説明

ポンプ

【課題】 ポンプ部の液体に気体が混入しても、吸入部から吐出部に液体を確実に送ることができるポンプを提供する。
【解決手段】 容積を拡大することで液体Lを吸入し且つ容積を縮小することで液体Lを吐出するポンプ部1と、ポンプ部1に液体Lを吸入するための吸入部3と、ポンプ部1から液体Lを吐出するための吐出部5と、液体Lがポンプ部1から吸入部3に逆流するのを抑制する吸入側逆止弁4と、液体Lが吐出部5からポンプ部1に逆流するのを抑制する吐出側逆止弁6とを備えるポンプにおいて、ポンプ部6が液体Lを吸入した状態で、ポンプ部1と吐出部5とを連続して連通する連通部6bを備え、連通部6bは、連続的に拡縮しているポンプ部1が縮小する際にはポンプ部1の液体に混入した気体の体積が縮小されているように、大きさが設定されてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容積を拡大することで液体を吸入し且つ容積を縮小することで液体を吐出するポンプ部を備えるポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポンプとして、容積を拡大することで液体を吸入し且つ容積を縮小することで液体を吐出するポンプ部と、ポンプ部に液体を吸入すべく、吸入側逆止弁を介してポンプ部に接続される吸入部と、ポンプ部から液体を吐出すべく、吐出側逆止弁を介してポンプ部に接続される吐出部とを備えるポンプが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
斯かるポンプによれば、ポンプ部が容積を拡大するのに伴って、吸入部からポンプ部に液体が吸入される一方、ポンプ部が容積を縮小するのに伴って、ポンプ部から吐出部に液体が吐出される。斯かる動作を繰り返すことにより、吸入部から吐出部に液体を連続して送ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−299484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に係るポンプにおいて、ポンプ部が容積を拡大して、液体が吸入部からポンプ部に吸入された際に、ポンプ部の液体に気体が混入していることがある。斯かる状態においては、ポンプ部が吸入部とのみ連通しているため、ポンプ部の液体及び気体の圧力は、吸入部の圧力と同じである。
【0006】
その後、ポンプ部が容積を縮小するのに伴って、ポンプ部の液体及び気体の圧力が吸入部の圧力よりも高い圧力である吐出部の圧力まで上昇すると、ポンプ部が吐出部と連通する。そして、斯かる圧力の変化により、液体に混入している気体の体積が縮小するように変化するため、気体が吐出部へ送られずにポンプ部に滞留する状態になる場合がある。斯かる状態になると、吸入部から吐出部に液体を確実に送れない状態になる。
【0007】
さらに、気体がポンプ部の液体に徐々に滞留し続けたり、或いは、一度に大量の気体がポンプ部の液体に混入したりすると、ポンプ部が容積を拡大や縮小するのに伴って、ポンプ部の液体に混入している気体の体積が単に拡大や縮小するだけの状態、所謂、ガスロックと呼ばれる状態に陥る場合もある。斯かるガスロックの状態になると、吸入部から吐出部に液体を全く送れない状態になる。
【0008】
よって、本発明は、斯かる事情に鑑み、ポンプ部の液体に気体が混入しても、吸入部から吐出部に液体を確実に送ることができるポンプを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るポンプは、容積を拡大することで液体を吸入し且つ容積を縮小することで液体を吐出するポンプ部と、ポンプ部に液体を吸入するための吸入部と、ポンプ部から液体を吐出するための吐出部と、液体がポンプ部から吸入部に逆流するのを抑制する吸入側逆止弁と、液体が吐出部からポンプ部に逆流するのを抑制する吐出側逆止弁とを備えるポンプにおいて、ポンプ部が液体を吸入した状態で、ポンプ部と吐出部とを連続して連通する連通部を備え、連通部は、連続的に拡縮しているポンプ部が縮小する際にはポンプ部の液体に混入した気体の体積が縮小されているように、大きさが設定されてなることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るポンプによれば、ポンプ部が容積を拡大すると、吸入部からポンプ部に液体が吸入される。そして、ポンプ部が液体を吸入した状態で、連通部がポンプ部と吐出部とを連通するため、ポンプ部の液体の圧力が吐出部の液体の圧力と略同じになる。その後、ポンプ部が容積を縮小すると、ポンプ部から吐出部に液体が吐出される。
