説明

ポータブル型脈動計

【課題】 ガスセンサーに供給されるガス流の脈動を電気信号で取得される検知結果に基づいて定量的に測定することができ、しかも、小型で、高い利便性が得られるポータブル型脈動計を提供すること。
【解決手段】 ポータブル型脈動計は、手で握って保持可能な大きさとされたケーシングを具え、このケーシング内には、駆動用電源である一本の柱状の電池が受容される電池室およびガス流路が形成されていると共に、当該ガス流路に供給されるガスの圧力を検知する圧力センサーが設けられており、供給されるガス流の脈動が当該圧力センサーによって取得される電気的信号に基づいて測定可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ガスセンサーに供給されるガス流の脈動を測定するために用いられるポータブル型脈動計に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス警報器のある種のものにおいては、例えば、検知対象空間における雰囲気空気をダイヤフラム式ポンプによって強制的に吸引してガスセンサーに供給する構成とされているが、このような構成のガス警報器においては、ガスセンサーに供給されるガス流は脈動を伴ういわゆる脈動流であって、脈動による流量変動(ないしは圧力変動)の程度が大きい場合には、センサー出力に与える影響が大きく、安定したガス検知を行うことができないため、通常、ガス流の脈動を低減させるための対策が講じられている。
一般に、ガス流等における脈動を低減させる方法としては、例えばガス供給量をオリフィスで絞ることにより脈動を低減させる方法(例えば特許文献1参照)や、例えばバッファ(緩衝部)を形成することにより脈動を低減させる方法(例えば特許文献2参照)などが知られている。
また、上述したようなダイヤフラム式ポンプを具備した吸引型ガス警報器に限らず、ガスセンサーの上流側の位置に、脈動を発生させる、あるいは脈動を発生させ得る機器が接続された製品についても同様に、ガス流の脈動が小さく低減されるよう対策が採られている。
【0003】
而して、上述したように、例えばガス警報器においては、ポンプによる脈動はセンサー出力に与える影響が大きいため、ガスセンサーに供給されるガス流の脈動を例えば定期的に測定し、その状態を把握しておくことが必要である。
しかしながら、ガス警報器が設置されている現場において、ガス流の脈動測定を実施可能な測定機器は知られていないのが実情である。
【0004】
【特許文献1】特開2004−37194号公報
【特許文献2】特開平11−281449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、供給されるガス流の脈動を電気的信号として取得される検知結果に基づいて定量的に測定することができ、しかも、小型で、高い利便性が得られるポータブル型脈動計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のポータブル型脈動計は、手で握って保持可能な大きさとされたケーシングを具え、このケーシング内には、駆動用電源である一本の柱状の電池が受容される電池室およびガス流路が形成されていると共に、当該ガス流路に供給されるガスの圧力を検知する圧力センサーが設けられており、
供給されるガス流の脈動が当該圧力センサーによって取得される電気的信号に基づいて測定可能に構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明のポータブル型脈動計においては、ケーシングの外表面部分に凹部が形成されており、当該凹部の壁において前記ガス流路に係るガス導入口が開口すると共にガス導入用プラグが凹部内に配置された状態でガス導入口に装着された構成とされていることが好ましい。
【0008】
また、本発明のポータブル型脈動計においては、ケーシングが樹脂よりなり、連続する樹脂表面部分の大きさを規制する金属帯が装着された構成とすることができる。
【0009】
本発明のポータブル型脈動計は、ダイヤフラム式ポンプを具備する吸引型ガス警報器における、当該ダイヤフラム式ポンプとガスセンサーとの間のガス流路に接続され、ガスセンサーに供給されるガス流の脈動を測定するために用いられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポータブル型脈動計によれば、供給されるガス流の脈動が圧力センサーによって取得される電気的信号に基づいて測定されることにより、ガス流の脈動を定量的に判断することができるので、ガス流の脈動の、ガスセンサーに対する影響の程度を容易に確認することができる。
