説明

ポーラスコンクリート及びその製造方法

【課題】ゼオライトを含有するとともに優れた強度を有する、環境調和型のポーラスコンクリート及びその製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも結合材を含むペーストと、骨材と、ゼオライト粉末とを混合する混合工程を備える製造方法により、ポーラスコンクリートを製造する。又、前記ゼオライト粉末が前記結合材の一部として混合されて前記ペーストとされる製造方法により、ポーラスコンクリートを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポーラスコンクリート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポーラスコンクリートは排水性、吸音性や断熱性に優れた材料であり、例えば、路面に降った雨水の排水性確保のための舗装材料として、道路や鉄道において、通行車両が発する騒音を減少させる吸音材として、或いは、建築材料における断熱材として利用されている。また、ポーラスコンクリートは比較的大きな比表面積を有し、水中において多くの微生物を取り込むことができるので、排水浄化のための微生物の住処としても使用することができる。さらに、適度な空隙を有しているため、空隙中に土壌と種子とを充填すれば、緑化コンクリートとしても使用することができる。
【0003】
上記のいずれの用途においても、ポーラスコンクリートは十分な強度を必要とする。また、特にポーラスコンクリートを緑化コンクリートとして使用する場合、当該コンクリートにおける保水性も重要となる。十分な保水性を確保するには、例えば、ポーラスコンクリートの空隙部分等に保水材として吸水性ポリマーを充填することが考えられる(特許文献1参照)。しかしながら、このような形態では、保水材が別途必要になることの作業上の煩雑さや、流水による吸水性ポリマーの流出等が懸念され、また、より環境負荷の小さな材料とするためには吸水性ポリマーのような人工材料を用いずに緑化コンクリートを形成することが好ましいものと考えられる。
【0004】
これに対し、特許文献2には、廃ガラス発砲軽量骨材を少量のセメントペーストを接着剤として多孔質に形成された第一層部と、珪砂、天然ゼオライト、珪藻土の何れか、またはこれらの2種以上を骨材として少量のセメントペーストを接着剤として多孔質に形成されて、第一層部が一体に積層された第二保水部との2層構造に形成された緑化コンクリートブロックが開示されている。また、特許文献3〜5には、緑化コンクリートにかかるものではないが、コンクリートの吸水性、吸放湿性等を確保するため、骨材として多孔質材料(ゼオライト等)を用いたコンクリートが開示されている。これら技術は、骨材自体の特性、或いは骨材同士の相互作用によって、吸水性、吸放湿性や吸脱着性を得ている点で共通している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−131948号公報
【特許文献2】特開2008−214960号公報
【特許文献3】特開2008−297774号公報
【特許文献4】特開平8−325076号公報
【特許文献5】特開2004−35285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2〜5のように、骨材としてゼオライトを用いることで、高分子吸水性ポリマーを用いずとも、ポーラスコンクリートの保水性を向上させることができ、吸放湿特性等を得ることもできる。しかしながら、骨材としてゼオライトを用いた場合、通常の骨材を用いた場合と比較して、ポーラスコンクリートの強度低下が懸念され、舗装材、建築材、緑化コンクリート等の様々な用途に応用するためには、より優れた強度を有するポーラスコンクリートとする必要があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、ゼオライトを含有するとともに優れた強度を有する、環境調和型のポーラスコンクリート及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、例えば、植栽用ポーラスコンクリート平板等への応用を想定して、天然ゼオライトを骨材や混和材として用いたポーラスコンクリートを種々作製し、その特性について研究を進めた結果、以下の知見を得た。
