ポンペ病を治療するための方法
本発明は、ポンペ病を治療するための新しく改良された方法を提供する。具体的には、本発明は、酸α−グルコシターゼ(GAA)をリソソームにマンノース−6−リン酸に非依存的に標的化するための方法および組成物を提供する。その結果、本発明の方法は、より単純、効率的、強力、かつ費用効果がある。したがって、本発明は、ポンペ病のための酵素補充療法の進歩を大幅に発展させる。一態様では、本発明は、対象に治療上有効量の融合タンパク質を投与することによって、対象におけるポンペ病を治療するための方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年2月7日出願の米国仮特許出願第60/900,187号、2007年1月5日出願の米国仮特許出願第60/879,255号、2006年11月13日出願の米国仮特許出願第60/858,514号の利益を請求するものであって、それぞれの内容は、参照することによって、全体として本明細書に組み込まれる。また、本出願は、2005年2月10日出願の米国特許出願第11/057,058号にも関し、その内容は、参照することによって、全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、ポンペ病を治療するための方法および組成物に関する。特に、本発明は、酸α−グルコシターゼをリソソームにマンノース−6−リン酸に非依存的に標的化することによって、ポンペ病を治療するための療法に関する。
【背景技術】
【0003】
ポンペ病は、グリコーゲン−分解リソソーム酵素であるリソソームヒドロラーゼ酸α−グルコシターゼ(GAA)の欠損または機能不全に生じる、常染色体性劣性遺伝病である。GAAの欠損は、ポンペ病患者の多くの組織内にリソソームグリコーゲン蓄積をもたらし、心筋組織および骨格筋組織が最も深刻な影響を受ける。あらゆる形態のポンペ病合計発生率は、1:40,000であると推定され、本疾患は、民族による偏好なく、全群に影響を及ぼす。ポンペ病患者のおよそ3分の1は、急速進行性の致死性乳児発症形態を有する一方、大部分の患者は、緩徐進行性の若年性以降発症形態を呈すると推定される。
【0004】
薬物治療方針、食餌療法、および骨髄移植は、ポンペ病の治療のための手段として採用されているが、有意な成功が伴っていない。近年、酵素補充療法(ERT)が、ポンペ病患者のための新しい希望として提供されている。例えば、組み換えGAAタンパク質薬物であるMyozyme(登録商標)は、2006年、米国およびヨーロッパ両国において、ポンペ病患者における使用の認可を得た。Myozyme(登録商標)は、リソソームへの送達のために、GAAタンパク質の表面上のマンノース−6−リン酸(M6P)に依存する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ポンペ病を治療するための新しく改良された方法を提供する。具体的には、本発明は、酸α−グルコシターゼ(GAA)をリソソームにマンノース−6−リン酸に非依存的に標的化するための方法および組成物を提供する。その結果、本発明の方法は、より単純、効率的、強力、かつ費用効果がある。したがって、本発明は、ポンペ病のための酵素補充療法の進歩を大幅に発展させる。
【0006】
一態様では、本発明は、対象に治療上有効量の融合タンパク質を投与することによって、対象におけるポンペ病を治療するための方法を提供する。融合タンパク質は、ヒト酸α−グルコシターゼ(GAA)(または、ヒトGAAのフラグメント)と、リソソーム標的化ドメインとを含む。リソソーム標的化ドメインは、ヒト陽イオン−非依存性マンノース−6−リン酸受容体をマンノース−6−リン酸に非依存的に結合する。
【0007】
一実施形態では、リソソーム標的化ドメインは、成熟ヒトインスリン様成長因子II(IGF−II)、あるいは成熟ヒトIGF−IIのフラグメントまたは配列変異体を含む。一実施形態では、リソソーム標的化ドメインは、成熟ヒトIGF−IIのアミノ酸8−67を含む。好ましくは、リソソーム標的化ドメインは、成熟ヒトIGF−IIのアミノ酸1および8−67(すなわち、成熟ヒトGAAのΔ2−7)を含む。別の実施形態では、融合タンパク質は、ヒトGAAのアミノ酸70−952を含む。
【0008】
一実施形態では、本発明に好適な融合タンパク質は、野生型ヒトGAAと比較して、低下したマンノース−6−リン酸(M6P)レベルをタンパク質の表面上に有する。さらに別の実施形態では、本発明に好適な融合タンパク質は、機能的M6Pレベルをタンパク質の表面上に有しない。
【0009】
別の実施形態では、治療上有効量は、対象の体重1キログラム当たり約2.5〜20ミリグラムの範囲である(mg/kg)。
【0010】
一実施形態では、融合タンパク質は、静脈内に投与される。他の実施形態では、融合タンパク質は、隔月、毎月、3週間毎、隔週、毎週、毎日、または変動する間隔で投与される。本明細書で使用される「隔月」という用語は、2ヶ月に1回の投与(すなわち、2ヶ月毎に1回)を意味し、「毎月」という用語は、1ヶ月に1回の投与を意味し、「3週間毎」という用語は、3週間に1回の投与を意味し(すなわち、3週間毎に1回)、「隔週」という用語は、2週間に1回の投与を意味し(すなわち、2週間毎に1回)、「毎週」という用語は、1週間に1回の投与を意味し、「毎日」という用語は、1日に1回の投与を意味する。
【0011】
さらなる実施形態では、融合タンパク質は、免疫抑制剤と併用して投与される。免疫抑制剤は、融合タンパク質の任意の投与に先立って、投与可能である。いくつかの実施形態では、ポンペ病を治療するための方法は、対象を耐性化する追加ステップをさらに含む。
【0012】
本発明の別の態様は、対象に治療上有効量の融合タンパク質を投与することによって、対象におけるポンペ病を治療するための方法を提供する。融合タンパク質は、成熟ヒトインスリン様成長因子II(IGF−II)のアミノ酸1および8−67(すなわち、成熟ヒトGAAのΔ2−7)と、ヒト酸α−グルコシターゼ(GAA)のアミノ酸70−952とを含む。好ましい実施形態では、融合タンパク質は、ヒトGAAのアミノ酸と成熟ヒトIGF−IIのアミノ酸との間にスペーサ配列GIy−Ala−Proを含む。
【0013】
一実施形態では、本発明の本態様に好適な融合タンパク質は、野生型ヒトGAAと比較して、低下したマンノース−6−リン酸(M6P)レベルをタンパク質の表面上に有する。さらに別の実施形態では、本発明の本態様に好適な融合タンパク質は、機能的M6Pレベルをタンパク質の表面上に有しない。
【0014】
本発明のさらなる態様は、ポンペ病罹患対象に有効量の融合タンパク質を投与することによって、体内グリコーゲンレベルを低下させるための方法を提供する。融合タンパク質は、ヒト酸α−グルコシターゼ(GAA)(または、ヒトGAAのフラグメント)と、リソソーム標的化ドメインとを含む。リソソーム標的化ドメインは、ヒト陽イオン−非依存性マンノース−6−リン酸受容体をマンノース−6−リン酸に非依存的に結合する。
【0015】
一実施形態では、リソソーム標的化ドメインは、成熟ヒトインスリン様成長因子II(IGF−II)、あるいは成熟ヒトIGF−IIのフラグメントまたは配列変異体を含む。一実施形態では、リソソーム標的化ドメインは、成熟ヒトIGF−IIのアミノ酸8−67を含む。好ましくは、リソソーム標的化ドメインは、成熟ヒトIGF−IIのアミノ酸1および8−67(すなわち、成熟ヒトGAAのΔ2−7)を含む。別の好ましい実施形態では、融合タンパク質は、ヒトGAAのアミノ酸70−952を含む。
【0016】
一実施形態では、本発明の本態様に好適な融合タンパク質は、野生型ヒトGAAと比較して、低下したマンノース−6−リン酸(M6P)レベルをタンパク質の表面上に有する。さらに別の実施形態では、本発明の本態様に好適な融合タンパク質は、機能的M6Pレベルをタンパク質の表面上に有しない。
【0017】
別の実施形態では、有効量は、対象の体重1キログラム当たり約2.5〜20ミリグラムの範囲である(mg/kg)。
【0018】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、静脈内に投与される。他の実施形態では、融合タンパク質は、隔月、毎月、3週間毎、隔週、毎週、毎日、または変動する間隔で投与される。
【0019】
別の態様では、本発明は、リソソームに有効量の融合タンパク質を標的化することによって、哺乳類リソソーム内のグリコーゲンレベルを低下させるための方法を提供する。融合タンパク質は、ヒト酸α−グルコシターゼ(GAA)(または、ヒトGAAのフラグメント)と、リソソーム標的化ドメインとを含む。リソソーム標的化ドメインは、ヒト陽イオン−非依存性マンノース−6−リン酸受容体をマンノース−6−リン酸に非依存的に結合する。
【0020】
一実施形態では、リソソーム標的化ドメインは、ヒトインスリン様成長因子II(IGF−II)、あるいはヒトIGF−IIのフラグメントまたは配列変異体を含む。一実施形態では、リソソーム標的化ドメインは、成熟ヒトIGF−IIのアミノ酸8−67を含む。好ましくは、リソソーム標的化ドメインは、成熟ヒトIGF−IIのアミノ酸1および8−67(すなわち、成熟ヒトGAAのΔ2−7)を含む。別の好ましい実施形態では、融合タンパク質は、ヒトGAAのアミノ酸70−952を含む。
【0021】
別の態様では、本発明は、筋組織に治療上有効量の融合タンパク質を送達することによって、ポンペ病罹患対象の筋組織におけるグリコーゲンレベルを低下させるための方法を提供する。融合タンパク質は、ヒト酸α−グルコシターゼ(GAA)(または、ヒトGAAのフラグメント)と、リソソーム標的化ドメインとを含む。リソソーム標的化ドメインは、ヒト陽イオン−非依存性マンノース−6−リン酸受容体をマンノース−6−リン酸に非依存的に結合する。一実施形態では、筋組織は、骨格筋である。
【0022】
本発明の別の態様は、対象に融合タンパク質の治療上有効量を投与することによって、対象におけるポンペ病に付随する心筋症を治療するための方法を提供する。融合タンパク質は、ヒト酸α−グルコシターゼ(GAA)(または、ヒトGAAのフラグメント)と、リソソーム標的化ドメインとを含む。リソソーム標的化ドメインは、ヒト陽イオン−非依存性マンノース−6−リン酸受容体をマンノース−6−リン酸に非依存的に結合する。
【0023】
さらに別の態様では、本発明は、対象に治療上有効量の融合タンパク質を投与することによって、対象におけるポンペ病に付随する筋疾患を治療するための方法を提供する。融合タンパク質は、ヒト酸α−グルコシターゼ(GAA)(または、ヒトGAAのフラグメント)と、リソソーム標的化ドメインとを含む。リソソーム標的化ドメインは、ヒト陽イオン−非依存性マンノース−6−リン酸受容体をマンノース−6−リン酸に非依存的に結合する。
【0024】
本発明の別の態様は、ヒト酸α−グルコシターゼ(GAA)(または、ヒトGAAのフラグメント)と、リソソーム標的化ドメインとを含む、融合タンパク質を対象に投与することによって、ポンペ病罹患対象における酸α−グルコシターゼ活性を増加させるための方法を提供する。リソソーム標的化ドメインは、マンノース−6−リン酸に非依存的にヒト陽イオン−非依存性マンノース−6−リン酸受容体を結合する。
【0025】
本発明のさらなる態様は、ポンペ病の治療に好適な医薬組成物を提供する。医薬組成物は、ヒト酸α−グルコシターゼ(GAA)(または、ヒトGAAのフラグメント)と、リソソーム標的化ドメインとを含む、治療上有効量の融合タンパク質を含む。リソソーム標的化ドメインは、ヒト陽イオン−非依存性マンノース−6−リン酸受容体をマンノース−6−リン酸に非依存的に結合する。
【0026】
一実施形態では、リソソーム標的化ドメインは、成熟ヒトインスリン様成長因子II(IGF−II)、あるいは成熟ヒトIGF−IIのフラグメントまたは配列変異体を含む。一実施形態では、リソソーム標的化ドメインは、成熟ヒトIGF−IIのアミノ酸8−67を含む。好ましくは、リソソーム標的化ドメインは、成熟ヒトIGF−IIのアミノ酸1および8−67(すなわち、成熟ヒトGAAのΔ2−7)を含む。別の好ましい実施形態では、融合タンパク質は、ヒトGAAのアミノ酸70−952を含む。
【0027】
別の実施形態では、融合タンパク質は、ヒトGAAのアミノ酸70−952と、成熟ヒトIGF−IIのアミノ酸1および8−67(すなわち、成熟ヒトGAAのΔ2−7)とを含む。さらなる実施形態では、融合タンパク質は、成熟ヒトIGF−II(アミノ酸1および8−67)のフラグメントとヒトGAAのフラグメント(アミノ酸70−952)との間にスペーサ配列GIy−Ala−Proをさらに含む。
【0028】
一実施形態では、本発明の本態様に好適な融合タンパク質は、野生型ヒトGAAと比較して、低下したマンノース−6−リン酸(M6P)レベルをタンパク質の表面上に有する。さらに別の実施形態では、本発明の本態様に好適な融合タンパク質は、機能的M6Pレベルをタンパク質の表面上に有しない。
【0029】
さらに別の実施形態では、医薬組成物は、医薬担体を含む。
【0030】
本出願で使用される「ヒト酸α−グルコシターゼ(GAA)」は、哺乳類リソソーム内のグリコーゲンレベルを低下可能な、あるいは1つ以上のポンペ病症状を救済または改善可能である、前駆体野生型形態のヒトGAAまたは機能的変異体を示す。
【0031】
本出願で使用される「約」および「およそ」という用語は、同等物として使用される。約/およその有無を問わず、本出願で使用される任意の数字は、当業者によって理解される任意の正常変動を網羅することを意味する。
【0032】
本発明の他の特徴、目的、および利点は、後述の発明を実施するための最良の形態において明白である。しかしながら、発明を実施するための最良の形態は、本発明の実施形態を示すが、例示のみとして提供され、制限ではないことを理解されたい。本発明の範囲内の種々の変更および修正は、発明を実施するための最良の形態から、当業者に明白となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図面は、例示目的のみであって、本発明を制限するためのものではない。
【図1】GILT標識GAAZC−701の略図を示す図である。
【図2】図2Aは、野生型非標識GAAとGILT標識GAAZC−701とのSDS−PAGEおよびウエスタンブロットを示す図である。図2Aは、銀染色を受けたSDS−PAGEを示す図である。図2Bは、抗GAA抗体を使用したウエスタンブロットを示す図である。図2Cは、抗IGF−II抗体を使用したウエスタンブロットを示す図である。
【図3A】ビオチン化され、Hisで標識された2つの組み換えタンパク質であるp1288およびp1355の略図を示す図であるであり、それぞれ、野生型CI−MPRドメイン10−13および点突然変異体を含有する。
【図3B】銀染色による1288および1355の発現を示す図である。
【図4A】CI−MPRとのGILT標識GAAZC−701相互作用のBiacore(登録商標)分析の例示的な結果を示す図である。図4Aは、IGF−IIの例示的な結合曲線を示す図である。
【図4B】図4Bは、GILT標識GAAZC−701の例示的な結合曲線を示す図である。
【図5】ラットL6筋芽細胞内へのGILT標識GAAZC−701の標識依存性取り込みの例示的な結果を示す図である。
【図6】ラットL6筋芽細胞内への精製されたGILT標識GAAZC−701および野生型非標識GAAの取り込みの例示的な飽和曲線を示す図である。
【図7】ラットL6筋芽細胞内のGILT標識GAAZC−701および野生型非標識GAA(ZC−635)の半減期を反映する、例示的な結果を示す図である。
【図8A】ラットL6筋芽細胞内への取り込み後のGILT標識GAAZC−701のタンパク質分解処理を表す、例示的なウエスタンブロットを示す図である。図8Aは、取り込み後のGILT標識の損失を表す、例示的なウエスタンブロットを示す図である。
【図8B】図8Bは、取り込み後の種々のペプチド種内への野生型およびGILT標識GAAの処理を表す、例示的なウエスタンブロットを示す図である。
【図9】3つの異なる組織培養培地において産出されたGILT標識GAAZC−701の野生型マウス129匹における血清半減期を反映する、例示的な結果を示す図である。赤線は、PF−CHO培地、tl/2=43分に対応し、橙線は、CDM4培地、tl/2=38分に対応し、緑線は、CD17培地、tl/2=52分に対応する。
【図10A】野生型非標識GAA(ZC−635)、GILT標識GAAZC−701、およびGILT標識GAAZC−1026に対するポンペ病マウスの種々の組織における例示的な減衰曲線を示す図である。図10Aは、大腿四頭筋組織における例示的な減衰曲線を示す図である。
【図10B】図10Bは、心組織における例示的な減衰曲線を示す図である。
【図10C】図10Cは、隔膜組織における例示的な減衰曲線を示す図である。
【図10D】図10Dは、肝組織における例示的な減衰曲線を示す図である。
【図11】GILT標識GAAおよびリソソームマーカーLAMP1の共局在化を示す図である。
【図12】GILT標識GAAタンパク質、ZC−701、または非標識GAAのうちのいずれかを一回注射することによって処理されたポンペ病マウスから採取された心組織試料におけるグリコーゲンのクライアントを表す、例示的な結果を示す図である。
【図13A】野生型非標識GAAまたはGILT標識GAAZC−701の注射後のポンペ病マウスの種々の筋組織におけるグリコーゲンのクリアランスを表す、例示的なグラフを示す図である。
【図13B】野生型非標識GAAまたはGILT標識GAAZC−701の注射後のポンペ病マウスの種々の筋組織におけるグリコーゲンのクリアランスを表す、例示的なグラフを示す図である。
【図13C】野生型非標識GAAまたはGILT標識GAAZC−701の注射後のポンペ病マウスの種々の筋組織におけるグリコーゲンのクリアランスを表す、例示的なグラフを示す図である。
【図13D】野生型非標識GAAまたはGILT標識GAAZC−701の注射後のポンペ病マウスの種々の筋組織におけるグリコーゲンのクリアランスを表す、例示的なグラフを示す図である。
【図13E】野生型非標識GAAまたはGILT標識GAAZC−701の注射後のポンペ病マウスの種々の筋組織におけるグリコーゲンのクリアランスを表す、例示的なグラフを示す図である。
【図13F】野生型非標識GAAまたはGILT標識GAAZC−701の注射後のポンペ病マウスの種々の筋組織におけるグリコーゲンのクリアランスを表す、例示的なグラフを示す図である。
【図13G】野生型非標識GAAまたはGILT標識GAAZC−701の注射後のポンペ病マウスの種々の筋組織におけるグリコーゲンのクリアランスを表す、例示的なグラフを示す図である。
【図13H】野生型非標識GAAまたはGILT標識GAAZC−701の注射後のポンペ病マウスの種々の筋組織におけるグリコーゲンのクリアランスを表す、例示的なグラフを示す図である。
【図14】臨床研究手順の詳細な工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、グリコシル化−非依存性リソソーム標的化技術(GILT)に基づいて、ポンペ病を治療するための方法および組成物を提供する。特に、本発明は、酸α−グルコシターゼをリソソームにマンノース−6−リン酸に非依存的に標的化することによって、ポンペ病を治療するための方法および組成物を提供する。
【0035】
本発明の種々の態様は、以下の項で詳述される。項の使用は、本発明を制限することを意味していない。各項は、本発明の任意の態様に適用可能である。本出願では、「または」の使用は、別途記載がない限り、「および/または」を意味する。
【0036】
ポンペ病
ポンペ病は、エネルギーのために使用される蓄積形態の糖類であるグリコーゲンを破壊するために必要とされる酵素である、酸α−グルコシターゼ(GAA)の欠損によって生じる稀な遺伝性疾患である。また、ポンペ病は、グリコーゲン蓄積症II型、GSDII、II型グリコーゲン蓄積症、糖原病II型、酸性マルターゼ欠損症、α−1,4−グルコシターゼ欠損症、びまん性心肥大グリコーゲン病、および全身性糖原病の心臓性病態としても知られる。グリコーゲンの蓄積は、全身の進行性筋衰弱(筋疾患)を生じさせ、特に、心臓、骨格筋、肝臓、呼吸器、および神経系における種々の体内組織に影響を及ぼす。
【0037】
ポンペ病の現れる臨床症状は、疾患発症年齢および残留GAA活性に応じて、大きく異なり得る。残留GAA活性は、グリコーゲン蓄積量および組織分布の両方、ならびに疾患の重症度と相関する。小児発症ポンペ病(正常GAA活性の1%未満)は、最も深刻な形態であって、低血圧、全身性筋衰弱、および肥大型心筋症、ならびに心組織および他の筋組織における大量のグリコーゲン蓄積によって特徴付けられる。通常、心肺不全によって、生後1年以内に死に至る。Hirschhorn et al.(2001)”Glycogen Storage Disease Type II:Acid Alpha−glucosidase(Acid Maltase)Deficiency,”in Scriver et al.,eds.,The Metabolic and Molecular Basis of Inherited Disease.8th Ed.,New York:McGraw−Hill,3389−3420.若年性発症(正常GAA活性の1−10%)および成人発症(正常GAA活性の10−40%)ポンペ病は、さらに臨床的に異種であって、発症年齢、臨床症状、および疾患進行度がより大きく異なる。若年性および成人発症ポンペ病は、概して、重度の心臓障害の欠如、晩年期の発症、および緩徐な疾患進行度によって特徴付けられるが、最終的呼吸器または四肢筋肉障害は、有意な罹患率および死亡率をもたらす。平均寿命は異なり得るが、概して、呼吸器不全によって、死に至る。Hirschhorn et al.(2001)”Glycogen Storage Disease Type II:Acid Alpha−glucosidase(Acid Maltase)Deficiency,”in Scriver et al.,eds.,The Metabolic and Molecular Basis of Inherited Disease.8th Ed.,New York:McGraw−Hill,3389−3420.