また、装置それ自体が小型のものとして構成されていることにより、実際に稼動状態にある(使用されている)例えばガス警報器などの製品における、ガスセンサーに供給されるガス流の脈動を、例えばガス警報器本体におけるガス流路にバイパス接続する、という簡単な操作を行うのみで、測定することができ、高い利便性を有するものとして構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明のポータブル型脈動計の一構成例を示す正面図、図2は、図1に示すポータブル型脈動計の左側面図、図3は、図1におけるA−A線断面図、図4は、図1におけるB−B線断面図である。
このポータブル型脈動計(以下、単に、「脈動計」という。)10は、手で握って保持可能な大きさとされた細長い形態を有するケーシング11を具えてなり、このケーシング11内には、平板状の制御用回路基板18がケーシング11の正面側の周壁に沿って長手方向に伸びるよう配設されていると共に、この制御用回路基板18の背面側における一方の側壁側領域に、駆動用電源である1本の柱状の電池、例えば単三形(AAサイズ)の電池13がケーシング11の端壁に開口する電池挿入口を介して長手方向に挿入されて受容される電池室12が形成されている。符号14は、ケーシング11における電池挿入口の開口縁部に取り外し自在に装着された電池室キャップであり、これにより、電池13が交換可能とされている。
ケーシング11における他方の側壁側部分には、ケーシング11の長手方向内方側に伸びるよう凹部15が形成されており、この凹部15の端壁には、電池挿入口と同方向に開口するガス導入口21が形成されていると共に接続用端子であるガス導入用プラグ(ニップル)30がガス導入口21に装着されてケーシング11の外縁より外方に突出しない状態で配置されている。
ケーシング11内における電池室12と並んだ他方の側壁側領域には、ガス導入口21に連続して内方に伸びるガス流路部分22を有するガス導入部20が形成されており、このガス導入部20は、ケーシング11の外表面に開口するガス導入口21の開口径より小さいガス吐出口を有する、いわゆるキャピラリー構造とされている。
【0012】
ケーシング11は、例えば、各々樹脂よりなり、長手方向に垂直な断面形状が略矩形枠状である、互いに着脱可能とされた2つのケーシング部材が係合されて構成されており、2つのケーシング部材11A,11Bの係合部において、金属帯16がその両端部が互いに重なる状態で外表面の全周にわたって伸びるよう装着されている。
この金属帯16は、樹脂よりなるために静電気を帯びやすいケーシング11の表面を、連続する樹脂表面部分の表面積が100cm2 以下の大きさとなるよう、分割し、これにより、脈動計10それ自体が着火源とならない構成、すなわち、防爆仕様(本質安全防爆)の規格を満足する構成とされている。
【0013】
ケーシング11内には、長手方向に直線状に伸びるガス流路26を形成するガス流路形成部材25がそのガス流路26の一端側開口部がガス導入部20に接続されて設けられており、このガス流路形成部材25には、ガス流路26に直交する方向に伸びる貫通孔27がガス流路26と連通し制御用回路基板18が位置される側の外表面に開口するよう形成されている。
このガス流路形成部材25における貫通孔27には、制御用回路基板18に実装された圧力センサー35のガス導入管部が例えばOリングなどのシール部材(図示せず)を介して気密に接続されている。
【0014】
また、図1において、31は検知結果を例えば表示器などの外部機器に出力するための信号出力端子であり、32は駆動用スイッチである。
【0015】
上記脈動計10の一構成例を示すと、全長(長手方向(図1における上下方向)の寸法)が例えば120mm、横方向最大寸法(図1における左右方向)が34mm、縦方向最大寸法(図1における紙面に垂直な方向)が33mm、電池13を含む重量が90g程度である。
ガス流路形成部材25におけるガス流路26は、内径が例えばφ4mmであり、ガス導入口21から圧力センサー35に至るガス流路(ガス導入部20のガス流路部分22を含む)26の長さが例えば40mmである。
【0016】
上記脈動計10は、例えば、実際に所定の検知対象空間に設置され、常時または継続して間欠的に動作されている、例えばダイヤフラム式ポンプを具備した吸引型ガス警報器に接続され、ガスセンサーに供給されるガス流の脈動を測定し、当該脈動がガスセンサーに与える影響の程度を測定(検査)するために用いられる。
【0017】
上記脈動計10の使用例について具体的に説明すると、図5に示すように、ガス警報器50におけるダイヤフラム式ポンプ51とガスセンサー52との間のガス流路55に、例えばT字管などのバイパス管56により脈動計10を配管接続する。ここに、脈動計10を配管接続するに際しては、圧力センサー35による検知信号、すなわち供給されるガス流の脈動が、用いられるバイパス管56の管径および長さによって影響を受けないよう、実際の配管に極力近い状態にすることが必要とされる。