(1)ポーラスコンクリートにゼオライト粉末を混和することで、ポゾラン反応によって硬化後の強度を増加させることが可能となり、無混和のものよりも圧縮強度、曲げ強度ともに向上させることができる。
(2)ポーラスコンクリートにゼオライト粉末を混和することで、ポーラスコンクリートにおけるペースト(結合材と水と高分子界面活性剤)のチキソトロピーが向上するとともに品質が安定し、ポーラスコンクリート製造時に結合材量を増加させても、ダレや目詰まり等を防ぐことができる。
(3)ゼオライト粉末を混和し、且つ、ペースト量を増加させることによって、ポーラスコンクリートの強度をさらに向上させることができる。
(4)細骨材率を調整することで、ポーラスコンクリートの強度をさらに向上させることができる。
(5)ゼオライト粉末をスラリー状とし、さらに高分子界面活性剤を含有させて用いることで、ポーラスコンクリートの結合材に混和できる粉末量を増加させることができ、ポーラスコンクリートにおけるペーストのコンシステンシーの改善やポゾラン反応のさらなる向上に結びつく。これにより、ポーラスコンクリートの強度をさらに向上させることができる。
(6)上記ポーラスコンクリートを複層平板構造とし、通常の骨材を用いたポーラスコンクリート、これにゼオライト粉末を加えたものや細骨材等を用いた密実なコンクリート、或いは、普通コンクリートやモルタル等を下層側、ゼオライト骨材を用いたポーラスコンクリートを上層側とすることで、曲げ強度のさらなる向上と、吸水、保水性の向上とを両立することができる。
【0009】
本発明は上記知見に基づいてなされたものである。すなわち、
第1の本発明は、少なくとも結合材を含むペーストと、骨材と、ゼオライト粉末と、を混合する混合工程を備える、ポーラスコンクリートの製造方法を提供して前記課題を解決するものである。
【0010】
第1の本発明及び以下に示す本発明において、「結合材」とは、ポーラスコンクリートの結合材として利用可能な結合材をいい、例えばセメント、好ましくはポルトランドセメント、或いはポルトランドセメントとゼオライト粉末とを混和したものが例示される。「ペースト」とは、ポーラスコンクリートのペーストとして利用可能なペーストをいい、結合材と水、または結合材と水および界面活性剤からなるものが例示される。「骨材」とは、ポーラスコンクリートの骨材として利用可能な骨材をいい、砕石、珪砂、珪藻土、廃材や、ゼオライト等の鉱物等を例示できる。「ゼオライト粉末」とは、通常の細骨材よりも小さな粒径を有する粉末状のゼオライトのことであり、粒径が0.5mm以下、好ましくは0.1mm以下、特に好ましくは0.08mm以下のものが例示される。
【0011】
尚、第1本発明において、ゼオライト粉末が結合材の一部として混合されてペーストとして用いられる場合、さらに別途ゼオライト粉末を混合する必要はない。
【0012】
第1の本発明において、ゼオライト粉末がスラリーとされて、ペーストと骨材ととともに混合されることが好ましい。また、当該スラリーには、さらに高分子界面活性剤が含まれることが好ましい。第1の本発明及び以下に示す本発明において、「高分子界面活性剤」とは、界面活性剤として適切に機能するものであれば特に限定されるものではないが、例えばポリカルボン酸系やスルホン酸系等の減水剤、高性能減水剤や高性能AE減水剤とすることができる。これにより、ポーラスコンクリートの結合材に混和できる粉末量を増加させることができ、ポーラスコンクリートにおけるペーストのコンシステンシーの改善やポゾラン反応のさらなる向上に結びつき、ポーラスコンクリートの強度を向上させることができる。
【0013】
第1の本発明において、ペーストと骨材との絶対容積比(ペースト/骨材)が36%以上となるように、混合工程においてペーストと骨材とが混合されることが好ましい。ポーラスコンクリートの強度をより向上させることができるからである。
【0014】
第1の本発明において、骨材における細骨材率が50%であることが好ましい。ポーラスコンクリートの強度をさらに向上させることができるからである。
【0015】
第1の本発明において、骨材には粒状ゼオライトが含まれていてもよい。環境負荷の小さいポーラスコンクリートとすることができ、さらに、吸水、保水性の向上も期待できるからである。
【0016】