【0011】
このとき、ポンプ部の液体に気体が混入している場合、ポンプ部が容積を縮小しても、ポンプ部の液体及び気体の圧力が吐出部の液体の圧力のまま変化せずに一定であるため、気体の体積も変化せずに一定のままである。これにより、ポンプ部の液体に混入していた気体を、その液体と共に吐出部に送ることができる。
【0012】
また、連通部がポンプ部と吐出部とを連続して連通する。そして、連通部が所定の大きさに設定されているため、ポンプ部が容積を拡大するのに伴って、液体が連通部を介して吐出部からポンプ部に若干量流入されるものの、液体が吸入部からポンプ部に吸入される。これにより、例えば、連通部の構成を簡素化することができるため、装置の設計をフレキシブルに行うことができる。
【0013】
また、本発明に係るポンプにおいては、吐出側逆止弁は、吸入側逆止弁よりも上方側に配置され、ポンプ部は、上端部が吐出側逆止弁に連結され且つ下端部が吸入側逆止弁に連結される定容量の第1の流路部と、容積を拡縮するポンプ室と、一端部が第1の流路部に連結され且つ他端部がポンプ室に連結される定容量の第2の流路部とを備えてもよい。
【0014】
また、本発明に係るポンプにおいては、吐出側逆止弁は、液体が流れる流路部内を移動可能な弁体と、液体が吐出部からポンプ部に逆流するのを抑制すべく、弁体に当接される弁座とを備え、弁座は、弁体との隙間で連通部が形成されるべく、凹部を備えてもよい。
【0015】
斯かる構成のポンプによれば、吐出側逆止弁において、流路部内を移動可能な弁体が弁座に当接することにより、液体が吐出部からポンプ部に逆流するのを抑制できる。そして、弁座には、凹部が設けられるため、弁座と弁体との隙間で連通部が形成される。これにより、連通部を安定して確保することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上の如く、本発明に係るポンプによれば、ポンプ部の液体に気体が混入しても、ポンプ部の液体に混入していた気体を、その液体と共に吐出部に送ることができるため、吸入部から吐出部に液体を確実に送ることができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るポンプの要部断面図を示す。
【図2】同実施形態に係る吐出側逆止弁の要部断面図を示す。
【図3】同実施形態に係る吐出側逆止弁における弁座の全体図であって、(a)は平面図、(b)はA−A線における断面図を示す。
【図4】同実施形態に係るポンプに対する比較例のポンプの作用を説明する図であって、(a)及び(b)はそれぞれ要部断面図を示す。
【図5】同比較例のポンプの作用を説明する図であって、(a)及び(b)はそれぞれ要部断面図を示す。
【図6】同実施形態に係るポンプの作用を説明する図であって、(a)及び(b)はそれぞれ要部断面図を示す。
【図7】同実施形態に係るポンプの作用を説明する図であって、(a)及び(b)はそれぞれ要部断面図を示す。
【図8】本発明の他の実施形態に係る吐出側逆止弁における弁座の全体図であって、(a)は平面図、(b)はB−B線における断面図を示す。
【図9】本発明のさらに他の実施形態に係る吐出側逆止弁の要部断面図を示す。
【図10】同実施形態に係る吐出側逆止弁における弁座の全体図であって、(a)は平面図、(b)はC−C線における断面図を示す。
【図11】本発明のさらに他の実施形態に係るポンプの要部概要図を示す。