酵素補充療法
酵素補充療法(ERT)は、欠落酵素を血流中に注入することによって、酵素欠損を補正するための治療方針である。血液が患者組織をかん流すると、酵素は、細胞によって吸収されて、リソソームに輸送され、酵素は、酵素欠損症によってリソソーム内に蓄積した物質を排除するように作用する。有効なリソソーム酵素補充療法のためには、治療酵素は、蓄積欠陥が発現する組織内の適切な細胞のリソソームに送達されなければならない。従来のリソソーム酵素補充療法は、タンパク質に天然付着する炭水化物を使用して送達され、標的細胞の表面上の特異的受容体に係合する。ある受容体、陽イオン−非依存性M6P受容体(CI−MPR)は、CI−MPRが、ほとんどの細胞型の表面上に存在するため、置換リソソーム酵素を標的化するために特に有用である。
【0038】
「陽イオン−非依存性マンノース−6−リン酸受容体(CI−MPR)」、「M6P/IGF−II受容体」、および「CI−MPR/IGF−II受容体」という用語は、本明細書において同義的に使用され、M6PおよびIGF−IIの両方を結合する細胞受容体を示す。
【0039】
グリコシル化非依存性リソソーム標的化
本発明は、治療酵素をリソソームに標的化するためのグリコシル化非依存性リソソーム標的化(GILT)技術を開発した。具体的には、本発明は、M6Pの代わりに、ペプチド標識を使用して、リソソーム標的化のためにCI−MPRに係合させる。典型的には、GILT標識は、タンパク質、ペプチド、またはCI−MPRをマンノース−6−リン酸に非依存的に結合する他の部分である。有利なことには、本技術は、リソソーム酵素の取り込みのために、正常な生物学的機構を模倣し、さらに、マンノース−6−リン酸非依存的に行う。
【0040】
好ましいGILT標識は、ヒトインスリン様成長因子II(IGF−II)に由来する。ヒトIGF−IIは、CI−MPRの高親和性配位子であって、また、IGF−II受容体とも称される。GILT標識治療酵素のM6P/IGF−II受容体への結合は、エンドサイトーシス経路を介して、タンパク質をリソソームに標的化する。本方法は、タンパク質が分離されると、さらなる修飾が必要ないため、グリコシル化を伴う方法と比べ、簡素化および費用効果を含む、多数の利点を有する。
【0041】
GILT技術およびGILT標識の詳細な説明は、米国特許公開第20030082176号、第20040006008号、第20040005309号、および第20050281805号において見られ、そのすべての教示は、参照することによって、全体として本明細書に組み込まれる。
【0042】
GILT標識GAA
適切なGILT標識をコードするカセットをGAA−コード化配列に融合することによって、本発明は、タンパク質上でCI−MPRを高親和性のM6P非依存性含有量と結合可能な、GILT標識GAAを提供する。さらに、本発明は、各酵素分子がCI−MPRの高親和性配位子を保有する、GAA製剤を提供する。実施例の項で説明されるように、GILT標識GAAは、Biacore(登録商標)分析によるCI−MPRに対し高親和性を有し、従来のリソソーム酵素補充療法よりも体内において治療上より効果的である。
【0043】
GILT標識GAAの優れた効力は、いくつかの臨床効果を提供する。効力の増加は、単に、同様またはより低用量でより有益な臨床予後をもたらすであろう。GILT標識GAAは、より効率的に疾患に罹患した複数の組織に送達可能である。例えば、GILT標識GAAは、特に、より低用量で骨格筋への送達を増加させることが可能である。また、効力の増加は、患者がしばしば被る有害事象を最小限にし、患者内の薬物に対する抗体の産出を軽減するために十分な低用量を可能にし得る。また、効力の増加によって、注入間の間隔を増加させた治療計画を可能にし得る。
【0044】
好ましい実施形態では、GILT標識GAAは、ヒトGAA、あるいは直鎖オリゴ糖内のαl−4結合を開裂する能力を保持するそのフラグメントまたは配列変異体と、ヒトCI−MPRをマンノース−6−リン酸に非依存的に結合するリソソーム標的化ドメインとを含む。好適なリソソーム標的化ドメインは、成熟ヒトIGF−II、あるいは、そのフラグメントまたは配列変異体を含む。
【0045】
IGF−IIは、好ましくは、CI−MPRに特異的に標的化される。特に有用なのは、高親和性を有するCI−MPRを結合するが、評価可能な親和性を有する他のIGF−II受容体の結合は行わない、タンパク質をもたらすIGF−IIポリペプチド内の変異体である。また、IGF−IIは、血清IGF−結合タンパク質への結合を最小限にするように修飾され(Baxter(2000)Am.J Physiol Endocrinol Metab.278(6):967−76)、IGF−II/GILT構築物の隔離を回避可能である。いくつかの研究は、IGF−結合タンパク質への結合のために必要なIGF−II内の残留物を特定している。これらの残留物において変異体を有する構築物は、M6P/IGF−II受容体に結合する高親和性の保持と、IGF−結合タンパク質の低下した親和性とに対して検査可能である。例えば、IGF−IIのPhe 26とSerの置換は、IGFBP−1および−6のIGF−IIの親和性を低下させ、M6P/IGF−II受容体への結合に作用しないと報告されている(Bach et al.(1993)J.Biol.Chem.268(13):9246−54)。また、GIu 9のLys等の他の置換も有利である可能性がある。IGF−IIによって高度に保存されるIGF−Iの領域内の類似変異体は、個別にまたは組み合わせて、IGF−BP結合の大幅な減少をもたらす(Magee et al.(1999)Biochemistry 38(48):15863−70)。
【0046】
代替アプローチは、高親和性によって、M6P/IGF−II受容体に結合可能なIGF−IIの最小領域を同定することである。M6P/IGF−II受容体に結合するIGF−IIに関与する残留物は、ほとんどがIGF−IIの一面上に凝集する(Terasawa et al.(1994)EMBO J.13(23):5590−7)。IGF−II三次構造は、通常、3つの分子内ジスルフィド結合によって維持されるが、IGF−IIのM6P/IGF−II受容体結合表面上のアミノ酸配列を組み込むペプチドは、適切に折り畳まれ、結合活性を有するように設計可能である。そのような最小結合ペプチドは、非常に好ましいリソソーム標的化ドメインである。例えば、好ましいリソソーム標的化ドメインは、ヒトIGF−IIのアミノ酸8−67である。またM6P/IGF−II受容体に結合するアミノ酸48−55周囲の領域に基づいて設計されたペプチドも、望ましいリソソーム標的化ドメインである。別様に、ペプチドのランダムライブラリは、酵母2ハイブリッドアッセイ、またはファージディスプレイ型アッセイのいずれかを介して、M6P/IGF−II受容体を結合する能力に対し検査可能である。
【0047】
GILT標識は、GAAポリペプチドのN−末端またはC−末端に融合可能である。GILT標識は、GAAポリペプチドに直接融合可能であるか、あるいはリンカまたはスペーサによって、GAAポリペプチドから分離可能である。アミノ酸リンカは、天然タンパク質内のその位置に生じるもの以外のアミノ酸配列を組み込み、概して、柔軟であるように、または2つのタンパク質部分間にα−ヘリックス等の構造を介入するように設計される。リンカは、配列Gly−Ala−ProまたはGIy−Gly−Gly−Gly−Gly−Pro等のように長さが比較的短い、あるいは、例えば、10−25アミノ酸等のように長い可能性がある。融合接合部位は、両融合パートナの適切な折り畳みおよび活性を促進し、GAAポリペプチドからのペプチド標識の未成熟分離を防止するように、慎重に選択されるべきである。好ましい実施形態では、リンカ配列は、Gly−Ala−Proである。
【0048】
本発明の方法および組成物において使用可能なGILT標識GAAタンパク質の追加構築物は、米国特許公開第20050244400号に詳細に説明されており、その全体の開示は、参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0049】
GILT標識GAAは、種々の哺乳類細胞株に発現可能であって、ヒト胎児腎臓(HEK)293、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、サル腎臓(COS)、HT1080、Cl0、HeLa、ベビーハムスター腎臓(BHK)、3T3、C127、CV−I、HaK、NS/O、およびL−929細胞を含むが、これらに限定されない。また、GILT標識GAAは、種々の非哺乳類宿主細胞内に発現可能であって、例えば、昆虫(例えば、Sf−9、Sf−21、Hi5)、植物(例えば、マメ科、穀草類、またはタバコ)、酵母(例えば、S.cerevisiae、P.pastoris)、原核生物(例えば、E.CoIi、B.subtilis、および他のBacillus類、Pseudomonas類、Streptomyces類)、あるいは菌類が挙げられる。
【0050】
いくつかの実施形態では、GILT標識GAAは、分泌シグナルペプチドを使用して産出され、融合タンパク質の分泌を促進可能である。例えば、GILT標識GAAは、IGF−IIシグナルペプチドを使用して産出可能である。一般に、IGF−IIシグナルペプチドを使用して産出されるGILT標識GAAは、野生型ヒトGAAと比較して、低下したマンノース−6−リン酸(M6P)レベルをタンパク質の表面上に有する。実施例の項に示されるように、検出可能M6Pは、本発明の例示的な治療的融合タンパク質上に存在しないことが、N−連鎖オリゴ糖分析および機能的取り込みアッセイの両方によって確認されている。
【0051】
本発明のGILT−GAAは、典型的には、約150,000−600,000nmol/時間/mgタンパク質、好ましくは、約250,000−500,000nmol/時間/mgタンパク質の範囲の特異的酵素活性を有する。一実施形態では、GAAは、少なくとも約150,000nmol/時間/mgタンパク質の特異的酵素活性、好ましくは、少なくとも約300,000nmol/時間/mgタンパク質の特異的酵素活性、より好ましくは、少なくとも約400,000nmol/時間/mgの特異的酵素活性、さらにより好ましくは、少なくとも約600,000nmol/時間/mgタンパク質の特異的酵素活性を有する。GAA活性は、GAA4MU単位によって定義される。
【0052】
ポンペ病の治療
本発明の方法は、小児、若年性、または成人発症ポンペ病に罹患する個体を治療する際に等しく有効である。典型的には、本明細書に記載の療法および組成物は、より高いレベルの残留GAA活性(それぞれ、1〜10%または10−40%)を有し、したがって、投与されたGILT標識GAAが免疫学的により耐性となる可能性があるため、若年性または成人発症ポンペ病を有する個体を治療する際により有効である場合がある。理論に制約されることを所望するものではないが、これらの患者は、概して、内因性GAAに対し交差反応性免疫物質(Cross−Reactive Immunologic Material;CRIM)陽性である。したがって、彼らの免疫系は、「異質」タンパク質として、GILT標識GAAのGAA部分を知覚せず、GILT標識GAAのGAA部分に対する抗体を作る可能性が低い。
【0053】
本明細書で使用される「治療する/処理する」または「治療/処理」という用語は、疾患に付随する1つ以上の症状の改善、疾患の1つ以上の症状の発症の防止または遅延、および/または疾患の1つ以上の症状の重症度または頻度を軽減することを示す。例えば、治療は、心臓状態(例えば、拡張終期および/または収縮末期容量の増加、あるいはポンペ病に典型的に見られる進行性心筋症の低減、改善、または防止)、あるいは肺機能(例えば、基準容量を上回る啼泣時肺活量の増加、および/または啼泣時の酸素飽和度低下の正常化)の改善、神経発達および/または運動技能の改善(例えば、AIMSスコアの上昇)、疾患に罹患する個体の組織内のグリコーゲンレベルの低下、あるいはこれらの効果の任意の組み合わせを示す可能性がある。好ましい一実施形態では、治療は、特に、ポンペ病付随心筋症の低減または防止におけるグリコーゲンクリアランスの改善を含む。本明細書で使用される「改善する」、「増加する」、または「低下する」という用語は、本明細書に記載の治療開始前の同一個体における測定値、あるいは本明細書に記載の治療を受けていない対照個体(または複数の対照個体)における測定値等、基準測定に相対する値を示す。「対照個体」は、治療を受ける個体と同一形態のポンペ病(小児、若年性、または成人発症のいずれか)に罹患する個体であって、治療を受ける個体とほぼ同年齢である(治療を受ける個体および対照個体における疾患の段階は同程度であることを保証するため)。
【0054】
治療を受ける個体(また、「患者」または「対象」とも称される)は、ポンペ病(すなわち、小児、若年性、または成人発症ポンペ病のいずれか)を有する、あるいはポンペ病を発症する可能性を有する個体(胎児、幼児、小児、青年、または成人のヒト)である。個体は、残留内因性GAA活性を有する、または測定可能活性を有しない可能性がある。例えば、ポンペ病を有する個体は、約1%未満の正常GAA活性(すなわち、通常、小児発症ポンペ病に付随するGAA活性)であるGAA活性、約1〜10%の正常GAA活性(すなわち、通常、若年性発症ポンペ病に付随するGAA活性)であるGAA活性、または約10〜40%の正常GAA活性(すなわち、通常、成人発症ポンペ病に付随するGAA活性)であるGAA活性を有する可能性がある。個体は、内因性GAAに対しCRIM−陽性またはCRIM−陰性である可能性がある。一実施形態では、個体は、内因性GAAに対しCRIM−陽性である。別の実施形態では、個体は、最近、疾患を有していると診断された個体である。早期治療(診断後可能な限り迅速な治療の開始)は、疾患の影響を最小限にし、治療の効果を最大限にするために重要である。
【0055】
GILT標識GAAの投与
本発明の方法では、GILT標識GAAは、典型的には、単独で、あるいは、本明細書に記載のように、GILT標識GAAを含有する(例えば、疾患の治療のための薬剤の製造において)組成物または薬剤中で、個体に投与される。組成物は、生理的に受容可能な担体または賦形剤によって調合された、医薬組成物を調製可能である。担体および組成物は、無菌にすることが可能である。調合は、投与形態に適合させるべきである。
【0056】
好適な医薬的に受容可能な担体は、水、食塩水(例えば、NaCl)、生理食塩水、緩衝食塩水、アルコール、グリセロール、エタノール、アラビアゴム、植物油、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、炭水化物(ラクトース、アミロース、または澱粉等)、糖類(マンニトール、スクロース、またはその他等)、デキストロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、流動パラフィン、香油、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等、ならびにこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。医薬製剤は、所望に応じて、活性化合物と有害に反応しない、あるいはそれらの活性に干渉しない、助剤(例えば、潤滑剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳剤、浸透圧に作用する塩、緩衝液、着色剤、香味料および/または芳香剤等)と混合可能である。好ましい実施形態では、静脈内投与に好適な水溶性担体が使用される。
【0057】
また、組成物または薬剤は、所望に応じて、小量の湿潤または乳化剤、あるいはpH緩衝液を含有可能である。組成物は、液体溶液、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸薬、カプセル剤、徐放性調合剤、または散剤であることが可能である。また、組成物は、従来の結合剤およびトリグリセリド等の担体によって、坐薬として調合可能である。経口調合剤は、製薬等級のマンニトール、ラクトース、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等の標準的担体を含むことが可能である。
【0058】
組成物または薬剤は、ヒトに投与するために適合される医薬組成物として、常法に従って、調合可能である。例えば、好ましい実施形態では、静脈内投与のための組成物は、典型的には、無菌等張水性緩衝液内の溶液である。また、必要に応じて、組成物は、溶解補助剤および局所麻酔薬を含み、注射部位の疼痛を緩和してもよい。概して、成分は、例えば、密封容器内の凍結乾燥粉末、あるいは活性剤の量を示すアンプルまたはサシェ等の密閉容器内の水非含有濃縮物等の単位投与量形態で、個別に、もしくは混合して供給される。組成物が注入によって投与されるべきである場合、無菌医薬等級の水、生理食塩水、またはデキストロース/水を含有する注入瓶によって分注可能である。組成物が注射によって投与される場合、成分が投与前に混合され得るように、注射のための無菌水または生理食塩水のアンプルを提供可能である。
【0059】
GILT標識GAAは、中性または塩形態で調合可能である。医薬的に受容可能な塩は、遊離アミノ基(塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸等に由来)、および遊離カルボキシル基(ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、二価カチオン、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等に由来)によって形成されるものを含む。
【0060】
GILT標識GAA(または、GILT標識GAA含有組成物または薬剤)は、任意の適切な経路によって投与される。好ましい実施形態では、GILT標識GAAは、静脈内に投与される。他の実施形態では、GILT標識GAAは、心臓または筋肉(例えば、筋肉内)、あるいは神経系(例えば、脳に直接注射、脳室内に、髄腔内に)等の標的組織への直接投与によって投与される。別様に、GILT標識GAA(または、GILT標識GAA含有組成物または薬剤)は、非経口的に、経皮的に、あるいは経粘膜的に(例えば、経口的にまたは経鼻的に)投与可能である。所望に応じて、2つ以上の経路を並行して、使用することができる。
【0061】
GILT標識GAA(あるいは、GILT標識GAAを含有する組成物または薬剤)は、単独で、もしくは抗ヒスタミン剤(例えば、ジフェンヒドラミン)または免疫抑制剤等の他の薬剤、あるいは抗GILT標識GAA抗体に拮抗する他の免疫治療剤と併用して、投与可能である。「併用して」という用語は、薬剤が、GILT標識GAA(または、GILT標識GAA含有組成物)の前、ほぼ同時に、あるいはその後に投与されることを示す。例えば、薬剤は、GILT標識GAA含有組成物内に混合され、それによって、GILT標識GAAと同時に投与可能である。別様に、薬剤は、混合せずに(例えば、同様にGILT標識GAAが投与される、静脈ライン上の薬剤の「ピギーバッキング」送達によって、またはその逆によって)、同時に投与可能である。別の実施例では、薬剤は、個別に(例えば、混合せずに)であるが、GILT標識GAAの投与の短時間フレーム内(例えば、24時間以内)で投与可能である。好ましい一実施形態では、個体が、内因性GAAに対しCRIM−陰性である場合、GILT標識GAA(または、GILT標識GAA含有組成物)は、抗GILT標識GAA抗体の量を低減する、あるいはその産出を防止するように設計された免疫抑制または免疫治療計画と併用して投与される。例えば、血友病患者において使用されるものと類似のプロトコル(Nilsson et al(1988)N.Engl.J.Med.318:947−50)を使用して、抗GILT標識GAA抗体を減少させることが可能である。また、そのような計画は、内因性GAAに対しCRIM−陽性であるが、抗GILT標識GAA抗体を有する、またはその危険性を有する個体において使用可能である。特に好ましい実施形態では、免疫抑制または免疫治療計画は、抗GILT標識GAA抗体の産出の可能性を最小限にするために、GILT標識GAAの最初の投与前に開始される。
【0062】
GILT標識GAA(または、GILT標識GAAを含有する組成物または薬剤)は、治療上有効量(すなわち、規則的間隔で投与されると、上述のように、疾患に付随する症状を改善する、疾患の発症を防止あるいは遅延させる、および/または疾患の症状の重症度もしくは頻度も同様に軽減する等、疾患を治療するために十分な投与量)で投与される。
【0063】
疾患の治療のために治療上有効となる投与量は、疾患の影響の特性および範囲に依存し、標準的臨床技術によって判定可能である。さらに、体外または体内アッセイは、随意に、以下に例示されるように、最適用量の範囲の同定を補助するために採用されてもよい。また、採用される正確な用量は、投与の経路および疾患の重篤度に依存し、施術者の判定および各患者の状況に従って、決定されるべきである。有効用量は、体外または動物モデル試験系に由来する用量応答曲線から推定されてもよい。治療上有効投与量は、例えば、約0.1〜1mg/kg、約1〜5mg/kg、約5〜20mg/kg、約20〜50mg/kg、または20〜100mg/kgであることが可能である。特定の個体のための有効投与量は、個体の必要性に応じて、経時的に変化可能である(例えば、増加または減少)。例えば、物理的疾病またはストレスの時、あるいは抗GILT標識GAA抗体が存在または増加する場合、もしくは疾患症状が悪化する場合、投与量は増大可能である。
【0064】
治療上有効量のGILT標識GAA(または、GILT標識GAAを含有する組成物または薬剤)は、疾患の影響の特性および範囲に応じて規則的間隔で、かつ継続的に投与される。本明細書で使用される、ある「間隔」での投与は、治療上有効量が、定期的に投与される(1回量とは区別されるように)ことを示す。間隔は、標準的臨床技術によって判定可能である。好ましい実施形態では、GILT標識GAAは、隔月、毎月、毎月2回、3週間毎、隔週、毎週、毎週2回、毎週3回、または毎日投与される。単一個体のための投与間隔は、固定間隔である必要はないが、個体の必要性に応じて、経時的に変化可能である。例えば、物理的疾病またはストレスの時、あるいは抗GILT標識GAA抗体が存在または増加する場合、もしくは疾患症状が悪化する場合、投与間の間隔は減少可能である。
【0065】
本明細書で使用される「隔月」という用語は、2ヶ月に1回(すなわち、2ヶ月毎に1回)の投与を意味し、「毎月」という用語は、1ヶ月に1回の投与を意味し、「3週間毎」という用語は、3週間に1回(すなわち、3週間毎に1回)の投与を意味し、「隔週」という用語は、2週間に1回(すなわち、2週間毎に1回)の投与を意味し、「毎週」という用語は、1週間に1回の投与を意味し、「毎日」という用語は、投与1日に1回の投与を意味する。
【0066】
さらに、本発明は、本明細書に記載のように、本明細書に記載の方法等による、ポンペ病の治療用の組成物の投与のための指示を含むラベル付き容器(例えば、バイアル、瓶、静脈内投与用の袋、注射器等)内のヒトGILT標識GAAを含む医薬組成物に関する。
【0067】
本発明は、以下の実施例によって、さらに、かつより具体的に説明される。しかしながら、実施例は、例証目的のために含まれるものであって、制限のためのものではない。
【実施例】
【0068】
実施例1 組み換え野生型GAAおよびGILT標識GAAの産出
プラスミド
全長野生型ヒトGAAをコードするDNAは、分離され、組み換えヒトGAAの産出のために、発現ベクター内に挿入される。完全ヒトGAAアミノ酸1−952をコードするDNAカセット(以下、「カセット635」)は、以下のPCRプライマーを使用して、IMAGEクローン4374238(Open Biosystems)から派生した。
GAA13:5’−GGAATTCCAACCATGGGAGTGAGGCACCCGCCC(配列番号1)
および
GAA27:5’−GCTCTAGACTAACACCAGCTGACGAGAAACTGC(配列番号2)。
カセット635は、EcoRIおよびXbaIによって消化され、Klenow DNAポリメラーゼによる処理によって鈍化され、次いで、発現ベクターpCEP4のKlenow処理されたHindIII部位(Invitrogen)内に結紮され、プラスミドp635を生成する。以下、ZC−635は、野生型非標識GAAタンパク質と称する。
【0069】
組み換えGILT標識GAAZC−701の産出のためのDNAカセット(以下、「カセット701」)は、アミノ酸A70に対応するGAA配列の上流に結合された以下のN−末端配列を除き、カセット635と同様に調製した。
GAATTCACACCAATGGGAATCCCAATGGGGAAGTCGATGCTGGTGCTTCT
CACCTTCTTGGCCTTCGCCTCGTGCTGCATTGCTGCTCTGTGCGGCGGGGA
GCTGGTGGACACCCTCCAGTTCGTCTGTGGGGACCGCGGCTTCTACTTCAG
CAGGCCCGCAAGCCGTGTGAGCCGTCGCAGCCGTGGCATCGTTGAGGAGT
GCTGTTTCCGCAGCTGTGACCTGGCCCTCCTGGAGACGTACTGTGCTACCC
CCGCCAAGTCCGAGGGCGCGCCG(配列番号3)。
【0070】
カセット701は、EcoRIおよびXbaIによって消化され、Klenow DNAポリメラーゼによる処理によって鈍化され、次いで、発現ベクターpCEP4のKlenow処理されたHindIII部位内に結紮され、プラスミドp701を生成する。以下、ZC−701は、p701プラスミドによってコードされるGILT標識GAAタンパク質と称する。図1は、GILT標識GAAZC−701の略図を示し、分泌によって損失するIGF−IIシグナルペプチドを表す。したがって、分泌形態(すなわち、対象に投与されるように)では、ZC−701は、ヒトIGF−IIのアミノ酸1および8−67(すなわち、成熟ヒトIGF−IIのΔ2−7)と、スペーサ配列GIy−Ala−Proと、ヒトGAAのアミノ酸70−952とを含む。全長アミノ酸配列は、以下に示される。スペーサ配列は、下線が引かれている。スペーサ配列に対する配列N−末端は、ヒトIGF−IIのアミノ酸1および8−67(アミノ酸1を指す矢印)を反映し、スペーサ配列に対する配列C−末端は、ヒトGAAのアミノ酸70−952を反映する。
↓
MGIPMGKSMLVLLTFLAFASCCIAALCGGELVDTLQFVCGDRGFYFSRPASRVSRRS
RGIVEECCFRSCDLALLETYCATPAKSEGAPAHPGRPRAVPTQCDVPPNSRFDCAPDK
AITQEQCEARGCCYIPAKQGLQGAQMGQPWCFFPPSYPSYKLENLSSSEMGYTATLT
RTTPTFFPKDILTLRLDVMMETENRLHFTIKDPANRRYEVPLETPRVHSRAPSPLYSVE
FSEEPFGVIVHRQLDGRVLLNTTVAPLFFADQFLQLSTSLPSQYITGLAEHLSPLMLST
SWTRITLWNRDLAPTPGANLYGSHPFYLALEDGGSAHGVFLLNSNAMDVVLQPSPA
