説明

ポータブル機器およびポータブル機器における仮想空間の提供方法

【課題】仮想的に構成されたユーザインターフェイスのメリットを活かすことの可能なポータブル機器を提供すること。
【解決手段】ポータブル機器は、移動および傾動を検出するモーションセンサ部101と、画面表示を行う表示部103と、ユーザが操作することにより所定の信号を生成する複数のキーを備えたキー入力部102と、モーションセンサ部101、表示部103およびキー入力部102を制御する制御部104とを備えたポータブル機器100において、制御部100は、表示部103よりもサイズの広いグラフィックスを表示する際に、グラフィックスの一部を表示部103に表示しつつ、モーションセンサ部101の検出した移動および傾動の方向および量に応じてグラフィックスの表示部103に表示される部分をスクロールまたはズームするとともに、キー入力部102の所定キーを操作することによりスクロールまたはズームを停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポータブル機器およびポータブル機器における仮想空間の提供方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンピュータがユーザに提供するインターフェイスは、キャラクタインターフェイスからグラフィカルインターフェイスへと進化し、現在ではさらにVR(Virtual Reality)技術を利用したVRインターフェイスも各種シミュレータ、設計支援システム、ゲーム、精密制御等の分野で実用化されつつある。
【0003】
VR技術としては、ユーザが頭部装着ディスプレイであるHMD(Head Mounted Display)を利用するタイプと、イリノイ大学で開発されたCAVEシステムのような没入型のタイプとが広く知られている。このうちHMDを利用するものではHMDを介してユーザの視覚に仮想現実の3Dグラフィックスを提供するものであり、CAVEシステムのような没入型においては、部屋の正面、左右側面、床面の全面にそれぞれ大型スクリーンが設けられ各スクリーンに3D映像を表示するものである。いずれの場合においても、ユーザが所定のインターフェイスデバイスを操作することに応じて、HMDが供するグラフィックスや各スクリーンの表示をリアルタイムに変化させることが行われる。
【0004】
このような仮想現実空間システムでは、コンピュータによってシステム上に仮想的に構築された世界の中に本当に存在しているかのような視覚効果がユーザに供されるものであり、またインターフェイスデバイスを操作することより仮想世界の中を移動したり回転しているかのような効果がユーザに供される。また、現実の視界と仮想現実の上に構築された視界とを重ね合わせてユーザに提供する技術についても研究が進められている。
【0005】
一方、携帯電話やPDAのようなポータブル機器で楽しむコンテンツも最近では多種多様なものとなっているが、このようなポータブル機器には小型の表示装置が搭載されているにすぎず、HMD型や没入型のVR技術をユーザに提供することはできない。また、近時においては、特開2007−93448に示されるように、3次元的なあらゆる方向の方位、姿勢および加速度を検出するモーションセンサを搭載した携帯電話も提案されているが、このような携帯電話と仮想現実空間システムとを有機的に結合することについての検討はなされていないのが現状である。
【特許文献1】特開2007−93448
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ユーザに対して仮想空間を提供することによりインターフェイスを構築することにより、単に表示部サイズのメニュー画面をユーザに提供する場合よりも、直感的で理解しやすく操作の簡単なユーザインターフェイスを構築することが可能である。そこで、ポータブル機器の表示装置で一度に表示可能なサイズを超えて、ユーザを取り囲むように仮想空間を構成し、その一部をポータブル機器の表示装置に表示し、必要に応じて画面をスクロールさせることが考えられる。しかし、このように構成された仮想空間の一部をポータブル機器に表示することによりユーザインターフェイスを提供しても、単にカーソルキーを利用して画面をスクロールさせるだけでは臨場感に欠け、仮想空間によりユーザインターフェイスを提供することで得られるメリットは制限されたものとなってしまう。
【0007】
