオプション的に中断されている)、アリール、OR、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、NR1011およびN121314から選択される1個以上の置換基がオプション的に置換する。当業者は、Y、Y、Yおよび/またはYが環状基を含み得ること、それが飽和であっても、芳香族であってもよいことを十分に理解するであろう。例えば、ピロール環の1つ以上が置換基を有して、イソインドール基を形成し得る;すなわち、Y、Y、Yおよび/またはYはそれらが付着するピロール環と一緒になって、環状となり得る。
【0060】
本発明の第一および第二の側面における別の好適な態様において、Y、Y、YおよびYは存在しない。従って、ポルフィリン環は、好ましくは、位置5、10、15または20の1ヶ所以上にのみ置換基を有する。
【0061】
本発明の第一および第二の側面におけるさらに好適な態様において、X、X、XおよびXの少なくとも1つは親油性部分であるか、またはそれを含んでなる。
我々がいう親油性部分とは、1−n−オクタノールと水の間の分配係数が、log P で表したとき、生理的pH、25℃で1.0より大きい部分である。
【0062】
通常、親油性部分は式−(CH)pCHで示される飽和、直鎖のアルキル基、または式−(CH)p−で示される等価のアルキレン基である;ただし、pは1ないし22の整数、例えば、1ないし18である。好ましくは、pは1ないし18であり、より好ましくは、2ないし16、4ないし16、6ないし18、8ないし16、または4ないし12である。最も好ましくは、pは10ないし12である。
【0063】
、X、Xおよび/またはXが上記定義のようにカチオン性基であることが可能あり、それが親油性部分を構成し得ることは十分に理解されよう。
【0064】
本発明の第一および第二の側面における別の好適な態様において、X、X、XおよびXはいずれもが親油性部分ではない。
【0065】
有利には、本発明の第一および第二の側面にて使用される化合物は、水溶性である。好ましくは、当該化合物は少なくとも5μg/lの濃度で、例えば、少なくとも10μg/l、15μg/lまたは20μg/lの濃度で水に溶解する。より好ましくは、該化合物は少なくとも100μg/lの濃度で、例えば、200μg/l、300μg/l、400μg/l、500μg/l、1mg/ml、5mg/ml、10mg/ml、20mg/ml、50mg/mlまたは100mg/mlの濃度で水に溶解する。
【0066】
通常、本発明の第一および第二の側面にて使用される化合物は、微生物に対して選択的毒性を示す。我々が意味する「選択的」とは、当該化合物が、哺乳動物(例えば、ヒト)の宿主細胞に比較して、1種以上の微生物(細菌、マイコプラズマ、酵母、真菌および/またはウイルス)に対して優先的に毒性であることである。好ましくは、標的微生物に対する化合物の毒性が、哺乳動物細胞に対するその化合物の毒性よりも少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも8倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、または少なくとも20倍大きい。最も好ましくは、本発明の化合物は哺乳動物細胞に対して実質的に非毒性である。
【0067】
本方法において、該化合物を細菌感染の処置に使用する場合、例えば、投与計画を健常な宿主組織に対する損害を最小として細菌細胞が破壊されるように選択することができる。従って、本発明の第一および第二の側面にて使用する化合物は、好ましくは、「セラピュティック・ウインドウ(therapeutic window)」を示す。
【0068】
好適な態様において、当該化合物は低用量で標的微生物(例えば、細菌細胞)に毒性である。好ましくは、該化合物は標的微生物に対して、10μM未満の濃度で、例えば、1μM未満、0.1μM未満、0.01μM未満、0.005μM未満または0.001μM未満の濃度で毒性である(実施例B参照)。
【0069】
本発明の第一および第二の側面にて使用する好適な化合物は、以下のとおりである:
(a)二塩化5,15−ビス−(4−{3−[(3−ジメチルアミノ−プロピル)−ジメチル−アンモニオ]−プロピルオキシ}−フェニル)−ポルフィリン(化合物8)
【0070】
【化7】

【0071】
好ましくは、この化合物は二塩化物または四塩化物塩として提供される。
【0072】
(b)二塩化5,15−ビス−[4−(3−トリエチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]−ポルフィリン(化合物9)
【0073】
【化8】

【0074】
好ましくは、この化合物は二塩化物塩として提供される。
【0075】
(c)二塩化5,15−ビス−[3−(3−トリメチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]−ポルフィリン(化合物12)
【0076】
【化9】

【0077】
好ましくは、この化合物は二塩化物塩として提供される。
【0078】
(d)二塩化5,15−ビス−[4−(3−トリメチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]−ポルフィリン(化合物10)
【0079】
【化10】

【0080】
好ましくは、この化合物は二塩化物塩として提供される。
【0081】
(e)二塩化5−[3,5−ビス−(3−トリメチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]−15−ウンデシル−ポルフィリン(化合物6)
【0082】
【化11】

【0083】
好ましくは、この化合物は二塩化物塩として提供される。
【0084】
(f)塩化5−{4−[3−ジメチル−(3−ジメチルアミノプロピル)−アンモニオ−プロピルオキシ]フェニル}−15−(4−ドデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン(化合物23)
【0085】
【化12】

【0086】
好ましくは、この化合物は塩化物または二塩化物塩として提供される。
【0087】
(g)三塩化3−[({3−[(3−{4−[15−(4−ドデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン−5−イル]−フェノキシ}−プロピル)−ジメチル−アンモニオ]−プロピル}−ジメチル−アンモニオ)−プロピル]−トリメチル−アンモニウム(化合物25)
【0088】
【化13】

【0089】
好ましくは、この化合物は三塩化物塩として提供される。
【0090】
(h)二塩化5,15−ビス−[3−(3−トリメチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]−10−ウンデシル−ポルフィリン(化合物28)
【0091】
【化14】

【0092】
好ましくは、この化合物は二塩化物塩として提供される。
【0093】
(i)二塩化5−{4−[3−ジメチル−(3−トリメチルアンモニオ−プロピル)−アンモニオ−プロピルオキシ]−フェニル}−15−(4−ドデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン(化合物31);及び
【0094】
【化15】

【0095】
好ましくは、この化合物は二塩化物塩として提供される。
【0096】
(j)二塩化5−[4−(3−ジメチルデシル−アンモニオプロピルオキシ)−フェニル]−15−{4−[3−ジメチル−(3−ジメチルアミノプロピル)−アンモニオプロピルオキシ]−フェニル}−ポルフィリン(化合物32)
【0097】
【化16】