【図12】本発明のさらに他の実施形態に係る吐出側逆止弁の作用を説明する図であって、(a)〜(c)はそれぞれ全体断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るポンプにおける一実施形態について、図1〜図7を参酌して説明する。
【0019】
本実施形態に係るポンプは、図1に示すように、液体Lを吸入し且つ吐出するポンプ部1と、ポンプ部1を駆動する駆動部2とを備える。そして、ポンプは、ポンプ部1に液体Lを吸入するための吸入部3と、液体Lがポンプ部1から吸入部3に逆流(流通)するのを抑制する吸入側逆止弁4とを備える。
【0020】
また、ポンプは、ポンプ部1から液体Lを吐出するための吐出部5と、液体Lが吐出部5からポンプ部1に逆流(流通)するのを抑制する吐出側逆止弁6とを備える。なお、ポンプにおいては、吐出部5の液体Lの圧力の方が吸入部3の圧力よりも大きくなるように設定されている。
【0021】
ポンプ部1は、本体部11に対して可動する可動部12と、可動部12の一部を本体部11に固定する固定部13とを備える。本実施形態において、可動部12は、弾性を有する円形状のダイヤフラムとしている。そして、本体部11と固定部13とが可動部12の外周部を挟持することで、可動部12の中央部が本体部11に対して接離するように可動する。
【0022】
また、ポンプ部1は、液体Lが流れる流路として、吸入側逆止弁4と吐出側逆止弁6とを繋ぐ定容積の第1の流路部1aと、可動部12が可動することで容積を変化させるポンプ室1bと、第1の流路部1aとポンプ室1bとを繋ぐ定容積の第2の流路部1cとを備える。そして、ポンプ部1は、ポンプ室1bの容積を拡大することで、第1の流路部1aの下方側から液体Lを吸入すると共に、ポンプ室1bの容積を縮小することで、第1の流路部1aの上方側から液体Lを吐出する。
【0023】
駆動部2は、先端部が可動部12の中央部に接続されるシャフト21と、可動部12の中央部を可動(往復動)させるべく、シャフト21を往復動させる駆動源(図示していない)22とを備える。なお、駆動源22の方式は、特定の方式に限定されるものではなく、機械式、エア式、油圧式、電気式、マグネット式等の何れの方式でもよく、さらに、直接的でも間接的でもよい。
【0024】
吸入側逆止弁4は、液体Lが流れる流路部4a内を移動可能な弁体41,41と、液体Lが吸入部3からポンプ部1に逆流するのを抑制すべく、弁体41に当接される弁座42,42とを備える。そして、吸入側逆止弁4は、弁体41が所定量以上移動するのを規制する規制部43,43と、弁座42と規制部43とを内部で固定し、弁座42及び規制部43間で弁体41を収容させる基部44,44とを備える。
【0025】
即ち、吸入側逆止弁4は、弁体41及び弁座42からなる弁ユニットを二つ備える構成である。また、吸入側逆止弁4は、ポンプ部1と吸入部3との間に配置されている。そして、吸入側逆止弁4の流路部4aは、上端部がポンプ部1の第1の流路部1aの下端部と連結されると共に、下端部が吸入部3の流路部3aの上端部と連結されてなる。
【0026】
さらに、吸入側逆止弁4において、各弁体41は、球状に形成されていると共に、各弁座42は、弁体41と当接することで流路部4aを閉塞すべく、弁体41に対応してテーパ面状に形成される当接部421を備えている。したがって、吸入側逆止弁4は、弁体41が弁座42に当接した状態で、液体Lがポンプ部1から吸入部3に逆流するのを完全に遮断する構成である。
【0027】
また、吸入側逆止弁4において、各規制部43は、弁体41を係止すべく、内方に向けて突出する係止部431,…を複数備えている。そして、複数の係止部431は、互いに離間して配置されることで、流路部4aを形成している。したがって、吸入側逆止弁4は、弁体41が規制部43に係止された状態で、液体Lが吸入部3からポンプ部1に流通するのを許容する構成である。
【0028】