LSWRSTGGILDVYIFLGPEPKSVVQQ YLDVVGYPFMPPYWGLGFHLCRWGYSSTAIT
RQVVENMTRAHFPLDVQWNDLDYMDSRRDFTFNKDGFRDFPAMVQELHQGGRRY
MMIVDPAISSSGPAGSYRPYDEGLRRGVFITNETGQPLIGKVWPGSTAFPDFTNPTAL
AWWEDMVAEFHDQVPFDGMWIDMNEPSNFIRGSEDGCPNNELENPPYVPGVVGGT
LQAATICASSHQFLSTHYNLHNLYGLTEAIASHRALVKARGTRPFVISRSTFAGHGRY
AGHWTGDVWSSWEQLASSVPEILQFNLLGVPLVGADVCGFLGNTSEELCVRWTQLG
AFYPFMRNHNSLLSLPQEPYSFSEPAQQAMRKALTLRYALLPHLYTLFHQAHVAGET
VARPLFLEFPKDSSTWTVDHQLLWGEALLITPVLQAGKAEVTGYFPLGTWYDLQTV
PIEALGSLPPPPAAPREPAIHSEGQWVTLPAPLDTINVHLRAGYIIPLQGPGLTTTESRQ
QPMALAVALTKGGEARGELFWDDGESLEVLERGAYTQVIFLARNNTIVNELVRVTS
EGAGLQLQKVTVLGVATAPQQVLSNGVPVSNFTYSPDTKVLDICVSLLMGEQFLVS
WC(配列番号4)。
【0071】
第2のGILT標識GAAカセットZC−1026は、同様に構築された。ZC−1026は、ヒトIGF−IIのアミノ酸1および8−67と、スペーサ配列Thr−Glyと、ヒトGAAのアミノ酸70−952とを含む。
【0072】
これらのプラスミドを使用して、組み換えタンパク質の産出のための懸濁HEK293細胞を一過性にトランスフェクトした。プラスミドは、製造業者(Invitrogen)によって記載されるように、懸濁FreeStyle(登録商標)293−F細胞内にトランスフェクトされた。要するに、細胞は、旋回式振盪機上のポリカーボネート振盪フラスコ内のOpti−MEM(登録商標)I培地(Invitrogen)において、37℃および8%CO2で成長させた。細胞は、製造業者(Invitrogen)によって記載されるように、濃度1×106細胞/mlに調節され、次いで、1:1:1の比率のml細胞:μg DNA:μl 293fectin(登録商標)でトランスフェクトされた。培養物は、トランスフェクション後5〜10日で採取され、細胞は、遠心分離と、0.2μmボトルトップフィルタを通した濾過とによって、除去された。上清は、−80℃で保存した。
【0073】
別様に、カセット701は、GPEx(登録商標)レトロベクター発現系(Cardinal Health)内に組み込まれた。プロセスは、米国特許第6,852,510号に記載されており、その開示は、参照することによって本明細書に組み込まれる。カセット701を含有するGPEx(登録商標)レトロベクター発現系を使用して、組み換えGILT標識GAAの産出のために、安定したCHO細胞株を生成した。また、カセット701は、GPEx(登録商標)レトロベクター発現系内に組み込み、組み換えGILT標識GAAの産出のために、安定したHEK293細胞株を生成するために使用可能である。
【0074】
GILT標識GAAの精製
出発物質は、上述のように、−80℃の保存から解凍させた哺乳類細胞培養上清であった。酢酸ナトリウム(pH4.6)を添加し、最終濃度100mMを達成し、硫酸アンモニウムを添加し、最終濃度0.75Mを達成した。物質を遠心分離して、沈殿物を除去し、0.8/0.2μm AcroPak(登録商標)500カプセル(Pall、カタログ#12991)で濾過した。
【0075】
濾過された物質は、HIC Load Buffer(50mM NaAc pH4.6、0.75M AmSO4)によって調製されたPhenyl−Sepharose(登録商標)6Low−Sub Fast−Flow(GE Healthcare)カラム上に装填した。カラムは、10カラム体積のHIC Wash Buffer(50mM NaAc pH5.3、0.75M AmSO4)で洗浄し、5カラム体積のHIC Elution Buffer(50mM NaAc pH5.3、20mM AmSO4)で溶出した。
【0076】
貯留された留分は、QXL Load Buffer(20mM Histidine pH6.5、50mM NaCl)内に広く透析され、次いで、Q Sepharose(登録商標)XLカラム(GE Healthcare)上に装填した。カラムは、10カラム体積のQXL Equilibration Bufferによって洗浄し、10カラム体積のQXL Elution Buffer(20mM Histidine pH6.5、150mM NaCl)で溶出した。ある場合には、QXLカラムから貯留された留分は、30から40mg/mlのタンパク質濃度に濃縮され、次いで、PBS pH6.2に平衡された2.6×90cm Ultrogel AcA 44カラム上に装填した。装填体積は、5から7.5ml(カラム体積の1〜1.5%)とした。カラムは、PBS pH6.2中で0.4ml/分で作動させ、4mlの留分を回収した。
【0077】
精製された非標識GAAおよびGILT標識GAAは、図2A−図2Cに示される。図2Aは、銀染色後のSDS−PAGEを示す。図2Bは、抗GAA抗体を使用したウエスタンブロットを示す。図2Cは、抗IGF−II抗体を使用したウエスタンブロットを示す。
【0078】
(実施例2)CI−MPRに対するGILT標識GAAの親和性
CI−MPRに対するGILT標識GAAZC−701の結合親和性は、Biacore(登録商標)表面プラズモン共鳴アッセイを使用して判定した。それぞれ、野生型CI−MPRドメイン10−13および点突然変異体を含有する2つのビオチン化およびHisで標識された組み換えタンパク質は、標準的分子技術に従って作製した。2つの組み換えタンパク質の略図は、図3Aに示される。プラスミドpl288は、IGF−IIシグナルペプチドに続き、ポリ−His標識、Biotin ASドメイン、野生型CI−MPRドメイン10−13をコードする配列を含有する。プラスミドp1355は、IGF−IIシグナルペプチドに続き、ポリ−His標識、Biotin ASドメイン、受容体IGF−IIに対する受容体の親和性を効果的に低下させる点変異体I1572Tを有するCI−MPRドメイン10−13をコードする配列を含有する。2つの組み換えタンパク質に関する特異的DNAおよびアミノ酸配列は、以下に示される。
【0079】
HIS−BIOTIN−CI−MPR DOMAINS 10−13
【0080】
【数1】
HIS−BIOTIN−CI−MPR DOMAINS 10−13PROTEIN SEQUENCE
【0081】
【数2】
HIS−BIOTIN−CI−MPR DOMAINS 10−13 Il 572T(下線の配列変化は、点変異体I1572Tと、診断SpeI部位を生成するサイレント変異体S 1573をもたらす)
【0082】
【数3】
HIS−BIOTIN−CI−MPR DOMAINS 10−13 I1572T PROTEIN SEQUENCE(I1572T変異体は下線部)
【0083】
【数4】
組み換えタンパク質は、懸濁HEK293細胞(図3B参照)内に一時的に発現した。タンパク質は、培養上清から回収し、ニッケルアガロースによって精製し、次いで、ビオチン化した。具体的には、プラスミドp1288およびp1355によってトランスフェクトされた細胞からの上清は、His6で標識された受容体ドメインタンパク質の精製のために、製造業者によって指示されるように、1ml His Gravitrap(登録商標)カラム(GE Healthcare)に適用した。溶出液を濃縮し、10mM Tris pH8および25mM NaCl緩衝液に交換し、次いで、タンパク質は、製造業者(Avidity)によって記載されるように、25μl BiomixA、25μl BiomixB、および4μl BirA酵素を有する205μl総体積中70μg受容体を含有する反応において、BirA酵素によってビオチン化された。BirA酵素処理は、30℃で1.5時間行った。反応液は、次いで、20倍でHis Gravitrap結合緩衝液(GE Healthcare)中に希釈し、BirA酵素および遊離ビオチンの除去のために、His Gravitrap(登録商標)カラムに再適用した。溶出液は、4℃で保存した。
【0084】
表面プラズモン共鳴分析
表面プラズモン共鳴測定はすべて、Biacore(登録商標) 3000機器を使用して、25℃で行った。SAセンサチップおよび界面活性剤P20は、Biacore(Piscataway、NJ)から取得した。緩衝液はすべて、Nalgene(登録商標)濾過ユニット(0.2μm)を使用して濾過し、室温に平衡化し、使用直前に脱気した。タンパク質試料は、13,000xgで15分間遠心分離し、試料内に存在し得るあらゆる微粒子を除去した。
【0085】
精製され、ビオチン化された野生型(1288FS)または変異体(1355FS)組み換えCI−MPR DOMAINS 10−13(Dom10−13)タンパク質は、ストレプトアビジンが共有結合しているデキストランマトリクスを含有するBiacore(登録商標)ストレプトアビジン(SA)チップ上に固定した。SAセンサチップのドッキング後、SAチップを脱イオン水で2回洗浄した。カップリングされるべき流動細胞は、50mM NaOH/1 M NaClを含有する緩衝液60mlを流速20ml/分で注入することによって、調整した。チップは、上述のように、H2Oで洗浄した。チップは、次いで、上述のように、カップリング緩衝液(10mM HEPES pH7.4/100mM NaCl)で洗浄した。ビオチン化されたDom10−13タンパク質1355FSおよび1288FSは、カップリング緩衝液中で20ng/mlおよび4ng/mlに希釈した。流動細胞(FC)1&2は、FC3&4よりも高密度でカップリングした。FC1およびFC3は、変異体Dom10−13構築物によって固定し、基準表面(すなわち、FC1からの反応は、FC2からサブトラクトし、FC3からの反応は、FC4からサブトラクトした)として使用した。FC2およびFC4は、野生型Dom10−13構築物によって固定した。FC1は、流速10ml/分で1355FS(20ng/ml)を50ml注入することによってカップリングし、FC2は、流速10ml/分で1288FS(20ng/ml)50mlを注入することによってカップリングし、最終カップリングレベルおよそ5,000共鳴単位(RU)を達成した。FC3は、流速10ml/分で1355FS(4ng/ml)50mlを注入することによってカップリングし、FC2は、流速10ml/分で1288FS(4ng/ml)を50mlを注入することによってカップリングし、最終カップリングレベルおよそ1,000RUを達成した。これらのカップリングレベルは、800RU(FC2−1)または160RU(FC4−3)のIGF−IIのための理論Rmaxと、10,000RU(FC2−1)または2,000RU(FC4−3)のGAA−GILTのための理論Rmaxとを提供する。Dom10−13構築物を含有するカップリング緩衝液を50ml注射後、チップは、カップリング緩衝液のみで洗浄した(流速10ml/分の10ml注射)。非結合ストレプトアビジン結合部位の保持は、流速10μl/分でのビオチン(10mM)の2つの連続した10ml注射によって、ビオチンで飽和した。
【0086】
カップリング後、流動細胞は、泳動緩衝液(10mM HEPES pH7.0、150mM NaCl、および0.005%(v/v)界面活性剤P20)中で平衡化した。固定されたDom10−13構築物の活性は、IGF−II単独に対する受容体の新和性を測定することによって判定した。IGF−II(134mM)は、最初に、泳動緩衝液中の最終濃度1、5、10、25、50、75、100、250、および500nMに希釈した。各IGF−II濃度は、流速40ml/分で2分間チップ上に注入し(すなわち、会合相)、その後、泳動緩衝液単独で2分間の注射(流速=40ml/分)を行った(すなわち、解離相)。表面は、流速10ml/分で、10mM HClの10ml注射によって再生した。再生後、流速を40ml/分に上昇させ、チップを次の注射の開始前に1分間平衡化させた。
【0087】
同様に、GILT標識GAA構築物701は、Dom10−13組み換え受容体に対するその結合親和性のためにアッセイした。構築物は、泳動緩衝液中の最終濃度1、5、10、25、50、75、100、250、および500nMに希釈し、IGF−IIに対し上述のように注入した。IGF−II濃度曲線を、GILT標識GAAを構築後に、固定されたDom10−13表面の完全性を試験するために、描いた。
【0088】
平衡状態での反応の平均は、各検体濃度に対し判定し、結果として生じる平衡共鳴単位は、濃度に対しプロット化した。データは、BIA評価(登録商標)ソフトウェア(バージョン4.1)を使用して、定常状態親和性モデルに適合させた。また、解離定数は、1:1結合等温モデルを使用して判定した。反応データはすべて、Myszka(2000)Methods Enzymol.323:325−340に記載されるように、二重参照され、バルク屈折率変化の寄与に対する対照(すなわち、泳動緩衝液の単独注射)を変異体Dom10−13によって固定された流動細胞と並行して行い、すべての結合センサグラムからサブトラクトした。図4A−図4Bは、例示的な濃度曲線であって、CI−MPRに結合するIGF−IIおよびGILT標識GAAZC−701のBiacore(登録商標)分析を示す。図4Aは、IGF−IIの結合曲線を示す。図4Bは、GILT標識GAAZC−701の結合曲線を示す。両流動細胞対の結果(すなわち、FC2−1およびFC4−3)を比較した(図4B)。
【0089】
これらの実験結果は、GILT標識GAAZC−701が、CI−MPRに対し親和性を有し、IGF−IIの親和性の約0.8であることを示す(表1)。これらのデータは、GILT標識GAAが、IGF−IIの親和性と比較して、CI−MPRに対し高親和性を有することを示す。CI−MPRに対するIGF−IIの測定された親和性の絶対値は、27nMであったが、IGF−IIは、天然受容体よりも約10倍低い親和性を有する受容体のドメイン10−13に結合することが、以前に文献に報告されていた。Linnell et al.(2001)J Biol Chem.Jun 29;276(26):23986−91。したがって、天然受容体に対するGILT標識GAAの結合親和性もまた、10倍高いと予測される。
【0090】
表1.
【0091】
【表1】
(実施例3)N−結合型オリゴ糖分析は、ZC−701のM6P欠落を示唆
N−結合型オリゴ糖分析を行い、脱グリコシル化に続き、蛍光検出によるHPLC分析の組み合わせを使用して、ZC−701に対するオリゴ糖プロファイルを判定した(Blue Stream Laboratories)。
【0092】
糖タンパク質試料からのN−結合型炭水化物の開裂は、各試料に対しおよそ100μgのタンパク質を使用して、1:100(酵素対基質)の比率でN−グリカナーゼによって行った。一旦放出させ、冷エタノールを使用してグリカンを抽出し、遠心分離によって乾燥させた。回収されたオリゴ糖は、シアノホウ水素化ナトリウムの存在下、かつ酸性条件下、2−アミノベンズアミド(2−AB)によって標識した。誘導体化ステップに続き、試料中に残った過剰染料および他の反応試薬は、Glycoclean(R)S試料濾過カートリッジ(Prozyme)によって除去した。
【0093】
以下の条件を使用してHPLC−FLDによるN結合型オリゴ糖の分析を行なった:移動相A:65%アセトニトリル/35%移動B;移動相B:250mMギ酸アンモニウム、pH4.4;検出:蛍光(Ex:330nm、Em:420nm);HPLC勾配。
【0094】
クロマトグラフのピークを積分し、ピーク保持時間に基づいて、比較した。結果は、総ピーク面積当たりの各糖型の%面積として報告した。本分析から、ZC−701上に存在する優勢オリゴ糖構造は、高マンノース構造であって、一部は複合鎖構造であることが判定された。しかしながら、マンノース−6−リン酸構造は検出されなかった。
【0095】
(実施例4)取り込みアッセイは、ZC−701表面上のM6Pの機能的欠如を実証
哺乳類細胞内への組み換えGAAの取り込みは、ほとんどの哺乳類細胞型の表面上に存在するCI−MPRとの相互作用によって媒介される。取り込みは、タンパク質表面のオリゴ糖上のM6Pの存在に依存する。
【0096】
対照的に、ZC−701は、タンパク質のN−末端におけるIGF−II由来標識の存在によって、CI−MPRに対し高親和性を有する。種々の実験では、ZC−701は、哺乳類細胞内への評価可能なM6P−依存性取り込みを示さず、ZC−701表面上のM6Pの機能的欠如を実証することを示した。
【0097】
細胞ベースの取り込みアッセイを行い、標的細胞に侵入するGILT標識または非標識GAAの能力を実証した。ラットL6筋芽細胞は、取り込み24時間前に、24−ウェルプレート内にウェル当たり密度1×105細胞で載置した。実験開始時、培地を細胞から除去し、2〜500nMの濃度の標識または非標識GAAを含有する0.5mlの取り込み培地と交換した。取り込みの特異性を実証するために、いくつかのウェルは、さらに、競合剤M6P(5mM最終濃度)および/またはIGF−II(18μg/ml最終濃度)を含有した。18時間後、培地を細胞から吸引し、細胞をPBSで4回洗浄した。次いで、細胞は、200μl CelLytic M(登録商標)溶菌緩衝液によって溶解した。4MU基質を使用して、後述のように、GAA活性に対し溶解物をアッセイした。タンパク質は、Pierce BCA(登録商標) Protein Assay Kitを使用して判定した。
【0098】
CHO細胞中に産生したZC−701の典型的取り込み実験結果は、図5に示される。図から分かるように、ラットL6筋芽細胞内へのZC−701の取り込みは、事実上、M6Pの大量のモル過剰の添加によって影響を受けなかった一方、取り込みは、過剰IGF−IIによって、完全に抑制された。対照的に、wtGAA(ZC−635)の取り込みは、過剰M6Pの添加によって、完全に抑制されたが、事実上、IGF−IIとの競合によって影響を受けなかった。過剰M6Pによる抑制に対する哺乳類細胞内へのCHO−細胞産出ZC−701取り込みの鈍感性は、CHO細胞内に産出されたZC−701表面上のM6Pの機能的欠如を示す。
【0099】
(実施例5)GILT標識GAAは、非標識GAAよりも効率的取り込みを示唆
図6は、精製されたGILT標識GAA(ZC−701)および野生型非標識GAA(ZC−635)のL6筋芽細胞内への取り込みの飽和曲線を示す。図示される実験では、GILT標識GAAは、Kuptake=7nMを有する一方、wt GAAは、Kuptake=354nMを有する。これは、GILT標識GAAの有意に低いレベルは、非標識GAAと比較して、CI−MPRを介しての筋芽細胞内への最大取り込みを達成することが必要とされるため、GILT標識GAAが非標識GAAよりも効率的取り込みを示すことを示唆する。
【0100】
また、GILT標識は、GAAの酵素活性に干渉しないことが示された。
【0101】
GAAPNPアッセイ
GAA酵素は、100mM酢酸ナトリウムpH4.2および10mM Para−Nitrophenol(PNP)α−グルコシド基質(Sigma N1 377)を含有する50μl反応混合物中でインキュベートした。反応物は、37℃で20分間インキュベートし、300μlの100mM炭酸ナトリウムで停止した。405nmでの吸収度は、96−ウェルマイクロタイタープレート内で測定し、p−ニトロフェノール(Sigma N7660)から派生した標準的曲線と比較した。1 GAAPNP単位は、1nモルPNP加水分解/時間として定義した。
【0102】
GAA4MUアッセイ
GAA酵素は、10mM 4−メチルウンベリフェリルα−D−グルコシターゼ基質(Sigma、カタログ#M−9766)を有する123mM酢酸ナトリウムpH 4.0を含有する20μl反応混合物内でインキュベートした。反応物は、37℃で1時間インキュベートし、267mM炭酸ナトリウム、427mMグリシン、pH10.7を含有する200μlの緩衝液で停止した。蛍光度は、96−ウェルマイクロタイタープレート内で355nm励振および460nm濾過によって測定し、4−メチルウンベリフェロン(Sigma、カタログ#M1381)から派生した標準的曲線と比較した。1 GAA4MU単位は、1nモル4−メチルウンベリフェロン加水分解/時間として定義した。
【0103】
例示的なGILT標識GAAおよび野生型非標識GAAの特異的活性は、表2に示される。GILT標識GAAの酵素活性は、非標識GAAと比較可能である。
【0104】
表2.GILT標識GAAZC−701および野生型非標識GAAに対する特異的活性およびKm
【0105】
【表2】
*3製剤の判定の平均
**2製剤の判定の平均
(実施例6)ラットL6筋芽細胞内のGAAの半減期
取り込み実験は、上述のように(実施例4参照)、ラットL6筋芽細胞内のGILT標識GAAおよび非標識GAAによって行った。18時間後、酵素を含有する培地を細胞から吸引し、細胞をPBSで4回洗浄した。この時、複製ウェルを溶解し(時間0)、溶解物を−80で凍結した。その後毎日、複製ウェルを溶解し、分析のために保存した。14日後、すべての溶解物をGAA活性に対しアッセイした。データは、一次減衰式:In Ct=−kt+InC0(式中、Cは化合物の濃度、tは1時間単位による時間、およびkは一次速度定数)に従って、プロット化した。図7は、例示的なグラフであって、ラットL6筋芽細胞内のGILT標識GAAZC−701および野生型非標識GAA(ZC−635)の半減期を示す。図7に示される結果は、標識および非標識タンパク質が、それぞれ、6.5および6.7日に非常に類似した半減期を有することを示す。これは、細胞内に入ると、GILT標識酵素が、非標識GAAに対し類似動態に固執することを示唆する。
【0106】
(実施例7)取り込み後のGAAの処理
哺乳類GAAは、典型的には、Moreland et al.(2005)J. Biol. Chem.,280:6780−6791およびその中に含まれる参照文献に記載されるように、リソソーム内で連続的タンパク質分解処理を受ける。処理されたタンパク質は、70kDa、20kDa、10kDa、およびいくつかの小ペプチドのペプチドパターンを生じさせる。GILT標識GAAが、非標識GAAと同様に処理されるかどうかを判定するために、前述の取り込み実験からの溶解物のアリコートをウエスタンブロットによって分析した。図8A−Bは、ラットL6筋芽細胞内への取り込み後のGILT標識GAAのタンパク質分解処理を示す、ウエスタンブロットである。図8Aは、IGF−II標識によって70kDa IGF−IIペプチドおよびより大きな中間体を認識する、モノクローナル抗体によって同定されるペプチドのパターンを示す、ウエスタンブロットである。図8Aに示される結果は、取り込み直後のGILT標識の損失を示す。図8Bは、70kDaペプチドおよびより大きな中間体を認識する、モノクローナル抗体によって同定された取り込み後の76kDaおよび70kDa種内への野生型およびGILT標識GAAの処理を示す、ウエスタンブロットである。本実験において同定されるポリペプチドのプロファイルは、事実上、標識および非標識酵素の両方と同等であった。これは、細胞内に侵入すると、GILT標識は失われ、GILT標識GAAは、非標識GAAと同様に処理されることを示唆する。したがって、GILT標識は、細胞内に入ると、GAAの挙動に影響をほとんど及ぼさない、または全く及ぼさない可能性がある。
【0107】
(実施例8)薬物動態
異なる培養条件の下産出されるGILT標識GAAの薬物動態は、野生型129マウスにおいて測定した。GILT標識GAAZC−701は、3つの異なる培養条件下で産出した。3つの群の129匹のマウスに、3つの代替培地で成長させた細胞の培養上清から精製された10mg/kg ZC−701の一回の投与によって、頸静脈に注射した。血清試料は、注射前、注射後15分、30分、45分、60分、90分、120分、4時間、および8時間に採取した。その後、動物を屠殺した。血清試料は、定量的ウエスタンブロットによってアッセイした。データは、一次減衰式:In Ct=−kt+InC0(式中、Cは化合物の濃度、tは1時間単位の時間、およびkは一次速度定数)に従って、プロット化した。半減期は、図9に示されるログプロットの線形部分から求めた。GILT標識GAAタンパク質の半減期:赤線、PF−CHO、tl/2=43分;橙線、CDM4、tl/2=38分;緑線、CD17、tl/2=52分。これらの結果に基づくと、CD17培地内で産出されるタンパク質は、最も有益な半減期を有する。これらの結果は、GILT標識GAAが、循環から過度に急速に消失しないことを示唆する。
【0108】
(実施例9)GAAの組織半減期
本実験の目的は、酵素がその標的組織に達すると、GILT標識GAA活性が損失される比率を判定することであった。ポンペ病マウスモデルでは、Myozyme(登録商標)は、種々の筋組織において、約6−7日の組織半減期を有すると考えられる(Center for Drug Evaluation and Research and Center for Biologies Evaluation and Research, Pharmacology Reviewsの出願番号第125141/0)。
【0109】
ポンペ病マウス(Raben(1998)JBC. 273:19086−19092に記載され、その開示は、参照することによって本明細書に組み込まれる、ポンペ病マウスモデル6neo/6neo)は、非標識GAA(ZC−635)、またはGILT標識GAAZC−701、あるいはGILT標識GAAZC−1026のいずれか10mg/kgを頸静脈に注射された。その後、注射後1、5、10、および15日に、マウスは屠殺された。組織試料を均質化し、標準的手順に従って、GAA活性を測定した。GILT標識GAAZC−701およびZC−1026、ならびに非標識GAAZC−635の組織半減期を異なる組織における減衰曲線から計算した(図10A、大腿四頭筋組織、図10B、心組織、図10C、隔膜組織、図10D、肝組織)。計算された半減期値は、表3に要約される。
【0110】
非標識タンパク質(ZC−635)の組織半減期は、異なる組織において9.1から3.9日の範囲であった一方、GILT標識GAAZC−701の半減期は、異なる組織において8.5から7.4日の範囲であった(表3)。これらの範囲は、有意差よりも、比較的小試料サイズ(点当たり3匹の動物)による統計的変動を反映している可能性がある。
【0111】
比較のため、図9に示される減衰曲線から計算したZC−701および非標識野生型GAA(ZC−635)に対するラットL6筋芽細胞における半減期は、それぞれ、6.5および6.7日であった。
【0112】
表3.種々の組織における標識および非標識GAAの組織半減期
【0113】
【表3】
これらのデータは、ポンペ病マウス内の細胞内に入ると、GILT標識GAAは、非標識GAAと類似の動態に固執すると考えられることを示唆する。さらに、GILT標識GAAの減衰動態の知識は、適切な投与間隔のデザインに役立ち得る。