【0098】
好ましくは、この化合物は二塩化物塩として提供される。
【0099】
上記化合物が、あるいは、金属化形状にあってもよいこと、すなわち、それらがキレート化金属元素またはメタロイド元素をポルフィリン環内に含み得ることは十分に理解されよう。
【0100】
本発明の第一および第二の側面に従い製造される医薬は、使用する化合物の有効性/毒性により、またどのように使用すべきかの適応により、種々の濃度で製剤化し得る。好ましくは、該医薬は0.1μMないし1mMの濃度、より好ましくは1μMないし100μM、5μMないし50μM、10μMないし50μM、20μMないし40μM、そして最も好ましくは、約30μMの濃度で該化合物を含有する。インビトロの使用のために、製剤は低濃度の化合物、例えば、0.0025μMないし1μMの濃度で含有し得る。
【0101】
当業者は本発明の第一および第二の側面にて使用される化合物が、一般的に、企図する投与経路および標準的製剤実務に関連して選択される適切な医薬添加剤、希釈剤または担体(キャリア)と混合して投与されるものであることを十分に理解しよう(例えば、Remington; The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995,
Ed. Alfonso Gennaro, Mack Publishing Company, ペンシルベニア、米国、参照)。適切な投与経路は以下に考察するように、局所、静脈内、経口、肺、鼻、耳、眼、膀胱およびCNS送達などである。
【0102】
例えば、局所投与の場合、例えば、皮膚または損傷部位に投与する場合、該化合物はローション、溶液剤、クリーム、ゲル剤、軟膏または散布剤の形状で投与することができる(例えば、上記文献(Remington)1586〜1597ページ参照)。このように、該化合物は、例えば、以下の1種以上との混合物、例えば、鉱油、流動パラフィン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックスおよび水などの混合物に懸濁または溶解させた活性化合物を含む適切な軟膏として製剤し得る。あるいは、該化合物は、例えば、以下の1種以上との混合物、例えば、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリエチレングリコール、流動パラフィン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、硫酸e−ラウリル、アルコール(例、エタノール、セタリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール)および水などの混合物に懸濁または溶解させた適切なローションまたはクリームとして製剤化し得る。
【0103】
好適な態様において、該医薬(例えば、ローション、溶液剤、クリーム、ゲル剤または軟膏)は水を基剤とするものである。
【0104】
口腔内局所投与に適する剤形はさらに、着香料をベースとして、有効成分を有するロゼンジを含んでおり、通常、スクロースおよびアカシア(acacia)またはトラガカントガム;ゼラチンとグリセリンまたはスクロースとアカシアなどの不活性ベース中に有効成分を含んでなるパステル剤;および適当な液状担体に有効成分を含んでなる洗口剤などである。
【0105】
本発明の第一および第二の側面に従い製造される医薬は、鼻腔内にまたは吸入により投与することも可能であり、簡便には乾燥粉末吸入剤またはエーロゾル噴霧組成の形状で、加圧式容器、ポンプ、スプレーまたはネブライザーから、適切な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、ヒドロフルオロアルカン(例えば、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA134Aまたは1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFA227EA))、二酸化炭素またはその他の適切なガスなどを使用して送達する。加圧エーロゾルの場合、投与用量単位は一定計量を送達するバルブを備えることにより決定し得る。加圧容器、ポンプ、スプレーまたはネブライザーには、例えば、溶媒としてのエタノールと噴射剤との混合物を用い、活性化合物の溶液または懸濁液を容れることが可能であり、これにさらに滑沢剤、例えば、トリオレイン酸ソルビタンを加えてもよい。吸入器または粉吹き器に使用するカプセルおよびカートリッジ(例えば、ゼラチンから調製)は、本発明化合物と適当な粉末基剤、例えば、ラクトースまたはデンプンなどとの粉末混合物を含むように製剤化することができる。
【0106】
エーロゾルまたは乾燥粉末製剤は、好ましくは、各一定計測用量または「パフ」が患者に送達する化合物の少なくとも1mgを含むようにアレンジする。エーロゾルによる総用量が患者ごとに、また適応ごとに変わるであろうこと、また一日を通して単回またはより一般的には分割用量で投与し得ることは十分に理解し得よう。
【0107】
あるいは、技術上既知の他の簡便な投与経路を採用してもよい;例えば、本発明の第一および第二の側面に従い製造される医薬は、錠剤、カプセル、オビュル、エリキシル、溶液剤または懸濁液剤の形状で、経口、口腔内または舌下に送達可能であり、これらは即時、遅延または制御−放出適用のために、着香剤または着色剤を含んでいてもよい。該医薬はまた眼内に(下記参照)、耳内に、または空洞内注入により投与し得る。
【0108】
当該医薬はまた非経口的に、例えば、静脈内、動脈内、腹腔内、外皮鞘内、心室内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内または皮下にも投与し得る(一連の細い注射針を介するか、または針なしのパウダージェクト(Powderject; 登録商標)技法を用いることによる)か、またはそれらを点滴法により投与し得る。それらを最良に使用するには、無菌水溶液とするが、該溶液には溶液を血液と等張にするための他の物質、例えば、十分な塩またはグルコースを加える。該水溶液は必要であれば適切に緩衝化(好ましくは、pH3〜9)する。無菌条件下の適切な非経口製剤の調製は、当業者周知の標準的製剤技法により容易に実施し得る。
【0109】
非経口投与に適する製剤は水性および非水性無菌注射溶液であり、該溶液は抗酸化剤、バッファー、静菌剤および対象となる受容者の血液と製剤が等張となるような溶質を含有し得る;また、水性および非水性無菌懸濁液は懸濁剤および粘稠化剤を含有し得る。該製剤は単位用量または多回用量用の容器、例えば、密封アンプルおよびバイアルにて提供し得る,また無菌の液状担体の添加(例えば、使用直前の注射用水の添加)のみを要する凍結乾燥(リオフィリゼーション)条件にて保存し得る。即席の注射溶液および懸濁液は、すでに記載した種類の無菌粉末、顆粒および錠剤から調製し得る。
【0110】
当該化合物は眼経路によっても、特に眼の疾患を処置するために投与し得る。眼科用の場合、該化合物は、等張pH調整無菌の塩中におけるミクロ化した懸濁液として、または好ましくは等張pH調整無菌の塩水溶液として、塩化ベンジルアルコニウムなどの保存剤とオプション的に組合わせて、製剤化することができる。あるいは、ワセリンなどの軟膏に製剤化することができる。
【0111】
獣医学的に使用する場合、化合物は通常の獣医学の実務に従って、適当なものとして許容される剤形として投与し、個々の動物にとって最も適切な用量計画と投与経路を獣医師が決定する。
【0112】
本発明の第一および第二の側面の好適な態様において、該医薬は経口または非経口用である。従って、該医薬は好ましくは全身性の微生物感染症を処置するためのものである。
【0113】
該医薬は技術上既知の適切な入れ物または容器に保存し得る。当業者は当該入れ物または容器が好ましくは気密性および/または無菌であるべきことを十分に理解しよう。有利には、該入れ物または容器はポリエチレンなどの樹脂材料製のものである。
【0114】
本発明の第一および第二の側面に従い製造される医薬は、多くのタイプの微生物、例えば、細菌、マイコプラズマ、酵母、真菌および/またはウイルスなどを阻止するために使用し得ることは理解し得よう。さらに、該医薬はかかる微生物による感染を予防および/または処置するために使用し得ること、すなわち、該医薬が予防的および/または治療的処置に適していることが十分に理解されよう。例えば、該医薬は他の対象者、例えば、患者、健康管理作業員などに病原体が拡散すること、または伝播することを予防または低減するために使用し得る。
【0115】
好ましくは、本発明の第一および第二の側面に従って製造される医薬は、以下の細菌感染の治癒的および/または予防的処置に使用するためのものである;グラム陽性球菌(例、ストレプトコッカス)、グラム陰性球菌(例、ナイセリア)、グラム陽性桿菌(例、コリネバクテリウム種)、グラム陰性桿菌(例、大腸菌)、抗酸性桿菌(例、代表的なマイコバクテリウム)による感染、および膿瘍、シストの原因となる感染、血液感染(細菌血症)、皮膚感染、創傷感染、関節炎、尿路感染、膵炎、骨盤内炎症性疾患、腹膜炎、前立腺炎,膣、口腔(歯科感染を含む)、眼および/または耳の感染;潰瘍およびその他の局部的感染;アクチノマイセス感染;カンジダ・アルビカンス、アスペルギルスおよびブラストマイセスなどの真菌感染;HIV、脳炎、胃腸炎、出血熱、ハンタウイルス、ウイルス性肝炎、ヘルペスウイルス(例、サイトメガロウイルス、エプシュタイン−バー、猿類ヘルペスウイルス、単純ヘルペスおよび水痘・帯状疱疹ウイルス)などのウイルス感染;原虫類感染、例えば、アメーバ症、バベシア症、コクシジウム症、クリプトスポリジウム症、ランブルべん毛虫症、リーシュマニア症、トリコモナス症、トキソプラズマ症およびマラリア;ぜん虫感染、例えば、線虫、条虫および吸虫など、例えば、回虫症、鉤虫症、リンパ管糸状虫症、回旋糸状虫症、住血吸虫症およびトキソカラ虫症;プリオン病;および軟組織リウマチ、骨関節症、関節リウマチおよび脊椎関節症などの炎症性疾患。
【0116】
より好ましくは、当該医薬はグラム陽性細菌および/またはグラム陰性細菌による感染の治癒および/または予防的措置に使用するためのものである。最も好ましくは、本発明化合物はグラム陽性細菌による感染の治癒および/または予防的措置に使用するためのものである。
【0117】
該医薬は、好ましくは、微生物、例えば、細菌、マイコバクテリウム、酵母、真菌およびウイルスを阻止する(殺す)ために使用する。該医薬は、常套の抗生剤処理に耐性を発現した細菌、例えば、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を阻止(殺生)するために特に適当である。
【0118】
当業者は当該医薬が感染部位に簡単に近づけ得ると否とにかかわらず、すべての微生物感染の処置に適していると十分に理解しよう。それ故、かかる医薬は常套の光力学治療剤によって処置し得ない感染症を処置するための用途を有し得る。好ましくは、該微生物感染が、簡単には近づき得ない表面にあるか、または簡単には近づき得ない領域にある場合である。
【0119】
本発明の第一および第二の側面に従い製造される医薬中の化合物の投与量は、各種のファクターに左右される;例えば、使用する特定化合物、剤形、投与経路および化合物を使用する適応症などである。しかし、一般的に、化合物の投与量は体重1kgあたり0.01ないし20mg、好ましくは、0.1ないし15mg/kg、例えば、体重に関し、1ないし10mg/kgである。
【0120】
好適な態様において、本発明の第一および第二の側面に従い製造される医薬は、常套の抗微生物剤と組合わせて使用される。例えば、該化合物は以下の常套の抗生剤1種以上と組合わせて使用し得る:抗菌剤、例えば、天然および合成のペニシリンおよびセファロスポリン、スルホンアミド、エリスロマイシン、カナマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、リファンピシンおよび、ゲンタマイシンを含むもの、アンピシリン、ベンジペニシリン、ベネタミンペニシリン、ベンザチンペニシリン、フェネチシリン、フェノキシ−メチルペニシリン、プロカインペニシリン、クロキサシリン、フルクロキサシリン、メチシリンナトリウム、アモキシシリン、バカンピシリン塩酸塩、シクラシリン、メズロシリン、ピバンピシリン、タランピシリン塩酸塩、カルフェシリンナトリウム、ピペラシリン、チカルシリン、メシリナム、ピルメシリナム、セファクロール、セファドロキシル、セフォタキシム、セフォキシチン、セフスロジンナトリウム、セフタジジム、セフチゾキシム、セフロキシム、セファレキシン、セファロチン、セファマンドール、セファゾリン、セフラジン、ラタモキセフナトリウム、アズトレオナム、クロルテトラサイクリン塩酸塩、クロモサイクリンナトリウム、デメクロシジン塩酸塩、ドキシサイクリン、リメサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、アミカシン、フラマイセチン硫酸塩、ネオマイシン硫酸塩、ネチルマイシン、トブラマイシン、コリスチン、フシジン酸ナトリウム、ポリミキシンB硫酸塩、スペクチノマイシン、バンコマイシン、スルファロクス酸カルシウム、スルファメトピラジン、スルファダイアジン、スルファジミジン、スルファグアニジン、スルファウレア、カプレオマイシン、メトロニダゾール、チニダゾール、シノキサシン、シプロフロキサシン、ニトロフラントイン、ヘキサミン、ストレプトマイシン、カルベニシリン、コリスチメテート、ポリミキシンB、フラゾリドン、ナルジクス酸、トリメトプリム−スルファメトキサゾール、クリンダマイシン、リンコマイシン、サイクロセリン、イソニアジド、エタンブトール、エチオナミド、ピラジナミドなど;抗かび剤、例えば、ミコナゾール、ケトコナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール、アンフォテリシン、フルシトシン、グリセオフルビン、ナタマイシン、ニスタチンなど;および抗ウイルス剤、例えば、アシクロビル、AZT、ddI、アマンタジン塩酸塩、イノシンプラノベクス、ビダラビンなど。
【0121】
さらに好適な態様において、該医薬は浸透増強剤、例えば、ポリ(エチレンイミン)、またはかかる浸透増強能力を示す抗生剤(例えば、ポリミキシンまたはコリスチン)を含有するか、および/またはそれらと同時に投与する。
【0122】
本発明の第一および第二の側面に従い製造される医薬は、1種以上の以下の適応症の治癒または予防的処置での使用に特に適している:
【0123】
膿痂疹
膿痂疹は伝染力の高い感染症である。これは子供に最も一般的な感染症である。
膿痂疹は古典的な2つの形状、非水泡性および水泡性形態を有する。非水泡性膿痂疹は伝染性膿痂疹とも称され、症例の約70%がこれに相当すると見られている。病巣は処置せずとも通常2〜3週間で解消する。膿痂疹はまた他の皮膚病、例えば、疥癬、水痘、アトピー性皮膚炎、およびダリエー病などを複雑化し得る。
【0124】
(a)非水泡性膿痂疹
細菌の型
非水泡性は主としてグループAベータ溶血連鎖球菌(ストレプトコッカス・ピオゲネス)、黄色ブドウ球菌、またはこれら2種類の菌の組み合わせを原因とする感染症である(皮膚のアンドリュー病、Clinical Dermatology 9th ed. (2000) edited by Odom RB editor Saunders p.312-4 参照)。非グループA(グループB、CおよびG)連鎖球菌は膿痂疹の稀な症例の原因であり、またグループB連鎖球菌は新生児膿痂疹と関係がある。
【0125】
創傷の型
非水泡性は表在性、表皮内、単房性水泡嚢胞性感染である。
非水泡性膿痂疹の病巣は、共通して創傷後の顔または四肢の皮膚上で始まる。原則として、無傷の皮膚は膿痂疹化に抵抗する。
膿痂疹の臨床的呈示は定まった様式で、小さな水泡または膿胞から徐々に発展し、それが蜂蜜色の痂皮で被われたプラークに進行する。病巣は通常直径2cm未満である。病巣は乾燥傾向にあり、瘢痕形成せずに微細な痂皮を残す。病巣は通常最小の症状である。稀に、軽い痛みまたはわずかな掻痒をともなう紅斑の存在することがある。この感染は他の傷を引っ掻くことによる感化を介して隣接および遠位領域に広がる。
【0126】
細菌の部位
非水泡性膿痂疹は表在性の連鎖球菌またはブドウ球菌感染であり、皮膚の角質層下(皮膚角質層の直ぐ下)層に局在化する(図1参照)。さらに詳しくは、膿痂疹における感染は高度に分化した上皮角化細胞に組織病理学的に限定される。一旦、細菌が皮膚の破壊箇所に侵入すると、その増殖が始まる。
【0127】
組織病理学では、毛包脂腺胞の漏斗状上部部分近辺の極端に表在性の炎症の様相である。角質層下膿胞性水泡が形成されるが、それは2〜3の散らばった球菌を含み、多形核白血球の残骸(断片)と上皮細胞とが共になしている。真皮では、ゆるやかな炎症反応(脈管拡張、浮腫、および多形核白血球の浸潤)がある(皮膚のアンドリュー疾患、上記、312〜4ページ)。
【0128】
(b)水泡性膿痂疹
細菌の型
水泡性膿痂疹は剥離性毒素を産生する黄色ブドウ球菌の株によって主として惹き起こされる(Sadich et al., 1997, Dermatologic Clinics 15(2):341-9)。
創傷の型
水泡性膿痂疹は組織学的には、角質層下切断と、表皮を通過して移動し、粒状および角質層皮膚層間に蓄積する多形核白血球の浸潤とにより特徴づけられる。大小の表在性の壊れやすい水疱が体幹と四肢に存在する。
弛緩した水泡と湿潤性の糜爛、それを取り巻く紅斑が角質層下感染の特徴である。しばしば、破壊された水疱の残留物のみが呈示の際に見られる。表皮の分離は黄色ブドウ球菌が産生する該毒素によるものである。
【0129】
細菌の部位
水泡性膿痂疹は角質層のその直下に存在する表在性ブドウ球菌感染である(図1参照)。水泡性膿痂疹は角質層細胞に付着した一部の黄色ブドウ球菌が産生する剥離性毒素によるものと考えられる。
【0130】
アトピー性皮膚炎(AD)
アトピー性皮膚炎はアトピー性湿疹とも称され、痒い発疹が取分け湾曲部、すなわち、膝の後ろ、肘の正面、手首、頚部、および瞼に生じる慢性の皮膚炎症である。発疹の感染は共通しており、さらに炎症および発疹の原因となる。
湿疹は一般に1〜6ヶ月令の頃に発症する。患者の略60%が1歳までに最初の突然の発症があり、90%が5歳までである。青年期以降のアトピー性皮膚炎の発症は稀であり、別の診断の考察を急ぐべきである。疾患の発現は年齢とともに変わる。
【0131】
細菌の型
細菌およびそのスーパー抗原はADの病因に寄与している。
黄色ブドウ球菌はAD患者(慢性湿疹病変)の90%の皮膚に、また非アトピー性患者のわずか5%にコロニーを作る。黄色ブドウ球菌のコロニー形成密度は、AD患者に感染の臨床的兆候なしに、コロニー形成単位10/cmにまで達し得る。さらに、アトピー性患者の明らかに正常な非病変皮膚には、黄色ブドウ球菌数が増大して含まれている。
【0132】
アトピー性皮膚炎で黄色ブドウ球菌が異常に増殖する理由は、乾癬などの疾患のようにそれ程に重篤でないか、あるいは大したことがないにしても、分かっていない。プロテインAは正常または乾癬状態におけるよりもアトピーにおいて多少とも激しい反応を惹き起すが、これはコロニー形成の原因というよりもむしろ結果であり得る。最近は皮膚脂質に注意が向けられており、ブドウ球菌のコロニー形成をコントロールし得る脂肪酸がアトピーでは不足しているというある証拠がある。
【0133】
スーパー抗原は、通常の、抗原の仲介する免疫系列のある種要素を迂回する細菌とウイルスが産生する特異な一群のタンパク質である。通常の抗原は身体T細胞の約0.01%ないし0.1%を活性化するが、一方、スーパー抗原はT細胞集団の5%ないし30%を刺激する能力を有する。黄色ブドウ球菌はスーパー抗原として作用する一群の外毒素を分泌することにより、ADにおける皮膚の炎症を悪化または持続させ得る。AD患者は角質層内のセラミドが不十分であるため派生的に、皮膚障壁に変化を受けている。これらの外毒素による皮膚の浸透は、T細胞、マクロファージ、LC類、および肥満細胞の活性化を惹き起こし、それによってサイトカインと肥満細胞メディエーターの放出に導く。
【0134】
これらの事象は慢性のADにおいて炎症の基となるものを提供し得ると考えられる。黄色ブドウ球菌コロニー形成と局部的スーパー抗原分泌がADにおいて一次的現象なのか、二次的現象なのかについては推測のままである(皮膚のアンドリュース病、Chap.5, Atopic Dermatitis, Eczema, and non-infectious immunodeficiency disorders (アトピー性皮膚炎、湿疹、および非感染性免疫不全症), p.69-76)。
【0135】
皮膚のウイルス性、真菌性、および細菌性感染症は、AD患者においてより一般的に起こる。ウイルス性感染症はT細胞欠失と矛盾がなく、単純ヘルペス(局所性または全身性、すなわち、疱疹性湿疹)、伝染性軟属腫およびヒトパピローマウイルスなどを含む。トリコフィトン・ルブルム(紅色白癬菌)およびピチロスポロン・オバレによる表在性真菌感染もまた頻繁に生じる。細菌感染、取分け黄色ブドウ球菌によるものは、非常に一般的である。スーパー感染は蜂蜜色の痂皮化した広範な漿液性液体分泌または毛包炎に至る。
【0136】
創傷の型
急性病変は丘疹エリテマトーデス、小胞、および糜爛として現れる;慢性疾患は線維性丘疹、および肥厚苔癬化皮膚からなる。
病原性ブドウ球菌の数の増加が見出される場合、それは多くの場合、液体の分泌、痂皮化、毛包炎および腺症と関連性がある。二次的ブドウ球菌感染症は頻度の高い局部的浮腫であり、領域的な腺症がアトピー性皮膚炎に際して共通に起こる。膿痂疹はアトピー性皮膚炎の一種の二次的感染であり得る。
アトピー性皮膚炎の組織学は、組織診した皮膚病変の形態学によって、急性海綿状皮膚炎から慢性単純性苔癬までの範囲がある。
【0137】
細菌の部位
黄色ブドウ球菌細胞壁はレセプター、いわゆる、表皮および皮膚のフィブロネクチンおよびフィブリノーゲンのためのレセプターを提示する。黄色ブドウ球菌の結合には、AD患者のフィブリノーゲンとフィブロネクチンが介在していることが証明されている。AD患者の皮膚は未変化角質層を欠いているので、皮膚のフィブロネクチンがはがされて、黄色ブドウ球菌の接着を増大する。原線維構造と無定形構造は、黄色ブドウ球菌細胞と角質細胞間で調べられており、細菌性バイオフィルムとし得る。黄色ブドウ球菌は細胞内空隙に浸透することが観察されており、AD患者では皮膚表面脂質が低下していることを示唆している(参照:Breuer K et al., 2002, British Journal of Dermatology 147: 55-61)。
【0138】
潰瘍
糖尿性脚潰瘍、圧迫性潰瘍、および慢性静脈潰瘍などの皮膚潰瘍は、組織の衰弱が特徴的な、また時には膿の形成を伴う皮膚の開放性の潰瘍または皮膚病変である。皮膚潰瘍は異なる原因を有し、また異なる集団に影響を与えるが、それらは快癒するにしても、すべてゆっくりとである傾向にあり、処置が非常に難しく、費用もかかる。
【0139】
細菌の型
表在性圧迫潰瘍は主たる感染の問題とは関連がない。好気性微生物は低レベルで圧迫性潰瘍を汚染するが、時宜にかなった治癒を妨げるものではない。しかし、深部全層圧迫潰瘍は二次的に感染し、骨髄炎を起こす可能性がある。壊死組織をもつこのような圧迫性潰瘍は、非壊死性潰瘍に比べた場合、高レベルの好気性および嫌気性微生物を含む;嫌気性菌が組織に侵襲した場合、通常、悪臭が存在する。従って、処置の戦略は傷口から壊死組織をきれいに除き、嫌気性菌の存在を低下させることである。
圧迫潰瘍の感染は一般に複数菌からなり、化膿連鎖球菌、腸球菌、嫌気性連鎖球菌、エンテロバクター属、緑膿菌、バクテロイデス・フラジリスおよび黄色ブドウ球菌などを含み得る。
【0140】
創傷の型
第I段階圧迫性潰瘍:皮膚潰瘍の前触れ病変であると考えられる未変化皮膚の非漂白紅斑。
第II段階圧迫性潰瘍:表皮および/または真皮を巻き込む部分肥厚皮膚喪失。潰瘍は表在性であり、臨床的に、剥離、水泡、または浅いクレーターとして現れる。表皮は、剥離、水泡、または浅いクレーターにより中断されるため、潰瘍は二次感染の兆候として評価すべきである。
第III段階:下部筋膜に向かって広がるが、貫通はせず、皮下組織の傷害または壊死を伴う全層皮膚喪失。潰瘍は隣接組織の潜食のないもの、または伴う深いクレーターとして臨床的に提示される。
第IV段階:広範な崩壊、組織壊死、または筋肉、骨、もしくは腱もしくは関節嚢などの支持構造に対する損傷による全層皮膚喪失。
【0141】
細菌の部位
創傷において可能な3つの微生物学的状態がある;すなわち、汚染、コロニー形成および感染である。汚染は創傷中に単に微生物は存在するが、増殖はしないことを特徴とする。一般に受け容れられていることは、すべての創傷は、病因とは関係なく汚染されているということである。コロニー形成は創傷中での微生物の存在と増殖を特徴とするが、宿主の反応はない。コロニー形成は静脈潰瘍および圧迫性潰瘍などの慢性創傷に共通の症状であり、必ずしも治癒過程を遅らせるものではない。細菌が健常組織に侵入し、その存在と副産物が宿主の免疫応答を引き出すか、または圧倒する程に増殖し続けるならば、この微生物の状態を感染とする。古典的な感染の兆候と症候は、局部的発赤、疼痛と腫脹、発熱、および創傷浸出液の量と特性の変化などである。
【0142】
肺感染
本発明の医薬は肺の感染症をもつ患者を処置するのにも適している。肺感染は細菌の様々な属と種によって起こり得るものであり、それらは結核菌(結核)、シュードモナス(嚢胞性線維症患者の死亡の第一原因)、連鎖球菌、肺炎ブドウ球菌、クレブシエラ、トキソプラズマなどを含む。肺の感染は様々なウイルス株および日和見病原菌(真菌、寄生虫)でも起こり得る。肺の病原菌は次第に古典的な抗生物質療法に耐性となっているので、光力学療法がこれらの有害な生物を除去するための替わり得る方法を提供する。
本発明の医薬は様々な方法で肺に投与し得る。例えば、本化合物は呼吸気道(すなわち、気管内、気管支内、または肺胞内)によるか、または胸部体壁を通して投与し得る。
【0143】
さらなる適応症
本発明の医薬は以下の疾患の治癒的および/または予防的処置にも適している:
全身性感染、細菌血症(血液感染)、歯周炎および他の歯科感染、虫歯およびプラークに対する処置、尿路感染、膣感染、プリオンなどのすべての微生物疾患の処置、ウイルス感染、酵母感染、咽喉感染、胃潰瘍(ヘリコバクター・ピロリを原因とする)、熱傷部分および皮膚移植の感染、耳炎(耳の感染)、細菌性結膜炎および他の眼の感染、外科手術手技時に曝された感染骨、およびバイオテロ攻撃。
適切な獣医学的適用は、口蹄病、BSEおよび動物寄生虫感染の治癒的および/または予防的処置である。
【0144】
このように、本発明のさらなる側面では、以下の事項を提供する:
(i)皮膚科感染の治療的および/または予防的処置のための医薬の製造における上記化合物の使用;
(ii)肺感染の治療的および/または予防的処置のための医薬の製造における上記化合物の使用;
(iii)創傷感染および/または潰瘍の治療的および/または予防的処置のための医薬の製造における上記化合物の使用;
(iv)抗微生物剤による処置を必要とする患者を処置する方法であって、上記の化合物を該患者に投与することからなり、その場合に、抗微生物活性を活性化する刺激により該化合物を照射することを含まない方法;
(v)抗微生物剤による処置を必要とする患者を処置する方法であって、上記の化合物を該患者に投与することからなり、その場合に、抗微生物活性を活性化する刺激により該化合物を照射しない第一処置段階(phase)と、次いで、抗微生物活性を活性化する刺激(超音波および/または光)により該化合物を照射する第二処置段階とを含んでなる方法。好ましくは、当該該第一処置相は少なくとも10分間、例えば、少なくとも20分間、30分間、40分間、50分間、1時間、2時間、3時間、5時間、12時間および24時間持続する。
【0145】
本発明の第一および第二の側面に従い製造される医薬は、インビトロでの微生物を阻止する(殺す)ためにも使用し得る。例えば、該医薬は臨床的環境(例えば、外科臨床講堂)または家庭内環境(例えば、台所作業表面、ベッドシーツと枕カバーなどの洗濯布地)などの表面または素地上での微生物の増殖を防止するための無菌化溶液または洗浄液の形状でも使用し得る。
好ましくは、かかる医薬は抗微生物性化合物を溶液中に、1〜100μg/mlの濃度で含んでなる。
【0146】
好ましくは、該溶液はさらに表面活性化剤または界面活性剤を含有する。適切な界面活性剤はアニオン性界面活性剤(例えば、脂肪族スルホン酸塩)、両性および/または双性イオン界面活性剤(例えば、脂肪族四級アンモニウム、ホスホニウムおよびスルホニウム化合物の誘導体)および非イオン性界面活性剤(例えば、アルキレンオキシドを有する脂肪族アルコール、酸、アミドまたはアルキルフェノール)などを含む。
通常、該界面活性剤は0.5〜5重量%の濃度で存在する。
【0147】
無菌溶液は特に病院環境での使用に適している。例えば、無菌溶液は外科用器具類および外科臨床講堂表面、ならびに講義講堂職員の手および手袋を滅菌するために使用し得る。さらに、該無菌溶液は外科手術の際に、例えば、露出した骨を滅菌するために使用し得る。すべての事例において、該溶液は滅菌すべき表面に塗布する。
該医薬は血液および血液製品の消毒に、また細菌の汚染または感染の診断にも使用し得る。
【0148】
インビトロおよびインビボの両方の使用において、本発明の第一および第二の側面に従い製造される医薬は、好ましくは、標的微生物(または処理すべき面/領域)に対し、少なくとも5分間接触させる。例えば、接触時間は少なくとも10分間、20分間、30分間、40分間、50分間、1時間、2時間、3時間、5時間、12時間および24時間である。
【0149】
本発明の態様としては以下が挙げられる:
【0150】
態様1
次の式(I)で示される化合物を光力学療法光源または音響力学療法超音波源に曝すことを含まない方法により微生物の増殖を停止または減弱させる医薬の製造における使用。
【0151】
【化17】

【0152】
ただし、式中、
、X、XおよびXは独立して、水素原子、親油部分、フェニル基、低級アルキル、アルカリールもしくはアラルキル基、または以下の式で示されるカチオン性基を表す;
−L−R−N(R)(R)R
ここにおいて、Lは連結部分であるか、または存在しない;Rは低級アルキレン、低級アルケニレンまたは低級アルキニレンを表し、これらには低級アルキル、低級アルキレン(酸素によりオプション的に中断される)、フルオロ、OR、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、NR1011およびN121314から選択される1個以上の置換基がオプション的に置換する;R、RおよびRは独立して、H、アリール、低級アルキル、低級アルケニルまたは低級アルキニルを表し、後者の3つには低級アルキル、低級アルキレン(酸素によりオプション的に中断される)、アリール、OR、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、NR1011およびN121314から選択される1個以上の置換基がオプション的に置換する)
Zは−CHまたはNである;
、Y、YおよびYは存在しないか、または独立してアリール、低級アルキル、低級アルケニルまたは低級アルキニルを表し、後者の3つには低級アルキル、低級アルキレン(酸素によりオプション的に中断される)、アリール、OR、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、NR1011およびN121314から選択される1個以上の置換基がオプション的に置換するか、またはそれらが結合するピロール環と組合わさって環状基を形成する;また
、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13およびR14は独立してHまたは低級アルキルを表す;
ただし、X、X、XおよびXの少なくとも1つは上記定義のカチオン性基であり、またX、X、XおよびXの少なくとも一つは水素原子である。
【0153】
態様2
次の式(II)で示される化合物を光力学療法光源または音響力学療法超音波源に曝すことを含まない方法により微生物の増殖を停止または減弱させる医薬の製造における使用。
【0154】
【化18】