吐出側逆止弁6は、図2及び図3に示すように、液体Lが流れる流路部6a内を移動可能な弁体61,61と、液体Lが吐出部5からポンプ部1に逆流するのを抑制すべく、弁体61に当接される弁座62,62とを備える。そして、吐出側逆止弁6は、弁体61が所定量以上移動するのを規制する規制部63,63と、弁座62と規制部63とを内部で固定し、弁座62及び規制部63間で弁体61を収容させる基部64,64とを備える。
【0029】
即ち、吐出側逆止弁6は、弁体61及び弁座62からなる弁ユニットを二つ備える構成である。また、吐出側逆止弁6は、ポンプ部1と吐出部5との間に配置されている。そして、吐出側逆止弁6の流路部6aは、下端部がポンプ部1の第1の流路部1aの上端部と連結されると共に、上端部が吐出部5の流路部5aの下端部と連結されてなる。
【0030】
さらに、吐出側逆止弁6において、各弁体61は、球状に形成されていると共に、各弁座62は、弁体61と当接すべく、弁体61に対応してテーパ面状に形成される当接部621を備えている。加えて、吐出側逆止弁6の各弁座62は、弁体61が当接部621に当接した状態でも、弁体61との間に隙間を形成すべく、径方向に沿って延びる凹部622を備えている。
【0031】
これにより、吐出側逆止弁6には、ポンプ部1が液体Lを吸入した状態において、ポンプ部1と吐出部5とを連通する連通部6bが形成される。具体的には、連通部6bは、各弁体61が各弁座62の当接部621に当接しても、各弁体61の外面と各弁座62の凹部622との隙間により形成され、ポンプ部1と吐出部5とを連続して連通する。したがって、吐出側逆止弁6は、弁体61が弁座62に当接した状態で、液体Lが吐出部5からポンプ部1に逆流するのを完全に遮断しない構成である。
【0032】
連通部6bは、ポンプ部1の容積を拡大するのに伴って液体Lが吸入部3からポンプ部1に吸入されるように、大きさが設定されてなる。即ち、連通部6bの開口が所定の大きさより大きく設定されると、ポンプ部1の容積を拡大するのに伴って液体Lが吸入部3からポンプ部1に吸入されない構成(液体Lが連通部6bからのみポンプ部1に吸入される構成)となるため、連通部6bは、斯かる構成となるのを防止すべく、所定の大きさに設定されている。
【0033】
具体的には、連通部6bの有効断面積(液体Lの流量を液体Lの流速で除した値)は、吸入部3の流路部3aの有効断面積や、吸入側逆止弁4の流路部4aの有効断面積よりも小さい。より具体的には、ポンプ部1の容積の変化率(シャフト21の移動速度)にもよるが、連通部6bの有効断面積は、吸入部3の流路部3aの有効断面積及び吸入側逆止弁4の流路部4aの有効断面積のうち、小さい方の有効断面積の5%以下となるのが好ましい。
【0034】
また、吐出側逆止弁6において、各規制部63は、弁体61を係止すべく、内方に向けて突出する係止部631,…を複数備えている。そして、複数の係止部631は、互いに離間して配置されることで、流路部6aを形成している。したがって、吐出側逆止弁6は、弁体61が規制部63に係止された状態で、液体Lがポンプ部1から吐出部5に流通するのを許容する構成である。
【0035】
本実施形態に係るポンプの構成については以上の通りである。次に、本実施形態に係るポンプの作用について説明するのに先立って、連通部6b(吐出側逆止弁6の弁座62の凹部622)が無い構成である比較例のポンプの作用について、図4及び図5を参酌して説明する。
【0036】
斯かる比較例のポンプは、吐出側逆止弁6’の各弁座62’の構成のみが本実施形態に係るポンプの構成と相違し、具体的には、吐出側逆止弁6’の各弁座62’の当接部621’に弁体61が当接することで、流路部6aが閉塞され、液体Lが吐出部5からポンプ部1に逆流するのを完全に遮断するように構成されている。なお、図4及び図5において、図1〜図3の符号と同一の符号を付した部分は、本実施形態に係るポンプと同一の構成又は要素を表す。
【0037】
まず、図4(a)に示すように、吐出側逆止弁6’を介して、ポンプ部1から吐出部5に液体Lが吐出された後、図4(b)に示すように、シャフト21が本体部11から離反するように一方側に移動すると、ポンプ部1のポンプ室1bの容積が拡大する。すると、ポンプ室1bが負圧となるため、吐出側逆止弁6’は、弁体61が弁座62’に当接して閉塞されると共に、吸入側逆止弁4は、弁体41が弁座42から離間して開放される。