【0114】
(実施例10)C2C12マウス筋芽細胞のリソソーム内へのGILT標識GAAの取り込み
C2C12マウス筋芽細胞をポリ−リジンでコーティングされた細胞(BD Biosciences)上に成長させ、5% CO2中37℃で、100nM GILT標識GAAの存在(パネルA)または非存在(パネルB)下、18時間インキュベートした。次いで、細胞を成長培地内で1時間インキュベートし、その後、室温で15分間、メタノールで凝固させる前に、D−PBSで4回洗浄した。以降のインキュベーションはすべて、室温で行い、それぞれ、D−PBS内での3回の洗浄によって分離した。インキュベーションは、記載がない限り、1時間とした。スライドは、15分間、0.1%トリトンX−100によって透過性化し、次いで、阻止緩衝液(D−PBS中10%加熱不活性化ウマ血清(Invitrogen))で阻止した。スライドは、一次マウスモノクローナル抗GAA抗体3A6−1F2(阻止緩衝液中1:5,000)によって、次いで、二次ウサギ抗マウスIgG AF594共役抗体(Invitrogen Al1032、阻止緩衝液中1:200)によって、インキュベートした。次いで、FITC−共役ラット抗マウスLAMP−I(BD Pharmingen 553793、阻止緩衝液中1:50)をインキュベートした。スライドは、DAPI−含有装填液(Invitrogen)で装填し、フルオレセインイソチオシアネート、Texas Red、およびDAPIフィルタ(Chroma Technology)を備えたNikon Eclipse 80i顕微鏡で観察した。画像は、MetaMorphソフトウェア(Universal Imaging)によって制御される光度Cascadeカメラで撮影した。画像は、Photoshopソフトウェア(Adobe)を使用して、統合した。図11は、リソソームマーカーLAMPlに対し誘導される抗体によって検出されたシグナルを有する、抗GAA抗体によって検出されるシグナルの共局在化を示す。したがって、本結果は、GILT標識GAAがリソソームに送達されることを実証する。
【0115】
(実施例11)体内グリコーゲンのクリアランス
本実験の目的は、グリコーゲンが、ポンペ病マウス内へのGILT標識GAAまたはwt GAAの一回のIV注射後、心組織から消失する比率を判定することであった。
【0116】
ポンペ病マウス(Raben(1998)JBC,273:19086−19092に記載され、その開示は、参照することによって本明細書に組み込まれる、ポンペ病マウスモデル6neo/6neo)に、非標識GAA(ZC−635)、またはGILT標識GAA(ZC−701)のいずれか10mg/kgを頸静脈に注射した。その後、マウスは、注射後1、5、10、および15日に屠殺された。各データ点は、3匹のマウスの平均を表す。心組織試料を標準的手順に従って均質化し、グリコーゲン含有量を分析した。これらの組織ホモジネート内のグリコーゲン含有量は、本質的に、Zhu et al.(2005)Biochem J.,389:619−628に記載のように、A.nigerアミログルコシダーゼおよびAmplex(登録商標) Red Glucoseアッセイキット(Invitrogen)を使用して測定した。図12に示される結果は、ZC−701で処理されたマウスからの心組織は、グリコーゲンのほぼ完全なクリアランスを示した一方、wt GAAで処理されたマウスは、グリコーゲン含有量の小量の変化のみを示したことを示唆する。
【0117】
(実施例12)ポンペ病病理の反転
本発明の治療的融合タンパク質は、体内wt GAAよりも治療上より有効であることが示された。ポンペ病マウス内の骨格筋組織からグリコーゲンを消失させるZC−701およびwt GAAの能力を比較するため、研究が行われた。ポンペ病マウスモデル6neo/6neo動物を使用した(Raben(1998)JBC 273:19086−19092)。ポンペ病マウス群(5/群)は、2用量のwt GAAあるいはZC−701(5mg/kgまたは20mg/kg)、もしくは媒介物のうちの1つのIV注射を週4回受けた。5匹の未処理動物を対照として使用し、生理食塩水溶液の注射を週4回受けた。動物は、2、3、および4回目の注射1時間前に、経口ジフェンヒドラミン5mg/kgを受けた。本研究におけるポンペ病ノックアウトマウスは、耐性化させるために、動物が生後48時間未満である場合、25μgのZC−701を首筋に皮下注射された。マウスは、4回目の注射から1週間後に屠殺され、組織(横隔膜、心臓、肺、肝臓、ヒラメ筋、大腿四頭筋、腓腹筋、TA、EDL、舌)を組織学的および生化学的分析のために採取した。組織ホモジネート内のグリコーゲン含有量は、A. nigerアミログルコシダーゼおよびAmplex Red Glucoseアッセイキットを使用して測定した。研究デザインは、表4に要約される。
表4
【0118】
【表4】
異なる組織ホモジネート内のGAA酵素レベルは、標準的手順を使用して測定し、結果は、表5に要約される。
【0119】
表5.組織内のGAAレベル
【0120】
【表5−1】
【0121】
【表5−2】
これらの組織ホモジネート内のグリコーゲン含有量は、本質的に、Zhu et al. (2005)Biochem J.,389:619−628に記載されるように、A. niger アミログルコシダーゼおよびAmplex Red Glucoseアッセイキット(Invitrogen)を使用して測定した。グリコーゲンデータは、図13A−Hに記載される。図13A−Hで使用されるように、GAA5は、用量5mg/kgにおける非標識GAAを示し、GAA20は、用量20mg/kgにおける非標識GAAを示し、701 5は、用量5mg/kgにおけるGILT標識GAAZC−701を示し、701 20は、用量20mg/kgにおけるGILT標識GAAZC−701を示す。PBSは、対照として使用した。これらの結果は、種々の筋組織からグリコーゲンを消失させるその能力において、非標識GAA(ZC−635)と比較して、GILT標識GAA(ZC−701)の消失優位性を示唆する。具体的には、ZC−701は、複数の骨格筋組織からグリコーゲンンを消失させるその能力において、wt GAAよりも有意に有効であった。いずれかの用量でwt GAAを受けたポンペ病マウスは、PBS処理動物におけるグリコーゲンレベルと異なるグリコーゲンレベルを有していた。対照的に、ZC−701を受けた動物は、有意に低いレベルのグリコーゲンを示した。
【0122】
(実施例13)対象の投与量、投与間隔、および年齢の最適化
投与量
前述の実験では、用量5mg/kgは、いくつかの組織において、グリコーゲン消失の際、用量20mg/kgとほぼ同程度に有効であった。用量漸増実験を使用して、ヒト患者を治療する際に、治療上十分となり得る最小有効用量を判定する。群当たり5から7匹の耐性化されたポンペ病ノックアウトマウスに、異なる用量のGILT標識GAAを毎週注射する。例えば、耐性化されたポンペ病マウスは、1.0、1.5、2、2.5、5、10、20mg/kgで注射する。
【0123】
ポンペ病ノックアウトマウスに、8週間注射し、その後、屠殺する。試料は、異なる組織から採取し、実施例11および12に記載されるように、グリコーゲンレベルを判定する。また、グリコーゲンおよび酵素分布の組織化学を標準的手順に従って判定する。さらに、気圧全身プレチスモグラフィを使用した、筋力測定および高炭酸ガスに対する喚起等の生理学的測定値は、Mah et al.(2007)Molecular Therapy(オンライン刊行物)によって記載されるように、マウスにおいて判定可能である。
【0124】
間隔
さらに、治療間隔が評価され、依然として臨床的有益性をもたらす所与の用量の最大間隔が判定される。用量漸増は、上述のように、異なる治療間隔、例えば、2、3、または4週間毎の注射によって行われる。例えば、ヒラメ筋または大腿四頭筋等の骨格筋組織内のグリコーゲンクリアランスは、典型的には、マウスモデルにおける用量と治療間隔との間の最適均衡を判定するための指標として使用される。上述のような他の臨床的関連測定値も、同様に使用可能である。
【0125】
例えば、一実験は、ポンペ病マウスモデルにおけるその有効性について、GILT標識GAAの可変投与間隔の効果を検査するように設計される。2−3ヶ月齢のポンペ病マウス(Raben JBC 1998 273:19086−19092)は、8匹の動物群に分割される。ある群は、PBSの注射を毎週受け(対照群)、ある群は、5mg/kg GILT標識GAAの注射を毎週受け、ある群は、10mg/kg GILT標識GAAの注射を隔週受け、ある群は、15mg/kg GILT−標識GAAの注射を3週間毎に受け、ある群は、20mg/kg GILT標識GAAの注射を4週間毎に受ける。12週目の注射から1週間後、すべての動物は屠殺される。分析のために採取された組織試料は、心臓、ヒラメ筋、腓腹筋、EDL、TA、大腿四頭筋、腰筋、横隔膜、脳、舌を含む。
【0126】
分析は、生化学的グリコーゲン分析、グリコーゲンのための組織化学的染色、選択組織のEM、選択組織の免疫染色、ELISAによる抗体のための血清試料の分析、ヒラメ筋の体外力−収縮頻度測定、研究の生存部分期間における尿中グルコース四糖類分析、治療計画前後のグリコーゲン含有量の13C NMR分光判定を含む。
【0127】
用量および間隔が変動する条件のマトリクスは、これらのパラメータ間の関係の理解を深めるために生成され得る。
【0128】
より高用量での投与の間隔がより長い程、有効であることが証明され、それによって、ポンペ病に罹患する人々のために、より負担の少ない治療計画のための理論的根拠を提供され得ることが予測される。例えば、図13A〜Hに示されるグリコーゲンデータに基づくと、用量5mg/kgの毎週の投与は、10mg/kgの隔週投与または20mg/kgの3週間毎の投与と同様の結果をもたらすことが予測される。したがって、2週間毎に1回の代わりに、3週間または4週間毎に1回のGILT標識GAAの注入は、ヒトポンペ病患者における治療的効果を達成するために十分であることが予測される。より長い治療間隔は、少なくとも、患者の負担および不便さを軽減するため、非常に有利である。
【0129】
対象の年齢
治療開始時のマウスの年齢が、治療的転帰に及ぼす影響を判定する。ポンペ病マウスII型筋線維において、外因性酵素のリソソームへの送達を含み、正常な輸送経路に干渉する自食胞が、経時的に形成されることが報告されている。Fukuda et al(2006)Mol. Therapy,14(6):831−839;Fukuda et al.(2006)Ann.Neurol.,59(4):700−708;Fukuda et al.(2006)Autophagy.2(4):318−320を参照されたい。科学者らは、それぞれ2つのM6Pを含有する最大6つの化学的にカップリングされた合成オリゴ糖を有する組み換えGAAであるネオ−rhGAAが、13ヶ月齢のポンペ病ノックアウトマウスからグリコーゲンを完全に消失可能であることを示した。Zhu et al,(2005)Biochem J.,389:619−628。これは、CI−MPRに対する高親和性を有する酵素が使用される場合、Fukudaらによって報告された細胞病理が、反転し得ることを示唆する。CI−MPRに対するGILT標識GAAの高親和性と、非標識GAAよりも効率的筋肉細胞への送達とを仮定すると、十分なGILT標識GAA酵素がリソソームに送達され、グリコーゲンを消失させ、続いて、自食胞構築を反転し得ることが想定される。これは、12−13ヶ月齢のポンペ病マウスにおいて直接試験される。これらのマウスは、20または40mg/kg GILT標識GAAの注射を毎週4回受け、最終注射から1週間後に屠殺される。グリコーゲン含有量は、本質的に、Zhuら(2005)に記載されるA.nigerアミログルコシダーゼおよびAmplex Red Glucoseアッセイキット(Invitrogen)を使用して査定される。また、グリコーゲンは、Lynch et al,(2005)J.Histochem.Cytochem.,53:63−73によって記載される組織化学的染色によって査定される。
【0130】
さらに、アッセイが行われ、自食胞構築を有する動物から分離された無傷筋線維内へのGILT標識GAAの取り込みを分析し、非標識GAAと比較して、Fukudaらによって記載されるそのような条件下、リソソームを標的化するGILT標識GAAの能力を直接比較する。GILT標識GAAは、非標識酵素より効率的に自食胞構築を有する筋線維を標的化することが予測される。
【0131】
実験14:ヒト臨床研究
動物治療の成功に基づき、小児ポンペ病患者における6ヶ月の第1相/第2相GILT標識GAA投与量決定研究をデザインする。本臨床研究は、非盲検実証ヒト研究であって、小児発症ポンペ病患者におけるGILT標識GAAの安全性、耐性、有効性、および薬物動態を評価するために行われる。本研究では、一般的治療間隔は、2週間毎に1回(隔週)である。特定用量において、治療間隔が3または4週間毎に1回である追加治療群が追加されることが、予測される。
【0132】
臨床研究の主要目的は、小児発症ポンペ病患者を治療する際に、2週間毎に静脈内注入によって投与される4つの用量レベル、すなわち、2.5、5、10、および20mg/kgのGILT標識GAAの有効性を判定することを含む。副次的目的は、(1)小児発症ポンペ病患者を治療する際に、2週間毎に静脈内注入によって投与される4つの異なる用量レベルのGILT標識GAAの安全性および薬物動態を評価すること、(2)小児発症ポンペ病患者を治療する際に、2週間毎に静脈内注入によって投与される4つの用量レベルのGILT−GAAの薬物動態を判定すること、(3)2週間毎に静脈内注入によって投与される4つの用量レベルのGILT−GAAのそれぞれの小児発症ポンペ病患者における筋肉グリコーゲンの存在に及ぼす影響を判定することを含む。本臨床研究の詳細なプロトコル概要は、表6に示される。
【0133】
表6.ヒト臨床研究
【0134】
【表6−1】
【0135】
【表6−2】
【0136】
【表6−3】
図14は、臨床研究手順の詳細な工程図を示す。
【0137】
さらに、患者を耐性化または免疫学的に抑制するステップを含むことが望ましい。他のリソソーム酵素補充療法の臨床研究では、多くの患者が、GAAに対する抗体の高力価を産出することが観察された。例えば、本現象は、Cerezyme(登録商標)を摂取しているゴーシェ病患者に認められる。その場合、大部分の患者は、治療計画に応じて、自然に耐性化され、抗体の産出を停止する。理論に制約されることを所望するものではないが、抗GAA抗体は、CI−MPRに対する酵素の標的化に干渉し、それによって、酵素の生体内分布を変化させると考えられる。耐性化計画の1つは、GILT標識GAA治療の前またはその間に、CD20に対するモノクローナル抗体であるRituximab(登録商標)によって、ポンペ病患者を治療することである。ポンペ病患者に使用されるRituximab(登録商標)の用量は、Sperr et al.(2007)Haematologica.Jan;92(1):66−71において教示され、参照することによって本明細書に組み込まれるように、いくつかの自己免疫疾患を治療する際に使用されるものと同様である。また、本化合物は、ステロイド等の他の免疫抑制薬剤と併用しても使用可能である。
【0138】
GILT標識GAAによって治療されるポンペ病患者は、生検物質の組織化学的染色に基づいて、10〜12週間後のグリコーゲンの有意なクリアランスを実証することが予測される。Thurbergらは、一連の微細構造の損傷に基づいて、ポンペ病を5段階の細胞病理に分類することを発明した。Thurberg et al.(2006)Lab.Invest.,86:1208−1220。例えば、早期疾患段階1細胞は、無傷筋細線維間に小グリコーゲン充填リソソームを含有する。段階3細胞は、リソソーム膜の破裂によって、細胞質に漏出する多量のグリコーゲンとともに、多数のグリコーゲン充填リソソームを含有する。これらの段階は、Fukadaらに記載される自食胞蓄積と相関すると考えられる。治療の開始時の研究における患者の細胞病理の分析は、臨床的転帰を示すと予測される。概して、応答患者は、より重度の形態の細胞病理とともに、低率の筋細胞を有する。特に、50%を上回る段階2の筋細胞を有する患者は、より優れた臨床転帰を有する。また、より若年の患者は、概して、より優れた臨床転帰を有し、より高率のI型筋線維を有する患者もまた、より優れた臨床転帰を有すると想定される。
【0139】
細胞病理の重症度を変化させる要因は、患者のGAA対立遺伝子の性質、治療開始時の患者の年齢、および患者の免疫反応による、患者内の残留GAA活性の存在を含む。例えば、GILT標識GAAに対する抗体反応は、CRIM−陰性患者において、より重症である。
【0140】
初期の動物実験の結果に基づいて、GILT標識GAAは、ヒト患者の治療における非標識GAAよりも有効であると予測される。同様の用量を仮定する場合、酵素補充療法の開始時に、所与のレベル細胞病理を有する患者のより高い留分は、GILT標識GAA療法に対し有利に反応することが予測される。例えば、Myozyme(登録商標)の中枢となる臨床試験では、18名中12名の患者が、52週目時点で、20%を上回る筋肉グリコーゲンの低下を示した。しかしながら、18名中わずか3名の患者は、50%以上のグリコーゲン含有量の低下を経験した。Kishnani et al. (2007)Neurology.68:99−109。動物データおよびZhuらの報告に基づくと、GILT標識GAAは、ほとんどの患者において、80%のグリコーゲン含有量の低下をもたらすと予測される。GILT標識GAAによって治療された患者のより多い留分は、運動機能、呼吸等の生理学的パラメータにおいて改善を示すことが予測され、より多くの患者が、療法開始後1、2、および5年生存することが予測される。
【0141】
また、筋細胞のより進行した細胞病理を有する、酵素補充療法を開始した患者、例えば、療法開始時、6ヶ月を上回る年齢の患者は、筋肉グリコーゲンの有意な減少、呼吸器能、運動機能の改善、およびGILT標識GAA酵素補充療法に基づくより優れた、かつ長期の転帰を有することが予測される。
【0142】
参照文献の援用
本出願に引用されるすべての刊行物および特許文書は、各個別の刊行物および特許文書が本明細書に組み込まれる場合と同様に、参照することによって、全体として本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年2月7日出願の米国仮特許出願第60/900,187号、2007年1月5日出願の米国仮特許出願第60/879,255号、2006年11月13日出願の米国仮特許出願第60/858,514号の利益を請求するものであって、それぞれの内容は、参照することによって、全体として本明細書に組み込まれる。また、本出願は、2005年2月10日出願の米国特許出願第11/057,058号にも関し、その内容は、参照することによって、全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、ポンペ病を治療するための方法および組成物に関する。特に、本発明は、酸α−グルコシターゼをリソソームにマンノース−6−リン酸に非依存的に標的化することによって、ポンペ病を治療するための療法に関する。
【背景技術】
【0003】
ポンペ病は、グリコーゲン−分解リソソーム酵素であるリソソームヒドロラーゼ酸α−グルコシターゼ(GAA)の欠損または機能不全に生じる、常染色体性劣性遺伝病である。GAAの欠損は、ポンペ病患者の多くの組織内にリソソームグリコーゲン蓄積をもたらし、心筋組織および骨格筋組織が最も深刻な影響を受ける。あらゆる形態のポンペ病合計発生率は、1:40,000であると推定され、本疾患は、民族による偏好なく、全群に影響を及ぼす。ポンペ病患者のおよそ3分の1は、急速進行性の致死性乳児発症形態を有する一方、大部分の患者は、緩徐進行性の若年性以降発症形態を呈すると推定される。
【0004】
薬物治療方針、食餌療法、および骨髄移植は、ポンペ病の治療のための手段として採用されているが、有意な成功が伴っていない。近年、酵素補充療法(ERT)が、ポンペ病患者のための新しい希望として提供されている。例えば、組み換えGAAタンパク質薬物であるMyozyme(登録商標)は、2006年、米国およびヨーロッパ両国において、ポンペ病患者における使用の認可を得た。Myozyme(登録商標)は、リソソームへの送達のために、GAAタンパク質の表面上のマンノース−6−リン酸(M6P)に依存する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ポンペ病を治療するための新しく改良された方法を提供する。具体的には、本発明は、酸α−グルコシターゼ(GAA)をリソソームにマンノース−6−リン酸に非依存的に標的化するための方法および組成物を提供する。その結果、本発明の方法は、より単純、効率的、強力、かつ費用効果がある。したがって、本発明は、ポンペ病のための酵素補充療法の進歩を大幅に発展させる。
【0006】
一態様では、本発明は、対象に治療上有効量の融合タンパク質を投与することによって、対象におけるポンペ病を治療するための方法を提供する。融合タンパク質は、ヒト酸α−グルコシターゼ(GAA)(または、ヒトGAAのフラグメント)と、リソソーム標的化ドメインとを含む。リソソーム標的化ドメインは、ヒト陽イオン−非依存性マンノース−6−リン酸受容体をマンノース−6−リン酸に非依存的に結合する。
【0007】
一実施形態では、リソソーム標的化ドメインは、成熟ヒトインスリン様成長因子II(IGF−II)、あるいは成熟ヒトIGF−IIのフラグメントまたは配列変異体を含む。一実施形態では、リソソーム標的化ドメインは、成熟ヒトIGF−IIのアミノ酸8−67を含む。好ましくは、リソソーム標的化ドメインは、成熟ヒトIGF−IIのアミノ酸1および8−67(すなわち、成熟ヒトGAAのΔ2−7)を含む。別の実施形態では、融合タンパク質は、ヒトGAAのアミノ酸70−952を含む。
【0008】
一実施形態では、本発明に好適な融合タンパク質は、野生型ヒトGAAと比較して、低下したマンノース−6−リン酸(M6P)レベルをタンパク質の表面上に有する。さらに別の実施形態では、本発明に好適な融合タンパク質は、機能的M6Pレベルをタンパク質の表面上に有しない。
【0009】
別の実施形態では、治療上有効量は、対象の体重1キログラム当たり約2.5〜20ミリグラムの範囲である(mg/kg)。
【0010】
一実施形態では、融合タンパク質は、静脈内に投与される。他の実施形態では、融合タンパク質は、隔月、毎月、3週間毎、隔週、毎週、毎日、または変動する間隔で投与される。本明細書で使用される「隔月」という用語は、2ヶ月に1回の投与(すなわち、2ヶ月毎に1回)を意味し、「毎月」という用語は、1ヶ月に1回の投与を意味し、「3週間毎」という用語は、3週間に1回の投与を意味し(すなわち、3週間毎に1回)、「隔週」という用語は、2週間に1回の投与を意味し(すなわち、2週間毎に1回)、「毎週」という用語は、1週間に1回の投与を意味し、「毎日」という用語は、1日に1回の投与を意味する。
【0011】
さらなる実施形態では、融合タンパク質は、免疫抑制剤と併用して投与される。免疫抑制剤は、融合タンパク質の任意の投与に先立って、投与可能である。いくつかの実施形態では、ポンペ病を治療するための方法は、対象を耐性化する追加ステップをさらに含む。
【0012】
本発明の別の態様は、対象に治療上有効量の融合タンパク質を投与することによって、対象におけるポンペ病を治療するための方法を提供する。融合タンパク質は、成熟ヒトインスリン様成長因子II(IGF−II)のアミノ酸1および8−67(すなわち、成熟ヒトGAAのΔ2−7)と、ヒト酸α−グルコシターゼ(GAA)のアミノ酸70−952とを含む。好ましい実施形態では、融合タンパク質は、ヒトGAAのアミノ酸と成熟ヒトIGF−IIのアミノ酸との間にスペーサ配列GIy−Ala−Proを含む。
【0013】
一実施形態では、本発明の本態様に好適な融合タンパク質は、野生型ヒトGAAと比較して、低下したマンノース−6−リン酸(M6P)レベルをタンパク質の表面上に有する。さらに別の実施形態では、本発明の本態様に好適な融合タンパク質は、機能的M6Pレベルをタンパク質の表面上に有しない。
【0014】
本発明のさらなる態様は、ポンペ病罹患対象に有効量の融合タンパク質を投与することによって、体内グリコーゲンレベルを低下させるための方法を提供する。融合タンパク質は、ヒト酸α−グルコシターゼ(GAA)(または、ヒトGAAのフラグメント)と、リソソーム標的化ドメインとを含む。リソソーム標的化ドメインは、ヒト陽イオン−非依存性マンノース−6−リン酸受容体をマンノース−6−リン酸に非依存的に結合する。
【0015】
一実施形態では、リソソーム標的化ドメインは、成熟ヒトインスリン様成長因子II(IGF−II)、あるいは成熟ヒトIGF−IIのフラグメントまたは配列変異体を含む。一実施形態では、リソソーム標的化ドメインは、成熟ヒトIGF−IIのアミノ酸8−67を含む。好ましくは、リソソーム標的化ドメインは、成熟ヒトIGF−IIのアミノ酸1および8−67(すなわち、成熟ヒトGAAのΔ2−7)を含む。別の好ましい実施形態では、融合タンパク質は、ヒトGAAのアミノ酸70−952を含む。
【0016】
一実施形態では、本発明の本態様に好適な融合タンパク質は、野生型ヒトGAAと比較して、低下したマンノース−6−リン酸(M6P)レベルをタンパク質の表面上に有する。さらに別の実施形態では、本発明の本態様に好適な融合タンパク質は、機能的M6Pレベルをタンパク質の表面上に有しない。
【0017】
別の実施形態では、有効量は、対象の体重1キログラム当たり約2.5〜20ミリグラムの範囲である(mg/kg)。
【0018】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、静脈内に投与される。他の実施形態では、融合タンパク質は、隔月、毎月、3週間毎、隔週、毎週、毎日、または変動する間隔で投与される。
【0019】
別の態様では、本発明は、リソソームに有効量の融合タンパク質を標的化することによって、哺乳類リソソーム内のグリコーゲンレベルを低下させるための方法を提供する。融合タンパク質は、ヒト酸α−グルコシターゼ(GAA)(または、ヒトGAAのフラグメント)と、リソソーム標的化ドメインとを含む。リソソーム標的化ドメインは、ヒト陽イオン−非依存性マンノース−6−リン酸受容体をマンノース−6−リン酸に非依存的に結合する。
【0020】
一実施形態では、リソソーム標的化ドメインは、ヒトインスリン様成長因子II(IGF−II)、あるいはヒトIGF−IIのフラグメントまたは配列変異体を含む。一実施形態では、リソソーム標的化ドメインは、成熟ヒトIGF−IIのアミノ酸8−67を含む。好ましくは、リソソーム標的化ドメインは、成熟ヒトIGF−IIのアミノ酸1および8−67(すなわち、成熟ヒトGAAのΔ2−7)を含む。別の好ましい実施形態では、融合タンパク質は、ヒトGAAのアミノ酸70−952を含む。
【0021】
別の態様では、本発明は、筋組織に治療上有効量の融合タンパク質を送達することによって、ポンペ病罹患対象の筋組織におけるグリコーゲンレベルを低下させるための方法を提供する。融合タンパク質は、ヒト酸α−グルコシターゼ(GAA)(または、ヒトGAAのフラグメント)と、リソソーム標的化ドメインとを含む。リソソーム標的化ドメインは、ヒト陽イオン−非依存性マンノース−6−リン酸受容体をマンノース−6−リン酸に非依存的に結合する。一実施形態では、筋組織は、骨格筋である。