【0155】
ただし、式中、Mは金属元素またはメタロイド元素である;X、X、X、X、Y、Y、Y、YおよびZは態様1に定義のとおりである。
【0156】
態様3
当該医薬が抗微生物作用を活性化する刺激に該化合物を曝すことを含まない方法により微生物の増殖を停止または減弱させるものである態様1または2に記載の使用。
【0157】
態様4
当該化合物が光力学療法光源または超音波源による照射なしに、抗微生物活性を示すものである態様1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【0158】
態様5
Mが二価または三価の金属元素である態様2ないし4のいずれか1項に記載の使用。
【0159】
態様6
MがZn(II)、Cu(II)、La(III)、Lu(III)、Y(III)、In(III)、Cd(II)、Mg(II)、Al(III)、Ru、Ni(II)、Mn(III)、Fe(III)およびPd(II)から選択される態様2ないし5のいずれか1項に記載の使用。
【0160】
態様7
Mがメタロイド元素、例えば、ケイ素(Si)またはゲルマニウム(Ge)である態様2ないし4のいずれか1項に記載の使用。
【0161】
態様8
、Y、YおよびYが存在しない態様1〜7のいずれか1項に記載の使用。
【0162】
態様9
Zが−CHである態様1〜8のいずれか1項に記載の使用。
【0163】
態様10
が非置換低級アルキレン、低級アルケニレンまたは低級アルキニレン基である態様1〜9のいずれか1項に記載の使用。
【0164】
態様11
が−(CH)m−であり、mが1ないし20の整数である態様1〜10のいずれか1項に記載の使用。
【0165】
態様12
mが1ないし10の整数、例えば、1ないし6、1ないし5、1ないし4または1ないし3である態様11記載の使用。
【0166】
態様13
mが3である態様12記載の使用。
【0167】
態様14
、Rおよび/またはRが低級アルキル、低級アルケニルまたは低級アルキニル基である態様1〜13のいずれか1項に記載の使用。
【0168】
態様15
、Rおよび/またはRが非置換低級アルキル基である態様14記載の使用。
【0169】
態様16
、RおよびRの少なくとも1つが、一級、二級もしくは三級のアミン基または四級アンモニウム基により置換されているアルキル基である態様14または15に記載の使用。
【0170】
態様17
が−(CH)−であり、RおよびRがCHであり、Rが−(CH)−N(CH)である態様1〜16のいずれか1項に記載の使用。
【0171】
態様18
が−(CH)−であり、R、RおよびRがそれぞれCHである態様1〜17のいずれか1項に記載の使用。
【0172】
態様19
が−(CH)−であり、R、RおよびRがそれぞれCである態様1〜18のいずれか1項に記載の使用。
【0173】
態様20
Lがフェノキシ、フェニレン、スルホニルアミド、アミノスルホニル、スルホニルイミノ、フェニルスルホニル−アミド、フェニルアミノスルホニル、尿素、ウレタンおよびカルバメート連結部分である態様1〜19のいずれか1項に記載の使用。
【0174】
態様21
、X、Xおよび/またはXが次の式であり、
【0175】
【化19】

【0176】
この式中、Rは態様1にて定義した−R−N(R)(R)Rであり、nは1ないし3の整数である態様20記載の使用。
【0177】
態様22
、X、Xおよび/またはXが次の式であり、
【0178】
【化20】

【0179】
ここで、Rは態様1にて定義した−R−N(R)(R)Rであり、mは1ないし3の整数である態様20記載の使用。
【0180】
態様23
、X、Xおよび/またはXが次の式であり、
【0181】
【化21】

【0182】
ここで、Rはそれぞれ独立して態様1にて定義した−R−N(R)(R)Rであり、nおよびmは1ないし3の整数であり;ただし、nおよびmの合計は1ないし3の整数である態様20記載の使用。
【0183】
態様24
nまたはmが3である態様21ないし23のいずれか1項に記載の使用。
【0184】
態様25
nまたはmが2である態様21ないし23のいずれか1項に記載の使用。
【0185】
態様26
nおよび/またはmが1である態様21ないし23または25のいずれか1項に記載の使用。
【0186】
態様27
Lがパラ位でモノ置換されている態様21ないし23のいずれか1項に記載の使用。
【0187】
態様28
Lがメタ位でモノ−またはジ−置換されている態様21ないし23のいずれか1項に記載の使用。
【0188】
態様29
Lがオルト位でモノ−またはジ−置換されている態様21ないし23のいずれか1項に記載の使用。
【0189】
態様30
当該化合物がポルフィリン環の反対側、すなわち、環位置の5位および15位または環位置の10位および20位に、態様1に定義の2つのカチオン性基を含んでなる態様1〜29のいずれか1項に記載の使用。
【0190】
態様31
およびXが水素原子、親油性部分、フェニル基、低級アルキル、アルカリールまたはアラルキル基であり、XおよびXがカチオン性基であるか、またはその逆である態様30記載の使用。
【0191】
態様32
当該化合物がポルフィリン環の隣接位置、すなわち、環位置の5位および10位、または環位置の10位および15位、または環位置の15位および20位または環位置の20位および5位に、態様1に定義の2つのカチオン性基を含んでなる態様1ないし30のいずれか1項に記載の使用。
【0192】
態様33
およびXが水素であって、XおよびXがカチオン性基であるか、またはXおよびXが水素であって、XおよびXがカチオン性基である態様32記載の使用。
【0193】
態様34
、X、XおよびXの少なくとも1つが親油性部分である態様1〜33のいずれか1項に記載の使用。
【0194】
態様35
当該親油性部分が式:−(CH)pCH(式中、pは1ないし22の整数である)で示される飽和の直鎖アルキル基である態様34記載の使用。
【0195】
態様36
pが1〜18の整数、例えば、2ないし16または4ないし12、である態様35記載の使用。
【0196】
態様37
、X、XおよびXのいずれもが親油性部分ではない態様1ないし33のいずれか1項に記載の使用。
【0197】
態様38
、X、XおよびXのいずれもがフェニル基ではない態様1〜37のいずれか1項に記載の使用。
【0198】
態様39
当該化合物が水溶性である態様1〜38のいずれか1項に記載の使用。
【0199】
態様40
当該化合物が二塩化5,15−ビス−(4−{3−[(3−ジメチルアミノ−プロピル)−ジメチル−アンモニオ]−プロピル−オキシ}−フェニル)−ポルフィリンである態様1記載の使用。
【0200】
態様41
当該化合物が二塩化5,15−ビス−[4−(3−トリエチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]−ポルフィリンである態様1記載の使用。
【0201】
態様42
当該化合物が二塩化5,15−ビス−[3−(3−トリメチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]−ポルフィリンである態様1記載の使用。
【0202】
態様43
当該化合物が二塩化5,15−ビス−[4−(3−トリメチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]−ポルフィリンである態様1記載の使用。
【0203】
態様44
当該化合物が二塩化5−[3,5−ビス−(3−トリメチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]−15−ウンデシル−ポルフィリンである態様1記載の使用。
【0204】
態様45
当該化合物が塩化5−{4−[3−ジメチル−(3−ジメチルアミノプロピル)−アンモニオ−プロピルオキシ]−フェニル}−15−(4−ドデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリンである態様1記載の使用。
【0205】
態様46
当該化合物が三塩化3−[({3−[(3−{4−[15−(4−ドデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン−5−イル]−フェノキシ}−プロピル)−ジメチル−アンモニオ]−プロピル}−ジメチル−アンモニオ)−プロピル]−トリメチル−アンモニウムである態様1記載の使用。
【0206】
態様47
当該化合物が二塩化5,15−ビス−[3−(3−トリメチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]−10−ウンデシル−ポルフィリンである態様1記載の使用。
【0207】
態様48
当該化合物が二塩化5−{4−[3−ジメチル−(3−トリメチルアンモニオ−プロピル)−アンモニオ−プロピルオキシ]−フェニル}−15−(4−ドデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリンである態様1記載の使用
【0208】
態様49
当該化合物が二塩化5−[4−(3−ジメチルデシル−アンモニオプロピルオキシ)−フェニル]−15−{4−[3−ジメチル−(3−ジメチルアミノプロピル)−アンモニオプロピルオキシ]−フェニル}−ポルフィリンである態様1記載の使用。
【0209】
態様50
当該化合物が金属化形状にある態様40ないし49のいずれか1項に記載の使用。
【0210】
態様51
当該化合物が哺乳動物細胞に対し実質的に非毒性である態様1〜50のいずれか1項に記載の使用。
【0211】
態様52
当該医薬が経口投与用である態様1〜51のいずれか1項に記載の使用。
【0212】
態様53
当該医薬が非経口投与用である態様1〜52のいずれか1項に記載の使用。
【0213】
態様54
当該医薬が局所投与用である態様1〜53のいずれか1項に記載の使用。
【0214】
態様55
当該微生物が細菌、マイコプラズマ、酵母、真菌およびウイルスからなる群より選択されるものである態様1〜54のいずれか1項に記載の使用。
【0215】
態様56
当該微生物が、1種以上の常套の抗生剤に耐性の細菌である態様1〜55のいずれか1項に記載の使用。
【0216】
態様57
当該微生物が光の届かない表面または光の届かない領域にある態様1〜56のいずれか1項に記載の使用。
【0217】
態様58
当該医薬が微生物感染の治療的および/または予防的処置に使用するためのものである態様1〜57のいずれか1項に記載の使用。
【0218】
態様59
微生物感染が全身性感染である態様58記載の使用。
【0219】
態様60
当該医薬が皮膚科感染を予防および/または処置するためのものである態様1〜59のいずれか1項に記載の使用。
【0220】
態様61
当該医薬が肺の感染を予防および/または処置するためのものである態様1〜60のいずれか1項に記載の使用。
【0221】
態様62
当該医薬が創傷感染および/または潰瘍を予防および/または処置するためのものである態様1〜61のいずれか1項に記載の使用。
【0222】
態様63
抗微生物剤による処置を必要とする患者を処置する方法であって、態様1ないし52のいずれか1項に記載の化合物を該患者に投与することからなり、その場合に、抗微生物活性を活性化する刺激により該化合物を照射することを含まない方法。
【0223】
態様64
当該化合物を経口投与することを特徴とする態様63記載の方法。
【0224】
態様65
当該化合物を非経口投与することを特徴とする態様63記載の方法。
【0225】
態様66
当該化合物を局所投与することを特徴とする態様63記載の方法。
【0226】
態様67
当該患者が皮膚感染症または肺感染症を有するものである態様63ないし66のいずれか1項に記載の方法。
【0227】
態様68
当該患者が創傷感染症を有するものである態様63ないし66のいずれか1項に記載の方法。
【0228】
態様69
微生物をインビトロで阻止する方法であって、態様1ないし51のいずれか1項に記載の化合物と該微生物とを接触させることからなり、その場合に、抗微生物活性を活性化する刺激に該化合物をさらすことを含まない方法。
【0229】
態様70
抗微生物剤による処置を必要とする患者を処置する方法であって、態様1ないし51のいずれか1項に記載の化合物を該患者に投与することからなり、その場合に、抗微生物活性を活性化する刺激により該化合物を照射しない第一処置段階と、次いで、抗微生物活性を活性化する刺激により該化合物を照射する第二処置段階とを含んでなる方法。
【0230】
態様71
抗微生物活性を活性化する刺激が、超音波および/または光である態様70記載の方法。
【0231】
態様72
当該第一処置段階が少なくとも10分間、例えば、少なくとも20分間、30分間、40分間、50分間、1時間、2時間、3時間、5時間、12時間または24時間持続する態様70または71に記載の方法。
【0232】
態様73
当該方法が当該化合物の光活性化を惹き起こすために十分な量の光で当該化合物を照射することを含まない態様72記載の方法。
【0233】
態様74
当該方法が当該化合物を超音波で照射することを含まない態様72記載の方法。
【0234】
態様75
本明細書を参照して実質的に文中に記載されている医薬の製造における化合物の使用。
【0235】
態様76
本明細書を参照して実質的に文中に記載されている微生物を阻止する方法。
【0236】
本発明の好適な非制限態様について、ここで実例により、添付の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0237】
【図1】皮膚構造の概略図を示す。
【図2】化合物10とのインキュベーションの5分後、1時間後および4時間後の正常ヒト皮膚線維芽細胞の細胞毒性を示す。 NHDFは異なる濃度の化合物10と、5分間、1時間および4時間(0μM、0.01μM、0.1μM、1.0μM、10μM)インキュベートした。次いで、細胞は暗所で24時間インキュベートした。毒性については標準のMTT−アッセイ法にて試験した。細胞生存率を1に標準化した;このことは対照細胞の値が1に標準化されたことを意味する。灰色点線:5分間のインキュベーション;黒点線:1時間インキュベーション;黒実線:4時間インキュベーション;(n=3、平均±SD)。
【図3】化合物10とのインキュベーションの5分後、1時間後および4時間後の正常ヒト表皮角質細胞の細胞毒性を示す。 NHEKは異なる濃度の化合物10と、5分間、1時間および4時間(0μM、0.01μM、0.1μM、1.0μM、10μM)インキュベートした。次いで、細胞は暗所で24時間インキュベートした。毒性については標準のMTT−アッセイ法にて試験した。細胞生存率を1に標準化した;このことは対照細胞の値が1に標準化されたことを意味する。赤点線:5分間のインキュベーション;黒点線:1時間インキュベーション;青点線:4時間インキュベーションのみ;(n=3、平均±SD)。
【図4(A)】固体として製剤化した化合物10の化学的安定性を示す。
【図4(B)】水中で製剤化した化合物10の化学的安定性を示す。
【図4(C)】PBS中で製剤化した化合物10の化学的安定性を示す。
【図5】PBSバッファー中、21日後の化合物10の安定性(HPLCにより測定)の3Dプロットを示す。
【図6(A)】化合物1の8週間にわたる安定性を示す。
【図6(B)】化合物8の8週間にわたる安定性を示す。
【図6(C)】化合物12の8週間にわたる安定性を示す。
【図6(D)】化合物10の8週間にわたる安定性を示す。
【図7(A)】剤形の化合物10の17週間にわたり延長した安定性を示す。
【図7(B)】化合物8の17週間にわたり延長した安定性を示す。
【実施例】
【0238】
実施例A:好例(代表的)化合物の合成
材料と方法
NMR測定
プロトンNMRスペクトルは内部基準としてTMSを用い、ブルーカー(Bruker)B−ACS69(300MHz)装置にて記録した。化学シフトはppmで与え、結合定数は示された(指示された)溶媒中、Hzで与えた。NMRでの幾つかの略号:シングレット(s);ブロードシングレット(bs);ダブレット(d);トリプレット(t)、カルテット(q)、クインテット(quint);マルチプレット(m)。
【0239】
試薬類
溶媒および試薬はすべてアルドリッチ、フルカ、メルクおよびランカスターから購入し、さらに精製することなく使用した。
ジピロールメタンは文献
【0240】
【化22】

【0241】
の記載に従って調製した。
【0242】
クロマトグラフィー
カラムクロマトグラフィーはシリカゲル(メルク・シリカゲル60、フルカ60、0.040〜0.063mm)およびセファデックスLH−20(ファルマシア)を用いて実施した。クロマトグラフィー用溶媒(シノファルム)は、すべて工業的純度のものであった。
略号
DDQ:2,3-ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
TFA:トリフルオロ酢酸
【0243】
試験化合物の合成経路
以下の試験化合物を合成した。
本発明に使用する好例化合物;化合物6、8〜10、12、23、25、28、31および32。
対照化合物(比較対照として使用):化合物1、3、16、19、26、29、33、36、37、39、41および46〜51。
化学中間体:化合物2、4、5、7、11、13〜15、17、18、20〜22、24、27、30、34、35、38、40および42〜45。
【0244】
化合物1
四塩化5,10,15,20−テトラキス−[4−(3−トリメチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]−ポルフィリン
【0245】
【化23】

【0246】
5,10,15,20−テトラキス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−ポルフィリン(50mg、0.07mmol)と、KCO(230mg、1.7mmol)をDMF(20mL)中で激しく攪拌した懸濁液に、DMF(5mL)中での臭化(1−ブロモプロピル)−トリメチルアンモニウム(0.27g、1.05mmol)の溶液を50℃で30分を要して滴下する。この混合物を50℃で15時間攪拌する。減圧下にDMFを除去した後、得られる残渣をメタノール(5mL)に溶かし、スチールフリット(直径3.5cm)に保持したシリカゲルのパッド(深さ2cm)で濾過する。メタノール(1L)で洗浄した後、パッドに酢酸を流す。溶出液から溶媒を蒸発させた後、得られる残渣をセファデックスLH20のカラム(2.5×40cm)上のクロマトグラフィーに付し、n−ブタノール:水:酢酸(4:5:1、容量、上相(phase))で溶出精製する。回収した物質を最少容量のメタノールに溶かし、その溶液をアニオン交換樹脂(アンバーライトIRA400、クロリド形)の短いカラム(3.5×20cm)を通過させる。回収した四塩化物塩は高度真空下に乾燥し、紫色固体として得る。
1H-NMR: δH (300MHz, CD3OD): 2.35-2.50 (bs.36H), 3.25-3.35 (bs, 36H), 3.65-3.75 (bs, 8H), 4.35 (m, 8H), 7.30, 8.10 (2×d, 3J8.5Hz, 16H), 8.80-9.00 (bs, 8H)。
【0247】
化合物2
5,10,15−トリス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−20−(4−ウンデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【0248】
【化24】

【0249】
5,10,15,20−テトラキス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−ポルフィリン(400mg、0.59mmol)とKCO(1.0g,7.1mmol)をDMF(75mL)中で激しく攪拌した懸濁液に、DMF(10mL)中で1−ブロモウンデカン(0.1mL、0.45mmol)の溶液を50℃で30分を要して滴下し、この混合物を同じ温度で1.5時間攪拌する。KCOを濾去し、DMFを減圧下で除去した後、得られる残渣をジクロロメタン(200mL)に溶かし、水(3×150mL)で水洗し、溶液を乾燥(NaSO)する。減圧下で溶媒を蒸発させ、得られる残渣をトルエン:エタノール(5:1、容量、約10mL)に溶かし、シリカゲル(メルク60)のカラム(5×50cm)によるクロマトグラフィーにより精製する。カラムをトルエンで、次いでトルエン:酢酸エチル(2:1、容量)で溶出し、適切なフラクションから溶媒を蒸発させて回収した所望の物質を高真空下で乾燥する。生成物は紫色の固体として得る。
1H-NMR: δH (300MHz, d6-アセトン): 0.95 (t, 3J7.5Hz, 3H), 1.25-1.55 (m, 14H), 1.58 (quint, 3J7.5Hz, 2H), 1.85 (quint, 3J7.5Hz. 2H), 4.16 (t, 3J7.5Hz, 2H), 7.20 (d, 3J8.1Hz, 2H), 7.25 (d, 3J8.2Hz, 6H), 8.00-8.15 (m, 8H), 8.80-9.10 (m, 8H)。
【0250】
化合物3
三塩化5,10,15−トリス−[4−(3−トリメチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]−20−(4−ウンデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【0251】
【化25】