上記事情に鑑み、本発明は、仮想空間のように仮想的に構成された画面の一部を表示することによりユーザインターフェイスを提供するポータブル機器において、仮想的に構成されたユーザインターフェイスのメリットを活かすことの可能なポータブル機器を提供することを目的とする。また、本発明は、そのようなポータブル機器で仮想空間を提供する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点は、移動および傾動を検出するモーションセンサ部と、
画面表示を行う表示部と、
ユーザが操作することにより所定の信号を生成する複数のキーを備えたキー入力部と、
前記モーションセンサ部、前記表示部および前記キー入力部を制御する制御部と、を備えたポータブル機器において、
前記制御部は、前記表示部よりもサイズの広いグラフィックスを表示する際に、当該グラフィックスの一部を前記表示部に表示しつつ、前記モーションセンサ部の検出した移動および傾動の方向および量に応じてグラフィックスの前記表示部に表示される部分をスクロールまたはズームするとともに、前記キー入力部の所定キーを操作することによりスクロールまたはズームを停止することを特徴とするポータブル機器を提供する。
【0009】
本発明の第1の観点においては、前記制御部は、前記モーションセンサ部が検出した移動ベクトルを、前記表示部表面の上下方向に相当する水平成分および前後方向に相当する垂直成分に分解し、前記水平成分に応じてスクロールを行い、前記垂直成分に応じてズームを行うことが好適である。この場合には、前記モーションセンサ部が検出した移動ベクトルの前記表示部画面との垂直成分が、前記表示部表面向きであれば前記表示部に表示されている画面をズームアウトし、前記表示部裏面向きであれば前記表示部に表示されている画面をズームインすることができる。また、垂直成分が、前記表示部表面向きであれば前記表示部に表示されている画面をズームインし、前記表示部裏面向きであれば前記表示部に表示されている画面をズームアウトしてもよい。
【0010】
また、本発明の第2の観点は、移動および傾動を検出するモーションセンサ部およびキー入力部を備えたポータブル機器の表示部に仮想現実空間をなすグラフィックスの一部を表示するステップと、
前記モーションセンサ部の検出した移動および傾動の方向および量に応じてコンテンツを表示する部分をスクロールまたはズームするステップと、
前記キー入力部を操作することにより、前記モーションセンサ部の検出結果にかかわらずスクロールまたはズームを停止するステップと、を含むことを特徴とするポータブル機器における仮想空間の提供方法を提供する。
【0011】
本発明の第2の観点においては、前記モーションセンサ部が検出した移動ベクトルを、前記表示部表面との水平成分および垂直成分に分解し、前記水平成分に応じてスクロールを行い、前記垂直成分に応じてズームを行うことが好適である。また、この場合には、前記モーションセンサ部が検出した移動ベクトルの前記表示部画面との垂直成分が、前記表示部表面向きであれば前記表示部に表示されている画面をズームアウトし、前記表示部裏面向きであれば前記表示部に表示されている画面をズームインすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、グラフィックスの一部を表示部に表示しつつ、モーションセンサ部の検出した移動および傾動の方向および量に応じてグラフィックスの表示部に表示される部分をスクロールまたはズームするとともに、キー入力部の所定キーを操作することによりスクロールまたはズームを停止するポータブル機器および仮想空間の提供方法が提供される。このようなポータブル機器では、ユーザがポータブル機器を動かしたり傾けたりする動作によって画面をスクロールまたはズームするので、ユーザが現実空間でルーペを用いて事物を観察する動作と同等の動作により仮想空間技術等を利用して構築されたユーザインターフェイスを利用することができる。
【0013】