第2の本発明は、第1の本発明にかかるポーラスコンクリートの製造方法により製造されてなる、ポーラスコンクリートを提供して前記課題を解決するものである。
【0017】
第3の本発明は、少なくとも結合材を含むペーストと、粒状ゼオライトを含む骨材と、ゼオライト粉末とを混合し、硬化させて、第一ポーラスコンクリート層を形成する工程、少なくとも結合材を含むペーストと、骨材とを混合し、硬化させて、第二コンクリート層を形成する工程、及び、第一ポーラスコンクリート層と第二コンクリート層とを一体とする工程、を備える、ポーラスコンクリート積層体の製造方法を提供して前記課題を解決するものである。
【0018】
第3の本発明において、「粒状ゼオライト」とは、骨材として用いることができる程度の粒径を有する粒状のゼオライトをいう。
【0019】
尚、第3本発明にかかる第一ポーラスコンクリート層を形成する工程において、ゼオライト粉末が結合材の一部として混合されてペーストとされる場合、さらに別途ゼオライト粉末を混合する必要はない。
また、第3の本発明にかかる第二コンクリート層を形成する工程において、ゼオライト粉末が混合されてもよい。
【0020】
第3の本発明において、ゼオライト粉末はスラリーとされて混合されることが好ましい。また、当該スラリーには高分子界面活性剤が含まれることが好ましい。ポーラスコンクリートの結合材に混和できる粉末量を増加させることができ、ポーラスコンクリートにおけるペーストのコンシステンシーの改善やポゾラン反応のさらなる向上に結びつき、ポーラスコンクリートの強度向上に繋がるからである。
【0021】
第3の本発明にかかる、第一ポーラスコンクリート層を形成する工程、及び/又は、第二コンクリート層を形成する工程において、硬化後のペーストと骨材との絶対容積比(ペースト/骨材)が36%以上となるように、ペーストと骨材とが混合されることが好ましい。ポーラスコンクリート積層体の強度をより向上させることができるからである。
【0022】
第3の本発明において、骨材の細骨材率を50%とすることが好ましい。ポーラスコンクリートの強度をより一層向上させることができるからである。
【0023】
第4の本発明は、第3の本発明にかかるポーラスコンクリート積層体の製造方法により製造されてなる、ポーラスコンクリート積層体を提供して前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0024】
第1の本発明によれば、ポーラスコンクリートの製造時、ゼオライト粉末が混合されるので、ペーストのチキソトロピーが向上し、品質を安定させ、且つ、ポゾラン反応によって硬化後の強度を増加させることができる。すなわち、優れた強度を有する環境調和型のポーラスコンクリートを製造することができる。また、ゼオライトを含有しているので、保水性等の効果も期待できる。
【0025】
第2の本発明によれば、第1の本発明によって製造されたポーラスコンクリートが提供される。すなわち、優れた強度を有するとともに、保水性等の効果も期待できる環境調和型のポーラスコンクリートを提供することができる。
【0026】
第3の本発明によれば、ゼオライト粉末が混合されることにより、優れた強度を有するとともに、保水性等の効果も期待できる環境調和型のポーラスコンクリート積層体を製造することができ、且つ、積層体とすることで、より強度を向上させたポーラスコンクリートを製造することができる。
【0027】
第4の本発明によれば、第3の本発明によって製造されたポーラスコンクリート積層体が提供される。すなわち、さらに優れた強度を有するとともに、保水性等の効果も期待できる環境調和型のポーラスコンクリート積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1実施形態にかかる本発明のポーラスコンクリートの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図2】第2実施形態にかかる本発明のポーラスコンクリート積層体の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図3】ポーラスコンクリートのペースト及び骨材の絶対容積比p/aと、圧縮強度との関係を示す図である。
【図4】ポーラスコンクリートのペースト及び骨材の絶対容積比p/aと、曲げ強度との関係を示す図である。