【0252】
化合物2(100mg、0.12mmol)とKCO(230mg、1.7mmol)をDMF(30mL)中で激しく攪拌した懸濁液に、DMF(10mL)中での臭化(1−ブロモプロピル)−トリメチルアンモニウム(0.3g、16.6mmol)溶液を50℃で加え、この混合物をこの温度で12時間攪拌する。減圧下でDMFを除去した後、得られる残渣をメタノール(5mL)に溶かし、スチールフリット(直径3.5cm)に保持したシリカゲルのパッド(深さ2cm)で濾過する。メタノール(約1L)で洗浄した後、パッドを酢酸:メタノール:水(3:2:1、容量)で溶出する。減圧下で溶出液から溶媒を蒸発させた後、得られる残渣をセファデックスLH20のカラム(2.5×40cm)上のクロマトグラフィーに付し、n−ブタノール:水:酢酸(5:4:1、容量、上相)で溶出精製する。溶出液の適切なフラクションから減圧下に溶媒を除去した後、得られる残剤をメタノール(5mL)に溶かし、その溶液をアニオン交換樹脂(アンバーライトIRA400、クロリド形)の短いカラム(3.5×20cm)を通過させる。最終産物は、溶媒を除去し、高真空下で乾燥した後、紫色固体の三塩化物塩として得る。
1H-NMR: δH (300MHz, CD3OD): 0.80 (t, 3J7.5Hz, 3H), 1.15-1.45 (m, 16H), 1.50-1.60 (bs, 2H), 2.25-2.45 (bs, 6H), 3.25-3.35 (bs, 27H), 3.75-3.85 (bs, 6H), 4.18 (t, 3J7.5Hz, 2H), 4.40-4.45 (bs, 6H), 7.20-7.40, 7.95-8.15 (2xm, 16H), 8.60-9.00 (bs, 8H)。
【0253】
化合物4
5−(3,5−ジメトキシ−フェニル)−15−ウンデシル−ポルフィリン
【0254】
【化26】

【0255】
ジクロロメタン(5mL)中のジピロールメタン(0.62g、4.2mmol)の攪拌溶液に、脱ガスジクロロメタン(1L)中の3,5−ジメトキシベンズアルデヒド(0.35g、2.1mmol)およびドデカナール(0.464g、2.52mmol)を加える。TFA(0.07mL、3.0mmol)を滴下する。この溶液を室温で17時間、アルゴン下の暗所で攪拌する。DDQ(2.7g、12mmol)を添加した後、混合物を室温でさらに1時間攪拌する。減圧下で溶媒を除去した後に回収される物質をシリカゲル(メルク60)のカラム(400g)上でのクロマトグラフィーに付し、トルエンで溶出して、紫色の固体として生成物を得る。
1H-NMR: δH (300MHz, CDCl3): 0.80 (t, 3J7.5Hz, 3H), 1.10-1.25 (m, 12H), 1.40 (m, 2H), 1.75 (quint., 3J7.5Hz. 2H), 2.45 (quint. 3J7.5Hz, 2H), 3.90 (s, 6H), 4.90 (t, 3J7.5Hz, 2H), 6.80 (m, 1H), 7.35 (m, 2H), 9.00, 9.25, 9.30, 9.50 (4xd, 3J4.7Hz, 4x2H), 10.15 (s, 2H)。
【0256】
化合物5
5−(15−ウンデシル−ポルフィリン−5−イル)−ベンゼン−1,3−ジオール
【0257】
【化27】

【0258】
化合物4(80mg、0.133mmol)と無水ジクロロメタン(80mL)との溶液に、アルゴン気流下、−70℃でBBr(5mL、1M/ジクロロメタン)を滴下し、その混合物を同温度で1時間攪拌し、次いで室温まで加温して、一夜攪拌する。この混合物を−10℃に冷やし、水(2mL)を加え、1時間攪拌して加水分解する。NaHCO(3g)を直接加え、中和する。混合物をさらに12時間攪拌し、NaHCOを濾去し、減圧下でジクロロメタンを除去し、得られる残渣をシリカゲルによるカラムクロマトグラフィーに付してジクロロメタンで溶出し、精製する。適切に併合したフラクションから溶媒を蒸発させ、得られる残渣を高真空下で乾燥して、生成物を紫色の固体として得る。
1H-NMR: δH (300MHz, d6-アセトン): 0.75 (t, 3J7.5Hz, 3H), 1.05-1.25 (m, 12H), 1.30-1.40 (m, 2H), 1.45-1.50 (m, 2H), 2.40 (quint, 3J7.5Hz, 2H), 4.90 (t, 3J7.5Hz, 2H), 6.65 (m, 1H), 7.18 (m,2H), 8.60-8.65, 9.00-9.05, 9.35-9.40, 9.55-9.60 (4xm, 8H), 10.25 (s, 2H)。
【0259】
化合物6
二塩化5−[3,5−ビス−(3−トリメチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]−15−ウンデシル−ポルフィリン
【0260】
【化28】

【0261】
化合物5(80mg、0.14mmol)、KCO(230mg、1.7mmol)およびDMF(30mL)からなる激しく攪拌した懸濁液に、臭化(1−ブロモプロピル)−トリメチルアンモニウム(0.3g、16.6mmol)を50℃で加える。この混合物をこの温度で18時間攪拌する。DMFを減圧下で除去した後、得られる残渣をメタノール(5mL)に溶かし、スチールフリット(直径3.5cm)に保持したシリカゲルのパッド(深さ2cm)で濾過する。パッドをメタノール(約1L)で洗浄した後、粗製産物を酢酸:メタノール:水(3:2:1、容量)で溶出する。適切なフラクションを集め、減圧下で溶媒を蒸発させた後、得られる残渣をセファデックスLH20のカラム(2.5×40cm)上のクロマトグラフィーに付し、n−ブタノール:水:酢酸(5:4:1、容量、上相)で溶出精製する。適切なフラクションから減圧下で溶媒を除去した後、得られる残剤をメタノール(5mL)に溶かし、その溶液をアニオン交換樹脂(アンバーライトIRA400、クロリド形)の短いカラム(3.5×20cm)を通過させる。溶出液を集め、減圧下で溶媒を除去し、得られる残渣を高真空下に乾燥し、二塩化物塩を紫色固体として得る。
1H-NMR: δH (300MHz, CD3OD): 0.75 (t, 3J7.5Hz, 3H), 1.05-1.20 (m, 14H), 1.45-1,50 (m, 2H), 2.05-2.15 (m, 4H), 2.15-2.20 (m, 2H), 2.95 (s, 18H), 3.35-3.45 (m, 4H), 3.95 (t, 3J7.5Hz, 4H), 4.55 (t, 3J7.5Hz, 2H), 6.85 (m, 1H), 7.35 (m, 2H), 8.85-8.90, 9.15-9.20 (3xm, 8H), 10.10 (s, 2H)。
【0262】
化合物7
5,15−ビス−[4−(3−ブロモ−プロピルオキシ)−フェニル]−ポルフィリン
【0263】
【化29】

【0264】
ジピロールメタン(0.61g、4.1mmol)、4−(3−ブロモプロピルオキシ)−ベンズアルデヒド(1.03g、4.2mmol)および脱ガスジクロロメタン(1L)からなる攪拌溶液に、TFA(0.07mL、1.5mmol)を滴下する。この溶液を室温、アルゴン下に暗所で17時間攪拌する。DDQ(2.76g、0.012mol)を添加した後、混合物を室温でさらに1時間攪拌する。ジクロロメタンを溶出液としてシリカゲル(フルカ60、100g)で濾過し、粗製産物を得る;これをジクロロメタン−ヘキサンで処理した後、純生成物を紫色固体として得る。
1H-NMR: δH (300MHz, C6D6): -3.15 (2H, s), 2.00 (quint, 3J7.5Hz, 4H), 3.30 (t, 3J7.5Hz, 4H), 3.90 (t, 3J7.5Hz, 4H), 7.15-7.18, 7.95-8.15 (2xm, 2x4H), 9.15-9.20,(m, 8H), 10.05 (s, 2H)。
【0265】
化合物8
二塩化5,15−ビス−(4−{3−[(3−ジメチルアミノ−プロピル)−ジメチル−アンモニオ]−プロピルオキシ}−フェニル)−ポルフィリン
【0266】
【化30】

【0267】
化合物7(200mg、0.27mmol)をN,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン(5mL、13.9mmol)と共に無水DMF(40mL)に溶かし、その溶液をアルゴン下で50℃で一夜攪拌する。減圧下で溶媒を蒸発させた後、得られる残渣をメタノール(5mL)に溶かし、スチールフリット(直径3.5cm)に保持したシリカゲルのパッド(深さ2cm)で濾過する。パッドをメタノール(約1L)で、次いで酢酸:メタノール:水(3:2:1、容量)で溶出する。適切なフラクションから溶媒を蒸発させ、得られる粗製の産物をメタノール(5mL)に溶かし、さらにセファデックスLH20のカラム(2.5×40cm)上のクロマトグラフィーに付し、展開相としてのn−ブタノール:水:酢酸(4:5:1、容量、上相)で溶出精製する。溶出した第一フラクションは所望の産物である。減圧下で溶媒を除去した後、得られる残渣をメタノール(5mL)に溶かし、アニオン交換樹脂(アンバーライトIRA400、クロリド形)の短いカラム(3.5×20cm)を通過させる。溶出液から減圧下で溶媒を除去した後、残渣をジエチルエーテルで処理し、高真空下で乾燥して生成物を紫色固体として得る。
1H-NMR: δH (300MHz, CD3OD): 2.20-2.35 (m, 4H), 2.40-2.50 (m, 4H), 2.80 (s, 12H), 3.05 (4H, t, 3J7.8, 2H), 3.25 (s, 12H), 3.45-3.55 (bs, 4H), 3.65-3.75 (m, 4H), 4.30 (t, 3J4.2Hz, 4H), 7.40, 8.10 (2xd, 3J7.5Hz, 2x4H), 8.95, 9.45 (2xd, 3J4.2Hz,
8H), 10.40 (s, 2H)。
【0268】
化合物9
二塩化5,15−ビス−[4−(3−トリエチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]−ポルフィリン
【0269】
【化31】

【0270】
化合物7(50mg、0.068mmol)と無水DMF(20mL)の溶液に、トリエチルアミン(4.7mL、0.034mol、500当量)を加える。混合物を60℃で24時間攪拌する。減圧下で溶媒を除去し、得られる残渣をメタノール(5mL)に溶かし、スチールフリット(直径3.5cm)に保持したシリカゲルのパッド(深さ2cm)で濾過する。メタノール(約1L)で洗浄した後、パッドを酢酸:メタノール:水(3:2:1、容量)で溶出する。溶出したフラクションから溶媒を蒸発させた後、得られる粗製産物をメタノール(5mL)に溶かし、セファデックスLH20のカラム(2.5×40cm)上のクロマトグラフィーに付し、n−ブタノール:水:酢酸(4:5:1、容量、上相)で溶出精製する。適切なフラクションから減圧下で溶媒を除去し、得られる残渣をメタノール(5mL)に溶かし、溶液をアニオン交換樹脂(アンバーライトIRA400、クロリド形)の短いカラム(3.5×20cm)を通過させ、溶媒を蒸発させた後に生成物を紫色固体として得る。
1H-NMR: δH (300MHz, CD3OD): 1.25 (m, 18H), 2.13 (m, 4H);-CH2NCH2 (16H) のシグナルは 3.00-3.40 の領域に、溶媒のシグナルと重なった多重線の一部となる,4.15 (t, 4H, 3J=7.5Hz), 7.36 (d, 4H, 3J=7.5Hz), 8.15 (d, 4H, 3J=7.5Hz), 9.05 (d, 4H, 3J=7.5Hz), 9.54 (d, 4H, 3J=7.5Hz), 10.45 (s, 2H)。
【0271】
化合物10
二塩化5,15−ビス−[4−(3−トリメチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]−ポルフィリン
【0272】
【化32】

【0273】
化合物7(300mg、0.41mmol)と無水DMF(50mL)との溶液を100mLのオートクレーブに移す。トリメチルアミン(4.5g)を加えた後、混合物を50℃で16時間攪拌する。溶媒を蒸発させた後、得られる残渣をメタノール(5mL)に溶かし、スチールフリット(直径3.5cm)に保持したシリカゲルのパッド(深さ2cm)で濾過する。メタノール(約1L)で洗浄した後、パッドを酢酸:メタノール:水(3:2:1、容量)で溶出する。適切なフラクションから溶媒を蒸発させた後、得られる残渣をメタノール(5mL)に溶かし、セファデックスLH20のカラム(2.5×40cm)上のクロマトグラフィーに付し、n−ブタノール:水:酢酸(4:5:1、容量、上相)で溶出精製する。2つのフラクションが得られるが、その最初の溶出物が所望の産物である。減圧下で溶媒を除去し、得られる残渣をメタノール(5mL)に再溶解し、その溶液をアニオン交換樹脂(アンバーライトIRA400、クロリド形)の短いカラム(3.5×20cm)を通過させる。減圧下で溶媒を蒸発させた後、残渣をメタノール:ジエチルエーテルで処理し、高真空下で乾燥して生成物を紫色固体として得る。
1H-NMR: δH (300MHz, CD3OD): 2.40-2.60 (m, 4H), 3.30-3.25 (bs, 18H), 3.75-3.80 (m, 4H), 4.40 (t, 3J7.5Hz, 4H), 7.40, 8.20 (2xd, 3J8.5Hz, 8H), 9.05, 9.50 (2xd, 3J4.5Hz, 8H), 10.45 (s, 2H)。
【0274】
化合物10についての別途合成経路
DMF(30mL)にて化合物42(100mg、0.2mMol;下記参照)を溶かし、炭酸カリウム(230mg、1.7mMol)を懸濁し、激しく攪拌したこの混合物に、臭化(1−ブロモプロピル)−トリメチルアンモニウム(350mg、1.3mMol)とDMF(5mL)との溶液を50℃、30分間で滴下する。この混合物を15時間加熱する。ロータリーエバポレーターによりDMFを除去し、得られる残渣をメタノールに溶かし、スチールフリット(直径3.5cm)に保持したシリカゲルのパッド(深さ2cm)で濾過する。メタノール(約1L)で洗浄した後、パッドを酢酸:メタノール:水(3:2:1、容量)で溶出する。適切なフラクションから溶媒を蒸発させた後、得られる残渣をメタノール(5mL)に溶かし、セファデックスLH20のカラム(2.5×40cm)上のクロマトグラフィーに付し、n−ブタノール:水:酢酸(4:5:1、容量、上相)で溶出精製する。2つのフラクションが得られるが、その最初の溶出物が所望の産物である。減圧下で溶媒を除去し、得られる残渣をメタノール(5mL)に再溶解し、その溶液をアニオン交換樹脂(アンバーライトIRA400、クロリド形)の短いカラム(3.5×20cm)を通過させる。減圧下で溶媒を蒸発させた後、残渣をメタノール:ジエチルエーテルで処理し、高真空下で乾燥して生成物を紫色固体として得る。
【0275】
化合物11
5,15−ビス−[3−(3−ブロモ−プロピルオキシ)−フェニル]−ポルフィリン
【0276】
【化33】

【0277】
ジピロールメタン(1.22g、8.2mmol)、3−(3−ブロモ−プロピルオキシ)−ベンズアルデヒド(2.06g、8.2mmol)および脱ガスジクロロメタン(2L)からなる攪拌溶液に、TFA(0.14mL、3mmol)を滴下する。この溶液を室温、アルゴン下で暗所で17時間攪拌する。DDQ(5.4g、0.024mol)を添加した後、混合物を室温でさらに1時間攪拌する。減圧下で溶媒を除去した後、得られる残渣をジクロロメタン(5mL)に溶かし、シリカ(フルカ60)のカラム(300g)でジクロロメタンを溶出液として通過させ、粗製産物を得る;これをジクロロメタン:メタノールで処理し、純生成物を紫色固体として得る。
1H-NMR: δH (300MHz, CDCl3): -3.20 (2H, s), 2.40 (quint. 3J7.5Hz, 4H), 3.65 (t, 3J7.5Hz, 4H), 4.25 (t, 3J7.5Hz, 4H), 7.20-7.25, 7.60-7.65, 7.75-7.80 (3xm, 8H), 9.05, 9.25 (2xd, 3J4.2Hz, 8H), 10.25 (s, 2H)。
【0278】
化合物12
二塩化5,15−ビス−[3−(3−トリメチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]−ポルフィリン
【0279】
【化34】

【0280】
化合物11(400mg、0.543mmol)とDMF(50mL)との溶液を100mLのオートクレーブに移す。トリメチルアミン(6.3g)を加えた後、混合物を50℃で8時間攪拌する。減圧下で溶媒を蒸発させた後、得られる残渣をメタノール(5mL)に溶かし、その溶液をスチールフリット(直径3.5cm)に保持したシリカゲルのパッド(深さ2cm)で濾過する。メタノール(約1L)でパッドを洗浄した後、酢酸:メタノール:水(3:2:1、容量)で溶出し、フラクションを得る;減圧下で溶媒を蒸発させ、固形の残渣を得る。これをメタノール(5mL)に溶かし、セファデックスLH20のカラム(2.5×40cm)上のクロマトグラフィーに付し、n−ブタノール:水:酢酸(4:5:1、容量、上相)で溶出精製する。カラムから2つのフラクションが溶出されるが、その最初の溶出物が所望の産物である。減圧下で溶媒を除去し、得られる残渣をメタノール(5mL)に溶解する。その溶液をアニオン交換樹脂(アンバーライトIRA400、クロリド形)の短いカラム(3.5×20cm)を通過させ、減圧下で溶媒を蒸発させ、粗製の産物をメタノール:ジエチルエーテルで処理し、高真空下に乾燥して紫色固体を得る。
1H-NMR: δH (300MHz, CD3OD): 2.30-2.35 (m, 4H), 3.15 (s, 18H), 3.95-4.05 (m, 4H), 4.20-4.25 (m, 4H), 7.40-7.45, 7.65-7.70, 7.80-7.85 (3xm, 8H), 9.00-9.05, 9.40-9.45 ,(2xm, 8H), 10.40 (m, 2H)。
【0281】
化合物13
5,15−ビス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−10,20−ビス−(4−ウンデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【0282】
【化35】