また、バイパス管56がガス流路55に対して接続される位置は、例えばガスセンサー52に近い位置で配管内径が同一の状態であることが好ましい。
【0018】
そして、脈動計10が動作状態とされることにより、ガス警報器50においてダイヤフラム式ポンプ51によって吸引された雰囲気空気(ガス)がバイパス管56を介して脈動計10のガス導入用プラグ(ニップル)30から脈動計10のガス流路26内に導入され、当該ガスの圧力が圧力センサー35によって検知され、この検知結果に基づいて、ガス流の脈動が測定(検出)される。
圧力センサー35から検知信号は、例えば図6に示すような、制御用回路基板18に形成された信号処理回路、具体的には増幅器38によって増幅されて、例えば表示器60などの外部機器に出力される。
【0019】
而して、供給されるガス流の脈動が正常な状態、すなわち、例えばガス警報器50におけるダイヤフラム式ポンプ51が有するバッファ(緩衝部)による脈動低減効果が十分に発現されている状態であれば、図7(イ)に示すように、ガス流の脈動は、圧力変動幅がガスセンサー52に対する影響が無視できるほど小さいものと考えられる許容範囲a内にある状態とされる。
一方、例えばポンプ動作性能の経年的な劣化やガス流路の劣化等の原因によって、図7(ロ)に示すように、例えば、ガス流の脈動が圧力変動幅Aが許容範囲aを逸脱する状態が所定時間以上の間継続するような状態である場合には、現状のガス警報器50においては、供給されるガス流の脈動の、ガスセンサー52に対する影響が大きく、信頼性の高いガス検知を行うことができない状態にあるものと判断することができる。ここに、ガス流の脈動についての判断は、例えば圧力値(瞬時値)が許容範囲aを逸脱したことが検知されることにより、または、瞬時的な圧力変化量(圧力変動量)が一定の大きさ以上であることが検知されることにより、あるいは、圧力変動の周期Tが短くなったことが検知されることにより、行うこともできる。
【0020】
以上のように、上記構成の脈動計10によれば、基本的には、ガスセンサー52に供給されるガス流の脈動が圧力センサー35によって取得される電気的信号(絶対値)に基づいて測定されることにより、ガス流の脈動を定量的に判断することができるので、ガス流の脈動の、ガスセンサー52に対する影響の程度を容易に確認することができる。
しかも、脈動計10それ自体が小型のものとして構成されていることにより、実際に使用されているガス警報器50における、ガスセンサー52に供給されるガス流の脈動を、例えばガス警報器50におけるガス流路55にバイパス接続する、という簡単な操作を行うことのみで、測定することができ、高い利便性を有するものとして構成することができる。
【0021】
また、脈動計10が、ケーシング11の外表面部分に形成された凹部15の壁においてガス流路26に係るガス導入口21が開口すると共にガス導入用プラグ30が凹部15内に配置された状態でガス導入口21に装着された構成とされていることにより、ケーシング11内におけるガス流路26の長さを小さくすることができてセンサー出力に対する影響が小さいものとして構成することができるので、ガス流の脈動をガス警報器50における実際の配管に近い状態で、測定することができ、得られる検知結果は高い信頼性を有するものとなる。
【0022】
また、防爆構造とされていることにより、脈動計10における樹脂表面部分に静電気が蓄積されることが確実に防止されて、脈動計10それ自体が実質的に着火源となることがないので、例えば引火による爆発が発生する危険性のある環境においても使用することができる。
【0023】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、ケーシング内において形成されるガス流路の内径寸法および長さ、ガス導入部におけるガス吐出口の開口径、並びにその他の構成は、目的に応じて適宜変更することができる。
また、上述したようにガス警報器におけるガス流の脈動を測定するために用いられる場合においては、脈動計はガス警報器におけるガス流路に直接接続して当該ガス流路の一部が脈動計によって形成されるよう配管接続されてもよい。
さらに、ガス流がガスセンサーの種類に応じて設定された閾値を超える圧力状態であることが検知された場合に、ブザー音あるいは発光による警報を発する警報報知機構を具備した構成とすることができる。このような構成によれば、例えば検知結果を表示器等に出力することなしに、現状の脈動(圧力指示値)がガスセンサーに対して影響があるかないかを判別することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明のポータブル型脈動計は、上述したような、実際の製品(ガス警報器)におけるガス流の脈動測定(検査)を行う場合の他に、以下のような場合に、極めて有用なものとなることが期待される。