【図5】ポーラスコンクリートの細骨材率と圧縮強度との関係を示す図である。
【図6】ポーラスコンクリートの細骨材率と曲げ強度との関係を示す図である。
【図7】ポーラスコンクリートを二層平板構造とした場合における、曲げ強度の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
1.第1実施形態
第1実施形態にかかる本発明のポーラスコンクリートの製造方法は、図1に示すように、少なくとも混合工程(工程S1)を備える。また、その後の硬化工程(工程S2)により現場の態様に応じた形状にされて、現場に施工される。以下、各工程について説明する。
【0030】
1.1.混合工程(工程S1)
工程S1は、少なくとも結合材を含むペーストと、骨材と、ゼオライト粉末と、を混合して混合物とする工程である。
【0031】
ペーストに用いる結合材としては、ポーラスコンクリートの結合材として使用可能な結合材を特に限定されることなく用いることができる。例えば、セメント、特にポルトランドセメントを用いることが好ましい。結合材は、水等と混合してペーストとした後で下記骨材やゼオライト粉末と混合してもよいが、結合材の一部としてゼオライト粉末を混和し、これをペーストとして用いてもよく、この場合は、ペーストと骨材とに加えて、別途ゼオライト粉末を混合する必要はない。
【0032】
骨材としては、ポーラスコンクリートの骨材として使用可能な骨材(粗骨材、細骨材)を特に限定されることなく用いることができる。例えば、砕石、珪砂、珪藻土、廃材等を用いることができる。一方で、吸水、保水性等の機能を付与する観点からは、ゼオライトを骨材として用いることが好ましい。この場合のゼオライトの種類は特に限定されず、人工的に合成したもののほか、天然に産出されるゼオライトをそのまま用いることもできる。これにより緑化コンクリートとして好適に用いられるポーラスコンクリートとすることができる。
【0033】
骨材の粒径は、通常の粗骨材や細骨材と同様とすることができる。すなわち、粗骨材として、5mm以上25mm以下、好ましくは5mm以上15mm以下の粒径を有するものを用い、細骨材として、5mm以下、好ましくは3mm以上5mm以下の粒径を有するものを用いることができる。また、骨材における細骨材率(全骨材の絶対容積に対する細骨材の絶対容積の比)は、20%以上60%以下とすることが好ましく、50%とすることが特に好ましい。これにより、ポーラスコンクリートの強度を向上させることができる。
【0034】
ゼオライト粉末は、ポーラスコンクリート製造時の混和材として機能する。特にゼオライト粉末を分散媒等に分散させてスラリーとして用いることが好ましい。ゼオライト粉末は、細骨材よりも小さな粒径を有するものであって、粒径0.5mm以下、好ましくは粒径0.1mm以下、特に好ましくは粒径0.08mm以下のものを用いることができる。ゼオライトの種類は特に限定されず、人工的に合成したもののほか、天然に産出されるゼオライトをそのまま用いることもできる。分散媒は、ゼオライト粉末を分散可能なものであれば特に限定されるものではないが、例えば水を用いることができる。尚、上述の通り、結合材の一部としてゼオライト粉末を混和し、これをペーストとして用いた場合は、当該ペーストと骨材とに加えて、別途ゼオライト粉末を混合する必要はない。本発明においては、ゼオライト粉末をポーラスコンクリートに混和することで、ポゾラン反応によって硬化後の強度を増加させることができ、また、ポーラスコンクリートにおけるペーストのチキソトロピーを向上させ、品質が安定し、ポーラスコンクリート製造時に結合材量を増加させても、ダレや目詰まり等を防ぐことができる。
【0035】
ゼオライト粉末を含むスラリー中には、さらに界面活性剤を含ませることが好ましい。具体的には、ポリカルボン酸系やスルホン酸系等の減水剤、高性能減水剤や高性能AE減水剤等の高分子界面活性剤を用いる。これにより、ポーラスコンクリートの結合材に混和できる粉末量を増加させることができ、ポーラスコンクリートにおけるペーストのコンシステンシーの改善やポゾラン反応のさらなる向上に結びつき、ポーラスコンクリートの強度向上に繋がる。
【0036】