【0283】
化合物2の合成について記載したクロマト分離に際し、カラムから溶出した第3フラクションは、5,15−ビス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−10,20−ビス−(4−ウンデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリンとして特徴づけられる。
1H-NMR: δH (300MHz, CDCl3): -2.88 (2H, s), 0.85 (t, 3J7.5Hz, 6H), 1.20-1.40 (m, 28H), 1.55 (br m, 4H), 1.80 (quint, 3J7,5Hz, 4H), 4.15 (t, 3J7.5Hz, 4H), 6.65,
7.15 (d, 3J8.1Hz, 8H), 7.80, 8.00 (d, 3J8.1Hz, 8H), 8.75-8.80 (m, 8H)。
trans−位置異性体の幾何構造は、d−酢酸中、H−13C−2D−NMRによって決める。
【0284】
化合物14
5,15−ビス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−15,20−ビス−(4−ウンデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【0285】
【化36】

【0286】
化合物2の合成について記載したクロマト分離に際し、カラムから溶出した第4フラクションは、5,10−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−15,20−ビス−(4−ウンデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリンとして特徴づけられる。
1H-NMR: δH (300MHz, CDCl3): -2.80 (2H, s), 0.90 (t, 3J7.5Hz, 6H), 1.20-1.60 (m, 28H), 1.65 (quint, 3J7.5Hz, 4H), 2.00 (quint, 3J7.5Hz, 4H), 4.22 (t, 3J7.5Hz, 4H), 7.15 (d, 3J8.1Hz, 4H), 7.25 (d, 3J8.2Hz, 4H), 8.10 (d, 3J8.2Hz, 4H), 8.15 (d, 3J8.2Hz, 4H), 8.80-8.90 (m, 8H)。
cis−位置異性体の幾何構造は、d−酢酸中、H−13C−2D−NMRによって決める。
【0287】
化合物15
5,10,15−トリス−[4−(3−ブロモ−プロピルオキシ)−フェニル]−20−(4−ウンデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【0288】
【化37】

【0289】
アルゴン気流下で、化合物2(200mg、0.24mmol)を、KCO(500mg)と1,3−ジブロモプロパン(1.02mL、10mmol)の存在下、無水DMF(40mL)に溶解する。この混合物を80℃で一夜加熱する。上記化合物2について示したとおりに後処理する。生成物はシリカゲル(メルク60)上のカラムクロマトグラフィーにより、ヘキサン:酢酸エチル(5:1、容量)で溶出し、精製する。
1H-NMR: δH (300MHz, CDCl3): -2.75 (2H, s), 0.85 (t, 3J7.5Hz, 3H), 1.20-1.45 (m, 14H), 1.50 (quint, 3J7.5Hz, 2H), 1.90 (quint, 3J7.5Hz, 2H), 2.40 (quint, 3J7.4Hz,
6H), 3.65 (t, 3J7.4Hz, 6H), 4.16 (t, 3J7.5Hz, 2H), 4.25 (t, 3J7.5Hz, 6H), 7.18-7.20 (m, 8H), 8.00-8.05 (m, 8H), 8.75-8.85 (m, 8H)。
【0290】
化合物16
三塩化5,10,15−トリス−[4−(3−トリエチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]−20−(4−ウンデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【0291】
【化38】

【0292】
化合物15(200mg、0.17mmol)をトリエチルアミン(5mL、34.5mmol、208当量)と共に無水DMF(40mL)に溶解する。この混合物を50℃で48時間加熱する。減圧下でDMFを除去した後、得られる残渣をメタノールに溶解し、シリカゲル(メルク60)を用いるカラムクロマトグラフィーにより、メタノール:水:酢酸(2:1:3、容量)、次いで酢酸:ピリジン(1:1、容量)で溶出、精製する。適切なフラクションから減圧下で溶媒を除去して粗製生成物を得る;これをメタノール:NaCl(1M)水(5mL、1:1、容量)に溶かす。この混合物を30分間攪拌し、スチールフリット(直径3.5cm)に保持したシリカゲルのパッド(深さ2cm)で濾過する。パッドをメタノール(200mL)で洗浄した後、メタノール:水:酢酸(2:1:3、容量)で溶出する。適切に併合したフラクションから溶媒を蒸発させた後、得られる残渣をメタノール(2mL)に溶かし、ジクロロメタン(5mL)を滴下する。沈殿する白色ゲルを濾取し、高真空下で溶媒を除去する。
1H-NMR: δH (300MHz, CD3OD): 0.90 (t, 3J7.5Hz, 3H), 1.20-1.45 (m, 43H), 1.45-1.65 (bs, 2H), 2.25-2.40 (bs, 6H), 3.35-3.45 (bs, 24H), 3.50-3.60 (bs, 6H), 4.25 (t, 3J7.5Hz, 2H), 4.40-4.45 (bs, 6H), 7.25-7.40, 8.10-8.20 (m, 16H), 8.80-9.10 (bs, 8H)。
【0293】
化合物17
5−[4−(3−ヒドロキシ−フェニル)]−15−(3−ウンデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【0294】
【化39】

【0295】
5,15−ビス−(3−ヒドロキシ−フェニル)−ポルフィリン(Wiehe, A., Simonenko, E.J., Senge, M.O. and Roeder, B. Journal of Porphyrins and Phthalocyanines 5, 758-761 (2001))(86mg、0.17mmol)をDMF(40mL)に溶かし、KCO(250mg、7.1mmol)を懸濁する。激しく攪拌した混合物に、1−ブロモウンデカン(0.04mL、0.17mmol)とDMF(5mL)との溶液を50℃で30分間で滴下し、その温度で1時間加熱する。KCOを濾去後、DMFを高真空下で除去する。得られる残渣をシリカゲル(メルク60)を用いるカラムクロマトグラフィーにより、n−ヘキサン:酢酸エチル(10:1、容量)で溶出、精製する。第二フラクションを集め、高真空下で乾燥して生成物を得る。
1H-NMR: δH (300MHz, CDCl3): -3.15 (2H, s), 0.75 (t, 3J7.5Hz, 3H), 1.10-1.30 (m,14H), 1.35 (m, 2H), 1.80 (quint, 3J7.5Hz, 2H), 4.05 (t, 3J7.5Hz, 2H), 6.85-6.90, 7.20-7.25, 7.35-7.45, 7.50-7.65, 7.75-7.80 (5xm, 8H), 8.85, 8.95, 9.10, 9.20 (4xd, 3J4.9Hz, 4x2H), 10.15 (s, 2H)。
【0296】
化合物18
5,10,15−トリス−(3−ヒドロキシ−フェニル)−20−(3−ドデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
酢酸(145mL)およびニトロベンゼン(98mL、960mmol)の混合物に、3−ヒドロキシベンズアルデヒド(1.8g、14.8mmol、3当量)および3−ドデシルオキシベンズアルデヒド(1.35g、4.9mmol、1当量)を溶かし、120℃に加熱する。ピロール(1.35mL、19.6mmol、4当量)を一度に加え、その混合物を120℃で1時間攪拌する。室温に冷却後、溶媒を50℃の減圧下で除去する。生成物はシリカカラム(500g)上のクロマトグラフィーにより、溶出液としてトルエンを用い単離する。所望の生成物はカラムからの第5フラクションとして得るが、これをトルエンで溶出する小規模のシリカカラム(200g)により再クロマトする。溶媒蒸発後に、紫色固体として生成物を得る。
1H-NMR: δH (300MHz, CDCl3): 0.64 (t, 3H, 3J6.8Hz), 0.94-1.15 (m, 16H), 1.25 (bs, 2H), 1.62 (bs, 2H), 3.90 (bs, 2H), 6.33-6.95 (m, 8H), 7.08-7.60 (m, 8H), 8.20-8.47 (m, 4H), 8.51-8.70 (m, 4H)。
【0297】
化合物19
5−{3−[ビス−(2−ジエチルアミノ−エチル)−アミノプロピルオキシ]−フェニル}−15−(3−ウンデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【0298】
【化40】

【0299】
化合物17(50mg、0.065mmol)をN,N,N’,N’−テトラエチルジエチレントリアミン(1mL、39mmol)と共にTHF(10mL)に溶かし、その混合物を室温で4日間攪拌する。溶媒を蒸発させた後、残渣をジエチルエーテル(20mL)に溶かし、その溶液を水(5×30mL)で水洗する。有機相を乾燥し(NaSO)、高真空下で濃縮する。混合物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、メルク60)に付し、n−ヘキサン:酢酸エチル(5:1、容量)、次いで、n−ヘキサン:酢酸エチル:トリエチルアミン(10:10:1、容量)により溶出精製する。適切なフラクションを集め、減圧下で溶媒を除去し、残渣をジエチルエーテル:メタノールで処理して、純生成物を得る。
1H-NMR: δH (300MHz, CDCl3): 0.80 (t, 3J7.5Hz, 3H), 0.9 (t, 3J7.5Hz, 12H), 1.20-1.40 (m, 14H), 1.45 (quint, 3J7.5Hz, 2H), 1.80 (quint, 3J7.5Hz, 2H), 1.95 (quint, 3J7.5Hz, 2H), 2.40-2.60 (m, 16H), 2.65 (t, 3J7.5Hz, 2H), 4.10 (t, 3J7.5H, 2H), 4.20 (t, 3J7.5Hz, 2H), 7.30-7.40, 7.55-7.65, 7.75-7.80 (3xm, 8H), 9.10-9.15, 9.20-9.25 (2xm, 2x4H), 10.15 (s, 2H)。
【0300】
化合物20
5−[4−(3−ブロモ−プロピルオキシ)−フェニル]−15−(4−ドデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【0301】
【化41】

【0302】
脱ガスしたジクロロメタン(500mL)中、ジピロールメタン(0.31g、2.1mmol)、4−(3−ブロモ−プロピルオキシ)−ベンズアルデヒド(0.27g、1.1mmol)および4−ドデシルオキシ−ベンズアルデヒド(0.32g、1.1mmol)からなる攪拌溶液に、TFA(0.035mL、1.5mmol)を滴下する。この溶液を暗所で17時間、アルゴン下で室温で攪拌する。DDQ(1.38g、6mmol)を添加した後、混合物を室温でさらに1時間攪拌する。シリカゲル(メルク60、400g)を用い、トルエンを溶出液とするカラムクロマトグラフィーにより精製して、当該生成物(第2フラクション)を化合物7(第3フラクション)と共に得る。
1H-NMR: δH (300MHz, CDCl3): -3.15 (2H, s), 0.90 (t, 3J7.5Hz, 3H), 1.20-1.40 (m, 16H), 1.55 (quint, 3J7.5Hz, 2H), 1.90 (quint, 3J7.5Hz, 2H), 2.40 (quint, 3J7.5Hz,
2H), 3.75 (t, 3J7.5Hz, 2H), 4.20 (t, 3J7.5Hz, 2H), 4.35 (t, 3J7.5Hz, 2H), 7.20-7.30, 8.10-8.15 (2xm, 8H), 9.10-9.15, 9.25-9.30 (2xm, 2x4H), 10.20 (s, 2H)。
【0303】
化合物21
5,10,15,20−テトラキス−(3−ヒドロキシ−フェニル)−ポルフィリン
3−ヒドロキシベンズアルデヒド(0.910g、7.45mmol)をプロピオン酸(50mL)に溶かし、140℃に加熱する。ピロール(0.52mL、7.45mmol)を一度に加え、その混合物を2時間加熱還流する。室温での攪拌をさらに12時間続ける。減圧下でプロピオン酸を除去し、残渣をアセトンに溶かし、シリカのカラム(250g)上のクロマトグラフィーに付し、酢酸エチルの割合を連続的に増加させながらトルエンで溶出する。生成物はトルエン:酢酸エチル(6:1、容量)にて溶出する。溶媒を減圧下で除去し、生成物を紫色固体として得る。
1H-NMR: δH (300MHz, d6−アセトン): 7.18 (d, 4H, 3J=8.25Hz), 7.49 (t, 4H, 3J=8.25Hz), 7.56-7.62 (m, 8H), 8.81 (m, 8H)。
【0304】
化合物22
5,10,15−トリス−[4−(3−ブロモ−プロピルオキシ)−フェニル]−20−(4−ドデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【0305】
【化42】

【0306】
脱ガスしたジクロロメタン(1L)中、ピロール(0.7mL、10mmol)、4−(3−ブロモプロピルオキシ)−ベンズアルデヒド(1.8g、7.5mmol)および4−(n−ドデシルオキシ)−ベンズアルデヒド(0.725g、2.5mmol)からなる攪拌溶液に、TFA(0.085mL、10mmol)を滴下する。この反応溶液を暗所で17時間、アルゴン下に室温で攪拌する。DDQ(6.9g、30mmol)を添加した後、反応混合物を室温でさらに1時間攪拌する。減圧下で溶媒を除去し、残渣をトルエンに再溶解する。トルエン−ヘキサン(1:4、容量)を溶出液とするシリカゲル(メルク60)のカラム(3.5×30cm)クロマトグラフィーにより精製して、粗製の産物を得る;これをメタノール:ジクロロメタンで処理精製することにより、紫色固体を得る。
1H-NMR: δH (300MHz, CDCl3): 0.90 (t, 3J7.5Hz, 3H), 1.20-1.45 (m, 16H), 1.60 (quint, 3J7.5Hz, 2H), 1.90 (quint, 3J7.5Hz, 2H), 2.50 (quint, 3J7.4Hz, 6H), 3.75 (t, 3J7.4Hz, 6H), 4.20 (t, 3J7.5Hz, 2H), 4.35 (t, 3J7.5Hz, 6H), 7.25-7.30 (m, 8H), 8.15-8.30 (m, 8H), 8.80-8.85 (m, 8H)。
【0307】
化合物23
塩化5−{4−[3−ジメチル−(3−ジメチルアミノプロピル)−アンモニオ−プロピルオキシ]フェニル}−15−(4−ドデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【0308】
【化43】

【0309】
化合物20(30mg、0.038mmol)をN,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン(156mg、1.2mmol)と共にTHF:DMF(1:1、容量比、20mL)に溶かし、50℃で18時間攪拌する。減圧下で溶媒を蒸発させた後、残渣をジクロロメタンに溶かし、酢酸:メタノール:水(3:2:1、容量)で溶出するカラムクロマトグラフィー(シリカゲル・メルク60)により精製する。適切なフラクションを組合わせ、減圧下で溶媒を除去した後、残渣をジクロロメタン:ヘキサンで処理して生成物を紫色固体として得る。
1H-NMR: δH (300MHz, CDCl3+1% 酢酸): 0.85 (m, 3H), 1.20-1.40 (m, 18H), 1.55-1.60 (m, 2H), 1.60-1.65 (m, 4H), 2.10-2.20 (bs, 8H), 3.15-3.25 (m, 8H), 3.75 (bs, 2H), 4.20 (bs, 2H), 4.35 (bs, 2H), 7.15-7.20, 8.10-8.15 (2xm, 8H), 8.95-9.00, 9.10-9.15, 9.25-9.30 (3xbs, 8H), 10.20 (s, 2H)。
【0310】
化合物24
5,15−ビス−(3−メトキシ−フェニル)−10−ウンデシル−ポルフィリン
【0311】
【化44】

【0312】
リチウム(500mg、71mmol)を容れた50mL容積フラスコに、アルゴン気流下、新たに蒸留したジエチルエーテル(15mL)を加える。この懸濁液を1時間還流し、15℃に冷やし、これに臭化n−ウンデシル(6.58g、71mmol)とエーテル(6mL)との溶液をシリンジから滴下する。この混合物を7〜10℃に冷却し、5分後に、懸濁液が少し濁り、リチウム金属上にキラキラした斑点が現れたとき、残りの臭化n−ウンデシル溶液を均一な速度で30分間を要して加える;その間、内部温度は10℃以下に維持する。添加終了後、混合物をさらに10℃で1時間攪拌する。この懸濁液をアルゴン下で濾過し、過剰のリチウムと臭化リチウムを除去する。
【0313】
5,15−ビス−(3−メトキシ−フェニル)−ポルフィリン(100mg、0.19mmol)をアルゴン気流下で−50℃で無水THF(30mL)に溶かす。上記の有機リチウム試薬(5mL)をこの混合物に滴下する。5分後に冷却浴を除き、混合物を室温に暖める。室温で15分間攪拌した後、水(2mL)をゆっくりと加えて反応を停止させる。15分後に、DDQ(4mL、0.4mmol、0.1M/THF)を加えて混合物を酸化し、さらに15分間攪拌する。この混合物をアルミナ(中性、ブロックマン等級+)で濾過し、ヘキサン:ジクロロメタン(4:1、容量)で溶出するシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製する。最初のフラクションを集め、メタノール:ジクロロメタンで処理して固体を得る。
1H-NMR: δH (300MHz, CDCl3): -3.05 (bs, 2H, s), 0.80 (t, 3J7.5Hz, 3H), 1.10-1.20 (m, 12H), 1.25 (m, 2H), 1.70 (quint, 3J7.5Hz, 2H), 2.40 (quint, 3J7.5Hz, 2H), 3.85 (s, 6H), 4.95 (t, 3J7.5Hz, 2H), 7.20-7.23, 7.50-7.60, 7.65-7.75 (3xm, 8H), 8.85-8.90, 9.10-9.15, 9.35-9.40 (3xm, 8H), 9.95 (s, 1H)。
【0314】
化合物25
三塩化3−[({3−[(3−{4−[15−(4−ドデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン−5−イル]−フェノキシ}−プロピル)−ジメチル−アンモニオ]−プロピル}−ジメチル−アンモニオ)−プロピル]−トリメチル−アンモニウム
【0315】
【化45】

【0316】
化合物23(20mg、0.022mmol)および臭化(1−ブロモプロピル)−トリメチル−アンモニウム(26mg、0.1mmol)をDMF(15ml)に溶かし、50℃で一夜攪拌する。減圧下で溶媒を蒸発させた後、残渣をメタノール(5ml)に溶かし、シリカゲルのパッド(深さ3cm)に加え、メタノール(500ml)、次いで、酢酸:メタノール:水(3:2:1、容量)で洗浄する。溶媒を蒸発させた後、残渣は先ず酢酸:メタノール:水(3:2:1、容量)および、次いで、ピリジン:酢酸(1:1、容量)を用いるカラムクロマトグラフィー(シリカゲル・メルク60)により精製する。溶出した第2フラクションを集め、真空乾燥する。残渣をメタノール(2ml)に溶かし、セファデックスLH20のカラム(2.5×40cm)上のクロマトグラフィーに付し、n−ブタノール:酢酸:水(5:1:4、容量、上相)で溶出精製する。減圧下で溶媒を除去した後、残渣を80℃で真空乾燥する。NMRスペクトルは当該生成物が少量の脱離産物で汚染されていることを示す。
【0317】
化合物26
5,10,15−トリス−[4−(3−ジエチルアミノ−プロピルオキシ)−フェニル]−20−(4−ドデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【0318】
【化46】