また、このような構成においてポータブル機器を動かしたり傾けたりすることにより所望の部位を表示させると、ポータブル機器の表示部が視認しがたい位置や向きになってしまう場合があり、そのような状態で表示部の位置や向きを直すためにポータブル機器を動かすと、その動きをモーションセンサ部が検出してしまい、表示部の表示している部位がずれてしまうことが考えられる。このため、本発明では所定キーを操作することによりスクロールまたはズームを停止する構成とし、そのような状態では所定キーを操作してからポータブル機器を動かしたり傾けたりすることにより、表示部に表示させた画面はそのままに表示部の位置や向きを直すことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。図1は、本発明の実施形態にかかるポータブル機器としての通信端末100の構成を示す機能ブロック図である。図1に示すように、この通信端末100は、主として、モーションセンサ部101と、キー入力部102と、表示部103と、制御部104と、記憶部105と、通信部107とから構成されている。また、図2は通信端末100の外観を示す図である。図2に示すように、この通信端末100は、内側に表示部103が設けられた第1の筐体120と、内側にキー入力部102の要部が設けられた第2の筐体121とが図2(b)に示すように二つ折り可能なクラムシェル構造になっている。また第2の筐体121には、側部にキー入力部102の一つであるロックボタンAが設けられている。さらに、図3は通信端末100が移動体通信網200に接続してサーバ202と通信する態様を示す図である。図3に示すように、通信端末100は基地局201を介して移動体通信網200と無線接続し、移動体通信網200に接続されたサーバ202と互いに通信を行うことが可能である。
【0015】
モーションセンサ部101は、携帯端末100の位置および/または姿勢角度の変動を検出することにより、ユーザが携帯端末100を動かしたり傾けたりする動作を検出し、それに相当する信号を制御部104に出力するものである。このようなモーションセンサ部101は、地磁気センサに加速度センサを組み合わせて構成したものであっても良いし、加速度センサでも良く、また傾きセンサを利用することも可能である。また、その変動を検出する方向は、3軸であっても2軸であってもよい。3軸方向の地磁気センサと3軸方向の加速度センサとを組み合わせた6軸センサ、また、3軸方向の地磁気センサと2軸方向の加速度センサとを組み合わせた5軸センサは、いずれもモーションセンサ部101として利用可能である。ただし、モーションセンサ部101の種類によっては、検出可能な動作が限定されることもあるので、本実施形態における後述の場合は、モーションセンサ部101で利用するセンサの特性に応じて変更する必要がある。以下では、モーションセンサ部101に公知の6軸センサを使用することを前提に説明を行う。
【0016】
キー入力部102は、前述のように通信端末100の第1の筐体120に設けられたキーパッド、ならびにその他ボタン等の入力装置であり、ユーザが操作することにより各キーまたはボタンに応じた信号であるキーイベントが制御部104に通知され、種々の操作ないしは制御に利用される。また、本実施形態の通信端末100においては、第2の筐体121の側部にロックボタンAが設けられており、キー入力部102はこのようなロックボタンAを含んだものである。
【0017】
表示部103は、液晶表示装置または有機液晶表示装置であって、通信端末100の動作状態、通信端末100を操作するためのユーザインターフェイス等を制御部104の制御下で表示するものである。
【0018】
制御部104は、不図示のCPU上で所定のプログラムを実行することにより仮想的に構成される機能ブロックであって、通信端末100のモーションセンサ部101、キー入力部102、表示部103、制御部104、記憶部105および通信部107といった各機能ブロックとの間でデータおよび制御信号をやり取りすることにより、通信端末100の各種機能を実現するものである。
【0019】
記憶部105は、所定の情報を制御部104の制御下で記憶し、また制御部104に記憶している情報を提供するための読み書き可能なメモリである。記憶部105は、コンテンツ106を格納しており、このコンテンツ106を制御部104で読み出して実行することによりVR技術を利用したユーザインターフェイスが表示部103に表示される。コンテンツ106が提供するユーザインターフェイスについては後に詳述する。
【0020】
通信部107は、制御部104の制御下で動作することにより、基地局201を介して移動体通信網200と無線接続して別のノードとの通信を行うものである。ここでの通信としては、例えば、他の通信端末と通信接続して行う回線交換型通信、他の通信端末またはサーバと接続して行うパケット交換型通信等が挙げられる。前述したように、記憶部105にはコンテンツ106が記憶されているが、コンテンツ106は例えば移動体通信網200に接続されたサーバ202から通信部107を介してダウンロードすることにより取得されたものであっても構わない。