【0038】
これにより、吸入側逆止弁4を介して、吸入部3からポンプ部1に液体Lが吸入され、ポンプ部1の液体Lの圧力は、吸入部3の液体Lの圧力と同じとなる。このとき、ポンプ部1の液体Lに、気体Gが混入していたとする。その後、図5(a)に示すように、シャフト21が本体部11に接近するように他方側に移動すると、ポンプ部1のポンプ室1bの容積が縮小する。
【0039】
すると、ポンプ部1の液体L及び気体Gの圧力が上昇するため、ポンプ部1の液体Lに混入している気体Gの体積が縮小する。そして、ポンプ部1の液体L及び気体Gの圧力が吸入部3の液体Lの圧力よりも高くなるため、吸入側逆止弁4は、弁体41が弁座42に当接して閉塞される。しかしながら、ポンプ部1の液体L及び気体Gの圧力が吐出部5の圧力よりも低いため、吐出側逆止弁6’は、閉塞されたままである。
【0040】
そして、図5(b)に示すように、シャフト21が本体部11に接近するように他方側にさらに移動すると、ポンプ部1のポンプ室1bの容積がさらに縮小する。それに伴って、ポンプ部1の液体L及び気体Gの圧力が上昇するため、ポンプ部1の液体Lに混入している気体Gの体積も縮小する。しかしながら、依然として、ポンプ部1の液体L及び気体Gの圧力が吐出部5の圧力よりも低いため、吐出側逆止弁6’は、閉塞されたままである。
【0041】
このような状態になると、シャフト21が往復動を繰り返しても、ポンプ部1が容積を拡大や縮小するのに伴って、ポンプ部1の液体Lに混入している気体Gの体積が単に拡大や縮小するだけの状態、所謂、ガスロックと呼ばれる状態となる。そして、ガスロックの状態になると、吸入部3から吐出部5に液体Lを全く送れない状態になる。
【0042】
次に、本実施形態に係るポンプの作用について、図6及び図7を参酌して説明する。まず、図6(a)に示すように、吐出側逆止弁6を介して、ポンプ部1から吐出部5に液体Lが吐出された後、図6(b)に示すように、シャフト21が本体部11から離反するように一方側に移動すると、ポンプ部1のポンプ室1bの容積が拡大する。すると、ポンプ室1bが負圧となるため、吐出側逆止弁6において、弁体61が弁座62に当接すると共に、吸入側逆止弁4は、弁体41が弁座42から離間して開放される。
【0043】
これにより、吸入側逆止弁4を介して、吸入部3からポンプ部1に液体Lが吸入される。そして、このとき、ポンプ部1の液体Lに、気体Gが混入していたとする。なお、吐出側逆止弁6において、弁体61が弁座62に当接しているものの、各弁体61の外面と各弁座62の凹部622との隙間により形成される連通部6bが、ポンプ部1と吐出部5とを連通するため、連通部6bを介して、吐出部5からポンプ部1に液体Lが若干量流入される。
【0044】
それに伴って、ポンプ部1の液体L及び気体Gの圧力が、吸入部3の液体Lの圧力から吐出部5の液体Lの圧力に近づくように上昇するため、図7(a)に示すように、吸入側逆止弁4は、弁体41が弁座42に当接して閉塞されると共に、ポンプ部1の液体Lに混入している気体Gの体積が縮小する。そして、最終的には、ポンプ部1の液体L及び気体Gの圧力が吐出部5の液体Lの圧力と同じになるまで、連通部6bを介して、吐出部5からポンプ部1に液体Lが流入される。
【0045】
その後、ポンプ部1の液体L及び気体Gの圧力が吐出部5の液体Lの圧力まで上昇しているため、図7(b)に示すように、シャフト21が本体部11に接近するように他方側に移動するのに伴って、ポンプ部1のポンプ室1bの容積が縮小すると共に、吐出側逆止弁6は、弁体61が弁座62から離間して開放される。そして、ポンプ部1の液体L及び気体Gの圧力が吐出部5の圧力と同じまま変化せずに一定であるため、液体Lに混入している気体Gの体積も変化せずに一定である。
【0046】
これにより、ポンプ部1の液体Lに混入していた気体Gを、吐出側逆止弁6を介して、液体Lと共に吐出部5に送ることができる。そして、シャフト21が往復動を繰り返すことにより、ポンプ部1が容積を拡大や縮小するのを繰り返すため、吸入部3から吐出部5に液体Lを連続的に送ることができる。