スラリーにおけるゼオライト粉末濃度は、質量%濃度で好ましくは30%以上90%以下、特に好ましくは50%以上70%以下となるように調整される。また、スラリーにおける界面活性剤の濃度は、質量%濃度で好ましくは3%以上10%以下、特に好ましくは7%となるように調整される。
【0037】
混合工程においては、上記の他に、必要に応じて化学混和剤等を混合してもよい。化学混和剤としては、コンクリートの製造において用いられている公知の化学混和剤(減水剤等)を用いることができる。
【0038】
工程S1では、これらペーストと、骨材と、ゼオライト粉末とを(或いは、ゼオライト粉末を結合材として含むペーストと、骨材とを)所定の比率で混合して混合物とする。混合物中において、練り混ぜ水と結合材(ゼオライト粉末を含む)との質量比(W/B)は、20%〜40%とすることが好ましい。また、混合物中における、ペーストと骨材との絶対容積比(p/a)は26%以上とし、36%以上とすることが好ましく、44%以上とすることが最も好ましい。ペーストと骨材との絶対容積比の上限は、50%程度とし、48%以下とすることが好ましい。さらに、ゼオライト粉末の混和率は、結合材全体における絶対容積率として、5%以上50%以下、好ましくは10%以上30%以下とする。
工程S1においてこのような比率で結合材等を混合することで、硬化後のポーラスコンクリートの強度をより一層向上させることができる。
【0039】
工程S1における、混合方法や混合手段については、特に限定されるものではないが、例えば、オムニミキサー等により練り混ぜることで上記ペースト等が混合され、ポーラスコンクリート(混合物)とされる。
【0040】
1.2.硬化工程(工程S2)
工程S2は、得られた混合物を硬化させる工程である。硬化工程については、従来公知の手段、方法を用いることができ、例えば外部振動機等を用いて混合物を締固め、水中や蒸気等で養生を行う等により、混合物を硬化させることができる。
【0041】
第1実施形態にかかるポーラスコンクリートは、上記工程S1により製造され、工程S2により種々の形態に硬化されて使用される。硬化後のポーラスコンクリートは、優れた強度を有し、且つ、構造中のゼオライト粉末によって吸水性、保水性が期待できる。従って、吸音材、断熱材、微生物の住処の材料として使用できることはもちろん、特に緑化コンクリートとして好適に用いることができる。
【0042】
2.第2実施形態
第2実施形態にかかる本発明のポーラスコンクリート積層体の製造方法は、図2に示すように、第一ポーラスコンクリート層を形成する工程(工程S11)、第二コンクリート層を形成する工程(工程S12)、及び第一ポーラスコンクリート層と第二コンクリート層とを一体とする工程(工程S13)を備えている。以下、各工程について説明する。
【0043】
2.1.工程S11
工程S11は、少なくとも結合材を含むペーストと、粒状ゼオライトを含む骨材と、ゼオライト粉末とを混合し、硬化させて、第一ポーラスコンクリート層を形成する工程である。
【0044】
ペースト中の結合材としては、上記第1実施形態にて説明した結合材と同様のものを用いることができる。また、粒状ゼオライトとしては、骨材として利用できる程度の粒径を有する粒状のゼオライトを用いることができる。骨材の粒径については第1実施形態にて説明した通りであり、ここでは説明を省略する。また、粒状ゼオライト以外にも、骨材として用いられている砕石等を含ませてもよいが、保水性や吸水性を確保する観点からは、粒状ゼオライトのみを用いることが好ましい。ゼオライト粉末についても、上記第1実施形態にて説明したものと同様であり、ここでは説明を省略する。尚、上記第1実施形態と同様に、結合材の一部として予めゼオライト粉末を含ませ、これをペーストとして用いてもよい。この場合は、ペーストと骨材とに加えて別途ゼオライト粉末を混合する必要はない。
【0045】
工程S11では、上記したペースト等が混合された後、硬化される。混合方法や硬化方法については、第1実施形態にて説明した通りであり、ここでは説明を省略する。これにより、第一ポーラスコンクリート層が形成される。
【0046】
2.2.工程S12