【0021】
以下、コンテンツ106が提供するユーザインターフェイスについて一例を示して説明する。図4および図5は、コンテンツ106が提供するユーザインターフェイスの概略を示した説明図である。このコンテンツ106は、図4に示すようにユーザを中心とするドーム状の星座図を仮想的に構成し、その一部を表示部103に表示してユーザに提供するものである。図4には、説明のために、仮想的に構成したドーム状の星座図Vをユーザと重ね合わせた状態を示すが、コンテンツ106はこのようなデータを常時保持している必要はなく、星座図Vを作成するためのデータから表示部103に表示する画像を動的に描画するものであってもよい。また、図5に示すように、表示部103に表示した画面はズームインおよびズームアウトすることが可能となっている。
【0022】
なお、図4に示した例では、コンテンツ106が星座図を提供するものであるため3Dグラフィックス技術等は必要ではないが、3D技術によって仮想的に構成された建造物、自然構造物等を提供してユーザインターフェイスとすることも可能である。また、単に静止画を表示するだけではなく、動画を組み合わせたり3Dオブジェクトによるアニメーションを利用しても良いし、ユーザの入力した初期条件やリアルタイムな入力に応じてシミュレーション計算を行い、その結果を仮想現実技術によって表示するようにしても構わない。
【0023】
次に、ユーザが本実施形態にかかる通信端末100でコンテンツ106を表示して、所望の部位を表示するとともに、通信端末100を動かす動作によって画面をスクロールおよびズームする動作について、図6のフローチャートを参照しながら説明する。
【0024】
この動作では、まずユーザが通信端末100のキー入力部102を操作すること等によりコンテンツ106の表示を開始し(ST101)、コンテンツ106の初期画面を表示部103に表示する(ST102)。図4に示したように、コンテンツ106は表示部103よりも広い仮想的な画面Vを有しており、ST102では画面Vのうちコンテンツ106起動時に表示するべき部分を表示部103に表示する。
【0025】
次に、制御部104がモーションセンサ部101を起動し(ST103)、ユーザが通信端末100を移動させたり傾けたりした動作の方向と量に応じた信号を、モーションセンサ部101が出力する状態とする。そのような状態で、ロックボタンAの操作によりスクロールがロックされているかが判断され(ST104)、このST104においてロックされていないと判断された場合には、モーションセンサ部101が通信端末100の移動を検出したかがモーションセンサ部101の出力した信号に応じて判断される(ST105)。ここでの判断は、例えばモーションセンサ部101の出力した信号が所定のしきい値を超えているかに応じて行うことができる。そして、移動を検出したと判断した場合には、検出された移動の方向および量に応じて表示部103の画面をスクロールおよびズームする処理が行われる(ST106)。その後、コンテンツ106の終了が指示されているかの判断が行われ(ST109)、指示されている場合にはコンテンツの表示を終了(ST110)して、一連の動作を終了する。
【0026】
一方、ST105で移動を検出したと判断されなかった場合には、次にモーションセンサ部101が通信端末100の傾動を検出したかが判断される(ST107)。ここでの判断についても、ST105と同様に出力信号がしきい値を超えているかに応じて行うことができ、傾動を検出したと判断した場合には、傾動の方向および量に応じて表示部103の画面をスクロールする処理が行われる(ST108)。その後、コンテンツ106の終了が指示されているかの判断が行われ(ST109)、指示されている場合には前記と同じくコンテンツの表示を終了(ST110)して、一連の動作を終了する。
【0027】
一方、ST109においてコンテンツ106の終了が指示されていると判断されなかった場合、および、ST105で通信端末100の移動が検出されず、さらにST107で通信端末100の傾動が検出されなかった場合には、ST104に戻って、同様の処理が繰り返される。
【0028】