【0319】
化合物22(50mg、0.06mmol)および新たに蒸留したジエチルアミン(5ml)をアルゴン下で無水DMF(30ml)に溶かす。反応混合物を室温で20時間攪拌し、酢酸エチル(50ml)に注ぐ。この混合物を水(4×50ml)で水洗し、併合した有機相の乾燥(NaSO)後、溶媒を蒸発させて残渣を得る;これをシリカ(メルク60)のカラム(2.5×30cm)上でのクロマトグラフィーに付し、酢酸エチル:n−ヘキサン:トリエチルアミン(10:10:1、容量)により溶出精製する。適切なフラクションを併合し、減圧下で溶媒を蒸発させ、残渣を高真空下で乾燥する。ジクロロメタン:n−ヘキサンにより処理し、純生成物を得る。
1H-NMR: δH (300MHz, CDCl3): 0.85 (t, 3J7.5Hz, 3H), 1.05 (m, 18H), 1.20-1.45 (m, 18H), 1.55 (quint. 3J7.5Hz, 2H), 2.15 (quint, 3J7.5H, 6H), 2.75 (quint, 3J7.4Hz, 6H), 3.15-3.25 (m, 12H), 4.15 (t, 3J7.5Hz, 2H), 4.25 (t, 3J7.5H, 6H), 7.15-7.20 (m, 8H), 8.00-8.05 (m, 8H), 7.95-8.05 (m, 8H)。
【0320】
化合物27
5,15−ビス−(3−ヒドロキシ−フェニル)−10−ウンデシル−ポルフィリン
【0321】
【化47】

【0322】
化合物24(95mg、0.14mmol)と無水ジクロロメタン(80mL)との溶液に、アルゴン気流下、BBr(6mL、1M/ジクロロメタン)を−70℃で滴下し、その混合物を1時間攪拌する。混合物を室温に加温して一夜攪拌し、次いで、−10℃に冷却、1時間で水2mLを加えて加水分解する。NaHCO(3g)を直接添加して中和する。この混合物をさらに12時間攪拌する。NaHCOを濾去し、ジクロロメタンを減圧除去した後、得られる残渣をシリカゲルを用いるカラムクロマトグラフィーに付し、ジクロロメタンで溶出、精製する。適切な併合フラクションから溶媒を除去し、高真空下で乾燥して生成物を紫色固体として得る。
1H-NMR: δH (300MHz, CDCl3): -3.05 (bs, 2H, s), 0.85 (t, 3J7.5Hz, 3H), 1.20-1.40 (m, 12H), 1.50 (m, 2H), 1.80 (quint, 3J7.5Hz, 2H), 2.55 (quint, 3J7.5Hz, 2H), 5.00 (t, 3J7.5Hz, 2H), 7.15-7.25, 7.50-7.60, 7.80-7.90 (3xm, 8H), 8.95-9.00, 9.20-9.25, 9.50-9.60 (3xm, 8H), 10.15 (s, 1H)。
【0323】
化合物28
二塩化5,15−ビス−[3−(3−トリメチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]−10−ウンデシル−ポルフィリン
【0324】
【化48】

【0325】
化合物27(50mg、0.08mmol)とDMF(20mL)との溶液に、アルゴン気流下で、KCO(100mg、0.72mmol)および臭化(3−ブロモプロピル)−トリメチルアンモニウム(300mg、1.2mmol)を加え、その混合物を50℃で18時間攪拌する。高真空下に溶媒を蒸発させた後、得られる残渣をメタノール(5mL)に溶かし、スチールフリット(直径3.5cm)に保持したシリカゲルのパッド(深さ2cm)で濾過する。パッドをメタノール(500mL)で洗浄した後、酢酸:メタノール:水(3:2:1、v:v)で溶出する。適切に併合したフラクションを高真空下で乾燥した後、得られる残渣をメタノールに溶かし、セファデックスLH20のカラムクロマトグラフィーに付し、n−ブタノール:酢酸:水(5:1:4、容量、上相)で溶出精製する。溶媒を蒸発させた後、最初の溶出フラクションから得られる残渣をメタノールに溶かし、アニオン交換樹脂(アンバーライトIRA400、クロリド形)の短いカラムを通過させ、溶媒を蒸発させた後に純生成物を得る。
1H-NMR: δH (300MHz, CD3OD): 0.85 (t, 3J7.5Hz, 3H), 1.20-1.40 (m, 12H), 1.50 (m, 2H), 1.80 (m, 2H), 2.40 (bs, 4H), 2.55 (m, 2H), 3.20 (bs, 18H), 3.65 (bs, 4H), 4.35 (bs, 4H), 5.10 (m, 2H), 7.50-7.55, 7.70-7.85 (2xm, 8H), 8.95-9.00, 9.25-9.24, 9.50-9.70 (3xbs, 8H), 10.15 (bs, 1H)。
【0326】
化合物29
二塩化5,10−ビス−[4−(3−トリメチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]−15,20−ビス−(4−ウンデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【0327】
【化49】

【0328】
DMF(30mL)中で化合物14(50mg、0.05mmol)を溶かし、KCO(150mg、1.1mmol)を懸濁する。この激しく攪拌する混合物に、臭化(1−ブロモプロピル)−トリメチルアンモニウム(0.3g、16.6mmol)とDMF(10mL)との溶液を50℃で滴下し、混合物を18時間加熱する。高真空下でDMFを除去した後、得られる残渣をメタノール(5mL)に溶かし、スチールフリット(直径3.5cm)に保持したシリカゲルのパッド(深さ2cm)で濾過する。パッドをメタノール(約500mL)で洗浄した後、酢酸:メタノール:水(3:2:1、容量)で溶出する。適切に併合したフラクションから溶媒を蒸発させた後、得られる残渣をセファデックスLH20のカラム(2.5×40cm)上のクロマトグラフィーに付し、n−ブタノール:水:酢酸(5:4:1、容量、上相)で溶出精製し、過剰のアンモニウム塩と他の副生物からさらに分離する。減圧下で溶媒を蒸発させた後、得られる残渣をメタノールに溶かし、アニオン交換樹脂(アンバーライトIRA400、クロリド形)の短いカラム(3.5×20cm)を通過させる。減圧下で溶媒を蒸発させた後、生成物を高真空下で乾燥する。
1H-NMR: δH (300MHz, CD3OD): 0.80 (t, 3J7.5Hz, 6H), 1.15-1.35 (m, 28H), 1.35-1.45 (bs, 4H), 1.70-1.80 (bs, 4H), 2.30-2.40 (bs, 4H), 3.15-3.30 (bs, 18H), 3.65-3.75 (bs, 4H), 4.00-4.05 (m, 4H), 4.30-4.40 (bs, 4H), 7.00-7.15, 7.20-7.30, 7.80-95, 7.95-8.15 (4xm, 4x4H), 8.60-9.00 (bs, 8H)。
【0329】
化合物30
5,10,15−トリス−(3−ヒドロキシ−フェニル)−20−(3−ウンデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【0330】
【化50】

【0331】
予め130℃に加熱した3−ヒドロキシベンズアルデヒド(1.8g、14.8mmol)、3−ウンデシルオキシベンズアルデヒド(1.36g、4.9mmol)、酢酸(145mL)およびニトロベンゼン(118g、960mmol)からなる混合物にピロール(1.31g、19.6mmol)を一度に加え、その混合物を120℃で1時間攪拌する。混合物を冷却し、高真空下で溶媒を除去する。残渣をジクロロメタン(5mL)に溶かし、ヘキサン:トルエン(4:1、容量)で溶出するシリカゲル(メルク60)でのカラムクロマトグラフィーにより精製する。溶出液から減圧下で溶媒を除去した後、得られる残渣を真空下で乾燥して生成物を得る。
1H-NMR: δH (300MHz, CDCl3): 0.75-0.80 (m, 3H), 1.05-1.35 (m, 14H), 1.40-1.50 (m, 2H), 1.75-1.85 (m, 2H), 3.90-4.10 (m, 2H), 6.90-7.70 (m, 16H) , 8.45-8.80 (m, 8H)。
【0332】
化合物31
二塩化5−{4−[3−ジメチル−(3−トリメチルアンモニオ−プロピル)−アンモニオ−プロピルオキシ]−フェニル}−15−(4−ドデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【0333】
【化51】

【0334】
化合物23(50mg、0.055mmol)を無水DMF(30mL)にヨウ化メチル(5mL、80mmol)と共に溶かし、その混合物を40℃で3時間攪拌する。溶媒を蒸発させた後、得られる残渣をメタノール(5mL)に溶かし、スチールフリット(直径3.5cm)に保持したシリカゲルのパッド(深さ2cm)で濾過する。パッドをメタノール(約1L)で洗浄した後、ジクロロメタン:メタノール(2:3、容量)で、次いで酢酸:水:メタノール(3:1:2、容量)で溶出する。適切にプールしたフラクションから溶媒を除去した後、得られる残渣を酢酸に溶かし、セファデックスLH20のカラムクロマトグラフィーにより精製する。適切にプールしたフラクションから溶媒を蒸発し、得られる残渣を高真空下で乾燥した後、残渣をメタノールに溶かし、アニオン交換樹脂(アンバーライトIRA400、クロリド形)の短いカラム(3.5×20cm)を通過させる。溶出液から溶媒を蒸発させた後、生成物を高真空下で乾燥する。
【0335】
化合物32
二塩化5−[4−(3−ジメチルデシル−アンモニオプロピルオキシ)−フェニル]−15−{4−[3−ジメチル−(3−ジメチルアミノプロピル)−アンモニオプロピルオキシ]−フェニル}−ポルフィリン
【0336】
【化52】

【0337】
化合物23(50mg、0.068mmol)をN,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン(354mg、1.36mmol)とN,N−ジメチルデシルアミン(1g、2.72mmol)と共にDMF:THF(30mL、1:1、容量)に溶かし、その混合物を50℃で一夜攪拌する。減圧下で溶媒を蒸発させた後、得られる残渣をメタノール(10mL)に溶かし、スチールフリット(直径3.5cm)に保持したシリカゲルのパッド(深さ2cm)で濾過する。パッドをメタノール(約500mL)で洗浄した後、酢酸:メタノール:水(3:2:1、容量)で溶出する。溶出した最初の2つのフラクションを併合し、減圧下で溶媒を蒸発させた後、得られる残渣をメタノールに溶かし、セファデックスLH20のカラム(2.5×40cm)上のクロマトグラフィーに付し、n−ブタノール:水:酢酸(4:5:1、容量)で溶出、精製する。溶出した第2フラクションから減圧下で溶媒を除去した後、残渣をメタノール(5mL)に溶かし、アニオン交換樹脂(アンバーライトIRA400、クロリド形)の短いカラム(3.5×20cm)を通過させる。溶出液を蒸発乾固させ、得られる残渣を高真空下で乾燥して、生成物を得る。
1H-NMR: δH (300MHz, CD3OD): 0.80 (m, 3H), 1.05-1.25 (m, 10H), 1.25-1.40 (bs, 2H), 1.80-1.90 (bs, 4H), 2.15-2.30 (bs, 2H), 2.80-3.60 (m, 20H), 3.80-3.95 (bs, 4H), 7.05-7.15, 7.85-8.00 (2xm, 2x4H), 8.75-8.90, 9.20-9.35 (2xbs, 2x4H), 10.15 (bs, 2H)。
【0338】
化合物33
三塩化5,10,15−トリス[3−(3−トリメチル−アンモニオプロピルオキシ)−フェニル]−20−(3−ウンデシルオキシフェニル)−ポルフィリン
【0339】
【化53】

【0340】
DMF(30mL)中で化合物30(100mg、0.12mmol)を溶かし、KCO(230mg、1.7mmol)を懸濁する。この激しく攪拌する混合物に、臭化(1−ブロモプロピル)−トリメチルアンモニウム(0.3g、16.6mmol)とDMF(10mL)との溶液を50℃30分間で滴下し、混合物を18時間加熱する。減圧下でDMFを除去した後、得られる残渣をメタノール(5mL)に溶かし、スチールフリット(直径3.5cm)に保持したシリカゲルのパッド(深さ2cm)で濾過する。パッドをメタノール(約500mL)で洗浄した後、酢酸:メタノール:水(3:2:1、容量)で溶出する。減圧下で適切に併合したフラクションから溶媒を蒸発させた後、残渣をセファデックスLH20のカラム(2.5×40cm)上のクロマトグラフィーに付し、n−ブタノール:水:酢酸(5:4:1、容量、上相)で溶出精製する。減圧下で溶出液から溶媒を除去した後、得られる残渣をメタノールに溶かし、その溶液をアニオン交換樹脂(アンバーライトIRA400、クロリド形)の短いカラム(3.5×20cm)を通過させる。溶出液から溶媒を蒸発させ、得られる生成物を高真空下で乾燥する。
1H-NMR: δH (300MHz, CD3OD): 0.75-0.80 (m, 3H), 1.00-1.40 (m, 18H), 1.60-1.80 (bs, 2H), 2.25-2.40 (bs, 6H), 3.29 (bs, 27H), 3.40-3.60 (m, 6H), 3.90-4.00 (m, 2H), 4.05-4.25 (m, 6H), 7.10-7.20, 7.25-7.40, 7.60-7.80, 7.80-7.90 (4xm, 16H), 8.70-9.00 (bs, 8H)。
【0341】
化合物34
5,15−ビス−(3−ヒドロキシ−フェニル)−ポルフィリン
【0342】
【化54】

【0343】
本化合物の調製は文献(Wiehe, A., Simonenko, E.J., Senge, M.O. and Roeder, B. Journal of Porphyrins and Phthalocyanines 5, 758-761 (2001))に記載されているようにして調製(製造)する。
【0344】
化合物35
5,10,15−トリス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−20−(4−テトラデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【0345】
【化55】

【0346】
DMF(30mL)中で5,10,15,20−テトラキス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−ポルフィリン(170mg、0.25mmol)を溶かし、KCO(0.65g、mmol)を懸濁する。この激しく攪拌する混合物に、1−ブロモテトラデカン(0.1mL、0.45mmol)とDMF(10mL)との溶液を50℃30分間で滴下し、混合物を1.5時間加熱する。溶媒を蒸発させた後、残渣をトルエン:エタノール(1:1、容量)に溶かし、シリカゲル(メルク60)のカラム(5×25m)を用いるクロマトグラフィーにより精製し、カラムはトルエンで洗う。最初の3つのフラクションを溶出した後、トルエン:酢酸エチル(2:1、容量)により溶出を続ける。溶出の5番目の化合物を集め、溶媒を蒸発させ、残渣を高真空下で乾燥して、紫色固体の生成物を得る。
1H-NMR: δH (300MHz, d6-アセトン): 0.85 (t, 3J7.5Hz, 3H), 1.15-1.55 (m, 20H), 1.45 (quint, 3J7.5Hz, 2H), 1.75 (quint, 3J7.5Hz, 2H), 4.10 (t, 3J7.5Hz, 2H), 7.20 (d, 3J8.5Hz, 2H), 7.25 (d, 3J 8.5Hz, 6H), 8.00-8.15 (m, 8H), 8.80-9.10 (m, 8H)。
【0347】
化合物36
三塩化5,10,15−トリス−[4−(3−トリメチル−アンモニオプロピルオキシ)−フェニル]−20−(4−テトラデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【0348】
【化56】

【0349】
1−ブロモウンデカンの代わりに1−ブロモテトラデカンを用いた以外、化合物2について記載したのと同様に調製した化合物2のn−テトラデシルオキシ類似体(50mg、0.057mmol)と臭化(1−ブロモプロピル)−トリメチルアンモニウム(210mg、0.8mmol)をDMF(20mL)に溶かし、KCO(230mg、1.7mmol)を懸濁する。この激しく攪拌する混合物をこの温度で18時間攪拌する。減圧下でDMFを除去した後、得られる残渣をメタノール(5mL)に溶かし、スチールフリット(直径3.5cm)に保持したシリカゲルのパッド(深さ2cm)で濾過する。パッドをメタノール(約500mL)で洗浄した後、酢酸:メタノール:水(3:2:1、容量)で溶出する。適切に併合したフラクションから溶媒を蒸発させた後、得られる残渣をセファデックスLH20のカラム(2.5×40cm)上のクロマトグラフィーに付し、n−ブタノール:水:酢酸(4:5:1、容量、上相)で溶出精製して、過剰のアンモニウム塩およびその他の汚染物質から分離する。溶出し、適切なフラクションから溶媒を除去した後、得られる残渣をメタノール(5mL)に溶かし、アニオン交換樹脂(アンバーライトIRA400、クロリド形)の短いカラム(3.5×20cm)を通過させる。減圧下で溶媒を除去し、得られる残渣を高真空下で乾燥し、紫色固体として生成物を得る。
1H-NMR: δH (300MHz, CD3OD): 0.75 (t, 3J7.5Hz, 3H), 0.95-1.25 (m, 22H), 1.50-1.65 (bs, 2H), 2.20-2.40 (bs, 6H), 3.05-3.15 (bs, 27H), 3.45-3.60 (bs, 6H), 3.60-3.80 (bs, 2H), 4.05-4.25 (bs, 6H), 6.80-7.25, 7.65-8.05,(2xm, 16H), 8.45-8.95 (bs, 8H)。
【0350】
化合物37
5−(4−{3−[2,4,6−トリス−(ジメチルアミノメチル)−フェニルオキシ]−プロピルオキシ}−フェニル)−15−(4−ドデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【0351】
【化57】

【0352】
2,4,6−トリス−(ジメチルアミノメチル)−フェノール(1mL、3.7mmol)の存在下に、化合物20(50mg、0.063mmol)をDMF(20mL)に溶かし、50℃で一夜攪拌する。溶媒を蒸発させた後、過剰のアミンを除去するためにジクロロメタン:メタノールで残渣を処理して、残渣を固化させる。濾過後、ポルフィリンをジクロロメタンに再溶解し、シリカゲル(メルク60)のカラム上のクロマトグラフィーに付し、ジクロロメタンで洗浄し、精製する。減圧下に溶媒を蒸発させ、残渣をジクロロメタン:メタノールで処理して紫色固体として生成物を得る。
1H-NMR: δH (300MHz, CDCl3): -3.15 (2H, s), 0.85 (t, 3J4.5Hz, 3H), 1.20-1.40 (m, 18H), 1.55 (quint, 3J4.5Hz, 2H), 1.90 (quint, 3J4.5Hz, 2H), 2.20 (s, 18H), 2.55 (t, 3J5.2Hz, 2H), 3.45 (s, 6H), 4.15 (t, 3J5.5Hz, 2H), 4.20 (t, 3J5.5Hz, 2H), 4.35 (t, 3J7.5Hz, 2H), 6.85 (2xs, 2H), 7.20-7.30, 8.10-8.15 (2xm, 8H), 9.00-9.05, 9.25-9.30 (2xm, 2x4H), 10.20 (s, 2H)。
【0353】
化合物38
5,10,15−トリス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−20−(4−デシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【0354】
【化58】