工程S12は、少なくとも結合材を含むペーストと、骨材とを混合し、硬化させて、第二コンクリート層を形成する工程である。ペースト中の結合材、骨材の詳細は、第1実施形態で説明した通りであり、ここでは説明を省略する。ただし、工程S12においては、骨材として粒状ゼオライト以外のもの(砕石等)が含まれる。すなわち、第一ポーラスコンクリート層と第二コンクリート層とは異なる骨材により構成される。また、工程S12においても、上記工程S1や工程S11と同様に、結合材の一部として予めゼオライト粉末を含ませてペーストとしてもよく、或いは、ペースト及び骨材に加えて、別途ゼオライト粉末を混和してもよい。また、ゼオライト粉末はスラリー状とされて用いられてもよい。ゼオライト粉末やスラリーの詳細については、第1実施形態にて説明した通りであり、ここでは説明を省略する。
工程S12における、混合方法や硬化方法については、第1実施形態で説明した通りであり、ここでは説明を省略する。工程S12により、第二コンクリート層が形成される。
【0047】
2.3.工程S13
工程S13は、第一ポーラスコンクリート層と第二コンクリート層とを一体とする工程である。第一ポーラスコンクリート層と第二コンクリート層とを一体とする方法は、特に限定されるものではないが、例えば、型に第二コンクリート層を打ち込み、その上に第一ポーラスコンクリート層を打ち込んだ後、当該二層をフレッシュ状態で結合させることにより、或いは、第二層の硬化後に第一層を打ち込むことにより、二層を一体とすることができる。
【0048】
このような工程S11〜S13を経て、第2実施形態にかかるポーラスコンクリート積層体が製造される。得られたポーラスコンクリート積層体は、強度、特に曲げ強度に優れ、且つ、十分な吸水性、保水性が確保される。従って、吸音材、断熱材、微生物の住処の材料として使用できることはもちろん、特に緑化コンクリートとして好適に用いることができる。第2実施形態にかかるポーラスコンクリート積層体を緑化コンクリートとして用いる場合は、上記第一ポーラスコンクリート層を上側、第二コンクリート層を下側となるようにして、設置することが好ましい。
【実施例】
【0049】
以下、実施例により、本発明にかかるポーラスコンクリート及びポーラスコンクリート積層体につき、さらに詳細に説明する。
【0050】
(ポーラスコンクリートの作製)
結合材の一部として早強ポルトランドセメントを用い、これと、表1に示される骨材を混合し、オムニミキサー(チヨダマシナリー社製OM−10A又はOM30E)で1分間練り混ぜ、その後、高性能減水剤(花王社製マイティ150)及び表1に示される混和材をさらに混合し、オムニミキサーで3分間練り混ぜた。その後、練り混ぜた混合物を、外部振動機(エクセン社製インバータ付きテーブルバイブレータTV500x500・KM250−2Px2)を用いて、平板供試材とする場合は一層で、円柱供試材とする場合は二層で締固めた。その後、水中にて14日間養生させ、評価用のポーラスコンクリート供試材を複数作製した。各供試材にかかる結合材、骨材、及び混和材の種類及び比率については、表2で示されるものとした。尚、供試材4〜6及び13〜15については、混和材としてZPを絶乾状態で用い、供試材20〜23については、混和材としてZPLを用いた。また、本実施例においては、混和材ZPは、結合材の一部を構成するものとして換算する。
表2において、Zは、表1の天然ゼオライト骨材を用いたことを意味し、CSは表1の砕石骨材を用いたことを意味する。また、W/Bは練混ぜ水と結合材との質量比を、s/aは細骨材率を、p/aはペーストと骨材の絶対容積比を、ZP混和率は結合材全体におけるZPの絶対容積率を示している。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
(二層平板ポーラスコンクリートの作製)
下層部に砕石骨材を用いたポーラスコンクリートを厚さ30mmとなるように型に打ち込み、その後、上層部にゼオライト骨材を用いたポーラスコンクリートを厚さ30mmとなるように打ち込み、当該二層をフレッシュ状態で結合させ一体とした。得られた各供試材を60×90×300mmの平板供試材とした。
【0054】
(評価方法)
1.圧縮強度試験
各供試材をφ100×200mmの円柱供試材とし、JIS A1108に準拠し、材齢14日での圧縮強度を測定した。
【0055】
2.曲げ強度試験
各供試材を60×90×300mmの平板状の供試材とし、JIS A1106に準拠し、材齢14日での曲げ強度を測定した。
【0056】