図7は図6に示したST106における処理の詳細を例示したフローチャートである。図6に示したように、この処理はモーションセンサ部101が通信端末100の移動を検出した場合に、検出された移動の方向および量に応じて表示部の画面をスクロールおよびズームするものである。ここでは、まず2つのフラグflag(1)およびflag(2)を0に初期化する(ST201)。次に、モーションセンサ部101が検出した移動の方向ベクトルを表示部との水平成分(x,y)および垂直成分zに分解する(ST202)。
【0029】
次に、flag(1)が1にセットされているかが判断される(ST203)。ここでflag(1)が1にセットされていると判断されなかった場合には、さらに表示部103に表示された画面が水平成分(x,y)方向にスクロール可能かが判断され(ST204)、スクロール可能であれば、水平成分方向(x,y)方向に所定の単位量だけスクロールが行われる(ST205)。その後、スクロールした量が水平成分(x,y)の大きさに達したかが判断され(ST206)、達したと判断されなかった場合にはST208以降の動作に進む。一方、ST204でスクロール可能と判断されなかった場合、および、ST206で水平成分(x,y)の大きさに達したと判断された場合には、flag(1)=1にセットされる。すなわち、flag(1)は表示部103に表示している画面をスクロールする必要がない場合に1にセットされる。
【0030】
一方、ST203でflag(1)が1にセットされていると判断された場合、ST206でスクロール量が水平成分(x,y)の大きさに達していないと判断された場合、または、ST207でflag(1)を1にセットする動作を行った後には、ST208においてflag(2)が1にセットされているかが判断される。ここでflag(2)が1にセットされていると判断されなかった場合には、さらに表示部103に表示された画面が垂直成分zに応じてズーム(本実施形態においては、z成分が表示部103上向きであればズームアウト、下向きであればズームイン)可能であるかが判断され(ST209)、ズーム可能であれば、垂直成分zに応じて単位量だけ表示画面をズームインまたはズームアウトする(ST210)。その後、スクロールした量がz成分の大きさに対応した量に達したかが判断され(ST211)、達したと判断された場合にはflag(2)が1にセットされる(ST212)。また、ST209で垂直成分zに応じてズーム可能ではないと判断された場合も同様にflag(2)が1にセットされる。すなわち、flag(2)は表示部103に表示している画面をズームする必要がない場合に1にセットされる。
【0031】
そして、ST208においてflag(2)が1にセットされていると判断された場合、および、ST212においてflag(2)を1にセットした後には、ST213においてflag(1)*flag(2)=1であるかが判断され、1である場合にはflag(1)=flag(2)=1なのでスクロールする必要もズームする必要もないものであるから、一連の処理は終了する。一方、ST211でズーム量が垂直成分zに相当する大きさに達していないと判断された場合、および、ST212でflag(1)*flag(2)=1であると判断されなかった場合には、ST203に戻って処理が続行される。
【0032】
図8は図6に示したST107における処理の詳細を例示したフローチャートである。図6に示したように、この処理はモーションセンサ部101が通信端末100の傾動を検出した場合に、検出された傾動の方向および量に応じて表示部103の画面をスクロールするものである。ここでは、まず検出した傾動の方向ベクトルから、画面をスクロールさせるべき方向aおよび量bを算出する(ST301)。このような算出は、例えばモーションセンサ部101が通信端末100の傾動に応じて出力する信号パターンから方向aを求め、その強度に応じて量bを求めることにより行うことができる。次に、表示部103に表示されている画面を方向aにスクロール可能であるかが判断され(ST302)、スクロール可能であると判断された場合には方向aに所定の単位量だけスクロールが行われる(ST303)。その後、スクロール量がbに達したかが判断され(ST304)、達していない場合にはST302に戻って同様の処理を繰り返す。一方、ST302でスクロール可能であると判断されなかった場合、および、ST304でスクロール量がbに達していると判断された場合には、一連の処理を終了する。
【0033】