【0355】
5,10,15,20−テトラキス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−ポルフィリン(100mg、0.15mmol)をDMF(30mL)に溶かし、KCO(230mg)を懸濁する。この激しく攪拌する反応混合物に、1−ブロモデカン(0.016mL、0.11mmol)とDMF(10mL)との溶液を70℃30分間で滴下し、混合物を1.5時間攪拌する。溶媒を蒸発させた後、残渣をトルエン:エタノール(1:1、容量、約3mL)に溶かし、トルエンを溶出液とするシリカゲル(メルク60)のカラム(150g)上のクロマトグラフィーにより精製する。最初の3つのフラクションを溶出した後、トルエン:酢酸エチル(2:1、容量)によりカラムを溶出する。溶出の5番目のフラクションを集め、溶媒を除去し、残渣を高真空下で乾燥して、紫色固体の生成物を得る。
1H-NMR: δH (300MHz, d6-アセトン): 0.95 (t, 3J7.5Hz, 3H), 1.25-1.55 (m, 12H), 1.55 (quint, 3J7.5Hz, 2H), 1.85 (quint, 3J7.5Hz, 2H), 4.15 (t, 3J7.5Hz, 2H), 7.20 (d, 3J8.5Hz, 2H), 7.25 (d, 3J8.5Hz, 6H), 8.00-8.15 (m, 8H), 8.80-9.10 (m, 8H)。
【0356】
化合物39
三塩化5,10,15−トリス−[4−(3−トリメチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]−20−(4−デシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【0357】
【化59】

【0358】
化合物38(50mg、0.061mmol)および臭化(1−ブロモプロピル)−トリメチルアンモニウム(210mg、0.8mmol)をDMF(20mL)に溶かし、KCO(230mg、1.7mmol)を懸濁する。激しく攪拌する反応混合物を50℃に18時間加熱する。溶媒を蒸発させた後、粗製の産物をメタノールに溶かし、セファデックスのカラム(2.5×40cm)上のクロマトグラフィーに付し、n−ブタノール:水:酢酸(4:5:1、容量、上相)で溶出精製する。溶媒を除去した後、残渣をメタノールに溶かし、アンバーライトIRA−400(クロリド形)のカラム(3.5×20cm)を通過させる。溶媒を蒸発させた後、生成物を高真空下に乾燥して、紫色固体を得る。
1H-NMR: δH (300MHz, CD3OD): 0.90 (t, 3J7.5Hz, 3H), 1.20-1.40 (m, 12H), 1.45-1.60 (bs, 2H), 1.80-1.90 (bs, 2H), 2.45-2.55 (bs, 6H), 3.25-3.35 (bs, 27H), 3.75-3.85 (bs, 6H), 4.05-4.25 (m, 2H), 4.35-4.40 (bs, 6H), 7.10-7.40, 7.95-8.15 (2xm, 16H), 8.60-9.00 (bs, 8H)。
【0359】
化合物40
5,10,15−トリス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−20−(4−トリデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【0360】
【化60】

【0361】
5,10,15,20−テトラキス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−ポルフィリン(400mg、0.59mmol)をDMF(75mL)に溶かし、KCO(1.0g、7.1mmol)を懸濁する。激しく攪拌するその反応混合物に、1−ブロモトリデカン(0.1mL、0.45mmol)とDMF(10mL)との溶液を50℃30分間で滴下し、次いで1.5時間加熱する。反応混合物を室温に冷やし、水中(150mL)に注ぐ。酢酸エチル(100mL)でポルフィリンを抽出し、抽出液を塩水(3×50mL)で洗い、乾燥する(NaSO)。溶媒を蒸発させた後、残渣をトルエン:エタノール(1:1、容量による;約10mL)に溶かし、トルエンを溶出液とするシリカゲル(メルク60)のカラム(200g)を用いるクロマトグラフィーにより精製する。最初の3種の化合物を溶出した後、溶出液をトルエン:酢酸エチル(2:1、容量)に変える。溶出した5番目の化合物を集め、高真空下で乾燥し、紫色固体として生成物を得る。
1H-NMR: δH (300Mz, d6-アセトン): 0.85 (t, 3J7.5Hz, 3H), 1.20-1.60 (m, 18H), 1.50 (quint, 3J7.5Hz, 2H), 1.80 (quint, 3J7.5Hz, 2H), 4.14 (t, 3J7.5Hz, 2H), 7.20 (d, 3J8.5Hz, 2H), 7.25 (d, 3J8.5Hz, 6H), 8.00-8.15 (m, 8H), 8.80-9.10 (m, 8H)。
【0362】
化合物41
三塩化5−(4−トリデシルオキシ−フェニル)−10,15,20−トリス−[4−(3−トリメチルアンモニオ−プロピルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【0363】
【化61】

【0364】
化合物40(50mg、0.057mmol)および臭化(1−ブロモプロピル)トリメチルアンモニウム(210mg、0.8mmol)をDMF(20mL)に溶かし、KCO(230mg、1.7mmol)を懸濁する。激しく攪拌する反応混合物を50℃に18時間加熱する。DMFを除去した後、残渣をメタノール(5mL)に溶かし、シリカゲルのパッド(深さ2cm)に負荷し、メタノール(約1000mL)で洗った後、酢酸:メタノール:水(3:2:1、容量)で溶出する。溶媒を蒸発させた後、残渣をメタノールに溶かし、セファデックスLH−20のカラム(2.5×40cm)上のクロマトグラフィーに付し、n−ブタノール:水:酢酸(4:5:1、容量、上相)で溶出精製する。溶媒を除去した後、残渣をメタノールに溶かし、アニオン交換樹脂(アンバーライトIRC400、クロリド形)の短いカラム(3.5×20cm)を通過させる。溶媒を蒸発させた後、生成物を高真空下で乾燥して、紫色固体を得る。
1H-NMR: δH (300MHz, CD3OD): 0.90 (t, 3J7.5Hz, 3H), 1.20-1.40 (m, 18H), 1.45-1.60 (m, 2H), 1.80-1.90 (bs, 2H), 2.40-2.55 (bs, 6H), 3.25-3.35 (bs, 27H), 3.75-3.85 (bs, 6H), 4.05-4.25 (m, 2H), 4.35-4.40 (bs, 6H), 7.10-7.40, 7.90-8.15 (2xm, 16H), 8.60-9.00 (bs, 8H)。
【0365】
化合物42
5,15−ビス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−ポルフィリン
【0366】
【化62】

【0367】
本化合物は文献(Mehta, Goverdhan; Muthusamy, Sengodagounder; Maiya, Bhaskar G.; Arounaguiri, S., J. Chem. Soc., Perkin Trans. 1; 2177-2182 (1999))の記載に従い調製する。
【0368】
化合物43
5,10,15−トリス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−20−(4−オクチルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【0369】
【化63】

【0370】
5,10,15,20−テトラキス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−ポルフィリン(200mg、0.294mmol)をアルゴン下で無水DMF(50mL)に溶かし、これに炭酸カリウム(487mg、3.53mmol、12当量)を懸濁し、その混合物を55℃に加熱する。臭化オクチル(35.8μl、0.206mmol、0.7当量)と無水DMF(10mL)との溶液を30分間で滴下し、その混合物を55℃で2時間攪拌する。減圧下、50℃で溶媒を除去し、水(80mL)を加えて、その混合物を酢酸エチル(3×40mL)で抽出する。併合した有機フラクションを乾燥し(NaSO)、溶媒を蒸発させる。残渣をシリカゲルのカラム(300g)クロマトグラフィーにより精製する。テトラ−アルキル化およびトリ−アルキル化化合物は、トルエン:酢酸エチル(30:1、容量)で溶出する。第3のフラクション(ジ置換化合物、trans−異性体)はトルエン:酢酸エチル(15:1、容量)により溶出する。第4フラクション(ジ置換化合物、cis−異性体)はトルエン:酢酸エチル(10:1、容量)で溶出し、所望の産物(モノ−アルキル化化合物)はトルエン:酢酸エチル(5:1、容量)で溶出する。減圧下で溶媒を蒸発させ、残渣を高真空下で乾燥し、紫色固体として生成物を得る。
1H-NMR: δH (300MHz, d6-アセトン): 0.75 (t, 3H, 3J=6.8Hz), 1.13-1.25 (m, 8H), 1.43 (quint, 2H, 3J=7.5Hz), 1.73 (quint, 2H, 3J=7.5Hz), 3.50 (t, 2H, 3J=8Hz), 7.11 (d, 2H, 3J=7.5Hz), 7.16 (d, 6H, 3J=7.5Hz), 7.90-7.94 (m, 8H), 8.80-8.90 (m, 8H)。
【0371】
化合物44
5−(4−ドデシルオキシ−フェニル)−10,15,20−トリス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−ポルフィリン
【0372】
【化64】

【0373】
5,10,15,20−テトラキス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−ポルフィリン(200mg、0.294mmol)をアルゴン下で、無水DMF(50mL)に溶かし、これに炭酸カリウム(487mg、3.53mmol、12当量)を懸濁し、その混合物を55℃に加熱する。臭化ドデシル(49.4μl、0.206mmol、0.7当量)と無水DMF(10mL)との溶液を30分間で滴下する。その混合物を55℃で2時間攪拌する。減圧下、50℃で溶媒を除去し、水(80mL)を加えて、その混合物を酢酸エチル(3×40mL)で抽出する。併合した有機フラクションを乾燥し(NaSO)、溶媒を蒸発させる。生成物をシリカのカラム(300g)クロマトグラフィーにより単離する。テトラ−アルキル化およびトリ−アルキル化化合物は、トルエン:酢酸エチル(30:1、容量)で溶出し、ジ置換化合物(trans−異性体)はトルエン:酢酸エチル(15:1、容量)により溶出し、ジ置換化合物(cis−異性体)はトルエン:酢酸エチル(10:1、容量)で溶出し、所望の産物(モノ−アルキル化化合物)はトルエン:酢酸エチル(5:1、容量)で溶出する。減圧下で溶媒を蒸発させ、残渣を高真空下で乾燥し、紫色固体として生成物を得る。
1H-NMR: δH (300MHz, d6-アセトン): 0.75 (t, 3H, 3J=6.8Hz), 1.13-1.25 (m, 16H), 1.41 (quint, 2H, 3J=7.5Hz), 1.63 (quint, 2H, 3J=7.5Hz), 3.89 (t, 2H, 3J=6Hz), 7.11 (d, 2H, 3J=7.5Hz), 7.16 (d, 6H, 3J=7.5Hz), 7.9-7.94 (m, 8H), 8.78-8.83(m, 8H)。
【0374】
化合物45
5,10,15−トリス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−20−(4−ノニルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【0375】
【化65】

【0376】
5,10,15,20−テトラキス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−ポルフィリン(200mg、0.294mmol)をアルゴン下で、無水DMF(50mL)に溶かし、これに炭酸カリウム(487mg、3.53mmol、12当量)を懸濁し、その混合物を55℃に加熱する。臭化ノニル(49.4μl、0.206mmol、0.7当量)と無水DMF(10mL)との溶液を30分間で滴下する。その混合物を55℃で2時間攪拌する。減圧下、50℃で溶媒を除去し、水(80mL)を加えて、その混合物を酢酸エチル(3×40mL)で抽出する。併合した有機抽出液を乾燥し(NaSO)、溶媒を減圧下に除去する。生成物をシリカのカラム(300g)クロマトグラフィーにより単離する。テトラ−アルキル化およびトリ−アルキル化化合物は、トルエン:酢酸エチル(30:1、容量)で溶出し、ジ置換化合物(trans−異性体)はトルエン:酢酸エチル(15:1、容量)により溶出し、ジ置換化合物(cis−異性体)はトルエン:酢酸エチル(10:1、容量)で溶出し、所望の産物(モノ−アルキル化化合物)はトルエン:酢酸エチル(5:1、容量)で溶出する。減圧下で溶媒を除去し、残渣を高真空下で乾燥し、紫色固体として生成物を得る。
1H-NMR: δH (300MHz, d6-アセトン): 0.87 (t, 3H, 3J=7.5Hz), 1.14-1.26 (m, 10H), 1.41 (quint, 2H), 1.70 (quint, 2H, 3J=7.5Hz), 3.92 (t, 2H, 3J=7.5Hz), 7.02 (d, 2H, 3J=8.25Hz), 7.15 (d, 6H, 3J=7.5Hz), 7.85 (d, 2H, 3J=8.25Hz), 7.91 (d, 3J=7.5Hz), 8.76-8.84 (m, 8H)。
【0377】
化合物46
三塩化5−(4−オクチルオキシ−フェニル)−10,15,20−トリス−[4−(3−トリメチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]−ポルフィリン
【0378】
【化66】

【0379】
アルゴン下、化合物43(50mg、0.063mmol)および臭化(3−ブロモプロピル)トリメチルアンモニウム(164mg、0.63mmol、10当量)を無水DMF(30mL)に溶かし、炭酸カリウム(130mg、0.95mmol、15当量)を懸濁し、その混合物を55℃で12時間攪拌する。減圧下、50℃で溶媒を除去し、残渣をシリカゲルのパッド(深さ2cm)に負荷する。未反応のアンモニウム塩をメタノール(約1000mL)で洗い去り、生成物を酢酸:メタノール:水(3:2:1、容量)で溶出する。溶媒を減圧下で除去し、残渣をさらに、セファデックスLH−20のカラム(100g)上のクロマトグラフィーに付し、n−ブタノール:水:酢酸(4:5:1、容量、上相)で溶出精製する。減圧下で溶媒を除去し、残渣をメタノールに溶かし、アニオン交換樹脂(アンバーライトIRA400、クロリド形)の短いカラムを通過させ、メタノールで溶出する。溶媒を蒸発させた後、粗生成物を最少量のメタノールに溶かし、ジエチルエーテル(50mL)を加える。この溶液を15分間遠心分離する。上澄液を蒸発乾固させ、残渣を高真空下に乾燥し、生成物を紫色固体として得る。
1H-NMR: δH (300MHz, CD3OD): 0.90 (t, 3H, 3J=7.5Hz), 1.25-1.41 (m, 8H), 1.45 (bs, 2H), 1.87 (bs, 2H), 2.38 (bs, 6H), 3.29 (bs, 27H), 3.67 (t, 6H, 3J=7.5Hz), 4.01 (t, 2H, 3J=7.5Hz), 4.30 (t, 6H, 3J=7.5Hz), 7.11 (d, 2H, 3J=7.5Hz), 7.38 (d, 6H, 3J=7.5Hz), 7.95 (d, 2H, 3J=7.5Hz), 8.11 (d, 6H, 3J=7.5Hz),
8.93 (bs, 8H)。
【0380】
化合物47
三塩化5−(4−ドデシルオキシ−フェニル)−10,15,20−トリス−[4−(3−トリメチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]−ポルフィリン
【0381】
【化67】

【0382】
アルゴン下、化合物44(50mg、0.059mmol)および臭化(3−ブロモプロピル)−トリメチルアンモニウム(154mg、0.59mmol、10当量)を無水DMF(30mL)に溶かし、炭酸カリウム(122mg、0.885mmol、15当量)を懸濁し、その混合物を55℃で12時間攪拌する。減圧下、50℃で溶媒を除去し、残渣を少量のメタノールに溶かし、シリカゲルのパッド(深さ2cm)に負荷する。未反応のアンモニウム塩をメタノール(1000mL)で洗い去る。生成物を酢酸:メタノール:水(3:2:1、容量)で溶出する。溶媒を減圧下で除去し、粗製の産物をさらに、セファデックスLH−20のカラム(100g)上のクロマトグラフィーに付し、n−ブタノール:水:酢酸(4:5:1、容量、上相)で溶出精製する。減圧下で溶媒を除去し、残渣を少量のメタノールに溶かし、アニオン交換樹脂(アンバーライトIRC400、クロリド形)の短いカラムを通過させ、メタノールで溶出する。溶媒を除去した後、粗生成物を最少量のメタノールに溶かし、ジエチルエーテル(50mL)を加える。この溶液を15分間遠心分離する。上澄液を蒸発乾固させ、残渣を高真空下で乾燥し、生成物を紫色固体として得る。
1H-NMR: δH (300MHz, CD3OD): 0.88 (t, 3H, 3J=7.5Hz), 1.25-1.37 (m, 16H), 1.48 (bs, 2H), 1.93 (bs, 2H), 2.42 (bs, 6H), 3.28 (bs, 27H), 3.68-3.75 (m, 6H), 4.05 (t, 2H), 4.33 (t, 6H), 7.17 (d, 2H, 3J=7.5Hz), 7.33 (d, 6H, 3J=7.5Hz), 7.99 (d,
2H, 3J=7.5Hz), 8.08 (d, 6H, 3J=7.5Hz), 8.85 (bs, 8H)。
【0383】
化合物48
三塩化5−(4−ノニルオキシ−フェニル)−10,15,20−トリス−[4−(3−トリメチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]−ポルフィリン
【0384】
【化68】

【0385】
アルゴン下、化合物45(50mg、0.062mmol)および臭化(3−ブロモプロピル)−トリメチルアンモニウム(162mg、0.62mmol、10当量)を無水DMF(30mL)に溶かし、炭酸カリウム(128mg、0.93mmol、15当量)を懸濁し、その混合物を55℃で12時間攪拌する。減圧下、50℃で溶媒を除去し、残渣を少量のメタノールに溶かし、シリカゲルのパッド(深さ2cm)に負荷する。未反応のアンモニウム塩をメタノール(1000mL)で洗い去る。生成物を酢酸:メタノール:水(3:2:1、容量)で溶出する。溶媒を減圧下で除去し、生成物をさらに、セファデックスLH−20のカラム(100g)上のクロマトグラフィーに付し、n−ブタノール:水:酢酸(4:5:1、容量、上相)で溶出精製する。減圧下で溶媒を除去し、残渣を少量のメタノールに再溶解し、アニオン交換樹脂(アンバーライトIRC400、クロリド形)の短いカラムを通過させ、メタノールで溶出する。溶媒を除去した後、生成物を高真空下で乾燥し、紫色固体として得る。
1H-NMR: δH (300MHz, CD3OD): 0.89 (t, 3H, 3J=7.5Hz), 1.18-1.34 (m, 10H), 1.41 (bs, 2H), 1.73 (quint, 2H, 3J=7.5Hz), 2.30-2.44 (m, 6H), 3.31 (bs, 27H), 3.65-3.73 (m, 6H), 3.93 (t, 2H, 3J=7.5Hz), 4.25-4.42 (m, 6H), 7.08 (d, 2H, 3J=7.5Hz), 7.30 (d, 6H, 3J=7.5Hz), 7.93 (d, 2H, 3J=7.5Hz), 8.05(d, 6H, 3J=7.5Hz), 8.94(bs,
8H)。
【0386】
化合物49
三塩化5−(4−オクチルオキシ−フェニル)−10,15,20−トリス−[4−(5−トリメチルアンモニオ−ペンチルオキシ)−フェニル]−ポルフィリン
【0387】
【化69】