【0047】
以上より、本実施形態に係るポンプによれば、ポンプ部1が容積を拡大すると、吸入部3からポンプ部1に液体Lが吸入される。そして、ポンプ部1が液体Lを吸入した状態で、連通部6bがポンプ部1と吐出部5とを連通するため、ポンプ部1の液体Lの圧力が吐出部5の液体Lの圧力と同じになる。その後、ポンプ部1が容積を縮小すると、ポンプ部1から吐出部5に液体Lが吐出される。
【0048】
このとき、ポンプ部1の液体Lに気体Gが混入した場合、ポンプ部1が容積を縮小しても、ポンプ部1の液体L及び気体Gの圧力が吐出部5の液体Lの圧力のまま変化せずに一定であるため、気体Gの体積も変化せずに一定となる。これにより、ポンプ部1の液体Lに混入していた気体Gを、その液体Lと共に吐出部5に送ることができるため、吸入部3から吐出部5に液体Lを確実に送ることができる。
【0049】
本実施形態に係るポンプによれば、連通部6bがポンプ部1と吐出部5とを連続して連通する。そして、連通部6bが所定の大きさに設定されているため、ポンプ部1が容積を拡大するのに伴って、液体Lが連通部6bを介して吐出部5からポンプ部1に若干量流入されるものの、液体Lが吸入部3からポンプ部1に吸入される。これにより、吸入部3から吐出部5に液体Lを確実に送ることができるだけでなく、例えば、連通部6bの構成を簡素化することができるため、装置の設計をフレキシブルに行うことができる。
【0050】
本実施形態に係るポンプによれば、吐出側逆止弁6において、流路部6b内を移動可能な弁体61が弁座62に当接することにより、液体Lが吐出部5からポンプ部1に逆流するのを抑制できる。そして、弁座62には、凹部622が設けられるため、弁座62と弁体61との隙間で連通部6bが形成される。これにより、弁体61がどの位置で弁座62と当接しても、常に同じ大きさの連通部6bが形成できたり、例えば、固化しやすい液体Lに対しても、連通部6bが詰まるのを抑制できたりする。
【0051】
なお、本発明に係るポンプは、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。また、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0052】
例えば、上記実施形態に係るポンプにおいては、可動部12がダイヤフラムから構成される、即ち、ポンプがダイヤフラムポンプである構成を説明したが、斯かる構成に限られない。具体的には、ポンプは、プランジャーポンプやベローズポンプでもよい。要するに、ポンプは、容積を拡大することで液体Lを吸入し且つ容積を縮小することで液体Lを吐出するポンプ部を備える構成であればよい。
【0053】
また、上記実施形態に係るポンプにおいては、吐出側逆止弁6が弁体61及び弁座62からなる弁ユニットを二つ備える構成を説明したが、斯かる構成に限られない。例えば、吐出側逆止弁6は、弁体61及び弁座62からなる弁ユニットを一つ備える構成でもよく、また、三つ以上備える構成でもよい。
【0054】
また、上記実施形態に係るポンプにおいては、吐出側逆止弁6の弁座62に、径方向に沿って伸びる凹部622が設けられる構成を説明したが、斯かる構成に限られない。例えば、図8に示すように、吐出側逆止弁の弁座623に、テーパ状の当接部624の表面に沿って伸びる凹部625,…が設けられる構成でもよい。
【0055】
また、上記実施形態に係るポンプにおいては、吐出側逆止弁6の弁座62に、一つの凹部622が設けられる構成を説明したが、斯かる構成に限られない。例えば、図8に示すように、吐出側逆止弁の弁座623に、複数(図8においては三つ)の凹部625,…が設けられる構成でもよい。
【0056】
また、上記実施形態に係るポンプにおいては、吐出側逆止弁6の弁座62に、凹部622が設けられることで、弁体61と弁座62との隙間に連通部6bが形成される構成を説明したが、斯かる構成に限られない。例えば、吐出側逆止弁の弁座に、凸部又は凹凸部(凹部及び凸部)が設けられることで、弁体61と弁座との隙間に連通部が形成される構成でもよい。