【0022】
本発明の別の態様は、対象に融合タンパク質の治療上有効量を投与することによって、対象におけるポンペ病に付随する心筋症を治療するための方法を提供する。融合タンパク質は、ヒト酸α−グルコシターゼ(GAA)(または、ヒトGAAのフラグメント)と、リソソーム標的化ドメインとを含む。リソソーム標的化ドメインは、ヒト陽イオン−非依存性マンノース−6−リン酸受容体をマンノース−6−リン酸に非依存的に結合する。
【0023】
さらに別の態様では、本発明は、対象に治療上有効量の融合タンパク質を投与することによって、対象におけるポンペ病に付随する筋疾患を治療するための方法を提供する。融合タンパク質は、ヒト酸α−グルコシターゼ(GAA)(または、ヒトGAAのフラグメント)と、リソソーム標的化ドメインとを含む。リソソーム標的化ドメインは、ヒト陽イオン−非依存性マンノース−6−リン酸受容体をマンノース−6−リン酸に非依存的に結合する。
【0024】
本発明の別の態様は、ヒト酸α−グルコシターゼ(GAA)(または、ヒトGAAのフラグメント)と、リソソーム標的化ドメインとを含む、融合タンパク質を対象に投与することによって、ポンペ病罹患対象における酸α−グルコシターゼ活性を増加させるための方法を提供する。リソソーム標的化ドメインは、マンノース−6−リン酸に非依存的にヒト陽イオン−非依存性マンノース−6−リン酸受容体を結合する。
【0025】
本発明のさらなる態様は、ポンペ病の治療に好適な医薬組成物を提供する。医薬組成物は、ヒト酸α−グルコシターゼ(GAA)(または、ヒトGAAのフラグメント)と、リソソーム標的化ドメインとを含む、治療上有効量の融合タンパク質を含む。リソソーム標的化ドメインは、ヒト陽イオン−非依存性マンノース−6−リン酸受容体をマンノース−6−リン酸に非依存的に結合する。
【0026】
一実施形態では、リソソーム標的化ドメインは、成熟ヒトインスリン様成長因子II(IGF−II)、あるいは成熟ヒトIGF−IIのフラグメントまたは配列変異体を含む。一実施形態では、リソソーム標的化ドメインは、成熟ヒトIGF−IIのアミノ酸8−67を含む。好ましくは、リソソーム標的化ドメインは、成熟ヒトIGF−IIのアミノ酸1および8−67(すなわち、成熟ヒトGAAのΔ2−7)を含む。別の好ましい実施形態では、融合タンパク質は、ヒトGAAのアミノ酸70−952を含む。
【0027】
別の実施形態では、融合タンパク質は、ヒトGAAのアミノ酸70−952と、成熟ヒトIGF−IIのアミノ酸1および8−67(すなわち、成熟ヒトGAAのΔ2−7)とを含む。さらなる実施形態では、融合タンパク質は、成熟ヒトIGF−II(アミノ酸1および8−67)のフラグメントとヒトGAAのフラグメント(アミノ酸70−952)との間にスペーサ配列GIy−Ala−Proをさらに含む。
【0028】
一実施形態では、本発明の本態様に好適な融合タンパク質は、野生型ヒトGAAと比較して、低下したマンノース−6−リン酸(M6P)レベルをタンパク質の表面上に有する。さらに別の実施形態では、本発明の本態様に好適な融合タンパク質は、機能的M6Pレベルをタンパク質の表面上に有しない。
【0029】
さらに別の実施形態では、医薬組成物は、医薬担体を含む。
【0030】
本出願で使用される「ヒト酸α−グルコシターゼ(GAA)」は、哺乳類リソソーム内のグリコーゲンレベルを低下可能な、あるいは1つ以上のポンペ病症状を救済または改善可能である、前駆体野生型形態のヒトGAAまたは機能的変異体を示す。
【0031】
本出願で使用される「約」および「およそ」という用語は、同等物として使用される。約/およその有無を問わず、本出願で使用される任意の数字は、当業者によって理解される任意の正常変動を網羅することを意味する。
【0032】
本発明の他の特徴、目的、および利点は、後述の発明を実施するための最良の形態において明白である。しかしながら、発明を実施するための最良の形態は、本発明の実施形態を示すが、例示のみとして提供され、制限ではないことを理解されたい。本発明の範囲内の種々の変更および修正は、発明を実施するための最良の形態から、当業者に明白となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図面は、例示目的のみであって、本発明を制限するためのものではない。
【図1】GILT標識GAAZC−701の略図を示す図である。
【図2】図2Aは、野生型非標識GAAとGILT標識GAAZC−701とのSDS−PAGEおよびウエスタンブロットを示す図である。図2Aは、銀染色を受けたSDS−PAGEを示す図である。図2Bは、抗GAA抗体を使用したウエスタンブロットを示す図である。図2Cは、抗IGF−II抗体を使用したウエスタンブロットを示す図である。
【図3A】ビオチン化され、Hisで標識された2つの組み換えタンパク質であるp1288およびp1355の略図を示す図であるであり、それぞれ、野生型CI−MPRドメイン10−13および点突然変異体を含有する。
【図3B】銀染色による1288および1355の発現を示す図である。
【図4A】CI−MPRとのGILT標識GAAZC−701相互作用のBiacore(登録商標)分析の例示的な結果を示す図である。図4Aは、IGF−IIの例示的な結合曲線を示す図である。
【図4B】図4Bは、GILT標識GAAZC−701の例示的な結合曲線を示す図である。
【図5】ラットL6筋芽細胞内へのGILT標識GAAZC−701の標識依存性取り込みの例示的な結果を示す図である。
【図6】ラットL6筋芽細胞内への精製されたGILT標識GAAZC−701および野生型非標識GAAの取り込みの例示的な飽和曲線を示す図である。
【図7】ラットL6筋芽細胞内のGILT標識GAAZC−701および野生型非標識GAA(ZC−635)の半減期を反映する、例示的な結果を示す図である。
【図8A】ラットL6筋芽細胞内への取り込み後のGILT標識GAAZC−701のタンパク質分解処理を表す、例示的なウエスタンブロットを示す図である。図8Aは、取り込み後のGILT標識の損失を表す、例示的なウエスタンブロットを示す図である。
【図8B】図8Bは、取り込み後の種々のペプチド種内への野生型およびGILT標識GAAの処理を表す、例示的なウエスタンブロットを示す図である。
【図9】3つの異なる組織培養培地において産出されたGILT標識GAAZC−701の野生型マウス129匹における血清半減期を反映する、例示的な結果を示す図である。赤線は、PF−CHO培地、tl/2=43分に対応し、橙線は、CDM4培地、tl/2=38分に対応し、緑線は、CD17培地、tl/2=52分に対応する。
【図10A】野生型非標識GAA(ZC−635)、GILT標識GAAZC−701、およびGILT標識GAAZC−1026に対するポンペ病マウスの種々の組織における例示的な減衰曲線を示す図である。図10Aは、大腿四頭筋組織における例示的な減衰曲線を示す図である。
【図10B】図10Bは、心組織における例示的な減衰曲線を示す図である。
【図10C】図10Cは、隔膜組織における例示的な減衰曲線を示す図である。
【図10D】図10Dは、肝組織における例示的な減衰曲線を示す図である。
【図11】GILT標識GAAおよびリソソームマーカーLAMP1の共局在化を示す図である。
【図12】GILT標識GAAタンパク質、ZC−701、または非標識GAAのうちのいずれかを一回注射することによって処理されたポンペ病マウスから採取された心組織試料におけるグリコーゲンのクライアントを表す、例示的な結果を示す図である。
【図13A】野生型非標識GAAまたはGILT標識GAAZC−701の注射後のポンペ病マウスの種々の筋組織におけるグリコーゲンのクリアランスを表す、例示的なグラフを示す図である。
【図13B】野生型非標識GAAまたはGILT標識GAAZC−701の注射後のポンペ病マウスの種々の筋組織におけるグリコーゲンのクリアランスを表す、例示的なグラフを示す図である。
【図13C】野生型非標識GAAまたはGILT標識GAAZC−701の注射後のポンペ病マウスの種々の筋組織におけるグリコーゲンのクリアランスを表す、例示的なグラフを示す図である。
【図13D】野生型非標識GAAまたはGILT標識GAAZC−701の注射後のポンペ病マウスの種々の筋組織におけるグリコーゲンのクリアランスを表す、例示的なグラフを示す図である。
【図13E】野生型非標識GAAまたはGILT標識GAAZC−701の注射後のポンペ病マウスの種々の筋組織におけるグリコーゲンのクリアランスを表す、例示的なグラフを示す図である。
【図13F】野生型非標識GAAまたはGILT標識GAAZC−701の注射後のポンペ病マウスの種々の筋組織におけるグリコーゲンのクリアランスを表す、例示的なグラフを示す図である。
【図13G】野生型非標識GAAまたはGILT標識GAAZC−701の注射後のポンペ病マウスの種々の筋組織におけるグリコーゲンのクリアランスを表す、例示的なグラフを示す図である。
【図13H】野生型非標識GAAまたはGILT標識GAAZC−701の注射後のポンペ病マウスの種々の筋組織におけるグリコーゲンのクリアランスを表す、例示的なグラフを示す図である。
【図14】臨床研究手順の詳細な工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、グリコシル化−非依存性リソソーム標的化技術(GILT)に基づいて、ポンペ病を治療するための方法および組成物を提供する。特に、本発明は、酸α−グルコシターゼをリソソームにマンノース−6−リン酸に非依存的に標的化することによって、ポンペ病を治療するための方法および組成物を提供する。
【0035】
本発明の種々の態様は、以下の項で詳述される。項の使用は、本発明を制限することを意味していない。各項は、本発明の任意の態様に適用可能である。本出願では、「または」の使用は、別途記載がない限り、「および/または」を意味する。
【0036】
ポンペ病
ポンペ病は、エネルギーのために使用される蓄積形態の糖類であるグリコーゲンを破壊するために必要とされる酵素である、酸α−グルコシターゼ(GAA)の欠損によって生じる稀な遺伝性疾患である。また、ポンペ病は、グリコーゲン蓄積症II型、GSDII、II型グリコーゲン蓄積症、糖原病II型、酸性マルターゼ欠損症、α−1,4−グルコシターゼ欠損症、びまん性心肥大グリコーゲン病、および全身性糖原病の心臓性病態としても知られる。グリコーゲンの蓄積は、全身の進行性筋衰弱(筋疾患)を生じさせ、特に、心臓、骨格筋、肝臓、呼吸器、および神経系における種々の体内組織に影響を及ぼす。
【0037】
ポンペ病の現れる臨床症状は、疾患発症年齢および残留GAA活性に応じて、大きく異なり得る。残留GAA活性は、グリコーゲン蓄積量および組織分布の両方、ならびに疾患の重症度と相関する。小児発症ポンペ病(正常GAA活性の1%未満)は、最も深刻な形態であって、低血圧、全身性筋衰弱、および肥大型心筋症、ならびに心組織および他の筋組織における大量のグリコーゲン蓄積によって特徴付けられる。通常、心肺不全によって、生後1年以内に死に至る。Hirschhorn et al.(2001)”Glycogen Storage Disease Type II:Acid Alpha−glucosidase(Acid Maltase)Deficiency,”in Scriver et al.,eds.,The Metabolic and Molecular Basis of Inherited Disease.8th Ed.,New York:McGraw−Hill,3389−3420.若年性発症(正常GAA活性の1−10%)および成人発症(正常GAA活性の10−40%)ポンペ病は、さらに臨床的に異種であって、発症年齢、臨床症状、および疾患進行度がより大きく異なる。若年性および成人発症ポンペ病は、概して、重度の心臓障害の欠如、晩年期の発症、および緩徐な疾患進行度によって特徴付けられるが、最終的呼吸器または四肢筋肉障害は、有意な罹患率および死亡率をもたらす。平均寿命は異なり得るが、概して、呼吸器不全によって、死に至る。Hirschhorn et al.(2001)”Glycogen Storage Disease Type II:Acid Alpha−glucosidase(Acid Maltase)Deficiency,”in Scriver et al.,eds.,The Metabolic and Molecular Basis of Inherited Disease.8th Ed.,New York:McGraw−Hill,3389−3420.
酵素補充療法
酵素補充療法(ERT)は、欠落酵素を血流中に注入することによって、酵素欠損を補正するための治療方針である。血液が患者組織をかん流すると、酵素は、細胞によって吸収されて、リソソームに輸送され、酵素は、酵素欠損症によってリソソーム内に蓄積した物質を排除するように作用する。有効なリソソーム酵素補充療法のためには、治療酵素は、蓄積欠陥が発現する組織内の適切な細胞のリソソームに送達されなければならない。従来のリソソーム酵素補充療法は、タンパク質に天然付着する炭水化物を使用して送達され、標的細胞の表面上の特異的受容体に係合する。ある受容体、陽イオン−非依存性M6P受容体(CI−MPR)は、CI−MPRが、ほとんどの細胞型の表面上に存在するため、置換リソソーム酵素を標的化するために特に有用である。
【0038】
「陽イオン−非依存性マンノース−6−リン酸受容体(CI−MPR)」、「M6P/IGF−II受容体」、および「CI−MPR/IGF−II受容体」という用語は、本明細書において同義的に使用され、M6PおよびIGF−IIの両方を結合する細胞受容体を示す。
【0039】
グリコシル化非依存性リソソーム標的化
本発明は、治療酵素をリソソームに標的化するためのグリコシル化非依存性リソソーム標的化(GILT)技術を開発した。具体的には、本発明は、M6Pの代わりに、ペプチド標識を使用して、リソソーム標的化のためにCI−MPRに係合させる。典型的には、GILT標識は、タンパク質、ペプチド、またはCI−MPRをマンノース−6−リン酸に非依存的に結合する他の部分である。有利なことには、本技術は、リソソーム酵素の取り込みのために、正常な生物学的機構を模倣し、さらに、マンノース−6−リン酸非依存的に行う。
【0040】
好ましいGILT標識は、ヒトインスリン様成長因子II(IGF−II)に由来する。ヒトIGF−IIは、CI−MPRの高親和性配位子であって、また、IGF−II受容体とも称される。GILT標識治療酵素のM6P/IGF−II受容体への結合は、エンドサイトーシス経路を介して、タンパク質をリソソームに標的化する。本方法は、タンパク質が分離されると、さらなる修飾が必要ないため、グリコシル化を伴う方法と比べ、簡素化および費用効果を含む、多数の利点を有する。
【0041】
GILT技術およびGILT標識の詳細な説明は、米国特許公開第20030082176号、第20040006008号、第20040005309号、および第20050281805号において見られ、そのすべての教示は、参照することによって、全体として本明細書に組み込まれる。
【0042】
GILT標識GAA
適切なGILT標識をコードするカセットをGAA−コード化配列に融合することによって、本発明は、タンパク質上でCI−MPRを高親和性のM6P非依存性含有量と結合可能な、GILT標識GAAを提供する。さらに、本発明は、各酵素分子がCI−MPRの高親和性配位子を保有する、GAA製剤を提供する。実施例の項で説明されるように、GILT標識GAAは、Biacore(登録商標)分析によるCI−MPRに対し高親和性を有し、従来のリソソーム酵素補充療法よりも体内において治療上より効果的である。
【0043】
GILT標識GAAの優れた効力は、いくつかの臨床効果を提供する。効力の増加は、単に、同様またはより低用量でより有益な臨床予後をもたらすであろう。GILT標識GAAは、より効率的に疾患に罹患した複数の組織に送達可能である。例えば、GILT標識GAAは、特に、より低用量で骨格筋への送達を増加させることが可能である。また、効力の増加は、患者がしばしば被る有害事象を最小限にし、患者内の薬物に対する抗体の産出を軽減するために十分な低用量を可能にし得る。また、効力の増加によって、注入間の間隔を増加させた治療計画を可能にし得る。
【0044】
好ましい実施形態では、GILT標識GAAは、ヒトGAA、あるいは直鎖オリゴ糖内のαl−4結合を開裂する能力を保持するそのフラグメントまたは配列変異体と、ヒトCI−MPRをマンノース−6−リン酸に非依存的に結合するリソソーム標的化ドメインとを含む。好適なリソソーム標的化ドメインは、成熟ヒトIGF−II、あるいは、そのフラグメントまたは配列変異体を含む。
【0045】
IGF−IIは、好ましくは、CI−MPRに特異的に標的化される。特に有用なのは、高親和性を有するCI−MPRを結合するが、評価可能な親和性を有する他のIGF−II受容体の結合は行わない、タンパク質をもたらすIGF−IIポリペプチド内の変異体である。また、IGF−IIは、血清IGF−結合タンパク質への結合を最小限にするように修飾され(Baxter(2000)Am.J Physiol Endocrinol Metab.278(6):967−76)、IGF−II/GILT構築物の隔離を回避可能である。いくつかの研究は、IGF−結合タンパク質への結合のために必要なIGF−II内の残留物を特定している。これらの残留物において変異体を有する構築物は、M6P/IGF−II受容体に結合する高親和性の保持と、IGF−結合タンパク質の低下した親和性とに対して検査可能である。例えば、IGF−IIのPhe 26とSerの置換は、IGFBP−1および−6のIGF−IIの親和性を低下させ、M6P/IGF−II受容体への結合に作用しないと報告されている(Bach et al.(1993)J.Biol.Chem.268(13):9246−54)。また、GIu 9のLys等の他の置換も有利である可能性がある。IGF−IIによって高度に保存されるIGF−Iの領域内の類似変異体は、個別にまたは組み合わせて、IGF−BP結合の大幅な減少をもたらす(Magee et al.(1999)Biochemistry 38(48):15863−70)。
【0046】
代替アプローチは、高親和性によって、M6P/IGF−II受容体に結合可能なIGF−IIの最小領域を同定することである。M6P/IGF−II受容体に結合するIGF−IIに関与する残留物は、ほとんどがIGF−IIの一面上に凝集する(Terasawa et al.(1994)EMBO J.13(23):5590−7)。IGF−II三次構造は、通常、3つの分子内ジスルフィド結合によって維持されるが、IGF−IIのM6P/IGF−II受容体結合表面上のアミノ酸配列を組み込むペプチドは、適切に折り畳まれ、結合活性を有するように設計可能である。そのような最小結合ペプチドは、非常に好ましいリソソーム標的化ドメインである。例えば、好ましいリソソーム標的化ドメインは、ヒトIGF−IIのアミノ酸8−67である。またM6P/IGF−II受容体に結合するアミノ酸48−55周囲の領域に基づいて設計されたペプチドも、望ましいリソソーム標的化ドメインである。別様に、ペプチドのランダムライブラリは、酵母2ハイブリッドアッセイ、またはファージディスプレイ型アッセイのいずれかを介して、M6P/IGF−II受容体を結合する能力に対し検査可能である。
【0047】
GILT標識は、GAAポリペプチドのN−末端またはC−末端に融合可能である。GILT標識は、GAAポリペプチドに直接融合可能であるか、あるいはリンカまたはスペーサによって、GAAポリペプチドから分離可能である。アミノ酸リンカは、天然タンパク質内のその位置に生じるもの以外のアミノ酸配列を組み込み、概して、柔軟であるように、または2つのタンパク質部分間にα−ヘリックス等の構造を介入するように設計される。リンカは、配列Gly−Ala−ProまたはGIy−Gly−Gly−Gly−Gly−Pro等のように長さが比較的短い、あるいは、例えば、10−25アミノ酸等のように長い可能性がある。融合接合部位は、両融合パートナの適切な折り畳みおよび活性を促進し、GAAポリペプチドからのペプチド標識の未成熟分離を防止するように、慎重に選択されるべきである。好ましい実施形態では、リンカ配列は、Gly−Ala−Proである。
【0048】
本発明の方法および組成物において使用可能なGILT標識GAAタンパク質の追加構築物は、米国特許公開第20050244400号に詳細に説明されており、その全体の開示は、参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0049】
GILT標識GAAは、種々の哺乳類細胞株に発現可能であって、ヒト胎児腎臓(HEK)293、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、サル腎臓(COS)、HT1080、Cl0、HeLa、ベビーハムスター腎臓(BHK)、3T3、C127、CV−I、HaK、NS/O、およびL−929細胞を含むが、これらに限定されない。また、GILT標識GAAは、種々の非哺乳類宿主細胞内に発現可能であって、例えば、昆虫(例えば、Sf−9、Sf−21、Hi5)、植物(例えば、マメ科、穀草類、またはタバコ)、酵母(例えば、S.cerevisiae、P.pastoris)、原核生物(例えば、E.CoIi、B.subtilis、および他のBacillus類、Pseudomonas類、Streptomyces類)、あるいは菌類が挙げられる。
【0050】
いくつかの実施形態では、GILT標識GAAは、分泌シグナルペプチドを使用して産出され、融合タンパク質の分泌を促進可能である。例えば、GILT標識GAAは、IGF−IIシグナルペプチドを使用して産出可能である。一般に、IGF−IIシグナルペプチドを使用して産出されるGILT標識GAAは、野生型ヒトGAAと比較して、低下したマンノース−6−リン酸(M6P)レベルをタンパク質の表面上に有する。実施例の項に示されるように、検出可能M6Pは、本発明の例示的な治療的融合タンパク質上に存在しないことが、N−連鎖オリゴ糖分析および機能的取り込みアッセイの両方によって確認されている。
【0051】
本発明のGILT−GAAは、典型的には、約150,000−600,000nmol/時間/mgタンパク質、好ましくは、約250,000−500,000nmol/時間/mgタンパク質の範囲の特異的酵素活性を有する。一実施形態では、GAAは、少なくとも約150,000nmol/時間/mgタンパク質の特異的酵素活性、好ましくは、少なくとも約300,000nmol/時間/mgタンパク質の特異的酵素活性、より好ましくは、少なくとも約400,000nmol/時間/mgの特異的酵素活性、さらにより好ましくは、少なくとも約600,000nmol/時間/mgタンパク質の特異的酵素活性を有する。GAA活性は、GAA4MU単位によって定義される。
【0052】
ポンペ病の治療
本発明の方法は、小児、若年性、または成人発症ポンペ病に罹患する個体を治療する際に等しく有効である。典型的には、本明細書に記載の療法および組成物は、より高いレベルの残留GAA活性(それぞれ、1〜10%または10−40%)を有し、したがって、投与されたGILT標識GAAが免疫学的により耐性となる可能性があるため、若年性または成人発症ポンペ病を有する個体を治療する際により有効である場合がある。理論に制約されることを所望するものではないが、これらの患者は、概して、内因性GAAに対し交差反応性免疫物質(Cross−Reactive Immunologic Material;CRIM)陽性である。したがって、彼らの免疫系は、「異質」タンパク質として、GILT標識GAAのGAA部分を知覚せず、GILT標識GAAのGAA部分に対する抗体を作る可能性が低い。
【0053】
本明細書で使用される「治療する/処理する」または「治療/処理」という用語は、疾患に付随する1つ以上の症状の改善、疾患の1つ以上の症状の発症の防止または遅延、および/または疾患の1つ以上の症状の重症度または頻度を軽減することを示す。例えば、治療は、心臓状態(例えば、拡張終期および/または収縮末期容量の増加、あるいはポンペ病に典型的に見られる進行性心筋症の低減、改善、または防止)、あるいは肺機能(例えば、基準容量を上回る啼泣時肺活量の増加、および/または啼泣時の酸素飽和度低下の正常化)の改善、神経発達および/または運動技能の改善(例えば、AIMSスコアの上昇)、疾患に罹患する個体の組織内のグリコーゲンレベルの低下、あるいはこれらの効果の任意の組み合わせを示す可能性がある。好ましい一実施形態では、治療は、特に、ポンペ病付随心筋症の低減または防止におけるグリコーゲンクリアランスの改善を含む。本明細書で使用される「改善する」、「増加する」、または「低下する」という用語は、本明細書に記載の治療開始前の同一個体における測定値、あるいは本明細書に記載の治療を受けていない対照個体(または複数の対照個体)における測定値等、基準測定に相対する値を示す。「対照個体」は、治療を受ける個体と同一形態のポンペ病(小児、若年性、または成人発症のいずれか)に罹患する個体であって、治療を受ける個体とほぼ同年齢である(治療を受ける個体および対照個体における疾患の段階は同程度であることを保証するため)。
【0054】
治療を受ける個体(また、「患者」または「対象」とも称される)は、ポンペ病(すなわち、小児、若年性、または成人発症ポンペ病のいずれか)を有する、あるいはポンペ病を発症する可能性を有する個体(胎児、幼児、小児、青年、または成人のヒト)である。個体は、残留内因性GAA活性を有する、または測定可能活性を有しない可能性がある。例えば、ポンペ病を有する個体は、約1%未満の正常GAA活性(すなわち、通常、小児発症ポンペ病に付随するGAA活性)であるGAA活性、約1〜10%の正常GAA活性(すなわち、通常、若年性発症ポンペ病に付随するGAA活性)であるGAA活性、または約10〜40%の正常GAA活性(すなわち、通常、成人発症ポンペ病に付随するGAA活性)であるGAA活性を有する可能性がある。個体は、内因性GAAに対しCRIM−陽性またはCRIM−陰性である可能性がある。一実施形態では、個体は、内因性GAAに対しCRIM−陽性である。別の実施形態では、個体は、最近、疾患を有していると診断された個体である。早期治療(診断後可能な限り迅速な治療の開始)は、疾患の影響を最小限にし、治療の効果を最大限にするために重要である。
【0055】
GILT標識GAAの投与
本発明の方法では、GILT標識GAAは、典型的には、単独で、あるいは、本明細書に記載のように、GILT標識GAAを含有する(例えば、疾患の治療のための薬剤の製造において)組成物または薬剤中で、個体に投与される。組成物は、生理的に受容可能な担体または賦形剤によって調合された、医薬組成物を調製可能である。担体および組成物は、無菌にすることが可能である。調合は、投与形態に適合させるべきである。
【0056】