評価結果について説明する。図3は、各供試材のペーストに対する骨材の絶対容積比(p/a)と圧縮強度との関係を示している。図3から明らかなように、各供試材は、p/aを増加させるに従って、圧縮強度が向上していることが分かる。特にp/aを36%から44%に増加させた場合に顕著な向上が見られ、圧縮強度が最大2.8倍程度に向上していることが分かる。また、供試材16と供試材20とを比較すると、ゼオライト粉末の混和によって、圧縮強度が明らかに向上している。
これら結果から、圧縮強度の向上には、ペーストと骨材の絶対容積比(p/a)を増加させること、及び、ゼオライト粉末(特にゼオライト粉末を含むスラリー)を混和することが効果的といえる。
【0057】
図4は、各供試材のペースト及び骨材の絶対容積比(p/a)と曲げ強度との関係を示している。図4から明らかなように、スラリー状のゼオライト粉末を混和した供試材21〜23については、p/aを増加させると、曲げ強度が1.5倍程度向上していることがわかる。また、供試材16と供試材20とを比較すると、ゼオライト粉末の混和によって、曲げ強度が明らかに向上している。一方で、ゼオライト粉末を混和していない供試材10〜12、17〜19については、p/aを増加させても、曲げ強度はほとんど変化しなかった。
これら結果から、曲げ強度の向上には、スラリー状にてゼオライト粉末を混和したうえで、ペースト及び骨材の絶対容積比(p/a)を増加させることが効果的といえる。
【0058】
図5は、各供試材の細骨材率(s/a)と圧縮強度との関係を示している。図5から明らかなように、各供試材は、細骨材率を0から50%に増加させた場合、圧縮強度が向上し、細骨材率を50から100%にさらに増加させた場合、圧縮強度が減少する傾向がみられる。すなわち、図5は、ポーラスコンクリートの細骨材率が50%程度において、最も優れた圧縮強度を示すことを示唆している。これは、特に、ペーストと骨材との絶対容積比が44%であり、且つ、スラリー状のゼオライト粉末を混和した供試材21〜23において顕著であった。
【0059】
図6は、各供試材の細骨材率(s/a)と曲げ強度との関係を示している。図6から明らかなように、各供試材は、細骨材率を0から50%に増加させた場合、曲げ強度が向上し、細骨材率を50から100%にさらに増加させた場合、曲げ強度は緩やかに減少する傾向がみられる。すなわち、図6は、ポーラスコンクリートの細骨材率が50%程度において、最も優れた曲げ強度を示すことを示唆している。これは、特に、ペーストと骨材との絶対容積比が44%であり、且つ、スラリー状のゼオライト粉末を混和した供試材21〜23において顕著であった。
【0060】
図7は、供試材を単層平板構造から二層平板構造にした場合の曲げ強度の変化を示している。図7のAは、上層部に供試材17〜19、21、22又は23を、下層部に供試材16を用いた二層平板構造の供試材の曲げ強度について、図7のBは、単層の供試材16〜23の曲げ強度について、図7のCは、上層部に供試材17〜19、21、22又は23を、下層部に供試材20を用いた二層平板構造の供試材の曲げ強度について示している。図7から明らかなように、ゼオライト粉末を混和していない供試材17〜19については、供試材16、20と組み合わせた二層平板構造とすることで、単層平板構造とするよりも、曲げ強度が顕著に増加している。特に、スラリー状のゼオライト粉末を混和した供試材20と組み合わせた場合に、その効果が顕著となることがわかる。
一方、ゼオライト粉末を混和した供試材21〜23については、供試材16、20と組み合わせても曲げ強度は向上しない傾向にある。これは、ゼオライト粉末を混和した供試材21〜23が、単層でも十分な曲げ強度を有しているためと考えられる。
【0061】
上記評価結果をまとめると以下のようになる。(1)ポーラスコンクリート製造時にゼオライト粉末(特にゼオライト粉末を含むスラリー)が混和されることで、圧縮強度、曲げ強度ともに向上する。(2)ポーラスコンクリート中のペースト量を増加させることで、圧縮強度が向上し、曲げ強度については、特にゼオライト粉末が混和されたものについて顕著に向上する。(3)細骨材率を50%程度とすることで、圧縮強度、曲げ強度ともに向上する。(4)ポーラスコンクリートを二層平板構造とすることで、曲げ強度が向上する。