【0057】
また、上記実施形態に係るポンプにおいては、凹部622が吐出側逆止弁6の弁座62に設けられる構成を説明したが、斯かる構成に限られない。例えば、吐出側逆止弁の弁体に、凹部及び凸部の少なくとも何れか一方が設けられることで、弁体と弁座との隙間に連通部が形成される構成でもよく、また、吐出側逆止弁の弁体及び弁座のそれぞれに、凹部及び凸部の少なくとも何れか一方が設けられることで、弁体と弁座との隙間に連通部が形成される構成でもよい。
【0058】
また、上記実施形態に係るポンプにおいては、吐出側逆止弁6の弁体61が球状に形成される構成、即ち、吐出側逆止弁6がボール逆止弁である構成を説明したが、斯かる構成に限られない。例えば、吐出側逆止弁がダックビル逆止弁であって、弁体と弁座との隙間に連通部が形成される構成でもよい。
【0059】
また、上記実施形態に係るポンプにおいては、吐出側逆止弁6の弁体61と弁座62との隙間に連通部6bが形成される構成を説明したが、斯かる構成に限られない。例えば、連通部は、吐出側逆止弁の弁座と基部との隙間と、吐出側逆止弁の弁座に設けられる貫通部との少なくとも何れか一方から形成される構成でもよい。斯かる構成の一例を、図9及び図10に示す。
【0060】
図9及び図10に示す吐出側逆止弁60の弁座626は、弁体61に当接する当接部627と、基部64との間に隙間を形成するための切欠部628と、切欠部628と液体Lの流路部60aとを連通される貫通部629とを備える。斯かる構成によれば、連通部60bは、弁座626の切欠部628と基部64の内面との間の隙間と、貫通部629とから構成される。なお、連通部は、吐出側逆止弁の弁座と基部との隙間だけで構成されてもよく、また、吐出側逆止弁の弁座に設けられる貫通部だけで構成されてもよい。
【0061】
また、上記実施形態に係るポンプにおいては、吐出側逆止弁6に連通部6bが形成される構成を説明したが、斯かる構成に限られない。例えば、図11に示すように、連通部7には、ポンプ部10の流路部10aと吐出部50の流路部50aとを連通するバイパス流路部71が設けられる構成でもよい。
【0062】
また、上記実施形態に係るポンプにおいては、連通部6bがポンプ部1と吐出部5とを連続して連通する構成を説明したが、斯かる構成に限られない。例えば、連通部は、ポンプ部と吐出部とを断続的に連通する構成でもよく、少なくともポンプ部が液体Lを吸入した状態(ポンプ部の容積が拡大した状態)で、ポンプ部と吐出部とを連通する構成であればよい。斯かる構成の一例を、図11及び図12に示す。
【0063】
図11に係る構成においては、連通部7に、バイパス流路部71を開閉する開閉手段72が設けられ、ポンプ部10が液体Lを吸入した状態で、開閉手段72がバイパス流路部71を開放する構成でもよい。なお、開閉手段72を制御弁(電動弁)とし、開閉手段72の開閉制御を駆動部2の制御(シャフト21の往復動制御)と連動させる構成としてもよい。
【0064】
また、図12に係る吐出側逆止弁600は、流路部600aを開閉する開閉弁である。そして、吐出側逆止弁600は、ポンプ部1が液体Lを吸入する際に流路部600aを閉塞し、ポンプ部1が液体Lを吸入した状態及びポンプ部1が液体Lを吐出する際に流路部600aを開放する構成である。
【0065】
具体的には、吐出側逆止弁600は、弁体61が所定量以上移動するのを規制する第1の規制部63を吐出部5側(図12の上方側)に備えると共にと、弁体61が所定量以上移動するのを規制する第2の規制部65を本体部1側(図12の下方側)にも備える。また、吐出側逆止弁600は、弁体61の直径よりも小さい内径で環状に形成される弾性の封止部66を、一対の規制部63,65間に備える。斯かる吐出側逆止弁600の作用について、説明する。
【0066】