【0388】
アルゴン下、化合物43(23mg、0.03mmol)および臭化(5−ブロモペンチル)−トリメチルアンモニウム(84mg、0.3mmol、10当量)を無水DMF(15mL)に溶かし、炭酸カリウム(62mg、0.45mmol、15当量)を懸濁し、その混合物を55℃で12時間攪拌する。減圧下、50℃で溶媒を除去し、残渣を少量のメタノールに再溶解し、シリカゲルのパッド(深さ2cm)に負荷する。未反応のアンモニウム塩をメタノール(1000mL)で洗い去る。生成物を酢酸:メタノール:水(3:2:1、容量)で溶出する。溶媒を減圧下で除去し、生成物をさらに、セファデックスLH−20のカラム(100g)上のクロマトグラフィーに付し、n−ブタノール:水:酢酸(4:5:1、容量、上相)で溶出精製する。減圧下で溶媒を除去し、残渣を少量のメタノールに再溶解し、その溶液をアニオン交換樹脂(アンバーライトIRC400、クロリド形)の短いカラムを通過させ、メタノールで溶出する。もし生成物に不純物が残っているならば、完全な精製工程を繰り返す。溶媒を除去した後、残渣を高真空下で乾燥し、生成物を紫色固体として得る。
1H-NMR: δH (300MHz, CD3OD): 0.78 (bs, 3H), 1.08-1.35 (m, 10H), 1.45-1.59 (m, 6H), 1.63-1.93 (m, 14H), 3.17-3.32 (m, 6H), 3.31 (bs, 33H), 3.84 (bs, 2H), 4.07 (bs, 6H), 6.93 (bs, 2H), 7.09 (d, 2H, 3J=7.5Hz), 7.74 (bs, 2H), 7.88 (d, 2H, 3J=7.5Hz), 8.71 (bs, 8H)。
【0389】
化合物50
三塩化5,10,15−トリス−[4−(5−トリメチルアンモニオ−ペンチルオキシ)−フェニル]−20−(4−ウンデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【0390】
【化70】

【0391】
アルゴン下、化合物2(50mg、0.06mmol)および臭化(5−ブロモプロピル)−トリメチルアンモニウム(174mg、0.6mmol、10当量)を無水DMF(30mL)に溶かし、炭酸カリウム(124mg、0.9mmol、15当量)を懸濁し、その混合物を55℃で12時間攪拌する。減圧下、50℃で溶媒を除去し、残渣を少量のメタノールに再溶解し、シリカのパッド(深さ2cm)に負荷する。未反応のアンモニウム塩をメタノール(1000mL)で洗い去る。生成物を酢酸:メタノール:水(3:2:1、容量)で溶出する。溶媒を減圧下で除去し、生成物をさらに、セファデックスLH−20のカラム(100g)上のクロマトグラフィーに付し、n−ブタノール:水:酢酸(4:5:1、容量、上相)で溶出精製する。減圧下で溶媒を除去し、残渣を最少量のメタノールに再溶解し、その溶液をアニオン交換樹脂(アンバーライトIRC400)の短いカラムを通過させ、メタノールで溶出する。もし生成物に不純物が残っているならば、完全な精製工程を繰り返す。溶媒を除去した後、残渣を高真空下で乾燥し、生成物を紫色固体として得る。
1H-NMR: δH (300MHz, MeOD): 0.71-0.88 (m, 13H), 0.91-1.38 (m, 14H), 1.48-1.81 (m, 12H); -CH2NCH2 および OCH2-長アルキル鎖のシグナルは2.8-3.3 領域の溶媒シグナルと一緒の多重線の部分にある;3.91 (bs, 6H), 6.33 (bs, 2H), 6.86 (bs, 6H), 7.35 (bs, 2H), 7.70 (bs, 6H), 8.65 (bs, 8H)。
【0392】
化合物51
5,10,15,20−テトラキス−(3−ドデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【0393】
【化71】

【0394】
ピロール(0.7mL、10mmol)および3−ドデシルオキシベンズアルデヒド(2.91g、10mmol)を脱ガスジクロロメタン(1000mL)に溶かし、TFA(0.77mL、10mmol)を滴下する。混合物を暗所、室温で17時間攪拌する。DDQ(6.81g、30mmol)を一度で加え、混合物をさらに1時間、室温で攪拌する。混合物をシリカのカラム(400g)で濾過するが、その際、溶出液としてジクロロメタン、次いで、pH値を8に調整するためにトリエチルアミンを加えたジクロロメタンを使用する。もし不純物が生成物に残っているならば、純生成物が得られるまでこの精製工程を繰り返す。
1H-NMR: δH (300MHz, d6-アセトン): 0.80 (bs, 12H), 1.03-1.45 (m, 80H), 1.78 (quint, 8H, 3J=7.5Hz), 4.05 (t, 8H, 3J=7.5Hz), 7.24 (d, 4H, 3J=7.5Hz), 7.49-7.55 (m, 4H), 7.68-7.71 (m, 8H), 8.80 (m, 8H)。
【0395】
実施例B:化合物10固有の抗菌活性−最小阻止濃度(MIC)と最小殺菌濃度(MBC)の測定(決定)
特定の微生物に対する抗菌剤の最小阻止(抑止)濃度(MIC)は、明瞭に目視し得る生物の増殖が観察されない抗菌剤の最小濃度と定義される(最小阻止濃度のFDAの定義)。MICは一般的に段階2倍希釈から伝統的に導かれる濃度を用いて測定する(国家臨床検査室基準委員会(NCCLS)ハンドブックM7−A5;「好気的に増殖する細菌の希釈抗菌剤感受性試験法;承認基準−第5版」第20巻第2号2000年1月)。光不在下での化合物10のMICは、NCCLS(国家臨床検査室基準委員会(NCCLS)ハンドブックM7−A5;上記)の立案したMICプロトコールに基づくプロトコールを用いて検討した。
【0396】
最小殺菌濃度(MBC)は、生存する微生物について、一定の時間(通常24時間)、所定の条件下にインキュベーションした後に、その殆ど(99.9%)を殺滅するために必要な薬物の最小濃度と定義される(国家臨床検査室基準委員会(NCCLS)ハンドブックM26−A;「抗菌剤の殺菌活性を測定する方法;承認済の手引き」第19巻第18号1999年9月)。
【0397】
方法論
黄色ブドウ球菌BAA−44、多剤耐性メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)株をATCCカタログから入手し、本研究に使用した。化合物10について、以下の濃度で検討した:0.764、0.382、0.191、0.0955、0.0478、0.0239、0.0119、0.00597、0.00298、0.00149、0.00075、および0.00037μg/mL。保存液は蒸留水で調製し、段階希釈はこれを用いて使用直前に必要な濃度とした。
【0398】
同じ形態学的タイプの少なくとも3〜5つの良好に分離したコロニーを寒天平板培地から選択し、その増殖分を100mLのイソセンシテスト・ブロスを容れたチューブに移し、そのブロス培養液を37℃で一夜インキュベートした。次いで、培養液を新たなイソセンシテスト・ブロスで最終密度10細胞/mLに希釈し、細胞が指数増殖に入るまで、37℃で振盪培養した。
0.09mLの調整した接種材料(接種源)をポリスチレン製96のウエル(穴)のマイクロタイタープレートの24のウエルそれぞれに移した。増殖培地のみの存在する面前に細菌のみの対照(コントロール)ウエルを含めた(陽性対照として)。
【0399】
希釈段階からの化合物10の保存液0.09mLをマイクロタイタープレートの関連するウエルにピペットで移し、暗所、37℃でインキュベートし、インキュベーションの24時間後にプレートを調べ、各ウエルの濁度を測定した。これらのデータを用いてMICを測定した。
37℃のインキュベーションの24時間後に、目視可能な細菌増殖のないウエル(4ウエルまで)からの液状サンプル25μLを栄養寒天平板上にスポットとして接種し、37℃でさらに24時間インキュベートし、MBCを測定した。
【0400】
結果
結果は光のない状態での化合物10のMICは0.0955μg/mLであり、MBCが0.382μg/mLであることを示した(表1)。
【0401】
【表1】

【0402】
結論
結果は光のない状態での化合物10が、低いMIC値とMBC値を有することを示した。これらのデータは、化合物10が抗生物質として、一部の伝統的な抗生物質よりも相当に効力の強いことを示している(表2参照)。
【0403】
【表2】

【0404】
実施例C:化合物10固有の抗菌活性−一連の対照株と臨床分離株に及ぼす活性
一連の対照株と臨床分離株に及ぼす化合物10の最小阻止濃度(MIC)は、イソセンシテスト(登録商標)ブロスを用いて測定し、最小殺菌濃度(MBC)はコロンビア血液寒天上に継代培養することにより測定した。
【0405】
方法論
1.化合物10の5mg/ml保存液を水で調製した。
2.段階希釈を行い、32〜0.001mg/Lの一連の濃度を作製した。
3.試験微生物はイソセンシテスト(登録商標)ブロスにて一夜増殖させた。
4.次いで、培養液を新たなブロスで希釈して最終濃度10微生物/mlとし、37℃の振盪機に90分間放置した。
5.微生物を含有するブロス培養液90μlをマイクロタイタートレイの1列12ウエルのそれぞれに移し、対照トレイでもそれを繰り返した−トレイあたり4種の微生物。
6.次いで、適切な化合物10の希釈液90μLを微生物含有の各ウエルに加え、最終希釈段階を16mg/Lから0.0005mg/Lとした。
7.該溶液をよく混合し、暗所にて24時間インキュベートした。
8.MICを記録し、増殖を示さなかったウエルから25μLを採り、血液寒天上で継代培養してMBCを測定した。
9.継代培養で一夜インキュベーションした後MBC値を記録した。
10.未接種ブロスおよびブロス+接種の対照は、各トレイの各微生物について実施した。
【0406】
結果
結果は表3に示す。
【0407】
【表3】

【0408】
結論
結果は化合物10が一連のグラム陽性細菌株に対して非常に低いMIC値とMBC値を有することを示している。MIC値とMBC値は方法論の制限内で殆ど一致し、抗菌活性の様式が殺菌性であり、静菌性とは相反することを示唆している。
【0409】
実施例D:ヒト細胞に対する化合物10の毒性試験
方法論
試験化合物につき、セルシステム・バイオテクノロジー社(ドイツ)より購入した正常ヒト表皮角質細胞(NHEK)および正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)を用いて、培養したヒト皮膚細胞に対する毒性を選抜した。
NHEKおよびNHDFの細胞は継代3〜10のものを使用した。細胞は7.5および/または15×10細胞/ウエル(マイクロタイタープレート)を播種し、インキュベーター(37℃、5%CO)内で一夜付着させた。選択した異なる濃度の光増感剤で様々な時間インキュベーションした後、その細胞を暗所で24時間インキュベートした。
【0410】
毒性は標準のMTTアッセイ法により試験した(Mossman et al., 1983, J. Immunological Methods 65: 55-63)。MTTは代謝活性細胞の指標である。ミトコンドリア内の酵素活性によって、着色反応を可視化することができ、それをELISAリーダー(540nm)で測定することができる。細胞の生存度を1に標準化する、すなわち、試験化合物の不存在下にインキュベーションした後の細胞のOD値を1に標準化する。各実験は3回繰り返した。
【0411】
結果
角質細胞と線維芽細胞における毒性研究の結果は、図2および3に示す。データは化合物10が正常ヒト表皮角質細胞または正常ヒト皮膚線維芽細胞に対して、抗菌作用を示すことの分かっている用量で、固有の毒性を示さないということを示している。
【0412】
実施例E:代表的化合物と細菌細胞との結合
化合物8、10および12と大腸菌との結合
大腸菌を化合物8、10または12と様々な濃度(1〜7.5μM)で5分間インキュベートした。インキュベーション期間の終末で、細胞を遠心分離して沈降させ、未結合の試験化合物のフラクションを除いた;細胞ペレットは2%SDS2mlに再懸濁して、細胞溶解液を得た。SDSと一夜インキュベーションした後、細胞結合試験化合物の量を細胞溶解液の蛍光分光分析により見積もった。細胞溶解液中の化合物濃度は発光蛍光スペクトルの最大値の強度を測定し、カリブレーション・プロット上のデータを内挿することにより計算した。細胞結合試験化合物の量は細胞タンパク質1mgあたりの化合物のナノモルで表した。タンパク質濃度はローリー法により測定した(Lowry et al., 1951, J. Biol. Chem. 193: 265-275)。
実験はすべて三重測定で実施し、結果は3つの測定値の平均を標準偏差と共に示す。
細胞から回収したポルフィリンの量は表4に示す。
【0413】
【表4】

【0414】
表3に示した結果は、3種の試験化合物が同様の効率で大腸菌と結合すること、またインキュベーション時間(5分)の終末点で細胞に会合している化合物は、PBSによる3回の洗浄で除去されることを示している。
【0415】
実施例F:安定性検討
化学的安定性
以下のHPLC方法が、本発明の好例化合物の分析のために確立された。
本方法はこれらの化合物に非常に特異的である波長420nmでのUVにより検出することからなる。ポルフィリン構造に関係しない不純物(従って、420nmに吸収を有しない)をモニターするために、全クロマトグラムのUVスペクトルを、一定の実験において、DAD(ダイオードアレイ検出計)により200nmないし700nmでも記録した。
【0416】
カラム:ゾーバックスフェニル(Zorbax Phenyl)250×4.6mm、5μm
溶出液A:1.5gドデシル硫酸ナトリウム+1mLギ酸/1000mL水
溶出液B:1.5gドデシル硫酸ナトリウム+1mLギ酸/200mL水+800mLテトラヒドロフラン
【0417】
【表5】

【0418】
流速:0.4mL/分
検出:420nm
カラム温度:25℃
注入容量:10μl
溶液:ポルフィリン誘導体を溶出液Aに溶かし、最終濃度約0.3mg/mlとした。
好例化合物の典型的保持時間は約8分であった(実行時間18分)。
【0419】
本発明の好例化合物について、定性的ストレス試験を実施した。分析はHPLCおよびLC−MSにて行った。化合物は固体形状、水溶液およびリン酸緩衝食塩水バッファーで調製した溶液としてストレス試験を行った。サンプルは当初7日間50℃でインキュベートし、1サンプルを試験用に取り出した。次いで、サンプルをさらに7日間70℃でインキュベートし、同じようにサンプルを取り出した;サンプルはさらに7日間90℃でインキュベートした。新たに調製した溶液のHPLC分析を実施し、7日、14日および21日インキュベーション後のサンプルと比較した。次いで、クロマトグラムの目視比較を行い、主生成物と副生成物の含量を面積百分比として測定した(図4参照)。
【0420】
クロマトグラムの3Dプロットはさらなるフラグメントの形成について何の兆候も示さない(低波長側にシグナルなし)。
図5のプロットはPBSバッファー中の21日後のサンプルを示すが、このものは最大の分解作用を示した。結果は、数週間80℃に加熱した固形薬物と溶液中薬物についての分析で最小の分解であることを示した。
【0421】
結論
化合物10および20は共に良好な安定性を示すことが判明し、また試験プロトコールのストレス条件下でも非常に安定であった。化合物8は化合物10および12よりも安定性で劣ったが、その証明された安定性は実用上十分であることが判明した。
【0422】
好例化合物の製剤における安定性
3種の好例(代表的)化合物(化合物8、10および12)および1対照化合物(化合物1)の安定性は、暗所に40℃で8週間以上、種々の水ベースの製剤としてポリエチレンバイアル中に保存し、以下のように評価した:
−ラウレス(laureth)硫酸ナトリウム(SLES)+水
−水:エタノール(9:1)
−SLES+水:エタノール(9:1)
【0423】
UVスペクトルは7週間にわたり350〜700nmの範囲で記録し、サンプルの目視評価を8週目で実施した。
その結果は、試験したすべての化合物が8週間にわたり良好な安定性を有することを示している(図6参照)。
化合物8および10についての安定性研究は、17週まで延長した(図7参照)。
【0424】
実施例G:化合物10の急性毒性試験
化合物10は、標準的急性皮膚毒性試験に従い、局所用製剤として3.2mMで試験し、該化合物について臨床的または組織学的毒性が検出されるか否かを測定した。
急性毒性プロトコールは、「OECD指針、化学品試験/第4節−健康への影響試験番号402:急性皮膚毒性」に基づいた。
【0425】
結果および結論
臨床的、巨視的および微視的観察の結果、臨床的毒性問題は認められなかった。いずれの主要器官(皮膚を含む)においても組織学的毒性問題は認められなかった。
結論として、化合物10は急性毒性作用を示すことはない;実際に、該物質またはその媒体の適用に関係する有意な臨床的または病理学的兆候は観察されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式I:
【化1】

[式中、
、X、XおよびXは独立して、水素原子、親油性部分、フェニル基、低級アルキル、アルカリールもしくはアラルキル基、または以下の式:
【化2】

で示されるカチオン性基を表し;
ここで、
は低級アルキレン、低級アルケニレンまたは低級アルキニレンを表し、これらは、低級アルキル、フルオロ、OR、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、NR1011およびN121314から選択される1個以上の置換基により場合によって置換されており;
、RおよびRは独立して、H、アリール、低級アルキル、低級アルケニルまたは低級アルキニルを表し、後者の3つは低級アルキル、アリール、OR、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、NR1011およびN121314から選択される1個以上の置換基により場合によって置換されており;
Zは−CHまたはNであり;及び
、Y、YおよびYは存在しないか、または独立してアリール、低級アルキル、低級アルケニルまたは低級アルキニルを表し、後者の3つは低級アルキル、アリール、OR、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、NR1011およびN121314から選択される1個以上の置換基により場合によって置換されるか、またはそれらが結合するピロール環と組合わさって環状基を形成し;及び
、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13およびR14は独立してHまたは低級アルキルを表し;
ここで、
前記親油性部分は式:−(CH)CH(式中、pは1ないし22の整数である)の飽和の直鎖アルキル基であり;
前記低級アルキル基は、酸素により中断されていてもよい、線状もしくは分枝状の、環状もしくは非環状のC〜C20アルキル基からなる群から独立に選択され;
前記低級アルキレン基は、酸素により中断されていてもよい、線状もしくは分枝状の、環状もしくは非環状のC〜C20アルキレン基からなる群から独立に選択され;
前記低級アルケニル基は、酸素により中断されていてもよい、線状もしくは分枝状の、環状もしくは非環状のC〜C20アルケニル基からなる群から独立に選択され;
前記低級アルケニレン基は、酸素により中断されていてもよい、線状もしくは分枝状の、環状もしくは非環状のC〜C20アルケニレン基からなる群から独立に選択され;
前記低級アルキニル基は、酸素により中断されていてもよい、線状もしくは分枝状の、環状もしくは非環状のC〜C20アルキニル基からなる群から独立に選択され;
前記低級アルキニレン基は、酸素により中断されていてもよい、線状もしくは分枝状の、環状もしくは非環状のC〜C20アルキニレン基からなる群から独立に選択され;
ただし、X、X、XおよびXの少なくとも1つは上記定義のカチオン性基であり、かつX、X、XおよびXの少なくとも一つは水素原子である。]
の化合物を光力学療法光源に曝すことを含まず、かつ音響力学療法超音波源に曝すことを含まないインビボの方法により微生物の増殖を停止または減弱させる医薬の製造における前記化合物の使用。

【図6(A)】
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【図6(B)】
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【図6(C)】
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【図6(D)】
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【図7(A)】
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【図7(B)】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4(A)】
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【図4(B)】
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【図4(C)】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−136527(P2012−136527A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−27117(P2012−27117)
【出願日】平成24年2月10日(2012.2.10)
【分割の表示】特願2007−517450(P2007−517450)の分割
【原出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【出願人】(501082842)デスティニー ファーマ リミテッド (5)
【Fターム(参考)】