好適な医薬的に受容可能な担体は、水、食塩水(例えば、NaCl)、生理食塩水、緩衝食塩水、アルコール、グリセロール、エタノール、アラビアゴム、植物油、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、炭水化物(ラクトース、アミロース、または澱粉等)、糖類(マンニトール、スクロース、またはその他等)、デキストロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、流動パラフィン、香油、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等、ならびにこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。医薬製剤は、所望に応じて、活性化合物と有害に反応しない、あるいはそれらの活性に干渉しない、助剤(例えば、潤滑剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳剤、浸透圧に作用する塩、緩衝液、着色剤、香味料および/または芳香剤等)と混合可能である。好ましい実施形態では、静脈内投与に好適な水溶性担体が使用される。
【0057】
また、組成物または薬剤は、所望に応じて、小量の湿潤または乳化剤、あるいはpH緩衝液を含有可能である。組成物は、液体溶液、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸薬、カプセル剤、徐放性調合剤、または散剤であることが可能である。また、組成物は、従来の結合剤およびトリグリセリド等の担体によって、坐薬として調合可能である。経口調合剤は、製薬等級のマンニトール、ラクトース、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等の標準的担体を含むことが可能である。
【0058】
組成物または薬剤は、ヒトに投与するために適合される医薬組成物として、常法に従って、調合可能である。例えば、好ましい実施形態では、静脈内投与のための組成物は、典型的には、無菌等張水性緩衝液内の溶液である。また、必要に応じて、組成物は、溶解補助剤および局所麻酔薬を含み、注射部位の疼痛を緩和してもよい。概して、成分は、例えば、密封容器内の凍結乾燥粉末、あるいは活性剤の量を示すアンプルまたはサシェ等の密閉容器内の水非含有濃縮物等の単位投与量形態で、個別に、もしくは混合して供給される。組成物が注入によって投与されるべきである場合、無菌医薬等級の水、生理食塩水、またはデキストロース/水を含有する注入瓶によって分注可能である。組成物が注射によって投与される場合、成分が投与前に混合され得るように、注射のための無菌水または生理食塩水のアンプルを提供可能である。
【0059】
GILT標識GAAは、中性または塩形態で調合可能である。医薬的に受容可能な塩は、遊離アミノ基(塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸等に由来)、および遊離カルボキシル基(ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、二価カチオン、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等に由来)によって形成されるものを含む。
【0060】
GILT標識GAA(または、GILT標識GAA含有組成物または薬剤)は、任意の適切な経路によって投与される。好ましい実施形態では、GILT標識GAAは、静脈内に投与される。他の実施形態では、GILT標識GAAは、心臓または筋肉(例えば、筋肉内)、あるいは神経系(例えば、脳に直接注射、脳室内に、髄腔内に)等の標的組織への直接投与によって投与される。別様に、GILT標識GAA(または、GILT標識GAA含有組成物または薬剤)は、非経口的に、経皮的に、あるいは経粘膜的に(例えば、経口的にまたは経鼻的に)投与可能である。所望に応じて、2つ以上の経路を並行して、使用することができる。
【0061】
GILT標識GAA(あるいは、GILT標識GAAを含有する組成物または薬剤)は、単独で、もしくは抗ヒスタミン剤(例えば、ジフェンヒドラミン)または免疫抑制剤等の他の薬剤、あるいは抗GILT標識GAA抗体に拮抗する他の免疫治療剤と併用して、投与可能である。「併用して」という用語は、薬剤が、GILT標識GAA(または、GILT標識GAA含有組成物)の前、ほぼ同時に、あるいはその後に投与されることを示す。例えば、薬剤は、GILT標識GAA含有組成物内に混合され、それによって、GILT標識GAAと同時に投与可能である。別様に、薬剤は、混合せずに(例えば、同様にGILT標識GAAが投与される、静脈ライン上の薬剤の「ピギーバッキング」送達によって、またはその逆によって)、同時に投与可能である。別の実施例では、薬剤は、個別に(例えば、混合せずに)であるが、GILT標識GAAの投与の短時間フレーム内(例えば、24時間以内)で投与可能である。好ましい一実施形態では、個体が、内因性GAAに対しCRIM−陰性である場合、GILT標識GAA(または、GILT標識GAA含有組成物)は、抗GILT標識GAA抗体の量を低減する、あるいはその産出を防止するように設計された免疫抑制または免疫治療計画と併用して投与される。例えば、血友病患者において使用されるものと類似のプロトコル(Nilsson et al(1988)N.Engl.J.Med.318:947−50)を使用して、抗GILT標識GAA抗体を減少させることが可能である。また、そのような計画は、内因性GAAに対しCRIM−陽性であるが、抗GILT標識GAA抗体を有する、またはその危険性を有する個体において使用可能である。特に好ましい実施形態では、免疫抑制または免疫治療計画は、抗GILT標識GAA抗体の産出の可能性を最小限にするために、GILT標識GAAの最初の投与前に開始される。
【0062】
GILT標識GAA(または、GILT標識GAAを含有する組成物または薬剤)は、治療上有効量(すなわち、規則的間隔で投与されると、上述のように、疾患に付随する症状を改善する、疾患の発症を防止あるいは遅延させる、および/または疾患の症状の重症度もしくは頻度も同様に軽減する等、疾患を治療するために十分な投与量)で投与される。
【0063】
疾患の治療のために治療上有効となる投与量は、疾患の影響の特性および範囲に依存し、標準的臨床技術によって判定可能である。さらに、体外または体内アッセイは、随意に、以下に例示されるように、最適用量の範囲の同定を補助するために採用されてもよい。また、採用される正確な用量は、投与の経路および疾患の重篤度に依存し、施術者の判定および各患者の状況に従って、決定されるべきである。有効用量は、体外または動物モデル試験系に由来する用量応答曲線から推定されてもよい。治療上有効投与量は、例えば、約0.1〜1mg/kg、約1〜5mg/kg、約5〜20mg/kg、約20〜50mg/kg、または20〜100mg/kgであることが可能である。特定の個体のための有効投与量は、個体の必要性に応じて、経時的に変化可能である(例えば、増加または減少)。例えば、物理的疾病またはストレスの時、あるいは抗GILT標識GAA抗体が存在または増加する場合、もしくは疾患症状が悪化する場合、投与量は増大可能である。
【0064】
治療上有効量のGILT標識GAA(または、GILT標識GAAを含有する組成物または薬剤)は、疾患の影響の特性および範囲に応じて規則的間隔で、かつ継続的に投与される。本明細書で使用される、ある「間隔」での投与は、治療上有効量が、定期的に投与される(1回量とは区別されるように)ことを示す。間隔は、標準的臨床技術によって判定可能である。好ましい実施形態では、GILT標識GAAは、隔月、毎月、毎月2回、3週間毎、隔週、毎週、毎週2回、毎週3回、または毎日投与される。単一個体のための投与間隔は、固定間隔である必要はないが、個体の必要性に応じて、経時的に変化可能である。例えば、物理的疾病またはストレスの時、あるいは抗GILT標識GAA抗体が存在または増加する場合、もしくは疾患症状が悪化する場合、投与間の間隔は減少可能である。
【0065】
本明細書で使用される「隔月」という用語は、2ヶ月に1回(すなわち、2ヶ月毎に1回)の投与を意味し、「毎月」という用語は、1ヶ月に1回の投与を意味し、「3週間毎」という用語は、3週間に1回(すなわち、3週間毎に1回)の投与を意味し、「隔週」という用語は、2週間に1回(すなわち、2週間毎に1回)の投与を意味し、「毎週」という用語は、1週間に1回の投与を意味し、「毎日」という用語は、投与1日に1回の投与を意味する。
【0066】
さらに、本発明は、本明細書に記載のように、本明細書に記載の方法等による、ポンペ病の治療用の組成物の投与のための指示を含むラベル付き容器(例えば、バイアル、瓶、静脈内投与用の袋、注射器等)内のヒトGILT標識GAAを含む医薬組成物に関する。
【0067】
本発明は、以下の実施例によって、さらに、かつより具体的に説明される。しかしながら、実施例は、例証目的のために含まれるものであって、制限のためのものではない。
【実施例】
【0068】
実施例1 組み換え野生型GAAおよびGILT標識GAAの産出
プラスミド
全長野生型ヒトGAAをコードするDNAは、分離され、組み換えヒトGAAの産出のために、発現ベクター内に挿入される。完全ヒトGAAアミノ酸1−952をコードするDNAカセット(以下、「カセット635」)は、以下のPCRプライマーを使用して、IMAGEクローン4374238(Open Biosystems)から派生した。
GAA13:5’−GGAATTCCAACCATGGGAGTGAGGCACCCGCCC(配列番号1)
および
GAA27:5’−GCTCTAGACTAACACCAGCTGACGAGAAACTGC(配列番号2)。
カセット635は、EcoRIおよびXbaIによって消化され、Klenow DNAポリメラーゼによる処理によって鈍化され、次いで、発現ベクターpCEP4のKlenow処理されたHindIII部位(Invitrogen)内に結紮され、プラスミドp635を生成する。以下、ZC−635は、野生型非標識GAAタンパク質と称する。
【0069】
組み換えGILT標識GAAZC−701の産出のためのDNAカセット(以下、「カセット701」)は、アミノ酸A70に対応するGAA配列の上流に結合された以下のN−末端配列を除き、カセット635と同様に調製した。
GAATTCACACCAATGGGAATCCCAATGGGGAAGTCGATGCTGGTGCTTCT
CACCTTCTTGGCCTTCGCCTCGTGCTGCATTGCTGCTCTGTGCGGCGGGGA
GCTGGTGGACACCCTCCAGTTCGTCTGTGGGGACCGCGGCTTCTACTTCAG
CAGGCCCGCAAGCCGTGTGAGCCGTCGCAGCCGTGGCATCGTTGAGGAGT
GCTGTTTCCGCAGCTGTGACCTGGCCCTCCTGGAGACGTACTGTGCTACCC
CCGCCAAGTCCGAGGGCGCGCCG(配列番号3)。
【0070】
カセット701は、EcoRIおよびXbaIによって消化され、Klenow DNAポリメラーゼによる処理によって鈍化され、次いで、発現ベクターpCEP4のKlenow処理されたHindIII部位内に結紮され、プラスミドp701を生成する。以下、ZC−701は、p701プラスミドによってコードされるGILT標識GAAタンパク質と称する。図1は、GILT標識GAAZC−701の略図を示し、分泌によって損失するIGF−IIシグナルペプチドを表す。したがって、分泌形態(すなわち、対象に投与されるように)では、ZC−701は、ヒトIGF−IIのアミノ酸1および8−67(すなわち、成熟ヒトIGF−IIのΔ2−7)と、スペーサ配列GIy−Ala−Proと、ヒトGAAのアミノ酸70−952とを含む。全長アミノ酸配列は、以下に示される。スペーサ配列は、下線が引かれている。スペーサ配列に対する配列N−末端は、ヒトIGF−IIのアミノ酸1および8−67(アミノ酸1を指す矢印)を反映し、スペーサ配列に対する配列C−末端は、ヒトGAAのアミノ酸70−952を反映する。
↓
MGIPMGKSMLVLLTFLAFASCCIAALCGGELVDTLQFVCGDRGFYFSRPASRVSRRS
RGIVEECCFRSCDLALLETYCATPAKSEGAPAHPGRPRAVPTQCDVPPNSRFDCAPDK
AITQEQCEARGCCYIPAKQGLQGAQMGQPWCFFPPSYPSYKLENLSSSEMGYTATLT
RTTPTFFPKDILTLRLDVMMETENRLHFTIKDPANRRYEVPLETPRVHSRAPSPLYSVE
FSEEPFGVIVHRQLDGRVLLNTTVAPLFFADQFLQLSTSLPSQYITGLAEHLSPLMLST
SWTRITLWNRDLAPTPGANLYGSHPFYLALEDGGSAHGVFLLNSNAMDVVLQPSPA
LSWRSTGGILDVYIFLGPEPKSVVQQ YLDVVGYPFMPPYWGLGFHLCRWGYSSTAIT
RQVVENMTRAHFPLDVQWNDLDYMDSRRDFTFNKDGFRDFPAMVQELHQGGRRY
MMIVDPAISSSGPAGSYRPYDEGLRRGVFITNETGQPLIGKVWPGSTAFPDFTNPTAL
AWWEDMVAEFHDQVPFDGMWIDMNEPSNFIRGSEDGCPNNELENPPYVPGVVGGT
LQAATICASSHQFLSTHYNLHNLYGLTEAIASHRALVKARGTRPFVISRSTFAGHGRY
AGHWTGDVWSSWEQLASSVPEILQFNLLGVPLVGADVCGFLGNTSEELCVRWTQLG
AFYPFMRNHNSLLSLPQEPYSFSEPAQQAMRKALTLRYALLPHLYTLFHQAHVAGET
VARPLFLEFPKDSSTWTVDHQLLWGEALLITPVLQAGKAEVTGYFPLGTWYDLQTV
PIEALGSLPPPPAAPREPAIHSEGQWVTLPAPLDTINVHLRAGYIIPLQGPGLTTTESRQ
QPMALAVALTKGGEARGELFWDDGESLEVLERGAYTQVIFLARNNTIVNELVRVTS
EGAGLQLQKVTVLGVATAPQQVLSNGVPVSNFTYSPDTKVLDICVSLLMGEQFLVS
WC(配列番号4)。
【0071】
第2のGILT標識GAAカセットZC−1026は、同様に構築された。ZC−1026は、ヒトIGF−IIのアミノ酸1および8−67と、スペーサ配列Thr−Glyと、ヒトGAAのアミノ酸70−952とを含む。
【0072】
これらのプラスミドを使用して、組み換えタンパク質の産出のための懸濁HEK293細胞を一過性にトランスフェクトした。プラスミドは、製造業者(Invitrogen)によって記載されるように、懸濁FreeStyle(登録商標)293−F細胞内にトランスフェクトされた。要するに、細胞は、旋回式振盪機上のポリカーボネート振盪フラスコ内のOpti−MEM(登録商標)I培地(Invitrogen)において、37℃および8%CO2で成長させた。細胞は、製造業者(Invitrogen)によって記載されるように、濃度1×106細胞/mlに調節され、次いで、1:1:1の比率のml細胞:μg DNA:μl 293fectin(登録商標)でトランスフェクトされた。培養物は、トランスフェクション後5〜10日で採取され、細胞は、遠心分離と、0.2μmボトルトップフィルタを通した濾過とによって、除去された。上清は、−80℃で保存した。
【0073】
別様に、カセット701は、GPEx(登録商標)レトロベクター発現系(Cardinal Health)内に組み込まれた。プロセスは、米国特許第6,852,510号に記載されており、その開示は、参照することによって本明細書に組み込まれる。カセット701を含有するGPEx(登録商標)レトロベクター発現系を使用して、組み換えGILT標識GAAの産出のために、安定したCHO細胞株を生成した。また、カセット701は、GPEx(登録商標)レトロベクター発現系内に組み込み、組み換えGILT標識GAAの産出のために、安定したHEK293細胞株を生成するために使用可能である。
【0074】
GILT標識GAAの精製
出発物質は、上述のように、−80℃の保存から解凍させた哺乳類細胞培養上清であった。酢酸ナトリウム(pH4.6)を添加し、最終濃度100mMを達成し、硫酸アンモニウムを添加し、最終濃度0.75Mを達成した。物質を遠心分離して、沈殿物を除去し、0.8/0.2μm AcroPak(登録商標)500カプセル(Pall、カタログ#12991)で濾過した。
【0075】
濾過された物質は、HIC Load Buffer(50mM NaAc pH4.6、0.75M AmSO4)によって調製されたPhenyl−Sepharose(登録商標)6Low−Sub Fast−Flow(GE Healthcare)カラム上に装填した。カラムは、10カラム体積のHIC Wash Buffer(50mM NaAc pH5.3、0.75M AmSO4)で洗浄し、5カラム体積のHIC Elution Buffer(50mM NaAc pH5.3、20mM AmSO4)で溶出した。
【0076】
貯留された留分は、QXL Load Buffer(20mM Histidine pH6.5、50mM NaCl)内に広く透析され、次いで、Q Sepharose(登録商標)XLカラム(GE Healthcare)上に装填した。カラムは、10カラム体積のQXL Equilibration Bufferによって洗浄し、10カラム体積のQXL Elution Buffer(20mM Histidine pH6.5、150mM NaCl)で溶出した。ある場合には、QXLカラムから貯留された留分は、30から40mg/mlのタンパク質濃度に濃縮され、次いで、PBS pH6.2に平衡された2.6×90cm Ultrogel AcA 44カラム上に装填した。装填体積は、5から7.5ml(カラム体積の1〜1.5%)とした。カラムは、PBS pH6.2中で0.4ml/分で作動させ、4mlの留分を回収した。
【0077】
精製された非標識GAAおよびGILT標識GAAは、図2A−図2Cに示される。図2Aは、銀染色後のSDS−PAGEを示す。図2Bは、抗GAA抗体を使用したウエスタンブロットを示す。図2Cは、抗IGF−II抗体を使用したウエスタンブロットを示す。
【0078】
(実施例2)CI−MPRに対するGILT標識GAAの親和性
CI−MPRに対するGILT標識GAAZC−701の結合親和性は、Biacore(登録商標)表面プラズモン共鳴アッセイを使用して判定した。それぞれ、野生型CI−MPRドメイン10−13および点突然変異体を含有する2つのビオチン化およびHisで標識された組み換えタンパク質は、標準的分子技術に従って作製した。2つの組み換えタンパク質の略図は、図3Aに示される。プラスミドpl288は、IGF−IIシグナルペプチドに続き、ポリ−His標識、Biotin ASドメイン、野生型CI−MPRドメイン10−13をコードする配列を含有する。プラスミドp1355は、IGF−IIシグナルペプチドに続き、ポリ−His標識、Biotin ASドメイン、受容体IGF−IIに対する受容体の親和性を効果的に低下させる点変異体I1572Tを有するCI−MPRドメイン10−13をコードする配列を含有する。2つの組み換えタンパク質に関する特異的DNAおよびアミノ酸配列は、以下に示される。
【0079】
HIS−BIOTIN−CI−MPR DOMAINS 10−13
【0080】
【数1】
HIS−BIOTIN−CI−MPR DOMAINS 10−13PROTEIN SEQUENCE
【0081】
【数2】
HIS−BIOTIN−CI−MPR DOMAINS 10−13 Il 572T(下線の配列変化は、点変異体I1572Tと、診断SpeI部位を生成するサイレント変異体S 1573をもたらす)
【0082】
【数3】
HIS−BIOTIN−CI−MPR DOMAINS 10−13 I1572T PROTEIN SEQUENCE(I1572T変異体は下線部)
【0083】
【数4】
組み換えタンパク質は、懸濁HEK293細胞(図3B参照)内に一時的に発現した。タンパク質は、培養上清から回収し、ニッケルアガロースによって精製し、次いで、ビオチン化した。具体的には、プラスミドp1288およびp1355によってトランスフェクトされた細胞からの上清は、His6で標識された受容体ドメインタンパク質の精製のために、製造業者によって指示されるように、1ml His Gravitrap(登録商標)カラム(GE Healthcare)に適用した。溶出液を濃縮し、10mM Tris pH8および25mM NaCl緩衝液に交換し、次いで、タンパク質は、製造業者(Avidity)によって記載されるように、25μl BiomixA、25μl BiomixB、および4μl BirA酵素を有する205μl総体積中70μg受容体を含有する反応において、BirA酵素によってビオチン化された。BirA酵素処理は、30℃で1.5時間行った。反応液は、次いで、20倍でHis Gravitrap結合緩衝液(GE Healthcare)中に希釈し、BirA酵素および遊離ビオチンの除去のために、His Gravitrap(登録商標)カラムに再適用した。溶出液は、4℃で保存した。
【0084】
表面プラズモン共鳴分析
表面プラズモン共鳴測定はすべて、Biacore(登録商標) 3000機器を使用して、25℃で行った。SAセンサチップおよび界面活性剤P20は、Biacore(Piscataway、NJ)から取得した。緩衝液はすべて、Nalgene(登録商標)濾過ユニット(0.2μm)を使用して濾過し、室温に平衡化し、使用直前に脱気した。タンパク質試料は、13,000xgで15分間遠心分離し、試料内に存在し得るあらゆる微粒子を除去した。
【0085】
精製され、ビオチン化された野生型(1288FS)または変異体(1355FS)組み換えCI−MPR DOMAINS 10−13(Dom10−13)タンパク質は、ストレプトアビジンが共有結合しているデキストランマトリクスを含有するBiacore(登録商標)ストレプトアビジン(SA)チップ上に固定した。SAセンサチップのドッキング後、SAチップを脱イオン水で2回洗浄した。カップリングされるべき流動細胞は、50mM NaOH/1 M NaClを含有する緩衝液60mlを流速20ml/分で注入することによって、調整した。チップは、上述のように、H2Oで洗浄した。チップは、次いで、上述のように、カップリング緩衝液(10mM HEPES pH7.4/100mM NaCl)で洗浄した。ビオチン化されたDom10−13タンパク質1355FSおよび1288FSは、カップリング緩衝液中で20ng/mlおよび4ng/mlに希釈した。流動細胞(FC)1&2は、FC3&4よりも高密度でカップリングした。FC1およびFC3は、変異体Dom10−13構築物によって固定し、基準表面(すなわち、FC1からの反応は、FC2からサブトラクトし、FC3からの反応は、FC4からサブトラクトした)として使用した。FC2およびFC4は、野生型Dom10−13構築物によって固定した。FC1は、流速10ml/分で1355FS(20ng/ml)を50ml注入することによってカップリングし、FC2は、流速10ml/分で1288FS(20ng/ml)50mlを注入することによってカップリングし、最終カップリングレベルおよそ5,000共鳴単位(RU)を達成した。FC3は、流速10ml/分で1355FS(4ng/ml)50mlを注入することによってカップリングし、FC2は、流速10ml/分で1288FS(4ng/ml)を50mlを注入することによってカップリングし、最終カップリングレベルおよそ1,000RUを達成した。これらのカップリングレベルは、800RU(FC2−1)または160RU(FC4−3)のIGF−IIのための理論Rmaxと、10,000RU(FC2−1)または2,000RU(FC4−3)のGAA−GILTのための理論Rmaxとを提供する。Dom10−13構築物を含有するカップリング緩衝液を50ml注射後、チップは、カップリング緩衝液のみで洗浄した(流速10ml/分の10ml注射)。非結合ストレプトアビジン結合部位の保持は、流速10μl/分でのビオチン(10mM)の2つの連続した10ml注射によって、ビオチンで飽和した。
【0086】
カップリング後、流動細胞は、泳動緩衝液(10mM HEPES pH7.0、150mM NaCl、および0.005%(v/v)界面活性剤P20)中で平衡化した。固定されたDom10−13構築物の活性は、IGF−II単独に対する受容体の新和性を測定することによって判定した。IGF−II(134mM)は、最初に、泳動緩衝液中の最終濃度1、5、10、25、50、75、100、250、および500nMに希釈した。各IGF−II濃度は、流速40ml/分で2分間チップ上に注入し(すなわち、会合相)、その後、泳動緩衝液単独で2分間の注射(流速=40ml/分)を行った(すなわち、解離相)。表面は、流速10ml/分で、10mM HClの10ml注射によって再生した。再生後、流速を40ml/分に上昇させ、チップを次の注射の開始前に1分間平衡化させた。
【0087】
同様に、GILT標識GAA構築物701は、Dom10−13組み換え受容体に対するその結合親和性のためにアッセイした。構築物は、泳動緩衝液中の最終濃度1、5、10、25、50、75、100、250、および500nMに希釈し、IGF−IIに対し上述のように注入した。IGF−II濃度曲線を、GILT標識GAAを構築後に、固定されたDom10−13表面の完全性を試験するために、描いた。
【0088】
平衡状態での反応の平均は、各検体濃度に対し判定し、結果として生じる平衡共鳴単位は、濃度に対しプロット化した。データは、BIA評価(登録商標)ソフトウェア(バージョン4.1)を使用して、定常状態親和性モデルに適合させた。また、解離定数は、1:1結合等温モデルを使用して判定した。反応データはすべて、Myszka(2000)Methods Enzymol.323:325−340に記載されるように、二重参照され、バルク屈折率変化の寄与に対する対照(すなわち、泳動緩衝液の単独注射)を変異体Dom10−13によって固定された流動細胞と並行して行い、すべての結合センサグラムからサブトラクトした。図4A−図4Bは、例示的な濃度曲線であって、CI−MPRに結合するIGF−IIおよびGILT標識GAAZC−701のBiacore(登録商標)分析を示す。図4Aは、IGF−IIの結合曲線を示す。図4Bは、GILT標識GAAZC−701の結合曲線を示す。両流動細胞対の結果(すなわち、FC2−1およびFC4−3)を比較した(図4B)。
【0089】
これらの実験結果は、GILT標識GAAZC−701が、CI−MPRに対し親和性を有し、IGF−IIの親和性の約0.8であることを示す(表1)。これらのデータは、GILT標識GAAが、IGF−IIの親和性と比較して、CI−MPRに対し高親和性を有することを示す。CI−MPRに対するIGF−IIの測定された親和性の絶対値は、27nMであったが、IGF−IIは、天然受容体よりも約10倍低い親和性を有する受容体のドメイン10−13に結合することが、以前に文献に報告されていた。Linnell et al.(2001)J Biol Chem.Jun 29;276(26):23986−91。したがって、天然受容体に対するGILT標識GAAの結合親和性もまた、10倍高いと予測される。
【0090】
表1.