【0062】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う、ポーラスコンクリート及びその製造方法もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明によれば、優れた強度(圧縮強度、曲げ強度)を有するとともに、吸水性、保水性にも優れるポーラスコンクリートが製造される。従って、本発明にかかるポーラスコンクリートは、吸音材、断熱材、浄化用の微生物の住処等として使用できることはもちろん、特に緑化コンクリートとして好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも結合材を含むペーストと、骨材と、ゼオライト粉末とを混合する混合工程を備える、ポーラスコンクリートの製造方法。
【請求項2】
前記ゼオライト粉末が前記結合材の一部として混合されて前記ペーストとされる、請求項1に記載のポーラスコンクリートの製造方法。
【請求項3】
前記ゼオライト粉末がスラリーとされて混合される、請求項1又は2に記載のポーラスコンクリートの製造方法。
【請求項4】
前記スラリーが、さらに高分子界面活性剤を含む、請求項3に記載のポーラスコンクリートの製造方法。
【請求項5】
前記混合工程において、前記ペーストと前記骨材との絶対容積比(ペースト/骨材)が36%以上となるように、前記ペーストと前記骨材とが混合される、請求項1〜4のいずれかに記載のポーラスコンクリートの製造方法。
【請求項6】
前記骨材の細骨材率が50%である、請求項1〜5のいずれかに記載のポーラスコンクリートの製造方法。
【請求項7】
前記骨材には粒状ゼオライトが含まれる、請求項1〜6のいずれかに記載のポーラスコンクリートの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のポーラスコンクリートの製造方法により製造されてなる、ポーラスコンクリート。
【請求項9】
少なくとも結合材を含むペーストと、粒状ゼオライトを含む骨材と、ゼオライト粉末とを混合し、硬化させて、第一ポーラスコンクリート層を形成する工程、
少なくとも結合材を含むペーストと、骨材とを混合し、硬化させて、第二コンクリート層を形成する工程、及び
前記第一ポーラスコンクリート層と前記第二コンクリート層とを一体とする工程、
を備える、ポーラスコンクリート積層体の製造方法。
【請求項10】
前記第一ポーラスコンクリート層を形成する工程において、前記ゼオライト粉末が前記結合材の一部として混合されて前記ペーストとされる、請求項9に記載のポーラスコンクリート積層体の製造方法。
【請求項11】
前記ゼオライト粉末がスラリーとされて混合される、請求項9又は10に記載のポーラスコンクリートの製造方法。
【請求項12】
前記スラリーには、高分子界面活性剤が含まれる、請求項11に記載のポーラスコンクリート積層体の製造方法。
【請求項13】
前記第一ポーラスコンクリート層を形成する工程、及び/又は、前記第二コンクリート層を形成する工程において、前記ペーストと前記骨材との絶対容積比(ペースト/骨材)が36%以上となるように、前記ペーストと前記骨材とが混合される、請求項9〜12のいずれかに記載のポーラスコンクリートの製造方法。
【請求項14】
前記骨材の細骨材率が50%である、請求項9〜13のいずれかに記載のポーラスコンクリート積層体の製造方法。
【請求項15】
請求項9〜14のいずれかに記載のポーラスコンクリートの製造方法により製造されてなる、ポーラスコンクリート積層体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−37646(P2011−37646A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184062(P2009−184062)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年2月9日 国立大学法人秋田大学工学資源学部土木環境工学科発行の「平成20年度 修士論文・卒業論文概要集」に発表
【出願人】(504409543)国立大学法人秋田大学 (210)
【出願人】(391002007)福田ヒューム管工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】