図12(a)に示すように、ポンプ部1から吐出部5に液体Lが吐出される際には、弁体61が第1の規制部63に係止されている。そして、ポンプ部1の容積が拡大するに伴って、ポンプ部1が負圧となるため、弁体61がポンプ部1側に向けて移動する。このとき、液体Lが吸入部3からポンプ部1に吸入される一方、図12(b)に示すように、弁体61が弾性変形する封止部66と係合するため、吐出側逆止弁600の流路部600aが閉塞される。
【0067】
さらに、ポンプ部1の容積が拡大するに伴って、弁体61が弾性変形する封止部66と係合しつつポンプ部1側に移動し、その後、図12(c)に示すように、弁体61が第2の規制部65に係止される位置まで移動する。これにより、吐出側逆止弁600の流路部600aが開放されるため、吐出側逆止弁600の流路部600aは、ポンプ部1が液体Lを吸入した状態で、ポンプ部1と吐出部5とを連通する連通部として機能する。
【0068】
その後、ポンプ部1の容積が縮小するのに伴って、弁体61が吐出部5側に移動し、図12(b)の状態を経由して、図12(a)に示すように、弁体61が第1の規制部63に係止される位置まで移動し、吐出側逆止弁600の流路部600aが開放される。これにより、ポンプ部1から吐出部5に液体Lが吐出される。なお、斯かる構成において、弁体も弾性を有して形成される構成でもよく、また、弁体が弾性を有して形成され且つ封止部が剛性を有して形成される構成でもよい。
【0069】
また、上記実施形態に係るポンプにおいては、ポンプ部1が液体Lを吸入して、ポンプ部1の液体Lの圧力が吐出部5の液体Lの圧力と同じになった後に、ポンプ部1が液体Lを吐出する構成を説明したが、斯かる構成に限られない。例えば、ポンプ部1が液体Lを吸入して、ポンプ部1の液体Lの圧力が所定圧力(吸入部3の液体Lの圧力より高く且つ吐出部5の液体Lの圧力より低い圧力)まで上昇するタイミングで、ポンプ部1が容積を縮小して液体Lを吐出する構成でもよい。
【符号の説明】
【0070】
1…ポンプ部、2…駆動部、3…吸入部、4…吸入側逆止弁、5…吐出部、6…吐出側逆止弁、6b…連通部、61…弁体、62…弁座、622…凹部、L…液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容積を拡大することで液体を吸入し且つ容積を縮小することで液体を吐出するポンプ部と、ポンプ部に液体を吸入するための吸入部と、ポンプ部から液体を吐出するための吐出部と、液体がポンプ部から吸入部に逆流するのを抑制する吸入側逆止弁と、液体が吐出部からポンプ部に逆流するのを抑制する吐出側逆止弁とを備えるポンプにおいて、
ポンプ部が液体を吸入した状態で、ポンプ部と吐出部とを連続して連通する連通部を備え、
連通部は、連続的に拡縮しているポンプ部が縮小する際にはポンプ部の液体に混入した気体の体積が縮小されているように、大きさが設定されてなることを特徴とするポンプ。
【請求項2】
吐出側逆止弁は、吸入側逆止弁よりも上方側に配置され、
ポンプ部は、上端部が吐出側逆止弁に連結され且つ下端部が吸入側逆止弁に連結される定容量の第1の流路部と、容積を拡縮するポンプ室と、一端部が第1の流路部に連結され且つ他端部がポンプ室に連結される定容量の第2の流路部とを備える請求項1に記載のポンプ。
【請求項3】
吐出側逆止弁は、液体が流れる流路部内を移動可能な弁体と、液体が吐出部からポンプ部に逆流するのを抑制すべく、弁体に当接される弁座とを備え、
弁座は、弁体との隙間で連通部が形成されるべく、凹部を備える請求項1に記載のポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−15133(P2013−15133A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−49289(P2012−49289)
【出願日】平成24年3月6日(2012.3.6)
【分割の表示】特願2011−147043(P2011−147043)の分割
【原出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000229760)株式会社タクミナ (25)
【Fターム(参考)】