【0091】
【表1】
(実施例3)N−結合型オリゴ糖分析は、ZC−701のM6P欠落を示唆
N−結合型オリゴ糖分析を行い、脱グリコシル化に続き、蛍光検出によるHPLC分析の組み合わせを使用して、ZC−701に対するオリゴ糖プロファイルを判定した(Blue Stream Laboratories)。
【0092】
糖タンパク質試料からのN−結合型炭水化物の開裂は、各試料に対しおよそ100μgのタンパク質を使用して、1:100(酵素対基質)の比率でN−グリカナーゼによって行った。一旦放出させ、冷エタノールを使用してグリカンを抽出し、遠心分離によって乾燥させた。回収されたオリゴ糖は、シアノホウ水素化ナトリウムの存在下、かつ酸性条件下、2−アミノベンズアミド(2−AB)によって標識した。誘導体化ステップに続き、試料中に残った過剰染料および他の反応試薬は、Glycoclean(R)S試料濾過カートリッジ(Prozyme)によって除去した。
【0093】
以下の条件を使用してHPLC−FLDによるN結合型オリゴ糖の分析を行なった:移動相A:65%アセトニトリル/35%移動B;移動相B:250mMギ酸アンモニウム、pH4.4;検出:蛍光(Ex:330nm、Em:420nm);HPLC勾配。
【0094】
クロマトグラフのピークを積分し、ピーク保持時間に基づいて、比較した。結果は、総ピーク面積当たりの各糖型の%面積として報告した。本分析から、ZC−701上に存在する優勢オリゴ糖構造は、高マンノース構造であって、一部は複合鎖構造であることが判定された。しかしながら、マンノース−6−リン酸構造は検出されなかった。
【0095】
(実施例4)取り込みアッセイは、ZC−701表面上のM6Pの機能的欠如を実証
哺乳類細胞内への組み換えGAAの取り込みは、ほとんどの哺乳類細胞型の表面上に存在するCI−MPRとの相互作用によって媒介される。取り込みは、タンパク質表面のオリゴ糖上のM6Pの存在に依存する。
【0096】
対照的に、ZC−701は、タンパク質のN−末端におけるIGF−II由来標識の存在によって、CI−MPRに対し高親和性を有する。種々の実験では、ZC−701は、哺乳類細胞内への評価可能なM6P−依存性取り込みを示さず、ZC−701表面上のM6Pの機能的欠如を実証することを示した。
【0097】
細胞ベースの取り込みアッセイを行い、標的細胞に侵入するGILT標識または非標識GAAの能力を実証した。ラットL6筋芽細胞は、取り込み24時間前に、24−ウェルプレート内にウェル当たり密度1×105細胞で載置した。実験開始時、培地を細胞から除去し、2〜500nMの濃度の標識または非標識GAAを含有する0.5mlの取り込み培地と交換した。取り込みの特異性を実証するために、いくつかのウェルは、さらに、競合剤M6P(5mM最終濃度)および/またはIGF−II(18μg/ml最終濃度)を含有した。18時間後、培地を細胞から吸引し、細胞をPBSで4回洗浄した。次いで、細胞は、200μl CelLytic M(登録商標)溶菌緩衝液によって溶解した。4MU基質を使用して、後述のように、GAA活性に対し溶解物をアッセイした。タンパク質は、Pierce BCA(登録商標) Protein Assay Kitを使用して判定した。
【0098】
CHO細胞中に産生したZC−701の典型的取り込み実験結果は、図5に示される。図から分かるように、ラットL6筋芽細胞内へのZC−701の取り込みは、事実上、M6Pの大量のモル過剰の添加によって影響を受けなかった一方、取り込みは、過剰IGF−IIによって、完全に抑制された。対照的に、wtGAA(ZC−635)の取り込みは、過剰M6Pの添加によって、完全に抑制されたが、事実上、IGF−IIとの競合によって影響を受けなかった。過剰M6Pによる抑制に対する哺乳類細胞内へのCHO−細胞産出ZC−701取り込みの鈍感性は、CHO細胞内に産出されたZC−701表面上のM6Pの機能的欠如を示す。
【0099】
(実施例5)GILT標識GAAは、非標識GAAよりも効率的取り込みを示唆
図6は、精製されたGILT標識GAA(ZC−701)および野生型非標識GAA(ZC−635)のL6筋芽細胞内への取り込みの飽和曲線を示す。図示される実験では、GILT標識GAAは、Kuptake=7nMを有する一方、wt GAAは、Kuptake=354nMを有する。これは、GILT標識GAAの有意に低いレベルは、非標識GAAと比較して、CI−MPRを介しての筋芽細胞内への最大取り込みを達成することが必要とされるため、GILT標識GAAが非標識GAAよりも効率的取り込みを示すことを示唆する。
【0100】
また、GILT標識は、GAAの酵素活性に干渉しないことが示された。
【0101】
GAAPNPアッセイ
GAA酵素は、100mM酢酸ナトリウムpH4.2および10mM Para−Nitrophenol(PNP)α−グルコシド基質(Sigma N1 377)を含有する50μl反応混合物中でインキュベートした。反応物は、37℃で20分間インキュベートし、300μlの100mM炭酸ナトリウムで停止した。405nmでの吸収度は、96−ウェルマイクロタイタープレート内で測定し、p−ニトロフェノール(Sigma N7660)から派生した標準的曲線と比較した。1 GAAPNP単位は、1nモルPNP加水分解/時間として定義した。
【0102】
GAA4MUアッセイ
GAA酵素は、10mM 4−メチルウンベリフェリルα−D−グルコシターゼ基質(Sigma、カタログ#M−9766)を有する123mM酢酸ナトリウムpH 4.0を含有する20μl反応混合物内でインキュベートした。反応物は、37℃で1時間インキュベートし、267mM炭酸ナトリウム、427mMグリシン、pH10.7を含有する200μlの緩衝液で停止した。蛍光度は、96−ウェルマイクロタイタープレート内で355nm励振および460nm濾過によって測定し、4−メチルウンベリフェロン(Sigma、カタログ#M1381)から派生した標準的曲線と比較した。1 GAA4MU単位は、1nモル4−メチルウンベリフェロン加水分解/時間として定義した。
【0103】
例示的なGILT標識GAAおよび野生型非標識GAAの特異的活性は、表2に示される。GILT標識GAAの酵素活性は、非標識GAAと比較可能である。
【0104】
表2.GILT標識GAAZC−701および野生型非標識GAAに対する特異的活性およびKm
【0105】
【表2】
*3製剤の判定の平均
**2製剤の判定の平均
(実施例6)ラットL6筋芽細胞内のGAAの半減期
取り込み実験は、上述のように(実施例4参照)、ラットL6筋芽細胞内のGILT標識GAAおよび非標識GAAによって行った。18時間後、酵素を含有する培地を細胞から吸引し、細胞をPBSで4回洗浄した。この時、複製ウェルを溶解し(時間0)、溶解物を−80で凍結した。その後毎日、複製ウェルを溶解し、分析のために保存した。14日後、すべての溶解物をGAA活性に対しアッセイした。データは、一次減衰式:In Ct=−kt+InC0(式中、Cは化合物の濃度、tは1時間単位による時間、およびkは一次速度定数)に従って、プロット化した。図7は、例示的なグラフであって、ラットL6筋芽細胞内のGILT標識GAAZC−701および野生型非標識GAA(ZC−635)の半減期を示す。図7に示される結果は、標識および非標識タンパク質が、それぞれ、6.5および6.7日に非常に類似した半減期を有することを示す。これは、細胞内に入ると、GILT標識酵素が、非標識GAAに対し類似動態に固執することを示唆する。
【0106】
(実施例7)取り込み後のGAAの処理
哺乳類GAAは、典型的には、Moreland et al.(2005)J. Biol. Chem.,280:6780−6791およびその中に含まれる参照文献に記載されるように、リソソーム内で連続的タンパク質分解処理を受ける。処理されたタンパク質は、70kDa、20kDa、10kDa、およびいくつかの小ペプチドのペプチドパターンを生じさせる。GILT標識GAAが、非標識GAAと同様に処理されるかどうかを判定するために、前述の取り込み実験からの溶解物のアリコートをウエスタンブロットによって分析した。図8A−Bは、ラットL6筋芽細胞内への取り込み後のGILT標識GAAのタンパク質分解処理を示す、ウエスタンブロットである。図8Aは、IGF−II標識によって70kDa IGF−IIペプチドおよびより大きな中間体を認識する、モノクローナル抗体によって同定されるペプチドのパターンを示す、ウエスタンブロットである。図8Aに示される結果は、取り込み直後のGILT標識の損失を示す。図8Bは、70kDaペプチドおよびより大きな中間体を認識する、モノクローナル抗体によって同定された取り込み後の76kDaおよび70kDa種内への野生型およびGILT標識GAAの処理を示す、ウエスタンブロットである。本実験において同定されるポリペプチドのプロファイルは、事実上、標識および非標識酵素の両方と同等であった。これは、細胞内に侵入すると、GILT標識は失われ、GILT標識GAAは、非標識GAAと同様に処理されることを示唆する。したがって、GILT標識は、細胞内に入ると、GAAの挙動に影響をほとんど及ぼさない、または全く及ぼさない可能性がある。
【0107】
(実施例8)薬物動態
異なる培養条件の下産出されるGILT標識GAAの薬物動態は、野生型129マウスにおいて測定した。GILT標識GAAZC−701は、3つの異なる培養条件下で産出した。3つの群の129匹のマウスに、3つの代替培地で成長させた細胞の培養上清から精製された10mg/kg ZC−701の一回の投与によって、頸静脈に注射した。血清試料は、注射前、注射後15分、30分、45分、60分、90分、120分、4時間、および8時間に採取した。その後、動物を屠殺した。血清試料は、定量的ウエスタンブロットによってアッセイした。データは、一次減衰式:In Ct=−kt+InC0(式中、Cは化合物の濃度、tは1時間単位の時間、およびkは一次速度定数)に従って、プロット化した。半減期は、図9に示されるログプロットの線形部分から求めた。GILT標識GAAタンパク質の半減期:赤線、PF−CHO、tl/2=43分;橙線、CDM4、tl/2=38分;緑線、CD17、tl/2=52分。これらの結果に基づくと、CD17培地内で産出されるタンパク質は、最も有益な半減期を有する。これらの結果は、GILT標識GAAが、循環から過度に急速に消失しないことを示唆する。
【0108】
(実施例9)GAAの組織半減期
本実験の目的は、酵素がその標的組織に達すると、GILT標識GAA活性が損失される比率を判定することであった。ポンペ病マウスモデルでは、Myozyme(登録商標)は、種々の筋組織において、約6−7日の組織半減期を有すると考えられる(Center for Drug Evaluation and Research and Center for Biologies Evaluation and Research, Pharmacology Reviewsの出願番号第125141/0)。
【0109】
ポンペ病マウス(Raben(1998)JBC. 273:19086−19092に記載され、その開示は、参照することによって本明細書に組み込まれる、ポンペ病マウスモデル6neo/6neo)は、非標識GAA(ZC−635)、またはGILT標識GAAZC−701、あるいはGILT標識GAAZC−1026のいずれか10mg/kgを頸静脈に注射された。その後、注射後1、5、10、および15日に、マウスは屠殺された。組織試料を均質化し、標準的手順に従って、GAA活性を測定した。GILT標識GAAZC−701およびZC−1026、ならびに非標識GAAZC−635の組織半減期を異なる組織における減衰曲線から計算した(図10A、大腿四頭筋組織、図10B、心組織、図10C、隔膜組織、図10D、肝組織)。計算された半減期値は、表3に要約される。
【0110】
非標識タンパク質(ZC−635)の組織半減期は、異なる組織において9.1から3.9日の範囲であった一方、GILT標識GAAZC−701の半減期は、異なる組織において8.5から7.4日の範囲であった(表3)。これらの範囲は、有意差よりも、比較的小試料サイズ(点当たり3匹の動物)による統計的変動を反映している可能性がある。
【0111】
比較のため、図9に示される減衰曲線から計算したZC−701および非標識野生型GAA(ZC−635)に対するラットL6筋芽細胞における半減期は、それぞれ、6.5および6.7日であった。
【0112】
表3.種々の組織における標識および非標識GAAの組織半減期
【0113】
【表3】
これらのデータは、ポンペ病マウス内の細胞内に入ると、GILT標識GAAは、非標識GAAと類似の動態に固執すると考えられることを示唆する。さらに、GILT標識GAAの減衰動態の知識は、適切な投与間隔のデザインに役立ち得る。
【0114】
(実施例10)C2C12マウス筋芽細胞のリソソーム内へのGILT標識GAAの取り込み
C2C12マウス筋芽細胞をポリ−リジンでコーティングされた細胞(BD Biosciences)上に成長させ、5% CO2中37℃で、100nM GILT標識GAAの存在(パネルA)または非存在(パネルB)下、18時間インキュベートした。次いで、細胞を成長培地内で1時間インキュベートし、その後、室温で15分間、メタノールで凝固させる前に、D−PBSで4回洗浄した。以降のインキュベーションはすべて、室温で行い、それぞれ、D−PBS内での3回の洗浄によって分離した。インキュベーションは、記載がない限り、1時間とした。スライドは、15分間、0.1%トリトンX−100によって透過性化し、次いで、阻止緩衝液(D−PBS中10%加熱不活性化ウマ血清(Invitrogen))で阻止した。スライドは、一次マウスモノクローナル抗GAA抗体3A6−1F2(阻止緩衝液中1:5,000)によって、次いで、二次ウサギ抗マウスIgG AF594共役抗体(Invitrogen Al1032、阻止緩衝液中1:200)によって、インキュベートした。次いで、FITC−共役ラット抗マウスLAMP−I(BD Pharmingen 553793、阻止緩衝液中1:50)をインキュベートした。スライドは、DAPI−含有装填液(Invitrogen)で装填し、フルオレセインイソチオシアネート、Texas Red、およびDAPIフィルタ(Chroma Technology)を備えたNikon Eclipse 80i顕微鏡で観察した。画像は、MetaMorphソフトウェア(Universal Imaging)によって制御される光度Cascadeカメラで撮影した。画像は、Photoshopソフトウェア(Adobe)を使用して、統合した。図11は、リソソームマーカーLAMPlに対し誘導される抗体によって検出されたシグナルを有する、抗GAA抗体によって検出されるシグナルの共局在化を示す。したがって、本結果は、GILT標識GAAがリソソームに送達されることを実証する。
【0115】
(実施例11)体内グリコーゲンのクリアランス
本実験の目的は、グリコーゲンが、ポンペ病マウス内へのGILT標識GAAまたはwt GAAの一回のIV注射後、心組織から消失する比率を判定することであった。
【0116】
ポンペ病マウス(Raben(1998)JBC,273:19086−19092に記載され、その開示は、参照することによって本明細書に組み込まれる、ポンペ病マウスモデル6neo/6neo)に、非標識GAA(ZC−635)、またはGILT標識GAA(ZC−701)のいずれか10mg/kgを頸静脈に注射した。その後、マウスは、注射後1、5、10、および15日に屠殺された。各データ点は、3匹のマウスの平均を表す。心組織試料を標準的手順に従って均質化し、グリコーゲン含有量を分析した。これらの組織ホモジネート内のグリコーゲン含有量は、本質的に、Zhu et al.(2005)Biochem J.,389:619−628に記載のように、A.nigerアミログルコシダーゼおよびAmplex(登録商標) Red Glucoseアッセイキット(Invitrogen)を使用して測定した。図12に示される結果は、ZC−701で処理されたマウスからの心組織は、グリコーゲンのほぼ完全なクリアランスを示した一方、wt GAAで処理されたマウスは、グリコーゲン含有量の小量の変化のみを示したことを示唆する。
【0117】
(実施例12)ポンペ病病理の反転
本発明の治療的融合タンパク質は、体内wt GAAよりも治療上より有効であることが示された。ポンペ病マウス内の骨格筋組織からグリコーゲンを消失させるZC−701およびwt GAAの能力を比較するため、研究が行われた。ポンペ病マウスモデル6neo/6neo動物を使用した(Raben(1998)JBC 273:19086−19092)。ポンペ病マウス群(5/群)は、2用量のwt GAAあるいはZC−701(5mg/kgまたは20mg/kg)、もしくは媒介物のうちの1つのIV注射を週4回受けた。5匹の未処理動物を対照として使用し、生理食塩水溶液の注射を週4回受けた。動物は、2、3、および4回目の注射1時間前に、経口ジフェンヒドラミン5mg/kgを受けた。本研究におけるポンペ病ノックアウトマウスは、耐性化させるために、動物が生後48時間未満である場合、25μgのZC−701を首筋に皮下注射された。マウスは、4回目の注射から1週間後に屠殺され、組織(横隔膜、心臓、肺、肝臓、ヒラメ筋、大腿四頭筋、腓腹筋、TA、EDL、舌)を組織学的および生化学的分析のために採取した。組織ホモジネート内のグリコーゲン含有量は、A. nigerアミログルコシダーゼおよびAmplex Red Glucoseアッセイキットを使用して測定した。研究デザインは、表4に要約される。
表4
【0118】
【表4】
異なる組織ホモジネート内のGAA酵素レベルは、標準的手順を使用して測定し、結果は、表5に要約される。
【0119】
表5.組織内のGAAレベル
【0120】
【表5−1】
【0121】
【表5−2】
これらの組織ホモジネート内のグリコーゲン含有量は、本質的に、Zhu et al. (2005)Biochem J.,389:619−628に記載されるように、A. niger アミログルコシダーゼおよびAmplex Red Glucoseアッセイキット(Invitrogen)を使用して測定した。グリコーゲンデータは、図13A−Hに記載される。図13A−Hで使用されるように、GAA5は、用量5mg/kgにおける非標識GAAを示し、GAA20は、用量20mg/kgにおける非標識GAAを示し、701 5は、用量5mg/kgにおけるGILT標識GAAZC−701を示し、701 20は、用量20mg/kgにおけるGILT標識GAAZC−701を示す。PBSは、対照として使用した。これらの結果は、種々の筋組織からグリコーゲンを消失させるその能力において、非標識GAA(ZC−635)と比較して、GILT標識GAA(ZC−701)の消失優位性を示唆する。具体的には、ZC−701は、複数の骨格筋組織からグリコーゲンンを消失させるその能力において、wt GAAよりも有意に有効であった。いずれかの用量でwt GAAを受けたポンペ病マウスは、PBS処理動物におけるグリコーゲンレベルと異なるグリコーゲンレベルを有していた。対照的に、ZC−701を受けた動物は、有意に低いレベルのグリコーゲンを示した。
【0122】
(実施例13)対象の投与量、投与間隔、および年齢の最適化
投与量
前述の実験では、用量5mg/kgは、いくつかの組織において、グリコーゲン消失の際、用量20mg/kgとほぼ同程度に有効であった。用量漸増実験を使用して、ヒト患者を治療する際に、治療上十分となり得る最小有効用量を判定する。群当たり5から7匹の耐性化されたポンペ病ノックアウトマウスに、異なる用量のGILT標識GAAを毎週注射する。例えば、耐性化されたポンペ病マウスは、1.0、1.5、2、2.5、5、10、20mg/kgで注射する。
【0123】
ポンペ病ノックアウトマウスに、8週間注射し、その後、屠殺する。試料は、異なる組織から採取し、実施例11および12に記載されるように、グリコーゲンレベルを判定する。また、グリコーゲンおよび酵素分布の組織化学を標準的手順に従って判定する。さらに、気圧全身プレチスモグラフィを使用した、筋力測定および高炭酸ガスに対する喚起等の生理学的測定値は、Mah et al.(2007)Molecular Therapy(オンライン刊行物)によって記載されるように、マウスにおいて判定可能である。
【0124】
間隔
さらに、治療間隔が評価され、依然として臨床的有益性をもたらす所与の用量の最大間隔が判定される。用量漸増は、上述のように、異なる治療間隔、例えば、2、3、または4週間毎の注射によって行われる。例えば、ヒラメ筋または大腿四頭筋等の骨格筋組織内のグリコーゲンクリアランスは、典型的には、マウスモデルにおける用量と治療間隔との間の最適均衡を判定するための指標として使用される。上述のような他の臨床的関連測定値も、同様に使用可能である。
【0125】
例えば、一実験は、ポンペ病マウスモデルにおけるその有効性について、GILT標識GAAの可変投与間隔の効果を検査するように設計される。2−3ヶ月齢のポンペ病マウス(Raben JBC 1998 273:19086−19092)は、8匹の動物群に分割される。ある群は、PBSの注射を毎週受け(対照群)、ある群は、5mg/kg GILT標識GAAの注射を毎週受け、ある群は、10mg/kg GILT標識GAAの注射を隔週受け、ある群は、15mg/kg GILT−標識GAAの注射を3週間毎に受け、ある群は、20mg/kg GILT標識GAAの注射を4週間毎に受ける。12週目の注射から1週間後、すべての動物は屠殺される。分析のために採取された組織試料は、心臓、ヒラメ筋、腓腹筋、EDL、TA、大腿四頭筋、腰筋、横隔膜、脳、舌を含む。
【0126】
分析は、生化学的グリコーゲン分析、グリコーゲンのための組織化学的染色、選択組織のEM、選択組織の免疫染色、ELISAによる抗体のための血清試料の分析、ヒラメ筋の体外力−収縮頻度測定、研究の生存部分期間における尿中グルコース四糖類分析、治療計画前後のグリコーゲン含有量の13C NMR分光判定を含む。
【0127】
用量および間隔が変動する条件のマトリクスは、これらのパラメータ間の関係の理解を深めるために生成され得る。
【0128】
より高用量での投与の間隔がより長い程、有効であることが証明され、それによって、ポンペ病に罹患する人々のために、より負担の少ない治療計画のための理論的根拠を提供され得ることが予測される。例えば、図13A〜Hに示されるグリコーゲンデータに基づくと、用量5mg/kgの毎週の投与は、10mg/kgの隔週投与または20mg/kgの3週間毎の投与と同様の結果をもたらすことが予測される。したがって、2週間毎に1回の代わりに、3週間または4週間毎に1回のGILT標識GAAの注入は、ヒトポンペ病患者における治療的効果を達成するために十分であることが予測される。より長い治療間隔は、少なくとも、患者の負担および不便さを軽減するため、非常に有利である。
【0129】
対象の年齢
治療開始時のマウスの年齢が、治療的転帰に及ぼす影響を判定する。ポンペ病マウスII型筋線維において、外因性酵素のリソソームへの送達を含み、正常な輸送経路に干渉する自食胞が、経時的に形成されることが報告されている。Fukuda et al(2006)Mol. Therapy,14(6):831−839;Fukuda et al.(2006)Ann.Neurol.,59(4):700−708;Fukuda et al.(2006)Autophagy.2(4):318−320を参照されたい。科学者らは、それぞれ2つのM6Pを含有する最大6つの化学的にカップリングされた合成オリゴ糖を有する組み換えGAAであるネオ−rhGAAが、13ヶ月齢のポンペ病ノックアウトマウスからグリコーゲンを完全に消失可能であることを示した。Zhu et al,(2005)Biochem J.,389:619−628。これは、CI−MPRに対する高親和性を有する酵素が使用される場合、Fukudaらによって報告された細胞病理が、反転し得ることを示唆する。CI−MPRに対するGILT標識GAAの高親和性と、非標識GAAよりも効率的筋肉細胞への送達とを仮定すると、十分なGILT標識GAA酵素がリソソームに送達され、グリコーゲンを消失させ、続いて、自食胞構築を反転し得ることが想定される。これは、12−13ヶ月齢のポンペ病マウスにおいて直接試験される。これらのマウスは、20または40mg/kg GILT標識GAAの注射を毎週4回受け、最終注射から1週間後に屠殺される。グリコーゲン含有量は、本質的に、Zhuら(2005)に記載されるA.nigerアミログルコシダーゼおよびAmplex Red Glucoseアッセイキット(Invitrogen)を使用して査定される。また、グリコーゲンは、Lynch et al,(2005)J.Histochem.Cytochem.,53:63−73によって記載される組織化学的染色によって査定される。
【0130】
さらに、アッセイが行われ、自食胞構築を有する動物から分離された無傷筋線維内へのGILT標識GAAの取り込みを分析し、非標識GAAと比較して、Fukudaらによって記載されるそのような条件下、リソソームを標的化するGILT標識GAAの能力を直接比較する。GILT標識GAAは、非標識酵素より効率的に自食胞構築を有する筋線維を標的化することが予測される。
【0131】
実験14:ヒト臨床研究
動物治療の成功に基づき、小児ポンペ病患者における6ヶ月の第1相/第2相GILT標識GAA投与量決定研究をデザインする。本臨床研究は、非盲検実証ヒト研究であって、小児発症ポンペ病患者におけるGILT標識GAAの安全性、耐性、有効性、および薬物動態を評価するために行われる。本研究では、一般的治療間隔は、2週間毎に1回(隔週)である。特定用量において、治療間隔が3または4週間毎に1回である追加治療群が追加されることが、予測される。
【0132】
臨床研究の主要目的は、小児発症ポンペ病患者を治療する際に、2週間毎に静脈内注入によって投与される4つの用量レベル、すなわち、2.5、5、10、および20mg/kgのGILT標識GAAの有効性を判定することを含む。副次的目的は、(1)小児発症ポンペ病患者を治療する際に、2週間毎に静脈内注入によって投与される4つの異なる用量レベルのGILT標識GAAの安全性および薬物動態を評価すること、(2)小児発症ポンペ病患者を治療する際に、2週間毎に静脈内注入によって投与される4つの用量レベルのGILT−GAAの薬物動態を判定すること、(3)2週間毎に静脈内注入によって投与される4つの用量レベルのGILT−GAAのそれぞれの小児発症ポンペ病患者における筋肉グリコーゲンの存在に及ぼす影響を判定することを含む。本臨床研究の詳細なプロトコル概要は、表6に示される。
【0133】
表6.ヒト臨床研究
【0134】
【表6−1】
【0135】
【表6−2】
【0136】
【表6−3】
図14は、臨床研究手順の詳細な工程図を示す。
【0137】