(1)例えば、ガス警報器の開発初期段階において、ガスセンサーに供給されるガス流の脈動を小さく低減し、ガスセンサーに与える影響をなくすことを目的として、各種のガスセンサーについて、脈動をセンサー出力に対する影響のない程度に低減させるための例えばバッファ(緩衝部)の構成あるいは機器選定等のガス警報器等の装置設計を行うために用いることができる。
具体的には、容積が可変できるバッファを脈動計10のガス導入用プラグ(ニップル)30に接続し、バッファの容量を変更しながら脈動を測定することにより、十分な脈動低減効果が得られる最小容量のバッファを選定することができ、これにより、製品の小型化を図ることができると共に、圧力変動(脈動)を数値化して絶対値で評価することができることにより、製品開発に貢献することができる。
(2)ガス警報器等の実際の製品だけでなく、例えばポータブル型ガス検知器に係るガス校正用キャップの設計の際にも応用できる。具体的には、ポータブル型ガス検知器に係る校正キャップにおいては、ガスをポンプで押し込み校正を行う構成のものと、ガスボンベから直接ガスを供給して校正を行う構成のものとがあるが、このような校正ガス供給方法の違いによるガス流の脈動の影響が考慮された、適正な大きさの校正値に設定されるものを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のポータブル型脈動計の一構成例を示す正面図である。
【図2】図1に示すポータブル型脈動計の左側面図である。
【図3】図1におけるA−A線断面図である。
【図4】図1におけるB−B線断面図である。
【図5】本発明のポータブル型脈動計の使用形態の一例を概略的に示すブロック図である。
【図6】本発明のポータブル型脈動計における信号処理回路の一構成例を示すブロック図である。
【図7】本発明のポータブル型脈動計によって得られる出力信号波形を概略的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0026】
10 ポータブル型脈動計
11 ケーシング
11A,11B ケーシング部材
12 電池室
13 電池
14 電池室キャップ
15 凹部
16 金属帯
18 制御用回路基板
20 ガス導入部
21 ガス導入口
22 ガス流路部分
25 ガス流路形成部材
26 ガス流路
27 貫通孔
30 ガス導入用プラグ(ニップル)
31 信号出力端子
32 駆動用スイッチ
35 圧力センサー
38 増幅器
50 ガス警報器
51 ダイヤフラム式ポンプ
52 ガスセンサー
55 ガス流路
56 バイパス管
60 表示器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手で握って保持可能な大きさとされたケーシングを具え、このケーシング内には、駆動用電源である一本の柱状の電池が受容される電池室およびガス流路が形成されていると共に、当該ガス流路に供給されるガスの圧力を検知する圧力センサーが設けられており、
供給されるガス流の脈動が当該圧力センサーによって取得される電気的信号に基づいて測定可能に構成されていることを特徴とするポータブル型脈動計。
【請求項2】
ケーシングの外表面部分に凹部が形成されており、当該凹部の壁において前記ガス流路に係るガス導入口が開口すると共にガス導入用プラグが凹部内に配置された状態でガス導入口に装着されていることを特徴とする請求項1に記載のポータブル型脈動計。
【請求項3】
ケーシングが樹脂よりなり、連続する樹脂表面部分の大きさを規制する金属帯が装着されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のポータブル型脈動計。
【請求項4】
ダイヤフラム式ポンプを具備する吸引型ガス警報器における、当該ダイヤフラム式ポンプとガスセンサーとの間のガス流路に接続され、ガスセンサーに供給されるガス流の脈動を測定するために用いられることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のポータブル型脈動計。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−241302(P2008−241302A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−78768(P2007−78768)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000250421)理研計器株式会社 (216)
【Fターム(参考)】