以上のような動作と処理によれば、図4に示したようにドーム状の星座図Vを表示可能なコンテンツ106を制御部104で実行中に、ユーザが通信端末100を水平方向に保持して表示部103に星座図VのG1に相当する領域が表示されている状態から、ユーザが通信端末100を上方に掲げるように動かすことにより、通信端末100のモーションセンサ部101がこのような通信端末100の移動を検出し、図6ないし図8に示した動作および処理によって表示部103に星座図VのG2に相当する領域が表示されるように画面がスクロールおよびズームされる。また、通信端末100を上方に掲げた状態でロックボタンAを操作すればスクロールおよびズームの動作は行わないので、星座図Vの所望領域が表示部103に表示された状態でロックボタンAを操作することにより、所望領域を表示部103に表示したまま通信端末100を元の位置に戻して楽な姿勢で星座図Vを閲覧することができる。さらに、図5に示したように、通信端末100を手前に保持して表示部103に画面G3が表示されている状態で、通信端末100を表示部103と垂直なz方向(表示部103裏側向き)へ移動させることにより、モーションセンサ部101がこのような通信端末100の移動を検出し、図6ないし図8に示した動作および処理によって表示部103に星座図Vを拡大した画面G4を表示するように画面がズームインされる。
【0034】
このように本発明によれば、仮想的に構成されたユーザインターフェイスの一部を表示部103に表示しつつ、ユーザが通信端末100を移動させたり傾動させる動作をモーションセンサ部101により検出し、その方向および量に応じて表示部103の表示をスクロールおよびズームするので、通信端末100を移動させたり傾動させるという直感的かつ臨場感ある動作によってユーザインターフェイスの操作を行うことができる。また、スクロールまたはズームのために表示部103が見づらい位置となった場合には、ロックボタンAでスクロールおよびズームを止めた状態として、表示部103が見易い位置となるように通信端末100を移動または傾動させることができる。さらに、通信端末100を移動または傾動させることのできる量には限界があるが、移動または傾動ではスクロール量/ズーム量が足りない場合には一旦ロックボタンAによりスクロールおよびズームを停止した状態で通信端末100を元の位置・角度に戻し、その後スクロールおよびズーム可能な状態としてから通信端末100を再び移動または傾動させることにより、スクロールおよびズームを継続して行えばよい。
【0035】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の改良・変更が可能であることは勿論である。
例えば、上記実施形態においては、コンテンツ106がドーム状の仮想空間に星座図Vをなし、その一部が表示部103に表示される場合を示したが、仮想空間はドーム状であることに限定されず、平面状、球状であってもよく、空間内に3Dオブジェクトを配した構成とすることも可能である。また、上記実施形態においては、星座図Vをスクロールまたはズームしながら表示するのみとしたが、仮想空間をクリックまたはクリックに相当する動作等を受け付けてインタラクティブな動作を行うユーザインターフェイスとしてもよい。
【0036】
さらに、図6ないし図8に示したフローチャートは、上記実施形態における動作および処理の一例であり、本発明の動作はこれに限られるものではない。例えば、図6に示したフローチャートでは、スクロールおよびズームのロックを解除しなければコンテンツを終了できない形になっているが、ロックを解除することなくコンテンツを終了可能な動作としても構わない。また、同じく移動によるスクロールが傾動によるスクロールよりも優先する形となっているが、これに限定されるものでもない。さらに、割り込み処理を利用できる場合には割り込み処理によって動作を進めるようにしてもよいし、複数のタスクまたはスレッドを並列して実行する動作により本発明を実現することも可能である。
【0037】
さらに、上記では携帯電話のような通信端末100に本発明を適用した場合を示したが、これに限られる物ではなく、本発明はユーザが手に持った状態で操作・利用するポータブル機器に広く適用することができる。このようなポータブル機器としては、例えば携帯情報端末、デジタルミュージックプレーヤー、デジタルカメラ等を挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】通信端末100の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】通信端末100の外観を示す図であり、(a)は通信端末100を開いた状態を示し、(b)は通信端末100を閉じた状態を示す。