さらに、患者を耐性化または免疫学的に抑制するステップを含むことが望ましい。他のリソソーム酵素補充療法の臨床研究では、多くの患者が、GAAに対する抗体の高力価を産出することが観察された。例えば、本現象は、Cerezyme(登録商標)を摂取しているゴーシェ病患者に認められる。その場合、大部分の患者は、治療計画に応じて、自然に耐性化され、抗体の産出を停止する。理論に制約されることを所望するものではないが、抗GAA抗体は、CI−MPRに対する酵素の標的化に干渉し、それによって、酵素の生体内分布を変化させると考えられる。耐性化計画の1つは、GILT標識GAA治療の前またはその間に、CD20に対するモノクローナル抗体であるRituximab(登録商標)によって、ポンペ病患者を治療することである。ポンペ病患者に使用されるRituximab(登録商標)の用量は、Sperr et al.(2007)Haematologica.Jan;92(1):66−71において教示され、参照することによって本明細書に組み込まれるように、いくつかの自己免疫疾患を治療する際に使用されるものと同様である。また、本化合物は、ステロイド等の他の免疫抑制薬剤と併用しても使用可能である。
【0138】
GILT標識GAAによって治療されるポンペ病患者は、生検物質の組織化学的染色に基づいて、10〜12週間後のグリコーゲンの有意なクリアランスを実証することが予測される。Thurbergらは、一連の微細構造の損傷に基づいて、ポンペ病を5段階の細胞病理に分類することを発明した。Thurberg et al.(2006)Lab.Invest.,86:1208−1220。例えば、早期疾患段階1細胞は、無傷筋細線維間に小グリコーゲン充填リソソームを含有する。段階3細胞は、リソソーム膜の破裂によって、細胞質に漏出する多量のグリコーゲンとともに、多数のグリコーゲン充填リソソームを含有する。これらの段階は、Fukadaらに記載される自食胞蓄積と相関すると考えられる。治療の開始時の研究における患者の細胞病理の分析は、臨床的転帰を示すと予測される。概して、応答患者は、より重度の形態の細胞病理とともに、低率の筋細胞を有する。特に、50%を上回る段階2の筋細胞を有する患者は、より優れた臨床転帰を有する。また、より若年の患者は、概して、より優れた臨床転帰を有し、より高率のI型筋線維を有する患者もまた、より優れた臨床転帰を有すると想定される。
【0139】
細胞病理の重症度を変化させる要因は、患者のGAA対立遺伝子の性質、治療開始時の患者の年齢、および患者の免疫反応による、患者内の残留GAA活性の存在を含む。例えば、GILT標識GAAに対する抗体反応は、CRIM−陰性患者において、より重症である。
【0140】
初期の動物実験の結果に基づいて、GILT標識GAAは、ヒト患者の治療における非標識GAAよりも有効であると予測される。同様の用量を仮定する場合、酵素補充療法の開始時に、所与のレベル細胞病理を有する患者のより高い留分は、GILT標識GAA療法に対し有利に反応することが予測される。例えば、Myozyme(登録商標)の中枢となる臨床試験では、18名中12名の患者が、52週目時点で、20%を上回る筋肉グリコーゲンの低下を示した。しかしながら、18名中わずか3名の患者は、50%以上のグリコーゲン含有量の低下を経験した。Kishnani et al. (2007)Neurology.68:99−109。動物データおよびZhuらの報告に基づくと、GILT標識GAAは、ほとんどの患者において、80%のグリコーゲン含有量の低下をもたらすと予測される。GILT標識GAAによって治療された患者のより多い留分は、運動機能、呼吸等の生理学的パラメータにおいて改善を示すことが予測され、より多くの患者が、療法開始後1、2、および5年生存することが予測される。
【0141】
また、筋細胞のより進行した細胞病理を有する、酵素補充療法を開始した患者、例えば、療法開始時、6ヶ月を上回る年齢の患者は、筋肉グリコーゲンの有意な減少、呼吸器能、運動機能の改善、およびGILT標識GAA酵素補充療法に基づくより優れた、かつ長期の転帰を有することが予測される。
【0142】
参照文献の援用
本出願に引用されるすべての刊行物および特許文書は、各個別の刊行物および特許文書が本明細書に組み込まれる場合と同様に、参照することによって、全体として本明細書に組み込まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるポンペ病を治療するための方法であって、ヒト酸α−グルコシターゼ(GAA)、またはそのフラグメントと、リソソーム標的化ドメインとを含有する、治療上有効量の融合タンパク質を前記対象に投与するステップを備え、前記リソソーム標的化ドメインは、ヒト陽イオン−非依存性マンノース−6−リン酸受容体をマンノース−6−リン酸に非依存的に結合する、方法。
【請求項2】
前記リソソーム標的化ドメインは、成熟ヒトインスリン様成長因子II(IGF−II)、あるいはそのフラグメントまたは配列変異体を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リソソーム標的化ドメインは、成熟ヒトIGF−IIのアミノ酸1および8−67を含有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記融合タンパク質は、ヒトGAAのアミノ酸70−952を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記融合タンパク質は、野生型ヒトGAAと比較して、低下したマンノース−6−リン酸(M6P)レベルをその上に有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記融合タンパク質は、機能的M6Pレベルをその上に有しない、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記治療上有効量は、前記対象の体重1キログラム当たり2.5〜20mgの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記融合タンパク質は、静脈内に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記融合タンパク質は、隔月、毎月、3週間毎、隔週、毎週、毎日、または変動する間隔で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
対象におけるポンペ病を治療するための方法であって、成熟ヒトインスリン様成長因子II(IGF−II)のアミノ酸1および8−67と、ヒト酸α−グルコシターゼ(GAA)のアミノ酸70−952とを含有する、治療上有効量の融合タンパク質を前記対象に投与するステップを備える、方法。
【請求項11】
前記融合タンパク質は、成熟ヒトIGF−IIの前記アミノ酸と、ヒトGAAの前記アミノ酸との間にスペーサ配列GIy−Ala−Proをさらに含有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記融合タンパク質は、野生型ヒトGAAと比較して、低下したマンノース−6−リン酸(M6P)レベルをその上に有する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記融合タンパク質は、機能的M6Pレベルをその上に有しない、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
体内グリコーゲンレベルを低下させるための方法であって、ヒト酸α−グルコシターゼ(GAA)、またはそのフラグメントと、リソソーム標的化ドメインとを含有する、有効量の融合タンパク質をポンペ病罹患対象に投与するステップを備え、前記リソソーム標的化ドメインは、ヒト陽イオン−非依存性マンノース−6−リン酸受容体をマンノース−6−リン酸に非依存的に結合する、方法。
【請求項15】
前記リソソーム標的化ドメインは、成熟ヒトインスリン様成長因子II(IGF−II)、あるいはそのフラグメントまたは配列変異体を含有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記リソソーム標的化ドメインは、成熟ヒトIGF−IIのアミノ酸1および8−67を含有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記融合タンパク質は、ヒトGAAのアミノ酸70−952を含有する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記融合タンパク質は、野生型ヒトGAAと比較して、低下したマンノース−6−リン酸(M6P)レベルをその上に有する、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記融合タンパク質は、機能的M6Pレベルをその上に有しない、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記治療上有効量は、前記対象の体重1キログラム当たり2.5〜20mgの範囲である、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記融合タンパク質は、静脈内に投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記融合タンパク質は、隔月、毎月、3週間毎、隔週、毎週、毎日、または変動する間隔で投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
哺乳類リソソーム内のグリコーゲンレベルを低下させるための方法であって、ヒト酸α−グルコシターゼ(GAA)、またはそのフラグメントと、リソソーム標的化ドメインとを含有する、有効量の融合タンパク質を前記リソソームに標的化するステップを備え、前記リソソーム標的化ドメインは、前記ヒト陽イオン−非依存性マンノース−6−リン酸受容体をマンノース−6−リン酸に非依存的に結合する、方法。
【請求項24】
前記リソソーム標的化ドメインは、成熟ヒトインスリン様成長因子II(IGF−II)、あるいはそのフラグメントまたは配列変異体を含有する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記リソソーム標的化ドメインは、成熟ヒトIGF−IIのアミノ酸1および8−67を含有する、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記融合タンパク質は、ヒトGAAのアミノ酸70−952を含有する、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
ポンペ病罹患対象の筋組織におけるグリコーゲンレベルを低下させるための方法であって、ヒト酸α−グルコシターゼ(GAA)、またはそのフラグメントと、リソソーム標的化ドメインとを含有する、治療上有効量の融合タンパク質を前記筋組織に送達するステップを備え、前記リソソーム標的化ドメインは、前記ヒト陽イオン−非依存性マンノース−6−リン酸受容体をマンノース−6−リン酸に非依存的に結合する、方法。
【請求項28】
前記筋組織は、骨格筋である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
対象におけるポンペ病に付随する心筋症を治療するための方法であって、ヒト酸α−グルコシターゼ(GAA)、またはそのフラグメントと、リソソーム標的化ドメインとを含有する、治療上有効量の融合タンパク質を前記対象に投与するステップを備え、前記リソソーム標的化ドメインは、マンノース−6−リン酸に非依存的に前記ヒト陽イオン−非依存性マンノース−6−リン酸受容体を結合する、方法。
【請求項30】
対象におけるポンペ病に付随する筋疾患を治療するための方法であって、ヒト酸α−グルコシターゼ(GAA)、またはそのフラグメントと、リソソーム標的化ドメインとを含有する、治療上有効量の融合タンパク質を前記対象に投与するステップを備え、前記リソソーム標的化ドメインは、マンノース−6−リン酸に非依存的に前記ヒト陽イオン−非依存性マンノース−6−リン酸受容体を結合する、方法。
【請求項31】
ポンペ病罹患対象における酸α−グルコシターゼ(GAA)活性を増加させるための方法であって、ヒト酸α−グルコシターゼ(GAA)、またはそのフラグメントと、リソソーム標的化ドメインとを含有する、融合タンパク質を前記対象に投与するステップを備え、前記リソソーム標的化ドメインは、前記ヒト陽イオン−非依存性マンノース−6−リン酸受容体をマンノース−6−リン酸に非依存的に結合する、方法。
【請求項32】
ポンペ病の治療に好適な医薬組成物であって、ヒト酸α−グルコシターゼ(GAA)、またはそのフラグメントと、リソソーム標的化ドメインとを含有する、治療上有効量の融合タンパク質を含有する、前記リソソーム標的化ドメインは、前記ヒト陽イオン−非依存性マンノース−6−リン酸受容体をマンノース−6−リン酸に非依存的に結合する、組成物。
【請求項33】
前記リソソーム標的化ドメインは、成熟ヒトインスリン様成長因子II(IGF−II)あるいは、そのフラグメントまたは配列変異体を含有する、請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記リソソーム標的化ドメインは、成熟ヒトIGF−IIのアミノ酸1および8−67を含有する、請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項35】
前記融合タンパク質は、ヒトGAAのアミノ酸70−952を含有する、請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項36】
前記融合タンパク質は、ヒトGAAのアミノ酸70−952と、成熟ヒトIGF−IIのアミノ酸1および8−67とを含有する、請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項37】
前記融合タンパク質は、ヒトGAAの前記アミノ酸と成熟ヒトIGF−IIの前記アミノ酸との間にスペーサ配列GIy−Ala−Proをさらに含有する、請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項38】
前記融合タンパク質は、野生型ヒトGAAと比較して、低下したマンノース−6−リン酸(M6P)レベルをその上に有する、請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項39】
前記融合タンパク質は、機能的M6Pレベルをその上に有しない、請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項40】
前記医薬組成物は、医薬担体をさらに含有する、請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項1】
対象におけるポンペ病を治療するための方法であって、ヒト酸α−グルコシターゼ(GAA)、またはそのフラグメントと、リソソーム標的化ドメインとを含有する、治療上有効量の融合タンパク質を前記対象に投与するステップを備え、前記リソソーム標的化ドメインは、ヒト陽イオン−非依存性マンノース−6−リン酸受容体をマンノース−6−リン酸に非依存的に結合する、方法。
【請求項2】
前記リソソーム標的化ドメインは、成熟ヒトインスリン様成長因子II(IGF−II)、あるいはそのフラグメントまたは配列変異体を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リソソーム標的化ドメインは、成熟ヒトIGF−IIのアミノ酸1および8−67を含有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記融合タンパク質は、ヒトGAAのアミノ酸70−952を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記融合タンパク質は、野生型ヒトGAAと比較して、低下したマンノース−6−リン酸(M6P)レベルをその上に有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記融合タンパク質は、機能的M6Pレベルをその上に有しない、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記治療上有効量は、前記対象の体重1キログラム当たり2.5〜20mgの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記融合タンパク質は、静脈内に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記融合タンパク質は、隔月、毎月、3週間毎、隔週、毎週、毎日、または変動する間隔で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
対象におけるポンペ病を治療するための方法であって、成熟ヒトインスリン様成長因子II(IGF−II)のアミノ酸1および8−67と、ヒト酸α−グルコシターゼ(GAA)のアミノ酸70−952とを含有する、治療上有効量の融合タンパク質を前記対象に投与するステップを備える、方法。
【請求項11】
前記融合タンパク質は、成熟ヒトIGF−IIの前記アミノ酸と、ヒトGAAの前記アミノ酸との間にスペーサ配列GIy−Ala−Proをさらに含有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記融合タンパク質は、野生型ヒトGAAと比較して、低下したマンノース−6−リン酸(M6P)レベルをその上に有する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記融合タンパク質は、機能的M6Pレベルをその上に有しない、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
体内グリコーゲンレベルを低下させるための方法であって、ヒト酸α−グルコシターゼ(GAA)、またはそのフラグメントと、リソソーム標的化ドメインとを含有する、有効量の融合タンパク質をポンペ病罹患対象に投与するステップを備え、前記リソソーム標的化ドメインは、ヒト陽イオン−非依存性マンノース−6−リン酸受容体をマンノース−6−リン酸に非依存的に結合する、方法。
【請求項15】
前記リソソーム標的化ドメインは、成熟ヒトインスリン様成長因子II(IGF−II)、あるいはそのフラグメントまたは配列変異体を含有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記リソソーム標的化ドメインは、成熟ヒトIGF−IIのアミノ酸1および8−67を含有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記融合タンパク質は、ヒトGAAのアミノ酸70−952を含有する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記融合タンパク質は、野生型ヒトGAAと比較して、低下したマンノース−6−リン酸(M6P)レベルをその上に有する、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記融合タンパク質は、機能的M6Pレベルをその上に有しない、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記治療上有効量は、前記対象の体重1キログラム当たり2.5〜20mgの範囲である、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記融合タンパク質は、静脈内に投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記融合タンパク質は、隔月、毎月、3週間毎、隔週、毎週、毎日、または変動する間隔で投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
哺乳類リソソーム内のグリコーゲンレベルを低下させるための方法であって、ヒト酸α−グルコシターゼ(GAA)、またはそのフラグメントと、リソソーム標的化ドメインとを含有する、有効量の融合タンパク質を前記リソソームに標的化するステップを備え、前記リソソーム標的化ドメインは、前記ヒト陽イオン−非依存性マンノース−6−リン酸受容体をマンノース−6−リン酸に非依存的に結合する、方法。
【請求項24】
前記リソソーム標的化ドメインは、成熟ヒトインスリン様成長因子II(IGF−II)、あるいはそのフラグメントまたは配列変異体を含有する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記リソソーム標的化ドメインは、成熟ヒトIGF−IIのアミノ酸1および8−67を含有する、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記融合タンパク質は、ヒトGAAのアミノ酸70−952を含有する、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
ポンペ病罹患対象の筋組織におけるグリコーゲンレベルを低下させるための方法であって、ヒト酸α−グルコシターゼ(GAA)、またはそのフラグメントと、リソソーム標的化ドメインとを含有する、治療上有効量の融合タンパク質を前記筋組織に送達するステップを備え、前記リソソーム標的化ドメインは、前記ヒト陽イオン−非依存性マンノース−6−リン酸受容体をマンノース−6−リン酸に非依存的に結合する、方法。
【請求項28】
前記筋組織は、骨格筋である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
対象におけるポンペ病に付随する心筋症を治療するための方法であって、ヒト酸α−グルコシターゼ(GAA)、またはそのフラグメントと、リソソーム標的化ドメインとを含有する、治療上有効量の融合タンパク質を前記対象に投与するステップを備え、前記リソソーム標的化ドメインは、マンノース−6−リン酸に非依存的に前記ヒト陽イオン−非依存性マンノース−6−リン酸受容体を結合する、方法。
【請求項30】
対象におけるポンペ病に付随する筋疾患を治療するための方法であって、ヒト酸α−グルコシターゼ(GAA)、またはそのフラグメントと、リソソーム標的化ドメインとを含有する、治療上有効量の融合タンパク質を前記対象に投与するステップを備え、前記リソソーム標的化ドメインは、マンノース−6−リン酸に非依存的に前記ヒト陽イオン−非依存性マンノース−6−リン酸受容体を結合する、方法。
【請求項31】
ポンペ病罹患対象における酸α−グルコシターゼ(GAA)活性を増加させるための方法であって、ヒト酸α−グルコシターゼ(GAA)、またはそのフラグメントと、リソソーム標的化ドメインとを含有する、融合タンパク質を前記対象に投与するステップを備え、前記リソソーム標的化ドメインは、前記ヒト陽イオン−非依存性マンノース−6−リン酸受容体をマンノース−6−リン酸に非依存的に結合する、方法。
【請求項32】
ポンペ病の治療に好適な医薬組成物であって、ヒト酸α−グルコシターゼ(GAA)、またはそのフラグメントと、リソソーム標的化ドメインとを含有する、治療上有効量の融合タンパク質を含有する、前記リソソーム標的化ドメインは、前記ヒト陽イオン−非依存性マンノース−6−リン酸受容体をマンノース−6−リン酸に非依存的に結合する、組成物。
【請求項33】
前記リソソーム標的化ドメインは、成熟ヒトインスリン様成長因子II(IGF−II)あるいは、そのフラグメントまたは配列変異体を含有する、請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記リソソーム標的化ドメインは、成熟ヒトIGF−IIのアミノ酸1および8−67を含有する、請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項35】
前記融合タンパク質は、ヒトGAAのアミノ酸70−952を含有する、請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項36】
前記融合タンパク質は、ヒトGAAのアミノ酸70−952と、成熟ヒトIGF−IIのアミノ酸1および8−67とを含有する、請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項37】
前記融合タンパク質は、ヒトGAAの前記アミノ酸と成熟ヒトIGF−IIの前記アミノ酸との間にスペーサ配列GIy−Ala−Proをさらに含有する、請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項38】
前記融合タンパク質は、野生型ヒトGAAと比較して、低下したマンノース−6−リン酸(M6P)レベルをその上に有する、請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項39】
前記融合タンパク質は、機能的M6Pレベルをその上に有しない、請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項40】
前記医薬組成物は、医薬担体をさらに含有する、請求項32に記載の医薬組成物。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図13E】
【図13F】
【図13G】
【図13H】
【図14】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図13E】
【図13F】
【図13G】
【図13H】
【図14】
【公表番号】特表2010−509344(P2010−509344A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536345(P2009−536345)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/023881
【国際公開番号】WO2008/063511
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(506271038)ザイストール セラピューティクス, インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/023881
【国際公開番号】WO2008/063511
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(506271038)ザイストール セラピューティクス, インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】
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