【図3】通信端末100が移動体通信網200に接続してサーバ202と通信する態様を示す図である。
【図4】コンテンツ106が提供するユーザインターフェイスの概略を示した説明図である。
【図5】コンテンツ106が提供するユーザインターフェイスの概略を示した別の説明図である。
【図6】通信端末100を動かす動作によって画面をスクロールおよびズームする動作のフローチャートである。
【図7】図6のST106における処理の詳細を例示したフローチャートである。
【図8】図6のST107における処理の詳細を例示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0039】
100;通信端末、
101;モーションセンサ部、
102;キー入力部、
103;表示部、
104;制御部、
105;記憶部、
106;コンテンツ、
107;通信部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動および傾動を検出するモーションセンサ部と、
画面表示を行う表示部と、
ユーザが操作することにより所定の信号を生成する複数のキーを備えたキー入力部と、
前記モーションセンサ部、前記表示部および前記キー入力部を制御する制御部と、を備えたポータブル機器において、
前記制御部は、前記表示部よりもサイズの広いグラフィックスを表示する際に、当該グラフィックスの一部を前記表示部に表示しつつ、前記モーションセンサ部の検出した移動および傾動の方向および量に応じてグラフィックスの前記表示部に表示される部分をスクロールまたはズームするとともに、前記キー入力部の所定キーを操作することによりスクロールまたはズームを停止することを特徴とするポータブル機器。
【請求項2】
前記制御部は、前記モーションセンサ部が検出した移動ベクトルを、前記表示部表面の上下左右方向に相当する水平成分および前後方向に相当する垂直成分に分解し、前記水平成分に応じてスクロールを行い、前記垂直成分に応じてズームを行うことを特徴とする請求項1に記載のポータブル機器。
【請求項3】
前記モーションセンサ部が検出した移動ベクトルの前記表示部画面との垂直成分が、前記表示部表面向きであれば前記表示部に表示されている画面をズームアウトし、前記表示部裏面向きであれば前記表示部に表示されている画面をズームインすることを特徴とする請求項2に記載のポータブル機器。
【請求項4】
前記モーションセンサ部が検出した移動ベクトルの前記表示部画面との垂直成分が、前記表示部表面向きであれば前記表示部に表示されている画面をズームインし、前記表示部裏面向きであれば前記表示部に表示されている画面をズームアウトすることを特徴とする請求項2に記載のポータブル機器。
【請求項5】
移動および傾動を検出するモーションセンサ部およびキー入力部を備えたポータブル機器の表示部に仮想現実空間をなすグラフィックスの一部を表示するステップと、
前記モーションセンサ部の検出した移動および傾動の方向および量に応じてコンテンツを表示する部分をスクロールまたはズームするステップと、
前記キー入力部を操作することにより、前記モーションセンサの検出結果にかかわらずスクロールまたはズームを停止するステップと、を含むことを特徴とするポータブル機器における仮想空間の提供方法。
【請求項6】
前記モーションセンサ部が検出した移動ベクトルを、前記表示部表面との水平成分および垂直成分に分解し、前記水平成分に応じてスクロールを行い、前記垂直成分に応じてズームを行うことを特徴とする請求項4に記載のポータブル機器における仮想空間の提供方法。
【請求項7】
前記モーションセンサ部が検出した移動ベクトルの前記表示部画面との垂直成分が、前記表示部表面向きであれば前記表示部に表示されている画面をズームアウトし、前記表示部裏面向きであれば前記表示部に表示されている画面をズームインすることを特徴とする請求項5に記載のポータブル機器における仮想空間の提供方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−3799(P2009−3799A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−165517(P2007−165517)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(394020376)株式会社アプリックス (51)
【Fターム(参考)】